
久喜市の分譲マンションで大規模修繕を考えている管理組合が、いま真っ先に確認すべき補助金はどれか。答えは久喜市分譲マンション耐震診断助成金です。診断費用の2分の1、または戸数×5万円のいずれか低い額で、上限100万円。旧耐震のマンションなら、まずここから入るのが久喜市では正解です。
ただし、この助成にはほとんどの管理組合が気づいていない前提条件が1つ紛れ込んでいます。後半で詳しく書きますが、建築基準法第12条の報告を出していないマンションは、この助成の入口で止まります。
株式会社明誠の本間です。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。この記事では、久喜市の管理組合が令和8年度に使える制度を、市の要綱と計画書の原文にあたって整理します。数字はすべて出典リンク付きで書きます。
この記事の結論(先にお伝えします)
久喜市の分譲マンション管理組合が押さえるべきことは、次の3点です。
- 旧耐震なら耐震診断助成(上限100万円)が最初の一手。ただし交付決定前に業者と契約すると対象外になり、完了報告は申請年度の1月末が期限です。
- 久喜市のマンションは全国平均より速く高経年化しています。築40年以上は現在26棟・約870戸ですが、10年後には86棟・約2,800戸と約3.2倍。国全体の約2.1倍を大きく上回るペースです。
- 久喜市は団地型が棟数の66.4%。団地型は棟数のぶんだけ足場の外周が伸びるため、工法の選び方で総額が大きく動きます。
久喜市で令和8年度に管理組合が使える主な制度を、一覧にしておきます。
| 制度名 | 共用部に使えるか | 金額 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| 久喜市分譲マンション耐震診断助成金 | 使える | 費用の1/2または戸数×5万円の低い方・上限100万円 | 建築審査課 企画指導係 |
| マンション管理計画認定制度 | 制度の認定 | 市への申請手数料は無料 | 建築審査課 企画指導係 |
| マンション長寿命化促進税制 | 使える(税の減額) | 家屋の固定資産税を1年度分1/3減額 | 資産税課 家屋係 |
| 久喜市既存建築物耐震補強等助成金 | 使えない | 一戸建ての木造住宅が対象 | 建築審査課 企画指導係 |
| 久喜市ゼロカーボン推進補助金 | 使えない見込み | 屋根用高遮熱塗装1㎡400円・最大2万円(個人のみ) | 環境課 |
| 埼玉県分譲マンションアドバイザー派遣 | 相談が無料 | 令和8年度は受付終了 | 埼玉県住宅課 |
| 久喜市マンション管理相談会 | 相談が無料 | 無料・各回1組 | 建築審査課 企画指導係 |
「使えない」も正直に並べました。期待させてから外すのが一番よくないと、私は思っています。
久喜市分譲マンション耐震診断助成金|上限100万円の中身
久喜市は、市内の分譲マンションで耐震診断を行う管理組合に対して、予算の範囲内で助成金を交付しています(出典:久喜市「分譲マンションの耐震診断に対し助成を行っています」)。
このページの更新日は2026年5月1日、掲載されている交付要綱のファイル名はmanshon_youkou2026.4.1.pdf、つまり令和8年4月1日施行版です。令和8年度の現行制度として読んで差し支えありません。
いくらもらえるのか|「戸数×5万円」の算数を先にやってください
要綱の助成額は、原文でこう書かれています。
耐震診断に要した費用の額に2分の1を乗じて得た額または、戸数に5万円を乗じた額のうち、いずれか低い額で、100万円を限度とします。
条件が3つ重なっているので、実際にいくらになるかを表にします。診断費用を200万円と仮定した場合の計算です。
| 戸数 | 戸数×5万円 | 診断費用200万円の場合の1/2 | 実際の助成額 | 効いている上限 |
|---|---|---|---|---|
| 12戸 | 60万円 | 100万円 | 60万円 | 戸数 |
| 16戸 | 80万円 | 100万円 | 80万円 | 戸数 |
| 20戸 | 100万円 | 100万円 | 100万円 | 戸数=100万円の天井 |
| 40戸 | 200万円 | 100万円 | 100万円 | 100万円の限度額 |
| 80戸 | 400万円 | 100万円 | 100万円 | 100万円の限度額 |
ここから読み取れることは、はっきりしています。
20戸を境に、効いている上限が入れ替わります。 20戸以上のマンションは、実質「診断費用の半額、ただし100万円まで」と考えればよい。20戸未満のマンションは、100万円の枠を使い切れません。12戸なら60万円が天井です。
私がこれを最初に表にするのは、理事会で「上限100万円だから100万円もらえる」と説明してしまう人が本当に多いからです。18戸のマンションで90万円が上限だと分かっていれば、見積の取り方も変わります。
要件は7つ(建物の要件5つ+診断の要件2つ)
要綱が定める対象建築物は、市内に存する昭和56年5月31日以前の建築確認を受けて建築された木造以外の共同住宅(2以上の区分所有者が存し、人の居住の用に供する専有部分があるもの)で、次の#1〜#5をすべて満たすものです。#6と#7は、要綱の別項「対象となる耐震診断」が定める診断そのものの要件です。合わせて7つ、すべてを満たす必要があります。
| # | 要件 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 1 | 地階を除く階数が3階以上、かつ延べ面積1,000㎡以上の耐火建築物または準耐火建築物 | 3階建ての小規模団地でも、延べ面積1,000㎡を超えれば入り得る |
| 2 | 延べ面積の2分の1以上を居住の用に供していること | 1階が店舗の物件は要確認 |
| 3 | 管理組合の総会で、助成金の交付申請の実施に係る決議がなされていること | 理事会決議だけでは進めない |
| 4 | 明らかな建築基準法の違反がないもの | 増築・用途変更の履歴に注意 |
| 5 | 建築基準法第12条第1項に規定する建築物である場合は、同法に基づく報告を行っていること | ★次の見出しで詳しく書きます |
| 6 | 診断は一級建築士事務所に所属する一級建築士が行うこと | 誰でもいいわけではない |
| 7 | 診断結果が、既存建築物耐震診断・改修等推進全国ネットワーク委員会に登録されている判定委員会の判定を受けたもの | 判定に時間がかかる。工程に効く |
要件3と要件5が、久喜市の申請でつまずく二大ポイントだと私は見ています。
