小田原市で使える賃貸オーナー向け補助金活用ガイド|耐震・省エネ・給湯器交換【2026年度】
「小田原で持っている賃貸物件、そろそろ手を入れたいけれど、補助金は管理組合や持ち家向けばかりで、オーナーには関係ないのでは」——私が小田原エリアのオーナーさまから一番よく聞くのが、この声です。
結論から申し上げます。2026年度(令和8年度)の小田原市には、賃貸経営をしているオーナーが現実に使える制度が複数あります。ただし「賃貸は対象外」という落とし穴もはっきり存在します。今日は、使える制度と使えない制度を、オーナーの財布の感覚で整理してお伝えします。
小田原は、海沿いの塩害、旧耐震の木造アパート、駅前のRCマンション、相続で引き継いだ築古物件と、物件の事情が実に多様な街です。だからこそ「うちの物件はどれが使えるのか」を見極めることが、そのままNOI(実質的な賃料収益)の差になって効いてきます。
最初にお伝えしておきたいのは、補助金には大きく分けて「オーナー(賃貸事業)を正面から対象にしているもの」と「自分が住む持ち家を主な対象にしていて、賃貸は対象外、または要件確認が必要なもの」の2系統があるということです。この線引きを知らずに「補助金があるらしい」と工事を進めてしまうと、申請段階で対象外と分かって落胆する、という残念な展開になりがちです。だからこそ、工事の計画と同時に「自分の物件はどの制度の対象になるのか」を先に押さえておくことが、遠回りに見えて一番の近道になります。
まず全体像:小田原オーナーが押さえる「3つの財布」
補助金は、出どころで3つに分けて考えると整理しやすくなります。
ひとつ目は国の財布。給湯器交換や窓の断熱など、賃貸住宅オーナーを正面から対象にした事業があります。金額が大きく、賃料維持に直結するのが特徴です。
ふたつ目は小田原市の財布。ブロック塀の撤去、太陽光・蓄電池、耐震、感震ブレーカーなど、地域防災と脱炭素が中心です。市の制度は予算枠が小さく、先着順で締め切るものが多いのが要注意点です。
みっつ目は税の財布。固定資産税の減額措置です。現金が振り込まれるわけではありませんが、翌年度の税額が軽くなる形でキャッシュフローに効きます。ただし賃貸住宅は要件が厳しく、ここに一番大きな落とし穴があります。
以下、オーナーにとって使い勝手のよい順にご説明します。先に、本記事で取り上げる主な制度を一覧で整理しておきます。ご自分の物件に当てはまりそうなものから読み進めてください。
| 制度名 | 出どころ | 賃貸物件での使いやすさ | 補助の目安 | 申請の主体 |
|---|---|---|---|---|
| 賃貸集合給湯省エネ2026事業 | 国 | ◎(賃貸オーナー専用) | 1台5万〜10万円 | 登録事業者が代行 |
| 先進的窓リノベ2026事業 | 国 | ○(賃貸も対象) | 工事内容で変動(大型枠あり) | 登録事業者が代行 |
| ブロック塀等撤去費補助金 | 小田原市 | ○(個人・法人問わず可) | 1mあたり1万円・上限10万円 | オーナー本人 |
| 重点対策加速化事業費補助金 | 小田原市 | △〜○(事業用枠あり) | 区分により変動 | 本人またはPPA・リース事業者 |
| 木造住宅耐震改修・診断費補助金 | 小田原市 | △(自己居住が主対象) | 改修上限115万円 | 要件確認のうえ本人 |
| 感震ブレーカー設置費補助金 | 小田原市 | ○(防災対策) | 小規模 | オーナー本人 |
| 省エネ改修の固定資産税減額 | 税(市) | ×〜△(完全賃貸は対象外) | 翌年度税額の1/3減 | 申告で本人 |
「◎○△×」はあくまで賃貸経営者から見た使い勝手の目安です。最終的な対象可否は、必ず各制度の窓口でご確認ください。
1. 賃貸集合給湯省エネ2026事業|賃貸オーナー専用の「本命」
まず本命からいきます。国(経済産業省・資源エネルギー庁)の賃貸集合給湯省エネ2026事業は、その名のとおり賃貸の集合住宅を持つオーナーが対象の、数少ない「オーナー直撃型」の制度です。
対象は、既存のアパート・マンションで、従来型給湯器を高効率給湯器(エコジョーズ・エコフィール)へ交換する工事です。補助額は、追い焚き機能なしで1台あたり5万円、追い焚き機能ありで1台あたり7万円が基本。一定の排水(ドレン水)工事を伴う場合は、それぞれ最大8万円・10万円まで加算されます(出典:資源エネルギー庁 賃貸集合給湯省エネ2026事業、同 公式サイト)。
例えば10戸のアパートで追い焚きありの給湯器を全戸更新すれば、単純計算で70万円規模の補助になり得ます。給湯器はいずれ寿命を迎える設備ですから、「どうせ替えるなら補助の出るうちに替える」という判断が、そのまま手残りの差になります。
給湯器は、入居者が毎日触れる設備の代表格です。冬場にお湯の出が悪い、設定温度が安定しない、といった不具合は、退去や更新拒否の引き金になります。私の現場感覚では、エアコンと給湯器は「壊れてから替える」設備の典型で、壊れてからの緊急対応は単価も上がりがちです。計画的に、しかも補助が出るタイミングで更新できれば、コストと入居者満足の両面で得をします。高効率給湯器はガス代・灯油代も抑えられますから、その分は入居者のランニングコスト低減として、間接的に物件の競争力にもつながります。
注意点が2つあります。ひとつは、2025年11月28日以降に着工した工事が対象であること。もうひとつは、オーナーが直接申請するのではなく、登録された「賃貸集合給湯省エネ事業者」が申請を代行する仕組みである点です。事務局のホームページは2026年2月16日に開設されています。施工を依頼する業者が事業者登録をしているか、必ず確認してください。
