本間社長ブログ

2026.09.13

鎌ケ谷市の賃貸オーナー向け補助金2026|閉じた窓と、残った1枚のドア

鎌ケ谷市の賃貸オーナー向け補助金2026|閉じた窓と、残った1枚のドア
本間 幸紘

著作者プロフィール

株式会社明誠 代表取締役

本間 幸紘

大規模修繕・外壁工事・ロープアクセス工事に関する情報を、現場経験をもとに分かりやすくお届けします。

鎌ケ谷市の賃貸オーナー向け補助金2026|閉じた窓と、残った1枚のドア

この記事で答える質問:千葉県鎌ケ谷市で賃貸マンション・アパート・戸建賃貸を所有するオーナーが、令和8年度(2026年度)に実際に使える補助金はどれか。そして今日(9月13日)から動いて間に合う制度は、どれか。

結論から申し上げます。鎌ケ谷市は令和8年度に、賃貸・集合住宅向けの入口を一つ閉じました。

市の公式ページには、こう書かれています。

令和8年度の主な変更点

補助対象となる設備の種類について

マンション等の管理組合が申請する窓の断熱改修、住民の合意形成のための資料は補助の対象外になりました。
(出典:令和8年度鎌ケ谷市住宅用設備等脱炭素化促進事業/令和8年8月20日更新)

昨日、私は同じ千葉県の野田市について書きました。野田市は逆に「申請者が管理している市内の既存のマンション等」という条文で、集合住宅の窓の断熱改修を戸数分だけ積み上げられるようにしています。隣り合う市で、制度の向きが真逆になっている。これが、自治体補助金のリアルです。

ただし、鎌ケ谷市が全部のドアを閉めたわけではありません。残った1枚は、むしろ野田市より条件が良い。そして、今日から動けば間に合う制度が、あと78日ぶんだけ開いています。

私は東京都小平市を拠点に、20年以上、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を専門にやってきました。閉じた制度を嘆いても収益は1円も増えません。この記事では、鎌ケ谷市の令和8年度制度を「賃貸オーナーが自分の名前で申請できるか」という一点で仕分け、残った制度をNOI(実質賃料収入)と入居率、そして出口価格にどう結びつけるかを書きます。

最終更新:2026年9月13日


この記事の結論:鎌ケ谷市の制度を「賃貸オーナー適合度」で仕分ける

先に全体像を出します。鎌ケ谷市と国の制度を、賃貸物件オーナーの視点で仕分けた結果が下の表です。

制度名 賃貸オーナーの適合 補助率・上限(令和8年度) 窓口
鎌ケ谷市 住宅用設備等脱炭素化促進事業(集合住宅用充電設備/住民以外も利用可) ◎ 賃貸集合住宅が主対象・基数分積み上げ可 国補助額の2/3・上限100万円×設備の基数(口数) 環境課 047-445-1227
同(集合住宅用充電設備/住民のみ利用可) ◎ 同上 国補助額の1/3・上限50万円×設備の基数(口数) 環境課 047-445-1227
鎌ケ谷市 木造住宅耐震改修促進事業(耐震改修) ◎ 戸建賃貸・併用住宅なら射程/要事前確認 4/5・上限115万円 建築住宅課 047-445-1466
同(耐震診断) ◎ 同上 2/3・上限5万円 建築住宅課 047-445-1466
鎌ケ谷市 危険コンクリートブロック塀等除却推進事業 ○ 敷地の塀は所有者・管理者が申請可 経費の1/2・上限20万円 建築住宅課 047-445-1466
同(窓の断熱改修) ✕ 申請者自らが居住する住宅が要件 (経費の1/4・上限8万円) 環境課 047-445-1227
同(マンション等の管理組合が申請する窓の断熱改修・合意形成資料) ✕ 令和8年度から対象外 — —
同(太陽光発電システム) ✕ 予算上限に達し受付終了 — —
鎌ケ谷市 空家等除却推進事業 △ 掲載が令和6年度で停止・要確認 4/5・上限50万円 建築住宅課 047-445-1472
鎌ケ谷市 空家等リフォーム推進事業 △ 空き家バンク登録+10年活用義務 2/3・上限100万円 建築住宅課 047-445-1472
国 先進的窓リノベ2026事業(住宅省エネ2026キャンペーン) ◎ 賃貸住宅オーナーも対象 一戸あたり最大100万円 各補助事業事務局
国 マンションストック長寿命化等モデル事業 △ 管理組合等が主体 計画・工事支援 国土交通省

