松崎町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

2026年9月8日 更新

「松崎町で分譲マンションの大規模修繕をやりたい。町から補助は出るのか」——この記事は、その質問に町の一次情報だけで答えます。

結論から言うと、静岡県賀茂郡松崎町には「分譲マンションの共用部改修に直接効く町独自の補助金」はありません。ただ、それで終わらせてしまうと松崎町では大きく損をします。理由は、この町のブロック塀撤去補助に、私がこのシリーズで176件の自治体を調べてきて初めて出会った条件が入っているからです。町が定める津波避難路沿いであれば、補助率10分の10、限度額なし。負担ゼロで撤去できる枠が、条件付きとはいえ実在します。

株式会社明誠の本間です。私はマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。足場を組む工事も、ロープアクセスという無足場の工事も、その両方を組み合わせるハイブリッド工法も、同じ社内で見積もれる立場にいます。だからこそ「補助金が出ないから何もできない」で終わらせず、制度と工法の両方から手を打つ話をこの記事に書きます。

この記事は、松崎町のマンション管理組合の理事長さま、賃貸アパート・マンションのオーナーさま、そして西伊豆で建物を持っている法人の方に向けて書いています。


この記事の結論:松崎町で先に確認すべきは「3つ」

長い記事なので、先に答えを置きます。松崎町で建物を維持していくうえで、私が最初に確認していただきたいのは次の3つです。

順位 確認すること なぜ先なのか
1 敷地のブロック塀が「町が定める津波避難路」に面していないか 該当すれば撤去費が10分の10補助・限度額なし。桁が変わります
2 工事を頼む会社が「町の資格登録を受けた町内施工業者」か 住宅改修事業補助金・空き家改修等補助金の両方で、これが入口条件です
3 その建物が「現に居住している住宅」か「空き家バンク登録物件」か 松崎町の補助はこの2本の道に分かれています。どちらでもない賃貸用の共用部は町補助の対象外です

この3つを外すと、松崎町では制度の入口に立てません。逆に言えば、この3つさえ押さえれば、町の制度は小さいながらもきちんと使えます。

そして、共用部の大規模修繕そのもののコストは、補助金ではなく工法の選択で下げる——これが松崎町のような町で私がいつもお伝えしている考え方です。理由は後半の「足場が組みにくい松崎町で、どう修繕するか」で数字を出して説明します。


松崎町という町を、3つの数字で見る

制度の話に入る前に、松崎町がどういう町なのかを数字で押さえます。ここを飛ばすと、なぜ町の補助制度がこの形なのかが分かりません。

数字1:人口6,038人、世帯2,663(令和2年国勢調査)

松崎町の令和2年国勢調査結果は、人口6,038人・2,663世帯でした(出典:松崎町「令和2年国勢調査の結果」)。

注目すべきは推移です。同じ町の公表数字を並べると、昭和35年は12,183人・2,749世帯。つまり65年で人口は半分以下になったのに、世帯数はほとんど減っていない。昭和35年に1世帯あたり4.43人だったものが、令和2年には2.27人になった計算です。

これが何を意味するか。建物の数は人口ほど減らない、ということです。世帯が分かれれば住戸は必要になる。だから松崎町には、人口規模のわりに維持すべき建物が多く残っています。そしてその多くが、住む人の高齢化とともに修繕の判断を先送りされやすい状態にあります。

数字2:冬の西風は「吹き始めると3日は止まない」

松崎町の建築を語るとき、外せないのがなまこ壁です。町の観光資源として有名ですが、私は建物屋として別の見方をしています。

なまこ壁は、平らな瓦を壁に貼り、目地を漆喰でかまぼこ状に盛り上げた工法です。松崎町でこれが発達した背景として、静岡県の観光公式情報では「松崎の冬の西風は猛烈で、吹き始めると3日は止まない」ため、より堅牢で火にも強い建物が求められたことが挙げられています(参考:松崎町「松崎町のなまこ壁」)。

つまり松崎町の先人は、風と雨と塩から建物を守るために、外壁の仕上げを厚く硬くするという答えを出していた。これは現代のRC造マンションの外壁改修でもまったく同じ発想が要ります。西伊豆の西向き外壁は、東京の同じ築年数のマンションより確実に傷みが早い。私が実際に西伊豆の物件を見て感じるのは、そこです。

数字3:ブロック塀撤去の補助率「10分の10」

松崎町の補助金一覧を通しで読んで、私が声を上げたのがここでした。詳細は後述しますが、津波避難路沿いのブロック塀撤去は、事業費と「延長×32,000円/m」を比較して少ないほうの10分の10、限度額なし(出典:松崎町「ブロック塀等の撤去、改修に補助金がでます」)。

補助率10分の10・上限なしという設計は、自治体の補助金としてかなり踏み込んだものです。これは松崎町が、津波避難という一点に予算を集中させている証拠だと私は読みます。海に面した町だからこその制度設計です。


【背骨①】住宅改修事業補助金——20%・20万円、ただし「一生に1回」

松崎町の住宅系補助で、いちばん幅広く使えるのがこれです。

制度の骨格

項目 内容
制度名 松崎町住宅改修事業補助金
対象工事 住宅(居住部分に限る)の増築、改築および修繕工事
補助額 工事費の20%以内(限度額20万円、千円未満切り捨て)
工事規模 改修に要する費用が10万円以上(税抜)
施工業者 町の資格登録を受けた町内施工業者が行う事業
居住要件 町内に1年以上住民登録/その住宅に現在居住、または完了後速やかに居住
納税要件 所有者および同一世帯全員が町税等を滞納していない
完了期限 該当年度の3月10日までに完了する事業
回数制限 同一住居および同一人について1回限り
窓口 松崎町役場企画観光課(0558-42-3964)

(出典:松崎町「住宅改修事業補助金」、松崎町「松崎町住宅建築・リフォーム補助制度一覧」)

「1回限り」をどう使うか

この制度でいちばん重要なのは、太字にした同一住居および同一人について1回限りという一文です。

上限20万円ですから、工事費100万円で満額に達します。ということは、30万円の工事で使ってしまうと6万円で権利を使い切る。同じ住宅では二度目がありません。

私が松崎町の方に助言するとしたら、こうです。屋根・外壁・防水など、金額が張る工事をひとまとめにできるタイミングまで温存する。玄関ドアだけ、給湯器だけ、といった単発工事で権利を消費しない。20万円の枠は、100万円以上の工事にぶつけて初めて満額になります。

分譲マンションの共用部には使えるのか

率直に書きます。この制度は「住宅(居住部分に限る)」を対象としており、申請者に町内1年以上の住民登録と現に居住していることを求めています。管理組合という団体が共用部改修で申請する制度としては設計されていません。

ただし、専有部側の改修——たとえば区分所有者ご自身が住んでいる住戸の内装・設備・建具の改修であれば、要件を満たす可能性があります。共用部と専有部の切り分けは管理規約によりますので、そこは管理会社か町の窓口で確認してください。

賃貸オーナーの場合

「改修工事を行う住宅に現在居住している方または、改修工事完了後速やかに居住する方」が条件ですから、オーナーさまがご自身で住まない賃貸物件は対象外と読むのが自然です。ここは南伊豆町など近隣の町とも共通する考え方で、伊豆の町の住宅補助はおおむね「定住支援」の色が濃く、賃貸事業への補助ではありません。

賃貸オーナーさまが松崎町で使える可能性があるのは、次に説明する空き家改修等補助金と、県の制度のほうです。


【背骨②】ブロック塀等撤去事業——津波避難路沿いなら「10分の10・上限なし」

ここが松崎町の最大の特徴です。金額の桁が変わりますので、丁寧に整理します。

2つの事業に分かれている

事業名 対象
ブロック塀等撤去事業 地震発生時に倒壊・転倒の危険性のあるブロック塀等の撤去(石塀やレンガ塀なども対象)
ブロック塀等改善事業 フェンス等の安全な塀への作り替え/既存のブロック塀を金具等により補強する工事

いずれも道路に面しているものに限るという共通条件があります(出典:松崎町「ブロック塀等の撤去、改修に補助金がでます」)。

補助金額——ここが本題

区分 補助率・算定 限度額
ブロック塀等撤去事業(通常) 「事業費」と「延長×8,900円/m」を比較して少ないほうの2/3 10万円
ブロック塀等撤去事業(町が定める津波避難路沿い) 「事業費」と「延長×32,000円/m」を比較して少ないほうの10/10 なし
ブロック塀等改修事業 「事業費」と「延長×38,400円/m」を比較して少ないほうの2/3 25万円

数字で並べると差が見えます。通常の撤去は単価8,900円/mの2/3、つまり実質5,933円/m相当。津波避難路沿いは単価32,000円/mの10/10、つまり32,000円/m。単価だけで5.4倍、しかも上限がありません。

たとえば延長20mのブロック塀を撤去する場合を試算します。

ケース 算定 補助額
通常(事業費30万円・20m) 20m×8,900円=17.8万円と30万円を比較→17.8万円の2/3=11.87万円だが限度額10万円 10万円
津波避難路沿い(事業費30万円・20m) 20m×32,000円=64万円と30万円を比較→30万円の10/10 30万円(全額)

同じ塀、同じ工事でも、道路の指定次第で20万円違う。これが松崎町の制度です。

何を確認すればいいか

「町が定める津波避難路」がどの路線を指すかは、町が指定するものです。敷地に面した道路が該当するかどうかは、松崎町役場総務課(0558-42-3963)に確認するのが確実です。マンションの敷地境界に古い塀が残っているケースは西伊豆でもよく見ますし、石塀・レンガ塀も対象に含まれる点は見落とされやすいところです。

生垣づくり奨励補助金との関係

松崎町にはもう1つ、生垣づくり奨励補助金があります。新設の場合は経費の1/2(限度額3万円)、そしてブロック塀を撤去する場合は延長1m(ブロック塀高80cm以上)につき2,000円補助(限度額3万円)という枠です。窓口は企画観光課(0558-42-3964)。

塀を撤去して生垣にする、という筋道が町として用意されているわけです。ただし住宅改修事業補助金の説明に「他の補助金等の交付を受ける事業(交付金額を超える工事費については対象)」という記載があるとおり、同じ経費に複数の補助を重ねる場合の扱いは制度ごとに異なります。併用の可否は必ず事前に窓口へ確認してください。

申請は「施工前」

撤去・改修とも、施工前の事前申請が必須です。町のページには「工事完了後では補助金の交付はできませんので、必ず施工前に申請してください」と明記されています。必要書類は交付申請書、事前計画書、位置図、施工前の写真、見積書の写し、そして改善事業の場合は計画図(平面図・立面図・断面図)。

私が現場で何度も見てきた失敗が、これです。工事屋に「ついでに塀も壊しておいて」と頼んで、後から補助金の存在を知る。写真も見積も残っていない。この順番だけは動かせません。


【背骨③】空き家改修等補助金——改修50万円と家財10万円は別枠

賃貸オーナーさま、そして相続で松崎町に建物を持つことになった方に関係するのがこの制度です。

制度の骨格

項目 内容
制度名 松崎町空き家改修等補助金
目的 町内への移住・定住の促進による地域の活性化
対象物件 松崎町空き家バンク登録物件
改修工事の補助 改修工事費用の1/2または50万円のいずれか少ない額
家財処分の補助 家財処分費用の4/5または10万円のいずれか少ない額
対象者 所有者、入居者または入居予定者
施工業者 改修は資格登録を受けた町内施工業者の請負、家財処分は町内事業者
窓口 松崎町役場企画観光課(0558-42-3964)

(出典:松崎町「空き家改修等補助金」)

見落としやすい3つの条件

条件1:3親等以内の親族には出ない

入居者・入居予定者は「登録物件所有者の3親等以内の親族でない者」と定められています。親御さんの空き家をお子さんが直して住む、という使い方はできません。

条件2:所有者には登録継続義務がある

所有者が申請する場合、「補助事業完了の日から継続して3年以上松崎町空き家バンクに登録する者」が条件です。ただし売買・賃借が成立した場合は「契約期間を2年間以上とする者」となります。つまり直したあと自分で使う、という選択はできない設計です。

条件3:改修と家財処分は「それぞれ1回限り」

補助金は同一の空き家に対して、改修に係るものと家財処分に係るもの、それぞれ1回限りの交付です。逆に言えば、改修50万円と家財処分10万円は別枠で両方使える。合計60万円になります。ここは知らないと片方しか申請しません。

家財処分4/5という補助率の意味

改修が1/2なのに、家財処分は4/5です。この差は、松崎町が「空き家が動かない最大の理由は残置物だ」と見ている表れだと私は読みます。

伊豆の空き家は、家財が丸ごと残っているケースが本当に多い。処分費用が12.5万円かかれば10万円が出る計算ですから、実質負担2.5万円。動かすなら、まずここからです。


木造住宅耐震補強は60万円。RC造マンションは対象外

静岡県といえばプロジェクト「TOUKAI-0」です。松崎町でも一式が用意されています。

事業名 対象 補助額
わが家の専門家診断事業 昭和56年5月31日以前に建築された既存木造住宅 専門家(静岡県耐震診断補強相談士)による無料の耐震診断
木造住宅補強計画策定事業 同上 96,000円/戸以内(費用の2/3以内)
木造住宅耐震補強助成事業 同上で、耐震診断の総合評点1.0未満を1.0以上に補強する工事(ただし総合評点が0.3以上あがる工事に限る) 60万円/戸以内(高齢者世帯等は80万円/戸以内)
家庭内家具等固定推進事業 家具等の転倒による被害の防止・軽減 災害時要援護世帯:2/3以内(限度額40,000円)/一般世帯:1/2以内(限度額30,000円)

(出典:松崎町住宅建築・リフォーム補助制度一覧、静岡県「TOUKAI-0+」)

「高齢者世帯等」は、①65歳以上のみの世帯、②下肢・体幹・視覚障害のいずれかで障害者手帳(1級または2級)の交付を受けた方が同居する世帯、③介護保険法による要介護者・要支援者が同居する世帯、④療育手帳または精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方が同居する世帯、と定義されています。窓口は産業建設課(0558-42-3965)。

私がここで一言申し上げたいこと

この一式は木造住宅が対象です。RC造・鉄骨造の分譲マンションは入りません。

このシリーズで静岡県内の市町を順に見てきましたが、木造耐震補強の上限額は自治体によってかなり差があります。松崎町は60万円(高齢者世帯等80万円)。近隣の南伊豆町が115万円という水準だったことを考えると、松崎町は控えめな設定です。同じ伊豆半島でも町の財政規模と方針で変わる、ということです。

とはいえ、耐震診断が無料という点は動かしません。昭和56年5月31日以前の木造をお持ちなら、まずここを使ってください。診断結果は、その建物を直すのか手放すのかを決める材料になります。


浄化槽補助は令和8年4月に「新設」だけ下がった

これは2026年度(令和8年度)に動いた制度なので、独立した項として書きます。

松崎町の浄化槽設置整備事業費補助金は、令和8年4月1日より、合併処理浄化槽の新設に対する補助額を変更しています(出典:松崎町「浄化槽設置整備事業費補助金について」、2026年4月1日公開)。

人槽区分 新設 単独処理浄化槽・くみ取便槽から合併処理浄化槽へ付替え
5人槽 168千円 414千円
6〜7人槽 207千円 516千円
8〜50人槽 276千円 684千円

同じ町の制度一覧(旧情報)では新設5人槽が332千円と記載されていましたので、新設分はおおむね半減した形です。一方、付替えの額は414千円・516千円・684千円で据え置かれています。

この差をどう読むか

新設と付替えで、5人槽なら168千円対414千円。2.5倍近い差です。町として「まだ単独処理浄化槽やくみ取りが残っている住宅を、合併処理に切り替えさせたい」という意思が数字にはっきり出ています。

補助対象区域は、三浦地区(岩地・石部・雲見)の集落排水施設整備事業の計画区域を除く松崎町全域。8〜50人槽まで区分がある点は、小規模な共同住宅や併用住宅にも射程が及ぶことを意味します。

なお、家屋の解体を伴う場合は、付替えであっても「新設」扱いになる、という備考があります。建て替え計画とセットで考える方は、ここで金額が変わります。付替えの場合は、廃止する単独処理浄化槽・くみ取便槽を完全に撤去・処分することが求められます。


太陽光・県制度——小さいが効く制度をもう一段

住宅用太陽光発電システム設置事業補助金

項目 内容
補助額 最大出力の値に5万円/kWを乗じた額(限度額20万円、千円未満切り捨て)
システム要件 系統連系していること/太陽電池容量10kW未満/電力受給契約締結/未使用品
対象者 町内に住民登録/現在お住まいの住宅(店舗併用住宅を含む)または新築する住宅に設置/町税等の滞納がない
窓口 生活環境課(0558-42-3969)

4kW載せれば20万円で上限に達します。10kW未満という制限があるため、規模の大きい共同住宅の全戸分をまかなう設計には向きませんが、店舗併用住宅が対象に含まれている点は覚えておく価値があります。

静岡県:ふじのくに緊急リフォーム支援事業

町の制度ではありませんが、共同住宅も対象になる県制度なので触れます。

型 主な条件 補助額
一般型リフォーム 一戸建て・マンション等の共同住宅のいずれも対象/昭和56年6月1日以降着手、または昭和56年5月31日以前着手でも耐震診断・耐震補強後の評点1.0以上/20㎡以上/静岡県産材を使用した床・壁等のリフォーム/施工者は県内に本店を有する建設業者等 限度額10万円/戸
TOUKAI-0型リフォーム 耐震補強工事と併せてリフォームを行う木造住宅/20㎡以上/県産材使用/施工者は県内に本店 限度額20万円/戸

(出典:松崎町住宅建築・リフォーム補助制度一覧)

「マンション等の共同住宅のいずれも対象」と明記されている点、そして県産材の床・壁リフォームが要件である点がポイントです。外壁塗装や防水といった共用部工事そのものには向きませんが、専有部の内装更新を計画している方には検討の余地があります。制度の年度ごとの実施状況は静岡県住まいづくり課(054-221-3081)にご確認ください。


マンション管理計画認定制度の窓口は「静岡県」

分譲マンションの管理組合さまに、補助金と並んで押さえていただきたいのが管理計画認定制度です。

マンション管理計画認定制度は、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、地方公共団体が認定する仕組みです(出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度」)。

松崎町は町域のため、この制度の窓口は静岡県になります(参考:静岡県「マンションの管理」)。市部であればその市が窓口ですが、町村部は県が担います。このシリーズで静岡県内の町を扱うたびに繰り返しお伝えしている点です。手数料や必要書類、事前確認サービスの取り扱いは年度により改定されますので、申請前に県へ直接ご確認ください。

認定を取ると何が変わるか

認定を取得すると、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」で金利引下げの対象になるなど、資金調達面での効果があります(参考:住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」)。また、公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを使うと、事前確認を経た電子申請ができます(参考:マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」)。

認定基準には、長期修繕計画が7年以内に見直されていること、計画期間が30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれること、といった項目が入ります。つまり「大規模修繕の計画を立てること」自体が認定の中身になっている。補助金がない町だからこそ、私はこの制度をおすすめします。町の補助金は数十万円ですが、認定と長期修繕計画の見直しは、この先30年の資金計画そのものを変えます。


松崎町の建物を痛める3つの力

ここからは建物屋としての話です。松崎町の建物には、内陸のマンションとは違う3つの力がかかっています。

力1:冬の西風

先ほど触れたとおり、松崎の冬の西風は「吹き始めると3日は止まない」と言い伝えられるほどのものです。西向きの外壁、西側のサッシまわり、西面のシーリングは、他の面と同じ周期で診てはいけません。

風そのものが壁を壊すわけではありません。壊すのは、風が運んでくるものです。

力2:塩

海に面した町ですから、風が運ぶのは塩分です。塩分はコンクリートの中に入り込み、内部の鉄筋を錆びさせます。錆びた鉄筋は体積が膨張し、コンクリートを内側から押し割る。これが爆裂です。

外壁のひび割れから始まって、塗膜のふくれ、そして鉄筋が見えるところまで進行する。私が西伊豆・南伊豆で見てきた海沿いの物件は、内陸の同じ築年数の建物と比べて、この進行が明らかに早い。「築25年だからまだ大丈夫」という内陸の常識を、海沿いの建物に当てはめないでください。

力3:雨と紫外線

伊豆半島は雨も多い地域です。降った雨は、シーリングの切れ目、笠木の隙間、屋上防水の立ち上がりから入ります。そして夏の紫外線が塗膜とシーリングを痩せさせる。

この3つは単独では効きません。組み合わさって効きます。紫外線でシーリングが痩せる→そこから雨が入る→塩分が鉄筋まで届く。この連鎖を、どこで断つか。それが修繕計画の本質です。

なまこ壁が瓦と漆喰で壁を厚く硬くしたのは、まさにこの連鎖を断つためでした。使う材料は変わっても、考え方は150年前と変わりません。


足場が組みにくい松崎町で、どう修繕するか

松崎町で建物を持っている方が直面するのが、この問題です。

松崎町の地形が持つ制約

松崎町は海と山の間に集落が入り込んだ地形をしています。道が狭い。隣地との距離が近い。斜面に建っている建物も多い。町並み保存の対象になっているエリアでは、景観への配慮も要ります。

こうした条件は、そのまま足場の架設コストと難易度に跳ね返ります。足場が組めない、あるいは組むために特殊な計画が要る現場では、工事費に占める仮設費の比率が跳ね上がります。

さらに、松崎町のような遠隔地では職人の移動と宿泊のコストが乗ります。都市部の現場なら日帰りできる工程が、西伊豆では宿泊前提になる。工期が長引けば、その分だけ費用が積み上がります。

だから工法の選択が効く

一般に、マンション・ビルの大規模修繕では、仮設足場費が工事費全体の2割前後を占めるとされます。ここが松崎町のような現場では、さらに膨らむ。

私が代表を務める株式会社明誠は、この一点に答えを持っています。

  • 通常の足場仮設工事:全面的な打診調査や大量の躯体補修が必要な場合、足場に勝るものはありません
  • ロープアクセス工法(無足場工法):産業用ロープで作業員が壁面に取り付き、足場なしで施工します。足場費が丸ごと不要になり、工期も短縮できます
  • ハイブリッド工法:足場が必要な部位だけ組み、他はロープアクセスで施工します

ロープアクセス工法は、足場が組めない狭小地、斜面地、道路占用が難しい立地で威力を発揮します。松崎町の地形は、まさにこの工法が向いている条件です。ロープアクセス工法の技術情報や安全基準は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。

明誠のロープアクセス工事の考え方はロープアクセス工法のご紹介、3工法を建物ごとに選び分ける考え方は明誠のコンセプトをご覧ください。

3工法の比較

比較軸 通常足場工法 ロープアクセス工法 ハイブリッド工法
仮設費 高い(工事費の2割前後) 原則不要 必要な部位のみ
工期 長い 短い 中間
居住者への影響 大きい(窓が塞がる・防犯面の不安) 小さい 部位により変動
適する工事 全面打診・大量の躯体補修 部分補修・塗装・シーリング・調査 大規模・複雑形状
松崎町での適性 道路条件次第 狭小地・斜面地で有効 総合コスト最適化に有効

大事なのは「ロープアクセスが常に安い」という話ではないことです。全面打診調査と大規模な躯体補修が必要な建物なら、足場を組んだほうが結果的に安く、確実です。 建物を診てから工法を決める。逆はやりません。

コストの考え方は適正価格へのこだわり、資産価値の視点は建物の価値を守るにまとめています。賃貸オーナーさま向けの内容はビル・アパートオーナーさまへ、管理組合さま向けはマンション管理組合さまへ、宿泊施設をお持ちの方はホテル・旅館オーナーさまへをご覧ください。


松崎町で大規模修繕を進める、18か月の逆算表

補助金の申請期限と工事の段取りは、逆算しないと噛み合いません。松崎町の条件を踏まえた標準的な流れをお示しします。

時期 やること 松崎町固有の注意点
18か月前 長期修繕計画の確認、修繕積立金残高の確認 管理計画認定を狙うなら、計画の見直し時期をここで確認
15か月前 建物調査・劣化診断 海沿い物件は鉄筋の腐食度合いを重点的に。西面を厚めに診る
12か月前 敷地内のブロック塀・石塀の有無を確認、面する道路が津波避難路指定か町へ照会 総務課(0558-42-3963)。該当すれば撤去は10/10
10か月前 工法の比較検討(足場/ロープアクセス/ハイブリッド)、概算見積の取得 遠隔地のため、移動・宿泊費を含めた総額で比較する
9か月前 町の資格登録を受けた町内施工業者を確認 住宅改修・空き家改修の補助を使うなら、この確認が入口
8か月前 総会に向けた資料作成、修繕積立金不足なら融資の検討 住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資も選択肢
6か月前 総会決議、施工業者の決定
5か月前 補助金の事前申請(ブロック塀等、住宅改修等) 施工前の申請が要件です。着工してからでは交付されません
4か月前 交付決定を待つ 交付決定前の着工は対象外になります
3か月前 居住者・入居者への説明、工程周知
着工 工事開始 施工前写真を必ず残す
完工 完了届・実績報告、請求書 住宅改修事業補助金は該当年度の3月10日までに完了が要件

私が強調したいのは、「12か月前」の行です。ブロック塀が津波避難路沿いかどうかの照会は、電話1本で済みます。それで補助額が20万円変わる可能性がある。やらない理由がありません。


修繕積立金が足りないとき、どう考えるか

松崎町のような小規模自治体のマンションでは、これが最大の論点になります。

選択肢は4つ

選択肢 内容 留意点
積立金の値上げ 月額を引き上げて原資を作る 総会決議が要る。高齢の区分所有者の負担感が課題
一時金の徴収 工事直前に不足分を集める 合意形成の難易度が高い
借入 住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資等を使う 管理計画認定・マンションすまい・る債の積立などで金利優遇の可能性
工事範囲・工法の見直し 優先順位をつけ、工法で仮設費を圧縮する 私が最初に検討をおすすめする選択肢

住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資は、管理組合が借入主体になれる制度です。返済シミュレーションも公開されています(参考:住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」、返済プラン比較シミュレーション)。あわせて、マンションすまい・る債による計画的な積立という選択肢もあります(参考:住宅金融支援機構「マンションすまい・る債」)。

私が最初に見るのは工事範囲です

借入や値上げの話をする前に、私が見るのは工事範囲と工法です。

理由は単純で、仮設費は建物の価値を1円も上げないからです。足場は工事が終われば解体します。そこに工事費の2割を投じている構造を、まず疑う。松崎町のような遠隔地・狭小地では、この比率がさらに大きくなりがちです。

ロープアクセスで足場費を圧縮した分を、躯体補修や防水の仕様を上げることに回す。同じ予算でも、建物に残るものが変わります。これが私の考え方です。

もちろん、全面打診が必要な建物で無理にロープアクセスを勧めることはしません。診断結果を見て決めます。調査の考え方は建物調査・診断にまとめています。


私が松崎町の理事長さま・オーナーさまにお伝えしていること

長く書いてきましたので、私が現場で実際に申し上げていることを3つに絞ります。

1. 補助金の額でがっかりしないでください

松崎町の住宅改修事業補助金は上限20万円です。大規模修繕の総額から見れば小さい。でも、ブロック塀が津波避難路沿いなら話は変わりますし、空き家バンク物件なら改修50万円+家財10万円が別枠で使えます。「使える枠を全部並べてから諦める」——順番はこれです。

2. 診断を先にしてください

松崎町の建物は、内陸の建物と傷み方が違います。西風と塩が主犯です。だから「築何年だからそろそろ」ではなく、いま実際にどこまで進行しているかを見てから計画を立てる。昭和56年5月31日以前の木造なら、町の無料耐震診断が使えます。RC造なら、まず外壁の打診と鉄筋の状態です。

3. 工法を1つに決めつけないでください

足場を組むと決めてから見積を取ると、足場ありきの金額しか出てきません。足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つで比較して初めて、その建物にとっての適正価格が見えます。 3つ全部を自社で見積もれる会社はまだ多くありません。私たちがそこにこだわってきた理由です。

松崎町、そして西伊豆エリアの建物についてのご相談は、お問合せフォームからお寄せください。現地調査とお見積りは無料でお受けしています。


よくある質問(FAQ)

Q1. 松崎町に、分譲マンションの共用部大規模修繕に直接使える町の補助金はありますか。
A. 2026年9月時点で、共用部の大規模修繕に直接充てられる町独自の補助金は確認できません。町の住宅改修事業補助金は「住宅(居住部分に限る)」が対象で、申請者に町内1年以上の住民登録と居住が求められます(出典:松崎町「住宅改修事業補助金」)。

Q2. ブロック塀の撤去が全額補助になると聞きました。本当ですか。
A. 町が定める津波避難路沿いのブロック塀等撤去事業は、「事業費」と「延長×32,000円/m」を比較して少ないほうの10分の10、限度額なしと公表されています。通常は2/3・限度額10万円です。該当路線かどうかは松崎町役場総務課(0558-42-3963)へご確認ください(出典:松崎町「ブロック塀等の撤去、改修に補助金がでます」)。

Q3. 住宅改修事業補助金は何度でも使えますか。
A. 同一住居および同一人について1回限りです。上限20万円は工事費100万円で満額に達しますので、金額の張る工事にまとめて使うことをおすすめします。

Q4. 空き家改修等補助金は、親の空き家を子どもが直して住む場合にも使えますか。
A. 入居者・入居予定者は「登録物件所有者の3親等以内の親族でない者」と定められているため、その使い方は対象外です(出典:松崎町「空き家改修等補助金」)。

Q5. 浄化槽の補助金額が変わったと聞きました。
A. 松崎町は令和8年4月1日より、合併処理浄化槽の新設に対する補助額を変更しています。新設は5人槽168千円・6〜7人槽207千円・8〜50人槽276千円、単独処理浄化槽やくみ取便槽からの付替えは414千円・516千円・684千円です(出典:松崎町「浄化槽設置整備事業費補助金について」)。

Q6. マンション管理計画認定制度の申請先はどこですか。
A. 松崎町は町域のため、窓口は静岡県です。手数料や必要書類は改定されることがありますので、申請前に県へご確認ください(参考:静岡県「マンションの管理」)。

Q7. 補助金の申請は工事の後でもできますか。
A. できません。松崎町のブロック塀等、住宅改修事業、空き家改修等のいずれも事前申請が要件で、ブロック塀等のページには「工事完了後では補助金の交付はできません」と明記されています。


この記事のポイントまとめ

  • 松崎町に共用部大規模修繕への町独自補助はないが、使える枠は複数ある
  • ブロック塀等撤去は津波避難路沿いなら10分の10・限度額なし(通常は2/3・10万円)
  • 住宅改修事業補助金は工事費20%・上限20万円、同一住居・同一人で1回限り
  • 空き家改修等補助金は改修50万円と家財処分10万円が別枠で使える
  • 木造住宅耐震補強は60万円(高齢者世帯等80万円)、RC造マンションは対象外
  • 浄化槽補助は令和8年4月1日に新設分のみ減額、付替えは据え置き
  • マンション管理計画認定制度の窓口は町域のため静岡県
  • 西風・塩・雨の3つが西伊豆の建物を痛める。診断を先に
  • 狭小地・斜面地の松崎町では、足場費の圧縮が総額に効く
  • 補助金の事前申請と交付決定前の着工禁止は、どの制度にも共通する

出典・参考資料

※本記事の制度内容は2026年9月8日時点で公開されている情報にもとづきます。補助金は年度ごとに予算・要件・受付期間が変わり、予算上限に達した時点で受付を終了する場合があります。申請前に各窓口で最新情報をご確認ください。


関連リソース


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円および静岡県内で、ロープアクセス工法・通常足場工法・ハイブリッド工法の3つを建物ごとに選び分けて提案できる改修会社です。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。

最終更新:2026年9月8日

西伊豆町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

この記事で答えること:西伊豆町のマンションで、2026年度に使える補助金はどれか?

結論から申し上げます。西伊豆町(静岡県賀茂郡)の分譲マンション共用部の大規模修繕そのものに、まとまった額を出す町独自の補助金は、2026年9月時点では確認できません。ただし、大規模修繕の「入口」と「配管まわり」には、町のお金が確かに用意されています。

私が本シリーズで179件目の自治体を調べてきて、西伊豆町ではっきり他と違ったのは次の2つでした。

  1. 民間建築物吹付けアスベスト対策事業補助金:含有調査費用の全額、1棟あたり上限25万円。木造住宅ではなく「町内の民間建築物」が対象で、共同住宅も射程に入る
  2. 合併処理浄化槽設置補助:人槽区分が31〜50人槽まであり、新設2,797,000円・設置替2,867,000円。これは戸建てではなく、共同住宅規模の浄化槽を想定した金額です

この2本は、マンション・アパートを保有されている方に直接効きます。以下、根拠となる要綱・公式ページをすべてリンク付きで並べます。

※本記事は2026年9月9日時点の公開情報に基づきます。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ますので、申請前に西伊豆町役場および静岡県へご確認ください。


西伊豆町のマンション補助金 早見表(2026年度/令和8年度)

まず全体像です。「共用部の大規模修繕に直接使えるか」という軸で整理しました。

制度名 補助率・上限 共同住宅で使えるか 窓口
民間建築物吹付けアスベスト対策事業補助金 含有調査費用の全額/1棟上限25万円 ◎ 民間建築物が対象 建設課建設係
合併処理浄化槽設置補助 5人槽442,000円〜31〜50人槽2,797,000円(新設) ○ 人槽区分は共同住宅規模まで有り/要件確認 環境課環境保全係
空き家改修等補助金 改修1/2(上限50万円)+家財処分4/5(上限10万円) △ 空き家情報バンク登録物件が対象。法人・町外の方も対象 まちづくり戦略課企画調整係
木造住宅耐震改修助成事業費補助金(補強計画一体型) 工事費の8割かつ上限115万円 × 木造住宅(軸組工法)限定 建設課建設係
耐震シェルター設置補助金 2/3以内・上限40万円(高齢者等世帯は50万円) × 昭和56年5月31日以前の木造住宅 建設課建設係
若者転入世帯等定住促進補助金 月額1万円×最大24か月(入居者へ) ○ 賃貸オーナーの空室対策として間接的に効く まちづくり戦略課企画調整係
静岡県 省エネ住宅新築等補助制度 定額40万円+木材加算 × 一戸建ての住宅に限定 県住まいづくり課

出典:西伊豆町の補助金・助成金等(西伊豆町役場)ほか各制度ページ。

この表を見て、私が理事長さまやオーナーさまに最初にお伝えするのは「アスベスト調査と浄化槽の2つを、修繕計画の頭に持ってきましょう」ということです。理由をこれから説明します。


西伊豆町のアスベスト調査補助は、なぜマンションに効くのか

制度の中身:調査費が全額、1棟25万円まで

西伊豆町のアスベスト含有調査への補助金は、次の内容です。

項目 内容
対象建築物 町内の民間建築物で、当補助金以外の経費補助を受けていないもの
対象 アスベスト含有の恐れのある吹付け建材が施工されている建築物
補助額 含有調査費用の全額(1棟あたり最大25万円)
重要な条件 調査に着手する前に相談すること
根拠 西伊豆町民間建築物吹付けアスベスト対策事業補助金交付要綱

補助率10分の10、つまり全額です。私が本シリーズで見てきた町の制度のなかで、「民間建築物」を対象に調査費を丸ごと持つという設計は、そう多くありません。多くの町は木造戸建ての耐震から入ります。西伊豆町は、そこにRC造・鉄骨造の建物を含み得る枠を持っている。ここが大きな違いです。

大規模修繕の前に、アスベスト調査は避けて通れない

なぜこれが大規模修繕に直結するのか。大気汚染防止法と石綿障害予防規則により、一定規模以上の建築物の解体・改修工事では、着工前に石綿(アスベスト)の有無を調査し、結果を記録・報告することが求められています(出典:国土交通省「建築物石綿含有建材調査者講習」)。

大規模修繕は「改修工事」です。外壁の下地補修、天井や梁の吹付け材に触れる工事、機械室・電気室の改修、給排水管の更新——このあたりは、築年数によっては調査対象になります。

私の現場感覚で申し上げると、1970年代から1980年代前半に建った建物の、機械室・電気室・エレベーター機械室・パイプスペース内部・駐車場天井あたりに吹付け材が残っていることがあります。共用廊下の天井裏も要注意です。

そして、この調査費は決して安くありません。検体数と分析方法にもよりますが、1棟あたり十数万円から数十万円になることは珍しくない。それを町が全額(25万円まで)見てくれるのであれば、使わない手はないと私は考えます。

「着手前に相談」の一文が、すべてを分けます

公式ページには「補助を受ける際には、調査に着手する前にご相談ください」と明記されています。業者に調査を頼んでから役場に行く、では間に合わない可能性があるということです。

私はこの手の話を、いつも同じ順番でお伝えしています。

  1. 理事会で「今期はアスベスト調査をやる」と決める
  2. 役場(建設課建設係/電話0558-55-0212)に電話し、補助の対象になるか確認する
  3. 調査機関から見積書をもらう
  4. 交付申請書と添付書類(登記事項証明書、確認済証または検査済証、全景写真、図面一式、位置図など)を提出する
  5. 交付決定を受けてから調査に着手する

この順番を守れば、25万円が戻ってくる可能性が生まれます。逆にすると、同じ調査をして同じお金を払って、補助はゼロになりかねません。書類の準備で一番手間がかかるのは、図面(配置図・各階平面図・立面図・断面図)です。管理組合の書庫に竣工図が残っているかどうか、今日にでも確認されることをお勧めします。


合併処理浄化槽の補助が「31〜50人槽」まで届く町

人槽区分ごとの補助額(2026年度)

西伊豆町の合併処理浄化槽設置補助は、金額の刻みが細かく、しかも上が大きいのが特徴です。

人槽区分 補助額(新設) 補助額(設置替)
5人槽 442,000円 492,000円
6〜7人槽 513,000円 573,000円
8〜10人槽 648,000円 718,000円
11〜20人槽 1,226,000円 1,296,000円
21〜30人槽 2,085,000円 2,155,000円
31〜50人槽 2,797,000円 2,867,000円

出典:西伊豆町環境課環境保全係「合併処理浄化槽設置補助」。根拠は西伊豆町合併処理浄化槽設置整備事業補助金交付要綱です。

私が驚いたのは、新設と設置替の差が一律で5万〜7万円程度しかない点です。他の町では「新設は減額、付替えは据え置き」といった形で2倍以上の差がつく設計を見てきました。西伊豆町は、既存槽からの切り替えでもきちんと上乗せする作りになっています。

30戸のアパートなら、どのくらいの規模になるか

浄化槽の人槽算定は「建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準(JIS A 3302-2000)」によります。共同住宅の場合、延べ面積や戸あたりの居住人員から算定します。ざっくりした感覚で言えば、中規模の賃貸アパート1棟で20〜50人槽のレンジに入ることが多い印象です。

そこに200万円台の補助が乗るというのは、賃貸経営の収支から見て小さくない数字です。仮に30戸のアパートで279万7,000円が入れば、1戸あたり約9万3,000円の負担軽減になります。

ただし、要件は必ず事前確認を

正直に申し上げます。この制度の対象者は、公式ページ上「町内に住所を有する方」「専用住宅(主に住居を目的とした住宅で、小規模店舗を併設した住宅を含む)を建築、または購入した方」等と書かれています。共同住宅がどこまで含まれるかは、建物の用途と申請者の要件を個別に確認する必要があります。

一方で、添付書類の「個別」欄には「申請者が借家人の場合、賃貸人の承諾書」「共同設置の場合、代表者選任届」という項目があり、31〜50人槽という区分も用意されています。制度として共同利用・共同設置を想定していることは読み取れます。

私なら、まず環境課環境保全係(電話0558-53-1408)に「共同住宅の浄化槽を入れ替えたい」と一本電話を入れます。5分の電話で数百万円が動く話です。

そして手続き上、申請は工事着工前です。実績報告は工事完了後1か月以内。ここも動き出す前に押さえておく必要があります。


空き家改修等補助金は「法人も町外の方も対象」という珍しい設計

補助額と対象

空き家改修等補助金の内容を整理します。

区分 補助率 上限
改修工事 費用の1/2 50万円
家財処分 費用の4/5 10万円

対象者は、空き家情報バンク登録物件の所有者、未登録物件の所有者(事業終了後3年以上の登録が条件)、登録物件の購入者・購入予定者・入居者・入居予定者。そして公式ページには、「町民の方だけでなく、町外の方も法人も対象となります」と明記されています。

不動産を法人で保有されている方、町外にお住まいのオーナーさまにとって、この一文は重要です。私が調べてきた町の空き家補助では、「法人・不動産業を営む方は対象外」と明記されているところもありました。西伊豆町は逆に、法人を明示的に受け入れています。

対象外になるもの

一方で、除外もはっきりしています。

  • 太陽光発電の設置費
  • 合併浄化槽の設置費
  • 外構工事
  • 駐車場整備

浄化槽は前章の別制度で見る、という整理です。二重取りを防ぐ設計になっています。

町内施工業者に限定される点

もう一点。対象経費は「町内施工業者が行う改修工事又は家財処分の費用」です。町内施工業者とは、町内に本店・支店・営業所等が登録されている法人および町に納税申告している個人事業者で、町税等を完納し、この制度に基づく町の資格登録を受けている者を指します。

空き家改修等資格登録業者一覧が公開されていますので、発注前にご確認ください。私たちのような町外の会社が入る場合は、この補助は使えません。そこは正直にお伝えしておきます。


木造住宅耐震改修助成は上限115万円(補強計画一体型)

分譲マンションには使えませんが、西伊豆町で戸建てや木造アパートをお持ちの方には効く制度です。

西伊豆町木造住宅耐震改修助成事業費補助金交付要綱(令和8年4月1日施行の改正あり)の要点は次のとおりです。

項目 内容
対象 昭和56年5月31日以前に建築された木造住宅(木造軸組工法)
事業内容 耐震補強計画策定と耐震補強工事を同一年度内に実施
補助額 1敷地ごとに、事業に要する経費と115万円を比較していずれか少ない額。ただし耐震補強工事費の8割を上限
借家の扱い 入居者の同意を得た上で、所有者が申請
除外 事前に補強計画策定事業費補助金または耐震補強助成事業費補助金の交付を受けているもの

「借家については、入居者の同意を得た上で所有者が申請するものであること」と要綱第3条に明記されている点は、木造アパートのオーナーさまにとって実務上重要です。

そして「工事費の8割を上限」という条件があるため、115万円を満額受け取るには工事費が143万7,500円以上である必要があります。ここは電卓を叩いておく価値があります。


耐震シェルターは2/3・40万円、高齢者世帯は50万円に増額

耐震シェルター設置補助金も、西伊豆町らしい設計です。

項目 内容
補助率 対象経費(購入費・運搬費・設置経費)の2/3以内
上限 40万円
割増 65歳以上”のみ”が居住する世帯、介護保険法による要介護者等が居住する世帯は50万円
対象住宅 町内の昭和56年5月31日以前建築の木造住宅(一階部分にのみ設置可)
除外 過去に町の補助金で耐震補強工事を行っていない住宅であること

町の公式ページには「50万円の耐震シェルターに対して約33万円の補助金が出ます(17万円は設置者負担)」という具体例まで載っています。

「耐震補強工事は費用的に難しい。でも寝室だけは守りたい」——こういうご相談は、私も現場で何度も受けてきました。建物全体を直すか、何もしないかの二択で止まってしまうより、まず一部屋を守る選択肢があることは知っておいて損はありません。


若者転入世帯等定住促進補助金は、賃貸オーナーの空室対策になる

若者転入世帯等定住促進補助金は、建物ではなく入居者に出るお金です。しかし賃貸オーナーの立場では、募集条件の一部として説明できる材料になります。

項目 内容
補助額 1世帯当たり月額1万円
期間 転入した日の属する月の翌々月から起算して24か月まで
対象 夫婦のいずれかが満40歳未満の転入世帯、またはひとり親世帯
住宅要件 家賃2万円以上/賃貸借契約期間1年以上/賃借人の3親等以内の親族が所有する住宅ではない/併用住宅は1/2が自己の居住用
その他要件 町内に居住し区または自治会に加入/町税等完納/生活保護を受給していない/他の公的家賃補助を受けていない

月1万円×24か月で、総額24万円です。家賃5万円の物件なら、実質2年間は4万円で住めることになります。この差は、募集の現場では大きい。

ただし、公式ページの「その他」欄には「この制度は、令和2年4月1日から令和5年3月31日までの3年間に西伊豆町へ転入してきた若者世帯等を対象とします」という記載も残っています。現在の受付状況は、まちづくり戦略課企画調整係(電話0558-52-1966)へご確認ください。この点は断定を避けます。


西伊豆町で「使えない」制度も整理しておきます

補助金の記事は、使えるものだけを並べると判断を誤らせます。私は必ず、使えないものも書きます。

制度 使えない理由
静岡県 令和8年度 省エネ住宅新築等補助制度(定額40万円) 対象が一戸建ての住宅の新築・購入に限定。共同住宅の改修は対象外(出典:静岡県)
木造住宅耐震改修助成/耐震シェルター 木造住宅(軸組工法)が対象。RC造・鉄骨造のマンションは対象外
空き家改修等補助金 空き家情報バンク登録物件が前提。稼働中の賃貸マンションは対象外
若者転入世帯等定住促進補助金 入居者への家賃補助。建物工事費には充当できない