2. 先進的窓リノベ2026事業|断熱で「結露・寒さのクレーム」を減らす
国(環境省)の先進的窓リノベ2026事業は、断熱性能の高い窓への改修を支援する制度で、賃貸住宅も対象になります(出典:環境省 先進的窓リノベ2026事業)。
窓の断熱は、オーナーにとって見落とされがちですが、入居者満足に直結する投資です。冬の結露、夏の暑さ、外の騒音——これらは退去理由になり、内見時の印象も左右します。私の経験上、築年数なりの「住み心地の劣化」は、賃料の下落圧力として静かに効いてきます。窓を一枚替えるだけで、その圧力をかなり抑えられることがあります。
補助額は窓の性能とサイズで決まり、戸建住宅で最大100万円、240平方メートル超の非住宅で最大1,000万円という大きな枠も用意されています。この制度も窓リノベ事業者を通じた申請になりますので、対応業者かどうかの確認が前提です。
国の住宅省エネ支援(給湯・窓・断熱)は年度ごとに名称や条件が変わります。最新の枠組みは国土交通省の住宅省エネキャンペーン関連ページもあわせてご確認ください。
3. ブロック塀等撤去費補助金|法人オーナーも使える「外構の盲点」
小田原市の制度に移ります。賃貸オーナーが意外と使えるのが、令和8年度 小田原市ブロック塀等撤去費補助金です。所有者が個人か法人かを問わず利用でき、外構という見落としやすい部分の安全対策に効きます。
補助額は、撤去するブロック塀等の長さ1メートルあたり1万円(限度額10万円)。工事見積額(消費税抜き)が限度額を下回る場合はその額が上限になります。対象は、市内の道路・通学路(私道含む)・公共施設などに面し、高さ1メートルを超えるブロック塀等です(出典:小田原市 令和8年度ブロック塀等撤去費補助金)。
申請には条件があります。同じ道路に面する塀をすべて撤去すること、撤去後に塀を設けるなら高さ40センチ以下にすること(フェンス設置は可)、そして工事の着工前に申請することです。家屋の建て替えや解体を伴う工事は対象外です。
期間は、交付申請が令和8年5月11日〜11月27日、実績報告期限が令和8年12月25日。先着順で、予算額に達すると期間中でも受付終了になります。古い物件の道路沿いブロック塀は、地震時の倒壊リスクであると同時に、通行人を巻き込めばオーナーの賠償責任問題にもなり得ます。「いつか直そう」を、補助の出るうちに片付けておく価値は十分にあります。
4. 重点対策加速化事業費補助金|太陽光・蓄電池、事業用の枠もある
脱炭素分野では、小田原市の令和8年度 重点対策加速化事業費補助金があります。自家消費型の太陽光発電設備と蓄電池が中心で、家庭用に加えて事業用(自己所有)の自家消費型太陽光発電設備の区分も用意されています。さらに、建物所有者の初期投資がゼロになるPPA・リース方式も対象です(この場合の申請者はPPA・リース事業者)(出典:小田原市 重点対策加速化事業費補助金)。
令和8年度の補助金交付要綱は、2026年5月12日に公開されています。一方で、高効率空調・高効率照明の補助は令和8年度の募集を行っていない点には注意してください。共用部の電気代や、店舗・事務所が入るビルの電力コストを下げたいオーナーにとって、太陽光・蓄電池は運営費の構造を変える投資になり得ます。
事業用物件なら「自家消費型」を投資判断の材料に
賃貸ビルや事業用区画を持つオーナーの場合、自家消費型の太陽光は、共用部電力の自家供給によるランニングコスト削減という形で利回りに効きます。導入形態(自己所有かPPA・リースか)で初期投資もキャッシュフローも変わりますので、「何年で回収できるか」を試算してから判断するのが筋です。
神奈川県の制度もあわせて確認を
太陽光・蓄電池や省エネ改修については、市の制度とは別に神奈川県の支援メニューが用意される年度もあります。ただし県の住宅向け省エネ改修支援は、自己居住の持ち家を対象とし賃貸を対象外とするものも見られます。市・県・国は対象や条件が重なったり食い違ったりしますので、「市がだめでも県、県がだめでも国」と、出どころを横断して確認するのが、取りこぼしを防ぐコツです。県の最新メニューは神奈川県の環境・エネルギー関連ページでご確認ください。
5. 木造住宅耐震改修・診断費補助金|「自己居住要件」を正直に解説します
ここは、正直に申し上げます。小田原市の木造住宅耐震改修費補助金・耐震診断費補助金は、オーナーが期待するほど賃貸物件に使いやすい制度ではありません。
制度の中身としては手厚く、耐震設計・工事監理は費用の3分の2、改修工事は費用の2分の1で、改修補助の上限は115万円(条件により拡充あり)。対象は、おおむね昭和56年(1981年)5月31日以前に着工された旧耐震基準の木造住宅です(出典:小田原市 木造住宅耐震診断費補助金・木造住宅耐震改修費補助金)。
ただし、この種の市の耐震補助は所有者自身が居住する住宅を主な対象としているのが一般的で、純粋な賃貸アパートは対象外、あるいは要件確認が必要になるケースが少なくありません。小田原は海沿いを中心に旧耐震の木造アパートが今も多く残っています。「うちの古いアパートも対象かも」と思ったら、思い込みで動かず、まず建築指導課(電話:0465-33-1433)に自分の物件の所有・利用形態を伝えて確認してください。これが遠回りに見えて一番確実です。
なお、自治体の補助対象から外れる賃貸物件でも、旧耐震の建物の耐震性は出口(売却)価格や入居者確保に直結します。補助の有無とは切り離して、収益物件としての耐震投資の要否は別途検討する価値があります。
6. 感震ブレーカー設置費補助金|小さいが防災の底上げに
