練馬区の管理組合が無料で使える相談・派遣12選|アドバイザー派遣料は区が全額助成、耐震アドバイザーは分譲マンションで10回まで無料【令和8年度版】

2026年9月23日 更新

先日、光が丘の分譲マンションの理事さまからこんなご相談をいただきました。

「築45年になる棟で、そろそろ3回目の大規模修繕を考えている。ただ理事は全員一年交代の輪番制で、誰も過去の経緯を知らない。管理会社の提案をそのまま通していいのか、正直自信がない」

伺うと、11階建て・120戸規模の団地型マンションで、長期修繕計画の更新は8年近く止まっていました。輪番制の理事会にありがちな話です。悪意はどこにもなく、ただ「専門家に相談する」という発想そのものが理事の頭になかった。

私はこの手のご相談を受けるたびに思うことがあります。練馬区の管理組合は、実は無料で呼べる第三者の専門家がかなり充実しているのに、その存在自体が知られていない、と。しかも練馬区の場合、単に「相談窓口がある」だけでなく、都のアドバイザー派遣にかかる費用そのものを区が肩代わりする助成まで用意されています。これは23区の中でも手厚い部類です。

申し遅れました。私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組んで建物をすっぽり囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も自分の足で踏んできた人間です。

今日は、練馬区の管理組合とビル・収益不動産オーナーさまが使える相談・派遣・助成を12個、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。


結論:練馬区で使える支援は12ある

先に一覧でお示しします。費用ゼロのものと、費用の一部・全部が助成で戻るものを分けて並べました。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用 申込先
1 練馬区 分譲マンション管理運営無料相談 マンション管理士2名 無料/1枠50分・月2回開催 住宅課 03-5984-1289
2 練馬区 分譲マンションアドバイザー制度利用助成 都センター認定アドバイザー 派遣料全額助成(年度内1回) 住宅課 03-5984-1289
3 練馬区 耐震アドバイザー派遣・簡易診断助成 建築士等の耐震アドバイザー 無料(10/10助成)/派遣は同一建物10回まで 建築課 耐震化推進係
4 ねりまマンションセミナー「未来塾」 東京都マンション管理士会と協働 無料(年3回) 住宅課(次回は令和8年11月上旬)
5 練馬区 区民相談所・石神井庁舎の法律相談 弁護士 無料/1回30分・年3回まで 区民相談所 03-5984-4523
6 練馬区 法律相談オンライン(Zoom・水曜) 弁護士 無料 区ホームページの申込フォーム
7 練馬区消費生活センター 消費生活相談員 無料 03-5910-4860(石神井公園区民交流センター内)
8 東京都 マンションアドバイザー無料派遣(管理状況届出制度) マンション管理士等 無料(届出済みが条件) 東京都防災・建築まちづくりセンター
9 東京都 マンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応) 講習修了のマンション管理士 無料/各2回まで 東京都マンション管理士会(令和9年2月26日まで)
10 (公財)マンション管理センター 電話相談 専門相談員 無料 03-3222-1517/設備は03-3222-1519
11 一般社団法人マンション管理業協会 相談窓口 専門相談員 無料 050-3733-8982
12 練馬区マンション管理計画認定制度 (公財)マンション管理センターが事前確認 手数料4,100円〜(長期修繕計画1本の場合) 住宅課 03-5984-1289

1〜11がお金のかからない相談・派遣・助成、12だけは少額の手数料が発生する認定制度です。順番に見ていきます。


練馬区のマンション管理士派遣は「区役所に呼ばれる」だけでなく「助成で呼べる」

練馬区の分譲マンション支援は、区が直接開く相談会と、都の制度を使うときの費用を区が肩代わりする助成の二段構えになっています。ここが練馬区の一番の特徴です。

1. 分譲マンション管理運営無料相談(事前予約制)

区が公表している内容をそのまま引用します。区内に所在する分譲マンションの管理組合役員および区分所有者が対象です。

項目 内容
対象 区内に所在する分譲マンションの管理組合役員および区分所有者
開催頻度 原則月2回(第1・第3木曜日の午後)
時間・回数 1枠50分、1日3枠(13時20分〜14時10分/14時15分〜15時05分/15時10分〜16時)
相談員 マンション管理士2名
費用 無料
会場 練馬区役所本庁舎13階会議室
申込方法 電子申請(Logoフォーム)または電話03-5984-1289(8時30分〜17時15分、土日祝除く)

(出典:練馬区「分譲マンション管理運営無料相談(事前予約制)」/更新日2026年4月30日)

同席は申請者を含めて3名までという制限があります。理事長お一人でふらっと申し込むよりも、修繕委員長や会計担当と3人で臨むほうが、限られた50分を有効に使えます。私の経験では、質問リストを事前に3つに絞って持っていく理事会ほど、この手の相談枠を使いこなしています。

2. 分譲マンションアドバイザー制度利用助成 — 練馬区の目玉

ここが練馬区独自の強みです。多くの区は「区が専門家を呼ぶ」か「都の制度を紹介するだけ」のどちらかですが、練馬区は都のアドバイザー派遣にかかる費用そのものを、区が全額肩代わりする助成を用意しています。

項目 内容
対象 練馬区の分譲マンション管理組合登録制度に登録した、区内の分譲マンション管理組合等
助成対象アドバイザー (公財)東京都防災・建築まちづくりセンターが派遣する認定アドバイザー
助成額 マンション管理アドバイザー制度:Aコース16,500円・Bコース25,300円の全額。マンション建替え・改修アドバイザー制度:Aコース16,500円・Aオプション8,800円の全額
助成回数 同一管理組合等につき、同一年度内にいずれか1回
手続の流れ ①管理組合登録 ②助成申請書の提出 ③区の審査・交付決定通知 ④アドバイザー派遣の申込・利用 ⑤完了報告と請求書提出後に助成金が入金

(出典:練馬区「分譲マンションアドバイザー制度利用助成」/更新日2026年7月3日)

この制度のポイントは、アドバイザーの種類を選べることです。「マンション管理アドバイザー制度」は管理運営や合意形成が専門のアドバイザー、「マンション建替え・改修アドバイザー制度」は建築士など技術系のアドバイザーが中心になります。つまり練馬区では、管理の相談も、建物の技術的な相談も、実質無料で専門家を呼べる設計です。

私はいつも理事長さまに「まず管理組合登録を先に済ませておいてください」とお伝えしています。登録そのものに費用はかからず、いざ大規模修繕の話が動き出したときに、登録の有無で使えるスピードが変わってくるからです。

3. 耐震アドバイザー派遣・簡易診断助成 — 昭和56年5月以前の分譲マンションなら10回まで無料

もう一つ、練馬区で見落とされがちな支援がこれです。旧耐震基準(昭和56年5月31日以前)の建築物を対象にした、耐震診断のアドバイザー派遣と簡易診断の助成制度です。

項目 内容
対象建築物 昭和56年5月以前に建築された建築物(緊急輸送道路沿道建築物、分譲マンション、災害時医療機関等を含む)
助成率 10分の10(申請者の自己負担なし)
アドバイザー派遣の回数 同一の建物に対して10回まで
助成金額の目安 アドバイザー派遣50,000円/回、簡易診断352,000〜745,000円(建物規模による)
対象者 分譲マンション管理組合の代表者または建築物所有者
内容 耐震診断の進め方だけでなく、区分所有者間の合意形成についてのアドバイスも対象に含まれる

(出典:練馬区「アドバイザー派遣および簡易診断の助成制度」/更新日2026年4月1日)

私がこの制度で驚くのは、アドバイザー派遣が10回までという枠の広さです。他区で見かける耐震アドバイザー制度は3回程度が多い印象ですが、練馬区は合意形成という一番時間のかかる部分まで面倒を見てくれる設計になっています。旧耐震のマンションで「建替えか、改修か」の議論が長引いている管理組合ほど、この枠を使い切る価値があります。

外壁の劣化がどの程度進んでいるかを客観的に把握する方法については、明誠のロープアクセス工法による外壁調査の考え方をご覧いただくと、足場を組まずにどこまで見られるのかが分かります。技術的な仕組みそのものをもう少し深く知りたい方は、同業者向けに書いている姉妹サイトロープアクセスドットコムのほうが詳しいです。


練馬区で使える弁護士の無料法律相談と消費生活センター

管理費の滞納、区分所有者間のトラブル、工事契約をめぐる紛争。これらは管理士や建築士の守備範囲を超えます。練馬区にも法律面の無料窓口が用意されています。

なお、練馬区の弁護士会法律相談センターは「弁護士会による相談(有料)」と区のページに明記されています。無料で使いたい場合は、次の区民相談のほうを選んでください。

5. 区民相談所・石神井庁舎の法律相談

項目 内容
相談時間 午後1時〜午後4時、一人30分以内
費用 無料(相談内容の秘密は厳守)
利用回数 1年間に3回まで
会場 練馬区区民相談所(月・水・金)、石神井庁舎区民相談室(火・木)、男女共同参画センターえーる(土曜)
予約方法 事前予約制・先着順。相談日の1週間前午前9時から電話または窓口で受付開始
連絡先 練馬区区民相談所 03-5984-4523

(出典:練馬区「法律相談」/更新日2026年1月20日)

30分は短く感じますが、年3回まで使えます。さらに水曜日はオンライン(Zoom)でも法律相談を実施しているため、平日の日中に区役所や石神井庁舎まで出向けない理事さまには、こちらのほうが現実的でしょう。私は「争点を1つに絞って行く」ことをいつもお勧めしています。「滞納が3年分たまっている区分所有者に、どの手続きから着手すべきか」まで絞れていれば、30分で具体的な道筋が見えます。

7. 練馬区消費生活センター

工事契約のトラブル、訪問業者による強引な勧誘への対応は、消費生活センターの領域です。

  • 所在地:練馬区石神井町2丁目14番1号 石神井公園区民交流センター内
  • 相談電話:03-5910-4860
  • 相談時間:月〜金 午前9時〜午後4時30分(祝休日・年末年始を除く)