つまり、RC造マンションの大規模修繕そのものに、町から直接出る補助金は現時点で確認できません。だからこそ、アスベスト調査(全額・25万円)と浄化槽(最大286万7,000円)という2つの「周辺」を取りにいく戦略が有効になります。


静岡県のマンション施策:認定手数料が令和8年4月に改定されました

管理計画認定制度の窓口は「県」です

西伊豆町は町域です。そのため、マンション管理計画認定制度の窓口は西伊豆町ではなく静岡県になります。市の区域は各市、町の区域は県、という切り分けです。

そして手数料が令和8年4月1日に改定されました。

事前確認適合証 長期修繕計画数 令和8年3月31日まで 令和8年4月1日から
有り 1 3,800円 4,000円
有り 2以上 3,800円+1,700円×(計画数−1) 4,000円+1,800円×(計画数−1)
無し 1 26,900円 28,100円
無し 2以上 26,900円+15,500円×(計画数−1) 28,100円+16,200円×(計画数−1)

事前確認適合証の有無で、4,000円と28,100円、約7倍の差が出ます。公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続き支援サービスを経由するかどうかで、この差が決まります。私はいつも理事長さまに「先に適合証を取るルートを検討してください」とお伝えしています。

マンション管理士の無料派遣は「10件枠」

令和8年度のマンション管理組合活動活性化支援事業として、県がマンション管理士の無料派遣を実施しています。

  • 受付件数:10件(上限に達した時点で終了)
  • 申込期限:令和8年11月14日(土曜)まで
  • 派遣回数:各管理組合2回まで
  • 派遣期限:令和9年1月31日(日曜)まで
  • 申込先:一般社団法人静岡県マンション管理士会

県内全域で10件です。修繕積立金の見直しや長期修繕計画の作り直しでお悩みなら、早めに動かれることをお勧めします。

令和8年度のマンション管理セミナー日程

県内各地で開催予定です。西伊豆町から通える範囲では、次の日程が該当します。

開催地 開催日 会場
三島市 令和8年9月12日(土) 三島市役所
沼津市 令和8年10月3日(土) 沼津市民文化センター
熱海市 令和8年10月17日(土) 熱海市役所
伊東市 令和8年12月予定 ―
富士市 令和9年2月予定 ―

伊豆半島の西側から東側へは距離がありますが、理事のどなたか1人でも参加して持ち帰るだけで、総会の議論の質は変わります。

マンション管理適正化支援法人の登録制度は、県では未実施

令和7年5月30日公布の法改正で「マンション管理適正化支援法人」の登録制度が創設されました。町の区域は県が登録主体になりますが、静岡県は現段階では登録制度を実施していません。この点は県の公式ページに明記されています。


国の制度:融資と積立の2本を押さえる

町と県で足りない部分は、国の枠組みで補います。

制度 内容 出典
マンション共用部分リフォーム融資 管理組合が共用部分の改修資金を借り入れられる制度 住宅金融支援機構
マンションすまい・る債 修繕積立金を債券で運用・積立 住宅金融支援機構
マンションライフサイクルシミュレーション 長期修繕計画の資金計画を試算するツール 住宅金融支援機構
管理計画認定マンション一覧 認定を受けたマンションの公開検索 マンション管理センター

管理計画認定を取得すると、マンションすまい・る債の利率上乗せや、共用部分リフォーム融資の金利引下げの対象になる場合があります。認定手数料4,000円が、数十万円の金利差になって返ってくる——この計算を理事会でしてみてください。


「夕陽のまち」の建物が受ける、西伊豆特有のダメージ

西日と塩害と、強い西風

西伊豆町は自らを「『ふるさと』と言いたくなる夕陽のまち」と名乗っています。堂ヶ島、黄金崎、田子、安良里、宇久須、仁科——駿河湾に沈む夕陽は、この町の誇りです。

ただ、建物にとって「夕陽が長く当たる」というのは、西向きの外壁が午後じゅう紫外線と熱を浴び続けるということでもあります。私は西向きファサードの塗膜が、東面より明らかに早くチョーキング(塗膜が粉状に劣化する現象)を起こす現場を、何度も見てきました。

さらに西伊豆は駿河湾に直接面しています。海からの西風が塩分を含んだまま建物に当たる。紫外線・熱・塩分・風雨が同じ面に集中する。これが西伊豆の建物の宿命です。

私が最初に見るのは、西面のバルコニー手すりです

正直に申し上げます。西伊豆のような立地で調査に入るとき、私が最初に見るのは西面のバルコニーの鉄部です。手すりの付け根、笠木の裏側、ドレン(排水口)まわり。ここに錆が出ていたら、塗装の周期を東面と同じにしていては追いつきません。

同じ建物でも、面によって傷み方が違う。これは教科書ではなく、現場でしか分からない話です。だから私は、面ごとに劣化度をランク分けして、優先順位をつけた見積りをお出しするようにしています。全面を一律で塗るより、傷んだ面に予算を厚く配分したほうが、建物は長持ちします。

台風と季節風の後は、必ず一度見上げてください

伊豆半島西岸は、台風の進路によっては強い西風・南西風を受けます。工事の有無にかかわらず、大きな風が吹いた翌日に、建物を一度見上げる習慣をつけていただきたいと私は思っています。

見るポイントは3つです。

  1. 屋上・塔屋の笠木や役物が浮いていないか
  2. バルコニーの隔て板(避難用の仕切板)が割れていないか
  3. 外壁のシーリングが切れて、黒い筋が下に伸びていないか

3番目の「黒い筋」は、雨水が壁を伝っている跡です。これが出ていたら、内部に水が入り始めているサインと考えて差し支えありません。


足場が組めない敷地こそ、ロープアクセス工法の出番です

西伊豆の地形と、仮設足場の相性

西伊豆町の集落は、海と山に挟まれた狭い平地に密集しています。建物と道路の間に十分な離隔がなく、隣地との隙間も狭い。こういう敷地では、そもそも足場が組めない、あるいは組めても仮設費が跳ね上がるという問題が起きます。

大規模修繕の見積りで、仮設足場費が総額の20〜25%を占めるのは珍しくありません。1,000万円の工事なら200万円から250万円が「作業のための通路」に消えている計算です。

ここで選択肢になるのがロープアクセス工法(無足場工法)です。産業用ロープで屋上から吊り下がり、外壁の補修・塗装・シーリング・タイル補修を行う工法で、足場を架けずに施工できるのが最大の特長です。ロープアクセス工法の技術情報や安全基準は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。

3つの工法を比較する

私が経営する株式会社明誠は、通常足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3つから、建物ごとに最適な組み合わせをご提案しています。

工法 仮設費 工期 居住者への影響 向いている建物
通常足場工法 大(総額の20〜25%目安) 長い 大(洗濯物・防犯・日照) 全面改修が必要な建物、複雑な形状
ロープアクセス工法 小(足場費が不要) 短い 小 高層、敷地が狭い、部分補修、コスト最重視
ハイブリッド工法 中 中 中 部位ごとに要否が分かれる大規模・複雑物件

ロープアクセスにも向き不向きがあります。外壁全面のタイル張替えのように、面としての作業量が膨大な工事は足場のほうが結果的に安いこともある。そこを正直に申し上げるのが、3工法を持っている会社の役割だと私は思っています。

ピンポイント施工という考え方や、バリュー工法によるコスト最適化についても、それぞれのページにまとめています。ロープアクセス工法の詳細はこちらのページをご覧ください。

積立金が足りないとき、工法の選択肢が効いてきます

修繕積立金が計画額に届いていない管理組合は、決して珍しくありません。そのとき取れる手は3つです。

  1. 一時金を徴収する
  2. 借入れをする(住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資)
  3. 工法を変えて、必要な工事だけを適正な価格で行う

私が最初に検討していただきたいのは3番です。1番と2番は、区分所有者の合意形成に時間と摩擦を伴います。3番は、同じ工事内容をより安い仮設で実現できないかという技術の問題です。まず技術で解けるところまで解いてから、お金の話をする。これが順序だと考えています。

大規模修繕工事のご案内、管理組合さま向けのサービス、マンション・ビルオーナーさま向けのサービス、ホテル・旅館オーナーさま向けのサービスも、それぞれ整理しております。西伊豆は観光地でもありますので、宿泊施設をお持ちの方はホテル向けのページもご覧ください。


2026年度・西伊豆町の逆算カレンダー

補助金は「いつ動くか」で結果が変わります。9月時点から逆算した、私なりの進め方です。

時期 やること
2026年9〜10月 竣工図・確認済証の所在確認。建設課へアスベスト調査補助の電話確認。県のマンション管理士無料派遣(申込期限11月14日)を検討
2026年10〜11月 アスベスト含有調査の交付申請 → 交付決定 → 調査着手。三島(9/12)・沼津(10/3)・熱海(10/17)のセミナーへ理事が参加
2026年11〜12月 調査結果を踏まえた劣化診断。浄化槽の更新要否を環境課へ相談
2027年1〜2月 修繕計画案の作成。管理計画認定の事前確認適合証ルートを検討(手数料4,000円)
2027年3〜4月 総会で予算承認。新年度の町・県の制度改正を確認
2027年5月以降 浄化槽・改修工事の交付申請(着工前) → 交付決定 → 着工

一番の落とし穴は、「工事を発注してから補助金を探す」という順番です。アスベスト調査も浄化槽も、着手前の申請と交付決定が前提になっています。順番を逆にすると、制度そのものが使えなくなります。


見積書で私が見る、5つのポイント

補助金の話とセットで、見積書の読み方もお伝えしておきます。

  1. 仮設費が総額の何%か:20〜25%を超えていたら、工法の再検討余地があります
  2. 「一式」の多さ:数量(㎡・m・箇所)が書かれていない項目が多い見積書は、後から増減しやすい
  3. 下地補修の数量が「想定」か「実測」か:想定のままだと、着工後に追加費用が出ます
  4. シーリングが「打ち増し」か「打ち替え」か:単価も耐久年数も違います
  5. 保証の年数と範囲:塗膜の保証か、防水の保証か、材料メーカー保証か施工店保証か

この5つを聞くだけで、業者の姿勢はかなり分かります。答えに詰まる会社は、避けたほうがよいと私は思っています。


西伊豆の建物に、12年周期は当てはまるのか

「12年」は目安であって、正解ではありません

大規模修繕は12年周期——この数字は、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」等で示されてきた考え方が広まったものです。ただし私は、この数字をそのまま西伊豆町に当てはめることには慎重です。

理由は単純で、劣化のスピードは立地で変わるからです。内陸の住宅地に建つマンションと、駿河湾に面して西風と塩分を浴び続けるマンションでは、同じ材料・同じ施工でも劣化の進み方が違います。

私の経験上、海に近い建物では次の部位が先に来ます。

部位 内陸との違い 対応の考え方
鉄部(手すり・避難ハッチ・扉枠) 錆の進行が明らかに早い 塗装周期を短く。錆が出てからでは断面欠損が進む
シーリング(目地) 紫外線+熱で硬化・ひび割れが早い 打ち替えを前提に予算化
屋上防水の立上り 風で飛来物が当たり傷がつく 定期的な目視点検で早期発見
アルミサッシまわり 塩分の付着で腐食・固着 清掃と可動部の点検を管理業務に組み込む

だから私は「12年で全部やる」ではなく、「6年目に点検して、部位ごとに前倒しする/後ろ倒しする」という考え方をお勧めしています。

前倒しすべきサインと、待ってよいサイン

理事会でよくいただく質問が「まだ早いのでは」というものです。私の判断基準を正直に書きます。

前倒しすべきサイン

  • 外壁に黒い筋(雨水が伝った跡)が縦に伸びている
  • タイルを叩いたときに空洞音がする箇所が増えた
  • バルコニーの天井(上階の床裏)に白い析出物(エフロレッセンス)が出ている
  • 鉄部の錆が塗膜を押し上げて膨れている

待ってよいサイン

  • 塗膜のわずかな艶引け(美観の問題で、防水性能は残っている)
  • 目地の細かい表面ひび(切れて貫通していなければ、経過観察でよい場合がある)
  • 屋上の水たまり(防水層が健全なら、勾配の問題として別途検討)

この見極めは、写真だけでは難しい。触って、叩いて、めくってみないと分からない部分があります。だから私たちは、調査に費用をいただかない方針を続けています。判断材料を持たずに数百万円の決議をするほうが、管理組合にとって損だと考えているからです。


総会にかける前に、理事会で確認したい7項目

最後に、実務のチェックリストを置いておきます。私が理事会に呼ばれたとき、順番に確認していく項目です。

  1. 竣工図・確認済証・検査済証はどこにあるか(アスベスト調査の補助申請にも必要です)
  2. 過去の修繕履歴が一覧になっているか(いつ、どこを、いくらで直したか)
  3. 修繕積立金の残高と、次回工事の想定額の差はいくらか
  4. 見積りは2社以上取れているか(工法が違う会社を混ぜると比較の質が上がります)
  5. 仮設費が総額の何%か(20〜25%を超えるなら工法の再検討余地あり)
  6. 町・県・国の制度で、着工前申請が必要なものを洗い出したか
  7. 総会の議案書に、工法の選択理由が書かれているか(「安いから」ではなく「この建物にはこの理由で」と書けるか)

7番目が抜けている議案書を、私は本当によく見ます。区分所有者の方は工事の専門家ではありませんから、「なぜこの工法なのか」を1行で説明できる議案書でないと、質疑で止まります。逆に、そこが書けていれば、総会は驚くほどスムーズに進みます。


よくある質問(FAQ)

Q1. 西伊豆町に、分譲マンションの大規模修繕そのものへの補助金はありますか?
A. 2026年9月時点で、共用部の大規模修繕工事費に直接充当できる町独自の補助金は確認できません。ただしアスベスト含有調査(全額・1棟25万円まで)と合併処理浄化槽設置(最大286万7,000円)は、共同住宅でも活用の余地があります。

Q2. アスベスト調査の補助は、マンションでも使えますか?
A. 対象は「町内の民間建築物で、当補助金以外の経費補助を受けていないもの」とされており、共同住宅も民間建築物に含まれ得ます。ただし個別の判断が必要ですので、調査に着手する前に建設課建設係(0558-55-0212)へご相談ください。(出典:西伊豆町)

Q3. 管理計画認定の申請先は西伊豆町ですか?
A. いいえ、町域のため静岡県(くらし・環境部建築住宅局住まいづくり課)が窓口です。手数料は令和8年4月1日に改定され、事前確認適合証ありで4,000円、なしで28,100円です。(出典:静岡県)

Q4. 空き家改修等補助金は、町外に住む法人オーナーでも使えますか?
A. 公式ページに「町民の方だけでなく、町外の方も法人も対象となります」と明記されています。ただし空き家情報バンク登録が前提で、施工は町の資格登録を受けた町内施工業者に限られます。

Q5. 足場を組む場所がない建物です。どうすればよいですか?
A. ロープアクセス工法(無足場工法)や、足場と併用するハイブリッド工法で対応できる場合があります。まず現地を拝見して、部位ごとにどの工法が適するかを判断します。お問合せフォームからご相談ください。調査・お見積りは無料です。


この記事のポイントまとめ

  • 西伊豆町のアスベスト含有調査補助は民間建築物対象・全額(1棟25万円まで)
  • 合併処理浄化槽の補助は31〜50人槽で新設279万7,000円まで届く
  • 空き家改修等補助金は法人・町外の方も対象、ただし町内施工業者限定
  • 管理計画認定の窓口は静岡県、手数料は令和8年4月1日改定で4,000円/28,100円
  • マンション管理士の無料派遣は10件枠・申込期限11月14日

最後に

西伊豆町は人口6,275人・3,407世帯(令和8年8月1日現在、西伊豆町)の町です。マンションの数は多くありません。だからこそ、制度も「マンション向け」と銘打っては用意されていない。

けれども、今回調べてみて私が感じたのは、西伊豆町の制度は「建物」を見ているということでした。木造住宅だけでなく民間建築物のアスベストを見ている。5人槽だけでなく50人槽までの浄化槽を見ている。空き家の所有者に法人を含めている。町の規模から考えると、これは相当に実務的な設計だと思います。

制度を使うか使わないかは、知っているかどうかで決まります。まずは役場に電話を一本。それだけで、数十万円から数百万円が動く可能性があります。

私たちにできるのは、その先の「どう直すか」の部分です。足場が組めるのか、ロープアクセスで足りるのか、両方を組み合わせるのが得か。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。

ロープアクセス工法の一般的な安全基準や施工事例は、ロープアクセスドットコムでも解説しています。あわせてご覧ください。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開しています。

最終更新:2026年9月9日


出典・参考資料

南伊豆町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

Q. 静岡県賀茂郡南伊豆町の分譲マンションや賃貸物件で、2026年度(令和8年度)に大規模修繕を計画しています。町から出る補助金はありますか。
A. 分譲マンションの共用部そのものを対象にした南伊豆町独自の補助金は、2026年9月5日時点で確認できません。ただし南伊豆町には、工事の内容ではなく「どう組み合わせるか」で可否が変わる制度があります。中心は「南伊豆町住宅リフォーム振興事業」(補助率20%・上限20万円)。この制度の対象工事表には、「外壁のみの塗装工事」は否とはっきり書かれています(出典:南伊豆町住宅リフォーム振興事業 概要)。同じ塗装でも、屋根やといを一緒に直せば対象になる。この一行を知っているかどうかで、20万円が動きます。

2026年9月5日 更新


この記事の結論:南伊豆町で押さえるべきことは「3つ」

先に結論から書きます。南伊豆町で建物の修繕を考えるとき、押さえるべきことは3つです。

  1. 「外壁だけ塗る」と補助が出ない。「外壁+屋根+とい」なら出る
    南伊豆町住宅リフォーム振興事業の対象工事一覧では、「屋根瓦の取替え、外壁の補修」は可、「外壁のみの塗装工事」は否、そして修繕の項目には「塗装工事(外壁のみを行う場合を除く。)」と書かれています。工事の切り出し方ひとつで、補助率20%・上限20万円の可否が変わります。
  2. 南伊豆町の制度は、ほぼすべてが「町内登録業者」を条件にしている
    住宅リフォーム振興事業は「資格登録を受けた町内施工業者が自ら行う改修工事」が条件。空き家バンクリフォーム補助金も「町内施工業者の請負による工事」が条件です。制度を使うつもりなら、業者選定より先に登録状況の確認が要ります。
  3. 人口7,034人・3,768世帯の町で、共用部の相談先は町ではなく静岡県
    南伊豆町は「町」なので、マンション管理計画認定制度の認定権者は静岡県です。そして静岡県は令和8年度、マンション管理士の無料派遣を10件だけ実施しています。申込期限は令和8年11月14日(土)。9月に読んでいるなら、まだ間に合う話です。

以下、順番に一次情報で確認していきます。

制度名 補助率・限度額 共用部・賃貸に使えるか 窓口
南伊豆町住宅リフォーム振興事業 工事費の20%・上限20万円(工事費10万円以上) 現に居住する自己所有住宅が対象。賃貸用・共用部は対象外。外壁のみの塗装も対象外 地域整備課 0558-62-6277
南伊豆町空き家バンクリフォーム補助金 所有者=1/3・上限50万円/入居者=2/3・上限80万円 空き家バンク登録物件のみ。町内施工業者要件あり 企画課 0558-62-6288
同・家財処分 所有者=2/3・上限30万円/入居者=1/2・上限20万円 同上。居住部分に係るものに限る 企画課 0558-62-6288
木造住宅耐震改修助成(プロジェクトTOUKAI‐0) 115万円/戸(補強計画一体型) 昭和56年5月31日以前の木造住宅。RC造マンションは対象外 地域整備課 0558-62-6277
ブロック塀等耐震改修促進事業(撤去) 「長さ(m)×9,200円」と工事費の少ない方の1/2・上限10万円 道路や避難地に面する塀。敷地内の該当塀なら可能性あり 地域整備課 0558-62-6277
ブロック塀等耐震改修促進事業(改善) 「長さ(m)×12,800円」と工事費の少ない方の1/3・上限16万6千円 同上。新設側に設置基準あり 地域整備課 0558-62-6277
老朽危険家屋等解体撤去補助金 対象経費の4/5以内。所有者・相続人=50万円/行政区代表者=300万円 法人・不動産業を営む方は対象外と明記 防災課 0558-62-6211
合併処理浄化槽設置補助金 5人槽=386千円/7人槽=482千円 販売や賃借を目的とした住宅は対象外。区域限定 生活環境課 0558-62-6270
空き店舗対策事業補助金 改装=上限50万円/家賃=月5万円×最大3か月 空き店舗を借りて新規開業する事業者向け 企画課 0558-62-6288
マンション管理計画認定制度 認定制度(補助ではない)。手数料4,000円〜28,100円 町域のため静岡県が認定権者 静岡県住まいづくり課 054-221-3084

南伊豆町の建物が置かれている前提を、3つの数字で

制度の話に入る前に、南伊豆町という町の輪郭を数字で押さえておきます。私は現場を見に行く前に、いつもその町の人口と世帯数を見るようにしています。建物がどう使われているかが、そこから見えてくるからです。

数字①:人口7,034人/世帯3,768世帯(令和8年8月1日現在)

2026年(令和8年)8月1日現在、南伊豆町の人口は7,034人(日本人住民6,934人・外国人住民100人)、世帯数は3,768世帯です(出典:令和8年度南伊豆町地区別・男女別人口)。

1世帯あたり1.87人。単身と二人暮らしが中心の町です。同じ資料の4月1日時点は7,061人でしたから、4か月で27人減っています。年率に直すと約1.1%の減少です。

もうひとつ、この表を見ていて私が気になったのは、外国人住民の動きです。4月1日に51世帯80人だったものが、8月1日には71世帯100人になっています。4か月で20人増。数としては小さいのですが、減り続ける町の中で増えている数少ない層であることは、賃貸物件を持つオーナーさまにとって無視できない事実だと思います。

数字②:35の行政区が6地区に分かれている

南伊豆町は、南崎・竹麻・南中・三坂・三浜・南上の6地区、合わせて35の行政区で構成されています。人口の多い区は湊(912人)、下賀茂(822人)、加納(524人)、青市(514人)。一方で吉田は11人、落居は18人、平戸は28人です(出典:令和8年度南伊豆町地区別・男女別人口)。

同じ町の中に、800人規模の集落と、10人台の集落が同居している。この差は、修繕工事の実務にそのまま効いてきます。

  • 資材を積んだ4トン車が入れるかどうかが、集落によって違う
  • 足場を組む前に、隣家との距離を実測しないと図面どおりにいかない
  • 仮置き場が取れない現場が普通にある

私は伊豆半島の現場でこれを何度も経験しました。図面上は2メートル空いているはずの隣地境界が、実際に行くと1.2メートルしかない。石積みの擁壁が張り出していて、足場の建地が立たない。こういう現場では、着工前の実測が工程表そのものを左右します。

数字③:昭和56年5月31日という境界線

南伊豆町の無料耐震診断(わが家の専門家診断事業)の対象は「昭和56年5月31日以前に建築された既存木造住宅」です(出典:南伊豆町 無料耐震診断・耐震補助制度 プロジェクト「TOUKAI‐0」)。

この日付は新耐震基準の施行日で、全国共通の線引きです。老朽危険家屋等解体撤去補助金でも、対象は「昭和56年5月31日以前に着工された一戸建て住宅または併用住宅」と定められています(出典:南伊豆町 老朽危険家屋等解体撤去補助金について)。

つまり南伊豆町の建物支援は、この一本の線を軸に組み立てられているということです。管理組合の理事さまが個人で古い家屋も持っている場合、そちらは診断・改修・解体のいずれの制度も射程に入ります。マンションの理事会の話と、ご自身の実家の話は、同じ窓口で相談できることが少なくありません。


【背骨①】南伊豆町住宅リフォーム振興事業——「外壁だけ塗る」と出ない補助金

この記事で一番お伝えしたいのが、この制度です。

制度の骨格

南伊豆町住宅リフォーム振興事業は、町内施工業者を使って住宅の安全性・耐震性・居住性を高めるリフォームを行う場合に、工事費の一部を町が補助する制度です(出典:南伊豆町住宅リフォーム振興事業 概要)。

項目 内容
補助率 20%(1,000円未満は切捨)
補助額上限 20万円
対象工事費 10万円以上(消費税等を除く)
対象者 町税等の滞納がなく、南伊豆町に1年以上住所を有し、対象住宅の所有者であって現に居住している者
回数 同一住居・同一人について1回限り
施工者 資格登録を受けた町内施工業者が自ら行う改修工事
申請時期 工事着手前に申請。完了後14日以内かつ申請年度の3月10日までに報告
予算 限りあり。予算がなくなり次第、受付終了

補助率20%・上限20万円ということは、工事費100万円で20万円に到達します。100万円を超える工事なら、どこまで大きくしても補助額は20万円で頭打ちです。

対象工事表に書かれている「否」の意味

この制度の要綱には、対象工事の可否がかなり細かく例示されています。私が読んでいて手が止まったのが、次の並びです。

工事内容 可否 備考(要綱の記載)
屋根瓦の取替え、外壁の補修 可 —
壁紙張替え等の内装工事 可 —
ガラス(サッシ)の取替え工事 可 —
住宅に付随するバルコニー、ベランダ、テラスの設置、修繕 可 ウッドデッキ等は除く
フローリング等の床張替え工事 可 —
外壁のみの塗装工事 否 他工事と共であれば可
門扉、ブロック壁の設置 否 住宅ではないため対象外
車庫の増改築 否 住宅ではないため対象外
造園工事、植木剪定 否 リフォームではないため対象外
住宅の一部又は全部を取り壊す工事 否 リフォームではないため対象外

(出典:南伊豆町住宅リフォーム振興事業 概要)

「外壁のみの塗装工事 → 否。ただし他工事と共であれば可」。

そして修繕の定義側にも、「塗装工事(外壁のみを行う場合を除く。)」という書き方で同じ趣旨が明記されています。

これは、外壁塗装を生業にしてきた私にとって、たいへん示唆的な一行です。町としては「塗り替えだけの美観工事に補助は出さない。建物の耐久性・安全性に踏み込む工事なら出す」という思想なのだと読めます。

では、どう組めば対象になるのか

正直に申し上げます。ここは工事会社の腕の見せどころです。

住宅の劣化は、外壁だけで進むものではありません。私が現場で見てきた限り、外壁にひび割れが出ている建物は、ほぼ例外なく次のどこかも傷んでいます。

  • とい(雨どい):紫外線で硬化し、継手が外れかけている
  • 屋根:瓦のずれ、棟の漆喰の痩せ、スレートの反り
  • シーリング(目地に詰めたゴム状の防水材):肉痩せ、切れ
  • バルコニーの床防水:膨れ、めくれ
  • 軒天(のきてん、屋根の裏側):雨漏りによる染み

外壁の塗り替えを検討する段階で、これらを一緒に点検して工事範囲に入れる。要綱の言う「他工事と共であれば可」は、そのまま建物にとって正しい直し方でもあります。私が「必ずワンセットで提案するようにしています」と申し上げているのは、補助金のためではなく、片方だけ直しても数年で同じ場所が傷むからです。

なお、この制度は現に居住している自己所有住宅が対象です。賃貸に出している物件や、分譲マンションの共用部そのものには使えません。ここは誤解のないよう、はっきり書いておきます。

「1年以上住所を有する」という条件の重み

見落とされやすいのが、対象者の要件です。「南伊豆町に1年以上住所を有する者(住民票に記載がある者)」。

移住してきて半年、家を直したい——という方は、この制度をまだ使えません。逆に言えば、移住1年目は空き家バンクリフォーム補助金、2年目以降は住宅リフォーム振興事業という順番で考えると整理がつきます。両制度は併給できない仕組み(空き家バンク側の要綱で、住宅リフォーム振興事業の対象経費に含まれているものは除くと明記)ですから、どちらを先に使うかは設計の問題です。


【背骨②】空き家バンクリフォーム補助金——所有者と入居者で額が「逆転」する

南伊豆町のもうひとつの柱が、空き家バンクリフォーム補助金です。空き家バンクに登録された物件のリフォーム工事費と家財処分費を補助します(出典:南伊豆町空き家バンクリフォーム補助金)。令和8年度の申請受付は4月1日から始まっています。

補助額の設計が面白い

区分 物件の所有者 入居者・入居予定者
リフォーム工事 工事費の1/3・上限50万円 工事費の2/3・上限80万円
家財処分 費用の2/3・上限30万円 費用の1/2・上限20万円

リフォームは入居者側が手厚く、家財処分は所有者側が手厚い。この逆転は、偶然ではないと私は読んでいます。

  • 家財処分は所有者の仕事:先代が残した家財を片づけない限り、そもそも物件が売り物・貸し物にならない。だから所有者に厚く出す
  • リフォームは入居者の負担になりがち:買った・借りた後に自腹で直すことになるから、入居者に厚く出す

制度の設計者が「どこで話が止まるか」を分かっているということです。実際、伊豆の空き家で私が相談を受けるとき、最初の壁はほぼ家財です。仏壇、桐箪笥、農機具、家族写真。これらを誰がどう処分するかで、半年止まる物件を何度も見てきました。

見落としやすい3つの条件

  1. 町内施工業者の請負であること
    リフォーム工事は「町内施工業者の請負による工事の経費であること」と明記されています。ここでいう町内施工業者とは「南伊豆町住宅リフォーム振興事業(地域整備課)において施工業者の資格登録がされている者」を指します。登録の有無は企画課(0558-62-6288)または地域整備課(0558-62-6277)で事前に確認できます。
  2. 家財処分は「一般廃棄物処理業の許可を受け、町内に事務所・事業所を有する者」
    こちらはさらに条件が絞られています。廃棄物の処理及び清掃に関する法律第7条の許可が要件です。町外の便利屋さんに頼んだ分は対象外になります。
  3. 所有者側には「3年」の縛りがある
    所有者が補助を受ける場合、補助事業完了の日から継続して3年以上空き家バンクに登録し続けるか、3年未満で入居者を決めて売買契約を結ぶか、賃貸借契約を契約期間2年以上で締結するか。いずれかを満たす必要があります。入居者側には交付後5年間継続して居住する意思が求められます。

そして「家財」「リフォーム」それぞれ1物件に対し1回まで。1人1回ではなく1物件1回なので、所有者が変わっても枠は復活しません。中古で買った物件が過去に補助を受けていた、というケースは実際に起こり得ます。取得前の確認が要ります。


【背骨③】老朽危険家屋等解体撤去補助金——50万円と300万円を分けるもの

南伊豆町の制度で、金額の桁が違うのがこれです(出典:南伊豆町 老朽危険家屋等解体撤去補助金について)。

補助対象者 補助率 上限
老朽危険家屋等の所有者(登記簿・固定資産課税台帳の登録名義人) 対象経費の4/5以内 50万円
その相続人 対象経費の4/5以内 50万円
老朽危険家屋等の存する行政区の代表者(所有者等から解体撤去の同意を受けた者) 対象経費の4/5以内 300万円

同じ工事で、6倍の差がつきます。

行政区が主体になって、地域の危険家屋を片づける場合に300万円まで出す。裏を返せば、「これは個人の資産の問題ではなく、集落の安全の問題だ」と町が認めた場合に、桁を上げる設計です。避難路をふさぐ空き家、隣家に瓦を落としそうな廃屋——南伊豆町のように道が細く、高齢化した集落が多い町では、切実な話だと思います。

ここは、はっきり注意してください

補助対象から明確に外されている方がいます。

※町税等を滞納している方、法人・不動産業を営む方、暴力団員等の方は対象外です。

不動産業を営む方は使えません。収益物件として取得した古家を壊して建て替える、という使い方は想定されていない制度です。加えて、

  • 個人所有で、所有権以外の権利(抵当権など)が設定されていないこと
  • 解体撤去後2年を経過しないうちに、建造物の建築または土地の譲渡・贈与を目的としていないこと
  • 空家になってから5年以上使用がなされていないことが常態であること

という要件があります。特に2番目は返還規定にもなっていて、解体後2年以内に建てたり売ったりすると、交付決定が取り消され、補助金の返還を求められることがあります。更地にして売る前提では使えない、と理解しておくのが安全です。


木造住宅の耐震は115万円。ただしRC造マンションは対象外

南伊豆町は静岡県のプロジェクト「TOUKAI(東海・倒壊)‐0(ゼロ)」に参加しています(出典:南伊豆町 無料耐震診断・耐震補助制度 プロジェクト「TOUKAI‐0」)。

段階 内容
無料耐震診断(わが家の専門家診断事業) 町が木造住宅耐震診断補強相談士を派遣し、無料で診断・相談。対象は昭和56年5月31日以前建築の既存木造住宅。店舗等併用住宅は、住宅部分の床面積が店舗等部分より大きい場合に対象
木造住宅耐震改修助成(補強計画一体型事業) 補強計画策定と補強工事を同一年度に連続して実施する事業。耐震評点1.0未満を1.0以上にする補強計画(評点が0.3以上向上するものに限る)が対象。補助額115万円/戸

「補強計画と補強工事を同一年度に」という条件が肝です。年度をまたぐと一体型の枠から外れます。逆算すると、年内に診断・計画まで終えて、年明けに工事着工というスケジュールでないと収まりません。9月は、ぎりぎり間に合う時期です。

ここで管理組合の方にはっきり申し上げておきます。この115万円は木造住宅が対象です。鉄筋コンクリート造(RC造)の分譲マンションには使えません。伊豆エリアの記事を読んでいて「耐震に100万円以上出るらしい」という話だけが伝わることがあるのですが、対象が違います。マンション本体の耐震は、別の枠組みで考える必要があります。

敷地内のブロック塀は、着工前申請を忘れずに

マンションや賃貸物件の敷地でも実際に効くのが、ブロック塀の制度です(出典:南伊豆町 ブロック塀の耐震改修に係る助成制度について)。

区分 補助金額
撤去 「塀の長さ(m)×9,200円」と実際の工事費を比較して少ない方の1/2。上限10万円
改善(撤去して安全な壁・フェンスを新設) 「塀の長さ(m)×12,800円」と実際の工事費を比較して少ない方の1/3。上限16万6千円

対象は「所有者が行う道路や避難地に面する危険なブロック塀等」。工事を行う前に申請手続きが必要とページに明記されています。大規模修繕の外構工事でブロック塀をやり替えるなら、着工前に地域整備課へ相談しておく。順番を間違えると、出るはずのものが出ません。

なお、新設側には設置基準があります。「安全な新しい壁やフェンス」の内容は、事前に窓口で確認しておくのが確実です。


合併処理浄化槽は「賃貸目的」だと使えない

賃貸オーナーさまにとって重要な除外規定なので、独立して書きます。

南伊豆町は、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への付け替え、または汲取り便槽から合併処理浄化槽の新設に対して補助を出しています(出典:南伊豆町 合併処理浄化槽の設置補助金について)。

人槽 補助額
5人槽 386,000円
7人槽 482,000円

金額は大きいのですが、対象者の条件にこう書かれています。

販売や賃借を目的とした住宅に設置するものでないこと

賃貸物件には使えません。加えて、

  • 補助対象区域から除かれる地区:公共下水道区域(湊・手石・下賀茂地区)、漁業集落排水区域(西子浦・東子浦・中木・妻良地区)※一部区域を除く
  • 町内に住所を有すること、町税等の未納がない世帯であること
  • 環境配慮型浄化槽を設置すること
  • 専用住宅または併用住宅(延べ床面積の1/2以上を居住用)の所有者であること

対象区域の除外は、地図で確認しないと判断できません。人口の多い下賀茂(822人)・湊(912人)・手石(485人)が下水道区域に入っているので、町の中心部はそもそも対象外という構造です。

もうひとつ、静岡県固有の運用として、戸建住宅の処理対象人員算定で、JIS A3302-2000の表2-イ「130」を令和3年4月1日から「145」として運用する、という記載があります。人槽が変われば補助額も変わります。設計段階での確認事項です。


マンション管理計画認定制度の窓口は「静岡県」です

南伊豆町は町域のため、マンション管理計画認定制度(国土交通省)の認定権者は静岡県になります。市域なら市が窓口ですが、町村部は都道府県が担います(マンションの管理の適正化の推進に関する法律に基づく制度)。

令和8年4月1日に手数料が改定されています

静岡県は令和8年4月1日付で認定申請手数料を改定しました(出典:静岡県 マンションの管理)。

事前確認適合証 長期修繕計画数 令和8年3月31日まで 令和8年4月1日から
有り 1 3,800円 4,000円
有り 2以上 3,800円+1,700円×(計画数-1) 4,000円+1,800円×(計画数-1)
無し 1 26,900円 28,100円
無し 2以上 26,900円+15,500円×(計画数-1) 28,100円+16,200円×(計画数-1)

注目していただきたいのは、事前確認適合証の有無で7倍の差がつくことです。適合証があれば4,000円、なければ28,100円。

事前確認適合証は、公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」を利用して取得します。県へ直接申請することもできますが、その場合は適合証なしの手数料が適用されます。更新時も同じ表です。先にセンターのサービスを通すのが、費用面では合理的な流れになります。

令和8年度、静岡県はマンション管理士を「10件」無料派遣します

これは9月に読む価値のある情報です。静岡県は令和8年度マンション管理組合活動活性化支援事業として、マンション管理士の無料派遣を実施しています(出典:静岡県 マンションの管理)。

項目 内容
受付件数 10件(上限に達した時点で申込終了)
派遣回数 各管理組合2回まで
申込期限 令和8年11月14日(土)まで
派遣期限 令和9年1月31日(日)まで
申込先 一般社団法人静岡県マンション管理士会(メールまたはファクス)
委託先 同上

静岡県内全域で10件です。静岡市・浜松市を含む県全体で10件ですから、決して多くありません。長期修繕計画の見直しに着手しようとしている管理組合であれば、費用ゼロで専門家の目を2回入れられる機会になります。

あわせて、令和8年度のマンション管理セミナーの県内開催予定も公表されています。伊豆エリアで開催されるのは、三島市が令和8年9月12日(土)に三島市役所、熱海市が令和8年10月予定、伊東市が令和8年12月予定の3回です。南伊豆町から三島市までは距離がありますが、伊豆縦貫自動車道を使えば日帰りできる範囲です。理事会のメンバーで手分けして、どれかに出ておく。それだけでも、次の総会での説明の厚みが変わります。

支援法人の登録制度は、静岡県では未実施

もうひとつ、制度動向として押さえておきたい点があります。令和7年5月30日に区分所有法の改正法が公布され、同年11月28日に一部施行された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」に、マンション管理適正化支援法人の登録制度が新設されました。

町の区域における登録主体は県です。ただし静岡県は「現段階では、登録制度は実施していません」と明記しています(出典:静岡県 マンションの管理)。南伊豆町の管理組合が支援法人の支援を受けたい場合、現時点では県内に登録された法人がない、という状況です。

制度は動いています。来年の話が変わる可能性は十分あります。


南伊豆町の建物を痛める3つの力

ここからが本題です。制度の話をひととおり終えたので、私の本業の話をさせてください。

南伊豆町は伊豆半島の最南端に位置し、石廊崎から弓ヶ浜、妻良、中木まで、太平洋(相模灘・駿河湾)に直接面した集落が並びます。この立地が、建物に対して3つの力を継続的に加えています。

力①:塩害(えんがい)

海から飛んでくる塩分(飛来塩分)が、外壁や鉄部に付着し続けます。塩分は空気中の水分を吸って濡れた状態を長く保つため、鉄部の腐食を加速させます。

私が伊豆の海沿いで見てきた典型的な症状は、こうです。

  • 手すり・階段の鉄部:塗膜の下から錆が膨らみ、塗膜ごと剥がれる(内部から膨れる)
  • アルミサッシ:白い粉を吹く(腐食生成物)
  • 外壁のコンクリート:中性化が進んだ箇所で鉄筋が錆び、爆裂(コンクリートが押し割られて剥落する現象)を起こす
  • 屋上の設備架台:アンカーボルト(固定用の埋込ボルト)の根元から錆が回る

内陸のマンションで12年周期でよいものが、海沿いでは10年、条件によっては8年で同じ状態になります。南伊豆町の建物を、東京の周期表で管理してはいけないというのが、私の率直な意見です。

力②:台風の直撃

伊豆半島最南端は、台風の進路にまともに乗る位置です。強風そのものよりも、私が現場で怖いと思うのは雨が横から、そして下から入ることです。

  • サッシまわりのシーリングが切れていると、水が室内側へ回る
  • 換気口・エアコンスリーブから吹き込む
  • 屋上の笠木(かさぎ、パラペット上部の被せ材)の継手から浸入し、最上階の天井に染みが出る

台風の後に「雨漏りしました」と連絡をいただく物件の多くは、その前から兆候が出ていた建物です。前回の点検で「まだ大丈夫」と判断された箇所が、一晩で限界を超える。私が一番悔しい思いをするのは、この瞬間です。

力③:紫外線と温度差

南向き・南西向きの面は、年間を通して日射を受け続けます。シーリングは硬化してひび割れ、防水層は膨れ、塗膜はチョーキング(触ると白い粉が付く状態)を起こします。

伊豆の温暖な気候は、住むには快適でも、建材にとっては過酷です。冬に凍結しない代わりに、夏の日射時間が長い。塗り替え周期は、日射面と北面で分けて考えるべきだと私はお伝えしています。全面を同時に塗るのが常識になっていますが、劣化速度が違うものを同じ周期で扱うのは、本来おかしな話です。


足場が組みにくい町で、どう修繕するか

南伊豆町の現場で、私が最初に確認するのは「足場が組めるか」です。

足場が組めない・組みにくい南伊豆町の典型条件

  • 敷地の背後が急斜面:山を削って建てているため、建物の裏に足場を立てる平場がない
  • 前面道路が狭い:資材車が停められず、荷揚げに人手と時間がかかる
  • 隣地との距離が近い:足場の建地(たてじ、垂直の支柱)が入らない
  • 海に面した面が絶壁:物理的に地面がない
  • 観光シーズンの規制:夏の弓ヶ浜、ヒリゾ浜(中木)周辺は、駐車・搬入の難易度が跳ね上がる

こういう建物に対して、私たちは3つの工法を使い分けています。

工法 概要 南伊豆町で向く場面 コスト・工期の傾向
通常足場工法 従来型の仮設足場を全面に組む 平場が確保でき、工事範囲が全面に及ぶ建物 仮設費が総額の2〜3割を占める。工期は長め
ロープアクセス工法(無足場工法) 産業用ロープで屋上から吊り下がり、足場を組まずに外壁作業を行う 背面が斜面、隣地が近い、部分補修、緊急の漏水対応 仮設費を大きく圧縮できる。着手が早い
ハイブリッド工法 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける 正面は足場、背面と海側はロープ——という建物 全面足場より総額を抑えつつ、施工品質を確保

ロープアクセス工法の技術情報や安全基準の解説は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。工法そのものを詳しく知りたい方は、そちらもご覧ください。明誠の施工内容はロープアクセス工法のご紹介でも整理しています。

私が南伊豆町の建物で、ハイブリッドを勧める理由

正直に申し上げます。全面ロープアクセスが常に最適解ではありません。

塗装の品質は、職人が安定した姿勢で、十分な時間をかけられるかで決まります。広い面をムラなく仕上げるなら、足場のほうが有利な場面は確かにあります。一方で、背面の斜面側に無理やり足場を組むと、仮設だけで数百万円が飛び、しかも組立に何日もかかります。

だから、部位で分ける。

  • 道路に面した正面・妻面 → 足場
  • 背後の斜面側、海に面した面、突出したバルコニー → ロープアクセス
  • 屋上防水・笠木 → 足場と関係なく施工可能

これがハイブリッド工法です。3つの工法を自社で持っているからこそ、建物ごとに最適な割合を設計できます。工法の考え方は明誠のコンセプトにまとめています。

賃貸マンション・ビルをお持ちのオーナーさまはビルオーナーさま向けページを、分譲マンションの管理組合さまは管理組合さま向けページをご覧ください。下賀茂温泉や弓ヶ浜周辺で宿泊施設を運営されている方には、ホテル・旅館オーナーさま向けページが参考になると思います。


南伊豆町で大規模修繕を進める、18か月の逆算表

補助金の申請時期と、工事の準備期間を重ねると、動くべき時期が見えてきます。南伊豆町の制度は「工事着手前申請」が基本なので、逆算が要ります。

時期(着工基準) やること
着工18か月前 修繕積立金の残高確認、長期修繕計画の位置づけ確認。静岡県のマンション管理士無料派遣(10件枠・令和8年11月14日締切)への申込を検討
着工15か月前 建物診断(劣化診断)の実施。海沿い物件は鉄部・シーリング・笠木を重点的に
着工12か月前 診断結果をもとに工事範囲の一次案。工法(足場/ロープ/ハイブリッド)の比較検討
着工10か月前 見積り取得。町内登録業者の確認(住宅リフォーム振興事業を使う個人所有物件がある場合)
着工8か月前 理事会で工事範囲・工法・概算を共有。ブロック塀の該否を現地確認
着工6か月前 総会議案の作成。補助金の申請書類の準備開始
着工4か月前 総会決議。各補助金の交付申請(着工前申請が原則)
着工3か月前 交付決定を待つ。決定前に着手すると対象外になる制度が複数あるため、ここは動かない
着工1か月前 居住者・テナントへの説明。仮設計画の最終確認。台風期を避けた工程の最終調整
着工 交付決定後に工事開始
完了後14日以内 住宅リフォーム振興事業は完了報告(申請年度の3月10日が最終期限)

