四街道市の賃貸マンション・アパート補助金|オーナー向け2026年版

最終更新:2026年9月5日

千葉県四街道市に賃貸マンション、アパート、戸建賃貸をお持ちのオーナーさまから、この夏よくいただいた質問があります。

「四街道市の補助金、自分の投資用物件でも使えるんですか?」

結論から申し上げます。四街道市の住宅系補助金の多くは「自分が住んでいる住宅」が要件で、投資用物件には原則使えません。ただし、オーナーが直接使える制度が2本、はっきり残っています。しかも片方は、2026年10月30日という現実的な締切が目の前に来ています。

この記事では、四街道市の賃貸物件オーナーが「実際に取りに行ける補助金」だけを、市の一次情報にあたって整理しました。使えない制度は「使えない」と明記します。そのうえで、市で足りない分を国の制度でどう埋めるか、そして受給した補助金がNOI(実質賃料収入)と出口価格にどう効いてくるかまで、数字で追いかけます。

私は建設・改修の現場に20年近くおります。補助金の話は、正直に申し上げると「使える・使えない」の線引きが8割です。ここを曖昧にしたまま工事を進めて、着工後に「対象外でした」と分かる。この事故が一番もったいない。だから今日は、線引きから入ります。


1. 結論:四街道市で賃貸オーナーが直接使えるのは、この2本

先に答えを出します。2026年度(令和8年度)時点で、四街道市の制度のうち投資用・賃貸用の物件でオーナー自身が申請できる可能性が高いのは、次の2本です。

制度名 補助率・上限 オーナー適合性 2026年度の受付状況
危険コンクリートブロック塀等安全対策事業補助金 除却1/2+設置1/2、合計上限10万円 ◎ 居住要件なし。「個人所有」が条件 事前調査申請は2026年10月30日まで、交付申請は11月30日まで先着
木造住宅耐震改修工事費補助金 4/5・上限115万円(2026年度から増額) ○ 一戸建て・併用住宅のみ。共同住宅は対象外 2026年11月30日まで予算の範囲で先着
(参考)木造住宅耐震診断費補助金 2/3・上限8万円 ○ 上と同じ建物要件 同上

(出典:四街道市 危険コンクリートブロック塀等安全対策事業補助金制度/四街道市 木造住宅耐震診断費補助制度・木造住宅耐震改修工事費補助制度)

逆に、名前だけ見ると使えそうで、実は投資用物件に使えない制度もあります。

制度名 使えない理由
四街道市住宅リフォーム補助金(10%・上限10万円) 「補助対象住宅を自ら所有し、かつ、現に居住している者」が要件。加えて2026年度は受付終了
四街道市住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金(蓄電池・EV・V2H) 「申請者が居住する住宅に太陽光が設置されている方のみ」等の居住要件あり

(出典:四街道市 住宅リフォーム補助金制度/四街道市 住宅用設備等脱炭素化促進事業補助制度(令和8年度))

ここが四街道市の特徴です。市の制度は「定住促進」の色が濃く、投資用物件には門戸が狭い。だからこそ、使える2本を確実に取りに行き、足りない分は国の制度で埋める。この二段構えが、四街道市の賃貸オーナーにとって現実的な戦略になります。

「取りこぼし額」を先に見ておく

10万円、115万円と聞くと小さく感じるかもしれません。ただ、オーナーの判断材料は「補助額の絶対値」ではなく「持ち出しがいくら減るか」です。

たとえば、ブロック塀の除却+軽量フェンス設置に税抜40万円かかったとします。補助が10万円上限まで出れば、持ち出しは30万円。実質25%オフです。加えて、この工事は修繕費として損金算入できる可能性が高い(後述)。法人実効税率を30%とすれば、税効果を含めた実質負担は21万円前後まで下がる計算になります。

40万円が21万円になる。しかも、道路際の危険物が消える。ここを「面倒だから」で放置している物件が、四街道市内にはまだかなりあります。


2. 【締切が近い】危険コンクリートブロック塀等安全対策事業補助金

四街道市の賃貸オーナーにとって、2026年度に最も「今すぐ動く価値がある」制度がこれです。

制度の中身

四街道市は、地震時に危険なコンクリートブロック塀等による被害を防ぐため、道路等に面した危険なブロック塀を除却する工事等の費用の一部を補助しています。

項目 内容
対象工事A(除却) 危険コンクリートブロック塀等の全部を除却、または高さを概ね60cm以下に減じる工事
対象工事B(設置) 除却後の代替として必要な軽量フェンス等の設置(除却と併せて行う工事に限る)
補助額 A・Bそれぞれ補助対象経費の1/2(千円未満切り捨て)、合計10万円が限度
対象となる塀 ①個人が所有するもの ②道路等に面し、道路面からの高さが1.2mを超えるもの ③事前調査で危険と判定されたもの
除外 建築基準法に明らかに違反しているものは対象外

(出典:四街道市 危険コンクリートブロック塀等安全対策事業補助金制度、2026年5月8日更新)

オーナーにとっての最大のポイント:居住要件がない

この制度の要綱には、「その塀のある土地に自分が住んでいること」という要件が書かれていません。対象者として定められているのは次の5つです。

  1. 道路等に面した危険コンクリートブロック塀等を所有する個人
  2. 土地又は建物の販売を目的として補助対象工事を行わないこと
  3. 市税等を滞納していないこと
  4. 四街道市暴力団排除条例に規定する暴力団員等に該当しないこと
  5. 同一敷地内において、過去にこの告示による補助金を受けていないこと

つまり、四街道市内のアパート敷地や駐車場の境界に危険なブロック塀を持つ個人オーナーは、自分が住んでいなくても対象になり得るということです。

ただし注意点が2つ。

①「個人」が対象。 資産管理法人名義の物件については、この「個人」要件をどう扱うか、建築課(043-421-6144/6147)に事前確認が必要です。法人所有だと対象外になる可能性があります。個人名義と法人名義の物件が混在しているオーナーさまは、まず名義の棚卸しから始めてください。

②「販売目的の工事は不可」。 売却前に物件を整えるための工事は対象外と読めます。出口(売却)の直前ではなく、保有中に手を打つのが正しい使い方です。

2026年度は「今なら残額を先着で取れる」状態

ここが今回いちばんお伝えしたい話です。四街道市の公式ページには、こう書かれています。

期間(令和8年4月6日から5月7日まで)を設けて募集した結果、予算枠を超えなかったため、抽選は行われませんでした。残額については、先着順で受付いたします。

(出典:四街道市 危険コンクリートブロック塀等安全対策事業補助金制度)

つまり、春の募集で予算が埋まらなかったため、いま申し込めば先着で入れる可能性がある。これは毎年そうなるとは限りません。

そして締切は現実的に迫っています。

手続き 期限(2026年度)
事前調査申請書の提出 2026年10月30日(金)
事前調査後の補助金交付申請書 2026年11月30日(月)
実績報告書の提出 補助対象年度の1月末日まで
補助金交付請求書 補助対象年度の2月末日まで

この記事を公開している2026年9月5日から、事前調査申請の締切まで残り約8週間です。しかも事前調査 → 危険判定 → 交付申請 → 交付決定 → 契約 → 着工、という順番を踏む必要があります。

絶対にやってはいけない「先に契約する」

要綱には太字でこう書かれています。「事前契約されますと補助の対象になりません」、そして「施工業者との契約締結は、市の補助金交付決定後に行われることが補助要件です」。

私が現場で一番悔しい思いをするのが、この事故です。「業者に見積を出させて、そのまま発注してしまった」。この瞬間に補助金は消えます。見積は取っていい。契約書に判を押すのは、市の交付決定通知が届いてから。ここだけは順番を絶対に守ってください。

賃貸オーナーがこの制度を使う実務的な意味

「たかがブロック塀」と思われるかもしれません。オーナー視点で見ると、この工事は3つの意味を持ちます。

第一に、賠償リスクの遮断です。 民法717条の工作物責任は、所有者が無過失でも責任を負う構造になっています。道路に面した1.2m超のブロック塀が地震で倒れて通行人が負傷した場合、責任は所有者に向かいます。四街道市が「危険」と判定した塀を放置していた事実は、その判断において不利に働き得ます。この制度は、補助金であると同時に「市が危険を判定してくれる無料の診断機会」でもあります。

第二に、募集時の第一印象です。 内見に来た入居希望者が最初に目にするのは、室内ではなく敷地の外構です。ひび割れて傾いたブロック塀は、それだけで「管理されていない物件」という印象を与えます。軽量フェンスに替えると敷地が明るくなり、防犯面の印象も上がる。募集単価を1,000円上げる交渉より、この印象改善の方が決まりやすいことがあります。

第三に、出口での指摘事項が1つ減ります。 売却時のエンジニアリングレポートや買主側のデューデリジェンスで、既存不適格のブロック塀は必ず指摘されます。指摘は値引き交渉の材料になります。保有中に補助金で処理しておけば、その材料が消える。10万円の補助で、将来の数十万円の値引き交渉を1つ潰せるという見方もできます。


3. 木造戸建賃貸を持つオーナーへ:耐震改修が4/5・上限115万円に増額

四街道市には木造戸建の賃貸物件、いわゆる「戸建賃貸」を運用しているオーナーさまが少なくありません。この層に効くのが耐震補助です。

2026年度からの変更点が大きい

四街道市は2026年度(令和8年度)から、耐震改修工事費補助金の上限を115万円に引き上げました(あわせて補助対象項目から設計費を除外)。

制度 補助率 上限 対象建物
木造住宅耐震診断費補助金 診断費用の2/3 8万円 在来工法・一戸建てまたは併用住宅・地上2階以下・建築確認済証が平成12年5月31日以前に交付
木造住宅耐震改修工事費補助金 補助対象経費の4/5 115万円 上記+診断で「倒壊する可能性がある/高い」と判定され、改修後に「倒壊しない/一応倒壊しない」が見込めること

(出典:四街道市 木造住宅耐震診断費補助制度・木造住宅耐震改修工事費補助制度、2026年5月8日更新)

補助率4/5は、全国の自治体の耐震改修補助と比べてもかなり手厚い水準です。税抜143万円の耐震改修なら、115万円が補助され、持ち出しは28万円という計算になります。

対象者要件が「所有者」で止まっている

耐震改修の補助対象者として要綱が定めているのは、次の2つだけです。

  1. 補助対象住宅を自ら所有している者
  2. 市税等を滞納していない者

住宅リフォーム補助金のような「現に居住している者」「10年以上居住する意思」といった居住要件が、ここには書かれていません。したがって、平成12年5月31日以前に確認済証が交付された木造の戸建賃貸を所有しているオーナーは、対象になり得ます。

ただし建物要件で明確な線が引かれています。「一戸建て住宅又は併用住宅であること」。つまり、木造アパートのような共同住宅は対象外です。ここは誤解しやすいので、はっきり書いておきます。

  • ○ 昭和・平成初期の木造戸建を賃貸として貸している → 対象になり得る
  • ○ 1階が店舗・2階が住居の併用住宅を貸している → 対象になり得る
  • ✕ 木造2階建てのアパート(共同住宅) → 建物要件で対象外
  • ✕ 軽量鉄骨造・RC造 → 在来工法木造ではないため対象外

判断に迷う物件は、建物の登記上の用途と確認済証の交付日を手元に用意して、建築課に照会するのが最短です。

「2000年5月31日」という線の意味

補助対象が「建築確認済証が平成12年5月31日以前」で切られているのは、いわゆる2000年基準(新耐震のさらに強化版)の前後で木造住宅の耐震性能に差があるためです。1981年6月の新耐震基準だけでなく、2000年6月の改正で地耐力に応じた基礎の仕様、柱頭・柱脚の金物、耐力壁のバランス配置が明確化されました。

四街道市で1980〜1990年代に供給された木造戸建は、この線の手前に入るものが多い。「新耐震だから大丈夫」と思っていた物件が、実は2000年基準を満たしていないというケースは、私の経験上かなりあります。診断費用の2/3・上限8万円が出るうちに、まず診断だけでも受けておく価値はあります。

受付は2026年11月30日まで、先着

耐震補助についても市はこう告知しています。「期間(令和8年4月6日から5月7日まで)を設けて募集した結果、予算枠を超えなかったため、抽選は行われませんでした。残額については、先着順で受付いたします」。受付期間は2026年11月30日(月)まで、予算の範囲内で先着順です。

こちらも事前契約は不可。「これらはすべて事前契約されますと補助対象になりません」と明記されています。


4. 「使えない制度」をはっきりさせる — ここで時間を無駄にしない

補助金記事でありがちなのが、制度名を並べるだけで「あなたが使えるか」に触れないパターンです。オーナーの立場では、使えない制度を早く捨てられることの方が価値があると私は思っています。

四街道市住宅リフォーム補助金 — 投資用は対象外、しかも受付終了

外壁塗装や屋根工事の情報サイトでよく紹介される制度ですが、賃貸オーナーは使えません。

要綱の補助対象者は次のとおりです。

  1. 申請時において、1年以上継続して本市に住所があり、かつ、住民基本台帳に記録されている者
  2. 補助対象住宅を自ら所有し、かつ、現に居住している者
  3. 補助対象住宅に10年以上居住する意思を有する者
  4. 市税等を滞納していない者
  5. 以前にこの告示による補助金を受けていない者

(出典:四街道市 住宅リフォーム補助金制度、2026年8月4日更新)

2号と3号で、投資用物件は明確に締め出されています。補助対象住宅の定義も「一戸建て住宅、共同住宅(専有部分のみ)又は併用住宅(自己居住部分のみ)」です。加えて2026年度の受付はすでに終了しており、市は「令和9年度については、内容が決まり次第、掲載いたします」としています。

なお、この制度には「市内に本店を有する施工業者によるリフォーム工事」という要件もあります。自宅を持つオーナーが翌年度に使う場合は、業者選定の段階からこの条件が効いてくる点は覚えておいてください。

住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金 — 窓は「要綱確認」、蓄電池・EVは居住要件で不可

2026年度の四街道市住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金は、予算1,000万円に対し、2026年8月18日時点で申請36件・256万8,000円(消化率およそ26%)と、残枠に余裕がある状態です。受付は2027年1月29日(金)まで、先着順。

対象設備 補助額
家庭用燃料電池システム(エネファーム) 上限10万円
定置用リチウムイオン蓄電システム 上限7万円
窓の断熱改修 補助対象経費の1/4(上限8万円、マンション管理組合の場合は8万円×改修戸数)
電気自動車・PHV V2H併設あり15万円/なし10万円
V2H充放電設備 補助対象経費の1/10(上限25万円)

(出典:四街道市 住宅用設備等脱炭素化促進事業補助制度(令和8年度)、2026年8月18日更新)

このうち蓄電池・電気自動車・PHV・V2Hは、「申請者が居住する住宅に住宅用太陽光発電設備が設置されている方のみ」が明記されており、投資用物件では使えません。

窓の断熱改修については、要件として示されているのは「既築住宅かつ既存窓であること」「窓全体の熱貫流率Uwが1.9以下であること」(2026年度からの追加要件)で、居住要件は明示されていません。ただし「このほか、補助対象設備の要件は、補助金交付要綱を必ず確認してください」とされており、賃貸物件で使えるかは要綱と環境政策課(043-421-6131)への事前確認が必須です。ここは断定しません。「使えるかもしれないから確認する価値がある」という温度感で捉えてください。

なお、この補助は設置後の申請であり、申請する年度内に着工から完了・支払いまでを終える必要があります。年度末ギリギリの工事は間に合いません。また、窓の断熱改修には10年の財産処分制限期間が設定されている点も、売却を検討中のオーナーには関係してきます。


5. 市で足りない分は国で取る:賃貸オーナー専用の国庫補助が2本ある

四街道市の制度が投資用物件に狭いぶん、国の制度で埋めるのが2026年度の現実解です。特に次の2本は、賃貸集合住宅のオーナーを正面から対象にしています。

5-1. 賃貸集合給湯省エネ2026事業(経済産業省・資源エネルギー庁)

正式名称は「既存賃貸集合住宅用小型省エネルギー型給湯器導入促進事業費補助金」。名前のとおり、賃貸集合住宅専用の補助です。

項目 内容
予算 35億円(令和7年度補正予算)
補助対象者 賃貸集合住宅のオーナー等で、給湯器交換工事の発注者(リース利用含む)。賃貸住戸を2戸以上所有する区分所有者も対象
対象建物 1棟に2戸以上の賃貸住戸を有し、建築から1年以上経過(または居住実績がある)建物
補助額(基本額) エコジョーズ/エコフィール:追い焚きなし5万円/台、追い焚きあり7万円/台(1住戸1台まで)
補助額(加算額) ドレン排水関連工事で3万円/台を加算 → 最大10万円/台
交付申請期間 受付開始〜予算上限まで(遅くとも2026年12月31日)。予約は遅くとも2026年11月16日まで
着工期間 2025年11月28日以降

(出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業 事業概要(経済産業省))

2026年9月4日午前0時時点で、予算に対する補助金申請額の割合は39%(出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業 公式サイト)。まだ6割残っていますが、給湯器の交換需要は冬に向けて跳ね上がります。10月〜11月の駆け込みで一気に消化される可能性は見ておくべきです。

数字で考えてみます。四街道市内に20戸の賃貸マンションを持ち、追い焚き機能付き給湯器を20台まとめて交換した場合。

  • 基本額7万円 × 20台 = 140万円
  • ドレン排水工事の加算が全戸で認められれば3万円 × 20台 = 60万円
  • 合計で最大200万円

給湯器交換の工事費が1台20万円だとすると総額400万円。その半分が国から戻る計算です。しかも入居者にとっては「給湯器が新しい」「ガス代が下がる」という実利があり、退去抑止に直結します。

ひとつ実務上の注意です。オーナーが直接申請することはできません。申請手続きは、あらかじめ登録された「賃貸集合給湯省エネ事業者(施工業者またはリース事業者)」が行い、補助金はオーナーに還元される仕組みです。したがって業者選定の段階で「登録事業者かどうか」を必ず確認してください。登録のない事業者と契約すると補助対象になりません。

なお、国内に所有または管理する既存賃貸集合住宅の住戸数が200戸以上の事業者は、事務局に申請して認められれば自ら手続きできる例外もあります。規模のあるオーナー法人は検討の余地があります。

5-2. 先進的窓リノベ2026事業(環境省)

窓の断熱改修に対する、金額規模が最も大きい国庫補助です。

項目 内容
予算 1,125億円(令和7年度補正予算)
補助額 最大100万円/戸
中高層集合住宅(4階建以上)の上限 1棟につき100万円 × 総戸数
下限 1申請あたりの合計補助額が5万円未満は申請不可
申請期限 遅くとも2026年12月31日(予算消化により前倒しの可能性)

(出典:先進的窓リノベ2026事業 事業概要(環境省))

2026年9月4日午前0時時点の予算消化率は21%(出典:先進的窓リノベ2026事業 公式サイト)。給湯器の39%より余裕がありますが、こちらも年末に向けて加速します。

窓の断熱改修は、オーナーにとって「入居者の光熱費を下げつつ、賃料を維持する」という珍しい種類の投資です。同じ築年数の競合物件と比べて、内窓が入っているだけで内見時の説明材料が1つ増える。特に四街道市のように新築戸建の供給が続き、賃貸が新築と比較されやすいエリアでは、この差は効いてきます。

こちらも申請は登録事業者(窓リノベ事業者)経由です。オーナーの直接申請はできません。

市と国、どちらを先に動かすか

四街道市の制度と国の制度は、併用の可否が制度ごとに異なります。一般論として、同一の工事に対して国と市の補助を二重取りすることはできません。四街道市の住宅リフォーム補助金には「本市で実施している他の補助金又は助成金の制度がない工事」という要件が明記されているとおりです。

私が提案するのは、工事の部位ごとに補助金を割り当てる組み方です。

  • 給湯器 → 国(賃貸集合給湯省エネ2026)
  • 窓・ドア → 国(先進的窓リノベ2026)
  • ブロック塀 → 市(危険コンクリートブロック塀等安全対策)
  • 木造戸建賃貸の構造補強 → 市(木造住宅耐震改修)
  • 外壁・屋上防水・シーリング → 補助対象外。自己資金または借入で計画的に

こう整理すると、補助対象外の外壁・防水こそが、オーナーの持ち出しが最も大きい領域だと分かります。ここをどう圧縮するかが、次の話です。


6. 補助対象外の外壁・防水を、足場を組まずに直すという選択肢

四街道市の物件で、オーナーの持ち出しが最も大きくなるのは外壁塗装と屋上・バルコニー防水です。ここに補助金はほぼ効きません。だからこそ、工法選択がそのままキャッシュフローに跳ね返ります。

私が20年やってきて確信しているのは、大規模修繕の総費用のうち、仮設足場が占める割合は決して小さくないという事実です。物件形状や高さによりますが、外壁改修工事において足場の仮設・解体費が全体の2〜3割に及ぶケースは珍しくありません。しかも足場は、建物を1ミリも良くしない費用です。

ロープアクセス工法(無足場工法)という選択

株式会社明誠は、大規模修繕を3つの工法からご提案しています。

工法 内容 向いている物件
通常足場工法 従来型の仮設足場を架設して施工 中低層、形状が複雑、全面的な改修
ロープアクセス工法(無足場工法) 産業用ロープで作業員が懸垂降下し、足場を組まずに施工 高層、足場架設が困難、部分補修、コスト最重視
ハイブリッド工法 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分け 大規模・複雑な物件で総合コストを最適化したいケース

賃貸オーナーにとって、ロープアクセス工法の価値はコストだけではありません。

入居者の生活影響が桁違いに小さいことが、実務上はむしろ効きます。足場を架設すると、外壁全面が数か月にわたって養生シートで覆われます。バルコニーは使えず、窓は開けられず、日照は落ちる。そして何より、足場は防犯上の侵入経路になります。この間に「工事がうるさいから」「洗濯物が干せないから」という理由で退去が出ると、原状回復費と募集費用と空室損失が同時に発生します。

入居率1%の差が、20戸・平均賃料7万円の物件で年間およそ8.4万円のキャッシュフロー差になります。工事を機に2戸が退去し、それぞれ2か月空室になれば、それだけで28万円が消える。足場代の削減額より、退去による損失の方が大きくなることは十分あり得ます。

ロープアクセスは、必要な部位に、必要な期間だけ人が降りてくる工法です。バルコニーは基本的に使えます。工期も短い。「入居者に気づかれにくい大規模修繕」が成立します。

ロープアクセス工法の技術情報・安全基準・施工事例は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。工法の適合判断でお悩みのオーナーさまは、こちらもあわせてご覧ください。

明誠は、ロープアクセス工事として日本で初めてのフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しています。中間マージンを重ねない体制で、高品質と低価格の両立を実現しています。工法の詳細はロープアクセス工法のご紹介、大規模修繕の全体像は大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。


7. 税務:補助金は「もらって終わり」ではない

オーナー記事なので、ここは避けて通れません。補助金の受給は、税務上のイベントです。

7-1. 補助金は雑収入として課税される

受け取った補助金は、原則として受給した事業年度の雑収入(益金)に計上します。10万円の補助を受けたら、その10万円に税金がかかるということです。法人実効税率30%なら、手残りは7万円。「10万円もらえる」ではなく「実質7万円」で計算するのが、オーナーの正しい読み方です。

なお、固定資産の取得に充てた国庫補助金等については、一定の要件のもとで圧縮記帳により課税を繰り延べる制度があります(法人税法第42条等)。ただし適用可否は補助金の性質と資産計上の有無で変わります。必ず顧問税理士に確認してください。私は税理士ではありませんので、ここでは制度の存在をお伝えするに留めます。

7-2. 資本的支出か、修繕費か

オーナーにとって補助金額より影響が大きいのが、この区分です。

区分 会計処理 キャッシュフローへの影響
修繕費 支出年度に全額損金算入 その年の課税所得を大きく圧縮。節税効果が即効性を持つ
資本的支出 資産計上し、耐用年数にわたり減価償却 節税効果が長期に分散。単年度のキャッシュフローは改善しにくい

大まかな考え方として、原状回復・維持管理のための支出は修繕費、価値を高める・使用可能期間を延長する支出は資本的支出とされます。

  • 危険ブロック塀の除却 → 修繕費として処理できる可能性が高い
  • 除却後の軽量フェンス新設 → 新たな構築物として資本的支出になり得る
  • 既存と同等の外壁塗り替え → 修繕費の余地が大きい
  • 断熱性能を新たに付加する窓改修・耐震補強 → 資本的支出と判断されやすい

同じ工事でも、見積書の記載の仕方ひとつで判断が分かれることがあります。「外壁改修工事一式」とだけ書かれた見積書は、税務上いちばん困ります。私が見積書を作るとき、部位別・工種別に分けて記載するようにしているのは、この理由です。見積の粒度は、そのまま税務の柔軟性です。

7-3. 出口価格への効き方

収益還元法では、物件価格はおおむねNOI ÷ キャップレートで決まります。四街道市のような千葉県北西部の住宅系エリアで、仮にキャップレートを5.5%とします。

年間NOIが10万円改善すれば、理論上の物件価値は10万円 ÷ 5.5% ≒ 約182万円上がる計算になります。

給湯器交換で光熱費の訴求ができ、退去が年1戸減った。窓の断熱で賃料を据え置いたまま更新が進んだ。塀を直して内見の印象が上がり、空室期間が2週間短くなった。ひとつひとつは地味です。しかし積み上がったNOIは、キャップレートで割り戻された瞬間に、桁の違う数字になります。

これが、私が「補助金は単年度の得ではなく、出口までの設計だ」と申し上げる理由です。


8. 四街道市という市場を、オーナー視点でどう読むか

制度の話から少し離れて、エリアの話をします。

四街道市は、JR総武本線で千葉駅から一駅、東京都心へも通勤圏という立地から、子育て世代の流入が続いてきたベッドタウンです。新築一戸建てが比較的取得しやすい価格帯で供給されており、住宅着工も一定量が続いています。

このエリア特性は、賃貸オーナーにとって両刃です。

プラス面は、賃貸需要の母数が安定していること。転入してくる世帯が、持ち家を取得するまでの数年間を賃貸で過ごす。この「持ち家までの助走期間」の需要が、四街道市の賃貸市場を支えています。

マイナス面は、競合が新築戸建になることです。「もう少し出せば家が買える」という判断が働きやすい市場では、築20年、築30年の賃貸物件は、価格ではなく「暮らしの質」で選ばれないと生き残れません。給湯器、窓、外構。今回取り上げた制度が効く部位が、まさにその「暮らしの質」の入口にあたります。

もう一点。四街道市は隣接する千葉市(若葉区・稲毛区)、佐倉市、八街市と入居者を取り合う関係にあります。近隣自治体では、たとえば千葉市が分譲マンション向けの耐震診断・耐震改修補助を持つなど、制度の設計が自治体ごとに異なります。複数の自治体に物件を分散して持っているオーナーさまは、「物件ごとにどの市の制度が効くか」を一覧化しておくことをおすすめします。私がお手伝いする場合も、まずこの一覧作りから始めます。


9. 2026年秋、四街道市のオーナーが今週やるべきこと

締切から逆算します。今日は2026年9月5日です。

時期 やること
9月中 ①所有物件の名義(個人/法人)を棚卸し ②道路に面したブロック塀の高さを実測(1.2m超か) ③木造戸建賃貸の確認済証の交付日を確認(平成12年5月31日以前か)
9月〜10月上旬 四街道市建築課(043-421-6144/6147)へ事前相談。法人名義の可否、建物用途の該当性をここで潰す
〜2026年10月30日 ブロック塀の事前調査申請書を提出(★この締切が最優先★)
〜2026年11月30日 ブロック塀の補助金交付申請書/木造耐震の申請を提出。交付決定前の契約は厳禁
10月〜11月 給湯器・窓は国の制度へ。登録事業者かどうかを確認して見積を取得。予算消化率を随時チェック
12月〜2027年1月 工事完了、実績報告(1月末) → 交付請求(2月末)

太字にした10月30日が、この記事でいちばん重要な日付です。

この順番を守れなかった瞬間に、補助金はゼロになります。逆に言えば、順番さえ守れば、書類の難易度はそれほど高くありません。市の様式はすべて公式サイトからダウンロードできます。


よくある質問(FAQ)

Q1. 四街道市の補助金は、賃貸物件(投資用)でも使えますか?
A. 制度によります。危険コンクリートブロック塀等安全対策事業補助金と木造住宅耐震診断・耐震改修補助は居住要件が明示されておらず、所有者であれば対象になり得ます。一方、住宅リフォーム補助金は「自ら所有し、現に居住している者」が要件で、投資用物件には使えません(出典:四街道市)。

Q2. 木造アパートでも耐震改修補助は使えますか?
A. 使えません。四街道市の木造住宅耐震改修工事費補助制度は、対象建築物を「一戸建て住宅又は併用住宅」と定めており、共同住宅は建物要件で対象外です。戸建賃貸・併用住宅であれば対象になり得ます。

Q3. ブロック塀の補助は、法人名義の物件でも申請できますか?
A. 要綱の対象者は「危険コンクリートブロック塀等を所有する個人」と定められています。法人名義の場合の取扱いは、四街道市建築課(043-421-6144/6147)への事前確認が必要です。個人名義であることが要件と読めるため、断定はできません。

Q4. 工事を先に契約して、あとから補助金を申請できますか?
A. できません。四街道市の要綱には「事前契約されますと補助の対象になりません」「施工業者との契約締結は、市の補助金交付決定後に行われることが補助要件です」と明記されています。見積取得は自由ですが、契約は交付決定後です。

Q5. 賃貸集合給湯省エネ2026事業は、オーナーが自分で申請できますか?
A. できません。申請は登録済みの「賃貸集合給湯省エネ事業者(施工業者またはリース事業者)」が行い、補助金がオーナーに還元される仕組みです。ただし、所有・管理する既存賃貸集合住宅が200戸以上の事業者は、事務局に申請して認められれば自ら手続きできます(出典:経済産業省)。

Q6. 受け取った補助金に税金はかかりますか?
A. 原則として雑収入(益金)として課税対象になります。固定資産の取得に充てた国庫補助金等については圧縮記帳による課税繰延べの制度がありますが、適用可否は個別判断です。顧問税理士にご確認ください。


この記事のポイントまとめ

  • 四街道市で賃貸オーナーが直接使えるのは、ブロック塀除却と木造戸建の耐震の2本
  • 危険ブロック塀の事前調査申請は2026年10月30日、交付申請は11月30日が締切
  • 木造住宅耐震改修は2026年度から4/5・上限115万円に増額(共同住宅は対象外)
  • 住宅リフォーム補助金は自己居住要件があり、投資用物件には使えない
  • 給湯器は国の賃貸集合給湯省エネ2026事業(最大10万円/台、9月4日時点で予算39%消化)
  • 窓は先進的窓リノベ2026事業(最大100万円/戸、同21%消化)で取りに行く
  • 補助対象外の外壁・防水は、足場を組まない工法選択でコストと退去リスクを圧縮する
  • 補助金は雑収入として課税。修繕費か資本的支出かの区分が手残りを左右する

四街道市に物件をお持ちで、まだブロック塀の高さを測っていないオーナーさま。まずはメジャー1本です。道路面から1.2mを超えているなら、10月30日までに動く価値があります。

私どもは、1棟の現地調査と、工法別のコスト比較シミュレーションだけでもお受けしています。補助金が使えるかどうかの見立てと、使えない部位をどう安く直すかの two-track で整理してお出しします。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。お問合せはこちら。

10月末までに動けるかどうかが、今年の分かれ目です。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション・ビル・ホテルの大規模修繕/ロープアクセス工法(無足場工法)/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がける改修会社。通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3工法から、建物にとって最適な方法をご提案できる日本でも数少ない会社です。ロープアクセス工事としては日本初となるフランチャイズ展開を行い、塗装・防水・タイル・電気・看板などの専門職が加盟しています。

最終更新:2026年9月5日

(注記)本記事に記載した制度内容・金額・期日は2026年9月5日時点で公表されている情報に基づきます。予算の消化状況により受付が早期に終了する場合があります。申請前には必ず各制度の公式サイトおよび担当窓口で最新情報をご確認ください。


出典・参考資料

お問い合わせ先(四街道市)
都市部建築課:043-421-6144/043-421-6147
環境部環境政策課:043-421-6131

南伊豆町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

Q. 静岡県賀茂郡南伊豆町の分譲マンションや賃貸物件で、2026年度(令和8年度)に大規模修繕を計画しています。町から出る補助金はありますか。
A. 分譲マンションの共用部そのものを対象にした南伊豆町独自の補助金は、2026年9月5日時点で確認できません。ただし南伊豆町には、工事の内容ではなく「どう組み合わせるか」で可否が変わる制度があります。中心は「南伊豆町住宅リフォーム振興事業」(補助率20%・上限20万円)。この制度の対象工事表には、「外壁のみの塗装工事」は否とはっきり書かれています(出典:南伊豆町住宅リフォーム振興事業 概要)。同じ塗装でも、屋根やといを一緒に直せば対象になる。この一行を知っているかどうかで、20万円が動きます。

2026年9月5日 更新


この記事の結論:南伊豆町で押さえるべきことは「3つ」

先に結論から書きます。南伊豆町で建物の修繕を考えるとき、押さえるべきことは3つです。

  1. 「外壁だけ塗る」と補助が出ない。「外壁+屋根+とい」なら出る
    南伊豆町住宅リフォーム振興事業の対象工事一覧では、「屋根瓦の取替え、外壁の補修」は可、「外壁のみの塗装工事」は否、そして修繕の項目には「塗装工事(外壁のみを行う場合を除く。)」と書かれています。工事の切り出し方ひとつで、補助率20%・上限20万円の可否が変わります。
  2. 南伊豆町の制度は、ほぼすべてが「町内登録業者」を条件にしている
    住宅リフォーム振興事業は「資格登録を受けた町内施工業者が自ら行う改修工事」が条件。空き家バンクリフォーム補助金も「町内施工業者の請負による工事」が条件です。制度を使うつもりなら、業者選定より先に登録状況の確認が要ります。
  3. 人口7,034人・3,768世帯の町で、共用部の相談先は町ではなく静岡県
    南伊豆町は「町」なので、マンション管理計画認定制度の認定権者は静岡県です。そして静岡県は令和8年度、マンション管理士の無料派遣を10件だけ実施しています。申込期限は令和8年11月14日(土)。9月に読んでいるなら、まだ間に合う話です。

以下、順番に一次情報で確認していきます。

制度名 補助率・限度額 共用部・賃貸に使えるか 窓口
南伊豆町住宅リフォーム振興事業 工事費の20%・上限20万円(工事費10万円以上) 現に居住する自己所有住宅が対象。賃貸用・共用部は対象外。外壁のみの塗装も対象外 地域整備課 0558-62-6277
南伊豆町空き家バンクリフォーム補助金 所有者=1/3・上限50万円/入居者=2/3・上限80万円 空き家バンク登録物件のみ。町内施工業者要件あり 企画課 0558-62-6288
同・家財処分 所有者=2/3・上限30万円/入居者=1/2・上限20万円 同上。居住部分に係るものに限る 企画課 0558-62-6288
木造住宅耐震改修助成(プロジェクトTOUKAI‐0) 115万円/戸(補強計画一体型) 昭和56年5月31日以前の木造住宅。RC造マンションは対象外 地域整備課 0558-62-6277
ブロック塀等耐震改修促進事業(撤去) 「長さ(m)×9,200円」と工事費の少ない方の1/2・上限10万円 道路や避難地に面する塀。敷地内の該当塀なら可能性あり 地域整備課 0558-62-6277
ブロック塀等耐震改修促進事業(改善) 「長さ(m)×12,800円」と工事費の少ない方の1/3・上限16万6千円 同上。新設側に設置基準あり 地域整備課 0558-62-6277
老朽危険家屋等解体撤去補助金 対象経費の4/5以内。所有者・相続人=50万円/行政区代表者=300万円 法人・不動産業を営む方は対象外と明記 防災課 0558-62-6211
合併処理浄化槽設置補助金 5人槽=386千円/7人槽=482千円 販売や賃借を目的とした住宅は対象外。区域限定 生活環境課 0558-62-6270
空き店舗対策事業補助金 改装=上限50万円/家賃=月5万円×最大3か月 空き店舗を借りて新規開業する事業者向け 企画課 0558-62-6288
マンション管理計画認定制度 認定制度(補助ではない)。手数料4,000円〜28,100円 町域のため静岡県が認定権者 静岡県住まいづくり課 054-221-3084

南伊豆町の建物が置かれている前提を、3つの数字で

制度の話に入る前に、南伊豆町という町の輪郭を数字で押さえておきます。私は現場を見に行く前に、いつもその町の人口と世帯数を見るようにしています。建物がどう使われているかが、そこから見えてくるからです。

数字①:人口7,034人/世帯3,768世帯(令和8年8月1日現在)

2026年(令和8年)8月1日現在、南伊豆町の人口は7,034人(日本人住民6,934人・外国人住民100人)、世帯数は3,768世帯です(出典:令和8年度南伊豆町地区別・男女別人口)。

1世帯あたり1.87人。単身と二人暮らしが中心の町です。同じ資料の4月1日時点は7,061人でしたから、4か月で27人減っています。年率に直すと約1.1%の減少です。

もうひとつ、この表を見ていて私が気になったのは、外国人住民の動きです。4月1日に51世帯80人だったものが、8月1日には71世帯100人になっています。4か月で20人増。数としては小さいのですが、減り続ける町の中で増えている数少ない層であることは、賃貸物件を持つオーナーさまにとって無視できない事実だと思います。

数字②:35の行政区が6地区に分かれている

南伊豆町は、南崎・竹麻・南中・三坂・三浜・南上の6地区、合わせて35の行政区で構成されています。人口の多い区は湊(912人)、下賀茂(822人)、加納(524人)、青市(514人)。一方で吉田は11人、落居は18人、平戸は28人です(出典:令和8年度南伊豆町地区別・男女別人口)。

同じ町の中に、800人規模の集落と、10人台の集落が同居している。この差は、修繕工事の実務にそのまま効いてきます。

  • 資材を積んだ4トン車が入れるかどうかが、集落によって違う
  • 足場を組む前に、隣家との距離を実測しないと図面どおりにいかない
  • 仮置き場が取れない現場が普通にある

私は伊豆半島の現場でこれを何度も経験しました。図面上は2メートル空いているはずの隣地境界が、実際に行くと1.2メートルしかない。石積みの擁壁が張り出していて、足場の建地が立たない。こういう現場では、着工前の実測が工程表そのものを左右します。

数字③:昭和56年5月31日という境界線

南伊豆町の無料耐震診断(わが家の専門家診断事業)の対象は「昭和56年5月31日以前に建築された既存木造住宅」です(出典:南伊豆町 無料耐震診断・耐震補助制度 プロジェクト「TOUKAI‐0」)。

この日付は新耐震基準の施行日で、全国共通の線引きです。老朽危険家屋等解体撤去補助金でも、対象は「昭和56年5月31日以前に着工された一戸建て住宅または併用住宅」と定められています(出典:南伊豆町 老朽危険家屋等解体撤去補助金について)。

つまり南伊豆町の建物支援は、この一本の線を軸に組み立てられているということです。管理組合の理事さまが個人で古い家屋も持っている場合、そちらは診断・改修・解体のいずれの制度も射程に入ります。マンションの理事会の話と、ご自身の実家の話は、同じ窓口で相談できることが少なくありません。


【背骨①】南伊豆町住宅リフォーム振興事業——「外壁だけ塗る」と出ない補助金

この記事で一番お伝えしたいのが、この制度です。

制度の骨格

南伊豆町住宅リフォーム振興事業は、町内施工業者を使って住宅の安全性・耐震性・居住性を高めるリフォームを行う場合に、工事費の一部を町が補助する制度です(出典:南伊豆町住宅リフォーム振興事業 概要)。

項目 内容
補助率 20%(1,000円未満は切捨)
補助額上限 20万円
対象工事費 10万円以上(消費税等を除く)
対象者 町税等の滞納がなく、南伊豆町に1年以上住所を有し、対象住宅の所有者であって現に居住している者
回数 同一住居・同一人について1回限り
施工者 資格登録を受けた町内施工業者が自ら行う改修工事
申請時期 工事着手前に申請。完了後14日以内かつ申請年度の3月10日までに報告
予算 限りあり。予算がなくなり次第、受付終了

補助率20%・上限20万円ということは、工事費100万円で20万円に到達します。100万円を超える工事なら、どこまで大きくしても補助額は20万円で頭打ちです。

対象工事表に書かれている「否」の意味

この制度の要綱には、対象工事の可否がかなり細かく例示されています。私が読んでいて手が止まったのが、次の並びです。

工事内容 可否 備考(要綱の記載)
屋根瓦の取替え、外壁の補修 可 —
壁紙張替え等の内装工事 可 —
ガラス(サッシ)の取替え工事 可 —
住宅に付随するバルコニー、ベランダ、テラスの設置、修繕 可 ウッドデッキ等は除く
フローリング等の床張替え工事 可 —
外壁のみの塗装工事 否 他工事と共であれば可
門扉、ブロック壁の設置 否 住宅ではないため対象外
車庫の増改築 否 住宅ではないため対象外
造園工事、植木剪定 否 リフォームではないため対象外
住宅の一部又は全部を取り壊す工事 否 リフォームではないため対象外

(出典:南伊豆町住宅リフォーム振興事業 概要)

「外壁のみの塗装工事 → 否。ただし他工事と共であれば可」。

そして修繕の定義側にも、「塗装工事(外壁のみを行う場合を除く。)」という書き方で同じ趣旨が明記されています。

これは、外壁塗装を生業にしてきた私にとって、たいへん示唆的な一行です。町としては「塗り替えだけの美観工事に補助は出さない。建物の耐久性・安全性に踏み込む工事なら出す」という思想なのだと読めます。

では、どう組めば対象になるのか

正直に申し上げます。ここは工事会社の腕の見せどころです。

住宅の劣化は、外壁だけで進むものではありません。私が現場で見てきた限り、外壁にひび割れが出ている建物は、ほぼ例外なく次のどこかも傷んでいます。

  • とい(雨どい):紫外線で硬化し、継手が外れかけている
  • 屋根:瓦のずれ、棟の漆喰の痩せ、スレートの反り
  • シーリング(目地に詰めたゴム状の防水材):肉痩せ、切れ
  • バルコニーの床防水:膨れ、めくれ
  • 軒天(のきてん、屋根の裏側):雨漏りによる染み

外壁の塗り替えを検討する段階で、これらを一緒に点検して工事範囲に入れる。要綱の言う「他工事と共であれば可」は、そのまま建物にとって正しい直し方でもあります。私が「必ずワンセットで提案するようにしています」と申し上げているのは、補助金のためではなく、片方だけ直しても数年で同じ場所が傷むからです。

なお、この制度は現に居住している自己所有住宅が対象です。賃貸に出している物件や、分譲マンションの共用部そのものには使えません。ここは誤解のないよう、はっきり書いておきます。

「1年以上住所を有する」という条件の重み

見落とされやすいのが、対象者の要件です。「南伊豆町に1年以上住所を有する者(住民票に記載がある者)」。

移住してきて半年、家を直したい——という方は、この制度をまだ使えません。逆に言えば、移住1年目は空き家バンクリフォーム補助金、2年目以降は住宅リフォーム振興事業という順番で考えると整理がつきます。両制度は併給できない仕組み(空き家バンク側の要綱で、住宅リフォーム振興事業の対象経費に含まれているものは除くと明記)ですから、どちらを先に使うかは設計の問題です。


【背骨②】空き家バンクリフォーム補助金——所有者と入居者で額が「逆転」する

南伊豆町のもうひとつの柱が、空き家バンクリフォーム補助金です。空き家バンクに登録された物件のリフォーム工事費と家財処分費を補助します(出典:南伊豆町空き家バンクリフォーム補助金)。令和8年度の申請受付は4月1日から始まっています。

補助額の設計が面白い

区分 物件の所有者 入居者・入居予定者
リフォーム工事 工事費の1/3・上限50万円 工事費の2/3・上限80万円
家財処分 費用の2/3・上限30万円 費用の1/2・上限20万円

リフォームは入居者側が手厚く、家財処分は所有者側が手厚い。この逆転は、偶然ではないと私は読んでいます。

  • 家財処分は所有者の仕事:先代が残した家財を片づけない限り、そもそも物件が売り物・貸し物にならない。だから所有者に厚く出す
  • リフォームは入居者の負担になりがち:買った・借りた後に自腹で直すことになるから、入居者に厚く出す

制度の設計者が「どこで話が止まるか」を分かっているということです。実際、伊豆の空き家で私が相談を受けるとき、最初の壁はほぼ家財です。仏壇、桐箪笥、農機具、家族写真。これらを誰がどう処分するかで、半年止まる物件を何度も見てきました。

見落としやすい3つの条件

  1. 町内施工業者の請負であること
    リフォーム工事は「町内施工業者の請負による工事の経費であること」と明記されています。ここでいう町内施工業者とは「南伊豆町住宅リフォーム振興事業(地域整備課)において施工業者の資格登録がされている者」を指します。登録の有無は企画課(0558-62-6288)または地域整備課(0558-62-6277)で事前に確認できます。
  2. 家財処分は「一般廃棄物処理業の許可を受け、町内に事務所・事業所を有する者」
    こちらはさらに条件が絞られています。廃棄物の処理及び清掃に関する法律第7条の許可が要件です。町外の便利屋さんに頼んだ分は対象外になります。
  3. 所有者側には「3年」の縛りがある
    所有者が補助を受ける場合、補助事業完了の日から継続して3年以上空き家バンクに登録し続けるか、3年未満で入居者を決めて売買契約を結ぶか、賃貸借契約を契約期間2年以上で締結するか。いずれかを満たす必要があります。入居者側には交付後5年間継続して居住する意思が求められます。

そして「家財」「リフォーム」それぞれ1物件に対し1回まで。1人1回ではなく1物件1回なので、所有者が変わっても枠は復活しません。中古で買った物件が過去に補助を受けていた、というケースは実際に起こり得ます。取得前の確認が要ります。


【背骨③】老朽危険家屋等解体撤去補助金——50万円と300万円を分けるもの

南伊豆町の制度で、金額の桁が違うのがこれです(出典:南伊豆町 老朽危険家屋等解体撤去補助金について)。

補助対象者 補助率 上限
老朽危険家屋等の所有者(登記簿・固定資産課税台帳の登録名義人) 対象経費の4/5以内 50万円
その相続人 対象経費の4/5以内 50万円
老朽危険家屋等の存する行政区の代表者(所有者等から解体撤去の同意を受けた者) 対象経費の4/5以内 300万円

同じ工事で、6倍の差がつきます。

行政区が主体になって、地域の危険家屋を片づける場合に300万円まで出す。裏を返せば、「これは個人の資産の問題ではなく、集落の安全の問題だ」と町が認めた場合に、桁を上げる設計です。避難路をふさぐ空き家、隣家に瓦を落としそうな廃屋——南伊豆町のように道が細く、高齢化した集落が多い町では、切実な話だと思います。

ここは、はっきり注意してください

補助対象から明確に外されている方がいます。

※町税等を滞納している方、法人・不動産業を営む方、暴力団員等の方は対象外です。

不動産業を営む方は使えません。収益物件として取得した古家を壊して建て替える、という使い方は想定されていない制度です。加えて、

  • 個人所有で、所有権以外の権利(抵当権など)が設定されていないこと
  • 解体撤去後2年を経過しないうちに、建造物の建築または土地の譲渡・贈与を目的としていないこと
  • 空家になってから5年以上使用がなされていないことが常態であること

という要件があります。特に2番目は返還規定にもなっていて、解体後2年以内に建てたり売ったりすると、交付決定が取り消され、補助金の返還を求められることがあります。更地にして売る前提では使えない、と理解しておくのが安全です。


木造住宅の耐震は115万円。ただしRC造マンションは対象外

南伊豆町は静岡県のプロジェクト「TOUKAI(東海・倒壊)‐0(ゼロ)」に参加しています(出典:南伊豆町 無料耐震診断・耐震補助制度 プロジェクト「TOUKAI‐0」)。

段階 内容
無料耐震診断(わが家の専門家診断事業) 町が木造住宅耐震診断補強相談士を派遣し、無料で診断・相談。対象は昭和56年5月31日以前建築の既存木造住宅。店舗等併用住宅は、住宅部分の床面積が店舗等部分より大きい場合に対象
木造住宅耐震改修助成(補強計画一体型事業) 補強計画策定と補強工事を同一年度に連続して実施する事業。耐震評点1.0未満を1.0以上にする補強計画(評点が0.3以上向上するものに限る)が対象。補助額115万円/戸

「補強計画と補強工事を同一年度に」という条件が肝です。年度をまたぐと一体型の枠から外れます。逆算すると、年内に診断・計画まで終えて、年明けに工事着工というスケジュールでないと収まりません。9月は、ぎりぎり間に合う時期です。

ここで管理組合の方にはっきり申し上げておきます。この115万円は木造住宅が対象です。鉄筋コンクリート造(RC造)の分譲マンションには使えません。伊豆エリアの記事を読んでいて「耐震に100万円以上出るらしい」という話だけが伝わることがあるのですが、対象が違います。マンション本体の耐震は、別の枠組みで考える必要があります。

敷地内のブロック塀は、着工前申請を忘れずに

マンションや賃貸物件の敷地でも実際に効くのが、ブロック塀の制度です(出典:南伊豆町 ブロック塀の耐震改修に係る助成制度について)。

区分 補助金額
撤去 「塀の長さ(m)×9,200円」と実際の工事費を比較して少ない方の1/2。上限10万円
改善(撤去して安全な壁・フェンスを新設) 「塀の長さ(m)×12,800円」と実際の工事費を比較して少ない方の1/3。上限16万6千円

対象は「所有者が行う道路や避難地に面する危険なブロック塀等」。工事を行う前に申請手続きが必要とページに明記されています。大規模修繕の外構工事でブロック塀をやり替えるなら、着工前に地域整備課へ相談しておく。順番を間違えると、出るはずのものが出ません。

なお、新設側には設置基準があります。「安全な新しい壁やフェンス」の内容は、事前に窓口で確認しておくのが確実です。


合併処理浄化槽は「賃貸目的」だと使えない

賃貸オーナーさまにとって重要な除外規定なので、独立して書きます。

南伊豆町は、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への付け替え、または汲取り便槽から合併処理浄化槽の新設に対して補助を出しています(出典:南伊豆町 合併処理浄化槽の設置補助金について)。

人槽 補助額
5人槽 386,000円
7人槽 482,000円

金額は大きいのですが、対象者の条件にこう書かれています。

販売や賃借を目的とした住宅に設置するものでないこと

賃貸物件には使えません。加えて、

  • 補助対象区域から除かれる地区:公共下水道区域(湊・手石・下賀茂地区)、漁業集落排水区域(西子浦・東子浦・中木・妻良地区)※一部区域を除く
  • 町内に住所を有すること、町税等の未納がない世帯であること
  • 環境配慮型浄化槽を設置すること
  • 専用住宅または併用住宅(延べ床面積の1/2以上を居住用)の所有者であること

対象区域の除外は、地図で確認しないと判断できません。人口の多い下賀茂(822人)・湊(912人)・手石(485人)が下水道区域に入っているので、町の中心部はそもそも対象外という構造です。

もうひとつ、静岡県固有の運用として、戸建住宅の処理対象人員算定で、JIS A3302-2000の表2-イ「130」を令和3年4月1日から「145」として運用する、という記載があります。人槽が変われば補助額も変わります。設計段階での確認事項です。