(出典:練馬区「消費生活センター」/更新日2025年10月7日)

「地震のあと点検に来たという業者に、その場で契約書を書かされた」という相談は、残念ながら現場で今も耳にします。この手の話は法律相談より先に、消費生活センターに入れたほうが早いことが多いです。

なお、収入・資産が一定基準以下の方であれば、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助による無料法律相談も選択肢になります。同一の問題につき1回30分・3回まで無料で、弁護士・司法書士に相談できます(出典:法テラス「無料法律相談のご利用の流れ」)。練馬区内の相談窓口については練馬区「法テラス(日本司法支援センター)」のページで案内されています。


セミナー・相談会:ねりまマンションセミナー「未来塾」

練馬区は東京都マンション管理士会と協働で、区内の分譲マンション管理組合役員・区分所有者を対象にしたセミナー「未来塾」を開いています。

項目 内容
対象 区内の分譲マンション管理組合役員や区分所有者
開催頻度 年3回開催予定
内容 管理組合の運営や大規模修繕の進め方などの情報提供、参加者相互の交流会
運営協力 東京都マンション管理士会
次回予定 令和8年11月上旬(詳細は令和8年10月下旬ごろにホームページ等で案内)

(出典:練馬区「ねりまマンションセミナー“未来塾”」/更新日2026年6月18日)

私がこの手のセミナーで価値を感じるのは、講義そのものよりも交流会の時間です。「うちの棟は3回目の大規模修繕でこう乗り切った」という他の管理組合の生の声は、コンサルタントの説明より腹に落ちることがあります。次回の令和8年11月上旬に向けて、詳細発表を待たずに理事会の議題として一言触れておくと、参加のハードルが下がります。


東京都・国の相談窓口を重ねて使う

練馬区の枠を使い切っても、まだ残っています。ここからは東京都と国の制度です。

8. マンションアドバイザー無料派遣(管理状況届出制度が前提)

東京都は「管理状況届出制度による届出を行った管理組合に対し、その管理状況に応じて、マンション管理士などの専門家を派遣し、マンションの管理や建替え・改修について、講義や個別具体的な相談に対するアドバイスを行います」としています(出典:東京都マンションポータルサイト「マンションアドバイザー無料派遣のご案内」)。

肝は「届出を出していること」が条件という点です。練馬区は「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」に基づく管理状況届出制度実施要領を定めており、区内の分譲マンションもこの枠組みの対象になります。届出の具体的な手続については、住宅課(03-5984-1289)に確認するのが確実です。

  • 通常の届出済みマンション:1回まで無料
  • 管理不全の兆候があるマンション:5回まで無料
  • 申込先:(公財)東京都防災・建築まちづくりセンター

順番としては「届出 → 無料派遣」です。まだ届出をしていない管理組合は、まずここから動くとよいでしょう。

9. マンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)

こちらは届出の有無を問わない枠です。

項目 内容
対象 都内に所在するマンション管理組合
回数 防災力向上・認知症対応それぞれ2回まで(合計最大4回)
費用 無料
受付期間 令和8年6月23日(火)から令和9年2月26日(金)まで
募集枠 防災力向上・認知症対応あわせて160件程度
申込 東京都マンション管理士会のホームページから

(出典:東京都「本日からマンション管理士無料派遣事業の受付を開始(マンション管理組合向け)」/東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」)

都内全域で160件程度という枠です。締切の令和9年2月26日まで残り約5か月。年内に理事会で決議しておくと安心です。賃貸マンションのオーナーさま向けには、賃貸マンション向け防災アドバイザー無料派遣という別枠も用意されています。

10. (公財)マンション管理センターの電話相談

全国の管理組合が使える、国のマンション管理適正化推進センター指定団体の窓口です。

  • 管理組合運営・管理規約などの相談:03-3222-1517
  • 建物・設備の維持管理の相談:03-3222-1519(電話で事前予約)
  • 相談時間:月〜金 9時30分〜17時00分

(出典:(公財)マンション管理センター「相談窓口について」)

11. 一般社団法人マンション管理業協会の相談窓口

管理会社の団体である日管協(マンション管理業協会)も、管理組合向けの相談窓口を設けています。

  • マンション管理に関する相談:050-3733-8982(10時〜16時30分、12時〜13時は昼休み)

(出典:一般社団法人マンション管理業協会「お問い合わせ」)

「区に相談するほどでもないが、誰かに確認したい」という程度の疑問なら、10番・11番のどちらかが一番手軽です。


練馬区マンション管理計画認定制度(唯一、少額の手数料がかかる制度)

12. マンション管理計画認定制度

練馬区は令和5年4月から、マンション管理計画認定制度を実施しています。

項目 内容
手数料 長期修繕計画が1つの場合4,100円、2つ以上の場合は2つ目以降1件あたり1,800円加算(更新時も同額)
事前確認 (公財)マンション管理センターの「管理計画認定手続支援システム」で事前確認適合証を取得
申請の流れ ①事前相談 ②総会での決議 ③事前確認適合証取得 ④認定申請 ⑤区への書類提出と手数料納付
注意点 オンライン申請をしただけでは申請完了にならず、区への書類提出と手数料納付が必要

(出典:練馬区「練馬区マンション管理計画認定制度」/更新日2026年4月15日)

認定を取ると、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資の金利引き下げや、長寿命化促進税制の適用要件など、修繕積立金の負担に効いてくる場面があります。国の制度概要は国土交通省「マンション管理計画認定制度」にまとまっています。


お金の話:練馬区で大規模修繕を検討するときの目安

支援制度の話ばかりでは実感が湧かないと思いますので、費用の目安も出しておきます。すべて参考値のレンジです。実際の見積は建物の形状・劣化状況・立地によって大きく変動します。

工種 ㎡単価の目安
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡
外壁打診調査 250〜500円/㎡
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/㎡

30戸規模のマンションで大規模修繕を一巡させると、総額のレンジは3,500〜5,000万円程度。このうち仮設足場が15〜25%を占めます。つまり足場だけで500万〜1,200万円という計算になります。

私がロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が懸垂し、足場を組まずに外壁作業を行う無足場工法)をお勧めする理由は、ここにあります。10階建て・外周80m・工期3か月というモデルケースでは、足場の仮設費が約168万円に対し、ロープアクセスなら約59万円。差額は約109万円です。

もちろん、どんな建物でもロープアクセスが最適というわけではありません。低層で形状が複雑な建物、外壁の改修範囲が広い建物は、足場を組んだほうが総合コストで有利になります。だからこそ明誠では、通常足場・ロープアクセス・両者を併用するハイブリッド工法の3つから選べる体制をとっています。3工法を自社で提案できる会社は、国内でも多くありません。料金の考え方については明誠の大規模修繕の料金の考え方にまとめています。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けています。この安全体制の詳細はロープアクセスドットコムで公開しています。


相談に行くとき、何を持っていけばいいか

50分や30分という枠を最大限に使うために、私がいつもお伝えしている3点セットがあります。

  1. 直近3期分の総会議事録 — 何が決まり、何が先送りされてきたかが一目で分かります
  2. 長期修繕計画書 — 更新が10年近く止まっていても構いません。むしろ止まっていること自体が相談材料です
  3. 管理規約(最新版) — 標準管理規約は令和7年に改正されています。自組合の規約がどの版に準拠しているかで、打てる手が変わります

余裕があれば、これに修繕積立金の残高が分かる直近の決算書と、気になっている箇所のスマホ写真を加えてください。写真は強力です。「北面3階のバルコニー下に白い筋が出ている」と口で説明するより、1枚見せたほうが専門家の判断は10倍速くなります。

法令面では、令和7年5月30日公布の「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律」(令和7年法律第47号)が令和7年11月28日に一部施行されています。旧耐震の団地型マンションで建替えや大規模な改修を視野に入れている管理組合は、この改正を踏まえた助言を受けられるかどうかで、相談の価値が変わってきます。


よくあるご質問

Q. 分譲マンション管理運営無料相談は、理事長でないと申し込めませんか?

A. 対象は「区内に所在する分譲マンションの管理組合役員および区分所有者」ですので、理事でない一区分所有者の立場でもお申し込みいただけます。同席は申請者を含めて3名までです。

Q. アドバイザー制度利用助成は、管理士と建築士のどちらを呼べますか?

A. 「マンション管理アドバイザー制度」(管理運営が中心)と「マンション建替え・改修アドバイザー制度」(建築士など技術系が中心)の2種類から選べます。ただし助成は同一年度内にいずれか1回です。管理組合登録が前提になりますので、まだの場合は早めに登録を済ませておくことをお勧めします。

Q. 耐震アドバイザー派遣・簡易診断助成は、うちのマンションが対象か分かりません。

A. 対象は昭和56年5月31日以前に建築された建築物です。築年数だけでなく建築確認日が基準になりますので、確実な判断は建築課の耐震化推進係にご確認ください。分譲マンション管理組合の代表者が申請できます。

Q. 東京都のマンション管理士無料派遣は、いつまでに申し込めばいいですか?

A. 令和8年度の受付期間は令和8年6月23日から令和9年2月26日までで、防災力向上・認知症対応あわせて160件程度という募集枠が公表されています。年度末ぎりぎりではなく、年内の理事会で決議しておくほうが安心です。

Q. 法律相談は、区民相談所と法テラスのどちらを使えばいいですか?

A. 区民相談所の法律相談は練馬区民であれば所得に関わらず年3回まで無料で使えます。法テラスは収入・資産の要件を満たす方が対象で、同一の問題につき3回まで無料です。まずは要件を問わない区民相談所から検討されるのがよいと思います。

Q. 大規模修繕の工期はどれくらい違いますか?

A. ロープアクセス工法は足場の組立・解体の期間がまるごと不要になるため、足場工法のおよそ60%の工期が目安です。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場工法で3か月程度のところ、ロープアクセスなら1.5〜2か月程度になります。ただし改修範囲が広い場合は差が縮まります。

