本間社長ブログ

2026.09.22

【令和8年度】荒川区の12条点検・外壁全面打診|報告時期・提出先・細街路で足場が組めない物件の進め方

【令和8年度】荒川区の12条点検・外壁全面打診|報告時期・提出先・細街路で足場が組めない物件の進め方
本間 幸紘

著作者プロフィール

株式会社明誠 代表取締役

本間 幸紘

大規模修繕・外壁工事・ロープアクセス工事に関する情報を、現場経験をもとに分かりやすくお届けします。

荒川区でビルや賃貸マンションをお持ちの方から、この時期に必ず届く質問が2つあります。「調査報告書は区役所に出せばいいのか」「うちの前の道は3メートルしかないが、外壁の打診調査はできるのか」。

この記事では、令和8年度(2026年度)に荒川区で定期報告の対象年を迎えるのはどの用途の建物か、そして外壁の全面打診を、荒川区特有の道路条件のなかでどう進めるのかを整理します。荒川区は区の公式サイトが「道幅が4メートルに満たない狭い道路が多く残っております」と明言している区です。つまり、足場を前提に見積を取ると、荒川区の物件は調査費が不必要に膨らむ構造になっています。

私は本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。荒川区でも町屋、東尾久、西日暮里、南千住あたりの物件を見ています。制度の教科書的な解説ではなく、理事会やオーナーさまと実際に話している内容をそのまま書きます。

更新日:2026年9月22日

結論:令和8年度に荒川区で報告年を迎えるのは「用途コード30番台」。報告期間は10月31日まで

先に結論を表でまとめます。

項目 内容
令和8年度の特定建築物定期調査の報告年次 用途コード30番台(事務所、店舗、物販店、飲食店、遊技場など)
報告期間 令和8年5月1日〜令和8年10月31日
共同住宅(用途コード40番台) 令和8年度は報告年次ではない(3年周期で令和6年度・令和9年度・令和12年度が報告年次)
特定行政庁 荒川区(敷地内に延べ面積1万㎡超の建築物がある場合は東京都)
特定建築物の報告書の提出先 公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター 建築防災課(03-5989-1929)
荒川区の担当窓口 防災都市づくり部 建築指導課 審査係(03-3802-3111/設備担当 内線2846)
外壁全面打診の周期 竣工または外壁改修から10年ごと
報告を怠った場合 建築基準法第101条により100万円以下の罰金

この記事を書いている時点で、令和8年10月31日の報告期限まで残り約40日です。用途コード30番台の建物をお持ちで調査会社がまだ決まっていない方は、9月中が実質的な判断のリミットになります。

この記事で答える質問

  • 令和8年度に荒川区で12条報告が必要なのは、どんな建物か
  • 報告書はどこに出すのか(区役所ではありません)
  • 外壁の全面打診が必要になるのはどういうときか
  • 道幅4メートル未満の細街路に面した建物で、打診調査はどう進めるのか
  • 打診調査は実際いくらかかるのか。足場とロープアクセスでいくら差が出るのか

建築基準法第12条とは:4種類の報告があり、提出先がそれぞれ違います

まずここでつまずく方が非常に多いので、整理します。

建築基準法第12条第1項および第3項は、不特定多数の人が利用する建築物について、有資格者による定期的な調査・検査と、特定行政庁への報告を所有者・管理者に義務づけています。荒川区の場合、特定行政庁は荒川区そのものです(敷地内に延べ面積1万㎡を超える建築物がある場合のみ東京都所管)。

報告は4種類に分かれ、荒川区は公式サイトでそれぞれの提出先を明記しています。

種類 対象 報告受付機関 電話
特定建築物(調査) 敷地・地盤、建築物の外部、屋上・屋根、内部、避難施設等 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1929
防火設備(検査) 防火戸、防火シャッター、耐火クロススクリーン、ドレンチャー等 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1937
建築設備(検査) 換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給水及び排水設備 日本建築設備・昇降機センター 03-3591-2421
昇降機・遊戯施設(検査) エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機、遊戯施設等 東京都昇降機安全協議会 03-6304-2225