マンション管理計画認定制度の窓口は「静岡県」です

南伊豆町は町域のため、マンション管理計画認定制度(国土交通省)の認定権者は静岡県になります。市域なら市が窓口ですが、町村部は都道府県が担います(マンションの管理の適正化の推進に関する法律に基づく制度)。

令和8年4月1日に手数料が改定されています

静岡県は令和8年4月1日付で認定申請手数料を改定しました(出典:静岡県 マンションの管理)。

事前確認適合証 長期修繕計画数 令和8年3月31日まで 令和8年4月1日から
有り 1 3,800円 4,000円
有り 2以上 3,800円+1,700円×(計画数-1) 4,000円+1,800円×(計画数-1)
無し 1 26,900円 28,100円
無し 2以上 26,900円+15,500円×(計画数-1) 28,100円+16,200円×(計画数-1)

注目していただきたいのは、事前確認適合証の有無で7倍の差がつくことです。適合証があれば4,000円、なければ28,100円。

事前確認適合証は、公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」を利用して取得します。県へ直接申請することもできますが、その場合は適合証なしの手数料が適用されます。更新時も同じ表です。先にセンターのサービスを通すのが、費用面では合理的な流れになります。

令和8年度、静岡県はマンション管理士を「10件」無料派遣します

これは9月に読む価値のある情報です。静岡県は令和8年度マンション管理組合活動活性化支援事業として、マンション管理士の無料派遣を実施しています(出典:静岡県 マンションの管理)。

項目 内容
受付件数 10件(上限に達した時点で申込終了)
派遣回数 各管理組合2回まで
申込期限 令和8年11月14日(土)まで
派遣期限 令和9年1月31日(日)まで
申込先 一般社団法人静岡県マンション管理士会(メールまたはファクス)
委託先 同上

静岡県内全域で10件です。静岡市・浜松市を含む県全体で10件ですから、決して多くありません。長期修繕計画の見直しに着手しようとしている管理組合であれば、費用ゼロで専門家の目を2回入れられる機会になります。

あわせて、令和8年度のマンション管理セミナーの県内開催予定も公表されています。伊豆エリアで開催されるのは、三島市が令和8年9月12日(土)に三島市役所、熱海市が令和8年10月予定、伊東市が令和8年12月予定の3回です。南伊豆町から三島市までは距離がありますが、伊豆縦貫自動車道を使えば日帰りできる範囲です。理事会のメンバーで手分けして、どれかに出ておく。それだけでも、次の総会での説明の厚みが変わります。

支援法人の登録制度は、静岡県では未実施

もうひとつ、制度動向として押さえておきたい点があります。令和7年5月30日に区分所有法の改正法が公布され、同年11月28日に一部施行された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」に、マンション管理適正化支援法人の登録制度が新設されました。

町の区域における登録主体は県です。ただし静岡県は「現段階では、登録制度は実施していません」と明記しています(出典:静岡県 マンションの管理)。南伊豆町の管理組合が支援法人の支援を受けたい場合、現時点では県内に登録された法人がない、という状況です。

制度は動いています。来年の話が変わる可能性は十分あります。


南伊豆町の建物を痛める3つの力

ここからが本題です。制度の話をひととおり終えたので、私の本業の話をさせてください。

南伊豆町は伊豆半島の最南端に位置し、石廊崎から弓ヶ浜、妻良、中木まで、太平洋(相模灘・駿河湾)に直接面した集落が並びます。この立地が、建物に対して3つの力を継続的に加えています。

力①:塩害(えんがい)

海から飛んでくる塩分(飛来塩分)が、外壁や鉄部に付着し続けます。塩分は空気中の水分を吸って濡れた状態を長く保つため、鉄部の腐食を加速させます。

私が伊豆の海沿いで見てきた典型的な症状は、こうです。

  • 手すり・階段の鉄部:塗膜の下から錆が膨らみ、塗膜ごと剥がれる(内部から膨れる)
  • アルミサッシ:白い粉を吹く(腐食生成物)
  • 外壁のコンクリート:中性化が進んだ箇所で鉄筋が錆び、爆裂(コンクリートが押し割られて剥落する現象)を起こす
  • 屋上の設備架台:アンカーボルト(固定用の埋込ボルト)の根元から錆が回る

内陸のマンションで12年周期でよいものが、海沿いでは10年、条件によっては8年で同じ状態になります。南伊豆町の建物を、東京の周期表で管理してはいけないというのが、私の率直な意見です。

力②:台風の直撃

伊豆半島最南端は、台風の進路にまともに乗る位置です。強風そのものよりも、私が現場で怖いと思うのは雨が横から、そして下から入ることです。

  • サッシまわりのシーリングが切れていると、水が室内側へ回る
  • 換気口・エアコンスリーブから吹き込む
  • 屋上の笠木(かさぎ、パラペット上部の被せ材)の継手から浸入し、最上階の天井に染みが出る

台風の後に「雨漏りしました」と連絡をいただく物件の多くは、その前から兆候が出ていた建物です。前回の点検で「まだ大丈夫」と判断された箇所が、一晩で限界を超える。私が一番悔しい思いをするのは、この瞬間です。

力③:紫外線と温度差

南向き・南西向きの面は、年間を通して日射を受け続けます。シーリングは硬化してひび割れ、防水層は膨れ、塗膜はチョーキング(触ると白い粉が付く状態)を起こします。

伊豆の温暖な気候は、住むには快適でも、建材にとっては過酷です。冬に凍結しない代わりに、夏の日射時間が長い。塗り替え周期は、日射面と北面で分けて考えるべきだと私はお伝えしています。全面を同時に塗るのが常識になっていますが、劣化速度が違うものを同じ周期で扱うのは、本来おかしな話です。


足場が組みにくい町で、どう修繕するか

南伊豆町の現場で、私が最初に確認するのは「足場が組めるか」です。

足場が組めない・組みにくい南伊豆町の典型条件

  • 敷地の背後が急斜面:山を削って建てているため、建物の裏に足場を立てる平場がない
  • 前面道路が狭い:資材車が停められず、荷揚げに人手と時間がかかる
  • 隣地との距離が近い:足場の建地(たてじ、垂直の支柱)が入らない
  • 海に面した面が絶壁:物理的に地面がない
  • 観光シーズンの規制:夏の弓ヶ浜、ヒリゾ浜(中木)周辺は、駐車・搬入の難易度が跳ね上がる

こういう建物に対して、私たちは3つの工法を使い分けています。

工法 概要 南伊豆町で向く場面 コスト・工期の傾向
通常足場工法 従来型の仮設足場を全面に組む 平場が確保でき、工事範囲が全面に及ぶ建物 仮設費が総額の2〜3割を占める。工期は長め
ロープアクセス工法(無足場工法) 産業用ロープで屋上から吊り下がり、足場を組まずに外壁作業を行う 背面が斜面、隣地が近い、部分補修、緊急の漏水対応 仮設費を大きく圧縮できる。着手が早い
ハイブリッド工法 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける 正面は足場、背面と海側はロープ——という建物 全面足場より総額を抑えつつ、施工品質を確保

ロープアクセス工法の技術情報や安全基準の解説は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。工法そのものを詳しく知りたい方は、そちらもご覧ください。明誠の施工内容はロープアクセス工法のご紹介でも整理しています。

私が南伊豆町の建物で、ハイブリッドを勧める理由

正直に申し上げます。全面ロープアクセスが常に最適解ではありません。

塗装の品質は、職人が安定した姿勢で、十分な時間をかけられるかで決まります。広い面をムラなく仕上げるなら、足場のほうが有利な場面は確かにあります。一方で、背面の斜面側に無理やり足場を組むと、仮設だけで数百万円が飛び、しかも組立に何日もかかります。

だから、部位で分ける。

  • 道路に面した正面・妻面 → 足場
  • 背後の斜面側、海に面した面、突出したバルコニー → ロープアクセス
  • 屋上防水・笠木 → 足場と関係なく施工可能

これがハイブリッド工法です。3つの工法を自社で持っているからこそ、建物ごとに最適な割合を設計できます。工法の考え方は明誠のコンセプトにまとめています。

賃貸マンション・ビルをお持ちのオーナーさまはビルオーナーさま向けページを、分譲マンションの管理組合さまは管理組合さま向けページをご覧ください。下賀茂温泉や弓ヶ浜周辺で宿泊施設を運営されている方には、ホテル・旅館オーナーさま向けページが参考になると思います。


南伊豆町で大規模修繕を進める、18か月の逆算表

補助金の申請時期と、工事の準備期間を重ねると、動くべき時期が見えてきます。南伊豆町の制度は「工事着手前申請」が基本なので、逆算が要ります。

時期(着工基準) やること
着工18か月前 修繕積立金の残高確認、長期修繕計画の位置づけ確認。静岡県のマンション管理士無料派遣(10件枠・令和8年11月14日締切)への申込を検討
着工15か月前 建物診断(劣化診断)の実施。海沿い物件は鉄部・シーリング・笠木を重点的に
着工12か月前 診断結果をもとに工事範囲の一次案。工法(足場/ロープ/ハイブリッド)の比較検討
着工10か月前 見積り取得。町内登録業者の確認(住宅リフォーム振興事業を使う個人所有物件がある場合)
着工8か月前 理事会で工事範囲・工法・概算を共有。ブロック塀の該否を現地確認
着工6か月前 総会議案の作成。補助金の申請書類の準備開始
着工4か月前 総会決議。各補助金の交付申請(着工前申請が原則)
着工3か月前 交付決定を待つ。決定前に着手すると対象外になる制度が複数あるため、ここは動かない
着工1か月前 居住者・テナントへの説明。仮設計画の最終確認。台風期を避けた工程の最終調整
着工 交付決定後に工事開始
完了後14日以内 住宅リフォーム振興事業は完了報告(申請年度の3月10日が最終期限)

「交付決定前に着手したものは対象としない」——これは老朽危険家屋等解体撤去補助金の要綱にある一文ですが、南伊豆町の他の制度にも同じ考え方が貫かれています。段取りを飛ばすと、金額そのものが消えます。

そして南伊豆町でもうひとつ考えるべきは、観光シーズンとの兼ね合いです。夏の海水浴シーズン(弓ヶ浜・ヒリゾ浜)と、みなみの桜と菜の花まつりの時期は、町内の交通と宿泊事情が変わります。宿泊業を兼ねる建物なら、稼働率の高い時期に足場を架けるのは避けたい。工程表は、制度の期限と繁忙期の両方を見ながら組む必要があります。


修繕積立金が足りないとき、どう考えるか

南伊豆町の規模の物件では、修繕積立金の不足は珍しくありません。私が理事長さまにお伝えしている順番は、いつも同じです。

順番①:工事範囲を「今やるべき」と「次でよい」に分ける

診断結果を見ながら、劣化の進行が速い部位から順に並べます。海沿いなら鉄部・シーリング・笠木が上位に来ます。美観のための塗り替えは、後ろに回せることが多いです。

順番②:工法でコストを削る

仮設足場は総工事費の2〜3割を占めます。ここをロープアクセスやハイブリッドに置き換えられるなら、工事範囲を削らずに総額を下げられます。私はこれを「削るのではなく、置き換える」と言っています。詳しくは低コストでの改修にまとめています。

数字を、財布の感覚に落としてみます。仮に総額3,000万円の大規模修繕で、仮設足場が25%(750万円)を占めていたとします。背面と海側をロープアクセスに切り替えて仮設費が4割圧縮できれば、300万円が浮きます。20戸のマンションなら、1戸あたり15万円。30戸なら1戸あたり10万円です。

一時金として15万円を集めるのは、総会で相当な議論になります。同じ15万円を工法の選択で生み出せるなら、そちらのほうが合意形成の負荷は軽い。私はこの比較を、理事会の資料に必ず1枚入れていただくようお願いしています。もちろん建物の形状によって圧縮できる割合は変わりますので、実際の数字は現地を見てからのご提示になります。

順番③:融資を検討する

住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資は、管理組合が借主となる融資制度です。マンション管理計画認定を受けていれば金利の引下げが適用されます。認定申請手数料が4,000円(事前確認適合証あり)であることを考えると、認定を取ってから借りるという順番に合理性があります。

また、マンションすまい・る債は積立金の運用先として、マンションライフサイクルシミュレーションは長期の資金計画づくりに使えます。いずれも住宅金融支援機構が提供しているもので、静岡県のマンション管理ページからもリンクされています。

順番④:一時金は最後の手段

区分所有者からの一時金徴収は、合意形成の負荷が最も高い選択肢です。私は最後に持ってくるようにしています。ここに行き着く前にやれることが、たいてい残っています。


私が南伊豆町の理事長さまにお伝えしていること

現場で20年やってきて、私が小規模自治体の管理組合で一番心配しているのは、「前回どうやったか」を知っている人が組織の中に残っていないことです。

3,768世帯の町で、分譲マンションの数は限られます。理事は数年で一巡し、12年周期の大規模修繕は理事の任期を軽く超えます。前回の議事録は残っていても、そのとき何に困り、なぜその業者を選び、どこで想定外が起きたのかは、書類には残りません。

だから私は、次の3つをお願いしています。

  1. 診断報告書は、写真ごと保管してください。 12年後、その写真が「どこから傷み始めたか」を教えてくれます。
  2. 見積書は、比較したもの全部を残してください。 金額だけでなく、なぜその工法にしたかの記録になります。
  3. 工事中に困ったことを、3行でいいのでメモに残してください。 次の理事会への、最良の引き継ぎです。

制度は変わります。この記事に書いた補助率や上限額も、来年度には改定されているかもしれません。ですが、建物が海風と台風と日射にさらされ続けるという事実は変わりません。制度に合わせて工事を決めるのではなく、建物の状態から工事を決めて、そこに使える制度を当てはめる。順番はこちらだと、私は考えています。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームからどうぞ。無料調査・お見積りに対応しています。


よくある質問(FAQ)

Q1. 南伊豆町に、分譲マンションの共用部を対象にした補助金はありますか。
A. 2026年9月5日時点で、共用部そのものを対象にした町独自の補助金は確認できません。使える可能性があるのは、敷地内のブロック塀に対する「ブロック塀等耐震改修促進事業費補助金」(撤去は上限10万円、改善は上限16万6千円)です。いずれも着工前の申請が必要です。

Q2. 外壁塗装に南伊豆町住宅リフォーム振興事業は使えますか。
A. 外壁のみの塗装工事は対象外です。要綱の対象工事一覧に「外壁のみの塗装工事 → 否/他工事と共であれば可」と明記されています。屋根・とい・バルコニー修繕などと組み合わせれば対象になり得ます。補助率20%・上限20万円、対象工事費は10万円以上です(出典:南伊豆町住宅リフォーム振興事業 概要)。

Q3. 賃貸に出しているアパートの修繕に、町の補助金は使えますか。
A. 住宅リフォーム振興事業は「現に居住している」自己所有住宅が対象のため、賃貸用物件には使えません。合併処理浄化槽設置補助金も「販売や賃借を目的とした住宅に設置するものでないこと」が条件です。老朽危険家屋等解体撤去補助金は不動産業を営む方が対象外とされています。賃貸物件については、工法の選択でコストを下げるアプローチが現実的です。

Q4. 移住して空き家を買いました。リフォーム補助はどちらを使うべきですか。
A. 空き家バンク登録物件であれば、入居者・入居予定者としてリフォーム工事費の2/3・上限80万円が対象になり得ます。住宅リフォーム振興事業は「町に1年以上住所を有する」ことが条件なので、移住直後は使えません。まず空き家バンク側、1年経ってから振興事業側という順番で検討すると整理がつきます。両制度の対象経費は重複できません。

Q5. マンション管理計画認定の申請先はどこですか。
A. 南伊豆町は町域のため、認定権者は静岡県(くらし・環境部建築住宅局住まいづくり課/054-221-3084)です。手数料は令和8年4月1日に改定され、事前確認適合証があれば4,000円、なければ28,100円(長期修繕計画1つの場合)。公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを経由するのが、費用面では有利です。

Q6. 静岡県のマンション管理士無料派遣は、まだ間に合いますか。
A. 令和8年度は受付件数10件、申込期限は令和8年11月14日(土)、派遣期限は令和9年1月31日(日)です。ただし定数に達し次第、早期に受付終了とされています。申込先は一般社団法人静岡県マンション管理士会(メールまたはファクス)。各管理組合2回まで派遣を受けられます。

Q7. 海沿いのマンションは、何年周期で修繕すべきですか。
A. 一般的な大規模修繕の周期は12年前後とされますが、飛来塩分の影響を受ける立地では鉄部・シーリングの劣化が先行します。私の経験では、海沿いの建物は鉄部の塗り替えを短い周期で回し、外壁全面の塗装は診断結果に応じて判断する形が現実的です。まずは劣化診断で、部位ごとの残存性能を把握することをお勧めします。


この記事のポイントまとめ

  • 南伊豆町独自のマンション共用部補助金は確認できず。使えるのは周辺制度
  • 住宅リフォーム振興事業は補助率20%・上限20万円。外壁のみの塗装は対象外
  • 空き家バンクリフォーム補助は入居者2/3・80万円、所有者1/3・50万円と非対称
  • 老朽危険家屋の解体は所有者50万円・行政区代表者300万円。不動産業者は対象外
  • マンション管理計画認定の窓口は静岡県。適合証の有無で手数料が7倍変わる
  • 静岡県のマンション管理士無料派遣は令和8年度10件枠・11月14日締切
  • 海沿い・斜面地の南伊豆町では、ハイブリッド工法が仮設費の圧縮に効く

執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円および静岡県で、通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3つを建物特性に応じて提案できる改修会社です。日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板などの専門職が加盟しています。

最終更新:2026年9月5日

ご注意:本記事の補助金・助成制度の内容は2026年9月5日時点で公開されている情報にもとづきます。制度は年度途中でも変更・終了する場合があり、予算の上限に達した時点で受付が締め切られる制度もあります。申請にあたっては、各窓口で最新の要綱をご確認ください。


出典・参考資料

関連リソース


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河津町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

Q. 静岡県賀茂郡河津町のマンションで、2026年度に大規模修繕を計画しています。町から出る補助金はありますか。
A. 分譲マンションの共用部そのものを対象にした河津町独自の補助金は、2026年9月4日時点で確認できません。ただし河津町には、他の自治体では見かけない特徴を持った制度が3本あります。1本目は木造住宅の耐震補強に1戸あたり115万円を出す「プロジェクトTOUKAI‐0⁺」。2本目は固定資産税相当額を3年間返す「木造住宅建築等助成制度(有期)」。3本目は改修費の20%を出す「空き家活用支援補助金」です。そして後ろ2本には、発注先が町内業者でなければ補助が出ないという共通の条件が付いています(出典:河津町)。

2026年9月4日 更新


この記事の結論:河津町で押さえるべきことは「3つ」

先に結論から書きます。河津町でマンションの大規模修繕を考えるとき、押さえるべきことは3つです。

  1. 町独自の共用部補助はない。しかし耐震の限度額は115万円で、伊豆エリアでは高い水準にある
    プロジェクトTOUKAI‐0⁺(木造住宅耐震補強)は、補強計画と補強工事を同一年度内に実施する場合、1戸あたり115万円を限度に補助されます(工事費の8割と115万円を比較し、いずれか少ない額)。近隣の町で見かける100万円という限度額より15万円高い設定です(出典:河津町 木造住宅耐震補強)。
  2. 河津町の補助金は「誰に発注するか」で可否が決まる制度が複数ある
    木造住宅建築等助成制度は「町内建築業者と請負契約を締結したもの」が条件。空き家活用支援補助金の改修支援も「町内業者が施工したものに要する費用」が対象です。工事の中身ではなく、契約の相手方が要件になっています。
  3. 2月から3月上旬にかけて、河津町は工事ができる町ではなくなる
    河津桜まつりの期間、人口6,130人の町に約100万人が訪れます。この1か月間に足場が架かっているという状態を、どう避けるか。ここが河津町の大規模修繕で最も実務的な論点です。

以下、順番に一次情報で確認していきます。

制度名 補助率・限度額 共用部に使えるか 窓口
プロジェクトTOUKAI‐0⁺(木造住宅耐震補強) 工事費の8割と115万円の少ない額 木造住宅が対象。RC造の分譲マンションは対象外 建設課 0558-34-1952
ブロック塀等撤去改善事業補助金 工事・設計費の一部(着工前申請) 敷地内の該当する塀なら可能性あり 建設課 0558-34-1952
木造住宅建築等助成制度(有期) 新築=固定資産税相当額の全額(15万円/年)、増築=1/2(10万円/年)、いずれも3年間 木造の新築・増築が対象。修繕は対象外 産業振興課 0558-34-1946
空き家活用支援補助金(改修支援) 工事費の20%・上限20万円 空き家情報バンク登録物件のみ 企画調整課 0558-34-1924
太陽光発電システム設置費補助金 1kWあたり5万円・最大4kW=20万円 賃貸住宅は対象外と明記 企画調整課 0558-34-1924
小規模事業者強化事業費補助金 事業費10〜60万円の1/2(5〜30万円) 販促のみ。建物工事は対象外 産業振興課 0558-34-1946
マンション管理計画認定制度 認定制度(補助ではない) 町域のため静岡県が窓口 静岡県住まいづくり課

河津町の建物が置かれている前提を、3つの数字で

制度の話に入る前に、河津町という町の輪郭を数字で押さえておきます。私は現場を見に行く前に、その町の人口と世帯数を見るようにしています。建物の使われ方が、そこから見えてくるからです。

数字①:人口6,130人/世帯3,208世帯

2026年8月1日現在、河津町の人口は6,130人(男2,963人・女3,167人)、世帯数は3,208世帯です(出典:河津町の人口と世帯)。

1世帯あたり1.91人。全国平均を下回りますが、伊豆半島東海岸の町としてはやや高めです。これは、河津町が別荘地としての性格だけでなく、生活の場としての性格も一定程度保っていることを示しています。

一方で、3,208世帯という規模の町に建つ分譲マンションは、当然ながら数が限られます。管理組合の理事は数年で一巡し、前回の大規模修繕を経験した理事が1人も残っていない、という状態が普通に起こります。「前回どうやったか」を知っている人が組織の中にいない——これが小規模自治体のマンション管理の実態です。

数字②:河津桜まつりに約100万人

2026年の河津桜まつりは、2月7日(土)から3月8日(日)まで開催されました。例年ほぼ同じ時期に約1か月間の会期が設定され、来訪者は100万人規模に達します(新型コロナウイルス感染症の流行前で90万人超)(出典:河津桜まつり公式)。

人口6,130人の町に、1か月で100万人。単純計算で人口の163倍です。この期間、河津川沿いの道路は歩行者であふれ、駐車場は満車になり、宿泊施設は埋まります。

これは工事計画にとって、決定的な制約です。

  • 資材搬入車両が町内に入りにくい
  • 職人の宿が取れない(伊豆急行沿線の宿はほぼ埋まる)
  • 足場とシートが架かった建物は、桜の景観の中で著しく目立つ
  • 賃貸・民泊・宿泊業を兼ねる建物なら、年間で最も稼げる1か月を工事で潰すことになる

首都圏の管理組合が「冬は乾燥していて塗装に向くから2月に工事を」と考えるのは、一般論としては正しい。しかし河津町では、その一般論がそのまま裏目に出ます。

数字③:昭和56年5月31日という境界線

河津町の無料耐震診断の対象は「昭和56年5月31日以前に建築された木造住宅」です。この日付は新耐震基準の施行日で、全国共通の線引きですが、河津町では診断できる戸数に限りがあると明記されています(出典:河津町 木造住宅耐震補強)。

年度予算と派遣できる専門家(木造住宅耐震診断補強相談士)の数に上限があるということです。「年度末近くに申し込んだら枠が埋まっていた」が現実に起こりうる。管理組合の役員が個人所有の木造家屋も持っている場合、そちらの診断は年度の早い時期に動かしておくべきです。


【背骨①】河津町の耐震補助は115万円。この15万円の差の意味

まず制度の全体像

プロジェクトTOUKAI‐0⁺は、静岡県が東海地震対策として展開してきた木造住宅耐震化支援の枠組みで、市町ごとに上乗せや運用の差があります。河津町の内容はこうです(出典:河津町 木造住宅耐震補強)。

段階 内容
無料耐震診断 町が派遣する専門家(木造住宅耐震診断補強相談士)が無料で診断。対象は昭和56年5月31日以前建築の木造住宅。診断戸数に限りあり
補強計画・補強工事 診断の結果、倒壊の危険性があると判断され、補強計画と補強工事を同一年度内に実施する場合、1戸あたり115万円を限度に補助(工事費の8割と115万円を比較し、いずれか少ない額)

「工事費の8割と115万円の少ない額」を分岐点で読む

この書き方の制度は、必ず「どこで限度額に届くか」を計算しておくべきです。

115万円 ÷ 0.8 = 143万7,500円

つまり、補強工事費が約144万円を超えた時点で、補助額は115万円で頭打ちになります。それ以下なら工事費の8割です。

補強工事費 工事費の8割 補助額(115万円と比較) 自己負担
60万円 48万円 48万円 12万円
100万円 80万円 80万円 20万円
140万円 112万円 112万円 28万円
143.75万円 115万円 115万円(分岐点) 28.75万円
200万円 160万円 115万円 85万円
300万円 240万円 115万円 185万円

分岐点を超えると、そこから先は全額が自己負担になります。補強工事の設計を「144万円をどう使い切るか」で組み立てるのが、この制度の最も効率のよい使い方です。144万円を大きく超える計画を立てるなら、超過分に見合う耐震性能の向上があるのかを、設計者に数字で説明してもらってください。

近隣の町との比較

私はこの連載で伊豆・東部の町を続けて調べてきました。その中で見えてきた限度額の水準を並べます。

自治体 木造耐震補強の限度額
河津町 115万円(工事費の8割との比較)
東伊豆町 100万円(別途、高齢者等の割増あり)
小山町 100万円(工事費の8割との比較)

河津町の115万円は、この3町の中で最も高い設定です。差は15万円。「たった15万円」ではありません。同じ工事をしても、河津町の建物なら15万円多く戻るということです。分岐点で見れば、河津町は143.75万円まで、東伊豆町・小山町は125万円までが「8割補助のゾーン」ということになります。

なお、いずれの町も金額・要件は年度ごとに見直される可能性があります。着工前に建設課で最新の要綱をご確認ください。

RC造の分譲マンションはこの制度の対象外です

はっきり書きます。プロジェクトTOUKAI‐0⁺は木造住宅の制度です。鉄筋コンクリート造・鉄骨造の分譲マンションの共用部は対象になりません。

では管理組合にとって無関係かというと、そうではありません。

  • 敷地内に木造の管理人室・集会所・付属棟がある場合、それが昭和56年5月31日以前の建築なら、診断の対象になる可能性があります
  • 理事・区分所有者が町内に古い木造家屋を所有している場合(河津町では珍しくありません)、その方個人が使えます
  • 賃貸経営をされている方で木造アパートをお持ちなら、直接の対象です

管理組合の掲示板に「町の無料耐震診断は戸数に限りがあります。ご自宅が昭和56年5月以前の木造の方は、年度の早い時期に建設課へ」と1枚貼るだけで、それは組合員に対する価値の提供です。管理組合は自分が使えない制度でも、周知役にはなれます。


【背骨②】河津町の補助金は「誰に発注するか」で決まる

ここが、河津町という自治体の制度設計で最も特徴的な部分です。私はこの連載で176の自治体を調べてきましたが、複数の制度に一貫して「町内業者要件」が入っている町は多くありません。

木造住宅建築等助成制度(有期)——固定資産税を3年間返す制度

まず制度の中身です(出典:河津町 木造住宅建築等助成制度(有期))。

項目 内容
対象工事 木造住宅の新築または増築
契約要件 平成26年1月1日以降に町内建築業者と請負契約を締結し、令和10年12月31日までに竣工したもの
町内建築業者の定義 町内に本社または支店を置く法人、または河津町に納税申告している個人事業主
木造住宅の定義 主要構造物を木材として建築された専用住宅(店舗等との併用住宅は居住用部分のみが対象)
竣工の定義 翌年度に固定資産税が賦課されたもの
その他要件 町税等の滞納がないこと/町税等を口座振替で納付していること(予定を含む)
補助額(新築) 納付すべき固定資産税相当額の全額(15万円/年を限度)
補助額(増築) 納付すべき固定資産税相当額の1/2(10万円/年を限度)
補助期間 最初の賦課年度から3年間
交付方法 固定資産税の賦課額確定後、税の口座振替先を利用して交付
窓口 産業振興課 観光商工振興係 0558-34-1946

補助総額は、新築なら最大45万円(15万円×3年)、増築なら最大30万円(10万円×3年)。

この制度で注目すべき点は3つあります。

第1に、支払われるのが「固定資産税相当額」であること。 補助額が工事費に比例しません。工事費がいくらであっても、賦課された固定資産税の額が上限になります。つまり小さめの建物ほど補助率が実質的に高くなる構造です。

第2に、事前申し込みが必要であること。 「建築工事請負契約を締結した後、速やかに申請書を提出していただく」と明記されています。竣工してから「そういえば制度があった」では間に合いません。

第3に、町内建築業者との契約が条件であること。 ここが本題です。

空き家活用支援補助金にも同じ条件がある

空き家情報バンク登録物件の改修支援事業でも、対象経費は「住宅の機能・性能を維持・向上させるために、登録物件の改修などを行う経費を対象とし、町内業者が施工したものに要する費用」と定義されています(出典:河津町 空き家活用支援補助金)。

事業 補助額
登録物件利用促進事業(取得) 取得対価の3%以内・上限30万円
登録物件利用促進事業(賃借) 家賃の50%以内・上限3万円/月、3か月分まで(最大9万円)
登録物件改修支援事業 工事費の20%・上限20万円(町内業者施工に限る)

いずれも新規転入者が対象、5年以上の居住が条件、契約締結後2年以内の申請が必要です。

この構造が管理組合にとって意味すること

2つの制度に共通する「町内業者要件」は、河津町という自治体が補助金を地域経済を回すための道具として設計していることを意味します。これは行政の考え方として、まったく正当なものです。

ただ、管理組合の実務としては、次の3点を分けて考える必要があります。

① 分譲マンションの共用部の大規模修繕には、この2制度は直接効きません。
木造住宅の新築・増築、あるいは空き家バンク登録物件の改修。いずれも共用部の外壁・防水とは対象が違います。ここは正直に申し上げます。

② しかし「町内業者との契約が有利になる制度が町にある」という事実は、業者選定の議論に影響します。
理事会で「地元業者にすべきか、実績のある町外業者にすべきか」という議論は必ず起きます。河津町の場合、補助金の設計思想として町内業者を優遇する町であることを、判断材料の1つとして議事録に残しておくべきです。

③ 元請と協力会社の関係を整理しておく。
実務では、町外の元請が地元の職人を協力会社として使う、あるいは地元業者が元請になって専門工事会社が入る、という組み合わせが一般的です。将来的に町の制度を使う可能性があるなら、契約の名義がどちらになっているかを、契約の段階で意識しておくことをおすすめします。

私たち株式会社明誠は、日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズを展開しています。塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟する仕組みで、地域の専門工事会社と組んで施工体制を作ることが前提の会社です。河津町のように地元業者との関係が制度に組み込まれている地域では、この形が噛み合いやすいと考えています。ロープアクセス工法そのものの技術情報や安全基準は、姉妹サイトロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。


【背骨③】桜まつりの1か月を、工事カレンダーからどう外すか

ここからが、河津町の大規模修繕で最も実務的な話です。

2月上旬から3月上旬は「工事をしない月」として先に確保する

2026年の河津桜まつりは2月7日(土)から3月8日(日)でした。例年、2月上旬から3月上旬にかけての約1か月です。次回も同様の時期になると想定して、この1か月を工程表から先に抜いて計画を組むのが河津町のセオリーです。

理由を整理します。

論点 具体的な支障
交通 河津川沿いを中心に歩行者が集中。資材搬入車両・高所作業車の動線が確保しにくい
宿泊 職人の宿が押さえられない。伊豆急行沿線の宿泊施設が埋まる
景観 足場とメッシュシートが桜の景観の中で目立つ。近隣・観光関係者からの心証も悪い
収益 賃貸・民泊・宿泊業を兼ねる建物では、年間で最も稼働率が高い1か月を工事で潰すことになる
安全 敷地周辺の歩行者が普段の数十倍。落下物・接触のリスク管理コストが跳ね上がる

では、いつやるのか

伊豆半島東海岸の気候と、この制約を合わせて考えると、河津町の建物にはこういう順序が現実的です。

時期 適性 理由
4月〜6月上旬 ◎ 桜まつり明けで町が落ち着く。気温・湿度が塗装に適する。梅雨入り前に工程の山を越せる
6月中旬〜7月中旬 △ 梅雨。工程が伸びやすい。伊豆は雨量が多い
7月下旬〜8月 ○ 夏休みの観光期。海側は人が多いが、桜まつりほどの集中ではない。ただし猛暑と台風
9月〜11月 ◎ 台風シーズンを抜ければ最も安定。紅葉・河津七滝方面の観光はあるが分散型
12月〜1月 ○ 気温低下で塗料の乾燥に注意。ただし桜まつり前に必ず終わらせるという締切がある
2月〜3月上旬 × 桜まつり期間。原則として工事を置かない

結論:河津町では「9月着工・12月竣工」または「4月着工・6月竣工」の2択が基本形です。

そして12月竣工を狙う場合、天候による遅延が桜まつりに食い込むリスクがあります。ここが後述するロープアクセス工法の価値が最も大きくなる場面です。


ブロック塀等撤去改善事業補助金——着工前申請という一点

河津町のブロック塀等撤去改善事業補助金は、地震発生時におけるブロック塀などの撤去または改善を行う場合に、工事や設計にかかる費用の一部を補助する制度です(出典:河津町 ブロック塀等撤去改善事業補助金)。

区分 対象
撤去 道路に面したブロック塀など
改善 広域避難地避難路に面するブロック塀など
注意 着工前に申請が必要

補助率と限度額は町のページに記載がないため、建設課(0558-34-1952)への確認が必要です。

管理組合の実務では、ここでミスが起きます

大規模修繕の工事範囲に敷地内の塀の補修が含まれているケースは、決して珍しくありません。そして塀の工事は、外壁や防水と一緒に一括契約されてしまう。

このとき何が起きるか。

  1. 総会で工事一式が承認される
  2. 契約を締結し、着工する
  3. 工事が始まってから「そういえば塀の補助金があった」と気づく
  4. 着工前申請の要件を満たさないため、申請できない

これを避ける手順は単純です。

  • 設計段階で、敷地内の塀のうち「道路に面しているもの」「広域避難地避難路に面しているもの」を図面上で色分けする
  • 該当があれば、総会の前に建設課へ相談する(ここが要点です)
  • 見積書で塀の工事費を別項目として分離しておく(補助対象額の算定に必要になります)
  • 交付決定の通知を受けてから着工する

塀の工事だけ着工時期をずらす、という判断もあり得ます。工程上は面倒ですが、補助金が出るなら差し引きで得になる場合があります。


太陽光発電システム設置費補助金は「賃貸住宅を除く」と明記されている

この制度は、賃貸オーナーの方に特に読んでいただきたい内容です(出典:河津町 太陽光発電システム設置費補助金)。

項目 内容
補助額 1kWあたり5万円、最大4kW=20万円
対象設備 当該年度以降に設置された未使用のもので、最大出力が10kW未満
対象者 町内に住所を有し、自ら居住する既存住宅(店舗兼用住宅を含み、賃貸住宅は除く)に設置する個人
申請者 設置者本人が行う。業者等の代理申請は受け付けない
申請時期 着工前。交付決定通知を受けた日以降に着工
工期 5か月以内に着工し工事着工届を提出。着工後3か月以内、または当該年度の3月10日までに完了
実績報告 当該年度の3月15日まで
事後義務 設置年度の次年度から3年間、発電量などの定期報告が義務。未提出の場合は返還
処分制限 耐用年数15年。途中処分は届出が必要で、返還が生じることがある

3つの注意点

① 賃貸住宅は明確に対象外です。
賃貸マンション・アパートのオーナーがご自身の物件の屋根に太陽光を載せても、この補助は使えません。ここは要綱の文言がはっきりしています。

② 分譲マンションの共用部(屋上)も、実務上は使いにくい。
対象者が「自ら居住する既存住宅に設置する個人」と定義されているため、管理組合(区分所有者の団体)が申請主体になる想定ではありません。専有部分の話でもない。屋上に載せるなら管理組合の決議が必要ですが、その管理組合はこの制度の対象者要件に当てはまりません。

③ 屋根に載せる前に、建物の安全性を確認する——町自身がそう書いています。
町のページの「設置にあたっての注意事項」には、こう記載されています。

建物耐震診断や耐震補強の必要な建物は(昭和56年5月以前の木造住宅は、必ずご確認ください。)太陽光発電施設の設置について、事前に建築士等に相談して、建物の安全性を確認してください。

これは太陽光の話ですが、大規模修繕の実務にそのまま通じる話です。屋根・屋上に新しい荷重を載せる、あるいは防水層を貫通させる工事は、既存躯体の状態を把握してからでなければ判断できません。太陽光の検討と、屋上防水の改修時期は、同じテーブルで議論すべきです。防水の更新直前に太陽光を載せてしまうと、数年後に架台を外して防水をやり直すことになります。


小規模事業者強化事業費補助金は、建物工事には使えません

賃貸経営・民泊・宿泊業を営む方向けに、河津町小規模事業者強化事業費補助金があります(出典:河津町小規模事業者強化事業費補助金交付)。

項目 内容
対象業種 各種小売、卸売、サービス、建設業など
対象事業者 河津町に町税を納めている個人事業者、町内に本店または支店等の登記をしている法人事業者ほか
補助額 事業費10万円以上60万円以内の1/2(補助金額5万円以上30万円以内)
2回目以降 1件につき5万円以上10万円以下
再申請 補助を受けた年度から5年以上経過した場合に限り可能
期限 申請後10月末までに事業開始し、翌年3月25日までに完了
窓口 産業振興課 0558-34-1946

対象事業は4メニューだけです

メニュー 内容
ホームページ等の制作 新規制作またはリニューアル費用(機器購入費、自作の経費、維持管理費は対象外)
インターネットを活用した販路整備 ネット注文・メール配信システムの整備費用
商標登録・意匠登録 新たに開発・製作したものの所有権登録費用
事業者紹介チラシ 店舗の事業内容を紹介するチラシ・リーフレット作成費用

外壁塗装・防水・改修工事は、いずれのメニューにも含まれません。

期待させて外すのは不誠実なので、はっきり書きました。この制度は販路開拓・集客のための補助金です。

ただし、使い方はあります。 大規模修繕を終えた賃貸物件・宿泊施設のオーナーが、「改修完了」を訴求材料にしてホームページをリニューアルする——これは対象になり得ます。工事そのものではなく、工事の成果を売上につなげる段階で使う制度だと理解してください。実際、外壁を一新した物件の写真を差し替えるだけで、宿泊予約サイトのクリック率が変わることがあります。申請は10月末までの事業開始が条件なので、9月着工・12月竣工の工程なら、補助金の申請を先に済ませてホームページ制作を並走させるという組み方も可能です。


マンション管理計画認定制度の窓口は「静岡県」です

河津町は町域のため、マンション管理計画認定制度(国土交通省)の認定権者は静岡県になります。市域であれば市が窓口ですが、町村部は都道府県が担います(マンションの管理の適正化の推進に関する法律に基づく制度)。

認定を取ると何が変わるのか

効果 内容
住宅金融支援機構の融資優遇 マンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ、フラット35の金利引下げ(区分所有者の住宅取得時)
管理の質の可視化 中古売買時に「管理が適正である」ことの公的な裏付けになる
長期修繕計画の整備 認定基準を満たす過程で、計画そのものが整う

認定基準には、長期修繕計画が7年以内に作成または見直しされていること、計画期間が30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれること、修繕積立金の額が明確に定められていること、などが含まれます。基準の詳細は公益財団法人マンション管理センターの案内が実務的です。

大規模修繕を計画するタイミングは、長期修繕計画を見直すタイミングでもあります。どうせ見直すなら、認定基準を満たす形で見直すのが合理的です。認定申請の手数料や運用の詳細は静岡県の最新の案内をご確認ください。制度は変更される可能性があります。

河津町から静岡県の窓口・セミナーへ

伊豆急行の河津駅から、熱海まで約1時間、伊東まで約40分。静岡県が開催するマンション管理セミナーは熱海・伊東・三島などで実施されることがあり、河津町からでも日帰りで参加できます。開催予定は静岡県のサイトでご確認ください。


ここから先は、株式会社明誠のサービスの話を含みます

ここまでは公的制度の話でした。ここから先は、私たちの仕事の話が入ります。あらかじめお断りしておきます。

まず「見積書のどこにお金が乗っているか」から

大規模修繕の見積書を開くと、多くの方が最初に驚くのが仮設足場の金額です。

一般的な中層マンションの大規模修繕では、仮設工事費が総工事費の2割前後を占めることが珍しくありません。建物の形状・立地・階数によって上下しますが、「外壁を直すためのお金」ではなく「外壁に手が届くようにするためのお金」が、それだけの比率を占めているということです。

そして河津町の建物では、この比率がさらに上がる要因があります。

  • 傾斜地に建つ建物が多い——敷地が平坦でないと、足場の基礎や乗り入れ構台に追加費用が発生します
  • 海沿いの狭い敷地——足場を組むスペースそのものが限られる
  • 強風——伊豆半島東海岸は冬季の季節風と台風の両方を受けます。メッシュシートを張った足場は風を受ける面積が大きく、養生・補強のコストが増えます

ロープアクセス工法という選択肢

ロープアクセス工法(無足場工法)は、産業用ロープを使って屋上から作業員が下降し、外壁の調査・補修・塗装・シーリング打ち替えなどを行う工法です。

河津町の建物にとっての具体的なメリットは4つです。

① 足場費が発生しない
仮設足場を組まないため、その費用がまるごと不要になります。工事費全体でどれだけ下がるかは建物によりますが、足場費が総額の2割前後を占める構造を考えれば、影響は小さくありません。

② 桜まつりの1か月に「架けっぱなし」が発生しない
これが河津町では最も大きい。ロープアクセスはその日の作業が終われば設備が残りません。仮に工期が伸びて2月に食い込んだとしても、桜まつりの期間だけ作業を止めれば、建物の外観は通常の状態に戻ります。足場だと、こうはいきません。組んだままにするか、一度解体して再度組むか(当然、二重の費用が発生します)。

③ 傾斜地・狭小地でも施工できる
足場を組む平坦なスペースが確保できない部位——擁壁際、隣地との隙間、海側の崖に面した面——でも、屋上から下降できれば作業ができます。

④ 部分補修に向いている
「シーリングだけ」「タイルの浮きだけ」「1面だけ」といった限定的な工事で、足場を全面に組むのは費用対効果が悪い。ロープアクセスなら必要な範囲だけを施工できます。

正直に申し上げます。ロープアクセスは万能ではありません

これは毎回書いていることですが、河津町の記事でも書きます。

  • 屋上に確実な支点が取れない建物では使えません。構造的に十分な強度を持つ支点が必要です。事前調査で必ず確認します。
  • 建物全面を同時に、短期間で仕上げる工事には向きません。同時に下降できる作業員の数には限りがあります。工程が長引く可能性があります。
  • 大量の資材を上げ下ろしする工事には向きません。外壁の大規模な張り替えや、開口部の全面交換のような工事は、足場のほうが適しています。
  • 強風時は作業を中止します。伊豆半島東海岸の風は侮れません。安全第一で、風速の基準を超えれば止めます。

だからこそ、私たちはハイブリッド工法という選択肢を持っています。足場が必要な部位(バルコニー側の全面改修、サッシまわりの大規模な作業)には足場を架け、それ以外の面(山側、海側の狭い面、傾斜地に面した部位)はロープアクセスで施工する。部位ごとに最適な工法を割り当てて、総コストを最小化する考え方です。

通常足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法。この3つを比較して提案できる会社は、日本でも多くありません。私たちはその3つを持っています。


河津町のマンションで、モデルケースを2つ

具体的な建物を特定しない、一般的なモデルケースで考えます。

ケース1:河津駅圏/築26年・5階建て・28戸

伊豆急行河津駅から徒歩圏、河津川に近い立地。海と川の両方の影響を受けます。

項目 内容
主な劣化 海側外壁のチョーキング、シーリングの硬化・剥離、バルコニー手すりの発錆、屋上防水の膨れ
工法の判断 全面ロープアクセス、またはバルコニー側のみ足場のハイブリッド
工期の置き方 9月着工・12月中旬竣工。桜まつりに1日も掛からない
使える公的制度 敷地内に道路に面したブロック塀があればブロック塀等撤去改善事業補助金(着工前申請)/管理計画認定は静岡県へ
押さえどころ 桜まつり期間中の来訪者動線が敷地に近いなら、そもそも足場は選択肢から外れる

ケース2:谷津・峰方面/築34年・4階建て・22戸(傾斜地)

天城方面へ向かう斜面地。山側は湿気、道路側は日照の強い面。

項目 内容
主な劣化 山側外壁の藻・カビ、北面の白華(エフロレッセンス)、擁壁のクラック、外階段の鉄部腐食
工法の判断 足場の設置が困難な擁壁側はロープアクセス、道路に面した側は足場のハイブリッド
工期の置き方 4月着工・6月上旬竣工。梅雨入り前に山側の洗浄・塗装を終える
使える公的制度 敷地内に木造の集会所・管理人室があり昭和56年5月31日以前の建築なら、TOUKAI‐0⁺の無料診断の対象になる可能性
押さえどころ 傾斜地は足場の基礎工事だけで金額が跳ねる。ここでロープアクセスの差が最も出る

いずれのケースも、現地を見なければ本当のことは言えません。私たちの調査・診断は無料で承っています。上の表は「こういう考え方で組み立てます」という設計図であって、見積書ではありません。


修繕積立金が足りないときの4つの打ち手

河津町に限らず、小規模マンションで最も多い相談がこれです。順番に検討してください。

① 工事範囲を分割する(フェーズ分け)
「今回は防水と鉄部、次回は外壁」というように、劣化の進行度で優先順位をつけて分割します。ロープアクセスは部分施工に向いているため、この戦略と相性が良い工法です。足場を前提にすると、分割するたびに足場費が二重・三重にかかるため、分割そのものが不利になります。

② 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資
管理組合が借主となる融資制度です。管理計画認定を受けていれば金利の引下げがあります(出典:住宅金融支援機構)。

③ 修繕積立金の見直し
痛みを伴いますが、避けられない場面があります。一度に大きく上げるのではなく、段階的な引き上げを長期修繕計画とセットで総会に提案するのが現実的です。

④ 工法の見直しで総額を下げる
これが私たちの領域です。足場を前提にした見積書を、ロープアクセスまたはハイブリッドで組み直すと、総額が変わることがあります。まず現行の見積書を見せていただければ、どこに削れる余地があるかを申し上げられます。工法ごとの考え方はロープアクセス工法のご紹介にまとめています。


見積書のチェック5点【河津町版】

管理組合の理事の方が、見積書を受け取ったときに最低限見るべき5点です。

① 仮設工事費が総額の何%か
2割を大きく超えているなら、その理由を説明してもらってください。傾斜地・狭小地なら妥当な場合もありますが、根拠は必要です。

② 塩害を前提とした仕様になっているか
河津町は海に面しています。海側の面と山側の面で、塗料の仕様や下地処理の内容が同じになっていないか確認してください。同じなら、それは建物を見ていない見積書です。

③ シーリングの打ち替えか、増し打ちか
「打ち替え(既存を撤去して新しく充填)」と「増し打ち(既存の上から重ねる)」では、耐久性も金額も違います。どちらか明記されているか確認してください。

④ 温泉配管・給湯設備の扱い
河津町は温泉地です。町が温泉給湯事業を行っており、建物によっては共用部に温泉の引湯配管や熱交換器があります。温泉水は成分によって金属の腐食やスケール付着を早めます。外壁・防水の見積書には現れませんが、大規模修繕のタイミングで一度点検しておくべき設備です。見積書に入っていないなら、それは「対象外」なのか「見落とし」なのかを確認してください。

⑤ 桜まつり期間の扱いが工程表に書かれているか
2月上旬から3月上旬にかけての工事の扱いについて、工程表に何も記載がないなら、その業者は河津町という土地の条件を理解していません。「2月上旬〜3月上旬は作業を行わない」あるいは「この期間に足場を残さない」と明記されているか。ここが河津町で見積書を比較するときの、最もわかりやすい判別点です。


河津町の建物が受けている、方位別の劣化条件

伊豆半島東海岸の建物は、面ごとに劣化の条件が大きく違います。

方位・立地 主な劣化要因 現れ方
東〜南東(海側) 潮風・紫外線・強い日照 塗膜のチョーキング、鉄部の発錆、シーリングの硬化・割れ
北〜北西(山側) 湿気・日照不足 藻・カビ、白華(エフロレッセンス)、塗膜の膨れ
屋上・屋根 紫外線・熱伸縮・台風 防水層の膨れ・ひび、笠木のシーリング切れ、ドレンの詰まり
河津川沿い 湿度・虫害 外壁下部の汚れ、基礎まわりの湿気
傾斜地の擁壁側 地下水・凍結融解 擁壁のクラック、外構の沈下

この5つの条件が1棟の中に同居しているのが、河津町の建物の特徴です。だからこそ、全面を同じ仕様で塗る見積書は、どこかで無理をしています。


着工19か月前からの逆算カレンダー【河津町版】

「9月着工」を目標にした場合の逆算です。総会の回数と、桜まつりの位置を組み込んであります。

時期 やること
着工19か月前(2月) 桜まつり期間。理事会は開催しにくい。この月は何も予定しない前提で組む
着工18か月前(3月) 建物診断の実施を理事会で決定。複数社に劣化診断を依頼
着工16か月前(5月) 診断結果の受領。長期修繕計画の見直し着手。管理計画認定の要否を検討
着工14か月前(7月) 通常総会で「調査・設計に着手する」ことの承認を取る
着工12か月前(9月) 工法の比較検討(足場/ロープアクセス/ハイブリッド)。概算見積の取得
着工10か月前(11月) 施工会社の選定に入る。3社以上から相見積。ブロック塀があれば建設課へ事前相談
着工8か月前(1月) 見積比較の完了。臨時総会の議案書を確定させる(2月に総会は開けない前提)
着工7か月前(2月) 桜まつり期間。議案書の郵送・回覧のみ。対面の説明会は避ける
着工6か月前(3月中旬) 臨時総会で工事の実施・契約の締結を決議
着工5か月前(4月) 契約締結。補助金の申請(該当があれば着工前に済ませる)
着工3か月前(6月) 近隣挨拶、居住者説明会。資材の発注
着工1か月前(8月) 最終確認。工程表の共有
着工(9月) 台風の情報を見ながら着工
竣工(12月) 桜まつり前に完全撤収

河津町の逆算カレンダーは、他の町と1点だけ違います。それは「2月は総会も説明会も開けない月」として最初から外すことです。

区分所有者に別荘所有者・町外居住者が含まれる建物では、そもそも総会の出席率が上がりにくい。そこに桜まつりの繁忙が重なる2月を選ぶと、定足数を満たせずに議案が流れます。工事が遅れるのではなく、決議が遅れる。これが伊豆エリアのマンション管理で、私が繰り返し見てきた失敗の形です。


今週できること(合計1時間かかりません)