Q. 管理会社を通さずに、明誠に直接相談してもいいのでしょうか?

A. もちろんです。セカンドオピニオンとしてお使いいただくケースが一番多いです。既存の見積書を拝見して、数量と単価の妥当性を一緒に確認するだけでも結構です。お問合せフォームからご連絡ください。


まとめ:今週、練馬区の管理組合が動けること3つ

長くなりましたので、動き出しの3手に絞ります。

1. 住宅課(03-5984-1289)に電話して、分譲マンションアドバイザー制度利用助成の管理組合登録を確認する

登録さえ済ませておけば、都センターのアドバイザー派遣料(16,500〜25,300円)が全額助成の対象になります。登録自体に費用はかかりません。

2. 旧耐震(昭和56年5月以前)の建物かどうかを確認し、該当すれば耐震アドバイザー派遣を検討する

該当すれば10分の10助成で、アドバイザー派遣は同一建物10回まで無料です。合意形成のアドバイスまで含まれるのが練馬区の強みです。

3. 東京都のマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)を理事会の議題に載せる

受付は令和9年2月26日まで。枠は都内全体で160件程度です。防災と認知症対応で各2回、計4回の専門家訪問が無料で受けられる計算になります。


練馬区は、光が丘や関町のような大規模団地型のマンションから、練馬駅・石神井公園駅周辺の中規模マンションまで、建物のタイプが幅広い区です。旧耐震の団地型が数多く残る一方で、駅前再開発で新しい住棟に入れ替わったエリアもある。だからこそ、「よその管理組合がこうしたから」ではなく、自分の建物の状態と築年を自分で把握することが効いてきます。

そして、その第一歩にかかるお金は、練馬区の場合ほとんどゼロにできます。区の相談、都のアドバイザー、耐震アドバイザー、弁護士、消費生活センター。これだけ呼んでも、支出は郵送代と電話代くらいのものです。

私は現場でこう思うことがあります。管理組合が損をするのは、悪い業者に当たったときよりも、相談しないまま時間だけが過ぎたときのほうがずっと多い、と。壁の浮きも、防水の切れも、待っていて良くなることはありません。

明誠のこれまでの明誠の施工事例もあわせてご覧いただければ、実際にどんな建物でどんな判断をしてきたかが伝わると思います。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。


出典・参考資料


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月23日時点で公表されている東京都練馬区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず東京都練馬区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)

株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市

マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月23日

武蔵野市のマンション漏水・防災対策|都内屈指の地盤の強さと神田川・仙川の内水氾濫リスク、大規模修繕の優先順位【2026年度版】

2026年9月23日 更新

吉祥寺のマンションで理事長さまから、「うちは武蔵野台地の上だから、地震も水害も他の区より安心だと聞いている」と言われたことがあります。半分は正しく、半分は言葉が足りません。武蔵野市は確かに、東京都内でも地盤の良さで知られる地域です。ただし「地盤が良い」と「水に関するリスクがゼロ」は、同じ意味ではありません。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。

武蔵野市は、吉祥寺・三鷹・西荻窪という人気の住宅地を抱える一方、神田川と仙川という2つの河川の源流域にあたります。台地の上にあるからこそ、大雨が降ったときに雨水が地表を速く流れ、短時間で排水が追いつかなくなる「内水氾濫」が起きやすいという、少し意外な事実があります。今日はその数字と、大規模修繕で先に手を打つべき場所を整理します。


結論:武蔵野市で優先すべきは「地盤の強さに安心しすぎないこと」と「地下・機械式駐車場の内水対策」です

先に結論を申し上げます。武蔵野市の大規模修繕で私が最初に確認するのは、次の2点です。

1つ目は地域危険度の低さを正しく理解すること。武蔵野市は東京都の地域危険度測定調査(第9回・令和4年9月公表)において、市内すべての町丁目が総合危険度ランク1〜3にとどまり、都内でも際立って地震リスクの低いエリアです。ただしこれは「延焼や倒壊のリスクが低い」という話であり、個々の建物の耐震性能が自動的に高いという意味ではありません。昭和56年5月31日以前に建てられたマンションであれば、地域の安全度とは別に、建物自体の耐震診断は必要です。

2つ目は内水氾濫と地下・機械式駐車場。武蔵野市が公表する浸水ハザードマップは、水防法に基づく神田川の洪水想定に加え、短時間豪雨による内水(雨水出水)の想定区域を1枚にまとめたものです。市内には土砂災害警戒区域・高潮浸水想定区域・津波災害警戒区域のいずれも指定がありませんが(出典:武蔵野市「防災情報マップ及び浸水ハザードマップについて」)、神田川・仙川の流域では想定最大規模降雨(総雨量690mm、時間最大雨量153mm)を前提にした浸水想定区域が示されています。地下や半地下に受変電設備・機械式駐車場のピットがある物件では、この内水想定を軽視できません。


武蔵野市のハザードマップを1枚で読む

市が公表している資料を、マンション修繕の視点で1枚に整理しました。

災害種別 武蔵野市の該当 想定・該当範囲
洪水(神田川、水防法に基づく想定) あり 想定最大規模降雨を前提とした浸水想定区域を設定
内水(雨水出水、仙川・神田川源流域含む) あり 総雨量690mm・時間最大雨量153mmを想定
土砂災害警戒区域 なし 市内に指定なし
高潮浸水想定区域 なし 市内に指定なし
津波災害警戒区域 なし 市内に指定なし
地震(総合危険度) 都内屈指の低リスク 全町丁目がランク1〜3。最高は吉祥寺南町5丁目のランク3

出典:武蔵野市「防災情報マップ及び浸水ハザードマップについて」、武蔵野市「雨水出水浸水想定区域について」、東京都都市整備局「地震に関する地域危険度一覧表(武蔵野市)」(第9回地域危険度測定調査・令和4年9月公表)

表を見て分かるとおり、武蔵野市は「土砂・高潮・津波・地震」という4つの軸ではいずれも低リスクです。私が管理組合の理事会でこの表をお見せすると、多くの方がまず安心されます。ただし洪水と内水氾濫だけは「あり」という点を見落とさないでください。市も「武蔵野浸水ハザードマップ」として、水防法に基づく洪水想定と、法定外の内水想定をあえて1枚のマップに統合して公表しています(出典:同上)。これは「両方を同じ重みで見てほしい」という市からのメッセージだと、私は受け止めています。

なお、個々の住戸単位の想定浸水深は、市は個別の問い合わせには回答しない方針をとっています。より詳細な地点別の浸水傾向を確認したい場合は、東京都が提供する10メートルメッシュの浸水シミュレーションデータや、国土交通省「重ねるハザードマップ」の活用が案内されています。総会資料をつくる前に、まずこうした公開ツールで自分の建物の周辺を確認することをお勧めします。費用はかかりません。


地域危険度は都内トップクラスの低さ。それでも耐震診断が要る理由

東京都の地域危険度測定調査(第9回・令和4年9月公表)によると、武蔵野市内のすべての町丁目は総合危険度ランク1〜3の範囲に収まっています。最も危険度が高いとされる吉祥寺南町5丁目でも、ランク3(危険量0.63棟/ha)にとどまります(出典:東京都都市整備局「地震に関する地域危険度一覧表(武蔵野市)」)。23区の木造住宅密集地域で見られるランク5・ランク4の町丁目は、武蔵野市には一つもありません。

これは、道路や街区が比較的整った住宅地が多く、老朽木造住宅の密集度が低いことが反映された結果だと考えられます。地域として延焼しにくく、避難もしやすいという点で、武蔵野市は東京都内でも際立って条件の良いエリアです。

ただし、私が理事会で必ずお伝えするのは、「地域危険度」と「建物の耐震性能」は別の指標だということです。地域危険度は、その地域全体の地震時の延焼・建物倒壊の危険量を測定したもので、個々の建物1棟1棟の構造計算や耐震診断の結果ではありません。昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた旧耐震基準の建物は、周辺の地域危険度が低くても、その建物自体の耐震性能は別途確認する必要があります。武蔵野市が吉祥寺・三鷹駅周辺を中心に相応の数の中古マンションストックを抱えていることを考えると、この違いを正しく理解しておくことには実務的な意味があります。


なぜ「地盤の良い台地」で内水氾濫が起きるのか

武蔵野市は武蔵野台地の上に位置し、井の頭恩賜公園を水源とする神田川と、市南部を水源域とする仙川という2つの河川が市内を流れています。台地の上にあるということは、低地の区のように川が氾濫して広範囲が深く水没するリスクは低い一方で、降った雨が地表を速く流れ、短時間で下水道や水路の処理能力を超えてしまう「内水氾濫」が起きやすいという特徴があります。

とくに吉祥寺駅周辺のような商業集積地は、道路や建物の屋根・駐車場などアスファルト・コンクリートで覆われた面積(不浸透域)の割合が高く、雨水が地面に浸み込まずにそのまま下水道へ流れ込みます。総雨量690mm・時間最大雨量153mmという想定最大規模降雨は、1000年に1度あるかないかの規模ですが、近年の短時間強雨(いわゆるゲリラ豪雨)は、この想定に近い降り方をする日が実際に増えています。私は、これが「地盤が良いから安心」という理解だけでは足りない理由だと考えています。

エリアごとの傾向も書いておきます。あくまで一般的な傾向であり、個別の住戸の浸水リスクは市の公開資料や東京都のメッシュデータで確認してください。

吉祥寺本町・吉祥寺南町周辺(神田川源流域、商業集積地)
井の頭恩賜公園を水源とする神田川に近く、駅前の商業エリアは不浸透域の割合が高いエリアです。地下や半地下に店舗・機械室がある物件では、短時間豪雨時の排水能力を確認しておく価値があります。