小田原市には令和8年度 感震ブレーカー設置費補助金もあります(出典:小田原市 防災対策課 補助金一覧)。地震時の通電火災を防ぐ装置で、金額は大きくありませんが、木造アパートの火災リスクを下げる地味に効く対策です。入居者の安全は、長く見れば空室率と評判に効いてきます。詳細・対象要件は市の防災対策課のページでご確認ください。
通電火災は、地震で停電したあと電気が復旧したときに、倒れた電気器具や傷んだ配線から出火する現象です。木造の集合住宅が密集するエリアでは、一棟の出火が周囲に広がるリスクもあります。オーナーにとっては、入居者の生命と財産を守るという責任の問題であると同時に、火災による物件の毀損・賃料収入の途絶という経営リスクの問題でもあります。費用が小さく効果のはっきりした対策は、優先して取り入れておく価値があります。
7. 固定資産税の省エネ改修減額|賃貸の「落とし穴」をはっきり書きます
最後に税の財布です。省エネ改修を行った住宅には、翌年度分の固定資産税が減額される制度があります。具体的には、120平方メートル相当分までの税額の3分の1が、改修完了の翌年度に限って減額されます(出典:小田原市 省エネ改修を行った住宅に対する固定資産税の減額制度、制度の枠組みは国土交通省 省エネ改修に係る固定資産税の減額措置)。
ここがオーナーにとっての落とし穴です。この減額は、居住部分の割合が家屋の2分の1以上であることが要件で、賃貸専用部分は対象になりません。完全な賃貸住宅(自分が住んでいない丸ごと貸している物件)は、本制度の対象外と整理されています。「省エネ改修したから固定資産税も下がるはず」と当て込むと、賃貸物件では当てが外れます。
オーナー兼自宅のような併用建物では、要件を満たす可能性があります。判断はケースバイケースなので、資産税課への確認が前提です。耐震改修・バリアフリー改修の固定資産税減額にもそれぞれ別の要件があり、賃貸での適用可否は一律ではありません。
8. 税務の落とし穴|「もらって終わり」ではない3つの注意点
補助金は、受け取ったら終わりではありません。オーナーとして必ず押さえておきたい税務上の論点が3つあります。
ひとつ目は、補助金は原則として課税対象になること。 受給した補助金は、多くの場合その年度の収入(雑収入など)として計上が必要です。「10万円もらえた」が、そのまま10万円の手残りにはなりません。最終的な税負担まで含めて損得を見てください。
ふたつ目は、修繕費か資本的支出かで税務処理が大きく変わること。 原状回復に近い修繕は、その年に全額を経費(修繕費)にできます。一方、性能を上げたり耐用年数を延ばしたりする工事は資本的支出として資産計上し、減価償却で複数年に分けて費用化することになります。給湯器交換、窓の断熱改修、耐震補強がどちらに当たるかは、工事内容と金額しだいです。
みっつ目は、補助金で取得した資産の「圧縮記帳」など、専門的な処理があること。 ここは判断を誤ると後で響きます。具体的な処理は、必ず顧問税理士にご相談ください。本記事は制度の紹介であって、税務上の助言ではありません。
9. 数字で考える|入居率1%とNOIの話
補助金の話を、最後にオーナーの言葉、つまり数字に翻訳しておきます。
仮に、家賃8万円・10戸のアパートを考えます。満室なら月80万円、年960万円の賃料です。もし入居率が1%下がる、つまり年間でおよそ0.1戸分が空く状態が続くと、ざっくり年10万円前後の減収になります。たった1%でも、毎年効いてくると無視できない金額です。
給湯器の更新や窓の断熱は、この「入居率」と「賃料の維持」に効く投資です。設備が古いままだと、内見での見劣り、結露や寒さのクレーム、退去の増加という形で、じわじわと収益を削っていきます。補助金は、その必要投資の一部を国や市が肩代わりしてくれる仕組みだ、ととらえると判断しやすくなります。
「補助が出るから工事をする」のではなく、「いずれ必要な工事を、補助の出るタイミングで前倒しする」。これが、私がオーナーさまにいつもお伝えしている考え方です。
もう一段踏み込むと、修繕投資には「利回りを上げる投資」と「物件価値そのものを底上げする投資」の2種類があります。給湯器や窓のような設備更新は、入居率と賃料を守ることで利回りを下支えします。一方、外壁・防水・耐震といった建物本体への投資は、出口、つまり売却時の収益還元価格を底上げする方向に効きます。出口を見据えた修繕投資は、目先の利回り改善以上に、物件価値の維持・向上という形で長期の収益に効いてくる、というのが私の実感です。補助金は、この両方の投資の「初期負担」を軽くしてくれる存在だと位置づけると、使いどころが見えてきます。
10. 工法の選択で総額が変わる|足場・ロープアクセス・ハイブリッド
補助金は工事費の一部を軽くする手段ですが、工事費そのものを下げることも、同じくらい収益に効きます。ここで効いてくるのが工法の選び方です。
私たち明誠は、大規模修繕や外壁・防水の工事を、3つの工法から建物に合わせて選べる体制を持っています。ひとつは従来型の足場仮設。ひとつは無足場のロープアクセス工法(産業用ロープで職人が下りながら施工する方法)。そしてその両方を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法です。
小田原のように、海風による塩害で外壁や鉄部の劣化が進みやすく、敷地に余裕のない物件も多い地域では、この使い分けが効きます。例えば、足場を全面に組むと費用も工期もかさむ物件でも、傷んでいる面だけをロープアクセスでピンポイント補修すれば、総額を抑えつつ入居者への影響も小さくできます。足場の設置・解体には相応の費用と期間がかかりますから、「足場を組まずに済む部分はないか」を最初に検討するだけで、見積りが変わることがあります。
