平塚市の分譲マンション管理組合が使える補助金・税制活用ガイド|大規模修繕の負担を軽くする2026年度(令和8年度)の制度設計

「そろそろ2回目の大規模修繕を考えないと——でも、積立金が足りるか不安で」。平塚駅周辺や紅谷町、八重咲町、四之宮、撫子原といった平塚市内のマンションにお住まいの理事長さまから、最近こうしたご相談を立て続けにいただいています。湘南・相模湾に面した平塚市は、東海道線の主要駅をかかえ、昭和から平成にかけて分譲されたファミリー向けマンションが数多く立ち並ぶまちです。築20年、30年を超えれば、外壁の塗り替えや屋上防水、給排水管の更新といったまとまった出費が、一度に押し寄せてきます。

私は大規模修繕の現場で20年近く、足場の上とロープの先から建物を見続けてきました。そのなかで一番もったいないと感じるのは、「使える制度を知らないまま工事を終えてしまった管理組合」に出会うときです。固定資産税の減額、耐震診断の補助、低利の公的融資、無料の専門家派遣——平塚市には、管理組合が活用できる制度がきちんとそろっています。知っているか知らないかで、組合の負担は数十万円から、規模によってはそれ以上変わってきます。

この記事では、平塚市の分譲マンション管理組合が2026年度(令和8年度)に使える制度を、申請の順番に沿って、現場目線で整理しました。専門用語にはそのつど補足を入れますので、建築にお詳しくない理事長さまも、最後までお付き合いください。ここからが本題です。

平塚市のマンション管理組合が使える支援制度【2026年度・一覧】

まず全体像を押さえましょう。平塚市の分譲マンション管理組合が、大規模修繕や維持管理の場面で活用できる主な制度は、大きく「税」「耐震」「資金」「相談・認定」の4つに分けられます。

区分 制度名 概要 窓口
税の優遇 マンション長寿命化促進税制 一定要件を満たす長寿命化工事で、翌年度の固定資産税(家屋分)が2分の1減額 平塚市 固定資産税課
耐震の補助 マンション耐震化促進事業(予備診断・耐震診断) 旧耐震マンションの予備診断・耐震診断の費用の一部を補助 平塚市 建築指導課
専門家の派遣 耐震改修アドバイザー派遣事業 耐震診断・改修の専門家(建築士)を管理組合の集会へ無料派遣 平塚市 建築指導課
資金の調達 マンション共用部分リフォーム融資 管理組合向けの低利・長期の公的融資(住宅金融支援機構) 住宅金融支援機構/マンション管理センター
相談・認定 マンション管理計画認定制度 適正管理のお墨付き+税・融資の優遇につながる入口 平塚市 建築指導課

ここで強調しておきたいのは、これらは「どれか一つを選ぶ」ものではなく、組み合わせて使う発想が大切だということです。私はいつも理事長さまに、「工事の中身を決める前に、まず使える制度の地図を広げてください」とお伝えしています。順番が逆になると、せっかくの優遇を取り逃すことがあるからです。なぜそうなるのかは、記事の後半でご説明します。

なお、各制度には年度ごとの受付期間や予算枠、細かな要件があります。本記事の数値は2026年6月時点で平塚市・国の公式情報を確認したものですが、申請前には必ず各窓口の最新情報をご確認ください。

【税】マンション長寿命化促進税制:固定資産税が1年間2分の1に

最初にご紹介したいのが、令和5年度の税制改正で創設された「マンション長寿命化促進税制」です。これは、一定の要件を満たしたうえで長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションについて、工事が完了した年の翌年度分の建物部分の固定資産税を2分の1に減額する制度です(出典:平塚市 マンション長寿命化促進税制)。

ここでいう「長寿命化に資する大規模修繕工事」とは、次の3つを指します。

  • 屋根防水工事(屋上・屋根などの防水)
  • 床防水工事(直接外気に開放された廊下・バルコニーなどの防水)
  • 外壁塗装等工事(外壁の塗り替え・補修)

つまり、屋根・床・外壁の3点セットの工事です。大規模修繕の王道メニューそのものですから、多くの管理組合にとって、ふだんの修繕計画の延長線上にある話だとお考えください。

対象となるマンションの要件

この制度の対象になるには、平塚市が示す要件を「すべて」満たす必要があります。要点を理事長さま向けにかみ砕くと、次のとおりです。

  1. 新築された日から20年以上が経過していること
  2. 総戸数が10戸以上であること
  3. 区分所有者の専有部分の床面積の2分の1以上が居住用であること
  4. 「平塚市マンション管理計画認定制度、助言・指導について」の建築指導課での手続きが完了していること

そのうえで、工事の要件として「過去に長寿命化工事(屋根防水・床防水・外壁塗装等)を1度以上実施していること」「令和5年4月1日から令和9年3月31日までの間に、2回目以降の長寿命化工事を完了していること」が求められます。

少し専門的なので、鍵になるところだけ。要件4の「管理計画認定または市の助言・指導」と、工事要件の「2回目の3点セット工事」がポイントです。日頃から修繕積立金をきちんと積み、長期修繕計画を整えている管理組合ほど、この税制に手が届きやすい設計になっています。逆に言えば、「2回目の大規模修繕を控えていて、積立金の見直しもこれから」という組合でも、今から準備すれば十分に間に合う可能性があります。

減額の中身:戸あたりで考える

減額の対象は、各区分所有者が翌年度に支払う「建物部分」の固定資産税です。これが1年間、2分の1に減額されます。ただし、対象になるのは1戸あたり100平方メートル(共用部分を含む)までで、これを超える部分は減額されません。また、都市計画税には減額がない点にもご注意ください。

実務でとくに大切なのが、申告のタイミングです。工事が完了した日から3か月以内に、平塚市固定資産税課(本館2階・213窓口)へ減額措置を申告する必要があります。「工事が終わってひと安心」と気を抜くと、この3か月をうっかり過ぎてしまいがちです。私は理事長さまに、工事の竣工前から申告書類の準備を始めておくようお願いしています。

申告できるのは、本人(納税義務者・所有者)やその相続人のほか、管理組合等の代表者です。管理組合の代表者が必要書類を提出することで、各所有者の申告をまとめて行うこともできます。なお、申告書はマンションの全戸数分(全部屋分)を提出する必要があります。

注意点として、この制度による減額は1棟につき「1度のみ」の適用です。さらに、耐震改修工事・バリアフリー改修工事・省エネルギー改修工事による固定資産税の減額措置とは重複して適用できません。どの優遇を使うのが組合にとって有利か、工事の計画段階で見極めておくことが欠かせません。

【入口】平塚市マンション管理計画認定制度:税と融資の「鍵」になる

長寿命化促進税制の要件4で出てきた「管理計画認定」。これは、平塚市が令和5年4月に創設した「マンション管理計画認定制度」のことです(出典:平塚市マンション管理計画認定制度、助言・指導について)。

この制度は、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、「適切な管理計画を持つマンション」として市の認定を受けられる仕組みです。平塚市は、マンション管理適正化推進計画を「平塚市空家等対策計画」のなかに位置づけて、この認定制度を運用しています。

認定を取ると、何がいいのか

認定の効果は、平塚市が公式に次の5つを挙げています。

  1. 区分所有者の管理への意識が高く保たれ、管理水準を維持向上しやすくなる
  2. 適正に管理されたマンションとして、市場において評価される
  3. 適正に管理されたマンションが存在することで、地域価値の維持向上につながる
  4. 住宅金融支援機構の「フラット35」および「マンション共用部分リフォーム融資」の金利引下げ等が受けられる
  5. 固定資産税の優遇(前述の長寿命化促進税制)が受けられる

理事長さまの視点で言い換えると、認定は「資産価値」と「資金調達」の両面で効いてくる、ということです。2の市場評価は、将来お部屋を売却・賃貸する区分所有者にとって追い風になりますし、4・5は管理組合の財布に直接効きます。私が「制度の地図をまず広げて」とお伝えするのは、この認定が税制と融資の入口になっているからにほかなりません。

申請の方法と手数料

申請は、(公財)マンション管理センターの申請システム「管理計画認定手続支援サービス」で事前確認を行ったうえで、同システムを経由して市に申請します。システムを使わずに直接市へ申請することはできません。

費用については、システムの利用料と、マンション管理士による事前確認審査料が必要です(金額はマンション管理センターでご確認ください)。一方で、システムを経由して市へ認定申請する際に、市の手数料はかかりません。認定の有効期間は5年です。

なお、管理計画認定の手前にある「助言・指導」を市から受け、長期修繕計画の作成・見直しを行うルートでも、一定の要件を満たせば固定資産税の優遇を受けられます。「いきなり認定はハードルが高い」という組合でも、まずは建築指導課に相談する道があるとお考えください。制度全般の相談窓口としては、一般社団法人日本マンション管理士会連合会の「マンション管理計画認定制度相談ダイヤル(電話:03-5801-0858、月曜から土曜の午前10時から午後5時)」も用意されています。

【耐震】平塚市マンション耐震化促進事業:旧耐震マンションの命綱

平塚市は、湘南エリアとして大規模地震への備えが欠かせない立地です。とくに昭和56年(1981年)の建築基準法改正前の「旧耐震基準」で設計されたマンションは、耐震性が十分でないと指摘されています。平塚市では、こうしたマンションの耐震化を後押しするため、「マンション耐震化促進事業」として段階的な補助を用意しています(出典:平塚市 分譲マンションの耐震改修アドバイザー派遣事業・マンション耐震化促進事業)。

支援は、(1) 耐震改修アドバイザー派遣(無料)、(2) 予備診断費の補助、(3) 耐震診断費の補助——という3段階です。ただし「アドバイザー派遣を受けずに予備診断の補助を受ける」など、それぞれを個別に利用することもできます。

まずは無料の「耐震改修アドバイザー派遣」から

最初のきっかけづくりに使えるのが、無料のアドバイザー派遣です。マンションの耐震診断・耐震改修に関する専門知識を持つ建築士を、管理組合が開く集会などにアドバイザーとして無料で派遣してくれます。「うちのマンションは耐震性が大丈夫なのか」「何から手をつければいいのか」——そんな漠然とした不安を、専門家と一緒に整理できる機会です。総会で住民の合意を形成する前段階として、私は活用をおすすめしています。

予備診断費の補助:費用の10分の9、上限18万円

「予備診断」とは、設計図書の保存状況や建物の経年劣化、平面・立面の形状などを調べ、本格的な「耐震診断」を受ける必要があるかどうかを判断する、いわば一次スクリーニングです。

平塚市の予備診断費の補助は、予備診断に要した費用(税込み)の10分の9で、補助金の上限額は18万円です。補助率が9割と高いのが特徴で、最初の一歩のハードルを大きく下げてくれます。

対象となるのは、平塚市内にあるマンションで、(1) 昭和56年5月31日以前に建築確認を得て工事に着手したもの、(2) 住戸数の過半が区分所有者の住居用、(3) 住宅部分の床面積が過半、(4) 集会または管理規約に基づく会で予備診断の実施を決議したもの、(5) 床面積の合計が1,000平方メートル以上のもの——これらすべてに該当する建物です。1つの管理組合につき1棟までが対象です。

耐震診断費の補助:費用の2分の1、1住戸あたり4万円

予備診断の結果、本格的な「耐震診断」が必要と判断された場合は、耐震診断費の補助に進みます。耐震診断は、現地調査や材料強度試験、設計図書をもとに構造計算を行い、数値で耐震性を判定するものです。

補助額は、耐震診断に要した費用と、耐震判定委員会等による評価・判定に要した費用の2分の1で、上限は1住戸あたり4万円(区分所有者が居住する住戸に限る)です。たとえば30戸のマンションなら、単純計算で最大120万円が補助の上限ということになります。耐震診断費の補助を受けるには、既存建築物耐震診断・改修等推進全国ネットワーク委員会等に登録された耐震判定委員会等の評価を取得する必要があります。

手続きの順番に注意——「決議」のタイミング

耐震化促進事業で実務上とくに気をつけたいのが、手続きの順番です。平塚市では、市に「計画承認申請」を行い、市の承認通知書を受け取った後に、管理組合の総会(または集会)で実施を決議する流れになっています。さらに、補助金交付決定通知書を受け取った後に、耐震診断者と診断の契約を締結します。

つまり「先に総会で決議して、業者と契約してから市に申請」という、つい無意識にやってしまいがちな順番だと、補助の対象外になりかねないということです。窓口は平塚市建築指導課(電話:0463-21-9731)。総会のスケジュールを組む前に、まず建築指導課へ相談されることを強くおすすめします。

【資金】住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資

補助金や税制で負担を軽くしても、大規模修繕には数千万円単位のまとまった資金が必要になることがあります。修繕積立金だけでは足りない——そんなときの選択肢が、住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)の「マンション共用部分リフォーム融資」です。

これは管理組合が借主となる、共用部分の修繕・改修のための公的融資です。民間ローンに比べて低利・長期での借入れがしやすく、マンション管理センターの保証を利用することで無担保化も可能です。そして前述のとおり、平塚市の管理計画認定を取得していれば、この融資や「フラット35」で金利の引下げ等が受けられます。

私の現場経験から言えば、資金計画は「工事の前」に固めておくほど、組合の選択肢が広がります。融資ありきで工事内容を削るのではなく、「使える制度をフル活用したうえで、最適な工法を選ぶ」。この順番が、結果として総コストを下げます。金利は毎月見直されるため、検討の際は最新の条件を住宅金融支援機構でご確認ください。

制度を「取り逃さない」ための着手順【5ステップ】

ここまでの制度を、実際の動きに落とし込みます。私が理事長さまにおすすめしている順番は、次の5ステップです。

  1. 現状把握と相談(無料):まず建築指導課に相談し、必要に応じて耐震改修アドバイザー派遣(無料)を受ける。自分のマンションが旧耐震かどうか、管理計画の状態はどうかを確認する。
  2. 管理計画の整備と認定:長期修繕計画と修繕積立金を見直し、マンション管理計画認定の取得(または市の助言・指導)を進める。これが税制・融資の入口になる。
  3. 資金計画の確定:修繕積立金に加え、共用部分リフォーム融資の活用可否を検討。認定取得による金利引下げも織り込む。
  4. 工事内容と工法の決定:必要な工事(屋根防水・床防水・外壁塗装等の3点セットを含む)を確定し、足場・ロープアクセス・ハイブリッドのなかから建物に最適な工法を選ぶ。
  5. 工事完了後の申告(3か月以内):長寿命化促進税制の減額措置を、工事完了から3か月以内に固定資産税課へ申告する。

このうち2の「管理計画認定」を起点に据えるのが、私からの一番のおすすめです。認定が固定資産税の減額と融資の金利引下げの両方に効いてくるため、ここを早めに動かしておくと、後段の選択肢が大きく広がります。

制度を活かす工法選び——足場・ロープアクセス・ハイブリッド

制度で負担を軽くしたら、次は「工事そのものの最適化」です。私たち明誠は、大規模修繕において3つの工法を建物の特性に応じて使い分け、最適な形をご提案できる、日本でも数少ない会社です。それぞれの向き・不向きを正直にお伝えします。

通常の足場工法は、中低層で形状が複雑な建物、あるいは全面的に大規模な改修を行う場合に向いています。作業の安定性が高く、広い面を一度に施工できる反面、足場の架設・解体に費用と工期がかかり、設置期間中は居住者の窓まわりやプライバシー、防犯面への配慮も必要になります。

ロープアクセス工法(無足場工法)は、産業用ロープを使って足場を架けずに施工する方法です。足場費がかからないぶんコストを抑えやすく、工期も短縮できます。高層で足場の架設が難しい建物、部分的な補修、居住者の生活への影響を最小化したい物件に向いています。一方で、全面的な大改修や、足場が必要な重量物の取り回しには不向きな場面もあります。

ハイブリッド工法は、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分ける方法です。たとえば施工量の多い面は足場、足場の架けにくい面はロープアクセス、といった具合に組み合わせることで、大規模・複雑な物件でも総合的なコストと工期の最適化を図れます。

平塚市内のマンションは、駅前の中高層から郊外のファミリータイプまで形状もさまざまです。「足場ありき」でも「無足場ありき」でもなく、建物を見たうえで最適な工法をご提案する——これが私たちの基本姿勢です。長寿命化促進税制の対象となる屋根・床・外壁の3工事も、工法の選び方次第で総コストは変わってきます。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 築年数が新しく旧耐震ではないのですが、使える制度はありますか。
A. はい。耐震化促進事業(予備診断・耐震診断の補助)は旧耐震(昭和56年5月31日以前に建築確認)が対象ですが、マンション長寿命化促進税制は「新築から20年以上・総戸数10戸以上」などの要件を満たせば、新耐震のマンションでも対象になり得ます。管理計画認定や共用部分リフォーム融資も、築年数を問わず活用できます。

Q2. 長寿命化促進税制で、本当にどのくらい安くなりますか。
A. 減額されるのは建物部分の固定資産税の2分の1(1戸あたり100平方メートルまで、1年間)です。金額は各戸の評価額によって異なるため一律には言えませんが、戸数の多いマンションほど組合全体での効果は大きくなります。具体額は固定資産税課(家屋担当・電話:0463-21-8768)にご確認ください。

Q3. 管理計画認定は、手間に見合いますか。
A. 認定は固定資産税の減額・公的融資の金利引下げ・市場での評価という複数の効果につながる「入口」です。長期修繕計画や積立金の整備は、認定の有無にかかわらずマンションの健全運営に欠かせないものですから、その延長で認定を取得できれば、得られるメリットは小さくありません。まずは建築指導課にご相談ください。

Q4. 補助や税制の手続きと工事の段取りを、まとめて相談できますか。
A. はい。私たちは制度の活用を前提に、工事の計画段階から「どの制度をどの順番で使うか」を含めてご提案しています。申請のタイミングを誤ると優遇を取り逃すこともあるため、工事を決める前のご相談が効果的です。

まとめ——「知っている管理組合」が、負担を軽くする

平塚市の分譲マンション管理組合が使える制度を、申請の順番に沿って整理してきました。マンション長寿命化促進税制による固定資産税の減額、耐震化促進事業の予備診断(費用の9割・上限18万円)・耐震診断(1住戸4万円)の補助、無料の耐震改修アドバイザー派遣、共用部分リフォーム融資、そしてそれらの入口となる管理計画認定制度。これらを「組み合わせて」「正しい順番で」使うことが、組合の負担を確実に軽くします。

冒頭でお伝えしたとおり、私が現場で一番もったいないと感じるのは、使える制度を知らないまま工事を終えてしまうケースです。逆に言えば、制度を知り、早めに動き出した管理組合は、同じ工事でも負担を大きく減らせます。

「うちのマンションだと、どの制度が使えるのか」「2回目の大規模修繕に向けて、何から準備すればいいのか」。そうした疑問が少しでもあれば、まずは情報を集めるところから始めてください。私たち明誠は、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法と制度活用の両面から、平塚市のマンションにとって最適な大規模修繕をご提案します。ご相談はいつでもお気軽にどうぞ。


出典(2026年6月時点・公式一次情報)

▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

大和市の分譲マンション管理組合が使える補助金・税制活用ガイド|大規模修繕の負担を軽くする2026年度(令和8年度)の制度設計

「うちのマンションも、そろそろ2回目の大規模修繕の時期だ」——中央林間やつきみ野、南林間、鶴間といった大和市内のマンションにお住まいの理事長さまから、最近こうしたご相談を立て続けにいただいています。東急田園都市線や小田急江ノ島線の沿線として発展してきた大和市には、昭和から平成初期に分譲されたファミリー向けマンションがたくさんあります。築20年、30年を超えれば、外壁の塗り替えや屋上防水、給排水管の更新といったまとまった出費が、一度に押し寄せてきます。

私は大規模修繕の現場で20年近く、足場の上とロープの先から建物を見続けてきました。そのなかで一番悔しい思いをするのは、「使える制度を知らないまま工事を終えてしまった管理組合」に出会うときです。固定資産税の減額や耐震診断の補助、低利の公的融資、無料の専門家相談——大和市には、管理組合が活用できる制度がきちんとそろっています。知っているか知らないかで、組合の負担は数十万円から、規模によってはそれ以上変わってきます。

この記事では、大和市の分譲マンション管理組合が2026年度(令和8年度)に使える制度を、申請の順番に沿って、現場目線で整理しました。専門用語にはそのつど補足を入れますので、建築にお詳しくない理事長さまも、最後までお付き合いください。ここからが本題です。

大和市のマンション管理組合が使える支援制度【2026年度・一覧】

まず全体像を押さえましょう。大和市の分譲マンション管理組合が、大規模修繕や維持管理の場面で活用できる主な制度は、大きく「税」「耐震」「資金」「相談・認定」の4つに分けられます。

区分 制度名 概要 窓口
税の優遇 マンション長寿命化促進税制 一定要件を満たす長寿命化工事で、翌年度の固定資産税(家屋分)が2分の1減額 大和市 資産税課
耐震の補助 マンション耐震診断費補助金 旧耐震マンションの予備診断・本診断の費用の一部を補助 大和市 建築指導課
資金の調達 マンション共用部分リフォーム融資 管理組合向けの低利・長期の公的融資(住宅金融支援機構) 住宅金融支援機構/マンション管理センター
相談・認定 マンション管理計画認定制度/専門家相談 適正管理のお墨付き+無料の専門家相談 大和市 建築指導課/神奈川県

ここで強調しておきたいのは、これらは「どれか一つを選ぶ」ものではなく、組み合わせて使う発想が大切だということです。私はいつも理事長さまに、「工事の中身を決める前に、まず使える制度の地図を広げてください」とお伝えしています。順番が逆になると、せっかくの優遇を取り逃すことがあるからです。なぜそうなるのかは、記事の後半でご説明します。

なお、各制度には年度ごとの受付期間や予算枠、細かな要件があります。本記事の数値は2026年6月時点で大和市・国の公式情報を確認したものですが、申請前には必ず各窓口の最新情報をご確認ください。

【税】マンション長寿命化促進税制:固定資産税が2分の1に

最初にご紹介したいのが、令和5年度の税制改正で創設された「マンション長寿命化促進税制」です。これは、一定の要件を満たしたうえで長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションについて、翌年度の建物部分の固定資産税を2分の1に減額する制度です(出典:大和市 大規模修繕等が行われたマンションに対する固定資産税の減額措置)。

ここでいう「長寿命化に資する大規模修繕工事」とは、次の3つを「すべて」実施するものを指します。

  • 外壁塗装等工事(外壁の塗り替え・補修)
  • 床防水工事(直接外気に開放された廊下・バルコニーなどの防水)
  • 屋根防水工事(屋上・屋根などの防水)

つまり、外壁・床・屋根の3点セットの工事です。大規模修繕の王道メニューそのものですから、多くの管理組合にとって、ふだんの修繕計画の延長線上にある話だとお考えください。

対象となるマンションの要件

この制度の対象になるには、大和市が示す要件を「すべて」満たす必要があります。要点を理事長さま向けにかみ砕くと、次のとおりです。

  1. 新築された日から20年以上が経過していること
  2. 総戸数が10戸以上であること
  3. 専有部分の2分の1以上が、人の居住の用に供する部分であること
  4. 次のいずれかに該当すること——(A)大和市の「マンション管理適正化推進計画」に基づき、修繕積立金を一定以上に引き上げたうえで管理計画の認定を受けたマンション、または(B)市から管理の適正化に必要な助言・指導を受け、その日以後に長期修繕計画を作成または基準に適合するよう変更したマンション
  5. 工事の要件として、過去に長寿命化に資する大規模修繕工事(前述の外壁・床・屋根の3工事すべて)を実施していること
  6. 令和9年3月31日までに、2回目以降の長寿命化工事(同じく3工事すべて)が完了していること

少し専門的なので、鍵になるところだけ。要件4の「管理計画認定」と、要件5・6の「2回目の3点セット工事」がポイントです。日頃から修繕積立金をきちんと積み、長期修繕計画を整えている管理組合ほど、この税制に手が届きやすい設計になっています。逆に言えば、「2回目の大規模修繕を控えていて、積立金の見直しもこれから」という組合でも、今から準備すれば十分に間に合う可能性があります。

減額の中身:戸あたりで考える

減額されるのは、工事が完了した年の翌年度分の固定資産税(家屋分)で、減額率は2分の1です。対象となる範囲は1戸あたり床面積100平方メートル分までで、それを超える部分や土地分は対象外です(出典:大和市 同ページ)。