御殿山・西久保周辺(仙川源流域に近い住宅地)
仙川の源流域に近い住宅地です。閑静な住宅街ですが、道路の高低差や雨水桝の位置によって、局地的に水が集まりやすい箇所が生じることがあります。

境・関前周辺(南部、仙川流域)
仙川沿いのエリアで、中央線沿線に比べて比較的低層の集合住宅が多い地域です。仙川に近い物件では、河川からの距離だけでなく、敷地内の排水勾配も確認しておくとよいでしょう。

中町・緑町・八幡町周辺(市役所周辺、内陸部)
神田川・仙川いずれの源流域からも一定の距離がある内陸部です。比較的リスクは低いエリアですが、大規模な集合住宅や公共施設が集まるため、地下駐車場の排水設備の点検価値は他エリアと変わりません。

桜堤・関前周辺(西部、玉川上水沿い)
玉川上水沿いの緑豊かなエリアです。河川氾濫リスクは低いものの、雨水桝や敷地内排水路の維持管理が内水対策の要になります。


大規模修繕で必ずチェックすべき漏水ポイント7つ

私が武蔵野市の物件で調査に入るとき、優先順位をつけて見る7か所です。内水氾濫のリスクがあるエリアでは、とくに1〜3番目を重点的に見ます。

  1. 屋上防水の立上りと押えコンクリートの打継ぎ — 平場より先に立上りを見ます。短時間豪雨で排水が追いつかず水位が上がったとき、最初に水が越えるのはここです
  2. ルーフドレンとストレーナー — 落ち葉の多い緑豊かなエリアでは、ドレンの詰まりが排水不良の主原因になりやすい箇所です
  3. バルコニー排水口と防水層の端部 — 各戸の私物で塞がれていることが多く、総会で一斉点検をかけるのが早道です
  4. 外壁シーリングの打継ぎ目地とサッシまわりの取り合い — 打替えの目安はおおむね10〜15年。塗り直しても止まらない漏水は、たいていここが原因です
  5. 地下・半地下の機械室・機械式駐車場ピットの防水と排水ポンプ — 内水氾濫が絡むエリアでは、地上より低い位置にある設備が最も先に影響を受けます
  6. エキスパンションジョイント(建物のつなぎ目の伸縮部) — 棟続き型・増築部で要注意。外から見えないぶん放置されやすい場所です
  7. 敷地の雨水桝と前面道路との高低差 — 道路側の水位が上がったときに敷地がどこから受けるか、実測しておく価値があります

金額の目安も書いておきます。実際の見積は物件の規模・形状・劣化状況で大きく変わりますので、あくまで参考値としてご覧ください。

工種 単価の目安
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡
打診調査(外壁タイル・モルタル) 250〜500円/㎡
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/㎡
30戸規模マンションの大規模修繕総額 3,500〜5,000万円(うち仮設足場が15〜25%)

仮設足場が総額の15〜25%というのは、言い換えれば工事費の5分の1前後が「作業員が登るための費用」だということです。ここに手を入れられるかどうかが、同じ予算で直せる範囲を大きく左右します。


漏水の緊急対応で、ロープアクセスが強い理由

漏水対応で私がいちばん悔しい思いをするのは、「原因が分かっているのに、足場を組むまで直せない」という状況です。大雨のあとにご連絡をいただいて、調査・見積・総会・足場架設で1か月半。そのあいだに次の雨が来ます。

ロープアクセス工法(産業用ロープで壁面を上下して作業する無足場工法)なら、足場の架設が要りません。私の実務感覚では、当日から翌日の着手が可能なケースが多いです。部分補修であれば、その日のうちに止水まで持っていけることもあります。

費用の差も具体的に書きます。10階建て・外周80m・工期3か月という条件で試算すると、仮設足場は約168万円、同じ範囲をロープアクセスで施工した場合は約59万円。差額は約109万円です。緊急の部分補修であれば足場を組まない判断ができるので、差はさらに大きくなります。

武蔵野市のように、吉祥寺駅前の商店街のような狭い路地や、住宅密集地で隣地との離隔が小さい物件が多いエリアでは、この「足場を組まずに済む」という選択肢の価値が上がります。足場を組むと駅前商店街の通行や視認性に影響が出ますし、閑静な住宅街では足場材の搬入路そのものが確保しづらいケースもあります。

技術的な裏付けについては、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで、器具構成・二重確保・作業手順まで公開しています。同業の方やフランチャイズ加盟をご検討の方は、そちらのほうが情報が濃いはずです。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。そしてロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を前提にした体制で、私は日本ロープ高所作業協会の事務局も担っています。安全の話を先にするのは、緊急対応こそ段取りが雑になりがちだからです。

工法の考え方は明誠のロープアクセス工法の技術詳細、漏水対応の進め方はマンション・ビルの漏水調査と補修、費用の組み立て方は大規模修繕の料金の考え方にまとめています。

武蔵野市での3つの工法の使い分け

明誠は、通常足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つから建物特性に応じてご提案しています。武蔵野市の物件での使い分けの目安です。

工法 向いている武蔵野市の物件 理由
通常足場 外壁全面打診・全面改修が必要な中層ストック 全面作業では足場のほうが効率がよい場面があります
ロープアクセス 吉祥寺駅前の商業エリアで営業への影響を抑えたい物件、住宅密集地で搬入路が狭い物件、緊急の部分補修 架設期間ゼロ、敷地占有なし
ハイブリッド 団地型・大規模ストック 道路側は足場・中庭側はロープなど部位ごとに最適化して総額を下げられます

「うちはどれですか」というご質問には、図面と現地を見ないと答えられません。ただ、3つの選択肢を持っている会社に相談すると、工事の順番そのものを組み替えられるという点は申し上げておきたいと思います。


防災上の共用部は「地下・低所」から優先度が決まります

内水氾濫の特徴は、浸水深そのものは低地の河川氾濫ほど深くならないことが多い一方、短時間豪雨のたびに繰り返し発生しうるという点です。だからこそ、私が現地で確認する順番は「地盤面より低い場所から」です。

設備 確認すること 止まると何が起きるか
地下・半地下の受変電設備 設置高さ、周囲の止水、防水扉の有無 全館停電。エレベーター・給水ポンプ・照明が同時に止まります
機械式駐車場ピット ピット内の排水ポンプの有無と点検頻度 冠水による機械故障。復旧に時間と費用がかかります
給水ポンプ・受水槽まわり ポンプ室の床レベル、排水経路 断水。高置水槽式でも揚水が止まれば同じです
エレベーターピット ピット内の湧水・排水ポンプの有無 復旧に時間がかかり、高層階の高齢の居住者に直接影響します
自家発電設備・非常用照明 設置高さと燃料系統、燃料の備蓄量 停電時の最後の砦です。頻発する短時間豪雨への耐性を見ておく価値があります

国土交通省は「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」を公開しています。新築向けの内容が中心ですが、既存建物でも「設置高さを上げる」「防水区画で囲う」という2つの考え方は流用できます。大規模修繕のタイミングは、この見直しを入れる数少ない機会です。

これは費用ゼロでできる確認です。次の理事会で、メジャーを1本持って地下や機械式駐車場のピットを見に行ってみてください。排水ポンプが正常に作動するか、電源は生きているかを確認するだけで、優先順位がはっきりします。


武蔵野市で使えるマンション耐震助成(令和8年度)

武蔵野市の非木造マンション向け耐震助成は、地上3階建て以上かつ延べ面積1,000平方メートル以上の耐火・準耐火構造の共同住宅を対象としています。令和8年度時点の一次情報で確認した内容です(出典:武蔵野市「マンション(耐震助成制度)」/最終更新 令和7年8月19日)。

助成メニュー 分譲マンション 賃貸マンション
アドバイザー派遣(相談・簡易診断) 無料 無料
耐震診断 診断費用の3分の2(上限200万円) 診断費用の3分の2(上限100万円)
補強設計 上限200万円 上限100万円
耐震改修・建替え 上限1億7,233万円 上限1,330万円
除却工事 上限8,333万円 上限633万円

対象は昭和56年5月31日以前に着工された旧耐震基準の建物で、延べ面積の過半が住宅用途であることが条件です。申請は管理組合等の代表者名義で行い、事前に都市整備部住宅対策課への相談が必須です。工事や診断に着手した後の申請は認められないため、総会で議題にする前の早い段階での事前相談をお勧めします(問い合わせ:都市整備部住宅対策課 耐震助成等担当、電話 0422-60-1976)。

ページには年度ごとの具体的な受付締切の記載はなく、通年で事前相談を受け付ける運用になっています。ただし予算の状況によって年度内の対応可否が変わりうる点は、他自治体の同種制度と同様に想定しておくべきです。総会シーズンより前、できれば工事着手の1年以上前を目安に、住宅対策課へ一度連絡を入れておくことをお勧めします。

武蔵野市には、マンション管理計画認定制度もあります。認定申請の手数料は無料で、国土交通省のマンション管理適正化の基本方針に基づく基準で運用されています(出典:武蔵野市「マンション管理計画認定制度」)。認定を取得すると、住宅金融支援機構のフラット35の金利優遇など、管理組合の資金計画にも波及するメリットがあります。大規模修繕の計画を見直すタイミングは、この認定取得を検討する好機でもあります。


よくあるご質問

Q. 武蔵野市は水害の心配がない、と聞いたのですが本当ですか?

A. 土砂災害・高潮・津波については、市内に警戒区域の指定がなく、その意味では心配は小さいエリアです。ただし神田川・仙川の流域では、洪水と内水氾濫(短時間豪雨による排水能力超過)の想定区域が公表されています。「水害ゼロ」ではなく「深い浸水のリスクは低いが、内水氾濫には備えが要る」というのが正確な理解です。

Q. 武蔵野市の地域危険度が低いなら、耐震診断は不要ですか?

A. 地域危険度は地域全体の延焼・倒壊の危険量を示す指標であり、個々の建物の耐震性能とは別の話です。昭和56年5月31日以前に建てられたマンションであれば、地域の安全度にかかわらず、建物自体の耐震診断を受ける価値があります。武蔵野市は分譲マンションの耐震診断費用の3分の2(上限200万円)を助成しています。