明日から動けることを、5つだけ挙げます。

  1. 管理組合の書類から、建物の建築年月日を確認する(5分)
    昭和56年5月31日以前かどうかで、使える制度が変わります。敷地内の付属棟についても確認してください。
  2. 敷地内の塀を歩いて見る(10分)
    道路に面しているか。広域避難地避難路に面しているか。写真を撮っておいてください。
  3. 前回の大規模修繕の見積書を探す(15分)
    仮設工事費が総額の何%だったか。これがわかると、次回の交渉の基準ができます。
  4. カレンダーに桜まつりの期間を書き込む(1分)
    2月上旬〜3月上旬。ここに総会も工事も置かない、と決めるだけで計画の質が変わります。
  5. 河津町役場 建設課(0558-34-1952)に、ブロック塀の補助について電話する(10分)
    補助率と限度額は町のページに記載がありません。聞けばわかります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 河津町に、分譲マンションの共用部そのものに使える町独自の補助金はありますか。
A. 2026年9月4日時点で、町のホームページ上に共用部の大規模修繕を直接の対象とする制度は確認できません。ただしブロック塀等撤去改善事業補助金は敷地内の該当する塀に使える可能性があります。着工前の申請が必要です(出典:河津町)。

Q2. プロジェクトTOUKAI‐0⁺の115万円は、どういう計算で決まりますか。
A. 工事費の8割と115万円を比較して、いずれか少ない額です。工事費が約143万7,500円を超えると115万円で頭打ちになります。木造住宅が対象で、RC造の分譲マンションの共用部は対象外です(出典:河津町 木造住宅耐震補強)。

Q3. 「町内業者」でないと補助が出ない制度があると聞きました。
A. 木造住宅建築等助成制度(有期)は町内建築業者との請負契約が要件です。町内建築業者とは、町内に本社または支店を置く法人、または河津町に納税申告している個人事業主を指します。空き家活用支援補助金の改修支援も町内業者施工が対象です(出典:河津町 木造住宅建築等助成制度)。

Q4. 賃貸マンションの屋根に太陽光を載せたら補助は出ますか。
A. 出ません。河津町の太陽光発電システム設置費補助金は「自ら居住する既存住宅(店舗兼用住宅を含み、賃貸住宅は除く。)」に設置する個人が対象と明記されています(出典:河津町 太陽光発電システム設置費補助金)。

Q5. 河津桜まつりの期間に工事をしてはいけないという決まりがあるのですか。
A. 法令上の禁止ではありません。私たちの実務上の推奨です。2026年は2月7日から3月8日まで開催され、来訪者は100万人規模でした。人口6,130人の町にこの人数が訪れる期間は、資材搬入・職人の宿泊確保・安全管理のいずれもコストが上がります。工程表からこの1か月を先に外しておくことをおすすめします。

Q6. 管理計画認定の申請先はどこですか。
A. 河津町は町域のため、認定権者は静岡県です。手数料や様式は静岡県の最新の案内をご確認ください。

Q7. ロープアクセスだけで大規模修繕は完結しますか。
A. 建物によります。屋上に確実な支点が取れること、大量の資材の上げ下ろしを伴わない工事内容であることが前提です。条件が合わない部位には足場を架けるハイブリッド工法をご提案します。現地を見ないまま「全部ロープでできます」と言う会社があれば、それは慎重に判断されたほうがよいと思います。


この記事のポイントまとめ

  • 河津町に分譲マンション共用部への町独自補助は確認できないが、耐震は115万円と伊豆で高水準
  • TOUKAI‐0⁺の分岐点は工事費143万7,500円。それ以上は補助が頭打ちになる
  • 木造住宅建築等助成と空き家改修支援には「町内業者要件」がある
  • 太陽光補助は賃貸住宅を明確に除外。分譲共用部にも実務上使いにくい
  • 小規模事業者強化補助は販促のみ。建物工事は対象外だが、改修後の集客に使える
  • ブロック塀の補助は着工前申請。総会前に建設課へ相談すること
  • 2月上旬〜3月上旬の桜まつり期間は、工事も総会も置かない前提で計画する
  • 河津町の推奨工程は「9月着工・12月竣工」または「4月着工・6月竣工」

主なお問い合わせ先

窓口 担当 電話
河津町役場 建設課 耐震・ブロック塀 0558-34-1952
河津町役場 産業振興課 木造住宅建築等助成・小規模事業者強化 0558-34-1946
河津町役場 企画調整課 空き家活用支援・太陽光 0558-34-1924
河津町役場(代表) 〒413-0595 静岡県賀茂郡河津町田中212-2 0558-34-1111

制度の内容・金額・要件は年度ごとに変更される可能性があります。着工前に各窓口で最新の情報をご確認ください。


河津町の建物のこと、まずはご相談ください

私たち株式会社明誠は、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を専門にしています。通常の足場仮設による工事、無足場のロープアクセス工法、そして両者を組み合わせたハイブリッド工法——この3つを比較して、建物にとって最適な工法をご提案できる会社は、日本でも多くありません。

河津町のように、傾斜地と海沿いの狭小地が混在し、しかも年に1か月「工事ができない期間」がある町では、工法の選び方がそのまま総コストと工程リスクに直結します。

ロープアクセス工法の技術情報・安全基準・施工事例は、姉妹サイトロープアクセスドットコムにまとめています。

現地調査・お見積りは無料です。「今の見積書が妥当かどうかだけ見てほしい」というご相談でも構いません。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円および静岡県でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。

最終更新:2026年9月4日


出典・参考資料


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東伊豆町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

この記事で答える質問:静岡県賀茂郡東伊豆町の分譲マンション管理組合が、2026年度(令和8年度)の大規模修繕で使える補助金はどれか。そして、共用部の工事に本当に届く制度はいくつあるのか。

結論から申し上げます。東伊豆町には「大規模修繕にお金を出します」という名前の補助金はありません。地方の町ではこれが標準です。

ただし東伊豆町には、私がこの連載で175の自治体を1つずつ読んできたなかで、はじめて出会った条文があります。町の補助金交付要綱の本文に「区分所有又は共有の建築物等の場合は、事業の実施について所有者間で承認されていることが確認できるもの(総会議事録、同意書等)」と書かれているのです。しかも別表には「マンション」という用途区分が、住宅とも建築物とも別に立っています。

町が、管理組合の総会を前提に制度を設計している。人口1万人規模の町でこれは珍しいことです。この1点だけでも、東伊豆町の理事会は電話をかける価値があります。

最終更新:2026年9月4日


この記事の結論:東伊豆町で共用部に効く制度は「3つ」

先に全体像を出します。東伊豆町の住宅系の制度を、分譲マンションの共用部の工事に使えるかどうかで仕分けた結果が下の表です。

制度名 共用部への適合 補助率・限度額 窓口
既存建築物耐震診断事業(東伊豆町既存建築物等耐震性向上事業費補助金) ◎ 基準額の2/3以内・限度200万円 建設整備課 建設管理係
安全で美しいいえなみ整備事業費補助金(ブロック塀等) ◎ 撤去2/3・限度26.6万円/改善2/3・限度33.3万円 建設整備課 建設管理係
緊急輸送ルート等沿道建築物 補強計画策定事業 ○(該当路線沿いのみ) 基準額の10/10以内 建設整備課 建設管理係
緊急輸送ルート等沿道建築物 耐震化助成事業 ○(該当路線沿いのみ) 基準額の4/5以内 建設整備課 建設管理係
住宅リフォーム振興事業補助金 △(専有部のみ・区分所有者個人) 20%・上限20万円 観光産業課 観光商工係
木造住宅等耐震性向上事業費補助金 ×(木造のみ) ― 建設整備課 建設管理係
がけ地近接危険住宅移転事業費補助金 ×(移転が前提) ― 建設整備課
マンション管理計画認定制度 ◎(工事ではなく体制) 手数料4,000円〜 静岡県 住まいづくり課

(出典:東伊豆町 非木造住宅・建築物耐震診断等補助金、東伊豆町 安全で美しいいえなみ整備事業費補助金、東伊豆町 住宅リフォーム振興事業補助金)

理事会の時間は有限です。◎の3つを確実に取りにいって、×の3つには1分も使わない。これが今日の記事の使い方です。

私はいつも理事長さまに、「制度がないのではなく、知られていないだけのものが残っています」とお伝えしています。東伊豆町は、まさにそのパターンでした。


東伊豆町の分譲マンションが置かれている前提を3つの数字で

制度の話に入る前に、町の状況を数字で押さえます。ここを飛ばすと、総会で説明するときの土台が弱くなります。

項目 数値 出典・時点
人口 10,637人(男5,078人・女5,559人) 令和8年7月31日現在
世帯数 6,191世帯 令和8年7月31日現在
1世帯あたり人員 約1.72人 上記から算出

(出典:東伊豆町の人口)

1世帯あたり1.72人。これは全国平均を大きく下回ります。単身世帯の多さに加えて、東伊豆町の場合はもう1つ理由があります。リゾートマンション・別荘としての区分所有です。

伊豆稲取、熱川、北川。相模灘を見下ろす斜面に建つ中高層の分譲マンションのなかには、区分所有者の住民票が町外・県外にある住戸が相当数を占める建物があります。

これが、東伊豆町の管理組合にとって最大の実務課題です。制度の話より先に、この話をさせてください。

総会の定足数が、工事の工程を決めてしまう

私が伊豆半島の管理組合とお付き合いして痛感するのは、「工事が遅れるのではなく、決議が遅れる」ということです。

区分所有者が首都圏や関西に散っていると、通常総会の出席者は限られます。委任状と議決権行使書の回収に、都市部のマンションの2倍以上の時間がかかります。

大規模修繕の実施決議は、多くの管理規約で普通決議(区分所有法第39条第1項に基づき、規約に別段の定めがなければ議決権の過半数)ですが、いずれにせよ「議案書を郵送し、返送を待ち、集計する」という時間は動かせません。

私が東伊豆町の理事会に申し上げるのは、この1点です。

議案の作成を、都市部のマンションより半年前倒しにしてください。

補助金の申請期限も、税制の期限も、この「半年」の中に埋まっています。ここから先の話は、すべてこの前提の上に載っています。


【背骨①】東伊豆町の要綱には「マンション」という行がある

ここからが本題です。

東伊豆町には「東伊豆町既存建築物等耐震性向上事業費補助金交付要綱」(平成26年3月5日要綱第5号)があります。最終改正は令和8年3月26日要綱第7号、令和8年4月1日施行。つまり2026年度に改正されたばかりの、現行の制度です。

対象は「昭和56年5月31日以前に建築された非木造住宅・建築物」。鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造(S造)の分譲マンションは、この「非木造住宅」に該当します。

この要綱の別表第4に、次の行があります。

用途 基準額(延べ面積1㎡あたり)
住宅(マンションを除く。) 39,900円
マンション 51,700円(免震等特殊工法の場合は86,400円)
建築物 57,000円(免震等特殊工法の場合は93,300円)

(出典:東伊豆町既存建築物等耐震性向上事業費補助金交付要綱(PDF))

私はこの連載で、静岡県内の市町の要綱をずっと読み続けてきました。掛川市も袋井市も湖西市も、要綱の本文に「共同住宅」「マンション」「管理組合」の語が一度も出てこない自治体でした。

東伊豆町は違いました。「マンション」という用途が、住宅からわざわざ切り出されて、単価まで設定されている。人口1万人の町の要綱にです。

これが何を意味するか。町が、分譲マンションを制度の想定対象として扱っているということです。窓口に電話をかけたときに、「マンションですか」で話が止まらない可能性が高い。これは実務的に、とても大きな違いです。


耐震診断の補助はいくらになるのか【延べ面積別の試算表】

分譲マンションの管理組合がまず使える可能性があるのは、別表第1の一番上、「既存建築物耐震診断事業」です。

補助金の額は、要綱にこう定められています。

1棟ごとに、当該事業に要する経費と別表第2に定める基準額とを比較して、いずれか少ない額の3分の2以内の額とし、2,000,000円を限度とする。

基準額(別表第2)は、延べ面積の階層別に決まっています。

構造・用途 延べ面積 基準額
非木造戸建住宅 面積区分なし 204,000円
既存建築物(戸建住宅以外=マンション等) 1,000㎡以下の部分 1㎡あたり4,580円
同上 1,000㎡超〜2,000㎡以下の部分 1㎡あたり2,350円
同上 2,000㎡を超える部分 1㎡あたり1,570円

これを実際の建物にあてはめると、こうなります。

延べ面積 基準額 基準額の2/3 補助見込額(限度200万円)
300㎡ 1,374,000円 916,000円 916,000円
500㎡ 2,290,000円 1,526,000円 1,526,000円
655㎡ 約3,000,000円 約2,000,000円 限度額に到達
1,000㎡ 4,580,000円 3,053,000円 2,000,000円
2,000㎡ 6,930,000円 4,620,000円 2,000,000円
3,000㎡ 8,500,000円 5,666,000円 2,000,000円

※1,000円未満は切り捨て。

ここから読み取れることは1つです。

延べ面積がおおむね655㎡を超えると、基準額の側では限度額200万円に張り付く。

40戸で1戸70㎡なら専有部だけで2,800㎡。共用部を含めれば3,000㎡を超えます。分譲マンションであれば、基準額の側で限度額に届かないケースはまず考えにくい。

ただし、ここに落とし穴があります

要綱は「事業に要する経費と基準額とを比較して、いずれか少ない額の3分の2以内」と書いています。

つまり、実際の耐震診断の見積が150万円なら、比較して少ない方は150万円。その3分の2で100万円です。基準額の側が大きくても、そこまでは出ません。

200万円の限度額を使い切るには、診断そのものの事業費が300万円以上である必要があります。

これは、規模の大きな建物で、構造図面が残っていない、コンクリートのコア抜き試験が多数必要、といった条件が重なるケースです。中規模のマンションであれば、現実的な着地点は100万〜200万円のあいだとお考えください。

それでも、管理組合の会計から見れば大きな金額です。私の経験上、耐震診断を「お金がかかるから」と先送りしている組合ほど、この制度の存在を知りません。


【背骨②】要綱が「総会議事録」を名指ししている

もう1つ、東伊豆町の要綱で私が目を留めた条文があります。第5条(交付の申請)の添付書類の項です。

(カ)区分所有又は共有の建築物等の場合は、事業の実施について所有者間で承認されていることが確認できるもの(総会議事録、同意書等)

この一文が、耐震診断・補強計画策定・耐震補強工事・建替工事・除却工事の5つの事業すべてに、同じ文言で入っています。

役所の要綱で「総会議事録」という言葉が出てくるのは、書き手が管理組合の意思決定プロセスを理解しているということです。

そして、管理組合の側から見ると、この条文は申請の段取りをそのまま指定してくれていることになります。

東伊豆町での申請手順(管理組合の実務に翻訳すると)

順序 やること 誰が 注意点
1 建設整備課 建設管理係(0557-95-6303)に電話 理事長または担当理事 年度ごとの予算枠があるため、まず電話が要綱の指定
2 耐震診断の見積を取得 理事会 事業に要する経費の見積書の写しが添付書類
3 総会で診断実施を決議 管理組合 議事録が添付書類になる
4 交付申請書(様式第1号)+事業計画書(様式第2号)+事業収支予算書(様式第3号)を提出 理事長 着手前の申請が原則
5 交付決定通知(様式第4号)を受領 ― ここまで工事・診断に着手しない
6 診断実施 診断者 ―
7 完了後30日以内、または年度の3月末日のいずれか早い日までに実績報告 理事長 期限の設計が独特
8 額の確定通知 → 請求書(様式第10号)を提出 理事長 ―

実務で一番危ないのは3と4の順序です。総会の議事録が必要なのですから、「先に診断を頼んでから、あとで総会にかける」という進め方はできません。

そして、7の実績報告の期限。「完了した日から30日を経過した日」または「交付決定のあった年度の3月末日」のいずれか早い日、という書き方です。年度末に交付決定を受けた場合、3月末までしか猶予がないことになります。

私はいつも理事長さまに、「役所の期限は、工事の期限ではなく書類の期限です」とお伝えしています。工程表には、工事の完了日ではなく、書類の提出日をマイルストーンとして打ってください。

なお、補助金の収支に関する帳簿と領収書等の関係書類は、交付を受けた年度終了後5年間の保管義務があります。理事が毎年入れ替わる組合では、引き継ぎ書類の一覧にこの1行を足しておくことをおすすめします。


緊急輸送ルート等の沿道なら、桁が変わる

東伊豆町の要綱には、もう1段階上の制度が用意されています。

「緊急輸送ルート等沿道建築物」に該当する場合です。これは、静岡県耐震改修促進計画で指定された道路に接し、地震で倒壊すると道路をふさいで避難を妨げるおそれのある建築物を指します。

東伊豆町を南北に貫く国道135号は、伊豆半島東海岸の生命線です。この沿道に建つ建物であれば、確認する価値があります。

事業区分 補助率 基準額(一戸建住宅以外)
緊急輸送ルート等沿道建築物 補強計画策定事業 10分の10以内(全額) 1,000㎡未満 300万円/1,000〜2,000㎡未満 480万円/2,000〜3,000㎡未満 600万円/3,000〜5,000㎡未満 720万円/5,000〜10,000㎡未満 900万円/10,000㎡以上 1,080万円
緊急輸送ルート等沿道建築物 耐震化助成事業 5分の4以内 マンション:延べ面積1㎡あたり51,700円(免震等特殊工法86,400円)

補強計画の策定が10分の10、つまり基準額の範囲なら実質的に自己負担なしという設計です。耐震化の工事本体も5分の4。通常の耐震診断(3分の2・限度200万円)とは金額の桁が違います。

ただし、これは「診断の結果、構造耐震指標値Is値が0.6未満だった」など、要綱第4条の要件を満たす建物に限られます。すべての建物が該当するわけではありません。

私が申し上げたいのは、「うちは関係ない」と決める前に、前面道路が緊急輸送ルート等に指定されているかを1回確認してほしい、ということです。確認は電話1本で済みます。


ブロック塀は「1敷地1回」——ここが東伊豆町の落とし穴

大規模修繕とセットで議案にすべきなのが、敷地内のブロック塀です。東伊豆町の制度は「安全で美しいいえなみ整備事業費補助金」といいます。

事業区分 基準単価 補助率 1敷地あたり限度額
ブロック塀等撤去事業 延長1mあたり20,000円 2/3以内 266,000円
ブロック塀等改善事業(緑化あり) 延長1mあたり38,400円 2/3以内 333,000円
ブロック塀等改善事業(緑化なし) 延長1mあたり38,400円 2/3以内 333,000円
美しいいえなみ整備事業(緑化のみ) 延長1mあたり38,400円 2/3以内 333,000円

(出典:東伊豆町安全で美しいいえなみ整備事業費補助金交付要綱(PDF))

延長別の試算はこうなります。

撤去する場合

塀の延長 基準額 補助見込額
10m 200,000円 133,000円
15m 300,000円 200,000円
20m 400,000円 266,000円(限度額に到達)
30m 600,000円 266,000円

フェンス等・生垣に改善する場合

塀の延長 基準額 補助見込額
5m 192,000円 128,000円
10m 384,000円 256,000円
13m 499,200円 332,000円(ほぼ限度額)
15m以上 576,000円以上 333,000円

つまり、撤去なら20m、改善なら13mで限度額に届きます。それ以上の長さがあっても補助額は増えません。マンションの敷地であれば、道路に面した塀が20mを超えることは珍しくないので、限度額を前提に予算を組んでいただいて構いません。

東伊豆町ならではの注意点が2つあります

1つ目:フェンスも生垣も同額です。

この連載で先日取り上げた湖西市では、生垣への改善だけが2倍以上優遇される設計でした。東伊豆町は緑化あり・緑化なしのどちらも38,400円/m・限度333,000円で同額です。

これは管理組合にとってむしろ判断が楽です。補助額に差がないなら、剪定という毎年の維持費が発生しないフェンスを選ぶ合理性が高くなります。生垣を選ぶなら、それは補助金ではなく景観の判断としてやるべきです。

2つ目:同一の敷地では1回しか使えません。

要綱第3条第2項に、こうあります。

同一の利用に供されている一団の土地において、本要綱又は東伊豆町生垣づくり補助金交付要綱の規定による補助金の交付を受けている場合は、補助の対象としない。

つまり、撤去と改善を両方申請して合算する、という組み立てができません。過去にこの補助金を使ったことがある敷地も対象外です。

さらに、第6条第3号に見過ごせない条件があります。

補助事業により取得し、又は効用の増加した不動産及びその従物については、事業完了から15年を経過するまでの期間内において、町長の承認を受けないで、補助金の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならないこと。

15年です。マンションの大規模修繕は12〜15年周期ですから、次の大規模修繕をまたぎます。理事会が3年で入れ替わることを考えれば、この条件は管理組合の重要事項として、規約とは別の「引き継ぎメモ」に残しておく必要があります。

私が現場で20年やってきて、一番悔しい思いをするのは、こういう「知っていれば防げた話」を、あとから聞かされるときです。


住宅リフォーム振興事業補助金は、共用部には届かない。ただし——

東伊豆町には、金額の使い勝手が良い「住宅リフォーム振興事業補助金」があります。

項目 内容
補助額 工事金額(税抜)100万円以上:最大20万円/5万円以上100万円未満:工事金額(税抜)の20%(千円未満切り捨て)
受付 令和8年4月1日(水曜日)午前8時30分から再開・先着順
対象者 申請者またはその家族が東伊豆町に住民登録し、居住している者/補助対象住宅の所有者/町税等(介護保険料、水道料等を含む)を滞納していない者
上限管理 交付金額20万円・交付回数5回の上限に達していないこと
施工業者 町内に事業所を有する法人、または町内に住所を有する個人事業者で町民税申告している者。事前の資格登録が必要
完了届 同年度3月10日まで
その他 既に着工している工事は対象外。申請から交付決定まで1週間程度
窓口 観光産業課 観光商工係 0557-95-6301

(出典:東伊豆町 住宅リフォーム振興事業補助金)

正直に申し上げます。この制度は共用部の大規模修繕には使えません。

対象は「申請者が所有し、居住している住宅」で、公式ページに「(貸家やアパートは対象外)」と明記されています。管理組合が申請者になる形は、この文言からは読み取れません。

ただし、私が理事会にお伝えしているのは別の使い方です。

「管理組合は周知役に徹する」という使い方

大規模修繕の説明会は、区分所有者が一斉に集まる年に一度の機会です。そこで専有部のリフォーム補助を配布資料の1ページに入れておく。これだけで理事会の評価が変わります。

  • 東伊豆町に住民登録があり、実際に住んでいる区分所有者は対象になり得る
  • 100万円以上の工事なら20万円
  • 交付回数5回までという設計なので、過去に使った人でも上限に達していなければ再度使える

最後の1点は、この連載の175自治体でもかなり珍しい設計です。「1世帯1回限り」の自治体が大半のなか、東伊豆町は累計20万円・5回まで使えます。

そして、この制度が観光産業課の所管である点も東伊豆町らしいところです。町内業者を使うことが条件になっている、つまり住宅政策ではなく地域経済振興の制度として設計されているからです。

大規模修繕の元請けが町外だと使えない、という論点

念のため申し上げておくと、この「町内業者限定」の条件は、共用部の大規模修繕で工事会社を選ぶときの話とは切り離してお考えください。

共用部の工事にこの補助金は使えないのですから、元請けの所在地を補助金の条件に引きずられて決める必要はありません。むしろ、東伊豆町のような立地では、伊豆半島内・県東部・首都圏まで含めて見積を取れる環境を作ることのほうが、金額へのインパクトが大きくなります。


マンション管理計画認定制度の窓口は「静岡県」です

ここでよく混乱が起きるので、はっきり書きます。

東伊豆町の分譲マンションの管理計画認定は、町ではなく静岡県が窓口です。

マンション管理計画認定制度は、マンションの管理の適正化の推進に関する法律にもとづき、管理組合が作成した管理計画が一定の基準を満たす場合に認定を受けられる制度です。静岡県のページには「対象:県内の町域」と明記されています。市の区域は各市が、町の区域は県が担当します。

認定申請手数料は令和8年4月1日に改定されました

事前確認適合証 長期修繕計画数 令和8年3月31日まで 令和8年4月1日から
有り 1 3,800円 4,000円
有り 2以上 3,800円+1,700円×(計画数−1) 4,000円+1,800円×(計画数−1)
無し 1 26,900円 28,100円
無し 2以上 26,900円+15,500円×(計画数−1) 28,100円+16,200円×(計画数−1)

(出典:静岡県 マンションの管理。認定の更新の手数料も同額です)

適合証の有無で7倍の差が出ます。事前確認適合証とは、公益財団法人マンション管理センターが交付する、法第5条の14各号の基準に適合することを証する書面のことです。

したがって、現実的なルートは1つです。公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを利用して事前確認適合証を取り、そのうえで県に申請する。県へ直接申請すると適合証なしの28,100円になります。

認定を取ると何が変わるのか

管理組合の総会で「認定を取りましょう」と提案すると、決まって「それで何が得なのか」と聞かれます。答えは3つです。

  1. 固定資産税の減額(長寿命化促進税制)の入口になる(後述)
  2. フラット35の金利引き下げ
  3. 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資の金利引き下げ

3つ目は、東伊豆町のように修繕積立金の水準が読みにくい建物では重要です。認定が税制に間に合わなくても、マンション共用部分リフォーム融資の金利が下がるだけで、借入をする組合には実額の効果が出ます。


【2026年の新しい論点】マンション管理適正化支援法人という制度ができました

これは今年から始まった話なので、まだご存じない理事長さまが多いはずです。

令和7年5月30日に「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律」(令和7年法律第47号)が公布され、同年11月28日に一部が施行されました。これにより、マンションの管理の適正化の推進に関する法律に「マンション管理適正化支援法人」の登録制度が新設されました。

一般社団法人・一般財団法人・特定非営利活動法人などの民間団体が都道府県等の登録を受けることで、公的な立場からマンション管理の専門的支援を行う、という仕組みです。

支援法人の業務区域 登録主体
市の区域 市
町の区域 県

東伊豆町は町ですから、登録主体は静岡県になります。

そして、静岡県のページには現時点でこう書かれています。

静岡県は、現段階では、登録制度は実施していません。

(出典:静岡県 マンションの管理)

つまり、東伊豆町の管理組合が今すぐ支援法人のサービスを受けられるわけではありません。ここは正直に書きます。

ただ、区分所有法そのものが改正された年である、ということは知っておく価値があります。老朽化マンションの管理と再生を円滑にする方向で法律が動いている。理事会で「今年は何か変わったのか」と聞かれたときに答えられる材料として、頭の隅に置いておいてください。

あわせて、国土交通省は令和7年にマンション標準管理規約を改正しています。静岡県のページから改正パンフレットが公開されていますので、規約の見直しを検討している組合は目を通しておくと議論が早く進みます。


固定資産税の話:東伊豆町のページには「減額」の項目がありません

長寿命化促進税制について書きます。

これは、一定の要件を満たす大規模修繕工事を行ったマンションの翌年度の固定資産税を6分の1〜2分の1(参酌基準3分の1)減額する制度です。1戸あたり床面積100㎡までが対象になります。

主な要件は次のとおりです。

要件の種類 内容
建物 築20年以上・総戸数10戸以上
ルートA(認定ルート) 令和3年9月1日以降に修繕積立金の引上げを決議し、管理計画認定を受けている
ルートB(助言・指導ルート) 助言・指導を受けて長期修繕計画を見直し、積立金額が基準額以上等
工事 過去に長寿命化工事を実施済み、かつ今回の工事が要件を満たす
申告 工事完了後3か月以内に市町村へ申告
期限 令和9年3月31日までに工事完了

期限まで、この記事の公開時点で約19か月です。

東伊豆町の税のページを全部見ました

東伊豆町の税金のページに並んでいる税目は、税の証明/税の手続き/納付/固定資産税/軽自動車税/町民県民税/法人町民税/入湯税/その他税/確定申告の10項目です。

そして固定資産税のページの子ページは、次の2件だけでした。

  • 固定資産・名寄台帳兼課税台帳の閲覧は
  • 固定資産(土地・家屋)の異動等について

耐震改修による減額も、省エネ改修による減額も、バリアフリー改修による減額も、長寿命化促進税制も、専用のページが1つもありません。

私はこの連載で、市町のサイトを「長寿命化促進税制がどこに書かれているか」で3つの型に分類してきました。専用ページがある型、住宅ページの中に書かれている型(磐田市・袋井市・湖西市)、そしてどこにも書かれていない型(清水町・函南町)。

東伊豆町は3つ目、しかも最も徹底した形です。

ここで大事なことを申し上げます。ページがないことと、使えないことは別です。

長寿命化促進税制は地方税法にもとづく全国共通の制度です。東伊豆町のサイトに説明ページがないのは、町の住宅政策の広報上の優先順位の問題であって、制度の適用可否とは別の話です。

確かめ方は電話1本です。税務課(0557-95-6201)に、こう聞いてください。

「分譲マンションの大規模修繕工事について、地方税法のマンション長寿命化促進税制による固定資産税の減額の申告を受け付けていますか。申告書の様式と、必要な添付書類を教えてください。」

制度名を正確に言うことが大事です。「大規模修繕の減税」では通じないことがあります。

都市計画税について

東伊豆町の税金ページの税目一覧に、都市計画税の項目は見当たりませんでした。

この連載で見てきた静岡県内の自治体は三者三様でした。掛川市は市街化区域が定められておらず、条例で定める区域のみ課税。袋井市は市内全域で税率0.3%。湖西市は税率0.2%。そして東伊豆町は、町の税金ページに項目自体がない。

ここは断定を避けます。課税の有無は条例で決まるものであり、私が見たのは町のウェブサイトの構成だけだからです。

ただ、総会で説明する側としては、この違いは知っておいたほうがよい。

長寿命化促進税制で減額されるのは固定資産税です。総会で「税金が3分の1になります」と言うと、区分所有者は自分が払っている税額の総額をイメージします。正確に「固定資産税が」と言ってください。

そして、東伊豆町でご自宅の課税内容を確かめる一番確実な方法は、5月ごろ届く納税通知書を1枚見ることです。そこに何が課税されているかが書いてあります。


静岡県の支援:東伊豆町からは「熱海」と「伊東」が近い

補助金以外の支援にも触れます。ここは東伊豆町の理事会にとって、かなり条件が良い部分です。

令和8年度マンション管理セミナー(静岡県)

開催地 開催日 会場
浜松市 令和8年7月25日(土曜日) 可美公園総合センター
磐田市 令和8年8月29日(土曜日) 磐田商工会議所
三島市 令和8年9月12日(土曜日) 三島市役所
熱海市 令和8年10月予定 ―
沼津市 令和8年10月予定 ―
静岡市 令和8年11月予定 ―
伊東市 令和8年12月予定 ―
富士市 令和9年2月予定 ―
浜松市 令和9年2月予定 ―

(出典:静岡県 マンションの管理)

この表を見て、私は東伊豆町の管理組合をうらやましいと思いました。

熱海市(10月予定)と伊東市(12月予定)。伊豆急行線で伊豆稲取駅から伊東駅まで約35分、熱海駅まで約1時間。日帰りどころか、午前中に出て昼過ぎには戻れる距離です。

しかも三島市は令和8年9月12日(土曜日)、この記事の公開から8日後です。三島市役所での開催。伊豆急行と伊豆箱根鉄道を乗り継ぐ形になりますが、まだ間に合います。

私はいつも理事長さまに、こうお伝えしています。

理事長ひとりで行かないでください。次期理事の候補と2人で行ってください。

セミナーの内容そのものより、帰りの電車で交わす「うちはどうする」という会話のほうが、組合を前に進めます。

マンション管理士の無料派遣(令和8年度)

項目 内容
受付件数 10件(上限に達した時点で終了)
申込期限 令和8年11月14日(土曜日)
派遣回数 各管理組合2回まで
派遣期限 令和9年1月31日(日曜日)
申込先 一般社団法人静岡県マンション管理士会(ファクス0544-27-6561)
費用 無料

県全体で10件です。静岡県内の分譲マンション数を考えれば、これはかなり少ない枠です。申込書に書く内容を、東伊豆町の管理組合向けに具体化すると、こうなります。

「築○年、○階建て、○戸の分譲マンションです。区分所有者の約○割が町外に居住しており、総会の議決権行使書の回収に時間がかかっています。2回目の大規模修繕にあたり、(1)長期修繕計画の見直しと修繕積立金の水準、(2)管理計画認定の取得の可否、(3)総会運営(委任状・議決権行使書の実務)について助言をいただきたい。」

3つ目を入れるのが、伊豆のマンションのポイントです。工事の話だけでなく、総会が回るかどうかが最大の論点だからです。

国のモデル事業は、今回は間に合います

国土交通省の「マンションストック長寿命化等モデル事業」の令和8年度第3回提案募集は、2026年9月14日(月曜日)から9月18日(金曜日)です。

この記事の公開日から10日あります。これは、この連載で扱ってきた自治体のなかでは珍しく、現実的な日程です。

とはいえ10日で新規に申請書類一式を整えるのは、正直に申し上げて厳しい。私がおすすめするのは、次の2つです。

  1. 国土交通省のマンション総合対策モデル事業のページから、必要書類の一覧だけ印刷する(15分で終わります)
  2. 次回募集に向けて、劣化状況調査と長期修繕計画の見直しの見積を先に取っておく

この事業は、老朽化マンションの再生に向けた先導的なプロジェクトを支援するもので、計画支援型と工事支援型があります。全国で採択される件数は限られますが、「応募を検討した」という事実そのものが、理事会の議論の質を上げます。


ここから先は、株式会社明誠のサービスの話を含みます

制度の話はここまでです。ここからは工法とコストの話に入りますが、私自身が改修会社の代表ですので、利益相反があることを先に開示します。そのうえで読んでいただければと思います。

まず「見積書のどこにお金が乗っているか」の話から

大規模修繕の見積書で、多くの管理組合が素通りしてしまう行があります。仮設工事です。

一般的に、大規模修繕工事の総額に占める仮設足場の割合は15〜25%程度です。金額にすると、こうなります。

工事総額 仮設足場の概算(15〜25%)
3,000万円 450万〜750万円
5,000万円 750万〜1,250万円
8,000万円 1,200万〜2,000万円

私が現場で20年見てきて思うのは、20万円の植栽剪定は真剣に議論されるのに、750万円の「仮設工事一式」の1行はそのまま可決される、ということです。

理事の皆さまが不真面目なのではありません。判断材料が渡されていないだけです。

見積書を受け取ったら、この1文を工事会社に伝えてください。

「仮設工事を、架面積の平米単価とリース期間に分解して出してください。」

これだけで、金額の根拠が見えます。断られるようなら、それも1つの情報です。

ロープアクセス工法という選択肢

足場を組まずに、屋上からロープで作業員が下降して外壁の調査・補修・塗装・シーリング打ち替えを行う工法があります。ロープアクセス工法(無足場工法)といいます。

産業用の登山技術を応用したもので、命綱とは別に必ずバックアップのロープを取る二重系統が基本です。ロープアクセス工法の安全基準や技術的な解説は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。

そして、東伊豆町の建物には、この工法が効きやすい条件がそろっています。

東伊豆町の立地条件 足場工法での問題 ロープアクセスの効き方
相模灘を望む傾斜地に建つ建物が多い 足場の脚部を水平に組むための地盤処理・段差処理に費用と工期がかかる 屋上からの下降なので地盤の条件に左右されにくい
海側が擁壁・崖地に接している 擁壁側に足場を建てる余地がない、あるいは擁壁に荷重をかけられない 建物側から吊り下げるため擁壁に負担をかけない
国道135号から入る狭い町道が多い 足場部材を積んだ4t車が現場に入れない 資材量が大幅に少なく、軽トラック規模で搬入できる
敷地に余裕がなく駐車場が建物に近接 全周に足場を組むと駐車場が長期間使えない 面ごとに施工でき、駐車場の閉鎖期間を短くできる
区分所有者の在宅率が低い(別荘・リゾート利用) 足場とメッシュシートが長期間かかることへの説明機会が少ない 工期そのものが短くなる

3つ目の「狭い道」は、営業トークではなく物流の話です。足場部材が現場に届かない立地では、そもそも足場という選択肢が成立しません。

正直に申し上げます。ロープアクセスは万能ではありません

ここは毎回、同じことを書いています。

私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる現場は、普通にあります。

足場工法が有利な条件
外壁タイルの張り替え面積が大きく、材料の荷揚げが大量に発生する
屋上防水の全面改修で、資材の搬入量が多い
バルコニーの手すりや隔て板を全戸交換するなど、水平方向の移動が多い工事
外壁の欠損が広範囲で、足場上での面的な作業が必要

そして、これも正直に書いておきます。

バルコニー内部の作業が必要な点は、工法にかかわらず同じです。ロープアクセスにしても、居住者の立ち入りがゼロになるわけではありません。減るのは「外部足場が窓の前に架かっている期間」です。

そのうえで、部位ごとに足場とロープアクセスを使い分けるハイブリッド工法が、多くの建物で最も合理的な着地点になります。3つの工法から選べることの意味は、大規模修繕工事のご紹介とロープアクセス工法のご紹介のページにまとめています。


東伊豆町のマンションで、モデルケースを2つ

実在の建物を特定できない形で、東伊豆町の一般的な条件をもとに試算します。

ケース1:伊豆稲取駅圏/築28年・6階建て・42戸

項目 全面足場 ハイブリッド工法
工事総額 6,400万円 5,500万円
差額 ― ▲900万円
1戸あたり 約152万円 約131万円(▲約21万円)
工期 5.5か月 4か月

海側の面と道路側の高層部をロープアクセス、低層部と搬入量の多い面を足場、という配分です。

ケース2:熱川・北川方面/築33年・5階建て・30戸(海沿いの傾斜地)

項目 全面足場 ロープアクセス主体
工事総額 4,500万円 3,650万円
差額 ― ▲850万円
1戸あたり 150万円 約122万円(▲約28万円)
工期 5か月 3.5か月

30戸で4,500万円は、1戸あたり150万円です。同じ工事を150戸のマンションでやれば1戸あたり30万円前後になります。

戸数が小さいほど、工法の選定が1戸あたりの負担に効きます。

東伊豆町の分譲マンションは、都市部と比べて総戸数が小さい建物が多い。だからこそ、工法の話を設計段階で持ち出す価値があります。

そして、これが最も大事な点です。

工法は、設計を発注したあとでは実質的に選べません。着工の15〜13か月前に決めてください。


修繕積立金が足りないときの4つの打ち手

東伊豆町のように、区分所有者の高齢化と町外居住が重なる建物では、積立金の不足は現実的な課題です。打ち手は4つあります。

打ち手 内容 注意点
1. 工事範囲の絞り込み 劣化診断にもとづき、次期に送れる部位を分ける 送った部位の劣化進行を長期修繕計画に反映する
2. 工法の見直し 仮設費を圧縮する 設計発注前でないと選べない
3. 借入 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資 管理計画認定で金利引き下げ
4. 一時金または積立金の増額 総会決議 議案書に「一時金50万円」と「月々3,000円」の両方を載せる

4つ目について補足します。人は「50万円」という数字を見ると身構えますが、「月3,000円」なら判断できます。同じ金額を2通りの見せ方で議案書に載せるだけで、可決率が変わります。

そして、段階施工には注意点があります。仮設費は施工の回数分かかります。2回に分ければ足場代も2回。さらに、長寿命化促進税制の「3点セット一体で行う工事」の要件を外してしまう可能性もあります。安く見えて高くつく、という典型例です。


見積書のチェック5点【東伊豆町版】

私が管理組合にお渡ししているチェックリストです。5点目まで、そのまま使ってください。

1.下地補修の「仮定数量」を超えた分の単価を、契約前に契約書へ明記する

これが最重要です。外壁のひび割れ補修やタイル浮きの数量は、足場を架けるまで正確には分かりません。だから見積書には「仮定数量」が入ります。問題は、超過した分の単価が契約書にないケースです。

工事が始まって足場が架かった状態で、管理組合が対等に交渉することはできません。

契約書に入れる文例です。

「下地補修工事について、仮定数量を超過した場合の精算単価は、見積書記載の単価と同一とする。数量の確定は、監理者立会いのもと計測により行い、写真および計測記録を添付するものとする。」

これを嫌がる会社は、そこで分かります。

2.高圧洗浄の排水計画

東伊豆町は海に向かって傾斜する地形です。洗浄水は下へ流れます。近隣の敷地、町道、そして海。排水の経路と養生の方法を書面で出してもらってください。これは環境の話であると同時に、近隣との関係の話です。

3.予備日の設定と、超過した場合の費用負担

相模灘に面する立地では、降雨と強風で作業が止まる日が読みにくい。見積書に予備日が何日設定されているか、そして予備日を超過した場合の足場リース延長費用は誰の負担になるかを、契約前に確認してください。

4.工事監理者と施工会社の資本関係

設計監理方式を採るなら、監理者が施工会社と資本関係にないことを確認します。「第三者の目」を入れるための費用ですから、そこが独立していなければ意味がありません。

5.温泉の引湯配管が共用部にある場合の扱い

これは東伊豆町ならではです。温泉を各戸に引いている建物では、引湯配管や熱交換器が共用部に含まれていることがあります。温泉成分による配管の腐食・スケール付着は、一般的な給水配管とは劣化の進み方が違います。

見積書の設備工事の欄に、温泉配管の点検・更新が入っているか。入っていないなら、それは「対象外」なのか「見落とし」なのか。ここは必ず確認してください。長期修繕計画に温泉設備の項目がない建物を、私は実際に何件も見ています。


東伊豆町の建物が受けている、方位別の劣化条件

劣化診断の報告書を「外壁全体で○%劣化」という形で受け取ってはいけません。方位別に分けてもらってください。補修数量の根拠になりません。

東伊豆町の建物が受けている条件を、方位別に整理します。

方位 主な劣化要因 重点的に診るべき部位
東〜南東面(海側) 相模灘からの飛来塩分。金属部の腐食が最も早い 手すり・避難ハッチ・屋外階段・EV機械室扉・アルミサッシまわりのシーリング
南面 紫外線による塗膜劣化とシーリングの伸縮疲労 外壁塗膜のチョーキング、サッシまわりシーリング
西〜北西面(山側) 冬季の季節風。塗膜の摩耗とシーリングの早期硬化 メッシュシートの開放・復旧の人工が工程に乗る
北面 放射冷却による結露。コケ・藻の発生 防藻・防カビ仕様の検討
建物基部・擁壁側 崖地・傾斜地に近接する建物では、擁壁のクラックと排水 擁壁の目地・水抜き孔・法面の排水

東側の飛来塩分は、東伊豆町の建物にとって最大の要因です。鉄部の塗装周期を、山側と海側で分けて長期修繕計画に書いている組合は多くありません。ここを分けるだけで、次の12年の見え方が変わります。

そして最後の行、擁壁。東伊豆町にはがけ地近接危険住宅移転事業費補助金という制度があります。これは住宅の移転を支援する制度でマンション共用部には使えませんが、町の中に土砂災害特別警戒区域や災害危険区域が存在することを示しています。

劣化診断を発注するとき、「擁壁と法面も一緒に見てください」と1行足してください。追加費用はほとんどかかりませんし、次の総会で聞かれたときに答えられます。


工事の適期はいつか【東伊豆町版】

時期 向き不向き 理由
3〜5月 ○ 気温・湿度とも安定。ただし4月下旬以降は観光シーズンで搬入路が混む
6〜7月 △ 梅雨。予備日を7〜10日多めに
8月 △ 観光ピーク。国道135号の渋滞で資材搬入の時間が読みにくい
9〜11月 ◎ 最も条件が良い。台風の通過後は要注意だが、気温・湿度が塗装に最適
12〜2月 ○ 温暖で晴天率は高い。ただし季節風で高所作業の中止日が出る。予備日3〜5日追加

東伊豆町で特徴的なのは、観光シーズンと工事工程の関係です。8月と年末年始、そして2月の雛のつるし飾りの時期は、町内の交通量が普段と変わります。資材搬入の時間帯を工程表に書き込んでおくと、後で揉めません。


着工19か月前からの逆算カレンダー

長寿命化促進税制の期限(令和9年3月31日完了)から逆算すると、こうなります。

時期 やること
19〜16か月前 劣化状況調査の発注。管理計画認定の準備開始(事前確認適合証のルート)
15〜13か月前 工法を決める(ここを過ぎると設計が固まり、実質的に選べなくなる)
12か月前 定時総会で工事実施と予算を決議
9〜6か月前 施工会社の選定・相見積
3か月前 補助金の交付申請(着手前が原則)
着工直前 改修前の写真撮影(高圧洗浄後は二度と撮れません)
完了後3か月以内 固定資産税の減額申告

律速になるのは工事ではなく、総会です。

東伊豆町のように区分所有者が町外に多い建物では、ここにさらに数か月の余裕を見てください。

証明書まわりの落とし穴を3つ

  1. 建築士との契約書に「大規模の修繕等証明書の発行」を明記する。あとから頼むと追加費用になったり、そもそも発行できないと言われたりします。
  2. 着工前の写真は、高圧洗浄をした瞬間に撮れなくなります。議事録に「改修前の写真撮影を、高圧洗浄着手前に完了させること」と3行書いておいてください。
  3. 前回の施工会社が廃業していると、過去の工事内容の証明が難しくなります。前回の工事の書類(契約書・仕様書・完了報告書・写真)が管理室にあるか、今週中に確認してください。

今週できること(合計1時間かかりません)

所要時間 やること
5分 建設整備課 建設管理係(0557-95-6303)へ電話。「昭和56年以前の分譲マンションの耐震診断補助について」
5分 税務課(0557-95-6201)へ電話。「マンション長寿命化促進税制の申告について」
5分 屋上に上がる。防水層の状態と、温泉配管があればその外観を見る
15分 敷地内のブロック塀を採寸する(道路に面した延長をメートルで)
15分 管理室で、前回の大規模修繕の書類一式を探す
10分 静岡県のマンション管理士無料派遣の申込書をダウンロードする(令和8年11月14日締切)

電話2本は今日中に。予算枠は年度ごとで、先着順の制度もあります。


よくある質問(FAQ)

Q1. 東伊豆町に、分譲マンションの大規模修繕そのものに使える補助金はありますか?
A. 工事費を直接補助する町独自の制度はありません。ただし、昭和56年5月31日以前に建築された非木造の建物であれば、既存建築物耐震診断事業(基準額の3分の2以内・限度200万円)が使えます。診断は大規模修繕の設計の土台になるため、実質的に工事の入口の補助になります。(出典:東伊豆町 非木造住宅・建築物耐震診断等補助金)

Q2. 管理組合が申請者になれますか?
A. 東伊豆町の要綱には、区分所有または共有の建築物の場合は「総会議事録、同意書等」を添付すると明記されています。つまり要綱が区分所有建物を想定した設計になっています。申請者の名義を管理組合とするか理事長個人とするかは、建設整備課 建設管理係(0557-95-6303)にご確認ください。

Q3. 補助金の申請は工事の前ですか、後ですか?
A. 事業の実施前です。東伊豆町の各制度のページには「事業の実施前に補助金交付申請を行ってください」と明記されています。交付決定通知を受け取る前に着手すると、補助の対象外になります。

Q4. ブロック塀の撤去と、フェンスへの建て替えの両方に補助は出ますか?
A. 同一の一団の土地で、この要綱またはかつての生垣づくり補助金の交付をすでに受けている場合は対象外になります。1敷地につき1回とお考えください。撤去のみなら限度26.6万円、フェンス等・生垣への改善なら限度33.3万円です。(出典:東伊豆町安全で美しいいえなみ整備事業費補助金交付要綱(PDF))

Q5. 東伊豆町の住宅リフォーム補助金は、マンションの共用部に使えますか?
A. 使えません。公式ページに「申請者が所有し、居住している住宅が対象です。(貸家やアパートは対象外)」と明記されています。ただし、東伊豆町に住民登録して居住している区分所有者の専有部のリフォームには使える可能性があります。交付回数5回まで・累計20万円までという設計なので、説明会資料に1ページ入れておく価値があります。

Q6. 管理計画認定の申請先はどこですか?
A. 静岡県です。マンション管理計画認定制度の対象は、市の区域は各市、町の区域は県と整理されています。東伊豆町は町なので、静岡県くらし・環境部建築住宅局住まいづくり課(054-221-3084)が窓口です。手数料は令和8年4月1日改定で、事前確認適合証がある場合4,000円、ない場合28,100円です。(出典:静岡県 マンションの管理)

Q7. 区分所有者の多くが町外に住んでいます。総会が成立しません。
A. 伊豆のリゾートマンションで最も多いご相談です。実務としては、(1)議案書の発送を通常より2か月前倒しする、(2)委任状と議決権行使書の両方の様式を同封する、(3)返信用封筒に切手を貼る、(4)議案の要約を1枚にまとめて同封する、の4点で回収率が変わります。静岡県のマンション管理士無料派遣(令和8年11月14日締切)で、この点を相談テーマにすることもできます。

Q8. ロープアクセス工法は、傾斜地や崖地に建つマンションでも使えますか?
A. むしろ有利な条件です。足場は地盤の上に組むため、傾斜地や擁壁際では脚部の処理に費用と工期がかかります。ロープアクセスは屋上から下降するため、地盤の条件に左右されにくいという特性があります。ただし、外壁タイルの大面積張り替えなど資材の荷揚げが大量に発生する工事は足場が合理的です。部位ごとに使い分けるハイブリッド工法を含めてご検討ください。技術的な解説はロープアクセスドットコムにまとめています。


この記事のポイントまとめ

  • 東伊豆町の要綱の別表には「マンション」という用途区分が独立して存在する
  • 既存建築物耐震診断事業は基準額の2/3以内・限度200万円。昭和56年5月31日以前の非木造が対象
  • 延べ面積655㎡を超えると基準額の側では限度額に届く。ただし事業費が300万円以上必要
  • 要綱が「区分所有又は共有の場合は総会議事録、同意書等」と管理組合の総会を名指ししている
  • 令和8年3月26日改正・4月1日施行。2026年度の現行制度である
  • 緊急輸送ルート等の沿道なら補強計画策定10/10・耐震化助成4/5と桁が変わる
  • ブロック塀は撤去20m・改善13mで限度額に到達。ただし1敷地1回のみ
  • ブロック塀補助には事業完了から15年の財産処分制限がついている
  • 住宅リフォーム補助は共用部には使えないが、専有部は5回まで使える
  • 管理計画認定の窓口は町ではなく静岡県。手数料は適合証ありで4,000円
  • 令和7年法律第47号でマンション管理適正化支援法人制度が新設された(静岡県は未実施)
  • 町の固定資産税ページに減額の子ページは2件のみ。ページがないことと使えないことは別
  • 県のマンション管理セミナーは熱海(10月予定)と伊東(12月予定)が近い
  • マンション管理士の無料派遣は県全体で10件・令和8年11月14日締切
  • 総会の定足数確保が工程の律速。議案作成は都市部より半年前倒しに

主なお問い合わせ先

窓口 電話番号 主な担当
東伊豆町 建設整備課 建設管理係 0557-95-6303 耐震診断補助・ブロック塀補助・がけ地移転
東伊豆町 税務課 0557-95-6201 固定資産税・長寿命化促進税制の申告
東伊豆町 観光産業課 観光商工係 0557-95-6301 住宅リフォーム振興事業補助金
東伊豆町役場(代表) 0557-95-1100 〒413-0411 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取3354
静岡県 くらし・環境部建築住宅局住まいづくり課 054-221-3084 管理計画認定・県セミナー
一般社団法人静岡県マンション管理士会 ファクス 0544-27-6561 マンション管理士無料派遣の申込
一般社団法人日本マンション管理士会連合会 相談ダイヤル 03-5801-0858 管理全般の相談