「2分の1」と聞いてもピンとこないかもしれませんので、財布感覚に直してみましょう。仮に1戸あたりの建物分の固定資産税が年7万円のマンションなら、1戸あたり年3万5千円ほどの軽減です。50戸のマンションなら、組合全体で年間150万円規模の負担減になる計算です。1年分とはいえ、決して小さな金額ではありません。

ここで一つ、大事な注意点があります。この減額措置は、ほかの固定資産税の減額措置とは併用できず、1戸につき一度しか受けられません。だからこそ、「いつの工事で、どのタイミングで申告するか」を、工事計画と一緒に設計しておくことが効いてきます。

申告の流れと注意点

この税制は、工事をすれば自動で適用されるものではありません。長寿命化工事が完了した日から3か月以内に、大和市役所の資産税課へ申告する必要があります。

申告には、市の窓口に備え付けの申告書に加えて、「大規模修繕等証明書」「過去工事証明書」、総戸数が10戸以上であることを確認できる書類、そして管理認定マンションの場合は「管理計画認定通知書の写し」と「修繕積立金引上証明書」などの添付が求められます。証明書は建築士やマンション管理士などが作成するもので、準備に時間がかかります。私はこの「証明書の前さばき」を、いつも工事計画とワンセットでご案内するようにしています。完成してから慌てて集めると、3か月の期限に追われることになるからです。

なお、この制度は要件が細かいため、対象になるかどうかの最終判断は必ず市の窓口で確認してください。税制の要件にかかわる「管理計画認定」「助言・指導」については大和市建築指導課(電話046-260-5422)、申告手続きそのものは資産税課(家屋償却資産係046-260-5237)が窓口です。

【耐震】マンション耐震診断費補助金:まず「現状を知る」

次は耐震です。大和市には、分譲マンションの耐震診断にかかる費用の一部を補助する制度があります。「うちは大丈夫だろう」と思われがちですが、対象は昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認を得て新築工事に着手した、いわゆる旧耐震基準のマンションです。築40年を超える物件をお持ちの組合は、ぜひ一度確認してください(出典:大和市 マンション耐震診断費補助金制度)。

ここでいう「旧耐震基準」とは、現在の耐震基準(新耐震基準)が導入される前の古い基準のことです。大きな地震に対する想定が今より緩く、専門家による診断で安全性を確かめておく意味が大きい建物です。

対象と補助額

補助の対象になるのは、次の条件をすべて満たす分譲マンションです。昭和56年5月31日以前に建築確認を得て着工していること、区分所有者がいて住戸数の過半数が区分所有者の居住用であること、延べ面積の2分の1を超える部分が共同住宅であること、そして平面図・構造図などの建築図面があること。申請できるのは管理組合(団体または法人)です。

補助の中身は、診断の段階によって分かれています。

区分 内容 補助額
予備診断 簡易な方法で本診断の要否を判断 1棟あたり上限20万円
本診断(緊急輸送路を塞ぐおそれのあるもの) 耐震改修促進法に基づく安全性評価 費用の3分の2(1棟あたり上限200万円。1,000平方メートル未満は1平方メートルあたり2,000円)
本診断(その他) 同上 費用の2分の1(1棟あたり上限150万円。1,000平方メートル未満は1平方メートルあたり1,500円)

「緊急輸送路を塞ぐおそれのあるもの」とは、災害時に救助や物資輸送の動脈となる道路沿いの建物のことです。倒れると道路をふさいでしまうため、補助率が手厚く設定されています。自分のマンションが該当するかどうかは、事前相談の際に市が判断してくれます。

「事前相談」と「総会・理事会決議」がカギ

この補助で気をつけたいのが、手続きの順番です。予備診断・本診断のいずれも、申請の前に必ず市との事前相談が必要で、診断を実施する前には管理規約や細則に基づく総会または理事会の決議が求められます(出典:大和市 同ページ)。

つまり、「理事会で耐震診断を話題に出す」→「市へ事前相談する」→「総会・理事会で決議する」→「申請する」という流れを、年度のなかで段取りよく進める必要があります。受付期間はおおむね当該年度の4月頃から12月末頃までとされていますので、総会のタイミングから逆算して、早めに動き出すことをおすすめします。私はいつも、「耐震は、まず現状を数字で知るところから」とお伝えしています。診断結果がなければ、改修が必要かどうかも、住民への説明もできないからです。

【資金】住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」

制度を使っても、大規模修繕には相応の自己資金が必要です。積立金が計画どおりに貯まっていればよいのですが、現実には「2回目の修繕で積立金が足りない」という組合は少なくありません。そんなときの選択肢が、独立行政法人住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」です(出典:住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資 ご利用条件(管理組合申込みの場合))。

これは、管理組合が共用部分のリフォーム工事資金を借り入れるための、公的な長期・固定金利の融資です。利用にあたっては、管理規約で必要な事項が定められていること、総会で工事の実施・借入れ・修繕積立金からの返済などが決議されていることが条件になります。

ポイントは、後述する管理計画認定を受けたマンションや、耐震改修を伴う工事などでは金利の引き下げが受けられる場合があることです。また、公益財団法人マンション管理センターの保証を利用すると、無担保で借りられるなどのメリットがあります(出典:マンション管理センター 共用部分リフォーム融資と債務保証)。金利は毎月見直されますので、検討時には必ず最新の適用金利をご確認ください。

私は、融資ありきで工事を組むことはおすすめしません。ですが、「積立金の不足で必要な工事を先送りし、傷みが進んで結局高くつく」という事態こそ避けたいのです。資金の選択肢を知ったうえで、無理のない返済計画を立てる。これも理事長さまの大切な仕事だと思います。

【相談・認定】管理計画認定制度と無料の専門家相談

最後は、すべての土台になる「相談・認定」です。

管理計画認定制度——税制・融資とつながる「適正管理のお墨付き」

大和市は令和6年4月から、「マンション管理計画認定制度」を始めています。これは、適切な管理が行われているマンションの管理計画を市が認定する制度で、認定を受けるには国の指針に沿った16項目の基準を満たす必要があります。大和市には独自の上乗せ基準はなく、国の基準と同じ内容です(出典:大和市 マンション管理計画認定制度について)。

この認定が効いてくるのは、まさに前述の制度との「つながり」です。認定を取得したマンションは、適正に管理されている物件として市場での評価につながるうえ、長寿命化促進税制の入口要件になり、住宅金融支援機構の融資(フラット35やマンション共用部分リフォーム融資)の金利引き下げといったメリットも受けられます。大和市では制度開始から着実に認定が進んでおり、令和8年4月時点で21件のマンションが認定を受けています。

申請の前には、公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」で、国の基準に適合しているかの事前確認を受ける必要があります。この事前確認は講習を修了したマンション管理士が行い、適合すれば「事前確認適合証」が発行されます。利用料は10,000円(税込)で、市への申請手数料は当面の間かからないとされています(出典:マンション管理センター 管理計画認定手続支援サービス)。認定の有効期間は5年間で、申請には総会での決議が前提となります。

神奈川県・市の無料相談を使い倒す

「制度は分かったが、誰に相談すればいいのか」——これが理事長さまの本音だと思います。大和市の制度に関する一次窓口は建築指導課建築住宅係(電話046-260-5422)ですが、より幅広い管理運営や大規模修繕、耐震化、建替えなどの相談には、神奈川県の支援も活用できます。神奈川県は、マンション管理の専門家を管理組合へ派遣する支援や、役員・区分所有者向けのセミナー、相談窓口を用意しています(出典:神奈川県 マンション施策)。

私はいつも、「最初の一歩は、お金のかからない相談から」とお伝えしています。いきなり工事会社に見積もりを取る前に、公的な相談窓口で全体像を整理しておくと、後の判断がぶれません。

制度を「組み合わせて」使う:大規模修繕の進め方

ここまでの制度を、実際の大規模修繕の流れに当てはめてみましょう。私がおすすめしている順番は、次のとおりです。

  1. 長期修繕計画と積立金の点検——まず、今の計画と積立金で何ができるかを把握する。神奈川県や市の無料相談を入口に。
  2. 管理計画認定の取得を検討——税制・融資の入口になるため、早めに動く価値が大きい。事前確認から逆算してスケジュールを引く。
  3. (旧耐震の場合)耐震診断——事前相談・総会決議を経て補助を活用し、まず現状を数字で知る。
  4. 工事計画の確定と資金計画——3点セット工事(外壁・床・屋根)を軸に、自己資金と融資のバランスを設計。
  5. 工事の実施と、完了後3か月以内の税制申告——証明書を前さばきしておき、期限に追われない。

この順番が大切な理由は、冒頭で「順番が逆になると優遇を取り逃す」と申し上げたことに関係します。たとえば、管理計画認定や積立金の引き上げを済ませないまま工事を終えてしまうと、長寿命化促進税制の入口要件を満たせず、減額を受けられないことがあるのです。だからこそ、工事の中身を決める前に、制度の地図を広げておく必要があります。

3つの工法、それぞれの向き・不向き

大規模修繕の費用を左右する大きな要素が、外壁などにアクセスするための「足場」です。私たちは、建物の特性に応じて3つの工法をご提案しています。

  • 通常足場工法:建物全体に仮設足場を架ける従来型。全面的な工事や複雑な形状に向きますが、足場の架設・解体に費用と工期がかかり、居住者の生活への影響(窓が開けにくい、防犯面の不安など)も大きくなりがちです。
  • ロープアクセス工法(無足場工法):産業用ロープを使い、足場を架けずに職人が外壁面で作業する工法です。足場費を抑えられ、工期も短縮しやすく、居住者の生活への影響を最小化できます。高層部や、足場が架けにくい立地で特に効果を発揮します。ただし、全面的な打診調査や大面積の改修には不向きな場合もあります。
  • ハイブリッド工法:足場とロープアクセスを部位ごとに使い分け、総合的なコストと工期を最適化する考え方です。大規模・複雑な物件で、無理なく費用を抑えたいときの選択肢です。

どれが正解かは、建物ごとに違います。私はこれを、必ず現地を見たうえでご提案するようにしています。ロープアクセスについてはロープアクセス工法のご紹介、大規模修繕の総合的な進め方については大規模修繕工事のご紹介もあわせてご覧ください。

「修繕積立金の引き上げ」を総会で通すために

長寿命化促進税制の入口にもなる「修繕積立金の引き上げ」。頭では必要と分かっていても、総会で住民の合意を得るのは簡単ではありません。私が現場で見てきたなかで、合意形成がうまくいく組合には共通点があります。

それは、「数字を、住民の財布感覚に翻訳して伝えている」ことです。たとえば「積立金が不足しています」だけでは動きません。「今のままだと2回目の修繕で○百万円足りず、一時金が1戸あたり△万円になる可能性があります。月△千円の引き上げで、それを避けられます」という形で、自分ごととして見える数字に変える。さらに、税制の減額や補助、融資といった「負担を軽くする選択肢」をセットで示すと、前向きな議論になりやすいのです。正直に申し上げます。値上げの提案は誰にとっても気が重いものですが、先送りのツケは必ず大きくなります。

よくある質問(大和市のマンション補助・税制)

Q1. 賃貸に出している区分所有者がいても、長寿命化促進税制の対象になりますか?
マンション全体として「専有部分の2分の1以上が居住用」などの要件を満たすかどうかで判断されます。一部に賃貸住戸があっても、ただちに対象外になるわけではありません。詳細は大和市資産税課にご確認ください。

Q2. 1回目の大規模修繕でも、固定資産税の減額は受けられますか?
この税制は「過去に長寿命化に資する大規模修繕工事を実施していること」が要件で、2回目以降の工事が対象です。1回目の工事は対象外となるため、長期的な計画のなかで位置づけて考える必要があります。

Q3. 旧耐震ではない(新耐震の)マンションですが、何か使える制度はありますか?
耐震診断補助は旧耐震が対象ですが、長寿命化促進税制や共用部分リフォーム融資、管理計画認定は新耐震のマンションでも活用できます。築年数や管理状況に応じて、使える制度は変わってきます。

Q4. 管理会社に任せているので、自分たちで動く必要はないのでは?
最終的に申請するのは管理組合です。管理会社と役割分担しながらも、理事会として制度の全体像を把握しておくことが、取りこぼしを防ぐ最大のポイントです。

まとめ:まず動くべき3つのこと

最後に、理事長さまに今日から動いていただきたいことを3つに絞ります。

第一に、長期修繕計画と修繕積立金の現状を確認すること。これがすべての出発点です。第二に、管理計画認定の取得を検討すること。税制と融資の入口になり、メリットが連鎖します。第三に、旧耐震のマンションなら、まず耐震診断の事前相談をすること。現状を数字で知ることから、すべてが始まります。

大和市と神奈川県には、無料で使える相談窓口があります。いきなり工事の話に進む前に、まずは制度の地図を広げてみてください。私たち明誠は、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つの工法から、建物にとって本当に必要な工事だけをご提案することを大切にしています。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください(お問合せフォーム)。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

出典・参考資料

※本記事は2026年6月時点で公開されている公的情報をもとに作成しています。補助率・上限額・受付期間・要件は年度や予算枠によって変わることがあります。申請前には必ず各窓口の最新情報をご確認ください。

▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

大規模修繕の市場が「1兆円規模」へ——分譲マンション713万戸時代に、上がり続ける修繕積立金とどう向き合うか。オーナー・管理組合のコスト最適化と工法選択【2026年6月】

大規模修繕の市場が「1兆円規模」へ——分譲マンション713万戸時代に、上がり続ける修繕積立金とどう向き合うか。オーナー・管理組合のコスト最適化と工法選択【2026年6月】

「うちのマンション、次の大規模修繕で積立金が足りるだろうか」。理事会のあと、理事長さまにそう声をかけられることが、この一年で本当に増えました。私は大規模修繕の現場に20年近く立ってきましたが、修繕の「お金」と「工法」を同じテーブルで語らなければならない時代が、いよいよ来たと感じています。

きっかけは、先日報じられた一本の記事でした。大規模修繕工事の需要が高まり、市場規模が1兆円規模へ向かっているという内容です(出典:朝日新聞「高まる大規模修繕工事の需要、市場は1兆円規模に 上がる修繕積立金」)。数字だけ見れば「業界が伸びている」という景気のいい話に聞こえます。けれども、この市場拡大の裏側にあるのは、オーナーさまと管理組合にとっては決して楽ではない構造変化です。今日は、その数字の中身を分解しながら、では私たち建物の持ち主・管理者は何をすべきなのかを、現場目線で正直にお話しします。

「市場1兆円」の中身——数字が示しているのは“老いていくストック”

まず、市場規模の根拠から押さえます。矢野経済研究所の2025年の調査によると、マンション共用部の修繕工事の市場規模は2030年に1兆539億円となり、2024年比で12.7%の拡大が見込まれています(出典:朝日新聞・前掲記事)。

なぜこれだけ需要が伸びるのか。答えはシンプルで、直す対象の建物そのものが、どんどん増えて、どんどん古くなっているからです。国土交通省によると、2024年末時点の分譲マンションの総戸数は約713万戸。1999年からのおよそ四半世紀でほぼ倍増しました(出典:国土交通省 報道発表資料)。

さらに見過ごせないのが、その「高経年化」のスピードです。築40年以上のマンションは約148万戸で、この10年間で3倍以上に増えました。そして20年後には、さらに約3.3倍に増えると見込まれています。建物が古くなれば、直すべき箇所も、1回あたりにかかる費用も増えていきます。この「ストックの老い」こそが、1兆円市場の正体だと、私は受け止めています。

ここで一度、言葉を補足させてください。「大規模修繕」とは、おおむね12〜15年の周期で、外壁・屋上防水・鉄部塗装・シーリング(外壁の目地を埋める防水材)などをまとめて直す、建物全体のメンテナンス工事のことです。1回あたりの費用は平均で約1.2億〜約1.5億円とされています(出典:朝日新聞・前掲記事)。つまり「1兆円市場」とは、全国のマンションが順番に1億円超の工事を迎えていく、その総和なのです。景気の話ではなく、私たちのマンションの“順番”が回ってくるという話だと、私は受け止めています。

修繕積立金は、なぜ上がり続けるのか

市場が伸びるということは、裏返せば「工事の発注が殺到する」ということです。当然、価格は上がります。その負担を最終的に背負うのは、毎月コツコツ積み立てているオーナーさまと区分所有者の皆さまです。

実際、1戸あたりの修繕積立金の月額は、2023年時点で約1万3千円。1999年の約7400円と比べると、約1.8倍の水準になっています(出典:朝日新聞・前掲記事)。25年で1.8倍。これは決して小さな数字ではありません。

しかも問題は、上がっても“まだ足りない”ケースが多いことです。積み立てられている額が、長期修繕計画で想定した額に比べて不足している管理組合は、約4割にのぼります(出典:朝日新聞・前掲記事)。10棟あれば4棟は「計画どおりにお金が貯まっていない」という現実です。

国も手を打っています。2024年6月、国土交通省は「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」と「長期修繕計画作成ガイドライン」を改定し、当初は安く設定して後から段階的に値上げする「段階増額積立方式」について、適切な引上げの考え方を示しました。具体的には、段階増額方式における各時点の徴収額を、均等積立方式とした場合の月額(基準額)と比べたとき、計画の初期額は基準額の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内に収めることが望ましい、という目安です(出典:国土交通省 報道発表資料(ガイドライン改定))。

少し噛み砕きます。これは「最初を安く見せておいて、後で急に2倍3倍に跳ね上げるような計画は、もうやめましょう」という国からのメッセージです。裏を返せば、これまでそういう“安く見せる”長期修繕計画が世の中に少なくなかった、ということでもあります。私はいつも理事長さまに、「新築時の積立金額は“最低ライン”だと思ってください」とお伝えしています。

本当の危機は「需要過多」と「供給逼迫」が同時に来ること

ここからが本題です。市場が1兆円に伸び、積立金も上がる。ここまでは「お金が足りるかどうか」の話でした。しかし私が現場で本当に怖いと感じているのは、もう一つの逆風が同時に吹いていることです。それは「工事を担う会社が減っている」という供給側の問題です。

直近では、塗装・防水工事業者の倒産が2000年以降で最多ペースで進んでいるという報道も出ています。原油・ナフサ(塗料や防水材の原料となる石油由来の成分)不足による資材高や、職人の高齢化・人手不足が背景にあります。需要は1兆円へ膨らむのに、それを支える施工側の体力は細っている。この「需要過多×供給逼迫」が重なると、何が起きるか。価格はさらに上がり、工事の順番待ちは長くなり、見積もりの精度や品質のばらつきも広がります。

正直に申し上げます。こういう局面では、「とりあえず相見積もりを3社取って一番安いところに」という従来のやり方だけでは、もう守りきれません。安いには安いなりの理由があり、その理由が「手抜き」や「あとからの追加請求」だった、という話を、私はこの業界で何度も見てきました。現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、お金がないわけではなかったのに、工法と発注先の選び方を誤って、本来守れたはずの資産価値を削ってしまったお客さまを見るときです。

では、オーナー・管理組合に何ができるのか——「効くところ」を押さえる

ここで悲観して終わるつもりはありません。値上がりする要素の中にも、自分たちでコントロールできる部分が確かにあります。そのひとつが「工法の選択」です。

大規模修繕の費用は、ざっくり言えば「①直す工事そのものの費用」と「②その工事を行うための仮設の費用」に分かれます。意外に思われるかもしれませんが、この②、つまり建物全体を覆う仮設足場(と、その周りに張る飛散防止のメッシュシート)の費用は、工事総額の中で決して小さくない割合を占めます。建物の形状や高さによっては、足場の架設・解体だけで数百万円から1千万円を超えることもあります。

私はここに、コストを抑える「効きどころ」があると考えています。明誠では、建物に応じて次の3つの工法を使い分けています。

工法 概要 向いている建物・状況
通常足場工法 従来型の仮設足場を建物全体に架ける 中低層、形状が複雑、全面的に手を入れる場合
ロープアクセス工法(無足場工法) 産業用ロープで作業員が降下して施工。足場を建てない 高層、足場が組みにくい、コストと工期を抑えたい、居住者の生活影響を最小化したい場合
ハイブリッド工法 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける 大規模・複雑物件で、全体コストの最適化が必要な場合

「ロープアクセス工法」という言葉に馴染みのない方のために補足します。これは、ビルの窓清掃で職人さんがロープでぶら下がっている、あの技術を、外壁の調査・補修・塗装・防水にまで応用したものです。足場を建てない分、仮設費を抑えられ、工期も短縮しやすく、何より足場がないので居住者・テナントの生活や営業への影響を小さくできます。明誠は、このロープアクセス工事で日本初のフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟することで、高品質と低価格の両立を目指しています(ロープアクセス工法のご紹介)。

ただし、両論併記でお伝えします。ロープアクセスは万能ではありません。外壁の全面打診(壁を叩いて浮きを調べる調査)が大量に必要な場合や、バルコニーの内部まで大がかりに手を入れる場合、あるいは作業の安全上ロープを固定する支点(アンカー)が十分に取れない建物では、足場のほうが適していることもあります。だからこそ私は、足場・ロープ・ハイブリッドの3つを“どれも持っている”会社として、その建物にとって本当に最適な組み合わせを提案するようにしています。1工法しか持たない会社は、どうしても「自社が得意な工法」に答えを寄せがちです。これは、3工法を扱える数少ない会社だからこそ言える、正直な話です。

3つの工法を、私はどう選んでいるか

実際の判断軸を、もう少しだけ具体的にお話しします。私が最初に見るのは、建物の「高さ」と「形状」、そして「居住者・利用者の生活影響をどこまで抑えたいか」です。

たとえば、足場を建てると窓が長期間ふさがれてしまう高層マンションや、足場の設置場所そのものが取りにくい敷地ぎりぎりの建物では、ロープアクセスやハイブリッドが効いてきます。逆に、低層で外壁の劣化が全面に及んでいる建物なら、足場をしっかり建てて一気に直したほうが、結果的に安く・早く終わることもあります。

私はこれを、必ず現地で自分の目を入れてから決めるようにしています。図面と写真だけで「ロープでいけます」と即答する会社があれば、私はむしろ慎重になります。建物は一棟ごとに性格が違う。だから、工法ありきではなく、建物ありきで考える。これが現場で20年やってきた私の、ゆずれない順番です。大規模修繕の総合的なご提案については、大規模修繕工事のご紹介もあわせてご覧ください。

修繕積立金が足りないとき、工法選択がもつ意味

ここで、お金の話に戻します。積立金が計画より不足している管理組合が約4割ある、という数字を先ほどお伝えしました。積立金が足りないとき、選択肢は大きく3つです。①一時金を徴収する、②借入をする、③工事の内容や範囲を見直す。①と②は区分所有者の負担増や金利負担を伴い、総会での合意形成も簡単ではありません。

そこで、③の「見直し」の一手として、工法の選択が生きてきます。たとえば仮設足場が前提だった計画を、建物条件が許す範囲でロープアクセスやハイブリッドに置き換えられれば、仮設費の一部を圧縮できる可能性があります。仮に総戸数50戸のマンションで仮設費を数百万円抑えられたとすれば、1戸あたりに換算して数万円から十数万円。これは、一時金の負担をそのぶん軽くできるということです。お財布感覚で言えば、「来年の一時金が、家族での旅行1回ぶん軽くなるかどうか」くらいの違いになり得ます。

もちろん、これは建物ごとの条件次第で、すべての物件で同じだけ下がるわけではありません。「必ず安くなります」とは申し上げません。けれども、工法という選択肢を最初から1つに固定してしまうと、この“効きどころ”を検討する機会そのものを失ってしまう。それが一番もったいない、と私は思うのです。

総会で必ず聞かれる質問と、私の答え方

6月は、多くの管理組合で通常総会が開かれる季節です。修繕の話題が必ず出ます。理事長さまから「総会で何を聞かれますか」とよく相談されるので、現場でよくいただく質問と、私の答え方を共有します。

「今やるべきか、もう少し待てるか」——劣化は待ってくれません。シーリングの切れや塗膜の劣化を放置すると、雨水が躯体(建物の構造部分)に入り、鉄筋の腐食や爆裂につながります。そうなると、修繕どころか“改修”という、桁の違う工事になりかねません。私はいつも「点検だけでも今のうちに」とお伝えしています。

「相見積もりの読み方が分からない」——金額の安さだけでなく、足場・仮設の費用が妥当か、工法がその建物に合っているか、数量(平米数)の根拠が示されているかを見てください。国土交通省も、適正な見積りかどうかを管理組合が検討できるよう、大規模修繕工事の実態調査を行い、指標を公表しています(出典:国土交通省 報道発表資料)。