「交付決定前に着手したものは対象としない」——これは老朽危険家屋等解体撤去補助金の要綱にある一文ですが、南伊豆町の他の制度にも同じ考え方が貫かれています。段取りを飛ばすと、金額そのものが消えます。

そして南伊豆町でもうひとつ考えるべきは、観光シーズンとの兼ね合いです。夏の海水浴シーズン(弓ヶ浜・ヒリゾ浜)と、みなみの桜と菜の花まつりの時期は、町内の交通と宿泊事情が変わります。宿泊業を兼ねる建物なら、稼働率の高い時期に足場を架けるのは避けたい。工程表は、制度の期限と繁忙期の両方を見ながら組む必要があります。


修繕積立金が足りないとき、どう考えるか

南伊豆町の規模の物件では、修繕積立金の不足は珍しくありません。私が理事長さまにお伝えしている順番は、いつも同じです。

順番①:工事範囲を「今やるべき」と「次でよい」に分ける

診断結果を見ながら、劣化の進行が速い部位から順に並べます。海沿いなら鉄部・シーリング・笠木が上位に来ます。美観のための塗り替えは、後ろに回せることが多いです。

順番②:工法でコストを削る

仮設足場は総工事費の2〜3割を占めます。ここをロープアクセスやハイブリッドに置き換えられるなら、工事範囲を削らずに総額を下げられます。私はこれを「削るのではなく、置き換える」と言っています。詳しくは低コストでの改修にまとめています。

数字を、財布の感覚に落としてみます。仮に総額3,000万円の大規模修繕で、仮設足場が25%(750万円)を占めていたとします。背面と海側をロープアクセスに切り替えて仮設費が4割圧縮できれば、300万円が浮きます。20戸のマンションなら、1戸あたり15万円。30戸なら1戸あたり10万円です。

一時金として15万円を集めるのは、総会で相当な議論になります。同じ15万円を工法の選択で生み出せるなら、そちらのほうが合意形成の負荷は軽い。私はこの比較を、理事会の資料に必ず1枚入れていただくようお願いしています。もちろん建物の形状によって圧縮できる割合は変わりますので、実際の数字は現地を見てからのご提示になります。

順番③:融資を検討する

住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資は、管理組合が借主となる融資制度です。マンション管理計画認定を受けていれば金利の引下げが適用されます。認定申請手数料が4,000円(事前確認適合証あり)であることを考えると、認定を取ってから借りるという順番に合理性があります。

また、マンションすまい・る債は積立金の運用先として、マンションライフサイクルシミュレーションは長期の資金計画づくりに使えます。いずれも住宅金融支援機構が提供しているもので、静岡県のマンション管理ページからもリンクされています。

順番④:一時金は最後の手段

区分所有者からの一時金徴収は、合意形成の負荷が最も高い選択肢です。私は最後に持ってくるようにしています。ここに行き着く前にやれることが、たいてい残っています。


私が南伊豆町の理事長さまにお伝えしていること

現場で20年やってきて、私が小規模自治体の管理組合で一番心配しているのは、「前回どうやったか」を知っている人が組織の中に残っていないことです。

3,768世帯の町で、分譲マンションの数は限られます。理事は数年で一巡し、12年周期の大規模修繕は理事の任期を軽く超えます。前回の議事録は残っていても、そのとき何に困り、なぜその業者を選び、どこで想定外が起きたのかは、書類には残りません。

だから私は、次の3つをお願いしています。

  1. 診断報告書は、写真ごと保管してください。 12年後、その写真が「どこから傷み始めたか」を教えてくれます。
  2. 見積書は、比較したもの全部を残してください。 金額だけでなく、なぜその工法にしたかの記録になります。
  3. 工事中に困ったことを、3行でいいのでメモに残してください。 次の理事会への、最良の引き継ぎです。

制度は変わります。この記事に書いた補助率や上限額も、来年度には改定されているかもしれません。ですが、建物が海風と台風と日射にさらされ続けるという事実は変わりません。制度に合わせて工事を決めるのではなく、建物の状態から工事を決めて、そこに使える制度を当てはめる。順番はこちらだと、私は考えています。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームからどうぞ。無料調査・お見積りに対応しています。


よくある質問(FAQ)

Q1. 南伊豆町に、分譲マンションの共用部を対象にした補助金はありますか。
A. 2026年9月5日時点で、共用部そのものを対象にした町独自の補助金は確認できません。使える可能性があるのは、敷地内のブロック塀に対する「ブロック塀等耐震改修促進事業費補助金」(撤去は上限10万円、改善は上限16万6千円)です。いずれも着工前の申請が必要です。

Q2. 外壁塗装に南伊豆町住宅リフォーム振興事業は使えますか。
A. 外壁のみの塗装工事は対象外です。要綱の対象工事一覧に「外壁のみの塗装工事 → 否/他工事と共であれば可」と明記されています。屋根・とい・バルコニー修繕などと組み合わせれば対象になり得ます。補助率20%・上限20万円、対象工事費は10万円以上です(出典:南伊豆町住宅リフォーム振興事業 概要)。

Q3. 賃貸に出しているアパートの修繕に、町の補助金は使えますか。
A. 住宅リフォーム振興事業は「現に居住している」自己所有住宅が対象のため、賃貸用物件には使えません。合併処理浄化槽設置補助金も「販売や賃借を目的とした住宅に設置するものでないこと」が条件です。老朽危険家屋等解体撤去補助金は不動産業を営む方が対象外とされています。賃貸物件については、工法の選択でコストを下げるアプローチが現実的です。

Q4. 移住して空き家を買いました。リフォーム補助はどちらを使うべきですか。
A. 空き家バンク登録物件であれば、入居者・入居予定者としてリフォーム工事費の2/3・上限80万円が対象になり得ます。住宅リフォーム振興事業は「町に1年以上住所を有する」ことが条件なので、移住直後は使えません。まず空き家バンク側、1年経ってから振興事業側という順番で検討すると整理がつきます。両制度の対象経費は重複できません。

Q5. マンション管理計画認定の申請先はどこですか。
A. 南伊豆町は町域のため、認定権者は静岡県(くらし・環境部建築住宅局住まいづくり課/054-221-3084)です。手数料は令和8年4月1日に改定され、事前確認適合証があれば4,000円、なければ28,100円(長期修繕計画1つの場合)。公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを経由するのが、費用面では有利です。

Q6. 静岡県のマンション管理士無料派遣は、まだ間に合いますか。
A. 令和8年度は受付件数10件、申込期限は令和8年11月14日(土)、派遣期限は令和9年1月31日(日)です。ただし定数に達し次第、早期に受付終了とされています。申込先は一般社団法人静岡県マンション管理士会(メールまたはファクス)。各管理組合2回まで派遣を受けられます。

Q7. 海沿いのマンションは、何年周期で修繕すべきですか。
A. 一般的な大規模修繕の周期は12年前後とされますが、飛来塩分の影響を受ける立地では鉄部・シーリングの劣化が先行します。私の経験では、海沿いの建物は鉄部の塗り替えを短い周期で回し、外壁全面の塗装は診断結果に応じて判断する形が現実的です。まずは劣化診断で、部位ごとの残存性能を把握することをお勧めします。


この記事のポイントまとめ

  • 南伊豆町独自のマンション共用部補助金は確認できず。使えるのは周辺制度
  • 住宅リフォーム振興事業は補助率20%・上限20万円。外壁のみの塗装は対象外
  • 空き家バンクリフォーム補助は入居者2/3・80万円、所有者1/3・50万円と非対称
  • 老朽危険家屋の解体は所有者50万円・行政区代表者300万円。不動産業者は対象外
  • マンション管理計画認定の窓口は静岡県。適合証の有無で手数料が7倍変わる
  • 静岡県のマンション管理士無料派遣は令和8年度10件枠・11月14日締切
  • 海沿い・斜面地の南伊豆町では、ハイブリッド工法が仮設費の圧縮に効く

執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円および静岡県で、通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3つを建物特性に応じて提案できる改修会社です。日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板などの専門職が加盟しています。

最終更新:2026年9月5日

ご注意:本記事の補助金・助成制度の内容は2026年9月5日時点で公開されている情報にもとづきます。制度は年度途中でも変更・終了する場合があり、予算の上限に達した時点で受付が締め切られる制度もあります。申請にあたっては、各窓口で最新の要綱をご確認ください。


出典・参考資料

関連リソース


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修繕積立金の不足で1億円超の借入も|2026年の回避策

修繕積立金の不足はなぜ起きるのか|まず結論からお伝えします

Q. 修繕積立金が足りず、大規模修繕で1億円以上の借入をする管理組合が出ています。うちは大丈夫でしょうか?

A. 国の統計では、計画上の積立額に対して現在の積立額が不足しているマンションは36.6%、つまりおよそ3組合に1組合です(出典:国土交通省令和5年度マンション総合調査結果)。不足を放置したまま工事時期を迎えると、選択肢は「一時金」「借入」「工事の縮小・先送り」の3つに絞られます。ただし、その前に検討できる4つ目の選択肢があります。それが「工事の仕組みそのものを見直して、工事費の側を下げる」という発想です。

私は建設・改修の現場に20年近く身を置いてきました。理事長さまから「積立金が足りない」とご相談をいただくとき、最初にお聞きするのは残高ではなく、前回の見積書に「仮設工事」がいくら計上されていたかです。理由は本文でご説明しますが、ここが総工事費のおよそ2割を占めるからです。

この記事では、公的な一次情報だけを使って、次の5点を整理します。

  1. 修繕積立金の不足は今どのくらい深刻なのか(国交省の最新データ)
  2. なぜ足りなくなるのか(4つの構造的な理由)
  3. 大規模修繕の費用相場と、自分のマンションの積立金が適正かの判定方法
  4. 借入を検討する前に試せる、工事費そのものを下げる方法
  5. 値上げを総会で通すための、説明資料の組み立て方

最終更新:2026年9月5日


修繕積立金の不足の実態|国の統計が示す3つの数字

3組合に1組合が計画未達、うち3分の1は「20%超の不足」

国土交通省は5年に一度、マンション管理の実態調査を行っています。最新の令和5年度調査(2024年6月21日公表)の結果は次のとおりです。

項目 数値 前回調査比
計画に対して積立額が不足しているマンション 36.6% +1.8ポイント
そのうち、不足割合が20%を超えるマンション 11.7% -
長期修繕計画(計画期間25年以上)に基づき積立額を設定している割合 59.8% +6.2ポイント
長期修繕計画を作成している管理組合 88.4% -2.5ポイント

(出典:国土交通省令和5年度マンション総合調査結果概要)

注目していただきたいのは2行目です。不足しているマンションのうち、およそ3分の1が「20%超の不足」という水準にあります。仮に工事費が1億円の規模であれば、2,000万円以上の穴が空いている計算になります。冒頭で触れた「1億円超の借入」という事例は、決して特殊なケースではないということです。

積立金の平均は月13,054円。ただし「平均」では判断できない

同じ調査によると、駐車場使用料等からの充当額を除いた月/戸当たりの修繕積立金の平均額は13,054円でした(総額ベースでは13,378円)。参考までに、月/戸当たり管理費の平均は11,503円です。

ただ、私はこの「平均13,054円」という数字だけを見て安心も心配もしないでください、と申し上げています。マンションの修繕積立金の適正額は、戸数ではなく専有面積と建物規模で決まるからです。判定方法は後の見出しで具体的にご説明します。

管理組合の将来不安、3位が「修繕積立金の不足」

同調査では、管理組合運営における将来への不安として次の順位が出ています。

  • 1位:区分所有者の高齢化(57.6%)
  • 2位:居住者の高齢化(46.1%)
  • 3位:修繕積立金の不足(39.6%)

そして「管理に関して取り組むべき課題」の1位は「修繕積立金の積立金額の見直し」(36.2%)、2位が「長期修繕計画の作成又は見直し」(33.0%)でした。

つまり、多くの管理組合は問題をすでに認識しているのです。認識しているのに動けない。ここに、この問題の本質があります。


なぜ足りなくなるのか|4つの構造的な理由

理由1:新築時の設定が低い「段階増額積立方式」が47.1%

修繕積立金の積み立て方には、大きく2つの方式があります。

方式 内容 採用割合(令和5年度調査)
均等積立方式 計画期間中、同額を積み立て続ける 40.5%
段階増額積立方式 当初を低く抑え、段階的に値上げする 47.1%

国土交通省のマンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年6月改定)は、「将来にわたって安定的な修繕積立金の積立てを確保する観点からは、均等積立方式が望ましい方式といえます」と明記しています。段階増額積立方式は「増額しようとする際に区分所有者間の合意形成ができず修繕積立金が不足する事例も生じている」と、リスクをはっきり指摘しているのです。

同ガイドラインは令和6年6月の改定で、段階増額積立方式を採る場合の目安も新たに示しました。

段階増額積立方式における月あたりの徴収金額は、均等積立方式とした場合の月あたりの金額を基準額とし、計画の初期額は基準額の0.6倍以上、計画の最終額は基準額の1.1倍以内とする。

新築時の積立金が「均等にした場合の6割」を下回っている物件は、この目安から外れているということになります。ご自身のマンションの長期修繕計画をお持ちであれば、一度この0.6倍・1.1倍で検算してみてください。

理由2:工事費が上がり続けている

積立計画を作ったときの単価と、実際に発注する時点の単価が違う。これが2つ目の理由です。

国土交通省が公表した令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価は、全国全職種の加重平均で25,834円となり、初めて25,000円を超えました。14年連続の上昇で、全国全職種の単純平均では対前年度比+4.5%です(出典:国土交通省令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について)。

大規模修繕工事で中心になるのは、とび工(仮設工事)・防水工(防水・シーリング工事)・塗装工(塗装工事)の主要3工種です。修繕積立金ガイドラインも、労務費について「建設業の担い手不足や技能労働者の就労環境の変化等により変動する可能性がありますので、必要に応じて上昇分について考慮することも重要です」と述べています。

10年前に作った長期修繕計画の単価が、今そのまま通用するとは考えにくい。これは業界の実感でもあり、公的なデータが裏づけている事実でもあります。

理由3:長期修繕計画の見直しが追いついていない

修繕積立金ガイドラインは、5年程度ごとの長期修繕計画の見直しを求めています。令和5年度調査では「5年毎を目安に定期的に見直している」管理組合が63.2%まで増えました(前回56.3%)。改善はしていますが、裏返せば4割近くは5年ごとの定期見直しができていないということです。

なお同ガイドラインは、令和6年6月の改定で見直しの理由に「工事費の高騰等」を明示的に加えました。制度の側も、値上がりを前提に計画を組み直すべきだという姿勢を打ち出しています。

理由4:高齢化で、値上げの合意形成が難しくなる

令和5年度調査では、70歳以上の世帯主の割合が25.9%(前回22.2%)へ増加し、昭和59年(1984年)以前に完成したマンションでは55.9%、つまり過半数に達しています。年金生活に入られた方が多数を占める組合で「月々の積立金を1.5倍にします」と提案するのが、どれほど難しいことか。私は総会の場で何度も目にしてきました。

ここが重要な点です。高齢化が進んだマンションほど、値上げ幅を小さく抑える工夫が必要になる。そして値上げ幅を抑えるには、分母である工事費の側を下げるしかありません。


大規模修繕の費用相場|戸あたり・㎡あたりの目安

1回目の工事は戸あたり中央値110.2万円

国土交通省は令和3年度に、200社・818件の工事事例を集計したマンション大規模修繕工事に関する実態調査を公表しています。戸あたりの工事金額は次のとおりです。

工事回数 下位25%値 中央値 上位25%値
1回目(n=331) 90.9万円/戸 110.2万円/戸 134.0万円/戸
2回目(n=194) 87.8万円/戸 106.1万円/戸 129.8万円/戸
3回目以上(n=242) 76.8万円/戸 97.0万円/戸 125.7万円/戸

全体では「100〜125万円/戸」が27.0%と最も多く、次いで「75〜100万円/戸」が24.7%です。床面積あたりでは「1.0〜1.5万円/㎡」が33.4%で最多でした。

なお、この調査の工事金額には共通仮設費は含まれていませんし、消費税相当額も含みません。実際の総額はこれより上振れる点にご注意ください。「うちは相場より高いのでは」と感じたときは、まず見積書の条件がこの調査の定義と揃っているかを確認する必要があります。

修繕周期は12〜15年が約7割

同調査によると、平均修繕周期は「13年」が最も多く、全体の約7割が12〜15年周期での実施でした。工事回数別の平均は、1回目が15.6年、2回目が14.0年、3回目が12.9年で、回数を重ねるほど周期が短くなる傾向が見られます。

築年数の中央値は、1回目が築15年、2回目が築28年、3回目以上が築40年です。「12年周期」という言葉が独り歩きしていますが、実態としては12〜15年の幅で、しかも後半になるほど間隔が詰まっていく。ここは長期修繕計画を作り直すときの現実的な前提になります。

3分でできる、積立金の適正額チェック

修繕積立金ガイドラインは、専有面積1㎡あたりの月額単価で目安を示しています(機械式駐車場分を除く。366事例を分析したもの)。

地上階数/建築延床面積 事例の3分の2が包含される幅 平均値
20階未満・5,000㎡未満 235〜430円/㎡・月 335円/㎡・月
20階未満・5,000〜10,000㎡未満 170〜320円/㎡・月 252円/㎡・月
20階未満・10,000〜20,000㎡未満 200〜330円/㎡・月 271円/㎡・月
20階未満・20,000㎡以上 190〜325円/㎡・月 255円/㎡・月
20階以上 240〜410円/㎡・月 338円/㎡・月

使い方は簡単です。長期修繕計画の「計画期間全体で集める修繕積立金の総額+計画期間当初の残高+専用使用料等からの繰入総額」を、総専有床面積と計画期間の月数で割る。その結果を上の表と見比べます。

たとえば専有70㎡・地上10階・延床7,000㎡のお住まいなら、目安の平均値は252円/㎡・月ですから、月額17,640円が一つの水準です。機械式駐車場がある場合は、機種ごとの1台あたり月額(2段昇降式なら6,450円/台・月など)×台数÷総専有床面積を加算します。

ただし、ガイドライン自身が「この幅に収まっていないからといって、その水準が直ちに不適切であると判断されることになるわけではありません」と断っています。建物の形状、立地、共用施設の内容で必要額は変わります。目安はあくまで会話の出発点として使ってください。


借入は悪ではない。ただし順番を間違えない

管理組合が使える公的融資という選択肢

独立行政法人住宅金融支援機構は、管理組合が申し込めるマンション共用部分リフォーム融資(マンションすまい・る融資)を扱っています。申込時の金利が全期間固定で適用される仕組みで、返済期間は原則として1年以上10年以内ですが、耐震改修・浸水対策・省エネルギー対策・給排水管取替・玄関またはサッシ取替・エレベーター取替または新設・アスベスト対策・機械式駐車場解体のいずれかを行う場合は20年以内まで延長できます。さらにそのうち耐震改修・浸水対策・省エネルギー対策のいずれかを行い、かつマンション管理計画認定を取得している場合は35年以内まで可能です。

ご利用には機構が承認した保証機関の保証等が必要で、2026年4月時点では(公財)マンション管理センター、(一財)住宅改良開発公社、(公社)全国市街地再開発協会の3機関が承認を受けています。金利は毎月見直されますので、検討時は必ず機構の最新の金利情報をご確認ください。

正直に申し上げます。借入そのものは悪いことではありません。劣化を放置して被害が拡大するほうが、結果として高くつくからです。雨水が躯体に回り、鉄筋が錆びて膨張し、コンクリートを押し割る。ここまで進むと補修範囲は一気に広がります。

借りる前に、必ず試していただきたい3つのこと

とはいえ、借入は将来の組合員に負担を先送りする行為でもあります。私は理事長さまに、借入額を決める前に次の3つを試していただくようお願いしています。

  1. 長期修繕計画を最新の単価で作り直す(10年前の単価のままなら、そもそも見積比較の土俵に乗っていません)
  2. 工事範囲を「必要」と「望ましい」に仕分ける(同時にやると効率が良い工事と、次回に回せる工事を分ける)
  3. 仮設計画から見直す(ここが本題です。次章でご説明します)

この3つをやってから借入額を出すと、当初の想定から金額が変わることが少なくありません。


費用を下げる最大の急所は「仮設足場」|総工事費の22.3%

国の実態調査が示す、仮設工事の比率

ここからが本題です。先ほどの令和3年度実態調査は、総工事金額に対する内訳も集計しています。

区分 全体 1回目 2回目 3回目以上
建築系工事 59.0% 60.3% 63.6% 58.8%
仮設工事 22.3% 22.8% 19.4% 25.3%
諸経費① 9.3% 9.5% 9.4% 9.6%
設備系・外構・その他 9.4% 7.7% 7.6% 6.3%

(出典:国土交通省 令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査。四捨五入のため合計は100%になりません)

仮設工事が、総工事金額のおよそ2割を占めています。 しかも工事回数が増えるほど比率が上がり、3回目以上では25.3%に達します。

一方で、実際に建物を直している建築系工事の内訳を見ると、外壁塗装24.5%、床防水18.6%、屋根防水13.4%、外壁タイル12.9%、シーリング12.0%という配分です(全体)。

つまり管理組合は、「建物を直す費用」とほぼ別枠で、「職人を高所まで運ぶための費用」に総額の2割を払っていることになります。私が見積書で真っ先に仮設工事の欄を見るのは、このためです。

国も認めている「足場費が工事費を押し上げる」という構造

これは私が営業のために言っているのではありません。国土交通省の修繕積立金ガイドラインが、修繕工事費の変動要因として次のように明記しています。

建物が階段状になっているなど複雑な形状のマンションや超高層マンションでは、外壁等の修繕のために建物の周りに設置する仮設足場やゴンドラ等の設置費用が高くなるほか、施工期間が長引くなどして、修繕工事費が高くなる傾向があります。

同ガイドラインが地上20階以上の目安を別枠(平均338円/㎡・月)で示しているのも、「外壁等の修繕のための特殊な足場が必要となる」ことが理由として挙げられています。足場は、公的に認められたコスト要因なのです。

ロープアクセス工法(無足場工法)という選択肢

ロープアクセス工法とは、産業用のロープと下降器を用いて、職人が屋上から直接ロープで降下しながら外壁の補修・塗装・防水・タイル補修などを行う工法です。仮設足場を組まないため「無足場工法」とも呼ばれます。

管理組合・オーナーさまにとっての実務的な違いは、次の3点に集約されます。

  • 足場の架設・解体費と、その工期がまるごと不要になる部分がある
  • バルコニーや窓まわりが足場と養生シートで囲われないため、居住者の生活影響が小さい(洗濯物、採光、通風、そして防犯)
  • 必要な箇所にピンポイントで入れるため、部分補修や緊急対応に強い

とくに3つ目は、台風シーズンのこの時期に効いてきます。9月は台風被害の点検依頼が集中しますが、足場を組んでからでは初動が遅れます。ロープアクセスなら、点検と応急補修に短期間で入れる場面が多い。ロープアクセス工法の安全基準や技術的な解説は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめていますので、技術面を深く知りたい方はそちらもご覧ください。

弊社のロープアクセス施工の実務については、ロープアクセス工法のご紹介のページで施工の流れをご案内しています。


3工法の比較|足場・ロープアクセス・ハイブリッド

建物によって最適解は変わります

株式会社明誠が3つの工法を持っているのは、どれか1つが常に優れているわけではないからです。実際の比較は次のようになります。

比較項目 通常足場工法 ロープアクセス工法(無足場) ハイブリッド工法
仮設費用 大きい(総額の約2割が目安) 大幅に圧縮できる 部位ごとに最適化
工期 架設・解体の期間が加算される 短縮しやすい 中間
居住者への影響 囲い・シートで採光と通風に影響 小さい 部位により限定的
大面積の一斉施工 得意 部位により時間がかかる 得意
複雑形状・超高層 費用が膨らみやすい 強い 強い
適する場面 全面改修、低中層、複雑な同時作業 高層、足場架設が困難、部分補修、緊急対応 大規模・複雑物件の総合最適化

ロープアクセス工法が向かないケースもあります

両論併記でお伝えします。ロープアクセスは万能ではありません。

  • 屋上にアンカー(支点)を安全に確保できない建物では採用できません。事前の支点調査が前提になります。
  • 全面的なタイル張り替えなど、大面積で資材の搬入量が多い工事は、足場を組んだほうが総コストで有利になる場合があります。
  • バルコニー内部の作業が大半を占める場合も、足場の優位性が出ます。
  • 職人が同時に張り付ける人数に制約があるため、「とにかく早く一斉に終わらせたい」大規模物件では足場が勝つことがあります。

私はこれを、あえてご提案の場で最初に申し上げるようにしています。無足場を売りにしている会社が「足場のほうがいい場面もあります」と言うのは奇妙に聞こえるかもしれません。ですが、向かない現場で無理に使えば品質にも工期にも跳ね返る。それは結局、管理組合の損になります。

現実解としてのハイブリッド工法

実務でいちばん多いのが、この組み合わせです。大面積の外壁や搬入量の多い部位は足場を架け、高層部・妻壁・入り組んだ部位・足場が組めない箇所はロープアクセスで対応する。足場の面積を必要最小限に絞ることで、仮設費と工期の両方を圧縮します。

私はこれを、必ずワンセットでご提案するようにしています。「足場かロープか」の二択ではなく、「この建物のこの面はどちらが合理的か」を面ごとに判定する。3つの工法を自社で持っていて初めてできる提案です。弊社の考え方は明誠の3工法と強み、大規模修繕全体の流れは大規模修繕工事のご紹介にまとめています。

なお弊社は、日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズを展開しており、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門会社が加盟しています。専門職が直接施工に入る体制のため、中間工程を減らした価格でご提案できるのが、この体制の実務的なメリットです。


値上げを総会で通すための、説明資料の組み立て方

並べるべきは「3つの数字」

理事会の資料づくりでご相談を受けたとき、私がお願いしているのは、感情に訴える表現を減らし、次の3つの数字を並べることです。

  1. 現状値:うちの積立金は月◯◯円/㎡(ガイドライン計算式で算出)
  2. 基準値:国のガイドラインの目安は◯◯〜◯◯円/㎡(該当する規模区分の幅)
  3. 差額の意味:不足額◯◯万円は、戸あたり月◯◯円の値上げ、または◯年後の一時金◯◯万円に相当する

3番目が肝心です。組合員の方が判断できるのは「総額1億円」ではなく、「自分の財布から毎月いくら出るのか」です。総額を戸あたり月額に割り戻して初めて、議論が前に進みます。

私が理事長さまにお伝えしていること

現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、必要な工事が「合意が取れないから」という理由だけで2年、3年と先送りされ、その間に劣化が進んで結果的に高くついたケースを見るときです。

タイルの浮きは、放置すれば剥落のリスクになります。屋上防水の切れは、下階の漏水につながります。どちらも早く見つけて小さく直せば安く済むのに、大きくなってから直すと足場も工期も費用も膨らむ。

だからこそ、値上げの議論と工法の議論は同時に進めていただきたいのです。「積立金をいくら上げるか」だけを議論すると反対されます。「工事費をここまで下げられる見込みがあり、そのうえで不足分をこれだけ埋めたい」という順番なら、話が通りやすくなります。

管理組合さま向けの具体的なご支援内容は管理組合さま向けサービスにまとめています。診断だけ、セカンドオピニオンだけ、というご相談も承っています。


使える制度|マンション長寿命化促進税制

修繕積立金を一定以上に引き上げた管理計画認定マンションが、適用期間内に一定の大規模修繕工事を行った場合、その建物部分に係る翌年度分の固定資産税が、6分の1から2分の1以下の範囲内で市町村(特別区にあっては都)の条例で定める割合だけ減額される制度があります。参酌基準は3分の1、減額対象は1戸あたり100㎡相当分までです(出典:国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドライン 令和6年6月改定)。

適用要件の一つが、令和3年9月1日以降に、計画期間全体での修繕積立金の平均額を、目安表の「事例の3分の2が包含される幅」の下限値を下回る金額から上回る金額へ引き上げたことです。つまり、先ほどの表の下限値(20階未満・5,000〜10,000㎡なら170円/㎡・月)が判断ラインになります。

引き上げた旨については、マンション管理士または建築士(建築士事務所登録をしている事務所に属する建築士に限る)から修繕積立金引上証明書の発行を受ける必要があります。要件や手続は改正される可能性がありますので、検討時点で必ず国土交通省および所在する市区町村の最新情報をご確認ください。

値上げは、組合員にとっては負担増です。ですが「値上げをすると固定資産税が下がる可能性がある」という材料は、総会での説明で確実に効きます。制度を知っているかどうかで、合意形成の難易度が変わります。


よくある質問(FAQ)

Q1. 修繕積立金が不足しているマンションはどのくらいありますか?
A. 計画上の積立額に対して現在の積立額が不足しているマンションは36.6%です。そのうち不足割合が20%を超えるものが11.7%あります(出典:国土交通省 令和5年度マンション総合調査)。

Q2. 大規模修繕の費用は戸あたりいくらが目安ですか?
A. 1回目の工事で中央値110.2万円/戸、下位25%値90.9万円/戸、上位25%値134.0万円/戸です。2回目は中央値106.1万円/戸、3回目以上は97.0万円/戸となっています。ただし共通仮設費と消費税相当額は含まれていません(出典:国土交通省 令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査)。

Q3. 大規模修繕の周期は何年ごとですか?
A. 全体の約7割が12〜15年周期で、最も多いのは13年です。工事回数別の平均は1回目15.6年、2回目14.0年、3回目12.9年で、回数を重ねるほど周期が短くなる傾向があります。

Q4. 足場を組まない工法にすると、どのくらい費用が変わりますか?
A. 建物の形状・階数・工事範囲によって変わるため一律には申し上げられません。判断材料として、国の実態調査では仮設工事が総工事金額の22.3%(3回目以上は25.3%)を占めています。この部分をどこまで圧縮できるかが、現地調査での検討ポイントになります。

Q5. ロープアクセス工法が使えない建物はありますか?
A. 屋上に安全な支点(アンカー)を確保できない建物では採用できません。また大面積のタイル張り替えなど資材搬入量の多い工事は、足場のほうが総コストで有利になる場合があります。まずは支点調査を含む現地確認からご相談ください。

Q6. 積立金の値上げで固定資産税が下がることがあると聞きました。
A. マンション長寿命化促進税制のことです。管理計画認定を受け、修繕積立金を一定以上引き上げ、適用期間内に一定の大規模修繕工事を行った場合、翌年度分の固定資産税が6分の1〜2分の1以下の範囲内(参酌基準3分の1、1戸100㎡相当分まで)で減額されます。要件の詳細は国土交通省と市区町村の最新情報をご確認ください。


この記事のポイントまとめ

  • 計画に対して修繕積立金が不足しているマンションは36.6%、うち11.7%は20%超の不足
  • 積立金不足の背景は、段階増額積立方式(47.1%)・工事費高騰・計画見直しの遅れ・高齢化の4つ
  • 公共工事設計労務単価は令和8年3月適用分で25,834円、14年連続の上昇
  • 大規模修繕1回目の費用は戸あたり中央値110.2万円、周期は12〜15年が約7割
  • 仮設工事は総工事金額の22.3%。ここが費用圧縮の最大の急所
  • 借入の前に「計画の更新」「工事範囲の仕分け」「仮設計画の見直し」を試す

修繕積立金の不足は、放っておいて解決する問題ではありません。ただ、値上げか借入かの二択だと思い込む必要もありません。工事の仕組みを変えれば、必要な金額そのものが変わります。

9月は台風シーズンです。この時期に外壁や屋上に異変を見つけたら、それは点検のきっかけとして悪くないタイミングです。次の理事会で1分だけ、「うちの仮設費は総額の何割か」を議題に出してみてください。それだけで、来年の議論が変わります。

診断やセカンドオピニオンだけのご相談も遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談はお問合せフォームからお受けしています。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法(無足場工法)/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でマンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事を手がける改修会社です。通常足場工法、ロープアクセス工法(無足場工法)、両者を組み合わせたハイブリッド工法の3工法から、建物ごとに最適な工法をご提案しています。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。

最終更新:2026年9月5日

※本記事に記載した制度・数値は執筆時点の公表内容に基づくものです。制度は変更される可能性がありますので、最新情報は各公式サイトでご確認ください。本記事は法的・税務的な助言を目的とするものではありません。


出典・参考資料

関連リソース:ロープアクセス工法の技術情報・安全基準はロープアクセスドットコムで解説しています。

河津町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

Q. 静岡県賀茂郡河津町のマンションで、2026年度に大規模修繕を計画しています。町から出る補助金はありますか。
A. 分譲マンションの共用部そのものを対象にした河津町独自の補助金は、2026年9月4日時点で確認できません。ただし河津町には、他の自治体では見かけない特徴を持った制度が3本あります。1本目は木造住宅の耐震補強に1戸あたり115万円を出す「プロジェクトTOUKAI‐0⁺」。2本目は固定資産税相当額を3年間返す「木造住宅建築等助成制度(有期)」。3本目は改修費の20%を出す「空き家活用支援補助金」です。そして後ろ2本には、発注先が町内業者でなければ補助が出ないという共通の条件が付いています(出典:河津町)。

2026年9月4日 更新


この記事の結論:河津町で押さえるべきことは「3つ」

先に結論から書きます。河津町でマンションの大規模修繕を考えるとき、押さえるべきことは3つです。

  1. 町独自の共用部補助はない。しかし耐震の限度額は115万円で、伊豆エリアでは高い水準にある
    プロジェクトTOUKAI‐0⁺(木造住宅耐震補強)は、補強計画と補強工事を同一年度内に実施する場合、1戸あたり115万円を限度に補助されます(工事費の8割と115万円を比較し、いずれか少ない額)。近隣の町で見かける100万円という限度額より15万円高い設定です(出典:河津町 木造住宅耐震補強)。
  2. 河津町の補助金は「誰に発注するか」で可否が決まる制度が複数ある
    木造住宅建築等助成制度は「町内建築業者と請負契約を締結したもの」が条件。空き家活用支援補助金の改修支援も「町内業者が施工したものに要する費用」が対象です。工事の中身ではなく、契約の相手方が要件になっています。
  3. 2月から3月上旬にかけて、河津町は工事ができる町ではなくなる
    河津桜まつりの期間、人口6,130人の町に約100万人が訪れます。この1か月間に足場が架かっているという状態を、どう避けるか。ここが河津町の大規模修繕で最も実務的な論点です。

以下、順番に一次情報で確認していきます。

制度名 補助率・限度額 共用部に使えるか 窓口
プロジェクトTOUKAI‐0⁺(木造住宅耐震補強) 工事費の8割と115万円の少ない額 木造住宅が対象。RC造の分譲マンションは対象外 建設課 0558-34-1952
ブロック塀等撤去改善事業補助金 工事・設計費の一部(着工前申請) 敷地内の該当する塀なら可能性あり 建設課 0558-34-1952
木造住宅建築等助成制度(有期) 新築=固定資産税相当額の全額(15万円/年)、増築=1/2(10万円/年)、いずれも3年間 木造の新築・増築が対象。修繕は対象外 産業振興課 0558-34-1946
空き家活用支援補助金(改修支援) 工事費の20%・上限20万円 空き家情報バンク登録物件のみ 企画調整課 0558-34-1924
太陽光発電システム設置費補助金 1kWあたり5万円・最大4kW=20万円 賃貸住宅は対象外と明記 企画調整課 0558-34-1924
小規模事業者強化事業費補助金 事業費10〜60万円の1/2(5〜30万円) 販促のみ。建物工事は対象外 産業振興課 0558-34-1946
マンション管理計画認定制度 認定制度(補助ではない) 町域のため静岡県が窓口 静岡県住まいづくり課

河津町の建物が置かれている前提を、3つの数字で

制度の話に入る前に、河津町という町の輪郭を数字で押さえておきます。私は現場を見に行く前に、その町の人口と世帯数を見るようにしています。建物の使われ方が、そこから見えてくるからです。

数字①:人口6,130人/世帯3,208世帯

2026年8月1日現在、河津町の人口は6,130人(男2,963人・女3,167人)、世帯数は3,208世帯です(出典:河津町の人口と世帯)。

1世帯あたり1.91人。全国平均を下回りますが、伊豆半島東海岸の町としてはやや高めです。これは、河津町が別荘地としての性格だけでなく、生活の場としての性格も一定程度保っていることを示しています。

一方で、3,208世帯という規模の町に建つ分譲マンションは、当然ながら数が限られます。管理組合の理事は数年で一巡し、前回の大規模修繕を経験した理事が1人も残っていない、という状態が普通に起こります。「前回どうやったか」を知っている人が組織の中にいない——これが小規模自治体のマンション管理の実態です。

数字②:河津桜まつりに約100万人

2026年の河津桜まつりは、2月7日(土)から3月8日(日)まで開催されました。例年ほぼ同じ時期に約1か月間の会期が設定され、来訪者は100万人規模に達します(新型コロナウイルス感染症の流行前で90万人超)(出典:河津桜まつり公式)。

人口6,130人の町に、1か月で100万人。単純計算で人口の163倍です。この期間、河津川沿いの道路は歩行者であふれ、駐車場は満車になり、宿泊施設は埋まります。

これは工事計画にとって、決定的な制約です。

  • 資材搬入車両が町内に入りにくい
  • 職人の宿が取れない(伊豆急行沿線の宿はほぼ埋まる)
  • 足場とシートが架かった建物は、桜の景観の中で著しく目立つ
  • 賃貸・民泊・宿泊業を兼ねる建物なら、年間で最も稼げる1か月を工事で潰すことになる

首都圏の管理組合が「冬は乾燥していて塗装に向くから2月に工事を」と考えるのは、一般論としては正しい。しかし河津町では、その一般論がそのまま裏目に出ます。

数字③:昭和56年5月31日という境界線

河津町の無料耐震診断の対象は「昭和56年5月31日以前に建築された木造住宅」です。この日付は新耐震基準の施行日で、全国共通の線引きですが、河津町では診断できる戸数に限りがあると明記されています(出典:河津町 木造住宅耐震補強)。

年度予算と派遣できる専門家(木造住宅耐震診断補強相談士)の数に上限があるということです。「年度末近くに申し込んだら枠が埋まっていた」が現実に起こりうる。管理組合の役員が個人所有の木造家屋も持っている場合、そちらの診断は年度の早い時期に動かしておくべきです。


【背骨①】河津町の耐震補助は115万円。この15万円の差の意味

まず制度の全体像

プロジェクトTOUKAI‐0⁺は、静岡県が東海地震対策として展開してきた木造住宅耐震化支援の枠組みで、市町ごとに上乗せや運用の差があります。河津町の内容はこうです(出典:河津町 木造住宅耐震補強)。

段階 内容
無料耐震診断 町が派遣する専門家(木造住宅耐震診断補強相談士)が無料で診断。対象は昭和56年5月31日以前建築の木造住宅。診断戸数に限りあり
補強計画・補強工事 診断の結果、倒壊の危険性があると判断され、補強計画と補強工事を同一年度内に実施する場合、1戸あたり115万円を限度に補助(工事費の8割と115万円を比較し、いずれか少ない額)

「工事費の8割と115万円の少ない額」を分岐点で読む

この書き方の制度は、必ず「どこで限度額に届くか」を計算しておくべきです。

115万円 ÷ 0.8 = 143万7,500円

つまり、補強工事費が約144万円を超えた時点で、補助額は115万円で頭打ちになります。それ以下なら工事費の8割です。

補強工事費 工事費の8割 補助額(115万円と比較) 自己負担
60万円 48万円 48万円 12万円
100万円 80万円 80万円 20万円
140万円 112万円 112万円 28万円
143.75万円 115万円 115万円(分岐点) 28.75万円
200万円 160万円 115万円 85万円
300万円 240万円 115万円 185万円

分岐点を超えると、そこから先は全額が自己負担になります。補強工事の設計を「144万円をどう使い切るか」で組み立てるのが、この制度の最も効率のよい使い方です。144万円を大きく超える計画を立てるなら、超過分に見合う耐震性能の向上があるのかを、設計者に数字で説明してもらってください。

近隣の町との比較

私はこの連載で伊豆・東部の町を続けて調べてきました。その中で見えてきた限度額の水準を並べます。

自治体 木造耐震補強の限度額
河津町 115万円(工事費の8割との比較)
東伊豆町 100万円(別途、高齢者等の割増あり)
小山町 100万円(工事費の8割との比較)

河津町の115万円は、この3町の中で最も高い設定です。差は15万円。「たった15万円」ではありません。同じ工事をしても、河津町の建物なら15万円多く戻るということです。分岐点で見れば、河津町は143.75万円まで、東伊豆町・小山町は125万円までが「8割補助のゾーン」ということになります。

なお、いずれの町も金額・要件は年度ごとに見直される可能性があります。着工前に建設課で最新の要綱をご確認ください。

RC造の分譲マンションはこの制度の対象外です

はっきり書きます。プロジェクトTOUKAI‐0⁺は木造住宅の制度です。鉄筋コンクリート造・鉄骨造の分譲マンションの共用部は対象になりません。

では管理組合にとって無関係かというと、そうではありません。

  • 敷地内に木造の管理人室・集会所・付属棟がある場合、それが昭和56年5月31日以前の建築なら、診断の対象になる可能性があります
  • 理事・区分所有者が町内に古い木造家屋を所有している場合(河津町では珍しくありません)、その方個人が使えます
  • 賃貸経営をされている方で木造アパートをお持ちなら、直接の対象です

管理組合の掲示板に「町の無料耐震診断は戸数に限りがあります。ご自宅が昭和56年5月以前の木造の方は、年度の早い時期に建設課へ」と1枚貼るだけで、それは組合員に対する価値の提供です。管理組合は自分が使えない制度でも、周知役にはなれます。


【背骨②】河津町の補助金は「誰に発注するか」で決まる

ここが、河津町という自治体の制度設計で最も特徴的な部分です。私はこの連載で176の自治体を調べてきましたが、複数の制度に一貫して「町内業者要件」が入っている町は多くありません。

木造住宅建築等助成制度(有期)——固定資産税を3年間返す制度

まず制度の中身です(出典:河津町 木造住宅建築等助成制度(有期))。

項目 内容
対象工事 木造住宅の新築または増築
契約要件 平成26年1月1日以降に町内建築業者と請負契約を締結し、令和10年12月31日までに竣工したもの
町内建築業者の定義 町内に本社または支店を置く法人、または河津町に納税申告している個人事業主
木造住宅の定義 主要構造物を木材として建築された専用住宅(店舗等との併用住宅は居住用部分のみが対象)
竣工の定義 翌年度に固定資産税が賦課されたもの
その他要件 町税等の滞納がないこと/町税等を口座振替で納付していること(予定を含む)
補助額(新築) 納付すべき固定資産税相当額の全額(15万円/年を限度)
補助額(増築) 納付すべき固定資産税相当額の1/2(10万円/年を限度)
補助期間 最初の賦課年度から3年間
交付方法 固定資産税の賦課額確定後、税の口座振替先を利用して交付
窓口 産業振興課 観光商工振興係 0558-34-1946

補助総額は、新築なら最大45万円(15万円×3年)、増築なら最大30万円(10万円×3年)。

この制度で注目すべき点は3つあります。

第1に、支払われるのが「固定資産税相当額」であること。 補助額が工事費に比例しません。工事費がいくらであっても、賦課された固定資産税の額が上限になります。つまり小さめの建物ほど補助率が実質的に高くなる構造です。

第2に、事前申し込みが必要であること。 「建築工事請負契約を締結した後、速やかに申請書を提出していただく」と明記されています。竣工してから「そういえば制度があった」では間に合いません。

第3に、町内建築業者との契約が条件であること。 ここが本題です。

空き家活用支援補助金にも同じ条件がある

空き家情報バンク登録物件の改修支援事業でも、対象経費は「住宅の機能・性能を維持・向上させるために、登録物件の改修などを行う経費を対象とし、町内業者が施工したものに要する費用」と定義されています(出典:河津町 空き家活用支援補助金)。

事業 補助額
登録物件利用促進事業(取得) 取得対価の3%以内・上限30万円
登録物件利用促進事業(賃借) 家賃の50%以内・上限3万円/月、3か月分まで(最大9万円)
登録物件改修支援事業 工事費の20%・上限20万円(町内業者施工に限る)

