本間社長ブログ
港区のマンション漏水・防災対策|台地と埋立地、2つの顔から逆算する修繕優先順位
目次

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著作者プロフィール
株式会社明誠 代表取締役
本間 幸紘
大規模修繕・外壁工事・ロープアクセス工事に関する情報を、現場経験をもとに分かりやすくお届けします。
港区のマンション漏水・防災対策|台地と埋立地、2つの顔から逆算する修繕優先順位
2026年9月13日 更新
港区のマンションを2棟持っておられるオーナーさまから、以前こう言われたことがあります。「同じ港区なのに、白金の物件と港南の物件で、傷み方がまるで違う」。
私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンションやビルの外壁と向き合ってきました。足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、両方やってきた人間です。
先ほどのオーナーさまの実感は、まったく正しいと私は思います。港区は、麻布・赤坂・高輪の台地と崖地、そして芝浦・港南・台場の埋立地という、性格のまったく違う2つの地形を1つの区に抱えています。同じ区内でも、警戒すべき災害の種類が違うのです。
今日は、港区が公表している最新のハザード資料から逆算して、港区のマンション・ビルで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。
結論:港区は「地形で対策を分ける」区です
先に結論から申し上げます。港区の建物では、まず自分の建物がどちらの地形に立っているかを決めてから、対策の順番を組みます。
| 立地 | 該当エリアの例 | 最優先の対策 |
|---|---|---|
| 埋立・沿岸(低地) | 芝浦、港南、海岸、台場、東新橋 | 地下・1階の電気設備の浸水対策/塩害を前提とした外壁シーリング |
| 谷筋・低地(内陸) | 新橋、虎ノ門、浜松町、三田、古川沿い | 屋上防水とドレン清掃/開口部の止水 |
| 台地・崖地 | 麻布、赤坂、高輪、白金、六本木 | 擁壁の水抜き穴と排水/斜面側の外壁面 |
そのうえで、どの立地でも共通して最優先なのは屋上ドレン(排水口)の詰まりです。私が現場で見てきた漏水事故の大半は、河川の氾濫ではなく、ドレンの詰まりとシーリングの切れから始まっています。派手な災害より、地味な詰まりのほうが、はるかに高い確率で建物を傷めます。
ここからが本題です。
港区のハザード資料を1枚で読む
港区が公表している主な資料は、次の5種類です(出典:港区「ハザードマップ」/2026年9月9日更新)。
1. 浸水ハザードマップ(洪水・雨水出水)
総雨量690mm・時間最大雨量153mmという想定最大規模降雨が降った場合の想定です。対象は城南地区河川流域、隅田川及び新河岸川流域、江東内部河川流域の3流域。浸水深は10m四方のメッシュで示されています。
このマップは、令和8年3月に東京都下水道局が水防法に基づく雨水出水(内水)浸水想定区域を指定・公表したことを受けて、令和8年7月1日に洪水と雨水出水を合わせた形へ更新されました。ただし区の説明によれば、浸水区域と深さそのものは令和6年4月版から変わっていません。元になった平成31年のシミュレーションが、すでに外水と内水の両方が同時に起こる前提で計算されていたためです(出典:港区「浸水ハザードマップ」/2026年9月1日更新)。
ここは読み違えやすいところなので補足します。「内水」とは、下水道や排水路が雨をさばききれずにあふれる現象のことです。川から水が来るより先に、降った雨が足元からあふれてくる。港区のマンションで実際に起きやすいのは、圧倒的にこちらです。
2. 高潮浸水ハザードマップ
台風や発達した低気圧で海面が大きく上昇する高潮の想定です。令和6年12月に東京都が改定した高潮浸水想定区域図を反映し、こちらも令和8年7月1日に更新されています。芝浦・港南・海岸・台場といった沿岸部を持つ港区にとって、実務上の重みが大きい資料です。
3. 津波ハザードマップ(令和6年3月)
元禄関東地震(M8.5)を想定した区独自のマップで、2つのケースが用意されているのが特徴です。
| ケース | 前提 | 津波最大水位 |
|---|---|---|
| ハザードマップA | 防潮堤・水門・古川護岸が健全に機能 | T.P.+3.2m |
| ハザードマップB | すべての防潮施設が機能不全(最悪想定) | T.P.+3.3m |
区の資料では、地震直後に区内で65〜74cm程度の地盤沈下が予測されること、津波の第一波が地震発生から約70分後、最大となる第二波が約150分後に到達するとされています。区内には津波避難ビルが22か所指定されています。