「積立金が足りないと言われた」——まずは長期修繕計画と積立方式を確認し、2024年改定のガイドラインの考え方(初期0.6倍以上・最終1.1倍以内)に照らして、無理のない引上げ計画になっているかを点検してください(出典:国土交通省 ガイドライン改定)。

収益不動産オーナーの視点——修繕は「コスト」ではなく「資産防衛」

ここまでは管理組合の理事長さまを想定してお話ししてきましたが、区分マンションや一棟ビルを保有する収益不動産オーナーさまにも、同じ構造変化が押し寄せています。むしろ、賃料という収益と直結するぶん、修繕の巧拙が経営にダイレクトに効いてきます。

私がオーナーさまにいつもお伝えしているのは、「大規模修繕は支出ではなく、資産価値を守るための投資だ」ということです。外壁の劣化やタイルの浮き、雨漏りを放置した建物は、見た目の印象が悪くなるだけでなく、空室率の上昇や賃料下落、最悪の場合は外壁落下による事故リスクまで抱え込みます。きれいに維持された建物は、入居者にも金融機関にも「管理が行き届いた物件」と評価され、売却時の価格にも効いてきます。

一方で、賃貸経営は利回りとの戦いでもあります。だからこそ、必要な修繕はしっかり行いつつ、仮設費のような“削れる固定費”は工法選択で抑える。この両立が、収益を守りながら資産価値を維持する現実的な道だと、私は考えています。たとえばテナントが営業を続けながらの工事では、足場で店舗の看板や入口がふさがれることが死活問題になります。ロープアクセスなら、その影響を最小限にしながら外壁を直せる。私はこういう物件でこそ、無足場工法の価値が際立つと感じています。

倒産が増えるいま、発注先をどう見極めるか

需要過多と供給逼迫が同時に進むこの局面で、もう一つ避けて通れないのが「発注先の見極め」です。工事を頼んだ会社が、工事の途中や保証期間中に倒産してしまえば、アフター対応も保証も宙に浮きます。せっかく1億円超をかけた工事が、これでは台無しです。

私が見極めのポイントとしてお伝えしているのは、次の3つです。ひとつは、見積もりの「内訳」がきちんと開示されているか。一式いくら、ではなく、足場・塗装・防水・シーリングといった項目ごとに、数量(平米数)と単価が示されているかを見てください。ふたつめは、自社施工の体制があるか、丸投げの多重下請けになっていないか。工事の品質と価格は、ここで大きく変わります。みっつめは、アフター保証と、その会社が保証期間を支えられる事業基盤を持っているか、です。

明誠は、こうした建設業界全体の課題に向き合うため、一般社団法人全国建設業支援協会(JCSA)を運営し、全国の建設業者に向けた経営支援やビジネスマッチング、情報発信を行っています。業界の足腰が強くなることは、最終的に発注者であるオーナーさま・管理組合の安心につながると信じているからです。正直に申し上げて、安かろう悪かろうの工事が淘汰され、まっとうな会社が正しく評価される業界にしていくことが、私の20年来の願いでもあります。

均等積立か、段階増額か——「方式」を知ると総会が変わる

修繕積立金の話に、もう一歩だけ踏み込みます。積立金には大きく2つの方式があります。「均等積立方式」は、長期修繕計画の全期間で必要な額を平準化し、毎月ほぼ一定額を積み立てる方式です。最初は負担が重く感じられますが、将来の急な値上げが起きにくく、計画が安定します。

もう一方の「段階増額積立方式」は、当初は低めに設定し、数年ごとに段階的に引き上げていく方式です。新築時の月々の負担を軽く見せられるため、分譲時に採用されることが多いのですが、後年になって大幅な値上げが必要になり、総会で合意が取れずに資金不足に陥る——これが、約4割の組合が積立不足を抱える一因にもなっています。

だからこそ国土交通省は2024年6月の改定で、段階増額方式を採るなら、初期額は均等積立の基準額の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内に、という目安を示したわけです(出典:国土交通省 ガイドライン改定)。私はいつも、「自分のマンションがどちらの方式か、今期の総会で一度確認してみてください」とお伝えしています。方式を理解しているだけで、値上げ提案が出たときの理事会の議論の質が、まるで変わります。

数字だけでは見えない「暮らしのコスト」——ある現場の話

最後に、見積書の金額には載らない価値の話を、ひとつだけさせてください。以前、築22年・約80戸の中規模マンションで、2回目の大規模修繕をお手伝いしたときのことです。1回目は全面足場で施工されていて、住民の方々から「3カ月近く窓を開けられず、洗濯物も外に干せなかった」「足場から部屋が見えるようで落ち着かなかった」という声が、理事会に多く寄せられていたそうです。

2回目のご相談で私が提案したのは、外壁の大部分をロープアクセスで、足場が必要な一部だけ部分足場を組むハイブリッド工法でした。結果として、仮設費を抑えられただけでなく、住民の方の生活ストレスが大きく減りました。工事が終わったあと、理事長さまから「今回は“工事をやっている感じ”がしなくて、住民からの苦情がほとんどなかった」と言っていただけたのです。私はこの一言を、金額の値引き以上に嬉しく思いました。

修繕積立金や工事費は、たしかに数字で比較できます。けれども、工事期間中に住民やテナントが負担する「暮らしのコスト」「営業のコスト」は、見積書には載りません。私はいつも、この“見えないコスト”まで含めて、その建物にとって本当に得な選択は何かを考えるようにしています。これは、足場・ロープ・ハイブリッドの3つを持っているからこそできる提案だと、自負しています。

よくある質問(FAQ)

Q. ロープアクセス工法は、足場より本当に安いのですか。
A. 仮設足場の架設・解体費を抑えられるため、足場が高くつく建物では総額が下がる可能性があります。ただし建物の形状・劣化範囲・安全上の支点の取りやすさによっては、足場のほうが適切で安い場合もあります。条件次第、というのが正直なお答えです。

Q. 居住者の生活への影響が心配です。
A. ロープアクセスは足場を建てないため、窓が長期間ふさがれる・足場から室内が見えるといったストレスを軽減しやすい工法です。防犯面でも、足場を伝った侵入リスクを避けられます。

Q. 築年数が浅くても相談していいですか。
A. もちろんです。むしろ、最初の大規模修繕(築12〜15年前後)を迎える前に、工法の選択肢と概算を知っておくほうが、長期修繕計画も積立計画も立てやすくなります。

Q. 工法の比較だけ相談することはできますか。
A. できます。発注前提でなくて構いません。総会前の論点整理だけでも、お力になれることがあります。

まとめ——数字に振り回されず、「効きどころ」を押さえる

最後に、今日の話を一段に絞ります。大規模修繕の市場が2030年に1兆539億円規模へ拡大し、分譲マンションは713万戸、築40年超は148万戸。修繕積立金は25年で1.8倍に上がり、なお約4割の組合が不足を抱えています。この大きな流れ自体は、私たちには止められません。

けれども、その大きな流れの中でも、自分たちでコントロールできる“効きどころ”はあります。そのひとつが、足場・ロープアクセス・ハイブリッドという工法の選択です。工法を最初から1つに決め打ちせず、建物に合った最適な組み合わせを検討する。それだけで、仮設費というコストの一部に、手を入れる余地が生まれます。

これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない感想です。総会の前段階の整理だけでも、工法の比較だけでも構いません。お問合せフォームから、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

出典・参考資料


本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の修繕計画・積立金・補助制度の適用可否を保証するものではありません。最新の制度内容・数値は各公的機関の一次情報をご確認のうえ、専門家にご相談ください。

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千葉市で使える賃貸オーナー向け補助金活用ガイド|幕張・稲毛・蘇我の築古物件を「NOI」で再生する2026年度の制度設計

千葉市で収益マンション・賃貸ビルを保有しているオーナーさまにとって、2026年度(令和8年度)は「修繕を、補助金と税制が乗っているうちに前倒しする」判断がしやすい年です。市の分譲マンション耐震補助、住宅用設備等の脱炭素化補助、危険ブロック塀の改善補助。そこに国の「住宅省エネ2026キャンペーン」と、賃貸オーナーを名指しで対象にした給湯省エネ制度が重なります。

本記事は、千葉市内に収益物件を持つ個人・法人オーナーさまを読者に想定し、補助金を「入居率・賃料・NOI(純営業収益)・出口価格・税務処理」という収益指標に翻訳して整理します。制度の正確な金額・要件はすべて市・国の公式情報に基づき、出典を末尾に明記しました。判断材料としてお使いください。


1. なぜ今、千葉市の賃貸オーナーは「補助金を絡めた修繕」を投資判断に組み込むべきか

賃貸経営において、外壁・屋上防水・給湯設備・窓は「いずれ必ず手を入れる部分」です。問題は「いつやるか」。どうせ来る支出なら、補助金と税制優遇が乗っているタイミングで前倒しするほうが、保有中の利回りにも、売却時の出口価格にも有利に働きます。

特に千葉市の物件で意識したいのは、「市の補助は個人市民向けで、法人や収益物件は対象外になりやすい」という構造です。後述する千葉市の脱炭素化補助は「法人は除く」と明記されており、賃貸オーナーがそのまま使える場面は限られます。だからこそ、国の制度(とりわけ賃貸オーナーを名指しで対象にした給湯省エネ制度)と、分譲を貸しているオーナーが管理組合経由で使える耐震補助を、きちんと棲み分けて設計することが収益を分けます。

「補助金で工事費が下がる」だけが価値ではありません。空室期間の短縮(設備の新しさ)、賃料の維持・微増(断熱・省エネ)、修繕履歴の明確化(売却時の評価)。この3つが、NOIと出口の両方を底上げします。

千葉市は政令指定都市として中央区・花見川区・稲毛区・若葉区・緑区・美浜区の6区を擁し、幕張新都心(海浜幕張)の業務集積、千葉駅周辺の再開発、蘇我・湾岸エリアの住居・商業混在など、エリアごとに賃貸需要の性格が異なります。築古ストックが厚いエリアでは、設備の新しさと断熱性能が「選ばれる物件」と「見送られる物件」を分けます。補助金を使った計画修繕は、こうした競争環境のなかで物件のポジションを一段引き上げる手段でもあります。


2. オーナーの物件タイプ別――千葉市の耐震補助は「分譲を貸しているか」で入口が変わる

千葉市の耐震補助は、旧耐震基準(昭和56年5月31日以前に建設)の建物が対象です。賃貸オーナーにとっての使い方は、保有形態で分かれます。

2-1. 分譲マンションの一室・複数室を貸している方――管理組合経由で耐震診断・改修補助

千葉市には分譲マンションの耐震診断・耐震改修への補助制度があります。区分所有者として一室を賃貸に出しているオーナーさまは、自分単独では申請できませんが、管理組合の合意形成に加わることで、共用部の耐震化を補助付きで進められます。

耐震診断補助(令和8年度)は、診断費用の3分の2を補助。予備診断は1棟あたり3万4千円、本診断は1棟あたり400万円を上限とします(消費税を除く。床面積による按分計算あり)。

耐震改修補助(令和8年度)は、設計費が3分の2(1戸あたり5万円、または1棟あたり500万円が上限)、工事および監理費が3分の1(1棟あたり3,000万円が上限)。Is値0.3以上の補助対象床面積は1㎡あたり51,700円、0.3未満は56,900円で算定されます。2019年度からは段階的に進める「部分改修工事」も出来高に応じて補助対象です。

オーナー視点で重要なのは、「共用部の耐震性は、自室の賃貸価値と売却価格に直結する」という点です。旧耐震という事実は重要事項として説明対象になり、賃料にも売値にも効いてきます。管理組合がこの補助を使って耐震化を進められるかどうかは、区分所有オーナーの資産価値そのものです。総会で「補助制度があるうちに」と提案する価値は十分にあります。

2-2. 一棟所有(賃貸マンション・ビル)の方――まず「事前相談」を入口に

一棟の賃貸マンションやビルを保有しているオーナーさまは、建物の用途・規模によって使える耐震メニューが変わります。千葉市は分譲マンション向け補助を明確に整備していますが、一棟賃貸や事業用建築物については、建物が「耐震診断義務付け対象建築物」(不特定多数が利用する大規模建築物など)に該当するか、また千葉県の制度が重ねられるかで扱いが変わります。

したがって最初の一手は、千葉市建築指導課(電話:043-245-5836)への事前相談です。「うちの建物はどの補助メニューに乗るのか」を確定させてから設計に入るのが、補助を取りこぼさない最短ルートです。

2-3. 「事前相談(前年9~11月)」という鉄則

千葉市の分譲マンション耐震補助には、「申請の前年(9月~11月)に事前相談を行うことが必須」という明確なルールがあります。これは年度内の駆け込みでは間に合わないことを意味します。令和8年度の補助を本命で狙うなら、前年度のうちに相談を済ませ、予算枠を見据えて動く必要があります。賃貸経営は「来期の修繕を、今期のうちに段取りする」のが鉄則。耐震補助はその典型です。


3. 省エネ改修を「賃料維持装置」に変える――国の2026年度制度

千葉市の市制度は法人・収益物件に使いにくい面がある一方、国の「住宅省エネ2026キャンペーン」は賃貸物件も視野に入っています。ここがオーナーにとっての主戦場です。

3-1. 賃貸集合給湯省エネ2026事業(賃貸オーナーを名指しで対象にした制度)

これは収益物件オーナーにとって、2026年度で最も使い勝手のよい制度のひとつです。補助対象者は「賃貸集合住宅のオーナー等」と明記され、給湯器交換工事の発注者(リース利用を含む)が対象になります。

補助額は、従来型給湯器から省エネ型(エコジョーズ/エコフィール)への取替で、追い焚き機能なしは5万円/台(共用廊下を横断してドレン排水ガイドを敷設した場合は8万円/台)、追い焚き機能ありは7万円/台(浴室へのドレン水排水工事を伴う場合は10万円/台)。令和7年11月28日以降に着工した工事が対象です。

20戸の物件で給湯器をまとめて更新すれば、補助だけで百万円規模が動きます。給湯器は故障してから慌てて交換するより、補助が乗るうちに計画更新するほうが、突発空室リスクも資金繰りも安定します。

3-2. 先進的窓リノベ2026事業

窓の断熱改修は、入居者が体感しやすく「賃料維持・退去抑制」に直結する投資です。先進的窓リノベ2026事業は高断熱窓への改修を補助する大型制度で、賃貸住宅も対象になります。結露・カビ・冷暖房費という、退去理由になりやすい不満を一気に解消できるため、NOIへの効きが良い改修です。

千葉市は冬の北西風と夏の湾岸部の日射が強く、窓まわりの断熱・遮熱は体感差が大きい地域です。内窓(インナーサッシ)の設置やガラス交換は、工事が一戸あたり短時間で済み、入居中でも施工しやすいのが利点です。空室のタイミングを待たずに進められるため、賃貸経営のキャッシュフローを止めずに資産価値を底上げできます。さらに、千葉市の脱炭素化補助の窓断熱メニュー(自己使用部分が対象になる場合)と国の窓リノベは、二重取りを避ける形で経費を按分する設計が前提です。「どの窓をどの制度で申請するか」を発注前に整理しておきましょう。

3-3. 給湯省エネ2026・みらいエコ住宅2026

エコキュート等の高効率給湯機を対象とする給湯省エネ2026事業、そして長寿命化・省エネ改修を支援するみらいエコ住宅2026事業も、住宅省エネ2026キャンペーンの一翼です。窓・給湯・断熱は複数事業の併用設計(ワンストップ申請)が可能な場合があり、「どの工事をどの事業に割り付けるか」で実質負担が大きく変わります。ここは設計段階での制度設計が勝負どころです。


4. 千葉市の脱炭素化補助は「法人除外・既築・個人市民」――それでも使える条件

千葉市の住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金(住宅向け/令和8年度)は、太陽光発電(最大4.5万円=1kWあたり1万円)、ZEH+(10万円)、家庭用燃料電池エネファーム(10万円)、定置用リチウムイオン蓄電システム(7万円)、窓の断熱改修(最大8万円=対象経費の4分の1)と、メニューが豊富です。受付は令和8年5月1日から令和9年1月29日まで、先着順(同日受付で予算超過の場合は抽選)です。

ただし注意点が2つあります。第一に「補助対象は市内の住宅に設備を導入した市民の方(法人は除く)」とされており、法人名義の収益物件は基本的に対象外です。第二に「既築住宅に設置する場合のみ」が条件のメニューがあります。

つまり、個人オーナーが自ら居住する併用住宅や、自己使用部分であれば検討余地がありますが、純粋な収益物件には使いにくい。ここを正直に把握しておくことが、申請の空振りを防ぎます。収益物件側は前章の国の制度(賃貸集合給湯省エネ・窓リノベ)を主軸に据えるのが現実的な設計です。なお、集合住宅のEV充電設備については別途の補助制度が用意されています。


5. 危険ブロック塀の改善補助――「安全コスト」を補助で軽くする

見落とされがちですが、千葉市危険ブロック塀等改善補助事業は賃貸物件の安全対策に直結します。敷地境界の古いブロック塀は、地震時の倒壊リスク(通行人への加害責任)と、外観劣化による募集力低下の両面でオーナーの負担です。

補助額は、「除却費用の2分の1」または「危険ブロック塀等の総延長(m)×8,000円」のいずれか低い額で、上限12万円。高さ1.2mを超え、現地調査で危険と判定されたブロック塀の改善(撤去・軽量フェンス設置など)が対象です。申請窓口は千葉市住宅供給公社です。

金額自体は大きくありませんが、「もし倒壊して人身事故が起きれば」という損害賠償リスクを、補助付きで前倒し処理できる意味は大きい。外構の更新は物件の第一印象を変え、内見時の印象=成約率にも効きます。

対象地区は市内小中学校の敷地からおおむね1,500メートル以内、そのうちおおむね500メートル以内は重点地区として補助が手厚くなります。通学路沿いに古いブロック塀を抱える物件は、社会的にも撤去・改善が求められやすく、補助が使えるうちに対応しておくのが賢明です。なお、外壁・タイルの浮きや剥落も同じく加害リスクと募集力の双方に関わるため、外構と外壁を一度の大規模修繕でまとめて手当てすると、足場・諸経費の重複を避けられ、総コストを抑えやすくなります。


6. 税務で結果が変わる――損金算入・固定資産税減額・補助金の課税

補助金を使う際、オーナーが必ず押さえるべきが税務処理です。補助金は原則として「益金(雑収入)」として課税対象になります。「補助が出たから丸ごと得」ではなく、課税後の実質手取りで判断する必要があります。

一方で、修繕費・減価償却・固定資産税減額をうまく組み合わせれば、トータルの負担は大きく変わります。原状回復・機能維持の範囲であれば修繕費として当期の損金に算入できる可能性があり、資本的支出に当たる部分は減価償却で複数年に配分します。耐震改修については、千葉市にも固定資産税の減額や所得税の特別控除に関する案内があり、要件を満たせば税負担の軽減が受けられます。

ここは「補助金額の大小」より「税引後キャッシュフロー」で見るべき領域です。顧問税理士と連携し、補助金の益金算入・圧縮記帳の可否・修繕費と資本的支出の区分を、工事の発注前に整理しておくことを強くお勧めします。発注後では選べる処理が減ります。


7. 数字で見る――千葉市・1棟20戸・築32年のNOI改善シミュレーション

抽象論ではイメージしづらいので、千葉市稲毛区・1棟20戸・築32年・旧耐震ではない区分の賃貸マンションを例に、補助を絡めた改修のNOIインパクトを試算します(あくまでモデルケースです)。

前提:満室想定年間賃料1,920万円(平均8万円×20戸)、現状の入居率88%(実効賃料約1,690万円)。給湯器が経年で更新期、外壁・屋上防水も周期到来。

施策:①国の賃貸集合給湯省エネ2026で給湯器20台を計画更新(追い焚きありエコジョーズ想定で補助7万円×20台=140万円)。②窓リノベで共用・専有の窓を高断熱化。③外壁・防水の大規模修繕を同時施工。

効果(モデル試算):設備の刷新と断熱性向上で入居率が88%→94%に改善すれば、実効賃料は約1,805万円へ。年間で約115万円の収入増です。加えて給湯補助140万円が初期投資を直接圧縮。空室期間短縮による募集コスト・原状回復回転の改善も加わります。

NOIが年100万円超改善すれば、還元利回り5%換算で物件評価額は2,000万円規模の押し上げに相当します。補助金は「工事費の値引き」にとどまらず、保有中の利回りと出口価格の両方を動かすテコだと分かります。

逆に、設備の老朽化を放置したまま空室率が悪化すると、賃料の下方修正と募集コストの増加が同時に進み、NOIは静かに削られていきます。築古物件の価値下落は「ある日突然」ではなく、設備更新を先送りした年数の分だけ積み上がります。補助と税制が乗っている2026年度に計画修繕を入れておくことは、この下落カーブを反転させる現実的な一手です。試算はあくまでモデルですが、「やる・やらない」で数年後の評価額に無視できない差が出る、という構造は多くの収益物件に共通します。


8. 申請の落とし穴と着手順ロードマップ

補助金で最も多い失敗は、「工事を先に始めてしまい、補助対象外になる」ことです。多くの制度は交付決定前・着工前の申請が前提で、千葉市の耐震補助は前年9~11月の事前相談まで必須です。順序を間違えると、同じ工事でも補助がゼロになります。

オーナーが踏むべき手順は次の通りです。第一に、保有物件の棚卸し(築年・耐震基準・設備更新期・所有形態=分譲か一棟か)。第二に、使える制度の割り付け設計(市の耐震/国の給湯・窓/ブロック塀/税務)。第三に、事前相談と交付申請(千葉市建築指導課・脱炭素推進課・住宅供給公社の各窓口、国はキャンペーン公式へ)。第四に、交付決定後に着工。第五に、実績報告と税務処理。

この順序を、修繕周期と予算枠(多くが先着・予算上限)に合わせて前倒しで段取りする。これが補助を取りこぼさない実務です。


9. 工法の選択がNOIを左右する――明誠の「3工法」提案

補助金で工事費の一部が軽くなっても、工法の選び方次第で総コストと工期、そして入居者への影響は大きく変わります。ここが、保有中の収益(=居住者に出ていかれないこと)に直結します。

明誠は、大規模修繕を「通常足場工法」「ロープアクセス工法(無足場)」「ハイブリッド工法」の3つから、建物の形状・高さ・立地・予算に応じて最適提案できる、日本でも数少ない会社です。

ロープアクセス工法(無足場工法)は、産業用ロープで施工するため足場の架設費を抑えられ、工期も短縮できます。足場を組まないぶん、外から室内が見えにくく、防犯・プライバシー面の入居者ストレスが小さいのも収益物件では見逃せない利点です。空室を生まない=NOIを落とさない修繕、という発想です。一方で、足場が適する部位・全面改修が必要な物件もあるため、足場とロープを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法で総コストを最適化するケースもあります。

加えて明誠は、日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟。専門職の直接施工により高品質と低価格を両立しています。補助金で初期負担を下げ、工法で総コストと入居者影響を最適化する。この2軸でNOIと出口を設計するのが、明誠のご提案です。


10. よくある質問(FAQ)

Q. 法人名義の収益物件でも千葉市の補助は使えますか?
A. 千葉市の住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金は「市民(法人は除く)」が対象で、法人名義の収益物件は基本的に対象外です。収益物件は、賃貸オーナーを対象とする国の「賃貸集合給湯省エネ2026事業」や「先進的窓リノベ2026事業」を主軸に設計するのが現実的です。

Q. 分譲マンションの一室を貸しています。耐震補助は私個人で申請できますか?
A. 千葉市の分譲マンション耐震補助は管理組合等が単位となります。区分所有者単独ではなく、管理組合の合意形成を通じて共用部の耐震化を補助付きで進める形になります。総会での提案が起点です。

Q. 給湯器の交換はいつの工事から対象ですか?
A. 賃貸集合給湯省エネ2026事業では、令和7年11月28日以降に着工した、従来型から省エネ型(エコジョーズ等)への取替が対象です。詳細・最新の受付状況は公式サイトでご確認ください。

Q. 補助金は課税されますか?
A. 原則として益金(雑収入)として課税対象です。修繕費・減価償却・固定資産税減額との組み合わせで実質負担が変わるため、発注前に税理士と整理することをお勧めします。

Q. どの工法が安いですか?
A. 一概には言えません。高層・足場架設が難しい立地ではロープアクセスが有利なことが多く、全面改修や複雑形状では足場やハイブリッドが適する場合もあります。現地調査のうえ、補助制度と合わせて総コストで比較するのが確実です。


