小田原市のマンションで使える補助金・支援制度まとめ【2026年度版】|大規模修繕前に管理組合が知るべきこと

「うちのマンション、そろそろ二回目の大規模修繕なんだが、小田原市から補助金は出ないのか」——先日、小田原市内の築22年・48戸のマンションで理事長さまから、開口一番こう聞かれました。総会で修繕積立金の値上げ議案を出したものの、住民から「補助金を使えば値上げしなくて済むのでは」という声が上がって板挟みになっている、というご相談でした。

私は大規模修繕の現場に20年近く携わってきましたが、この「補助金は出ないのか」という問いほど、答え方の難しいものはありません。なぜなら、正直に申し上げると、小田原市にはマンションの大規模修繕工事そのものに直接お金が出る補助金は、現時点では用意されていないからです。

ただし、です。ここからが本題です。「工事費の補助金がない」ことと「使える支援制度がない」ことは、まったく別の話です。固定資産税が安くなる制度、無料で専門家を呼べる制度、融資の金利が下がる制度——お金の出方が違うだけで、管理組合の負担を確実に軽くする仕組みは、小田原市にもきちんと存在します。

この記事では、小田原市のマンション管理組合・区分所有オーナーが2026年度(令和8年度)に実際に使える支援制度を、私が現場で説明するときの順番でひとつずつ整理します。読み終えるころには、次の理事会で何を議題に乗せればいいかが見えるはずです。


まず結論:小田原市のマンションが使える支援は「6つ」

細かい説明に入る前に、全体像をお見せします。小田原市のマンション(分譲・区分所有)に関係する公的支援は、大きく次の6つです。

# 制度名 何が得になるか 窓口
① マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額) 大規模修繕の翌年度、建物部分の固定資産税が1/2減額 小田原市 資産税課
② マンションの管理計画認定制度 フラット35・共用部リフォーム融資の金利引下げ、資産価値の評価向上 小田原市 都市政策課
③ 神奈川県マンションアドバイザー派遣事業 専門家(マンション管理士・建築士など)を無料で派遣 神奈川県
④ 小田原市分譲マンション管理相談 マンション管理士による無料相談 小田原市 都市政策課
⑤ 地域経済循環型住宅リフォーム支援事業 市内業者で工事すると抽選で3万円相当の地場産品等 小田原市 産業政策課
⑥ マンション共用部分リフォーム融資(住宅金融支援機構) 管理組合向けの低利・長期融資 住宅金融支援機構

ポイントは、①〜④が「お金を直接もらう」のではなく「税金を減らす」「無料で専門家を使う」「金利を下げる」という支援だということ。派手さはありませんが、戸あたりに換算すると決して小さくありません。順番に見ていきましょう。


① マンション長寿命化促進税制——大規模修繕の「ごほうび」は固定資産税

私がいま、小田原のマンション管理組合に最初にお伝えしているのが、このマンション長寿命化促進税制です。正式には「長寿命化に資する大規模の修繕等を行ったマンションに係る固定資産税の減額制度」といいます。少し長いので、本記事では「長寿命化促進税制」と呼びます。

これは国の制度を小田原市が実施しているもので、一定の条件を満たすマンションが長寿命化工事(外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事)を完了すると、翌年度の建物部分の固定資産税が2分の1減額されるというものです(出典:小田原市「長寿命化に資する大規模の修繕等を行ったマンションに係る固定資産税の減額制度」)。

対象になるのはどんなマンションか

小田原市の案内によると、対象となるマンションの主な要件は次のとおりです。

  • 新築された日から20年以上が経過し、総戸数が10戸以上であること
  • 過去に1回以上、長寿命化工事(外壁塗装等・床防水・屋根防水)を適切に行っていること
  • 長寿命化工事を適切に実施するために必要な修繕積立金が確保されていること

3つ目の「修繕積立金が確保されていること」が肝です。具体的には、(ア)市の認定を受けた管理計画認定マンションのうち、認定の際に基準へ適合させるため令和3年9月1日以降に修繕積立金を引き上げた場合、または(イ)市から助言・指導を受けて長期修繕計画を見直し、修繕積立金を積み増した場合、のいずれかが必要です。つまり、後ほど説明する②管理計画認定とセットで考えると話が早い、ということです。私はこれを、必ずワンセットでご提案するようにしています。

減額される範囲と期間

減額されるのは、居住用部分の床面積(一戸あたり100平方メートル相当分まで)にかかる固定資産税の2分の1です。期間は工事が完了した年の翌年度分の1年間。なお、都市計画税には減額はありません。

仮に一戸あたりの建物分固定資産税が年8万円のマンションなら、その年だけで一戸あたり約4万円、50戸なら単純計算で約200万円が軽くなる規模感です(実際の税額は評価額により異なります)。1回しか受けられない制度ですが、二回目・三回目の大規模修繕のタイミングに合わせれば、修繕積立金の負担感をやわらげる材料になります。

ここが落とし穴——申告期限は「工事完了から3か月以内」

正直に申し上げます。この制度で一番もったいないのが、申告のし忘れです。申告期限は工事完了から3か月以内。しかも対象期間は「令和5年4月1日から令和9年3月31日までに工事が完了したもの」と区切られています(同上)。耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修による減額とは同時に使えない点も要注意です。

工事のスケジュールを組む段階から、施工会社と税理士、そして市の資産税課(電話0465-33-1371)に動きを共有しておく。これだけで取りこぼしは防げます。私たちのような施工側も、工事完了証明書の発行を含めて段取りでお手伝いできる部分です。


② マンションの管理計画認定制度——「ちゃんと管理してます」を市のお墨付きに

次がマンションの管理計画認定制度です。これは、適切な管理が行われているマンションの管理計画を市が認定する制度で、令和4年4月にスタートした比較的新しい仕組みです(出典:小田原市「マンションの管理計画認定制度について」)。

認定を受けるには、マンション管理に関する16項目の基準を満たし、事前に管理組合の集会で認定申請の決議を得ておく必要があります。基準には、管理者等が定められていること、年1回以上の総会開催、修繕積立金が長期修繕計画に照らして適切に設定されていること、などが含まれます。

認定を取ると何がうれしいのか

認定マンションになると、次のようなメリットがあります。

  • 住宅金融支援機構の融資金利が引き下げられる(フラット35、マンション共用部分リフォーム融資)
  • 「適切に管理されたマンション」として、中古市場での評価につながる
  • 前述の①長寿命化促進税制の要件(修繕積立金の確保)を満たしやすくなる

申請は市に直接出すのではなく、まず(公財)マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」で、講習を修了したマンション管理士による事前確認を受け、適合証を得たうえで申請する流れです。一連の手続きはオンライン上で行います。システム使用料と事前確認審査料がかかる点は、あらかじめ予算に入れておきましょう。

理事長さまには、「認定は手間がかかるけれど、一度取れば資産価値と資金調達の両面で効く投資です」とお伝えしています。窓口は小田原市 都市政策課(電話0465-33-1307)です。


③ 神奈川県マンションアドバイザー派遣事業——専門家を「無料で」呼べる

「修繕の見積もりが妥当か、第三者の目で見てほしい」「長期修繕計画の見直し方が分からない」——こうしたとき、まず使ってほしいのが神奈川県のマンションアドバイザー派遣事業です。

これは、神奈川県内の分譲マンションの管理組合などに、マンション管理士や建築士などの専門家を無料で派遣する制度です(出典:神奈川県「マンションアドバイザー派遣事業」)。管理運営の悩みから大規模修繕の進め方まで、幅広く相談できます。

ひとつ注意点があります。この県の事業は、独自に同種の制度を持つ横浜市・川崎市・相模原市・横須賀市を対象から除いています。裏を返せば、小田原市は対象に含まれるということです。小田原のマンションにとっては、まさに使える制度です。

私は施工会社の立場ですが、第三者のアドバイザーが入ることをむしろ歓迎しています。中立の専門家が「この修繕仕様は妥当」「この時期にやるべき」と整理してくれると、その後の工事提案も住民の納得感が段違いになるからです。


④ 小田原市分譲マンション管理相談——市の窓口でも無料で聞ける

県の派遣事業とあわせて知っておきたいのが、小田原市が独自に開いている分譲マンション管理相談です。マンション管理士が、管理組合の運営全般、規約の見直し、大規模修繕、長期修繕計画の見直し、日常のトラブルなどの相談を無料で受け付けています(出典:小田原市「住情報」内の分譲マンション管理相談)。

開催日が決まっている予約制の相談ですので、「総会の前に論点を整理したい」「役員のなり手がいなくて困っている」といった段階でも、気軽に使えます。③の県の派遣が「専門家にマンションへ来てもらう」のに対し、④は「まず窓口で相談する」イメージです。状況に応じて使い分けてください。


⑤ 地域経済循環型住宅リフォーム支援事業——市内業者で工事すると地場産品が当たる

少し毛色の違う支援が、産業政策課が所管する地域経済循環型住宅リフォーム支援事業です。これは市民の消費を促し地域経済を活性化させることを目的に、市内の施工業者で住宅リフォームを行った市民を対象に、抽選で地場産品等を進呈する制度です(出典:小田原市「令和7年度地域経済循環型住宅リフォーム支援事業について」)。

令和7年度は、支援件数65件(上限超過時は抽選)、内容は地場産品等と食事券の組み合わせで3万円相当、申請期間は令和7年6月2日〜10月31日でした。申請書には住宅の種類として「マンションなど」の選択肢があり、マンションのリフォームも対象に含まれます。

金額としては大きくありませんが、ポイントは「市内業者を使うことが条件」だという点です。地元の専門業者に発注することで地域にお金が回り、こうしたささやかな還元も受けられる。私は、地域に根ざした施工体制の価値が、こういう制度にも表れていると感じています。なお、2026年度(令和8年度)も同様の事業が実施されるかは、年度ごとに小田原市の公式サイトで最新情報をご確認ください。


⑥ マンション共用部分リフォーム融資——「借りる」という選択肢

補助金や減税で足りない分は、借りるという手もあります。住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資は、管理組合が共用部分の修繕工事のために利用できる、長期・固定金利の融資制度です(出典:小田原市「住情報」からのリンク先)。

修繕積立金が一時的に不足しても、工事の先送りはむしろ建物の傷みを進め、後の費用を膨らませます。私が現場で20年やってきて一番悔しい思いをするのは、「あと2年早く手を打っていれば、これほどかからなかった」という劣化を見たときです。融資を上手に使い、必要な時期に必要な工事を行うことも、長い目で見た資産防衛になります。

しかも前述の②管理計画認定を受けていれば、この融資の金利が引き下げられる。①②③が単独ではなく、つながっているのがお分かりいただけると思います。


すべての支援の「土台」は、長期修繕計画と修繕積立金

ここまで6つの制度を見てきて、勘のいい理事長さまならお気づきだと思います。①の固定資産税減額も、②の管理計画認定も、根っこにあるのは同じ条件——「修繕積立金が、長期修繕計画に照らして適切に確保されているか」です。逆に言えば、ここが整っていないと、せっかくの制度がどれも使えません。

私が現場でお会いする管理組合の多くは、ここでつまずきます。よくあるのが次の3つです。

  • 修繕積立金が「均等積立」になっておらず、段階増額方式のまま値上げのタイミングを逃している
  • 長期修繕計画が10年以上見直されておらず、物価上昇後の工事費に追いついていない
  • 二回目の大規模修繕で、給排水管の更生・更新という大きな費用が見えていなかった

特に近年は資材費・人件費の上昇で、5年前の長期修繕計画の見積額では足りないケースが目立ちます。私の経験上、築20年を超えたマンションは、まず長期修繕計画を最新の単価で引き直すことが、すべての出発点になります。計画を引き直し、必要な積立水準を住民に説明し、合意形成する。この順番を踏んでおけば、①の税制要件(修繕積立金の確保)も②の認定基準も自然と満たせるようになります。

実際、私が小田原で関わった現場でも、長期修繕計画を最新単価で引き直したところ、当初の積立計画では二回目の大規模修繕の途中で資金がショートする見込みだったことが判明したマンションがありました。早めに気づけたおかげで、無理のない範囲での段階的な積立改定と、工法の見直しによるコスト圧縮で乗り切れました。計画の引き直しは、住民にとっては耳の痛い「値上げの話」になりがちですが、根拠となる数字と外部専門家の裏づけがあれば、総会での合意は決して不可能ではありません。むしろ、何も示さずに値上げだけを求めるほうが、住民の反発を招きます。

国土交通省は、長期修繕計画の標準的な様式や、修繕積立金の目安となるガイドラインを公表しています(出典:国土交通省「マンション管理について(標準管理規約・各種ガイドライン)」)。「うちの積立金は高いのか安いのか」を判断する物差しとして、一度目を通しておく価値があります。そしてこの引き直しこそ、③④の無料専門家相談がもっとも力を発揮する場面です。


小田原のマンションが取るべき進め方ロードマップ

「制度は分かった。で、何から手をつければいいのか」——最後に、私が理事会でお伝えしている現実的な順番を、ロードマップとして整理します。

  1. 【1〜2か月目】現状把握:直近の長期修繕計画と修繕積立金の残高・徴収額を確認する。前回の大規模修繕からの経過年数と、次回の想定時期を洗い出す。
  2. 【2〜3か月目】無料相談を使う:③神奈川県アドバイザー派遣、または④小田原市の管理相談を予約し、長期修繕計画の妥当性を第三者にチェックしてもらう。
  3. 【3〜6か月目】計画の引き直しと合意形成:最新単価で長期修繕計画を更新し、必要なら修繕積立金の改定案を総会に諮る。ここで②管理計画認定の取得も視野に入れる。
  4. 【6〜12か月目】工事の発注準備:複数社から見積もりを取り、工法(足場・ロープアクセス・ハイブリッド)を比較する。市内業者を使う場合は⑤地域リフォーム支援の申請期間も確認。
  5. 【工事〜完了後3か月】税制の申告:工事完了後、①長寿命化促進税制の申告を3か月以内に資産税課へ。完了証明書などの書類は施工会社と連携して準備する。

このロードマップで大事なのは、「工事を決めてから制度を探す」のではなく、「制度から逆算して工事計画を組む」という発想の転換です。順番を逆にするだけで、使える支援の数が変わります。


【正直な話】木造耐震補助は手厚いが、マンションは対象外

ここはあえて、はっきりお伝えします。小田原市には木造住宅耐震診断費補助金・木造住宅耐震改修費補助金があり、令和8年度の申請受付も始まっています。診断費は一戸建てで上限9万円、改修費は工事費の2分の1で上限85万円(要配慮者世帯は115万円)と、かなり手厚い内容です(出典:小田原市「木造住宅耐震診断費・耐震改修費補助金」)。

ただし、この補助の対象は昭和56年5月31日以前に着工した、地上2階建て以下の木造住宅です。鉄筋コンクリート造の分譲マンションは対象になりません。「耐震の補助があると聞いた」というご相談をよく受けますが、それは木造向けの制度であって、マンションには使えない——この線引きを誤ると総会で混乱します。マンションの場合は、①〜⑥の制度で組み立てるのが現実的です。

なお小田原市は、活断層である国府津-松田断層帯を抱える地域です。地震リスクが相対的に高い土地だからこそ、建物の維持管理と長期修繕計画は、資産価値の問題であると同時に、住民の安全の問題でもあります。


補助金・税制を「最大限」活かすには、工法選びが効く

ここまで制度の話をしてきましたが、最後に施工側の人間として一つだけ。同じ大規模修繕でも、工法の選び方で総額は大きく変わります。 補助金で数十万円を取りに行くのと並行して、工事そのもののコストを最適化する視点を、ぜひ持ってください。

大規模修繕の工法には、大きく3つあります。

  • 通常の足場仮設工法:建物全体に仮設足場を架ける従来型。複雑な形状や全面的な改修に向く一方、足場の架設・撤去に相応の費用と工期がかかります。
  • ロープアクセス工法(無足場工法):産業用ロープで作業員が懸垂下降して施工する方法。足場を架けないため足場費を抑えられ、工期も短縮しやすく、居住者の生活への影響(目隠し・防犯面の不安・駐車場制限など)も小さく抑えられます。高層部や、足場を架けにくい立地で特に強みを発揮します。
  • ハイブリッド工法:足場とロープアクセスを部位ごとに使い分ける方法。たとえばバルコニー側は足場、外壁の一部はロープ、と最適配分することで、総コストと工期のバランスを取ります。

私たちは、この3つを建物の形状・立地・劣化状況に応じて使い分け、建物にとって本当にベストな工法をご提案しています(詳しくはロープアクセス工法のご紹介、大規模修繕工事のご紹介をご覧ください)。足場代が浮けば、その分を本当に必要な防水・タイル補修に回せます。補助金・減税で「もらう」工夫と、工法で「減らす」工夫。この両輪が、修繕積立金を守る一番の近道だと、私は考えています。


よくある質問(FAQ)

Q. 小田原市から、大規模修繕の工事費そのものに補助金は出ますか?
A. 2026年6月時点では、マンションの大規模修繕工事に直接交付される市の補助金はありません。代わりに、①長寿命化促進税制(固定資産税の減額)、②管理計画認定による融資金利引下げ、③④の無料専門家相談、⑤地域リフォーム支援、⑥共用部分リフォーム融資を組み合わせて負担を軽減するのが現実的です。

Q. 固定資産税の減額は、どのマンションでも受けられますか?
A. いいえ。築20年以上・総戸数10戸以上で、過去に1回以上の長寿命化工事を行い、かつ管理計画認定または市の助言・指導を通じて修繕積立金を適切に確保していることなどの要件があります。詳細は資産税課(0465-33-1371)にご確認ください。

Q. うちは管理会社に任せきりですが、相談だけでもできますか?
A. できます。神奈川県のアドバイザー派遣も、小田原市の管理相談も、まずは相談から始められます。役員が建築の素人でも問題ありません。

Q. 制度の内容は今後変わりますか?
A. 補助金・税制は年度ごとに見直されます。特に長寿命化促進税制は令和9年3月31日完了分までという期限があります。最新情報は必ず小田原市の公式サイトと各担当課でご確認ください。

Q. 工法によって、どのくらいコストが変わりますか?
A. 建物の形状・高さ・劣化状況によって幅がありますが、足場費は大規模修繕費の大きな割合を占めるため、ロープアクセスやハイブリッドの活用で総額を抑えられるケースは少なくありません。まずは建物を見せていただいたうえで、複数の工法で比較見積もりを出すのが確実です。


まとめ——「補助金がない」で終わらせない

小田原市のマンションには、工事費そのものへの補助金はありません。けれど、固定資産税を半分にする制度があり、融資の金利を下げる認定があり、専門家を無料で呼べる仕組みがあり、市内業者で工事すれば地場産品が当たる制度もあります。お金の出方が違うだけで、管理組合の負担を軽くする手立ては、確かに用意されています。

そして、制度を使い切るには段取りが命です。①長寿命化促進税制は申告期限が工事完了から3か月以内、⑤地域リフォーム支援にも申請期間があります。動くなら、総会・理事会のスケジュールから逆算して、いまから準備を始めるのが分かれ目です。理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。

「うちの場合はどの制度が使えるのか」「足場とロープ、どちらが安く済むのか」——その整理だけでも、私たちでお力になれることがあります。総会の前段階の交通整理だけでも構いません。ご相談だけでも、遠慮なくお声がけください(お問合せフォームはこちら)。

次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


出典・参考資料

※本記事は2026年6月時点の公開情報をもとに作成しています。補助金・税制は年度途中で変更・終了する場合があり、予算枠到達により受付が締め切られることもあります。申請の際は必ず各担当課の最新情報をご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・法務判断については専門家にご相談ください。

▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

鎌倉市の分譲マンション管理組合が使える補助金・税制活用ガイド|大規模修繕の負担を軽くする2026年度(令和8年度)の制度設計

「築30年を超えて、そろそろ2回目の大規模修繕。でも、足場が架けにくい場所が多くて見積もりが読めない」——大船・深沢・腰越、そして由比ガ浜や材木座といった鎌倉市内のマンションにお住まいの理事長さまから、こうしたご相談を続けていただいています。鎌倉は、海と山がすぐ近くにある、全国でも独特の地形を持つ街です。相模湾から吹き上げる潮風が外壁や鉄部を早く傷ませる一方、谷戸(やつ)と呼ばれる谷あいや斜面地に建つマンションも多く、隣地との境界が狭くて足場を組みにくい——そんな現場が、内陸の街よりずっと多いのです。

私は大規模修繕の現場で20年近く、足場の上とロープの先から建物を見続けてきました。そのなかで一番もったいないと感じるのは、「使える制度を知らないまま工事を終えてしまった管理組合」に出会うときです。固定資産税の減額、耐震診断の補助、無料の専門家派遣、低利の公的融資——鎌倉市には、管理組合が活用できる制度がきちんとそろっています。知っているか知らないかで、組合の負担は数十万円から、規模によってはそれ以上変わってきます。

この記事では、鎌倉市の分譲マンション管理組合が2026年度(令和8年度)に使える制度を、申請の順番に沿って、現場目線で整理しました。専門用語にはそのつど補足を入れますので、建築にお詳しくない理事長さまも、最後までお付き合いください。ここからが本題です。

鎌倉市のマンション管理組合が使える支援制度【2026年度・一覧】

まず全体像を押さえましょう。鎌倉市の分譲マンション管理組合が、大規模修繕や維持管理の場面で活用できる主な制度は、大きく「税」「耐震」「資金」「相談・認定」の4つに分けられます。

区分 制度名 概要 窓口
税の優遇 マンション長寿命化促進税制 一定要件を満たす長寿命化工事で、翌年度の固定資産税(家屋分)が3分の1減額 鎌倉市 資産税課
耐震の補助 マンション耐震診断補助金 旧耐震マンションの耐震診断費用の2分の1(上限150万円)を補助 鎌倉市 建築指導課
耐震の支援 耐震改修アドバイザー派遣 勉強会・検討会へ建築士を無料で派遣(耐震診断補助の前提) 鎌倉市 建築指導課
資金の調達 マンション共用部分リフォーム融資 管理組合向けの低利・長期の公的融資(住宅金融支援機構) 住宅金融支援機構/マンション管理センター
相談・認定 マンション管理計画認定制度 適正管理のお墨付き+融資金利の引下げ、税制の入口 鎌倉市 都市整備総務課/マンション管理センター

ここで強調しておきたいのは、これらは「どれか一つを選ぶ」ものではなく、組み合わせて使う発想が大切だということです。私はいつも理事長さまに、「工事の中身を決める前に、まず使える制度の地図を広げてください」とお伝えしています。順番が逆になると、せっかくの優遇を取り逃すことがあるからです。なぜそうなるのかは、記事の後半でご説明します。

なお、各制度には年度ごとの受付期間や予算枠、細かな要件があります。本記事の数値は2026年6月時点で鎌倉市・国の公式情報を確認したものですが、申請前には必ず各窓口の最新情報をご確認ください。

【税】マンション長寿命化促進税制:固定資産税が3分の1に

最初にご紹介したいのが、令和5年度の税制改正で創設された「マンション長寿命化促進税制」です。これは、一定の要件を満たしたうえで長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションについて、翌年度の建物部分の固定資産税を減額する制度です(出典:鎌倉市 マンション長寿命化大規模修繕工事に伴う固定資産税の減額について)。

鎌倉市の場合、減額の割合は翌年度分の家屋に係る固定資産税の3分の1です。ここは市町村によって条例で定める割合が異なる部分で、鎌倉市は「3分の1」と定めています。報道や他市の解説で「2分の1」という数字を目にすることがありますが、鎌倉市にお住まいの管理組合が確認すべきは、あくまで鎌倉市の公式情報です。なお、都市計画税(建物・土地にかかるもう一つの市税)は、この減額の対象にはなりません。

対象となる工事の中身

この税制が想定している「長寿命化に資する大規模修繕工事」とは、屋根防水工事、床防水工事、外壁塗装等工事といった、建物の寿命を延ばす王道メニューの工事を指します。大規模修繕の基本そのものですから、多くの管理組合にとって、ふだんの修繕計画の延長線上にある話だとお考えください。鎌倉のような海沿いの立地では、塩害で傷んだ外壁塗装や鉄部塗装、屋上・バルコニーの防水は、まさに「長寿命化」の中心になる工事です。

工事の要件としては、まず長寿命化に資する大規模修繕工事を過去に1度以上実施していること、そして2回目以降の大規模修繕工事が、令和5年(2023年)4月1日から令和9年(2027年)3月31日までの間に完了していることが求められます。期間が区切られている制度ですので、これから2回目の修繕を計画する管理組合は、この適用期間を意識してスケジュールを組むことが大切です。

対象となるマンションの要件

この制度の対象になるには、鎌倉市が示す要件を「すべて」満たす必要があります。要点を理事長さま向けにかみ砕くと、次のとおりです。

  1. 「管理計画認定マンション」または「市から助言・指導を受けた管理組合のマンション」であること
  2. 新築された日から20年以上が経過していること
  3. 総戸数が10戸以上であること
  4. 併用住宅の場合は、2分の1以上が居住用部分であること

そして、上記1の「管理計画認定」または「助言・指導」については、修繕積立金に関する条件が加わります。管理計画認定マンションの場合は、令和3年(2021年)9月1日以降に修繕積立金の額を認定基準まで引き上げていること。助言・指導を受けたマンションの場合は、長期修繕計画について市の助言・指導を受けて作成・見直しを行い、一定の基準に適合していることが必要です。