Q. 地下の機械式駐車場は、内水氾濫でどんな影響を受けますか?

A. 短時間豪雨で敷地の排水能力を超えると、地盤面より低い位置にあるピットに雨水が流れ込み、機械の故障につながる可能性があります。排水ポンプの有無と作動状況を定期的に確認し、電源系統が浸水の影響を受けない位置にあるかを点検しておくことをお勧めします。

Q. マンションの分譲住戸でも耐震助成は使えますか?

A. 対象建築物であれば使えます。昭和56年5月31日以前に着工された、地上3階建て以上かつ延べ面積1,000平方メートル以上の非木造共同住宅で、延べ面積の過半が住宅用途であることが条件です。申請前に都市整備部住宅対策課への事前相談が必須で、工事着手後の申請はできません。

Q. 足場が組めない面の外壁調査は、どうすればよいですか?

A. ロープアクセス工法での打診調査(250〜500円/㎡が目安)か、ドローンによる外観調査を組み合わせます。武蔵野市は吉祥寺駅前の商業地や住宅密集地で搬入路が狭い物件が少なくなく、実務ではこの2つのどちらかになることがよくあります。ドローン調査の条件と限界もあわせてご覧ください。

Q. 賃貸マンションのオーナーでも相談できますか?

A. できます。収益物件では、漏水を1件起こすと原状回復費と空室期間の両方が効いてきます。武蔵野市は吉祥寺・三鷹駅周辺を中心に賃貸需要が厚いエリアですので、稼働率を落とさない工期の組み方まで含めてご提案しています。考え方は収益物件オーナー向けページとビルオーナー向けのご案内にまとめています。


まとめ:今週、武蔵野市の理事会で動けること3つ

  1. 地下・半地下の機械室と機械式駐車場ピットの排水ポンプを点検する — 費用ゼロで、内水氾濫対策としていちばん効く確認です
  2. 東京都提供のメッシュデータや国土交通省「重ねるハザードマップ」で、自分のマンションの浸水傾向を確認する — 市は住戸単位の個別回答をしていないため、公開ツールでの自己確認が近道です
  3. 昭和56年5月31日以前の建物であれば、耐震助成の事前相談を都市整備部住宅対策課へ入れる — 分譲マンションの耐震診断は費用の3分の2(上限200万円)が助成対象です。着手前の相談が必須なので、早めの連絡をお勧めします

武蔵野市は、土砂災害・高潮・津波・地震のいずれの面でも、都内で際立って条件の良いエリアです。一方で、神田川・仙川という2つの水系の源流域にあるという地形上の特徴から、内水氾濫だけは他区とは違う形で向き合う必要があります。地盤の良さに安心しすぎず、地下・低所の設備から確認すること。ここに絞って修繕計画を組めば、限られた予算でも効果の出やすい対策になります。

工法の選択肢を3つ(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)持っていると、工事の順番を組み替える自由度が上がります。順番が変われば、同じ予算で直せる範囲が変わります。技術面の詳細はロープアクセスドットコムの工法解説もあわせてご覧ください。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談はお問合せフォームから、管理組合としての進め方は管理組合向けのご案内をご覧ください。

明誠の施工事例もご覧いただけます。これまでに手がけた約6,000棟のうち、公開できるものを掲載しています。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月23日時点で公表されている武蔵野市および東京都・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。耐震助成に関するお問い合わせは都市整備部住宅対策課(0422-60-1976)、水害ハザードマップに関するお問い合わせは環境部下水道課(0422-60-1868)、浸水履歴に関するお問い合わせは防災安全部防災課(0422-60-1821)へ、申請・利用前に必ず最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月23日

葛飾区のマンション漏水・防災対策|想定浸水深5m超とカスリーン台風の教訓、大規模修繕の優先順位【2026年度版】

2026年9月23日 更新

葛飾区の新小岩に近いマンションで、理事長さまから「うちは川から少し離れているから、水害は大丈夫だと思っていた」と言われたことがあります。区のハザードマップをその場でお見せすると、表情が変わりました。荒川が氾濫した場合の想定浸水深は、区の広い範囲で5mを超えます。5mというのは、2階の軒先を優に超える高さです。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。

葛飾区は、荒川・中川・江戸川という3つの一級河川に囲まれた低地に広がる区です。私はこの区の物件を見るたびに、「水に囲まれている」という事実を、まず数字で理事会に見せることから話を始めています。今日はその数字と、大規模修繕で先に手を打つべき場所を整理します。


結論:葛飾区で優先すべきは「浸水深5m」と「木造密集地域の地震火災」の2本立てです

先に結論を申し上げます。葛飾区の大規模修繕で私が最初に確認するのは、次の2点です。

1つ目は水。葛飾区は区が公表する水害ハザードマップにおいて、想定最大規模の洪水で区の広い範囲が浸水深5m超(2階の軒先を超える水準)とされ、浸水が引くまでに2週間以上を要すると想定されています。屋上防水や排水よりも先に、設備の設置高さを見る理由がここにあります。

2つ目は地震火災。東京都が公表している地域危険度調査で、葛飾区は東四つ木・堀切・立石といった木造住宅密集地域を中心に、総合危険度がランク5(最高)の町丁目を複数抱えています。マンション自体が鉄筋コンクリート造で燃えにくくても、周辺からの延焼と避難経路の確保は別問題です。

一方で、葛飾区には土砂災害警戒区域、造成宅地防災区域、津波災害警戒区域、浸水被害軽減地区のいずれの指定もありません(出典:葛飾区「葛飾区水害ハザードマップ(令和7年3月発行)」/最終更新 令和8年7月16日)。斜面や擁壁の心配をしなくてよいぶん、水と地震火災という2つの論点に予算と手間を集中できます。これが、葛飾区で修繕の優先順位を組むときの私の基本姿勢です。


葛飾区のハザードマップを1枚で読む

区が公表している資料を、マンション修繕の視点で1枚に整理しました。

災害種別 葛飾区の該当 想定・該当範囲
洪水(荒川) あり 想定最大規模降雨:72時間総雨量632mm(1000年以上に1度の規模)
洪水(中川・綾瀬川) あり 想定最大規模降雨:48時間総雨量596mm(1000年以上に1度の規模)
洪水(江戸川) あり 想定最大規模降雨:72時間総雨量491mm(1000年以上に1度の規模)
内水氾濫 あり 河川から離れた低地でも発生。区が別途ハザードマップを公表
高潮 あり 東京都高潮浸水想定区域図(令和6年12月公表版に更新)
土砂災害 なし 区内に指定なし
液状化 想定あり 東京都の液状化予測図で区内の沖積低地の多くが該当(地盤による差が大きい)
津波災害警戒区域 なし 区内に指定なし
浸水被害軽減地区 なし 区内に指定なし

出典:葛飾区「葛飾区水害ハザードマップ【解説編】」、葛飾区「葛飾区水害ハザードマップ(令和7年3月発行)」(最終更新 令和8年7月16日)

3つの河川で想定される降雨規模がそれぞれ異なる点に注目してください。荒川は72時間で632mm、中川・綾瀬川は48時間で596mmという、短時間により多くの雨が集中する想定です。中川・綾瀬川沿いの物件では、荒川より先に中川側の水位上昇が効いてくる可能性があるということです。

浸水深そのものは、区の公式マップと国土交通省ハザードマップポータルサイト「重ねるハザードマップ」で地点ごとに色分けされています。区の担当課によると、荒川氾濫時には立石・新小岩・堀切菖蒲園周辺を含む区の広い範囲が2階の軒先を超える浸水深の区分で示されており、亀有・金町・柴又・お花茶屋周辺は比較的浅い区分になる傾向があります。自分のマンションの所在地がどちらの区分に入るかは、必ず地点ごとに確認してください。

なお区は、地点別の浸水深をピンポイントで確認できる「浸水ナビ」の利用も案内しています。総会資料をつくる前に、まずこのツールで自分の建物の番地を検索することをお勧めします。費用はかかりません。


カスリーン台風の記憶と、葛飾区という地域特性

葛飾区は東京都が公表する「今昔・葛飾区史」の中でも、1947年(昭和22年)のカスリーン台風で大きな被害を受けた地域として記録されています(出典:葛飾区「カスリーン台風で水びたしになった葛飾区」)。関東・東北の広い範囲に大雨をもたらしたこの台風では、利根川の堤防が決壊し、氾濫水が荒川流域を経て東京東部の低地まで流れ込みました。区の資料では、当時の葛飾区が広範囲にわたって長期間水につかったことが伝えられています。

私がこの歴史を理事会でお話しするのは、脅すためではありません。「一度起きたことは、もう一度起きうる」という前提で、設備の高さと避難経路を考えてほしいからです。カスリーン台風から80年近くが経ち、堤防やポンプ場の整備は当時とは比較になりません。それでも、荒川下流域が「一度浸水すると水が引くまでに時間がかかる地形」であること自体は変わっていません。

葛飾区は江戸川区・江東区・墨田区・足立区とともに「江東5区」を構成しており、5区合同で大規模水害時の広域避難のあり方を検討してきました。大規模水害時には区外への早期避難が呼びかけられる地域だという前提そのものが、マンションの在宅避難計画にも影響します。エレベーターが止まり、給水が止まった状態で、何日分の備蓄を共用部に置いておくか。これは総会で一度は議題にしておくべきテーマです。

地区ごとの傾向も書いておきます。

立石・四つ木・堀切周辺の木造密集地域に囲まれたマンション
東京都の地域危険度調査で総合危険度ランク5(最高)とされる町丁目が集中するエリアです(東四つ木3丁目、堀切2丁目・5丁目、立石4丁目、東立石4丁目など)。マンション自体が耐火構造でも、周辺からの延焼を想定した避難経路・排煙経路の確保が要ります。

