稲城市の賃貸マンション補助金|オーナー向け2026年版

2026年8月23日 更新

稲城市で賃貸マンション・アパートをお持ちのオーナーさまから、この夏よくいただく質問があります。

「稲城市に、賃貸物件の修繕に使える補助金はありますか?」

この記事は、その一問に正面から答えるために書きました。結論から申し上げると、稲城市そのものが持っている補助金の多くは「そこに住んでいる市民」向けで、オーナーさまが賃貸に出している住戸には効きません。 ただし例外が一つあり、そこがむしろ稲城市の最大の穴場です。そして本命は、市ではなく東京都と国の賃貸住宅専用メニューにあります。

私は株式会社明誠の本間と申します。建設・改修の現場に20年近くおりまして、大規模修繕を足場仮設・ロープアクセス(無足場)・その組み合わせの3通りで提案しています。稲城のように丘陵と平地が混ざった街は、実は工法選定でコストが大きく振れる地域です。制度と工法の両面から、キャッシュフローの話をさせてください。


結論:稲城市の賃貸オーナーが2026年度に狙う「3本+1」

先に答えを置きます。2026年8月時点で、稲城市内の賃貸物件オーナーが現実的に使える主要メニューは次のとおりです。

# 制度名(正式名称) 実施主体 補助率 上限 賃貸オーナー 2026年度の受付状況
1 稲城市木造住宅耐震改修等助成金 稲城市 1/2(税抜) 100万円 ○(木造共同住宅が明記) 受付中(申請書は12/11まで)
2 令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業【省エネ診断・断熱改修】 東京都(クール・ネット東京) 診断10/10、改修2/3 診断120万円/棟、窓30万円/戸ほか ○(賃貸住宅所有者が申請者) 受付中(事前申込は5/29開始)
3 賃貸集合給湯省エネ2026事業 経済産業省 定額 機器・工事による ○(オーナーが補助対象者) 受付中(8/23時点で予算消化33%)
+ 稲城市生垣造成・ブロック塀等撤去等補助金 稲城市 定額 撤去5,000円/m ほか(30mまで) △(適用除外規定に注意) 受付中(申請は12/18まで)

そして、使えないほうも先に潰しておきます。

制度名 賃貸オーナーが使えない理由
稲城市カーボンニュートラル住宅設備等補助金 「自家消費を目的として」「その居住する住宅で使用されること」が要件。オーナーが住んでいない賃貸住戸は対象外
稲城市商工会住宅改修等補助金事業 市民が現に居住している住宅が対象。加えて令和8年度は6月11日で受付終了
省エネ改修に係る固定資産税の減額措置 対象が「賃貸住宅ではない住宅」と国の制度要件で明記されている

この「使えないリスト」を先に共有するのが、私は誠実だと思っています。使えない制度を前提に予算を組んでしまうと、着工直前に計画が崩れるからです。

以下、1本ずつ数字を詰めていきます(出典:稲城市 住宅関連制度等一覧)。


【本命①】稲城市の耐震助成は「木造共同住宅」が対象。木造アパートオーナーの穴場

稲城市で賃貸オーナーが最も見落としている制度が、これです。

対象に「木造共同住宅」と明記されている

稲城市木造住宅耐震改修等助成金の助成対象住宅は、要綱上「市内に存する民間の木造住宅又は木造共同住宅」とされています。共同住宅、つまり木造アパートが正面から対象です。

さらに助成対象者は「現に助成対象住宅の所有権を有すること」。居住要件ではなく所有要件です。実際、市が公開している申請様式には「同意書(居住者と所有者が異なる場合)」が用意されています。市の側が、貸している建物からの申請を最初から想定しているということです。

(出典:稲城市 木造住宅耐震改修等助成金)

金額と要件

項目 内容
助成額(耐震改修) 耐震改修に要した費用(税抜)の1/2、上限100万円
助成額(耐震診断) 診断費用(税抜)または10万円のいずれか低い額
対象年代 昭和56年5月31日以前の基準で建築、または昭和56年6月1日〜平成12年5月31日の基準で在来軸組工法により建築された平屋・2階建て
用途要件 複数用途の建物は、延べ面積の過半が住宅の用途であること
改修後の水準 耐震診断で倒壊の可能性ありと診断され、改修後の評点1.0以上
施工業者 建設業法第3条第1項の建設業許可を有する者
申請タイミング 耐震改修工事の契約前に市へ申請

ここは太字で書きます。令和7年度から、いわゆる新耐震(1981年6月〜2000年5月)の在来軸組木造も対象に加わりました。 稲城市内で昭和末期から平成一桁に建てられた木造2階建てアパートは相当数あります。「うちは新耐震だから関係ない」と思い込んでいるオーナーさまこそ、一度確認する価値があります。

注意点(ここを外すと0円になります)

  • 契約前の申請が大前提です。工事契約を結んでから相談に行っても、遡っては出ません。
  • 令和8年度の耐震診断助成は、予算上限に達して受付終了しています。改修助成は受付中ですが、診断助成を使わずに自費で診断機関に依頼する形になります(改修助成の対象住宅要件は「診断機関で耐震診断を実施した住宅」でも満たせます)。
  • 耐震除却(解体)助成は予算上限で新規受付を一時停止中です。建替え前提の除却を当てにしていた方は計画を組み直してください。
  • 所有者および居住者(共同住宅の占有者は除く)に市税の滞納がないこと。

私の経験上、この手の「予算枠に達したら終わり」型の助成は、年度が変わった4月〜6月が最も通りやすいです。稲城市の耐震診断助成が令和8年度中に締まったのが何よりの証拠で、来年度に狙うなら年度明けすぐに動く前提で逆算してください。

代理受領制度は資金繰りに効く

稲城市は代理受領制度を用意しています。助成金を施工業者が代理で受け取る仕組みで、オーナーは工事費と助成金の差額だけを支払えばよい。100万円の助成が確定していれば、その分の立替キャッシュを持たずに着工できます。手元資金を他物件の空室対策に回したいオーナーさまには、地味ですが効きます。


【要注意】稲城市の”住民向け”補助金は、なぜ賃貸に効かないのか

期待させておいて申し訳ないのですが、ここは正直に申し上げます。

稲城市カーボンニュートラル住宅設備等補助金

太陽光1kWあたり2万円(上限8万円)、蓄電池定額4万円、既設窓・ドアの断熱改修は設置費用の1/6(上限5万円)――金額としては使いやすそうに見えます。申請対象者にも「戸建住宅、集合住宅」と書かれています。

しかし要件を読むと、太陽光は「発電した電力がその居住する住宅で使用されること」、蓄電池・エネファームも「その居住する住宅で使用されること」。制度の趣旨が「自家消費」なのです。オーナーが住んでいない賃貸住戸への設置は、この要件で外れます。

さらに窓・ドアの断熱改修には「管理組合が大規模改修等により住宅に設置した断熱窓は補助対象外」という一文もあります。共用部一括での改修は最初から想定外ということです。

(出典:令和8年度稲城市カーボンニュートラル住宅設備等補助金)

なお、この補助金は令和8年8月7日時点で予算に対する申請額が36.4%。オーナーさまご自身の自宅(稲城市内)であれば十分間に合うペースです。区分けして考えてください。

稲城市商工会住宅改修等補助金事業

工事費の10%・上限15万円、市内業者施工が条件。外壁塗装や張替えも対象工事に含まれるため、毎年問い合わせが多い制度です。

ただし対象は「市民の皆様が住宅のリフォームをする際」であり、市内に所在し市民が現に居住している住宅が前提です。加えて――

令和8年度は6月11日をもって受付終了しています。(出典:稲城市商工会)

年間の申請枠が早期に埋まる典型です。令和8年度の受付開始は4月13日でしたから、実質2か月で締まった計算になります。オーナーさまの自宅リフォームで狙う場合も、来年度は4月中に動く前提でお考えください。


【本命②】東京都「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」――ここが本丸

稲城市が賃貸に薄いぶん、東京都が手厚い。オーナーさま向けとしては、これが2026年度の主役です。

診断費用は実質ゼロ、上限120万円/棟

対象 補助率 上限
省エネ診断等(省エネ性能表示含む) 対象経費の10/10 120万円/棟
省エネ診断用現況図面の作成 対象経費の10/10 10万円/戸
高断熱窓 対象経費の2/3 30万円/戸
高断熱ドア 対象経費の2/3 27万円/戸
断熱材(屋根・天井・外壁・床) 対象経費の2/3 60万円/戸

(出典:令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業【省エネ診断・断熱改修】)

補助率10/10。つまり診断費用は原則として全額返ってくる設計です。これは「まず自分の物件の断熱等級を数字で知る」という行為を、東京都がタダにしてくれているのと同じ意味を持ちます。

私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。診断で等級を把握し、その数字を根拠に窓・断熱材の投資判断をする。順番を逆にすると、改修前の等級を把握していない工事は助成対象外という要件で弾かれます。ここは本当に多い失敗です。

対象と要件

項目 内容
助成対象者 助成対象住宅を1棟所有している個人または法人(登記事項証明書で所有権者と証明できること)
対象住宅 普通賃貸借契約を締結し貸し出される既存の住宅、かつ専用住宅
拡充点 令和8年度からオーナー及び3親等以内の親族が居住する住戸も対象
対象外 1住戸を店舗用と居住用で兼用している部屋
事前申込 令和8年5月29日から。事前申込受付前に契約・着工したものは対象外
交付申請兼実績報告 令和8年6月30日から(事前申込有効期限または令和11年3月30日の早い日まで)
施工者 公社に登録された省エネ診断等事業者・断熱改修事業者との契約が必須

断熱材の熱抵抗値要件(屋根2.7以上/天井2.7以上/外壁2.7以上/床2.2以上)、高断熱ドアの熱貫流率2.3W/(㎡・K)以下など、製品側の縛りもあります。製品は北海道環境財団や先進的窓リノベ2026事業、みらいエコ住宅2026事業の登録製品一覧から選ぶ形です。

オーナー視点で、この制度の何が本当に効くのか

補助金額そのものより、私が重要だと思っているのは「省エネ性能表示(ラベル)」が義務づけられている点です。

建築物省エネ法に基づく省エネ性能表示制度により、賃貸募集の広告に省エネ性能ラベルを表示できるようになりました。つまりこの補助金は、改修費の補助であると同時に、募集図面に載せられる「性能の証明書」を作る補助でもあるわけです。

築25年・1LDKで月10万円の物件を10戸お持ちだとします。年間満室賃料は1,200万円。ここで入居率が92%から95%に3ポイント動けば、年間36万円の差です。10年で360万円。窓の断熱改修で「冬に結露しない」「夏に効きが早い」が実現し、それがラベルという第三者にわかる形で表示できるなら、この3ポイントは決して夢物語ではありません。

東京都は「断熱改修等による賃貸住宅の資産価値向上を強力に支援します」というタイトルでこの事業のプレスリリースを出しています。行政の側が資産価値という言葉を使っているのが、この制度の性格をよく表しています。

なお、所有する賃貸住宅の断熱改修について相談したい方向けに、東京都はコンシェルジュ支援の窓口も設けています。無料で使えるものは使いましょう。


【本命③】国「賃貸集合給湯省エネ2026事業」――予算消化33%、動くなら今

給湯器は、入居者の満足度に直結し、かつ故障時のクレームが最も痛い設備です。国はここに専用の補助枠を用意しています。

項目 内容
事業名 賃貸集合給湯省エネ2026事業(経済産業省)
対象 既存賃貸集合住宅の小型省エネ型給湯器(エコジョーズ、エコフィール)
タイプ リフォーム工事タイプ/リース利用タイプ
申請者 オーナーではなく「賃貸集合給湯省エネ事業者」(登録済の施工業者・リース事業者)が申請
予算消化 2026年8月23日午前0時時点で33%(毎日午前中更新)

(出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業【公式】)

ポイントはオーナーが直接申請できないことです。登録事業者との契約が前提で、補助金は事業者が受け取ってオーナーへ還元する流れになります。したがって、依頼先が登録事業者かどうかが最初の分岐点。公式サイトに事業者検索があるので、見積を取る前に必ず確認してください。

予算消化33%という数字は、8月下旬にしては速くも遅くもないペースです。ただし、この手の国庫補助は秋以降に一気に伸びる傾向があります。今年度の給湯器更新を検討しているなら、年内着手を前提に段取りするのが安全です。

なお、国内に所有・管理する既存賃貸集合住宅が200戸以上の事業者は、自ら手続きを行うことを希望できる相談窓口があります。規模の大きい法人オーナーはこちらの選択肢も検討価値があります。


敷地まわり:ブロック塀の撤去補助は「使えるか」を先に確認する

外壁や設備の話ばかりしてきましたが、私が現場で最も肝を冷やすのは、実は敷地境界の古いブロック塀です。

稲城市の補助額は次のとおりです。

種類 補助額
生垣の設置 8,000円/m(30mまで)
ブロック塀等の撤去 5,000円/m(30mまで)
ブロック塀等の撤去に伴うフェンス等の新設 8,000円/m(30mまで)

要件は、高さ1.2mを超えるブロック塀等であること、総延長3m以上であること、そして稲城市地域防災計画で定める避難路および公共用地に面していること。地震時に倒壊して通行を妨げるおそれがあるもの、が前提です。

(出典:稲城市 生垣造成・ブロック塀等の撤去・フェンス等の新設の補助について)

ここで賃貸オーナーが必ず確認すべき一文があります。適用除外に「不動産業者及び開発事業者が業として行うもの」と規定されています。個人オーナーが自己所有物件の危険なブロック塀を撤去するケースがこれに当たるかどうかは、所有形態や事業形態によって判断が分かれ得ます。申請前に、まちづくり再生課(042-378-2111 内線324)へ事実関係を伝えて確認してください。 ここは私が断定できる領域ではありません。

交付申請書の提出期限は令和8年12月18日、完了報告書は令和9年2月5日。こちらも交付決定前の着工は対象外です。


稲城市の賃貸市場を、NOIの目で読む

制度の話から、少し物件の話に寄せます。

稲城市の人口は令和8年6月1日現在で95,110人、44,461世帯(住民基本台帳・外国人住民を含む/出典:稲城市 最新の人口及び世帯数)。多摩地域では中規模ですが、多摩ニュータウンの開発と京王相模原線・小田急多摩線の沿線整備によって人口が伸びてきた、比較的「新しい」街です。

オーナー視点で押さえるべき地理的な特徴は3つあります。

1. 平地(南武線沿線)と丘陵(京王相模原線沿線)で物件性格がまったく違う

矢野口・稲城長沼・南多摩といったJR南武線沿線は、多摩川に近い平地。単身向け・コンパクト物件が厚く、ワンルーム〜1Kのゾーンが主戦場です。一方、若葉台・向陽台・長峰といった丘陵側は計画的に整備された住宅地で、ファミリー向けの比重が上がります。同じ「稲城市の賃貸」でも、断熱改修が賃料に跳ね返る度合いはファミリー層の物件のほうが大きい、というのが私の実感です。単身者は数年で退去しますが、ファミリーは光熱費と快適性で住み続けを決めるからです。

2. 「築25〜35年」のボリュームゾーンが厚い

多摩ニュータウン系の街区や沿線開発の第一世代が、いま大規模修繕2回目・3回目の時期に差しかかっています。ここが今回ご紹介した制度群のターゲットとぴたり重なります。

3. 斜面地・高低差が多い

これは工法選定の話に直結します。後述します。

入居率1ポイントの重み

数字で体感していただくため、モデルを置きます。

前提 数値
総戸数 12戸
平均賃料 85,000円/月
満室年間賃料 1,224万円
入居率92% → 95%(+3pt) 年間 約36.7万円の増収
同・10年累計 約367万円

これに対し、東京都の断熱改修助成で窓を12戸分改修した場合、上限ベースでは30万円/戸×12戸=360万円が補助されうる計算になります(実際は対象経費の2/3が上限を下回れば、その額)。補助で投資額を圧縮し、性能向上で入居率を持ち上げる。 2つを重ねて初めて、この投資は「利回り改善」として成立します。


税務:補助金は雑収入、修繕費か資本的支出かで手残りが変わる

ここは税理士の領域なので、私は事実関係だけを整理します。最終判断は必ず顧問税理士にご確認ください。

① 補助金は受け取った年度に「雑収入」として課税対象

これを忘れているオーナーさまが本当に多い。100万円の補助金が入れば、その年度の収入が100万円増えます。法人・個人を問わず、課税所得への影響を織り込んで資金計画を立てる必要があります。国庫補助金等については圧縮記帳という取り扱いが用意されている場合もありますので、適用可否を含めて事前相談を。

② 修繕費か資本的支出か

区分 処理 オーナーへの影響
修繕費 その年の必要経費・損金に一括算入 当年の課税所得を大きく圧縮できる
資本的支出 資産計上し、耐用年数にわたり減価償却 当年の効果は小さいが、長期で費用化

原状回復・維持管理の色が濃い工事は修繕費、使用可能期間を延ばしたり価値を高めたりする工事は資本的支出、というのが基本的な考え方です。外壁塗装ひとつでも、既存同等仕様での塗り替えか、高耐久・高断熱仕様へのグレードアップかで判断が変わり得ます。 見積書の内訳の書き方が後々効いてきますので、施工会社にも「税務上の区分を意識した内訳で出してほしい」と伝えておくのが実務的です。

③ 省エネ改修の固定資産税減額は、賃貸住宅は対象外

これは明確です。省エネ改修に係る固定資産税の減額措置は、対象が「賃貸住宅ではない住宅」と要件で定められています(出典:国土交通省 住宅:省エネリフォーム税制(所得税・固定資産税)、東京都主税局 省エネ改修工事をした住宅に対する固定資産税の減額)。

「断熱改修すれば固定資産税が下がる」と説明されたら、その相手は賃貸の制度を正確に把握していません。オーナーの税メリットは固定資産税ではなく、修繕費の損金算入と減価償却で取りにいく――ここが管理組合向けの記事とオーナー向けの記事で最も大きく分かれる点です。


出口戦略:省エネラベルは「収益還元価格」に効く

賃貸経営の最終利益は、毎月のキャッシュフローと、売却時の価格の合算で決まります。

収益還元法で価格を考えるなら、価格 ≒ NOI ÷ 還元利回り(キャップレート)です。式の分子であるNOIが上がれば価格は上がり、分母のキャップレートが下がっても価格は上がります。

断熱改修が効くのは、実はこの両方です。

  • 分子(NOI):入居率の改善、賃料下落圧力の緩和、共用部光熱費の低減
  • 分母(キャップレート):省エネ性能表示ラベルという客観指標があることで、買主側のリスク認識が下がり得る

とりわけ後者は、これから効いてくる論点だと私は見ています。金融機関や機関投資家が建物の環境性能を評価軸に入れる流れは、住宅分野にも降りてきています。ラベルのない築30年と、ラベル付きの築30年が並んだとき、5年後の買主がどちらを選ぶか。 私はここに賭ける価値があると思っています。

築年数なりの劣化は、賃料の下落圧力として静かに効いてきます。出口を見据えた修繕投資は、利回り改善よりも物件価値そのものを底上げする――オーナーさまにはこの順番でお伝えするようにしています。


工法選定:稲城の高低差では、足場が「見えないコスト」になることがある

最後に、私の本業の話をさせてください。

稲城市は多摩川沿いの平地と、多摩丘陵の斜面地が混在しています。丘陵側の物件では、こんなことが起こります。

  • 建物の一方が擁壁・法面に接していて、足場が組みにくい/組めない
  • 隣地との離隔が数十センチしかなく、足場の足元が取れない
  • 敷地内通路が狭く、資材搬入の動線が確保できない
  • 足場を組むと入居者の駐車区画を数か月潰すことになる

こういう現場で従来の全面足場にこだわると、特殊足場の割増、仮設計画のやり直し、工期延長という形でコストが膨らみます。 そして最後の一つ――駐車場を数か月使えなくすることの機会損失は、見積書には絶対に載りません。載らないから、多くのオーナーさまが見落とします。

ここで選択肢になるのがロープアクセス工法(無足場工法)です。産業用ロープで作業員が屋上から吊り下がり、外壁の塗装・シーリング打ち替え・タイル補修・調査を行う工法で、足場の架設・解体が不要になります。足場費用そのものの圧縮に加えて、入居者の生活影響と工期を短くできるのが賃貸物件にとっての本質的な価値です。ロープアクセス工法の技術情報や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。

一方で、正直に申し上げます。ロープアクセスが常に有利なわけではありません。

条件 向いている工法
全面的な下地補修・大量のタイル張替えがある 足場仮設(作業効率で勝る)
バルコニー内部の作業比率が高い 足場仮設
高層・塔状で足場架設費が跳ね上がる ロープアクセス
隣地離隔が取れない/擁壁に面している ロープアクセス
一部の面だけ足場が組めない ハイブリッド(部位ごとに使い分け)

明誠は、この3通りを同じテーブルで比較してご提案できる、日本でも数少ない会社です。加えて、ロープアクセス工事では日本で初めてとなるフランチャイズを展開しており、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しています。だから高品質と低価格を同時に成立させられる。手前味噌ですが、これは10年かけて作ってきた仕組みです。

詳しくはロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。


2026年度 稲城市オーナー向け 申請カレンダー

締切だけを抜き出しました。カレンダーに転記してお使いください。

期限 内容 制度
受付終了済(6/11) 令和8年度分の受付終了 稲城市商工会住宅改修等補助金事業
受付終了済 令和8年度の耐震診断助成は予算上限で終了 稲城市木造住宅耐震診断助成金
一時停止中 耐震除却助成は予算上限で新規受付停止 稲城市木造住宅耐震改修等助成金(除却)
令和8年12月11日(金) 耐震改修助成の交付申請書提出期限 稲城市木造住宅耐震改修等助成金
令和8年12月18日(金) 変更等承認申請書 / 生垣・ブロック塀の交付申請書 稲城市(両制度)
令和9年2月5日(金) 完了報告書提出期限 稲城市(耐震・生垣ブロック塀)
令和9年3月5日(金)17:00 申請受付終了 稲城市カーボンニュートラル住宅設備等補助金
随時(予算上限まで) 事前申込 → 契約 → 交付申請兼実績報告 東京都 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業
随時(予算上限まで) 登録事業者経由で申請 賃貸集合給湯省エネ2026事業

制度は年度途中でも変更・終了する可能性があります。着手前に必ず各制度の公式ページと担当窓口で最新情報をご確認ください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 稲城市に、賃貸マンションの外壁塗装や屋上防水そのものに出る補助金はありますか?
A. 2026年8月時点で、稲城市が賃貸物件の外壁塗装・屋上防水そのものを対象に単独で交付している補助金は確認できていません。狙うのは、耐震改修助成(木造共同住宅)、東京都の断熱改修助成、国の給湯省エネ事業の3本です。

Q2. 木造アパートのオーナーですが、自分は市外に住んでいます。稲城市の耐震改修助成は使えますか?
A. 助成対象者の要件は「現に助成対象住宅の所有権を有すること」で、居住地の要件は課されていません。所有者と居住者が異なる場合の同意書様式も市が用意しています。詳細はまちづくり再生課(042-378-2111 内線324)へご確認ください(出典:稲城市)。

Q3. 東京都の断熱改修助成は、工事を始めてからでも申請できますか?
A. できません。事前申込の受付完了後に契約を締結する必要があり、事前申込受付前に契約または着工したものは助成対象外です。また、改修前の断熱等級を把握していない工事も対象外になります。

Q4. 断熱改修をすると固定資産税は安くなりますか?
A. 賃貸住宅は対象外です。省エネ改修に係る固定資産税の減額措置は「賃貸住宅ではない住宅」が要件とされています。オーナーの税メリットは、修繕費としての損金算入や減価償却の側で設計してください。

Q5. 足場を組まずに大規模修繕はできますか?
A. ロープアクセス工法により、外壁塗装・シーリング打ち替え・タイル補修・外壁調査などは足場なしで施工可能です。ただし下地補修が広範囲に及ぶ場合やバルコニー内部の作業比率が高い場合は足場のほうが効率的です。部位ごとに使い分けるハイブリッド工法が最適解になるケースも多くあります。


この記事のポイントまとめ

  • 稲城市の補助金は「居住要件」が壁。賃貸オーナーは市の制度の大半が使えない
  • 例外は木造住宅耐震改修等助成金。木造共同住宅が対象で1/2・上限100万円、申請は12月11日まで
  • 本丸は東京都の賃貸住宅断熱・再エネ集中促進事業。省エネ診断は10/10・120万円/棟
  • 給湯器は賃貸集合給湯省エネ2026事業。オーナーは直接申請不可、登録事業者経由
  • 省エネ改修の固定資産税減額は賃貸住宅は対象外。税メリットは損金算入と減価償却で取る

最後に

制度を並べてきましたが、私が本当にお伝えしたいのは、「稲城市は市の補助金が薄いから何もできない」ではないということです。市が薄いぶん、東京都と国の賃貸専用メニューをどう組み合わせるかで差がつきます。そして稲城の丘陵地形は、工法選定でさらに差がつく土地です。

お持ちの物件で、まだこの補助金の検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度お声がけください。1棟の現地調査と、補助金を織り込んだ利回り改善シミュレーションだけでもお受けしています。「今年度は間に合わないので、来年度の4月に照準を合わせましょう」という結論になることもあります。それでも、来年度に間に合わせるための逆算ができるだけで、判断は変わるはずです。

ご相談だけでも遠慮なく、お問合せフォームからお声がけください。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


関連記事・関連リソース


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社です。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板の専門職が加盟しています。

最終更新:2026年8月23日


出典・参考資料

免責:本記事は2026年8月23日時点の公開情報に基づいています。補助金・税制は予算状況により年度途中で変更・終了する場合があります。実際の申請にあたっては各制度の公式ページおよび担当窓口で最新情報をご確認ください。税務上の取り扱いは個別事情により異なりますので、顧問税理士へご相談ください。

狛江市の賃貸マンション補助金|オーナー向け2026年版

この記事で答える質問:狛江市で賃貸マンション・アパートを持つオーナーは、2026年度(令和8年度)にどの補助金が使えて、どれが使えないのか?

先に答えます。狛江市には、賃貸オーナーが「居住地に関係なく」使える市の助成が1つあります。 地球温暖化対策用設備導入助成の、共同住宅枠です。市の要綱は対象者を3つに分け、個人住宅枠には「市内に住所を有し、かつ居住する方」という条件を付けているのに対し、共同住宅枠は「市内に共同住宅を所有する方(予定を含む)または管理組合」とだけ書いています。物件に住んでいる必要も、市内に住んでいる必要も、書かれていません。

しかも金額の設計が独特です。高反射率塗装は通常「材料費の4分の1・上限4万円」ですが、共同住宅の共用部分等に導入する場合は限度額20万円。宅配ボックスも通常2万円のところ、共用部分等なら10万円。市の側が明確に「共用部でやるなら厚く出す」という設計にしています。

一方で、狛江市の分譲マンション耐震助成は、要綱に「賃貸住宅以外の建築物であること」と明記されています。 一棟まるごと賃貸で運用している物件は、この制度からは外れます。

そして本命は、例年どおり東京都です。令和8年度の賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業は、省エネ診断が補助率10/10・120万円/棟、高断熱窓が2/3・30万円/戸。狛江市のオーナーにとって、桁がひとつ違います。

以下、一次情報のURLを添えて、順に整理していきます。


1. 狛江市の賃貸経営は「土地が増えない街」の戦い方になる

私は改修の仕事で多摩地域を回りますが、狛江市の物件を見るときは、他の市とはっきり違う前提を置きます。この街には、新しい土地が出てこないからです。

狛江市の面積は6.39平方キロメートル。東西2,940メートル、南北3,660メートル。市役所を中心に、東は世田谷区、西と北は調布市、南は多摩川をはさんで川崎市に接しています(出典:狛江市 狛江市の概要)。全国でも2番目に小さい市とされる規模で、四方を他自治体に囲まれ、市域が広がる余地はありません。

そこに国勢調査人口(令和2年)で84,772人が住んでいます。単純計算で1平方キロメートルあたり約1万3千人。多摩地域では突出した密度です。

この構造が、賃貸経営に何をもたらすか。新築供給の余地が小さいということは、既存ストックの競争が、そのまま入居率を決めるということです。

23区や多摩の広い市であれば、「近くに新築が建って客を持っていかれた」という話が起きます。狛江ではそれが起きにくい。裏を返せば、同じ築年数の既存物件同士で、設備と管理の差だけで勝負が決まるということでもあります。

もうひとつ、時間軸の前提があります。小田急線が開通したのは昭和2年で、このとき狛江駅と和泉多摩川駅が開設されました(出典:狛江市 狛江市の概要)。新宿まで約20分という立地が、戦後の早い段階からベッドタウンとしての開発を進めてきた。つまり狛江市の賃貸ストックには、築40年、築50年という物件が普通に混ざっています。

そして、この街のもうひとつの顔が水です。南に多摩川、北に野川。市は多摩川氾濫版・野川入間川氾濫版の両方の洪水ハザードマップに加えて、浸水継続時間マップと内水ハザードマップまで整備しています(出典:狛江市 狛江市防災マップ、ハザードマップ、防災ミニアプリ)。ここまで揃えている自治体は、多摩でも多くありません。

つまり狛江市のオーナーが向き合う課題は、こう整理できます。

  • 供給が増えないぶん、既存物件の質がそのまま入居率になる
  • ストックが古く、大規模修繕の判断が待ったなしの物件が多い
  • 水害リスクという、この街固有の資産価値要因がある

補助金は、この3つに手を打つための資金圧縮の道具です。順に見ていきます。


2. 【最初に結論】狛江市のオーナーが使える制度・使えない制度

長い記事なので、判定表を先に置きます。お持ちの物件を思い浮かべながら見てください。

制度名 実施主体 賃貸オーナーの可否 助成額の目安
地球温暖化対策用設備導入助成(共同住宅枠) 狛江市 ◎ 居住地要件なし。使える 高反射率塗装 共用部20万円、宅配ボックス 共用部10万円、高断熱窓5万円ほか
賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業(令和8年度) 東京都(クール・ネット東京) ◎ 本命。賃貸専用の制度 省エネ診断10/10・120万円/棟、高断熱窓2/3・30万円/戸ほか
賃貸集合給湯省エネ2026事業 国(経済産業省) ○ オーナー専用。ただし自分では申請できない エコジョーズ等 5万〜10万円/台
分譲マンション耐震診断助成金 狛江市 × 対象外(「賃貸住宅以外」と明記) 上限100万円
分譲マンション耐震補強設計助成金 狛江市 × 対象外(同上) 上限200万円
分譲マンション耐震補強改修助成金 狛江市 × 対象外(同上) 上限1,500万円
分譲マンション耐震化促進アドバイザー派遣 狛江市 △ 区分所有オーナーは管理組合経由で恩恵あり 無料
木造住宅耐震診断・改修助成金 狛江市 △ 木造集合住宅も対象。年度ごとの要件確認が必須 要確認(後述)
先進的窓リノベ2026事業/みらいエコ住宅2026事業 国 ○ 製品要件の根拠として実質必須 製品・工法により変動

見ていただくとわかるとおり、狛江市は「耐震は分譲マンションと自己居住者向け、省エネは共同住宅も可」という線引きをしています。ここを最初に押さえてください。


3. 市の温暖化対策助成は、共同住宅枠に居住地要件がない

3-1. 対象者の書き分けが、そのまま扉になっている

令和8年度の狛江市地球温暖化対策用設備導入助成は、対象者を導入場所ごとに3つに分けています。

導入場所 個別要件
個人住宅(共同住宅の専有部分、および個人で使用するために共用部分に設置する場合を含む) 市内に住所を有し、かつ居住する方(予定を含む)
共同住宅(複数の入居者が共有で使用するために共用部分等に設置する場合に限る) 市内に共同住宅を所有する方(予定を含む)または管理組合
事業所 市内で事業を営んでいる方(予定を含む)

共通要件は、市税の滞納がないこと、権利関係等により必要となる他者の同意が得られていること、未使用の機器を新たに導入すること、の3点です(出典:狛江市 令和8年度狛江市地球温暖化対策用設備導入助成の申請受付を開始しました)。

読み比べてください。個人住宅は「市内に住所を有し、かつ居住する方」。共同住宅は「市内に共同住宅を所有する方」。居住も住所も、共同住宅枠の条文には書かれていません。

多摩地域の市の省エネ助成は、この居住地要件で賃貸オーナーが弾かれるケースが少なくありません。狛江市の共同住宅枠には、それがない。ここが第一の重要ポイントです。

ただし条件が1つあります。「複数の入居者が共有で使用するために共用部分等に設置する場合に限る」という括弧書きです。つまり、専有部(各住戸内)の工事ではなく、共用部の工事でなければならない。 屋根、共用廊下、エントランス、駐輪場まわり——大規模修繕で手を入れる場所と、ちょうど重なります。

3-2. 共用部だと、限度額が跳ね上がる

金額表を見ると、市の意図がはっきり読み取れます。

対象機器 通常の助成額 共同住宅の共用部分等の場合
高反射率塗装 材料費の4分の1以下(限度額4万円) 限度額20万円
太陽光発電システム(購入) 1kW当たり2万円(限度額8万円) 限度額20万円
宅配ボックス 1件あたり2万円 10万円(共用部は2台以上の設置が要件)
高断熱窓 1件あたり5万円(太陽光を設置済み・同時設置なら10万円) ―
日射調整フィルム 材料費の4分の1以下(限度額4万円) ―
蓄電池システム(購入) 5万円 ―
家庭用燃料電池 5万円 ―
エネルギーマネジメントシステム 機器本体費用の3分の1以下(限度額2万円) ―

1,000円未満の端数は切り捨てです(出典:狛江市 令和8年度狛江市地球温暖化対策用設備導入助成)。

正直に申し上げて、1棟の大規模修繕から見れば20万円は主役ではありません。ただ、高反射率塗装20万円+宅配ボックス10万円+高断熱窓5万円と積み上げれば、足場の一部やシーリング打ち替え1面ぶんくらいにはなります。取れるものを取らない理由はない、というのが私の考えです。

3-3. 高反射率塗装には、外しやすい技術要件が3つある

ここが実務で一番間違えるところです。市が言う高反射率塗装は、次の要件をすべて満たす必要があります。

  • 蓄熱を抑制する塗料等であって、揮発性有機化合物(VOC)の含有量が少ないもの
  • 灰色(N6)または類似色の試験体が、JIS K5602(塗膜の日射反射率の求め方)に基づき測定された結果、日射反射率測定値(近赤外線領域)が50パーセント以上であると第三者機関により証明されているもの、または同等の性能をもつと認められるもの
  • 屋根面全体を塗装すること(外壁部分は対象となりません)