いずれも新規転入者が対象、5年以上の居住が条件、契約締結後2年以内の申請が必要です。

この構造が管理組合にとって意味すること

2つの制度に共通する「町内業者要件」は、河津町という自治体が補助金を地域経済を回すための道具として設計していることを意味します。これは行政の考え方として、まったく正当なものです。

ただ、管理組合の実務としては、次の3点を分けて考える必要があります。

① 分譲マンションの共用部の大規模修繕には、この2制度は直接効きません。
木造住宅の新築・増築、あるいは空き家バンク登録物件の改修。いずれも共用部の外壁・防水とは対象が違います。ここは正直に申し上げます。

② しかし「町内業者との契約が有利になる制度が町にある」という事実は、業者選定の議論に影響します。
理事会で「地元業者にすべきか、実績のある町外業者にすべきか」という議論は必ず起きます。河津町の場合、補助金の設計思想として町内業者を優遇する町であることを、判断材料の1つとして議事録に残しておくべきです。

③ 元請と協力会社の関係を整理しておく。
実務では、町外の元請が地元の職人を協力会社として使う、あるいは地元業者が元請になって専門工事会社が入る、という組み合わせが一般的です。将来的に町の制度を使う可能性があるなら、契約の名義がどちらになっているかを、契約の段階で意識しておくことをおすすめします。

私たち株式会社明誠は、日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズを展開しています。塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟する仕組みで、地域の専門工事会社と組んで施工体制を作ることが前提の会社です。河津町のように地元業者との関係が制度に組み込まれている地域では、この形が噛み合いやすいと考えています。ロープアクセス工法そのものの技術情報や安全基準は、姉妹サイトロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。


【背骨③】桜まつりの1か月を、工事カレンダーからどう外すか

ここからが、河津町の大規模修繕で最も実務的な話です。

2月上旬から3月上旬は「工事をしない月」として先に確保する

2026年の河津桜まつりは2月7日(土)から3月8日(日)でした。例年、2月上旬から3月上旬にかけての約1か月です。次回も同様の時期になると想定して、この1か月を工程表から先に抜いて計画を組むのが河津町のセオリーです。

理由を整理します。

論点 具体的な支障
交通 河津川沿いを中心に歩行者が集中。資材搬入車両・高所作業車の動線が確保しにくい
宿泊 職人の宿が押さえられない。伊豆急行沿線の宿泊施設が埋まる
景観 足場とメッシュシートが桜の景観の中で目立つ。近隣・観光関係者からの心証も悪い
収益 賃貸・民泊・宿泊業を兼ねる建物では、年間で最も稼働率が高い1か月を工事で潰すことになる
安全 敷地周辺の歩行者が普段の数十倍。落下物・接触のリスク管理コストが跳ね上がる

では、いつやるのか

伊豆半島東海岸の気候と、この制約を合わせて考えると、河津町の建物にはこういう順序が現実的です。

時期 適性 理由
4月〜6月上旬 ◎ 桜まつり明けで町が落ち着く。気温・湿度が塗装に適する。梅雨入り前に工程の山を越せる
6月中旬〜7月中旬 △ 梅雨。工程が伸びやすい。伊豆は雨量が多い
7月下旬〜8月 ○ 夏休みの観光期。海側は人が多いが、桜まつりほどの集中ではない。ただし猛暑と台風
9月〜11月 ◎ 台風シーズンを抜ければ最も安定。紅葉・河津七滝方面の観光はあるが分散型
12月〜1月 ○ 気温低下で塗料の乾燥に注意。ただし桜まつり前に必ず終わらせるという締切がある
2月〜3月上旬 × 桜まつり期間。原則として工事を置かない

結論:河津町では「9月着工・12月竣工」または「4月着工・6月竣工」の2択が基本形です。

そして12月竣工を狙う場合、天候による遅延が桜まつりに食い込むリスクがあります。ここが後述するロープアクセス工法の価値が最も大きくなる場面です。


ブロック塀等撤去改善事業補助金——着工前申請という一点

河津町のブロック塀等撤去改善事業補助金は、地震発生時におけるブロック塀などの撤去または改善を行う場合に、工事や設計にかかる費用の一部を補助する制度です(出典:河津町 ブロック塀等撤去改善事業補助金)。

区分 対象
撤去 道路に面したブロック塀など
改善 広域避難地避難路に面するブロック塀など
注意 着工前に申請が必要

補助率と限度額は町のページに記載がないため、建設課(0558-34-1952)への確認が必要です。

管理組合の実務では、ここでミスが起きます

大規模修繕の工事範囲に敷地内の塀の補修が含まれているケースは、決して珍しくありません。そして塀の工事は、外壁や防水と一緒に一括契約されてしまう。

このとき何が起きるか。

  1. 総会で工事一式が承認される
  2. 契約を締結し、着工する
  3. 工事が始まってから「そういえば塀の補助金があった」と気づく
  4. 着工前申請の要件を満たさないため、申請できない

これを避ける手順は単純です。

  • 設計段階で、敷地内の塀のうち「道路に面しているもの」「広域避難地避難路に面しているもの」を図面上で色分けする
  • 該当があれば、総会の前に建設課へ相談する(ここが要点です)
  • 見積書で塀の工事費を別項目として分離しておく(補助対象額の算定に必要になります)
  • 交付決定の通知を受けてから着工する

塀の工事だけ着工時期をずらす、という判断もあり得ます。工程上は面倒ですが、補助金が出るなら差し引きで得になる場合があります。


太陽光発電システム設置費補助金は「賃貸住宅を除く」と明記されている

この制度は、賃貸オーナーの方に特に読んでいただきたい内容です(出典:河津町 太陽光発電システム設置費補助金)。

項目 内容
補助額 1kWあたり5万円、最大4kW=20万円
対象設備 当該年度以降に設置された未使用のもので、最大出力が10kW未満
対象者 町内に住所を有し、自ら居住する既存住宅(店舗兼用住宅を含み、賃貸住宅は除く)に設置する個人
申請者 設置者本人が行う。業者等の代理申請は受け付けない
申請時期 着工前。交付決定通知を受けた日以降に着工
工期 5か月以内に着工し工事着工届を提出。着工後3か月以内、または当該年度の3月10日までに完了
実績報告 当該年度の3月15日まで
事後義務 設置年度の次年度から3年間、発電量などの定期報告が義務。未提出の場合は返還
処分制限 耐用年数15年。途中処分は届出が必要で、返還が生じることがある

3つの注意点

① 賃貸住宅は明確に対象外です。
賃貸マンション・アパートのオーナーがご自身の物件の屋根に太陽光を載せても、この補助は使えません。ここは要綱の文言がはっきりしています。

② 分譲マンションの共用部(屋上)も、実務上は使いにくい。
対象者が「自ら居住する既存住宅に設置する個人」と定義されているため、管理組合(区分所有者の団体)が申請主体になる想定ではありません。専有部分の話でもない。屋上に載せるなら管理組合の決議が必要ですが、その管理組合はこの制度の対象者要件に当てはまりません。

③ 屋根に載せる前に、建物の安全性を確認する——町自身がそう書いています。
町のページの「設置にあたっての注意事項」には、こう記載されています。

建物耐震診断や耐震補強の必要な建物は(昭和56年5月以前の木造住宅は、必ずご確認ください。)太陽光発電施設の設置について、事前に建築士等に相談して、建物の安全性を確認してください。

これは太陽光の話ですが、大規模修繕の実務にそのまま通じる話です。屋根・屋上に新しい荷重を載せる、あるいは防水層を貫通させる工事は、既存躯体の状態を把握してからでなければ判断できません。太陽光の検討と、屋上防水の改修時期は、同じテーブルで議論すべきです。防水の更新直前に太陽光を載せてしまうと、数年後に架台を外して防水をやり直すことになります。


小規模事業者強化事業費補助金は、建物工事には使えません

賃貸経営・民泊・宿泊業を営む方向けに、河津町小規模事業者強化事業費補助金があります(出典:河津町小規模事業者強化事業費補助金交付)。

項目 内容
対象業種 各種小売、卸売、サービス、建設業など
対象事業者 河津町に町税を納めている個人事業者、町内に本店または支店等の登記をしている法人事業者ほか
補助額 事業費10万円以上60万円以内の1/2(補助金額5万円以上30万円以内)
2回目以降 1件につき5万円以上10万円以下
再申請 補助を受けた年度から5年以上経過した場合に限り可能
期限 申請後10月末までに事業開始し、翌年3月25日までに完了
窓口 産業振興課 0558-34-1946

対象事業は4メニューだけです

メニュー 内容
ホームページ等の制作 新規制作またはリニューアル費用(機器購入費、自作の経費、維持管理費は対象外)
インターネットを活用した販路整備 ネット注文・メール配信システムの整備費用
商標登録・意匠登録 新たに開発・製作したものの所有権登録費用
事業者紹介チラシ 店舗の事業内容を紹介するチラシ・リーフレット作成費用

外壁塗装・防水・改修工事は、いずれのメニューにも含まれません。

期待させて外すのは不誠実なので、はっきり書きました。この制度は販路開拓・集客のための補助金です。

ただし、使い方はあります。 大規模修繕を終えた賃貸物件・宿泊施設のオーナーが、「改修完了」を訴求材料にしてホームページをリニューアルする——これは対象になり得ます。工事そのものではなく、工事の成果を売上につなげる段階で使う制度だと理解してください。実際、外壁を一新した物件の写真を差し替えるだけで、宿泊予約サイトのクリック率が変わることがあります。申請は10月末までの事業開始が条件なので、9月着工・12月竣工の工程なら、補助金の申請を先に済ませてホームページ制作を並走させるという組み方も可能です。


マンション管理計画認定制度の窓口は「静岡県」です

河津町は町域のため、マンション管理計画認定制度(国土交通省)の認定権者は静岡県になります。市域であれば市が窓口ですが、町村部は都道府県が担います(マンションの管理の適正化の推進に関する法律に基づく制度)。

認定を取ると何が変わるのか

効果 内容
住宅金融支援機構の融資優遇 マンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ、フラット35の金利引下げ(区分所有者の住宅取得時)
管理の質の可視化 中古売買時に「管理が適正である」ことの公的な裏付けになる
長期修繕計画の整備 認定基準を満たす過程で、計画そのものが整う

認定基準には、長期修繕計画が7年以内に作成または見直しされていること、計画期間が30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれること、修繕積立金の額が明確に定められていること、などが含まれます。基準の詳細は公益財団法人マンション管理センターの案内が実務的です。

大規模修繕を計画するタイミングは、長期修繕計画を見直すタイミングでもあります。どうせ見直すなら、認定基準を満たす形で見直すのが合理的です。認定申請の手数料や運用の詳細は静岡県の最新の案内をご確認ください。制度は変更される可能性があります。

河津町から静岡県の窓口・セミナーへ

伊豆急行の河津駅から、熱海まで約1時間、伊東まで約40分。静岡県が開催するマンション管理セミナーは熱海・伊東・三島などで実施されることがあり、河津町からでも日帰りで参加できます。開催予定は静岡県のサイトでご確認ください。


ここから先は、株式会社明誠のサービスの話を含みます

ここまでは公的制度の話でした。ここから先は、私たちの仕事の話が入ります。あらかじめお断りしておきます。

まず「見積書のどこにお金が乗っているか」から

大規模修繕の見積書を開くと、多くの方が最初に驚くのが仮設足場の金額です。

一般的な中層マンションの大規模修繕では、仮設工事費が総工事費の2割前後を占めることが珍しくありません。建物の形状・立地・階数によって上下しますが、「外壁を直すためのお金」ではなく「外壁に手が届くようにするためのお金」が、それだけの比率を占めているということです。

そして河津町の建物では、この比率がさらに上がる要因があります。

  • 傾斜地に建つ建物が多い——敷地が平坦でないと、足場の基礎や乗り入れ構台に追加費用が発生します
  • 海沿いの狭い敷地——足場を組むスペースそのものが限られる
  • 強風——伊豆半島東海岸は冬季の季節風と台風の両方を受けます。メッシュシートを張った足場は風を受ける面積が大きく、養生・補強のコストが増えます

ロープアクセス工法という選択肢

ロープアクセス工法(無足場工法)は、産業用ロープを使って屋上から作業員が下降し、外壁の調査・補修・塗装・シーリング打ち替えなどを行う工法です。

河津町の建物にとっての具体的なメリットは4つです。

① 足場費が発生しない
仮設足場を組まないため、その費用がまるごと不要になります。工事費全体でどれだけ下がるかは建物によりますが、足場費が総額の2割前後を占める構造を考えれば、影響は小さくありません。

② 桜まつりの1か月に「架けっぱなし」が発生しない
これが河津町では最も大きい。ロープアクセスはその日の作業が終われば設備が残りません。仮に工期が伸びて2月に食い込んだとしても、桜まつりの期間だけ作業を止めれば、建物の外観は通常の状態に戻ります。足場だと、こうはいきません。組んだままにするか、一度解体して再度組むか(当然、二重の費用が発生します)。

③ 傾斜地・狭小地でも施工できる
足場を組む平坦なスペースが確保できない部位——擁壁際、隣地との隙間、海側の崖に面した面——でも、屋上から下降できれば作業ができます。

④ 部分補修に向いている
「シーリングだけ」「タイルの浮きだけ」「1面だけ」といった限定的な工事で、足場を全面に組むのは費用対効果が悪い。ロープアクセスなら必要な範囲だけを施工できます。

正直に申し上げます。ロープアクセスは万能ではありません

これは毎回書いていることですが、河津町の記事でも書きます。

  • 屋上に確実な支点が取れない建物では使えません。構造的に十分な強度を持つ支点が必要です。事前調査で必ず確認します。
  • 建物全面を同時に、短期間で仕上げる工事には向きません。同時に下降できる作業員の数には限りがあります。工程が長引く可能性があります。
  • 大量の資材を上げ下ろしする工事には向きません。外壁の大規模な張り替えや、開口部の全面交換のような工事は、足場のほうが適しています。
  • 強風時は作業を中止します。伊豆半島東海岸の風は侮れません。安全第一で、風速の基準を超えれば止めます。

だからこそ、私たちはハイブリッド工法という選択肢を持っています。足場が必要な部位(バルコニー側の全面改修、サッシまわりの大規模な作業)には足場を架け、それ以外の面(山側、海側の狭い面、傾斜地に面した部位)はロープアクセスで施工する。部位ごとに最適な工法を割り当てて、総コストを最小化する考え方です。

通常足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法。この3つを比較して提案できる会社は、日本でも多くありません。私たちはその3つを持っています。


河津町のマンションで、モデルケースを2つ

具体的な建物を特定しない、一般的なモデルケースで考えます。

ケース1:河津駅圏/築26年・5階建て・28戸

伊豆急行河津駅から徒歩圏、河津川に近い立地。海と川の両方の影響を受けます。

項目 内容
主な劣化 海側外壁のチョーキング、シーリングの硬化・剥離、バルコニー手すりの発錆、屋上防水の膨れ
工法の判断 全面ロープアクセス、またはバルコニー側のみ足場のハイブリッド
工期の置き方 9月着工・12月中旬竣工。桜まつりに1日も掛からない
使える公的制度 敷地内に道路に面したブロック塀があればブロック塀等撤去改善事業補助金(着工前申請)/管理計画認定は静岡県へ
押さえどころ 桜まつり期間中の来訪者動線が敷地に近いなら、そもそも足場は選択肢から外れる

ケース2:谷津・峰方面/築34年・4階建て・22戸(傾斜地)

天城方面へ向かう斜面地。山側は湿気、道路側は日照の強い面。

項目 内容
主な劣化 山側外壁の藻・カビ、北面の白華(エフロレッセンス)、擁壁のクラック、外階段の鉄部腐食
工法の判断 足場の設置が困難な擁壁側はロープアクセス、道路に面した側は足場のハイブリッド
工期の置き方 4月着工・6月上旬竣工。梅雨入り前に山側の洗浄・塗装を終える
使える公的制度 敷地内に木造の集会所・管理人室があり昭和56年5月31日以前の建築なら、TOUKAI‐0⁺の無料診断の対象になる可能性
押さえどころ 傾斜地は足場の基礎工事だけで金額が跳ねる。ここでロープアクセスの差が最も出る

いずれのケースも、現地を見なければ本当のことは言えません。私たちの調査・診断は無料で承っています。上の表は「こういう考え方で組み立てます」という設計図であって、見積書ではありません。


修繕積立金が足りないときの4つの打ち手

河津町に限らず、小規模マンションで最も多い相談がこれです。順番に検討してください。

① 工事範囲を分割する(フェーズ分け)
「今回は防水と鉄部、次回は外壁」というように、劣化の進行度で優先順位をつけて分割します。ロープアクセスは部分施工に向いているため、この戦略と相性が良い工法です。足場を前提にすると、分割するたびに足場費が二重・三重にかかるため、分割そのものが不利になります。

② 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資
管理組合が借主となる融資制度です。管理計画認定を受けていれば金利の引下げがあります(出典:住宅金融支援機構)。

③ 修繕積立金の見直し
痛みを伴いますが、避けられない場面があります。一度に大きく上げるのではなく、段階的な引き上げを長期修繕計画とセットで総会に提案するのが現実的です。

④ 工法の見直しで総額を下げる
これが私たちの領域です。足場を前提にした見積書を、ロープアクセスまたはハイブリッドで組み直すと、総額が変わることがあります。まず現行の見積書を見せていただければ、どこに削れる余地があるかを申し上げられます。工法ごとの考え方はロープアクセス工法のご紹介にまとめています。


見積書のチェック5点【河津町版】

管理組合の理事の方が、見積書を受け取ったときに最低限見るべき5点です。

① 仮設工事費が総額の何%か
2割を大きく超えているなら、その理由を説明してもらってください。傾斜地・狭小地なら妥当な場合もありますが、根拠は必要です。

② 塩害を前提とした仕様になっているか
河津町は海に面しています。海側の面と山側の面で、塗料の仕様や下地処理の内容が同じになっていないか確認してください。同じなら、それは建物を見ていない見積書です。

③ シーリングの打ち替えか、増し打ちか
「打ち替え(既存を撤去して新しく充填)」と「増し打ち(既存の上から重ねる)」では、耐久性も金額も違います。どちらか明記されているか確認してください。

④ 温泉配管・給湯設備の扱い
河津町は温泉地です。町が温泉給湯事業を行っており、建物によっては共用部に温泉の引湯配管や熱交換器があります。温泉水は成分によって金属の腐食やスケール付着を早めます。外壁・防水の見積書には現れませんが、大規模修繕のタイミングで一度点検しておくべき設備です。見積書に入っていないなら、それは「対象外」なのか「見落とし」なのかを確認してください。

⑤ 桜まつり期間の扱いが工程表に書かれているか
2月上旬から3月上旬にかけての工事の扱いについて、工程表に何も記載がないなら、その業者は河津町という土地の条件を理解していません。「2月上旬〜3月上旬は作業を行わない」あるいは「この期間に足場を残さない」と明記されているか。ここが河津町で見積書を比較するときの、最もわかりやすい判別点です。


河津町の建物が受けている、方位別の劣化条件

伊豆半島東海岸の建物は、面ごとに劣化の条件が大きく違います。

方位・立地 主な劣化要因 現れ方
東〜南東(海側) 潮風・紫外線・強い日照 塗膜のチョーキング、鉄部の発錆、シーリングの硬化・割れ
北〜北西(山側) 湿気・日照不足 藻・カビ、白華(エフロレッセンス)、塗膜の膨れ
屋上・屋根 紫外線・熱伸縮・台風 防水層の膨れ・ひび、笠木のシーリング切れ、ドレンの詰まり
河津川沿い 湿度・虫害 外壁下部の汚れ、基礎まわりの湿気
傾斜地の擁壁側 地下水・凍結融解 擁壁のクラック、外構の沈下

この5つの条件が1棟の中に同居しているのが、河津町の建物の特徴です。だからこそ、全面を同じ仕様で塗る見積書は、どこかで無理をしています。


着工19か月前からの逆算カレンダー【河津町版】

「9月着工」を目標にした場合の逆算です。総会の回数と、桜まつりの位置を組み込んであります。

時期 やること
着工19か月前(2月) 桜まつり期間。理事会は開催しにくい。この月は何も予定しない前提で組む
着工18か月前(3月) 建物診断の実施を理事会で決定。複数社に劣化診断を依頼
着工16か月前(5月) 診断結果の受領。長期修繕計画の見直し着手。管理計画認定の要否を検討
着工14か月前(7月) 通常総会で「調査・設計に着手する」ことの承認を取る
着工12か月前(9月) 工法の比較検討(足場/ロープアクセス/ハイブリッド)。概算見積の取得
着工10か月前(11月) 施工会社の選定に入る。3社以上から相見積。ブロック塀があれば建設課へ事前相談
着工8か月前(1月) 見積比較の完了。臨時総会の議案書を確定させる(2月に総会は開けない前提)
着工7か月前(2月) 桜まつり期間。議案書の郵送・回覧のみ。対面の説明会は避ける
着工6か月前(3月中旬) 臨時総会で工事の実施・契約の締結を決議
着工5か月前(4月) 契約締結。補助金の申請(該当があれば着工前に済ませる)
着工3か月前(6月) 近隣挨拶、居住者説明会。資材の発注
着工1か月前(8月) 最終確認。工程表の共有
着工(9月) 台風の情報を見ながら着工
竣工(12月) 桜まつり前に完全撤収

河津町の逆算カレンダーは、他の町と1点だけ違います。それは「2月は総会も説明会も開けない月」として最初から外すことです。

区分所有者に別荘所有者・町外居住者が含まれる建物では、そもそも総会の出席率が上がりにくい。そこに桜まつりの繁忙が重なる2月を選ぶと、定足数を満たせずに議案が流れます。工事が遅れるのではなく、決議が遅れる。これが伊豆エリアのマンション管理で、私が繰り返し見てきた失敗の形です。


今週できること(合計1時間かかりません)

明日から動けることを、5つだけ挙げます。

  1. 管理組合の書類から、建物の建築年月日を確認する(5分)
    昭和56年5月31日以前かどうかで、使える制度が変わります。敷地内の付属棟についても確認してください。
  2. 敷地内の塀を歩いて見る(10分)
    道路に面しているか。広域避難地避難路に面しているか。写真を撮っておいてください。
  3. 前回の大規模修繕の見積書を探す(15分)
    仮設工事費が総額の何%だったか。これがわかると、次回の交渉の基準ができます。
  4. カレンダーに桜まつりの期間を書き込む(1分)
    2月上旬〜3月上旬。ここに総会も工事も置かない、と決めるだけで計画の質が変わります。
  5. 河津町役場 建設課(0558-34-1952)に、ブロック塀の補助について電話する(10分)
    補助率と限度額は町のページに記載がありません。聞けばわかります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 河津町に、分譲マンションの共用部そのものに使える町独自の補助金はありますか。
A. 2026年9月4日時点で、町のホームページ上に共用部の大規模修繕を直接の対象とする制度は確認できません。ただしブロック塀等撤去改善事業補助金は敷地内の該当する塀に使える可能性があります。着工前の申請が必要です(出典:河津町)。

Q2. プロジェクトTOUKAI‐0⁺の115万円は、どういう計算で決まりますか。
A. 工事費の8割と115万円を比較して、いずれか少ない額です。工事費が約143万7,500円を超えると115万円で頭打ちになります。木造住宅が対象で、RC造の分譲マンションの共用部は対象外です(出典:河津町 木造住宅耐震補強)。

Q3. 「町内業者」でないと補助が出ない制度があると聞きました。
A. 木造住宅建築等助成制度(有期)は町内建築業者との請負契約が要件です。町内建築業者とは、町内に本社または支店を置く法人、または河津町に納税申告している個人事業主を指します。空き家活用支援補助金の改修支援も町内業者施工が対象です(出典:河津町 木造住宅建築等助成制度)。

Q4. 賃貸マンションの屋根に太陽光を載せたら補助は出ますか。
A. 出ません。河津町の太陽光発電システム設置費補助金は「自ら居住する既存住宅(店舗兼用住宅を含み、賃貸住宅は除く。)」に設置する個人が対象と明記されています(出典:河津町 太陽光発電システム設置費補助金)。

Q5. 河津桜まつりの期間に工事をしてはいけないという決まりがあるのですか。
A. 法令上の禁止ではありません。私たちの実務上の推奨です。2026年は2月7日から3月8日まで開催され、来訪者は100万人規模でした。人口6,130人の町にこの人数が訪れる期間は、資材搬入・職人の宿泊確保・安全管理のいずれもコストが上がります。工程表からこの1か月を先に外しておくことをおすすめします。

Q6. 管理計画認定の申請先はどこですか。
A. 河津町は町域のため、認定権者は静岡県です。手数料や様式は静岡県の最新の案内をご確認ください。

Q7. ロープアクセスだけで大規模修繕は完結しますか。
A. 建物によります。屋上に確実な支点が取れること、大量の資材の上げ下ろしを伴わない工事内容であることが前提です。条件が合わない部位には足場を架けるハイブリッド工法をご提案します。現地を見ないまま「全部ロープでできます」と言う会社があれば、それは慎重に判断されたほうがよいと思います。


この記事のポイントまとめ

  • 河津町に分譲マンション共用部への町独自補助は確認できないが、耐震は115万円と伊豆で高水準
  • TOUKAI‐0⁺の分岐点は工事費143万7,500円。それ以上は補助が頭打ちになる
  • 木造住宅建築等助成と空き家改修支援には「町内業者要件」がある
  • 太陽光補助は賃貸住宅を明確に除外。分譲共用部にも実務上使いにくい
  • 小規模事業者強化補助は販促のみ。建物工事は対象外だが、改修後の集客に使える
  • ブロック塀の補助は着工前申請。総会前に建設課へ相談すること
  • 2月上旬〜3月上旬の桜まつり期間は、工事も総会も置かない前提で計画する
  • 河津町の推奨工程は「9月着工・12月竣工」または「4月着工・6月竣工」

主なお問い合わせ先

窓口 担当 電話
河津町役場 建設課 耐震・ブロック塀 0558-34-1952
河津町役場 産業振興課 木造住宅建築等助成・小規模事業者強化 0558-34-1946
河津町役場 企画調整課 空き家活用支援・太陽光 0558-34-1924
河津町役場(代表) 〒413-0595 静岡県賀茂郡河津町田中212-2 0558-34-1111

制度の内容・金額・要件は年度ごとに変更される可能性があります。着工前に各窓口で最新の情報をご確認ください。


河津町の建物のこと、まずはご相談ください

私たち株式会社明誠は、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を専門にしています。通常の足場仮設による工事、無足場のロープアクセス工法、そして両者を組み合わせたハイブリッド工法——この3つを比較して、建物にとって最適な工法をご提案できる会社は、日本でも多くありません。

河津町のように、傾斜地と海沿いの狭小地が混在し、しかも年に1か月「工事ができない期間」がある町では、工法の選び方がそのまま総コストと工程リスクに直結します。

ロープアクセス工法の技術情報・安全基準・施工事例は、姉妹サイトロープアクセスドットコムにまとめています。

現地調査・お見積りは無料です。「今の見積書が妥当かどうかだけ見てほしい」というご相談でも構いません。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円および静岡県でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。

最終更新:2026年9月4日


出典・参考資料


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  • 湖西市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

東伊豆町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

この記事で答える質問:静岡県賀茂郡東伊豆町の分譲マンション管理組合が、2026年度(令和8年度)の大規模修繕で使える補助金はどれか。そして、共用部の工事に本当に届く制度はいくつあるのか。

結論から申し上げます。東伊豆町には「大規模修繕にお金を出します」という名前の補助金はありません。地方の町ではこれが標準です。

ただし東伊豆町には、私がこの連載で175の自治体を1つずつ読んできたなかで、はじめて出会った条文があります。町の補助金交付要綱の本文に「区分所有又は共有の建築物等の場合は、事業の実施について所有者間で承認されていることが確認できるもの(総会議事録、同意書等)」と書かれているのです。しかも別表には「マンション」という用途区分が、住宅とも建築物とも別に立っています。

町が、管理組合の総会を前提に制度を設計している。人口1万人規模の町でこれは珍しいことです。この1点だけでも、東伊豆町の理事会は電話をかける価値があります。

最終更新:2026年9月4日


この記事の結論:東伊豆町で共用部に効く制度は「3つ」

先に全体像を出します。東伊豆町の住宅系の制度を、分譲マンションの共用部の工事に使えるかどうかで仕分けた結果が下の表です。

制度名 共用部への適合 補助率・限度額 窓口
既存建築物耐震診断事業(東伊豆町既存建築物等耐震性向上事業費補助金) ◎ 基準額の2/3以内・限度200万円 建設整備課 建設管理係
安全で美しいいえなみ整備事業費補助金(ブロック塀等) ◎ 撤去2/3・限度26.6万円/改善2/3・限度33.3万円 建設整備課 建設管理係
緊急輸送ルート等沿道建築物 補強計画策定事業 ○(該当路線沿いのみ) 基準額の10/10以内 建設整備課 建設管理係
緊急輸送ルート等沿道建築物 耐震化助成事業 ○(該当路線沿いのみ) 基準額の4/5以内 建設整備課 建設管理係
住宅リフォーム振興事業補助金 △(専有部のみ・区分所有者個人) 20%・上限20万円 観光産業課 観光商工係
木造住宅等耐震性向上事業費補助金 ×(木造のみ) ― 建設整備課 建設管理係
がけ地近接危険住宅移転事業費補助金 ×(移転が前提) ― 建設整備課
マンション管理計画認定制度 ◎(工事ではなく体制) 手数料4,000円〜 静岡県 住まいづくり課

(出典:東伊豆町 非木造住宅・建築物耐震診断等補助金、東伊豆町 安全で美しいいえなみ整備事業費補助金、東伊豆町 住宅リフォーム振興事業補助金)

理事会の時間は有限です。◎の3つを確実に取りにいって、×の3つには1分も使わない。これが今日の記事の使い方です。

私はいつも理事長さまに、「制度がないのではなく、知られていないだけのものが残っています」とお伝えしています。東伊豆町は、まさにそのパターンでした。


東伊豆町の分譲マンションが置かれている前提を3つの数字で

制度の話に入る前に、町の状況を数字で押さえます。ここを飛ばすと、総会で説明するときの土台が弱くなります。

項目 数値 出典・時点
人口 10,637人(男5,078人・女5,559人) 令和8年7月31日現在
世帯数 6,191世帯 令和8年7月31日現在
1世帯あたり人員 約1.72人 上記から算出

(出典:東伊豆町の人口)

1世帯あたり1.72人。これは全国平均を大きく下回ります。単身世帯の多さに加えて、東伊豆町の場合はもう1つ理由があります。リゾートマンション・別荘としての区分所有です。

伊豆稲取、熱川、北川。相模灘を見下ろす斜面に建つ中高層の分譲マンションのなかには、区分所有者の住民票が町外・県外にある住戸が相当数を占める建物があります。

これが、東伊豆町の管理組合にとって最大の実務課題です。制度の話より先に、この話をさせてください。

総会の定足数が、工事の工程を決めてしまう

私が伊豆半島の管理組合とお付き合いして痛感するのは、「工事が遅れるのではなく、決議が遅れる」ということです。

区分所有者が首都圏や関西に散っていると、通常総会の出席者は限られます。委任状と議決権行使書の回収に、都市部のマンションの2倍以上の時間がかかります。

大規模修繕の実施決議は、多くの管理規約で普通決議(区分所有法第39条第1項に基づき、規約に別段の定めがなければ議決権の過半数)ですが、いずれにせよ「議案書を郵送し、返送を待ち、集計する」という時間は動かせません。

私が東伊豆町の理事会に申し上げるのは、この1点です。

議案の作成を、都市部のマンションより半年前倒しにしてください。

補助金の申請期限も、税制の期限も、この「半年」の中に埋まっています。ここから先の話は、すべてこの前提の上に載っています。


【背骨①】東伊豆町の要綱には「マンション」という行がある

ここからが本題です。

東伊豆町には「東伊豆町既存建築物等耐震性向上事業費補助金交付要綱」(平成26年3月5日要綱第5号)があります。最終改正は令和8年3月26日要綱第7号、令和8年4月1日施行。つまり2026年度に改正されたばかりの、現行の制度です。

対象は「昭和56年5月31日以前に建築された非木造住宅・建築物」。鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造(S造)の分譲マンションは、この「非木造住宅」に該当します。

この要綱の別表第4に、次の行があります。

用途 基準額(延べ面積1㎡あたり)
住宅(マンションを除く。) 39,900円
マンション 51,700円(免震等特殊工法の場合は86,400円)
建築物 57,000円(免震等特殊工法の場合は93,300円)

(出典:東伊豆町既存建築物等耐震性向上事業費補助金交付要綱(PDF))

私はこの連載で、静岡県内の市町の要綱をずっと読み続けてきました。掛川市も袋井市も湖西市も、要綱の本文に「共同住宅」「マンション」「管理組合」の語が一度も出てこない自治体でした。

東伊豆町は違いました。「マンション」という用途が、住宅からわざわざ切り出されて、単価まで設定されている。人口1万人の町の要綱にです。

これが何を意味するか。町が、分譲マンションを制度の想定対象として扱っているということです。窓口に電話をかけたときに、「マンションですか」で話が止まらない可能性が高い。これは実務的に、とても大きな違いです。


耐震診断の補助はいくらになるのか【延べ面積別の試算表】

分譲マンションの管理組合がまず使える可能性があるのは、別表第1の一番上、「既存建築物耐震診断事業」です。

補助金の額は、要綱にこう定められています。

1棟ごとに、当該事業に要する経費と別表第2に定める基準額とを比較して、いずれか少ない額の3分の2以内の額とし、2,000,000円を限度とする。

基準額(別表第2)は、延べ面積の階層別に決まっています。

構造・用途 延べ面積 基準額
非木造戸建住宅 面積区分なし 204,000円
既存建築物(戸建住宅以外=マンション等) 1,000㎡以下の部分 1㎡あたり4,580円
同上 1,000㎡超〜2,000㎡以下の部分 1㎡あたり2,350円
同上 2,000㎡を超える部分 1㎡あたり1,570円

これを実際の建物にあてはめると、こうなります。

延べ面積 基準額 基準額の2/3 補助見込額(限度200万円)
300㎡ 1,374,000円 916,000円 916,000円
500㎡ 2,290,000円 1,526,000円 1,526,000円
655㎡ 約3,000,000円 約2,000,000円 限度額に到達
1,000㎡ 4,580,000円 3,053,000円 2,000,000円
2,000㎡ 6,930,000円 4,620,000円 2,000,000円
3,000㎡ 8,500,000円 5,666,000円 2,000,000円

※1,000円未満は切り捨て。

ここから読み取れることは1つです。

延べ面積がおおむね655㎡を超えると、基準額の側では限度額200万円に張り付く。

40戸で1戸70㎡なら専有部だけで2,800㎡。共用部を含めれば3,000㎡を超えます。分譲マンションであれば、基準額の側で限度額に届かないケースはまず考えにくい。

ただし、ここに落とし穴があります

要綱は「事業に要する経費と基準額とを比較して、いずれか少ない額の3分の2以内」と書いています。

つまり、実際の耐震診断の見積が150万円なら、比較して少ない方は150万円。その3分の2で100万円です。基準額の側が大きくても、そこまでは出ません。

200万円の限度額を使い切るには、診断そのものの事業費が300万円以上である必要があります。

これは、規模の大きな建物で、構造図面が残っていない、コンクリートのコア抜き試験が多数必要、といった条件が重なるケースです。中規模のマンションであれば、現実的な着地点は100万〜200万円のあいだとお考えください。

それでも、管理組合の会計から見れば大きな金額です。私の経験上、耐震診断を「お金がかかるから」と先送りしている組合ほど、この制度の存在を知りません。


【背骨②】要綱が「総会議事録」を名指ししている

もう1つ、東伊豆町の要綱で私が目を留めた条文があります。第5条(交付の申請)の添付書類の項です。

(カ)区分所有又は共有の建築物等の場合は、事業の実施について所有者間で承認されていることが確認できるもの(総会議事録、同意書等)

この一文が、耐震診断・補強計画策定・耐震補強工事・建替工事・除却工事の5つの事業すべてに、同じ文言で入っています。

役所の要綱で「総会議事録」という言葉が出てくるのは、書き手が管理組合の意思決定プロセスを理解しているということです。

そして、管理組合の側から見ると、この条文は申請の段取りをそのまま指定してくれていることになります。

東伊豆町での申請手順(管理組合の実務に翻訳すると)

順序 やること 誰が 注意点
1 建設整備課 建設管理係(0557-95-6303)に電話 理事長または担当理事 年度ごとの予算枠があるため、まず電話が要綱の指定
2 耐震診断の見積を取得 理事会 事業に要する経費の見積書の写しが添付書類
3 総会で診断実施を決議 管理組合 議事録が添付書類になる
4 交付申請書(様式第1号)+事業計画書(様式第2号)+事業収支予算書(様式第3号)を提出 理事長 着手前の申請が原則
5 交付決定通知(様式第4号)を受領 ― ここまで工事・診断に着手しない
6 診断実施 診断者 ―
7 完了後30日以内、または年度の3月末日のいずれか早い日までに実績報告 理事長 期限の設計が独特
8 額の確定通知 → 請求書(様式第10号)を提出 理事長 ―

実務で一番危ないのは3と4の順序です。総会の議事録が必要なのですから、「先に診断を頼んでから、あとで総会にかける」という進め方はできません。

そして、7の実績報告の期限。「完了した日から30日を経過した日」または「交付決定のあった年度の3月末日」のいずれか早い日、という書き方です。年度末に交付決定を受けた場合、3月末までしか猶予がないことになります。

私はいつも理事長さまに、「役所の期限は、工事の期限ではなく書類の期限です」とお伝えしています。工程表には、工事の完了日ではなく、書類の提出日をマイルストーンとして打ってください。

なお、補助金の収支に関する帳簿と領収書等の関係書類は、交付を受けた年度終了後5年間の保管義務があります。理事が毎年入れ替わる組合では、引き継ぎ書類の一覧にこの1行を足しておくことをおすすめします。


緊急輸送ルート等の沿道なら、桁が変わる

東伊豆町の要綱には、もう1段階上の制度が用意されています。

「緊急輸送ルート等沿道建築物」に該当する場合です。これは、静岡県耐震改修促進計画で指定された道路に接し、地震で倒壊すると道路をふさいで避難を妨げるおそれのある建築物を指します。

東伊豆町を南北に貫く国道135号は、伊豆半島東海岸の生命線です。この沿道に建つ建物であれば、確認する価値があります。

事業区分 補助率 基準額(一戸建住宅以外)
緊急輸送ルート等沿道建築物 補強計画策定事業 10分の10以内(全額) 1,000㎡未満 300万円/1,000〜2,000㎡未満 480万円/2,000〜3,000㎡未満 600万円/3,000〜5,000㎡未満 720万円/5,000〜10,000㎡未満 900万円/10,000㎡以上 1,080万円
緊急輸送ルート等沿道建築物 耐震化助成事業 5分の4以内 マンション:延べ面積1㎡あたり51,700円(免震等特殊工法86,400円)

補強計画の策定が10分の10、つまり基準額の範囲なら実質的に自己負担なしという設計です。耐震化の工事本体も5分の4。通常の耐震診断(3分の2・限度200万円)とは金額の桁が違います。

ただし、これは「診断の結果、構造耐震指標値Is値が0.6未満だった」など、要綱第4条の要件を満たす建物に限られます。すべての建物が該当するわけではありません。

私が申し上げたいのは、「うちは関係ない」と決める前に、前面道路が緊急輸送ルート等に指定されているかを1回確認してほしい、ということです。確認は電話1本で済みます。


ブロック塀は「1敷地1回」——ここが東伊豆町の落とし穴

大規模修繕とセットで議案にすべきなのが、敷地内のブロック塀です。東伊豆町の制度は「安全で美しいいえなみ整備事業費補助金」といいます。

事業区分 基準単価 補助率 1敷地あたり限度額
ブロック塀等撤去事業 延長1mあたり20,000円 2/3以内 266,000円
ブロック塀等改善事業(緑化あり) 延長1mあたり38,400円 2/3以内 333,000円
ブロック塀等改善事業(緑化なし) 延長1mあたり38,400円 2/3以内 333,000円
美しいいえなみ整備事業(緑化のみ) 延長1mあたり38,400円 2/3以内 333,000円

(出典:東伊豆町安全で美しいいえなみ整備事業費補助金交付要綱(PDF))

延長別の試算はこうなります。

撤去する場合

塀の延長 基準額 補助見込額
10m 200,000円 133,000円
15m 300,000円 200,000円
20m 400,000円 266,000円(限度額に到達)
30m 600,000円 266,000円

フェンス等・生垣に改善する場合

塀の延長 基準額 補助見込額
5m 192,000円 128,000円
10m 384,000円 256,000円
13m 499,200円 332,000円(ほぼ限度額)
15m以上 576,000円以上 333,000円

つまり、撤去なら20m、改善なら13mで限度額に届きます。それ以上の長さがあっても補助額は増えません。マンションの敷地であれば、道路に面した塀が20mを超えることは珍しくないので、限度額を前提に予算を組んでいただいて構いません。

東伊豆町ならではの注意点が2つあります

1つ目:フェンスも生垣も同額です。

この連載で先日取り上げた湖西市では、生垣への改善だけが2倍以上優遇される設計でした。東伊豆町は緑化あり・緑化なしのどちらも38,400円/m・限度333,000円で同額です。

これは管理組合にとってむしろ判断が楽です。補助額に差がないなら、剪定という毎年の維持費が発生しないフェンスを選ぶ合理性が高くなります。生垣を選ぶなら、それは補助金ではなく景観の判断としてやるべきです。

2つ目:同一の敷地では1回しか使えません。

要綱第3条第2項に、こうあります。

同一の利用に供されている一団の土地において、本要綱又は東伊豆町生垣づくり補助金交付要綱の規定による補助金の交付を受けている場合は、補助の対象としない。

つまり、撤去と改善を両方申請して合算する、という組み立てができません。過去にこの補助金を使ったことがある敷地も対象外です。

さらに、第6条第3号に見過ごせない条件があります。

補助事業により取得し、又は効用の増加した不動産及びその従物については、事業完了から15年を経過するまでの期間内において、町長の承認を受けないで、補助金の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならないこと。

15年です。マンションの大規模修繕は12〜15年周期ですから、次の大規模修繕をまたぎます。理事会が3年で入れ替わることを考えれば、この条件は管理組合の重要事項として、規約とは別の「引き継ぎメモ」に残しておく必要があります。

私が現場で20年やってきて、一番悔しい思いをするのは、こういう「知っていれば防げた話」を、あとから聞かされるときです。


住宅リフォーム振興事業補助金は、共用部には届かない。ただし——

東伊豆町には、金額の使い勝手が良い「住宅リフォーム振興事業補助金」があります。

項目 内容
補助額 工事金額(税抜)100万円以上:最大20万円/5万円以上100万円未満:工事金額(税抜)の20%(千円未満切り捨て)
受付 令和8年4月1日(水曜日)午前8時30分から再開・先着順
対象者 申請者またはその家族が東伊豆町に住民登録し、居住している者/補助対象住宅の所有者/町税等(介護保険料、水道料等を含む)を滞納していない者
上限管理 交付金額20万円・交付回数5回の上限に達していないこと
施工業者 町内に事業所を有する法人、または町内に住所を有する個人事業者で町民税申告している者。事前の資格登録が必要
完了届 同年度3月10日まで
その他 既に着工している工事は対象外。申請から交付決定まで1週間程度
窓口 観光産業課 観光商工係 0557-95-6301

(出典:東伊豆町 住宅リフォーム振興事業補助金)

正直に申し上げます。この制度は共用部の大規模修繕には使えません。

対象は「申請者が所有し、居住している住宅」で、公式ページに「(貸家やアパートは対象外)」と明記されています。管理組合が申請者になる形は、この文言からは読み取れません。

ただし、私が理事会にお伝えしているのは別の使い方です。

「管理組合は周知役に徹する」という使い方

大規模修繕の説明会は、区分所有者が一斉に集まる年に一度の機会です。そこで専有部のリフォーム補助を配布資料の1ページに入れておく。これだけで理事会の評価が変わります。

  • 東伊豆町に住民登録があり、実際に住んでいる区分所有者は対象になり得る
  • 100万円以上の工事なら20万円
  • 交付回数5回までという設計なので、過去に使った人でも上限に達していなければ再度使える

最後の1点は、この連載の175自治体でもかなり珍しい設計です。「1世帯1回限り」の自治体が大半のなか、東伊豆町は累計20万円・5回まで使えます。

そして、この制度が観光産業課の所管である点も東伊豆町らしいところです。町内業者を使うことが条件になっている、つまり住宅政策ではなく地域経済振興の制度として設計されているからです。

大規模修繕の元請けが町外だと使えない、という論点

念のため申し上げておくと、この「町内業者限定」の条件は、共用部の大規模修繕で工事会社を選ぶときの話とは切り離してお考えください。

共用部の工事にこの補助金は使えないのですから、元請けの所在地を補助金の条件に引きずられて決める必要はありません。むしろ、東伊豆町のような立地では、伊豆半島内・県東部・首都圏まで含めて見積を取れる環境を作ることのほうが、金額へのインパクトが大きくなります。