ここが、この税制のいちばんのポイントです。固定資産税の減額を受けたいなら、その前提として「管理計画の認定」または「市の助言・指導にもとづく長期修繕計画の整備と修繕積立金の確保」が必要になる、ということです。だからこそ、工事に取りかかる前に、認定や相談の段取りから始めるのが正解になります。詳しくは記事後半の着手順でご説明します(認定・助言指導など制度の詳細は、鎌倉市 都市整備総務課 住宅担当、直通0467-61-3679へ)。

減額の範囲と申告のしかた

減額の対象になる床面積は、住宅1戸あたり100平方メートル相当分まで、という上限があります。一般的なファミリータイプの住戸であれば、多くがこの範囲に収まります。そして大切なのが申告期限です。工事完了から3か月以内に、鎌倉市 資産税課へ申告しなければなりません。減額は自動では適用されず、申告がなければ受けられません。

申告には、減額適用申告書のほか、「総戸数が確認できる書類(設計図等)」「建築士または住宅瑕疵担保責任保険法人が発行する大規模の修繕等証明書」「マンション管理士または建築士が発行する過去工事証明書」などが必要です。管理計画認定マンションの場合は認定通知書や修繕積立金引上証明書を、助言・指導を受けた場合は助言・指導内容実施等証明書を添えます。これらの証明書の様式は国土交通省のホームページにありますが、工事を担う施工会社や設計事務所が発行・準備に関わる書類も多いので、工事の契約前から「税制を使うつもりだ」と施工側に伝えておくことが、書類の取りこぼしを防ぐコツです。窓口は鎌倉市 資産税課(電話0467-61-3931)です。

なお、この長寿命化促進税制には、いくつか注意点があります。この制度による減額は、対象マンション1棟につき1回のみです。また、耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修にかかる固定資産税の減額制度とは同時に適用することはできません。複数の減額制度の対象になりそうな工事を計画している場合は、どれを使うのが得かを早めに比較しておきましょう。

【耐震】マンション耐震診断補助金:まず「現状を知る」費用を軽くする

次にご紹介するのが、鎌倉市の「マンション耐震診断補助金交付制度」です。これは、旧耐震基準のマンションが耐震診断を行う際の費用の一部を市が補助する制度です(出典:鎌倉市 マンション耐震診断補助金交付制度について)。

「耐震診断」とは、建物が大きな地震に対してどれくらい耐えられるかを、専門の資格者が調べる調査のことです。昭和56年(1981年)以前の旧耐震基準で建てられたマンションは、現在の耐震基準(新耐震)を満たしていない可能性があり、まずは現状を正確に知ることが、その後の判断のすべての出発点になります。

鎌倉市の補助は「アドバイザー派遣を受けたマンション」が対象

鎌倉市の耐震診断補助でまず押さえておきたいのが、対象の入口です。鎌倉市の制度は、「耐震改修アドバイザーの派遣を受けたマンションが耐震診断を実施する場合」に補助が受けられる、という設計になっています。つまり、いきなり診断の補助申請をするのではなく、まずアドバイザー派遣(後述)で勉強会・検討会を行い、そのうえで診断に進む、という流れが想定されています。

そのほかの対象要件は、次のとおりです。

  • 住戸の過半に区分所有者が居住していること
  • 住宅部分の延べ面積が全体の過半であること
  • 建築図面があること
  • 管理組合の集会において、耐震診断の実施に関する決議がなされていること
  • 耐震診断結果について、耐震判定委員会により適正であるとの評価を受けていること
  • 耐震診断を同一年度中に実施可能であること

補助額は「診断費用の2分の1・上限150万円」

鎌倉市の耐震診断補助の金額は、耐震診断に要する費用の2分の1、かつ上限150万円です。なお、延べ面積が1000平方メートル未満のマンションについては、1平方メートルあたり1,500円を限度とし、1,000円未満の端数を切り捨てた額が上限になります。

ここは、近隣の市と方式が異なる部分です。たとえば茅ヶ崎市のように「戸数×3万円」と「診断費用の2分の1」を比べて少ないほう、という設計の自治体もありますが、鎌倉市は「2分の1・上限150万円」というシンプルな上限方式です。診断費用が300万円なら、その2分の1の150万円が上限いっぱいの補助になり、診断費用が200万円なら、その2分の1の100万円が補助額になる、というイメージです。耐震診断は数百万円規模になることもあり、「まず調べる」の一歩を踏み出しにくい組合は少なくありません。その最初のハードルを下げてくれるのが、この補助制度です。

申請とスケジュールの注意点

この補助で気をつけたいのが、着手前の申請です。補助金の交付を受けて耐震診断を行おうとする場合、診断に着手する前に補助金交付申請の手続きが必要です。申請前に診断を始めてしまうと補助が受けられなくなりますので、ここは順番が肝心です。あわせて、診断の実施について集会で決議していること、診断結果が耐震判定委員会の評価を受けること、年度内に診断を完了できること、といった要件も満たす必要があります。窓口は鎌倉市 都市調整部 建築指導課(電話0467-61-3586)です。

【耐震】耐震改修アドバイザー派遣事業:無料で「検討の入口」をつくる

耐震診断補助の前段として、ぜひ活用していただきたいのが「耐震改修アドバイザー派遣事業」です。これは、役員会・理事会・総会などで行う耐震診断や耐震改修の勉強会・検討会に、市が依頼した建築士をアドバイザーとして無料で派遣してくれる制度です(出典:鎌倉市 鎌倉市耐震改修アドバイザーの派遣事業)。

対象は、昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた共同住宅などです。派遣の回数は1施設につき3回まで、1回あたりの派遣時間は2時間以内で、午前9時から午後9時の間、土日でも可能です。アドバイザーの費用は市が負担します(会場は申込み側で用意)。前述のとおり、鎌倉市の耐震診断補助は「アドバイザー派遣を受けたマンション」が対象という建付けですので、旧耐震マンションの耐震対策は、この無料のアドバイザー派遣から始めるのが、制度的にも実務的にも自然な第一歩になります。

なお、耐震診断の結果を受けて耐震改修工事に進む場合、鎌倉市には「耐震改修工事費等補助金交付制度」もありますが、こちらは木造2階建て以下の一戸建て住宅などが対象で、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の分譲マンションは対象外です(出典:鎌倉市 耐震改修工事等費用の補助制度について)。マンションの場合は、診断後の改修について、神奈川県や国の支援メニュー、また管理計画認定にもとづく融資の活用などを、建築指導課や専門家と相談しながら検討することになります。「マンションも工事費補助が出る」と早合点しないよう、ここは正確に押さえておきましょう。

【資金】住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資

3つ目は、工事費そのものの資金調達です。修繕積立金だけでは大規模修繕の費用をまかないきれない——これは、私が現場で本当によく耳にする悩みです。そんなときの選択肢が、独立行政法人・住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)の「マンション共用部分リフォーム融資」です。これは管理組合が借り入れの主体となれる、公的な低利・長期の融資制度です(出典:住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資)。

民間のマンション修繕ローンと比べたこの融資の特長は、3つあります。第一に、管理組合名義で借りられること。個々の区分所有者が個人ローンを組む必要がありません。第二に、(公財)マンション管理センターの債務保証を利用することで、担保(土地・建物への抵当権設定など)を入れずに借りられること。第三に、金利が比較的低く、固定で見通しが立てやすいことです。金利は毎月見直されますが、お申込み時の金利が全期間にわたって固定で適用される仕組みになっています(出典:公益財団法人マンション管理センター 共用部分リフォーム融資と債務保証)。

そして見逃せないのが、後ほどご説明する「管理計画認定」を受けていると、この融資の金利が引き下げられるという連動です。適正に管理されているマンションほど、資金調達でも有利になる。制度どうしがつながっているわけです。金利は市場の動きで変わりますので、検討の際は必ず住宅金融支援機構の最新の金利情報をご確認ください。

【認定・相談】マンション管理計画認定制度をどう使うか

ここまで読まれて、「管理計画認定」という言葉が何度も出てきたことにお気づきだと思います。鎌倉市の「マンション管理計画認定制度」は、マンションの管理の適正化の推進に関する法律にもとづき、国の定める認定基準を満たし、適切な管理が行われているマンションの管理計画を、市が認定する制度です(出典:鎌倉市 マンション管理計画認定制度)。

認定を受けるメリット

管理計画認定を受けると、一般に次のようなメリットがあります。

  • 住宅金融支援機構の【フラット35】やマンション共用部分リフォーム融資の金利が引き下げられる
  • 住宅金融支援機構の【マンションすまい・る債】の利率が上乗せされる
  • 適正に管理されたマンションとして、不動産市場で評価されやすくなる
  • 住人の管理意識が保たれ、管理水準を維持・向上しやすくなる

加えて、これまで見てきたとおり、認定(とそれに伴う修繕積立金の引上げ)は、固定資産税の長寿命化促進税制を使うための「入口」にもなります。認定そのものに費用や手間はかかりますが、税の減額・融資の金利引下げ・資産価値の評価という複数のリターンにつながる、いわば「土台」の制度だと考えてください。

認定申請の流れ

鎌倉市の認定で、ひとつ実務的に重要な注意点があります。それは、申請方法や必要書類については(公財)マンション管理センターへ問い合わせる必要があり、市へ直接申請することはできないという点です。一般的な流れとしては、まずマンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」で、国の認定基準に適合しているかの事前確認を受け、適合していれば事前確認適合証が発行されます。その適合証を受けたうえで市へ認定の本申請を行い、市の確認を経て認定通知書が交付される、という段取りです。

実務的には、管理計画の中身——とくに長期修繕計画の内容や修繕積立金の水準——を、認定基準に合わせて整える作業が中心になります。ここは管理会社やマンション管理士、そして工事の見通しを示せる施工会社と連携しながら進めるのが現実的です。鎌倉市の制度の詳細は、都市整備総務課 住宅担当(直通0467-61-3679)にご確認ください。

どの制度を、どの順番で使うか【着手の5ステップ】

ここまでの内容を、実際の動きに落とし込みます。私が理事長さまにいつもお伝えしている、無理のない進め方が次の5ステップです。

ステップ1:現状把握と相談(今すぐ)。 まずは長期修繕計画と修繕積立金の現状を確認します。旧耐震マンションなら、建築指導課に耐震改修アドバイザー派遣を申し込み、無料の勉強会から始めましょう。あわせて、管理計画認定や長期修繕計画の助言・指導について、都市整備総務課に相談を。ここはすべて無料でできる範囲です。

ステップ2:管理計画の整備と認定(工事の前年〜当年)。 固定資産税の減額を見据えるなら、認定(または市の助言・指導にもとづく長期修繕計画の見直しと、必要な修繕積立金の引上げ)を、工事に着手する前に整えておきます。順番を逆にすると、税制の要件を満たせなくなる恐れがあります。

ステップ3:資金計画の確定(工事の半年前まで)。 積立金で足りない分は、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資を検討します。認定を受けていれば金利引下げの対象になります。借入額・返済期間・月々の負担を、戸あたりに換算して総会で共有しましょう。

ステップ4:工事の発注と「税制を使う」宣言(契約時)。 施工会社との契約前に、「長寿命化促進税制を使うので、必要な証明書を出してほしい」と明確に伝えます。証明書の準備は施工側の協力が不可欠です。工事内容も、屋根・床の防水や外壁塗装など、長寿命化に資するメニューが軸になっているかを確認します。

ステップ5:工事完了と申告(完了後3か月以内)。 工事が終わったら、3か月以内に資産税課へ固定資産税減額の申告を行います。耐震診断補助を使った場合は、年度内に診断・支払い・報告まで終える段取りも忘れずに。

この順番を守るだけで、「制度はあったのに使えなかった」という取りこぼしは、ほとんど防げます。

工事の工法をどう選ぶか:足場・ロープアクセス・ハイブリッド

制度の話に続けて、工事そのものの「やり方」についても、現場の立場から少しだけお話しさせてください。大規模修繕の費用は、工事の中身だけでなく、どうやって建物の外側に手が届くようにするか(仮設のしかた)で、大きく変わるからです。とりわけ鎌倉は、谷戸や斜面地、海沿いといった、足場の条件が物件ごとに大きく違う街です。私たちは、建物に合わせて3つの工法を提案しています。

ひとつめは、従来からの足場(仮設足場)工法です。建物全体を足場で囲い、職人が安定した足場の上で作業します。複雑な形状の建物や、広い面を一度に塗り替える工事、低中層のマンションに向いています。一方で、足場の設置・撤去に費用と工期がかかり、足場が建つあいだは窓を開けにくい、防犯面が気になる、といった居住者への影響が生じます。鎌倉では、隣地との境界が狭い物件や斜面地の物件で、そもそも足場を全面に架けにくい、というケースも少なくありません。

ふたつめが、ロープアクセス工法です。これは、屋上などから下ろした産業用ロープに作業者がぶら下がり、足場を架けずに外壁の補修や塗装、シーリング(目地の打ち替え)などを行う「無足場工法」です。足場の設置費用がかからない分コストを抑えやすく、工期も短く、足場で建物を囲わないため居住者の生活への影響を最小限にできます。鎌倉のように、谷戸の狭い敷地や斜面に建ち、足場が架けにくい物件、あるいは海沿いで塩害により鉄部や外壁が部分的に傷んでいる物件では、必要なところにピンポイントで素早く手を入れられるロープアクセスの利点が、とくに生きます。ただし、塗り替える面が非常に広い全面改修では、足場のほうが効率的なこともあります。

みっつめが、両者を組み合わせるハイブリッド工法です。たとえば、面積の大きい正面や複雑な低層部は足場で、足場の架けにくい高層部や斜面側・海側の妻面はロープアクセスで、というように部位ごとに使い分けます。これにより、足場の総量を減らして費用と工期を抑えつつ、品質も確保する——大規模・複雑な物件で、総合的なコスト最適化が必要なケースに向いています。

なお、鎌倉は歴史的なまちなみを守るため、地区によっては建物の色やデザインに関する景観上の配慮が求められることがあります。大規模修繕で外壁色を選ぶ際は、こうした地域のルールを踏まえる必要がある場面もありますので、計画の早い段階で確認しておくと安心です。大切なのは、「最初からこの工法ありき」で決めないこと。私たちは3つの工法すべてを提案できる立場だからこそ、建物の形・立地・予算・居住者の事情を見たうえで、その物件にとっていちばん合理的な組み合わせをご提案できます。工法の選び方そのものが、修繕積立金を守る一つの手段になるのです。ロープアクセス工法の詳しい内容はロープアクセス工事のご案内を、大規模修繕全般の進め方は大規模修繕のサポートをご覧ください。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 鎌倉市の固定資産税の減額は、結局いくら安くなりますか?

減額されるのは、住宅1戸あたり100平方メートル相当分までの「家屋にかかる翌年度分の固定資産税」の3分の1です。実際の金額は、各住戸の家屋の評価額によって変わります。ご自宅の固定資産税額(家屋分)のおよそ3分の1が、1年度分軽くなるとイメージしてください。都市計画税は対象外です。正確な見込みは、工事内容が固まった段階で鎌倉市 資産税課にご確認ください。

Q2. 築20年ですが、まだ一度も大規模修繕をしていません。税制は使えますか?

長寿命化促進税制は「長寿命化に資する大規模修繕工事を過去に1度以上実施していること」が要件のひとつで、2回目以降の工事が対象になるのが基本です。1回目の大規模修繕では要件を満たしませんが、1回目をきちんと記録に残し、長期修繕計画を整えておくことが、2回目で税制を使うための準備になります。なお、対象となるのは令和5年4月1日から令和9年3月31日までに完了する工事ですので、2回目の時期が見えてきたら、適用期間を意識して計画を立てましょう。

Q3. まず何から始めればいいですか?

旧耐震(昭和56年以前)のマンションなら、まずは無料の「耐震改修アドバイザー派遣」を建築指導課に申し込み、勉強会で現状の共有から始めるのがおすすめです。耐震が気にならない築年数のマンションでも、長期修繕計画と修繕積立金の点検、そして管理計画認定の検討は、税制や融資の優遇につながる土台になります。いずれも、最初の相談はすべて無料の範囲でできます。

Q4. 谷戸で道が狭く、足場が架けにくい立地です。工事はできますか?

できます。むしろ、こうした立地こそロープアクセス工法が力を発揮する場面です。足場を全面に組まなくても、ロープで必要な箇所に作業者が下りて、外壁補修・塗装・シーリングなどを行えます。足場が架けにくい部分はロープ、広い面は足場、というハイブリッドでコストと品質を両立させる方法もあります。現地を見れば、その物件に合うやり方が必ず見つかります。点検だけでも早めに入れておくと、傷みが軽いうちに小さな費用で手を打てます。

おわりに——「知っているか」で、組合の未来は変わる

海と山に抱かれた鎌倉は、暮らしには豊かで、建物には少しだけ手間のかかる街です。潮風、斜面、狭い谷戸の道、そして守るべきまちなみ——だからこそ、この街のマンション管理組合には、使える制度を一つずつ味方につけてほしいと、現場を歩いてきた私は思います。固定資産税の3分の1減額、耐震診断費用の補助、無料の専門家派遣、低利の公的融資、そして管理計画の認定。一つひとつは小さく見えても、組み合わせて、正しい順番で使えば、組合の負担は確かに軽くなります。

そして、制度を使いこなす土台になるのは、「自分たちのマンションを、長く大切に住み継ぐ」という管理組合の意思です。長期修繕計画を整え、積立金を備え、適正な管理を続ける——その延長線上に、税制や融資の優遇が用意されています。難しく感じられるかもしれませんが、最初の一歩は「市の窓口に相談してみる」「アドバイザー派遣を申し込む」「現状を点検してもらう」だけで十分です。

私たちは、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つの工法から、その建物にいちばん合うやり方をご提案できる、数少ない会社です。制度の使い方から工法の選び方まで、押し売りはいたしませんので、まずは相談だけでもかまいません。鎌倉のマンションを、次の世代まで気持ちよく住み継いでいくお手伝いができれば、これほど嬉しいことはありません。ご相談はお問い合わせからお気軽にどうぞ。


参考・出典(2026年6月時点)

▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

茅ヶ崎市の分譲マンション管理組合が使える補助金・税制活用ガイド|大規模修繕の負担を軽くする2026年度(令和8年度)の制度設計

「そろそろ2回目の大規模修繕だが、海風で外壁の傷みが思ったより早い」——茅ヶ崎・香川・松浪・浜見平といった茅ヶ崎市内のマンションにお住まいの理事長さまから、最近こうしたご相談を立て続けにいただいています。相模湾に面した茅ヶ崎は、暮らしの心地よさと引き換えに、塩分を含んだ潮風が建物に休みなく当たり続ける土地です。鉄部のサビ、塗膜の劣化、タイルの浮き——内陸のマンションより一歩早く、外壁や鉄部の傷みが顔を出します。築20年、30年を超えれば、外壁の塗り替えや屋上防水、給排水管の更新といったまとまった出費が、一度に押し寄せてきます。

私は大規模修繕の現場で20年近く、足場の上とロープの先から建物を見続けてきました。そのなかで一番悔しい思いをするのは、「使える制度を知らないまま工事を終えてしまった管理組合」に出会うときです。固定資産税の減額、耐震診断の補助、低利の公的融資、無料の専門家相談——茅ヶ崎市には、管理組合が活用できる制度がきちんとそろっています。知っているか知らないかで、組合の負担は数十万円から、規模によってはそれ以上変わってきます。

この記事では、茅ヶ崎市の分譲マンション管理組合が2026年度(令和8年度)に使える制度を、申請の順番に沿って、現場目線で整理しました。専門用語にはそのつど補足を入れますので、建築にお詳しくない理事長さまも、最後までお付き合いください。ここからが本題です。

茅ヶ崎市のマンション管理組合が使える支援制度【2026年度・一覧】

まず全体像を押さえましょう。茅ヶ崎市の分譲マンション管理組合が、大規模修繕や維持管理の場面で活用できる主な制度は、大きく「税」「耐震」「資金」「相談・認定」の4つに分けられます。

区分 制度名 概要 窓口
税の優遇 マンション長寿命化促進税制 一定要件を満たす長寿命化工事で、翌年度の固定資産税(家屋分)が3分の1減額 茅ヶ崎市 資産税課
耐震の補助 分譲マンション耐震診断事業補助金 旧耐震マンションの耐震診断費用の一部を補助 茅ヶ崎市 建築指導課
資金の調達 マンション共用部分リフォーム融資 管理組合向けの低利・長期の公的融資(住宅金融支援機構) 住宅金融支援機構/マンション管理センター
相談・認定 マンション管理計画認定制度/専門家相談 適正管理のお墨付き+融資金利の引下げ 茅ヶ崎市 都市政策課/神奈川県

ここで強調しておきたいのは、これらは「どれか一つを選ぶ」ものではなく、組み合わせて使う発想が大切だということです。私はいつも理事長さまに、「工事の中身を決める前に、まず使える制度の地図を広げてください」とお伝えしています。順番が逆になると、せっかくの優遇を取り逃すことがあるからです。なぜそうなるのかは、記事の後半でご説明します。

なお、各制度には年度ごとの受付期間や予算枠、細かな要件があります。本記事の数値は2026年6月時点で茅ヶ崎市・国の公式情報を確認したものですが、申請前には必ず各窓口の最新情報をご確認ください。

【税】マンション長寿命化促進税制:固定資産税が3分の1に

最初にご紹介したいのが、令和5年度の税制改正で創設された「マンション長寿命化促進税制」です。これは、一定の要件を満たしたうえで長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションについて、翌年度の建物部分の固定資産税を減額する制度です(出典:茅ヶ崎市 長寿命化に資する大規模修繕工事が行われたマンションに対する固定資産税の減額について)。

茅ヶ崎市の場合、減額の割合は翌年度分の家屋に係る固定資産税の3分の1です。ここは市町村によって条例で定める割合が異なる部分で、茅ヶ崎市は「3分の1」と定めています。報道や他市の解説で「2分の1」という数字を目にすることがありますが、茅ヶ崎市にお住まいの管理組合が確認すべきは、あくまで茅ヶ崎市の公式情報です。なお、都市計画税(土地・建物にかかるもう一つの市税)は、この減額の対象にはなりません。

対象となる工事の中身

この税制が想定している「長寿命化に資する大規模修繕工事」とは、外壁や屋上防水、床防水といった、建物の寿命を延ばす王道メニューの工事を指します。大規模修繕の基本そのものですから、多くの管理組合にとって、ふだんの修繕計画の延長線上にある話だとお考えください。茅ヶ崎のような海沿いの立地では、塩害で傷んだ外壁塗装や鉄部塗装、屋上・バルコニーの防水は、まさに「長寿命化」の中心になる工事です。

対象となるマンションの要件

この制度の対象になるには、茅ヶ崎市が示す要件を「すべて」満たす必要があります。要点を理事長さま向けにかみ砕くと、次のとおりです。

  1. 居住用専有部分(専有床面積の2分の1以上が人の居住の用に供される部分)を有していること
  2. 新築された日から20年以上が経過していること
  3. 総戸数が10戸以上であること
  4. 過去に1回以上、大規模修繕工事を適切に行っていること
  5. 長寿命化のために必要な修繕積立金が確保されていること

5番目の「修繕積立金が確保されている」という要件は、具体的には次のどちらかに当てはまる必要があります。ひとつは、茅ヶ崎市の管理計画認定マンションのうち、認定を受ける際に認定基準に適合させるために修繕積立金の引上げを行った場合。もうひとつは、茅ヶ崎市から長期修繕計画に係る助言または指導を受けて、長期修繕計画を作成・見直しし、一定の基準に適合することとなった場合です。

ここが、この税制のいちばんのポイントです。固定資産税の減額を受けたいなら、その前提として「管理計画の認定」または「市の助言・指導にもとづく長期修繕計画の整備」が必要になる、ということです。だからこそ、工事に取りかかる前に、認定や相談の段取りから始めるのが正解になります。詳しくは記事後半の着手順でご説明します(認定・助言指導の窓口は、茅ヶ崎市 都市政策課 住宅政策担当、電話0467-81-7181です)。

減額の範囲と申告のしかた

減額の対象になる床面積は、住宅1戸あたり100平方メートル相当分まで、という上限があります。一般的なファミリータイプの住戸であれば、多くがこの範囲に収まります。そして大切なのが申告期限です。工事完了から3か月以内に、茅ヶ崎市へ申告しなければなりません。減額は自動では適用されず、管理組合(または各区分所有者)からの申告が必要です。管理組合等の代表者が、各所有者の申告をまとめて行うこともできます。

申告には、申告書のほか、「大規模の修繕等証明書」「過去工事証明書」「総戸数が分かる書類」などが必要です。管理計画認定マンションの場合は認定通知書や修繕積立金引上証明書、助言・指導を受けた場合は実施等証明書を添えます。これらの証明書の様式は国土交通省のホームページにありますが、工事を担う施工会社や設計事務所が発行・準備に関わる書類も多いので、工事の契約前から「税制を使うつもりだ」と施工側に伝えておくことが、書類の取りこぼしを防ぐコツです。窓口は茅ヶ崎市 資産税課 家屋評価担当(電話0467-81-7142)です。

なお、この長寿命化促進税制は、住宅の省エネ改修、高齢者等居住(バリアフリー)改修、耐震改修にかかる固定資産税の減額制度とは併用できません。複数の減額制度の対象になりそうな工事を計画している場合は、どれを使うのが得かを早めに比較しておきましょう。

