本間社長ブログ
宇都宮市の賃貸マンション補助金2026|止水板は上限50万円、外壁塗装の住宅改修補助は廃止
目次
- 宇都宮市の賃貸オーナー向け制度マップ【令和8年度】
- 止水板等設置費補助金:令和8年度から始まった、オーナーが主役になれる制度
- ブロック塀等安全対策費補助:令和8年4月から撤去の限度額が増額
- 住宅改修事業費補助金:外壁塗装は令和8年度から対象外、申請者は居住者
- 入居者さまが使う家賃補助:居住誘導区域内の物件は募集図面に書く
- アスベスト除去・雨水貯留:オーナーが確認しておきたい2つの制度
- 耐震・脱炭素の補助は「自己居住」限定。賃貸オーナーは対象外
- 固定資産税の減額:耐震は貸家も対象になりうるが、省エネ・バリアフリーは要注意
- 定期報告は宇都宮市建築指導課へ。宇都宮市は特定行政庁
- 外壁塗装の補助がなくなった今、工事費を何で抑えるか
- 宇都宮市の物件で、足場・ロープアクセス・ハイブリッドをどう選ぶか
- 試算:宇都宮市の16戸RCマンションで考える、制度のインパクトと物件価値
- 損金算入:修繕費と資本的支出の線引き、補助金の扱い
- 出口戦略:補助の「10年ルール」と、宇都宮で選ばれる物件の条件
- 医療法人・介護事業者オーナーさまへ:宇都宮市の施設で優先すべきこと
- 宇都宮市のオーナーさま向け:着手までの5ステップ
- よくあるご質問
- この記事のポイントまとめ
- 宇都宮市の賃貸オーナーさまへ

-
著作者プロフィール
株式会社明誠 代表取締役
本間 幸紘
大規模修繕・外壁工事・ロープアクセス工事に関する情報を、現場経験をもとに分かりやすくお届けします。
宇都宮市で賃貸マンション・アパート・収益ビルを経営されているオーナーさまへ。この記事では、令和8年度(2026年度)の宇都宮市の住まい・建物関連の補助制度を、「オーナーさまご自身が申請できるもの」「入居者さまが使うもの」「賃貸では使えないもの」の3つに仕分けしました。根拠は、宇都宮市が公開している「【令和8年度版】宇都宮市 住まいの支援制度」のチラシと各制度の要綱・案内で、確認日は2026年10月8日です。
先に結論をお伝えします。宇都宮市には、賃貸オーナーさまにとって令和8年度から始まった、使い勝手のよい制度がひとつあります。それが令和8年4月1日に要綱が適用された止水板等設置費補助金です。補助対象者は「補助対象施設を所有、賃借又は管理していること」とされ、対象施設には「住宅、マンション、店舗又は事務所等(附属する駐車場を含む)」が明記されています。浸水想定区域などにある物件なら、設置費用の2分の1、1申請あたり50万円までの補助を受けられます。
反対に、注意していただきたい変化もあります。宇都宮市の住宅改修事業費補助金は、令和7年度まで対象だった「選択工事(外壁塗装等)」への補助を廃止しました。しかも、この補助の申請者は「工事を実施する住宅に居住(住民登録)すること」が条件です。外壁塗装に市の補助を当て込んでいたオーナーさまは、資金計画を組み直す必要があります。
この記事では、これらの制度を入居率・NOI(実質賃料収入)・損金算入・出口戦略の視点で整理し、補助に頼れない外壁・防水の工事費をどう抑えるかまで、20年以上大規模修繕に携わってきた私の現場感覚でお話しします。
宇都宮市の賃貸オーナー向け制度マップ【令和8年度】
最初に全体像です。「賃貸オーナーから見た位置づけ」は、市の公式資料の記載をもとに私が整理した目安です。個別の物件で使えるかどうかは、必ず各担当課へご確認ください。
| 制度(令和8年度) | 補助の内容 | 賃貸オーナーから見た位置づけ | 担当課 |
|---|---|---|---|
| 止水板等設置費補助金 | 設置費用の1/2、上限50万円/申請 | オーナーが申請できる(所有・賃借・管理する者が対象) | 河川課 028-632-2689 |