入居中の物件では、工法の選択は「工事のしやすさ」だけの問題ではありません。足場を組むと、その期間は外からの視線や窓の開けづらさ、防犯面の不安などで、入居者に少なからずストレスがかかります。これが退去のきっかけになることもあります。ロープアクセスやハイブリッドで工期を短く、影響を小さく抑えられれば、入居率を守りながら工事を進められます。つまり工法の選択は、工事費の話であると同時に、工事期間中の賃料収入を守る話でもあるのです。私が「建物にとってのベスト」を考えるとき、施工のしやすさとオーナーの収益、入居者の暮らしの三つを必ず一緒に見るようにしています。
工法の詳しい違いはロープアクセス工法のご紹介、大規模修繕の進め方は大規模修繕工事のご紹介、3工法を建物ごとに最適提案する考え方は明誠の強み・コンセプトで詳しくご説明しています。雨漏り・漏水でお困りの場合は漏水・雨漏り対応もご覧ください。マンション・ビルオーナーさま向けの窓口はオーナー様向けサービスにまとめています。
11. よくあるご質問(小田原市で賃貸経営をするオーナー編)
Q. 個人オーナーでも市の補助金は使えますか。
ブロック塀等撤去費補助金は所有者が個人か法人かを問わず利用できます。一方、木造住宅の耐震補助は自己居住を主な対象とする傾向があり、賃貸物件は要件確認が必要です。制度ごとに対象が異なるとお考えください。
Q. 国の給湯器・窓の補助は、自分で申請するのですか。
いいえ。賃貸集合給湯省エネ2026事業も先進的窓リノベ2026事業も、登録された事業者が申請を代行する仕組みです。施工業者がその事業者登録をしているかが前提条件になります。
Q. 補助金がもらえれば、工事は実質タダになりますか。
なりません。多くの制度で補助は工事費の一部ですし、受給した補助金は課税対象になり得ます。手残りベースでの損得計算をおすすめします。
Q. 申請の締切はいつですか。
制度ごとに異なります。小田原市の制度は先着順で予算到達次第終了するものが多く、年度の早い時期に動くほど有利です。国の事業も予算上限に達すると締め切られます。
Q. うちの古い木造アパート、何から手をつけるべきですか。
まずは現地調査で劣化の状態を把握することです。緊急性の高い箇所(外壁の浮き、防水切れ、危険な塀)と、補助が使える工事を整理してから順番を決めると、無駄がありません。
Q. 海に近い物件で塗装がすぐ傷みます。何か対策はありますか。
小田原の沿岸部は塩害で塗膜や鉄部の劣化が早く進みます。塩分は定期的な洗浄である程度落とせますし、耐候性・防錆性の高い仕様を選ぶことで塗り替え周期を延ばせます。傷みが一部に偏っている場合は、その面だけをロープアクセスで先行補修し、全面工事の時期を後ろにずらす、という総額を抑える組み立ても可能です。
Q. 補助金の申請に必要な書類は、自分で全部そろえるのですか。
市の制度は申請者本人がそろえる書類が中心ですが、図面や工事内容に関する資料は施工業者の協力が要ります。国の給湯・窓の事業は事業者が申請主体なので、必要書類の多くは事業者側で用意します。いずれにしても、補助金の扱いに慣れた業者を選ぶと手間が大きく変わります。
Q. 1棟だけでなく複数棟を持っています。まとめて相談できますか。
もちろんです。複数棟を保有されている場合は、棟ごとの劣化状況と使える補助を一覧化し、年度をまたいで工事と申請を割り振る「ポートフォリオ単位」の計画づくりが効果的です。1年に使える予算枠や締切は制度ごとに限りがあるため、計画的に分散させたほうが取りこぼしを減らせます。
12. 小田原市オーナーが取るべき順番:調査 → 計画 → 申請 → 工事
最後に、動き方の順番を整理します。
第一に、現地調査で物件の状態を把握すること。劣化箇所と緊急度、そして使える補助金の候補を洗い出します。第二に、工事計画と資金計画を立てること。補助の締切と予算枠を踏まえ、今年度に何を、来年度に何を、と振り分けます。第三に、着工前に申請すること。多くの制度は着工後の申請を認めません。ここを間違えると、せっかくの補助がゼロになります。第四に、工事と実績報告です。
私たち明誠は、現地調査と、補助金も見据えた工事計画づくりからお手伝いできます。小田原で賃貸物件をお持ちで、まだこうした制度の検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度お声がけください。1棟の現地調査と、利回り改善を見据えた工事プランのご提案だけでも承ります。ご相談はお問合せフォームからどうぞ。
補助金は年度で変わり、予算枠で締め切られます。本記事の金額・期間は2026年6月時点で確認した内容です。申請前には必ず各制度の公式ページと窓口で最新情報をご確認ください。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 小田原市「令和8年度小田原市ブロック塀等撤去費補助金」
- 小田原市「重点対策加速化事業費補助金(令和8年度)」
- 小田原市「木造住宅耐震診断費補助金・木造住宅耐震改修費補助金」
- 小田原市「防災対策課 補助金・証明」
- 小田原市「省エネ改修を行った住宅に対する固定資産税の減額制度」
- 資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業について」
- 賃貸集合給湯省エネ2026事業「公式サイト」
- 環境省「先進的窓リノベ2026事業」
- 国土交通省「住宅省エネ関連支援」
