印西市の賃貸マンション・アパート補助金|オーナー向け2026年版

2026年9月8日 更新

千葉県印西市で賃貸マンション・アパート・賃貸ビルをお持ちのオーナーさま。「印西市の補助金は、自分が住んでいない投資用物件にも使えるのか?」 ——この記事は、その一点にお答えするために書きました。

結論から申し上げます。印西市の補助金は「自ら居住していること」を条件にするものが多く、投資用物件では使えない制度のほうが実は多いのが実態です。ただし例外が2つ、それも金額の大きい例外があります。集合住宅用充電設備(EV充電器)で1基あたり最大100万円、そして危険ブロック塀の除却で上限10万円。前者は所有者名義で申請できる様式が市の公式ページに用意されています。

私は株式会社明誠の本間と申します。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年近くやってきました。今日は印西市の一次情報だけを根拠に、賃貸オーナーの立場で「使える・使えない」を仕分けし、NOI(実質賃料収入)と出口価格にどう効いてくるかまで踏み込んでお話しします。


結論:印西市でオーナーが「使える制度・使えない制度」早見表

まず全体像です。2026年9月8日時点で、印西市の公式サイトに掲載されている住宅関連の補助金を、賃貸オーナー視点で仕分けするとこうなります。

制度名(正式名称) 補助率・上限 賃貸オーナー適合 申請期限(2026年度)
印西市住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金(集合住宅用充電設備) 国の補助金額の1/2または2/3、上限75万円〜100万円×基数 ◎ 所有者名義の様式あり 令和9年2月26日 正午
同(住民の合意形成のための資料作成) 上限15万円 ◎ 所有者名義の様式あり 令和9年2月26日 正午
印西市危険ブロック塀等除却費補助金 1/2・上限10万円 ○ 個人所有のみ(法人は対象外) 令和8年12月28日
同(窓の断熱改修) 1/4・上限8万円(個人)/8万円×戸数(管理組合) △ 適用可否は環境保全課に要確認 令和9年2月26日 正午
印西市木造住宅耐震改修促進事業補助金 診断2/3・上限6.6万円/改修4/5・上限100万円 ✕ 自己居住要件+令和8年度受付終了 受付終了
印西市空き家リフォーム工事補助金 1/10・上限20万円(+加算最大10万円) ✕ 自ら居住するための取得が要件 令和8年11月30日

(出典:印西市 住宅に関する補助、印西市住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金、印西市危険ブロック塀等除却費補助金、印西市木造住宅耐震改修促進事業補助金、印西市空き家リフォーム工事補助金)

この表を見て「なんだ、使えるものが少ないじゃないか」と思われたかもしれません。私も正直に申し上げますが、印西市は住宅系の補助メニューが特別に手厚い自治体ではありません。

ただし、EV充電設備の1基100万円は他市と比べて相当に強い数字です。 千葉ニュータウンを抱え、戸建・集合住宅ともに駐車場付きの物件が多い印西市で、この制度を知らずに放置しているオーナーさまは、率直に言ってもったいない。ここを記事の主軸に据えます。


主軸:集合住宅用充電設備で1基あたり最大100万円

賃貸オーナーが「所有者」として直接申請できる

印西市住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金には、集合住宅用充電設備という区分があります。そして市の公式ページには、チェックシートが3種類用意されています。

  • 集合住宅用充電設備(申請者が所有者の場合)
  • 集合住宅用充電設備(申請者が管理組合の場合)
  • 集合住宅用充電設備(リースで導入の場合)

ここが極めて重要です。「申請者が所有者の場合」という様式が独立して存在するということは、分譲マンションの管理組合だけでなく、建物を一棟所有する賃貸オーナーが自分の名義で申請する経路が制度上想定されているということです(出典:印西市住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金)。

私はいつもオーナーさまに「補助金は、様式の名前を見ると本音がわかります」とお伝えしています。要綱の文言だけ読んでも判断がつかないとき、申請様式が誰向けに用意されているかを見るのが一番早い。印西市のこの制度は、所有者単独申請のルートがはっきり用意されています。

補助金額の構造:国の補助金の「上乗せ」型

金額の決まり方は、国の補助金を基準にした上乗せ方式です。

ケース 補助金額 上限
国補助あり・住民のみ利用可能 補助対象経費に係る国の補助金額の1/2 75万円×基数
国補助なし・住民のみ利用可能 国の補助金額を基準として市が定める額の1/2 75万円×基数
住民以外も利用可能 補助対象経費に係る国の補助金額の2/3 100万円×基数

(出典:印西市住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金)

注目していただきたいのは、「住民以外も利用可能」にすると補助率が1/2から2/3に、上限が75万円から100万円に跳ね上がるという設計です。

賃貸物件で「住民以外も利用可能」にするというのは、実務的には外来者に開放した課金型の充電器を設置するということです。これはオーナーにとって二重の意味があります。第一に補助金が25万円/基分厚くなる。第二に、充電課金という賃料以外の収益源が物件に乗る。

もちろん、外部の車が敷地に入ることによる管理負担や、既存入居者からの反発というデメリットもあります。私は「必ず開放型にすべきです」とは申しません。駐車場の配置上、来客用区画が独立している物件なら開放型を検討する価値が高い、という程度の言い方が正確でしょう。

国の充電インフラ補助金とセットで考える

印西市の補助は「国の補助金額」を基準にしているため、まず国の制度を押さえる必要があります。対象機器の確認先として市が案内しているのは一般社団法人 次世代自動車振興センター(NeV)です。

NeVが執行するクリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てん設備等導入促進補助金は、集合住宅も対象で、機器費は原則1/2、工事費は定額補助という構造です。年度によって条件が変わりますので、設置口数の上限や補助単価は必ず次世代自動車振興センターの公式ページで最新の公募要領をご確認ください。ここは私が数字を断定してはいけない部分です。

イメージとしては、国の補助で機器費の半分+工事費、その残りの自己負担分に市が最大100万円/基を重ねるという二階建てです。物件によっては、実質負担がかなり圧縮されます。

「合意形成のための資料作成」で別枠15万円

見落とされがちですが、同じ制度に「集合住宅用充電設備の導入に係る住民の合意形成のための資料作成」上限15万円という枠があります。しかもこちらにも「申請者が所有者の場合」のチェックシートがあります。

賃貸物件の場合、区分所有マンションのような総会決議は不要です。ただし、既存入居者への説明資料(駐車区画の変更、電気料金の扱い、工事期間中の動線)は実務上どうしても必要になります。その資料作成費が15万円まで見てもらえるのであれば、使わない手はありません。

申請スケジュール(2026年度)

項目 内容
工事着手・完了の対象期間 令和8年4月1日〜令和9年2月26日
申請受付期間 令和8年5月11日(月)〜令和9年2月26日(金)正午
受付方法 印西市役所2階 環境保全課 政策推進係窓口 持参または郵送
受付順 先着順。予算上限に達し次第終了
注意 申請後に市税等の納付状況を確認。未納があると納付後の受付

(出典:印西市住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金)

「令和9年2月26日まであるなら、まだ半年ある」——そう思われたなら、少し待ってください。先着順で予算上限に達し次第終了です。市のページには「申請期間内であっても、予算に達した時点で申請受付を終了します。電話で予算残額をご確認の上、申請を行ってください」と明記されています。

私の経験上、EV充電設備の補助は年度後半に駆け込みが集中します。今が9月です。動くなら今月中に環境保全課(0476-33-4491)へ予算残額を確認する電話を1本入れる。 これだけで判断が早まります。


危険ブロック塀等除却費補助金:個人オーナーなら上限10万円

「法人所有は対象外」という一行を見逃さない

印西市危険ブロック塀等除却費補助金は、除却工事費の1/2、上限10万円です。平成31年度から続く制度で、2026年4月16日に最新の案内が更新されています。

そして交付対象者の規定がこうなっています。危険ブロック塀等を所有する方で、次に一つでも該当する方は除外——

  • 市町村税を滞納している
  • 自ら除却する
  • 売買を目的としている
  • 法人またはその他団体が所有している
  • 以前にこの補助金を受けている

(出典:印西市危険ブロック塀等除却費補助金)

ここで押さえるべきポイントは2つあります。

第一に、「自ら居住していること」という要件がありません。 つまり、個人名義で所有する賃貸アパート・賃貸マンションの敷地にあるブロック塀は、オーナーが住んでいなくても対象になり得るということです。これは印西市の他の住宅補助(耐震改修・空き家リフォーム)が軒並み自己居住要件を課しているのと対照的です。

第二に、法人所有は明確に対象外です。 資産管理法人に物件を移されているオーナーさまは、この制度は使えません。個人名義で保有している物件だけが対象になります。私はこの「個人か法人か」で明暗が分かれる制度を何度も見てきました。法人化の判断をされる際、こうした細かい補助制度の適格性まで検討材料に入れているオーナーさまは、正直かなり少ないと感じています。

また「売買を目的としている」場合も除外されます。出口(売却)直前に塀を直して補助金を取る、という使い方はできないとお考えください。保有継続中に手を打つ制度です。

対象になる塀の条件

対象は、市が示す「ブロック塀の点検のチェックポイント」にひとつでも不適合があり、かつ建築基準法第42条に規定する道路に面したブロック塀等です。コンクリートブロック造・石造・れんが造その他の組積造による塀、門柱、基礎を含みます。部分的な撤去で不適合を解消する場合も対象です。

なお市のページには「市ではブロック塀等の安全について判断は行いません」と明記され、一般社団法人 千葉県建築士会(043-202-2100)や公益社団法人 千葉県建築士事務所協会(043-224-1640)への相談が案内されています。相談は無料、調査は有料です。

スケジュールと、絶対に外せない順番

手続き 期限
事前相談(工事契約前に必須) 早いほどよい
交付申請書の受付期限 令和8年12月28日(月)
除却工事完了・実績報告 令和9年2月26日(金)

(出典:印西市危険ブロック塀等除却費補助金)

「工事契約後では、補助金の申請はできません」——市のページにはっきり書かれています。ここが最大の落とし穴です。

私が一番悔しい思いをするのは、この順番を間違えたケースです。以前、別の自治体で、外構業者と先に契約を済ませてしまったオーナーさまがいらっしゃいました。工事は良い出来でした。ただ、契約日が交付決定より前だったというだけで補助はゼロ。金額は10万円前後でしたが、「知っていれば」という後悔の質が違うんです。工事の見積もりを取る段階で、市役所開発建築課住宅係(0476-33-4657)に一本電話を入れる。それだけで済む話でした。

施工業者に市内・市外の制限はありません。ここは印西市の良心的なところです。


印西市では「使えない」制度を、先に潰しておく

補助金記事は「使える」情報ばかり並べがちですが、オーナーさまの時間を守るためには使えないものを早く諦めていただくほうが価値があります。

木造住宅耐震改修促進事業補助金:二重に対象外

金額だけ見れば魅力的です。耐震診断が補助率2/3・上限6.6万円、耐震改修工事が補助率4/5・上限100万円、建替え工事も4/5・上限100万円。

しかし補助対象住宅の条件に、こうあります。

自己の居住の用に供する一戸建ての専用住宅または兼用住宅(居住の用に供する部分の床面積が当該住宅の延べ面積の2分の1以上であるものに限る。)

さらに補助対象者の条件に「補助対象住宅に現に居住し、引き続き居住する者」。投資用の戸建賃貸・アパートは制度上そもそも対象外です。

加えて、市のページには「令和8年度木造住宅耐震改修促進事業の受付は終了しました」の告知が掲示されています(2026年6月15日更新時点)。仮に自己居住の物件をお持ちでも、今年度分はもう間に合いません(出典:印西市木造住宅耐震改修促進事業補助金)。

来年度に自己居住物件の耐震改修をお考えなら、年度当初(4〜5月)に動くのが鉄則です。上限100万円の制度が数か月で埋まるということは、それだけ需要があるということですから。

空き家リフォーム工事補助金:「自ら居住するために取得」が壁

補助対象経費の1/10・上限20万円、親世帯近居で+5万円、子育て世帯で+5万円。フラット35地域連携型で当初5年間の借入金利が年0.5%引き下げになる特典も付きます。

ただし補助対象者の第一条件が「自ら居住するために補助対象住宅を新たに取得し、当該補助対象住宅に係る売買契約を締結した日から2年以内に補助対象工事を行う方」。賃貸に出す目的での取得は対象になりません(出典:印西市空き家リフォーム工事補助金)。

なお、施工業者は市内に本店を有する法人または市内の個人事業者に限られ、補助対象経費の総額が20万円以上であることも条件です。申請期限は令和8年11月30日(月)、実績報告は令和9年2月26日(金)まで。

「印西市に中古物件を買って、自分が住みながら一部を賃貸に回す」といった使い方であれば検討の余地はありますが、純粋な投資物件には届きません。

窓の断熱改修(市):適用可否はグレー、必ず事前確認を

同じ脱炭素化促進事業補助金の中に、窓の断熱改修があります。補助対象経費の1/4で、個人の場合は上限8万円、集合住宅の管理組合の場合は上限8万円×戸数。条件は「既存の戸建て・集合住宅において、一室単位で外気に接する窓を全て改修する場合のみ対象」です。

市の公開ページには、この区分について自己居住要件が明示されていません。チェックシートも「個人」「管理組合」「リース」の3種類で、賃貸物件の所有者がどう扱われるかは公開情報だけでは断定できません。

ですので私は、「使えます」とも「使えません」とも申し上げません。 環境保全課政策推進係(0476-33-4491)に、物件が賃貸である旨を明確に伝えたうえで確認してください。この一手間を惜しんで申請書を作り込むと、書類ごと返却される可能性があります。市のページには「例年申請書類の不備が多く見受けられます」という注意書きまであるくらいです。


市で足りない分は、国の制度で埋める

印西市の制度だけでは、賃貸物件の大規模修繕本体(外壁・防水・シーリング)に効く補助はほぼありません。ここは国の住宅省エネ2026キャンペーンで補います。

賃貸集合給湯省エネ2026事業:オーナー専用の国制度

賃貸オーナーにとって、国の制度で最も素直に使えるのがこれです。既存賃貸集合住宅の給湯器を省エネ型(エコジョーズ・エコフィール)に交換する工事を対象とした、文字通り賃貸専用の補助制度です。

項目 内容
正式名称 賃貸集合給湯省エネ2026事業(令和7年度補正予算「既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業」)
対象 既存賃貸集合住宅のオーナー等
対象機器 エコジョーズ、エコフィール
タイプ リフォーム工事タイプ/リース利用タイプ
予算消化率 40%(2026年9月6日午前0時時点)
申請主体 オーナーではなく「賃貸集合給湯省エネ事業者」が申請

(出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業 公式サイト、資源エネルギー庁)

ここで実務上の注意を1つ。オーナーが直接申請することはできません。 事務局に登録された「賃貸集合給湯省エネ事業者」(施工業者またはリース事業者)が申請し、補助金をオーナーに還元する仕組みです。登録のない事業者と契約すると補助対象になりません。

つまり、給湯器交換の見積もりを取る際に聞くべき質問はただ一つ。「御社は賃貸集合給湯省エネ2026事業の登録事業者ですか?」 これだけです。公式サイトに事業者検索があります。

なお、国内に所有または管理する既存賃貸集合住宅の住戸数が200戸以上の事業者であれば、工事発注者自身が手続きを行うことを希望できる問い合わせ窓口も用意されています。複数棟を運用される規模のオーナーさまは検討の余地があります。

予算消化率40%という数字は、9月上旬としては「まだ余裕があるが、油断はできない」水準です。2025年度は最終的に61%止まりでしたが、年度によって動きは変わります。

先進的窓リノベ2026事業:予算1,125億円、消化率21%

窓・ドアの断熱改修に特化した環境省の事業で、内窓設置・ガラス交換・外窓交換(カバー工法/はつり工法)・ドア交換が対象。予算消化率は21%(2026年9月7日午前0時時点)と、まだ大きく残っています(出典:先進的窓リノベ2026事業 公式サイト)。

こちらもオーナー直接申請は不可で、登録された「窓リノベ事業者」が申請します。

賃貸物件で窓の断熱を上げる意味を、私は入居者目線ではなく賃料目線で説明するようにしています。築25年のアパートで、冬場の結露とカビのクレームが毎年出る部屋がある。原状回復のたびにクロスを張り替える。それでも内見時の印象が悪く、賃料を下げないと決まらない。——このループを断ち切るのが内窓です。工事は1部屋あたり半日〜1日、退去時のタイミングなら入居者に負担もかかりません。

みらいエコ住宅2026事業(リフォーム):消化率5%

躯体(床・壁・天井)の断熱改修を含む幅広いリフォームが対象で、リフォーム枠の予算消化率は5%(2026年9月7日午前0時時点)とほとんど手つかずです(出典:みらいエコ住宅2026事業 公式サイト)。

原則として平成28年12月31日以前に新築された住宅が対象で、1つの交付申請で申請する補助額合計が5万円以上である必要があります。同事業には「賃貸住宅の新築」という独立した申請区分もあり、新築の賃貸物件を計画中のオーナーさまはそちらも確認する価値があります。

3制度の使い分け早見表

制度 主な対象工事 消化率(2026年9月上旬) 賃貸オーナー適合
賃貸集合給湯省エネ2026事業 給湯器(エコジョーズ・エコフィール) 40% ◎ 賃貸専用
先進的窓リノベ2026事業 窓・ドアの断熱改修 21% ○
みらいエコ住宅2026事業(リフォーム) 躯体断熱を含む幅広いリフォーム 5% ○(築年要件あり)

これらは併用ルールが複雑です。同一工事に複数の国庫補助を重ねることは原則できませんが、工事の種類ごとに使い分けることは可能です。詳細は各事業の公式サイトと、登録事業者への確認が必要です。


