江東区のマンション漏水・防災対策|海抜0m地帯と湾岸タワマン、弱点が違う9つのチェックポイント

江東区のマンション漏水・防災対策|海抜0m地帯と湾岸タワマン、弱点が違う9つのチェックポイント

2026年9月15日 更新

株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンションやビルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、両方やってきた人間です。

江東区でお仕事をいただくとき、私はいつも同じことを最初に聞きます。「この建物は、内陸ですか、それとも湾岸ですか」と。

同じ区内なのに、建物の傷み方がまるで違うからです。砂町や大島の古い分譲マンションと、豊洲や有明のタワーマンションでは、見るべき場所が半分くらい入れ替わります。ところが管理組合さまに渡される修繕の提案書は、どちらも同じテンプレートで書かれていることが少なくありません。

今日は、江東区が公表している最新のハザード資料と、令和8年度の区の助成制度から逆算して、江東区のマンション・ビルで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。内陸と湾岸で分けて書きます。


結論:江東区は「浸水リスクは区全体で共通、建物の弱点は立地で真逆」

先に結論から申し上げます。

江東区は、区の広い範囲が地盤沈下の影響で海抜0メートル地帯にあり、河川の氾濫や堤防の決壊が起きた場合、最大でおよそ10メートルに及ぶ浸水が想定されていると区自身が明記しています(出典:江東区「水害時における町会と民間マンションとの一時避難協定締結の推進について」)。この点では、区内のどこに建っていても条件は大きくは変わりません。

ところが、毎年の雨と風が建物を削っていくスピードは、立地で明確に分かれます。

内陸側(砂町・大島・亀戸・東陽 ほか) 湾岸側(豊洲・有明・東雲・辰巳 ほか)
主な劣化要因 内水氾濫、地下水位の高さ、不同沈下 潮風による塩害、ビル風、紫外線
先に切れる部位 屋上ドレンまわり、地下ピット、サッシ下端 海側1〜2面のシーリング、手すり・鉄部、ガラス手すりの支持金物
建物の傾向 中低層・築年数が長い・敷地に余裕がない 高層/超高層・共用設備が大規模・足場が組めない
修繕の悩みどころ 足場を組む場所がない 足場費が総額を押し上げる

どちらの場合も、最優先は屋上ドレン(排水口)の清掃履歴です。私が現場で見てきた漏水事故の大半は、荒川でも東京湾でもなく、ドレンの詰まりとシーリングの切れから始まっています。派手な災害より、地味な詰まりのほうが、はるかに高い確率で建物を傷めます。

ここからが本題です。


江東区のハザード資料は、令和8年8月に3種類とも改訂されています

まず押さえていただきたいのは、江東区のハザードマップは、つい先日更新されたばかりだということです。

江東区は、水防法第15条第3項に基づく水害ハザードマップを3種類公表しており、いずれも最終改訂日は令和8年8月です(出典:江東区「江東区水害ハザードマップ(3種類)」 更新日:2026年9月1日)。

3年前に印刷したマップを管理室に貼ったままにしている建物は、江東区の場合、中身が入れ替わっている可能性があります。特に内水(大雨浸水)は、想定の根拠そのものが新しくなりました。

1. 洪水ハザードマップ(荒川の堤防が決壊した場合)

  • 根拠:荒川水系荒川洪水浸水想定区域図(指定 平成28年5月30日)
  • 前提降雨:荒川流域の72時間総雨量632mm(想定最大規模、1/1,000年)
  • メッシュサイズ25m

浸水の深さだけでなく継続時間が示されている点が重要です。江東5区(墨田区・江東区・足立区・葛飾区・江戸川区)の広域避難計画では、地域によって浸水が2週間以上続く可能性が示されています(出典:江東区「江東5区大規模水害ハザードマップ・江東5区大規模水害広域避難計画について」)。

建物の1階・地下が2週間水に浸かるということは、電気室が使えない、エレベーターが動かない、給水ポンプが止まる、という話です。高層階の住戸が無事でも、生活は成立しません。

2. 大雨浸水(内水)ハザードマップ ← 今回いちばん変わった部分

これが、江東区のマンション・ビルで実際に一番起きている災害です。「内水」とは、下水道や排水路が雨をさばききれずにあふれる現象を指します。川から水が来るより先に、降った雨が足元からあふれてくる。

令和8年8月改訂版の根拠は、次の2つの浸水想定区域図に更新されています。

  • 隅田川及び新河岸川流域雨水出水浸水想定区域図(指定 令和8年3月25日)
  • 江東内部河川流域雨水出水浸水想定区域図(指定 令和8年3月25日)

前提は、24時間総雨量690mm・1時間最大雨量153mm。メッシュサイズは10mと細かく、自分の建物が建っている街区単位で読めます。

時間153mmという雨は、東京の下水道の整備水準を大きく超えます。インフラ側で受けきれない分は、建物側で受け止めるしかない。 これが、私が屋上ドレンと外壁シーリングを最優先に挙げる理由です。

3. 高潮ハザードマップ(東京湾で高潮が発生した場合)

  • 根拠:東京都高潮浸水想定区域図(指定 令和6年12月19日)
  • 前提:中心気圧910hPa(昭和9年の室戸台風級)、移動速度73km/h(昭和34年の伊勢湾台風級)
  • 年超過確率 1/1,000〜5,000年、メッシュサイズ10m

湾岸に物件をお持ちのオーナーさま・管理組合さまは、洪水よりまずこちらを見てください。東京湾に直接面しているのが江東区の地理的な特徴です。

なお区は、3種類のマップを解説する動画と、日本語のほか英語・中国語・韓国語版、色覚に配慮した色違い版も公開しています。外国籍の居住者が多い建物では、掲示板に多言語版のQRコードを貼っておくだけでも意味があります。


内陸側(砂町・大島・亀戸 ほか)で私が先に見る4か所

江東区の内陸側は、区の全域とほぼ同じく沖積低地です。地下水位が高く、揺れが増幅されやすい。この地盤特性が、漏水に次のかたちで効いてきます。

① 地下ピット・地下駐車場の湧水と、排水ポンプ

地下水位が高いので、地下ピットに常時水が溜まる建物が珍しくありません。「排水ポンプが動いていることが前提」の設計になっている建物です。このポンプが停電で止まったときに何が起きるか、理事会で一度シミュレーションしておく価値があります。点検記録が3年以上出てこない建物は、要注意です。

② サッシの四隅から斜めに走るクラック(ひび割れ)

軟弱地盤の上の建物は、わずかに傾きの差が出ることがあります。それが外壁の開口部の角、つまりサッシの四隅から斜めに走るクラックとして現れる。ここは雨水が最も入りやすい場所のひとつです。打診調査で浮きを探すだけでなく、クラックの方向と発生位置を図面に記録しておくと、次回の修繕で効きます。

③ 屋上防水の平場とパラペット(屋上の立上り部分)

平場よりも、パラペットの立上りと笠木(かさぎ/立上りの天端に被せる部材)の継ぎ目が先に切れます。ここが切れると、雨は壁の中を通って数階下の室内に出ます。原因の特定が最も難しいパターンです。

④ 屋外の非常階段・共用廊下の鉄部

江東区・墨田区エリアで、私が一番ヒヤリとする箇所です。塗装が切れて錆が進行すると、見た目が保たれていても内部から痩せます。水害時に階段が使えないというのは、避難そのものが成立しないということです。


湾岸側(豊洲・有明・東雲 ほか)で私が先に見る5か所

湾岸のタワーマンション・大型ビルは、内陸とは別の理屈で傷みます。

⑤ 海側1〜2面のシーリング(コーキング)

外壁は4面が均等に傷むわけではありません。 潮風と紫外線を正面から受ける面だけ、シーリングが数年早く硬化して切れることがあります。調査費を抑えたい管理組合さまには、まず海側の1面だけロープアクセスで詳細に見て、そこから全体の劣化度を推定する進め方をご提案することがあります。

⑥ バルコニーのガラス手すり・金物の支持部

意匠性の高い建物ほど、ガラスや金属パネルの手すりが使われています。支持金物の付け根のシーリングと、アルミ以外の金属部品の腐食は、地上からの目視ではまず分かりません。落下の危険がある部位なので、私は最優先で見ます。

⑦ 高層部のサッシの水抜き孔(水切り)

ビル風で雨が横から、ときには下から吹き上げます。サッシ下枠の水抜き孔が詰まっていると、通常の雨では出ないのに、台風のときだけ室内側に水が回る。「年に1回だけ漏る」という相談は、たいていここです。

⑧ 機械式駐車場のピットと排水

湾岸の大型物件に多い設備です。ピットの排水ポンプが止まると、収容されている車両ごと水没します。復旧費と保険の話が一気に複雑になる部位なので、点検記録の確認を修繕計画に組み込んでおいてください。

⑨ 電気室・受水槽・給水ポンプの「設置階」

これは内陸・湾岸を問わず、江東区の全建物にお願いしたい確認事項です。

設備 確認すること 浸水した場合
受電設備(キュービクル・電気室) 地下/1階/中間階/屋上のどれか 全館停電。復旧に数週間かかることがある
エレベーター機械室・ピット ピットの排水経路 冠水すると長期停止。高層階の生活が成立しない
給水ポンプ・受水槽 設置階と点検口の位置 断水。在宅避難ができなくなる
自家発電設備 燃料タンクの位置と連続稼働時間 停電時の最後の砦。地下設置だと真っ先に沈む
非常用階段・避難経路 屋外階段の鉄部の腐食状況 錆による段板の抜けは、実際に起きています

図面を開いて、この5行を埋めるだけです。理事会1回分の議題としては、費用ゼロで、効果は大きいほうだと思います。


漏水の緊急対応で、ロープアクセスが強い理由

ここは私の本業の話なので、正直に書きます。

漏水が発生したとき、原因箇所が3階より上にある場合、通常の仮設足場だと架設に数日から1週間、費用も数十万円から数百万円かかります。「原因を特定するため」だけに足場を組むのは、管理組合にとって現実的な判断ではありません。

ロープアクセス工法(産業用ロープを使った無足場工法)であれば、屋上にアンカーを取れる建物なら、原則として即日から翌日には作業員が壁面に出られます。調査だけなら半日で終わることも多い。そして、原因が特定できた時点で「この1か所だけ直す」という判断ができます。

江東区では、この差が内陸と湾岸の両方で効きます。

内陸側は、敷地に余裕がなく隣地との離隔が取れない建物が多く、そもそも足場が物理的に組めない面がある。湾岸側は、高さがあるぶん足場費が総額を大きく押し上げ、風の強い日には足場上の作業が止まります。

一方で、全面改修の段階まで来ているなら、足場を組んだほうが安いこともあります。ここは正直にお伝えしています。明誠では足場・ロープアクセス・両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物ごとに最適な組み合わせをご提案しています。工法の詳細と施工事例は、ロープアクセス工法のご紹介と、専門サイトのロープアクセス・メソッド(https://rope-access-method.com/)にまとめてあります。

漏水の原因調査については、漏水・雨漏り調査のページもあわせてご覧ください。


江東区の調査・修繕を後押しする制度(令和8年度)

ここは年度で内容が変わる部分なので、丁寧に書きます。

マンション計画修繕調査支援事業(調査費の一部助成)

大規模修繕に計画的に対応するための調査そのものに助成が出る制度です。屋上・バルコニー・外部廊下の防水、外壁、鉄部、給排水管の調査が対象に含まれます。

  • 対象:区内の建築後7年以上経過した耐火建築物の民間マンション(分譲管理組合・賃貸所有者)
  • 助成割合:調査費用の3分の1(千円未満切捨て)
  • 助成限度額:60戸以下 219,000円/61〜90戸 282,000円/91〜120戸 287,000円/121〜200戸 388,000円/201〜300戸 520,000円/301〜400戸 624,000円/401〜500戸 709,000円/501戸以上 793,000円
  • 注意:調査を実施する1か月前までに申請すること。10年以内に同じ助成を受けていないこと

(出典:江東区「マンション計画修繕調査支援事業」)

この制度について1点だけお断りします。 区の当該ページの更新日は2023年4月7日で、令和8年度時点の金額・要件が同じかどうかは、ページ上からは確認できませんでした。上記は当該ページに掲載されている内容です。申請を検討される場合は、必ず住宅課 住宅指導係(03-3647-9473)へ現行年度の内容をご確認ください。

いずれにせよ、「調査の1か月前までに申請」という順番だけは動きません。 業者に調査を発注してから制度を知る、というのが一番もったいないパターンです。

非木造住宅・マンションなどの耐震化助成

昭和56年5月31日以前に建築(工事着工)された建築物が対象です(出典:江東区「非木造住宅、マンション、一般緊急輸送道路沿道建築物などの耐震化」 更新日:2026年4月1日)。

マンションの場合 助成割合 助成限度額
耐震診断 1/2 150万円
耐震設計 1/2 150万円
耐震改修工事 1/2 2,000万円(分譲マンションは3,000万円)

対象者は建物を所有する個人・法人(中小企業に限る)と、分譲マンションの管理組合(管理組合法人を含む)です。

令和8年度で押さえるべき日付は2つあります。

  • 令和8年度の完了報告期限:令和9年1月29日(金曜日)
  • 令和8年度の全体設計承認申請の提出期限:令和8年12月28日(月曜日)(複数年度にわたって耐震改修を行う場合)

そして、区からの助成対象承認通知を受領するまでは業務の契約ができません。申請受付前に区職員による現地確認もあります。窓口は都市整備部 安全都市づくり課(03-3647-9764)です。

制度の要否を判断する前段として、区は耐震化アドバイザー派遣制度も用意しています。まず誰かに見てもらいたい、という段階の管理組合さまには、こちらから入るのが早いはずです。

マンション共用部分リフォーム支援事業(債務保証料の助成)

住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資を利用して修繕工事を行った場合の、債務保証料の2分の1(上限50万円)を助成する制度です。東京都のマンション改良工事助成制度による交付決定を受けていることなどが条件になります。受付期間は、マンション管理センター等と締結した債務保証委託契約の契約日の翌日から起算して90日以内です(出典:江東区「マンション共用部分リフォーム支援事業」 更新日:2026年7月3日)。

なお、従前の区の利子補給制度は令和4年5月末で終了しています。古い資料を見て「利子補給が使える」と計画されている場合は、修正が必要です。


江東区ならではの制度:一時避難協定で備蓄物資30万円相当

最後に、江東区に特有の取り組みを1つ紹介させてください。

区は、水害発生時に近隣住民等が民間マンションへ一時的に避難できる協定を、町会・民間マンション・区の三者で締結した場合、当該マンションに対して30万円相当の備蓄物資(区が用意した一覧からの選択式)を供与しています(出典:江東区「水害時における町会と民間マンションとの一時避難協定締結の推進について」 更新日:2025年3月27日)。区はガイドラインとQ&Aも公開しています。

「うちのマンションが避難先になるのは負担では」と感じられる理事の方もいらっしゃると思います。実際、区がQ&Aを用意しているのは、そうした懸念があるからでしょう。ただ、海抜0メートル地帯で上層階を持っている建物というのは、地域から見れば数少ない高台です。事前に協定というかたちで条件を決めておくほうが、当日の混乱は確実に減ります。判断は各管理組合さまですが、選択肢として知っておく価値はあると思います。

土のうについては、区が6月から10月に配布を行っています(土のうの配送)。台風接近時の直前対応は困難とされていますので、必要な建物はシーズン前に手配してください。


背景データ:雨の降り方が変わっている

「昔はこんなに漏らなかった」というお声を、本当によくいただきます。感覚の問題ではありません。

気象庁は、全国のアメダスで観測した1時間降水量50mm以上の年間発生回数について、統計期間の初めごろと比べて増加していることを公表しています(出典:気象庁「日本の気候変動2025」)。強い雨ほど、頻度の増加率が高いという評価です。

江東区の大雨浸水ハザードマップが前提にしている1時間153mmは、繰り返しになりますが、下水道の整備水準を大きく超える雨です。インフラ側の対策には限界があり、その差は建物側で埋めるしかありません。

区の境界をまたぐリスクは、国土地理院の重ねるハザードマップで自分の建物の位置をピンポイントに確認できます。また東京都は「我が家の水害リスク診断書」の配布も行っています。


まとめ:今週、理事会・管理会社に投げられる3点

長くなりました。江東区の建物で、今週すぐ動けることを3つに絞ります。

1. 令和8年8月改訂版のハザードマップに差し替える

管理室・掲示板に貼ってあるマップの改訂年を確認してください。令和8年8月より前のものなら差し替えです。特に大雨浸水(内水)は、令和8年3月25日指定の新しい浸水想定区域図が根拠になっています。区のページからPDFで取得できます。10分で終わります。

2. 屋上ドレンの清掃記録と、ピット排水ポンプの点検記録を出してもらう

直近1年で何回清掃したか。ストレーナー(ゴミよけのカゴ)は付いているか。地下ピット・機械式駐車場がある物件は、排水ポンプの点検記録もあわせて。台風シーズンの真っ最中ですから、今週が一番効きます。

3. 電気室・給水ポンプ・エレベーターピットの設置階を図面で確認する

地下または1階にあるなら、止水板の見積りを1本取っておく。あわせて、大規模修繕の調査を予定しているなら、発注の1か月前までにマンション計画修繕調査支援事業の申請が要るかどうかを住宅課(03-3647-9473)に確認する。順番を間違えると、使えるはずの助成が使えなくなります。

10月までに動けるかどうかが、今シーズンの分かれ目です。理事会で1分だけでもこの話題を出してみてください。調査だけ、ご相談だけでも構いません。総会前の整理の段階から、お力になれることがあります。お問合せフォームからお声がけください。

冒頭の「内陸ですか、湾岸ですか」という質問に戻ります。これは工法を売り込むための質問ではなく、限られた修繕積立金をどの面から使うかを決めるための質問です。江東区は、区全体が同じ水害リスクを共有しながら、建物ごとの弱点はまるで違う。その二層構造を分けて考えることが、江東区で修繕積立金を有効に使う一番の近道だと、私は思っています。


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月15日時点で公表されている江東区および国土交通省・気象庁・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず江東区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。なお「マンション計画修繕調査支援事業」については、参照した区のページの更新日が2023年4月7日であり、令和8年度の金額・要件は住宅課へ直接ご確認ください。ハザードマップの被害想定は東京都および区が公表したものであり、実際の被害状況と異なることがあります。


出典・参考資料


関連ページ

ロープアクセス工法の詳しい解説・施工事例はこちら → https://rope-access-method.com/

墨田区のマンション漏水・防災対策|ゼロメートル地帯で先に手を打つべき7つの漏水ポイント

2026年9月15日 更新

錦糸町で分譲マンションを1棟お持ちの理事長さまから、去年の秋にこう聞かれました。「荒川が切れたら2週間水が引かないと区のマップに書いてある。そんな災害に、修繕積立金で備える意味はあるんですか」と。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンションやビルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、両方やってきた人間です。

正直に申し上げます。あの質問には、その場ですぐ答えられませんでした。持ち帰って、区の資料を全部読み直して、次の理事会でこうお伝えしました。「荒川の氾濫に建物単体で勝つことはできません。ただ、墨田区のマンションを実際に傷めているのは、荒川ではなく毎年の雨です」と。

今日は、墨田区が公表している最新のハザード資料から逆算して、墨田区のマンション・ビルで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。


結論:墨田区は「区全体が同じリスク」だからこそ、順番を間違えないこと

先に結論から申し上げます。墨田区は、文京区や港区のように「台地の上か低地か」で対策が分かれる区ではありません。荒川が氾濫した場合、区の大部分が浸水するおそれがあると区自身が明記しています(出典:墨田区「墨田区水害ハザードマップ(水害への備え)」)。つまり、立地による選別があまり効きません。

では何で順番を決めるか。私は、発生確率と修繕費の大きさで決めます。

優先度 対象 理由
最優先 屋上ドレン(排水口)の清掃/屋上防水の平場とパラペット ほぼ毎年、確実に効く。詰まれば数十万円の補修が数百万円になる
次点 外壁シーリング/サッシまわり/バルコニー排水 5年〜10年で確実に劣化する。漏水クレームの実質的な発生源
その次 電気室・受水槽・給水ポンプの設置階と止水対策 発生確率は低いが、起きたときの復旧費と生活影響が桁違い
長期 耐震診断・耐震改修 助成が拡充されたタイミングを逃さない

どの立地でも共通して最優先なのは屋上ドレンの清掃履歴です。 私が現場で見てきた漏水事故の大半は、河川の氾濫ではなく、ドレンの詰まりとシーリングの切れから始まっています。派手な災害より、地味な詰まりのほうが、はるかに高い確率で建物を傷めます。

ここからが本題です。


墨田区のハザード資料を1枚で読む

墨田区の水害ハザードマップは、洪水・高潮・雨水出水の3種類が、水防法第15条第3項に基づいて作成・公表されています。2026年8月25日に更新された区の公式ページから、それぞれPDFで確認できます(出典:墨田区「墨田区水害ハザードマップ(水害への備え)」)。

1. 洪水(荒川が氾濫した場合・想定最大規模)

浸水深と浸水継続時間の2枚が公開されています。墨田区の場合、この「継続時間」の図が重要です。区は、場所によっては浸水が2週間以上続く可能性を示しています。建物の1階・地下が2週間水に浸かるということは、電気室が使えない、エレベーターが動かない、給水ポンプが止まる、という話です。

2. 高潮(想定最大規模)

東京湾で発生した高潮が、海岸や河川から氾濫した場合の想定です。こちらも浸水深と浸水継続時間の2枚があります(都全体の図は東京都港湾局の高潮浸水想定区域図で確認できます)。

3. 雨水出水(内水)

ここが、墨田区のマンション・ビルで実際に一番起きている災害です。「内水」とは、下水道や排水路が雨をさばききれずにあふれる現象のことを指します。川から水が来るより先に、降った雨が足元からあふれてくる。

想定最大規模降雨として、時間最大雨量153mm・総雨量690mmが前提に置かれています。これは東京の下水道の整備水準を大きく超える雨量です。インフラ側で受けきれない分は、建物側で受け止めるしかない。 これが、私が屋上ドレンと外壁シーリングを最優先に挙げる理由です。

なお、区は縮尺と中心位置を自由に設定できるWeb版水害ハザードマップも公開しています。自分の建物の住所で開けば、3種類のリスクを1分で確認できます。


地域特性と漏水事故の関係

墨田区の地盤は、区の全域が沖積低地に分類されます。河川や海の働きで運ばれた泥や砂でつくられた、比較的新しい地層です。地下水位が高く、地震の揺れが増幅されやすい。液状化のリスクも、埋立・盛土のエリアや旧河道では相応にあります。

この地盤特性が、建物の漏水にどう効いてくるか。私の経験上、墨田区の物件では次の3つが目立ちます。

1. 不同沈下由来のクラック(ひび割れ)

軟弱地盤の上の建物は、わずかに傾きの差が出ることがあります。それが外壁の開口部の角、つまりサッシの四隅から斜めに走るクラックとして現れる。ここは雨水が最も入りやすい場所のひとつです。打診調査で浮きを探すだけでなく、クラックの方向と発生位置を記録しておくと、次回の修繕で効きます。

2. 地下ピット・地下駐車場の湧水

地下水位が高いので、地下ピットに常時水が溜まる建物が珍しくありません。排水ポンプが動いていることが前提の設計になっている。このポンプが停電で止まったときに何が起きるか、理事会で一度シミュレーションしておく価値があります。

3. 隅田川沿いの塩害と風

墨田区は海に直接面していませんが、隅田川・北十間川・横十間川に沿って風が抜けます。川沿いに建つ中高層の建物は、川側の面だけシーリングの劣化が早いことがあります。外壁は4面が均等に傷むわけではありません。 調査費を節約したい管理組合さまには、まず川側の1面だけロープアクセスで詳細に見て、そこから全体を推定する方法をご提案することがあります。


大規模修繕で必ずチェックすべき漏水ポイント7つ

墨田区に限らずですが、私が調査でまず見る7か所です。理事会の資料にそのまま使っていただいて構いません。

① 屋上防水の平場とパラペット(屋上の立上り部分)

平場よりも、パラペットの立上りと笠木(かさぎ/立上りの天端に被せる部材)の継ぎ目が先に切れます。ここが切れると、雨は壁の中を通って数階下の室内に出ます。原因の特定が最も難しいパターンです。

② 屋上ドレン(排水口)

落ち葉・土砂・鳥の巣。ストレーナー(ゴミよけのカゴ)が外れたまま何年も放置されている建物を、毎年何棟も見ます。清掃は年2回、出水期の前と後が基本です。

③ バルコニーの排水と防水

各戸の私物が置かれていて、排水溝が見えない。これも非常に多い。総会の資料に「バルコニーの排水溝の上に物を置かないでください」の1行を入れるだけで、事故は減ります。

④ 外壁シーリング(コーキング)

打継目地とサッシまわり。10年前後で硬化し、切れます。墨田区の物件では、前述のとおり川側の面から進むことがあります。

⑤ サッシまわり

シーリングだけでなく、サッシ本体の水切り・排水穴(水抜き孔)の詰まりも見ます。ここが詰まると、サッシの下枠から室内側に水が回ります。

⑥ エキスパンションジョイント(建物の継ぎ目部分)