マンション管理計画認定制度の窓口は「静岡県」です

ここでよく混乱が起きるので、はっきり書きます。

東伊豆町の分譲マンションの管理計画認定は、町ではなく静岡県が窓口です。

マンション管理計画認定制度は、マンションの管理の適正化の推進に関する法律にもとづき、管理組合が作成した管理計画が一定の基準を満たす場合に認定を受けられる制度です。静岡県のページには「対象:県内の町域」と明記されています。市の区域は各市が、町の区域は県が担当します。

認定申請手数料は令和8年4月1日に改定されました

事前確認適合証 長期修繕計画数 令和8年3月31日まで 令和8年4月1日から
有り 1 3,800円 4,000円
有り 2以上 3,800円+1,700円×(計画数−1) 4,000円+1,800円×(計画数−1)
無し 1 26,900円 28,100円
無し 2以上 26,900円+15,500円×(計画数−1) 28,100円+16,200円×(計画数−1)

(出典:静岡県 マンションの管理。認定の更新の手数料も同額です)

適合証の有無で7倍の差が出ます。事前確認適合証とは、公益財団法人マンション管理センターが交付する、法第5条の14各号の基準に適合することを証する書面のことです。

したがって、現実的なルートは1つです。公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを利用して事前確認適合証を取り、そのうえで県に申請する。県へ直接申請すると適合証なしの28,100円になります。

認定を取ると何が変わるのか

管理組合の総会で「認定を取りましょう」と提案すると、決まって「それで何が得なのか」と聞かれます。答えは3つです。

  1. 固定資産税の減額(長寿命化促進税制)の入口になる(後述)
  2. フラット35の金利引き下げ
  3. 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資の金利引き下げ

3つ目は、東伊豆町のように修繕積立金の水準が読みにくい建物では重要です。認定が税制に間に合わなくても、マンション共用部分リフォーム融資の金利が下がるだけで、借入をする組合には実額の効果が出ます。


【2026年の新しい論点】マンション管理適正化支援法人という制度ができました

これは今年から始まった話なので、まだご存じない理事長さまが多いはずです。

令和7年5月30日に「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律」(令和7年法律第47号)が公布され、同年11月28日に一部が施行されました。これにより、マンションの管理の適正化の推進に関する法律に「マンション管理適正化支援法人」の登録制度が新設されました。

一般社団法人・一般財団法人・特定非営利活動法人などの民間団体が都道府県等の登録を受けることで、公的な立場からマンション管理の専門的支援を行う、という仕組みです。

支援法人の業務区域 登録主体
市の区域 市
町の区域 県

東伊豆町は町ですから、登録主体は静岡県になります。

そして、静岡県のページには現時点でこう書かれています。

静岡県は、現段階では、登録制度は実施していません。

(出典:静岡県 マンションの管理)

つまり、東伊豆町の管理組合が今すぐ支援法人のサービスを受けられるわけではありません。ここは正直に書きます。

ただ、区分所有法そのものが改正された年である、ということは知っておく価値があります。老朽化マンションの管理と再生を円滑にする方向で法律が動いている。理事会で「今年は何か変わったのか」と聞かれたときに答えられる材料として、頭の隅に置いておいてください。

あわせて、国土交通省は令和7年にマンション標準管理規約を改正しています。静岡県のページから改正パンフレットが公開されていますので、規約の見直しを検討している組合は目を通しておくと議論が早く進みます。


固定資産税の話:東伊豆町のページには「減額」の項目がありません

長寿命化促進税制について書きます。

これは、一定の要件を満たす大規模修繕工事を行ったマンションの翌年度の固定資産税を6分の1〜2分の1(参酌基準3分の1)減額する制度です。1戸あたり床面積100㎡までが対象になります。

主な要件は次のとおりです。

要件の種類 内容
建物 築20年以上・総戸数10戸以上
ルートA(認定ルート) 令和3年9月1日以降に修繕積立金の引上げを決議し、管理計画認定を受けている
ルートB(助言・指導ルート) 助言・指導を受けて長期修繕計画を見直し、積立金額が基準額以上等
工事 過去に長寿命化工事を実施済み、かつ今回の工事が要件を満たす
申告 工事完了後3か月以内に市町村へ申告
期限 令和9年3月31日までに工事完了

期限まで、この記事の公開時点で約19か月です。

東伊豆町の税のページを全部見ました

東伊豆町の税金のページに並んでいる税目は、税の証明/税の手続き/納付/固定資産税/軽自動車税/町民県民税/法人町民税/入湯税/その他税/確定申告の10項目です。

そして固定資産税のページの子ページは、次の2件だけでした。

  • 固定資産・名寄台帳兼課税台帳の閲覧は
  • 固定資産(土地・家屋)の異動等について

耐震改修による減額も、省エネ改修による減額も、バリアフリー改修による減額も、長寿命化促進税制も、専用のページが1つもありません。

私はこの連載で、市町のサイトを「長寿命化促進税制がどこに書かれているか」で3つの型に分類してきました。専用ページがある型、住宅ページの中に書かれている型(磐田市・袋井市・湖西市)、そしてどこにも書かれていない型(清水町・函南町)。

東伊豆町は3つ目、しかも最も徹底した形です。

ここで大事なことを申し上げます。ページがないことと、使えないことは別です。

長寿命化促進税制は地方税法にもとづく全国共通の制度です。東伊豆町のサイトに説明ページがないのは、町の住宅政策の広報上の優先順位の問題であって、制度の適用可否とは別の話です。

確かめ方は電話1本です。税務課(0557-95-6201)に、こう聞いてください。

「分譲マンションの大規模修繕工事について、地方税法のマンション長寿命化促進税制による固定資産税の減額の申告を受け付けていますか。申告書の様式と、必要な添付書類を教えてください。」

制度名を正確に言うことが大事です。「大規模修繕の減税」では通じないことがあります。

都市計画税について

東伊豆町の税金ページの税目一覧に、都市計画税の項目は見当たりませんでした。

この連載で見てきた静岡県内の自治体は三者三様でした。掛川市は市街化区域が定められておらず、条例で定める区域のみ課税。袋井市は市内全域で税率0.3%。湖西市は税率0.2%。そして東伊豆町は、町の税金ページに項目自体がない。

ここは断定を避けます。課税の有無は条例で決まるものであり、私が見たのは町のウェブサイトの構成だけだからです。

ただ、総会で説明する側としては、この違いは知っておいたほうがよい。

長寿命化促進税制で減額されるのは固定資産税です。総会で「税金が3分の1になります」と言うと、区分所有者は自分が払っている税額の総額をイメージします。正確に「固定資産税が」と言ってください。

そして、東伊豆町でご自宅の課税内容を確かめる一番確実な方法は、5月ごろ届く納税通知書を1枚見ることです。そこに何が課税されているかが書いてあります。


静岡県の支援:東伊豆町からは「熱海」と「伊東」が近い

補助金以外の支援にも触れます。ここは東伊豆町の理事会にとって、かなり条件が良い部分です。

令和8年度マンション管理セミナー(静岡県)

開催地 開催日 会場
浜松市 令和8年7月25日(土曜日) 可美公園総合センター
磐田市 令和8年8月29日(土曜日) 磐田商工会議所
三島市 令和8年9月12日(土曜日) 三島市役所
熱海市 令和8年10月予定 ―
沼津市 令和8年10月予定 ―
静岡市 令和8年11月予定 ―
伊東市 令和8年12月予定 ―
富士市 令和9年2月予定 ―
浜松市 令和9年2月予定 ―

(出典:静岡県 マンションの管理)

この表を見て、私は東伊豆町の管理組合をうらやましいと思いました。

熱海市(10月予定)と伊東市(12月予定)。伊豆急行線で伊豆稲取駅から伊東駅まで約35分、熱海駅まで約1時間。日帰りどころか、午前中に出て昼過ぎには戻れる距離です。

しかも三島市は令和8年9月12日(土曜日)、この記事の公開から8日後です。三島市役所での開催。伊豆急行と伊豆箱根鉄道を乗り継ぐ形になりますが、まだ間に合います。

私はいつも理事長さまに、こうお伝えしています。

理事長ひとりで行かないでください。次期理事の候補と2人で行ってください。

セミナーの内容そのものより、帰りの電車で交わす「うちはどうする」という会話のほうが、組合を前に進めます。

マンション管理士の無料派遣(令和8年度)

項目 内容
受付件数 10件(上限に達した時点で終了)
申込期限 令和8年11月14日(土曜日)
派遣回数 各管理組合2回まで
派遣期限 令和9年1月31日(日曜日)
申込先 一般社団法人静岡県マンション管理士会(ファクス0544-27-6561)
費用 無料

県全体で10件です。静岡県内の分譲マンション数を考えれば、これはかなり少ない枠です。申込書に書く内容を、東伊豆町の管理組合向けに具体化すると、こうなります。

「築○年、○階建て、○戸の分譲マンションです。区分所有者の約○割が町外に居住しており、総会の議決権行使書の回収に時間がかかっています。2回目の大規模修繕にあたり、(1)長期修繕計画の見直しと修繕積立金の水準、(2)管理計画認定の取得の可否、(3)総会運営(委任状・議決権行使書の実務)について助言をいただきたい。」

3つ目を入れるのが、伊豆のマンションのポイントです。工事の話だけでなく、総会が回るかどうかが最大の論点だからです。

国のモデル事業は、今回は間に合います

国土交通省の「マンションストック長寿命化等モデル事業」の令和8年度第3回提案募集は、2026年9月14日(月曜日)から9月18日(金曜日)です。

この記事の公開日から10日あります。これは、この連載で扱ってきた自治体のなかでは珍しく、現実的な日程です。

とはいえ10日で新規に申請書類一式を整えるのは、正直に申し上げて厳しい。私がおすすめするのは、次の2つです。

  1. 国土交通省のマンション総合対策モデル事業のページから、必要書類の一覧だけ印刷する(15分で終わります)
  2. 次回募集に向けて、劣化状況調査と長期修繕計画の見直しの見積を先に取っておく

この事業は、老朽化マンションの再生に向けた先導的なプロジェクトを支援するもので、計画支援型と工事支援型があります。全国で採択される件数は限られますが、「応募を検討した」という事実そのものが、理事会の議論の質を上げます。


ここから先は、株式会社明誠のサービスの話を含みます

制度の話はここまでです。ここからは工法とコストの話に入りますが、私自身が改修会社の代表ですので、利益相反があることを先に開示します。そのうえで読んでいただければと思います。

まず「見積書のどこにお金が乗っているか」の話から

大規模修繕の見積書で、多くの管理組合が素通りしてしまう行があります。仮設工事です。

一般的に、大規模修繕工事の総額に占める仮設足場の割合は15〜25%程度です。金額にすると、こうなります。

工事総額 仮設足場の概算(15〜25%)
3,000万円 450万〜750万円
5,000万円 750万〜1,250万円
8,000万円 1,200万〜2,000万円

私が現場で20年見てきて思うのは、20万円の植栽剪定は真剣に議論されるのに、750万円の「仮設工事一式」の1行はそのまま可決される、ということです。

理事の皆さまが不真面目なのではありません。判断材料が渡されていないだけです。

見積書を受け取ったら、この1文を工事会社に伝えてください。

「仮設工事を、架面積の平米単価とリース期間に分解して出してください。」

これだけで、金額の根拠が見えます。断られるようなら、それも1つの情報です。

ロープアクセス工法という選択肢

足場を組まずに、屋上からロープで作業員が下降して外壁の調査・補修・塗装・シーリング打ち替えを行う工法があります。ロープアクセス工法(無足場工法)といいます。

産業用の登山技術を応用したもので、命綱とは別に必ずバックアップのロープを取る二重系統が基本です。ロープアクセス工法の安全基準や技術的な解説は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。

そして、東伊豆町の建物には、この工法が効きやすい条件がそろっています。

東伊豆町の立地条件 足場工法での問題 ロープアクセスの効き方
相模灘を望む傾斜地に建つ建物が多い 足場の脚部を水平に組むための地盤処理・段差処理に費用と工期がかかる 屋上からの下降なので地盤の条件に左右されにくい
海側が擁壁・崖地に接している 擁壁側に足場を建てる余地がない、あるいは擁壁に荷重をかけられない 建物側から吊り下げるため擁壁に負担をかけない
国道135号から入る狭い町道が多い 足場部材を積んだ4t車が現場に入れない 資材量が大幅に少なく、軽トラック規模で搬入できる
敷地に余裕がなく駐車場が建物に近接 全周に足場を組むと駐車場が長期間使えない 面ごとに施工でき、駐車場の閉鎖期間を短くできる
区分所有者の在宅率が低い(別荘・リゾート利用) 足場とメッシュシートが長期間かかることへの説明機会が少ない 工期そのものが短くなる

3つ目の「狭い道」は、営業トークではなく物流の話です。足場部材が現場に届かない立地では、そもそも足場という選択肢が成立しません。

正直に申し上げます。ロープアクセスは万能ではありません

ここは毎回、同じことを書いています。

私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる現場は、普通にあります。

足場工法が有利な条件
外壁タイルの張り替え面積が大きく、材料の荷揚げが大量に発生する
屋上防水の全面改修で、資材の搬入量が多い
バルコニーの手すりや隔て板を全戸交換するなど、水平方向の移動が多い工事
外壁の欠損が広範囲で、足場上での面的な作業が必要

そして、これも正直に書いておきます。

バルコニー内部の作業が必要な点は、工法にかかわらず同じです。ロープアクセスにしても、居住者の立ち入りがゼロになるわけではありません。減るのは「外部足場が窓の前に架かっている期間」です。

そのうえで、部位ごとに足場とロープアクセスを使い分けるハイブリッド工法が、多くの建物で最も合理的な着地点になります。3つの工法から選べることの意味は、大規模修繕工事のご紹介とロープアクセス工法のご紹介のページにまとめています。


東伊豆町のマンションで、モデルケースを2つ

実在の建物を特定できない形で、東伊豆町の一般的な条件をもとに試算します。

ケース1:伊豆稲取駅圏/築28年・6階建て・42戸

項目 全面足場 ハイブリッド工法
工事総額 6,400万円 5,500万円
差額 ― ▲900万円
1戸あたり 約152万円 約131万円(▲約21万円)
工期 5.5か月 4か月

海側の面と道路側の高層部をロープアクセス、低層部と搬入量の多い面を足場、という配分です。

ケース2:熱川・北川方面/築33年・5階建て・30戸(海沿いの傾斜地)

項目 全面足場 ロープアクセス主体
工事総額 4,500万円 3,650万円
差額 ― ▲850万円
1戸あたり 150万円 約122万円(▲約28万円)
工期 5か月 3.5か月

30戸で4,500万円は、1戸あたり150万円です。同じ工事を150戸のマンションでやれば1戸あたり30万円前後になります。

戸数が小さいほど、工法の選定が1戸あたりの負担に効きます。

東伊豆町の分譲マンションは、都市部と比べて総戸数が小さい建物が多い。だからこそ、工法の話を設計段階で持ち出す価値があります。

そして、これが最も大事な点です。

工法は、設計を発注したあとでは実質的に選べません。着工の15〜13か月前に決めてください。


修繕積立金が足りないときの4つの打ち手

東伊豆町のように、区分所有者の高齢化と町外居住が重なる建物では、積立金の不足は現実的な課題です。打ち手は4つあります。

打ち手 内容 注意点
1. 工事範囲の絞り込み 劣化診断にもとづき、次期に送れる部位を分ける 送った部位の劣化進行を長期修繕計画に反映する
2. 工法の見直し 仮設費を圧縮する 設計発注前でないと選べない
3. 借入 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資 管理計画認定で金利引き下げ
4. 一時金または積立金の増額 総会決議 議案書に「一時金50万円」と「月々3,000円」の両方を載せる

4つ目について補足します。人は「50万円」という数字を見ると身構えますが、「月3,000円」なら判断できます。同じ金額を2通りの見せ方で議案書に載せるだけで、可決率が変わります。

そして、段階施工には注意点があります。仮設費は施工の回数分かかります。2回に分ければ足場代も2回。さらに、長寿命化促進税制の「3点セット一体で行う工事」の要件を外してしまう可能性もあります。安く見えて高くつく、という典型例です。


見積書のチェック5点【東伊豆町版】

私が管理組合にお渡ししているチェックリストです。5点目まで、そのまま使ってください。

1.下地補修の「仮定数量」を超えた分の単価を、契約前に契約書へ明記する

これが最重要です。外壁のひび割れ補修やタイル浮きの数量は、足場を架けるまで正確には分かりません。だから見積書には「仮定数量」が入ります。問題は、超過した分の単価が契約書にないケースです。

工事が始まって足場が架かった状態で、管理組合が対等に交渉することはできません。

契約書に入れる文例です。

「下地補修工事について、仮定数量を超過した場合の精算単価は、見積書記載の単価と同一とする。数量の確定は、監理者立会いのもと計測により行い、写真および計測記録を添付するものとする。」

これを嫌がる会社は、そこで分かります。

2.高圧洗浄の排水計画

東伊豆町は海に向かって傾斜する地形です。洗浄水は下へ流れます。近隣の敷地、町道、そして海。排水の経路と養生の方法を書面で出してもらってください。これは環境の話であると同時に、近隣との関係の話です。

3.予備日の設定と、超過した場合の費用負担

相模灘に面する立地では、降雨と強風で作業が止まる日が読みにくい。見積書に予備日が何日設定されているか、そして予備日を超過した場合の足場リース延長費用は誰の負担になるかを、契約前に確認してください。

4.工事監理者と施工会社の資本関係

設計監理方式を採るなら、監理者が施工会社と資本関係にないことを確認します。「第三者の目」を入れるための費用ですから、そこが独立していなければ意味がありません。

5.温泉の引湯配管が共用部にある場合の扱い

これは東伊豆町ならではです。温泉を各戸に引いている建物では、引湯配管や熱交換器が共用部に含まれていることがあります。温泉成分による配管の腐食・スケール付着は、一般的な給水配管とは劣化の進み方が違います。

見積書の設備工事の欄に、温泉配管の点検・更新が入っているか。入っていないなら、それは「対象外」なのか「見落とし」なのか。ここは必ず確認してください。長期修繕計画に温泉設備の項目がない建物を、私は実際に何件も見ています。


東伊豆町の建物が受けている、方位別の劣化条件

劣化診断の報告書を「外壁全体で○%劣化」という形で受け取ってはいけません。方位別に分けてもらってください。補修数量の根拠になりません。

東伊豆町の建物が受けている条件を、方位別に整理します。

方位 主な劣化要因 重点的に診るべき部位
東〜南東面(海側) 相模灘からの飛来塩分。金属部の腐食が最も早い 手すり・避難ハッチ・屋外階段・EV機械室扉・アルミサッシまわりのシーリング
南面 紫外線による塗膜劣化とシーリングの伸縮疲労 外壁塗膜のチョーキング、サッシまわりシーリング
西〜北西面(山側) 冬季の季節風。塗膜の摩耗とシーリングの早期硬化 メッシュシートの開放・復旧の人工が工程に乗る
北面 放射冷却による結露。コケ・藻の発生 防藻・防カビ仕様の検討
建物基部・擁壁側 崖地・傾斜地に近接する建物では、擁壁のクラックと排水 擁壁の目地・水抜き孔・法面の排水

東側の飛来塩分は、東伊豆町の建物にとって最大の要因です。鉄部の塗装周期を、山側と海側で分けて長期修繕計画に書いている組合は多くありません。ここを分けるだけで、次の12年の見え方が変わります。

そして最後の行、擁壁。東伊豆町にはがけ地近接危険住宅移転事業費補助金という制度があります。これは住宅の移転を支援する制度でマンション共用部には使えませんが、町の中に土砂災害特別警戒区域や災害危険区域が存在することを示しています。

劣化診断を発注するとき、「擁壁と法面も一緒に見てください」と1行足してください。追加費用はほとんどかかりませんし、次の総会で聞かれたときに答えられます。


工事の適期はいつか【東伊豆町版】

時期 向き不向き 理由
3〜5月 ○ 気温・湿度とも安定。ただし4月下旬以降は観光シーズンで搬入路が混む
6〜7月 △ 梅雨。予備日を7〜10日多めに
8月 △ 観光ピーク。国道135号の渋滞で資材搬入の時間が読みにくい
9〜11月 ◎ 最も条件が良い。台風の通過後は要注意だが、気温・湿度が塗装に最適
12〜2月 ○ 温暖で晴天率は高い。ただし季節風で高所作業の中止日が出る。予備日3〜5日追加

東伊豆町で特徴的なのは、観光シーズンと工事工程の関係です。8月と年末年始、そして2月の雛のつるし飾りの時期は、町内の交通量が普段と変わります。資材搬入の時間帯を工程表に書き込んでおくと、後で揉めません。


着工19か月前からの逆算カレンダー

長寿命化促進税制の期限(令和9年3月31日完了)から逆算すると、こうなります。

時期 やること
19〜16か月前 劣化状況調査の発注。管理計画認定の準備開始(事前確認適合証のルート)
15〜13か月前 工法を決める(ここを過ぎると設計が固まり、実質的に選べなくなる)
12か月前 定時総会で工事実施と予算を決議
9〜6か月前 施工会社の選定・相見積
3か月前 補助金の交付申請(着手前が原則)
着工直前 改修前の写真撮影(高圧洗浄後は二度と撮れません)
完了後3か月以内 固定資産税の減額申告

律速になるのは工事ではなく、総会です。

東伊豆町のように区分所有者が町外に多い建物では、ここにさらに数か月の余裕を見てください。

証明書まわりの落とし穴を3つ

  1. 建築士との契約書に「大規模の修繕等証明書の発行」を明記する。あとから頼むと追加費用になったり、そもそも発行できないと言われたりします。
  2. 着工前の写真は、高圧洗浄をした瞬間に撮れなくなります。議事録に「改修前の写真撮影を、高圧洗浄着手前に完了させること」と3行書いておいてください。
  3. 前回の施工会社が廃業していると、過去の工事内容の証明が難しくなります。前回の工事の書類(契約書・仕様書・完了報告書・写真)が管理室にあるか、今週中に確認してください。

今週できること(合計1時間かかりません)

所要時間 やること
5分 建設整備課 建設管理係(0557-95-6303)へ電話。「昭和56年以前の分譲マンションの耐震診断補助について」
5分 税務課(0557-95-6201)へ電話。「マンション長寿命化促進税制の申告について」
5分 屋上に上がる。防水層の状態と、温泉配管があればその外観を見る
15分 敷地内のブロック塀を採寸する(道路に面した延長をメートルで)
15分 管理室で、前回の大規模修繕の書類一式を探す
10分 静岡県のマンション管理士無料派遣の申込書をダウンロードする(令和8年11月14日締切)

電話2本は今日中に。予算枠は年度ごとで、先着順の制度もあります。


よくある質問(FAQ)

Q1. 東伊豆町に、分譲マンションの大規模修繕そのものに使える補助金はありますか?
A. 工事費を直接補助する町独自の制度はありません。ただし、昭和56年5月31日以前に建築された非木造の建物であれば、既存建築物耐震診断事業(基準額の3分の2以内・限度200万円)が使えます。診断は大規模修繕の設計の土台になるため、実質的に工事の入口の補助になります。(出典:東伊豆町 非木造住宅・建築物耐震診断等補助金)

Q2. 管理組合が申請者になれますか?
A. 東伊豆町の要綱には、区分所有または共有の建築物の場合は「総会議事録、同意書等」を添付すると明記されています。つまり要綱が区分所有建物を想定した設計になっています。申請者の名義を管理組合とするか理事長個人とするかは、建設整備課 建設管理係(0557-95-6303)にご確認ください。

Q3. 補助金の申請は工事の前ですか、後ですか?
A. 事業の実施前です。東伊豆町の各制度のページには「事業の実施前に補助金交付申請を行ってください」と明記されています。交付決定通知を受け取る前に着手すると、補助の対象外になります。

Q4. ブロック塀の撤去と、フェンスへの建て替えの両方に補助は出ますか?
A. 同一の一団の土地で、この要綱またはかつての生垣づくり補助金の交付をすでに受けている場合は対象外になります。1敷地につき1回とお考えください。撤去のみなら限度26.6万円、フェンス等・生垣への改善なら限度33.3万円です。(出典:東伊豆町安全で美しいいえなみ整備事業費補助金交付要綱(PDF))

Q5. 東伊豆町の住宅リフォーム補助金は、マンションの共用部に使えますか?
A. 使えません。公式ページに「申請者が所有し、居住している住宅が対象です。(貸家やアパートは対象外)」と明記されています。ただし、東伊豆町に住民登録して居住している区分所有者の専有部のリフォームには使える可能性があります。交付回数5回まで・累計20万円までという設計なので、説明会資料に1ページ入れておく価値があります。

Q6. 管理計画認定の申請先はどこですか?
A. 静岡県です。マンション管理計画認定制度の対象は、市の区域は各市、町の区域は県と整理されています。東伊豆町は町なので、静岡県くらし・環境部建築住宅局住まいづくり課(054-221-3084)が窓口です。手数料は令和8年4月1日改定で、事前確認適合証がある場合4,000円、ない場合28,100円です。(出典:静岡県 マンションの管理)

Q7. 区分所有者の多くが町外に住んでいます。総会が成立しません。
A. 伊豆のリゾートマンションで最も多いご相談です。実務としては、(1)議案書の発送を通常より2か月前倒しする、(2)委任状と議決権行使書の両方の様式を同封する、(3)返信用封筒に切手を貼る、(4)議案の要約を1枚にまとめて同封する、の4点で回収率が変わります。静岡県のマンション管理士無料派遣(令和8年11月14日締切)で、この点を相談テーマにすることもできます。

Q8. ロープアクセス工法は、傾斜地や崖地に建つマンションでも使えますか?
A. むしろ有利な条件です。足場は地盤の上に組むため、傾斜地や擁壁際では脚部の処理に費用と工期がかかります。ロープアクセスは屋上から下降するため、地盤の条件に左右されにくいという特性があります。ただし、外壁タイルの大面積張り替えなど資材の荷揚げが大量に発生する工事は足場が合理的です。部位ごとに使い分けるハイブリッド工法を含めてご検討ください。技術的な解説はロープアクセスドットコムにまとめています。


この記事のポイントまとめ

  • 東伊豆町の要綱の別表には「マンション」という用途区分が独立して存在する
  • 既存建築物耐震診断事業は基準額の2/3以内・限度200万円。昭和56年5月31日以前の非木造が対象
  • 延べ面積655㎡を超えると基準額の側では限度額に届く。ただし事業費が300万円以上必要
  • 要綱が「区分所有又は共有の場合は総会議事録、同意書等」と管理組合の総会を名指ししている
  • 令和8年3月26日改正・4月1日施行。2026年度の現行制度である
  • 緊急輸送ルート等の沿道なら補強計画策定10/10・耐震化助成4/5と桁が変わる
  • ブロック塀は撤去20m・改善13mで限度額に到達。ただし1敷地1回のみ
  • ブロック塀補助には事業完了から15年の財産処分制限がついている
  • 住宅リフォーム補助は共用部には使えないが、専有部は5回まで使える
  • 管理計画認定の窓口は町ではなく静岡県。手数料は適合証ありで4,000円
  • 令和7年法律第47号でマンション管理適正化支援法人制度が新設された(静岡県は未実施)
  • 町の固定資産税ページに減額の子ページは2件のみ。ページがないことと使えないことは別
  • 県のマンション管理セミナーは熱海(10月予定)と伊東(12月予定)が近い
  • マンション管理士の無料派遣は県全体で10件・令和8年11月14日締切
  • 総会の定足数確保が工程の律速。議案作成は都市部より半年前倒しに

主なお問い合わせ先

窓口 電話番号 主な担当
東伊豆町 建設整備課 建設管理係 0557-95-6303 耐震診断補助・ブロック塀補助・がけ地移転
東伊豆町 税務課 0557-95-6201 固定資産税・長寿命化促進税制の申告
東伊豆町 観光産業課 観光商工係 0557-95-6301 住宅リフォーム振興事業補助金
東伊豆町役場(代表) 0557-95-1100 〒413-0411 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取3354
静岡県 くらし・環境部建築住宅局住まいづくり課 054-221-3084 管理計画認定・県セミナー
一般社団法人静岡県マンション管理士会 ファクス 0544-27-6561 マンション管理士無料派遣の申込
一般社団法人日本マンション管理士会連合会 相談ダイヤル 03-5801-0858 管理全般の相談

実務メモ:建設整備課と税務課は同じ町役場(稲取3354)にあります。1回の来庁で両方回れます。開庁時間は月曜日から金曜日の8時30分から17時15分までです。


東伊豆町の建物のこと、まずはご相談ください

株式会社明誠は、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を専門とする改修会社です。通常の足場仮設工事、無足場のロープアクセス工事、その両方を組み合わせたハイブリッド工法という3つの選択肢から、建物にとって最適な工法をご提案します。

  • 傾斜地・崖地に建っていて、足場が組めるのか分からない
  • 海側の鉄部の傷みが早い。原因と対策を知りたい
  • 補助金が使えるのか、まず建物を見てほしい
  • 相見積の条件がそろっているか、第三者の目で見てほしい
  • 温泉の引湯配管が長期修繕計画に入っていない

こうしたご相談に、無料の現地調査・お見積りで対応しています。お問い合わせフォームからご連絡ください。管理組合向けのサービスについても承ります。

総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション・ビル・ホテルの大規模修繕/ロープアクセス工法(無足場工法)/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、東京・関東一円と全国のフランチャイズ加盟店を通じて、ロープアクセス工法・足場工法・ハイブリッド工法の3つを提案できる改修会社。ロープアクセス工事として日本初のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。

最終更新:2026年9月4日

注記:本記事は2026年9月4日時点で公開されている情報にもとづいて作成しています。補助制度は年度途中で内容・金額・受付状況が変更されることがあります。また、要綱の解釈や適用の可否は個別の建物の条件によって異なります。申請にあたっては、各制度の公式ページと窓口で最新の内容をご確認ください。本記事は法務・税務の助言を目的としたものではありません。


出典・参考資料


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点検商法の相談が年19,696件で高止まり|屋根リフォーム詐欺5人逮捕から、オーナーと管理組合が「点検」を検証する5つの方法【2026年9月】

この記事で答える質問:訪問してきた業者の「点検結果」が本当かどうか、オーナーと管理組合はどうやって確かめればいいのか?

2026年9月4日 更新/執筆:株式会社明誠 代表取締役 本間幸紘(大規模修繕・ロープアクセス工法 実務20年)

2026年9月2日、神奈川県警が屋根のリフォーム工事をめぐる詐欺の疑いで、リフォーム会社の実質的経営者ら5人を逮捕したと報じられました。報道によれば、逮捕容疑は2024年10月、川崎市の男性に補修の必要がないのに「屋根の部品が外れているのは中の木が腐っているから」などとうそを言い、工事代金25万3千円をだまし取ったというものです。グループは首都圏の1都3県で約3億2000万円を売り上げていたとみられ、県警は匿名・流動型犯罪グループ、いわゆる「匿流(とくりゅう)」の関与も視野に捜査していると報じられています(いずれも容疑段階の報道であり、事実関係は今後の捜査・裁判で確定します)。

正直に申し上げます。この手のニュースを見るたび、私は同じ業界にいる人間として、うまく言葉にできない悔しさを感じます。私たちが1棟1棟、ロープにぶら下がって外壁を叩いて回っている横で、「見えない場所」の嘘だけで3億円が動く。しかも被害に遭うのは、一人暮らしの高齢者や、建物のことを相談する相手が身近にいないオーナーさんです。

ここからが本題です。この記事は「悪い業者に気をつけましょう」で終わらせません。点検商法という商売がなぜ成立するのか、その構造を分解したうえで、オーナーさま・管理組合さまが「目の前の点検結果は検証可能か」を判定するための具体的な手順を、公的な一次情報とあわせて整理します。


1. 結論:点検商法は「点検を検証できない」ことを突く商売。防ぐ鍵は”記録”の3条件

先に結論を申し上げます。

Q. 点検商法を防ぐ、いちばん効く方法は何ですか?
A. 「その場で契約しない」ことと、「点検の記録が第三者に検証できる形で残っているか」を確認することの2つです。

点検商法が成立する条件は、実はたった1つです。依頼者が、点検された場所を自分の目で確かめられない——これに尽きます。屋根、屋上、外壁の高い位置、バルコニーの外側、屋上の防水層の立ち上がり。どれも、はしごをかけて上がるか、足場を組むか、ロープで降りるかしなければ、所有者本人が見に行けない場所です。

見に行けないから、業者が持ってきた1枚の写真を信じるしかない。ところがその写真は、本当にあなたの建物のものかどうかを、あなたには確かめようがない。ここに嘘の入り込む余地が生まれます。

だから、対抗手段も裏返しです。点検の「記録」が次の3条件を満たしているかどうかを見てください。

条件 具体的に確認すること なぜ効くのか
①位置が特定できる 写真に「北面3階west側・柱型」など部位表記があるか。立面図や部位番号と紐づいているか 他物件の写真の流用を防げる
②連続していて全体像がある 「悪い箇所」だけでなく、健全な箇所も含めて面全体が撮られているか 都合の悪い部分の切り取りを防げる
③第三者が追試できる 打診(叩き)音の記録、日付、調査者名、調査方法(打診/赤外線/近接目視)の明示があるか 別の会社が同じ手順で再点検して照合できる

私はいつも理事長さまに、「点検結果に納得できないときは、同じ場所をもう一度、別の会社に見てもらってください」とお伝えしています。まっとうな点検であれば、追試されて困ることは何ひとつありません。追試を嫌がる時点で、それは点検ではなく営業です。


2. 何が起きたのか|屋根リフォーム詐欺で5人逮捕、1都3県で約3億2000万円

まず、今回の事案を事実として整理します。報道内容の範囲でまとめます。

  • 逮捕日:2026年9月上旬(神奈川県警)
  • 容疑:詐欺
  • 主な逮捕容疑の内容:2024年10月、川崎市の男性(58)に対し、補修工事の必要がないのに「屋根の部品が外れているのは中の木が腐っているから」などとうそを言い、工事代金25万3千円をだまし取った疑い
  • グループの規模:首都圏1都3県で約3億2000万円の売上があったとみられる
  • 主な標的:一人暮らしの高齢者が住む、築年数の古い戸建て住宅
  • 手口:直接訪問し、屋根などの不具合を指摘して不安をあおり、リフォームを持ちかける

注目していただきたいのは、1件あたりの金額が25万3千円という点です。数百万円の詐欺ではありません。「まあ、それくらいなら」と財布が緩む金額に、意図的に設定されています。

これは私の経験上、非常によくできた設計です。理由は3つあります。

  1. 建設業の許可がいらない金額帯である。建設業法では、工事1件の請負代金の額が500万円に満たない工事(建築一式工事は1,500万円未満など)は「軽微な建設工事」として、建設業許可がなくても請け負えます(建設業法施行令第1条の2)。つまり「許可がないこと自体は違法ではない」帯を狙っている。
  2. 被害者が声を上げにくい金額である。数十万円だと、「騒ぐほどでもない」「自分が悪かった」と泣き寝入りしやすい。
  3. 回数を稼げる。1件25万円でも、1,000件回れば2億5,000万円になります。実際、報じられた3億2000万円という数字はその規模感と整合します。

つまりこれは、単発の悪人による犯行ではなく、回数で稼ぐようにチューニングされたビジネスモデルです。だからこそ、個別の「悪い業者を見分ける」発想だけでは足りません。構造で防ぐ必要があります。


3. 数字で見る現在地|訪問販売リフォームは減り、点検商法は増えている

ここは公的な一次情報で確認します。独立行政法人 国民生活センターが公表している、全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET)の相談件数です。

表:訪問販売によるリフォーム工事/点検商法の相談件数の推移(年度別)

年度 訪問販売によるリフォーム工事 点検商法
2023年度 11,879件 12,550件
2024年度 9,839件 19,249件
2025年度 5,544件 19,696件
2026年度(5月31日まで) 602件(前年同期680件) 2,193件(前年同期2,012件)

(出典:国民生活センター「訪問販売によるリフォーム工事/点検商法」/件数は2026年5月31日現在。消費生活センター等からの経由相談は含まれていません。2026年7月31日更新)

この表は、2つのことを同時に語っています。

ひとつめ。「訪問販売によるリフォーム工事」の相談は、2023年度の11,879件から2025年度の5,544件へと、2年で半分以下になりました。 数字だけ見れば改善です。

ふたつめ。ところが「点検商法」の相談は、同じ期間に12,550件から19,696件へと、約1.57倍に増えています。 そして2026年度も、5月末までの累計で2,193件と、前年同期の2,012件を約9%上回っています。

私はこの2つを、別々の現象とは思っていません。「リフォームを売りに来ました」という入り方が通用しなくなったので、「点検に来ました」という入り方に移動した——そう読むのが素直です。売っているものは同じでも、入口のラベルが変わった。だから「訪問販売リフォーム」という統計では捕まえきれなくなり、「点検商法」の統計が膨らんでいる。

国民生活センターが挙げている最近の相談事例にも、次のようなものが並びます。

  • 突然訪問した業者に「屋根の瓦がずれている」と言われ、承諾したら足場を組んで高額な契約を迫られた
  • 「無料で点検します」と言われて上がらせたところ、別の会社が同席していて高額な工事を勧められた
  • 「近所で工事をしている」と言って訪問し、点検が必要と言われた

(出典:同上/国民生活センター「訪問販売によるリフォーム工事・点検商法」の最近の事例より要旨)

「無料」「近所で工事中」「今日だけ」。この3語がそろったら、いったん止まってください。これは私が20年間、数え切れないほど後始末をしてきた入口の言葉です。


4. なぜ「屋根・屋上・外壁の上のほう」ばかりが狙われるのか

答えは単純です。そこが、所有者にとって最も検証コストが高い場所だからです。

キッチンの水漏れなら、施主は自分の目で見られます。床の傾きも、ビー玉を転がせば分かります。ところが屋根と屋上と外壁の高所は、見に行くこと自体に費用と危険が伴う。

ここで、ひとつ業界の実情をお話しします。従来、建物の高所を「ちゃんと見る」ためには、足場を架けるのが唯一の方法でした。 そして足場は高い。大規模修繕工事の総額のうち、仮設足場が占める割合は、建物形状や階数にもよりますが、私の実感で総額の2割前後になることが珍しくありません。

つまりこういう構造です。

見に行くのに数百万円かかる場所は、嘘をつかれても検証されない。

点検商法は、この経済的な非対称性の上に立っています。悪意ある業者が意図的に高所を選んでいるのは、そこが「安全地帯」だからです。

そして、ここが本題につながります。この非対称性を崩す技術が、無足場工法、なかでもロープアクセス工法です。

ロープアクセス工法(産業用ロープアクセス/無足場工法。作業者が2本のロープで屋上から下降し、外壁面に直接アプローチして調査・施工する技術)は、足場を架けずに、人の手と目で外壁に触れられます。つまり、打診(テストハンマーで壁面を叩き、音の違いから浮きや剥離を判定する調査方法)を、足場代を払わずに実施できる。ロープアクセス工法の一般的な安全基準や技術的な背景については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。

これは「工事が安くなる」という話にとどまりません。検証のコストが下がると、嘘のコストが上がる。 セカンドオピニオンが現実的な選択肢になるからです。私がロープアクセスをこの業界に広げたいと思っている理由の、決して小さくない部分がここにあります。


5. 賃貸オーナー・管理組合にも、同じ手口は来る|共用部で起きる3パターン

「今回の逮捕は戸建ての話でしょう」と思われたかもしれません。私の実感では、そうとも言い切れません。マンション・アパート・テナントビルには、戸建てとは別の形で同じ手口が入ってきます。よくあるのは次の3パターンです。

パターンA:入居者経由で管理会社・オーナーに話が上がる

「お住まいのアパートの屋根が傷んでいます」と入居者に声をかけ、不安になった入居者からオーナーに連絡が入る形です。オーナーからすると「入居者からのクレーム」の顔をして届くので、断りにくい。

対処:入居者へは事前に「建物に関する業者の訪問は、必ず管理会社を通します。直接の対応は不要です」と一斉通知しておくのが最も効きます。これは1通のメール/掲示で済みます。

パターンB:総会・理事会の直前に「無料診断」が届く

管理組合の場合、大規模修繕の検討時期は登記や築年数からある程度推測できます。そのタイミングを狙って「無料診断」のチラシや訪問が集中することがあります。

対処:診断の依頼先は、理事会で「複数社に同一条件で依頼する」と決めてから動く。飛び込みで来た1社だけに診断させて、そのまま見積もりまで進むのが、いちばん比較ができなくなる流れです。

パターンC:台風・地震のあとの「火災保険が使えます」

9月は台風期です。災害後には「保険金で自己負担なく直せます」という勧誘が増えます。国民生活センターも、災害に便乗した住宅修理サービスのトラブルについて繰り返し注意喚起を行っています。

対処:保険が使えるかどうかを判断するのは保険会社であって、工事業者ではありません。先に保険会社・代理店に連絡する。順番を逆にしないでください。

なお、賃貸オーナーさまに1点補足します。公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センターの推計では、2025年の住宅リフォーム市場規模は7兆4200億円(広義では8兆6700億円)と過去最高でした。ただしこの推計には注記があり、分譲マンションの大規模修繕等の共用部分のリフォーム、および賃貸住宅所有者による賃貸住宅のリフォームは含まれていません(出典:住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住宅リフォームの市場規模(2021年〜2025年)」)。

つまり、私たちが日々関わっている共用部・賃貸の修繕市場は、この7.42兆円の「外側」にあるわけです。統計に出にくい分野だからこそ、相場情報も出回りにくく、比較がしづらい。ここも、悪質業者にとっては都合のよい環境だということです。


6. 「本物の点検」と「点検商法」を分ける5つの検証ポイント

ここが、この記事でいちばん持ち帰っていただきたい部分です。表にしました。理事会や社内でそのまま使っていただいて構いません。

# 確認すること 本物の点検 点検商法の疑いが濃い
1 訪問の経緯 こちらから依頼した/管理会社経由 突然の訪問・「近所で工事中」「無料点検」
2 写真の作り 部位表記・立面図との紐づけ・健全部も含む連続撮影 損傷部のクローズアップ数枚のみ、位置が不明
3 調査方法の明示 打診/近接目視/赤外線/ドローンなど手法と範囲を書面で明記 「見れば分かる」「専門家だから」
4 契約を迫る速度 見積もり提示後、検討期間を置くのが当然という態度 「今日中なら」「足場代がタダになるのは今だけ」
5 相手の身元 商号・所在地・建設業許可の有無・所属団体を自ら開示 名刺のみ、携帯電話番号だけ、法人所在地が曖昧

5つのうち、どれか1つでも引っかかったら

その場で契約しない。これだけで、被害の大半は防げます。

私はこれを、必ずワンセットでお伝えするようにしています。「断る」のは勇気が要ります。でも「今日は決めません」と言うだけなら、誰でも言えます。断らなくていい。決めなければいい。 まっとうな業者は、それで一切困りません。

「建設業許可がないから悪徳」とは限らない点に注意

ここは正確に書きます。前述のとおり、請負金額500万円未満(建築一式工事は1,500万円未満等)の軽微な建設工事は、建設業許可がなくても請け負えます。許可がないこと自体は違法ではありません。 地域の優良な小規模事業者にも、許可を持たない会社は普通にあります。

ですから、許可の有無は「あれば安心材料が1つ増える」程度に扱ってください。より実務的なのは、国土交通省の住宅リフォーム事業者団体登録制度に登録された団体の構成員かどうかを確認することです。この制度は、要件を満たす住宅リフォーム事業者団体を国が登録・公表し、団体を通じて事業者の業務の適正な運営を確保しようとするもので、平成26年9月1日に告示公布・施行されています。


7. 制度で身を守る|クーリング・オフ、建築基準法第12条、そして記録

7-1. 訪問販売なら、クーリング・オフは「8日間」

契約してしまった場合でも、訪問販売であれば特定商取引法に基づくクーリング・オフができます。法律で定められた事項が正しく記載された書面(申込書面または契約書面)を受け取った日から8日間、無条件で契約を解除できます。通知は電磁的記録(メール等)でも可能です(出典:消費者庁「特定商取引法ガイド」)。

実務上、非常に重要なポイントを1つ。書面に不備がある場合、「正しく記載された書面を受け取った」ことにはならないため、8日間の起算が始まりません。 つまり、契約から日が経っていても、書面が不備だらけなら、まだクーリング・オフができる可能性があります。「もう8日過ぎたから無理だ」と自己判断で諦めず、消費者ホットライン(電話番号 188)や地域の消費生活センターに相談してください。

7-2. 一定規模以上の建物には、そもそも公的な点検ルールがある

マンション・ビル・ホテルのオーナーさま、管理組合さまには、こちらのほうが実務的に重要です。建築基準法第12条の定期報告制度です。

  • 特定建築物の定期調査:おおむね1〜3年ごと(対象・周期は特定行政庁が指定)
  • 外壁の全面打診等調査:竣工または外壁改修から10年を超えて最初の調査時、および以降10年以内ごと(平成20年国土交通省告示第282号)