数字の話:補助金はNOIと出口価格にどう効くか

ここからが本題です。補助金の額そのものより、それが物件の収益力と売却価格にどう跳ね返るかが経営判断の核心です。

入居率1%の重み

印西市の賃貸マーケットを、20戸・平均賃料7.5万円のファミリー向け賃貸マンションで考えてみます。

項目 数値
総戸数 20戸
平均賃料 7.5万円/月
満室想定年間賃料 1,800万円
入居率1%分の年間賃料 18万円

つまり、入居率が1%違うだけで年間18万円のキャッシュフロー差が出ます。EV充電設備の補助が1基100万円だとすれば、これは入居率5.6%分に相当する金額です。

そして印西市という立地を考えてください。千葉ニュータウン中央・印西牧の原・印旛日本医大といった北総線沿線は、戸建・集合住宅ともに駐車場付きが当たり前のエリアです。2026年6月末時点で人口112,772人・47,300世帯(出典:印西市の人口と世帯数)、都心通勤層とデータセンター等の就業者が混在する。車保有率が高く、EVへの買い替え検討層が一定数いるマーケットです。

この立地で「EV充電器あり」と募集図面に書けることの意味は、都心のワンルームとはまったく違います。私は「設備投資はエリア特性と噛み合ったときだけ賃料に乗る」といつも申し上げています。印西市のEV充電器は、噛み合う側です。

出口価格への効き方

収益還元法では、物件価格 = NOI ÷ キャップレート で概算されます。印西市の築古一棟物件でキャップレート6.0%と仮定しましょう。

ケース 年間NOI改善額 収益還元価格への影響(キャップレート6.0%)
EV充電課金収入 月1万円 12万円 +200万円
入居率1%改善 18万円 +300万円
給湯器更新による原状回復費・修繕費の平準化 10万円 +167万円

年間12万円の充電課金収入が、出口では200万円の価格差になる。 これが収益還元の怖さであり、面白さです。補助金100万円を使って設置した設備が、賃料に乗らなくても課金収入だけで200万円の資産価値を生む可能性がある——この計算をせずに「EV充電器は流行りものだから」と判断してしまうのは、あまりに惜しい。

もちろん、これは仮定を置いた試算です。実際のキャップレートは物件の築年・立地・構造で大きく変わりますし、充電課金の稼働率も読み切れません。「必ずこうなる」という話ではないことは、正直に申し上げておきます。


税務:補助金は「もらって終わり」ではない

私は税理士ではありませんので、ここは一般的な取り扱いの整理として読んでください。実際の申告は必ず顧問税理士にご相談ください。

補助金は雑収入として課税される

補助金を受け取ると、原則として不動産所得(または法人所得)の雑収入として計上され、課税対象になります。 100万円の補助金をもらっても、手元に丸々100万円残るわけではありません。

一定の要件を満たす国庫補助金等については圧縮記帳という制度があり、課税の繰り延べが可能な場合があります。ただし適用要件は細かく、自治体の補助金が該当するかどうかはケースバイケースです。ここは必ず専門家にご確認ください。

資本的支出か、修繕費か

オーナーにとって、補助金の額より影響が大きいのがこちらです。

区分 内容 税務上の扱い
修繕費 原状回復・維持管理のための支出 その年の経費に全額算入
資本的支出 価値を高める・耐用年数を延ばす支出 資産計上し、耐用年数にわたり減価償却

具体的な線引きの目安を、私の現場感覚で申し上げます。

  • 外壁塗装で同等グレードの塗料に塗り替える → 修繕費として扱われることが多い
  • 外壁塗装で明らかに高耐久な塗料(フッ素・無機など)にグレードアップ → 資本的支出と判断される可能性
  • 給湯器を同等品に交換 → 修繕費寄り
  • 給湯器を高効率型に更新し、機能が向上 → 資本的支出寄り
  • EV充電設備の新設 → 新たな設備の取得なので資本的支出

キャッシュフローを重視するなら修繕費で落としたい。しかし建物の性能を上げて賃料を維持したいなら資本的支出になる工事を選ばざるを得ない。この二律背反を、単年度ではなく5年10年のスパンで設計するのが、修繕計画の本当の役割です。

私は工事の見積書を作る際、「この項目は修繕費として説明しやすい」「これは明確に資本的支出です」という色分けをオーナーさまにお渡しするようにしています。税理士さんに丸投げすると、工事の実態がわからないまま保守的に資産計上されてしまうことがあるからです。


大規模修繕とセットで考える:足場代をどう圧縮するか

補助金の話をここまでしてきましたが、賃貸物件の支出で最も大きいのは大規模修繕そのものです。そして大規模修繕費の中で、1円も建物の性能を上げないのに20〜25%を占めるのが仮設足場です。

足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3択

私が代表を務める株式会社明誠は、通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3つを、建物ごとに使い分けて提案できる日本でも数少ない会社です。

工法 特徴 向いている物件
通常足場工法 全面に仮設足場を架設。作業範囲が広く、全面改修に適する 中低層、複雑形状、全面的な改修
ロープアクセス工法(無足場工法) 産業用ロープで作業。足場費が不要、工期短縮、入居者の生活影響が最小 高層、足場架設が困難、部分補修、コスト最重視
ハイブリッド工法 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分け 大規模・複雑物件で総合コスト最適化が必要なケース

ロープアクセス工法(産業用ロープで壁面を昇降しながら施工する無足場工法)の技術情報や安全基準については、姉妹サイトロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。

賃貸オーナーにとってのロープアクセスの価値は「足場代」だけではない

コスト削減はもちろん大きいのですが、賃貸物件の場合、私はもう一つの価値のほうを強調します。それは「入居者が退去しないこと」です。

足場を組むと、こうなります。

  • 全戸のバルコニーが数か月使えない
  • 窓に養生シートがかかり、日照と眺望が落ちる
  • 防犯上の不安から、上層階の入居者からクレームが出る
  • 工事期間中の内見で「今、足場がかかってまして」と説明することになり、成約率が落ちる

20戸の物件で、大規模修繕をきっかけに2戸が退去したとします。空室期間3か月・賃料7.5万円なら、それだけで45万円の減収。さらに原状回復費と募集広告費が乗ります。この「工事起因の退去コスト」は、見積書のどこにも書かれていません。

ロープアクセスなら足場を組まないため、バルコニーは通常どおり使え、窓も塞がれません。工期も足場の架設・解体分(往復で2〜3週間程度)が丸ごと不要になります。私はこれを、「見積書に出てこない、けれど確実に効く差」とお伝えしています。

大規模修繕全体の考え方は大規模修繕工事のご紹介、無足場での施工についてはロープアクセス工法のご紹介をご覧ください。

明誠のもう一つの顔:フランチャイズと業界支援

株式会社明誠は、ロープアクセス工事としては日本で初めてとなるフランチャイズ展開を行っています。塗装・防水・タイル・電気・看板工事など各分野の専門職が加盟しており、中間マージンを抑えた高品質・低価格の施工体制を全国で構築しています。

また、一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)を運営し、全国の建設業者向けに経営支援情報の発信、オンラインセミナー、リアル交流会、ビジネスマッチングを行っています。私が「この工法はこの建物には向きません」と正直に申し上げられるのは、業界全体を見る立場にもいるからだと思っています。


印西市オーナーの2026年度・残り半年のスケジュール

今日は9月8日です。年度末までの動きを逆算します。

時期 やること
2026年9月中 環境保全課(0476-33-4491)にEV充電設備補助の予算残額を電話確認。開発建築課住宅係(0476-33-4657)にブロック塀補助の残額確認
2026年9〜10月 現地調査。ブロック塀の点検(千葉県建築士会等)、駐車場の電気容量調査。国の登録事業者を選定
2026年10〜11月 交付申請(契約前に必ず)。ブロック塀は12月28日が申請期限
2026年11月〜2027年1月 交付決定後に契約・着工
2027年2月26日 実績報告・申請の最終期限(EV充電設備は正午まで)

このスケジュールで一番危ういのは、「交付決定前に契約してしまう」という事故です。ブロック塀補助も脱炭素化促進事業補助金も、対象期間や事前手続きの条件が明記されています。工事業者から「今なら安くできます、今日中に契約を」と言われても、市への確認が終わるまでは判子を押さない。 これだけは守ってください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 印西市の補助金で、賃貸マンションのオーナーが自分名義で申請できるものはありますか?
A. あります。印西市住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金の「集合住宅用充電設備」には「申請者が所有者の場合」のチェックシートが用意されており、上限は75万円〜100万円×基数です。また危険ブロック塀等除却費補助金は自己居住要件がなく、個人所有であれば投資用物件でも対象になり得ます(出典:印西市)。

Q2. 資産管理法人で物件を持っています。ブロック塀の補助は使えますか?
A. 使えません。交付対象者から「法人またはその他団体が所有している」場合が明確に除外されています。個人名義の物件のみが対象です(出典:印西市危険ブロック塀等除却費補助金)。

Q3. 印西市の木造住宅耐震改修補助を、木造アパートに使えますか?
A. 使えません。「自己の居住の用に供する一戸建ての専用住宅または兼用住宅」が対象で、賃貸用の共同住宅は対象外です。加えて令和8年度分は受付が終了しています(出典:印西市木造住宅耐震改修促進事業補助金)。

Q4. 賃貸物件の給湯器交換に使える補助金はありますか?
A. 国の賃貸集合給湯省エネ2026事業があります。エコジョーズ・エコフィールへの交換が対象で、2026年9月6日時点の予算消化率は40%です。オーナー直接申請はできず、登録された「賃貸集合給湯省エネ事業者」経由での申請になります(出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業)。

Q5. EV充電器を入居者以外にも開放すると、補助金は増えますか?
A. 増えます。印西市の制度では、住民のみ利用可の場合が国補助額の1/2・上限75万円×基数、住民以外も利用可能な場合は国補助額の2/3・上限100万円×基数となります。ただし外来者の出入りによる管理負担は別途検討が必要です(出典:印西市住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金)。

Q6. 補助金をもらうと税金はどうなりますか?
A. 原則として雑収入として計上され、課税対象になります。一定の国庫補助金等については圧縮記帳による課税の繰り延べが可能な場合がありますが、適用要件は個別判断です。工事費の側も、修繕費か資本的支出かで単年度の損益が変わりますので、必ず顧問税理士にご確認ください。私は税理士ではありませんので、ここは一般的な取り扱いの説明にとどめます。

Q7. 大規模修繕で足場を組むと、入居者は退去してしまいますか?
A. 必ず退去するわけではありませんが、バルコニーが使えない・窓が塞がれる・防犯不安といった要因で解約が増える傾向はあります。20戸で2戸が退去し空室期間3か月なら45万円の減収です。ロープアクセス工法(無足場工法)なら足場を組まないため、この影響を大きく抑えられます(ロープアクセスドットコム)。


この記事のポイントまとめ

  • 印西市の集合住宅用充電設備補助は所有者名義で申請可、上限100万円×基数
  • 住民以外にも開放すると補助率が1/2→2/3、上限が75万→100万円に上がる
  • 合意形成資料の作成費にも別枠で上限15万円が用意されている
  • 危険ブロック塀除却は1/2・上限10万円、居住要件なし。ただし法人所有は対象外
  • ブロック塀補助の申請期限は令和8年12月28日、契約前の事前相談が必須
  • 木造住宅耐震改修と空き家リフォームは自己居住要件があり投資用は対象外
  • 国の賃貸集合給湯省エネ2026事業は賃貸専用、消化率40%(9/6時点)
  • 先進的窓リノベ2026は消化率21%、みらいエコ住宅2026リフォームは5%と余力あり
  • 補助金は雑収入として課税、工事費は修繕費か資本的支出かで損益が変わる
  • 20戸・平均7.5万円なら入居率1%=年18万円、キャップレート6%で出口300万円差
  • 足場を組まないロープアクセス工法は、足場代だけでなく工事起因の退去も抑える

執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション・ビル・ホテルの大規模修繕/ロープアクセス工法(無足場工法)/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円で通常足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3工法を建物特性に応じて提案できる改修会社。ロープアクセス工事としては日本初のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板の各専門職が加盟することで、高品質と低価格を両立しています。

印西市で賃貸マンション・アパート・賃貸ビルをお持ちのオーナーさま。1棟の現地調査と、修繕費・補助金を織り込んだ利回り改善シミュレーションだけでも承ります。「今すぐ工事を」という話ではありません。まずはお手元の物件で、いくら取り戻せる可能性があるのかを一緒に確認させてください。お問合せフォームからお気軽にどうぞ。

(本記事は2026年9月8日時点で公開されている一次情報に基づいて作成しています。補助制度は年度途中でも予算上限到達により受付が終了する場合があり、要件も変更されることがあります。申請前に必ず各制度の公式ページおよび担当窓口でご確認ください。また税務の取り扱いについては顧問税理士にご相談ください。)


出典・参考資料

四街道市の賃貸マンション・アパート補助金|オーナー向け2026年版

最終更新:2026年9月5日

千葉県四街道市に賃貸マンション、アパート、戸建賃貸をお持ちのオーナーさまから、この夏よくいただいた質問があります。

「四街道市の補助金、自分の投資用物件でも使えるんですか?」

結論から申し上げます。四街道市の住宅系補助金の多くは「自分が住んでいる住宅」が要件で、投資用物件には原則使えません。ただし、オーナーが直接使える制度が2本、はっきり残っています。しかも片方は、2026年10月30日という現実的な締切が目の前に来ています。

この記事では、四街道市の賃貸物件オーナーが「実際に取りに行ける補助金」だけを、市の一次情報にあたって整理しました。使えない制度は「使えない」と明記します。そのうえで、市で足りない分を国の制度でどう埋めるか、そして受給した補助金がNOI(実質賃料収入)と出口価格にどう効いてくるかまで、数字で追いかけます。

私は建設・改修の現場に20年近くおります。補助金の話は、正直に申し上げると「使える・使えない」の線引きが8割です。ここを曖昧にしたまま工事を進めて、着工後に「対象外でした」と分かる。この事故が一番もったいない。だから今日は、線引きから入ります。


1. 結論:四街道市で賃貸オーナーが直接使えるのは、この2本

先に答えを出します。2026年度(令和8年度)時点で、四街道市の制度のうち投資用・賃貸用の物件でオーナー自身が申請できる可能性が高いのは、次の2本です。

制度名 補助率・上限 オーナー適合性 2026年度の受付状況
危険コンクリートブロック塀等安全対策事業補助金 除却1/2+設置1/2、合計上限10万円 ◎ 居住要件なし。「個人所有」が条件 事前調査申請は2026年10月30日まで、交付申請は11月30日まで先着
木造住宅耐震改修工事費補助金 4/5・上限115万円(2026年度から増額) ○ 一戸建て・併用住宅のみ。共同住宅は対象外 2026年11月30日まで予算の範囲で先着
(参考)木造住宅耐震診断費補助金 2/3・上限8万円 ○ 上と同じ建物要件 同上

(出典:四街道市 危険コンクリートブロック塀等安全対策事業補助金制度/四街道市 木造住宅耐震診断費補助制度・木造住宅耐震改修工事費補助制度)

逆に、名前だけ見ると使えそうで、実は投資用物件に使えない制度もあります。

制度名 使えない理由
四街道市住宅リフォーム補助金(10%・上限10万円) 「補助対象住宅を自ら所有し、かつ、現に居住している者」が要件。加えて2026年度は受付終了
四街道市住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金(蓄電池・EV・V2H) 「申請者が居住する住宅に太陽光が設置されている方のみ」等の居住要件あり

(出典:四街道市 住宅リフォーム補助金制度/四街道市 住宅用設備等脱炭素化促進事業補助制度(令和8年度))

ここが四街道市の特徴です。市の制度は「定住促進」の色が濃く、投資用物件には門戸が狭い。だからこそ、使える2本を確実に取りに行き、足りない分は国の制度で埋める。この二段構えが、四街道市の賃貸オーナーにとって現実的な戦略になります。

「取りこぼし額」を先に見ておく

10万円、115万円と聞くと小さく感じるかもしれません。ただ、オーナーの判断材料は「補助額の絶対値」ではなく「持ち出しがいくら減るか」です。

たとえば、ブロック塀の除却+軽量フェンス設置に税抜40万円かかったとします。補助が10万円上限まで出れば、持ち出しは30万円。実質25%オフです。加えて、この工事は修繕費として損金算入できる可能性が高い(後述)。法人実効税率を30%とすれば、税効果を含めた実質負担は21万円前後まで下がる計算になります。

40万円が21万円になる。しかも、道路際の危険物が消える。ここを「面倒だから」で放置している物件が、四街道市内にはまだかなりあります。


2. 【締切が近い】危険コンクリートブロック塀等安全対策事業補助金

四街道市の賃貸オーナーにとって、2026年度に最も「今すぐ動く価値がある」制度がこれです。

制度の中身

四街道市は、地震時に危険なコンクリートブロック塀等による被害を防ぐため、道路等に面した危険なブロック塀を除却する工事等の費用の一部を補助しています。

項目 内容
対象工事A(除却) 危険コンクリートブロック塀等の全部を除却、または高さを概ね60cm以下に減じる工事
対象工事B(設置) 除却後の代替として必要な軽量フェンス等の設置(除却と併せて行う工事に限る)
補助額 A・Bそれぞれ補助対象経費の1/2(千円未満切り捨て)、合計10万円が限度
対象となる塀 ①個人が所有するもの ②道路等に面し、道路面からの高さが1.2mを超えるもの ③事前調査で危険と判定されたもの
除外 建築基準法に明らかに違反しているものは対象外

(出典:四街道市 危険コンクリートブロック塀等安全対策事業補助金制度、2026年5月8日更新)

オーナーにとっての最大のポイント:居住要件がない

この制度の要綱には、「その塀のある土地に自分が住んでいること」という要件が書かれていません。対象者として定められているのは次の5つです。

  1. 道路等に面した危険コンクリートブロック塀等を所有する個人
  2. 土地又は建物の販売を目的として補助対象工事を行わないこと
  3. 市税等を滞納していないこと
  4. 四街道市暴力団排除条例に規定する暴力団員等に該当しないこと
  5. 同一敷地内において、過去にこの告示による補助金を受けていないこと

