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| ① | 耐震改修に伴う家屋の固定資産税の減額措置 | ふじみ野市 税務課 | 家屋の固定資産税額の1/2(120㎡相当分まで)を1〜2年度分 | 令和13年3月31日までの工事完了 |
| ② | R8年度ふじみ野市商工会建設工事等補助事業 | ふじみ野市商工会 建設部会 | 工事費の5%・上限2万円 | 令和8年12月25日(金曜日)まで |
| ③ | 賃貸集合給湯省エネ2026事業 | 経済産業省(資源エネルギー庁) | 1台あたり5万円〜10万円 | 予算上限到達まで |
| 参考 | 先進的窓リノベ2026事業 | 環境省 | 上限100万円/戸(非住宅は棟単位) | 予算上限到達まで(遅くとも令和8年12月末) |
| ✕ | 令和8年度住宅用スマートエネルギーシステム導入促進補助金 | ふじみ野市 環境課 | 太陽光2万円/kW(上限7万円)等 | 対象は「市内の戸建て住宅で、自ら居住する住宅」 |
| ✕ | 既存住宅耐震診断料・耐震改修工事費補助金 | ふじみ野市 建築課 | 診断 1戸2万円(合計200万円まで)/改修 1戸30万円(合計2,000万円まで) | 対象者は「既存住宅に居住していること」 |
この表で申し上げたいのは、ふじみ野市の制度が冷たいということではありません。市の補助金は「市民の住まい」を支えるための予算であり、収益不動産の設備投資を支えるための予算ではない——ただそれだけのことです。設計思想が違うのですから、いくら読み込んでも賃貸物件は出てきません。
私はこの仕事を20年以上やってきて、オーナーさまとの最初の打ち合わせで必ず申し上げることがあります。制度の名前ではなく、要綱の「対象者」と「対象住宅」の二行を見てください、と。そこに「自ら居住する」「居住していること」と書いてあれば、その先を読む時間は節約できます。その時間を、固定資産税と工法の検討に回したほうが、手元に残る金額はずっと大きくなります。
ふじみ野市の補助金が賃貸物件に届かない理由を、要綱の一文で確認する
「たぶん対象外だろう」で済ませると、逆に取れるものを取り逃します。まず、対象外であることを一次情報で確定させておきます。
住宅用スマートエネルギーシステム導入促進補助金:「戸建て住宅」かつ「自ら居住する」
令和8年度の制度概要は、ふじみ野市環境課のページ(2026年9月1日更新)に明記されています。補助の対象になる住宅は「市内の戸建て住宅で、自ら居住する住宅(既存・新築・建売)」。補助の対象者は「市内に住所を有する方又は転入予定者」「世帯全員が市税を滞納していない方」などです(出典:ふじみ野市「令和8年度ふじみ野市住宅用スマートエネルギーシステム導入促進補助金のご案内」)。
要件が二重になっている点に注意してください。「戸建て住宅」で一度弾かれ、「自ら居住する」でもう一度弾かれます。賃貸マンションのオーナーさまは、どちらの入口からも入れません。
なお、この制度の中身自体は参考になります。太陽光発電システムは1kWあたり2万円(上限7万円)、定置型リチウムイオン蓄電池は1kWhあたり2万円(上限7万円)、エネファーム5万円、V2H 5万円、強制循環型太陽熱利用システム3万円。国・県の補助金との併用が可能と明記されており、受付は令和8年4月1日から令和9年3月31日まで。令和8年度予算額1,100万円に対し、予算残額は648万2,000円(令和8年8月31日時点)と公開されています。
ふじみ野市が予算残額を月次で開示していること自体は、実はかなり親切な運用です。他市では「予算の範囲内で」としか書かれておらず、残りが読めないケースのほうが多い。オーナーさまご自身が住む戸建てをお持ちなら、こちらは十分検討に値します。
耐震診断・耐震改修工事費補助金:「所有」+「居住」+「市税滞納なし」
ふじみ野市建築課のページによれば、耐震診断・耐震改修ともに、補助対象者は「市内に住所を有する方」で、既存住宅を所有していること/既存住宅に居住していること/市税を滞納していないことのすべてを満たす必要があります(出典:ふじみ野市「耐震診断・改修補助制度」)。
補助金額そのものは、共同住宅を正面から想定した設計になっています。
| 区分 | 補助率 | 補助限度額 |
|---|---|---|
| 耐震診断(戸建専用住宅・戸建兼用住宅) | 費用の2/3 | 5万円 |
| 耐震診断(共同住宅・長屋住宅) | 費用の2/3 | 1戸あたり2万円、合計200万円まで |
| 耐震改修(戸建専用住宅・戸建兼用住宅) | 費用の23%以内 | 30万円 |