新小岩・小岩に近い中層マンション
想定浸水深が5m以上とされる区分に含まれる地域が広がっています。1階の店舗・駐車場・機械室の設置高さが最優先です。

金町・柴又・お花茶屋周辺
比較的浅い浸水深の区分が中心ですが、江戸川側の想定(72時間491mm)が効いてくるエリアです。油断せず、敷地の雨水桝と前面道路の高低差を確認してください。

亀有駅周辺の商業集積エリア
1階が店舗のマンションが多く、足場を組むと営業への影響が大きくなります。緊急対応の速さが物を言う立地です。

高砂・青戸周辺の再開発・大規模ストック
比較的新しい建物が増えていますが、設計時の想定雨量と現在の想定最大規模降雨には差があります。竣工年次にかかわらず、設備の設置高さは改めて確認する価値があります。


大規模修繕で必ずチェックすべき漏水ポイント7つ

私が葛飾区の物件で調査に入るとき、優先順位をつけて見る7か所です。

  1. 屋上防水の立上りと押えコンクリートの打継ぎ — 平場より先に立上りを見ます。ゲリラ豪雨で排水が追いつかず水位が上がったとき、最初に水が越えるのはここです
  2. ルーフドレンとストレーナー — 3日間で600mmを超える想定雨量の地域では、詰まったドレン1つが致命傷になります
  3. バルコニー排水口と防水層の端部 — 各戸の私物で塞がれていることが多く、総会で一斉点検をかけるのが早道です
  4. 外壁シーリングの打継ぎ目地とサッシまわりの取り合い — 打替えの目安はおおむね10〜15年。塗り直しても止まらない漏水は、たいていここが原因です
  5. 1階まわりの基礎打継ぎ・配管貫通部 — 内水氾濫が絡む区では、地上に近い低い位置の貫通部が水の入口になります
  6. エキスパンションジョイント(建物のつなぎ目の伸縮部) — 団地型・棟続き型で要注意。外から見えないぶん放置されやすい場所です
  7. 敷地の雨水桝と前面道路との高低差 — 道路側の水位が上がったときに敷地がどこから受けるか、実測しておく価値があります

金額の目安も書いておきます。実際の見積は物件の規模・形状・劣化状況で大きく変わりますので、あくまで参考値としてご覧ください。

工種 単価の目安
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡
打診調査(外壁タイル・モルタル) 250〜500円/㎡
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/㎡
30戸規模マンションの大規模修繕総額 3,500〜5,000万円(うち仮設足場が15〜25%)

仮設足場が総額の15〜25%というのは、言い換えれば工事費の5分の1前後が「作業員が登るための費用」だということです。ここに手を入れられるかどうかが、同じ予算で直せる範囲を大きく左右します。


漏水の緊急対応で、ロープアクセスが強い理由

漏水対応で私がいちばん悔しい思いをするのは、「原因が分かっているのに、足場を組むまで直せない」という状況です。台風のあとにご連絡をいただいて、調査・見積・総会・足場架設で1か月半。そのあいだに次の雨が来ます。

ロープアクセス工法(産業用ロープで壁面を上下して作業する無足場工法)なら、足場の架設が要りません。私の実務感覚では、当日から翌日の着手が可能なケースが多いです。部分補修であれば、その日のうちに止水まで持っていけることもあります。

費用の差も具体的に書きます。10階建て・外周80m・工期3か月という条件で試算すると、仮設足場は約168万円、同じ範囲をロープアクセスで施工した場合は約59万円。差額は約109万円です。緊急の部分補修であれば足場を組まない判断ができるので、差はさらに大きくなります。

葛飾区のように、亀有駅周辺の商業地や、住宅密集地で隣地との離隔が小さい物件が多いエリアでは、この「足場を組まずに済む」という選択肢の価値が上がります。足場を組むと1階店舗の視認性が落ち、テナントの売上に影響します。木造密集地域に近い物件では、足場材の搬入路そのものが確保しづらいケースもあります。

技術的な裏付けについては、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで、器具構成・二重確保・作業手順まで公開しています。同業の方やフランチャイズ加盟をご検討の方は、そちらのほうが情報が濃いはずです。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。そしてロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を前提にした体制で、私は日本ロープ高所作業協会の事務局も担っています。安全の話を先にするのは、緊急対応こそ段取りが雑になりがちだからです。

工法の考え方は明誠のロープアクセス工法の技術詳細、漏水対応の進め方はマンション・ビルの漏水調査と補修、費用の組み立て方は大規模修繕の料金の考え方にまとめています。

葛飾区での3つの工法の使い分け

明誠は、通常足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つから建物特性に応じてご提案しています。葛飾区の物件での使い分けの目安です。

工法 向いている葛飾区の物件 理由
通常足場 外壁全面打診・全面改修が必要な中層ストック 全面作業では足場のほうが効率がよい場面があります
ロープアクセス 1階店舗があり足場で商売を止められない物件、木造密集地域に近く搬入路が狭い物件、緊急の部分補修 架設期間ゼロ、敷地占有なし
ハイブリッド 団地型・大規模ストック 道路側は足場・中庭側はロープなど部位ごとに最適化して総額を下げられます

「うちはどれですか」というご質問には、図面と現地を見ないと答えられません。ただ、3つの選択肢を持っている会社に相談すると、工事の順番そのものを組み替えられるという点は申し上げておきたいと思います。


防災上の共用部は「高さ」で優先度が決まります

浸水深5m超という想定が出ている区では、修繕の優先度は劣化の度合いではなく設置されている高さで決まります。私が現地で確認する順番です。

設備 確認すること 止まると何が起きるか
受変電設備・キュービクル 地盤面からの設置高さ、周囲の止水 全館停電。エレベーター・給水ポンプ・照明が同時に止まります
給水ポンプ・受水槽まわり ポンプ室の床レベル、排水経路 断水。高置水槽式でも揚水が止まれば同じです
エレベーターピット ピット内の湧水・排水ポンプの有無 復旧に時間がかかり、高層階の高齢の居住者に直接影響します
自家発電設備・非常用照明 設置高さと燃料系統、燃料の備蓄量 停電時の最後の砦が先に沈みます。浸水継続時間が2週間規模になりうる区では特に重要です
避難通路・階段室の出入口 木造密集地域からの延焼を想定した排煙・避難動線 地震火災時に避難経路が塞がれる可能性があります

国土交通省は「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」を公開しています。新築向けの内容が中心ですが、既存建物でも「設置高さを上げる」「防水区画で囲う」という2つの考え方は流用できます。大規模修繕のタイミングは、この見直しを入れる数少ない機会です。

これは費用ゼロでできる確認です。次の理事会で、メジャーを1本持って地下や設備室を回ってみてください。設置高さを実測してメモするだけで、優先順位がはっきりします。


葛飾区で使える防災補助・耐震助成(令和8年度)

葛飾区の非木造(鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造)の耐震助成は、分譲マンションも対象に含まれています。令和8年度の一次情報で確認した内容です(出典:葛飾区「非木造の住宅、分譲マンション等の耐震助成について」/最終更新 令和8年4月1日)。

項目 令和8年度の内容
対象建築物 昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の建物
対象用途 一戸建て住宅、長屋、共同住宅、病院、学校、幼稚園、保育所、分譲マンション など
令和8年度の申請受付 12月11日(金曜日)締切(予算状況により期限前に受付終了の場合あり)
助成の種類 耐震診断、耐震改修設計、耐震改修工事等(国・東京都の補助金を活用した制度)
準備のタイミング 工程表・見積書・図面・建築時期確認書類を、申請する前年の夏頃までに整え、区への事前相談が必要

パンフレットには、分譲マンションの耐震診断について助成率と上限額の目安が示されています。ただし詳細は物件の規模・構造によって変わるため、必ず区の建築課(電話:03-5654-8552)に事前相談のうえ、最新のパンフレットで確認してください。本制度は国と東京都の補助金を財源にしているため、区独自の判断だけで柔軟に変更できない制約があることも申し添えます。

区にはこのほか、感震ブレーカー設置補助の制度もあります(出典:葛飾区「感震ブレーカー設置補助」/最終更新 令和8年4月2日)。ただし対象は「世帯全員が満65歳以上等の世帯」または「2階以下の木造戸建て住宅で世帯専用の分電盤がある住宅」に限定されており、マンションの共用部の分電盤は対象外です。この制度をマンションの防災対策として使うことはできませんので、誤解のないようご注意ください。

木造住宅の耐震化促進事業(耐震診断士の無料派遣・工事助成)も区にはありますが、こちらは木造住宅が対象で、鉄筋コンクリート造のマンションは対象外です。周辺の木造密集地域の耐震化が進むこと自体は、延焼リスクを下げるという意味でマンション側にも間接的なメリットがあります。


よくあるご質問

Q. 葛飾区の想定浸水深5mというのは、どこまで信じてよい数字ですか?

A. これは「想定最大規模」、つまり1000年以上に1度の規模を想定した降雨(荒川72時間632mmなど)を前提にした数字です。毎年起こる規模ではありませんが、区が公式にハザードマップとして公表している数字である以上、備えの前提としては採用すべきだと私は考えています。実際の浸水深は地点によって差がありますので、区の「浸水ナビ」で自分の建物の場所を確認してください。

Q. 葛飾区に土砂災害の心配はありませんか?

A. 区の公式ハザードマップに「土砂災害警戒区域、造成宅地防災区域、津波災害警戒区域、浸水被害軽減地区に指定された区域はありません」と明記されています。区全体が低地にあるため、傾斜地特有のリスクは想定されていません。そのぶん、水と地震火災への備えに集中できます。

Q. マンションの分譲住戸でも耐震助成は使えますか?

A. 対象建築物であれば使えます。昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の分譲マンションが対象で、令和8年度の申請受付は12月11日締切です。国と東京都の補助金を活用した制度のため、申請する前年の夏頃までの準備と、区への事前相談が必要です。

