用語集
アールヌーヴォー
アール・ヌーヴォー(Art Nouveau)とは、19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパを中心に広がった装飾芸術・建築の運動で、「新しい芸術」を意味するフランス語に由来する。植物の蔓や花、昆虫の翅といった有機的なモチーフを取り入れ、うねるような自由曲線と繊細な装飾を特徴とする。それまで主流であった歴史主義的な様式の模倣から脱却し、鉄やガラスといった当時の新素材を積極的に用いて、建築・家具・ガラス工芸・ポスター・宝飾など生活空間全体を統一的にデザインしようとした点に、美術史上の大きな意義がある。
この運動が広がった背景には、産業革命による大量生産がもたらした意匠の画一化への反発と、芸術と生活を融合させようとする思想があった。手仕事の価値を尊重しつつ、同時に鉄やガラスという近代的素材の表現力を引き出した点に、過渡期ならではの独自性がある。代表的な担い手として、ベルギーのヴィクトール・オルタ、フランスのエクトール・ギマール(パリの地下鉄入口の意匠で知られる)、ガラス工芸のエミール・ガレやルネ・ラリックなどが挙げられる。スペインのアントニ・ガウディの作品もこの潮流と関連づけて語られることが多い。
地域によって、ドイツではユーゲント・シュティール、オーストリアではゼツェッシオン(分離派)、イタリアではリバティ様式など呼称が異なるが、いずれも有機的曲線と装飾性を志向する点で共通している。やがて、より幾何学的で機能的なアール・デコへと様式は移行していくが、アール・ヌーヴォーが装飾と構造の一体化、総合芸術の理念を打ち立てた意義は大きい。日本でも明治後期から大正期にかけて流行し、近代建築や工芸意匠、商業デザインに影響を残した。
現代の都市部に残る歴史的なマンション・ビル・ホテルの一部には、こうした装飾様式に通じる曲線的な手すりや装飾的なバルコニー、装飾鉄部、ステンドグラス、装飾タイルが用いられている例がある。大規模修繕の現場では、これらの意匠要素を損なわずに塗装・防水・補修を行う繊細な技術が求められ、画一的な改修ではかえって建物の価値を損なうおそれがある。明誠では、通常足場・ロープアクセス・ハイブリッドの三工法を建物特性に応じて選択できる強みを活かし、足場を架けにくい装飾部や高所の意匠部分にも柔軟にアクセスして、劣化した箇所のみを的確に補修できる。装飾鉄部のサビ処理や塗り替え、ステンドグラスまわりの止水処理なども、意匠の輪郭や質感を尊重しながら施工し、建物本来のデザイン価値と機能性の双方を維持する改修を提供している。
このように、装飾様式を持つ建物の改修は、単なる劣化補修ではなく、歴史的・意匠的価値の保全という側面を併せ持つ。明誠は、建物一棟ごとの個性に向き合い、意匠を尊重した部分補修と、機能回復に必要な防水・塗装・タイル補修を組み合わせることで、デザインと耐久性の双方を満たす改修を実現し、オーナーの大切な資産を次の世代へと引き継ぐ支援を行っている。