(出典:国土交通省「建築基準法に基づく定期報告制度について」。対象建築物の範囲・報告周期は特定行政庁ごとに異なるため、必ず所在地の特定行政庁の指定をご確認ください)

この制度の存在は、点検商法対策として2つの意味を持ちます。

  1. 「公的に定められた調査の型」があるということ。訪問業者の「点検」が、この型(調査範囲・手法・報告様式)に照らしてどうなのかを問える。
  2. 定期報告の履歴そのものが、建物の記録になるということ。前回いつ・どこを・どの手法で調べたかが残っていれば、「急に危険な状態になった」という主張の妥当性を、自分たちで判断できます。

私が申し上げたいのは、制度を守るためだけに定期報告をするのはもったいない、ということです。あれは、あなたの建物についての公的な履歴書です。使ってください。


8. 私が現場でやっていること|「記録に残る点検」を、足場なしでつくる

正直に申し上げます。私たちのような改修会社が、今回のようなニュースに対してできる最大の貢献は、「悪い業者に気をつけて」と言うことではありません。検証可能な点検を、安く、当たり前にすることだと思っています。

数年前、都内の築28年・68戸のマンションで、こんなことがありました。理事会に「外壁タイルが危険な状態です」という他社の診断書が持ち込まれていました。写真は5枚。すべて損傷部のアップで、どの面のどの高さかは書かれていません。提示された概算は、足場を含めて総額で1億円を超えていました。

私はロープアクセスで、南面と東面の全数打診をさせていただきました。作業員2名、実働3日です。結果、浮きが確認されたのは主に東面の4階から6階の窓まわりに集中しており、南面は健全でした。写真は部位番号を振って320枚、打診記録は面ごとに集計してお渡ししました。

最終的にその年に実施したのは、東面の部分補修とシーリングの打ち替えで、金額は当初提示の3分の1以下です。理事長さまが最後におっしゃった言葉を、私は今でも覚えています。「やっと、うちの建物のことが自分の言葉で説明できるようになりました」と。

これが、私がロープアクセスにこだわる理由です。技術そのものより、技術がもたらす説明可能性のほうが大事だと思っています。

明誠が提案できる3つの工法(自社サービスのご案内)

※ここからは当社サービスのご紹介です。中立的な情報をお求めの方は、前章までをご参照ください。

当社は、建物の条件に応じて3つの工法から最適な組み合わせをご提案しています。

工法 主な特徴 向いている建物
通常足場工法 従来型の仮設足場。作業範囲が広く、大量の面積を一度に施工しやすい 中低層、形状が複雑、施工面積が大きい
ロープアクセス工法(無足場工法) 産業用ロープで下降し、足場を架けずに調査・施工。足場費の削減、工期短縮、居住者・利用者の生活影響を最小化 高層、足場架設が困難、部分補修、稼働を止められないホテル・テナントビル
ハイブリッド工法 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分け、総コストを最適化 大規模・複雑形状で、総額の最適化が必要な物件

3つを比較して提案できる会社は、日本ではまだ多くありません。当社はロープアクセス工事において日本初のフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。大規模修繕工事のご紹介もあわせてご覧ください。賃貸マンション・ビル・ホテルなど用途別のご相談はオーナーさま向けページからどうぞ。

セカンドオピニオンだけのご依頼も承ります。 他社の診断書を持ち込んでいただいて、「この写真はどの部位のものか」「この工法は妥当か」を一緒に読むだけでも構いません。お問合せフォームからお気軽にどうぞ。


9. 万一、契約してしまったら|最初の72時間でやる4つの手順

慌てないでください。順番があります。

  1. 工事を止める。着工前なら「検討し直します」と伝える。口頭で構いません。まず止める。
  2. 書面をすべて確保する。契約書、申込書、見積書、パンフレット、名刺、受け取った日付が分かるもの(封筒・メール)。写真も撮っておく。
  3. クーリング・オフの通知を出す。訪問販売なら書面受領日から8日間。ハガキ(特定記録郵便や簡易書留が確実)または電磁的記録で。文面は消費者庁の特定商取引法ガイドに例があります。
  4. 消費者ホットライン188に相談する。8日を過ぎていても、書面不備・不実告知(うその説明)があれば取消しを主張できる場合があります。自己判断で諦めない。

法的な判断は個別の事情によりますので、最終的には消費生活センターや弁護士等の専門家にご相談ください。私はこの記事で法的助言をするつもりはありませんが、「相談先が公的に用意されている」ことだけは知っておいていただきたいのです。


よくある質問(FAQ)

Q1. 「無料点検」は全部あやしいのですか?
A. いいえ。無料点検そのものは、まっとうな会社も行っている正当な営業活動です。問題は「無料点検」+「突然の訪問」+「その場で契約を迫る」の組み合わせです。この3つがそろったときだけ警戒してください。

Q2. 点検商法の相談は、いま増えているのですか?
A. 増えています。国民生活センターのPIO-NET登録件数では、点検商法の相談は2023年度12,550件→2025年度19,696件。2026年度も5月31日までで2,193件と、前年同期の2,012件を上回っています(出典:国民生活センター)。

Q3. 屋根や屋上を自分で確認できないのですが、どうすればいいですか?
A. ロープアクセス工法やドローン等を使えば、足場を架けずに近接での調査・撮影が可能です。重要なのは「見に行けること」より「部位が特定できる形で記録が残ること」です。調査を依頼する際は、部位表記付きの写真と調査方法の明記を条件にしてください。

Q4. 建設業許可がない会社は避けるべきですか?
A. 一概には言えません。請負金額500万円未満(建築一式工事は1,500万円未満等)の軽微な建設工事は、建設業許可がなくても請け負えます。許可の有無より、国土交通省の住宅リフォーム事業者団体登録制度の登録団体に所属しているか、記録の残し方が適切か、のほうが実務的な判断材料になります。

Q5. 契約から10日経ってしまいました。もう手遅れですか?
A. 諦めるのはまだ早いです。訪問販売のクーリング・オフは「法律で定められた事項が正しく記載された書面を受け取った日」から8日間で、書面に不備があればその起算が始まっていない可能性があります。消費者ホットライン188、または地域の消費生活センターにご相談ください。


この記事のポイントまとめ

  • 屋根リフォーム詐欺で5人が逮捕。1件25万3千円×回数で稼ぐビジネスモデル
  • 点検商法の相談は2025年度19,696件。訪問販売リフォームは減り、点検商法へ移動
  • 点検商法が成立する条件は「所有者が点検箇所を検証できない」ことのみ
  • 防ぐ鍵は、位置特定・連続撮影・第三者追試の3条件を満たす「記録」
  • 訪問販売のクーリング・オフは書面受領から8日間。書面不備なら起算しない
  • 賃貸・共用部の修繕は7.42兆円統計の「外側」。相場が見えにくい分野

執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション・ビル・ホテルの大規模修繕/ロープアクセス工法(無足場工法)/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法・通常足場工法・ハイブリッド工法の3工法から最適な提案ができる改修会社。ロープアクセス工事において日本初のフランチャイズを展開しています。

最終更新:2026年9月4日

※本記事の制度・統計情報は執筆時点のものです。制度は変更される場合がありますので、最新の内容は必ず各公式サイトでご確認ください。また、本記事は法的助言を目的としたものではありません。


出典・参考資料


関連リソース

最後に一言だけ。私は、建物を直す仕事は「不安を売る仕事」であってはならないと思っています。不安ではなく、記録と根拠をお渡しする。それができる会社が増えれば、今回のような事件は減っていくはずです。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

森町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

2026年9月3日 更新

この記事で答える質問:静岡県周智郡森町で、マンション・アパート・事業所ビルの大規模修繕や屋根・外壁の改修に使える補助金は、2026年度にどれが残っているのか?

先に結論から書きます。森町には、分譲マンションの共用部大規模修繕そのものを直接補助する町独自のメニューは、2026年9月時点の町の公開情報の中には見当たりません。そのかわり森町には、他の自治体ではあまり見かけない「住宅屋根の耐風改修助成事業」があります。瓦屋根の全面改修に対して工事費の23%、上限55.2万円。屋根という、大規模修繕でいちばん足場代がかさむ部位に、町が独自にお金を出しているのです。

さらに、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物、つまりマンションや事業所ビルの耐震診断費用にも補助が用意されています。木造住宅の耐震改修は上限120万円。ブロック塀は除却だけでなく建替えにも補助が出ます。分譲マンションの管理計画認定は、森町の場合、町ではなく静岡県が窓口です。

私は建設・改修の業界に20年以上いて、その中でロープアクセス工法という無足場の技術を日本でフランチャイズ展開するところまでやってきました。人口16,422人、6,763世帯(2026年8月1日現在)という規模の町で、大規模修繕の予算をどう組み立てるか。町の制度・県の制度・国の制度を、実際に工事を発注する側の目線で並べ直してみます。


この記事の結論:森町で押さえるべき7つの制度

まず全体像を表にします。以下はすべて、森町または静岡県、国土交通省・環境省の公開情報にもとづくものです。金額や期限は年度途中で変わることがあるため、申請前には窓口での確認をお願いします。

# 制度名 実施主体 補助額 主な対象
1 住宅屋根の耐風改修助成事業(耐風改修) 森町 工事費相当額の23%・上限55.2万円 令和3年12月31日以前建築の瓦屋根住宅
2 住宅屋根の耐風改修助成事業(耐風診断) 森町 2/3以内・上限21,000円 同上(粘土瓦・セメント瓦)
3 建築物の耐震診断事業 森町 非木造住宅は2/3以内、住宅以外は上限100万円 昭和56年5月31日以前建築の木造以外の建築物
4 木造住宅の耐震改修事業(補強計画一体型) 森町 上限120万円(高齢者等の世帯は140万円) 昭和56年5月以前建築・耐震評点1.0未満の木造住宅
5 ブロック塀等の除却・建替え事業 森町 除却は上限26.6万円、建替えは上限33.3万円 道路面から高さ60cmを超える既存ブロック塀
6 空き家等利活用推進支援費用補助金 森町 改修工事は上限30万円、残置物処分は上限10万円 空き家・空き地バンク登録物件
7 マンション管理計画認定制度 静岡県(町域が対象) 認定申請手数料 4,000円〜28,100円 森町内の分譲マンション管理組合

このうち、大規模修繕を検討している建物オーナー・管理組合にとって現実的に効いてくるのは 1・2・3・5 の4つです。理由は単純で、この4つが「建物の外側」に効くからです。外壁・屋根・付属工作物という、足場をかけないと触れない部位に、町がお金を出している。ここを取りこぼさないでほしい、というのがこの記事の主旨です。

出典:森町 わが家の耐震化へ向けた補助制度について、静岡県 マンションの管理


森町という町の輪郭を、建物側から見る

人口16,422人・6,763世帯。世帯数は10年前より増えている

森町の人口は16,422人(男8,213人/女8,209人)、世帯数は6,763世帯です(2026年8月1日現在、出典:森町の月別人口)。令和2年国勢調査時点の17,475人・6,240世帯と比べると、人口は減っているのに世帯数は増えています。

これは全国の中山間地でよく見る動きで、建物側から読むと意味は明快です。1世帯あたりの人数が減り、単身・二人世帯向けの小さな住戸の需要が相対的に増えている。森町でいえば、駅周辺や幹線道路沿いの木造アパート、鉄骨造の共同住宅が、そういう世帯の受け皿になっています。

つまり森町で「大規模修繕」を考える人の多くは、分譲マンションの管理組合ではなく、賃貸共同住宅を持っているオーナー、あるいは事業所・工場・倉庫を持っている経営者です。この記事もその前提で書いています。

三方を山に囲まれ、太田川が中心を流れる

森町は静岡県西部、遠州平野の北の端にあり、三方を低い山に囲まれ、中心を太田川が流れます。「遠州の小京都」と呼ばれる古い町並みが残り、瓦屋根の建物が今も多く残っている。この地形と町並みが、あとで説明する屋根の耐風改修助成という制度の背景になっています。

山あいの町は、平野部より風の当たり方が複雑です。谷筋を吹き抜ける風、山越えで加速する風。台風が接近したとき、平野の真ん中より山際の集落のほうが屋根の被害が大きい、という現象を私も現場で見てきました。森町が令和6年度にわざわざ「住宅屋根の耐風改修助成事業」を新設したのは、理由のないことではないと思います。

隣接自治体との位置関係

森町は袋井市、掛川市、磐田市、浜松市天竜区と接しています。このシリーズでは袋井市(2026年9月1日公開)、掛川市(同9月1日)、磐田市、浜松市も個別に扱いました。近隣の市では住宅リフォームや耐震に関する制度の組み立てが少しずつ違うので、物件が市境に近い場合は、隣の市の制度と読み比べる価値があります。ただし補助を受けられるのは物件所在地の自治体の制度のみです。ここを取り違える方が毎年いらっしゃるので、念のため書いておきます。


森町の目玉:住宅屋根の耐風改修助成事業

まず数字から。診断は上限21,000円、改修は上限55.2万円

森町が令和6年度に創設した制度です。台風などの強風による屋根の被害を未然に防ぐため、令和3年(2021年)12月31日以前に建築された瓦屋根の住宅について、耐風診断と耐風改修の費用の一部を助成します。

区分 補助率・基準額 上限額 条件
耐風診断 診断費用と31,500円のいずれか少ない額の2/3以内 21,000円 原則として瓦屋根の全面を診断
耐風改修 改修費用と「屋根面積1平方メートルあたり24,000円(上限240万円)」のいずれか少ない額の23% 55.2万円 原則として耐風診断を実施し、瓦屋根の全面を改修

町が示している計算例をそのまま引くと、こうなります。

耐風診断の例:診断費用が40,000円(税込)の場合。40,000円は基準額31,500円を超えているので、31,500円×2/3=21,000円が補助額。申請者の負担は19,000円。

耐風改修の例:改修費用が300万円(税込)、屋根面積が130平方メートルの場合。町の基準額は130×24,000円=312万円。業者見積額300万円のほうが少ないので、300万円×23%=69万円。ただし上限が55.2万円なので、補助額は55.2万円。申請者の負担は244.8万円。

出典:森町 わが家の耐震化へ向けた補助制度について

粘土瓦・セメント瓦が対象。スレート葺きは対象外

ここは間違えやすいところです。対象になるのは粘土瓦とセメント瓦で、スレート葺きの屋根は対象外と町が明記しています。

築40年前後の木造アパートだと、屋根がスレート(いわゆるカラーベスト・コロニアル)というケースはかなり多い。その場合、この制度は使えません。逆に、昭和の商店併用住宅や古い町家、和瓦の載った木造二階建てアパートであれば、対象になる可能性があります。

自分の建物の屋根材が何なのかを正確に言える方は、意外に少ないものです。図面が残っていれば仕様書を見る、なければ現地で確認する。ここは工事会社に見てもらってください。判断を誤ると、申請の前提が崩れます。

「原則として全面」という条件の意味

耐風診断も耐風改修も、原則として瓦屋根の全面が対象です。「南面だけ傷んでいるから南面だけ」という部分改修では要件を満たさない、と読むのが自然です。

これは工事側から見ると、実はありがたい条件でもあります。屋根を部分的にいじる工事は、足場と養生のコストが工事量に対して割高になりがちだからです。全面でやるなら、足場や仮設のコストを工事量で割ったときの単価が下がる。「どうせやるなら屋根と外壁を同じ足場でまとめる」という判断につながりやすい、ということです。

屋根と外壁を同じタイミングでやるべき、実務上の理由

これは補助金の話ではなく、私が現場で見てきた話です。

屋根だけを直して、5年後に外壁をやる。この順番でやると、足場を2回組むことになります。一般的な木造二階建てアパートで、足場だけで数十万円。それが2回。しかも屋根工事のときに外壁の上部に付いた汚れや、屋根まわりのシーリングの取り合いは、外壁工事のときにもう一度手を入れることになる。

森町の制度は、屋根の耐風改修(上限55.2万円)と外壁の改修に別々の窓口を持っているわけではありません。だからこそ、補助が出る屋根を軸にして、補助が出ない外壁を同じ工期に抱き合わせる。これが、限られた予算で建物全体の寿命を伸ばす、いちばん現実的なやり方だと思っています。

なお、屋根と高所外壁の調査・施工については、足場を組まないロープアクセス工法という選択肢もあります。技術的な背景は姉妹サイトロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。


鉄骨造・RC造の建物には「建築物の耐震診断事業」

マンション・事業所ビルの耐震診断に補助が出る

森町の補助制度でもうひとつ見落とされがちなのが、これです。昭和56年5月31日以前に建築された、木造住宅以外の建築物が対象で、非木造住宅(鉄骨造ほか)と、住宅以外の建築物の両方が含まれます。

対象 補助額
非木造住宅(鉄骨造ほか) 事業に要する経費と13万円を比較して少ない額の2/3以内
住宅以外の建築物 事業に要する経費と「延床面積×2,000円」を比較して少ない額の2/3以内(上限100万円)

申請できるのは対象建築物の所有者などで、借家で居住者が申請する場合は所有者の同意が必要です。

出典:森町 わが家の耐震化へ向けた補助制度について

「住宅以外の建築物」で上限100万円という枠

この枠は、森町のように事業所・工場・倉庫が点在する町では地味に効きます。延床面積2,000平方メートルの建物なら、2,000×2,000円=400万円が基準額。その2/3は266万円ですが、上限100万円が効いて100万円になります。

耐震診断そのものは工事ではありません。しかし、診断をやらないと補強計画は作れず、補強計画がなければ補助対象の工事にもならない。診断は、すべての入口です。そして診断費用は、規模の大きい建物ほど重い。ここに公費が入るのは、判断のハードルを大きく下げます。

分譲マンション・賃貸マンションでの使いどころ

森町にある分譲マンションの数はけっして多くありません。ただ、鉄骨造・鉄筋コンクリート造の共同住宅は幹線道路沿いに存在しますし、旧耐震(昭和56年5月31日以前)にあたる建物も残っています。

そういう建物を持っている方に申し上げたいのは、「うちはマンションだから町の補助は関係ない」と決めつけないでほしい、ということです。少なくとも耐震診断については、非木造住宅として補助の対象になり得ます。まずは定住推進課住まい支援係(電話 0538-85-6321)に、建物の構造・建築年・用途を伝えて相談してみてください。


木造住宅の耐震改修事業(補強計画一体型)=上限120万円

制度の中身

森町でいちばん金額が大きい住宅系の補助が、これです。補強計画の策定と、その計画に基づく耐震改修工事を同一年度内に実施する場合に、費用の合計額と上限額を比較して少ない額が補助されます。

区分 補助額
一般世帯 補強計画策定費+耐震改修工事費の合計と1,200,000円を比較して少ない額
高齢者等の世帯 同じく1,400,000円を比較して少ない額

対象は、昭和56年5月以前に建築された木造住宅で、耐震診断の結果、1階部分の耐震評点が1.0未満のもの。これを0.3ポイント以上向上させ、かつ1.0以上に上げる補強工事であること。補強計画は「静岡県耐震診断補強相談士」が作成したものであることが求められます。

出典:森町 木造住宅の耐震改修事業(補強計画一体型)(2026年4月1日更新)

「高齢者等の世帯」の4つの区分

上限が140万円になる「高齢者等の世帯」は、次のいずれかに該当する世帯です。

  1. 65歳以上の者が居住している世帯
  2. 身体障害者手帳を受け、身体障害程度等級が1級または2級の人が居住している世帯
  3. 介護保険法による要介護者または要支援者が同居している世帯
  4. 療育手帳または精神保健福祉手帳を所持している人が同居している世帯

20万円の差は小さくありません。該当しそうな場合は、申請前に窓口で確認してください。

補強計画だけの申請はできない

町のページに明記されています。「補強計画の策定のみを行うことはできません」。そして「耐震改修工事まで完了しないと補助金の対象外になります」とも書かれています。

つまり、この制度は「計画だけ立てて、工事は来年」が通らない。年度内に工事完了まで持っていく前提で、逆算してスケジュールを組む必要があります。森町のような山あいの町では、冬場の朝の冷え込みで塗料や接着系材料の施工可能温度を割る日が出ます。年度末ぎりぎりの工程は、天候リスクを工程表に織り込んでおいてください。

PR幕と見学会という、ちょっと珍しい条件

森町のこの制度には、他ではあまり見ない条件が付いています。

  1. 耐震改修工事期間中に、PR幕(森町から貸出)を設置すること
  2. 耐震改修工事期間中または工事完了後に見学会を実施する、もしくは耐震改修工事を実施するきっかけを記載した文書を提出すること

町のページには「耐震改修の宣伝等を行うこと」とも書かれています。要は、補助を受けた工事を、町の耐震化を進めるための広報材料として使わせてほしいということです。

私はこれを、悪い条件だとは思っていません。工事中に幕が掛かっていれば、近所の方が「あそこは耐震やったのか」と気づく。中山間地の耐震化は、こういう口伝えで進む部分が確かにあります。ただ、申請者としては「工事中に幕を掛ける」「見学会か文書提出をする」という手間が発生することは、あらかじめ知っておいたほうがいい。工事会社にも事前に共有してください。


無料の耐震診断は令和6年度で終わっている

森町の「わが家の専門家診断事業」は、町が静岡県耐震診断補強相談士を無料で派遣して耐震診断を行う事業でしたが、令和6年度で終了しています。町のページに「令和7年度以降は、個人負担(有料)になります」と明記されています。

出典:森町 わが家の耐震化へ向けた補助制度について

これは、森町だけの話ではありません。静岡県の「プロジェクトTOUKAI-0」は2001年(平成13年)に始まった長い事業で、無料診断の枠を先に締めて、改修工事の補助に予算を寄せる自治体が増えてきています。県全体の取り組みは静岡県 耐震ナビ(建築物耐震化ナビゲーション)にまとまっています。

順番として押さえておきたいのは、「無料診断が終わった=耐震の補助が終わった」ではないということです。診断は有料になりましたが、耐震改修工事の上限120万円(高齢者等140万円)は2026年4月1日更新のページに掲載されています。診断費用は数万円規模、改修補助は100万円規模。この差を見れば、診断に自費を投じる合理性はまだ十分にあると私は思います。


木造住宅の除却助成事業(23%・上限40万円)

令和6年度からの新規事業です。昭和56年5月31日以前に建築された木造住宅を除却する場合に、費用の一部を助成します。

項目 内容
補助額 除却事業に要する経費の23%と40万円を比較して少ない額
対象 台所・風呂・トイレがあり、現に居住している木造軸組工法の個人所有住宅
耐震要件 耐震診断の評点1.0未満、または「誰でもできるわが家の耐震診断」の合計が9点以下
除外 空き家は対象外
条件 住宅の全てを除却し、耐震性のある建築物への住み替えまたは建替えを行うこと/過去に町の耐震化促進事業費補助金の交付を受けていないこと

町の計算例では、除却費用100万円なら23万円、200万円なら上限が効いて40万円です。

「空き家は対象外」「現に居住している住宅が対象」という要件は、他自治体の除却補助と性格が違う点なので注意してください。空き家の除却を考えている場合は、次に説明する空き家関連の制度、あるいは別枠の危険空き家対策のほうを窓口で確認することになります。

出典:森町 わが家の耐震化へ向けた補助制度について


ブロック塀は「除却」だけでなく「建替え」にも補助が出る

3つのメニューと上限額

森町のブロック塀補助は、3本立てになっています。

メニュー 補助率 町の基準額 上限額
ブロック塀等の除却事業(避難路沿道等) 2/3以内 1mあたり8,900円×塀の長さ 26.6万円
ブロック塀等の建替え事業(避難路沿道等) 2/3以内 1mあたり38,400円×塀の長さ 33.3万円
危険なブロック塀等の除却事業 1/2以内 1mあたり8,900円×塀の長さ 20万円

いずれも「業者の見積額」と「町の基準額」を比較して少ない額に、補助率を掛けます。

対象になる塀の条件

  • 公衆用道路に接道(面している)ブロック塀であること
  • 地震発生時に倒壊または転倒の危険性があると判断されたブロック塀等で、道路面からの高さが60センチメートルを超えるもの
  • 除却後に建替えた場合、道路からの高さが60センチメートル未満、かつコンクリートブロック塀は2段以下で施工すること

対象は、通学路・避難路、および住宅や事業所等から避難所・避難地へ至る経路沿いにある既存ブロック塀です。

建替え補助があることの意味

自治体によっては「除却だけ補助、建替えは自己負担」というところがあります。森町は建替えにも2/3・上限33.3万円を出す。この差は実務では大きい。

集合住宅や事業所の外周を囲んでいる古いブロック塀は、防犯やゴミ置き場の目隠しの役割を担っていることが多く、「撤去だけして終わり」にはできません。撤去したら何かで置き換える必要がある。そこに補助が付くかどうかで、オーナーの意思決定は変わります。

ただし建替え後は高さ60センチメートル未満・CB2段以下という制限がかかります。目隠しの機能を残したい場合は、低いブロック基礎の上にフェンスを立てる、といった設計になります。この納まりは、外構業者と塗装・防水業者の担当が分かれてしまいがちなところなので、外壁改修と同じタイミングで、同じ会社が一括で見るほうが手戻りが少ないというのが私の実感です。

出典:森町 わが家の耐震化へ向けた補助制度について


空き家等利活用推進支援費用補助金:屋根・外壁の改修も対象

森町の空き家・空き地バンクに登録できる物件について、残置物処分費用と改修工事費用を補助する制度です。

区分 上限額
改修工事 30万円
残置物処分 10万円

改修工事の補助対象経費に「内装、屋根、外壁等の改修に係る経費」が明記されているのがポイントです。台所・風呂・トイレの改修、電気・ガス・水道設備の改修も対象。残置物処分側は、ごみ処理手数料、家電製品の処分費、家財処分の委託費、建物内の清掃費、敷地内の支障木伐採費まで含まれます。

補助対象者は、売買または賃貸等による利活用を目的とした空き家の所有者・購入者・賃借人で、残置物処分や改修を行う権限を有する方、または所有者から許可を受けた方です。

主な要件は次のとおりです。

  • 空き家バンクに2年以上継続して物件を登録すること
  • 税金等の滞納がなく、暴力団関係者ではないこと
  • 登録した空き家を3親等内の親族に売却または賃貸しないこと
  • 残置物処分を委託する場合は、一般廃棄物処理業の許可を受けている業者に依頼すること

出典:森町 空き家等利活用推進支援費用補助金

この制度は、空いた戸建てを賃貸に回したいオーナーにとって使える枠です。「3親等内の親族には貸せない」という条件があるので、身内に住まわせる目的では使えません。予算の範囲内での補助である旨も町のページに書かれているので、年度の早い段階で相談されることをおすすめします。


災害復旧と宅地の安全性:森町ならではの2つの論点

森町住家災害復旧事業費補助金

大雨・洪水・地すべり・地震などで、現に居住している建物が被害を受けた、または被害を受けるおそれがある場合に、土地崩壊復旧工事または土砂や竹木などの流入堆積物除去工事の費用を補助する制度です。

項目 内容
補助額 工事費10万円以上の対象工事にかかる経費の1/2以内、上限20万円
必要書類 被害状況が分かる工事前の写真、工事の見積書(コピー可)
窓口 役場定住推進課

町の例示では、工事費8万円は対象外、18万円なら補助9万円、48万円なら上限が効いて20万円です。

工事前の写真が要件になっている点は、実務上とても重要です。被害が出たとき、人はまず片付けようとします。片付けてから申請しようとすると、被害状況を証明できない。撮ってから動く。これは覚えておいてください。

出典:森町住家災害復旧事業費補助金

大規模盛土造成地は町内に何か所あるのか

森町は宅地耐震化推進事業として、大規模盛土造成地の調査結果を公表しています。経緯はこうです。

静岡県が平成19年(2007年)から平成25年(2013年)にかけて、静岡市・浜松市・沼津市・富士市を除く市町の造成宅地533か所について第一次スクリーニングを実施し、森町内では4か所の大規模盛土造成地が抽出されました。町は令和4年度に、この4か所について第二次スクリーニング計画(変動予測調査)を実施。その結果、4か所のうち谷埋め型造成地の1か所が大規模盛土造成地に該当し、腹付け型の3か所は該当しなかったと公表しています。

大規模盛土造成地の定義は、谷埋め型が「盛土の面積3,000平方メートル以上」、腹付け型が「盛土前の地盤面の角度20度以上かつ盛土の高さ5m以上」です。

町は「このマップは大規模盛土造成地の位置を示すものであり、危険な造成地を表すものではありません」と明記しています。過度に不安を持つ話ではありません。ただ、自分の物件がどういう地盤の上に建っているかを知っておくことは、長期修繕計画を立てるうえで意味があります。外壁のひび割れが、材料の経年劣化によるものなのか、建物の不同沈下によるものなのか。原因が違えば、打つべき手も違うからです。

出典:森町 宅地耐震化推進事業、国土交通省 大規模盛土造成地の滑動崩落対策について


分譲マンション管理組合が使える静岡県の制度

管理計画認定制度の窓口は「町ではなく県」

森町のような町域にある分譲マンションの管理計画認定は、静岡県が窓口になります。認定基準は「静岡県マンション管理適正化推進計画」に定められています。

申請方法は2つ。

申請方法 事前確認適合証
【1】公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを利用する 適合証あり
【2】静岡県住まいづくり課へ直接申請する 適合証なし

そして手数料は、令和8年4月1日に改定されています。

事前確認適合証 長期修繕計画数 令和8年3月31日まで 令和8年4月1日から
有り 1 3,800円 4,000円
有り 2以上 3,800円+1,700円×(計画数-1) 4,000円+1,800円×(計画数-1)
無し 1 26,900円 28,100円
無し 2以上 26,900円+15,500円×(計画数-1) 28,100円+16,200円×(計画数-1)

認定の更新も同じ料金体系です。事前確認適合証があるかないかで、手数料は7倍違います。4,000円と28,100円。ここは制度設計として非常にはっきりしたメッセージで、「マンション管理センターの事前確認を通してから来てください」ということです。

出典:静岡県 マンションの管理、公益財団法人マンション管理センター 管理計画認定手続支援サービス

マンション管理士の無料派遣(受付10件・令和8年11月14日締切)

静岡県は令和8年度のマンション管理組合活動活性化支援事業として、マンション管理士の無料派遣を実施しています。

項目 内容
受付件数 10件(上限に達した時点で終了)
申込期限 令和8年11月14日(土曜)まで
派遣回数 各管理組合2回まで
派遣期限 令和9年1月31日(日曜)まで
申込先 一般社団法人静岡県マンション管理士会

県全体で10件です。長期修繕計画の見直しや修繕積立金の水準について第三者の目を入れたい管理組合は、早めに動いたほうがいい枠だと思います。

マンション管理適正化支援法人の登録は、県ではまだ実施していない

令和7年5月30日に「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律(令和7年法律第47号)」が公布され、同年11月28日に一部施行された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成12年法律第149号)」において、マンション管理適正化支援法人の登録制度が創設されました。

登録主体は、市の区域は市、町の区域は県です。そして静岡県は「現段階では、登録制度は実施していません」と明記しています。森町は町域ですから、支援法人による公的支援の枠組みは、現時点ではまだ動いていないということになります。

制度の枠だけができて、運用はこれから。この現在地を知っておくと、管理組合として「何を待ち、何を自分たちで進めるか」の判断がしやすくなります。

静岡県のマンション管理セミナー(令和8年度)

県は分譲マンションの管理組合役員・区分所有者を対象としたセミナーを県内各地で開催しています。令和8年度の開催予定は、浜松市(令和8年7月25日)、磐田市(同8月29日)、三島市(同9月12日)、熱海市(同10月予定)、沼津市(同10月予定)、静岡市(同11月予定)、伊東市(同12月予定)、富士市(令和9年2月予定)、浜松市(同2月予定)です。

森町からだと、磐田市・浜松市の回が距離的に現実的です。三島市の回は令和8年9月12日で、この記事の公開直後にあたります。


国の制度:窓の断熱と、長寿命化のモデル事業

先進的窓リノベ2026事業

住宅の窓・ドアを断熱性能の高いものに改修する費用を補助する事業で、一戸あたり最大100万円が交付されます。対象は既存の戸建住宅・集合住宅で、新築は対象外。住宅所有者(個人・法人)、賃貸住宅オーナー、マンション管理組合などが申請対象になり得ます。

出典:環境省 断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業(先進的窓リノベ2026事業)、住宅省エネ2026キャンペーン公式

森町のような山あいの町では、冬の朝の冷え込みが平野部より厳しく、結露やカビの相談が多くなります。外壁改修と内窓設置は、工事の性格がまったく違うので同時にやりやすい。足場を使う外部の工事と、住戸内で完結する内窓工事は、干渉しません。工期を重ねられます。

マンションストック長寿命化等モデル事業

国土交通省が、マンションの長寿命化や再生に関する先導的な取組を支援する事業です。令和8年度は複数回の公募が行われており、第2回が2026年6月22日〜26日、第3回が2026年9月14日〜18日の日程で予定されています。

出典:国土交通省 マンション総合対策モデル事業

補助額は事業計画・要望額・評価委員会の評価を総合的に勘案して個別に決定されます。公募期間が5営業日程度と短いのが最大の注意点で、第3回を狙うなら、この記事が公開される時点で準備は最終盤に入っている必要があります。

住宅金融支援機構の融資とすまい・る債

補助金ではありませんが、管理組合が使える資金調達の選択肢として、住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資とマンションすまい・る債があります。修繕積立金が不足しているとき、一時金の徴収か借入かという議論になりますが、後者の選択肢を知らないまま総会にかけている管理組合は少なくありません。

出典:住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資、住宅金融支援機構 マンションすまい・る債


建物タイプ別・使える制度の早見表

森町で「自分の建物は何が使えるのか」を整理すると、こうなります。

建物タイプ 使える可能性のある制度
瓦屋根の木造住宅・木造アパート(令和3年12月31日以前建築) 住宅屋根の耐風改修助成事業(診断+改修)/木造住宅の耐震改修事業(旧耐震の場合)/ブロック塀等の除却・建替え
旧耐震(昭和56年5月31日以前)の木造住宅 木造住宅の耐震改修事業(上限120万円・高齢者等140万円)/木造住宅の除却助成事業(居住中の場合)
旧耐震の鉄骨造・RC造の共同住宅 建築物の耐震診断事業(非木造住宅として2/3以内)/ブロック塀等の除却・建替え
旧耐震の事業所・工場・倉庫 建築物の耐震診断事業(住宅以外の建築物として上限100万円)
分譲マンション(RC造) 管理計画認定制度(県)/マンション管理士無料派遣(県)/先進的窓リノベ2026(国)/マンションストック長寿命化等モデル事業(国)/機構の融資・すまい・る債
空き家を賃貸・売却で活用したい 空き家等利活用推進支援費用補助金(改修上限30万円・残置物処分上限10万円)
新耐震の賃貸アパート(昭和56年6月1日以後) 先進的窓リノベ2026/ブロック塀等の除却・建替え(要件を満たす場合)

新耐震の建物は、町の耐震系メニューからは外れます。そこは国の省エネ系(窓リノベ)と、共用部の資金計画で組み立てることになります。


2026年度中に効いてくる期限のまとめ

時期 内容
2026年9月12日 静岡県マンション管理セミナー 三島市会場
2026年9月14日〜18日 マンションストック長寿命化等モデル事業 令和8年度 第3回公募(予定)
2026年10月ごろ 静岡県マンション管理セミナー 熱海市・沼津市会場(予定)
2026年11月14日 静岡県マンション管理士無料派遣 申込期限(受付10件・定数に達し次第終了)
2027年1月31日 同 派遣期限
年度内(2027年3月末) 森町の耐震改修事業は同一年度内に工事完了が要件

森町の各補助は予算の範囲内での交付です。年度後半になるほど、枠が残っているかどうかの不確実性は上がります。「年度末に駆け込む」より「秋のうちに窓口に相談する」。これが、私が毎年お客様に申し上げていることです。


申請から着工までの流れ(森町の耐震・屋根系の場合)

森町の制度は、いずれも「申請書に必要な資料を添付して、定住推進課窓口に直接申込み」という形をとっています。オンライン完結ではありません。おおまかな流れは次のとおりです。

  1. 窓口に相談(定住推進課 住まい支援係/電話 0538-85-6321)。建物の構造・建築年・屋根材・用途を伝える
  2. 診断(耐震診断/耐風診断)。静岡県耐震診断補強相談士など、要件を満たす専門家に依頼する
  3. 計画・見積。補強計画または改修計画を作成し、工事会社から見積を取る
  4. 交付申請。申請書と添付書類を定住推進課へ提出(森町は申請様式をWord・PDFで公開しています)
  5. 交付決定を待つ。★ここが最重要。交付決定前の着工は補助対象外になるのが自治体補助の原則です
  6. 着工・施工。耐震改修の場合はPR幕の設置などの条件を守る
  7. 実績報告・請求。工事完了後、実績報告書と請求書を提出
  8. 補助金の交付

ステップ5を飛ばして着工してしまう事故が、毎年どこかで起きています。見積が出た=工事してよい、ではありません。工事会社の側から「まだ着工できません」と止められるのが本来ですが、そこまで制度に詳しくない会社もあります。発注者側でも押さえておいてください。


工法でコストを下げる:足場・ロープアクセス・ハイブリッド

大規模修繕費の中で、足場は何割を占めるのか

補助金の話をしてきましたが、費用を下げる手段は補助金だけではありません。工法の選択は、補助金よりも大きく総額を動かすことがあります。

外壁改修や屋根改修の見積書を開くと、必ず「仮設工事」という項目があります。枠組足場、養生シート、昇降設備。建物の形状と規模によりますが、この仮設工事費が工事総額の相応の割合を占めるのが一般的です。ここを削れれば、同じ予算でより多くの部位を直せます。

ロープアクセス工法(無足場工法)とは

産業用のロープと下降器・登高器を使い、屋上や外壁に設けたアンカーから作業員が懸垂して施工する工法です。足場を組まないため、次のような効果が出ます。

  • 仮設費の圧縮:枠組足場の設置・解体・リース料が発生しない
  • 工期の短縮:足場の組立・解体に要する日数が丸ごと消える
  • 居住者・利用者の生活影響の最小化:窓の外を足場とシートで塞がれない、洗濯物が干せる、日照と通風が確保される
  • 防犯面の不安の軽減:足場は第三者が上れる構造物でもあるため、これがない
  • 部分補修への機動力:漏水や剥落など、限られた範囲の緊急対応に着手しやすい

ロープアクセス工法の一般的な安全基準や事例については、ロープアクセスドットコムで解説しています。

ハイブリッド工法という第三の選択肢

現実の建物は、「全部足場」か「全部ロープ」かで割り切れるほど単純ではありません。低層部やバルコニーが密集した面は足場のほうが効率がよく、高層部や隣地との離隔が取れない面はロープアクセスのほうが速い。

そこで、部位ごとに足場とロープアクセスを使い分けるのがハイブリッド工法です。株式会社明誠は、通常の足場仮設工事、無足場のロープアクセス工事、その両方を組み合わせたハイブリッド工法の3つを、建物の特性に応じて提案できる会社です。3つとも自社の選択肢として持っているからこそ、「この建物にはどれが最適か」をフラットに判断できます。

工法の詳細は明誠のロープアクセス工法のご紹介、会社としての考え方は明誠のコンセプトをご覧ください。

森町のような町での、実務上の判断軸

森町の建物でロープアクセスが効くのは、次のようなケースです。

  1. 敷地に余裕がなく、足場を建てる場所がない。旧市街の町家や商店併用住宅は、隣地境界まで数十センチということがあります
  2. 傾斜地・擁壁の上に建っている。足場の base をどこに取るかが難しい建物です。森町は三方を山に囲まれた地形で、こういう物件が実際にあります
  3. 一部だけ直したい。屋根の棟や、外壁の一部のクラック。全面足場を組むほどではないが、放っておくと広がる劣化です
  4. 入居中で、居住者の生活影響を抑えたい。賃貸オーナーにとって、工事期間中の空室・退去は補助金より大きな損失になり得ます

逆に、屋根の全面葺き替えのように、屋根面での作業量が多く、材料の荷揚げが大量に発生する工事は、足場のほうが合理的です。森町の耐風改修助成が「原則として瓦屋根の全面を改修」を求めていることを考えると、この助成を使う工事は足場ベース、外壁の一部補修や調査はロープアクセス、という組み合わせが現実的でしょう。

明誠は、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟する、日本初のロープアクセス工事のフランチャイズを展開しています。専門職が直接動く体制なので、中間マージンの積み上がりを抑えられます。明誠の対応サービスもあわせてご覧ください。


補助金を使うとき、私が現場で見てきた落とし穴

1. 交付決定前に着工してしまう

繰り返しになりますが、これがいちばん多い事故です。「見積が出たから」「業者の段取りがついたから」で先に着工すると、補助の対象外になります。

2. 屋根材の種類を確認しないまま話が進む

森町の耐風改修助成は、粘土瓦・セメント瓦が対象、スレートは対象外です。「うちは瓦です」とおっしゃる方の建物が、実はセメント系のスレートだった、ということは珍しくありません。申請の前提が崩れると、工程も予算も組み直しになります。

3. 「全面」の要件を部分工事でクリアしようとする

耐風診断も耐風改修も、原則として全面が対象です。安く上げようとして部分施工にすると、補助が使えなくなり、かえって高くつきます。

4. 年度をまたぐ工程を組んでしまう

耐震改修事業は同一年度内の完了が要件です。冬季の施工可能温度、年末年始の職人確保、資材の納期。この3つで年度末は毎年混みます。逆算して、余裕を持った工程を。

5. 相見積の条件がそろっていない

3社から見積を取ったが、A社は足場込み、B社は足場別、C社は屋根の面積の拾い方が違う。これでは比較になりません。同じ図面・同じ仕様書・同じ数量で出してもらう。ここを揃えるだけで、判断の質は大きく変わります。

6. 見学会やPR幕の条件を工事会社に伝えていない

森町の耐震改修事業には、PR幕の設置と、見学会の実施または文書提出という条件があります。工事会社が知らないまま工程を組むと、後から慌てることになります。契約前に共有してください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 森町に、分譲マンションの大規模修繕そのものを補助する町の制度はありますか?
A. 2026年9月時点で、町が公開している情報の中に、分譲マンションの共用部大規模修繕を直接補助する単独メニューは見当たりません。管理組合が使える公的支援は、静岡県の管理計画認定制度・マンション管理士無料派遣と、国の先進的窓リノベ2026事業・マンションストック長寿命化等モデル事業、住宅金融支援機構の融資・すまい・る債が中心になります。一方で、旧耐震の非木造建物であれば、町の建築物の耐震診断事業が使える可能性があります。

Q2. 屋根の耐風改修助成は、賃貸アパートでも使えますか?
A. 制度は「住宅」の瓦屋根を対象としており、令和3年12月31日以前に建築されたものが対象です。共同住宅で使えるかどうか、また複数棟・複数住戸の扱いについては、建物の登記上の用途や構造によって判断が分かれる可能性があるため、定住推進課住まい支援係(0538-85-6321)で個別に確認してください。(出典:森町 わが家の耐震化へ向けた補助制度について)

Q3. 無料の耐震診断が終わったと聞きましたが、耐震の補助も終わったのですか?
A. 終わったのは「わが家の専門家診断事業」(無料の専門家派遣)で、令和6年度で終了しています。令和7年度以降、診断は個人負担です。ただし、木造住宅の耐震改修事業(補強計画一体型/上限120万円、高齢者等の世帯は140万円)は2026年4月1日更新のページに掲載されており、継続しています。

Q4. 管理計画認定の申請手数料は、いつからいくらになりましたか?
A. 静岡県は令和8年4月1日に手数料を改定しました。事前確認適合証がある場合、長期修繕計画1件で4,000円(改定前3,800円)。適合証がない場合は28,100円(改定前26,900円)です。適合証の有無で7倍の差が出るため、公益財団法人マンション管理センターの事前確認を経るルートが現実的です。(出典:静岡県 マンションの管理)

Q5. 足場を組まないロープアクセス工法は、森町のような山あいの町でも使えますか?
A. 使えます。むしろ、敷地に余裕がない旧市街の建物や、傾斜地・擁壁の上に建つ建物では、足場を建てる場所の確保が難しく、ロープアクセスの利点が出やすい条件です。ただし屋根の全面葺き替えのように材料の荷揚げが大量に発生する工事は足場が合理的なので、部位ごとに使い分けるハイブリッド工法を含めて検討することをおすすめします。


この記事のポイントまとめ

  • 森町の目玉は住宅屋根の耐風改修助成。工事費の23%・上限55.2万円
  • 耐風診断は上限21,000円。粘土瓦・セメント瓦が対象でスレートは対象外
  • 鉄骨造・RC造も対象。建築物の耐震診断事業は住宅以外で上限100万円
  • 木造の耐震改修は上限120万円、高齢者等の世帯は140万円まで
  • ブロック塀は除却26.6万円だけでなく建替え33.3万円にも補助が出る
  • 無料の専門家診断は令和6年度で終了。診断は令和7年度から有料
  • 分譲マンションの管理計画認定は町ではなく静岡県が窓口
  • 認定手数料は令和8年4月1日改定。適合証あり4,000円/なし28,100円
  • 県のマンション管理士無料派遣は10件・令和8年11月14日締切
  • 交付決定前の着工は補助対象外。秋のうちに窓口へ相談を

森町の建物のこと、まずはご相談ください

株式会社明誠は、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を専門とする改修会社です。通常の足場仮設工事、無足場のロープアクセス工事、その両方を組み合わせたハイブリッド工法という3つの選択肢から、建物にとって最適な工法をご提案します。

  • 屋根と外壁を同じ工期でまとめたい
  • 補助金が使えるのか、まず建物を見てほしい
  • 足場を組まずに、劣化状況だけ先に調べたい
  • 相見積の条件がそろっているか、第三者の目で見てほしい

こうしたご相談に、無料の現地調査・お見積りで対応しています。お問い合わせフォームからご連絡ください。ドローンによる外観調査や、管理組合向けのサービスについても承ります。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション・ビル・ホテルの大規模修繕/ロープアクセス工法(無足場工法)/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円と全国のフランチャイズ加盟店を通じて、ロープアクセス工法・足場工法・ハイブリッド工法の3つを提案できる改修会社。ロープアクセス工事として日本初のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。

最終更新:2026年9月3日

注記:本記事は2026年9月3日時点で公開されている情報にもとづいて作成しています。補助制度は年度途中で内容・金額・受付状況が変更されることがあります。申請にあたっては、必ず各制度の公式ページと窓口で最新の内容をご確認ください。


出典・参考資料

小山町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

この記事で答える質問:小山町のマンション・アパートの修繕で、2026年度に使える公的支援はどれか?