つまり、四街道市内のアパート敷地や駐車場の境界に危険なブロック塀を持つ個人オーナーは、自分が住んでいなくても対象になり得るということです。

ただし注意点が2つ。

①「個人」が対象。 資産管理法人名義の物件については、この「個人」要件をどう扱うか、建築課(043-421-6144/6147)に事前確認が必要です。法人所有だと対象外になる可能性があります。個人名義と法人名義の物件が混在しているオーナーさまは、まず名義の棚卸しから始めてください。

②「販売目的の工事は不可」。 売却前に物件を整えるための工事は対象外と読めます。出口(売却)の直前ではなく、保有中に手を打つのが正しい使い方です。

2026年度は「今なら残額を先着で取れる」状態

ここが今回いちばんお伝えしたい話です。四街道市の公式ページには、こう書かれています。

期間(令和8年4月6日から5月7日まで)を設けて募集した結果、予算枠を超えなかったため、抽選は行われませんでした。残額については、先着順で受付いたします。

(出典:四街道市 危険コンクリートブロック塀等安全対策事業補助金制度)

つまり、春の募集で予算が埋まらなかったため、いま申し込めば先着で入れる可能性がある。これは毎年そうなるとは限りません。

そして締切は現実的に迫っています。

手続き 期限(2026年度)
事前調査申請書の提出 2026年10月30日(金)
事前調査後の補助金交付申請書 2026年11月30日(月)
実績報告書の提出 補助対象年度の1月末日まで
補助金交付請求書 補助対象年度の2月末日まで

この記事を公開している2026年9月5日から、事前調査申請の締切まで残り約8週間です。しかも事前調査 → 危険判定 → 交付申請 → 交付決定 → 契約 → 着工、という順番を踏む必要があります。

絶対にやってはいけない「先に契約する」

要綱には太字でこう書かれています。「事前契約されますと補助の対象になりません」、そして「施工業者との契約締結は、市の補助金交付決定後に行われることが補助要件です」。

私が現場で一番悔しい思いをするのが、この事故です。「業者に見積を出させて、そのまま発注してしまった」。この瞬間に補助金は消えます。見積は取っていい。契約書に判を押すのは、市の交付決定通知が届いてから。ここだけは順番を絶対に守ってください。

賃貸オーナーがこの制度を使う実務的な意味

「たかがブロック塀」と思われるかもしれません。オーナー視点で見ると、この工事は3つの意味を持ちます。

第一に、賠償リスクの遮断です。 民法717条の工作物責任は、所有者が無過失でも責任を負う構造になっています。道路に面した1.2m超のブロック塀が地震で倒れて通行人が負傷した場合、責任は所有者に向かいます。四街道市が「危険」と判定した塀を放置していた事実は、その判断において不利に働き得ます。この制度は、補助金であると同時に「市が危険を判定してくれる無料の診断機会」でもあります。

第二に、募集時の第一印象です。 内見に来た入居希望者が最初に目にするのは、室内ではなく敷地の外構です。ひび割れて傾いたブロック塀は、それだけで「管理されていない物件」という印象を与えます。軽量フェンスに替えると敷地が明るくなり、防犯面の印象も上がる。募集単価を1,000円上げる交渉より、この印象改善の方が決まりやすいことがあります。

第三に、出口での指摘事項が1つ減ります。 売却時のエンジニアリングレポートや買主側のデューデリジェンスで、既存不適格のブロック塀は必ず指摘されます。指摘は値引き交渉の材料になります。保有中に補助金で処理しておけば、その材料が消える。10万円の補助で、将来の数十万円の値引き交渉を1つ潰せるという見方もできます。


3. 木造戸建賃貸を持つオーナーへ:耐震改修が4/5・上限115万円に増額

四街道市には木造戸建の賃貸物件、いわゆる「戸建賃貸」を運用しているオーナーさまが少なくありません。この層に効くのが耐震補助です。

2026年度からの変更点が大きい

四街道市は2026年度(令和8年度)から、耐震改修工事費補助金の上限を115万円に引き上げました(あわせて補助対象項目から設計費を除外)。

制度 補助率 上限 対象建物
木造住宅耐震診断費補助金 診断費用の2/3 8万円 在来工法・一戸建てまたは併用住宅・地上2階以下・建築確認済証が平成12年5月31日以前に交付
木造住宅耐震改修工事費補助金 補助対象経費の4/5 115万円 上記+診断で「倒壊する可能性がある/高い」と判定され、改修後に「倒壊しない/一応倒壊しない」が見込めること

(出典:四街道市 木造住宅耐震診断費補助制度・木造住宅耐震改修工事費補助制度、2026年5月8日更新)

補助率4/5は、全国の自治体の耐震改修補助と比べてもかなり手厚い水準です。税抜143万円の耐震改修なら、115万円が補助され、持ち出しは28万円という計算になります。

対象者要件が「所有者」で止まっている

耐震改修の補助対象者として要綱が定めているのは、次の2つだけです。

  1. 補助対象住宅を自ら所有している者
  2. 市税等を滞納していない者

住宅リフォーム補助金のような「現に居住している者」「10年以上居住する意思」といった居住要件が、ここには書かれていません。したがって、平成12年5月31日以前に確認済証が交付された木造の戸建賃貸を所有しているオーナーは、対象になり得ます。

ただし建物要件で明確な線が引かれています。「一戸建て住宅又は併用住宅であること」。つまり、木造アパートのような共同住宅は対象外です。ここは誤解しやすいので、はっきり書いておきます。

  • ○ 昭和・平成初期の木造戸建を賃貸として貸している → 対象になり得る
  • ○ 1階が店舗・2階が住居の併用住宅を貸している → 対象になり得る
  • ✕ 木造2階建てのアパート(共同住宅) → 建物要件で対象外
  • ✕ 軽量鉄骨造・RC造 → 在来工法木造ではないため対象外

判断に迷う物件は、建物の登記上の用途と確認済証の交付日を手元に用意して、建築課に照会するのが最短です。

「2000年5月31日」という線の意味

補助対象が「建築確認済証が平成12年5月31日以前」で切られているのは、いわゆる2000年基準(新耐震のさらに強化版)の前後で木造住宅の耐震性能に差があるためです。1981年6月の新耐震基準だけでなく、2000年6月の改正で地耐力に応じた基礎の仕様、柱頭・柱脚の金物、耐力壁のバランス配置が明確化されました。

四街道市で1980〜1990年代に供給された木造戸建は、この線の手前に入るものが多い。「新耐震だから大丈夫」と思っていた物件が、実は2000年基準を満たしていないというケースは、私の経験上かなりあります。診断費用の2/3・上限8万円が出るうちに、まず診断だけでも受けておく価値はあります。

受付は2026年11月30日まで、先着

耐震補助についても市はこう告知しています。「期間(令和8年4月6日から5月7日まで)を設けて募集した結果、予算枠を超えなかったため、抽選は行われませんでした。残額については、先着順で受付いたします」。受付期間は2026年11月30日(月)まで、予算の範囲内で先着順です。

こちらも事前契約は不可。「これらはすべて事前契約されますと補助対象になりません」と明記されています。


4. 「使えない制度」をはっきりさせる — ここで時間を無駄にしない

補助金記事でありがちなのが、制度名を並べるだけで「あなたが使えるか」に触れないパターンです。オーナーの立場では、使えない制度を早く捨てられることの方が価値があると私は思っています。

四街道市住宅リフォーム補助金 — 投資用は対象外、しかも受付終了

外壁塗装や屋根工事の情報サイトでよく紹介される制度ですが、賃貸オーナーは使えません。

要綱の補助対象者は次のとおりです。

  1. 申請時において、1年以上継続して本市に住所があり、かつ、住民基本台帳に記録されている者
  2. 補助対象住宅を自ら所有し、かつ、現に居住している者
  3. 補助対象住宅に10年以上居住する意思を有する者
  4. 市税等を滞納していない者
  5. 以前にこの告示による補助金を受けていない者

(出典:四街道市 住宅リフォーム補助金制度、2026年8月4日更新)

2号と3号で、投資用物件は明確に締め出されています。補助対象住宅の定義も「一戸建て住宅、共同住宅(専有部分のみ)又は併用住宅(自己居住部分のみ)」です。加えて2026年度の受付はすでに終了しており、市は「令和9年度については、内容が決まり次第、掲載いたします」としています。

なお、この制度には「市内に本店を有する施工業者によるリフォーム工事」という要件もあります。自宅を持つオーナーが翌年度に使う場合は、業者選定の段階からこの条件が効いてくる点は覚えておいてください。

住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金 — 窓は「要綱確認」、蓄電池・EVは居住要件で不可

2026年度の四街道市住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金は、予算1,000万円に対し、2026年8月18日時点で申請36件・256万8,000円(消化率およそ26%)と、残枠に余裕がある状態です。受付は2027年1月29日(金)まで、先着順。

対象設備 補助額
家庭用燃料電池システム(エネファーム) 上限10万円
定置用リチウムイオン蓄電システム 上限7万円
窓の断熱改修 補助対象経費の1/4(上限8万円、マンション管理組合の場合は8万円×改修戸数)
電気自動車・PHV V2H併設あり15万円/なし10万円
V2H充放電設備 補助対象経費の1/10(上限25万円)

(出典:四街道市 住宅用設備等脱炭素化促進事業補助制度(令和8年度)、2026年8月18日更新)

このうち蓄電池・電気自動車・PHV・V2Hは、「申請者が居住する住宅に住宅用太陽光発電設備が設置されている方のみ」が明記されており、投資用物件では使えません。

窓の断熱改修については、要件として示されているのは「既築住宅かつ既存窓であること」「窓全体の熱貫流率Uwが1.9以下であること」(2026年度からの追加要件)で、居住要件は明示されていません。ただし「このほか、補助対象設備の要件は、補助金交付要綱を必ず確認してください」とされており、賃貸物件で使えるかは要綱と環境政策課(043-421-6131)への事前確認が必須です。ここは断定しません。「使えるかもしれないから確認する価値がある」という温度感で捉えてください。

なお、この補助は設置後の申請であり、申請する年度内に着工から完了・支払いまでを終える必要があります。年度末ギリギリの工事は間に合いません。また、窓の断熱改修には10年の財産処分制限期間が設定されている点も、売却を検討中のオーナーには関係してきます。


5. 市で足りない分は国で取る:賃貸オーナー専用の国庫補助が2本ある

四街道市の制度が投資用物件に狭いぶん、国の制度で埋めるのが2026年度の現実解です。特に次の2本は、賃貸集合住宅のオーナーを正面から対象にしています。

5-1. 賃貸集合給湯省エネ2026事業(経済産業省・資源エネルギー庁)

正式名称は「既存賃貸集合住宅用小型省エネルギー型給湯器導入促進事業費補助金」。名前のとおり、賃貸集合住宅専用の補助です。

項目 内容
予算 35億円(令和7年度補正予算)
補助対象者 賃貸集合住宅のオーナー等で、給湯器交換工事の発注者(リース利用含む)。賃貸住戸を2戸以上所有する区分所有者も対象
対象建物 1棟に2戸以上の賃貸住戸を有し、建築から1年以上経過(または居住実績がある)建物
補助額(基本額) エコジョーズ/エコフィール:追い焚きなし5万円/台、追い焚きあり7万円/台(1住戸1台まで)
補助額(加算額) ドレン排水関連工事で3万円/台を加算 → 最大10万円/台
交付申請期間 受付開始〜予算上限まで(遅くとも2026年12月31日)。予約は遅くとも2026年11月16日まで
着工期間 2025年11月28日以降

(出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業 事業概要(経済産業省))

2026年9月4日午前0時時点で、予算に対する補助金申請額の割合は39%(出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業 公式サイト)。まだ6割残っていますが、給湯器の交換需要は冬に向けて跳ね上がります。10月〜11月の駆け込みで一気に消化される可能性は見ておくべきです。

数字で考えてみます。四街道市内に20戸の賃貸マンションを持ち、追い焚き機能付き給湯器を20台まとめて交換した場合。

  • 基本額7万円 × 20台 = 140万円
  • ドレン排水工事の加算が全戸で認められれば3万円 × 20台 = 60万円
  • 合計で最大200万円

給湯器交換の工事費が1台20万円だとすると総額400万円。その半分が国から戻る計算です。しかも入居者にとっては「給湯器が新しい」「ガス代が下がる」という実利があり、退去抑止に直結します。

ひとつ実務上の注意です。オーナーが直接申請することはできません。申請手続きは、あらかじめ登録された「賃貸集合給湯省エネ事業者(施工業者またはリース事業者)」が行い、補助金はオーナーに還元される仕組みです。したがって業者選定の段階で「登録事業者かどうか」を必ず確認してください。登録のない事業者と契約すると補助対象になりません。

なお、国内に所有または管理する既存賃貸集合住宅の住戸数が200戸以上の事業者は、事務局に申請して認められれば自ら手続きできる例外もあります。規模のあるオーナー法人は検討の余地があります。

5-2. 先進的窓リノベ2026事業(環境省)

窓の断熱改修に対する、金額規模が最も大きい国庫補助です。

項目 内容
予算 1,125億円(令和7年度補正予算)
補助額 最大100万円/戸
中高層集合住宅(4階建以上)の上限 1棟につき100万円 × 総戸数
下限 1申請あたりの合計補助額が5万円未満は申請不可
申請期限 遅くとも2026年12月31日(予算消化により前倒しの可能性)

(出典:先進的窓リノベ2026事業 事業概要(環境省))

2026年9月4日午前0時時点の予算消化率は21%(出典:先進的窓リノベ2026事業 公式サイト)。給湯器の39%より余裕がありますが、こちらも年末に向けて加速します。

窓の断熱改修は、オーナーにとって「入居者の光熱費を下げつつ、賃料を維持する」という珍しい種類の投資です。同じ築年数の競合物件と比べて、内窓が入っているだけで内見時の説明材料が1つ増える。特に四街道市のように新築戸建の供給が続き、賃貸が新築と比較されやすいエリアでは、この差は効いてきます。

こちらも申請は登録事業者(窓リノベ事業者)経由です。オーナーの直接申請はできません。

市と国、どちらを先に動かすか

四街道市の制度と国の制度は、併用の可否が制度ごとに異なります。一般論として、同一の工事に対して国と市の補助を二重取りすることはできません。四街道市の住宅リフォーム補助金には「本市で実施している他の補助金又は助成金の制度がない工事」という要件が明記されているとおりです。

私が提案するのは、工事の部位ごとに補助金を割り当てる組み方です。

  • 給湯器 → 国(賃貸集合給湯省エネ2026)
  • 窓・ドア → 国(先進的窓リノベ2026)
  • ブロック塀 → 市(危険コンクリートブロック塀等安全対策)
  • 木造戸建賃貸の構造補強 → 市(木造住宅耐震改修)
  • 外壁・屋上防水・シーリング → 補助対象外。自己資金または借入で計画的に

こう整理すると、補助対象外の外壁・防水こそが、オーナーの持ち出しが最も大きい領域だと分かります。ここをどう圧縮するかが、次の話です。


6. 補助対象外の外壁・防水を、足場を組まずに直すという選択肢

四街道市の物件で、オーナーの持ち出しが最も大きくなるのは外壁塗装と屋上・バルコニー防水です。ここに補助金はほぼ効きません。だからこそ、工法選択がそのままキャッシュフローに跳ね返ります。

私が20年やってきて確信しているのは、大規模修繕の総費用のうち、仮設足場が占める割合は決して小さくないという事実です。物件形状や高さによりますが、外壁改修工事において足場の仮設・解体費が全体の2〜3割に及ぶケースは珍しくありません。しかも足場は、建物を1ミリも良くしない費用です。

ロープアクセス工法(無足場工法)という選択

株式会社明誠は、大規模修繕を3つの工法からご提案しています。

工法 内容 向いている物件
通常足場工法 従来型の仮設足場を架設して施工 中低層、形状が複雑、全面的な改修
ロープアクセス工法(無足場工法) 産業用ロープで作業員が懸垂降下し、足場を組まずに施工 高層、足場架設が困難、部分補修、コスト最重視
ハイブリッド工法 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分け 大規模・複雑な物件で総合コストを最適化したいケース

賃貸オーナーにとって、ロープアクセス工法の価値はコストだけではありません。

入居者の生活影響が桁違いに小さいことが、実務上はむしろ効きます。足場を架設すると、外壁全面が数か月にわたって養生シートで覆われます。バルコニーは使えず、窓は開けられず、日照は落ちる。そして何より、足場は防犯上の侵入経路になります。この間に「工事がうるさいから」「洗濯物が干せないから」という理由で退去が出ると、原状回復費と募集費用と空室損失が同時に発生します。

入居率1%の差が、20戸・平均賃料7万円の物件で年間およそ8.4万円のキャッシュフロー差になります。工事を機に2戸が退去し、それぞれ2か月空室になれば、それだけで28万円が消える。足場代の削減額より、退去による損失の方が大きくなることは十分あり得ます。

ロープアクセスは、必要な部位に、必要な期間だけ人が降りてくる工法です。バルコニーは基本的に使えます。工期も短い。「入居者に気づかれにくい大規模修繕」が成立します。

ロープアクセス工法の技術情報・安全基準・施工事例は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。工法の適合判断でお悩みのオーナーさまは、こちらもあわせてご覧ください。

明誠は、ロープアクセス工事として日本で初めてのフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しています。中間マージンを重ねない体制で、高品質と低価格の両立を実現しています。工法の詳細はロープアクセス工法のご紹介、大規模修繕の全体像は大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。


7. 税務:補助金は「もらって終わり」ではない

オーナー記事なので、ここは避けて通れません。補助金の受給は、税務上のイベントです。

7-1. 補助金は雑収入として課税される

受け取った補助金は、原則として受給した事業年度の雑収入(益金)に計上します。10万円の補助を受けたら、その10万円に税金がかかるということです。法人実効税率30%なら、手残りは7万円。「10万円もらえる」ではなく「実質7万円」で計算するのが、オーナーの正しい読み方です。

なお、固定資産の取得に充てた国庫補助金等については、一定の要件のもとで圧縮記帳により課税を繰り延べる制度があります(法人税法第42条等)。ただし適用可否は補助金の性質と資産計上の有無で変わります。必ず顧問税理士に確認してください。私は税理士ではありませんので、ここでは制度の存在をお伝えするに留めます。