なお港区は、津波防災地域づくりに関する法律に基づく津波災害警戒区域の指定はありません。マップがあることと区域指定があることは別の話なので、ここは混同しないほうがよいと思います。
4. 液状化マップ・揺れやすさマップ(令和6年3月)
区の資料には、沿岸部の大部分で液状化の発生が見込まれる地域が広く存在すると明記されています。津波の浸水予測でも、液状化による地盤沈下を0〜7cm(平均的条件)と0〜20cm(厳しい条件)の2通りで織り込んでいます。
液状化は地震の話に見えますが、私の実感では漏水の話でもあります。地盤が動けば、建物と外構の取り合い、埋設配管、エキスパンションジョイント(建物どうしのつなぎ目)に無理がかかります。地震のあと数か月してから漏り始める、というケースを私は何度も見てきました。
5. 土砂災害ハザードマップ(令和元年度指定)
港区は「都心=崖はない」というイメージと違い、土砂災害警戒区域の一部指定がある区です。マップは芝地区、麻布・赤坂地区、麻布地区、芝・高輪地区、高輪地区に分かれています。
区域の指定・解除・変更は毎年のように動いています。区が公表している直近の動きだけでも、南麻布一丁目で令和7年3月19日に新たな指定、六本木五丁目と三田一丁目で令和7年10月16日に変更、赤坂九丁目で令和8年6月24日に変更、麻布台一丁目で令和8年6月24日に解除がありました(出典:港区「土砂災害に備えて」/2026年7月1日更新)。
港区のマップ自体は令和元年度指定時点のものなので、最新の区域は東京都の土砂災害警戒区域等マップで確認するのが実務上は確実です。
地域特性と漏水事故の関係
芝浦・港南・台場——塩害とタワーの高さ
湾岸の建物で私がいつも最初に見るのは、シーリングの表面です。海が近い場所では、外壁に塩分が乗ります。塗膜とシーリングの劣化が、内陸より一段早く進む。同じ12年周期で回していても、湾岸の建物のほうが切れ始めが早い、というのが私の経験上の感覚です。
そしてタワーマンションの場合、もう1つ厄介なのが風です。高層階では、雨は上から落ちてくるのではなく、横から、ときには下から吹き上がってきます。サッシまわりのシーリングと水切り、バルコニー手すり壁の天端(てんば=上端の面)が、真っ先に効いてきます。
ここは足場の有無でも差が出るところです。タワーで全面足場を組むと、仮設費が工事費のかなりの部分を占めます。ロープアクセス工法(産業用ロープで壁面を上下しながら作業する無足場の工法)であれば、傷んでいる面だけ、必要な高さだけを狙って打ち替えるという進め方ができます。工法の使い分けについてはロープアクセス工法のご紹介と、施工事例をまとめた https://rope-access-method.com/ に整理してあります。
新橋・虎ノ門・浜松町・古川沿い——低地と古いビル
古川(渋谷川の下流部、天現寺橋から下流の4.4km区間)の流域は、港区が長く水害と向き合ってきたエリアです。平成11年8月29日の集中豪雨では大きな被害が出ました。現在は東京都が整備した古川地下調節池が機能しており、平成28年8月20日の集中豪雨では6,000㎥の流入実績があったと区は公表しています(出典:港区「古川地下調節池について」)。
インフラ側の備えは進んでいます。ただ、それでも建物側でやることは残ります。このエリアは築年数の経った中小ビルが多く、屋上防水の押さえコンクリート下で水がまわっているケースにしばしば出会います。表面からは見えません。だから、入居テナントさまから「天井にシミが出た」と言われたときには、すでに広範囲に水が入っている。
麻布・赤坂・高輪・白金——斜面と擁壁
台地側の建物で見落とされやすいのが、擁壁の水抜き穴です。港区は擁壁の点検ポイントを明示しており、「水抜き穴がない/数が少ない/詰まっている」「傾斜や膨らみがある」「増し積みをしたもの」などを注意が必要な擁壁として挙げています(出典:港区「がけや擁壁の安全対策」/2025年10月16日更新)。
私が現場で一番悔しい思いをするのは、擁壁の水抜き穴が土や落ち葉で完全に埋まっているのに、誰もそれを「点検項目」だと思っていなかったという場面です。清掃だけなら、費用はほとんどかかりません。
大規模修繕で見るべき漏水ポイント7つ
立地にかかわらず、私が調査でチェックする順番です。
| # | 部位 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 1 | 屋上防水 | 膨れ、破断、立上りの浮き、押さえコンクリートのひび |
| 2 | 屋上ドレン(排水口) | ストレーナー(ゴミ受け)の有無、詰まり、周囲の防水の納まり |
| 3 | 外壁シーリング | 切れ、肉やせ、剥離。特に異種材料の取り合い部 |