静岡県駿東郡小山町で分譲マンションの管理組合を運営されている方、あるいは町内でアパートや貸家をお持ちのオーナーさまに向けて、2026年度(令和8年度)に実際に使える制度を、町・県・国の一次情報だけを根拠に整理しました。

先に結論を申し上げます。小山町には「分譲マンションの共用部大規模修繕そのものを直接補助する町の制度」は、2026年9月時点で見当たりません。その代わり、賃貸住宅のオーナーに真正面から効く助成金と、木造の共同住宅(アパート)を対象に含む耐震補強の助成、そして商工会が運営する地域振興券方式のリフォーム助成という、他の自治体ではあまり見ない組み合わせが用意されています。

私は建設・改修の現場に20年以上おりますが、人口1万6千人台の町でここまでオーナー向けの入口が明確な自治体は、正直に申し上げてそう多くありません。問題は、その入口が「マンション補助金」という言葉では検索に引っかからない場所に置かれていることです。この記事では、そこを一つずつ開けていきます。

(最終更新:2026年9月3日)

結論:小山町で2026年度に使える制度は「町4本+県2本+国3本」

まず全体像です。以下が、小山町の建物オーナー・管理組合が2026年度に検討できる制度の一覧です。

# 制度名(正式名称) 実施主体 補助率・上限 主な対象
1 小山町民間賃貸住宅リフォーム助成金 小山町(おやまで暮らそう課) 改修工事費の1/3。アパート1住戸あたり最大20万円/一戸建て1戸あたり最大40万円 町内の賃貸アパート・貸家の空き住戸
2 小山町木造住宅耐震補強助成事業(計画工事一体型) 小山町(都市整備課) 耐震補強工事費の8/10と100万円の少ない額。高齢者等割増で最大+20万円 昭和56年5月31日以前の木造在来軸組工法。長屋・共同住宅も対象
3 小山町ブロック塀等耐震改修事業費補助金 小山町(都市整備課) 撤去:単価8,900円/mとの比較後2/3以内・1敷地10万円限度/改善:単価38,400円/mとの比較後2/3以内・1敷地25万円限度 道路等に面する危険なブロック塀等
4 小山快適リフォーム助成事業(令和8年度) 小山町商工会 工事金額に応じ1万円〜10万円分の地域振興券 町内の住宅・店舗・工場・事業所等
5 マンション管理計画認定制度(町域) 静岡県住まいづくり課 認定申請手数料 4,000円〜(事前確認適合証あり・1計画) 町内の分譲マンション管理組合
6 マンション管理士の無料派遣(令和8年度) 静岡県/静岡県マンション管理士会 無料・各管理組合2回まで(県全体で受付10件) 県内のマンション管理組合
7 先進的窓リノベ2026事業 環境省ほか3省連携 一戸あたり最大100万円 既存の戸建・集合住宅の断熱窓改修
8 マンションストック長寿命化等モデル事業(令和8年度) 国土交通省 事業計画に応じて個別決定 先導的な長寿命化・再生の取組
9 マンション共用部分リフォーム融資/マンションすまい・る債 住宅金融支援機構 融資・積立(補助金ではない) 分譲マンション管理組合

このうち、小山町のオーナーさまが最初に見るべきは1番です。理由は次の章で申し上げます。

なお、制度は年度途中でも変更・終了することがあります。予算枠に達した時点で受付を締め切る制度も含まれますので、最終的な可否は必ず各窓口の公式情報でご確認ください。

小山町という町の前提を、数字で押さえる

制度の話に入る前に、町の姿を共有させてください。ここを外すと、制度の設計意図を読み違えます。

小山町の人口は16,481人(うち外国人564人)、世帯数は7,431世帯です(2026年8月1日現在、出典:静岡県小山町公式ホームページ)。富士山の東麓、駿東郡に位置し、JR御殿場線が通り、町内には富士スピードウェイがあります。金太郎生誕の地としても知られる町です。

この規模感から見えてくることが3つあります。

1つ目。分譲マンションの絶対数が少ない。 7,431世帯の町で、区分所有の分譲マンションが数十棟あるということは考えにくい。したがって、町が「分譲マンションの大規模修繕補助」という単独メニューを持たず、賃貸住宅と木造住宅の耐震化に予算を寄せているのは、町の住宅事情に沿った合理的な資源配分だと私は受け止めています。

2つ目。賃貸住宅の役割が大きい。 町の助成金の要綱には「子育て世帯や立地企業の従業者の皆さんが、安心して快適に暮らせる住環境を提供するため」という目的が明記されています(出典:小山町民間賃貸住宅のリフォーム費用の一部を助成します)。つまり町は、アパート・貸家の質=町の定住政策の要だと位置づけている。ここにオーナーさま向けの予算が乗っています。

3つ目。旧耐震の木造住宅・木造アパートが一定量残っている。 小山町は昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた木造住宅の耐震化を、県の「プロジェクトTOUKAI(東海・倒壊)-0(ゼロ)」の枠組みで進めています。この助成が長屋や共同住宅も対象に含めている点は、木造アパートを持つオーナーさまにとって見逃せません。

私は現場に入るとき、必ずその土地の気候を先に見ます。小山町は富士山東麓で標高が高く、冬季の冷え込みが厳しい地域です。外壁のひび割れに入った水が凍って膨張し、融けてまた入る——この凍結融解の繰り返し(凍害)は、温暖な沿岸部の物件より塗膜やモルタルを速く痛めます。加えて富士山の降灰リスクを抱える地域でもあり、屋上防水の排水口(ドレン)まわりは詰まりやすい。同じ築年数でも、平野部のマンションと同じ修繕周期でよいとは限らない、というのが私の実感です。

小山町民間賃貸住宅リフォーム助成金:オーナーに一番効く1本

Q. 小山町でアパートを持っています。空室の改修に使える町の助成金はありますか?
A. あります。「小山町民間賃貸住宅リフォーム助成金」で、改修工事費の3分の1、アパートは1住戸あたり最大20万円、一戸建ての貸家は1戸あたり最大40万円が助成されます(出典:小山町 民間賃貸住宅リフォーム助成金、2026年4月6日更新)。

これが小山町最大の特徴です。制度の骨格を整理します。

項目 内容
対象者 町内に賃貸住宅(アパート・一戸建て)を所有する個人または法人
対象住宅 賃貸借契約により入居される住宅/昭和56年6月1日以後に着工した独立住戸(水回り・駐車場付)/現に空室、または賃借人の退去日が決定しているもの
助成金額 改修工事費の3分の1。アパート:1住戸あたり最大20万円/一戸建て:1戸あたり最大40万円
対象工事 住戸の居住性・安全性を高める改修工事で、AまたはBの要件を含むもの
要件A 子育ての利便性や安全性を高める「こどもみらいリフォーム」を1つ以上実施する工事
要件B 町内立地企業との賃貸借契約に基づき、そのニーズを叶えるためのリフォームを実施する工事
窓口 未来創造部 おやまで暮らそう課 移住定住促進班(Tel:0550-76-6159)

「新耐震以後」という条件が意味すること

対象住宅が昭和56年6月1日以後に着工した住戸に限られている点に注目してください。これは新耐震基準の適用ラインです。裏を返せば、それ以前の建物は制度2(耐震補強助成)の側に誘導されている、という設計です。町として、古い建物には耐震から、新しい建物には居住性からという交通整理ができている。私はこの割り切りは正しいと思います。

要件Bは、小山町でしか成立しない条件

要件Bの「町内立地企業との賃貸借契約に基づいて、そのニーズを叶えるためのリフォーム」——これは他の自治体ではまず見ない条件です。小山町は製造業を中心に企業が立地しており、その従業者の住まいの確保が町の課題になっている。社宅・寮としての一括借上げを前提にした改修が、助成対象になり得るということです。

私が理事長さまやオーナーさまにいつもお伝えしているのは、「補助金は工事のためではなく、行政の政策目標のためにある」ということです。小山町の政策目標は定住人口と企業従業者の住環境。ここに自分の物件の改修計画を重ねられるオーナーさまが、この助成金を通せます。

ただし、共用部の大規模修繕そのものは対象外

正直に申し上げます。この助成金は「独立住戸」の改修が対象です。外壁塗装・屋上防水・鉄部塗装といった、建物全体の共用部大規模修繕を丸ごと賄うものではありません。「空室の内装と設備を直して、次の入居者に貸す」という場面の制度です。

ですから実務としては、共用部の大規模修繕は自己資金と長期修繕計画で組み、空室の内装改修だけ助成金を当てる——この二階建てが現実的な使い方になります。足場を架けている間に空室の窓や水回りも同時に触ると、職人の出入りが一度で済み、結果として総額が下がる。私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。

木造アパートなら最大120万円:小山町木造住宅耐震補強助成事業

Q. 木造アパートは耐震補強の補助金の対象になりますか?
A. 小山町では、一戸建てのほか長屋や共同住宅も対象です。補助額は耐震補強工事費の10分の8と100万円を比べて少ない額、高齢者等割増を加えると最大で120万円規模になります(出典:小山町木造住宅耐震補強助成事業(計画工事一体型))。

制度の中身を、要綱の記載に沿って整理します。

項目 内容
対象住宅 昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された木造住宅(在来軸組工法)。一戸建てのほか長屋・共同住宅も対象。併用住宅は建物全体の半分以上が住宅なら対象
補助対象 耐震評点を1.0以上、かつ0.3ポイント以上向上させる耐震補強計画の作成と工事に要する費用
補助金額(一般世帯) 耐震補強工事費に10分の8を乗じた額と100万円を比較し、いずれか少ない額
補助金額(高齢者等割増) 上記の額に、工事費から上記額を引いた額と20万円を比較して少ない額を加算
必須条件 静岡県耐震診断補強相談士の資格を持つ建築士が補強計画を作成すること
最重要の注意点 工事業者と契約する前に補助金を申請すること。契約後・着手後の申請では補助を受けられません
窓口 都市基盤部 都市整備課(Tel:0550-76-6137)

「耐震評点1.0以上、かつ0.3ポイント以上向上」の読み方

耐震評点とは、建物の耐震性能を数値化した指標で、1.0が「一応倒壊しない」水準の目安とされています。小山町の制度は、1.0を超えるだけでは足りず、現状から0.3ポイント以上引き上げることを求めています。

これは実務上、重要な意味を持ちます。もともと評点0.9の建物を1.0にする「ちょっとだけ補強」は対象外になり得るということです。逆に評点0.4の建物を0.7にしても、1.0未満なので対象外。「低いところから、1.0を超えるところまで、一気に上げる」補強計画が求められるわけです。

木造アパートオーナーが取るべき順番

木造の共同住宅をお持ちなら、順番はこうなります。

  1. わが家の専門家診断事業(無料)を申し込む。町から委託された専門家が住宅を診断します(出典:小山町 住宅の耐震対策を進めましょう【TOUKAI-0】)。
  2. 診断結果が耐震評点1.0未満なら、静岡県耐震診断補強相談士の資格を持つ建築士に補強計画の作成を依頼する。
  3. 工事契約の前に、都市整備課へ補助金を申請する。
  4. 交付決定を受けてから契約・着工する。
  5. 完了実績報告書(様式第8号)と補助金請求書(様式第10号)を提出する。

この5段階のうち、私が現場で一番悔しい思いをするのは3番の順番違いです。「もう業者と契約してしまった」というご相談を年に何度かいただきますが、この制度に限らず、着工前申請が原則の補助金は後戻りができません。見積りを取ることと契約することは違います。ここだけは、動く前に町へ一本電話を入れてください。

ブロック塀の撤去・改善:1敷地あたり最大25万円

マンションやアパートの敷地境界にブロック塀が残っている物件は、小山町でもまだあります。小山町ブロック塀等耐震改修事業費補助金は、地震時に倒壊・転倒の危険があるブロック塀等(道路等に面するものに限る)を対象にしています(出典:小山町 ブロック塀等の撤去・改修費用の補助)。

事業区分 補助額
ブロック塀等撤去事業 補助対象経費と「延長1mにつき8,900円」を乗じた額を比較し、いずれか少ない額の3分の2以内。1敷地につき10万円を限度
避難路・避難地沿いブロック塀等緊急改善事業 補助対象経費と「延長1mにつき38,400円」を乗じた額を比較し、いずれか少ない額の3分の2以内。1敷地につき25万円を限度

ここでいう「道路等」は、住宅や事務所等から避難所や避難地へ至る経路で、道路法第3条に規定する道路、建築基準法第42条に規定する道路、小山町法定外道路管理条例第2条に規定する法定外道路を指します。

「改善」の定義に落とし穴がある

要綱の注記に、こう書かれています。「改善とは、塀の改修及び造り替え並びにフェンス、その他の種類の塀への転換をいい、塀の造り替え又は他の種類の塀へ転換するための塀の撤去及び生垣への転換を含まない」。

読み飛ばしやすい一文ですが、これは実務にそのまま効きます。つまり、

  • ブロック塀をフェンスに転換する → 改善事業の対象になり得る
  • ブロック塀を生垣に転換する → 改善の定義から除外されている
  • 造り替えのための撤去部分は、改善事業の中には含まれない

という整理です。生垣にしたい場合は、撤去事業(上限10万円)の側で検討することになります。この違いを知らずに計画を立てると、想定した金額が出ません。

なお、この制度は事前現地調査の申込みから始まります。窓口(役場本庁舎2階)、電話(0550-76-6137)、ファックス(0550-76-2795)、メール(toshi@fuji-oyama.jp)のいずれでも受け付けています。申込みの際に、塀の種類・延長・高さ・厚さ、建築年月や劣化状況を聞かれますので、先にメジャーで測っておくと話が早く進みます。

小山快適リフォーム助成事業:商工会の地域振興券という発想

小山町には、役場とは別に小山町商工会が運営するリフォーム助成があります。令和8年度も実施されており、金銭ではなく地域振興券で交付されるのが特徴です(出典:小山町商工会 令和8年度リフォーム助成事業開始について)。

商工会が公表している令和8年度の概要は、以下のとおりです。

項目 内容
受付開始 令和8年6月15日(月)
対象工事期間 令和8年7月1日以降着工、令和8年12月31日までに完了するリフォーム工事
対象工事費 税抜10万円以上
交付額 10万円以上:1万円分/20万円以上50万円未満:3万円分/50万円以上100万円未満:5万円分/100万円以上:10万円分(いずれも地域振興券)
対象工事の例 屋根・外壁・内壁・床などの内外装工事、浴室・台所・トイレの改修、床や畳の張替え、間取り変更
対象者 町内に住宅を所有する住民、または町内の店舗・工場・事業所・事務所の所有者
施工業者 登録施工業者による工事であること
回数 同一住宅・同一店舗等で期間内1回限り
窓口 小山町商工会(静岡県駿東郡小山町小山96-2/Tel:0550-76-4236)

事業用建物も対象という点が大きい

この制度で見逃せないのは、店舗・工場・事業所・事務所の所有者も対象に含まれていることです。町の他の助成が「住宅」に軸足を置いているのに対し、商工会の制度は事業用建物の外装改修にも届く。ビルや事業所をお持ちのオーナーさまにとっては、数少ない入口です。

また、屋根・外壁の工事が明示的に対象例に挙がっている点も重要です。金額としては最大10万円分の振興券ですが、外壁塗装や屋根改修は工事規模が大きくなりやすい。100万円以上の工事なら一律10万円分ですから、大規模修繕とセットで申請しない手はない、というのが率直な感想です。

ただし、この制度も必ず工事着工前の申請が条件です。そして12月31日完了という期限がある。9月に動き始めるなら、10月中に契約、11月着工、12月完了という逆算になります。屋根や外壁の工事は天候に左右されますから、冬季の冷え込みが早い小山町では、11月着工はかなりぎりぎりです。年内完了を狙うなら、この記事を読んだ週のうちに商工会へ電話をしてください。

なお、金額区分や条件は年度ごとに見直される可能性があります。最新の詳細は必ず商工会にご確認ください。

空き家を持っているなら:空き家活用・流動化促進助成金

相続などで町内の空き家を保有されている方には、小山町空き家活用・流動化促進助成金があります。定住を目的として空き家を取得し、1年以内に改修工事または解体工事に着手する方が対象で、給排水設備・電気設備・ガス設備・換気設備の改修工事、住宅のエネルギー効率や静穏性・防犯性を高める改修工事、空き家を完全に除却する工事などが対象に含まれています(出典:小山町空き家活用・流動化促進助成金交付要綱)。

賃貸に回すのか、売却するのか、解体して土地として活かすのか。判断の前に、建物としてあと何年もつのかを把握しておく必要があります。外壁と屋根と防水の状態が分かれば、「あと10年もたせる費用」と「解体費用」を並べて比較できる。ここは私どもがお手伝いできる領域です。

分譲マンションの管理計画認定:小山町の窓口は「静岡県」

ここからは分譲マンションの管理組合さま向けの話です。

Q. 小山町のマンションで管理計画認定を取りたい。申請先はどこですか?
A. 町域のマンションについては、静岡県くらし・環境部建築住宅局住まいづくり課が認定主体です。町役場ではありません(出典:静岡県 マンションの管理、2026年1月5日更新)。

マンション管理計画認定制度は、管理組合が作成する管理計画のうち一定の基準を満たすものを認定する制度です。市の区域は各市が、町の区域は県が担当します。小山町は「町」ですので、県が窓口になります。

認定申請手数料は令和8年4月1日に改定されている

ここは数字が動いていますので、正確に押さえてください。静岡県は令和8年4月1日に認定申請手数料を改定しました。

事前確認適合証 長期修繕計画数 令和8年3月31日まで 令和8年4月1日から
有り 1 3,800円 4,000円
有り 2以上 3,800円+1,700円×(計画数−1) 4,000円+1,800円×(計画数−1)
無し 1 26,900円 28,100円
無し 2以上 26,900円+15,500円×(計画数−1) 28,100円+16,200円×(計画数−1)

(出典:静岡県 マンションの管理)

事前確認適合証とは、マンションの管理の適正化の推進に関する法律第91条に規定するセンター(公益財団法人マンション管理センター)が交付する、同法第5条の14各号の基準に適合することを証する書面です。

表を見ていただければ一目瞭然ですが、事前確認適合証があるかないかで、手数料が7倍違います(4,000円対28,100円)。差額は24,100円。手間を惜しまず、まず公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを使い、事前確認適合証を取ってから県に申請する。これが定石です。

申請ルートは2本

ルート 内容 事前確認適合証
【1】公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続き支援サービスを利用 管理状況評価サービスの併用可(マンション管理業協会のマンション管理適正評価制度、日本マンション管理士会連合会のマンション適正化診断サービス) 有り
【2】県住まいづくり課へ直接申請 県へ直接 無し

なお、令和7年5月30日公布の法改正によりマンション管理適正化支援法人の登録制度が創設され、町の区域は県が登録主体となりましたが、静岡県は現段階では登録制度を実施していません。県のページに明記されています。この点も、県のマンション行政の現在地として押さえておいてください。

静岡県のマンション管理士無料派遣:受付10件、締切は令和8年11月14日

小山町の管理組合さまが今年度もっとも使いやすい県の制度が、これです。

静岡県は令和8年度マンション管理組合活動活性化支援事業として、マンション管理士の無料派遣を実施しています。管理に当たって困っている事項について、県内のマンション管理組合に専門家を派遣し、業務補助や助言を行うものです。

項目 内容
受付件数 10件(上限に達した時点で申込終了)
派遣回数 各管理組合2回まで
申込期限 令和8年11月14日(土曜)まで(定数に達し次第、早期終了)
派遣期限 令和9年1月31日(日曜)まで
申込先 一般社団法人静岡県マンション管理士会(メールまたはファクス)
費用 無料

(出典:静岡県 マンションの管理)

受付が県全体で10件という点を、どうか軽く見ないでください。静岡県内には多数の分譲マンションがあり、その中の10件です。11月14日という期限より前に埋まる可能性が十分にあります。修繕積立金の不足、長期修繕計画の見直し、管理規約の改正、管理会社との委託契約の見直し——こうしたテーマを抱えている理事会なら、9月中に申し込むのが現実的な判断です。

県は令和8年度、マンション管理セミナーも県内各地で開催しています。9月12日(土)に三島市役所、10月に熱海市・沼津市、11月に静岡市での開催が予定されています(出典:静岡県 マンションの管理)。小山町からなら三島・沼津の会場が現実的な距離です。理事会のメンバーで一度出てみると、他の管理組合が何に困っているかが分かります。

国の制度:窓の断熱と、長寿命化のモデル事業

町・県の次は国です。2026年度に共用部・専有部の改修で使える国の主な制度を挙げます。

先進的窓リノベ2026事業

住宅の窓・ドアを断熱性能の高いものに改修する費用を補助する事業で、一戸あたり最大100万円が交付されます。対象は既存の戸建住宅・集合住宅で、新築は対象外。住宅所有者(個人・法人)、賃貸住宅オーナー、マンション管理組合などが申請対象になり得ます(出典:環境省 断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業(先進的窓リノベ2026事業)、住宅省エネ2026キャンペーン公式)。

手続きは登録された支援事業者が代行する仕組みです。冬の冷え込みが厳しい小山町では、窓の断熱は入居者の満足度に直結します。賃貸オーナーさまなら、空室改修(町の助成金)+窓の断熱(国の補助)を同じ工事で組める可能性があります。

マンションストック長寿命化等モデル事業

国土交通省が、マンションの長寿命化や再生に関する先導的な取組を支援する事業です。令和8年度は複数回の公募が行われており、第2回が2026年6月22日〜26日、第3回が2026年9月14日〜18日の日程で予定されています(出典:国土交通省 マンション総合対策モデル事業)。

補助額は事業計画・要望額・評価委員会の評価を総合的に勘案して個別に決定されるため、採択されても要望額が満額出るとは限りません。応募のハードルは決して低くありませんが、公募期間が5営業日程度と短いのが最大の注意点です。第3回を狙うなら、この記事が公開される時点で準備は最終盤に入っている必要があります。

住宅金融支援機構の融資・積立

補助金ではありませんが、管理組合の資金計画では外せません。

  • マンション共用部分リフォーム融資:管理組合が共用部改修のために借り入れる融資(出典:住宅金融支援機構)
  • マンションすまい・る債:修繕積立金を計画的に積み立てるための債券(出典:住宅金融支援機構)
  • マンションライフサイクルシミュレーション:長期修繕計画の資金繰りを試算できるツール(出典:住宅金融支援機構)

私はいつも理事長さまに、「補助金を探す前に、まずシミュレーションを回してください」とお伝えしています。積立金が足りないという事実が数字で見えて初めて、理事会は動きます。補助金は、その動き始めた計画に後から乗せるものです。

富士山東麓という立地が、修繕周期に効いてくる

制度の話から、少し建物そのものの話に戻します。

小山町は富士山の東麓に位置し、冬季の冷え込みが厳しい地域です。建物の劣化という観点から見ると、平野部・沿岸部の物件と比べて次の点に注意が必要だと私は考えています。

気象要因 建物への影響 現場での見方
冬季の氷点下と日中の気温上昇 外壁のひび割れに入った水が凍結・膨張し、融解する繰り返しで、モルタルやタイルの浮き・塗膜の剥離が進みやすい(凍害) 北面・日陰面の下部、笠木まわり、バルコニー床の立ち上がりを重点的に見る
積雪と融雪水 屋上・バルコニーの排水経路に負荷。ドレン詰まりからの溢水 冬前のドレン清掃を年間管理項目に入れる
富士山の降灰リスク 排水口・雨樋への堆積、外装への付着 大雨のあとに屋上を見る習慣をつける
強い紫外線と寒暖差 シーリング材の硬化・追従性低下が早まる 打診とあわせてシーリングの触診をする

大事なのは、「築12年だから大規模修繕」という一般論を、そのまま持ち込まないことです。長期修繕計画の周期は目安であって、実際に何年もつかは立地と施工品質で変わります。まず現況を診てから、周期を修正する。順番はこちらが先です。

小山町の物件で私が気にするのは、下地の水分です。凍害が進んでいる建物に、下地を乾かさないまま新しい塗膜をかぶせると、内側の水分が逃げ場を失って数年で膨れます。補助金や振興券の期限に追われて冬場に無理な工程を組むと、この失敗が起きやすい。期限に工事を合わせるのではなく、工事に合う期限の制度を選ぶ。遠回りに見えて、これが一番安く上がります。

【当社サービスのご案内】工法の選択肢で、足場費そのものを削る

ここからは自社サービスのご案内です。制度の解説とは分けてお読みください。

大規模修繕の見積書を開いて、多くの理事長さまが驚かれるのが仮設足場の金額です。建物を丸ごと囲う足場は、それ自体は何も直していないのに、総額の中で決して小さくない比率を占めます。

私ども株式会社明誠は、次の3つの工法から建物にとって最適なものをご提案しています。

工法 概要 向いているケース
通常足場工法 従来型の仮設足場を架けて施工 全面的な改修、複雑な形状、施工範囲が広い建物
ロープアクセス工法(無足場工法) 産業用ロープで作業員が降下して施工。足場を架けない 高層部、足場の架設が難しい立地、部分補修、居住者の生活影響を抑えたいケース
ハイブリッド工法 足場とロープアクセスを部位ごとに使い分ける 大規模・複雑な建物で、総合的なコスト最適化が必要なケース

ロープアクセス工法の技術情報や安全基準、施工事例については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。工法そのものを詳しく知りたい方は、そちらもご参照ください。

小山町の物件で、ロープアクセスが効く場面

1つ目は、部分補修です。 「北面のタイルの一部が浮いている」「特定の住戸の窓まわりから漏水している」という場合、建物を丸ごと囲う必要はありません。ロープアクセスなら、必要な箇所にだけ人を降ろせます。足場を架けずに済めば、その分の費用と工期がそのまま浮きます。

2つ目は、調査です。 補助金の申請にも、修繕の意思決定にも、まず「今どうなっているか」の情報が要ります。打診調査を足場なしで行えれば、調査のためだけに足場代を払う必要がなくなります。ドローン点検と組み合わせれば、屋上や高所の状況も先に把握できます。

3つ目は、冬季です。 小山町のように冬の条件が厳しい地域では、工期の圧縮がそのまま品質に効きます。足場の架設・解体に要する日数がなくなれば、施工に使える好天日を増やせます。

私が20年やってきて思うのは、工法は目的ではなく手段だということです。足場が必要な建物には足場を架けます。ロープアクセスが不利な現場では勧めません。3つの選択肢を持っているからこそ、「この建物にはこれ」と正直に言える。それが私どもの立ち位置です。

明誠は日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板などの専門職が加盟しています。各分野の職人が直接施工に入る体制のため、中間コストを抑えながら品質を確保できます。工法の全体像は明誠の3工法・強みのご紹介、大規模修繕の進め方は大規模修繕工事のご紹介、管理組合さま向けのサービスはマンション管理組合の皆さまへにまとめています。

補助金を確実に通すための実務手順

制度は分かった、では何から動くか。小山町の場合、順番はこうなります。

ステップ1:現況を把握する(費用ゼロで始められる部分がある)

  1. 木造住宅・木造アパートなら、わが家の専門家診断事業(無料)を都市整備課に申し込む
  2. 分譲マンションなら、住宅金融支援機構のマンションライフサイクルシミュレーションで資金繰りを試算する
  3. ブロック塀があるなら、都市整備課に事前現地調査を申し込む(塀の種類・延長・高さ・厚さを測っておく)

ステップ2:使える制度を1本に絞らない

建物のタイプ 主に見るべき制度
分譲マンション(RC造) 管理計画認定制度(県)/マンション管理士無料派遣(県)/先進的窓リノベ2026(国)/マンションストック長寿命化等モデル事業(国)/機構の融資・すまい・る債
賃貸アパート(新耐震・昭和56年6月1日以後着工) 小山町民間賃貸住宅リフォーム助成金/小山快適リフォーム助成事業(商工会)/先進的窓リノベ2026
木造アパート・長屋(昭和56年5月31日以前) 木造住宅耐震補強助成事業(計画工事一体型)/わが家の専門家診断事業/小山快適リフォーム助成事業
ビル・店舗・事業所 小山快適リフォーム助成事業(商工会)
空き家 空き家活用・流動化促進助成金/小山快適リフォーム助成事業

ステップ3:締切から逆算する

2026年度で日付がはっきりしている締切を並べます。

期限 内容
2026年9月14日〜18日 マンションストック長寿命化等モデル事業 令和8年度 第3回公募(予定)
2026年11月14日(土) 静岡県 マンション管理士無料派遣 申込期限(受付10件、定数到達で早期終了)
2026年12月31日 小山快適リフォーム助成事業 工事完了期限
2027年1月31日(日) 静岡県 マンション管理士派遣の実施期限

ステップ4:着工前申請を、全制度で徹底する

小山町の制度は、木造住宅耐震補強助成事業も、商工会のリフォーム助成も、いずれも工事着工前(契約前)の申請が条件です。ここを飛ばすと、どれだけ良い工事をしても補助は出ません。

私はいつも、「見積りは何社取っても構いません。ただし、ハンコを押す前に一度、町か商工会に電話を入れてください」とお伝えしています。電話一本の順番で、数十万円が動きます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 小山町に、分譲マンションの大規模修繕そのものを補助する町独自の制度はありますか?
A. 2026年9月時点で、町の公開情報の中に分譲マンションの共用部大規模修繕を直接補助する単独メニューは見当たりません。管理組合が使える公的支援は、静岡県の管理計画認定制度・マンション管理士無料派遣と、国の先進的窓リノベ2026事業・マンションストック長寿命化等モデル事業、住宅金融支援機構の融資・すまい・る債が中心になります。

Q2. 賃貸アパートのオーナーです。町の助成金はいくらもらえますか?
A. 小山町民間賃貸住宅リフォーム助成金なら、改修工事費の3分の1で、アパートは1住戸あたり最大20万円、一戸建ての貸家は1戸あたり最大40万円です。対象は昭和56年6月1日以後に着工した独立住戸(水回り・駐車場付)で、現に空室、または賃借人の退去日が決定しているものに限られます(出典:小山町)。

Q3. 木造アパートでも耐震補強の補助は使えますか?
A. 使える可能性があります。小山町木造住宅耐震補強助成事業(計画工事一体型)は、一戸建てのほか長屋や共同住宅も対象としています。対象は昭和56年5月31日以前に建築された木造在来軸組工法の住宅で、補助額は耐震補強工事費の10分の8と100万円のいずれか少ない額。高齢者等割増で最大20万円が加算されます(出典:小山町)。

Q4. マンション管理計画の認定は、小山町役場に申請するのですか?
A. いいえ。町の区域は静岡県が認定主体です。県くらし・環境部建築住宅局住まいづくり課が窓口になります。認定申請手数料は令和8年4月1日に改定され、事前確認適合証があり長期修繕計画1つの場合で4,000円、適合証がない場合は28,100円です(出典:静岡県)。

Q5. 補助金の申請は、工事を頼む会社に任せてもいいですか?
A. 書類の作成補助を施工会社が担うことはありますが、申請の名義と責任は所有者・管理組合にあります。とくに小山町の制度は着工前申請が条件ですので、「業者に任せていたら申請が間に合わなかった」という事態を避けるため、申請状況はご自身でも確認してください。工事契約前の段階で、町の担当課に一度直接お問い合わせいただくのが確実です。

この記事のポイントまとめ

  • 小山町に分譲マンション共用部の直接補助はないが、賃貸オーナー向けの助成が手厚い
  • 民間賃貸住宅リフォーム助成金は1/3補助、アパート1住戸20万円・貸家1戸40万円が上限
  • 木造の長屋・共同住宅も耐震補強助成の対象。工事費の8/10、上限100万円+割増20万円
  • 管理計画認定の窓口は町ではなく静岡県。手数料は令和8年4月1日に改定済み
  • 県のマンション管理士無料派遣は受付10件、締切は令和8年11月14日で早期終了もある

出典・参考資料

最後に

制度の数だけ並べると、複雑に見えるかもしれません。ですが、小山町の場合、やることはとてもはっきりしています。

木造の古い建物を持っているなら、まず無料の専門家診断。賃貸の空室があるなら、おやまで暮らそう課へ電話。外装工事を年内にやるなら、商工会へ電話。分譲マンションなら、県のマンション管理士派遣を11月14日までに申し込む。

このうち、費用がかかるものは一つもありません。全部、電話一本から始まります。

正直に申し上げます。私どもは工事会社ですから、最後は工事のご相談をいただけたら嬉しい。ですが、その前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。「うちの建物はどの制度に当てはまるのか」「あと何年もつのか」——そうしたご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会や理事会にかける前の整理からご一緒します。

ご相談・現地調査のお申し込みはお問合せフォームから承っています。マンション・ビルのオーナーさま向けのご案内はマンション・ビルオーナーの皆さまへをご覧ください。

次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション・ビル・ホテルの大規模修繕/ロープアクセス工法(無足場工法)/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円および静岡県内でマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がける改修会社。通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3工法から、建物にとって最適な方法をご提案できる、日本でも数少ない会社です。ロープアクセス工事としては日本初となるフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板の各専門職が加盟しています。

最終更新:2026年9月3日

※本記事に記載した制度の内容・金額・期日は、掲載時点で各機関が公開している情報に基づいています。制度は年度途中に変更されたり、予算枠に達した時点で受付を終了したりすることがあります。申請にあたっては、必ず各窓口の最新の公式情報をご確認ください。本記事は法的助言を目的とするものではありません。

吉田町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

この記事で答える質問:静岡県榛原郡吉田町の分譲マンション管理組合は、2026年度(令和8年度)の大規模修繕にあたって、どの窓口に、いくらの手数料で、何を申請できるのでしょうか。

先に結論から申し上げます。吉田町のマンション管理組合が向き合う窓口は、役場だけではありません。吉田町は「市」ではなく「町」です。この一文字の違いによって、マンション管理計画認定制度の申請先は町役場ではなく静岡県くらし・環境部建築住宅局住まいづくり課になります。そして令和8年4月1日、その認定申請手数料が改定されました。

この連載でこれまで扱ってきた静岡県内の自治体は、湖西市、掛川市、袋井市、富士宮市……すべて「市」でした。市であれば市が自ら推進計画を策定し、市の窓口で認定を受けられます。湖西市の場合、認定申請の市手数料は無料でした。ところが吉田町の管理組合が同じ認定を取ろうとすると、県に申請することになり、手数料は4,000円または28,100円がかかります。同じ静岡県内、車で30分の距離でも、制度の入口はこれだけ違います。

私は建設・改修の現場に20年以上いて、大規模修繕の見積書と総会議案書を数え切れないほど見てきました。その経験から申し上げると、「窓口を間違える」ことによる時間の損失は、補助金の額そのものより大きいことがあります。総会で承認を取ってから「その申請は町ではなく県でした」と分かると、次の総会まで半年待つことになりかねません。

この記事では、吉田町の管理組合とオーナーが2026年度に確認すべき制度を、公的な一次情報だけを根拠にして整理します。数字はすべて出典を付けます。断定できないところは「町に確認してください」と正直に書きます。

最終更新:2026年9月2日


結論:吉田町のマンションが向き合う窓口は3つに分かれています

まず全体像を1枚の表にします。ここを読み違えなければ、あとの手続きは順番に進むだけです。

制度 窓口 費用 吉田町のマンションで使えるか
マンション管理計画認定制度 静岡県 住まいづくり課(町域が対象) 4,000円 または 28,100円 使える(申請先は県)
マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額) 吉田町 税務課(申告先) 申告手数料なし 使える(減額割合は町の条例)
住宅耐震改修に伴う固定資産税の減額 吉田町 税務課 申告手数料なし 条件付き(昭和57年1月1日以前所在)
住宅の省エネ改修に伴う固定資産税の減額 吉田町 税務課 申告手数料なし 条件付き(窓の改修が必須・賃貸を除く)
ブロック塀等耐震化促進事業 吉田町 都市環境課 補助 使える(敷地内の道路沿いの塀)
TOUKAI-0+(外部補強減災化ほか) 吉田町 都市環境課 補助 木造住宅が対象のため、RC造マンションは対象外
マンション管理士の無料派遣 一般社団法人静岡県マンション管理士会 無料 使える(県内で受付10件)

出典は以下のとおりです。

この表を見て、多くの理事の方が「思ったより町の補助が少ない」と感じられると思います。その感覚は正しいです。そして実は、吉田町自身がその不足を計画書に明記しています。この点は本記事の後半で詳しく扱います。だからこそ、補助金頼みではなく「工事のつくり方でコストを下げる」という発想が、吉田町では特に効いてきます。


吉田町は「町」だから、管理計画認定の申請先は静岡県です

マンション管理計画認定制度は、マンション管理適正化法(マンションの管理の適正化の推進に関する法律/平成12年法律第149号)に基づき、管理組合が作成した管理計画が一定の基準を満たす場合に、行政がそれを認定する制度です。

認定の主体は、マンション管理適正化推進計画を作成した市・特別区です。市以外の町村部については、都道府県が認定を行います。静岡県はこの点を明確に書いています。

マンション管理計画認定制度(対象:県内の町域)
(出典:静岡県 マンションの管理)

つまり、静岡県は「静岡県マンション管理適正化推進計画」の中に、県内の町域におけるマンション管理適正化推進計画を含めて策定しています。吉田町のマンションは、この県の計画の対象です。

認定基準は「静岡県マンション管理適正化推進計画」で確認する

認定基準は自治体ごとに上乗せがある場合があります。吉田町のマンションについては、静岡県の推進計画に書かれた基準が適用されます。基準そのものは静岡県マンション管理適正化推進計画(PDF)で公開されています。

国の全国共通基準は、国土交通省のリーフレット「マンションの大規模修繕をすると固定資産税が減税されます!」(2025年4月発行)に一覧があります。要点だけ挙げます。

  • 管理者等および監事が定められている
  • 集会(総会)が年1回以上開催されている
  • 管理規約に「緊急時等における専有部分の立入り」「修繕等の履歴情報の保管」「管理組合の財務・管理に関する情報の提供」が定められている
  • 管理費と修繕積立金が区分経理されている
  • 修繕積立金の3か月以上の滞納額が全体の1割以内である
  • 長期修繕計画が7年以内に作成または見直しされている
  • 長期修繕計画の計画期間が30年以上あり、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれている
  • 長期修繕計画において将来の一時金の徴収を予定していない
  • 計画期間の最終年度において借入金の残高のない計画となっている
  • 組合員名簿・居住者名簿が適切に備えられ、1年に1回以上内容の確認を行っている

修繕積立金の平均額の基準は「延床面積」で決まります

見落とされやすいのが、修繕積立金の平均額の基準です。国のガイドラインでは、機械式駐車場を除いた月額の専有面積当たり金額が以下のように定められています。

地上階数/建築延床面積 月額の専有面積当たり修繕積立金額
20階未満/5,000㎡未満 235円/㎡・月以上
20階未満/5,000㎡以上10,000㎡未満 170円/㎡・月以上
20階未満/10,000㎡以上20,000㎡未満 200円/㎡・月以上
20階未満/20,000㎡以上 190円/㎡・月以上
20階以上 240円/㎡・月以上

(出典:国土交通省リーフレット、および「マンションの管理の適正化の推進に関する法律第5条の3に基づくマンションの管理計画認定に関する事務ガイドライン」)

吉田町のマンションは、規模から見て多くが20階未満・延床5,000㎡未満の区分に入ると考えられます。この区分の基準は235円/㎡・月以上で、5つの区分の中で2番目に高い水準です。延床5,000〜10,000㎡の170円と比べると、1.38倍の水準が求められます。

これは直感に反する数字です。「小さいマンションのほうが1戸あたりの積立金は高く求められる」ということだからです。理由は単純で、外壁面積や屋上面積は戸数に比例して小さくならないからです。戸数が少ないほど、1戸あたりが負担する共用部分の面積が大きくなります。

70㎡の住戸なら、235円×70㎡=月額16,450円以上が計画期間全体の平均として必要になります。現在の積立金がこれを下回っている管理組合は、認定を目指す場合、値上げの議案が前提になります。ここは正直にお伝えしておきます。


認定申請手数料は令和8年4月1日に改定されました

ここが吉田町の管理組合にとって、今年度いちばん実務に効く変更点です。静岡県は認定申請手数料を令和8年4月1日に改定しました。

認定(新規)の手数料

事前確認適合証 長期修繕計画数 令和8年3月31日まで 令和8年4月1日から
有り 1 3,800円 4,000円
有り 2以上 3,800円+1,700円×(計画数−1) 4,000円+1,800円×(計画数−1)
無し 1 26,900円 28,100円
無し 2以上 26,900円+15,500円×(計画数−1) 28,100円+16,200円×(計画数−1)

(出典:静岡県 マンションの管理。認定の更新も同額)

「事前確認適合証」の有無で手数料が7倍変わります

4,000円と28,100円。差額は24,100円、倍率にして約7倍です。この差を生むのが「事前確認適合証」の有無です。

事前確認適合証とは、マンション管理適正化法第91条に規定する法人(公益財団法人マンション管理センター)が交付する、同法第5条の14各号に掲げる基準に適合することを証する書面です。平たく言えば、県に出す前に、専門機関が先に書類をチェックして「基準を満たしています」という証明書を出してくれるものです。

申請ルートは2つあります。

申請方法 事前確認適合証 県への手数料
【1】公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」を利用 有り 4,000円
【2】静岡県住まいづくり課へ直接申請 無し 28,100円

【1】のルートには、さらに3つの選び方があります。

  • 管理状況評価サービスを併用しない場合
  • 一般社団法人マンション管理業協会の「マンション管理適正評価制度」を併用する場合
  • 一般社団法人日本マンション管理士会連合会の「マンション適正化診断サービス」を併用する場合

(出典:公益財団法人マンション管理センター 管理計画認定手続支援サービス)

ただし「事前確認」自体にも費用がかかります

ここは誠実に補足します。県に払う手数料が4,000円で済むということは、事前確認のサービス側に別途費用が発生するということです。県手数料と事前確認費用の合計で比較しなければ、どちらが安いかは判断できません。

私の実務感覚でお伝えすると、判断の分かれ目は「書類が整っているかどうか」です。長期修繕計画が標準様式に準拠していて、総会議事録も規約も揃っている管理組合なら、直接申請でも書類の差し戻しは少なく済みます。逆に、長期修繕計画を10年以上見直していない、規約が分譲時のままという管理組合は、事前確認を通したほうが結果的に早く、手戻りが少ないことが多いです。

手数料の総額は、まずマンション管理センターの支援サービスのページで確認し、そのうえで静岡県住まいづくり課(054-221-3084)に「町域のマンションで、事前確認なしの直接申請を検討している」と伝えて相談されるのが確実です。


管理計画認定を取ると、何が変わるのか

手数料を払ってまで認定を取る価値があるのか。この問いには、3つの実利で答えられます。

1. 固定資産税が減額される(マンション長寿命化促進税制)

築20年以上・10戸以上で管理計画の認定を取得したマンションが、一定の長寿命化工事を行うと、各区分所有者が翌年度支払う固定資産税(建物部分のみ)が1/2〜1/6の範囲内で減額されます。この点は次章で詳しく扱います。

2. 住宅金融支援機構の融資金利が下がる

国土交通省のリーフレットに明記されている効果です。

  • 【フラット35】:当初5年間について年0.25%の引き下げ
  • マンション共用部分リフォーム融資:全期間について年0.2%の引き下げ
  • マンションすまい・る債:利率の上乗せ

(出典:国土交通省リーフレット(PDF))