| 耐震改修(共同住宅・長屋住宅) | 費用の23%以内 | 1戸あたり30万円、合計2,000万円まで |
対象建築物は、建築確認を取得し昭和56年5月31日以前に着工された市内の建築物のうち、明らかな建築基準法違反がなく、戸建専用住宅・戸建兼用住宅・共同住宅・長屋住宅であるもの(木造の場合は在来工法)。昭和56年6月以降に増築工事を行った建築物は対象外とされています。
そして共同住宅・長屋住宅の場合、管理組合法人(無い場合は区分所有者の代表)が対象者となり、さらに区分所有者の2分の1以上が当該住宅に住所を有し、居住している必要があります。
ここが実務上の分かれ目です。一棟すべてをオーナーが所有する賃貸マンションには、そもそも区分所有者が存在しません。また、分譲マンションであっても賃貸化が進んで区分所有者の居住割合が半分を割り込んでいる物件では、この要件で落ちます。築40年を超え、賃貸化率が上がっているマンションほど、耐震改修補助から遠ざかるという構造になっているわけです。
ひとつ注意点を申し添えます。このページの更新日は2024年8月20日です。令和8年度分としての改訂が公開されていないため、補助率・限度額が現行年度も同じであるかは、事前に建築課 建築指導係(049-220-2069)へご確認ください。私どもも、お客さまにご案内する前には必ず電話で1本確認を入れています。
ルート①:固定資産税の減額——ふじみ野市の要綱で「賃貸除外」が書かれていない項目
ここからが本題です。ふじみ野市税務課の「固定資産税・都市計画税の軽減・減額措置」のページ(2026年4月27日更新=令和8年度内の更新)を読むと、オーナーにとって非常に重要な書き分けがされています(出典:ふじみ野市「固定資産税・都市計画税の軽減・減額措置」)。
バリアフリー改修と省エネ改修には「賃貸住宅は除きます」と明記されている
同ページの記載を、そのまま拾います。
- バリアフリー改修:「令和13年3月31日までに一定のバリアフリー改修をした場合には、翌年度の住宅にかかる固定資産税(床面積100平方メートル相当分まで)の3分の1を減額します。(ただし、アパートなどの賃貸住宅は除きます。)」
- 省エネ改修:「令和13年3月31日までに一定の省エネ改修をした場合には、翌年度の住宅にかかる固定資産税(床面積120平方メートル相当分まで)の3分の1を減額します。(ただし、アパートなどの賃貸住宅は除きます。)」
この2つは、明確に賃貸住宅が除外されています。国の制度設計上も、省エネ改修の固定資産税減額は「人の居住の用に供する部分(賃貸住宅を除く)」が対象とされており、賃貸部分は減額になりません。令和8年度税制改正により、この特例措置自体は令和8年4月1日から令和13年3月31日まで5年間延長されています(出典:国土交通省「令和8年度税制改正概要」)。
つまり、窓の断熱改修で先進的窓リノベ2026事業の補助金は狙えても、固定資産税の減額まで取りにいくことは賃貸物件ではできないということです。ここを混同したまま「省エネ改修すれば税金も安くなる」と説明されているケースを何度か見てきました。オーナーさまの投資判断を歪めるので、はっきり分けてお伝えしています。
耐震改修の項には、その一文がない
一方、同じページの耐震改修に伴う家屋の固定資産税の減額措置の項には、「アパートなどの賃貸住宅は除きます」という但し書きが書かれていません。記載されている要件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象家屋 | 昭和57年1月1日以前に建築された住宅 |
| 工事期限 | 令和13年3月31日までに現行の耐震基準に適合する耐震改修 |
| 工事費要件 | 耐震改修にかかる費用が50万円超(耐震改修に直接関係のない壁の張り替え等は含まない) |
| 減額割合 | 改修した住宅部分の固定資産税額の2分の1(床面積120㎡相当分まで) |
| 減額期間 | 通行障害既存耐震不適格建築物は2年間、それ以外は1年間 |
| 長期優良住宅化 | 改修により長期優良住宅となった場合は最初の一年度分3分の2を減額 |
| 申告期限 | 工事完了日から3か月以内に申告 |
「通行障害既存耐震不適格建築物」とは、地震で倒壊した場合に道路通行を妨げ、多数の者の円滑な避難を困難とする建築物で、都道府県または市町村の耐震改修促進計画に記載された道路の区画にその敷地が接するもののうち、耐震基準を満たしていないものを指します。幹線道路沿いに建つ築古の賃貸マンション・ビルは、ここに該当する可能性があります。該当すれば減額期間が2年に伸びる——この差は、規模の大きい物件ほど効きます。
