用語集
打込接ぎ
打込接ぎ(うちこみはぎ、Uchikomi-Hagi、打ち込み接ぎ、打込み積み)とは、石を粗加工して隙間を残しつつ積む石垣工法を指し、近世日本の城郭・寺院・庭園の石垣工事で広く用いられた中世〜近世の伝統的石垣工法概念である。「打込接ぎ」「打ち込み接ぎ」「打ち込みハギ」など複数の表記揺れがあるが、同一の工法を指す。本工法の特徴は、第一に「石材の粗加工」(自然石を打撃で形状を整えるが、完全な平面ではなく凹凸を残す)、第二に「不揃いな石材の組合せ」(大小・形状の異なる石を組み合わせて積む)、第三に「隙間の存在」(石材間に小さな隙間が残り、これが排水・通気に寄与)、第四に「裏込め(うらごめ)」(石垣裏面に栗石・砕石を充填して安定性を確保)、第五に「勾配のある積み方」(垂直ではなく適度な勾配を持たせる)などである。本工法は「乱積み(らんづみ、自然石を加工せずに積む最古の工法)」と「切込接ぎ(きりこみはぎ、石を精密加工して隙間なく積む最高級工法)」の中間に位置し、コストと耐久性のバランスがとれた標準的な石垣工法として、近世(江戸時代)の城郭石垣に広く採用された。代表的な城郭石垣として、第一に「安土城」(織田信長、1576年築城、安土山)、第二に「大阪城」(豊臣秀吉、1583年築城、現在の天守は徳川時代復元)、第三に「江戸城」(徳川家康、1603年〜、現在の皇居)、第四に「名古屋城」(徳川家康、1612年築城)、第五に「彦根城」(井伊直政、1604年築城)、第六に「松山城」「丸亀城」「岡山城」など、近世の大型城郭の多くで打込接ぎ工法が採用された。技術系譜として、第一に「乱積み(古墳時代〜中世)」、第二に「打込接ぎ(近世初期〜中期)」、第三に「切込接ぎ(近世後期〜明治)」と発展した。石材は地域の自然石を活用することが多く、花崗岩、安山岩、凝灰岩、砂岩など、地域の地質に応じた選定が行われた。現代では、石垣の保存修復・伝統的工法の継承が文化財保護の重要課題となっており、各地で専門技術者の養成が進む。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事との直接的関連は小さいが、敷地内に石垣・歴史的構築物を有する物件や、伝統建築・寺社建築の保存修復に関わるケースでは、本工法の知識が活用される。明誠フランチャイズの一部の伝統建築・石材工事専門会社では、伝統的石垣工事の知識と技術を継承している。JCSAでも歴史建築・伝統技法の技術セミナーを開催している。