結語

千葉市の賃貸オーナーさまにとって、2026年度は「どのみち来る更新を、補助と税制が乗るうちに前倒しで投資に変える」好機です。給湯・窓・耐震は、いずれ必ず手を入れる部分。だとすれば、空室率と賃料という「静かな数字」を底上げできるタイミングで実行するのが、保有中の利回りにも、出口の売却価格にも効いてきます。

特に千葉市は「市の補助は個人市民向け、収益物件は国の制度が主軸」という棲み分けを理解しているかどうかで、使える金額が変わります。制度の割り付けと着手順、そして工法選定。この3点を設計できれば、補助金は単なる値引きではなく、NOIと出口価格を動かすテコになります。

お持ちの物件で、まだこの検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度お問い合わせください。1棟の現地調査と、利回り改善シミュレーション・工法比較(足場かロープアクセスか)だけでも承ります。補助金の制度設計から工法選定まで、数字でご一緒に試算しましょう。

なお、近隣の政令市のオーナー向け補助金については、横浜市の賃貸オーナー向け補助金ガイド、川崎市の賃貸オーナー向け補助金ガイド、さいたま市の賃貸オーナー向け補助金ガイドもあわせてご覧ください。エリアごとに使える制度と限度額が異なります。


出典・参考資料

本記事は2026年6月12日時点の公開情報に基づきます。各補助制度は予算上限・受付期間・要件が変更される場合があります。申請前に必ず各窓口の最新情報をご確認ください。

▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

厚木市の分譲マンション管理組合が使える補助金・税制活用ガイド|大規模修繕の負担を軽くする2026年度(令和8年度)の制度設計

「次の大規模修繕、いくらかかるんだろう」——厚木市内の分譲マンションで理事長を務める方から、最近こうしたご相談を続けていただいています。築20年を超えると、外壁の塗り替え、屋上やバルコニーの防水、給排水管の更新といった工事がまとまって押し寄せます。修繕積立金は足りるのか、住民の合意は取れるのか。理事長さまの肩には、重い宿題がのしかかります。

私は大規模修繕の現場で20年近く、足場の上とロープの先から建物を見てきました。そのなかで痛感しているのは、「使える制度を知らないまま工事をしてしまう管理組合が、本当に多い」ということです。厚木市には、分譲マンションの管理組合が活用できる税の優遇、耐震診断の補助、低利の公的融資、そして無料の専門家派遣がそろっています。知っているか知らないかで、組合の負担は数十万円から、規模によってはそれ以上変わってきます。

この記事では、厚木市の管理組合が2026年度(令和8年度)に使える制度を、現場目線で整理しました。専門用語にはそのつど補足を入れますので、建築にお詳しくない理事長さまも、最後までお付き合いください。ここからが本題です。

厚木市のマンション管理組合が使える支援制度【2026年度・一覧】

まず全体像を押さえましょう。厚木市の分譲マンション管理組合が、大規模修繕や維持管理の場面で活用できる主な制度は、大きく「税」「耐震」「資金」「相談」の4つに分けられます。

区分 制度名 概要 窓口
税の優遇 マンション長寿命化促進税制 一定要件を満たす長寿命化工事で翌年度の固定資産税が2分の1に減額 厚木市 資産税課 / 住宅課
耐震の補助 分譲マンションへの予備診断補助 耐震の予備診断費用の2分の1(上限15万円)を補助 厚木市 建築指導課
耐震の支援 耐震アドバイザー派遣 一級建築士が耐震診断の相談に無料で対応 厚木市 建築指導課
資金の調達 マンション共用部分リフォーム融資 管理組合向けの低利・長期の公的融資(住宅金融支援機構) 住宅金融支援機構
相談・支援 分譲マンションアドバイザー派遣/管理計画認定制度 マンション管理士等の無料派遣と、管理の適正化を後押しする認定 厚木市 住宅課

ここで強調しておきたいのは、これらは「どれか一つを選ぶ」ものではなく、組み合わせて使う発想が大切だということです。私はいつも理事長さまに、「工事の中身を決める前に、まず使える制度の地図を広げてください」とお伝えしています。順番が逆になると、せっかくの優遇を取り逃すことがあるからです。理由は記事の後半でご説明します。

なお、各制度には年度ごとの受付期間や予算枠、細かな要件があります。本記事の数値は2026年6月時点で厚木市・国の公式情報を確認したものですが、申請前には必ず各窓口の最新情報をご確認ください。

【税】マンション長寿命化促進税制:固定資産税が2分の1に

最初にご紹介したいのが、令和5年度の税制改正で創設された「マンション長寿命化促進税制」です。これは、一定の要件を満たしたうえで長寿命化工事を実施したマンションについて、翌年度の建物部分の固定資産税を2分の1に減額する制度です。厚木市でも条例で導入されており、市の公式ページに要件が公開されています(出典:厚木市 長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する固定資産税の減額について)。

ここでいう「長寿命化工事」とは、次の3つを「すべて一体として」実施するものを指します。

  • 外壁塗装等工事
  • 床防水工事(廊下・バルコニーなどの防水)
  • 屋根防水工事(屋上・屋根などの防水)

つまり、外壁・床・屋根の3点セットの工事です。大規模修繕の王道メニューそのものですから、多くの管理組合にとって、ふだんの修繕計画の延長線上にある話だとお考えください。なお「一体として」とは、同一の工事請負契約の中で行われる場合や、同一の総会決議で決議されている場合などを指します。3つをバラバラの年度・契約で実施すると要件を外れるおそれがあるため、ここは注意が必要です。

対象となるマンションの要件

この制度の対象になるには、厚木市が示すマンションの要件と工事の要件を「すべて」満たす必要があります。要点を理事長さま向けにかみ砕くと、次のとおりです。

  1. 新築から20年以上が経過している、10戸以上のマンションであること
  2. 過去に長寿命化工事を1回以上、適切に行っていること(=今回が2回目以降の長寿命化工事にあたること)
  3. 次のいずれかに該当すること
    – 管理計画認定マンションのうち、令和3年9月1日以降に、長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の平均額を、認定基準まで引き上げたもの
    – 厚木市(住宅課住宅政策係)から長期修繕計画に係る助言・指導を受けて、長期修繕計画を作成または見直し、一定の基準に適合することとなったもの
  4. 令和5年4月1日から令和9年3月31日までの間に工事が完了するものであること

少し専門的なので、ポイントだけ。鍵になるのは要件3の「管理計画認定または市の助言・指導」と、「修繕積立金の引き上げ」です。日頃から修繕積立金をきちんと積み、長期修繕計画を整えている管理組合ほど、この税制に手が届きやすい設計になっています。逆に言えば、「2回目の大規模修繕を控えていて、積立金の見直しもこれから」という組合は、今から準備すれば令和9年3月の期限に十分間に合う可能性があります。

ここで一点、用語の補足です。「管理計画認定制度」とは、マンションの管理体制や長期修繕計画、修繕積立金の積み立て状況などが国の基準を満たしているかを市が認定する仕組みです。認定を受けると、この税制の入口に立てるだけでなく、後述する公的融資の金利引き下げなど、複数のメリットにつながります。

減額の中身:戸あたりで考える

減額されるのは、工事が完了した年の翌年度分の固定資産税です。減額される額は固定資産税額の2分の1で、対象は居住部分のみ。1戸あたり床面積100平方メートルまでが対象で、それを超える部分や、店舗・事務所部分、都市計画税は対象外です(出典:厚木市 同ページ)。なお、工事が1月2日から3月31日までに完了した場合は、翌々年度の固定資産税が減額対象になります。

「2分の1」と聞いてもピンとこないかもしれませんので、財布感覚に直してみましょう。仮に1戸あたりの建物分の固定資産税が年7万円のマンションなら、1戸あたり年3万5千円ほどの軽減です。50戸のマンションなら、組合全体で年間150万円規模の負担減になる計算です。1年分とはいえ、決して小さくありません。

申告の流れと注意点

この税制は、工事をすれば自動で適用されるものではありません。長寿命化工事の完了後3か月以内に、厚木市の資産税課(家屋・償却資産係)へ申告する必要があります。

申告には、固定資産税減額申告書のほか、建築士事務所に属する建築士などが発行する「大規模の修繕等証明書」、マンション管理士または建築士が発行する「過去工事証明書」、さらに管理計画認定マンションの場合は「管理計画認定通知書の写し」と「修繕積立金引上証明書」などの添付が求められます。証明書の準備には時間がかかりますので、工事の発注段階から、施工会社や管理会社と段取りを共有しておくことをおすすめします。私はこの「証明書の前さばき」を、いつも工事計画とワンセットでご案内するようにしています。完成してから慌てて集めると、3か月の期限に追われることになるからです。

制度の詳しい要件や証明書については、厚木市住宅課住宅政策係(電話046-225-2330)と、資産税課家屋・償却資産係(電話046-225-2031)が窓口です。

【耐震】予備診断補助と耐震アドバイザー派遣

厚木市は、分譲マンションの耐震化を後押しする制度も用意しています。とくに昭和56年(1981年)以前の旧耐震基準で建てられたマンションは、ここを起点に検討を始めるとよいでしょう。

分譲マンションへの予備診断補助

厚木市では、分譲マンションを対象に「予備診断」の費用を補助しています。予備診断とは、本格的な耐震診断の前に、建物の図面や現況をもとに耐震性のおおよその見当をつける、いわば一次スクリーニングです。補助額は予備診断に要する費用の2分の1で、上限15万円。管理組合の総会または理事会で予備診断の実施を決議していることが条件です(出典:厚木市 分譲マンションへの予備診断補助)。

対象となるのは、昭和56年5月31日以前に建築確認を受けて工事に着手したマンションで、住戸の過半が区分所有者の住居として使われ、住宅部分の床面積が全体の過半を占めるものです。「うちは旧耐震かもしれない」という管理組合は、まずこの予備診断から入るのが、費用面でも合意形成の面でも現実的です。

耐震アドバイザー派遣(無料)

もう一つ、ぜひ知っておいていただきたいのが「耐震アドバイザー派遣」です。市が委嘱した耐震アドバイザー(一級建築士)が管理組合に出向き、建物の耐震性について資料を用いて説明し、保存図書の有無や現場を確認したうえで、そのマンションに適した診断方法を助言してくれます。派遣費用は市が負担するため、管理組合の負担はありません(出典:厚木市 分譲マンションへの耐震アドバイザー派遣)。

理事会で「耐震診断をやるべきか」を議論する前に、まず専門家の話を無料で聞ける——これは合意形成の第一歩として非常に有効です。耐震に関する窓口は、厚木市建築指導課(電話046-225-2434)です。

【資金】住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資

補助や減税で負担を抑えても、大規模修繕にはまとまった初期費用が必要です。修繕積立金だけでは足りないとき、頼りになるのが住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)の「マンション共用部分リフォーム融資」です。これは管理組合が借入主体となって、共用部分の修繕資金を低利・長期で借りられる公的融資です。

注目すべきは、金利の引き下げ制度です。住宅金融支援機構によると、マンション管理計画認定を取得していると融資金利が年0.2%引き下げられます。さらに、耐震改修工事・浸水対策工事・省エネルギー対策工事を行う場合にも年0.2%、「マンションすまい・る債」の残高がある管理組合にはさらに年0.2%の引き下げが用意されています(出典:住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資の融資金利について)。

ここで先ほどの「管理計画認定」が、税制だけでなく融資の金利にも効いてくることに気づいていただけると思います。認定を取っておくことは、いわば複数の制度に共通する「鍵」なのです。借入を検討する管理組合は、金利情報が毎月見直される点も踏まえ、早めに資金計画を立てておくと安心です。

【相談】分譲マンションアドバイザー派遣と管理計画認定制度

最後は、これらすべての土台になる「相談・支援」の制度です。

分譲マンションアドバイザー派遣(無料)

厚木市は、維持管理に課題を抱える管理組合へ、マンション管理士などの専門家をアドバイザーとして無料で派遣しています。対象は、昭和58年5月31日以前に建設されたマンション、改修・建替えを検討しているマンション、長期修繕計画の作成・見直しを検討しているマンション、大規模修繕工事を予定しているマンション、組合員の高齢化などで管理機能が低下しているマンション、自主管理のマンションなど。利用は年度内2回までです(出典:厚木市 厚木市分譲マンションアドバイザー派遣【無料】)。

「大規模修繕を予定している」「長期修繕計画を見直したい」——まさに今、この記事をお読みの管理組合に当てはまる対象です。第三者の専門家に無料で相談できる機会は、ぜひ活用していただきたいと思います。なお、神奈川県も「マンションアドバイザー派遣事業」として、マンション管理士・建築士等を無料派遣しています(出典:神奈川県 マンションアドバイザー派遣事業)。市と県、二つの相談ルートがあると考えてください。

管理計画認定制度

そして、ここまで何度も登場した「管理計画認定制度」です。これは、長期修繕計画や修繕積立金、管理組合の運営体制などが国の基準を満たしているマンションを、市が認定する仕組みです。認定を受けると、適正に管理されたマンションとして市場での評価が高まるだけでなく、先ほどの固定資産税の減額や、住宅金融支援機構の融資金利の引き下げといった具体的なメリットにつながります(出典:厚木市 マンションの管理計画認定制度について)。

認定の申請前には、公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」で、国の基準に適合しているかを事前確認する流れになります。窓口は厚木市住宅課住宅政策係(電話046-225-2330)です。

制度は「順番」が命:管理計画認定を起点に組み立てる

ここまで個別に見てきた制度を、どう組み合わせるか。私が現場でお伝えしている考え方は、ひとつだけです。「管理計画認定」を起点に据えること。

なぜなら、固定資産税の2分の1減額も、融資金利の0.2%引き下げも、入口は管理計画認定(または市の助言・指導による長期修繕計画の適正化)だからです。工事の中身を先に決めてから「使える制度はないか」と探すと、認定や修繕積立金の引き上げが間に合わず、本来取れたはずの優遇を逃すことがあります。順番としては、(1)アドバイザー派遣で現状を診てもらい、(2)長期修繕計画と修繕積立金を整え、(3)管理計画認定を取り、(4)そのうえで工事の設計・発注と税・融資の手続きを並走させる——この流れが、もっとも無駄がありません。

時間がかかる手続きほど、前倒しが効きます。「次の大規模修繕は2年後」という組合こそ、今が制度準備のベストタイミングです。

工法の選択が、コストと住民負担を左右する

制度で負担を抑えたら、次は工事そのものの最適化です。ここは私たちの本業ですので、現場の知見を少しだけ。

大規模修繕の費用のうち、意外に大きいのが「足場」の仮設費用です。建物をぐるりと囲う仮設足場(建物の外周に組む作業用の足場)は、組み立て・解体・リース費だけで全体の1〜2割を占めることもあります。そこで近年広がっているのが、ロープアクセス工法です。これは産業用ロープで作業員が壁面を上下しながら施工する「無足場工法」で、足場費の削減、工期の短縮、そして足場がないことによる防犯面・生活面での住民負担の軽減が期待できます。

一方で、すべての建物にロープアクセスが最適なわけではありません。低層で複雑な形状の建物や、広い面積を一度に仕上げたい工事では、従来の足場のほうが効率的なこともあります。そこで私たちは、足場・ロープアクセス・両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物の形状・高さ・劣化状況・予算に応じて最適な組み合わせをご提案しています。3つの工法を自前で提案できる会社は、日本でも多くありません。制度で「入口」を、工法で「中身」を最適化する——この両輪で、管理組合の負担は大きく変わります。

実務の段取り表:いつ、何を、どこへ

「順番が大事」と言われても、具体的な時間軸が見えないと動きづらいものです。次の大規模修繕を2年後に控えた管理組合を例に、おおまかな段取りを整理してみました。あくまでモデルケースですが、検討の出発点にしてください。

時期の目安 やること 窓口・相手
2年前 アドバイザー派遣で現状把握、建物の劣化と耐震の見当をつける 厚木市 住宅課/建築指導課
1年半前 長期修繕計画の見直し、修繕積立金の水準を点検・必要なら引き上げ決議 管理組合(総会)・管理会社
1年前 管理計画認定の事前確認・申請、工事の基本計画と工法の比較検討 マンション管理センター/厚木市 住宅課・施工会社
半年前 施工会社の選定、資金計画(自己資金+共用部分リフォーム融資)の確定 住宅金融支援機構・施工会社
着工〜完了 大規模修繕工事の実施、各種証明書の準備を並行 施工会社・建築士・マンション管理士
完了後3か月以内 固定資産税減額の申告 厚木市 資産税課

ご覧のとおり、税の優遇を受けるための「管理計画認定」や「修繕積立金の引き上げ」は、工事のかなり前から動き出す必要があります。ここを後回しにすると、工事は終わったのに減額が受けられない、という残念な結果になりかねません。

よくあるご質問

Q. 旧耐震ではない、比較的新しいマンションでも使える制度はありますか。
A. はい。固定資産税の長寿命化促進税制は、新築20年以上で過去に長寿命化工事を1回以上行っているマンションが対象です。築20年を超えていれば、旧耐震・新耐震を問わず検討できます。耐震の予備診断補助は旧耐震(昭和56年5月31日以前)が主な対象ですが、管理計画認定や共用部分リフォーム融資、アドバイザー派遣は築年数を問わず活用できます。

Q. 自主管理(管理会社に委託していない)のマンションでも相談できますか。
A. できます。厚木市の分譲マンションアドバイザー派遣は、自主管理のマンションも対象に明記されています。管理会社がいない分、第三者の専門家に相談する価値はむしろ大きいといえます。

Q. 固定資産税の減額は、管理組合がまとめて申請するのですか。
A. 減額の対象は各区分所有者の固定資産税ですが、申告手続きでは管理組合が証明書類の準備の中心的な役割を担います。証明書の取得には建築士やマンション管理士の関与が必要なため、工事の発注段階から管理組合・施工会社・専門家が連携して進めるのが現実的です。

Q. 補助や融資は、どのくらい早めに動けばよいですか。
A. 補助制度は予算枠があり、受付が先着順・期間限定のものもあります。融資の金利も毎月見直されます。「やると決めてから窓口へ」では間に合わないことがあるため、検討段階で一度、各窓口に問い合わせておくことを強くおすすめします。

まとめ:厚木の管理組合が、今日からできること

厚木市の分譲マンション管理組合には、固定資産税の2分の1減額、予備診断費の補助、無料の耐震アドバイザー派遣、低利の公的融資、そして無料の専門家派遣という、現実的な支援がそろっています。共通する鍵は「管理計画認定」と「長期修繕計画・修繕積立金の整備」です。

まずは、市の分譲マンションアドバイザー派遣(無料・年2回)に申し込み、自分たちの管理組合がどの制度に手が届くのかを棚卸しすることから始めてみてください。制度の地図を広げ、認定を取り、工法でコストを締める。この順番で進めれば、大規模修繕は「重い宿題」から「資産価値を守る投資」へと姿を変えます。私たちも、現場の立場から一緒に考えてまいります。


参考・出典(2026年6月時点)

※本記事は2026年6月時点の公開情報をもとに作成しています。各制度には受付期間・予算枠・要件があり、内容は変更される場合があります。申請前に必ず各窓口で最新情報をご確認ください。

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横須賀市のマンション補助金・税制優遇2026|大規模修繕で管理組合が使える制度を本間社長が解説

「うちのマンションも、そろそろ2回目の大規模修繕だ」——横須賀市内の管理組合の理事長さまから、最近こうしたご相談を立て続けにいただきます。築20年を超えると、外壁の塗り替えや屋上防水、給排水管の更新など、まとまった出費が一気に押し寄せます。修繕積立金は足りるのか、住民の合意は取れるのか。理事長さまの肩には、重い宿題がのしかかります。

私は大規模修繕の現場で20年近く、足場の上とロープの先から建物を見てきました。そのなかで痛感しているのは、「使える制度を知らないまま工事をしてしまう管理組合が、本当に多い」ということです。横須賀市には、分譲マンションの管理組合が活用できる税の優遇や補助、低利の融資、そして無料の相談窓口がそろっています。知っているか知らないかで、組合の負担は数十万円から、規模によってはそれ以上変わってきます。

この記事では、横須賀市の管理組合が2026年度(令和8年度)に使える制度を、現場目線で整理しました。専門用語にはそのつど補足を入れますので、建築にお詳しくない理事長さまも、最後までお付き合いください。ここからが本題です。

横須賀市のマンション管理組合が使える支援制度【2026年度・一覧】

まず全体像を押さえましょう。横須賀市の分譲マンション管理組合が、大規模修繕や維持管理の場面で活用できる主な制度は、大きく「税」「耐震」「資金」「相談」の4つに分けられます。

区分 制度名 概要 窓口
税の優遇 マンション長寿命化促進税制 一定要件を満たす長寿命化工事で固定資産税が2分の1に減額 横須賀市 資産税課
耐震の補助 マンション耐震診断補助 予備診断・耐震診断の費用の一部を補助 横須賀市 建築指導課
資金の調達 マンション共用部分リフォーム融資 管理組合向けの低利・長期の公的融資(住宅金融支援機構) 住宅金融支援機構
相談・支援 管理計画認定制度/相談会・専門家派遣 管理の適正化を後押しする認定や無料相談 横須賀市 まちなみ景観課 ほか

ここで強調しておきたいのは、これらは「どれか一つを選ぶ」ものではなく、組み合わせて使う発想が大切だということです。私はいつも理事長さまに、「工事の中身を決める前に、まず使える制度の地図を広げてください」とお伝えしています。順番が逆になると、せっかくの優遇を取り逃すことがあるからです。理由は記事の後半でご説明します。

なお、各制度には年度ごとの受付期間や予算枠、細かな要件があります。本記事の数値は2026年6月時点で横須賀市・国の公式情報を確認したものですが、申請前には必ず各窓口の最新情報をご確認ください。

【税】マンション長寿命化促進税制:固定資産税が2分の1に

最初にご紹介したいのが、令和5年度の税制改正で創設された「マンション長寿命化促進税制」です。これは、一定の要件を満たしたうえで長寿命化工事を実施したマンションについて、翌年度の建物部分の固定資産税を2分の1に減額する制度です(出典:横須賀市 大規模の修繕等が行われたマンションに係る固定資産税の減額制度)。

ここでいう「長寿命化工事」とは、次の3つを「すべて」実施するものを指します。

  • 外壁について行う修繕・模様替(外壁塗装等工事)
  • 直接外気に開放されている廊下・バルコニーなどの防水措置(床防水工事)
  • 屋上・屋根・ひさしなどの防水措置(屋根防水工事)

つまり、外壁・床・屋根の3点セットの工事です。大規模修繕の王道メニューそのものですから、多くの管理組合にとって、ふだんの修繕計画の延長線上にある話だとお考えください。

対象となるマンションの7要件

この制度の対象になるには、横須賀市が示す(1)〜(7)の要件を「すべて」満たす必要があります。要点を理事長さま向けにかみ砕くと、次のとおりです。

  1. 管理計画認定マンションであること(後述の認定制度で認定を受けたマンション。または、市の助言・指導を受けて長期修繕計画を見直し、国の基準に適合したマンション)
  2. 居住用の専有部分があること(住まいとして使われている部分が一定以上あること)
  3. 新築の日から20年以上が経過していること
  4. 総戸数が10戸以上であること
  5. 過去に長寿命化工事を1度以上行っていること
  6. 令和5年4月1日から令和9年3月31日の間に、2回目以降の長寿命化工事を完了していること
  7. 令和3年9月1日以降に、修繕積立金の平均額を認定基準未満から基準以上へ引き上げていること

少し専門的なので、ポイントだけ。鍵になるのは要件1の「管理計画認定」と、要件7の「修繕積立金の引き上げ」です。日頃から修繕積立金をきちんと積み、長期修繕計画を整えている管理組合ほど、この税制に手が届きやすい設計になっています。逆に言えば、「2回目の大規模修繕を控えていて、積立金の見直しもこれから」という組合は、今から準備すれば十分間に合う可能性があります。

減額の中身:戸あたりで考える

減額されるのは、工事完了年の翌年1月1日を基準日とする課税年度分です。たとえば工事完了が令和7年中であれば、令和8年度の固定資産税が対象になります。減額される額は固定資産税額の2分の1。対象範囲は1戸あたり床面積100平方メートル(共用部分を含む)までで、それを超える部分や、土地、都市計画税は対象外です(出典:横須賀市 同上ページ)。