外壁の打診調査が関わるのは、一番上の「特定建築物(調査)」だけです。ここを押さえておいてください。

エレベーターの保守業者から「12条の検査は済んでいます」と言われても、それは昇降機等の定期検査であり、外壁の話は一切含まれていません。この混同のまま10年以上が過ぎている雑居ビルを、荒川区内でも何件も見てきました。

消防設備点検とは別制度です

荒川区は定期調査報告のページで、わざわざ注意書きを置いています。

建築基準法に基づく「定期調査・検査報告制度」は、消防法に基づく消防用設備等点検とは異なる制度ですので注意してください。

消火器、自動火災報知設備、誘導灯などの点検は消防法に基づくもので、建築基準法の定期報告とは別枠です。「毎年消防に出しているから大丈夫」は通用しません。

報告を怠った場合

定期報告は法令上の義務であり、報告を怠ることや虚偽の報告を行うことは法令違反です。建築基準法第101条により100万円以下の罰金が課される可能性があります。

ただ、実務上もっとこわいのは罰金ではありません。外壁タイルやモルタルが落下して第三者に当たった場合です。定期報告を出していなかった事実は、所有者・管理者の安全配慮義務が問われる局面でほぼ確実に持ち出されます。荒川区は歩道のない細街路が多く、建物と通行人の距離が近い区です。落下物のリスクは、区の条件としてむしろ高いほうだと考えるべきです。

誰が調べれば「報告」として通るのか:荒川区が示す資格者の範囲

これも問い合わせの多いところです。荒川区は資格と対象の対応を表で公開しています。

資格 特定建築物 防火設備 建築設備 昇降機等
1級建築士・2級建築士 〇 〇 〇 〇
特定建築物調査員 〇 × × ×
防火設備検査員 × 〇 × ×
建築設備検査員 × × 〇 ×
昇降機検査員 × × × 〇

つまり外壁の打診を含む特定建築物の調査は、1級・2級建築士または特定建築物調査員が行う必要があります。「足場屋さんに見てもらった」「塗装会社に外壁を叩いてもらった」では報告書は成立しません。

ここが実務上の分かれ目です。調査の打診作業そのものは高所作業の技能を持つ職人が行い、調査・判定・報告書の作成は資格者が担う、という体制を組めるかどうか。株式会社明誠がロープアクセス工法で打診調査に関わる場合も、この役割分担を前提に組み立てます。

外壁の「全面打診」が必要になる4つのトリガー

特定建築物の定期調査のなかで、外壁のタイル・モルタル等について全面打診等が求められるのは、次のいずれかに当たるときです(平成20年国土交通省告示第282号、令和4年1月18日一部改正)。

トリガー1:竣工から10年が経過し、直近10年以内に全面打診をしていない

最も多いパターンです。10年周期が起点になります。

トリガー2:外壁改修(タイル張替え・モルタル補修等)から10年が経過

大規模修繕で外壁を触っていれば、その時点がリセットの起点です。前回の大規模修繕が平成28年(2016年)頃なら、令和8年度が対象年になります。

トリガー3:手の届く範囲の打診等で異常が認められ、「要調査」と判定された

部分打診で浮きが出れば、全面打診に進みます。

トリガー4:落下があった、または落下のおそれが高いと判断された

実際に剥落した場合です。荒川区のような密集市街地では、この時点で近隣対応と並行することになり、選択の余地が一気に狭まります。

つまり、「前回いつ全面打診をしたか」が分からない建物は、それ自体がリスクです。長期修繕計画書、過去の大規模修繕の竣工図書、理事会議事録、前回の定期報告概要書を当たってください。荒川区では建築計画概要書等の閲覧・写しの交付制度があり、建築指導課で確認できます。

荒川区固有の事情:道幅4メートル未満の細街路と、2つの不燃化特区

ここが荒川区の記事で一番書きたかった部分です。

区自身が「4メートル未満の道路が多く残る」と明言している

荒川区は細街路拡幅整備事業のページで、次のように書いています。

荒川区には、道幅が4メートルに満たない狭い道路が多く残っております。このような道路は、日照・通風など生活環境を悪化させるばかりでなく、災害時の防災・避難等安全上問題があります。

