本間社長ブログ
荒川区の管理組合が無料で使える相談・派遣12選|コンサルタント派遣は防災3回+通算6回・1回2時間まで無料、耐震アドバイザーは1棟3回【令和8年度版】
目次
- 結論:荒川区で使える支援は12ある
- 1. 荒川区コンサルタント派遣制度:1回2時間が無料、防災は別枠で年3回
- 2. 分譲マンション耐震アドバイザー派遣:旧耐震なら1棟3回まで無料
- 3. 荒川区の窓口・セミナー・マンション通信:情報を取る3つの経路
- 4. 管理状況届出を出すと、東京都のアドバイザー派遣が無料になる
- 5. 電話1本で聞ける無料相談ダイヤル
- 6. 荒川区で使える助成:防災に最大400万円、耐震改修に最大1,000万円
- 7. 賃貸マンション・ビルオーナーが使える枠
- 8. 荒川区マンション管理計画認定制度:区への手数料は当面無料
- 9. 荒川区の管理組合が直面している数字
- 10. 大規模修繕の費用を実際に下げる:足場とロープアクセスの差額
- よくあるご質問
- まとめ
- 出典・参考資料

-
著作者プロフィール
株式会社明誠 代表取締役
本間 幸紘
大規模修繕・外壁工事・ロープアクセス工事に関する情報を、現場経験をもとに分かりやすくお届けします。
2026年9月21日 更新
荒川区の管理組合さまとお話ししていて、いつも引っかかる数字が一つあります。
年4件。
これは荒川区が公表している、アドバイザー派遣の年間利用件数(令和4年度実績)です。区内には分譲マンションが何百棟とあるのに、区が用意した専門家派遣を使った管理組合は、1年でたった4つ。区自身も、令和10年度までにこれを10件へ増やすことを目標に掲げています(出典:荒川区マンション管理適正化推進計画(概要))。
つまり荒川区では、制度が足りないのではなく、制度が知られていないのです。
私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組んで建物をすっぽり囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も自分の足で踏んできた人間です。
その立場から申し上げると、荒川区の支援メニューは決して薄くありません。むしろ「防災」に特化した専門家枠を別建てで用意しているという、他区にあまりない特徴を持っています。荒川区は荒川・隅田川に挟まれた低地を抱える区ですから、防災に厚いのは必然と言えます。
今日は、荒川区の管理組合とビル・収益不動産オーナーさまが使える相談・派遣・助成を12個、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。
結論:荒川区で使える支援は12ある
先に一覧でお示しします。無料のものと、費用の一部が戻るものを分けて並べました。
| # | 制度・窓口 | 誰が対応するか | 費用 | 申込先 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 荒川区コンサルタント派遣制度(マンション) | マンション管理士・防災士・一級建築士 | 無料/1回2時間以内 | 住まい街づくり課 03-3802-4454 |
| 2 | 分譲マンション耐震アドバイザー派遣事業 | 区登録の一級建築士・マンション管理士 | 無料/1棟3回まで | 住まい街づくり課住宅係(内線2826) |
| 3 | 住まい街づくり課住宅係の窓口・電話相談 | 区職員 | 無料/平日8時30分〜17時15分 | 03-3802-4454 |
| 4 | 荒川区分譲マンションセミナー | 外部講師 | 無料/年2回 | 住まい街づくり課(内線2824) |
| 5 | 東京都マンションアドバイザー無料派遣 | マンション管理士ほか | 無料/届出受理で1回、管理不全の兆候ありで5回 | 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1453 |
| 6 | 分譲マンション総合相談窓口 | 専門相談員 | 無料 | 03-6427-4900 |
| 7 | マンション管理計画認定制度「相談ダイヤル」 | マンション管理士会の相談員 | 無料/月〜土10時〜17時 | 03-5801-0858 |
| 8 | 荒川区の法律相談(弁護士) | 弁護士 | 無料/火・金曜13時〜16時・要予約 | 区民相談所(区役所3階) |