7-2. 資本的支出か、修繕費か

オーナーにとって補助金額より影響が大きいのが、この区分です。

区分 会計処理 キャッシュフローへの影響
修繕費 支出年度に全額損金算入 その年の課税所得を大きく圧縮。節税効果が即効性を持つ
資本的支出 資産計上し、耐用年数にわたり減価償却 節税効果が長期に分散。単年度のキャッシュフローは改善しにくい

大まかな考え方として、原状回復・維持管理のための支出は修繕費、価値を高める・使用可能期間を延長する支出は資本的支出とされます。

  • 危険ブロック塀の除却 → 修繕費として処理できる可能性が高い
  • 除却後の軽量フェンス新設 → 新たな構築物として資本的支出になり得る
  • 既存と同等の外壁塗り替え → 修繕費の余地が大きい
  • 断熱性能を新たに付加する窓改修・耐震補強 → 資本的支出と判断されやすい

同じ工事でも、見積書の記載の仕方ひとつで判断が分かれることがあります。「外壁改修工事一式」とだけ書かれた見積書は、税務上いちばん困ります。私が見積書を作るとき、部位別・工種別に分けて記載するようにしているのは、この理由です。見積の粒度は、そのまま税務の柔軟性です。

7-3. 出口価格への効き方

収益還元法では、物件価格はおおむねNOI ÷ キャップレートで決まります。四街道市のような千葉県北西部の住宅系エリアで、仮にキャップレートを5.5%とします。

年間NOIが10万円改善すれば、理論上の物件価値は10万円 ÷ 5.5% ≒ 約182万円上がる計算になります。

給湯器交換で光熱費の訴求ができ、退去が年1戸減った。窓の断熱で賃料を据え置いたまま更新が進んだ。塀を直して内見の印象が上がり、空室期間が2週間短くなった。ひとつひとつは地味です。しかし積み上がったNOIは、キャップレートで割り戻された瞬間に、桁の違う数字になります。

これが、私が「補助金は単年度の得ではなく、出口までの設計だ」と申し上げる理由です。


8. 四街道市という市場を、オーナー視点でどう読むか

制度の話から少し離れて、エリアの話をします。

四街道市は、JR総武本線で千葉駅から一駅、東京都心へも通勤圏という立地から、子育て世代の流入が続いてきたベッドタウンです。新築一戸建てが比較的取得しやすい価格帯で供給されており、住宅着工も一定量が続いています。

このエリア特性は、賃貸オーナーにとって両刃です。

プラス面は、賃貸需要の母数が安定していること。転入してくる世帯が、持ち家を取得するまでの数年間を賃貸で過ごす。この「持ち家までの助走期間」の需要が、四街道市の賃貸市場を支えています。

マイナス面は、競合が新築戸建になることです。「もう少し出せば家が買える」という判断が働きやすい市場では、築20年、築30年の賃貸物件は、価格ではなく「暮らしの質」で選ばれないと生き残れません。給湯器、窓、外構。今回取り上げた制度が効く部位が、まさにその「暮らしの質」の入口にあたります。

もう一点。四街道市は隣接する千葉市(若葉区・稲毛区)、佐倉市、八街市と入居者を取り合う関係にあります。近隣自治体では、たとえば千葉市が分譲マンション向けの耐震診断・耐震改修補助を持つなど、制度の設計が自治体ごとに異なります。複数の自治体に物件を分散して持っているオーナーさまは、「物件ごとにどの市の制度が効くか」を一覧化しておくことをおすすめします。私がお手伝いする場合も、まずこの一覧作りから始めます。


9. 2026年秋、四街道市のオーナーが今週やるべきこと

締切から逆算します。今日は2026年9月5日です。

時期 やること
9月中 ①所有物件の名義(個人/法人)を棚卸し ②道路に面したブロック塀の高さを実測(1.2m超か) ③木造戸建賃貸の確認済証の交付日を確認(平成12年5月31日以前か)
9月〜10月上旬 四街道市建築課(043-421-6144/6147)へ事前相談。法人名義の可否、建物用途の該当性をここで潰す
〜2026年10月30日 ブロック塀の事前調査申請書を提出(★この締切が最優先★)
〜2026年11月30日 ブロック塀の補助金交付申請書/木造耐震の申請を提出。交付決定前の契約は厳禁
10月〜11月 給湯器・窓は国の制度へ。登録事業者かどうかを確認して見積を取得。予算消化率を随時チェック
12月〜2027年1月 工事完了、実績報告(1月末) → 交付請求(2月末)

太字にした10月30日が、この記事でいちばん重要な日付です。

この順番を守れなかった瞬間に、補助金はゼロになります。逆に言えば、順番さえ守れば、書類の難易度はそれほど高くありません。市の様式はすべて公式サイトからダウンロードできます。


よくある質問(FAQ)

Q1. 四街道市の補助金は、賃貸物件(投資用)でも使えますか?
A. 制度によります。危険コンクリートブロック塀等安全対策事業補助金と木造住宅耐震診断・耐震改修補助は居住要件が明示されておらず、所有者であれば対象になり得ます。一方、住宅リフォーム補助金は「自ら所有し、現に居住している者」が要件で、投資用物件には使えません(出典:四街道市)。

Q2. 木造アパートでも耐震改修補助は使えますか?
A. 使えません。四街道市の木造住宅耐震改修工事費補助制度は、対象建築物を「一戸建て住宅又は併用住宅」と定めており、共同住宅は建物要件で対象外です。戸建賃貸・併用住宅であれば対象になり得ます。

Q3. ブロック塀の補助は、法人名義の物件でも申請できますか?
A. 要綱の対象者は「危険コンクリートブロック塀等を所有する個人」と定められています。法人名義の場合の取扱いは、四街道市建築課(043-421-6144/6147)への事前確認が必要です。個人名義であることが要件と読めるため、断定はできません。

Q4. 工事を先に契約して、あとから補助金を申請できますか?
A. できません。四街道市の要綱には「事前契約されますと補助の対象になりません」「施工業者との契約締結は、市の補助金交付決定後に行われることが補助要件です」と明記されています。見積取得は自由ですが、契約は交付決定後です。

Q5. 賃貸集合給湯省エネ2026事業は、オーナーが自分で申請できますか?
A. できません。申請は登録済みの「賃貸集合給湯省エネ事業者(施工業者またはリース事業者)」が行い、補助金がオーナーに還元される仕組みです。ただし、所有・管理する既存賃貸集合住宅が200戸以上の事業者は、事務局に申請して認められれば自ら手続きできます(出典:経済産業省)。

Q6. 受け取った補助金に税金はかかりますか?
A. 原則として雑収入(益金)として課税対象になります。固定資産の取得に充てた国庫補助金等については圧縮記帳による課税繰延べの制度がありますが、適用可否は個別判断です。顧問税理士にご確認ください。


この記事のポイントまとめ

  • 四街道市で賃貸オーナーが直接使えるのは、ブロック塀除却と木造戸建の耐震の2本
  • 危険ブロック塀の事前調査申請は2026年10月30日、交付申請は11月30日が締切
  • 木造住宅耐震改修は2026年度から4/5・上限115万円に増額(共同住宅は対象外)
  • 住宅リフォーム補助金は自己居住要件があり、投資用物件には使えない
  • 給湯器は国の賃貸集合給湯省エネ2026事業(最大10万円/台、9月4日時点で予算39%消化)
  • 窓は先進的窓リノベ2026事業(最大100万円/戸、同21%消化)で取りに行く
  • 補助対象外の外壁・防水は、足場を組まない工法選択でコストと退去リスクを圧縮する
  • 補助金は雑収入として課税。修繕費か資本的支出かの区分が手残りを左右する

四街道市に物件をお持ちで、まだブロック塀の高さを測っていないオーナーさま。まずはメジャー1本です。道路面から1.2mを超えているなら、10月30日までに動く価値があります。

私どもは、1棟の現地調査と、工法別のコスト比較シミュレーションだけでもお受けしています。補助金が使えるかどうかの見立てと、使えない部位をどう安く直すかの two-track で整理してお出しします。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。お問合せはこちら。

10月末までに動けるかどうかが、今年の分かれ目です。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション・ビル・ホテルの大規模修繕/ロープアクセス工法(無足場工法)/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がける改修会社。通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3工法から、建物にとって最適な方法をご提案できる日本でも数少ない会社です。ロープアクセス工事としては日本初となるフランチャイズ展開を行い、塗装・防水・タイル・電気・看板などの専門職が加盟しています。

最終更新:2026年9月5日

(注記)本記事に記載した制度内容・金額・期日は2026年9月5日時点で公表されている情報に基づきます。予算の消化状況により受付が早期に終了する場合があります。申請前には必ず各制度の公式サイトおよび担当窓口で最新情報をご確認ください。


出典・参考資料

お問い合わせ先(四街道市)
都市部建築課:043-421-6144/043-421-6147
環境部環境政策課:043-421-6131

成田市の賃貸マンション・アパート補助金|オーナー向け2026年版

成田市で賃貸マンション・アパート・戸建賃貸・テナントビルをお持ちのオーナーさまから、この夏いちばん多くいただいたご相談は「うちの物件でも市の補助金は使えるのか」というものでした。

結論から申し上げます。成田市の住宅系補助金は、制度によって「自分が住んでいること」を求めるものと、「所有していること」だけで足りるものにはっきり分かれています。 ここを取り違えると、使えるはずの補助金を取り逃がし、使えない補助金の書類を集めて時間だけを失います。

この記事では、2026年度(令和8年度)に成田市の賃貸物件オーナーが実際に使える制度を、市・県・国の一次情報にあたって整理しました。あわせて、NOI(純営業収益)と入居率、雑収入の課税、資本的支出と修繕費の線引き、そして出口(売却)で効いてくる修繕の順序まで、収益不動産の判断軸で解説します。

なお本記事は2026年9月2日時点の公表情報にもとづいています。予算枠のある制度は年度途中で受付終了となることがあるため、実際の申請前には必ず担当課へご確認ください。


まず結論:成田市の賃貸オーナーが今日動くべきは、この4本

賃貸物件を所有するオーナーの立場で成田市の制度を洗い出すと、優先順位は次のようになります。

順位 制度名 補助率・上限 オーナーの使いやすさ
1 成田市 危険コンクリートブロック塀等除却工事費助成 経費の1/2以内・上限10万円 ◎ 所有していれば申請可。居住要件なし
2 成田市 住宅耐震改修助成 工事費の4/5以内・上限115万円 ○ 一戸建て・併用住宅の貸家なら対象。共同住宅は対象外
3 国 賃貸集合給湯省エネ2026事業 1台5万円/7万円(加算で最大8万円/10万円) ◎ 賃貸集合住宅オーナーが本来の対象。ただし申請は登録事業者経由
4 国 先進的窓リノベ2026事業 最大100万円/戸 ○ 賃貸住宅の所有者も対象。空室期間との段取りが鍵

そして、多くのオーナーが誤解しているのが5番目です。

成田市の「住宅用省エネルギー設備設置費補助金」は、原則としてオーナーの投資用物件には使えません。

理由は後述しますが、対象者が「自分が住む市内の住宅に設備を設置した個人」で、かつ「その所在地に住民登録していること」が要件になっているためです(成田市 環境計画課)。太陽光や蓄電池を賃貸物件に載せる計画で市の補助を織り込んでいた方は、収支計画の見直しが必要です。

以下、それぞれを実務レベルで掘り下げます。


成田市の賃貸市場を「NOIの視点」で見ると何が見えるか

制度の話に入る前に、成田市という市場の性格を押さえておきます。ここを外すと、補助金を取れても入居率が上がらない、という本末転倒が起こります。

空港が需要をつくり、空港が需要を変える街

成田市の賃貸需要は、成田国際空港とその関連産業に強く紐づいています。航空会社、グランドハンドリング、貨物・物流、ホテル、税関・入管などの公的機関——これらに勤める単身者・世帯が、市内の賃貸ストックの主要な借り手です。

この構造は、2029年度に向けて大きく動きます。成田国際空港の機能強化事業では、C滑走路の新設とB滑走路の延伸が進行中で、2026年6月時点の全体用地確保率は約90.4%、B滑走路延伸については99.5%に達し、2029年度内の先行供用を目指すと報じられています(sky-budget)。

オーナーにとっての意味は明快です。工事期間中は建設・物流系の中期滞在需要が積み上がり、供用後は空港関連の常勤雇用が増える可能性が高い。 つまり、成田市の賃貸は「今後5年の需要が読みやすい、数少ないエリア」のひとつです。

ただし、需要が読めることと、あなたの物件が選ばれることは別の話です。需要が増えるほど、新築・築浅の供給も増えます。築20年、30年の物件が競争に残るには、外観・水回り・断熱・設備という4つの軸で「見劣りしない」状態をつくる必要があります。 補助金は、そのための資金を薄める道具として使うべきものです。

NOIで考えると、補助金は「利回りの底上げ」ではなく「取得原価の圧縮」

賃貸経営の指標であるNOI(Net Operating Income=賃料収入から運営費用を差し引いた純営業収益)で考えると、補助金の効き方が見えてきます。

NOI利回り=NOI ÷ 投資額(取得価格+資本的支出)

補助金は分母である投資額を直接圧縮します。たとえば200万円の工事に対して100万円の補助が出れば、投じた自己資金は100万円。同じ賃料上昇効果でも、NOI利回りへの寄与は単純に2倍になります。

さらに重要なのは、入居率(稼働率)への効き方です。年間賃料480万円(月40万円)の8戸アパートで、稼働率が92%から96%に改善すれば、年間収入は約19万円増えます。仮に還元利回り6%で評価するなら、物件価値は約320万円押し上がる計算です。「補助金で工事費が安くなった」以上に、「工事によって空室期間が短くなった」効果のほうが、資産価値には大きく効くということです。

この視点を持ったうえで、成田市の制度を見ていきます。


【最優先・上限10万円】危険コンクリートブロック塀等除却工事費助成

金額は大きくありません。しかし、成田市のオーナーが最初に検討すべきはこれです。

制度の概要

成田市は、ブロック塀等の倒壊から市民の生命・身体を守り、避難経路を確保するため、危険なブロック塀等の除却費用の一部を助成しています(成田市 建築住宅課)。

補助対象となるブロック塀等(次のいずれにも該当し、地震により倒壊するおそれがあると市長が認めたもの)

  1. 補強コンクリートブロック造または組積造(コンクリートブロック造、石造、レンガ造など)による塀および門柱(基礎を含む)
  2. 道路等に面して設置されているもの

補助対象者:市内に危険なブロック塀等を所有し、除却工事を市内業者に行わせる方

補助金の額:除却に要する経費の1/2以内の額で、上限10万円

なぜオーナーが最優先なのか——3つの理由

第一に、居住要件がありません。 対象者は「市内に危険なブロック塀等を所有し」と定められており、その物件に自分が住んでいることは求められていません。アパートの敷地境界にある古いブロック塀、駐車場を囲う塀、貸家の門柱——いずれも所有者であるオーナーが申請者になれます。この点で、後述する省エネ設備補助金とは決定的に性格が異なります。

第二に、放置したときのリスクが金額に見合いません。 ブロック塀の倒壊で通行人が負傷した場合、工作物責任(民法717条)により所有者が責任を問われます。工作物責任は、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたときは所有者が負う構造で、所有者の責任は原則として無過失責任とされています。「管理会社に任せていた」は免責理由になりません。10万円の補助を取りにいく手間と、この賠償リスクを天秤にかける話ではないのです。

第三に、成田市には該当する塀が実際に多い。 市街地には昭和期に建てられた木造貸家・アパートが相応に残っており、その多くが道路に面したブロック塀を持っています。建築基準法施行令に定める高さ・厚さ・控壁・鉄筋の基準を満たさない塀は珍しくありません。まずはご自分の物件の塀が、次の項目に当てはまらないか確認してください。

現地で確認できる危険サイン

  • 高さが2.2mを超えている
  • 塀の厚さが10cm未満(高さ2m超なら15cm未満)
  • 控壁(支えの壁)が3.4m以下の間隔で入っていない
  • 基礎(コンクリートの根元)が見当たらない
  • ひび割れ、傾き、白い析出物(エフロレッセンス)、鉄筋の露出がある
  • 建てられた年代がわからない、増積みした形跡がある

ひとつでも該当するなら、まず成田市役所5階の建築住宅課(0476-20-1564)にご相談ください。

オーナー視点の実務ポイント

「市内業者に行わせること」が要件です。 市外の解体業者に相見積もりを取って安いほうへ、という判断をすると補助対象から外れます。市内業者の見積もりが5万円高くても、10万円の補助が出るなら手残りは有利です。相見積もりの母集団を「市内業者に限る」ところから始めてください。

塀を撤去した後の「見え方」まで設計する。 撤去だけで終えると、敷地境界がむき出しになり、かえって物件の印象が悪くなることがあります。フェンス設置や生垣への転換は補助対象外の可能性が高いため自己負担になりますが、外構は内見時の第一印象を決める要素です。撤去(補助あり)と新設(自己負担)をセットで見積もり、トータルの投資対効果で判断するのが実務的です。

外壁塗装・防水と同じ工期にまとめる。 足場や重機の搬入、廃材処理を共通化できるため、単独で発注するより総額が下がるケースが多くあります。大規模修繕の計画があるなら、その中に塀の除却を組み込んでください。


【最大115万円】住宅耐震改修助成は「貸家」でも申請できる

成田市の耐震改修助成は、補助率と上限額の両面で全国的に見ても手厚い制度です。そして、オーナーが見落としがちなポイントがここにあります。

制度の概要

市は、耐震診断で耐震性が低いと判定され、市に登録された住宅耐震診断士に設計・工事監理を依頼して耐震改修工事を行う場合に、費用の一部を助成しています(成田市 建築住宅課)。

補助金の額:補助の対象となる工事費の5分の4以内の額(1,000円未満切り捨て、上限115万円)
※工事費には設計費および工事監理費を含みます
※二段階耐震改修工事の場合は、段階ごとに57.5万円が限度