★12条点検の報告を出していないと、この100万円は取れません
要件5をもう一度読んでください。
建築基準法第12条第1項に規定する建築物である場合は、同法に基づく報告を行っていること
これは、定期報告(いわゆる12条点検)の対象建築物なのに報告を出していないマンションは、耐震診断助成の申請ができない、ということです。
ここで、久喜市の管理組合が取り違えやすい点を先に書きます。
久喜市は平成26年4月に建築基準法の規定による特定行政庁へ移行しており(出典:久喜市建築物耐震改修促進計画(令和8年3月改定))、報告対象の指定は久喜市が独自に行います。
参考までに、埼玉県知事が報告対象として指定している建築物の表では、共同住宅は「六階以上の階にあるもの」が報告の間隔3年とされています(出典:埼玉県「定期報告対象となる建築物等と報告の間隔」。同ページの掲載日は2026年9月2日)。ただしこれは埼玉県知事が特定行政庁となる市町村に適用されるもので、久喜市の物件にそのまま当てはまるとは限りません。 埼玉県自身も「建築物の所在地により、定期報告対象の建築物等と報告の間隔は、特定行政庁ごとに異なる場合がありますので、詳細は各特定行政庁にご確認ください」と案内しています。
自分のマンションが対象かどうかは、久喜市建築審査課が公表している「定期報告対象建築物等と報告期間」のPDFで必ず確認してください(出典:久喜市「建築物の定期報告」。ページ更新日は2025年7月16日です)。階数だけを見て「うちは5階建てだから関係ない」と自己判断すると、100万円の助成の可否を取り違えます。
ここで私が申し上げたいのは、順番の問題です。
旧耐震のマンションで6階以上、という条件は、昭和50年代に建った久喜市のマンションでは珍しくありません。その物件が「耐震診断の助成を取りにいこう」と動き出した瞬間に、12条報告を何年も出していなかったことが表に出る。しかも定期報告の未報告は、建築基準法第101条により100万円以下の罰金の対象です。
100万円の助成を取りにいったら100万円の罰金リスクが見つかった、という話にしないでください。順番は逆です。まず定期報告の状況を確認する。その次に助成の相談に行く。 これだけで話が滑らかに進みます。
定期調査(検査)報告書の提出窓口は、市役所ではなく一般財団法人埼玉県建築安全協会(skjak.jp)です。様式類も同協会のホームページからダウンロードします。一方、報告概要書の閲覧窓口は久喜市建築審査課(第二庁舎)で、閲覧時間は開庁日の8時45分から16時30分まで。出すところと見るところが別、という点は毎回どこかで混乱が起きます。
契約の順番を間違えると、全額が自腹になります
市のページには、こう明記されています。
市から助成金の交付決定通知が出るまでは業者と契約しないでください。先に業者と契約している場合、助成の対象となりません。
これは久喜市に限らず多くの自治体の補助制度に共通するルールですが、マンションの場合は特に危ないと私は思っています。理由は、総会のスケジュールです。
要件3で「総会で交付申請の実施に係る決議」が求められるので、多くの管理組合は総会で診断業者も一緒に決めてしまいたくなる。そこで「では発注しましょう」と話が進むと、交付決定前の契約になります。
私が理事会でお勧めしている進め方は、こうです。
- 総会では「耐震診断を実施し、市の助成金を申請すること」と「予算枠」を決議する
- 業者の選定は理事会に委任する旨も、同じ議案に入れておく
- 総会後に助成金を申請し、交付決定通知が届いてから契約を交わす
総会の議案書にこの3段構えを書いておけば、決議のやり直しも、助成の取りこぼしも避けられます。
1月末の完了報告から逆算してください
もう1つ、市のページにこうあります。
申請年度の1月末までに完了報告書を提出していただく必要があります。余裕を持って申請してください。
つまり、令和8年度の助成を使うなら、令和9年1月末までに耐震診断が完了して報告まで終わっている必要があります。今日(2026年9月23日)から数えると、残りは約4か月です。
ここで効いてくるのが、先ほどの要件7、判定委員会の判定です。耐震診断は「一級建築士が診断書をつくって終わり」ではなく、全国ネットワーク委員会に登録された判定委員会の判定を受ける必要があります。判定委員会は開催日が決まっていることが多く、申込から判定書の交付まで数週間から数か月を見ておくものです。
診断そのものに1〜2か月、判定に1〜2か月。そこから逆算すると、9月中に建築審査課へ相談を入れて、10月中に申請、11月に交付決定、という並びがぎりぎりのラインだと私は見ています。令和8年度中が厳しければ、令和9年度の4月に動き出せるよう、この秋に総会の議案を仕込んでおくほうが確実です。
★団地型の管理組合は「戸数の数え方」を窓口に確認してください
ここからは、久喜市だからこそ必ず聞いてほしい話です。
久喜市のマンションは、団地型が107棟中71棟=棟数の66.4%を占めます。戸数ベースでも45.8%。しかも2棟から最大21棟までの建物が一団地を形成しています(出典:久喜市マンション管理適正化推進計画)。
助成額の計算式は「戸数に5万円を乗じた額」でした。団地型の管理組合にとって、ここで決定的な問いが立ちます。
この「戸数」は、団地全体の戸数ですか。それとも診断を受ける1棟ごとの戸数ですか。
団地全体なら、多くの団地は20戸をはるかに超えるので100万円の限度額に届きます。1棟ごとなら、1棟20戸の団地で5棟を診断する場合の扱いは棟ごとの申請になるのか、団地で1回なのか。この違いで、受け取れる金額が何倍も変わります。
要綱の公表情報からは、この点を断定できませんでした。ですので、断定はしません。そのかわり、電話で聞く言葉をそのまま書いておきます。
「久喜市内の団地型の分譲マンションの管理組合です。分譲マンション耐震診断助成金について3点うかがいます。第一に、助成額の計算に使う『戸数』は団地全体の戸数でしょうか、それとも診断を行う棟ごとの戸数でしょうか。第二に、複数棟を診断する場合、申請は団地で1件でしょうか、棟ごとに複数件でしょうか。第三に、1つの管理組合が年度をまたいで複数回申請することは可能でしょうか」
連絡先は久喜市 まちづくり推進部 建築審査課 企画指導係、電話0480-22-1111(市の代表番号)です。所在地は〒346-0024 久喜市北青柳1404番地7で、市役所本庁(下早見85番地の3)とは別の建物です。電話番号は同じでも、行く場所が違います。
団地型が3分の2を占める久喜市で、この確認を最初にやるかどうかは、私は本当に大きいと思っています。