| 9 | 分譲マンション防災対策費助成 | ― | 工事最大400万円/資器材50万円/備蓄品10万円(いずれも費用の3分の2) | 住まい街づくり課(内線2822) |
| 10 | 非木造建物耐震化推進事業(分譲) | ― | 診断3分の2・400万円/設計3分の2・100万円/工事3分の2・1,000万円 | 同(内線2822・2826) |
| 11 | 非木造建物耐震化推進事業(賃貸) | ― | 診断2分の1・200万円/設計2分の1・50万円/工事2分の1・500万円 | 同上 |
| 12 | 荒川区マンション管理計画認定制度 | ― | 区への手数料は当面無料 | 住まい街づくり課住宅係 |
覚えておく電話番号は、実質1つで足ります。住まい街づくり課 03-3802-4454。荒川区のマンション施策はほぼすべてこの課が窓口です。
ここからが本題です。
1. 荒川区コンサルタント派遣制度:1回2時間が無料、防災は別枠で年3回
荒川区の管理組合が最初に使うべき制度が、これです。
区は、分譲マンションの管理組合が抱えている困りごとの相談に対して、コンサルタントを派遣する「出張相談」を行っています。派遣されるのはマンション管理士、防災士、一級建築士などの専門家で、相談内容に応じた専門家を区が選んで送り込んでくれます(出典:荒川区「コンサルタント派遣制度(マンション)」、2026年9月4日更新)。
条件を整理します。
- 対象:区内の分譲マンション管理組合(管理組合のないマンションは別途相談)
- 派遣時間:1回につき2時間以内
- 利用料:無料
- 回数:防災に関する助言業務は1年度につき3回まで(回数は毎年リセット)/それ以外の助言業務は1管理組合につき通算6回まで(回数は次年度へ引き継がれる)
この「回数の分け方」が、荒川区の制度でいちばん大事なところです。
防災枠は毎年リセットされる
区のパンフレットには、防災に関する助言は年3回まで使え、回数は毎年リセットされると明記されています(出典:荒川区「コンサルタント派遣制度パンフレット」)。
つまり防災テーマであれば、毎年3回×2時間=6時間の専門家の時間を、費用ゼロで使い続けられる。10年使えば60時間です。これは相当な資源です。
一方、防災以外の助言(管理組合の運営、管理会社との関係、修繕積立金の滞納対策など)は通算6回で、使い切ったら翌年度に戻ってはきません。こちらは大事に使う必要があります。
相談できること・できないこと
相談内容として区が挙げているのは次の6つです。
- 管理組合の運営(総会、理事会、管理規約など)
- 管理会社との関係
- マンション内のトラブル対策(騒音、生活マナーなど)
- 修繕積立金、管理費に関する基本的な情報提供、滞納対策
- マンション防災対策の進め方
- マンション管理計画認定制度の申請にあたっての相談
逆に、次のものは対象外です。ここを知らずに申し込むと止まります。
- 管理規約、長期修繕計画等の書類作成
- 見積の作成
- 修繕工事の設計
- 建物に関する耐震等の診断・調査
- 居住者間・近隣住民間の紛争解決、仲裁、権利調整
- 特定業者の紹介
要するに、「作ってもらう」ことはできず、「判断を助けてもらう」制度です。長期修繕計画そのものを作りたいなら、この制度ではなく設計事務所やコンサルタントへの発注が必要になります。ただ、「いまの長期修繕計画が妥当かどうか、専門家の目で見てほしい」という相談なら、この枠でできます。私の経験では、この使い方がいちばん費用対効果が高い。
申請の流れ:事前相談 → 7日前までに書類
手続きはシンプルです。
- 事前相談。申請の前に、派遣を希望する内容と派遣日を区に相談します(03-3802-4454)
- 申込。派遣希望日の7日前までに、申請書+相談内容に関係する資料(管理規約、図面、長期修繕計画書など)+理事長が確認できる書類(総会議事録、役員名簿など)を提出
- 派遣決定。区から日時・場所の通知が届きます
区は「調整にお時間をいただきますので、お早めにご相談ください」と注意書きを添えています。理事会の日程が決まった時点で動くのが正解です。なお、個人への派遣はできず、コンサルタントの指名も原則できません(管理計画認定や法律相談など、2回目以降も同じコンサルタントが望ましいと区が判断した場合は例外)。
2. 分譲マンション耐震アドバイザー派遣:旧耐震なら1棟3回まで無料
荒川区にはもう一つ、別枠の無料派遣があります。あまり知られていませんが、旧耐震のマンションにとってはこちらのほうが重要です。