- 国土交通省「省エネ改修に係る固定資産税の減額措置」
※本記事は制度の概要を分かりやすくお伝えするもので、税務・法務上の個別助言ではありません。具体的な申請可否や税務処理は、各制度の窓口および顧問税理士にご確認ください。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
小田原市のマンションで使える補助金・支援制度まとめ【2026年度版】|大規模修繕前に管理組合が知るべきこと
「うちのマンション、そろそろ二回目の大規模修繕なんだが、小田原市から補助金は出ないのか」——先日、小田原市内の築22年・48戸のマンションで理事長さまから、開口一番こう聞かれました。総会で修繕積立金の値上げ議案を出したものの、住民から「補助金を使えば値上げしなくて済むのでは」という声が上がって板挟みになっている、というご相談でした。
私は大規模修繕の現場に20年近く携わってきましたが、この「補助金は出ないのか」という問いほど、答え方の難しいものはありません。なぜなら、正直に申し上げると、小田原市にはマンションの大規模修繕工事そのものに直接お金が出る補助金は、現時点では用意されていないからです。
ただし、です。ここからが本題です。「工事費の補助金がない」ことと「使える支援制度がない」ことは、まったく別の話です。固定資産税が安くなる制度、無料で専門家を呼べる制度、融資の金利が下がる制度——お金の出方が違うだけで、管理組合の負担を確実に軽くする仕組みは、小田原市にもきちんと存在します。
この記事では、小田原市のマンション管理組合・区分所有オーナーが2026年度(令和8年度)に実際に使える支援制度を、私が現場で説明するときの順番でひとつずつ整理します。読み終えるころには、次の理事会で何を議題に乗せればいいかが見えるはずです。
まず結論:小田原市のマンションが使える支援は「6つ」
細かい説明に入る前に、全体像をお見せします。小田原市のマンション(分譲・区分所有)に関係する公的支援は、大きく次の6つです。
| # | 制度名 | 何が得になるか | 窓口 |
|---|---|---|---|
| ① | マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額) | 大規模修繕の翌年度、建物部分の固定資産税が1/2減額 | 小田原市 資産税課 |
| ② | マンションの管理計画認定制度 | フラット35・共用部リフォーム融資の金利引下げ、資産価値の評価向上 | 小田原市 都市政策課 |
| ③ | 神奈川県マンションアドバイザー派遣事業 | 専門家(マンション管理士・建築士など)を無料で派遣 | 神奈川県 |
| ④ | 小田原市分譲マンション管理相談 | マンション管理士による無料相談 | 小田原市 都市政策課 |
| ⑤ | 地域経済循環型住宅リフォーム支援事業 | 市内業者で工事すると抽選で3万円相当の地場産品等 | 小田原市 産業政策課 |
| ⑥ | マンション共用部分リフォーム融資(住宅金融支援機構) | 管理組合向けの低利・長期融資 | 住宅金融支援機構 |
ポイントは、①〜④が「お金を直接もらう」のではなく「税金を減らす」「無料で専門家を使う」「金利を下げる」という支援だということ。派手さはありませんが、戸あたりに換算すると決して小さくありません。順番に見ていきましょう。
① マンション長寿命化促進税制——大規模修繕の「ごほうび」は固定資産税
私がいま、小田原のマンション管理組合に最初にお伝えしているのが、このマンション長寿命化促進税制です。正式には「長寿命化に資する大規模の修繕等を行ったマンションに係る固定資産税の減額制度」といいます。少し長いので、本記事では「長寿命化促進税制」と呼びます。
これは国の制度を小田原市が実施しているもので、一定の条件を満たすマンションが長寿命化工事(外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事)を完了すると、翌年度の建物部分の固定資産税が2分の1減額されるというものです(出典:小田原市「長寿命化に資する大規模の修繕等を行ったマンションに係る固定資産税の減額制度」)。
対象になるのはどんなマンションか
小田原市の案内によると、対象となるマンションの主な要件は次のとおりです。
- 新築された日から20年以上が経過し、総戸数が10戸以上であること
- 過去に1回以上、長寿命化工事(外壁塗装等・床防水・屋根防水)を適切に行っていること
- 長寿命化工事を適切に実施するために必要な修繕積立金が確保されていること
3つ目の「修繕積立金が確保されていること」が肝です。具体的には、(ア)市の認定を受けた管理計画認定マンションのうち、認定の際に基準へ適合させるため令和3年9月1日以降に修繕積立金を引き上げた場合、または(イ)市から助言・指導を受けて長期修繕計画を見直し、修繕積立金を積み増した場合、のいずれかが必要です。つまり、後ほど説明する②管理計画認定とセットで考えると話が早い、ということです。私はこれを、必ずワンセットでご提案するようにしています。
減額される範囲と期間
減額されるのは、居住用部分の床面積(一戸あたり100平方メートル相当分まで)にかかる固定資産税の2分の1です。期間は工事が完了した年の翌年度分の1年間。なお、都市計画税には減額はありません。
仮に一戸あたりの建物分固定資産税が年8万円のマンションなら、その年だけで一戸あたり約4万円、50戸なら単純計算で約200万円が軽くなる規模感です(実際の税額は評価額により異なります)。1回しか受けられない制度ですが、二回目・三回目の大規模修繕のタイミングに合わせれば、修繕積立金の負担感をやわらげる材料になります。