区は、4メートル未満の道路(細街路)に面した敷地で新築・建替えを行う際に、道路中心線から2メートルのセットバック部分を順次拡幅整備する事業を進めています。助成単価も公開されていて、後退用地の整地が30,000円/㎡、すみきり用地の整地が60,000円/1ヶ所、私道電柱の移設は上限165万円/1本です(令和7年4月1日から申請書類が変更)。

この「順次整備」という言葉が実務では重要です。一時的に凹凸のある道路形状となると区自身が説明しているとおり、拡幅が完了していない区間が多数残っているということです。

これが12条点検にどう効くのか

外壁の全面打診のために仮設足場を組むには、次のどれかが必要になります。

  1. 敷地内に足場と作業通路の幅(おおむね1メートル前後)を確保する
  2. 前面道路を占用して足場を張り出す(道路占用許可・道路使用許可)
  3. 隣地の使用承諾を得て足場を越境させる

前面道路が4メートル未満で、なおかつ建物が敷地境界いっぱいに建っている——荒川区で頻繁に遭遇する条件です。この場合、1も2も3も難しい。道路占用は交通管理者との協議が必要で、幅員が狭いほど許可のハードルは上がります。

2つの不燃化特区

荒川区は東京都の不燃化特区制度に基づき、荒川・南千住地区と町屋・尾久地区の2地区を対象地区に指定しています。支援期間は令和12年度までで、建替え助成、解体助成、住み替え助成、密集住宅市街地整備促進事業、専門家派遣支援が用意されています(東京都の制度として固定資産税・都市計画税の減免もあり、窓口は荒川都税事務所 固定資産税課 03-3802-8116)。

不燃化特区に指定されているということは、木造住宅が密集し、地域危険度が高いと評価されているエリアだということです。そこに建つ賃貸マンションや雑居ビルの外壁調査を「足場ありき」で計画すると、見積が跳ね上がるか、そもそも成立しません。

なお、密集住宅市街地整備促進事業では、消防活動が困難な区域における幅員6メートル未満の道路を「優先整備路線」に指定して拡幅を進めています。整備の途上にある沿道の建物は、当面この道路条件のまま維持管理していくことになります。

実務コスト感:打診調査の㎡単価と、足場費の差額

ここは数字で話します。いずれも目安・参考レンジであり、実際の見積は建物の形状・立地・仕上げ材によって大きく変動します。

打診調査そのものの単価目安

項目 単価の目安
外壁全面打診(打診棒による目視・打診) 250〜500円/㎡
赤外線調査(地上または無人航空機) 200〜400円/㎡
報告書作成・図面化 10〜30万円(建物規模による)

仮設足場を組む場合の上乗せ

項目 単価の目安
枠組足場(架設・解体・養生込み) 900〜1,200円/㎡
道路占用・使用許可の手続き、ガードマン配置 10〜50万円

荒川区でよくある規模で比べてみます

7階建て・外周64m・高さ約21mの事務所併用ビルで試算します。町屋や西日暮里の幹線沿いから一本入った立地を想定しています。

  • 外壁面積の概算:64m × 21m = 約1,344㎡
  • 打診調査費:1,344㎡ × 350円 = 約47万円

ここに足場を組むと、こうなります。

工法 内訳 合計
足場を組む場合 打診47万円 + 足場1,344㎡×1,000円=134万円 + 道路占用等20万円 約201万円
ロープアクセス工法 打診47万円 + ロープ支点設置・安全設備15〜30万円 約62〜77万円
差額 — 約124〜139万円

打診調査のためだけに足場を組むと、調査費の3倍近い仮設費が乗ります。しかも足場は架設に1〜2週間、解体に1週間、道路占用の協議を含めると調査完了まで1〜2ヶ月です。ロープアクセス工法なら、同規模で実働3〜5日が目安になります。

もちろん、大規模修繕と一体で足場を組むなら話は別です。問題は「調査だけのために足場を組む」ケースで、荒川区のように道路条件が厳しい区では、この無駄が特に大きくなります。大規模修繕の費用構成の考え方は大規模修繕の料金の考え方でも整理しています。