実務メモ:建設整備課と税務課は同じ町役場(稲取3354)にあります。1回の来庁で両方回れます。開庁時間は月曜日から金曜日の8時30分から17時15分までです。


東伊豆町の建物のこと、まずはご相談ください

株式会社明誠は、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を専門とする改修会社です。通常の足場仮設工事、無足場のロープアクセス工事、その両方を組み合わせたハイブリッド工法という3つの選択肢から、建物にとって最適な工法をご提案します。

  • 傾斜地・崖地に建っていて、足場が組めるのか分からない
  • 海側の鉄部の傷みが早い。原因と対策を知りたい
  • 補助金が使えるのか、まず建物を見てほしい
  • 相見積の条件がそろっているか、第三者の目で見てほしい
  • 温泉の引湯配管が長期修繕計画に入っていない

こうしたご相談に、無料の現地調査・お見積りで対応しています。お問い合わせフォームからご連絡ください。管理組合向けのサービスについても承ります。

総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション・ビル・ホテルの大規模修繕/ロープアクセス工法(無足場工法)/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、東京・関東一円と全国のフランチャイズ加盟店を通じて、ロープアクセス工法・足場工法・ハイブリッド工法の3つを提案できる改修会社。ロープアクセス工事として日本初のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。

最終更新:2026年9月4日

注記:本記事は2026年9月4日時点で公開されている情報にもとづいて作成しています。補助制度は年度途中で内容・金額・受付状況が変更されることがあります。また、要綱の解釈や適用の可否は個別の建物の条件によって異なります。申請にあたっては、各制度の公式ページと窓口で最新の内容をご確認ください。本記事は法務・税務の助言を目的としたものではありません。


出典・参考資料


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この記事では、佐倉市・千葉県・国の一次情報にあたって、収益不動産オーナーの判断軸——NOI(純営業収益=家賃収入から運営費を引いた利益)、入居率、雑収入の課税、資本的支出と修繕費の線引き、そして出口(売却)——で整理しました。

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まず結論:佐倉市の賃貸オーナーが今日動くべきは、この5本

賃貸物件を所有するオーナーの立場で佐倉市の制度を洗い出すと、優先順位は次のとおりです。

順位 制度名 補助率・上限 オーナーの使いやすさ
1 佐倉市 住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金(集合住宅用充電設備) 1口あたり上限50万円/100万円 ◎ 管理組合「又は所有者」が対象。一棟所有の賃貸オーナーが直接申請できる
2 佐倉市 危険コンクリートブロック塀等の除却・フェンス設置・緑化補助 除却1/2かつ1万円/m、フェンス1/2かつ1.5万円/m、合計上限25万円 ◎ 所有者または管理者が対象。居住要件なし
3 国 賃貸集合給湯省エネ2026事業 1台5万円/7万円(加算で最大8万円/10万円) ◎ 賃貸集合住宅オーナーが本来の対象。申請は登録事業者経由
4 国 先進的窓リノベ2026事業 100万円 × 改修した住戸数(1棟あたり上限) ○ 賃貸住宅所有者も対象。空室期間との段取りが鍵
5 佐倉市 空き家バンク賃貸登録物件リフォーム補助 改修費・家財処分費の1/2以内・上限30万円 △ 空き家バンク登録が前提、かつ法人は対象外

そして、多くのオーナーさまが誤解しているのが次の一点です。

佐倉市の太陽光発電・蓄電池・エネファーム・EV充電(戸建)・窓の断熱改修(戸建)への補助金は、原則としてオーナーの投資用物件には使えません。

理由は要綱にはっきり書かれています。これらの補助対象者は「市内に住所を有する個人であること」。つまり自ら居住し住民登録していることが前提で、投資用の賃貸物件は想定されていません(出典:別表第3、4 補助対象者の要件(PDF)|佐倉市)。

ところが同じ補助金の中で、たった一つだけ「所有者」を明記している設備があります。それが集合住宅用充電設備です。ここが2026年度の佐倉市における最大の狙い目です。

以下、順に実務レベルで掘り下げます。


佐倉市の賃貸市場を「NOIの視点」で見ると何が見えるか

成熟したベッドタウンで、ストックが一斉に更新期を迎えている

佐倉市は千葉県北部、印旛沼の南に広がる人口約17万人の市です。京成本線とJR総武本線・成田線が並走し、ユーカリが丘・志津・臼井・佐倉・根郷と、性格の異なる住宅地が帯状に連なっています。京成上野方面へのアクセスと、住宅価格の水準がバランスした——典型的な成熟ベッドタウンです。

オーナーの視点でこの街の特徴を一言でいえば、「賃貸ストックの築年が揃っている」ことです。1970〜1990年代に集中的に供給された木造アパート・軽量鉄骨アパート・中低層のRCマンションが、いま一斉に築30〜50年に入っています。

これは二つのことを意味します。ひとつは、同じエリアの競合物件も同時に劣化していること。もうひとつは、先に手を打った物件だけが選ばれることです。

NOIで考えると、補助金は「利回りの改善」ではなく「取得原価の圧縮」

補助金をどう評価すべきか。ここを整理しておきます。

補助金は毎年入ってくるものではありません。ですから利回りを恒常的に押し上げるものではなく、その工事の実質コストを一度だけ下げるもの——つまり取得原価の圧縮として捉えるのが正確です。

たとえば給湯器交換に120万円かかる工事で40万円の補助が出れば、実質80万円。この差額40万円が、そのままキャッシュフローに残ります。

一方で、工事そのものがNOIに与える効果は毎年続きます。給湯器が古いという理由での退去がなくなれば、その分の空室損と原状回復費・広告料が毎年浮きます。

数字にしてみます。佐倉市の郊外エリアで、家賃6万5,000円・8戸の木造アパートを想定します。

  • 満室想定年収入:6万5,000円 × 8戸 × 12か月 = 624万円
  • 1戸が1か月空室になると:6万5,000円の減収
  • 加えて原状回復20万円+広告料(家賃1か月分)6万5,000円 = 26万5,000円

つまり退去1件あたり、およそ33万円が飛びます。年間2件の退去を1件に減らせれば、それだけで33万円。給湯器交換の補助金40万円と、ほぼ同じインパクトが毎年発生する計算になります。

補助金は入口の値引き、工事は毎年効く配当。この二つを分けて考えるのが、オーナーとしての正しい評価軸です。


【最優先・所有者が直接申請できる】集合住宅用充電設備への補助——1口あたり上限50万〜100万円

制度の骨格

佐倉市の「住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金」のなかで、唯一「所有者」を対象者に明記しているのが集合住宅用充電設備(EV充電設備)です。

要綱の別表第4には、こう書かれています。

補助対象設備を設置するマンション等のマンション管理組合又は所有者であること。

(出典:令和8年度佐倉市住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金のご案内|佐倉市 生活環境課)

太陽光発電・エネファーム・蓄電池・電気自動車・V2Hが軒並み「市内に住所を有する個人」と限定されているなかで、この一項目だけが所有者を含んでいます。一棟所有の賃貸オーナーが、佐倉市から直接、補助金を受け取れる数少ないルートです。

補助金額——「基数」ではなく「口数」で数える

補助額は次のとおりです(出典:別表第6 補助金の額(PDF))。

利用範囲 補助率 上限
住民のみが充電設備を利用可能とする場合 設備本体購入費に係る国の促進補助金額の1/3 50万円 × 設置口数
住民以外も利用可能とする場合 設備本体購入費に係る国の促進補助金額の2/3 100万円 × 設置口数

ここで見落としてはいけないのが、「複数口の充電設備を設置する場合は、その口数を乗じる」という一文です。2口の設備を1基設置すれば、上限は50万円ではなく100万円(住民のみの場合)。台数ではなく口数で積み上がる設計になっています。

「住民以外も使える」に振ると補助率が倍になる意味

補助率が1/3から2/3へ、上限が50万円から100万円へ。利用範囲を住民以外にも開放するだけで、補助が倍になります。

これはオーナーにとって、単なる補助額の話ではありません。

  • 敷地内の空き駐車区画を、充電課金収入を生む区画に転換できる
  • 近隣EVユーザーの流入により、駐車場の稼働率が上がる
  • 物件の「EV充電あり」表示が、募集条件として差別化要素になる

つまり、NOIに直接効く投資に補助金が付く構造です。ただし住民以外に開放する場合は、管理・課金・トラブル対応の設計が別途必要になります。既存入居者の駐車区画を潰さないゾーニングも含め、設計段階で決めておくべき論点です。

実務上の注意点——国の補助金の交付決定が先

要綱には、次の条件が付されています。

補助対象設備の設置に当たって、(中略)国が実施するクリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金(国促進補助金)の交付決定通知を受けていること。ただし、住民のみ充電設備を利用可能とする場合の補助を受けようとするときは、この限りでない。

読み替えると、こうなります。

  • 住民以外も使えるようにする場合:国の充電インフラ補助金の交付決定が必須。国→市の順で進める
  • 住民のみが使う場合:国の交付決定は必須ではない(国の補助額を基準に市が算定)

上限100万円を狙うなら国の申請から逆算した工程が必要で、これは数か月単位の話になります。一方、上限50万円のルートなら市への申請から着手できます。どちらを狙うかを最初に決めることが、この制度の実務の8割です。

予算残額は公開されています——2026年8月4日時点

佐倉市はこの補助金の予算残額を公表しています。

  • 太陽光発電設備補助金:1,164,000円
  • その他設備:12,622,000円

(令和8年8月4日現在/出典:佐倉市 生活環境課)

集合住宅用充電設備は「その他設備」の枠です。残り約1,262万円。1口50万円で試算すれば、単純計算で25口分。年度後半に向けて確実に減っていく数字です。

受付開始は令和8年6月1日。申請は市役所1号館5階の生活環境課窓口、またはちば電子申請サービスから可能です。お問い合わせは生活環境課(環境政策班)043-484-4278。


【居住要件なし】危険コンクリートブロック塀等の除却・フェンス設置・緑化補助——合計上限25万円

制度の概要

佐倉市が、通学路や災害時の避難路に面した危険なコンクリートブロック塀の除却・転換を支援する制度です。補助対象者は「危険と判定されたコンクリートブロック塀等を所有または管理されているかた」。居住要件はありません(出典:危険コンクリートブロック塀等の除却、フェンス等の設置及び緑化工事への補助|佐倉市 建築指導課 更新日:2026年4月21日)。

つまり、貸家・アパート・駐車場の塀でも、オーナーが直接申請できます。

補助金額——除却とフェンスで単価が違う

工事内容 補助額
塀等の除却工事(樹木の移植を含む) 要した経費の1/2 または 1万円/m(10,000円/m)のうち低い額
緑化に係る工事(生垣、8㎡以上の植栽) 市が算定した額の1/2
フェンス等の設置工事 要した経費の1/2 または 1.5万円/m(15,000円/m)のうち低い額

合計25万円が上限(危険ブロック塀の除却が前提)。

延長20mの塀を除却してフェンスに転換する場合を試算します。

  • 除却:単価1万円/m × 20m = 20万円が上限
  • フェンス設置:単価1.5万円/m × 20m = 30万円が上限
  • ただし合計25万円が天井

実際の工事費が除却40万円+フェンス60万円=100万円だったとすれば、1/2は50万円ですが、上限により25万円の交付。それでも工事費の4分の1がカバーされます。

部分撤去でも対象になる——ここが実務のポイント

令和2年度から、すべて撤去しなくても、道路面からの高さを60cm以下に下げる「部分撤去」も補助対象になりました。ただし残した塀の直上に、新たなブロック積みやフェンスを設置しないことが条件です。

擁壁を兼ねている塀、境界確定が済んでいない塀など、全撤去が難しいケースは実務では珍しくありません。部分撤去が認められることで、「うちは無理だ」と諦めていた物件にも道が開けます。

なぜこれをオーナーの最優先に置くのか

補助額は最大25万円。金額だけ見れば小さく思えるかもしれません。それでも私が最優先に挙げる理由は、リスクの性質にあります。

民法717条は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があり他人に損害を生じさせたとき、占有者・所有者に損害賠償責任を負わせています。所有者の責任は、注意していたことを立証しても免れない性質のもの(無過失責任)とされています。ブロック塀は、この「土地の工作物」の典型例です。

通学路に面した塀が倒れたときに何が起きるか——2018年の大阪府北部地震の事例が、社会全体に突きつけた問題です。

そして佐倉市の場合、危険かどうかの判定は建築指導課の職員が直接現地に伺って行います。塀の破損・傾き、内部鉄筋・基礎・控壁の有無を確認し、一定点数以下であれば補助対象。つまりまず相談すれば、専門職員による無料の危険度診断が受けられるということです。

「補助金がもらえるかどうか」以前に、自分の物件の塀が客観的にどう評価されるかを知っておくことに価値があります。

スケジュールと代理受領

  • 交付申請:補助を受けようとする年度の11月30日まで(工事着手前)
  • 実績報告:1月31日まで
  • 請求書:3月15日まで

2026年9月時点でまだ間に合いますが、現地判定→申請→交付決定→着工→完了という流れを考えると、10月中には相談を入れておきたい日程感です。

なお佐倉市には補助金の代理受領制度があり、施工業者が補助金を直接受領する形にすれば、オーナーの立替負担を圧縮できます。キャッシュフローを重視する方は必ず確認してください。

お問い合わせは建築指導課(指導班)043-484-6169。


【佐倉市ならでは】戸建賃貸住宅家賃補助事業——これは「入居者向け」ですが、オーナーの武器になります

制度の骨格

これは申請者が入居者であり、オーナーが補助金を受け取る制度ではありません。それでも私がこの記事で章を割く理由は、佐倉市で戸建賃貸を持つオーナーにとって、これが募集条件そのものを変える力を持つからです。

制度の内容はこうです(出典:令和8年度戸建賃貸住宅家賃補助事業について|佐倉市 住宅課)。

項目 内容
補助額 毎月の家賃の1/3以内(上限2万円)× 24か月
対象者 新たに戸建住宅を賃貸契約した方(申請時に契約から1年以内。契約更新は対象外)
世帯要件 2008年(平成20年)4月2日以降に生まれた子を育てる世帯、または令和8年4月1日時点で夫婦どちらかが40歳未満の世帯
対象住宅 市内の戸建民間賃貸住宅。親族の所有する住宅は対象外。契約期間1年未満の短期滞在向けは対象外
対象外費用 共益費・管理費・駐車場使用料
募集期間 令和8年4月21日〜令和9年2月26日(先着順、予算到達で終了)

オーナー視点で読み替えると、こうなります

上限2万円 × 24か月 = 最大48万円。これを、市が入居者に給付します。

家賃9万円の戸建賃貸を想定してください。入居者から見た実質負担は、2年間にわたり月7万円です。同じ佐倉市内で家賃7万円台の戸建賃貸を探している若年子育て世帯にとって、あなたの物件が突然、検討対象に入ってくるという意味になります。

そしてこれは、オーナーが1円も値引きしていない状態で起きます。表面家賃を下げずに、体感家賃だけを下げる——賃貸経営でこれ以上ありがたい構造はそうありません。

実務でやるべきこと

やることは単純です。募集図面と広告に、この制度を明記する。

「佐倉市戸建賃貸住宅家賃補助対象物件(要件を満たす世帯に限る/市への申請が必要です)」

この一行を入れているかどうかで、反響数は変わります。私が見てきたかぎり、この制度を告知に使っている募集図面は、まだ少数です。管理会社任せにしていると、まず載りません。今週、管理会社に電話一本入れる価値があります。

ただし注意点が二つ。

  1. 申請するのは入居者本人です。オーナーが代行することはできません。募集段階では「制度がある」ことの案内にとどめ、要件判定は市の窓口へ誘導してください
  2. 先着順で予算到達により終了します。「必ずもらえる」と断定した表示は避け、「市への申請が必要/予算により終了する場合があります」と添えてください

誠実な告知が、結果としてトラブルを防ぎ、成約率を上げます。

住宅課 043-484-6168。


【空き家をお持ちなら】空き家バンク賃貸登録物件リフォーム補助——1/2・上限30万円

相続などで取得した空き家を、賃貸に回すか売却するか迷っている方に直結する制度です。

項目 内容
補助額 住宅改修工事費および家財道具の処分費の1/2以内・上限30万円
対象者 空き家バンクに登録されている賃貸物件の所有者、または賃借した利用者
重要 法人は対象外
対象住宅 所有者が使う場合、賃貸契約する前の住宅であること
条件 1物件1回、補助金交付後1年以上、空き家バンク登録を継続すること
申請期間 令和8年4月17日〜令和9年2月26日(先着順)

(出典:令和8年度佐倉市定住人口維持増加活動支援事業(空き家バンク賃貸登録物件リフォーム補助)|佐倉市)

実務上、効くのは「家財道具の処分費」も対象になる点です。相続空き家の再生でいちばん腰が重くなるのが残置物処分で、戸建一棟で30万〜60万円かかることも珍しくありません。ここが補助対象に含まれているのは、実態をよく踏まえた設計だと思います。

一方で制約も明確です。法人名義は対象外。資産管理法人で物件を保有しているオーナーさまは、この制度だけは使えません。また、所有者が使う場合は賃貸契約前である必要があります。「入居が決まってから直す」という順序では間に合いません。

そして、空き家バンクへの登録と1年以上の継続が条件です。市場でさっと売り抜けたい物件には向かず、腰を据えて賃貸運用する物件に向いた制度といえます。


【重要な落とし穴】佐倉市の省エネ設備補助と耐震補助は、投資用物件には原則使えません

ここが本記事でいちばんお伝えしたい注意点です。

省エネ設備補助——「市内に住所を有する個人」

佐倉市住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金のうち、以下は補助対象者が「市内に住所を有する個人であること」と定められています。

  • 住宅用太陽光発電設備(1kWあたり1.5万円・上限6万円)
  • 家庭用燃料電池システム(エネファーム/上限10万円)
  • 定置用リチウムイオン蓄電システム(上限7万円)
  • 電気自動車等(上限10万〜15万円)
  • V2H充放電設備(1/10・上限25万円)
  • 窓の断熱改修(1/4・上限8万円)

つまり自ら住み、住民登録している住宅が前提です。投資用の賃貸物件に太陽光や蓄電池を載せる計画に、この補助金を織り込んでいた方は収支計画の見直しが必要です。

さらに窓の断熱改修には、もう一段の注意があります。マンション向けの枠(1/4・8万円×戸数)は、対象者が「マンション管理組合であること」。これは分譲マンションを想定した規定で、一棟所有の賃貸マンションオーナーは対象になりません。

加えて、市は明確に案内しています。

耐震補助——佐倉市は「お住まいのかた」

佐倉市の木造住宅耐震補助は、補助率4/5・上限115万円と全国的にも手厚い水準です。しかし補助対象者は「昭和56年5月31日以前に建築され、以降増築されていない戸建木造住宅にお住まいのかた」と定められています(出典:木造住宅の耐震診断・耐震補強工事への補助|佐倉市)。

「所有しているかた」ではなく「お住まいのかた」。この一語の差が決定的です。近隣の一部自治体では所有者であれば貸家でも対象としている例がありますが、佐倉市は居住を要件としている読み方が自然です。旧耐震の貸家をお持ちで、この補助を前提に改修を検討されている方は、着手前に必ず建築指導課へ個別確認してください。

同様に、分譲マンションの耐震診断補助(本診断で1戸4万円かつ1棟100万円が上限)も、対象者は管理組合であり、区分所有者が現に居住する住宅戸数が全戸数の1/2以上であることが条件です。投資用の区分所有や一棟賃貸マンションは想定されていません。

浸水区域のかさ上げ工事補助(1/2・上限100万円)も、対象は「自らがお住まいの住宅等」で、対象区域も表町二〜四丁目、鏑木町二丁目などに限定されています。

まとめると、佐倉市の住宅系補助は「居住者向け」に厚く設計されており、オーナーが直接使えるのは集合住宅用充電設備とブロック塀除却の2本。 ここを正確に押さえておけば、無駄な労力は発生しません。

では、オーナーはどうやって取り返すのか。答えは国の制度です。


【国・オーナーが主役】賃貸集合給湯省エネ2026事業——1台5万〜10万円

制度の骨格

この制度は、賃貸集合住宅のオーナーが主役として設計された、数少ない国の補助金です。

項目 内容
対象者 賃貸集合住宅のオーナー等(2戸以上を所有する区分所有者を含む)
補助額 追い焚き機能なしのエコジョーズ/エコフィール:5万円/台
追い焚き機能あり:7万円/台
一定の排水工事を伴う場合、加算により最大8万円/10万円/台
対象工事 令和7年11月28日以降に補助対象製品の設置工事に着手したもの
申請 登録事業者(施工業者・管理会社・リース事業者等)が交付申請を行う

(出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業について|資源エネルギー庁、賃貸集合給湯省エネ2026事業【公式】)

8戸のアパートで試算すると

追い焚きなしのエコジョーズに8台交換する場合。

  • 工事費(8台分):約120万円
  • 補助金:5万円 × 8台 = 40万円
  • 実質負担:約80万円

さらに追い焚きありなら7万円×8台=56万円。排水工事の加算要件を満たせば、さらに上振れします。

実務上の最重要ポイント:オーナーは直接申請できません

この制度は登録事業者が申請します。オーナーが自分で書類を出す制度ではありません。

したがってオーナーがやるべきことは、ただ一つ。依頼先の業者が「賃貸集合給湯省エネ事業者」として登録済みかを確認することです。登録していない業者に工事を頼んだ時点で、補助はゼロになります。事業者検索は公式サイトから可能です。

見積依頼のときに、この一言を入れてください。

「賃貸集合給湯省エネ2026事業の登録事業者ですか。補助金申請まで対応いただけますか」

給湯器交換が入居率に効く理由

給湯器は、入居者が退去を決める理由の上位に来る設備です。しかも故障は、使用頻度が上がる冬に集中します。冬の給湯器故障は即日対応を求められ、部材の在庫がなければ数日にわたり入居者に不便を強いることになります。これが原因の退去は、統計に残らない形で毎年発生しています。

故障を待って交換するのではなく、補助金のある年度に計画交換する。 これが、キャッシュフローと入居率の両方で優位に立つ考え方です。設置から15年を超えた給湯器をお持ちなら、今年度が動きどきです。


【国】先進的窓リノベ2026事業——賃貸住宅所有者も対象

環境省の先進的窓リノベ2026事業は、建物を所有する個人・法人・地方公共団体等が対象で、賃貸住宅所有者、マンション管理組合、管理組合法人等も含まれます(出典:事業概要|先進的窓リノベ2026事業)。

項目 内容
予算 令和7年度補正予算 1,125億円
対象者 建物を所有する個人・法人等(賃貸住宅所有者を含む)
補助上限 1棟につき 100万円 × 改修した住戸数(2025年度の200万円/戸から見直し)
下限 1申請あたり合計補助額5万円以上の工事
非住宅建築物 1棟あたり上限1,000万円
期限 申請開始〜遅くとも2026年12月31日まで(予算上限到達時点で終了)

(令和7年度補正予算の概要(PDF)|環境省)

賃貸物件で窓の断熱改修を行う場合、実務上の壁は居室内での作業です。入居中の部屋には入れません。したがって現実的な進め方は、退去のタイミングで内窓を設置し、原状回復工事と一体で発注すること。

このとき効いてくるのが、「1申請合計5万円以上」という下限です。1戸ずつバラバラに申請するのではなく、退去が重なったタイミングでまとめる、あるいは共用部の工事と束ねる設計が有利になります。予算が消化されきる前に、年間の退去見込みから逆算した申請計画を立ててください。

なお国の制度は、みらいエコ住宅2026事業・給湯省エネ2026事業とともに住宅省エネ2026キャンペーンとして一体運用されています。同一工事への重複受給はできませんが、対象工事が異なれば併用できる設計です。


税務:補助金の課税、資本的支出と修繕費、そして固定資産税

補助金は課税されます

まずここを外さないでください。賃貸経営に関して受け取った補助金は、原則として不動産所得の総収入金額に算入されます(法人の場合は益金算入)。

「補助金40万円をもらったから40万円得した」ではありません。所得税・住民税率が合計30%なら、実質の手取りは28万円程度です。

ただし対応する工事費が同じ年度に費用または資産として計上されるため、実質的な負担は緩和されます。また、固定資産の取得に充てた国庫補助金等については圧縮記帳という選択肢があり、課税の繰延べが可能な場合があります。適用要件は厳密なので、必ず顧問税理士にご確認ください。

資本的支出と修繕費——ここで最も差がつきます

賃貸経営で税務上いちばん結果が変わるのが、この線引きです。

工事 一般的な考え方
ブロック塀の除却のみ 撤去費用としてその年の必要経費になりやすい
ブロック塀撤去+フェンス新設 フェンスは構築物として資本的支出(減価償却)になりやすい
給湯器の同等品交換 原則修繕費
給湯器の高機能化を伴う交換 資本的支出と判断される可能性
窓の断熱改修(内窓設置) 性能向上を伴うため資本的支出になりやすい
EV充電設備の新設 資本的支出(構築物・機械装置)

重要なのは、見積書の内訳の書き方で判断が変わりうるという点です。「一式」でまとめられた見積書は、税務判断の材料になりません。除却費・撤去処分費・新設費を明確に分けた内訳書をもらってください。真っ当な業者であれば、依頼すれば出してくれるはずのものです。

私どもが見積書を出すときに内訳を細かく分けているのは、単に丁寧なのではなく、オーナーさまの税務判断のためです。

固定資産税の減額制度

佐倉市には、耐震改修および省エネ改修を行った住宅に対する固定資産税の減額制度があります。

いずれも申告しなければ適用されません。工事が終わったら自動的に減額されるものではない、という点だけは覚えて帰ってください。要件に居住条件が含まれるものもあるため、投資用物件での適用可否は資産税課へご確認ください。


モデルケースで見る:佐倉市のオーナーは、どれだけ変わるか

ケースA:築36年・木造アパート8戸(志津エリア、家賃6万5,000円)

課題:給湯器が全戸15年超。道路側のブロック塀にひび割れ。

打ち手 費用 補助 実質負担
エコジョーズ8台交換(国・賃貸集合給湯省エネ2026) 120万円 40万円 80万円
ブロック塀20m除却+フェンス(市・上限25万円) 100万円 25万円 75万円
合計 220万円 65万円 155万円

補助率にすると約30%。 さらに、給湯器起因の退去が年2件から1件に減れば年間33万円の改善。3〜4年で実質負担が回収される計算になります。

ケースB:築30年・RC一棟マンション12戸(ユーカリが丘エリア)

課題:敷地に来客用の空き駐車区画が3台分。EV充電の要望が入居者から出ている。

打ち手 内容
集合住宅用充電設備(2口)を設置 市の補助上限は50万円×2口=100万円(住民のみ利用の場合)
住民以外にも開放する設計に変更 国の充電インフラ補助の交付決定が必要/市の上限は100万円×2口=200万円

加えて、充電課金による収入が発生します。空き駐車区画という「NOIを生んでいない資産」を、収益区画に転換する——これが佐倉市で今年度いちばん見逃されている打ち手だと考えています。

ただし予算残額は令和8年8月4日時点で「その他設備」約1,262万円。動くなら年内です。

ケースC:相続で取得した空き家(戸建、佐倉地区)

課題:残置物が大量。賃貸に回すか売るか未定。

打ち手 費用 補助
空き家バンク登録 → 家財処分+内装リフォーム 90万円 1/2かつ上限30万円
入居者が戸建賃貸住宅家賃補助を利用(家賃9万円想定) — 入居者に最大48万円(月2万円×24か月)

オーナーは30万円の補助を受け、入居者は月2万円の負担軽減を受ける。募集競争力が上がった状態で、リフォーム費の1/3が戻ってくる構造です。ただし法人名義は補助対象外、かつ賃貸契約前に申請する必要がある点にご注意ください。


出口戦略:佐倉で「売れる物件」にするための修繕の順序

買主が減額交渉に使う3つの材料

収益物件の売買で、買主側が指値の根拠に使うのは、たいてい次の3つです。

  1. 危険なブロック塀・擁壁(是正費用+潜在的な賠償リスク)
  2. 旧耐震(融資が付きにくい/出口が狭い)
  3. 給湯器・屋上防水・外壁の残存年数(引渡し後すぐに発生する支出)

いずれも「いくらかかるか」を数字で示せてしまうため、そのまま価格から引かれます。

収益還元で考えると、修繕はどこまで正当化されるか

収益物件の価格は、おおまかに「年間NOI ÷ 期待利回り(キャップレート)」で決まります。

佐倉市の郊外・築古アパートで期待利回りを仮に8%と置くと、年間NOIが10万円改善すれば、理論上の物件価格は約125万円上がる計算です(10万円 ÷ 0.08)。

もちろんこれは単純化した試算で、実際の売買価格は立地・築年・融資環境で大きく変わります。それでも、「修繕は費用ではなく価格への投資でもある」という視点は、出口を意識するオーナーには欠かせません。

売却の2〜3年前に着手すべき順序

  1. ブロック塀の是正(補助が使え、賠償リスクを消せ、内見時の印象も変わる)
  2. 給湯器の計画交換(補助が使え、引渡し後の買主リスクを消せる)
  3. 外壁・防水の更新(最も金額が大きく、最も指値の根拠になりやすい)
  4. 窓の断熱(退去のタイミングに合わせて段階的に)

この順序は、補助金が使える順でもあり、単価あたりの効果が高い順でもあります。


コストは制度だけでなく「工法の選び方」でも変わります

ここまで補助金の話をしてきましたが、大規模修繕の総額を最も大きく動かすのは、実は工法の選択です。

一般的な大規模修繕では、仮設足場が工事費の2割前後を占めます。この2割は、建物の性能を1ミリも向上させません。作業員が高所に届くためだけの費用です。

佐倉市の賃貸ストックは2〜4階建ての中低層が中心で、多くの場合は足場工法が基本になります。それでも、次のような条件ではロープアクセス工法(無足場工法)やハイブリッド工法が有効に働きます。

  • 敷地が狭く、足場を組むと駐車場を潰さざるを得ない(駐車場収入の停止=NOIの直接的な毀損)
  • 隣地との距離が近く、足場の架設自体が困難
  • 部分補修で足りる(外壁の一部、シーリングのみ、屋上まわりのみ)
  • 入居者の生活影響を最小化したい(足場は防犯上の不安を生み、これが退去理由になることがあります)

株式会社明誠は、足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物の形状・劣化状況・入居状況に応じて最適な組み合わせをご提案できる、日本でも数少ない会社です。ロープアクセス工法の技術情報・安全基準・施工事例は、姉妹サイトロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。

また明誠は、日本初となるロープアクセス工事のフランチャイズを展開しており、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しています。中間マージンを重ねずに専門職へ直接発注できる体制が、高品質と適正価格の両立を可能にしています。

補助金で工事費の2〜3割を圧縮し、工法の選択でさらに足場費を圧縮する。この二段構えが、オーナーにとっての最適解です。大規模修繕の進め方全般については大規模修繕工事のご案内にまとめています。

近隣自治体の同シリーズ記事

佐倉市の物件と併せて、近隣にも物件をお持ちの方は次の記事もご参照ください。制度の中身は自治体ごとにかなり違います。


申請カレンダーと早見表

制度ごとの要点まとめ

制度 補助率・上限 対象者 期限 窓口
佐倉市 集合住宅用充電設備 国補助額の1/3または2/3、上限50万/100万円×口数 マンション等の管理組合又は所有者 予算到達まで(残額 約1,262万円/2026年8月4日時点) 生活環境課 043-484-4278
佐倉市 危険ブロック塀等除却・フェンス・緑化 除却1/2かつ1万円/m、フェンス1/2かつ1.5万円/m、合計25万円 塀の所有者または管理者 申請11/30、実績報告1/31、請求3/15 建築指導課 043-484-6169
佐倉市 空き家バンク賃貸登録物件リフォーム 1/2以内・上限30万円 空き家バンク登録賃貸物件の所有者(法人不可) 令和9年2月26日(先着順) 住宅課 043-484-6168
佐倉市 戸建賃貸住宅家賃補助 家賃1/3以内・上限2万円×24か月 入居者(若年・子育て世帯) 令和9年2月26日(先着順) 住宅課 043-484-6168
国 賃貸集合給湯省エネ2026 5万/7万円(加算で最大8万/10万円)/台 賃貸集合住宅のオーナー等 予算到達まで 登録事業者経由
国 先進的窓リノベ2026 1申請5万円以上、非住宅1棟上限1,000万円 建物所有者(賃貸住宅所有者を含む) 遅くとも2026年12月31日 登録事業者経由

2026年9月からの現実的なスケジュール

9月中

  • 所有物件のブロック塀を確認し、建築指導課へ現地判定を依頼
  • 給湯器の設置年を全戸分リストアップ
  • 空き駐車区画の有無を確認(EV充電設備を検討する材料になります)

10月中

  • ブロック塀の補助申請書類を準備(申請期限11月30日)
  • 給湯器交換の見積を、賃貸集合給湯省エネ登録事業者から取得
  • 集合住宅用充電設備を検討するなら、住民限定か開放型かを決定

11月〜12月

  • ブロック塀:11月30日までに交付申請
  • 窓リノベ:退去予定から逆算して申請計画(12月31日期限)
  • 令和9年度予算に向けた工事計画の整理

1月〜3月

  • ブロック塀:実績報告1月31日、請求3月15日
  • 確定申告に向け、補助金の収入計上と資本的支出/修繕費の整理

よくある質問(FAQ)

Q1. 佐倉市の補助金で、法人名義の賃貸物件でも使えるものはありますか。

A. 集合住宅用充電設備は、対象者が「マンション等のマンション管理組合又は所有者」と定められており、法人所有を明示的に除外する規定は置かれていません。一方、空き家バンク賃貸登録物件リフォーム補助は法人が明確に対象外です。法人名義での申請可否は、必ず事前に各担当課へご確認ください。

Q2. 貸家の耐震改修に、佐倉市の上限115万円の補助は使えますか。

A. 佐倉市の補助対象者は「戸建木造住宅にお住まいのかた」と定められており、居住していない貸家は原則対象外と読むのが自然です。近隣自治体には所有者要件のみの例もありますが、佐倉市では建築指導課(043-484-6169)への個別確認を強くおすすめします。

Q3. 市の補助金と国の補助金は併用できますか。

A. 佐倉市の場合、この論点は制度によって答えが逆になります。集合住宅用充電設備は、住民以外にも開放するなら国の充電インフラ補助の交付決定を受けていることが市の補助の条件——つまり併用が前提の設計です。一方、住宅用の省エネ設備については、市が「エコキュートは市の対象外なので国の給湯省エネ2026事業へ」と役割分担を明示しています。同一の工事に対する重複受給は原則できませんが、工事の対象が異なれば制度をまたいで組み立てられます。切り分け方は、着手前に各担当課へご相談ください。

Q4. 佐倉市の補助金を受け取ると、税金はどうなりますか。

A. 賃貸経営に関して受け取った補助金は、不動産所得の総収入金額に算入されるのが原則です(法人は益金算入)。たとえばブロック塀の補助25万円を受け取れば、その25万円は収入として計上されます。ただし同じ年度に工事費が費用または資産として計上されるため、実質的な負担は緩和されます。EV充電設備のように固定資産の取得に充てた国庫補助金等については、圧縮記帳による課税の繰延べという選択肢もあります。適用の可否は顧問税理士にご確認ください。

Q5. 佐倉市の物件で、入居者に住んでもらったまま工事はできますか。

A. 外装まわりの工事であれば可能です。むしろ佐倉市の賃貸物件で気をつけたいのは駐車場です。市内の物件は1戸1台以上の駐車区画を備えていることが多く、足場を組むと数区画が使えなくなり、入居者から不満が出やすくなります。ロープアクセス工法(無足場工法)であれば駐車区画をほぼ塞がずに施工でき、工期も短縮できるケースがあります。一方、窓の内窓設置のような居室内の工事は、退去のタイミングに合わせるのが現実的です。

Q6. ブロック塀の「危険」判定は誰がするのですか。

A. 佐倉市建築指導課の職員が直接現地に伺い、塀の破損・傾き、内部鉄筋・基礎・控壁の有無等を確認して評価し、一定点数以下のものが補助対象になります。判定を受けること自体は、専門職員による無料の危険度チェックにもなります。


この記事のポイントまとめ

  • 佐倉市で賃貸オーナーが直接申請できる市の補助は、EV充電設備とブロック塀除却の2本
  • 集合住宅用充電設備は「管理組合又は所有者」が対象。1口あたり上限50万〜100万円
  • 太陽光・蓄電池・エネファーム等は「市内に住所を有する個人」=投資用物件は原則対象外
  • 戸建賃貸の家賃補助(入居者に最大48万円)は、募集図面に明記すべき強力な武器
  • 給湯器と窓は国の制度が本命。登録事業者かどうかの確認が成否を分ける

まとめ:佐倉市のオーナーが取るべき3つの行動

1. 今週、所有物件の「塀」と「給湯器の設置年」を確認してください。

ブロック塀は上限25万円ですが、居住要件がなくオーナーが直接使える数少ない市の制度であり、同時に工作物責任という重いリスクを消せます。申請期限は11月30日。現地判定から逆算すると、10月中の相談が現実的なリミットです。給湯器は、国の賃貸集合給湯省エネ2026事業が使えるうちに計画交換へ切り替えるべきタイミングです。

2. 敷地に空き駐車区画があるなら、EV充電設備を検討してください。

佐倉市の補助金で「所有者」を対象に明記しているのは、集合住宅用充電設備だけです。1口あたり上限50万円(住民以外にも開放するなら100万円)。予算残額は2026年8月4日時点で約1,262万円。NOIを生んでいない空き区画を、補助金付きで収益区画に変えられる——今年度、佐倉市でいちばん見逃されている打ち手だと考えています。

3. 市の省エネ補助を投資用物件の収支計画に入れているなら、今すぐ見直してください。

佐倉市の太陽光・蓄電池・エネファーム・窓断熱(戸建)は、「市内に住所を有する個人」が要件です。投資用物件には原則使えません。代わりに、国の賃貸集合給湯省エネ2026事業と先進的窓リノベ2026事業が、賃貸オーナーを対象として設計されています。取り返すルートは、市ではなく国にあります。

そして最後に。補助金と同じくらい、場合によってはそれ以上に総額を左右するのが工法の選択です。足場は工事費の2割前後を占めながら、資産価値を生みません。株式会社明誠は、足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3つから、建物と入居状況に応じた最適解をご提案します。ロープアクセス工法の一般的な安全基準や事例はロープアクセスドットコムで解説しています。

佐倉市の物件で「補助金を使いつつ、工事総額も下げたい」とお考えでしたら、まずは1棟の現地調査と利回り改善シミュレーションからご相談ください。制度の適用可否と、工法別の概算を並べてお示しします。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開しています。

最終更新:2026年9月3日


出典・参考資料

お問い合わせ先(佐倉市役所 〒285-8501 千葉県佐倉市海隣寺町97)

  • 都市部 建築指導課(指導班):043-484-6169
  • 都市部 住宅課(住生活推進班):043-484-6168
  • 経済環境部 生活環境課(環境政策班):043-484-4278
  • 佐倉市役所 代表:043-484-1111

※本記事は2026年9月3日時点の公表情報に基づいて作成しています。制度内容・予算状況・受付期間は変更される場合がありますので、申請前に必ず各窓口へご確認ください。税務の取扱いについては、必ず顧問税理士にご相談ください。

森町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

2026年9月3日 更新

この記事で答える質問:静岡県周智郡森町で、マンション・アパート・事業所ビルの大規模修繕や屋根・外壁の改修に使える補助金は、2026年度にどれが残っているのか?

先に結論から書きます。森町には、分譲マンションの共用部大規模修繕そのものを直接補助する町独自のメニューは、2026年9月時点の町の公開情報の中には見当たりません。そのかわり森町には、他の自治体ではあまり見かけない「住宅屋根の耐風改修助成事業」があります。瓦屋根の全面改修に対して工事費の23%、上限55.2万円。屋根という、大規模修繕でいちばん足場代がかさむ部位に、町が独自にお金を出しているのです。

さらに、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物、つまりマンションや事業所ビルの耐震診断費用にも補助が用意されています。木造住宅の耐震改修は上限120万円。ブロック塀は除却だけでなく建替えにも補助が出ます。分譲マンションの管理計画認定は、森町の場合、町ではなく静岡県が窓口です。

私は建設・改修の業界に20年以上いて、その中でロープアクセス工法という無足場の技術を日本でフランチャイズ展開するところまでやってきました。人口16,422人、6,763世帯(2026年8月1日現在)という規模の町で、大規模修繕の予算をどう組み立てるか。町の制度・県の制度・国の制度を、実際に工事を発注する側の目線で並べ直してみます。


この記事の結論:森町で押さえるべき7つの制度

まず全体像を表にします。以下はすべて、森町または静岡県、国土交通省・環境省の公開情報にもとづくものです。金額や期限は年度途中で変わることがあるため、申請前には窓口での確認をお願いします。

# 制度名 実施主体 補助額 主な対象
1 住宅屋根の耐風改修助成事業(耐風改修) 森町 工事費相当額の23%・上限55.2万円 令和3年12月31日以前建築の瓦屋根住宅
2 住宅屋根の耐風改修助成事業(耐風診断) 森町 2/3以内・上限21,000円 同上(粘土瓦・セメント瓦)
3 建築物の耐震診断事業 森町 非木造住宅は2/3以内、住宅以外は上限100万円 昭和56年5月31日以前建築の木造以外の建築物
4 木造住宅の耐震改修事業(補強計画一体型) 森町 上限120万円(高齢者等の世帯は140万円) 昭和56年5月以前建築・耐震評点1.0未満の木造住宅
5 ブロック塀等の除却・建替え事業 森町 除却は上限26.6万円、建替えは上限33.3万円 道路面から高さ60cmを超える既存ブロック塀
6 空き家等利活用推進支援費用補助金 森町 改修工事は上限30万円、残置物処分は上限10万円 空き家・空き地バンク登録物件
7 マンション管理計画認定制度 静岡県(町域が対象) 認定申請手数料 4,000円〜28,100円 森町内の分譲マンション管理組合

このうち、大規模修繕を検討している建物オーナー・管理組合にとって現実的に効いてくるのは 1・2・3・5 の4つです。理由は単純で、この4つが「建物の外側」に効くからです。外壁・屋根・付属工作物という、足場をかけないと触れない部位に、町がお金を出している。ここを取りこぼさないでほしい、というのがこの記事の主旨です。

出典:森町 わが家の耐震化へ向けた補助制度について、静岡県 マンションの管理


森町という町の輪郭を、建物側から見る

人口16,422人・6,763世帯。世帯数は10年前より増えている

森町の人口は16,422人(男8,213人/女8,209人)、世帯数は6,763世帯です(2026年8月1日現在、出典:森町の月別人口)。令和2年国勢調査時点の17,475人・6,240世帯と比べると、人口は減っているのに世帯数は増えています。

これは全国の中山間地でよく見る動きで、建物側から読むと意味は明快です。1世帯あたりの人数が減り、単身・二人世帯向けの小さな住戸の需要が相対的に増えている。森町でいえば、駅周辺や幹線道路沿いの木造アパート、鉄骨造の共同住宅が、そういう世帯の受け皿になっています。

つまり森町で「大規模修繕」を考える人の多くは、分譲マンションの管理組合ではなく、賃貸共同住宅を持っているオーナー、あるいは事業所・工場・倉庫を持っている経営者です。この記事もその前提で書いています。

三方を山に囲まれ、太田川が中心を流れる

森町は静岡県西部、遠州平野の北の端にあり、三方を低い山に囲まれ、中心を太田川が流れます。「遠州の小京都」と呼ばれる古い町並みが残り、瓦屋根の建物が今も多く残っている。この地形と町並みが、あとで説明する屋根の耐風改修助成という制度の背景になっています。

山あいの町は、平野部より風の当たり方が複雑です。谷筋を吹き抜ける風、山越えで加速する風。台風が接近したとき、平野の真ん中より山際の集落のほうが屋根の被害が大きい、という現象を私も現場で見てきました。森町が令和6年度にわざわざ「住宅屋根の耐風改修助成事業」を新設したのは、理由のないことではないと思います。

隣接自治体との位置関係

森町は袋井市、掛川市、磐田市、浜松市天竜区と接しています。このシリーズでは袋井市(2026年9月1日公開)、掛川市(同9月1日)、磐田市、浜松市も個別に扱いました。近隣の市では住宅リフォームや耐震に関する制度の組み立てが少しずつ違うので、物件が市境に近い場合は、隣の市の制度と読み比べる価値があります。ただし補助を受けられるのは物件所在地の自治体の制度のみです。ここを取り違える方が毎年いらっしゃるので、念のため書いておきます。


森町の目玉:住宅屋根の耐風改修助成事業

まず数字から。診断は上限21,000円、改修は上限55.2万円

森町が令和6年度に創設した制度です。台風などの強風による屋根の被害を未然に防ぐため、令和3年(2021年)12月31日以前に建築された瓦屋根の住宅について、耐風診断と耐風改修の費用の一部を助成します。

区分 補助率・基準額 上限額 条件
耐風診断 診断費用と31,500円のいずれか少ない額の2/3以内 21,000円 原則として瓦屋根の全面を診断
耐風改修 改修費用と「屋根面積1平方メートルあたり24,000円(上限240万円)」のいずれか少ない額の23% 55.2万円 原則として耐風診断を実施し、瓦屋根の全面を改修

町が示している計算例をそのまま引くと、こうなります。

耐風診断の例:診断費用が40,000円(税込)の場合。40,000円は基準額31,500円を超えているので、31,500円×2/3=21,000円が補助額。申請者の負担は19,000円。

耐風改修の例:改修費用が300万円(税込)、屋根面積が130平方メートルの場合。町の基準額は130×24,000円=312万円。業者見積額300万円のほうが少ないので、300万円×23%=69万円。ただし上限が55.2万円なので、補助額は55.2万円。申請者の負担は244.8万円。

出典:森町 わが家の耐震化へ向けた補助制度について

粘土瓦・セメント瓦が対象。スレート葺きは対象外

ここは間違えやすいところです。対象になるのは粘土瓦とセメント瓦で、スレート葺きの屋根は対象外と町が明記しています。

築40年前後の木造アパートだと、屋根がスレート(いわゆるカラーベスト・コロニアル)というケースはかなり多い。その場合、この制度は使えません。逆に、昭和の商店併用住宅や古い町家、和瓦の載った木造二階建てアパートであれば、対象になる可能性があります。

自分の建物の屋根材が何なのかを正確に言える方は、意外に少ないものです。図面が残っていれば仕様書を見る、なければ現地で確認する。ここは工事会社に見てもらってください。判断を誤ると、申請の前提が崩れます。

「原則として全面」という条件の意味

耐風診断も耐風改修も、原則として瓦屋根の全面が対象です。「南面だけ傷んでいるから南面だけ」という部分改修では要件を満たさない、と読むのが自然です。

これは工事側から見ると、実はありがたい条件でもあります。屋根を部分的にいじる工事は、足場と養生のコストが工事量に対して割高になりがちだからです。全面でやるなら、足場や仮設のコストを工事量で割ったときの単価が下がる。「どうせやるなら屋根と外壁を同じ足場でまとめる」という判断につながりやすい、ということです。

屋根と外壁を同じタイミングでやるべき、実務上の理由

これは補助金の話ではなく、私が現場で見てきた話です。

屋根だけを直して、5年後に外壁をやる。この順番でやると、足場を2回組むことになります。一般的な木造二階建てアパートで、足場だけで数十万円。それが2回。しかも屋根工事のときに外壁の上部に付いた汚れや、屋根まわりのシーリングの取り合いは、外壁工事のときにもう一度手を入れることになる。

森町の制度は、屋根の耐風改修(上限55.2万円)と外壁の改修に別々の窓口を持っているわけではありません。だからこそ、補助が出る屋根を軸にして、補助が出ない外壁を同じ工期に抱き合わせる。これが、限られた予算で建物全体の寿命を伸ばす、いちばん現実的なやり方だと思っています。

なお、屋根と高所外壁の調査・施工については、足場を組まないロープアクセス工法という選択肢もあります。技術的な背景は姉妹サイトロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。


鉄骨造・RC造の建物には「建築物の耐震診断事業」

マンション・事業所ビルの耐震診断に補助が出る

森町の補助制度でもうひとつ見落とされがちなのが、これです。昭和56年5月31日以前に建築された、木造住宅以外の建築物が対象で、非木造住宅(鉄骨造ほか)と、住宅以外の建築物の両方が含まれます。

対象 補助額
非木造住宅(鉄骨造ほか) 事業に要する経費と13万円を比較して少ない額の2/3以内
住宅以外の建築物 事業に要する経費と「延床面積×2,000円」を比較して少ない額の2/3以内(上限100万円)

申請できるのは対象建築物の所有者などで、借家で居住者が申請する場合は所有者の同意が必要です。

出典:森町 わが家の耐震化へ向けた補助制度について

「住宅以外の建築物」で上限100万円という枠

この枠は、森町のように事業所・工場・倉庫が点在する町では地味に効きます。延床面積2,000平方メートルの建物なら、2,000×2,000円=400万円が基準額。その2/3は266万円ですが、上限100万円が効いて100万円になります。

耐震診断そのものは工事ではありません。しかし、診断をやらないと補強計画は作れず、補強計画がなければ補助対象の工事にもならない。診断は、すべての入口です。そして診断費用は、規模の大きい建物ほど重い。ここに公費が入るのは、判断のハードルを大きく下げます。

分譲マンション・賃貸マンションでの使いどころ

森町にある分譲マンションの数はけっして多くありません。ただ、鉄骨造・鉄筋コンクリート造の共同住宅は幹線道路沿いに存在しますし、旧耐震(昭和56年5月31日以前)にあたる建物も残っています。

そういう建物を持っている方に申し上げたいのは、「うちはマンションだから町の補助は関係ない」と決めつけないでほしい、ということです。少なくとも耐震診断については、非木造住宅として補助の対象になり得ます。まずは定住推進課住まい支援係(電話 0538-85-6321)に、建物の構造・建築年・用途を伝えて相談してみてください。


木造住宅の耐震改修事業(補強計画一体型)=上限120万円

制度の中身

森町でいちばん金額が大きい住宅系の補助が、これです。補強計画の策定と、その計画に基づく耐震改修工事を同一年度内に実施する場合に、費用の合計額と上限額を比較して少ない額が補助されます。

区分 補助額
一般世帯 補強計画策定費+耐震改修工事費の合計と1,200,000円を比較して少ない額
高齢者等の世帯 同じく1,400,000円を比較して少ない額

対象は、昭和56年5月以前に建築された木造住宅で、耐震診断の結果、1階部分の耐震評点が1.0未満のもの。これを0.3ポイント以上向上させ、かつ1.0以上に上げる補強工事であること。補強計画は「静岡県耐震診断補強相談士」が作成したものであることが求められます。

出典:森町 木造住宅の耐震改修事業(補強計画一体型)(2026年4月1日更新)

「高齢者等の世帯」の4つの区分

上限が140万円になる「高齢者等の世帯」は、次のいずれかに該当する世帯です。

  1. 65歳以上の者が居住している世帯
  2. 身体障害者手帳を受け、身体障害程度等級が1級または2級の人が居住している世帯
  3. 介護保険法による要介護者または要支援者が同居している世帯
  4. 療育手帳または精神保健福祉手帳を所持している人が同居している世帯