(出典:狛江市 令和8年度狛江市地球温暖化対策用設備導入助成)

3つとも、外すと通りません。特に3つ目です。「外壁部分は対象となりません」とはっきり書かれている。大規模修繕で外壁を遮熱塗料で塗っても、この助成では1円も出ないということです。出るのは屋根だけ、それも全面塗装が条件。

そして助成額の計算基礎も要注意です。市は「材料費は、仕上げ用とその下地となる塗料の材料費を指し、防水材は含まれません」と明記しています。屋上防水を同時にやる物件では、見積の内訳が塗料材料費と防水材料費で分かれていなければ、申請額が計算できません。

だから見積を取る段階で、施工会社にこう確認してください。

「JIS K5602で、近赤外線領域の日射反射率50%以上を第三者機関が証明した塗料を出せますか。灰色(N6)系の試験体でお願いします。あと、見積は屋根の塗料材料費と防水材料費を分けて書いてください」

これを聞かれて即答できない会社は、この助成の実務をやったことがない可能性が高いです。

3-4. 宅配ボックス10万円は、入居率に直接効く唯一の枠

補助金の記事でこんな言い方をするのは珍しいと思いますが、狛江市の助成メニューで、私が最も「賃貸経営に効く」と考えるのは宅配ボックスです。

理由は単純で、入居希望者が物件検索で条件指定する設備だからです。断熱性能や遮熱塗装は、内見時に説明しないと伝わりません。宅配ボックスは、募集図面の設備欄にチェックが1つ増える。それだけで、検索でヒットする母数が変わります。

要件は次のとおりです。

  • 施錠できる構造であること(南京錠で施錠できるものは除く)
  • 3辺の合計が100cm以上の荷物が投函できる大きさがあること
  • 袋式および折りたたみ式でないこと
  • 業者の設置工事により、移設できないように固定されていること
  • 共同住宅の共用部分は、上記要件を満たす宅配ボックスを2台以上設置すること

(出典:狛江市 令和8年度狛江市地球温暖化対策用設備導入助成)

「2台以上」という条件が付いているぶん、初期費用は上がります。ただ助成は10万円。10戸〜20戸規模のアパート・マンションであれば、自己負担はかなり圧縮できる計算になります。

3-5. 落とし穴は3つあります

落とし穴1:交付申請日から着工予定日まで、30日以上空ける

市はこう書いています。「交付申請をいただいてから交付決定までに審査の時間をいただきます。交付申請日から工事着工予定日の期間を30日以上空けてください」(出典:狛江市 令和8年度狛江市地球温暖化対策用設備導入助成)。

これは他市の制度より一段厳しい書きぶりです。「交付決定前の着工はNG」はどこでも同じですが、狛江市は日数まで指定している。 足場を組むスケジュールから逆算すると、着工希望日の1か月半前には申請書を出しておく必要があります。

落とし穴2:申請者と、領収書の名義が一致していないと出ない

市の注意書きです。「助成金の申請者は対象者要件を満たした上で、機器の導入費用を支払う方となります。申請者以外が機器の導入費用を支払う場合、助成金の交付は受けられません。そのため、機器導入後に提出する完了報告書には、申請者が宛名になっている領収書を添付する必要があります」(出典:狛江市 令和8年度狛江市地球温暖化対策用設備導入助成)。

これ、法人と個人で物件を持ち分けているオーナーが引っかかります。申請名義と支払名義がズレたら、その時点で不交付です。 資産管理会社を使っている方は、契約・請求・入金の名義を最初から揃えてください。

なお、権利関係によっては同意書が必要です。分譲共同住宅の共用部なら「管理組合機器等導入同意書(第1号様式の2)」、共有持分がある場合は「共有者機器等導入同意書(第1号様式の3)」、建物を使用する権限を有する方は「所有者機器等導入同意書(第1号様式の4)」です。

落とし穴3:先着順で、予算上限に達したら止まる

申請期間は令和8年4月1日〜令和9年1月29日。受付は先着順で、予算上限額に達した日をもって停止します。

完了報告は、機器を設置した日から起算して30日以内、または令和9年2月26日までのいずれか早い日まで。請求書の提出は令和9年3月31日まで。助成回数は、同一の建築物に設置する対象機器の種目ごとに1回です。

窓口は狛江市役所5階 環境政策課環境係(電話 03-3430-1287)、受付は平日午前8時30分〜午後5時。郵送申請も可能で、宛先は〒201-8585 狛江市和泉本町1-1-5 です。


4. 分譲マンション耐震助成は「賃貸住宅以外」と明記されている

狛江市は分譲マンションの耐震化に、多摩地域でもかなり手厚い制度を持っています。金額だけ見れば魅力的です。

内容 助成額 上限額
耐震化促進アドバイザー派遣 自己負担なし 無料
耐震診断 延べ床面積1㎡当たり4,580円または耐震診断費用のいずれか低い額の3分の2 100万円
耐震補強設計 延べ床面積1㎡当たり2,000円または設計費用のいずれか低い額の2分の1 200万円
耐震補強改修(延べ床1,000㎡以上) 1㎡当たり51,700円(Is値0.3未満相当なら56,900円)または改修費用のいずれか少ない額の3分の1 1,500万円
耐震補強改修(延べ床1,000㎡未満) 1㎡当たり34,100円または改修費用のいずれか少ない額の23% 1,500万円

対象は、昭和56年5月31日以前に建築基準法第6条に基づく建築確認を受けた、地階を除く階数が3以上の民間分譲マンションです(出典:狛江市 分譲マンション耐震助成)。

4-1. 一棟賃貸のオーナーは、条文で外れます

ただし、診断・補強設計・補強改修の3つとも、対象建築物の要件に同じ一文が入っています。

賃貸住宅以外の建築物であること。

そして「民間分譲マンション」の定義も書かれています。「2以上の区分所有者が存する建物で人の居住の用に供する専用部分がある共同住宅のこと」(出典:狛江市 分譲マンション耐震助成)。

つまり、1棟を単独で所有して賃貸に出している物件は、区分所有者が2以上ではないため、そもそも定義から外れます。 さらに念押しで「賃貸住宅以外」と書かれている。ここは解釈の余地がありません。

耐震という公益性の高いテーマですら、賃貸には届かない。私はこの設計を批判したいわけではなく、制度の構造がそうなっている以上、賃貸オーナーは別の道具を探すしかない、という事実を共有したいだけです。

4-2. 区分所有で貸している方は、話が別です

一方、ワンルームや複数戸を区分所有して賃貸に出している方は、立場が変わります。あなたはそのマンションの区分所有者であり、管理組合の構成員です。

耐震診断助成の対象者は「耐震診断を受けることについて、区分所有者の合意を得た管理組合または団地管理組合」。つまり管理組合として申請する制度であり、区分所有オーナーはその受益者になります。

そして最初の一歩として使えるのが、耐震化促進アドバイザー派遣事業です。

  • 対象:昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた、耐火または準耐火建築物で、原則3階以上の分譲マンション
  • 対象者:分譲マンションの管理組合等の代表者
  • 費用:無料(派遣費用は市が負担)
  • 回数:1管理組合等につき、1回あたり2時間、年度あたり5回を上限
  • 内容:耐震化の概算費用と工事の説明、相談・質疑、補助制度の説明、耐震診断・補強設計・改修に係る区分所有者間の合意形成に必要な指導、管理組合運営の円滑化に必要な指導

派遣されるのは、内容に応じて建築士、行政職員、マンション管理士です(出典:狛江市 分譲マンション耐震助成)。

区分所有オーナーにとって、この「合意形成の指導」が無料で年5回使えるのは、実はかなり大きい。 旧耐震マンションの耐震化が進まない最大の理由は、費用そのものより合意形成だからです。総会で話を前に進めたいなら、理事会にアドバイザー派遣の申請を提案してみてください。

4-3. ただし、現在の受付状況は要確認です

市のページには、診断・補強設計・補強改修の3制度すべてに次の注記が付いています。

※予算が上限に達したため一旦受付を停止していましたが、現在調整中であり、ご相談には対応できますのでご連絡ください

このページの更新日は2026年8月7日です(出典:狛江市 分譲マンション耐震助成)。つまり、この記事の公開時点で、金額の大きい3制度は受付が止まっている状態ということになります。

相談自体は受け付けているとのことなので、該当する管理組合の理事をされている方は、都市建設部 まちづくり事業課 住宅係(電話 03-3430-1359)へ確認してください。私の経験上、この手の「調整中」は、電話1本で見通しが分かります。


5. 木造アパートなら、市の木造耐震助成に可能性がある

狛江市には木造住宅の耐震助成もあり、こちらは分譲マンション制度と対象の書きぶりが違います。

市のページによれば、対象となる住宅は「昭和56年5月31日以前(旧耐震基準)に原則として建築確認を受けて建てられた、市内の木造住宅または、木造集合住宅」。そして対象者は「対象となる住宅を所有する個人」などとされています(出典:狛江市 木造住宅耐震助成)。

注目すべきは2点です。

  1. 対象に「木造集合住宅」が明記されている——木造アパートが視野に入る書き方
  2. 対象者の条件に「現に居住していること」が書かれていない——所有していることが軸

多摩地域の耐震助成は「一戸建て」「現に居住」で賃貸を外す例が多いので、この書きぶりは相対的に賃貸オーナーに開かれています。

ただし、ここは慎重にお伝えしなければなりません。 市の当該ページには平成29年度時点の受付終了の記載が残っており、掲載されている助成額(診断は費用の3分の2・8万6千円限度、改修は費用の2分の1で評点1.0以上とする工事が50万円限度、評点0.7以上1.0未満または1階部分を1.0以上とする工事が30万円限度、同時期の他リフォーム工事に費用の5分の1・20万円限度の上乗せ)が、令和8年度も同額かどうかはこのページだけでは判断できません。 民間の補助金まとめサイトでは診断12万円・改修80万円という上限額を掲げているものもあり、数字が一致していません。

したがって、木造アパートをお持ちの方は、令和8年度の住宅関係支援ガイドブックを確認したうえで、まちづくり事業課 住宅係(03-3430-1359)に「木造集合住宅で、所有者は市外在住。診断助成の対象になりますか」と直接聞いてください。 記事の数字を鵜呑みにして計画を組むのは、この論点に関してはおすすめしません。

なお、市税を完納していることは共通の要件です。共有建築物なら共有者全員、区分所有建築物なら区分所有者全員の完納が求められます。


6. 本命は都の「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」

ここからが、狛江市のオーナーにとっての本題です。

東京都は令和8年度、賃貸住宅のためだけに作られたこの事業を実施しています。居住地要件も法人制限もありません。

6-1. 対象になるオーナー・ならない物件

助成対象者は、助成対象住宅を1棟所有している個人または法人。建物の登記事項証明書で所有権者として証明できることが条件です。1棟のうち、オーナーの3親等以内の親族による区分登記がある物件も対象になります。設備をオーナーに貸与するリース事業者との共同申請も可能です。

対象住宅の要件はこうです。

  • 普通賃貸借契約を締結し、貸し出される既存の住宅であること
  • 専用住宅であること
  • 1つの住戸を店舗用と居住用の2つの用途で兼用している場合、その部屋は対象外
  • 賃貸集合住宅では、オーナーおよびオーナーの3親等以内の親族が居住する住戸も対象

(出典:クール・ネット東京 令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業)

狛江駅・和泉多摩川駅周辺には1階が店舗の物件が点在します。該当する場合は、住戸部分だけで計画を組んでください。

6-2. 助成額——診断は全額出ます

省エネ診断等

対象 補助率 上限
省エネ診断等(省エネ性能表示を含む) 対象経費の10/10 120万円/棟
省エネ診断用の現況図面の作成 対象経費の10/10 10万円/戸

断熱改修

対象 補助率 上限
高断熱窓 対象経費の2/3 30万円/戸
高断熱ドア 対象経費の2/3 27万円/戸
断熱材 対象経費の2/3 60万円/戸

対象経費は材料費(対象設備の購入に必要な経費)と工事費(対象設備の設置と不可分の工事に必要な経費)です。省エネ性能表示(ラベル作成・再計算)に係る経費は、按分して各事業費に加えられます(出典:クール・ネット東京 令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業【省エネ診断・断熱改修】)。

技術要件も押さえておきます。

  • 高断熱窓:居室の外気に接する窓を改修すること。国の二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(断熱リフォームに係わる支援事業)、先進的窓リノベ事業、みらいエコ住宅事業のいずれかで補助対象製品として登録されている窓・ガラスであること
  • 高断熱ドア:高断熱窓または断熱材の改修と同時に実施すること。熱貫流率が2.3 W/(㎡・K)以下であること
  • 断熱材:居室の外気に接する部分に設置すること。熱抵抗値が屋根2.7以上、天井2.7以上、外壁2.7以上、床2.2以上であること

6-3. 狛江市の家賃水準で、この投資はペイするのか

数字で見ます。狛江駅周辺の1Kは、新築かつ駅徒歩5分以内という条件で家賃相場9.3万円前後、市内全体では駅距離に応じて5万円台から10万円台まで幅があるレンジです(出典:SUUMO 狛江駅の家賃相場・賃料相場情報)。武蔵村山市のような多摩西部と比べると、同じ工事でも回収年数がはっきり短くなる水準です。

仮に20戸、平均家賃8万円のマンションで試算します。

項目 金額
満室想定賃料(8万円×20戸×12か月) 1,920万円
空室率5%を見た実効賃料 1,824万円
運営費25%を引いたNOI(純営業収益) 約1,368万円

ここに高断熱窓の改修を入れます。1戸あたり工事費45万円と置くと、20戸で900万円。

項目 金額
工事費総額 900万円
都の助成(2/3、上限30万円/戸) 600万円
実質自己負担 300万円
省エネ診断(10/10・120万円/棟の枠内) 実質ゼロ

自己負担300万円に対して、家賃を月2,000円上げられたとします。2,000円×20戸×12か月=年48万円。単純回収は約6.3年です。

もちろん、狛江市の相場で全戸2,000円上げられるかは物件次第です。ただ、賃料を上げなくても効果は出ます。空室期間の短縮です。 家賃8万円の部屋が1戸、年間で1か月ぶん早く決まるだけで8万円。20戸のうち年5戸の入退去があるなら、それだけで年40万円のインパクトになります。

そしてNOIが年48万円増えれば、還元利回り5%で評価した場合の物件価格は960万円上がる計算です。自己負担300万円に対して、これが出口戦略における本当のリターンです。断熱改修は、家賃の話であると同時に、売却時の評価額の話でもあります。

6-4. 申請順序を1つ間違えると、全部ゼロになります

都の制度で最も多い失敗が、順番です。次の3つは、どれか1つでも外すと不交付になります。

① 事前申込の前に契約・着工したら対象外

都はこう明記しています。「必ず事前申込受付完了後に事業者と契約を締結してください。事前申込受付前に契約又は着工したものは助成金の対象外です」(出典:クール・ネット東京 令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業)。

② 改修前の断熱等級を把握していないと対象外

「事前に診断等を行い、改修前の等級を確認してから改修を行ってください。改修前の等級を把握せずに改修を行った場合は助成対象外となります」(出典:クール・ネット東京【省エネ診断・断熱改修】)。

省エネ診断は補助率10/10、つまり実質無料です。やらない理由がありません。

③ 登録事業者以外の施工は対象外

診断も改修も、公社によって登録された事業者と契約を締結して実施されたものでなければなりません。長年つきあってきた工事会社が登録していない場合、その会社にお願いすると助成はゼロになります。事業者登録の期間は令和8年5月29日〜令和9年2月27日ですので、取引先に「登録していますか」と確認し、していなければ登録を促すのが現実的な進め方です。

なお、事前申込は契約や住戸ごとではなく、1棟の建物ごとに1度だけ行います。住戸ごとに工事時期を分ける場合でも、同一建物なら申込は1回です。

6-5. 令和8年度のスケジュール

内容 期間
事前申込 令和8年5月29日から(令和8年4月1日〜6月30日に契約した場合は、令和9年3月31日までに事前申込)
交付申請兼実績報告 令和8年6月30日から、事前申込有効期限または令和11年3月30日のいずれか早い日まで
事前申込後の交付申請期限 事前申込から1年以内(超えると事前申込が自動的に無効)
不備修正の対応期限 修正依頼から150日以内
事業者登録の受付 令和8年5月29日〜令和9年2月27日

相談窓口として、東京都は「賃貸住宅断熱・再エネ×コンシェルジュ事務局」を用意しています。まず話を聞きたいという段階なら、こちらから入るのが早いです。


7. 国の「賃貸集合給湯省エネ2026事業」は、オーナー専用なのに自分では申請できない

意外と知られていない制度が、これです。賃貸集合住宅のオーナーだけを対象にした、国の給湯器補助です。

既存の賃貸集合住宅の住戸で、従来型給湯器を小型の省エネ型給湯器(エコジョーズ/エコフィール)に交換する工事が対象になります。補助額は、追い焚き機能なしで5万円/台、追い焚き機能ありで7万円/台、浴室へのドレン水排水工事を伴う場合は10万円/台とされています(出典:資源エネルギー庁 賃貸集合給湯省エネ2026事業について)。

20戸のアパートで全戸交換すれば、単純計算で100万円〜200万円です。給湯器の更新時期が来ている物件なら、これは無視できない金額です。

ただし、決定的な注意点があります。

補助金の申請手続きや受け取りと賃貸集合住宅のオーナー等への還元は、「賃貸集合給湯省エネ事業者」が行います。補助対象者である賃貸集合住宅のオーナー等が直接申請をすることはできません。

(出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業【公式】)

つまり、登録事業者を選ばないと、そもそも土俵に乗れない。 公式サイトには登録事業者の検索機能があります。給湯器の相見積を取るとき、「この会社は賃貸集合給湯省エネ事業者として登録されているか」を必ず確認してください。登録のない事業者との契約は補助対象外です。

予算の消化状況も公式サイトで毎日更新されており、2026年8月22日午前0時時点で、予算に対する補助金申請額の割合は33%と公表されています(出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業【公式】)。予算上限に達し次第、交付申請の受付は終了します。年度後半に動き出すと、間に合わない可能性があります。

なお、国内に所有または管理する既存賃貸集合住宅の住戸数が200戸以上の事業者であれば、自ら手続きを行うことを希望する相談窓口が用意されています。規模の大きいオーナー法人は、こちらを検討する余地があります。


8. 多摩川・野川に挟まれた街で、水害リスクを資産価値にどう織り込むか

補助金の話から少し離れますが、狛江市の賃貸経営を語るうえで避けられない論点なので、触れておきます。

狛江市は、南に多摩川、北に野川という構造の中にあります。市が公表しているハザードマップは4種類です。

  • 洪水ハザードマップ(多摩川氾濫版):多摩川流域48時間総雨量588mmという、水防法上の想定しうる最大規模の降雨を前提
  • 洪水ハザードマップ(野川・入間川氾濫版):1時間最大雨量153mm、24時間総雨量690mmを前提
  • 浸水継続時間マップ(多摩川版・野川入間川版)
  • 内水ハザードマップ:下水道等からあふれる水による浸水を想定

(出典:狛江市 狛江市防災マップ、ハザードマップ、防災ミニアプリ)

浸水の深さだけでなく「継続時間」まで公表している点に注目してください。オーナーにとって、浸水深は原状回復費用の話ですが、継続時間は空室期間の話です。水が引くまで半日なのか、1日なのか。その差が、退去と再募集のコストを分けます。

狛江市はさらに、地域ポイントサービス「こまポ」内の防災ミニアプリで、排水樋管水位情報(六郷・猪方)や河川水位情報をリアルタイムに確認できる仕組みも用意しています。

賃貸オーナーとして、私は次の3つを提案しています。

  1. 所有物件のハザード情報を、いま確認しておく。 市はweb版で地点ごとの想定最大浸水深を表示できるようにしています。数字を知らずに保険を掛けているオーナーが、実は少なくありません。
  2. 電気設備の高さを見直す。 受変電設備やポンプ、分電盤が地上や地下ピットにある物件は、浸水すると建物全体が止まります。大規模修繕のタイミングは、この見直しを組み込める数少ない機会です。
  3. 重要事項説明での水害ハザードマップ説明義務を、募集戦略の前提にする。 2020年8月から、不動産取引の重要事項説明で水害ハザードマップの説明が義務化されています。隠せない情報である以上、「対策済み」と説明できる状態にしておくことが、最も現実的な資産防衛です。

昭和49年(1974年)の多摩川堤防決壊は、狛江市の歴史として市自身が記録しています。この街で長く賃貸経営をするなら、水は「前提条件」として計画に入れる。 それが、私が狛江の物件を見るときの基本姿勢です。


9. 税務:補助金は「もらって終わり」ではありません

9-1. 補助金は課税されます

賃貸経営で受け取る補助金・助成金は、原則として不動産所得(法人なら益金)の総収入金額に算入されます。100万円もらったら、100万円がそのまま手元に残るわけではありません。

課税所得が増えれば、所得税・住民税、法人なら法人税に跳ね返ります。「20万円もらった」ではなく「税引後でいくら残るか」で計算してください。

一定の要件を満たす国庫補助金等については圧縮記帳という制度がありますが、自治体の助成金がこれに該当するかは制度ごとの判断になります。必ず顧問税理士に確認してください。

9-2. 修繕費か、資本的支出か

これが実務では一番効きます。

  • 修繕費:その年に全額を経費(損金)算入できる
  • 資本的支出:資産計上し、耐用年数にわたって減価償却する

原状回復にとどまる塗り替えや防水の打ち替えは修繕費になりやすく、建物の価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりする工事は資本的支出と判定されやすい、というのが原則です。

問題は、大規模修繕がこの2つの混在だという点です。同じ足場の上で、外壁の塗り替え(修繕費寄り)と、高断熱窓への交換(資本的支出寄り)が同時に進みます。

だから私は、オーナーさまにいつもこうお願いしています。「見積の内訳を、工事種別ごとに分けて出してもらってください」。1式でまとめられた見積書は、税理士が判定できません。判定できなければ、保守的に資本的支出に寄せられ、その年の節税効果は消えます。

見積の書き方1つで、手元に残るキャッシュが変わります。 これは補助金20万円より大きな話になることがあります。

9-3. 省エネ改修の減税と、出口

一定の要件を満たす省エネ改修工事については、所得税または固定資産税が一定額控除・減額される特例があります。東京都のクール・ネット東京も、この事業の参考情報として国土交通省と東京都主税局の該当ページを案内しています(出典:国土交通省 住宅をリフォームした場合に使える減税制度について、東京都主税局 省エネ改修工事をした住宅に対する固定資産税の減税)。賃貸住宅が対象になるかは要件次第ですので、こちらも事前確認が必要です。

そして出口の話です。都の制度では、省エネ性能表示(ラベル)の作成が必須とされています。診断後も改修後も、ラベルを提出しなければ助成が下りません。

これを「面倒な手続き」と捉えるか、「資産の証明書」と捉えるかで、意味が変わります。省エネ性能表示は、建築物省エネ法に基づいて、住宅の販売・賃貸時に性能を示すための制度です。 募集広告に載せられる。売却時に買主へ提示できる。つまり、助成金を取りにいく過程で、出口戦略に使える書類が手に入るということです。

築40年の物件を、性能の説明ができない状態で市場に出すのか、ラベル付きで出すのか。狛江市のように供給が増えず、既存ストック同士で競争する市場では、この差は年々効いてきます。


10. 工事の側から:狛江市で「足場が架けにくい」物件をどうするか

最後に、施工の話をします。ここは補助金以上に、コストに直結します。

10-1. 狛江市の物件は、足場の条件が厳しい

冒頭で書いたとおり、狛江市は6.39平方キロメートルに約8万5千人が暮らす、多摩地域屈指の高密度な街です。当然、建物どうしの距離が近く、道路が狭い区画が多い。 市が狭あい道路の拡幅整備に取り組んでいること自体が、その裏返しです。

現場から見ると、これは具体的にこういう問題になります。

  • 隣地との離隔が取れず、足場が組めない面が出る
  • 前面道路が狭く、資材搬入・トラックの駐車に苦労する
  • 越境の同意取得や、近隣への影響の説明に時間とコストがかかる
  • 敷地に余裕がないため、仮設材の仮置き場所がない

足場は「架けられれば安い」工法です。しかし架けにくい現場では、割増と工程遅延で、想定より高くつくことがあります。

10-2. ロープアクセス工法が効く条件

ロープアクセス工法(無足場工法)は、産業用ロープで職人が壁面に取り付いて作業する手法です。足場を組まないため、次の条件が揃うと強く効きます。

  • 隣地が近く、足場を架けにくい面がある——狛江の密集市街地の物件はここに当たりやすい
  • 4〜5階建て以上で、外壁の一部だけを補修したい——全面足場は過剰投資になる
  • 調査・診断だけ先に行いたい——打診調査や漏水原因の特定は、足場なしで実施できる
  • 入居者の生活影響を抑えたい——足場は防犯不安と日照の問題を生み、既存入居者からのクレームや退去要因になる

最後の点は、賃貸オーナーにとって見落とされがちですが重要です。大規模修繕の期間中に退去が出れば、それはNOIの直接的な毀損です。 足場を3か月架けて2戸退去が出たら、家賃8万円として年間192万円の逸失。工事費の削減額を上回ることさえあります。

工法ごとの適否や施工事例については、ロープアクセス工法の専門サイト(rope-access-method.com)でも解説しています。無足場工法が向く建物・向かない建物の整理として、あわせてご覧ください。

10-3. ハイブリッド工法という現実解

とはいえ、「全部ロープアクセスにすれば安い」という話ではありません。広い面を一気に塗る作業は、足場のほうが効率的です。

だから現実的な最適解は、部位ごとに使い分けるハイブリッド工法になります。

部位・条件 向いている工法
道路に面した広い面、全面塗り替え 通常足場工法
隣地が近く足場が架けられない面 ロープアクセス工法
高層部の部分補修、シーリング打ち替え ロープアクセス工法
屋上防水(今回の市の助成の対象部位) 足場の有無を問わず施工可
調査・診断段階 ロープアクセス工法

株式会社明誠は、通常足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法をご提案しています。1つの工法しか持たない会社は、どうしても自社の得意な工法に寄せた提案になります。3つ持っているからこそ、「この面は足場、この面はロープ」という切り分けができる。 狛江市のような密集市街地では、この切り分けがコストを左右します。


11. 狛江市のオーナーが、今月中にやるべき3つのこと

長い記事になりましたので、行動に落とします。

① 東京都の省エネ診断を申し込む(費用ゼロ)

補助率10/10、上限120万円/棟。実質無料で、建物の断熱性能が数値化されます。 しかも診断をしていなければ断熱改修助成の対象にすらなりません。順番は「事前申込 → 契約 → 診断」。この順序だけ絶対に守ってください。

② 狛江市の環境政策課に、共同住宅枠の適用可否を電話で確認する

環境政策課環境係、03-3430-1287。聞くことは3つです。

  • 「市外在住/法人名義で、狛江市内に共同住宅を所有しています。共同住宅枠の対象になりますか」
  • 「屋根の高反射率塗装で、共用部分等として限度額20万円の適用を受けられますか」
  • 「現時点の予算残額の目安を教えてください」

先着順・予算上限で停止する制度です。残額を知らずに計画を組むのは危険です。

③ 取引先の工事会社に「登録状況」を確認する

都の断熱改修は公社の登録事業者でなければ対象外。国の給湯器補助は賃貸集合給湯省エネ事業者でなければ対象外。どんなに良い会社でも、登録していなければ補助金はゼロになります。

今つきあいのある会社に、「登録していますか。していなければ登録の予定はありますか」と、いま聞いてください。


補助金は、あくまで手段です。目的は、入居者に選ばれ続ける建物にしておくこと。狛江市は、土地が増えず、新築供給が限られ、既存ストック同士で競争が決まる市場です。言い換えれば、手を入れた建物が、入れなかった建物との差を維持しやすい街でもあります。その差をつくるかどうかは、今の判断次第です。


よくある質問(FAQ)

Q. 市外に住んでいますが、狛江市内に賃貸マンションを持っています。市の温暖化対策助成は使えますか?

A. 共同住宅枠であれば、可能性は高いと考えられます。要綱の共同住宅枠の対象者は「市内に共同住宅を所有する方(予定を含む)または管理組合」とされており、個人住宅枠のような「市内に住所を有し、かつ居住する方」という条件が書かれていません。ただし共通要件として市税の滞納がないことが求められます。市外在住で狛江市に市税の納付関係がない場合の取扱いは、条文だけでは判断しきれません。環境政策課(03-3430-1287)への確認を強くおすすめします。

Q. 大規模修繕で外壁を遮熱塗料で塗ります。市の高反射率塗装の助成は使えますか?

A. 使えません。市の要件に「屋根面全体を塗装すること(外壁部分は対象となりません)」と明記されています。対象は屋根のみ、それも全面塗装が条件です。外壁の遮熱塗装は、この助成の枠外になります。

Q. 一棟賃貸ですが、旧耐震です。市の耐震助成は本当に使えないのですか?

A. 分譲マンション向けの3制度(診断・補強設計・補強改修)は、対象建築物の要件に「賃貸住宅以外の建築物であること」と明記されており、対象外です。ただし木造の集合住宅であれば、市の木造住宅耐震助成に「木造集合住宅」が対象として明記されています。年度ごとの要件・金額が変わる可能性があるため、まちづくり事業課 住宅係(03-3430-1359)にご確認ください。

Q. 東京都の助成と、狛江市の助成は併用できますか?

A. 制度上は別々の実施主体による別の制度です。ただし同一の工事部分に対する重複受給は認められないのが一般的で、都の提出書類には「国等補助金の交付額確定通知書等」の欄があります。また狛江市の制度も、他制度による助成を受けていないことを要件とする項目があります。併用を前提に計画を組む場合は、必ず両方の窓口に事前確認してください。

Q. 給湯器の補助金は、自分で申請すればいいのですか?

A. できません。賃貸集合給湯省エネ2026事業は、登録された「賃貸集合給湯省エネ事業者」が申請と受け取りを行い、オーナーに還元する仕組みです。オーナーが直接申請することはできません。公式サイトの事業者検索で、依頼先が登録されているかを必ず確認してください(所有・管理戸数200戸以上の事業者向けには、自ら手続きを行う相談窓口が別に用意されています)。

Q. 築45年のRCマンションですが、断熱改修する価値はありますか?

A. まず省エネ診断を受けてください。補助率10/10なので費用はかかりません。そのうえで、残存耐用年数と、出口の時期を並べて考えることをおすすめします。診断で作成される省エネ性能ラベルは、保有し続ける場合の募集材料にも、売却する場合の説明材料にもなります。判断を先延ばしにするより、まず数値を持つほうが選択肢が増えます。

Q. 補助金の申請書類は、自分で作らないといけませんか?

A. 東京都の制度は手続代行が可能です(事前申込・交付申請とも、賃貸住宅のオーナーまたは手続代行者が行えます)。狛江市の制度についても、代行の可否は窓口で確認できます。補助金申請の実績がある施工会社を選べば、書類の大半は任せられます。 見積を取る段階で、代行の可否を確認してください。

Q. 屋上防水と屋根の高反射率塗装を同時にやります。助成額はどう計算されますか?

A. 市は「材料費は、仕上げ用とその下地となる塗料の材料費を指し、防水材は含まれません」と明記しています。したがって、見積の内訳で塗料材料費と防水材料費が分かれていなければ、助成額の算定ができません。 見積依頼の段階で、内訳を分けて記載するよう工事会社に伝えてください。


この記事のポイントまとめ

  • 狛江市の地球温暖化対策用設備導入助成は、共同住宅枠の対象者が「市内に共同住宅を所有する方または管理組合」とされ、個人住宅枠にある居住地要件が書かれていない。賃貸オーナーに開かれた設計。
  • ただし共同住宅枠は「複数の入居者が共有で使用するために共用部分等に設置する場合に限る」。専有部の工事は対象外。
  • 共用部だと限度額が跳ね上がる。 高反射率塗装は4万円→20万円、太陽光(購入)は8万円→20万円、宅配ボックスは2万円→10万円(共用部は2台以上設置が要件)。
  • 高反射率塗装はJIS K5602で近赤外線領域の日射反射率50%以上、灰色(N6)系の試験体、屋根面全体を塗装(外壁は対象外)。材料費に防水材は含まない。
  • 交付申請日から着工予定日まで30日以上空ける必要がある。交付決定前の着工は対象外。申請者と領収書の名義が一致していないと不交付。申請期間は令和8年4月1日〜令和9年1月29日、先着順。
  • 分譲マンション耐震助成の3制度は「賃貸住宅以外の建築物であること」と明記され、一棟賃貸は対象外。かつ2026年8月時点で予算上限により受付停止中(相談は可)。
  • 区分所有で貸しているオーナーは、耐震化促進アドバイザー派遣(無料・年5回・合意形成の指導含む)を管理組合経由で活用できる。
  • 市の木造住宅耐震助成は「木造集合住宅」が対象に明記され、居住要件も書かれていない。ただし金額の年度更新に注意し、必ず窓口確認を。
  • 本命は東京都の賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業。 省エネ診断は補助率10/10・120万円/棟、高断熱窓2/3・30万円/戸、断熱材2/3・60万円/戸。居住地要件も法人制限もない。
  • 都の制度は①事前申込前の契約・着工、②改修前の断熱等級の未把握、③登録事業者以外の施工——このどれか1つで不交付になる。
  • 国の賃貸集合給湯省エネ2026事業はオーナー専用(エコジョーズ等5万〜10万円/台)だが、オーナーは直接申請できず、登録事業者が申請・還元する。2026年8月22日時点の予算消化率は33%。
  • 狛江市は多摩川・野川に挟まれ、市は浸水継続時間マップや内水ハザードマップまで公表している。浸水深=原状回復費、継続時間=空室期間として読むべき情報。
  • 補助金は課税対象。修繕費と資本的支出の判定で手残りが変わるため、見積内訳を工事種別ごとに分けておくこと。
  • 狛江市は多摩地域屈指の高密度な市街地で、隣地が近く足場が架けにくい物件が多い。ロープアクセス工法・ハイブリッド工法が効く条件が揃いやすい。

出典・参考資料


※本記事の制度内容は2026年8月時点の公開情報に基づきます。補助金は年度ごとに要件・金額・受付期間が変わり、予算到達により早期終了する場合があります。申請前に必ず各実施主体の最新情報をご確認ください。税務の取扱いについては、顧問税理士にご相談ください。

大規模修繕の工法選定や概算のご相談は、株式会社明誠へ。通常足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法をご提案します。

武蔵村山市の賃貸マンション補助金|オーナー向け2026年版

この記事で答える質問:武蔵村山市で賃貸マンション・アパートを持つオーナーは、2026年度(令和8年度)にどの補助金が使えて、どれが使えないのか?