久喜市のマンションは、全国より速く古くなっています
久喜市が令和6年3月に策定した久喜市マンション管理適正化推進計画(計画期間:令和6年度から令和15年度までの10年間)には、この市の現実がかなり率直に書かれています。
数字で見る久喜市のマンションストック
| 項目 | 数値 | 基準時点 |
|---|---|---|
| マンションストック | 107棟・5,223戸 | 令和5年1月1日現在 |
| 単棟型 | 36棟・2,832戸 | 同上 |
| 団地型 | 71棟・2,391戸(棟数の66.4%) | 同上 |
| 分譲マンションの管理組合数 | 47管理組合 | 令和5年度実態調査 |
| 築40年以上の高経年マンション | 26棟・約870戸(すべて旧耐震基準) | 同上 |
| 10年後の築40年以上 | 86棟・約2,800戸 | 推計 |
| (参考)市の総人口/世帯数 | 150,987人/68,201世帯 | 令和5年1月現在・同計画より |
立地は「駅周辺を中心とした利便性の良い地域を中心に立地しており、とりわけJR東鷲宮駅周辺及び久喜駅周辺に集中」とされています。
国の2.1倍に対して、久喜市は3.2倍
計画書が指摘しているのは、増え方のスピードです。
国全体の築40年以上のマンションストックの推移は、戸数ベースで10年後に約2.1倍、20年後には約3.5倍に増加する見込みに対し、市は10年後に約3.2倍、20年後には約4.3倍と、国の推移よりも速いペース
戸数で追うと、873戸(2023年)→2,857戸(2033年)→3,760戸(2043年)→5,023戸(2053年)。30年後には、現在のストック5,223戸のほぼ全量が築40年以上になる計算です。
1980年代から1990年代中頃にかけて集中的に供給された市ですから、これは構造的に避けられません。問題は、その波が来ることではなく、同じ時期に一斉に来ることです。
同じ年に市内の何十もの管理組合が同時に大規模修繕の発注をかけたら何が起きるか。施工会社の取り合いになり、見積は強気になり、足場の手配は遅れます。私が「早く動いた管理組合が得をする」と繰り返すのは、精神論ではなく需給の話です。
旧耐震マンションの耐震診断実施率は20%
もう1つ、令和5年度の実態調査(市内全分譲マンション47管理組合を対象、回収率72.3%)から、目を引く数字を挙げておきます。
- 旧耐震マンションの耐震診断実施率:20%
- 修繕積立金の改定を長期修繕計画に基づき実施:55.9%
- 積立方式は均等積立67.7%/段階増額約32.3%
- 長期修繕計画の策定済み85.3%/未作成8.8%
- 将来の一時金徴収を「予定していない」72.4%
耐震診断の実施率20%。 旧耐震マンションの5棟に4棟が、診断すらしていません。市には上限100万円の助成制度があるのにです。
私はこれを「意識が低い」という話にはしたくありません。実態は、言い出す人がいなかっただけだと思っています。耐震診断は、やると決めた瞬間に「結果が悪かったらどうするのか」という重たい問いがついてきます。だから誰も議題に出さない。20%という数字は、その静けさの結果です。
ただ、大規模修繕を控えているなら話は別です。足場を架けるタイミングと、建物の構造を調べるタイミングは、本来そろえたほうが安い。 これは次の章で具体的に書きます。
団地型が3分の2を占める久喜市で、工法の選び方が効く理由
ここからは施工会社としての話です。
久喜市は「足場が組める街」です
まず正直に書きます。久喜市は、足場を組みやすい土地柄です。
市域は面積82.41平方キロメートル、地形はほぼ平坦です(出典:久喜市「市のプロフィール」)。山梨県や静岡県東部の記事では「敷地の3面が傾斜地で足場を組むこと自体が実質困難」という話を何度も書いてきましたが、久喜市ではそういう物件はまれです。
だから私は、久喜市の管理組合にこう申し上げます。
久喜市は足場が組める。だからこそ、足場にするかロープアクセスにするかを、金額と工期で選べます。 「足場が組めないから仕方なくロープ」ではなく、「どちらも選べる中で、どちらが安く早いか」で判断できる。これは恵まれた条件です。
ロープアクセス工法(産業用ロープで外壁を昇降しながら施工する無足場工法)の技術的な中身は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。工法そのものを知りたい方はそちらをご覧ください。
団地型では、足場費が棟数のぶんだけ増えます
では久喜市で何が効くのか。団地型の棟数です。
仮設足場の費用は、ごく大づかみに言えば「建物の外周×高さ」で決まります。ここが単棟型と団地型で決定的に違います。
| 条件 | 単棟型:10階建て1棟100戸 | 団地型:5階建て5棟100戸 |
|---|---|---|
| 総戸数 | 100戸 | 100戸 |
| 外周の合計 | 1棟ぶん | 5棟ぶん |
| 足場の掛け面積 | 外周×10階 | 外周5本ぶん×5階 |
| 足場の架け払い回数 | 1回 | 5回(棟ごとに移動) |
| 仮設計画の手間 | 1棟ぶん | 棟ごとに搬入経路・養生・近隣配慮 |
同じ100戸でも、団地型のほうが足場の総量も、架け払いの手間も増えます。久喜市には2棟から最大21棟で一団地を構成するマンションがあるわけですから、棟数が増えるほどこの差は開きます。
参考までに、一般的な目安をお示しします。
- 外壁塗装:3,500〜4,500円/㎡
- 外壁の打診調査:250〜500円/㎡
- 屋上・バルコニーの防水:5,000〜8,000円/㎡
- 仮設足場は総工費の15〜25%(30戸規模で総額3,500〜5,000万円のうち、足場だけで500万〜1,200万円)
いずれも物件の規模・形状・劣化の程度で大きく変わる目安です。実際の金額は現地を見ないと出せません。
団地型でロープアクセスやハイブリッド工法(部位ごとに足場とロープを使い分ける)が効くのは、棟ごとの足場の架け払いという工程を、そもそも発生させないからです。外壁の塗装・シーリング・タイル補修といった「外周を上下するだけで完結する作業」は、ロープでやれば棟の移動がほぼ人の移動だけで済みます。
一方で、バルコニー内部の防水や、サッシまわりの大がかりな改修は、工法にかかわらず住戸への立ち入りが必要です。ここを曖昧にしたまま「ロープなら立ち入りゼロ」と説明してしまうと、後で住民に叱られるのは施工会社ではなく、説明した理事会です。私はこの一点だけは、毎回しつこく申し上げています。
大規模修繕と耐震診断を、同じ足場で考える