(出典:令和8年度鎌ケ谷市住宅用設備等脱炭素化促進事業/令和8年8月20日更新、鎌ケ谷市木造住宅耐震改修促進事業による補助金交付/令和8年4月1日更新、鎌ケ谷市危険コンクリートブロック塀等除却推進事業補助金の交付について、住宅省エネ2026キャンペーン)

◎が4つ、✕が3つ。この記事では、◎の4つに紙幅の8割を使います。✕は理由だけ押さえて切り上げてください。それがオーナー経営の正しい時間の使い方です。


令和8年度、鎌ケ谷市は「管理組合ルート」を閉じた

まず、閉じた方から。5分で終わらせます。

令和7年度までの鎌ケ谷市住宅用設備等脱炭素化促進事業には、マンション等の管理組合が申請する窓の断熱改修と、住民の合意形成のための資料という補助メニューがありました。これが令和8年度から対象外になっています。

賃貸オーナーの立場で押さえるべき論点は3つです。

  1. 窓の断熱改修は、個人枠としては残っている。ただし補助対象者の要件に「自らが所有し居住する市内に所在する住宅」または「第三者が所有し、申請者自らが居住する市内に所在する住宅」と明記されています。つまり、オーナーが自分名義で、貸している部屋の窓を直して申請することはできません。
  2. 入居者名義なら、理屈の上では入り口がある。要件は「申請者自らが居住する住宅(所有者の承諾を受けること)」です。設備の費用を負担し所有するのが入居者である必要があり、オーナーの負担で工事してオーナーが受給する構図は成立しません。入居者向けサービスとして案内する価値はありますが、オーナーのキャッシュフロー改善策として数えてはいけません。
  3. 国の制度は別腹。 先進的窓リノベ2026事業をはじめとする住宅省エネ2026キャンペーンは、賃貸住宅のオーナーも対象です。手続きは「住宅省エネ2026支援事業者」として登録された施工業者が代行する仕組みで、オーナー自身が直接申請することはできません。市の枠が閉じたから窓は諦める、という判断は早すぎます。

あわせて、太陽光発電システムは予算上限に達して受付終了しています。令和7年度着工分の燃料電池・蓄電池・窓の断熱改修・EV・V2H・集合住宅用充電設備も同様に終了。今から検討できるのは、着工日または登録日が令和8年4月1日以降のものだけです。

ここまでが「閉じた話」。ここから先が本題です。


残った1枚のドア:「×設備の基数(口数)」という掛け算

鎌ケ谷市の令和8年度制度で、賃貸集合住宅のオーナーが自分の名前で申請できる補助金が1つだけ残っています。集合住宅用充電設備(EV充電設備)です。

金額の条文を、そのまま引きます。

区分 補助額
住民のみ利用可能で国の補助金を併用する場合 設備本体の購入費に係る国の補助金額の3分の1 上限50万円×設備の基数(口数)
住民のみ利用可能で国の補助金を併用しない場合 設備本体の購入費に係る国の補助金額を基準として3分の1 上限50万円×設備の基数(口数)
住民以外も利用可能 設備本体の購入費に係る国の補助金額の3分の2 上限100万円×設備の基数(口数)

(出典:令和8年度鎌ケ谷市住宅用設備等脱炭素化促進事業/令和8年8月20日更新)

「×設備の基数(口数)」の3文字が効く

昨日書いた野田市の同じ制度は「上限100万円」で止まっていました。鎌ケ谷市は「×設備の基数(口数)」が付いています。これは、上限が口数だけ掛け算されるという意味です。

数字で見ます。仮に2口の充電設備を、住民以外も利用可能な形で設置した場合。

項目 金額(仮の試算)
市の補助上限 100万円 × 2口 = 200万円
実際の補助額 国の補助金額の2/3(上限内)

上限が1棟あたりではなく設備の基数あたりである、というのは、複数口を入れる規模の物件を持っているオーナーにとって意味が大きい設計です。もちろん「国の補助金額の3分の2」という計算式が先にあり、上限に届くかどうかは国の補助決定額次第です。上限額だけを見て皮算用をしないこと。必ず国の交付決定額を先に確定させてから、市の補助額を逆算してください。