ここが落とし穴——申告期限は「工事完了から3か月以内」
正直に申し上げます。この制度で一番もったいないのが、申告のし忘れです。申告期限は工事完了から3か月以内。しかも対象期間は「令和5年4月1日から令和9年3月31日までに工事が完了したもの」と区切られています(同上)。耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修による減額とは同時に使えない点も要注意です。
工事のスケジュールを組む段階から、施工会社と税理士、そして市の資産税課(電話0465-33-1371)に動きを共有しておく。これだけで取りこぼしは防げます。私たちのような施工側も、工事完了証明書の発行を含めて段取りでお手伝いできる部分です。
② マンションの管理計画認定制度——「ちゃんと管理してます」を市のお墨付きに
次がマンションの管理計画認定制度です。これは、適切な管理が行われているマンションの管理計画を市が認定する制度で、令和4年4月にスタートした比較的新しい仕組みです(出典:小田原市「マンションの管理計画認定制度について」)。
認定を受けるには、マンション管理に関する16項目の基準を満たし、事前に管理組合の集会で認定申請の決議を得ておく必要があります。基準には、管理者等が定められていること、年1回以上の総会開催、修繕積立金が長期修繕計画に照らして適切に設定されていること、などが含まれます。
認定を取ると何がうれしいのか
認定マンションになると、次のようなメリットがあります。
- 住宅金融支援機構の融資金利が引き下げられる(フラット35、マンション共用部分リフォーム融資)
- 「適切に管理されたマンション」として、中古市場での評価につながる
- 前述の①長寿命化促進税制の要件(修繕積立金の確保)を満たしやすくなる
申請は市に直接出すのではなく、まず(公財)マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」で、講習を修了したマンション管理士による事前確認を受け、適合証を得たうえで申請する流れです。一連の手続きはオンライン上で行います。システム使用料と事前確認審査料がかかる点は、あらかじめ予算に入れておきましょう。
理事長さまには、「認定は手間がかかるけれど、一度取れば資産価値と資金調達の両面で効く投資です」とお伝えしています。窓口は小田原市 都市政策課(電話0465-33-1307)です。
③ 神奈川県マンションアドバイザー派遣事業——専門家を「無料で」呼べる
「修繕の見積もりが妥当か、第三者の目で見てほしい」「長期修繕計画の見直し方が分からない」——こうしたとき、まず使ってほしいのが神奈川県のマンションアドバイザー派遣事業です。
これは、神奈川県内の分譲マンションの管理組合などに、マンション管理士や建築士などの専門家を無料で派遣する制度です(出典:神奈川県「マンションアドバイザー派遣事業」)。管理運営の悩みから大規模修繕の進め方まで、幅広く相談できます。
ひとつ注意点があります。この県の事業は、独自に同種の制度を持つ横浜市・川崎市・相模原市・横須賀市を対象から除いています。裏を返せば、小田原市は対象に含まれるということです。小田原のマンションにとっては、まさに使える制度です。
私は施工会社の立場ですが、第三者のアドバイザーが入ることをむしろ歓迎しています。中立の専門家が「この修繕仕様は妥当」「この時期にやるべき」と整理してくれると、その後の工事提案も住民の納得感が段違いになるからです。
④ 小田原市分譲マンション管理相談——市の窓口でも無料で聞ける
県の派遣事業とあわせて知っておきたいのが、小田原市が独自に開いている分譲マンション管理相談です。マンション管理士が、管理組合の運営全般、規約の見直し、大規模修繕、長期修繕計画の見直し、日常のトラブルなどの相談を無料で受け付けています(出典:小田原市「住情報」内の分譲マンション管理相談)。
開催日が決まっている予約制の相談ですので、「総会の前に論点を整理したい」「役員のなり手がいなくて困っている」といった段階でも、気軽に使えます。③の県の派遣が「専門家にマンションへ来てもらう」のに対し、④は「まず窓口で相談する」イメージです。状況に応じて使い分けてください。
⑤ 地域経済循環型住宅リフォーム支援事業——市内業者で工事すると地場産品が当たる
少し毛色の違う支援が、産業政策課が所管する地域経済循環型住宅リフォーム支援事業です。これは市民の消費を促し地域経済を活性化させることを目的に、市内の施工業者で住宅リフォームを行った市民を対象に、抽選で地場産品等を進呈する制度です(出典:小田原市「令和7年度地域経済循環型住宅リフォーム支援事業について」)。
令和7年度は、支援件数65件(上限超過時は抽選)、内容は地場産品等と食事券の組み合わせで3万円相当、申請期間は令和7年6月2日〜10月31日でした。申請書には住宅の種類として「マンションなど」の選択肢があり、マンションのリフォームも対象に含まれます。
金額としては大きくありませんが、ポイントは「市内業者を使うことが条件」だという点です。地元の専門業者に発注することで地域にお金が回り、こうしたささやかな還元も受けられる。私は、地域に根ざした施工体制の価値が、こういう制度にも表れていると感じています。なお、2026年度(令和8年度)も同様の事業が実施されるかは、年度ごとに小田原市の公式サイトで最新情報をご確認ください。
⑥ マンション共用部分リフォーム融資——「借りる」という選択肢