先に答えます。武蔵村山市には、賃貸オーナーが使える市の補助金が「1つだけ」あります。 ゼロカーボンシティ住宅普及促進事業補助金のうち、遮熱性塗装工事と断熱工事の枠です。この制度、対象住宅に集合住宅が明記されていて、しかも「その住宅に居住している必要はありません」と市が公式に書いています。多摩地域の市の補助金でここまではっきり賃貸を入れている例は、多くありません。

ただし条件があります。申請者本人が武蔵村山市内に住所を持っていること。 そして金額は、市内業者を使えば上限5万円、市外業者なら3万円。決して大きくはありません。

だから武蔵村山市のオーナーの戦い方は、こうなります。市の5万円を「取れるなら取る」、本命は東京都の賃貸住宅専用制度に置く。 そのうえで、2030年代半ばのモノレール開業という、この市だけの時間軸を修繕計画に織り込む。

以下、一次情報のURLを添えて、順に整理していきます。


1. 武蔵村山市の賃貸経営は、今が「時間軸の設計」を迫られる局面にある

私は改修の仕事で多摩北部を回ることが多いのですが、武蔵村山市の物件を見るときだけは、他の市と違う計算をします。理由は単純で、この市には駅がないからです。

武蔵村山市は東京49市区のなかで唯一、鉄道駅がない市です。市の公式ページも「駅のない街からモノレールが通る街へ」という見出しでこの事実を掲げています(出典:武蔵村山市 武蔵村山市と多摩都市モノレール)。

その前提が、2030年代半ばに変わります。多摩都市モノレールが上北台駅から箱根ケ崎駅付近まで約7.0km延伸され、7つの新駅ができる。うち5駅が武蔵村山市内です。2025年11月に国から都市計画事業の認可が告示され、計画は「構想」から「工事」の段階に入りました(出典:武蔵村山市 武蔵村山市と多摩都市モノレール、東京都建設局 多摩都市モノレールの整備)。

これがオーナーにとって何を意味するか。「いつ直すか」の答えが変わります。

現在の武蔵村山市の家賃相場は、単身向けで5万円前後、2LDK〜3LDKでおよそ7万円前後というレンジです。同じ間取りでも23区の半分程度という水準で、これは駅がないことの裏返しでもあります(出典:SUUMO 武蔵村山市の家賃相場)。

この家賃水準では、1戸あたり100万円の投資を家賃アップだけで回収する絵は描けません。私が現場でオーナーさまから聞く言葉も、だいたい同じです。

「モノレールが来るまで待った方がいいんじゃないか」

気持ちはわかります。ただ、私はこの考え方には落とし穴があると思っています。開業まであと10年前後あるということは、建物はその間に10年ぶん古くなるということです。 今すでに築30年の物件は、開業時には築40年になります。開業という追い風が吹いたとき、風を受ける帆がボロボロだったら意味がありません。

さらに現実的な問題として、開業が近づくほど、多摩地域の職人と資材は取り合いになります。 沿線のまちづくりが動けば、新築も改修も一斉に発注が出る。そのタイミングで見積を取るのと、今取るのとでは、同じ工事でも金額が変わります。

だから武蔵村山市のオーナーにとって、2026年の判断はこうなります。開業を待つのではなく、開業までに仕上げておく。 そのための資金圧縮の道具が、補助金です。


2. 【最初に結論】武蔵村山市のオーナーが使える制度・使えない制度

長い記事なので、判定表を先に置きます。お持ちの物件を思い浮かべながら見てください。

制度名 実施主体 賃貸オーナーの可否 助成額の目安
ゼロカーボンシティ住宅普及促進事業補助金(遮熱性塗装工事・断熱工事) 武蔵村山市 ○ 集合住宅は居住不要。使える 工事費×1/2、市内業者5万円/市外業者3万円(工事種別ごと)
賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業(令和8年度) 東京都(クール・ネット東京) ◎ 本命。賃貸専用の制度 省エネ診断10/10・120万円/棟、高断熱窓2/3・30万円/戸ほか
木造住宅耐震診断補助金 武蔵村山市 × 対象外(一戸建て+現に居住が条件) 費用の1/2・10万円限度
木造住宅耐震改修等補助金 武蔵村山市 × 対象外(同上) 費用の1/2・耐震改修30万円/簡易20万円限度
バリアフリー住宅化補助金 武蔵村山市 △ 居住要件の確認が必要 5万円
新エネルギー利用機器等設置費補助金(蓄電池ほか) 武蔵村山市 △ 住宅種別により要確認 家庭用蓄電池5万円ほか
先進的窓リノベ2026事業/みらいエコ住宅2026事業 国 ○ 製品要件の根拠として実質必須 製品・工法により変動

見ていただくとわかるとおり、武蔵村山市は「耐震は自己居住者向け、省エネは賃貸も可」という線引きをしています。多くの自治体が省エネ枠まで自己居住に限定するなかで、ここは違います。まずこの1点を押さえてください。


3. 市のエコ枠は、なぜ賃貸オーナーでも使えるのか

3-1. 対象住宅に「集合住宅」が明記されている

武蔵村山市のゼロカーボンシティ住宅普及促進事業補助金は、対象住宅を3種類に分けています。

対象住宅の種類 申請できるかた
個人住宅 所有し、かつ実際に居住しているかた/他者所有の住宅に居住し工事を行うかた
併用住宅 所有し、かつ実際に居住しているかた(居住部分が延床の半分超であること)
集合住宅 工事を行おうとする集合住宅を所有しているかた(その住宅に居住している必要はありません)

(出典:武蔵村山市 遮熱性塗装工事・断熱工事 補助金申請方法)

この括弧書きが、賃貸オーナーにとっての扉です。アパート・マンションを1棟所有していれば、そこに住んでいなくても申請できる。 個人住宅・併用住宅の欄が「かつ実際に居住している」で締められているのと、明確に書き分けられています。

3-2. 金額——市内業者と市外業者で、上限が2万円違う

対象工事 施工者が市内業者 施工者が市外業者
遮熱性塗装工事 工事費(対象部分)×1/2 上限5万円 工事費(対象部分)×1/2 上限3万円
断熱工事 工事費(対象部分)×1/2 上限5万円 工事費(対象部分)×1/2 上限3万円

補助金額に1,000円未満の端数があるときは切り捨て。市内業者とは、武蔵村山市内に事業所等を有する業者を指します(出典:武蔵村山市 遮熱性塗装工事・断熱工事 補助金申請方法)。

そして重要なのは、遮熱性塗装工事と断熱工事は別枠だということです。対象住宅1件につき、対象工事それぞれ1回ずつ申請でき、同時申請も可能。つまり外壁の遮熱塗装と窓の断熱改修を同じ年にやれば、市内業者を使って最大10万円という組み立てになります。

正直に申し上げて、1棟の大規模修繕から見れば10万円は大きな数字ではありません。ただ、足場の一部、あるいはシーリングの打ち替え1面ぶんくらいにはなります。取れるものを取らない理由もない、というのが私の考えです。

3-3. 「遮熱性塗装」には技術要件がある——ここを外すと通りません

ここが実務で一番間違いやすいところです。市が言う遮熱性塗装工事とは、屋上、外壁、ベランダにおける、以下の塗料を使用した塗装工事を指します。

  • 日本産業規格 JIS K5602 に基づく日射反射率50%以上の塗料、または
  • 日本産業規格 JIS K5675 に適合する遮熱塗料(屋上のみ)

そして注意書きに「立地又は構造上、遮熱の効果が期待できない部分は対象外」とあります(出典:武蔵村山市 遮熱性塗装工事・断熱工事 補助金申請方法)。

言い換えると、「遮熱塗料っぽい高性能塗料」では通らないということです。日射反射率50%以上という数値を、メーカーの試験成績で示せる製品でなければならない。

ここは施工会社選びに直結します。見積を取るときは、塗料名だけでなく「JIS K5602で日射反射率50%以上の証明が出せますか」と一言確認してください。これを聞かれて即答できない会社は、この補助金の実務をやったことがない可能性が高いです。

断熱工事のほうは、窓・ドアの断熱建材への改修工事、外壁・天井・床の断熱材への改修工事が対象です。こちらは後述する東京都の制度と組み合わせる余地があります。

3-4. 落とし穴は3つあります

落とし穴1:申請者は「市内に住所があること」が必要

要件の1番目に「市内に住所があること(住基台帳登録があること)」とあります。集合住宅の所有者は物件に住んでいなくてもよいのですが、申請者自身は武蔵村山市民である必要がある、という構造です。

市外にお住まいで武蔵村山の物件だけ持っている、いわゆる不在オーナーの方は、この一点で外れる可能性が高い。また法人所有の場合、「住基台帳登録」という文言は個人を想定した書きぶりです。法人名義の物件をお持ちの方は、申請前に環境課へ直接確認してください。 042-565-1111(内線295)、市役所2階の環境課ゼロカーボン推進係です。私の経験上、この手の判断は電話1本で白黒がつきます。

落とし穴2:交付決定より先に契約したら、その時点でアウト

市のページにはこう書かれています。「補助金を受けるためには、市への交付申請が済み、市からの交付決定を受けた日以降に、業者と工事契約を行う必要があります」(出典:武蔵村山市 遮熱性塗装工事・断熱工事 補助金申請方法)。

順番は申請 → 交付決定 → 契約 → 着工 → 完了報告 → 入金。よくあるのが、「先に工事会社と契約してから補助金を調べ始める」というパターンです。これをやると、どれだけ条件に合っていても対象外になります。

落とし穴3:予算枯渇と、写真の撮り忘れ

交付申請額の総額が予算に達し次第、受付終了。残額は市ホームページに随時掲載されますが、あくまで目安です。年度後半に動き出すと、間に合わない可能性があります。

そしてもう一つ、地味に効くのが写真です。施工前・施工中・施工後の写真を、同一箇所で撮影しておく必要があります。 複数箇所の断熱工事なら、すべての箇所で。施工後に見えなくなる部位がある場合は、材料や施工過程がわかる写真も必要です。

これは施工会社側の仕事です。補助金申請の実績がある会社なら、言わなくても撮ります。 逆に言えば、写真管理の話をこちらから説明しなければならない会社は、少し不安が残ります。

スケジュールの目安は次のとおりです。

内容 期限
交付申請の期限 令和8年2月2日(月曜日)
工事の完了期日 令和8年2月28日(日曜日)までに完了すること
完了報告の期限 令和8年3月2日(月曜日)
受付時間 平日 午前8時30分〜午後5時15分

(出典:武蔵村山市 遮熱性塗装工事・断熱工事 補助金申請方法)

外壁塗装は工期が1か月前後、足場の設置・解体も含めれば余裕をみたい。2月完了ということは、遅くとも年内には交付決定を取っておきたい、という逆算になります。


4. 市の耐震補助は、賃貸オーナーには届きません

「耐震で30万円出るらしい」という話も、たまに聞かれます。数字は合っていますが、賃貸には届きません。

木造住宅耐震診断補助金は、昭和56年5月31日以前に建築に着手された市内の一戸建て木造住宅が対象で、補助対象者は当該住宅に現に居住していること。補助額は診断費用(税抜)の2分の1、上限10万円です。

木造住宅耐震改修等補助金は、令和4年4月1日以降に市の診断補助を受けて実施した診断で上部構造評点1.0未満と判定された住宅が対象。補助対象者は当該住宅に居住していること。補助額は費用の1/2で、耐震改修工事は上限30万円、簡易耐震改修工事や耐震シェルター等の設置は上限20万円です(出典:武蔵村山市 木造住宅耐震改修等補助金)。

「一戸建て」「現に居住」。この2語で、賃貸アパートも貸家として運用している戸建ても外れます。耐震という公益性の高いテーマですら、住んでいる本人が対象という設計になっている。この点は、多くの自治体と同じです。

ただし例外の可能性はあります。オーナーご自身が住む戸建てを持ちながら、別に賃貸物件を運用している方であれば、ご自宅のほうでこの制度は使えます。資産全体で見れば、使えるものは使っておいて損はありません。


5. 本命は都の「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」

ここからが、武蔵村山市のオーナーにとっての本題です。

東京都は令和8年度、この事業に218億円の予算を計上しています。名前のとおり、賃貸住宅のためだけに作られた制度です(出典:クール・ネット東京 令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業)。

5-1. 対象になるオーナー・ならない物件

助成対象者は、助成対象住宅を1棟所有している個人または法人。建物の登記事項証明書で所有権者として証明できることが条件です。1棟のうち、オーナーの3親等以内の親族による区分登記がある物件も対象になります。設備をオーナーに貸与するリース事業者との共同申請も可能です。

ここが市の制度との決定的な違いです。都の制度には「市内在住」のような居住地要件がなく、法人も明記されています。 武蔵村山市外にお住まいのオーナーや、法人名義で物件をお持ちの方にとっては、こちらが主戦場になります。

対象住宅は「普通賃貸借契約を締結し、貸し出される既存の住宅」で、専用住宅であること。1つの住戸を店舗用と居住用で兼用している場合、その部屋は対象外です。新青梅街道沿いには1階が店舗の物件が点在しますので、該当する場合は住戸部分だけで計画を組みます。

なお令和8年度からは、賃貸集合住宅の所有者住戸(オーナーおよび3親等以内の親族が居住する住戸)も助成対象に加わりました。オーナー住戸付きのアパートを持つ方には、1棟まるごと組める意味は小さくありません。

5-2. 助成額——診断は全額出ます

省エネ診断等

対象 補助率 上限
省エネ診断等(省エネ性能表示を含む) 対象経費の10/10 120万円/棟
省エネ診断用の現況図面作成 対象経費の10/10 10万円/戸

断熱改修

対象 補助率 上限
高断熱窓 対象経費の2/3 30万円/戸
高断熱ドア 対象経費の2/3 27万円/戸
断熱材 対象経費の2/3 60万円/戸

(出典:クール・ネット東京 令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業【省エネ診断・断熱改修】)

補助率10/10、つまり省エネ診断は全額出ます。 これは覚えておいてください。自己負担ゼロで、自分の物件の断熱性能が数値で出る。そのうえで、直すかどうかを決めればいい。 診断を受けたからといって工事の義務が生じるわけではありません。

5-3. 家賃7万円台の物件で、この補助はペイするのか

数字で見てみます。8戸の木造アパート、家賃7万円、全戸の窓を高断熱窓に替えるケースを仮定します。

1戸あたりの窓改修費を45万円と置くと、8戸で360万円。補助は2/3・上限30万円/戸なので、45万円×2/3=30万円がそのまま上限に当たり、8戸で240万円。自己負担は120万円です。

さらに省エネ診断が10/10で出ますから、診断費用は実質ゼロ。トータルの持ち出しは120万円前後という絵になります。

これを家賃で回収するには、8戸で年間120万円÷(回収年数)が必要です。1戸あたり月2,000円の家賃アップができれば、8戸×2,000円×12か月=年19.2万円。約6.3年で回収という計算になります。

「月2,000円の値上げなんてできるのか」と思われるかもしれません。ここで効くのが、省エネ性能ラベルです。2024年4月から、建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度が始まっています。この制度は、募集広告に省エネ性能を表示するというものです(出典:国土交通省 建築物の省エネ性能表示制度)。

つまり、同じ武蔵村山市内の物件が、ポータルサイトで省エネ性能を並べて比較される世界になりつつあるということです。家賃7万円で断熱等級の表示がない物件と、7万2千円で等級が明示されている物件。数年後、どちらが先に埋まるか。

私は、値上げできるかどうかより、空室期間が縮むかどうかで考えたほうが実態に近いと思っています。家賃7万円の物件が年1か月空室を減らせれば、8戸で年56万円。こちらのほうが、効き方としては大きい。

ついでに言えば、断熱改修は入居者の光熱費を下げます。 家賃を据え置いても、実質的な負担は下がる。募集条件を変えずに競争力だけ上げるという選択肢が取れるのは、この工事の特徴です。

5-4. 申請順序を1つ間違えると、全部ゼロになります

ここは太字で書きます。必ず事前申込の受付完了後に、事業者と契約を締結してください。事前申込受付前に契約または着工したものは助成金の対象外です。

そしてもう1つ。改修前に当該住戸の断熱等級を把握していることが要件です。等級を把握せずに改修すると、対象外になります。だから順番は、

事前申込 → 省エネ診断等 → 省エネ性能表示 → 断熱改修 → 省エネ性能表示 → 交付申請兼実績報告 → 助成金受領

となります。事前申込は、契約や住戸ごとではなく、1棟の建物ごとに一度だけ。住戸ごとに工事時期を分ける場合でも、同じ建物なら申込は1回です。

さらに、登録事業者以外が診断や改修を行った場合は助成対象外になります。クール・ネット東京が公表する登録事業者一覧で確認できます。見積を取る段階で、「この事業の登録事業者ですか」と聞いてください。

武蔵村山市の制度と併用する場合は、2つの制度がどちらも「契約前の手続き」を要求している点に注意が必要です。市は交付決定後の契約、都は事前申込後の契約。両方を先に済ませてから契約するという段取りになります。ここは工事会社と一緒に工程表を引いたほうが確実です。

5-5. 令和8年度のスケジュール

手続き 期間
事前申込 令和8年5月29日から(※令和8年4月1日〜6月30日に契約を締結した場合は、令和9年3月31日までに事前申込)
交付申請兼実績報告 令和8年6月30日から、事前申込有効期限または令和11年3月30日のいずれか早い日まで
事業者登録申請 令和8年5月29日〜令和9年2月27日

事前申込後、1年以内に交付申請を行わないと事前申込は自動的に無効になります。「とりあえず申し込んでおく」はできますが、放置はできない設計です。

なお、「詳しく知りたい」「まず相談したい」という段階の方向けに、東京都は賃貸住宅断熱・再エネ×コンシェルジュ事務局という相談窓口を用意しています。工事会社に聞く前に中立的な情報を得たい方は、こちらから入るのも一つの手です。


6. モノレール延伸を、修繕計画にどう織り込むか

ここは武蔵村山市固有の論点なので、少し丁寧に書きます。

2030年代半ばの開業に向けて、これから10年前後、市内では用地取得と工事が段階的に進みます。 新青梅街道は幅18mから30mへ拡幅する都市計画が2005年に決定しており、沿道の用地取得はすでに始まっています(出典:武蔵村山市 武蔵村山市と多摩都市モノレール)。

オーナーとして考えるべきことは、大きく3つです。

1つめ:物件の立地が、5つの新駅のどこに対してどの距離にあるか。

駅ができれば、市内でも立地の序列が変わります。今まで「どこもバス」だった市内が、「駅徒歩圏」と「そうでない場所」に分かれる。新駅予定地には東京都が看板を設置しており、位置は確認できます(出典:武蔵村山市 多摩都市モノレール延伸における新駅予定地に東京都が看板を設置)。

駅徒歩圏に入る物件なら、開業前に外装と断熱を仕上げておく価値が高い。 開業後の賃料上昇を、古い建物のまま迎えるのはもったいない。

2つめ:工事期間中の周辺環境。

新青梅街道沿いの物件は、拡幅とモノレール建設の工事期間中、騒音や通行の影響を受ける可能性があります。この時期に大規模修繕をぶつけると、入居者の負担が二重になります。沿道物件は、工事の進捗を見ながらタイミングを選ぶという判断があってよいと思います。

3つめ:出口戦略の時間軸。

売却を考えている方にとって、開業は明確なイベントです。ただし、不動産価格は開業時ではなく、開業が確実視された時点から動き始めるのが一般的です。すでに都市計画事業の認可は下りています。

売却時の査定では、外装の状態、修繕履歴、そして今後は省エネ性能ラベルが見られます。「補助金を使って、自己負担を抑えて仕上げた物件」は、投資対効果の観点で説明しやすい。 開業を待って売るにせよ、その前に売るにせよ、建物の状態を整えておくことは無駄になりません。


7. 税務:補助金は「もらって終わり」ではありません

意外と見落とされる論点なので、ここも書いておきます。私は税理士ではありませんので、実際の処理は必ず顧問税理士にご確認ください。 そのうえで、押さえておくべき論点を3つ挙げます。

7-1. 補助金は雑収入として課税されます

受け取った補助金は、原則として総収入金額に算入されます。個人であれば不動産所得の総収入金額、法人であれば益金です。

つまり、5万円の補助金をもらっても、手元に残るのは税引後の金額ということです。所得税・住民税を合わせて30%の税率帯なら、実質3万5千円。都の助成240万円なら、税負担だけで数十万円が動きます。

一定の要件を満たす場合には国庫補助金等の圧縮記帳の適用が検討できるケースもありますが、対象となる補助金や要件は限定的です。「使えるかどうか」は、必ず税理士に確認してください。

7-2. 修繕費か、資本的支出か

ここが最も金額インパクトの大きい論点です。

修繕費なら、支出した年に全額を経費にできます。資本的支出なら、資産計上して耐用年数にわたって減価償却します。同じ工事でも、判定によってその年の税負担が大きく変わります。

一般に、原状回復・維持のための支出は修繕費、価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりする支出は資本的支出とされます。外壁塗装は原則として修繕費とされることが多い一方で、断熱性能を上げる改修は資本的支出と判定されやすい傾向があります。窓を高断熱窓に替える工事は、まさにその境界にあります。

実務上のポイントは、見積書と請求書の内訳を工事種別ごとに分けておくことです。「外装改修工事一式」という1行の請求書では、後から仕分けができません。足場、下地補修、塗装、シーリング、窓交換、断熱材——これらが分かれていれば、税理士が判断しやすくなります。

これは工事会社に依頼すればできることです。契約前に「内訳を細かく分けてください」と一言伝えてください。

7-3. 省エネ改修の固定資産税減額と、出口

一定の要件を満たす省エネ改修については、所得税または固定資産税が一定額控除・減額される制度があります(出典:国土交通省 住宅をリフォームした場合に使える減税制度について、東京都主税局 省エネ改修工事をした住宅に対する固定資産税の減税)。

要件は細かく、賃貸物件が対象になるかは制度ごとに異なります。ただ、補助金と減税を両方検討したうえで実質負担を計算するという発想は持っておいてください。補助金だけを見て「思ったより出ない」と判断するのは早計です。

そして出口。売却時の譲渡所得計算では、資本的支出として資産計上した部分は取得費に加算されます。 修繕費として経費化した分は、その年に節税効果を得ているぶん、取得費には乗りません。どちらが有利かは、保有期間と売却時期次第です。モノレール開業という明確な時間軸がある武蔵村山市では、この論点は特に検討する価値があります。


8. 工事の側から:武蔵村山市の物件でコストを下げる方法

補助金の話ばかりしてきましたが、投資額そのものを下げる方法にも触れておきます。ここは私の本業なので、正直に書きます。

8-1. 木造2階建てアパートに、ロープアクセスは向きません

まず、都合の悪いことから。武蔵村山市の賃貸ストックは木造アパートと低層マンションが中心です。この規模の建物に、無足場工法であるロープアクセスは基本的に向きません。

理由は3つあります。ロープを固定する支点を屋上に確保しにくいこと。2階建て程度なら足場を組んでも費用が知れていること。そして外壁全面の塗装は、足場を組んで面で作業したほうが早いこと。

2階建てアパートの外壁塗装なら、素直に足場を組んでください。 これは営業として損な発言ですが、事実です。

8-2. では、武蔵村山市でロープアクセスが効くのはどこか

効く場面は、はっきりしています。

ケース1:4〜5階建て以上のマンション

新青梅街道沿いや市の南部には、中層のマンションがあります。この規模になると、足場費が総工費の20〜25%を占めてきます。部分補修であれば、足場を組まずにロープアクセスで対応するほうが安く、早い。

ケース2:敷地に余裕がない物件

隣地との離隔が取れず、足場を組むと隣地にはみ出す。あるいは駐車場をつぶさないと足場が組めない——武蔵村山市は駐車場付きの物件が多いので、これは実際に起きます。入居者の駐車場を1か月つぶす損失を計算に入れると、無足場のほうが有利になることがあります。

ケース3:調査・部分補修だけをやりたいとき

「雨漏りの原因を特定したい」「タイルが1枚落ちた」——このために足場を組むのは過剰です。ロープアクセスなら、調査と補修を短期間で終えられます。

工法ごとの適性や具体的な事例は、ロープアクセス工法の専門サイトにまとめています。ご自身の物件がどれに当たるか、判断の材料にしてください。

8-3. ハイブリッド工法という選択肢

私どもが力を入れているのが、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法です。

たとえば、入居者の出入りがある低層部と共用階段まわりは足場を組み、隣地に近い面や高所の部分補修はロープアクセスで処理する。 足場面積を減らせば、その分の仮設費が下がります。工期も短くなり、入居者の生活影響も小さくなります。

株式会社明誠は、通常足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法を提案できる数少ない会社です。加えて、ロープアクセス工事としては日本で初めてとなるフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板などの専門職が加盟しています。中間マージンを挟まず、各分野の職人が直接施工するため、高品質と低価格を両立できます。

武蔵村山市の物件については、もう1つ実務的なポイントがあります。市の補助金は「市内業者」を使うと上限が5万円、市外業者だと3万円。差は工事種別ごとに2万円、両枠使えば4万円です。この差額と、施工品質・総額を比べて判断してください。総額で10万円安い市外業者を選べば、補助金の差額4万円は吸収できます。 補助金の枠だけで業者を決めるのは、本末転倒です。


9. 武蔵村山市のオーナーが、今月中にやるべき3つのこと

長くなりました。最後に、動き方を整理します。

1. 東京都の省エネ診断に、事前申込をする

補助率10/10、上限120万円/棟。自己負担ゼロで、自分の物件の断熱性能が数値でわかります。 診断を受けたからといって工事の義務はありません。まずは認証用メールアドレスの登録から始めてください。ここが2026年の起点です。

2. 市内在住なら、環境課に「集合住宅で使えるか」を確認する

武蔵村山市内に住所があり、市内に賃貸物件をお持ちの方。環境課ゼロカーボン推進係(042-565-1111 内線295)に電話し、「集合住宅の所有者として、遮熱性塗装工事の補助を申請したい」と伝えてください。予算残額も同時に確認できます。法人名義の方は、この電話が特に重要です。

3. 物件が新駅からどの距離にあるかを確認する

5つの新駅予定地に対して、お持ちの物件がどこにあるか。徒歩圏なら、開業前に仕上げる計画を。沿道なら、工事期間との重なりを避ける計画を。この10年をどう使うかを、今のうちに決めておく。

補助金は、あくまで手段です。目的は、入居者に選ばれ続ける建物にしておくこと。武蔵村山市には、10年後に確実に訪れる追い風があります。その風を受けられる状態にしておくかどうかは、今の判断次第です。


よくある質問(FAQ)

Q. 市外に住んでいますが、武蔵村山市に賃貸アパートを持っています。市の補助金は使えますか?

A. 要件に「市内に住所があること(住基台帳登録があること)」とあるため、難しい可能性が高いです。ただし対象住宅の欄には「集合住宅の所有者は居住不要」と書かれており、判断が分かれ得る書きぶりです。環境課への確認を強くおすすめします。 使えない場合でも、東京都の賃貸住宅向け制度には居住地要件がありませんので、そちらが本命になります。

Q. 遮熱性塗装工事と断熱工事、両方申請できますか?

A. できます。市のページに「対象住宅1件につき、対象工事それぞれ1回ずつ申請が可能であり、同時に申請することもできます」と明記されています。ただし令和5・6年度に同名補助金の交付を受けている場合、同一建物・同一種類での申請はできません。

Q. 東京都の助成と市の補助金は併用できますか?

A. 制度上、別々の実施主体による別々の制度です。ただし同一の工事部分に対する重複受給は認められないのが一般的で、都の申請書類には「国等補助金の交付額確定通知書等」の提出欄があります。併用を前提に計画を組む場合は、必ず両方の窓口に事前確認してください。

Q. 築40年の木造アパートですが、断熱改修する価値はありますか?

A. まず省エネ診断を受けてください。補助率10/10なので費用はかかりません。そのうえで、残存耐用年数と、モノレール開業までの期間を並べて考えることをおすすめします。開業時に築50年の木造アパートをどうするか——改修して持ち続けるのか、建て替えるのか、売却するのか。診断結果は、その判断の材料になります。

Q. 補助金の申請は自分でやるのですか?

A. 市の制度には「手続代行者選任届(第3号様式)」があり、代行が認められています。都の制度も手続代行が可能です。補助金申請の実績がある施工会社を選べば、書類の大半は任せられます。 見積を取る段階で、代行の可否を確認してください。

Q. 遮熱塗料を使えば、入居者の電気代は本当に下がりますか?

A. 屋上・最上階への効果は相対的に大きく、外壁への効果は建物の構造や向きによります。市の要件にも「立地又は構造上、遮熱の効果が期待できない部分は対象外」とあるとおり、どこに塗っても同じ効果が出るわけではありません。 最上階の暑さに関する入居者からのクレームがある物件なら、優先度は高いと考えてよいと思います。


この記事のポイントまとめ

  • 武蔵村山市のゼロカーボンシティ住宅普及促進事業補助金は、対象住宅に「集合住宅」が含まれ、居住不要と明記されている。 多摩地域では珍しく、賃貸オーナーが使える市の制度。
  • 金額は工事費×1/2で、市内業者なら上限5万円、市外業者なら3万円。遮熱性塗装工事と断熱工事は別枠で、両方申請すれば最大10万円。
  • ただし申請者本人が市内に住所を持つことが要件。不在オーナー・法人所有は環境課への確認が必須。
  • 遮熱性塗装にはJIS K5602で日射反射率50%以上という技術要件がある。塗料名だけでなく試験成績の提出可否を確認すること。
  • 交付決定前の契約は対象外。 順番は申請→交付決定→契約→着工。予算枯渇による受付終了もある。
  • 市の耐震補助は一戸建て+現に居住が条件で、賃貸オーナーは対象外。
  • 本命は東京都の賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業(令和8年度予算218億円)。省エネ診断は補助率10/10・120万円/棟、高断熱窓は2/3・30万円/戸。居住地要件も法人制限もない。
  • 事前申込の前に契約・着工したら対象外。 改修前の断熱等級把握も必須。登録事業者以外の施工も対象外。
  • 2030年代半ばのモノレール延伸で、市内に5つの新駅ができる。 開業を待つのではなく、開業までに仕上げる発想を。
  • 補助金は課税対象。修繕費と資本的支出の判定で税負担が変わるため、見積内訳を工事種別ごとに分けておくこと。
  • 木造2階建てには足場が合理的。4〜5階建て以上、隣地が近い物件、部分補修ではロープアクセスやハイブリッド工法が効く。

出典・参考資料


※本記事の制度内容は2026年8月時点の公開情報に基づきます。補助金は年度ごとに要件・金額・受付期間が変わり、予算到達により早期終了する場合があります。申請前に必ず各実施主体の最新情報をご確認ください。税務の取扱いについては、顧問税理士にご相談ください。

大規模修繕の工法選定や概算のご相談は、株式会社明誠へ。通常足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法をご提案します。

あきる野市の賃貸アパート補助金|オーナー向け2026年版

この記事で答える質問:あきる野市で賃貸マンション・アパートを持つオーナーは、2026年度(令和8年度)にどの補助金が使えて、どれが使えないのか?

