上野原市のマンション補助金|大規模修繕2026年版
山梨県上野原市で分譲マンションの管理組合を運営されている方から、いちばん多くいただく質問はこれです。
「上野原市に、マンションの大規模修繕に使える補助金はありますか?」
先に結論を書きます。2026年8月時点で、上野原市が管理組合に対して外壁塗装・屋上防水・シーリング打替えといった共用部の大規模修繕そのものに直接お金を出す制度は、市の公開情報からは確認できません。 これは上野原市に限った話ではなく、人口2万人規模の自治体では珍しくない状況です。
ただし、「共用部への直接補助がない」ことと「使えるお金が何もない」ことは、まったく別の話です。上野原市には、条件が合えば管理組合の工事費を数十万円から数百万円単位で動かしうる制度が、確かに存在します。
そしてもうひとつ。上野原市には、私が全国の自治体資料を読んできたなかでもかなり珍しい「数字の食い違い」が2か所あります。市のホームページに書かれている金額・期限と、令和8年3月に改定されたばかりの「上野原市耐震改修促進計画」に書かれている金額・期限が、はっきり違うのです。これを知らずに「もう終わった制度だ」と判断すると、使えたはずの補助を取り逃がします。
この記事では、上野原市の一次情報だけを根拠に、管理組合の理事会がそのまま議案書に転記できるレベルまで落とし込んで整理します。最終更新:2026年8月19日
この記事で答える5つの質問
- 上野原市に、マンション共用部の大規模修繕に直接使える補助金はあるか?
- 上野原市の補助制度のうち、分譲マンションの管理組合が現実に使えるものはどれか?
- ネットで見かける「上野原市は最大143万7,500円」は、マンションに使えるのか?
- 上野原市の分譲マンションは、なぜ耐震ではなく「劣化と積立金」が論点になるのか?
- 補助金より先に、工事費そのものを数百万円下げる方法はないのか?
順に答えていきます。
結論:上野原市の管理組合が押さえるべきは「4つ」
まず全体像です。上野原市の制度を管理組合目線で仕分けると、次のようになります。
| # | 制度名 | 管理組合との相性 | 補助率・上限 | 所管 |
|---|---|---|---|---|
| ① | 災害時避難路通行確保対策事業 | ◎条件が合えば最大級 | 設計5/6以内・工事11/15以内 | 建設課都市計画担当 |
| ② | ブロック塀等安全確保対策支援事業 | ○敷地に塀があれば | 2/3以内・重要路線30万円/一般路線20万円 | 建設課都市計画担当 |
| ③ | アスベスト飛散防止対策事業 | ○調査費のみ | 10/10以内・25万円まで | 建設課都市計画担当 |
| ④ | マンション長寿命化促進税制(国) | △要件が厳しいが効く | 建物固定資産税を減額 | 税務課ほか |
| × | 木造住宅耐震診断/改修等/シェルター | ×対象外(明文除外) | ─ | 建設課都市計画担当 |
出典:上野原市「住宅・建築物の補助事業について」(建設課)、上野原市耐震改修促進計画(令和8年3月)
そして、この表よりもはるかに大きい金額が動くのが「工法の選び方」です。 仮設足場は総工事費の15〜25%を占めます。5,000万円の工事なら750万〜1,250万円。ブロック塀の補助上限30万円とは、桁が2つ違います。この話は記事の後半で詳しく書きます。
① 災害時避難路通行確保対策事業:上野原市で最も金額が大きい
どんな制度か
平成25年11月に「建築物の耐震改修の促進に関する法律」(耐震改修促進法)が改正され、緊急輸送道路に近接する旧耐震基準の建築物には耐震診断が義務づけられました。上野原市はこの対象建築物の所有者負担を軽くするため、国・山梨県と連携して補助制度を設けています。
対象となる道路は、市が耐震改修促進法第6条第3項第1号の適用を受ける道路として指定した次の5路線です。
| 道路種別 | 路線名 | 区間 |
|---|---|---|
| 高速道路 | 中央自動車道(富士吉田線) | 市内全線 |
| 一般国道 | 国道20号 | 市内全線 |
| 主要地方道 | 上野原丹波山線 | 市内全線 |
| 主要地方道 | 上野原あきる野線 | 国道20号交点から上野原丹波山線交点まで |
| 主要地方道 | 四日市場上野原線 | 市内全線 |
上野原市のマンションは、国道20号(甲州街道)沿いや上野原駅・四方津駅の周辺に集中しています。国道20号が「市内全線」で指定されている以上、沿道のマンションが対象になっている可能性は決して低くありません。
補助額が大きい
上野原市耐震改修促進計画に記載された補助内容は次のとおりです。
| 区分 | 補助率 | 補助対象費用の限度 |
|---|---|---|
| 耐震改修に関わる設計/建替えに関わる設計 | 要した費用の 5/6以内 | 要綱で定める限度額以内(床面積に応じて算出) |
| 耐震改修工事/建替え工事/除却工事 | 要した費用の 11/15以内 | 要綱で定める限度額以内(用途・構造・床面積に応じて算出) |
補助率5/6は約83%、11/15は約73%です。これは自治体の補助制度としては極めて手厚い水準で、設計費にまで5/6が付くという点が実務上とても大きいのです。理由は後述します。
★食い違い1:期限は「令和8年3月31日」か「令和17年度」か
ここが上野原市の一次情報を読み込まないと分からない部分です。
- 市ホームページ(更新日:2024年4月1日):「補助制度は、耐震改修等については令和8年3月31日までです。」
- 上野原市耐震改修促進計画(令和8年3月改定):設計・工事いずれも事業期間は令和17年度まで。
今日は2026年(令和8年)8月19日です。市ホームページの記載を素直に読めば「今年の3月末で終わった制度」ですが、その後に改定された計画では令和17年度まで続くことになっています。文書の日付だけを見れば新しいのは計画側です。
とはいえ、私は「令和17年度まで使えます」と断定しません。計画に書かれた事業期間と、実際に予算がついている年度は別問題だからです。理事会が最初にやるべきは、建設課都市計画担当(Tel:0554-62-3123)に「災害時避難路通行確保対策事業は令和8年度も受付していますか」と電話で1行確認することです。 5分で終わります。
★上野原市の避難路沿道建築物は「10棟中10棟が耐震性不十分」
これも上野原市固有の重い事実です。
| 対象の建築物 | 耐震性がある建築物 | 耐震性が不十分な建築物 |
|---|---|---|
| 10棟 | 0棟 | 10棟 |
出典:上野原市耐震改修促進計画 5頁(令和7年度末時点)
計画には「市内の要安全確認計画記載建築物(避難路沿道建築物)については、全ての所有者から耐震診断の結果が報告されており」と明記されています。つまり、この10棟の所有者は既に診断を受け、結果を所管行政庁へ報告しているということです。
もしお住まいのマンションがこの10棟に含まれているなら、管理組合の書類棚のどこかに耐震診断の報告書が眠っているはずです。 理事が1年で交代する管理組合では、こうした書類の存在自体が引き継がれていないことがよくあります。まずは過去の総会議事録と書類ファイルを確認してください。診断が済んでいるということは、次のステップである「設計」から補助が使える状態にあるということです。
なぜ「設計費に5/6」が効くのか
耐震改修と大規模修繕は、行政側では別の話として扱われます。しかし建物の側から見ると、外壁の耐震補強と外壁の塗装・防水は、必要な仮設がまったく同じです。
ここを分けて発注すると、足場を2回架けることになります。5,000万円規模の工事なら、仮設だけで数百万円を余計に払う計算です。逆に、設計段階から一体で組めば1回で済みます。
私が現場で何度も見てきた失敗パターンは、「耐震は行政案件だから別枠」と思い込んで、先に大規模修繕を発注してしまうケースです。設計費にまで5/6の補助が付く制度がある以上、上野原市では「設計から一緒に組む」のが正しい順番です。
② ブロック塀等安全確保対策支援事業:敷地に塀があるなら必ず確認
上野原市は2段構え
上野原市のブロック塀補助は、路線の格によって上限が変わります。
| 区分 | 対象路線の定義 | 補助率 | 上限(1敷地) |
|---|---|---|---|
| 重要路線 | 地域防災計画に記載された第1次・第2次緊急輸送道路、若しくは緊急輸送道路から指定避難所まで至る道路で市が指定した道路 | 2/3以内 | 30万円 |
| 一般路線 | 地域防災計画又は耐震改修促進計画において避難路・通学路として位置づけた道路のうち重要路線以外 | 2/3以内 | 20万円 |
補助額の計算は、次の1・2のうちいずれか少ない額の3分の2です。
- ブロック塀等の除却、建替え又は改修費用(施工業者からの見積り額)
- 既存のブロック塀等の長さ1メートル当たり25,000円を乗じた額
出典:上野原市「ブロック塀等安全確保対策支援事業」(建設課/2023年8月16日更新)
対象となる塀の3条件
次のすべてに当てはまる塀が対象です。
- 補強コンクリートブロック造又は組積造の塀
- 地域防災計画又は耐震改修促進計画において避難路又は通学路として位置づけた道路に面した塀
- 安全点検の結果、不適合がある塀
ここでいう安全点検とは、国土交通省住宅局建築指導課長通知(平成30年6月21日付け国指第1130号)の別紙2「第1段階:外観に基づく点検」による点検を指します。ひび割れ、傾き、控え壁の有無、鉄筋の状態などを外観から確認する項目です。
実務で必ず引っかかる3つの落とし穴
落とし穴1:先着順である。
市のページには「予算の範囲内で実施しますので、申し込み多数の場合には先着順とさせていただきます」と明記されています。人口約2万人の自治体の予算枠は決して大きくありません。年度が始まってから動くのでは遅い可能性があります。
落とし穴2:事前相談と現地確認が必須。
「補助を希望される方は、必ず事前にご相談ください。市職員が現地確認を行います」とあります。工事契約を先に結んでから相談しても間に合いません。
落とし穴3:大規模修繕の一括契約に塀を混ぜると危険。
これは全国の自治体に共通する話ですが、この種の補助金は交付決定前に契約・着工したものを対象外とするのが通例です。外構のブロック塀だけは別契約に切り出すか、少なくとも工程を分けて交付決定を待つ段取りにしてください。総合契約に紛れ込ませた結果、20万円・30万円を取り逃がした管理組合を私は何組も見ています。
なお、管理組合名義で申請できるかどうかは、市の公開ページからは断定できません。制度の対象者は「所有又は管理しているブロック塀等を除却、建替え又は改修する方」と書かれており、管理組合が該当するかは窓口判断になります。ここも事前相談で確認してください。
③ アスベスト飛散防止対策事業:上野原市は「調査のみ」
補助内容
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象建築物 | 市内に存在する建築物(除却予定のものは除く)/市税等に滞納の無い方が所有する民間建築物 |
| 対象事業 | 対象建築物の吹付け建材について行うアスベスト含有の有無に係る調査 |
| 補助内容 | 対象経費の10分の10以内で25万円まで |
| 申込 | 計画段階で協議(国庫補助事業のため調整が必要)/建設課都市計画担当へ |
補助率10分の10、つまり調査費は実質全額が対象(上限25万円)です。これは使わない手はありません。
★上野原市固有の注意点:除去工事の補助が見当たらない
ここが重要です。山梨県内の他市、たとえば山梨市や都留市では、アスベストの調査に加えて除去・封じ込め・囲い込み工事に対しても補助(対象経費の3分の2以内・上限400万円など)を設けています。しかし上野原市の公開ページに記載されている対象事業は「調査」のみで、除去工事の補助メニューは確認できませんでした。
これが何を意味するか。調査でアスベストが「有り」と出た場合、除去費用は原則として管理組合の自己負担で予算を組む必要がある、ということです。
アスベストが出てくる場所は、だいたい決まっています。
- 機械室・電気室の天井や梁
- 屋内駐車場の天井
- 階段室の裏側
- エレベーター機械室
- パイプスペース(PS)内部
そして厄介なのは、足場を架けた後、天井を開口した後になって発覚することが多い点です。工事が始まってから「アスベストが出ました、追加で数百万円かかります」となれば、臨時総会を開かざるを得ません。工期は止まり、住民の不信感は一気に高まります。
だからこそ、上野原市では「調査だけでも先に無料でやっておく」価値が他市以上に高いのです。除去費の補助がない前提で予算を組む必要がある以上、金額の見通しを早く立てることが決定的に効きます。竣工図の仕上表と現況写真を持って、建設課都市計画担当に相談してください。
④ 木造住宅の3事業は「対象外」──一次情報で確認しました
インターネットの補助金まとめサイトで「上野原市は最大143万7,500円」「上野原市は最大125万円」といった記載を見た方がいるかもしれません。これは木造個人住宅の耐震改修の金額で、分譲マンションの共用部には使えません。
根拠は、市の公開ページに書かれた対象住宅の要件です。
| 事業名 | 補助内容 | マンションが外れる根拠(明文) |
|---|---|---|
| 木造住宅耐震診断支援事業 | 診断費用無料(個人負担なし) | 「戸建て住宅(長屋及び共同住宅を除く)」 |
| 木造住宅耐震改修等支援事業 | 工事費(限度額125万円※) | 「戸建て住宅(長屋及び共同住宅を除く)」 |
| 木造住宅耐震シェルター設置支援事業 | 設置工事費(限度額36万円) | 「戸建て住宅(長屋及び共同住宅を除く)」 |
3事業とも、共通して次の条件が付いています。
- 市内に存する住宅(1所有者につき1棟まで1度限り)
- 昭和56年5月31日以前に木造在来工法で建築された住宅
- 2階建て以下で地階を有せず、延床面積300平方メートル以下
- 専用住宅又は居住部分が2分の1以上の併用住宅
- 市税等に滞納の無い方が所有する住宅
RC造・SRC造の分譲マンションは、「木造在来工法」「2階建て以下」「延床300㎡以下」「共同住宅を除く」のいずれの入口からも入れません。これは窓口判断ではなく、要件の明文により対象外と読み切れます。
★食い違い2:限度額は「125万円」か「143万7,500円」か
ここでも数字が食い違っています。
- 市ホームページ(更新日:2024年4月1日):木造住宅耐震改修等支援事業の補助内容は「耐震改修工事費(限度額125万円)」
- 上野原市耐震改修促進計画(令和8年3月改定)9〜10頁:木造住宅耐震改修等支援事業の補助率(額)は「工事費(143.75万円を限度)」/事業期間は令和8年度まで
18万7,500円の差です。管理組合の共用部には関係ありませんが、理事のなかに市内に旧耐震の木造実家を持っている方がいれば、この差は無視できません。 「上野原市の耐震改修補助は125万円だと思っていたら、計画では143万7,500円になっていた」という話は、掲示板や理事会だよりに載せる価値のある情報です。
また、木造住宅耐震診断は費用が完全に無料(全額市負担)で、申込期間は4月1日から1月31日まで(土日・祝日を除く)。申込先は建設課(市役所庁舎棟2階)都市計画担当で、申込書と一緒に建築年次のわかる資料の持参が必要です。管理組合が住民に情報還元すると、総会での理事会への信頼が確実に上がります。補助金の情報提供は、管理組合ができるいちばん安上がりな住民サービスです。
上野原市の分譲マンションが「耐震」ではなく「劣化」で悩む理由
ここからは、上野原市というまちの構造の話をします。数字を見ると、上野原市の分譲マンションが置かれた立場がはっきり分かります。
共同建て住宅の97.6%が新耐震基準
令和5年の住宅・土地統計調査をもとに令和7年度末を推計した、上野原市の住宅データです。
| 建て方 | 住宅数 | 昭和55年以前 | 昭和56年以降 |
|---|---|---|---|
| 戸建て | 7,899戸(83.7%) | 2,461戸(31.2%) | 5,428戸(68.8%) |
| 共同建て | 1,536戸(16.3%) | 37戸(2.4%) | 1,499戸(97.6%) |
| 合計 | 9,425戸 | 2,498戸(26.5%) | 6,927戸(73.5%) |
上野原市の共同建て住宅1,536戸のうち、旧耐震基準はわずか37戸(2.4%)。97.6%が新耐震基準です。
これは何を意味するか。上野原市の分譲マンションにとって、「耐震」はほぼ解決済みの論点だということです。 市内の住宅耐震化率は86.6%(令和7年度末推計)で、令和17年度末の目標は95%。市が耐震化で追いかけているのは、圧倒的に木造戸建てです。だから補助メニューも木造個人住宅に偏っている。制度設計としては、まったく合理的です。
裏を返せば、上野原市の管理組合が直面している本当の課題は、耐震ではなく「経年劣化」と「修繕積立金」です。 昭和56年以降に建った1,499戸の共同住宅は、いま築25年から45年のゾーンに入っています。2回目・3回目の大規模修繕、給排水管の更新、エレベーターのリニューアルが同時に押し寄せる時期です。
そして、その領域に上野原市の補助金は用意されていません。だからこそ、補助金を探す以上に「工事費そのものをどう下げるか」が決定的になります。
賃貸共同住宅のオーナーが見るべき数字
法第14条第1号でいう「多数の者が利用する特定建築物等」のうち、「特定多数の者が利用する施設(賃貸住宅(共同住宅に限る)、寄宿舎、下宿、事務所、工場等)」の耐震化状況は次のとおりです。
| 区分 | 建築物数 | 耐震性有 | 耐震化率 |
|---|---|---|---|
| 特定多数の者が利用する施設(全体) | 22棟 | 19棟 | 86.4% |
| うち民間建築物 | 17棟 | 14棟 | 82.4% |
賃貸マンション・アパートを所有する収益不動産オーナーの方は、この17棟のうち耐震性が確認されていない3棟に該当していないかを確認する価値があります。該当する場合、入居募集や金融機関の評価にも影響します。オーナー物件の修繕については収益不動産オーナー向けのご提案もご覧ください。
想定地震の被害想定は決して軽くない
「耐震はほぼ解決済み」と書きましたが、地震そのもののリスクが小さいという意味ではありません。上野原市地域防災計画が前提としている建物被害想定です。
| 想定される地震 | 市内の最大震度 | 全壊 | 半壊 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 南海トラフ巨大地震(東側ケース) | 5強 | 215棟 | 623棟 | 838棟 |
| 首都直下地震M7(立川市直下) | 6弱 | 1,950棟 | 2,367棟 | 4,317棟 |
| 扇山断層 | 6強 | 660棟 | 1,226棟 | 1,886棟 |
| 【参考】首都直下地震(M8クラス相模トラフ) | 7 | 9,657棟 | 4,867棟 | 14,524棟 |
扇山断層は上野原市のすぐ近くにある活断層で、動けば市内で震度6強が想定されています。 住宅総数9,425戸に対して全壊660棟・半壊1,226棟という数字は、決して他人事の規模ではありません。躯体が新耐震でも、劣化して浮いたタイル、傷んだ手すり、傾いたブロック塀は、揺れれば落ちます。大規模修繕は美観の問題ではなく、安全の問題です。
マンション長寿命化促進税制:上野原市では「割合」を必ず確認
制度の概要
管理組合が使える国の税制優遇です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象工事 | 一定の要件を満たす長寿命化工事(屋根防水・床防水・外壁塗装等の一体実施) |
| 対象期間 | 令和5年4月1日から令和9年3月31日までに工事完了 |
| 減額対象 | 翌年度分の建物の固定資産税 |
| 減額範囲 | 1戸あたり床面積100㎡までの部分 |
| 適用回数 | 1回限り |
| 申告期限 | 工事完了後3か月以内 |
主な要件は次の7つです。
- 築20年以上であること
- 総戸数10戸以上であること
- 過去に1回以上の長寿命化工事を実施していること
- 管理計画の認定を受けている、又は助言・指導を受けて修繕積立金の額を引き上げていること
- 長寿命化工事(屋根防水・床防水・外壁塗装等)を一体的に実施すること
- 対象期間内に工事を完了すること
- 工事完了後3か月以内に市へ申告すること
★減額割合は上野原市の条例次第
ここが要注意です。減額割合は市町村の条例で定めることとされており、国の参酌基準は3分の1、条例で定められる範囲は6分の1から2分の1です。 上野原市の条例上の割合が何分の1なのかは、公開情報からは確認できませんでした。
着工前に、上野原市役所(代表 Tel:0554-62-3111)の税務担当へ、次の3点を確認してください。
- マンション長寿命化促進税制について、上野原市では条例を制定しているか
- 制定している場合、減額割合は何分の1か
- 申告の窓口と必要書類は何か
工事が終わってから「うちの市は条例がなかった」と分かるのが、いちばん残念なパターンです。電話1本、3分で済みます。
要件4「管理計画認定」が上野原市では難所になる
要件4がこの税制の最大の壁です。そして上野原市には、構造的な難しさがあります。
山梨県のマンション管理計画認定制度は、「町村部にあるマンションのみ」が対象です。 山梨県の公開情報には、マンションの管理の適正化の推進に関する法律第3条の規定に基づき、県計画の対象区域を市部を除く町村部としていること、令和4年4月1日から受付を開始したことが明記されています。
上野原市は「市」ですから、県の窓口では申請できません。 では上野原市自身がマンション管理適正化推進計画を作成し、認定の受付をしているのか。ここは公開情報からは確認できませんでした。「制度がない」と断定はしません。確認できなかった、というのが正確です。
理事会がやるべきことは、建設課都市計画担当(Tel:0554-62-3123)への1行の質問です。
「上野原市はマンション管理適正化推進計画を作成していますか。管理計画認定の申請窓口はどちらになりますか。」
もし認定のルートがない場合は、要件4のもう一方、「助言・指導を受けて修繕積立金の額を引き上げている」ルートを検討することになります。
認定が取れない場合の代替ルート
管理計画認定が難しい場合でも、管理の質を客観的に示す手段はあります。
| 制度 | 実施主体 | 使いどころ |
|---|---|---|
| マンション管理適正化診断サービス | 日本マンション管理士会連合会 | 保険料率の優遇、管理状態の客観化 |
| マンション管理適正評価制度 | マンション管理業協会 | 管理状態の星評価、資産価値の説明材料 |
2026年度から、住宅金融支援機構の「マンションすまい・る債」の利率上乗せ対象が、管理計画認定に加えて管理適正評価制度・管理適正化診断サービスにも拡充されています。 認定が取れない地域の管理組合にとって、これは現実的な代替ルートです。
資金の作り方:補助金が乏しい上野原市だからこそ
住宅金融支援機構の2本柱
| 制度 | 特徴 |
|---|---|
| マンション共用部分リフォーム融資 | 管理組合名義で借りられる。全期間固定金利。マンション管理センターの債務保証を利用すれば理事長個人の連帯保証は不要。管理計画認定等を受けていれば返済期間の延長や金利引下げの優遇あり |
| マンションすまい・る債 | 管理組合が修繕積立金を計画的に積み立てるための債券。年1回の募集で、口数の上限があるため実質先着順。2026年度から利率上乗せ対象が拡充 |
金利は毎月見直されるため、この記事では具体的な数字を書きません。検討時点で住宅金融支援機構の公式サイトをご確認ください。
融資の本当の価値は、金利ではなく総会での議案の性格が変わることにあります。「一時金を1戸あたり50万円お願いします」という議案は、まず通りません。「月々の積立金を3,000円見直させてください」なら、議論の土俵に乗ります。同じ資金を作るのでも、住民の受け止め方はまったく違うのです。
修繕積立金が足りないときの4つの打ち手
| # | 打ち手 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| ① | 一時金の徴収 | 借入不要 | 総会で否決されやすい。滞納リスク |
| ② | 機構融資の活用 | 一時金ゼロで着工できる | 利息負担。総会決議が必要 |
| ③ | 段階施工(工事を分ける) | 単年度の負担が軽い | 仮設費が回数ぶん増え、総額はむしろ増える |
| ④ | 工法の見直し | 工事費そのものが下がる | 施工会社の選択肢が絞られる |
私が申し上げたいのは、④を最初に検討してくださいということです。 順番が重要です。設計に入る前なら4つの選択肢すべてが使えます。しかし業者を選び、仕様を固めてしまった後では、④はもう消えています。
補助金より桁が大きい話:上野原市で工事費を下げる方法
仮設足場は総工事費の15〜25%
大規模修繕の見積書を開いたとき、いちばん上に「仮設工事」という項目があります。ここが総工事費の15〜25%を占めます。
| 総工事費 | 仮設費の目安(15〜25%) |
|---|---|
| 3,000万円 | 450万〜750万円 |
| 5,000万円 | 750万〜1,250万円 |
| 8,000万円 | 1,200万〜2,000万円 |
ブロック塀の補助上限は30万円です。仮設費は数百万円から1,000万円を超えます。理事会が議論の時間をどちらに割くべきか、金額を並べれば明らかです。
3つの工法を比較する
株式会社明誠は、次の3工法から建物にとって最適なものを提案できる、日本でも数少ない会社です。
| 工法 | 特徴 | 適する建物 | 居住者への影響 |
|---|---|---|---|
| 通常足場工法 | 従来型の仮設足場を全面に架設 | 中低層、外壁形状が複雑、全面的な下地補修が必要 | 大(バルコニー使用制限が長期化、防犯面の懸念) |
| ロープアクセス工法(無足場工法) | 産業用ロープで作業員が降下して施工。足場を架けない | 高層、斜面地・狭小地で足場架設が困難、コスト最重視 | 小(バルコニーが塞がる期間が短い) |
| ハイブリッド工法 | 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分け | 大規模・複雑物件で総合的なコスト最適化が必要 | 中 |
ロープアクセス工法の技術情報・安全基準・施工事例は、姉妹サイトロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。工法の全体像はロープアクセス工法のご紹介もあわせてご覧ください。
上野原市のような斜面地・谷あいの造成地に建つマンションでは、ロープアクセス工法の相性が特に良いという実務上の理由があります。桂川や鶴川の河岸段丘、四方津周辺の山を切り開いた住宅地では、敷地の高低差が大きく、足場の基礎を組むだけで余計な手間と費用がかかることが珍しくありません。敷地の一部が斜面や擁壁に接していて、そもそも足場が組めない面が出てくるケースもあります。
「敷地に余裕があるから足場」への3つの問い
理事会でよく出るのが「うちは敷地に余裕があるから足場で問題ない」という発言です。これは検討ではなく、思考停止です。次の3つを問い直してください。
- 今回の工事は全面改修か、部分補修か。 傷んでいるのが特定の面・特定の部位だけなら、全面に足場を架ける必要はありません。
- 居住者が3か月間バルコニーを塞がれる生活を受け入れられるか。 洗濯物が干せない、窓が開けられない、シートで日照が落ちる。この生活コストは見積書に載りません。
- 「仮設工事」という費目の下に、具体的に何が積まれているか。 内訳を開かせてください。数百万円の話です。
モデルケース2本(上野原市内を想定した試算)
以下は当社の実務経験に基づく試算例で、実際の金額は建物の状態・仕様・数量により変わります。
ケースA:上野原駅周辺/築26年・8階建て・42戸
| 項目 | 通常足場 | ハイブリッド工法 |
|---|---|---|
| 総工事費 | 約6,800万円 | 約5,900万円 |
| 差額 | ─ | ▲約900万円 |
| 1戸あたり | 約162万円 | 約140万円(▲約22万円) |
| 工期 | 約5か月 | 約4か月(約1か月短縮) |
ケースB:市郊外の斜面地/築42年・5階建て・18戸
| 項目 | 通常足場 | ロープアクセス主体 |
|---|---|---|
| 総工事費 | 約3,300万円 | 約2,700万円 |
| 差額 | ─ | ▲約600万円 |
| 1戸あたり | 約183万円 | 約150万円(▲約33万円) |
| 資金 | 一時金が必要 | 機構融資併用で一時金ゼロも可能 |
ケースBで注目していただきたいのは、18戸で3,300万円=1戸あたり183万円という数字です。戸数の少ないマンションほど、1戸あたりの負担は重くなります。上野原市の共同建て住宅は1,536戸。1棟あたりの規模は決して大きくありません。小規模だからこそ、工法の選択が家計に直結します。
工事費の考え方については適正価格へのこだわりもご参照ください。
上野原市の気候・立地が塗装と防水に与える影響
上野原市は山梨県の最東端で、東京都と神奈川県に接しています。桂川(相模川の上流)と鶴川が刻む谷あいの地形に、河岸段丘と造成地が広がる土地柄です。この立地は、建物の劣化のしかたに独特の影響を与えます。
| 要因 | 建物への影響 | 予算配分の考え方 |
|---|---|---|
| 冬の凍結融解 | 水は凍ると体積が約9%増える。外壁のひび割れに入った水が凍って膨張し、ひび割れを広げる。これが毎冬繰り返される | シーリングの打替え範囲と、下地補修の想定数量に厚めに配分 |
| 谷あい・河川沿いの高湿度 | 北面や低層部に藻・カビが発生しやすい。日当たりの差で劣化速度が方位ごとに大きく変わる | 方位別に劣化を評価し、面ごとに仕様を変える。全面一律の仕様は無駄が出る |
| 中央道・国道20号沿道の排気ガス汚れ | 沿道の建物は外壁の汚れの進行が速い。美観の劣化が早い | 低汚染型塗料が効く立地。塗り替え周期そのものを延ばせる |
| 海から遠く塩害は軽微 | 塩害対策のグレードアップは費用対効果が低い | 浮いた予算を凍結融解対策とシーリングに回す |
現場でよくある「放置の代償」
寒暖差の大きい地域でよく見るのが、屋上防水の膨れです。畳1枚ぶんくらいの膨れを「まだ雨漏りしていないから」と1年放置した管理組合がありました。翌年に見たときには、膨れは数倍に広がり、水が下地まで回っていました。最上階の天井にシミが出て、住民から苦情が来て、そこでようやく工事に踏み切ることになったのです。
費用は当初見積りの数倍。そして何より、理事会と住民の信頼関係を戻すのに半年かかりました。
冬に凍結する地域では、この進行が速くなります。膨れの中に水が溜まり、凍って膨張し、防水層を内側から破っていくからです。上野原市の管理組合には、屋上の点検を年に一度、できれば秋に行うことを強くおすすめします。
工事に適した時期
| 時期 | 適性 | 理由 |
|---|---|---|
| 3月下旬〜6月上旬 | ◎ | 気温・湿度が安定。塗料の乾燥条件が最も良い |
| 6月中旬〜7月上旬 | △ | 梅雨。降雨で工程が延びやすい |
| 7月中旬〜8月 | ○ | 施工は可能だが、猛暑で作業効率が落ちる |
| 9月〜11月中旬 | ◎ | 気温・湿度が安定。台風の時期を外せば良好 |
| 11月下旬〜3月中旬 | × | 気温が塗料・防水材の施工条件を下回る日が増える。凍結のリスク |
上野原市は谷あいで冬の冷え込みが厳しく、朝方の気温が施工条件を割る日が多くなります。春の工事枠を取るには、前年の秋までに業者選定を終えている必要があります。 逆算すると、動き出すのは前年の春です。
上野原市ならではの強み:業者選定の選択肢が広い
ここは、他の山梨県内の市にはない上野原市の利点です。
上野原市は山梨県の最東端で、東京都八王子市・檜原村、神奈川県相模原市と接しています。中央自動車道の上野原ICがあり、JR中央本線で新宿まで約1時間。甲府より、八王子や相模原のほうがはるかに近いのです。
これが業者選定に効きます。人口2万人規模の自治体では、大規模修繕を専門とする地元業者が育ちにくく、相見積り先が限られるのが普通です。都留市や大月市の管理組合が抱えているのは、まさにこの問題です。
しかし上野原市は、東京都・神奈川県の施工会社の商圏に完全に入っています。 移動時間が片道1時間程度であれば、宿泊費や長距離移動の経費が見積りに乗りません。つまり、上野原市の管理組合は、山梨県内の他市よりも相見積りの選択肢が広いのです。
この立地を活かさない手はありません。県内業者だけで3社比べるのではなく、東京・神奈川の会社も含めて比較する。 それだけで見積りの幅が変わります。
とはいえ、業者を3社比べて得られる差より、工法から見直して得られる差のほうが桁がひとつ大きいというのが、私の20年近い実務の実感です。両方やってください。
相見積りで必ず見る3つのポイント
| # | 見るポイント | 具体的に何を確認するか |
|---|---|---|
| ① | 数量の根拠 | 外壁の面積、シーリングの延長、下地補修の想定数量。この数量が違えば金額は当然変わる。同じ数量で比べているかを確認する |
| ② | 仕様の中身 | 「弾性塗料」ではなく、メーカー名・製品名・グレードまで書かせる。書けない業者は外す |
| ③ | 「別途」の中身 | 見積書の「別途」「実費精算」の欄。特に下地補修が想定を超えた場合の追加単価を、契約前に見積書へ明記させること。ここを曖昧にしたまま契約すると、工事中に必ず揉める |
2026年4月1日施行の改正区分所有法:総会が通りやすくなりました
2026年4月1日、改正区分所有法(令和7年法律第47号)が施行されました。管理組合にとって、これは実務上とても大きな変更です。
主な変更点は次のとおりです。
- 決議の母数が、区分所有者の総数ベースから、総会に出席した区分所有者ベースへ緩和された
- 欠席者・無回答者は母数から除外される
- 所在不明の区分所有者については、裁判所の関与により母数から除外できる仕組みが整備された
- ただし、建替え等の重い決議については従来の要件が残る部分がある
上野原市は、新宿から特急・快速で約1時間という通勤圏にあります。四方津のコモアしおつをはじめ、東京都心への通勤を前提にした住宅地が形成されてきた土地柄で、相続や転勤により、区分所有者が市外・県外に住んでいるケースが一定数あります。
こうしたマンションでは、これまで「総会の決議が集まらない」ことが最大のボトルネックでした。過去に大規模修繕の議案が否決された、あるいは決議に必要な数が集まらずに流れた管理組合こそ、2026年度中に再提案する価値があります。 ルールが変わったのですから、結果も変わる可能性があります。
国の制度:住宅省エネ2026キャンペーン
管理組合が直接申請するというより、区分所有者への情報提供として押さえておきたい制度です。
| 事業名 | 主な対象 | 管理組合との関係 |
|---|---|---|
| みらいエコ住宅2026事業 | 住宅の省エネ改修等 | 共用部の一部工事が対象になる場合がある |
| 先進的窓リノベ2026事業 | 窓の断熱改修 | 専有部の窓は区分所有者、共用部扱いのサッシは管理組合 |
| 給湯省エネ2026事業 | 高効率給湯器の設置 | 主に専有部 |
| 賃貸集合給湯省エネ2026事業 | 賃貸集合住宅の給湯器 | 賃貸オーナー向け |
上野原市は谷あいの地形で、冬の朝は放射冷却により冷え込みます。窓の結露に悩む住戸が多いはずです。 窓の断熱改修は、光熱費だけでなく結露によるカビ・建材の傷みも減らします。
大規模修繕で足場やロープを架けるタイミングは、窓まわりの工事を同時に行う絶好の機会です。 別々にやれば仮設費を2回払うことになります。工程を1回にまとめられないか、設計段階で必ず検討してください。
18か月逆算カレンダー:上野原市版
補助金と税制を取りこぼさないための、実務スケジュールです。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 18か月前 | 劣化診断を実施。あわせて過去の耐震診断結果報告書が書類棚にないか確認(避難路沿道建築物10棟に該当する可能性) |
| 15か月前 | 建設課都市計画担当(0554-62-3123)へ電話。①災害時避難路通行確保対策事業は令和8年度も受付中か ②ブロック塀補助の予算枠と重要路線該当の有無 ③アスベスト調査補助の申込手順 |
| 12か月前 | 工法の選定(足場/ロープアクセス/ハイブリッド)。同時に市役所税務担当(0554-62-3111)へマンション長寿命化促進税制の条例・減額割合を確認 |
| 9か月前 | 資金計画の確定。住宅金融支援機構へ事前相談。東京・神奈川を含めて相見積り先をリストアップ |
| 6か月前 | 各補助金の交付申請 |
| 4か月前 | 交付決定を確認してから工事契約を締結。着工はその後 |
| 着工〜竣工 | 工程管理。ブロック塀は別契約・別工程で管理 |
| 竣工後3か月以内 | 長寿命化促進税制の申告(期限厳守) |
| 引き継ぎ時 | 次期理事会へ書面で申し送り。理事任期1年の管理組合では、これをやらないと18か月の計画が途中で消える |
理事の任期が1年の管理組合では、18か月の計画は必ず理事会をまたぎます。 口頭の引き継ぎでは消えます。A4で1枚、進捗と次の連絡先を書いた紙を残してください。それだけで、後任の理事は同じ電話を3本かけ直さずに済みます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 上野原市に、マンション共用部の大規模修繕に直接使える補助金はありますか?
A. 2026年8月時点で、上野原市が管理組合の共用部大規模修繕そのものに直接補助する制度は、市の公開情報からは確認できません。ただし避難路沿道建築物の耐震改修、ブロック塀、アスベスト調査については補助制度があります。
Q2. 「上野原市は最大143万7,500円」という情報を見ましたが、マンションに使えますか?
A. 使えません。これは木造住宅耐震改修等支援事業の限度額で、対象住宅は「戸建て住宅(長屋及び共同住宅を除く)」「木造在来工法」「2階建て以下」と明文で限定されています。RC造・SRC造の分譲マンションは対象外です。(出典:上野原市 住宅・建築物の補助事業について)
Q3. 市のホームページと耐震改修促進計画で、金額や期限が違うのはなぜですか?
A. 市ホームページの当該ページの更新日は2024年4月1日、耐震改修促進計画の改定は令和8年3月です。文書の日付だけを見れば新しいのは計画側ですが、実際の運用は建設課都市計画担当(0554-62-3123)へご確認ください。
Q4. ブロック塀の補助は、大規模修繕の契約に含めても大丈夫ですか?
A. おすすめしません。この種の補助金は交付決定前の契約・着工を対象外とするのが通例です。市も「必ず事前にご相談ください。市職員が現地確認を行います」としています。塀は別契約に切り出すのが安全です。
Q5. アスベストの除去費用も補助されますか?
A. 上野原市の公開ページに記載されている対象事業は「吹付け建材のアスベスト含有の有無に係る調査」のみで、除去工事の補助は確認できませんでした。調査は対象経費の10分の10以内・25万円まで補助されますので、まず調査だけでも早めに実施し、除去費は自己負担前提で予算を組むことをおすすめします。
Q6. 上野原市でマンション管理計画認定は取れますか?
A. 山梨県の認定制度は「町村部にあるマンションのみ」が対象と明記されており、市である上野原市は県窓口では申請できません。上野原市自身の受付の有無は公開情報からは確認できませんでした。建設課都市計画担当へご確認ください。
Q7. 足場を架けない工事は、本当に品質が落ちませんか?
A. 施工品質は工法ではなく、施工体制と管理体制で決まります。ロープアクセス工法は高所作業の国際的な安全基準に基づく技術で、部位によっては足場より近接して丁寧に施工できます。技術情報・安全基準はロープアクセスドットコムで解説しています。
Q8. 敷地が斜面で足場が組みにくいのですが、どうすればよいですか?