| ブロック塀等安全対策費補助 | 撤去費の3/4・上限22.5万円(スクールゾーン等)、1/2・上限15万円(その他)、再築1/3・上限6.6万円 | 所有者等が申請。賃貸物件の外構でも検討の価値あり | 建築指導課 028-632-2573 |
| 民間建築物アスベスト除去等補助 | 除去等費用の2/3、上限200万円 | 対象は戸建て住宅と「多数の人が利用する建築物」。賃貸マンションの扱いは要確認 | 建築指導課 028-632-2573 |
| 雨水貯留・浸透施設設置費補助 | 経費の2/3(限度額あり) | 市街化区域の土地・建物の所有者・占有者が対象 | 工事受付センター 028-633-3164 |
| 若年夫婦、子育て世帯及び新卒採用者等家賃補助金 | 市外転入者がいる世帯は最大12万円、市内転居のみは最大6万円、子ども1人1万円加算 | 入居者さまが使う。居住誘導区域内の物件なら募集の武器になる | 住宅政策課 028-632-2735 |
| 結婚新生活支援事業 | 新居の家賃・引越費用等の一部(世帯により上限30〜60万円) | 入居者さまが使う | 都市ブランド戦略課 028-632-2115 |
| 住宅改修事業費補助金 | 工事費の10%、上限10万円 | 借家も対象だが、申請者は居住者本人。外壁塗装等の選択工事は廃止 | 住宅政策課 028-632-2735 |
| 木造住宅耐震改修・建替え補助 | 改修費の4/5・上限115万円ほか | 「賃貸を目的としない住宅」に限定。賃貸は対象外 | 建築指導課 028-632-2573 |
| 家庭向け脱炭素化促進補助 | 太陽光・蓄電池など | 「自ら居住する市内の住宅」が条件。賃貸は対象外 | 環境創造課 028-632-2408 |
ひと目でわかるとおり、宇都宮市の住まいの補助は「自分で住む人」向けが中心です。そのなかで、止水板・ブロック塀・雨水貯留の3つは、建物や土地の所有者として申請できる防災系の制度です。賃貸オーナーさまが市の補助を取りにいくなら、まずこの3つから検討するのが近道だと私は考えます。
止水板等設置費補助金:令和8年度から始まった、オーナーが主役になれる制度
宇都宮市止水板等設置費補助金交付要綱は、令和8年4月1日から適用されています。賃貸経営の目線で、要綱の中身を整理します。
- 対象地域:「宇都宮市防災ハザードマップ」の洪水または内水ハザードマップの浸水想定区域、過去に浸水被害が発生した地域、その他市長が認める地域
- 対象施設:対象地域にある(または年度内に建築される)住宅、マンション、店舗または事務所等。これらに附属する駐車場も含みます
- 対象者:補助対象施設を「所有、賃借又は管理」していること、市税の滞納がないこと など
- 補助額:補助対象費用の2分の1(1,000円未満切り捨て)、1申請あたり50万円が限度
- 対象となる止水板等:浸水に耐える材質、主要部分が取り外しまたは移動でき、繰り返し使え、止水板等として販売されている製品。設置に特別な工事を要しない簡易型止水板は対象外です
- 対象となる設置工事:内外壁の止水工事、土間コンクリート打設工事など、止水効果を高めるための工事も対象に含まれます
賃貸マンションでいえば、1階のエントランス、機械式・平置き駐車場のスロープ、地下ピットや電気室の出入口、1階店舗の入口などが、止水板を検討する場所になります。1階の住戸や共用部が浸水すると、原状回復費だけでなく、入居者さまの退去、受変電設備やポンプの故障による建物全体の機能停止まで連鎖します。止水板は、こうした連鎖を入口で断つための設備です。
実務で気をつけていただきたい点が3つあります。
1つ目は、実績報告の期限が短いことです。工事完了の日から30日を経過した日と、その年度の3月31日のどちらか早い日までに実績報告を出す必要があります。年度末に工事が集中すると間に合わないことがあるため、秋から冬にかけての発注が現実的です。