先に答えます。あきる野市が独自に出している住宅系の助成は、2つとも「自分で住んでいる人」向けで、賃貸オーナーは原則として対象外です。 一方で、東京都の「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」は、賃貸住宅を1棟持っているオーナーのためだけに作られた制度で、省エネ診断は補助率10/10、つまり全額出ます。あきる野市のオーナーが2026年に狙うべきはこちらです。

以下、一次情報のURLを添えて、順に整理していきます。


1. あきる野市の賃貸経営は「家賃6万円の壁」との戦い

私は改修の仕事で西多摩を回ることが多いのですが、あきる野市の賃貸物件を見ていて毎回思うことがあります。23区の理屈がそのまま通用しない、ということです。

あきる野市の家賃相場は、2LDK〜3LDKでおよそ6万円前後、単身向けのワンルームで4万円前後というレンジです。しかも市の住宅ストックは戸建ての比率が高く、賃貸も木造アパートと戸建て賃貸が主力になります。

この「家賃6万円台・木造中心」という条件が、修繕投資の判断を難しくします。1戸あたり100万円の工事をしたとき、23区の家賃15万円の物件なら回収の絵が描けても、6万円の物件では同じ絵が描けません。私が現場でオーナーさまから聞く悩みも、ほぼここに集約されます。

「直したい気持ちはある。でも、家賃を上げられないなら、かけた金は戻ってこない」

この前提に立つと、補助金の意味が23区とは変わります。 家賃で回収できないなら、投資額そのものを外部資金で圧縮するしかない。あきる野市のオーナーにとって補助金は「あれば嬉しいオマケ」ではなく、工事をやるかやらないかの分岐そのものです。

もうひとつ、あきる野市には市場側の変化もあります。武蔵引田駅北口では約19.5haの土地区画整理事業が進行中で、住・商・工・農の複合型市街地への転換が計画されています(事業完了予定は2036年3月末、計画人口1,000人程度/出典:あきる野市 武蔵引田駅北口土地区画整理事業の事業計画について)。圏央道あきる野インターチェンジのアクセスを活かした物流施設の立地も進んでいます。

物流や工業の雇用が増えるということは、単身・少人数世帯の賃貸需要が動くということです。 借り手の顔ぶれが変わるタイミングで、築古のまま何もしていない物件と、断熱と設備を入れ替えた物件では、選ばれ方に差が出ます。私はここに、あきる野市のオーナーが2026年に動く理由があると考えています。


2. 【最初に結論】あきる野市のオーナーが使える制度・使えない制度

長い記事なので、判定表を先に置きます。お持ちの物件を思い浮かべながら見てください。

制度名 実施主体 賃貸オーナーの可否 助成額の目安
賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業(令和8年度) 東京都(クール・ネット東京) ◎ 本命。賃貸専用の制度 省エネ診断10/10・120万円/棟、高断熱窓2/3・30万円/戸ほか
木造住宅耐震改修費助成制度 あきる野市 × 原則対象外(所有者自らが利用する住宅が条件) 改修費の4/5以内・110万円限度
木造住宅耐震診断費助成 あきる野市 × 原則対象外(同上) 診断費の1/2以内・5万円限度
住宅改修工事等助成事業 あきる野商工会 × 原則対象外(所有者かつ居住者が条件) 工事費の5%・上限10万円
太陽光・蓄電池の市独自補助 あきる野市 - 制度自体が存在しない -
既存住宅における省エネ改修促進事業(令和8年度) 東京都 △ 区分所有者・管理組合向け。1棟所有の賃貸は上の本命制度へ 高断熱窓・ドア合計200万円上限
先進的窓リノベ2026事業/みらいエコ住宅2026事業 国 ○ 製品要件の根拠として実質必須 製品・工法により変動

見ていただくとわかるとおり、市の窓口に期待できるものはほぼありません。 あきる野市の賃貸オーナーにとっての主戦場は、東京都の制度です。以下、なぜそうなるのかを一つずつ。


3. 市の助成が2つとも「自ら住む人」向けである理由

「市が110万円出すと聞いたのですが」——これはよく受ける質問です。数字は合っています。ただし、条件を読むと賃貸には届きません。

3-1. 木造住宅耐震改修費助成制度(あきる野市)

助成額は耐震改修または建て替え工事に要する費用(消費税を除く)の5分の4以内、110万円を限度。診断のほうは費用の2分の1以内、5万円を限度です。金額だけ見れば手厚い制度です。

問題は対象住宅の定義です。市内に昭和56年5月31日以前に新築工事に着手された木造2階建て以下の戸建て住宅であって、所有者自らが利用するために延べ床面積の2分の1以上を居住の用に供している住宅——ここが壁になります(出典:あきる野市 木造住宅耐震改修費助成制度、木造住宅の耐震化を支援します)。

「所有者自らが利用する」「戸建て」。この2語で、賃貸に出しているアパートも、貸家として運用している戸建ても外れます。耐震という公益性の高いテーマですら、住んでいる本人が対象という設計です。

ただし、可能性がゼロというわけではありません。オーナーご自身が居住し、一部を賃貸している併用住宅(いわゆるオーナー住戸付き)であれば、延べ床の2分の1以上が自己居住であるという条件を満たせる場合があります。該当しそうな方は、市の都市整備部住宅政策課に個別確認する価値があります。私の経験上、この手の「グレーに見える案件」は、電話1本で白黒がつくことが多いです。

3-2. 住宅改修工事等助成事業(あきる野商工会)

こちらは商工会の事業です。工事費(税抜)10万円以上の工事に対し、費用の5%・上限10万円(千円未満切捨て)。外壁修繕・塗り替え、住宅本体の修繕・改築、省エネ設備機器導入などが対象で、あきる野商工会の会員事業所を利用することが条件になります(出典:あきる野商工会 住宅改修工事等助成事業のご案内)。

対象者はあきる野市内または檜原村内の住宅で、対象住宅の所有者かつ居住者であること。ここでも「かつ居住者」が効いてきます。

そして実務上、もうひとつ重要な注意点があります。この助成は例年1か月ほどで予算枠に達して受付終了になります。 併用住宅などで対象になり得るオーナーさまは、年度開始直後の動きが必須です。上限10万円は大規模修繕の総額から見れば小さいですが、足場の一部や部分補修には効きます。


4. 本命は都の「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」

ここからが、あきる野市のオーナーにとっての本題です。

東京都は令和8年度、この事業に218億円の予算を計上しています(出典:東京都 報道発表「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進 令和8年度助成事業受付等」)。名前のとおり、賃貸住宅のためだけの制度です。

4-1. 対象になるオーナー・ならない物件

助成対象者は、助成対象住宅を1棟所有している個人または法人。建物の登記事項証明書で所有権者として証明できることが条件です。1棟のうち、オーナーの3親等以内の親族による区分登記がある物件も対象になります。設備をオーナーに貸与するリース事業者との共同申請も可能です。

対象住宅は「普通賃貸借契約を締結し、貸し出される既存の住宅」で、専用住宅であること。ここで一点、あきる野市で気をつけていただきたいのが店舗兼用住戸です。1つの住戸を店舗用と居住用で兼用している場合、その部屋は対象外になります。秋川駅周辺や五日市街道沿いには1階が店舗の物件が少なくありません。該当する場合は、住戸部分だけで計画を組み立てることになります。

なお令和8年度からは、オーナーおよび3親等以内の親族が居住する住戸も助成対象に加わりました。オーナー住戸付きのアパートを持つ方には、1棟まるごと組める意味は大きいはずです。

4-2. 助成額——診断は全額出る

省エネ診断等

対象 補助率 上限
省エネ診断等(省エネ性能表示を含む) 対象経費の10/10 120万円/棟
省エネ診断用の現況図面作成 対象経費の10/10 10万円/戸

断熱改修

対象 補助率 上限
高断熱窓 対象経費の2/3 30万円/戸
高断熱ドア 対象経費の2/3 27万円/戸
断熱材 対象経費の2/3 60万円/戸

技術要件も押さえておきます。高断熱ドアは熱貫流率2.3 W/(㎡・K)以下であり、かつ高断熱窓または断熱材の改修と同時に実施すること。断熱材は熱抵抗値(厚さ÷熱伝導率)が屋根2.7以上/天井2.7以上/外壁2.7以上/床2.2以上であること。窓・ドアは先進的窓リノベ2026事業やみらいエコ住宅2026事業の対象製品として登録されている製品を使う必要があります。

熱貫流率とは、建物の内と外で熱がどれだけ通り抜けるかを表す数値です。小さいほど熱が逃げにくい、とだけ覚えていただければ実務上は足ります。

私が特に強調したいのは、省エネ診断の10/10です。築古の木造アパートは、図面が残っていないケースが本当に多い。「新築時の設計図は前の持ち主から引き継いでいない」というオーナーさまに、私は何度もお会いしてきました。現況図面の作成に1戸あたり10万円まで、しかも全額が出る。この図面は、将来の大規模修繕でも、売却時のデューデリジェンスでも、そのまま使えます。物件の情報資産を無料で整備できる枠だと考えてください。

4-3. 家賃6万円台の物件で、この補助はペイするのか

ここが、あきる野市のオーナーにとって一番知りたいところだと思います。数字で考えます。

仮に10戸の木造アパートで、全戸の窓を高断熱窓に交換するとします。1戸あたりの工事費を45万円と置くと、総額450万円。補助率2/3・上限30万円/戸が効けば、助成は300万円、自己負担は150万円です。

この150万円を、家賃で回収する計算をしてみます。仮に断熱改修によって空室期間が1戸あたり平均1か月短縮できたとすると、家賃6万円×10戸=年間60万円のキャッシュフロー改善。単純計算で2.5年で回収する形になります。さらに退去時のリフォーム軽減や、更新率の改善が乗ります。

もちろんこれは仮定の数字であり、実際の空室期間短縮効果を保証するものではありません。 ただ、判断の枠組みとしては使えるはずです。ポイントは、補助を入れないと450万円÷60万円=7.5年の話が、補助を入れると2.5年の話に変わるということ。家賃を上げられない市場では、この差が意思決定を左右します。

「入居率1%の改善が、年間どれだけのキャッシュフロー差になるか」——私がオーナーさまとお話しするとき、必ず一度は電卓を叩いていただく数字です。

4-4. 申請順序を1つ間違えると、全部ゼロになります

制度の中身より、こちらのほうが実害が出ます。私が見てきた失敗を、そのまま書きます。

①「事前申込の前に契約・着工」で全部飛ぶ

要綱に明記されています。事前申込受付前に契約または着工したものは助成金の対象外です。見積を取り、話がまとまり、その勢いで契約書に判を押す——これで消えます。正しい順番は、事前申込 → 受付確認メールの受領 → 契約 → 着工。ここだけは崩さないでください。

②「改修前の断熱等級を把握せずに工事」で対象外

これも要綱どおりです。改修前の等級を把握せずに改修を行った場合は助成対象外。だからこそ、補助率10/10の省エネ診断が先に来る設計になっています。診断が先、改修が後。 この順序に制度上の意味があります。

③「登録事業者以外と契約」で対象外

診断も改修も、公社に登録された事業者と契約したものだけが対象です。長年お付き合いのある地元の工務店さんがいても、その会社が登録されていなければ助成は出ません。事業者登録の申請期間は令和8年5月29日〜令和9年2月27日。登録事業者一覧で確認できます。私はいつも「見積を取る前に、まず登録の有無を確認してください」とお伝えしています。

4-5. 令和8年度のスケジュール

手順 期限・時期
事前申込 令和8年5月29日から受付中
交付申請兼実績報告 令和8年6月30日から、事前申込有効期限または令和11年3月30日のいずれか早い日まで
事前申込後の交付申請 1年以内。過ぎると事前申込が自動的に無効
不備修正の対応 150日以内。放置すると申請取下げとみなされる

事前申込は住戸ごとではなく、1棟の建物ごとに1回です。住戸ごとに工事時期を分ける計画でも、同じ建物なら事前申込は一度で足ります。

「まず話を聞きたい」という段階の方には、都が賃貸住宅断熱・再エネ×コンシェルジュ事務局という無料の相談窓口を用意しています。


5. 太陽光・蓄電池:市の補助はないが、都の制度は使える

あきる野市には、太陽光発電・蓄電池に対する市独自の補助制度がありません(2026年度時点)。この点は正直にお伝えしておきます。

一方、東京都の制度は使えます。既築住宅への太陽光発電設置では、3.75kW以下の場合に15万円/kW(上限45万円)という水準が示されています。賃貸住宅については、前章の「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」に再エネ導入の枠が併設されています。

あきる野市は市域に山地を抱え、日照条件は物件ごとの差が大きい地域です。「補助が出るから載せる」ではなく、屋根形状・方位・周囲の樹木を見てから判断してください。 木造アパートの場合、屋根の構造耐力の確認も必須です。ここを飛ばして載せると、後の雨漏りリスクを買うことになります。


6. 立地の変化を、賃料と修繕計画にどう織り込むか

補助金の話から少し離れますが、投資判断の材料として書いておきます。

武蔵引田駅北口の土地区画整理事業は、低層住宅地を中心に沿道へ商業・業務地を配置し、公園4か所・約6,000㎡や歩行者専用道路、電線共同溝などを整備する計画です。圏央道のインターチェンジ至近という条件から、物流施設の立地も進んでいます。

物流・製造の雇用が増える地域では、賃貸需要の「質」が変わります。 具体的には、単身・二人世帯、法人契約、短中期の入居——といった層が増える傾向があります。この層は内見の判断が速く、設備と清潔感で決める傾向が強い。逆に言えば、築年数そのものよりも、窓・玄関ドア・水回りの見た目と体感が効きます。

ここで断熱改修が二重に効きます。ひとつは光熱費という実利。もうひとつが、省エネ性能ラベルです。国土交通省の建築物省エネ法に基づく省エネ性能表示制度により、賃貸物件の募集広告にも省エネ性能が表示される流れになっています。同じ家賃帯で並んだとき、ラベルの有無が比較材料になるということです。

私は、これは西多摩のような家賃が高くないエリアほど効くと考えています。家賃で差をつけられない市場では、差別化の軸が「見えるスペック」に移るからです。


7. 税務:補助金は「もらって終わり」ではありません

ここは毎回書きます。会計処理でつまずくと、せっかくの補助が目減りします。

7-1. 補助金は雑収入として課税されます

国や自治体から受け取った補助金・助成金は、原則として受給した年の収入(雑収入)として課税対象になります。個人であれば不動産所得の総収入金額に算入します(参考:国税庁 タックスアンサー No.1379)。

つまり、300万円の助成を受けたら、その300万円にも税金がかかります。手取りベースで考えないと、資金繰りの読みを外します。 工事費の支払時期と補助金の入金時期がずれることも多いので、つなぎ資金の手当ても含めて計画してください。具体的な処理は必ず顧問税理士にご確認ください(私は税理士ではありませんので、ここでは一般的な考え方までにとどめます)。

7-2. 修繕費か、資本的支出か

同じ工事でも、修繕費なら一括で経費、資本的支出なら減価償却で数年〜数十年に分割になります。手元のキャッシュフローに与える影響がまったく違います。

大まかな目安は次のとおりです。

区分 考え方 例
修繕費 原状回復、通常の維持管理 既存と同等品への外壁塗り替え、シーリング打ち替え、既存同等の窓交換
資本的支出 価値を高める、使用可能期間を延ばす 断熱性能を大幅に引き上げる改修、非常階段の増設、用途変更を伴う改造

ここが厄介なところで、断熱改修は「性能を上げる」工事なので、資本的支出と判定されやすい領域です。木造アパートの場合、法定耐用年数は22年。築22年を超えた物件に資本的支出を計上すると、償却期間の考え方が実務上ややこしくなります。

私からの実務的な提案は、見積書の内訳を工事項目ごとに細かく分けておくことです。「外壁改修工事一式」と1行で書かれた見積書は、税務判断のときに何の助けにもなりません。「既存塗膜の劣化に対する塗り替え」と「断熱性能向上のための付加断熱」が分かれていれば、税理士が判断しやすくなります。見積の粒度が、そのまま節税の余地になります。

7-3. 出口を見据えるなら

売却を視野に入れているオーナーさまには、もうひとつ観点を足してください。収益還元価格は、家賃と経費、そして「買い手が想定する将来の修繕費」で決まります。

断熱改修と省エネ性能ラベルの取得は、買い手にとって「当面の大きな修繕が済んでいる」という材料になります。加えて、補助金で作った現況図面一式が揃っていれば、デューデリジェンスがスムーズに進みます。書類が揃っている物件は、値切られにくい。 私が売買の現場で何度も見てきたことです。


8. 工事の側から:あきる野市の物件でコストを下げる方法

ここからは自社サービスの話を含みます。判断材料として読んでください。

8-1. 木造2階建てアパートに、ロープアクセスは向きません

先に、はっきりデメリットを書きます。2階建ての木造アパートに、ロープアクセス工法は適しません。 ロープアクセス(無足場工法)は、産業用ロープで屋上から吊り下がって作業する工法で、真価が出るのは足場の架設費が大きくなる中高層や、隣地が迫って足場が組めない物件です。2階建てなら、足場を組んだほうが速く、安く、仕上がりも安定します。

補助金の記事だからといって、何でもかんでも自社工法に寄せるつもりはありません。建物に合わない工法を勧めるのは、オーナーの資産を毀損する行為だと私は考えています。

8-2. では、あきる野市でロープアクセスが効くのはどこか

一方で、あきる野市にも該当する物件はあります。

  • 秋川駅・武蔵五日市駅周辺の5階建て以上の賃貸マンション・テナントビル
  • 敷地に余裕がなく、隣地の同意が取りにくい物件
  • 部分補修(外壁の一部タイル浮き、シーリング打ち替え、雨漏り箇所の特定)で、全面足場を組むのが割に合わないケース
  • 山際の斜面地に建ち、足場の設置面が確保しにくい物件

特に3点目は、あきる野市の物件でよく相談を受けます。「1面だけ直したいのに、見積が全面足場前提で出てきた」というケースです。全面足場を1面の補修のために組むのは、費用対効果が合いません。ロープアクセス工法の技術情報や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。

8-3. ハイブリッド工法という選択肢

株式会社明誠では、足場を組む面とロープアクセスで対応する面を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法もご提案しています。たとえば「道路に面した1面だけ足場、残り3面はロープアクセス」といった組み方です。工法の詳細はロープアクセス工法のご紹介、施工の考え方は大規模修繕サービスにまとめています。

私たちが3工法を提案できる会社である理由は単純で、選択肢が1つしかない会社は、その1つを勧めるしかないからです。オーナーさまの物件にとって最適なものを選ぶには、こちらが複数持っている必要がある。それだけの話です。


9. あきる野市のオーナーが、今月中にやるべき3つのこと

最後に、行動の順番を整理します。

① 登記事項証明書を用意し、1棟所有かどうかを確認する

都の制度の入口は「1棟所有」です。共有名義、区分登記、法人と個人の混在——このあたりが曖昧なままだと、申請段階で止まります。まずは書類で確定させてください。

② 事前申込を先に入れる(工事の話はその後)

繰り返しますが、事前申込の前に契約・着工すると対象外です。「工事内容が固まってから申し込もう」は逆です。事前申込を入れてから、登録事業者に相談してください。

③ 省エネ診断を10/10で入れ、現況図面まで作る

全額補助が出るうちに、物件の性能と図面を数値化しておく。これは補助金を取るためだけでなく、5年後の大規模修繕と、10年後の売却の準備でもあります。


お持ちの物件で、まだこの補助金の検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度お問合せフォームからご連絡ください。1棟の現地調査と、補助金を織り込んだキャッシュフロー試算だけでも承ります。 「工事をするかどうかは、数字を見てから決めたい」——それでまったく構いません。


よくある質問(FAQ)

Q1. あきる野市の耐震助成110万円は、賃貸アパートには使えませんか?
A. 原則として使えません。対象は「所有者自らが利用するために延べ床面積の2分の1以上を居住の用に供している」木造2階建て以下の戸建て住宅です(出典:あきる野市)。ただしオーナー自身が住む併用住宅は個別確認の余地があります。

Q2. 東京都の賃貸住宅断熱事業は、築何年から対象ですか?
A. 築年数の下限・上限は要件になっていません。「普通賃貸借契約で貸し出される既存の住宅」で、1棟所有であることが条件です。詳しくは本文の「4-1. 対象になるオーナー・ならない物件」を参照。

Q3. 省エネ診断だけ受けて、改修をやらなくても大丈夫ですか?
A. 診断単独での申請可否と精算条件は、要綱および手引きで確認が必要です。制度の設計上は「診断が先、改修が後」であり、改修前の断熱等級を把握していないと改修が対象外になります。判断に迷う場合は、都のコンシェルジュ窓口にご相談ください。

Q4. 1階が店舗のアパートを持っています。対象になりますか?
A. 1つの住戸を店舗用と居住用で兼用している場合、その部屋は対象外です。ただし建物全体が失格になるわけではなく、専用住宅として使っている住戸で計画を組むことは可能です。

Q5. あきる野商工会の助成は、いつ申請すればいいですか?
A. 年度開始直後です。例年1か月程度で予算枠に達して受付終了になります。工事着工前の申請が必須で、商工会の会員事業所を利用することが条件です(あきる野商工会、TEL 042-559-4511)。


この記事のポイントまとめ

  • あきる野市の住宅系助成2つは「自ら居住」が条件で、賃貸オーナーは原則対象外
  • 本命は東京都の賃貸住宅断熱・再エネ集中促進事業(令和8年度予算218億円)
  • 省エネ診断は補助率10/10・120万円/棟、現況図面も10万円/戸まで全額
  • 高断熱窓は2/3・30万円/戸。家賃6万円台でも補助込みなら回収年数が大きく縮む
  • 事前申込前の契約・着工、登録外事業者との契約は一発で対象外になる
  • 補助金は雑収入として課税。見積の内訳を細かく分けると税務判断がしやすい
  • 2階建て木造にロープアクセスは不向き。中高層・部分補修・斜面地で真価が出る

出典・参考資料

※補助金・助成制度は年度途中で要件や予算枠が変更される場合があります。申請前に必ず各制度の公式サイトおよび窓口で最新情報をご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務判断・法的助言を行うものではありません。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション・ビルの大規模修繕/ロープアクセス工法(無足場工法)/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円で通常足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3工法から、建物に最適な方法をご提案できる改修会社です。ロープアクセス工事としては日本初となるフランチャイズを展開しています。

最終更新:2026年8月20日

羽村市の賃貸マンション補助金|オーナー向け2026年版

2026年8月19日 更新

この記事で答える質問:東京都羽村市で賃貸マンション・アパートを1棟持っているオーナーは、2026年度にどの補助金を使えて、どれが使えないのか?

先に結論から申し上げます。羽村市が独自に持っている耐震補助は、要綱の時点で「賃貸を目的とする住宅を除く」と明記されており、投資用物件のオーナーは入口で対象外です。一方で、市の「環境配慮事業助成制度」は共同住宅や事業所も対象家屋に含めてきた制度で、賃貸物件でも入口はあります。ただしこの制度は現金ではなくエコポイントという独特の形で支給されます。

そして、羽村市のオーナーにとって本命は市ではなく東京都の「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業(令和8年度)」です。省エネ診断が補助率10/10・上限120万円/棟、高断熱窓が2/3・上限30万円/戸。1棟所有の個人または法人が申請者になれる、賃貸オーナーのための制度です(出典:クール・ネット東京)。

私は株式会社明誠の本間と申します。20年近く、マンションやビルの外壁・防水の現場に立ってきました。この記事では羽村市の賃貸オーナーさま向けに、使える制度と使えない制度を一次情報で線引きし、税務処理と工事の進め方まで一気に整理します。


1. 2026年、羽村市の賃貸市場は「工場の主が替わる年」

羽村市の賃貸経営を語るとき、この話を外すわけにはいきません。

日野自動車は2025年8月21日、羽村工場を管轄する新会社を設立し、その全株式をトヨタ自動車へ譲渡すると発表しました。新会社は「トヨタ自動車羽村株式会社」として、2026年4月1日付でトヨタ自動車の傘下に入っています(出典:日野自動車 IR資料)。羽村工場ではダイナやランドクルーザー250などが生産されてきました。

羽村市は、戦後から高度成長期にかけて自動車工場の誘致とともに人口を伸ばしてきた街です。総人口は令和2年国勢調査時点で54,783人(出典:国土交通省資料)。市域の規模に対して、工場に紐づく単身・ファミリーの賃貸需要が厚く形成されてきた地域だと、私は現場を回っていて感じます。

ここで正直に申し上げます。工場の経営主体が替わることは、賃貸オーナーにとって「上振れも下振れもある変数」です。生産体制が拡充されれば需要は堅い。逆に配置転換や機能移転が起これば、特定エリアの空室が一気に動きます。どちらに転ぶかを私が予言することはできません。

私が申し上げたいのはひとつだけです。変数が動く年に、築古のまま何もしない物件がいちばん弱い。 需要が締まったとき、真っ先に選ばれなくなるのは「見た目が古い」「夏暑くて冬寒い」物件です。そして今年は、その2つを公費で直せる制度が並んでいます。


2. 【結論の表】羽村市のオーナーが使える制度・使えない制度

まず全体像を1枚で押さえてください。

制度 実施主体 1棟所有の賃貸オーナー 補助率・上限
賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業 東京都 ◎ 本命 省エネ診断10/10・120万円/棟、高断熱窓2/3・30万円/戸
既存住宅における省エネ改修促進事業 東京都 △(分譲住戸の所有者向けが中心) 上限200万円/住戸(令和8年度に増額)
環境配慮事業助成制度 羽村市 ○(共同住宅・事業所も対象家屋) エコポイント方式。上限は要確認
中小企業経営基盤強化助成金 羽村市 ○(市内に事業所を持つ法人・個人) 2/3・全体で法人25万円/個人15万円
木造住宅耐震診断・耐震改修補助 羽村市 × 対象外 「賃貸を目的とする住宅を除く」
マンション長寿命化促進税制 国 △(分譲住戸を賃貸中なら余地あり) 建物部分の固定資産税を1/6〜1/2減額

以下、1つずつ根拠を示していきます。


3. 羽村市の耐震補助は、なぜ賃貸オーナーが使えないのか

Q. 羽村市の耐震改修補助(上限50万円)は、所有する賃貸アパートに使える?
A. 使えません。 補助対象住宅の定義に「賃貸を目的とする住宅を除く」と明記され、補助対象者も「自己の住宅の用途に供する補助対象住宅を所有する個人」に限定されています(出典:羽村市 木造住宅耐震診断および耐震改修補助制度)。

制度の中身自体は手厚いものです。

区分 補助率 上限
耐震診断 経費の1/2以内 5万円
耐震改修 経費の1/2以内 1棟1回・50万円
耐震改修(65歳以上の所有者が居住) 経費の6/10 50万円

対象は昭和56年5月31日以前に軸組工法で建築された2階建て以下の一戸建て木造住宅で、延床面積の1/2以上を住宅に供しているもの。市税等を完納していることも条件です。診断の実費は15万円以上かかるとされています。

私はこの「自己居住要件」を、羽村市に限らず多くの自治体で見てきました。オーナーさまから「うちのアパートも耐震補助が出るんじゃないの」とご相談をいただくことがありますが、多摩地域の市レベルの耐震補助は、ほぼ自己居住の戸建てを想定して設計されています。ここで時間を溶かすより、都の制度に照準を合わせたほうが早い。これが私の実務上の判断です。

なお、耐震改修そのものを行った場合、所得税の特別控除や固定資産税の減額を受けられる場合があります。市のページでは所得税は青梅税務署、固定資産税は市民部課税課資産税係が問い合わせ先と案内されています。補助金は出なくても税制は別ルートで効く、という発想は持っておいて損がありません。


4. 【本命】東京都「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」令和8年度

ここからが本題です。この制度は、そもそも賃貸住宅のオーナーのためだけに作られています。都の報道発表のタイトルからしてそうです。「断熱改修等による賃貸住宅の資産価値向上を強力に支援します!」(出典:クール・ネット東京 令和8年度事業ページ)。

4-1. 誰が申請できるか

助成対象者は、助成対象住宅を1棟所有している個人または法人です。建物の登記事項証明書で所有権者として証明できることが条件。1棟のうち、オーナーの3親等以内の親族による区分登記がある物件も対象になります。設備をオーナーに貸与するリース事業者が共同申請することも可能です。

助成対象住宅は「普通賃貸借契約を締結し、貸し出される既存の住宅」。専用住宅であることが必要で、1つの住戸を店舗用と居住用で兼用している場合、その部屋は対象外です。1階が店舗の物件をお持ちの方は、住戸部分だけで組み立てることになります。

4-2. 令和8年度で変わったポイント

私がこの制度を見ていて「今年は動くべきだ」と思う理由が、変更点にあります。

  • 賃貸集合住宅の所有者住戸(オーナー及び3親等以内の親族が居住する住戸)も助成対象になった
  • 省エネ性能診断等の実施要件から「断熱改修プラン提案書の作成」が外れた

オーナー住戸込みで1棟まるごと組める。そして診断のハードルが1段下がった。制度側が明らかに使いやすさへ舵を切っています。

4-3. 助成額(ここが数字の核心)

省エネ診断等

対象 補助率 上限
省エネ診断等(省エネ性能表示含む) 対象経費の10/10 120万円/棟
省エネ診断用の現況図面作成 対象経費の10/10 10万円/戸

補助率10/10、つまり全額です。私は正直に申し上げますが、この診断枠を使わないのは相当もったいない。築古物件は図面が残っていないことが本当に多く、現況図面の作成に1戸10万円まで出るのは実務的に大きい。図面は将来の大規模修繕でも売却時のデューデリでも使えます。

断熱改修

対象 補助率 上限
高断熱窓 対象経費の2/3 30万円/戸
高断熱ドア 対象経費の2/3 27万円/戸
断熱材 対象経費の2/3 60万円/戸

技術要件も押さえておきます。高断熱ドアは熱貫流率2.3 W/(㎡・K)以下であること、かつ高断熱窓または断熱材の改修と同時に実施すること。断熱材は熱抵抗値(厚さ÷熱伝導率)が屋根2.7以上/天井2.7以上/外壁2.7以上/床2.2以上であること。窓・ドアは先進的窓リノベ2026事業やみらいエコ住宅2026事業の対象製品として登録されているものを使う必要があります(先進的窓リノベ2026事業/みらいエコ住宅2026事業)。

熱貫流率とは、建物の内外で熱がどれだけ通り抜けるかを示す数値です。小さいほど熱が逃げにくい、とだけ覚えていただければ十分です。

4-4. ★ここで落とす人が本当に多い★ 3つの落とし穴

私が現場で見てきた失敗を、そのまま書きます。

落とし穴①:事前申込の前に契約・着工してしまう

要綱に明記されています。「事前申込受付前に契約又は着工したものは助成金の対象外です」。見積を取って、話が進んで、勢いで契約書に判を押した——これで全部飛びます。順番は「事前申込 → 受付確認メール受領 → 契約 → 着工」。ここだけは絶対に崩さないでください。

落とし穴②:改修前の断熱等級を把握せずに工事してしまう

これも要綱の記載どおりです。「改修前の等級を把握せずに改修を行った場合は助成対象外」。だからこそ、補助率10/10の省エネ診断を先に入れる設計になっています。診断が先、改修が後。この順序に意味があります。

落とし穴③:登録事業者以外と契約してしまう

診断も改修も、公社に登録された事業者と契約したものだけが対象です。長年お付き合いのある業者さんがいても、その会社が登録されていなければ助成は出ません。事業者登録の申請期間は令和8年5月29日〜令和9年2月27日。登録事業者一覧で確認できます。私はいつもオーナーさまに、「見積を取る前に、まず登録の有無を確認してください」とお伝えしています。

4-5. スケジュールの逆算

手順 期限・時期
事前申込 令和8年5月29日から受付中
交付申請兼実績報告 令和8年6月30日から、事前申込有効期限または令和11年3月30日のいずれか早い日まで
事前申込後の交付申請 1年以内。過ぎると事前申込が自動的に無効
不備修正の対応 150日以内。放置すると申請取下げとみなされる

事前申込は住戸ごとではなく1棟の建物ごとに1回。住戸ごとに工事時期を分けても、同じ建物なら事前申込は一度だけです。

「まず相談したい」という段階の方には、都の賃貸住宅断熱・再エネ×コンシェルジュ事務局という無料の相談窓口も用意されています。


5. 省エネ性能ラベルは「募集広告に載る」——入居率に直結する話

ここは、補助金の話に見えて実は入居率の話です。

建築物省エネ法に基づく省エネ性能表示制度により、住宅の販売・賃貸時に省エネ性能をラベルで表示する仕組みが動いています(出典:国土交通省 省エネ性能表示制度)。つまり、あなたの物件の断熱性能が、募集広告の上で数字とマークになって並ぶということです。

同じ家賃、同じ駅距離、同じ築年数で、片方にラベルが付いていて片方に何もない。入居希望者がどちらを内見するか。答えは考えるまでもありません。

そして都の制度は、このラベル作成にかかる費用まで助成対象に含んでいます(省エネ性能表示は各事業費に按分して加算されます)。診断費が10/10、ラベル費も対象、改修費が2/3。「募集力を上げる仕掛け」の費用を、ほぼ公費で作れる年だと私は捉えています。

入居率の話を数字で置き換えます。仮に20戸の物件で家賃7万円、稼働率が92%から95%へ3ポイント改善したとします。年間の賃料収入差は 7万円 × 20戸 × 12か月 × 3% = 50.4万円。これが毎年積み上がります。キャップレート5%で還元すれば、物件価値としては約1,000万円の差です。断熱改修が「利回りの改善」ではなく「物件価値そのものの底上げ」だと私が申し上げるのは、この計算があるからです。


6. 羽村市の制度:エコポイントという独特の仕組み

市の制度も、使えるものは使いましょう。

6-1. 環境配慮事業助成制度(令和8年度)

羽村市の「環境配慮事業助成制度」は、現金ではなくエコポイントで助成するという全国的にも珍しい設計の制度です。エコポイントは市内の法人・個人事業主での物品購入やサービス、工事代金の支払いに使え、使用後に領収証書を提出することで指定口座へ振り込まれます。

令和8年度の申請受付期間は令和8年6月1日〜令和9年1月31日(先着順・予算に達し次第終了)と案内されています(出典:羽村市公式サイト/補助金ポータル 令和8年度掲載)。

オーナーにとって重要なのは、助成対象となる家屋に「共同住宅(2以上の住戸からなるもの、賃貸借などの方も含まれます)」「分譲マンション」「事業所」が含まれてきた点です。耐震補助のような自己居住要件がなく、賃貸物件でも入口があります。

助成メニューには、高遮熱塗装等改修工事・高断熱化改修工事・LED照明改修工事・遮熱フィルム・太陽光発電システム・蓄電池・エネルギー管理システムなどが並びます。外壁塗装を検討しているオーナーさまにとって、高遮熱塗装が対象メニューに入っているのは見逃せません。

もうひとつ、実務で効く仕組みがあります。市内事業者(優先施工者)に発注すると助成額が上乗せされる設計です。制度の趣旨が「市内消費へのインセンティブ」である以上、当然の設計とも言えます。

ただし正直に申し上げます。上限額については、公表資料によって「30万エコポイント」「21万円」など表記の差があります。年度ごとにメニューと限度額が改定される制度ですので、必ず市の環境保全課(電話 042-555-1111)に最新の要綱をご確認ください。ここを他人の要約で判断してはいけません。

6-2. 中小企業経営基盤強化助成金

法人でアパート・マンションを保有し、羽村市内に事業所があるオーナーさまには、こちらも選択肢になり得ます。

区分 補助率 上限(一社一年度)
【1】働く環境整備事業 2/3 1事業あたり 法人10万円・個人5万円
【2】DX推進事業 2/3 1事業あたり 法人10万円・個人5万円
【3】環境配慮加算 2/3 法人・個人 5万円
助成金全体 — 法人25万円・個人15万円

環境配慮加算の対象経費には高断熱化改修工事、LED照明の設置・改修、太陽光発電システムの導入・更新が挙げられています(出典:羽村市 中小企業経営基盤強化助成金)。

注意点を3つ。環境配慮加算は単独申請できず、【1】または【2】を申請した年度のみ追加できます。市の別の助成制度との併用はできません(環境配慮事業助成制度とどちらを取るかの選択になります)。そして事業開始前の申請が必須で、実施済み・購入済みは対象外です。なお市の掲載ページは令和6年度の申請期間表記のままですので、こちらも最新年度の取扱いは産業振興課へご確認ください。


7. 税務:補助金は「もらって終わり」ではありません

オーナー読者にとって、ここが利回りに直結します。

7-1. 補助金は雑収入として課税される

これは毎回お伝えしています。受け取った補助金・助成金は、法人なら益金、個人事業者なら事業所得の総収入金額に算入されます。「120万円もらえた」と喜んでいたら、期末に課税所得が120万円増えていた、という話です。手残りベースで試算してください。

なお、固定資産の取得に充てた国庫補助金等については圧縮記帳という制度があり、課税を繰り延べられる場合があります。適用可否は補助金の性格と会計処理によりますので、必ず顧問税理士にご確認ください。私は工事のプロですが、税務の判断者ではありません。

7-2. 修繕費か、資本的支出か

Q. 断熱改修の工事費は、その年に全額経費にできる?
A. 一概には言えません。建物の価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりする支出は「資本的支出」として資産計上し、減価償却することになります。

区分 処理 キャッシュフローへの影響
修繕費 支出年に全額損金 その年の課税所得を大きく圧縮
資本的支出 資産計上して減価償却 効果が長期に分散

国税庁は、修繕費か資本的支出か明らかでない場合の形式基準として、1件20万円未満のもの、おおむね3年以内の周期で行われるものなどを修繕費として扱ってよい旨を示しています(出典:国税庁 タックスアンサー No.1379 修繕費とならないものの判定)。

私の経験上、同じ工事内容でも、工事の切り分け方と見積書の書き方で区分が変わることがあります。「外壁全面をやり替える」のか「劣化部分を原状に戻す」のか。工事会社が出す見積書の書きぶりが、そのまま税務の判断材料になります。私が見積を作るときに工事内容を丁寧に分けて書くのは、この理由からです。