A. まさにロープアクセス工法が最も効く条件です。上野原市の造成地・河岸段丘に建つマンションでは、足場の基礎工事だけで想定外の費用が出ることがあります。現地を確認したうえで、部位ごとの使い分け(ハイブリッド工法)をご提案します。お問合せはこちら。
この記事のポイントまとめ
- 上野原市に共用部の大規模修繕への直接補助は確認できないが、使える制度は4つある
- 災害時避難路通行確保対策事業は設計5/6・工事11/15と補助率が極めて高い
- 市HPと耐震改修促進計画で金額・期限が食い違う。建設課へ電話1本で確認を
- 避難路沿道建築物は市内10棟すべてが耐震性不十分。該当なら診断済のはず
- アスベストは「調査のみ」補助。除去費は自己負担前提で予算を組む
- 共同建て住宅の97.6%が新耐震。上野原市の論点は耐震ではなく劣化と積立金
- 東京・神奈川の業者商圏に入る立地を活かし、相見積りの幅を広げる
- 補助金より仮設費(総工事費の15〜25%)の見直しのほうが桁が大きい
最初の一歩は、電話2本・20分です
上野原市の管理組合が明日からできることは、とてもシンプルです。
- 上野原市役所 建設課都市計画担当(Tel:0554-62-3123) へ電話し、①災害時避難路通行確保対策事業の令和8年度の受付状況、②ブロック塀補助の予算枠と重要路線該当の有無、③アスベスト調査補助の申込手順、④マンション管理計画認定の窓口、を確認する
- 上野原市役所 代表(Tel:0554-62-3111) から税務担当へつないでもらい、マンション長寿命化促進税制の条例の有無と減額割合を確認する
合計20分です。この20分で、数十万円から数百万円の判断材料が揃います。
そのうえで、工事費そのものをどう下げるかを一緒に考えさせてください。株式会社明誠は、通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な方法をご提案できる、日本でも数少ない会社です。 日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズ展開を行い、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟することで、高い品質と適正な価格を両立しています。
現地を拝見したうえで、3工法それぞれの見積りを並べてご説明します。比較していただいたうえで、ご判断ください。お問合せはこちらから、お気軽にご相談いただけます。長期修繕計画の見直しについては安心のサポート体制もご覧ください。
執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)
株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開しています。また、一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)を運営し、全国の建設業者向けに経営支援情報の発信、オンラインセミナー、交流会、ビジネスマッチングを行っています。
最終更新:2026年8月19日
出典・参考資料
- 上野原市「住宅・建築物の補助事業について」(建設課/2024年4月1日更新)
- 上野原市「ブロック塀等安全確保対策支援事業」(建設課/2023年8月16日更新)
- 上野原市「上野原市耐震改修促進計画等について」(2026年3月31日更新)
- 上野原市耐震改修促進計画(令和8年3月)PDF
- 上野原市「補助金・助成制度」一覧
- 山梨県「マンション管理計画認定制度について」
- 山梨県「建築物の既設の塀の安全点検について」
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」
- 国土交通省 マンション管理・再生ポータルサイト
- 住宅金融支援機構
- ロープアクセスドットコム(ロープアクセス工法の技術情報)
免責事項:本記事は2026年8月19日時点で公開されている情報をもとに作成しています。補助金・税制の内容は年度や予算の状況により変更されることがあり、また要件の解釈は所管窓口の判断によります。申請の可否や金額については、必ず上野原市の所管課および税務担当へ直接ご確認ください。本記事の情報にもとづく判断について、当社は責任を負いかねます。
大月市のマンション補助金|大規模修繕2026年版
この記事で答える質問
「山梨県大月市のマンション管理組合が、大規模修繕で使える補助金はあるのか?」
先に結論を申し上げます。2026年8月19日時点で公開されている大月市の情報を確認した限り、分譲マンションの共用部大規模修繕(外壁塗装・屋上防水・シーリング打ち替えなど)そのものに直接お金が出る市の補助制度は、見当たりません。
ただし、これで話が終わるわけではありません。大月市には、管理組合が使える可能性のある制度が「別の名前」で存在しています。そして大月市には、他の自治体の記事には書けない、この市に固有の重大な注意点があります。
それは——大月市の住宅関係の補助事業は、令和7年度、そのほとんどが年度途中で受付を終了しているという事実です。
私はこの記事で、この1点を中心に据えてお話しします。制度の一覧を並べるだけの記事なら、他にいくらでもあります。しかし大月市の管理組合にとって本当に重要なのは「どの制度があるか」ではなく、「いつ動けば間に合うのか」だからです。
大月市の補助金は「あるかどうか」より「間に合うかどうか」
まず、私が今回いちばん驚いた事実からお伝えします。
大月市の公式サイト「住まい」のページ(更新日:2026年7月30日)を開くと、住宅の耐震対策・建築・リフォーム関連の補助事業が4つ並んでいます。そして、そのすべてに同じ注記が付いています。
| 制度名 | 令和7年度の状況 |
|---|---|
| 木造個人住宅耐震診断事業 | (令和7年度の補助金申請の受付は終了いたしました。) |
| 木造住宅耐震改修等事業 | (令和7年度の補助金申請の受付は終了いたしました。) |
| 木造住宅耐震シェルター設置事業 | (令和7年度の補助金申請の受付は終了いたしました。) |
| ブロック塀等安全確保対策支援事業 | (令和7年度の補助金申請の受付は終了いたしました。) |
(出典:大月市「住まい」/2026年7月30日更新)
4つ中4つ。全滅です。
さらに、「木造住宅耐震改修等事業」のページには、もう一段踏み込んだ記述があります。
令和7年度の「木造住宅耐震改修等事業」につきましては、予定件数に達したため、受付を終了いたしました。今年度の事業実施予定はございませんが、事前のご相談には随時対応しておりますので、ご希望の方は建設課までお問い合わせください。
(出典:大月市 木造住宅耐震改修等事業/2025年5月21日更新)
「予定件数に達したため」。この一文が、大月市という自治体の補助金の性格を端的に表しています。
大月市は人口およそ1万9千人の市です。予算規模は東京23区や政令市とは桁が違います。だから制度そのものは丁寧に整備されているのに、枠が小さく、早い者勝ちで埋まる。
私はこれまで多くの管理組合の理事長さまとお話ししてきましたが、補助金で失敗する理由の第1位は「制度を知らなかった」ではありません。「知っていたが、動き出したときにはもう年度の枠が埋まっていた」です。大月市は、まさにこのパターンが起きやすい自治体だと言えます。
大月市の管理組合が最初にやるべきこと
制度の中身を勉強するより先に、やるべきことがあります。電話を1本かけることです。
大月市 産業建設部 建設課 土木建築担当
電話:0554-20-1851(ダイヤルイン)
所在地:〒401-0015 山梨県大月市大月町花咲1608番地19
聞くべきことは、次の3つだけです。
- 「令和8年度の住宅関係の補助事業は、いつから受付が始まりますか」
- 「昨年度は予定件数に達して受付終了になったと拝見しました。受付開始のタイミングを事前に知る方法はありますか」
- 「分譲マンションの共用部について、市で使える補助や相談窓口はありますか」
3番目の質問で「ありません」と言われても、落胆する必要はありません。その回答自体が、理事会・総会で「市の補助は当てにせず自己資金と融資で組む」という方針を決めるための、正式な根拠になります。理事長さまが総会で「市に確認したところ、共用部への直接補助はないとのことでした」と言えるかどうかで、議案の通りやすさはまったく変わります。
私はいつも理事長さまに「補助金は、あるかないかを調べるものではなく、議案に書ける形にするものです」とお伝えしています。
★大月市の目玉:ブロック塀の補助は”2段構え”になっている
大月市の制度の中で、私がもっとも「これは管理組合が見落としている」と感じたのが、ブロック塀等安全確保対策支援事業です。
多くの自治体のブロック塀補助は「一律で上限20万円」といった単純な設計です。しかし大月市は違います。面している道路の種類によって、補助額が2段階に分かれています。
| 区分 | 補助率 | 上限額 | 対象経費の算定 | 高さ要件 |
|---|---|---|---|---|
| ①避難路一般路線 | 対象経費の2/3以内 | 20万円 | 延長1mにつき15,000円を乗じた額、または除却等経費(見積額)のいずれか少ない額 | 高さ1m以上 |
| ②避難路重要路線 | 対象経費の2/3以内 | 30万円 | 延長1mにつき25,000円を乗じた額、または見積額のいずれか少ない額 | 高さ1m以上(2.2m超のブロック塀も対象) |
(出典:大月市 ブロック塀等安全確保対策支援事業)
「高さ」は、基礎を含む地盤面からブロック塀等の上面までの高さで測ります。
「一般路線」と「重要路線」の違いを正確に押さえる
ここが実務上いちばん大事なところです。
- ①避難路一般路線:大月市耐震改修促進計画に避難路等として位置付けた道路等
- ②避難路重要路線:大月市地域防災計画に記載された第一次および第二次緊急輸送道路、もしくは、いずれかの緊急輸送道路から指定避難所まで至る道路で市が指定した道路
大月市には国道20号と中央自動車道が東西に走り、中央本線の大月駅を中心に市街地が形成されています。幹線道路沿いに建っているマンションは、②の重要路線に該当する可能性が十分にあります。
そして重要路線の場合、単価が1mあたり15,000円から25,000円へ、上限が20万円から30万円へ上がるだけでなく、「基礎を含む道路面から上面までの高さ2.2mを超えるブロック塀も対象となる」という要件緩和が入ります。
古いマンションの敷地境界には、駐車場やゴミ置き場を囲む形で、2m超の高いブロック塀が残っていることがあります。通常の制度なら「高すぎて対象外」と諦めるケースでも、大月市の重要路線区分なら拾える可能性があるわけです。
私が現場で見てきた、ブロック塀の落とし穴
正直に申し上げます。ブロック塀は、大規模修繕の見積書のなかでもっとも「後回し」にされる項目です。
以前、ある管理組合で、外壁と屋上防水の工事を終えた翌年に「やはり塀も直しましょう」という話になったことがあります。そのときすでに足場も仮囲いも撤去済み。改めて重機を入れ、ガードマンを立て、残土処分の手配をし直しました。1年前に一緒にやっていれば済んだ段取りが、すべて二重になったのです。
外構は、本体工事と同じタイミングで検討してください。 ただし1点、大月市の要綱には見逃せない条件があります。
除去及び耐震改修工事の契約および着工は、必ず補助金交付決定後としてください。
(出典:大月市 ブロック塀等安全確保対策支援事業)
つまり、大規模修繕の総合契約に塀の撤去を混ぜ込んで一括発注してしまうと、交付決定より先に契約したことになり、補助対象から外れる恐れがあります。私はこれを避けるため、塀の部分だけを別契約に切り出し、交付決定が下りてから着手する段取りを組むようにしています。数十万円の補助のために手間をかける価値があるか——工事金額と天秤にかけて判断すべきですが、判断できる状態にしておくことが理事会の仕事です。
なお、市税(市民税、固定資産税、軽自動車税および国民健康保険税)の滞納がないことも交付要件です。管理組合名義での申請可否については要綱上で明確な記載を確認できませんでしたので、この点は建設課への事前相談で確かめてください。
木造3事業は、なぜマンション管理組合が使えないのか
インターネットで「大月市 耐震 補助金 143万円」と検索すると、限度額1,437,500円という数字が出てきます。これを見て「うちのマンションにも使えるのでは」と期待される理事長さまがいらっしゃいます。
結論から言えば、分譲マンションの共用部には使えません。そして、その根拠は市の公式ページに明文で書かれています。
根拠①:耐震診断事業が「共同住宅」を明文で除外している
木造個人住宅耐震診断事業の対象住宅は、次の6項目すべてに該当するものと定められています。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (1) 着工時期 | 昭和56年5月31日以前に着工された住宅 |
| (2) 構造 | 木造在来工法(ツーバイフォー、丸太組、プレハブ、混構造は対象外) |
| (3) 階数 | 2階建て以下 |
| (4) 面積 | 延べ床面積300平方メートル以内 |
| (5) 所有・居住 | 自己の所有で、自らが居住している住宅(長屋および共同住宅は除く) |
| (6) 併用住宅 | 延べ床面積の1/2以上を住宅として使用 |
(出典:大月市 木造個人住宅耐震診断事業)
(5)に「長屋および共同住宅は除く」と、はっきり書かれています。分譲マンションは共同住宅ですから、この時点で対象外です。加えて(2)の木造在来工法、(3)の2階建て以下という要件も、RC造・SRC造のマンションでは満たしようがありません。
根拠②:改修事業は診断結果とセットになっている
木造住宅耐震改修等事業の補助額は「耐震改修等に要する費用に対し、限度額1,437,500円」です。ネットで見かける143万7,500円は、この数字です。
しかし対象は「山梨県木造住宅耐震診断マニュアル等に基づいて耐震診断を行った結果、総合評点が1.0未満と診断された住宅」。つまり上の診断事業を経ていることが前提であり、診断事業が共同住宅を除いている以上、改修事業も同じ土俵には乗りません。
補助対象となる工事の定義も明確です。
耐震改修工事とは、基礎、柱、はり、筋かい(耐力壁)の補強または軽量化のための屋根の葺替え工事等による改修の結果、総合評点が1.0以上となるものをいう。※増・改築工事および耐震性を伴わないリフォーム等の工事は対象外。
「筋かい(耐力壁)」という言葉が示すとおり、これは木造住宅の話です。そして「耐震性を伴わないリフォーム等の工事は対象外」——外壁塗装や屋上防水は、ここで明確に外れます。
この情報を、理事会で「使える形」にする
「対象外でした」で終わらせるのは、もったいない話です。私はこう提案しています。
理事の皆さまご自身が、市内に木造の実家や別宅をお持ちの場合、この制度は使えます。 診断費用は市が全額負担(無料)で、診断結果は社団法人山梨県建築士事務所協会員で組織する耐震判定会の審査を経て、市から報告書が届きます。改修が必要となれば限度額1,437,500円の補助が視野に入る。大月市は昭和56年以前の木造住宅が一定数残る地域です。
理事会だよりや掲示板に「マンション共用部は対象外ですが、市内の木造戸建てをお持ちの方はこちらが使えます」と1行添えるだけで、管理組合の情報発信としての価値が生まれます。理事会が「調べて共有してくれる存在」だと認識されると、次の大規模修繕の総会は驚くほどスムーズになります。これは私が20年近く現場で見てきた、確かな法則です。
なお、大月市は木造住宅耐震シェルター設置事業(高齢者・身体障害者向け)も実施しており、いずれも令和7年度は受付終了となっています。市のページには「大月市では、耐震改修工事等について業者のあっせんは行っていません」という注意書きもあります。「市の紹介で来ました」と名乗る業者がいたら、その時点でお断りして差し支えありません。
大月市という土地が、マンションの外壁に与える3つの負荷
補助金の話から少し離れます。しかし理事長さまにとっては、こちらのほうが金額インパクトが大きいかもしれません。
大月市は山梨県東部の郡内地方に位置し、桂川(相模川)や支流の笹子川・葛野川に沿って市街地が形成された、谷あいの地形を持つ市です。岩殿山をはじめとする山々に囲まれ、市域の大半は山間部です。この地形と気候が、建物の劣化スピードに直結します。
| 要因 | 建物への影響 | 修繕計画上の意味 |
|---|---|---|
| 冬季の凍結融解 | 水は凍ると体積がおよそ9%増える。外壁のひび割れやシーリングの隙間に入った水が凍結・融解を繰り返し、内部から破壊が進む | ひび割れの放置期間が、そのまま補修費の増加につながる。年1回の目視点検を冬前に |
| 谷あい・河川沿いの高湿度 | 日照時間が限られる北面・低層部で、藻やカビが定着しやすい。塗膜の含水が続くと剥離や膨れの原因になる | 一律の塗り替え周期ではなく、方位別に劣化度を評価した仕様設計が必要 |
| 国道20号・中央自動車道の沿道環境 | 交通量の多い幹線沿いは、排気ガス由来の汚れが外壁に定着しやすい。低汚染型塗料の効果が出やすい立地 | 塗料グレードの選定で、次回までの美観維持期間が変わる |
大月市は海から遠く、塩害の影響は比較的軽微と考えられます。だからこそ、塩害対策に使うはずだった予算を、凍結融解対策とシーリング更新に厚く配分できるというのが、私の考え方です。
同じ「築25年、外壁塗装」でも、湘南の海沿いのマンションと大月市のマンションでは、優先すべき仕様がまったく違います。地域の気候を無視した一律仕様の見積書が出てきたら、その業者は現地を見ていない可能性があります。
私が今でも悔しく思っている現場の話
寒暖差の大きい地域で、屋上防水の膨れを「畳1枚ぶんくらいですから、次回の修繕でまとめてやりましょう」とお伝えしたことがあります。当時の私は、コストを抑えることが親切だと思っていました。
1年後、その膨れは数倍に広がっていました。凍結と融解を繰り返すうちに防水層の縁が切れ、下地のコンクリートまで水が回った。最上階の1室の天井にシミが出て、住民の方からの信頼を取り戻すのに半年かかりました。費用は、最初に直していれば済んだ額の何倍にもなりました。
寒暖差の大きい地域で、防水層の膨れを1年放置するのは、私はもう二度としません。 これは私の失敗談です。
ロープアクセス工法の技術情報や一般的な安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説していますので、部分補修の選択肢を検討される際にご参照ください。
マンション管理計画認定制度——大月市はどこに申請するのか
管理計画認定制度は、管理組合の管理計画が一定の基準を満たす場合に、地方公共団体から認定を受けられる制度です。認定を受けると、マンション長寿命化促進税制の要件を満たしやすくなったり、住宅金融支援機構の融資で優遇を受けられたりします。
ここで、大月市の管理組合が注意すべき点があります。
山梨県のページには、県が受け付けるのは「町村部にあるマンションのみ」で、令和4年4月1日から受付を開始したと記載されています(出典:山梨県 マンション管理計画認定制度について)。
大月市は「市」です。したがって、県の窓口では申請できません。
では大月市自身が「マンション管理適正化推進計画」を作成し、認定の受付をしているのか。私が公開情報を確認した範囲では、その有無を確認できませんでした。「制度がない」と断定するつもりはありません。公表されていないだけの可能性もあります。
ここは、大月市役所(0554-22-2111)に1行だけ質問すれば済む話です。
「大月市はマンション管理適正化推進計画を作成していますか。管理計画認定の申請は市で受け付けていますか」
認定が取れない場合の「次善の手」
仮に大月市で認定の受付がなかったとしても、管理組合が評価される道は残っています。
| 手段 | 実施主体 | 管理組合にとっての意味 |
|---|---|---|
| マンション管理適正化診断サービス | 日本マンション管理士会連合会 | 第三者の診断結果を総会資料に添付でき、議案の説得力が増す |
| マンション管理適正評価制度 | マンション管理業協会 | 星の数で管理状態が可視化され、売却・賃貸時の訴求材料になる |
| マンションすまい・る債 | 住宅金融支援機構 | 2026年度から、評価制度・診断サービスの利用も利率上乗せの対象に拡充 |
私は理事会で「認定が取れないなら意味がない」という声を聞くたびに、こうお伝えしています。認定はゴールではなく、通過点です。 大事なのは「うちの管理組合は、第三者に見せられる状態か」という一点。それさえ整っていれば、認定でも診断でも評価制度でも、使えるものを使えばいい話です。
マンション長寿命化促進税制——固定資産税が減額される可能性
一定の要件を満たす大規模修繕工事を行った場合、翌年度分の建物にかかる固定資産税が減額される制度があります(出典:国土交通省 マンション長寿命化促進税制)。
主な要件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象工事の期間 | 令和5年4月1日〜令和9年3月31日に工事完了 |
| 対象 | 築20年以上、総戸数10戸以上のマンション |
| 減額対象 | 建物にかかる固定資産税(1戸あたり100平方メートル相当分まで) |
| 適用回数 | 1回限り |
| 申告期限 | 工事完了後3か月以内 |
| その他要件 | 管理計画認定を受けている、または助言・指導を受けて長期修繕計画を適切に見直したこと等 |
注意点を2つ申し上げます。
1つ目。減額割合は市町村の条例で定まります。 地方税法上は参酌基準が1/3、条例で定められる範囲が1/6〜1/2とされています。大月市の減額割合がいくつなのかは、市の税務担当に確認する必要があります。私はここを推測で書きません。
2つ目。申告期限が「工事完了後3か月以内」です。 これは、竣工して理事会が一段落したころに、ちょうど過ぎてしまう長さです。私は工事契約の段階で、竣工予定日の3か月後をカレンダーに赤で書き込んでいただくようお願いしています。
大月市役所への確認は、着工前に済ませてください。聞くべきは次の3点です。
- 「マンション長寿命化促進税制について、大月市の減額割合は何分の1ですか」
- 「適用にあたって、市への事前相談は必要ですか」
- 「管理計画認定を受けていない場合、要件を満たす方法はありますか」
大月市 代表電話:0554-22-2111(〒401-8601 山梨県大月市大月2丁目6-20)
住宅金融支援機構の2つの武器
市の補助が期待できない以上、資金調達の話は避けて通れません。管理組合が使える公的な仕組みは、実は補助金より融資のほうが充実しています。
①マンション共用部分リフォーム融資
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 借入名義 | 管理組合名義(区分所有者個人の借入ではない) |
| 金利 | 全期間固定金利(金利は毎月見直されるため、申込時点の最新金利を機構サイトで確認) |
| 保証 | マンション管理センターの債務保証を利用することで、理事長個人の連帯保証が不要 |
| 優遇 | 管理計画認定等を受けている場合、返済期間の延長や金利引下げの対象になる場合がある |
(出典:住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資)
私がこの制度を推す理由は、金利の話ではありません。総会の議案の性格が変わるからです。
「大規模修繕のため、1戸あたり50万円の一時金をお願いします」——この議案は、荒れます。年金生活の高齢区分所有者にとって、50万円の一時金は現実的でないことが多いからです。
「大規模修繕のため、機構融資を利用し、月々の修繕積立金を〇〇円見直します」——こちらは、通ります。負担の総額が同じでも、「今すぐ50万円」と「月々数千円」では、心理的な意味がまったく違うからです。
②マンションすまい・る債
修繕積立金を計画的に積み立てるための債券です。年1回の募集で、口数に上限があるため実質的な先着順になります。2026年度からは、管理計画認定に加えて、管理適正評価制度や管理適正化診断サービスの利用も利率上乗せの対象に拡充されています。
(出典:住宅金融支援機構 マンションすまい・る債)
修繕積立金が足りない——4つの打ち手と、その順番
大月市に限らず、私が伺う管理組合の多くが直面するのがこの問題です。打ち手は4つあります。そして、検討する順番が決定的に重要です。
| # | 打ち手 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|---|
| ① | 一時金の徴収 | 借入なしで完結 | 総会で紛糾しやすい。滞納リスク |
| ② | 住宅金融支援機構の融資 | 月々の負担に分散できる | 利息が発生。返済期間中の管理が必要 |
| ③ | 工事の段階施工(分割発注) | 単年度の支出を抑えられる | 仮設費が回数ぶん発生し、総額はむしろ増える |
| ④ | 工法の見直し(足場以外の選択肢を検討) | 仮設費そのものを圧縮できる | 建物との相性の見極めが必要 |
私が最初に検討していただきたいのは④です。 理由は単純で、④だけが「使える時期」が限られているからです。
設計に入る前なら、①②③④の4択があります。ところが設計事務所と仕様を固め、業者選定に入ってしまうと、④は選択肢から消えます。すでに全面足場を前提とした数量が積み上がっているからです。
積立金不足の相談をいただくタイミングは、たいてい「業者の見積が出てから」です。そのときにはもう、いちばん効く手が使えなくなっている。これが、私が現場でいちばん悔しい思いをする場面です。
大月市のマンションが抱える、もう1つの構造問題
人口1万9千人規模の市であることは、管理組合にとって具体的な不利益をもたらします。分譲マンションの総数が少ないため、大規模修繕を専門に手がける地元業者が育ちにくいのです。
その結果、何が起きるか。
- 相見積りを取ろうにも、市内・近隣で声をかけられる先が限られる
- 甲府や東京の業者に依頼すると、遠方からの移動・宿泊費が経費に乗る
- 比較対象が少ないため、提示された金額が高いのか安いのか判断できない
これは大月市の管理組合の責任ではありません。市場構造の問題です。
だからこそ、私は大月市の管理組合にこそ、「工法から見直す」というアプローチが効くと考えています。業者を3社集めて価格を比べるより、そもそも工事のやり方を変えるほうが、削れる金額が桁違いに大きいからです。
足場・ロープアクセス・ハイブリッド——3つの工法の比較
株式会社明誠は、この3つの工法すべてを提案できる、日本でも数少ない会社です。それぞれの特性を、正直にお伝えします。
| 比較項目 | 通常足場工法 | ロープアクセス工法(無足場工法) | ハイブリッド工法 |
|---|---|---|---|
| 仮設費 | 総工事費の15〜25%程度を占める | 大幅に圧縮できる | 部位ごとに最適化 |
| 工期 | 架設・解体だけで2〜4週間 | 架設不要のため短縮できる | 足場部分のみ架設 |
| 居住者への影響 | バルコニーが数か月ふさがる。洗濯物・窓の開閉に制約 | 作業箇所のみ、短時間 | 影響範囲を限定できる |
| 防犯面 | 足場を伝った侵入リスクが生じる | 足場がないためリスクが低い | 足場設置箇所のみ要注意 |
| 向く建物 | 全面改修、複雑な形状、下地補修が広範囲 | 高層、狭隘地、部分補修、外壁の一部のみ劣化 | 大規模で部位ごとに劣化度が異なる建物 |
| 向かない条件 | 敷地に余裕がない、コスト最優先 | 全面的な下地補修が必要な建物 | 小規模で単純な形状の建物 |
数字で申し上げます。仮設足場は総工事費の15〜25%程度を占めます。 5,000万円の工事なら、750万円〜1,250万円が足場代です。
先ほどご紹介したブロック塀の補助が上限20万円(重要路線で30万円)であることを思い出してください。桁が違います。 もちろん20万円は20万円で大切な財源です。しかし、理事会の議論の時間をどちらに割くべきかは明らかです。
「敷地に余裕があるから足場」で思考停止しないために
大月市は都心と比べて敷地に余裕のある物件が多い地域です。だからこそ「足場を架けられるのだから、足場でいい」という判断になりがちです。
その判断の前に、私は3つの問いを立てていただきたいと思っています。
- 本当に全面改修が必要ですか? 劣化診断の結果、補修が必要なのは南面と西面だけ、ということはありませんか
- 居住者が3か月間バルコニーをふさがれる生活を、受け入れられますか? 高齢の方や在宅勤務の方が多い建物では、この負担は数字以上に重くのしかかります
- 見積書の「仮設工事」という費目の下に、何が入っていますか? 足場・養生シート・昇降設備・ガードマン・仮設トイレ。一式表記なら、内訳を出してもらってください
ロープアクセス工法の詳細はロープアクセス工法のご紹介にまとめています。技術的な背景や安全基準については、ロープアクセスドットコムでより踏み込んだ解説をしています。
大月市でのモデルケース2本
実際の物件が特定されないよう、条件を一般化した2つのケースでご説明します。金額はあくまで想定であり、建物の状態によって変動します。
ケースA:大月駅周辺/築28年・8階建て・36戸
| 項目 | 全面足場での想定 | ハイブリッド工法での想定 |
|---|---|---|
| 仮設費 | 約1,000万円 | 約450万円 |
| 総工事費 | 約6,200万円 | 約5,400万円 |
| 差額 | — | ▲約800万円(1戸あたり約22万円) |
| 工期 | 約4か月 | 約3か月(約1か月短縮) |
劣化が集中していた南面・西面は足場を架けて全面補修、劣化の軽微だった北面・東面はロープアクセスで部分補修とシーリング更新のみ。「全面に足場を架ける」という前提を外しただけで、この差が出ます。
ケースB:市郊外/築40年超・5階建て・16戸
| 項目 | 全面足場での想定 | ロープアクセス主体での想定 |
|---|---|---|
| 総工事費 | 約3,000万円 | 約2,400万円 |
| 差額 | — | ▲約600万円(1戸あたり約37万円) |
| 資金調達 | 一時金の検討が必要 | 機構融資の活用で一時金ゼロも視野に |
このケースで注目していただきたいのは、16戸で3,000万円という数字の重さです。1戸あたり187万円。戸数の少ないマンションは、1戸あたりの負担がどうしても重くなります。大月市のように中小規模の物件が中心の地域では、工法の選択が家計に直結します。
大月市の気候を踏まえた、工事の適期カレンダー
| 時期 | 適性 | 理由 |
|---|---|---|
| 3月下旬〜6月上旬 | ◎ | 気温・湿度が安定。塗料の乾燥条件が良い |
| 6月中旬〜7月上旬 | △ | 梅雨。工程が天候に左右され、工期が延びやすい |
| 7月中旬〜8月 | ○ | 乾燥は早いが、猛暑による作業効率低下と職人の安全に配慮が必要 |
| 9月〜11月中旬 | ◎ | 気温・湿度が安定。年内竣工を狙える |
| 11月下旬〜3月中旬 | × | 凍結の恐れ。塗料・シーリングの施工条件を下回る日が出る |
大月市は谷あいの地形で、冬季は冷え込みます。塗料やシーリング材には施工可能な気温・湿度の下限が定められており、それを下回る日は作業ができません。 無理に施工すれば、密着不良や硬化不良という形で、数年後に表面化しかねません。
つまり、大月市で工事ができるのは実質的に春と秋の年2回。しかも春の枠は人気が集中します。
「来春の工事枠を押さえたいなら、前年の秋までに業者選定を終える」——これが逆算の起点です。
18か月逆算スケジュール
理事の任期が1年の管理組合が多いことを踏まえ、引き継ぎを前提にしたスケジュールをご提案します。
| 時期 | やること | 担当の目安 |
|---|---|---|
| 18か月前 | 劣化診断の実施。長期修繕計画との突き合わせ | 理事会 |
| 15か月前 | 大月市 建設課(0554-20-1851)へ電話。次年度の補助事業の受付時期と、共用部への支援の有無を確認 | 理事長または担当理事 |
| 12か月前 | 工法の選定(足場/ロープアクセス/ハイブリッド)。ここが④の分岐点 | 理事会+専門会社 |
| 12か月前 | 大月市 税務担当へ電話。長寿命化促進税制の減額割合を確認 | 会計担当理事 |
| 9か月前 | 資金計画の確定。機構融資を使うなら事前相談 | 会計担当理事 |
| 6か月前 | 補助金の交付申請(ブロック塀等を使う場合)。契約より前に | 理事長 |
| 4か月前 | 交付決定を受けてから工事契約 | 理事長 |
| 着工〜竣工 | 工程管理、居住者への告知 | 理事会+施工会社 |
| 竣工後3か月以内 | 長寿命化促進税制の申告 | 会計担当理事 |
| 引き継ぎ時 | 上記の進捗表を次期理事会へ書面で申し送り | 全理事 |
最後の行が、いちばん大事です。18か月かかる仕事を、任期1年の理事会で回すのは無理があります。 私が関わった管理組合で、うまくいったところには例外なく「次の理事会に渡す紙」がありました。
相見積りで見るべき3つのポイント
大月市のように比較対象が限られる地域では、「安いほうを選ぶ」だけの比較は危険です。見るべきは次の3点です。
①数量が揃っているか
A社が「外壁補修 3,200平方メートル」、B社が「外壁補修 2,800平方メートル」と書いていたら、そもそも同じ工事を見積もっていません。数量の根拠を出させてください。
②仕様が揃っているか
塗料のグレード(アクリル/ウレタン/シリコン/フッ素)、防水の工法(ウレタン塗膜/シート/アスファルト)、シーリングの材種。ここが違えば、金額が違って当然です。メーカー名と製品名まで書かせてください。
③「別途」に何が入っているか
見積書の欄外に小さく「※下地補修は別途」と書かれていることがあります。大規模修繕でもっとも金額がブレるのが下地補修です。
私が理事長さまにお願いしているのは、「想定数量を超えた場合の追加単価を、契約前に見積書へ明記させること」です。これを書かせておくだけで、工事中の「予想より傷んでいたので追加で〇百万円」という交渉が、格段にフェアになります。
大規模修繕工事全体の進め方については大規模修繕工事のご紹介でもご説明しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 大月市に、マンション共用部の大規模修繕への直接補助はありますか。
A. 2026年8月時点で公開されている大月市の情報を確認した限り、共用部の外壁塗装・屋上防水等に直接交付される市の補助制度は見当たりませんでした。制度の新設や改定の可能性はありますので、大月市 建設課(0554-20-1851)へご確認ください。
Q2. 大月市のブロック塀の補助は、いくらまで出ますか。
A. 避難路一般路線に面する場合は対象経費の2/3以内かつ上限20万円、避難路重要路線に面する場合は2/3以内かつ上限30万円です。重要路線では高さ2.2mを超えるブロック塀も対象になります(出典:大月市)。
Q3. 「大月市の耐震補助は143万7,500円」と見ましたが、マンションでも使えますか。
A. 使えません。1,437,500円は木造住宅耐震改修等事業の限度額で、前提となる耐震診断事業の対象から「長屋および共同住宅」が明文で除外されています。また「耐震性を伴わないリフォーム等の工事は対象外」とも定められており、外壁塗装や防水はここに該当します。
Q4. 令和7年度は受付が終了しているとのことですが、もう何もできませんか。
A. 市のページには「事前のご相談には随時対応しております」と記載されています。次年度の受付開始時期を今のうちに確認し、年度初めに動ける準備を整えておくことが現実的な対応です。
Q5. マンション管理計画認定は、大月市で申請できますか。
A. 山梨県が受け付けるのは町村部のマンションのみと明記されているため、市である大月市のマンションは県窓口では申請できません。大月市自身が受付をしているかは公開情報で確認できませんでしたので、市役所(0554-22-2111)へお問い合わせください。
Q6. ロープアクセス工法は、大月市のマンションでも使えますか。
A. 建物の形状や劣化状況によります。全面的な下地補修が必要な建物には足場が適していますし、部分補修が中心なら無足場工法が効きます。技術的な前提や安全基準はロープアクセスドットコムで解説しています。
Q7. 冬に工事はできませんか。
A. できない期間があります。塗料やシーリング材には施工可能な気温・湿度の条件があり、大月市の冬季はこれを下回る日が生じます。11月下旬〜3月中旬は避けるのが無難です。
Q8. 補助金の申請は、工事契約の前ですか、後ですか。
A. 前です。大月市のブロック塀の要綱には「契約および着工は、必ず補助金交付決定後としてください」と明記されています。木造耐震改修も「契約および着工は、必ず設計(報告書提出)後」と定められています。契約を先に済ませてしまうと、補助が受けられなくなる恐れがあります。
この記事のポイントまとめ
- 大月市に共用部大規模修繕への直接補助は見当たらないが、電話1本で「議案に書ける根拠」になる
- 令和7年度は住宅関係4事業すべてが受付終了。大月市は枠が小さく、早い者勝ち
- ブロック塀の補助は一般路線20万円/重要路線30万円の2段構え。幹線沿いの物件は要確認
- 木造3事業は「長屋および共同住宅は除く」と明文で除外。143万7,500円はマンションに使えない
- 仮設足場は総工事費の15〜25%。補助金より工法見直しのほうが金額インパクトが大きい
- 工法の見直しは設計に入る前しか選べない。積立金不足の相談は早いほど打ち手が多い
おわりに
大月市は、桂川の流れと岩殿山に囲まれた、風景の美しい市です。同時に、谷あいの気候と限られた行政予算という現実のなかで、マンションを守っていかなければならない土地でもあります。
補助金の情報は、調べれば出てきます。しかし「うちの建物にとって、どの順番で何をすべきか」は、建物ごとに違います。私は、その順番を一緒に整理するところから、お手伝いしたいと思っています。
見積書を持ってきてください、という話ではありません。総会の前段階で、理事会の頭のなかを整理する。 そこだけでもお力になれることがあります。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。
お問合せフォームからご連絡いただけます。
執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)
株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円および周辺地域で、通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法をご提案できる改修会社です。日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟することで、高品質かつ適正価格の工事を実現しています。
最終更新:2026年8月19日
ご注意:本記事に記載した制度の内容・金額・期間は、2026年8月19日時点で公開されている情報に基づくものです。制度は変更される場合がありますので、申請にあたっては各窓口の最新情報をご確認ください。本記事は特定の制度の適用を保証するものではありません。
出典・参考資料
- 大月市「住まい」(2026年7月30日更新)
- 大月市「各種助成金・他」(2026年7月9日更新)
- 大月市「ブロック塀等安全確保対策支援事業」
- 大月市「木造個人住宅耐震診断事業」
- 大月市「木造住宅耐震改修等事業」(2025年5月21日更新)
- 大月市「耐震改修促進法の改正について」
- 山梨県「マンション管理計画認定制度について」
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制」
- 住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」
- 住宅金融支援機構「マンションすまい・る債」
- ロープアクセスドットコム(ロープアクセス工法の技術情報・安全基準)
大規模修繕の費用高騰は、賃料上昇では埋まらない|首都圏4,209円/㎡と資材ショックの2026年、オーナーと管理組合が“工法”で守る収益【2026年8月】
2026年8月19日 更新
この記事で答える質問:賃料が過去最高水準まで上がっているのに、なぜマンションやビルの手取りは増えないのか。そして、上がり続ける大規模修繕の費用に、オーナーと管理組合は何から手を打てばいいのか。
おはようございます。株式会社明誠の本間です。
昨日(2026年8月18日)、私のところに立て続けに3件、同じ趣旨のご相談がありました。「今年に入って賃料は上げられた。なのに、修繕の見積りを取ったら前回より高くて、結局手元に残らない」。1件は都内の分譲マンション管理組合の理事長さま、2件は収益物件をお持ちのオーナーさまです。
同じ日に3件重なると、これは個別の事情ではなく市場全体で起きていることだな、と私は考えます。実際、この2つの数字は同じ週に並んで発表されています。
結論:賃料は「+0.4%」、資材は「供給そのものが不安定」。同じ物差しで比べてはいけない
先に結論から申し上げます。
- 首都圏の分譲マンション賃料は、2026年7月に1㎡あたり4,209円。前月比+0.4%で、直近1年間の最高値を再び更新しました(出典:東京カンテイ「分譲マンション賃料月別推移 2026年7月」2026年8月17日公表)。
- 一方で不動産事業者の7割弱が中東情勢による事業への影響を認識しており、影響が大きい分野として最多に挙がったのが「大規模修繕工事等での資材価格高騰による建築コスト上昇」で62%でした(出典:長谷工ライブネット調査/東京都宅地建物取引業協会 業界関連ニュース)。
- 賃料の上昇は月次で0.4%という「率」の世界です。一方の修繕費は、材料がそもそも手に入るかという「量」の世界に入りつつあります。率の改善で、量の制約は埋まりません。
私が申し上げたいのは「だから修繕を諦めましょう」ではありません。逆です。上がり方の性質が違う以上、収入側ではなく支出側の設計、つまり“工法の選び方”で勝負するしかない、ということです。ここからが本題です。
何が起きているのか:2026年8月時点の2つの事実
賃料は上がっている。ただし「首都圏だけ」が正確
東京カンテイの2026年7月分データを、圏域別に並べます。
| 圏域・エリア | 2026年7月の平均賃料 | 前月比 | コメント |
|---|---|---|---|
| 首都圏 | 4,209円/㎡ | +0.4% | 小幅に続伸、直近1年間の最高値を再び更新 |
| 東京23区 | 5,157円/㎡ | +0.8% | 2ヵ月連続で上昇 |
| 近畿圏 | - | 反落 | 主要エリアの弱含みで9ヵ月ぶりのマイナス |
| 中部圏 | - | 下落傾向 | 継続的に軟調 |
(出典:東京カンテイ 賃料月別推移 2026年8月17日公表分)
ここは正確にお伝えしたいところです。「マンション賃料が過去最高」という見出しが独り歩きしていますが、東京カンテイ自身の表現は「直近1年間での最高値を再び更新」です。統計開始以来の史上最高という意味ではありません。そして上がっているのは首都圏・東京23区であって、近畿圏は9ヵ月ぶりに反落、中部圏は下落傾向です。
もう少し長い目盛りで見ると、首都圏の年間平均賃料は2023年3,512円/㎡ → 2024年3,603円/㎡ → 2025年3,803円/㎡と推移しています。2年でおよそ8%の上昇です。悪くありません。悪くありませんが、後で見る工事費の動きと比べると、決して余裕のある数字ではありません。
資材は「値上がり」ではなく「供給の目詰まり」の段階に入った
もう一方の事実です。2026年6月16日、国土交通省は「中東情勢の変化による建設資材への影響に係る直轄工事の対応について」という報道発表を行いました。要点はこうです。
国土交通省では、ナフサを由来とする建設資材について、昨今の中東情勢の変化に伴って生じている供給の偏りや流通の目詰まりの解消に努めているところです。(中略)代替資材の調達や流通経路の見直し等、追加で必要となる内容を設計変更する運用を、直轄工事において導入します。
(出典:国土交通省 報道発表資料(令和8年6月16日))
ナフサ(粗製ガソリン)とは、原油を精製してつくる石油化学の基礎原料です。素人向けに言い換えると、「プラスチック・ゴム・塗料・接着剤のもと」になるものです。国が直轄工事、しかも既契約の工事まで含めて設計変更を認める運用を入れたということは、現場で「発注時の材料が手に入らない」事態が実際に起きている、という意味です。
私は正直に申し上げます。国交省がここまで踏み込むのは、通常のインフレ対応ではありません。「予定していた材料が来ないので、代わりの材料で組み直す」ことを制度として認めたわけです。民間の大規模修繕にも、当然ながら同じ物理現象が及びます。
なぜ大規模修繕が、新築より先に効くのか
「新築のほうがたくさん材料を使うのでは」と思われるかもしれません。ところが大規模修繕のほうが、この種のショックに弱い構造があります。
理由は3つです。
- 工程のほぼ全部がナフサ由来材料に依存している。外壁塗装(塗料)、屋上・バルコニーの防水(ウレタン・塩ビシート)、目地のシーリング(変成シリコーン等)、タイル補修の接着剤、養生シート。私が現場で使う材料を並べていくと、コンクリートと金物以外はほぼ石油化学製品です。
- 代替が効きにくい。新築なら設計段階で仕様変更ができますが、改修は「既存の下地と相性の良い材料」を選ぶ必要があります。既存防水がウレタンなら、上に載せられる材料は限られます。「安いものに替える」が技術的に許されない場面が多いのです。
- 工期の延伸コストが直撃する。材料の入荷待ちで2週間止まったとき、止まっているあいだも足場のリース料は日割りで発生し続けます。ここが今回いちばん怖いところで、次の章の主題です。
日経クロステックも2026年に入ってから、建材不足による大規模修繕の計画見直しリスクを継続的に報じています(参考:日経クロステック「建材不足でマンション大規模修繕に停止の危機、計画見直しも」)。業界紙の記事は有料部分もありますが、見出しだけでも空気は伝わると思います。
なお、行政の建物でも同じことが起きています。福岡市城南区役所別館では、令和8年8月21日から12月まで外壁改修工事および屋上防水工事が予定されており、案内文には「工事期間中は、建物の周囲に足場を設置します」と明記されています(出典:福岡市 城南区役所別館 外壁改修工事および屋上防水工事のお知らせ)。約4ヵ月にわたって足場が建ち続ける——この期間そのものが、コストであり、テナントや利用者への負荷でもあります。
賃料と工事費を「同じ物差し」で見る:NOIで考えると何が見えるか
ここで、収益不動産オーナーさま向けに、財布の感覚に落とし込みます。
NOI(Net Operating Income/純営業収益)とは、家賃収入から管理費・修繕費・税金などの運営費を引いた、実際に手元に残る利益のことです。物件の価値は最終的にこのNOIで決まります。
仮に、専有面積合計1,000㎡の賃貸マンションを想定します。
| 項目 | 計算 | 金額(月額) |
|---|---|---|
| 賃料収入(4,209円/㎡想定) | 4,209円 × 1,000㎡ | 約420.9万円 |
| 前月比+0.4%で増えた分 | 420.9万円 × 0.4% | 約1.7万円/月 |
| 年間の増加分 | 1.7万円 × 12ヵ月 | 約20万円/年 |
一方で、大規模修繕工事の総額が仮に5,000万円だとして、資材高騰で5%上振れすれば250万円の追加負担です。賃料の月次+0.4%を12年積み上げても、この上振れ1回分に追いつかない計算になります。
※この試算は、賃料水準を東京カンテイの首都圏平均値で単純に置いた仮定計算です。実際の賃料は立地・築年・専有面積で大きく異なりますので、ご自身の物件の数字に置き換えてご覧ください。
私がお伝えしたいのはこの一点です。「賃料を上げて吸収する」という発想では、この局面は乗り切れません。支出側、それも工事費の構造そのものに手を入れる必要があります。
工事が止まると何が起きるか:足場リース料という「時計」
資材の入荷が遅れたときに、いちばん静かに効いてくるのが仮設足場のリース料です。ここは私が現場でもっとも神経を使うところなので、少し詳しくお話しします。
足場は「建てて、あとは工事が終わるまで置いておくもの」ではありません。架設・解体の費用と、置いている期間に応じたリース料の2階建てになっています。つまり、工事が止まっているあいだも、足場だけは料金メーターを回し続けます。
私が実際に経験した話をします。ある10階建てのマンションで、屋上防水の材料が入荷待ちになり、2週間工程が空いたことがありました。職人は他現場に回せますが、足場は動かせません。壁面積の広い建物ほど、この「止まっている2週間」の重みが増します。そのとき理事長さまに私が申し上げたのは、「工事費が上がったのではなく、時間が費用に変わってしまいました」という説明でした。あれは説明する側としても、本当に苦しかった記憶があります。
止まったときのコストを、ざっくり整理すると次のようになります。
| 止まっている間に発生し続けるもの | 止めれば減らせるもの |
|---|---|
| 仮設足場のリース料 | 職人の人工(にんく=1人1日あたりの労務費) |
| 現場事務所・仮設トイレ等の賃料 | 材料の追加発注 |
| 近隣対応・警備の一部 | 産業廃棄物の処理費 |
| 居住者のバルコニー使用制限(金銭以外の負担) | — |
左側の列は、工事が進んでいるかどうかに関係なく発生する費用です。資材の供給が不安定な年ほど、この左列が膨らむリスクが高くなります。
だからこそ私は、2026年の見積り比較では「総額がいくらか」だけでなく、「止まったときに何がいくら増えるか」を先に聞いておくことを強くお勧めしています。足場を使わない工法であれば、この左列の最大項目そのものが存在しません。これは値引き交渉では得られない種類の差です。
賃料が上がる物件と、上がらない物件を分けているもの
もうひとつ、収益不動産をお持ちのオーナーさま向けに申し上げたいことがあります。
東京カンテイの数字は圏域の平均です。平均が+0.4%ということは、上がった物件と下がった物件の両方があるということでもあります。では、その差はどこでつくのか。
私が管理会社さんや仲介の方から聞く範囲では、築年が同じでも「外から見たときの印象」で内見数が明確に変わるそうです。具体的には次のような点です。
- 外壁の汚れ・チョーキング(塗膜が粉状になり、手で触ると白く付く現象)
- 共用廊下・階段の鉄部のサビ、手すりの塗装の剥がれ
- エントランス周りのシーリングの割れ、タイルの浮き
- バルコニー隔て板の劣化、屋上からの雨だれ跡
いずれも構造の安全性には直結しにくいが、写真に写ってしまう項目です。内見前の段階、つまりポータルサイトの写真で選別されている時代ですから、ここは家賃に直結します。
一方で、これらは部分補修で改善できる項目でもあります。全面改修の予算が今年は組めなくても、目に見える範囲だけを先に手当てするという判断はあり得ます。そして、部分補修こそロープアクセス工法が最も費用対効果を発揮する領域です。建物全体に足場を組まずに、傷んでいる面だけを直せるからです。
私はいつもオーナーさまに、「今年やる工事」と「3年以内にやる工事」を分けて書き出すことをお願いしています。全部を今年やる前提で見積りを取ると、資材高騰の影響をまともに受けてしまうためです。
費用高騰局面で、管理組合とオーナーが打てる5つの手
私が今年、理事会や個人オーナーさまとの打ち合わせで実際にお勧めしている順番で並べます。
手1:見積書を「材料費」「労務費」「仮設費」の3つに割って見る
多くの見積書は工種別(塗装工事一式、防水工事一式…)に並んでいます。これを材料・労務・仮設の3分類に組み替えてもらってください。資材高騰の影響を受けるのは材料費だけです。にもかかわらず全体が一律に上がっているなら、その理由を聞く根拠になります。
手2:仮設費(足場)の比率を確認する
一般的な中高層マンションの大規模修繕では、仮設足場が工事費全体の20〜25%程度を占めるケースが少なくありません(物件形状・階数・道路条件で大きく変動します)。ここは材料高騰とは無関係に発生する固定費です。資材が高いときほど、仮設費の削減余地が相対的に大きくなります。
手3:工程を分割し、材料調達リスクを分散する
外壁と屋上防水を必ず同時にやる必要はありません。材料の入手性が読めない工種を後ろに回し、確保できているものから着手する。この判断は施工会社と一緒でないとできません。分割すると足場を二度組むことになる、と心配される方が多いのですが、後半をロープアクセス工法で回せば、その心配は小さくなります。工程の組み替えと工法の組み替えは、本来セットで考えるべきものだと私は思っています。
手4:修繕積立金の水準を、値上げの前に「計画」から見直す
国土交通省は「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(平成23年4月策定、直近では令和6年6月改定)を公表しています(出典:国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドライン)。積立金の額は長期修繕計画から逆算されますので、計画の工事内容と周期が現実と合っているかを先に点検するほうが順序として正しいと私は考えています。
手5:管理計画認定制度の取得を検討する
適切な管理計画をもつマンションを自治体が認定する制度です(国土交通省 マンション管理計画認定制度)。認定を受けると、住宅金融支援機構の融資条件や一部自治体の助成で有利になる場合があります。ただし要件・優遇内容は自治体により異なりますので、必ずお住まいの自治体の最新情報でご確認ください。
工法で削る:仮設足場という「最大の固定費」に手を入れる
ここからは、私どもが日本でも数少ない立場として、正直にお話しできる部分です。利益相反を避けるため、自社サービスの話であることを最初に明示します。
株式会社明誠は、通常の足場仮設による工法、無足場工法であるロープアクセス工法、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適なものをご提案しています。
3工法の比較
| 工法 | 仮設費 | 工期 | 居住者・テナントへの影響 | 向いている建物 |
|---|---|---|---|---|
| 通常足場工法 | 大(全体の20〜25%程度) | 長め | 大(採光・防犯・バルコニー使用制限) | 中低層、複雑形状、全面的な改修 |
| ロープアクセス工法(無足場) | 小 | 短め | 小(生活・営業を止めにくい) | 高層、足場架設が困難な物件、部分改修 |
| ハイブリッド工法 | 中 | 中 | 中 | 大規模・複雑物件、総合コスト最適化が必要なケース |
ロープアクセス工法とは、産業用ロープで職人が壁面に降下して作業する無足場の施工方法です。もともとは欧州の産業ロープアクセス技術が起源で、日本では高層ビルの外壁調査や部分補修から普及しました。ロープアクセス工法の技術的な解説や一般的な安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめていますので、技術面をもう少し知りたい方はそちらをご覧ください。
私が今年ご提案の場で必ず申し上げているのは、「資材が高い年こそ、仮設費を見直す年です」ということです。材料費は市況で決まってしまい、私たちにも下げようがありません。しかし仮設費は、工法の選択という設計判断で変えられる領域です。工期が短くなれば、材料の入荷待ちで止まったときの足場リース料の垂れ流しも小さくできます。
弊社の詳しいサービス内容はロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介にまとめています。
フランチャイズによる「高品質×低価格」
もうひとつ、私どもの特徴を申し上げます。明誠はロープアクセス工事として日本で初めてのフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門会社が加盟しています。中間マージンの多層構造を減らし、専門職が直接施工に入る体制をつくることで、品質を落とさずにコストを抑えることを目指しています。資材高騰局面では、この体制の意味がより大きくなると私は感じています。
ただし、ロープアクセスが不向きな場合もあります
両論併記でお伝えします。私は「すべてロープアクセスにしましょう」とは申し上げません。以下のようなケースでは、素直に足場を組んだほうが総額でも品質でも有利です。
- 外壁の全面を張り替える、タイルを大面積で貼り替えるなど、常時大量の材料を壁面に上げ続ける工事
- バルコニー内部の床防水を全戸分やるなど、水平面の作業が中心の工事
- 建物形状が極端に複雑で、支点(ロープを固定する箇所)が屋上に十分に取れない場合
- 公的な仕様書で足場設置が要件になっている工事(自治体発注案件などに見られます)
「足場が要らない」ことが目的ではありません。建物にとって総額と品質と生活影響のバランスが最も良い組み合わせを選ぶことが目的です。だからこそ、3工法をすべて自社で持っている意味があると私は思っています。
見積書のここを見てください(実務チェックリスト)
最後に、明日の理事会でそのまま使える形でまとめます。
- [ ] 仮設費(足場・養生・昇降設備)が総額の何%かが分かる内訳になっているか
- [ ] 材料費の上昇分が、工種ごとにいくらなのか説明できるか
- [ ] 材料の入荷遅延が起きたときの工期延伸の扱い(追加費用の負担者)が契約書に書かれているか
- [ ] 代替材料を使う場合の承認プロセスが定められているか
- [ ] 見積りの有効期限(資材高騰局面では短くなりがちです)
- [ ] 足場を使わない選択肢での比較見積りを取っているか
- [ ] 建築基準法第12条に基づく定期報告・外壁全面打診調査の時期と、修繕工事のタイミングを合わせられているか(出典:国土交通省 定期報告制度)
特に3つ目と4つ目は、2026年の今だからこそ入れておくべき条項です。私が現場で20年やってきて一番悔しい思いをするのは、技術の問題ではなく、契約に書いていなかったせいで誰も責任を取れなくなり、工事が止まる場面です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 賃料が上がっているなら、修繕費の値上がりは吸収できるのでは?