2つ目は、財産処分の制限です。補助金の交付決定日から10年以内に、補助の対象施設を目的に反して使ったり、譲渡・交換・貸付けをしようとするときは、市長の承認が必要で、補助金の一部返還を求められる場合があります。返還額は、交付決定額の10分の1に、10年に満たない残りの年数を掛ける計算です。10年以内に売却を考えている物件では、出口戦略と合わせて判断してください(この点は後ほど出口戦略の章でも触れます)。
3つ目は、物件が対象地域に入っているかの確認です。宇都宮市内でも、田川・鬼怒川などの河川沿いや、雨水が集まりやすい低地に物件をお持ちの場合は、まず市の防災ハザードマップで洪水と内水の両方を確認し、河川課に事前相談をされることをおすすめします。市のチラシにも「交付申請前に事前相談」と書かれています。
外部からの浸水だけでなく、屋上やベランダの防水劣化による漏水も、賃貸経営では同じくらい大きなリスクです。漏水の原因調査と止水については、明誠の雨漏り・漏水対策で考え方をまとめています。
ブロック塀等安全対策費補助:令和8年4月から撤去の限度額が増額
宇都宮市のブロック塀等安全対策費補助は、令和8年4月から塀の撤去にかかる限度額が増額されました。令和8年度版のチラシでは、次のとおりです。
| 区分 | 補助率 | 上限 |
|---|---|---|
| 撤去(スクールゾーン等) | 撤去費の4分の3 | 22.5万円 |
| 撤去(上記以外の地域) | 撤去費の2分の1 | 15万円 |
| 再築(撤去と同一工事で生垣・フェンス・板塀等を設置) | 工事再築費の3分の1 | 6.6万円 |
対象は、道路等に面する高さ80センチメートルを超える石塀やブロック塀等の撤去工事等を行う「所有者等」です。チラシの書き方を見る限り、居住しているかどうかや賃貸物件かどうかの区別は書かれていません。築年数の古い賃貸アパートや、駐車場まわりに大谷石やブロックの塀が残る物件では、検討の価値があります。
宇都宮市らしい論点として、大谷石の塀があります。市内には大谷石の塀や蔵が今も多く残っていますが、チラシでは「石塀」も撤去補助の対象に含まれています。一方で、大谷石を内外装材として使う「大谷石利用促進補助」は自ら居住する住宅が対象で、塀や蔵は対象外です。古い大谷石塀を撤去してフェンスに替える場合は撤去補助と再築補助、景観として残す場合は自費での補強、という整理になります。
手続きは、交付申請の前に事前相談が必要です。過去の市の案内では、事前相談は申請年度の1月末まで、交付申請は12月末までとされていました。撤去工事に着手してしまうと対象外になりますので、外構工事を大規模修繕と同時に行う場合も、工事の発注前に建築指導課へ相談してください。
入居者さまや通行人の安全という意味では、塀の問題は「補助が出るなら直す」ではなく、所有者の管理責任の問題でもあります。地震で塀が倒れて通行人がけがをすれば、民法上の工作物責任を問われる可能性があります。補助はその背中を押す制度と考えていただくのがよいと思います。
住宅改修事業費補助金:外壁塗装は令和8年度から対象外、申請者は居住者
ここは、オーナーさまに一番お伝えしたい変更点です。
宇都宮市住宅改修事業費補助金の令和8年度の案内では、「令和7年度まで実施していた『選択工事(外壁塗装等)』への補助は廃止」と明記されています。補助額は対象工事費用の10%(上限10万円)で、対象工事は断熱改修、バリアフリー改修、防犯性向上(CPマーク付き製品)、多子世帯の間取り変更、多世代同居の増設、太陽熱温水器の設置、地域活用に向けた間取り改修です。
工事の対象となる住宅には「持家,借家」の両方が書かれていますが、申請者の要件は「工事を実施する住宅に居住(住民登録)すること」と「工事に要した費用を支払うものであること」です。つまり、ご自身が住んでいない賃貸物件では、オーナーさまは申請者になれません。
賃貸物件でこの補助が生きるのは、たとえば入居者さまが自費で防犯性の高い錠前(CPマーク付き)に交換したい、手すりを付けたい、というケースです。入居者さまが申請者となり、オーナーさまは工事の承諾をする立場です。原状回復の取り扱いを書面で決めておけば、入居者さまの住み心地が上がり、長く住んでいただくきっかけになります。
