用語集

漆

読み方
うるし

漆(うるし、Urushi、Lacquer)とは、ウルシ科ウルシ属の植物(漆の木、Toxicodendron vernicifluum)の樹液を採取・精製した天然樹脂塗料を指し、数千年の歴史を持つ世界最古級の塗料素材として、日本・中国・韓国・東南アジアで連綿と継承されてきた伝統的な工芸・建築・建具・道具向け塗料概念である。漆の歴史は縄文時代後期(約9000年前)の遺物にまで遡り、北海道函館市の垣ノ島遺跡から漆塗りの装飾品が出土するなど、極東アジア文明と深く結びついた素材である。化学組成は、ウルシオール(漆の主成分、フェノール性化合物の混合物)を主体とし、ゴム質(多糖類)、糖タンパク質(ラッカーゼ酵素)、水分などから構成される。乾燥(硬化)機構は他の塗料と異なる独特のもので、漆に含まれるラッカーゼ酵素の働きにより、空気中の酸素を取り込みながら酸化重合する独特の硬化機構を持ち、適度な温度(20〜30℃)・湿度(70〜85%RH)の漆風呂(しつ)で乾燥させる必要がある。性能特性として、第一に「耐水性が極めて高い(漆器を熱湯で洗っても劣化しない)」、第二に「耐酸性・耐アルカリ性・耐塩性に優れる」、第三に「耐熱性が高い(300℃でも耐える)」、第四に「電気絶縁性が高い(伝統電子部品でも使われた)」、第五に「特有の光沢と深みのある質感」、第六に「アレルギー反応リスク(ウルシオール接触皮膚炎)」などが挙げられる。社寺建築(寺院本堂・神社拝殿・鳥居)、城郭建築(豪華内装)、漆器(輪島塗・会津塗・木曽漆器・京漆器)、楽器(三味線・琴)、武具・刀剣装飾・高級和家具など多岐にわたる用途で活用される。代表的な漆産地は岩手県浄法寺町・茨城県大子町・京都府・福井県・石川県などで、希少な日本産漆は文化財修復の専用材料として極めて高価(1kg数十万円〜)に取引される。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事との直接関連は限定的だが、歴史的建造物・社寺建築・伝統旅館・高級和食料亭の維持補修では漆塗装の知識が必要となる。明誠フランチャイズの内装・建具工事専門会社が伝統工芸関連の対応を担当し、JCSAでも伝統建築・文化財修復関連のセミナーを開催している。

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