大規模修繕で共用部分リフォーム融資を使う管理組合にとって、全期間0.2%の引き下げは実額として効きます。仮に3,000万円を15年で借りるなら、0.2%の差は総返済額で数十万円規模の違いになります。これは税制の話とは別に、借入前提の管理組合にとっての直接的なメリットです。

3. 「きちんと管理されている」という外部の証明になる

賃貸に出しているオーナーの方にとっては、この3つ目が最も効くかもしれません。認定は国の制度に基づく公的な評価であり、募集や売却の際の材料になります。

「町だから県に申請する」ことのデメリットは正直あります

一方で、市の窓口に比べると不利な点もあります。市であれば「市の担当者が同じ市内のマンションを継続的に見ている」状態になりますが、県が県内全町域を担当する場合、個別の物件事情まで踏み込んだ相談は難しくなります。

だからこそ、後述する静岡県マンション管理士の無料派遣が効いてきます。これは「県の窓口が遠い」という町域のハンデを埋めるための仕組みだと私は理解しています。


マンション長寿命化促進税制:吉田町の減額割合は「町の条例」で決まります

大規模修繕そのものに直接効く唯一の税制が、これです。制度の骨格を正確に押さえます。

制度の要件(令和8年度時点)

項目 内容
対象マンション 築20年以上かつ10戸以上で、管理計画の認定を取得したマンション
工事要件 長寿命化工事(外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事)を過去に1度以上実施していて、令和5年4月1日〜令和9年3月31日の間に2回目以降の長寿命化工事を完了していること
減額額 各区分所有者が翌年度支払う固定資産税(建物部分のみ)を1/2〜1/6の範囲内で減額(割合は自治体の条例で決定)
申請期限 工事完了後3か月以内に市町村に申請
積立金の要件 令和3年9月以降に、修繕積立金の額を管理計画の認定基準未満から認定基準以上に引き上げることが必要

(出典:国土交通省 マンション税制、および同省リーフレット)

押さえておくべき4つのポイント

第一に、「2回目以降」であること。 新築後はじめての大規模修繕では使えません。過去に1度以上、外壁塗装等・床防水・屋根防水の長寿命化工事を実施していることが前提です。築20年以上という要件と合わせて考えると、築25〜35年で2回目の大規模修繕を迎える管理組合が中心的な対象になります。

第二に、3工事すべてを含むこと。 外壁塗装等工事、床防水工事、屋根防水工事。この3つが揃っている必要があります。「今回は屋上防水だけ」という工事では要件を満たしません。逆に言えば、工事の切り分け方によって税制が使えるかどうかが変わるということです。これは工事計画を立てる段階で意識しておくべき点です。

第三に、減額割合は吉田町の条例で決まること。 国の制度は「1/2〜1/6の範囲内」としか定めておらず、実際に何分の1になるかは各市町村の条例です。吉田町のホームページには、令和8年9月2日時点でこの制度に関する専用ページが見当たりません。 ここは断定を避けます。吉田町役場税務課資産税部門(0548-33-2108)に、次の3点を電話で確認してください。

  1. マンション長寿命化促進税制に対応する町の条例は制定されていますか。制定されている場合、減額割合は何分の1ですか
  2. 減額の対象となる床面積の上限は1戸あたり何㎡ですか(多くの自治体は100㎡)
  3. 申告に必要な書類の一覧と、提出先の部署を教えてください

第四に、期限が令和9年3月31日であること。 令和8年9月の今から逆算すると、残りは約1年半です。管理計画認定の取得、修繕積立金の引き上げ議案、工事の発注と完了、そして完了後3か月以内の申告。この工程を積み上げると、総会2回分のスケジュールを見込む必要があります。9月に動き出しても、決して早すぎることはありません。

令和8年4月に新しい証明書の様式が追加されました

もうひとつ、実務家として見逃せない動きがあります。国土交通省は令和8年4月1日付で、この税制に関する新しい通知(国住参マ第305号・第306号)を発出し、証明書の様式を拡充しました。

現在、同省のページに掲載されている様式は次のとおりです。

  • 大規模の修繕等証明書
  • 過去工事証明書
  • 修繕積立金引上証明書
  • 助言・指導内容実施等証明申請書、証明書

(出典:国土交通省 マンション税制)

注目すべきは4つ目です。同省のページには「制度の概要」として「管理計画認定マンションの場合」に加えて「助言又は指導を受けた管理組合の管理者等に係るマンションの場合」という資料が別途掲載されています。

これは、管理計画の認定を取得していなくても、マンション管理適正化法第5条の2に基づく助言・指導を受けた管理組合であれば、この税制の対象になり得るということを意味します。認定取得(4,000円〜28,100円+準備の手間)がハードルになっている管理組合にとっては、もうひとつの入口です。

ただし、町域における助言・指導の主体も静岡県になります。この経路が吉田町のマンションで現実的に使えるかは、静岡県住まいづくり課(054-221-3084)に「助言・指導ルートでの長寿命化促進税制の適用について、町域のマンションの取り扱いを教えてほしい」と確認するのが確実です。制度が動き始めたばかりの領域なので、ここは断定せずに書いておきます。


吉田町のブロック塀等耐震化促進事業:撤去に2/3・上限13万3千円

町の補助で、マンションの敷地に直接使える可能性が高いのがこれです。

補助の内容

項目 内容
対象となる塀 建築基準法に規定する道路沿いに存在する、地盤からの高さ60cm以上の危険なブロック塀、石塀、れんが塀その他これらに類する塀
補助金額 「撤去工事金額の2/3」と「ブロック塀の延長×20,000円/m×2/3」を比較していずれか少ない額(上限133,000円、千円未満切り捨て)
申請時期 撤去工事の着手前に申請が必要
事前確認 補助対象となるかを都市環境課窓口で事前に確認

(出典:吉田町 ブロック塀等耐震化促進事業)

上限に届く塀の長さは「10メートル」です

計算してみます。延長×20,000円/m×2/3 が133,000円に達する長さは、133,000 ÷ (20,000 × 2/3) = 約10.0m です。

つまり、塀の延長が約10mを超えると、それ以上長くても補助額は133,000円で頭打ちになります。マンションの敷地境界に沿って20m、30mとブロック塀が続いている場合、補助でカバーできるのは全体の一部です。

一方で、実際の撤去工事金額の2/3という条件もあります。撤去単価が1mあたり20,000円を下回るなら、そちらの少ない額が採用されます。マンションの敷地の塀は基礎が深く、擁壁と一体化していることも多いため、実費が1mあたり20,000円を上回るケースが一般的です。その場合は「延長×20,000円×2/3」のほうが少なくなり、こちらが採用されると考えられます。

まず「5項目の点検」を理事会で回してください

吉田町は、静岡県作成の「ブロック塀の点検と改善」に基づく点検項目を公開しています。専門知識がなくても、理事の方が現場を歩けば確認できる内容です。

通常のブロック塀の点検5項目

  1. 基礎の根入れはあるか
  2. 塀は高すぎない(地盤から2m以下)か
  3. 控壁はあるか
  4. 塀の傾き、ひび割れはないか
  5. 塀に鉄筋は入っているか

1つでも該当しない場合は危険とされています。(出典:吉田町、および静岡県作成リーフレット「ブロック塀の点検と改善」(PDF))

組積造(れんが造、石造、鉄筋のないブロック造)の場合は6項目になり、高さの基準が1.2m以下と厳しくなります。マンションの敷地内でも、ゴミ集積所の囲いや自転車置場の袖壁がれんが造・石造というケースは珍しくありません。あわせて点検してください。

「控壁」とは、主壁に対して直角方向に突き出した補助的な壁のことです。この用語は町のページでも注記されています。

令和7年度に申請が急減しています

町の耐震改修促進計画には、ブロック塀撤去の助成実績が年度別に掲載されています。

年度 令和4年度 令和5年度 令和6年度 令和7年度 合計
ブロック塀の撤去(件) 11 18 15 6 50

(出典:吉田町耐震改修促進計画(令和8年度〜令和12年度)(PDF)、令和8年3月末現在)

町はこの実績について「助成実績が堅調に推移している」と評価しています。人口29,230人・11,249世帯(面積20.73㎢)の町で4年間に50件ですから、世帯数に対する比率としては確かに堅調です。

ただし、令和7年度は6件で、前年度の15件から4割に減っています。この減少をどう読むかは、私は断定を避けます。対象となる危険な塀が減ってきた結果かもしれませんし、周知が届いていないだけかもしれません。ただ実務家として言えるのは、申請が少ない年度は、予算に余裕がある可能性があるということです。「いずれの メニューも予算に達した時点で受付を終了します」と町が明記している以上、動くなら年度の早いうちです。


TOUKAI-0 は令和7年度で終了し、令和8年度から「TOUKAI-0+」になりました

静岡県が全国に先駆けて平成13年度から実施してきた木造住宅の耐震化プロジェクト「TOUKAI-0」は、令和7年度をもって終了しました。令和8年度から、新たな事業体系として「TOUKAI-0+(トウカイゼロプラス)」が始まっています。

県が推進してきた木造住宅の耐震化プロジェクト「TOUKAI-0」は、令和7年度をもって終了し、令和8年度から新たな事業体系を構築する。
(出典:吉田町耐震改修促進計画(令和8年度〜令和12年度))

25年続いた県の看板事業の名前が変わった年です。吉田町も令和8年度から、新たに外部補強減災化助成事業と住宅屋根耐風改修助成事業の2メニューを追加しました。

吉田町のTOUKAI-0+の全メニューは次の6つです。

  1. わが家の専門家診断(静岡県耐震補強相談士による無料耐震診断)
  2. 耐震補強計画策定及び耐震補強工事に対する補助金の交付(一体型補助金)
  3. 外部補強減災化助成事業(令和8年度新規)
  4. 住宅屋根耐風改修助成事業(令和8年度新規)
  5. ブロック塀等耐震化促進事業
  6. 耐震シェルター・防災ベッド設置助成事業

(出典:吉田町 木造住宅の耐震化プロジェクト「TOUKAI-0+」事業)

このうち5番のブロック塀以外は、いずれも木造住宅が対象です。 鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションは対象外になります。この点は最初に押さえておいてください。


外部補強減災化助成は補助率5分の4 — ただしマンションは対象外です

とはいえ、令和8年度に新設された「外部補強減災化助成事業」の中身は、管理組合の方にも知っておいていただく価値があります。理由は後述します。

項目 内容
対象 木造住宅耐震診断の結果、耐震評点が0.7以上1.0未満と診断された旧基準木造住宅
対象工事 改修促進工事(屋根の軽量化または外付けブレース)
補助額 1棟ごとに、事業に要する経費に5分の4を乗じて得た額と850,000円とを比較していずれか少ない額
前提 申請前に「わが家の専門家診断(無料耐震診断)」を受けること
申請先 吉田町 都市環境課

(出典:吉田町 外部補強減災化助成事業)

なぜ管理組合にも関係があるのか

補助率5分の4(80%)は、私がこの連載で扱ってきた静岡県内の制度の中で最も高い水準です。 補助率2/3(約67%)が手厚いほうだと考えられている中で、80%という設計は突出しています。

そして注目すべきは、この補助の思想です。「居住空間はそのままで、外部補強による地震対策改修工事」。つまり、中に住んだまま、外側からの工事で性能を上げるという考え方です。

これはまさに、マンションの大規模修繕でロープアクセス工法が選ばれる理由と同じ発想です。居住者の生活を止めず、建物の外側から手を入れる。工事のために引っ越す必要がない。町がこの考え方に補助率80%を付けたという事実は、「居住しながらの外部工事」という手法が行政にも合理的だと評価されていることの傍証だと私は受け止めています。

もう一点。町は補助制度の説明の中で「低コスト工法」の推奨を明記しています。

耐震診断、耐震改修といった基本的な耐震化補助については、低コスト工法※の推奨を図り耐震化の加速を目指す。
※低コスト工法:床や天井の撤去・復旧を最小限に抑え、N値計算等を活用した精密診断法により合理的な補強を行うなどコストの削減を図りながら、耐震性能を向上させる工法
(出典:吉田町耐震改修促進計画)

「撤去・復旧を最小限に抑え、コストを削減しながら性能を向上させる」。この一文は木造住宅の話として書かれていますが、思想としては大規模修繕にそのまま通じます。仮設足場を組んで、解体して、復旧して、という工程のどこを削れば性能を落とさずに費用が下がるか。それが工法選択の本質です。

代理受領制度も知っておいてください

もうひとつ、町の計画に書かれている実務的な仕組みです。

代理受領制度は、補助事業の実施における申請者の一時的な費用負担を軽減するため、工事施工者等が申請者の委任を受け、補助金を代理受領できる制度である。この制度では、申請者は工事費等と補助金の差額分のみ用意すればよく取り組みやすい。
(出典:吉田町耐震改修促進計画)

補助金は原則として、工事代金を全額支払ったあとに交付されます。つまり一時的に全額を立て替える必要があります。代理受領制度を使えば、管理組合が用意するのは「工事費−補助金」の差額だけで済みます。

現在この制度が明記されているのは木造住宅の耐震化補助についてですが、ブロック塀等耐震化促進事業でも同様の運用ができるかどうかは、都市環境課(0548-33-2161)に確認する価値があります。修繕積立金の残高がぎりぎりの管理組合にとって、キャッシュフローの差は小さくありません。


吉田町が計画に書いた一文:「充足しているとは言えない」

ここが、この記事でどうしてもお伝えしたい部分です。

吉田町は令和8年3月に策定した耐震改修促進計画の中で、ブロック塀・特定天井・既存不適格昇降機など「その他の建築物等」について、こう書いています。

全般的に耐震化が伸び悩んでいる。また、所有者の負担軽減を図るためには助成制度の創設が必要であると考えるが、財政的な理由等により充足しているとは言えない。
(出典:吉田町耐震改修促進計画(令和8年度〜令和12年度))

私はこの連載で静岡県内の自治体の計画を読み込んできましたが、自治体が自らの助成制度について「充足しているとは言えない」と明記した例は、ここが初めてです。

これは町を批判する話ではありません。むしろ逆で、私はこの率直さを評価しています。面積20.73㎢、人口29,230人の町が、限られた財源をどこに配分するかを判断した結果です。そして町は、その判断を隠さずに公表しました。

管理組合が受け取るべきメッセージ

この一文から、吉田町のマンション管理組合が読み取るべきことは明確です。

吉田町では、大規模修繕のコストを「町の補助金」で下げる余地は限定的です。 ブロック塀の撤去で最大133,000円。それ以外に、共用部分の修繕そのものに直接充てられる町の補助はありません。

したがって、コストを下げる手段は次の3つに絞られます。

  1. 国の税制を使う(マンション長寿命化促進税制。ただし認定または助言・指導が前提)
  2. 住宅金融支援機構の融資を有利な条件で使う(認定でマンション共用部分リフォーム融資が全期間0.2%引き下げ)
  3. 工事そのものの構成でコストを下げる(工法選択、仕様の適正化、発注方式)

このうち3番目は、行政の制度に依存せず、管理組合の判断だけで実行できます。そして金額のインパクトが最も大きい。吉田町のような、町の補助が薄い自治体でこそ、ここに注力する意味があります。

具体的には、大規模修繕の総工事費のうち仮設足場が占める割合は一般に15〜20%程度です。この部分の設計を見直すだけで、工事全体の費用構造が変わります。ロープアクセス工法や、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法は、この論点への実務的な回答です。ロープアクセス工法の一般的な安全基準や技術情報は、姉妹サイトロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。


耐震改修促進計画が示す、マンションに直結する3つの論点

吉田町の耐震改修促進計画には、木造住宅の話だけでなく、マンションにこそ関係する記述が複数あります。ここは総会での説明材料として、そのまま使える内容です。

論点1:杭の二次設計

過去の大地震において杭が損傷し、継続使用が困難な事例があった。このため、杭基礎を使用している建築物においては、建築基準法では一次設計(中小規模の地震に対する検討)しか規定していないことに留意する。
(出典:吉田町耐震改修促進計画)

計画の別の箇所では、令和6年1月の能登半島地震について「杭頭の破壊が主な原因としてビルが倒壊した」と記載されています。

これは、マンション管理組合にとって重い指摘です。大井川の河口部に位置する吉田町は、地盤条件から杭基礎を採用している建物が多いと考えられます。そして建築基準法は、杭について中小規模の地震しか検討を求めていない。建物本体が新耐震基準を満たしていても、杭は別の話だということです。

これは「不安を煽る」ための情報ではありません。むしろ逆で、外壁や防水の劣化診断とは別に、基礎まわりの点検が意味を持つということです。大規模修繕の際に、地盤面近くのひび割れや不同沈下の兆候、外構との取り合い部分の変状を記録に残しておくことは、コストをかけずにできる備えです。

論点2:長周期地震動と免震・高層建築物

木造住宅よりも長い固有周期を持つ超高層建築物や免震建築物は、長周期の地震動の影響を受けることから、長周期地震動が発生しやすい軟弱な堆積層で覆われている地域では特に注意が必要となる。
(出典:吉田町耐震改修促進計画)

国は南海トラフ巨大地震について、長周期地震動対策が必要な区域をSZ1(建設時の想定を上回る可能性が非常に高い地域)、SZ2(高い地域)、SZ3(ある地域)に区分しています。町は「特に対策が必要とされるSZ1及びSZ2の区域内の建築物に対するフォローアップを県と継続的に行い、所有者等に対し詳細診断や対策工事の啓発を行う」としています。

吉田町がどの区域に該当するかは計画本文では図で示されており、テキストからは特定できませんでした。該当区域を確認したい場合は、都市環境課(0548-33-2161)に「長周期地震動対策の対象区域について、町内はSZ何に該当しますか」と問い合わせてください。

論点3:エレベーターの支持部材と釣合いおもり

町は、県・関係団体と連携して、エレベーターの支持部材の耐震化、釣合いおもりの脱落対策やエスカレーター落下防止対策などの防災対策改修や、地震時のエレベーターの運行方法や閉じこめられた場合の対処方法について周知・啓発を図るとともに、エレベーター及びエスカレーターの所有者や管理者に対して定期検査等に併せ、改善を促す取組を促進する。
(出典:吉田町耐震改修促進計画)

平成30年6月の大阪府北部地震では、多くのビルでエレベーターの緊急異常停止により閉じ込め事案が発生しました。

大規模修繕の議案を組むときに、エレベーターの地震時管制運転装置や釣合いおもりの脱落防止対策を「同時に検討する項目」として並べておくと、後年の追加工事を避けられます。エレベーターは専門業者の領域ですが、足場を組むタイミングと合わせられる工事があるかどうかは、修繕委員会で一度確認しておく価値があります。

あわせて:非構造部材と屋外広告物

地震によって瓦屋根、窓ガラス、外装材等(非構造部材等)や屋外広告物が落下すると、通行人等に死傷者が出るおそれがあるだけではなく、道路通行の妨げとなり避難や救助・消火活動にも影響を及ぼす。
(出典:吉田町耐震改修促進計画)

マンションで言えば、外壁タイルの浮き、モルタルの剥離、看板・アンテナの取り付け金物の腐食がこれに該当します。大規模修繕の打診調査は、まさにこの落下防止のための調査です。


応急仮設住宅は40戸足りない — だから「在宅避難できる建物」が要る

吉田町の計画で、私がもっとも重く受け止めた数字がこれです。

吉田町第4次地震被害想定における建設型応急仮設住宅の必要戸数は約490戸、応急建設住宅建設可能戸数は450戸であり、新規建設予定地の確保は至難の業である。
(出典:吉田町耐震改修促進計画)

必要490戸に対して、建設できるのは450戸。差し引き約40戸分の行き場がありません。 面積20.73㎢という県内でも小さい町で、仮設住宅を建てる土地を新たに確保するのは「至難の業」だと町自身が書いています。

想定される被害は次のとおりです。

区分 南海トラフ巨大地震 相模トラフ地震(首都直下地震)
規模 マグニチュード9.0程度 マグニチュード8.2程度
発生頻度 100〜150年 約2,300年
全壊・焼失棟数 約2,200棟 約0棟
死者数 約40人 約0人

(出典:吉田町耐震改修促進計画、吉田町第4次被害想定)

「命を守る」から「命をつなぐ」へ

だからこそ、町の計画の基本方針はこうなっています。

「地震による住宅・建築物の倒壊から、一人でも多くの県民の命を守り、助かった命をつなぐ」

そして、この方針の技術的な意味を、計画は極めて明確に説明しています。

建築基準法は最低限の基準であり、大地震に対して「倒壊しない」が、「損傷は許容する」ものであるため、被災後の継続使用を担保するものではない。特に、経済設計を追及した構造設計の場合は、耐震性に余力がないことが多いため、被災後の継続使用が困難となる可能性がある。そのため、大地震でも損傷を抑え継続使用するためには、余裕を持った耐震性能を確保する必要がある。
(出典:吉田町耐震改修促進計画)

この一節は、マンション管理組合の総会でそのまま読み上げる価値があります。

「うちは新耐震だから大丈夫」という認識は、半分正しく、半分足りません。新耐震基準が保証しているのは「倒壊しない」ことであって、「地震のあとも住み続けられる」ことではないからです。そして吉田町では、仮設住宅が40戸足りない。倒壊しなくても住めなくなれば、行き場がありません。

経年劣化が耐震性能を下げるという指摘

計画はさらに、こう書いています。

新築時は耐震性能が確保されていても、時間の経過とともに、ひび割れや変形、老朽化などの経年劣化による耐震性能の低下が懸念されるため、定期的な調査により劣化状況を把握し、必要な対策を講じるなど適切なメンテナンスにより、安全性確保を目指す。
(出典:吉田町耐震改修促進計画)

今回の計画では、対象建築物の区分に「経年劣化が進んだ建築物」が新たに加えられました。これまでの計画は昭和56年5月以前の旧耐震基準の建物だけを対象としていましたが、令和8年度からの計画は違います。

これは、新耐震のマンションであっても、劣化が進めば耐震性能が下がるという前提に、行政が公式に立ったということです。大規模修繕は美観のための工事ではなく、耐震性能の維持・回復のための工事である。この位置づけを、町の計画が裏づけてくれています。

総会で「なぜ12年周期で外壁を直すのか」と問われたとき、この一文ほど説得力のある根拠はないと私は思います。


固定資産税・都市計画税:吉田町の税率と「対象外」の落とし穴

税の話を正確に整理します。

吉田町の税率

税目 税率 備考
固定資産税 1.4% 標準税率と同じ
都市計画税 0.15% 制限税率0.3%の半分

(出典:吉田町 固定資産税・都市計画税、令和8年4月1日作成)

都市計画税0.15%は、この連載で扱ってきた自治体の中で最も低い水準です。参考までに、湖西市は0.2%でした。制限税率(上限)は0.3%ですから、吉田町はその半分に抑えています。

不動産オーナーの方にとっては、保有コストが相対的に低いということです。ただし、次の点に注意が必要です。

減額されるのは固定資産税だけで、都市計画税は減額されません

吉田町は、耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修のいずれの減額措置についても、同じ注記を繰り返しています。

なお、都市計画税は減額されません。
(出典:吉田町 固定資産税・都市計画税)

これは総会説明での事故につながりやすいポイントです。「工事をすれば来年の税金が半分になる」と説明してしまうと、実際には都市計画税分が残るため、通知書を見た組合員から「話が違う」と言われます。

正確な説明は「固定資産税額の◯分の1が減額されます。都市計画税は減額の対象外です」です。1文字の違いですが、信頼を左右します。

3つの減額措置の要件を並べて比較する

措置 減額割合 対象床面積 費用要件 建物の要件 賃貸住宅
住宅耐震改修 1/2(長期優良住宅の認定を受けて改修した場合は2/3) 1戸あたり120㎡相当分まで 1戸あたり50万円超 昭和57年1月1日以前から所在 記載なし
バリアフリー改修 1/3 1戸あたり100㎡相当分まで 補助金等を除く自己負担額が50万円超 新築から10年以上経過 除く
省エネ改修 1/3(長期優良住宅の認定を受けて改修した場合は2/3) 1戸あたり120㎡相当分まで 補助金等を除く自己負担額が60万円超 平成26年4月1日以前から所在 除く

(出典:吉田町 固定資産税・都市計画税)

いずれも改修工事完了後3か月以内に町税務課へ申告が必要です。そして適用は1回限り、減額されるのは改修工事が完了した翌年度分に限るという点も共通しています。

省エネ改修は「窓の改修」が必須です

大規模修繕との関係で、もっとも見落とされやすいのがここです。

※窓の改修工事を必ず行うことが必要です。
(出典:吉田町 固定資産税・都市計画税)

対象工事の例として町が挙げているのは、次の4つです。

  • 窓の改修工事(ガラスの交換や内窓の新設又は交換、サッシの交換など)
  • 窓の改修工事と合わせて行う床の断熱工事
  • 窓の改修工事と合わせて行う天井の断熱工事
  • 窓の改修工事と合わせて行う外壁の断熱工事

つまり、外壁の断熱工事だけを行っても、この減額措置は使えません。 窓の改修とセットである必要があります。

マンションの窓・サッシは、標準管理規約上は共用部分ですが、専用使用権が設定されているのが通例です。大規模修繕でサッシ改修を計画に含める管理組合であれば、各区分所有者が個別にこの減額を申告できる可能性があります。ただし賃貸住宅は除かれるため、賃貸に出している住戸のオーナーは対象外です。

この整理は複雑なので、サッシ改修を計画に含める場合は、税務課資産税部門(0548-33-2108)に「分譲マンションの共用部分サッシ改修について、各区分所有者が省エネ改修の減額を申告できるか」と、工事の前に確認されることをお勧めします。

免税点が令和9年度から引き上げられます

もうひとつ、賃貸オーナーの方に関係する変更です。

免税点:同一人が所有する土地・家屋・償却資産それぞれの課税標準額の合計が次の金額に満たない場合は、固定資産税は課税されません。土地…30万円未満/家屋…20万円未満(令和9年度分から30万円未満)/償却資産…150万円未満(令和9年度分から180万円未満)
(出典:吉田町 固定資産税・都市計画税)

家屋の免税点が20万円から30万円へ、償却資産が150万円から180万円へ引き上げられます。賃貸物件の設備を償却資産として申告している方は、令和9年度から課税対象が変わる可能性があります。償却資産は毎年1月1日現在の状況を1月末日までに町へ申告する必要がありますので、あわせてご確認ください。


静岡県のマンション管理士無料派遣は受付10件 — 9月に動く理由

町の補助が薄い分、県が用意している支援は使い切りたいところです。とくにこれは、費用がゼロで、専門家が管理組合に直接来てくれる制度です。

項目 内容
事業名 令和8年度マンション管理組合活動活性化支援事業(マンション管理士の無料派遣)
内容 マンションの管理に当たって困っている事項について、県内のマンション管理組合に専門家(マンション管理士)を派遣し、業務補助及び助言等を行う
費用 無料
受付件数 10件(上限に達した時点で申込終了)
派遣回数 各管理組合2回まで
申込期限 令和8年11月14日(土曜)まで
派遣期限 令和9年1月31日(日曜)まで
申込先 一般社団法人静岡県マンション管理士会(メール:t_gotoh@tx.thn.ne.jp/ファクス:0544-27-6561)

(出典:静岡県 マンションの管理。派遣業務の概要(PDF)、申込書(Word))

「県内で10件」という数字の意味

静岡県には約370万人が住み、分譲マンションは相当数あります。その中で受付件数は10件です。県は「受付件数が上限に達した時点で申込を終了させていただきます」「申込多数の場合、派遣先を調整させていただくことがあります」と明記しています。

申込期限は11月14日ですが、期限まで待つ理由はありません。 定数に達し次第、早期終了すると県が書いています。

何を相談すればいいか

吉田町の管理組合であれば、私なら次の2点を相談テーマにします。

  1. 管理計画認定の取得に向けて、長期修繕計画と管理規約に何が足りないか(県への申請が前提になるため、県の基準に詳しい専門家の助言が効く)
  2. 修繕積立金の水準が、認定基準(20階未満・延床5,000㎡未満なら235円/㎡・月)に対してどの程度不足しているか

派遣は2回まで使えます。1回目で現状の棚卸し、2回目で総会議案の詰め、という組み立てが現実的です。

県のマンション管理セミナーも開催されています

あわせて、令和8年度のマンション管理セミナーが県内各地で予定されています。吉田町から通える範囲では次のとおりです。

開催地 開催日 会場
磐田市 令和8年8月29日(土曜日) 磐田商工会議所
三島市 令和8年9月12日(土曜日) 三島市役所
静岡市 令和8年11月予定 ―
富士市 令和9年2月予定 ―
浜松市 令和9年2月予定 ―

(出典:静岡県 マンションの管理)

この記事の公開時点で直近は9月12日(土)の三島市です。11月の静岡市開催は、吉田町からの距離を考えると最も参加しやすい回になりそうです。日程が確定次第、県のページで確認してください。


区分所有法の改正(令和7年法律第47号)で何が変わるか

管理組合にとって、2026年度に押さえておくべき法改正があります。

令和7年5月30日に、「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律(令和7年法律第47号)」が公布され、同年11月28日に一部施行された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成12年法律第149号)」において、新たに「マンション管理適正化支援法人」の登録制度が創設されました。
(出典:静岡県 マンションの管理)

支援法人の登録主体も「町域は県」です

支援法人の業務区域 登録主体
市の区域 市
町の区域 県

そして静岡県は、こう明記しています。

静岡県は、現段階では、登録制度は実施していません。

つまり、吉田町の管理組合が「支援法人」の支援を受けられる体制は、令和8年9月時点ではまだ整っていません。これは県を責める話ではなく、制度が始まったばかりだからです。ただし、今後動きが出る領域として、県のページを定期的に確認しておく価値があります。

標準管理規約も改正されています

国土交通省は令和7年にマンション標準管理規約を改正し、県がその紹介パンフレットを掲載しています(マンション標準管理規約改正パンフレット(PDF))。

管理規約が分譲時のまま、あるいは10年以上見直されていない管理組合は、管理計画認定の基準(緊急時等における専有部分の立入り、修繕等の履歴情報の保管、財務・管理情報の提供の3項目の規定)を満たしていない可能性が高いです。規約改正には特別決議(区分所有者および議決権の各4分の3以上)が必要ですから、認定を目指すなら早めの準備が要ります。

注意喚起:管理会社を装った勧誘

県は消費者庁からの注意喚起も掲載しています。マンション管理会社の関係者を装い、マンション全体のインターネット接続サービスが切り替わるかのように告げて契約させる事業者に関するものです(消費者庁からの注意喚起(PDF))。

大規模修繕の周辺でも、同種の手口はあります。理事会に諮られていない「管理組合の名前を使った案内」が届いたときは、まず管理会社に事実確認をしてください。


工法でコストを下げる:足場・ロープアクセス・ハイブリッド

ここまで見てきたとおり、吉田町では大規模修繕の費用を町の補助金で下げる余地は限られています。町自身が「充足しているとは言えない」と書いているとおりです。

では、どこでコストを下げるか。私が一貫してお伝えしているのは、工事の構成そのものを見直すという方法です。

3つの工法の使い分け

工法 内容 向いている条件
通常足場工法 建物の全周に仮設足場を組んで施工する従来型 全面的にタイル補修・外壁改修が必要/複雑な形状/低〜中層
ロープアクセス工法(無足場工法) 産業用ロープで施工者が屋上から降下し、外側から施工する 足場の架設が難しい/工期を短縮したい/居住者の生活影響を抑えたい/部分補修が中心
ハイブリッド工法 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける 大規模・複雑な物件で、総合的にコストを最適化したい

大規模修繕の総工事費に占める仮設足場の割合は、一般に15〜20%程度です。ここを部分的にロープアクセスへ置き換えられれば、その分が直接効いてきます。

吉田町の立地で効いてくる論点

吉田町は駿河湾と大井川に面した、海に近い町です。海に近い立地の建物は、塩害による劣化の進行が内陸より速い傾向があります。手すり・避難ハッチ・アンテナ支持金物などの鉄部、外壁の目地シーリング、屋上の防水立ち上がりは、点検の頻度を上げる価値があります。

一方で、ロープアクセス工法は部位を限定した点検・補修に強いという特性があります。「12年に1度の大規模修繕で全部やる」のではなく、「劣化の速い部位だけを短いサイクルで手当てし、大規模修繕の周期を延ばす」という考え方が成立します。これは長期修繕計画上の総コストを下げる方向に働きます。

また、吉田町は「シーガーデンシティ構想」を掲げ、海岸部のまちづくりを進めています。町の景観が変わっていく中で、建物の外観を良好に保つことは、賃貸の競争力にも売却時の評価にも直結します。

ロープアクセス工法の安全基準や技術的な解説は、ロープアクセスドットコムで詳しくまとめています。工法の比較検討に入る前に、一度ご覧いただくと理解が早いと思います。

弊社について

株式会社明誠は、通常足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3つを、建物の条件に応じて提案できる会社です。日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズを展開しており、塗装・防水・タイル・電気・看板工事など各分野の専門職が加盟しています。専門職が直接施工に入る体制のため、中間コストを抑えた価格をご提示できます。

サービスの詳細はロープアクセス工法のご紹介、管理組合・オーナー向けのご相談はお問合せフォームからお願いいたします。


吉田町の管理組合が9月中にできる3つのこと

制度の話を並べても、動かなければ何も変わりません。今月中に実行できることを3つに絞ります。

1. 電話を2本かける(所要15分)

1本目:静岡県 住まいづくり課(054-221-3084)

聞くこと:
– 「吉田町のマンションですが、管理計画認定の申請は県で受け付けていただけますか」
– 「事前確認適合証なしの直接申請の場合、手数料は28,100円という理解で合っていますか」
– 「助言・指導を受けた管理組合として長寿命化促進税制を使う経路は、町域ではどのように取り扱われますか」

2本目:吉田町役場 税務課資産税部門(0548-33-2108)

聞くこと:
– 「マンション長寿命化促進税制に対応する町の条例はありますか。減額割合は何分の1ですか」
– 「分譲マンションの共用部分サッシ改修について、各区分所有者が省エネ改修の減額を申告できますか」
– 「申告に必要な書類の一覧をいただけますか」

3本目(敷地にブロック塀がある場合):吉田町役場 都市環境課(0548-33-2161)

聞くこと:
– 「マンションの敷地の道路沿いブロック塀は、ブロック塀等耐震化促進事業の対象になりますか」
– 「令和8年度の予算枠はまだ残っていますか」
– 「補助金の代理受領はブロック塀の事業でも使えますか」

2. マンション管理士の無料派遣に申し込む(所要30分)

申込書は静岡県のページからWordファイルでダウンロードできます。宛先は一般社団法人静岡県マンション管理士会(メール:t_gotoh@tx.thn.ne.jp/ファクス:0544-27-6561)です。

受付10件・先着であることを、申込の優先順位を決めるときに思い出してください。

3. ブロック塀の5項目点検を理事会で回す(所要1時間)

敷地内の塀を歩いて、5項目をチェックします。写真を撮って、延長をメジャーで測る。これだけで、補助金を使えるかどうかの見当がつきます。

  • 基礎の根入れはあるか
  • 高さは2m以下か
  • 控壁はあるか
  • 傾き・ひび割れはないか
  • 鉄筋は入っているか

必ず着工前に申請してください。 工事を始めてしまうと補助の対象外になります。


総会議案書にそのまま書ける文案

理事の方が総会資料を作るときに使える文案を置いておきます。数字と出典はすべて本記事で確認済みのものです。

議案:マンション管理計画認定の取得に向けた検討について

本管理組合が所在する吉田町は「町」であるため、マンション管理計画認定制度の認定主体は静岡県となります(マンション管理適正化法に基づく制度。市・特別区は当該市区が、町村部は都道府県が認定を行います)。

静岡県は令和8年4月1日に認定申請手数料を改定しており、公益財団法人マンション管理センターの事前確認適合証がある場合は4,000円、ない場合は28,100円です(長期修繕計画が1つの場合)。

認定を取得した場合の効果として、(1) マンション長寿命化促進税制による固定資産税の減額(築20年以上・10戸以上、2回目以降の長寿命化工事が対象。減額割合は市町村の条例で1/2〜1/6の範囲)、(2) 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資の金利が全期間0.2%引き下げ、(3) 【フラット35】の当初5年間の金利が0.25%引き下げ、といった実利があります。

ついては、令和9年3月31日を期限とするマンション長寿命化促進税制の適用を視野に、認定取得の可否を検討するため、静岡県が実施するマンション管理士の無料派遣(令和8年度・県内受付10件・各組合2回まで・申込期限 令和8年11月14日)への申込みを理事会に一任いただきたく、承認をお願いいたします。

議案:敷地内ブロック塀の点検および撤去補助の申請について

吉田町は、建築基準法に規定する道路沿いに存在する高さ60cm以上の危険なブロック塀等の撤去工事に対し、「撤去工事金額の2/3」と「延長×20,000円/m×2/3」のいずれか少ない額(上限133,000円)を補助しています。

本管理組合の敷地内ブロック塀について、静岡県作成「ブロック塀の点検と改善」に基づく5項目(基礎の根入れ/高さ2m以下/控壁の有無/傾き・ひび割れ/鉄筋の有無)の点検を実施したところ、〇項目が基準を満たしていないことを確認しました。

補助制度は予算に達した時点で受付を終了するとされており、また撤去工事の着手前に申請が必要です。ついては、吉田町都市環境課への事前相談および交付申請を理事会において進めることの承認をお願いいたします。

説明用の一文:なぜ周期的な大規模修繕が必要か

吉田町耐震改修促進計画(令和8年度〜令和12年度)は、「建築基準法は最低限の基準であり、大地震に対して『倒壊しない』が、『損傷は許容する』ものであるため、被災後の継続使用を担保するものではない」と明記しています。

また同計画は、令和8年度から対象建築物の区分に「経年劣化が進んだ建築物」を新たに加え、「新築時は耐震性能が確保されていても、時間の経過とともに、ひび割れや変形、老朽化などの経年劣化による耐震性能の低下が懸念される」として、定期的な調査と適切なメンテナンスの必要性を示しています。

加えて同計画によれば、吉田町第4次地震被害想定における建設型応急仮設住宅の必要戸数は約490戸に対し、建設可能戸数は450戸であり、町自身が「新規建設予定地の確保は至難の業」と記載しています。地震後の避難生活は在宅避難が基本とされており、建物が住み続けられる状態を保つことは、居住者の生活の継続そのものに直結します。

本管理組合が周期的な大規模修繕を計画的に実施することは、資産価値の維持だけでなく、災害後の生活継続の観点からも合理性があると考えます。


よくある質問(FAQ)

Q1. 吉田町のマンションでも、管理計画認定は取れますか。
A. 取れます。ただし申請先は吉田町役場ではなく、静岡県くらし・環境部建築住宅局住まいづくり課(054-221-3084)です。市以外の町村部は都道府県が認定を行うためです。(出典:静岡県 マンションの管理)

Q2. 認定申請の手数料はいくらですか。
A. 令和8年4月1日から、長期修繕計画が1つの場合で、公益財団法人マンション管理センターの事前確認適合証がある場合は4,000円、ない場合は28,100円です。長期修繕計画が2以上ある場合は、それぞれ1,800円/16,200円が計画数に応じて加算されます。認定の更新も同額です。

Q3. 吉田町に、大規模修繕そのものに使える町の補助金はありますか。
A. 令和8年9月2日時点で、共用部分の大規模修繕に直接充てられる町独自の補助金は確認できませんでした。町の補助でマンションの敷地に関係し得るのは、ブロック塀等耐震化促進事業(撤去工事金額の2/3、上限133,000円)です。TOUKAI-0+の各メニューは木造住宅が対象のため、RC造マンションは対象外です。

Q4. マンション長寿命化促進税制で、吉田町の減額割合は何分の1ですか。
A. 国の制度は「1/2〜1/6の範囲内」と定めており、実際の割合は市町村の条例で決まります。吉田町のホームページには令和8年9月2日時点で該当ページが確認できませんでした。吉田町役場税務課資産税部門(0548-33-2108)へお問い合わせください。

Q5. 築15年で1回目の大規模修繕を控えています。長寿命化促進税制は使えますか。
A. この税制は「築20年以上かつ10戸以上」で、かつ「長寿命化工事を過去に1度以上実施していて、令和5年4月1日〜令和9年3月31日の間に2回目以降の長寿命化工事を完了していること」が要件です。1回目の工事では要件を満たしません。ただし、今回の工事を外壁塗装等・床防水・屋根防水の3工事を含む形で実施しておくと、次回(2回目)に要件を満たしやすくなります。工事の記録と証明書類は保管してください。

Q6. 都市計画税も減額されますか。
A. 減額されません。吉田町は耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修のいずれについても「都市計画税は減額されません」と明記しています。吉田町の都市計画税率は0.15%です。

Q7. 大規模修繕でサッシを交換します。省エネ改修の減額は使えますか。
A. 省エネ改修の減額は「窓の改修工事を必ず行うこと」が要件なので、サッシ交換はその中心になります。ただし、平成26年4月1日以前から所在する住宅であること、補助金等を除く自己負担額が60万円超であること、床面積が40㎡以上240㎡以下であること、そして賃貸住宅は除かれることに注意が必要です。共用部分の一括工事について各区分所有者が申告できるかは、事前に税務課資産税部門(0548-33-2108)にご確認ください。

Q8. マンション管理士の無料派遣は本当に無料ですか。
A. 無料です。静岡県の令和8年度マンション組合活動活性化支援事業として、一般社団法人静岡県マンション管理士会に委託されています。受付件数は県内で10件、各管理組合2回まで、申込期限は令和8年11月14日(土)、派遣期限は令和9年1月31日(日)です。定数に達し次第、早期に受付終了となります。

Q9. ロープアクセス工法は、どんなマンションで効果が出ますか。
A. 足場の架設が難しい立地、工期を短縮したい場合、居住者の生活影響を抑えたい場合、部分的な補修が中心の場合に効果が出やすいです。逆に、全面的なタイル張替えなど作業量が多い工事では、足場のほうが合理的なこともあります。だからこそ、部位ごとに使い分けるハイブリッド工法という選択肢があります。技術情報はロープアクセスドットコムをご覧ください。

Q10. 吉田町のマンションは、地震にどのくらい備えるべきですか。
A. 吉田町耐震改修促進計画によれば、南海トラフ巨大地震(マグニチュード9.0程度、発生頻度100〜150年)で全壊・焼失棟数は約2,200棟、死者数は約40人と想定されています。同計画は、建設型応急仮設住宅の必要戸数約490戸に対し建設可能戸数は450戸で「新規建設予定地の確保は至難の業」としており、在宅避難が基本になります。倒壊を防ぐだけでなく、地震後も住み続けられる状態を保つことが重要だと、町自身が計画に書いています。


この記事のポイントまとめ

  • 吉田町は「町」のため、マンション管理計画認定の申請先は静岡県住まいづくり課である
  • 認定申請手数料は令和8年4月1日に改定され、事前確認あり4,000円・なし28,100円になった
  • 修繕積立金の認定基準は、20階未満・延床5,000㎡未満で235円/㎡・月以上と高い水準
  • 町のブロック塀撤去補助は2/3・上限133,000円、延長約10mで上限に達する
  • TOUKAI-0は令和7年度で終了し、令和8年度からTOUKAI-0+に。木造住宅が対象でマンションは対象外
  • 外部補強減災化助成の補助率5分の4は、「居住したまま外部から工事する」思想への行政の評価
  • 町は耐震改修促進計画で「助成制度は財政的な理由等により充足しているとは言えない」と明記
  • 都市計画税率0.15%は制限税率の半分だが、各種減額措置の対象外である点に注意
  • 応急仮設住宅は必要約490戸に対し建設可能450戸。在宅避難を前提とした建物性能が要る
  • 静岡県のマンション管理士無料派遣は県内受付10件・先着。申込期限は令和8年11月14日
  • 町の補助が薄い自治体でこそ、工法選択によるコスト最適化の効果が大きい

出典・参考資料

吉田町(公的一次情報)

静岡県

国土交通省

関係団体

問い合わせ先一覧

窓口 電話 内容
吉田町役場 都市環境課 0548-33-2161 ブロック塀、耐震、都市計画
吉田町役場 税務課(資産税部門) 0548-33-2108 固定資産税・都市計画税の減額申告
吉田町役場 税務課 0548-33-2109 税務全般
静岡県 住まいづくり課 054-221-3084 マンション管理計画認定(町域)
日本マンション管理士会連合会 相談ダイヤル 03-5801-0858 長寿命化税制・認定制度(月〜土 10:00〜17:00)

免責事項:本記事は令和8年(2026年)9月2日時点で公開されている情報に基づいて作成しています。制度の内容・金額・期限・受付状況は変更される場合があります。実際に申請される際は、必ず各窓口の公式情報および担当部署への確認をお願いいたします。本記事の情報に基づく判断について、当社は責任を負いかねます。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円および静岡県内で、ロープアクセス工法・通常足場工法・ハイブリッド工法の3つを建物の条件に応じて提案できる改修会社です。日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板工事など各分野の専門職が加盟しています。

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最終更新:2026年9月2日

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