本間社長ブログ
稲城市のマンション漏水・防災対策|多摩川の洪水と丘陵地の急傾斜地、大規模修繕の優先順位【2026年度版】
目次

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著作者プロフィール
株式会社明誠 代表取締役
本間 幸紘
大規模修繕・外壁工事・ロープアクセス工事に関する情報を、現場経験をもとに分かりやすくお届けします。
2026年9月30日 更新
稲城市の丘陵地に建つ築25年前後のマンションで、私が現場調査のたびに気になるのは、屋上より先に「建物の裏の斜面」です。擁壁の水抜き穴が土で埋まり、大雨のたびに1階の外壁の裏側へ水が回る。理事会では外壁のひび割れの話ばかりが出て、敷地の水の流れは誰も見ていない、という状況です。稲城市のように、川の低地と丘陵の斜面が同居する街では、建物の漏水と敷地の水を、ひとつの台帳でセットに管理する必要があります。
私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。
稲城市は、多摩川沿いの低地(矢野口・東長沼・大丸など)と、多摩丘陵に広がる住宅地(向陽台・若葉台・平尾・坂浜など)という、性格の違う2つの顔を持っています。今日は稲城市の公式情報を数字で整理し、大規模修繕で先に手を打つべき場所をお伝えします。
結論:稲城市で優先すべきは「斜面と敷地排水」と「電気設備の浸水対策」です
先に結論を申し上げます。稲城市の分譲・賃貸マンションで、私が最初に確認するのは次の3点です。
1つ目は擁壁・法面・敷地排水(水抜き穴、側溝、集水桝)の詰まりと劣化を、建物の修繕と同じ台帳で管理すること。稲城市の公式ページによると、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)は278箇所、特別警戒区域(レッドゾーン)は218箇所で、いずれも令和8年3月25日現在の数字です(出典:稲城市「土砂災害(特別)警戒区域」、令和8年4月8日更新)。ほとんどが急傾斜地の崩壊にかかる区域です。
2つ目は受変電設備・給水ポンプ・エレベーター制御盤が、浸水想定より低い位置にないかを確認すること。多摩川・浅川・大栗川の洪水浸水想定区域は、多摩川流域の48時間総雨量588ミリという想定最大規模の雨で作られています(出典:国土交通省 京浜河川事務所)。
3つ目は屋上・バルコニー・ドレンの排水能力を、豪雨の前に点検すること。市の内水浸水想定は、1時間最大153ミリ・24時間総雨量690ミリという、ふだんの感覚を超える雨を前提にしています。屋上のドレンが落ち葉で詰まれば、この量の雨は建物の中に入ってきます。
稲城市のハザードマップを1枚で読む
稲城市の公開情報を整理すると、次のようになります。
| リスク | 該当有無 | 内容 |
|---|---|---|
| 洪水(多摩川) | あり | 多摩川・浅川・大栗川の想定最大規模。48時間総雨量588ミリ(国土交通省・平成28年5月30日公表) |
| 洪水(三沢川) | あり | 東京都の想定。1時間最大152ミリ、24時間総雨量690ミリ(令和6年2月公表) |
| 内水 | あり | 1時間最大153ミリ、24時間総雨量690ミリを想定 |
| 土砂災害 | あり | イエロー278箇所、レッド218箇所(令和8年3月25日現在) |
| 液状化 | 地域による | 東京都の液状化予測図を市が案内。低地ほど注意 |
| 津波・高潮 | 主要な想定なし | 内陸のため、市の主要なリスクには挙がっていません |
(出典:稲城市「浸水想定区域」、稲城市「Web版 防災マップ・ハザードマップ」。津波・高潮の行は、市の公開ページに項目が無いことからの整理です。)
ここで押さえていただきたいのは、稲城市の洪水想定が川ごとに前提の雨が違う点です。多摩川は48時間で588ミリ、三沢川や内水は「1時間150ミリ超」の短時間豪雨が前提です。前者は長雨の水位上昇、後者はゲリラ豪雨の局地的な溢れ方を見ています。マンションの管理組合には、自分の建物がどちらの雨に弱いのかを、地図で確認していただきたいのです。
国土地理院の重ねるハザードマップに住所を入れると、洪水・内水・土砂・液状化を1枚に重ねて見られます。理事会の席で、スマートフォンからでも確認できます。
地域特性と漏水事故の関係:低地の電気設備、丘陵の斜面
稲城市の漏水・浸水は、地形で原因が分かれます。
多摩川沿いの低地では、洪水そのものよりも、地下ピットや1階の機械室への水の回り込みが課題です。受変電設備が地下や半地下にある建物、給水ポンプ室が1階の低い位置にある建物は、浸水すると復旧に時間がかかります。電気が止まれば、エレベーターも給水も止まります。国土交通省は、建築物の電気設備の浸水対策ガイドラインを公表しています(出典:国土交通省「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」、令和2年6月)。
丘陵地の住宅地では、斜面の上下に建つ建物ほど、擁壁・法面・敷地排水の管理が漏水に直結します。私が現場で何度も見てきたのは、次のパターンです。
- 擁壁の水抜き穴が土砂と根で詰まり、雨水が擁壁の裏に溜まる
- 駐車場のU字溝が落ち葉で埋まり、水が1階の外壁側へ流れる
- 外壁の下端(立上り部)のシーリングが切れ、そこから壁の内側へ水が入る
外壁のひび割れより先に、こうした「地面側の排水」で漏水が始まっているケースが、体感では少なくありません。
令和元年台風19号のとき、稲城市は令和元年10月12日午前10時30分に災害対策本部を設置し、午後2時に避難勧告を発令しました。ピーク時には1,375世帯3,481人が避難しています。午後4時ごろには多摩川が氾濫危険水位を超え、大丸谷戸川の越水の可能性が報告されました。市長の要請で大型排水ポンプ車が派遣され、夜10時過ぎから翌13日午前3時まで排水作業が行われ、氾濫は防がれています。市内数カ所で土砂崩れも起きましたが、人的被害はありませんでした(出典:稲城市「No.95 台風災害への対応」)。