【耐震】分譲マンション耐震診断事業補助金:まず「現状を知る」費用を軽くする

次にご紹介するのが、茅ヶ崎市の「分譲マンション耐震診断事業補助金」です。これは、昭和56年5月31日以前の旧耐震基準で建てられた分譲マンションが、耐震診断を行う際の費用の一部を市が補助する制度です(出典:茅ヶ崎市 分譲マンション耐震診断事業補助金のご案内)。

「耐震診断」とは、建物が大きな地震に対してどれくらい耐えられるかを、専門の資格者が調べる調査のことです。旧耐震のマンションは、現在の耐震基準(新耐震)を満たしていない可能性があり、まずは現状を正確に知ることが、その後の判断のすべての出発点になります。

補助の対象になるマンション

茅ヶ崎市の補助対象になるのは、市内にある旧耐震基準の分譲マンションで、次の条件をすべて満たすものです。

  • 住宅部分の床面積の合計が、延べ面積の過半であること
  • 住戸の総数の過半を、区分所有者が居住の用に供していること
  • 昭和56年5月31日以前に建築され、または工事に着手されたものであること
  • 地階を除く階数が3以上であること
  • 鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、または鉄骨造であること
  • 管理組合の集会等で、耐震診断の実施を決議していること
  • 避難路沿道建築物耐震診断事業補助金を受けていないこと

補助額は「2つを比べて少ないほう」

茅ヶ崎市の耐震診断補助の金額は、次の2つを比較して、いずれか少ない額になります。

  1. 耐震診断に要した費用に2分の1を乗じて得た額
  2. 区分所有者が居住する住戸の数に3万円を乗じて得た額

たとえば区分所有者居住の住戸が40戸であれば、2番の上限は40戸×3万円=120万円。診断費用が240万円なら、その2分の1の120万円と比べて、どちらも120万円ですから補助は120万円。診断費用が180万円なら、その2分の1の90万円と120万円を比べて少ないほう、つまり90万円が補助額になります。戸数が多いマンションほど2番の枠が大きくなり、実質的に「診断費用の半額」が出やすくなる、という設計です。

戸あたりの感覚に置き換えると、たとえば50戸のマンションで診断費用の半額・100万円の補助が出れば、1戸あたり2万円の負担軽減です。耐震診断は数百万円規模になることもあり、「まず調べる」の一歩を踏み出しにくい組合は少なくありません。その最初のハードルを下げてくれるのが、この補助制度です。

申請とスケジュールの注意点

この補助で気をつけたいのが、段取りと期限です。まず、耐震診断を実施する前に、集会等で区分所有者の合意決議が必要です。そして、診断の検討を始めた段階で、補助金交付要件の確認を兼ねて、建築指導課へ事前相談をしておくことが推奨されています。診断は「耐震診断資格者」など、法令で定められた技術者が行う必要があります。

スケジュール面では、耐震診断事業と費用の支払いまですべて完了したうえで、市へ実績報告書を3月20日までに提出する必要があります。年度内に完了・支払い・報告まで終える段取りが求められるということです。また、補助金の申請額が市の単年度予算額を超える場合は、翌年度の予算計上が必要になるため、10月までに建築指導課へ相談するよう案内されています。「やろうと決めたら、年度の早い段階で動く」のが鉄則です。窓口は茅ヶ崎市 建築指導課 建築安全担当(電話0467-81-7185)です。

なお、外壁改修にあわせて吹付け材などのアスベスト(石綿)含有が心配な場合は、茅ヶ崎市に「民間建築物アスベスト含有調査事業補助金」もあります。築年数の古い建物では、調査の要否もあわせて早めに確認しておくと安心です。

【資金】住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資

3つ目は、工事費そのものの資金調達です。修繕積立金だけでは大規模修繕の費用をまかないきれない——これは、私が現場で本当によく耳にする悩みです。そんなときの選択肢が、独立行政法人・住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)の「マンション共用部分リフォーム融資」です。これは管理組合が借り入れの主体となれる、公的な低利・長期の融資制度です(出典:住宅金融支援機構 ご利用条件(管理組合申込みの場合))。

民間のマンション修繕ローンと比べたこの融資の特長は、3つあります。第一に、管理組合名義で借りられること。個々の区分所有者が個人ローンを組む必要がありません。第二に、(公財)マンション管理センターの債務保証を利用することで、担保(土地・建物への抵当権設定など)を入れずに借りられること。第三に、金利が比較的低く、固定で見通しが立てやすいことです。金利は毎月見直されますが、お申込み時の金利が全期間にわたって固定で適用される仕組みになっています(出典:公益財団法人マンション管理センター 共用部分リフォーム融資と債務保証)。

そして見逃せないのが、後ほどご説明する「管理計画認定」を受けていると、この融資の金利が引き下げられるという連動です。適正に管理されているマンションほど、資金調達でも有利になる。制度どうしがつながっているわけです。金利は市場の動きで変わりますので、検討の際は必ず住宅金融支援機構の最新の金利情報をご確認ください。

【認定・相談】マンション管理計画認定制度をどう使うか

ここまで読まれて、「管理計画認定」という言葉が何度も出てきたことにお気づきだと思います。茅ヶ崎市の「マンション管理計画認定制度」は、国の定める認定基準を満たし、適切な管理が行われているマンションの管理計画を、市が認定する制度です(出典:茅ヶ崎市 マンション管理計画認定制度)。

認定を受けるメリット

茅ヶ崎市が挙げている認定のメリットは、次のとおりです。

  • 住宅金融支援機構の【フラット35】やマンション共用部分リフォーム融資の金利が引き下げられる
  • 住宅金融支援機構の【マンションすまい・る債】の利率が上乗せされる
  • 適正に管理されたマンションとして、不動産市場で評価される
  • 住人の管理意識が保たれ、管理水準を維持・向上しやすくなる

加えて、これまで見てきたとおり、認定(とそれに伴う修繕積立金の引上げ)は、固定資産税の長寿命化促進税制を使うための「入口」にもなります。認定そのものに費用や手間はかかりますが、税の減額・融資の金利引下げ・資産価値の評価という複数のリターンにつながる、いわば「土台」の制度だと考えてください。

認定申請の流れ

茅ヶ崎市の認定申請は、おおむね次の流れで進みます。まず、認定の本申請の前に、(公財)マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」で、国の認定基準に適合しているかの事前確認を受けます。審査に係る講習を受けたマンション管理士が確認を行い、基準に適合していれば事前確認適合証が発行されます。その適合証を受けたうえで、市へ認定の本申請を行い、市の確認を経て認定通知書が交付される、という段取りです。

実務的には、管理計画の中身——とくに長期修繕計画の内容や修繕積立金の水準——を、認定基準に合わせて整える作業が中心になります。ここは管理会社やマンション管理士、そして工事の見通しを示せる施工会社と連携しながら進めるのが現実的です。窓口は茅ヶ崎市 都市政策課 住宅政策担当(電話0467-81-7181)です。神奈川県や国土交通省のマンション施策の情報も、市のサイトからたどれます。

どの制度を、どの順番で使うか【着手の5ステップ】

ここまでの内容を、実際の動きに落とし込みます。私が理事長さまにいつもお伝えしている、無理のない進め方が次の5ステップです。

ステップ1:現状把握と相談(今すぐ)。 まずは長期修繕計画と修繕積立金の現状を確認し、茅ヶ崎市 都市政策課に管理計画認定や長期修繕計画の助言・指導について相談します。旧耐震マンションなら、建築指導課への耐震診断補助の事前相談も同時に。ここはすべて無料でできる範囲です。

ステップ2:管理計画の整備と認定(工事の前年〜当年)。 固定資産税の減額を見据えるなら、認定(または市の助言・指導にもとづく長期修繕計画の見直しと、必要な修繕積立金の引上げ)を、工事に着手する前に整えておきます。順番を逆にすると、税制の要件を満たせなくなる恐れがあります。

ステップ3:資金計画の確定(工事の半年前まで)。 積立金で足りない分は、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資を検討します。認定を受けていれば金利引下げの対象になります。借入額・返済期間・月々の負担を、戸あたりに換算して総会で共有しましょう。

ステップ4:工事の発注と「税制を使う」宣言(契約時)。 施工会社との契約前に、「長寿命化促進税制を使うので、必要な証明書を出してほしい」と明確に伝えます。証明書の準備は施工側の協力が不可欠です。工事内容も、外壁・防水など長寿命化に資するメニューが軸になっているかを確認します。

ステップ5:工事完了と申告(完了後3か月以内)。 工事が終わったら、3か月以内に資産税課へ固定資産税減額の申告を行います。耐震診断補助を使った場合は、年度内(3月20日まで)の実績報告も忘れずに。

この順番を守るだけで、「制度はあったのに使えなかった」という取りこぼしは、ほとんど防げます。

工事の工法をどう選ぶか:足場・ロープアクセス・ハイブリッド

制度の話に続けて、工事そのものの「やり方」についても、現場の立場から少しだけお話しさせてください。大規模修繕の費用は、工事の中身だけでなく、どうやって建物の外側に手が届くようにするか(仮設のしかた)で、大きく変わるからです。私たちは、建物に合わせて3つの工法を提案しています。

ひとつめは、従来からの足場(仮設足場)工法です。建物全体を足場で囲い、職人が安定した足場の上で作業します。複雑な形状の建物や、広い面を一度に塗り替える工事、低中層のマンションに向いています。一方で、足場の設置・撤去に費用と工期がかかり、足場が建つあいだは窓を開けにくい、防犯面が気になる、といった居住者への影響が生じます。

ふたつめが、ロープアクセス工法です。これは、屋上などから下ろした産業用ロープに作業者がぶら下がり、足場を架けずに外壁の補修や塗装、シーリング(目地の打ち替え)などを行う「無足場工法」です。足場の設置費用がかからない分コストを抑えやすく、工期も短く、足場で建物を囲わないため居住者の生活への影響を最小限にできます。とくに茅ヶ崎のような海沿いの立地では、塩害で傷みやすい鉄部や外壁の部分補修を、必要なところにピンポイントで素早く入れられるのが利点です。高層部や、足場が架けにくい狭い隣地境界の物件とも相性がよい工法です。ただし、塗り替える面が非常に広い全面改修では、足場のほうが効率的なこともあります。

みっつめが、両者を組み合わせるハイブリッド工法です。たとえば、面積の大きい正面や複雑な低層部は足場で、足場の架けにくい高層部や海側の妻面はロープアクセスで、というように部位ごとに使い分けます。これにより、足場の総量を減らして費用と工期を抑えつつ、品質も確保する——大規模・複雑な物件で、総合的なコスト最適化が必要なケースに向いています。

大切なのは、「最初からこの工法ありき」で決めないことです。私たちは3つの工法すべてを提案できる立場だからこそ、建物の形・立地・予算・居住者の事情を見たうえで、その物件にとっていちばん合理的な組み合わせをご提案できます。工法の選び方そのものが、修繕積立金を守る一つの手段になるのです。ロープアクセス工法の詳しい内容はロープアクセス工事のご案内を、大規模修繕全般の進め方は大規模修繕のサポートをご覧ください。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 茅ヶ崎市の固定資産税の減額は、結局いくら安くなりますか?

減額されるのは、住宅1戸あたり100平方メートル相当分までの「家屋にかかる翌年度分の固定資産税」の3分の1です。実際の金額は、各住戸の家屋の評価額によって変わります。ご自宅の固定資産税額(家屋分)のおよそ3分の1が、1年度分軽くなるとイメージしてください。都市計画税は対象外です。正確な見込みは、工事内容が固まった段階で茅ヶ崎市 資産税課にご確認ください。

Q2. 築20年ですが、まだ一度も大規模修繕をしていません。税制は使えますか?

長寿命化促進税制は「過去に1回以上、大規模修繕工事を適切に行っていること」が要件のひとつです。1回目の大規模修繕では要件を満たさず、2回目以降が対象になるのが基本です。ただし、1回目をきちんと記録に残し、長期修繕計画を整えておくことが、2回目で税制を使うための準備になります。早いうちから段取りをしておく価値は十分にあります。

Q3. 耐震診断補助と固定資産税の減額は、両方使えますか?

耐震診断補助(建築指導課)と長寿命化促進税制(資産税課)は、目的の異なる別の制度なので、それぞれの要件を満たせば両方の検討が可能です。ただし、固定資産税の「耐震改修にかかる減額」と「長寿命化促進税制の減額」は併用できません。診断の結果、耐震改修と長寿命化工事の両方を考える場合は、どの減額を使うのが有利かを早めに整理しておきましょう。

Q4. 海沿いなので外壁の傷みが早い気がします。工法で差は出ますか?

出ます。塩害は、鉄部のサビや塗膜・シーリングの劣化を早めます。傷みが部分的に進んでいる段階なら、ロープアクセスで必要な箇所をピンポイントに、足場費用をかけずに素早く補修できます。劣化が全面に及んでいるなら足場での全面改修が効率的なこともあります。どちらが得かは現地を見て判断するのが確実です。点検だけでも早めに入れておくと、傷みが軽いうちに小さな費用で手を打てます。

おわりに——「知っているか」で、組合の未来は変わる

茅ヶ崎の海風は、暮らしには心地よく、建物には少しだけ厳しい。だからこそ、この街のマンション管理組合には、使える制度を一つずつ味方につけてほしいと、現場を歩いてきた私は思います。固定資産税の3分の1減額、耐震診断費用の補助、低利の公的融資、そして無料の専門家相談。一つひとつは小さく見えても、組み合わせて、正しい順番で使えば、組合の負担は確かに軽くなります。

そして、制度を使いこなす土台になるのは、「自分たちのマンションを、長く大切に住み継ぐ」という管理組合の意思です。長期修繕計画を整え、積立金を備え、適正な管理を続ける——その延長線上に、税制や融資の優遇が用意されています。難しく感じられるかもしれませんが、最初の一歩は「市の窓口に相談してみる」「現状を点検してもらう」だけで十分です。

私たちは、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つの工法から、その建物にいちばん合うやり方をご提案できる、数少ない会社です。制度の使い方から工法の選び方まで、押し売りはいたしませんので、まずは相談だけでもかまいません。茅ヶ崎のマンションを、次の世代まで気持ちよく住み継いでいくお手伝いができれば、これほど嬉しいことはありません。ご相談はお問い合わせからお気軽にどうぞ。


参考・出典(2026年6月時点)

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マンション大規模修繕で16億円の談合課徴金——公取委が38社処分へ、設計コンサル方式の死角と管理組合・オーナーが今すぐやるべき発注先の見極め方【2026年6月】

マンション大規模修繕で16億円の談合課徴金——公取委が38社処分へ、設計コンサル方式の死角と管理組合・オーナーが今すぐやるべき発注先の見極め方【2026年6月】

「うちのマンションの修繕、本当に適正な金額だったのだろうか」。2026年6月、そう胸がざわついた管理組合の理事長さん、収益物件オーナーさんは、決して少なくないはずです。公正取引委員会が、関東地方のマンション大規模修繕工事をめぐる大規模な談合を認定し、施工会社と設計コンサルタントの計38社へ排除措置命令を出す方針を固めた——そんな報道が、6月12日に一斉に流れました。課徴金は計約16億円。対象とされた工事は100件以上にのぼると報じられています。

私は東京・関東を中心に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕に長く携わってきました。足場を架ける従来工法だけでなく、ロープアクセス(無足場工法)、そして両者を組み合わせるハイブリッド工法まで、建物ごとに最適な工法を提案することを仕事の柱にしています。だからこそ今回のニュースは、業界の一員として残念に思うと同時に、「この機会に、発注する側が損をしない知識を持ってほしい」という気持ちで受け止めています。

この記事では、今回の談合事件で何が起きたのかを整理したうえで、なぜこうした構造的な問題が繰り返されるのか、そして管理組合の理事長さんや不動産オーナーさんが「次の修繕で同じ轍を踏まない」ために今すぐできる自衛策を、現場の目線でお伝えします。煽るつもりはありません。淡々と、事実と根拠で。


何が起きたのか——公取委が認定した「関東マンション修繕談合」の全体像

38社に排除措置命令、計16億円の課徴金へ

報道各社によると、公正取引委員会は2026年6月11日、関東地方のマンション大規模修繕工事をめぐり、施工会社と設計コンサルタント計約40社が独占禁止法違反(不当な取引制限=いわゆる談合)にあたると認定する方針を固めました。このうち38社に対して再発防止を求める排除措置命令を出し、あわせて計約16億円の課徴金納付命令を出す方針とされています(毎日新聞・時事通信・日本経済新聞など、2026年6月12日報道)。

排除措置命令の対象とされたのは、報道によれば工事施工会社が36社、設計コンサルタントが2社です。施工会社には長谷工リフォーム、シミズ・ビルライフケア、大京穴吹建設といった、マンション管理や修繕の世界では名の知られた会社の名前が挙がっています。設計コンサルタント側は翔設計、リノシスコーポレーションの2社が対象と報じられました。日本経済新聞は、談合の対象となった工事は100件以上にのぼると伝えています。

念のため申し添えると、本稿執筆時点(2026年6月14日)では、これらはあくまで「公取委が命令を出す方針を固めた」という段階の報道であり、正式な命令の確定や各社の主張は今後の手続きの中で明らかになっていきます。個社を断罪することが目的ではありません。発注する側として、この構造をどう読み解くかが大切です。

談合の手口——「見積もり合わせ」と「入札」の事前調整

報道によれば、各社は遅くとも2021年秋ごろ以降、関東地方のマンションを対象に、外壁・内装・防水といった修繕工事の見積もり合わせや入札の際に、あらかじめ工事価格や受注者を調整していたとされています。

ここで重要なのは、「見積もり合わせ(あいみつ)」という、管理組合にとってごく当たり前の手続きが舞台になっていたという点です。理事会では、複数の施工会社から見積もりを取り、いちばん条件の良い会社を選ぶ——これは健全なプロセスのはずです。ところが、その複数社が裏でつながり、「今回はA社が取る番だから、B社とC社はわざと高く出す」という調整がなされていたとすれば、管理組合がどれだけ真剣に比較検討しても、結果は最初から決まっていたことになります。

つまり、競争が働いているように「見える」状態が人工的に作られていた、というのが談合の本質です。理事の皆さんが手を抜いていたわけではありません。仕組みそのものに、見抜きにくい死角があったのです。


なぜ起きたのか——「設計監理方式(設計コンサルタント方式)」の死角

設計コンサルタント方式とは何か

今回の事件を理解するうえで欠かせないのが、大規模修繕の発注方式の話です。マンションの大規模修繕には、大きく分けて二つの進め方があります。

一つは「設計監理方式(設計コンサルタント方式)」。管理組合がまず設計コンサルタント(設計事務所)と契約し、建物の調査診断・修繕設計・施工会社選定の支援・工事中の監理までを任せる方式です。専門家が組合の代理人として施工会社を厳しくチェックしてくれる、という建前で、近年は主流とされてきました。

もう一つは「責任施工方式」。調査診断から設計、施工までを一つの施工会社にまとめて任せる方式です。窓口が一本化されて分かりやすい反面、第三者のチェックが入りにくいと言われてきました。

設計監理方式は本来、「組合の味方である専門家が、施工会社を監視する」ことで透明性を高める仕組みです。ところが今回問題になったのは、その「組合の味方」であるはずの設計コンサルタント側が、施工会社と通じていた疑いがある、という点です。番犬が泥棒と組んでいたら、いくら立派な番犬小屋を建てても意味がありません。これが「設計監理方式の死角」と呼ばれる理由です。

国交省が9年前から鳴らしていた「3つの不適切事例」

実はこの問題、降って湧いた話ではありません。国土交通省は、平成29年(2017年)1月27日付で「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について(通知)」を出し、設計コンサルタントと施工会社の癒着やバックマージンに対して、すでに警鐘を鳴らしていました。今からおよそ9年も前のことです。

この通知の中で、国交省は次のような不適切な事例を紹介しています。

第一に、コンサルタントに業務を依頼したのに、実際に調査診断や設計を行っていたのは、そのコンサルタントではなく施工会社の社員だったというケース。第三者のチェックという建前が、最初から崩れている例です。

第二に、設計会社が、施工会社の候補数社のうち特定の1社の見積金額が低くなるよう操作し、その1社が施工会社として内定するように仕向けたというケース。まさに今回の談合報道と重なる構図です。

第三に、コンサルタントが、自社にバックマージン(リベート)を支払う施工会社が受注できるよう不適切な工作を行い、割高な工事費や、過剰な工事項目・仕様にもとづく発注を誘導したというケース。組合のお金が、知らないうちに余分に抜かれていく構図です。

私が現場で見てきた範囲でも、「コンサルさんに任せていたのに、後から相見積もりを取ったら数千万円も差が出た」という相談は、決して珍しくありませんでした。国がここまで具体的に注意喚起していたにもかかわらず、構造が温存され、今回の大規模な摘発につながった——そう捉えるのが自然だと思います。


管理組合・オーナーが受ける「見えない損失」

談合や不適切コンサルの怖いところは、被害が「見えにくい」ことです。詐欺のように一目で分かる被害ではなく、「相場より少し高い金額を、納得して払ってしまう」という形で表れます。具体的には、次のような損失が考えられます。

割高な工事費とバックマージン

談合によって競争が働かないと、工事価格は下がりません。本来なら相見積もりで削れたはずの金額が、そのまま管理組合の負担になります。さらにバックマージンが上乗せされていれば、その分は純粋に「組合の修繕積立金が、工事と関係のない誰かの懐に流れた」ことになります。

修繕積立金は、区分所有者一人ひとりが毎月コツコツ積み立てた、いわば共有の貯金です。近年は資材費や人件費の高騰で修繕費そのものが上がり、積立金不足に悩む組合も増えています。その貴重な原資が、不透明な仕組みで目減りしていたとすれば、これほど悔しいことはありません。

過剰な工事項目・仕様という「水増し」

もう一つ見落とされがちなのが、「やらなくてもよい工事まで盛り込まれる」というタイプの損失です。国交省の指摘にもあったとおり、過剰な工事項目や過剰な仕様の設定によって、工事費が膨らむことがあります。

たとえば、まだ十分に機能している防水層をすべて撤去してやり直す、本来は部分補修で足りる外壁を全面的に塗り替える、といった具合です。専門知識のない管理組合からすれば、「専門家がそう言うのだから必要なのだろう」と受け入れてしまいがちです。けれども、その判断をする専門家自身が利益相反の立場にいたとしたら——。ここに、設計監理方式の根深い難しさがあります。


今すぐできる、5つの自衛策

では、管理組合の理事長さんや収益物件のオーナーさんは、次の修繕で同じ轍を踏まないために何をすればよいのでしょうか。専門家でなくても実践できる、現実的な5つの自衛策をお伝えします。

1. 設計コンサルタントと施工会社の「資本・人的関係」を確認する。 契約前に、コンサルタントと候補施工会社の間に資本関係や役員の兼任、過去の継続的な取引がないかを確認しましょう。「御社と、推薦いただく施工会社さんとの関係を教えてください」と率直に尋ねるだけでも、相手の反応から多くが分かります。

2. コンサルタントへの報酬体系を明確にする。 設計監理料を、工事費に対する%ではなく定額(あるいは業務内容に応じた積算)で契約すると、「工事費が高いほどコンサルの報酬も増える」という利益相反が起きにくくなります。バックマージンの有無も、契約書で明示的に否定してもらいましょう。

3. 相見積もりは「組合主導」で、候補社も自分たちで探す。 コンサルタントが用意した候補社だけで相見積もりを取ると、その時点で競争が閉じている可能性があります。組合として独自に1〜2社を候補に加える、あるいはまったく別ルートから見積もりを取ってみる。これだけで、提示金額の妥当性を客観的に検証できます。

4. 国や自治体の相談窓口・指標を活用する。 国土交通省は、管理組合が適正な見積りかどうかを検討する際の指標となるよう、マンション大規模修繕工事に関する実態調査を実施・公表しています。工事費の目安を知るだけでも、「明らかに高い見積もり」に気づけます。各自治体もマンション管理の相談窓口を設けています。

5. 「発注方式そのもの」を比較検討する。 設計監理方式が唯一の正解ではありません。後述する責任施工方式や、複数の工法を扱える施工会社への直接相談など、選択肢を広げて比較することが、結果的に最も強い防衛策になります。


見積書のどこを見ればいいか——理事長が押さえる5つのチェックポイント

「専門用語ばかりで、見積書のどこを見ればいいのか分からない」。これは、私が管理組合の理事長さんから最もよくいただく相談です。建築の素人であっても、次の5点を押さえるだけで、見積もりの不自然さにはかなり気づけるようになります。

第一に、仮設費(足場代)の内訳です。 大規模修繕の見積もりの中で、足場をはじめとする仮設費は大きな割合を占めます。ここが「仮設工事 一式」とだけ書かれていたら要注意です。足場の面積(㎡)、単価、設置期間が明示されているかを確認してください。ロープアクセスやハイブリッド工法という選択肢を検討すれば、この仮設費そのものを見直せる余地が生まれます。

第二に、「一式」表記の多さです。 見積書に「一式」が並んでいると、何にいくらかかっているのかが分かりません。本来は、項目ごとに数量と単価が積み上げられているのが健全な見積もりです。「一式」が多い見積もりは、後から金額を動かしやすく、比較もしにくいため、内訳の明示を求めましょう。