棟が分かれている建物、増築している建物にあります。可動する部分なので、防水的には最も弱い。見落とされがちです。

⑦ 配管の貫通部

外壁を貫通する給排水管・エアコンのスリーブまわり。シーリングが痩せて隙間が空きます。上階のスリーブから入った水が、下階の天井に出ることがあります。


漏水の緊急対応で、ロープアクセスが強い理由

ここは私の本業の話なので、正直に書きます。

漏水が発生したとき、原因箇所が3階より上にある場合、通常の仮設足場だと架設に数日から1週間、費用も数十万円から数百万円かかります。「原因を特定するため」だけに足場を組むのは、管理組合にとって現実的ではありません。

ロープアクセス工法(産業用ロープを使った無足場工法)であれば、屋上にアンカーを取れる建物なら、原則として即日から翌日には作業員が壁面に出られます。調査だけなら半日で終わることも多い。そして、原因が特定できた時点で「この1か所だけ直す」という判断ができます。

墨田区のように、敷地に余裕がなく、隣地との離隔が取れない建物が多い区では、この差はさらに大きくなります。足場が物理的に組めない面がある建物も珍しくありません。

一方で、全面改修が必要な段階であれば、足場を組んだほうが安いこともあります。明誠では足場・ロープアクセス・両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物ごとに最適な組み合わせをご提案しています。工法の詳細と施工事例は、ロープアクセス工法のご紹介と、専門サイトのロープアクセス・メソッド(https://rope-access-method.com/)にまとめてあります。

漏水の原因調査については、漏水・雨漏り調査のページもあわせてご覧ください。


防災上の共用部:どこにあるかを図面で確認する

墨田区のマンション・ビルで、修繕計画に必ず載せていただきたいのが、次の設備の設置階です。

設備 確認すること 浸水した場合
受電設備(キュービクル・電気室) 地下/1階/屋上のどれか 全館停電。復旧に数週間かかることがある
エレベーター機械室・ピット ピットの排水経路 冠水すると長期停止。高層階の生活が成立しない
給水ポンプ・受水槽 設置階と点検口の位置 断水。在宅避難ができなくなる
自家発電設備 燃料タンクの位置と稼働時間 停電時の最後の砦。地下設置だと真っ先に沈む
避難通路・非常階段 屋外階段の鉄部の腐食状況 錆による段板の抜けは、実際に起きています

特に屋外の非常階段の鉄部は、私が墨田区・江東区エリアで一番ヒヤリとする箇所です。塗装が切れて錆が進行すると、見た目が保たれていても内部から痩せます。ロープアクセスで外壁を見るときは、非常階段の裏側も一緒に確認するようにしています。

なお墨田区には、水害時に近隣住民の避難受入れが可能な集合住宅に対して、防災対策用の資器材を交付する制度があります(出典:墨田区「集合住宅への資器材交付制度」)。マンション単体の話ではなく、地域の避難拠点としての役割を引き受ける制度です。防災課(03-5608-6206)が窓口です。

また区内の公園等には、区民が自由に使える約5キログラムの土のうを保管した土のうステーションが設置されています。エントランスの浸水対策として、場所だけでも掲示板に貼っておくと役立ちます。


墨田区の耐震助成は、令和8年4月1日に拡充されています

ここは年度で内容が変わる部分なので、丁寧に書きます。

墨田区は、令和8年4月1日から不燃化・耐震化の助成制度を拡充しました(出典:墨田区「不燃化・耐震化の助成制度の拡充について」 更新日2026年4月24日)。分譲マンションに関係する主な変更点は次のとおりです。

  • 一般緊急輸送道路沿道建築物・非木造建築物・分譲マンションの耐震診断助成額を300万円へ引き上げ(令和8年4月1日から)
  • 特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震改修工事等の補助率を9/10へ引き上げ
  • 住宅耐震改修等助成制度について、令和8年4月1日より非木造(鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造)も助成対象に追加
  • ブロック塀等の無料耐震相談と撤去工事助成を令和8年4月1日から新規開始

分譲マンション向けの詳細は、区の分譲マンション耐震化促進事業および耐震診断助成事業のページをご確認ください。

要件や申請の順番があり、着工後の申請は受け付けられないのが通例です。窓口は不燃・耐震促進課(耐震は03-5608-6269、不燃化は03-5608-6268)です。予算枠のある事業は年度途中で受付を終えることもありますので、検討されている管理組合さまは、早めに窓口へ残枠を確認されることをおすすめします。


背景データ:雨の降り方が変わっている

「昔はこんなに漏らなかった」というお声を、本当によくいただきます。感覚の問題ではありません。

気象庁は、全国のアメダスで観測した1時間降水量50mm以上の年間発生回数について、統計期間の初めごろと比べて増加していることを公表しています(出典:気象庁「日本の気候変動2025」)。強い雨ほど、頻度の増加率が高いという評価です。

墨田区の雨水出水ハザードマップが前提にしている時間最大153mmは、繰り返しになりますが、下水道の整備水準を大きく超える雨です。区とインフラ側の対策には限界があり、その差は建物側で埋めるしかありません。

なお、区の境界を越えたハザード情報は、国土地理院の重ねるハザードマップで自分の建物の位置をピンポイントに確認できます。墨田区の場合、荒川の対岸(足立区・葛飾区)や、隅田川の対岸(台東区・中央区)に関係する物件をお持ちなら、江東5区(墨田区・江東区・足立区・葛飾区・江戸川区)で策定された大規模水害対策の広域避難の考え方にも目を通しておくと、理事会での説明がしやすくなります。


まとめ:今週、理事会・管理会社に投げられる3点

長くなりました。墨田区の建物で、今週すぐ動けることを3つに絞ります。

1. Web版ハザードマップで、自分の建物の3つのリスクを確認する

墨田区Web版水害ハザードマップで住所を入れ、洪水・高潮・雨水出水の3つを順に見る。特に洪水の「浸水継続時間」をメモしてください。10分で終わります。

2. 屋上ドレンの清掃記録を、管理会社に出してもらう

直近1年で何回清掃したか。ストレーナーは付いているか。地下ピットがある物件は、排水ポンプの点検記録もあわせて。台風シーズンの真っ最中ですから、今週が一番効きます。

3. 電気室・給水ポンプ・エレベーターピットの設置階を、図面で確認する

地下または1階にあるなら、止水板の見積りを1本取っておく。あわせて、耐震診断助成の残枠を不燃・耐震促進課(03-5608-6269)に電話で確認する。着工前の申請が前提なので、順番を間違えないようにしてください。

10月までに動けるかどうかが、今シーズンの分かれ目です。理事会で1分だけでもこの話題を出してみてください。調査だけ、ご相談だけでも構いません。総会前の整理の段階から、お力になれることがあります。お問合せフォームからお声がけください。

冒頭の理事長さまには、結局こうお伝えしました。「荒川の想定は、避難の計画で備えるものです。建物の修繕で備えるのは、毎年来る雨のほうです」と。この2つを混ぜないことが、墨田区で修繕積立金を有効に使う一番の近道だと、私は思っています。


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月15日時点で公表されている墨田区および国土交通省・気象庁・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず墨田区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。ハザードマップの被害想定は東京都および区が公表したものであり、実際の被害状況と異なることがあります。


出典・参考資料


関連ページ

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蒲郡市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

蒲郡市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

2026年9月15日 更新

この記事で答える質問:蒲郡市の分譲マンションで、共用部の大規模修繕に使える令和8年度の補助金・税制はどれか。そして、なぜ蒲郡市の管理組合は「制度はあるのに取り逃す」のか。

結論から申し上げます。蒲郡市には、管理組合そのものを申請者として要綱に書き込んでいる補助金があります。戸あたり最大70万円という、決して小さくない額です。ところが令和8年度分は、すでに受付が終了しました。申請件数はわずか35件。そのほとんどが戸建てです。

私は20年近くこの業界におりますが、「制度が足りない」より「制度に管理組合が間に合わない」ケースのほうが、圧倒的に多い。蒲郡市はその構造が数字ではっきり見える、めずらしい市です。今日はそこを正面から書きます。


【早見表】蒲郡市で共用部に使える制度・使えない制度(令和8年度)

まず仕分けからお見せします。管理組合の理事会で最初に共有していただきたいのは、この表です。

制度名 共用部に効くか 補助率・限度額 窓口
蒲郡市住宅省エネ改修推進事業費補助金 ◎ 効く(管理組合が申請可) 省エネ基準レベル 2/5・30万円/戸/ZEH水準レベル 4/5・70万円/戸 建築住宅課 管理担当 0533-66-1132
非木造住宅耐震診断事業費補助金 ◎ 効く(共同住宅が対象用途) 一戸建て以外は上限120万円(面積帯別の単価計算) 建築住宅課 営繕担当 0533-66-1133
マンション管理計画認定制度 ◎ 効く(市への手数料は不要) 補助金ではないが融資優遇・税制の入口 建築住宅課 管理担当 0533-66-1132
マンション長寿命化促進税制 ◎ 効く(固定資産税1/3減額) 建物部分の固定資産税1/3、1戸100㎡まで、1年度分 税務課 固定資産税・家屋担当 0533-66-1114
民間建築物アスベスト含有分析調査費補助金 ○ 条件付きで効く 1棟25万円を限度・1回限り 建築住宅課 営繕担当 0533-66-1133
ブロック塀等撤去事業費補助金 ○ 条件付きで効く(敷地境界の塀) 延長1m×1万円との比較で少ない額の1/2以内、1敷地10万円限度 危機管理課 0533-66-1208
民間木造住宅耐震改修費補助金 × 効かない(木造限定) 上限120万円(精密診断法なら140万円) 建築住宅課 営繕担当 0533-66-1133
浄化槽設置整備事業費補助金 × ほぼ効かない(要件で外れる) 5〜50人槽で33万2千円〜54万8千円 環境清掃課 0533-57-4100
住宅用地球温暖化対策設備導入費補助金 × 共用部には効きにくい 設備別(自ら居住する住宅が対象) 環境清掃課 0533-57-3645

(出典:蒲郡市「補助金等の一覧について(令和8年度版)」2026年6月2日更新、および各制度の個別ページ)

○と×の理由は、このあと一つずつ潰していきます。理事会では「使えない理由」を説明できることのほうが、実は重要です。「あの補助金は使えないんですか」と総会で聞かれて答えられないと、そこで議事が止まりますから。


結論:蒲郡市の管理組合がまず押さえるべき3点

1. 補助金は「先着順」、管理組合は「年1回の総会」で動く

この2つは構造的にかみ合いません。後述しますが、蒲郡市の省エネ改修補助は令和8年度、わずか35件で受付上限に達して終了しました。管理組合が総会決議を経て申請書を出すころには、枠が残っていないという話です。

2. お金より先に、「市に見えている状態」をつくる

蒲郡市が把握しているマンションの管理実態は、回答率39.4%にとどまります。裏を返せば、6割のマンションは市から見て中身が分からない。市の助言・指導を受けるルートも、管理計画認定も、まず市とつながっていないと始まりません。

3. 認定を取らなくても、税制は取りに行ける

長寿命化促進税制は、管理計画認定マンションでなくても、市の助言・指導を受けて長期修繕計画を作成または見直していれば対象になります。蒲郡市の要件表にはっきり書かれています。ここを知らないまま「うちは認定がないから無理」と諦めている組合を、私は何度も見てきました。


蒲郡市のマンションは33棟1,031戸。この数字が、すべての前提です

ここからが本題です。

蒲郡市が令和5年9月に策定した「蒲郡市マンション管理適正化推進計画」の概要版に、こう書かれています。

本市には、1970年代の前半からマンションの建設が始まり、2021(令和3)年時点で33棟、1,031戸のマンションがあります。

そして、築40年以上の高経年マンションは2021年時点で8棟、全体の24.2%。10年後、20年後にはさらに増えることが見込まれる、と市自身が書いています。

(出典:蒲郡市「蒲郡市マンション管理適正化推進計画(概要版)」令和5年9月)

33棟。これは大都市の1つの町内会にも満たない数です。名古屋市や豊橋市の管理組合の方が読んだら驚かれるかもしれません。ですが私は、この「少なさ」こそが蒲郡市の管理組合にとって有利にも不利にもなる、と考えています。

有利な点:制度が管理組合を名指ししている

母数が少ないぶん、蒲郡市の制度は一つひとつが具体的です。省エネ改修補助の対象者欄には「補助対象となる住宅の所有者(区分所有者含む)、管理組合」とはっきり書かれている。対象住宅にも「蒲郡市内の既存の戸建住宅、長屋、共同住宅(マンション等)」と明記されています。

自治体の補助金で、管理組合が申請主体として要綱レベルで書かれているものは、正直そう多くありません。

不利な点:市が実態を把握できていない

一方で、同じ計画にこうあります。

2021(令和3)年度に「愛知県マンション管理実態調査」が実施され、本市においてはマンション33棟のうち13棟から回答がありました。

回答率39.4%。そして市が課題として挙げているのが、次の3点です。

  • 管理組合の活動実態がないマンションや、管理規約が存在しないマンションが見受けられる
  • 長期修繕計画が作成されておらず、修繕積立金の不足による大規模修繕の未実施が懸念される
  • 未回答のマンションが半数以上あり、管理状況が把握できていない

さらに、市が2030年に向けて掲げた目標値の現状値がこれです。

指標 現状値(2021年) 目標値(2030年)
マンションの管理状況の実態調査の回答率 39.4% 100%
集会を年1回以上開催している管理組合の割合 33.3% 75%
25年以上の長期修繕計画に基づく修繕積立金を設定している管理組合の割合 15.2% 50%

集会を年1回以上開催している管理組合が33.3%。

正直に申し上げます。この数字を最初に見たとき、私はしばらく画面を見つめていました。3棟に2棟は、年に一度の総会すら開けていない可能性がある、ということです。そして25年以上の長期修繕計画に基づいて積立金を設定できているのは、15.2%。7棟に1棟しかない。

補助金の話をする前に、ここに手を入れないといけない組合が、蒲郡市にはまだ相当数あるということです。

私が現場で見てきた「33棟の街」の実務

私はこれまで、都心の200戸を超えるマンションから、地方都市の20戸台の小さなマンションまで、どちらの大規模修繕にも関わってきました。そのうえで申し上げると、戸数が少ないマンションほど、1戸あたりの負担が重くなるというのが率直な実感です。

足場の仮設費用は、建物の外周と高さで決まります。20戸のマンションでも100戸のマンションでも、階数が同じなら1面あたりの足場代はそれほど変わらない。ところが、それを割る頭数が5分の1になる。

蒲郡市の1棟あたり平均は、1,031戸÷33棟で約31戸です。この規模感で、外壁・防水・シーリングをフルセットで足場を架けて回すと、1戸あたりの一時金負担が跳ね上がる。私が「工法の選択が、そのまま予算の話になる」と繰り返し申し上げているのは、まさにこの規模帯のマンションを想定してのことです。


住宅省エネ改修推進事業費補助金――戸あたり最大70万円。ただし令和8年度は受付終了

蒲郡市の制度のなかで、共用部に最も直接効くのがこれです。正式名称は「蒲郡市住宅省エネ改修推進事業費補助金」。

制度の中身

改修後の省エネ性能 補助率 補助限度額
省エネ基準レベル 2/5 30万円/戸
ZEH水準レベル 4/5 70万円/戸

対象は「省エネ設計等及び省エネ改修工事」。改修工事は次の2つに分かれます。

  1. 全体改修:改修後に住宅全体が省エネ基準またはZEH水準に相当することについて、BELS等の第三者の評価・認証を受けていること
  2. 部分改修:住宅の部分について、複数の開口部を含む改修工事を行い、改修部分が省エネ基準またはZEH水準に相当する仕様基準を満たすもの

補助対象経費には、開口部(外気に接する窓またはドア)の断熱改修、躯体等(天井、屋根、外壁または床)の断熱改修、そして一定の設備効率化工事が含まれます。

(出典:蒲郡市「蒲郡市住宅省エネ改修推進事業費補助金」記事ID 0308604・2026年7月23日更新)

管理組合が主語になっている、という意味

繰り返しますが、この補助金の補助対象者は「補助対象となる住宅の所有者(区分所有者含む)、管理組合」です。

つまり、各戸がバラバラに申請するのではなく、管理組合が一括で申請できる建て付けになっている。共用部の窓サッシ改修や外壁の断熱改修を計画修繕に組み込んだ場合、理論上は戸数×限度額で計算できることになります。仮に30戸のマンションでZEH水準レベルなら、30戸×70万円で2,100万円。

ここで慌てて電卓を叩かないでいただきたいのですが――補助額は次の3つのうち最も低い額になります。

  1. 補助対象事業費の合計額 × 補助率
  2. モデル工事費の合計額 × 補助率
  3. 補助限度額

「モデル工事費」は工事種別・規模等に応じて市が定めた金額で、モデル工事費一覧(令和8年度)がPDFで公開されています。実勢の見積額がモデル工事費を上回っても、補助の計算はモデル工事費が上限になる、という設計です。ここを読み違えると、総会資料の数字が大きくずれます。

そして、令和8年度は終わりました

市のページには、はっきりこう出ています。

※令和8年度の交付申請については、受付可能上限額に達しましたので受付を終了いたしました。
令和9年度以降の実施は現時点で未定です。

受付終了時点の申請受付件数は、こうなっています。

受付区分 申請受付件数(受付終了時点)
新耐震基準の住宅 21件
旧耐震基準の住宅(昭和56年5月31日以前に着工) 14件

合計35件。この35件で、市の予算枠は埋まりました。

私が「管理組合は先着順の補助金に構造的に負ける」と申し上げるのは、この構図です。戸建ての所有者は、思い立った翌週に見積を取って窓口へ行けます。管理組合はそうはいかない。理事会で議題に挙げ、修繕委員会で内容を詰め、総会で決議し、そこでようやく申請できる。早くて半年、通常は1年です。

そのあいだに、年度の枠は埋まる。

では、どう動くか

令和9年度以降の実施は「現時点で未定」です。ですから断定はできません。ですが、もし令和9年度に同様の制度が立つなら、今年度のうちに準備を終えておく以外に打ち手はありません。具体的には、

  • 共用部の開口部(窓・ドア)の現況を把握しておく
  • 長期修繕計画に「省エネ改修」の項目を立てておく
  • 見積書・設計図・使用建材のカタログ・型番を先に揃えておく
  • 市の事前相談(任意)を、年度が明ける前に受けておく

市は事前相談で「対象工事の可否、補助金額の試算、申請書類の記載補助」まで対応してくれます。オンライン申請(電子申請)フォームから事前相談だけ先に申し込めます。年度が明けてから動くのでは、間に合わないということです。

なお注意点として、外壁塗装工事や屋根の葺替工事はこの補助金の対象外です。あくまで省エネ性能が向上する改修に限られます。大規模修繕の本体工事をこの補助金で賄うことはできません。ここは正直にお伝えしておきます。


非木造住宅耐震診断事業費補助金――上限120万円、面積が増えるほど単価が下がる階段式

蒲郡市の「民間木造住宅耐震改修費補助金」は名前のとおり木造限定で、RC造・S造・SRC造のマンションには使えません。管理組合が見るべきはこちらです。

対象になるマンション

  • 構造:非木造(鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造)
  • 用途:一戸建て住宅、店舗等併用住宅、長屋、共同住宅(分譲、賃貸)
  • その他:耐火又は準耐火建築物(共同住宅)
  • 建築時期:昭和56年5月31日以前の旧基準

昭和56年6月以降に増築されている場合は、条件によっては既設部分も対象外になることがあるため、事前の問い合わせが必要です。なお「耐用年数は、診断条件に該当しません」と市が明記しています。築年数が古いから対象外、ということはないという意味です。

補助額の計算が階段式になっている

ここが蒲郡市の特徴です。一戸建て以外の住宅の場合、1平方メートルあたりの補助対象経費が延べ面積で3段階に分かれます。

延べ面積の区分 1㎡あたりの補助対象経費
1,000㎡未満の部分 3,670円
1,000㎡以上2,000㎡未満の部分 1,570円
2,000㎡以上の部分 1,050円

補助金の上限額は120万円です。

(出典:蒲郡市「非木造住宅耐震診断事業費補助金」記事ID 0087049・2026年4月1日更新)

この「面積が増えるほど単価が下がる」設計は、実務的に大きな意味を持ちます。大規模なマンションほど、1㎡あたりの補助は薄くなる。逆に言えば、蒲郡市の平均的な規模(1棟あたり約31戸)のマンションは、この階段の上のほうを使えるということです。小規模だから不利、という話ではありません。

申請主体と同意書

申請者は住宅所有者です。ただし、分譲マンションの場合は管理組合等の同意書の提出が併せて必要になります。賃貸の共同住宅なら借家人の同意書が要ります。

そして実務上、最も見落とされやすいのがこれです。

なお診断は補助金経理都合上、12月末までに終了して下さい。

年度末までではありません。12月末です。逆算すると、事前相談・申請・交付決定・業者契約・診断実施をすべて年内に収める必要がある。総会が春や秋に1回だけ、という組合だと、この時点でかなり厳しくなります。

事前相談と交付申請は、いずれもオンライン申請に対応しています(事前相談フォーム/交付申請フォーム)。窓口に理事長が平日に出向く必要がない、というのは小さくない利点です。


マンション管理計画認定制度――蒲郡市は市への手数料が不要です

蒲郡市は令和5年9月に「蒲郡市マンション管理適正化推進計画」を策定し、令和5年10月2日からマンション管理計画認定制度を開始しています。

手数料の扱いが、他市と違う

市のページにこうあります。

市への手数料は不要です。(マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」の利用料は有料です。)

これは管理組合にとって、判断を軽くする材料です。自治体によっては認定申請に数万円の手数料を設定しているところもあります。蒲郡市は市の手数料をゼロにしている。かかるのは公益財団法人マンション管理センターの事前確認サービス利用料だけです。

蒲郡市独自の上乗せ基準がある

国が定める認定基準に加えて、蒲郡市は防災に関する基準を追記しています(内容は愛知県と同一)。

防災に関する以下の取組を、管理組合として1つ以上実施していること

  • ア 自主防災組織を組織
  • イ 災害時の対応マニュアルを作成
  • ウ 防災用品や医療品・医薬品を備蓄
  • エ 非常食や飲料水を備蓄
  • オ 防災用名簿を作成
  • カ 定期的に防災訓練を実施
  • キ その他管理組合として実施する防災に関する取組

7項目のうち1つ以上です。ハードルとしては決して高くありません。非常食と飲料水の備蓄だけでも該当します。そして審査のためには「表明保証書(第1号様式)」を市へ提出します。

認定を受けるメリット

市が挙げているのは次の4つです。

  1. 適正に管理されたマンションとして市場において評価される
  2. 区分所有者の管理への意識が高く保たれ、管理水準が向上する
  3. 適正に管理されたマンションが存在することで、立地している地域価値の維持向上につながる
  4. 住宅金融支援機構による優遇、およびマンション長寿命化税制

(出典:蒲郡市「マンション管理計画認定制度」記事ID 0294357・2026年3月23日更新)

私はいつも理事長さまに、「認定は目的ではなく、健康診断だと思ってください」とお伝えしています。認定基準の項目――管理者等が定められているか、監事が選任されているか、集会が年1回以上開催されているか、管理費と修繕積立金が区分経理されているか、長期修繕計画が7年以内に作成または見直しされているか――これらは、認定を取るかどうかに関係なく、まともに管理を回すために必要なことばかりです。

蒲郡市の実態調査で「集会を年1回以上開催している管理組合の割合 33.3%」という数字が出ている以上、認定基準を一つずつ潰していく作業そのものが、その組合にとっての立て直しになります。


マンション長寿命化促進税制――認定がなくても「市の助言・指導」ルートがある

大規模修繕に最も直接効く税制がこれです。蒲郡市税務課のページに、要件が具体的に整理されています。

対象になる「長寿命化工事」の定義

次の1〜3がすべて実施された工事をいいます。また、各工事は同一の工事請負契約の中で行われたなど、一体として扱われる工事であることが必要です。

  1. 外壁塗装等工事
  2. 床防水工事
  3. 屋根防水工事

ここは要注意です。「外壁だけ今年、防水は来年」と分けて発注すると、要件から外れる可能性があります。私が「必ずワンセットで提案するようにしています」と申し上げるのは、施工上の理由だけではなく、この税制要件があるからです。

マンション側の要件(6つすべて)

  1. 新築された日から20年以上が経過していること
  2. 総戸数が10戸以上であること
  3. 令和5年4月1日から令和9年3月31日までに長寿命化工事が完了していること
  4. 過去に長寿命化工事が1回以上適正に実施されていること(各工事が同時期である必要はありません)
  5. 併用住宅については、専有部分における居住部分の割合が2分の1以上であること
  6. 次の(ア)(イ)いずれかに該当すること
  7. (ア)管理計画認定マンション
  8. (イ)市の助言・指導を受けて、適切に長期修繕計画を作成または見直しているマンション