区は、区に登録された一級建築士またはマンション管理士を「分譲マンション耐震アドバイザー」として無料で派遣し、耐震化のアドバイスを1棟につき3回まで行っています(出典:荒川区「非木造建物耐震化推進事業のご案内」)。
内容は次の3つです。
- 建物現地調査の実施(建物目視調査、設計図書確認等)
- 耐震化の必要性や技術的なアドバイス
- 耐震化に向けた区分所有者間の合意形成の支援
3つ目に注目してください。合意形成の支援まで無料枠に入っているのは、かなり踏み込んだ制度です。耐震改修が進まない最大の理由は技術でも費用でもなく、総会で決まらないことですから、ここに第三者が入ってくれる意味は大きい。
対象は、区内にある分譲マンションで、昭和56年5月31日以前に建築(新築や増築)された建物、かつ建築基準法その他の関係法令等に違反していない建物です。申請には建物全部事項証明書、確認通知書(写)または建築年月日を証する書類、管理組合の規約および理事長であることを証する書類が必要です。
現地調査が無料、というのが効く
私たち施工会社の立場から言うと、「建物現地調査(目視調査、設計図書確認)」が無料で受けられるのは、思っている以上に価値があります。
大規模修繕の検討でいちばん最初につまずくのは、自分の建物の状態を誰も客観的に語れないことだからです。管理会社の言い分と、飛び込みで来た業者の言い分がずれる。どちらが正しいか判断できない。そこで理事会が止まる。
区の登録建築士が1回現地を見て所見を出してくれれば、その後のすべての議論の土台ができます。外壁の状態については、明誠のロープアクセス工法による外壁調査の考え方もあわせてご覧いただくと、調査方法ごとの違いがつかめると思います。
3. 荒川区の窓口・セミナー・マンション通信:情報を取る3つの経路
制度を使うほどではないけれど、方向だけ知りたい。そういうときの入口が3つあります。
窓口・電話相談(無料)
荒川区役所 防災都市づくり部 住まい街づくり課 住宅係が、マンション管理に関する相談の窓口です。
- 電話:03-3802-4454
- 所在:〒116-8502 荒川区荒川二丁目11番1号(北庁舎2階)
- 区役所の開庁時間:月曜〜金曜 午前8時30分〜午後5時15分(祝日・休日・年末年始を除く)
荒川区分譲マンションセミナー(無料・年2回)
区は、分譲マンションの管理運営について理解を深めることを目的として、分譲マンションセミナーを年2回開催しています。毎回、管理組合の運営や大規模修繕、長期修繕計画等をテーマにした講演会と、参加者相互で話し合う交流会の2部構成です(出典:荒川区「荒川区分譲マンションセミナー」、2026年9月2日更新)。
令和8年度第1回は、令和8年10月3日(土曜)に開催が予定されています。
過去のテーマを見ると、区が何を課題と見ているかがよく分かります。
| 開催日 | テーマ |
|---|---|
| 令和8年2月28日 | 管理組合の財政対策(適正な修繕積立金とお金のため方) |
| 令和7年10月18日 | 外部管理者方式導入する?しない?(生成AIと一緒に学ぶ体験型) |
| 令和7年2月15日 | 在宅避難を進めましょう! |
| 令和6年10月19日 | マンション管理の要点整理(大規模修繕・管理計画認定・防災) |
| 令和6年2月24日 | いまのお住まいを終の棲家とするために |
令和8年2月の「管理組合の財政対策」は講演資料(PDF)が公開されています。セミナーに行けなかった年度でも、資料だけは無料で読めるということです。
交流会が付いている、という価値
私が「このセミナーは出る価値がある」と申し上げるのは、第2部の交流会があるからです。
管理組合の理事は数年で入れ替わります。だから知識が組織に蓄積しない。隣のマンションが3年前にどんな失敗をしたのか、どこで見積が跳ねたのか、それを聞ける場が荒川区内にほとんどない。年2回のこの交流会は、その数少ない機会です。
4. 管理状況届出を出すと、東京都のアドバイザー派遣が無料になる
ここが、荒川区の管理組合が取りこぼしやすいポイントです。
東京都は「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」により、昭和58年(1983年)12月31日以前に新築され、居住用の独立部分が6以上ある分譲マンションに、管理状況の届出を義務づけています(出典:荒川区「マンション管理状況届出制度」、2026年8月20日更新)。届出先は荒川区役所 住まい街づくり課 住宅係(03-3802-4454)です。