Q. 感震ブレーカーはマンションの共用部にも設置できますか?

A. 区の補助制度の対象は「2階以下の木造戸建て住宅で世帯専用の分電盤がある住宅」または「世帯全員が満65歳以上等の世帯」に限られており、マンションの共用部の分電盤は対象外です。マンションでの感震ブレーカー導入は、補助を前提にせず修繕計画の中で検討することになります。

Q. カスリーン台風のような水害は、今でも起こりえますか?

A. 堤防やポンプ場の整備は当時から大きく進んでいます。ただし、荒川下流域が「一度浸水すると水が引くまでに時間がかかる地形」であること自体は変わっていません。区が公表する想定最大規模の洪水シナリオでも、浸水継続時間は長期に及ぶ想定になっています。過去に起きたことが前提として想定に組み込まれている、と捉えるのが実務的だと思います。

Q. 足場が組めない面の外壁調査は、どうすればよいですか?

A. ロープアクセス工法での打診調査(250〜500円/㎡が目安)か、ドローンによる外観調査を組み合わせます。葛飾区は木造密集地域に近く搬入路が狭い物件や、1階店舗の営業を止められない物件が少なくなく、実務ではこの2つのどちらかになることがよくあります。ドローン調査の条件と限界もあわせてご覧ください。

Q. 賃貸マンションのオーナーでも相談できますか?

A. できます。収益物件では、漏水を1件起こすと原状回復費と空室期間の両方が効いてきます。葛飾区は金町・亀有・新小岩を中心に賃貸需要が厚いエリアですので、稼働率を落とさない工期の組み方まで含めてご提案しています。考え方は収益物件オーナー向けページとビルオーナー向けのご案内にまとめています。


まとめ:今週、葛飾区の理事会で動けること3つ

  1. 区の「浸水ナビ」で、自分のマンションの所在地の想定浸水深を確認する — 費用はかかりません。想定最大規模の洪水で5mを超える区分に入っているかどうかで、設備の見直しの優先度が変わります
  2. 受変電設備・給水ポンプ・エレベーターピット・自家発電設備の設置高さを、メジャーで実測する — 費用ゼロで、防災上いちばん効く確認です
  3. 非木造・分譲マンション耐震助成の事前相談を、年内に区の建築課へ入れる — 令和8年度の申請受付は12月11日締切。前年の夏頃までに準備するのが本来のスケジュールですが、まずは電話1本で事前相談の予約を取ることから始められます

葛飾区は、荒川・中川・江戸川という3つの河川に囲まれた区です。一方で土砂災害や津波の指定はなく、心配すべき方向ははっきりしています。水の入口を塞ぐことと、設備の設置高さを上げること。この2つに絞って修繕計画を組めば、限られた予算でも効果の出やすい対策になります。

工法の選択肢を3つ(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)持っていると、工事の順番を組み替える自由度が上がります。順番が変われば、同じ予算で直せる範囲が変わります。技術面の詳細はロープアクセスドットコムの工法解説もあわせてご覧ください。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談はお問合せフォームから、管理組合としての進め方は管理組合向けのご案内をご覧ください。

明誠の施工事例もご覧いただけます。これまでに手がけた約6,000棟のうち、公開できるものを掲載しています。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月23日時点で公表されている葛飾区および東京都・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。耐震助成に関するお問い合わせは都市整備部建築課(03-5654-8552)、水害ハザードマップに関するお問い合わせは危機管理部防災課、感震ブレーカー設置補助は危機管理部防災課へ、申請・利用前に必ず最新の内容をご確認ください。非木造耐震助成は予算状況により受付期限前に終了する場合がある旨を区が注記しています。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月23日

東松山市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

東松山市のマンションで大規模修繕を控える管理組合が、まず知っておくべきことは何か。正直に申し上げます。東松山市には、共用部の大規模修繕そのものに使える市独自の補助金は、今のところありません。耐震診断補助も、空き家補助も、リフォーム助成も、条文を読むと「木造一戸建て住宅のみ」という同じ壁にぶつかります。

株式会社明誠の本間です。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。この記事では、東松山市の管理組合が令和8年度に実際に使える制度と、使えない制度を正直に仕分けたうえで、数少ない実利(マンション管理計画認定制度、固定資産税の減額、12条点検の体制)をどう活かすかを、市の一次情報にあたって整理します。数字はすべて出典リンク付きで書きます。

この記事の結論(先にお伝えします)

東松山市の分譲マンション管理組合が押さえるべきことは、次の3点です。

  1. 共用部の大規模修繕に直接使える東松山市独自の補助金は、現時点で確認できませんでした。耐震診断・改修補助、空き家関連の補助はいずれも「一戸建て・兼用住宅」限定で、区分所有のマンションは対象外です。
  2. 使えるのは「補助金」ではなく「制度」です。マンション管理計画認定制度(申請手数料は無料)と、マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)の2つは、共用部の大規模修繕を後押しする実利があります。
  3. 東松山市は「限定特定行政庁」という、埼玉県内でも珍しい建築行政の仕組みを持つ市です。マンションのような大きな建物の確認申請や12条点検(外壁の打診調査などを義務づける建築基準法の定期報告制度)は、市ではなく埼玉県(川越建築安全センター)が窓口になります。この仕組みを知らずに動くと、窓口を間違えて時間を失います。

東松山市で令和8年度に管理組合が押さえておくべき主な制度を、一覧にしておきます。

制度名 共用部に使えるか 内容 窓口
住宅耐震診断・改修補助金交付制度 使えない 木造一戸建て住宅のみが対象 住宅建築課
マンション管理計画認定制度 制度の認定(お金は出ない) 市への申請手数料は無料。支援サービス利用料等は別途 住宅建築課・都市計画課
マンション長寿命化促進税制 使える(税の減額) 家屋の固定資産税を1年度分1/3減額(令和9年3月31日完了分まで) 資産税課
12条点検(建築基準法定期報告) 制度上の義務 特定建築物は用途に応じ2〜3年ごと、設備・昇降機は1年ごと 川越建築安全センター
空き家利活用補助金・老朽空き家除却補助金 使えない 一戸建て・兼用住宅が対象、マンションの共用部は対象外 住宅建築課
住宅のエコ化助成(太陽光発電奨励金) 共用部には届きにくい 蓄電池・V2H補助は終了、現行は太陽光発電設置のみ 環境政策課
埼玉県分譲マンションアドバイザー派遣(市部) 東松山市は対象外 対象は熊谷市・久喜市など19市。東松山市は含まれない ―

東松山市の分譲マンション、いま何が起きているか

東松山市は「東松山市マンション管理適正化推進計画」(計画期間:令和6年度〜令和15年度)を策定しており、この計画書の原文に、市内マンションの実態が書かれています(出典:東松山市マンション管理適正化推進計画)。

市内には36団地のマンションがあり、竣工年代別では1990年代に竣工した15団地が最も多くなっています。この実態調査には36団地のうち23団体(回答率64%)が回答しており、逆に言えば約4割の管理組合は、市が連絡先すら把握できていません。計画は令和15年度までにこの回答率を80%まで引き上げる目標を掲げています。

私が現場で一番気になるのは、次の一文です。計画書は「築40年を超える高経年マンションは、今後10年間で約2.7倍まで急増する見込み」と明記しています。全国ベースでも高経年マンション(築40年超)は平成18年末の約4万戸から令和3年末には約115万戸に達し、10年後には約2.2倍、20年後には約3.7倍になる見通しですが、東松山市の伸び率はこれを上回るペースです(出典:同計画書)。

令和2年国勢調査ベースでは、東松山市の一般世帯39,647世帯のうち、共同住宅に住む世帯は13,008世帯(32.8%)、そのうち持ち家(=分譲マンションに区分所有として住んでいる世帯とみなせる層)は1,952世帯で、共同住宅全体の15.0%、市の全世帯の4.9%にとどまります(出典:同計画書)。つまり東松山市では、共同住宅の大半は賃貸で、分譲マンションの区分所有者はまだ少数派です。だからこそ、少数派である管理組合の理事長さまが情報弱者にならないよう、この記事で制度を一つずつ整理します。

高齢化のスピードも見過ごせません。同計画書によれば、東松山市の年少人口の割合は平成26年の12.1%から令和5年には11.5%へ、高齢者人口の割合は同じ期間に24%から29.8%へ上昇しています。築30年前後のマンションが多い東松山市では、理事のなり手不足がこの先さらに深刻になっていく可能性が高いと、私は見ています。人口91,187人・44,682世帯(令和8年9月1日時点、出典:東松山市 人口・世帯数)という市の規模からすると、36団地という分譲マンションの母数は決して多くありませんが、その分、理事会同士が情報交換できる横のつながりが少ないという弱点もあります。隣接する熊谷市や、東武東上線でつながる坂戸市・鶴ヶ島市は、埼玉県分譲マンションアドバイザー派遣の対象市に入っていますが、東松山市はここでも対象外です(詳しくは後述します)。だからこそ、管理計画認定制度のような「自分たちで動かせる制度」を先に押さえておく価値があります。

東松山市で「使えない」制度を、先に正直に書きます

補助金記事で一番大事なのは、「使えます」と期待させたあとに条文の但し書きで裏切らないことだと、私は考えています。ここでは東松山市の主な住宅系補助金が、なぜマンションの共用部に使えないのかを先に明らかにします。

住宅耐震診断・改修補助金交付制度は木造一戸建て限定

東松山市の住宅耐震診断・改修補助金交付制度は、対象を「既存木造一戸建て住宅」に限定しています(出典:東松山市 住宅耐震診断・改修補助金交付制度、ページ最終更新2026年4月14日)。令和8年度の交付申請は令和9年1月8日までと期限が明記されていますが、鉄筋コンクリート造のマンションはそもそも対象になりません。旧耐震のマンションの耐震診断・改修は、この制度ではなく、後述する管理計画認定制度や税制優遇の枠組みで考える必要があります。