ロープアクセス工法が荒川区の12条打診で選ばれる4つの理由

ロープアクセス工法は、産業用ロープで屋上から作業員が降下し、外壁に直接アクセスする無足場工法です。荒川区の物件で選ばれる理由は4つあります。

1. 前面道路が狭くても、隣地が迫っていても成立する

必要なのは屋上の支点だけです。道路占用も、隣地への足場越境も原則として発生しません。細街路や不燃化特区の内側のように道路条件が厳しいエリアでは、これが決定的な差になります。荒川区の物件では、そもそも足場が組めるかどうかの検討に時間を取られるケースが少なくありませんが、その工程自体が不要になります。

2. テナント・居住者の生活影響と営業影響が小さい

足場と養生シートで建物を覆えば、看板は隠れ、窓は塞がれ、1階店舗の視認性は失われます。ロープアクセスなら、作業している面だけが一時的に影響を受けます。1階に店舗が入る建物では、この差がそのまま賃料収入の差になります。賃貸物件の収益維持という視点はオーナー向けの提供価値のページでも整理しています。

3. 打診と同時に「補修すべき箇所」を確定できる

作業員が外壁に直接触れているので、浮き・ひび割れ・シーリングの劣化をその場で記録し、位置と数量を確定できます。赤外線調査だけでは「疑わしい範囲」までしか分かりません。調査結果がそのまま次の大規模修繕の見積根拠になります。

4. 部分的に足場が必要な箇所だけハイブリッドにできる

バルコニーが深い面、庇が大きく張り出している面、屋上に支点が取れない構造など、ロープだけでは届きにくい箇所もあります。株式会社明誠では、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法から建物に合わせて選べる体制を取っています。「全面足場」か「全面ロープ」かの二択ではなく、面ごとに最適解を組み合わせるのが実際のコスト最適化です。

安全面について数字で申し上げます。株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では、ロープアクセス工法での高所作業において過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工し、明誠は日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。技術者向け・同業者向けの詳細な技術情報は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。

明誠のロープアクセス工法の技術詳細と高所作業の安全管理体制は、それぞれのページでご確認いただけます。

令和4年の告示改正:ドローン赤外線という第3の選択肢と、荒川区での限界

令和4年1月18日の告示改正により、無人航空機(ドローン)による赤外線調査が、外壁全面打診に代わる手法として正式に位置づけられました。国土交通省と一般財団法人日本建築防災協会が「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドライン」を公表しています。

ただし、荒川区での実務上の制約は小さくありません。

  • 気象条件:日射量、外気温の日較差、風速が条件を満たす必要があり、曇天・雨天・無風では実施できない
  • 飛行環境:荒川区は全域が人口集中地区(DID)に該当する市街地であり、第三者上空の飛行や目視外飛行には国土交通省の許可・承認が必要
  • 離隔距離:建物が密接して建つ細街路沿いでは、機体と建物・第三者との離隔距離を確保することが難しい
  • 判定精度:赤外線は「温度差のある範囲」を示すもので、浮きの有無を直接断定するものではない。疑わしい箇所は結局、打診で確認することになる

私の実感として、荒川区のように建物が密集し、隣接建物からの輻射熱の影響を受けやすいエリアでは、ドローン赤外線を単独で使うのは条件が厳しいというのが正直なところです。北面など日射の乏しい面では特にそうです。

現実的には、赤外線で当たりをつけ、疑わしい箇所をロープアクセスで打診確認する組み合わせが、精度とコストのバランスが良い。赤外線調査とロープアクセス打診の使い分けの技術的な条件は、ロープアクセスドットコムで詳しく整理しています。ドローン単独での適用条件と限界についてはドローン調査の適用条件もご覧ください。

初回免除の落とし穴:増築・大規模の修繕には初回免除がない

特定建築物の定期報告には「初回免除」という制度があります。東京都都市整備局の説明では、新築・改築後は、検査済証の交付を受けた日の属する年度の翌年度以降の「2回目」の報告時期から報告が必要になります。

3年周期の共同住宅を例に、都が示している具体例がこうです。

ケース 検査済証の交付 初回報告の時期
令和5年度中に交付 R5年4月1日〜R6年3月31日 令和9年度(R9年5月1日〜10月31日)
令和6〜8年度中に交付 R6年4月1日〜R8年3月31日 令和12年度(R12年5月1日〜10月31日)