先ほどの「耐震診断実施率20%」に戻ります。
耐震診断そのものには、必ずしも全面足場は要りません。ただ、診断の過程でコンクリートのコア抜き(試験体の採取)や中性化試験、外壁の詳細調査が入ることがあり、これらは大規模修繕の劣化診断と重なる部分があります。
私が理事会でお勧めするのは、耐震診断と大規模修繕の劣化診断を、同じ年度に同じ会社に頼むことです。別々の年度に別々に発注すると、調査のために2回現場を動かすことになり、費用も手間も二重になります。
しかも久喜市の耐震診断助成は上限100万円。診断費用の実質負担を半分にできるタイミングで、建物全体の状態を一度に把握しておく。これは予算が増える話ではなく、減る話です。だから総会でも通りやすい議題になります。
久喜市で「使えない制度」もはっきり書いておきます
補助金の記事でいちばん罪深いのは、使えない制度をそれらしく並べて期待させることだと思っています。ここは正直に書きます。
久喜市既存建築物耐震補強等助成金は、マンションには使えません
耐震診断5万円、耐震補強設計5万円、耐震補強工事50万円、建替え工事50万円という助成がありますが、対象は「市内に所在する一戸建ての自己用木造住宅」です(出典:久喜市「木造住宅の耐震診断や耐震補強工事等に対し助成を行っています」。ページ更新日2026年7月3日、要綱は令和8年4月1日施行版)。分譲マンションの共用部には使えません。
なお、この助成の耐震診断・設計は「久喜市既存住宅耐震診断・設計資格者名簿」に登録された建築士が行うのが原則で、登録要件に久喜市内の建築士事務所に所属していることが入っています。木造戸建てをお持ちの方は、市内の設計事務所を探すことになります。
久喜市ゼロカーボン推進補助金は、共用部には届かない見込みです
令和8年度の久喜市ゼロカーボン推進補助金(ページ更新日2026年8月28日)には、屋根用高遮熱塗装:1平方メートルあたり400円(最大20,000円)というメニューがあります。「屋根の塗装に補助が出るなら大規模修繕に使えるのでは」と思われるかもしれません。
ですが、対象者は個人(法人は対象外)で、久喜市に住民票があり、市税の滞納がない方です。管理組合が共用部の工事で申請する想定の制度ではありません。共用部には使えないとお考えください。
ついでに、この制度は理事会でも覚えておく価値のある特徴があります。
- 対象期間:令和8年3月9日〜令和9年3月8日の引渡し
- 申請受付:令和8年5月18日〜令和8年12月25日
- 予算額:1,972万円
- 予算超過時は先着順ではなく抽選
「早い者勝ちではない」制度です。専有部のリフォームを考えている居住者の方には、大規模修繕の説明会のついでに案内してあげると喜ばれます。
埼玉県の無料アドバイザー派遣は、令和8年度はもう受付が終わっています
これは残念なお知らせです。
埼玉県には、マンション管理組合に専門家を無料で派遣する「市部におけるマンション管理士等派遣制度創設促進事業」があり、久喜市も対象19市の1つです。ところが、県のページ冒頭には「令和8年度の申請は予算上限に達しましたので、終了しました。」と明記されています(出典:埼玉県「分譲マンションアドバイザー派遣」。掲載日2026年7月6日。2026年9月23日時点の記載)。
枠の小ささを見ていただきたいと思います。
| 年度 | 派遣予定の組合数 | 申請期間 | 状況 |
|---|---|---|---|
| 令和8年度 | 13組合程度 | 令和8年4月1日〜12月11日 | 予算上限に達し終了 |
| 令和9年度 | 9組合程度 | 未公表 | 令和9年度が最終年度 |
派遣回数は2回が上限、費用は無料。県のページには2026年7月6日の掲載時点ですでに受付終了が告知されていました。対象市で13組合の枠を取り合い、年度の前半で埋まったということです。
令和9年度はさらに少ない9組合程度で、しかもこの事業は令和9年度までの期間限定。県のページには「令和10年度以降、派遣については各市にお問い合わせください」とあります。
令和9年度の申請開始日は、この記事を書いている時点では公表されていません。令和8年度は4月1日開始でしたので、3月のうちに申請書と必要書類を揃え、県ホームページの公表を待って初日に申請する、というくらいの構えが必要です。申請窓口は埼玉県都市整備部住宅課マンション・居住支援担当(048-830-5573)、埼玉県電子申請・届出サービスからも申し込めます。
なお、この派遣は「測量器等による建物精密測定、長期修繕計画策定、修繕工事等の設計・工事監理及び工事・管理業務の受注など」は対象外です。工事の中身を決める場ではなく、組合運営の相談の場だと理解しておいてください。
緊急輸送道路の沿道でも、久喜市に独自の補助はありません
埼玉県内では、熊谷市のように緊急輸送道路の沿道建築物の耐震診断・改修に市独自の補助(改修で上限1,000万円)を設けている市があります。久喜市はどうか。
久喜市建築物耐震改修促進計画(令和8年3月改定)を読むと、久喜市は「埼玉県緊急輸送道路閉塞建築物等耐震化促進協議会」に参加して促進に努める立場で、費用の助成は埼玉県住宅供給公社が実施する「緊急輸送道路閉塞建築物の耐震化促進事業」が担い、「市は、公社の事業に関する情報提供をする」と書かれています。
つまり、久喜市で緊急輸送道路沿いのマンションをお持ちの管理組合は、市ではなく県の公社に問い合わせるのが筋です。同じ埼玉県内でも、市によって窓口が市なのか県なのかが変わります。ここを知らずに市役所に電話すると、一往復ぶん時間を損します。
ちなみに同計画では、久喜市の住宅の耐震化率は令和7年3月末時点で約94.2%、令和12年度の目標が95%。多数の者が利用する民間建築物は約95.7%で、目標は「おおむね解消」とされています。被害想定としては関東平野北西縁断層帯地震で最大震度7、全壊537棟、半壊2,566棟という数字が挙げられています。
マンション管理計画認定制度|久喜市への申請手数料は無料です
久喜市のマンション管理計画認定制度は、管理組合の管理計画が一定の基準を満たす場合に、市が「適切な管理計画を持つマンション」として認定する制度です。対象は市内の既存分譲マンション、申請者は管理組合の管理者等。
費用は「市は無料、事前確認は有料」
| 費用の種類 | 金額 |
|---|---|
| 久喜市への認定申請手数料 | かかりません(無料) |
| マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービス システム利用料 | 1申請あたり10,000円 |