第三に、数量の根拠(数量拾い)です。 外壁補修やタイルの張り替えは、「想定数量」で見積もられることが多い項目です。実際の劣化範囲を調査したうえでの数量なのか、それとも経験則で多めに積んでいるのか。この差が、過剰な工事項目につながります。調査診断の報告書と見積もりの数量が整合しているかを照らし合わせてください。

第四に、予備費の割合です。 工事中に追加で見つかる劣化に備える予備費は必要ですが、過大に計上されていると、使われなかった分がそのまま費用になりかねません。予備費が総額の一定割合を大きく超える場合は、その根拠を確認しましょう。

第五に、諸経費率です。 現場管理費や一般管理費などの諸経費は、工事の規模に応じてある程度の幅に収まるのが通常です。複数社の見積もりを並べたとき、諸経費率が極端に高い会社があれば、その理由を尋ねる価値があります。

これらは、専門家でなくても「質問できる」ポイントです。そして、誠実な施工会社やコンサルタントであれば、こうした質問に丁寧に答えてくれます。逆に、質問をはぐらかしたり、「お任せください」の一点張りだったりする相手は、慎重に見極めたほうがよいでしょう。


修繕積立金との関係——「高い工事」は将来の積立計画も狂わせる

談合や不適切コンサルによる割高な工事の影響は、その一回の工事費だけにとどまりません。マンションの修繕は、12年前後の周期で繰り返される長期戦です。一度の工事で想定より多く積立金を使ってしまえば、次回・次々回の修繕に向けた資金計画が狂い、最悪の場合は一時金の徴収や借入れが必要になります。

国土交通省は、長期修繕計画と修繕積立金のあり方についてガイドラインを示し、計画的な積立てを促してきました。近年は資材費・人件費の高騰で修繕単価そのものが上昇しており、積立金が不足する組合も少なくありません。そうした厳しい環境だからこそ、「一回の工事で適正な金額に抑える」ことの重みが増しています。

私は、大規模修繕を「資産価値を守るための投資」だと考えています。投資である以上、同じ効果ならコストは低いほうがよく、同じコストなら効果は高いほうがよい。談合によって競争が失われると、この当たり前の経済原理が働かなくなります。発注する側が知識を持ち、複数の選択肢を比較することは、目先の一工事だけでなく、マンションの数十年先の財務を守ることにつながるのです。

収益物件のオーナーさんにとっては、この問題はより直接的に利回りに響きます。修繕費が割高になれば、その分だけ実質利回りは下がります。建物の資産価値を維持しながら、修繕コストを適正化する——その両立こそが、長期で収益を最大化する王道だと、私は現場で繰り返し実感してきました。


<明誠のサービス紹介>工法の選択肢を増やすという発想——足場・ロープアクセス・ハイブリッド

ここからは、私たち株式会社明誠が大規模修繕で大切にしている考え方を、サービス紹介としてお伝えします。利益相反を避けるため、見出しで明確に区切っておきます。読み飛ばしていただいてもかまいません。

今回の談合事件の根っこには、「管理組合が、工事の中身や価格の妥当性を自分で判断しにくい」という情報の非対称性があります。私たちが解決策の一つとして提案しているのが、工法の選択肢を増やし、コスト構造を見える化するというアプローチです。

3つの工法を、建物ごとに使い分ける

大規模修繕というと、多くの方が「建物全体に足場を架ける」イメージを持たれます。ですが、工法は一つではありません。

工法 特徴 向いている建物
通常足場工法 従来型の仮設足場による施工。広い面を一度に施工でき、複雑な形状にも対応 中低層、形状が複雑な物件
ロープアクセス工法(無足場) 産業用ロープで職人が昇降して施工。足場の架設費が不要で、工期短縮・居住者の生活影響の最小化につながる 高層、足場の架設が難しい物件、コストを重視する物件
ハイブリッド工法 足場とロープアクセスを部位ごとに使い分け、総合的にコストを最適化 大規模・複雑で、総合コスト最適化が必要な物件

足場を架けるか架けないかで、仮設費(足場代)は大きく変わります。一般に足場の架設・解体・賃料は工事費の中でも大きな割合を占めるため、ロープアクセスを適切に組み合わせると、その部分のコスト構造が分かりやすくなります。「なぜこの金額なのか」を発注者が理解しやすくなる——これは、不透明な見積もりに対する一つの抑止力になります。

私たち明誠は、この3つの工法をすべて自社で扱い、建物の高さ・形状・劣化状況・居住者の事情に応じて「この建物にとってのベスト」を提案できる、日本でも数少ない会社です。一つの工法しか持たない会社は、どうしても自社の得意な工法に話を寄せがちです。複数の選択肢を同じテーブルに並べて比較できることが、発注者の納得につながると考えています。

なぜ「工法の選択肢」が談合に強いのか

談合が成立するのは、限られたプレイヤーが同じ土俵で価格を調整できるからです。ところが、足場工法しか想定していなかった案件に「ロープアクセスならこの部分はこの費用」という別の物差しが入ると、価格の妥当性を測る基準が一つ増えます。物差しが増えるほど、不当に高い金額は目立ちます。工法の多様性は、結果として価格の透明性を高めるのです。

加えて、私たちはロープアクセス工事として日本で初めてフランチャイズ展開を行い、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟する体制を築いています。専門職が直接施工に関わることで、中間マージンを抑え、高品質と低価格の両立を目指しています。


発注方式の選び方——設計監理方式と責任施工方式、どちらが正解か

「では、設計監理方式はやめて責任施工方式にすればいいのか」と問われると、答えは単純ではありません。どちらにも長所と短所があります。

設計監理方式は、信頼できる第三者のコンサルタントに当たれば、施工会社を厳しくチェックしてもらえる強みがあります。問題は、その「信頼できる第三者」をどう見極めるかです。今回の事件は、方式そのものが悪いというより、運用における利益相反のチェックが甘かった点に本質があると私は見ています。

責任施工方式は、窓口が一本化されて話が早く、設計から施工まで一貫した責任を負ってもらえる安心感があります。一方で、第三者の目が入りにくいため、施工会社の誠実さに大きく依存します。だからこそ、責任施工方式を選ぶ場合は、施工会社の実績・財務の健全性・工法の説明の丁寧さを、組合側がしっかり見極める必要があります。

私からの提案は、「方式を先に決めない」ことです。まずは複数の施工会社・コンサルタントに会い、見積もりと説明の中身を比較したうえで、自分たちのマンションに合った進め方を選ぶ。そのプロセス自体が、最良の自衛策になります。手間はかかりますが、何千万円、ときに億単位の工事です。手間をかける価値は十分にあります。


現場で見た「油断」——「うちは大丈夫」と思っていた組合ほど危ない

最後に、私自身が現場で見聞きしてきた話を、個人や物件が特定されない範囲でお伝えします。談合や不適切コンサルの被害に遭う組合には、いくつか共通する「油断」があると感じています。

一つめは、「前回と同じところに頼めば安心」という油断です。あるご相談では、十数年前の修繕を担当した会社にそのまま二回目もお願いしようとしていました。継続は悪いことではありません。けれども、相見積もりを一度も取らずに発注を続けると、価格が適正かどうかを検証する機会が永遠に訪れません。私たちが参考見積もりを出したところ、工法の組み合わせを見直すだけで仮設費の構成が大きく変わり、理事会の皆さんが「比べてみて初めて分かった」とおっしゃっていたのが印象的でした。

二つめは、「専門家に任せておけば間違いない」という油断です。これは決して理事の皆さんを責める話ではありません。本業を持ちながら無償で組合運営を担う理事の方々が、建築の専門家を信頼するのはごく自然なことです。だからこそ、その信頼を裏切る一部の事業者の存在が、いっそう罪深いのだと思います。専門家を信頼することと、専門家を一切チェックしないことは、別物です。

三つめは、「急いで決めなければ」という油断です。総会の日程や劣化の進行を理由に、十分な比較検討をしないまま発注へ進んでしまうケースです。確かに、雨漏りや外壁の浮きなど、安全に関わる劣化は急ぐべきです。けれども、緊急対応と本工事の発注は切り分けられます。まずは応急処置で安全を確保し、本工事はじっくり比較する——この二段構えが、結果的に組合を守ります。

私は職人の世界から叩き上げてきた人間です。ロープ一本で外壁にぶら下がり、タイルの一枚一枚を打診しながら、「この建物をあと何十年もたせるか」を考えてきました。だからこそ、発注者の大切なお金が不透明な仕組みで失われるのを見ると、本当に悔しい。今回のニュースを、業界が襟を正す機会にしなければならないと、強く思っています。


よくある質問(FAQ)

Q. 今回の談合に関わった会社に発注した管理組合は、お金を取り戻せますか。
A. 個別の事案については、弁護士など専門家への相談が必要です。一般論として、独占禁止法違反が確定した場合、損害賠償請求の可能性が論じられることはありますが、立証や手続きのハードルは高いのが実情です。本記事は法的助言ではありませんので、具体的な対応は専門家にご確認ください。

Q. うちのマンションの過去の修繕が適正だったか、今から確認できますか。
A. 当時の見積書・契約書・工事仕様書が残っていれば、第三者の施工会社やコンサルタントにセカンドオピニオンを求めることができます。次回の修繕計画を立てる良い機会にもなります。

Q. ロープアクセスにすれば必ず安くなりますか。
A. いいえ。建物の形状や劣化状況によっては、足場工法のほうが適切で結果的に経済的な場合もあります。大切なのは「必ず安い工法」を探すことではなく、「この建物にとって最適な工法」を複数の選択肢の中から選ぶことです。

Q. 設計コンサルタントを使うこと自体が悪いのですか。
A. そうではありません。誠実なコンサルタントは、管理組合にとって心強い味方です。問題は利益相反のある一部の事業者です。報酬体系の透明化と、施工会社との関係の確認で、多くのリスクは下げられます。


まとめ——「見えない損失」を、知識で防ぐ

今回の公取委による談合認定は、マンション修繕業界にとって厳しいニュースです。けれども、発注する側にとっては「自分たちのお金の守り方」を学び直す機会でもあります。

ポイントを振り返ります。談合は、競争が働いているように見える状態を人工的に作る行為であり、理事会が手を抜いていたから起きたものではありません。背景には設計監理方式の利益相反という構造的な死角があり、国は9年前から警鐘を鳴らしていました。被害は割高な工事費やバックマージン、過剰な工事項目という「見えない損失」として表れます。そして自衛策は、コンサルと施工会社の関係確認、報酬体系の透明化、組合主導の相見積もり、公的指標の活用、そして発注方式と工法の選択肢を広げること——この5つです。

私たち明誠は、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法を建物ごとに提案し、コスト構造を見える化することで、発注者の皆さまが「納得して選べる」修繕を目指しています。大規模修繕は、マンションやビルの資産価値を守り、入居者・利用者の暮らしを支える大切な投資です。その一円一円が、正しく建物のために使われる——そんな当たり前を、業界の一員として取り戻していきたいと、今回のニュースを見て改めて思いました。

次の修繕で迷われたときは、工法の選択肢から一緒に考えてみませんか。お問い合わせをお待ちしています。

工法ごとの考え方や費用構造については、株式会社明誠の公式サイトで、足場工法・ロープアクセス工法(無足場)・ハイブリッド工法それぞれの特徴と、建物に応じた選び方をご案内しています。具体的なご相談はお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。

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出典

  • マンション修繕談合、38社に排除命令へ 計16億円課徴金方針(毎日新聞/Yahoo!ニュース、2026年6月12日):https://news.yahoo.co.jp/articles/5ea9e87a5718b6e476fa0be0807558072a4e8a37
  • マンション修繕談合、30社超に排除命令へ 100件以上が対象(日本経済新聞、2026年6月):https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD034M00T00C26A6000000/
  • 公取委、マンション修繕工事で談合認定 三十数社に課徴金16億円命令へ(時事ドットコム、2026年6月12日):https://www.jiji.com/jc/article?k=2026061200061&g=eco
  • 公正取引委員会(一次情報トップ):https://www.jftc.go.jp/
  • 国土交通省「住宅:マンション管理」:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_hous

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平塚市の分譲マンション管理組合が使える補助金・税制活用ガイド|大規模修繕の負担を軽くする2026年度(令和8年度)の制度設計

「そろそろ2回目の大規模修繕を考えないと——でも、積立金が足りるか不安で」。平塚駅周辺や紅谷町、八重咲町、四之宮、撫子原といった平塚市内のマンションにお住まいの理事長さまから、最近こうしたご相談を立て続けにいただいています。湘南・相模湾に面した平塚市は、東海道線の主要駅をかかえ、昭和から平成にかけて分譲されたファミリー向けマンションが数多く立ち並ぶまちです。築20年、30年を超えれば、外壁の塗り替えや屋上防水、給排水管の更新といったまとまった出費が、一度に押し寄せてきます。

私は大規模修繕の現場で20年近く、足場の上とロープの先から建物を見続けてきました。そのなかで一番もったいないと感じるのは、「使える制度を知らないまま工事を終えてしまった管理組合」に出会うときです。固定資産税の減額、耐震診断の補助、低利の公的融資、無料の専門家派遣——平塚市には、管理組合が活用できる制度がきちんとそろっています。知っているか知らないかで、組合の負担は数十万円から、規模によってはそれ以上変わってきます。

この記事では、平塚市の分譲マンション管理組合が2026年度(令和8年度)に使える制度を、申請の順番に沿って、現場目線で整理しました。専門用語にはそのつど補足を入れますので、建築にお詳しくない理事長さまも、最後までお付き合いください。ここからが本題です。

平塚市のマンション管理組合が使える支援制度【2026年度・一覧】

まず全体像を押さえましょう。平塚市の分譲マンション管理組合が、大規模修繕や維持管理の場面で活用できる主な制度は、大きく「税」「耐震」「資金」「相談・認定」の4つに分けられます。

区分 制度名 概要 窓口
税の優遇 マンション長寿命化促進税制 一定要件を満たす長寿命化工事で、翌年度の固定資産税(家屋分)が2分の1減額 平塚市 固定資産税課
耐震の補助 マンション耐震化促進事業(予備診断・耐震診断) 旧耐震マンションの予備診断・耐震診断の費用の一部を補助 平塚市 建築指導課
専門家の派遣 耐震改修アドバイザー派遣事業 耐震診断・改修の専門家(建築士)を管理組合の集会へ無料派遣 平塚市 建築指導課
資金の調達 マンション共用部分リフォーム融資 管理組合向けの低利・長期の公的融資(住宅金融支援機構) 住宅金融支援機構/マンション管理センター
相談・認定 マンション管理計画認定制度 適正管理のお墨付き+税・融資の優遇につながる入口 平塚市 建築指導課

ここで強調しておきたいのは、これらは「どれか一つを選ぶ」ものではなく、組み合わせて使う発想が大切だということです。私はいつも理事長さまに、「工事の中身を決める前に、まず使える制度の地図を広げてください」とお伝えしています。順番が逆になると、せっかくの優遇を取り逃すことがあるからです。なぜそうなるのかは、記事の後半でご説明します。

なお、各制度には年度ごとの受付期間や予算枠、細かな要件があります。本記事の数値は2026年6月時点で平塚市・国の公式情報を確認したものですが、申請前には必ず各窓口の最新情報をご確認ください。

【税】マンション長寿命化促進税制:固定資産税が1年間2分の1に

最初にご紹介したいのが、令和5年度の税制改正で創設された「マンション長寿命化促進税制」です。これは、一定の要件を満たしたうえで長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションについて、工事が完了した年の翌年度分の建物部分の固定資産税を2分の1に減額する制度です(出典:平塚市 マンション長寿命化促進税制)。

ここでいう「長寿命化に資する大規模修繕工事」とは、次の3つを指します。

  • 屋根防水工事(屋上・屋根などの防水)
  • 床防水工事(直接外気に開放された廊下・バルコニーなどの防水)
  • 外壁塗装等工事(外壁の塗り替え・補修)

つまり、屋根・床・外壁の3点セットの工事です。大規模修繕の王道メニューそのものですから、多くの管理組合にとって、ふだんの修繕計画の延長線上にある話だとお考えください。

対象となるマンションの要件

この制度の対象になるには、平塚市が示す要件を「すべて」満たす必要があります。要点を理事長さま向けにかみ砕くと、次のとおりです。

  1. 新築された日から20年以上が経過していること
  2. 総戸数が10戸以上であること
  3. 区分所有者の専有部分の床面積の2分の1以上が居住用であること
  4. 「平塚市マンション管理計画認定制度、助言・指導について」の建築指導課での手続きが完了していること

そのうえで、工事の要件として「過去に長寿命化工事(屋根防水・床防水・外壁塗装等)を1度以上実施していること」「令和5年4月1日から令和9年3月31日までの間に、2回目以降の長寿命化工事を完了していること」が求められます。

少し専門的なので、鍵になるところだけ。要件4の「管理計画認定または市の助言・指導」と、工事要件の「2回目の3点セット工事」がポイントです。日頃から修繕積立金をきちんと積み、長期修繕計画を整えている管理組合ほど、この税制に手が届きやすい設計になっています。逆に言えば、「2回目の大規模修繕を控えていて、積立金の見直しもこれから」という組合でも、今から準備すれば十分に間に合う可能性があります。

減額の中身:戸あたりで考える

減額の対象は、各区分所有者が翌年度に支払う「建物部分」の固定資産税です。これが1年間、2分の1に減額されます。ただし、対象になるのは1戸あたり100平方メートル(共用部分を含む)までで、これを超える部分は減額されません。また、都市計画税には減額がない点にもご注意ください。

実務でとくに大切なのが、申告のタイミングです。工事が完了した日から3か月以内に、平塚市固定資産税課(本館2階・213窓口)へ減額措置を申告する必要があります。「工事が終わってひと安心」と気を抜くと、この3か月をうっかり過ぎてしまいがちです。私は理事長さまに、工事の竣工前から申告書類の準備を始めておくようお願いしています。

申告できるのは、本人(納税義務者・所有者)やその相続人のほか、管理組合等の代表者です。管理組合の代表者が必要書類を提出することで、各所有者の申告をまとめて行うこともできます。なお、申告書はマンションの全戸数分(全部屋分)を提出する必要があります。

注意点として、この制度による減額は1棟につき「1度のみ」の適用です。さらに、耐震改修工事・バリアフリー改修工事・省エネルギー改修工事による固定資産税の減額措置とは重複して適用できません。どの優遇を使うのが組合にとって有利か、工事の計画段階で見極めておくことが欠かせません。

【入口】平塚市マンション管理計画認定制度:税と融資の「鍵」になる

長寿命化促進税制の要件4で出てきた「管理計画認定」。これは、平塚市が令和5年4月に創設した「マンション管理計画認定制度」のことです(出典:平塚市マンション管理計画認定制度、助言・指導について)。

この制度は、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、「適切な管理計画を持つマンション」として市の認定を受けられる仕組みです。平塚市は、マンション管理適正化推進計画を「平塚市空家等対策計画」のなかに位置づけて、この認定制度を運用しています。

認定を取ると、何がいいのか

認定の効果は、平塚市が公式に次の5つを挙げています。

  1. 区分所有者の管理への意識が高く保たれ、管理水準を維持向上しやすくなる
  2. 適正に管理されたマンションとして、市場において評価される
  3. 適正に管理されたマンションが存在することで、地域価値の維持向上につながる
  4. 住宅金融支援機構の「フラット35」および「マンション共用部分リフォーム融資」の金利引下げ等が受けられる
  5. 固定資産税の優遇(前述の長寿命化促進税制)が受けられる

理事長さまの視点で言い換えると、認定は「資産価値」と「資金調達」の両面で効いてくる、ということです。2の市場評価は、将来お部屋を売却・賃貸する区分所有者にとって追い風になりますし、4・5は管理組合の財布に直接効きます。私が「制度の地図をまず広げて」とお伝えするのは、この認定が税制と融資の入口になっているからにほかなりません。

申請の方法と手数料

申請は、(公財)マンション管理センターの申請システム「管理計画認定手続支援サービス」で事前確認を行ったうえで、同システムを経由して市に申請します。システムを使わずに直接市へ申請することはできません。

費用については、システムの利用料と、マンション管理士による事前確認審査料が必要です(金額はマンション管理センターでご確認ください)。一方で、システムを経由して市へ認定申請する際に、市の手数料はかかりません。認定の有効期間は5年です。

なお、管理計画認定の手前にある「助言・指導」を市から受け、長期修繕計画の作成・見直しを行うルートでも、一定の要件を満たせば固定資産税の優遇を受けられます。「いきなり認定はハードルが高い」という組合でも、まずは建築指導課に相談する道があるとお考えください。制度全般の相談窓口としては、一般社団法人日本マンション管理士会連合会の「マンション管理計画認定制度相談ダイヤル(電話:03-5801-0858、月曜から土曜の午前10時から午後5時)」も用意されています。

【耐震】平塚市マンション耐震化促進事業:旧耐震マンションの命綱

平塚市は、湘南エリアとして大規模地震への備えが欠かせない立地です。とくに昭和56年(1981年)の建築基準法改正前の「旧耐震基準」で設計されたマンションは、耐震性が十分でないと指摘されています。平塚市では、こうしたマンションの耐震化を後押しするため、「マンション耐震化促進事業」として段階的な補助を用意しています(出典:平塚市 分譲マンションの耐震改修アドバイザー派遣事業・マンション耐震化促進事業)。

支援は、(1) 耐震改修アドバイザー派遣(無料)、(2) 予備診断費の補助、(3) 耐震診断費の補助——という3段階です。ただし「アドバイザー派遣を受けずに予備診断の補助を受ける」など、それぞれを個別に利用することもできます。

まずは無料の「耐震改修アドバイザー派遣」から

最初のきっかけづくりに使えるのが、無料のアドバイザー派遣です。マンションの耐震診断・耐震改修に関する専門知識を持つ建築士を、管理組合が開く集会などにアドバイザーとして無料で派遣してくれます。「うちのマンションは耐震性が大丈夫なのか」「何から手をつければいいのか」——そんな漠然とした不安を、専門家と一緒に整理できる機会です。総会で住民の合意を形成する前段階として、私は活用をおすすめしています。

予備診断費の補助:費用の10分の9、上限18万円

「予備診断」とは、設計図書の保存状況や建物の経年劣化、平面・立面の形状などを調べ、本格的な「耐震診断」を受ける必要があるかどうかを判断する、いわば一次スクリーニングです。

平塚市の予備診断費の補助は、予備診断に要した費用(税込み)の10分の9で、補助金の上限額は18万円です。補助率が9割と高いのが特徴で、最初の一歩のハードルを大きく下げてくれます。

対象となるのは、平塚市内にあるマンションで、(1) 昭和56年5月31日以前に建築確認を得て工事に着手したもの、(2) 住戸数の過半が区分所有者の住居用、(3) 住宅部分の床面積が過半、(4) 集会または管理規約に基づく会で予備診断の実施を決議したもの、(5) 床面積の合計が1,000平方メートル以上のもの——これらすべてに該当する建物です。1つの管理組合につき1棟までが対象です。

耐震診断費の補助:費用の2分の1、1住戸あたり4万円

予備診断の結果、本格的な「耐震診断」が必要と判断された場合は、耐震診断費の補助に進みます。耐震診断は、現地調査や材料強度試験、設計図書をもとに構造計算を行い、数値で耐震性を判定するものです。

補助額は、耐震診断に要した費用と、耐震判定委員会等による評価・判定に要した費用の2分の1で、上限は1住戸あたり4万円(区分所有者が居住する住戸に限る)です。たとえば30戸のマンションなら、単純計算で最大120万円が補助の上限ということになります。耐震診断費の補助を受けるには、既存建築物耐震診断・改修等推進全国ネットワーク委員会等に登録された耐震判定委員会等の評価を取得する必要があります。

手続きの順番に注意——「決議」のタイミング

耐震化促進事業で実務上とくに気をつけたいのが、手続きの順番です。平塚市では、市に「計画承認申請」を行い、市の承認通知書を受け取った後に、管理組合の総会(または集会)で実施を決議する流れになっています。さらに、補助金交付決定通知書を受け取った後に、耐震診断者と診断の契約を締結します。

つまり「先に総会で決議して、業者と契約してから市に申請」という、つい無意識にやってしまいがちな順番だと、補助の対象外になりかねないということです。窓口は平塚市建築指導課(電話:0463-21-9731)。総会のスケジュールを組む前に、まず建築指導課へ相談されることを強くおすすめします。

【資金】住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資

補助金や税制で負担を軽くしても、大規模修繕には数千万円単位のまとまった資金が必要になることがあります。修繕積立金だけでは足りない——そんなときの選択肢が、住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)の「マンション共用部分リフォーム融資」です。

これは管理組合が借主となる、共用部分の修繕・改修のための公的融資です。民間ローンに比べて低利・長期での借入れがしやすく、マンション管理センターの保証を利用することで無担保化も可能です。そして前述のとおり、平塚市の管理計画認定を取得していれば、この融資や「フラット35」で金利の引下げ等が受けられます。

私の現場経験から言えば、資金計画は「工事の前」に固めておくほど、組合の選択肢が広がります。融資ありきで工事内容を削るのではなく、「使える制度をフル活用したうえで、最適な工法を選ぶ」。この順番が、結果として総コストを下げます。金利は毎月見直されるため、検討の際は最新の条件を住宅金融支援機構でご確認ください。

