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渋谷区のマンション管理計画認定制度|手数料無料化と区独自基準2026年度版

渋谷区のマンション管理計画認定制度|手数料無料化と区独自基準2026年度版

結論:渋谷区で管理計画認定を取ると何が変わるか、手数料はいくらか

私は大規模修繕の現場で20年近く、理事長さまや管理会社の担当者さまと修繕積立金の話をしてきました。その中で最近いちばん増えている相談が「マンション管理計画認定制度」です。渋谷区に絞って結論から申し上げます。

渋谷区は令和8年4月1日から、区への認定申請手数料を無料にしました。以前は申請のたびにコストがかかっていましたが、この変更で管理組合の負担は軽くなっています(出典:渋谷区ポータル マンション管理計画認定制度)。

一方で同じ令和8年4月1日から、渋谷区独自の上乗せ基準(防災・コミュニティ関連)が新設されました。手数料は下がったが要件は増えた、というのが渋谷区の令和8年度の実像です。認定を取得すると、固定資産税の減額やフラット35の金利引下げなど、長期修繕計画の実行そのものを後押しする経済効果が得られます。この記事では、渋谷区で実際に認定を目指す理事会が押さえるべき手数料・要件・スケジュールを、現場の実務目線でまとめました。

認定主体はどこか(渋谷区固有)

マンション管理計画認定制度は、都道府県・政令指定都市・中核市などが「認定行政庁」として運用する仕組みです。東京都の場合、島しょ部を除く区市の区域は各区市が認定事務を担い、渋谷区のマンションについては渋谷区自身が認定行政庁になります(出典:東京都マンションポータルサイト)。

ただし渋谷区では、区への直接申請は原則できません。申請は公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」を経由する仕組みになっており、区への直接申請が認められるのは変更認定申請のみです(出典:渋谷区ポータル マンション管理計画認定制度)。

さらに渋谷区では、マンション管理センターへ事前確認を依頼する前に、渋谷区への事前相談が必須とされています。この事前相談で、後述する渋谷区独自基準への適合状況を確認する流れです。私はこの「事前相談が必須」という点を見落として、書類を全部そろえてから区に問い合わせて手戻りになった理事会を実際に見ています。窓口は住宅政策課住環境整備係(電話03-3463-3548)です。申請を検討される段階で、まずこちらに一本電話を入れることをおすすめします。

認定17要件(総会・修繕計画・修繕積立金・長期修繕計画 等)

管理計画認定制度は令和4年4月にスタートした国の制度で、国土交通省が定める認定基準は大きく5分野・合計17項目で構成されています(出典:国土交通省 マンションの管理計画認定の基準)。渋谷区もこの国基準をベースに審査します。

① 管理組合の運営(3項目)
– 管理者等が定められている
– 監事が選任されている
– 集会(総会)が年1回以上開催されている

② 管理規約(3項目)
– 管理規約が作成されている
– 緊急時等における専有部分への立入りや、修繕等の履歴情報の保管について規約に定めがある
– 管理組合の財務・管理に関する情報提供について規約に定めがある

③ 管理組合の経理(3項目)
– 管理費と修繕積立金が区分経理されている
– 修繕積立金会計から他の会計への充当がされていない
– 直前の事業年度末時点で、3か月以上の修繕積立金滞納額が全体の1割以内である

④ 長期修繕計画の作成及び見直し等(6項目)
– 計画の内容と修繕積立金額が総会で決議されている
– 計画の作成または見直しが7年以内にされている
– 計画期間が30年以上、かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれている
– 計画で一時的な修繕積立金の徴収を予定していない
– 計画期間全体の総額から算定した修繕積立金の平均額が著しく低額でない
– 計画期間の最終年度において借入金残高のない計画となっている

⑤ その他(2項目)
– 組合員名簿、居住者名簿が備えられており、年1回以上内容確認が行われている

私の経験上、多くの管理組合がつまずくのは④の長期修繕計画まわりです。特に「修繕積立金の平均額が著しく低額でない」という項目は、目先の値上げを避けたい理事会心理と真っ向からぶつかります。ここは認定を取る・取らないに関わらず、資産価値を守るために避けて通れない論点だと私は考えています。

独自基準の有無と実務への影響

東京都・神奈川県では、市区町村が国の基準に独自の項目を上乗せできる仕組みがあり、渋谷区もこれを活用しています。渋谷区は令和8年4月1日から、以下の独自基準を追加しました(出典:渋谷区ポータル マンション管理計画認定制度)。