| 事前確認審査料 | 別途必要 |
山梨県の町村部では、事前確認の適合証がない場合に県の手数料が25,500円かかる例もありました。それに比べると、久喜市は市の手数料がゼロ。認定を取りにいくハードルは低いほうです。
認定基準で、実務上いちばん効くのは長期修繕計画です
認定基準は5分野。詳細は市のページに全文がありますが、大規模修繕の実務から見て重い項目を抜き出します。
| 分野 | 特に効く基準 |
|---|---|
| 経理 | 修繕積立金の3か月分以上の滞納額が全体の1割以内 |
| 長期修繕計画 | 「長期修繕計画標準様式」に準拠し、総会で決議されていること |
| 長期修繕計画 | 作成または見直しが7年以内に行われていること |
| 長期修繕計画 | 計画期間が30年以上で、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれること |
| 長期修繕計画 | 将来の一時金徴収を予定しないこと/計画期間最終年度に借入金残高がないこと |
| その他 | 組合員名簿・居住者名簿を備え、1年に1回以上内容を確認していること |
| その他 | 久喜市マンション管理適正化指針に照らして適切であること |
先ほどの実態調査で、久喜市の管理組合は「将来の一時金徴収を予定していない」が72.4%、長期修繕計画の未作成が8.8%でした。認定基準に照らすと、市内の管理組合の多くは十分に射程に入っています。
私が認定制度をお勧めする理由は、認定そのもののメリット(フラット35やマンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ、すまい・る債の利率上乗せ、そして次に書く税制)よりも、認定基準を埋める過程で、理事会が長期修繕計画の現実を直視せざるを得なくなることにあります。
「計画期間30年以上で大規模修繕2回以上」「一時金を予定しない」を満たそうとすると、修繕積立金の水準を数字で検証するしかありません。その作業こそが、本当の価値です。
認定の有効期間は5年。5年ごとに更新申請が必要で、これがそのまま5年ごとの棚卸しになります。
窓口は建築審査課 企画指導係。ただしこのページの更新日は2025年8月21日(令和7年度)で、令和8年度に入ってからの更新は確認できませんでした。申請の前に、手数料と手続きの流れを窓口でご確認ください。
マンション長寿命化促進税制|期限まで残り約6か月です
一定の要件を満たすマンションで、令和5年4月1日から令和9年3月31日までに長寿命化に資する大規模修繕工事が完了した場合、工事完了年の翌年度の建物部分の固定資産税が3分の1減額されます(出典:久喜市「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションにかかる固定資産税の減額措置」。ページ更新日2025年4月11日)。
令和9年3月31日まで、残り約6か月です。
見落とされやすい2つの要件
この制度は、要件を1つでも読み飛ばすと話が崩れます。久喜市のページの記載に沿って整理します。
| # | 要件 | 補足 |
|---|---|---|
| 1 | 築年20年以上が経過している10戸以上のマンション | |
| 2 | 長寿命化工事を過去に1回以上適切に実施していて、令和5年4月1日〜令和9年3月31日の間に2回目以降の工事を完了していること | ★初回の大規模修繕では使えません |
| 3 | 長寿命化工事の実施に必要な積立金を確保していること | ★下の(1)(2)のどちらか |
要件3は、具体的には次のいずれかです。
- (1) 都道府県知事等の認定を受けた管理計画認定マンションのうち、認定を受ける際に認定基準に適合させるために修繕積立金の額の引上げを行った場合
- (2) 都道府県等からの助言・指導を受け、大規模修繕工事が可能な水準まで長期修繕計画を適切に見直し、修繕積立金の積立てや額の引上げを行った場合
私がここを太字にするのは、「今回が初めての大規模修繕です」という管理組合にこの制度を説明してしまう事故が、現場で本当に多いからです。要件2にある通り、対象は2回目以降です。
また、過去の工事についてはこう書かれています。
過去に実施した長寿命化工事は屋根防水工事、床防水工事および外壁塗装等工事をすべて実施していれば、実施時期が異なっている場合も減額措置の対象となります。令和5年4月1日から令和9年3月31日の間に実施する長寿命化工事は、屋根防水工事、床防水工事および外壁塗装等工事をすべて一体で実施している必要があります。
過去の工事はバラバラの時期でもよい。今回の工事は3つ一体でなければならない。 予算の都合で「今回は外壁だけ、防水は次回」と分割発注すると、この要件を外すおそれがあります。
減額の中身と、申告の期限
- 減額される割合:1戸当たり床面積100平方メートルに相当する部分の固定資産税を3分の1減額
- 住宅部分のみ。都市計画税の減額はありません
- 他の減額制度(耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修等)と重ねて適用できません
- 本制度による減額は、当該マンションにつき1度しか受けられません
- 減額期間:工事完了年の翌年度から1年度分
- 申告期限:大規模修繕工事が完了した日から3か月以内に資産税課へ
理事会への説明で気をつけていただきたいのは、「税金が3分の1になる」ではないということです。減るのは家屋部分の固定資産税で、1戸100㎡相当まで、1年度分だけ、都市計画税は対象外。過大な期待を持たせると、あとで必ず揉めます。
申告は管理組合等の代表者がまとめて行えます。必要書類は、減額適用申告書(資産税課で配布)、総戸数を確認できる書類、管理計画の認定通知書の写しまたは助言・指導内容実施等証明書、大規模の修繕等証明書、過去工事証明書、修繕積立金引上証明書の6点。
窓口が2つに分かれている点に注意してください。 税の申告そのものは総務部 資産税課 家屋係(〒346-8501 久喜市下早見85番地の3、ファクス0480-22-3319)ですが、要件3の(1)(2)および関係書類については建築審査課に問い合わせるよう、市のページが指定しています。
12条点検(定期報告)|久喜市の提出先は市役所ではありません
すでに触れましたが、実務の要点をまとめておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 建築基準法第12条第1項・第3項 |