ただし、ここは断定を避けます。同じページ内で賃貸除外が明記されているのはバリアフリーと省エネの2項目だけであり、耐震改修の項にその一文がない、という事実をお伝えしているにすぎません。適用可否は、物件ごとの状況を添えて税務課 資産税係【家屋担当】049-262-9013へ直接ご確認ください。電話1本で、数十万円単位の判断が確定します。
もうひとつ実務的な注意を。減額を受けるには、市が発行する住宅耐震改修証明書や、建築士・指定確認検査機関・住宅瑕疵担保責任保険法人等が発行する証明書が必要です。工事が終わってから慌てて手配すると、3か月の申告期限に間に合いません。着工前に「誰が証明書を出すか」を決めておく。これだけで取りこぼしは防げます。
賃貸オーナーが既に受けている軽減も、一度見直す価値がある
同じページには、オーナーが見落としがちな2つの特例も載っています。
新築家屋の軽減措置は、床面積40㎡以上240㎡以下という要件が「一戸建て以外の貸家住宅も同様」と明記されています。さらに「賃貸マンションなどについても、独立的に区分された部分ごとに区分所有家屋に準じた方法で判断します」とあり、3階建以上の中高層耐火住宅なら5年度分、税額の2分の1が軽減されます(一般の住宅は3年度分)。RC造の賃貸マンションを新築・取得されたオーナーさまは、この5年枠がいつ切れるかをキャッシュフロー計画に織り込んでおくべきです。
住宅用地の特例は、小規模住宅用地(1戸につき200㎡以下)の固定資産税の課税標準が評価額の6分の1、都市計画税は3分の1。そして「マンション等集合住宅の場合、敷地全体の面積を居住用住戸の戸数で除した面積で判定します」と明記されています。つまり戸数分だけ200㎡の枠が積み上がる。この判定が正しく効いているかどうかは、課税明細書で確認できます。
ルート②:ふじみ野市商工会の建設工事等補助事業——市ではなく商工会が出す
ふじみ野市商工会 建設部会が、令和8年度も建設工事等補助事業を実施しています(出典:ふじみ野市商工会「R8年度ふじみ野市商工会建設工事等補助事業のご案内」2026年8月3日掲載/8月5日最終更新)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | ふじみ野市内の住宅・設備・工場等を改修する場合 |
| 補助内容 | 工事費の5%(上限2万円) |
| 受付期間 | 令和8年8月14日(金)から令和8年12月25日(金)まで |
| 契約日の要件 | 工事契約日が令和8年8月14日以降のものに限る |
| 打ち切り | 受付期間内に補助金額が予算枠を超えた場合、その時点で打ち切り |
金額そのものは上限2万円ですので、これ単独で工法や時期を決める性質のものではありません。ただ、注目していただきたいのは対象の書きぶりが「住宅・設備・工場等」であり、「自ら居住する」の一文がない点です。市の制度とは主体が違う(商工会の建設部会が原資を出している)ため、要件の立て方も違います。
なお、案内には制度パンフレットとあわせて業者一覧が掲載されています。商工会建設部会の会員事業者による施工が前提と読めますので、申請を前提に動かれる場合は、見積り取得の前段階で商工会(049-261-3156)へ対象要件をご確認ください。「工事契約日が令和8年8月14日以降」という条件があるため、契約済みの工事を後から乗せることはできません。
ルート③:国の賃貸集合給湯省エネ2026事業——賃貸オーナーが主語になっている制度
国の制度には、賃貸オーナーを名指しで対象にしているものがあります。賃貸集合給湯省エネ2026事業(令和7年度補正予算「既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業」)です。資源エネルギー庁の説明では「既存賃貸集合住宅における賃貸オーナー等によるエコジョーズ等の取替を促進する取り組みに係る設備の導入に要する経費の一部を補助する事業」と定義されています(出典:資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業について」)。
補助額は台数単位で、次のとおりです。
| 工事内容 | 補助額 |
|---|---|
| 追い焚き機能なしエコジョーズ/エコフィールへの取替 | 5万円/台 |
| 同上(共用廊下を横断してドレン排水ガイドを敷設した場合) | 8万円/台 |
| 追い焚き機能ありエコジョーズ/エコフィールへの取替 | 7万円/台 |
| 同上(浴室へのドレン水排水(三方弁、三本管(二重管含む))工事の場合) | 10万円/台 |
主な条件は、従来型給湯器から補助対象のエコジョーズ等への取替であること、そして令和7年11月28日以降に工事に着手したものであること。予算上限(100%)に達し次第、交付申請の受付を終了する先着方式です。