この記録が教えてくれるのは、「氾濫は防げた」場合でも、水位が危険水位を超える事態は実際に起きるということです。建物側の備えは、市の対応を待つ前提では組めません。
大規模修繕で最初にチェックすべき漏水ポイント7つ
大規模修繕の事前調査で、私が稲城市の建物に限らず毎回見る7点を挙げます。
- 屋上防水:防水層の膨れ、立上りの端末、脱気筒まわり。防水改修の目安は5,000〜8,000円/㎡程度です(物件により変動します)
- シーリング(目地):サッシまわり、パネル目地の切れ・肉やせ。ここからの雨水が室内漏水の大半を占めます
- バルコニー排水:排水溝とドレンの詰まり。落ち葉の多い丘陵地では、年に複数回の清掃が要ります
- ドレン(屋上・庇):ゴミ除けのストレーナーが詰まると、豪雨で屋上が水たまりになります
- 立上り(パラペット・笠木):笠木の継ぎ目と下地。外壁の内側へ雨水が入る典型部位です
- サッシまわり:枠と躯体の取り合い。強い風雨の後に、窓の下の壁だけ濡れる場合は要注意です
- エキスパンションジョイント:棟と棟をつなぐ隙間部。動く部位なので、劣化が早く出ます
外壁の打診調査は250〜500円/㎡が目安です。ドローンによる外観調査と組み合わせると、高所の確認が早く進みます(ドローン調査の条件と限界)。
漏水緊急対応でロープアクセスが強い理由
台風や豪雨の翌日、「上の階から水が落ちている」と連絡が入ったとき、足場を組んでから調査していては何日もかかります。ロープアクセス工法なら、足場の設置スペースが不要で、調査員が翌日に外壁の上からシーリングや防水端末を確認できます。
シーリングの切れ目を打ち直しただけで、次の雨から漏水が止まった現場を、私は何度も見てきました。応急処置だけなら、半日から1日で済むことが少なくありません。
もう一つの強みは費用です。たとえば10階建て・外周80m・工期3か月の物件で、足場費が約168万円かかるところ、ロープアクセスなら約59万円で済んだ試算があります(物件条件で大きく変わる参考値です)。工期も、足場工法の約6割が目安です。傾斜地の物件は足場の脚が据えにくく、足場費が膨らみやすいため、この差はさらに広がる傾向があります。
明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセスの高所作業では、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業で、過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の訓練を受けており、品質管理はISO9001に沿って運用しています。工法の詳細は明誠のロープアクセス工法のご紹介に、技術面の深掘りは姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。
漏水の原因調査と対処の流れは、漏水対応のご案内をご覧ください。
防災上の共用部の位置と修繕優先度
防災の観点では、共用部の「位置」が修繕の優先順位を決めます。
| 設備 | 確認すること | 優先度の考え方 |
|---|---|---|
| 受変電設備 | 設置階と、想定浸水深との比較 | 最優先。停電はエレベーター・給水の停止に直結 |
| 給水ポンプ | 機械室の位置、止水板の有無 | 高い。断水は避難生活の質を大きく下げる |
| 自家発電機 | 設置位置、燃料の備蓄、起動試験の記録 | 高い。あるのに動かない、が最悪のパターン |
| エレベーター | 制御盤の位置、停止時の閉じ込め対策 | 高い。高層階の在宅避難に影響 |
| 避難通路・階段 | 荷物の放置、手すりの劣化 | 日常管理で対応可能。費用対効果が高い |
大規模修繕の工事費は、30戸規模のマンションで3,500〜5,000万円が一つの目安で、そのうち仮設足場が15〜25%を占めるとされます(規模・仕様で変動する参考値です)。防災設備の位置の見直しは、この工事の設計段階で織り込めば、後から単独で工事するより安く済むことが多いのです。
気象庁の「キキクル(危険度分布)」は、土砂・浸水・洪水の危険度を地図で確認できます。豪雨の日は、理事長さまや管理員さんが見られる状態にしておくと、電気設備の養生や駐車場の車の移動の判断が早くなります(出典:気象庁「キキクル」)。
稲城市の防災補助・耐震助成
制度は年度で変わります。ここは慎重にお伝えします。
稲城市の公式ページで、私が確認できた範囲は次のとおりです(令和8年9月30日時点)。
- 市の「建築物の耐震化」ページで案内されているのは、木造住宅の耐震診断・耐震改修の助成金と、生垣造成・ブロック塀等の撤去等の補助金です。分譲マンション(非木造)の耐震診断・改修の助成は、このページからは確認できませんでした(出典:稲城市「建築物の耐震化」)
- 市の「住宅関連制度等一覧」では、マンション向けとしてマンション改良工事助成(住宅金融支援機構の融資に伴う利子補給)と、東京都の命を守るためのピロティ階等緊急対策事業補助金(旧耐震基準のマンションのピロティ階等の補強費用の一部を補助)が案内されています。窓口は東京都都市整備局マンション課などで、市のページの更新日は令和8年2月26日です(出典:稲城市「住宅関連制度等一覧」)
補助率・限度額・受付期間は、令和8年度の内容を、東京都および稲城市の窓口(都市建設部まちづくり再生課、代表 042-378-2111)で直接ご確認ください。市のページに載っていない制度でも、都の制度が使える場合があります。