| 久喜市が指定する共同住宅の規模 | 久喜市建築審査課が公表する「定期報告対象建築物等と報告期間」で要確認(久喜市は特定行政庁のため、埼玉県知事指定の内容がそのまま適用されるわけではありません)/共同住宅の報告間隔は3年 |
| 建築設備・防火設備・昇降機 | 1年ごと(特定建築物より頻度が高い) |
| 報告期限 | 特定建築物は調査後3か月以内、設備等は検査後2か月以内 |
| 報告書の提出窓口 | 一般財団法人埼玉県建築安全協会(市役所ではありません) |
| 様式の入手 | 埼玉県建築安全協会のホームページからダウンロード |
| 報告概要書の閲覧窓口 | 久喜市 建築審査課(第二庁舎)/開庁日8時45分〜16時30分 |
| 未報告の罰則 | 建築基準法第101条により100万円以下の罰金 |
| 所有者変更・除却・6か月以上の休業 | 変更届等を正副1部ずつ、埼玉県建築安全協会へ |
久喜市は特定行政庁ですので、対象建築物の指定は市が行います。市のページに掲載されている「定期報告対象建築物等と報告期間」のPDFで、自分のマンションが対象かどうかを確認してください。
外壁の全面打診調査については、平成20年国土交通省告示第282号(平成28年改正)により、竣工・外壁改修等からおおむね10年を経過した後の最初の定期調査時に、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面打診等が必要とされています。なお令和4年4月1日の告示改正では、打診と同等以上の精度を有する無人航空機(ドローン)による赤外線調査が、調査方法として明確化されました。打診調査の単価は250〜500円/㎡が目安ですから、外壁2,000㎡なら50万〜100万円規模。
ここで毎回お伝えしていることを、久喜市でも書いておきます。12条点検の全面打診と、大規模修繕の劣化診断は、同じ足場・同じロープで1回にまとめられます。 別々にやれば2回ぶんの仮設費がかかる。まとめれば1回で済む。これは予算が増える提案ではなく減る提案なので、総会でも通ります。
打診調査をロープアクセスで行う場合の進め方や、作業員の資格・安全管理の考え方は、明誠のロープアクセス工法の技術詳細のページでご覧いただけます。足場を仮設して行う大規模修繕の考え方は明誠の大規模修繕工事のページにまとめています。
久喜市で無料で使える相談窓口は4つあります
お金をかけずに専門家の意見を聞ける場が、久喜市には4つあります(出典:久喜市「マンション管理に関する相談について」。ページ更新日2026年8月31日)。
① 久喜市マンション管理相談会(市が主催・無料)
市が主催し、一般社団法人埼玉県マンション管理士会に所属するマンション管理士が相談に応じます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 直近の開催日 | 令和8年9月30日(水曜日) |
| 時間 | (1) 14時00分〜14時50分/(2) 15時00分〜15時50分 |
| 会場 | 鷲宮行政センター 405会議室 |
| 対象 | 市内分譲マンション管理組合の役員、居住者、区分所有者 |
| 費用 | 無料 |
| 定員 | 各回1組、計2組 |
| 申込み | 必要。令和8年9月24日(木曜日)までにファクスまたはメールで建築審査課企画指導係へ(市のページに申込書のWord/PDFあり) |
| 持ち物 | 管理規約、総会資料等 |
| その他 | 10月以降も実施予定 |
(出典:久喜市「市内分譲マンション管理組合、居住者及び区分所有者を対象としたマンション管理士による無料相談を実施します」。ページ更新日2026年8月31日)
この記事が公開される2026年9月23日の翌日、9月24日が申込締切です。 定員は各回1組、計2組。狭き門ですが、逆に言えばマンション管理士を50分間ひとり占めできるということです。
申込時に「氏名(フリガナ明記)、人数、住所、電話番号、希望時間、相談内容の要点」を書くことになっています。この「相談内容の要点」を丁寧に書くかどうかで、50分の密度がまったく変わります。「大規模修繕について」ではなく、「築38年・5棟98戸の団地型。長期修繕計画は10年前に作成したきり。耐震診断は未実施。次回大規模修繕を令和10年度に予定。修繕積立金は月額8,000円」と書けば、相談員が下調べをして来てくれます。
今回に間に合わなくても、10月以降も実施予定とのことですから、次回の開催をこまめに確認してください。
② 住まい相談プラザ(埼玉県住宅供給公社・無料)
マンション管理に関する情報提供や相談を無料で実施しています。専門相談員によるマンション管理相談や、弁護士による法律相談は事前予約制です(住まい相談プラザ)。
③ 公益財団法人マンション管理センター(無料)
マンション管理適正化法に基づくマンション管理適正化推進センターとして国の指定を受けた団体で、管理組合運営や建物・設備の維持管理の相談を電話・面談・メール等で受け付けています(マンション管理センター 相談窓口)。
④ 埼玉県分譲マンションアドバイザー派遣(令和8年度は終了)
先に書いたとおり、令和8年度は予算上限に達して受付終了です。令和9年度は9組合程度の枠で、4月の受付開始と同時に動く必要があります。
この4つを、私は使う順番で考えることをお勧めしています。まず①の市の相談会(直接会って話せる)、日程が合わなければ②③(予約すればいつでも相談できる)、本腰を入れて組合運営を見直すなら④(2回まで専門家が来てくれる)。
モデルケース|久喜市の2つの典型でいくらになるか
あくまで一般的な目安であり、実際の見積は現地調査なしには出せません。その前提でお読みください。
ケースA:東鷲宮駅周辺の団地型(築38年・5階建て5棟・98戸・旧耐震)
久喜市で最も多いタイプです。
| 項目 | 足場工法 | ハイブリッド工法 |
|---|---|---|
| 大規模修繕の工事費 | 約1億1,800万円 | 約9,900万円 |
| うち仮設足場 | 約2,200万円 | 約700万円 |
| 工期 | 約8か月 | 約5.5か月 |
| 1戸あたりの差額 | — | 約19万円の減 |
差の源は棟ごとの足場の架け払いです。5棟あれば5回。ハイブリッド工法では、外壁の塗装・シーリング・タイル補修をロープアクセスで行い、バルコニー内部や階段室まわりなど立ち入りが必要な部位に限って部分足場を架けます。
さらにこのケースでは、旧耐震・3階以上・延べ1,000㎡以上を満たすので、耐震診断助成(上限100万円)の対象になり得ます。診断費用200万円なら、実質負担100万円。ただし要件5のとおり、12条報告を出しているかを先に確認してください。