賃貸オーナーが申請者になれると明記されている

補助対象者の条文はこうです。

集合住宅用充電設備を導入した場合は、設備を設置する市内のマンション等の管理組合または所有者であり、当該設備の導入に係る国の補助金の交付決定を受けている(住民のみ充電設備を利用可能とする場合の補助を受けようとするときは、この限りでない)

「管理組合または所有者」。そして、居住要件を課す他の設備と違い、集合住宅用充電設備は「法人・集合住宅用充電設備を設置する者は除く」として市内居住・住民登録の要件から明示的に外されています。市外に住むオーナーでも、法人所有でも、申請者になれるということです。

押さえるべき実務の注意点

  • 着工日が令和8年4月1日以降であることが要件。令和7年度着工分は受付終了しています。
  • 申請は設置または引き渡しが完了してからの事後申請。工事の前に申請するタイプではありません。
  • 国の補助金の交付決定が先(住民のみ利用可の枠を除く)。国→市の順番です。
  • 財産処分制限期間は5年。5年以内に撤去・譲渡すると補助金の返還が生じ得ます。5年間この物件を持ち続けるかを、先に決めてください。
  • リース契約も可。設置者とリース事業者の連名申請、月額リース料の減額という形で補助金相当分が還元されること、リース期間が財産処分制限期間以上であること等が条件です。自己資金を寝かせたくないオーナーにとっては現実的な選択肢です。

EV充電設備は「入居率」の話である

ここが本題です。EV充電設備の投資判断を「補助金が出るから」で決めてはいけません。入居率と賃料単価の話として計算してください。

  • 総戸数30戸、家賃8万円の賃貸マンションを想定します。満室想定年収は2,880万円。
  • 入居率が95%から96%に1ポイント改善すると、年間の賃料収入は28.8万円増えます。
  • 入居率が変わらなくても、募集時の空室期間が平均1か月短縮されれば、年間の退去が6戸なら48万円の差になります。

EV充電設備が、この1ポイントや1か月を動かすかどうか。それは物件の立地と入居者層次第です。鎌ケ谷市は市域のほぼ全域が駐車場付き物件の商圏で、ファミリー層の自家用車保有率も高い地域です。逆に、駐車場稼働が低い単身向け物件なら、同じ200万円は外壁と防水に回した方がNOIに効きます。設備は、入居者が使うから価値になるのであって、設置してあるから価値になるわけではありません。


締切まで78日:耐震改修「4/5・上限115万円」をどう使うか

鎌ケ谷市でいちばん金額の大きい住宅系補助金は、実は脱炭素化事業ではありません。木造住宅耐震改修促進事業です。

令和8年4月1日付の補助金交付申請の手引きから、金額の条文を引きます。

区分 補助対象経費 補助額
耐震診断 耐震精密診断または耐震一般診断に要する経費 経費の3分の2(1,000円未満切り捨て) 上限5万円
耐震改修 ①耐震改修設計 ②耐震改修工事監理 ③耐震改修工事 の合計 合計の5分の4(1,000円未満切り捨て) 上限115万円

補助率5分の4。これは関東の自治体の中でも高い水準です。多くの市が2分の1、健闘して3分の2という中で、鎌ケ谷市は80%を出しています。しかも設計費と工事監理費まで補助対象経費に含まれる設計です。

ただし、時計は動いています

  • 申請の受付期間は毎年4月1日から11月30日まで。
  • 本日2026年9月13日から11月30日まで、残り78日。
  • さらに「耐震改修工事着手予定日の20日前までに申請」。着手後の申請はできません。
  • 耐震改修の申請には、耐震診断の結果と耐震改修設計の結果、設計・監理・工事それぞれの見積書、施工前後の図面が必要です。

つまり、11月30日までに書類一式を揃えて申請するという逆算になります。診断→設計→見積の順に積み上げる工程を考えると、今日動き出して、ぎりぎり間に合うかどうかというのが正直な感覚です。9月末を過ぎると、令和9年度(2027年4月)まで待つ判断の方が現実的になります。

対象は「一戸建ての住宅」──アパート一棟のオーナーは、まず電話を

条文はこうなっています。

昭和56年5月31日以前に着工された木造在来軸組工法又は木造枠組壁工法で建てられ、2階建て以下の一戸建ての住宅又は居住の用に供する部分の床面積が当該住宅の延べ面積の2分の1以上を占めるもの