| 4 | バルコニー・開放廊下の排水 | 排水口の詰まり、床防水の立上り高さ |
| 5 | 防水立上り | 高さが足りているか、端部の押さえ金物が浮いていないか |
| 6 | サッシまわり | シーリングの切れ、水切りの変形、ビス穴からの浸入 |
| 7 | エキスパンションジョイント | カバーの変形、シールの切れ。地震後は特に |
この7つのうち、1・2・4は費用がほとんどかからず、効果が大きい。だから私は、いきなり大規模修繕の話をする前に、まずここを見てくださいとお伝えしています。漏水の原因調査そのものについては漏水・雨漏り調査にまとめました。
漏水の緊急対応で、ロープアクセスが強い理由
台風が過ぎたあと、電話が鳴ります。「上階の外壁から水が入っている、見てほしい」。
このとき、足場を組んでいたら間に合いません。仮設足場は、計画・近隣説明・資材搬入・組立てで、どんなに急いでも数日から数週間かかります。狭小地や隣地との離れがない建物なら、そもそも組めないこともあります。
ロープアクセスなら、屋上にアンカーを取れる条件が整っていれば、当日または翌日に人を降ろして、目視と触診で原因を特定できます。応急のシール処置まで、同じ日に済むこともあります。
もちろん万能ではありません。作業面積が広い場合、部材の搬入量が多い場合、下地補修が全面に及ぶ場合は、足場のほうが結果的に安く早い。だから私は、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法を提案することが多いです。「どちらが優れているか」ではなく「この建物のこの面はどちらか」という考え方です。判断の基準は https://rope-access-method.com/ に工法別で整理しています。
防災上の共用部——どこから直すか
浸水と地震の両方を考えると、共用部の優先度はこうなります。
| 共用部 | 港区での注意点 | 優先度 |
|---|---|---|
| 受変電設備(キュービクル) | 地下・1階設置が多い。浸水すると全館停電 | ★★★ |
| 給水ポンプ・受水槽 | 停電すると上階が断水。高層ほど影響が大きい | ★★★ |
| エレベーター機械室・ピット | ピット浸水で長期停止。タワーでは生活が成り立たなくなる | ★★★ |
| 自家発電設備 | 燃料の備蓄量と、燃料タンクの設置階 | ★★ |
| 避難通路(開放廊下・階段) | 排水詰まりと防水立上りの高さ | ★★ |
| 機械式駐車場ピット | 排水ポンプの能力と非常電源の有無 | ★★ |
| 外構・擁壁 | 水抜き穴、排水溝、斜面側の排水経路 | ★★(台地側は★★★) |
電気室の位置は、後から動かすのが非常に大変です。 移設が難しい場合は、防水扉・止水板・防水シャッターといった「入れない」対策と、機器の嵩上げ(かさあげ)を組み合わせることになります。
私はいつも理事長さまに、「大規模修繕の設計段階で、電気室の浸水対策も一緒に検討しませんか」とお伝えしています。別々にやると、足場も申請も近隣説明も二度手間になるからです。ビルオーナーさま向けのご提案、管理組合さま向けのご提案は、この一体検討を前提に組み立てています。
港区の助成——防災投資として使えるもの
港区には、漏水・浸水対策と直結する助成があります。令和8年度時点で受付が続いているものを整理します。
止水板設置工事等の助成
浸水による建築物の被害を防ぐため、止水板の設置工事費用の一部を区が助成する制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成対象者 | 区内の建築物の所有者・賃借人、またはマンションの管理組合 |
| 助成額 | 上限150万円(助成率は工事費の4/5を限度) |
| 助成期間 | 令和8年4月1日から令和11年3月31日までの3年間 |
| 対象経費 | 内壁・外壁への止水板設置工事、土間コンクリート打設等の関連工事、簡易型止水板の購入 など |
| 対象外 | 令和8年4月1日以後に建築確認を受け、都市開発諸制度等を活用した建築物/他の助成を受ける建築物 |
| 窓口 | 街づくり支援部土木課土木計画係(03-3578-2217) |
(出典:港区「止水板設置工事等の助成」/2026年4月9日更新)
ここで一点、強くお伝えしておきたいことがあります。区の案内には、計画段階(工事を始める前)で相談すること、交付承認前に着工した場合は助成の対象外になることが明記されています。工事を終えてから申請しても間に合いません。段取りの順番が、そのまま使えるか使えないかを分けます。
がけ・擁壁改修工事費用助成/アドバイザー派遣