仮に20戸の賃貸マンションで追い焚き機能なしの給湯器を一斉更新した場合、5万円×20台=100万円。共用廊下を横断するドレン排水ガイドの敷設が必要な構造であれば8万円×20台=160万円になります。ふじみ野市の制度で数万円を追いかけるより、こちらのほうが桁が違います。
大規模修繕との関係で申し上げると、給湯器の更新は外壁・防水の工事と同時に足場計画を共有できる場合があります。特にパイプスペースが外部に面している物件では、外壁改修と給湯器更新を切り離すと、同じ場所に二度足場を立てることになりかねません。工事の順番を決める前に、給湯器の残存年数を必ず確認してください。
先進的窓リノベ2026事業:中高層集合住宅の単価は、戸建てより高く設定されている
環境省の先進的窓リノベ2026事業(令和7年度補正予算1,125億円)は、断熱性能の高い窓への改修を定額補助する制度です。上限は100万円/戸、延床面積240㎡以下の非住宅建築物は100万円/棟、240㎡超の非住宅建築物は1,000万円/棟(出典:環境省「先進的窓リノベ2026事業の概要」)。
オーナーさまに知っておいていただきたいのは、単価が建物のタイプ別に設定されており、地上4階建以上の中高層集合住宅は戸建住宅より高いという点です。代表的な単価を抜粋します。
| 工種・グレード | 戸建住宅(特大) | 中高層集合住宅等(特大) |
|---|---|---|
| 外窓交換(カバー工法)SS | 239,000円 | 302,000円 |
| 外窓交換(はつり工法)SS | 194,000円 | 302,000円 |
| 内窓設置 SS | 140,000円 | 152,000円 |
| ガラス交換 SS | 78,000円 | 86,000円 |
※「中高層集合住宅等」は地上4階建以上の集合住宅または延床面積240㎡超の非住宅建築物。「特大」はガラス1枚の面積2.0㎡以上、サッシ1箇所の面積4.0㎡以上。
令和7年度補正予算案の閣議決定日(令和7年11月28日)以降に対象工事に着手したものが対象で、交付申請は予算上限に達するまで(遅くとも令和8年12月末まで)。注意点として、内窓のAグレードは令和8年度から補助対象外になっています。前年度の資料を見て計画を立てると、この変更で足元をすくわれます。
もうひとつ、実務で必ず引っかかる点を。この事業は登録事業者が申請し、住宅所有者等に全額還元する仕組みです。オーナーさまご自身が直接申請することはできません。発注先が事業者登録を済ませているかどうかを、見積り段階で確認してください。予算の消化状況は公式サイトの「予算に対する補助金申請額の割合」で公開されています。
埼玉県の事業者向け補助は令和8年度が終了——令和9年度に備える
県の制度についても整理しておきます。令和8年度 企業等における省エネ・再エネ活用設備導入補助金は、埼玉県のページ上で既に【募集終了】と表示されています(出典:埼玉県「令和8年度 企業等における省エネ・再エネ活用設備導入補助金」)。
この制度は、県内の事業所において「埼玉県省エネ・再エネ活用設備あんしん事業者(企業等向け)」の認定を受けた事業者との契約により補助対象設備を導入する民間事業者が対象で、法人所有の収益物件でも射程に入り得るものでした。募集期間が短いのが特徴で、認定事業者の選定・見積り取得・書類準備を募集開始前に終わらせておかないと間に合わないタイプの制度です。
令和9年度に同種の募集があるかは未定ですが、狙うのであれば令和8年度のうちに「あんしん事業者」の認定を受けている施工会社を把握しておくことが準備になります。県の中小企業者向けカーボンニュートラル・省エネ支援制度には、省エネ診断やセミナーもありますので、そちらから接点を作るのも一手です(出典:埼玉県「中小企業者向けカーボンニュートラル・省エネ支援制度の御案内」)。
誤解されやすい制度:マンションストック長寿命化等モデル事業は、一棟所有では使えない
大規模修繕の資金計画を調べていると、必ず出てくるのが国土交通省のマンションストック長寿命化等モデル事業です。計画支援型(事業前の立ち上げ準備段階への支援)と工事支援型(長寿命化等の改修工事や建替工事の実施段階への支援)があり、金額規模も大きい。
ただし、この事業の要件には「区分所有者が10人以上であること」が含まれます(出典:国立研究開発法人建築研究所「マンションストック長寿命化等モデル事業」)。一棟すべてをオーナーが所有する賃貸マンションには区分所有者が存在しませんので、この時点で対象外です。