制度を「取り逃さない」ための着手順【5ステップ】

ここまでの制度を、実際の動きに落とし込みます。私が理事長さまにおすすめしている順番は、次の5ステップです。

  1. 現状把握と相談(無料):まず建築指導課に相談し、必要に応じて耐震改修アドバイザー派遣(無料)を受ける。自分のマンションが旧耐震かどうか、管理計画の状態はどうかを確認する。
  2. 管理計画の整備と認定:長期修繕計画と修繕積立金を見直し、マンション管理計画認定の取得(または市の助言・指導)を進める。これが税制・融資の入口になる。
  3. 資金計画の確定:修繕積立金に加え、共用部分リフォーム融資の活用可否を検討。認定取得による金利引下げも織り込む。
  4. 工事内容と工法の決定:必要な工事(屋根防水・床防水・外壁塗装等の3点セットを含む)を確定し、足場・ロープアクセス・ハイブリッドのなかから建物に最適な工法を選ぶ。
  5. 工事完了後の申告(3か月以内):長寿命化促進税制の減額措置を、工事完了から3か月以内に固定資産税課へ申告する。

このうち2の「管理計画認定」を起点に据えるのが、私からの一番のおすすめです。認定が固定資産税の減額と融資の金利引下げの両方に効いてくるため、ここを早めに動かしておくと、後段の選択肢が大きく広がります。

制度を活かす工法選び——足場・ロープアクセス・ハイブリッド

制度で負担を軽くしたら、次は「工事そのものの最適化」です。私たち明誠は、大規模修繕において3つの工法を建物の特性に応じて使い分け、最適な形をご提案できる、日本でも数少ない会社です。それぞれの向き・不向きを正直にお伝えします。

通常の足場工法は、中低層で形状が複雑な建物、あるいは全面的に大規模な改修を行う場合に向いています。作業の安定性が高く、広い面を一度に施工できる反面、足場の架設・解体に費用と工期がかかり、設置期間中は居住者の窓まわりやプライバシー、防犯面への配慮も必要になります。

ロープアクセス工法(無足場工法)は、産業用ロープを使って足場を架けずに施工する方法です。足場費がかからないぶんコストを抑えやすく、工期も短縮できます。高層で足場の架設が難しい建物、部分的な補修、居住者の生活への影響を最小化したい物件に向いています。一方で、全面的な大改修や、足場が必要な重量物の取り回しには不向きな場面もあります。

ハイブリッド工法は、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分ける方法です。たとえば施工量の多い面は足場、足場の架けにくい面はロープアクセス、といった具合に組み合わせることで、大規模・複雑な物件でも総合的なコストと工期の最適化を図れます。

平塚市内のマンションは、駅前の中高層から郊外のファミリータイプまで形状もさまざまです。「足場ありき」でも「無足場ありき」でもなく、建物を見たうえで最適な工法をご提案する——これが私たちの基本姿勢です。長寿命化促進税制の対象となる屋根・床・外壁の3工事も、工法の選び方次第で総コストは変わってきます。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 築年数が新しく旧耐震ではないのですが、使える制度はありますか。
A. はい。耐震化促進事業(予備診断・耐震診断の補助)は旧耐震(昭和56年5月31日以前に建築確認)が対象ですが、マンション長寿命化促進税制は「新築から20年以上・総戸数10戸以上」などの要件を満たせば、新耐震のマンションでも対象になり得ます。管理計画認定や共用部分リフォーム融資も、築年数を問わず活用できます。

Q2. 長寿命化促進税制で、本当にどのくらい安くなりますか。
A. 減額されるのは建物部分の固定資産税の2分の1(1戸あたり100平方メートルまで、1年間)です。金額は各戸の評価額によって異なるため一律には言えませんが、戸数の多いマンションほど組合全体での効果は大きくなります。具体額は固定資産税課(家屋担当・電話:0463-21-8768)にご確認ください。

Q3. 管理計画認定は、手間に見合いますか。
A. 認定は固定資産税の減額・公的融資の金利引下げ・市場での評価という複数の効果につながる「入口」です。長期修繕計画や積立金の整備は、認定の有無にかかわらずマンションの健全運営に欠かせないものですから、その延長で認定を取得できれば、得られるメリットは小さくありません。まずは建築指導課にご相談ください。

Q4. 補助や税制の手続きと工事の段取りを、まとめて相談できますか。
A. はい。私たちは制度の活用を前提に、工事の計画段階から「どの制度をどの順番で使うか」を含めてご提案しています。申請のタイミングを誤ると優遇を取り逃すこともあるため、工事を決める前のご相談が効果的です。

まとめ——「知っている管理組合」が、負担を軽くする

平塚市の分譲マンション管理組合が使える制度を、申請の順番に沿って整理してきました。マンション長寿命化促進税制による固定資産税の減額、耐震化促進事業の予備診断(費用の9割・上限18万円)・耐震診断(1住戸4万円)の補助、無料の耐震改修アドバイザー派遣、共用部分リフォーム融資、そしてそれらの入口となる管理計画認定制度。これらを「組み合わせて」「正しい順番で」使うことが、組合の負担を確実に軽くします。

冒頭でお伝えしたとおり、私が現場で一番もったいないと感じるのは、使える制度を知らないまま工事を終えてしまうケースです。逆に言えば、制度を知り、早めに動き出した管理組合は、同じ工事でも負担を大きく減らせます。

「うちのマンションだと、どの制度が使えるのか」「2回目の大規模修繕に向けて、何から準備すればいいのか」。そうした疑問が少しでもあれば、まずは情報を集めるところから始めてください。私たち明誠は、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法と制度活用の両面から、平塚市のマンションにとって最適な大規模修繕をご提案します。ご相談はいつでもお気軽にどうぞ。


出典(2026年6月時点・公式一次情報)

▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

大和市の分譲マンション管理組合が使える補助金・税制活用ガイド|大規模修繕の負担を軽くする2026年度(令和8年度)の制度設計

「うちのマンションも、そろそろ2回目の大規模修繕の時期だ」——中央林間やつきみ野、南林間、鶴間といった大和市内のマンションにお住まいの理事長さまから、最近こうしたご相談を立て続けにいただいています。東急田園都市線や小田急江ノ島線の沿線として発展してきた大和市には、昭和から平成初期に分譲されたファミリー向けマンションがたくさんあります。築20年、30年を超えれば、外壁の塗り替えや屋上防水、給排水管の更新といったまとまった出費が、一度に押し寄せてきます。

私は大規模修繕の現場で20年近く、足場の上とロープの先から建物を見続けてきました。そのなかで一番悔しい思いをするのは、「使える制度を知らないまま工事を終えてしまった管理組合」に出会うときです。固定資産税の減額や耐震診断の補助、低利の公的融資、無料の専門家相談——大和市には、管理組合が活用できる制度がきちんとそろっています。知っているか知らないかで、組合の負担は数十万円から、規模によってはそれ以上変わってきます。

この記事では、大和市の分譲マンション管理組合が2026年度(令和8年度)に使える制度を、申請の順番に沿って、現場目線で整理しました。専門用語にはそのつど補足を入れますので、建築にお詳しくない理事長さまも、最後までお付き合いください。ここからが本題です。

大和市のマンション管理組合が使える支援制度【2026年度・一覧】

まず全体像を押さえましょう。大和市の分譲マンション管理組合が、大規模修繕や維持管理の場面で活用できる主な制度は、大きく「税」「耐震」「資金」「相談・認定」の4つに分けられます。

区分 制度名 概要 窓口
税の優遇 マンション長寿命化促進税制 一定要件を満たす長寿命化工事で、翌年度の固定資産税(家屋分)が2分の1減額 大和市 資産税課
耐震の補助 マンション耐震診断費補助金 旧耐震マンションの予備診断・本診断の費用の一部を補助 大和市 建築指導課
資金の調達 マンション共用部分リフォーム融資 管理組合向けの低利・長期の公的融資(住宅金融支援機構) 住宅金融支援機構/マンション管理センター
相談・認定 マンション管理計画認定制度/専門家相談 適正管理のお墨付き+無料の専門家相談 大和市 建築指導課/神奈川県

ここで強調しておきたいのは、これらは「どれか一つを選ぶ」ものではなく、組み合わせて使う発想が大切だということです。私はいつも理事長さまに、「工事の中身を決める前に、まず使える制度の地図を広げてください」とお伝えしています。順番が逆になると、せっかくの優遇を取り逃すことがあるからです。なぜそうなるのかは、記事の後半でご説明します。

なお、各制度には年度ごとの受付期間や予算枠、細かな要件があります。本記事の数値は2026年6月時点で大和市・国の公式情報を確認したものですが、申請前には必ず各窓口の最新情報をご確認ください。

【税】マンション長寿命化促進税制:固定資産税が2分の1に

最初にご紹介したいのが、令和5年度の税制改正で創設された「マンション長寿命化促進税制」です。これは、一定の要件を満たしたうえで長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションについて、翌年度の建物部分の固定資産税を2分の1に減額する制度です(出典:大和市 大規模修繕等が行われたマンションに対する固定資産税の減額措置)。

ここでいう「長寿命化に資する大規模修繕工事」とは、次の3つを「すべて」実施するものを指します。

  • 外壁塗装等工事(外壁の塗り替え・補修)
  • 床防水工事(直接外気に開放された廊下・バルコニーなどの防水)
  • 屋根防水工事(屋上・屋根などの防水)

つまり、外壁・床・屋根の3点セットの工事です。大規模修繕の王道メニューそのものですから、多くの管理組合にとって、ふだんの修繕計画の延長線上にある話だとお考えください。

対象となるマンションの要件

この制度の対象になるには、大和市が示す要件を「すべて」満たす必要があります。要点を理事長さま向けにかみ砕くと、次のとおりです。

  1. 新築された日から20年以上が経過していること
  2. 総戸数が10戸以上であること
  3. 専有部分の2分の1以上が、人の居住の用に供する部分であること
  4. 次のいずれかに該当すること——(A)大和市の「マンション管理適正化推進計画」に基づき、修繕積立金を一定以上に引き上げたうえで管理計画の認定を受けたマンション、または(B)市から管理の適正化に必要な助言・指導を受け、その日以後に長期修繕計画を作成または基準に適合するよう変更したマンション
  5. 工事の要件として、過去に長寿命化に資する大規模修繕工事(前述の外壁・床・屋根の3工事すべて)を実施していること
  6. 令和9年3月31日までに、2回目以降の長寿命化工事(同じく3工事すべて)が完了していること

少し専門的なので、鍵になるところだけ。要件4の「管理計画認定」と、要件5・6の「2回目の3点セット工事」がポイントです。日頃から修繕積立金をきちんと積み、長期修繕計画を整えている管理組合ほど、この税制に手が届きやすい設計になっています。逆に言えば、「2回目の大規模修繕を控えていて、積立金の見直しもこれから」という組合でも、今から準備すれば十分に間に合う可能性があります。

減額の中身:戸あたりで考える

減額されるのは、工事が完了した年の翌年度分の固定資産税(家屋分)で、減額率は2分の1です。対象となる範囲は1戸あたり床面積100平方メートル分までで、それを超える部分や土地分は対象外です(出典:大和市 同ページ)。

「2分の1」と聞いてもピンとこないかもしれませんので、財布感覚に直してみましょう。仮に1戸あたりの建物分の固定資産税が年7万円のマンションなら、1戸あたり年3万5千円ほどの軽減です。50戸のマンションなら、組合全体で年間150万円規模の負担減になる計算です。1年分とはいえ、決して小さな金額ではありません。

ここで一つ、大事な注意点があります。この減額措置は、ほかの固定資産税の減額措置とは併用できず、1戸につき一度しか受けられません。だからこそ、「いつの工事で、どのタイミングで申告するか」を、工事計画と一緒に設計しておくことが効いてきます。

申告の流れと注意点

この税制は、工事をすれば自動で適用されるものではありません。長寿命化工事が完了した日から3か月以内に、大和市役所の資産税課へ申告する必要があります。

申告には、市の窓口に備え付けの申告書に加えて、「大規模修繕等証明書」「過去工事証明書」、総戸数が10戸以上であることを確認できる書類、そして管理認定マンションの場合は「管理計画認定通知書の写し」と「修繕積立金引上証明書」などの添付が求められます。証明書は建築士やマンション管理士などが作成するもので、準備に時間がかかります。私はこの「証明書の前さばき」を、いつも工事計画とワンセットでご案内するようにしています。完成してから慌てて集めると、3か月の期限に追われることになるからです。

なお、この制度は要件が細かいため、対象になるかどうかの最終判断は必ず市の窓口で確認してください。税制の要件にかかわる「管理計画認定」「助言・指導」については大和市建築指導課(電話046-260-5422)、申告手続きそのものは資産税課(家屋償却資産係046-260-5237)が窓口です。

【耐震】マンション耐震診断費補助金:まず「現状を知る」

次は耐震です。大和市には、分譲マンションの耐震診断にかかる費用の一部を補助する制度があります。「うちは大丈夫だろう」と思われがちですが、対象は昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認を得て新築工事に着手した、いわゆる旧耐震基準のマンションです。築40年を超える物件をお持ちの組合は、ぜひ一度確認してください(出典:大和市 マンション耐震診断費補助金制度)。

ここでいう「旧耐震基準」とは、現在の耐震基準(新耐震基準)が導入される前の古い基準のことです。大きな地震に対する想定が今より緩く、専門家による診断で安全性を確かめておく意味が大きい建物です。

対象と補助額

補助の対象になるのは、次の条件をすべて満たす分譲マンションです。昭和56年5月31日以前に建築確認を得て着工していること、区分所有者がいて住戸数の過半数が区分所有者の居住用であること、延べ面積の2分の1を超える部分が共同住宅であること、そして平面図・構造図などの建築図面があること。申請できるのは管理組合(団体または法人)です。

補助の中身は、診断の段階によって分かれています。

区分 内容 補助額
予備診断 簡易な方法で本診断の要否を判断 1棟あたり上限20万円
本診断(緊急輸送路を塞ぐおそれのあるもの) 耐震改修促進法に基づく安全性評価 費用の3分の2(1棟あたり上限200万円。1,000平方メートル未満は1平方メートルあたり2,000円)
本診断(その他) 同上 費用の2分の1(1棟あたり上限150万円。1,000平方メートル未満は1平方メートルあたり1,500円)

「緊急輸送路を塞ぐおそれのあるもの」とは、災害時に救助や物資輸送の動脈となる道路沿いの建物のことです。倒れると道路をふさいでしまうため、補助率が手厚く設定されています。自分のマンションが該当するかどうかは、事前相談の際に市が判断してくれます。

「事前相談」と「総会・理事会決議」がカギ

この補助で気をつけたいのが、手続きの順番です。予備診断・本診断のいずれも、申請の前に必ず市との事前相談が必要で、診断を実施する前には管理規約や細則に基づく総会または理事会の決議が求められます(出典:大和市 同ページ)。

つまり、「理事会で耐震診断を話題に出す」→「市へ事前相談する」→「総会・理事会で決議する」→「申請する」という流れを、年度のなかで段取りよく進める必要があります。受付期間はおおむね当該年度の4月頃から12月末頃までとされていますので、総会のタイミングから逆算して、早めに動き出すことをおすすめします。私はいつも、「耐震は、まず現状を数字で知るところから」とお伝えしています。診断結果がなければ、改修が必要かどうかも、住民への説明もできないからです。

【資金】住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」

制度を使っても、大規模修繕には相応の自己資金が必要です。積立金が計画どおりに貯まっていればよいのですが、現実には「2回目の修繕で積立金が足りない」という組合は少なくありません。そんなときの選択肢が、独立行政法人住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」です(出典:住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資 ご利用条件(管理組合申込みの場合))。

これは、管理組合が共用部分のリフォーム工事資金を借り入れるための、公的な長期・固定金利の融資です。利用にあたっては、管理規約で必要な事項が定められていること、総会で工事の実施・借入れ・修繕積立金からの返済などが決議されていることが条件になります。

ポイントは、後述する管理計画認定を受けたマンションや、耐震改修を伴う工事などでは金利の引き下げが受けられる場合があることです。また、公益財団法人マンション管理センターの保証を利用すると、無担保で借りられるなどのメリットがあります(出典:マンション管理センター 共用部分リフォーム融資と債務保証)。金利は毎月見直されますので、検討時には必ず最新の適用金利をご確認ください。

私は、融資ありきで工事を組むことはおすすめしません。ですが、「積立金の不足で必要な工事を先送りし、傷みが進んで結局高くつく」という事態こそ避けたいのです。資金の選択肢を知ったうえで、無理のない返済計画を立てる。これも理事長さまの大切な仕事だと思います。

【相談・認定】管理計画認定制度と無料の専門家相談

最後は、すべての土台になる「相談・認定」です。

管理計画認定制度——税制・融資とつながる「適正管理のお墨付き」

大和市は令和6年4月から、「マンション管理計画認定制度」を始めています。これは、適切な管理が行われているマンションの管理計画を市が認定する制度で、認定を受けるには国の指針に沿った16項目の基準を満たす必要があります。大和市には独自の上乗せ基準はなく、国の基準と同じ内容です(出典:大和市 マンション管理計画認定制度について)。

この認定が効いてくるのは、まさに前述の制度との「つながり」です。認定を取得したマンションは、適正に管理されている物件として市場での評価につながるうえ、長寿命化促進税制の入口要件になり、住宅金融支援機構の融資(フラット35やマンション共用部分リフォーム融資)の金利引き下げといったメリットも受けられます。大和市では制度開始から着実に認定が進んでおり、令和8年4月時点で21件のマンションが認定を受けています。

申請の前には、公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」で、国の基準に適合しているかの事前確認を受ける必要があります。この事前確認は講習を修了したマンション管理士が行い、適合すれば「事前確認適合証」が発行されます。利用料は10,000円(税込)で、市への申請手数料は当面の間かからないとされています(出典:マンション管理センター 管理計画認定手続支援サービス)。認定の有効期間は5年間で、申請には総会での決議が前提となります。

神奈川県・市の無料相談を使い倒す

「制度は分かったが、誰に相談すればいいのか」——これが理事長さまの本音だと思います。大和市の制度に関する一次窓口は建築指導課建築住宅係(電話046-260-5422)ですが、より幅広い管理運営や大規模修繕、耐震化、建替えなどの相談には、神奈川県の支援も活用できます。神奈川県は、マンション管理の専門家を管理組合へ派遣する支援や、役員・区分所有者向けのセミナー、相談窓口を用意しています(出典:神奈川県 マンション施策)。

私はいつも、「最初の一歩は、お金のかからない相談から」とお伝えしています。いきなり工事会社に見積もりを取る前に、公的な相談窓口で全体像を整理しておくと、後の判断がぶれません。

制度を「組み合わせて」使う:大規模修繕の進め方

ここまでの制度を、実際の大規模修繕の流れに当てはめてみましょう。私がおすすめしている順番は、次のとおりです。

  1. 長期修繕計画と積立金の点検——まず、今の計画と積立金で何ができるかを把握する。神奈川県や市の無料相談を入口に。
  2. 管理計画認定の取得を検討——税制・融資の入口になるため、早めに動く価値が大きい。事前確認から逆算してスケジュールを引く。
  3. (旧耐震の場合)耐震診断——事前相談・総会決議を経て補助を活用し、まず現状を数字で知る。
  4. 工事計画の確定と資金計画——3点セット工事(外壁・床・屋根)を軸に、自己資金と融資のバランスを設計。
  5. 工事の実施と、完了後3か月以内の税制申告——証明書を前さばきしておき、期限に追われない。

この順番が大切な理由は、冒頭で「順番が逆になると優遇を取り逃す」と申し上げたことに関係します。たとえば、管理計画認定や積立金の引き上げを済ませないまま工事を終えてしまうと、長寿命化促進税制の入口要件を満たせず、減額を受けられないことがあるのです。だからこそ、工事の中身を決める前に、制度の地図を広げておく必要があります。

3つの工法、それぞれの向き・不向き

大規模修繕の費用を左右する大きな要素が、外壁などにアクセスするための「足場」です。私たちは、建物の特性に応じて3つの工法をご提案しています。

  • 通常足場工法:建物全体に仮設足場を架ける従来型。全面的な工事や複雑な形状に向きますが、足場の架設・解体に費用と工期がかかり、居住者の生活への影響(窓が開けにくい、防犯面の不安など)も大きくなりがちです。
  • ロープアクセス工法(無足場工法):産業用ロープを使い、足場を架けずに職人が外壁面で作業する工法です。足場費を抑えられ、工期も短縮しやすく、居住者の生活への影響を最小化できます。高層部や、足場が架けにくい立地で特に効果を発揮します。ただし、全面的な打診調査や大面積の改修には不向きな場合もあります。
  • ハイブリッド工法:足場とロープアクセスを部位ごとに使い分け、総合的なコストと工期を最適化する考え方です。大規模・複雑な物件で、無理なく費用を抑えたいときの選択肢です。

どれが正解かは、建物ごとに違います。私はこれを、必ず現地を見たうえでご提案するようにしています。ロープアクセスについてはロープアクセス工法のご紹介、大規模修繕の総合的な進め方については大規模修繕工事のご紹介もあわせてご覧ください。

「修繕積立金の引き上げ」を総会で通すために

長寿命化促進税制の入口にもなる「修繕積立金の引き上げ」。頭では必要と分かっていても、総会で住民の合意を得るのは簡単ではありません。私が現場で見てきたなかで、合意形成がうまくいく組合には共通点があります。

それは、「数字を、住民の財布感覚に翻訳して伝えている」ことです。たとえば「積立金が不足しています」だけでは動きません。「今のままだと2回目の修繕で○百万円足りず、一時金が1戸あたり△万円になる可能性があります。月△千円の引き上げで、それを避けられます」という形で、自分ごととして見える数字に変える。さらに、税制の減額や補助、融資といった「負担を軽くする選択肢」をセットで示すと、前向きな議論になりやすいのです。正直に申し上げます。値上げの提案は誰にとっても気が重いものですが、先送りのツケは必ず大きくなります。

よくある質問(大和市のマンション補助・税制)

Q1. 賃貸に出している区分所有者がいても、長寿命化促進税制の対象になりますか?
マンション全体として「専有部分の2分の1以上が居住用」などの要件を満たすかどうかで判断されます。一部に賃貸住戸があっても、ただちに対象外になるわけではありません。詳細は大和市資産税課にご確認ください。

Q2. 1回目の大規模修繕でも、固定資産税の減額は受けられますか?
この税制は「過去に長寿命化に資する大規模修繕工事を実施していること」が要件で、2回目以降の工事が対象です。1回目の工事は対象外となるため、長期的な計画のなかで位置づけて考える必要があります。

Q3. 旧耐震ではない(新耐震の)マンションですが、何か使える制度はありますか?
耐震診断補助は旧耐震が対象ですが、長寿命化促進税制や共用部分リフォーム融資、管理計画認定は新耐震のマンションでも活用できます。築年数や管理状況に応じて、使える制度は変わってきます。

Q4. 管理会社に任せているので、自分たちで動く必要はないのでは?
最終的に申請するのは管理組合です。管理会社と役割分担しながらも、理事会として制度の全体像を把握しておくことが、取りこぼしを防ぐ最大のポイントです。

まとめ:まず動くべき3つのこと

最後に、理事長さまに今日から動いていただきたいことを3つに絞ります。

第一に、長期修繕計画と修繕積立金の現状を確認すること。これがすべての出発点です。第二に、管理計画認定の取得を検討すること。税制と融資の入口になり、メリットが連鎖します。第三に、旧耐震のマンションなら、まず耐震診断の事前相談をすること。現状を数字で知ることから、すべてが始まります。

大和市と神奈川県には、無料で使える相談窓口があります。いきなり工事の話に進む前に、まずは制度の地図を広げてみてください。私たち明誠は、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つの工法から、建物にとって本当に必要な工事だけをご提案することを大切にしています。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください(お問合せフォーム)。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

出典・参考資料

※本記事は2026年6月時点で公開されている公的情報をもとに作成しています。補助率・上限額・受付期間・要件は年度や予算枠によって変わることがあります。申請前には必ず各窓口の最新情報をご確認ください。

▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

大規模修繕の市場が「1兆円規模」へ——分譲マンション713万戸時代に、上がり続ける修繕積立金とどう向き合うか。オーナー・管理組合のコスト最適化と工法選択【2026年6月】

大規模修繕の市場が「1兆円規模」へ——分譲マンション713万戸時代に、上がり続ける修繕積立金とどう向き合うか。オーナー・管理組合のコスト最適化と工法選択【2026年6月】

「うちのマンション、次の大規模修繕で積立金が足りるだろうか」。理事会のあと、理事長さまにそう声をかけられることが、この一年で本当に増えました。私は大規模修繕の現場に20年近く立ってきましたが、修繕の「お金」と「工法」を同じテーブルで語らなければならない時代が、いよいよ来たと感じています。

きっかけは、先日報じられた一本の記事でした。大規模修繕工事の需要が高まり、市場規模が1兆円規模へ向かっているという内容です(出典:朝日新聞「高まる大規模修繕工事の需要、市場は1兆円規模に 上がる修繕積立金」)。数字だけ見れば「業界が伸びている」という景気のいい話に聞こえます。けれども、この市場拡大の裏側にあるのは、オーナーさまと管理組合にとっては決して楽ではない構造変化です。今日は、その数字の中身を分解しながら、では私たち建物の持ち主・管理者は何をすべきなのかを、現場目線で正直にお話しします。