そして、この届出が受理された管理組合は、東京都のマンションアドバイザー派遣を無料で使えます(出典:東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」)。
無料になる回数は次のとおりです。
- 届出が受理された要届出マンション:1回まで無料
- 届出が受理されたマンションのうち、管理不全の兆候があるマンション:5回まで無料
各コース1回あたり2時間程度。使えるコースは大きく2系統あります。
管理アドバイザー(講座編A・相談編B)
講座編は、マンションの管理のポイントの解説(A-1)、長期修繕計画作成ガイドライン活用の手引きの解説(A-2)、管理委託の仕方(A-3)、計画修繕工事の進め方(A-4)、滞納管理費・修繕積立金督促の仕方(A-5)、管理組合の設立の仕方(A-6)。
相談編は、管理組合の運営(B-1)、財務(B-2)、管理委託契約(B-3)、修繕計画の作成や修繕積立金等の設定(B-4)、修繕工事検討段階での相談(B-5①:建物・設備等の劣化状況の調査・診断、修繕工事の検討組織、修繕工事の方式等)、修繕工事準備段階での相談(B-5②:修繕工事の内容、業者選定の仕方、合意形成等)、その他の維持管理(B-6)。
大規模修繕を控えた管理組合なら、B-5①とB-5②が本命です。「修繕工事の方式」「業者選定の仕方」について、利害関係のない第三者に2時間話を聞ける。これを無料で使わない手はありません。
建替え・改修アドバイザー(Aコース)
建替え入門(A-1)、老朽度判定・建替えと修繕の費用対効果の説明(A-2)、合意形成の進め方(A-3)、改修によるマンション再生(A-4)。
申込は、申込書に必要事項を記載のうえ、FAX・メール・郵送で東京都防災・建築まちづくりセンター(03-5989-1453)へ。申込後1〜2週間程度でアドバイザーから日程調整の連絡が入ります。
荒川区の制度と都の制度は別枠です。両方使えます。順番としては、区のコンサルタント派遣で論点を整理し、都のアドバイザーB-5で工事方式を詰める、という流れが噛み合います。
5. 電話1本で聞ける無料相談ダイヤル
区役所が開いていない時間や、名乗らずに一般論だけ聞きたいときは、電話相談があります。
| 窓口 | 電話番号 | 受付 |
|---|---|---|
| 分譲マンション総合相談窓口(東京都防災・建築まちづくりセンター) | 03-6427-4900 | 管理状況届出制度に関することを含む |
| マンション管理計画認定制度「相談ダイヤル」(日本マンション管理士会連合会) | 03-5801-0858 | 月曜〜土曜 午前10時〜午後5時(祝日・休日、年末年始を除く) |
| 管理計画認定手続支援システムに関する相談(マンション管理センター) | 03-6261-1274 | 月曜〜金曜 午前9時30分〜午後5時(祝日・休日、年末年始を除く) |
| 管理状況届出システムのログインID・パスワード(東京都住宅政策本部マンション課) | 03-5320-4913 | ― |
(出典:荒川区「荒川区マンション管理計画認定制度」、2026年9月17日更新/荒川区「マンション管理状況届出制度」)
とくに相談ダイヤル(03-5801-0858)は土曜も受け付けています。平日に動けない理事長さんにとって、土曜に電話できる窓口があるのは実務的に大きい。認定制度だけでなく、長寿命化促進税制やマンション管理適正化法に関する幅広い質問に、マンション管理士会の相談員が答えてくれます。
区民の個人的な法律問題であれば、荒川区の法律相談(弁護士)が火曜・金曜の午後1時〜4時に区民相談所(区役所3階)で無料・要予約で受けられます(出典:荒川区「相談窓口」)。司法書士相談(第2水曜)、行政書士相談(第1・第4水曜)もいずれも午後1時〜4時です。
6. 荒川区で使える助成:防災に最大400万円、耐震改修に最大1,000万円
ここからは、無料ではないけれど費用の一部が戻る制度です。
分譲マンション防災対策費助成
区は、分譲マンション管理組合に対して、防災対策工事・防災資器材・共同備蓄品の購入費用の一部を助成しています(出典:荒川区「分譲マンションの防災対策を支援します」、2026年8月31日更新)。
| 助成メニュー | 対象例 | 要件 | 助成額 |
|---|---|---|---|
| 防災対策工事 | エレベーター防災対策改修工事、防災備蓄倉庫設置工事、耐震ドア改修工事 など | 管理規約がある/総会が行われている/防災マニュアルを備えている/防災訓練を実施する/新耐震性能を有している | 最大400万円(費用の3分の2) |