7-3. マンション長寿命化促進税制は、賃貸オーナーに関係あるか

国のマンション長寿命化促進税制は、大規模修繕を行ったマンションの建物部分の固定資産税を、翌年度に1/6〜1/2の範囲で減額する制度です。適用期限は令和9年3月31日まで延長されています(出典:国土交通省 マンション税制)。

ただし、この制度は管理組合の合意形成を後押しすることを目的に設計されており、区分所有マンションが前提です。1棟をまるごと所有している賃貸マンションのオーナーは、基本的に対象外と理解してください。

一方で、分譲マンションの住戸を複数お持ちで賃貸に出しているオーナーさまは話が別です。管理組合が管理計画認定を取得し、要件を満たす長寿命化工事を実施すれば、あなたが所有する住戸の固定資産税も減額対象になり得ます。この場合、管理組合の総会議案に注意を払う価値があります。保有戸数が多いほど効きます。


8. 工事の側から見た、羽村市の物件でコストを下げる方法

補助金の話ばかりしてきましたが、工事費そのものを下げなければ手残りは増えません。ここは私の本業の話です。

大規模修繕の総工事費のうち、仮設足場が占める割合は一般に2割前後になることがあります。5,000万円の工事なら1,000万円前後が「作業のための足場」に消える計算です。この部分に手を入れられるのが、無足場工法であるロープアクセス工法です。

ロープアクセス工法とは、屋上などにアンカーを取り、2本のロープで作業者が壁面を降下しながら作業する工法です。足場を組まないため、次のような違いが出ます。

項目 通常足場工法 ロープアクセス工法
仮設費 総工事費の2割前後になることも 大幅に圧縮できる
工期 架設・解体の期間が加わる 着手が早い
入居者への影響 全戸の窓前に足場・メッシュシート 該当面のみ・短時間
防犯面 足場からの侵入リスクへの配慮が必要 足場自体がない
適する工事 全面改修・大規模な補修 部分補修・シーリング・塗装・調査

賃貸オーナーにとって見逃せないのが、入居者への影響の行です。足場とメッシュシートで数か月間ふさがれると、退去の申し出が出ることがあります。1件の退去は、原状回復費と募集経費と空室期間の3つを同時に発生させます。足場を組まないという選択肢は、工事費だけでなく退去リスクにも効きます。

ロープアクセス工法の技術的な解説や安全基準については、姉妹サイトロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。

そして私が実務でいちばん多く提案するのは、ハイブリッド工法です。傷みの激しい面や全面改修が必要な部分は足場を架け、部分補修で足りる面はロープアクセスで処理する。建物の状態に応じて工法を使い分ければ、総額を無理なく圧縮できます。工法ありきで見積を作らないこと。これが私の考える誠実な提案です。詳しくはロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。

補助金で断熱改修の2/3を賄い、残りの工事は工法選択で圧縮する。この2段構えが、羽村市の賃貸オーナーが2026年度に取れる最も効率のよい形だと考えています。


9. 羽村市のオーナーが今日から動く順番

私がオーナーさまにお伝えしている段取りを、そのまま置いておきます。

  1. 登記事項証明書を用意する。 都の制度は1棟所有を登記で証明します。まずここが土台です。
  2. 物件が普通賃貸借契約で貸し出されている既存住宅か確認する。 店舗兼用住戸がある場合、その部屋は対象外になります。
  3. 登録事業者を確認する。 契約先が公社の登録事業者かどうか。ここが未確認のまま見積を進めないこと。
  4. 事前申込を出す。 1棟につき1回。受付確認メールを受け取ってから契約する。順番を絶対に崩さない。
  5. 省エネ診断を先に入れる。 補助率10/10。改修前の断熱等級を把握しないまま工事すると助成対象外です。
  6. 改修と省エネ性能表示を行い、交付申請兼実績報告を出す。 事前申込から1年以内。
  7. 並行して、市の環境配慮事業助成制度の最新要綱を確認する。 高遮熱塗装など塗装系メニューの適用可否を市に直接確認します。
  8. 顧問税理士に、雑収入計上と資本的支出/修繕費の区分を相談する。 工事の切り分け方は着工前に決めておくべきです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 羽村市の耐震改修補助(上限50万円)は、所有する賃貸アパートに使えますか?
A. 使えません。補助対象住宅から「賃貸を目的とする住宅」が除外され、補助対象者も自己の住宅の用途に供する個人に限定されています(出典:羽村市)。詳しくは本文3章をご覧ください。

Q2. 法人名義で持っている賃貸マンションでも、東京都の制度は申請できますか?
A. できます。助成対象者は「助成対象住宅を1棟所有している個人又は法人」で、建物の登記事項証明書で所有権者として証明できることが条件です(出典:クール・ネット東京)。

Q3. 先に工事契約を結んでしまいました。あとから申請できますか?
A. 対象外になります。要綱に「事前申込受付前に契約又は着工したものは助成金の対象外」と明記されています。まだ契約前であれば、事前申込を先に済ませてください。

Q4. オーナー自身が住んでいる住戸も対象になりますか?
A. 令和8年度から、賃貸集合住宅の所有者住戸(オーナー及びその3親等以内の親族が居住する住戸)も対象に追加されました。1棟まるごとで組み立てられます。

Q5. 受け取った助成金に税金はかかりますか?
A. かかる可能性が高いです。補助金・助成金は法人では益金、個人事業者では総収入金額に算入されるのが原則です。固定資産の取得に充てた場合は圧縮記帳の余地がありますので、顧問税理士にご確認ください。

Q6. 断熱改修と外壁塗装を同時にやったほうが得ですか?
A. 足場や高所作業の段取りを共有できる分、別々に行うより仮設コストを圧縮できるのが一般的です。ただし助成制度ごとに対象経費の線引きが異なるため、見積段階で工事項目を明確に分けておく必要があります。


この記事のポイントまとめ

  • 羽村市の耐震補助は「賃貸を目的とする住宅を除く」ため、投資用物件は対象外
  • 本命は東京都の賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業(令和8年度)
  • 省エネ診断は補助率10/10・上限120万円/棟、高断熱窓は2/3・30万円/戸
  • 事前申込前の契約・着工、改修前の等級未把握、登録事業者以外との契約は全部アウト
  • 令和8年度からオーナー所有住戸も対象、診断プラン提案書の要件も撤廃
  • 市の環境配慮事業助成制度は共同住宅も対象家屋。ただしエコポイント方式で上限は要確認
  • 補助金は雑収入として課税。資本的支出か修繕費かで手残りが変わる
  • 工事費は足場とロープアクセスの使い分けで圧縮できる

お持ちの羽村市の物件で、まだ都の事前申込を出していないオーナーさまは、契約前の今のうちに手を打っておくべきタイミングです。1棟の現地調査と、断熱改修を含めた利回り改善シミュレーションだけでもお受けしています。図面が残っていない、どこから手をつけるか分からない、という段階のご相談で構いません。お問合せフォームからお声がけください。

制度は年度ごとに要件も予算枠も変わります。この記事の数字は執筆時点のものですので、実際に申請される際は必ず各実施機関の最新の要綱をご確認ください。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開しています。

最終更新:2026年8月19日


出典・参考資料

青梅市の賃貸マンション補助金|オーナー向け2026年版

「青梅市で賃貸マンションやアパートを持っているが、2026年度(令和8年度)の大規模修繕で本当に使える補助金はどれなのか」——この記事はその一点に答えます。結論から申し上げると、青梅市の市独自制度の多くは「自己居住」を要件にしており、投資用の賃貸物件にはそのまま使えません。オーナーさまが本気で取りに行くべきは東京都の制度です。

私は建設・改修の現場に20年近く身を置いてきました。青梅市を含む多摩地域の物件も何棟も見てきましたが、補助金の話になると「市役所に聞いたら対象外と言われた」で止まってしまうオーナーさまが本当に多い。実は、そこで諦めるのが一番もったいないのです。

この記事では、2026年8月18日時点の公的一次情報だけを根拠に、青梅市の賃貸物件オーナーが使える制度を整理します。数字はすべて出典URLを添えています。


結論:青梅市の賃貸オーナーが2026年度に狙うべきは「都の賃貸住宅断熱事業」

Q. 青梅市の賃貸マンション・アパートで、2026年度に使える補助金の本命は?
A. 東京都(クール・ネット東京)の「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」です。省エネ診断等は補助率10分の10・上限120万円/棟、高断熱窓は補助率3分の2・上限30万円/戸(出典:クール・ネット東京 令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業【省エネ診断・断熱改修】)。

市の制度と都の制度で「使える/使えない」が真っ二つに分かれる

青梅市の制度を一つひとつ確認していくと、ある共通点に気づきます。「市内に住所を有し、自ら居住する個人」「自宅に自家用として」——この要件が繰り返し登場するのです。つまり、投資用の賃貸物件を持つオーナーさまは、入口の時点で外れてしまう。

一方、東京都の制度は逆です。賃貸住宅であることが前提だったり、助成対象者に法人が明記されていたりします。この構造を理解しているかどうかで、取れる金額が桁ひとつ変わります。

2026年度・青梅市の賃貸オーナー向け制度 早見表

制度名 実施主体 補助率・上限 賃貸オーナーの可否 出典
賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業(省エネ診断等) 東京都・クール・ネット東京 10/10・120万円/棟 ○(1棟所有の個人・法人) 都
同(高断熱窓) 同上 2/3・30万円/戸 ○ 同上
同(断熱材) 同上 2/3・60万円/戸 ○ 同上
既存住宅における省エネ改修促進事業 東京都・クール・ネット東京 単価制・200万円/住戸 ○(都内に住宅を所有する個人・法人・管理組合) 都
マンション長寿命化促進税制 国(地方税法) 固定資産税1/6〜1/2減額 ○(区分所有・管理計画認定が前提) 国交省
青梅市ブロック塀等撤去費補助制度 青梅市 工事費9/10・上限18万円 ○(所有または管理する者) 青梅市
青梅市木造住宅耐震改修補助 青梅市 1/2以内・上限100万円 ×(自ら居住する個人が要件) 青梅市
青梅市省エネルギー住宅改修補助制度 青梅市 1/2・上限10万円 ×(自宅に自家用として) 青梅市

この表を、ぜひ一度お手元の物件リストと突き合わせてみてください。


本命①:東京都「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」

これは、私が青梅市の賃貸オーナーさまに真っ先にご案内している制度です。理由は単純で、診断費用が実質ゼロ円で済むからです。

助成額と上限(令和8年度)

対象 補助率 上限
省エネ診断等(省エネ性能表示含む) 対象経費の10/10 120万円/棟
省エネ診断用現況図面の作成 対象経費の10/10 10万円/戸
高断熱窓 対象経費の2/3 30万円/戸
高断熱ドア 対象経費の2/3 27万円/戸
断熱材 対象経費の2/3 60万円/戸

(出典:クール・ネット東京 令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業)

助成対象者は「助成対象住宅を1棟所有している個人又は法人」で、建物の登記事項証明書で所有権者として証明できることが条件です。助成対象住宅は「普通賃貸借契約を締結し、貸し出される既存の住宅」。令和8年度からは賃貸集合住宅の所有者住戸(オーナーご自身やご親族が住む住戸)も助成対象に加わりました(出典:クール・ネット東京)。

たとえば1棟20戸の賃貸マンションで、全戸の窓を高断熱窓に交換したとします。1戸あたり上限30万円ですから、単純計算で最大600万円。これに省エネ診断等の120万円/棟が乗ります。金額の桁として、無視できる規模ではないはずです。

事前申込より前に契約したら、その時点で対象外

ここからが本題です。この制度は「事前申込受付完了後に事業者と契約を締結する」ことが絶対条件で、事前申込受付前に契約または着工したものは助成金の対象外になります(出典:クール・ネット東京)。

私が現場で一番悔しい思いをするのが、この順番の取り違えです。以前、多摩地域のあるオーナーさまから「工事が終わったので補助金の書類を出したい」とご相談をいただいたことがありました。工事内容も金額も要件を満たしていたのに、契約日が事前申込より前だったというだけで、数百万円が消えました。制度は「良い工事をしたか」ではなく「決められた順番を踏んだか」を見ます。

事前申込は令和8年5月29日から受付が始まっており、契約や住戸ごとではなく1棟の建物ごとに一度だけ行います。住戸ごとに工事時期を分ける場合でも、同一建物なら事前申込は1回です。

改修前の断熱等級を把握していないと、これも対象外

もう一つの落とし穴が診断の順番です。断熱改修は「改修前の断熱等級を把握している場合にのみ助成対象」となり、事前に等級を把握せずに改修を行った場合は対象外になります。等級を把握していないなら、先に省エネ診断を実施してください。

さらに、工事を請け負う会社は公社に登録された事業者である必要があります。登録事業者以外が診断・改修を行った場合は助成対象外です。相見積もりを取るときは、金額だけでなく「登録事業者かどうか」を必ず確認してください。


本命②:既存住宅における省エネ改修促進事業 — 1住戸あたり最大200万円

こちらは賃貸に限定されない制度ですが、助成対象者に「都内に住宅を所有する個人・法人及び管理組合」が明記されているため、賃貸オーナーも対象になります(出典:クール・ネット東京 令和8年度 既存住宅における省エネ改修促進事業)。

助成単価は「窓のサイズ×性能グレード」で決まる

高断熱窓・高断熱ドアの上限額は1住戸あたり200万円。国の住宅省エネ2026キャンペーンで「断熱等+防犯窓」として登録されている製品なら300万円まで上がります。単価の一例を挙げると、外窓交換(はつり工法・カバー工法)でグレードP(熱貫流率1.1以下)・面積4.0㎡以上の特大サイズなら1か所あたり277,000円です。

断熱材は「対象経費の1/3」「1住戸あたり100万円」「国の補助金交付額」のうち最も小さい額。高断熱浴槽は1住戸あたり95,000円、リフォーム瑕疵保険は1契約あたり7,000円です。

なお、分譲集合住宅の管理組合が申請者で、かつ改修戸数が50戸以上となる場合は助成単価合計額の120%が交付され、上限も1申請あたり240万円×合計改修戸数に引き上げられます。区分所有物件を複数戸お持ちのオーナーさまは、管理組合側の動きも把握しておく価値があります。

「都および公社の他の同種の助成金」との重複はできない

ここは正直に申し上げます。この制度には「助成対象設備について、都および公社の他の同種の助成金の交付を重複して受けることはできません」という明記があります。つまり、同じ窓に対して「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」と「既存住宅における省エネ改修促進事業」の両方を当てることはできません。

どちらが有利かは、物件の規模と工事範囲で変わります。1棟丸ごとの賃貸物件で診断から入るなら前者、区分所有や部分改修で単価の高い窓を入れるなら後者、という判断が基本線になります。この見極めだけでも、専門家に一度相談する価値はあると私は思っています。


青梅市独自の制度:オーナーが使えるもの・使えないもの

木造住宅耐震改修補助(上限100万円)は「自ら居住」が要件

青梅市の木造住宅耐震改修補助は、令和8年度の受付が始まっています。耐震診断は費用の1/2以内・上限9万円、耐震改修は費用の1/2以内・1棟につき1回限りで上限100万円。対象は昭和56年5月以前、または昭和56年6月〜平成12年5月以前に建てられた軸組工法2階建以下の一戸建木造住宅です(出典:青梅市 木造住宅耐震改修補助)。

ただし補助対象者は「市内に住所を有し、補助対象住宅を所有し自ら居住する個人」。投資用の木造アパートや、オーナーが市外に居住している物件は対象外です。加えて対象は一戸建木造住宅ですから、非木造の賃貸マンションはそもそも土俵に上がりません。

青梅市省エネルギー住宅改修補助制度も「自宅」限定

高断熱窓ガラスへの改修を支援する青梅市省エネルギー住宅改修補助制度は、補助金額が10万円または本人負担額の1/2のいずれか低い額。しかし対象者の要件に「青梅市内に居住し、自宅に自家用として対象機器を新たに設置・改修すること」とあり、賃貸物件のオーナー用途では使えません(出典:青梅市 既存住宅向け高断熱窓ガラスへの改修支援)。

年度ごとに受付状況が変わる制度でもあるため、最新の実施有無は環境部環境政策課に確認するのが確実です。

ブロック塀等撤去費補助(上限18万円)はアパートでも使える

一方で、青梅市の制度にもオーナーが使えるものがあります。ブロック塀等撤去費補助制度です。補助対象者は「ブロック塀等を所有または管理し、当該ブロック塀等を撤去する者」で、居住要件がありません。

補助額は次の3つのうち最も少ない額(1,000円未満切り捨て)。

  1. 工事に要した費用の10分の9
  2. 撤去するブロック塀等の長さ×1メートルあたり8,000円
  3. 18万円

対象となるのは、避難路等に面し、頂部までの高さが地盤面から1メートルを超え、構造部の高さが60センチメートルを超えるブロック塀等です。交付決定後に着手することが条件で、敷地や建物の売却・新築・改築を目的とした撤去工事は対象外になります(出典:青梅市ブロック塀等撤去費補助制度)。

金額としては大きくありませんが、アパートの敷地境界にある古いブロック塀は、地震時の倒壊リスクとオーナーの工作物責任に直結します。大規模修繕のタイミングで一緒に片付けてしまうのが合理的です。


築古ビル・投資用マンションのオーナーへ:沿道規制という別の論点

青梅市には「特定緊急輸送道路」が指定されており、その沿道の建築物には条例上の義務がかかっています。

特定沿道建築物とは、次のすべてに当てはまる建築物です。

  • 敷地が特定緊急輸送道路に接する建築物
  • 昭和56年5月以前に新築された建築物(旧耐震基準)
  • 道路幅員の概ね2分の1以上の高さの建築物

これらの所有者には耐震診断の実施が義務づけられ、行政指導や実施命令により義務の履行が確保されます。一定期間経過後も耐震診断が未実施の建築物は、都条例により公表される可能性があります(出典:青梅市 緊急輸送道路沿道建築物の耐震化)。

青梅市は該当建築物の耐震補強設計・耐震改修工事に対する助成を行ってきましたが、市のページには耐震診断補助が平成29年3月31日で廃止されたこと、補助期限が令和7年3月(事業完了)であることが記載されています。2026年度時点で助成が継続しているかは、都市整備部住宅課への確認が必須です。制度は変更されることがありますので、必ず最新の公式情報でご確認ください。

オーナーの立場で申し上げれば、これは補助金の話である以前に「公表リスク」の話です。所有ビルの名前が耐震診断未実施として公表された場合、テナント募集にも売却交渉にも影響が出ます。


区分所有の投資用マンションを持つオーナーの武器:長寿命化促進税制

青梅市は令和5年9月に青梅市マンション管理適正化推進計画を策定し、マンション管理計画認定制度が始まっています(出典:青梅市 マンション管理計画認定制度)。

認定されると何が起きるか

認定を受けたマンションでは、長寿命化工事(屋根防水工事、床防水工事、外壁塗装等工事)が実施された場合に、その翌年度に課される建物部分の固定資産税額が減額されます。これがマンション長寿命化促進税制です(出典:国土交通省 マンション税制)。減額幅は1/6〜1/2の範囲で、参酌基準は1/3です。

加えて、住宅金融支援機構による優遇もあります。フラット35の金利引き下げ、マンション共用部分リフォーム融資の金利引き下げ、マンションすまい・る債の利率上乗せ。区分所有の投資用マンションを持つオーナーにとって、これは保有コストの直接的な圧縮を意味します。

認定基準と費用

認定基準は青梅市の独自基準ではなく、東京都マンション管理適正化指針の基準と同一です。実務上ハードルになりやすいのは次のあたりです。

  • 長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠して作成され、集会で決議されていること
  • 長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われていること
  • 計画期間が30年以上で、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれること
  • 直前事業年度末時点で、修繕積立金の3か月以上の滞納額が全体の1割以内であること
  • 修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと

費用面では、市への認定申請手数料は無料です。ただし申請前に公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」による事前確認が必要で、利用料10,000円の支払いが発生します。認定の有効期間は5年間です。

区分所有オーナーの立場では、認定申請の主体は管理組合になります。だからこそ、管理組合に対して「認定を取れば長寿命化促進税制が使える」と情報提供できるオーナーが、結果的に自分の保有コストを下げることになります。総会で発言する材料として、この記事の数字をそのまま使っていただいて構いません。


補助金を受け取った後の税務:ここを外すと手取りが変わる

補助金は「もらって終わり」ではありません。オーナーの手取りは税務処理で大きく変わります。

補助金は原則として雑収入

国や自治体から受け取った補助金は、原則として受給時に雑収入として計上され、課税対象になります。100万円の補助金を受けても、税率次第で手元に残るのは数十万円ということです。設備の取得に充てた補助金については圧縮記帳という選択肢もありますが、適用要件があります。金額が大きい案件では、必ず顧問税理士にご相談ください。私は税理士ではありませんので、ここは断定を避けます。

修繕費か資本的支出か

もう一つの分岐が、工事費の税務上の取り扱いです。

区分 考え方の目安 税務上の扱い
修繕費 原状回復・維持管理が目的 その年の損金(必要経費)に一括算入
資本的支出 価値の増加・使用可能期間の延長 資産計上して減価償却

外壁塗装や防水の打ち替えのように「劣化した部分を元に戻す」工事は修繕費として処理できる可能性が高い一方、断熱性能を大きく引き上げる改修や、間取り変更を伴う工事は資本的支出と判断されやすくなります。同じ1,000万円の工事でも、一括損金か17年償却かでキャッシュフローの形はまったく別物になります。

私はいつもオーナーさまに、「工事の見積書は税理士に見せる前提で、工事内容を項目ごとに分けて出してもらってください」とお伝えしています。一式見積では、税務判断の材料になりません。


NOI・入居率・出口価格でみた「修繕投資の採算」

入居率1%の改善が生む差

仮に20戸・平均賃料7万円の賃貸マンションを想定します。満室想定年間賃料は7万円×20戸×12か月=1,680万円。入居率が1ポイント改善すれば、年間で約16.8万円の収入増です。5ポイント改善なら約84万円。

外壁の汚れ、シーリングの劣化、共用廊下の錆——こうした「見た目の築年数」は、内見時の意思決定に静かに効いてきます。築年数なりの劣化は、賃料の下落圧力として確実に効いてきます。

収益還元価格への効き方

出口を見据えるなら、効くのは賃料そのものよりNOI(実質賃料収入)です。収益還元法では、物件価格はおおむね「NOI ÷ 還元利回り」で評価されます。仮に還元利回りを5%とすると、NOIが年間50万円改善すれば、理論上の物件価値は1,000万円上振れる計算になります。

補助金で工事費の一部が賄えて、その工事がNOIを押し上げるなら、投資対効果の計算式は大きく変わります。修繕を「出ていくお金」ではなく「利回り改善の原資」として見る発想です。

省エネ性能表示が募集広告に載る時代

見落とされがちですが、建築物省エネ法に基づき、建築物の販売・賃貸時に省エネ性能を表示する制度が始まっています。東京都の賃貸住宅断熱事業でも、省エネ診断後に「省エネ性能ラベル」を提出することが要件になっています。

つまり、断熱改修は「入居希望者が募集図面上で比較できる差別化要素」に変わりつつあるということです。同じ築年数・同じ間取りで並んだとき、ラベルの等級が高いほうが選ばれる。この流れは今後強まると私は見ています。


青梅市の物件で工事費を抑える現実解:足場・ロープアクセス・ハイブリッド

補助金の話をしたうえで、最後に工事費そのものの話をさせてください。補助金で100万円取るのと、工事費を100万円下げるのは、オーナーの手元では同じ意味を持ちます。

足場費は総額の無視できない割合を占める

大規模修繕工事の見積書を開くと、必ず最初のほうに仮設足場の項目があります。青梅市のように敷地に余裕のあるエリアなら足場は架けやすいのですが、隣地との離隔が取れない物件、道路使用許可が必要な立地、擁壁の上に建つ物件では、足場の架設・解体だけで想定外の費用が乗ります。

さらに足場は、工期中ずっと入居者のベランダ前に組まれ続けるという副作用を持ちます。防犯上の不安、洗濯物が干せない、日照が落ちる——結果として、工事期間中の退去や賃料交渉につながることがあります。オーナーにとって、これは見積書に載らないコストです。

ロープアクセス工法という選択肢

ロープアクセス工法(無足場工法)とは、産業用ロープで作業員が建物外壁を上下しながら施工する工法です。足場を架けないため、仮設費が大幅に圧縮でき、工期も短くなります。何より、居住者のベランダが足場に覆われる期間が最小化されます。

ロープアクセスの技術情報・安全基準・施工事例は、姉妹サイト ロープアクセスドットコムに詳しくまとめていますので、工法そのものを知りたい方はそちらもご覧ください。明誠のサービス概要はロープアクセス工法のご紹介にまとめています。

ハイブリッド工法で総額を最適化する

ただし、正直に申し上げるとロープアクセスがすべての物件・すべての部位に最適というわけではありません。バルコニー内部の床防水、大量のタイル張替え、外構に近い低層部などは、足場を架けたほうが早く安く仕上がるケースがあります。

そこで私が提案しているのが、部位ごとに足場とロープアクセスを使い分けるハイブリッド工法です。低層部と改修量の多い面は足場、高層部や妻側の塗装・シーリングはロープアクセス、という組み合わせで総額を最適化します。株式会社明誠は、通常足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3つから、建物ごとに最適な工法をご提案できる数少ない会社です。

大規模修繕の全体像は大規模修繕工事のご紹介、ビル・オフィスをお持ちの方はビルオーナーさま向けサービスもあわせてご覧ください。


2026年度中に動くための逆算スケジュール

制度は予算枠に達した時点で受付を終了するものが多く、年度末まで待ってくれません。青梅市の賃貸オーナーが2026年度(令和8年度)に間に合わせるなら、逆算はこうなります。

時期の目安 やること
着工の4〜6か月前 建物の現況調査、劣化診断、工事範囲の粗い切り分け
着工の3〜4か月前 東京都の制度へ事前申込(1棟につき1回・契約前に必須)
事前申込の受付確認後 登録事業者と契約締結、省エネ診断の実施、省エネ性能ラベル作成
着工〜完工 断熱改修・外壁・防水などの工事、施工前後の写真記録
完工後 改修後の省エネ性能表示、交付申請兼実績報告の提出
翌年度 長寿命化促進税制の適用可否確認(区分所有の場合)

事前申込後は1年以内に交付申請を行う必要があり、これを過ぎると事前申込が自動的に無効になります。逆に言えば、事前申込さえ早めに入れておけば、工事時期にはある程度の幅を持たせられるということです。


よくある質問(FAQ)

Q1. 青梅市に住んでいませんが、市内に賃貸アパートを持っています。市の耐震改修補助は使えますか。
A. 使えません。青梅市木造住宅耐震改修補助の対象者は「市内に住所を有し、補助対象住宅を所有し自ら居住する個人」とされています(出典:青梅市)。賃貸物件については東京都の制度を検討してください。

Q2. 東京都の賃貸住宅断熱事業は、工事が終わってからでも申請できますか。
A. できません。事前申込受付前に契約または着工したものは助成金の対象外です。必ず事前申込の受付確認メールを受け取ってから契約してください(出典:クール・ネット東京)。

Q3. 省エネ診断はいくらかかりますか。
A. 令和8年度の賃貸住宅断熱事業では、省エネ診断等の補助率は対象経費の10/10、上限120万円/棟です。診断用の現況図面作成も10/10・上限10万円/戸。上限内であれば実質的な自己負担はありません。ただし公社の登録事業者が実施することが条件です。

Q4. 受け取った補助金に税金はかかりますか。
A. 原則として受給時に雑収入として計上され、課税対象になります。圧縮記帳などの選択肢がある場合もありますので、金額が大きい案件は必ず顧問税理士にご確認ください。

Q5. 区分所有のワンルームを数戸持っています。長寿命化促進税制は自分だけで申請できますか。
A. できません。マンション管理計画認定の申請者は管理組合の管理者等です。まず管理組合に認定取得の検討を働きかけることが第一歩になります。青梅市への認定申請手数料は無料ですが、事前確認に利用料10,000円がかかります(出典:青梅市)。

Q6. ブロック塀の撤去は、建て替え前に行っても補助対象ですか。
A. 対象外になる可能性が高いです。青梅市の要綱では「敷地や敷地内の建物等の売却等または建物等の新築、改築等を目的としたブロック塀等の撤去工事ではないこと」が要件とされています(出典:青梅市)。


この記事のポイントまとめ

  • 青梅市の市独自制度は「自ら居住」要件が多く、賃貸オーナーは対象外になりやすい
  • 本命は東京都「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」。省エネ診断等は10/10・120万円/棟
  • 高断熱窓は2/3・30万円/戸、断熱材は2/3・60万円/戸。事前申込は契約前に1棟1回
  • 青梅市ブロック塀等撤去費補助(上限18万円)は居住要件がなく賃貸物件でも使える
  • 区分所有オーナーは管理計画認定→長寿命化促進税制で固定資産税1/6〜1/2減額を狙える
  • 補助金は雑収入計上が原則。修繕費か資本的支出かでキャッシュフローが大きく変わる
  • 足場・ロープアクセス・ハイブリッドの使い分けで、補助金と同等以上のコスト差が出る

最後に

補助金の制度は、毎年のように名称も金額も要件も変わります。今日ご紹介した数字も、来年の同じ時期には別のものになっているかもしれません。それでも変わらないのは、「先に順番を確認してから動いたオーナーだけが取れる」という一点です。

お持ちの青梅市の物件で、まだ2026年度の補助金検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度お問合せください。1棟の現地調査と、工法別のコスト比較・利回り改善シミュレーションだけでも承ります。制度の適用可否の整理からご一緒します。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。お問合せフォームからどうぞ。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション・ビル・ホテルの大規模修繕/ロープアクセス工法(無足場工法)/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方、さらに両者を組み合わせたハイブリッド工法を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。

最終更新:2026年8月18日

※本記事は2026年8月18日時点の公開情報に基づいています。補助金・税制は年度途中でも変更され、予算枠に達した時点で受付が終了する場合があります。申請の際は必ず各実施機関の最新の公式情報をご確認ください。また、税務上の取り扱いについては税理士等の専門家にご相談ください。


出典・参考資料

福生市の賃貸オーナー向け補助金2026|市の耐震助成は「賃貸住宅は対象外」、では何を使うのか

この記事で答える質問:福生市に賃貸物件を持つオーナーは、2026年度にどの補助金を、いくらまで使えるのか?