(イ)の存在が、蒲郡市では効きます

ここが、この記事でいちばんお伝えしたかった点かもしれません。

固定資産税の減額は、管理計画認定を取っていなくても受けられます。「市の助言・指導を受けて、適切に長期修繕計画を作成または見直している」ルートがある。そしてその証明である「助言・指導内容実施等証明書」は、市の建築住宅課が発行します。

蒲郡市は、市に長期修繕計画の相談をしている管理組合そのものが少ない。回答率39.4%という数字が示すとおりです。裏返せば、建築住宅課に相談に行くだけで、税制のドアが1枚開くということでもあります。

減額の内容

  • 減額される範囲:対象建物の固定資産税の3分の1(1戸あたり100㎡まで)
  • 減額される期間:工事完了年の翌年度分(工事完了日が1月1日の場合はその年度分)
  • 申告期限:工事完了後3か月以内
  • 都市計画税は減額されません

(出典:蒲郡市「長寿命化工事を行ったマンションの固定資産税減額制度について」記事ID 0297046/国土交通省「マンション長寿命化促進税制」)

申告期限3か月を落とす組合が、本当に多い。工事が終わって竣工検査が済んで、理事会が一息ついたころには2か月が過ぎています。私は工事の着工前に、竣工予定日から逆算した「申告期限」を工程表に書き込むようにしています。

提出書類のうち「大規模の修繕等証明書」は登録を受けた建築士事務所に属する建築士等が、「過去工事証明書」はマンション管理士または建築士が発行します。過去工事証明書が要るということは、前回の大規模修繕の記録が残っていないと詰まる、ということです。修繕履歴の保管は、それ自体が資産です。


ブロック塀・アスベスト・浄化槽――共用部で使える/使えないの線引き

ブロック塀等撤去事業費補助金(○ 条件付きで使える)

マンションの敷地境界にブロック塀がある場合、対象になり得ます。窓口は建築住宅課ではなく危機管理課(0533-66-1208)です。ここを間違えると往復が1回増えます。

対象は次の1〜5をすべて満たす塀です。

  1. 蒲郡市内で道路や公共施設に面していて、地震で倒壊するおそれがある、民間が所有する塀であること
  2. 基礎を除く高さが60センチメートルより高い塀であること
  3. 愛知県建築物地震対策推進協議会作成のチェックリスト「ブロック塀の点検をしよう!」の項目に1以上該当し、ヒビや傾きなどがあること
  4. 再度ブロック塀に建て替えるための撤去や部分的な補修でないこと
  5. 市に申請を出す前に撤去工事に着手していないこと

補助額は、事業に要する経費と「撤去するブロック塀等の延長1メートル当たり1万円を乗じて得た額」のいずれか少ない額の2分の1以内(千円未満切捨て)、かつ一敷地につき10万円を補助限度額とした額です。

私道に面した塀は対象外(「道路(私道除く)」)という点と、一敷地10万円が上限という点は、総会資料に書くときに省かないでください。100mの塀があっても10万円です。

なお、この制度の詳細ページの最終更新日は2025年6月12日で、令和8年度の年度表記がありません。一方、財政課が2026年6月2日に更新した令和8年度版の補助金一覧には掲載されています。金額・要件が令和8年度も同一かどうかは、申請前に危機管理課へ直接ご確認ください。

民間建築物アスベスト含有分析調査費補助金(○ 条件付きで使える)

RC造マンションの本体に直接関わる可能性がある制度です。補助額は1棟25万円を限度、1回限り。ただし対象は「愛知県が整備するアスベスト調査台帳に記載された建築物」の分析調査に限られます。

まず自分のマンションが台帳に載っているかどうか。そこから建築住宅課 営繕担当(0533-66-1133)にご確認ください。大規模修繕で外壁の下地調整や既存塗膜の除去を行う場合、事前のアスベスト調査は避けて通れません。

浄化槽設置整備事業費補助金(× ほぼ使えない)

人槽の規模で5人槽33万2千円、6〜7人槽41万4千円、8〜50人槽で54万8千円と、共同住宅規模まで区分があります。数字だけ見ると使えそうに見える。

ですが対象要件がこうです。

  1. 令和8年4月1日以降に、自ら居住する住宅にある単独処理浄化槽や汲み取り便槽を撤去または廃止して、建築確認申請を伴わずに合併処理浄化槽を設置する方
  2. 市街化調整区域内にお住まいの方(下水道事業計画区域等は除く)
  3. 市税の滞納がない方

「自ら居住する住宅」「市街化調整区域内」という二重の縛りで、分譲マンションの共用部設備の更新には、まず届きません。使えないものを使えないとお伝えするのも、私の仕事のうちです。

申請の締切自体は令和9年3月1日(月曜日)まで、実績報告は工事完了後30日以内もしくは令和9年3月15日(月曜日)までのいずれか早い期日、と明示されています(出典:蒲郡市「令和8年度浄化槽整備事業費補助金の募集について」2026年4月1日更新)。

住宅用地球温暖化対策設備導入費補助金(× 共用部には効きにくい)

「自ら居住する住宅」に温暖化対策設備(太陽熱高度利用システム、リチウムイオン蓄電池、家庭用燃料電池、V2H、HEMS等)を導入する方が対象です。共用部の設備更新としての申請は想定されていません。また、市の省エネ改修補助のFAQでは、この制度と補助対象経費が重複する部分は併用できないと明記されています。


令和8年6月、愛知県が南海トラフ地震の被害予測を更新しました

これは蒲郡市の管理組合にとって、今年いちばん大きな環境変化です。

愛知県は令和8年6月、「愛知県南海トラフ地震被害予測調査」の結果を公表しました。平成26年3月の「愛知県東海地震・東南海地震・南海地震等被害予測調査」を、国の被害想定の見直し、最新の基礎データ、令和6年能登半島地震等の近年の地震災害における被害状況を踏まえて見直したものです。

蒲郡市は令和8年6月3日にこれを受けてページを更新し、蒲郡市の被害予測(抜粋)をPDFで公開しています。

(出典:蒲郡市「愛知県南海トラフ地震被害予測調査(令和8(2026)年6月)」/愛知県「愛知県南海トラフ地震被害予測調査結果(2026年6月)」)

具体的な数値はPDFをご確認いただくとして、管理組合として押さえていただきたいのは次の3点です。

第一に、耐震診断の優先順位が上がったこと。昭和56年5月31日以前の非木造共同住宅をお持ちの組合は、上限120万円の診断補助を使う理由が一つ増えました。しかも診断は12月末までに終える必要がある。動くなら今年度です。

第二に、認定基準の「防災の取組」と直結すること。蒲郡市の管理計画認定は、防災に関する取組を1つ以上実施していることを求めています。被害予測が更新された今年は、理事会で防災を議題に載せる自然な口実になります。備蓄を始めれば、それがそのまま認定要件を満たす。

第三に、ブロック塀と外壁の落下物です。地震で最初に人に当たるのは、塀とタイルと庇です。私が現場で20年やってきて一番悔しい思いをするのは、「あのとき打診をしておけば」という話を、事故のあとに聞くときです。


工法の選択が、そのまま予算の話になります

ここからは、補助金の外側の話です。

蒲郡市の1棟あたり平均は約31戸。この規模のマンションで大規模修繕を回すとき、総工事費に占める仮設足場の割合が2割から3割に達することは、決して珍しくありません。戸数が少ないほど、この比率は重くのしかかります。

私どもは、建物ごとに3つの工法から最適なものをご提案しています。

工法 特徴 向いている建物
通常足場工法 従来型の仮設足場による施工 中低層、形状が複雑、全面改修
ロープアクセス工法(無足場工法) 産業用ロープで作業員が直接躯体にアクセスする無足場施工。足場費を削減し、工期を短縮できる 高層、足場架設が困難、コストを最優先したい建物
ハイブリッド工法 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける 大規模・複雑で、総合的なコスト最適化が必要なケース

ロープアクセス工法(無足場工法)は、足場を組まずに建物の外壁面へ直接アクセスする施工方法です。足場がないぶん、仮設費が圧縮できるだけでなく、居住者の生活への影響が小さいという利点があります。窓の外に足場とメッシュシートが1か月半かかり続けるのと、必要な面だけ数日で作業が終わるのとでは、住んでいる方の負担がまるで違う。防犯面の不安も減ります。工法の技術的な背景や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。

一方で、ロープアクセスが万能だとは申し上げません。外壁全面の塗替えや大面積の下地補修を伴う工事では、足場を架けたほうが結果的に安く、品質も安定します。だからこそ、部位ごとに使い分けるハイブリッド工法という選択肢が生きてきます。

蒲郡市の管理組合にこの話が効く理由は、もう一つあります。省エネ改修補助が受付終了し、外壁塗装や屋根の葺替えはそもそも補助対象外である以上、大規模修繕の本体費用は基本的に自前です。だとすれば、削れるところを削る設計が、そのまま修繕積立金の延命になります。

工法の詳細はロープアクセス工法のご紹介、大規模修繕全体の進め方は大規模修繕工事のご紹介にまとめています。


申請を落とさないための実務――蒲郡市の「期日」まとめ

制度の中身を理解していても、期日と手順で落ちるケースが本当に多い。蒲郡市の制度を横並びで整理します。

論点 蒲郡市のルール
契約前申請 省エネ改修補助・非木造耐震診断・ブロック塀撤去のいずれも、交付決定前の契約・着手は対象外
診断の完了期限 非木造耐震診断は12月末までに診断を終了
実績報告の期限 省エネ改修補助は工事完了から30日以内、最終期限は2月末日/ブロック塀撤去は交付決定年度の2月末日まで
税制の申告期限 長寿命化促進税制は工事完了後3か月以内
事前相談 省エネ改修補助・非木造耐震診断とも任意の事前相談あり。オンライン申請に対応
施工業者の所在地 省エネ改修補助は市外の事業者でも可(市のFAQに明記)
代理受領制度 耐震改修では、補助金の受領を工事業者へ委任できる。申請者は補助金相当額を除いた工事費を用意すればよい

「施工業者は市内でなくてよい」は、蒲郡市のFAQに明記されています。自治体によっては市内業者要件が付くところもあるため、これは確認しておく価値があります。

代理受領制度は、資金繰りの面で効きます。補助金は原則、後払いです。管理組合が一度全額を支払い、あとから補助金が振り込まれる。代理受領を使えば、補助金相当額を差し引いた金額だけを用意すればよくなります。積立金に余裕のない組合ほど、この制度の有無で判断が変わります。

私はいつも理事長さまに、こうお伝えしています。「補助金の申請書を書く前に、まず逆算表を1枚つくりましょう」と。総会の開催日、交付決定の見込み、契約日、着工日、竣工日、実績報告の期限、税制の申告期限。この7つを1枚の紙に並べるだけで、落ちる案件はかなり減ります。


よくある質問(FAQ)

Q1. 蒲郡市で、管理組合が申請者になれる補助金はありますか?
A. あります。「蒲郡市住宅省エネ改修推進事業費補助金」は補助対象者に「区分所有者、管理組合」を明記しており、対象住宅にも共同住宅(マンション等)が含まれます。ただし令和8年度分は受付上限額に達して終了しており、令和9年度以降の実施は現時点で未定です(出典:蒲郡市)。

Q2. 旧耐震のマンションです。耐震診断に補助は出ますか?
A. 出ます。「非木造住宅耐震診断事業費補助金」が、昭和56年5月31日以前の旧基準で建てられた非木造の共同住宅(分譲・賃貸)を対象としており、一戸建て以外は上限120万円です。分譲マンションの場合は管理組合等の同意書が必要で、診断は12月末までに終える必要があります。

Q3. 管理計画認定を取るのに、蒲郡市に手数料は必要ですか?
A. 市への手数料は不要です。ただし公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」の利用料は有料です。また蒲郡市は独自基準として、防災に関する取組を管理組合として1つ以上実施していることを求めています。

Q4. 管理計画認定を受けていないと、長寿命化促進税制は使えませんか?
A. いいえ。蒲郡市の要件では、(ア)管理計画認定マンション、または(イ)市の助言・指導を受けて、適切に長期修繕計画を作成または見直しているマンションの、いずれかに該当すればよいとされています。(イ)の証明書は市の建築住宅課が発行します。

Q5. 外壁塗装だけを先にやって、防水は来年にしても税制は使えますか?
A. おすすめしません。長寿命化工事は「外壁塗装等工事」「床防水工事」「屋根防水工事」の3つがすべて実施され、かつ同一の工事請負契約の中で行われたなど一体として扱われる工事であることが求められます。分割発注は要件を外すおそれがあります。

Q6. 敷地のブロック塀を撤去したいのですが、どこが窓口ですか?
A. 建築住宅課ではなく危機管理課(0533-66-1208)です。補助額は延長1mあたり1万円との比較で少ない額の2分の1以内、かつ一敷地につき10万円が上限です。なお詳細ページの最終更新は2025年6月12日のため、令和8年度の金額・要件は窓口でご確認ください。


この記事のポイントまとめ

  • 蒲郡市のマンションは2021年時点で33棟1,031戸、うち築40年以上が8棟(24.2%)
  • 省エネ改修補助は管理組合が申請可・戸あたり最大70万円だが、令和8年度は35件で受付終了
  • 非木造耐震診断は共同住宅が対象、上限120万円。診断は12月末までに完了が必要
  • 管理計画認定は市への手数料が不要。防災の取組1つ以上という独自基準がある
  • 長寿命化税制は認定がなくても「市の助言・指導」ルートで対象になり得る
  • 令和8年6月に愛知県が南海トラフ地震被害予測を更新。耐震と防災の優先順位が上がった

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月15日時点で公表されている蒲郡市および国土交通省・愛知県の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず蒲郡市および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。とくに「ブロック塀等撤去事業費補助金」の詳細ページは2025年6月12日更新、「長寿命化工事を行ったマンションの固定資産税減額制度」のページは2023年9月29日更新であり、令和8年度の運用と細部が異なる可能性があります。


出典・参考資料


蒲郡市の管理組合の皆さまへ。33棟という数字は、裏を返せば「市の担当者が、あなたのマンションを個別に把握できる規模」ということでもあります。人口100万人の都市では、こうはいきません。建築住宅課の管理担当(0533-66-1132)に電話を1本かけて、長期修繕計画を見てもらう。それだけで税制のドアが開き、認定の入口に立てる。

補助金の話は、そのあとで構いません。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームからどうぞ。


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟することで、高品質と低価格を両立しています。

最終更新:2026年9月15日

【令和8年度版】江東区のマンション管理計画認定制度|区独自の「防災・地域コミュニティ」基準と手数料4,100円の全手順

【令和8年度版】江東区のマンション管理計画認定制度|区独自の「防災・地域コミュニティ」基準と手数料4,100円の全手順

2026年9月15日 更新

「マンション管理士さんに事前確認をお願いして、適合証までもらったんです。それで区に出したら、『まだ書類が足りません』と言われまして」——先日、東陽町のマンションの理事長さまから、そんな電話をいただきました。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも自分の手でやってきた人間です。

その理事長さまは、何も間違ったことをしていません。江東区の制度の作りが、他の区と少し違うだけです。

江東区の管理計画認定には、国が定める基準のほかに、江東区独自の認定基準があります。そして、その独自基準の部分はマンション管理士の事前確認の対象外で、区へ別ルートで直接提出することになっています。ここを知らずに進めると、必ず一度つまずきます。

今日は、江東区で管理計画認定を取るときに何が他区と違い、いくらかかり、取ると何が返ってくるのか——この一点に絞ってお話しします。


結論:江東区で認定を取ると何が変わり、いくらかかるか

先に全体像を表でお示しします。

論点 江東区での答え
認定の主体 江東区(マンション管理適正化推進計画を策定済みの特別区)
窓口 江東区 都市整備部 住宅課 住宅指導係(区役所5階1番窓口)/電話 03-3647-9473
所在地 〒135-8383 江東区東陽4丁目11番28号
区への申請手数料 基本4,100円(長期修繕計画が2つ目以降は1計画につき1,800円加算)
別途かかる費用 管理計画認定手続支援システム利用料 10,000円+事前確認審査料
事前確認審査料 パターンにより10,000円、またはマンション管理士との取り決め額
区独自の認定基準 あり(防災対策/地域コミュニティ/都条例の管理状況届出/区の適正化指針)
独自基準の確認者 区が直接審査(マンション管理士の事前確認の対象外)
事前相談 必須(総会決議・事前確認より前に住宅課へ)
有効期間 5年間(満了日の1か月前から満了日までに更新申請)
区独自のご褒美 掲示用の区独自の管理計画認定証を進呈

(出典:江東区「マンション管理計画認定制度」(更新日:2026年9月1日)、江東区「マンション管理計画認定申請の手引き」(PDF・令和6年4月版)、国土交通省「マンション管理計画認定制度」)

江東区の一番の特徴は、国の16項目に区独自の基準を上乗せしていることです。手数料をゼロにして間口を広げる区もありますが、江東区は4,100円という実費相当を取りつつ、中身の基準を厚くしている。私は「量より質」の設計だと受け止めています。

なお、上記の手引きは令和6年4月版です。区が令和8年9月時点で公開している最新版がこれですが、手数料や様式は改正され得ますので、申請前には必ず住宅課へご確認ください。


認定主体はどこか——江東区は「区が認定する」

管理計画認定制度の認定主体は、マンション管理適正化法に基づく「マンション管理適正化推進計画」を策定した市・特別区です。策定していない町村部は都道府県が担います(出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度」)。

江東区は「江東区マンション管理適正化推進計画」を策定済みですので、江東区が認定主体です。東京都に申請するものではありません。

私はこの点を取り違えている理事会に、これまで何度も出会いました。東京都のマンションポータルサイトを見て準備を進めていたら、実は窓口は区だった、というパターンです。江東区内のマンションについては、窓口は区役所5階1番窓口の住宅課住宅指導係、電話03-3647-9473です。

一方で、固定資産税の減額(後述の長寿命化促進税制)の申告先だけは、区ではありません。東京23区の固定資産税は東京都が課税しますので、申告先は物件所在地を管轄する都税事務所——江東区内であれば江東都税事務所(03-3637-7121)になります。

認定は区、減税の申告は都。この二本立てを最初に頭へ入れておくと、後の段取りで慌てずに済みます。


ここが江東区の本題——「区独自基準」という第2の関門

国の基準は5分野、江東区はそこに2分野を足している

国が全国共通で定める認定基準は、(1)管理組合の運営、(2)管理規約、(3)管理組合の経理、(4)長期修繕計画の作成および見直し等、(5)その他——の5分野です。

江東区の認定基準は、ここに「5 防災対策」「6 地域コミュニティ」という分野を独立して立て、さらに「7 その他」の中にも区独自の項目を置いています(出典:江東区「管理計画認定基準」(PDF))。

5 防災対策(次のいずれか1つ以上を実施していること)

選択肢 区に出す確認書類
① 防災マニュアルを作成している 防災マニュアルの写し
② 継続的に年1回以上の防災訓練を実施している 実施が確認できる書類(マンション広報、写真等)
③ 入居者の3日分以上の飲料水・食料・簡易トイレを備蓄している 備蓄品のリスト等
④ 災害時に自発的な活動を行う組織を結成または参加している 活動報告書等

6 地域コミュニティ(両方とも必要)

  • 町会や自治会との連絡担当者を選任していること
  • 管理人の駐在時間や管理会社名、緊急連絡先など管理体制を来訪者の見やすい場所に表示していること(写真等で確認)

7 その他(区独自部分)

  • 「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」の要届出マンションは、管理状況の届出を行っていること
  • 江東区マンション管理適正化指針の趣旨に沿ったものであること

町会との連絡担当者の選任、そして掲示板への管理体制の表示。ここまで踏み込んで基準にしている区は、23区でも多くありません。江東区は湾岸部の広域避難が大きな行政課題ですから、マンション管理を防災と地域の側から捉えている——私はそう理解しています。

なお、連絡担当者について区は「区から個別に紹介することはなく、他に情報を提供することもない」と明記しています。個人情報が外へ出る心配は要りません。

独自基準は「事前確認では見てもらえない」

ここが冒頭の理事長さまがつまずいた点です。

事前確認は、マンション管理センターの事前確認講習を修了したマンション管理士が行いますが、事前確認で確認するのは国が定める基準のみです。区の独自基準は確認されません(出典:江東区「マンション管理計画認定申請の手引き」(PDF))。

では独自基準はどう審査されるのか。「江東区独自基準に係る届出書」とその添付書類を、管理計画認定手続支援サービスを通さず、区へ直接提出する——この二重ルートです。

提出方法は3つあります。

  1. 区役所5階1番窓口へ持参
  2. 区へ郵送(〒135-8383 江東区東陽4-11-28 住宅課住宅指導係)
  3. 電子申請(LoGoフォーム)

順番にも決まりがあります。先にマンション管理センターのシステムで区への認定申請を済ませてから、独自基準の届出書を区へ出してください。逆にすると受け付けてもらえません。

そして江東区は、認定申請を検討している管理組合に対し、総会決議と事前確認より前に、区への事前相談を必ず行うことを求めています。これは形式的な案内ではなく、独自基準の中身を先に確認しておくための実務上の意味がある手順です。

私が理事長さまにお伝えしているのは、「江東区は電話1本の事前相談が一番の時短になる区です」ということです。


国が定める認定基準——江東区でも土台はここ

区の上乗せ分を見てきましたので、土台となる国の基準も押さえておきます(出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度」、江東区「管理計画認定基準」(PDF))。

1)管理組合の運営

  • 管理者等(理事長など)が定められていること
  • 監事が選任されていること
  • 集会(総会)が年1回以上開催されていること

2)管理規約

  • 管理規約が作成されていること
  • 緊急時等の専有部への立ち入り、修繕等の履歴情報の管理について定められていること
  • 財務・管理に関する情報の書面交付(または電磁的方法による提供)について定められていること

3)管理組合の経理

  • 管理費と修繕積立金等の会計が明確に区分されていること
  • 修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと
  • 直前の事業年度末日時点で、3か月以上の滞納額が全体の1割以内であること

4)長期修繕計画の作成および見直し等

  • 長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠して作成され、内容と修繕積立金額が総会で決議されていること
  • 長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われていること
  • 計画期間が30年以上、かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれていること
  • 将来の一時金徴収を予定していないこと
  • 計画期間全体での修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと
  • 計画期間の最終年度において借入金の残高がない計画であること

5)その他(国基準)

  • 組合員名簿・居住者名簿を備え、年1回以上は内容を確認していること

私がこれまで見てきた中で、いちばん引っかかりやすいのが4)の長期修繕計画まわりです。特に「7年以内に見直し」「30年以上・大規模修繕2回以上」「一時金を予定していない」の3つ。これらは書類を揃えるだけでは通りません。中身のある調査・診断を経た計画が必要になります。

補足として、令和9年4月1日から認定基準の見直しと制度の拡充が予定されています。令和8年9月時点では施行前ですので、いま申請される場合は現行基準で進めることになります。


認定の経済効果と、江東区の上乗せ支援

ここからが、理事会で数字として説明しやすいパートです。

① マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)

一定の要件を満たすマンションが長寿命化工事(大規模修繕工事)を実施すると、翌年度の固定資産税(建物部分)が減額されます。減額の割合は6分の1から2分の1の範囲で、東京23区では都の条例で定められた割合が適用されます(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制」)。

主な要件は、築20年以上・総戸数10戸以上で、管理計画認定を受けている(または助言・指導を受けて長期修繕計画を適切に見直した)こと、そして過去に1回以上の長寿命化工事を実施済みであることです。

適用期限について、正直に申し上げます。 当初は令和7年3月31日までの措置でしたが、令和7年度の税制改正で2年間延長され、現在の適用期限は令和9年3月31日です。つまり令和8年9月の時点で、残りは半年強という計算になります。

大規模修繕は着工までに1年から2年かかるのが普通です。ですから「これから工事を計画して税制に間に合わせる」のは、率直に申し上げて難しい。すでに工事の計画が動いている管理組合が、認定の取得を急ぐ——この順番なら現実的です。延長の有無は毎年度の税制改正で決まりますので、江東都税事務所および住宅課へ最新の取扱いをご確認ください。

② フラット35・共用部分リフォーム融資・すまい・る債

管理計画認定を受けたマンションは、住宅金融支援機構の以下の優遇を受けられます(出典:江東区「マンション管理計画認定制度」、住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」)。

制度 認定による効果 主に効く相手
フラット35(維持保全型) 借入金利の引下げ 住戸を買う・売る区分所有者
マンション共用部分リフォーム融資 借入金利の引下げ 大規模修繕を借入で行う管理組合
マンションすまい・る債 利率の上乗せ 積立てを運用する管理組合

「認定を取ると売りやすくなる」と言われるのは、フラット35のこの仕組みに支えられています。理事会では「自分たちには関係ない」と受け止められがちですが、資産価値の話は区分所有者全員の関心事です。総会での説明順序としては、ここから入ると通りやすいと感じています。