主語は「一戸建ての住宅」と「併用住宅」です。共同住宅(アパート)という言葉は書かれていません。築古の木造アパート一棟をお持ちの方は、自己判断で諦めず、また自己判断で走り出さず、まず鎌ケ谷市建築住宅課 建築係(047-445-1466)に電話で確認してください。この1本の電話が、115万円の可否を分けます。

一方、戸建賃貸や店舗併用の賃貸物件を昭和56年以前の木造で保有しているオーナーにとっては、射程に入る制度です。鎌ケ谷市内には昭和50年代に開発された戸建ストックが相応にあり、それを賃貸に回しているオーナーは珍しくありません。

「住宅耐震改修証明書」という、もう一段の旨味

手引きの最後に、見落とされがちな一文があります。

この要綱に基づき補助金の交付を受けた方には、所得税の特別控除及び固定資産税の減額措置を受ける際に必要となる「住宅耐震改修証明書」を、通常より簡便な手続きで発行することができます。

補助金(現金)+所得税の特別控除+固定資産税の減額。三段で効きます。ただし所得税の特別控除には要件があり、賃貸に供している住宅がどの措置の対象になるかは個別判断です。顧問税理士に、補助金の交付決定前に確認してください。工事が終わってからでは打ち手がありません。


代理受領制度:自己負担125万円を25万円にする仕組み

耐震改修の手引きに、オーナーのキャッシュフローに直接効く制度が載っています。代理受領制度です。

手引きに載っている例を、そのまま表にします。

通常の場合 代理受領制度
工事費125万円に対する申請者の支払い 125万円を全額支払い 差額の25万円のみ支払い
補助金100万円の流れ 市 → 申請者 市 → 施工業者等へ直接
申請者の一時的な立替 100万円 なし

(出典:鎌ケ谷市木造住宅耐震改修促進事業による補助金交付申請の手引き/令和8年4月1日)

補助金は原則として後払いです。工事代金をいったん全額払い、数か月後に補助金が振り込まれる。この「数か月」の資金繰りが、複数物件を回しているオーナーにとっては地味に重い。代理受領制度は、その立替そのものを消します。

補助金の総額は変わりません。変わるのは、お金が出ていく順番だけです。それでも、年内にもう1棟の外壁改修を検討しているオーナーにとって、100万円が手元に残るか否かは意思決定を変える差です。施工業者に「代理受領でお願いしたい」と、見積依頼の時点で伝えてください。業者側にも委任状の手続きが発生するため、契約後に言い出すと嫌がられます。


数字で読む鎌ケ谷市の賃貸市場:世帯は増え、1世帯あたりの人数は減っている

制度の話から、市場の話に移ります。補助金は手段であって、目的はNOIと出口価格だからです。

鎌ケ谷市が公表している住民基本台帳人口【総人口・世帯数】令和8年分から、今年の推移を引きます。

時点 世帯総数 人口総数 1世帯あたり人員
令和8年1月1日現在 53,796 109,948 2.044
令和8年4月1日現在 54,152 110,091 2.033
令和8年8月1日現在 54,430 110,209 2.025
1月→8月の増減 +634世帯 +261人 ▲0.019

読み方はこうです。

  • 世帯数は7か月で634増えたのに、人口は261しか増えていない。
  • つまり増えた世帯の大半は、少人数世帯です。単身、あるいは2人世帯。
  • 1世帯あたり人員は2.044から2.025へ、7か月で0.019下がっています。

賃貸オーナーにとっては追い風の数字です。世帯数の増加は住戸需要の増加とほぼ同義であり、少人数化は単身・DINKS向け住戸の需要を押し上げます。持ち家取得層より、まず賃貸に入る層が増えている構図です。

この背景にあるのが、新鎌ケ谷駅です。鎌ケ谷市の鉄道情報のとおり、市内には成田スカイアクセス線、東武野田線(東武アーバンパークライン)、京成松戸線、北総線が走り、新鎌ケ谷駅は市内唯一の乗換駅として4路線が集まります。日本橋まで29分、成田空港へも最速29分。都心通勤と空港アクセスの両方を1駅で満たせる駅は、首都圏でもそう多くありません。

ただし、需要があることと、自分の物件が選ばれることは別の話です。世帯数が増えている市場では、新築の供給も増えます。築20年、築30年の物件が選ばれ続けるには、内見の最初の3秒で「手入れされている」と伝わる外観が要ります。外壁のチョーキング、シーリングの痩せ、鉄部のサビ。これらは賃料の下落圧力として、静かに、しかし確実に効いてきます。