よくあるご質問
Q. 稲城市のマンションは、洪水と土砂災害のどちらに気をつけるべきですか?
A. 建物の場所で変わります。多摩川沿いの低地は洪水・内水と電気設備の浸水、丘陵地は擁壁・法面・敷地排水が主な確認点です。まず市のWeb版防災マップで、ご自身の建物の位置を確認してください。
Q. 漏水の緊急対応にはどのくらいの費用がかかりますか?
A. 原因により幅があります。シーリングの部分補修なら数万円〜数十万円、防水の部分改修は㎡あたり5,000〜8,000円が目安です。現地調査で原因を特定してから、無料で概算をお出しします。
Q. 台風の直後に、足場なしで調査できますか?
A. できます。ロープアクセス工法なら足場の設置が不要なため、翌日に外壁の上から状況を確認できます。技術面の詳細はロープアクセスドットコムで解説しています。
Q. 大規模修繕の工期は、どのくらい短くなりますか?
A. ロープアクセス工法は足場工法の約6割の工期が目安です。10階建て・外周80mで、足場3か月に対しロープアクセス1.5〜2か月です。物件条件で変わります。
Q. 賃貸マンションのオーナーでも相談できますか?
A. できます。収益物件は、漏水1件で原状回復費と空室期間の両方が効いてきます。考え方は収益物件オーナー向けページとビルオーナー向けのご案内にまとめています。
Q. 管理組合として、最初に何をすればよいですか?
A. 敷地の側溝・ドレン・擁壁の水抜き穴を、目視で確認することです。費用がかからず、効果が大きい確認です。進め方は管理組合向けのご案内をご覧ください。
まとめ:今週、稲城市の理事会で動けること3つ
- 擁壁の水抜き穴・敷地の側溝・屋上ドレンの詰まりを目視で確認する — 費用がかからず、丘陵地の物件でいちばん効く確認です
- 受変電設備・給水ポンプの位置を、市の洪水・内水ハザードマップと重ねて確認する — 浸水想定より低い位置にあれば、優先的に対策を検討します
- 旧耐震基準(昭和56年5月31日以前)の建物なら、まちづくり再生課(042-378-2111)に、令和8年度に使える都・市の制度を問い合わせる — 過去の表記のまま判断せず、窓口で最新を確認します
自分のマンションが、川の側にあるのか、坂の側にあるのか。ここを最初に確認して修繕計画を組めば、限られた予算でも効果が出やすくなります。工法の選択肢を3つ(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)持っていれば、工事の順番を組み替えられ、同じ予算で直せる範囲も変わります。
秋の台風シーズンは、まだ続きます。理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。ご相談はお問合せフォームからどうぞ。
明誠の施工事例もご覧いただけます。これまでに手がけた約6,000棟のうち、公開できるものを掲載しています。
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月30日時点で公表されている稲城市および国土交通省・気象庁・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず稲城市および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
出典・参考資料
- 稲城市「浸水想定区域」(令和8年4月8日更新)
- 稲城市「Web版 防災マップ・ハザードマップ」(令和8年7月14日更新)
- 稲城市「土砂災害(特別)警戒区域」(令和8年4月8日更新)
- 稲城市「No.95 台風災害への対応」
- 稲城市「建築物の耐震化」
- 稲城市「住宅関連制度等一覧」(令和8年2月26日更新)
- 国土交通省 京浜河川事務所「多摩川・浅川・大栗川の洪水浸水想定区域図(想定最大規模)」
- 気象庁「キキクル(危険度分布)」
- 東京都建設局「土砂災害(特別)警戒区域の区市町村別指定状況」
- 国土交通省「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」(令和2年6月)
- 国土交通省・国土地理院「重ねるハザードマップ」
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月30日
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