補助の対象者

  • 耐震改修工事を行おうとする住宅を市内に所有している方
  • 市税の滞納がない方

「所有していること」——ここが決定的です

市が公表している「住宅耐震診断費・耐震改修費 補助事業のご案内」(PDF)に、申請者および住宅の要件が明記されています。

  • 住宅を所有していること
  • 市税を滞納していないこと
  • 非木造住宅の場合は、昭和56年5月31日以前に工事に着手または建築された住宅であること
  • 一戸建てまたは併用住宅(住居部分が延べ面積の1/2以上)が対象
  • 建築基準法等に違反している住宅は対象外

つまり、「自分が住んでいること」も「入居者がいること」も要件になっていません。 成田市内に一戸建ての貸家をお持ちで、それが旧耐震基準(あるいは2000年5月以前の木造)であれば、オーナーとして申請できる可能性があります。空室のまま持て余している築古戸建てを、耐震改修して貸し出す——という筋道が制度上つながるのです。

一方で、アパート・マンションといった共同住宅(長屋・共同住宅)は対象外です。ここは正確に押さえてください。8戸のアパートを耐震補強したい、という相談には、この制度は使えません。対象は一戸建てと、住居部分が延べ面積の1/2以上を占める併用住宅(1階が店舗で2階が住居、といった建物)です。

補助率5分の4という数字の意味

工事費150万円の耐震改修を行った場合、5分の4は120万円ですが上限が115万円なので、自己負担は35万円。工事費115万円までなら、自己負担は5分の1の23万円で済みます。

さらに成田市には代理受領制度があります。補助金の受領を、設計・工事監理・工事を行った業者に委任できる仕組みです。これを使うと、オーナーは工事費と補助金の差額分だけを用意すればよく、満額を立て替えてから数か月後に還付を待つ、というキャッシュフローの負担がなくなります。金額の大きい耐震改修では、この差は実務上かなり大きい。申請時に必ず業者と相談してください。

手続きの流れと「今から間に合うか」

制度の運用上、次の順序が絶対条件です。

  1. まず耐震診断を受ける(診断も助成対象:診断費用の3分の2以内、上限8万円)
  2. 診断結果で木造は上部構造評点1.0未満、非木造はIs値0.6未満またはq値1.0未満と判定される
  3. 交付申請 → 交付決定 を受ける
  4. 契約 → 補強設計 → 設計終了報告 → 工事の実施 → 実績報告

交付決定を受ける前に工事へ着手した場合、補助対象になりません。 ここは例外がないと考えてください。

スケジュール面では、市は次のように案内しています。

  • 耐震改修:申請の受付期間は4月1日から10月末までが目安、補助金申請年度の1月末までに対象工事を終える必要がある
  • 耐震診断:申請の受付期間は4月1日から12月末までが目安、1月末までに診断を終える必要がある
  • 交付申請の審査に1か月ほど、実績報告の審査にも1か月ほどかかる

2026年9月の時点で「診断も受けていない」状態からのスタートは、正直に申し上げて今年度中の改修工事完了は厳しい日程です。現実的な打ち手は、「今年度は耐震診断まで済ませ、来年度(令和9年度)に改修工事を申請する」という二段構えです。診断助成の受付は12月末まで(工事を伴わないぶん日程に余裕があります)。まず診断を取り、上部構造評点という客観的な数字を手にしておけば、来年度の予算枠が開いた4月に一番手で申請できます。

耐震改修は「税制」とセットで効いてくる

市の案内にも記載のとおり、基準に適合する耐震改修を行った場合、所得税額の控除および固定資産税の減額措置を受けられることがあります(所得税:成田税務署 0476-28-5151/固定資産税:成田市役所資産税課 0476-20-1514)。

賃貸物件の場合、居住用財産を前提とした所得税の特別控除は使えないケースが多い一方、固定資産税の減額措置や、工事費の減価償却を通じた損金算入が効いてきます。オーナーにとっては「所得税控除」より「経費計上」の設計のほうが実利が大きい。詳しくは後段の税務セクションで整理します。


【重要な落とし穴】成田市の省エネ設備補助金は、オーナーの投資用物件には原則使えません

ここは、この記事でもっともお伝えしたい部分です。

成田市の「住宅用省エネルギー設備設置費補助金」は、太陽光発電、エネファーム、蓄電池、HEMS、太陽熱、地中熱、断熱窓、電気自動車、V2H充放電設備、集合住宅用充電設備と、対象設備が非常に幅広い制度です(成田市 環境計画課)。太陽光と蓄電池を賃貸物件に載せて共用部電気代を下げたい、EV充電器を設置して差別化したい——そう考えるオーナーにとって、一見すると理想的な制度に見えます。

しかし、対象者の定義がこうなっています。

自分が住む市内の住宅(店舗等と併用可)に未使用品の住宅用省エネルギー設備を設置した個人、または未使用品の住宅用省エネルギー設備が設置された市内の住宅を購入した個人で、次のいずれにも当てはまる方
– 上記の所在地に住民登録していること
– 市税を滞納していないこと
– 住宅を自分が所有していない場合(賃貸、他の家族名義など)は、所有者に設置の承諾を受けていること

読み替えると、こういうことです。

  • 申請できるのは個人であり、法人は対象外
  • 自分が住み、住民登録している住宅であることが要件
  • したがって、自分が住んでいない投資用の賃貸マンション・アパート・貸家に設置しても対象外
  • 逆に、入居者(賃借人)が自分の住む部屋に設置し、オーナーの承諾を得た場合は、その入居者が申請できる

つまりこの制度は、構造上「オーナー向け」ではなく「居住者向け」です。集合住宅用充電設備が対象設備に入っているため誤解を招きやすいのですが、これも「自分が住む住宅」という大枠の要件がかかります。 アパート経営者が入居者向けにEV充電設備を設置する、という使い方は想定されていません。

では、オーナーはどうすべきか

第一に、自宅と収益物件を分けて考えること。 ご自身が成田市内にお住まいで、その自宅(併用住宅を含む)に設備を入れるなら、この補助金は使えます。1階が自宅、2階が賃貸というアパート兼自宅(店舗等と併用可)のようなケースでは、要件を満たす可能性があります。窓口である環境計画課(0476-20-1533)に、建物の使用形態を具体的に伝えて確認してください。

第二に、国の制度に切り替えること。 国の住宅省エネ2026キャンペーンには、賃貸物件のオーナーが本来の対象者として設計された事業があります。次のセクションで詳述します。

第三に、入居者向けの制度として案内する発想を持つこと。 断熱窓の改修などは、入居者が申請主体になれます(オーナーの承諾書が必要)。入居者の光熱費が下がれば退去率は下がります。「オーナーが使えないから終わり」ではなく、「入居者が使える制度としてお知らせする」という運用は、退去抑止のコミュニケーションとして機能します。

なお、申請期間は電気自動車・プラグインハイブリッド自動車・V2H充放電設備・集合住宅用充電設備が令和9年3月10日まで(必着)、それ以外の設備が令和9年3月末までとされています。いずれも予算の範囲内での実施です。


【国・オーナーが主役】賃貸集合給湯省エネ2026事業——1台5万〜10万円

成田市の制度でカバーできない部分を埋めるのが、国の事業です。なかでも賃貸集合給湯省エネ2026事業は、補助対象者が「賃貸集合住宅のオーナー等」と明記された、数少ないオーナー向け補助金です(経済産業省 資源エネルギー庁/公式サイト)。

制度の骨格

補助対象者:賃貸集合住宅のオーナー等で、給湯器の交換工事の発注者。既存賃貸集合住宅のうち一部(賃貸住戸を2戸以上)を所有する区分所有者も含みます。

対象事業:既存賃貸集合住宅の住戸について、従来型給湯器を、補助対象である小型の省エネ型給湯器(エコジョーズ/エコフィール)に交換する事業。

補助額:追い焚きなし5万円/台、追い焚きあり7万円/台。一定の排水工事を伴う場合、最大8万円/台・10万円/台まで加算。

予算の消化状況——2026年9月2日時点で38%

公式サイトが日次で公表している予算に対する補助金申請額の割合は、2026年9月2日午前0時時点で38%です。予算上限(100%)に達し次第、交付申請の受付を終了します。

38%という数字をどう読むか。年度の折り返しを過ぎて4割弱ですから、「まだ余裕はあるが、年度末までは確実にもたない可能性がある」水準です。給湯器は突然壊れます。壊れてから慌てて交換すると、事業者登録の確認や予約の手続きが間に合わず、補助を取り逃がします。築15年を超えた給湯器を抱えているなら、故障前の計画交換に切り替えるべきタイミングです。

実務上の最重要ポイント:オーナーは直接申請できません

公式サイトに明記されています。

補助金の申請手続きや受け取りと賃貸集合住宅のオーナー等への還元は、「賃貸集合給湯省エネ事業者」が行います。補助対象者である賃貸集合住宅のオーナー等が直接申請をすることはできません。

したがって、オーナーがやるべきことは次の3点に集約されます。

  1. 登録事業者かどうかを最初に確認する。 公式サイトの「賃貸集合給湯省エネ事業者の検索」で、発注予定の業者が登録済みかを確かめます。登録のない事業者との契約は補助対象になりません。いつもの給湯器屋さんが未登録だった、というのは実際によくある話です。
  2. 補助金が自分に還元される契約になっているかを確認する。 補助金を受け取るのは事業者です。見積書・契約書の段階で「補助金額を工事代金から差し引く」のか「工事後に還元する」のかを文書で確認してください。ここを曖昧にしたまま進めて、補助分が事業者側に留まったというトラブルが起きています。
  3. 対象製品かを型番で確認する。 事務局に登録された製品を使った工事のみが対象です。「エコジョーズなら何でもいい」ではありません。

なお、国内に所有または管理する既存賃貸集合住宅の住戸数が200戸以上である事業者(工事発注者)が、補助金の手続き等を自ら行うことを希望する場合は、事務局への個別相談窓口が用意されています。相応の規模でお持ちのオーナー・管理会社は検討の余地があります。

給湯器交換が入居率に効く理由

給湯器は、入居者の生活満足度に直結する設備です。冬場に湯温が安定しない、追い焚きができない、着火が遅い——こうした不満は、更新時期の判断に静かに効いてきます。

エコジョーズへの交換は、入居者のガス代を下げます。「光熱費が安い部屋」は、家賃を下げずに実質的な負担を軽くする、数少ない差別化要素です。募集図面に「エコジョーズ(省エネ給湯器)設置」と書けることの効果は、成田市のように単身・世帯の入れ替わりが一定量ある市場では小さくありません。


【国】先進的窓リノベ2026事業——賃貸住宅も対象、最大100万円/戸

窓の断熱改修を支援する国の事業です。補助対象者は建物を所有する個人・法人・地方公共団体等で、賃貸住宅の所有者も対象とされています(環境省・国土交通省 先進的窓リノベ2026事業)。成田市の省エネ設備補助金が使えないオーナーにとって、断熱まわりの本命がこちらです。

補助額:最大100万円/戸
工事期間:2025年11月28日以降に対象工事に着手し、2026年12月31日までに全工事完了
交付申請期間:2026年3月下旬〜遅くとも2026年12月31日まで(予算上限に達し次第終了)

賃貸物件で窓改修を行う際の実務的な壁は、居室内での工事になるため、入居中は施工しづらいことです。したがって現実的な進め方はこうなります。

  • 退去が出たタイミングで、原状回復工事と同時に窓を改修する
  • 空室が複数出ている物件から着手する
  • 内窓(インナーサッシ)方式なら1戸あたり半日〜1日で完了するため、募集期間内に収まる

内窓の設置は、断熱だけでなく遮音にも効きます。成田市は空港と幹線道路を抱えるエリアがあり、「静かさ」を訴求できる物件は明確に競争力を持ちます。断熱補助を使って遮音性能を上げる、という一石二鳥の設計ができるのは成田ならではです。

また、みらいエコ住宅2026事業や給湯省エネ2026事業との併用も可能とされています。窓・給湯・断熱を一体で計画すれば、補助の総額は大きくなります。ただし同一の工事に対して国と市の補助を二重に受けることは原則できません。成田市の申請書類に「国の補助金を受けていない理由書」の様式が用意されていることからも、市がこの点を厳格に見ていることがわかります。


空室・空き家をお持ちのオーナーへ:空家改修補助金と特定空家等除却補助金

相続で引き継いだ古家、事業をたたんだ後の店舗併用建物——成田市には、この2つの制度があります(成田市 空き家補助金について)。

成田市空家改修補助金:事業用改修なら上限100万円

補助金の額

  • 住宅用改修:補助対象経費の2分の1(上限50万円)
  • 事業用改修:補助対象経費の2分の1(上限100万円)
  • ※成田市空家バンク登録物件は、補助額に10万円加算
  • ※1,000円未満は切り捨て

補助対象空き家:1年以上使用されていない一戸建ての住宅(併用住宅含む)で、確認済証の交付を受けており、都市計画法等に適合し、土砂災害警戒区域等の危険な区域に存しないこと。

ここで、オーナーとして正確に理解すべき区別があります。

住宅用改修は「自ら居住する方」が対象です。 市外から転居する方、市内の賃貸住宅から転居する方などが対象で、「賃貸に出すために改修する」という使い方は住宅用改修では想定されていません。

一方、事業用改修は法人・個人が対象で、上限100万円と手厚い。 改修後の用途は、宿泊施設、交流施設、体験学習施設、創作活動施設、文化施設、そのほか地域の活性化に資するもの(レストラン、カフェ、商業施設、テレワーク施設など)とされています。

成田市というエリアで、この「宿泊施設」「テレワーク施設」という用途指定は、他の自治体より現実味があります。 国際空港を抱え、早朝便・深夜便の前後泊需要、乗務員・工事関係者の中期滞在需要が恒常的にある街です。空き家を簡易宿所や小規模なゲストハウス、ワーケーション向けの施設に転用する構想は、成田では机上の空論になりにくい。

ただし条件は厳格です。

  • 改修目的の用途に10年以上活用すること
  • 市税の滞納がないこと
  • 空家改修工事の契約締結前に申請が必要(工事着手後の申請は受けられません)
  • 補助金申請年度の2月末までに工事を終え、実績報告をすること
  • 受付期間は4月1日から10月末までが目安(内容により10月以降も相談可)
  • 交付決定の翌年度から、毎年度2月末日までに活用状況の報告が必要
  • 予算がなくなり次第、受付終了

「10年以上活用」と「毎年の活用状況報告」は、出口戦略に制約をかけます。 5年後の売却を視野に入れているなら、この補助金を使うことで売りにくくなる可能性があります。逆に、長期保有・自社運営の方針が固まっているなら、100万円+空家バンク加算10万円は極めて有利な条件です。制度を使うかどうかは、保有方針を先に決めてから判断してください。

なお、改修する住宅が耐震基準に満たない場合は、前述の耐震改修補助も併せて受けられる旨が市の案内に明記されています。空家改修100万円+耐震改修115万円を組み合わせられる可能性がある——これは成田市の制度設計のなかでも、最も金額インパクトの大きい組み合わせです。

成田市特定空家等除却工事費補助金:上限50万円

管理不全のまま放置され、成田市空家等対策委員会に諮って特定空家等と認定された空き家の除却費用に対する補助です。

補助金の額:補助対象経費の2分の1(上限50万円、1,000円未満切り捨て)

補助対象空き家(すべてに該当すること)

  1. 個人が所有するものであること
  2. 一戸建て等に係るものであること
  3. 所有権以外の権利が設定されていないこと
  4. 空家法第22条第2項の規定による勧告を受けていないこと
  5. 敷地の所有者が異なる場合は、敷地所有者の同意を得ていること
  6. 共有の場合は、全共有者の同意を得ていること

オーナーにとって注意すべきは3.の「所有権以外の権利が設定されていないこと」です。抵当権が残っている物件は対象外と読むのが自然です。借入れで取得した収益物件を除却する場合、抵当権抹消が先行しないと使えません。金融機関との調整が必要になります。

また4.の「勧告を受けていないこと」も重要です。特定空家に認定され、さらに勧告まで進むと、住宅用地の固定資産税特例(小規模住宅用地で課税標準6分の1)が適用除外となり、固定資産税が実質的に跳ね上がります。勧告を受ける前に動けば補助が使え、勧告後は補助が使えないうえに税負担も増える。 特定空家の話は、「早く動くほど得をする」という構造が最もはっきりしている領域です。


税務:補助金の課税、資本的支出と修繕費、損金算入のタイミング

補助金を「もらって終わり」にすると、翌年の申告で驚くことになります。オーナーが押さえるべき論点を整理します。なお、以下は一般的な考え方の整理であり、個別の判断は必ず顧問税理士にご確認ください。

補助金は課税対象になります

賃貸経営に関して受け取った補助金は、不動産所得の総収入金額(雑収入)に算入されるのが原則です。「補助金だから非課税」ではありません。115万円の耐震改修補助を受ければ、その115万円は原則として収入に立ちます。

ただし、多くの場合、対応する工事費が同じ年に費用または資産計上されるため、トータルでの課税所得への影響は緩和されます。 問題は、補助金の入金時期と、工事費の費用化のタイミングがズレる場合です。

圧縮記帳という選択肢

国庫補助金等で固定資産を取得した場合、一定の要件のもとで圧縮記帳(法人税法42条、所得税法42条)により、補助金相当額を課税の対象から繰り延べる処理が認められることがあります。

補助金100万円で200万円の資本的支出を行った場合の考え方は、おおまかに次のようになります。

  • 圧縮記帳を使わない:補助金100万円が収入計上、資産200万円を耐用年数で減価償却 → 初年度の課税所得が大きく増える
  • 圧縮記帳を使う:資産の取得価額を100万円に圧縮 → 初年度の課税を繰り延べ、償却期間を通じて平準化

キャッシュフローが厳しい年度に大きな課税所得が立つのを避けたいなら、圧縮記帳は有力な選択肢です。ただし適用できる補助金の性質や要件が細かく定められているため、必ず事前に税理士へ相談してください。