20万円の差は小さくありません。該当しそうな場合は、申請前に窓口で確認してください。

補強計画だけの申請はできない

町のページに明記されています。「補強計画の策定のみを行うことはできません」。そして「耐震改修工事まで完了しないと補助金の対象外になります」とも書かれています。

つまり、この制度は「計画だけ立てて、工事は来年」が通らない。年度内に工事完了まで持っていく前提で、逆算してスケジュールを組む必要があります。森町のような山あいの町では、冬場の朝の冷え込みで塗料や接着系材料の施工可能温度を割る日が出ます。年度末ぎりぎりの工程は、天候リスクを工程表に織り込んでおいてください。

PR幕と見学会という、ちょっと珍しい条件

森町のこの制度には、他ではあまり見ない条件が付いています。

  1. 耐震改修工事期間中に、PR幕(森町から貸出)を設置すること
  2. 耐震改修工事期間中または工事完了後に見学会を実施する、もしくは耐震改修工事を実施するきっかけを記載した文書を提出すること

町のページには「耐震改修の宣伝等を行うこと」とも書かれています。要は、補助を受けた工事を、町の耐震化を進めるための広報材料として使わせてほしいということです。

私はこれを、悪い条件だとは思っていません。工事中に幕が掛かっていれば、近所の方が「あそこは耐震やったのか」と気づく。中山間地の耐震化は、こういう口伝えで進む部分が確かにあります。ただ、申請者としては「工事中に幕を掛ける」「見学会か文書提出をする」という手間が発生することは、あらかじめ知っておいたほうがいい。工事会社にも事前に共有してください。


無料の耐震診断は令和6年度で終わっている

森町の「わが家の専門家診断事業」は、町が静岡県耐震診断補強相談士を無料で派遣して耐震診断を行う事業でしたが、令和6年度で終了しています。町のページに「令和7年度以降は、個人負担(有料)になります」と明記されています。

出典:森町 わが家の耐震化へ向けた補助制度について

これは、森町だけの話ではありません。静岡県の「プロジェクトTOUKAI-0」は2001年(平成13年)に始まった長い事業で、無料診断の枠を先に締めて、改修工事の補助に予算を寄せる自治体が増えてきています。県全体の取り組みは静岡県 耐震ナビ(建築物耐震化ナビゲーション)にまとまっています。

順番として押さえておきたいのは、「無料診断が終わった=耐震の補助が終わった」ではないということです。診断は有料になりましたが、耐震改修工事の上限120万円(高齢者等140万円)は2026年4月1日更新のページに掲載されています。診断費用は数万円規模、改修補助は100万円規模。この差を見れば、診断に自費を投じる合理性はまだ十分にあると私は思います。


木造住宅の除却助成事業(23%・上限40万円)

令和6年度からの新規事業です。昭和56年5月31日以前に建築された木造住宅を除却する場合に、費用の一部を助成します。

項目 内容
補助額 除却事業に要する経費の23%と40万円を比較して少ない額
対象 台所・風呂・トイレがあり、現に居住している木造軸組工法の個人所有住宅
耐震要件 耐震診断の評点1.0未満、または「誰でもできるわが家の耐震診断」の合計が9点以下
除外 空き家は対象外
条件 住宅の全てを除却し、耐震性のある建築物への住み替えまたは建替えを行うこと/過去に町の耐震化促進事業費補助金の交付を受けていないこと

町の計算例では、除却費用100万円なら23万円、200万円なら上限が効いて40万円です。

「空き家は対象外」「現に居住している住宅が対象」という要件は、他自治体の除却補助と性格が違う点なので注意してください。空き家の除却を考えている場合は、次に説明する空き家関連の制度、あるいは別枠の危険空き家対策のほうを窓口で確認することになります。

出典:森町 わが家の耐震化へ向けた補助制度について


ブロック塀は「除却」だけでなく「建替え」にも補助が出る

3つのメニューと上限額

森町のブロック塀補助は、3本立てになっています。

メニュー 補助率 町の基準額 上限額
ブロック塀等の除却事業(避難路沿道等) 2/3以内 1mあたり8,900円×塀の長さ 26.6万円
ブロック塀等の建替え事業(避難路沿道等) 2/3以内 1mあたり38,400円×塀の長さ 33.3万円
危険なブロック塀等の除却事業 1/2以内 1mあたり8,900円×塀の長さ 20万円

いずれも「業者の見積額」と「町の基準額」を比較して少ない額に、補助率を掛けます。

対象になる塀の条件

  • 公衆用道路に接道(面している)ブロック塀であること
  • 地震発生時に倒壊または転倒の危険性があると判断されたブロック塀等で、道路面からの高さが60センチメートルを超えるもの
  • 除却後に建替えた場合、道路からの高さが60センチメートル未満、かつコンクリートブロック塀は2段以下で施工すること

対象は、通学路・避難路、および住宅や事業所等から避難所・避難地へ至る経路沿いにある既存ブロック塀です。

建替え補助があることの意味

自治体によっては「除却だけ補助、建替えは自己負担」というところがあります。森町は建替えにも2/3・上限33.3万円を出す。この差は実務では大きい。

集合住宅や事業所の外周を囲んでいる古いブロック塀は、防犯やゴミ置き場の目隠しの役割を担っていることが多く、「撤去だけして終わり」にはできません。撤去したら何かで置き換える必要がある。そこに補助が付くかどうかで、オーナーの意思決定は変わります。

ただし建替え後は高さ60センチメートル未満・CB2段以下という制限がかかります。目隠しの機能を残したい場合は、低いブロック基礎の上にフェンスを立てる、といった設計になります。この納まりは、外構業者と塗装・防水業者の担当が分かれてしまいがちなところなので、外壁改修と同じタイミングで、同じ会社が一括で見るほうが手戻りが少ないというのが私の実感です。

出典:森町 わが家の耐震化へ向けた補助制度について


空き家等利活用推進支援費用補助金:屋根・外壁の改修も対象

森町の空き家・空き地バンクに登録できる物件について、残置物処分費用と改修工事費用を補助する制度です。

区分 上限額
改修工事 30万円
残置物処分 10万円

改修工事の補助対象経費に「内装、屋根、外壁等の改修に係る経費」が明記されているのがポイントです。台所・風呂・トイレの改修、電気・ガス・水道設備の改修も対象。残置物処分側は、ごみ処理手数料、家電製品の処分費、家財処分の委託費、建物内の清掃費、敷地内の支障木伐採費まで含まれます。

補助対象者は、売買または賃貸等による利活用を目的とした空き家の所有者・購入者・賃借人で、残置物処分や改修を行う権限を有する方、または所有者から許可を受けた方です。

主な要件は次のとおりです。

  • 空き家バンクに2年以上継続して物件を登録すること
  • 税金等の滞納がなく、暴力団関係者ではないこと
  • 登録した空き家を3親等内の親族に売却または賃貸しないこと
  • 残置物処分を委託する場合は、一般廃棄物処理業の許可を受けている業者に依頼すること

出典:森町 空き家等利活用推進支援費用補助金

この制度は、空いた戸建てを賃貸に回したいオーナーにとって使える枠です。「3親等内の親族には貸せない」という条件があるので、身内に住まわせる目的では使えません。予算の範囲内での補助である旨も町のページに書かれているので、年度の早い段階で相談されることをおすすめします。


災害復旧と宅地の安全性:森町ならではの2つの論点

森町住家災害復旧事業費補助金

大雨・洪水・地すべり・地震などで、現に居住している建物が被害を受けた、または被害を受けるおそれがある場合に、土地崩壊復旧工事または土砂や竹木などの流入堆積物除去工事の費用を補助する制度です。

項目 内容
補助額 工事費10万円以上の対象工事にかかる経費の1/2以内、上限20万円
必要書類 被害状況が分かる工事前の写真、工事の見積書(コピー可)
窓口 役場定住推進課

町の例示では、工事費8万円は対象外、18万円なら補助9万円、48万円なら上限が効いて20万円です。

工事前の写真が要件になっている点は、実務上とても重要です。被害が出たとき、人はまず片付けようとします。片付けてから申請しようとすると、被害状況を証明できない。撮ってから動く。これは覚えておいてください。

出典:森町住家災害復旧事業費補助金

大規模盛土造成地は町内に何か所あるのか

森町は宅地耐震化推進事業として、大規模盛土造成地の調査結果を公表しています。経緯はこうです。

静岡県が平成19年(2007年)から平成25年(2013年)にかけて、静岡市・浜松市・沼津市・富士市を除く市町の造成宅地533か所について第一次スクリーニングを実施し、森町内では4か所の大規模盛土造成地が抽出されました。町は令和4年度に、この4か所について第二次スクリーニング計画(変動予測調査)を実施。その結果、4か所のうち谷埋め型造成地の1か所が大規模盛土造成地に該当し、腹付け型の3か所は該当しなかったと公表しています。

大規模盛土造成地の定義は、谷埋め型が「盛土の面積3,000平方メートル以上」、腹付け型が「盛土前の地盤面の角度20度以上かつ盛土の高さ5m以上」です。

町は「このマップは大規模盛土造成地の位置を示すものであり、危険な造成地を表すものではありません」と明記しています。過度に不安を持つ話ではありません。ただ、自分の物件がどういう地盤の上に建っているかを知っておくことは、長期修繕計画を立てるうえで意味があります。外壁のひび割れが、材料の経年劣化によるものなのか、建物の不同沈下によるものなのか。原因が違えば、打つべき手も違うからです。

出典:森町 宅地耐震化推進事業、国土交通省 大規模盛土造成地の滑動崩落対策について


分譲マンション管理組合が使える静岡県の制度

管理計画認定制度の窓口は「町ではなく県」

森町のような町域にある分譲マンションの管理計画認定は、静岡県が窓口になります。認定基準は「静岡県マンション管理適正化推進計画」に定められています。

申請方法は2つ。

申請方法 事前確認適合証
【1】公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを利用する 適合証あり
【2】静岡県住まいづくり課へ直接申請する 適合証なし

そして手数料は、令和8年4月1日に改定されています。

事前確認適合証 長期修繕計画数 令和8年3月31日まで 令和8年4月1日から
有り 1 3,800円 4,000円
有り 2以上 3,800円+1,700円×(計画数-1) 4,000円+1,800円×(計画数-1)
無し 1 26,900円 28,100円
無し 2以上 26,900円+15,500円×(計画数-1) 28,100円+16,200円×(計画数-1)

認定の更新も同じ料金体系です。事前確認適合証があるかないかで、手数料は7倍違います。4,000円と28,100円。ここは制度設計として非常にはっきりしたメッセージで、「マンション管理センターの事前確認を通してから来てください」ということです。

出典:静岡県 マンションの管理、公益財団法人マンション管理センター 管理計画認定手続支援サービス

マンション管理士の無料派遣(受付10件・令和8年11月14日締切)

静岡県は令和8年度のマンション管理組合活動活性化支援事業として、マンション管理士の無料派遣を実施しています。

項目 内容
受付件数 10件(上限に達した時点で終了)
申込期限 令和8年11月14日(土曜)まで
派遣回数 各管理組合2回まで
派遣期限 令和9年1月31日(日曜)まで
申込先 一般社団法人静岡県マンション管理士会

県全体で10件です。長期修繕計画の見直しや修繕積立金の水準について第三者の目を入れたい管理組合は、早めに動いたほうがいい枠だと思います。

マンション管理適正化支援法人の登録は、県ではまだ実施していない

令和7年5月30日に「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律(令和7年法律第47号)」が公布され、同年11月28日に一部施行された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成12年法律第149号)」において、マンション管理適正化支援法人の登録制度が創設されました。

登録主体は、市の区域は市、町の区域は県です。そして静岡県は「現段階では、登録制度は実施していません」と明記しています。森町は町域ですから、支援法人による公的支援の枠組みは、現時点ではまだ動いていないということになります。

制度の枠だけができて、運用はこれから。この現在地を知っておくと、管理組合として「何を待ち、何を自分たちで進めるか」の判断がしやすくなります。

静岡県のマンション管理セミナー(令和8年度)

県は分譲マンションの管理組合役員・区分所有者を対象としたセミナーを県内各地で開催しています。令和8年度の開催予定は、浜松市(令和8年7月25日)、磐田市(同8月29日)、三島市(同9月12日)、熱海市(同10月予定)、沼津市(同10月予定)、静岡市(同11月予定)、伊東市(同12月予定)、富士市(令和9年2月予定)、浜松市(同2月予定)です。

森町からだと、磐田市・浜松市の回が距離的に現実的です。三島市の回は令和8年9月12日で、この記事の公開直後にあたります。


国の制度:窓の断熱と、長寿命化のモデル事業

先進的窓リノベ2026事業

住宅の窓・ドアを断熱性能の高いものに改修する費用を補助する事業で、一戸あたり最大100万円が交付されます。対象は既存の戸建住宅・集合住宅で、新築は対象外。住宅所有者(個人・法人)、賃貸住宅オーナー、マンション管理組合などが申請対象になり得ます。

出典:環境省 断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業(先進的窓リノベ2026事業)、住宅省エネ2026キャンペーン公式

森町のような山あいの町では、冬の朝の冷え込みが平野部より厳しく、結露やカビの相談が多くなります。外壁改修と内窓設置は、工事の性格がまったく違うので同時にやりやすい。足場を使う外部の工事と、住戸内で完結する内窓工事は、干渉しません。工期を重ねられます。

マンションストック長寿命化等モデル事業

国土交通省が、マンションの長寿命化や再生に関する先導的な取組を支援する事業です。令和8年度は複数回の公募が行われており、第2回が2026年6月22日〜26日、第3回が2026年9月14日〜18日の日程で予定されています。

出典:国土交通省 マンション総合対策モデル事業

補助額は事業計画・要望額・評価委員会の評価を総合的に勘案して個別に決定されます。公募期間が5営業日程度と短いのが最大の注意点で、第3回を狙うなら、この記事が公開される時点で準備は最終盤に入っている必要があります。

住宅金融支援機構の融資とすまい・る債

補助金ではありませんが、管理組合が使える資金調達の選択肢として、住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資とマンションすまい・る債があります。修繕積立金が不足しているとき、一時金の徴収か借入かという議論になりますが、後者の選択肢を知らないまま総会にかけている管理組合は少なくありません。

出典:住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資、住宅金融支援機構 マンションすまい・る債


建物タイプ別・使える制度の早見表

森町で「自分の建物は何が使えるのか」を整理すると、こうなります。

建物タイプ 使える可能性のある制度
瓦屋根の木造住宅・木造アパート(令和3年12月31日以前建築) 住宅屋根の耐風改修助成事業(診断+改修)/木造住宅の耐震改修事業(旧耐震の場合)/ブロック塀等の除却・建替え
旧耐震(昭和56年5月31日以前)の木造住宅 木造住宅の耐震改修事業(上限120万円・高齢者等140万円)/木造住宅の除却助成事業(居住中の場合)
旧耐震の鉄骨造・RC造の共同住宅 建築物の耐震診断事業(非木造住宅として2/3以内)/ブロック塀等の除却・建替え
旧耐震の事業所・工場・倉庫 建築物の耐震診断事業(住宅以外の建築物として上限100万円)
分譲マンション(RC造) 管理計画認定制度(県)/マンション管理士無料派遣(県)/先進的窓リノベ2026(国)/マンションストック長寿命化等モデル事業(国)/機構の融資・すまい・る債
空き家を賃貸・売却で活用したい 空き家等利活用推進支援費用補助金(改修上限30万円・残置物処分上限10万円)
新耐震の賃貸アパート(昭和56年6月1日以後) 先進的窓リノベ2026/ブロック塀等の除却・建替え(要件を満たす場合)

新耐震の建物は、町の耐震系メニューからは外れます。そこは国の省エネ系(窓リノベ)と、共用部の資金計画で組み立てることになります。


2026年度中に効いてくる期限のまとめ

時期 内容
2026年9月12日 静岡県マンション管理セミナー 三島市会場
2026年9月14日〜18日 マンションストック長寿命化等モデル事業 令和8年度 第3回公募(予定)
2026年10月ごろ 静岡県マンション管理セミナー 熱海市・沼津市会場(予定)
2026年11月14日 静岡県マンション管理士無料派遣 申込期限(受付10件・定数に達し次第終了)
2027年1月31日 同 派遣期限
年度内(2027年3月末) 森町の耐震改修事業は同一年度内に工事完了が要件

森町の各補助は予算の範囲内での交付です。年度後半になるほど、枠が残っているかどうかの不確実性は上がります。「年度末に駆け込む」より「秋のうちに窓口に相談する」。これが、私が毎年お客様に申し上げていることです。


申請から着工までの流れ(森町の耐震・屋根系の場合)

森町の制度は、いずれも「申請書に必要な資料を添付して、定住推進課窓口に直接申込み」という形をとっています。オンライン完結ではありません。おおまかな流れは次のとおりです。

  1. 窓口に相談(定住推進課 住まい支援係/電話 0538-85-6321)。建物の構造・建築年・屋根材・用途を伝える
  2. 診断(耐震診断/耐風診断)。静岡県耐震診断補強相談士など、要件を満たす専門家に依頼する
  3. 計画・見積。補強計画または改修計画を作成し、工事会社から見積を取る
  4. 交付申請。申請書と添付書類を定住推進課へ提出(森町は申請様式をWord・PDFで公開しています)
  5. 交付決定を待つ。★ここが最重要。交付決定前の着工は補助対象外になるのが自治体補助の原則です
  6. 着工・施工。耐震改修の場合はPR幕の設置などの条件を守る
  7. 実績報告・請求。工事完了後、実績報告書と請求書を提出
  8. 補助金の交付

ステップ5を飛ばして着工してしまう事故が、毎年どこかで起きています。見積が出た=工事してよい、ではありません。工事会社の側から「まだ着工できません」と止められるのが本来ですが、そこまで制度に詳しくない会社もあります。発注者側でも押さえておいてください。


工法でコストを下げる:足場・ロープアクセス・ハイブリッド

大規模修繕費の中で、足場は何割を占めるのか

補助金の話をしてきましたが、費用を下げる手段は補助金だけではありません。工法の選択は、補助金よりも大きく総額を動かすことがあります。

外壁改修や屋根改修の見積書を開くと、必ず「仮設工事」という項目があります。枠組足場、養生シート、昇降設備。建物の形状と規模によりますが、この仮設工事費が工事総額の相応の割合を占めるのが一般的です。ここを削れれば、同じ予算でより多くの部位を直せます。

ロープアクセス工法(無足場工法)とは

産業用のロープと下降器・登高器を使い、屋上や外壁に設けたアンカーから作業員が懸垂して施工する工法です。足場を組まないため、次のような効果が出ます。

  • 仮設費の圧縮:枠組足場の設置・解体・リース料が発生しない
  • 工期の短縮:足場の組立・解体に要する日数が丸ごと消える
  • 居住者・利用者の生活影響の最小化:窓の外を足場とシートで塞がれない、洗濯物が干せる、日照と通風が確保される
  • 防犯面の不安の軽減:足場は第三者が上れる構造物でもあるため、これがない
  • 部分補修への機動力:漏水や剥落など、限られた範囲の緊急対応に着手しやすい

ロープアクセス工法の一般的な安全基準や事例については、ロープアクセスドットコムで解説しています。

ハイブリッド工法という第三の選択肢

現実の建物は、「全部足場」か「全部ロープ」かで割り切れるほど単純ではありません。低層部やバルコニーが密集した面は足場のほうが効率がよく、高層部や隣地との離隔が取れない面はロープアクセスのほうが速い。

そこで、部位ごとに足場とロープアクセスを使い分けるのがハイブリッド工法です。株式会社明誠は、通常の足場仮設工事、無足場のロープアクセス工事、その両方を組み合わせたハイブリッド工法の3つを、建物の特性に応じて提案できる会社です。3つとも自社の選択肢として持っているからこそ、「この建物にはどれが最適か」をフラットに判断できます。

工法の詳細は明誠のロープアクセス工法のご紹介、会社としての考え方は明誠のコンセプトをご覧ください。

森町のような町での、実務上の判断軸

森町の建物でロープアクセスが効くのは、次のようなケースです。

  1. 敷地に余裕がなく、足場を建てる場所がない。旧市街の町家や商店併用住宅は、隣地境界まで数十センチということがあります
  2. 傾斜地・擁壁の上に建っている。足場の base をどこに取るかが難しい建物です。森町は三方を山に囲まれた地形で、こういう物件が実際にあります
  3. 一部だけ直したい。屋根の棟や、外壁の一部のクラック。全面足場を組むほどではないが、放っておくと広がる劣化です
  4. 入居中で、居住者の生活影響を抑えたい。賃貸オーナーにとって、工事期間中の空室・退去は補助金より大きな損失になり得ます

逆に、屋根の全面葺き替えのように、屋根面での作業量が多く、材料の荷揚げが大量に発生する工事は、足場のほうが合理的です。森町の耐風改修助成が「原則として瓦屋根の全面を改修」を求めていることを考えると、この助成を使う工事は足場ベース、外壁の一部補修や調査はロープアクセス、という組み合わせが現実的でしょう。

明誠は、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟する、日本初のロープアクセス工事のフランチャイズを展開しています。専門職が直接動く体制なので、中間マージンの積み上がりを抑えられます。明誠の対応サービスもあわせてご覧ください。


補助金を使うとき、私が現場で見てきた落とし穴

1. 交付決定前に着工してしまう

繰り返しになりますが、これがいちばん多い事故です。「見積が出たから」「業者の段取りがついたから」で先に着工すると、補助の対象外になります。

2. 屋根材の種類を確認しないまま話が進む

森町の耐風改修助成は、粘土瓦・セメント瓦が対象、スレートは対象外です。「うちは瓦です」とおっしゃる方の建物が、実はセメント系のスレートだった、ということは珍しくありません。申請の前提が崩れると、工程も予算も組み直しになります。

3. 「全面」の要件を部分工事でクリアしようとする

耐風診断も耐風改修も、原則として全面が対象です。安く上げようとして部分施工にすると、補助が使えなくなり、かえって高くつきます。

4. 年度をまたぐ工程を組んでしまう

耐震改修事業は同一年度内の完了が要件です。冬季の施工可能温度、年末年始の職人確保、資材の納期。この3つで年度末は毎年混みます。逆算して、余裕を持った工程を。

5. 相見積の条件がそろっていない

3社から見積を取ったが、A社は足場込み、B社は足場別、C社は屋根の面積の拾い方が違う。これでは比較になりません。同じ図面・同じ仕様書・同じ数量で出してもらう。ここを揃えるだけで、判断の質は大きく変わります。

6. 見学会やPR幕の条件を工事会社に伝えていない

森町の耐震改修事業には、PR幕の設置と、見学会の実施または文書提出という条件があります。工事会社が知らないまま工程を組むと、後から慌てることになります。契約前に共有してください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 森町に、分譲マンションの大規模修繕そのものを補助する町の制度はありますか?
A. 2026年9月時点で、町が公開している情報の中に、分譲マンションの共用部大規模修繕を直接補助する単独メニューは見当たりません。管理組合が使える公的支援は、静岡県の管理計画認定制度・マンション管理士無料派遣と、国の先進的窓リノベ2026事業・マンションストック長寿命化等モデル事業、住宅金融支援機構の融資・すまい・る債が中心になります。一方で、旧耐震の非木造建物であれば、町の建築物の耐震診断事業が使える可能性があります。

Q2. 屋根の耐風改修助成は、賃貸アパートでも使えますか?
A. 制度は「住宅」の瓦屋根を対象としており、令和3年12月31日以前に建築されたものが対象です。共同住宅で使えるかどうか、また複数棟・複数住戸の扱いについては、建物の登記上の用途や構造によって判断が分かれる可能性があるため、定住推進課住まい支援係(0538-85-6321)で個別に確認してください。(出典:森町 わが家の耐震化へ向けた補助制度について)

Q3. 無料の耐震診断が終わったと聞きましたが、耐震の補助も終わったのですか?
A. 終わったのは「わが家の専門家診断事業」(無料の専門家派遣)で、令和6年度で終了しています。令和7年度以降、診断は個人負担です。ただし、木造住宅の耐震改修事業(補強計画一体型/上限120万円、高齢者等の世帯は140万円)は2026年4月1日更新のページに掲載されており、継続しています。

Q4. 管理計画認定の申請手数料は、いつからいくらになりましたか?
A. 静岡県は令和8年4月1日に手数料を改定しました。事前確認適合証がある場合、長期修繕計画1件で4,000円(改定前3,800円)。適合証がない場合は28,100円(改定前26,900円)です。適合証の有無で7倍の差が出るため、公益財団法人マンション管理センターの事前確認を経るルートが現実的です。(出典:静岡県 マンションの管理)

Q5. 足場を組まないロープアクセス工法は、森町のような山あいの町でも使えますか?
A. 使えます。むしろ、敷地に余裕がない旧市街の建物や、傾斜地・擁壁の上に建つ建物では、足場を建てる場所の確保が難しく、ロープアクセスの利点が出やすい条件です。ただし屋根の全面葺き替えのように材料の荷揚げが大量に発生する工事は足場が合理的なので、部位ごとに使い分けるハイブリッド工法を含めて検討することをおすすめします。


この記事のポイントまとめ

  • 森町の目玉は住宅屋根の耐風改修助成。工事費の23%・上限55.2万円
  • 耐風診断は上限21,000円。粘土瓦・セメント瓦が対象でスレートは対象外
  • 鉄骨造・RC造も対象。建築物の耐震診断事業は住宅以外で上限100万円
  • 木造の耐震改修は上限120万円、高齢者等の世帯は140万円まで
  • ブロック塀は除却26.6万円だけでなく建替え33.3万円にも補助が出る
  • 無料の専門家診断は令和6年度で終了。診断は令和7年度から有料
  • 分譲マンションの管理計画認定は町ではなく静岡県が窓口
  • 認定手数料は令和8年4月1日改定。適合証あり4,000円/なし28,100円
  • 県のマンション管理士無料派遣は10件・令和8年11月14日締切
  • 交付決定前の着工は補助対象外。秋のうちに窓口へ相談を

森町の建物のこと、まずはご相談ください

株式会社明誠は、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を専門とする改修会社です。通常の足場仮設工事、無足場のロープアクセス工事、その両方を組み合わせたハイブリッド工法という3つの選択肢から、建物にとって最適な工法をご提案します。

  • 屋根と外壁を同じ工期でまとめたい
  • 補助金が使えるのか、まず建物を見てほしい
  • 足場を組まずに、劣化状況だけ先に調べたい
  • 相見積の条件がそろっているか、第三者の目で見てほしい

こうしたご相談に、無料の現地調査・お見積りで対応しています。お問い合わせフォームからご連絡ください。ドローンによる外観調査や、管理組合向けのサービスについても承ります。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション・ビル・ホテルの大規模修繕/ロープアクセス工法(無足場工法)/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円と全国のフランチャイズ加盟店を通じて、ロープアクセス工法・足場工法・ハイブリッド工法の3つを提案できる改修会社。ロープアクセス工事として日本初のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。

最終更新:2026年9月3日

注記:本記事は2026年9月3日時点で公開されている情報にもとづいて作成しています。補助制度は年度途中で内容・金額・受付状況が変更されることがあります。申請にあたっては、必ず各制度の公式ページと窓口で最新の内容をご確認ください。


出典・参考資料

小山町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

この記事で答える質問:小山町のマンション・アパートの修繕で、2026年度に使える公的支援はどれか?

静岡県駿東郡小山町で分譲マンションの管理組合を運営されている方、あるいは町内でアパートや貸家をお持ちのオーナーさまに向けて、2026年度(令和8年度)に実際に使える制度を、町・県・国の一次情報だけを根拠に整理しました。

先に結論を申し上げます。小山町には「分譲マンションの共用部大規模修繕そのものを直接補助する町の制度」は、2026年9月時点で見当たりません。その代わり、賃貸住宅のオーナーに真正面から効く助成金と、木造の共同住宅(アパート)を対象に含む耐震補強の助成、そして商工会が運営する地域振興券方式のリフォーム助成という、他の自治体ではあまり見ない組み合わせが用意されています。

私は建設・改修の現場に20年以上おりますが、人口1万6千人台の町でここまでオーナー向けの入口が明確な自治体は、正直に申し上げてそう多くありません。問題は、その入口が「マンション補助金」という言葉では検索に引っかからない場所に置かれていることです。この記事では、そこを一つずつ開けていきます。

(最終更新:2026年9月3日)

結論:小山町で2026年度に使える制度は「町4本+県2本+国3本」

まず全体像です。以下が、小山町の建物オーナー・管理組合が2026年度に検討できる制度の一覧です。

# 制度名(正式名称) 実施主体 補助率・上限 主な対象
1 小山町民間賃貸住宅リフォーム助成金 小山町(おやまで暮らそう課) 改修工事費の1/3。アパート1住戸あたり最大20万円/一戸建て1戸あたり最大40万円 町内の賃貸アパート・貸家の空き住戸
2 小山町木造住宅耐震補強助成事業(計画工事一体型) 小山町(都市整備課) 耐震補強工事費の8/10と100万円の少ない額。高齢者等割増で最大+20万円 昭和56年5月31日以前の木造在来軸組工法。長屋・共同住宅も対象
3 小山町ブロック塀等耐震改修事業費補助金 小山町(都市整備課) 撤去:単価8,900円/mとの比較後2/3以内・1敷地10万円限度/改善:単価38,400円/mとの比較後2/3以内・1敷地25万円限度 道路等に面する危険なブロック塀等
4 小山快適リフォーム助成事業(令和8年度) 小山町商工会 工事金額に応じ1万円〜10万円分の地域振興券 町内の住宅・店舗・工場・事業所等
5 マンション管理計画認定制度(町域) 静岡県住まいづくり課 認定申請手数料 4,000円〜(事前確認適合証あり・1計画) 町内の分譲マンション管理組合
6 マンション管理士の無料派遣(令和8年度) 静岡県/静岡県マンション管理士会 無料・各管理組合2回まで(県全体で受付10件) 県内のマンション管理組合
7 先進的窓リノベ2026事業 環境省ほか3省連携 一戸あたり最大100万円 既存の戸建・集合住宅の断熱窓改修
8 マンションストック長寿命化等モデル事業(令和8年度) 国土交通省 事業計画に応じて個別決定 先導的な長寿命化・再生の取組
9 マンション共用部分リフォーム融資/マンションすまい・る債 住宅金融支援機構 融資・積立(補助金ではない) 分譲マンション管理組合

このうち、小山町のオーナーさまが最初に見るべきは1番です。理由は次の章で申し上げます。

なお、制度は年度途中でも変更・終了することがあります。予算枠に達した時点で受付を締め切る制度も含まれますので、最終的な可否は必ず各窓口の公式情報でご確認ください。

小山町という町の前提を、数字で押さえる

制度の話に入る前に、町の姿を共有させてください。ここを外すと、制度の設計意図を読み違えます。

小山町の人口は16,481人(うち外国人564人)、世帯数は7,431世帯です(2026年8月1日現在、出典:静岡県小山町公式ホームページ)。富士山の東麓、駿東郡に位置し、JR御殿場線が通り、町内には富士スピードウェイがあります。金太郎生誕の地としても知られる町です。

この規模感から見えてくることが3つあります。

1つ目。分譲マンションの絶対数が少ない。 7,431世帯の町で、区分所有の分譲マンションが数十棟あるということは考えにくい。したがって、町が「分譲マンションの大規模修繕補助」という単独メニューを持たず、賃貸住宅と木造住宅の耐震化に予算を寄せているのは、町の住宅事情に沿った合理的な資源配分だと私は受け止めています。

2つ目。賃貸住宅の役割が大きい。 町の助成金の要綱には「子育て世帯や立地企業の従業者の皆さんが、安心して快適に暮らせる住環境を提供するため」という目的が明記されています(出典:小山町民間賃貸住宅のリフォーム費用の一部を助成します)。つまり町は、アパート・貸家の質=町の定住政策の要だと位置づけている。ここにオーナーさま向けの予算が乗っています。

3つ目。旧耐震の木造住宅・木造アパートが一定量残っている。 小山町は昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた木造住宅の耐震化を、県の「プロジェクトTOUKAI(東海・倒壊)-0(ゼロ)」の枠組みで進めています。この助成が長屋や共同住宅も対象に含めている点は、木造アパートを持つオーナーさまにとって見逃せません。

私は現場に入るとき、必ずその土地の気候を先に見ます。小山町は富士山東麓で標高が高く、冬季の冷え込みが厳しい地域です。外壁のひび割れに入った水が凍って膨張し、融けてまた入る——この凍結融解の繰り返し(凍害)は、温暖な沿岸部の物件より塗膜やモルタルを速く痛めます。加えて富士山の降灰リスクを抱える地域でもあり、屋上防水の排水口(ドレン)まわりは詰まりやすい。同じ築年数でも、平野部のマンションと同じ修繕周期でよいとは限らない、というのが私の実感です。

小山町民間賃貸住宅リフォーム助成金:オーナーに一番効く1本

Q. 小山町でアパートを持っています。空室の改修に使える町の助成金はありますか?
A. あります。「小山町民間賃貸住宅リフォーム助成金」で、改修工事費の3分の1、アパートは1住戸あたり最大20万円、一戸建ての貸家は1戸あたり最大40万円が助成されます(出典:小山町 民間賃貸住宅リフォーム助成金、2026年4月6日更新)。

これが小山町最大の特徴です。制度の骨格を整理します。

項目 内容
対象者 町内に賃貸住宅(アパート・一戸建て)を所有する個人または法人
対象住宅 賃貸借契約により入居される住宅/昭和56年6月1日以後に着工した独立住戸(水回り・駐車場付)/現に空室、または賃借人の退去日が決定しているもの
助成金額 改修工事費の3分の1。アパート:1住戸あたり最大20万円/一戸建て:1戸あたり最大40万円
対象工事 住戸の居住性・安全性を高める改修工事で、AまたはBの要件を含むもの
要件A 子育ての利便性や安全性を高める「こどもみらいリフォーム」を1つ以上実施する工事
要件B 町内立地企業との賃貸借契約に基づき、そのニーズを叶えるためのリフォームを実施する工事
窓口 未来創造部 おやまで暮らそう課 移住定住促進班(Tel:0550-76-6159)

「新耐震以後」という条件が意味すること

対象住宅が昭和56年6月1日以後に着工した住戸に限られている点に注目してください。これは新耐震基準の適用ラインです。裏を返せば、それ以前の建物は制度2(耐震補強助成)の側に誘導されている、という設計です。町として、古い建物には耐震から、新しい建物には居住性からという交通整理ができている。私はこの割り切りは正しいと思います。

要件Bは、小山町でしか成立しない条件

要件Bの「町内立地企業との賃貸借契約に基づいて、そのニーズを叶えるためのリフォーム」——これは他の自治体ではまず見ない条件です。小山町は製造業を中心に企業が立地しており、その従業者の住まいの確保が町の課題になっている。社宅・寮としての一括借上げを前提にした改修が、助成対象になり得るということです。

私が理事長さまやオーナーさまにいつもお伝えしているのは、「補助金は工事のためではなく、行政の政策目標のためにある」ということです。小山町の政策目標は定住人口と企業従業者の住環境。ここに自分の物件の改修計画を重ねられるオーナーさまが、この助成金を通せます。

ただし、共用部の大規模修繕そのものは対象外

正直に申し上げます。この助成金は「独立住戸」の改修が対象です。外壁塗装・屋上防水・鉄部塗装といった、建物全体の共用部大規模修繕を丸ごと賄うものではありません。「空室の内装と設備を直して、次の入居者に貸す」という場面の制度です。

ですから実務としては、共用部の大規模修繕は自己資金と長期修繕計画で組み、空室の内装改修だけ助成金を当てる——この二階建てが現実的な使い方になります。足場を架けている間に空室の窓や水回りも同時に触ると、職人の出入りが一度で済み、結果として総額が下がる。私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。

木造アパートなら最大120万円:小山町木造住宅耐震補強助成事業

Q. 木造アパートは耐震補強の補助金の対象になりますか?
A. 小山町では、一戸建てのほか長屋や共同住宅も対象です。補助額は耐震補強工事費の10分の8と100万円を比べて少ない額、高齢者等割増を加えると最大で120万円規模になります(出典:小山町木造住宅耐震補強助成事業(計画工事一体型))。

制度の中身を、要綱の記載に沿って整理します。

項目 内容
対象住宅 昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された木造住宅(在来軸組工法)。一戸建てのほか長屋・共同住宅も対象。併用住宅は建物全体の半分以上が住宅なら対象
補助対象 耐震評点を1.0以上、かつ0.3ポイント以上向上させる耐震補強計画の作成と工事に要する費用
補助金額(一般世帯) 耐震補強工事費に10分の8を乗じた額と100万円を比較し、いずれか少ない額
補助金額(高齢者等割増) 上記の額に、工事費から上記額を引いた額と20万円を比較して少ない額を加算
必須条件 静岡県耐震診断補強相談士の資格を持つ建築士が補強計画を作成すること
最重要の注意点 工事業者と契約する前に補助金を申請すること。契約後・着手後の申請では補助を受けられません
窓口 都市基盤部 都市整備課(Tel:0550-76-6137)

「耐震評点1.0以上、かつ0.3ポイント以上向上」の読み方

耐震評点とは、建物の耐震性能を数値化した指標で、1.0が「一応倒壊しない」水準の目安とされています。小山町の制度は、1.0を超えるだけでは足りず、現状から0.3ポイント以上引き上げることを求めています。

これは実務上、重要な意味を持ちます。もともと評点0.9の建物を1.0にする「ちょっとだけ補強」は対象外になり得るということです。逆に評点0.4の建物を0.7にしても、1.0未満なので対象外。「低いところから、1.0を超えるところまで、一気に上げる」補強計画が求められるわけです。

木造アパートオーナーが取るべき順番

木造の共同住宅をお持ちなら、順番はこうなります。

  1. わが家の専門家診断事業(無料)を申し込む。町から委託された専門家が住宅を診断します(出典:小山町 住宅の耐震対策を進めましょう【TOUKAI-0】)。
  2. 診断結果が耐震評点1.0未満なら、静岡県耐震診断補強相談士の資格を持つ建築士に補強計画の作成を依頼する。
  3. 工事契約の前に、都市整備課へ補助金を申請する。
  4. 交付決定を受けてから契約・着工する。
  5. 完了実績報告書(様式第8号)と補助金請求書(様式第10号)を提出する。

この5段階のうち、私が現場で一番悔しい思いをするのは3番の順番違いです。「もう業者と契約してしまった」というご相談を年に何度かいただきますが、この制度に限らず、着工前申請が原則の補助金は後戻りができません。見積りを取ることと契約することは違います。ここだけは、動く前に町へ一本電話を入れてください。

ブロック塀の撤去・改善:1敷地あたり最大25万円

マンションやアパートの敷地境界にブロック塀が残っている物件は、小山町でもまだあります。小山町ブロック塀等耐震改修事業費補助金は、地震時に倒壊・転倒の危険があるブロック塀等(道路等に面するものに限る)を対象にしています(出典:小山町 ブロック塀等の撤去・改修費用の補助)。

事業区分 補助額
ブロック塀等撤去事業 補助対象経費と「延長1mにつき8,900円」を乗じた額を比較し、いずれか少ない額の3分の2以内。1敷地につき10万円を限度
避難路・避難地沿いブロック塀等緊急改善事業 補助対象経費と「延長1mにつき38,400円」を乗じた額を比較し、いずれか少ない額の3分の2以内。1敷地につき25万円を限度

ここでいう「道路等」は、住宅や事務所等から避難所や避難地へ至る経路で、道路法第3条に規定する道路、建築基準法第42条に規定する道路、小山町法定外道路管理条例第2条に規定する法定外道路を指します。

「改善」の定義に落とし穴がある

要綱の注記に、こう書かれています。「改善とは、塀の改修及び造り替え並びにフェンス、その他の種類の塀への転換をいい、塀の造り替え又は他の種類の塀へ転換するための塀の撤去及び生垣への転換を含まない」。

読み飛ばしやすい一文ですが、これは実務にそのまま効きます。つまり、

  • ブロック塀をフェンスに転換する → 改善事業の対象になり得る
  • ブロック塀を生垣に転換する → 改善の定義から除外されている
  • 造り替えのための撤去部分は、改善事業の中には含まれない

という整理です。生垣にしたい場合は、撤去事業(上限10万円)の側で検討することになります。この違いを知らずに計画を立てると、想定した金額が出ません。

なお、この制度は事前現地調査の申込みから始まります。窓口(役場本庁舎2階)、電話(0550-76-6137)、ファックス(0550-76-2795)、メール(toshi@fuji-oyama.jp)のいずれでも受け付けています。申込みの際に、塀の種類・延長・高さ・厚さ、建築年月や劣化状況を聞かれますので、先にメジャーで測っておくと話が早く進みます。

小山快適リフォーム助成事業:商工会の地域振興券という発想

小山町には、役場とは別に小山町商工会が運営するリフォーム助成があります。令和8年度も実施されており、金銭ではなく地域振興券で交付されるのが特徴です(出典:小山町商工会 令和8年度リフォーム助成事業開始について)。

商工会が公表している令和8年度の概要は、以下のとおりです。

項目 内容
受付開始 令和8年6月15日(月)
対象工事期間 令和8年7月1日以降着工、令和8年12月31日までに完了するリフォーム工事
対象工事費 税抜10万円以上
交付額 10万円以上:1万円分/20万円以上50万円未満:3万円分/50万円以上100万円未満:5万円分/100万円以上:10万円分(いずれも地域振興券)
対象工事の例 屋根・外壁・内壁・床などの内外装工事、浴室・台所・トイレの改修、床や畳の張替え、間取り変更
対象者 町内に住宅を所有する住民、または町内の店舗・工場・事業所・事務所の所有者
施工業者 登録施工業者による工事であること
回数 同一住宅・同一店舗等で期間内1回限り
窓口 小山町商工会(静岡県駿東郡小山町小山96-2/Tel:0550-76-4236)

事業用建物も対象という点が大きい

この制度で見逃せないのは、店舗・工場・事業所・事務所の所有者も対象に含まれていることです。町の他の助成が「住宅」に軸足を置いているのに対し、商工会の制度は事業用建物の外装改修にも届く。ビルや事業所をお持ちのオーナーさまにとっては、数少ない入口です。

また、屋根・外壁の工事が明示的に対象例に挙がっている点も重要です。金額としては最大10万円分の振興券ですが、外壁塗装や屋根改修は工事規模が大きくなりやすい。100万円以上の工事なら一律10万円分ですから、大規模修繕とセットで申請しない手はない、というのが率直な感想です。

ただし、この制度も必ず工事着工前の申請が条件です。そして12月31日完了という期限がある。9月に動き始めるなら、10月中に契約、11月着工、12月完了という逆算になります。屋根や外壁の工事は天候に左右されますから、冬季の冷え込みが早い小山町では、11月着工はかなりぎりぎりです。年内完了を狙うなら、この記事を読んだ週のうちに商工会へ電話をしてください。

なお、金額区分や条件は年度ごとに見直される可能性があります。最新の詳細は必ず商工会にご確認ください。

空き家を持っているなら:空き家活用・流動化促進助成金

相続などで町内の空き家を保有されている方には、小山町空き家活用・流動化促進助成金があります。定住を目的として空き家を取得し、1年以内に改修工事または解体工事に着手する方が対象で、給排水設備・電気設備・ガス設備・換気設備の改修工事、住宅のエネルギー効率や静穏性・防犯性を高める改修工事、空き家を完全に除却する工事などが対象に含まれています(出典:小山町空き家活用・流動化促進助成金交付要綱)。

賃貸に回すのか、売却するのか、解体して土地として活かすのか。判断の前に、建物としてあと何年もつのかを把握しておく必要があります。外壁と屋根と防水の状態が分かれば、「あと10年もたせる費用」と「解体費用」を並べて比較できる。ここは私どもがお手伝いできる領域です。

分譲マンションの管理計画認定:小山町の窓口は「静岡県」

ここからは分譲マンションの管理組合さま向けの話です。

Q. 小山町のマンションで管理計画認定を取りたい。申請先はどこですか?
A. 町域のマンションについては、静岡県くらし・環境部建築住宅局住まいづくり課が認定主体です。町役場ではありません(出典:静岡県 マンションの管理、2026年1月5日更新)。

マンション管理計画認定制度は、管理組合が作成する管理計画のうち一定の基準を満たすものを認定する制度です。市の区域は各市が、町の区域は県が担当します。小山町は「町」ですので、県が窓口になります。

認定申請手数料は令和8年4月1日に改定されている

ここは数字が動いていますので、正確に押さえてください。静岡県は令和8年4月1日に認定申請手数料を改定しました。

事前確認適合証 長期修繕計画数 令和8年3月31日まで 令和8年4月1日から
有り 1 3,800円 4,000円
有り 2以上 3,800円+1,700円×(計画数−1) 4,000円+1,800円×(計画数−1)
無し 1 26,900円 28,100円
無し 2以上 26,900円+15,500円×(計画数−1) 28,100円+16,200円×(計画数−1)

(出典:静岡県 マンションの管理)

事前確認適合証とは、マンションの管理の適正化の推進に関する法律第91条に規定するセンター(公益財団法人マンション管理センター)が交付する、同法第5条の14各号の基準に適合することを証する書面です。

表を見ていただければ一目瞭然ですが、事前確認適合証があるかないかで、手数料が7倍違います(4,000円対28,100円)。差額は24,100円。手間を惜しまず、まず公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを使い、事前確認適合証を取ってから県に申請する。これが定石です。

申請ルートは2本

ルート 内容 事前確認適合証
【1】公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続き支援サービスを利用 管理状況評価サービスの併用可(マンション管理業協会のマンション管理適正評価制度、日本マンション管理士会連合会のマンション適正化診断サービス) 有り
【2】県住まいづくり課へ直接申請 県へ直接 無し

なお、令和7年5月30日公布の法改正によりマンション管理適正化支援法人の登録制度が創設され、町の区域は県が登録主体となりましたが、静岡県は現段階では登録制度を実施していません。県のページに明記されています。この点も、県のマンション行政の現在地として押さえておいてください。

静岡県のマンション管理士無料派遣:受付10件、締切は令和8年11月14日

小山町の管理組合さまが今年度もっとも使いやすい県の制度が、これです。

静岡県は令和8年度マンション管理組合活動活性化支援事業として、マンション管理士の無料派遣を実施しています。管理に当たって困っている事項について、県内のマンション管理組合に専門家を派遣し、業務補助や助言を行うものです。

項目 内容
受付件数 10件(上限に達した時点で申込終了)
派遣回数 各管理組合2回まで
申込期限 令和8年11月14日(土曜)まで(定数に達し次第、早期終了)
派遣期限 令和9年1月31日(日曜)まで
申込先 一般社団法人静岡県マンション管理士会(メールまたはファクス)
費用 無料

(出典:静岡県 マンションの管理)

受付が県全体で10件という点を、どうか軽く見ないでください。静岡県内には多数の分譲マンションがあり、その中の10件です。11月14日という期限より前に埋まる可能性が十分にあります。修繕積立金の不足、長期修繕計画の見直し、管理規約の改正、管理会社との委託契約の見直し——こうしたテーマを抱えている理事会なら、9月中に申し込むのが現実的な判断です。

県は令和8年度、マンション管理セミナーも県内各地で開催しています。9月12日(土)に三島市役所、10月に熱海市・沼津市、11月に静岡市での開催が予定されています(出典:静岡県 マンションの管理)。小山町からなら三島・沼津の会場が現実的な距離です。理事会のメンバーで一度出てみると、他の管理組合が何に困っているかが分かります。

国の制度:窓の断熱と、長寿命化のモデル事業

町・県の次は国です。2026年度に共用部・専有部の改修で使える国の主な制度を挙げます。

先進的窓リノベ2026事業

住宅の窓・ドアを断熱性能の高いものに改修する費用を補助する事業で、一戸あたり最大100万円が交付されます。対象は既存の戸建住宅・集合住宅で、新築は対象外。住宅所有者(個人・法人)、賃貸住宅オーナー、マンション管理組合などが申請対象になり得ます(出典:環境省 断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業(先進的窓リノベ2026事業)、住宅省エネ2026キャンペーン公式)。

手続きは登録された支援事業者が代行する仕組みです。冬の冷え込みが厳しい小山町では、窓の断熱は入居者の満足度に直結します。賃貸オーナーさまなら、空室改修(町の助成金)+窓の断熱(国の補助)を同じ工事で組める可能性があります。

マンションストック長寿命化等モデル事業

国土交通省が、マンションの長寿命化や再生に関する先導的な取組を支援する事業です。令和8年度は複数回の公募が行われており、第2回が2026年6月22日〜26日、第3回が2026年9月14日〜18日の日程で予定されています(出典:国土交通省 マンション総合対策モデル事業)。

補助額は事業計画・要望額・評価委員会の評価を総合的に勘案して個別に決定されるため、採択されても要望額が満額出るとは限りません。応募のハードルは決して低くありませんが、公募期間が5営業日程度と短いのが最大の注意点です。第3回を狙うなら、この記事が公開される時点で準備は最終盤に入っている必要があります。

住宅金融支援機構の融資・積立

補助金ではありませんが、管理組合の資金計画では外せません。

  • マンション共用部分リフォーム融資:管理組合が共用部改修のために借り入れる融資(出典:住宅金融支援機構)
  • マンションすまい・る債:修繕積立金を計画的に積み立てるための債券(出典:住宅金融支援機構)
  • マンションライフサイクルシミュレーション:長期修繕計画の資金繰りを試算できるツール(出典:住宅金融支援機構)

私はいつも理事長さまに、「補助金を探す前に、まずシミュレーションを回してください」とお伝えしています。積立金が足りないという事実が数字で見えて初めて、理事会は動きます。補助金は、その動き始めた計画に後から乗せるものです。

富士山東麓という立地が、修繕周期に効いてくる

制度の話から、少し建物そのものの話に戻します。

小山町は富士山の東麓に位置し、冬季の冷え込みが厳しい地域です。建物の劣化という観点から見ると、平野部・沿岸部の物件と比べて次の点に注意が必要だと私は考えています。

気象要因 建物への影響 現場での見方
冬季の氷点下と日中の気温上昇 外壁のひび割れに入った水が凍結・膨張し、融解する繰り返しで、モルタルやタイルの浮き・塗膜の剥離が進みやすい(凍害) 北面・日陰面の下部、笠木まわり、バルコニー床の立ち上がりを重点的に見る
積雪と融雪水 屋上・バルコニーの排水経路に負荷。ドレン詰まりからの溢水 冬前のドレン清掃を年間管理項目に入れる
富士山の降灰リスク 排水口・雨樋への堆積、外装への付着 大雨のあとに屋上を見る習慣をつける
強い紫外線と寒暖差 シーリング材の硬化・追従性低下が早まる 打診とあわせてシーリングの触診をする

大事なのは、「築12年だから大規模修繕」という一般論を、そのまま持ち込まないことです。長期修繕計画の周期は目安であって、実際に何年もつかは立地と施工品質で変わります。まず現況を診てから、周期を修正する。順番はこちらが先です。

小山町の物件で私が気にするのは、下地の水分です。凍害が進んでいる建物に、下地を乾かさないまま新しい塗膜をかぶせると、内側の水分が逃げ場を失って数年で膨れます。補助金や振興券の期限に追われて冬場に無理な工程を組むと、この失敗が起きやすい。期限に工事を合わせるのではなく、工事に合う期限の制度を選ぶ。遠回りに見えて、これが一番安く上がります。

【当社サービスのご案内】工法の選択肢で、足場費そのものを削る

ここからは自社サービスのご案内です。制度の解説とは分けてお読みください。

大規模修繕の見積書を開いて、多くの理事長さまが驚かれるのが仮設足場の金額です。建物を丸ごと囲う足場は、それ自体は何も直していないのに、総額の中で決して小さくない比率を占めます。