| 防災資器材配備 | エレベーター用防災チェア、階段避難車、電動階段台車、ポータブル発電機 など | 管理規約がある/総会が行われている/防災マニュアルを備えている/防災訓練を実施する | 最大50万円(費用の3分の2) |
| 共同備蓄品配備 | 携帯トイレ、おむつ、生理用品、保存水 等 | 管理規約がある/総会が行われている | 最大10万円(費用の3分の2) |
注意点が一つ。区は「必ず工事の契約又は物品の購入をする前に、申請手続きを行ってください」と明記しています。先に契約すると対象外です。これは助成制度に共通する落とし穴で、私が現場で見てきたなかでもいちばん多い失敗です。
また、防災対策工事と防災資器材には「防災マニュアルを備えている」「防災訓練を実施する」という要件があります。防災マニュアルがまだない管理組合は、区が防災マニュアル作成例(ワード)を公開していますので、まずそこから。前述のコンサルタント派遣の防災枠(年3回)を、このマニュアル作成の助言に使うのが、いちばん筋のよい組み合わせです。
非木造建物耐震化推進事業(分譲マンション)
昭和56年5月31日以前に建築された分譲マンションには、耐震化の三段構えの補助があります(出典:荒川区「木造・非木造建物耐震化推進事業」、2026年4月1日更新)。
| 事業 | 補助率 | 補助限度額 | 必要な同意 |
|---|---|---|---|
| 耐震診断 | 3分の2 | 400万円(延べ面積に応じた限度額あり) | 区分所有者の2分の1以上 |
| 耐震補強設計 | 3分の2 | 100万円 | 区分所有者の2分の1以上 |
| 耐震補強工事 | 3分の2 | 1,000万円 | 区分所有者の4分の3以上 |
耐震診断の補助対象費用の限度額は、床面積1,000㎡以内の部分が3,670円/㎡、1,000㎡超2,000㎡以内の部分が1,570円/㎡、2,000㎡を超える部分が1,050円/㎡で算出した額の合算です。設計図書が備わっていない場合の設計図書復元費用も補助対象にできます。
耐震補強設計・工事の対象は、区の耐震診断支援事業を受けた建物で、Is値0.6未満(診断後5年以内)のものです。
7. 賃貸マンション・ビルオーナーが使える枠
ここは収益不動産をお持ちの方向けです。荒川区の耐震化推進事業は、分譲だけでなく賃貸マンションにも枠がある点が重要です。
| 事業 | 分譲マンション | 賃貸マンション |
|---|---|---|
| 耐震診断 | 3分の2・400万円 | 2分の1・200万円 |
| 耐震補強設計 | 3分の2・100万円 | 2分の1・50万円 |
| 耐震補強工事 | 3分の2・1,000万円 | 2分の1・500万円 |
一般緊急輸送道路沿道建物(道路幅員の概ね2分の1以上の高さのもの)に該当する場合は、耐震診断が3分の2・100万円、補強設計が3分の2・100万円、補強工事が3分の2・1,000万円、耐震建替え工事が3分の2・1,500万円という別枠になります。荒川区内の幹線道路沿いに物件をお持ちのオーナーさまは、ご自身の建物が沿道建物に当たるかどうかを住まい街づくり課(内線2822・2826)で確認する価値があります。
防災面では、東京都の「東京とどまるマンション」事業が、登録したマンションの管理組合や賃貸オーナーを対象に防災資器材の購入などの補助を実施しています(出典:荒川区「東京とどまるマンション事業(東京都)」、2025年8月4日更新)。賃貸物件も対象になる数少ない防災補助です。
収益物件の維持管理・修繕の考え方については、ビル・収益不動産オーナー向けのご提案にまとめています。
8. 荒川区マンション管理計画認定制度:区への手数料は当面無料
荒川区は令和5年11月1日から管理計画認定制度の運用を開始しています。特筆すべきは費用です。
荒川区への申請・変更・更新手数料は当面無料(出典:荒川区「荒川区マンション管理計画認定制度」、2026年9月17日更新)。
多くの区が3,000円台から3万円近い手数料を取るなかで、荒川区は区の手数料を取っていません。ただし、管理計画認定手続支援システムの利用料および事前確認審査料は別途必要です(申請は公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援システム」経由のみで、区の窓口での申請はできません)。