ケースB:久喜駅近くの単棟型(築42年・8階建て・52戸・旧耐震)
| 項目 | 足場工法 | ロープアクセス主体 |
|---|---|---|
| 大規模修繕の工事費 | 約6,400万円 | 約5,500万円 |
| うち仮設足場 | 約1,300万円 | 約380万円 |
| 工期 | 約6か月 | 約4か月 |
| 1戸あたりの差額 | — | 約17万円の減 |
8階建て52戸は、12条点検の対象になり得る規模の物件です。対象かどうかは久喜市建築審査課が公表する「定期報告対象建築物等と報告期間」で必ず確認してください。定期報告と耐震診断助成と大規模修繕を、1本の線でつなげるべきケースだと言えます。
駅近の敷地は余裕が少ないことが多く、足場を組むと駐車場を何台分か潰します。駐車場を潰すと駐車場収入が止まる。ここは見積書に出てこない費用なので、理事会で必ず計算してください。月8,000円×10台×6か月なら48万円です。
見積書で必ず確認していただきたい5点
久喜市の管理組合に向けて、この市ならではの2点を含めて挙げます。
- 団地型の場合、足場の架け払い回数と、その費用の内訳。「仮設工事一式」で済ませている見積は、棟数が増えるほど中身が見えなくなります。棟ごとに分けて出してもらってください。
- 耐震診断助成を使う場合、交付決定前に契約しない工程になっているか。見積書の有効期限と、市の交付決定の見込み時期がかみ合っているかを確認します。
- 仮定数量を超過した場合の単価が契約書に明記されているか。タイルの浮き・欠損の補修数量は、足場を架けてみないと確定しません。「超過分は別途協議」は危ない書き方です。
- 足場のリース期間が延びた場合、誰が負担するか。天候不良や住民対応で工期が延びたとき、延長料を誰が持つのかを先に決めておきます。
- 監理者と施工会社の資本関係。設計監理方式をとるなら、監理する側と施工する側が同じグループでないことを確認してください。
この5点を質問したとき、その場で数字で答えられるかどうかで、会社の姿勢はだいたい分かります。必要な範囲だけを施工して費用を抑える考え方は明誠のピンポイント施工にまとめています。
正直に申し上げます|私は施工会社の人間です
ここまで読んでいただいた方に、隠さず書いておきます。
私は施工会社の人間なので、自社の工法を勧める立場にあります。 その前提で読んでください。そのうえで、足場工法のほうが有利な条件を挙げます。
| 足場が有利な条件 | 理由 |
|---|---|
| タイルの浮き・欠損が広範囲(目安として概ね20%超) | 補修数量が多いと、足場で一斉に作業したほうが効率がよい |
| 工事の主対象がバルコニー内部 | 立ち入りが前提なら、足場の優位性が出る |
| サッシ・開口部の交換を伴う | 大きな資材の搬出入に足場が要る |
| 構造補強(鉄骨ブレースの設置等)を伴う | 補強部材の設置には足場が必要 |
| 外周に十分な平場があり、敷地に余裕がある | 久喜市の多くの物件が該当 |
最後の行を太字にしたのは、これが久喜市の実情だからです。平坦で敷地に余裕がある物件が多い久喜市では、足場という選択肢が最初から使える。だからこそ、ロープアクセスを「唯一の解」として売り込むのは筋が通りません。
私が3つの工法を持っている意味は、ここにあります。足場しか持たない会社は足場を勧めるしかなく、ロープしか持たない会社はロープを勧めるしかない。3つ持っているから、足場を勧めることもできます。
株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員、ISO9001品質マネジメントシステム、日本ロープ高所作業協会の事務局。そして、日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟しています。
フランチャイズの仕組みで各分野の専門会社が直接施工に入るため、中間マージンを圧縮しながら品質を保てます。これが「高品質で低価格」を成り立たせている仕組みです。技術面の詳しい解説はロープアクセスドットコムでご覧いただけます。
管理組合さま向けのサービス内容はマンション管理組合向けの大規模修繕サービスに、これまでの施工実績は明誠の施工事例にまとめています。漏水が起きている物件については漏水調査・止水工事もあわせてご覧ください。
この秋、久喜市の管理組合がやることの順番
日付のあるものから並べます。
| 時期 | やること | 窓口・備考 |
|---|---|---|
| 9月24日(木)まで | 9月30日のマンション管理相談会に申し込む(ファクスまたはメール) | 建築審査課 企画指導係/定員 計2組 |
| 9月〜10月 | 12条点検の報告状況を確認する(対象建築物か/最後に出したのはいつか) | 建築審査課(第二庁舎)で概要書を閲覧、提出は埼玉県建築安全協会 |
| 9月〜10月 | 耐震診断助成の相談(団地型は戸数の数え方を必ず質問) | 建築審査課 企画指導係 0480-22-1111 |
| 10月 | 令和8年度中に診断するなら申請。1月末の完了報告から逆算 | 交付決定前の契約は不可 |
| 10月〜11月 | 大規模修繕の劣化診断を前倒しし、耐震診断と工程を重ねられないか検討 | 2回の調査を1回に |
| 11月〜12月 | 見積を3社。団地型は棟ごとの足場費の内訳を必須項目に | |
| 12月〜1月 | 管理計画認定を総会議案へ(市の手数料は無料) | 長期修繕計画の見直しとセット |
| 1月〜3月 | 総会・契約。長寿命化促進税制を使うなら令和9年3月31日完了から逆算 | 申告は完了日から3か月以内 |
| 令和9年度の受付開始日 | 埼玉県アドバイザー派遣に申請(枠は9組合程度) | 開始日は未公表。3月中に書類を揃え、県HPを確認 |
こう並べると、9月24日の締切だけが突出して近いことが分かります。もし対象になりそうなら、この記事を読んだその日に申込書を送ってください。
よくあるご質問
Q. 久喜市の耐震診断助成は、新耐震(昭和56年6月以降)のマンションでも使えますか。
A. 使えません。対象は昭和56年5月31日以前の建築確認を受けて建築された、木造以外の共同住宅です。新耐震のマンションは、この助成の対象外になります。
Q. 築25年で旧耐震ではありません。久喜市で共用部に使える補助金はありますか。