資本的支出と修繕費——賃貸経営で最も差がつく論点

工事費が修繕費なら支出年度に全額が費用計上でき、資本的支出なら資産計上して耐用年数にわたって減価償却することになります。この差は、初年度の手残りに直結します。

大まかな判断軸は次のとおりです。

区分 内容の例 処理
修繕費 原状回復、通常の維持管理、既存と同等品への交換、劣化部分の補修 支出年度に全額損金
資本的支出 価値を高める・使用可能期間を延ばす工事、グレードアップ、用途変更を伴う改造 資産計上し減価償却

実務でよく問題になるのが大規模修繕です。外壁塗装や屋上防水は、既存と同等仕様への「原状回復」であれば修繕費とされることが多い一方、断熱塗料への変更や防水グレードの大幅な引き上げは資本的支出と判断される余地があります。

判断の分かれ目を明確にするのが「見積書と工事写真の書き方」です。 工事内容が一式で書かれた見積書は、税務調査で不利に働きます。部位ごと・工事内容ごとに明細を分け、「劣化補修」と「性能向上」を分離して記載してもらうこと。これは施工会社への依頼の仕方ひとつで変わります。当社が大規模修繕をお受けするときも、この点は必ずオーナーと事前に握るようにしています。

なお、金額基準として、一件20万円未満の支出や、おおむね3年以内の周期で行われる修理・改良は修繕費として扱える取扱いがあります。修繕を数年に分けて計画的に行うことが、結果的に有利になる場合もあるということです。

固定資産税の視点

耐震改修を行った場合、要件を満たせば固定資産税の減額措置を受けられることがあります。成田市役所資産税課(0476-20-1514)が窓口です。

また、前述のとおり特定空家等に認定され勧告を受けると、住宅用地特例が外れます。更地にすると同様に特例が外れるため、「壊すか、直して貸すか」の判断は、税負担を含めた総合判断になります。除却補助50万円を取って更地にした結果、固定資産税が数倍になって手残りが減った——という結末を避けるには、除却前に必ず税額のシミュレーションをしてください。


モデルケースで見る:成田市のオーナーは、どれだけ変わるか

抽象論だけでは判断できないので、具体的な3つのケースで試算します。金額は成田市の制度要件に基づく理論値であり、実際の工事費・補助額は物件と工事内容により変動します。

ケースA:築38年・木造アパート8戸(成田駅徒歩15分)

現状:稼働率88%(8戸中1戸空室が常態)、家賃5.5万円、道路面に高さ2.0mのブロック塀、給湯器は追い焚きなしの従来型が8台

打ち手
1. ブロック塀除却(工事費30万円) → 補助15万円 → 上限適用で10万円
2. 賃貸集合給湯省エネ2026でエコジョーズ8台に交換(工事費8台分120万円) → 補助5万円×8台=40万円
3. 外壁塗装・屋上防水(工事費420万円、補助なし)

効果の試算
– 補助合計:50万円
– 自己負担:520万円
– 稼働率が88%→95%に改善した場合の年間収入増:5.5万円×12か月×8戸×7%=約37万円
– 還元利回り6%で評価した資産価値の押し上げ:約616万円

補助50万円そのものより、稼働率改善による資産価値の増加のほうが桁が違うことがわかります。補助金は「工事を決断する後押し」として機能し、リターンの本体は入居率にあります。

ケースB:築45年・空き家の戸建(相続で取得、旧耐震)

現状:1年以上空き家、上部構造評点0.6と診断される見込み、駅から離れた住宅地

打ち手(貸家として再生する場合)
1. 耐震診断(費用12万円) → 補助8万円(2/3・上限8万円)
2. 耐震改修工事(設計・監理含め工事費180万円) → 補助115万円(4/5・上限115万円)
3. 水回り更新・内装(工事費150万円、補助なし)

効果の試算
– 補助合計:123万円
– 自己負担:219万円
– 想定家賃8万円/月 → 年間96万円
– 表面利回り(自己負担ベース):96万円÷219万円=約43.8%

もちろん土地建物の取得原価を含めれば数字は変わりますが、「持っているだけで固定資産税を払っていた空き家」が、年間96万円を生む資産に変わるインパクトは大きい。代理受領制度を使えば、115万円を立て替える必要もありません。

注意:この試算は令和8年度中に工事完了できる前提です。2026年9月の時点からでは日程が厳しいため、今年度は診断(補助8万円)まで、改修は令和9年度という二段構えが現実的です。

ケースC:空き家を宿泊・テレワーク施設に転用(事業用改修)

現状:空港へ車で15分、1年以上使用されていない一戸建て、確認済証あり

打ち手
1. 成田市空家バンクに登録
2. 事業用改修(工事費300万円) → 補助150万円 → 上限適用で100万円+空家バンク加算10万円=110万円
3. 耐震基準を満たさない場合は耐震改修補助も併用検討

制約
– 改修目的の用途に10年以上活用する義務
– 毎年度2月末までに活用状況を報告
– 契約締結前に申請が必要

判断:10年の縛りを受け入れられるかが分水嶺です。成田で宿泊・滞在系の運営を長期で行う覚悟があるオーナーには、110万円は極めて有利。 5年以内の売却を考えているなら、この制度は選ぶべきではありません。


出口戦略:成田で「売れる物件」にするための修繕の順序

補助金の話は、最後は出口につながります。売却時、買主とその金融機関は何を見るか。

買主が減額交渉に使う3つの材料

  1. 外壁・屋上の劣化:見た瞬間に「あと数年で大規模修繕」と読まれ、その概算額をそのまま値引き要求されます
  2. 旧耐震・耐震性の不明:融資が付きにくくなり、買主層が現金購入者に限定されて価格が下がります
  3. 設備の老朽化:給湯器・エアコンの残存年数は、購入後の追加投資として計算されます

逆に言えば、この3つを潰しておけば、値引きの根拠を先に消せるということです。

売却の2〜3年前に着手すべき順序

第1順位:耐震性の確保と証明
耐震診断・耐震改修は、単に安全なだけでなく「書類として残る」のが強みです。耐震改修証明があれば、買主の融資審査が通りやすくなり、買主層が広がります。成田市には住宅耐震改修証明申請書の様式も用意されています。補助率5分の4を使えるうちに済ませておくべきです。

第2順位:外装(外壁・屋上防水・シーリング)
第一印象と、修繕履歴の説得力を同時に作ります。「5年前に大規模修繕済み」は、価格交渉における最強のカードのひとつです。

第3順位:給湯器・窓などの設備更新
補助金が最も効く領域です。国の制度で費用を薄めながら、入居率と募集条件を改善できます。

第4順位:外構(ブロック塀の除却と再整備)
金額は小さいものの、内見の第一印象と、工作物責任というリスクの除去を同時に果たします。

この順序は、「融資が付くか」→「見た目」→「ランニング」→「印象」 という、買主の判断順序に対応しています。


コストは制度だけでなく「工法の選び方」でも変わります

ここまで補助金の話をしてきましたが、大規模修繕の総額に最も効くのは、実は足場の掛け方です。

一般的なマンション・アパートの大規模修繕では、仮設足場が総工事費の20〜25%程度を占めるとされます。8戸のアパートで工事費500万円なら、100万円以上が「工事をするための舞台装置」に消えている計算です。しかも足場は、資産価値を1円も生みません。

株式会社明誠は、通常の足場仮設による工事、無足場工法であるロープアクセスでの工事、足場とロープアクセスを組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物にとってベストな工法をご提案できる、日本でも数少ない会社です。

ロープアクセス工法(無足場工法)が成田市の賃貸物件に向くケース

  • 敷地に余裕がなく、足場を組むと駐車場が使えなくなる物件(入居者の駐車場を潰さずに済むのは、車社会である成田では決定的な差です)
  • 部分補修で足りる劣化状況(全面足場は過剰投資)
  • 空室リスクを最小化したい満室稼働中の物件
  • 足場を組むことによる防犯上の不安を避けたい物件

足場工法が向くケース

  • 全面的な外壁改修・タイル張替えなど、作業量が大きい工事
  • 低層で足場の設置効率が良い建物
  • 複数職種が同時に入る工程

ハイブリッド工法が向くケース

  • 一部の面だけ足場が必要で、他は無足場で対応できる建物
  • 総合的なコスト最適化を優先したい大規模・複雑形状の物件

当社はロープアクセス工事として日本で初めてとなるフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板工事など各分野の専門職が加盟しています。この体制により、高品質と低価格を両立しています。

ロープアクセス工法の詳細や施工事例は、専門サイト ロープアクセス工法.com(https://rope-access-method.com/) にまとめていますので、工法の比較検討にお役立てください。

補助金で10万円、20万円を取りにいくのは大切です。同時に、足場の掛け方を変えることで数十万円から数百万円が変わる可能性がある——このスケール感を、ぜひ頭に入れておいてください。


申請カレンダーと早見表

制度ごとの要点まとめ

制度 補助率・上限 対象 申請時期の目安 窓口
危険コンクリートブロック塀等除却工事費助成 1/2以内・上限10万円 道路等に面した危険な塀・門柱の所有者。市内業者施工が条件 予算の範囲内 建築住宅課 0476-20-1564
住宅耐震診断等助成 2/3以内・上限8万円(マンション予備診断は上限10万円・管理組合) 一戸建て・併用住宅の所有者 4/1〜12月末目安、1月末までに診断完了 建築住宅課 0476-20-1564
住宅耐震改修助成 4/5以内・上限115万円(二段階は段階ごと57.5万円) 一戸建て・併用住宅の所有者。診断で評点1.0未満等 4/1〜10月末目安、1月末までに工事完了 建築住宅課 0476-20-1564
空家改修補助金 住宅用1/2・上限50万円/事業用1/2・上限100万円(空家バンク登録+10万円) 1年以上使用されていない一戸建て(併用住宅含む)。10年以上活用 4/1〜10月末目安、契約締結前に申請 建築住宅課 0476-20-1564
特定空家等除却工事費補助金 1/2・上限50万円 特定空家等に認定された個人所有の一戸建て等。所有権以外の権利設定なし 4/1〜10月末目安、契約締結前に申請 建築住宅課 0476-20-1564
住宅用省エネルギー設備設置費補助金 設備により異なる 自分が住み住民登録している住宅に設置した個人(投資用物件は原則対象外) EV等は令和9年3/10必着、他は令和9年3月末 環境計画課 0476-20-1533
国 賃貸集合給湯省エネ2026事業 5万円/7万円(加算で最大8万円/10万円)/台 賃貸集合住宅のオーナー等(2戸以上所有の区分所有者含む)。申請は登録事業者経由 予算上限到達で終了(2026/9/2時点38%) 事業事務局
国 先進的窓リノベ2026事業 最大100万円/戸 建物を所有する個人・法人等(賃貸住宅所有者を含む) 2026年12月31日まで(予算上限到達で終了) 事業事務局

2026年9月からの現実的なスケジュール

今月(9月)にやること

  • 所有物件のブロック塀を全数チェックし、該当があれば建築住宅課へ相談
  • 給湯器の設置年を全台リストアップ、15年超のものを抽出
  • 旧耐震の一戸建て貸家があれば、耐震診断の申請準備(受付は12月末目安)
  • 発注予定の給湯器業者が賃貸集合給湯省エネ事業者に登録済みか確認

10月まで

  • 耐震改修・空家改修は受付期間の目安が10月末。今年度に間に合わせるならこの時点で申請を出す
  • 窓リノベを使うなら、退去予定と工事日程のすり合わせを開始

12月まで

  • 耐震診断の申請期限(目安)
  • 先進的窓リノベ2026の工事完了・交付申請期限(2026年12月31日)

年明け以降

  • 令和9年度(2027年度)の予算に向けて、耐震改修の設計・見積もりを準備
  • 4月1日の受付開始と同時に申請できる状態にしておく

予算枠のある制度は、年度の頭が最も有利です。 「4月に一番手で出せる状態を、前年の秋冬につくっておく」——これが、補助金を確実に取るオーナーの共通点です。


よくあるご質問

Q. 法人名義で所有している賃貸物件でも、成田市の補助金は使えますか。

制度により異なります。危険ブロック塀除却は「所有し、除却工事を市内業者に行わせる方」、耐震改修は「住宅を市内に所有している方」で、法人を明示的に排除する記載は見当たりません。一方、住宅用省エネルギー設備設置費補助金は対象者が「個人」と明記され、住民登録要件もあるため法人は対象外です。空家改修補助金の事業用改修は法人が明示的に対象に含まれています。個別の可否は必ず担当課にご確認ください。

Q. アパート(共同住宅)の耐震補強に、市の耐震改修助成は使えますか。

使えません。市の案内には「一戸建てまたは併用住宅(住居部分が延べ面積の1/2以上)が対象」と明記されています。共同住宅は対象外です。ただし、1階が店舗や事務所で2階以上が住居という併用住宅で、住居部分が延べ面積の1/2以上を占めるものは対象になり得ます。

Q. マンションの予備診断補助は、区分所有のオーナーでも申請できますか。

耐震診断等助成のうちマンション予備診断は、補助対象者が「区分所有法に基づく決議を経たマンションの管理組合」とされています。区分所有者個人が単独で申請することはできません。管理組合として総会決議を経る必要があります。

Q. 補助金の入金はいつになりますか。工事代金は先に払う必要がありますか。

原則として、工事完了後に実績報告を行い、審査を経て補助金額が確定してから交付されます。実績報告の審査に1か月ほどかかるため、入金までには相応の期間があります。ただし成田市の耐震診断・耐震改修には代理受領制度があり、これを使えば工事費と補助金の差額分だけを業者に支払えばよくなります。

Q. 国と市の補助金を、同じ工事で両方もらえますか。

原則としてできません。成田市の申請書類に「国の補助金を受けていない理由書」の様式が用意されていることからも、市がこの点を確認していることがわかります。ただし、対象が異なる工事であれば、別々の制度を使うことは可能です(例:塀の除却は市、給湯器交換は国)。工事の切り分け方は事前に相談してください。

Q. 受け取った補助金に税金はかかりますか。

賃貸経営に関して受け取った補助金は、原則として不動産所得の総収入金額に算入されます。ただし対応する工事費が同時に費用または資産として計上されるため、実質的な負担は緩和されます。固定資産の取得に係る補助金については圧縮記帳という選択肢もあります。個別の判断は必ず税理士にご相談ください。

Q. 満室のまま工事はできますか。

外装工事であれば可能です。むしろ、入居者への影響を最小化する工法選択が重要になります。ロープアクセス工法なら足場を組まないため、駐車場を使い続けられ、工期も短縮できるケースが多くあります。窓の内窓設置など居室内の工事は、退去のタイミングに合わせるのが現実的です。

Q. 相見積もりは何社取るべきですか。

3社が目安です。ただし、同じ仕様書で比較することが前提です。仕様が揃っていない見積もりを金額だけで比べても意味がありません。また、市の補助金を使う工事は「市内業者」などの条件がかかる場合があるため、条件を満たす業者の中から選ぶ必要があります。


まとめ:成田市のオーナーが取るべき3つの行動

1. 今週中に、所有物件のブロック塀と給湯器を確認してください。
ブロック塀は上限10万円ですが、居住要件がなくオーナーが直接使える数少ない市の制度です。同時に、放置したときの工作物責任という無過失責任のリスクを消せます。給湯器は、国の賃貸集合給湯省エネ2026事業の予算消化が2026年9月2日時点で38%。故障を待たず計画交換に切り替えるべきタイミングです。

2. 旧耐震の一戸建て貸家があるなら、今年度中に耐震診断を受けてください。
成田市の耐震改修助成は補助率5分の4・上限115万円と、全国的に見ても手厚い制度です。そして「所有していること」が要件で、居住要件はありません。改修工事を今年度に間に合わせるのは日程的に厳しいものの、診断だけなら12月末まで。診断結果という客観的な数字を手にしておけば、令和9年度の4月に一番手で申請できます。

3. 市の省エネ設備補助金を投資用物件の収支計画に入れているなら、今すぐ見直してください。
成田市の住宅用省エネルギー設備設置費補助金は「自分が住み、住民登録している住宅」が要件です。投資用物件には原則使えません。代わりに、国の賃貸集合給湯省エネ2026事業と先進的窓リノベ2026事業が、賃貸オーナーを対象として設計されています。

そして最後に、補助金と同じくらい——場合によってはそれ以上に総額を左右するのが、工法の選択です。足場は工事費の2割超を占めながら、資産価値を生みません。株式会社明誠は、足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3つから、建物の形状・劣化状況・入居状況に応じた最適な工法をご提案します。

成田市の物件で「補助金を使いつつ、工事総額も下げたい」とお考えでしたら、まずは現地調査からご相談ください。制度の適用可否と、工法別の概算を並べてお示しします。

ロープアクセス工法の詳細・施工事例:https://rope-access-method.com/


出典・参考資料

お問い合わせ先(成田市)

  • 土木部 建築住宅課:0476-20-1564(〒286-8585 成田市花崎町760番地 市役所行政棟5階)
  • 環境部 環境計画課:0476-20-1533
  • 資産税課:0476-20-1514
  • 成田税務署:0476-28-5151

※本記事は2026年9月2日時点の公表情報に基づいて作成しています。制度内容・予算状況は変更される場合がありますので、申請前に必ず各窓口へご確認ください。税務の取扱いについては、必ず顧問税理士にご相談ください。

南足柄市の賃貸物件補助金|オーナー向け2026年版

2026年9月1日 更新

この記事で答える質問:南足柄市で賃貸マンション・アパート・テナントビル・倉庫を持っているオーナーが、2026年度(令和8年度)に実際に使える補助金はどれで、締切はいつで、いくら残っているのか?