③ 宅配ボックス助成の上限が「2倍」になる

江東区らしい、わかりやすい上乗せがこれです。

区内マンションの共用部分に宅配ボックスを新設する場合、費用の一部が助成されます。

項目 内容
対象 分譲は管理組合(またはこれに準ずるもの)、賃貸はマンション経営者
対象マンション 区内・地階を除く3階以上・総住戸数10戸以上 など
助成額 対象経費の20%(千円未満切捨て)、上限10万円
認定マンションの場合 上限20万円
設置数の条件 総住戸数の1割以上(端数切上げ)
注意 申請時点で工事に着手していないこと/申請年度内に工事完了/予算がなくなり次第終了

(出典:江東区「マンション共用部分への宅配ボックス設置費用の助成」、更新日:2026年1月8日)

令和8年1月8日受付開始の制度で、管理計画認定を受けているマンションは上限が10万円から20万円へ倍になります。金額としては大きくありませんが、「認定を取ると区の助成が手厚くなる」という一番わかりやすい実例です。予算枠がなくなり次第終了とされていますので、令和8年度の残枠は住宅課にご確認ください。

④ マンション管理アドバイザーCコースの派遣料助成

認定の準備そのものに使える助成もあります。

公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターの「マンション管理アドバイザーCコース(支援編)」を利用して認定基準に関する事項を改善し、認定を取得した管理組合に対し、区が派遣料を助成します。

項目 内容
申請資格 ①Cコースを利用し派遣料を支払った区内管理組合/②法に基づく認定を受けている/③派遣料支払完了日から認定日まで2年以内/④過去にこの助成を受けていない
申請期限 認定を受けた翌日から起算して60日以内
助成額 予算の範囲内で、Cコース利用に係る派遣料(違約金等は対象外)
助成対象コース数 C-1〜C-9のうち2コースまで+C-0およびC-オプション各1コース(最大4コース)

(出典:江東区「マンション管理アドバイザーCコース派遣料助成金パンフレット」(PDF))

Cコースには、C-7「長期修繕計画見直し案及び修繕積立金見直し案に関すること」、C-8「大規模修繕工事計画案に関すること」があります。認定基準4)でつまずいている管理組合には、まさにここが効きます。

そして申請期限が「認定の翌日から60日以内」という点。認定通知が来て一安心したところで忘れる期限です。認定申請の段階で、カレンダーに入れておいてください。

なお、Aコース(講座編)とBコース(相談編)は、区のマンションアドバイザー派遣事業で無料派遣されています(テキスト代等は自己負担)。派遣希望日の30日前までの申請が必要です。

⑤ マンション計画修繕調査支援事業

長期修繕計画の見直しに必要な調査費用の助成です。

項目 内容
対象住宅 区内の建築後7年以上経過した耐火建築物の民間マンション
対象調査 防水/外壁・内壁・天井・床/鉄製品(設備含む)/給排水管(高架水槽・受水槽含む)
助成額 調査費用(税込)の3分の1(千円未満切捨て)、ただし戸数規模別の限度額まで
重要な条件 調査を実施する1か月前までに申請/10年以内に同助成を受けていないこと

戸数規模別の助成限度額は次のとおりです。

戸数規模 助成限度額 戸数規模 助成限度額
60戸以下 219,000円 201〜300戸 520,000円
61〜90戸 282,000円 301〜400戸 624,000円
91〜120戸 287,000円 401〜500戸 709,000円
121〜200戸 388,000円 501戸以上 793,000円

(出典:江東区「マンション計画修繕調査支援事業」)

戸数が大きいほど限度額が上がる設計で、江東区の大規模物件では50万円を超える助成になります。ただし区のこのページの更新日は2023年4月7日です。令和8年度の予算・要件に変更がないかは、申請前に住宅課へ必ずご確認ください。

そして何より、「調査の1か月前までに申請」。この順番を間違えて「もう調査してしまったので助成が使えない」となった管理組合を、私は何度か見ています。

⑥ マンション共用部分リフォーム支援事業(債務保証料の助成)

機構の共用部分リフォーム融資を借りる際の、債務保証料の助成です。

項目 内容
助成額 債務保証料の2分の1(千円未満切捨て)、上限50万円(予算の範囲内)
受付期間 (公財)マンション管理センターと締結した債務保証委託契約の契約日の翌日から90日以内
申込資格 ①区内の分譲マンション管理組合/②機構の共用部分リフォーム融資を受けている/③東京都のマンション改良工事助成制度による交付決定を受けている/④マンション管理センターに債務保証を委託している
注意 区の従前の利子補給制度は令和4年5月末で終了

(出典:江東区「マンション共用部分リフォーム支援事業」)

ポイントは条件③です。東京都のマンション改良工事助成制度(利子補給)の交付決定が前提になっているため、都と区の2つの制度を並行して段取りする必要があります。都の改良工事助成は機構の融資と連携した利子補給制度で、募集期間が年度ごとに設定されます(出典:東京都マンションポータルサイト「分譲マンションの修繕への助成」)。

こちらも区のページの更新日が2022年6月1日と古く、令和8年度の運用については住宅課への確認が必須です。古いまとめサイトを見て「江東区は利子補給がある」と計画を立てている管理組合があれば、そこは組み替えが要ります。令和8年度の入口は債務保証料の助成です。

私が一番悔しい思いをするのは、こういう情報の更新漏れで、使えたはずのお金を取り逃がす管理組合を見たときです。


江東区の建物事情と、工法選びの話

制度の話ばかりしてきましたので、現場屋としての話も少しだけさせてください。

江東区は、私の感覚では東京23区の中でもマンションの「世代差」がいちばん激しい区です。

豊洲・東雲・有明・辰巳には、2000年代以降に建った超高層のタワーマンションが林立している。門前仲町・清澄白河・木場のあたりには、中小規模の分譲マンションが密集して建っています。そして亀戸・大島・砂町・南砂には、昭和40年代から50年代の団地型・旧耐震マンションが少なくありません。

足場が組めるかどうか、そもそも足場が現実的かどうかが、まったく違うのです。

湾岸のタワーマンションでは、そもそも高さの面で全面足場が非現実的です。加えて海風による塩害と、強風による仮設足場のリスクという、江東区特有の条件があります。一方、門前仲町や木場の路地裏に建つ中小規模マンションでは、隣地との間が数十センチしかない、前面道路が狭くて資材搬入が難しい——そういう現場では、通常の仮設足場を前提に見積もりを組むと、仮設費だけで工事費の2割から3割を食われます。近隣への越境承諾に何か月もかかることもあります。

こういうときに検討していただきたいのが、ロープアクセス工法(無足場工法)です。産業用ロープで職人が直接壁面に降りて施工する方法で、足場を架けずに外壁補修や塗装、シーリング打ち替えができます。仮設費を圧縮でき、工期も短くなり、何より足場を伝った不法侵入のリスクや、洗濯物が干せない期間を減らせる。居住者の生活への影響がまるで違います。

もちろん万能ではありません。全面打診や大量のタイル張り替えが必要な建物は、足場を組んだほうが結果的に安く確実です。だから私たちは、部位ごとに足場とロープアクセスを使い分けるハイブリッド工法もご提案しています。北側の狭い面だけロープアクセス、南面は足場、という組み方です。

工法の詳しい話は、ロープアクセス工法のご紹介と、専門サイトのロープアクセス工法とは(rope-access-method.com)にまとめてあります。あわせて無足場工法のメリットと適用条件もご覧いただくと、ご自身のマンションで使えるかどうかの見当がつくはずです。

認定との関係でいえば、工法の選択は「修繕積立金の額が計画期間内で足りるか」に直結します。認定基準4)に出てきた、「一時金を予定していない」「最終年度に借入金の残高がない」という条件です。仮設費を圧縮できれば、同じ積立金でも計画が成り立つ。制度と現場は、ここでつながっています。大規模修繕全体の考え方は大規模修繕工事のご紹介にまとめています。


逆算スケジュール——事前相談から認定交付まで

江東区で認定まで持っていく場合の、現実的な時間軸をお示しします。

時期 やること
第0段階 住宅課へ事前相談(必須)。区独自基準の中身と、自分たちの現状を突き合わせる
第1段階(1〜2か月) 理事会で棚卸し。管理規約・総会議事録・長期修繕計画・名簿・防災マニュアル/訓練記録/備蓄リスト・町会連絡担当者・掲示板の管理体制表示の有無を確認
第2段階(1か月) 長期修繕計画の見直しが必要なら、計画修繕調査支援事業の助成申請(調査の1か月前まで)
第3段階(2〜4か月) 建物調査・診断の実施、長期修繕計画の見直し、修繕積立金の額の再算定
第4段階(総会) 長期修繕計画の総会承認、必要なら管理規約の改正、認定申請の総会決議
第5段階(1〜2か月) マンション管理士等に依頼して事前確認を受け、事前確認適合証を取得
第6段階 管理計画認定手続支援システムから区へ申請 → その後に独自基準の届出書を区へ直接提出
第7段階 手数料4,100円を納入(納入通知書またはオンライン決済)→ 区の審査
第8段階 認定通知書+区独自の認定証が交付。有効期間は5年。Cコース助成を使うなら60日以内に申請

私がいつも理事長さまにお伝えしているのは、「総会が律速になります」ということです。

長期修繕計画の承認も、認定申請の決議も、理事会だけでは決められません。年1回の通常総会に議案として乗せるのが基本です。ということは、総会の3か月前には調査・診断を終えていないと間に合わない。逆算すると、次の総会に乗せたいなら、動き出すのは今です。

そして江東区では、その手前に事前相談というステップが入ります。これは面倒な追加手続きではなく、独自基準で足りない項目を早期に洗い出すための工程だと考えてください。


まとめ——江東区の管理組合が今週動けること3点

長くなりましたので、要点を絞ります。

1. 住宅課に電話して、事前相談の予約を取る

電話は03-3647-9473、区役所5階1番窓口の住宅課住宅指導係です。江東区は総会決議と事前確認の前に事前相談が必須とされています。独自基準の中身を先に聞いておけば、あとの手戻りが激減します。理事長さまお一人で、今週中に動かせます。

2. 「防災」と「地域コミュニティ」の現状を確認する

防災マニュアルはあるか。年1回以上の防災訓練の記録は残っているか。備蓄はあるか。町会・自治会との連絡担当者は決まっているか。管理人の駐在時間や緊急連絡先が、来訪者に見える場所に掲示されているか——。この5つは、掲示板の前に立てば10分で確認できます。江東区では、これが認定の可否を分ける項目です。

3. 長期修繕計画の「最終見直し日」を調べる

認定基準は「7年以内の見直し」です。手元の長期修繕計画の表紙を開いて、日付を見てください。7年を超えていたら、計画修繕調査支援事業(1/3・戸数別限度額)の対象になる可能性があります。ただし調査の1か月前までに申請が条件ですので、調査会社に声をかける前に区へ相談してください。


江東区は、手数料を取り、基準を上乗せし、その代わりに支援と認定証で応える——制度の作り方が一貫している区だと私は感じています。だからこそ、事前相談という最初の一歩が効いてきます。

うちのマンションは足場が組めるのか、湾岸の塩害にはどんな仕様が要るのか、ロープアクセスで何がどこまでできるのか。そういう工法の相談だけでも構いません。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームから、遠慮なくお声がけください。

次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


出典・参考資料


補足:都条例の管理状況届出について

江東区の独自基準7⑵に出てきた「管理状況の届出」は、東京都の条例に基づく制度です。

要届出マンションは、昭和58(1983)年12月31日以前に新築された分譲マンションのうち、居住用の独立部分が6戸以上であるもの。これ以外のマンションも任意で届け出ることができます。すでに提出済みの管理組合も、前回の届出から5年以内ごとに更新の届出が必要です(出典:江東区「管理状況届出制度」、更新日:2026年3月2日)。

届出方法は、管理状況届出システムへの入力か、区役所5階1番窓口への郵送・持参です。届出がない場合、条例に基づく調査や指導勧告が行われることがあります。

亀戸・大島・砂町エリアの旧耐震マンションは、この要届出マンションに該当する可能性が高い。認定を目指す前提として、まずここを確認するのが江東区の実務です。


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月15日時点で公表されている江東区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。区の一部のページ(マンション計画修繕調査支援事業/マンション共用部分リフォーム支援事業)は更新日が前年度以前であるため、令和8年度の取扱いは変更されている可能性があります。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず江東区住宅課住宅指導係(03-3647-9473)および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

免責:本記事は情報提供を目的としたものであり、個別の申請の可否や税額の判断を保証するものではありません。税制の適用については、税理士および所管の都税事務所にご確認ください。


株式会社明誠|東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事/足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法

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【令和8年度版】墨田区のマンション管理計画認定制度|区手数料無料・適正管理条例とセットで進める全手順

【令和8年度版】墨田区のマンション管理計画認定制度|区手数料無料・適正管理条例とセットで進める全手順

2026年9月15日 更新

「認定を取りたいと理事会で話しているんですが、うちは区に何か届出を出した記憶がなくて。そこから始めないといけないんでしょうか」——先月、錦糸町のマンションの理事長さまから、そんなご相談をいただきました。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも自分の手でやってきた人間です。

結論から申し上げます。その理事長さまの直感は、当たっていました。墨田区で管理計画認定を目指すなら、区独自の「管理状況届出」から入るのが実務上いちばん早いからです。

墨田区には、平成29年4月1日に施行された「墨田区分譲マンションの適正管理に関する条例」があります。これが墨田区のマンション行政の背骨で、認定制度も補助金も、この条例の届出を土台に組み立てられています。ここを飛ばすと、後で二度手間になります。

今日は、墨田区にあるマンションが管理計画認定を取ると何が変わり、いくらかかり、条例とどう噛み合わせればいいのか——この一点に絞ってお話しします。


結論:墨田区で認定を取ると何が変わり、いくらかかるか

先に全体像を表でお示しします。

論点 墨田区での答え
認定の主体 墨田区(マンション管理適正化推進計画を策定済みの特別区)
窓口 墨田区 都市計画部 住宅課 計画担当(区役所9階)/電話 03-5608-6215
所在地 〒130-8640 墨田区吾妻橋一丁目23番20号
メール juutaku@city.sumida.lg.jp
区への申請手数料 無料
別途かかる費用 マンション管理センターの手続支援システム利用料+事前確認審査料
事前確認審査料の決め方 管理組合と委託先のマンション管理士との間で決定(区が一律に定めていない)
マンション管理センター経由 「事前確認適合証」を取得してシステムから申請するルートが基本
区独自の上乗せ 認定基準そのものへの上乗せではなく、「適正管理条例」の遵守事項が並走する
条例上の管理状況届出 対象マンションは義務
有効期間 5年間(5年ごとの更新認定)
主な経済効果 長寿命化促進税制、フラット35の金利引下げ、共用部分リフォーム融資、すまい・る債の利率優遇

(出典:墨田区「マンションの管理計画認定制度」、墨田区「分譲マンションの適正管理に関する条例」、国土交通省「マンション管理計画認定制度」)

墨田区の一番の特徴は、区への申請手数料をゼロにしていることです。他区では基本手数料として数千円がかかるところもありますが、墨田区はここを取っていません。

もうひとつの特徴が、条例です。手数料を下げてハードルを低くしつつ、条例で管理の底上げを図る——私はそう理解しています。認定を「ご褒美」ではなく「通過点」として設計している区だ、という印象です。


認定主体はどこか——墨田区は「区が認定する」

管理計画認定制度の認定主体は、マンション管理適正化法に基づく「マンション管理適正化推進計画」を策定した市・特別区です。策定していない町村部は都道府県が担います(出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度」)。

墨田区は特別区で、推進計画を策定済みです。つまり墨田区が認定主体であり、東京都に申請するものではありません。

私はこの点を取り違えている理事会に、これまで何度も出会いました。都のマンションポータルサイトを見て準備を進めていたら、実は窓口は区だった、というパターンです。墨田区のマンションについては、窓口は区役所9階の住宅課計画担当、電話03-5608-6215です。

一方で、固定資産税の減額(後述の長寿命化促進税制)の申告先だけは、区ではありません。東京23区の固定資産税は東京都が課税しますので、申告先は物件所在地を管轄する都税事務所になります。墨田区内のマンションであれば墨田都税事務所です。

認定は区、減税の申告は都。この二本立てを最初に頭へ入れておくと、後の段取りで慌てずに済みます。


墨田区でまずやること——「適正管理条例」の管理状況届出

ここからが、墨田区ならではの本題です。

条例の対象になるマンション

墨田区分譲マンションの適正管理に関する条例の対象は、次のすべてに当てはまる区内のマンションです(出典:墨田区「分譲マンションの適正管理に関する条例」、更新日:2026年3月9日)。

  • 地下を除く3階以上の非木造
  • 住戸の数が6戸以上
  • 区分所有者が2人以上

かなり広く網がかかります。墨田区内の分譲マンションの大半は対象になると考えていいでしょう。そして対象マンションには管理状況の届出が義務付けられています。

届出は専用フォームからのオンライン提出のほか、届出書を郵送またはメール(juutaku@city.sumida.lg.jp)で提出する方法があります。

届出は「支援制度の入口カード」

ここが実務上いちばん大事なところです。

管理状況届出書を提出していることが、墨田区の各種支援制度を利用する前提条件になっています。区のページにも「管理状況届出書を提出することで区の支援制度を利用することができます」と明記されています。

私が理事長さまにいつもお伝えしているのは、「届出は義務であると同時に、支援制度の入口カードです」という言い方です。出していないと、次の章でご紹介する補助金にそもそも手が届きません。

もし「うちは出したかどうか分からない」という状態であれば、住宅課へ一本電話を入れて確認するところから始めてください。これは理事長さまお一人でも、10分あれば動かせる話です。


条例の「遵守事項」——認定基準と重なる部分・重ならない部分

墨田区は、認定制度の案内ページに「『墨田区分譲マンションの適正管理に関する条例』遵守事項」というチェックリストを掲げています。そこにはこう書かれています。管理計画認定制度における認定基準以外にも、同条例で定める内容については遵守していただく必要があります、と(出典:墨田区「条例遵守事項」チェックリスト(PDF))。

義務項目(抜粋)

条例が義務として求めている主な内容です。

条文 規定事項
第5条 管理者(理事長など)が選任されている
第11条 管理規約等の作成および適正な保管
第12条 総会の議事録の作成および適正な保管
第13条 区分所有者および居住者等の名簿の作成・保管
第14条 設計図書および修繕履歴等の適正な保管
第15条 管理人室の設置・管理責任者の選任・管理体制(戸数に応じた巡回/駐在)・近隣配慮ルールの周知
第16条 法定点検、設備点検、清掃の適切な実施
第17条 長期修繕計画が作成されている
第18条 積立金の取崩し対象工事と経理の方法を管理規約等に記載

第15条の管理体制については、戸数に応じて水準が定められています。20戸未満は週5日以上の定時巡回管理、20戸以上50戸未満は週5日以上かつ1日4時間以上の駐在管理、50戸以上100戸未満は週5日以上かつ1日8時間以上の駐在管理、100戸以上は常駐管理または同等の体制、という段階です。ただし平成20年以降に竣工した建物や住戸数9戸以下の場合は努力義務の扱いになります。

努力項目(抜粋)

  • 調査・診断を行い、その結果に基づいて長期修繕計画を見直している
  • 修繕積立金を計画的に積み立てている
  • 除却または建替え費用を計画的に積み立てている
  • 長期修繕計画に基づき、適時適切な修繕を実施している
  • 昭和56年5月31日以前に竣工している場合、耐震診断を実施し、耐震性能が不足する場合は解決方策を検討している
  • 防災用品の備蓄、定期的な防災訓練、要配慮者の情報把握、防災の手引の作成・周知
  • 町会・自治会への加入や活動参加を居住者が検討できるようにしている

チェックリストには「網掛け部分は、認定基準と同じ」との注記があります。つまり条例の遵守事項と国の認定基準は、かなりの部分が重なっているということです。

私の経験上、これは朗報です。条例対応と認定準備を別々のプロジェクトとして走らせる必要はありません。一本の作業として組み立てたほうが、理事会の負担は軽くなります。

そのうえで、認定基準には無いけれど条例にはある項目——名簿の整備、管理人室、防災訓練、町会との関わり——を上乗せで潰していく。この順番が、墨田区ではいちばん素直です。


国が定める認定基準——16項目が土台

墨田区の認定審査も、土台は国の基準です。大きく5つの分野に分かれています(出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度」)。

1)管理組合の運営

  • 管理者等(理事長など)が定められていること
  • 監事が選任されていること
  • 集会(総会)が年に1回以上開催されていること

2)管理規約

  • 管理規約が作成されていること
  • 緊急時等の専有部への立ち入り、修繕等の履歴情報の管理について定められていること
  • 財務・管理に関する情報の書面交付(または電磁的方法による提供)について定められていること

3)管理組合の経理

  • 管理費と修繕積立金等の会計が明確に区分されていること
  • 修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと
  • 直前の事業年度末日時点で、3か月以上の滞納額が全体の1割以内であること

4)長期修繕計画の作成および見直し等

  • 長期修繕計画が総会で承認されていること
  • 長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われていること
  • 計画期間が30年以上、かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれていること
  • 計画期間全体での修繕積立金の総額から算定した平均額が著しく低額でないこと
  • 修繕積立金の額が、計画期間内で借入れを行うことなく修繕工事を実施できる金額であること

5)その他

  • 管理組合が組合員名簿・居住者名簿を備え、年1回以上は内容を確認していること

私がこれまで見てきた中で、いちばん引っかかりやすいのが4)の長期修繕計画まわりです。特に「7年以内に見直し」と「30年以上・大規模修繕2回以上」。この2つは、書類を揃えるだけでは通りません。中身のある調査・診断を経た計画が必要になります。

補足として、令和9年4月1日から認定基準の見直しと制度の拡充が予定されています。分譲時に分譲事業者が認定を申請できるようになる方向で、修繕積立金の設定に関する考え方も整理される見込みです。令和8年9月時点では施行前ですので、いま申請される場合は現行基準で進めることになります。


認定の3つの経済効果と、墨田区の上乗せ支援

ここからが、理事会で数字として説明しやすいパートです。

① マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)

一定の要件を満たすマンションが長寿命化工事(大規模修繕工事)を実施すると、翌年度の固定資産税(建物部分)が減額されます。減額の割合は6分の1から2分の1の範囲で、東京23区の場合は都の条例で定められた割合が適用されます(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制」)。

主な要件は、築20年以上・総戸数10戸以上で、管理計画認定を受けている(または助言・指導を受けて長期修繕計画を適切に見直した)こと、そして過去に1回以上の長寿命化工事を実施済みであることです。

適用期間について申し上げます。当初は令和7年3月31日までの措置でしたが、令和7年度の税制改正で2年間延長されました。令和8年9月時点では現行制度として動いていますが、期限のある措置ですので、工事のスケジュールを組む際は税制の適用期限を住宅課および都税事務所に確認したうえで判断されることをおすすめします。

私がこれを申し上げるのは、工事完了のタイミングが1年ずれただけで適用の可否が変わるからです。大規模修繕は着工までに1年から2年かかります。逆算が要ります。

② フラット35の金利引下げ

管理計画認定を受けたマンションは、住宅金融支援機構の【フラット35】維持保全型の対象となり、借入金利が一定期間引き下げられます(出典:住宅金融支援機構)。

これは管理組合ではなく、区分所有者が住戸を購入・売却するときに効いてくるメリットです。「認定を取ると売りやすくなる」というのは、こういう仕組みに支えられています。

③ マンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ+墨田区の保証料補助

住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資は、管理組合が大規模修繕の資金を借りる際の代表的な選択肢です。管理計画認定を受けていると、金利引下げの対象になります(出典:住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」)。

そしてここに墨田区が上乗せしています。

【令和8年4月1日開始】分譲マンションリフォーム融資債務保証料補助制度

項目 内容
対象 機構の共用部分リフォーム融資を受け、機構が承認する保証機関に債務保証を委託した管理組合
保証機関 (公財)マンション管理センター、(一財)住宅改良開発公社(令和8年4月現在)
前提条件 適正管理条例に基づく管理状況届出書を提出していること
補助額 支払った債務保証料の全額(上限50万円)
申請期限 債務保証委託契約の契約日の翌日から起算して90日以内
併用 東京都マンション改良工事助成制度と併用可

(出典:墨田区「分譲マンションリフォーム融資債務保証料補助制度」、更新日:2026年9月1日)

保証料の全額が戻ってくる制度で、上限が50万円。令和8年度から始まった新しい制度です。申請期限が「契約日の翌日から90日以内」と短い点だけ、強く意識してください。工事の最中に忘れてしまいがちなタイミングです。

④ 分譲マンション計画修繕調査支援制度

認定の準備そのものに使える補助もあります。

項目 内容
補助対象 防水・外壁・鉄部・給排水設備の調査、長期修繕計画の策定または改定、改修計画の作成 など
補助額 調査に要した費用(税込)の1/3以内、上限50万円
主な要件 築5年以上/管理状況届出書を提出済み/総会で調査を決議/過去3年以内に本制度の補助を受けていない
年度の縛り 申請と同一年度内(2月末まで)に調査完了・完了報告

(出典:墨田区「分譲マンション計画修繕調査支援制度」)