私ども株式会社明誠は、次の3つの工法から建物にとって最適なものをご提案しています。

工法 概要 向いているケース
通常足場工法 従来型の仮設足場を架けて施工 全面的な改修、複雑な形状、施工範囲が広い建物
ロープアクセス工法(無足場工法) 産業用ロープで作業員が降下して施工。足場を架けない 高層部、足場の架設が難しい立地、部分補修、居住者の生活影響を抑えたいケース
ハイブリッド工法 足場とロープアクセスを部位ごとに使い分ける 大規模・複雑な建物で、総合的なコスト最適化が必要なケース

ロープアクセス工法の技術情報や安全基準、施工事例については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。工法そのものを詳しく知りたい方は、そちらもご参照ください。

小山町の物件で、ロープアクセスが効く場面

1つ目は、部分補修です。 「北面のタイルの一部が浮いている」「特定の住戸の窓まわりから漏水している」という場合、建物を丸ごと囲う必要はありません。ロープアクセスなら、必要な箇所にだけ人を降ろせます。足場を架けずに済めば、その分の費用と工期がそのまま浮きます。

2つ目は、調査です。 補助金の申請にも、修繕の意思決定にも、まず「今どうなっているか」の情報が要ります。打診調査を足場なしで行えれば、調査のためだけに足場代を払う必要がなくなります。ドローン点検と組み合わせれば、屋上や高所の状況も先に把握できます。

3つ目は、冬季です。 小山町のように冬の条件が厳しい地域では、工期の圧縮がそのまま品質に効きます。足場の架設・解体に要する日数がなくなれば、施工に使える好天日を増やせます。

私が20年やってきて思うのは、工法は目的ではなく手段だということです。足場が必要な建物には足場を架けます。ロープアクセスが不利な現場では勧めません。3つの選択肢を持っているからこそ、「この建物にはこれ」と正直に言える。それが私どもの立ち位置です。

明誠は日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板などの専門職が加盟しています。各分野の職人が直接施工に入る体制のため、中間コストを抑えながら品質を確保できます。工法の全体像は明誠の3工法・強みのご紹介、大規模修繕の進め方は大規模修繕工事のご紹介、管理組合さま向けのサービスはマンション管理組合の皆さまへにまとめています。

補助金を確実に通すための実務手順

制度は分かった、では何から動くか。小山町の場合、順番はこうなります。

ステップ1:現況を把握する(費用ゼロで始められる部分がある)

  1. 木造住宅・木造アパートなら、わが家の専門家診断事業(無料)を都市整備課に申し込む
  2. 分譲マンションなら、住宅金融支援機構のマンションライフサイクルシミュレーションで資金繰りを試算する
  3. ブロック塀があるなら、都市整備課に事前現地調査を申し込む(塀の種類・延長・高さ・厚さを測っておく)

ステップ2:使える制度を1本に絞らない

建物のタイプ 主に見るべき制度
分譲マンション(RC造) 管理計画認定制度(県)/マンション管理士無料派遣(県)/先進的窓リノベ2026(国)/マンションストック長寿命化等モデル事業(国)/機構の融資・すまい・る債
賃貸アパート(新耐震・昭和56年6月1日以後着工) 小山町民間賃貸住宅リフォーム助成金/小山快適リフォーム助成事業(商工会)/先進的窓リノベ2026
木造アパート・長屋(昭和56年5月31日以前) 木造住宅耐震補強助成事業(計画工事一体型)/わが家の専門家診断事業/小山快適リフォーム助成事業
ビル・店舗・事業所 小山快適リフォーム助成事業(商工会)
空き家 空き家活用・流動化促進助成金/小山快適リフォーム助成事業

ステップ3:締切から逆算する

2026年度で日付がはっきりしている締切を並べます。

期限 内容
2026年9月14日〜18日 マンションストック長寿命化等モデル事業 令和8年度 第3回公募(予定)
2026年11月14日(土) 静岡県 マンション管理士無料派遣 申込期限(受付10件、定数到達で早期終了)
2026年12月31日 小山快適リフォーム助成事業 工事完了期限
2027年1月31日(日) 静岡県 マンション管理士派遣の実施期限

ステップ4:着工前申請を、全制度で徹底する

小山町の制度は、木造住宅耐震補強助成事業も、商工会のリフォーム助成も、いずれも工事着工前(契約前)の申請が条件です。ここを飛ばすと、どれだけ良い工事をしても補助は出ません。

私はいつも、「見積りは何社取っても構いません。ただし、ハンコを押す前に一度、町か商工会に電話を入れてください」とお伝えしています。電話一本の順番で、数十万円が動きます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 小山町に、分譲マンションの大規模修繕そのものを補助する町独自の制度はありますか?
A. 2026年9月時点で、町の公開情報の中に分譲マンションの共用部大規模修繕を直接補助する単独メニューは見当たりません。管理組合が使える公的支援は、静岡県の管理計画認定制度・マンション管理士無料派遣と、国の先進的窓リノベ2026事業・マンションストック長寿命化等モデル事業、住宅金融支援機構の融資・すまい・る債が中心になります。

Q2. 賃貸アパートのオーナーです。町の助成金はいくらもらえますか?
A. 小山町民間賃貸住宅リフォーム助成金なら、改修工事費の3分の1で、アパートは1住戸あたり最大20万円、一戸建ての貸家は1戸あたり最大40万円です。対象は昭和56年6月1日以後に着工した独立住戸(水回り・駐車場付)で、現に空室、または賃借人の退去日が決定しているものに限られます(出典:小山町)。

Q3. 木造アパートでも耐震補強の補助は使えますか?
A. 使える可能性があります。小山町木造住宅耐震補強助成事業(計画工事一体型)は、一戸建てのほか長屋や共同住宅も対象としています。対象は昭和56年5月31日以前に建築された木造在来軸組工法の住宅で、補助額は耐震補強工事費の10分の8と100万円のいずれか少ない額。高齢者等割増で最大20万円が加算されます(出典:小山町)。

Q4. マンション管理計画の認定は、小山町役場に申請するのですか?
A. いいえ。町の区域は静岡県が認定主体です。県くらし・環境部建築住宅局住まいづくり課が窓口になります。認定申請手数料は令和8年4月1日に改定され、事前確認適合証があり長期修繕計画1つの場合で4,000円、適合証がない場合は28,100円です(出典:静岡県)。

Q5. 補助金の申請は、工事を頼む会社に任せてもいいですか?
A. 書類の作成補助を施工会社が担うことはありますが、申請の名義と責任は所有者・管理組合にあります。とくに小山町の制度は着工前申請が条件ですので、「業者に任せていたら申請が間に合わなかった」という事態を避けるため、申請状況はご自身でも確認してください。工事契約前の段階で、町の担当課に一度直接お問い合わせいただくのが確実です。

この記事のポイントまとめ

  • 小山町に分譲マンション共用部の直接補助はないが、賃貸オーナー向けの助成が手厚い
  • 民間賃貸住宅リフォーム助成金は1/3補助、アパート1住戸20万円・貸家1戸40万円が上限
  • 木造の長屋・共同住宅も耐震補強助成の対象。工事費の8/10、上限100万円+割増20万円
  • 管理計画認定の窓口は町ではなく静岡県。手数料は令和8年4月1日に改定済み
  • 県のマンション管理士無料派遣は受付10件、締切は令和8年11月14日で早期終了もある

出典・参考資料

最後に

制度の数だけ並べると、複雑に見えるかもしれません。ですが、小山町の場合、やることはとてもはっきりしています。

木造の古い建物を持っているなら、まず無料の専門家診断。賃貸の空室があるなら、おやまで暮らそう課へ電話。外装工事を年内にやるなら、商工会へ電話。分譲マンションなら、県のマンション管理士派遣を11月14日までに申し込む。

このうち、費用がかかるものは一つもありません。全部、電話一本から始まります。

正直に申し上げます。私どもは工事会社ですから、最後は工事のご相談をいただけたら嬉しい。ですが、その前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。「うちの建物はどの制度に当てはまるのか」「あと何年もつのか」——そうしたご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会や理事会にかける前の整理からご一緒します。

ご相談・現地調査のお申し込みはお問合せフォームから承っています。マンション・ビルのオーナーさま向けのご案内はマンション・ビルオーナーの皆さまへをご覧ください。

次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション・ビル・ホテルの大規模修繕/ロープアクセス工法(無足場工法)/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円および静岡県内でマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がける改修会社。通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3工法から、建物にとって最適な方法をご提案できる、日本でも数少ない会社です。ロープアクセス工事としては日本初となるフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板の各専門職が加盟しています。

最終更新:2026年9月3日

※本記事に記載した制度の内容・金額・期日は、掲載時点で各機関が公開している情報に基づいています。制度は年度途中に変更されたり、予算枠に達した時点で受付を終了したりすることがあります。申請にあたっては、必ず各窓口の最新の公式情報をご確認ください。本記事は法的助言を目的とするものではありません。

成田市の賃貸マンション・アパート補助金|オーナー向け2026年版

成田市で賃貸マンション・アパート・戸建賃貸・テナントビルをお持ちのオーナーさまから、この夏いちばん多くいただいたご相談は「うちの物件でも市の補助金は使えるのか」というものでした。

結論から申し上げます。成田市の住宅系補助金は、制度によって「自分が住んでいること」を求めるものと、「所有していること」だけで足りるものにはっきり分かれています。 ここを取り違えると、使えるはずの補助金を取り逃がし、使えない補助金の書類を集めて時間だけを失います。

この記事では、2026年度(令和8年度)に成田市の賃貸物件オーナーが実際に使える制度を、市・県・国の一次情報にあたって整理しました。あわせて、NOI(純営業収益)と入居率、雑収入の課税、資本的支出と修繕費の線引き、そして出口(売却)で効いてくる修繕の順序まで、収益不動産の判断軸で解説します。

なお本記事は2026年9月2日時点の公表情報にもとづいています。予算枠のある制度は年度途中で受付終了となることがあるため、実際の申請前には必ず担当課へご確認ください。


まず結論:成田市の賃貸オーナーが今日動くべきは、この4本

賃貸物件を所有するオーナーの立場で成田市の制度を洗い出すと、優先順位は次のようになります。

順位 制度名 補助率・上限 オーナーの使いやすさ
1 成田市 危険コンクリートブロック塀等除却工事費助成 経費の1/2以内・上限10万円 ◎ 所有していれば申請可。居住要件なし
2 成田市 住宅耐震改修助成 工事費の4/5以内・上限115万円 ○ 一戸建て・併用住宅の貸家なら対象。共同住宅は対象外
3 国 賃貸集合給湯省エネ2026事業 1台5万円/7万円(加算で最大8万円/10万円) ◎ 賃貸集合住宅オーナーが本来の対象。ただし申請は登録事業者経由
4 国 先進的窓リノベ2026事業 最大100万円/戸 ○ 賃貸住宅の所有者も対象。空室期間との段取りが鍵

そして、多くのオーナーが誤解しているのが5番目です。

成田市の「住宅用省エネルギー設備設置費補助金」は、原則としてオーナーの投資用物件には使えません。

理由は後述しますが、対象者が「自分が住む市内の住宅に設備を設置した個人」で、かつ「その所在地に住民登録していること」が要件になっているためです(成田市 環境計画課)。太陽光や蓄電池を賃貸物件に載せる計画で市の補助を織り込んでいた方は、収支計画の見直しが必要です。

以下、それぞれを実務レベルで掘り下げます。


成田市の賃貸市場を「NOIの視点」で見ると何が見えるか

制度の話に入る前に、成田市という市場の性格を押さえておきます。ここを外すと、補助金を取れても入居率が上がらない、という本末転倒が起こります。

空港が需要をつくり、空港が需要を変える街

成田市の賃貸需要は、成田国際空港とその関連産業に強く紐づいています。航空会社、グランドハンドリング、貨物・物流、ホテル、税関・入管などの公的機関——これらに勤める単身者・世帯が、市内の賃貸ストックの主要な借り手です。

この構造は、2029年度に向けて大きく動きます。成田国際空港の機能強化事業では、C滑走路の新設とB滑走路の延伸が進行中で、2026年6月時点の全体用地確保率は約90.4%、B滑走路延伸については99.5%に達し、2029年度内の先行供用を目指すと報じられています(sky-budget)。

オーナーにとっての意味は明快です。工事期間中は建設・物流系の中期滞在需要が積み上がり、供用後は空港関連の常勤雇用が増える可能性が高い。 つまり、成田市の賃貸は「今後5年の需要が読みやすい、数少ないエリア」のひとつです。

ただし、需要が読めることと、あなたの物件が選ばれることは別の話です。需要が増えるほど、新築・築浅の供給も増えます。築20年、30年の物件が競争に残るには、外観・水回り・断熱・設備という4つの軸で「見劣りしない」状態をつくる必要があります。 補助金は、そのための資金を薄める道具として使うべきものです。

NOIで考えると、補助金は「利回りの底上げ」ではなく「取得原価の圧縮」

賃貸経営の指標であるNOI(Net Operating Income=賃料収入から運営費用を差し引いた純営業収益)で考えると、補助金の効き方が見えてきます。

NOI利回り=NOI ÷ 投資額(取得価格+資本的支出)

補助金は分母である投資額を直接圧縮します。たとえば200万円の工事に対して100万円の補助が出れば、投じた自己資金は100万円。同じ賃料上昇効果でも、NOI利回りへの寄与は単純に2倍になります。

さらに重要なのは、入居率(稼働率)への効き方です。年間賃料480万円(月40万円)の8戸アパートで、稼働率が92%から96%に改善すれば、年間収入は約19万円増えます。仮に還元利回り6%で評価するなら、物件価値は約320万円押し上がる計算です。「補助金で工事費が安くなった」以上に、「工事によって空室期間が短くなった」効果のほうが、資産価値には大きく効くということです。

この視点を持ったうえで、成田市の制度を見ていきます。


【最優先・上限10万円】危険コンクリートブロック塀等除却工事費助成

金額は大きくありません。しかし、成田市のオーナーが最初に検討すべきはこれです。

制度の概要

成田市は、ブロック塀等の倒壊から市民の生命・身体を守り、避難経路を確保するため、危険なブロック塀等の除却費用の一部を助成しています(成田市 建築住宅課)。

補助対象となるブロック塀等(次のいずれにも該当し、地震により倒壊するおそれがあると市長が認めたもの)

  1. 補強コンクリートブロック造または組積造(コンクリートブロック造、石造、レンガ造など)による塀および門柱(基礎を含む)
  2. 道路等に面して設置されているもの

補助対象者:市内に危険なブロック塀等を所有し、除却工事を市内業者に行わせる方

補助金の額:除却に要する経費の1/2以内の額で、上限10万円

なぜオーナーが最優先なのか——3つの理由

第一に、居住要件がありません。 対象者は「市内に危険なブロック塀等を所有し」と定められており、その物件に自分が住んでいることは求められていません。アパートの敷地境界にある古いブロック塀、駐車場を囲う塀、貸家の門柱——いずれも所有者であるオーナーが申請者になれます。この点で、後述する省エネ設備補助金とは決定的に性格が異なります。

第二に、放置したときのリスクが金額に見合いません。 ブロック塀の倒壊で通行人が負傷した場合、工作物責任(民法717条)により所有者が責任を問われます。工作物責任は、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたときは所有者が負う構造で、所有者の責任は原則として無過失責任とされています。「管理会社に任せていた」は免責理由になりません。10万円の補助を取りにいく手間と、この賠償リスクを天秤にかける話ではないのです。

第三に、成田市には該当する塀が実際に多い。 市街地には昭和期に建てられた木造貸家・アパートが相応に残っており、その多くが道路に面したブロック塀を持っています。建築基準法施行令に定める高さ・厚さ・控壁・鉄筋の基準を満たさない塀は珍しくありません。まずはご自分の物件の塀が、次の項目に当てはまらないか確認してください。

現地で確認できる危険サイン

  • 高さが2.2mを超えている
  • 塀の厚さが10cm未満(高さ2m超なら15cm未満)
  • 控壁(支えの壁)が3.4m以下の間隔で入っていない
  • 基礎(コンクリートの根元)が見当たらない
  • ひび割れ、傾き、白い析出物(エフロレッセンス)、鉄筋の露出がある
  • 建てられた年代がわからない、増積みした形跡がある

ひとつでも該当するなら、まず成田市役所5階の建築住宅課(0476-20-1564)にご相談ください。

オーナー視点の実務ポイント

「市内業者に行わせること」が要件です。 市外の解体業者に相見積もりを取って安いほうへ、という判断をすると補助対象から外れます。市内業者の見積もりが5万円高くても、10万円の補助が出るなら手残りは有利です。相見積もりの母集団を「市内業者に限る」ところから始めてください。

塀を撤去した後の「見え方」まで設計する。 撤去だけで終えると、敷地境界がむき出しになり、かえって物件の印象が悪くなることがあります。フェンス設置や生垣への転換は補助対象外の可能性が高いため自己負担になりますが、外構は内見時の第一印象を決める要素です。撤去(補助あり)と新設(自己負担)をセットで見積もり、トータルの投資対効果で判断するのが実務的です。

外壁塗装・防水と同じ工期にまとめる。 足場や重機の搬入、廃材処理を共通化できるため、単独で発注するより総額が下がるケースが多くあります。大規模修繕の計画があるなら、その中に塀の除却を組み込んでください。


【最大115万円】住宅耐震改修助成は「貸家」でも申請できる

成田市の耐震改修助成は、補助率と上限額の両面で全国的に見ても手厚い制度です。そして、オーナーが見落としがちなポイントがここにあります。

制度の概要

市は、耐震診断で耐震性が低いと判定され、市に登録された住宅耐震診断士に設計・工事監理を依頼して耐震改修工事を行う場合に、費用の一部を助成しています(成田市 建築住宅課)。

補助金の額:補助の対象となる工事費の5分の4以内の額(1,000円未満切り捨て、上限115万円)
※工事費には設計費および工事監理費を含みます
※二段階耐震改修工事の場合は、段階ごとに57.5万円が限度

補助の対象者

  • 耐震改修工事を行おうとする住宅を市内に所有している方
  • 市税の滞納がない方

「所有していること」——ここが決定的です

市が公表している「住宅耐震診断費・耐震改修費 補助事業のご案内」(PDF)に、申請者および住宅の要件が明記されています。

  • 住宅を所有していること
  • 市税を滞納していないこと
  • 非木造住宅の場合は、昭和56年5月31日以前に工事に着手または建築された住宅であること
  • 一戸建てまたは併用住宅(住居部分が延べ面積の1/2以上)が対象
  • 建築基準法等に違反している住宅は対象外

つまり、「自分が住んでいること」も「入居者がいること」も要件になっていません。 成田市内に一戸建ての貸家をお持ちで、それが旧耐震基準(あるいは2000年5月以前の木造)であれば、オーナーとして申請できる可能性があります。空室のまま持て余している築古戸建てを、耐震改修して貸し出す——という筋道が制度上つながるのです。

一方で、アパート・マンションといった共同住宅(長屋・共同住宅)は対象外です。ここは正確に押さえてください。8戸のアパートを耐震補強したい、という相談には、この制度は使えません。対象は一戸建てと、住居部分が延べ面積の1/2以上を占める併用住宅(1階が店舗で2階が住居、といった建物)です。

補助率5分の4という数字の意味

工事費150万円の耐震改修を行った場合、5分の4は120万円ですが上限が115万円なので、自己負担は35万円。工事費115万円までなら、自己負担は5分の1の23万円で済みます。

さらに成田市には代理受領制度があります。補助金の受領を、設計・工事監理・工事を行った業者に委任できる仕組みです。これを使うと、オーナーは工事費と補助金の差額分だけを用意すればよく、満額を立て替えてから数か月後に還付を待つ、というキャッシュフローの負担がなくなります。金額の大きい耐震改修では、この差は実務上かなり大きい。申請時に必ず業者と相談してください。

手続きの流れと「今から間に合うか」

制度の運用上、次の順序が絶対条件です。

  1. まず耐震診断を受ける(診断も助成対象:診断費用の3分の2以内、上限8万円)
  2. 診断結果で木造は上部構造評点1.0未満、非木造はIs値0.6未満またはq値1.0未満と判定される
  3. 交付申請 → 交付決定 を受ける
  4. 契約 → 補強設計 → 設計終了報告 → 工事の実施 → 実績報告

交付決定を受ける前に工事へ着手した場合、補助対象になりません。 ここは例外がないと考えてください。

スケジュール面では、市は次のように案内しています。

  • 耐震改修:申請の受付期間は4月1日から10月末までが目安、補助金申請年度の1月末までに対象工事を終える必要がある
  • 耐震診断:申請の受付期間は4月1日から12月末までが目安、1月末までに診断を終える必要がある
  • 交付申請の審査に1か月ほど、実績報告の審査にも1か月ほどかかる

2026年9月の時点で「診断も受けていない」状態からのスタートは、正直に申し上げて今年度中の改修工事完了は厳しい日程です。現実的な打ち手は、「今年度は耐震診断まで済ませ、来年度(令和9年度)に改修工事を申請する」という二段構えです。診断助成の受付は12月末まで(工事を伴わないぶん日程に余裕があります)。まず診断を取り、上部構造評点という客観的な数字を手にしておけば、来年度の予算枠が開いた4月に一番手で申請できます。

耐震改修は「税制」とセットで効いてくる

市の案内にも記載のとおり、基準に適合する耐震改修を行った場合、所得税額の控除および固定資産税の減額措置を受けられることがあります(所得税:成田税務署 0476-28-5151/固定資産税:成田市役所資産税課 0476-20-1514)。

賃貸物件の場合、居住用財産を前提とした所得税の特別控除は使えないケースが多い一方、固定資産税の減額措置や、工事費の減価償却を通じた損金算入が効いてきます。オーナーにとっては「所得税控除」より「経費計上」の設計のほうが実利が大きい。詳しくは後段の税務セクションで整理します。


【重要な落とし穴】成田市の省エネ設備補助金は、オーナーの投資用物件には原則使えません

ここは、この記事でもっともお伝えしたい部分です。

成田市の「住宅用省エネルギー設備設置費補助金」は、太陽光発電、エネファーム、蓄電池、HEMS、太陽熱、地中熱、断熱窓、電気自動車、V2H充放電設備、集合住宅用充電設備と、対象設備が非常に幅広い制度です(成田市 環境計画課)。太陽光と蓄電池を賃貸物件に載せて共用部電気代を下げたい、EV充電器を設置して差別化したい——そう考えるオーナーにとって、一見すると理想的な制度に見えます。

しかし、対象者の定義がこうなっています。

自分が住む市内の住宅(店舗等と併用可)に未使用品の住宅用省エネルギー設備を設置した個人、または未使用品の住宅用省エネルギー設備が設置された市内の住宅を購入した個人で、次のいずれにも当てはまる方
– 上記の所在地に住民登録していること
– 市税を滞納していないこと
– 住宅を自分が所有していない場合(賃貸、他の家族名義など)は、所有者に設置の承諾を受けていること

読み替えると、こういうことです。

  • 申請できるのは個人であり、法人は対象外
  • 自分が住み、住民登録している住宅であることが要件
  • したがって、自分が住んでいない投資用の賃貸マンション・アパート・貸家に設置しても対象外
  • 逆に、入居者(賃借人)が自分の住む部屋に設置し、オーナーの承諾を得た場合は、その入居者が申請できる

つまりこの制度は、構造上「オーナー向け」ではなく「居住者向け」です。集合住宅用充電設備が対象設備に入っているため誤解を招きやすいのですが、これも「自分が住む住宅」という大枠の要件がかかります。 アパート経営者が入居者向けにEV充電設備を設置する、という使い方は想定されていません。

では、オーナーはどうすべきか

第一に、自宅と収益物件を分けて考えること。 ご自身が成田市内にお住まいで、その自宅(併用住宅を含む)に設備を入れるなら、この補助金は使えます。1階が自宅、2階が賃貸というアパート兼自宅(店舗等と併用可)のようなケースでは、要件を満たす可能性があります。窓口である環境計画課(0476-20-1533)に、建物の使用形態を具体的に伝えて確認してください。

第二に、国の制度に切り替えること。 国の住宅省エネ2026キャンペーンには、賃貸物件のオーナーが本来の対象者として設計された事業があります。次のセクションで詳述します。

第三に、入居者向けの制度として案内する発想を持つこと。 断熱窓の改修などは、入居者が申請主体になれます(オーナーの承諾書が必要)。入居者の光熱費が下がれば退去率は下がります。「オーナーが使えないから終わり」ではなく、「入居者が使える制度としてお知らせする」という運用は、退去抑止のコミュニケーションとして機能します。

なお、申請期間は電気自動車・プラグインハイブリッド自動車・V2H充放電設備・集合住宅用充電設備が令和9年3月10日まで(必着)、それ以外の設備が令和9年3月末までとされています。いずれも予算の範囲内での実施です。


【国・オーナーが主役】賃貸集合給湯省エネ2026事業——1台5万〜10万円

成田市の制度でカバーできない部分を埋めるのが、国の事業です。なかでも賃貸集合給湯省エネ2026事業は、補助対象者が「賃貸集合住宅のオーナー等」と明記された、数少ないオーナー向け補助金です(経済産業省 資源エネルギー庁/公式サイト)。

制度の骨格

補助対象者:賃貸集合住宅のオーナー等で、給湯器の交換工事の発注者。既存賃貸集合住宅のうち一部(賃貸住戸を2戸以上)を所有する区分所有者も含みます。

対象事業:既存賃貸集合住宅の住戸について、従来型給湯器を、補助対象である小型の省エネ型給湯器(エコジョーズ/エコフィール)に交換する事業。

補助額:追い焚きなし5万円/台、追い焚きあり7万円/台。一定の排水工事を伴う場合、最大8万円/台・10万円/台まで加算。

予算の消化状況——2026年9月2日時点で38%

公式サイトが日次で公表している予算に対する補助金申請額の割合は、2026年9月2日午前0時時点で38%です。予算上限(100%)に達し次第、交付申請の受付を終了します。

38%という数字をどう読むか。年度の折り返しを過ぎて4割弱ですから、「まだ余裕はあるが、年度末までは確実にもたない可能性がある」水準です。給湯器は突然壊れます。壊れてから慌てて交換すると、事業者登録の確認や予約の手続きが間に合わず、補助を取り逃がします。築15年を超えた給湯器を抱えているなら、故障前の計画交換に切り替えるべきタイミングです。

実務上の最重要ポイント:オーナーは直接申請できません

公式サイトに明記されています。

補助金の申請手続きや受け取りと賃貸集合住宅のオーナー等への還元は、「賃貸集合給湯省エネ事業者」が行います。補助対象者である賃貸集合住宅のオーナー等が直接申請をすることはできません。

したがって、オーナーがやるべきことは次の3点に集約されます。

  1. 登録事業者かどうかを最初に確認する。 公式サイトの「賃貸集合給湯省エネ事業者の検索」で、発注予定の業者が登録済みかを確かめます。登録のない事業者との契約は補助対象になりません。いつもの給湯器屋さんが未登録だった、というのは実際によくある話です。
  2. 補助金が自分に還元される契約になっているかを確認する。 補助金を受け取るのは事業者です。見積書・契約書の段階で「補助金額を工事代金から差し引く」のか「工事後に還元する」のかを文書で確認してください。ここを曖昧にしたまま進めて、補助分が事業者側に留まったというトラブルが起きています。
  3. 対象製品かを型番で確認する。 事務局に登録された製品を使った工事のみが対象です。「エコジョーズなら何でもいい」ではありません。

なお、国内に所有または管理する既存賃貸集合住宅の住戸数が200戸以上である事業者(工事発注者)が、補助金の手続き等を自ら行うことを希望する場合は、事務局への個別相談窓口が用意されています。相応の規模でお持ちのオーナー・管理会社は検討の余地があります。

給湯器交換が入居率に効く理由

給湯器は、入居者の生活満足度に直結する設備です。冬場に湯温が安定しない、追い焚きができない、着火が遅い——こうした不満は、更新時期の判断に静かに効いてきます。

エコジョーズへの交換は、入居者のガス代を下げます。「光熱費が安い部屋」は、家賃を下げずに実質的な負担を軽くする、数少ない差別化要素です。募集図面に「エコジョーズ(省エネ給湯器)設置」と書けることの効果は、成田市のように単身・世帯の入れ替わりが一定量ある市場では小さくありません。


【国】先進的窓リノベ2026事業——賃貸住宅も対象、最大100万円/戸

窓の断熱改修を支援する国の事業です。補助対象者は建物を所有する個人・法人・地方公共団体等で、賃貸住宅の所有者も対象とされています(環境省・国土交通省 先進的窓リノベ2026事業)。成田市の省エネ設備補助金が使えないオーナーにとって、断熱まわりの本命がこちらです。

補助額:最大100万円/戸
工事期間:2025年11月28日以降に対象工事に着手し、2026年12月31日までに全工事完了
交付申請期間:2026年3月下旬〜遅くとも2026年12月31日まで(予算上限に達し次第終了)

賃貸物件で窓改修を行う際の実務的な壁は、居室内での工事になるため、入居中は施工しづらいことです。したがって現実的な進め方はこうなります。

  • 退去が出たタイミングで、原状回復工事と同時に窓を改修する
  • 空室が複数出ている物件から着手する
  • 内窓(インナーサッシ)方式なら1戸あたり半日〜1日で完了するため、募集期間内に収まる

内窓の設置は、断熱だけでなく遮音にも効きます。成田市は空港と幹線道路を抱えるエリアがあり、「静かさ」を訴求できる物件は明確に競争力を持ちます。断熱補助を使って遮音性能を上げる、という一石二鳥の設計ができるのは成田ならではです。

また、みらいエコ住宅2026事業や給湯省エネ2026事業との併用も可能とされています。窓・給湯・断熱を一体で計画すれば、補助の総額は大きくなります。ただし同一の工事に対して国と市の補助を二重に受けることは原則できません。成田市の申請書類に「国の補助金を受けていない理由書」の様式が用意されていることからも、市がこの点を厳格に見ていることがわかります。


空室・空き家をお持ちのオーナーへ:空家改修補助金と特定空家等除却補助金

相続で引き継いだ古家、事業をたたんだ後の店舗併用建物——成田市には、この2つの制度があります(成田市 空き家補助金について)。

成田市空家改修補助金:事業用改修なら上限100万円

補助金の額

  • 住宅用改修:補助対象経費の2分の1(上限50万円)
  • 事業用改修:補助対象経費の2分の1(上限100万円)
  • ※成田市空家バンク登録物件は、補助額に10万円加算
  • ※1,000円未満は切り捨て

補助対象空き家:1年以上使用されていない一戸建ての住宅(併用住宅含む)で、確認済証の交付を受けており、都市計画法等に適合し、土砂災害警戒区域等の危険な区域に存しないこと。

ここで、オーナーとして正確に理解すべき区別があります。

住宅用改修は「自ら居住する方」が対象です。 市外から転居する方、市内の賃貸住宅から転居する方などが対象で、「賃貸に出すために改修する」という使い方は住宅用改修では想定されていません。

一方、事業用改修は法人・個人が対象で、上限100万円と手厚い。 改修後の用途は、宿泊施設、交流施設、体験学習施設、創作活動施設、文化施設、そのほか地域の活性化に資するもの(レストラン、カフェ、商業施設、テレワーク施設など)とされています。

成田市というエリアで、この「宿泊施設」「テレワーク施設」という用途指定は、他の自治体より現実味があります。 国際空港を抱え、早朝便・深夜便の前後泊需要、乗務員・工事関係者の中期滞在需要が恒常的にある街です。空き家を簡易宿所や小規模なゲストハウス、ワーケーション向けの施設に転用する構想は、成田では机上の空論になりにくい。

ただし条件は厳格です。

  • 改修目的の用途に10年以上活用すること
  • 市税の滞納がないこと
  • 空家改修工事の契約締結前に申請が必要(工事着手後の申請は受けられません)
  • 補助金申請年度の2月末までに工事を終え、実績報告をすること
  • 受付期間は4月1日から10月末までが目安(内容により10月以降も相談可)
  • 交付決定の翌年度から、毎年度2月末日までに活用状況の報告が必要
  • 予算がなくなり次第、受付終了

「10年以上活用」と「毎年の活用状況報告」は、出口戦略に制約をかけます。 5年後の売却を視野に入れているなら、この補助金を使うことで売りにくくなる可能性があります。逆に、長期保有・自社運営の方針が固まっているなら、100万円+空家バンク加算10万円は極めて有利な条件です。制度を使うかどうかは、保有方針を先に決めてから判断してください。

なお、改修する住宅が耐震基準に満たない場合は、前述の耐震改修補助も併せて受けられる旨が市の案内に明記されています。空家改修100万円+耐震改修115万円を組み合わせられる可能性がある——これは成田市の制度設計のなかでも、最も金額インパクトの大きい組み合わせです。

成田市特定空家等除却工事費補助金:上限50万円

管理不全のまま放置され、成田市空家等対策委員会に諮って特定空家等と認定された空き家の除却費用に対する補助です。

補助金の額:補助対象経費の2分の1(上限50万円、1,000円未満切り捨て)

補助対象空き家(すべてに該当すること)

  1. 個人が所有するものであること
  2. 一戸建て等に係るものであること
  3. 所有権以外の権利が設定されていないこと
  4. 空家法第22条第2項の規定による勧告を受けていないこと
  5. 敷地の所有者が異なる場合は、敷地所有者の同意を得ていること
  6. 共有の場合は、全共有者の同意を得ていること

オーナーにとって注意すべきは3.の「所有権以外の権利が設定されていないこと」です。抵当権が残っている物件は対象外と読むのが自然です。借入れで取得した収益物件を除却する場合、抵当権抹消が先行しないと使えません。金融機関との調整が必要になります。

また4.の「勧告を受けていないこと」も重要です。特定空家に認定され、さらに勧告まで進むと、住宅用地の固定資産税特例(小規模住宅用地で課税標準6分の1)が適用除外となり、固定資産税が実質的に跳ね上がります。勧告を受ける前に動けば補助が使え、勧告後は補助が使えないうえに税負担も増える。 特定空家の話は、「早く動くほど得をする」という構造が最もはっきりしている領域です。


税務:補助金の課税、資本的支出と修繕費、損金算入のタイミング

補助金を「もらって終わり」にすると、翌年の申告で驚くことになります。オーナーが押さえるべき論点を整理します。なお、以下は一般的な考え方の整理であり、個別の判断は必ず顧問税理士にご確認ください。

補助金は課税対象になります

賃貸経営に関して受け取った補助金は、不動産所得の総収入金額(雑収入)に算入されるのが原則です。「補助金だから非課税」ではありません。115万円の耐震改修補助を受ければ、その115万円は原則として収入に立ちます。

ただし、多くの場合、対応する工事費が同じ年に費用または資産計上されるため、トータルでの課税所得への影響は緩和されます。 問題は、補助金の入金時期と、工事費の費用化のタイミングがズレる場合です。

圧縮記帳という選択肢

国庫補助金等で固定資産を取得した場合、一定の要件のもとで圧縮記帳(法人税法42条、所得税法42条)により、補助金相当額を課税の対象から繰り延べる処理が認められることがあります。

補助金100万円で200万円の資本的支出を行った場合の考え方は、おおまかに次のようになります。

  • 圧縮記帳を使わない:補助金100万円が収入計上、資産200万円を耐用年数で減価償却 → 初年度の課税所得が大きく増える
  • 圧縮記帳を使う:資産の取得価額を100万円に圧縮 → 初年度の課税を繰り延べ、償却期間を通じて平準化

キャッシュフローが厳しい年度に大きな課税所得が立つのを避けたいなら、圧縮記帳は有力な選択肢です。ただし適用できる補助金の性質や要件が細かく定められているため、必ず事前に税理士へ相談してください。

資本的支出と修繕費——賃貸経営で最も差がつく論点

工事費が修繕費なら支出年度に全額が費用計上でき、資本的支出なら資産計上して耐用年数にわたって減価償却することになります。この差は、初年度の手残りに直結します。

大まかな判断軸は次のとおりです。

区分 内容の例 処理
修繕費 原状回復、通常の維持管理、既存と同等品への交換、劣化部分の補修 支出年度に全額損金
資本的支出 価値を高める・使用可能期間を延ばす工事、グレードアップ、用途変更を伴う改造 資産計上し減価償却

実務でよく問題になるのが大規模修繕です。外壁塗装や屋上防水は、既存と同等仕様への「原状回復」であれば修繕費とされることが多い一方、断熱塗料への変更や防水グレードの大幅な引き上げは資本的支出と判断される余地があります。

判断の分かれ目を明確にするのが「見積書と工事写真の書き方」です。 工事内容が一式で書かれた見積書は、税務調査で不利に働きます。部位ごと・工事内容ごとに明細を分け、「劣化補修」と「性能向上」を分離して記載してもらうこと。これは施工会社への依頼の仕方ひとつで変わります。当社が大規模修繕をお受けするときも、この点は必ずオーナーと事前に握るようにしています。

なお、金額基準として、一件20万円未満の支出や、おおむね3年以内の周期で行われる修理・改良は修繕費として扱える取扱いがあります。修繕を数年に分けて計画的に行うことが、結果的に有利になる場合もあるということです。

固定資産税の視点

耐震改修を行った場合、要件を満たせば固定資産税の減額措置を受けられることがあります。成田市役所資産税課(0476-20-1514)が窓口です。

また、前述のとおり特定空家等に認定され勧告を受けると、住宅用地特例が外れます。更地にすると同様に特例が外れるため、「壊すか、直して貸すか」の判断は、税負担を含めた総合判断になります。除却補助50万円を取って更地にした結果、固定資産税が数倍になって手残りが減った——という結末を避けるには、除却前に必ず税額のシミュレーションをしてください。


モデルケースで見る:成田市のオーナーは、どれだけ変わるか

抽象論だけでは判断できないので、具体的な3つのケースで試算します。金額は成田市の制度要件に基づく理論値であり、実際の工事費・補助額は物件と工事内容により変動します。

ケースA:築38年・木造アパート8戸(成田駅徒歩15分)

現状:稼働率88%(8戸中1戸空室が常態)、家賃5.5万円、道路面に高さ2.0mのブロック塀、給湯器は追い焚きなしの従来型が8台

打ち手
1. ブロック塀除却(工事費30万円) → 補助15万円 → 上限適用で10万円
2. 賃貸集合給湯省エネ2026でエコジョーズ8台に交換(工事費8台分120万円) → 補助5万円×8台=40万円
3. 外壁塗装・屋上防水(工事費420万円、補助なし)

効果の試算
– 補助合計:50万円
– 自己負担:520万円
– 稼働率が88%→95%に改善した場合の年間収入増:5.5万円×12か月×8戸×7%=約37万円
– 還元利回り6%で評価した資産価値の押し上げ:約616万円

補助50万円そのものより、稼働率改善による資産価値の増加のほうが桁が違うことがわかります。補助金は「工事を決断する後押し」として機能し、リターンの本体は入居率にあります。

ケースB:築45年・空き家の戸建(相続で取得、旧耐震)

現状:1年以上空き家、上部構造評点0.6と診断される見込み、駅から離れた住宅地

打ち手(貸家として再生する場合)
1. 耐震診断(費用12万円) → 補助8万円(2/3・上限8万円)
2. 耐震改修工事(設計・監理含め工事費180万円) → 補助115万円(4/5・上限115万円)
3. 水回り更新・内装(工事費150万円、補助なし)

効果の試算
– 補助合計:123万円
– 自己負担:219万円
– 想定家賃8万円/月 → 年間96万円
– 表面利回り(自己負担ベース):96万円÷219万円=約43.8%

もちろん土地建物の取得原価を含めれば数字は変わりますが、「持っているだけで固定資産税を払っていた空き家」が、年間96万円を生む資産に変わるインパクトは大きい。代理受領制度を使えば、115万円を立て替える必要もありません。

注意:この試算は令和8年度中に工事完了できる前提です。2026年9月の時点からでは日程が厳しいため、今年度は診断(補助8万円)まで、改修は令和9年度という二段構えが現実的です。

ケースC:空き家を宿泊・テレワーク施設に転用(事業用改修)

現状:空港へ車で15分、1年以上使用されていない一戸建て、確認済証あり

打ち手
1. 成田市空家バンクに登録
2. 事業用改修(工事費300万円) → 補助150万円 → 上限適用で100万円+空家バンク加算10万円=110万円
3. 耐震基準を満たさない場合は耐震改修補助も併用検討

制約
– 改修目的の用途に10年以上活用する義務
– 毎年度2月末までに活用状況を報告
– 契約締結前に申請が必要

判断:10年の縛りを受け入れられるかが分水嶺です。成田で宿泊・滞在系の運営を長期で行う覚悟があるオーナーには、110万円は極めて有利。 5年以内の売却を考えているなら、この制度は選ぶべきではありません。


出口戦略:成田で「売れる物件」にするための修繕の順序

補助金の話は、最後は出口につながります。売却時、買主とその金融機関は何を見るか。

買主が減額交渉に使う3つの材料

  1. 外壁・屋上の劣化:見た瞬間に「あと数年で大規模修繕」と読まれ、その概算額をそのまま値引き要求されます
  2. 旧耐震・耐震性の不明:融資が付きにくくなり、買主層が現金購入者に限定されて価格が下がります
  3. 設備の老朽化:給湯器・エアコンの残存年数は、購入後の追加投資として計算されます

逆に言えば、この3つを潰しておけば、値引きの根拠を先に消せるということです。

売却の2〜3年前に着手すべき順序

第1順位:耐震性の確保と証明
耐震診断・耐震改修は、単に安全なだけでなく「書類として残る」のが強みです。耐震改修証明があれば、買主の融資審査が通りやすくなり、買主層が広がります。成田市には住宅耐震改修証明申請書の様式も用意されています。補助率5分の4を使えるうちに済ませておくべきです。

第2順位:外装(外壁・屋上防水・シーリング)
第一印象と、修繕履歴の説得力を同時に作ります。「5年前に大規模修繕済み」は、価格交渉における最強のカードのひとつです。

第3順位:給湯器・窓などの設備更新
補助金が最も効く領域です。国の制度で費用を薄めながら、入居率と募集条件を改善できます。

第4順位:外構(ブロック塀の除却と再整備)
金額は小さいものの、内見の第一印象と、工作物責任というリスクの除去を同時に果たします。

この順序は、「融資が付くか」→「見た目」→「ランニング」→「印象」 という、買主の判断順序に対応しています。


コストは制度だけでなく「工法の選び方」でも変わります

ここまで補助金の話をしてきましたが、大規模修繕の総額に最も効くのは、実は足場の掛け方です。

一般的なマンション・アパートの大規模修繕では、仮設足場が総工事費の20〜25%程度を占めるとされます。8戸のアパートで工事費500万円なら、100万円以上が「工事をするための舞台装置」に消えている計算です。しかも足場は、資産価値を1円も生みません。

株式会社明誠は、通常の足場仮設による工事、無足場工法であるロープアクセスでの工事、足場とロープアクセスを組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物にとってベストな工法をご提案できる、日本でも数少ない会社です。

ロープアクセス工法(無足場工法)が成田市の賃貸物件に向くケース

  • 敷地に余裕がなく、足場を組むと駐車場が使えなくなる物件(入居者の駐車場を潰さずに済むのは、車社会である成田では決定的な差です)
  • 部分補修で足りる劣化状況(全面足場は過剰投資)
  • 空室リスクを最小化したい満室稼働中の物件
  • 足場を組むことによる防犯上の不安を避けたい物件

足場工法が向くケース

  • 全面的な外壁改修・タイル張替えなど、作業量が大きい工事
  • 低層で足場の設置効率が良い建物
  • 複数職種が同時に入る工程

ハイブリッド工法が向くケース

  • 一部の面だけ足場が必要で、他は無足場で対応できる建物
  • 総合的なコスト最適化を優先したい大規模・複雑形状の物件

当社はロープアクセス工事として日本で初めてとなるフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板工事など各分野の専門職が加盟しています。この体制により、高品質と低価格を両立しています。

ロープアクセス工法の詳細や施工事例は、専門サイト ロープアクセス工法.com(https://rope-access-method.com/) にまとめていますので、工法の比較検討にお役立てください。

補助金で10万円、20万円を取りにいくのは大切です。同時に、足場の掛け方を変えることで数十万円から数百万円が変わる可能性がある——このスケール感を、ぜひ頭に入れておいてください。


申請カレンダーと早見表

制度ごとの要点まとめ

制度 補助率・上限 対象 申請時期の目安 窓口
危険コンクリートブロック塀等除却工事費助成 1/2以内・上限10万円 道路等に面した危険な塀・門柱の所有者。市内業者施工が条件 予算の範囲内 建築住宅課 0476-20-1564
住宅耐震診断等助成 2/3以内・上限8万円(マンション予備診断は上限10万円・管理組合) 一戸建て・併用住宅の所有者 4/1〜12月末目安、1月末までに診断完了 建築住宅課 0476-20-1564
住宅耐震改修助成 4/5以内・上限115万円(二段階は段階ごと57.5万円) 一戸建て・併用住宅の所有者。診断で評点1.0未満等 4/1〜10月末目安、1月末までに工事完了 建築住宅課 0476-20-1564
空家改修補助金 住宅用1/2・上限50万円/事業用1/2・上限100万円(空家バンク登録+10万円) 1年以上使用されていない一戸建て(併用住宅含む)。10年以上活用 4/1〜10月末目安、契約締結前に申請 建築住宅課 0476-20-1564
特定空家等除却工事費補助金 1/2・上限50万円 特定空家等に認定された個人所有の一戸建て等。所有権以外の権利設定なし 4/1〜10月末目安、契約締結前に申請 建築住宅課 0476-20-1564
住宅用省エネルギー設備設置費補助金 設備により異なる 自分が住み住民登録している住宅に設置した個人(投資用物件は原則対象外) EV等は令和9年3/10必着、他は令和9年3月末 環境計画課 0476-20-1533
国 賃貸集合給湯省エネ2026事業 5万円/7万円(加算で最大8万円/10万円)/台 賃貸集合住宅のオーナー等(2戸以上所有の区分所有者含む)。申請は登録事業者経由 予算上限到達で終了(2026/9/2時点38%) 事業事務局
国 先進的窓リノベ2026事業 最大100万円/戸 建物を所有する個人・法人等(賃貸住宅所有者を含む) 2026年12月31日まで(予算上限到達で終了) 事業事務局

2026年9月からの現実的なスケジュール

今月(9月)にやること

  • 所有物件のブロック塀を全数チェックし、該当があれば建築住宅課へ相談
  • 給湯器の設置年を全台リストアップ、15年超のものを抽出
  • 旧耐震の一戸建て貸家があれば、耐震診断の申請準備(受付は12月末目安)
  • 発注予定の給湯器業者が賃貸集合給湯省エネ事業者に登録済みか確認

10月まで

  • 耐震改修・空家改修は受付期間の目安が10月末。今年度に間に合わせるならこの時点で申請を出す
  • 窓リノベを使うなら、退去予定と工事日程のすり合わせを開始

12月まで

  • 耐震診断の申請期限(目安)
  • 先進的窓リノベ2026の工事完了・交付申請期限(2026年12月31日)

年明け以降

  • 令和9年度(2027年度)の予算に向けて、耐震改修の設計・見積もりを準備
  • 4月1日の受付開始と同時に申請できる状態にしておく

予算枠のある制度は、年度の頭が最も有利です。 「4月に一番手で出せる状態を、前年の秋冬につくっておく」——これが、補助金を確実に取るオーナーの共通点です。


よくあるご質問

Q. 法人名義で所有している賃貸物件でも、成田市の補助金は使えますか。

制度により異なります。危険ブロック塀除却は「所有し、除却工事を市内業者に行わせる方」、耐震改修は「住宅を市内に所有している方」で、法人を明示的に排除する記載は見当たりません。一方、住宅用省エネルギー設備設置費補助金は対象者が「個人」と明記され、住民登録要件もあるため法人は対象外です。空家改修補助金の事業用改修は法人が明示的に対象に含まれています。個別の可否は必ず担当課にご確認ください。

Q. アパート(共同住宅)の耐震補強に、市の耐震改修助成は使えますか。

使えません。市の案内には「一戸建てまたは併用住宅(住居部分が延べ面積の1/2以上)が対象」と明記されています。共同住宅は対象外です。ただし、1階が店舗や事務所で2階以上が住居という併用住宅で、住居部分が延べ面積の1/2以上を占めるものは対象になり得ます。

Q. マンションの予備診断補助は、区分所有のオーナーでも申請できますか。

耐震診断等助成のうちマンション予備診断は、補助対象者が「区分所有法に基づく決議を経たマンションの管理組合」とされています。区分所有者個人が単独で申請することはできません。管理組合として総会決議を経る必要があります。

Q. 補助金の入金はいつになりますか。工事代金は先に払う必要がありますか。

原則として、工事完了後に実績報告を行い、審査を経て補助金額が確定してから交付されます。実績報告の審査に1か月ほどかかるため、入金までには相応の期間があります。ただし成田市の耐震診断・耐震改修には代理受領制度があり、これを使えば工事費と補助金の差額分だけを業者に支払えばよくなります。

Q. 国と市の補助金を、同じ工事で両方もらえますか。

原則としてできません。成田市の申請書類に「国の補助金を受けていない理由書」の様式が用意されていることからも、市がこの点を確認していることがわかります。ただし、対象が異なる工事であれば、別々の制度を使うことは可能です(例:塀の除却は市、給湯器交換は国)。工事の切り分け方は事前に相談してください。

Q. 受け取った補助金に税金はかかりますか。

賃貸経営に関して受け取った補助金は、原則として不動産所得の総収入金額に算入されます。ただし対応する工事費が同時に費用または資産として計上されるため、実質的な負担は緩和されます。固定資産の取得に係る補助金については圧縮記帳という選択肢もあります。個別の判断は必ず税理士にご相談ください。

Q. 満室のまま工事はできますか。

外装工事であれば可能です。むしろ、入居者への影響を最小化する工法選択が重要になります。ロープアクセス工法なら足場を組まないため、駐車場を使い続けられ、工期も短縮できるケースが多くあります。窓の内窓設置など居室内の工事は、退去のタイミングに合わせるのが現実的です。

Q. 相見積もりは何社取るべきですか。

3社が目安です。ただし、同じ仕様書で比較することが前提です。仕様が揃っていない見積もりを金額だけで比べても意味がありません。また、市の補助金を使う工事は「市内業者」などの条件がかかる場合があるため、条件を満たす業者の中から選ぶ必要があります。


まとめ:成田市のオーナーが取るべき3つの行動

1. 今週中に、所有物件のブロック塀と給湯器を確認してください。
ブロック塀は上限10万円ですが、居住要件がなくオーナーが直接使える数少ない市の制度です。同時に、放置したときの工作物責任という無過失責任のリスクを消せます。給湯器は、国の賃貸集合給湯省エネ2026事業の予算消化が2026年9月2日時点で38%。故障を待たず計画交換に切り替えるべきタイミングです。

2. 旧耐震の一戸建て貸家があるなら、今年度中に耐震診断を受けてください。
成田市の耐震改修助成は補助率5分の4・上限115万円と、全国的に見ても手厚い制度です。そして「所有していること」が要件で、居住要件はありません。改修工事を今年度に間に合わせるのは日程的に厳しいものの、診断だけなら12月末まで。診断結果という客観的な数字を手にしておけば、令和9年度の4月に一番手で申請できます。