先に結論だけ申し上げます。福生市が実施している木造住宅の耐震診断・耐震改修助成は、要綱に「賃貸住宅は対象となりません」と明記されています。つまり、あなたが賃貸経営をしている限り、市の看板制度からは1円も出ません。にもかかわらず、福生市の賃貸オーナーが2026年度に使える補助金の総額は、条件が揃えば1住戸あたり200万円超に達します。出し手が「市」ではなく「東京都」と「国」だからです。

大規模修繕の現場を20年以上見てきた私(本間)が、福生市に賃貸マンション・アパート、戸建賃貸、あるいは自社ビルや医療・介護施設をお持ちのオーナーさま向けに、2026年度(令和8年度)の制度を投資判断の目線だけで整理します。管理組合向けの記事にありがちな「住民の安心のため」という話はしません。入居率・NOI(実質賃料収入。家賃収入から運営経費を引いた手残り)・固定資産税・出口価格という、オーナーの財布に直結する話に絞ります。


結論:福生市の賃貸・ビルオーナーが狙う「三層マップ」

補助金は「国・東京都・福生市」の三層で重なっています。まず全体像を、賃貸オーナーにとっての実用度で並べます。ここだけ読んでも今日の判断はできます。

層 制度名 賃貸オーナーの実用度 何に効くか
東京都 既存住宅における省エネ改修促進事業(クール・ネット東京) ★★★★★ 個人・法人・管理組合が対象。高断熱窓/ドアは1住戸上限200万円、防犯仕様なら300万円
国 賃貸集合給湯省エネ2026事業(既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業) ★★★★★ 賃貸オーナー専用枠。エコジョーズ等への取替で5〜10万円/台
国 先進的窓リノベ2026事業 ★★★★★ 窓の断熱改修。住宅1戸最大100万円、非住宅は1棟最大1,000万円
東京都 既存住宅の省エネ診断・省エネ設計への補助 ★★★★ 診断・設計費が対象経費の10/10、上限120万円/棟
国 みらいエコ住宅2026事業/給湯省エネ2026事業 ★★★★ 断熱・給湯の全国共通枠。住宅省エネ2026キャンペーンの一部
福生市 特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化助成 ★★★ 市の制度で唯一、賃貸ビル・マンションが正面から入れる枠
福生市(商工会) 住まいの省エネ・バリアフリー住宅改修等工事費助成 ★★ オーナー本人は不可。ただし入居者に使わせる方法がある(後述)
福生市 木造住宅の耐震診断(2/3・上限10万円)/耐震改修(1棟50万円) ✕ 要綱に「賃貸住宅は対象となりません」と明記
税制 省エネ改修に係る固定資産税の減額 ✕ 賃貸部分は減額されない。期待してはいけない

この表の下から2行目、「木造住宅の耐震助成は賃貸住宅対象外」という一行を、福生市の補助金まとめ記事で正面から書いているものを私はほとんど見たことがありません。工事会社のサイトを見て「福生市にも耐震補助があるらしい」と期待し、申請段階で門前払いされたオーナーさまを、私は実際に知っています。まずここを潰してから、使える制度に進みます。


福生市という賃貸市場の読み方――「基地の街」の需要は誰が支えているか

制度の前に、福生市という賃貸市場の性格を押さえます。補助金は「入れられるか」ではなく「入れて回収できるか」で判断すべきで、その分母になるのが地域の家賃と入居者層だからです。

福生市は東京都多摩地域の西部、多摩川左岸に位置します。人口は56,945人(男28,735人・女28,210人)。うち外国人住民が5,216人で、令和8年4月1日現在の数字です(出典:福生市「令和8年の人口」)。

この外国人比率およそ9.2%という数字が、福生市の賃貸経営を考えるうえでの出発点です。多摩地域の市のなかでも突出して高い水準で、理由は言うまでもなく横田基地(在日米軍横田飛行場)の存在にあります。市域の相当部分を基地が占め、基地正門から続く国道16号沿いには、いわゆる「福生ハウス」「米軍ハウス」と呼ばれる木造平屋の賃貸ストックと、それを目当てにした店舗群が並びます。

賃貸市場としての特徴を、オーナー目線で3つに整理します。

第一に、入居者層が二層構造であること。 一方に基地関係者(軍人・軍属・請負業者とその家族)、もう一方に日本人の単身・ファミリー層がいます。前者はいわゆるベース契約で、地域相場より高い賃料が成立しうる一方、任期に連動して転居するため回転が速い。後者は青梅線・八高線・西武拝島線で立川・八王子・所沢方面へ通勤する層で、相場は抑えめだが滞在が長い。この二層のどちらを取りにいくかで、投資すべき箇所が変わります。

第二に、家賃の絶対水準が低いこと。 賃貸ポータルの公開値を見る限り、ワンルームで概ね4万円台前後、2LDKで7〜8万円台、3LDKで8〜9万円台が目安として示されています(各賃貸情報サイトの公開相場より。時期・条件で大きく変動するため、投資判断にあたっては必ず最新の募集事例でご確認ください)。都心と比べれば低い。これは裏を返せば、賃料の値上げで投資を回収する戦略が効きにくい市場だということです。

第三に、築古ストックが厚いこと。 昭和40〜50年代に建った木造アパート、そして前述の米軍ハウス系ストックが今も現役で稼働しています。断熱性能という点では、当時の水準はほぼ「なし」に等しい。

この3つを重ねると、福生市のオーナーが取るべき戦略は一つに絞られます。賃料を上げるのではなく、退去を減らし、運営経費を削る。 そのほうが確実にNOIに効きます。

数字で確認しましょう。家賃6万円・10戸のアパートで、空室期間が平均1か月縮まったとします。年間で6万円、10年で60万円のキャッシュフロー改善です。加えて、退去のたびに発生する原状回復費と広告料(AD)を仮に1件15万円とすれば、年間の退去が3件から2件に減るだけで15万円が浮く。窓を断熱化して「冬に窓際が寒くない部屋」に変える工事は、まさにこの「退去を減らす」施策の中核であり、しかも次章以降で見るとおり、その費用の大半に公的資金が入ります。

外国人入居者が多い市場では、この効果はさらに効きます。日本の木造賃貸住宅の断熱性能に対する不満は、欧米圏から来た入居者ほど率直に口にします。「窓が冷たい」「結露がひどい」は、彼らにとって我慢する理由のない欠陥です。断熱改修は、福生市においては単なる省エネ工事ではなく、二層構造の需要の両方に効く数少ない共通施策だと私は考えています。


【まず確認】福生市の耐震助成は、賃貸住宅では使えない

順序として、いちばん誤解の多い制度から潰します。

福生市は「建築物の耐震診断及び耐震改修費用の一部を助成します」という制度を設けています。内容は次のとおりです(出典:福生市「建築物の耐震診断及び耐震改修費用の一部を助成します」)。

区分 助成の対象となる住宅 補助対象者 助成額
木造住宅の耐震診断 昭和56年以前に建築された木造2階建て以下の戸建て住宅で、延べ床面積の2分の1以上を所有者自らの住居としているもの(賃貸住宅は対象となりません) 住宅を所有している個人 費用の3分の2以内(限度額10万円)
木造住宅の耐震改修 上記に加え、耐震診断で倒壊の可能性があると診断されたもの 住宅を所有している個人 1棟当たり50万円(費用が50万円未満なら実費)

要綱の文言は明快です。「延べ床面積の2分の1以上を所有者自らの住居としているもの(賃貸住宅は対象となりません。)」。

つまり、

  • 純粋な投資用のアパート・戸建賃貸 → 対象外
  • オーナーが所有する法人名義の物件 → 補助対象者が「個人」なので対象外
  • 1階が自宅、2階が賃貸の併用住宅で、自宅部分が延べ床の2分の1以上 → 対象になりうる

最後のケースだけが例外です。福生市には自宅併用のアパートが一定数ありますので、該当する方はまちづくり計画課計画係(042-551-1952)にご確認ください。ただし、耐震改修助成には「事前申請」が必須で、申請前に着手した工事は助成できませんとも明記されています。この「先に契約すると取れない」構造は、後述する東京都の制度とまったく同じです。順番を間違えないでください。

市の制度で唯一、賃貸ビルが正面から入れる枠

一方、同じページの3番目に、オーナーにとって見逃せない制度が載っています。特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化助成です。

緊急輸送道路は、震災時の救急救命・消火活動・物資輸送・復旧復興の大動脈となる幹線道路を指します。東京都は平成23年4月から「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」を施行し、特に耐震化を図る必要のある路線を「特定緊急輸送道路」に指定。沿道建築物には耐震診断の義務付けと耐震改修の努力義務が課され、あわせて助成制度が拡充されています。福生市も助成要綱を定めています。

対象となる建築物の要件は4つです。

  1. 市内に存する沿道建築物であること
  2. 建築物の敷地が特定緊急輸送道路に接するものであること
  3. 道路の中心から45°の角度の範囲を超える高さを有する建築物であること
  4. 耐震診断の結果、耐震性がないとされた建築物であること(昭和56年5月以前に新築された建築物)

この制度には「自ら居住していること」という要件がありません。賃貸マンションでも、テナントビルでも、要件を満たせば対象です。福生市内では国道16号などが特定緊急輸送道路に指定されており、16号沿いに旧耐震のビルやマンションをお持ちのオーナーさまは、市の窓口に直行する価値があります。

なお、助成率の具体的な数値は市のページには掲載されていません。特定緊急輸送道路沿道建築物の助成は都と区市町村の協調補助で構成され、年度ごとに単価や条件が改定されるのが通例です(実際、令和8年4月1日から算定単価を変更した自治体もあります)。金額については必ずまちづくり計画課計画係に直接ご確認ください。ここは私も「ネットの情報を鵜呑みにしないでください」と申し上げる箇所です。


【市・間接】商工会のリフォーム助成は「入居者に使わせる」

福生市には、市が直接ではなく福生市商工会が実施する住宅改修助成があります。市の環境政策課のページから商工会へ案内される形になっており、平成26年度に市の制度から移行したものです(出典:福生市「住まいの省エネ・バリアフリー住宅改修等工事費助成事業のご案内」)。

制度の中身はこうです(出典:福生市商工会「住宅リフォーム工事費助成制度」)。

項目 内容
省エネルギー工事・バリアフリー工事 工事費の20%(上限20万円)
住宅リフォーム工事 工事費の10%(上限10万円)
対象工事の例 太陽光発電システム、潜熱回収型ガス給湯器(エコジョーズ)、高断熱浴槽の改修等
施工業者の条件 福生市商工会会員の、福生市内の登録施工業者に依頼すること
対象者 福生市内の自ら居住している住宅に工事を行った福生市民
令和8年度の募集 一次:4月1日〜5月29日(終了)/二次:7月1日〜8月31日(終了)/三次:令和8年10月1日〜令和9年2月1日
注意 予算額に達した時点で受付終了。交付決定後3か月以内に着工できない場合は決定取消の可能性あり

「自ら居住している住宅」「福生市民」という要件がある以上、市外に住む投資家オーナーが自分の賃貸物件に使うことはできません。ここまでは、他のまとめ記事にも書いてあります。

ただし、申請書一覧をよく見ると、こういう様式があります。

③ 住宅改修承諾書(様式第8号)※賃貸住宅の場合

つまりこの制度は、「福生市に住んでいる賃貸入居者が、オーナーの承諾を得て自室に工事を入れる」というルートを正式に用意しているわけです。ここに、オーナー側の実務的な使い道があります。

私が提案しているのは、次のような組み立てです。長期入居している入居者から「エアコンの効きが悪い」「浴室が寒い」といった相談が来たとき、オーナー負担で全額を抱えるのではなく、入居者主導で商工会助成を申請してもらい、オーナーは承諾書と費用の一部を出す。入居者にとっては自己負担が2割減り、オーナーにとっては設備更新の実質負担が下がったうえに、工事後の設備は建物に残る(=資産価値として残る)。しかも「要望に応えてくれる大家」という評価が、退去抑制に効きます。

対象が「福生市内の登録施工業者」に限定されている点も、実は悪い話ではありません。地元業者との関係を作っておくことは、災害時の初動対応や、深夜の設備トラブル対応で必ず効いてきます。遠方の投資家オーナーほど、この一点を軽く見がちです。

三次募集は令和8年10月1日からです。今から入居者に案内すれば、十分に間に合います。詳細は福生市商工会(042-551-2927/平日9時〜17時、12時〜13時を除く)へ。


【都・本命】クール・ネット東京の省エネ改修助成――法人オーナーも対象、1住戸上限200万円

さて、ここからが本題です。福生市の賃貸オーナーが最初に押さえるべきは、市の制度ではなく東京都の「令和8年度 既存住宅における省エネ改修促進事業(高断熱窓・ドア・断熱材・浴槽)」です。理由は、助成対象者の一行にあります。

助成対象者:都内に住宅を所有する個人・法人及び管理組合

(出典:クール・ネット東京「令和8年度 既存住宅における省エネ改修促進事業」)

多くの自治体制度が「所有者が現に居住している住宅」に限定されるなか――まさに福生市の耐震助成がそうであるように――この制度は法人所有の賃貸物件を正面から対象にしています。しかも、助成申請者の生活の本拠は都外でも構いません。神奈川や埼玉に住みながら福生に物件を持つオーナーさまにとって、これは決定的な違いです。

助成額の水準

区分 助成額
高断熱窓・高断熱ドア 対象経費(材料費・工事費)の1/2、製品性能・大きさごとの助成単価の合計。上限:1住戸あたり200万円
同(断熱+防犯窓として登録された製品の場合) 上限:1住戸あたり300万円
断熱材 対象経費の1/3、1住戸あたり上限100万円(国補助を受ける場合は国の交付額が上限)
高断熱浴槽 1住戸あたり95,000円
リフォーム瑕疵保険 1契約あたり7,000円

令和8年度の主な改定点は2つです。窓・ドアの断熱改修の補助率が対象経費の1/2に拡充されたこと、そして窓のサイズ区分に「特大」が追加されたこと。加えて、防犯仕様と組み合わせた場合の単価が上乗せされる設計になっています。

10戸のアパートで考えれば、理屈のうえでは上限が2,000万円分積み上がる計算です。もちろん実際の助成額は製品単価と工事規模で決まりますが、「1棟いくら」ではなく「1住戸いくら」で上限が設定されている点が、集合住宅オーナーにとって圧倒的に有利だということは押さえてください。

ここが落とし穴:契約・施工は「事前申込受付後」

この制度には、オーナーが最も踏みやすい地雷があります。

設備設置の契約・施工は「事前申込受付後」が条件となります。

つまり、先に工事契約を結んでしまうと、その工事はもう対象外です。私が現場で何度も見てきた失敗は、「見積が出た、いい業者だ、じゃあ契約しよう」と判子を押してから補助金を調べ始めるパターンです。順番が逆です。制度を先に決め、事前申込を通し、それから契約する。この順番だけは、絶対に崩さないでください。

また、事前申込後1年以内に交付申請をしないと、事前申込は自動的に無効になります。工期が読めない工事ほど、着工時期を業者と詰めてから申し込むべきです。受付期間・予算残・申請様式は年度途中でも改定されることがあります。着手前に必ずクール・ネット東京の公式ページで最新情報をご確認ください。

診断・設計費も別枠で取れる

もう一つ、意外に知られていない枠があります。東京都住宅政策本部の「既存住宅の省エネ診断・省エネ設計への補助」です。省エネ診断等は対象経費の10/10(全額)、上限120万円/棟、現況図面の作成は10万円/住戸という水準が示されています(出典:東京都住宅政策本部「既存住宅の省エネ診断・省エネ設計への補助」)。

「うちの物件、どこから断熱すれば費用対効果が高いのか分からない」というオーナーさまは、まず診断を全額補助で入れて、投資判断の材料そのものを補助金で作るという順序が取れます。築古ストックが厚い福生市では、この診断が「あと何年もたせるか、いつ出口を取るか」の判断材料そのものになります。私は必ずワンセットで提案しています。


【国・賃貸専用】賃貸集合給湯省エネ2026事業――オーナーのためだけにある制度

国の制度のなかに、賃貸オーナーだけを対象にした珍しい枠があります。資源エネルギー庁の「既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業(賃貸集合給湯省エネ2026事業)」です(出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業【公式】、資源エネルギー庁)。

制度の趣旨は明快で、設置スペースの都合からヒートポンプ給湯機(エコキュート)の導入が難しい既存の賃貸集合住宅向けに、小型の潜熱回収型給湯器(エコジョーズ/エコフィール)への取替を後押しするというものです。

項目 内容
補助額(追い焚き機能なし) 5万円/台(一定のドレン排水工事を伴う場合は最大8万円/台)
補助額(追い焚き機能あり) 7万円/台(同じく最大10万円/台)
対象 既存賃貸集合住宅の給湯器交換工事の発注者=賃貸オーナー等
対象着工時期 2025年11月28日以降の着工分
申請 オーナー本人ではなく、登録事業者が代理申請

福生市の築古アパートは、給湯器が従来型のまま更新期を迎えている物件が少なくありません。20戸のアパートで追い焚きなしの給湯器を一斉更新すれば、5万円×20台=100万円。ドレン排水工事の条件を満たせば160万円まで伸びます。給湯器はいずれ寿命で交換するものですから、「どうせ替えるものを、補助が出る年度に前倒しで替える」というだけで、確実に取れる補助です。

ここで重要なのは、申請ができるのは制度に登録した事業者だけという点です。付き合いのある設備業者が未登録なら、その工事では補助が取れません。見積もりを取る段階で「賃貸集合給湯省エネ2026の登録事業者ですか」と一言確認してください。この一言だけで100万円が動きます。


【国】先進的窓リノベ2026事業――非住宅は1棟最大1,000万円

窓の断熱改修については、国の先進的窓リノベ2026事業も併走しています(出典:先進的窓リノベ2026事業【公式】)。

項目 内容
補助上限 住宅1戸につき最大100万円
非住宅建築物 2026年から対象化。1棟あたり上限最大1,000万円
対象者 賃貸住宅所有者も対象
下限 補助総額が5万円以上となる工事であること
申請 登録事業者が代理申請し、補助金は施主に全額還元

注目すべきは非住宅建築物が対象に加わった点です。テナントビル、事務所、店舗併用ビルをお持ちのオーナーさまは、これまで住宅系の補助から外れてきましたが、2026年度は1棟あたり最大1,000万円という枠に入れる可能性があります。福生市の国道16号沿いや駅前に旧耐震〜築30年級の小規模ビルをお持ちなら、耐震・断熱・外壁改修を一つの工事として設計し直す価値があります。

なお、東京都のクール・ネット東京の助成と国の窓リノベは、製品登録が連動する設計になっており、併用の可否・上限の考え方は年度ごとに整理されています。「都と国、どちらが有利か」ではなく「どう組むか」が実務の勝負どころです。ここは登録事業者と一緒に設計してください。


忘れてはいけない:固定資産税の減額は「賃貸部分には効かない」

補助金の話をすると、必ず「固定資産税も安くなるんですよね?」と聞かれます。ここは正直にお伝えします。

省エネ改修や耐震改修に伴う固定資産税の減額措置は、原則として「居住部分」を対象とした制度設計になっており、賃貸に供している部分は減額の対象になりません。自宅併用物件の自宅部分は対象になりうるものの、投資用の賃貸住宅について「補助金を取ったうえに固定資産税も下がる」という絵は描けないと考えてください。

なぜこれをわざわざ書くかというと、この一点を織り込まずに投資回収シミュレーションを作ると、回収年数が実態より2〜3年短く出るからです。営業資料で「固定資産税も減額されます」と書いてある提案書を見たら、それが賃貸部分に適用されるのか、必ず確認してください。適用関係は物件の構成や年度の税制改正で変わりますので、最終的には税理士または市の資産税担当への確認が必須です。


補助金だけでは足りない――福生の築古アパートで「足場代」をどう削るか

ここまで制度の話をしてきましたが、私は工事会社の人間ですので、もう一段実務的な話をします。

補助金で拾えるのは、多くの場合「窓」「断熱材」「給湯器」といった部位・設備です。ところが実際の大規模修繕で費用を押し上げるのは、外壁塗装でも防水でもなく、仮設足場です。工事費の20〜30%を足場が占めることは珍しくありません。ここは補助金の対象になりにくい。

福生市の物件でこれが効いてくる場面が2つあります。

ひとつは、敷地に余裕のない小規模アパート。 隣地との離隔が数十センチしかない、道路後退がとれない、駐車場を潰さないと足場が組めない――こうした現場では、足場を組むこと自体に無理が生じます。駐車場を1か月潰せば、その分の駐車場収入も失われます。

もうひとつは、部分補修で足りる物件。 「シーリングだけ打ち替えたい」「バルコニーの手すりだけ塗りたい」「屋上の一部だけ防水を直したい」というケースで、全面足場を組んでいたら費用対効果が成立しません。

こうした場面で、私たちが提案しているのがロープアクセス工法(無足場工法)です。産業用ロープで職人が壁面を降下しながら施工する方法で、足場を組まない分、仮設費が大きく下がり、工期も短縮できます。居住者にとっては足場と養生シートに囲まれる期間がない、つまり日照も通風も洗濯物も奪われないという実利があります。防犯面の不安(足場を伝った侵入)もありません。入居中の物件で工事をするオーナーにとって、この「入居者の生活を止めない」という一点は、退去リスクの管理そのものです。

工法 向いている場面 オーナーにとっての利点 留意点
通常足場工法 外壁全面の大規模改修、タイル全面打診・張替、中低層で敷地に余裕がある物件 全面同時施工で工期を圧縮しやすい。作業効率が高い 仮設費が高い。駐車場・通路を占有。工事中の生活影響が大きい
ロープアクセス工法(無足場) 部分補修、シーリング打替、高所の限定的な補修、敷地に余裕のない物件 仮設費を圧縮できる。生活影響と防犯リスクが小さい。着工が早い 一度に施工できる面積に制約。全面改修には不向きな場合がある
ハイブリッド工法 部位ごとに条件が異なる中〜大規模物件 足場が必要な面だけ組み、残りをロープで処理して総額を最適化 施工計画の設計力が問われる。両方を自社で持つ会社でないと組めない

工法の選択は、建物の形状・階数・劣化状況・敷地条件・入居状況で決まります。「うちはロープアクセスが専門だから全部ロープで」という会社の提案は、私は疑ったほうがいいと思っています。足場が正解の物件は確実に存在するからです。ロープアクセス工法の適用条件や施工事例については、ロープアクセス工法の専門サイトに技術的な解説をまとめていますので、判断材料としてご覧ください。

補助金で設備の費用を圧縮し、工法の選択で仮設費を圧縮する。この2つを掛け算して初めて、築古物件の大規模修繕は「回る投資」になります。片方だけでは足りません。


福生市オーナーの申請カレンダー(2026年度)

時系列で整理します。動く順番を間違えると、取れるはずの補助が消えます。

時期 やること
いま(8月) ①物件の劣化状況を把握する(東京都の省エネ診断補助を使えば診断費は実質無料の枠がある)②給湯器の更新時期を洗い出す③特定緊急輸送道路に接しているか市に確認
9月まで クール・ネット東京の事前申込を通す。この段階で工事契約を結ばない
令和8年10月1日〜 福生市商工会の三次募集開始。入居者が使えるケースを案内する
事前申込受付後 ここで初めて工事契約 → 着工
工事中〜完了後 賃貸集合給湯省エネ2026・先進的窓リノベ2026は登録事業者が代理申請。オーナーは書類を揃えて渡す
令和9年2月1日 商工会三次募集の締切
随時 予算枠は先着順。「締切まで時間がある」は理由になりません

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 福生市に住んでいない投資家ですが、市の補助金は使えますか?
A. 福生市商工会の住宅リフォーム助成は「福生市民」「自ら居住している住宅」が要件のため、市外在住の投資家オーナーは使えません。一方、東京都のクール・ネット東京の助成は、申請者の生活の本拠が都外でも対象です。市外・都外にお住まいのオーナーさまは、都と国の制度に絞ってください。

Q2. 法人名義で物件を持っています。対象になりますか?
A. 福生市の木造住宅耐震助成は補助対象者が「個人」なので対象外です。クール・ネット東京の省エネ改修助成は「個人・法人及び管理組合」が対象と明記されており、法人所有の賃貸物件でも申請できます。資産管理法人で保有されている方は、こちらが本命です。

Q3. もう工事の見積もりを取って、契約直前です。今からでも間に合いますか?
A. 契約を結ぶ前なら間に合います。結んだ後だと手遅れです。クール・ネット東京の助成は「設備設置の契約・施工は事前申込受付後」が条件です。福生市の耐震改修助成も「申請前に着手されたものについては助成できません」と明記されています。判子を押す前に、この記事をもう一度読んでください。

Q4. 米軍関係者向けに貸している物件(いわゆる米軍ハウス)でも補助は使えますか?
A. 補助制度は入居者の国籍や勤務先で対象を分けていません。判断されるのは建物が要件を満たすか、所有者が対象者に該当するかです。ただし築年が古い木造平屋は、断熱改修の設計難易度が高い場合があります。まず診断を入れて、投資に見合うかを数字で判断されることをおすすめします。

Q5. 補助金の申請は自分でやるのですか?
A. 制度によって異なります。賃貸集合給湯省エネ2026事業と先進的窓リノベ2026事業は、登録事業者が代理申請する仕組みです。オーナーは書類の準備と押印が中心になります。一方、クール・ネット東京の助成や市の制度は、原則としてオーナー側で手続きを進めます。実務上は、慣れた施工会社が書類作成を伴走するのが一般的です。

Q6. 満室のアパートですが、工事で退去が出ませんか?
A. これが最大の実務課題です。全面足場を組むと、日照・通風・防犯・洗濯物のすべてに影響が出て、繁忙期を挟むと退去が出ます。部分補修で足りる範囲であれば、ロープアクセス工法(無足場工法)で足場を組まずに施工するという選択肢があります。工事の内容と建物条件次第ですので、まず現地を見せていただくのが確実です。

Q7. 固定資産税は下がりますか?
A. 賃貸に供している部分は、省エネ改修等に伴う固定資産税の減額の対象になりません。投資回収の計算に織り込まないでください。自宅併用物件の自宅部分については適用の余地がありますが、税制改正で変わりますので、税理士または市の資産税担当にご確認ください。

Q8. 予算はいつ頃なくなりますか?
A. 制度により異なりますが、先着順の枠は「工事の繁忙期の前」に動くのが鉄則です。福生市商工会の助成は一次・二次募集がすでに終了し、残るのは令和8年10月1日からの三次募集のみ。国・都の枠も、年度後半になるほど残額が読めなくなります。「締切まで日がある」は、先着順制度では安心材料になりません。


まとめ:福生市のオーナーが今日やるべき3つのこと

長くなりましたので、要点だけ残します。

1. 福生市の耐震助成には期待しない。 要綱に「賃貸住宅は対象となりません」と明記されています。例外は、自宅部分が延べ床の2分の1以上ある併用住宅と、特定緊急輸送道路に接する建築物の耐震化助成だけです。国道16号沿いに旧耐震のビルをお持ちなら、まちづくり計画課計画係(042-551-1952)に今日電話してください。

2. 本命は都と国。しかも「契約前」に動く。 クール・ネット東京は法人オーナーも対象で1住戸上限200万円(防犯窓なら300万円)、令和8年度は補助率が1/2に拡充されました。ただし事前申込前に契約すると全部が無効になります。給湯器なら賃貸集合給湯省エネ2026事業でオーナー専用枠が5〜10万円/台、窓なら先進的窓リノベ2026事業で住宅1戸最大100万円・非住宅1棟最大1,000万円。まず制度、次に契約。この順番を守るだけで、取れる金額が変わります。

3. 補助金で設備を、工法で仮設費を削る。 福生市の賃貸市場は家賃の絶対水準が低く、値上げでの回収が効きにくい市場です。だからこそ、退去を減らし、経費を削る方向にしか勝ち筋がありません。断熱改修は退去抑制に直結し、その費用の大半に公的資金が入る。そして足場が組みにくい小規模物件・部分補修の物件では、ロープアクセス工法で仮設費そのものを圧縮できます。

補助金の情報は年度途中でも改定されます。この記事の数字は執筆時点で公開されている情報に基づいていますが、申請にあたっては必ず各制度の公式ページと市の担当窓口で最新の要件をご確認ください。

福生市で賃貸物件・自社ビルの修繕をご検討中で、「この工事に補助が使えるのか」「足場を組まずにできる範囲はどこまでか」を数字で知りたいというオーナーさまは、お気軽にご相談ください。現地を拝見したうえで、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法から、その建物にとって総額が最も小さくなる組み立てをご提案します。


会社概要

株式会社明誠
東京都知事認可(般-29)第148121号
代表取締役 本間 幸紘
〒207-0004 東京都東大和市清水5-1003-57
TEL:042-508-3567/FAX:042-508-3568
MAIL:info@meiseitosou.com
HP:https://meiseitosou.com/

マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事/通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3工法対応/日本初のロープアクセス工事フランチャイズ展開。足場仮設による工事と無足場工法であるロープアクセスの両方からご提案できる、東京でも数少ない会社です。建物のことでしたら何でもご相談ください。


出典一覧

昭島市の賃貸オーナー向け補助金2026|市の耐震助成「1/3・上限60万円」と都の“1住戸200万円”をどう組むか

この記事で答える質問:昭島市に賃貸物件を持つオーナーは、2026年度にどの補助金を、いくらまで使えるのか?

大規模修繕の現場を20年以上見てきた私(本間)が、昭島市に賃貸マンション・アパート、戸建賃貸、あるいは自社ビルや医療・介護施設をお持ちのオーナーさま向けに、2026年度(令和8年度)に「実際に使える」補助金を、投資判断の目線だけで整理します。管理組合向けの記事によくある「住民の安心のため」という話はしません。入居率・NOI(実質賃料収入。家賃収入から運営経費を引いた手残り)・固定資産税・出口価格という、オーナーの財布に直結する話に絞ります。

先に結論を申し上げます。昭島市のオーナーにとって、本命は「市」ではなく「東京都」と「国」です。

理由は単純で、金額の桁が違うからです。昭島市の木造住宅耐震改修等補助制度は補助率1/3・上限60万円。これはこれで有難い制度ですが、東京都のクール・ネット東京(東京都地球温暖化防止活動推進センター)が実施する省エネ改修助成は、高断熱窓・ドアだけで1住戸あたり上限200万円、しかも助成対象者に「法人」が明記されています。10戸のアパートなら、理屈のうえでは上限が2,000万円分積み上がる計算です。

ただし、この都の制度には着工してからでは1円も取れないという、決定的な手続きの壁があります。ここを外すオーナーさまを、私は毎年何人も見ています。順番に、数字で見ていきましょう。


結論:昭島市の賃貸・ビルオーナーが狙う「三層マップ」

補助金は「国・東京都・昭島市」の三層で重なっています。まず全体像を、賃貸オーナーにとっての実用度で並べておきます。ここだけ読んでも今日の判断はできます。

層 制度名 賃貸オーナーの実用度 何に効くか
東京都 既存住宅における省エネ改修促進事業(クール・ネット東京) ★★★★★ 個人・法人・管理組合が対象。高断熱窓/ドアは1住戸上限200万円
国 賃貸集合給湯省エネ2026事業(既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業) ★★★★★ 賃貸オーナー専用枠。エコジョーズ等へ取替で5〜10万円/台
国 先進的窓リノベ2026事業 ★★★★★ 窓の断熱改修。都の助成と製品登録が連動
国 みらいエコ住宅2026事業/給湯省エネ2026事業 ★★★★ 断熱・給湯の全国共通枠。住宅省エネ2026キャンペーンの一部
東京都 既存住宅省エネ診断・設計等支援事業 ★★★★ 診断・設計費が対象経費の10/10、上限120万円/棟
昭島市 木造住宅耐震改修等補助制度(1/3・上限60万円) ★★★ 旧耐震の木造戸建賃貸・木造アパート。対象者は「所有する個人」
昭島市 木造住宅耐震診断補助制度(2/3・上限8万円) ★★★ 上記の入口。診断なしに改修補助は取れない
昭島市 木造住宅の除却のみ(1/3・上限50万円) ★★★ 空き家化した旧耐震木造の出口整理
東京都 マンション改良工事助成(利子1%補給) ★★(分譲・管理組合限定) 区分所有を持つオーナーが管理組合経由で間接的に活用
税制 省エネ改修に係る固定資産税の減額 ★(賃貸部分は対象外) 賃貸部分は減額されない。期待してはいけない

この表の一番下、「賃貸部分は固定資産税の減額対象外」という一行が、オーナー向け記事でいちばん書かれていない事実です。後半で必ず触れます。


昭島市という賃貸市場の読み方――「5,000人の雇用」が動き始めた街

制度の話に入る前に、昭島市という賃貸市場の性格を押さえておきます。補助金は「入れられるか」ではなく「入れて回収できるか」で判断すべきで、その分母になるのが地域の家賃と入居者層だからです。

昭島市は東京都多摩地域の中西部、多摩川北岸に位置する人口約11.7万人の市です。人口は116,769人・59,354世帯(令和8年5月1日現在)(出典:昭島市「今月の人口詳細」)。JR青梅線が市内を東西に貫き、昭島駅・中神駅・東中神駅・拝島駅が並びます。拝島駅は青梅線・五日市線・八高線・西武拝島線が集まる結節点で、西武新宿線方面への直通も持つ、多摩地域では珍しい「四方向に抜ける駅」です。

家賃相場は、賃貸ポータルの公開値を見る限り、1R〜1Kでおおむね5〜6.5万円台、2LDK〜3LDKで8〜9.5万円台が目安として示されています(各賃貸情報サイトの公開相場より。時期・条件で変動するため、投資判断にあたっては必ず最新の募集事例でご確認ください)。都心と比べれば低い水準ですが、これは裏を返せば「賃料の伸びで取り返す戦略が効きにくい市場」だということです。

ではこの市場でオーナーは何をすべきか。私の見立ては単純です。賃料を上げるより、退去を減らし、運営経費を削る。そのほうが確実にNOIに効きます。空室が1か月縮まることの価値を、家賃6万円・10戸のアパートで考えてみてください。年間で6万円、10年で60万円です。窓を断熱化して「冬に窓際が寒くない部屋」に変える工事は、まさにこの「退去を減らす」施策の中核です。

そして今、昭島市の賃貸需要には構造変化の芽があります。昭島駅北側、旧・昭和飛行機工業の広大な用地で進むGLP昭島プロジェクト(GLP ALFALINK 昭島)です。約58.8ヘクタールという規模で物流施設とデータセンターを建設する計画で、報道ベースでは約5,000人規模の雇用が見込まれるとされています。昭島市も公式サイトに専用の対応ページを設け、事業者との協議経過を公開しています(出典:昭島市「GLP昭島プロジェクトへの対応」)。

交通量や環境負荷への懸念から地域で議論が続いている案件でもあり、私はここで賛否を語る立場にありません。ただ、賃貸経営の実務としては「単身〜DINKS層の実需が数年かけて厚くなる可能性がある」という事実を前提に、今のうちに部屋の競争力を上げておくという判断はきわめて合理的だと考えます。需要が動いてから慌てて工事をしても、その頃には補助金の予算枠が埋まっています。

さらに昭島市には、拝島・中神・田中町周辺に昭和40〜50年代に建った木造アパートと戸建賃貸のストックが厚いという特徴があります。ここが、次に述べる市の耐震助成が効く土壌です。


【都・本命】クール・ネット東京の省エネ改修助成――法人オーナーも対象、1住戸上限200万円

昭島市の賃貸オーナーが最初に押さえるべきは、市の制度ではなく東京都の「令和8年度 既存住宅における省エネ改修促進事業(高断熱窓・ドア・断熱材・浴槽)」です。理由は、助成対象者の一行にあります。

助成対象者:都内に住宅を所有する個人・法人及び管理組合

(出典:クール・ネット東京「令和8年度 既存住宅における省エネ改修促進事業」)

多くの自治体制度が「所有者が現に居住している住宅」に限定されるなか、この制度は法人所有の賃貸物件を正面から対象にしています。資産管理法人で物件を保有しているオーナーさまにとって、これは決定的な違いです。

助成額の水準

金額を並べます。

区分 助成額
高断熱窓・高断熱ドア 製品性能・大きさごとの助成単価の合計。上限:1住戸あたり200万円
同(断熱+防犯窓として登録された製品の場合) 上限:1住戸あたり300万円
断熱材 対象経費の1/3、1住戸あたり上限100万円(国補助を受ける場合は国の交付額が上限)
高断熱浴槽 1住戸あたり95,000円
リフォーム瑕疵保険 1契約あたり7,000円

助成単価の一例を挙げると、外窓交換(はつり工法・カバー工法)で熱貫流率1.1以下のグレードP、面積4.0㎡以上の「特大」窓なら1か所277,000円。内窓設置でも同条件で133,000円です。令和8年度は高断熱窓・ドアの助成単価が増額され、窓のサイズ区分に「特大」が追加されています。

事業全体の予算規模は約1,012億円(令和8年度分/災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業の総額)。単年度としては相当に大きな枠ですが、先着順である以上、埋まるときは一気に埋まります。

ここが落とし穴:契約・施工は「事前申込受付後」

この制度には、オーナーが最も踏みやすい地雷があります。要綱にはこう書かれています。

設備設置の契約・施工は「事前申込受付後」が条件となります。

つまり、先に工事契約を結んでしまうと、その工事はもう対象外です。しかも事前申込の受付開始は令和8年5月29日。交付申請兼実績報告の受付は令和8年6月30日から令和11年3月30日までです。私が現場で何度も見てきた失敗は、「見積が出た、いい業者だ、じゃあ契約しよう」と判子を押してから補助金を調べ始めるパターンです。順番が逆です。制度を先に決め、事前申込を通し、それから契約する。この順番だけは、絶対に崩さないでください。

なお、事前申込後1年以内に交付申請をしないと、事前申込は自動的に無効になります。工期が読めない工事ほど、着工時期を業者と詰めてから申し込むべきです。

診断・設計費も別枠で取れる

もう一つ、意外に知られていない枠があります。東京都住宅政策本部の「既存住宅の省エネ診断・省エネ設計への補助」です。省エネ診断等は対象経費の10/10(全額)、上限120万円/棟、現況図面の作成は10万円/住戸という水準が示されています(出典:東京都住宅政策本部「既存住宅の省エネ診断・省エネ設計への補助」)。

「うちの物件、どこから断熱すれば費用対効果が高いのか分からない」というオーナーさまは、まず診断を全額補助で入れて、投資判断の材料そのものを補助金で作るという順序が取れます。私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。


【国・賃貸専用】賃貸集合給湯省エネ2026事業――オーナーのためだけにある制度

国の制度のなかで、賃貸オーナーだけを対象にした珍しい枠があります。資源エネルギー庁の「既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業(賃貸集合給湯省エネ2026事業)」です。