認定基準の「7年以内の長期修繕計画見直し」に引っかかっている管理組合にとって、これは実質的な認定準備補助です。私はこの2つを、ワンセットで提案するようにしています。調査費の3分の1が戻ってきて、その成果物が認定申請の中核書類になるからです。

年度単位の事業で、2月末までに完了報告という締切があります。9月に動き出すなら、まだ十分に間に合う時期です。

【重要】受付が終了した制度

正直に申し上げます。従来からあった「分譲マンションリフォームローン償還助成」は、令和8年8月31日で受付を終了しました(出典:墨田区「分譲マンションリフォームローン償還助成」)。

古い資料やまとめサイトを見て「利子補給が使える」と計画を立てていた管理組合があれば、ここは組み替えが要ります。令和8年度以降は、債務保証料補助のほうが入口です。私が一番悔しい思いをするのは、こういう情報の更新漏れで、使えたはずのお金を取り逃がす管理組合を見たときです。


墨田区の建物事情と、工法選びの話

制度の話ばかりしてきましたので、現場屋としての話も少しだけさせてください。

墨田区は、私の感覚では東京23区の中でもマンションの「顔つき」の幅が広い区です。

錦糸町・押上・曳舟には、東京スカイツリーの開業以降に建った高層のマンションがある。一方で、京島・八広・立花のあたりには、木造密集市街地に混じるように建つ中小規模の分譲マンションがあります。そして両国・緑・石原には、昭和40年代から50年代の旧耐震マンションが少なくありません。

足場が組めるかどうかが、まったく違うのです。

隣地との間に数十センチしかない敷地。前面道路が狭くて資材搬入に苦労する現場。そういう物件では、通常の仮設足場を前提に見積もりを組むと、仮設費だけで工事費の2割から3割を食われます。近隣への越境承諾に何か月もかかることもあります。

こういうときに検討していただきたいのが、ロープアクセス工法(無足場工法)です。産業用ロープで職人が直接壁面に降りて施工する方法で、足場を架けずに外壁補修や塗装、シーリング打ち替えができます。仮設費を圧縮でき、工期も短くなり、何より足場を伝った不法侵入のリスクや、洗濯物が干せない期間を減らせる。居住者の生活への影響がまるで違います。

もちろん万能ではありません。全面打診や大量のタイル張り替えが必要な建物は、足場を組んだほうが結果的に安く確実です。だから私たちは、部位ごとに足場とロープアクセスを使い分けるハイブリッド工法もご提案しています。北側の狭い面だけロープアクセス、南面は足場、という組み方です。

工法の詳しい話は、ロープアクセス工法のご紹介と、専門サイトのロープアクセス工法とは(rope-access-method.com)にまとめてあります。あわせて無足場工法のメリットと適用条件もご覧いただくと、ご自身のマンションで使えるかどうかの見当がつくはずです。

認定との関係でいえば、工法の選択は「修繕積立金の額が計画期間内で足りるか」に直結します。認定基準の4)に出てきた条件です。仮設費を圧縮できれば、同じ積立金でも計画が成り立つ。ここは制度と現場がつながっているポイントです。大規模修繕全体の考え方は大規模修繕工事のご紹介にまとめています。


逆算スケジュール——総会決議から認定交付まで

墨田区で令和8年度中に認定まで持っていく場合の、現実的な時間軸をお示しします。

時期 やること
第0段階 住宅課へ電話し、管理状況届出書の提出状況を確認(未提出なら提出)
第1段階(1〜2か月) 理事会で現状把握。管理規約・総会議事録・長期修繕計画・名簿・修繕履歴の有無をチェックリストで棚卸し
第2段階(1か月) 不足があれば、計画修繕調査支援制度の補助申請(調査前の申請が必要)
第3段階(2〜4か月) 建物調査・診断の実施、長期修繕計画の見直し、修繕積立金の額の再算定
第4段階(総会) 長期修繕計画の総会承認、必要なら管理規約の改正、認定申請の決議
第5段階(1〜2か月) マンション管理士に依頼して事前確認を受け、事前確認適合証を取得
第6段階 管理計画認定手続支援システムから墨田区へ申請(区手数料は無料)
第7段階 区の審査を経て認定通知。有効期間は5年

私がいつも理事長さまにお伝えしているのは、「総会が律速になります」ということです。

長期修繕計画の承認は、理事会だけでは決められません。年1回の通常総会に議案として乗せるのが基本です。ということは、総会の3か月前には調査・診断を終えていないと間に合わない。逆算すると、次の総会に乗せたいなら、動き出すのは今です。

そして調査費の補助を使うなら、調査を始める前に補助申請が要ります。この順番を間違えて「もう調査してしまったので補助が使えない」となった管理組合を、私は何度か見ています。


まとめ——墨田区の管理組合が今週動けること3点

長くなりましたので、要点を絞ります。

1. 住宅課に電話して、管理状況届出書の提出状況を確認する

電話は03-5608-6215、墨田区役所9階の住宅課計画担当です。未提出なら、オンラインフォームまたはメール(juutaku@city.sumida.lg.jp)で提出できます。これが墨田区のすべての支援制度の入口カードです。理事長さまお一人で、今週中に片づけられます。

2. 長期修繕計画の「最終見直し日」を調べる

認定基準は「7年以内の見直し」です。手元の長期修繕計画の表紙を開いて、日付を見てください。7年を超えていたら、計画修繕調査支援制度(1/3・上限50万円)の対象になる可能性があります。年度内の完了報告が条件ですので、9月のいまが動き出しのぎりぎり手前です。

3. 大規模修繕を検討中なら、保証料補助の申請期限をカレンダーに入れる

令和8年4月に始まった債務保証料補助は、全額・上限50万円と手厚い一方、契約日の翌日から90日以内という短い期限があります。共用部分リフォーム融資を使う予定があるなら、保証委託契約の日付を理事会の議事録に残しておくことをおすすめします。


墨田区は、手数料を取らず、条例で土台を作り、補助で背中を押す——制度の作り方が一貫している区だと私は感じています。だからこそ、届出という最初の一歩を踏み外さないことが効いてきます。

うちのマンションは足場が組めるのか、ロープアクセスで何がどこまでできるのか。そういう工法の相談だけでも構いません。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームから、遠慮なくお声がけください。

次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


出典・参考資料


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月15日時点で公表されている墨田区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず墨田区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

免責:本記事は情報提供を目的としたものであり、個別の申請の可否や税額の判断を保証するものではありません。税制の適用については、税理士および所管の都税事務所にご確認ください。


株式会社明誠|東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事/足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法

ロープアクセス工法の詳細はこちら → https://rope-access-method.com/

【2026年9月】マンションストック長寿命化等モデル事業 第3回募集は9月18日まで|第2回採択8件が示す「通る提案」の共通点と、管理組合・オーナーの動き方

この記事で答える質問:国のマンション長寿命化モデル事業は、いくら・誰に・何に対して出るのか。そして今週、管理組合とオーナーは何をすればよいのか?

2026年9月15日 更新/執筆:株式会社明誠 代表取締役 本間幸紘(マンション大規模修繕・ロープアクセス工法 実務20年以上)

2026年9月14日、国土交通省が「マンションストック長寿命化等モデル事業」の令和8年度(第2回)採択プロジェクトを公表しました。11者11件の応募に対し、8者8件が採択されています(出典:国土交通省「マンションストック長寿命化等モデル事業」の令和8年度第2回採択プロジェクトを決定しました!、令和8年9月14日)。

そして同じ発表のなかに、見落とされがちな一行があります。

令和8年度の第3回の応募期間は、下記のとおりです。・第3回:令和8年9月14日(月)~令和8年9月18日(金)

募集期間は5日間です。この記事を朝にお読みの方にとっては、実質あと数日ということになります。

正直に申し上げます。今週から検討を始めて第3回に間に合う管理組合は、ほぼありません。それでもこの記事を書くのは、この制度の「採択された8件」を読むと、国がいまマンション再生の何にお金を出そうとしているのかが、驚くほどはっきり見えるからです。そしてそれは、第4回以降を狙う組合にも、モデル事業とは無縁の賃貸オーナーにも、そのまま使える情報です。


結論:3つだけ先に申し上げます

長い記事になるので、核心を先に置きます。

  1. この補助金は、管理組合が直接申請するものではありません。 補助事業者はコンサル・設計事務所・管理会社・施工業者です。つまりパートナー選びが申請の前提になります。ここを誤解している理事会が、私の経験上とても多いです。
  2. 採択8件のうち7件は1960〜70年代築、つまり築50年前後の物件でした。 一方で「まだ築30年」のマンションがこの制度を狙うのは現実的ではありません。狙うべき制度が別にあります(後述)。
  3. 第3回に間に合わなくても、今週やれることがあります。 計画支援の申請書に必ず求められる「これまでの取組経緯」は、一夜漬けで作れません。逆に言えば、今日から記録を残し始めた組合は、半年後に強くなります。

何が起きたのか|9月14日に「結果公表」と「次の募集開始」が同時に出た

まず事実関係を整理します。

項目 内容
公表日 令和8年9月14日(月)
公表主体 国土交通省 住宅局 参事官(マンション・賃貸住宅担当)付
対象 令和8年度 第2回 マンションストック長寿命化等モデル事業
第2回の提案受付期間 令和8年6月22日~6月26日
応募 11者11件
採択 8者8件
第3回募集 令和8年9月14日(月)~9月18日(金)

(出典:同報道発表資料)

内訳はこうなっています。

タイプ/支援区分 提案数 採択数
先導的再生モデルタイプ・計画支援 8件 5件
先導的再生モデルタイプ・工事支援 3件 3件
管理適正化モデルタイプ・計画支援 0件 0件
管理適正化モデルタイプ・改修工事支援 0件 0件

ここで最初に目が留まるのは、管理適正化モデルタイプの応募がゼロだったという事実です。制度としては用意されているのに、使われていない。この意味は、記事の後半でもう一度取り上げます。


この事業は、いくら・誰に・何に出るのか

制度の骨格を、国土交通省の資料どおりに整理します(出典:国土交通省別添1:マンションストック長寿命化等モデル事業の概要(PDF))。

区分 補助事業者 補助率・上限
計画支援(事業前の立ち上げ準備段階) マンション再生コンサル、設計事務所、管理会社 等 定額。原則上限500万円/年(最大3年)。評価委員会が必要と認める場合は1事業あたり1,500万円を上限として、500万円/年を超える補助も可
工事支援(長寿命化の改修工事等の実施段階) 施工業者、買取再販業者 等 1/3

タイプは2つあります。

①先導的再生モデルタイプ
先導性の高い長寿命化等に向けた事業を実現するための調査・検討(計画支援)と、その改修等(工事支援)を支援します。

②管理適正化モデルタイプ
管理水準の低いマンションが地方公共団体と連携して管理適正化を図るための調査・検討(計画支援)と、大規模修繕工事等の修繕(工事支援)を支援します。

さらに募集枠が2つに分かれています。

  • 優先募集枠(政策上重要なポイントの取組を高く評価)……自主建替えの検討/超高層マンションにおける給排水管設備改修や防災設備改修等の設備改修の検討/団地型マンションにおける敷地分割事業の検討/非現地建替えの検討 など
  • 一般募集枠(独自性などの観点で総合的に優れた取組を評価)

評価のポイントとして国が挙げているのは、長寿命化改修では「構造躯体の長寿命化」「ライフライン(給排水、電気、ガス)の長寿命化」、建替えでは「制約が多いマンションにおける建替え」「複合用途マンションの建替え」などです。

ここが実務上の分かれ目:補助を受けるのは「事業者」

もう一度書きます。補助事業者は、管理組合ではありません。

計画支援ならマンション再生コンサル・設計事務所・管理会社、工事支援なら施工業者や買取再販業者が補助事業者になります。実際、第2回の採択8件の提案者は、株式会社日建設計、ミサワホーム株式会社、株式会社長谷工コーポレーション、一般財団法人首都圏不燃建築公社、日鉄興和不動産株式会社、株式会社コスモスイニシア、住友不動産株式会社、阪急阪神不動産株式会社——すべて事業者です。

これは制度の欠陥ではなく、設計思想です。調査・検討にはプロの人件費がかかる。そこに定額補助を入れることで、管理組合が「検討するだけでお金がかかる」という最初の壁を越えられるようにしているわけです。

だからこそ、理事会がまずやるべきなのは申請書を探すことではなく、この制度を使った実績のあるパートナーを見つけることになります。


採択8件を読み解く|「通る提案」に共通する4つの条件

ここからが本題です。国土交通省が公表した採択プロジェクト一覧(出典:別添2:採択プロジェクト一覧(PDF))から、8件を一覧にします。

No マンション名 所在地 築年 規模 提案の核
1 多摩川住宅ト号棟 東京都 1971年 12棟326戸 自主建替えを前提に、建替え・保留地・敷地分割・既存住棟改修を組み合わせた再生検討
2 かみさく住宅1号棟 神奈川県 1965年 24戸 建物・敷地の一括売却に向けた合意形成
3 キャッスル共進 東京都 1971年 住宅156戸+店舗18区画 耐震・外皮性能向上、設備配管更新、バリアフリー化の一棟リノベーション検討
4 杉並コーポラス 東京都 1971年 41戸 管理規約・長期修繕計画のない自主管理マンションの再生手法比較
5 亀戸2丁目団地 東京都 1969年 4棟620戸 高台避難デッキ整備を核とした浸水対応型まちづくりと団地再生
6 鷺沼コーナス 神奈川県 1976年 20戸 保留床が少ない小規模マンションの建替え(工事支援)
7 烏山北住宅 東京都 1965年 9棟300戸 一団地区域内の団地型マンション建替え(工事支援)
8 阪急茨木駅前ソシオ 大阪府 1969年 2棟205戸 駅前の用途複合マンション2棟の一体建替え(工事支援)

この8件を並べて、私が読み取った共通点は4つです。

条件1:築50年前後。つまり「大規模修繕で延命する」段階を過ぎている

8件のうち7件が1965年〜1971年築です。最も新しい鷺沼コーナスでも1976年築。この制度は、次の大規模修繕をどうするかという段階のマンションを主な対象にしていません。 建替え・売却・一棟リノベーションといった「再生」の段階に入った物件が対象です。

築30年前後で修繕積立金の不足に悩んでいる組合が、この制度を第一候補に置くのは無理があります。そういう組合には別の道があります(後述します)。

条件2:「これまでの取組経緯」が長い

ここが最も重要です。評価の観点として国が明記しているのは、まず「対象マンションの現状・これまでの取組経緯を踏まえ、提案事業が、対象マンションの再生において適切な検討であるか」です。

採択案件の記述を拾うと、こうなります。

  • 多摩川住宅ト号棟:2015年の建替え推進決議以降、建替えを前提とした再生検討を進めている
  • 亀戸2丁目団地:2015年より再生検討を行ってきた
  • 烏山北住宅:1998年に建物委員会を発足、2005年から4者協議会を設立し、一団地認定の取扱い等について計260回の協議を実施
  • 鷺沼コーナス:令和5年度第2回の計画支援に採択され、コーポラティブ方式による建替えを検討。その後、建築費高騰で方式を再検証
  • 阪急茨木駅前ソシオ:令和6年度第1回の計画支援に採択され、行政協議を経て地区計画決定に至っている

10年、20年という単位の蓄積が評価されています。 そして工事支援で採択された3件のうち2件は、過去に計画支援で採択された案件の続きです。つまりこの制度は、計画支援→工事支援と2段階で伴走する設計になっている。一発勝負ではありません。

条件3:「実現可能性」を数字と仕組みで説明している

もう一つの評価観点は「工事の目的、予算、工期、技術的な課題などを総合的に判断し、工事の実現が見込めるか」です。

採択案件が具体的に何を書いているか。

  • 多摩川住宅ト号棟:工事費高騰を受けて建替えの事業規模を縮小し、区分所有者の費用負担を軽減したスキームを構築
  • 鷺沼コーナス:事業費が今後さらに上昇した場合には、追加負担額を専有面積に応じて按分する仕組みを用意。従前の専有面積の80%相当部分までは権利床単価を適用し、超える面積は保留床単価で取得できる仕組み
  • 亀戸2丁目団地:「浸水対応型まちづくり」に即した高台防災への地域貢献により、日影規制・高さ制限の解除と指定容積率の割増(300%→325%)を伴う都市計画変更を行政と協議中

「頑張ります」ではなく、「工事費が上がったときにどう配分するか」まで書いてある。 ここが通る提案と通らない提案の差だと、私は読みました。

条件4:調査・診断の中身が具体的

計画支援で採択されたキャッスル共進の記述には、こうあります。「アスベスト調査、電気設備・給水管劣化診断、環境性能測定調査、水質検査・既存住宅状況調査等を行う」。

何を調べるかが具体的に書かれている提案が採択されています。 逆に言えば、「まず調査します」だけでは足りない。これは第4回以降を狙う組合にとって、かなり実務的なヒントです。


築25〜40年の「まだ建替えではない」マンションは、何を狙うべきか

ここまで読んで、「うちは築30年だから関係ないのか」と思われた方へ。関係ないわけではありません。狙う制度が違うだけです。

私が理事長さまにお伝えしている順番は、この3つです。

① マンション管理計画認定制度を取る

自治体がマンションの管理計画を認定する、マンション管理適正化法に基づく制度です(マンション管理適正化推進計画を作成した自治体に限ります)。認定を取ると、住宅金融支援機構の【フラット35】やマンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ、マンションすまい・る債の利率上乗せといったメリットがあります(出典:国土交通省マンション長寿命化促進税制リーフレット(PDF)、発行2025年4月)。

認定基準の中身は、正直なところ「きちんとした管理組合なら満たしているはず」の項目が並びます。総会を年1回以上開いている、管理費と修繕積立金を区分経理している、長期修繕計画が7年以内に作成または見直しされている、計画期間が30年以上で大規模修繕が2回以上含まれている、など。

なお、この制度は2027年4月1日から対象が拡充されます。新築時の分譲事業者による認定申請の導入と、管理計画認定マンションの表示制度の創設が施行されます(出典:国土交通省マンション管理・再生の円滑化等のための改正法の一部の施行期日を定める政令等を閣議決定、令和8年5月15日)。

② マンション長寿命化促進税制を視野に入れる

管理計画認定マンションで、令和3年9月1日以降に修繕積立金の額を認定基準まで引き上げ、長寿命化工事(外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事)を完了させると、工事完了翌年度の建物部分の固定資産税額が1/6〜1/2の範囲内で減額されます。減額割合は自治体の条例で決まります。

主な要件は、築20年以上、総戸数10戸以上、過去に長寿命化工事を1度以上実施していること、そして工事完了が令和5年4月1日〜令和9年3月31日の間であること(出典:国土交通省マンション長寿命化促進税制の要件(PDF))。

税制は毎年度見直されます。工事の着工時期を判断する前に、必ず国土交通省のマンション税制ページと、お住まいの市町村の窓口で最新の取扱いをご確認ください。

注意点を1つ。 この税制は「工事完了から3か月以内の申告」が要件です。工事が終わってから調べ始めると間に合わないことがあります。私は、工事の契約時点でこの話を理事会に出すようにしています。

③ 建築物の省エネ改修の支援制度を並行して調べる

国土交通省は「既存建築物省エネ化推進事業」の提案募集を令和8年6月19日に開始しています(出典:国土交通省「建築物の省エネ改修工事」の提案募集を開始します!)。外壁の断熱改修や窓の改修は、大規模修繕と工程を合わせられる場合があります。

ただし、前にも書いたとおり、補助金を前提に工事計画を組まないでください。 採択されなくても実行できる計画を作ったうえで、補助が取れたら積立金の温存に回す。この順番のほうが理事会の議論は安定します。


現場の視点|「調査費が高くて検討が止まる」をどう解くか

ここからは、20年近く現場をやってきた側の話をします。

計画支援であれ自主的な検討であれ、再生の議論は劣化診断から始まります。そして私が一番悔しい思いをするのは、「調査に足場を架けると数百万円かかる」と言われて、そこで検討が止まってしまう管理組合を見たときです。

外壁の打診調査、タイルの浮き確認、シーリングの劣化確認、写真記録——これらは建物全体に足場を架けなくても実施できる場合があります。ロープアクセス工法(無足場工法:屋上から産業用ロープで降下して施工・調査する方法)であれば、仮設費を抑えて外壁の状態を面で確認できます。

ロープアクセス工法の安全基準や適用範囲の一般的な解説は、姉妹サイトロープアクセスドットコムにまとめています。

工法の使い分けを整理しておきます。

工法 内容 向いている場面 留意点
通常足場工法 建物全周に枠組足場を架設 全面的な塗装・タイル改修、複雑形状、低中層 仮設費が大きい。駐輪場・通路の占用期間が長い
ロープアクセス工法(無足場工法) 屋上から産業用ロープで降下して施工 高層、敷地に余裕がない、部分補修、調査・診断 施工数量が多い場合は工期の見極めが必要。有資格者の確保が前提
ハイブリッド工法 部位ごとに足場とロープを使い分け 大規模・複雑形状で総額最適化を図りたい場合 工程管理の設計が重要

誤解のないように書きますが、ロープアクセスは「安いから選ぶ」ものではありません。 足場を架けにくい形状である、住戸のバルコニーを長期間ふさぎたくない、駐車場を潰したくない——そうした条件のときに、選択肢として土俵に乗せる価値がある、という話です。工法ごとの適性はロープアクセス工法のご紹介でも整理しています。

そしてもう一点。採択されたキャッスル共進の提案に「アスベスト調査」が含まれていたことに、私は注目しました。1971年築の建物であれば当然の項目です。再生の検討に入る前に、アスベストの有無を把握しているかどうかで、後の予算の精度がまったく変わります。 これは補助の有無に関係なく、築年の古い建物では避けて通れない論点です。


賃貸マンション・ビルオーナーの方へ|この制度は分譲マンション向けです

ここまで分譲マンションの話をしてきました。収益不動産をお持ちのオーナーさまにとって、このモデル事業は直接の対象ではありません。 区分所有のマンションが前提の制度です。

では無関係かというと、そうではないと私は考えています。理由は2つあります。

第一に、この制度は「国が何にお金を出すか」の意思表示です。 構造躯体の長寿命化、ライフライン(給排水・電気・ガス)の長寿命化、超高層における給排水管設備改修や防災設備改修。国がいま先導的と呼んでいるのは、外装をきれいにすることではなく、建物を長く使うための中身の更新です。賃貸物件の修繕計画を組むときの優先順位づけに、そのまま応用できます。

第二に、周辺の分譲マンションが再生に動くと、エリアの相場が動きます。 亀戸2丁目団地の事例のように、容積率の割増を伴う都市計画変更まで踏み込む案件が出てくると、周辺の土地利用の前提が変わります。保有物件の近くでこの種のプロジェクトが動いていないかは、オーナーとして押さえておく価値があります。

賃貸物件で使える制度としては、省エネ改修関係の支援や、自治体独自の助成制度があります。年度ごとに内容が変わるため、この記事で数字を断定することは避けます。大規模修繕の進め方全体については大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。


応募ゼロだった「管理適正化モデルタイプ」が示すもの

最後に、第2回で応募がゼロだった管理適正化モデルタイプについて触れておきます。

このタイプは、管理水準の低いマンションが地方公共団体と連携して管理適正化を図るための支援です。計画支援も改修工事支援も、提案数0件・採択数0件でした。

理由を断定することはできません。ただ、構造的に難しい点は想像がつきます。管理水準が低いマンションは、そもそも管理組合が機能していないことが多い。自治体との連携を前提にした提案を組み立てる主体が、内部にいないのです。

第2回で採択された杉並コーポラスは、まさにこの層に近い物件でした。「管理組合、管理規約、長期修繕計画がなく、修繕積立金の定めがない」「借地権マンションであり、期限も迫っている」「容積率既存不適格状態」。それでも採択されたのは、一般財団法人首都圏不燃建築公社という外部の主体が提案者として入ったからです。

ここに、この制度を使ううえでの最大の教訓があると私は思います。動き出せない組合ほど、外部の伴走者が必要である。 そして伴走者を探すこと自体は、総会の決議を待たずに、理事会レベルで今日から始められます。


今週やること|第4回以降に向けたチェックリスト

第3回(9月18日締切)に間に合わない前提で、今日から着手できることを挙げます。

  1. 管理組合の検討経緯を年表にする。 いつ何を議論し、何を決め、何が決まらなかったか。採択案件が10年〜20年の経緯を書けているのは、記録があるからです。
  2. 直近の建築基準法第12条定期調査報告書を引っ張り出す。 要是正箇所がそのまま検討の出発点になります。すでに費用を払って取得している一次情報です。
  3. 長期修繕計画の作成・見直し時期を確認する。 管理計画認定の基準は「7年以内に作成又は見直し」です。ここが切れていると、認定も税制も届きません。
  4. 修繕積立金の月額㎡単価を計算する。 管理計画の認定基準では、20階未満・延床5,000㎡未満で235円/㎡・月以上などの目安が示されています(機械式駐車場分を除く)。
  5. アスベストの調査記録があるか確認する。 築年の古い建物では、これがないと予算の精度が出ません。
  6. 相談先を1社決める。 モデル事業の実績がある設計事務所・コンサル・管理会社・施工会社。「申請できるか」ではなく「うちの状況で何が現実的か」を聞く相談です。