なお、この補助を受けるには工事契約前の事前申込が必要で、事前申込から1年以内かつ支払い完了後6か月以内に申請する流れです。自治会加入や市税の滞納がないことなども要件に含まれています。
入居者さまが使う家賃補助:居住誘導区域内の物件は募集図面に書く
宇都宮市には、若年夫婦、子育て世帯及び新卒採用者等家賃補助金があります。令和8年度版のチラシでは、対象は「居住誘導区域の民間賃貸住宅に入居する,若年夫婦,子育て世帯,新卒採用者,結婚を希望する女性」で、補助額は次のとおりです。
- 世帯に市外転入者がいる場合:最大12万円
- 世帯全員が市内転居者である場合:最大6万円
- 子ども1人につき1万円の加算
ポイントは、賃貸借契約の前に事前申込が必要なことです。入居者さまが契約した後でこの制度を知っても、補助を受けられない可能性があります。だからこそ、オーナーさまと管理会社さまが「この物件は居住誘導区域内です。家賃補助の事前申込は契約前に」と募集の段階で伝えることに意味があります。所得要件などの細かな条件は年度ごとに変わる場合があるため、最新の手引きで確認したうえで案内してください。
宇都宮市は「ネットワーク型コンパクトシティ」を掲げ、立地適正化計画で居住誘導区域を定めています。2023年8月にはLRT(ライトライン)が開業し、まちなかや沿線への居住を後押しする施策が続いています。お持ちの物件が居住誘導区域の内か外かは、家賃補助だけでなく、将来の入居需要と売却価格にも関わる情報です。市の地図で一度確認しておくことをおすすめします。
あわせて、令和8年1月1日から令和9年2月28日までに結婚した世帯が対象の結婚新生活支援事業(新居の家賃や引越費用等の一部、世帯により上限30〜60万円)、東京23区からの移住者向けの移住支援金(世帯100万円、単身60万円)もあります。いずれも入居者さまが申請する制度ですが、首都圏から宇都宮に移り住む方を迎える物件では、話題にしやすい制度です。
アスベスト除去・雨水貯留:オーナーが確認しておきたい2つの制度
民間建築物アスベスト除去等補助は、吹付け建材が施工されている戸建て住宅と「多数の人が利用する建築物」のアスベスト除去等工事を行う所有者等が対象で、除去等費用の3分の2(上限200万円)です。ひる石は対象外、事前申請が必要です。昭和50年代までに建てられた賃貸マンションでは、駐車場の天井や機械室、階段裏などに吹付け材が残っていることがあります。賃貸共同住宅が「多数の人が利用する建築物」に当たるかどうかはチラシからは読み取れないため、建築指導課への確認が必要です。大規模修繕の前に、事前調査の結果をもとに相談されるとよいでしょう。
雨水貯留・浸透施設設置費補助は、市街化区域に土地または建物を「所有又は占有」している方が対象で、設置経費の3分の2(限度額あり)です。浸透施設は市街化区域でも一部対象外の区域があります。駐車場の舗装改修や外構工事と同時に浸透ますを入れれば、敷地内の水はけ改善と内水対策を兼ねられます。止水板とあわせて検討したい制度です。
耐震・脱炭素の補助は「自己居住」限定。賃貸オーナーは対象外
宇都宮市の木造住宅の耐震支援は手厚く、耐震改修は改修費用の5分の4(上限115万円)、耐震建替えは5分の4(上限100万円)、部分改修は上限50万円、耐震シェルター等は上限25万円です。ただし、対象は「昭和56年5月31日以前の基準で建築された木造2階建て以下の一戸建て住宅(賃貸を目的としない住宅)」です。木造アパートや貸家は対象になりません。
家庭向け脱炭素化促進補助(太陽光発電、定置型蓄電池、エネファーム、HEMSなど)も、「自ら居住する市内の住宅」が条件です。賃貸物件の共用部に太陽光や蓄電池を載せたい場合は、市の家庭向け補助ではなく、事業者向けの制度や国の制度を探すことになります。