「市場1兆円」の中身——数字が示しているのは“老いていくストック”

まず、市場規模の根拠から押さえます。矢野経済研究所の2025年の調査によると、マンション共用部の修繕工事の市場規模は2030年に1兆539億円となり、2024年比で12.7%の拡大が見込まれています(出典:朝日新聞・前掲記事)。

なぜこれだけ需要が伸びるのか。答えはシンプルで、直す対象の建物そのものが、どんどん増えて、どんどん古くなっているからです。国土交通省によると、2024年末時点の分譲マンションの総戸数は約713万戸。1999年からのおよそ四半世紀でほぼ倍増しました(出典:国土交通省 報道発表資料)。

さらに見過ごせないのが、その「高経年化」のスピードです。築40年以上のマンションは約148万戸で、この10年間で3倍以上に増えました。そして20年後には、さらに約3.3倍に増えると見込まれています。建物が古くなれば、直すべき箇所も、1回あたりにかかる費用も増えていきます。この「ストックの老い」こそが、1兆円市場の正体だと、私は受け止めています。

ここで一度、言葉を補足させてください。「大規模修繕」とは、おおむね12〜15年の周期で、外壁・屋上防水・鉄部塗装・シーリング(外壁の目地を埋める防水材)などをまとめて直す、建物全体のメンテナンス工事のことです。1回あたりの費用は平均で約1.2億〜約1.5億円とされています(出典:朝日新聞・前掲記事)。つまり「1兆円市場」とは、全国のマンションが順番に1億円超の工事を迎えていく、その総和なのです。景気の話ではなく、私たちのマンションの“順番”が回ってくるという話だと、私は受け止めています。

修繕積立金は、なぜ上がり続けるのか

市場が伸びるということは、裏返せば「工事の発注が殺到する」ということです。当然、価格は上がります。その負担を最終的に背負うのは、毎月コツコツ積み立てているオーナーさまと区分所有者の皆さまです。

実際、1戸あたりの修繕積立金の月額は、2023年時点で約1万3千円。1999年の約7400円と比べると、約1.8倍の水準になっています(出典:朝日新聞・前掲記事)。25年で1.8倍。これは決して小さな数字ではありません。

しかも問題は、上がっても“まだ足りない”ケースが多いことです。積み立てられている額が、長期修繕計画で想定した額に比べて不足している管理組合は、約4割にのぼります(出典:朝日新聞・前掲記事)。10棟あれば4棟は「計画どおりにお金が貯まっていない」という現実です。

国も手を打っています。2024年6月、国土交通省は「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」と「長期修繕計画作成ガイドライン」を改定し、当初は安く設定して後から段階的に値上げする「段階増額積立方式」について、適切な引上げの考え方を示しました。具体的には、段階増額方式における各時点の徴収額を、均等積立方式とした場合の月額(基準額)と比べたとき、計画の初期額は基準額の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内に収めることが望ましい、という目安です(出典:国土交通省 報道発表資料(ガイドライン改定))。

少し噛み砕きます。これは「最初を安く見せておいて、後で急に2倍3倍に跳ね上げるような計画は、もうやめましょう」という国からのメッセージです。裏を返せば、これまでそういう“安く見せる”長期修繕計画が世の中に少なくなかった、ということでもあります。私はいつも理事長さまに、「新築時の積立金額は“最低ライン”だと思ってください」とお伝えしています。

本当の危機は「需要過多」と「供給逼迫」が同時に来ること

ここからが本題です。市場が1兆円に伸び、積立金も上がる。ここまでは「お金が足りるかどうか」の話でした。しかし私が現場で本当に怖いと感じているのは、もう一つの逆風が同時に吹いていることです。それは「工事を担う会社が減っている」という供給側の問題です。

直近では、塗装・防水工事業者の倒産が2000年以降で最多ペースで進んでいるという報道も出ています。原油・ナフサ(塗料や防水材の原料となる石油由来の成分)不足による資材高や、職人の高齢化・人手不足が背景にあります。需要は1兆円へ膨らむのに、それを支える施工側の体力は細っている。この「需要過多×供給逼迫」が重なると、何が起きるか。価格はさらに上がり、工事の順番待ちは長くなり、見積もりの精度や品質のばらつきも広がります。

正直に申し上げます。こういう局面では、「とりあえず相見積もりを3社取って一番安いところに」という従来のやり方だけでは、もう守りきれません。安いには安いなりの理由があり、その理由が「手抜き」や「あとからの追加請求」だった、という話を、私はこの業界で何度も見てきました。現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、お金がないわけではなかったのに、工法と発注先の選び方を誤って、本来守れたはずの資産価値を削ってしまったお客さまを見るときです。

では、オーナー・管理組合に何ができるのか——「効くところ」を押さえる

ここで悲観して終わるつもりはありません。値上がりする要素の中にも、自分たちでコントロールできる部分が確かにあります。そのひとつが「工法の選択」です。

大規模修繕の費用は、ざっくり言えば「①直す工事そのものの費用」と「②その工事を行うための仮設の費用」に分かれます。意外に思われるかもしれませんが、この②、つまり建物全体を覆う仮設足場(と、その周りに張る飛散防止のメッシュシート)の費用は、工事総額の中で決して小さくない割合を占めます。建物の形状や高さによっては、足場の架設・解体だけで数百万円から1千万円を超えることもあります。

私はここに、コストを抑える「効きどころ」があると考えています。明誠では、建物に応じて次の3つの工法を使い分けています。

工法 概要 向いている建物・状況
通常足場工法 従来型の仮設足場を建物全体に架ける 中低層、形状が複雑、全面的に手を入れる場合
ロープアクセス工法(無足場工法) 産業用ロープで作業員が降下して施工。足場を建てない 高層、足場が組みにくい、コストと工期を抑えたい、居住者の生活影響を最小化したい場合
ハイブリッド工法 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける 大規模・複雑物件で、全体コストの最適化が必要な場合

「ロープアクセス工法」という言葉に馴染みのない方のために補足します。これは、ビルの窓清掃で職人さんがロープでぶら下がっている、あの技術を、外壁の調査・補修・塗装・防水にまで応用したものです。足場を建てない分、仮設費を抑えられ、工期も短縮しやすく、何より足場がないので居住者・テナントの生活や営業への影響を小さくできます。明誠は、このロープアクセス工事で日本初のフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟することで、高品質と低価格の両立を目指しています(ロープアクセス工法のご紹介)。

ただし、両論併記でお伝えします。ロープアクセスは万能ではありません。外壁の全面打診(壁を叩いて浮きを調べる調査)が大量に必要な場合や、バルコニーの内部まで大がかりに手を入れる場合、あるいは作業の安全上ロープを固定する支点(アンカー)が十分に取れない建物では、足場のほうが適していることもあります。だからこそ私は、足場・ロープ・ハイブリッドの3つを“どれも持っている”会社として、その建物にとって本当に最適な組み合わせを提案するようにしています。1工法しか持たない会社は、どうしても「自社が得意な工法」に答えを寄せがちです。これは、3工法を扱える数少ない会社だからこそ言える、正直な話です。

3つの工法を、私はどう選んでいるか

実際の判断軸を、もう少しだけ具体的にお話しします。私が最初に見るのは、建物の「高さ」と「形状」、そして「居住者・利用者の生活影響をどこまで抑えたいか」です。

たとえば、足場を建てると窓が長期間ふさがれてしまう高層マンションや、足場の設置場所そのものが取りにくい敷地ぎりぎりの建物では、ロープアクセスやハイブリッドが効いてきます。逆に、低層で外壁の劣化が全面に及んでいる建物なら、足場をしっかり建てて一気に直したほうが、結果的に安く・早く終わることもあります。

私はこれを、必ず現地で自分の目を入れてから決めるようにしています。図面と写真だけで「ロープでいけます」と即答する会社があれば、私はむしろ慎重になります。建物は一棟ごとに性格が違う。だから、工法ありきではなく、建物ありきで考える。これが現場で20年やってきた私の、ゆずれない順番です。大規模修繕の総合的なご提案については、大規模修繕工事のご紹介もあわせてご覧ください。

修繕積立金が足りないとき、工法選択がもつ意味

ここで、お金の話に戻します。積立金が計画より不足している管理組合が約4割ある、という数字を先ほどお伝えしました。積立金が足りないとき、選択肢は大きく3つです。①一時金を徴収する、②借入をする、③工事の内容や範囲を見直す。①と②は区分所有者の負担増や金利負担を伴い、総会での合意形成も簡単ではありません。

そこで、③の「見直し」の一手として、工法の選択が生きてきます。たとえば仮設足場が前提だった計画を、建物条件が許す範囲でロープアクセスやハイブリッドに置き換えられれば、仮設費の一部を圧縮できる可能性があります。仮に総戸数50戸のマンションで仮設費を数百万円抑えられたとすれば、1戸あたりに換算して数万円から十数万円。これは、一時金の負担をそのぶん軽くできるということです。お財布感覚で言えば、「来年の一時金が、家族での旅行1回ぶん軽くなるかどうか」くらいの違いになり得ます。

もちろん、これは建物ごとの条件次第で、すべての物件で同じだけ下がるわけではありません。「必ず安くなります」とは申し上げません。けれども、工法という選択肢を最初から1つに固定してしまうと、この“効きどころ”を検討する機会そのものを失ってしまう。それが一番もったいない、と私は思うのです。

総会で必ず聞かれる質問と、私の答え方

6月は、多くの管理組合で通常総会が開かれる季節です。修繕の話題が必ず出ます。理事長さまから「総会で何を聞かれますか」とよく相談されるので、現場でよくいただく質問と、私の答え方を共有します。

「今やるべきか、もう少し待てるか」——劣化は待ってくれません。シーリングの切れや塗膜の劣化を放置すると、雨水が躯体(建物の構造部分)に入り、鉄筋の腐食や爆裂につながります。そうなると、修繕どころか“改修”という、桁の違う工事になりかねません。私はいつも「点検だけでも今のうちに」とお伝えしています。

「相見積もりの読み方が分からない」——金額の安さだけでなく、足場・仮設の費用が妥当か、工法がその建物に合っているか、数量(平米数)の根拠が示されているかを見てください。国土交通省も、適正な見積りかどうかを管理組合が検討できるよう、大規模修繕工事の実態調査を行い、指標を公表しています(出典:国土交通省 報道発表資料)。

「積立金が足りないと言われた」——まずは長期修繕計画と積立方式を確認し、2024年改定のガイドラインの考え方(初期0.6倍以上・最終1.1倍以内)に照らして、無理のない引上げ計画になっているかを点検してください(出典:国土交通省 ガイドライン改定)。

収益不動産オーナーの視点——修繕は「コスト」ではなく「資産防衛」

ここまでは管理組合の理事長さまを想定してお話ししてきましたが、区分マンションや一棟ビルを保有する収益不動産オーナーさまにも、同じ構造変化が押し寄せています。むしろ、賃料という収益と直結するぶん、修繕の巧拙が経営にダイレクトに効いてきます。

私がオーナーさまにいつもお伝えしているのは、「大規模修繕は支出ではなく、資産価値を守るための投資だ」ということです。外壁の劣化やタイルの浮き、雨漏りを放置した建物は、見た目の印象が悪くなるだけでなく、空室率の上昇や賃料下落、最悪の場合は外壁落下による事故リスクまで抱え込みます。きれいに維持された建物は、入居者にも金融機関にも「管理が行き届いた物件」と評価され、売却時の価格にも効いてきます。

一方で、賃貸経営は利回りとの戦いでもあります。だからこそ、必要な修繕はしっかり行いつつ、仮設費のような“削れる固定費”は工法選択で抑える。この両立が、収益を守りながら資産価値を維持する現実的な道だと、私は考えています。たとえばテナントが営業を続けながらの工事では、足場で店舗の看板や入口がふさがれることが死活問題になります。ロープアクセスなら、その影響を最小限にしながら外壁を直せる。私はこういう物件でこそ、無足場工法の価値が際立つと感じています。

倒産が増えるいま、発注先をどう見極めるか

需要過多と供給逼迫が同時に進むこの局面で、もう一つ避けて通れないのが「発注先の見極め」です。工事を頼んだ会社が、工事の途中や保証期間中に倒産してしまえば、アフター対応も保証も宙に浮きます。せっかく1億円超をかけた工事が、これでは台無しです。

私が見極めのポイントとしてお伝えしているのは、次の3つです。ひとつは、見積もりの「内訳」がきちんと開示されているか。一式いくら、ではなく、足場・塗装・防水・シーリングといった項目ごとに、数量(平米数)と単価が示されているかを見てください。ふたつめは、自社施工の体制があるか、丸投げの多重下請けになっていないか。工事の品質と価格は、ここで大きく変わります。みっつめは、アフター保証と、その会社が保証期間を支えられる事業基盤を持っているか、です。

明誠は、こうした建設業界全体の課題に向き合うため、一般社団法人全国建設業支援協会(JCSA)を運営し、全国の建設業者に向けた経営支援やビジネスマッチング、情報発信を行っています。業界の足腰が強くなることは、最終的に発注者であるオーナーさま・管理組合の安心につながると信じているからです。正直に申し上げて、安かろう悪かろうの工事が淘汰され、まっとうな会社が正しく評価される業界にしていくことが、私の20年来の願いでもあります。

均等積立か、段階増額か——「方式」を知ると総会が変わる

修繕積立金の話に、もう一歩だけ踏み込みます。積立金には大きく2つの方式があります。「均等積立方式」は、長期修繕計画の全期間で必要な額を平準化し、毎月ほぼ一定額を積み立てる方式です。最初は負担が重く感じられますが、将来の急な値上げが起きにくく、計画が安定します。

もう一方の「段階増額積立方式」は、当初は低めに設定し、数年ごとに段階的に引き上げていく方式です。新築時の月々の負担を軽く見せられるため、分譲時に採用されることが多いのですが、後年になって大幅な値上げが必要になり、総会で合意が取れずに資金不足に陥る——これが、約4割の組合が積立不足を抱える一因にもなっています。

だからこそ国土交通省は2024年6月の改定で、段階増額方式を採るなら、初期額は均等積立の基準額の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内に、という目安を示したわけです(出典:国土交通省 ガイドライン改定)。私はいつも、「自分のマンションがどちらの方式か、今期の総会で一度確認してみてください」とお伝えしています。方式を理解しているだけで、値上げ提案が出たときの理事会の議論の質が、まるで変わります。

数字だけでは見えない「暮らしのコスト」——ある現場の話

最後に、見積書の金額には載らない価値の話を、ひとつだけさせてください。以前、築22年・約80戸の中規模マンションで、2回目の大規模修繕をお手伝いしたときのことです。1回目は全面足場で施工されていて、住民の方々から「3カ月近く窓を開けられず、洗濯物も外に干せなかった」「足場から部屋が見えるようで落ち着かなかった」という声が、理事会に多く寄せられていたそうです。

2回目のご相談で私が提案したのは、外壁の大部分をロープアクセスで、足場が必要な一部だけ部分足場を組むハイブリッド工法でした。結果として、仮設費を抑えられただけでなく、住民の方の生活ストレスが大きく減りました。工事が終わったあと、理事長さまから「今回は“工事をやっている感じ”がしなくて、住民からの苦情がほとんどなかった」と言っていただけたのです。私はこの一言を、金額の値引き以上に嬉しく思いました。

修繕積立金や工事費は、たしかに数字で比較できます。けれども、工事期間中に住民やテナントが負担する「暮らしのコスト」「営業のコスト」は、見積書には載りません。私はいつも、この“見えないコスト”まで含めて、その建物にとって本当に得な選択は何かを考えるようにしています。これは、足場・ロープ・ハイブリッドの3つを持っているからこそできる提案だと、自負しています。

よくある質問(FAQ)

Q. ロープアクセス工法は、足場より本当に安いのですか。
A. 仮設足場の架設・解体費を抑えられるため、足場が高くつく建物では総額が下がる可能性があります。ただし建物の形状・劣化範囲・安全上の支点の取りやすさによっては、足場のほうが適切で安い場合もあります。条件次第、というのが正直なお答えです。

Q. 居住者の生活への影響が心配です。
A. ロープアクセスは足場を建てないため、窓が長期間ふさがれる・足場から室内が見えるといったストレスを軽減しやすい工法です。防犯面でも、足場を伝った侵入リスクを避けられます。

Q. 築年数が浅くても相談していいですか。
A. もちろんです。むしろ、最初の大規模修繕(築12〜15年前後)を迎える前に、工法の選択肢と概算を知っておくほうが、長期修繕計画も積立計画も立てやすくなります。

Q. 工法の比較だけ相談することはできますか。
A. できます。発注前提でなくて構いません。総会前の論点整理だけでも、お力になれることがあります。

まとめ——数字に振り回されず、「効きどころ」を押さえる

最後に、今日の話を一段に絞ります。大規模修繕の市場が2030年に1兆539億円規模へ拡大し、分譲マンションは713万戸、築40年超は148万戸。修繕積立金は25年で1.8倍に上がり、なお約4割の組合が不足を抱えています。この大きな流れ自体は、私たちには止められません。

けれども、その大きな流れの中でも、自分たちでコントロールできる“効きどころ”はあります。そのひとつが、足場・ロープアクセス・ハイブリッドという工法の選択です。工法を最初から1つに決め打ちせず、建物に合った最適な組み合わせを検討する。それだけで、仮設費というコストの一部に、手を入れる余地が生まれます。

これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない感想です。総会の前段階の整理だけでも、工法の比較だけでも構いません。お問合せフォームから、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

出典・参考資料


本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の修繕計画・積立金・補助制度の適用可否を保証するものではありません。最新の制度内容・数値は各公的機関の一次情報をご確認のうえ、専門家にご相談ください。

▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
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厚木市の分譲マンション管理組合が使える補助金・税制活用ガイド|大規模修繕の負担を軽くする2026年度(令和8年度)の制度設計

「次の大規模修繕、いくらかかるんだろう」——厚木市内の分譲マンションで理事長を務める方から、最近こうしたご相談を続けていただいています。築20年を超えると、外壁の塗り替え、屋上やバルコニーの防水、給排水管の更新といった工事がまとまって押し寄せます。修繕積立金は足りるのか、住民の合意は取れるのか。理事長さまの肩には、重い宿題がのしかかります。

私は大規模修繕の現場で20年近く、足場の上とロープの先から建物を見てきました。そのなかで痛感しているのは、「使える制度を知らないまま工事をしてしまう管理組合が、本当に多い」ということです。厚木市には、分譲マンションの管理組合が活用できる税の優遇、耐震診断の補助、低利の公的融資、そして無料の専門家派遣がそろっています。知っているか知らないかで、組合の負担は数十万円から、規模によってはそれ以上変わってきます。

この記事では、厚木市の管理組合が2026年度(令和8年度)に使える制度を、現場目線で整理しました。専門用語にはそのつど補足を入れますので、建築にお詳しくない理事長さまも、最後までお付き合いください。ここからが本題です。

厚木市のマンション管理組合が使える支援制度【2026年度・一覧】

まず全体像を押さえましょう。厚木市の分譲マンション管理組合が、大規模修繕や維持管理の場面で活用できる主な制度は、大きく「税」「耐震」「資金」「相談」の4つに分けられます。

区分 制度名 概要 窓口
税の優遇 マンション長寿命化促進税制 一定要件を満たす長寿命化工事で翌年度の固定資産税が2分の1に減額 厚木市 資産税課 / 住宅課
耐震の補助 分譲マンションへの予備診断補助 耐震の予備診断費用の2分の1(上限15万円)を補助 厚木市 建築指導課
耐震の支援 耐震アドバイザー派遣 一級建築士が耐震診断の相談に無料で対応 厚木市 建築指導課
資金の調達 マンション共用部分リフォーム融資 管理組合向けの低利・長期の公的融資(住宅金融支援機構) 住宅金融支援機構
相談・支援 分譲マンションアドバイザー派遣/管理計画認定制度 マンション管理士等の無料派遣と、管理の適正化を後押しする認定 厚木市 住宅課

ここで強調しておきたいのは、これらは「どれか一つを選ぶ」ものではなく、組み合わせて使う発想が大切だということです。私はいつも理事長さまに、「工事の中身を決める前に、まず使える制度の地図を広げてください」とお伝えしています。順番が逆になると、せっかくの優遇を取り逃すことがあるからです。理由は記事の後半でご説明します。

なお、各制度には年度ごとの受付期間や予算枠、細かな要件があります。本記事の数値は2026年6月時点で厚木市・国の公式情報を確認したものですが、申請前には必ず各窓口の最新情報をご確認ください。

【税】マンション長寿命化促進税制:固定資産税が2分の1に

最初にご紹介したいのが、令和5年度の税制改正で創設された「マンション長寿命化促進税制」です。これは、一定の要件を満たしたうえで長寿命化工事を実施したマンションについて、翌年度の建物部分の固定資産税を2分の1に減額する制度です。厚木市でも条例で導入されており、市の公式ページに要件が公開されています(出典:厚木市 長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する固定資産税の減額について)。

ここでいう「長寿命化工事」とは、次の3つを「すべて一体として」実施するものを指します。

  • 外壁塗装等工事
  • 床防水工事(廊下・バルコニーなどの防水)
  • 屋根防水工事(屋上・屋根などの防水)

つまり、外壁・床・屋根の3点セットの工事です。大規模修繕の王道メニューそのものですから、多くの管理組合にとって、ふだんの修繕計画の延長線上にある話だとお考えください。なお「一体として」とは、同一の工事請負契約の中で行われる場合や、同一の総会決議で決議されている場合などを指します。3つをバラバラの年度・契約で実施すると要件を外れるおそれがあるため、ここは注意が必要です。

対象となるマンションの要件

この制度の対象になるには、厚木市が示すマンションの要件と工事の要件を「すべて」満たす必要があります。要点を理事長さま向けにかみ砕くと、次のとおりです。

  1. 新築から20年以上が経過している、10戸以上のマンションであること
  2. 過去に長寿命化工事を1回以上、適切に行っていること(=今回が2回目以降の長寿命化工事にあたること)
  3. 次のいずれかに該当すること
    – 管理計画認定マンションのうち、令和3年9月1日以降に、長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の平均額を、認定基準まで引き上げたもの
    – 厚木市(住宅課住宅政策係)から長期修繕計画に係る助言・指導を受けて、長期修繕計画を作成または見直し、一定の基準に適合することとなったもの
  4. 令和5年4月1日から令和9年3月31日までの間に工事が完了するものであること

少し専門的なので、ポイントだけ。鍵になるのは要件3の「管理計画認定または市の助言・指導」と、「修繕積立金の引き上げ」です。日頃から修繕積立金をきちんと積み、長期修繕計画を整えている管理組合ほど、この税制に手が届きやすい設計になっています。逆に言えば、「2回目の大規模修繕を控えていて、積立金の見直しもこれから」という組合は、今から準備すれば令和9年3月の期限に十分間に合う可能性があります。

ここで一点、用語の補足です。「管理計画認定制度」とは、マンションの管理体制や長期修繕計画、修繕積立金の積み立て状況などが国の基準を満たしているかを市が認定する仕組みです。認定を受けると、この税制の入口に立てるだけでなく、後述する公的融資の金利引き下げなど、複数のメリットにつながります。

減額の中身:戸あたりで考える

減額されるのは、工事が完了した年の翌年度分の固定資産税です。減額される額は固定資産税額の2分の1で、対象は居住部分のみ。1戸あたり床面積100平方メートルまでが対象で、それを超える部分や、店舗・事務所部分、都市計画税は対象外です(出典:厚木市 同ページ)。なお、工事が1月2日から3月31日までに完了した場合は、翌々年度の固定資産税が減額対象になります。

「2分の1」と聞いてもピンとこないかもしれませんので、財布感覚に直してみましょう。仮に1戸あたりの建物分の固定資産税が年7万円のマンションなら、1戸あたり年3万5千円ほどの軽減です。50戸のマンションなら、組合全体で年間150万円規模の負担減になる計算です。1年分とはいえ、決して小さくありません。

申告の流れと注意点

この税制は、工事をすれば自動で適用されるものではありません。長寿命化工事の完了後3か月以内に、厚木市の資産税課(家屋・償却資産係)へ申告する必要があります。

申告には、固定資産税減額申告書のほか、建築士事務所に属する建築士などが発行する「大規模の修繕等証明書」、マンション管理士または建築士が発行する「過去工事証明書」、さらに管理計画認定マンションの場合は「管理計画認定通知書の写し」と「修繕積立金引上証明書」などの添付が求められます。証明書の準備には時間がかかりますので、工事の発注段階から、施工会社や管理会社と段取りを共有しておくことをおすすめします。私はこの「証明書の前さばき」を、いつも工事計画とワンセットでご案内するようにしています。完成してから慌てて集めると、3か月の期限に追われることになるからです。

制度の詳しい要件や証明書については、厚木市住宅課住宅政策係(電話046-225-2330)と、資産税課家屋・償却資産係(電話046-225-2031)が窓口です。

【耐震】予備診断補助と耐震アドバイザー派遣

厚木市は、分譲マンションの耐震化を後押しする制度も用意しています。とくに昭和56年(1981年)以前の旧耐震基準で建てられたマンションは、ここを起点に検討を始めるとよいでしょう。