制度の趣旨は明快で、設置スペースの都合からヒートポンプ給湯機(エコキュート)の導入が難しい既存の賃貸集合住宅向けに、小型の潜熱回収型給湯器(エコジョーズ/エコフィール)への取替を後押しするというものです。

項目 内容
補助額(追い焚き機能なし) 5万円/台(共用廊下を横断してドレン排水ガイドを敷設した場合は8万円/台)
補助額(追い焚き機能あり) 7万円/台(浴室へのドレン水排水〈三方弁、三本管・二重管含む〉工事の場合は10万円/台)
対象設備 潜熱回収型給湯器(エコジョーズ/エコフィール)。都市ガス/LP/石油
機器+工事費の目安 20〜40万円程度
主な条件 従来型給湯器からの取替であること。令和7年11月28日以降に工事に着手したもの
申請単位 既存賃貸集合住宅1棟あたり1台以上の取替
予算規模 35億円(令和7年度補正予算)

(出典:環境省「既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業の概要」(PDF・資源エネルギー庁作成)、資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業について」)

この制度の実務上の勘所は2つあります。

第一に、申請はオーナー本人ではなく「間接補助事業者(民間企業等)」が行うという点です。つまり、この事業に登録している施工業者・ガス事業者と組まなければ、そもそも申請ルートに乗れません。「うちの出入りの業者が登録していなかった」という理由で取り逃すケースが実際にあります。見積を取る段階で「御社は賃貸集合給湯省エネ2026事業の登録事業者ですか」と一言確認してください。

第二に、この制度は「壊れる前に替える」ためのものだということです。給湯器の突発故障は、賃貸経営で最も嫌なトラブルの一つです。真冬にお湯が出なくなり、入居者から夜中に電話が入り、翌日に飛び込みで交換して定価に近い金額を払う。私はこの流れを何度も見てきました。築15年を超えた物件で給湯器が10台あるなら、故障を待たずに計画更新し、1台7万円の補助を10台分取るほうが、経営としてははるかに合理的です。70万円の差は、家賃1年分に相当します。


【市】昭島市木造住宅耐震改修等補助制度――1/3・上限60万円、ただし「個人」限定

ここからが市の制度です。昭島市の木造住宅耐震改修等補助制度は、旧耐震の木造アパート・戸建賃貸を持つオーナーにとって検討価値があります。

項目 内容
耐震改修 耐震改修に要する費用の3分の1以内、上限60万円(千円未満切り捨て)
太陽光発電システム付属耐震改修の加算 太陽光パネル(2kW以上/棟)の設備を想定した設計が行われている耐震改修について、費用から250万円を差し引いた額の5分の3以内、上限30万円を加算
建替え(昭和56年5月31日以前建築の建物) 建替えに要する費用の3分の1以内、上限60万円
除却工事のみ(同上) 除却に要した費用の3分の1以内、上限50万円
対象住宅 市内にある住宅のうち、①昭和56年5月31日以前に建築された2階建て以下の建物、または②平成12年5月31日以前に建築された2階建て以下の建物で、③市が認定した耐震診断員による総合評点(Iw値)が1.0未満であるもの
対象者 補助対象住宅を所有する個人(共有の場合は共有者全員が合意した代表者)
前提条件 納期が到来している市税等を完納していること(共有の場合は全員)
施工業者要件 建設業法第3条に規定する建設業許可のうち、耐震改修工事等に係る許可を受けた業者

(出典:昭島市「昭島市木造住宅耐震改修等補助制度」)

オーナー目線で、この制度には3つの読みどころがあります。

第一に、対象者が「所有する個人」と書かれている点。これは資産管理法人で物件を保有しているオーナーにとって重要な分岐です。法人名義の木造アパートが対象になるかどうかは、要綱の解釈と市の運用に関わります。断定は避けますので、必ず事前に都市計画部都市計画課住宅係(電話042-544-4413)に、所有形態を明かしたうえで確認してください。ここを曖昧にしたまま工事を進めるのが一番危険です。

第二に、平成12年5月31日以前の建物まで対象が広がっている点。令和5年5月1日の改正で追加されたもので、いわゆる「新耐震だが2000年基準以前」の木造まで射程に入りました。築25〜45年の木造アパートを持つオーナーには、この一行の意味は大きいはずです。ただし建替え・除却への補助は昭和56年5月31日以前の建物に限られる点に注意してください。

第三に、市税等の完納要件。これは補助金あるあるの落とし穴で、共有名義の物件では共有者全員が完納していなければなりません。相続で兄弟共有になっている物件などは、申請前に全員の納税状況を確認しておくべきです。

入口は耐震診断補助(2/3・上限8万円)

耐震改修補助を受けるには、その前に耐震診断が必要です。昭島市の木造住宅耐震診断補助制度は、診断に要する費用の3分の2以内、上限8万円。診断は市が認定した「昭島市耐震診断員」(一般社団法人東京都建築士事務所協会立川支部所属の一級建築士)が実施します。希望する場合は事前に都市計画課住宅係に相談し、固定資産税課税明細書と建物図面を持参すると話が早く進みます(出典:昭島市「昭島市木造住宅耐震診断補助制度」)。

診断の結果Iw値が1.0以上であれば、改修補助は使えません。逆に言えば、診断は「補助が取れるかどうかの判定」であり、8万円の補助で投資判断の入口を買えるということです。


税務:ここを間違えると、補助金の旨味は消える

補助金の話を、税金の話とセットにしないオーナー向け記事は信用しないでください。ここが手残りを最も左右します。

① 補助金は「雑収入」として課税される

国・都・市いずれの補助金も、受給した年度に雑収入として益金(収入)に計上するのが原則です。「200万円もらえる」は「200万円の課税対象収入が立つ」と同義です。法人税・所得税の税率を考えれば、手残りは額面より小さくなります。圧縮記帳などの取扱いは制度と資産の性質によって異なるため、必ず顧問税理士に事前確認してください。私は税理士ではありませんので、ここは断定せずにお伝えします。

② 修繕費か資本的支出か、で結果が大きく変わる

外壁塗装や防水の打ち替えのように、原状回復・維持管理の性質が強い工事は修繕費として一括損金にできる可能性が高い一方、断熱性能を大きく引き上げる改修や、建物の使用可能期間を延ばす工事は資本的支出として資産計上・減価償却になる可能性があります。同じ1,000万円の工事でも、当期の課税所得への効き方はまったく違います。

私が現場でよく申し上げるのは、「見積書の内訳の書き方が、税務処理の分かれ目になることがある」ということです。工事を発注する前に、税理士と施工会社の三者で内訳の建て方をすり合わせておく。それだけで、後の処理が驚くほどスムーズになります。

③ 固定資産税の省エネ改修減額は「賃貸部分は対象外」

これは、賃貸オーナーが最も誤解しやすい点です。東京都主税局は、省エネ改修工事をした住宅に対する固定資産税の減額の要件として、「居住部分の割合が当該家屋の1/2以上あること(ただし、家屋の賃貸部分は減額になりません)」と明記しています(出典:東京都主税局「省エネ改修工事をした住宅に対する固定資産税の減額」)。

つまり、賃貸に出している部分については、省エネ改修をしても固定資産税は減らない。「補助金+固定資産税減額の二段構え」を期待して事業計画を立てると、想定が崩れます。オーナーが取りに行くべきは、あくまで現金補助(都・国)と、損金算入による課税所得の圧縮の二段です。三段目は最初から数えない。これが実務です。


工法の選択――足場か、ロープアクセスか、その両方か

補助金の話をしていると、「で、工事そのものはいくらかかるのか」という質問に必ず行き着きます。ここで効いてくるのが工法の選択です。

大規模修繕の総工事費のうち、仮設足場が占める割合は決して小さくありません。5階建てのアパートでも、足場の架設・解体・養生には相応の金額と日数がかかります。しかも足場は、防犯上の不安から入居者に嫌われ、部屋が暗くなり、ベランダが使えなくなる。繁忙期に足場を架けたせいで退去が出たという話を、私は何度も聞いています。

私たち株式会社明誠は、通常の足場仮設工法/無足場工法であるロープアクセス工法/その両方を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つを、建物の形状と工事内容に応じて提案できます。ロープアクセス工法は、産業用ロープで職人が壁面に直接アクセスして施工する無足場の工法で、足場費用を圧縮でき、工期も短縮しやすく、何より入居者の生活影響が小さいという特徴があります。ロープアクセス工法の技術的な背景や安全基準の考え方については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめていますので、技術面を深く知りたいオーナーさまはそちらもご覧ください。

ただし、両論併記で申し上げます。ロープアクセスが常に最適なわけではありません。外壁の広範囲を打診・補修する必要がある場合や、バルコニー内部の作業量が多い場合、あるいは重量物を扱う工事では、足場を架けたほうが結果的に安く早いケースがあります。私がハイブリッド工法を勧めるのは、まさにこの「部位ごとに最適解が違う」という現実があるからです。低層部は足場、高層部と屋上まわりはロープといった組み方で、総コストと工期の両方を詰めていく。詳しくはロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。

補助金との関係でいえば、足場費が浮いた分をそのまま「補助対象になる工事」に振り向けられるという点が効きます。同じ予算で窓の断熱化まで手が届けば、都の助成が乗り、入居者の光熱費が下がり、退去が減る。この連鎖こそが、オーナーにとっての本当のリターンです。


2026年度・昭島市オーナーの実務カレンダー

最後に、今日から動くための順序を時系列で示します。8月中旬の今、まだ間に合う制度と、急ぐべき制度が分かれます。

  1. 今すぐ(8月):物件ごとに「築年数・構造・給湯器の設置年・窓の仕様」を棚卸しする。図面と固定資産税課税明細書を手元に揃える。
  2. 8〜9月:都の省エネ診断補助(対象経費10/10・上限120万円/棟)の活用を検討。診断結果が、この後すべての判断材料になる。
  3. 契約前(必須):クール・ネット東京の事前申込を通す。契約・施工は事前申込受付後が条件。ここを飛ばすと全部が無になる。
  4. 並行して:給湯器の更新計画を立て、賃貸集合給湯省エネ2026事業の登録事業者かどうかを施工会社に確認する。
  5. 木造旧耐震物件がある場合:昭島市都市計画課住宅係(042-544-4413)に事前相談。所有形態(個人/法人)と市税等の納付状況を先に確認する。
  6. 税理士との確認:補助金の雑収入計上、修繕費/資本的支出の切り分け、見積内訳の建て方をすり合わせる。
  7. 年度後半(10月以降):予算枠の消化状況を確認しつつ、翌年度案件の仕込みに入る。先着順の制度は、年度末には枠が細っている前提で動く。

補助金制度は年度ごとに要件・金額・期間が変更される可能性があります。本記事の数値は執筆時点で公表されている情報に基づくものですので、申請にあたっては必ず各制度の公式サイトと窓口で最新情報をご確認ください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 昭島市の耐震改修補助は、賃貸に出している木造アパートでも使えますか?
A. 昭島市の要綱では補助対象者を「補助対象住宅を所有する個人」と定めており、居住要件については明記されていません。賃貸物件や法人所有物件の取扱いは市の運用によりますので、必ず事前に都市計画部都市計画課住宅係(042-544-4413)へ所有形態を明かしてご確認ください(出典:昭島市木造住宅耐震改修等補助制度)。

Q2. 法人名義の賃貸マンションでも使える補助金はありますか?
A. あります。東京都のクール・ネット東京「令和8年度 既存住宅における省エネ改修促進事業」は、助成対象者を「都内に住宅を所有する個人・法人及び管理組合」と明記しています。高断熱窓・ドアは1住戸あたり上限200万円です(出典:クール・ネット東京)。

Q3. 工事契約を先に結んでしまいました。都の助成は取れますか?
A. 都の同事業は「設備設置の契約・施工は事前申込受付後が条件」とされています。事前申込より前に契約・施工したものは対象外となる可能性が高いため、契約前に必ず事前申込を通してください。

Q4. 給湯器の交換だけでも補助は出ますか?
A. 出る可能性があります。賃貸集合給湯省エネ2026事業では、従来型給湯器からエコジョーズ等への取替について追い焚きなし5万円/台、追い焚きあり7万円/台(工事内容により8万円/10万円)が示されています。申請は登録された間接補助事業者が行うため、施工会社が登録事業者かどうかの確認が必要です。

Q5. 省エネ改修をすれば固定資産税は下がりますか?
A. 賃貸部分は下がりません。東京都主税局は減額要件として「家屋の賃貸部分は減額になりません」と明記しています。賃貸オーナーは、現金補助と損金算入の2つで採算を組むべきです(出典:東京都主税局)。


この記事のポイントまとめ

  • 昭島市のオーナーの本命は市制度ではなく、東京都と国の制度である
  • 都のクール・ネット東京は個人・法人・管理組合が対象、高断熱窓は1住戸上限200万円
  • 都の助成は契約・施工が事前申込受付後でなければ対象外になる
  • 国の賃貸集合給湯省エネ2026事業は賃貸オーナー専用枠で5〜10万円/台
  • 昭島市の木造耐震改修補助は1/3・上限60万円、対象者は「所有する個人」
  • 省エネ改修の固定資産税減額は賃貸部分は対象外、期待に入れない
  • GLP昭島プロジェクトによる雇用増を見据え、先に部屋の競争力を上げる判断が効く

出典・参考資料


お持ちの物件で、まだこの補助金の検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度お問合せフォームからお声がけください。1棟の現地調査と、足場/ロープアクセス/ハイブリッドの3工法で見積を並べた比較シミュレーションだけでも承ります。数字を並べてみないと、判断はできません。私はいつも、そこから始めることにしています。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開しています。

最終更新:2026年8月16日

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断・法的助言を行うものではありません。補助金の要件・金額・期間は変更される場合がありますので、申請前に必ず各制度の公式窓口でご確認ください。

日野市の賃貸オーナー向け補助金2026|耐震改修「4/5・上限100万円」が“賃貸を含む”数少ない自治体

この記事で答える質問:日野市に賃貸物件を持つオーナーは、2026年度にどの補助金をいくら使えるのか?

大規模修繕の現場を30年近く見てきた私(本間)が、日野市に賃貸マンション・アパート、戸建賃貸、あるいは自社ビルや医療・介護施設をお持ちのオーナーさま向けに、2026年度(令和8年度)に「実際に使える」補助金を、投資判断の目線で整理します。管理組合向けの記事によくある「住民の安心のため」という話はしません。入居率・NOI(実質賃料収入。家賃収入から運営経費を引いた手残り)・固定資産税・出口価格という、オーナーの財布に直結する話だけをします。

先に結論を言います。日野市は、多摩地域のなかでも賃貸オーナーにとって「市の制度」が本当に効く、数少ない自治体です。理由ははっきりしています。多くの自治体では耐震改修助成が「所有者が現に居住している住宅」に限定され、賃貸物件がまるごとこぼれ落ちます。ところが日野市の木造住宅耐震改修工事助成は、対象建築物の要件に「昭和56年5月31日以前に着工されたもの(賃貸住宅を含む)」と明記されています(出典:日野市「住宅の耐震化、バリアフリー化及び断熱改修に関する補助金のご案内」)。しかも補助率は5分の4以内・上限80万円、市内業者施工なら上限100万円。この水準は多摩地域でも屈指です。

ただし、そこには一発で失格になる落とし穴もあります。この記事の後半で、その条件を必ず確認してください。


結論:日野市の賃貸・ビルオーナーが狙う「三層マップ」

補助金は「国・東京都・日野市」の三層で重なっています。まず全体像を、賃貸オーナーの実用度で並べておきます。

層 制度名 賃貸オーナーの実用度 何に効くか
日野市 木造住宅耐震改修工事助成(4/5・上限80万/市内業者100万円) ★★★★★ 旧耐震の戸建賃貸・併用住宅。賃貸住宅を含む
日野市 木造住宅耐震診断助成(2/3・上限8万8千円) ★★★★★ 上記の入口。診断なしに改修助成は取れない
日野市 住宅バリアフリー化工事助成(1/10・上限20万円) ★★★★ 集合住宅は専有部分に限り対象。高齢入居者対策
日野市 木造住宅断熱改修工事助成(1/6・上限20万円) ★★★ 木造戸建賃貸の断熱材充填。外壁塗装は対象外
東京都 賃貸集合住宅向け省エネ化・再エネ導入支援(クール・ネット東京) ★★★★★ 賃貸1棟の窓・断熱材・太陽光。オーナー本命枠
国 先進的窓リノベ2026事業 ★★★★★ 窓の断熱改修。1棟につき100万円×住戸数が上限
国 住宅省エネ2026キャンペーン各事業(給湯・断熱) ★★★★ 給湯器更新・断熱の全国共通枠
国 マンションストック長寿命化等モデル事業 ★★★ 投資型1棟マンションの長寿命化改修
東京都 マンション改良工事助成(利子1%補給) ★★(分譲・管理組合限定) 分譲区分を保有するオーナーが管理組合として活用
日野市 分譲マンション耐震化助成(改修23%等) ★★(管理組合限定) 1棟所有オーナーは対象外。区分所有なら間接的に恩恵

このマップを頭に入れたうえで、「なぜ日野市の市制度が本命になり得るのか」「どこで失格になるのか」を、一つずつ数字で見ていきます。


日野市という賃貸市場の読み方――「産業と大学と多摩川」の三本足

制度の話に入る前に、日野市という賃貸市場の性格を押さえておきます。補助金は「入れられるかどうか」だけでなく「入れて回収できるか」で判断すべきで、その分母になるのが地域の家賃と入居者層だからです。

日野市は東京都多摩地域の中央部、多摩川と浅川に挟まれた人口約19万人の中核都市です。世帯数は96,256世帯(令和8年6月1日現在)と、多摩地域でも有数の規模を持ちます(出典:日野市「日野市の人口、世帯数、面積」)。鉄道はJR中央線の日野駅・豊田駅、京王線の高幡不動駅・百草園駅、そして多摩都市モノレールが走り、新宿方面へのアクセスと多摩地域内の横移動の両方を持つ、珍しい二軸構造の街です。

日野市の賃貸市場を支えているのは、大きく三本の足だと私は見ています。

第一に産業です。日野自動車をはじめとする製造業の拠点が集積し、勤労者世帯の実需が厚い。第二に大学・教育です。市内および周辺に複数の大学キャンパスがあり、単身の学生・若年層の需要が継続的に発生します。第三にファミリーの定住です。多摩平や旭が丘といった大規模団地の再生が進み、子育て世代の受け皿として機能してきました。

家賃相場は、賃貸情報サイトの公開値を見る限り、高幡不動駅・豊田駅周辺のワンルーム・1Kでおおむね4〜6万円台、2LDKで9〜10万円台、3LDKで10〜11万円台といった水準が目安として示されています(各賃貸ポータルの公開相場より。時期・条件で変動するため、投資判断にあたっては最新の募集事例でご確認ください)。都心のような大幅な賃料上昇は望みにくい代わりに、産業・学生・ファミリーの三層が需要を分散して支えているため、空室リスクが読みやすい「守りの効く市場」です。

この市場でオーナーが取るべき戦略は、私の見立てでははっきりしています。相場の天井が見えている以上、家賃を上げるより、支出を減らし、退去を減らすほうが利回りに効きます。断熱改修による光熱費の削減と体感温度の改善、給湯器の計画更新による突発故障の撲滅は、まさにこの「退去を減らす」施策の中核です。私が現場でオーナーさまによく申し上げるのは、「入居率1%の改善が、年間どれだけのキャッシュフロー差になるか」という問いです。10戸のアパートで1戸の空室期間が1か月縮まるだけで、年間の手残りは目に見えて変わります。

そして日野市には、多摩平や旭が丘、程久保などに昭和40〜50年代に建った木造アパート・戸建賃貸のストックが厚いという特徴があります。ここが、次に述べる市の耐震助成が「効く」土壌になっています。


【市・最重要】木造住宅耐震改修工事助成――補助率4/5、市内業者なら上限100万円

日野市の賃貸オーナーにとって、まず押さえるべきは市の木造住宅耐震改修工事助成です。数字を先に並べます。

項目 内容
助成額 耐震改修工事費用の5分の4以内、上限80万円
市内業者施工の場合 上限100万円
対象事業の金額 耐震改修工事費用が10万円以上(消費税込)
対象建築物 市内に所有する木造住宅/居住用一戸建住宅/昭和56年5月31日以前に着工されたもの(賃貸住宅を含む)
対象工事 耐震診断の上部構造評点が1.0未満の木造住宅を1.0以上にする耐震改修工事、または除却・建替え工事
併用住宅の場合 床面積の2分の1以上を住宅として使用していること

(出典:日野市「住宅の耐震化、バリアフリー化及び断熱改修に関する補助金のご案内」)

補助率5分の4という水準は、住宅系の耐震助成としてはかなり高い部類です。仮に耐震改修工事費が125万円かかった場合、5分の4は100万円ですから、市内業者施工なら上限いっぱいの100万円が出る計算になります。オーナーの実質負担は25万円。旧耐震の戸建賃貸をお持ちで、上部構造評点が1.0を割っている物件なら、これを使わない手はありません。

ここで「賃貸住宅を含む」の一文の重みを、あらためて強調しておきます。多摩地域の他市では、耐震改修助成の対象を「所有者が現に居住する住宅」に限定している例が珍しくありません。その場合、投資用に持っている旧耐震の戸建賃貸は、どれだけ危険でも一円も出ないことになります。日野市はそこを開いている。投資用の木造戸建・併用住宅を持つオーナーにとって、日野市は制度上かなり有利な立地だということです。

なお、建替え工事については扱いが異なります。要綱上、建替えは「所有者が自ら居住する場合に限る」とされているため、純粋な投資物件の建替えには使えません。耐震改修(補強工事)と除却は賃貸を含む扱い、建替えは自己居住限定――この線引きは間違えやすいので、必ず事前相談で確認してください。

上部構造評点とは何か(初出なので補足します)

「上部構造評点」とは、木造住宅の耐震診断で算出される、建物の粘り強さを示す指標です。1.0以上で「一応倒壊しない」、1.5以上で「倒壊しない」とされ、1.0未満だと「倒壊する可能性がある」と判定されます。日野市の改修助成は「1.0未満を1.0以上にする工事」が対象なので、まず診断で自分の物件の評点を知ることが出発点になります。

太陽光発電システム付属耐震改修という加算枠

見落とされがちですが、日野市には耐震改修に太陽光発電システムの設置を想定した設計を組み込んだ場合の加算枠があります。

  • 助成額:対象事業に要する費用の5分の3以内、上限30万円
  • 条件:木造耐震改修工事に要する経費が250万円を超えるもの(建替えを除く)

耐震補強で構造をいじるタイミングは、屋根荷重の見直しをする絶好の機会です。将来の太陽光設置を前提に設計しておけば、後から屋根を触り直す二度手間を避けられます。共用部・自家消費に回せる発電量を確保できれば、オーナー負担の電気代(=運営経費)そのものが下がり、NOIの底上げに直結します。


【市】耐震診断助成――上限8万8千円、まずここから始まる

改修助成を取るには、その前段の耐震診断が必須です。日野市はここにも助成を用意しています。

項目 内容
助成額 耐震診断費用の3分の2以内、上限8万8千円
対象事業の金額 耐震診断費用が2万円以上(消費税込)
対象建築物① 昭和56年5月31日以前着工の市内木造住宅(在来軸組工法以外の工法も含む)/居住用一戸建住宅(賃貸住宅を含む)
対象建築物② 昭和56年6月1日〜平成12年5月31日着工の市内木造住宅(在来軸組工法のみ)/居住用一戸建住宅(賃貸住宅を含む)
診断機関 一般社団法人東京都建築士事務所協会立川支部、または東京都木造住宅耐震診断事務所登録制度に基づく登録事務所

(出典:日野市 同上ページ)

注目すべきは対象建築物②です。昭和56年6月以降、つまり新耐震基準に入った後の建物でも、平成12年5月31日以前に着工した在来軸組工法の木造住宅は診断助成の対象になります。いわゆる「2000年基準」以前の木造は、金物の仕様や壁配置のバランス規定が緩く、実際に診断すると評点が振るわないケースが少なくありません。築25〜45年の木造賃貸を持っているなら、まず診断を受ける価値があります。

診断機関が指定されている点は要注意です。付き合いのある工務店に頼めばよいという話ではなく、東京都の登録事務所か、東京都建築士事務所協会立川支部を通す必要があります。ここを外すと助成が出ません。


【市】バリアフリー化・断熱改修――集合住宅オーナーが使える「専有部分」の抜け道

「うちは木造戸建じゃなくてRC造のマンションだから、日野市の制度は関係ない」と思われたオーナーさま。ひとつだけ、集合住宅でも使える枠があります。

住宅バリアフリー化工事助成

項目 内容
助成額 工事費用の10分の1以内、上限20万円
対象事業の金額 10万円以上(消費税込)
対象建築物 市内に所有する居住用住宅/築1年以上経過/賃貸住宅を含むが、集合住宅にあっては専有部分に限る
対象工事 段差解消、廊下・出入口の幅確保、低い浴槽への交換、手すり設置(居室・浴室・階段・廊下・トイレ・玄関)、ホームエレベーター/階段昇降機、いす座・車いす対応キッチン、高齢者・身体障害者対応トイレ/洗面所

(出典:日野市 同上ページ)

「集合住宅にあっては専有部分に限る」という一文が、賃貸マンション・アパートのオーナーにとっての入口です。共用部の大規模修繕には使えませんが、住戸内のバリアフリー改修には使える。補助率1割・上限20万円は決して大きくありませんが、これを「高齢入居者の長期入居施策」として捉えると意味が変わります。

日野市に限らず、多摩地域の賃貸市場では入居者の高齢化が静かに進んでいます。浴室の手すり、段差解消、低い浴槽への交換――こうした工事は、高齢の長期入居者に「ここに住み続けられる」と思ってもらうための投資です。退去を1回防げば、原状回復費・広告料・空室期間の三重コストが浮きます。20万円の補助で工事の1割が戻り、そのうえ長期入居につながるなら、費用対効果は悪くありません。

木造住宅断熱改修工事助成――ただし外壁塗装は対象外

項目 内容
助成額 工事費用の6分の1以内、上限20万円
対象事業の金額 10万円以上(消費税込)
対象建築物 市内に所有する木造住宅/居住用一戸建住宅/築1年以上経過(賃貸住宅を含む)
対象工事 天井・床・壁・屋根裏の内部に断熱材等を充填し断熱性能を向上させる工事。外気に接する壁(窓・扉を除く)すべてを改修すること/断熱材が断熱材等性能等級4の性能を有すること
対象外 外壁塗装や屋根の葺き替え工事は対象ではありません

(出典:日野市 同上ページ)

ここは正直にお伝えしなければなりません。日野市の断熱改修助成では、外壁塗装も屋根の葺き替えも対象外です。市のページに明記されています。「大規模修繕のついでに補助金が出る」と期待して問い合わせると、ここで肩透かしを食らいます。

対象になるのは、あくまで断熱材そのものを壁・天井・床・屋根裏に充填する工事です。しかも「外気に接する壁のすべて」という要件があるため、部分的な工事では通りません。木造アパートの空室期間中に一気に断熱改修をかける、といった使い方が現実的です。

外壁の塗り替えや防水といった、いわゆる大規模修繕の本体工事については、市の助成ではなく東京都・国の省エネ系メニューと、後述する工法選択によるコスト圧縮で勝負するのが正解です。


【市・最大の落とし穴】「日野市民であること」――市外オーナーは原則使えない

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい注意点です。日野市の耐震・バリアフリー・断熱の各助成には、対象者について次の要件があります。

補助対象住宅の所有者で日野市民または、補助対象事業完了後直ちに市民になる方。
(出典:日野市「住宅の耐震化、バリアフリー化及び断熱改修に関する補助金のご案内」)

つまり、八王子市や国立市、あるいは都心にお住まいで日野市内に投資物件だけを持っているオーナーは、原則としてこれらの助成を使えません。 建物が「賃貸住宅を含む」対象であっても、申請者であるオーナー自身が日野市民でなければ入口に立てない、という構造です。

これは残酷ですが、制度設計としては筋が通っています。市税を負担する市民の住環境整備が目的だからです。したがって、日野市の市制度をフルに使えるのは、

  • 日野市内に居住しながら市内に賃貸物件を持つ、いわゆる地元大家
  • 日野市に本店・住所を置く、市内在住のオーナー

に絞られます。市外在住のオーナーさまは、この記事の後半で扱う東京都と国の制度が主戦場になります。落胆せずに読み進めてください。都と国のメニューには市民要件がなく、金額規模もむしろ大きいからです。

そのほかの申請条件(ここも失格ポイント)

  • 該当事業の契約をしていないこと(=契約前に申請が必要。工事契約を先に結ぶと出ません)
  • 申請した年度内に事業が完了すること(申請受付は12月28日まで)
  • 過去に同様の補助金を市から受けていないこと
  • 申請前に事前相談票の提出による事前相談が必須
  • 交付決定通知を受けてから契約すること。先に契約すると補助金を受けられません

私は現場で、「良い業者が見つかったので契約してから役所に行った」という理由だけで助成を逃したオーナーを何度も見てきました。補助金は、契約書にハンコを押す前が勝負です。これは日野市に限らず、ほぼすべての自治体で共通する鉄則だと思ってください。

問い合わせ先は、まちづくり部都市計画課住宅政策係(直通:042-514-8371)です。

おまけ:【フラット35】地域連携型の金利引き下げ

日野市の耐震改修に伴う建替えの助成を受けた場合、【フラット35】地域連携型による金利引き下げが受けられます(出典:日野市 同上ページ)。補助金の現金給付だけでなく、調達金利という形でもキャッシュフローに効くという点は、投資家目線では見逃せません。ただし現時点で対象事業は「木造住宅の耐震改修工事(建替えのみ)」とされており、建替えは自己居住が前提です。


【市】分譲マンション耐震化助成――1棟オーナーは対象外、区分所有なら間接的に効く

日野市には、平成28年(2016年)4月から分譲マンション耐震化助成が設けられています。金額規模が大きいので、内容を押さえておきましょう。

助成対象事業 助成率・限度
耐震アドバイザー派遣 助成対象費用の10分の10(1回あたり5万円限度、1管理組合につき5回まで)
耐震診断 助成対象費用の3分の2(延べ面積2,000㎡以上なら 5,240,000円+1,050円/㎡×(延べ面積−2,000㎡) を上限に算定)
耐震補強設計 3分の2(2,000円/㎡×延べ面積を上限に算定)
耐震改修工事 助成対象費用の23%(1,000㎡以上は50,200円/㎡、特殊工法は83,800円/㎡、1,000㎡未満は34,100円/㎡で算定)
建替え工事・除却工事 助成対象費用の23%

(出典:日野市「分譲マンション耐震化助成」)

耐震アドバイザー派遣が10分の10(全額)というのは、かなり手厚い設計です。アドバイザーには一級建築士、マンション管理士、弁護士、税理士、開発プランナー、ファイナンシャルプランナーなどが充てられます。税理士やFPを無料で呼べる枠があるというのは、修繕計画の資金繰りを詰めたい局面では実務的に非常に使えます。

ただし、対象要件は厳格です。

  • 2以上の区分所有者がいる分譲マンションであること
  • 昭和56年(1981年)5月31日以前に建築されたもの
  • 耐火建築物または準耐火建築物であること
  • 階数が3階以上であること(地階を除く)
  • 特定沿道建築物ではないこと
  • 対象者は当該分譲マンションの管理組合であり、区分所有法に定める承認に必要な区分所有者の数以上の承認を総会で得ていること

つまり、1棟をまるごと所有している投資型マンションのオーナーは、この制度の対象外です。「2以上の区分所有者」という要件を満たさないからです。ここは制度の性格上どうにもなりません。

一方で、日野市内の分譲マンションを区分で複数戸保有している投資家にとっては話が別です。管理組合が主体となって耐震診断・改修に動く場合、あなたも区分所有者としてその恩恵を受けます。耐震改修が実現すれば、保有区分の担保評価・売却時の物件価値に直接効いてきます。総会での賛否は、住み心地の話ではなく「自分の資産価値の話」として判断すべきです。


【都】東京都の賃貸オーナー向けメニュー――市民要件のない主戦場

市外在住オーナーの本命がここです。東京都は、賃貸集合住宅を対象にした省エネ・再エネの助成を、クール・ネット東京(東京都地球温暖化防止活動推進センター)を窓口に展開しています。

代表例が「賃貸住宅における省エネ化・再エネ導入促進事業」です。この事業の助成水準は、賃貸オーナーにとって相当に大きなものでした。

対象 補助額
高断熱窓改修 対象経費の2/3(上限30万円/戸)
断熱材改修(壁・屋根・天井・床) 対象経費の2/3(上限60万円/戸)
高断熱ドア 対象経費の2/3(上限27万円/戸)
省エネ診断等 対象経費の10/10(上限120万円/件)
省エネ診断用現況図面 対象経費の10/10(上限10万円/戸)
既築の太陽光発電(3.75kW以下) 30万円/kW(上限90万円/棟)、3.75kW超は24万円/kW
陸屋根の架台設置 +20万円/kW 上乗せ
陸屋根の防水工事(既築) +18万円/kW 上乗せ
低圧電力一括受電の電力量計 7万円/戸

(出典:クール・ネット東京「賃貸住宅における省エネ化・再エネ導入促進事業」)

断熱材改修が戸あたり上限60万円、省エネ診断が全額・上限120万円という水準は、市の助成とは桁が違います。さらに投資家目線で見逃せないのが、陸屋根の防水工事に対する18万円/kWの上乗せです。RC造の屋上防水は大規模修繕の主要費目のひとつですが、太陽光設置とセットで計画すれば、その防水費用の一部が再エネ助成として戻ってくる設計になっていました。「どうせ防水をやるなら、太陽光と同時に」という発想が、そのまま補助金の最大化につながります。

重要な注意点を申し上げます。上記の令和6年度事業については、交付申請の受付はすでに終了しており、現在は交付決定済み案件の実績報告(省エネ化:令和8年3月31日17時まで/再エネ導入:令和8年9月30日17時まで)の段階に入っています。都の賃貸向け省エネ支援は年度ごとに後継事業として組み替えられ、予算規模も拡大傾向にあります。必ずクール・ネット東京の補助金・助成金一覧で最新年度の公募状況を確認し、登録事業者経由で契約前に対象確認を行ってください。 都の事業は原則として事前申請制で、交付決定前に契約・工事したものは対象外になります。この一点だけは、年度が変わっても変わりません。問い合わせは創エネ支援チーム(03-6258-5317)です。