先に結論を申し上げます。南足柄市の賃貸物件オーナーにとって、2026年度に本当に効く制度は4本です。しかもそのうち2本は、令和8年12月28日(月)という同じ日に申込が締め切られます。さらに神奈川県の1本は、8月31日時点で予算の90%に到達しています。

私は株式会社明誠の本間と申します。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年近くやってきました。補助金の記事は世の中に山ほどありますが、そのほとんどは「持ち家に住んでいる人」向けに書かれています。賃貸経営をしている方が読むと、いざ申請段階で「戸建住宅に限る」「現に居住していること」という一行に弾かれる。今日はそこを、賃貸オーナーの目線だけで整理します。


1. 結論:南足柄市の賃貸オーナーが2026年に押さえる補助金は「4本」

まず全体像です。南足柄市内に収益物件をお持ちの方が現実的に使える制度を、金額と締切で並べます。

# 制度の正式名称 実施主体 金額 賃貸物件での使い勝手 締切
1 南足柄市危険ブロック塀等安全対策補助金 南足柄市 撤去費(税抜)の1/2以内・最大20万円 ○ ただし収益目的の解体は対象外 令和8年12月28日(月)
2 南足柄市木造住宅耐震改修工事補助 南足柄市 工事費等(税抜)の1/2以内・最大100万円 ◎ 借家・空室でも申請可 令和8年12月28日(月)
3 賃貸集合給湯省エネ2026事業 経済産業省(資源エネルギー庁) 1台5万円/7万円+加算3万円 ◎ 賃貸集合住宅オーナー専用制度 予算上限まで(遅くとも2026年12月31日)
4 令和8年度神奈川県自家消費型再生可能エネルギー導入費補助金 神奈川県 太陽光1kWあたり8万円/蓄電池1kWhあたり5万円 ○ 事業者限定・残枠約1割 予算上限まで(8/31時点で90%到達)

このほか、工場・倉庫・事業所をお持ちの方には、南足柄市の企業立地・拡大再投資に対する奨励措置(固定資産税・都市計画税の実質1/2軽減が5年間)という、金額でいえば最も大きい制度があります。これは第8章で扱います。

逆に、南足柄市地球温暖化対策推進事業補助金(ZEH・断熱リフォーム・太陽光・蓄電池)は、EV・V2Hを除いて戸建住宅が対象です。賃貸集合住宅のオーナーが「市に太陽光の補助があるらしい」と聞いて申請しようとすると、ここで止まります。第7章で詳しく書きます。


2. なぜ今、南足柄市のオーナーは「塀」から見るべきなのか

令和8年6月26日の夜に起きたこと

2026年6月26日22時29分頃、山梨県東部・富士五湖を震源とする地震が発生しました。規模はマグニチュード5.6、最大震度は6弱。神奈川県内でも相模原市緑区、中井町、松田町、山北町で震度5弱を観測し、南足柄市では震度4を記録しています。

震度4。数字だけ見れば、建物本体が壊れるレベルではありません。問題はその後です。

市が公式に点検を呼びかけている

南足柄市は自らのウェブサイトで、こう書いています。

令和8年6月26日夜に発生した地震により、ブロック塀や石積塀が一部倒壊するなどの被害が発生しました。

(出典:南足柄市「危険ブロック塀等安全対策補助金」/ページ最終更新 2026年7月2日)

そのうえで市は、ブロック塀等(ブロック塀、大谷石などの石積塀、組立式コンクリート塀)の点検を改めて呼びかけ、撤去を検討する場合は着工前に建築営繕課へ相談するよう案内しています。

南足柄市は市域の約7割が森林で、山あいから平地へ下る地形に古い集落と後発の宅地が混在しています。傾斜地の擁壁の上にブロック塀、その足元が市道、というかたちの敷地が少なくありません。震度4で一部が倒れたということは、震度5強〜6弱を食らったときに何が起きるかの予告だと私は受け止めています。

塀の倒壊は「オーナーの責任」になりうる

ここが賃貸オーナーにとって本題です。塀が道路側に倒れて通行人が負傷した場合、民法第717条の土地の工作物責任が問題になります。工作物の設置または保存に瑕疵があったとき、第一次的には占有者、占有者が必要な注意を尽くしていたときは所有者が損害を賠償する責任を負う、という条文です。所有者責任は、過失がなくても免れにくい構造になっています。

私は建物の外壁を見に行った現場で、建物そのものより先に塀のことを申し上げることが年に何度かあります。外壁のタイルが1枚浮いているより、道路際の塀が傾いている方が、事故が起きたときの金額も社会的なダメージも桁が違うからです。

そして、市が「一部倒壊した」と公表した年の12月28日に、その撤去補助の受付が閉まります。


3. 危険ブロック塀等安全対策補助金:最大20万円、ただしオーナーには落とし穴がある

対象になる塀

南足柄市の制度の要件は明快です。

  • 市内に存在する、道路に面する高さが1メートル以上あるブロック塀等
  • 点検表で点検し、危険であると判断されたもの
  • ブロック塀等=ブロック塀、石積塀、組立式コンクリート塀その他これらに類する塀

対象となる工事は次のいずれかです。

  • ブロック塀等の全てを解体すること
  • 一部を解体する場合は、道路面から40センチメートル以下の高さにすること

補助金額は、1件につき撤去に要する費用(消費税を除く)の2分の1以内の額で、最大20万円です(出典:南足柄市「危険ブロック塀等安全対策補助金」)。

★ここが落とし穴:収益目的の解体は対象外

市の要綱には、補助の対象にならないケースが明記されています。賃貸オーナーが必ず読むべきなのは2つ目です。

  • 他の助成又は補償を受けてブロック塀等の撤去を行う場合
  • 販売又は収益を目的として整地、宅地造成や解体工事をする際にブロック塀等を撤去する場合

つまり、「築古アパートを解体して更地にして売る」「宅地分譲する」という流れの中で塀を壊すと、この補助金は使えません。同じ塀を壊すのに、目的が「安全対策」なら20万円、「収益化」ならゼロ。ここを取り違えると、事前相談の段階で止まります。

逆に言えば、運用を継続する物件の塀を、安全対策として単独で撤去するなら、正面から対象になります。私がオーナーさまにお勧めするのは、外壁改修や屋上防水の見積を取るタイミングで、塀の撤去だけを別の工事として切り出しておくことです。見積書も分けます。市の要綱では、他の工事を含む見積書の場合は塀の撤去に係る部分が明確に分かるものとされていますから、どのみち内訳は必要になります。

申請の実務

  • 工事に着手する前に申請手続きが必要。着工してからでは出ません
  • 申請書提出の前に、建築営繕班(直通 0465-73-8058)へ事前相談の連絡が必要
  • 必要書類:交付申請書、案内図、塀の位置・延長・高さを記入した図面、現況写真(A4縦の台紙に貼付)、申請者自身が塀を直接確認して記入した点検表、撤去の見積書の写し、(申請者が所有者でない場合)所有者の同意書
  • 受付窓口:南足柄市役所2階 建築営繕課 建築営繕班
  • 申込締切:令和8年12月28日(月)。申込件数が予算に達した場合は受付終了の可能性あり

点検表は所有者本人が記入します。管理会社任せにできない部分なので、遠方にお住まいのオーナーさまは、現地に行く日を先に決めてしまうのが早いです。


4. 木造住宅耐震改修工事補助:上限100万円、しかも「借家」「空室」でも使える

制度の要点

南足柄市は平成12年5月31日以前の耐震基準で建てられた木造住宅を対象に、簡易耐震診断・耐震診断補助・耐震改修工事補助・除却工事補助の4本立てで支援しています(出典:南足柄市「木造住宅の耐震化事業」)。

このうち耐震改修工事補助の制度概要には、賃貸オーナーが目を留めるべき一文が2つ入っています。

  1. 居住していない住宅も補助対象です
  2. 借家など、所有者以外の居住者でも申請が可能です

(出典:南足柄市「耐震改修工事補助」)

制度の骨格は次のとおりです。

項目 内容
補助率・上限 耐震改修工事等に要する費用(消費税を除く)の2分の1以内・最大100万円
対象建築物 平成12年5月31日以前に建築された一戸建住宅、2世帯住宅、店舗・事務所併用住宅
構造の限定 2階建て以下の在来軸組工法による木造建築物(枠組壁工法・プレハブ工法は除く)
対象工事 耐震診断の結果、総合評点が1.0未満の住宅を、1.0以上となるよう設計して行う工事
技術者要件 建築士で、(一財)日本建築防災協会の木造耐震診断資格者講習または神奈川県木造住宅耐震実務講習会を修了した「耐震診断技術者」の設計、かつ工事中も同技術者による工事監理を受けること
補助対象経費 耐震改修工事、耐震診断、工事設計、工事積算、工事監理その他耐震改修に必要なもの
併用住宅の条件 住宅以外の床面積が延べ床面積の2分の1未満
締切 令和8年12月28日(月)(上限到達で早期終了の可能性あり)

なぜこれが賃貸オーナーにとって稀有なのか

耐震改修の補助制度は全国の自治体にありますが、その多くは「自ら居住する住宅」を条件にしています。オーナーが持っている木造アパートや、空室のまま置いてある戸建賃貸は、対象外になることが珍しくありません。

南足柄市の制度は、そこを外しています。居住していない住宅も対象、借家も申請可。しかも上限100万円は、県西部の同規模自治体の中では厚い方です。

対象は「一戸建住宅、2世帯住宅、店舗や事務所併用住宅」ですから、いわゆる木造アパート(共同住宅)そのものは形式的に読めば範囲外です。ただし、戸建賃貸、二世帯を分けて貸している物件、1階が店舗で2階が住居の併用建物を持っているオーナーさまは、ここに乗る可能性が十分あります。南足柄市の駅前(大雄山駅周辺)や旧道沿いには、この形の建物が今も残っています。判断に迷う建物こそ、建築営繕課への事前相談の価値があります。

反面:除却工事補助は賃貸には使いにくい

同じ耐震化事業の中に除却工事補助(1/2以内・最大20万円)がありますが、こちらの制度概要には次の条件が入っています。

  1. 現に居住している住宅で建替えを目的とした除却工事が補助対象です

(出典:南足柄市「除却工事補助」)

「現に居住し、建替えを目的とした建築物」が対象なので、空き家になった木造賃貸を更地にして売るという出口には、この補助は使えません。ここは正直に申し上げておきます。除却で20万円を狙うより、耐震改修で100万円を取って運用を続けるか、補助なしで解体して土地として売るか、二択で考えた方が話が早いです。

NOI・入居率への効き方を数字にする

耐震改修は「安全のため」で終わらせると経営判断になりません。数字にします。

家賃6万円・8戸の木造アパートを想定します。満室の年間賃料収入は576万円。

  • 耐震改修工事費が総額240万円かかったとして、補助が上限100万円出れば、実質負担は140万円
  • 入居率が92%から96%に4ポイント改善すると、年間賃料収入は約23万円増える(576万円×4%)
  • NOI(純収益=賃料収入から運営費を引いた実質的な手取り)が年23万円改善し、この地域のキャップレート(還元利回り)を仮に8%とすると、収益還元法での物件価値は約288万円押し上がる計算になります(23万円÷8%)

もちろん、これは机上の試算です。耐震改修だけで入居率が4ポイント上がると断言することはできません。ただ、140万円の実質負担に対して、賃料収入とは別に物件価値が動く可能性があるという枠組みで見るかどうかで、決裁の速度が変わります。

入居率を1ポイント動かす、という表現はどうも実感が湧きにくいので、もう少し噛み砕きます。家賃6万円・8戸なら、年間の満室収入は576万円。入居率1ポイントは、年間5万7,600円です。1室が1か月空くだけで、入居率はおよそ1ポイント落ちます。築古の木造アパートで「耐震性が不安だから」と申込みが1件流れたときの損失は、それだけでこの程度の規模になる。補助金100万円は、その空室を17か月分埋めるのと同じ効果があるということです。


5. 賃貸集合給湯省エネ2026事業:1台5〜7万円、賃貸オーナー専用の国の制度

制度の要点

これは南足柄市に限らず全国で使える国の制度ですが、賃貸集合住宅のオーナーだけを対象にした、数少ない制度なので必ず押さえてください。

正式名称は「既存賃貸集合住宅用小型省エネルギー型給湯器導入促進事業費補助金(賃貸集合給湯省エネ2026事業)」。令和7年度補正予算で35億円が計上されています。

項目 内容
補助対象事業 対象となる既存賃貸集合住宅の住戸で、従来型給湯器を小型の省エネ型給湯器(エコジョーズ/エコフィール)に交換する事業(リース利用を含む)
補助対象者 賃貸集合住宅のオーナー等で、給湯器の交換工事の発注者。賃貸住戸を2戸以上所有する区分所有者、管理委託を受けている管理会社も含む
対象建物 1棟に2戸以上の賃貸住戸を有し、建築から1年以上経過している(またはいずれかの住戸で居住実績がある)建物
基本額 追い焚き機能なし 5万円/台、あり 7万円/台(いずれか、1住戸1台まで)
加算額 3万円/台。追い焚きなし=共用廊下を横断するドレン排水ガイド敷設工事/追い焚きあり=浴室へのドレン水排水工事(三方弁工事、三本管(二重管含む)工事)
着工期間 2025年11月28日以降
交付申請 2026年3月31日〜予算上限に達するまで(遅くとも2026年12月31日)
交付申請の予約 予算上限に達するまで(遅くとも2026年11月16日)

(出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業 事業概要、資源エネルギー庁)

オーナーは原則、自分で申請できない

ここが実務上いちばん引っかかる点です。交付申請は、あらかじめ賃貸集合給湯省エネ事業者として登録を受けた事業者(リフォーム工事なら施工業者・管理会社等、リース利用ならリース事業者)が行います。オーナーは共同事業者という位置づけです。

例外は、国内に所有または管理する既存賃貸集合住宅の住戸数が200戸以上である工事発注者。事務局に申請して認められれば、自ら手続きができます。

補助金の還元方法は、①契約代金に充当する、②現金で支払う、のいずれか。②の場合、登録事業者は補助金の交付から遅くとも2か月以内に還元を完了する必要があります。契約前に「うちは登録事業者か」「還元は充当か現金か」を確認しておかないと、後から揉めます。

もう一点、注意すべき除外規定があります。住宅であっても事業用に貸し出される住戸は対象外、オーナーや親族等が居住する住戸は含みません。1階を事務所として貸している複合物件では、住戸部分だけを切り分けて数える必要があります。

20戸一斉交換のキャッシュフロー試算

築25年、20戸のファミリー向け賃貸マンション(追い焚きあり)を想定します。

  • 給湯器20台を一斉交換:7万円×20台=140万円
  • 浴室へのドレン水排水工事(三方弁工事等)を実施した住戸が15戸:3万円×15台=45万円
  • 補助額合計:185万円

給湯器は、故障してから1台ずつ交換すると、そのたびに入居者対応と手配コストが乗ります。真冬に給湯器が止まると、退去の引き金にもなります。私は現場で、給湯器の故障から始まった不満が、外壁の汚れやポストの錆にまで飛び火して退去に至った例を何度も見ています。一斉交換は、補助金が付く年にまとめてやるのが一番安いというのが、私の実感です。

なお、交付申請には工事前・工事後の写真の提出が必要です。撮り忘れると補助が出ません。加算を受ける場合は、排水管や排水ユニット等を写した工事後写真、場合によっては浴槽のエプロン内の写真も要ります。ここは施工業者の段取り力が出るところです。


6. 神奈川県自家消費型再生可能エネルギー導入費補助金:1kWあたり8万円、ただし残りは約1割

制度の要点

法人または青色申告を行っている個人事業者が、県内の事業用施設に自家消費型の再エネ発電設備を入れるときの補助です。個人の住宅への導入は対象外と県が明記しています。

項目 内容
補助対象者 法人または青色申告を行っている個人事業者。リース・PPAモデル等の場合はリース等事業者が交付を受ける
太陽光の要件 発電出力10kW以上。FIT・FIPの認定を受けない設備に限る(自家消費が前提)
補助額(発電設備) 発電出力に1kWあたり8万円を乗じた額。かながわ脱炭素チャレンジ中小企業認証を受けた場合は1kWあたり2万円上乗せ
上限 中小企業等:補助対象経費/中小企業等でない場合:補助対象経費または3,000万円の低い方
蓄電システム 発電設備と併せて導入する場合のみ、蓄電容量に1kWhあたり5万円(上限500万円)。蓄電システムだけの設置は対象外
当初予算額 9億9,300万円
申請 電子申請システムのみ・先着順。持込不可
着手 交付決定後に着手。交付決定前に着工した場合は補助対象外
完了期限 令和9年3月31日(水)までに設置工事および支払いを完了
実績報告 完了日から2か月を経過した日、または令和9年4月15日(木)のいずれか早い日まで

(出典:神奈川県「令和8年度神奈川県自家消費型再生可能エネルギー導入費補助金」)

8月31日時点で予算の90%に到達

県のページの新着情報が、そのまま緊急度の指標になっています。

  • 令和8年8月12日:申請額が予算額の70%に到達
  • 令和8年8月21日:80%に到達
  • 令和8年8月31日:90%に到達

(同上)

9日で10ポイント、10日でさらに10ポイント。このペースが続けば、残りの1割は長くは持ちません。県も「電子申請システム上受け付けた場合であっても、予算額に達してからの申請は受理することはできません」「提出期限にかかわらず、補助枠を超える申請があった時点で受付を終了します」と明記しています。

賃貸マンションの共用部電力(エレベーター、給水ポンプ、共用廊下照明)を自家消費でまかなう構成なら、この補助は事業者向けとして射程に入ります。ただし10kW以上という要件があるので、小規模なアパートの屋根では届かないことがあります。県は無料の「太陽光発電設備の導入提案」(ヒアリングと現地調査のうえ、設置場所や導入費用を提案書として提供)も用意していますので、10kW載るかどうかから確認するのが順序です。

もうひとつ、県のページには神奈川県警からの注意喚起として、太陽光発電設備から銅線等が盗まれる事例が掲載されています。南足柄市は森林が市域の約7割を占め、人目の少ない敷地も少なくありません。設置後の防犯計画まで含めて考えてください。


7. 市の「地球温暖化対策推進事業補助金」は戸建て限定──いちばん誤解されやすい制度

南足柄市は令和4年6月に「ゼロカーボンシティ宣言」を行い、令和8年度も地球温暖化対策推進事業補助金を実施しています。ただし、賃貸集合住宅のオーナーが使える範囲は限定的です。