分譲マンションへの予備診断補助

厚木市では、分譲マンションを対象に「予備診断」の費用を補助しています。予備診断とは、本格的な耐震診断の前に、建物の図面や現況をもとに耐震性のおおよその見当をつける、いわば一次スクリーニングです。補助額は予備診断に要する費用の2分の1で、上限15万円。管理組合の総会または理事会で予備診断の実施を決議していることが条件です(出典:厚木市 分譲マンションへの予備診断補助)。

対象となるのは、昭和56年5月31日以前に建築確認を受けて工事に着手したマンションで、住戸の過半が区分所有者の住居として使われ、住宅部分の床面積が全体の過半を占めるものです。「うちは旧耐震かもしれない」という管理組合は、まずこの予備診断から入るのが、費用面でも合意形成の面でも現実的です。

耐震アドバイザー派遣(無料)

もう一つ、ぜひ知っておいていただきたいのが「耐震アドバイザー派遣」です。市が委嘱した耐震アドバイザー(一級建築士)が管理組合に出向き、建物の耐震性について資料を用いて説明し、保存図書の有無や現場を確認したうえで、そのマンションに適した診断方法を助言してくれます。派遣費用は市が負担するため、管理組合の負担はありません(出典:厚木市 分譲マンションへの耐震アドバイザー派遣)。

理事会で「耐震診断をやるべきか」を議論する前に、まず専門家の話を無料で聞ける——これは合意形成の第一歩として非常に有効です。耐震に関する窓口は、厚木市建築指導課(電話046-225-2434)です。

【資金】住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資

補助や減税で負担を抑えても、大規模修繕にはまとまった初期費用が必要です。修繕積立金だけでは足りないとき、頼りになるのが住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)の「マンション共用部分リフォーム融資」です。これは管理組合が借入主体となって、共用部分の修繕資金を低利・長期で借りられる公的融資です。

注目すべきは、金利の引き下げ制度です。住宅金融支援機構によると、マンション管理計画認定を取得していると融資金利が年0.2%引き下げられます。さらに、耐震改修工事・浸水対策工事・省エネルギー対策工事を行う場合にも年0.2%、「マンションすまい・る債」の残高がある管理組合にはさらに年0.2%の引き下げが用意されています(出典:住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資の融資金利について)。

ここで先ほどの「管理計画認定」が、税制だけでなく融資の金利にも効いてくることに気づいていただけると思います。認定を取っておくことは、いわば複数の制度に共通する「鍵」なのです。借入を検討する管理組合は、金利情報が毎月見直される点も踏まえ、早めに資金計画を立てておくと安心です。

【相談】分譲マンションアドバイザー派遣と管理計画認定制度

最後は、これらすべての土台になる「相談・支援」の制度です。

分譲マンションアドバイザー派遣(無料)

厚木市は、維持管理に課題を抱える管理組合へ、マンション管理士などの専門家をアドバイザーとして無料で派遣しています。対象は、昭和58年5月31日以前に建設されたマンション、改修・建替えを検討しているマンション、長期修繕計画の作成・見直しを検討しているマンション、大規模修繕工事を予定しているマンション、組合員の高齢化などで管理機能が低下しているマンション、自主管理のマンションなど。利用は年度内2回までです(出典:厚木市 厚木市分譲マンションアドバイザー派遣【無料】)。

「大規模修繕を予定している」「長期修繕計画を見直したい」——まさに今、この記事をお読みの管理組合に当てはまる対象です。第三者の専門家に無料で相談できる機会は、ぜひ活用していただきたいと思います。なお、神奈川県も「マンションアドバイザー派遣事業」として、マンション管理士・建築士等を無料派遣しています(出典:神奈川県 マンションアドバイザー派遣事業)。市と県、二つの相談ルートがあると考えてください。

管理計画認定制度

そして、ここまで何度も登場した「管理計画認定制度」です。これは、長期修繕計画や修繕積立金、管理組合の運営体制などが国の基準を満たしているマンションを、市が認定する仕組みです。認定を受けると、適正に管理されたマンションとして市場での評価が高まるだけでなく、先ほどの固定資産税の減額や、住宅金融支援機構の融資金利の引き下げといった具体的なメリットにつながります(出典:厚木市 マンションの管理計画認定制度について)。

認定の申請前には、公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」で、国の基準に適合しているかを事前確認する流れになります。窓口は厚木市住宅課住宅政策係(電話046-225-2330)です。

制度は「順番」が命:管理計画認定を起点に組み立てる

ここまで個別に見てきた制度を、どう組み合わせるか。私が現場でお伝えしている考え方は、ひとつだけです。「管理計画認定」を起点に据えること。

なぜなら、固定資産税の2分の1減額も、融資金利の0.2%引き下げも、入口は管理計画認定(または市の助言・指導による長期修繕計画の適正化)だからです。工事の中身を先に決めてから「使える制度はないか」と探すと、認定や修繕積立金の引き上げが間に合わず、本来取れたはずの優遇を逃すことがあります。順番としては、(1)アドバイザー派遣で現状を診てもらい、(2)長期修繕計画と修繕積立金を整え、(3)管理計画認定を取り、(4)そのうえで工事の設計・発注と税・融資の手続きを並走させる——この流れが、もっとも無駄がありません。

時間がかかる手続きほど、前倒しが効きます。「次の大規模修繕は2年後」という組合こそ、今が制度準備のベストタイミングです。

工法の選択が、コストと住民負担を左右する

制度で負担を抑えたら、次は工事そのものの最適化です。ここは私たちの本業ですので、現場の知見を少しだけ。

大規模修繕の費用のうち、意外に大きいのが「足場」の仮設費用です。建物をぐるりと囲う仮設足場(建物の外周に組む作業用の足場)は、組み立て・解体・リース費だけで全体の1〜2割を占めることもあります。そこで近年広がっているのが、ロープアクセス工法です。これは産業用ロープで作業員が壁面を上下しながら施工する「無足場工法」で、足場費の削減、工期の短縮、そして足場がないことによる防犯面・生活面での住民負担の軽減が期待できます。

一方で、すべての建物にロープアクセスが最適なわけではありません。低層で複雑な形状の建物や、広い面積を一度に仕上げたい工事では、従来の足場のほうが効率的なこともあります。そこで私たちは、足場・ロープアクセス・両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物の形状・高さ・劣化状況・予算に応じて最適な組み合わせをご提案しています。3つの工法を自前で提案できる会社は、日本でも多くありません。制度で「入口」を、工法で「中身」を最適化する——この両輪で、管理組合の負担は大きく変わります。

実務の段取り表:いつ、何を、どこへ

「順番が大事」と言われても、具体的な時間軸が見えないと動きづらいものです。次の大規模修繕を2年後に控えた管理組合を例に、おおまかな段取りを整理してみました。あくまでモデルケースですが、検討の出発点にしてください。

時期の目安 やること 窓口・相手
2年前 アドバイザー派遣で現状把握、建物の劣化と耐震の見当をつける 厚木市 住宅課/建築指導課
1年半前 長期修繕計画の見直し、修繕積立金の水準を点検・必要なら引き上げ決議 管理組合(総会)・管理会社
1年前 管理計画認定の事前確認・申請、工事の基本計画と工法の比較検討 マンション管理センター/厚木市 住宅課・施工会社
半年前 施工会社の選定、資金計画(自己資金+共用部分リフォーム融資)の確定 住宅金融支援機構・施工会社
着工〜完了 大規模修繕工事の実施、各種証明書の準備を並行 施工会社・建築士・マンション管理士
完了後3か月以内 固定資産税減額の申告 厚木市 資産税課

ご覧のとおり、税の優遇を受けるための「管理計画認定」や「修繕積立金の引き上げ」は、工事のかなり前から動き出す必要があります。ここを後回しにすると、工事は終わったのに減額が受けられない、という残念な結果になりかねません。

よくあるご質問

Q. 旧耐震ではない、比較的新しいマンションでも使える制度はありますか。
A. はい。固定資産税の長寿命化促進税制は、新築20年以上で過去に長寿命化工事を1回以上行っているマンションが対象です。築20年を超えていれば、旧耐震・新耐震を問わず検討できます。耐震の予備診断補助は旧耐震(昭和56年5月31日以前)が主な対象ですが、管理計画認定や共用部分リフォーム融資、アドバイザー派遣は築年数を問わず活用できます。

Q. 自主管理(管理会社に委託していない)のマンションでも相談できますか。
A. できます。厚木市の分譲マンションアドバイザー派遣は、自主管理のマンションも対象に明記されています。管理会社がいない分、第三者の専門家に相談する価値はむしろ大きいといえます。

Q. 固定資産税の減額は、管理組合がまとめて申請するのですか。
A. 減額の対象は各区分所有者の固定資産税ですが、申告手続きでは管理組合が証明書類の準備の中心的な役割を担います。証明書の取得には建築士やマンション管理士の関与が必要なため、工事の発注段階から管理組合・施工会社・専門家が連携して進めるのが現実的です。

Q. 補助や融資は、どのくらい早めに動けばよいですか。
A. 補助制度は予算枠があり、受付が先着順・期間限定のものもあります。融資の金利も毎月見直されます。「やると決めてから窓口へ」では間に合わないことがあるため、検討段階で一度、各窓口に問い合わせておくことを強くおすすめします。

まとめ:厚木の管理組合が、今日からできること

厚木市の分譲マンション管理組合には、固定資産税の2分の1減額、予備診断費の補助、無料の耐震アドバイザー派遣、低利の公的融資、そして無料の専門家派遣という、現実的な支援がそろっています。共通する鍵は「管理計画認定」と「長期修繕計画・修繕積立金の整備」です。

まずは、市の分譲マンションアドバイザー派遣(無料・年2回)に申し込み、自分たちの管理組合がどの制度に手が届くのかを棚卸しすることから始めてみてください。制度の地図を広げ、認定を取り、工法でコストを締める。この順番で進めれば、大規模修繕は「重い宿題」から「資産価値を守る投資」へと姿を変えます。私たちも、現場の立場から一緒に考えてまいります。


参考・出典(2026年6月時点)

※本記事は2026年6月時点の公開情報をもとに作成しています。各制度には受付期間・予算枠・要件があり、内容は変更される場合があります。申請前に必ず各窓口で最新情報をご確認ください。

▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

横須賀市のマンション補助金・税制優遇2026|大規模修繕で管理組合が使える制度を本間社長が解説

「うちのマンションも、そろそろ2回目の大規模修繕だ」——横須賀市内の管理組合の理事長さまから、最近こうしたご相談を立て続けにいただきます。築20年を超えると、外壁の塗り替えや屋上防水、給排水管の更新など、まとまった出費が一気に押し寄せます。修繕積立金は足りるのか、住民の合意は取れるのか。理事長さまの肩には、重い宿題がのしかかります。

私は大規模修繕の現場で20年近く、足場の上とロープの先から建物を見てきました。そのなかで痛感しているのは、「使える制度を知らないまま工事をしてしまう管理組合が、本当に多い」ということです。横須賀市には、分譲マンションの管理組合が活用できる税の優遇や補助、低利の融資、そして無料の相談窓口がそろっています。知っているか知らないかで、組合の負担は数十万円から、規模によってはそれ以上変わってきます。

この記事では、横須賀市の管理組合が2026年度(令和8年度)に使える制度を、現場目線で整理しました。専門用語にはそのつど補足を入れますので、建築にお詳しくない理事長さまも、最後までお付き合いください。ここからが本題です。

横須賀市のマンション管理組合が使える支援制度【2026年度・一覧】

まず全体像を押さえましょう。横須賀市の分譲マンション管理組合が、大規模修繕や維持管理の場面で活用できる主な制度は、大きく「税」「耐震」「資金」「相談」の4つに分けられます。

区分 制度名 概要 窓口
税の優遇 マンション長寿命化促進税制 一定要件を満たす長寿命化工事で固定資産税が2分の1に減額 横須賀市 資産税課
耐震の補助 マンション耐震診断補助 予備診断・耐震診断の費用の一部を補助 横須賀市 建築指導課
資金の調達 マンション共用部分リフォーム融資 管理組合向けの低利・長期の公的融資(住宅金融支援機構) 住宅金融支援機構
相談・支援 管理計画認定制度/相談会・専門家派遣 管理の適正化を後押しする認定や無料相談 横須賀市 まちなみ景観課 ほか

ここで強調しておきたいのは、これらは「どれか一つを選ぶ」ものではなく、組み合わせて使う発想が大切だということです。私はいつも理事長さまに、「工事の中身を決める前に、まず使える制度の地図を広げてください」とお伝えしています。順番が逆になると、せっかくの優遇を取り逃すことがあるからです。理由は記事の後半でご説明します。

なお、各制度には年度ごとの受付期間や予算枠、細かな要件があります。本記事の数値は2026年6月時点で横須賀市・国の公式情報を確認したものですが、申請前には必ず各窓口の最新情報をご確認ください。

【税】マンション長寿命化促進税制:固定資産税が2分の1に

最初にご紹介したいのが、令和5年度の税制改正で創設された「マンション長寿命化促進税制」です。これは、一定の要件を満たしたうえで長寿命化工事を実施したマンションについて、翌年度の建物部分の固定資産税を2分の1に減額する制度です(出典:横須賀市 大規模の修繕等が行われたマンションに係る固定資産税の減額制度)。

ここでいう「長寿命化工事」とは、次の3つを「すべて」実施するものを指します。

  • 外壁について行う修繕・模様替(外壁塗装等工事)
  • 直接外気に開放されている廊下・バルコニーなどの防水措置(床防水工事)
  • 屋上・屋根・ひさしなどの防水措置(屋根防水工事)

つまり、外壁・床・屋根の3点セットの工事です。大規模修繕の王道メニューそのものですから、多くの管理組合にとって、ふだんの修繕計画の延長線上にある話だとお考えください。

対象となるマンションの7要件

この制度の対象になるには、横須賀市が示す(1)〜(7)の要件を「すべて」満たす必要があります。要点を理事長さま向けにかみ砕くと、次のとおりです。

  1. 管理計画認定マンションであること(後述の認定制度で認定を受けたマンション。または、市の助言・指導を受けて長期修繕計画を見直し、国の基準に適合したマンション)
  2. 居住用の専有部分があること(住まいとして使われている部分が一定以上あること)
  3. 新築の日から20年以上が経過していること
  4. 総戸数が10戸以上であること
  5. 過去に長寿命化工事を1度以上行っていること
  6. 令和5年4月1日から令和9年3月31日の間に、2回目以降の長寿命化工事を完了していること
  7. 令和3年9月1日以降に、修繕積立金の平均額を認定基準未満から基準以上へ引き上げていること

少し専門的なので、ポイントだけ。鍵になるのは要件1の「管理計画認定」と、要件7の「修繕積立金の引き上げ」です。日頃から修繕積立金をきちんと積み、長期修繕計画を整えている管理組合ほど、この税制に手が届きやすい設計になっています。逆に言えば、「2回目の大規模修繕を控えていて、積立金の見直しもこれから」という組合は、今から準備すれば十分間に合う可能性があります。

減額の中身:戸あたりで考える

減額されるのは、工事完了年の翌年1月1日を基準日とする課税年度分です。たとえば工事完了が令和7年中であれば、令和8年度の固定資産税が対象になります。減額される額は固定資産税額の2分の1。対象範囲は1戸あたり床面積100平方メートル(共用部分を含む)までで、それを超える部分や、土地、都市計画税は対象外です(出典:横須賀市 同上ページ)。

「2分の1」と聞いてもピンとこないかもしれませんので、財布感覚に直してみましょう。仮に1戸あたりの建物分の固定資産税が年7万円のマンションなら、1戸あたり年3万5千円ほどの軽減です。50戸のマンションなら、組合全体で年間150万円規模の負担減になる計算です。1年分とはいえ、決して小さくありません。

申告の流れと注意点

この税制は、工事をすれば自動で適用されるものではありません。長寿命化工事を完了した日から3か月以内に、横須賀市の資産税課へ申告する必要があります。申告は各区分所有者のほか、管理組合等の代表者がまとめて行うこともできます。

申告には、市が発行する管理計画の認定通知書のほか、建築士やマンション管理士などが証明する「過去工事証明書」「大規模の修繕等証明書」「修繕積立金引上証明書」などの添付が求められます。証明書の準備には時間がかかりますので、工事の発注段階から、施工会社や管理会社と段取りを共有しておくことをおすすめします。私はこの「証明書の前さばき」を、いつも工事計画とワンセットでご案内するようにしています。完成してから慌てて集めると、3か月の期限に追われることになるからです。

【耐震】分譲マンション耐震診断補助:まず「現状を知る」

次は耐震です。横須賀市には、分譲マンションの耐震診断費用の一部を補助する制度があります。「うちは新しいから関係ない」と思われがちですが、対象は昭和56年(1981年)5月末日以前に建築確認を得て着工した、いわゆる旧耐震基準のマンションです。築40年を超える物件をお持ちの組合は、ぜひ確認してください(出典:横須賀市 住宅の耐震診断補強工事補助事業)。

対象と補助額

補助は「予備診断」と「耐震診断」の2段階です。

段階 補助率 上限額
予備診断 診断費用(税抜)の3分の2 1棟につき12万円
耐震診断 診断費用(税抜)の半額 1住戸あたり3万円

予備診断は、現地の目視調査と設計図・構造計算書をもとに、壁の量などから建物の耐震性を簡易に評価するものです。ここで「倒壊の危険がある」と判断された場合に限り、より詳細な耐震診断へ進めます。

耐震診断の補助は「1住戸あたり上限3万円」という戸数連動型です。市の例示では、20戸のマンションで一般診断費用が1住戸6万円(合計120万円)の場合、60万円が補助されるとされています。診断という最初の一歩のハードルを、横須賀市がしっかり下げてくれているわけです。

このほか、耐震診断の結果、補強工事を行わない戸建住宅向けには、耐震シェルターや防災ベッドの設置費を半額・上限20万円で補助する制度もあります。マンションの管理組合の方の直接の対象ではありませんが、区分所有者ご自身の戸建てなどで参考になる場合があります。

「総会決議」と「前年度の事前相談」がカギ

ここで管理組合として外せない要件が2つあります。1つは、予備診断または耐震診断を実施することが、管理組合の総会で決議されていること。もう1つは、診断を行う前年度中に、市へ事前相談を行うことです。

この「前年度中の事前相談」という条件は、見落とされがちです。やりたいと思った年度に思い立って動いても、その年度の補助には間に合わない可能性があります。耐震診断をお考えなら、総会の議題に上げる前の段階でも構いませんので、早めに横須賀市建築指導課(電話046-822-8319)へ一報を入れておくのが安全です。

なお、令和8年度の耐震関係補助は、受付に期限と定員があります。市の案内では、申込締切は12月28日(月曜日)とされ、締切前でも定員に達した時点で受付を終了するとされています(出典:横須賀市 同上ページ)。先着順という性格上、早めの動き出しが結果を左右します。

【資金】住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」

制度を使っても、大規模修繕には相応の自己資金が必要です。積立金が計画どおりに貯まっていればよいのですが、現実には「2回目の修繕で積立金が足りない」という組合は少なくありません。そんなときの選択肢が、独立行政法人住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」、愛称「マンションすまい・る融資」です(出典:住宅金融支援機構 マンションすまい・る融資(管理組合申込みの場合))。

これは、管理組合がマンションの共用部分の工事を行う際に利用できる、公的な低利・長期のリフォームローンです。外壁・防水といった修繕工事はもちろん、専門家による調査設計、耐震診断、長期修繕計画の作成に要する費用のみでも融資の対象になり得ます。民間の金融機関では借りにくい「組合名義」での借入ができる点が、大きな特徴です。

利用にあたっては、管理規約に組合の組合員・業務・役員・総会・理事会・会計に関する定めがあること、そして総会の決議で、共用部分の工事を行うこと・機構から借り入れること・返済に修繕積立金を充てることなどが決議されていることが必要です。融資金利は毎月見直される変動制で、2026年4月時点で機構の承認を受けている保証機関は、公益財団法人マンション管理センター、一般財団法人住宅改良開発公社、公益社団法人全国市街地再開発協会の3つとされています。

私は、融資を「借金だから避ける」と一律に考えるのは、もったいないと思っています。工事を先延ばしにすると、劣化が進んで結局は費用がかさむことが少なくありません。低利の公的融資で適切なタイミングに工事を行い、資産価値を守るほうが、長い目で見て組合の利益になるケースもあります。借りるかどうかは別として、選択肢として知っておくだけでも、総会での議論の幅が広がります。

【相談】横須賀市と管理組合ネットワークの無料サポート

「制度は分かったが、誰に相談すればいいのか」——これが理事長さまの本音だと思います。横須賀市は、令和6年3月に「横須賀市マンション管理適正化推進計画」を策定し、管理組合への情報提供や相談機会の提供に力を入れています(出典:横須賀市 マンション関連施策)。

具体的には、次のような無料の支援が用意されています。

  • マンション相談会(定期・出張):管理組合役員や区分所有者を対象に、運営や修繕の悩みを専門家に相談できます。いずれも予約制です。
  • 新任役員研修会:管理組合の新任役員向けに、適正管理や組合運営の研修を実施しています。
  • まちづくりアドバイザー派遣:建て替えを検討している管理組合へ、専門家を派遣して相談に応じます。

これらの予約・問い合わせ窓口は、NPO法人よこすかマンション管理組合ネットワーク(電話046-824-8133)です。理事になったばかりで右も左も分からないという方こそ、まずここに電話してみてください。

管理計画認定制度——税制とつながる「適正管理のお墨付き」

相談支援の中でも、特に押さえておきたいのが「マンション管理計画認定制度」です。これは、適切な管理が行われているマンションの管理計画を、市が認定する制度で、令和4年4月に始まりました。横須賀市でも市内の分譲マンションが活用できます。

この認定は、単なる「お墨付き」ではありません。先にご説明した固定資産税の長寿命化促進税制は、原則として「管理計画認定マンションであること」が要件になっています。つまり、日頃の管理体制を整えて認定を取っておくことが、将来の税の優遇につながるわけです。認定の相談は、横須賀市まちなみ景観課(電話046-822-8077)が窓口になっています。

制度を「組み合わせて」使う:大規模修繕の進め方

ここまで4つの区分をご紹介してきました。冒頭で「組み合わせて使う発想が大切」と申し上げた理由を、ここで回収します。

私の経験上、もっとも残念なのは、工事の中身と発注先を先に決めてしまい、後から「実は認定を取っておけば税が安くなった」「前年度に事前相談していれば耐震診断の補助が使えた」と気づくパターンです。制度には、認定の取得や総会決議、事前相談、証明書の準備など、工事の「前」に動いておくべき手続きが含まれています。だからこそ、長期修繕計画の見直しの段階で、税・耐震・資金・相談の4つを同じテーブルに並べて検討することをおすすめしています。

そしてもう一つ、工事の「やり方」そのものでも、組合の負担は大きく変わります。横須賀のような海風の強い土地では、外壁や鉄部の傷みが内陸より早く進みます。以前、坂の上にある高層マンションで、足場を全面に架けると周辺道路を長期間ふさいでしまうという物件を担当したことがあります。住民の皆さまの駐車場の出入りにも影響が出る計画でした。そこで一部をロープアクセス工法——産業用ロープで職人が壁面を降りながら作業する無足場の工法——に切り替え、足場と組み合わせる「ハイブリッド工法」をご提案しました。結果として足場の架設範囲を絞り込め、工期と仮設費の双方を圧縮できました。住民の方からは「生活への影響が思ったより少なくて助かった」とお声をいただいたのを、今でも覚えています。

足場が向く建物もあれば、ロープアクセスが向く建物もあります。私はこの見極めを、いつも建物ごとに行うようにしています。補助や税制で工事費の一部を抑えつつ、工法の選び方でも仮設費と工期を最適化する。この両輪がそろって初めて、管理組合にとって本当に納得感のある大規模修繕になると考えています。

3つの工法、それぞれの向き・不向き

工法の違いは、管理組合のコストと住民負担に直結します。一般論として整理すると、次のような特徴があります。あくまで傾向であって、最終的には現地調査で判断する点はご了承ください。

工法 仮設費の目安 向いている建物 留意点
通常足場工法 全面に架設するため大きい 中低層、複雑な形状、全面的な打診・補修が必要な建物 架設・解体に時間がかかり、敷地や周辺道路を占有する
ロープアクセス工法(無足場) 足場が不要で抑えやすい 高層、足場の架設が難しい建物、部分補修が中心の建物 一度に大人数が同時施工しにくい、強風時は作業を中断
ハイブリッド工法 足場範囲を絞れるため中間 大規模・複雑で、部位ごとに最適化したい建物 工程設計に専門的な知見が必要

ロープアクセス工法は、足場を組まないぶん仮設費を抑えやすく、足場の死角になりがちな箇所にも職人が直接アプローチできます。一方で、全面打診のように一度に広い面を扱う作業は、足場のほうが効率的なこともあります。だからこそ、どちらか一方に決め打ちせず、建物の高さ・形状・劣化状況に応じて使い分けることが、結果的にもっとも費用対効果の高い選択につながります。私はこの「使い分け」を、ワンセットでご提案するようにしています。

「修繕積立金の引き上げ」を総会で通すために

ここまで読んで、「制度の入り口がどれも修繕積立金や管理計画の整備にある」とお気づきの方も多いと思います。実際、固定資産税の長寿命化促進税制は積立金の引き上げが要件の一つですし、管理計画認定でも積立金の水準が問われます。土台になるのは、やはり日頃の積立金です。