令和6年度の報告年次が「直近の時期」として免除されるため、次の令和9年度が初回になる、という仕組みです。検査済証の取得時期によって、最初の報告までの期間に最大3年近い幅が出ます。

ここで注意していただきたいのが、建築設備・昇降機等は取扱いが違うという点です。こちらは新築・改築後、検査済証の交付を受けた日の翌日から起算して2年を経過する日までに初回の定期検査報告を提出する必要があります。都は「令和6年6月17日交付なら初回報告は令和8年6月17日まで」という例を挙げています。特定建築物の初回免除と混ぜて考えると、確実にずれます。

そして最大の落とし穴が、増築や、建築確認が必要な大規模の修繕・大規模の模様替えには初回免除が適用されないという運用です。新築と同じ感覚で「まだ先だろう」と構えていると、報告年を1回分飛ばすことになります。

なお、ここでいう建築基準法上の「大規模の修繕・大規模の模様替え」は、主要構造部の一種以上について行う過半の修繕・模様替えを指すもので、管理組合が言う「大規模修繕工事」とは範囲が異なります。外壁塗装や防水の更新だけであれば通常は建築確認を要しませんが、確認申請を出した工事があったかどうかは必ず確認してください。判断がつかない場合は、竣工図書と確認済証・検査済証を揃えたうえで、荒川区 建築指導課にご相談ください。

荒川区の報告・届出手続き:LoGoフォームで完結するもの/しないもの

荒川区はこの分野の電子化が進んでいる区です。ここは実務でそのまま使える情報なので、細かく書きます。

報告書の提出先は区役所ではありません

特定建築物の定期調査報告書は、荒川区役所ではなく公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター 建築防災課(〒160-8353 新宿区西新宿7-7-30 小田急西新宿O-PLACE 2階/03-5989-1929)に提出します。受付時間は月〜金(祝祭日を除く)の9:00〜11:30、13:00〜16:00です。報告書の様式は各受付機関のサイトからダウンロードできます。

なお、すべての特定行政庁で報告書の押印は省略できるようになっています。

届出類はLoGoフォームで区に電子申請できる

一方、次の届出は荒川区の電子申請システム「LoGoフォーム」で、来庁せずにパソコン・スマートフォンから提出できます。

  • 建築物等の所有者等変更届
  • 建築物除却・使用休止届
  • 建築物再使用届
  • 特定建築設備等廃止・使用休止届
  • 特定建築設備等再使用届
  • 改善完了報告書・改善計画書

書面で出す場合は、荒川区建築基準法施行細則の別記様式(建築物除却・使用休止届=別記第8号様式の3、建築物再使用届=別記第8号様式の4、特定建築設備等廃止・使用休止届=別記第11号様式、再使用届=別記第12号様式、所有者等変更届=別記第12号様式の2)をダウンロードして建築指導課の窓口に提出します。

改善完了報告書の出し先には注意

ここは間違えやすいところです。荒川区が受け付ける改善完了報告書・改善計画書は、特定建築物の定期調査報告および防火設備の定期検査報告における要是正箇所についてのものです。建築設備および昇降機等の定期検査報告に関する改善報告は、区が委託した受付団体に提出する必要があります。検査を行った検査員に確認してください。

外壁の浮き・剥落は「要是正」に分類されることが多い項目です。調査で要是正が出た場合、改善計画書と改善完了報告書までがセットで発生する——ここを見込んで年間の予算とスケジュールを組んでおくと、後が楽になります。

昇降機の電子提出は令和7年4月1日から

荒川区では、昇降機の報告書の提出について、従来の書面(紙)に加えて、令和7年4月1日からインターネットを利用した電子提出の受付を開始しています。外壁の話ではありませんが、同じ建物の管理業務として押さえておくと手間が減ります。

所管が東京都になる場合

敷地内に延べ面積1万㎡を超える建築物がある場合、所管は荒川区ではなく東京都です。特定建築物・防火設備は市街地建築部建築企画課(建築安全担当/03-5388-3344)、建築設備・昇降機等は同課(設備担当/03-5388-3349)が窓口になります。