認定の有効期間は5年間。荒川区の独自基準は1つで、「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例の要届出マンションに該当するマンションは、管理状況の届出が行われていること」です。つまり届出を出していない要届出マンションは、認定を取れません。
令和8年9月15日時点で、荒川区の認定マンションは33件。令和6年2月の1件目から、着実に増えています。区は令和10年度の目標値を20件と設定していましたが、すでに大きく上回っている計算です。
認定を受ける実利は、次の3つに集約されます。
- マンション長寿命化促進税制:屋根防水工事、床防水工事、外壁塗装等工事といった長寿命化工事が実施された場合、固定資産税額の減額措置を受けられます(国土交通省「マンション長寿命化促進税制」)
- 融資の金利引下げ:住宅金融支援機構のフラット35やマンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ
- すまい・る債の利率上乗せ:マンションすまい・る債の利率上乗せ
外壁塗装と防水が税制優遇の対象になるというのは、大規模修繕を控えた管理組合にとって直接的な意味があります。工事の内容を決める前に、認定の取得と工事時期の関係を整理しておくと、同じ工事で戻ってくるお金が変わります。
9. 荒川区の管理組合が直面している数字
区の計画書に載っている数字を、そのまま並べます。耳の痛い話ですが、自分のマンションがどこに当てはまるかを確認する価値があります(出典:荒川区マンション管理適正化推進計画(概要)、令和4年度荒川区マンション実態調査ほか)。
| 指標 | 令和4年度の実績 | 区の令和10年度目標 |
|---|---|---|
| 長期修繕計画を作成している管理組合の割合 | 80.2% | 100% |
| アドバイザー派遣の利用数 | 4件/年 | 10件/年 |
| 管理計画認定を受けたマンション数 | 0件 | 20件 |
| 災害対策を実施している管理組合の割合 | 59.5% | 70% |
さらに実態調査からは、こんな姿が見えます。
- 区内の区分所有建物の築年数は「20年以上」の割合が50%を超えている(令和4年7月時点の登記情報)
- 修繕積立金の額が「不足している」と3割弱が回答
- 自主防災組織が「ない」マンションが78.5%
- 総会に出席する区分所有者の割合が「2割未満」のマンションが35.6%
耐震診断を実施していない理由として「費用」を挙げるマンションもある、と区は書いています。しかし前述のとおり、荒川区の耐震診断補助は3分の2・400万円、そもそも耐震アドバイザーの現地調査は無料です。費用が理由で止まっているなら、その前提はもう変わっています。
築20年超が半数を超えたということは、2回目・3回目の大規模修繕が視野に入っている物件が荒川区内に大量にあるということです。1回目は新築時の保証や分譲会社の紹介でなんとかなる。難しくなるのは2回目からです。
10. 大規模修繕の費用を実際に下げる:足場とロープアクセスの差額
制度の話を一通りしたので、最後に工事そのもののコストに触れます。無料相談で方向が決まったあと、必ず突き当たる壁だからです。
マンションの大規模修繕では、総工費のうち仮設足場が15〜25%程度を占めるのが一般的です。30戸規模のマンションで総工費3,500万〜5,000万円とすると、足場だけで500万〜1,000万円という計算になります。しかも足場は、建物を1ミリも良くしません。職人を高所に運ぶための、純粋な移動コストです。
ロープアクセス工法は、この足場を組まずに、産業用ロープで作業員が屋上から降下して施工する方法です。目安として、10階建て・外周80m・工期3か月の物件で、仮設足場168万円に対してロープアクセス59万円(差額およそ109万円)という試算になります。工期も、足場の架設・解体期間が不要になる分、足場工法の6割程度で収まるケースがあります。
実際の見積は物件の形状、開口部の位置、屋上のアンカー設置可否によって大きく変わりますので、あくまで参考値としてご理解ください。外壁の打診調査だけであれば、一般的な目安は250〜500円/㎡程度、外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、防水は5,000〜8,000円/㎡あたりが相場のレンジです。
荒川区の建物条件とロープアクセス