とはいえ、積立金の値上げを総会で通すのは、理事長さまにとって最も気の重い議題でしょう。私が現場で見てきたなかで、住民の合意が得やすかったのは、「値上げの必要性」を感情ではなく数字と段取りで示せた組合でした。具体的には、長期修繕計画にもとづく将来の不足額を「戸あたり・月あたり」に換算して見せること、そして「値上げによって固定資産税の優遇や公的融資という出口につながる」と、メリットまで含めて説明することです。

積み立ての手段としては、住宅金融支援機構の「マンションすまい・る債」という、管理組合向けの積立債券の仕組みもあります。修繕積立金を計画的に育てる選択肢の一つとして、融資(出口)とあわせて知っておくと、総会での説明に厚みが出ます。正直に申し上げます。制度を使う管理組合と使わない管理組合の差は、特別な知識量ではなく、「早めに、順番どおりに動いたかどうか」だけのことが、本当に多いのです。

海沿いの横須賀ならでは:塩害と防水の早期点検

最後に、横須賀という土地ならではの注意点を一つ。海に開けた立地のマンションは、潮風に含まれる塩分の影響で、鉄部のサビや外壁・タイルの劣化が内陸の物件より進みやすい傾向があります。バルコニーの手すり、共用廊下の鉄部、屋上の防水層など、塩害の影響を受けやすい箇所は、長期修繕計画の周期を待たずに状態が悪化していることが少なくありません。

私が横須賀の現場でよくお伝えするのは、「補助や税制を使えるタイミングに合わせて工事を組むのも大切ですが、それ以上に、劣化を早期に見つけて手を打つことが、結局はいちばんの節約になります」ということです。小さなひび割れや浮きのうちに補修できれば、ロープアクセス工法で部分的に、低コストで対応できることもあります。逆に放置して躯体(建物の構造体)まで傷みが進むと、大がかりな工事と費用が必要になりかねません。総会のシーズンには、ぜひ「うちのマンションの今の状態」を専門家の目で点検することも、議題の一つに加えてみてください。

よくある質問(横須賀市のマンション補助・税制)

最後に、理事長さまからよくいただく質問にお答えします。

Q. 築20年で、これから2回目の大規模修繕です。何から動けばいいですか。
A. まずは長期修繕計画と修繕積立金の状態を確認し、管理計画認定の取得を検討してください。認定は固定資産税の長寿命化促進税制の前提になります。並行して、横須賀市まちなみ景観課やマンション管理組合ネットワークの無料相談を活用すると、優先順位が整理できます。

Q. 旧耐震のマンションです。耐震診断の補助はいつまでに動けばいいですか。
A. 「診断を行う前年度中の事前相談」と「総会決議」が要件です。令和8年度の受付には締切と定員があり、定員に達すると締切前でも終了します。診断をお考えなら、できるだけ早く建築指導課へ事前相談されることをおすすめします。

Q. 積立金が足りません。工事はあきらめるしかないですか。
A. 必ずしもそうとは限りません。住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」は、管理組合名義で借りられる公的融資です。総会決議などの要件はありますが、選択肢として検討する価値はあります。

Q. 補助や税制の金額は、ここに書いてある通りで確定ですか。
A. 本記事は2026年6月時点の公式情報に基づいていますが、補助率・上限額・受付期間・要件は年度や予算の状況で変わります。申請前には必ず各窓口の最新情報をご確認ください。

まとめ:まず動くべき3つのこと

横須賀市の管理組合が、大規模修繕を前に動くべきことを3つに絞ります。

  1. 管理計画認定と修繕積立金の状態を確認する——固定資産税の優遇につながる土台です。
  2. 旧耐震マンションは、耐震診断の事前相談を前年度中に——先着順・定員ありの制度です。
  3. 資金が不安なら、公的融資という選択肢を総会の議論に乗せる——工事の先延ばしが、かえって費用を膨らませることがあります。

制度は、知って、段取りよく使ってこそ価値が出ます。とはいえ、理事長さまが本業のかたわら、すべてを把握して動くのは大変なことだと、私はよく分かっています。横須賀市内のマンションで「うちはどの制度が使えるのか」「どの工法がコストと住民負担のバランスがいいのか」と迷われたら、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問い合わせはこちらのフォームから承っています。

次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

出典・参考資料

※本記事の情報は2026年6月12日時点で確認したものです。制度内容・補助額・受付期間は変更される場合があります。申請にあたっては、必ず各窓口・公式サイトの最新情報をご確認ください。

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大規模修繕の施工会社が「倒産」する時代へ——塗装・防水工事業者の倒産が2000年以降最多ペース、オーナー・管理組合が今すぐ確認すべき発注先の見極め方【2026年6月】

工事が始まって、足場が建って、養生シートが張られた。あとは仕上がりを待つだけ——そう思っていた矢先に、施工会社から「会社をたたむことになりました」と連絡が入る。前払いした工事代金はどうなるのか。途中で止まった工事は誰が引き継ぐのか。10年保証のはずだったアフター保証は、もう紙切れなのか。

正直に申し上げます。これは、私が大げさに脅しているのではありません。2026年に入ってから、塗装・防水工事業者の倒産が「2000年以降で最も多いペース」で進んでいます。大規模修繕を控えた管理組合の理事長さま、そして収益物件を持つオーナーさまにとって、「どの工法で、いくらで直すか」と同じくらい——いや、それ以上に「どの会社に頼むか」が、いま資産を守れるかどうかの分かれ目になりつつあります。

私は大規模修繕の現場で20年近くやってきました。足場を組む工事も、ロープアクセス(産業用ロープで宙吊りになり、足場を架けずに外壁や屋上を施工する無足場工法)の工事も、その両方を組み合わせたハイブリッド工法も手がけています。その立場から、今日は「施工会社が消えるリスク」という、これまであまり正面から語られてこなかったテーマを、データと現場の両面からお話しします。

いま何が起きているのか——塗装・防水工事の倒産「80件」という数字

まず、事実から確認します。

帝国データバンク(TDB)が2026年6月8日に公表した調査によると、2026年1〜5月に発生した「塗装工事」と「防水工事」の倒産は合計80件。内訳は塗装工事が56件、防水工事が24件でした(出典:帝国データバンク「『塗装・防水工事』の倒産動向(2026年 1-5月)」)。

この80件という数字が、なぜ深刻なのか。理由は二つあります。

一つは、通年の倒産件数が「2000年以降で最多」を記録した2025年(1〜5月で87件)に次ぐペースで推移していること。つまり、過去四半世紀でいちばん倒産が多かった年に、肩を並べる勢いで増えているということです。

もう一つは、倒産した会社の顔ぶれです。負債額別で見ると、1億円未満の倒産が69件と全体の約86.3%を占めました(出典:帝国データバンク プレスリリース(PR TIMES))。これは、街の塗装屋さん・防水屋さんといった、地域に根ざした小規模事業者が真っ先に倒れているという意味です。塗装・防水は、マンションやビルの大規模修繕で必ず発生する工種です。その担い手が細っていくということは、いざ工事をしようと思ったときに「頼める会社が見つからない」「見つかっても割高になる」という形で、発注する側にも跳ね返ってきます。

別の調査会社・東京商工リサーチ(TSR)も同様の警鐘を鳴らしています。塗装工事業の倒産は2025年に143件と、23年ぶりの高水準に達しました(出典:東京商工リサーチ「『塗装工事業』の倒産143件 23年ぶり高水準」)。一過性の話ではなく、業界全体が構造的に揺れている、と捉えるべき局面です。

私は、この数字を最初に見たとき、現場で一緒に汗を流してきた職人さんたちの顔が浮かびました。腕は確かなのに、経営の体力が続かず店じまいする——現場で20年やってきて、私がいちばん悔しい思いをするのは、こういうときです。

なぜ倒産が増えているのか——「中東情勢」から始まる連鎖

倒産が増えている背景には、いくつもの要因が重なっています。順番に解きほぐします。

引き金は塗料・防水材の不足と値上がり

直接の引き金は、塗料と防水材の調達難です。中東情勢の悪化を起点に、塗料や防水材の原料となるナフサ(原油を精製してできる石油化学製品の基礎原料)の供給が不安定になりました。

塗装・防水工事は、ナフサ由来の溶剤(シンナーなど)に大きく依存しています。さらに、養生に使う保護シートや塗料を入れる容器といった副資材も、原料をたどればナフサに行き着く。つまり、工事の本丸も脇役も、まとめて値上がり・納期遅延の波に飲み込まれている状態です。

TDBも「塗料・防水材の値上げ幅が不透明で工事の見積もりが出しづらい」「資材調達の遅れで工期に遅延が生じている」ケースが出ていると指摘しています。私の現場でも、5月の連休前あたりから「いつもの材料がいつ入るか読めない」という声が職人さんから上がるようになりました。今後、ナフサ製品の供給不安が解消されなければ、倒産件数は2025年を上回り、2000年以降の最多を更新する可能性もある——TDBはそこまで踏み込んで警告しています。

値上げを「すぐに転嫁できない」小さな会社が倒れる

材料が上がっても、それを工事代金にすぐ反映できれば、会社は持ちこたえられます。問題は、小規模な専門工事会社ほど、価格転嫁の交渉力が弱いことです。

元請けから「この金額でやってくれ」と言われれば、断れば次の仕事が来ないかもしれない。だから無理を承知で受ける。材料費は上がっているのに受注単価は据え置き——この差が、薄い利益を食いつぶしていきます。負債1億円未満の小規模事業者が倒産の86.3%を占めたという事実は、まさにこの構造を映しています。建設業は、元請けから一次下請け、二次下請けへと仕事が流れる重層構造になっており、下にいくほど価格交渉の余地が小さくなる。倒産の波が「いちばん下」から来ているのは、偶然ではありません。

人件費(労務単価)の上昇も同時進行

追い打ちをかけているのが、人件費の上昇です。国土交通省が定める公共工事設計労務単価は、令和8年(2026年)3月適用分で全国全職種の加重平均が25,834円となり、初めて2万5千円を突破しました。平成25年度の改定から14年連続の上昇で、今回は前年度比4.5%の引き上げです(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」)。

職人さんの待遇が改善されるのは、業界の未来にとって良いことです。私も賛成です。ただ経営の現実として、材料費と人件費が同時に上がるなかで受注単価だけが上がらなければ、体力のない会社から順に資金繰りが行き詰まる。倒産の増加は、その帰結でもあるのです。

建設業の「担い手」はそもそも減り続けてきた

もう一段、大きな構図も押さえておきます。

国土交通省の建設業許可業者数調査によると、令和6年度末(2025年3月末)時点の建設業許可業者数は483,700業者で、2年連続の増加でした。一見、回復しているように見えます。しかし、業者数が最も多かった平成12年3月末と比べると、約11万7千業者(約19.5%)少ない水準にとどまっています。令和6年度の1年間だけでも、7,252業者が廃業の届出を出しています(出典:国土交通省「全国の建設業許可業者数は2年連続で増加〜令和6年度末の建設業許可業者数調査の結果〜」)。

加えて、現場で働く職人さんの高齢化も進んでいます。私の周りでも、腕のいい職人さんほど年齢が上がり、若い担い手への技能の引き継ぎが追いついていない。倒産で会社が消えるということは、その会社が抱えていた技術や職人さんのネットワークごと、地域から失われるということでもあります。一度失われた施工力は、すぐには戻りません。

つまり、この四半世紀で「工事を担う会社の母数」そのものが細ってきた。そこに今回の倒産ラッシュが重なります。母数が減り、そのなかでも経営体力のある会社とない会社の二極化が進む——大規模修繕を発注する側から見れば、「頼める会社」を選ぶ目が、これまで以上に問われる時代になった、ということです。

オーナー・管理組合に降りかかる「3つの実害」

ここからが本題です。施工会社が工事の途中で倒産すると、発注した管理組合やオーナーには、具体的にどんな実害が及ぶのか。私が現場で見聞きしてきた範囲で、大きく3つあります。

実害1:工事が止まり、足場が宙に浮く

最も困るのが、工事の中断です。足場を架けたまま施工会社が消えると、その足場の解体も、残りの工事も、宙に浮きます。新しい会社を探して引き継いでもらうにも、「前の会社がどこまでやったのか」「下地はどう処理されているのか」が分からなければ、引き受ける側もリスクを取れません。結果として、再見積もり・再契約に数カ月かかり、その間ずっと足場が建ったまま、というケースもあります。

居住者にとっては、洗濯物も干せず、防犯上も不安な状態が長引く。賃貸オーナーにとっては、入居者からのクレームや、最悪の場合は退去にもつながりかねません。

実害2:前払い金・出来高の回収が難しくなる

工事代金の一部を前払いしていた場合、倒産した会社からその回収はほぼ望めません。出来高(実際に終わった工事の分)を超えて支払っていた金額は、原則として戻ってこないと考えるのが現実的です。

私はいつも理事長さまに、「支払いは出来高に応じて、検査を挟みながら段階的に」とお伝えしています。契約のときに支払い条件をどう設計するかで、いざというときの傷の深さがまったく変わってくるからです。

実害3:アフター保証・瑕疵担保が「消える」

見落とされがちですが、いちばん長く効いてくるのがこれです。大規模修繕では、防水や塗装に5年・10年といった保証を付けるのが一般的です。ところが、保証を出した会社が倒産してしまえば、その保証は実質的に履行されません。数年後に屋上から雨漏りが起きても、「保証してくれるはずの会社が、もう存在しない」。

これは、工事が無事に終わったケースでも起こり得ます。だからこそ「無事に完成したから安心」ではなく、「10年後まで責任を取り続けられる会社か」という視点が要るのです。

現場で見た、ある「引き継ぎ工事」の話

少し具体的な話をします。物件が特定されないよう細部はぼかしますが、私が以前、別の会社が途中で立ち行かなくなった現場の引き継ぎを相談されたことがありました。

足場はすでに建っていました。外壁の下地補修まではどうにか終わっているように見えたのですが、いざ調べてみると、ひび割れの補修(シーリングの打ち替えなど)が一部しか終わっておらず、しかも、どこをどう処理したのかの記録がほとんど残っていない。引き継ぐ側からすると、「見えている範囲はやり直す前提で見積もるしかない」状態でした。結果として、管理組合は当初の予定より工期も費用も膨らみ、居住者は半年近く、足場と養生シートに囲まれた暮らしを強いられました。

このとき私が痛感したのは、「安いから」という理由だけで会社を選ぶと、いちばん高くつくのは発注したオーナー・管理組合の側だ、ということです。最初の見積もりが多少高くても、最後まで責任を持ってやり切れる会社に頼むほうが、トータルでは確実に安く済む。これは精神論ではなく、私が現場で何度も見てきた事実です。

発注先をどう見極めるか——理事会で使えるチェックの観点

では、倒産リスクの高い会社をどう避け、長く付き合える会社をどう選ぶか。専門的な財務分析まではできなくても、理事会レベルで確認できる観点があります。ここは表にまとめます。

確認の観点 具体的に見るところ なぜ大事か
経営の安定性 建設業許可の有無と業歴、決算書の提示可否 許可は5年ごとの更新制。業歴が長く決算を開示できる会社は一定の体力がある
施工体制 自社施工か、下請けへの丸投げか 重層下請けが深いほど、どこか一社の倒産で全体が止まりやすい
資材の調達力 塗料・防水材の仕入れルート、メーカーとの取引 調達難の局面で「材料が入らず工事が止まる」リスクを左右する
保証スキーム 保証の主体は誰か、メーカー保証や第三者保証の有無 施工会社が倒れても、メーカー保証や保証会社が残れば被害を抑えられる
支払い条件 出来高払いに応じるか、過大な前払いを求めないか 健全な会社ほど無理な前払いを求めない

すべてを完璧に調べる必要はありません。ただ、「この5つを質問してみて、誠実に答えてくれるか」だけでも、会社の姿勢はかなり見えてきます。逆に、相見積もりで極端に安い金額を出してきた会社には、「なぜこの値段でできるのか」を必ず確認してください。材料費も人件費も上がっているなかで不自然に安い見積もりは、どこかに無理がある——その無理が、数年後の倒産や手抜きという形で跳ね返ってくることがあるからです。

工法の選択が、施工会社の「健全さ」にもつながる理由

ここで、工法の話を絡めます。一見、倒産リスクと工法は無関係に思えるかもしれません。しかし、私の経験上、両者は深いところでつながっています。

大規模修繕の費用のなかで、足場の仮設・解体は決して小さくない割合を占めます。建物の規模や形状にもよりますが、足場費が工事全体の2〜3割に達することも珍しくありません。この足場費は、外壁や屋上を「直す」ためのお金ではなく、職人さんがそこに「行くため」のお金です。

ロープアクセス(無足場工法)を適切に使えば、この足場費を大きく圧縮できます。高層階や、足場を架けにくい形状の建物では、特に効果が出ます。足場という大きな固定費を削れる会社は、その分、無理な安値競争に巻き込まれずに、適正な利益を確保しながら良い仕事ができる。つまり、工法の引き出しが多い会社ほど、経営としても健全でいられる余地があるのです。

もちろん、ロープアクセスが万能というわけではありません。バルコニーの内側や、広い面を一気に塗る作業など、足場のほうが向く場面も確実にあります。だからこそ私は、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つを、建物ごとに使い分けることをお勧めしています。「足場ありき」でも「無足場ありき」でもなく、その建物にとっていちばんコストと品質のバランスが良い組み合わせを選ぶ。これが、結果として工事費を圧縮し、発注先の会社の体力にも余裕を生みます。

ロープアクセス工法そのものについては「ロープアクセス工法のご紹介」、3工法を組み合わせた大規模修繕の進め方については「大規模修繕工事のご紹介」で詳しくお伝えしています。

「足場を二度組まない」という発想がコストを左右する

もう一つ、お伝えしたいのが「足場を二度組まない」という考え方です。

大規模修繕では、外壁の塗装・防水と同時に、屋上防水やシーリングの打ち替え、鉄部の塗装など、複数の工事をまとめて行います。ところが、計画がばらばらだと、ある工事のために足場を組み、解体し、数年後に別の工事のためにまた足場を組む——という二度手間が起きます。足場費が工事全体の2〜3割を占めることを思えば、これは大きな無駄です。

ロープアクセスやハイブリッド工法をうまく使うと、この「足場の重複」を避けやすくなります。たとえば、足場が要る面は足場で一気に仕上げ、ロープアクセスで届く部分や、後から発生した小規模な補修は無足場で対応する。こうして固定費を抑えられれば、浮いた予算を本当に必要な補修や、修繕積立金の温存に回せます。修繕積立金が上昇し続けるいまの局面では、この「足場の二度組みを避ける」発想が、長期修繕計画全体の体力を左右します。

「専門職が束になる」体制が、調達難と人手不足への答えになる

倒産の最大の要因が、小規模な専門工事会社の「一社単独での経営の弱さ」にあるなら、その裏返しが答えになります。すなわち、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が、緩やかに束になって動ける体制です。

私たちは、ロープアクセス工事のフランチャイズという形で、各分野の専門職に加盟していただく仕組みを国内でいち早く立ち上げました。専門職が一つのネットワークでつながることで、資材の調達も、繁忙期の人手のやりくりも、一社で抱えるより格段に安定します。一社だけでは材料が手に入らない局面でも、ネットワーク全体で融通し合えれば、工事を止めずに進められる。これが、高品質と低価格を両立できる理由でもあります。調達難・人手不足・価格転嫁という、いま小規模事業者を倒産に追い込んでいる三つの圧力に対して、ネットワークで立ち向かう——これが私たちの考える、現実的な処方箋です。

加えて、私たちは一般社団法人全国建設業支援協会(JCSA)を運営し、全国の建設業者に向けて経営支援の情報発信やオンラインセミナー、交流会、ビジネスマッチングの場を提供しています。倒産が増えるこの局面だからこそ、業界全体の経営体力を底上げする取り組みにも、力を入れています。発注するオーナー・管理組合の皆さまにとっても、「経営を学び続けている会社か」は、長く付き合えるかどうかの一つの目安になるはずです。

もし工事の途中で施工会社が倒産したら——初動でやるべきこと

「すでに工事が進んでいる最中に、施工会社の様子がおかしい」。そんなときに慌てないために、初動の考え方を整理しておきます。あくまで一般的な手順であり、実際には弁護士など専門家への相談を前提にしてください。

第一に、支払いと出来高の状況を急いで突き合わせること。これまでいくら支払い、工事が実際にどこまで進んでいるのかを、写真や工程表とともに記録に残します。前払いが出来高を上回っているほど、損失は大きくなります。

第二に、足場や資材、現場の鍵といった「現場の管理権」がどうなっているかを確認すること。工事が止まったまま足場が放置されると、安全面・防犯面のリスクが続きます。誰が責任をもって現場を管理するのか、早い段階で整理が必要です。

第三に、保証書や契約書、施工記録を手元にそろえること。引き継ぎを別の会社に頼む場合でも、どこまでどう施工されたかの記録があるかどうかで、再見積もりの精度と費用がまったく変わってきます。

そして第四に、複数の会社から引き継ぎの相談を受けること。一社だけの言い値で決めると、足元を見られかねません。私のところにも、こうした引き継ぎのご相談は少なくありません。緊急時こそ、冷静に複数の選択肢を比べることが、被害を最小限にとどめる近道です。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 相見積もりで一番安い会社を選ぶのは危険ですか? 安いこと自体が悪いわけではありません。問題は「なぜ安いのか」を説明できるかどうかです。材料費も人件費も上がっているなかで、根拠なく極端に安い見積もりは、利益を削りすぎているか、どこかを省いている可能性があります。安さの理由を質問し、納得できる答えが返ってくるかを確かめてください。

Q. 大手なら倒産の心配はないと考えてよいですか? 規模が大きいほど一般に体力はありますが、「大手だから心配ない」と言い切ることはできません。むしろ、自社でどこまで施工するのか、下請けへの依存度はどうか、という施工体制のほうが、現場の安定性に直結します。会社の規模だけでなく、実際に手を動かす体制を確認することをお勧めします。

Q. 保証はどうやって守ればよいですか? 施工会社の保証だけに頼らず、塗料・防水材のメーカー保証や、第三者の保証会社による保証を併用できないかを確認してください。施工会社が万一倒産しても、メーカー保証や第三者保証が残っていれば、被害を抑えられる場合があります。

Q. 施工会社の「経営の健全さ」は素人でも確認できますか? 完全な財務分析は難しくても、手がかりはあります。建設業許可の番号と業歴、過去の施工実績、決算書を見せてもらえるか、業界団体や経営支援の取り組みに参加しているか——こうした点を質問するだけでも、会社の透明性や姿勢が見えてきます。隠さず答えてくれるかどうかが、一つの判断材料になります。

Q. 工事はまだ数年先ですが、いま何をしておけばよいですか? 長期修繕計画の見直しと、発注先選びの基準づくりです。倒産が増える局面では、「いつ・いくらで・どの会社に頼むか」を早めに整理しておくほど、いざというときに慌てずに済みます。総会の前段階の整理だけでも、第三者の目を入れておく価値があります。

6月の総会シーズン、理事会で話してほしいこと

ちょうど今、6月はマンションの通常総会が集中する時期です。大規模修繕を数年内に控えている管理組合では、この機会にぜひ、次の3点を議題に少しだけ触れてみてください。

第一に、「発注先候補の会社の、経営の安定性をどう確認するか」。安さだけでなく、長く責任を取れる会社かどうかを選定基準に入れる、という共通認識を持つことです。

第二に、「契約時の支払い条件と保証の中身」。出来高払いを基本にする、保証はメーカー保証や第三者保証も併せて確認する、という方針を、発注前に固めておくことです。

第三に、「工法の選択肢を一社の言いなりにしない」。足場かロープアクセスか、あるいはその組み合わせか。複数の工法で提案を受け、それぞれのコストと工期、居住者への影響を比較したうえで決める。これだけで、見積もりの妥当性がぐっと判断しやすくなります。

なお、本記事は施工会社選定の一般的な考え方を整理したものであり、特定の会社の経営状態を保証・断定するものではありません。最終的なご判断は、複数の見積もりと専門家の助言を踏まえて行ってください。

まとめ——「直す技術」だけでなく「続く会社」を選ぶ時代に

塗装・防水工事業者の倒産が2000年以降で最多ペースに達したという今回のニュースは、単なる業界の内輪話ではありません。大規模修繕を発注する管理組合・オーナーにとって、「工事の途中や保証期間中に、頼んだ会社が消えるかもしれない」という、新しいリスクが現実になったということです。

これからの発注先選びでは、「直す技術があるか」だけでなく、「10年後まで責任を取り続けられる経営体力があるか」を、同じ重さで見てほしい。そして、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つの工法を建物ごとに最適に組み合わせ、工事費そのものを圧縮することが、結果として、発注する側にも施工する側にも余裕を生みます。工事費に無理がなければ、施工会社は適正な利益のなかで丁寧な仕事ができ、その余裕が10年後の保証履行にもつながっていく。発注の仕方ひとつが、巡り巡って自分たちの資産を守ることになるのです。

これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない感想です。資産価値を守る大規模修繕は、技術と経営の両輪が回って初めて成り立ちます。総会の前段階の整理や、工法ごとの概算比較だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームから、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

出典・参考資料


※本記事は2026年6月12日時点の公表情報に基づいています。制度・統計の最新状況は各一次情報をご確認ください。投資・売買・税務に関する助言を目的としたものではありません。

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