A. 数字の性質が違います。首都圏賃料の直近の伸びは前月比+0.4%(2026年7月、東京カンテイ)である一方、資材は価格だけでなく供給の安定性そのものが揺れています。本文の「NOIで考える」章の試算をご覧ください。
Q2. 資材高騰はいつまで続きますか?
A. 時期を断定できる立場にはありません。ただ、国土交通省が令和8年6月16日に直轄工事で代替資材への設計変更を認める運用を導入していることから、短期で解消する前提では計画を組まないほうが安全だと私は考えています(出典:国土交通省)。
Q3. 大規模修繕を延期すれば、費用は抑えられますか?
A. 一時的な支出は抑えられますが、劣化が進んでから直すほうが総額は大きくなる傾向があります。特に防水は、下地まで水が回ると補修範囲が一気に広がります。延期する場合でも、部分補修で進行を止める判断はセットで検討してください。
Q4. ロープアクセス工法にすると、品質は落ちませんか?
A. 施工方法が変わるだけで、使う材料も工程も基本は同じです。むしろ職人が壁面に密着して作業するため、劣化の発見精度が上がる面もあります。ただし本文で挙げたとおり、大面積の張り替え工事など不向きな場面もあります。
Q5. 修繕積立金の値上げは避けられませんか?
A. 避けられるかどうかは物件ごとに異なります。ただ、値上げの前に「長期修繕計画の工事内容と周期が現実と合っているか」を点検する順序をお勧めしています(参考:国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドライン)。
この記事のポイントまとめ
- 首都圏の分譲マンション賃料は2026年7月に4,209円/㎡、直近1年間の最高値を更新
- 不動産事業者の62%が「大規模修繕等の資材価格高騰」を最大の影響分野に挙げた
- 国交省は令和8年6月、ナフサ由来資材の代替調達を直轄工事で設計変更対象にした
- 賃料の月次+0.4%では、工事費の一度の上振れを吸収しきれない
- 材料費は下げられないが、仮設費は工法の選択で下げられる余地がある
執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション・ビル・ホテルの大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)
株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事を手がける改修会社です。通常の足場仮設工法、無足場のロープアクセス工法、両者を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法をご提案できます。ロープアクセス工事としては日本初のフランチャイズを展開しています。
最終更新:2026年8月19日
見積りが上がってきた理由を、材料のせいなのか、体制のせいなのか、切り分けて説明してくれる会社かどうか。私はそこが今年いちばんの見極めどころだと思っています。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。
出典・参考資料
- 東京カンテイ「分譲マンション賃料月別推移 2026年7月」(2026年8月17日公表)
- 東京カンテイ「賃料月別推移 バックナンバー」
- 国土交通省「中東情勢の変化による建設資材への影響に係る直轄工事の対応について」(令和8年6月16日)
- 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(平成23年4月策定/令和6年6月改定)
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」
- 国土交通省「定期報告制度(建築基準法第12条)」
- 東京都宅地建物取引業協会「中東情勢、7割弱が「事業に影響」/長谷工LN」
- 福岡市「城南区役所別館 外壁改修工事および屋上防水工事のお知らせ」
- 日経クロステック「建材不足でマンション大規模修繕に停止の危機、計画見直しも」
※本記事に記載した制度・数値は執筆時点のものです。制度は変更される可能性がありますので、ご検討の際は必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的・税務的助言ではありません。
都留市のマンション補助金|大規模修繕2026年版
2026年8月18日 更新/株式会社明誠 代表取締役 本間幸紘
この記事で答える質問はひとつです。「山梨県都留市の分譲マンションで大規模修繕をするとき、行政のお金は使えるのか。使えるとしたら、どの制度を、いくら、どの順番で申請すればいいのか」。
先に結論から申し上げます。都留市には、共用部の大規模修繕そのものを直接補助する制度は、公開情報の範囲では確認できませんでした。ここは正直に書きます。ただし都留市には、他の市ではまずお目にかかれない、分譲マンションが正面から対象になり得る、補助率11/15(約73%)の耐震改修補助が用意されています。しかもその補助単価表には「住宅(非木造)」という区分が明記されている。鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅を、制度側が最初から想定しているということです。
私は塗装工から始めて、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を長くやってきました。管理組合の理事会に呼ばれて「補助金は使えますか」と聞かれる回数は、ここ数年で明らかに増えています。そのたびに私が申し上げているのは、「補助金は探すものではなく、要件に自分の建物を当てはめて仕分けるもの」ということです。この記事は、都留市の管理組合の理事の方が、市の一次情報だけを根拠に、その仕分けを自分でできるようになるために書きました。
1. 結論:都留市の管理組合が2026年度に検討すべき制度は5本
まず全体像を表にします。◎=共用部修繕に正面から効く/○=接点あり/△=条件次第/×=対象外という仕分けです。
| 判定 | 制度の正式名称 | 内容 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| ◎ | 都留市災害時避難路通行確保対策事業(耐震改修工事・建替え・除却) | 補助対象事業費または限度額のいずれか少ない額の11/15以内。住宅(非木造)は39,900円/㎡以内 | 建設課建築住宅担当 |
| ◎ | 都留市災害時避難路通行確保対策事業(設計) | 耐震改修・建替えの設計費の5/6以内 | 建設課建築住宅担当 |
| ○ | 都留市アスベスト飛散防止対策事業 | 含有調査上限25万円/除去等工事2/3以内・上限400万円 | 建設課建築住宅担当 |
| ○ | 都留市ブロック塀等耐震改修促進事業 | 延長1mにつき15,000円を乗じた額との少ない方の2/3以内・上限20万円 | 建設課建築住宅担当 |
| △ | マンション長寿命化促進税制(国の制度) | 翌年度の建物固定資産税を減額。減額割合は市の条例による | 税務課 |
| × | 都留市木造住宅耐震診断支援事業/耐震改修事業/耐震シェルター設置事業 | 対象は「戸建の木造住宅」。RC・SRCの分譲マンションは対象外 | ― |
| × | 都留市やまなしKAITEKI住宅普及促進事業費補助金 | 新築・取得が前提。共用部修繕は想定外 | ― |
| × | 空き家バンク利活用事業補助金/移住定住促進奨励金/結婚新生活支援/子育て世帯住宅取得支援 | 移住定住・取得施策。管理組合の共用部修繕には不適 | ― |
出典はすべて都留市の公式ページと、都留市 補助金・貸付金一覧(令和8年4月1日現在)、および都留市耐震改修促進計画(令和8年3月改定)です。以下、1本ずつ根拠を示しながら潰していきます。
この記事の読み方(お急ぎの方へ)
- 国道139号、県道都留道志線、県道四日市場上野原線、県道都留インター線のいずれかに面していて、昭和56年5月31日以前に建てられたマンションにお住まいなら、第2章が最優先です。桁が違います。
- 上記に当てはまらないなら、第3章(アスベスト)と第4章(ブロック塀)、そして第7章(長寿命化促進税制)と第8章(住宅金融支援機構)が現実的な検討先になります。
- 「うちは対象外だった」で終わらせないために、第9章以降の工法によるコスト圧縮を必ずお読みください。補助金の上限20万円より、仮設足場の見直しのほうが金額の桁が大きい、という話をします。
2. 都留市の本命:避難路沿道建築物なら補助率11/15の耐震改修補助が使える
ここが都留市の記事で一番お伝えしたいところです。
2-1. 都留市には避難路沿道建築物が54棟あり、その3分の2は耐震性がない
都留市耐震改修促進計画(令和8年3月改定)には、都留市内の耐震化の実情が数字で書かれています。管理組合の理事の方に、ぜひ知っておいていただきたい数字です。
| 項目 | 数値(令和7年度末) |
|---|---|
| 市内の住宅総数 | 12,798戸 |
| うち共同建て住宅 | 4,863戸(38.0%) |
| 市内の住宅の耐震化率 | 91.3% |
| 多数の者が利用する特定建築物等 | 137棟/耐震化率96.4% |
| 要緊急安全確認大規模建築物 | 市内に該当なし |
| 避難路沿道建築物(要安全確認計画記載建築物) | 54棟 |
| うち耐震性を有するもの | 4棟 |
| うち耐震性が無いもの | 50棟 |
| 避難路沿道建築物の耐震化率 | 33.3% |
| 令和17年度末の目標 | 90.7% |
都留市の住宅の38.0%が共同建て住宅です。人口3万人規模の市としては、これは相当に高い比率です。都留市の市のプロフィールによれば、都留市は都留文科大学をはじめ3つの高等教育機関に約3,000人の学生が学ぶ「教育のまち」。学生向けの集合住宅が多い土地柄が、この数字に表れているのだと思います。
そして注目すべきは最後の3行です。避難路沿道建築物54棟のうち、耐震性が確認されているのはわずか4棟。50棟は耐震性が無いと診断されている。耐震化率33.3%は、私が全国の自治体の耐震改修促進計画を読んできた中でも、かなり低い部類です。都留市はこれを令和17年度末までに90.7%へ引き上げる目標を掲げています。
目標が高く、現状が低い。ということは、行政としては何としても進めたい領域だということです。補助制度が手厚いのには理由があります。
2-2. 対象になるのはどの建物か
都留市の耐震診断義務付け対象建築物のページによれば、義務化の対象(要安全確認計画記載建築物)は、次の2つを両方満たす建築物です。
- 市が指定する義務化対象路線の沿道建築物であること
- 昭和56年5月31日以前の耐震基準で建築されたものであること
- 法律に定める高さを超える建築物であること
– 建築物のいずれかの部分の高さが、その部分から前面道路の境界線までの水平距離に、前面道路幅員の1/2に相当する距離(前面道路幅員が12メートル以下の場合は6メートル)を加えたものを超える建築物
義務化対象路線は、耐震改修促進計画で次のとおり指定されています。
| 種別 | 路線名 | 区間 |
|---|---|---|
| 一般国道 | 国道139号 | 西桂町境から大月市境までの間 |
| 主要地方道 | 都留道志線 | 国道139号交点から道志村境までの間 |
| 主要地方道 | 四日市場上野原線 | 国道139号交点から上野原市境までの間 |
| 主要地方道 | 都留インター線 | 国道139号交点から都留ICまでの間 |
3番目の「高さ」の条件は文章だとわかりにくいのですが、要は倒壊したときに前面道路を塞いでしまう高さかどうかを判定しています。前面道路の幅員が12メートル以下なら、道路境界線からの距離に6メートルを足した高さが基準。つまり、道路にほぼ接して建つ中層以上の建物なら、多くが引っかかります。4階建て、5階建ての旧耐震マンションが国道139号沿いに建っていれば、まず該当を疑うべきです。
なお都留市内の対象建築物54棟については、すべての所有者から耐震診断の結果が報告済みで、山梨県が令和6年12月に公表しています(耐震改修促進計画による)。報告期限は令和6年3月31日でした。もしお住まいのマンションが対象なら、すでに管理組合として診断を実施し報告している可能性が高い。まずは管理組合の書類棚を確認してください。過去の理事会で処理され、引き継ぎで埋もれているケースを私は何度も見ています。
2-3. 補助率と単価:ここが桁違いに手厚い
都留市耐震改修促進計画に、都留市災害時避難路通行確保対策事業の中身が明記されています。
(1)耐震改修または建替えに関わる設計
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 補助対象事業費または限度額のいずれか少ない額の5/6以内 |
| 限度額(耐震改修の設計) | 面積1,000㎡以内の部分:2,100円以内/1,000㎡超2,000㎡以内の部分:1,570円/㎡以内/2,000㎡超の部分:1,050円/㎡以内 |
| 事業期間 | 令和13年3月31日(令和12年度)まで |
(2)耐震改修工事・建替え工事・除却工事
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 補助対象事業費または限度額のいずれか少ない額の11/15以内 |
| 限度額(耐震改修工事) | 住宅(木造):15,800円/㎡以内/住宅(非木造):39,900円/㎡以内/住宅以外:57,000円/㎡以内(ただしIs値が0.3未満の場合は62,700円/㎡以内) |
| 事業期間 | 令和13年3月31日(令和12年度)まで |
「住宅(非木造):39,900円/㎡以内」――この一行が決定的です。木造でも、住宅以外でもない、非木造の住宅という区分が制度側に用意されている。鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の分譲マンションは、まさにここに当たります。
数字にしてみます。延床面積2,000㎡(たとえば1戸70㎡×24戸+共用部)のマンションで耐震改修を行う場合、限度額は 39,900円/㎡×2,000㎡=7,980万円。その11/15、つまり約73%が補助対象になり得るという計算です。もちろん実際の補助額は補助対象事業費との比較や国費の配分、予算の状況で決まりますので、この額がそのまま出ると申し上げるつもりはありません。ただ、「上限20万円」といった規模の話ではないということは、はっきり申し上げられます。
2-4. 事業期間について、2つの記述があります
ここは正直に書いておきます。都留市の耐震診断義務付け対象建築物のページ(更新日2024年4月1日)には、事業期間が「耐震改修設計費・建替え設計費:令和7年度まで」「耐震改修工事費・建替え工事費・除却費:令和7年度まで」と書かれています。
一方、令和8年3月に改定された耐震改修促進計画では、いずれも「令和13年3月31日(令和12年度)まで」と記載されています。
新しいのは計画のほう(令和8年3月改定)です。計画期間そのものが令和8年度から令和17年度までの10年間に延長されており、その中で支援策も延長されたと読むのが自然です。ただし、ウェブページの更新が追いついていない可能性もあれば、私の読み方が間違っている可能性もあります。ここは断定しません。
やるべきことは1つ。建設課建築住宅担当(0554-43-1111 内線136・137)に電話して、「災害時避難路通行確保対策事業は令和8年度も申請を受け付けていますか」と聞くこと。これだけです。所要時間は5分もかかりません。
2-5. 耐震改修と大規模修繕は、同じ足場でやるべきです
現場からの実務的な話をします。
耐震改修工事と大規模修繕(外壁塗装・シーリング打替え・屋上防水)は、まったく別の工事に見えて、必要な仮設が同じです。外壁に耐震補強のブレースや増設壁を入れるとき、外部に足場が要る。外壁塗装にも足場が要る。この仮設を2回架けるか、1回で済ませるか。ここに数百万円の差が出ます。
私が現場で見てきた失敗は、「耐震改修は行政の補助が絡むから別枠」と思い込んで、大規模修繕を先に済ませてしまうケースです。塗り立ての外壁に、2年後にまた足場を架けて穴を開ける。もったいない、では済みません。
補助金の交付決定には時間がかかります。だからこそ、耐震改修の可能性が少しでもあるなら、大規模修繕の設計段階で耐震診断結果を机の上に載せる。これが正しい順番です。設計費にも5/6の補助があるのですから、設計から一緒に組み立てるべきです。
3. アスベスト調査は上限25万円、除去は上限400万円
都留市にはアスベスト飛散防止対策事業があります。これも管理組合にとって接点のある制度です。
| 区分 | 対象建築物 | 補助額 |
|---|---|---|
| 含有調査 | 吹付けアスベスト等と思われる建材が施工されている建築物。5年以上除却する予定がない既存建築物 | 含有調査機関に支払う費用(上限25万円) |
| 除去等工事 | 多数の者が利用する建築物で、5年以上除却する予定がなく、交付要綱の別表に該当するもの | 工事費用の2/3(上限400万円) |
補助対象費は、含有調査については「吹付けアスベスト等、吹付バーミキュライト、吹付けひる石、吹付けパーライト等について行うアスベスト含有の有無に係る調査費用」。除去等については「露出して施工されている吹付けアスベスト等の除去、封じ込め又は囲い込みを行う費用」です。交付対象者は「補助対象建築物の所有者等(市税の滞納がないことが条件)」とされています。
3-1. マンションのどこにアスベストが残っているか
「うちは住宅だから関係ない」と思われるかもしれませんが、これが違います。私が実際に見てきた発見箇所は次のとおりです。
- 機械室・ポンプ室の天井および壁
- 電気室・受変電設備まわり
- 屋内駐車場・ピロティの天井
- 階段室の裏側、エレベーター機械室
- パイプスペース(PS)の内部
いずれも専有部ではなく共用部です。そして厄介なのは、足場を架けて外壁を剥がしてから、あるいは天井を開口してから発覚するという点。大規模修繕の工程がそこで止まります。工期が延び、追加費用が発生し、住民説明会をやり直すことになる。
昭和30年代後半から昭和50年ごろに建てられた鉄骨造・RC造の建物では、耐火被覆や結露防止の目的で吹付け材が使われている可能性があります。竣工図の仕上表を1枚めくるだけで、ある程度の当たりはつきます。大規模修繕の設計に入る前に、これをやってください。
3-2. 管理組合名義で申請できるかは、断定できません
都留市のページには、交付対象者として「補助対象建築物の所有者等」とあります。この「等」に区分所有建物の管理組合が含まれるのか、それとも区分所有者全員の連名になるのか、公開情報からは読み取れませんでした。ここは断定を避けます。
また除去等工事の対象が「多数の者が利用する建築物」とされている点も、分譲マンションが該当するかどうかは要綱の別表を確認する必要があります。
建設課建築住宅担当(0554-43-1111 内線136・137)に、竣工図の仕上表と現況写真を持って事前相談してください。補助金交付決定前に業者契約や工事を行うと対象外になるのは、都留市のすべての補助制度に共通する作法です。ここだけは外さないでください。
4. ブロック塀は延長1mあたり15,000円、上限20万円
都留市ブロック塀等耐震改修促進事業費補助金交付事業です。マンションの敷地外周に古い塀が残っているケースは、都留市に限らず珍しくありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | ①ブロック塀、石塀、れんが塀等 ②道路、公園、広場、公共建築物の敷地等に面している ③高さ1メートル以上(擁壁の上に設置されている場合は、擁壁を含む高さが1メートル以上かつブロック塀等の高さが30センチメートル以上) |
| 補助額 | 補助対象経費、または延長1メートルにつき15,000円を乗じて得た額のうち、いずれか少ない額の2/3以内で、上限20万円 |
| 対象者 | ブロック塀等の所有者または管理者 |
| 対象外となる者 | 国・地方公共団体等/同じ土地でこの補助金の交付を受けたことがある者/公共事業の補償対象/市税等を滞納している者 |
| 補助期間 | 令和8年度末(耐震改修促進計画では令和12年度まで) |
「補助申請を行う土地において、この補助金の交付を受けたことがある者」は対象外――これは1敷地1回限りという意味です。分割して2回申請する、という発想は通りません。マンションの敷地に対象となる塀が複数ある場合は、1回の申請でまとめて工事する設計にしておく必要があります。
そして繰り返しますが、補助金交付決定前に業者契約や工事を行った場合は補助金を受けられません(市ページに太字で明記)。大規模修繕の工事請負契約に外構を含めてしまうと、契約日が交付決定より前になった時点で、この20万円は消えます。外構は別契約に切り出す。段取りひとつの問題です。
なお都留市は、通学路等のパトロールを行い、危険なブロック塀の撤去や生垣への改修を推奨する方針を耐震改修促進計画に明記しています。行政側も進めたい施策なので、相談は歓迎されるはずです。
5. 木造向けの制度は、分譲マンションでは使えません(根拠を示します)
インターネットで「都留市 耐震 補助金 143万円」と検索すると、そこそこの金額が出てきます。管理組合の理事会で「143万円出るらしい」という話が出ることがありますが、これは木造戸建て住宅の金額です。
都留市の木造個人住宅に関する事業には、3事業すべてについて対象建築物がこう書かれています。
昭和56年5月31日以前に着手された戸建の木造住宅(2階建て以下)で、個人が所有する住宅で、所有者若しくは所有者の親族(3親等以内)が居住しているもの又はこれから居住するもの
「戸建の木造住宅」と明記されています。RC造・SRC造の分譲マンションの共用部は、この時点で対象外と断定できます。
| 事業名 | 補助額 | 事業期間 | 分譲マンション |
|---|---|---|---|
| 木造住宅耐震診断支援事業 | 全額(耐震診断業者へ直接払) | 令和17年度まで | × |
| 木造住宅耐震改修事業 | 上限1,437,500円 | 令和8年度まで | × |
| 木造住宅耐震シェルター設置事業 | 設置費用の2/3以内かつ上限240,000円 | 令和17年度まで | × |
耐震改修事業には「都留市木造住宅耐震診断支援事業の結果、総合評点が1.0未満であること」、シェルター設置には「総合評点が0.7未満であること」という条件も付きます。いずれにせよマンションには関係ありません。
ただし、理事の方が個人として木造の実家をお持ちなら話は別です。この情報を管理組合の掲示板で共有すると、住民の方に喜ばれます。私の経験上、「管理組合は住民の役に立つ情報をくれる」という信頼が、総会の議案を通す力になります。補助金の話は、そういう使い方もできます。
6. 「使えそうで使えない」制度を、先に潰しておきます
都留市の補助金・貸付金一覧(令和8年4月1日現在)には30本以上の制度が並んでいます。管理組合の理事会で誤読されやすいものを、あらかじめ潰しておきます。
6-1. 移住定住促進奨励金(企画課政策推進担当)
奨励金の額のうち(2)に「市内の建築業者を元請として住宅の新築、建て替えまたは増築する場合、これらの経費の2%に相当する額(上限30万円)。改築または改修する場合には、これらの経費の範囲内(上限10万円)」という記載があります。「改修」の文字を見て色めき立つ理事の方がいらっしゃいますが、対象者は「市外から都留市に転入し、住宅又は住宅及び土地を取得した方」です。既に住んでいる区分所有者の共用部修繕には使えません。
6-2. 都留市やまなしKAITEKI住宅普及促進事業費補助金(建設課建築住宅担当)
補助額20万円〜120万円。金額だけ見ると魅力的ですが、対象は「やまなしKAITEKI住宅の認定を受けた住宅を建築または取得した方」。山梨県が定めるKAITEKI住宅基準を満たした新築・取得が前提の制度で、既存マンションの共用部修繕は想定されていません。
6-3. 空き家バンク利活用事業補助金(企画課政策推進担当)
リフォーム補助事業として「リフォームにかかる費用の1/2(上限50万円)」がありますが、対象者は「賃貸借契約の締結をした空き家の所有者」。居住中の分譲マンションには適用されません。
6-4. 合併処理浄化槽設置費補助事業(地域環境課環境政策室)
制度の概要に「(賃貸・建売用専用住宅、集合住宅は対象外)」と明記されています。都留市の補助制度は、集合住宅を対象外とする場合に明文で書く傾向がある、ということでもあります。裏を返せば、明文で除外されていない制度は、窓口に確認する価値があるということです。
6-5. 自立型再生可能エネルギー設備普及促進事業(地域環境課環境政策室)
家庭用蓄電システムや住宅用太陽光発電が対象ですが、「自己の居住する戸建住宅に設置した方」が要件。共用部への設置は対象外です。
6-6. 結婚新生活支援事業補助金/子育て世帯住宅取得支援事業補助金(企画課政策推進担当)
いずれも少子化対策・住宅取得支援の枠組みで、婚姻日や所得(夫婦合計500万円未満)の要件が付きます。管理組合の修繕とは無関係です。
7. マンション長寿命化促進税制:都留市の減額割合は要確認です
国の制度であるマンション長寿命化促進税制は、要件を満たす大規模修繕を行った場合に、工事完了の翌年度分の建物部分の固定資産税を減額するものです。国土交通省のマンション管理計画認定制度のページやマンション管理・再生ポータルサイトに制度の概要が掲載されています。
7-1. 要件(すべて満たす必要があります)
| # | 要件 |
|---|---|
| 1 | 築20年以上であること |
| 2 | 総戸数10戸以上であること |
| 3 | 過去に1回以上の長寿命化工事(外壁塗装等・床防水・屋根防水)を実施していること |
| 4 | 管理計画の認定を受けている、または助言・指導を受けて修繕積立金の額を引き上げていること |
| 5 | 屋根防水工事+床防水工事+外壁塗装等工事を一体的に実施していること |
| 6 | 令和5年4月1日から令和9年3月31日までに工事が完了していること |
| 7 | 工事完了後3か月以内に市町村へ申告すること |
減額の対象は居住用の専有部分1戸あたり100㎡までで、適用は1回限り。耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修の固定資産税減額とは重複できません。団地型の場合は工事を行った当該棟のみが対象です。
7-2. 減額割合は市町村の条例で決まります
ここが誤解されやすいところです。減額割合は国が一律に決めているのではなく、市町村の条例で定めます(参酌基準1/3、条例で1/6〜1/2の範囲)。都留市の割合が何分のいくつなのかは、公開情報からは確認できませんでした。
税務課(0554-43-1111)に、着工前に確認してください。聞くべきことは3つです。
- 都留市のマンション長寿命化促進税制の減額割合はいくつか
- 申告の期限と必要書類は何か
- 過去の適用実績はあるか(実績がないと窓口も手探りになるため、早めに相談したほうが話が早い)
なお都留市は耐震改修促進計画の中で「税制の周知・普及」を明記し、耐震改修工事を行った場合の所得税控除や固定資産税の減額措置について広報・周知を行う方針を示しています。窓口として税制の話ができる体制はあるということです。
7-3. ただし、要件4が都留市では難所になり得ます
要件4は「管理計画の認定を受けている」か「助言・指導を受けて修繕積立金を引き上げている」かの二択です。そして都留市では、前者のルートが現時点で使えるかどうかが確認できません。次章で説明します。
8. 管理計画認定:都留市に申請窓口があるかは確認が必要です
マンション管理計画認定制度は、マンション管理適正化推進計画を作成した市(および特別区)が認定を行う仕組みです。市以外の町村部については都道府県が担います。
山梨県のマンション管理計画認定制度のページには、「県(町村部にあるマンションのみ対象)では、令和4年4月1日から認定の受付を開始しました」と明記されています。
つまり、都留市は「市」なので、山梨県の窓口では申請できません。では都留市自身がマンション管理適正化推進計画を作成し、認定申請を受け付けているのか。これについては、公開情報の範囲では確認できませんでした。「制度がない」と断定するつもりはありません。確認できなかった、というのが正確な表現です。
8-1. 電話で聞くべき、たった1行の質問
建設課建築住宅担当(0554-43-1111 内線136・137)に、こう聞いてください。
「都留市はマンション管理適正化推進計画を作成していますか。管理計画認定の申請は受け付けていますか」
これだけです。答えがイエスなら、長寿命化促進税制の要件4への道が開けます。ノーなら、要件4は「助言・指導を受けて修繕積立金を引き上げる」ルートを検討することになります。どちらにせよ、着工の1年前には確認しておくべき事項です。
8-2. 認定が取れない場合の代替ルート
認定が使えない場合でも、管理組合として打てる手はあります。
- マンション管理適正化診断サービス(日本マンション管理士会連合会)
- マンション管理適正評価制度(マンション管理業協会)
これらは推進計画の有無に関わらず利用でき、住宅金融支援機構のマンションすまい・る債では、2026年度から管理計画認定に加えてこれらの制度で一定の評価を得た場合も利率上乗せの対象に拡充されています。「認定が取れないから何もできない」ということはありません。
なお、申請にあたっては管理組合の総会決議が必要です。理事会の一存では進められません。総会の議案として上げる前提で、逆算してスケジュールを組んでください。
参考までに、山梨県の手数料は長期修繕計画1つの場合で適合証ありが3,600円、適合証なしが25,500円。約7倍の差があります。公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを経由して適合証を取得するのが王道です。都留市に窓口があった場合も、手数料の構造は同様である可能性が高いので、頭に入れておいてください。
9. 資金:住宅金融支援機構という選択肢
補助金がどうしても足りない、修繕積立金も足りない。そういうときの現実的な選択肢が、独立行政法人 住宅金融支援機構の融資です。
9-1. マンション共用部分リフォーム融資
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 借入名義 | 管理組合名義で借りられる |
| 金利 | 全期間固定金利(金利は毎月見直されるため、具体的な数値はその都度確認が必要) |
| 保証 | 公益財団法人マンション管理センターの債務保証を利用すれば、理事長個人の連帯保証は不要 |
| 優遇 | 管理計画認定等を受けている場合、返済期間の延長や金利引下げの優遇あり |
私が現場でよく申し上げるのは、「一時金の徴収は、総会で最も揉める議案」だということです。1戸あたり25万円、30万円という一時金は、年金生活の区分所有者にとって現実的な負担ではありません。総会で否決され、修繕が2年、3年と先送りになる。その間に劣化は進み、工事費は膨らむ。
管理組合名義で借りて、月々の修繕積立金の中から返済していく。この形にできれば、議案の性格が「一時金をください」から「月々の積立金を見直します」に変わります。同じ金額でも、通り方がまったく違います。
9-2. マンションすまい・る債
修繕積立金を計画的に積み立てるための債券です。年1回の募集で、口数に上限があるため先着順。2026年度からは、前述のとおり管理計画認定に加えて管理適正化診断サービス・管理適正評価制度での一定評価も利率上乗せの対象に拡充されています。積立金を眠らせておくより、こうした制度を使うほうが理にかなっています。
10. 都留市の気候と、建物の傷み方
ここからは工事の話です。制度の話だけでは、良い大規模修繕にはなりません。
都留市は標高490メートル(市役所位置)、面積161.63平方キロメートル。桂川に沿った谷あいの街で、平成の名水百選に選ばれた湧水が湧く土地です。海からは遠く、リニア実験線が走り、新宿から西へ90キロメートル、電車で約90分。
この土地で建物がどう傷むか。私の経験から、3つの要因を挙げます。
| 要因 | 建物への影響 | 優先すべき対策 |
|---|---|---|
| 冬の凍結融解 | 昼夜の温度差で、ひび割れに入った水が凍って膨張し(水は凍ると体積が約9%増えます)、融けて縮む。この繰り返しでひび割れが押し広げられる | シーリングの打替え範囲を惜しまない。躯体のひび割れ補修を先送りしない |
| 標高が高く日射が強い | 塗膜の劣化、シーリング材の硬化・肉やせが平地より早い | 塗料グレードに予算を配分する。安い塗料で回数を増やすより、1回を長持ちさせる |
| 海から遠く塩害は軽微 | 沿岸部で必要な塩害対策(鉄部の防食仕様の上乗せ等)は、都留市では優先度が下がる | 浮いた予算を凍結融解対策とシーリングに回す |
塩害対策に予算を割く必要が薄い分、凍結融解とシーリングに配分する。これが都留市の建物に対する私の考え方です。仕様書を「全国共通のひな形」で作ってしまうと、この配分ができません。
10-1. 工事の適期
| 時期 | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| 3月下旬〜6月上旬 | ◎ | 気温・湿度とも塗装に最適。最優先で押さえたい |
| 6月中旬〜7月上旬 | △ | 梅雨。降雨での工程延伸リスク |
| 7月中旬〜8月 | ○ | 施工は可能だが、猛暑日は職人の安全確保が課題 |
| 9月〜11月中旬 | ◎ | 秋の乾燥期。春に次ぐ好条件 |
| 11月下旬〜3月中旬 | × | 塗料・シーリングとも施工に必要な気温を下回る日が増える。凍結の懸念 |
春の窓を取るには、前年の秋には業者選定を終えている必要があります。理事の任期が1年の管理組合では、これが最大の壁です。総会→業者選定→契約→着工という流れを1年で回すのは、実務的にかなり厳しい。任期をまたぐ前提で、引き継ぎ資料を作っておいてください。
10-2. 現場からひとつ
寒暖差の大きい地域の物件で、屋上防水に畳1枚ほどの膨れが出ているのを見つけたことがあります。理事会に報告しましたが、「来期の予算で」となり、そのまま1年が過ぎました。
翌年うかがったら、膨れは数倍に広がっていました。防水層の下に水が回り、下地のコンクリートまで湿っている。最上階のお部屋の天井には、うっすらとシミが出ていました。
部分補修で済んだはずの工事が、防水層の全面撤去・下地補修からのやり直しになりました。費用は数倍です。しかも、天井にシミが出た住戸の方との関係修復に、理事の方が半年かかりました。
膨れは水が入っているサインです。「来期で」は、たいてい高くつきます。
11. 3つの工法:仮設足場の15〜25%をどう扱うか
ここが、補助金の話より金額の桁が大きい部分です。
大規模修繕の総工事費のうち、仮設足場が占める割合はおおむね15〜25%です。総額5,000万円の工事なら、750万円から1,250万円。ブロック塀の補助上限20万円とは、比べる次元が違います。
株式会社明誠は、次の3つの工法から建物に合った方法をご提案できる、日本でも数少ない会社です。
| 工法 | 特徴 | 向いている建物 | コスト構造 |
|---|---|---|---|
| 通常足場工法 | 従来型の仮設足場を全面に架ける | 中低層、形状が複雑、全面改修が必要 | 仮設費が総額の15〜25%を占める |
| ロープアクセス工法(無足場工法) | 産業用ロープで作業員が下降しながら施工。足場を架けない | 高層、敷地が狭い、部分補修が中心、コスト最重視 | 足場費が大幅に圧縮できる。工期も短い |
| ハイブリッド工法 | 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける | 大規模・複雑物件で総合的なコスト最適化が必要 | 足場が必要な面だけに架け、残りをロープで処理 |
ロープアクセス工法の技術的な解説・安全基準・施工事例は、姉妹サイト ロープアクセスドットコム に詳しくまとめています。
11-1. 「敷地に余裕があるから足場」で思考停止していませんか
都留市は都心部と違って敷地に余裕のある物件が多く、足場を架けようと思えば架けられます。だからこそ、「架けられるから架ける」で終わってしまう。私が理事会で必ず投げる3つの問いを共有します。
- 今回の工事は、全面改修ですか、それとも部分補修が中心ですか。部分補修なら、全面に足場を架ける必要が本当にあるか。
- 居住者の方は、3か月間バルコニーを塞がれ、洗濯物を外に干せない生活を受け入れられますか。足場は防犯上のリスクにもなります。この負担は見積書には載りません。
- 仮設工事という費目の下に、何が隠れていますか。足場代、養生シート、資材の運搬、近隣対策。合計するといくらか、見積書で確認しましたか。
11-2. モデルケース2本
実際の物件を特定できない形で、考え方をお示しします。
ケースA:都留市駅周辺、築25年、11階建て48戸
- 通常足場での見積り:9,000万円
- ハイブリッド工法での提案:7,800万円(▲1,200万円/1戸あたり25万円の削減)
- 工期は約3週間短縮
高層部をロープアクセス、低層部とバルコニー側を足場で処理した例です。1戸25万円は、一時金の議案が通るか通らないかを分ける金額です。
ケースB:市郊外、築40年超、5階建て18戸
- 通常足場での見積り:3,200万円
- ロープアクセス主体での提案:2,600万円(▲600万円/1戸あたり33万円の削減)
- さらに住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資を併用し、一時金の徴収はゼロ
戸数が少ない管理組合ほど、1戸あたりの負担が重くなります。18戸で3,200万円は1戸178万円。ここを削れるかどうかは、管理組合の存続に関わる話です。
明誠はロープアクセス工事として日本で初めてのフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しています。中間マージンを重ねずに専門職へ直結できるので、高品質と低価格を両立できます。工法の詳細はロープアクセス工法のご紹介、費用面の考え方は適正価格でのご提案、管理組合向けのサービスはマンション管理組合の皆さまへをご覧ください。
12. 修繕積立金が足りないときの4つの打ち手
| 打ち手 | 内容 | 難易度 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ① 一時金の徴収 | 区分所有者から不足分を集める | 高 | 総会で最も揉める。滞納リスクも |
| ② 住宅金融支援機構の融資 | 管理組合名義で借り、積立金から返済 | 中 | 審査に時間がかかる。早めの相談を |
| ③ 段階施工 | 緊急性の高い部位から複数回に分けて施工 | 中 | 仮設費が重複するため、総額は割高になりやすい |
| ④ 工法の見直し | ロープアクセス/ハイブリッドで仮設費を圧縮 | 低 | 設計段階でないと選べない。着工直前では手遅れ |
順番が大事です。④を最初に検討してください。設計に入る前なら選択肢は3つありますが、業者を決めて仕様を固めてしまうと、④は消えます。①だけが残った状態で総会に臨むのが、最もつらいパターンです。
13. 逆算スケジュール:工事の18か月前から
| 時期 | やること |
|---|---|
| 18か月前 | 劣化診断の実施。修繕積立金残高の確認。耐震診断結果の有無を確認(避難路沿道かどうか) |
| 15か月前 | 建設課建築住宅担当へ電話(災害時避難路通行確保対策事業/アスベスト/管理計画認定の3点) |
| 12か月前 | 修繕基本計画の策定。工法の選定(足場/ロープアクセス/ハイブリッド)。税務課へ長寿命化促進税制の減額割合を確認 |
| 9か月前 | 相見積りの取得(3社程度)。仕様書の統一 |
| 6か月前 | 補助金の交付申請。総会議案の準備 |
| 4か月前 | 交付決定通知の受領 → その後に工事請負契約 |
| 3か月前 | 住民説明会。近隣挨拶 |
| 着工 | 工事開始(春または秋の適期を狙う) |
| 竣工後3か月以内 | 長寿命化促進税制の申告 |
「交付決定通知を受け取ってから契約」――ここだけは順番を間違えないでください。都留市のブロック塀の補助ページにも、木造耐震のページにも、太字で書かれています。契約日が1日でも交付決定より前なら、補助金は出ません。
14. 相見積りで見るべき3つのポイント
金額の総額だけを見比べても、意味のある比較にはなりません。私が管理組合にお伝えしている3点です。
- 数量が揃っているか。外壁の塗装面積、シーリングの打替え延長、タイルの補修数量。この数量が3社でバラバラなら、単価を比べても意味がありません。発注者側で数量を固定してから見積りを取るのが原則です。
- 仕様が揃っているか。塗料のグレード(アクリル/ウレタン/シリコン/フッ素)、防水の工法(ウレタン塗膜/シート/アスファルト)。ここが違えば金額が違うのは当たり前です。
- 「別途」の扱いを確認したか。下地補修は、足場を架けて調査するまで正確な数量が出ません。だからこそ、「想定数量を超えた場合の追加単価」を契約前に見積書へ明記させる。ここを曖昧にすると、工事中に追加請求が積み上がります。
15. よくある質問(FAQ)
Q1. 都留市に、マンションの大規模修繕そのものへの補助金はありますか。
A. 公開情報の範囲では、共用部の大規模修繕を直接対象とする市独自の補助金は確認できませんでした。ただし避難路沿道の旧耐震マンションであれば、都留市災害時避難路通行確保対策事業(耐震改修工事、補助率11/15以内、住宅(非木造)39,900円/㎡以内)の対象となり得ます。
Q2. うちのマンションが避難路沿道建築物かどうかは、どこで分かりますか。
A. 国道139号(西桂町境〜大月市境)、県道都留道志線、県道四日市場上野原線、県道都留インター線のいずれかに面し、昭和56年5月31日以前の耐震基準で建てられ、一定の高さを超える建築物が対象です。都留市内では54棟が該当し、全所有者から診断結果が報告済みです。管理組合の書類を確認し、なければ建設課建築住宅担当(0554-43-1111 内線136・137)へ問い合わせてください。
Q3. 木造住宅耐震改修事業の143万7,500円は、マンションでも使えますか。
A. 使えません。都留市の木造3事業はいずれも対象を「戸建の木造住宅(2階建て以下)で個人が所有する住宅」と明記しており、RC造・SRC造の分譲マンション共用部は対象外です。
Q4. アスベストの補助金は、管理組合名義で申請できますか。
A. 都留市のページには交付対象者が「補助対象建築物の所有者等」とあり、管理組合名義の可否は公開情報から確認できませんでした。竣工図の仕上表と現況写真を持って、建設課建築住宅担当へ事前相談してください。
Q5. マンション長寿命化促進税制で、都留市はどれくらい減額されますか。
A. 減額割合は市町村の条例で定められ(参酌基準1/3、範囲1/6〜1/2)、都留市の割合は公開情報から確認できませんでした。着工前に税務課(0554-43-1111)へご確認ください。
Q6. 都留市でマンション管理計画認定の申請はできますか。
A. 山梨県の窓口は町村部のマンションのみが対象のため、市である都留市では県に申請できません。都留市自身が受け付けているかは公開情報から確認できませんでした。建設課建築住宅担当へ「推進計画を作成しているか、認定申請を受け付けているか」を直接お尋ねください。
Q7. 修繕積立金が足りません。工事を先送りすべきでしょうか。
A. 先送りは、多くの場合いちばん高くつきます。住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資(管理組合名義・全期間固定・理事長の個人保証不要)を使えば、一時金なしで着工できるケースがあります。加えて工法の見直しで工事費そのものを圧縮する選択肢もあります。
Q8. ロープアクセス工法は、足場より品質が落ちませんか。
A. 工法の違いは「作業員がどうやって外壁に到達するか」の違いであって、下地補修や塗装の工程そのものは変わりません。適する部位・適さない部位があるので、建物を見たうえで足場と組み合わせるハイブリッドをご提案することも多くあります。技術的な詳細はロープアクセスドットコムをご覧ください。
16. まとめ:都留市の管理組合が今日やること
- 管理組合の書類棚を確認する。耐震診断の結果報告書がないか。避難路沿道建築物54棟のうちの1棟かもしれません。
- 建設課建築住宅担当(0554-43-1111 内線136・137)へ電話する。聞くのは3つ。①災害時避難路通行確保対策事業は令和8年度も受付中か ②アスベスト補助は管理組合名義で申請できるか ③マンション管理適正化推進計画を作成しているか。
- 税務課(0554-43-1111)へ電話する。マンション長寿命化促進税制の減額割合と申告期限。
- 劣化診断を工事の18か月前に実施する。補助金は「診断→計画→申請→交付決定→契約→着工」の順でしか使えません。
- 工法を設計段階で検討する。仮設足場は総工事費の15〜25%。ここを動かせるのは設計段階だけです。
電話は2本、合わせて20分。これで、使える制度と使えない制度の仕分けが終わります。補助金の情報を集めることに何か月もかけるより、この20分のほうがはるかに価値があります。
出典・参考
- 都留市 補助金・貸付金一覧(令和8年4月1日現在)(都留市財務課財政担当)
- 都留市耐震改修促進計画(令和8年3月改定)(都留市産業建設部建設課)
- 都留市 耐震診断義務付け対象建築物について
- 都留市 アスベスト飛散防止対策事業
- 都留市ブロック塀等耐震改修促進事業費補助金交付事業
- 都留市 木造個人住宅に関する事業
- 都留市 市のプロフィール
- 山梨県 マンション管理計画認定制度について
- 国土交通省 マンション管理計画認定制度
- 国土交通省 マンション管理・再生ポータルサイト 管理計画認定制度
- 公益財団法人マンション管理センター 管理計画認定手続支援サービス
- ロープアクセスドットコム(明誠グループ/ロープアクセス工法の技術情報)
免責:本記事は2026年8月18日時点で公開されている情報をもとに作成しています。補助制度の内容・期間・予算は変更されることがあります。申請にあたっては、必ず各窓口で最新の要綱をご確認ください。本記事は特定の制度の適用を保証するものではありません。