荒川区は、道路が狭く隣棟間隔の詰まった敷地が少なくない区です。足場を組もうとすると、隣地の承諾が要る、道路占用の調整が要る、そもそも組む幅がない。こうした条件の建物では、ロープアクセスやハイブリッド工法(足場とロープアクセスを部位ごとに使い分ける方法)の適合性が高くなります。
株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業については、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業で過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けており、品質面ではISO9001のマネジメントシステムに基づいて管理しています。
日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟しているため、工種ごとに元請を立てずに施工できる点も、コストが下がる理由の一つです。
工法ごとの技術的な条件、どういう建物に向き・不向きがあるかは、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。同業の方やフランチャイズ加盟をご検討の方は、ロープアクセスドットコムの技術情報もあわせてご覧ください。
料金の考え方については大規模修繕の料金の考え方に、安全管理の体制は明誠の安全管理にまとめています。
よくあるご質問
Q. 荒川区のコンサルタント派遣は、何回まで無料ですか?
A. 防災に関する助言業務は1年度につき3回まで(回数は毎年リセットされます)、それ以外の助言業務は1管理組合につき通算6回まで(回数は次年度へ引き継がれます)です。1回につき2時間以内で、利用料は無料です。個人への派遣はできず、対象は区内の分譲マンション管理組合となります。
Q. コンサルタント派遣で、長期修繕計画を作ってもらえますか?
A. 作成はできません。荒川区は対象外として、管理規約・長期修繕計画等の書類作成、見積の作成、修繕工事の設計、建物に関する耐震等の診断・調査、居住者間の紛争解決・仲裁、特定業者の紹介を挙げています。ただし「いまの長期修繕計画の内容について専門家の意見が聞きたい」という相談は対象です。作成そのものを発注する場合は、設計事務所やコンサルタントへの委託が必要になります。
Q. 耐震アドバイザーとコンサルタント派遣は、どちらを使えばいいですか?
A. 建物の耐震化がテーマなら分譲マンション耐震アドバイザー派遣(1棟3回まで無料、対象は昭和56年5月31日以前建築の分譲マンション)、管理組合の運営や修繕積立金、防災対策の進め方がテーマならコンサルタント派遣制度です。耐震アドバイザーは建物現地調査と合意形成支援まで含むので、旧耐震の物件であればまずこちらから使うほうが実務的です。両方とも申込先は住まい街づくり課(03-3802-4454)です。
Q. 賃貸マンションやビルのオーナーでも使える制度はありますか?
A. 荒川区の非木造建物耐震化推進事業には賃貸マンションの枠があり、耐震診断は2分の1・200万円、耐震補強設計は2分の1・50万円、耐震補強工事は2分の1・500万円が限度です。東京都の「東京とどまるマンション」の防災資器材補助も、登録すれば賃貸オーナーが対象に含まれます。一方、コンサルタント派遣や防災対策費助成は分譲マンション管理組合が対象です。収益物件の修繕計画についてはビル・収益不動産オーナー向けのご提案もご覧ください。
Q. 管理計画認定を取ると、大規模修繕で得をしますか?
A. 屋根防水工事、床防水工事、外壁塗装等工事といった長寿命化工事を実施した場合に、マンション長寿命化促進税制による固定資産税額の減額措置を受けられます。また住宅金融支援機構のフラット35やマンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ、マンションすまい・る債の利率上乗せもあります。荒川区への申請・変更・更新手数料は当面無料ですが、管理計画認定手続支援システムの利用料と事前確認審査料は別途かかります。適用にはほかにも要件がありますので、工事の内容を決める前に住まい街づくり課へご相談ください。
Q. 外壁の打診調査にはいくらかかりますか?
A. 一般的な目安として250〜500円/㎡程度ですが、建物の形状、足場の要否、調査範囲によって大きく変わります。明誠ではロープアクセス工法を使い、足場を組まずに打診調査を行う方法もご提案しています。概算のお見積りをご希望でしたら明誠のお問い合わせ窓口からご連絡ください。