修繕積立金額が長期修繕計画額と概ね一致している、あるいは計画より余裕があること、耐用年数の2分の1を経過していること、といった要件も並びます。分譲マンションの管理組合を想定した制度である、と割り切っていただくのが正確です。公募は年度内に複数回に分けて実施されていますので、区分所有物件を複数お持ちで管理組合の理事を務めておられるオーナーさまは、そちらの立場から検討する余地があります。
ふじみ野市で規模の大きい建物を扱うときの、窓口の話
もう一点、実務で必ずぶつかる構造をお伝えしておきます。ふじみ野市は川越建築安全センターの管轄区域内にある限定特定行政庁です。限定特定行政庁の市町では、木造2階建て住宅などの小規模な建築物等に関する建築確認等は各市町が行いますが、それを超える規模の建築物は埼玉県が所管します(出典:埼玉県「建築行政の窓口」)。
川越建築安全センターの管轄区域は、朝霞市・入間市・坂戸市・志木市・鶴ヶ島市・飯能市・東松山市・日高市・富士見市・ふじみ野市・和光市ほかの町村です。3階建て以上のRC造賃貸マンションについて建築基準法関連の相談をされる場合、市役所ではなく埼玉県川越建築安全センターが窓口になります。「市内の建物なのに市役所が扱わない」のは、担当者の誤りではなく制度上の切り分けです。
ちなみに、ふじみ野市のブロック塀等撤去に関する補助制度は、本記事執筆時点(2026年9月21日)で市の公式サイト上に該当ページを確認できませんでした。隣接する富士見市には同種の制度がありますが、自治体ごとに運用は異なります。敷地際のブロック塀が気になっている物件をお持ちであれば、まず建築課へ問い合わせるところからになります。
大規模修繕の費用相場と、足場・ロープアクセスの差額
ここからは、補助金の話から一歩離れます。オーナーさまの手元に残る金額を最も大きく左右するのは、補助金ではなく工事そのものの設計だからです。
工種別の単価目安
首都圏の一般的なマンション・ビルで、私どもがご相談をいただく際の目安は次のとおりです。
| 工種 | 単価の目安 |
|---|---|
| 外壁塗装 | 3,500〜4,500円/㎡ |
| 外壁打診調査 | 250〜500円/㎡ |
| 防水(屋上・バルコニー) | 5,000〜8,000円/㎡ |
| 30戸規模マンションの大規模修繕 総額 | 3,500〜5,000万円 |
| うち仮設足場が占める割合 | 総工費の15〜25% |
これらは目安・レンジであり、実際の見積りは建物の形状、階数、外周長、既存の劣化状況、近隣条件によって大きく変動します。同じ30戸でも、外周が長い板状型と、外周の短いタワー型では、足場の数量がまったく違います。
足場とロープアクセスの差額は、百万円単位で動く
分かりやすい比較として、10階建て・外周80m・工期3ヶ月の物件で仮設を比較した場合、足場設置が約168万円になるケースで、ロープアクセス工法なら約59万円。差額はおよそ109万円です。総工費3,500万円の工事であれば、これだけで3%強が動きます。
ロープアクセス工法(無足場工法)は、産業用ロープで作業員が外壁に取り付く工法です。足場を組まないため、仮設費が圧縮できるだけでなく、工期が足場工法の約60%に収まるケースが多い。10階建て・外周80mのマンションなら、足場3ヶ月に対してロープアクセス1.5〜2ヶ月が目安になります。工法の技術的な詳細や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで解説しています。
オーナー視点で本当に効くのは、実は仮設費よりも入居者への影響のほうです。足場を組むと、バルコニーに足場が接し、外から見える状態が数ヶ月続きます。メッシュシートで建物全体が覆われるため、日照と通風が落ち、洗濯物が干しにくくなる。この期間の入居者の不満は、更新時期と重なると退去理由になります。
入居率の話に置き換えてみます。20戸の賃貸マンションで、家賃8万円、年間家賃収入1,920万円の物件を想定します。入居率が1%落ちるということは、年間約19万円の減収です。工事をきっかけに2戸が退去し、それぞれ2ヶ月の空室期間が発生すれば、それだけで32万円。さらに原状回復費と客付け費用が乗ります。仮設費の差額と並べて、この数字も見積書の隣に置いてください。
弊社・株式会社明誠は、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてまいりました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたり、ISO9001の品質マネジメントシステムを運用、日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。料金の考え方については大規模修繕の料金の考え方のページに、安全管理の体制については高所作業の安全管理のページにまとめています。