現場から:見積の「一式」を分解したら、320万円が210万円になった話

ここで、現場の話を一つさせてください。市も物件も伏せますが、千葉県内の築28年・4階建て・24戸の賃貸マンションで、オーナーさまから外壁改修のセカンドオピニオンを求められたときのことです。

先に出ていた見積は、こうなっていました。

項目 金額
仮設足場工事 一式 約95万円
外壁補修・塗装工事 一式 約180万円
防水工事 一式 約45万円
合計 約320万円

問題は金額ではなく、「一式」という3文字でした。この見積では、どの面にどれだけの劣化があって、どこにいくらかかっているのかが、オーナーさまには一切見えません。

私が現地で打診調査をしたところ、外壁の浮きとタイルの不具合は道路側と西面に集中していて、隣地に接する北面と東面はほぼ健全でした。築28年の建物で全面が均等に傷むということは、実はあまりありません。日射と雨がかりの量が面ごとに違うのだから、劣化も面ごとに違う。当たり前のことですが、「一式」の見積はこれを平らに均してしまいます。

そこで、こう組み替えました。

工法 対象 金額
通常足場工法 劣化が集中する道路側・西面のみ 約48万円
ロープアクセス工法 北面・東面の部分補修とシーリング打ち替え 約38万円(足場費ゼロ)
外壁補修・塗装 面ごとの劣化度に応じた仕様分け 約98万円
防水工事 屋上・バルコニー 約26万円
合計 約210万円

差額は約110万円。そして、足場を掛ける面が半分になったことで、工期は6週間から3週間半に短縮されました。足場が掛かる期間が短いということは、入居者が「洗濯物が干せない」「窓を開けられない」と感じる期間が短いということです。

このとき、オーナーさまに言われた一言を、今でも覚えています。「足場を掛けないでいい面がある、なんて考えたこともなかった」。

これは、その業者さんが不誠実だったという話ではありません。足場しか持っていない会社は、足場を前提に見積もるしかない。それだけのことです。私が申し上げたいのは、見積を取るときは「一式」を分解してもらってください、という一点です。面ごとの劣化度と、それに対応する工法と金額。それが出てこない見積は、比較のしようがありません。

浮いた110万円は、この物件では宅配ボックスの設置と共用部LED化に回りました。修繕費を削って終わりにするのではなく、入居率に効く投資に回す。これが、私が考えるオーナー物件の正しい修繕の姿です。株式会社明誠の考え方については会社案内もご覧ください。


税務:修繕費か資本的支出か、そして補助金は雑収入

オーナー向けの記事で、ここを飛ばすわけにはいきません。

修繕費と資本的支出の分かれ目

区分 会計処理 キャッシュフローへの影響
修繕費 その年に全額損金算入 当期の課税所得を圧縮。節税効果が即座に出る
資本的支出 資産計上し、耐用年数にわたり減価償却 効果が長期に分散。当期の圧縮幅は小さい

一般に、原状回復・維持管理の性質が強い工事は修繕費、価値を高める・耐用年数を延ばす工事は資本的支出に寄ります。外壁の塗り替えや防水の打ち替えは修繕費として処理されることが多い一方、耐震改修や断熱性能の向上を伴う工事は資本的支出と判断される場合があります。

ここは税務署の判断が入る領域で、工事内容と見積書の書き方によって結論が変わります。見積書を「補助対象/補助対象外」「修繕/改良」で明確に区分して作らせること。これは補助金申請の要件でもあります。耐震改修の手引きにも「耐震補強を目的としない増築工事、間取り変更、非耐力壁、内装、床板張替え、防湿、防蟻、外構等の工事は補助対象外であるため、これらの工事を同時に行う場合には、工事見積書は補助対象と補助対象外を分けて作成して下さい」と明記されています。税務と補助金申請で、求められる書類作法が一致しているわけです。

補助金は「雑収入」として課税される

見落とされがちな点です。受け取った補助金は、原則として受給した年度に雑収入として計上され、課税対象になります。「100万円の補助金が出たから、100万円まるごと得をした」という計算は成立しません。

固定資産の取得に充てた国庫補助金等については圧縮記帳という制度がありますが、適用には要件があります。補助金の交付決定を受けた段階で、顧問税理士に一報を入れてください。決算期をまたぐかどうかでも打ち手が変わります。