「2分の1」と聞いてもピンとこないかもしれませんので、財布感覚に直してみましょう。仮に1戸あたりの建物分の固定資産税が年7万円のマンションなら、1戸あたり年3万5千円ほどの軽減です。50戸のマンションなら、組合全体で年間150万円規模の負担減になる計算です。1年分とはいえ、決して小さくありません。

申告の流れと注意点

この税制は、工事をすれば自動で適用されるものではありません。長寿命化工事を完了した日から3か月以内に、横須賀市の資産税課へ申告する必要があります。申告は各区分所有者のほか、管理組合等の代表者がまとめて行うこともできます。

申告には、市が発行する管理計画の認定通知書のほか、建築士やマンション管理士などが証明する「過去工事証明書」「大規模の修繕等証明書」「修繕積立金引上証明書」などの添付が求められます。証明書の準備には時間がかかりますので、工事の発注段階から、施工会社や管理会社と段取りを共有しておくことをおすすめします。私はこの「証明書の前さばき」を、いつも工事計画とワンセットでご案内するようにしています。完成してから慌てて集めると、3か月の期限に追われることになるからです。

【耐震】分譲マンション耐震診断補助:まず「現状を知る」

次は耐震です。横須賀市には、分譲マンションの耐震診断費用の一部を補助する制度があります。「うちは新しいから関係ない」と思われがちですが、対象は昭和56年(1981年)5月末日以前に建築確認を得て着工した、いわゆる旧耐震基準のマンションです。築40年を超える物件をお持ちの組合は、ぜひ確認してください(出典:横須賀市 住宅の耐震診断補強工事補助事業)。

対象と補助額

補助は「予備診断」と「耐震診断」の2段階です。

段階 補助率 上限額
予備診断 診断費用(税抜)の3分の2 1棟につき12万円
耐震診断 診断費用(税抜)の半額 1住戸あたり3万円

予備診断は、現地の目視調査と設計図・構造計算書をもとに、壁の量などから建物の耐震性を簡易に評価するものです。ここで「倒壊の危険がある」と判断された場合に限り、より詳細な耐震診断へ進めます。

耐震診断の補助は「1住戸あたり上限3万円」という戸数連動型です。市の例示では、20戸のマンションで一般診断費用が1住戸6万円(合計120万円)の場合、60万円が補助されるとされています。診断という最初の一歩のハードルを、横須賀市がしっかり下げてくれているわけです。

このほか、耐震診断の結果、補強工事を行わない戸建住宅向けには、耐震シェルターや防災ベッドの設置費を半額・上限20万円で補助する制度もあります。マンションの管理組合の方の直接の対象ではありませんが、区分所有者ご自身の戸建てなどで参考になる場合があります。

「総会決議」と「前年度の事前相談」がカギ

ここで管理組合として外せない要件が2つあります。1つは、予備診断または耐震診断を実施することが、管理組合の総会で決議されていること。もう1つは、診断を行う前年度中に、市へ事前相談を行うことです。

この「前年度中の事前相談」という条件は、見落とされがちです。やりたいと思った年度に思い立って動いても、その年度の補助には間に合わない可能性があります。耐震診断をお考えなら、総会の議題に上げる前の段階でも構いませんので、早めに横須賀市建築指導課(電話046-822-8319)へ一報を入れておくのが安全です。

なお、令和8年度の耐震関係補助は、受付に期限と定員があります。市の案内では、申込締切は12月28日(月曜日)とされ、締切前でも定員に達した時点で受付を終了するとされています(出典:横須賀市 同上ページ)。先着順という性格上、早めの動き出しが結果を左右します。

【資金】住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」

制度を使っても、大規模修繕には相応の自己資金が必要です。積立金が計画どおりに貯まっていればよいのですが、現実には「2回目の修繕で積立金が足りない」という組合は少なくありません。そんなときの選択肢が、独立行政法人住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」、愛称「マンションすまい・る融資」です(出典:住宅金融支援機構 マンションすまい・る融資(管理組合申込みの場合))。

これは、管理組合がマンションの共用部分の工事を行う際に利用できる、公的な低利・長期のリフォームローンです。外壁・防水といった修繕工事はもちろん、専門家による調査設計、耐震診断、長期修繕計画の作成に要する費用のみでも融資の対象になり得ます。民間の金融機関では借りにくい「組合名義」での借入ができる点が、大きな特徴です。

利用にあたっては、管理規約に組合の組合員・業務・役員・総会・理事会・会計に関する定めがあること、そして総会の決議で、共用部分の工事を行うこと・機構から借り入れること・返済に修繕積立金を充てることなどが決議されていることが必要です。融資金利は毎月見直される変動制で、2026年4月時点で機構の承認を受けている保証機関は、公益財団法人マンション管理センター、一般財団法人住宅改良開発公社、公益社団法人全国市街地再開発協会の3つとされています。

私は、融資を「借金だから避ける」と一律に考えるのは、もったいないと思っています。工事を先延ばしにすると、劣化が進んで結局は費用がかさむことが少なくありません。低利の公的融資で適切なタイミングに工事を行い、資産価値を守るほうが、長い目で見て組合の利益になるケースもあります。借りるかどうかは別として、選択肢として知っておくだけでも、総会での議論の幅が広がります。

【相談】横須賀市と管理組合ネットワークの無料サポート

「制度は分かったが、誰に相談すればいいのか」——これが理事長さまの本音だと思います。横須賀市は、令和6年3月に「横須賀市マンション管理適正化推進計画」を策定し、管理組合への情報提供や相談機会の提供に力を入れています(出典:横須賀市 マンション関連施策)。

具体的には、次のような無料の支援が用意されています。

  • マンション相談会(定期・出張):管理組合役員や区分所有者を対象に、運営や修繕の悩みを専門家に相談できます。いずれも予約制です。
  • 新任役員研修会:管理組合の新任役員向けに、適正管理や組合運営の研修を実施しています。
  • まちづくりアドバイザー派遣:建て替えを検討している管理組合へ、専門家を派遣して相談に応じます。

これらの予約・問い合わせ窓口は、NPO法人よこすかマンション管理組合ネットワーク(電話046-824-8133)です。理事になったばかりで右も左も分からないという方こそ、まずここに電話してみてください。

管理計画認定制度——税制とつながる「適正管理のお墨付き」

相談支援の中でも、特に押さえておきたいのが「マンション管理計画認定制度」です。これは、適切な管理が行われているマンションの管理計画を、市が認定する制度で、令和4年4月に始まりました。横須賀市でも市内の分譲マンションが活用できます。

この認定は、単なる「お墨付き」ではありません。先にご説明した固定資産税の長寿命化促進税制は、原則として「管理計画認定マンションであること」が要件になっています。つまり、日頃の管理体制を整えて認定を取っておくことが、将来の税の優遇につながるわけです。認定の相談は、横須賀市まちなみ景観課(電話046-822-8077)が窓口になっています。

制度を「組み合わせて」使う:大規模修繕の進め方

ここまで4つの区分をご紹介してきました。冒頭で「組み合わせて使う発想が大切」と申し上げた理由を、ここで回収します。

私の経験上、もっとも残念なのは、工事の中身と発注先を先に決めてしまい、後から「実は認定を取っておけば税が安くなった」「前年度に事前相談していれば耐震診断の補助が使えた」と気づくパターンです。制度には、認定の取得や総会決議、事前相談、証明書の準備など、工事の「前」に動いておくべき手続きが含まれています。だからこそ、長期修繕計画の見直しの段階で、税・耐震・資金・相談の4つを同じテーブルに並べて検討することをおすすめしています。

そしてもう一つ、工事の「やり方」そのものでも、組合の負担は大きく変わります。横須賀のような海風の強い土地では、外壁や鉄部の傷みが内陸より早く進みます。以前、坂の上にある高層マンションで、足場を全面に架けると周辺道路を長期間ふさいでしまうという物件を担当したことがあります。住民の皆さまの駐車場の出入りにも影響が出る計画でした。そこで一部をロープアクセス工法——産業用ロープで職人が壁面を降りながら作業する無足場の工法——に切り替え、足場と組み合わせる「ハイブリッド工法」をご提案しました。結果として足場の架設範囲を絞り込め、工期と仮設費の双方を圧縮できました。住民の方からは「生活への影響が思ったより少なくて助かった」とお声をいただいたのを、今でも覚えています。

足場が向く建物もあれば、ロープアクセスが向く建物もあります。私はこの見極めを、いつも建物ごとに行うようにしています。補助や税制で工事費の一部を抑えつつ、工法の選び方でも仮設費と工期を最適化する。この両輪がそろって初めて、管理組合にとって本当に納得感のある大規模修繕になると考えています。

3つの工法、それぞれの向き・不向き

工法の違いは、管理組合のコストと住民負担に直結します。一般論として整理すると、次のような特徴があります。あくまで傾向であって、最終的には現地調査で判断する点はご了承ください。

工法 仮設費の目安 向いている建物 留意点
通常足場工法 全面に架設するため大きい 中低層、複雑な形状、全面的な打診・補修が必要な建物 架設・解体に時間がかかり、敷地や周辺道路を占有する
ロープアクセス工法(無足場) 足場が不要で抑えやすい 高層、足場の架設が難しい建物、部分補修が中心の建物 一度に大人数が同時施工しにくい、強風時は作業を中断
ハイブリッド工法 足場範囲を絞れるため中間 大規模・複雑で、部位ごとに最適化したい建物 工程設計に専門的な知見が必要

ロープアクセス工法は、足場を組まないぶん仮設費を抑えやすく、足場の死角になりがちな箇所にも職人が直接アプローチできます。一方で、全面打診のように一度に広い面を扱う作業は、足場のほうが効率的なこともあります。だからこそ、どちらか一方に決め打ちせず、建物の高さ・形状・劣化状況に応じて使い分けることが、結果的にもっとも費用対効果の高い選択につながります。私はこの「使い分け」を、ワンセットでご提案するようにしています。

「修繕積立金の引き上げ」を総会で通すために

ここまで読んで、「制度の入り口がどれも修繕積立金や管理計画の整備にある」とお気づきの方も多いと思います。実際、固定資産税の長寿命化促進税制は積立金の引き上げが要件の一つですし、管理計画認定でも積立金の水準が問われます。土台になるのは、やはり日頃の積立金です。

とはいえ、積立金の値上げを総会で通すのは、理事長さまにとって最も気の重い議題でしょう。私が現場で見てきたなかで、住民の合意が得やすかったのは、「値上げの必要性」を感情ではなく数字と段取りで示せた組合でした。具体的には、長期修繕計画にもとづく将来の不足額を「戸あたり・月あたり」に換算して見せること、そして「値上げによって固定資産税の優遇や公的融資という出口につながる」と、メリットまで含めて説明することです。

積み立ての手段としては、住宅金融支援機構の「マンションすまい・る債」という、管理組合向けの積立債券の仕組みもあります。修繕積立金を計画的に育てる選択肢の一つとして、融資(出口)とあわせて知っておくと、総会での説明に厚みが出ます。正直に申し上げます。制度を使う管理組合と使わない管理組合の差は、特別な知識量ではなく、「早めに、順番どおりに動いたかどうか」だけのことが、本当に多いのです。

海沿いの横須賀ならでは:塩害と防水の早期点検

最後に、横須賀という土地ならではの注意点を一つ。海に開けた立地のマンションは、潮風に含まれる塩分の影響で、鉄部のサビや外壁・タイルの劣化が内陸の物件より進みやすい傾向があります。バルコニーの手すり、共用廊下の鉄部、屋上の防水層など、塩害の影響を受けやすい箇所は、長期修繕計画の周期を待たずに状態が悪化していることが少なくありません。

私が横須賀の現場でよくお伝えするのは、「補助や税制を使えるタイミングに合わせて工事を組むのも大切ですが、それ以上に、劣化を早期に見つけて手を打つことが、結局はいちばんの節約になります」ということです。小さなひび割れや浮きのうちに補修できれば、ロープアクセス工法で部分的に、低コストで対応できることもあります。逆に放置して躯体(建物の構造体)まで傷みが進むと、大がかりな工事と費用が必要になりかねません。総会のシーズンには、ぜひ「うちのマンションの今の状態」を専門家の目で点検することも、議題の一つに加えてみてください。

よくある質問(横須賀市のマンション補助・税制)

最後に、理事長さまからよくいただく質問にお答えします。

Q. 築20年で、これから2回目の大規模修繕です。何から動けばいいですか。
A. まずは長期修繕計画と修繕積立金の状態を確認し、管理計画認定の取得を検討してください。認定は固定資産税の長寿命化促進税制の前提になります。並行して、横須賀市まちなみ景観課やマンション管理組合ネットワークの無料相談を活用すると、優先順位が整理できます。

Q. 旧耐震のマンションです。耐震診断の補助はいつまでに動けばいいですか。
A. 「診断を行う前年度中の事前相談」と「総会決議」が要件です。令和8年度の受付には締切と定員があり、定員に達すると締切前でも終了します。診断をお考えなら、できるだけ早く建築指導課へ事前相談されることをおすすめします。

Q. 積立金が足りません。工事はあきらめるしかないですか。
A. 必ずしもそうとは限りません。住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」は、管理組合名義で借りられる公的融資です。総会決議などの要件はありますが、選択肢として検討する価値はあります。

Q. 補助や税制の金額は、ここに書いてある通りで確定ですか。
A. 本記事は2026年6月時点の公式情報に基づいていますが、補助率・上限額・受付期間・要件は年度や予算の状況で変わります。申請前には必ず各窓口の最新情報をご確認ください。

まとめ:まず動くべき3つのこと

横須賀市の管理組合が、大規模修繕を前に動くべきことを3つに絞ります。

  1. 管理計画認定と修繕積立金の状態を確認する——固定資産税の優遇につながる土台です。
  2. 旧耐震マンションは、耐震診断の事前相談を前年度中に——先着順・定員ありの制度です。
  3. 資金が不安なら、公的融資という選択肢を総会の議論に乗せる——工事の先延ばしが、かえって費用を膨らませることがあります。

制度は、知って、段取りよく使ってこそ価値が出ます。とはいえ、理事長さまが本業のかたわら、すべてを把握して動くのは大変なことだと、私はよく分かっています。横須賀市内のマンションで「うちはどの制度が使えるのか」「どの工法がコストと住民負担のバランスがいいのか」と迷われたら、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問い合わせはこちらのフォームから承っています。

次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

出典・参考資料

※本記事の情報は2026年6月12日時点で確認したものです。制度内容・補助額・受付期間は変更される場合があります。申請にあたっては、必ず各窓口・公式サイトの最新情報をご確認ください。

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大規模修繕の施工会社が「倒産」する時代へ——塗装・防水工事業者の倒産が2000年以降最多ペース、オーナー・管理組合が今すぐ確認すべき発注先の見極め方【2026年6月】

工事が始まって、足場が建って、養生シートが張られた。あとは仕上がりを待つだけ——そう思っていた矢先に、施工会社から「会社をたたむことになりました」と連絡が入る。前払いした工事代金はどうなるのか。途中で止まった工事は誰が引き継ぐのか。10年保証のはずだったアフター保証は、もう紙切れなのか。

正直に申し上げます。これは、私が大げさに脅しているのではありません。2026年に入ってから、塗装・防水工事業者の倒産が「2000年以降で最も多いペース」で進んでいます。大規模修繕を控えた管理組合の理事長さま、そして収益物件を持つオーナーさまにとって、「どの工法で、いくらで直すか」と同じくらい——いや、それ以上に「どの会社に頼むか」が、いま資産を守れるかどうかの分かれ目になりつつあります。

私は大規模修繕の現場で20年近くやってきました。足場を組む工事も、ロープアクセス(産業用ロープで宙吊りになり、足場を架けずに外壁や屋上を施工する無足場工法)の工事も、その両方を組み合わせたハイブリッド工法も手がけています。その立場から、今日は「施工会社が消えるリスク」という、これまであまり正面から語られてこなかったテーマを、データと現場の両面からお話しします。

いま何が起きているのか——塗装・防水工事の倒産「80件」という数字

まず、事実から確認します。

帝国データバンク(TDB)が2026年6月8日に公表した調査によると、2026年1〜5月に発生した「塗装工事」と「防水工事」の倒産は合計80件。内訳は塗装工事が56件、防水工事が24件でした(出典:帝国データバンク「『塗装・防水工事』の倒産動向(2026年 1-5月)」)。

この80件という数字が、なぜ深刻なのか。理由は二つあります。

一つは、通年の倒産件数が「2000年以降で最多」を記録した2025年(1〜5月で87件)に次ぐペースで推移していること。つまり、過去四半世紀でいちばん倒産が多かった年に、肩を並べる勢いで増えているということです。

もう一つは、倒産した会社の顔ぶれです。負債額別で見ると、1億円未満の倒産が69件と全体の約86.3%を占めました(出典:帝国データバンク プレスリリース(PR TIMES))。これは、街の塗装屋さん・防水屋さんといった、地域に根ざした小規模事業者が真っ先に倒れているという意味です。塗装・防水は、マンションやビルの大規模修繕で必ず発生する工種です。その担い手が細っていくということは、いざ工事をしようと思ったときに「頼める会社が見つからない」「見つかっても割高になる」という形で、発注する側にも跳ね返ってきます。

別の調査会社・東京商工リサーチ(TSR)も同様の警鐘を鳴らしています。塗装工事業の倒産は2025年に143件と、23年ぶりの高水準に達しました(出典:東京商工リサーチ「『塗装工事業』の倒産143件 23年ぶり高水準」)。一過性の話ではなく、業界全体が構造的に揺れている、と捉えるべき局面です。

私は、この数字を最初に見たとき、現場で一緒に汗を流してきた職人さんたちの顔が浮かびました。腕は確かなのに、経営の体力が続かず店じまいする——現場で20年やってきて、私がいちばん悔しい思いをするのは、こういうときです。

なぜ倒産が増えているのか——「中東情勢」から始まる連鎖

倒産が増えている背景には、いくつもの要因が重なっています。順番に解きほぐします。

引き金は塗料・防水材の不足と値上がり

直接の引き金は、塗料と防水材の調達難です。中東情勢の悪化を起点に、塗料や防水材の原料となるナフサ(原油を精製してできる石油化学製品の基礎原料)の供給が不安定になりました。

塗装・防水工事は、ナフサ由来の溶剤(シンナーなど)に大きく依存しています。さらに、養生に使う保護シートや塗料を入れる容器といった副資材も、原料をたどればナフサに行き着く。つまり、工事の本丸も脇役も、まとめて値上がり・納期遅延の波に飲み込まれている状態です。

TDBも「塗料・防水材の値上げ幅が不透明で工事の見積もりが出しづらい」「資材調達の遅れで工期に遅延が生じている」ケースが出ていると指摘しています。私の現場でも、5月の連休前あたりから「いつもの材料がいつ入るか読めない」という声が職人さんから上がるようになりました。今後、ナフサ製品の供給不安が解消されなければ、倒産件数は2025年を上回り、2000年以降の最多を更新する可能性もある——TDBはそこまで踏み込んで警告しています。

値上げを「すぐに転嫁できない」小さな会社が倒れる

材料が上がっても、それを工事代金にすぐ反映できれば、会社は持ちこたえられます。問題は、小規模な専門工事会社ほど、価格転嫁の交渉力が弱いことです。

元請けから「この金額でやってくれ」と言われれば、断れば次の仕事が来ないかもしれない。だから無理を承知で受ける。材料費は上がっているのに受注単価は据え置き——この差が、薄い利益を食いつぶしていきます。負債1億円未満の小規模事業者が倒産の86.3%を占めたという事実は、まさにこの構造を映しています。建設業は、元請けから一次下請け、二次下請けへと仕事が流れる重層構造になっており、下にいくほど価格交渉の余地が小さくなる。倒産の波が「いちばん下」から来ているのは、偶然ではありません。

人件費(労務単価)の上昇も同時進行

追い打ちをかけているのが、人件費の上昇です。国土交通省が定める公共工事設計労務単価は、令和8年(2026年)3月適用分で全国全職種の加重平均が25,834円となり、初めて2万5千円を突破しました。平成25年度の改定から14年連続の上昇で、今回は前年度比4.5%の引き上げです(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」)。

職人さんの待遇が改善されるのは、業界の未来にとって良いことです。私も賛成です。ただ経営の現実として、材料費と人件費が同時に上がるなかで受注単価だけが上がらなければ、体力のない会社から順に資金繰りが行き詰まる。倒産の増加は、その帰結でもあるのです。

建設業の「担い手」はそもそも減り続けてきた

もう一段、大きな構図も押さえておきます。

国土交通省の建設業許可業者数調査によると、令和6年度末(2025年3月末)時点の建設業許可業者数は483,700業者で、2年連続の増加でした。一見、回復しているように見えます。しかし、業者数が最も多かった平成12年3月末と比べると、約11万7千業者(約19.5%)少ない水準にとどまっています。令和6年度の1年間だけでも、7,252業者が廃業の届出を出しています(出典:国土交通省「全国の建設業許可業者数は2年連続で増加〜令和6年度末の建設業許可業者数調査の結果〜」)。

加えて、現場で働く職人さんの高齢化も進んでいます。私の周りでも、腕のいい職人さんほど年齢が上がり、若い担い手への技能の引き継ぎが追いついていない。倒産で会社が消えるということは、その会社が抱えていた技術や職人さんのネットワークごと、地域から失われるということでもあります。一度失われた施工力は、すぐには戻りません。

つまり、この四半世紀で「工事を担う会社の母数」そのものが細ってきた。そこに今回の倒産ラッシュが重なります。母数が減り、そのなかでも経営体力のある会社とない会社の二極化が進む——大規模修繕を発注する側から見れば、「頼める会社」を選ぶ目が、これまで以上に問われる時代になった、ということです。

オーナー・管理組合に降りかかる「3つの実害」

ここからが本題です。施工会社が工事の途中で倒産すると、発注した管理組合やオーナーには、具体的にどんな実害が及ぶのか。私が現場で見聞きしてきた範囲で、大きく3つあります。

実害1:工事が止まり、足場が宙に浮く

最も困るのが、工事の中断です。足場を架けたまま施工会社が消えると、その足場の解体も、残りの工事も、宙に浮きます。新しい会社を探して引き継いでもらうにも、「前の会社がどこまでやったのか」「下地はどう処理されているのか」が分からなければ、引き受ける側もリスクを取れません。結果として、再見積もり・再契約に数カ月かかり、その間ずっと足場が建ったまま、というケースもあります。

居住者にとっては、洗濯物も干せず、防犯上も不安な状態が長引く。賃貸オーナーにとっては、入居者からのクレームや、最悪の場合は退去にもつながりかねません。

実害2:前払い金・出来高の回収が難しくなる

工事代金の一部を前払いしていた場合、倒産した会社からその回収はほぼ望めません。出来高(実際に終わった工事の分)を超えて支払っていた金額は、原則として戻ってこないと考えるのが現実的です。

私はいつも理事長さまに、「支払いは出来高に応じて、検査を挟みながら段階的に」とお伝えしています。契約のときに支払い条件をどう設計するかで、いざというときの傷の深さがまったく変わってくるからです。

実害3:アフター保証・瑕疵担保が「消える」

見落とされがちですが、いちばん長く効いてくるのがこれです。大規模修繕では、防水や塗装に5年・10年といった保証を付けるのが一般的です。ところが、保証を出した会社が倒産してしまえば、その保証は実質的に履行されません。数年後に屋上から雨漏りが起きても、「保証してくれるはずの会社が、もう存在しない」。

これは、工事が無事に終わったケースでも起こり得ます。だからこそ「無事に完成したから安心」ではなく、「10年後まで責任を取り続けられる会社か」という視点が要るのです。

現場で見た、ある「引き継ぎ工事」の話

少し具体的な話をします。物件が特定されないよう細部はぼかしますが、私が以前、別の会社が途中で立ち行かなくなった現場の引き継ぎを相談されたことがありました。

足場はすでに建っていました。外壁の下地補修まではどうにか終わっているように見えたのですが、いざ調べてみると、ひび割れの補修(シーリングの打ち替えなど)が一部しか終わっておらず、しかも、どこをどう処理したのかの記録がほとんど残っていない。引き継ぐ側からすると、「見えている範囲はやり直す前提で見積もるしかない」状態でした。結果として、管理組合は当初の予定より工期も費用も膨らみ、居住者は半年近く、足場と養生シートに囲まれた暮らしを強いられました。

このとき私が痛感したのは、「安いから」という理由だけで会社を選ぶと、いちばん高くつくのは発注したオーナー・管理組合の側だ、ということです。最初の見積もりが多少高くても、最後まで責任を持ってやり切れる会社に頼むほうが、トータルでは確実に安く済む。これは精神論ではなく、私が現場で何度も見てきた事実です。