修繕費か資本的支出か——税務処理でNOIが変わる
補助金と同じくらい、いやそれ以上に手元のキャッシュに効くのが税務処理です。
判定の基本的な考え方
大規模修繕の工事費は、税務上「修繕費」と「資本的支出」に分かれます。修繕費であればその年度に全額を損金算入でき、資本的支出であれば資産計上して耐用年数にわたり減価償却していくことになります。
大まかな考え方としては、原状回復・維持管理のための支出は修繕費、建物の価値を高める、あるいは耐久性を増す支出は資本的支出です。既存と同等の仕様での外壁塗り替えや防水の打ち替えは修繕費に寄り、断熱性能を大幅に向上させる改修や、これまでなかった設備の新設は資本的支出に寄ります。
ただし、この線引きは工事の実態で判断されるもので、一律の正解はありません。実際の判定は顧問税理士にご確認ください。私どもは税務の専門家ではありませんので、お伝えできるのは「見積書の作り方で、税理士が判断しやすくなる」という実務上のポイントまでです。
見積書の段階で工種を分けておく
よくあるのが、「外壁改修工事一式 2,800万円」という見積書です。これを受け取った税理士は、修繕費と資本的支出の按分ができません。結果として保守的に資本的支出へ寄せた処理になり、初年度の損金が小さくなります。
私どもがお出しする見積書は、工種別・部位別に分けた明細を標準にしています。塗装/防水/シーリング/タイル補修/鉄部/付帯設備が別行で並んでいれば、判断の材料になります。これは、施工会社に頼めば対応してもらえるはずのことです。見積り依頼の段階で「税務判定のために工種別の内訳が欲しい」と一言添えてください。
補助金は雑収入として課税される
もうひとつ、見落とされがちな点です。補助金を受給すると、原則として受給時に雑収入として計上され、課税の対象になります。「100万円もらえた」は、税引き後で見ると手取りがそれより小さくなるということです。
法人であれば圧縮記帳の適用を検討できる場合もありますが、要件があります。これも顧問税理士へご相談ください。補助金の額面だけで工事の意思決定をすると、キャッシュフロー計画がずれます。
出口戦略:修繕履歴が、収益還元価格の前提を守る
最後に、出口の話をさせてください。
収益不動産の価格は、突き詰めればNOIとキャップレートで決まります。修繕を先送りしてもNOIは当面変わらないので、「今は利回りが出ている」と見えてしまう。ところが売却の局面になると、買主側のエンジニアリングレポート(建物状況調査)で将来の修繕費が洗い出され、その分が価格から差し引かれます。
私が見てきた中で印象的だったのは、築35年の一棟賃貸で、外壁のタイル浮きが広範囲に見つかったケースです。売主側は「そろそろ売り時」と判断されていましたが、買主側の調査で大規模修繕の必要性が指摘され、見積り額がそのまま指値の根拠になりました。先送りした修繕費は、消えるのではなく、売却価格から引かれる形で必ず支払うことになる——この構造は、どの物件でも変わりません。
逆に言えば、修繕履歴が整理されていて、直近の大規模修繕から年数が浅い物件は、買主の不安材料が減ります。工事報告書、使用材料の仕様書、保証書。これらが揃っているだけで、交渉のテーブルの位置が変わります。修繕は費用であると同時に、出口で効く資料の蓄積でもあると考えていただきたいのです。
賃貸経営の投資判断の考え方については、収益物件オーナー向けの大規模修繕のページも参考になさってください。明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は施工実績の一覧からご覧いただけます。
ふじみ野市で実際に動くなら、この順番
情報を整理しても、順番を間違えると取れるものが取れません。私どもがオーナーさまにお勧めしている手順です。
- 建物の建築年を確認する——昭和57年1月1日以前の建築なら、固定資産税の耐震改修減額の射程に入ります。登記簿または課税明細書で確認してください。
- 税務課 資産税係【家屋担当】(049-262-9013)へ電話する——賃貸物件での耐震改修減額の適用可否、必要書類、申告のタイミングを確認します。ここが最初です。
- 給湯器の残存年数を確認する——従来型給湯器が残っているなら、賃貸集合給湯省エネ2026事業が使える可能性があります。予算上限到達で終了する先着方式なので、早いほど有利です。
- 外壁・防水の現況を調査する——打診調査で浮きの範囲が分かれば、修繕の緊急度と概算費用が見えます。ここで初めて、工法(足場/ロープアクセス/ハイブリッド)の比較が意味を持ちます。