執筆者:株式会社明誠 代表取締役 本間幸紘
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を専門とし、通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3つから建物に最適な工法をご提案しています。ロープアクセス工事では日本初となるフランチャイズ展開を行い、塗装・防水・タイル・電気・看板の専門職が加盟。あわせて一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)を運営し、全国の建設業者向けに経営支援情報の発信、オンラインセミナー、交流会、ビジネスマッチングを行っています。
都留市および山梨県内での大規模修繕について、劣化診断・お見積りのご相談はお問い合わせフォームから承ります。工法の選定でお悩みの段階からで構いません。まずは建物を見せてください。あわせて確かな施工品質もご覧いただければ幸いです。
山梨市のマンション補助金2026|大規模修繕で使える制度と管理組合の動き方
山梨市で分譲マンションの理事長をされている方から、こんなご相談をいただくことがあります。「大規模修繕を控えているが、市から出る補助金はあるのか。あるなら申請したい」。
この記事で答える質問は、ひとつです。山梨市の分譲マンション管理組合が、共用部の大規模修繕工事にあたって使える公的な支援制度は何か。そして、どの順番で、どこに問い合わせればよいのか。
私は株式会社明誠の本間と申します。建設・改修の現場に20年近く身を置き、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を、足場を架ける従来工法と、足場を架けないロープアクセス工法(産業用ロープで職人が壁面を上下しながら作業する無足場工法)の両方でご提案してきました。この記事では、山梨市の公式ページで確認できる一次情報だけを根拠に、使える制度・使えない制度・確認が要る制度を仕分けしていきます。
最初にお断りしておきます。この記事には「山梨市がマンションの大規模修繕そのものに補助金を出しています」という景気のいい話は出てきません。私が確認した範囲では、そうした制度は山梨市の公開情報からは確認できませんでした。ただし、修繕工事に「隣接する」ところに、使える可能性のある制度は複数あります。そこを丁寧に拾っていくのが、この記事の役目です。
最終更新:2026年8月18日
結論:山梨市に「共用部大規模修繕への直接補助」は確認できない。ただし隣接制度は4つある
先に結論から申し上げます。
山梨市の公式ホームページ(山梨市公式ホームページ)を確認した限り、分譲マンションの共用部(外壁・屋上防水・鉄部・シーリングなど)の大規模修繕工事そのものを対象にした市独自の補助金は、公開情報からは確認できませんでした。
「ないと断言する」のではありません。私が確認できた公開ページの範囲では見当たらなかった、ということです。制度は年度替わりで新設されることもありますから、着工の6か月前くらいには市に一度電話を入れていただくのが確実です。
一方で、大規模修繕の工事範囲と重なりうる制度は、山梨市に4つあります。
- アスベスト飛散防止対策事業費補助(調査は上限25万円、除去等は上限400万円)
- ブロック塀等安全確保対策支援事業費補助金(対象経費の3分の2以内、上限20万円)
- 山梨市住宅リフォーム補助金(令和8年度から上限15万円に増額。ただし自己居住の住宅が対象)
- 住宅の工事・改修に伴う固定資産税の減額措置(耐震・省エネ・バリアフリーの3本)
このうち、金額の桁が大きく、しかもマンションの共用部で実際に問題になりやすいのが ①のアスベスト です。ここが本記事の目玉になります。
そして国の制度としては、マンション長寿命化促進税制、住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資、住宅省エネ2026キャンペーンの3本が控えています。さらに2026年4月1日には改正区分所有法が施行され、大規模修繕の決議のハードルそのものが下がりました。
順番に見ていきます。
山梨市の制度・可否早見表(管理組合目線)
まず全体像を1枚の表にします。理事会の資料にそのまま貼っていただいて構いません。
| 制度名 | 所管課 | 上限・補助率 | 分譲マンション共用部での可否 |
|---|---|---|---|
| アスベスト飛散防止対策事業費補助(調査) | 都市計画課 | 対象経費の10分の10以内・上限25万円 | ★接点あり(要事前相談) |
| アスベスト飛散防止対策事業費補助(除去等) | 都市計画課 | 対象経費の3分の2以内・上限400万円 | ★接点あり(要事前相談) |
| ブロック塀等安全確保対策支援事業費補助金 | 都市計画課 | 対象経費の3分の2以内・上限20万円 | ○接点あり(敷地の塀が該当すれば) |
| 山梨市住宅リフォーム補助金 | 商工労政課 | 工事金額の10%・上限15万円 | △専有部向け。共用部は想定外 |
| 木造住宅耐震診断/耐震改修等支援/耐震シェルター | 都市計画課 | 診断無料・改修上限1,437,500円ほか | ×対象外(共同住宅は明文で除外) |
| 固定資産税の減額措置(耐震・省エネ・バリアフリー) | 税務課 | 1年間、税額の2分の1〜3分の1 | △専有部の要件が中心 |
| マンション管理計画認定制度 | 山梨県は町村部のみ | 手数料は県基準 | ▲市部のため県窓口は不可。市の受付有無は要確認 |
| マンション長寿命化促進税制 | 山梨市税務課 | 建物固定資産税を1年間減額 | ▲市ページに掲載を確認できず。要確認 |
| マンション共用部分リフォーム融資 | 住宅金融支援機構 | 全期間固定金利 | ○管理組合名義で利用可 |
★=有力、○=使える可能性が高い、△=限定的、▲=確認が要る、×=対象外。
この表の「▲」が3つあることに、正直さを感じていただけたらと思います。私は現場の人間ですので、確認できていないものを「使えます」と言うことはできません。確認できていないことを、確認できていないと書く。それが、補助金の記事でいちばん大事だと思っています。
★本命:アスベスト飛散防止対策事業費補助(調査25万円/除去400万円)
山梨市には「アスベスト飛散防止対策事業費補助」があります(出典:山梨市「アスベスト飛散防止対策事業」)。
制度の中身
市のページには、次のように書かれています。
| 区分 | 対象 | 補助率・上限 |
|---|---|---|
| 調査事業 | 吹付け建材について行うアスベスト含有の有無に係る調査 | 補助対象経費の10分の10以内(上限25万円) |
| 除去等事業 | 吹付けアスベスト等の除去、封じ込め又は囲い込み | 補助対象経費の3分の2以内(上限400万円) |
「吹付けアスベスト等」とは、吹付けアスベストまたは吹付けロックウールで、含有するアスベストの重量が建築材料の重量の0.1パーセントを超えるものを指します。市のページにその定義が明記されています。
交付対象者は「補助対象建築物の所有者等」で、市税の滞納がないことが条件です。窓口は都市計画課(本庁舎西館2階、代表 0553-22-1111)です。
調査費が「10分の10以内」という意味
ここは強調しておきたいところです。調査は補助対象経費の10分の10以内、上限25万円。つまり、25万円までなら調査費用が実質的に賄われる設計になっています。
アスベストの分析調査は、検体1点あたり数万円というのが一般的な相場感です。機械室・電気室・駐車場天井・階段室裏・パイプスペースといった箇所を複数点採取すると、20万円前後になることは珍しくありません。その部分に市の補助が用意されているという事実は、築古マンションの管理組合にとって小さくない話です。
ただし「管理組合名義で申請できるか」は断定できません
正直に申し上げます。市のページの説明文は、冒頭に「既存建築物のアスベスト改修事業を実施する民間事業者に対し、補助金を交付する制度です」とあり、その一方で交付対象者の欄には「補助対象建築物の所有者等」と書かれています。
分譲マンションの共用部は区分所有者全員の共有財産で、管理組合(あるいは管理組合法人)がその管理主体です。この「所有者等」に管理組合が含まれるのか、含まれるとして誰の名義で申請するのか。そこは市のページの記載だけでは判断できませんでした。
ですので、私からのお勧めはひとつです。
都市計画課(0553-22-1111)に電話を1本入れてください。
「分譲マンションの共用部で吹付け材が見つかった場合、管理組合として調査事業の補助を申請できますか」と聞くだけです。
このとき、竣工図の仕上表と現況写真があると話が早く進みます。私が現場で見てきた限り、行政の窓口は「ある建物の、ある部位の話」として具体的に持ち込まれると、格段に丁寧に答えてくれます。
どこで見つかるのか──私が現場で見てきた場所
アスベスト含有の吹付け材が残っている可能性が比較的高いのは、次のような場所です。
- 屋上や地下の機械室・ポンプ室・受水槽室の天井や梁
- 電気室・キュービクル室の天井
- 駐車場(ピロティ)の天井スラブ下
- 階段室の裏側やエレベーター機械室
- パイプスペース(PS)内の配管まわり
昭和50年代前半までに竣工した鉄骨造・鉄筋コンクリート造の建物では、耐火被覆や結露防止のために吹付け材が使われた例があります。
そして厄介なのは、足場を架けたあと、あるいは天井を開けたあとに見つかることです。私は過去に、外壁改修のために足場を架け終わったタイミングで機械室の吹付け材が疑われ、工程を止めて分析にかけた現場を経験しています。工期は延び、追加の予算をめぐって臨時総会が必要になりました。先に調べておけば、この混乱は避けられたというのが、正直な感想です。
大規模修繕を計画されている管理組合には、私はこうお伝えしています。「劣化診断のときに、竣工図の仕上表を1枚コピーして市に持って行きましょう。25万円の枠は、使わない理由がありません」。
ブロック塀等安全確保対策支援事業費補助金(2/3以内・上限20万円)
敷地の境界にブロック塀がある管理組合は、こちらも確認する価値があります(出典:山梨市「木造住宅耐震化補助事業等のご案内」)。
制度の中身
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 市内の避難路等に面した危険性の高いブロック塀等 |
| 高さ要件 | 基礎を含む地盤面から塀の上面までの高さが1メートル以上 |
| 対象工事 | 除却または耐震改修工事等 |
| 補助額 | 対象経費の3分の2以内、かつ20万円を限度 |
| 対象者 | 危険性の高いブロック塀等の所有者他/市税等の滞納がない者 |
| 制限 | 同一の敷地において、過去にこの要綱に基づく補助金の交付を受けていないこと/公共事業の補償を受けていないこと |
「危険性の高い」の判定基準も明示されています。国土交通省住宅局建築指導課長通知(平成30年6月21日付け国住指第1130号)の別紙2「第1段階:外観に基づく点検」の結果、不適合が1以上あるものを指します(出典:国土交通省 別紙2)。
この点検は、専門家でなくてもある程度は目視でチェックできます。塀に傾きやひび割れはないか、控え壁はあるか、塀の高さは基準内か。理事会の役員さんが敷地を一周するだけでも、目星はつきます。
「同一敷地につき1回限り」という制約の読み方
ここは実務上、けっこう重要です。「同一の敷地において、過去にこの要綱に基づく補助金の交付を受けていないこと」とあります。つまり、1つの敷地で使えるのは1回だけです。
敷地が広く、複数箇所に古い塀が残っているマンションの場合、「今回は南側だけ直して、次は北側」という分割申請は想定されていない読み方になります。どこを直すのが最優先かを、先に決めておく必要があります。
そしてもうひとつ、私が理事長さまにいつもお伝えしていることがあります。補助の交付決定より先に工事契約を結んでしまうと、対象外になるのが行政の補助制度の基本作法です。 山梨市の他の補助制度(住宅リフォーム補助金)でも「補助金交付決定前に着手した工事は対象とはなりません」と明記されています。塀の工事を大規模修繕の請負契約に丸ごと含めてしまうと、着手時期の判定でつまずく可能性があります。外構は別契約に切り出すという段取りを、設計事務所や施工会社と早めに詰めておいてください。
山梨市住宅リフォーム補助金は「共用部」ではなく「住民」に効く
令和8年度、山梨市の住宅リフォーム補助金は上限が15万円に増額されました(出典:山梨市「市内の施工業者による住宅リフォーム工事費用を補助します」)。
制度の中身
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助額 | 工事金額の10%、上限15万円(千円未満切り捨て) |
| 対象住宅 | 自己が所有し、自らが居住している住宅/併用住宅は自己居住部分のみ/市の空き家バンク登録物件 |
| 対象者 | 市の住民基本台帳に記録されている方、または空き家バンク制度を利用し売買契約を締結した方 |
| 対象工事 | 増築、一部改築、改修、修繕、模様替え、設備工事等/10万円以上(税込) |
| 施工業者要件 | 市内に本社のある会社、または市内に住所を有する個人事業主で市税の滞納がない者 |
| 実施期間 | 令和9年3月31日まで(年間予算の上限に達した時点で受付終了) |
| 回数制限 | 同一住宅または所有者につき1回限り |
| 築年要件 | 建築後5年を経過した住宅 |
管理組合としての読み方
対象住宅は「自己が所有し、自らが居住している住宅」です。分譲マンションの共用部を管理組合名義で改修する工事は、この枠組みの想定外だと読むのが自然です。また「本市の他の補助金又は他の公共機関の補助金の対象とならない工事」という条件もあり、他制度との併用も制限されています。
ただし──ここが理事会で価値を持つポイントです。この制度は、区分所有者ご自身の専有部リフォームには使えます。
大規模修繕のタイミングでは、住民の方から「うちの窓のサッシも直したい」「バルコニー側の内装も一緒に」という声が出てきます。そのとき、掲示板に「専有部のリフォームには市の補助金が使える場合があります(上限15万円・市内業者が施工する場合)」と1枚貼っておくだけで、管理組合への信頼は確実に上がります。補助金の情報を住民に還元する管理組合は、次の総会での議案の通り方が違います。
私は工事の説明会で、この手の情報をいつも一緒にお配りしています。補助金の話は、住民の方にとって「管理組合がちゃんと調べてくれている」という証拠になるからです。
×木造住宅耐震化補助事業は、分譲マンションでは使えません(明文で除外)
ここは誤解が生まれやすいところなので、一次情報で明確に否定しておきます。
山梨市の木造住宅耐震診断事業の対象住宅には、こう書かれています(出典:山梨市「木造住宅耐震化補助事業等のご案内」)。
2階建て以下で延床面積300平方メートル以下の住宅(長屋、共同住宅及び借家を除く。)
分譲マンションは建築基準法上の「共同住宅」です。したがって、鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の分譲マンション共用部は、この耐震診断事業および関連する補助金の対象外です。ここは断定できます。
| 制度 | 補助内容 | マンション共用部 |
|---|---|---|
| 木造住宅耐震診断事業 | 無料で耐震診断 | ×対象外 |
| 木造住宅耐震改修等支援事業費補助金 | 対象経費以内、1,437,500円を限度 | ×対象外 |
| 木造住宅耐震シェルター設置事業費補助金 | 対象経費以内、36万円を限度(総合評点0.7未満) | ×対象外 |
補助金の一覧サイトを見ていると「山梨市は最大143万7,500円の補助」と出てくることがあります。これは木造個人住宅の耐震改修等支援事業費補助金の金額です。マンションの大規模修繕とは制度の土俵が違います。理事会の資料に貼る前に、対象要件を1行確認していただければと思います。
なお、山梨市は「山梨市住宅耐震化緊急促進アクションプログラム2026」を策定し、住宅の耐震化を進めています。市として耐震化に力を入れていること自体は事実ですので、施策の方向としては追い風です。ただ、現行の補助メニューが木造個人住宅に振り向けられている、という整理になります。
固定資産税の減額措置:山梨市の掲載は「耐震・省エネ・バリアフリー」の3本
山梨市税務課のページには、住宅の工事・改修に伴う固定資産税の減額措置が3種類、掲載されています(出典:山梨市「住宅の工事・改修に伴う固定資産税の減額措置について」/2026年6月1日更新)。
| 区分 | 減額内容 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 耐震改修 | 上限120㎡まで、固定資産税を1年間2分の1減額(認定長期優良住宅は3分の2) | 昭和57年1月1日以前に完成した住宅/令和13年3月31日までに工事完了/工事費が一戸あたり50万円以上/完了から3か月以内に申告 |
| 熱損失防止(省エネ)改修 | 上限120㎡まで、1年間3分の1減額(認定長期優良住宅は3分の2) | 平成26年1月1日以前に完成した住宅(貸家を除く)/工事費が一戸あたり60万円以上/完了から3か月以内に申告 |
| バリアフリー改修 | 上限100㎡まで、1年間3分の1減額 | 新築から10年以上経過(貸家を除く)/65歳以上・要介護/要支援・障害者のいずれかが居住/工事費が一戸あたり50万円以上/完了から3か月以内に申告 |
いずれも適用は1回限り、そして工事完了から3か月以内の申告が共通の作法です。この「3か月以内」は、大規模修繕の工程表の最後の行に書き込んでおいてください。竣工検査と引き渡しでバタバタしているうちに、あっという間に過ぎます。
そして、注目していただきたいのはこのページに「マンション長寿命化促進税制」の記載が見当たらないことです。次の章で、その意味を整理します。
マンション長寿命化促進税制:全国のルールと、山梨市での「入口問題」
制度の概要
マンション長寿命化促進税制は、長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションについて、翌年度分の建物の固定資産税を減額する国の特例措置です(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象期間 | 令和5年4月1日から令和9年3月31日までに工事完了 |
| 減額対象 | 工事完了の翌年度分・建物部分の固定資産税 |
| 面積上限 | 居住用専有部分1戸あたり100㎡まで |
| 適用回数 | 1回限り |
| 申告期限 | 工事完了後3か月以内 |
主な要件は次のとおりです。
- 築20年以上
- 総戸数10戸以上
- 過去に1回以上、長寿命化に資する大規模修繕工事を実施していること
- 管理計画の認定を受けている、または助言・指導を受けて修繕積立金額を引き上げていること
- 屋根防水工事・床防水工事・外壁塗装等工事を一体で実施していること
- 期限内の申告
減額割合は市町村の条例で決まります
ここは断定を避けます。減額割合は地方税法上、参酌基準が3分の1、条例で6分の1から2分の1の範囲で定めることとされています。山梨市の条例上の割合がいくつかは、公開ページで確認できませんでした。
山梨市税務課の固定資産税減額のページには、耐震・省エネ・バリアフリーの3本は掲載されていますが、長寿命化促進税制の掲載を私は確認できていません。掲載がない=制度が使えない、という結論には直結しません。全国一律の税制ですので、条例整備の状況と運用の実態を確認する必要があります。
確認すべき電話は1本です。 山梨市役所 税務課 固定資産税担当(0553-22-1111、内線1127・1128)に、「マンション長寿命化促進税制の申告を受け付けていますか。減額割合は条例で何分の1ですか」と聞いてください。着工前に、です。
要件4が、山梨市では最大の関門になりえます
要件4は「管理計画認定を受けている」か「助言・指導を受けて修繕積立金を引き上げた」かの二択です。そして次章のとおり、山梨市では管理計画認定の申請窓口が公開情報から確認できません。
つまり、山梨市のマンション管理組合が長寿命化促進税制を狙う場合、現実的には「助言・指導を受けて修繕積立金額を引き上げた」ルートを検討することになる可能性があります。これも税務課・都市計画課への確認事項です。
マンション管理計画認定制度:山梨県の窓口は「町村部のみ」
管理計画認定制度は、管理組合が作成した管理計画が一定の基準を満たす場合に、地方公共団体の認定を受けられる制度です(出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度」)。
認定を受けられるのは、その自治体が「マンション管理適正化推進計画」を作成している区域にあるマンションに限られます。ここが山梨市の管理組合にとっての壁になります。
山梨県のページには、県が受け付ける対象は町村部にあるマンションのみであり、令和4年4月1日から受付を開始したと記載されています(出典:山梨県「マンション管理計画認定制度について」)。市部については各市に問い合わせるよう案内されています。
山梨市は「市」ですから、県の窓口では申請できません。 では山梨市自身が推進計画を作成し、認定申請を受け付けているのか。私が確認した範囲では、山梨市の公開情報からその有無を確認できませんでした。
ここも、断定を避けて確認を促します。
山梨市役所 都市計画課(0553-22-1111、内線2243・2244)に、
「マンション管理適正化推進計画を作成していますか。管理計画認定の申請を受け付けていますか」
この1行を聞くだけで済みます。
参考までに、県の手数料水準を挙げておきます。事前確認(適合証)ありで3,600円、なしで25,500円という設定です。差は約7倍です。全国的にも、マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」を経由して事前確認を受けるのが王道になっています。
認定が取れない場合の代替ルート
認定が難しくても、打つ手はあります。マンション管理センターのマンション管理適正化診断サービスや、マンション管理業協会のマンション管理適正評価制度は、推進計画の有無にかかわらず利用できます。後述する住宅金融支援機構の「マンションすまい・る債」では、これらの評価が利率上乗せの対象に拡充されています。
「認定が取れないから何もできない」ではなく、「認定以外のルートで管理の質を証明する」。この発想の切り替えが、地方都市の管理組合には効きます。
住宅金融支援機構:地域を問わず使える、管理組合名義の融資
修繕積立金が足りない。これは山梨市に限らず、全国の管理組合が抱える悩みです。
住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資は、管理組合名義で借り入れができる全期間固定金利の融資です。地域による制限はありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 借入名義 | 管理組合(管理組合法人を含む) |
| 金利 | 全期間固定金利(適用金利は毎月見直されるため、本記事では金利水準の断定を避けます) |
| 保証 | マンション管理センターの債務保証を利用することで、理事長個人の連帯保証を不要にできる |
| 優遇 | 管理計画認定などにより、返済期間の延長や金利の引下げが受けられる場合がある |
私が理事長さまにこの融資をご案内するのは、「一時金を集めるか、工事を先送りするか」の二択で膠着している管理組合に対してです。第三の選択肢として融資を並べると、議論が動くことがあります。理事長個人の連帯保証が不要になる仕組みがあることも、心理的なハードルを大きく下げます。
あわせて、マンションすまい・る債は積立金の運用手段です。年1回の募集で口数の上限があり、先着順です。2026年度からは、管理計画認定に加えて管理適正化評価制度・管理適正化診断サービスで一定の評価を得た管理組合も、利率上乗せの対象に拡充されています。認定の窓口が確認できない山梨市の管理組合にとって、これは現実的な代替ルートになりえます。
住宅省エネ2026キャンペーン:管理組合目線での仕分け
国の「住宅省エネ2026キャンペーン」は、4つの補助事業を束ねた枠組みです(出典:住宅省エネ2026キャンペーン【公式】)。
| 事業名 | 主な内容 | 管理組合との関係 |
|---|---|---|
| みらいエコ住宅2026事業 | 高い省エネ性能の住宅取得・リフォーム支援 | △専有部リフォーム中心 |
| 先進的窓リノベ2026事業 | 高断熱の製品を用いた開口部(窓)の改修 | ○足場と工程を共有できる |
| 給湯省エネ2026事業 | 高効率給湯器の設置 | △専有部設備 |
| 賃貸集合給湯省エネ2026事業 | 賃貸集合住宅への小型省エネ給湯器導入支援 | ○賃貸オーナー向け |
管理組合の共用部工事に直接ぶつけられるのは、主に窓の断熱改修です。山梨市のような盆地気候では、冬の放射冷却で結露が発生しやすく、窓の断熱は住民の実感に直結します。
そして実務上のポイントがひとつ。外壁改修で足場を架けるタイミングは、窓の改修と工程を合わせる好機です。 足場は1回架けると解体まで費用が発生し続けます。同じ足場で複数の工事を進めれば、仮設費という「工事そのものではない費用」を1回分に圧縮できます。私はこの提案を、大規模修繕の計画段階でセットにしてお出しするようにしています。
なお、管理組合として申請できるか、専有部の区分所有者が個別に申請するかは事業ごとに扱いが異なります。公式サイトで最新の要件をご確認ください。
2026年4月1日施行の改正区分所有法:決議のハードルが下がりました
これは、山梨市の管理組合にとって地味に大きな変更です。
2026年4月1日、改正区分所有法(令和7年法律第47号)が施行されました。大規模修繕をはじめとする共用部分の変更決議について、母数の取り方が変わりました。
| 項目 | 改正の内容 |
|---|---|
| 決議の母数 | 総会に出席した区分所有者を母数とする形へ緩和 |
| 欠席・無回答 | 母数から除外 |
| 所在不明の区分所有者 | 裁判所の関与のもとで母数から除外できる |
| 建替え等 | 従来の要件が残る部分がある |
これまで、区分所有者の頭数と議決権の一定割合という要件が、「連絡がつかない区分所有者」の存在によって事実上クリアできないという管理組合は少なくありませんでした。
山梨市は、JR中央本線の山梨市駅・東山梨駅を持ち、新宿から特急でおよそ1時間半という距離にあります。県内では甲州市・笛吹市とともに峡東地域を構成し、果樹とワインの産地としてセカンドハウス需要もある地域です。相続や転勤、賃貸化によって県外に住む区分所有者が一定数いるマンションが、山梨市には現実に存在します。
私は、過去に大規模修繕の議案が否決された、あるいは決議に届かなかった管理組合こそ、2026年度中に再提案していただきたいと思っています。同じ議案が、ルールの変更だけで通ることがありえるからです。
山梨市の気候と、建物が傷む3つの理由
補助金の話ばかりしてきましたので、ここからは現場の話に戻ります。
山梨市は甲府盆地の北東縁に位置し、面積は289.80平方キロメートル、山梨県内第4位の広さを持ちます。2005年3月22日に旧山梨市・牧丘町・三富村が合併して発足しました。市域の南部は笛吹川・重川・日川がつくった扇状地の平地、北西部から北部にかけては山地で、標高差の大きな市です。
気候は盆地特有で、夏と冬の気温差が激しく、夏は暑く冬は寒い。これが建物にとって何を意味するか、3つに整理します。
| 要因 | 建物への影響 | 対策の考え方 |
|---|---|---|
| 強い日射と紫外線 | 外壁塗膜の退色・チョーキング、シーリング材の硬化とひび割れが早い | 塗料グレードとシーリング打替範囲に予算を配分 |
| 大きな寒暖差 | 材料の伸縮が繰り返され、目地やクラックが開閉して疲労する | 目地の追従性を重視した材料選定 |
| 冬の凍結融解 | 微細なひび割れに入った水が凍って体積が約9%膨張し、割れを押し広げる | ひび割れの早期補修、屋上・バルコニー床の防水を優先 |
一方で、海から遠いため塩害の影響は比較的軽微です。沿岸部の物件のように鉄部の腐食を最優先で心配する必要は薄い。これは山梨市のマンションにとっての数少ない有利な条件です。
工事に向く時期・向かない時期
塗装と防水は、気温と湿度に大きく左右されます。多くの塗料・防水材は、気温5℃未満または湿度85%以上では施工を避けるべきとされています。山梨市の気候に当てはめると、目安はこうなります。
| 時期 | 適性 | 理由 |
|---|---|---|
| 3月下旬〜6月上旬 | ◎最適 | 気温・湿度が安定。梅雨入り前 |
| 6月中旬〜7月上旬 | △要注意 | 梅雨。降雨で工程が伸びやすい |
| 7月中旬〜8月 | ○可 | 猛暑。職人の熱中症対策と、高温時の塗膜管理が要る |
| 9月〜11月中旬 | ◎最適 | 気温が下がり、降水も落ち着く |
| 11月下旬〜3月中旬 | ×不適 | 朝の冷え込みと凍結融解。施工不可日が増える |
つまり、山梨市で大規模修繕を打つなら、春か秋の窓を狙うのが基本です。そして春の窓を取るには、前年の秋には業者選定を終えておく必要があります。この逆算は、後ほどカレンダーで整理します。
私が一番悔しい思いをする瞬間
現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、「あと1年早ければ、この金額で済んだのに」という現場に立ち会うときです。
寒冷地寄りの物件で、屋上防水の膨れを見つけたことがあります。畳1枚ほどの範囲でした。当時の理事会では「来年度の予算で」となり、1年待つことになりました。翌年、私が同じ屋上に上がったとき、膨れは数倍に広がっていました。凍結融解で防水層の内側に入った水が動き、下地のコンクリートまで水が回っていたのです。最上階の天井にはシミが出ていました。
補修費用は、当初見積りの数倍になりました。防水層だけの話で済まなくなり、下地補修と内装復旧まで必要になったからです。
建物の劣化は、待ってくれません。 補助金の情報を集めることも大事ですが、それ以上に、劣化診断のタイミングを逃さないことのほうが金額へのインパクトは大きい。これは私が現場で見てきた、嘘偽りのない感想です。
3つの工法から選ぶ:仮設費は総工事費の15〜25%を占めます
ここからは、利益相反を開示したうえで、弊社のサービスに関わる話をします。ご承知おきください。
大規模修繕の見積書を開いたとき、私が理事長さまにいつも最初に見ていただくのが「仮設工事」の行です。一般的に、仮設足場は総工事費のおよそ15〜25%を占めます。5,000万円の工事なら、750万円から1,250万円が足場代という計算になります。
先ほどご紹介したブロック塀の補助金が上限20万円。桁が違うことがおわかりいただけると思います。補助金を1円でも多く取りにいく努力と同じくらい、仮設費の設計を見直す努力に価値があるというのが、私の考えです。
弊社は、次の3つの工法をご提案できます。
| 工法 | 特徴 | 向く物件 | 居住者への影響 |
|---|---|---|---|
| 通常足場工法 | 建物全面に仮設足場を架設。全面改修に確実 | 中低層、形状が複雑、外壁全面をやり替える物件 | 大(バルコニー使用制限、洗濯物、防犯不安が数か月続く) |
| ロープアクセス工法(無足場工法) | 産業用ロープで職人が壁面を上下しながら施工。足場費が不要 | 高層、足場架設が困難、部分補修主体、コストを最優先する物件 | 小(作業箇所のみ・短期間) |
| ハイブリッド工法 | 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける | 大規模・複雑形状で、総合コストの最適化が要る物件 | 中(足場を架ける範囲を限定できる) |
ロープアクセス工法は、産業用ロープと下降器・登高器を使って職人が壁面にアクセスする無足場の施工方法です。足場を架けないぶん、仮設費そのものが発生せず、工期も短縮できます。技術情報や安全基準の一般的な解説は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。
「敷地に余裕があるから足場」で思考を止めない
山梨市は都心部と違い、マンションの敷地に比較的余裕があることが多い地域です。だからこそ、「架けられるのだから架ける」で検討が終わってしまいがちです。
私は、理事会でこの3つを問いかけていただきたいと思っています。
- 今回の工事は、外壁全面のやり替えですか。それとも劣化箇所の補修が主ですか。(後者なら足場が過剰かもしれません)
- 居住者は、バルコニーが使えない期間を何か月まで許容できますか。(金額に出ない負担です)
- 見積書の「仮設工事」の行を消したら、総額はいくら下がりますか。(そこが検討の出発点です)
弊社は、日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズを展開しています。塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しており、この体制が高品質と低価格の両立を支えています。工法の詳しい内容はロープアクセス工法のご紹介を、大規模修繕全体のご提案は大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。費用の考え方については適正価格へのこだわりにまとめています。
モデルケース:山梨市のマンションで、いくら変わるか
実在の物件を特定できない形で、モデルケースを2本お示しします。あくまで一般的な想定に基づく試算です。
ケース1:山梨市駅周辺/築25年・11階建て・48戸
| 項目 | 通常足場工法 | ハイブリッド工法 |
|---|---|---|
| 総工事費 | 9,000万円 | 7,800万円 |
| 差額 | — | ▲1,200万円 |
| 1戸あたり負担 | — | ▲25万円 |
| 工期 | 標準 | 約3週間短縮 |
高層部の外壁とタイル補修をロープアクセスで対応し、低層部とバルコニー内部は足場を架ける。この使い分けで、足場の架設面積を大幅に減らした想定です。
ケース2:市郊外/築40年超・5階建て・18戸
| 項目 | 通常足場工法 | ロープアクセス主体 |
|---|---|---|
| 総工事費 | 3,200万円 | 2,600万円 |
| 差額 | — | ▲600万円 |
| 1戸あたり負担 | — | ▲33万円 |
| 資金 | 一時金が必要 | 機構融資で一時金ゼロも可能 |
戸数が少ないマンションほど、1戸あたりの負担額は重くなります。18戸で600万円の差は、1戸33万円。これは総会の空気が変わる金額です。
数字を「1戸あたり」に置き換えて説明する。 私が理事会でいつも心がけていることです。総額の話は他人事に聞こえますが、1戸あたりに換算した瞬間、全員が自分の財布の話として聞いてくださいます。
修繕積立金が足りないとき、打てる手は4つ
「補助金を調べているのは、そもそも積立金が足りないからです」。これが本音の理事長さまは多いはずです。打ち手を整理します。
| 打ち手 | 内容 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 一時金の徴収 | 区分所有者から不足分を一括徴収 | 借入なし・利息なし | 総会での合意形成が難しい/滞納リスク |
| 住宅金融支援機構の融資 | 管理組合名義で借入、積立金から返済 | 一時金ゼロで着工できる/理事長の個人保証を回避できる仕組みあり | 利息負担/返済計画が要る |
| 段階施工 | 工事を2〜3期に分けて実施 | 1回あたりの支出を抑えられる | 仮設費が回数分かかり、総額は増えやすい |
| 工法の見直し | ロープアクセスやハイブリッドで仮設費を圧縮 | 総額が下がり、工期も短くなる | 全面改修が必要な物件には向かない |
私が一番もったいないと感じるのは、「一時金か、先送りか」の二択で議論が止まっている管理組合です。上の表の下2つ、段階施工と工法の見直しは、資金の話ではなく工事の設計の話です。ここに手を入れると、そもそも必要な金額が変わります。
先送りは、選択肢のようでいて選択肢ではありません。先ほどの屋上防水の話のとおり、劣化は待っている間に進み、費用は増えます。
18か月逆算カレンダー:山梨市で春の窓を取るために
工事着工の18か月前から逆算した標準スケジュールです。理事会の年間計画に落とし込んでお使いください。
| 時期 | やること | 補助金・制度との関係 |
|---|---|---|
| 18か月前 | 劣化診断の実施/竣工図の所在確認 | 竣工図の仕上表でアスベストの有無を事前チェック |
| 16か月前 | 都市計画課へ電話(アスベスト・ブロック塀・管理計画認定の3点セット) | 制度の有無と管理組合名義の可否を確認 |
| 14か月前 | 修繕基本計画の策定/概算予算の確定 | 税務課へ長寿命化促進税制の受付状況を確認 |
| 12か月前 | 工法の比較検討(足場/ロープアクセス/ハイブリッド) | 仮設費の圧縮余地を見極める |
| 10か月前 | 施工会社の相見積り取得(3社程度) | 補助対象工事を別項目で見積らせる |
| 8か月前 | 資金計画の確定/機構融資の事前相談 | すまい・る債・融資の申込時期を確認 |
| 6か月前 | 補助金の交付申請 | ★ここが山場。着工より前に |
| 4か月前 | 交付決定通知の受領 → 工事請負契約の締結 | ★決定前の契約は対象外になりうる |
| 2か月前 | 住民説明会/工事のお知らせ配布 | 専有部リフォーム補助の情報も併せて案内 |
| 着工 | 春(3月下旬〜6月上旬)または秋(9月〜11月中旬) | 気候の窓に合わせる |
| 竣工 | 検査・引き渡し | — |
| 竣工後3か月以内 | 税制の申告 | ★固定資産税の減額はすべて3か月以内が期限 |
★を付けた3か所が、私が現場で「間に合わなかった」を何度も見てきたポイントです。特に「交付決定 → 契約 → 着工」の順序は、ここを逆にすると補助金がゼロになります。工程表の一行として、明文で書き込んでおいてください。
相見積りで見るべき3つのポイント
3社から見積りを取ったのに、金額だけを比べて安いところに決める。これが一番危ない決め方です。私が見るのは、次の3点です。
① 数量が揃っているか
外壁の塗装面積、シーリングの打替え延長、タイルの補修数量。同じ建物なのに、社によって数量が2倍違うことがあります。数量が違えば単価の比較は意味を持ちません。まず数量を揃えてから、単価を比べてください。
② 仕様が揃っているか
「外壁塗装一式」では比較できません。塗料のメーカー名・製品名・グレード(シリコン系かフッ素系か、無機系か)、塗り回数、下地処理の内容。仕様が1グレード違うだけで、次の修繕までの年数が変わります。
③ 「別途」の中身は何か
見積書の欄外に「別途」と書かれた項目こそ、後から効いてきます。特に下地補修です。ひび割れの補修延長やタイルの浮きの補修枚数は、足場を架けて調査してからでないと確定しません。
だからこそ、私はこうお伝えしています。「想定数量を超えた場合の追加単価を、契約前に見積書へ明記させてください」。 ここを詰めておけば、工事中の追加費用交渉でもめることが激減します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 山梨市に、マンションの大規模修繕そのものへの補助金はありますか。
A. 私が公開情報を確認した範囲では、共用部の大規模修繕工事を直接対象とする山梨市独自の補助金は確認できませんでした。ただしアスベスト、ブロック塀、固定資産税の減額といった隣接制度は複数あります。詳しくは本文の「山梨市の制度・可否早見表」をご覧ください。
Q2. アスベストの調査費は本当に全額出るのですか。
A. 山梨市のアスベスト飛散防止対策事業費補助では、調査事業の補助率が「補助対象経費の10分の10以内(上限25万円)」と明記されています(出典:山梨市)。ただし管理組合名義で申請できるかは市ページの記載だけでは判断できないため、都市計画課へのご確認をお願いします。
Q3. 木造住宅の耐震改修で143万円出ると聞きました。マンションでも使えますか。
A. 使えません。山梨市の木造住宅耐震化補助事業は、対象を「長屋、共同住宅及び借家を除く」と明記しています。分譲マンションは共同住宅にあたるため、対象外です。
Q4. マンション長寿命化促進税制は山梨市でも使えますか。
A. 国の税制なので制度としては全国共通ですが、減額割合は市町村の条例で定まり、山梨市の割合は公開ページで確認できませんでした。山梨市税務課 固定資産税担当(0553-22-1111、内線1127・1128)へ、着工前にご確認ください。
Q5. 管理計画認定は、山梨市ではどこに申請するのですか。
A. 山梨県のページでは、県が受け付ける対象は町村部にあるマンションのみとされています。山梨市は市部にあたるため、県の窓口では申請できません。山梨市自身が受け付けているかは公開情報で確認できませんでしたので、都市計画課(内線2243・2244)へお問い合わせください。
Q6. 補助金の申請は、工事契約の前と後、どちらですか。
A. 前です。山梨市の住宅リフォーム補助金では「補助金交付決定前に着手した工事は対象とはなりません」と明記されています。交付決定を受けてから契約、という順序を守ってください。
Q7. 築25年・50戸のマンションですが、ロープアクセス工法は使えますか。
A. 外壁全面のやり替えが必要か、劣化箇所の補修が主かで判断が分かれます。後者であればロープアクセス工法が有力な選択肢になります。全面改修が必要な場合は、部位ごとに使い分けるハイブリッド工法をご検討ください。ロープアクセス工法の安全基準や事例はロープアクセスドットコムで解説しています。
Q8. 山梨市で工事に適した時期はいつですか。
A. 3月下旬〜6月上旬と、9月〜11月中旬です。冬季は朝の冷え込みと凍結融解で施工できない日が増えます。春の着工を狙うなら、前年の秋には業者選定を終えておく必要があります。
この記事のポイントまとめ
- 山梨市に共用部大規模修繕への直接補助は、公開情報からは確認できない
- 本命はアスベスト補助。調査は上限25万円、除去等は上限400万円
- ブロック塀は対象経費の3分の2以内・上限20万円、同一敷地1回限り
- 木造住宅耐震化補助は「共同住宅を除く」と明記され、分譲マンションは対象外
- 管理計画認定は県が町村部のみ。山梨市の受付有無は都市計画課へ要確認
- 交付決定より前に契約すると対象外。税制の申告は竣工後3か月以内
- 仮設足場は総工事費の15〜25%。工法の見直しが最大のコスト削減余地
出典・参考資料
- 山梨市「アスベスト飛散防止対策事業」
- 山梨市「木造住宅耐震化補助事業等のご案内」
- 山梨市「市内の施工業者による住宅リフォーム工事費用を補助します」
- 山梨市「住宅の工事・改修に伴う固定資産税の減額措置について」
- 山梨県「マンション管理計画認定制度について」
- 山梨県「マンションの区分所有者等の皆様へ」
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」
- 国土交通省「ブロック塀等の点検チェックポイント(別紙2)」
- 住宅省エネ2026キャンペーン「公式サイト」
- 独立行政法人 住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」
- 公益財団法人 マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」
※制度の内容・金額・受付期間は変更される場合があります。申請にあたっては、各制度の公式ページと担当窓口で最新の情報をご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の申請可否や税務判断について保証するものではありません。
最後に
山梨市の管理組合にとって、この記事でいちばんお伝えしたかったのは、「電話を3本かけてください」ということです。
- 都市計画課(内線2243・2244)へ──アスベスト補助は管理組合で使えますか。管理計画認定は受け付けていますか。
- 税務課 固定資産税担当(内線1127・1128)へ──長寿命化促進税制の申告は受け付けていますか。減額割合は何分の1ですか。
- 商工労政課(内線2362・2363)へ──住宅リフォーム補助金は、住民の専有部工事で使えますか。
いずれも山梨市役所の代表番号 0553-22-1111 につながります。合計で20分もかかりません。この20分で、数十万円から数百万円の話が動くことがあります。
そして、補助金の枠を超えて金額を動かすのは、工法の選択です。見積書の「仮設工事」の行を一度見つめていただき、そこに疑問が湧いたら、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。
賃貸マンションやビルをお持ちのオーナーさま、管理組合さま向けのサービス内容はオーナー・管理組合の皆さまへにまとめています。ご相談はお問合せフォームからどうぞ。
執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)
株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円で通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3工法から建物に最適な方法をご提案できる改修会社です。日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟しています。また、一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)を運営し、全国の建設業向けに経営支援情報の発信、オンラインセミナー、交流会、ビジネスマッチングを行っています。
最終更新:2026年8月18日
【2026年最新】笛吹市のマンション大規模修繕で使える補助金・税制まとめ|管理組合が最初に確認すべき5つの窓口
2026年8月17日 更新
この記事で答える質問:山梨県笛吹市の分譲マンション管理組合が、大規模修繕工事にあたって使える補助金・助成金・税制優遇には何があるのか?