  • 防災マニュアルの作成:マンション独自の防災マニュアルを整備していること
  • 防災対策(次のいずれか1つ以上):年1回以上の防災訓練実施/自主防災組織の設置/防災資材・備蓄物資の整備/避難行動要支援者の把握
  • コミュニティ活動(次のいずれか1つ以上):自治会の設置または設置計画/地域町会・自治会への加入/地域活動への参加(美化活動、防災訓練等)/町会・自治会との連絡担当者の選任

経過措置として、令和8年3月31日までに事前確認申請を済ませた管理組合には旧基準が適用されます。これから申請する管理組合は、令和8年4月1日以降の新基準(独自基準込み)で審査される点に注意してください。

実務への影響は小さくありません。防災マニュアルや防災訓練の実施記録は、多くのマンションで「作った気になっているが、更新されていない」「総会議事録に記録が残っていない」状態になりがちです。認定を目指すなら、防災訓練の実施日・参加人数・実施内容を議事録や写真で残しておくことを、私は理事会に強くお伝えしています。

手数料と申請ルート(事前確認あり/なし・マンション管理センター経由)

手数料は「区への手数料」と「マンション管理センターへの事前確認手数料」の2階建てで理解する必要があります。

区分 金額 備考
渋谷区への申請手数料 無料(令和8年4月1日〜) それ以前は有料だった
マンション管理センター システム利用料 10,000円(税込) 事前確認を利用する場合
マンション管理センター 事前確認審査料 10,000円(税込)/長期修繕計画1計画あたり 事前確認を利用する場合

(出典:渋谷区ポータル マンション管理計画認定制度、マンション管理センター 管理計画認定手続支援サービス)

つまり渋谷区での申請は、事前確認あり・なしを自由に選べる制度ではありません。区への直接申請ができるのは変更認定に限られるため、新規に認定を取る管理組合は事実上、マンション管理センターの事前確認ルートを通ることになります。最低でも20,000円程度の実費がかかると見込んでおくとよいでしょう。区の手数料が無料になった分、実質的な負担はこのマンション管理センター側の費用だけと考えて差し支えありません。

申請の流れは次のとおりです。

  1. 渋谷区(住宅政策課住環境整備係)へ事前相談し、独自基準への適合状況を確認する
  2. 公益財団法人マンション管理センターに事前確認を依頼し、事前確認講習を修了したマンション管理士の審査を受ける
  3. 基準に適合すれば「事前確認適合証」が交付される
  4. 適合証をもとに渋谷区へ本申請し、区が認定基準を満たすか審査する
  5. 認定通知を受領(認定の有効期間は5年間、更新可能)

認定の3つの経済効果(長寿命化促進税制/フラット35/共用部リフォーム融資)

認定を取ること自体がゴールではありません。認定マンションになると、実際に使える経済的なメリットが3つあります。

① マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)
管理計画認定を受けたマンションが、長寿命化に資する大規模修繕工事を実施した場合、工事翌年度の固定資産税額が一定割合減額される制度です(出典:国土交通省 マンション長寿命化促進税制)。適用には工事内容や申請時期の要件があるため、工事契約前に管理会社・施工会社と減額要件を確認しておく必要があります。

② フラット35の金利引下げ・フラット50の利用
住宅金融支援機構のフラット35には、管理計画認定マンションを対象にした金利引下げメニューがあります。また、通常は利用できないフラット50(最長50年の長期固定金利ローン)も、認定マンションの住戸であれば利用可能になります(出典:国土交通省 マンション管理計画認定制度)。区分所有者が住戸を売却・購入する際の資産価値にも直結するポイントです。

③ マンション共用部分リフォーム融資の金利優遇・マンション債の利率上乗せ
管理組合が大規模修繕の資金を借り入れる際の「マンション共用部分リフォーム融資」でも、認定マンションは金利優遇の対象になります(出典:住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資)。修繕積立金だけで工事費をまかなえない場合の資金調達コストを抑えられる点は、理事会にとって実務的なメリットです。

私はいつも理事長さまに「認定は取って終わりではなく、取った後にどう使うかが本題です」とお伝えしています。特に③の融資メリットは、ロープアクセス工法を組み合わせて足場費を圧縮し、借入額そのものを減らす工夫と合わせると効果がさらに大きくなります。実際に私が関わった案件では、10階建て・外周80m・工期3か月程度の建物で、通常足場が約168万円かかるところをロープアクセス工法に切り替えたことで約59万円まで下がり、差額はおよそ109万円という例もありました(工法や現場条件により変動します)。この種の工法選択も、長期修繕計画の「著しく低額でない修繕積立金」という認定要件をクリアするための現実的な打ち手になります。ロープアクセス工法の技術的な仕組みや訓練体制については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく紹介しています。

逆算スケジュール(総会決議→書類準備→認定申請→交付)