もうひとつ、分譲区分を保有するオーナー向けに東京都マンション改良工事助成(利子補給制度)があります。共用部分の修繕・改修工事を融資を受けて実施した場合、住宅金融支援機構の金利が1%(1%未満の場合は当該金利分)低利になるよう、東京都が管理組合に対して利子補給を行う制度です。令和8年度の募集は第1期:2026年5月13日〜9月30日、第2期:2026年10月1日〜2027年2月19日と案内されています(出典:東京都マンションポータルサイト)。金利1%の差は、借入額と期間によっては数百万円規模の総支払額差になります。


【国】住宅省エネ2026キャンペーン――窓リノベは1棟100万円×住戸数

国のメニューで、日野市の賃貸オーナーにいちばん効くのが先進的窓リノベ2026事業です。

  • 補助上限:1棟(建物)につき100万円 × リフォームした住戸数
  • 補助対象工事の内容に応じて、一戸あたり5万円から最大100万円
  • 対象:低層集合住宅(3階建以下)および中高層集合住宅(4階建以上)を含む
  • 交付申請期間:2025年11月28日〜遅くとも2026年12月31日まで(予算上限に達した場合は当該時点で終了)
  • 申請は「窓リノベ事業者」として登録された施工業者が行う。一般消費者・オーナーが直接申請することはできない

(出典:環境省「先進的窓リノベ2026事業」対象要件の詳細)

「1棟につき100万円×住戸数」という設計は、戸数の多い賃貸を持つオーナーほど有利です。10戸のアパートで全戸の窓を内窓・外窓交換で改修すれば、理論上の上限は1,000万円規模になります。もちろん実際の補助額は工事内容と製品グレードで決まりますが、窓は住戸の熱の出入りが最も大きい部位であり、費用対効果でいえば断熱改修の一丁目一番地です。

窓改修は、入居者にとっての体感がはっきりしている点も見逃せません。「夏の西日が入る」「冬に窓際が寒い」「線路の音がうるさい」——日野市のようにJR中央線・京王線の沿線物件が多いエリアでは、内窓による遮音効果が募集時の武器になります。断熱と遮音を同時に取れて、その費用の相当部分に国費が入る。使わない理由が見当たりません。

同じ住宅省エネ2026キャンペーンの枠内には、給湯器の省エネ化を支援する事業や、断熱改修全般を支援する事業も並びます。いずれも登録事業者経由・予算上限に達し次第終了という共通ルールがあり、人気の高い窓・給湯の枠は例年、年度後半になるほど埋まりがちです。使うなら早めに施工計画を固めるのが鉄則です。

マンションストック長寿命化等モデル事業――投資型1棟マンション向け

国土交通省のマンションストック長寿命化等モデル事業は、老朽化マンションの再生・長寿命化を後押しする補助制度です。令和8年度の提案募集は、第2回:2026年6月22日〜6月26日、第3回:2026年9月14日〜9月18日と案内されています(出典:国土交通省 報道発表資料)。

「総合的に優れた先導的な再生プロジェクト」を公募し、国が費用の一部を補助する仕組みで、採択制のため難易度は高い制度です。ただし、築古の大規模物件を単なる原状回復ではなく「長寿命化」という付加価値のある改修として再生し、出口の物件価値そのものを底上げしたいオーナーには、選択肢として頭の隅に置く価値があります。応募期間が年に数回・各1週間程度と非常に短いため、狙うなら年度当初から準備を始めることが必須です。


税務:補助金は「もらって終わり」ではない――雑収入と資本的支出の話

ここは私の専門から少し外れますので、一般的な考え方の整理としてお読みください(個別の判断は必ず税理士にご確認ください)。オーナーが補助金を使う際、税務で必ず論点になるのが次の二つです。

第一に、補助金は原則として受給した年度の「雑収入」として課税対象になります。 100万円の補助金が入れば、それはそのまま利益に乗ります。手元に残る金額を計算するときは、税引後で考える必要があります。国庫補助金等の圧縮記帳など、課税を繰り延べる制度が使える場合もありますが、適用要件が細かいため、必ず事前に税理士に相談してください。

第二に、工事費が「修繕費」なのか「資本的支出」なのかで、キャッシュフローの形が大きく変わります。 大まかな考え方として、原状回復や維持管理にあたる支出は修繕費として一括で損金算入でき、建物の価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりする支出は資本的支出として資産計上し、減価償却で費用化していきます。

耐震改修や断熱改修は、この線引きが悩ましい領域です。「同じ工事でも、契約書と見積書の書き方で判断が分かれることがある」——これが実務の現実です。私が現場でお勧めしているのは、着工前に見積書の内訳を税理士に見せて、修繕費/資本的支出の切り分けを確認しておくことです。工事が終わってから相談しても、書類は書き直せません。

固定資産税についても触れておきます。一定の耐震改修や省エネ改修を行った住宅について、家屋の固定資産税を一定期間減額する特例が設けられている場合があります。適用要件・期間・申告期限は制度改正で変わりますので、工事前に日野市の資産税担当窓口で最新の取り扱いを確認してください。補助金・所得税(法人税)・固定資産税の三段で効いてくるのが、オーナーにとっての改修投資の本当の妙味です。


工法の選択――補助金の次に効く「足場をどうするか」

補助金の話をひととおりしたところで、もう一つ、私が本業として最もお伝えしたいコスト論に触れさせてください。補助金で削れる金額には上限がありますが、工法の選択で削れる金額には上限がありません。

大規模修繕の見積書を分解すると、仮設足場費が全体の20%前後を占めることは珍しくありません。ここは建物そのものを直すお金ではなく、「作業員が高所に行くための足場を組んで、解体して、運ぶ」ためのお金です。

そこで選択肢になるのがロープアクセス工法(無足場工法)です。産業用ロープと下降器を用いて作業員が屋上から吊り下がり、外壁の調査・補修・シーリング・塗装・防水を行う工法で、足場を組まずに施工できます。オーナー物件で効いてくるメリットは三つあります。

  1. 足場費用がまるごと不要になるため、総工事費が圧縮できる(=補助金と同じ方向にキャッシュを残せる)
  2. 工期が短い。足場の架設・解体期間がゼロになるぶん、入居者へのストレス期間が短くなります
  3. 足場を組まないため、足場を伝った侵入という防犯リスクがない。女性の単身入居者が多い物件では、これが募集時の安心材料になります

一方で、正直にデメリットも申し上げます。全面打診が必要な劣化調査や、大量の面積を一気に処理する工事では、足場のほうが有利な場面もあります。 隣地との離隔がほとんどない建物、屋上に支点を取れない構造、バルコニー内部の細かい作業が多い物件では、ロープアクセスが最適解にならないケースもあります。

だからこそ私たちは、足場・ロープアクセス・その両方を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法という三択で提案しています。北面と東面は足場、南面のタイル補修だけロープアクセス、といった組み方をすると、総額と工期の両方が最適化できることが多いのです。ロープアクセス工法の技術的な解説・安全基準・施工事例は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめていますので、工法選択の判断材料としてご覧ください。明誠のロープアクセス施工についてはロープアクセス工法のご紹介、大規模修繕の進め方全般については大規模修繕・改修工事のご案内でもご案内しています。

日野市のような、駅からの距離で家賃が階段状に下がる郊外型の賃貸市場では、総工事費を1割削れるかどうかが、そのまま投資回収年数の差になります。補助金で取れる分は取り、工法で削れる分は削る。この両輪をそろえて初めて、修繕投資は「守り」から「攻め」に変わります。


日野市オーナーの実行手順――今日から何をするか

最後に、行動に落とし込みます。日野市に賃貸物件をお持ちのオーナーが取るべき順序は、次のとおりです。

  1. 自分が日野市民かどうかを確認する。 市民なら市の助成が全部使える。市外在住なら都・国が主戦場になる(この分岐が最初)
  2. 物件の着工年月日を確認する。 昭和56年5月31日以前か、平成12年5月31日以前か。木造なら耐震診断助成の対象になり得る
  3. 耐震診断を、東京都の登録事務所または東京都建築士事務所協会立川支部に依頼する。 費用の2/3・上限8万8千円が出る
  4. 上部構造評点が1.0未満なら、改修工事助成(4/5・上限80万円/市内業者100万円)を申請する。 必ず事前相談 → 交付決定 → 契約の順で
  5. 窓・断熱・給湯は、国の住宅省エネ2026キャンペーンと都の賃貸向け省エネ事業の最新公募を確認する。 登録事業者経由でしか申請できない
  6. 屋上防水・外壁の大規模修繕は、足場/ロープアクセス/ハイブリッドの三択で相見積もりを取る
  7. 着工前に、見積内訳を税理士に見せて修繕費/資本的支出を確認する

年度内完了が要件で、市の申請受付は12月28日までです。今が8月なら、動くのにちょうどよい時期です。年末に駆け込むと、診断・設計・工事の日程が物理的に入りません。


よくある質問(FAQ)

Q1. 日野市に住んでいませんが、日野市内の賃貸物件で市の耐震助成は使えますか?
A. 原則として使えません。日野市の耐震・バリアフリー・断熱の各助成は、対象者を「補助対象住宅の所有者で日野市民または、補助対象事業完了後直ちに市民になる方」と定めています(出典:日野市)。市外在住のオーナーは、市民要件のない東京都・国の制度が主戦場になります。

Q2. 賃貸に出している木造アパートでも耐震改修助成は使えますか?
A. 対象は「居住用一戸建住宅」で、賃貸住宅を含むとされています。したがって戸建賃貸や併用住宅(住宅部分が床面積の1/2以上)は対象になり得ますが、共同住宅形式のアパートについては形態により判断が分かれます。着工前に必ず都市計画課住宅政策係(042-514-8371)へ事前相談してください。

Q3. 外壁塗装や屋上防水に、日野市の補助金は出ますか?
A. 出ません。日野市の断熱改修工事助成のページには「外壁塗装や屋根の葺き替え工事は対象ではありません」と明記されています。外壁・防水の費用は、国・都の省エネ系メニューと、足場/ロープアクセスの工法選択によるコスト圧縮で組み立てるのが現実的です。

Q4. 1棟まるごと所有している投資用マンションで、日野市の分譲マンション耐震化助成は使えますか?
A. 使えません。同助成は「2以上の区分所有者がいる分譲マンション」であり、対象者は「管理組合」と定められています(出典:日野市)。1棟所有のオーナーは、国のマンションストック長寿命化等モデル事業や都の省エネ系事業を検討してください。

Q5. 工事の契約を済ませてから補助金を申請してもよいですか?
A. 認められません。日野市の申請条件には「該当事業の契約をしていないこと」「交付決定通知を受けてから契約してください。先に契約をされると補助金を受けることができません」と明記されています。都・国の事業も同様に事前申請制が原則です。契約前が勝負です。

Q6. 補助金を受け取ったら、税金はどうなりますか?
A. 一般に、受給した補助金は雑収入として課税対象になります。また、工事費が修繕費か資本的支出かで損金算入のタイミングが変わります。圧縮記帳等の制度が使える場合もありますので、着工前に見積内訳を税理士にご確認ください(本記事は税務上の助言ではありません)。


この記事のポイントまとめ

  • 日野市の木造住宅耐震改修助成は4/5・上限80万円、市内業者なら100万円
  • 対象に「賃貸住宅を含む」と明記された、オーナーに有利な数少ない制度
  • ただし申請者が日野市民であることが必須。市外オーナーは都・国が主戦場
  • バリアフリー助成は集合住宅の専有部分も対象。長期入居施策に使える
  • 外壁塗装・屋根葺き替えは市の断熱助成の対象外なので工法選択で削る
  • 契約前の事前相談・交付決定が絶対条件。市の受付は12月28日まで
  • 補助金は雑収入課税、修繕費か資本的支出かは着工前に税理士確認を

出典・参考資料

※本記事に記載した制度内容・金額・期日は執筆時点の公表情報に基づきます。制度は年度途中でも変更・終了する可能性があるため、申請前に必ず各実施主体の公式ページで最新情報をご確認ください。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社です。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟することで、高品質と低価格を両立しています。

最終更新:2026年8月15日


日野市で賃貸マンション・アパート、戸建賃貸、自社ビルをお持ちのオーナーさま。まだこれらの補助金の検討を始めていないなら、まずは築年と着工年月日の確認からです。1棟の現地調査と、足場/ロープアクセス/ハイブリッドの3パターンでの概算比較、そこから逆算した利回り改善シミュレーションだけでも承ります。お気軽にお問合せフォームからご相談ください。制度の使い方も含めて、数字でお答えします。

清瀬市で使える賃貸オーナー向け補助金活用ガイド|『病院のまち』で効く都218億円と、市の耐震30万円の正しい使い分け

大規模修繕の現場を30年見てきた私(本間)が、清瀬市に賃貸マンション・アパート、あるいは自社ビルや医療・介護施設をお持ちのオーナーさま向けに、2026年度(令和8年度)に「実際に使える」補助金を、投資判断の目線で整理します。管理組合向けの「住民の安心」ではなく、入居率・NOI(実質賃料収入、=家賃収入から運営経費を引いた手残り)・固定資産税・出口価格という、オーナーの財布に直結する話だけをします。

先に結論を言います。清瀬市の賃貸オーナーが本気で狙うべきは「市の制度」ではなく「東京都と国の制度」です。理由は単純で、市の看板である木造住宅の耐震改修助成が、「現に所有者が居住している住宅」=賃貸は対象外という線引きを持っているからです。一方、都には賃貸住宅そのものを対象にした218億円規模の助成があり、国には既存の賃貸集合住宅の給湯器を対象にした専用補助があります。この二枚を知っているかどうかで、1棟あたり数百万円のキャッシュフローが変わります。そしてもう一つ、清瀬ならではの論点として「病院のまち」ならではの医療・介護施設オーナー向けの視点も、記事後半で触れます。


結論:清瀬市の賃貸・ビルオーナーが狙う「三層マップ」

補助金は「国・東京都・清瀬市」の三層で重なっています。まず全体像を、賃貸オーナーの実用度で並べておきます。

層 制度名 賃貸オーナーの実用度 何に効くか
東京都 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業(令和8年度218億円) ★★★★★ 賃貸1棟丸ごとの断熱改修・太陽光。オーナー本命
国 賃貸集合給湯省エネ2026事業 ★★★★★ 既存賃貸のエコジョーズ等への交換。1台あたり定額
東京都 既存住宅における省エネ改修促進事業(高断熱窓・ドア・断熱材・浴槽) ★★★★ 窓・ドア・断熱材・高断熱浴槽の改修
東京都 断熱・太陽光住宅普及拡大事業 ★★★★ 太陽光・蓄電池の設置支援
国 住宅省エネ2026キャンペーン(先進的窓リノベ・給湯省エネ・みらいエコ住宅) ★★★★ 窓・給湯・断熱の全国共通枠
国 マンションストック長寿命化等モデル事業 ★★★(投資型の1棟マンション) 大規模改修・長寿命化の先導的プロジェクト
清瀬市 木造住宅耐震改修等助成(工事費1/3・上限30万円) ★★(所有者居住のみ・賃貸は原則対象外) 旧耐震の持ち家に限定
清瀬市 木造住宅耐震診断助成(費用2/3・上限10万円) ★(同上・診断のみ) 旧耐震の持ち家診断

このマップを頭に入れたうえで、「なぜ都と国が本命なのか」「市の制度はどこまで賃貸に届くのか」を、一つずつ数字で見ていきます。


清瀬市という賃貸市場の読み方――「病院のまち・西武池袋線」という構造

制度の話に入る前に、清瀬市という賃貸市場の性格を押さえておきます。補助金は「入れられるかどうか」だけでなく「入れて回収できるか」で判断すべきで、その分母になるのが地域の家賃と入居者層だからです。

清瀬市は東京都の北端、埼玉県所沢市・新座市に接する人口約7.4万人の住宅都市です。鉄道は西武池袋線の清瀬駅が中心で、池袋まで約25分、所沢・練馬方面へのアクセスを持ちます。家賃相場は手ごろで、新築・駅近条件でも1Kで7万円台後半、ワンルームの平均賃料は4万円前後という水準です。派手な値上がりは望みにくい代わりに、ファミリー層と単身の実需が厚く、空室リスクが読みやすい「守りの効く市場」だと言えます。

そして清瀬を語るうえで外せないのが「病院のまち」という顔です。昭和初期から昭和40年代まで結核療養地として発展した歴史を持ち、複十字病院や国立病院機構東京病院など大規模病院が市南西部に集中しています。人口1000人あたりの病床数は全国でも上位(都内でも屈指)で、医療・福祉が地域経済の基盤になっています。これは賃貸市場にとっても意味があります。病院・研究機関で働く医療従事者、その家族、通院・介護に関わる層という、景気に左右されにくい安定した賃貸需要が土台にあるということです。

この市場でオーナーが取るべき戦略は明確です。相場の天井が見えている以上、家賃を上げるより、支出を減らし、退去を減らすほうが利回りに効きます。断熱改修による光熱費の削減と体感温度の改善は、まさにこの「退去を減らす」施策の中核です。夏の暑さ・冬の底冷えは、郊外ファミリー物件の退去理由として無視できません。補助金を使って断熱性能を底上げできれば、家賃据え置きでも競合との差がつき、結果として実質利回りが上がります。私が現場でよく言うのは、「入居率1%の改善が、年間どれだけのキャッシュフロー差になるか」という問いです。10戸のアパートなら、1戸の空室が1か月縮まるだけで、年間の手残りは目に見えて変わります。


【都・最重要】令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業(218億円)

清瀬市の賃貸オーナーにとっての本命が、東京都の「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」です。令和8年度の予算規模は218億円。名前のとおり、賃貸住宅の断熱改修と再エネ導入を「集中的に」後押しするために組まれた、賃貸オーナー専用と言ってよい制度です。

ポイントは、対象が「賃貸住宅の1棟所有者等」であること。分譲マンションの管理組合ではなく、あなたのようにアパート・マンションを1棟丸ごと所有しているオーナーが主役の制度です。市の耐震助成が「所有者居住」に絞られ、賃貸集合住宅がこぼれ落ちるのとは対照的です。

助成の柱は大きく二つです。ひとつは、省エネ性能の診断・表示と、一定水準以上の断熱性能を確保する改修(高断熱窓・ドア、断熱材の設置など)を実施する賃貸住宅への経費助成。もうひとつは、太陽光発電と低圧一括受電を組み合わせて各住戸へ再エネ電力を供給する賃貸住宅への、太陽光発電設備や附帯設備の経費助成です。つまり「建物を暖かく・涼しくする断熱」と「電気を自前で作って各戸に配る再エネ」の両輪を、1棟単位で支援してくれます。

賃貸オーナーの視点で言えば、これは単なる環境対策ではありません。断熱改修は入居者の光熱費を下げ、防音・防犯にも資するため、募集時の訴求力=家賃維持力に直結します。「病院のまち清瀬」で医療従事者やファミリーを狙うなら、断熱・省エネ性能は静かな差別化材料になります。制度は事業者登録制を取っており、令和8年度の交付申請は2026年6月26日から2027年3月31日までの受付が予定されています(事前申込・事業者登録は先行実施)。制度の詳細な補助率・上限額・対象要件は年度の要綱で細かく定められるため、必ず「登録事業者」経由で、契約前に対象確認をすることが使いこなしの絶対条件です。予算枠に達すれば早期終了もあり得ますから、動くなら年度前半が有利です。


【都】省エネ改修促進事業・断熱太陽光普及拡大事業――窓・断熱・太陽光の実弾

218億円事業と並行して、東京都には賃貸にも使える省エネ系の助成がいくつも走っています。代表的なのが次の二つです。

既存住宅における省エネ改修促進事業(高断熱窓・ドア・断熱材・浴槽)は、クール・ネット東京(東京都地球温暖化防止活動推進センター)が窓口となり、高断熱窓・断熱ドア・断熱材・高断熱浴槽といった改修を支援します。窓は住戸の熱の出入りが最も大きい部位で、費用対効果の高い改修ポイントです。国の「先進的窓リノベ2026事業」と役割が重なる部分がありますが、国と都で対象や補助単価が異なるため、どちらが有利かは物件ごとに試算が必要です。原則として同一工事への国・都の重複受給には制限があるため、ここは登録事業者と一緒に組み合わせを設計します。

断熱・太陽光住宅普及拡大事業は、太陽光発電や蓄電池の設置を支援する制度です。清瀬のような郊外の一戸建て賃貸や低層アパートは屋根面積を取りやすく、太陽光との相性が悪くありません。共用部の電力を自家消費に回せれば、オーナーが負担する共用電気代(=運営経費)そのものを圧縮でき、NOIの底上げにつながります。

これらの都の制度は年度ごとに要綱・予算・受付期間が更新されます。「昨年度はこうだった」という記憶で動くと、対象要件のズレで足元をすくわれます。必ず最新年度の要綱を一次情報で確認してください。


【国】住宅省エネ2026キャンペーン――賃貸集合給湯省エネが賃貸オーナーの本命

国の「住宅省エネ2026キャンペーン」は、「給湯省エネ2026事業」「先進的窓リノベ2026事業」「みらいエコ住宅2026事業」、そして賃貸オーナーに直球の「賃貸集合給湯省エネ2026事業」の4本柱で構成されています。

このうち、清瀬の賃貸オーナーにまず検討してほしいのが賃貸集合給湯省エネ2026事業です。これは経済産業省(資源エネルギー庁)が実施する、既存の賃貸集合住宅に特化した給湯器の省エネ化支援です。従来型給湯器を小型の省エネ型給湯器(エコジョーズなど)に取り替える費用の一部を補助します。補助額は、追い焚きなしで5万円/台、追い焚きありで7万円/台が基本で、一定の排水設備工事を伴う場合は最大8万円/台・10万円/台まで加算されます。対象は2025年11月28日(閣議決定日)以降に工事着手したもので、既存賃貸のエコジョーズ・エコフィール等への交換が対象です。

戸数の多い賃貸をお持ちのオーナーには、この「1台あたり定額」が効いてきます。仮に10戸すべての給湯器を追い焚きあり・排水工事ありで更新すれば、単純計算で最大100万円規模の補助になり得ます。老朽給湯器はいずれ壊れて緊急交換になり、退去や入居者クレームの引き金になります。壊れる前に、補助が出るタイミングでまとめて更新する――これは典型的な「攻めの守り」です。

先進的窓リノベ2026事業(窓の断熱改修、上限は工事規模により大きい枠)、給湯省エネ2026事業、みらいエコ住宅2026事業も、物件の条件次第でオーナー物件に使える場面があります。ただし国のキャンペーンは登録事業者(工事施工業者)を通じて申請する仕組みで、予算上限に達し次第終了します。人気の窓・給湯は例年、年度後半に枠が埋まりがちです。使うなら早めに施工計画を固めるのが鉄則です。


【国】マンションストック長寿命化等モデル事業――投資型の1棟マンション向け

マンションストック長寿命化等モデル事業は、国土交通省が実施する、老朽化マンションの再生・長寿命化を後押しする制度です。「先導的再生モデルタイプ」「管理適正化モデルタイプ」があり、計画支援(事業前の立ち上げ段階)は原則年間500万円を上限に最大3年間、工事支援(改修・建替え工事段階)もあります。

もともと分譲マンションの管理組合を主対象とした制度ですが、独自性・創意工夫・合理性などが評価される「先導的なプロジェクト」であれば、投資型の1棟マンションでも検討余地があります。築古の大規模物件を、単なる原状回復ではなく「長寿命化」という付加価値のある改修として再生し、出口の物件価値そのものを底上げしたいオーナーには、選択肢として頭の隅に置く価値があります。採択制で難易度は高いため、これは「使える人は限られるが、当たれば大きい」枠として理解してください。


【市】清瀬市の耐震助成――「賃貸は対象外」の壁と、それでも読む価値

ここまで都・国を先に説明したのは、清瀬市の看板制度である耐震助成が、賃貸オーナーには原則届かないからです。それでも、制度の輪郭を正確に知っておくことには意味があります。持ち家部分と賃貸部分が混在する物件や、相続・住み替えの局面で効いてくる場面があるからです。

清瀬市木造住宅耐震改修等助成制度は、旧耐震基準(昭和56年5月31日以前建築)の木造住宅を対象に、耐震改修工事に要する費用の3分の1以内・上限30万円を助成します。建物を取り壊す除却工事も、同じく3分の1以内・上限30万円が対象です。ただし助成対象は「木造住宅耐震診断助成金の交付を受け、上部構造評点1.0未満と診断された住宅であり、現に所有者が居住している住宅」に限られます。つまり、他人に貸している純粋な賃貸アパートは、この制度からは外れます。助成は1住宅につき1回限り、毎年度の予算の範囲内という条件も付きます。

その前段にある清瀬市木造住宅耐震診断助成制度は、旧耐震の木造住宅の耐震診断費用について、消費税を除く費用の3分の2以内・上限10万円を助成します。こちらも延べ床面積の半分以上が居住用の個人所有住宅が対象です。

まとめると、市の耐震助成は「持ち家の旧耐震木造」を守るための制度で、賃貸専業のオーナーにとっては直接の弾になりにくい。だからこそ、賃貸1棟を丸ごと見てくれる都の218億円事業と、国の賃貸集合給湯省エネが、清瀬の賃貸オーナーにとっての主戦場になる――この構造を押さえておいてください。なお、旧耐震の物件をお持ちなら、補助の有無に関わらず耐震性能そのものは出口価格・融資評価・入居者募集のすべてに響きます。制度に乗らなくても、耐震の一次診断だけは早めに受けておく価値があります。


【副特集】「病院のまち清瀬」の医療・介護施設オーナーへ――BCPと省エネの二正面

清瀬の特色を踏まえ、病院・クリニック・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)・介護施設をお持ちのオーナー・事業者向けに、視点を一つ加えます。

医療・介護施設は、一般賃貸以上に建物の停止が事業の停止に直結します。停電・断水・空調停止が入居者・患者の安全に関わるため、BCP(事業継続計画)と防災の観点が経営の生命線です。ここで効いてくるのが、先に挙げた太陽光・蓄電池の支援です。停電時に共用部・医療機器の一部を自家電力でまかなえる体制は、単なる省エネを超えて「止まらない施設」という競争力になります。介護報酬・医療報酬の枠内で運営する施設は、光熱費という固定費の圧縮がそのまま収支改善に直結するため、省エネ改修の投資回収も読みやすいはずです。

また、外壁・防水・鉄部塗装といった大規模修繕は、医療・介護施設では「入居者・患者の生活を止めずに、安全に」進める必要があります。ここは工法選択が結果を大きく左右します。次のセクションで、私たちが現場でどう考えているかをお話しします。


税務の勘どころ――損金算入・雑収入・固定資産税

オーナーにとって補助金の価値は、現金の入りだけでは測れません。税務処理までを含めて初めて「手残り」が決まるからです。ここは顧問税理士と必ず詰めていただく前提で、勘どころだけ整理します。

第一に、修繕費(損金一括算入)か、資本的支出(減価償却)かの切り分けです。原状回復や維持管理のための工事は修繕費として当年度の損金にでき、節税効果が早く出ます。一方、建物の価値を高めたり耐用年数を延ばしたりする工事(=資本的支出)は、いったん資産計上して減価償却で少しずつ費用化します。断熱改修や設備更新は内容によってどちらにも振れ得るため、「修繕費か資本的支出か、税務処理で結果が大きく変わります」。工事内容の切り分けと見積書の書き方は、着工前に設計しておくべきです。

第二に、補助金は原則、受給時に雑収入として課税対象になります。「補助金が出たから丸ごと得」ではなく、受給益にも税がかかる点に注意が必要です(圧縮記帳など課税を繰り延べる会計処理が使える場合もありますが、要件があります)。

第三に、固定資産税の減額措置です。国の耐震・省エネ・バリアフリー改修に伴う固定資産税の減額は、その多くが「住宅」を対象とし、賃貸住宅は対象範囲が限定される、あるいは要件が細かいのが実情です。清瀬市の耐震助成が「所有者居住」に絞られるのと同じ構造で、賃貸の固定資産税減額は「使えたらラッキー」程度に見ておき、本命はあくまで現金補助+損金算入と考えるのが安全です。


工法の選択――足場か、ロープアクセスか(明誠のサービス)

ここからは自社サービスの話であることを明示したうえで、オーナーの投資判断に直結する「工法」の話をします。大規模修繕のコストは、実は塗料や防水材そのものより、仮設足場の費用と工期に大きく左右されるからです。

私たち明誠は、通常の足場を組む工法と、産業用ロープで施工する無足場工法(ロープアクセス)、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つを、建物ごとに最適提案できる数少ない会社です。ロープアクセスは足場の架設・撤去が不要なため、足場費用の圧縮と工期短縮、そして居住者・利用者の生活影響の最小化に効きます。清瀬のような低〜中層のアパート・小規模ビル、あるいは「入居者や患者の生活を止められない」医療・介護施設では、この選択肢の有無がコストと入居率の両方を左右します。

ロープアクセス工法そのものの仕組み、適用できる建物条件、足場工法との費用比較については、専門サイトロープアクセス工法の解説サイト(rope-access-method.com)にまとまっています。「自分の物件で使えるのか」を判断する前提知識として、オーナーご自身で目を通しておく価値があります。

もちろん万能ではありません。全面打診や大面積のタイル張り替えなど、足場を組んだほうが安全・効率的な工事もあります。だからこそ「1〜2工法しか持たない会社」ではなく、現場を見て最適な組み合わせを選べることが、オーナーのコストに直結します。補助金で工事費の一部が戻るとしても、そもそもの工事費と工期を最適化できれば、投資回収はさらに早まります。補助金と工法最適化は、掛け合わせて初めて効果が最大になります。


よくある質問(FAQ)

Q. 補助金の対象工事を、足場を組まずに(ロープアクセスで)施工しても補助金は使えますか?
A. 東京都・国の省エネ系補助金は「どの工法で施工したか」ではなく「対象製品・対象性能を満たしたか」で判定されるのが原則です。したがって外壁の断熱改修や窓改修そのものが要件を満たしていれば、無足場工法(ロープアクセス)で施工しても補助対象になり得ます。ただし工事内容によっては足場が前提となる検査・報告が求められる場合があるため、申請前に交付要綱と施工会社の両方で確認してください。工法の適用条件はrope-access-method.comでも整理されています。

Q. 清瀬市には、賃貸オーナーがそのまま使える「市独自」の補助金はありますか?
A. 2026年度時点で、市の看板である耐震改修・診断助成は「所有者が居住している木造住宅」が対象で、賃貸専業の物件は原則対象外です。賃貸オーナーの主戦場は、東京都の「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業(218億円)」と、国の「賃貸集合給湯省エネ2026事業」になります。

Q. 都の218億円事業と国の給湯・窓補助は、同時に使えますか?
A. 制度が異なれば併用できる場合もありますが、同一の工事に国と都の補助を重ねることには制限があります。どの工事にどの制度を当てるかの「割り付け」を、登録事業者と契約前に設計するのが正解です。

Q. 補助金はいつまでに動けばよいですか?
A. 都の218億円事業は令和8年度の交付申請が2026年6月26日〜2027年3月31日に予定され、国のキャンペーンも予算上限に達し次第終了します。人気の窓・給湯は年度後半に枠が埋まりがちなので、動くなら年度前半が有利です。

Q. 補助金を受け取ると税金はどうなりますか?
A. 原則、受給時に雑収入として課税対象になります。工事が修繕費か資本的支出かで損金算入のタイミングも変わります。必ず顧問税理士と事前に整理してください。

Q. 「病院のまち清瀬」で医療・介護施設を持っています。何から手を付ければよいですか?
A. まずは太陽光・蓄電池による非常用電源の確保(BCP対策)と、空調・給湯の省エネ改修を優先すると、投資回収と施設の競争力の両方に効きます。医療・介護施設は建物の停止が事業の停止に直結するため、外壁・防水の大規模修繕も「利用者・患者の生活を止めない工法」で計画することが重要です。断熱・省エネの都・国の助成と、給湯省エネの国補助を組み合わせつつ、施工中の生活影響を最小化できる工法を、現地調査のうえでご提案します。

Q. 相談したいのですが、いきなり工事の契約が前提になりますか?
A. いいえ。まずは1棟の現地調査と、補助金を織り込んだ利回り改善シミュレーション・キャッシュフロー試算だけでも承ります。補助金の対象になるか、どの制度をどの工事に割り付けるのが有利かを整理したうえで、投資判断の材料をお渡しします。契約を急かすことはありません。


結語――「使える制度」を、使える物件で

清瀬市の賃貸・ビルオーナーにとっての要点は、たった二つです。ひとつ、市の耐震助成は持ち家向けで、賃貸には原則届かない。もうひとつ、その代わり、都の218億円事業と国の賃貸集合給湯省エネという「賃貸を丸ごと見てくれる制度」が待っている。この使い分けを間違えなければ、清瀬の「守りの効く市場」で、家賃を上げずに手残りを増やすことは十分に可能です。

私たち明誠は、大規模修繕の設計から工法選択、補助金の割り付けまでを一気通貫でご相談いただけます。お持ちの物件で、まだこの補助金の検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度お問合せください。1棟の現地調査と、利回り改善シミュレーション・キャッシュフロー試算だけでも、ご相談を承ります。「病院のまち清瀬」で長く回る物件を、次の10年に向けて一緒に整えていきましょう。


参考にした主な一次情報・出典

  • 清瀬市|木造住宅耐震改修等助成制度(工事費1/3・上限30万円): https://www.city.kiyose.lg.jp/kurashi/bousai_anzen/bousai_kiki/1003364/1003387.html
  • 清瀬市|木造住宅耐震診断助成制度(費用2/3・上限10万円): https://www.city.kiyose.lg.jp/kurashi/sumai/1014152/1003388.html
  • 清瀬市|住宅の耐震化・住み替え(補助・助成金): https://www.city.kiyose.lg.jp/kurashi/sumai/1014152/index.html
  • 東京都環境局|賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進 令和8年度助成事業受付等(218億円): https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2026/05/2026052202
  • クール・ネット東京|令和8年度 既存住宅における省エネ改修促進事業(高断熱窓・ドア・断熱材・浴槽): https://www.tokyo-co2down.jp/subsidy/ene_reform/ene_reform_r08/
  • 資源エネルギー庁|賃貸集合給湯省エネ2026事業: https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/kyutokidonyu/chintaisyugo2025.html
  • 住宅省エネ2026キャンペーン【公式】: https://jutaku-shoene2026.mlit.go.jp/
  • 国土交通省|マンションストック長寿命化等モデル事業(令和8年度): https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000273.html

※本記事は2026年8月時点で公表されている情報をもとに、賃貸オーナーの投資判断の観点から整理したものです。補助率・上限額・対象要件・受付期間は年度の要綱で変更され、予算枠に達し次第終了する場合があります。申請前に必ず各実施機関の最新の一次情報をご確認いただき、税務の取り扱いは顧問税理士にご相談ください。本記事は特定の投資・税務判断を助言するものではありません。

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