ここで誤解していただきたくないのは、補助がないことと、工事が不要なことは別の話だということです。旧耐震の賃貸物件は、金融機関の評価や買い手の目線で不利になりやすいのが実情です。補助に頼れないからこそ、耐震診断を自費で受けて現状を数字で把握しておくことが、次の判断の材料になります。
固定資産税の減額:耐震は貸家も対象になりうるが、省エネ・バリアフリーは要注意
宇都宮市の令和8年度版チラシには、「断熱改修工事又はバリアフリー化改修工事」「耐震改修工事(全体耐震改修工事のみ)」のうち一定の要件を満たす場合、申告により固定資産税(家屋)の減額を受けられると案内されています(担当は資産税課 028-632-2250)。
国の制度の枠組みでは、耐震改修に伴う固定資産税の減額は、昭和57年1月1日以前から所在する住宅が対象で、貸家かどうかで区別していないのが原則です。一方で、省エネ改修とバリアフリー改修の減額は、賃貸住宅を対象から除いているのが国の制度の枠組みです。つまり、賃貸オーナーさまが固定資産税の減額を検討できるのは、主に耐震改修の場合です。
ただし、適用期限や面積の上限、申告期限(工事完了後3か月以内とするのが一般的)、必要な証明書は、税制改正のたびに変わる可能性があります。工事の契約前に資産税課へ、物件の所在地・構造・築年・工事内容を伝えて適用可否を確認してください。証明書は建築士などが発行するもので、工事後に慌てて探すと申告期限に間に合わないことがあります。
定期報告は宇都宮市建築指導課へ。宇都宮市は特定行政庁
一定規模以上の共同住宅は、建築基準法第12条にもとづく定期報告(特定建築物の調査、建築設備・防火設備の検査)の対象になる場合があります。栃木県の資料によれば、宇都宮市は特定行政庁として定期報告の対象建築物や報告時期を独自に定めている9市のひとつです。提出先は栃木県ではなく、宇都宮市都市整備部建築指導課の指導グループ(市役所11階、028-632-2574)です。
宇都宮市の資料では、令和6年に対象となる建築物・建築設備が見直され、防火設備の定期検査が加わっています。所有者の変更、建物の名称や用途の変更があったときは届出も必要です。物件を売買したときに、定期報告の名義変更が漏れていたというのは、実務でよく見かける失敗です。
外壁の調査については、定期報告の中で外壁タイル等の全面打診が求められる時期があります。全面打診は足場を組むと費用がかさむため、ロープアクセスやドローンによる赤外線調査を組み合わせて、費用を抑えるのが合理的です。
外壁塗装の補助がなくなった今、工事費を何で抑えるか
令和8年度から外壁塗装が住宅改修補助の対象から外れたことで、宇都宮市では外壁・屋上防水といった大規模修繕の本体工事に使える市の現金補助は、私が確認できた範囲では見当たらない状況です。だからこそ、総工費の中で大きな割合を占める仮設費をどう計画するかが、オーナーさまの手残りを左右します。
一般に、大規模修繕の総工費のうち仮設足場の費用は15〜25%程度を占めるといわれます。たとえば、10階建て・外周80メートル・工期3か月の建物で、足場工法の仮設費の概算が168万円、ロープアクセス工法が59万円となった事例では、約109万円の差が出ました(建物の形状や条件により変わる参考値で、実際の見積は物件ごとに異なります)。
単価の目安も挙げておきます。外壁の打診調査は1平方メートルあたり250〜500円、外壁塗装は3,500〜4,500円、屋上・バルコニーの防水は5,000〜8,000円程度が一般的なレンジです。劣化の範囲を調査で正確に把握してから、必要な箇所に必要な工事をすることが、過剰な見積を避ける一番の近道です。料金の考え方は明誠の大規模修繕の料金の考え方で公開しています。