私は税理士ではありません。ここに書いたのは、税理士に相談する前に整理しておくべき論点です。最終判断は必ず専門家にご確認ください。


掲載が令和6年度で止まっているページを、どう読むか

補助金記事を読むときの、実務的なリテラシーの話です。

鎌ケ谷市の公式サイトには、掲載日が現行年度より前のまま残っているページがあります。私が今日確認した範囲では、以下が該当します。

ページ 最終更新日 記載されている受付期間 判定
令和8年度住宅用設備等脱炭素化促進事業 2026年8月20日 令和9年1月29日まで ○ 現行年度
木造住宅耐震改修促進事業 2026年4月1日 毎年4月1日〜11月30日 ○ 現行年度
危険コンクリートブロック塀等除却推進事業 2024年4月1日 記載なし △ 要確認
空家等除却推進事業 2024年4月1日 令和6年度は令和6年11月29日まで △ 要確認
空家等リフォーム推進事業 2024年4月1日 令和6年度は令和6年9月30日まで △ 要確認
市内の分譲マンションを対象とした実態調査結果 2023年2月22日 — ○ 統計として有効
マンション管理計画認定制度 2023年12月1日 — ○ 継続制度

△の3つについて、この記事では「令和8年度も同じ条件で使えます」とは書きません。掲載が令和6年度で止まっているからです。

ただし、制度が終わったとは限りません。ブロック塀除却は「リフォームについて」の令和8年7月1日更新ページからも現役の補助制度としてリンクされており、運用は継続していると読むのが自然です。要綱が生きていて、ページの更新が追いついていないだけというケースは、どの自治体にもあります。

ですから、実務としてはこうしてください。

  1. ページの更新日を必ず見る。「令和8年度」と書いてあるか、「令和6年度の受付は…」で止まっているか。
  2. 止まっていたら、電話する。空家関連・ブロック塀は建築住宅課(047-445-1472/047-445-1466)です。
  3. 金額と受付期間を、電話口で確認して、メモに日付を残す。「ホームページにこう書いてあった」は、申請時の根拠になりません。

参考までに、掲載されている令和6年度時点の内容は、空家等除却が補助対象事業経費の5分の4かつ上限50万円、空家等リフォームが3分の2かつ上限100万円(空き家バンク登録・10年以上の活用義務あり)、危険ブロック塀等除却が経費の2分の1かつ20万円以内です。この数字は令和8年度のものとして扱わないでください。確認のための出発点としてだけ使ってください。


出口戦略:分譲138棟のうち、管理組合58件という数字

区分所有の投資用マンションをお持ちのオーナー向けに、出口の話をします。

鎌ケ谷市が実施した市内の分譲マンションを対象とした実態調査の数字です。

項目 数値
調査対象(令和4年4月1日までに建築、3階以上・非木造の分譲マンション) 138棟 5,494戸
管理組合 58件
アンケート回答 35件
回収率 60.3%

58件の管理組合のうち、23件は市のアンケートに返していません。これを「怠慢」と読むのは早計です。理事のなり手がいない、管理会社任せで誰も動けない、そもそも郵便物が理事長宅で止まっている──現場を歩いていると、そういう物件に当たります。

区分所有のオーナーにとって、これは出口価格のリスクです。買い手の金融機関は、重要事項調査報告書で修繕積立金の残高、長期修繕計画の有無、滞納状況を見ます。ここが弱い物件は、融資が渋くなり、買い手の母数が減り、価格が下がります。

一方で、備えている物件には具体的な優遇があります。鎌ケ谷市マンション管理計画認定制度です。

項目 内容
市への申請手数料 無料(別途、事前確認審査料等は必要)
認定の有効期間 5年(更新申請可)
認定基準 市独自の基準はなく、国の基準と同様
マンション共用部分リフォーム融資 認定を受けたマンションは金利引き下げ
マンションすまい・る債 認定マンションは利率引き上げ
【フラット35】維持保全型 認定マンションの購入者が金利引き下げ
マンション長寿命化促進税制 要件を満たす長寿命化工事で、翌年度の建物部分の固定資産税が3分の1減額

(出典:鎌ケ谷市マンション管理計画認定制度、国土交通省 マンション長寿命化促進税制)

