用語集
アールヌーボー
アールヌーボー(アール・ヌーヴォー、Art Nouveau)とは、19世紀末にベルギーやフランスで生まれ、ヨーロッパ各地に普及した建築・工芸の新しい様式である。過去の歴史的様式の模倣にとらわれず、新しい造形と新しい素材を駆使した点が大きな特徴で、植物の蔓や茎、花などを思わせるうねるような有機的曲線によって豊かに装飾されたデザインが象徴的である。鉄やガラスといった当時の新素材を意匠の中心に据え、建築物の外観から手すり、扉、窓枠、家具、照明、ガラス工芸に至るまで、一貫した美的世界観を空間全体で表現しようとした。
この運動は、産業革命以降の大量生産による意匠の画一化への反動という側面を持ち、手仕事の価値や、芸術と生活の融合を志向した。建築・工芸・グラフィックといった分野の垣根を越えて、生活環境全体を一つの作品として総合的にデザインしようとする「総合芸術」の理念が、その根底にあった。ベルギーのヴィクトール・オルタの邸宅建築、フランスのギマールによるパリ地下鉄入口、ガレやラリックのガラス工芸などが代表例として知られる。
日本でも明治後半から大正にかけて流行し、近代建築や百貨店建築、商業意匠、工芸品のデザインに影響を与えた。地域ごとにユーゲント・シュティール(ドイツ)やゼツェッシオン(オーストリア)など別名で呼ばれることもあるが、有機的曲線と装飾性という共通の志向を持つ。20世紀に入ると、より直線的・幾何学的で機能を重んじるアール・デコやモダニズムへと潮流は移っていくが、アール・ヌーヴォーが残した装飾的遺産は、今日でも歴史的建造物のなかに息づいている。
今日の都市に残る歴史的なマンション・ビル・ホテルの一部には、この様式に通じる装飾的なファサードや曲線的なバルコニー、装飾鉄部、ステンドグラスが用いられている。大規模修繕の現場では、こうした意匠を尊重した補修が課題となり、劣化した塗膜や鉄部のサビを処理しつつ、装飾の輪郭や質感を損なわないためには、部位ごとにきめ細かな施工が欠かせない。明誠では、通常足場・ロープアクセス・ハイブリッドの三工法を建物特性に応じて選択でき、装飾部や高所の意匠部分にも無理なくアクセスして、必要な箇所のみを丁寧に補修できる体制を備えている。デザイン的価値の高い建物ほど、一律の仕様で塗りつぶすのではなく、意匠の保全と機能の回復を両立させる提案が求められ、こうしたきめ細かな改修こそが、建物の歴史的魅力と資産価値の維持・向上に直結する。
歴史的・意匠的価値を持つ建物の改修では、施工者の技術力と提案力がそのまま建物の将来価値を左右する。明誠は、塗装・防水・タイルなど各分野の専門職が加盟するフランチャイズ体制と、三つの工法を使い分ける柔軟性を活かし、装飾を損なわない丁寧な施工と、機能回復に必要な改修とを両立させることで、建物の魅力と資産価値の長期的な維持に貢献している。