補助金や減税で足りない分は、借りるという手もあります。住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資は、管理組合が共用部分の修繕工事のために利用できる、長期・固定金利の融資制度です(出典:小田原市「住情報」からのリンク先)。
修繕積立金が一時的に不足しても、工事の先送りはむしろ建物の傷みを進め、後の費用を膨らませます。私が現場で20年やってきて一番悔しい思いをするのは、「あと2年早く手を打っていれば、これほどかからなかった」という劣化を見たときです。融資を上手に使い、必要な時期に必要な工事を行うことも、長い目で見た資産防衛になります。
しかも前述の②管理計画認定を受けていれば、この融資の金利が引き下げられる。①②③が単独ではなく、つながっているのがお分かりいただけると思います。
すべての支援の「土台」は、長期修繕計画と修繕積立金
ここまで6つの制度を見てきて、勘のいい理事長さまならお気づきだと思います。①の固定資産税減額も、②の管理計画認定も、根っこにあるのは同じ条件——「修繕積立金が、長期修繕計画に照らして適切に確保されているか」です。逆に言えば、ここが整っていないと、せっかくの制度がどれも使えません。
私が現場でお会いする管理組合の多くは、ここでつまずきます。よくあるのが次の3つです。
- 修繕積立金が「均等積立」になっておらず、段階増額方式のまま値上げのタイミングを逃している
- 長期修繕計画が10年以上見直されておらず、物価上昇後の工事費に追いついていない
- 二回目の大規模修繕で、給排水管の更生・更新という大きな費用が見えていなかった
特に近年は資材費・人件費の上昇で、5年前の長期修繕計画の見積額では足りないケースが目立ちます。私の経験上、築20年を超えたマンションは、まず長期修繕計画を最新の単価で引き直すことが、すべての出発点になります。計画を引き直し、必要な積立水準を住民に説明し、合意形成する。この順番を踏んでおけば、①の税制要件(修繕積立金の確保)も②の認定基準も自然と満たせるようになります。
実際、私が小田原で関わった現場でも、長期修繕計画を最新単価で引き直したところ、当初の積立計画では二回目の大規模修繕の途中で資金がショートする見込みだったことが判明したマンションがありました。早めに気づけたおかげで、無理のない範囲での段階的な積立改定と、工法の見直しによるコスト圧縮で乗り切れました。計画の引き直しは、住民にとっては耳の痛い「値上げの話」になりがちですが、根拠となる数字と外部専門家の裏づけがあれば、総会での合意は決して不可能ではありません。むしろ、何も示さずに値上げだけを求めるほうが、住民の反発を招きます。
国土交通省は、長期修繕計画の標準的な様式や、修繕積立金の目安となるガイドラインを公表しています(出典:国土交通省「マンション管理について(標準管理規約・各種ガイドライン)」)。「うちの積立金は高いのか安いのか」を判断する物差しとして、一度目を通しておく価値があります。そしてこの引き直しこそ、③④の無料専門家相談がもっとも力を発揮する場面です。
小田原のマンションが取るべき進め方ロードマップ
「制度は分かった。で、何から手をつければいいのか」——最後に、私が理事会でお伝えしている現実的な順番を、ロードマップとして整理します。
- 【1〜2か月目】現状把握:直近の長期修繕計画と修繕積立金の残高・徴収額を確認する。前回の大規模修繕からの経過年数と、次回の想定時期を洗い出す。
- 【2〜3か月目】無料相談を使う:③神奈川県アドバイザー派遣、または④小田原市の管理相談を予約し、長期修繕計画の妥当性を第三者にチェックしてもらう。
- 【3〜6か月目】計画の引き直しと合意形成:最新単価で長期修繕計画を更新し、必要なら修繕積立金の改定案を総会に諮る。ここで②管理計画認定の取得も視野に入れる。
- 【6〜12か月目】工事の発注準備:複数社から見積もりを取り、工法(足場・ロープアクセス・ハイブリッド)を比較する。市内業者を使う場合は⑤地域リフォーム支援の申請期間も確認。
- 【工事〜完了後3か月】税制の申告:工事完了後、①長寿命化促進税制の申告を3か月以内に資産税課へ。完了証明書などの書類は施工会社と連携して準備する。
このロードマップで大事なのは、「工事を決めてから制度を探す」のではなく、「制度から逆算して工事計画を組む」という発想の転換です。順番を逆にするだけで、使える支援の数が変わります。
【正直な話】木造耐震補助は手厚いが、マンションは対象外
ここはあえて、はっきりお伝えします。小田原市には木造住宅耐震診断費補助金・木造住宅耐震改修費補助金があり、令和8年度の申請受付も始まっています。診断費は一戸建てで上限9万円、改修費は工事費の2分の1で上限85万円(要配慮者世帯は115万円)と、かなり手厚い内容です(出典:小田原市「木造住宅耐震診断費・耐震改修費補助金」)。
ただし、この補助の対象は昭和56年5月31日以前に着工した、地上2階建て以下の木造住宅です。鉄筋コンクリート造の分譲マンションは対象になりません。「耐震の補助があると聞いた」というご相談をよく受けますが、それは木造向けの制度であって、マンションには使えない——この線引きを誤ると総会で混乱します。マンションの場合は、①〜⑥の制度で組み立てるのが現実的です。
なお小田原市は、活断層である国府津-松田断層帯を抱える地域です。地震リスクが相対的に高い土地だからこそ、建物の維持管理と長期修繕計画は、資産価値の問題であると同時に、住民の安全の問題でもあります。
補助金・税制を「最大限」活かすには、工法選びが効く