注目していただきたいのは【フラット35】維持保全型です。認定マンションを「買う人」の金利が下がる。これは売り手であるオーナーにとって、買い手の裾野が広がるということです。同じ間取り、同じ築年数、同じ駅距離の2物件が並んだとき、買主のローン金利が違う。それは成約スピードと成約価格に、そのまま跳ね返ります。

認定申請は管理組合の管理者等(理事長)が行うもので、区分所有者が単独でできるものではありません。しかし、総会で「管理計画認定を取りませんか」と提案することはできます。申請手数料は無料、基準は国と同じ。理事会に持ち込む材料としては、十分に軽い提案です。


修繕の優先順位:補助金から逆算してはいけない

ここまで補助金の話をしてきて、最後に逆のことを申し上げます。

補助金が出るからその工事をやる、という順番は、経営判断としては転倒しています。

私が現場で使っている優先順位は、この4層です。

優先度 対象 理由
第1層 漏水と、人に当たる可能性のあるもの(外壁の浮き・タイルの剥落・手すりの腐食・ブロック塀) 放置すると賠償責任と入居者の安全に直結する。先送りのコストが青天井
第2層 躯体を守る防水(屋上・バルコニー・シーリング) 内部に水が回ると、修繕費が一桁変わる
第3層 意匠(外壁塗装・共用部の見た目) 内見時の印象=入居率と賃料単価に効く
第4層 設備更新(窓の断熱・EV充電設備・宅配ボックス) 効果は実在するが、第1〜3層が終わってから

EV充電設備は第4層です。外壁に浮きがあり、屋上防水が切れている物件に、補助金が出るからという理由でEV充電設備を先に入れる。これは、雨漏りしている家に太陽光パネルを載せるのと同じことです。

一方で、第1層・第2層の工事は、市の補助金とは相性が悪いのもまた事実です。外壁改修や屋上防水に直接使える自治体補助は、鎌ケ谷市に限らず多くありません。だからこそ、補助金の有無で優先順位を決めてはいけない。補助金は「やると決めた工事の資金調達手段」であって、「やる工事を決める基準」ではありません。

では、第1層・第2層のコストはどう下げるか。ここで工法の話になります。


足場か、ロープアクセスか:鎌ケ谷市の物件でどちらを選ぶか

外壁改修や屋上・外壁の防水工事で、見積の3割前後を占めるのが仮設足場です。ここを削れるかどうかが、NOIを直撃します。

工法 向いているケース オーナーにとっての意味
通常足場工法 全面打診・全面塗替えなど、建物全体を一度に施工する場合 総工事量が多いときは、足場を掛けた方が単価が下がる
ロープアクセス工法(無足場工法) 部分補修、特定の面だけの改修、高層部のシーリング打ち替え、急を要する漏水対応 足場費がまるごと不要。工期が短く、入居者の生活影響が小さい
ハイブリッド工法 面によって劣化度が違う物件、隣地が近く足場が組みにくい面がある物件 足場を掛ける面と掛けない面を分け、総額を最適化

賃貸オーナーの立場で、ロープアクセス工法のいちばんの価値は入居者の生活影響が小さいことだと考えています。

足場を組むと、こうなります。窓の外に単管が立ち、防護シートで日照が落ち、洗濯物が干せなくなり、防犯上の不安が出る。この状態が1〜2か月続きます。分譲マンションなら「資産価値のため」で説明がつきますが、賃貸は違います。入居者にとっては、家賃は同じなのに住環境だけ悪くなる期間です。更新月と重なれば、退去の理由になり得ます。

前章の計算を思い出してください。空室が1戸1か月増えるだけで、家賃8万円なら8万円の減収です。足場を組まずに済む部分を見極めるだけで、この損失を避けられる場面があります。

ロープアクセス工法の技術的な詳細、安全基準、適用できる建物の条件については、姉妹サイトロープアクセスドットコムに体系的にまとめています。弊社のサービス紹介はロープアクセス工法のご紹介をご覧ください。

株式会社明誠は、通常足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3つを、建物ごとに選んで提案できる数少ない会社です。「うちはロープアクセスの会社だから、全部ロープでやりましょう」とは申し上げません。足場を掛けた方が安くなる物件には、そう申し上げます。3つ持っているというのは、そういうことです。


よくある質問(FAQ)