発注先をどう見極めるか——理事会で使えるチェックの観点

では、倒産リスクの高い会社をどう避け、長く付き合える会社をどう選ぶか。専門的な財務分析まではできなくても、理事会レベルで確認できる観点があります。ここは表にまとめます。

確認の観点 具体的に見るところ なぜ大事か
経営の安定性 建設業許可の有無と業歴、決算書の提示可否 許可は5年ごとの更新制。業歴が長く決算を開示できる会社は一定の体力がある
施工体制 自社施工か、下請けへの丸投げか 重層下請けが深いほど、どこか一社の倒産で全体が止まりやすい
資材の調達力 塗料・防水材の仕入れルート、メーカーとの取引 調達難の局面で「材料が入らず工事が止まる」リスクを左右する
保証スキーム 保証の主体は誰か、メーカー保証や第三者保証の有無 施工会社が倒れても、メーカー保証や保証会社が残れば被害を抑えられる
支払い条件 出来高払いに応じるか、過大な前払いを求めないか 健全な会社ほど無理な前払いを求めない

すべてを完璧に調べる必要はありません。ただ、「この5つを質問してみて、誠実に答えてくれるか」だけでも、会社の姿勢はかなり見えてきます。逆に、相見積もりで極端に安い金額を出してきた会社には、「なぜこの値段でできるのか」を必ず確認してください。材料費も人件費も上がっているなかで不自然に安い見積もりは、どこかに無理がある——その無理が、数年後の倒産や手抜きという形で跳ね返ってくることがあるからです。

工法の選択が、施工会社の「健全さ」にもつながる理由

ここで、工法の話を絡めます。一見、倒産リスクと工法は無関係に思えるかもしれません。しかし、私の経験上、両者は深いところでつながっています。

大規模修繕の費用のなかで、足場の仮設・解体は決して小さくない割合を占めます。建物の規模や形状にもよりますが、足場費が工事全体の2〜3割に達することも珍しくありません。この足場費は、外壁や屋上を「直す」ためのお金ではなく、職人さんがそこに「行くため」のお金です。

ロープアクセス(無足場工法)を適切に使えば、この足場費を大きく圧縮できます。高層階や、足場を架けにくい形状の建物では、特に効果が出ます。足場という大きな固定費を削れる会社は、その分、無理な安値競争に巻き込まれずに、適正な利益を確保しながら良い仕事ができる。つまり、工法の引き出しが多い会社ほど、経営としても健全でいられる余地があるのです。

もちろん、ロープアクセスが万能というわけではありません。バルコニーの内側や、広い面を一気に塗る作業など、足場のほうが向く場面も確実にあります。だからこそ私は、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つを、建物ごとに使い分けることをお勧めしています。「足場ありき」でも「無足場ありき」でもなく、その建物にとっていちばんコストと品質のバランスが良い組み合わせを選ぶ。これが、結果として工事費を圧縮し、発注先の会社の体力にも余裕を生みます。

ロープアクセス工法そのものについては「ロープアクセス工法のご紹介」、3工法を組み合わせた大規模修繕の進め方については「大規模修繕工事のご紹介」で詳しくお伝えしています。

「足場を二度組まない」という発想がコストを左右する

もう一つ、お伝えしたいのが「足場を二度組まない」という考え方です。

大規模修繕では、外壁の塗装・防水と同時に、屋上防水やシーリングの打ち替え、鉄部の塗装など、複数の工事をまとめて行います。ところが、計画がばらばらだと、ある工事のために足場を組み、解体し、数年後に別の工事のためにまた足場を組む——という二度手間が起きます。足場費が工事全体の2〜3割を占めることを思えば、これは大きな無駄です。

ロープアクセスやハイブリッド工法をうまく使うと、この「足場の重複」を避けやすくなります。たとえば、足場が要る面は足場で一気に仕上げ、ロープアクセスで届く部分や、後から発生した小規模な補修は無足場で対応する。こうして固定費を抑えられれば、浮いた予算を本当に必要な補修や、修繕積立金の温存に回せます。修繕積立金が上昇し続けるいまの局面では、この「足場の二度組みを避ける」発想が、長期修繕計画全体の体力を左右します。

「専門職が束になる」体制が、調達難と人手不足への答えになる

倒産の最大の要因が、小規模な専門工事会社の「一社単独での経営の弱さ」にあるなら、その裏返しが答えになります。すなわち、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が、緩やかに束になって動ける体制です。

私たちは、ロープアクセス工事のフランチャイズという形で、各分野の専門職に加盟していただく仕組みを国内でいち早く立ち上げました。専門職が一つのネットワークでつながることで、資材の調達も、繁忙期の人手のやりくりも、一社で抱えるより格段に安定します。一社だけでは材料が手に入らない局面でも、ネットワーク全体で融通し合えれば、工事を止めずに進められる。これが、高品質と低価格を両立できる理由でもあります。調達難・人手不足・価格転嫁という、いま小規模事業者を倒産に追い込んでいる三つの圧力に対して、ネットワークで立ち向かう——これが私たちの考える、現実的な処方箋です。

加えて、私たちは一般社団法人全国建設業支援協会(JCSA)を運営し、全国の建設業者に向けて経営支援の情報発信やオンラインセミナー、交流会、ビジネスマッチングの場を提供しています。倒産が増えるこの局面だからこそ、業界全体の経営体力を底上げする取り組みにも、力を入れています。発注するオーナー・管理組合の皆さまにとっても、「経営を学び続けている会社か」は、長く付き合えるかどうかの一つの目安になるはずです。

もし工事の途中で施工会社が倒産したら——初動でやるべきこと

「すでに工事が進んでいる最中に、施工会社の様子がおかしい」。そんなときに慌てないために、初動の考え方を整理しておきます。あくまで一般的な手順であり、実際には弁護士など専門家への相談を前提にしてください。

第一に、支払いと出来高の状況を急いで突き合わせること。これまでいくら支払い、工事が実際にどこまで進んでいるのかを、写真や工程表とともに記録に残します。前払いが出来高を上回っているほど、損失は大きくなります。

第二に、足場や資材、現場の鍵といった「現場の管理権」がどうなっているかを確認すること。工事が止まったまま足場が放置されると、安全面・防犯面のリスクが続きます。誰が責任をもって現場を管理するのか、早い段階で整理が必要です。

第三に、保証書や契約書、施工記録を手元にそろえること。引き継ぎを別の会社に頼む場合でも、どこまでどう施工されたかの記録があるかどうかで、再見積もりの精度と費用がまったく変わってきます。

そして第四に、複数の会社から引き継ぎの相談を受けること。一社だけの言い値で決めると、足元を見られかねません。私のところにも、こうした引き継ぎのご相談は少なくありません。緊急時こそ、冷静に複数の選択肢を比べることが、被害を最小限にとどめる近道です。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 相見積もりで一番安い会社を選ぶのは危険ですか? 安いこと自体が悪いわけではありません。問題は「なぜ安いのか」を説明できるかどうかです。材料費も人件費も上がっているなかで、根拠なく極端に安い見積もりは、利益を削りすぎているか、どこかを省いている可能性があります。安さの理由を質問し、納得できる答えが返ってくるかを確かめてください。

Q. 大手なら倒産の心配はないと考えてよいですか? 規模が大きいほど一般に体力はありますが、「大手だから心配ない」と言い切ることはできません。むしろ、自社でどこまで施工するのか、下請けへの依存度はどうか、という施工体制のほうが、現場の安定性に直結します。会社の規模だけでなく、実際に手を動かす体制を確認することをお勧めします。

Q. 保証はどうやって守ればよいですか? 施工会社の保証だけに頼らず、塗料・防水材のメーカー保証や、第三者の保証会社による保証を併用できないかを確認してください。施工会社が万一倒産しても、メーカー保証や第三者保証が残っていれば、被害を抑えられる場合があります。

Q. 施工会社の「経営の健全さ」は素人でも確認できますか? 完全な財務分析は難しくても、手がかりはあります。建設業許可の番号と業歴、過去の施工実績、決算書を見せてもらえるか、業界団体や経営支援の取り組みに参加しているか——こうした点を質問するだけでも、会社の透明性や姿勢が見えてきます。隠さず答えてくれるかどうかが、一つの判断材料になります。

Q. 工事はまだ数年先ですが、いま何をしておけばよいですか? 長期修繕計画の見直しと、発注先選びの基準づくりです。倒産が増える局面では、「いつ・いくらで・どの会社に頼むか」を早めに整理しておくほど、いざというときに慌てずに済みます。総会の前段階の整理だけでも、第三者の目を入れておく価値があります。

6月の総会シーズン、理事会で話してほしいこと

ちょうど今、6月はマンションの通常総会が集中する時期です。大規模修繕を数年内に控えている管理組合では、この機会にぜひ、次の3点を議題に少しだけ触れてみてください。

第一に、「発注先候補の会社の、経営の安定性をどう確認するか」。安さだけでなく、長く責任を取れる会社かどうかを選定基準に入れる、という共通認識を持つことです。

第二に、「契約時の支払い条件と保証の中身」。出来高払いを基本にする、保証はメーカー保証や第三者保証も併せて確認する、という方針を、発注前に固めておくことです。

第三に、「工法の選択肢を一社の言いなりにしない」。足場かロープアクセスか、あるいはその組み合わせか。複数の工法で提案を受け、それぞれのコストと工期、居住者への影響を比較したうえで決める。これだけで、見積もりの妥当性がぐっと判断しやすくなります。

なお、本記事は施工会社選定の一般的な考え方を整理したものであり、特定の会社の経営状態を保証・断定するものではありません。最終的なご判断は、複数の見積もりと専門家の助言を踏まえて行ってください。

まとめ——「直す技術」だけでなく「続く会社」を選ぶ時代に

塗装・防水工事業者の倒産が2000年以降で最多ペースに達したという今回のニュースは、単なる業界の内輪話ではありません。大規模修繕を発注する管理組合・オーナーにとって、「工事の途中や保証期間中に、頼んだ会社が消えるかもしれない」という、新しいリスクが現実になったということです。

これからの発注先選びでは、「直す技術があるか」だけでなく、「10年後まで責任を取り続けられる経営体力があるか」を、同じ重さで見てほしい。そして、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つの工法を建物ごとに最適に組み合わせ、工事費そのものを圧縮することが、結果として、発注する側にも施工する側にも余裕を生みます。工事費に無理がなければ、施工会社は適正な利益のなかで丁寧な仕事ができ、その余裕が10年後の保証履行にもつながっていく。発注の仕方ひとつが、巡り巡って自分たちの資産を守ることになるのです。

これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない感想です。資産価値を守る大規模修繕は、技術と経営の両輪が回って初めて成り立ちます。総会の前段階の整理や、工法ごとの概算比較だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームから、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

出典・参考資料


※本記事は2026年6月12日時点の公表情報に基づいています。制度・統計の最新状況は各一次情報をご確認ください。投資・売買・税務に関する助言を目的としたものではありません。

▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

さいたま市で使える賃貸オーナー向け補助金活用ガイド|大宮・浦和の築古物件を「NOI」で立て直す2026年度の制度設計

築年数が30年に近づいてくると、物件は静かに表情を変えていきます。外壁のチョーキング(白い粉が手につく現象)、目地シールの痩せ、窓まわりの結露跡、給湯器の不調による入居者からのクレーム。私はこの仕事を20年やってきて、こうした「小さな劣化」が、ある日突然「空室期間の長期化」「家賃の値下げ要求」という数字になって返ってくる場面を、大宮でも浦和でも何度も見てきました。

正直に申し上げます。賃貸オーナーさまにとって、大規模修繕や設備更新は「コスト」ではありません。入居率と賃料、そして売却時の物件価値(収益還元価格)を左右する投資判断です。そして2026年度(令和8年度)は、その投資判断を後押しする補助金・税制が、国・埼玉県・さいたま市の三層でかなり手厚く揃っています。なかには賃貸オーナーを名指しで対象にした制度まであります。

この記事では、さいたま市内に賃貸マンション・賃貸ビル・店舗・クリニックなどをお持ちのオーナーさまに向けて、使える制度を「物件タイプ別」「NOI(実質賃料収入)への効き方別」「税務処理別」で整理します。管理組合向けの一般的な解説ではなく、オーナーの財布とキャッシュフローの目線で書いていきます。


1. なぜ今、さいたま市の賃貸オーナーは「補助金を絡めた修繕」を投資判断に組み込むべきか

さいたま市は、大宮区の交通結節点としての強さ、浦和区の住宅地としてのブランド、武蔵浦和や北与野の再開発エリアまで、賃貸需要の厚い街を10区に抱える政令指定都市です。人口流入も続き、賃貸経営の地盤としては全国でも恵まれた部類に入ります。一方で、昭和56年(1981年)5月以前に着工された旧耐震基準の建物も、大宮や浦和の駅近を中心にまだ相当数が現役で稼働しています。

ここで効いてくるのが、入居者側の目線の変化です。同じ家賃帯でも、窓が二重サッシで結露しにくい、給湯がエコジョーズで光熱費が安い、外壁がきれいで管理が行き届いている——そうした物件に入居希望は集まります。私の経験上、入居率が1%改善すれば、20戸・平均家賃8万円の物件で年間およそ19万円のキャッシュフロー差が生まれます。これが10年続けば190万円です。修繕投資の回収は、家賃の維持と空室の短縮という「静かな数字」で進みます。

もう一つ、さいたま市ならではの事情があります。大宮・浦和の駅周辺では新築・築浅の供給が続き、築古物件との競争は年々厳しくなっています。築古物件が同じ土俵で戦うには、価格を下げるか、価値を上げるかのどちらかしかありません。私は、安易な家賃の値下げは「物件価値そのものを削る選択」だと考えています。賃料を下げればNOIが下がり、NOIが下がれば収益還元で評価される売却価格も下がる。値下げは、保有中と出口の両方で資産を痩せさせるのです。

ここからが本題です。築古物件の修繕は、どのみち避けられません。だとすれば、補助金・税制が乗るタイミングで、出口(売却)まで見据えた投資として実行するのが合理的です。2026年度の制度を、順に見ていきましょう。


2. オーナーの物件タイプ別――さいたま市の耐震助成は「3つの窓口」

さいたま市の耐震系助成は、オーナーの物件の持ち方・用途によって窓口と限度額が分かれます。ここを取り違えると、申請そのものが通りません。まずは自分の物件がどれに当たるかを確認してください。いずれも対象は昭和56年5月31日以前に着工した旧耐震基準の建物です。

2-1. 賃貸マンション・分譲を貸している方――共同住宅等耐震補強等助成事業

賃貸マンションや、長屋(テラスハウス)など、延べ面積の2分の1以上を住居に使っている共同住宅をお持ちのオーナーさまが使えるのが「共同住宅等耐震補強等助成事業」です(出典:さいたま市・耐震補強等助成事業(共同住宅等))。申請できるのは建物の所有者(またはその2親等以内の親族)で、区分所有の場合は区分所有者の代表者が申請主体となり、集会での実施決議が前提になります。助成内容は次のとおりです。

区分 補助率 助成限度額
簡易診断 費用の2/3 20万円/棟
耐震診断 費用の2/3 床面積・戸数に応じた上限額
耐震補強設計 費用の2/3 住宅の戸数×10万円
耐震補強工事 費用の1/2(+工事監理費の2/3) 住宅の戸数×60万円
建替え工事 費用の23%(一定の場合1/3) 住宅の戸数×30万円

ここがオーナー目線で重要なのですが、限度額が「戸数×単価」で決まる点に注目してください。たとえば20戸の賃貸マンションなら、耐震補強工事の限度額は単純計算で戸数20×60万円=1,200万円まで届きます。規模の大きい物件ほど、補助の絶対額が効いてきます。さらに、この助成制度を使って耐震補強を行うと、固定資産税の減額措置と所得税額の特別控除を併用できます(出典:同上)。補助金で初期キャッシュアウトを抑え、税制で保有コストを下げる——この二段構えが効きます。

2-2. 賃貸ビル・店舗・クリニック・老人ホームの方――民間特定建築物/小規模建築物の助成

一棟所有の賃貸ビル、店舗、事務所、そして病院・診療所や老人ホームなど多数の方が利用する建物(共同住宅を除く)をお持ちのオーナーさまは、別制度の「民間特定建築物・小規模建築物耐震補強等助成事業」が窓口になります。延べ面積1,000平方メートル以上が「民間特定建築物」、未満が「小規模建築物」で、限度額が変わります(出典:さいたま市・耐震補強等助成事業(民間特定建築物、小規模建築物))。

区分 民間特定建築物(1,000㎡以上) 小規模建築物(1,000㎡未満)
耐震診断 2/3・限度300万円/棟 2/3・限度120万円/棟
耐震補強設計 2/3・限度300万円/棟 2/3・限度120万円/棟
耐震補強工事 1/3+監理2/3・限度1,500万円(救急病院4,500万円) 23%・限度720万円/棟
建替え工事 23%・限度650万円(救急病院2,000万円) 23%・限度360万円/棟

医療法人や介護事業者のオーナーさまにとっては、耐震性の確保はBCP(事業継続計画。災害時に事業を止めないための備え)と直結します。救急病院に限度額の大きな枠が用意されているのは、災害時に診療を止めないことが地域の使命だからです。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や有床診療所では、災害時にサービスを継続できる建物であることが、入居者・患者やそのご家族からの信頼に直結し、稼働率の維持につながります。耐震・防災への投資は、医療報酬・介護報酬という安定収入の土台を守る投資でもある、という捉え方ができます。建物が止まれば収入も止まる——この構造を持つオーナーさまほど、耐震補助の優先順位は高くなります。

2-3. 「着手前申請」と「1月末実績報告」という鉄則

どの制度にも共通する、最も大切な注意点を申し上げます。いずれの助成も、契約・着手の前に建築総務課へ交付申請を行い、交付決定を受けてから着手すること。 着工後に申請しても対象になりません。そして原則として、申請した年度(4月1日以降)の1月31日までに実績報告を提出できるスケジュールで動く必要があります(出典:前掲さいたま市各ページ)。

加えて、これらの耐震助成は予算枠に達した時点で受付終了になります。年度の早い段階で動くオーナーが有利です。窓口はさいたま市役所10階の建築総務課 企画係(電話048-829-1539)。令和7年度から電子申請も可能になっています。


3. 省エネ改修を「賃料維持装置」に変える――国の2026年度制度

耐震が「守りの投資」だとすれば、省エネ改修は「攻めの投資」です。窓・給湯・断熱を更新すると、入居者の光熱費が下がり、結露やカビのクレームが減り、内見時の印象が上がります。これらは家賃の維持・空室期間の短縮に直結します。2026年度(令和8年度)は国の住宅省エネキャンペーンが「住宅省エネ2026キャンペーン」として継続しており、賃貸オーナーが使える制度が揃っています。

3-1. 先進的窓リノベ2026事業

断熱窓(内窓・外窓・ガラス交換)への改修を支援する制度です(出典:先進的窓リノベ2026事業)。窓は熱の出入りが最も大きい部位で、改修効果が体感されやすい場所です。築古物件のアルミサッシ+単板ガラスを断熱窓に替えるだけで、冬の結露と夏の暑さが目に見えて改善します。「結露でカビが出る」というクレームは、入居者の退去理由として軽視できません。窓の更新は、入居者満足という形で賃料維持に効いてくる投資です。

3-2. 賃貸集合給湯省エネ2026事業(賃貸オーナーを名指しで対象にした制度)

これは、賃貸オーナーさまにとって最も「効く」制度です。国が、設置スペースの制約からエコキュート(ヒートポンプ給湯機)を入れにくい既存の賃貸集合住宅を狙って、小型の省エネ給湯器(エコジョーズ/エコフィール)への交換を支援するものです(出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業【公式】)。補助額は1台あたり、

  • 追いだき機能あり:7万円/台(浴室へのドレン水排水工事を伴う場合は10万円/台)
  • 追いだき機能なし:5万円/台(共用廊下を横断してドレンレールを敷設した場合は8万円/台)

リースの利用も対象に含まれます。たとえば20戸の物件で全戸の給湯器を追いだき付きに更新すれば、単純計算で20台×7万円=140万円の補助になります。給湯器は寿命が10〜15年で、いずれ交換が避けられない設備です。「壊れてから1台ずつ慌てて替える」のではなく、「補助が乗るタイミングでまとめて計画更新する」だけで、まとまった補助を引き出せます。なお、設置スペースに余裕があるエコキュートはこの制度の対象外で、その場合は次の給湯省エネ2026事業を検討します。

3-3. 給湯省エネ2026・みらいエコ住宅2026

エコキュート、ハイブリッド給湯機、エネファームなどの高効率給湯機は「給湯省エネ2026事業」が対象です(出典:給湯省エネ2026事業)。また、断熱改修や高効率給湯機を幅広く対象とする「みらいエコ住宅2026事業」もあります(出典:みらいエコ住宅2026事業)。物件の給湯方式や設置条件によって最適な制度が変わるため、「この物件はどの制度が一番引き出せるか」を設計段階で見極めることが、補助の最大化につながります。


4. さいたま市の省エネ・断熱補助金は「居住要件」に注意――それでも使える条件

さいたま市にも独自の「令和8年度 省エネ・断熱住宅普及促進補助金」があり、ZEH・高効率給湯機・断熱改修に対して国の制度と併用可能です(出典:さいたま市・省エネ・断熱住宅普及促進補助金)。令和8年度の予算額はZEH9,600万円、高効率給湯機5,400万円、断熱改修1,500万円。受付は令和8年4月1日から令和9年3月1日までで、先着順です。各区分とも予算残額が200万円を下回ると抽選に切り替わるため、早めの動きが有利です。

ただし、賃貸オーナーさまには正直にお伝えしておくべき注意点があります。この市の補助金は「市民が、自ら居住する住宅に補助対象事業を実施する」費用が対象で、実績報告の時点で申請者本人がその住所に住民票を有し、居住していることが条件です(出典:同上)。つまり、自分が住んでいない純粋な賃貸物件には、原則としてこの市の補助金は使えません。この点を見落として申請準備を進めると、後で実績報告が通らないという事態になりかねません。

一方で、分譲マンションの管理組合による申請には専用様式(様式第1号の2)が用意されており、共用部分の断熱改修などで管理組合として活用できる余地があります(出典:同上)。区分所有の住戸をお持ちで、管理組合を通じて共用部の省エネ改修を検討している場合は、ここが入口になります。要するに、国の制度(とくに賃貸集合給湯省エネ2026)は賃貸オーナーが直接使える、市の省エネ補助は居住要件に注意——この線引きを押さえておけば、無駄打ちを避けられます。


5. 埼玉県の制度を重ねる――窓断熱リフォーム支援事業

国・市に加えて、埼玉県にも上乗せできる制度があります。「埼玉県窓断熱リフォーム支援事業」は、断熱窓・断熱扉などの断熱改修を支援するもので、国の先進的窓リノベ2026事業またはみらいエコ住宅2026事業の交付決定を受けていることが条件になります(出典:埼玉県・窓断熱リフォーム支援事業)。また、太陽光発電・蓄電池・エネファーム等を対象とする「家庭における省エネ・再エネ活用設備導入補助金」もあります(出典:埼玉県・家庭における省エネ・再エネ活用設備導入補助金)。

ポイントは、国・県・市の制度を「重ねて」使う設計です。たとえば窓の断熱改修なら、国の先進的窓リノベ2026を軸に、県の窓断熱リフォーム支援を上乗せする、という組み合わせが考えられます。ただし、同じ工事費に対して複数の補助を重複して受けられるかどうかは制度ごとに条件があり、市の補助金申請時には国や県の補助申請額(予定を含む)を申告する義務があります(出典:前掲さいたま市ページ)。申告漏れがあると交付取消や返還を求められるため、組み合わせは必ず事前に整理しておく必要があります。


6. 税務で結果が変わる――損金算入・固定資産税減額・補助金の「雑収入」課税

補助金の話と同じくらい、いえ、それ以上に手残りを左右するのが税務処理です。ここはオーナー経営の核心なので、3点に絞って整理します(一般的な考え方の説明であり、個別の判断は必ず税理士にご確認ください)。

第一に、修繕費(損金)か資本的支出(資産計上)かの区分です。原状回復や劣化部分の補修にあたる工事は修繕費として一括損金にできる一方、建物の価値を高めたり耐用年数を延ばす工事は資本的支出として減価償却していくことになります。耐震補強や断熱改修は資本的支出と判断されやすい領域ですが、工事の内容次第で区分は変わります。「同じ100万円の工事でも、税務処理で手残りが大きく変わる」——これがオーナー経営の現実です。

