用語集
アーツアンドクラフツ
アーツアンドクラフツ(Arts and Crafts、アーツ・アンド・クラフツ運動)とは、1880年代から1910年代にかけてイギリスを中心に展開された美術工芸・建築・デザインの社会改革運動で、産業革命の機械生産による画一的で粗悪な工業製品の氾濫を批判し、職人の手仕事による高品質な工芸品の復権と、生活全般における芸術性・美意識の回復を目指した文化潮流である。同運動の中心人物は、詩人・思想家・社会主義者・デザイナー・テキスタイル作家として多面的に活躍したウィリアム・モリス(William Morris、1834-1896)で、彼は哲学者ジョン・ラスキン(John Ruskin、1819-1900)の影響を強く受け、ゴシック建築の精神とゲーテ的自然主義を融合させた独自の生活美学を提唱した。モリスは1861年にロンドンで設計・装飾・工芸の総合工房「モリス・マーシャル・フォークナー商会」(後のモリス商会)を設立し、壁紙・カーペット・タペストリー・テキスタイル・家具・ステンドグラス・タイル・印刷物・装飾本など多岐にわたる工芸品を製作した。彼が手掛けた壁紙「いちご泥棒(Strawberry Thief、1883年)」「アカンサス(Acanthus、1875年)」「ピンプネル(Pimpernel、1876年)」などは、現代でも英国を代表するクラシック意匠として世界中で愛用されている。建築分野におけるアーツアンドクラフツの代表作には、フィリップ・ウェッブ設計の「レッドハウス(Red House、1860年)」(モリス自邸)、C.F.A.ヴォイジー、エドウィン・ラッチェンス、M.H.ベイリー・スコットらによる多数のカントリーハウスがあり、いずれもレンガ・自然石・木材・スレート瓦・タイルなどの地域材を素直に活かす素材感重視のデザイン、ベイウィンドウやハーフティンバー、急勾配屋根、装飾的暖炉、伝統的な英国カントリーハウスのディテールなどを特徴としている。同運動は世界的に大きな影響を与え、後のアールヌーヴォー、ウィーン分離派、ドイツ工作連盟、バウハウス、北欧モダンデザイン、日本の民藝運動などのデザイン潮流の源流となった。日本では1920年代以降に同運動の影響が及び、武田五一・伊東忠太・遠藤新らの建築家、河井寬次郎・濱田庄司・バーナード・リーチらの陶芸家、柳宗悦による民藝運動などが連動して発展した。マンションや戸建住宅の大規模修繕工事においても、アーツ・アンド・クラフツ様式の意匠を保全・継承する塗装計画、伝統的タイル張替工事、木製建具の補修・再塗装などが必要となるケースがあり、明誠は意匠設計者と連携した文化的価値を尊重する修繕提案を強みとしている。