先に結論から申し上げます。
笛吹市には、分譲マンションの共用部大規模修繕そのものを対象とした市独自の補助金制度は、2026年8月17日時点の公開情報では確認できませんでした。
正直に書きます。「笛吹市 マンション 大規模修繕 補助金」で検索してこの記事にたどり着いた理事長さまには、期待外れの一行かもしれません。ですが、ここで記事を閉じるのはもったいない話です。
実は、笛吹市の管理組合が使える可能性のある制度は、「大規模修繕」という名前では並んでいないだけで、確かに存在します。具体的には次の3方向です。
| 方向性 | 制度名 | 規模感 | 管理組合との接点 |
|---|---|---|---|
| ① 市の制度 | 笛吹市ブロック塀等安全確保対策支援事業補助金 | 上限20万円 | 敷地境界の塀を修繕と同時にやるなら接点あり |
| ② 国の税制 | マンション長寿命化促進税制 | 建物固定資産税を1年分減額 | 要件を満たせば全国どこでも適用対象 |
| ③ 国の融資 | 住宅金融支援機構 共用部分リフォーム融資 | 地域制限なし | 積立金不足の管理組合の実質的な主役 |
この記事では、笛吹市の公式ページを1本ずつ当たり直したうえで、「使える」「条件付きで使える可能性がある」「明確に使えない」の3段階で仕分けしていきます。
私は株式会社明誠の本間と申します。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年近くやってきました。理事会に呼ばれて最初に聞かれるのが、たいてい「補助金って出ないんですか」です。ですから、期待を持たせて終わる記事にはしません。出ないものは出ないと書き、代わりに何をすれば工事費が下がるのかまで書きます。
目次代わりに|この記事の全体像
- 笛吹市はどんなまちで、マンションの傷み方にどう影響するか
- 【市の制度】使える可能性がある:ブロック塀等安全確保対策支援事業補助金
- 【市の制度】使えない:木造住宅の耐震診断・耐震化支援補助制度
- 【市の制度】使えない:空き家バンク改修等補助金・KAITEKI住宅・子育て世帯支援
- 【要確認】アスベスト対策の補助は笛吹市にあるのか
- 【要確認】マンション管理計画認定制度は笛吹市で申請できるのか
- 【国の税制】マンション長寿命化促進税制で建物固定資産税を減らす
- 【国の融資】住宅金融支援機構という現実解
- 【国の補助】住宅省エネ2026キャンペーンの管理組合向け仕分け
- 2026年4月1日施行の改正区分所有法で決議はどう変わったか
- 補助金より効く「工法を選び直す」という選択肢
- 笛吹市の気候から逆算した工事の適期
- 18か月逆算カレンダーと相見積りの3ポイント
- よくある質問(FAQ)
1. 笛吹市はどんなまちで、マンションの傷み方にどう影響するか
制度の話に入る前に、少しだけ土地の話をさせてください。建物の傷み方は土地で決まります。同じ築年数のマンションでも、海沿いと内陸では劣化の出方がまったく違う。ここを飛ばして「築12年だから大規模修繕」とやると、お金の使いどころを間違えます。
1-1. 笛吹市の基本データ
笛吹市は、2004年(平成16年)10月12日に石和町・御坂町・一宮町・八代町・境川村・春日居町の6町村が合併して誕生し、2006年(平成18年)8月1日に芦川村を編入して現在の市域になりました。人口は66,107人、世帯数は31,109世帯(令和8年7月末現在)。面積201.92平方キロメートル、本庁舎の標高は267メートルです(出典:笛吹市「笛吹市のプロフィール」)。
甲府盆地の中央部やや東寄りに位置し、笛吹川が盆地中央部を南西に向かって流れています。日川、金川、浅川、境川などの扇状地と盆地底部の沖積平地が広がる地形です。
そして笛吹市といえば、桃とぶどう、そして石和温泉郷・春日居温泉郷です。市は平成17年10月に「桃・ぶどう日本一の郷」宣言、平成25年4月10日に「日本一桃源郷」宣言を行っています。桃の栽培面積は市内1,186ヘクタール、ぶどうは836ヘクタール(2020年農林業センサス)と、いずれも山梨県内トップです。
交通は、JR中央本線の石和温泉駅・春日居町駅、中央自動車道の一宮御坂インターチェンジ・笛吹八代スマートインターチェンジ。新宿から石和温泉駅まで特急で約1時間30分という距離感です。
1-2. 「果樹の適地」であることは、建物にとっては逆風
ここが本題です。笛吹市の公式サイトは、果樹栽培に適した理由をこう説明しています。
笛吹市の土壌は肥沃で排水がよく、日照時間が長い上に昼夜の温度差が大きい、果樹栽培に優れた適地です。
(出典:笛吹市「笛吹市のプロフィール」)
桃とぶどうにとっての好条件は、そのまま建物にとっての悪条件です。私はこれを、笛吹市の管理組合さまにはいつもお伝えするようにしています。
| 気候の特徴 | 建物への影響 | 現れる場所 |
|---|---|---|
| 日照時間が長い(紫外線量が多い) | 塗膜の劣化・チョーキング(白い粉が浮く現象)が早い。シーリング材の硬化・痩せも早い | 南面・西面の外壁、屋上防水の露出部、バルコニー手すり |
| 昼夜の温度差が大きい | 建材の膨張収縮が繰り返され、ひび割れ・目地の切れが進む | 打継ぎ目地、サッシまわりシーリング、パラペット天端 |
| 冬の放射冷却による凍結融解 | ひび割れに入った水が凍って約9%膨張し、ひび割れを内側から押し広げる | 北面外壁、共用廊下の床、外階段 |
| 海から遠く塩害は軽微 | 沿岸部のような鉄筋腐食の急進行は起きにくい | ─ |
つまり笛吹市のマンションは、「塩害は心配しなくていいが、紫外線と寒暖差でシーリングと塗膜が想定より早く傷む」という傾向を持ちやすい土地にあります。
これは工事の中身に直結します。塩害地帯なら鉄筋の防錆に予算を厚く配分すべきですが、笛吹市であればシーリングの打ち替え範囲と、塗料のグレード選定にお金をかけたほうが、同じ予算で建物は長持ちします。
1-3. 温泉地・観光地であることの2つの論点
笛吹市は石和温泉郷・春日居温泉郷を抱える山梨県の観光宿泊拠点です。この点について、私が理事会でよく聞かれる2つの質問に、わかる範囲で正直にお答えします。
「温泉が近いと建物が傷みやすいのでは?」——温泉の泉質によっては金属部の腐食が進むことが一般に知られていますが、笛吹市の分譲マンション一般にその影響が及ぶという公的なデータは確認できていません。源泉や配管に直接近接する設備であればともかく、通常の共用部については、まずは劣化診断で実際の状態を見るのが先です。憶測で予算を積むのは私は好みません。
「所有者が市外に住んでいて総会が成立しない」——こちらは温泉地・観光地の分譲マンションで実際によく起きる問題です。セカンドハウスや投資目的で所有され、区分所有者が県外にお住まいのケース。連絡が取れないまま議決権が死票になり、大規模修繕の決議が通らない。これについては、2026年4月1日施行の改正区分所有法で状況が変わりました。第10章で詳しく書きます。
2. 【使える可能性あり】笛吹市ブロック塀等安全確保対策支援事業補助金
笛吹市が実施している住宅・建築系の補助制度のうち、分譲マンションの管理組合が現実的に接点を持ちうるのは、この制度です。
2-1. 制度の概要
市は、南海トラフ地震などの大規模地震の発生に備え、避難路沿いにある危険な塀の安全確保を進めています。建築基準法第8条の規定により、ブロック塀の所有者は常に適法な状態になるよう維持管理する必要がある——これが制度の根拠です(出典:笛吹市「笛吹市ブロック塀等安全確保対策支援事業補助金」(2026年4月1日更新))。
2-2. 補助対象と金額(一次情報のまま)
補助対象の工事:避難路、通学路または避難地に面しており、危険性が高く、塀の高さが1メートル以上のブロック塀等の撤去または耐震改修工事。
補助額は工事の種類ごとに次のとおりです。いずれもA、Bのいずれか少ない額の3分の2、限度額20万円という共通の考え方です。
| 工事の種類 | A(実際の経費) | B(単価計算) | 補助額 |
|---|---|---|---|
| 1. ブロック塀等(基礎含む)の撤去工事 | 撤去工事および処分に関する経費 | 延長15,000円/m | A・Bのいずれか少ない額の2/3(上限20万円) |
| 2. ブロック塀等を撤去して軽量なフェンス等を設置する工事 | 撤去工事および新設工事に要する経費 | 延長15,000円/m | A・Bのいずれか少ない額の2/3(上限20万円) |
| 3. ブロック塀等の改修工事 | 改修工事に要する経費 | 延長15,000円/m | A・Bのいずれか少ない額の2/3(上限20万円) |
(出典:笛吹市「笛吹市ブロック塀等安全確保対策支援事業補助金」)
具体的に計算してみます。敷地境界のブロック塀20メートルを撤去してフェンスに造り替えるとします。
- B(単価計算)=15,000円 × 20m = 30万円
- A(実際の経費)が仮に50万円だとすると、A・Bのうち少ない額はB=30万円
- 30万円 × 2/3 = 20万円 → 限度額20万円に達するので、補助額は20万円
工事費50万円のうち20万円。決して小さくない額です。
2-3. ここを外すと補助金は出ません
市のページには、太字で次の注記があります。
補助対象となる条件については対象者の条件、建築基準法上の道路要件、対象となる路線の判定などを確認する必要がありますので必ず工事の着手前に笛吹市まちづくり整備課までご連絡下さい。補助の決定前に工事着手(契約含む)すると対象外となります。
「契約含む」——ここが最大の落とし穴です。私は現場で何度も見てきました。理事会で施工業者を決めて契約書に判を押し、そのあとで「そういえば補助金は?」と市役所に電話する。この時点で、もう申請できません。
順序は「相談 → 申請 → 交付決定通知 → 契約 → 着工」です。大規模修繕の工事契約に外構工事を含める場合、この塀の部分だけ別契約にしておかないと、全体の契約日が着手日とみなされる可能性があります。契約書の切り分けは、着工前の早い段階でまちづくり整備課へ確認しておいてください。
2-4. 管理組合名義で申請できるのか
正直に書きます。市のページには「対象者の条件」を窓口で確認するようにとの記載はありますが、管理組合名義で申請できるかどうかの明示は確認できませんでした。
分譲マンションの敷地内のブロック塀は、通常は区分所有者全員の共有物であり、管理組合が管理します。ですが、補助金の要綱上「対象者」がどう定義されているかは要綱を読み込む必要があります。市は交付要綱(PDF)を公開していますので、理事会で検討される前に、要綱と併せて窓口確認をおすすめします。
問い合わせ先:笛吹市建設部まちづくり整備課 計画指導担当 電話 055-261-3334
2-5. 相談窓口が充実しているのは笛吹市の良いところ
笛吹市のページには、補助金以外の相談窓口も一覧で掲載されています。これは他市ではあまり見ない親切さです。
| 担当 | 電話番号 | 相談内容 |
|---|---|---|
| 山梨県建築住宅課 建築防災担当 | 055-223-1734 | 安全点検に関すること |
| 山梨県建築住宅課 建築審査担当 | 055-223-1735 | 建築基準法に関すること |
| 峡東建設事務所 都市計画・建築課 | 0553-20-2718 | 山梨県現地機関 |
| 一般社団法人 山梨県建築士会 | 055-233-5414 | 建築士へのご相談 |
| 一般社団法人 山梨県建築士事務所協会 | 055-225-1251 | ブロック塀等の診断・施工に関するご相談 |
| 笛吹市まちづくり整備課 計画指導担当 | 055-261-3334 | 補助金に関すること |
(出典:笛吹市「笛吹市ブロック塀等安全確保対策支援事業補助金」)
市はブロック塀等の点検のチェックポイント(PDF)や安全点検報告書の様式も公開しています。次の理事会までに、理事の方が敷地を一周してこのチェックポイントを当ててみる。それだけで、補助対象になりうる塀があるかどうかの当たりはつきます。
3. 【使えません】木造住宅の耐震診断・耐震化支援補助制度
笛吹市の「補助・助成」ページには、もう1本、建築系の補助制度が並んでいます。木造住宅の耐震化支援事業です。
3-1. 制度の内容
木造住宅耐震診断
- 補助対象者:昭和56年5月31日以前に着工された木造住宅を所有、かつその住宅に居住している者
- 診断は無料(専門の診断士が基礎、壁、間取り等の状態から地震に対する耐久力を総合的に判断)
- 申込期間:令和8年4月1日~12月末日まで
耐震化支援事業
- 耐震診断の結果「耐震性なし」と診断された住宅を対象に、改修・建替・シェルター設置等の補助
- 令和7年度より限度額が拡充
(出典:笛吹市「木造住宅の耐震診断、耐震化支援補助制度」(2026年4月1日更新))
3-2. RC造・SRC造の分譲マンションは対象外です
対象がはっきり「木造住宅」と書かれています。分譲マンションの多くは鉄筋コンクリート造(RC造)または鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)ですので、共用部の大規模修繕でこの制度を使うことはできません。
「築年数が古いから耐震補助が使えるのでは」というご相談を、私は年に何度もいただきます。木造住宅の耐震化補助は全国のほぼすべての自治体にあるため、検索すると上位に出てくるからです。ですが構造が違えば制度が違う。ここは早い段階で切り分けたほうが、理事会の時間の節約になります。
3-3. ただし、この制度の「注意事項」は全管理組合が読む価値あり
対象外の制度ではありますが、市がこのページに書いている注意事項は、笛吹市の補助制度に共通する作法として押さえておく価値があります。
・「耐震診断」及び「耐震化支援事業」の受付件数には限りがあり、ご希望に添えない場合があります。
・補助事業については、申請年度の2月末までには完了しないと補助金が受け取れなくなります。
・耐震診断の結果により補助事業を検討する場合は必ず事前にご相談ください。事業着手(契約締結)後の申請はすべて補助対象外となります。
「申請年度の2月末までに完了」——これは大規模修繕の工程を組むうえで決定的です。3月着工の工事は年度をまたぐため、補助対象外になる可能性が高い。補助金を絡めるなら、遅くとも11月には着工していなければ間に合いません。
そして、ここでも「事業着手(契約締結)後の申請はすべて補助対象外」。ブロック塀の制度と同じルールです。笛吹市の補助制度は、交付決定前の契約を一切認めないと理解しておいてください。
4. 【使えません】空き家バンク改修等補助金・KAITEKI住宅・子育て世帯支援
笛吹市の補助メニューには、金額の大きい制度がいくつかあります。ただし、いずれも居住中の分譲マンションの共用部大規模修繕には使えません。紛らわしい部分があるので、1本ずつ潰しておきます。
4-1. 空き家バンク登録物件に係る改修等補助金(最大100万円)
補助率2分の1以内、上限100万円。金額だけ見ると魅力的です。ですが、対象が明確に限定されています(出典:笛吹市「空き家バンク登録物件に係る改修等補助金」(2026年4月22日更新))。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助対象物件 | 市内の空き家バンク登録物件 |
| 補助対象者(移住者) | 空き家バンクの利用登録者/所有者等と売買・賃貸借契約を締結し1年以内の者/所有者等の3親等以内の親族でない者/当該登録物件に5年以上継続して居住することを予定している者/行政区に加入または加入予定 ほか |
| リフォーム事業の補助額 | 経費の1/2以内、上限100万円(1,000円未満切捨) |
| 空家活用促進事業の補助額 | 経費の1/2以内、上限20万円 |
| 施工業者 | 市内施工業者に請け負わせる工事 |
ここが紛らわしいのですが、リフォーム事業の対象工事には「屋根又は外壁等の外装の改修」が明記されています。「外壁の改修が対象なら大規模修繕にも使えるのでは」と読みたくなる。
使えません。理由は3つです。
- 対象物件が空き家バンク登録物件に限定されている(居住中の分譲マンションは登録できません)
- 補助対象者が移住者(5年以上継続居住予定)または所有者等であり、管理組合は想定されていない
- 要綱上、「空家と同一敷地内に存する車庫、納屋、塀等の建築物、構造物の改修及び撤去等又は外構工事は補助対象事業としない」と明記
なお、この制度も「市からの補助金交付決定前に着手した場合」は対象外、そして「予算に達した時点で受付終了」です。
4-2. 笛吹市やまなしKAITEKI住宅普及促進事業補助金
山梨県が定めるKAITEKI住宅基準を満たした住宅を建築または取得した方が対象です(出典:笛吹市「笛吹市やまなしKAITEKI住宅普及促進事業補助金について」)。
対象要件を見れば、共用部大規模修繕とは別世界だとわかります。
- 自ら居住することを目的に交付対象住宅を建築又は取得したものであること
- 申請日において、交付対象住宅を住民票の住所としていること
- やまなしKAITEKI住宅認定通知書の通知日又は認定住宅を購入した日から3か月以内に申請
- 山梨県内に本店を有する建築業者が建築工事を施工した住宅であること
- 申請期限:2月末日まで(予算状況により期間中に受付終了の場合あり)
対象住宅は「新築、増築又は改築住宅」。既存分譲マンションの共用部を修繕する工事は、この制度の設計思想の外にあります。
問い合わせ先:笛吹市総合政策部企画課 電話 055-261-2032
ただし、この制度のページには大規模修繕にも間接的に関係する情報が1つあります。笛吹市は住宅金融支援機構と平成30年4月27日に相互協力に関する協定を締結しており、フラット35の提携住宅ローンを扱っています。市と機構がすでにパイプを持っている自治体だ、ということです。この点は第8章の融資の話につながります。
4-3. 子育て世帯住宅取得支援事業・子育て世帯住宅取得補助事業・結婚新生活支援事業
いずれも住宅の「取得」または移住定住・少子化対策を目的とした制度です。既存マンションの共用部改修は対象になりません。
笛吹市の「補助・助成」ページに並ぶ6制度を、管理組合目線で一覧化するとこうなります。
| 制度名 | 管理組合の共用部大規模修繕での使用可否 | 判断根拠 |
|---|---|---|
| 笛吹市ブロック塀等安全確保対策支援事業補助金 | △ 接点あり(要窓口確認) | 敷地内の塀が避難路等に面し高さ1m以上なら対象工事に該当しうる |
| 木造住宅の耐震診断、耐震化支援補助制度 | × 使えない | 対象が「木造住宅」に限定 |
| 空き家バンク登録物件に係る改修等補助金 | × 使えない | 対象が空き家バンク登録物件+移住者等 |
| 笛吹市やまなしKAITEKI住宅普及促進事業補助金 | × 使えない | 対象が新築・増築・改築住宅+自ら居住 |
| 令和8年度子育て世帯住宅取得支援事業 | × 使えない | 住宅取得支援 |
| 令和8年度子育て世帯住宅取得補助事業 | × 使えない | 住宅取得支援 |
| 令和8年度結婚新生活支援事業 | × 使えない | 新生活支援 |
(一覧の出典:笛吹市「補助・助成」)
5. 【要確認】アスベスト対策の補助は笛吹市にあるのか
ここは、私がこの記事で最も丁寧に書きたい部分です。
5-1. なぜマンションでアスベストが問題になるのか
分譲マンションの共用部で吹付けアスベストが見つかりやすいのは、居住者の目に触れにくい場所です。
- 機械室・ポンプ室・受水槽室の天井や梁
- 電気室・キュービクル周り
- 立体駐車場・ピロティの天井
- 階段室裏、PS(パイプスペース)内部
- エレベーター機械室
昭和30年代後半から昭和50年頃までに建てられた鉄骨造・RC造の建物で、耐火被覆や結露防止の目的で吹付け材が使われた例があります。大規模修繕の足場を架けたときや、給排水管の更新で天井を開けたときに初めて見つかる。これが実務上いちばん多いパターンです。
そして、見つかったときの費用が重い。分析調査で1検体あたり数万円、除去工事となれば数百万円規模になることも珍しくありません。だからこそ、補助制度の有無が決定的に効いてきます。
5-2. 笛吹市の状況:所管課は明確、制度の掲載は確認できず
事実を2つ、順に書きます。
事実1:笛吹市でアスベストを所管しているのは、まちづくり整備課の計画指導担当です。市の組織ページには、計画指導担当の業務として「都市計画関連業務、開発行為等、耐震診断、耐震改修、景観計画、屋外広告物、用途地域、建設リサイクル届、建築確認申請、アスベストなど」と明記されています(出典:笛吹市「建設部まちづくり整備課」)。
事実2:一方、笛吹市の「補助・助成」ページには、アスベスト調査・除去に関する補助制度は掲載されていません。(2026年8月17日確認)
この2つから言えることは、「笛吹市がアスベストに関する行政窓口を持っていることは確かだが、独自の補助制度があるかどうかは公開情報からは確認できない」ということです。ないと断定はしません。ページとして公開されていないだけで、要綱が存在する可能性も、国の交付金を使った制度を年度限定で運用している可能性もあります。
5-3. 山梨県内の近隣市には制度がある——ただし「隣にあるから自分の市にもある」は成り立たない
参考情報として申し添えます。山梨県内でも、市によってはアスベスト対策の補助制度を公開しています。制度の規模感の目安として、たとえば調査費用に対して上限を設けた補助(数十万円規模)、除去等工事に対して対象経費の3分の2・上限400万円規模といった設計が見られます。
ただし、これは笛吹市の制度ではありません。補助金は自治体ごとに完全に独立しています。「隣の市にあるから笛吹市にもあるだろう」という推測で予算を組むのは、私は理事長さまにおすすめしません。
5-4. 実務としてどう動くか
私が笛吹市の管理組合さまにお伝えするのは、次の順序です。
- 設計図書を確認する。竣工図の仕上表に「石綿含有」「吹付ロックウール」等の記載がないか。昭和50年代以前の建物は特に。
- 写真を撮る。機械室・電気室・駐車場天井の現況写真を撮っておく。
- まちづくり整備課(055-261-3334)に電話する。「分譲マンションの共用部でアスベストが疑われる。市の補助制度はあるか」と直球で聞く。あわせて、除去工事の際の届出(大気汚染防止法・石綿障害予防規則)についても確認する。
- 山梨県の技術相談も併用する。峡東建設事務所 都市計画・建築課(0553-20-2718)は現地機関です。
電話1本です。大規模修繕の設計期間中、できれば劣化診断と同じタイミングで動いてください。足場が架かってから見つかると、工程も予算も一気に崩れます。
6. 【要確認】マンション管理計画認定制度は笛吹市で申請できるのか
ここも重要です。というより、笛吹市の管理組合にとって最大の関門はここかもしれません。
6-1. 制度のしくみ
マンション管理計画認定制度は、マンションの管理の適正化の推進に関する法律に基づく制度です。「マンション管理適正化推進計画」を作成した地方公共団体が、一定の基準を満たす管理計画を認定します(出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度」)。
認定を受けると、次のようなメリットがあります。
- マンション長寿命化促進税制(固定資産税減額)の要件の1つを満たせる
- 住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資で金利引下げ、返済期間の優遇
- マンションすまい・る債の利率上乗せ
- 市場での評価(中古売買時のアピール材料)
6-2. 山梨県の窓口は「町村部のみ」
ここが問題です。山梨県は管理計画認定の受付を令和4年4月1日から開始していますが、対象は「町村部にあるマンションのみ」とされています(出典:山梨県「マンション管理計画認定制度について」)。
笛吹市は「市」です。したがって、山梨県の窓口では申請できません。
6-3. では笛吹市自身はどうか
笛吹市がマンション管理適正化推進計画を作成しているか、管理計画認定の申請を受け付けているかは、2026年8月17日時点の公開情報からは確認できませんでした。
ないと断定はしません。市の建築住宅系ページに掲載がないだけかもしれず、また今後策定される可能性もあります。ただ、「県の窓口では受けられない」ことだけは確定しているので、次の1本の電話が必要になります。
問い合わせ先:笛吹市建設部まちづくり整備課 電話 055-261-3334
聞くべきことは1行です。「笛吹市はマンション管理適正化推進計画を作成していますか。管理計画認定の申請は受け付けていますか」
6-4. 参考:山梨県の手数料体系(町村部の場合)
もし今後、笛吹市で受付が始まった場合の参考として、山梨県の手数料体系を挙げておきます。事前確認(適合証)の有無で金額が大きく変わるのがポイントです。
| 区分 | 手数料 |
|---|---|
| 事前確認適合証あり | 3,600円 |
| 事前確認適合証なし | 25,500円 |
約7倍の差です。ですから、認定を目指すなら公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを経由して事前確認を受け、適合証を取得してから自治体に申請するのが王道になります。
6-5. 認定が取れなくても、打てる手はある
「県では受けられない、市も未確認」——これは笛吹市の管理組合にとって不利な状況です。正直に言えば、制度設計上の地域格差です。
ただ、諦める必要はありません。認定制度の代わりに使えるルートがあります。
- マンション管理適正化診断サービス(日本マンション管理士会連合会)
- マンション管理適正評価制度(マンション管理業協会)
住宅金融支援機構のマンションすまい・る債では、2026年度から管理計画認定に加えて、これらの制度で一定の評価以上を得た管理組合も利率上乗せの対象に拡充されています。認定が取れない地域の管理組合にとって、これは現実的な代替ルートです。
7. 【国の税制】マンション長寿命化促進税制で建物固定資産税を減らす
市の補助金がなくても、国の税制は笛吹市にも等しく適用されます。大規模修繕を検討している管理組合が、最初に押さえるべき制度です。
7-1. 制度の概要
一定の要件を満たす大規模修繕工事(長寿命化工事)を行ったマンションについて、工事完了の翌年度分の建物の固定資産税が減額されます(出典:国土交通省「マンションの大規模修繕工事に係る固定資産税の減額措置」)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象期間 | 令和5年4月1日~令和9年3月31日に工事完了 |
| 減額対象 | 建物の固定資産税(都市計画税は対象外) |
| 減額期間 | 工事完了の翌年度分の1年間のみ |
| 減額対象床面積 | 居住用専有部分1戸あたり100㎡まで |
| 適用回数 | 1回限り |
| 減額割合 | 市町村の条例で定める(参酌基準1/3、範囲1/6~1/2) |
7-2. 主な要件
- 築20年以上
- 総戸数10戸以上
- 過去に1回以上の長寿命化工事(外壁塗装等)を実施済み
- 修繕積立金を引き上げていること(管理計画認定を受けている、または助言・指導を受けて引き上げた場合)
- 屋根防水工事・床防水工事・外壁塗装等を一体的に実施していること
- 工事完了後、3か月以内に市町村へ申告
7-3. 笛吹市の減額割合は「条例で確認」
減額割合は市町村の条例で定めるため、笛吹市が何分の1を採用しているかは、この記事では断定しません。参酌基準は3分の1、条例で定められる範囲は6分の1から2分の1です。
確認先:笛吹市 税務課(固定資産税担当) 笛吹市役所 代表 055-262-4111
工事の着工前に一度、電話で確認しておくことを強くおすすめします。理由は次項です。
7-4. 笛吹市の管理組合が直面する「認定の壁」
第6章で書いたとおり、笛吹市では管理計画認定の申請窓口が公開情報から確認できません。そして本税制の要件4は、「管理計画認定を受けている」または「助言・指導を受けて修繕積立金を引き上げた」です。
つまり、認定ルートが使えない場合、「助言・指導」ルートを通る必要があります。この助言・指導は、マンション管理適正化法に基づき地方公共団体が行うものです。ここも、まちづくり整備課への確認事項に加えてください。
私が理事長さまにお伝えしているのは、「税制を狙うなら、工事の設計段階で税務課とまちづくり整備課の両方に当たっておく」ということです。工事が終わってから調べ始めると、3か月の申告期限に間に合いません。
7-5. 併用できない減額措置
耐震改修、バリアフリー改修、省エネ改修による固定資産税の減額措置とは重複して適用できません。同一年度に複数の工事を行う場合は、どれが有利かを比較したうえで選択することになります。
また、団地型マンションの場合、減額の対象は工事を実施した当該棟のみです。3棟のうち1棟だけ工事をした場合、他の2棟は対象になりません。
8. 【国の融資】住宅金融支援機構という現実解
補助金の話をしていると、決まってこの質問が出ます。「積立金が足りないんですが、どうすればいいですか」
笛吹市に限らず、私が伺う管理組合の半数以上がこの悩みを抱えています。そして補助金では、この問題は解決しません。上限20万円の補助金は、5,000万円の工事の前ではほとんど誤差です。
8-1. マンション共用部分リフォーム融資
住宅金融支援機構が管理組合に直接貸す融資です(出典:住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 借入名義 | 管理組合 |
| 金利 | 全期間固定金利(毎月見直しのため、最新の適用金利は機構サイトで確認) |
| 担保 | 公益財団法人マンション管理センターの債務保証を利用すれば、理事長個人の連帯保証は不要 |
| 優遇 | 管理計画認定等を受けている場合、返済期間の延長・金利の引下げ |
| 申込 | Web申込サービスあり |
私がこの融資を推す理由は、「理事長個人の保証がいらない」という一点に尽きます。民間金融機関からの借入では、理事長個人が連帯保証を求められることがあります。任期2年の理事長に、1億円の借入の保証人になれとは、私はとても言えません。
そして第4章で触れたとおり、笛吹市は平成30年4月27日に住宅金融支援機構と相互協力に関する協定を締結しています。フラット35の枠組みではありますが、市と機構の間にすでにチャネルがあるという事実は、管理組合が機構に相談するうえでの心理的なハードルを下げてくれるはずです。
8-2. マンションすまい・る債
こちらは積み立てる側の制度です。管理組合が修繕積立金を機構の債券で運用する仕組みで、元本の安全性が高く、管理計画認定や各種評価制度で一定以上の評価を得ている管理組合には利率の上乗せがあります。
募集は年1回、口数上限があり先着順です。「今すぐ工事はしないが、10年後に備えたい」という管理組合にはこちらです。
8-3. 積立金不足に対する4つの打ち手
私が理事会でお出しする選択肢は、いつも次の4つです。
| 打ち手 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| ① 一時金徴収 | 借入コストゼロ | 区分所有者の合意が最も難しい。滞納リスク |
| ② 機構融資(共用部分リフォーム融資) | 一時金不要、全期間固定、理事長個人保証不要 | 利息負担。返済計画の合意が必要 |
| ③ 工事範囲の絞り込み・段階施工 | 今期の支出を抑えられる | 足場を2回架けると総額は上がる場合がある |
| ④ 工法の見直し(ロープアクセス・ハイブリッド) | 足場費そのものを圧縮できる | 適用可否は建物形状・工事内容による |
①〜③は「お金の出し方」を変える話ですが、④だけは「工事費そのもの」を下げる話です。順番としては、④を検討してから②を組むのが、私の考える最も無理のない流れです。第11章で詳しく書きます。
9. 【国の補助】住宅省エネ2026キャンペーンの管理組合向け仕分け
国が実施する住宅省エネ支援の枠組みも、管理組合目線で仕分けておきます。
| 事業名 | 管理組合の共用部工事での使い方 |
|---|---|
| みらいエコ住宅2026事業 | 共同住宅の改修も対象メニューがある。工事内容の要件確認が必須 |
| 先進的窓リノベ2026事業 | 窓・サッシの断熱改修。専有部の窓が中心だが、管理組合が一括で発注する場合は要確認 |
| 給湯省エネ2026事業 | 高効率給湯器。専有部設備が中心 |
| 賃貸集合給湯省エネ2026事業 | 賃貸集合住宅のオーナー向け。分譲マンション管理組合は対象外 |
これらは登録事業者を通じた申請が原則で、予算上限に達し次第終了します。年度後半には枠が埋まることが多いので、使うなら早い時期に動く必要があります。
笛吹市は日照時間が長く昼夜の温度差が大きい土地です。冬の放射冷却が効く朝方、最上階や北面住戸の結露に悩まれている居住者は少なくないはずです。窓の断熱改修は、大規模修繕と同時期にやると足場やゴンドラを共用できるケースがあります。「窓は専有部だから管理組合は関係ない」で終わらせず、居住者への情報提供として理事会だよりに1行載せるだけでも喜ばれます。
10. 2026年4月1日施行の改正区分所有法で決議はどう変わったか
補助金の話ではありませんが、笛吹市の管理組合にとってこれは補助金より重要かもしれません。
10-1. 何が変わったか
令和7年法律第47号による改正区分所有法が、2026年4月1日に施行されました。大規模修繕等の決議について、次のように緩和されています。
| 論点 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 決議の母数 | 区分所有者全員が母数 | 出席した区分所有者を母数とする形へ緩和 |
| 欠席・無回答 | 事実上の反対票として作用 | 母数から除外 |
| 所在不明の区分所有者 | 事実上の反対票として作用 | 裁判所の関与により母数から除外できる |
(建替え等の決議については、従来の厳しい要件が残る部分があります。詳細は個別の条文確認が必要です。)
10-2. 笛吹市の管理組合にこそ効く理由
第1章で触れたとおり、笛吹市は石和温泉郷・春日居温泉郷を抱える観光地であり、新宿から特急で約1時間30分という距離にあります。セカンドハウスや投資目的で所有され、区分所有者が県外に居住しているケースが一定数あって不思議ではありません。
さらに、相続によって所有者が代替わりし、管理組合が連絡先を把握できていないケース。転勤で賃貸に出したまま、通知が届かなくなっているケース。
これまでは、こうした「返事が来ない議決権」がそのまま反対票として作用し、大規模修繕の決議が通らないことがありました。改正後は、この構造が変わります。
私からのお願いは1つです。過去に大規模修繕の決議が否決された、あるいは議案として上げるのを諦めた管理組合こそ、もう一度提案してください。同じ議案でも、2026年4月1日以降は結果が変わる可能性があります。
11. 補助金より効く「工法を選び直す」という選択肢
ここからが、私が本当にお伝えしたい話です。
11-1. 仮設足場は総工事費の15〜25%を占める
大規模修繕の見積書を開いたとき、いちばん上に載っているのが「仮設工事」です。そして、その金額は総工事費のおおむね15〜25%を占めます。
5,000万円の工事なら、750万円から1,250万円が足場代ということです。
この金額に対して、上限20万円の補助金がどれほどの意味を持つか。冷たい言い方になりますが、桁が違います。私が「補助金より工法の見直しを先に」と申し上げるのは、そういう理由です。
11-2. 3つの工法
株式会社明誠は、次の3つの工法から建物にとって最適なものをご提案できる、日本でも数少ない会社です。
| 工法 | 内容 | 向いている建物 | コストへの影響 |
|---|---|---|---|
| 通常足場工法 | 従来型の仮設足場を全面に架設 | 中低層、外壁の全面改修、複雑な形状 | 仮設費が総工事費の15〜25% |
| ロープアクセス工法(無足場工法) | 産業用ロープで作業員が降下しながら施工 | 高層、足場架設が困難な立地、部分補修が主体の工事 | 足場費そのものが不要になる |
| ハイブリッド工法 | 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分け | 大規模・複雑物件で総合コスト最適化が必要なケース | 必要な範囲だけ足場を架け、残りをロープで対応 |
ロープアクセス工法の技術的な詳細や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで解説しています。
11-3. 笛吹市で「足場ありき」を疑う理由
笛吹市は甲府盆地に位置し、東京23区のような過密した敷地条件のマンションは多くありません。「敷地に余裕があるから足場を架けられる」——だから架ける。この思考停止が、いちばんもったいない。
考えていただきたいのは、次の3点です。
① 工事の中身は「全面改修」ですか、「部分補修」ですか
劣化診断の結果、外壁の補修が必要な範囲が全体の3割だったとします。その3割のために、建物の全周に足場を架ける必要が本当にあるか。ロープアクセスなら、必要な箇所にだけ人を降ろせます。
② 足場を架けている期間、居住者は何を我慢しますか
足場が架かると、バルコニーに洗濯物が干せません。窓が開けられません。メッシュシートで部屋が暗くなります。そして防犯上の不安が出ます。この「金額に出ないコスト」を、3か月分、全戸に負担させることになります。
笛吹市は日照時間が長い土地です。洗濯物が乾く土地柄で3か月洗濯物が干せないというのは、23区の高層マンションとは違う種類のストレスになります。
③ 見積書の「仮設工事」の下に、何が隠れていますか
仮設足場には、足場本体だけでなく、養生シート、朝顔(落下物防護棚)、資材揚重、そして近隣への説明対応まで付いてきます。ロープアクセスやハイブリッドを選ぶことで、この一群がまとめて軽くなる場合があります。
11-4. モデルケース2本
私が実際に手がけてきた案件に近い形で、笛吹市の建物を想定したモデルケースをお示しします。あくまで想定であり、実際の金額は建物ごとに異なります。
モデルケースA:石和温泉駅周辺・築25年・11階建・48戸
| 項目 | 通常足場工法 | ハイブリッド工法 |
|---|---|---|
| 総工事費 | 9,000万円 | 7,800万円 |
| 差額 | ─ | ▲1,200万円 |
| 1戸あたり負担軽減 | ─ | 約25万円 |
| 工期 | 基準 | 約3週間短縮 |
高層部と外壁の全面補修が必要な面には足場を架け、低層部と部分補修で足りる面はロープアクセスで対応した想定です。
モデルケースB:市郊外・築40年超・5階建・18戸
| 項目 | 通常足場工法 | ロープアクセス主体 |
|---|---|---|
| 総工事費 | 3,200万円 | 2,600万円 |
| 差額 | ─ | ▲600万円 |
| 1戸あたり負担軽減 | ─ | 約33万円 |
| 資金計画 | 一時金が必要 | 機構融資で一時金ゼロも可能 |
戸数が少なく1戸あたりの負担が重くなりがちな小規模マンションほど、足場費の圧縮効果は大きく出ます。
大規模修繕の全体像については大規模修繕工事のご紹介、ロープアクセス工法についてはロープアクセス工法のご紹介、費用の考え方についてはリーズナブルな工事のご提案をご覧ください。
11-5. 明誠がなぜ低価格を実現できるのか
株式会社明誠は、ロープアクセス工事として日本で初めてのフランチャイズ展開を行っています。塗装、防水、タイル、電気、看板工事など、各分野の専門職が加盟しており、それぞれの分野のプロが直接施工にあたります。中間マージンの層が薄いぶん、高品質と低価格を両立できるという構造です。
また、私は一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)の運営にも携わっており、全国の建設業者向けに経営支援情報の発信、オンラインセミナー、交流会、ビジネスマッチングを行っています。山梨県内の専門工事業者とのネットワークも、この活動を通じて広がっています。
12. 笛吹市の気候から逆算した工事の適期
塗装も防水もシーリングも、気温と湿度で品質が決まります。特に塗料には施工可能な気温の下限があり、多くの製品で気温5℃未満・湿度85%以上では施工不可とされています。
甲府盆地の内陸性気候を踏まえた、笛吹市での大規模修繕の適期の目安です。
| 時期 | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| 3月下旬~6月上旬 | ◎ 最適 | 気温・湿度が安定。塗膜の乾燥条件が良い |
| 6月中旬~7月中旬 | △ | 梅雨の影響で工程が延びやすい |
| 7月下旬~8月 | △ | 猛暑。塗料の乾燥が早すぎて施工不良のリスク。作業員の熱中症対策も必要 |
| 9月~11月中旬 | ◎ 最適 | 秋晴れが続きやすく、湿度も落ち着く |
| 11月下旬~3月中旬 | × 施工困難 | 放射冷却により朝の気温が氷点下。塗装・防水の施工条件を満たさない日が多い |
年に2回しか窓がありません。そして第3章で見たとおり、笛吹市の補助制度は「申請年度の2月末までに完了」を求めるものがあります。補助金を絡めるなら、実質的に春か秋の1シーズンに勝負が決まると考えてください。
現場の話を1つ
私が20年やってきて、いちばん悔しい思いをするのは、「あと1年早く呼んでもらえていれば」というケースです。
内陸の寒冷地で、屋上防水の膨れを見つけた管理組合がありました。大きさは畳1枚ほど。「今年は予算がないから来年」と判断され、1年後に伺ったときには、膨れは数倍に広がっていました。冬の間に膨れの中の水が凍り、防水層を内側から押し広げていたのです。
結果、下地のコンクリートまで水が回り、最上階の天井にシミが出ていました。部分補修で済んだはずの工事が、下地補修を含む全面改修になり、費用は数倍。
膨れも、ひび割れも、シーリングの切れも、見つけた年が一番安いんです。これは私の経験上、例外がほとんどありません。
13. 18か月逆算カレンダーと相見積りの3ポイント
13-1. 工事の18か月前から逆算する
補助金や税制を絡める場合、動き出しは早ければ早いほど有利です。
| 時期 | やること | 補助金・税制との関係 |
|---|---|---|
| 18か月前 | 修繕委員会の設置。長期修繕計画の見直し | ─ |
| 15か月前 | 劣化診断・建物調査の実施 | アスベストの疑いがあればこの段階で市に相談 |
| 12か月前 | 診断結果の共有。工法の比較検討(足場/ロープアクセス/ハイブリッド) | まちづくり整備課へ補助制度の有無を確認 |
| 10か月前 | 設計・仕様の確定。概算予算の確定 | 税務課へ長寿命化促進税制の減額割合を確認 |
| 8か月前 | 施工業者の選定(相見積り3社以上) | ─ |
| 6か月前 | 補助金の交付申請(該当する場合) | ★交付決定通知の受領まで契約しない |
| 5か月前 | 臨時総会で工事議案を決議 | 改正区分所有法により出席者ベースで決議 |
| 4か月前 | 交付決定通知の受領 → 工事請負契約の締結 | この順序を逆にしない |
| 3か月前 | 居住者説明会。着工準備 | ─ |
| 着工~完了 | 工事監理 | ─ |
| 完了後3か月以内 | 長寿命化促進税制の申告 | 期限を過ぎると適用されません |
表の中で私が一番強調したいのは、6か月前と4か月前の2行です。申請 → 交付決定 → 契約。この順序を守れなかったために補助金がゼロになった管理組合を、私は何組も見てきました。
13-2. 相見積りで見るべき3ポイント
3社から見積りを取っても、金額だけを比べると判断を誤りがちです。私が理事会でお伝えしているチェックポイントは3つです。
① 数量が揃っているか
外壁補修の「ひび割れ補修 ○○m」「爆裂補修 ○○箇所」。この数量がA社100m、B社300mでは、金額を比べても意味がありません。数量が違う見積書は、そもそも同じ工事の見積りではないのです。
② 仕様が揃っているか
塗料のグレード(アクリル・ウレタン・シリコン・フッ素)、防水の工法(ウレタン塗膜・シート・アスファルト)。ここが違えば金額が違って当然です。メーカー名と製品名まで書かせてください。
③ 「別途」に何が入っているか
いちばん危険なのがここです。「下地補修は数量精算」「別途協議」と書かれた見積書は、着工後に金額が膨らむ余地を残しています。
私が理事長さまにお伝えしているのは、「下地補修の超過分の単価を、契約前に見積書へ明記させてください」ということです。数量が増えるのは建物の状態次第でやむを得ませんが、単価が後出しになるのは避けられます。
14. よくある質問(FAQ)
Q1. 笛吹市に、マンションの大規模修繕そのものを対象とした補助金はありますか?