第二に、固定資産税の減額と所得税の特別控除です。前述のとおり、さいたま市の助成制度を使って耐震補強を行うと、固定資産税の減額措置と所得税額の特別控除の対象になります(出典:さいたま市・耐震補強工事による減税のお知らせ)。補助金で初期費用を抑え、税制で保有コストを下げる。この合わせ技が、実質負担を二重に圧縮します。

第三に、見落としやすいのが、受け取った補助金は原則として雑収入として課税対象になる点です。「補助金が出たから丸ごと得した」わけではなく、その分は収益として計上され、課税されます。資金繰りの計画では、補助金の入金時期と納税のタイミングを併せて見ておく必要があります。なお国の制度には圧縮記帳などの取り扱いが関係する場合もあり、ここは特に税理士との連携が欠かせません。


7. 数字で見る――さいたま市・1棟20戸・築30年のNOI改善シミュレーション

抽象論だけでは判断できないので、私のほうで一つモデルケースを置いてみます。大宮区にある築30年・RC造・20戸・平均家賃8万円の賃貸マンションを想定します(以下はあくまで一般化した試算で、実際の効果は物件ごとに異なります)。

満室想定の年間賃料は、8万円×20戸×12カ月=1,920万円。仮に空室率が10%なら、年間で約192万円の機会損失が発生しています。ここで窓断熱と給湯器更新を行い、内見時の印象と入居者満足を底上げして、空室率を10%から7%に3ポイント改善できたとします。すると年間の賃料収入は約58万円増えます。表面利回りではなく、この「埋まり方の改善」がNOIを押し上げるのです。

工事費の側を見ます。給湯器20戸を追いだき付きに更新すると、賃貸集合給湯省エネ2026事業で最大140万円(20台×7万円)の補助が見込めます。窓断熱には先進的窓リノベ2026と埼玉県の上乗せが乗ります。耐震補強が必要な旧耐震物件であれば、共同住宅等耐震補強工事の助成(戸数×60万円=最大1,200万円)も併用の射程に入ります。「どのみち発生する更新費用」に補助を乗せ、税制で圧縮し、結果として空室率と賃料を底上げする——この一連の流れが、保有中のキャッシュフローと、出口での売却価格(収益還元価格)の両方を引き上げます。賃料が下がらず、むしろ埋まりが良くなれば、収益還元で評価される物件価値そのものが底上げされる。これが、値下げによる延命とは正反対の発想です。


8. 申請の落とし穴と着手順ロードマップ

ここまでの制度を、実際に使う順番に並べ直します。落とし穴は、ほぼ「順番」と「タイミング」に集約されます。

第一に、着手前申請の鉄則。耐震助成も省エネ補助も、契約・着工の前に交付申請を済ませ、交付決定を受けてから着手するのが大原則です。「先に工事を始めてしまった」案件は、ほぼ救済されません。第二に、予算枠と抽選への警戒。さいたま市の耐震助成は予算超過で受付終了、省エネ補助は残額200万円を下回ると抽選です。年度の早い時期に動くオーナーほど有利になります。第三に、併用の事前整理。国・県・市を重ねる場合、申告漏れは交付取消・返還につながるため、最初に全体設計を固めておきます。

着手順としては、(1)物件の築年・構造・用途から使える制度を洗い出す、(2)耐震診断が必要なら先に診断助成を申請して建物の状態を把握する、(3)診断結果と更新時期を踏まえて省エネ改修・耐震補強の工事計画を作る、(4)国・県・市の補助を重ねた資金計画と税務処理を税理士と詰める、(5)交付申請→交付決定→着工→実績報告(1月末まで)という流れになります。この設計図を年度初めに描けるかどうかで、引き出せる補助額が大きく変わります。


9. 工法の選択がNOIを左右する――明誠の「3工法」提案

最後に、私たちの仕事の話を少しだけさせてください。補助金は工事の「費用」を軽くしますが、その工事をどの工法で行うかも、オーナーさまのキャッシュフローを大きく左右します。

私たち明誠は、大規模修繕を「通常の足場仮設」「ロープアクセス(無足場工法)」「両者を組み合わせたハイブリッド工法」の3つから、建物にとってベストな方法を提案できる、日本でも数少ない会社です。とりわけロープアクセスは、足場を架けずに産業用ロープで施工するため、足場費用の圧縮・工期の短縮・入居者の生活への影響の最小化という、オーナー経営に直結するメリットがあります。足場の架設・解体には相応の費用と時間がかかり、その間は外観が覆われ、入居者にとってもストレスになります。賃貸物件では、この「工事中の入居者ストレス」が退去や賃料交渉の引き金になることもあります。

たとえば「窓まわりと外壁の一部補修だけなら、足場を全面に架けるよりロープアクセスのほうがコストも工期も抑えられる」というケースは少なくありません。逆に、全面打診や大規模な防水が必要なら足場が合理的なこともあります。部位と工事内容ごとに最適な工法を組み合わせることで、総額を抑えつつ入居者への影響を最小化できる。これが、補助金と並んでNOIを底上げするもう一つのレバーです。なお明誠は、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟する、ロープアクセス工事のフランチャイズ展開も行っており、高品質と低価格を両立できる体制を整えています。


10. よくある質問(FAQ)

Q. 自分が住んでいない賃貸物件でも、さいたま市の省エネ・断熱補助金は使えますか?
A. 原則として使えません。市の省エネ・断熱住宅普及促進補助金は、申請者本人がその住宅に住民票を有して居住していることが条件です。賃貸オーナーさまは、賃貸住宅を直接対象にした国の「賃貸集合給湯省エネ2026事業」などを軸に検討するのが現実的です(分譲の共用部は管理組合申請の余地あり)。

Q. 一番まとまった補助が見込めるのはどの制度ですか?
A. 物件の状態によりますが、旧耐震の賃貸マンションなら共同住宅等耐震補強工事の助成(戸数×60万円が限度)が金額的に大きく、給湯器更新では賃貸集合給湯省エネ2026事業(1台最大10万円)が賃貸オーナーに直接効きます。

Q. すでに工事を発注済みですが、後から申請できますか?
A. 耐震助成・省エネ補助とも、原則として着手前の交付申請・交付決定が必須です。発注・着工済みの工事は対象外になることがほとんどなので、次回の更新計画から逆算して動くことをお勧めします。

Q. 補助金は課税されますか?
A. 受け取った補助金は原則として雑収入として課税対象になります。手残りの計算と納税時期は、税理士と併せて確認してください。


結語

さいたま市の賃貸オーナーさまにとって、2026年度は「どのみち来る更新を、補助と税制が乗るうちに前倒しで投資に変える」好機です。耐震・給湯・窓断熱は、いずれ必ず手を入れる部分。だとすれば、空室率と賃料という「静かな数字」を底上げできるタイミングで実行するのが、保有中の利回りにも、出口の売却価格にも効いてきます。

お持ちの物件で、まだこの補助金の検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度お問い合わせください。1棟の現地調査と、利回り改善シミュレーション・工法比較(足場かロープアクセスか)だけでも承ります。補助金の制度設計から工法選定まで、数字でご一緒に試算しましょう。

なお、近隣の政令市・中核市のオーナー向け補助金については、横浜市の賃貸オーナー向け補助金ガイド、川崎市の賃貸オーナー向け補助金ガイドもあわせてご覧ください。エリアごとに使える制度と限度額が異なります。


出典・参考資料

▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

相模原市の分譲マンション管理組合が使える補助金・税制活用ガイド|大規模修繕の負担を軽くする2026年度(令和8年度)の制度設計

「修繕積立金が、計画していた額に届いていない」――相模原市内の管理組合で理事長さまとお話しすると、最初の30分でほぼ決まってこの話に行き着きます。築20年を超えたあたりから、外壁や防水の劣化は待ってくれません。一方で積立金の値上げは総会でなかなか可決されない。このギャップに、理事会の皆さまは毎年頭を悩ませておられます。

私は20年近く、マンションやビルの大規模修繕の現場で叩き上げてきました。その経験から正直に申し上げます。相模原市の管理組合は、使える制度を「知らないまま」工事に入ってしまうケースが、本当に多いのです。相模原市・神奈川県・国には、管理組合が主体となって使える補助金や税の優遇が、実は何層にも用意されています。これらを工事計画と一緒に設計するだけで、戸あたりの負担は目に見えて変わります。

この記事では、相模原市の分譲マンション管理組合が2026年度(令和8年度)に活用できる支援制度を、入口の相談から、アドバイザー派遣、耐震診断・耐震改修、管理計画認定、省エネ改修、そして固定資産税の減額まで、申請の順番と落とし穴も含めて整理します。読み終えたとき、次の理事会で「まず何を確認すべきか」がはっきりしているはずです。


1. なぜ今、相模原市の管理組合は「補助金・税制を絡めた大規模修繕」を考えるべきか

相模原市は、中央区・南区・緑区の3区からなる政令指定都市です。橋本・相模大野・古淵といった主要駅の周辺を中心に分譲マンションのストックが厚く、高度経済成長期からバブル期に供給された住棟の多くが、いままさに「2回目・3回目の大規模修繕」の時期を迎えています。リニア中央新幹線の駅が予定される橋本エリアなど、これから資産価値の評価が問われる地区も少なくありません。

ここで管理組合が直面するのが、次の3つの壁です。

第一に、修繕積立金の不足です。国土交通省の「マンション総合調査」でも、長期修繕計画上の必要額に対して積立額が不足している組合が一定割合あることが繰り返し指摘されています(出典:国土交通省 マンションに関する統計・データ等)。工事単価が上がっている近年、この不足は以前より重くのしかかります。

第二に、合意形成の難しさです。区分所有者の高齢化、賃貸化、空室化が進むと、総会で工事の議決を得ること自体が容易ではなくなります。

第三に、情報の非対称です。補助金や税制は、申請のタイミングや要件が細かく、しかも年度ごとに変わります。理事は数年で交代するため、ノウハウが組合に蓄積されにくいのです。

私はこれを、いつも「制度の取りこぼし」と呼んでいます。工事そのものは避けられない出費でも、制度を絡めれば「実質負担」は下げられます。たとえば固定資産税の減額は、工事費そのものを安くするわけではありませんが、工事後に区分所有者全員の税負担が軽くなるため、総会で工事を通すための「説明材料」になります。補助金は積立金不足の穴埋めに直接効きます。

ここからが本題です。相模原市の管理組合が使える制度を、順番に見ていきましょう。


2. 相模原市が持つ管理組合向け支援制度

相模原市は、いきなり「お金を出す制度」に飛びつくのではなく、まず相談と現状把握から入れる入口を丁寧に整えているのが特徴です。順番に紹介します。

2-1. 入口の相談――分譲マンションアドバイザー派遣制度

「何から手をつければいいか分からない」という組合に、私が最初におすすめするのがこの制度です。相模原市は、市内の分譲マンション管理組合等の自主的な取組みを支援するため、管理組合の設立・管理規約の見直し・大規模修繕や改修・建替えなど、マンションに関するさまざまな課題について、専門家が現地に赴いてアドバイスする制度を設けています(出典:相模原市「分譲マンションアドバイザー派遣制度について」)。

費用負担は、回数によって段階的に変わります。

回数 自己負担
初回 無料
2・3回目 費用の3分の1
4・5・6回目 費用の2分の1

費用は1時間あたり1万円、1回あたり3時間が上限です。派遣場所は、管理組合等が準備した集会場などになります。申込みは電話または直接窓口で受け付けており、問い合わせ先は相模原市住宅課(電話 042-769-9817)です。

工事業者に相談する前に、まず中立的な専門家に現状を見てもらう。これは遠回りに見えて、いちばん安全な入口です。初回が無料で使えるのですから、使わない手はありません。神奈川県も県域で「マンションアドバイザー派遣事業」を実施していますので、状況に応じて使い分けられます(参考:神奈川県「マンションアドバイザー派遣事業」)。

2-2. 学びの場――マンション管理セミナー・マンション相談

相模原市は、管理組合の理事や区分所有者に向けたマンション管理セミナーを開催しており、管理運営や大規模修繕、長期修繕計画の基礎を学べる機会を提供しています(出典:相模原市「マンション管理セミナー」)。あわせて、マンション相談の窓口も用意されています(出典:相模原市「マンション相談について」)。

理事が毎年交代する組合では、知識の引き継ぎが弱点になりがちです。こうしたセミナーや相談を「理事の引き継ぎ資料づくり」の機会として使うと、組合のノウハウが少しずつ積み上がっていきます。

2-3. 旧耐震マンションの要――相模原市マンション耐震診断補助制度

1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を得て工事に着手した、いわゆる「旧耐震」の分譲マンションには、相模原市の耐震診断補助があります。対象は、次の条件をすべて満たす分譲マンションの管理組合です(出典:相模原市「旧耐震基準の分譲マンションの地震対策を支援します」)。

  • 市の耐震巡回相談を受け、耐震診断を行うことの決議書を得ていること
  • 昭和56(1981)年5月31日以前に建築確認を得て、工事に着手したもの
  • 鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄骨造のもの

補助の水準は、耐震診断に係る費用の6分の5以内の額で、1住戸につき5万円を限度(市の予算の範囲内)とされています。

ここでひとつ、現場の人間として強くお伝えしたいことがあります。補助を受けるには、市の「耐震巡回相談」を先に受け、総会で診断の決議を取っておくことが要件です。つまり、いきなり業者に診断を頼むのではなく、「巡回相談 → 総会決議 → 補助申請 → 診断」という順番を守る必要があるのです。この順番を飛ばすと、せっかくの補助が受けにくくなります。耐震巡回相談自体は無料ですので、旧耐震が疑われる住棟は、まずここから動くのが正解です。

2-4. 診断の次へ――分譲マンション耐震改修補助制度

耐震診断の結果、耐震改修工事が必要と判定されたマンションには、改修計画の作成費用と改修工事費用を助成する制度が続いて用意されています(出典:相模原市「旧耐震基準の分譲マンションの地震対策を支援します」)。

  • 耐震改修計画作成費用:作成に要する費用の3分の2以内の額で、1住戸につき5万円を限度(市の予算の範囲内)
  • 耐震改修工事費用:補助制度あり(補助率・上限額の詳細は市にお問い合わせください)

補助対象は、住居の用に供する部分とされ、店舗等の用途に供する部分は除かれます(住居と店舗を兼ねる場合で、店舗部分が住居の2分の1未満のものは含む)。診断・計画・工事を一連の流れとして設計できるのがこの制度の良いところで、市の補助を受けて改修計画を作成したものが工事補助の対象になります。耐震に関する窓口は、相模原市建築政策課 耐震推進班(電話 042-769-8252)です。

2-5. 税制・融資の土台づくり――マンション管理計画認定制度

相模原市は、管理組合が立てた管理計画が一定の基準を満たす場合に、適切な管理が行われているマンションとして市が認定する「マンション管理計画認定制度」を設けています(出典:相模原市「マンションの管理計画認定制度について」)。

相模原市の場合、認定にあたって市独自の基準(防災に関する取組み)についての事前相談を住宅課で受け付けている点が特徴です。マンション管理センターによる事前確認を経て、「管理計画認定手続支援サービス」を通じて市へ申請する流れになります。

認定を取得すると、市場での評価が高まるほか、住宅金融支援機構の融資の金利優遇など波及するメリットがあります。そして相模原市では、後述する長寿命化促進税制の入口要件としても、この認定が効いてきます。私はこれを、補助金・税制を効かせるための「土台づくり」と位置づけて、長期修繕計画の見直しとワンセットで理事会にご提案するようにしています。


3. 固定資産税が半額に――マンション長寿命化促進税制

補助金が「入口の出費」を軽くするのに対し、税制は「工事後の負担」を軽くします。なかでも管理組合がぜひ知っておくべきなのが、マンション長寿命化促進税制です。相模原市も公式に案内しています(出典:相模原市「マンション長寿命化促進税制について」)。

3-1. 制度の中身

一定の要件を満たすマンションで、長寿命化に資する大規模修繕工事(外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事)を実施すると、各区分所有者が翌年度に支払う建物部分の固定資産税が2分の1減額されます。減額の適用期間は1年間です。

ここがこの制度の優れたところで、減額は区分所有者全員に及びます。総会で「工事をすると、来年の皆さんの固定資産税が半分になります」と説明できれば、合意形成の追い風になります。数字の体感としては、たとえば建物部分の固定資産税が1戸あたり年5万円のマンションなら、その年は2.5万円が軽くなる計算です。50戸あれば組合全体で年125万円規模の効果になります。

3-2. 適用要件と「管理計画認定」との関係

相模原市の案内によると、対象となるのは次の要件をすべて満たすマンションです。

  1. 築20年以上かつ10戸以上であること
  2. 過去に長寿命化工事(外壁塗装等工事、床防水工事および屋根防水工事)を行っていること
  3. 令和5年4月1日から令和9年3月31日までの間に、2回目以降の長寿命化工事を完了していること
  4. 次の(1)または(2)に該当すること
    – (1) 管理計画認定マンション(修繕積立金の額を、国が示す基準以下から管理計画の認定基準まで引き上げたもの)
    – (2) 長期修繕計画に係る助言・指導を受けて長期修繕計画の作成または見直しを行い、一定の基準に適合したもの

ここで、相模原市の「管理計画認定制度」や「長期修繕計画に係る助言・指導」が、税制の入口要件として直結していることが分かります。工事完了後、3か月以内に申告が必要で、申告方法や必要書類は市の案内ページで確認できます(出典:相模原市「長寿命化工事が行われたマンションに対する固定資産税の減額について」)。

なお、相模原市の案内では、この税制や管理計画認定制度に関する相談窓口として、一般社団法人日本マンション管理士会連合会の相談ダイヤル(電話 03-5801-0858、平日10時〜17時)が紹介されています。制度の細部に迷ったら、こうした窓口も活用できます(参考:国土交通省「マンション長寿命化促進税制」)。


4. 国・神奈川県の制度(2026年度)で省エネ改修を「戸あたり」で効かせる

相模原市・神奈川県の制度に、国の省エネ補助を重ねると、大規模修繕に「断熱」や「設備更新」を組み込んだときの戸あたり負担がさらに下がります。2026年度(令和8年度)の主役は次の制度群です。

4-1. 先進的窓リノベ2026事業

窓を断熱性能の高いものに交換・設置する工事に、国(環境省)が大型の補助を出す制度です。2026年は補助上限が1戸あたり最大100万円となっています(2025年の上限200万円から変更)。重要なのは、管理組合・管理組合法人が施主となって建物全体を一括で申請するケースも対象になる点です(戸単位での申請も可)。大規模修繕に合わせて全戸の窓を断熱改修する、といった使い方ができます。出典:先進的窓リノベ2026事業【公式】(環境省)。

申請は、事務局に登録された「窓リノベ事業者」が管理組合に代わって行う代理申請が必須の仕組みです。区分所有者や組合が直接申請するものではありません。だからこそ、制度に精通した施工会社を選ぶことが、そのまま補助の取りこぼし防止につながります。なお、本事業は予算(1,125億円)の上限に達し次第、受付が締め切られますので、活用するなら早めの段取りが肝心です。

4-2. 給湯省エネ2026・住宅省エネ2026キャンペーン

高効率給湯器(エコキュート等)の導入を補助する「給湯省エネ2026事業」など、断熱改修や設備更新を対象にする国の制度群も走っています。これらは一定の範囲で併用が可能で、窓の断熱改修と給湯器交換を同時に行えば、それぞれの補助を受けられます(出典:住宅省エネ2026キャンペーン)。

大規模修繕のタイミングは、足場が架かる、あるいはロープアクセスで建物全周にアクセスできる「またとない機会」です。このときに窓や設備の更新をまとめて行うと、後から単独で工事するより足場・仮設のコストを節約でき、補助の対象工事も増やせます。

4-3. 神奈川県の省エネ補助も重ねる

神奈川県も既存住宅の省エネ改修に対する補助制度を用意しています。指定の省エネ改修が対象で、外気に接する窓(玄関ドア等を含む)の改修を必須とし、交付決定を受けた後に着工することが条件とされるのが一般的です。国・県・市の制度の重複利用の可否や、その年度の受付状況は、必ず各窓口で確認が必要です(参考:神奈川県ホームページ)。相模原市の住まいに関する助成・補助制度は、市のまとめページからも確認できます(出典:相模原市「助成・補助制度」)。


5. 申請タイミングという落とし穴――「交付決定前の契約」は全部パー

ここまで多くの制度を紹介しましたが、すべてに共通する、いちばん大事な原則を改めて強調させてください。

「補助金は、交付決定を受ける前に契約・着工したものは対象外になる」

国・県の省エネ補助は「交付決定前に着工しないこと」が条件です。相模原市の耐震診断補助も、「巡回相談 → 総会決議 → 申請 → 診断」という順番が前提になっています。長寿命化促進税制も、工事完了後3か月以内という申告期限があります。

私の経験上、ここでつまずく組合が本当に多いのです。総会で工事業者を決め、契約を交わし、いざ着工してから「補助金を使いたい」と相談に来られても、もう間に合わない。制度は「動き出す前」に組み込むものです。理事会のスケジュールを引くとき、私はいつも「①事前相談 → ②申請 → ③交付決定 → ④契約・着工」という順番を最初に書き出すようお伝えしています。

逆に言えば、この順番さえ守れば、複数の制度を計画的に重ねられます。早めに動くこと――それが相模原市で補助金を取りこぼさない、最大のコツです。


6. 相模原市の管理組合・補助金活用ロードマップ(着手順)

ここまでの制度を、実際に動かす順番でまとめます。

  1. 分譲マンションアドバイザー派遣で現状把握。初回無料。管理運営・積立金・長期修繕計画の課題を、中立の専門家と一緒に洗い出す。
  2. マンション管理セミナー・マンション相談を活用し、理事会内の知識の土台をそろえる。
  3. 長期修繕計画の作成・見直し(助言・指導の活用を検討)。工事範囲と積立金の水準を確定させ、長寿命化促進税制の入口要件も整える。
  4. マンション管理計画認定の取得を検討。市独自基準(防災)の事前相談を住宅課で受け、税制・融資優遇の土台を作る。
  5. 旧耐震なら耐震巡回相談 → 総会決議 → 耐震診断補助 → 耐震改修補助。順番が補助の要件そのもの。
  6. 大規模修繕の本体工事に、国・県の省エネ補助を組み込む(窓・給湯・断熱)。施工会社は制度対応の実績で選ぶ。
  7. 工事完了後3か月以内に長寿命化促進税制を申告し、翌年度の固定資産税減額を受ける。

この順番の肝は、「お金を出す前に、相談と認定で土台を作り、制度の交付決定を取りに行く」ことに尽きます。

6-1. 数字で見る試算イメージ(相模原市・50戸・築25年のケース)

あくまで考え方を示すためのイメージで、実際の金額は建物の状態・面積・工事内容により変わりますが、効果の「桁感」をつかんでいただくために置いてみます。

項目 概算
大規模修繕工事費(本体) 約9,000万円
省エネ改修(窓・断熱を組み込み) 上乗せ工事費の一部を国・県補助でカバー(窓は最大100万円/戸が上限)
耐震診断(旧耐震の場合) 診断費用の6分の5以内・1住戸5万円上限の補助
固定資産税減額(長寿命化促進税制) 翌年度、建物部分の固定資産税が組合全体で半額(戸あたり数万円規模)

工事費そのものを大きく削るというより、「省エネ部分の上乗せを補助で吸収」「翌年度の税が軽くなる」という形で、実質負担を多面的に下げるのが相模原市での王道です。


7. 大規模修繕は「工法の選択肢」で総額が変わる――明誠の3工法提案

ここからは、私たち株式会社明誠のサービスのご案内です(自社紹介のセクションとして明確に区切ります)。

補助金や税制で「実質負担」を下げる一方、工事の総額そのものを左右するのが工法の選び方です。マンションの大規模修繕というと、建物全体に足場を架ける「通常足場工法」が当たり前だと思われがちです。しかし足場の仮設・解体には相応の費用と工期がかかり、足場が架かっている間は居住者の生活にも影響が出ます。

明誠は、建物の特性に応じて3つの工法から最適な提案ができる、日本でも数少ない会社です。

第一に、通常足場工法。中低層や複雑な形状の建物に向きます。第二に、ロープアクセス工法。産業用ロープで作業員が壁面を昇降して施工する「無足場工法」で、足場費の削減・工期短縮・居住者の生活影響の最小化が強みです。高層や、足場の架設が難しい物件、コストを重視する物件に向きます。第三に、ハイブリッド工法。部位ごとに足場とロープアクセスを使い分け、大規模・複雑な物件で総合的にコストを最適化します。