Q. 足場を組まないロープアクセス工法だと、工期はどれくらい短くなりますか?
A. 物件条件によりますが、仮設足場の架設・解体に要する期間が不要になるため、足場工法の6割程度の工期で完了するケースがあります。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場工法で約3か月のところ、ロープアクセスで1.5〜2か月が一つの目安です。荒川区のように隣棟間隔の詰まった敷地では、そもそも足場が組みにくいという物理的な制約もあわせて検討する価値があります。
Q. 防災対策費助成は、工事のあとでも申請できますか?
A. できません。荒川区は「必ず工事の契約又は物品の購入をする前に、申請手続きを行ってください」と明記しています。耐震診断・耐震補強設計・耐震補強工事の補助も、内定決定後に契約を行う流れです。いずれも「先に契約してしまうと対象外」という共通の落とし穴がありますので、見積を取った段階で一度区にご相談ください。
まとめ
荒川区の管理組合とオーナーさまが使える支援は、無料の相談・派遣が8つ、費用の一部が戻る助成が4つ。合計12あります。
このうち、荒川区でいちばん特徴的なのはコンサルタント派遣制度の「防災枠が毎年3回リセットされる」設計です。管理組合の運営相談は通算6回で終わりですが、防災テーマであれば毎年使えます。防災マニュアルの作成、在宅避難の準備、防災訓練の設計、そして防災対策費助成の申請準備。ここまでを毎年3回の枠で回していけば、費用はかかりません。
そして、旧耐震の物件であれば耐震アドバイザーの現地調査(1棟3回まで無料)が、大規模修繕の検討にそのまま使えます。建物の状態を第三者の建築士に一度見てもらう。それだけで、理事会の議論の質が変わります。
年4件。冒頭の数字に戻ります。これだけの制度が用意されていて、使われているのが年4件だというのは、率直に言ってもったいない。制度は、知っている組合だけが使えます。私が現場で見てきたかぎり、修繕で苦労する組合とそうでない組合の差は、建物の状態よりも「相談先をいくつ持っているか」で決まります。管理会社が1社だけ、という状態が一番危うい。
明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。管理組合さま向けのサービス内容は管理組合向けの大規模修繕サポートに、私たちの仕事の考え方は明誠の理念にまとめました。
まずは03-3802-4454に一本。次の理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。
出典・参考資料
- 荒川区「コンサルタント派遣制度(マンション)」(更新日:2026年9月4日)
- 荒川区「コンサルタント派遣制度パンフレット(PDF)」
- 荒川区「分譲マンションの防災対策を支援します」(更新日:2026年8月31日)
- 荒川区「非木造建物耐震化推進事業のご案内(PDF)」(令和6年12月作成/分譲マンション耐震アドバイザー派遣事業を含む)
- 荒川区「木造・非木造建物耐震化推進事業」(更新日:2026年4月1日/令和8年度の補助率・限度額)
- 荒川区「マンション管理状況届出制度」(更新日:2026年8月20日)
- 荒川区「荒川区マンション管理計画認定制度」(更新日:2026年9月17日/認定マンション一覧は令和8年9月15日認定分まで)
- 荒川区「荒川区分譲マンションセミナー」(更新日:2026年9月2日)
- 荒川区「荒川区マンション管理適正化推進計画(概要)(PDF)」(令和5年10月/令和4年度荒川区マンション実態調査を含む)
- 荒川区「荒川区マンション実態調査」
- 荒川区「東京とどまるマンション事業(東京都)」(更新日:2025年8月4日)
- 荒川区「相談窓口」
- 公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」
- 東京都マンションポータルサイト「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制」
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」
- 公益財団法人 マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」
- 住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月21日時点で公表されている荒川区および東京都・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。分譲マンション耐震アドバイザー派遣事業の詳細を記載した「非木造建物耐震化推進事業のご案内」は令和6年12月作成の資料であり、補助率・限度額については令和8年4月1日更新の区ホームページの記載を優先して掲載しました。また、荒川区の管理計画認定手数料は「当面無料」という記載であり、将来的に有料化される可能性があります。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず荒川区 防災都市づくり部 住まい街づくり課(電話 03-3802-4454/耐震関係は03-3802-3111 内線2822・2826)および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月21日