12条点検を大規模修繕と一体化する3つのメリット

荒川区の物件で私がいつも提案するのは、12条の全面打診を単独の出費として見ないという考え方です。

メリット1:仮設を1回で済ませられる

足場を組むなら、調査と補修を分けて2回組むのは明確な無駄です。ロープアクセスで進める場合も、支点設置と安全設備の段取りを1回にまとめられます。

メリット2:調査結果がそのまま補修数量になる

打診で浮きの位置と面積を確定できれば、それが補修の数量表になります。「概算〇〇万円」ではなく、根拠のある見積が出せます。相見積を比べるときの精度も上がります。

メリット3:長期修繕計画の見直し材料になる

外壁の実際の劣化状況が分かれば、次回の大規模修繕の時期と規模を現実的な数字で置き直せます。修繕積立金の議論は、この材料がないまま進めても結論が出ません。明誠が何を大事にしているかは明誠の理念に書いています。管理組合向けの進め方は管理組合向けサービス、ビルオーナー向けはビルオーナー向けサービスをご覧ください。

明誠の施工事例は明誠の施工事例からご覧いただけます。打診調査から補修までを一貫して進めた事例も掲載しています。

よくあるご質問

Q. 令和8年度に荒川区で12条報告が必要なのは、どんな建物ですか?

A. 用途コード30番台(事務所、店舗、物販店、飲食店、遊技場など)で、規模の要件を満たす建築物です。用途と規模で報告年度が決まるため、まずは荒川区が公開している「定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧」で用途コードを確認してください。判断がつかない場合は、全体の階数・面積、各用途に供する面積、各階の用途を整理したうえで荒川区 建築指導課にお問い合わせください。

Q. うちは分譲マンションです。令和8年度は関係ないということですか?

A. 共同住宅(用途コード40番台)は3年周期で、報告年次は令和6年度・令和9年度・令和12年度です。令和8年度は報告年ではありません。ただし準備は令和8年度中に始めるのが実務的です。全面打診の対象になるかの確認、調査会社の選定、予算の総会決議には数ヶ月かかります。

Q. 報告書は荒川区役所に持っていけばいいのですか?

A. 特定建築物の定期調査報告書は区役所ではなく、公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター(03-5989-1929)が受付窓口です。区役所(建築指導課)に提出するのは、所有者等変更届、除却・使用休止届、改善完了報告書などの届出類で、これらはLoGoフォームで電子申請もできます。

Q. 外壁の全面打診は、いくらくらいかかりますか?

A. 打診調査そのものは250〜500円/㎡が目安です。7階建て・外周64mの建物なら外壁面積約1,344㎡で、調査費は約47万円が目安になります。これに仮設費が乗ります。足場を組むと約134万円+道路占用等、ロープアクセス工法なら支点設置・安全設備で15〜30万円程度です。いずれも目安であり、物件条件で変動します。

Q. 前の道が3メートルしかありません。打診調査はできますか?

A. できます。ロープアクセス工法なら必要なのは屋上の支点で、道路占用も隣地への足場越境も原則として発生しません。荒川区は区の公式サイトが「道幅が4メートルに満たない狭い道路が多く残っております」と説明しているとおり、細街路沿いの物件が多い区です。無足場の選択肢を持っているかどうかで、見積が100万円単位で変わります。

Q. 打診調査の工期はどれくらいですか?

A. 7階建て・外周64m程度の規模で、ロープアクセス工法なら実働3〜5日が目安です。足場を組む場合は、架設1〜2週間、調査、解体1週間で、道路占用の協議を含めると1〜2ヶ月を見ておく必要があります。

Q. ドローンの赤外線調査だけで報告は通りますか?

A. 令和4年1月18日の告示改正で赤外線調査は正式に位置づけられましたが、日射量・外気温の日較差・風速などの気象条件、撮影距離と角度の条件を満たす必要があります。荒川区のような密集市街地では飛行の許可・承認と離隔距離の確保がハードルになります。赤外線で当たりをつけ、疑わしい箇所をロープアクセスで打診確認する組み合わせを提案することが多いです。