このうち1〜5は、外部に費用を払わずに理事会でできます。6を急いで、1〜5を飛ばすと、話が噛み合いません。


よくある質問(FAQ)

Q1. マンションストック長寿命化等モデル事業の第3回募集は、いつまでですか?
A. 令和8年9月14日(月)から9月18日(金)までです(出典:国土交通省令和8年度第2回採択プロジェクト決定、令和8年9月14日公表)。

Q2. 補助金はいくら出ますか?
A. 計画支援は定額で、原則上限500万円/年(最大3年)。評価委員会が必要と認める場合は1事業あたり1,500万円を上限として、500万円/年を超える補助も可能です。工事支援は補助率1/3です(出典:別添1(PDF))。

Q3. 管理組合が自分で申請できますか?
A. 補助事業者は、計画支援がマンション再生コンサル・設計事務所・管理会社等、工事支援が施工業者・買取再販業者等とされています。管理組合が単独で補助を受ける制度ではありません。

Q4. 築30年のマンションでも採択されますか?
A. 制度上の築年要件が公表されているわけではありませんが、令和8年度第2回の採択8件は7件が1965〜1971年築でした。築30年前後であれば、マンション管理計画認定制度とマンション長寿命化促進税制を先に検討されるほうが現実的だと考えます。

Q5. 賃貸マンションのオーナーでも使えますか?
A. このモデル事業は区分所有のマンション(分譲マンション)を前提とした制度です。賃貸物件については、省エネ改修関係の支援制度や自治体独自の助成制度をご確認ください。

Q6. 足場を架けずに劣化診断だけ先に行うことはできますか?
A. 部位と数量によっては可能です。ロープアクセス工法(無足場工法)は屋上から産業用ロープで降下する方法で、外壁の打診調査や写真記録などの調査・診断に適性があります。詳しくはロープアクセスドットコムをご参照ください。


この記事のポイントまとめ

  • 国交省が2026年9月14日、長寿命化モデル事業の令和8年度第2回採択(11件中8件)を公表
  • 同日に第3回募集が開始、締切は令和8年9月18日(金)
  • 計画支援は定額・原則上限500万円/年(最大3年)、工事支援は補助率1/3
  • 補助事業者はコンサル・設計事務所・管理会社・施工業者。管理組合の単独申請ではない
  • 採択8件のうち7件が1965〜1971年築。再生段階の物件が主な対象
  • 評価されたのは「10年単位の取組経緯」と「費用変動時の負担配分まで書いた実現可能性」
  • 築25〜40年の組合は、管理計画認定と長寿命化促進税制を先に狙うほうが現実的
  • 管理適正化モデルタイプは応募ゼロ。外部の伴走者がいるかどうかが分かれ目

出典・参考資料

※補助制度・税制は年度ごとに見直されます。ご検討の際は、必ず当該年度の公式ページおよび自治体窓口で最新情報をご確認ください。


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開しています。

最終更新:2026年9月15日


採択された8件の提案概要を読んでいて、私が一番長く目を止めたのは、烏山北住宅の「計260回の協議」という一行でした。

260回です。1998年に建物委員会が発足してから、28年。単純に割っても年に9回以上、関係者が顔を突き合わせてきた計算になります。補助金の話をするとき、私たちはつい金額と締切に目がいきます。けれど国が評価しているのは、金額ではなく、この260回のほうなのだと思います。

今週の締切には、ほとんどの組合が間に合いません。それでいいのです。261回目を始めることのほうが、はるかに重い。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会前の論点整理だけでも、お力になれることがあります(お問合せフォーム)。

これは私が現場で20年以上見てきた、嘘偽りのない感想です。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

台東区の管理組合が無料で使える相談・派遣7選|相談員派遣は年4回、よろず相談室は45分×年6回

台東区の管理組合が無料で使える相談・派遣7選|相談員派遣は年4回、よろず相談室は45分×年6回

2026年9月14日 更新

「うちは古いから、相談したところで何も変わらないと思って」

浅草橋のマンションで、理事長さまからそう言われたことがあります。築40年を超える中規模マンション。理事は輪番、修繕積立金は不足気味、管理会社との関係もぎくしゃくしていた。それでも「区に相談しても仕方ない」と思っていらっしゃいました。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンションやビルの外壁の仕事をしてきました。足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、両方の現場を経験してきた人間です。

そのとき私がお伝えしたのは、「台東区の相談員派遣は、弁護士も呼べますよ」ということでした。

理事長さまは驚いていました。マンション管理士か一級建築士だと思っていたら、令和2年度から東京弁護士会との協定で、弁護士も相談員に加わっている。管理費滞納の督促、規約解釈、住民間の合意形成など、法的なアドバイスを無料で1回2時間、年に4回まで、理事会に呼べる。しかも区役所の「マンションよろず相談室」では、45分の個別相談を弁護士か一級建築士から受けることができ、令和8年度は年に6回開催されている。

下町ならではの、築古・小規模・輪番制の管理組合が多い区で、これだけの支援メニューが揃っている区は多くありません。使わない理由がありません。

今日は、台東区のマンション管理組合とオーナーさまが、お金をかけずに使える相談・派遣・連絡会を7つ、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。


結論:台東区で無料で使える相談・派遣は7つある

先に一覧でお示しします。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用 申込先
1 マンション管理・修繕相談員派遣制度 弁護士/マンション管理士/一級建築士 無料(年度4回・1回2時間) 住宅課マンション施策担当 03-5246-9028
2 マンションよろず相談室 弁護士 or 一級建築士 無料(1組45分・年6回開催) 住宅課マンション施策担当 03-5246-9028
3 マンション理事長等連絡会 理事長同士+区職員 無料(会員登録制) 住宅課マンション施策担当 03-5246-9028
4 マンショングループ相談会 専門家+複数組合 無料 住宅課マンション施策担当 03-5246-9028
5 台東区消費生活センター 消費生活相談員 無料(電話・来所) 03-5836-7511
6 東京都 マンション管理士無料派遣 マンション管理士 無料(防災・認知症対応 各2回まで) 東京都マンション管理士会
7 (公財)マンション管理センター 電話相談 マンション管理士等 無料(15分程度) 03-3222-1517 ほか

これに加えて、マンション計画修繕調査費助成、共用部分バリアフリー化支援助成、耐震化助成、耐震改修利子補給、マンションアドバイザー利用助成といった費用助成メニューも台東区にはあります。こちらは無料ではないので7つの外に置きますが、後半で触れます。

ここからが本題です。


1. マンション管理・修繕相談員派遣制度:台東区の柱

台東区の分譲マンション支援のなかで、私が「まず理事会で使ってください」とお勧めしているのがこの制度です。

費用と回数

台東区の公式ページには、次のように書かれています。

項目 内容
派遣先 マンションの管理組合等(理事会・勉強会等)
相談員 弁護士/マンション管理士/一級建築士のいずれか
時間 1回あたり2時間まで
回数 同一マンションで年4回まで
費用 無料(資料代・会場費は申込者負担)
受付締切 年度予算額到達時、または2月末日

(出典:台東区「マンション管理・修繕相談員派遣制度」/更新日 2026年4月1日)

台東区が特徴的なのは、令和2年度から東京弁護士会との協定を締結し、相談員に弁護士が加わっている点です。管理費滞納への対応、管理組合の設立、総会の運営指導、騒音・悪臭問題を発生させている区分所有者への対応など、法的なアドバイスを受けたい場合に、無料で弁護士を理事会へ呼べる区は多くありません。

私が現場で見てきた限り、管理費・修繕積立金の滞納は大規模修繕の資金計画を最も揺らす要因です。滞納額が積立金総額の数パーセントでも、工事の入札直前に「予定していた予算が組めない」という話になります。弁護士相談で督促の手順を確認しておくことは、工事の準備そのものだと私は考えています。

相談できる内容

台東区が示している業務範囲は次のとおりです。

  • 総会・理事会の運営、管理規約に関すること
  • 住人の騒音・生活マナーに関すること
  • 修繕積立金・管理費・滞納に関すること
  • 大規模修繕の進め方、建物・設備の不具合等に関すること
  • 長期修繕計画に関すること
  • 管理会社との関係、管理委託契約・瑕疵担保責任に関すること
  • マンション管理計画認定制度に関すること

「大規模修繕」「長期修繕計画」「建物・設備の不具合」が明記されている点に注目してください。修繕委員会を立ち上げる段階の理事会で、進め方の全体像を専門家から共有してもらう用途に、この派遣は適しています。

できないことも明記されている

台東区は制約も丁寧に書いています。

  • 業者の紹介、耐震・修繕等の見積作成業務
  • 管理規約の作成等の書類作成業務
  • 建物診断業務、測定器による精密測定
  • 管理組合や区分所有者間の紛争の解決や権利調整
  • 管理会社・業者等に対して相談員が直接意見等を伝えること
  • マンションの建て替えに関する具体的な相談
  • 総会や業者選定等の場への立ち会い依頼

「相談員が管理会社に直接ものを言う」ことはできません。ここを誤解して「区の相談員から管理会社に言ってほしい」と申し込んでも、対応の対象外です。派遣は理事会に助言を届ける制度であり、当事者間の交渉の代行ではない。私が理事長さまに毎回お伝えしている線引きです。

耐震化に関する相談は、別枠の「耐震アドバイザー派遣」を使う流れになっています。

申請の手順

台東区は、事前相談を前置きにしている点が他区と少し違います。

項目 内容
事前相談 電話または窓口で必須(03-5246-9028)
申請の時期 利用したい日の概ね3週間前まで
提出書類(分譲) 申請書+理事長名がわかる資料(総会議事録のコピー等)
提出書類(賃貸) 申請書+前年度の住民税納税証明書
押印 理事長の私印(または理事長印・管理者印)
派遣希望日時 第3候補まで記入(別日で)
開始時間帯 原則、午前9時頃〜午後7時頃
弁護士相談 相談員の調整に時間がかかるため、余裕を持って申請

事前相談が必要な理由は、相談内容によって派遣する専門家(弁護士/管理士/建築士)が変わるためです。「なんとなく相談したい」ではなく、論点をあらかじめ整理して電話することで、適切な相談員につながります。

もう1つの前提が「管理組合の登録」です。台東区はマンション管理組合登録制度を持っており、区の派遣制度を使うには、この登録制度に登録している(または登録すること)が申込対象の条件になっています。まだ登録していない管理組合は、派遣申請と同時に登録の手続きを進める段取りです。


2. マンションよろず相談室:区役所で45分の個別相談

派遣とは別に、区役所5階で受けられる個別相談があります。「理事会に呼ぶ前に、理事長さま個人として整理しておきたい」という段階で使う枠です。

令和8年度の年間スケジュール

台東区の公式ページ(更新日 2026年9月14日)には、令和8年度のマンションよろず相談室の予定が明記されています。

開催日 会場 募集状況
令和8年4月23日(木) 住宅課(5階) 実施済み
令和8年6月20日(土) 住宅課(5階) 実施済み
令和8年9月17日(木) 住宅課(5階) 募集終了
令和8年11月28日(土) 住宅課(5階) 10月19日(月)募集開始予定
令和9年1月21日(木) 住宅課(5階) 12月17日(木)募集開始予定
令和9年3月13日(土) 住宅課(5階) 2月4日(木)募集開始予定

(出典:台東区「マンションよろず相談室等に関するご案内」/更新日 2026年9月14日)

年6回、木曜と土曜が交互に組まれています。土曜開催があるので、平日に休みを取れない区分所有者でも参加できます。次に空いているのは11月28日(土)の回で、募集開始は10月19日(月)予定です。

相談の中身

項目 内容
会場 台東区役所5階 住宅課
相談員 弁護士 or 一級建築士(相談内容に応じて案内)
対象 区内の分譲マンションの区分所有者または賃貸マンションの所有者
相談者 2名以内(同席者含む)
定員 弁護士3組、一級建築士3組(1組45分)
時間枠 13:30〜14:15/14:30〜15:15/15:30〜16:15
申込 電話または窓口(03-5246-9028)による事前予約制
費用 無料

弁護士向けの相談例(規約解釈、住民間の合意形成、騒音、契約)と、一級建築士向けの相談例(修繕積立金の値上げ、大規模修繕、給排水、耐震化)が公式ページに具体的に示されています。申込の段階で相談内容を伝えると、適切な相談員に振り分けられます。

注意点が1つ。弁護士相談については、同じ方の申込・同席は同一年度内に2回までとされています(近年、弁護士相談のお問い合わせが増えているためとされています)。理事長さまが弁護士相談ばかり毎回使う、という運用はできません。


3. マンション理事長等連絡会:横のつながりが工事の質を上げる

区が主催する、マンション理事長同士の連絡会です(出典:台東区「マンション理事長等連絡会」)。

分譲マンションの理事長や理事役員の方々が定期的に集まり、区からの情報提供を受けつつ、他組合の運営事例や修繕対応の事例を持ち寄る場です。会員登録制で参加費は無料。年に数回、区役所会議室等で開催されています。

工事の見積書を比較するとき、一番効くのは「同じ規模のマンションが、いくらでどこまでやったか」という他組合の実例です。これはインターネットには出てきません。同規模・同年代のマンションの理事長さま同士が話せる場は、それだけの価値があります。

私が伺った現場でも、連絡会で聞いた他組合の進め方を参考に、修繕委員会の立ち上げ方を決めた管理組合がありました。詳細は住宅課マンション施策担当(03-5246-9028)にお問い合わせください。


4. マンショングループ相談会:複数組合まとめて相談

台東区独自の枠として「マンショングループ相談会」があります。複数の管理組合が同じ論点を持ち寄って、専門家に相談する形式です。

大規模修繕の進め方、管理計画認定制度の対応、標準管理規約の令和7年改正への対応など、どの組合にも共通する論点を、複数組合でまとめて聞けるのがメリットです。一組合単独では聞きにくい費用感の話も、他組合の事例と並べれば聞きやすくなります。

開催時期・テーマ・申込方法は年度ごとに変わるため、住宅課マンション施策担当(03-5246-9028)で最新情報をご確認ください。


5. 台東区消費生活センター:訪問販売型リフォーム勧誘への相談窓口

管理会社との契約や、訪問販売型のリフォーム勧誘、点検商法など、消費者トラブルの色が濃い話はこちらです。

項目 内容
対象 台東区に在住・在勤・在学の方
相談内容 契約に関するトラブル、悪質商法など
相談員 専門の消費生活相談員
相談電話 03-5836-7511
費用 無料

(出典:台東区「ご利用ください!消費生活センター」)

台東区は下町の性格上、高齢の区分所有者が突然の来訪業者に押し切られてリフォーム契約をしてしまう事例も耳にします。契約から8日以内であればクーリングオフの対象になる場合が多く、消費生活センターへ早めに電話するかしないかで、その後の展開は大きく変わります。

管理組合として、掲示板や総会資料に消費生活センターの番号を1行入れておくだけでも、区分所有者を守る効果があります。私はこれを大規模修繕の準備の1つだと考えています。悪質業者の被害は、修繕積立金の議論より前の段階で起きるからです。

外国人住民の割合が23区の中でも高い区の1つでもあり、東京都消費生活総合センターでは多言語対応も行っています。管理組合内の情報共有では、東京都のポータルにも案内があることをあわせてお伝えしておくと親切です。


6. 東京都のマンション管理士無料派遣:令和9年2月26日まで

区の制度と重ねて使えるのが東京都の制度です。防災力向上と認知症対応という2つのテーマに絞られています。

令和8年度の募集内容は次のとおりです(出典:東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」)。

項目 内容
対象 都内に所在するマンション管理組合
回数 1管理組合につき、防災力向上と認知症対応それぞれ2回まで
利用料 無料
受付期間 令和8年6月23日(火)〜令和9年2月26日(金)
募集数 防災力向上・認知症対応あわせて160件(達し次第締切)
申込先 東京都マンション管理士会(https://www.kanrisi.org/)
問い合わせ 東京都住宅政策本部 マンション課 03-5320-5004

過去(令和5年度から令和7年度)に本事業で派遣を受けている管理組合は、その回数も通算のカウントに含まれる点に注意が必要です。「前の理事会が使ったかどうか」を確認してから申し込んでください。

台東区は築古のマンションが多く、居住者の高齢化も進んでいる区です。認知症対応のテーマは、他人事ではありません。総会に出てこられない区分所有者への対応、緊急連絡先が家族と繋がらない事案、専有部での認知症関連の事故対応など、管理組合が抱える論点は年々増えています。防災と認知症対応の派遣は、こうした場面を管理規約や運営ルールに落とし込む機会になります。


7. (公財)マンション管理センター:国指定の相談窓口

国土交通大臣の指定を受けた「マンション管理適正化推進センター」です。指定を受けている唯一の団体とされています。

相談内容 電話
管理組合運営、管理規約等 03-3222-1517
建物・設備の維持管理 03-3222-1519

受付は月曜から金曜(祝日・年末年始を除く)の9時30分から17時。1件あたり15分前後のアドバイスとされています。メールでの相談フォームもあります(出典:(公財)マンション管理センター「相談窓口について」)。

公平・中立の立場が原則で、特定の弁護士や企業の紹介はしない、個別事案の適法性の判断はしない、回答は口頭のみ、という前提です。「うちの見積書は高いか安いか」を判定する窓口ではありません。標準管理規約や法令に照らして一般的な考え方を確認する窓口です。

同センターは令和7年の法改正に対応した『マンション管理基本法令集』を令和8年6月25日に発行しています。規約の見直しを検討中の管理組合の理事長さまには、目を通しておかれる価値があります。


番外:無料ではないが強い費用助成メニュー

無料ではないので7つの外に置きましたが、台東区には費用助成が複数あります。大規模修繕の準備段階で効いてきます。

助成 主な内容 出典
マンション計画修繕調査費助成 計画修繕に必要な調査(劣化診断等)費用を助成 台東区「マンション計画修繕調査費助成」
マンションアドバイザー利用助成制度 都のマンションアドバイザーを使う際の費用を助成 台東区「マンションアドバイザー利用助成制度」
マンション共用部分バリアフリー化支援助成 手すり・段差解消等のバリアフリー化を助成 台東区「マンション共用部分バリアフリー化支援助成制度」
マンション耐震化助成 耐震診断・改修設計・耐震改修工事の費用を助成 台東区「マンション耐震化助成」
マンション耐震改修工事に伴う利子補給制度 耐震改修工事の借入利子を補給 台東区「マンション耐震改修工事に伴う利子補給制度」

いずれも申請前に住宅課マンション施策担当への事前相談が条件とされている助成です。「調査を先に契約してから助成を申請」の順番では対象外になる可能性が高いので、まず03-5246-9028へ電話して、順番と要件を確認してから動かれるのが確実です。令和8年度の助成率・上限額・予算残額は、必ず区の担当窓口で最新情報をご確認ください。


何を用意していけばいいか:3点セット+1

無料の窓口へ行くとき、手ぶらで行くと一般論しか返ってきません。私が理事長さまに毎回お伝えしているのは、次の3点を持参することです。

3点セット

# 書類 なぜ必要か
1 総会議事録(直近2〜3年分) 何が決議済みで何が未決議かが分かる。相談員は最初にここを確認する
2 長期修繕計画書 次の大規模修繕の時期と想定費用の前提が分かる。積立金不足の議論はここが出発点
3 管理規約(+使用細則) 工事の決議要件、専有と共用の区分、理事会の権限が書かれている

+1:修繕積立金の残高と滞納額

修繕積立金の現在残高と滞納額を数字で言えるようにしておいてください。この2つがあるかないかで、相談の解像度がまるで変わります。

「積立金は足りていますか」と聞かれて「たぶん足りないと思います」と答える理事長さまを、私は何度も見てきました。残高が分からないと、工法の選択肢も絞れません。

写真があればもっといい

外壁のひび割れ、タイルの浮き、鉄部のさび、屋上の防水層の膨れ。スマートフォンで撮った写真で構いません。建築の話をするとき、写真1枚が説明の10分を短縮します。撮影日を記録しておくと、劣化の進み方を後から追えます。


台東区の物件で、私が工法の話を急がない理由

ここで少しだけ工法の話に触れます。

台東区は、狭い敷地に建つ中規模・小規模マンションが多い区です。浅草、上野、蔵前、鳥越、根岸のあたりには、隣地との距離が数十センチしか取れない物件が数多くあります。道路も狭く、大型車両の搬入経路が限られる。こうした条件で足場を組む前提だけで予算を組むと、見積金額が想定を大きく超えることがあります。仮設足場の費用は工事全体の2割から3割を占めることも珍しくありません。

そこで選択肢に入るのが、ロープアクセス工法(無足場工法)です。産業用ロープで作業員が壁面に取り付き、足場を組まずに塗装や補修を行う工法です。私は「ロープアクセスがいつでも安い」とは申し上げません。全面的にタイルを貼り替えるような工事では、足場のほうが向く場面もあります。私が提案しているのは、部位ごとに足場と無足場を使い分けるハイブリッド工法という選び方です。この考え方は明誠の考え方にまとめています。

無足場工法の技術的な中身、適した建物の条件、安全管理の考え方は、ロープアクセス工法の専門サイト(rope-access-method.com)に整理しています。無料相談に行かれる前にこちらのサイトに目を通しておかれると、区の相談員派遣で聞ける話の質が上がります。

ただ、この判断は劣化の実態が分かってからの話です。だから私は、区や都の無料派遣で劣化と工法の考え方を先に聞いていただくことをお勧めしています。工法を決めてから調査する順番では、選択肢が残りません。

管理組合向けのサービス全体像は管理組合さま向けサービスのご案内にまとめてあります。


まとめ:今週動くこと3点

長くなりました。台東区の管理組合の理事長さまが、今週できることを3点に絞ります。

① 住宅課マンション施策担当(03-5246-9028)に電話して、管理組合登録と過去の利用履歴を確認する

台東区の相談員派遣は「管理組合登録制度への登録」が申込条件です。登録していなければ、まず登録の相談からです。あわせて、過去の派遣回数・よろず相談室の利用回数・東京都の管理士派遣の利用回数を確認しておくと、残り枠が見えます。

② 3点セットを1冊のファイルにまとめる

総会議事録(直近2〜3年分)、長期修繕計画書、管理規約。この3つをファイル1冊にまとめておく。理事が交代しても引き継げます。修繕積立金の残高と滞納額をメモに書き添えておくと、相談の質が変わります。

③ 11月28日(土)のよろず相談室、または年内の相談員派遣を1枠押さえる

11月28日(土)のマンションよろず相談室は10月19日(月)から募集開始予定です。土曜開催なので理事の複数名で押さえやすい枠です。あわせて、相談員派遣は3週間前までに事前相談+申請が必要なので、11月・12月に理事会で使う予定なら10月中に電話しておくのが確実です。

東京都のマンション管理士無料派遣は令和9年2月26日まで受付ですが、160件に達した時点で締切です。防災・認知症対応のテーマで使う予定があるなら、年度後半を待たないほうが確実です。


無料の相談窓口は、使わなければゼロですが、使えば専門家の時間そのものです。台東区の相談員派遣は年度4回、よろず相談室は年6回開催。あわせて年間10回近く、専門家の時間を無料で確保できる区です。これを使い切っている管理組合と、1回で終わっている管理組合の差は、5年後の修繕積立金残高に出ます。

大規模修繕の工法や見積書の読み方について、総会前の段階の整理だけでもお力になれることがあります。お問合せフォームからご相談だけでも遠慮なくお声がけください。どの制度をどの順番で使うかの整理からご一緒できます。


出典・参考資料


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月14日時点で公表されている台東区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず台東区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


株式会社明誠|東京都東大和市
大規模修繕・足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法
ロープアクセス工法の専門情報:https://rope-access-method.com/

文京区の管理組合が無料で使える相談・派遣8選|マンション管理士派遣は年4回、個別相談は年2回まで

文京区の管理組合が無料で使える相談・派遣8選|マンション管理士派遣は年4回、個別相談は年2回まで

2026年9月14日 更新

「区の派遣、去年一度だけ呼びました」

小石川のマンションで、理事長さまからそう伺ったことがあります。文京区のマンション管理士派遣を、理事会に1回呼んで、規約の見直しの入り口の話だけを聞いた。それで「制度は使いました」と胸を張られていました。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンションやビルの外壁の仕事をしてきました。足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、両方の現場を経験してきた人間です。

そのとき私がお伝えしたのは、「文京区の派遣は、同じ年度内でもあと3回、無料で呼べますよ」ということでした。

理事長さまは驚いていました。1回2時間の相談を年に4回。同じ年度に、規約の話、大規模修繕の入り口の話、財務の話、管理会社との契約の話、と論点を分けて呼び直すことができる。しかも派遣とは別に、区役所での個別相談も年度2回、月・水・金の午後に予約できる。1年で6回、専門家の時間をタダで確保できる区が、文京区です。

私が現場で悔しく感じるのは、こうした場面です。工事の見積書を前に「もっと早く誰かに相談できていれば」とおっしゃる管理組合を、私は何度も見てきました。文京区は23区のなかでも支援メニューが厚い区で、しかも申請の手続きが平易です。使わない理由がありません。