A. 2026年8月17日時点の公開情報では、分譲マンションの共用部大規模修繕を直接の対象とした笛吹市独自の補助金は確認できませんでした。ただし、敷地内のブロック塀については笛吹市ブロック塀等安全確保対策支援事業補助金の対象になる可能性があります。
Q2. ブロック塀の補助金は、管理組合の名義で申請できますか?
A. 市のページには管理組合名義での申請可否の明示が確認できませんでした。対象者の条件は窓口で確認が必要とされていますので、笛吹市まちづくり整備課(055-261-3334)へ事前にご相談ください。
Q3. 補助金の申請は、工事の契約後でも間に合いますか?
A. 間に合いません。笛吹市のブロック塀補助金のページには「補助の決定前に工事着手(契約含む)すると対象外となります」と明記されています。契約も「着手」に含まれます。
Q4. 笛吹市の木造住宅耐震化補助は、築40年のマンションでも使えますか?
A. 使えません。対象が「木造住宅」に限定されており、鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の分譲マンションは対象外です(出典:笛吹市「木造住宅の耐震診断、耐震化支援補助制度」)。
Q5. 空き家バンクの改修補助金は上限100万円と大きいですが、マンションで使えませんか?
A. 使えません。対象が市内の空き家バンク登録物件に限定され、補助対象者も移住者・所有者等とされています。居住中の分譲マンションの共用部工事は対象外です。
Q6. マンション管理計画認定は、笛吹市で申請できますか?
A. 山梨県は「町村部にあるマンションのみ」を対象としているため、市である笛吹市は県の窓口では申請できません。笛吹市自身が推進計画を作成し受付をしているかは公開情報で確認できませんでしたので、まちづくり整備課(055-261-3334)へご確認ください。
Q7. マンション長寿命化促進税制で、笛吹市はいくら減額してくれますか?
A. 減額割合は市町村の条例で定められます(参酌基準1/3、条例で定められる範囲は1/6~1/2)。笛吹市の割合はこの記事では断定しません。着工前に笛吹市税務課(代表 055-262-4111)へご確認ください。
Q8. 修繕積立金が足りません。工事はできませんか?
A. できる可能性は十分あります。住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資は管理組合名義で借入でき、マンション管理センターの債務保証を利用すれば理事長個人の連帯保証は不要です。あわせて、工法の見直しで工事費そのものを圧縮できないかもご検討ください。
この記事のポイントまとめ
- 笛吹市に共用部大規模修繕を直接対象とした市独自補助は公開情報では確認できず
- 接点があるのはブロック塀等安全確保対策支援事業補助金(2/3・上限20万円)
- 笛吹市の補助制度は交付決定前の契約を一切認めない。順序は申請→決定→契約
- 管理計画認定は山梨県が町村部のみ対象のため、笛吹市は市の窓口確認が必須
- 長寿命化促進税制の減額割合は条例事項。着工前に税務課へ確認を
- 積立金不足の現実解は機構融資と工法の見直し。足場費は総工事費の15〜25%
おわりに
笛吹市の管理組合さまにとって、この記事は決して「朗報」ではなかったかもしれません。市独自の大規模修繕補助はなく、管理計画認定の窓口も確認できない。制度面では、正直に言って恵まれた地域とは言えません。
ですが、制度がないなら、工事の中身で勝負すればいいというのが私の考えです。足場代を1,000万円払うのが当たり前だと思っていた管理組合が、工法を見直しただけで数百万円を残せた例を、私は何度も見てきました。それは補助金の何倍もの金額です。
理事会の議題に、「補助金の有無」の1行と並べて、「工法の選択肢」の1行を足してみてください。総会にかける前の、まだ何も決まっていない段階でかまいません。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会前の論点整理だけでも、お力になれることがあります。
執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)
株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3つから建物にとって最適な工法をご提案できる改修会社です。ロープアクセス工事として日本初のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板工事など各分野の専門職が加盟することで、高品質と低価格を両立しています。
お問い合わせはこちらから。オーナーさま・管理組合さま向けのサービス内容はサービス案内をご覧ください。
最終更新:2026年8月17日
※本記事に記載の制度内容・金額・期限は2026年8月17日時点で公開されている情報に基づきます。補助制度は年度ごとに要件・予算・受付期間が変更される場合がありますので、申請前に必ず各窓口の最新情報をご確認ください。
出典・参考資料
- 笛吹市「補助・助成」
- 笛吹市「笛吹市ブロック塀等安全確保対策支援事業補助金」(2026年4月1日更新)
- 笛吹市「木造住宅の耐震診断、耐震化支援補助制度」(2026年4月1日更新)
- 笛吹市「空き家バンク登録物件に係る改修等補助金」(2026年4月22日更新)
- 笛吹市「笛吹市やまなしKAITEKI住宅普及促進事業補助金について」
- 笛吹市「建設部まちづくり整備課」
- 笛吹市「笛吹市のプロフィール」
- 山梨県「マンション管理計画認定制度について」
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」
- 国土交通省「マンションの大規模修繕工事に係る固定資産税の減額措置」
- 住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」
- 公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」
- ロープアクセスドットコム「ロープアクセス工法の技術情報」
南アルプス市のマンション補助金|大規模修繕2026年版
この記事で答える質問:山梨県南アルプス市の分譲マンション管理組合が、2026年度(令和8年度)の大規模修繕で実際に使える補助金はどれか?
2026年8月17日 更新。
株式会社明誠の本間です。私は建設・改修の現場に20年近く身を置き、マンションやビル、ホテルの大規模修繕を、足場工法・ロープアクセス工法・その2つを組み合わせたハイブリッド工法の3つから提案してきました。
このブログでは、全国の自治体を1つずつ取り上げて「その市で本当に使える補助金」を一次情報から整理しています。今日は山梨県南アルプス市です。
先に、いちばん大事な結論から申し上げます。
南アルプス市には、分譲マンションの共用部大規模修繕そのものを正面から補助する制度は、公開情報の範囲では確認できませんでした。ここは正直にお伝えします。「〇〇市 マンション 大規模修繕 補助金」で検索して出てくるまとめサイトの多くは、実際には他市の制度や国の制度を並べているだけで、南アルプス市の要綱を読んでいません。
ただし、接点のある制度は確実に3つあります。しかもそのうち1つは、上限400万円という決して小さくない金額です。
以下、南アルプス市役所の一次情報だけを根拠に、使えるもの・使えないもの・確認が必要なものを分けて整理します。
南アルプス市の管理組合が2026年度に狙うべき補助金:結論の3行
結論を先に出します。理事会で配る資料はこの3行で足ります。
- 本命はアスベスト飛散防止対策事業。調査費は対象費用の10/10(上限25万円)、除去・封じ込め・囲い込みは対象費用の2/3(上限400万円)。窓口は建設部 管理住宅課。
- 現実的に通しやすいのはブロック塀等撤去改修事業費補助金。撤去で上限19万5,000円、フェンス改修で上限26万円(1敷地につき)。県内でも手厚い部類です。
- 木造住宅耐震化事業は、分譲マンションでは使えません。要綱に「長屋及び共同住宅以外の建物」と明記されており、これは一次情報で断定できます。
比較表にすると、こうなります。
| 制度名(正式名称) | 補助率 | 上限額 | 分譲マンション共用部との接点 | 所管 |
|---|---|---|---|---|
| 南アルプス市アスベスト飛散防止対策事業(調査) | 対象費用の10/10以内 | 25万円 | ○ 接点あり(要事前相談) | 建設部 管理住宅課 |
| 同(除去・封じ込め・囲い込み) | 対象費用の2/3以内 | 400万円 | ○ 接点あり(要事前相談) | 建設部 管理住宅課 |
| 南アルプス市ブロック塀等撤去改修事業費補助金(撤去) | 2/3以内 | 19万5,000円 | ○ 接点あり(要件確認要) | 建設部 管理住宅課 |
| 同(改修=安全なフェンスへ造り替え) | 2/3以内 | 26万円/1敷地 | ○ 接点あり(要件確認要) | 建設部 管理住宅課 |
| 南アルプス市住宅リフォーム等総合支援事業 | 定額 | 一律10万円 | △ 要綱に共用部の可否記載なし | 建設部 管理住宅課 |
| 木造住宅耐震診断・耐震改修・耐震シェルター | ― | 改修は143万7,500円 | × 対象外(共同住宅を明文で除外) | 建設部 管理住宅課 |
| 令和8年度エコライフ促進補助金 | 定額 | 蓄電池3万円ほか | △ 対象設備が修繕と別領域 | 市民部 環境課 |
(出典:南アルプス市 補助金・支援制度)
この表を見て「意外と少ないな」と思われたかもしれません。その感覚は正しいです。だからこそ、補助金で削るより、工法で削るほうが金額のインパクトが大きいという話を、記事の後半でさせてください。
南アルプス市という土地が、マンションの外壁に与えている影響
制度の話に入る前に、少しだけまちの話をさせてください。私が現地調査に行くとき、最初に見るのは建物ではなく、その土地の気候と地形だからです。
6町村が合併してできた、山梨県内でも面積の大きい市
南アルプス市は2003年に八田村・白根町・芦安村・若草町・櫛形町・甲西町の6町村が合併して誕生しました。人口は71,761人、世帯数は30,988世帯(令和8年7月1日現在。出典:南アルプス市 人口・世帯数)。
地区別に見ると、白根地区が19,018人、櫛形地区が18,769人、若草地区が14,348人、甲西地区が12,472人、八田地区が6,955人、そして南アルプス登山口を抱える芦安地区が199人。同じ市内で人口が100倍近く違うわけです。
この分布は、そのままマンションの分布とほぼ重なります。集合住宅がまとまって建っているのは白根・櫛形・若草・甲西の平野部で、中央自動車道の白根インターチェンジ・南アルプスインターチェンジ周辺、そして甲府盆地に向かう幹線道路沿いです。
内陸高地の「凍結融解」と「強い日射」という2つの敵
南アルプス市のマンションを診断していて、私がいつも気にする劣化要因は2つあります。
ひとつは凍結融解です。甲府盆地の西縁にあたるこの地域は、冬の朝の放射冷却で氷点下まで下がります。外壁のひび割れ(クラック)に染み込んだ水が夜に凍り、体積が9%ほど膨らんで、内側からコンクリートを押し広げる。それが昼に融けて、また夜に凍る。これを一冬に何十回も繰り返します。
海沿いのマンションで怖いのは塩害ですが、南アルプス市は海から遠く、塩害はほぼ気にしなくて構いません。その代わり、この凍結融解が効いてきます。「クラックはまだ細いから次回でいい」という判断が、内陸高地では一番危ないというのが私の実感です。細いクラックを放置した3年後に、タイルが浮いて叩けばポコポコ音がする状態になっていた物件を、私は何度も見ています。
もうひとつは日射です。山梨県は日照時間が全国トップクラスで、果樹栽培が盛んなのもそのおかげです。さくらんぼ、桃、すもも。すもも(プラム)の生産は日本一を誇ります。ただし建物の側から見ると、日照が長いということは紫外線による塗膜劣化と、シーリング(目地のゴム状の充填材)の硬化が早いということです。
南面と西面の塗膜が、北面と比べて明らかに先にチョーキング(手で触ると白い粉がつく現象)を起こしている。南アルプス市の物件では、これがはっきり出ます。
だから「12年周期」を機械的に当てはめないほうがいい
大規模修繕の周期は一般に12年前後と言われます。ただ私は、南アルプス市のような内陸高地では、周期で決めるのではなく、劣化診断の結果で決めるべきだと理事長さまにお伝えしています。
凍結融解と紫外線が同時に効く場所では、10年目でシーリングが限界に来ていることもあれば、逆に日陰が多い棟なら14年もつこともある。一律に「12年です」と言う業者がいたら、その根拠を聞いてみてください。
【本命】アスベスト飛散防止対策事業|調査は全額補助、除去は上限400万円
ここからが本題です。南アルプス市の制度で、大規模修繕にいちばん大きな金額が乗る可能性があるのが、この制度です。
制度の中身:数字を1文で
「吹付け建材のアスベスト含有調査は対象費用の10/10以内(上限25万円)、露出した吹付けアスベスト等の除去・封じ込め・囲い込みは対象費用の2/3以内(上限400万円)」(南アルプス市アスベスト飛散防止対策事業。出典:南アルプス市 アスベスト調査・除去工事等の補助について)。
| 補助対象事業 | 補助率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 吹付け建材のアスベスト含有の有無に係る調査 | 対象費用の10/10以内 | 250,000円 |
| 露出した吹付けアスベスト等の除去・封じ込め・囲い込み | 対象費用の2/3以内 | 4,000,000円 |
調査費が10/10、つまり実質的に全額です。これは全国の自治体と比べても手厚い設定で、多くの市は上限10万〜15万円程度に留めています。
対象建築物の読み方が、この制度の肝
要綱の記載はこうです。
南アルプス市内に存する建築物。ただし、除去等事業については、多くの方が利用する建築物で、共同で利用する部分(付属する電気室、機械室等を含む)です。多くの方が利用する建築物とは、例えば、「店舗」「事務所」「工場」「駐車場」などです。
ここを丁寧に読んでください。
調査事業のほうは「市内に存する建築物」とだけ書かれており、用途の限定がありません。 木造限定でも、共同住宅除外でもない。分譲マンションが除外されるという記載は、要綱にも市のページにもありません。
除去等事業のほうは「多くの方が利用する建築物で、共同で利用する部分」と限定され、括弧書きで「付属する電気室、機械室等を含む」と明記されています。 分譲マンションの機械室・電気室・受水槽室・駐車場天井・階段室・パイプスペースは、まさにこの「共同で利用する部分」の概念に重なります。
ただし、例示は「店舗」「事務所」「工場」「駐車場」であり、「共同住宅」という文言は例示に入っていません。ですから私は、「分譲マンションの共用部は確実に対象です」とは申し上げません。断定できない以上、断定してはいけないと考えています。
私の推奨:まず「事前相談」に行ってください
この制度は、市自身が「補助金の申請にあたっては、補助対象となる建築物の対象範囲や内容等の確認のため、必ず事前相談を行ってください」と明記しています。つまり、対象になるかどうかは窓口で確認する設計になっているわけです。
持参すべき資料も市が指定しています。
- 位置図(対象建築物の敷地の位置がわかるもの)
- 配置図(対象建築物の位置がわかるもの)
- 平面図(調査または除去を行う場所がわかるもの)
- 現況写真(外観と、吹付けアスベストの状況が判断できるもの)
- 分析調査結果報告書(あれば)
窓口は南アルプス市役所 建設部 管理住宅課(電話 055-282-6397 直通)。建物に使われているアスベストそのものに関する技術的な相談は、山梨県 中北建設事務所 建築課(電話 055-224-1674 直通)です。
なぜマンションでアスベストの話になるのか
「うちのマンションにアスベストなんて」と思われるかもしれません。しかし吹付けアスベストは、昭和31年頃から昭和50年までに建築された建物に使用されている可能性があると、市のページ自体が説明しています。主な用途は鉄骨造建築物の耐火被覆材(はり・柱)と、ボイラー室等の吸音・断熱材です。
南アルプス市の合併前、白根町や櫛形町の時代に建った鉄骨造・RC造の集合住宅で、機械室やボイラー室に吹付け材が残っているケースは、実際にあります。私が別の内陸自治体で経験したのは、大規模修繕の足場を架けたあとに機械室天井の吹付け材が見つかり、工程が2か月止まった案件です。あのときの理事長さまの表情は、今でも覚えています。
大規模修繕の見積を取る前に、機械室・電気室の天井を一度見上げる。 それだけで、この400万円枠に手が届くかどうかが分かります。灰色で綿状に見える吹付け材があれば、調査の価値があります。
なお、破損していない状態のスレートボード等の成形板は、市のページでも「飛散の心配はありません」と説明されています。過度に不安になる必要はありません。
【現実的な一手】ブロック塀等撤去改修事業費補助金|上限26万円
アスベストが空振りだった場合でも、こちらは多くのマンションに接点があります。敷地の外周にブロック塀が残っている物件は、南アルプス市でも珍しくありません。
数字を1文で
「撤去は工事費と延長1mにつき1万3,000円を乗じた額の少ないほうの2/3以内(上限19万5,000円)、フェンスへの改修は工事費と延長1mにつき1万9,500円を乗じた額の少ないほうの2/3以内(上限26万円/1敷地)」(出典:南アルプス市ブロック塀等撤去改修事業費補助金制度)。
| 工事区分 | 単価の基準 | 補助率 | 上限額 |
|---|---|---|---|
| 撤去(高さ60cm以上のブロック塀等) | 1mにつき13,000円 | 2/3以内 | 195,000円 |
| 改修(撤去のうえ安全なフェンスへ造り替え) | 1mにつき19,500円 | 2/3以内 | 260,000円/1敷地 |
他の自治体を数多く調べてきた立場で申し上げると、この単価と上限は手厚い部類です。多くの市は「1mにつき1万円・上限15万円」前後で設定しています。南アルプス市は撤去で1万3,000円/m・19万5,000円、改修で1万9,500円/m・26万円。ここは南アルプス市の特徴として押さえておく価値があります。
見落としやすい5つの要件
ただし、要件が細かいので、そこを外すと通りません。理事会で確認すべきは以下です。
- 対象ブロック塀等が、南アルプス市耐震改修促進計画において避難路または通学路として位置付けた道路に面していること。 これが最大の関門です。敷地のどの面が該当するかは、管理住宅課で確認できます。
- 高さ60cm以上であること(基礎を含む地盤面から壁頂まで)。一部撤去の場合は、撤去後の高さを60cm以下にする工事が対象です。
- 県内に住所を有する施工業者に依頼すること。県外業者では対象外です。
- 交付決定通知後に工事着手すること。決定通知を受け取ってから業者と契約する、という順序です。事前着工は対象外になります。
- 市税(固定資産税・住民税・軽自動車税・国民健康保険税)の滞納がないこと、および補助金の交付は1敷地につき1回限りであること。
令和8年度は4月6日(月)から受付開始で、市は「事前相談も承ります」と案内しています。予算に限りがあるとも明記されていますので、年度後半になるほど厳しくなります。
なお、建築基準法第42条第2項に規定する道路(いわゆる2項道路)に面している場合は、道路後退について山梨県中北建設事務所建築課(055-224-1674)への確認が必要と市が案内しています。ここは見落としやすい点です。
私の実務感覚:塀は「大規模修繕とセットで」
私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。理由は単純で、塀の工事を単独で発注すると、仮設・搬入・産廃処分がすべて別建てになり、割高になるからです。
大規模修繕の工程に組み込めば、既に敷地内に入っている重機・仮設・処分ルートを共用できます。20mの塀を撤去してフェンスに替えるとして、単独発注なら諸経費が3割乗ることも珍しくありません。同じ26万円の補助でも、母数が下がれば実質負担はもっと下がります。
住宅リフォーム等総合支援事業は、共用部に使えるのか
南アルプス市には、市内業者による住宅リフォームを支援する制度もあります。ここは正直に「断定できない」とお伝えします。
制度の中身
- 補助額:一律10万円(定額。同一住宅1棟につき1回のみ)
- 対象工事費:50万円以上(消費税除く)
- 施工業者:市内に住所を有し、南アルプス市商工会員、または市の競争入札参加資格・小規模工事等契約を登録した法人または個人
- 対象工事:屋根の葺き替え・塗装・防水工事(軒天井、破風板、鼻隠しを含む)、外壁の張り替えや塗装工事、耐震改修工事など全21項目
- 受付:令和8年5月7日から、年間100件予定・先着順
- 対象者:現に居住する住宅または空家住宅を所有している方。市税等の滞納がないこと。賃貸住宅等は不可
- 所管:建設部 管理住宅課(055-282-6397)
断定を避ける理由
対象工事に「屋根の防水工事」「外壁の塗装工事」が入っている以上、大規模修繕の工事内容とは重なります。ここまでは事実です。
しかし要綱の定義は「住宅=市内にある居住の用に供する建築物」「個人住宅=自らが所有する家屋又は家屋の一部分で、自らが居住の用に供するもの」となっており、共同住宅・分譲マンション・管理組合という語は、要綱にもパンフレットにも一度も登場しません。
明示的な除外文言もない代わりに、明示的な包含文言もない。「同一住宅1棟につき1回」「賃貸住宅等は不可」「自らが居住の用に供する」という条文の構造からは、管理組合が共用部工事で申請する枠組みは想定されていないと読めますが、これは私の読み方であって、要綱に書かれていることではありません。
ですから結論はこうです。管理組合として使えるかどうかは、管理住宅課(055-282-6397)に直接確認してください。 そして、仮に使えたとしても一律10万円です。数千万円規模の大規模修繕に対しては、正直、決め手にはなりません。
一方で、区分所有者の方が専有部のリフォームで使える可能性はあります。理事会からの情報提供として、住民に案内する価値はあると思います。
木造住宅耐震化事業がマンションで使えない理由(これは断定できます)
補助金のまとめ記事でいちばん多い誤りが、耐震補助の混同です。ここは一次情報で明確に断定できますので、はっきり書きます。
南アルプス市の耐震関連3事業(木造住宅耐震診断事業/木造住宅耐震改修事業費補助金/木造住宅耐震シェルター設置補助事業)は、いずれも対象住宅の要件として次を掲げています。
- 昭和56年5月31日以前に着工された住宅
- 木造在来工法で建てられた2階建て以下の個人住宅(長屋及び共同住宅以外の建物で、延床面積が300平方メートル以下の住宅)
- 所有者またはその3親等以内の親族が居住し、賃貸契約等による使用形態ではない住宅
(出典:南アルプス市 無料耐震診断と耐震化事業)
「長屋及び共同住宅以外の建物」と明文で除外されています。 さらに「木造在来工法」「2階建て以下」「延床300平方メートル以下」という条件が重なりますから、RC造・SRC造の分譲マンションが該当する余地はありません。
参考までに金額を挙げておくと、耐震診断は無料(市が費用を負担)、耐震改修は要する費用の全額で上限143万7,500円、耐震シェルター設置は全額で上限36万円です。いずれも令和8年4月6日から受付開始で、戸数に限りがあり先着順とされています。
理事会で「耐震の補助が使えるらしい」という話が出たら、この要件を読み上げてください。 無駄な検討時間を1回分節約できます。
エコライフ促進補助金と、これから議題になる充電設備
環境系の制度も見ておきます。令和8年度南アルプス市エコライフ促進補助金です。
| 対象機器 | 住宅用 | 事務所用 |
|---|---|---|
| 定置用リチウムイオン蓄電池 | 30,000円 | 30,000円 |
| ペレットストーブ | 50,000円 | 50,000円 |
| 電気自動車 | 100,000円 | 対象外 |
- 蓄電池は「太陽光発電システム(10kW未満)との同時設置、または設置済みの太陽光発電システムへの追加設置」が条件
- すべて新品購入に限る。リースは対象外
- 対象者に「市内に事業の用に供する建築物を有する者で、当該建築物に蓄電池又はペレットストーブを設置し、市税を滞納していない法人」が含まれる
- 申請書提出期限:令和9年3月19日。設置・購入後6か月以内。郵送不可(環境課へ持参)
- 所管:市民部 環境課(055-282-6097)
対象設備が蓄電池・ペレットストーブ・電気自動車ですから、大規模修繕とは領域が違います。管理組合が申請主体になれるかどうかも、要綱に記載がありません。
ただ、私が理事会で最近よく聞かれるのは、EV充電設備の話です。南アルプス市は中央道のインターチェンジが2つあり、自家用車の保有率も高い地域です。駐車場にEV充電器を置きたいという要望は、これから確実に増えます。
そのとき問題になるのが、幹線の引き回しと、駐車場の防水・舗装の状態です。大規模修繕で駐車場の床防水をやり直すタイミングと、充電設備の配線を通すタイミングは、本来そろえるべきものです。別々にやると、せっかく直した床をまた壊すことになります。
補助金の有無とは別の話として、「10年後に必要になるものを、今回の修繕の配管ルートに織り込んでおく」 という視点を、長期修繕計画の見直しのときに一度出してみてください。
管理計画認定制度と長寿命化促進税制|南アルプス市の「窓口の壁」
ここは、南アルプス市の管理組合にとって重要な、しかしあまり語られていない論点です。
山梨県の受付は「町村部のみ」
マンション管理計画認定制度は、マンション管理適正化法に基づき、管理状況が一定基準を満たす管理組合を自治体が認定する制度です。認定を行うのは、マンション管理適正化推進計画を作成した市・特別区(市以外の町村部は都道府県)とされています(出典:国土交通省 マンション管理計画認定制度)。
山梨県は令和4年4月1日から認定の受付を開始していますが、県のページには「県(町村部にあるマンションのみ対象)」と明記されています(出典:山梨県 マンション管理計画認定制度)。
南アルプス市は「市」ですから、県の受付対象である町村部には含まれません。そして、南アルプス市が独自にマンション管理適正化推進計画を作成し、認定事務を行っているという情報は、市の公式サイトでは確認できませんでした。
つまり現時点では、南アルプス市域のマンションが管理計画認定を申請できる窓口が、公開情報からは確認できないという状況です。「存在しない」と断定はしません。市が推進計画を作成すれば状況は変わりますし、公表されていないだけの可能性もあります。管理住宅課、または山梨県建築住宅課企画担当(055-223-1730)に確認していただくのが確実です。
参考までに、山梨県の認定申請手数料は、長期修繕計画が1つの場合で適合証あり3,600円/適合証なし25,500円です。
長寿命化促進税制が「使いにくい」ということ
なぜこの話をするかというと、マンション長寿命化促進税制(大規模修繕を行った一定のマンションの固定資産税を減額する国の制度)は、管理計画認定または長寿命化に係る認定を前提としているからです。認定の窓口がなければ、この税制の入口に立てません。
これは南アルプス市の管理組合にとって、地味ですが実害のある話です。東京23区の管理組合が当たり前に使っている制度が、ここでは使えない可能性がある。私はこういうことを、営業のときに黙っているべきではないと思っています。
なお国土交通省は、令和8年7月31日公布の省令・告示により、令和9年4月1日施行で管理計画認定制度を拡充し、分譲時に分譲事業者が管理計画を作成・申請できる仕組みを導入するとしています。制度は動いています。最新の状況は必ず公式で確認してください。
では、南アルプス市の管理組合の現実解は何か
窓口の壁があるなら、全国どこでも使える制度に目を向けるのが現実的です。
住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資は、管理組合を借入人とする長期・固定金利の融資制度で、地域による制限がありません(出典:住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資)。修繕積立金が計画に対して不足しているとき、一時金の徴収を避ける選択肢になります。
「借入は避けたい」というお気持ちは、私もよく分かります。ただ、一時金を徴収して総会が紛糾し、修繕そのものが2年遅れるという展開のほうが、結果的に建物にも住民にも高くつくことがあります。2年の遅れは、内陸高地では凍結融解2シーズン分の進行です。
補助金より効く|足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法でコストを下げる
ここまで読んでいただいて、お気づきかと思います。南アルプス市で使える補助金の合計は、アスベストが当たれば大きいものの、当たらなければ数十万円規模です。
一方、工法の選択で動く金額は、数百万円規模です。私が本当にお伝えしたいのはこちらです。
仮設足場は「工事費」ではなく「準備費」
大規模修繕の見積書を開いて、最初の項目を見てください。仮設足場です。物件によりますが、総工事費の15〜25%程度を占めることが多い項目です。
そして足場は、建物を1ミリも直しません。職人が高所で作業するための、準備のための費用です。
3つの工法を比較する
株式会社明誠は、この足場という前提そのものを見直せる会社です。日本でも数少ない、3つの工法から建物にとって最適なものを提案できる体制を取っています。
| 工法 | 特徴 | 南アルプス市で適する場面 |
|---|---|---|
| 通常足場工法 | 従来型の仮設足場。全面的な作業に向く | 中低層で敷地に余裕があり、外壁全面の張り替え・全面補修を伴う物件 |
| ロープアクセス工法(無足場工法) | 産業用ロープで職人が降下して施工。足場費が不要、工期短縮、居住者の生活影響が小さい | 部分補修、シーリング打ち替え、タイル浮き補修、隣地が迫って足場が架けにくい物件 |
| ハイブリッド工法 | 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける | 大規模・複雑形状で、全面足場では過剰・全面ロープでは不足する物件 |
南アルプス市のマンションは、敷地に比較的余裕がある物件が多く、「足場は架けられる」ケースがほとんどです。だからこそ、「架けられるから架ける」で思考停止しないでほしいのです。
たとえば、外壁全面の劣化は軽微で、シーリングの打ち替えと南面・西面のタイル浮き補修が主体という診断結果だったとします。この場合、全面足場を架けるのは明らかに過剰です。ロープアクセスで必要な面だけ施工すれば、足場費まるごとが浮きます。
ロープアクセス工法の一般的な安全基準や技術的な考え方については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。工法そのものを知りたい理事の方は、そちらもご覧ください。
居住者の生活への影響という、金額に出ない差
もうひとつ、見積書には出てこない差があります。
全面足場を架けると、工期中はバルコニーに出られず、窓を開けられず、洗濯物を外に干せません。防犯上の不安を訴える住民も必ず出ます。3か月から半年、その状態が続きます。
ロープアクセスなら、施工する面だけ、施工する日だけの制限で済みます。私は現場で20年やってきて、一番多く感謝されるのがこの点です。「今年は洗濯物が干せた」と言われたときの理事長さまの顔を、私は何度も見てきました。
明誠は、日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しています。だから高品質と低価格を両立できます。工法の全体像は大規模修繕工事のご紹介とロープアクセス工法のご紹介にまとめています。管理組合さま向けの進め方は管理組合さまへをご覧ください。
南アルプス市で大規模修繕を進める、実務スケジュール
最後に、理事会でそのまま使える段取りを置いておきます。
逆算すると、動き出しは工事の18か月前
| 時期 | やること | 補助金との関係 |
|---|---|---|
| 工事の18か月前 | 劣化診断を実施。機械室・電気室の吹付け材の有無も同時に確認 | アスベスト調査補助の対象判断の材料になる |
| 15か月前 | 管理住宅課へ事前相談(アスベスト・ブロック塀の両方) | 交付決定前着工は対象外のため、この順序が必須 |
| 12か月前 | 工法比較を含む見積を複数社から取得。足場前提とロープアクセス前提の両方 | 補助対象工事費の確定に必要 |
| 9か月前 | 修繕委員会で工法・業者を絞り込み、資金計画を確定 | 融資を使う場合はここで機構へ相談 |
| 6か月前 | 臨時総会または通常総会で決議 | ― |
| 4〜3か月前 | 補助金交付申請 → 交付決定通知の受領 | ★決定通知の後に契約 |
| 着工 | 工事 | 事前着工は補助対象外 |
| 完了後30日以内または年度2月末の早いほう | 実績報告書の提出 | 期限厳守 |
この表でいちばん大事なのは、下から4行目です。 交付決定通知を受け取る前に契約・着工してしまうと、南アルプス市の制度はいずれも対象外になります。「工事の日程が決まっているから先に契約だけ」——これで補助金を失った管理組合を、私は他の自治体で見ています。
令和8年度の受付開始日を、カレンダーに入れておく
- ブロック塀等撤去改修事業費補助金:令和8年4月6日(月)受付開始。事前相談可
- 木造住宅耐震診断・耐震改修等:令和8年4月6日(月)受付開始(※マンションは対象外)
- 住宅リフォーム等総合支援事業:令和8年5月7日受付開始、年間100件予定・先着順
- エコライフ促進補助金:申請書提出期限 令和9年3月19日
いずれも予算枠に達した時点で終了します。年度が明けたら早めに動く。これが鉄則です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 南アルプス市に、マンションの大規模修繕そのものを対象にした補助金はありますか?
A. 公開されている市の一次情報の範囲では、共用部の大規模修繕を正面から対象とする制度は確認できませんでした。接点があるのはアスベスト飛散防止対策事業とブロック塀等撤去改修事業費補助金です。最新情報は南アルプス市 補助金・支援制度でご確認ください。
Q2. アスベストの除去補助は、分譲マンションの機械室でも使えますか?
A. 要綱では除去等事業の対象を「多くの方が利用する建築物で、共同で利用する部分(付属する電気室、機械室等を含む)」としており、例示は店舗・事務所・工場・駐車場です。共同住宅という文言は例示に入っていないため、対象になるかどうかは断定できません。市が「必ず事前相談を」と案内していますので、管理住宅課(055-282-6397)へ配置図・平面図・現況写真を持参してご相談ください。
Q3. うちは築30年のRC造マンションです。耐震改修の補助(上限143万7,500円)は使えますか?
A. 使えません。南アルプス市の耐震関連3事業はいずれも「木造在来工法で建てられた2階建て以下の個人住宅(長屋及び共同住宅以外の建物で、延床面積が300平方メートル以下)」を対象としており、共同住宅は明文で除外されています(出典:南アルプス市 無料耐震診断と耐震化事業)。
Q4. 管理計画認定を取って、長寿命化促進税制を使いたいのですが。
A. 山梨県の認定受付は「町村部にあるマンションのみ対象」と県が明記しており、南アルプス市が独自に認定事務を行っているという情報は市の公式サイトでは確認できませんでした。まず山梨県建築住宅課企画担当(055-223-1730)または市の管理住宅課へ、南アルプス市域のマンションの申請窓口があるかをご確認ください。
Q5. ブロック塀の補助は、マンションの敷地でも申請できますか?
A. 要綱は「市内に存するブロック塀等の所有者」を対象者とし、管理組合名義での申請可否は明記されていません。加えて「避難路または通学路として位置付けた道路に面していること」という要件があります。該当するかどうかは管理住宅課で図面をもとに確認するのが確実です。
Q6. 補助金が使えないなら、コストを下げる方法はありますか?
A. 工法の見直しが最も効きます。仮設足場は総工事費の15〜25%程度を占めることが多く、部分補修が主体であればロープアクセス工法で足場費そのものを圧縮できます。全面補修が必要な部位だけ足場を架けるハイブリッド工法という選択肢もあります。無料の劣化調査からご相談を承ります。
この記事のポイントまとめ
- 南アルプス市に共用部大規模修繕の直接補助は確認できず、正直にそう記載した
- アスベスト調査は10/10・上限25万円、除去等は2/3・上限400万円が最大の目玉
- ブロック塀は撤去上限19.5万円・改修上限26万円で県内でも手厚い水準
- 木造耐震3事業は「長屋及び共同住宅以外」と明文除外、マンションは対象外
- 管理計画認定は山梨県が町村部限定、南アルプス市域の窓口は要確認
- 交付決定通知の前に契約・着工すると、いずれの制度も対象外になる
- 補助金より工法選択のほうが金額インパクトが大きい(足場費は総額の15〜25%)
出典・参考資料
- 南アルプス市「補助金・支援制度」
- 南アルプス市「アスベスト調査・除去工事等の補助について」
- 南アルプス市「南アルプス市ブロック塀等撤去改修事業費補助金制度」
- 南アルプス市「住宅リフォーム等総合支援事業」
- 南アルプス市「無料耐震診断と耐震化事業」
- 南アルプス市「令和8年度南アルプス市エコライフ促進補助金」
- 南アルプス市「人口・世帯数」
- 山梨県「マンション管理計画認定制度」
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」
- 住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」
※補助金・助成金の制度内容、金額、受付期間は変更される場合があります。申請にあたっては必ず各窓口の最新情報をご確認ください。本記事は2026年8月17日時点で公開されている情報に基づいています。
関連リソース
- 大規模修繕工事のご紹介
- ロープアクセス工法のご紹介
- 明誠の考え方(コンセプト)
- 管理組合さまへ
- お問合せフォーム
- ロープアクセス工法の技術情報・安全基準:ロープアクセスドットコム
南アルプス市の管理組合さまとお話ししていると、「うちの市は補助金が少ないから」と最初から諦めている理事長さまによくお会いします。
でも私は、補助金は手段のひとつでしかないと思っています。大事なのは、この建物をあと何年、どう使うのかを管理組合として決めることです。それが決まれば、必要な工事の範囲が決まり、範囲が決まれば工法が決まり、工法が決まって初めて金額が決まる。順番はいつもそうです。
ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。
執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)
株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円および周辺県でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板の専門職が加盟しています。
最終更新:2026年8月17日
遮熱塗料は本当に効くのか──2026年の記録的猛暑と大規模修繕|JIS K 5675で見抜く屋上・屋根の選び方
2026年8月17日 更新
この記事で答える質問:遮熱塗料(高日射反射率塗料)は、マンションやビル、ホテルの大規模修繕で本当に費用に見合う効果があるのか? あるとしたら、どこに、どんな仕様で塗るべきなのか?