Q. 大規模修繕を終えたばかりですが、報告は免除されませんか?

A. 新築・改築には初回免除がありますが、増築や建築確認が必要な大規模の修繕・大規模の模様替えには初回免除が適用されません。また、建築基準法上の「大規模の修繕」と管理組合の言う「大規模修繕工事」は範囲が異なります。確認申請を出した工事があったかどうかを、確認済証・検査済証で確認してください。

Q. 調査で浮きが見つかったら、すぐ全部直さないといけませんか?

A. 「要是正」と判定された箇所については、改善計画書と改善完了報告書の提出が求められます。優先順位をつけて段階的に進める計画を立てるのが現実的です。落下の危険が高い箇所は先行して処置し、残りを次回の大規模修繕に組み込む、という進め方をよく採ります。

この記事のポイントまとめ

  • 令和8年度に荒川区で報告年次を迎えるのは用途コード30番台。報告期間は令和8年5月1日〜10月31日
  • 荒川区の特定行政庁は荒川区だが、特定建築物の報告書の提出先は東京都防災・建築まちづくりセンター(03-5989-1929)。区役所ではない
  • 届出類(所有者変更・除却・使用休止・再使用・改善完了報告)は荒川区のLoGoフォームで電子申請可能
  • 改善完了報告書は、特定建築物・防火設備は区へ、建築設備・昇降機等は区が委託した受付団体へ
  • 共同住宅(40番台)は3年周期で令和6・9・12年度が報告年次。令和8年度は対象外
  • 外壁全面打診は竣工または外壁改修から10年ごと。前回の大規模修繕から10年なら令和8年度が動きどき
  • 増築・大規模の修繕には初回免除がない。建築設備・昇降機は検査済証交付の翌日から2年以内が初回
  • 7階建て・外周64mの試算では、足場約201万円に対しロープアクセス約62〜77万円。差額は約124〜139万円
  • 荒川区は区自身が「4メートル未満の道路が多く残る」と明言する区。不燃化特区は荒川・南千住地区と町屋・尾久地区の2地区(支援期間は令和12年度まで)

まとめ:荒川区で今週動くこと3点

長くなったので、実際に何をすればいいかだけ書きます。

1. 用途コードを確認する

建物の用途コードが30番台なら、令和8年度が報告年次です。荒川区が公開している報告時期一覧のPDFで確認できます。判断がつかなければ、階数・面積・各階の用途を整理して建築指導課審査係(03-3802-3111/内線2846)へ。

2. 「前回いつ全面打診をしたか」を調べる

これが分からない管理組合・オーナーさまが本当に多いところです。長期修繕計画書、過去の大規模修繕の竣工図書、理事会議事録、前回の定期報告概要書。10年以上前だったら、令和8年度が動きどきです。

3. 足場前提の見積を、無足場でも取ってみる

すでに調査会社から見積が出ている方も、比較のために無足場の見積を1本取ってみてください。荒川区の物件は、道路条件と隣地条件のせいで足場費が想定より膨らんでいることがよくあります。差額が100万円単位で出るなら、理事会や社内の会議に報告する価値があります。なお、前面道路の種別は荒川区地図情報(wagmap)でも確認できます。

令和8年10月31日までが報告期間です。用途コード30番台のビルをお持ちの方は、9月中に調査会社を押さえないと間に合わない可能性があります。1階に店舗が入っている建物なら、営業影響の少ない工法を選べるかどうかも含めて、一度検討してみてください。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会や取締役会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問い合わせはこちらから承っています。

関連リソース:明誠が提供している価値の全体像は明誠の提供価値、技術者向け・同業者向けの情報はロープアクセスドットコム(https://rope-access-method.com/)にまとめています。


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月22日時点で公表されている荒川区、東京都都市整備局、公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンターおよび国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。荒川区の定期調査報告ページの更新日は2025年12月4日(令和7年度中の更新)であり、令和8年度中の運用変更が反映されていない可能性があります。制度は年度途中でも改正・運用変更があり得ますので、実際に報告や申請をされる前に、必ず荒川区 防災都市づくり部 建築指導課審査係および該当の受付機関へ最新の内容をご確認ください。記載の金額はすべて目安・参考レンジであり、実際の見積は物件条件により変動します。

出典・参考資料


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市

マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月22日

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