今日は、文京区のマンション管理組合とオーナーさまが、お金をかけずに使える相談・派遣・セミナーを8つ、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。


結論:文京区で無料で使える相談・派遣は8つある

先に一覧でお示しします。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用 申込先
1 マンション管理士派遣 マンション管理士 無料(年度4回・1回2時間) 住環境課管理担当 03-5803-1374
2 分譲マンション管理個別相談 マンション管理士 無料(年度2回・1回1時間) 住環境課管理担当 03-5803-1374
3 マンション管理に関する相談窓口 区職員(住環境課管理担当) 無料(電話・窓口) 03-5803-1374
4 マンション管理セミナー マンション管理士・一級建築士・弁護士等 無料(事前予約制) 住環境課管理担当 03-5803-1374
5 マンションアドバイザー制度利用助成 東京都のマンションアドバイザー 助成(有料派遣の費用を区が助成) 住環境課管理担当 03-5803-1374
6 文京区消費生活センター 消費生活相談員 無料(電話・来所) 03-5803-1106
7 東京都 マンション管理士無料派遣 マンション管理士 無料(防災・認知症対応 各2回まで) 東京都マンション管理士会
8 (公財)マンション管理センター 電話相談 マンション管理士等 無料(15分程度) 03-3222-1517 ほか

これに加えて、劣化診断調査費助成・共用部分改修費助成・長期修繕計画作成費助成といった費用助成メニューも文京区にはあります。こちらは無料ではないので8つの外に置きますが、後半で触れます。

ここからが本題です。


1. マンション管理士派遣:文京区の中心にある制度

文京区の分譲マンション支援のなかで、私が「まず理事会で使ってください」とお勧めしているのがこの制度です。

費用と回数

文京区の公式ページには、次のように書かれています。

項目 内容
対象 文京区内にある分譲マンションの管理組合
時間 1回あたり2時間以内
回数 1つの管理組合につき、同一年度内で4回まで
費用 無料

(出典:文京区「マンション管理士派遣」/更新日 2026年8月4日)

同じ年度に4回。1回あたり2時間。単純に計算すれば、8時間分の専門家の時間を無料で確保できます。しかも派遣先は理事会や専門部会なので、理事全員で同じ話を聞くことができます。

文京区の派遣は「休日・夜間にも現地へ伺い、適切なアドバイスを行います」と明記されています。理事会が土曜の午前中、あるいは平日夜に開かれる管理組合でも、その時間に合わせて呼ぶことができます。

相談できる内容

文京区が示している業務内容は次のとおりです。

  • 管理組合の運営に関すること
  • 管理組合の財務に関すること
  • 管理組合の契約に関すること
  • マンションの建築・設備に関すること
  • マンションにおける日常生活上のルールに関すること
  • マンションの防災対策に関すること
  • マンション管理計画の認定に関すること

大規模修繕に直結する項目が、この中に3つあります。「財務」「契約」「建築・設備」です。私が理事会でお話しするとき、いつもお伝えしているのは「工法を決める前に、この3つを別々の回で相談してください」ということです。積立金の残高がどうか、管理委託契約が現状に合っているか、建物の劣化がどこまで進んでいるか。この3点が揃わないと、工法の選択はできません。

できないことも公式に明記されている

文京区は制約も丁寧に書いています。

  • 居住者間、近隣住民間の紛争解決や権利調整
  • 管理規約の作成、見積書等の比較検討
  • 長期修繕計画の作成、修繕工事等の設計
  • 耐震診断、測定器等による建物の精密測定、劣化診断・調査
  • 診断、工事、管理業務などの受注および業者の紹介等

「見積書の比較検討」は対象外です。ここを誤解して「A社とB社どっちがいいですか」と派遣で聞いても、答えは返ってきません。派遣は判断材料をもらう場であって、判断そのものを外注する場ではない。私が現場で見てきた限り、この線引きを理解している理事会と、理解していない理事会とでは、派遣1回の成果がまるで違います。

申請の手順

文京区は電子申請と窓口・郵送の両方に対応しています。

項目 内容
電子申請 可能(マンション管理士派遣の申請フォーム)
郵送・窓口 派遣希望日の2週間前までに申請書を提出
申請者 管理組合の代表者(理事長)
初回の指名 不可(2回目以降は内容により相談可)

理事会の年間予定を決めた段階で、派遣日と申請日を先にカレンダーに書き込んでおくのが実務的です。「次の理事会で呼びたい」という思いつきでは、2週間前の締切に間に合わないことがあります。

申請書と要綱は派遣ページからダウンロードできます。


2. 分譲マンション管理個別相談:区役所での1時間枠

派遣とは別に、区役所内で受けられる個別相談があります。「理事会に呼ぶほどではないが、理事長さま個人として整理しておきたい」という段階で使う枠です。

項目 内容
対象 区内分譲マンションの区分所有者及び居住者
日時 月・水・金曜日 午後1時から午後5時(完全予約制)
相談時間 1回につき1時間以内
場所 文京シビックセンター内会議室
費用 無料
利用回数 同一年度内に2回まで
申込締切 相談希望日の14日前まで

(出典:文京区「分譲マンション管理個別相談」/更新日 2026年4月1日)

対応するのは「経験豊富なマンション管理士」と明記されています。派遣と同じくマンション管理士が入りますが、個別相談は区分所有者や居住者個人でも申し込める点が違います。理事長さまだけでなく、修繕委員会の委員や、輪番で理事になる予定の区分所有者が事前に整理する目的でも使えます。

派遣(管理組合として理事会に呼ぶ/年度4回)と、個別相談(個人として区役所で聞く/年度2回)。この2つを組み合わせると、同じ年度に合計6回、専門家の時間を無料で確保できます。

申込は持参・郵送・ファックスに加えて、オンライン申込フォームにも対応しています。


3. マンション管理に関する相談窓口:どこに聞けばいいか分からない段階で

「まず、どこに電話すればいいですか」と私が聞かれることがあります。文京区の場合、答えは決まっています。

都市計画部住環境課管理担当(03-5803-1374)

大規模修繕、長期修繕計画、管理規約、標準管理規約の令和7年改正、管理計画認定制度、劣化診断助成、共用部分改修費助成、管理士派遣、個別相談、セミナー。分譲マンションに関する相談は、この窓口が起点になります(出典:文京区「マンションの管理に関する相談窓口」)。

私は理事長さまに、「制度の名前を全部覚える必要はありません」とお伝えしています。まずこの番号にかけて、相談内容を伝えると、担当の職員が「その内容なら管理士派遣が向いています」「それなら個別相談で足ります」と振り分けてくれます。順番としては、この窓口で全体像を聞く → 個別相談で理事長さま個人が整理する → 管理士派遣で理事会全体に共有する、という流れが無駄がありません。

窓口の場所は文京シビックセンター18階北側、受付時間は平日8時30分から17時(祝日・年末年始を除く)です。


4. マンション管理セミナー:秋の勉強機会

文京区は年に1回、マンション管理セミナーを開催しています。マンション管理士・一級建築士・弁護士等の専門家が講師を務め、無料・事前予約制で行われます(出典:文京区「マンション管理セミナー」)。

例年の傾向としては、秋(10月から11月)に文京区民センター等の区内公共施設で開かれ、定員は60人前後、講演テーマは大規模修繕・修繕積立金・管理規約改正・防災対策など、その年ごとに設定されています。令和8年度の開催日・会場・テーマの詳細は、住環境課管理担当(03-5803-1374)または上記のセミナーページでの告知が確定情報になります。

理事長さま単独よりも、修繕委員会のメンバーや若手の区分所有者を数人連れて参加するのが私のお勧めです。派遣や個別相談は同じ相談を1度しか受けられませんが、セミナーは会場で他組合の事例が拾えます。修繕委員会の立ち上げ方について、他マンションの理事長さまとその場で名刺交換をしていた事例も、私は現場で見てきました。


5. マンションアドバイザー制度利用助成:都のアドバイザーを実質無料で

文京区には、区独自の派遣に加えて「東京都のマンションアドバイザーを利用したときの費用を区が助成する」という制度があります。

(公財)東京都防災・建築まちづくりセンターが行うマンションアドバイザー派遣は本来有料ですが、文京区の管理組合が使う場合、区の助成を受けることで実質的に無料または低額で利用できます。同一年度内で「管理アドバイザーA・Bコース」と「建替え・改修アドバイザーAコース」を合わせて4回まで、建替え・改修アドバイザーBコースは1回まで利用可能とされています(出典:文京区「マンションアドバイザー制度利用助成」)。

大規模修繕の検討段階で使いやすいのは、建替え・改修アドバイザーAコースです。修繕工事の方式検討、劣化状況の相談、業者選定の考え方など、区の派遣で扱えない「見積書の比較検討」に近い論点にも踏み込めるのが特徴です。区の管理士派遣で全体像を掴んで、都のアドバイザー(+区の助成)で工事の中身に入る、という段取りが合理的です。

制度の詳細と申請の順番は、必ず事前に住環境課管理担当へお問い合わせください。区の助成が受けられるかどうかは、都への申込の前に区へ相談する順番が守られているかで変わります。


6. 文京区消費生活センター:訪問販売型リフォーム勧誘への相談窓口

管理会社との契約や、訪問販売型のリフォーム勧誘、点検商法など、消費者トラブルの色が濃い話はこちらです。

項目 内容
場所 文京シビックセンター地下2階北側
相談電話 03-5803-1106
受付時間 月〜金 9時〜16時(祝日・年末年始を除く)
費用 無料

(出典:文京区「消費生活センター」)

高齢の区分所有者が突然の来訪業者に押し切られてリフォーム契約をしてしまった、という相談を私も現場で耳にしたことがあります。契約から8日以内であればクーリングオフの対象になる場合が多く、消費生活センターに早めに電話するかしないかで、その後の展開は大きく変わります。

管理組合として、掲示板や総会資料に消費生活センターの番号を1行入れておくだけでも、区分所有者を守る効果があります。私はこれを、大規模修繕の準備の1つだと考えています。悪質業者の被害は、修繕積立金の議論より前の段階で起きるからです。


7. 東京都のマンション管理士無料派遣:令和9年2月26日まで

区の制度と重ねて使えるのが東京都の制度です。防災力向上と認知症対応という2つのテーマに絞られています。

令和8年度の募集内容は次のとおりです(出典:東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」)。

項目 内容
対象 都内に所在するマンション管理組合
回数 1管理組合につき、防災力向上と認知症対応それぞれ2回まで
利用料 無料
受付期間 令和8年6月23日(火)〜令和9年2月26日(金)
募集数 防災力向上・認知症対応あわせて160件(達し次第締切)
申込先 東京都マンション管理士会(https://www.kanrisi.org/)
問い合わせ 東京都住宅政策本部 マンション課 03-5320-5004

過去(令和5年度から令和7年度)に本事業で派遣を受けている管理組合は、その回数も通算のカウントに含まれる点に注意が必要です。「前の理事会が使ったかどうか」を確認してから申し込んでください。

防災の相談は、外壁の安全管理と切り離せません。台風の翌朝にタイルが1枚落ちていたとき、誰がどう判断して、誰に連絡するのか。この段取りが決まっていない管理組合では、報告が理事長さまに届くまで数日かかることがあります。その間、下に人が通っています。私が防災派遣を大規模修繕の話とセットで考えていただきたい理由は、ここにあります。


8. (公財)マンション管理センター:国指定の相談窓口

国土交通大臣の指定を受けた「マンション管理適正化推進センター」です。指定を受けている唯一の団体とされています。

相談内容 電話
管理組合運営、管理規約等 03-3222-1517
建物・設備の維持管理 03-3222-1519

受付は月曜から金曜(祝日・年末年始を除く)の9時30分から17時。1件あたり15分前後のアドバイスとされています。メールでの相談フォームもあります(出典:(公財)マンション管理センター「相談窓口について」)。

公平・中立の立場が原則で、特定の弁護士や企業の紹介はしない、個別事案の適法性の判断はしない、回答は口頭のみ、という前提です。「うちの見積書は高いか安いか」を判定する窓口ではありません。標準管理規約や法令に照らして一般的な考え方を確認する窓口です。

同センターは令和7年の法改正に対応した『マンション管理基本法令集』を令和8年6月25日に発行しています。規約の見直しを検討中の管理組合の理事長さまには、目を通しておかれる価値があります。


番外:無料ではないが強い「劣化診断調査費助成」ほか3本

無料ではないので8つの外に置きましたが、文京区には費用助成が3本あります。大規模修繕の準備段階で効いてきます。

助成 主な内容 出典
マンション劣化診断調査費助成 劣化診断費用の一部を助成(申請前の事前相談が条件) 文京区「マンション劣化診断調査費助成」
マンション長期修繕計画作成費助成 長期修繕計画の作成・見直し費用を助成 文京区「マンション長期修繕計画作成費助成」
マンション共用部分改修費助成 共用部分の改修工事費用の一部を助成 文京区「マンション共用部分改修費助成」

いずれも申請前に住環境課管理担当への事前相談が条件とされている助成です。「診断を先に契約してから助成を申請」の順番では対象外になる可能性が高いので、まず03-5803-1374へ電話して、順番と要件を確認してから動かれるのが確実です。令和8年度の助成率・上限額・予算残額は、必ず区の担当窓口で最新情報をご確認ください。


何を用意していけばいいか:3点セット+1

無料の窓口へ行くとき、手ぶらで行くと一般論しか返ってきません。私が理事長さまに毎回お伝えしているのは、次の3点を持参することです。

3点セット

# 書類 なぜ必要か
1 総会議事録(直近2〜3年分) 何が決議済みで何が未決議かが分かる。相談員は最初にここを確認する
2 長期修繕計画書 次の大規模修繕の時期と想定費用の前提が分かる。積立金不足の議論はここが出発点
3 管理規約(+使用細則) 工事の決議要件、専有と共用の区分、理事会の権限が書かれている

+1:修繕積立金の残高と滞納額

修繕積立金の現在残高と滞納額を数字で言えるようにしておいてください。この2つがあるかないかで、相談の解像度がまるで変わります。

「積立金は足りていますか」と聞かれて「たぶん足りないと思います」と答える理事長さまを、私は何度も見てきました。残高が分からないと、工法の選択肢も絞れません。

写真があればもっといい

外壁のひび割れ、タイルの浮き、鉄部のさび、屋上の防水層の膨れ。スマートフォンで撮った写真で構いません。建築の話をするとき、写真1枚が説明の10分を短縮します。撮影日を記録しておくと、劣化の進み方を後から追えます。


文京区の物件で、私が工法の話を急がない理由

ここで少しだけ工法の話に触れます。

文京区は、坂の多い地形と、道幅の狭い旧市街地の物件が混在する区です。小石川、白山、本郷、千駄木のあたりには、敷地に余裕のない中規模マンションが数多くあります。隣地との距離が取れない物件では、足場を組む前提だけで予算を組むと、見積金額が想定を大きく超えることがあります。仮設足場の費用は工事全体の2割から3割を占めることも珍しくありません。

そこで選択肢に入るのが、ロープアクセス工法(無足場工法)です。産業用ロープで作業員が壁面に取り付き、足場を組まずに塗装や補修を行う工法です。私は「ロープアクセスがいつでも安い」とは申し上げません。全面的にタイルを貼り替えるような工事では、足場のほうが向く場面もあります。私が提案しているのは、部位ごとに足場と無足場を使い分けるハイブリッド工法という選び方です。この考え方は明誠の考え方にまとめています。

無足場工法の技術的な中身、適した建物の条件、安全管理の考え方は、ロープアクセス工法の専門サイト(rope-access-method.com)に整理しています。無料相談に行かれる前にこちらのサイトに目を通しておかれると、区の管理士派遣で聞ける話の質が上がります。

ただ、この判断は劣化の実態が分かってからの話です。だから私は、区や都の無料派遣で劣化と工法の考え方を先に聞いていただくことをお勧めしています。工法を決めてから診断する順番では、選択肢が残りません。

管理組合向けのサービス全体像は管理組合さま向けサービスのご案内にまとめてあります。


まとめ:今週動くこと3点

長くなりました。文京区の管理組合の理事長さまが、今週できることを3点に絞ります。

① 住環境課管理担当(03-5803-1374)に電話して、過去の利用履歴を確認する

マンション管理士派遣は同一年度4回。個別相談は同一年度2回。東京都の管理士派遣は令和5年度から通算でカウントされます。前の理事会が何回使ったかを確認しないと、残り枠が分かりません。まずここからです。

② 3点セットを1冊のファイルにまとめる

総会議事録(直近2〜3年分)、長期修繕計画書、管理規約。この3つをファイル1冊にまとめておく。理事が交代しても引き継げます。修繕積立金の残高と滞納額をメモに書き添えておくと、相談の質が変わります。

③ 理事会の年間予定と、派遣の申請日を一緒に決める

文京区のマンション管理士派遣は、申請から2週間以降の日付でないと希望日にできません。理事会の日程に合わせて呼ぶには、年間予定を立てた段階で申請日も決めてしまうのが確実です。同一年度4回の枠を、規約・財務・工事・契約と論点別に割り振る形が、私のお勧めする使い方です。

東京都のマンション管理士無料派遣は令和9年2月26日まで受付ですが、160件に達した時点で締切です。防災・認知症対応のテーマで使う予定があるなら、年度後半を待たないほうが確実です。


無料の相談窓口は、使わなければゼロですが、使えば専門家の時間そのものです。文京区の管理士派遣は年度4回、個別相談は年度2回。あわせて年間6回、1回1時間から2時間の相談を、無料で受けられる。これを使い切っている管理組合と、1回で終わっている管理組合の差は、5年後の修繕積立金残高に出ます。

大規模修繕の工法や見積書の読み方について、総会前の段階の整理だけでもお力になれることがあります。お問合せフォームからご相談だけでも遠慮なくお声がけください。どの制度をどの順番で使うかの整理からご一緒できます。


出典・参考資料


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月14日時点で公表されている文京区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず文京区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


株式会社明誠|東京都東大和市
大規模修繕・足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法
ロープアクセス工法の専門情報:https://rope-access-method.com/

台東区のマンション漏水・防災対策|低地と上野台の高低差から逆算する修繕優先順位

台東区のマンション漏水・防災対策|低地と上野台の高低差から逆算する修繕優先順位

2026年9月14日 更新

浅草でホテルを1棟、根岸で賃貸マンションを1棟持っておられるオーナーさまから、以前こう相談されました。「浅草の物件は台風が来るたびに心配で仕方ないが、根岸のほうは同じ雨でも管理員から連絡が来たことがない」。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンションやビルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、両方やってきた人間です。

先ほどのオーナーさまの実感は、まったく正しいと私は思います。台東区は、荒川・隅田川に近い低地(浅草・浅草橋・蔵前・鳥越・下谷)と、上野・谷中・根岸の上野台という、性格のまったく違う2つの地形を1つの区に抱えています。同じ区内でも、警戒すべき災害の種類が違います。

今日は、台東区が公表している最新のハザード資料から逆算して、台東区のマンション・ビル・ホテルで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。


結論:台東区は「低地か台地か」で対策を分ける区です

先に結論から申し上げます。台東区の建物では、まず自分の建物が「低地」か「上野台の上」か、あるいは「台地の縁の斜面」かを地図で確定させてから、対策の順番を組みます。

立地 該当エリアの例 最優先の対策
荒川想定浸水域 区の大部分(浅草、清川、日本堤、橋場、今戸、東浅草ほか) 電気設備の階上げ/垂直避難計画
内水氾濫リスク高 浅草橋、蔵前、鳥越、三筋、寿、雷門、駒形 屋上防水とドレン清掃/地下・1階の止水対策
上野台の上 上野桜木、池之端の高台、谷中、根岸の高台側 屋上ドレン、外壁シーリング(標準セット)
台地の縁(斜面地) 谷中・根岸の縁辺部、池之端の斜面 擁壁の水抜き穴/斜面側の外壁面

そのうえで、どの立地でも共通して最優先なのは屋上ドレン(排水口)の清掃履歴です。私が現場で見てきた漏水事故の大半は、河川の氾濫ではなく、ドレンの詰まりとシーリングの切れから始まっています。派手な災害より、地味な詰まりのほうが、はるかに高い確率で建物を傷めます。

台東区は特に、「荒川氾濫という最大級のリスク」と「日常的に起きる内水氾濫」の両方を同時に考える必要のある区です。ここからが本題です。


台東区のハザード資料を1枚で読む

台東区が公表している主なハザード資料は、次の5系統です(出典:台東区「ハザードマップ(水害・土砂災害)」)。

1. 水害ハザードマップ(荒川版)

荒川がはん濫した場合の想定を示したマップです。荒川が氾濫した場合、区のほとんどが浸水エリアになると想定されており、浸水深も3〜5mが大部分を占めるとされています。上野・谷中の上野台の一部を除けば、区の大半で2階以上への垂直避難、あるいは広域避難が前提になる規模です。

これは建物側でできる対策の限界を超えた話に思えますが、電気室の階上げ、水没しない位置への非常用電源の配置、防水扉の設置などは今からでも計画可能です。特に台東区に多いホテル・共同住宅の複合ビルは、地下に電気室を置いている物件が多く、荒川想定水位に対して致命的な弱点になり得ます。

2. 水害ハザードマップ(神田川版)

神田川がはん濫した場合の想定です。神田川については、1日程度の浸水ではあるものの、発生頻度としては相対的に高いと考えるべきものです。台東区の南西部、浅草橋・柳橋方面が影響を受けやすいエリアです。

3. 内水氾濫ハザードマップ

下水道が雨をさばききれずにあふれる現象を想定したマップです(出典:台東区「台東区内水氾濫ハザードマップ」)。ここは読み違えやすいところなので補足します。「内水」とは、川から水が来るより先に、降った雨が足元からあふれてくる現象です。台東区のマンションで実際に起きやすいのは、圧倒的にこちらです。

隅田川本川があふれる前に、蔵前・鳥越・浅草橋・寿・駒形といったエリアでは、道路冠水や地下浸水が先に起きます。実際、私が調査に呼ばれるケースの多くは、内水由来の1階浸水と、それに伴う電気室・エレベーターピットのトラブルです。

なお、隅田川そのものは、上流の岩淵水門で荒川と別れて水が来なくなる構造のため、基本的に隅田川単独での氾濫は想定されていません。ここは誤解が多いポイントなので付記しておきます。

4. 高潮水害ハザードマップ

台風や発達した低気圧で東京湾の海面が大きく上昇した場合の想定です。台東区は海に面していませんが、隅田川を遡って高潮の影響が及ぶ可能性が示されています。

5. 土砂災害ハザードマップ

台東区にも、上野台の縁辺部を中心に土砂災害警戒区域が指定されている場所があります。「都心の平らな区」というイメージと違い、谷中・根岸・池之端の斜面には勾配のある崖地があり、そこに建つ古いマンション・戸建てが少なくありません。区の資料と、東京都建設局の土砂災害警戒区域等マップを突き合わせて、最新の指定を確認してください。


地域特性と漏水事故の関係

浅草・雷門・駒形・蔵前——低地と地下街・商業ビル

浅草エリアの建物で私がまず確認するのは、地下と1階の開口部です。地下駐車場の車路入口、機械室の換気口、飲食テナントの搬入口、共用のごみ置き場。ここに止水板や土のう置き場があるかどうかで、台風時の対応力がまったく変わります。

浅草・雷門・駒形は、店舗テナントと共同住宅・ホテルが混在するエリアで、地下や1階に飲食・物販・厨房を抱える物件が特に多い。厨房排気の外壁ダクトまわり、店舗看板の取り付けボルト、テナント工事のあとに残った壁の穴——こうした「後付けの弱点」がシーリングの切れとセットになり、水の入り口になっているケースを何度も見てきました。

そして意外と見落とされるのが、エレベーターピットの排水です。ピットの底に排水ポンプが入っているのですが、これがずっと停止したままだったり、停電時に動かなかったりする建物があります。1階が浸水しなくても、ピットに雨水が回り込むだけでエレベーターは長期停止します。ホテルであれば営業停止に直結する話です。

浅草橋・柳橋・鳥越・三筋・寿——中小ビルと古い賃貸

浅草橋から鳥越にかけては、築年数の経った中小ビルが密集するエリアです。屋上防水の押さえコンクリート下で水がまわっているケース、外壁のタイル浮きが広範囲に進んでいるケース、パラペット(屋上の外周立ち上がり壁)の天端シールが完全に切れているケース——このあたりは、開けてみて初めて分かることが多い。

古いビルの場合、「見た目がまだ持ちそう」と「実際に持つ」は別の話です。テナントさまから「天井にシミが出た」と言われたときには、すでに広範囲に水が入っている。押さえコンクリートを剥がしてみたら、防水層と下地の間に湿った砂のような層ができていた、ということが実際にあります。

日本堤・清川・橋場・今戸——木造密集地と延焼リスク

台東区の北東側は、木造住宅が密集し、道路も狭いエリアを含みます。ここは水害と同時に、地震時の火災延焼リスクを考える必要があります。マンション側でできる対策は、外壁の不燃化(既存タイル・モルタルの健全性維持)、窓シャッターの動作確認、避難通路の維持です。