3. 市の省エネ設備補助金を投資用物件の収支計画に入れているなら、今すぐ見直してください。
成田市の住宅用省エネルギー設備設置費補助金は「自分が住み、住民登録している住宅」が要件です。投資用物件には原則使えません。代わりに、国の賃貸集合給湯省エネ2026事業と先進的窓リノベ2026事業が、賃貸オーナーを対象として設計されています。

そして最後に、補助金と同じくらい——場合によってはそれ以上に総額を左右するのが、工法の選択です。足場は工事費の2割超を占めながら、資産価値を生みません。株式会社明誠は、足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3つから、建物の形状・劣化状況・入居状況に応じた最適な工法をご提案します。

成田市の物件で「補助金を使いつつ、工事総額も下げたい」とお考えでしたら、まずは現地調査からご相談ください。制度の適用可否と、工法別の概算を並べてお示しします。

ロープアクセス工法の詳細・施工事例:https://rope-access-method.com/


出典・参考資料

お問い合わせ先(成田市)

  • 土木部 建築住宅課:0476-20-1564(〒286-8585 成田市花崎町760番地 市役所行政棟5階)
  • 環境部 環境計画課:0476-20-1533
  • 資産税課:0476-20-1514
  • 成田税務署:0476-28-5151

※本記事は2026年9月2日時点の公表情報に基づいて作成しています。制度内容・予算状況は変更される場合がありますので、申請前に必ず各窓口へご確認ください。税務の取扱いについては、必ず顧問税理士にご相談ください。

吉田町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

この記事で答える質問:静岡県榛原郡吉田町の分譲マンション管理組合は、2026年度(令和8年度)の大規模修繕にあたって、どの窓口に、いくらの手数料で、何を申請できるのでしょうか。

先に結論から申し上げます。吉田町のマンション管理組合が向き合う窓口は、役場だけではありません。吉田町は「市」ではなく「町」です。この一文字の違いによって、マンション管理計画認定制度の申請先は町役場ではなく静岡県くらし・環境部建築住宅局住まいづくり課になります。そして令和8年4月1日、その認定申請手数料が改定されました。

この連載でこれまで扱ってきた静岡県内の自治体は、湖西市、掛川市、袋井市、富士宮市……すべて「市」でした。市であれば市が自ら推進計画を策定し、市の窓口で認定を受けられます。湖西市の場合、認定申請の市手数料は無料でした。ところが吉田町の管理組合が同じ認定を取ろうとすると、県に申請することになり、手数料は4,000円または28,100円がかかります。同じ静岡県内、車で30分の距離でも、制度の入口はこれだけ違います。

私は建設・改修の現場に20年以上いて、大規模修繕の見積書と総会議案書を数え切れないほど見てきました。その経験から申し上げると、「窓口を間違える」ことによる時間の損失は、補助金の額そのものより大きいことがあります。総会で承認を取ってから「その申請は町ではなく県でした」と分かると、次の総会まで半年待つことになりかねません。

この記事では、吉田町の管理組合とオーナーが2026年度に確認すべき制度を、公的な一次情報だけを根拠にして整理します。数字はすべて出典を付けます。断定できないところは「町に確認してください」と正直に書きます。

最終更新:2026年9月2日


結論:吉田町のマンションが向き合う窓口は3つに分かれています

まず全体像を1枚の表にします。ここを読み違えなければ、あとの手続きは順番に進むだけです。

制度 窓口 費用 吉田町のマンションで使えるか
マンション管理計画認定制度 静岡県 住まいづくり課(町域が対象) 4,000円 または 28,100円 使える(申請先は県)
マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額) 吉田町 税務課(申告先) 申告手数料なし 使える(減額割合は町の条例)
住宅耐震改修に伴う固定資産税の減額 吉田町 税務課 申告手数料なし 条件付き(昭和57年1月1日以前所在)
住宅の省エネ改修に伴う固定資産税の減額 吉田町 税務課 申告手数料なし 条件付き(窓の改修が必須・賃貸を除く)
ブロック塀等耐震化促進事業 吉田町 都市環境課 補助 使える(敷地内の道路沿いの塀)
TOUKAI-0+(外部補強減災化ほか) 吉田町 都市環境課 補助 木造住宅が対象のため、RC造マンションは対象外
マンション管理士の無料派遣 一般社団法人静岡県マンション管理士会 無料 使える(県内で受付10件)

出典は以下のとおりです。

この表を見て、多くの理事の方が「思ったより町の補助が少ない」と感じられると思います。その感覚は正しいです。そして実は、吉田町自身がその不足を計画書に明記しています。この点は本記事の後半で詳しく扱います。だからこそ、補助金頼みではなく「工事のつくり方でコストを下げる」という発想が、吉田町では特に効いてきます。


吉田町は「町」だから、管理計画認定の申請先は静岡県です

マンション管理計画認定制度は、マンション管理適正化法(マンションの管理の適正化の推進に関する法律/平成12年法律第149号)に基づき、管理組合が作成した管理計画が一定の基準を満たす場合に、行政がそれを認定する制度です。

認定の主体は、マンション管理適正化推進計画を作成した市・特別区です。市以外の町村部については、都道府県が認定を行います。静岡県はこの点を明確に書いています。

マンション管理計画認定制度(対象:県内の町域)
(出典:静岡県 マンションの管理)

つまり、静岡県は「静岡県マンション管理適正化推進計画」の中に、県内の町域におけるマンション管理適正化推進計画を含めて策定しています。吉田町のマンションは、この県の計画の対象です。

認定基準は「静岡県マンション管理適正化推進計画」で確認する

認定基準は自治体ごとに上乗せがある場合があります。吉田町のマンションについては、静岡県の推進計画に書かれた基準が適用されます。基準そのものは静岡県マンション管理適正化推進計画(PDF)で公開されています。

国の全国共通基準は、国土交通省のリーフレット「マンションの大規模修繕をすると固定資産税が減税されます!」(2025年4月発行)に一覧があります。要点だけ挙げます。

  • 管理者等および監事が定められている
  • 集会(総会)が年1回以上開催されている
  • 管理規約に「緊急時等における専有部分の立入り」「修繕等の履歴情報の保管」「管理組合の財務・管理に関する情報の提供」が定められている
  • 管理費と修繕積立金が区分経理されている
  • 修繕積立金の3か月以上の滞納額が全体の1割以内である
  • 長期修繕計画が7年以内に作成または見直しされている
  • 長期修繕計画の計画期間が30年以上あり、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれている
  • 長期修繕計画において将来の一時金の徴収を予定していない
  • 計画期間の最終年度において借入金の残高のない計画となっている
  • 組合員名簿・居住者名簿が適切に備えられ、1年に1回以上内容の確認を行っている

修繕積立金の平均額の基準は「延床面積」で決まります

見落とされやすいのが、修繕積立金の平均額の基準です。国のガイドラインでは、機械式駐車場を除いた月額の専有面積当たり金額が以下のように定められています。

地上階数/建築延床面積 月額の専有面積当たり修繕積立金額
20階未満/5,000㎡未満 235円/㎡・月以上
20階未満/5,000㎡以上10,000㎡未満 170円/㎡・月以上
20階未満/10,000㎡以上20,000㎡未満 200円/㎡・月以上
20階未満/20,000㎡以上 190円/㎡・月以上
20階以上 240円/㎡・月以上

(出典:国土交通省リーフレット、および「マンションの管理の適正化の推進に関する法律第5条の3に基づくマンションの管理計画認定に関する事務ガイドライン」)

吉田町のマンションは、規模から見て多くが20階未満・延床5,000㎡未満の区分に入ると考えられます。この区分の基準は235円/㎡・月以上で、5つの区分の中で2番目に高い水準です。延床5,000〜10,000㎡の170円と比べると、1.38倍の水準が求められます。

これは直感に反する数字です。「小さいマンションのほうが1戸あたりの積立金は高く求められる」ということだからです。理由は単純で、外壁面積や屋上面積は戸数に比例して小さくならないからです。戸数が少ないほど、1戸あたりが負担する共用部分の面積が大きくなります。

70㎡の住戸なら、235円×70㎡=月額16,450円以上が計画期間全体の平均として必要になります。現在の積立金がこれを下回っている管理組合は、認定を目指す場合、値上げの議案が前提になります。ここは正直にお伝えしておきます。


認定申請手数料は令和8年4月1日に改定されました

ここが吉田町の管理組合にとって、今年度いちばん実務に効く変更点です。静岡県は認定申請手数料を令和8年4月1日に改定しました。

認定(新規)の手数料

事前確認適合証 長期修繕計画数 令和8年3月31日まで 令和8年4月1日から
有り 1 3,800円 4,000円
有り 2以上 3,800円+1,700円×(計画数−1) 4,000円+1,800円×(計画数−1)
無し 1 26,900円 28,100円
無し 2以上 26,900円+15,500円×(計画数−1) 28,100円+16,200円×(計画数−1)

(出典:静岡県 マンションの管理。認定の更新も同額)

「事前確認適合証」の有無で手数料が7倍変わります

4,000円と28,100円。差額は24,100円、倍率にして約7倍です。この差を生むのが「事前確認適合証」の有無です。

事前確認適合証とは、マンション管理適正化法第91条に規定する法人(公益財団法人マンション管理センター)が交付する、同法第5条の14各号に掲げる基準に適合することを証する書面です。平たく言えば、県に出す前に、専門機関が先に書類をチェックして「基準を満たしています」という証明書を出してくれるものです。

申請ルートは2つあります。

申請方法 事前確認適合証 県への手数料
【1】公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」を利用 有り 4,000円
【2】静岡県住まいづくり課へ直接申請 無し 28,100円

【1】のルートには、さらに3つの選び方があります。

  • 管理状況評価サービスを併用しない場合
  • 一般社団法人マンション管理業協会の「マンション管理適正評価制度」を併用する場合
  • 一般社団法人日本マンション管理士会連合会の「マンション適正化診断サービス」を併用する場合

(出典:公益財団法人マンション管理センター 管理計画認定手続支援サービス)

ただし「事前確認」自体にも費用がかかります

ここは誠実に補足します。県に払う手数料が4,000円で済むということは、事前確認のサービス側に別途費用が発生するということです。県手数料と事前確認費用の合計で比較しなければ、どちらが安いかは判断できません。

私の実務感覚でお伝えすると、判断の分かれ目は「書類が整っているかどうか」です。長期修繕計画が標準様式に準拠していて、総会議事録も規約も揃っている管理組合なら、直接申請でも書類の差し戻しは少なく済みます。逆に、長期修繕計画を10年以上見直していない、規約が分譲時のままという管理組合は、事前確認を通したほうが結果的に早く、手戻りが少ないことが多いです。

手数料の総額は、まずマンション管理センターの支援サービスのページで確認し、そのうえで静岡県住まいづくり課(054-221-3084)に「町域のマンションで、事前確認なしの直接申請を検討している」と伝えて相談されるのが確実です。


管理計画認定を取ると、何が変わるのか

手数料を払ってまで認定を取る価値があるのか。この問いには、3つの実利で答えられます。

1. 固定資産税が減額される(マンション長寿命化促進税制)

築20年以上・10戸以上で管理計画の認定を取得したマンションが、一定の長寿命化工事を行うと、各区分所有者が翌年度支払う固定資産税(建物部分のみ)が1/2〜1/6の範囲内で減額されます。この点は次章で詳しく扱います。

2. 住宅金融支援機構の融資金利が下がる

国土交通省のリーフレットに明記されている効果です。

  • 【フラット35】:当初5年間について年0.25%の引き下げ
  • マンション共用部分リフォーム融資:全期間について年0.2%の引き下げ
  • マンションすまい・る債:利率の上乗せ

(出典:国土交通省リーフレット(PDF))

大規模修繕で共用部分リフォーム融資を使う管理組合にとって、全期間0.2%の引き下げは実額として効きます。仮に3,000万円を15年で借りるなら、0.2%の差は総返済額で数十万円規模の違いになります。これは税制の話とは別に、借入前提の管理組合にとっての直接的なメリットです。

3. 「きちんと管理されている」という外部の証明になる

賃貸に出しているオーナーの方にとっては、この3つ目が最も効くかもしれません。認定は国の制度に基づく公的な評価であり、募集や売却の際の材料になります。

「町だから県に申請する」ことのデメリットは正直あります

一方で、市の窓口に比べると不利な点もあります。市であれば「市の担当者が同じ市内のマンションを継続的に見ている」状態になりますが、県が県内全町域を担当する場合、個別の物件事情まで踏み込んだ相談は難しくなります。

だからこそ、後述する静岡県マンション管理士の無料派遣が効いてきます。これは「県の窓口が遠い」という町域のハンデを埋めるための仕組みだと私は理解しています。


マンション長寿命化促進税制:吉田町の減額割合は「町の条例」で決まります

大規模修繕そのものに直接効く唯一の税制が、これです。制度の骨格を正確に押さえます。

制度の要件(令和8年度時点)

項目 内容
対象マンション 築20年以上かつ10戸以上で、管理計画の認定を取得したマンション
工事要件 長寿命化工事(外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事)を過去に1度以上実施していて、令和5年4月1日〜令和9年3月31日の間に2回目以降の長寿命化工事を完了していること
減額額 各区分所有者が翌年度支払う固定資産税(建物部分のみ)を1/2〜1/6の範囲内で減額(割合は自治体の条例で決定)
申請期限 工事完了後3か月以内に市町村に申請
積立金の要件 令和3年9月以降に、修繕積立金の額を管理計画の認定基準未満から認定基準以上に引き上げることが必要

(出典:国土交通省 マンション税制、および同省リーフレット)

押さえておくべき4つのポイント

第一に、「2回目以降」であること。 新築後はじめての大規模修繕では使えません。過去に1度以上、外壁塗装等・床防水・屋根防水の長寿命化工事を実施していることが前提です。築20年以上という要件と合わせて考えると、築25〜35年で2回目の大規模修繕を迎える管理組合が中心的な対象になります。

第二に、3工事すべてを含むこと。 外壁塗装等工事、床防水工事、屋根防水工事。この3つが揃っている必要があります。「今回は屋上防水だけ」という工事では要件を満たしません。逆に言えば、工事の切り分け方によって税制が使えるかどうかが変わるということです。これは工事計画を立てる段階で意識しておくべき点です。

第三に、減額割合は吉田町の条例で決まること。 国の制度は「1/2〜1/6の範囲内」としか定めておらず、実際に何分の1になるかは各市町村の条例です。吉田町のホームページには、令和8年9月2日時点でこの制度に関する専用ページが見当たりません。 ここは断定を避けます。吉田町役場税務課資産税部門(0548-33-2108)に、次の3点を電話で確認してください。

  1. マンション長寿命化促進税制に対応する町の条例は制定されていますか。制定されている場合、減額割合は何分の1ですか
  2. 減額の対象となる床面積の上限は1戸あたり何㎡ですか(多くの自治体は100㎡)
  3. 申告に必要な書類の一覧と、提出先の部署を教えてください

第四に、期限が令和9年3月31日であること。 令和8年9月の今から逆算すると、残りは約1年半です。管理計画認定の取得、修繕積立金の引き上げ議案、工事の発注と完了、そして完了後3か月以内の申告。この工程を積み上げると、総会2回分のスケジュールを見込む必要があります。9月に動き出しても、決して早すぎることはありません。

令和8年4月に新しい証明書の様式が追加されました

もうひとつ、実務家として見逃せない動きがあります。国土交通省は令和8年4月1日付で、この税制に関する新しい通知(国住参マ第305号・第306号)を発出し、証明書の様式を拡充しました。

現在、同省のページに掲載されている様式は次のとおりです。

  • 大規模の修繕等証明書
  • 過去工事証明書
  • 修繕積立金引上証明書
  • 助言・指導内容実施等証明申請書、証明書

(出典:国土交通省 マンション税制)

注目すべきは4つ目です。同省のページには「制度の概要」として「管理計画認定マンションの場合」に加えて「助言又は指導を受けた管理組合の管理者等に係るマンションの場合」という資料が別途掲載されています。

これは、管理計画の認定を取得していなくても、マンション管理適正化法第5条の2に基づく助言・指導を受けた管理組合であれば、この税制の対象になり得るということを意味します。認定取得(4,000円〜28,100円+準備の手間)がハードルになっている管理組合にとっては、もうひとつの入口です。

ただし、町域における助言・指導の主体も静岡県になります。この経路が吉田町のマンションで現実的に使えるかは、静岡県住まいづくり課(054-221-3084)に「助言・指導ルートでの長寿命化促進税制の適用について、町域のマンションの取り扱いを教えてほしい」と確認するのが確実です。制度が動き始めたばかりの領域なので、ここは断定せずに書いておきます。


吉田町のブロック塀等耐震化促進事業:撤去に2/3・上限13万3千円

町の補助で、マンションの敷地に直接使える可能性が高いのがこれです。

補助の内容

項目 内容
対象となる塀 建築基準法に規定する道路沿いに存在する、地盤からの高さ60cm以上の危険なブロック塀、石塀、れんが塀その他これらに類する塀
補助金額 「撤去工事金額の2/3」と「ブロック塀の延長×20,000円/m×2/3」を比較していずれか少ない額(上限133,000円、千円未満切り捨て)
申請時期 撤去工事の着手前に申請が必要
事前確認 補助対象となるかを都市環境課窓口で事前に確認

(出典:吉田町 ブロック塀等耐震化促進事業)

上限に届く塀の長さは「10メートル」です

計算してみます。延長×20,000円/m×2/3 が133,000円に達する長さは、133,000 ÷ (20,000 × 2/3) = 約10.0m です。

つまり、塀の延長が約10mを超えると、それ以上長くても補助額は133,000円で頭打ちになります。マンションの敷地境界に沿って20m、30mとブロック塀が続いている場合、補助でカバーできるのは全体の一部です。

一方で、実際の撤去工事金額の2/3という条件もあります。撤去単価が1mあたり20,000円を下回るなら、そちらの少ない額が採用されます。マンションの敷地の塀は基礎が深く、擁壁と一体化していることも多いため、実費が1mあたり20,000円を上回るケースが一般的です。その場合は「延長×20,000円×2/3」のほうが少なくなり、こちらが採用されると考えられます。

まず「5項目の点検」を理事会で回してください

吉田町は、静岡県作成の「ブロック塀の点検と改善」に基づく点検項目を公開しています。専門知識がなくても、理事の方が現場を歩けば確認できる内容です。

通常のブロック塀の点検5項目

  1. 基礎の根入れはあるか
  2. 塀は高すぎない(地盤から2m以下)か
  3. 控壁はあるか
  4. 塀の傾き、ひび割れはないか
  5. 塀に鉄筋は入っているか

1つでも該当しない場合は危険とされています。(出典:吉田町、および静岡県作成リーフレット「ブロック塀の点検と改善」(PDF))

組積造(れんが造、石造、鉄筋のないブロック造)の場合は6項目になり、高さの基準が1.2m以下と厳しくなります。マンションの敷地内でも、ゴミ集積所の囲いや自転車置場の袖壁がれんが造・石造というケースは珍しくありません。あわせて点検してください。

「控壁」とは、主壁に対して直角方向に突き出した補助的な壁のことです。この用語は町のページでも注記されています。

令和7年度に申請が急減しています

町の耐震改修促進計画には、ブロック塀撤去の助成実績が年度別に掲載されています。

年度 令和4年度 令和5年度 令和6年度 令和7年度 合計
ブロック塀の撤去(件) 11 18 15 6 50

(出典:吉田町耐震改修促進計画(令和8年度〜令和12年度)(PDF)、令和8年3月末現在)

町はこの実績について「助成実績が堅調に推移している」と評価しています。人口29,230人・11,249世帯(面積20.73㎢)の町で4年間に50件ですから、世帯数に対する比率としては確かに堅調です。

ただし、令和7年度は6件で、前年度の15件から4割に減っています。この減少をどう読むかは、私は断定を避けます。対象となる危険な塀が減ってきた結果かもしれませんし、周知が届いていないだけかもしれません。ただ実務家として言えるのは、申請が少ない年度は、予算に余裕がある可能性があるということです。「いずれの メニューも予算に達した時点で受付を終了します」と町が明記している以上、動くなら年度の早いうちです。


TOUKAI-0 は令和7年度で終了し、令和8年度から「TOUKAI-0+」になりました

静岡県が全国に先駆けて平成13年度から実施してきた木造住宅の耐震化プロジェクト「TOUKAI-0」は、令和7年度をもって終了しました。令和8年度から、新たな事業体系として「TOUKAI-0+(トウカイゼロプラス)」が始まっています。

県が推進してきた木造住宅の耐震化プロジェクト「TOUKAI-0」は、令和7年度をもって終了し、令和8年度から新たな事業体系を構築する。
(出典:吉田町耐震改修促進計画(令和8年度〜令和12年度))

25年続いた県の看板事業の名前が変わった年です。吉田町も令和8年度から、新たに外部補強減災化助成事業と住宅屋根耐風改修助成事業の2メニューを追加しました。

吉田町のTOUKAI-0+の全メニューは次の6つです。

  1. わが家の専門家診断(静岡県耐震補強相談士による無料耐震診断)
  2. 耐震補強計画策定及び耐震補強工事に対する補助金の交付(一体型補助金)
  3. 外部補強減災化助成事業(令和8年度新規)
  4. 住宅屋根耐風改修助成事業(令和8年度新規)
  5. ブロック塀等耐震化促進事業
  6. 耐震シェルター・防災ベッド設置助成事業

(出典:吉田町 木造住宅の耐震化プロジェクト「TOUKAI-0+」事業)

このうち5番のブロック塀以外は、いずれも木造住宅が対象です。 鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションは対象外になります。この点は最初に押さえておいてください。


外部補強減災化助成は補助率5分の4 — ただしマンションは対象外です

とはいえ、令和8年度に新設された「外部補強減災化助成事業」の中身は、管理組合の方にも知っておいていただく価値があります。理由は後述します。

項目 内容
対象 木造住宅耐震診断の結果、耐震評点が0.7以上1.0未満と診断された旧基準木造住宅
対象工事 改修促進工事(屋根の軽量化または外付けブレース)
補助額 1棟ごとに、事業に要する経費に5分の4を乗じて得た額と850,000円とを比較していずれか少ない額
前提 申請前に「わが家の専門家診断(無料耐震診断)」を受けること
申請先 吉田町 都市環境課

(出典:吉田町 外部補強減災化助成事業)

なぜ管理組合にも関係があるのか

補助率5分の4(80%)は、私がこの連載で扱ってきた静岡県内の制度の中で最も高い水準です。 補助率2/3(約67%)が手厚いほうだと考えられている中で、80%という設計は突出しています。

そして注目すべきは、この補助の思想です。「居住空間はそのままで、外部補強による地震対策改修工事」。つまり、中に住んだまま、外側からの工事で性能を上げるという考え方です。

これはまさに、マンションの大規模修繕でロープアクセス工法が選ばれる理由と同じ発想です。居住者の生活を止めず、建物の外側から手を入れる。工事のために引っ越す必要がない。町がこの考え方に補助率80%を付けたという事実は、「居住しながらの外部工事」という手法が行政にも合理的だと評価されていることの傍証だと私は受け止めています。

もう一点。町は補助制度の説明の中で「低コスト工法」の推奨を明記しています。

耐震診断、耐震改修といった基本的な耐震化補助については、低コスト工法※の推奨を図り耐震化の加速を目指す。
※低コスト工法:床や天井の撤去・復旧を最小限に抑え、N値計算等を活用した精密診断法により合理的な補強を行うなどコストの削減を図りながら、耐震性能を向上させる工法
(出典:吉田町耐震改修促進計画)

「撤去・復旧を最小限に抑え、コストを削減しながら性能を向上させる」。この一文は木造住宅の話として書かれていますが、思想としては大規模修繕にそのまま通じます。仮設足場を組んで、解体して、復旧して、という工程のどこを削れば性能を落とさずに費用が下がるか。それが工法選択の本質です。

代理受領制度も知っておいてください

もうひとつ、町の計画に書かれている実務的な仕組みです。

代理受領制度は、補助事業の実施における申請者の一時的な費用負担を軽減するため、工事施工者等が申請者の委任を受け、補助金を代理受領できる制度である。この制度では、申請者は工事費等と補助金の差額分のみ用意すればよく取り組みやすい。
(出典:吉田町耐震改修促進計画)

補助金は原則として、工事代金を全額支払ったあとに交付されます。つまり一時的に全額を立て替える必要があります。代理受領制度を使えば、管理組合が用意するのは「工事費−補助金」の差額だけで済みます。

現在この制度が明記されているのは木造住宅の耐震化補助についてですが、ブロック塀等耐震化促進事業でも同様の運用ができるかどうかは、都市環境課(0548-33-2161)に確認する価値があります。修繕積立金の残高がぎりぎりの管理組合にとって、キャッシュフローの差は小さくありません。


吉田町が計画に書いた一文:「充足しているとは言えない」

ここが、この記事でどうしてもお伝えしたい部分です。

吉田町は令和8年3月に策定した耐震改修促進計画の中で、ブロック塀・特定天井・既存不適格昇降機など「その他の建築物等」について、こう書いています。

全般的に耐震化が伸び悩んでいる。また、所有者の負担軽減を図るためには助成制度の創設が必要であると考えるが、財政的な理由等により充足しているとは言えない。
(出典:吉田町耐震改修促進計画(令和8年度〜令和12年度))

私はこの連載で静岡県内の自治体の計画を読み込んできましたが、自治体が自らの助成制度について「充足しているとは言えない」と明記した例は、ここが初めてです。

これは町を批判する話ではありません。むしろ逆で、私はこの率直さを評価しています。面積20.73㎢、人口29,230人の町が、限られた財源をどこに配分するかを判断した結果です。そして町は、その判断を隠さずに公表しました。

管理組合が受け取るべきメッセージ

この一文から、吉田町のマンション管理組合が読み取るべきことは明確です。

吉田町では、大規模修繕のコストを「町の補助金」で下げる余地は限定的です。 ブロック塀の撤去で最大133,000円。それ以外に、共用部分の修繕そのものに直接充てられる町の補助はありません。

したがって、コストを下げる手段は次の3つに絞られます。

  1. 国の税制を使う(マンション長寿命化促進税制。ただし認定または助言・指導が前提)
  2. 住宅金融支援機構の融資を有利な条件で使う(認定でマンション共用部分リフォーム融資が全期間0.2%引き下げ)
  3. 工事そのものの構成でコストを下げる(工法選択、仕様の適正化、発注方式)

このうち3番目は、行政の制度に依存せず、管理組合の判断だけで実行できます。そして金額のインパクトが最も大きい。吉田町のような、町の補助が薄い自治体でこそ、ここに注力する意味があります。

具体的には、大規模修繕の総工事費のうち仮設足場が占める割合は一般に15〜20%程度です。この部分の設計を見直すだけで、工事全体の費用構造が変わります。ロープアクセス工法や、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法は、この論点への実務的な回答です。ロープアクセス工法の一般的な安全基準や技術情報は、姉妹サイトロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。


耐震改修促進計画が示す、マンションに直結する3つの論点

吉田町の耐震改修促進計画には、木造住宅の話だけでなく、マンションにこそ関係する記述が複数あります。ここは総会での説明材料として、そのまま使える内容です。

論点1:杭の二次設計

過去の大地震において杭が損傷し、継続使用が困難な事例があった。このため、杭基礎を使用している建築物においては、建築基準法では一次設計(中小規模の地震に対する検討)しか規定していないことに留意する。
(出典:吉田町耐震改修促進計画)

計画の別の箇所では、令和6年1月の能登半島地震について「杭頭の破壊が主な原因としてビルが倒壊した」と記載されています。

これは、マンション管理組合にとって重い指摘です。大井川の河口部に位置する吉田町は、地盤条件から杭基礎を採用している建物が多いと考えられます。そして建築基準法は、杭について中小規模の地震しか検討を求めていない。建物本体が新耐震基準を満たしていても、杭は別の話だということです。

これは「不安を煽る」ための情報ではありません。むしろ逆で、外壁や防水の劣化診断とは別に、基礎まわりの点検が意味を持つということです。大規模修繕の際に、地盤面近くのひび割れや不同沈下の兆候、外構との取り合い部分の変状を記録に残しておくことは、コストをかけずにできる備えです。

論点2:長周期地震動と免震・高層建築物

木造住宅よりも長い固有周期を持つ超高層建築物や免震建築物は、長周期の地震動の影響を受けることから、長周期地震動が発生しやすい軟弱な堆積層で覆われている地域では特に注意が必要となる。
(出典:吉田町耐震改修促進計画)

国は南海トラフ巨大地震について、長周期地震動対策が必要な区域をSZ1(建設時の想定を上回る可能性が非常に高い地域)、SZ2(高い地域)、SZ3(ある地域)に区分しています。町は「特に対策が必要とされるSZ1及びSZ2の区域内の建築物に対するフォローアップを県と継続的に行い、所有者等に対し詳細診断や対策工事の啓発を行う」としています。

吉田町がどの区域に該当するかは計画本文では図で示されており、テキストからは特定できませんでした。該当区域を確認したい場合は、都市環境課(0548-33-2161)に「長周期地震動対策の対象区域について、町内はSZ何に該当しますか」と問い合わせてください。

論点3:エレベーターの支持部材と釣合いおもり

町は、県・関係団体と連携して、エレベーターの支持部材の耐震化、釣合いおもりの脱落対策やエスカレーター落下防止対策などの防災対策改修や、地震時のエレベーターの運行方法や閉じこめられた場合の対処方法について周知・啓発を図るとともに、エレベーター及びエスカレーターの所有者や管理者に対して定期検査等に併せ、改善を促す取組を促進する。
(出典:吉田町耐震改修促進計画)

平成30年6月の大阪府北部地震では、多くのビルでエレベーターの緊急異常停止により閉じ込め事案が発生しました。

大規模修繕の議案を組むときに、エレベーターの地震時管制運転装置や釣合いおもりの脱落防止対策を「同時に検討する項目」として並べておくと、後年の追加工事を避けられます。エレベーターは専門業者の領域ですが、足場を組むタイミングと合わせられる工事があるかどうかは、修繕委員会で一度確認しておく価値があります。

あわせて:非構造部材と屋外広告物

地震によって瓦屋根、窓ガラス、外装材等(非構造部材等)や屋外広告物が落下すると、通行人等に死傷者が出るおそれがあるだけではなく、道路通行の妨げとなり避難や救助・消火活動にも影響を及ぼす。
(出典:吉田町耐震改修促進計画)

マンションで言えば、外壁タイルの浮き、モルタルの剥離、看板・アンテナの取り付け金物の腐食がこれに該当します。大規模修繕の打診調査は、まさにこの落下防止のための調査です。


応急仮設住宅は40戸足りない — だから「在宅避難できる建物」が要る

吉田町の計画で、私がもっとも重く受け止めた数字がこれです。

吉田町第4次地震被害想定における建設型応急仮設住宅の必要戸数は約490戸、応急建設住宅建設可能戸数は450戸であり、新規建設予定地の確保は至難の業である。
(出典:吉田町耐震改修促進計画)

必要490戸に対して、建設できるのは450戸。差し引き約40戸分の行き場がありません。 面積20.73㎢という県内でも小さい町で、仮設住宅を建てる土地を新たに確保するのは「至難の業」だと町自身が書いています。

想定される被害は次のとおりです。

区分 南海トラフ巨大地震 相模トラフ地震(首都直下地震)
規模 マグニチュード9.0程度 マグニチュード8.2程度
発生頻度 100〜150年 約2,300年
全壊・焼失棟数 約2,200棟 約0棟
死者数 約40人 約0人

(出典:吉田町耐震改修促進計画、吉田町第4次被害想定)

「命を守る」から「命をつなぐ」へ

だからこそ、町の計画の基本方針はこうなっています。

「地震による住宅・建築物の倒壊から、一人でも多くの県民の命を守り、助かった命をつなぐ」

そして、この方針の技術的な意味を、計画は極めて明確に説明しています。

建築基準法は最低限の基準であり、大地震に対して「倒壊しない」が、「損傷は許容する」ものであるため、被災後の継続使用を担保するものではない。特に、経済設計を追及した構造設計の場合は、耐震性に余力がないことが多いため、被災後の継続使用が困難となる可能性がある。そのため、大地震でも損傷を抑え継続使用するためには、余裕を持った耐震性能を確保する必要がある。
(出典:吉田町耐震改修促進計画)

この一節は、マンション管理組合の総会でそのまま読み上げる価値があります。

「うちは新耐震だから大丈夫」という認識は、半分正しく、半分足りません。新耐震基準が保証しているのは「倒壊しない」ことであって、「地震のあとも住み続けられる」ことではないからです。そして吉田町では、仮設住宅が40戸足りない。倒壊しなくても住めなくなれば、行き場がありません。

経年劣化が耐震性能を下げるという指摘

計画はさらに、こう書いています。

新築時は耐震性能が確保されていても、時間の経過とともに、ひび割れや変形、老朽化などの経年劣化による耐震性能の低下が懸念されるため、定期的な調査により劣化状況を把握し、必要な対策を講じるなど適切なメンテナンスにより、安全性確保を目指す。
(出典:吉田町耐震改修促進計画)

今回の計画では、対象建築物の区分に「経年劣化が進んだ建築物」が新たに加えられました。これまでの計画は昭和56年5月以前の旧耐震基準の建物だけを対象としていましたが、令和8年度からの計画は違います。

これは、新耐震のマンションであっても、劣化が進めば耐震性能が下がるという前提に、行政が公式に立ったということです。大規模修繕は美観のための工事ではなく、耐震性能の維持・回復のための工事である。この位置づけを、町の計画が裏づけてくれています。

総会で「なぜ12年周期で外壁を直すのか」と問われたとき、この一文ほど説得力のある根拠はないと私は思います。


固定資産税・都市計画税:吉田町の税率と「対象外」の落とし穴

税の話を正確に整理します。

吉田町の税率

税目 税率 備考
固定資産税 1.4% 標準税率と同じ
都市計画税 0.15% 制限税率0.3%の半分

(出典:吉田町 固定資産税・都市計画税、令和8年4月1日作成)

都市計画税0.15%は、この連載で扱ってきた自治体の中で最も低い水準です。参考までに、湖西市は0.2%でした。制限税率(上限)は0.3%ですから、吉田町はその半分に抑えています。

不動産オーナーの方にとっては、保有コストが相対的に低いということです。ただし、次の点に注意が必要です。

減額されるのは固定資産税だけで、都市計画税は減額されません

吉田町は、耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修のいずれの減額措置についても、同じ注記を繰り返しています。

なお、都市計画税は減額されません。
(出典:吉田町 固定資産税・都市計画税)

これは総会説明での事故につながりやすいポイントです。「工事をすれば来年の税金が半分になる」と説明してしまうと、実際には都市計画税分が残るため、通知書を見た組合員から「話が違う」と言われます。

正確な説明は「固定資産税額の◯分の1が減額されます。都市計画税は減額の対象外です」です。1文字の違いですが、信頼を左右します。

3つの減額措置の要件を並べて比較する

措置 減額割合 対象床面積 費用要件 建物の要件 賃貸住宅
住宅耐震改修 1/2(長期優良住宅の認定を受けて改修した場合は2/3) 1戸あたり120㎡相当分まで 1戸あたり50万円超 昭和57年1月1日以前から所在 記載なし
バリアフリー改修 1/3 1戸あたり100㎡相当分まで 補助金等を除く自己負担額が50万円超 新築から10年以上経過 除く
省エネ改修 1/3(長期優良住宅の認定を受けて改修した場合は2/3) 1戸あたり120㎡相当分まで 補助金等を除く自己負担額が60万円超 平成26年4月1日以前から所在 除く

(出典:吉田町 固定資産税・都市計画税)

いずれも改修工事完了後3か月以内に町税務課へ申告が必要です。そして適用は1回限り、減額されるのは改修工事が完了した翌年度分に限るという点も共通しています。

省エネ改修は「窓の改修」が必須です

大規模修繕との関係で、もっとも見落とされやすいのがここです。

※窓の改修工事を必ず行うことが必要です。
(出典:吉田町 固定資産税・都市計画税)

対象工事の例として町が挙げているのは、次の4つです。

  • 窓の改修工事(ガラスの交換や内窓の新設又は交換、サッシの交換など)
  • 窓の改修工事と合わせて行う床の断熱工事
  • 窓の改修工事と合わせて行う天井の断熱工事
  • 窓の改修工事と合わせて行う外壁の断熱工事

つまり、外壁の断熱工事だけを行っても、この減額措置は使えません。 窓の改修とセットである必要があります。

マンションの窓・サッシは、標準管理規約上は共用部分ですが、専用使用権が設定されているのが通例です。大規模修繕でサッシ改修を計画に含める管理組合であれば、各区分所有者が個別にこの減額を申告できる可能性があります。ただし賃貸住宅は除かれるため、賃貸に出している住戸のオーナーは対象外です。

この整理は複雑なので、サッシ改修を計画に含める場合は、税務課資産税部門(0548-33-2108)に「分譲マンションの共用部分サッシ改修について、各区分所有者が省エネ改修の減額を申告できるか」と、工事の前に確認されることをお勧めします。

免税点が令和9年度から引き上げられます

もうひとつ、賃貸オーナーの方に関係する変更です。

免税点:同一人が所有する土地・家屋・償却資産それぞれの課税標準額の合計が次の金額に満たない場合は、固定資産税は課税されません。土地…30万円未満/家屋…20万円未満(令和9年度分から30万円未満)/償却資産…150万円未満(令和9年度分から180万円未満)
(出典:吉田町 固定資産税・都市計画税)

家屋の免税点が20万円から30万円へ、償却資産が150万円から180万円へ引き上げられます。賃貸物件の設備を償却資産として申告している方は、令和9年度から課税対象が変わる可能性があります。償却資産は毎年1月1日現在の状況を1月末日までに町へ申告する必要がありますので、あわせてご確認ください。


静岡県のマンション管理士無料派遣は受付10件 — 9月に動く理由

町の補助が薄い分、県が用意している支援は使い切りたいところです。とくにこれは、費用がゼロで、専門家が管理組合に直接来てくれる制度です。

項目 内容
事業名 令和8年度マンション管理組合活動活性化支援事業(マンション管理士の無料派遣)
内容 マンションの管理に当たって困っている事項について、県内のマンション管理組合に専門家(マンション管理士)を派遣し、業務補助及び助言等を行う
費用 無料
受付件数 10件(上限に達した時点で申込終了)
派遣回数 各管理組合2回まで
申込期限 令和8年11月14日(土曜)まで
派遣期限 令和9年1月31日(日曜)まで
申込先 一般社団法人静岡県マンション管理士会(メール:t_gotoh@tx.thn.ne.jp/ファクス:0544-27-6561)

(出典:静岡県 マンションの管理。派遣業務の概要(PDF)、申込書(Word))

「県内で10件」という数字の意味

静岡県には約370万人が住み、分譲マンションは相当数あります。その中で受付件数は10件です。県は「受付件数が上限に達した時点で申込を終了させていただきます」「申込多数の場合、派遣先を調整させていただくことがあります」と明記しています。

申込期限は11月14日ですが、期限まで待つ理由はありません。 定数に達し次第、早期終了すると県が書いています。

何を相談すればいいか

吉田町の管理組合であれば、私なら次の2点を相談テーマにします。

  1. 管理計画認定の取得に向けて、長期修繕計画と管理規約に何が足りないか(県への申請が前提になるため、県の基準に詳しい専門家の助言が効く)
  2. 修繕積立金の水準が、認定基準(20階未満・延床5,000㎡未満なら235円/㎡・月)に対してどの程度不足しているか

派遣は2回まで使えます。1回目で現状の棚卸し、2回目で総会議案の詰め、という組み立てが現実的です。

県のマンション管理セミナーも開催されています

あわせて、令和8年度のマンション管理セミナーが県内各地で予定されています。吉田町から通える範囲では次のとおりです。

開催地 開催日 会場
磐田市 令和8年8月29日(土曜日) 磐田商工会議所
三島市 令和8年9月12日(土曜日) 三島市役所
静岡市 令和8年11月予定 ―
富士市 令和9年2月予定 ―
浜松市 令和9年2月予定 ―

(出典:静岡県 マンションの管理)

この記事の公開時点で直近は9月12日(土)の三島市です。11月の静岡市開催は、吉田町からの距離を考えると最も参加しやすい回になりそうです。日程が確定次第、県のページで確認してください。


区分所有法の改正(令和7年法律第47号)で何が変わるか

管理組合にとって、2026年度に押さえておくべき法改正があります。

令和7年5月30日に、「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律(令和7年法律第47号)」が公布され、同年11月28日に一部施行された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成12年法律第149号)」において、新たに「マンション管理適正化支援法人」の登録制度が創設されました。
(出典:静岡県 マンションの管理)

支援法人の登録主体も「町域は県」です

支援法人の業務区域 登録主体
市の区域 市
町の区域 県

そして静岡県は、こう明記しています。

静岡県は、現段階では、登録制度は実施していません。

つまり、吉田町の管理組合が「支援法人」の支援を受けられる体制は、令和8年9月時点ではまだ整っていません。これは県を責める話ではなく、制度が始まったばかりだからです。ただし、今後動きが出る領域として、県のページを定期的に確認しておく価値があります。

標準管理規約も改正されています

国土交通省は令和7年にマンション標準管理規約を改正し、県がその紹介パンフレットを掲載しています(マンション標準管理規約改正パンフレット(PDF))。

管理規約が分譲時のまま、あるいは10年以上見直されていない管理組合は、管理計画認定の基準(緊急時等における専有部分の立入り、修繕等の履歴情報の保管、財務・管理情報の提供の3項目の規定)を満たしていない可能性が高いです。規約改正には特別決議(区分所有者および議決権の各4分の3以上)が必要ですから、認定を目指すなら早めの準備が要ります。

注意喚起:管理会社を装った勧誘

県は消費者庁からの注意喚起も掲載しています。マンション管理会社の関係者を装い、マンション全体のインターネット接続サービスが切り替わるかのように告げて契約させる事業者に関するものです(消費者庁からの注意喚起(PDF))。

大規模修繕の周辺でも、同種の手口はあります。理事会に諮られていない「管理組合の名前を使った案内」が届いたときは、まず管理会社に事実確認をしてください。


工法でコストを下げる:足場・ロープアクセス・ハイブリッド

ここまで見てきたとおり、吉田町では大規模修繕の費用を町の補助金で下げる余地は限られています。町自身が「充足しているとは言えない」と書いているとおりです。

では、どこでコストを下げるか。私が一貫してお伝えしているのは、工事の構成そのものを見直すという方法です。

3つの工法の使い分け

工法 内容 向いている条件
通常足場工法 建物の全周に仮設足場を組んで施工する従来型 全面的にタイル補修・外壁改修が必要/複雑な形状/低〜中層
ロープアクセス工法(無足場工法) 産業用ロープで施工者が屋上から降下し、外側から施工する 足場の架設が難しい/工期を短縮したい/居住者の生活影響を抑えたい/部分補修が中心
ハイブリッド工法 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける 大規模・複雑な物件で、総合的にコストを最適化したい

大規模修繕の総工事費に占める仮設足場の割合は、一般に15〜20%程度です。ここを部分的にロープアクセスへ置き換えられれば、その分が直接効いてきます。

吉田町の立地で効いてくる論点

吉田町は駿河湾と大井川に面した、海に近い町です。海に近い立地の建物は、塩害による劣化の進行が内陸より速い傾向があります。手すり・避難ハッチ・アンテナ支持金物などの鉄部、外壁の目地シーリング、屋上の防水立ち上がりは、点検の頻度を上げる価値があります。

一方で、ロープアクセス工法は部位を限定した点検・補修に強いという特性があります。「12年に1度の大規模修繕で全部やる」のではなく、「劣化の速い部位だけを短いサイクルで手当てし、大規模修繕の周期を延ばす」という考え方が成立します。これは長期修繕計画上の総コストを下げる方向に働きます。

また、吉田町は「シーガーデンシティ構想」を掲げ、海岸部のまちづくりを進めています。町の景観が変わっていく中で、建物の外観を良好に保つことは、賃貸の競争力にも売却時の評価にも直結します。

ロープアクセス工法の安全基準や技術的な解説は、ロープアクセスドットコムで詳しくまとめています。工法の比較検討に入る前に、一度ご覧いただくと理解が早いと思います。

弊社について

株式会社明誠は、通常足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3つを、建物の条件に応じて提案できる会社です。日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズを展開しており、塗装・防水・タイル・電気・看板工事など各分野の専門職が加盟しています。専門職が直接施工に入る体制のため、中間コストを抑えた価格をご提示できます。

サービスの詳細はロープアクセス工法のご紹介、管理組合・オーナー向けのご相談はお問合せフォームからお願いいたします。


吉田町の管理組合が9月中にできる3つのこと

制度の話を並べても、動かなければ何も変わりません。今月中に実行できることを3つに絞ります。

1. 電話を2本かける(所要15分)

1本目:静岡県 住まいづくり課(054-221-3084)

聞くこと:
– 「吉田町のマンションですが、管理計画認定の申請は県で受け付けていただけますか」
– 「事前確認適合証なしの直接申請の場合、手数料は28,100円という理解で合っていますか」
– 「助言・指導を受けた管理組合として長寿命化促進税制を使う経路は、町域ではどのように取り扱われますか」

2本目:吉田町役場 税務課資産税部門(0548-33-2108)

聞くこと:
– 「マンション長寿命化促進税制に対応する町の条例はありますか。減額割合は何分の1ですか」
– 「分譲マンションの共用部分サッシ改修について、各区分所有者が省エネ改修の減額を申告できますか」
– 「申告に必要な書類の一覧をいただけますか」

3本目(敷地にブロック塀がある場合):吉田町役場 都市環境課(0548-33-2161)

聞くこと:
– 「マンションの敷地の道路沿いブロック塀は、ブロック塀等耐震化促進事業の対象になりますか」
– 「令和8年度の予算枠はまだ残っていますか」
– 「補助金の代理受領はブロック塀の事業でも使えますか」

2. マンション管理士の無料派遣に申し込む(所要30分)

申込書は静岡県のページからWordファイルでダウンロードできます。宛先は一般社団法人静岡県マンション管理士会(メール:t_gotoh@tx.thn.ne.jp/ファクス:0544-27-6561)です。

受付10件・先着であることを、申込の優先順位を決めるときに思い出してください。

3. ブロック塀の5項目点検を理事会で回す(所要1時間)

敷地内の塀を歩いて、5項目をチェックします。写真を撮って、延長をメジャーで測る。これだけで、補助金を使えるかどうかの見当がつきます。

  • 基礎の根入れはあるか
  • 高さは2m以下か
  • 控壁はあるか
  • 傾き・ひび割れはないか
  • 鉄筋は入っているか

必ず着工前に申請してください。 工事を始めてしまうと補助の対象外になります。


総会議案書にそのまま書ける文案

理事の方が総会資料を作るときに使える文案を置いておきます。数字と出典はすべて本記事で確認済みのものです。

議案:マンション管理計画認定の取得に向けた検討について

本管理組合が所在する吉田町は「町」であるため、マンション管理計画認定制度の認定主体は静岡県となります(マンション管理適正化法に基づく制度。市・特別区は当該市区が、町村部は都道府県が認定を行います)。

静岡県は令和8年4月1日に認定申請手数料を改定しており、公益財団法人マンション管理センターの事前確認適合証がある場合は4,000円、ない場合は28,100円です(長期修繕計画が1つの場合)。

認定を取得した場合の効果として、(1) マンション長寿命化促進税制による固定資産税の減額(築20年以上・10戸以上、2回目以降の長寿命化工事が対象。減額割合は市町村の条例で1/2〜1/6の範囲)、(2) 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資の金利が全期間0.2%引き下げ、(3) 【フラット35】の当初5年間の金利が0.25%引き下げ、といった実利があります。

ついては、令和9年3月31日を期限とするマンション長寿命化促進税制の適用を視野に、認定取得の可否を検討するため、静岡県が実施するマンション管理士の無料派遣(令和8年度・県内受付10件・各組合2回まで・申込期限 令和8年11月14日)への申込みを理事会に一任いただきたく、承認をお願いいたします。

議案:敷地内ブロック塀の点検および撤去補助の申請について

吉田町は、建築基準法に規定する道路沿いに存在する高さ60cm以上の危険なブロック塀等の撤去工事に対し、「撤去工事金額の2/3」と「延長×20,000円/m×2/3」のいずれか少ない額(上限133,000円)を補助しています。

本管理組合の敷地内ブロック塀について、静岡県作成「ブロック塀の点検と改善」に基づく5項目(基礎の根入れ/高さ2m以下/控壁の有無/傾き・ひび割れ/鉄筋の有無)の点検を実施したところ、〇項目が基準を満たしていないことを確認しました。

補助制度は予算に達した時点で受付を終了するとされており、また撤去工事の着手前に申請が必要です。ついては、吉田町都市環境課への事前相談および交付申請を理事会において進めることの承認をお願いいたします。

説明用の一文:なぜ周期的な大規模修繕が必要か

吉田町耐震改修促進計画(令和8年度〜令和12年度)は、「建築基準法は最低限の基準であり、大地震に対して『倒壊しない』が、『損傷は許容する』ものであるため、被災後の継続使用を担保するものではない」と明記しています。

また同計画は、令和8年度から対象建築物の区分に「経年劣化が進んだ建築物」を新たに加え、「新築時は耐震性能が確保されていても、時間の経過とともに、ひび割れや変形、老朽化などの経年劣化による耐震性能の低下が懸念される」として、定期的な調査と適切なメンテナンスの必要性を示しています。

加えて同計画によれば、吉田町第4次地震被害想定における建設型応急仮設住宅の必要戸数は約490戸に対し、建設可能戸数は450戸であり、町自身が「新規建設予定地の確保は至難の業」と記載しています。地震後の避難生活は在宅避難が基本とされており、建物が住み続けられる状態を保つことは、居住者の生活の継続そのものに直結します。

本管理組合が周期的な大規模修繕を計画的に実施することは、資産価値の維持だけでなく、災害後の生活継続の観点からも合理性があると考えます。


よくある質問(FAQ)

Q1. 吉田町のマンションでも、管理計画認定は取れますか。
A. 取れます。ただし申請先は吉田町役場ではなく、静岡県くらし・環境部建築住宅局住まいづくり課(054-221-3084)です。市以外の町村部は都道府県が認定を行うためです。(出典:静岡県 マンションの管理)

Q2. 認定申請の手数料はいくらですか。
A. 令和8年4月1日から、長期修繕計画が1つの場合で、公益財団法人マンション管理センターの事前確認適合証がある場合は4,000円、ない場合は28,100円です。長期修繕計画が2以上ある場合は、それぞれ1,800円/16,200円が計画数に応じて加算されます。認定の更新も同額です。

Q3. 吉田町に、大規模修繕そのものに使える町の補助金はありますか。
A. 令和8年9月2日時点で、共用部分の大規模修繕に直接充てられる町独自の補助金は確認できませんでした。町の補助でマンションの敷地に関係し得るのは、ブロック塀等耐震化促進事業(撤去工事金額の2/3、上限133,000円)です。TOUKAI-0+の各メニューは木造住宅が対象のため、RC造マンションは対象外です。

Q4. マンション長寿命化促進税制で、吉田町の減額割合は何分の1ですか。
A. 国の制度は「1/2〜1/6の範囲内」と定めており、実際の割合は市町村の条例で決まります。吉田町のホームページには令和8年9月2日時点で該当ページが確認できませんでした。吉田町役場税務課資産税部門(0548-33-2108)へお問い合わせください。