株式会社明誠は、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕に携わってきました。ロープアクセス工法は、作業員1人につきメインロープとバックアップロープの2本に接続し、2点以上の吊元を確保して行うのが基本です。明誠と全国のフランチャイズ加盟企業では、過去16年間、墜落による労働災害ゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受け、品質面ではISO9001を取得しています。安全への取り組みは明誠の安全管理をご覧ください。
宇都宮市の物件で、足場・ロープアクセス・ハイブリッドをどう選ぶか
明誠は、通常の足場工法、無足場のロープアクセス工法、両者を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法を提案できる、日本でも数少ない会社です。
| 工法 | 宇都宮市で向いている物件のイメージ | 強み | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 通常の足場工法 | 郊外の2〜3階建てアパートで、外壁を全面塗装する場合 | 広い面を一度に施工でき、作業の自由度が高い | 足場費がかかり、窓がふさがる期間が長い。駐車場が使えなくなる期間が出ることも |
| ロープアクセス工法(無足場) | JR宇都宮駅周辺やLRT沿線の中高層の賃貸マンション、隣地との間隔が狭い物件、部分補修 | 足場費の削減、工期短縮、入居者さまの生活への影響が小さい | 大面積の全面施工や重量物の搬入には向かない場合がある |
| ハイブリッド工法 | 1階が店舗・上階が住戸の賃貸ビル、低層部と高層部が混在する物件 | 部位ごとに最適化して総額を下げる | 工程管理に高い調整力が必要 |
宇都宮市は車社会で、賃貸物件の多くが敷地内に駐車場を確保しています。足場を組むと駐車場の一部が使えなくなり、入居者さまの不満や月極駐車場の手配費用につながります。中心市街地の中高層物件では、道路占用や隣地との調整がネックになりがちです。仮設を最小限にできるロープアクセスやハイブリッドは、入居者さまの暮らしへの影響を抑えるという点で、宇都宮の賃貸物件と相性がよいと私は考えています。
ロープアクセス工法の技術的な解説や事例は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく紹介しています。賃貸ビルや店舗併用の物件については、ビルオーナー向けの明誠のサービスもあわせてご覧ください。実際の工事の様子は明誠の施工事例で公開しています。
試算:宇都宮市の16戸RCマンションで考える、制度のインパクトと物件価値
ここからは、仮定にもとづくイメージ試算です(実在の物件の数字ではありません)。
宇都宮市内の浸水想定区域にある、RC造4階建て・16戸・平均賃料6.5万円の賃貸マンションをお持ちだとします。満室時の年間賃料収入は、16戸×6.5万円×12か月=1,248万円です。
- 止水板:エントランスと駐車場スロープ、電気室入口に止水板を設置し、設置工事費が80万円だったとします。補助は2分の1の40万円で、上限50万円の範囲内です
- ブロック塀:スクールゾーン等に面した塀の撤去費が30万円なら、4分の3は22.5万円で、上限22.5万円にちょうど収まります。撤去後にフェンスを再築する費用が15万円なら、3分の1の5万円(上限6.6万円の範囲内)が加わります
- 退去1件あたりの損失:空室3か月分の賃料19.5万円、広告料1か月分6.5万円、原状回復15万円とすると、1件あたり約41万円です。1階住戸が浸水して2戸が退去すれば、それだけで約82万円の損失になります
止水板への補助40万円は金額だけ見れば大きくありませんが、浸水1回で失う金額と比べれば、自己負担40万円の「保険」として十分に検討の価値があると私は考えます。
物件価値でも考えてみます。年間NOIが850万円のマンションを、キャップレート6.0%で評価すれば約1億4,167万円、6.5%で評価すれば約1億3,077万円です。0.5ポイントの違いで約1,090万円の差が出ます。浸水リスクの高い立地で対策をしていない物件は、買い手や金融機関から割り引いて見られがちです。止水板の設置記録やハザード対策の履歴は、この差を縮める材料になります。
