用語集
ARTSCRAFTS
ARTSCRAFTS(アーツ・アンド・クラフツ運動、Arts and Crafts Movement)とは、19世紀後半のイギリスを発祥地とする美術工芸運動であり、産業革命によって失われつつあった手仕事の価値と職人技術の復権を理念として掲げ、生活と芸術の融合、自然との調和、地域材料の活用、装飾と機能の統一などを追求した文化潮流である。同運動の代表的指導者は詩人・思想家・デザイナー・社会主義者として知られるウィリアム・モリス(William Morris、1834-1896)で、彼は1861年に「モリス・マーシャル・フォークナー商会(後のモリス商会)」を設立し、壁紙・家具・テキスタイル・ステンドグラス・タペストリー・書籍などの分野で手作りの工芸品を制作販売した。モリスの代表作には壁紙「いちご泥棒」「ピンプネル」「アカンサス」、書籍『ニュースフロムノーウェア』『地上の楽園』、ケルムスコット・プレス社による『チョーサー著作集』など、美術と思想を融合した多彩な業績がある。同運動の理念は、(1)安価な機械生産品ではなく職人の手仕事による高品質な生活用品の生産、(2)使用材料の地域性・自然性の重視、(3)装飾と機能の不可分性、(4)デザイナーと職人の協働、(5)民衆の生活への美の浸透、などにあり、後のアールヌーヴォー(1890年代〜)、ウィーン分離派(1897年〜)、ドイツ工作連盟(1907年〜)、バウハウス(1919年〜)、北欧モダンデザイン、日本の民藝運動(柳宗悦、1925年〜)など世界中のデザイン運動に多大な影響を与えた。建築分野では、フィリップ・ウェッブ設計のRed House(1860年、モリス自邸)、C.F.A.ヴォイジー設計のカントリーハウス、エドウィン・ラッチェンス設計の各種住宅などが代表例で、レンガ・木材・石・タイルなどの地域材を素直に表現する素材感重視のデザイン、伝統的な英国カントリーハウススタイル、ベイウィンドウ(出窓)・ハーフティンバー・スレート瓦などの伝統的ディテール、室内外の統合的デザインなどを特徴とした。日本では京都の村野藤吾・大阪の安井武雄・東京の岡田信一郎などの建築家が同運動の影響を受けたとされ、現代でも自然素材重視・手仕事重視のリノベーション・新築住宅でその精神が継承されている。マンション・戸建住宅の大規模修繕工事においても、既存建物のアーツ・アンド・クラフツ的意匠を尊重した塗装色彩計画・タイル張替計画・木製窓改修などの提案が求められるケースがあり、明誠は意匠設計者と連携した修繕提案を行う体制を整えている。