区分 内容 補助金額 賃貸オーナーの可否
1 新築戸建住宅のZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス) 1軒あたり上限10万円 × 戸建住宅
2 既存戸建住宅の断熱リフォーム 1軒あたり上限7万5000円 × 戸建住宅
3 既存戸建住宅への太陽光発電設備・蓄電システム 太陽光:上限10万円(1kWあたり2万円)/蓄電:上限5万円(1kWhあたり2万円) × 戸建住宅・個人の住宅
4 EV(電気自動車)の購入、充給電システム(V2H)の設置 EV:1台あたり上限10万円/V2H:1台あたり上限5万円 ○ 4のみ個人・法人の両方が対象

(出典:南足柄市「【受付中】ZEHや断熱リフォーム、EV、太陽光発電設備の導入補助」/ページ最終更新 2026年8月27日)

区分1〜3は「戸建住宅」「個人の住宅」と明記されています。戸建賃貸を所有していて断熱リフォームをするというケースは相談の余地がありますが、共同住宅の共用部に太陽光を載せる用途では、この市の補助ではなく第6章の県の補助を見る流れになります。

区分4のEV・V2Hだけが個人・法人の両方が対象です。管理用の車両をEVに替える、駐車場にV2Hを設置して入居者向けの付加価値にする、という使い方は法人オーナーでも射程に入ります。

そして、この制度には他とは違う独特の要件があります。

市の補助金の申請をするためには、国又は神奈川県が実施する補助事業に申請済又は令和9年2月26日(金)までに申請し交付決定を受けている必要があります。

つまり、市単独では使えません。国か県の制度に乗ることが前提の「上乗せ」型です。申請期間は令和8年6月1日(月)〜令和9年2月26日(金)午後4時まで、市役所2階環境課へ直接または郵送(必着)、申し込みは先着順。市は令和8年8月27日時点の受付状況を公表しています。


8. 工場・倉庫・事業所オーナー向け:企業立地・拡大再投資に対する奨励措置

金額の桁でいえば、南足柄市でいちばん大きいのはここです。

南足柄市は「企業の立地の促進等に関する条例」を平成20年4月1日から施行しています。そして令和6年4月1日に、拡大再投資に係る奨励措置の要件緩和・期間延長・回数制限撤廃が施行されました。

立地に係る奨励措置

項目 内容
対象地域 指定産業集積地域(市長が指定する地域)
適用要件 事業所を新設、移設、または用地を拡大して増設し、操業を開始する場合。資本投下額3億円以上(中小企業は5,000万円以上)
固定資産税・都市計画税 賦課される年度から5年間、実質1/2軽減(固定資産税は100分の0.7、都市計画税は100分の0.1の不均一課税)
雇用奨励金 市内に住所を有する者等を5人以上(中小企業は2人以上)新規雇用した場合、新規雇用従業員×20万円(障害者の場合は40万円)、上限1,400万円
転入奨励金 従業員を10人以上市内に転入勤務させた場合、市内に転入した従業員×10万円、上限1,400万円

拡大再投資に係る奨励措置(令和6年4月1日改正)

項目 改正前 改正後
対象企業 市内に立地後10年以上 市内に立地後3年以上
対象地域 工業系地域(指定産業集積地域を除く) 工業系地域(指定産業集積地域を含む)
固定資産税の軽減 4年度分 5年度分
都市計画税の軽減 4年度分 5年度分
回数 1回限り 制限を廃止

適用要件は、市内に立地後3年以上事業活動を行っている企業等が、敷地内に家屋を新設または増設し当該家屋にかかる償却資産を取得して操業を開始する場合。投下資本額は2億円以上(中小企業は3,000万円以上)です。

指定産業集積地域

地域の名称 指定地域 面積
東部工業団地 和田河原 字向河原の一部/塚原 字上河原の一部 約15.5ha
壗下竹松北地区 壗下字沢及び竹松字上河原地内 約11.8ha
怒田地区 怒田字天井、字別名、字中沢、字蛇ヶ尾、字入改戸及び字山神戸地内 約41.5ha

(出典:南足柄市「企業立地・拡大再投資に対する奨励措置」)

中小企業なら投下資本額3,000万円以上で拡大再投資の対象に入り、しかも回数制限がない。倉庫を1棟増築するたびに5年間の税軽減が乗る構図です。南足柄市は大井松田インターチェンジから県道78号を西に約4kmという立地で、物流用途の引き合いがある土地柄です。工場・倉庫をお持ちの方は、大規模修繕の計画と増築計画を同じテーブルに載せて検討する価値があります。

なお、これは税務・法務の判断を伴う話です。私は建設会社の人間であって税理士でも弁護士でもありませんので、適用可否は必ず市の商工観光課(0465-73-8030)と顧問税理士にご確認ください。


9. 税務:補助金は雑収入、そして「修繕費か資本的支出か」

補助金の話は、受け取った後の処理まで含めて初めて経営判断になります。ここは賃貸オーナー向け記事として外せません。

補助金は受給時に雑収入として計上する

国や自治体から受け取った補助金は、原則として受給時に雑収入(益金)として計上されます。100万円の補助が出たら、そのまま100万円が手元に残るわけではなく、課税所得が100万円増えます。実効税率が30%なら、手残りは70万円という感覚で計画を立てるのが安全です。

固定資産の取得に充てた補助金については、一定の要件のもとで圧縮記帳という処理を選べる場合があります。取得価額を圧縮して課税を将来に繰り延べる仕組みですが、適用要件は制度ごとに異なります。顧問税理士に、制度名を伝えたうえで確認してください。

修繕費か資本的支出か

税務処理で結果が大きく変わるのが、この線引きです。

区分 考え方 経費計上
修繕費 通常の維持管理、原状回復のための支出 その年に全額損金算入
資本的支出 使用可能期間を延長させる、または価値を増加させる支出 資産計上し、耐用年数にわたって減価償却

実務でよく問題になる例を挙げます。

  • 外壁塗装:既存と同等の塗料で塗り替えるなら修繕費に寄る。高耐久のフッ素系に変更して耐用年数を明確に延ばす場合は、資本的支出と判断されうる
  • 屋上防水:既存防水層の改修は修繕費に寄るが、断熱を新たに付加すると資本的支出の議論になる
  • 給湯器交換:従来型からエコジョーズへの交換は、同機能の更新か性能向上かで見解が分かれる
  • 耐震改修:耐震性能を評点1.0未満から1.0以上に引き上げる工事は、価値の増加として資本的支出になりやすい

「今期は利益が出過ぎているから修繕費で落としたい」「来期以降に平準化したいから資本的支出にしたい」というオーナーさまの意向は、工事の仕様を決める段階から設計に織り込むことができます。工事が終わってから税理士に相談しても、もう仕様は動かせません。私が見積の段階で税理士さんを交えた打ち合わせをお勧めするのは、この順番のためです。


10. 出口戦略:南足柄市で「売れる物件」にしておく

収益還元とキャップレート

賃貸物件の価格は、最終的にNOI÷キャップレートで見られます。NOIが年間100万円で、買主が想定するキャップレートが8%なら、収益還元価格は1,250万円。NOIが年間150万円になれば1,875万円です。NOIの50万円の差が、価格では625万円の差になる。これが賃貸経営の増幅装置です。

だから修繕投資は、「支出をいくら抑えたか」ではなく「NOIをいくら押し上げ、キャップレートをいくら押し下げたか」で評価すべきです。キャップレートは、買主が感じるリスクの裏返しです。すぐに追加投資が必要になりそうな物件ほど、キャップレートは高く(=価格は安く)見積もられます。

買主が必ず見る3点

私が売却を控えたオーナーさまからご相談を受けるとき、買主側のデューデリジェンスで必ず突かれるのは次の3点です。

  1. 外壁と屋上防水の直近の履歴。何年前に、何を、いくらでやったか。記録がないと「これから1,000万円かかる」と値引き交渉の材料にされます
  2. 給湯器などの設備の残存年数。20戸の給湯器が全部15年落ちなら、買主は数百万円のコストを織り込みます
  3. 塀・擁壁・外構の状態。ここが傾いていると、隣地との紛争リスクとして減額されます

面白いことに、この3点は今日ご紹介した補助金の対象範囲と、ほぼ重なります。補助金を使って直せる場所は、そのまま買主が値引きの材料にする場所なのです。売却を3年以内に考えている方ほど、補助金の締切カレンダーを見る意味があります。


11. 南足柄市という市場の輪郭

数字で市場を押さえておきます。

項目 数値 時点
人口 39,907人 令和5年4月
世帯数 16,582世帯 令和5年4月
1世帯当たり人員 2.41人 令和5年4月
面積 77.09平方キロメートル 平成27年
森林面積 市域の約7割 ─
事業所数 1,245事業所 令和3年経済センサス
従業員数 14,050人 令和3年経済センサス

(出典:南足柄市「南足柄ってこんなところ」)

読み取れることを3つ書きます。

1世帯2.41人という数字は、県内の平均的な都市部より高めです。単身向けワンルームより、ファミリー・2DK以上の需要が相対的に厚い市場だということです。追い焚き機能付きの給湯器が主流になるので、賃貸集合給湯省エネ2026事業では7万円/台(追い焚きあり)の単価が効いてきます。

事業所1,245・従業員14,050人。人口約4万人の市に1万4千人の就業者がいるということは、市内の雇用が住宅需要を支えている構造です。工業系地域の企業立地が動けば、賃貸需要も動きます。第8章の奨励措置が拡充された意味は、賃貸オーナーにとっても他人事ではありません。

森林が市域の約7割。平地部に住宅と事業所が集中し、そこから斜面地へ広がる地形です。擁壁の上の塀、法面沿いの外構が多い。だから第2章・第3章の話が、この市では特に重く効きます。

交通は、車なら東名高速道路「大井松田IC」から県道78号線を西に直進約4km、電車なら「小田原駅」から伊豆箱根鉄道大雄山線で「大雄山駅」下車です。


12. 工事の進め方:足場・ロープアクセス・ハイブリッドの選択がNOIに効く

ここからは自社サービスの話になりますので、見出しで区切っておきます。

足場費は「補助金より大きい」ことがある

補助金の話をさんざんしてきて恐縮ですが、正直に申し上げます。中規模の賃貸マンションでは、仮設足場の費用が補助金の総額を上回ることが珍しくありません。

外壁の部分補修とシーリングの打ち替えだけをやりたいのに、建物を一周する足場を架けると、それだけで100万円単位の費用が乗ります。しかも足場があると、居住者は洗濯物が干せず、窓を開けられず、防犯上の不安を訴えます。工事期間中の不満は、そのまま更新時の退去につながる。ここが賃貸オーナーにとっての本当のコストです。

ロープアクセス工法という選択肢

弊社は、産業用ロープを使って建物の外壁に直接アクセスするロープアクセス工法(無足場工法)を扱っています。足場を架けずに、屋上から降下して外壁の調査・補修・塗装・シーリング打ち替えを行う工法です。ロープアクセス工法の技術情報や安全基準、施工事例については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。

賃貸オーナーにとっての効き方は3つです。

  • 足場費が不要または大幅圧縮され、その分を補助対象工事そのものに回せる
  • 工期が短いため、募集停止期間や入居者ストレスが短く済む
  • 部分補修に踏み切れる。足場が必要だと「どうせなら全面」となりがちですが、ロープアクセスなら傷んだ面だけを直せる

もちろん万能ではありません。バルコニーが深い建物、ルーバーや庇が張り出した外観、屋上に支点が取れない構造では、ロープアクセスは向きません。大面積の全面塗装をまとめて仕上げるなら、足場を架けた方が結果的に安く早い場合もあります。「ロープアクセスの方が必ず安い」とは申し上げません。

3工法から選べるという意味

弊社は、通常の仮設足場による工事、ロープアクセスによる無足場工法、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物ごとに最適な組み合わせを提案しています。日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しているため、専門工事を束ねた形でご提案できます。

詳しくはロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。


13. 申請スケジュール逆算カレンダー(2026年9月時点)

今日から動くとして、どの順で何をするか。

時期 やること
2026年9月中 神奈川県の自家消費型再エネ補助は残枠約1割。10kW以上載るかを最優先で確認(県の無料「導入提案」を活用)。同時に、物件の塀を自分の目で見て写真を撮る
2026年9〜10月 建築営繕課(0465-73-8058)へ事前相談。ブロック塀・耐震改修の両方について、対象になるかを口頭で確認。撤去業者・耐震診断技術者の手配
2026年10〜11月 見積取得(塀の撤去は他工事と分けて内訳を明示)。給湯器交換は登録事業者を選定し、11月16日までに交付申請の予約を検討
2026年11〜12月 市への交付申請。12月28日(月)が塀・耐震改修の申込締切。予算到達で早期終了の可能性があるので、月内は避けたい
2027年2月26日(金)16時 市の地球温暖化対策推進事業補助金(EV・V2H等)の申請期限。国・県の制度への申請済であることが前提
2027年3月31日(水) 県の自家消費型再エネ補助:設置工事および支払いの完了期限

どの制度も共通して、着工前の申請が原則です。「工事が終わってから申請する」は通用しません。これだけは覚えて帰ってください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 南足柄市で賃貸アパートを持っています。市の太陽光の補助金は使えますか?
A. 使えません。南足柄市地球温暖化対策推進事業補助金の太陽光・蓄電池の区分は「既存戸建住宅」「個人の住宅」が対象です。賃貸集合住宅の共用部に太陽光を載せるなら、事業者向けの神奈川県自家消費型再生可能エネルギー導入費補助金(1kWあたり8万円、10kW以上)を検討してください。ただし8月31日時点で予算の90%に到達しています。

Q2. 空室の戸建賃貸でも耐震改修の補助は受けられますか?
A. 南足柄市の耐震改修工事補助は、制度概要に「居住していない住宅も補助対象です」「借家など、所有者以外の居住者でも申請が可能です」と明記されています。平成12年5月31日以前建築、2階建て以下の在来軸組工法、耐震診断で総合評点1.0未満、という要件を満たすかを建築営繕課にご確認ください(出典:南足柄市)。

Q3. アパートを解体して売却する予定です。ブロック塀の撤去補助は使えますか?
A. 使えない可能性が高いです。南足柄市の危険ブロック塀等安全対策補助金は、「販売又は収益を目的として整地、宅地造成や解体工事をする際にブロック塀等を撤去する場合」を対象外と明記しています。運用を継続する物件の安全対策としての撤去であれば対象になり得ます。事前に建築営繕課(0465-73-8058)へご相談ください。

Q4. 給湯器の補助金は、自分で申請すればいいのですか?
A. 原則できません。賃貸集合給湯省エネ2026事業の交付申請は、登録を受けた事業者(施工業者・管理会社等、またはリース事業者)が行います。例外として、国内に所有または管理する既存賃貸集合住宅の住戸数が200戸以上の事業者は、事務局に申請して認められれば自ら手続きが可能です。

Q5. 補助金を受け取ったら、税金はどうなりますか?
A. 原則として、受給した年度に雑収入(益金)として計上され、課税所得が増えます。固定資産の取得に充てた補助金は、要件を満たせば圧縮記帳により課税の繰り延べができる場合があります。制度ごとに扱いが異なるため、顧問税理士にご確認ください。私は税理士ではありませんので、ここは一般的な考え方のご紹介にとどめます。

Q6. 締切に間に合わなかったら、来年度もありますか?
A. 制度は年度ごとに見直されるため、翌年度も同じ内容で継続するとは限りません。金額や要件が変わることも、事業自体が終了することもあります。特に先着順・予算到達で終了の制度(県の自家消費型再エネ、市の地球温暖化対策推進事業)は、締切日を待たずに閉まります。最新情報は必ず各実施主体の公式ページでご確認ください。


この記事のポイントまとめ

  • 南足柄市の賃貸オーナーが狙う本命は、塀の撤去20万円と木造耐震改修100万円
  • ブロック塀・耐震改修の申込締切はどちらも令和8年12月28日(月)
  • 塀の撤去は「収益目的の解体に伴う撤去」だと補助対象外になる
  • 木造耐震改修は借家・空室でも申請できる、賃貸オーナーには稀有な制度
  • 賃貸集合給湯省エネ2026事業は1台5〜7万円+加算3万円、20戸で185万円規模
  • 県の自家消費型再エネ補助は1kWあたり8万円だが、8月31日時点で予算の90%到達
  • 市の太陽光・断熱補助は戸建住宅限定。集合住宅オーナーはEV・V2Hのみ対象
  • 工場・倉庫は企業立地・拡大再投資の奨励措置で固定資産税が5年間実質1/2
  • 補助金は雑収入として課税、修繕費か資本的支出かは工事仕様の段階で設計する
  • どの制度も着工前の申請が原則。工事後の申請は通らない

最後に

南足柄市は、私が現場に伺うと、まず空気が違う土地です。森が近く、水がきれいで、そこに暮らす方々が長く住み続けている。だからこそ、建物も塀も、静かに年を取っていきます。

令和8年6月26日の地震で、市内の塀が一部倒れました。幸い大きな人身事故の報は聞いていませんが、あれは偶然が味方しただけかもしれません。震度4であの結果なら、次に何が来るかは考えたくもない。私が今回、補助金の記事なのに塀の話から始めたのは、そういう理由です。

補助金は、あくまできっかけです。20万円のために塀を直すのではなく、直さなければいけない塀があるから、ちょうど補助が使える年に動く。その順番でいいと思っています。

お持ちの物件で、まだこの補助金の検討を始めていないオーナーさまは、一度お問合せフォームからお声がけください。1棟の現地調査と、補助金を織り込んだ利回り改善シミュレーションだけでも承ります。塀を1枚見に行くだけでも構いません。

12月28日までに動けるかどうかが分かれ目です。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。

最終更新:2026年9月1日

※本記事の制度内容は2026年9月1日時点で公表されている情報に基づいています。補助金制度は予算到達や年度替わりで変更・終了する場合があります。申請前に必ず各実施主体の公式ページおよび窓口でご確認ください。また、税務上の取扱いについては顧問税理士にご相談ください。


出典・参考資料

お気軽にご相談ください!