ここまで制度の話をしてきましたが、最後に施工側の人間として一つだけ。同じ大規模修繕でも、工法の選び方で総額は大きく変わります。 補助金で数十万円を取りに行くのと並行して、工事そのもののコストを最適化する視点を、ぜひ持ってください。
大規模修繕の工法には、大きく3つあります。
- 通常の足場仮設工法:建物全体に仮設足場を架ける従来型。複雑な形状や全面的な改修に向く一方、足場の架設・撤去に相応の費用と工期がかかります。
- ロープアクセス工法(無足場工法):産業用ロープで作業員が懸垂下降して施工する方法。足場を架けないため足場費を抑えられ、工期も短縮しやすく、居住者の生活への影響(目隠し・防犯面の不安・駐車場制限など)も小さく抑えられます。高層部や、足場を架けにくい立地で特に強みを発揮します。
- ハイブリッド工法:足場とロープアクセスを部位ごとに使い分ける方法。たとえばバルコニー側は足場、外壁の一部はロープ、と最適配分することで、総コストと工期のバランスを取ります。
私たちは、この3つを建物の形状・立地・劣化状況に応じて使い分け、建物にとって本当にベストな工法をご提案しています(詳しくはロープアクセス工法のご紹介、大規模修繕工事のご紹介をご覧ください)。足場代が浮けば、その分を本当に必要な防水・タイル補修に回せます。補助金・減税で「もらう」工夫と、工法で「減らす」工夫。この両輪が、修繕積立金を守る一番の近道だと、私は考えています。
よくある質問(FAQ)
Q. 小田原市から、大規模修繕の工事費そのものに補助金は出ますか?
A. 2026年6月時点では、マンションの大規模修繕工事に直接交付される市の補助金はありません。代わりに、①長寿命化促進税制(固定資産税の減額)、②管理計画認定による融資金利引下げ、③④の無料専門家相談、⑤地域リフォーム支援、⑥共用部分リフォーム融資を組み合わせて負担を軽減するのが現実的です。
Q. 固定資産税の減額は、どのマンションでも受けられますか?
A. いいえ。築20年以上・総戸数10戸以上で、過去に1回以上の長寿命化工事を行い、かつ管理計画認定または市の助言・指導を通じて修繕積立金を適切に確保していることなどの要件があります。詳細は資産税課(0465-33-1371)にご確認ください。
Q. うちは管理会社に任せきりですが、相談だけでもできますか?
A. できます。神奈川県のアドバイザー派遣も、小田原市の管理相談も、まずは相談から始められます。役員が建築の素人でも問題ありません。
Q. 制度の内容は今後変わりますか?
A. 補助金・税制は年度ごとに見直されます。特に長寿命化促進税制は令和9年3月31日完了分までという期限があります。最新情報は必ず小田原市の公式サイトと各担当課でご確認ください。
Q. 工法によって、どのくらいコストが変わりますか?
A. 建物の形状・高さ・劣化状況によって幅がありますが、足場費は大規模修繕費の大きな割合を占めるため、ロープアクセスやハイブリッドの活用で総額を抑えられるケースは少なくありません。まずは建物を見せていただいたうえで、複数の工法で比較見積もりを出すのが確実です。
まとめ——「補助金がない」で終わらせない
小田原市のマンションには、工事費そのものへの補助金はありません。けれど、固定資産税を半分にする制度があり、融資の金利を下げる認定があり、専門家を無料で呼べる仕組みがあり、市内業者で工事すれば地場産品が当たる制度もあります。お金の出方が違うだけで、管理組合の負担を軽くする手立ては、確かに用意されています。
そして、制度を使い切るには段取りが命です。①長寿命化促進税制は申告期限が工事完了から3か月以内、⑤地域リフォーム支援にも申請期間があります。動くなら、総会・理事会のスケジュールから逆算して、いまから準備を始めるのが分かれ目です。理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。
「うちの場合はどの制度が使えるのか」「足場とロープ、どちらが安く済むのか」——その整理だけでも、私たちでお力になれることがあります。総会の前段階の交通整理だけでも構いません。ご相談だけでも、遠慮なくお声がけください(お問合せフォームはこちら)。
次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 小田原市「長寿命化に資する大規模の修繕等を行ったマンションに係る固定資産税の減額制度」
- 小田原市「マンションの管理計画認定制度について」
- 小田原市「住情報(分譲マンション管理相談・各種支援制度)」
- 小田原市「木造住宅耐震診断費・耐震改修費補助金」
- 小田原市「令和7年度地域経済循環型住宅リフォーム支援事業について」
- 神奈川県「マンションアドバイザー派遣事業」
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」
- 国土交通省「マンション管理について(標準管理規約・各種ガイドライン)」
※本記事は2026年6月時点の公開情報をもとに作成しています。補助金・税制は年度途中で変更・終了する場合があり、予算枠到達により受付が締め切られることもあります。申請の際は必ず各担当課の最新情報をご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・法務判断については専門家にご相談ください。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
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