Q5. 築15年で1回目の大規模修繕を控えています。長寿命化促進税制は使えますか。
A. この税制は「築20年以上かつ10戸以上」で、かつ「長寿命化工事を過去に1度以上実施していて、令和5年4月1日〜令和9年3月31日の間に2回目以降の長寿命化工事を完了していること」が要件です。1回目の工事では要件を満たしません。ただし、今回の工事を外壁塗装等・床防水・屋根防水の3工事を含む形で実施しておくと、次回(2回目)に要件を満たしやすくなります。工事の記録と証明書類は保管してください。

Q6. 都市計画税も減額されますか。
A. 減額されません。吉田町は耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修のいずれについても「都市計画税は減額されません」と明記しています。吉田町の都市計画税率は0.15%です。

Q7. 大規模修繕でサッシを交換します。省エネ改修の減額は使えますか。
A. 省エネ改修の減額は「窓の改修工事を必ず行うこと」が要件なので、サッシ交換はその中心になります。ただし、平成26年4月1日以前から所在する住宅であること、補助金等を除く自己負担額が60万円超であること、床面積が40㎡以上240㎡以下であること、そして賃貸住宅は除かれることに注意が必要です。共用部分の一括工事について各区分所有者が申告できるかは、事前に税務課資産税部門(0548-33-2108)にご確認ください。

Q8. マンション管理士の無料派遣は本当に無料ですか。
A. 無料です。静岡県の令和8年度マンション組合活動活性化支援事業として、一般社団法人静岡県マンション管理士会に委託されています。受付件数は県内で10件、各管理組合2回まで、申込期限は令和8年11月14日(土)、派遣期限は令和9年1月31日(日)です。定数に達し次第、早期に受付終了となります。

Q9. ロープアクセス工法は、どんなマンションで効果が出ますか。
A. 足場の架設が難しい立地、工期を短縮したい場合、居住者の生活影響を抑えたい場合、部分的な補修が中心の場合に効果が出やすいです。逆に、全面的なタイル張替えなど作業量が多い工事では、足場のほうが合理的なこともあります。だからこそ、部位ごとに使い分けるハイブリッド工法という選択肢があります。技術情報はロープアクセスドットコムをご覧ください。

Q10. 吉田町のマンションは、地震にどのくらい備えるべきですか。
A. 吉田町耐震改修促進計画によれば、南海トラフ巨大地震(マグニチュード9.0程度、発生頻度100〜150年)で全壊・焼失棟数は約2,200棟、死者数は約40人と想定されています。同計画は、建設型応急仮設住宅の必要戸数約490戸に対し建設可能戸数は450戸で「新規建設予定地の確保は至難の業」としており、在宅避難が基本になります。倒壊を防ぐだけでなく、地震後も住み続けられる状態を保つことが重要だと、町自身が計画に書いています。


この記事のポイントまとめ

  • 吉田町は「町」のため、マンション管理計画認定の申請先は静岡県住まいづくり課である
  • 認定申請手数料は令和8年4月1日に改定され、事前確認あり4,000円・なし28,100円になった
  • 修繕積立金の認定基準は、20階未満・延床5,000㎡未満で235円/㎡・月以上と高い水準
  • 町のブロック塀撤去補助は2/3・上限133,000円、延長約10mで上限に達する
  • TOUKAI-0は令和7年度で終了し、令和8年度からTOUKAI-0+に。木造住宅が対象でマンションは対象外
  • 外部補強減災化助成の補助率5分の4は、「居住したまま外部から工事する」思想への行政の評価
  • 町は耐震改修促進計画で「助成制度は財政的な理由等により充足しているとは言えない」と明記
  • 都市計画税率0.15%は制限税率の半分だが、各種減額措置の対象外である点に注意
  • 応急仮設住宅は必要約490戸に対し建設可能450戸。在宅避難を前提とした建物性能が要る
  • 静岡県のマンション管理士無料派遣は県内受付10件・先着。申込期限は令和8年11月14日
  • 町の補助が薄い自治体でこそ、工法選択によるコスト最適化の効果が大きい

出典・参考資料

吉田町(公的一次情報)

静岡県

国土交通省

関係団体

問い合わせ先一覧

窓口 電話 内容
吉田町役場 都市環境課 0548-33-2161 ブロック塀、耐震、都市計画
吉田町役場 税務課(資産税部門) 0548-33-2108 固定資産税・都市計画税の減額申告
吉田町役場 税務課 0548-33-2109 税務全般
静岡県 住まいづくり課 054-221-3084 マンション管理計画認定(町域)
日本マンション管理士会連合会 相談ダイヤル 03-5801-0858 長寿命化税制・認定制度(月〜土 10:00〜17:00)

免責事項:本記事は令和8年(2026年)9月2日時点で公開されている情報に基づいて作成しています。制度の内容・金額・期限・受付状況は変更される場合があります。実際に申請される際は、必ず各窓口の公式情報および担当部署への確認をお願いいたします。本記事の情報に基づく判断について、当社は責任を負いかねます。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円および静岡県内で、ロープアクセス工法・通常足場工法・ハイブリッド工法の3つを建物の条件に応じて提案できる改修会社です。日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板工事など各分野の専門職が加盟しています。

関連リソース

最終更新:2026年9月2日

湖西市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

湖西市には、マンションが7棟しかありません

株式会社明誠の本間です。

この連載では、静岡県内の市や町を1つずつ取り上げて、分譲マンションの大規模修繕で使える補助金・税制を、市の一次情報だけを頼りに整理してきました。浜松市、磐田市、掛川市、袋井市と西へ東へ回ってきて、今回はいよいよ県の最西端、湖西市です。

湖西市の資料を開いて、私は少し手が止まりました。

湖西市が公表している「湖西市マンション管理適正化推進計画」には、こう書かれています。

本市には、令和6年度末時点で7棟のマンションがあり、そのうち、4棟が建築後20年を超えています。

(出典:湖西市マンション管理適正化推進計画)

7棟。しかも、計画書には7棟すべての竣工年・階数・戸数を並べた一覧表と、位置図まで載っています。

浜松市や静岡市のように何百棟とある都市では、行政の資料は「棟数の推計」で終わります。湖西市は違う。市が、市内のマンションを1棟ずつ把握したうえで計画を立てている。これはつまり、この記事を読んでいるあなたの管理組合も、湖西市の計画のなかに名前入りで載っているということです。

その前提で、以下を読み進めてください。今回は一般論の割合を減らして、湖西市の資料に実際に書いてあることと、書いていないことの線引きに集中します。


湖西市のマンション7棟|築年数の分布から見えること

市の計画に載っている7棟を、名称を伏せて竣工年順に並べ直すと、こうなります。

竣工年 2026年時点の築年数 階数 戸数
1986年 築40年 5階 45戸
1991年 築35年 10階 39戸
1995年 築31年 5階 12戸
2003年 築23年 5階 38戸
2007年 築19年 10階 88戸
2009年 築17年 9階 35戸
2017年 築9年 7階 46戸

(出典:湖西市マンション管理適正化推進計画より作成)

合計303戸。1棟あたり平均43戸です。

この表から、私が実務者として読み取ることを3つ挙げます。

1つ目。戸数が小さい。 平均43戸、最小は12戸です。首都圏の感覚だと「小規模マンション」に分類されます。後で詳しく書きますが、戸数が小さいほど、1戸あたりの工事費負担は重くなります。同じ5,000万円の工事でも、150戸なら1戸33万円、40戸なら1戸125万円です。だからこそ、工法選定による削減が効いてくる。

2つ目。高層が混ざっている。 7棟中、9階建て以上が3棟あります。地方都市のマンション群としては珍しい構成です。仮設足場は高さが上がるほど1平方メートルあたりの単価も、架設・解体の日数も増えます。10階建ての建物にぐるりと足場を架けるのと、5階建てに架けるのとでは、費用の桁が違ってきます。

3つ目。1棟には「リゾート」の区分が付いている。 市の計画表には、リゾートマンションかどうかを示す欄があります。リゾートマンションの管理組合には固有の難しさがあります。区分所有者の多くが市外・県外に住んでいるため、総会の定足数を満たすのに時間がかかる。委任状・議決権行使書の回収に、通常のマンションの倍近い期間を見ておく必要があります。もしお心当たりがあるなら、大規模修繕の議案は、通常より半年ほど前倒しでスケジュールを組むことをお勧めします。

築20年を超えた4棟のうち、築31年と築35年、築40年の3棟は、すでに2回目・3回目の大規模修繕の周期に入っています。


湖西市のマンション管理計画認定制度|手数料は無料、独自基準もなし

まず、湖西市で最も条件が良い制度から紹介します。マンション管理計画認定制度です。

湖西市は、マンション管理適正化法の改正を受けて「湖西市マンション管理適正化推進計画」(計画期間:令和6年10月〜令和15年9月)を策定し、市として認定事務を行っています。計画目標は「市内全てのマンションの管理計画の認定」。7棟全部です。

湖西市の条件を、市のページから抜き出します。

項目 湖西市の内容
認定申請手数料 無料
市独自の上乗せ基準 設けていない(国の基準どおり)
必要書類 (公財)マンション管理センター発行の事前確認適合証
申請ルート マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービス経由
窓口 建築住宅課 建築住宅係 053-576-4549

(出典:湖西市マンション管理適正化推進計画の策定)

この2つ、地味に見えて大きい話です。

「市に支払う手数料は無料」。 自治体によっては数千円から3万円弱の手数料を取ります。この連載で回った静岡県内の町のなかにも、28,100円という設定のところがありました。湖西市は0円です。

「湖西市独自の基準は設けていません」。 これは、国が示した認定基準(管理者の設置、集会の年1回以上の開催、管理規約の適切な作成、長期修繕計画の期間30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれること、修繕積立金の額が明確に定められていること、など)をそのまま満たせばよい、という意味です。市の独自要件を別途調べる手間がかかりません。国の様式のまま準備を進められます。

ただし、市に払う費用が0円であることと、認定にお金がかからないことは別です。(公財)マンション管理センターのシステム利用料と事前確認審査料は別途かかります。合計で2万円前後を見ておくと、理事会での説明がぶれません。

認定を取ると何が得られるか。市のページは4つ挙げています。区分所有者の管理意識が高く保たれること、市場で適正管理として評価されること、地域価値の維持向上、そして──

  • 住宅金融支援機構の【フラット35】およびマンション共用部分リフォーム融資の金利引き下げ
  • マンション長寿命化促進税制の適用(各区分所有者が翌年度支払う固定資産税が減額される)

税制については後述しますが、認定単体でもフラット35と共用部分リフォーム融資の金利優遇という実利がある点は、総会で説明するときに効きます。「税制に間に合わなかったら無駄になる」わけではない、ということです。

認定制度についての相談は、一般社団法人日本マンション管理士会連合会が相談ダイヤル(03-5801-0858、月〜土10時〜17時、祝日・年末年始を除く)を設けています。市の窓口に電話する前の予習として、こちらを使う手もあります。


湖西市の耐震補助は「木造住宅だけ」──では、マンションは?

ここからが、この記事で一番慎重に書かなければならない部分です。

湖西市は令和8年4月に「湖西市耐震改修促進計画(第4期・令和8年度〜令和12年度)」を改訂しました。この計画の第2章に、市の補助制度の一覧表(表2-1「補助制度の概要(令和8年4月現在)」)があります。

そこに載っているのは、次の3つだけです。

事業 対象建築物 補助率(国・県・市)
木造住宅 耐震改修事業(補強計画一体型) 昭和56年5月以前・耐震評点1.0未満を1.0以上に 1/2・1/4・1/4
木造住宅 除却事業 昭和56年5月以前・耐震評点1.0未満 1/2・1/4・1/4
木造住宅 移転事業 同上・高齢者等世帯に限る ―

(出典:湖西市耐震改修促進計画(令和8年4月))

すべて「木造住宅」です。 鉄筋コンクリート造の分譲マンションを対象にした耐震診断補助は、この表に載っていません。

一方で、同じ計画の実績表(表1-3)には、こういう行があります。

事業名 H13〜R2 R3 R4 R5 R6 合計
既存建築物耐震診断事業(建築物の耐震診断) 10 0 0 0 0 10

「既存建築物耐震診断事業」──これは木造住宅ではなく、木造住宅以外の建築物の耐震診断に対する補助事業の名称です。掛川市や袋井市の計画には、この事業が補助率3分の2(国1/3+県1/6+市1/6)で現行制度として載っていました。

湖西市の計画では、実績表には出てくるのに、令和8年4月現在の補助制度一覧表には出てこない。 そして直近4年間(令和3〜6年度)の実績は0件です。

ここで私が言えるのは、ここまでです。

  • 「湖西市にはマンションの耐震診断補助がない」と断定はできません。表に載っていないだけで、要綱としては生きている可能性があります。
  • 「使える」と断定することもできません。市が公表している令和8年4月現在の支援策一覧に載っていない以上、それは推測になります。

推測で埋めるくらいなら、電話1本かけたほうが早い。 建築住宅課 建築住宅係(053-576-4549)に、次の3点をそのまま読み上げてください。

  1. 「湖西市耐震改修促進計画の実績表にある既存建築物耐震診断事業は、令和8年度も申請を受け付けていますか」
  2. 「対象に分譲マンション(鉄筋コンクリート造の共同住宅)は含まれますか。含まれる場合、補助率と限度額を教えてください」
  3. 「申請者は管理組合でよいですか。それとも区分所有者個人になりますか」

そして最後に、この一言を添えてください。

「工事はこれからです。まだ何も契約していません。」

耐震関係の補助は、着手前の申請が原則です。工事が始まってから電話をすると、その時点で対象外が確定します。「これからです」と伝えるだけで、窓口の答えが変わります。


令和8年度から「TOUKAI-0」は「TOUKAI-0+」に変わりました

もうひとつ、2026年度ならではの話をひとつ。

静岡県が平成13年度から続けてきた木造住宅の耐震化プロジェクト「TOUKAI-0(東海ゼロ)」は、令和7年度をもって終了しました。令和8年度からは、新たに「TOUKAI-0+(プラス)」総合支援事業として継続されています。

(出典:湖西市耐震改修促進計画(令和8年4月))

25年続いた県の看板事業が名前を変えた年です。窓口では制度の呼び名が切り替わった直後で、市のパンフレット類も更新の途中かもしれません。古い年度の資料をお持ちの管理組合は、条件が変わっていないか一度確認する価値があります。

なお、この「+(プラス)」が何を指すのかは、湖西市の計画に基本方針として書かれています。

「地震による住宅・建築物の倒壊から、一人でも多くの市民の命を守り、助かった命をつなぐ」

「命を守る」に「命をつなぐ」が足された、というのが今回の改訂の骨格です。地震後の避難生活の基本は在宅避難である。だから、倒壊しないだけでなく、住み慣れた自宅で生活を継続できる程度に被害を抑える耐震性能が要る──国が令和7年7月に公表した「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」を受けた考え方です。

これはマンションの大規模修繕の話にも、そのままつながります。地震後に住み続けられるかどうかを分けるのは、躯体の強さだけではありません。給排水管が生きているか、エレベーターが復旧できるか、外壁のタイルが落ちて出入口が塞がっていないか。そのほとんどが、共用部の維持管理の話です。


非木造住宅の耐震化率96.9%|湖西市には、まだ252戸残っている

湖西市の住宅の耐震化状況を、計画の表1-2から整理します。

区分 昭和56年以降 昭和56年以前 住宅数 耐震性のある住宅 耐震化率
木造 10,720戸 3,860戸 14,580戸 12,732戸 87.3%
非木造 7,506戸 874戸 8,380戸 8,128戸 96.9%
合計 18,226戸 4,734戸 22,960戸 20,860戸 90.9%

(出典:湖西市耐震改修促進計画(令和8年4月)、令和5年住宅・土地統計調査)

この連載で、私は掛川市(非木造99.1%)と袋井市(同99.1%)について、「その市では耐震訴求はもう刺さらない」と正直に書きました。

湖西市は少し違います。 96.9%。8,380戸のうち、耐震性が確認できていない住戸が252戸残っている計算になります。昭和56年5月以前に建てられた非木造住宅874戸のうち、耐震性があるとされたのは622戸。差の252戸が、まだ課題として残っている。

冒頭の7棟のうち、昭和56年5月以前に竣工したマンションはありません(最も古い1棟が1986年=昭和61年築です)。ですから、湖西市の分譲マンション7棟は、いずれも新耐震基準で建てられていると読むのが自然です。

ここは、はっきり書きます。新耐震基準のマンションについて、「耐震性が不安だから工事しましょう」という言い方を、私はしません。 それは不安を煽る話であって、事実ではありません。

では、湖西市の計画は、新耐震のマンションについて何と言っているか。ここが本題です。


市の計画が書いている「経年劣化による耐震性能の低下」=大規模修繕そのもの

湖西市耐震改修促進計画の第4章(4)に、こう書かれています。

新築時は耐震性能が確保されていても、その後の適切なメンテナンスが行われていない建築物は、時間の経過とともに、ひび割れや変形、老朽化などに見舞われ、経年劣化による耐震性能の低下が懸念される。

そして、続けて熊本地震(震度7が2回発生し、1回目に耐えた建物が2回目で倒壊した例)、能登半島地震(群発地震でダメージが蓄積した可能性)に触れたうえで、現行耐震基準の建築物であっても、地震により被害を受けた建築物、経年劣化が進んだ建築物については注意喚起を行い、啓発に力を入れていく、と明記しています。

さらに、第4章(5)「屋内における安全性確保について」には、こうあります。

  • 特定天井の落下防止対策(定期報告制度で安全性の確保を指導)
  • 建築設備の安全対策:エレベーターの支持部材の耐震化、釣合いおもりの脱落対策、地震時の運行方法や閉じ込め時の対処方法の周知、所有者・管理者に対する定期検査に併せた改善の促進

(出典:湖西市耐震改修促進計画(令和8年4月))

読み替えます。

ひび割れ。外装材の劣化。エレベーターの支持部材。釣合いおもり。天井。

これは全部、マンションの共用部の話です。そして、大規模修繕工事とエレベーターの改修・定期検査で扱う対象そのものです。

つまり湖西市は、その計画のなかで「新耐震のマンションであっても、メンテナンスをしていない建物は耐震性能が落ちる」「設備の落下・脱落対策を進める」と明言している。ということは、管理組合が行う大規模修繕は、湖西市の防災施策の文脈にきちんと位置づけられる、ということです。

総会の議案書の書き出しに、そのまま使えます。文案を置いておきます。

【議案書 記載例】
本工事は、建物の美観を維持するためだけに行うものではありません。湖西市耐震改修促進計画(第4期・令和8年度〜令和12年度)は、新耐震基準で建てられた建築物であっても、適切なメンテナンスが行われない場合に「経年劣化による耐震性能の低下が懸念される」と明記しています。また同計画は、エレベーターの支持部材の耐震化や釣合いおもりの脱落対策を、建築設備の安全対策として掲げています。本工事はこれらに対応するものであり、本マンションの防災性能と資産価値を維持するために実施するものです。

「美観のため」と書かれた議案書と、上のように書かれた議案書とでは、総会での通り方が変わります。私が現場で何度も見てきたことです。


ブロック塀補助|湖西市は「フェンス」より「生け垣」を厚く支援している

湖西市のブロック塀補助は、この連載で見てきたどの自治体とも設計が違います。令和8年4月27日(月)から令和8年度分の受付が始まっています。

緊急輸送路沿道の場合

工事内容 補助率 上限額 基準額
ブロック塀等の撤去 3分の2 132,000円 13,000円/m
撤去+フェンス等を設置して改善 3分の1 80,000円 38,400円/m
撤去+生け垣・植え込みを設置して改善 3分の2 164,000円 38,400円/m

緊急輸送路沿道でない、その他沿道の場合

工事内容 補助率 上限額 基準額
ブロック塀等の撤去 2分の1 100,000円 13,000円/m

(出典:ブロック塀などの撤去・改善に対する補助金)

気づかれたでしょうか。同じ「改善」でも、フェンスは3分の1・上限8万円、生け垣は3分の2・上限16万4千円。倍以上の差があります。

これは湖西市の政策的な意思表示です。緑化を進めたい、という自治体としての方針が補助率に表れている。他市では見なかった設計です。

管理組合の実務としては、こう考えます。

  • 敷地の外周にブロック塀があり、大規模修繕に合わせて手を入れる予定があるなら、「フェンスに建て替える」を既定路線にせず、生け垣・植え込みという選択肢を一度検討する価値がある。
  • ただし生け垣には継続的な剪定費用が発生します。年2回の剪定を外注すれば、長期的にはフェンスより高くつく可能性もある。補助額の差(8万円 vs 16万4千円=差額8万4千円)と、10年20年の維持費を並べて比較してください。
  • 生け垣・植え込みで補助を受けるには市の整備基準があります(市が基準のPDFを公開しています)。植える樹種や高さの条件が定められているため、造園業者に基準を渡してから見積りを取ってください。

そして、撤去と改善の補助金は併用できます。撤去で最大132,000円、生け垣改善で最大164,000円、合わせて最大296,000円。ここは押さえておく価値があります。

補助対象経費は「実際の工事費(見積金額)」と「基準額×延長」を比較して少ない方です。延長別に試算しておきます(緊急輸送路沿道・撤去の場合、基準額13,000円/m)。

ブロック塀の延長 基準額×延長 3分の2の額 実際の補助額(上限132,000円)
10m 130,000円 約86,600円 約86,600円
15m 195,000円 130,000円 130,000円
20m 260,000円 約173,300円 132,000円(上限)
30m 390,000円 260,000円 132,000円(上限)

延長20mを超えると上限に張り付きます。 逆に言えば、15m前後までは延長に比例して補助が増える。まずはメジャーを持って敷地の外周を歩き、塀の延長を測ってください。15分で終わります。

なお、湖西市の実績を見ておくと、示唆的な数字が出てきます。

事業名 H13〜R2 R3 R4 R5 R6 合計
ブロック塀等撤去事業 225 11 12 9 5 262件
ブロック塀等撤去事業(緊急輸送路沿道) 3 4 0 1 0 8件

補助率が高い緊急輸送路沿道のほうが、25年間で8件しか使われていません。「自分の敷地の前の道が緊急輸送路かどうか」を知らないまま、条件の悪いほうで申請している方がいる可能性があります。

湖西市は緊急輸送路図(PDF)を公開しています。まずこの地図でご自身の敷地の前面道路を確認してください。 判断がつかなければ建築住宅課の窓口で確認できます。補助額が最大で6万円以上変わります。

そして最も重要な注意書きを、市のページから引きます。

いずれの補助金申請も、撤去・改善をする前に、申請が必要となります。

大規模修繕の工事が始まってから「ついでにブロック塀も」とやってしまうと、その瞬間に補助が消えます。工程表にマイルストーンとして立ててください。


マンション長寿命化促進税制|湖西市の都市計画税は0.2%です

ここは、総会で数字を間違えると信用を失う論点なので、丁寧に書きます。

マンション長寿命化促進税制は、一定の要件を満たす大規模修繕工事を行ったマンションについて、各区分所有者が翌年度に支払う固定資産税を減額する制度です。国の制度で、地方税法にもとづきます。期限は令和9年3月31日までに工事完了。残り約19か月です。

湖西市の税率を確認します。

税目 湖西市の税率
固定資産税 1.4%
都市計画税 0.2%

(出典:税額の計算|湖西市)

都市計画税0.2%。 これは、この連載で初めて出てきた数字です。都市計画税の制限税率は0.3%で、袋井市は0.3%、掛川市はそもそも市街化区域が定められていないという特殊な形でした。湖西市は0.2%──制限税率より低く設定しているわけです。

なぜこれが総会で効くのか。長寿命化促進税制で減額されるのは固定資産税だけで、都市計画税は減額されません。つまり──

「税金が3分の1になります」と説明すると、不正確です。減額されるのは固定資産税(1.4%分)だけで、都市計画税(0.2%分)はそのまま残ります。

理事長が総会でこの説明を間違えると、あとで納税通知書を見た区分所有者から「話が違う」と言われます。私はこの手の行き違いを、他所の現場で何度も見てきました。最初から正確に説明したほうが、結果的に理事会が楽になります。

確かめ方は簡単です。毎年5月頃に届く納税通知書の1枚目に、固定資産税と都市計画税がそれぞれいくらか書かれています。湖西市は年税額を4期に分けて納付します。

もうひとつ、湖西市の資料の並びについて実務的なメモを。

湖西市の税務課のページには、マンション長寿命化促進税制の専用ページがありません。 家屋に関する減額制度として並んでいるのは次の3つです。

長寿命化促進税制は、税務課ではなく建築住宅課の「マンション管理適正化推進計画」のページに書かれています。磐田市・袋井市と同じ「住宅ページ型」の配置です。

「税のページにないから、湖西市では使えない」は誤りです。 探す場所が違うだけ。制度は地方税法にもとづく全国共通のものです。ただし申告先は税務課 資産税係(053-576-1217)になります。建築住宅課(053-576-4549)と税務課(053-576-1217)の2本立て、と覚えておいてください。

減額を受けるための大枠の要件(国の制度)は次のとおりです。管理組合として押さえるべきは3点セットが一体で必要だという点です。

  1. 管理計画の認定を受けていること(または市から助言・指導を受けて長期修繕計画を適切に見直したこと)
  2. 築20年以上・総戸数10戸以上であること
  3. 過去に一定の長寿命化工事(外壁塗装等・床防水・屋根防水)を実施しており、今回の工事もそれに該当すること

減額の対象は1戸あたり床面積100平方メートルまでの部分、減額割合は6分の1〜2分の1の範囲で市町村の条例で定める割合(参酌基準は3分の1)、減額されるのは工事完了の翌年度分の1年間です。

そして期限。令和9年3月31日までに工事を完了していなければなりません。


固定資産税の3つの改修減額|管理組合は「周知役」に徹する

上の3つの減額制度(耐震・バリアフリー・省エネ)は、基本的に専有部分の改修が対象です。管理組合が共用部の工事で使うものではありません。

ただし、大規模修繕の説明会は、区分所有者が一堂に会する年に数少ない機会です。「共用部の話ではないが、皆さんの専有部で使える制度がある」と1ページ挟むだけで、理事会の信頼度が上がります。

説明会資料に入れる文案です。

【お知らせ】 湖西市には、住宅の耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修を行った場合に、翌年度の固定資産税が減額される制度があります。いずれも専有部分の改修が対象で、共用部の本工事とは別の制度です。適用の可否は個別の判断になりますので、湖西市税務課 資産税係(053-576-1217)へ直接お問い合わせください。

管理組合が税務判断をしてはいけません。 「あなたのお宅は対象です」と誰かが言った瞬間に、理事会が責任を負うことになります。周知役に徹してください。これは私が理事長さまに毎回お伝えしていることです。


家庭用脱炭素化補助は、共用部に使えるか

令和8年度の「湖西市家庭用脱炭素化促進設備等導入支援補助金」の内容を確認します。

対象機器 補助金額
家庭用蓄電池 10,000円/kWh・上限40,000円
太陽光発電システム 10,000円/kW・上限40,000円(蓄電池と同時申請なら15,000円/kW・上限60,000円)
V2H充放電設備 40,000円
電気自動車・PHV 50,000円
燃料電池自動車 150,000円
家庭用コージェネレーション(エネファーム) 60,000円

補助対象者は「市内に住民登録がある人」「市税の滞納がない人」「過去に同様の設備の補助金を受領していない人」。各補助金は年度に関係なく一世帯につき1回限り。受付は令和8年4月1日〜令和9年3月31日で、先着順です。

(出典:令和8年度湖西市家庭用脱炭素化促進設備等導入支援補助金)

対象者が「市内に住民登録がある人」で、単位が「一世帯につき」である以上、管理組合が共用部に蓄電池や太陽光を入れるための補助として使うことは、この要綱の書きぶりからは読み取れません。 専有部(各戸)向けの制度と理解するのが自然です。

したがって、共用部への蓄電池・太陽光の導入議案を、市の補助金ありきで組み立てないでください。 予算が付かない前提で採算を検討し、市の補助が出れば上振れ、という組み方が安全です。

なお、令和8年度の予算と執行状況が市のページに公開されています。

予算額 4,100,000円
交付決定額 1,090,000円
予算残額(令和8年7月31日現在) 3,010,000円

年度の3分の1が過ぎて、残額は約73%。先着順の制度としては、まだ十分に余裕があります。区分所有者の方に周知するなら、今が良いタイミングです。窓口は環境課 脱炭素推進係(053-576-4921、市役所1階)。電子申請にも対応しています。


湖西市の制度を「共用部の大規模修繕で使えるか」で仕分けた一覧

理事会の時間は限られています。「使えない制度を調べる時間」を節約するために、私のほうで仕分けておきます。

制度 共用部の大規模修繕で 窓口
マンション管理計画認定制度(手数料無料) ◎ 使える 建築住宅課 053-576-4549
マンション長寿命化促進税制(固定資産税減額) ◎ 使える(認定+工事要件) 建築住宅課/税務課 053-576-1217
ブロック塀等の撤去・改善補助(緊急輸送路沿道) ○ 使える可能性が高い 建築住宅課 053-576-4549
ブロック塀等の撤去補助(その他沿道) ○ 使える可能性が高い 建築住宅課 053-576-4549
既存建築物耐震診断事業(非木造) △ 要確認(令和8年度の一覧に記載なし) 建築住宅課 053-576-4549
木造住宅 耐震改修事業(TOUKAI-0+) × 木造住宅のみ 建築住宅課
木造住宅 除却・移転事業 × 木造住宅のみ 建築住宅課
耐震シェルター・防災ベッド整備補助 × 木造住宅の所有者・居住者 建築住宅課
家庭用脱炭素化促進設備等導入支援補助金 × 個人・一世帯単位 環境課 053-576-4921
住宅耐震改修に伴う固定資産税減額 × 専有部(周知はできる) 税務課 053-576-1217
住宅バリアフリー改修に伴う固定資産税減額 × 専有部(周知はできる) 税務課 053-576-1217
住宅省エネ改修に伴う固定資産税減額 × 専有部(周知はできる) 税務課 053-576-1217

◎2つ、○2つ、△1つ、×7つ。

正直に申し上げます。湖西市は、共用部の大規模修繕そのものに直接お金を出す補助金を持っていません。 それは掛川市も袋井市も同じでした。地方都市ではむしろこれが標準です。

だからこそ、確実に取れる◎2つ(認定制度と税制)を確実に取り、△の1つを電話で確かめ、×の7つには理事会の時間を1分も使わない。これが、限られた任期のなかで理事会ができる最も効率のいい動き方だと私は思っています。


南海トラフ巨大地震|湖西市の被害想定と、造成地について

湖西市の防災上の前提を、市の計画から引いておきます。想定は南海トラフ巨大地震のレベル2(震度6強〜7、マグニチュード9.0程度)、静岡県第4次地震被害想定にもとづくものです。

項目 湖西市の想定(最大ケース)
死者 約5,000人(うち建物倒壊による死者 約500人)
重傷者 約1,200人
建物棟数 24,570棟
全壊・焼失 約15,000棟(建物被害率 約57〜61%)
半壊 約7,000〜7,400棟

(出典:湖西市耐震改修促進計画(令和8年4月)、湖西市地域防災計画)

建物被害率が6割近い。これは津波被害を含む数字で、遠州灘と浜名湖に挟まれた湖西市の地理的条件を反映しています。死者約5,000人のうち、建物倒壊によるものが約500人──裏を返せば、約4,500人は津波等によるものという想定です。

この数字をどう扱うか。私は、大規模修繕の議案書に被害想定の数字を大きく載せることを勧めません。 恐怖で決議を通しても、後から不信感が残るだけです。

そのかわり、こう使ってください。「地震のとき、この建物で暮らし続けられるか」という観点で、修繕の優先順位を組み替える材料にする。屋上防水が切れていれば、地震で断水したときに雨水すら使えません。給排水管が更新されていなければ、躯体が無事でも在宅避難ができません。「命を守る」から「命をつなぐ」へ、という県と市の方針転換は、そのまま修繕の優先順位の話です。

もうひとつ、湖西市固有の安心材料も書いておきます。

湖西市は令和4年度に「大規模盛土造成地」の第二次スクリーニング計画(安全性把握調査の実施優先度評価)を作成しました。その結果は──

優先度評価の結果、早期に第二次スクリーニング(安全性把握調査)を実施すべき盛土は、ありませんでした。

(出典:宅地耐震化推進事業|湖西市)

袋井市では液状化と人工造成地の被害想定が明示されていましたが、湖西市では「早急に調査すべき盛土なし」と評価されています。これは、丘陵地に建つマンションの管理組合にとって、地盤について過度に心配しなくてよいという材料になります。ただし市は今後も経過観察を続けるとしています。擁壁がある敷地では、大規模修繕の劣化診断のときに擁壁のひび割れも一緒に見てもらってください。追加費用はほとんどかかりません。


仮設足場は工事費の15〜25%|最初に削れるのはここです

ここから先は、株式会社明誠のサービスの話を含みます。利益相反がありますので、先に明示しておきます。

大規模修繕工事の見積書を開くと、いちばん上のほうに「仮設工事一式」という行があります。金額は、工事費全体のおおむね15〜25%。私の経験上、ここが最も動く部分です。

工事費総額 仮設足場費の目安(15〜25%)
3,000万円 450万〜750万円
5,000万円 750万〜1,250万円
8,000万円 1,200万〜2,000万円

理事会でこんな場面を、私は何度も見てきました。植栽の剪定20万円については30分議論されるのに、750万円と書かれた「仮設工事一式」の1行は、そのまま可決される。

理事の皆さんが不真面目なのではありません。判断材料が渡されていないだけです。

見積書を受け取ったら、この1文を施工会社に伝えてください。

「仮設工事一式を、架面積の平米単価とリース期間に分解して出してください。」

これで、足場の総面積が何平方メートルで、1平方メートルあたりいくらで、何か月分のリース料が乗っているのかが見えます。ここが見えると、工期が1か月延びたときにいくら増えるのかも計算できるようになります。


湖西市のマンションに効く、ハイブリッド工法の3つの配分

大規模修繕の工法には、大きく3つあります。

  • 通常足場工法:外周に仮設足場を架ける従来型。低層や複雑形状の建物に向く。
  • ロープアクセス工法(無足場工法):産業用ロープで作業員が降下しながら施工する。足場費が不要で、工期が短く、居住者の生活への影響が小さい。
  • ハイブリッド工法:部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける。

弊社は、この3つすべてを自社で提案できる、日本でも数少ない会社です。詳しくはロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。ロープアクセス専門の情報はロープアクセスドットコムにまとめています。

湖西市のマンションに当てはめると、配分の考え方は3つに整理できます。

1つ目|駐車場を潰さない配分。 遠州地域は自動車保有率が高く、1世帯1台以上が前提です。全周に6か月足場を架けると、その間ずっと一部の駐車区画が使えません。近隣に代替駐車場を借りれば、それだけで数十万円から百万円単位の追加費用です。2面ずつ各1.5か月に分けるか、駐車場側だけロープアクセスにするか。この2択で、駐車区画の閉鎖期間はかなり短縮できます。

2つ目|低層は足場、高層はロープ。 湖西市の7棟のうち3棟が9階建て以上でした。高さが上がるほど足場の単価と架設日数は増えます。低層階のバルコニー廻りなど細かい作業が多い部分は足場、上層階の外壁面はロープアクセス、という分け方は、この階数構成に素直に効きます。

3つ目|前面道路が狭く4トン車が入らない立地。 これは営業トークではなく物流の話です。足場部材は4トン車で運びます。道路が狭くて入れなければ、小型車に積み替える手間賃が乗るか、そもそも部材が現場に届きません。足場を架けられない現場では、ロープアクセスは「安い選択肢」ではなく「唯一の選択肢」になります。

そのうえで、正直に申し上げます。

ロープアクセス工法は万能ではありません。 私が「今回は足場でいきましょう」とお伝えする現場は、普通にあります。足場が有利になるのは、次の4つの条件が重なるときです。

  1. 下地補修の数量が多いことが事前調査でわかっている(作業量が多いほど足場の効率が上がる)
  2. 建物の形状が複雑で、ロープの支点が確保しづらい
  3. 低層(3〜4階建て)で、足場の架設面積そのものが小さい
  4. サッシ交換や大がかりな設備更新を同時施工する

そして、これも正直に書きます。バルコニー内部の作業が必要な点は、工法にかかわらず同じです。 ロープアクセスにしても、居住者の立ち入りがゼロになるわけではありません。減るのは、外部足場が窓の前に架かっている期間です。防犯上の不安や、洗濯物を干せない期間が短くなる。ここが本当の価値です。


モデルケース|湖西市の規模感で試算すると

弊社が実際に扱った案件の傾向をもとにした試算です。個別の物件の見積りではありません。 建物の状態によって上下します。

ケースA|JR鷲津駅圏・築30年前後・5階建て・40戸

項目 通常足場工法 ハイブリッド工法
工事費 約6,000万円 約5,150万円
差額 ― ▲約850万円
1戸あたり 約150万円 約129万円(▲約21万円)
工期 約5.5か月 約4か月

ケースB|新居・浜名湖岸方面・築20年前後・9階建て・60戸

項目 通常足場工法 ロープアクセス主体
工事費 約8,600万円 約7,150万円
差額 ― ▲約1,450万円
1戸あたり 約143万円 約119万円(▲約24万円)
工期 約6.5か月 約4.5か月

注目していただきたいのは、1戸あたりの金額です。

40戸で6,000万円なら1戸150万円。同じ6,000万円でも150戸なら1戸40万円です。戸数が小さいマンションほど、1戸あたりの負担が重く、工法選定の効果が大きい。 湖西市の7棟は平均43戸、最小12戸でした。この連載で回ったどの市よりも、工法選定が効く規模です。

そしてもうひとつ、これは強調しておきます。

工法は、設計を発注する前でなければ、実質的に選べません。

設計事務所に「足場を架ける前提」で設計・積算を進めてもらったあとで「やっぱりロープで」と言っても、設計をやり直すことになります。工法の検討は、設計者を選ぶ段階と同時です。理事会のスケジュールでいうと、着工の15〜13か月前。


修繕積立金が足りないとき、打ち手は4つあります

私が最も多く相談を受けるのが、この話です。積立金が足りない。打ち手は4つしかありません。

1|工事範囲を絞る。 今回は屋上防水と外壁、次回にサッシ廻り、という分け方です。ただし注意点があります。段階施工にすると仮設費が回数分かかります。 足場を2回架ければ、足場代は2回分です。そして、長寿命化促進税制は「外壁塗装等・床防水・屋根防水」の3点セットが一体で必要なので、分けた瞬間に税制の要件を外します。

2|工法を変える。 上に書いたとおりです。設計発注前でなければ選べません。

3|一時金を徴収する。 1戸50万円といった形です。可決のハードルは高いですが、明快です。

4|借入れをする。 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資があります。管理計画の認定を受けていれば金利の引き下げを受けられます。ここで、冒頭の認定制度が効いてきます。

議案書を作るときのコツを1つ。「一時金50万円」と「月々3,000円の値上げ」を、両方載せてください。 片方だけを出すと「高い」で終わりますが、両方並べると「どちらが自分にとって楽か」という議論に変わります。決議の通り方が変わります。


見積書で確認したい5点|1つ目が最重要です

1|下地補修の仮定数量を超えた分の単価を、契約前に契約書へ明記する。

これが最重要です。大規模修繕の見積書には、たいてい「下地補修 タイル張替え ○○枚(仮定)」という項目が入っています。実際の数量は足場を架けて調べないと分かりません。

問題は、超過分の単価が契約書に書かれていないケースです。

工事が始まり、足場が架かった状態で「タイルが想定より500枚多かったので追加費用が」と言われたとき、管理組合が対等に交渉することはできません。工事を止められないからです。

契約書に、この1行を入れてください。

「下地補修工事において仮定数量を超過した場合の追加単価は、○○円/枚(○○円/平方メートル)とし、契約時の単価を工期中に変更しない。」

これを嫌がる会社は、そこで分かります。

2|仮設工事一式を、架面積の平米単価とリース期間に分解してもらう。(前述)

3|高圧洗浄の排水計画を確認する。 湖西市は浜名湖と遠州灘に挟まれ、市内に水路が多い地域です。洗浄水と塗料カスの処理をどうするかは、環境の話であると同時に、近隣の住民合意の話でもあります。

4|予備日を超過した場合の足場リース延長費用は、誰の負担になるか。 雨天が続いて工期が延びたとき、リース延長費用を管理組合が負担するのか施工会社が負担するのか。契約前に確認してください。

5|工事監理者が施工会社と資本関係にないか。 設計・監理と施工が同じグループだと、チェック機能が働きません。


湖西市の工事適期と、方位別の劣化要因

湖西市の気候条件に合わせて、工事適期を整理します。

時期 適性 理由
3〜5月 ○ 気温・湿度が安定。ただし年度替わりで業者が混み合う
6〜7月 △ 梅雨。予備日を7〜10日多めに
8〜9月 △ 猛暑と台風期。作業員の熱中症対策が工程に影響
10〜11月 ◎ 気温・湿度ともに塗装に最適。最有力
12〜2月 ○ 温暖で晴天率は高いが、遠州の空っ風で予備日3〜5日を追加

そして、湖西市固有の方位別の劣化要因です。同じ建物でも、面によって傷み方がまったく違います。

方位 湖西市での主な劣化要因 重点的に見る箇所
西〜北西面 遠州の空っ風による塗膜の摩耗、シーリングの早期硬化。メッシュシートの開放・復旧の人工が工程に乗る 塗膜の劣化、目地シーリング
南面(遠州灘側) 飛来塩分による鉄部の腐食 手すり、避難ハッチ、屋外階段、庇の鉄部
東面(浜名湖側) 朝日による温度変化でシーリングが伸縮疲労 開口部廻りの目地
北面 放射冷却による結露 → コケ・藻の発生 防藻・防カビ仕様の検討

湖西市は、西から遠州の空っ風、南から遠州灘の潮風、東から浜名湖の湿気を受ける、三方向から条件を突きつけられる立地です。「南面だけ鉄部の腐食が早い」「北面だけ緑色になっている」というのは、放置の結果ではなく、立地の必然です。

劣化診断を依頼するときは、方位別に報告書を分けてもらってください。 「外壁全体で○○%劣化」という報告書は、補修数量の根拠になりません。


国のモデル事業と、静岡県の支援メニュー

国のマンション長寿命化・再生モデル事業は、令和8年度の第3回募集が9月14日(月)〜18日(金)の予定です。事務局は03-6801-5902。

正直に書きます。この記事の公開から2週間で応募書類を揃えるのは、現実的ではありません。 管理組合の意思決定は総会を経ますから、2週間では動けない。

そのかわり、必要書類の一覧だけ印刷しておいてください。15分で終わります。 次回募集のときに、どの資料に何か月かかるのかが分かっているだけで、動きがまるで変わります。

静岡県の支援については、湖西市の計画にこう書かれています。

静岡県及び市町で構成する「静岡県マンション管理適正化推進協議会」において、マンション管理セミナーの開催やマンション管理士の派遣等を実施します。

(出典:湖西市マンション管理適正化推進計画)

マンション管理士の派遣制度は、専門家に無料または低額で相談できる仕組みです。申込期限や派遣期限は年度ごとに設定されますので、最新の日程は静岡県の担当課、または湖西市建築住宅課(053-576-4549)で確認してください。 湖西市の場合、県西部のセミナー会場は浜松になることが多く、JR東海道本線で30分程度です。

このとき、私からのお願いを1つ。理事長ひとりで行かないでください。 次期理事候補と2人で行ってください。理事は1年で交代します。ひとりで聞いた話は、その人の任期とともに消えます。


逆算カレンダーと、今週できること5つ

長寿命化促進税制の期限(令和9年3月31日 工事完了)から逆算すると、こうなります。

時期 やること
19〜16か月前 管理計画認定の準備開始・劣化診断の発注
15〜13か月前 工法をここまでに決める(設計発注と同時)
12か月前 定時総会で工事実施を決議
6か月前 施工会社の選定・契約
着工直前 改修前の写真撮影(高圧洗浄後は二度と撮れません)
着工〜完了 工事
完了後3か月以内 税の申告(税務課 053-576-1217)

律速になるのは工事ではありません。総会です。 総会は年1回。ここを外すと1年ずれます。

証明書まわりの落とし穴を3つ、書いておきます。

  1. 建築士との契約書に「大規模の修繕等証明書の発行」を明記する。 あとから頼むと追加費用になります。
  2. 着工前の写真は、高圧洗浄後には二度と撮れません。 理事会の議事録に「着工前写真の撮影担当者」を書いてください。3行で済みます。
  3. 前回工事の施工会社が廃業していることがあります。 前回の工事記録を先に探してください。

そして、今週できることを5つ。

  1. 建築住宅課(053-576-4549)に電話。 既存建築物耐震診断事業がマンションに使えるか、管理計画認定の受付状況を聞く。──今日中に
  2. 税務課 資産税係(053-576-1217)に電話。 長寿命化促進税制の申告手続きの確認。──今日中に
  3. 緊急輸送路図で、敷地の前面道路を確認。 ──5分
  4. 敷地外周のブロック塀の延長をメジャーで測る。 ──15分
  5. 前回の大規模修繕の書類一式を探す。 ──15分

合わせて1時間かかりません。電話2本が、この記事の結論です。


よくある質問

Q1|湖西市に、大規模修繕そのものへの補助金はありますか。
共用部の大規模修繕工事費に直接出る補助金は、令和8年9月時点で市のサイトから確認できません。使えるのは、管理計画認定制度(手数料無料)、マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)、ブロック塀の撤去・改善補助です。

Q2|築40年ですが、耐震診断の補助は使えますか。
湖西市耐震改修促進計画の令和8年4月現在の補助制度一覧には、木造住宅向けの制度しか記載されていません。非木造向けの「既存建築物耐震診断事業」は実績表には登場しますが、現行の一覧には出てきません。建築住宅課(053-576-4549)へ直接ご確認ください。

Q3|「税金が3分の1減る」と説明していいですか。
不正確になります。減額されるのは固定資産税(税率1.4%)のみで、都市計画税(湖西市は0.2%)は減額されません。この点は分けて説明してください。

Q4|管理計画の認定に、市の手数料はいくらかかりますか。
市に支払う認定申請手数料は無料です。ただし(公財)マンション管理センターのシステム利用料と事前確認審査料が別途かかります。

Q5|ブロック塀は、フェンスにするのと生け垣にするのと、どちらが得ですか。
補助額は生け垣のほうが有利です(3分の2・上限164,000円 対 3分の1・上限80,000円)。ただし生け垣には剪定費用が継続的にかかります。10年20年の維持費を含めて比較してください。

Q6|リゾートマンションで、総会の定足数が集まりません。
区分所有者が市外・県外に多い場合、委任状・議決権行使書の回収に通常の倍の期間を見てください。大規模修繕の議案は、半年ほど前倒しでスケジュールを組むことをお勧めします。

Q7|湖西市は遠いので、施工会社が限られませんか。
湖西市はJR東海道本線と国道1号(潮見バイパス)が通り、名古屋圏・浜松市街ともに日帰り圏です。「遠方だから割高」という前提は、湖西市にはあまり当てはまりません。相見積りは3社以上を推奨します。

Q8|工事の見積りを取るのは、いつがいいですか。
劣化診断の結果が出てからです。診断なしの見積りは、下地補修の数量が仮定だらけになり、比較の意味を持ちません。


まとめ

湖西市の分譲マンション管理組合が、2026年度に押さえるべき点をまとめます。

  • 湖西市内のマンションは7棟・303戸。市が1棟ずつ把握し、全棟の管理計画認定を目標に掲げている
  • 管理計画認定制度の市手数料は無料。市独自の上乗せ基準もなし。国の様式のまま準備できる
  • 認定はフラット35と共用部分リフォーム融資の金利引き下げにもつながる。税制と切り離しても価値がある
  • マンション長寿命化促進税制の期限は令和9年3月31日(工事完了ベース)。残り約19か月
  • 減額されるのは固定資産税1.4%分のみ。都市計画税0.2%は減額されない
  • 長寿命化促進税制の情報は税務課ではなく建築住宅課のページにある。窓口は建築住宅課と税務課の2本立て
  • 非木造の耐震診断補助は令和8年度の一覧に記載がない。断定せず、053-576-4549へ確認を
  • 湖西市の非木造耐震化率は96.9%。まだ252戸が課題として残っている
  • 市の計画は「経年劣化による耐震性能の低下」とエレベーター支持部材・釣合いおもりの対策を明記。大規模修繕は防災施策として議案書に書ける
  • ブロック塀は生け垣2/3・上限164,000円 対 フェンス1/3・上限80,000円。撤去との併用可。着手前申請が原則
  • 令和8年度から静岡県の耐震事業はTOUKAI-0+に切り替わった。古い資料は要確認
  • 大規模盛土造成地は「早期に調査すべき盛土なし」と評価済み
  • 仮設足場費は工事費の15〜25%。架面積の平米単価とリース期間に分解させる
  • 戸数が小さいほど1戸あたりの負担は重い。湖西市の平均43戸は、工法選定が最も効く規模
  • 工法は設計発注前でなければ選べない。着工の15〜13か月前が判断期限
  • 見積書の最重要チェックは下地補修の超過単価を契約書に明記すること

最後に。

湖西市は、浜名湖の西岸にあり、東は湖、南は遠州灘、西は愛知県境という土地です。県庁所在地からも浜松市街からも離れていて、行政の情報が大きく取り上げられることは多くありません。

けれど、私は今回、湖西市の資料を読んで感心しました。市内にマンションが7棟しかないのに、市はその7棟の竣工年と階数と戸数を1棟ずつ把握し、位置図まで添えて計画を公表している。認定の手数料を0円にして、独自基準も設けていない。「数が少ないから後回し」にしていないのです。

7棟の管理組合の皆さんは、そのことをもう少し知っていていいと思います。窓口に電話をかければ、担当の方は7棟のうちのどれかを頭に思い浮かべながら答えてくれるはずです。人口何十万人の都市では、そうはいきません。

制度がないのではなく、知られていないだけのものが、まだ残っています。

今日の結論は、電話2本です。建築住宅課(053-576-4549)と、税務課 資産税係(053-576-1217)。それだけで、来年の総会に出せる材料が1つ増えます。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。工法の話をする前に、まず建物を見せていただくところからです。


主なお問い合わせ先(湖西市)

用件 窓口 電話番号
管理計画認定制度・耐震・ブロック塀 湖西市 建築住宅課 建築住宅係 053-576-4549(FAX 053-576-1897)
固定資産税・長寿命化促進税制の申告 湖西市 税務課 資産税係 053-576-1217(FAX 053-576-1896)
家庭用脱炭素化補助 湖西市 環境課 脱炭素推進係 053-576-4921
市代表 湖西市役所(〒431-0492 湖西市吉美3268番地) 053-576-1111
管理計画認定制度の相談 (一社)日本マンション管理士会連合会 相談ダイヤル 03-5801-0858(月〜土10〜17時)
国のモデル事業 モデル事業事務局 03-6801-5902

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出典・参考資料

湖西市

国

関係団体


執筆者|本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役。大規模修繕の現場に20年近く携わり、通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3工法から建物に最適な方法を提案。日本初となるロープアクセス工事のフランチャイズ展開を行い、塗装・防水・タイル・電気・看板工事などの専門職が加盟することで、高品質と低価格を両立させています。

免責事項
本記事は2026年9月2日時点で公開されている情報にもとづいて作成しています。補助制度の内容・予算・受付期間は変更される場合があります。申請にあたっては、必ず各制度の担当窓口で最新の要綱をご確認ください。税務上の取り扱いについては、湖西市税務課または税理士にご相談ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の判断を保証するものではありません。

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