- 見積りは工種別内訳で取る——税務判定と、補助対象工事の切り出しの両方に効きます。
- 商工会(049-261-3156)に対象要件を確認する——工事契約日が令和8年8月14日以降であることが条件です。契約前に確認してください。
- 登録事業者かどうかを確認する——窓リノベ・給湯省エネは、事業者登録がなければ申請できません。
この順番でいくと、「補助金の申請期限に追われて、工法の検討が雑になる」という一番もったいない事態を避けられます。
よくあるご質問
Q. ふじみ野市に住んでいない大家ですが、市から金銭的な支援を受ける方法はありますか?
A. 補助金としては、市の主要な制度(住宅用スマートエネルギーシステム導入促進補助金、耐震診断・耐震改修工事費補助金)がいずれも「自ら居住する」「居住していること」を要件としているため、非居住のオーナーさまは対象外です。一方、固定資産税の減額措置のうち耐震改修の項には賃貸住宅を除外する記載がなく、またふじみ野市商工会の建設工事等補助事業は「住宅・設備・工場等の改修」が対象です。まずは税務課 資産税係(049-262-9013)と商工会(049-261-3156)へのご確認をお勧めします。
Q. 省エネ改修をすれば、固定資産税も安くなりますか?
A. 賃貸住宅は対象外です。ふじみ野市のページにも「ただし、アパートなどの賃貸住宅は除きます」と明記されており、国の制度設計上も賃貸部分は減額になりません。ただし、補助金(先進的窓リノベ2026事業など)は賃貸物件でも使えます。「補助金は取れるが、固定資産税の減額は取れない」——この2つを分けて考えてください。
Q. 賃貸集合給湯省エネ2026事業は、いくらもらえますか?
A. 追い焚き機能なしのエコジョーズ/エコフィールへの取替で5万円/台、追い焚き機能ありで7万円/台です。共用廊下を横断してドレン排水ガイドを敷設した場合は8万円/台、浴室へのドレン水排水工事を伴う場合は10万円/台になります。従来型給湯器からの取替であること、令和7年11月28日以降に工事着手したものであることが条件で、予算上限到達で受付終了となります。
Q. 外壁の打診調査は、足場を組まないとできませんか?
A. 組まなくてもできます。ロープアクセス工法なら、産業用ロープで作業員が外壁に取り付いて打診調査を行えます。打診調査の単価目安は250〜500円/㎡です。足場を組んでからでないと調査ができないと思い込んで、調査自体を先送りされているオーナーさまは少なくありません。調査だけ先に済ませて、修繕の緊急度と概算を把握するという進め方ができます。
Q. ロープアクセス工法は、どんな建物に向いていますか?
A. 高層で外周が長い建物、隣地との離隔が狭く足場が架けにくい建物、稼働を止めたくないホテルや商業施設、そしてコストを最優先したい物件に向いています。逆に、外壁全面の張り替えのように大量の資材搬入が必要な工事は足場のほうが適しています。明誠では足場/ロープアクセス/両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3案で比較してご提案しています。工法ごとの技術的な違いはロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディアに整理されています。
Q. 補助金をもらうと、税金はどうなりますか?
A. 原則として受給時に雑収入として計上され、課税の対象になります。法人の場合は圧縮記帳の適用を検討できるケースもありますが、要件がありますので顧問税理士にご確認ください。額面と手取りは一致しない、という前提で計画を立てるのが安全です。
Q. 工期はどれくらいかかりますか?
A. 建物の規模と工事範囲によりますが、ロープアクセス工法は足場工法の約60%の工期が目安です。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場3ヶ月に対してロープアクセスは1.5〜2ヶ月程度。工期が短いということは、入居者がメッシュシートに囲まれる期間、バルコニーが使いにくい期間がその分短いということでもあります。