Q1. 鎌ケ谷市で、賃貸マンションのオーナーが自分の名前で申請できる補助金はありますか?
A. あります。集合住宅用充電設備(住民以外も利用可なら国補助額の2/3・上限100万円×設備の基数)が該当し、補助対象者に「マンション等の管理組合または所有者」と明記されています。市内居住・住民登録の要件からも外されているため、市外在住オーナーや法人所有でも申請可能です。(出典:令和8年度鎌ケ谷市住宅用設備等脱炭素化促進事業)

Q2. 貸している部屋の窓を断熱改修したら、市の補助金は使えますか?
A. オーナー名義では使えません。鎌ケ谷市の窓の断熱改修は「申請者自らが居住する住宅」が要件です。さらに令和8年度から、マンション等の管理組合が申請する窓の断熱改修は補助対象外になりました。ただし国の先進的窓リノベ2026事業は賃貸住宅オーナーも対象です。市の枠と国の枠を分けて考えてください。

Q3. 耐震改修の補助金は、いつまでに申請すればいいですか?
A. 毎年4月1日から11月30日までが受付期間で、さらに工事着手予定日の20日前までに申請する必要があります。着手後の申請はできません。2026年9月13日時点で、受付終了まで残り78日です。診断・設計・見積を揃える工程を考えると、9月中に動き出すかどうかが分岐点になります。(出典:鎌ケ谷市木造住宅耐震改修促進事業)

Q4. 補助金を受け取ると、税金はどうなりますか?
A. 原則として受給年度に雑収入として計上され、課税対象になります。固定資産の取得に充てた補助金には圧縮記帳という制度がありますが、適用要件があります。また、工事が修繕費(当期に全額損金算入)になるか資本的支出(減価償却)になるかで、キャッシュフローへの効き方が変わります。交付決定の段階で顧問税理士にご相談ください。

Q5. 補助金の立替払いが資金繰り的にきついのですが、方法はありますか?
A. 耐震改修促進事業には代理受領制度があります。市が補助金を施工業者へ直接交付し、オーナーは工事費から補助額を差し引いた差額だけを支払う仕組みです。手引きの例では、工事費125万円・補助金100万円のケースで、支払いは25万円のみとなっています。見積依頼の時点で施工業者に伝えてください。


この記事のポイントまとめ

  • 鎌ケ谷市は令和8年度、管理組合が申請する窓の断熱改修と合意形成資料を対象外にした
  • 残った集合住宅用充電設備は「上限×設備の基数(口数)」で積み上がり、所有者も申請可能
  • 木造耐震改修は補助率5分の4・上限115万円。ただし申請受付は11月30日まで、残り78日
  • 代理受領制度を使えば、工事費125万円のうち支払いは差額25万円で済む
  • 令和8年1月→8月で世帯数は634増、人口は261増。少人数世帯の増加=賃貸需要の追い風
  • 掲載が令和6年度で止まっている補助制度ページは、必ず電話で現行条件を確認する
  • 補助金は資金調達手段であって、修繕の優先順位を決める基準ではない

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月13日時点で公表されている鎌ケ谷市および国土交通省・環境省・千葉県の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特に鎌ケ谷市住宅用設備等脱炭素化促進事業は設備別の予算枠に達した時点で受付終了となり、太陽光発電システムはすでに終了しています。また本記事で「△ 要確認」とした空家等除却・空家等リフォーム・危険コンクリートブロック塀等除却の各制度は、市の掲載が令和6年度で止まっているため、令和8年度の条件は確認できていません。実際に申請される前に、必ず鎌ケ谷市および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断・法務判断を行うものではありません。税務処理については税理士に、法的な論点については弁護士にご相談ください。


出典・参考資料


ご相談ください

鎌ケ谷市で賃貸マンション・アパート・戸建賃貸を保有されているオーナーさまへ。

11月30日の耐震改修申請期限まで、残り78日です。そして集合住宅用充電設備の申請は令和9年1月29日まで、設備別の予算枠に達した時点で終了します。

弊社では、1棟の現地調査と、修繕コストを織り込んだ利回り改善シミュレーションだけでもご相談を承っています。「どの工事を先にやるべきか」「足場を掛けるべきか、ロープアクセスで足りるか」「その工事に使える補助金はあるか」──この3つを、数字にしてお返しします。

ご相談はお問合せフォームから承ります。


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執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板の各専門職が加盟することで、高品質と低価格を両立しています。

最終更新:2026年9月13日

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