損金算入:修繕費と資本的支出の線引き、補助金の扱い
工事費を経費(損金)にできるかどうかは、キャッシュフローに直結します。一般的な考え方を整理します(個別の判断は必ず税理士にご確認ください)。
- 修繕費として一括で経費にしやすいもの:外壁の塗り替え、防水の補修、劣化したシーリングの打ち替えなど、建物の価値を維持・原状回復するための工事
- 資本的支出として減価償却するもの:建物の価値を高めたり耐用年数を延ばしたりする工事。止水板の新設や、耐震補強の多くはこちらに当たる可能性があります
- 形式基準:1件20万円未満の支出や、おおむね3年以内の周期で行う修繕は修繕費として扱えます。区分が明らかでない支出でも、60万円未満または前期末取得価額のおおむね10%以下であれば修繕費とできる取り扱いがあります
補助金は原則として収入(益金)になります。ただし、固定資産の取得や改良に充てた国や地方公共団体の補助金には、法人なら圧縮記帳、個人なら総収入金額不算入の規定を使える場合があります。止水板の補助を受けるときは、工事の見積書と請求書で「止水板本体」「設置工事」「同時に行った外壁補修」を分けて記載してもらうと、税務上の整理がしやすくなります。
出口戦略:補助の「10年ルール」と、宇都宮で選ばれる物件の条件
売却を視野に入れたとき、宇都宮市の制度で押さえておきたいのは次の3点です。
- 止水板補助の財産処分制限:交付決定から10年以内に譲渡するときは、市長の承認が必要で、補助金の一部返還を求められる場合があります。5年後に売却すれば、交付額の10分の5が返還額の計算の目安になります。売却予定の時期と補助の受け方を、あらかじめ天秤にかけてください
- 居住誘導区域とLRT沿線:家賃補助の対象区域は、入居者さまにとっての「住む理由」になります。区域内の物件は、募集図面や売却時の物件概要書にその旨を書き、需要の根拠として示すのが有効です
- 修繕履歴と防災対策の記録:外壁・防水の修繕履歴、定期報告の結果、止水板などの浸水対策、ブロック塀の撤去記録は、買い手の金融機関の評価で効いてきます。写真と報告書を1冊のファイルにまとめておくことをおすすめします
物件の収益性を高める修繕の考え方は、オーナー向けの明誠のご案内にもまとめています。
医療法人・介護事業者オーナーさまへ:宇都宮市の施設で優先すべきこと
病院・クリニック・介護施設を所有されている法人さまにとって、浸水と停電は事業継続に直結します。止水板等設置費補助金は対象施設に「店舗又は事務所等」も含んでおり、施設の用途によって対象になるかは河川課への確認が必要ですが、浸水想定区域にある施設では最優先で相談する価値があります。
また、施設は定期報告の対象になりやすく、外壁の全面打診の時期も意識する必要があります。入所者さまがいる状態で足場を長期間組むと、採光や防犯の面で負担が大きくなります。ロープアクセスやハイブリッドで仮設を短期間にする計画は、施設の運営への影響を抑える有力な選択肢です。
宇都宮市のオーナーさま向け:着手までの5ステップ
- ハザードマップの確認:洪水と内水の両方で、物件が浸水想定区域に入っているかを確認する
- 建物と外構の現状調査:外壁・防水の劣化、ブロック塀や大谷石塀の高さと状態、吹付け材の有無を調べる
- 担当課への事前相談:止水板は河川課、ブロック塀・アスベストは建築指導課、固定資産税は資産税課へ。いずれも契約・着工の前に
- 工法と時期の決定:足場・ロープアクセス・ハイブリッドを比較し、止水板の実績報告期限(完了後30日または3月31日の早い方)から逆算して工期を組む
- 記録の保存:見積書・契約書・写真・報告書を残し、税務申告と将来の売却に備える
よくあるご質問
Q1. 宇都宮市で、賃貸マンションのオーナーが申請できる補助金はありますか?