Q. ふじみ野市の3階建て以上のマンションについて、建築基準法の相談はどこにすればいいですか?
A. 埼玉県川越建築安全センターです。ふじみ野市は限定特定行政庁で、市が扱えるのは木造2階建て住宅などの小規模な建築物等に限られます。規模の大きい建築物は県の所管になります。
この記事のポイントまとめ
- ふじみ野市の主要な補助金(住宅用スマートエネルギーシステム、耐震診断・耐震改修)は、いずれも「自ら居住する」「居住していること」が要件で、非居住のオーナーは対象外
- 一方、固定資産税の減額措置では、バリアフリー改修と省エネ改修に「アパートなどの賃貸住宅は除きます」と明記されているのに対し、耐震改修の項にはその記載がない。昭和57年1月1日以前建築・工事費50万円超が要件で、税額の1/2を1〜2年度分減額。税務課への確認が第一歩
- ふじみ野市商工会の建設工事等補助事業は工事費の5%・上限2万円。受付は令和8年12月25日まで、工事契約日が令和8年8月14日以降であることが条件
- 賃貸集合給湯省エネ2026事業は賃貸オーナーを名指しで対象にした国の制度。1台5万〜10万円、20戸なら100万〜200万円規模
- 先進的窓リノベ2026事業は地上4階建以上の中高層集合住宅の単価が戸建てより高い(外窓交換カバー工法SS・特大で302,000円)。内窓Aグレードは令和8年度から対象外
- マンションストック長寿命化等モデル事業は区分所有者10人以上が要件のため、一棟所有の賃貸は対象外
- 補助金より大きく動くのは工法選択。10階建て・外周80mなら足場168万円 → ロープアクセス59万円で差額109万円、工期は約60%
- 補助金は雑収入として課税。修繕費/資本的支出の判定のため、見積りは工種別内訳で取る
本記事の情報の鮮度について
本記事は2026年9月21日時点で公表されているふじみ野市、ふじみ野市商工会、埼玉県、国土交通省・環境省・経済産業省(資源エネルギー庁)の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特に、ふじみ野市住宅用スマートエネルギーシステム導入促進補助金は「予算がなくなり次第受付終了」、賃貸集合給湯省エネ2026事業および先進的窓リノベ2026事業は「予算上限に達し次第終了」と明記されている先着方式です。また、ふじみ野市の耐震診断・改修補助制度のページは2024年8月20日更新であり、令和8年度としての改訂内容は確認できておりません。実際に申請される前に、必ずふじみ野市および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
ふじみ野市の問い合わせ窓口
- 固定資産税の減額措置:税務課 資産税係【家屋担当】049-262-9013
- 耐震診断・耐震改修工事費補助金:建築課 建築指導係 049-220-2069
- 住宅用スマートエネルギーシステム導入促進補助金:環境課 環境係 049-262-9021
- 建設工事等補助事業:ふじみ野市商工会 049-261-3156
- 規模の大きい建築物の建築基準法関連:埼玉県 川越建築安全センター
出典・参考資料
- ふじみ野市「固定資産税・都市計画税の軽減・減額措置」(2026年4月27日更新)
- ふじみ野市「令和8年度ふじみ野市住宅用スマートエネルギーシステム導入促進補助金のご案内」(2026年9月1日更新)
- ふじみ野市「耐震診断・改修補助制度」(2024年8月20日更新)
- ふじみ野市商工会「R8年度ふじみ野市商工会建設工事等補助事業のご案内」(2026年8月3日掲載)
- 資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業(令和7年度補正予算「既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業」)について」
- 環境省「先進的窓リノベ2026事業の概要」(令和7年度補正予算)
- 環境省「先進的窓リノベ2026事業 公式サイト」
- 国土交通省「住宅省エネ2026キャンペーン」
- 国土交通省「令和8年度税制改正概要」(令和7年12月)
- 国立研究開発法人建築研究所「マンションストック長寿命化等モデル事業」
- 埼玉県「建築行政の窓口」
- 埼玉県「令和8年度 企業等における省エネ・再エネ活用設備導入補助金」(募集終了)
- 埼玉県「中小企業者向けカーボンニュートラル・省エネ支援制度の御案内」
最後に
ふじみ野市のオーナーさまとお話ししていて、いつも申し訳なく思うことがあります。制度の情報は公開されているのに、自分の物件が対象かどうかを判定するには、要綱の細かい一文まで読み込まないと分からない。これは、忙しい経営者の方に求めるには酷な作業です。
ただ、判定の勘所は多くありません。「居住」の二文字があるかどうか。建築年が昭和56年5月31日以前か、昭和57年1月1日以前か。区分所有者が何人いるか。この3つを押さえるだけで、大半の制度は仕分けできます。
そして、これだけは申し上げておきたい。補助金で動くのは数万円から数百万円ですが、工法選択で動くのは百万円単位、先送りで失うのは空室期間と出口価格を含めてそれ以上です。補助金の締切を追いかけるあまり、本来の投資判断が雑になるのが、一番もったいない。
お持ちの物件で、まだ外壁の現況調査も税務上の整理も手つかずだというオーナーさまは、ぜひ一度お声がけください。1棟の現地調査と、足場/ロープアクセス/ハイブリッドの3案での概算比較、そして利回り改善シミュレーションだけでも承ります。ご相談だけでも遠慮なくどうぞ。お問い合わせはこちらから承っております。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月21日