渋谷区の申請ルートは事前相談・事前確認・本申請と段階を踏むため、着手が遅れるほど工期に影響します。目安として、次の順序で逆算してください。

ステップ 目安時期 内容
① 総会決議 申請の4〜6か月前 長期修繕計画・修繕積立金額を総会で決議
② 独自基準の整備 申請の3〜4か月前 防災マニュアル作成、防災訓練実施記録の整備
③ 渋谷区への事前相談 申請の2〜3か月前 住宅政策課住環境整備係へ連絡、独自基準適合を確認
④ マンション管理センターへ事前確認依頼 申請の1〜2か月前 書類提出、事前確認審査
⑤ 適合証取得・区へ本申請 申請月 適合証をもとに渋谷区へ申請
⑥ 認定交付 申請から数週間〜1か月程度 審査完了後、認定通知

総会決議が必要な項目が多いため、通常総会が年1回しかない管理組合は、逆算すると総会の半年以上前から準備を始める計算になります。私の経験上、ここでいちばん時間がかかるのは「長期修繕計画の見直し」そのものです。計画が古いまま放置されているマンションでは、認定申請の前に計画自体の改訂作業が必要になるケースが少なくありません。

まとめ+今週動くこと3点

渋谷区のマンション管理計画認定制度は、令和8年4月から手数料無料化と独自基準の追加が同時に始まった、いわば「入りやすくなったが、やることは増えた」制度です。正直に申し上げると、独自基準の防災・コミュニティ項目は、書類上の整備だけでなく実際の活動実績が問われるため、直前に慌てて用意できるものではありません。

今週、理事会で動いていただきたいことを3点にまとめます。

  1. 長期修繕計画の最終見直し年月日を確認し、7年を超えていないかチェックする
  2. 防災マニュアルの有無と、防災訓練・自主防災組織などの実施記録が議事録に残っているか確認する
  3. 渋谷区住宅政策課住環境整備係(03-3463-3548)へ、認定を検討している旨を一度相談してみる

大規模修繕の実施計画とあわせて認定取得を進めたい場合は、足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法のどれが自分たちの建物に合うかという検討も、同じタイミングで進めておくと効率的です。ロープアクセス工法の技術的な詳細については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムでも解説していますので、あわせてご覧ください。

よくあるご質問

Q. 渋谷区にマンション管理計画認定制度の申請手数料はいくらかかりますか?

A. 渋谷区への申請手数料は令和8年4月1日から無料です。ただし、マンション管理センターの事前確認を利用する場合、システム利用料10,000円と長期修繕計画1計画あたりの審査手数料10,000円、合計で最低20,000円程度の実費がかかります。

Q. 渋谷区の独自基準とはどのようなものですか?

A. 防災マニュアルの作成、防災対策(防災訓練・自主防災組織・備蓄整備・要支援者把握のいずれか1つ以上)、コミュニティ活動(自治会設置・地域加入・地域活動参加・連絡担当者選任のいずれか1つ以上)の3分野です。令和8年4月1日から適用されています。

Q. 渋谷区に直接申請することはできますか?

A. 新規の認定申請は、公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを経由する必要があります。区への直接申請が認められるのは変更認定申請の場合のみです。

Q. 認定の有効期間はどれくらいですか?

A. 認定日から5年間です。継続して制度のメリットを受けるには、期限内に更新申請を行う必要があります。

Q. 認定を取ると具体的にどんなメリットがありますか?

A. 長寿命化に資する大規模修繕工事を行った場合の固定資産税減額、フラット35の金利引下げおよびフラット50の利用、マンション共用部分リフォーム融資の金利優遇といった経済的なメリットがあります。

Q. 長期修繕計画が古いままでも申請できますか?

A. 認定基準では、計画の作成または見直しが7年以内であることが求められます。7年を超えている場合は、申請前に計画の改訂が必要です。

Q. 修繕積立金の滞納があると認定は取れませんか?

A. 直前の事業年度末時点で、3か月以上の滞納額が全体の1割を超えていると基準を満たしません。滞納管理の状況を事前に確認しておくことをおすすめします。

大規模修繕そのものの進め方や工法選定でお悩みの場合は、ロープアクセス工法のご紹介や大規模修繕工事の安全管理のページもあわせてご参照ください。管理組合向けのサポート内容は管理組合さま向けサービスにまとめています。株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけており、ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。これまでの明誠の施工事例もあわせてご覧いただけます。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。通常足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3工法から、建物特性に応じて最適な工法を提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月23日

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月23日時点で公表されている渋谷区、東京都、国土交通省、公益財団法人マンション管理センター、住宅金融支援機構の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・基準変更があり得ます。実際に申請される前に、必ず渋谷区住宅政策課住環境整備係(03-3463-3548)および公益財団法人マンション管理センターへ最新の内容をご確認ください。

出典・参考資料