あります。令和8年度から始まった止水板等設置費補助金(設置費用の1/2、上限50万円)は、施設を所有・賃借・管理する方が対象で、マンションも明記されています。ほかにブロック塀等安全対策費補助(所有者等)、雨水貯留・浸透施設設置費補助(所有者・占有者)も検討できます。
Q2. 宇都宮市の住宅改修補助で、賃貸アパートの外壁塗装はできますか?
できません。令和8年度から「選択工事(外壁塗装等)」への補助は廃止されました。また、申請者は工事をする住宅に居住(住民登録)している方に限られます。
Q3. 止水板の補助を受けた物件を売却するとき、注意点はありますか?
交付決定から10年以内の譲渡には市長の承認が必要で、補助金の一部返還を求められる場合があります。返還額は交付決定額の10分の1に、10年に満たない残りの年数を掛けて計算する定めです。
Q4. 簡易な止水シートや土のう袋も補助の対象になりますか?
要綱では、止水板等として販売されている製品で、繰り返し使用できるものが対象とされ、設置に特別な工事を要しない簡易型止水板は除かれています。対象になるかは事前相談で確認してください。
Q5. ブロック塀撤去補助の上限はいくらですか?
令和8年度版のチラシでは、スクールゾーン等は撤去費の3/4(上限22.5万円)、それ以外の地域は1/2(上限15万円)です。撤去と同一工事で生垣やフェンスを再築する場合は、再築費の1/3(上限6.6万円)が加わります。
Q6. 木造アパートの耐震改修に補助はありますか?
宇都宮市の木造住宅耐震改修・建替え補助は「賃貸を目的としない住宅」が対象のため、木造アパートは対象外です。耐震改修による固定資産税の減額は、国の制度上は貸家も対象になりうるため、資産税課に確認してください。
Q7. 入居者さま向けの家賃補助は、どの物件でも使えますか?
若年夫婦、子育て世帯及び新卒採用者等家賃補助金は、居住誘導区域にある民間賃貸住宅が対象です。賃貸借契約の前に入居者さまが事前申込をする必要があるため、募集の段階で案内するのが効果的です。
Q8. 宇都宮市の定期報告はどこに出しますか?
宇都宮市は特定行政庁のため、栃木県ではなく宇都宮市都市整備部建築指導課(指導グループ、028-632-2574)に提出します。
この記事のポイントまとめ
- 宇都宮市で賃貸オーナーさまが申請者になれるのは、止水板(上限50万円)・ブロック塀(上限22.5万円)・雨水貯留などの防災系の補助
- 住宅改修補助の外壁塗装は令和8年度から廃止。しかも申請者は居住者本人
- 木造住宅の耐震補助と家庭向け脱炭素化補助は、賃貸物件は対象外
- 家賃補助は入居者さまが使う制度。居住誘導区域内の物件は、募集図面に書く価値あり
- 止水板補助は10年以内の譲渡に承認が必要。出口戦略とあわせて判断を
- 補助に頼れない外壁・防水は、仮設計画(足場・ロープアクセス・ハイブリッド)で総額を抑える
宇都宮市の賃貸オーナーさまへ
宇都宮市は、住まいの補助メニューの数は多いものの、その大半が「自分で住む人」向けです。賃貸オーナーさまにとっては、使える制度を正しく見極め、補助の届かない部分を工事の設計で取り返すことが大切になります。
令和8年度から始まった止水板の補助は、宇都宮市の賃貸オーナーさまにとって数少ない「自分で申請できる」制度です。浸水想定区域に物件をお持ちなら、外壁や防水の修繕計画とあわせて検討されることをおすすめします。
お持ちの物件で、まだ修繕計画や浸水対策の検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度ご相談ください。1棟の現地調査と、工法別の概算比較、キャッシュフロー試算だけでも承ります。こちらからお問合せいただけます。
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本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年10月8日時点で公表されている宇都宮市・栃木県の公式情報をもとに執筆しています。補助制度は予算の範囲内で先着順となるものが多く、年度途中でも受付終了や改正があり得ます。実際に申請・申告される前に、必ず宇都宮市の各担当課へ最新の内容をご確認ください。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年10月8日
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