用語集
アーチ
アーチとは、組積造(レンガ造・石造・コンクリートブロック造)や鉄筋コンクリート造、木造、鋼構造など多様な構造種別で実現できる、上部が円弧状・楕円状・尖頭状などに湾曲した構造物の総称であり、建築・土木分野で古代から現代に至るまで利用され続けている代表的な構造形式である。アーチの構造原理は「圧縮力で荷重を伝達する」点にあり、上部からの鉛直荷重を曲線形状に沿って両端の支点(スプリンギング)へ斜めに分散させ、最終的には水平方向への反力(ホリゾンタルスラスト)と鉛直方向への反力に分解して支持構造へ伝える。最頂部に位置する楔形の石材を「キーストーン(要石)」と呼び、これがアーチ全体の構造安定を担う最重要部材となる。古代ローマでは石造アーチ橋・水道橋・凱旋門・コロッセオ(ラテン語:アンフィテアトルム・フラウィウム)・パンテオン神殿などにアーチ構造が多用され、構造的合理性と意匠的美しさを兼ね備えた建築様式の基盤となった。中世ヨーロッパではゴシック様式の尖頭アーチ(ポインテッドアーチ)が大聖堂建築の代表的意匠となり、ノートルダム大聖堂・シャルトル大聖堂・ケルン大聖堂など壮麗な宗教建築を生み出した。アーチの形態には半円アーチ・尖頭アーチ・楕円アーチ・馬蹄形アーチ・三葉アーチ・チューダーアーチなど多様な種類があり、それぞれ時代・文化・地域・用途に応じて発展してきた。日本では石造アーチ橋として長崎県の眼鏡橋(1634年)が有名で、その後も国内に数多くの石造アーチ橋が建設された。近代以降は鉄筋コンクリートや鋼によるアーチ橋(東京湾アクアブリッジ等)、半円形コンクリートアーチを連続させたアーチダム(黒部ダム等)、エントランス門・正門のデザインアーチ、室内のクラシック装飾アーチ、植栽アーチ・ローズアーチなど多様な用途で生かされている。マンション・ビルの意匠デザインにおいても、エントランス・通路・バルコニー手すり・装飾窓などにアーチ形状を採用するクラシック様式が根強い人気を持ち、明誠の大規模修繕工事では既存のアーチ意匠を保全・再現する塗装・タイル工事・シーリング工事の技術力が問われる場面が多い。