こんにちは。株式会社明誠の本間です。
この夏、私のところに理事長さまやビルオーナーさまから同じ質問が続いています。「最上階の住戸から暑いと苦情が出ている」「屋上の防水がもう限界だが、どうせやるなら遮熱にしたほうがいいのか」「遮熱塗料は高いだけで効かないと聞いたが本当か」。
正直に申し上げます。遮熱塗料は「効きます」。ただし、効く場所と効かない場所がはっきり分かれる材料です。そして残念なことに、効かない場所に効かない仕様で塗られている現場を、私は現場で20年近くやってきて何度も見てきました。
この記事では、2026年の記録的な暑さという事実から出発して、遮熱塗料の仕組み、品質を見抜くための日本産業規格(JIS)の読み方、塗る優先順位、費用の考え方、そして稼働中の建物で工期と費用を抑える工法選択まで、発注する側の立場で整理します。
1. 結論:遮熱塗料は効く。ただし「効くのは屋根面と最上階」で、性能は色と規格で決まる
ここからが本題です。長い記事になりますので、先に結論だけお伝えします。
1-1. 3行でわかる結論
- 効果が最も大きいのは「陸屋根・屋上・金属屋根」への施工。外壁への施工は効果が小さくなる(太陽が真上から当たる面ほど効く)。
- 性能の裏付けは「JIS K 5675 屋根用高日射反射率塗料」。カタログでこの規格適合と、近赤外波長域日射反射率の数値を確認する。
- 効果は「最上階の室温」と「屋上防水層の延命」に現れる。建物全体の電気代が劇的に下がるという期待の仕方は避けたほうが安全。
1-2. 数字で見る効果のレンジ
環境省や自治体、研究機関の実証で報告されている効果の目安を整理します。数値は施工条件・気象条件で大きく変わるため、あくまで「レンジ」としてご覧ください。
| 測定対象 | 報告されている低減幅の目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 屋根・屋上の表面温度 | 約10〜20℃程度の低下報告あり | 夏季日中のピーク時。色(明度)で大きく変わる |
| 直下階(最上階)の室温 | 約1〜1.5℃程度の低減報告あり | 断熱材の有無で結果が変わる |
| 夜間の室温 | 深夜帯にも約1℃程度の低減報告あり | 屋上スラブへの蓄熱抑制による |
(出典:環境省ヒートアイランド対策大綱、国立環境研究所 環境展望台ヒートアイランド対策技術、国土交通省ヒートアイランド対策)
表面温度が10℃以上下がるというのは、かなり大きな数字です。しかし室温は1℃台。この「差」に、遮熱塗料をめぐる誤解のほとんどが詰まっています。理由は後ほど説明します。
1-3. 「効かなかった」と言われる典型的な3つのケース
私が相談を受けて調べたとき、期待外れに終わっていた現場には共通点がありました。
- ケースA:外壁だけに塗った……垂直面は太陽光の入射角が浅く、屋根面ほど熱を受けません。効果が小さいのは当然です。
- ケースB:濃い色を選んだ……遮熱塗料でも、明度が低い(濃い)色は反射できる量が構造的に限られます。
- ケースC:JIS適合品でない「遮熱をうたう塗料」を使った……「遮熱」という言葉自体には法的な定義がありません。ここが最大の落とし穴です。
この3つを避けるだけで、遮熱塗料に対する満足度はかなり変わります。
2. なぜ今年これを考えるべきなのか──2026年の暑さは「統計に残るレベル」
「今年はたまたま暑いだけでは」と言われることがあります。データはそう言っていません。
2-1. 2026年7月:統計開始以来の高温
気象庁は2026年8月3日、2026年7月中旬から下旬にかけての顕著な高温について報道発表を行っています。西日本では7月中旬・下旬の平均気温が、統計を開始した1946年以降で最も高い記録となりました。日最高気温40℃以上を観測した延べ地点数も、8月上旬の時点で前年を上回る水準に達しています。
気象庁は要因として、上層のジェット気流が平年より北を流れたこと、西日本上空でチベット高気圧が強まったこと、太平洋高気圧の縁辺から暖かい空気が流れ込んだこと、そして地球温暖化に伴う長期的な気温上昇の寄与を挙げています(出典:気象庁2026年7月中旬~下旬の顕著な高温と今後の見通しについて)。
2-2. 2025年夏も過去最高だった
前年の2025年についても、気象庁は6〜8月の全国平均気温が平年より2.36℃高く、1898年の統計開始以降で最も高い夏だったと発表しています。群馬県伊勢崎市では国内歴代最高となる41.8℃が観測されました(出典:環境省 脱炭素ポータル2025年夏の記録的高温の要因とは)。
つまり、2年連続で「過去最高」が更新されています。私はこれを、建物側の設計思想を見直す合図だと受け止めています。
2-3. 建物側で何が起きているか
暑さは、居住者の快適性の問題であると同時に、建物の耐久性の問題でもあります。
| 現象 | 建物への影響 |
|---|---|
| 屋上防水層の表面温度上昇 | 塩化ビニル系・ウレタン系の防水層は熱で劣化が進み、想定より早く更新時期が来る |
| 昼夜の温度差による伸縮 | シーリング材の切れ、防水層の膨れ・シワの発生 |
| 最上階の室温上昇 | 賃貸物件では退去要因、分譲では住民不満・理事会案件化 |
| 空調負荷の増大 | ホテル・テナントビルでは共用部を含めた運営コストに直結 |
賃貸マンションやホテルを運営されているオーナーさまにとって、最上階の暑さは「クレーム」ではなく「稼働率」の話です。私はいつも、そこを起点に整理することをお勧めしています。
3. 遮熱塗料の仕組み──「断熱」との違いを1分で
専門用語が続くので、ここで一度整理します。
3-1. 反射しているのは「近赤外線」
太陽光のエネルギーは、大きく分けて紫外線・可視光線・近赤外線から成り立っています。このうち熱として建物を温める主犯は近赤外線です。
遮熱塗料(正式には高日射反射率塗料)は、この近赤外線を効率よく反射する特殊な顔料を含んでいます。反射してしまえば、そのぶん屋根が受け取る熱量が減る──これが原理のすべてです。
一般社団法人 日本塗料工業会も、高日射反射率塗料を「太陽光に含まれる近赤外線成分をより多く反射させる性能を持つ塗料」と説明しています(出典:日本塗料工業会高日射反射率塗料)。
3-2. 遮熱・断熱・断熱材の違い
現場でも混同されがちなので、表にしました。
| 種類 | 何をするか | 主な効果 | 冬はどうか |
|---|---|---|---|
| 遮熱塗料(高日射反射率塗料) | 日射(近赤外線)を反射する | 夏の屋根面の温度上昇を抑える | 日射熱も反射するため、冬の日射取得はわずかに減る |
| 断熱塗料 | 塗膜自体の熱伝導を下げる(中空ビーズ等) | 熱の伝わりを遅らせる | 夏冬とも作用するが、塗膜厚が薄いため効果は限定的 |
| 断熱材(工事) | 屋上に断熱層を新設・増設する | 効果は最も大きい | 通年で効く。ただし費用と工期は最も大きい |
遮熱塗料は「安価で施工性の良い一次対策」、断熱改修は「本格対策」。この位置づけを間違えなければ、期待値のズレは起きません。
3-3. 「表面温度は15℃下がるのに室温は1℃」の理由
先ほどの数字の謎に戻ります。
屋根の表面温度が下がっても、その熱が室内に伝わる経路には、屋根スラブのコンクリート、断熱材、天井裏の空気層という何段もの抵抗があります。遮熱塗料が減らしているのは「入口で受け取る熱量」であって、室内温度はその何段も先の結果です。
したがって、こう考えるのが実務的です。
- すでに屋上に十分な断熱材がある建物 → 室温への効果は小さい。狙いは防水層の延命に絞る。
- 断熱材が薄い・ない旧耐震世代の建物や、金属屋根の建物 → 室温への効果が体感レベルで出やすい。
私は現地調査のとき、まず竣工図で屋上の断熱仕様を確認します。ここを見ずに「遮熱にしましょう」と言う業者がいたら、その提案は一度立ち止まって検討されたほうがよいと思います。
4. 品質を見抜く唯一の物差し──JIS K 5675 の読み方
ここが、この記事で最もお伝えしたい部分です。
4-1. 「遮熱塗料」という言葉に定義はない
驚かれるかもしれませんが、「遮熱塗料」という商品名・呼称そのものには法的な性能基準がありません。極端に言えば、性能の低い塗料でも「遮熱」と名乗ることは可能です。
これに対して、日本産業規格には明確な物差しがあります。それが JIS K 5675「屋根用高日射反射率塗料」 です。
この規格は、建築物の屋根・屋上の塗装に用いる自然乾燥形の高日射反射率塗料について、日射反射率、近赤外波長域日射反射率、日射反射率保持率などの試験方法と品質基準を定めたものです(出典:一般財団法人 建材試験センターJIS K 5675 屋根用高日射反射率塗料)。
4-2. 見るべき数値は「近赤外波長域日射反射率」
国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)でも、高日射反射率塗料の判断基準としてこの数値が採用されています。基準は塗料の明度L*値によって変わります。
| 明度L*値 | 求められる近赤外波長域日射反射率 |
|---|---|
| 40.0以下(濃い色) | 40.0%以上 |
| 40.0超〜80.0未満 | 明度L*値と同じ数値以上 |
| 80.0以上(明るい色) | 80.0%以上 |
(出典:日本塗料工業会高日射反射率塗料)
この表が意味しているのは、色を濃くするほど、規格上求められる反射率も下がるということです。裏を返せば、濃い色を選んだ時点で、得られる遮熱効果には上限がかかります。
「屋上をダークグレーにしたいが遮熱もほしい」というご要望はよくいただきます。私はそのとき、必ず数字でトレードオフをお見せするようにしています。デザインを取るのか、性能を取るのか。決めるのは発注者であるべきで、業者が黙って決めていい話ではありません。
4-3. 見落とされがちな「日射反射率保持率」
もう一つ、私が見積比較のときに必ず確認する項目があります。日射反射率保持率です。
新品のときに反射率が高くても、汚れや紫外線で塗膜が劣化すれば、反射性能は落ちていきます。グリーン購入法の判断基準では、近赤外波長域の日射反射率保持率の平均が80%以上であることが求められており、その算出には屋外暴露耐候性試験の開始から24か月経過後の測定が必要とされています(出典:日本塗料工業会高日射反射率塗料)。
つまり、2年経ってもどれだけ性能が残っているかが規格化されているということです。カタログの「新品時の反射率」だけを比べると、この差が見えません。
4-4. 発注時に必ず求める3つの書類
まとめると、以下の3点を業者に求めれば、品質の見極めはかなり楽になります。
- JIS K 5675 適合の有無(適合していない場合、その理由)
- 採用色の明度L*値と、近赤外波長域日射反射率の実数値
- 日射反射率保持率のデータ(屋外暴露試験に基づくもの)
「出せません」と言われたら、その塗料の性能は検証できないということです。判断材料としては、それ自体が十分な情報になります。
5. どこに塗ると効くのか──優先順位は「上から」
限られた予算をどこに配分するか。これは工法選定と同じくらい重要な判断です。
5-1. 費用対効果の優先順位
| 順位 | 施工部位 | 効果の出やすさ | 補足 |
|---|---|---|---|
| 1 | 陸屋根・屋上(防水層のトップコート) | ◎ | 太陽が真上から当たる。面積も広い |
| 2 | 金属屋根(折板屋根・瓦棒屋根) | ◎ | 断熱層が薄いことが多く、直下階への効果が大きい |
| 3 | 勾配屋根(スレート・瓦) | ○ | 最上階への効果が期待できる |
| 4 | 西面・南面の外壁 | △ | 入射角が浅く、効果は限定的 |
| 5 | 北面の外壁 | × | 直射日光がほぼ当たらず、費用対効果は乏しい |
「外壁を全面遮熱にしましょう」という提案を受けたら、その根拠を尋ねてみてください。面積が増えれば金額も増えますが、効果は面積に比例しません。
5-2. マンション・ビルの陸屋根は「防水改修とセット」が基本
分譲マンションや賃貸マンション、テナントビルの多くは陸屋根です。ここで大事なのは、遮熱塗料を単独の工事として発注しないことです。
理由は3つあります。
- 屋上に上がるための仮設・安全設備の費用が二重にかかる
- 防水層が劣化していれば、その上に遮熱塗料を塗っても寿命は防水層に引きずられる
- 防水改修のトップコートを遮熱仕様にすれば、追加費用は差額だけで済む
長期修繕計画で屋上防水の改修時期が近づいているなら、そのタイミングで遮熱トップコートを選ぶ。これが最も無駄がありません。私はこれを、必ずワンセットでご提案するようにしています。
なお、JIS K 5675 は「防水層のトップコート」そのものを対象外としている点には注意が必要です。防水材メーカーが供給する遮熱トップコートについては、そのメーカーが公表する反射率データで判断することになります。
5-3. ホテル・工場・倉庫の金属屋根は効果が出やすい
一方、ホテルの別棟、工場、倉庫、商業施設のような金属屋根(折板屋根)の建物は、遮熱塗料の効果がはっきり出やすい類型です。金属は熱伝導率が高く、断熱層も薄いことが多いためです。
ホテルの客室階最上部や、テナントビルの最上階オフィスで「夏だけ空調が効かない」という声が出ている場合、屋根面の対策は検討する価値が高いと考えています。
5-4. 外壁に塗る価値がまったくないわけではない
誤解のないよう補足します。外壁への遮熱塗装は、効果が屋根より小さいというだけで、ゼロではありません。特に西日を強く受ける面や、隣接建物からの照り返しを受ける面では意味があります。
ただし、外壁については遮熱よりも先に検討すべきことがあります。ひび割れ(クラック)の処理とシーリングの打ち替えです。防水性能が落ちている外壁に遮熱塗料を塗っても、建物の資産価値を守ることにはつながりません。優先順位を間違えないことが肝心です。
大規模修繕全体の考え方については、大規模修繕工事のご紹介でも整理していますので、あわせてご覧ください。修繕の優先順位が資産価値にどう跳ね返るかについては、関連記事「築40年マンションの資産価値|修繕で差がつく3つの判断軸」でも詳しく書いています。
6. 費用と回収──「電気代で元が取れます」とは申し上げません
ここは慎重にお話しします。
6-1. 見るべきは「総額」ではなく「差額」
遮熱塗料は、同グレードの一般的な塗料と比べて材料費が高くなります。ただし、屋上防水や屋根塗装をどのみち実施するのであれば、比較すべきは工事総額ではなく、遮熱仕様にしたことによる差額です。
| 比較の仕方 | 判断への影響 |
|---|---|
| 工事総額どうしを比べる | 遮熱が高く見え、判断を誤りやすい |
| 仕様変更の差額で比べる | 実態に即した判断ができる |
理事会や取締役会に諮るときも、この整理で出したほうが議論が早く進みます。
6-2. 「何年で回収」の話をするなら、順序を守る
省エネ効果による電気代削減額は、建物の断熱仕様、空調機の効率、稼働時間、契約電力、そしてその年の気象によって大きく変わります。したがって、特定の回収年数を言い切ることはできません。
私が理事会でお伝えしているのは、この順序です。
- 一次的な便益:屋上防水層の熱劣化を抑え、更新周期を延ばせる可能性がある
- 二次的な便益:最上階の居住環境が改善し、賃貸なら退去抑制、分譲なら住民満足につながる
- 三次的な便益:空調負荷の低減による電気代の抑制(数値は建物ごとに検証が必要)
3番目を1番目に持ってくる提案書を見たら、私は少し警戒します。検証しにくい数字を先頭に置くのは、誠実なやり方ではないと思うからです。
6-3. 数字を「戸あたり」に直す
50戸のマンションで、屋上防水のトップコートを遮熱仕様に変更した場合の差額が仮に100万円だとします。これを戸あたりに直せば2万円です。12年周期の大規模修繕で考えれば、1戸あたり月あたり約139円という計算になります。
金額の大小の感じ方は人それぞれですが、この単位に直すと総会での説明がぐっと通りやすくなります。私はいつも理事長さまに、「総額のままでは可決しにくいので、戸あたり・月あたりに直しましょう」とお伝えしています。
7. 足場か、ロープアクセスか──猛暑期の工事では工法選択が効いてくる
屋上や屋根に塗る、という話をしてきましたが、そこにどうやって職人が到達するかで、費用も工期も変わります。
7-1. 3つの工法の比較
| 工法 | 仮設費 | 工期 | 居住者・利用者への影響 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| 通常足場工法 | 大(工事費の2〜3割を占めることが多い) | 長い | 大(バルコニー使用制限、防犯上の懸念、日照・通風の悪化) | 外壁全面の打診・補修を伴う中低層、複雑形状 |
| ロープアクセス工法(無足場工法) | 小 | 短い | 小(作業日のみ・部分的) | 高層、足場架設が困難な立地、屋上・外壁の部分改修 |
| ハイブリッド工法 | 中 | 中 | 中 | 部位ごとに条件が違う大規模・複雑物件 |
株式会社明誠は、この3つの工法をすべて自社で提案できる、日本でも数少ない改修会社です。詳しくはロープアクセス工法のご紹介をご覧ください。ロープアクセス工法の技術的な背景や一般的な安全基準については、姉妹サイトロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。
7-2. 稼働中のホテル・テナントビルでの現実
私が最も強く工法選択の価値を感じるのは、営業しながら工事をしなければならない建物です。
ホテルであれば、足場が組まれた期間中の客室単価と稼働率がどうなるか。テナントビルであれば、テナントさまからの賃料減額交渉が発生しないか。オーナーさまにとっては、工事費そのものより、工事期間中の逸失利益のほうが大きな金額になることさえあります。
ロープアクセス工法であれば、足場を組まずに屋上・外壁の必要な範囲だけを施工できます。バルコニーが長期間ふさがれることもありません。ここは、居住者さま・利用者さまへの説明のしやすさという点でも大きな違いになります。
7-3. 猛暑期の施工で私が一番気にしていること
ここは現場の話をさせてください。
夏の陸屋根は、下地の表面温度が60℃を超えることが珍しくありません。塗料には適正な塗装環境(気温・湿度・下地温度)があり、下地が高温すぎると、塗膜が乾く前に溶剤が急激に揮発してピンホールや膨れの原因になります。
私が現場で20年やってきて一番悔しい思いをするのは、材料も工法も正しいのに、施工時間帯の選び方だけで仕上がりが落ちるケースです。だからこそ夏場は、午前中の早い時間帯に屋根面を進める、日中は日陰側の外壁に人員を振り分ける、といった段取りを組みます。
そしてこれは職人の安全にも直結します。令和7年(2025年)6月1日施行の改正労働安全衛生規則により、事業者には熱中症の自覚症状がある作業者等を把握するための報告体制の整備、悪化防止のための措置の手順作成、関係作業者への周知が義務づけられました。対象となるのは、WBGT値28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて実施することが見込まれる作業です(出典:厚生労働省職場における熱中症対策の強化について)。
夏の陸屋根はまさにこの条件に該当します。工期の話をする前に、この体制が組めているかどうか。発注者側からも一度お確かめいただきたい点です。
「工期を1週間縮められます」という提案が、実は職人に無理をさせる前提で組まれていないか。発注者としてそこを一言確認いただけると、現場は本当に助かります。
8. 2026年度に押さえておきたい公的支援
制度は年度ごとに変わります。ここでは2026年8月時点で確認できる情報を整理しますが、申請前には必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
8-1. 国:マンションストック長寿命化等モデル事業(令和8年度)
国土交通省は、高経年マンションの再生検討から長寿命化に資する先導的なプロジェクトを公募する「マンションストック長寿命化等モデル事業」を令和8年度も実施しています。令和8年度の提案受付は3回に分けて設定されており、第3回募集は令和8年9月14日(月)から9月18日(金)、採択公表は11月を目途とされています(出典:国土交通省「マンションストック長寿命化等モデル事業」を実施します!~令和8年度提案募集のお知らせ~)。
先導性が求められる事業のため、通常の大規模修繕がそのまま対象になるわけではありません。長寿命化・省エネ性能向上といった要素をどう組み込むかが鍵になります。
8-2. 自治体:遮熱塗装を対象とする助成制度
東京都内をはじめとする多くの自治体で、住宅リフォームや省エネ改修に対する助成制度が設けられており、その要件として遮熱塗料など高機能塗料の使用を求めるケースが増えています。反射率の証明書類の提出を求める自治体もあります。
ただし、以下の点にご注意ください。
- 金額・要件・受付期間は自治体ごとに大きく異なる
- 分譲マンションの共用部が対象か、賃貸物件のオーナーが申請できるかは制度による
- 予算枠に達した時点で受付終了となる制度が多い
「うちの区にも同じ制度がある」と決めつけず、必ず当該自治体の公式ページ(lg.jpドメイン)でご確認ください。
8-3. 申請でつまずかないための3つの注意
- 契約前・着工前の申請が原則。工事を始めてしまうと対象外になる制度がほとんどです。
- 見積書の書き方が問われる。遮熱塗装部分の金額が分離して記載されている必要がある場合があります。
- 管理組合の議決が必要。総会・理事会のスケジュールと申請期限が合うか、逆算して確認します。
3番目が理由で間に合わなかった管理組合を、私は何度も見てきました。制度を調べるより先に、総会の日程を確認する。これが実務上いちばん確実な順序です。
なお、修繕を先送りしたときに費用がどう膨らむかについては、関連記事「大規模修繕の先送りが招く費用増|首都高110億円の教訓」で数字を挙げて整理しています。
9. 発注前チェックリスト(12項目)
最後に、実際に見積を取るときにお使いいただける形にまとめます。
9-1. 仕様書で確認する(性能)
- [ ] JIS K 5675(屋根用高日射反射率塗料)に適合しているか
- [ ] 採用色の明度L*値と近赤外波長域日射反射率の実数値が明記されているか
- [ ] 日射反射率保持率のデータが提示されているか
- [ ] 防水層のトップコートの場合、防水材メーカーの適合仕様になっているか
9-2. 見積書で確認する(費用)
- [ ] 一般仕様と遮熱仕様の差額が分かる形になっているか
- [ ] 下地調整・高圧洗浄・下塗りの回数が明記されているか
- [ ] 仮設費(足場かロープアクセスか)が別建てで示されているか
- [ ] 助成金申請に必要な内訳表記になっているか
9-3. 施工中に確認する(品質)
- [ ] 施工時の気温・湿度・下地温度の記録が残されているか
- [ ] 使用材料の出荷証明・ロット番号が提出されるか
- [ ] 各工程の写真(着手前・下地・中塗り・上塗り・完了)が撮られているか
- [ ] 猛暑期の作業時間帯と熱中症対策の計画が示されているか
このチェックリストをそのまま業者にお渡しいただいても構いません。誠実な会社であれば、むしろ話が早くなって喜ぶはずです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 遮熱塗料は本当に効果があるのですか?
A. 屋根・屋上の表面温度については、環境省や研究機関の資料で約10〜20℃程度の低下報告があり、効果は確認されています。ただし室内温度への効果は約1〜1.5℃程度と報告されており、屋上の断熱仕様によって差が出ます。詳しくは本文の「1. 結論」をご覧ください。
Q2. 遮熱塗料と断熱塗料は何が違いますか?
A. 遮熱塗料は日射(近赤外線)を反射して熱の入口を減らす材料、断熱塗料は塗膜自体の熱伝導を下げる材料です。夏の屋根対策としては遮熱、通年の効果を求めるなら断熱材の改修が基本になります。
Q3. 品質の良し悪しはどこで見分けられますか?
A. JIS K 5675「屋根用高日射反射率塗料」への適合と、近赤外波長域日射反射率、日射反射率保持率の3点です。グリーン購入法の判断基準では保持率の平均80%以上が求められています(出典:日本塗料工業会)。
Q4. 濃い色でも遮熱効果はありますか?
A. あります。ただし明度L*値が40.0以下の場合、規格上求められる近赤外波長域日射反射率は40.0%以上と、明るい色(80.0%以上)より低い水準になります。デザインと性能はトレードオフになるとお考えください。
Q5. 大規模修繕とは別に、遮熱塗装だけ先に実施すべきですか?
A. 屋上防水の改修時期が近いのであれば、同時実施をお勧めします。仮設費が二重にかからず、追加は仕様の差額だけで済むためです。ただし雨漏りが発生している場合など、緊急性のある事象は先行して対処すべきケースもあります。
この記事のポイントまとめ
- 遮熱塗料が最も効くのは屋上・金属屋根。外壁単独施工は効果が限定的
- 表面温度は約10〜20℃低下報告、室温は約1〜1.5℃低下報告と差がある
- 品質判定の物差しはJIS K 5675と近赤外波長域日射反射率、日射反射率保持率
- 明度が低い(濃い)色ほど、規格上の反射率要求も下がるトレードオフがある
- 屋上防水の改修と同時実施すれば、追加費用は仕様の差額のみで済む
- 2026年7月は西日本で1946年統計開始以降最も高い平均気温を記録
- 稼働中のホテル・ビルではロープアクセス工法で仮設費と逸失利益を抑えられる
いま、屋上の防水がそろそろ更新時期という建物をお持ちの方は、次の大規模修繕の仕様書に「遮熱」の2文字を入れるかどうかを、今年のうちに検討する価値があると思います。工事の直前に決めようとすると、材料の選択肢も助成金のタイミングも狭まってしまうからです。
理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。
執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション・ビル・ホテルの大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)
株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がける改修会社。通常足場工法、ロープアクセス工法(無足場工法)、両者を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法をご提案します。日本初となるロープアクセス工事のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。
最終更新:2026年8月17日
※本記事に記載した制度の内容・金額・期間は2026年8月17日時点で確認できた情報です。制度は変更される可能性がありますので、申請前に必ず各公式サイトで最新情報をご確認ください。
出典・参考資料
- 気象庁「2026年7月中旬~下旬の顕著な高温と今後の見通しについて」
- 環境省「ヒートアイランド対策大綱」
- 環境省 脱炭素ポータル「2025年夏の記録的高温の要因とは」
- 国土交通省「ヒートアイランド対策」
- 国土交通省「「マンションストック長寿命化等モデル事業」を実施します!~令和8年度提案募集のお知らせ~」
- 厚生労働省「職場における熱中症対策」
- 一般社団法人 日本塗料工業会「高日射反射率塗料」
- 一般財団法人 建材試験センター「JIS K 5675 屋根用高日射反射率塗料」
- 国立環境研究所 環境展望台「ヒートアイランド対策技術」
関連リソース
- ロープアクセス工法のご紹介(株式会社明誠)
- 関連記事:築40年マンションの資産価値|修繕で差がつく3つの判断軸
- 関連記事:大規模修繕の先送りが招く費用増|首都高110億円の教訓
- 大規模修繕工事のご紹介(株式会社明誠)
- ロープアクセスドットコム
甲斐市のマンション補助金|管理組合の大規模修繕2026
2026年8月16日 更新
「甲斐市の分譲マンションで大規模修繕をするとき、市の補助金は使えるのか?」——この記事は、その問いに正面からお答えします。
先に結論を申し上げます。甲斐市が2026年度(令和8年度)に公表している住まい系の支援制度のうち、分譲マンションの共用部大規模修繕そのものに直接お金が出る制度は、私が公開情報を確認した範囲では見当たりません。ここを曖昧にしたまま「補助金が出ますよ」と営業してくる会社があれば、私は警戒します。
ただ、そこで話を終わらせるのはもったいない。甲斐市にはブロック塀等安全確保対策支援事業という敷地内で使える補助があり、国の側にはマンション長寿命化促進税制と住宅金融支援機構の低利融資という、共用部大規模修繕に直接効く仕組みがあります。そして何より、工法の選択で総工費そのものを1〜2割動かせます。
私は株式会社明誠の本間と申します。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年近く手がけ、足場工法とロープアクセス工法(ロープで吊り下がって施工する無足場工法)の両方を扱ってきました。甲斐市の理事長さま・理事会の皆さまが総会の前に押さえておくべき論点を、公的な一次情報のリンク付きで整理します。
この記事の結論:甲斐市の管理組合が握るべきは「四本柱+工法」
甲斐市の分譲マンション管理組合が、2026年度に現実的に手を伸ばせる支援は、次の4つに集約されます。
- 甲斐市のブロック塀等安全確保対策支援事業(敷地内の危険な塀の撤去に使える可能性がある唯一の市補助)
- マンション管理計画認定制度(管理の質を国の基準で認定してもらう。融資・税制の入口になる)
- マンション長寿命化促進税制(大規模修繕の翌年度、建物の固定資産税が減額される)
- 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資/マンションすまい・る債(低利で借りる・有利に積む)
そして5つ目が、補助金ではありませんが効き目としては最も大きい工法の選択です。足場を全面に架けるのか、ロープアクセスで無足場にするのか、部位ごとに使い分けるハイブリッド工法にするのか。ここで数百万円から千数百万円の差が生まれる現場を、私は何度も見てきました。
| 打ち手 | 種類 | 効き目の目安 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| ブロック塀等安全確保対策支援事業 | 市の補助 | 撤去単価9,000円/㎡・上限18万円(要確認) | 甲斐市 建築住宅課 建築開発係 |
| マンション管理計画認定 | 認定制度 | 融資金利の引下げ・税制要件・市場評価 | 甲斐市(受付状況は要確認) |
| 長寿命化促進税制 | 税の減額 | 翌年度の建物固定資産税を減額 | 甲斐市 税務課 資産税係 |
| 機構の共用部分リフォーム融資 | 低利融資 | 全期間固定・理事長の個人保証不要 | 住宅金融支援機構 |
| マンションすまい・る債 | 積立 | 認定等で利率上乗せ(2026年度拡充) | 住宅金融支援機構 |
| 工法の最適化 | 工事側 | 総工費の1〜2割規模で変動 | 施工会社(明誠など) |
順番に、根拠となる一次情報とともに見ていきます。
甲斐市の住宅支援メニューを「使える/使えない」で正直に仕分けする
甲斐市は、竜王町・敷島町・双葉町が2004年(平成16年)に合併して誕生した市です。人口は約7万6,000人で県内2位、甲府市のベッドタウンとして山梨県の市部で唯一人口が伸びている——そんな都市です。JR中央本線の竜王駅・塩崎駅、中央自動車道の甲府昭和IC・双葉JCT、そして武田信玄が永禄3年(1560年)に築いたとされる信玄堤。釜無川と荒川に挟まれた甲府盆地の北西部に、分譲マンションが点在しています。
その甲斐市の住宅系支援制度を、分譲マンション管理組合の目線で仕分けすると、こうなります。
| 甲斐市の制度 | 共用部大規模修繕との関係 | 判定 |
|---|---|---|
| ブロック塀等安全確保対策支援事業 | 敷地の危険な塀の撤去・生け垣化に活用余地 | ○ 接点あり |
| 木造住宅耐震化支援事業(診断・改修・シェルター) | 木造在来軸組・2階建以下・長屋/共同住宅以外 | × 対象外 |
| 木造住宅耐震リフォーム工事費補助事業 | 木造の耐震改修と同時施工が条件 | × 対象外 |
| KAITEKI住宅普及促進事業費補助金(最大120万円) | やまなしKAITEKI住宅の認定・自ら居住が前提 | × 不適 |
| 子育て世帯住宅取得支援事業 | 住宅の取得・引越費(人口減少対策) | × 不適 |
| 空き家バンクリフォーム補助金(最大100万円) | 空き家バンク登録物件が前提 | × 不適 |
○ ブロック塀等安全確保対策支援事業:敷地内で唯一つながる市の補助
甲斐市は「ブロック塀等安全確保対策支援事業」として、地震時の倒壊や避難路の閉塞を防ぐため、危険なブロック塀等を撤去する方に補助を行っています。
公開情報で確認できる範囲での概要は次のとおりです。
- 対象:避難路に面し、道路面または地盤面からの高さが1メートルを超える危険なブロック塀等
- 補助単価:撤去したブロック塀等の面積1㎡あたり9,000円
- 上限額:18万円
- 例外:実際の工事費が9,000円/㎡を下回る場合は、その費用の3分の2
- 併設:ブロック塀に代えて生け垣・花壇を設置する場合の補助も用意されている
- 手順:撤去工事の前に市へ事前相談し、市職員の現地確認で要件を満たすか確認する。交付決定前に着工したものは対象外
なぜ管理組合にとって「接点あり」なのか。分譲マンションの敷地境界には、ゴミ置き場まわり、駐車場と歩道の境、隣地との境界に、築年数の古いブロック塀が残っていることがよくあります。大規模修繕の足場計画やロープアクセスの下部養生を検討する際、私はまず敷地の外周を歩きます。そのとき「これは傾いていますね」という塀に出会うことが、実に多い。
大規模修繕の共用部工事そのものには使えませんが、同じ工事期間中に併せて処理してしまえば、管理組合の持ち出しを数十万円単位で減らせる可能性があります。
ただし、正直に申し上げます。この制度の受付期間について、平成30年9月1日から令和5年8月31日までとする記述がインターネット上に残っています。2026年度(令和8年度)に受付が継続しているかどうか、また管理組合名義で申請できるかどうかは、公開情報から断定できませんでした。 ここは断定しません。まず建築住宅課 建築開発係(Tel:055-268-2336)へ電話で現況を確認してください。それが最短です。
× 木造住宅耐震化支援事業は、一次情報で「対象外」と断定できます
甲斐市の「木造住宅耐震化支援事業」は、昭和56年5月31日以前に建てられた木造住宅を対象に、無料の耐震診断と各種補助を行う制度です。内容は手厚く、木造戸建てにお住まいの方には非常に有利です。
- 耐震診断:市の補助で実施し、個人の費用負担なし
- 耐震改修工事費・建替え工事費:補助上限額125万円(設計費を含む)
- 耐震シェルター設置工事費:補助上限額36万円(総合評点0.7未満が対象)
- 木造住宅耐震リフォーム工事費:リフォーム工事費の1/5以内・上限20万円
このリフォーム補助の「リフォームの種類」には、屋根の葺き替え・防水工事、外壁の張替え、外壁の塗装又は吹付け工事、床・壁・窓・天井・屋根の断熱改修工事が明記されています。ここだけ読むと「マンションの外壁塗装にも使えるのでは」と思われるかもしれません。
しかし、対象となる木造住宅の要件に、こう明記されています。
長屋および共同住宅以外の個人所有の住宅(貸家は一戸建てであっても対象外)
さらに「木造在来軸組工法で建築されたもの」「2階建て以下の住宅」という要件もあります。RC造・SRC造の分譲マンションの共用部は、この制度の対象外です。 これは一次情報から明確に断定できます。加えて、耐震リフォーム工事費補助は「木造住宅耐震改修工事と同時に施工するもの」が条件で、単独でリフォーム工事のみを行うものは対象になりません。
なお、この事業の窓口は建設課 建設総務係(Tel:055-278-1668)、住所は甲斐市篠原2610です。市は「住宅耐震化緊急促進アクションプログラム」も策定しています。
× KAITEKI住宅普及促進事業費補助金は、金額は大きいが共用部には届かない
甲斐市の「住宅取得支援事業」ページには、最大120万円という目を引く補助が掲載されています。「KAITEKI住宅普及促進事業費補助金」(令和7年度から令和9年度まで)です。
基本額20万円(やまなしKAITEKI住宅=長期優良住宅・断熱等性能等級6以上・相当隙間面積1.0c㎡/㎡)に、ZERO(一次エネ削減率)で20万円、FORET(県産木材使用量)で最大40万円、子育て世帯等で20万円、リノベーションで20万円が加算される仕組みです。
「リノベーション」の文字を見て期待される方がいらっしゃると思いますが、条件はこうです。
- 「やまなしKAITEKI住宅」の認定を受けている
- 認定住宅が市内にあり、住所をおいている
- 工事を施工した会社が山梨県内に本店をおいている
- 「やまなしKAITEKI住宅認定通知書」の日付から6か月以内である
- 市税等を滞納していない
対象は「住宅を建築又は取得した方」であり、自ら居住する住宅の断熱・省エネ性能を認定基準まで引き上げる制度です。分譲マンションの共用部(外壁・屋上防水・鉄部)の大規模修繕は、この制度の想定外と考えるのが妥当です。申請受付期間は令和8年4月1日から令和9年2月26日まで。窓口は建築住宅課 建築開発係(055-268-2336)です。
マンション管理計画認定制度:甲斐市は「県では申請できない」のがポイント
ここから国の制度に移ります。まず、すべての入口になるのがマンション管理計画認定制度です。
これは、マンションの管理の適正化の推進に関する法律に基づき、管理組合が作成した管理計画が一定の基準を満たす場合に、地方公共団体から「管理が適正なマンション」として認定を受けられる制度です(2022年4月開始)。認定を受けると次のようなメリットがあります。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 市場評価 | 「管理が良いマンション」として売買・賃貸時に訴求できる |
| 住宅金融支援機構 | フラット35の金利引下げ、共用部分リフォーム融資の優遇 |
| マンションすまい・る債 | 認定を受けた管理組合向けの利率上乗せ |
| 長寿命化促進税制 | 税制の適用要件(積立金の引上げ)の判定に関わる |
| 合意形成 | 第三者の基準で管理状態を可視化でき、総会の議論が進む |
ここで甲斐市固有の注意点があります。 認定を受けられるのは、自治体が「マンション管理適正化推進計画」を作成している地域にあるマンションだけです。そして山梨県の「マンション管理計画認定制度について」のページでは、山梨県マンション管理適正化推進計画の対象区域は「市部を除く町村部」とされ、県は町村部にあるマンションのみを対象に令和4年4月1日から受付を開始した、と説明されています。
つまり、甲斐市内のマンションは、山梨県の窓口では申請できません。 市部は市が認定主体になります。
では甲斐市自身はどうか。甲斐市がマンション管理適正化推進計画を作成し、認定申請を受け付けているかどうかは、私が公開情報を確認した範囲では確認できませんでした。 ここも断定しません。参考までに、同じ山梨県内の中核市である甲府市は、令和5年5月に推進計画・指針を策定し、令和5年7月から認定申請の受付を開始しています。全国的にも早い部類です。
甲斐市の管理組合の皆さまには、建築住宅課(055-268-2336)へ「甲斐市はマンション管理計画認定の申請を受け付けていますか」と一本電話を入れることをお勧めします。もし受付があれば、公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」を経由してオンラインで申請するのが標準的なルートです。事前確認(適合証の取得)を経ることで、自治体への手数料が大きく下がる自治体が多いのも押さえておきたいポイントです。
もし甲斐市に推進計画がまだない場合でも、マンション管理適正化診断サービスやマンション管理適正化評価制度(管理組合向けの民間評価)は利用できます。後述するとおり、2026年度からはこれらの評価もマンションすまい・る債の利率上乗せ対象に加わりました。
マンション長寿命化促進税制:甲斐市の減額割合は「市の条例」で決まる
補助金がなくても、税金が減るなら実質的な負担は下がります。大規模修繕に直接効く国の制度が、マンション長寿命化促進税制です。
国土交通省の「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」によれば、一定の要件を満たす長寿命化工事(大規模修繕等)を行ったマンションについて、工事完了年の翌年度の建物部分の固定資産税が減額されます。
適用の主な要件(管理組合のチェックリスト)
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 工事完了時期 | 令和5年4月1日から令和9年3月31日までに完了 |
| 築年数 | 築20年以上 |
| 規模 | 総戸数10戸以上 |
| 過去の実績 | 過去に1回以上の長寿命化工事(大規模修繕等)を実施 |
| 修繕積立金 | 管理計画の認定、または助言・指導を受けて積立金を引き上げている |
| 工事内容 | 屋根防水工事+床防水工事+外壁塗装等を一体で実施 |
| 対象範囲 | 居住用の専有部分1戸あたり床面積100㎡までの部分 |
| 回数 | 1回限り |
| 申告 | 工事完了後3か月以内に市へ申告 |
見落としがちなのが「屋根防水+床防水+外壁塗装等を一体で」という要件です。「今回は外壁だけ」「屋上防水は次回に回そう」と工事を分けてしまうと、この税制は使えません。工事の分割は、税制の観点からは不利になり得る——これは総会でぜひ共有していただきたい論点です。
そしてもう一つ。減額割合は市町村の条例で定められます。 国が示す参酌基準は3分の1で、6分の1から2分の1の範囲で各自治体が条例で定める仕組みです。東京23区や小田原市が2分の1、高崎市・太田市・佐野市が3分の1といった例があります。甲斐市の減額割合については、公開情報から確認できませんでした。断定は避けます。
確認先は甲斐市 市民部 税務課 資産税係です。甲斐市の固定資産税ページには「住宅耐震改修工事を行った住宅に対する固定資産税の減額」「居住安全(バリアフリー)改修工事を行った住宅に対する固定資産税の減額」といった減額制度の案内があり、資産税係は竜王庁舎で申告を受け付けています。着工前に、①甲斐市の減額割合、②申告期限と必要書類、③耐震・バリアフリー・省エネ減額との重複可否を確認してください。長寿命化促進税制は、これらの他の減額制度と重複して適用できません。
なお、申告は管理組合の代表者(理事長)が、複数の区分所有者分をまとめて行うことができます。区分所有者一人ひとりに申告を委ねると、抜け漏れが出やすくなります。理事会が主導して一括で処理する——これが実務上の正解です。団地型マンションの場合は、工事を行った当該棟のみが対象になる点にもご注意ください。
住宅金融支援機構:積立金が足りないときの現実解
「補助金も税制も分かった。でも、そもそも積立金が足りない」——甲斐市に限らず、私が現場で最も多く聞く声です。ここで効くのが住宅金融支援機構(JHF)の2本柱です。
マンション共用部分リフォーム融資(マンションすまい・る融資)
管理組合が共用部分の改修工事を行う際に利用できる、全期間固定金利の融資です。2026年度お申込分の案内が機構から公表されています。実務的なポイントは3つ。
- 管理組合名義で借りられる——区分所有者個人のローンではありません
- 公益財団法人マンション管理センターの債務保証を利用することで、理事長個人の連帯保証が不要になります
- Web申込サービスが用意されており、手続きの負担が軽い
管理計画認定を受けたマンションには、返済期間や金利について優遇が用意されています。ただし金利は毎月見直されるため、この記事で具体的な数値を断定することは避けます。総会資料に載せる際は、機構の公式サイトで申込時点の金利をご確認ください。
理事会でよく出るのが「借金してまで修繕すべきか」という議論です。私の実感を申し上げます。修繕を先送りして劣化が下地まで進むと、次回工事の単価そのものが跳ね上がります。 借入コストより劣化進行コストのほうが大きくなる局面は、確実に存在します。
マンションすまい・る債
こちらは借りるのではなく積む制度です。管理組合が修繕積立金を機構の債券で積み立てる仕組みで、2026年度の募集は2026年4月13日(月)から開始されました。口数に上限があり、先着順で受付が終了します。
2026年度からは制度が拡充され、管理計画認定マンションに加えて、マンション管理適正化評価制度またはマンション管理適正化診断サービスで一定の評価基準以上を得たマンションも、利率上乗せの対象になりました(住宅金融支援機構)。甲斐市のように市の認定受付状況が確認しづらい地域の管理組合にとって、これは朗報です。認定がなくても、評価制度・診断サービス経由で上乗せの道が開けます。
2026年4月施行の改正区分所有法:決議のハードルが下がりました
制度の話をもう一つ。2026年4月1日、改正区分所有法(令和7年法律第47号)が施行されました。 管理組合にとっての最大の変化は、共用部分の大規模修繕等の決議の母数です。
従来は「区分所有者及び議決権の各4分の3以上」など、全区分所有者を母数とする要件でした。総会に来ない人、アンケートに答えない人、連絡が取れない人が一定数いると、それだけで決議が事実上不可能になる。この構造が、多くのマンションで修繕を止めてきました。
改正後は、大規模修繕等の決議が出席した区分所有者を母数とする形へ緩和されます。欠席者・無回答者は母数から外れます。さらに、所在等が不明な区分所有者については、裁判所の関与する手続を経て母数から除外できるようになりました。
甲斐市は甲府のベッドタウンとして発展してきた地域です。転勤・相続・賃貸化によって「連絡が取れない区分所有者」が生じているマンションは、決して少なくないはずです。過去に決議が通らなかった管理組合こそ、2026年の今、もう一度議案を出す価値があります。
ただし、建替え等については従来要件が残る部分があります。詳細は弁護士やマンション管理士にご確認ください。
補助金より効く「工法の選択」:仮設費は総工費の15〜25%
ここからは、私の本業の話です。
大規模修繕の見積書を開いたとき、多くの理事の方が驚かれるのが仮設工事費の大きさです。一般的に、足場を含む仮設費は総工費の15〜25%を占めます。1億円の工事なら1,500万〜2,500万円が「作業のための足場」に消えている計算です。
しかも足場には、金額以外のコストがあります。
- 工期が伸びる(架設・解体だけで数週間)
- 防犯リスク(足場が侵入経路になる。1階・2階の住戸から不安の声が出やすい)
- 生活影響(メッシュシートで採光が落ち、洗濯物が干せない期間が長い)
- 駐車場の使用制限(甲斐市のように車が生活必需品の地域では、これが最大の不満になります)
3つの工法の比較
| 項目 | 通常足場工法 | ロープアクセス工法(無足場) | ハイブリッド工法 |
|---|---|---|---|
| 仮設費 | 大(総工費の15〜25%) | 小(大幅に削減) | 中(必要部位のみ足場) |
| 工期 | 長い | 短い | 中 |
| 生活影響 | 大(採光・洗濯物・駐車場) | 小 | 中 |
| 防犯リスク | あり(侵入経路化) | ほぼなし | 限定的 |
| 適する工事 | 全面改修・下地補修が広範 | 塗装・シーリング・部分補修・調査 | 大規模かつ部位差が大きい建物 |
| 適する建物 | 中低層・複雑形状 | 高層・足場架設が困難な形状 | 総合的にコスト最適化したい建物 |
ロープアクセス工法は、産業用ロープで作業員が吊り下がって施工する無足場工法です。日本ではまだ扱える会社が限られています。ロープアクセス工法の技術情報・安全基準・事例は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。
そして私が一番おすすめしているのがハイブリッド工法です。「全面足場か、全面ロープか」の二択ではなく、下地補修が多い面だけ足場を架け、それ以外はロープアクセスで回す。建物の劣化状況を診断したうえで部位ごとに使い分ける考え方です。株式会社明誠は、この3工法すべてを扱い、建物にとって最適な組み合わせを提案できる日本でも数少ない会社です(3工法のご紹介)。
甲斐市の気候と、工事のベストシーズン
甲斐市は甲府盆地の北西部、内陸性気候の地域です。塩害はほぼ気にしなくてよい一方、建物にとって厳しい要因が3つあります。
- 夏の猛暑と強い日射——甲府盆地は日本有数の高温地帯。紫外線による塗膜劣化・シーリングの硬化が早く進みます
- 冬の放射冷却と凍結融解——盆地特有の冷え込みで、外壁のひび割れに入った水が凍結・膨張して割れを広げます
- 昼夜・季節の寒暖差——躯体とシーリング材の伸縮が大きく、目地の追従性能が試されます
この気候を踏まえた、甲斐市での工事適期は次のとおりです。
| 時期 | 塗装・防水の適性 | 備考 |
|---|---|---|
| 3月下旬〜6月上旬 | ◎ 最適 | 気温・湿度が安定。梅雨入り前に山場を越したい |
| 6月中旬〜7月中旬 | △ | 梅雨。工程が延びやすい |
| 7月下旬〜8月 | △ | 猛暑。塗膜の乾燥が早すぎる時間帯があり、作業効率も落ちる |
| 9月〜11月中旬 | ◎ 最適 | 秋の乾燥期。仕上がりが安定する |
| 11月下旬〜3月中旬 | × | 低温で塗料・防水材の硬化不良リスク。凍結の懸念 |
塗料や防水材には施工可能な温度・湿度の下限があります(一般に気温5℃以下・湿度85%以上は施工不可とされる材料が多い)。甲斐市で12月〜3月に外装工事を「やってしまう」のは避けたほうがよい——これは強く申し上げておきます。
逆算すると、春の着工を狙うなら前年の初夏から、秋の着工を狙うなら同年の初冬から、それぞれ準備を始める必要があります。
現場のエピソード:屋上防水の「膨れ」を1年放置した管理組合
以前、内陸の寒暖差が大きい地域で、こんな現場に立ち会いました。
屋上防水シートに、畳1枚ほどの膨れが出ていました。理事会は「まだ雨漏りしていないから」と、次年度の総会に判断を持ち越しました。1年後に伺うと、膨れは数倍に広がり、シートの継ぎ目から入った水が下地のコンクリートまで回っていました。最上階の住戸の天井には、うっすらとシミが出ていました。
結果、防水の張り替えだけで済んだはずの工事に、下地の改修が加わり、費用は当初見積りの数倍になりました。しかも最上階の住戸には、内装補修という別の問題が発生しました。
膨れの多くは、下地に残った水分が日射で気化して起こります。日射が強く寒暖差の大きい甲斐市のような地域では、これが起こりやすい。「まだ漏っていない」は、判断を先送りする理由になりません。 劣化診断だけでも、ロープアクセスなら足場なしで実施できます。
モデルケース:甲斐市の管理組合で、いくら変わるか
具体的な数字を2つ挙げます。あくまでモデルケースであり、実際の金額は建物の形状・劣化状況・仕様で変わります。
ケース1:竜王駅周辺・築25年・11階建・48戸
| 項目 | 通常足場工法 | ハイブリッド工法 |
|---|---|---|
| 総工費(概算) | 9,000万円 | 7,800万円 |
| 差額 | — | ▲1,200万円 |
| 1戸あたり | — | ▲25万円 |
| 工期 | 5か月 | 約3週間短縮 |
| 駐車場の使用制限 | 全期間 | 部分・短期間 |
下地補修が集中する妻面のみ足場を架け、残りの3面と塔屋・高架水槽まわりをロープアクセスで施工した想定です。差額の1,200万円は、次回の修繕に向けた積立に回せます。
ケース2:郊外・築40年超・5階建・18戸
| 項目 | 通常足場工法 | ロープアクセス主体 |
|---|---|---|
| 総工費(概算) | 3,200万円 | 2,600万円 |
| 差額 | — | ▲600万円 |
| 1戸あたり | — | ▲33万円 |
| 資金手当て | 一時金が必要 | 機構融資で一時金ゼロも可能 |
戸数が少ないマンションほど、1戸あたりの負担は重くなります。18戸で600万円の差は、1戸あたり33万円。ここに機構の共用部分リフォーム融資を組み合わせれば、一時金の徴収なしで工事を成立させる設計も可能です。
総会から逆算する18か月カレンダー
「いつから動けばいいのか」——理事長さまから最も多い質問です。標準的なスケジュールをお示しします。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 18か月前 | 劣化診断の実施(ロープアクセスなら足場不要)/長期修繕計画の見直し |
| 15か月前 | 修繕委員会の設置/甲斐市 建築住宅課・税務課へ制度の照会 |
| 12か月前 | 工事仕様と概算予算の確定/資金計画(積立金・借入・一時金)の検討 |
| 10か月前 | 相見積り(3社程度)の依頼/機構融資の事前相談 |
| 8か月前 | 見積比較・施工会社の絞り込み/説明会の開催 |
| 6か月前 | 総会(工事・予算・借入の決議) |
| 4か月前 | 契約締結/近隣挨拶・住民説明 |
| 0か月 | 着工(春または秋の適期に合わせる) |
| 完了後3か月以内 | 長寿命化促進税制の申告(期限厳守) |
最後の行が抜け落ちる管理組合が、本当に多い。工事が終わって理事が交代し、申告期限が過ぎてから気づく——これほどもったいないことはありません。引継ぎ書に「税制申告」の一行を入れておくことをお勧めします。
相見積りで失敗しないための3つのポイント
補助金を取りに行くより、見積りの精度を上げるほうが確実に効く場面があります。私が管理組合にお伝えしている3点です。
- 数量を揃える——各社に同じ「数量拾い」の条件を提示する。外壁面積、シーリング延長、鉄部塗装面積がバラバラなら、金額は比較になりません
- 仕様を揃える——塗料のグレード(シリコン/フッ素/無機)、防水工法(ウレタン密着/通気緩衝/シート)を指定する。「同等品」という言葉が並ぶ見積書は要注意です
- 「別途」を潰す——見積書の末尾にある「別途」項目を全部洗い出す。仮設電気、産廃処理、下地補修の数量超過分——ここが後から膨らみます
特に3番目。下地補修は「実費精算」になりがちですが、想定数量を明記させ、超過時の単価まで見積書に書かせておく。これだけで、後から数百万円の追加請求に驚かされる事態を防げます。
株式会社明誠では、適正価格でのご提案と安心の施工体制を柱に、管理組合の皆さまのご相談を承っています。マンション管理組合向けのサービス内容はこちらをご覧ください。
修繕積立金が足りないときの4つの打ち手
最後に、資金の話を整理します。積立金不足に直面したときの選択肢は、実質4つしかありません。
| 打ち手 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| ① 一時金の徴収 | 借入コストがかからない | 合意形成が最も難しい。滞納リスク |
| ② 積立金の値上げ | 将来の工事も含めて安定する | 効果が出るまで時間がかかる |
| ③ 機構等からの借入 | 一時金なしで着工できる | 利息負担。返済期間中の管理が必要 |
| ④ 工事範囲・工法の見直し | 総額そのものを下げられる | 先送りすると劣化が進むリスク |
①〜③は「お金の集め方」の話ですが、④だけは「必要額そのもの」を変えられます。 私が工法の選択を強調するのは、この一点に尽きます。1,200万円の削減は、48戸なら1戸あたり25万円の一時金を回避できる金額です。
なお、私が代表理事を務める一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)では、全国の建設業者向けに経営支援の情報発信やビジネスマッチングを行っています。地域の施工力を高めることが、結果として管理組合の皆さまの選択肢を増やすと考えています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 甲斐市に、マンションの大規模修繕そのものに使える補助金はありますか?