私はこの3つを、必ずワンセットで比較してご提案するようにしています。なぜなら、同じ建物でも「どこに足場を架け、どこをロープで攻めるか」で、総額も工期も、そして補助金を組み込む余地も変わってくるからです。相模大野や橋本のように中高層の住棟が多い相模原市では、ロープアクセスやハイブリッドの強みが特に活きます。

明誠はさらに、日本で初めてとなるロープアクセス工事のフランチャイズを展開しており、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。これにより、高品質と低価格の両立を図っています。相模原市の補助金・税制の活用と、工法の最適化。この2つを同時に設計できるのが、私たちの強みです。

工法の詳細はロープアクセス工法のご紹介を、大規模修繕の総合的な進め方は大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。


8. よくある質問(FAQ)

Q1. 補助金と長寿命化促進税制は、両方使えますか。
A. 制度の趣旨と要件が異なるため、要件を満たせば併用できる場合があります。税制は「工事後の固定資産税」、補助金は「工事費」と、効くタイミングが違うと整理すると分かりやすいです。ただし、固定資産税の各減額措置どうしには同時適用の制限がありますので、どの減額を使うのが得かは工事内容とセットで判断する必要があります。重複利用の可否は各窓口で確認するのが前提です。

Q2. 耐震診断の補助を受けたいのですが、何から始めればよいですか。
A. 相模原市の場合、まず無料の「耐震巡回相談」を受け、総会で耐震診断を行う決議を取ることが補助の要件です。いきなり業者に診断を頼むのではなく、「巡回相談 → 総会決議 → 補助申請 → 診断」という順番を守ってください。窓口は建築政策課 耐震推進班(042-769-8252)です。

Q3. 申請の事務作業が大変そうで不安です。
A. 相模原市の分譲マンションアドバイザー派遣(初回無料)や、制度に精通した施工会社のサポートを使えば、書類の準備は大きく軽くなります。先進的窓リノベ2026などは登録事業者が申請を代行します。組合だけで抱え込まず、入口で専門家に相談するのが結局いちばん早い、というのが私の実感です。

Q4. 築20年・12戸の小規模マンションですが、長寿命化促進税制は使えますか。
A. 「築20年以上かつ10戸以上」が要件なので、戸数の条件は満たします。あとは、過去に長寿命化工事の実績があること、令和9年3月31日までに2回目以降の長寿命化工事を完了すること、そして管理計画認定または長期修繕計画の助言・指導という入口要件を満たせるかがポイントです。小規模でも十分に対象になり得ます。


結語

相模原市の管理組合が使える制度は、決して少なくありません。むしろ「多すぎて分かりにくい」こと、そして「相談や認定という土台づくりを飛ばしてしまうこと」が、取りこぼしの最大の原因だと、私は現場で感じてきました。大事なのは、工事を決める前に、制度の地図を一度広げてみること。そして「相談 → 申請 → 交付決定 → 契約」の順番を守ることです。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階、長期修繕計画の確認や工法の比較だけでも、お力になれることがあります。相模原の街には、これから2回目・3回目の修繕を迎える住棟がたくさんあります。その一棟一棟を、無理のない負担で長く使えるようにすること。それが、私たちの仕事です。

次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


出典・参考資料

本記事は2026年6月11日時点で公開されている情報をもとに作成しています。補助率・上限額・申請期限・受付状況は年度や予算の状況により変更される場合があります。実際の申請にあたっては、必ず各制度の公式窓口で最新情報をご確認ください。また、税制・法務に関わる個別の判断は、税理士・行政書士等の専門家にご相談ください。

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修繕積立金が6年で67.2%上昇——新築の「設定額」が映す大規模修繕インフレ、収益物件オーナー・管理組合が今やるべき長期修繕計画の見直しと工法選択【2026年6月】

理事会で「修繕積立金を上げたい」と切り出すと、たいてい空気が固まります。私も総会の場で、何度もその沈黙に立ち会ってきました。けれど、その値上げは管理会社の都合ではなく、もっと大きな「相場の地殻変動」から来ているとしたら——。

先日、ある調査会社が都心の新築マンションを独自集計したところ、修繕積立金の新築時設定額が6年で約67.2%も上がっていた、というニュースが出ました。今日はこの数字を入り口に、収益物件をお持ちのオーナーさまと、管理組合の理事長さま・修繕委員のみなさまが、今どこを点検すべきかを、現場の言葉で整理します。

正直に申し上げます。この話は「他人事」ではありません。新築の設定額が上がるということは、これから発注される大規模修繕の単価が、業界全体で上がっているということだからです。

ニュースの要点——新築の修繕積立金、6年で67.2%増

不動産コンサルティングのさくら事務所が2026年5月13日に公表した独自集計によると、都心9区(千代田・中央・港・渋谷・新宿・目黒・品川・世田谷・江東)でメジャーセブン(大手分譲7社)が2019〜2025年に分譲した新築マンションの「新築時設定額」は、次のように推移していました(出典:さくら事務所「管理費+修繕積立金、6年で+44%」2026年5月13日)。

項目 2025年の平均 70㎡換算(月額) 2019年比
管理費 519.3円/㎡ 約3万6千円 +35.9%
修繕積立金 221.5円/㎡ 約1万5千円 +67.2%
合計 740.8円/㎡ 約5万2千円 +43.9%

修繕積立金だけを見ると、2019年の132.5円/㎡から2025年の221.5円/㎡へ、約67.2%の上昇です。管理費(+35.9%)よりも、修繕積立金の伸びのほうがはるかに急なのがポイントです。管理費の最高値は千代田区の752円/㎡で、70㎡換算だと管理費だけで月5万円を超えます。

ここで一度、財布の感覚に直してみます。70㎡の住戸で「管理費+修繕積立金」が月5万2千円。年間で約62万円。これは住宅ローンの変動金利が0.25%上がったときの返済増を、大きく上回るペースだと調査は指摘しています。「もうひとつの住居費」が、静かに、しかし確実に重くなっているのです。

なぜ修繕積立金だけがこんなに上がるのか

修繕積立金は、将来の大規模修繕工事に備えて毎月積み立てるお金です(初めての方向けに補足すると、管理費が「日々の管理・清掃・点検」に使う運転資金なのに対し、修繕積立金は「12〜15年に一度の大工事」のための貯金です)。

その貯金の目標額が上がっているということは、見込まれる工事費そのものが上がっている、ということに他なりません。背景には主に3つの圧力があります。

第一に、建築工事費の高騰です。資材価格は、ナフサを起点とする塗料・防水材の値上がりが続き、ここ数年で何度も改定されてきました。私の現場でも、見積もり時点と着工時点で材料単価が変わってしまい、お客さまに頭を下げた経験が一度や二度ではありません。

第二に、労務費の上昇です。国土交通省が毎年改定する公共工事設計労務単価は、令和8年3月から適用される最新版で全国全職種の加重平均が日額25,834円となり、初めて2万5千円を超えました。これで14年連続の上昇で、2012年度の13,072円からほぼ倍増した計算です(出典:国土交通省 報道発表資料「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」)。職人の手間賃が明確に上がっているということです。建設業にも2024年4月から時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)が適用され、「人を増やさないと工期が回らない」状況が単価をさらに押し上げています。

大規模修繕は、新築の工事に比べて手作業の比率が高く、人件費の影響を受けやすい工事です。資材が上がり、人の手間賃も上がる。この二重の圧力が、積立金の目標額をじりじりと押し上げているわけです。

第三に、ガイドラインに沿った「適正化」です。後で詳しく触れますが、国土交通省が積立不足を防ぐために初期設定額の引き上げを促してきたことも、新築の設定額が上がった一因です。

私はこれを、現場で20年見てきた肌感覚として「大規模修繕インフレ」と呼んでいます。物価のインフレと同じで、いったん上がった工事単価は、簡単には下がりません。

「適正化」か「工事費転嫁」か——2つの顔を見分ける

調査を行ったさくら事務所の山本直彌社長は、この上昇について「初期設定額が上がったからといって安心はできない。長期修繕計画の個別検証が不可欠」とコメントしています。私もまったく同感です。

修繕積立金の上昇には、評価すべき「適正化」の側面と、警戒すべき「工事費転嫁」の側面が同居しています。

適正化の側面とは、これまで安すぎた初期設定額を、将来の大規模修繕に間に合うよう、現実的な水準に引き上げる動きです。これは健全です。むしろ「新築時の積立金が安いマンションほど、後で大幅値上げか一時金徴収に苦しむ」というのが、私が現場で何度も見てきた現実です。

一方の工事費転嫁の側面とは、建築費・人件費の高騰分を、工事の中身を精査しないまま、そのまま積立額に乗せているケースです。この場合、額面が上がっても「割高な工事を前提に積み立てているだけ」で、将来の積立不足リスクは何も解決していません。

つまり、積立金が上がったこと自体は良し悪しではなく、「その額の根拠となる長期修繕計画と工事仕様が妥当か」を一棟ごとに確かめないと判断できない、ということです。ここが今日いちばんお伝えしたい急所です。

新築の数字が、既存マンションに突きつけるもの

「これは新築の話でしょう。うちは築20年だから関係ない」——そう思われたかもしれません。ですが、私はむしろ既存マンションのオーナーさま・管理組合にこそ、この数字を見ていただきたいと考えています。

理由はシンプルです。新築の設定額が上がっているのは、これから発注される工事の単価が業界全体で上がっているからです。築20年のマンションが次に迎える2回目・3回目の大規模修繕は、まさにこの「上がった単価」で発注することになります。

ところが、多くの既存マンションの長期修繕計画は、数年前の——つまり今より安かった時代の——工事単価を前提に組まれたままです。計画上の積立額と、実際にかかる工事費との間に、静かに「ワニの口」が開いていきます。

国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、修繕積立金が「計画に対して不足している」マンションが36.6%にのぼり、現在の積立額は月・戸あたり平均13,054円でした(出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」)。3棟に1棟が、すでに足りていないのです。そこへ工事単価の上昇が重なれば、不足はさらに広がります。

新築の67.2%増は、既存マンションにとって「次の見積もりは、あなたが思っているより高い」という予告だと、私は受け止めています。

そして、計画と実勢の差が開いたまま放置されると、行き着く先は2つしかありません。一つは、ある総会で突然「大幅値上げ」を提案すること。もう一つは、工事の直前に「一時金」として、一戸あたり数十万円をまとめて徴収することです。どちらも区分所有者の反発を招きやすく、合意形成に時間がかかります。私の経験上、合意が取れずに工事が1年、2年と先送りされる間に、劣化はさらに進み、工事費はさらに上がる——という悪循環が、いちばん怖いのです。早めに計画を点検しておくことが、結局は最も安く済む道だと、私はいつも理事長さまにお伝えしています。

国交省ガイドラインの目安と、令和6年改定の新ルール

判断の物差しとして、公的な目安を押さえておきましょう。国土交通省は「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」で、専有面積あたりの積立額の目安を示しています。たとえば建築延床面積が一定規模・20階未満のマンションで、月あたり概ね200円/㎡前後(建物条件で変動)が一つの参照値とされています(出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」令和6年6月改定)。

さくら事務所の集計で出た新築の221.5円/㎡という数字は、この目安の上限寄りに位置します。新築の設定額が、ガイドラインの目安をしっかり踏まえた水準まで上がってきた、と読むことができます。

そして2026年の今、もう一つ知っておくべきなのが、令和6年6月の改定で加わった「段階増額積立方式の適切な引上げの考え方」です(出典:国土交通省 報道発表資料(令和6年6月7日))。

段階増額積立方式とは、最初は安く、年数の経過とともに段階的に積立額を上げていく方式です。新築の販売時に「月々の負担が軽い」と見せやすいため、広く使われてきました。改定では、この方式について、計画初期の額を「均等積立方式とした場合の基準額の0.6倍以上」、最終額を「基準額の1.1倍以内」に収めることが望ましい、という具体的な目安が示されました。

平たく言えば、「最初を安く見せすぎて、後で急に跳ね上げる計画はやめましょう」というルール化です。今ご自身のマンションが段階増額方式なら、将来の増額カーブがこの目安に収まっているか——ここは総会の前に必ず確認したいポイントです。

収益物件オーナーにとっての意味——利回りを蝕む「見えないコスト」

ここからは、収益物件をお持ちのオーナーさま向けの話です。

修繕積立金の上昇は、区分所有で投資用住戸をお持ちの方にとって、家賃には反映しづらい「純粋な手出しの増加」です。月1万5千円だった積立金が、修繕計画の見直しで月2万5千円になれば、年間で12万円の手出し増。表面利回りには見えない形で、実質利回りが削られていきます。

私がオーナーさまにいつもお伝えしているのは、「出口(売却)の前に、修繕積立金と長期修繕計画は必ず点検しましょう」ということです。買い手や仲介は、いまや積立金の不足や近く予定される大幅値上げを必ずチェックします。計画が穴だらけのまま売りに出すと、価格交渉で確実に足元を見られます。逆に、計画が整理され、直近の大規模修繕がコストを抑えて適切に行われている物件は、それ自体が強い売り材料になります。

複数戸・複数棟をお持ちの法人オーナーさまであれば、影響はさらに大きくなります。保有する全戸の積立金が一斉に上昇する局面では、「どの棟から、どの工法で、いつ直すか」というポートフォリオ単位の修繕戦略が、キャッシュフローを左右します。

もう少し具体的に、戸あたりの感覚で考えてみます。仮に20戸のマンションで、次回の大規模修繕に1億円かかるとすれば、単純割りで1戸あたり500万円です。その総額のうち足場が25%なら2,500万円が「直す中身」ではなく「作業のための仮設」に消えます。ここを工法の組み合わせで1割でも圧縮できれば、建物全体で数百万円、戸あたりにすれば十数万円の差になります。修繕積立金が月1万円上がると年12万円。つまり「工法を見直して工事費を抑える」ことは、「積立金を1年分まるごと節約する」のと同じくらいのインパクトを持つ場面がある、ということです。私が工法選択を“最初に”ご提案する理由は、ここにあります。

管理組合の理事長にとっての意味——総会で必ず聞かれること

6月は、多くのマンションで定期総会のシーズンです。そして総会で修繕積立金の値上げ議案を出すと、ほぼ必ず、次の質問が飛んできます。

「なぜ今、上げる必要があるのか」「上げないとどうなるのか」「工事費は本当に妥当なのか」——。

このとき、「世間が上がっているから」だけでは、区分所有者は納得しません。私が理事長さまにお勧めしているのは、3つの数字をセットで示すことです。第一に、自分のマンションの現在の積立額(円/㎡)と国交省ガイドラインの目安との差。第二に、長期修繕計画上の収支見通し(いつ不足に転じるか)。第三に、直近の工事費見積もりが、複数社の相見積もりで妥当性を確認されているか。

この3点が揃っていれば、値上げは「管理会社の言いなり」ではなく、「自分たちで根拠を確かめた決断」になります。総会の空気は、根拠の有無で驚くほど変わります。

私が現場で見てきた「積立不足」のリアル

少し、現場の話をさせてください。

私が一番悔しい思いをするのは、「お金が足りないから、本当はやるべき工事を削った」という相談を受けるときです。外壁の補修範囲を減らし、防水のグレードを落とし、足場の都合で点検しきれない面を「次回送り」にする。その場はしのげても、劣化は待ってくれません。次の修繕周期で、削った分の何倍もの費用がのしかかってきます。

ある築25年のマンションでは、積立金不足を理由に、外壁打診(壁を叩いて浮きを探す検査)を一部省いて工事を終えていました。数年後、省いた面のタイルが剥がれ落ち、結局もう一度足場を架けて補修することに。足場の架け払いだけで、数百万円が二度かかった計算です。あのとき、最初に全面を点検できていれば——と、今でも悔やまれます。

もう一つ、印象に残っている現場があります。高層部の一部にだけ気になる劣化があったマンションで、当初は「全面に足場を架けないと見られない」と言われ、見積もりが大きく膨らんでいました。私たちがロープアクセスで高層部だけ先行調査したところ、補修が必要なのは一部だけと分かり、全面足場を見送れたケースです。「全部を疑って全部を囲う」のと、「狙いを定めて確実に直す」のとでは、同じ建物でも費用がまったく変わります。

だからこそ私は、「お金が足りないから工事を削る」のではなく、「同じ予算で、より広く・確実に直せる工法を選ぶ」ことを、必ず先に検討していただきたいのです。ここが、次の話につながります。

積立金の上昇圧力を下げる最大のレバーは「工事費」、その鍵は工法選択

修繕積立金は、突き詰めれば「将来の工事費の積立」です。ということは、工事費そのものを下げられれば、積立金の上昇圧力も和らぎます。家賃や金利と違って、ここはオーナー・管理組合の判断で動かせる数少ないレバーです。

そして、大規模修繕の工事費の中で、意外なほど大きな割合を占めるのが「足場(仮設)」の費用です。建物をぐるりと囲う足場の架設・解体・養生は、工事費全体の2〜3割に達することも珍しくありません。しかも足場は、それ自体は何も「直して」いません。職人が作業するための、いわば足場代です。

私は、ここに改善の余地が大きいと考えています。すべてを従来の足場で囲うのではなく、建物の形状や劣化箇所に応じて、足場を使わない「ロープアクセス工法」(産業用ロープで職人が降下しながら作業する無足場の工法)を組み合わせる。これだけで、足場費と工期を圧縮できる現場が、確かに存在します。

足場を二度組まない——ロープアクセスとハイブリッド工法の実務

ロープアクセス工法は、高層部や、足場を架けにくい狭い隣地境界、あるいは「部分的な補修・点検」に特に向いています。足場の架設・解体が不要なため、コストと工期を抑えられ、何より居住者・テナントの生活への影響(騒音・日照の遮り・防犯面の不安)を小さくできます。賃貸物件なら、これは退去抑制にも直結します。

一方で、外壁の全面打診や大面積の塗り替えなど、足場を架けたほうが確実・効率的な部位もあります。だからこそ私は、「ロープアクセスか、足場か」の二者択一ではなく、部位ごとに使い分ける「ハイブリッド工法」を、必ずワンセットでご提案するようにしています。

たとえば、低層部の大面積は足場で一気に、高層部や入り組んだ部分はロープアクセスで——という具合に、建物にとっての最適解を組み立てる。これができると、「足場を二度組まない」段取りが可能になり、削らずに、しかし安く直せる現場が増えます。

イメージしやすいよう、ごく単純化した内訳で考えてみます。仮に大規模修繕の総額のうち、足場(仮設)が全体の25%を占めるとします。建物の3割の面積をロープアクセスに置き換えられた場合、その部分の足場が不要になるだけで、足場費の一部が圧縮できます。これは工事の中身(補修・塗装・防水そのもの)を一切削らずに生まれる差です。もちろん建物形状や立地によって効果の大小はありますが、「直す中身は守りながら、足場という“作業のための費用”を見直す」という発想が、積立金の上昇局面ではとりわけ効いてきます。

明誠が3つの工法(通常足場・ロープアクセス・ハイブリッド)を自社で持っている理由は、まさにここにあります。工法の選択肢が1つしかなければ、その工法に合わせた見積もりしか出せません。足場専門の会社は足場前提の、ロープ専門の会社はロープ前提の提案になりがちです。3つを比較した上で「この建物にはこれが最適」と言える会社は、日本でもまだ多くありません。詳しくはロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介もご覧ください。

フランチャイズで「高品質×低価格」を成立させる仕組み

「安い」と聞くと、品質を心配される方がいます。当然のご懸念です。

明誠は、ロープアクセス工事として日本で初めてのフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板など、各分野の専門職が加盟しています。これは、価格を無理に叩いて品質を削るのではなく、各専門職が自分の得意分野を直接担うことで、中間マージンを圧縮しながら品質を保つ仕組みです。

大規模修繕では、元請けが各工種を下請けに流すたびに、マージンが積み重なります。私が現場で「もったいない」と感じてきたのは、このマージンの層が、必ずしも品質には反映されていないことでした。専門職が直接つながるネットワークなら、その分を価格に還元できます。修繕積立金の上昇に頭を悩ませている管理組合・オーナーにとって、これは現実的な選択肢になり得ます。

そしてもう一つ、収益物件のオーナーさまにお伝えしたいのが「工期」の価値です。足場を組む工事は、架設と解体だけで相応の日数がかかり、その間は外観も住み心地も損なわれます。賃貸であれば、入居者にとっての不快期間がそのまま退去リスクや募集の弱さにつながりかねません。ロープアクセスを組み合わせて工期を縮められれば、不快期間が短くなり、空室や家賃下落という「見えない損失」を抑えられます。工事費の節約だけでなく、収益への影響まで含めて工法を選ぶ——これが、長く持ち続けるオーナーさまにとっての賢い守り方だと、私は考えています。

相見積もりは「金額」ではなく「仕様」で比べる

工事費の妥当性を確かめる王道は、複数社からの相見積もり(あいみつ)です。ただ、ここで一つだけ注意があります。総額の安さだけで選ぶと、かえって損をすることがあります。

私が理事長さまにお伝えしているのは、「金額の前に、仕様をそろえて比べてください」ということです。A社は外壁補修を全面で、B社は一部だけで見積もっていれば、B社が安く見えるのは当たり前です。比べるべきは、同じ補修範囲・同じ材料グレード・同じ保証年数で、いくらになるか。この土俵をそろえないと、数字は比較になりません。

そのうえで、足場費がいくら計上されているか、その一部をロープアクセスに置き換える提案が含まれているかを見ると、各社の「工法の引き出しの多さ」が見えてきます。同じ建物でも、工法の選択肢を持つ会社は、選択肢の少ない会社より柔軟な価格を出せることが多いのです。相見積もりは、価格交渉の道具であると同時に、各社の実力を見抜く健康診断でもあります。

今やるべき——長期修繕計画 見直しチェックリスト

最後に、総会前・着工前に確認したい項目を、チェックリストにまとめます。理事会で1分、議題に出すだけでも価値があります。

  • 現在の修繕積立金(円/㎡・月)は、国交省ガイドラインの目安と比べてどの位置か
  • 段階増額方式の場合、将来の増額カーブは「初期0.6倍以上・最終1.1倍以内」の目安に収まっているか
  • 長期修繕計画は何年前に作られ、直近の工事単価で見直されているか(5年ごとの見直しが目安)
  • 次回大規模修繕の見積もりは、複数社の相見積もりで妥当性を確認したか
  • 見積もりに「足場費」がいくら含まれ、その一部をロープアクセスで圧縮できないか検討したか
  • 工事仕様は、削るのではなく「同じ予算で広く・確実に」の発想で組まれているか

このうち一つでも「確認していない」があれば、それが点検の出発点です。

よくある質問

Q. 修繕積立金が上がったのは、管理会社が儲けたいからでは?
必ずしもそうとは言えません。建築費・労務費の高騰と、国交省ガイドラインに沿った適正化が主因です。ただし「工事費の妥当性を精査せず転嫁しているだけ」のケースもあるため、額そのものより、根拠となる長期修繕計画と工事仕様の妥当性を確かめることが重要です。

Q. 築古で積立金が足りません。工事を諦めるしかない?
諦める前に、工法の見直しをご検討ください。足場費の圧縮や工種の最適化で、同じ予算でもカバーできる範囲が変わることがあります。「相談だけでも」という段階で構いません。

Q. ロープアクセスは安全なのですか?
産業用ロープによる無足場工法は、所定の資格・手順・複線(二重のロープ)による安全管理のもとで行います。建物の形状や部位によって向き不向きがあるため、足場と組み合わせるハイブリッドで最適化します。

まとめ——数字の裏側を読み、削らずに賢く直す

新築の修繕積立金が6年で67.2%上がったというニュースは、裏を返せば「大規模修繕の単価が、業界全体で上がり続けている」という事実の表れです。既存マンションのオーナーさま・管理組合にとって、次の見積もりは確実に重くなります。

だからこそ、やるべきことは「値上げに耐える」ことだけではありません。長期修繕計画を今の単価で見直し、工事費の最大の変動要素である工法を点検し、足場を二度組まない段取りで、削らずに賢く直す。この順番で考えれば、積立金の上昇圧力とも、もう少し落ち着いて向き合えるはずです。

修繕積立金の値上げや長期修繕計画の妥当性、工法の選択について、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームはこちら。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


出典・参考資料

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