大規模修繕のタイミングで、サッシまわりのシーリングと同時に、防火性能に影響するパッキンや目地の状態も一緒に確認することをお勧めします。外壁の遮熱塗装・防水塗装は、直接的には火災対策ではありませんが、下地の劣化を防ぐことで長期的な健全性に寄与します。

谷中・根岸・池之端の高台・上野台——斜面地と擁壁

上野台の縁に立っている建物で見落とされやすいのが、擁壁の水抜き穴です。「水抜き穴がない/数が少ない/詰まっている」「傾斜や膨らみがある」「上から増し積みをしたもの」は、注意が必要な擁壁の典型です。

私が現場で一番悔しい思いをするのは、擁壁の水抜き穴が土や落ち葉で完全に埋まっているのに、誰もそれを「点検項目」だと思っていなかったという場面です。清掃だけなら、費用はほとんどかかりません。

そしてもう1つ、地震時に忘れられがちなのが給排水管の縦管です。斜面地に建つ建物は、地震のとき建物本体と外構、隣接建物との間で不同変位が起きやすい。エキスパンションジョイントと、そこを通る配管のフレキシブル継手が、揺れの後に少しずつ漏り始める。地震のあと数か月してから漏水報告が上がる、というケースを私は何度も見てきました。


大規模修繕で見るべき漏水ポイント7つ

立地にかかわらず、私が調査でチェックする順番です。

# 部位 見るポイント
1 屋上防水 膨れ、破断、立上りの浮き、押さえコンクリートのひび
2 屋上ドレン(排水口) ストレーナーの有無、詰まり、周囲の防水の納まり
3 外壁シーリング 切れ、肉やせ、剥離。特に異種材料の取り合い部
4 バルコニー・開放廊下の排水 排水口の詰まり、床防水の立上り高さ
5 防水立上り 高さが足りているか、端部の押さえ金物が浮いていないか
6 サッシまわり シーリングの切れ、水切りの変形、ビス穴からの浸入
7 エキスパンションジョイント カバーの変形、シールの切れ。地震後は特に

この7つのうち、1・2・4は費用がほとんどかからず、効果が大きい。だから私は、いきなり大規模修繕の話をする前に、まずここを見てくださいとお伝えしています。漏水の原因調査そのものについては漏水・雨漏り調査にまとめました。


漏水の緊急対応で、ロープアクセスが強い理由

台風が過ぎたあと、電話が鳴ります。「上階の外壁から水が入っている、見てほしい」。

このとき、足場を組んでいたら間に合いません。仮設足場は、計画・近隣説明・資材搬入・組立てで、どんなに急いでも数日から数週間かかります。台東区のように、隣地との離れがなく、道路の幅も余裕のない敷地では、そもそも組めないこともあります。浅草・上野の中心部は、道路占用の許可申請そのものが厳しくなるエリアでもあります。

ロープアクセス(産業用ロープで壁面を上下しながら作業する無足場の工法)なら、屋上にアンカーを取れる条件が整っていれば、当日または翌日に人を降ろして、目視と触診で原因を特定できます。応急のシール処置まで、同じ日に済むこともあります。ホテル運営中の物件でも、宿泊者に大きな影響を与えずに調査ができる点は大きな利点です。

もちろん万能ではありません。作業面積が広い場合、部材の搬入量が多い場合、下地補修が全面に及ぶ場合は、足場のほうが結果的に安く早い。だから私は、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法を提案することが多いです。「どちらが優れているか」ではなく「この建物のこの面はどちらか」という考え方です。工法の判断基準はロープアクセス工法のご紹介と、施工事例をまとめた https://rope-access-method.com/ に整理しています。


防災上の共用部——どこから直すか

浸水と地震の両方を考えると、共用部の優先度はこうなります。

共用部 台東区での注意点 優先度
受変電設備(キュービクル) 荒川想定の浸水深を超える階への配置が理想。地下・1階は要対策 ★★★
給水ポンプ・受水槽 停電すると上階が断水。ホテル・共同住宅は営業影響大 ★★★
エレベーター機械室・ピット ピット浸水で長期停止。低地の物件は特に ★★★
自家発電設備 燃料の備蓄量と、燃料タンクの設置階 ★★
避難通路(開放廊下・階段) 排水詰まりと防水立上りの高さ ★★
機械式駐車場ピット 排水ポンプの能力と非常電源の有無 ★★
外構・擁壁 水抜き穴、排水溝、斜面側の排水経路 ★★(斜面地は★★★)

電気室の位置は、後から動かすのが非常に大変です。 移設が難しい場合は、防水扉・止水板・止水シートといった「入れない」対策と、機器の嵩上げ(かさあげ)を組み合わせることになります。

私はいつも理事長さま・オーナーさまに、「大規模修繕の設計段階で、電気室の浸水対策も一緒に検討しませんか」とお伝えしています。別々にやると、足場も申請も近隣説明も二度手間になるからです。ビルオーナーさま向けのご提案、管理組合さま向けのご提案は、この一体検討を前提に組み立てています。


台東区の助成——修繕投資として使えるもの

台東区には、大規模修繕と直結する助成があります。令和8年度時点で運用されているものを整理します。ただし制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ますので、実際の申請時は必ず区の窓口で最新をご確認ください。

マンション計画修繕調査費助成

区内の分譲マンションが、大規模修繕の計画的な実施や長期修繕計画作成のために、共用部分の建物(配線等電気関係を含む)および給排水管の調査を実施する場合に、調査費の一部を助成する制度です。

項目 内容
対象 区内の分譲マンションの管理組合
対象調査 共用部分の建物・給排水管の調査
主な要件 管理規約が整備され、管理組合が適正に運営されている/総会または臨時総会で調査の実施・経費について決議している/過去10年以内に同じ調査項目で本制度の助成を受けていない/台東区マンション管理組合登録制度への登録(または登録予定)があること
事前相談 令和8年度の申請予定マンション向けに事前相談票の入力フォームあり
注意 予算の範囲内で実施、年度途中で受付終了する場合あり

(出典:台東区「マンション計画修繕調査費助成」、参考:台東区「マンションに関する主な支援制度」)

ここで一点、強くお伝えしておきたいことがあります。区の案内には、事前相談から始まる運用が明記されています。工事や調査を終えてから申請しても間に合いません。段取りの順番が、そのまま使えるか使えないかを分けます。

なお、止水板設置に特化した助成は、台東区では現時点で公表資料の中に見当たりません(区外の隣接自治体では実施している自治体もあります)。この点は区の窓口で最新をご確認ください。制度がなくても、止水板そのものは工事費に対する効果が大きい対策なので、大規模修繕の設計に組み込む価値があります。

建築物における液状化対策

台東区は、建築物における液状化対策の情報を区として発信しています(出典:台東区「建築物における液状化対策」)。液状化は地震の話に見えますが、私の実感では漏水の話でもあります。地盤が動けば、建物と外構の取り合い、埋設配管、エキスパンションジョイントに無理がかかります。地震のあと数か月してから漏り始める、というケースを私は何度も見てきました。台東区に限らず、液状化想定エリアの建物では、地震後3か月〜半年の追加点検を計画に入れておくことをお勧めします。


背景データ:雨の降り方が変わっている

「昔はこんなに漏らなかった」というお声を、本当によくいただきます。感覚の問題ではありません。

気象庁は、全国のアメダスで観測した1時間降水量50mm以上の年間発生回数について、統計期間の初めごろと比べて増加していることを公表しています(出典:気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」)。東京の観測点についても、日降水量50mm以上の日数の長期変化傾向がグラフとCSVで公開されています(出典:気象庁「大都市における日降水量50mm以上の長期変化傾向」)。

台東区の水害ハザードマップが前提にしている降雨は、下水道の整備水準を大きく超える雨です。インフラ側で受けきれない分は、建物側で受け止めるしかない。これが、私が屋上ドレンと外壁シーリングを最優先に挙げる理由です。

なお、区の境界を越えたハザード情報は、国土地理院の重ねるハザードマップで自分の建物の位置をピンポイントに確認できます。台東区の場合、隣接する荒川区・墨田区・千代田区・文京区とまたがるように立っている物件は、双方のマップを見る必要があります。


まとめ:今週、理事会・管理会社・オーナーに投げられる3点

長くなりました。台東区の建物で、今週すぐ動けることを3つに絞ります。

1. 自分の建物が「荒川想定浸水域のどこ」にあるかを、地図の上で確定させる

台東区の水害・土砂災害ハザードマップのページから、荒川版・神田川版・内水・高潮を順に見て、自分の建物の想定浸水深をメモする。斜面地の物件は、東京都建設局の土砂災害警戒区域等マップで最新を確認する。10分で終わります。

2. 屋上ドレンの清掃記録を、管理会社に出してもらう

直近1年で何回清掃したか。ストレーナーは付いているか。低地の物件は、地下ピットの排水ポンプが動くかどうか、非常電源につながっているかも合わせて確認を。

3. 電気室・給水ポンプの設置階を、図面で確認する

地下または1階にあるなら、止水板の見積りと、機器嵩上げの見積りを1本ずつ取っておく。台東区のマンション計画修繕調査費助成は事前相談が前提なので、順番を間違えないようにしてください。

10月までに動けるかどうかが、今シーズンの分かれ目です。理事会で1分だけでもこの話題を出してみてください。調査だけ、ご相談だけでも構いません。総会前の整理の段階から、お力になれることがあります。お問合せフォームからお声がけください。


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月14日時点で公表されている台東区および国土交通省・気象庁・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、台東区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。ハザードマップの被害想定は東京都および区が公表したものであり、実際の被害状況と異なることがあります。


出典・参考資料


関連ページ

ロープアクセス工法の詳しい解説・施工事例はこちら → https://rope-access-method.com/

文京区のマンション漏水・防災対策|台地と谷筋の高低差から逆算する修繕優先順位

文京区のマンション漏水・防災対策|台地と谷筋の高低差から逆算する修繕優先順位

2026年9月14日 更新

小石川で分譲マンションを1棟、湯島で賃貸ビルを1棟持っておられるオーナーさまから、以前こう相談されました。「同じ文京区で歩いて15分の距離なのに、湯島側だけが台風のたびに1階が心配になる」。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンションやビルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、両方やってきた人間です。

先ほどのオーナーさまの実感は、まったく正しいと私は思います。文京区は、本郷台・小石川台・小日向台・目白台・白山台の5つの台地と、神田川・小石川・後楽園に代表される谷筋の低地が、細かな帯状に入り組んでいる区です。同じ町内でも、道1本挟むだけで警戒すべき災害の種類が変わります。

今日は、文京区が公表している最新のハザード資料から逆算して、文京区のマンション・ビルで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。


結論:文京区は「台地の上か谷筋か」で対策を分ける区です

先に結論から申し上げます。文京区の建物では、まず自分の建物が「台地の上」なのか「谷筋の低地」なのか、あるいは「台地の縁の斜面地」なのかを地図で確定させてから、対策の順番を組みます。

立地 該当エリアの例 最優先の対策
谷筋・低地 後楽・春日・小石川、湯島・弥生・根津、江戸川橋、水道 屋上防水とドレン清掃/地下・1階の止水対策
台地の縁(斜面地) 目白台、関口、小日向、大塚の縁辺部、本郷台の縁 擁壁の水抜き穴/斜面側の外壁面
台地の上 本郷、白山、千駄木、駒込、大塚の高台 屋上ドレン、外壁シーリング(標準セット)

そのうえで、どの立地でも共通して最優先なのは屋上ドレン(排水口)の清掃履歴です。私が現場で見てきた漏水事故の大半は、河川の氾濫ではなく、ドレンの詰まりとシーリングの切れから始まっています。派手な災害より、地味な詰まりのほうが、はるかに高い確率で建物を傷めます。

ここからが本題です。


文京区のハザード資料を1枚で読む

文京区が公表している主な水害・防災資料は、次の3系統です(出典:文京区「水害への備え」)。

1. 文京区水害ハザードマップ(内水を含む総合版)

総雨量690mm・時間最大雨量153mmという想定最大規模降雨(東京都および国土交通省の想定に準拠)を前提に、神田川はん濫による外水と、下水道が雨をさばききれずにあふれる内水を合わせて表示している総合版です。区が令和6年3月に発行した最新版が、区役所・行政情報センター・各地域活動センターで配布されています(出典:文京区「文京区水害ハザードマップ(令和6年3月発行版)」)。

2. 神田川洪水ハザードマップ(文京区版)/高潮ハザードマップ

神田川がはん濫した場合の外水を単独で示したものと、東京湾で発生した高潮による浸水想定を示したものです。こちらも令和6年3月発行の最新版が公表されています(出典:文京区「文京区洪水ハザードマップ・高潮ハザードマップ(令和6年3月発行)」)。文京区は海に面していませんが、河川を遡って高潮の影響が及ぶ可能性を想定しています。

ここは読み違えやすいところなので補足します。「内水」とは、下水道や排水路が雨をさばききれずにあふれる現象のことです。川から水が来るより先に、降った雨が足元からあふれてくる。文京区のマンションで実際に起きやすいのは、圧倒的にこちらです。神田川本川があふれる前に、後楽園・春日・水道・江戸川橋といった谷筋の低地では、道路冠水や地下浸水が先に起きます。

3. 土砂災害警戒区域と斜面地

文京区は「都心の平らな区」というイメージと違い、5つの台地の縁に細かく斜面地を抱える区です。目白台・関口・小日向・大塚エリアの斜面、小石川台の縁、本郷台の縁、白山台の縁、弥生・根津・本郷にかけての谷筋の壁面などに、区分所有の共同住宅が数多く建っています。

土砂災害警戒区域の指定・解除・変更は毎年のように動きます。文京区のマップだけでなく、最新の区域は東京都建設局の土砂災害警戒区域等マップで確認するのが実務上は確実です。ここは指定日で運用が変わるので、区の資料と都のマップを突き合わせる二重チェックをお勧めします。


地域特性と漏水事故の関係

後楽・春日・小石川・江戸川橋——谷筋と内水氾濫

後楽園から春日、小石川に抜ける谷筋は、地形図で見ると細長い低地です。神田川と、暗渠化された小石川・千川といった旧河道が集まる場所で、周囲の台地から雨水が下ってきます。

このエリアの建物で私がまず確認するのは、地下と1階の開口部です。地下駐車場の車路入口、機械室の換気口、飲食テナントの搬入口、共用のごみ置き場。ここに止水板や土のう置き場があるかどうかで、台風時の対応力がまったく変わります。

そして意外と見落とされるのが、エレベーターピットの排水です。ピットの底に排水ポンプが入っているのですが、これがずっと停止したままだったり、停電時に動かなかったりする建物があります。1階が浸水しなくても、ピットに雨水が回り込むだけでエレベーターは長期停止します。台風のあと数日、住民が階段しか使えない、というのは実際によく起きる事態です。

湯島・弥生・根津——不忍池方向へ下る谷筋

湯島・弥生・根津は、本郷台と上野台に挟まれた谷筋で、雨が降れば水は不忍池方向へ流れ込みます。ここは築年数の経った中小ビルと、比較的新しい低層マンションが混在しているエリアです。

古い建物で私がしばしば出会うのが、屋上防水の押さえコンクリート下で水がまわっているケースです。表面からは見えません。だから、入居テナントさまから「天井にシミが出た」と言われたときには、すでに広範囲に水が入っている。押さえコンクリートを剥がしてみたら、防水層と下地の間に湿った砂のような層ができていた、ということが実際にあります。

目白台・関口・小日向・大塚——台地の縁の斜面地

台地の縁に立っている建物で見落とされやすいのが、擁壁の水抜き穴です。「水抜き穴がない/数が少ない/詰まっている」「傾斜や膨らみがある」「上から増し積みをしたもの」は、注意が必要な擁壁の典型です。

私が現場で一番悔しい思いをするのは、擁壁の水抜き穴が土や落ち葉で完全に埋まっているのに、誰もそれを「点検項目」だと思っていなかったという場面です。清掃だけなら、費用はほとんどかかりません。斜面地のマンションでは、大規模修繕の見積りに擁壁の点検・清掃を一項目として組み込むことをお勧めします。

そしてもう1つ、地震時に忘れられがちなのが給排水管の縦管です。斜面地に建つ建物は、地震のとき建物本体と外構、隣接建物との間で不同変位(違う方向・違う量の動き)が起きやすい。エキスパンションジョイント(建物どうしのつなぎ目のカバー)と、そこを通る配管のフレキシブル継手が、揺れの後に少しずつ漏り始める。地震のあと数か月してから漏水報告が上がる、というケースを私は何度も見てきました。

本郷・白山・千駄木・駒込——台地の上の「標準構造」

台地の上の物件は、水害の直接リスクは相対的に小さくなります。ただし油断は禁物です。台地の上の建物は敷地に余裕がある分、屋上面積が広く、ドレンの数も多い。「ドレンが多い=清掃負担が大きい」ということでもあります。管理会社の清掃頻度と、ストレーナー(ゴミ受け)の設置状況は必ず確認してください。


大規模修繕で見るべき漏水ポイント7つ

立地にかかわらず、私が調査でチェックする順番です。

# 部位 見るポイント
1 屋上防水 膨れ、破断、立上りの浮き、押さえコンクリートのひび
2 屋上ドレン(排水口) ストレーナーの有無、詰まり、周囲の防水の納まり
3 外壁シーリング 切れ、肉やせ、剥離。特に異種材料の取り合い部
4 バルコニー・開放廊下の排水 排水口の詰まり、床防水の立上り高さ
5 防水立上り 高さが足りているか、端部の押さえ金物が浮いていないか
6 サッシまわり シーリングの切れ、水切りの変形、ビス穴からの浸入
7 エキスパンションジョイント カバーの変形、シールの切れ。地震後は特に

この7つのうち、1・2・4は費用がほとんどかからず、効果が大きい。だから私は、いきなり大規模修繕の話をする前に、まずここを見てくださいとお伝えしています。漏水の原因調査そのものについては漏水・雨漏り調査にまとめました。


漏水の緊急対応で、ロープアクセスが強い理由

台風が過ぎたあと、電話が鳴ります。「上階の外壁から水が入っている、見てほしい」。

このとき、足場を組んでいたら間に合いません。仮設足場は、計画・近隣説明・資材搬入・組立てで、どんなに急いでも数日から数週間かかります。文京区のように隣地との離れがなく、道路の幅も余裕のない敷地では、そもそも組めないこともあります。

ロープアクセス(産業用ロープで壁面を上下しながら作業する無足場の工法)なら、屋上にアンカーを取れる条件が整っていれば、当日または翌日に人を降ろして、目視と触診で原因を特定できます。応急のシール処置まで、同じ日に済むこともあります。

もちろん万能ではありません。作業面積が広い場合、部材の搬入量が多い場合、下地補修が全面に及ぶ場合は、足場のほうが結果的に安く早い。だから私は、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法を提案することが多いです。「どちらが優れているか」ではなく「この建物のこの面はどちらか」という考え方です。工法の判断基準はロープアクセス工法のご紹介と、施工事例をまとめた https://rope-access-method.com/ に整理しています。


防災上の共用部——どこから直すか

浸水と地震の両方を考えると、共用部の優先度はこうなります。

共用部 文京区での注意点 優先度
受変電設備(キュービクル) 谷筋の建物は地下・1階設置が特に多い。浸水すると全館停電 ★★★
給水ポンプ・受水槽 停電すると上階が断水。台地上の建物は落差ぶん影響が大きい ★★★
エレベーター機械室・ピット ピット浸水で長期停止。谷筋の物件は要注意 ★★★
自家発電設備 燃料の備蓄量と、燃料タンクの設置階 ★★
避難通路(開放廊下・階段) 排水詰まりと防水立上りの高さ ★★
機械式駐車場ピット 排水ポンプの能力と非常電源の有無 ★★
外構・擁壁 水抜き穴、排水溝、斜面側の排水経路 ★★(斜面地は★★★)

電気室の位置は、後から動かすのが非常に大変です。 移設が難しい場合は、防水扉・止水板・止水シートといった「入れない」対策と、機器の嵩上げ(かさあげ)を組み合わせることになります。

私はいつも理事長さまに、「大規模修繕の設計段階で、電気室の浸水対策も一緒に検討しませんか」とお伝えしています。別々にやると、足場も申請も近隣説明も二度手間になるからです。ビルオーナーさま向けのご提案、管理組合さま向けのご提案は、この一体検討を前提に組み立てています。


文京区の助成——修繕投資として使えるもの

文京区には、大規模修繕や耐震化と直結する助成があります。令和8年度時点で運用されているものを整理します。ただし制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ますので、実際の申請時は必ず区の窓口で最新をご確認ください。

マンション共用部分改修費助成

分譲マンションの共用部分の改修工事費用の一部を区が助成する制度です。

項目 内容
助成対象 区内の分譲マンションの管理組合
対象工事 大規模修繕工事の設計・工事監理費、共用部分の改修工事費 など
事前相談 申請前の相談が必要
窓口 文京区都市計画部住環境課

(出典:文京区「マンション共用部分改修費助成」)

マンション長期修繕計画作成費助成

長期修繕計画の新規作成・見直しに要する費用を助成する制度です。管理組合として12年前後の周期で見直しを検討されている場合、この助成を活用できる可能性があります(出典:文京区「マンション長期修繕計画作成費助成」)。

こちらも申請前の相談が前提で、令和8年2月10日までに実績報告が可能な案件が対象です。年度後半で駆け込みたい場合は間に合わないことがあるので、動くなら早めが安全です。

耐震設計助成/文京区耐震化促進事業

昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた旧耐震の非木造住宅・分譲マンションで、耐震化基準(Iw値1.0以上またはIs値0.6以上)を満たさない建物に対し、耐震設計費用の一部を助成する制度です。令和8年度の申請受付期限は令和8年12月4日(金曜日)とされています(出典:文京区「耐震設計助成」、文京区「文京区耐震化促進事業」)。

ここで一点、強くお伝えしておきたいことがあります。これらの助成はいずれも、計画段階(工事や設計を始める前)で相談することが前提です。工事を終えてから申請しても間に合いません。段取りの順番が、そのまま使えるか使えないかを分けます。

なお、止水板設置に特化した助成は、文京区では現時点で公表資料の中に見当たりません(区外の隣接区では実施している自治体もあります)。この点は区の窓口で最新をご確認ください。制度がなくても、止水板そのものは工事費に対する効果が大きい対策なので、大規模修繕の設計に組み込む価値があります。


背景データ:雨の降り方が変わっている

「昔はこんなに漏らなかった」というお声を、本当によくいただきます。感覚の問題ではありません。

気象庁は、全国のアメダスで観測した1時間降水量50mm以上の年間発生回数について、統計期間の初めごろと比べて増加していることを公表しています(出典:気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」)。東京の観測点についても、日降水量50mm以上の日数の長期変化傾向がグラフとCSVで公開されています(出典:気象庁「大都市における日降水量50mm以上の長期変化傾向」)。

文京区の水害ハザードマップが前提にしている時間最大153mmは、下水道の整備水準を大きく超える雨です。インフラ側で受けきれない分は、建物側で受け止めるしかない。これが、私が屋上ドレンと外壁シーリングを最優先に挙げる理由です。

なお、区の境界を越えたハザード情報は、国土地理院の重ねるハザードマップで自分の建物の位置をピンポイントに確認できます。文京区の場合、隣接する新宿区・豊島区・北区・荒川区・台東区・千代田区とまたがるように立っている物件は、双方のマップを見る必要があります。


まとめ:今週、理事会・管理会社に投げられる3点

長くなりました。文京区の建物で、今週すぐ動けることを3つに絞ります。

1. 自分の建物が「台地の上」か「谷筋の低地」か「斜面地」かを、地図の上で確定させる

文京区の水害ハザードマップのページから、水害・洪水・高潮を順に見て、自分の建物がどれに該当するかをメモする。斜面地の物件は、東京都建設局の土砂災害警戒区域等マップで最新を確認する。10分で終わります。

2. 屋上ドレンの清掃記録を、管理会社に出してもらう

直近1年で何回清掃したか。ストレーナーは付いているか。斜面地なら、擁壁の水抜き穴の状況もあわせて聞いてみてください。谷筋の物件は、地下ピットの排水ポンプが動くかどうかも合わせて確認を。

3. 電気室・給水ポンプの設置階を、図面で確認する

地下または1階にあるなら、止水板の見積りを1本取っておく。文京区には長期修繕計画作成費助成・共用部分改修費助成があり、着工前の相談が前提なので、順番を間違えないようにしてください。

10月までに動けるかどうかが、今シーズンの分かれ目です。理事会で1分だけでもこの話題を出してみてください。調査だけ、ご相談だけでも構いません。総会前の整理の段階から、お力になれることがあります。お問合せフォームからお声がけください。


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月14日時点で公表されている文京区および国土交通省・気象庁・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、文京区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。ハザードマップの被害想定は東京都および区が公表したものであり、実際の被害状況と異なることがあります。


出典・参考資料


関連ページ

ロープアクセス工法の詳しい解説・施工事例はこちら → https://rope-access-method.com/

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