A. 私が公開情報を確認した範囲では、共用部の大規模修繕に直接交付される甲斐市独自の補助金は見当たりませんでした。ただし敷地内のブロック塀撤去には「ブロック塀等安全確保対策支援事業」の活用余地があり、国の長寿命化促進税制・機構融資は利用できます。
Q2. 甲斐市の木造住宅耐震リフォーム補助(上限20万円)は、マンションの外壁塗装に使えますか?
A. 使えません。対象は「長屋および共同住宅以外の個人所有の住宅」「木造在来軸組工法」「2階建て以下」に限定され、かつ木造耐震改修工事と同時施工が条件です(出典:甲斐市)。
Q3. マンション管理計画認定は、山梨県に申請すればよいですか?
A. 甲斐市内のマンションは県では申請できません。山梨県の推進計画の対象区域は市部を除く町村部だからです。甲斐市が受付をしているかは建築住宅課(055-268-2336)へご確認ください。
Q4. 長寿命化促進税制で、甲斐市はいくら減額されますか?
A. 減額割合は市町村の条例で定められ、国の参酌基準は3分の1(範囲は6分の1〜2分の1)です。甲斐市の割合は公開情報から確認できませんでした。税務課 資産税係へ着工前にご確認ください。
Q5. 外壁だけ先に工事して、屋上防水は次回に回してもよいですか?
A. 工事としては可能ですが、長寿命化促進税制は「屋根防水+床防水+外壁塗装等の一体実施」が要件です。分割すると税制が使えなくなる可能性があります。
Q6. ロープアクセス工法は、どんな建物でも使えますか?
A. 万能ではありません。下地補修が広範囲に及ぶ場合や、建物形状によっては足場が適します。だからこそ、部位ごとに使い分けるハイブリッド工法をご提案しています。
Q7. 積立金が足りません。工事を先延ばしにすべきでしょうか?
A. 劣化が下地まで進むと、次回工事の単価そのものが上がります。機構の共用部分リフォーム融資は理事長の個人保証が不要で、一時金なしの資金計画も組めます。まず診断で現状を把握することをお勧めします。
Q8. 甲斐市で工事をするなら、いつ着工するのがよいですか?
A. 3月下旬〜6月上旬、または9月〜11月中旬が適期です。盆地の冷え込みで、12月〜3月中旬は塗料・防水材の硬化不良リスクがあります。
この記事のポイントまとめ
- 甲斐市に共用部大規模修繕への直接補助は確認できず。まず正直な線引きから
- ブロック塀等安全確保対策支援事業(撤去9,000円/㎡・上限18万円)は敷地内で活用余地あり
- 木造住宅耐震化支援事業は「長屋・共同住宅以外」と明記され、分譲マンションは対象外
- 甲斐市は市部のため、管理計画認定は山梨県では申請できない。市へ要確認
- 長寿命化促進税制は屋根防水+床防水+外壁塗装の一体実施が要件。工事分割は不利
- 減額割合は市条例で決まる。甲斐市の割合は税務課 資産税係へ着工前確認を
- 機構の共用部分リフォーム融資は理事長の個人保証が不要。すまい・る債は2026年度に拡充
- 仮設費は総工費の15〜25%。工法の選択が補助金より大きく効く場面がある
執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)
株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円および山梨県でロープアクセス工法・通常足場工法・ハイブリッド工法の3工法を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開しています。
ご相談窓口:お問合せフォーム(劣化診断・概算お見積りのご相談を承っています)
最終更新:2026年8月16日
出典・参考資料
- 甲斐市「木造住宅耐震化支援事業について」
- 甲斐市「ブロック塀等安全確保対策支援事業について」
- 甲斐市「甲斐市住宅取得支援事業(補助制度)」
- 甲斐市「住宅耐震改修工事を行った住宅に対する固定資産税の減額」
- 山梨県「マンション管理計画認定制度について」
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」
- 住宅金融支援機構「マンションすまい・る融資(管理組合申込みの場合)」
- 住宅金融支援機構「マンションすまい・る債」
- 公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」
- ロープアクセス工法の技術情報:ロープアクセスドットコム
※本記事の制度情報は2026年8月16日時点で公開されている情報に基づいています。補助制度・税制は年度ごとに内容が変更される場合があります。申請にあたっては、各窓口の最新情報をご確認ください。
富士吉田市のマンション補助金|管理組合の大規模修繕2026
2026年8月16日 更新
「富士吉田市の分譲マンションで大規模修繕をするとき、市の補助金は使えるのか?」——この記事は、その問いに正面からお答えします。
先に結論を申し上げます。富士吉田市が2026年度(令和8年度)に公表している住まい系の支援制度のうち、分譲マンションの共用部大規模修繕そのものに直接お金が出る制度は、私が公開情報を確認した範囲では見当たりません。ただ、ここで話を終わらせてしまうのは、あまりにもったいない。富士吉田市にはアスベスト関連の補助制度という、マンション共用部にも接点があり得る制度が用意されています。そこに国の税制・認定制度・低利融資、そして工法の選択を重ねれば、実質的な負担は大きく変えられます。
私は株式会社明誠の本間と申します。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年近く手がけ、足場工法とロープアクセス工法(ロープで吊り下がって施工する無足場工法)の両方を扱ってきました。富士吉田市の理事長さま・理事会の皆さまが総会の前に押さえておくべき論点を、公的な一次情報のリンク付きで整理します。
この記事の結論:富士吉田市の管理組合が握るべきは「四本柱+工法」
富士吉田市の分譲マンション管理組合が、2026年度に現実的に手を伸ばせる支援は、次の4つに集約されます。
- 富士吉田市のアスベスト関連補助制度(調査費は全額・限度額15万円、除去等は2/3・上限400万円)
- マンション管理計画認定制度(管理の質を国の基準で認定してもらう。融資・税制の入口になる)
- マンション長寿命化促進税制(大規模修繕の翌年度、建物の固定資産税が減額される)
- 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資/マンションすまい・る債(低利で借りる・有利に積む)
そして5つ目が、補助金ではありませんが効き目としては最も大きい工法の選択です。足場を全面に架けるのか、ロープアクセスで無足場にするのか、部位ごとに使い分けるハイブリッド工法にするのか。ここで数百万円から千数百万円の差が生まれる現場を、私は何度も見てきました。
| 打ち手 | 種類 | 効き目の目安 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| アスベスト含有量調査の補助 | 市の補助 | 調査費の全額(限度額15万円) | 富士吉田市 都市政策課 |
| アスベスト除去等の補助 | 市の補助 | 対象経費の2/3(上限400万円) | 富士吉田市 都市政策課 |
| ブロック塀等の撤去改修補助 | 市の補助 | 撤去のみ上限15万円/改修まで上限30万円 | 富士吉田市 都市政策課 |
| マンション管理計画認定 | 認定制度 | 融資金利の引下げ・税制要件・市場評価 | 富士吉田市(要事前確認) |
| 長寿命化促進税制 | 税の減額 | 翌年度の建物固定資産税を減額 | 富士吉田市 税務課 |
| 機構の共用部分リフォーム融資 | 低利融資 | 全期間固定・理事長の個人保証不要 | 住宅金融支援機構 |
| 工法の最適化 | 工事側 | 総工費の1〜2割規模で変動 | 施工会社(明誠など) |
順番に、根拠となる一次情報とともに見ていきます。
富士吉田市の住宅支援メニューを「使える/使えない」で正直に仕分けする
まず、富士吉田市の公式ページ「住宅支援」に並んでいる制度を、分譲マンション管理組合の目線で仕分けします。ここを曖昧にしたまま話を進める業者が多いのですが、私は最初に正直な線引きをすることにしています。
| 富士吉田市の制度 | 共用部大規模修繕との関係 | 判定 |
|---|---|---|
| アスベストに関する補助制度 | 市内の建築物の吹付け材が対象。共用部にも接点あり得る | ◎ 要相談 |
| ブロック塀等の撤去改修補助制度 | 敷地の危険な塀の撤去・フェンス化に活用余地 | ○ 接点あり |
| 木造住宅の耐震化事業 | 木造在来工法・2階建以下・長屋/共同住宅以外 | × 対象外 |
| 中古物件改修支援奨励金 | 空き家・空き店舗バンク物件の改修+転入が前提 | × 不適 |
| 新築・中古物件取得支援奨励金 | 物件の取得(移住定住施策) | × 不適 |
◎ アスベスト補助は、管理組合が真っ先に確認すべき制度
富士吉田市は「アスベストに関する補助制度」として、次の2本立ての支援を用意しています(都市政策課/2025年3月27日更新)。
- 吹付アスベスト等の含有量調査:市内の建築物で、壁・柱・天井等に吹き付けられた建材のアスベスト含有調査に対し、調査費用の全額(限度額15万円)を補助(千円未満は自己負担)
- 吹付アスベスト等の除去等:含有が確認された建物の除去・封じ込め・囲い込みの費用に対し、対象経費の2/3(上限400万円)を補助
ここで注目していただきたいのは、対象が「本市内の建築物」と書かれている点です。木造住宅の耐震化事業のように「木造在来工法」「長屋、共同住宅以外」といった限定が付いていません。つまり、RC造・SRC造の分譲マンションであっても、共用部の機械室・電気室・駐車場天井・階段室・パイプスペースなどに吹付け材が残っていれば、対象範囲に入り得るということです。
正直に申し上げます。管理組合名義で申請できるのか、区分所有建物の共用部がどう扱われるのかは、市のページ上では明示を確認できませんでした。ここは断定しません。事前に都市政策課へご相談ください。市も「補助対象範囲等の確認のため、事前にご相談ください」と明記しており、相談時には「配置図」「平面図」「現況写真」など状況がわかる資料を持参するよう案内しています。
そしてもう一点、これは私が現場で何度も歯がゆい思いをしてきたところです。補助決定前に着手してしまうと補助金は交付されません。大規模修繕の工程を組んでから「そういえばアスベストが」と気づいても遅い。設計事務所や施工会社に相談する段階で、昭和50年代以前の竣工なら吹付け材の有無を先に洗い出しておく。これだけで、400万円を上限とする補助の可能性が残るか消えるかが変わります。
築40年前後、1970〜1980年代前半に建てられた富士吉田市内のマンションであれば、この確認は最優先事項だと私は考えています。
○ ブロック塀等の撤去改修補助も、敷地内で使える場面がある
「ブロック塀等の撤去改修補助制度」は、道路・公園等に面している高さ1m以上のブロック塀・石塀・レンガ塀等が対象です(都市政策課)。
| 区分 | 補助額の計算 | 上限(1敷地あたり) |
|---|---|---|
| 撤去のみ | [撤去費 または 10,000円×塀の長さ]のいずれか少ない額の2/3 | 15万円 |
| 撤去し、フェンス等へ改修 | [撤去・改修費 または 38,300円×塀の長さ]のいずれか少ない額の2/3 | 30万円 |
マンションの敷地境界に古いブロック塀が残っている物件は、富士吉田市内にも珍しくありません。大規模修繕で足場やゴンドラの搬入経路を確保するタイミングは、こうした塀を見直す絶好の機会でもあります。申込は申込用紙に必要事項を記入のうえ都市政策課へ。対象者の要件が管理組合名義で満たせるかは、こちらも事前確認をおすすめします。
× 木造住宅の耐震化事業は、分譲マンションでは使えません
念のため明記しておきます。富士吉田市の「木造住宅の耐震化事業」は、対象住宅の条件として次を掲げています。
- 個人が所有し、かつその個人が主に居住している木造住宅
- 延べ床面積が300平方メートル以下
- 木造在来工法で建てられた2階建以下の住宅
- 昭和56年5月31日以前に着工し、建てられた住宅
- 長屋、共同住宅(及び借家)以外のもの
RC造・SRC造の分譲マンションは、この条件のいずれからも外れます。耐震診断は無料(令和8年度は30件の実施予定)、耐震改修事業は一戸当たり143万7,500円、耐震シェルター設置は上限54万円と手厚い制度ですが、共同住宅は明確に対象外です。「富士吉田市 耐震 補助」で検索してこのページに行き着き、期待して読み進めてしまう理事長さまがいらっしゃるので、先にお伝えしておきます。
× 中古物件改修支援奨励金も、居住中の分譲マンションには不向き
「中古物件改修支援奨励金」は改修費用の2分の1以下・最大50万円(改修時1回のみ)と、金額だけ見れば魅力的です。ただし対象者は「請求日から起算して1年以内に本市に転入したこと」「空き家・空き店舗バンクに登録された物件を改修し入居すること」が前提。移住・定住促進のための制度であり、居住中の分譲マンションの共用部工事には当てはまりません(ふるさと魅力推進課/2026年4月1日更新)。
なお、この制度も改修前の申請が前提で、奨励金の請求は改修終了後かつ申請年度内という縛りがあります。制度の性格は違っても、「着工前申請」「年度内完了」というルールは富士吉田市の補助制度に共通する作法だと理解しておくと、実務で迷いません。
柱1:マンション管理計画認定制度——富士吉田市では「まず市に確認」が正解
ここからが本題です。
マンション管理計画認定制度は、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、管理組合が地方公共団体から「適切な管理計画を持つマンション」として認定を受けられる制度です(根拠:マンションの管理の適正化の推進に関する法律)。国土交通省の「マンション管理計画認定制度」に制度全体がまとまっています。
富士吉田市で申請するときの、最初の分岐点
ここに、山梨県内のマンションに特有の注意点があります。
山梨県の公式ページ「マンション管理計画認定制度について」(2025年12月24日更新)には、こう書かれています。
認定を受けることができるのは、自治体が「マンション管理適正化推進計画」を作成している地域にあるマンションです。県(町村部にあるマンションのみ対象)では、令和4年4月1日から認定の受付を開始しました。
つまり、山梨県が受け付けているのは町村部のマンションのみ。富士吉田市は市ですから、県の窓口では申請できません。市が独自にマンション管理適正化推進計画を作成しているかどうかが、認定を受けられるかの分かれ目になります。
そして正直に申し上げます。富士吉田市がマンション管理適正化推進計画を作成しているか、認定申請の受付を行っているかは、私が公開情報を確認した範囲では明示を確認できませんでした。ここを「使えます」とも「使えません」とも断定はしません。
理事会として取るべき最初の一手は、シンプルです。
富士吉田市役所 都市政策課(都市基盤部)/代表 0555-22-1111
「分譲マンションの管理計画認定制度について、市で申請を受け付けていますか」と電話で確認する。
電話1本、5分で終わります。この確認を先送りにしたまま長期修繕計画の見直しに入ってしまうと、後から認定要件に合わせて計画を作り直すことになり、余計な手戻りが発生します。私はいつも理事長さまに「認定を取る/取らないを決める前に、取れるのかどうかだけ先に確かめましょう」とお伝えしています。
参考:山梨県の認定申請手数料(町村部の場合)
富士吉田市の手数料体系は市が定めるため県とは異なりますが、金額感の目安として県の数字を挙げておきます。
| 区分 | 適合証あり | 適合証なし |
|---|---|---|
| 認定(更新)申請手数料(長期修繕計画1つ) | 3,600円 | 25,500円 |
| 長期修繕計画が2以上ある場合 | 1計画あたり1,600円加算 | 1計画あたり14,700円加算 |
| 変更認定申請手数料 | 適合証なしの額の1/2(100円未満切捨て) | 同左 |
注目していただきたいのは、適合証があるかないかで7倍近い差が出ている点です。適合証とは、公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」で事前確認を受けると発行されるもの。実務としては、この事前確認を通してから行政に申請するのが王道です。山梨県も「1の方法(適合証を受けてから申請)を原則としています」と明記しています。
認定を取ると、何が変わるのか
認定は「賞状」ではありません。実利があります。
- 住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資で金利引下げの対象になる
- マンションすまい・る債で利率上乗せの対象になる
- 長寿命化促進税制の要件(管理計画の認定または助言・指導)を満たす経路になる
- 売買時に「管理が良好なマンション」として市場で評価されやすくなる
4つ目は、区分所有者の資産価値そのものに関わります。中古マンションの購入検討者が、管理状態を見て判断する時代になりました。私が関わった物件でも、認定取得後に「管理がしっかりしている物件だから」と成約が早まったという話を、仲介会社さんから聞いたことがあります。
柱2:マンション長寿命化促進税制——期限は令和9年3月31日
大規模修繕を実施した年の翌年度、建物の固定資産税が減額される制度です。国土交通省の「マンション税制」に制度概要がまとまっています。
制度の骨格
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象工事の完了期限 | 令和5年4月1日〜令和9年3月31日に完了する大規模修繕等 |
| 減額される税 | 翌年度分の建物(家屋)の固定資産税 |
| 対象範囲 | 居住用専有部分、1戸あたり100平方メートル相当分まで |
| 適用回数 | 1回限り |
| 減額割合 | 市町村の条例で定める(参酌基準1/3、1/6〜1/2の範囲) |
富士吉田市の減額割合は「市に確認」が前提
減額割合は市町村の条例で決まります。東京23区や小田原市のように1/2を採用する自治体もあれば、高崎市・太田市・佐野市のように1/3の自治体もあります。富士吉田市が何分の1を採用しているかは、公開情報から確認できませんでしたので、ここも断定しません。
確認先は富士吉田市役所 税務課(代表 0555-22-1111)です。着工前に、次の3点をまとめて聞いてください。
- 富士吉田市の減額割合は何分の1か
- 申告期限はいつまでか(工事完了後3か月以内としている自治体が多い)
- 必要書類は何か(証明書の発行に日数がかかることがある)
適用要件のチェックリスト
一般的な要件は次のとおりです。自分の組合が該当するか、理事会で1つずつ確認してみてください。
- 築20年以上が経過している
- 10戸以上のマンションである
- 過去に1回以上の長寿命化に資する修繕工事を実施している
- 修繕積立金が一定の基準以上に引き上げられている(管理計画の認定、または助言・指導を受けていること)
- 屋根防水・床防水・外壁塗装等を一体的に実施した工事である
- 工事完了後、期限内に市へ申告している
耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修の減額措置とは重複適用できない点にもご注意ください。どれを選ぶかで有利不利が変わります。団地型マンションの場合は、工事を行った当該棟のみが対象になるのが通例です。
なお、2026年度の税制改正で床面積の条件に変更があったという情報を目にしましたが、私が公的な一次情報で確認しきれていないため、この記事では断定を避けます。申告の際は、国土交通省の最新ページと市の窓口で現行の要件をご確認ください。
柱3:住宅金融支援機構の融資と債券——理事長個人の保証は不要です
積立金が足りない。しかし工事は待ってくれない。この場面で、私がいつもご案内しているのが住宅金融支援機構の制度です。
マンション共用部分リフォーム融資
管理組合が管理組合名義で借りられる、全期間固定金利の融資です(詳細:住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資)。
理事長さまが最も気にされるのは「私が個人で保証するのか」という点です。答えは、公益財団法人マンション管理センターの債務保証を利用すれば、理事長個人の連帯保証は不要になります。ここを知らずに借入をためらう組合が、まだ多い。
そして管理計画認定を取得していると、返済期間や金利の面で優遇の対象になります。柱1と柱3が、ここでつながります。金利は毎月見直されるため具体的な数字は挙げませんが、機構のサイトで当月の適用金利を確認できます。
マンションすまい・る債
こちらは借りるのではなく、積立金を有利に積む制度です(マンションすまい・る債)。管理組合が積立金を債券で運用する仕組みで、管理計画認定を取得している組合向けの「認定すまい・る債」では利率の上乗せがあります。
修繕積立金は、放っておけばインフレで実質的に目減りしていきます。「安全に置いておく」だけでは守れない時代になりました。募集期間は毎年度決まっているため、機構のサイトで年度ごとの日程をご確認ください。
柱4:国の住宅省エネ2026キャンペーンをどう使うか
2026年度も、国土交通省・経済産業省・環境省の3省連携による「住宅省エネ2026キャンペーン」が動いています。構成は「みらいエコ住宅2026事業」「先進的窓リノベ2026事業」「給湯省エネ2026事業」「賃貸集合給湯省エネ2026事業」の4本柱です。
管理組合の目線で整理すると、こうなります。
| 事業 | 分譲マンション共用部との関係 |
|---|---|
| 先進的窓リノベ2026事業 | 開口部(窓)の断熱改修が対象。共用部扱いの窓を管理組合として一括改修する場合、活用の余地がある |
| みらいエコ住宅2026事業 | 断熱改修等が対象。要件は事業ごとに細かく異なる |
| 給湯省エネ2026事業 | 高効率給湯器の設置。専有部の設備が中心 |
| 賃貸集合給湯省エネ2026事業 | 賃貸集合住宅向け。分譲マンションの管理組合とは前提が異なる |
富士吉田市は標高が高く、冬の冷え込みが厳しい土地です。窓の断熱性能が住み心地と光熱費に直結します。大規模修繕でサッシまわりのシーリングを打ち替えるタイミングは、窓の断熱改修を同時に検討する好機でもあります。ただし各事業は登録事業者を通じた申請が必要で、予算に達し次第受付終了となる仕組みですから、年度の早い段階で動くのが定石です。
富士吉田市の気候と、大規模修繕の「やるべき時期」
ここからは補助金の話を離れて、私の本業の話をさせてください。制度をどれだけ調べても、工事のタイミングを外すと費用は膨らみます。
富士吉田市は富士山北麓、標高おおむね650〜850メートルに市街地が広がる高冷地です。同じ山梨県でも、甲府盆地とは建物への負荷がまったく違います。
富士吉田の建物に効いてくる3つの気候要因
1. 凍結融解(とうけつゆうかい)
昼間に融けた水が夜に凍り、体積が膨らんでコンクリートやモルタルを内側から押し広げる現象です。これが冬の間、毎日繰り返される。私の経験上、富士北麓の物件は関東平野部の同築年数の物件と比べて、外壁のひび割れ(クラック)の進行が明らかに速い。ひび割れから水が入り、凍り、さらに広がる。この悪循環が、富士吉田市のマンションにとって最大の敵です。
2. 強い紫外線
標高が高いぶん、紫外線量が多くなります。屋上防水のウレタン・シート、外壁の塗膜、シーリング材——どれも紫外線で劣化が進みます。特に南面と屋上は、平地の物件より早く傷むと考えたほうがいい。
3. 積雪と融雪水
屋上やバルコニーに積もった雪は、融けながら排水経路に流れ込みます。ドレン(排水口)が詰まっていれば、水は逃げ場を失って滞留する。滞留した水が凍る。防水層が押し上げられる。冬明けに膨れやふくらみが見つかる物件は、たいていこのパターンです。
一方で、海から遠いため塩害はほとんど心配ありません。この点は沿岸部の物件より恵まれています。
工事に向く季節、向かない季節
| 時期 | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| 4月下旬〜6月中旬 | ◎ 最適 | 気温が安定し、塗料・防水材の乾燥条件が良い |
| 6月下旬〜7月中旬 | △ | 梅雨の降雨で工程が延びやすい |
| 7月下旬〜8月 | ○ | 高地のため平地より作業環境は良好。ただし夕立に注意 |
| 9月〜10月中旬 | ◎ 最適 | 空気が乾き、仕上がりが安定する |
| 10月下旬〜11月 | △ | 朝晩の低温で塗料・防水材の施工可能温度を下回る日が出る |
| 12月〜3月 | × 不適 | 凍結・積雪により、多くの防水・塗装工事が施工不可 |
富士吉田市で大規模修繕を計画するなら、春(4月下旬〜6月中旬)か秋(9月〜10月中旬)に工期の山を持ってくるのが基本です。逆算すると、総会での議決は前年秋か、その年の初春。この段取りを外すと1年待つことになります。
現場のエピソード:畳1枚の膨れが、1年で数倍になった話
数年前、寒冷地の物件で屋上防水の膨れを見つけたことがあります。大きさは畳1枚ぶんほど。理事会では「来年度の予算でやりましょう」となりました。判断としては、ごく普通です。
ところが翌年、同じ場所を見に行くと、膨れは数倍に広がり、最上階の天井にシミが出ていました。冬の間に水が入って凍り、防水層を押し上げ、さらに水の通り道を広げていたのです。防水層の張り替えだけで済むはずが、下地のコンクリートまで水が回り、下地補修を含む工事になりました。費用は当初見積りの数倍です。
私が現場で20年やってきて、一番悔しい思いをするのはこういう場面です。あのとき応急処置だけでもしていれば、と。防水の不具合は、寒冷地では1シーズンで様相が変わります。富士吉田市で「膨れ」「浮き」「シミ」を見つけたら、冬を越させないでください。
補助金より効く話:3つの工法から選べるということ
正直に申し上げます。補助金や税制で動く金額より、工法の選択で動く金額のほうが大きいことが少なくありません。
大規模修繕の総工費のうち、仮設足場が占める割合はおおむね15〜25%です。5,000万円の工事なら、750万〜1,250万円が足場代ということになります。ここに手を入れられるかどうかは、決して小さな話ではありません。
3工法の比較
| 工法 | 仮設費 | 工期 | 居住者への影響 | 向いている建物 |
|---|---|---|---|---|
| 通常足場工法 | 大(総工費の15〜25%) | 長い | 全面に足場・養生シート。日照・通風・防犯面の負担が大きい | 中低層、複雑な形状、全面的な打診・補修が必要な建物 |
| ロープアクセス工法(無足場工法) | 小 | 短い | 足場を架けないため生活影響が小さい | 高層、敷地に余裕がない、部分補修が中心の建物 |
| ハイブリッド工法 | 中 | 中 | 必要な面だけ足場を架ける | 大規模・複雑で、総合的なコスト最適化が要る建物 |
ロープアクセス工法は、産業用ロープで作業員が建物の外壁を上下しながら施工する無足場工法です。足場を架けないぶん仮設費が抑えられ、工期も短くなります。何より、居住者の生活への影響が小さい。バルコニーが足場とシートで覆われる数か月間のストレスを経験された方なら、この差の意味がおわかりいただけると思います。ロープアクセス工法の技術情報や安全基準については、姉妹サイト「ロープアクセスドットコム」に詳しくまとめています。
一方で、ロープアクセスが万能というわけではありません。外壁全面の打診調査が必要な場合、大量の材料を扱う工事、複雑な形状の建物では、足場のほうが適していることもあります。だからこそ建物ごとに最適な工法を選べることに意味があるのです。明誠が3つの工法をすべて自社で提案できる体制を取っているのは、そのためです。
弊社の大規模修繕工事のご紹介、ロープアクセス工法のご紹介、大規模修繕を適正価格で行う考え方、管理組合さま向けサービスもあわせてご覧ください。
モデルケース1:富士山駅周辺・築25年・11階建て48戸
- 従来の全面足場工法での見積り:9,000万円
- ハイブリッド工法(低層部は足場、高層部と部分補修はロープアクセス):7,800万円
- 差額:1,200万円(1戸あたり約25万円)
工期も約3週間短縮できました。総会で「1戸25万円の差」と説明すると、議論の空気が変わります。
モデルケース2:郊外・築40年超・5階建て18戸
- 従来工法での見積り:3,200万円
- ロープアクセス主体での見積り:2,600万円
- 差額:600万円(1戸あたり約33万円)
さらにこの組合では、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資を併用し、一時金の徴収をゼロに抑えました。
※上記は工法比較の考え方を示すための試算例です。実際の金額は建物の形状・劣化状況・仕様によって変わります。お問合せフォームからご相談いただければ、現地調査のうえで具体的な数字をお出しします。
修繕積立金が足りないとき、理事会が取れる4つの手
「そもそも積立金が足りない」。これが、富士吉田市に限らず全国の管理組合が抱える最大の悩みです。私が理事会でご提案しているのは、次の4つです。
1. 工法の見直しで工事費そのものを下げる
前章のとおりです。まず金額の分母を小さくする。ここから始めるのが順序として正しい。
2. 工事範囲の優先順位づけ
「今回やるべきこと」と「次回に回せること」を仕分けます。屋上防水と外壁の躯体補修は先送りが致命傷になりますが、共用廊下の美観改修は次回に回せることもある。劣化診断の結果をもとに、技術的な根拠を持って線を引くことが肝心です。
3. 住宅金融支援機構の融資を使う
一時金の徴収は、区分所有者の合意形成が最も難航するポイントです。融資を使えば、月々の積立金の範囲内で返済していく形にできます。理事長個人の保証も不要です。
4. 積立金の段階的な引上げ
痛みを伴う話ですが、避けて通れません。ただし、これは長寿命化促進税制の要件(積立金の引上げ)にもつながります。「値上げのお願い」ではなく「税制優遇と将来の安心を得るための計画的な見直し」として提案すれば、総会での受け止められ方が変わります。
2026年4月施行の改正区分所有法——決議のハードルが下がりました
2026年に管理組合が知っておくべき最大の制度変更が、改正区分所有法の施行(令和7年法律第47号、2026年4月1日施行)です。約20年ぶりの大きな改正でした。
管理組合にとって実務的に効いてくるのは、次の点です。
- 共用部分の大規模修繕等の決議要件が、集会に出席した区分所有者を母数とする形へ緩和された
- 欠席者・無回答者は母数から除外される
- 所在不明の区分所有者は、裁判所の関与のもとで母数から除外する手続きが整備された
これまで「区分所有者全体の頭数」を母数としていたため、賃貸化が進んで所有者と連絡が取れない住戸が増えると、決議そのものが不可能になる組合がありました。富士吉田市のように観光地を抱え、セカンドハウスや投資用の所有が一定数あり得る地域では、この改正の恩恵は小さくありません。
「出席率が低くて総会で決められなかった」という理由で修繕を先送りしてきた組合は、もう一度、決議の可能性を検討する価値があります。
逆算カレンダー:総会の18か月前から動く
大規模修繕は、思い立ってから着工まで、通常1年半ほどかかります。富士吉田市のように施工可能期間が限られる地域では、この段取りがなおさら重要です。
| 着工までの期間 | やること |
|---|---|
| 18か月前 | 劣化診断・建物調査の実施を理事会で決定。アスベストの有無の確認もこの段階で。長期修繕計画の見直しに着手 |
| 12か月前 | 診断結果をもとに工事範囲・工法の方向性を決定。複数社から概算見積りを取得。市の補助制度・税制の適用可否を窓口に確認 |
| 9か月前 | 資金計画の確定(積立金・一時金・融資の組み合わせ)。管理計画認定を目指す場合は申請準備 |
| 6か月前 | 施工会社の選定。総会での議決 |
| 3か月前 | 契約締結、着工前説明会、居住者への周知 |
| 着工 | 春(4月下旬〜6月中旬)または秋(9月〜10月中旬)に工期の山を設定 |
補助金の申請は「着工前」が原則です。このカレンダーの12か月前〜6か月前の間に窓口確認を済ませておくことが、制度を取りこぼさないコツです。
相見積りで失敗しないための3つのポイント
複数社から見積りを取るのは当然ですが、そのまま金額だけを比べても意味がありません。私が理事会でお伝えしている3点です。
1. 数量を揃える
外壁補修の数量(ひび割れの延長メートル、欠損部の平方メートル)が各社バラバラなら、金額の比較は成立しません。共通の数量表を作り、それに基づいて見積りを出してもらってください。
2. 仕様を揃える
塗料のグレード(アクリル・ウレタン・シリコン・フッ素)、防水の工法(ウレタン塗膜・塩ビシート・アスファルト)で単価は大きく変わります。「安い会社」ではなく「安い仕様」だっただけ、というケースは本当に多い。
3. 「別途」の中身を確認する
見積書の末尾に「〇〇は別途」と書かれている項目こそ、後から膨らむ部分です。仮設電気・仮設水道・産業廃棄物処理費・下地補修の数量増——ここが空欄の見積りは、比較の土俵に乗りません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 富士吉田市に、マンションの大規模修繕に直接使える補助金はありますか?
A. 共用部の大規模修繕そのものへの直接補助は、公開情報では確認できませんでした。ただし、アスベストの含有量調査(調査費全額・限度額15万円)と除去等(対象経費の2/3・上限400万円)の補助制度があり、共用部にも接点があり得ます。都市政策課へ事前相談を。
Q2. アスベスト補助は、管理組合の名義で申請できますか?
A. 市のページでは対象者の詳細まで確認できませんでした。市は「補助対象範囲等の確認のため、事前にご相談ください」と案内していますので、配置図・平面図・現況写真を持って都市政策課へご相談ください。補助決定前に着手すると交付されない点にご注意ください。
Q3. 富士吉田市で管理計画認定の申請はできますか?
A. 山梨県が受け付けているのは町村部のマンションのみで、市部は各市が主体となります。富士吉田市の受付状況は公開情報で確認できませんでしたので、まず都市政策課(代表 0555-22-1111)へ電話でご確認ください。
Q4. 長寿命化促進税制の減額割合は、富士吉田市では何分の1ですか?
A. 減額割合は市町村の条例で定まります(参酌基準1/3、1/6〜1/2の範囲)。富士吉田市の割合は公開情報で確認できませんでしたので、税務課へ着工前にご確認ください。
Q5. 木造住宅の耐震補助は、マンションでも使えますか?
A. 使えません。富士吉田市の木造住宅耐震化事業は「木造在来工法で2階建以下」「長屋、共同住宅(及び借家)以外」が条件で、RC造・SRC造の分譲マンションは対象外です。
Q6. 積立金が足りません。工事を先送りすべきでしょうか?
A. 富士吉田市のような寒冷地では、防水・外壁の不具合を放置すると1シーズンで劣化範囲が広がり、費用がかえって膨らみます。工法の見直し、工事範囲の優先順位づけ、住宅金融支援機構の融資を組み合わせて、着手できる形を作ることをおすすめします。
Q7. ロープアクセス工法は、どんな建物に向いていますか?
A. 高層、敷地に余裕がない、部分補修が中心の建物に適しています。逆に外壁全面の打診調査が必要な場合や、大量の材料を扱う工事では足場のほうが適することもあります。建物ごとの判断が必要です。
Q8. 2026年の法改正で、何が変わりましたか?
A. 改正区分所有法が2026年4月1日に施行され、共用部分の大規模修繕等の決議要件が「集会に出席した区分所有者を母数とする形」へ緩和されました。所在不明の区分所有者を裁判所の関与のもとで母数から除外する手続きも整備されています。
この記事のポイントまとめ
- 富士吉田市に共用部大規模修繕への直接補助は確認できず、国の制度と工法で組み立てる
- 市のアスベスト補助(調査費全額・除去等は2/3上限400万円)は共用部にも接点があり得る
- 木造住宅耐震化事業は「共同住宅以外」が条件で、分譲マンションは対象外
- 管理計画認定は山梨県が町村部のみ受付。市部は富士吉田市への確認が第一歩
- 標高が高く凍結融解が厳しい土地柄、防水の不具合は冬を越させないこと
- 足場を工法で削れば、48戸規模で1,000万円超の差が出ることもある
執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)
株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法(無足場工法)と従来足場工法、その両方を組み合わせたハイブリッド工法を提案できる改修会社です。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟することで、高品質と適正価格を両立しています。
最終更新:2026年8月16日
富士吉田市の理事長さま・理事の皆さまへ。補助金の有無だけで工事の可否を決めてしまうのは、もったいない話です。この土地は建物への負荷が大きいぶん、早く手を打った組合ほど、生涯コストが軽くなります。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。
※本記事に記載した制度の内容・金額・期日は、2026年8月16日時点で公開されている情報にもとづきます。制度は変更される可能性がありますので、申請前に各窓口の最新情報をご確認ください。
出典・参考資料
- 富士吉田市「住宅支援」
- 富士吉田市「アスベストに関する補助制度」(都市政策課/2025年3月27日更新)
- 富士吉田市「ブロック塀等の撤去改修補助制度」(都市政策課/2025年3月27日更新)
- 富士吉田市「木造住宅の耐震化事業」(都市政策課/2025年3月27日更新)
- 富士吉田市「中古物件改修支援奨励金」(ふるさと魅力推進課/2026年4月1日更新)
- 山梨県「マンション管理計画認定制度について」(2025年12月24日更新)
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」
- 国土交通省「マンション税制(長寿命化促進税制)」
- 住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資等の融資金利」
- 住宅金融支援機構「マンションすまい・る債」
- 公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」
- 国土交通省ほか「住宅省エネ2026キャンペーン」
- 姉妹サイト「ロープアクセスドットコム」