擁壁の新設工事・築造替え工事に対する費用助成と、専門家を現地に派遣して目視調査や技術的助言を行うアドバイザー派遣があります(出典:港区「がけや擁壁の安全対策」)。区は「がけ・擁壁安全ハンドブック」も配布しており、簡単なチェックシートが付いています。台地側の物件をお持ちなら、目を通す価値があると思います。
共同住宅の防災力向上支援(防災カルテ)
6階建て以上かつ20戸以上の高層住宅、および3階から5階建てかつ10戸以上の中層住宅を対象に、防災対策の取組状況をレーダーチャートで示す「防災カルテ」の作成、区職員の直接訪問による助言を行っています。令和7年度からは、共同住宅ごとの防災マニュアル作成支援と、それに基づく訓練の実施支援も加わりました(出典:港区「皆さんのマンションの防災力向上を支援します!」/2025年7月3日更新。問い合わせは防災課地域防災支援係 03-3578-2516)。
費用はかかりません。理事会として「うちの防災レベルは客観的にどうなのか」を知る材料としては、かなり使えるものだと私は思います。
背景データ:雨の降り方が変わっている
「昔はこんなに漏らなかった」というお声を、本当によくいただきます。感覚の問題ではありません。
気象庁は、全国のアメダスで観測した1時間降水量50mm以上の年間発生回数について、統計期間の初めごろと比べて増加していることを公表しています(出典:気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」)。東京の観測点についても、日降水量50mm以上の日数の長期変化傾向がグラフとCSVで公開されています(出典:気象庁「大都市における日降水量50mm以上の長期変化傾向」)。
港区の浸水ハザードマップが前提にしている時間最大153mmは、下水道の整備水準を大きく超える雨です。インフラ側で受けきれない分は、建物側で受け止めるしかない。これが、私が屋上ドレンと外壁シーリングを最優先に挙げる理由です。
なお港区は、これらのハザード情報を都市計画情報提供サービスの電子マップや、3D都市モデル(PLATEAU)でも公開しています。紙のマップより、自分の建物の位置を特定しやすいはずです。
まとめ:今週、理事会・管理会社に投げられる3点
長くなりました。港区の建物で、今週すぐ動けることを3つに絞ります。
1. 自分の建物が「台地側」か「埋立側」かを、地図の上で確定させる
港区のハザードマップのページから、浸水・高潮・津波・液状化・土砂災害を順に見て、自分の建物がどれに該当するかをメモする。土砂災害の区域だけは動きが早いので、東京都の土砂災害警戒区域等マップで最新を確認する。10分で終わります。
2. 屋上ドレンの清掃記録を、管理会社に出してもらう
直近1年で何回清掃したか。ストレーナーは付いているか。台地側なら、擁壁の水抜き穴の状況もあわせて聞いてみてください。
3. 電気室・給水ポンプの設置階を、図面で確認する
地下または1階にあるなら、止水板の見積りを1本取っておく。港区の助成は上限150万円・助成率4/5で、管理組合も対象です。ただし着工前の相談が前提なので、順番を間違えないようにしてください。
10月までに動けるかどうかが、今シーズンの分かれ目です。理事会で1分だけでもこの話題を出してみてください。調査だけ、ご相談だけでも構いません。総会前の整理の段階から、お力になれることがあります。お問合せフォームからお声がけください。
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月13日時点で公表されている港区および国土交通省・気象庁・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、港区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。ハザードマップの被害想定は東京都および区が公表したものであり、実際の被害状況と異なることがあります。
出典・参考資料
- 港区「ハザードマップ」(2026年9月9日更新)
- 港区「浸水ハザードマップ(洪水・雨水出水)」(2026年9月1日更新)
- 港区「土砂災害に備えて」(2026年7月1日更新)
- 港区「がけや擁壁の安全対策」(2025年10月16日更新)
- 港区「止水板設置工事等の助成」(2026年4月9日更新)
- 港区「皆さんのマンションの防災力向上を支援します!」(2025年7月3日更新)
- 港区「古川地下調節池について」
- 東京都建設局「土砂災害警戒区域等マップ」
- 気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」
- 気象庁「大都市における日降水量50mm以上の長期変化傾向」
- 国土地理院「重ねるハザードマップ」
関連ページ
ロープアクセス工法の詳しい解説・施工事例はこちら → https://rope-access-method.com/