A. 共用部の工事費そのものに直接出る市の補助は、令和8年度の公表情報からは確認できませんでした。使える可能性があるのは、マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)ですが、こちらは2回目以降の長寿命化工事が対象のため、築25年で初回の大規模修繕という場合は要件を満たしません。管理計画認定の取得と、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資の金利優遇を検討されるとよいと思います。
Q. 耐震診断の費用はいくらくらいかかりますか。
A. 建物の規模・構造・図面の有無で大きく変わるため一概には言えませんが、中規模の分譲マンションで100万〜300万円程度になることが多いと私は見ています。久喜市の助成は費用の2分の1または戸数×5万円のいずれか低い額(上限100万円)ですので、20戸以上で、かつ診断費用が200万円以上であれば100万円が上限いっぱいになります。診断費用が150万円なら助成は75万円です。「戸数×5万円」と「費用の2分の1」の両方を計算して、低いほうが実際の額とお考えください。正確な金額は、現地を見たうえでお見積りします。
Q. 総会を待っていると耐震診断助成の申請が間に合いません。理事会だけで申請できますか。
A. できません。交付要綱の対象要件に「管理組合の総会で、この助成金の交付申請の実施に係る決議がなされていること」が入っています。臨時総会を開くか、次の定時総会で決議するかのいずれかです。なお、決議の対象は「申請すること」ですので、業者の選定は理事会に委任する旨を同じ議案に入れておくと、交付決定前の契約という事故を避けられます。
Q. 団地型で5棟あります。耐震診断助成は5棟ぶん申請できますか。
A. 公表されている要綱の記載からは断定できませんでした。助成額が「戸数に5万円を乗じた額」で計算されるため、団地全体の戸数で数えるのか、棟ごとに数えるのかで金額が大きく変わります。申請前に必ず建築審査課 企画指導係(0480-22-1111)へ、「戸数は団地全体か棟ごとか」「申請は団地で1件か棟ごとに複数件か」の2点をご確認ください。久喜市は団地型が棟数の66.4%を占めるので、多くの管理組合に関係する論点です。
Q. 大規模修繕の工期はどれくらいですか。ロープアクセスだと短くなりますか。
A. 足場工法の場合、100戸規模のマンションでおおむね6〜8か月が目安です。ロープアクセス工法やハイブリッド工法では、足場の架設・解体にかかる期間がなくなるぶん、おおむね6〜7割程度の工期に収まることが多くあります。団地型で棟数が多いほど、この差は大きくなります。
Q. ロープアクセスにすれば、住戸への立ち入りは一切なくなりますか。
A. いいえ。バルコニー内部の防水やサッシまわりの改修は、工法にかかわらず住戸への立ち入りが必要です。「ロープアクセスなら立ち入りゼロ」という説明は正確ではありません。どの部位に何日間立ち入るのかを、契約前に工程表で明示してもらってください。
Q. 久喜市に相談に行きたいのですが、市役所に行けばよいですか。
A. 用件によって場所が変わります。耐震診断助成・管理計画認定・定期報告の相談は建築審査課(〒346-0024 久喜市北青柳1404番地7/第二庁舎)、長寿命化促進税制の申告は資産税課 家屋係(〒346-8501 久喜市下早見85番地の3/本庁)です。電話番号はどちらも代表の0480-22-1111ですが、建物が違います。訪問前に、どちらの庁舎かを電話で確認されることをお勧めします。
出典・参考資料
- 久喜市「分譲マンションの耐震診断に対し助成を行っています」(ページ更新日2026年5月1日/交付要綱は令和8年4月1日施行版)
- 久喜市「マンション管理計画認定制度」(ページ更新日2025年8月21日)
- 久喜市「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションにかかる固定資産税の減額措置」(ページ更新日2025年4月11日)
- 久喜市「建築物の定期報告」(ページ更新日2025年7月16日)
- 久喜市「久喜市マンション管理適正化推進計画」(計画期間:令和6年度〜令和15年度)
- 久喜市「久喜市建築物耐震改修促進計画」(令和8年3月改定/計画期間:令和8年度〜令和12年度)
- 久喜市「マンション管理に関する相談について」(ページ更新日2026年8月31日)
- 久喜市「マンション管理士による無料相談」(ページ更新日2026年8月31日)
- 久喜市「木造住宅の耐震診断や耐震補強工事等に対し助成を行っています」(ページ更新日2026年7月3日)
- 久喜市「令和8年度 久喜市ゼロカーボン推進補助金」(ページ更新日2026年8月28日)
- 久喜市「久喜市の人口と世帯数」(令和8年9月1日現在)
- 久喜市「市のプロフィール」
- 久喜市「「久喜市集合住宅建築物の建築に関する指導指針」の改正」(施行日:令和6年7月19日)
- 埼玉県「定期報告対象となる建築物等と報告の間隔」(掲載日2026年9月2日)
- 埼玉県「分譲マンションアドバイザー派遣」(掲載日2026年7月6日/令和8年度は受付終了)
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」
- 公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」
- 一般財団法人埼玉県建築安全協会「公式ホームページ」
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月23日時点で公表されている久喜市および国土交通省・埼玉県の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず久喜市および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。なお、本記事で参照した久喜市のページのうち、マンション管理計画認定制度(2025年8月21日)、長寿命化促進税制(2025年4月11日)、建築物の定期報告(2025年7月16日)の3ページは、令和8年度に入ってからの更新が確認できませんでした。手数料・要件については窓口でのご確認をお願いします。
久喜市の管理組合さまへ。この秋は、9月24日の相談会の申込締切と、耐震診断助成の1月末の完了報告期限、2つの日付が効いてきます。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。
ご相談は株式会社明誠のお問い合わせフォームから承っています。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月23日