空き家利活用補助金・老朽空き家除却補助金もマンション対象外

東松山市空き家利活用補助金交付制度は、1年以上使用されていない空き家の購入・リフォームを対象に、費用の2分の1以内、上限45万円(加算要件込み)を補助する制度です(出典:空き家利活用補助金交付制度、更新2026年4月21日)。ページに区分所有マンションに関する明記はなく、老朽空き家除却補助金にいたっては「一戸建て住宅又は、兼用住宅」と対象が明文化されており、マンションは制度の外です(出典:東松山市老朽空き家除却補助金、更新2024年4月1日)。1住戸が空いているマンションの区分所有者が個人的にこの補助金を検討するケースはあり得ますが、管理組合の共用部修繕には使えません。

住宅のエコ化助成は蓄電池・V2Hが終了し、太陽光発電奨励金のみ

東松山市の住宅のエコ化に関する助成制度は、家庭用蓄電池・V2H(電気自動車を家庭用電源として使う仕組み)の補助が終了し、現行は既存住宅への太陽光発電設備設置奨励金のみが残っています(出典:住宅のエコ化に関する助成制度)。共用部の屋上防水と太陽光パネルの設置は工事のタイミングを合わせる価値がありますが、このページ自体の更新は2023年で情報が古く、詳細額は環境政策課(0493-63-5006)への確認が必須です。断定は避けます。

住宅省エネ2026キャンペーンは専有部の工事に限られる

国が実施する住宅省エネ2026キャンペーン(窓・給湯器等の省エネ改修を対象にした補助制度)は、マンションの場合でも各住戸の窓交換や給湯器交換といった専有部の工事には使える場合があります。ただし、これは共用部の外壁・屋上防水・タイルといった大規模修繕そのものには使えません。理事会でこの制度の話が出た際は、「共用部と専有部、どちらの工事の話をしているか」を最初に切り分けてお伝えするようにしています。専有部のサッシ交換を検討している区分所有者がいる場合は、大規模修繕の足場やロープアクセスの設置期間に合わせて工事すると、二重に足場費用がかかることを防げます。

埼玉県分譲マンションアドバイザー派遣(市部)は東松山市が対象外

埼玉県は市部の分譲マンション管理組合向けに、マンション管理士を無料で2回まで派遣する制度を持っていますが、対象は熊谷市・飯能市・狭山市・鴻巣市・上尾市・戸田市・入間市・朝霞市・志木市・和光市・桶川市・久喜市・北本市・八潮市・富士見市・三郷市・坂戸市・鶴ヶ島市・吉川市の19市に限られ、東松山市は含まれていません(出典:市部における埼玉県分譲マンションアドバイザーの無料派遣について)。隣接する坂戸市は対象なのに、東松山市が対象外というのは、理事会で相談窓口を探すときに見落としやすい落とし穴です。県への相談を希望する場合は、まず対象市かどうかを確認してから動いてください。

マンション管理計画認定制度――お金は出ないが、実利はある

東松山市のマンション管理計画認定制度は、市への申請手数料は無料です(出典:東松山市マンション管理適正化推進計画)。ただし、公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを利用する場合、システム利用料が1申請あたり10,000円(税込)、事前確認審査料が長期修繕計画1件あたり10,000円(税込)かかります(出典:管理計画認定手続支援サービス)。つまり実質的な負担は2万円前後からで、長期修繕計画が複数ある団地型のマンションでは、その分だけ加算されます。

認定の有効期間は5年。更新しなければ効力を失います。国が定める共通の認定基準(管理者等の選任、管理規約の整備、経理の区分、長期修繕計画の作成・見直しなど)に加えて、東松山市は独自に「東松山市マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること」という項目を認定基準に加えています(出典:管理計画の認定基準)。市が独自の指針を認定基準に組み込んでいる点は、東松山市の管理計画認定制度を語るうえで見落とせないポイントです。

東松山市マンション管理適正化推進計画は、令和15年度までに認定マンション数を0件から4件に増やす目標を掲げています(出典:同計画書)。市内36団地のうち4件という数字は決して大きくありませんが、逆に言えば「認定を取る」こと自体が、まだ珍しい先進事例として理事会の実績になり得るということです。私はいつも理事長さまに、「認定そのものよりも、基準を一つずつ埋めていく過程で、長期修繕計画の現実を理事会全員で直視できることに価値がある」とお伝えしています。5年ごとの更新が、そのまま計画の棚卸しになります。

12条点検――東松山市は「限定特定行政庁」という珍しい立場

ここが東松山市の記事で一番実務的に重要な論点です。東松山市は「限定特定行政庁」(平成12年4月1日〜)という区分の自治体で、市が確認申請等を所管できるのは、地上2階以下・延べ面積300㎡以下・高さ16m以下の木造建築物(建築基準法第6条第1項第3号の建築物)に限られます(出典:埼玉県 特定行政庁一覧(東松山市))。この条件を満たさないマンションのような建物は、市ではなく川越建築安全センター東松山駐在が窓口になります。

さらに、建築基準法第12条に基づく定期報告(外壁の打診調査などを含む、いわゆる12条点検)についても、東松山市を含む区域は埼玉県が特定行政庁として扱う枠組みに入っており、川越建築安全センターは朝霞市・入間市・坂戸市・志木市・鶴ヶ島市・飯能市・日高市・富士見市・ふじみ野市・和光市など22市町村を所管しています(出典:埼玉県 定期報告制度について)。埼玉県が特定行政庁となる区域では、特定建築物は用途に応じて2年または3年ごと、建築設備・防火設備・昇降機は1年ごとに報告する仕組みです(出典:埼玉県 定期報告に関するQ&A)。提出先は一般財団法人埼玉県建築安全協会で、正副各1部(計2部)と概要書1部が必要です。

共同住宅が具体的に何階建てから、あるいはどの床面積から特定建築物として報告義務を負うかという細かな規模要件は、一覧表のPDF資料に基づく専門的な判定が必要なため、この記事では断定を避けます。「うちのマンションが12条点検の対象かどうか」は、川越建築安全センターまたは埼玉県建築安全協会に、棟の階数・延べ面積・用途を伝えて確認するのが確実です。私の経験上、これは「対象かどうか分からないまま放置する」のが一番損です。報告義務を怠ると建築基準法第101条により100万円以下の罰金の対象になり得ますし、後述する税制優遇の要件にも影響します。

マンション長寿命化促進税制――東松山市でも使える数少ない実利

国のマンション長寿命化促進税制は、当初の期限が2年間延長され、令和5年4月1日から令和9年3月31日までに完了した工事が対象です(出典:マンション長寿命化促進税制の適用期間が延長されました、国土交通省 マンション税制)。築20年以上・10戸以上のマンションで、外壁塗装等・床防水・屋根防水を一体的に実施し、過去に1回以上大規模修繕を行ったうえで今回が2回目以降の工事であること、修繕積立金の額を管理計画の認定基準まで引き上げているか都道府県等の助言・指導を受けて長期修繕計画を見直していること、といった要件を満たすと、家屋の固定資産税が1戸あたり100㎡相当分まで、1年度分に限り3分の1減額されます。都市計画税は対象外です。申告は工事完了日から3か月以内という期限があります。

東松山市では固定資産税の窓口は資産税課、耐震・建築関連は住宅建築課(限定特定行政庁の範囲)・川越建築安全センター(それ以外)に分かれます。私はこれを理事会にお伝えするとき、「税金が3分の1になると説明しないでください」と必ず釘を刺します。減るのは固定資産税のみで、しかも1戸あたり100㎡相当分までという上限があるためです。正確な適用可否は、工事完了前に資産税課へ確認することをお勧めします。

工法の選び方――東松山市の地形を踏まえて

東松山市は中央から西部にかけて東松山台地・高坂台地が広がり、都幾川・越辺川・市野川沿いは低地という、台地と低地が入り混じった地形です(出典:東松山市 市の基本データ)。関越自動車道の東松山インターチェンジがあり、東武東上線の東松山駅・高坂駅を中心に住宅地とマンションが分布しています。

台地の上に建つマンションは敷地に高低差が少なく、足場を外周にぐるりと組みやすい立地が多い一方、低地や河川に近い立地では、敷地に余裕がなかったり、隣地との距離が狭かったりするケースもあります。足場が有利なのは、①外周に十分な平場(足場を組める平らなスペース)があり敷地に余裕がある、②タイル浮きの面積が全体の概ね20%を超える、③バルコニー内部の工事が主体、④サッシ開口部の交換を伴う、という4条件がそろう場合です。逆に、敷地に余裕がなく足場を組む場所の確保が難しい、あるいは工期を短縮したい場合は、ロープアクセス工法(無足場工法。作業員が屋上からロープで吊り下がって外壁を点検・補修する工法)や、足場とロープアクセスを組み合わせたハイブリッド工法のほうが総額を抑えられることがあります。

私はいつも理事長さまに、「足場しか持たない会社は足場を勧めるしかなく、ロープしか持たない会社はロープを勧めるしかありません。3つの工法を持っているからこそ、建物にとって一番合う方法を勧められます」とお伝えしています。ロープアクセス工法の技術的な詳細や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。明誠は日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟することで、高品質かつ低価格な工事を可能にしています。この工法の考え方をさらに深掘りしたい方は、ロープアクセス工法の詳細解説もあわせてご覧ください。

現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、敷地に余裕のない立地なのに足場ありきで見積を取ってしまい、結局は隣地の許可交渉に工期の半分近くを費やしてしまう管理組合を見たときです。以前、東松山市と同じように台地と低地が入り混じる別の市で、外周のうち1面だけが擁壁に接した5階建て・36戸のマンションを担当したことがあります。足場だけで見積ると擁壁側の1面だけ特殊な仮設が必要になり総額が跳ね上がる想定でしたが、その面だけロープアクセスに切り替えるハイブリッド工法にしたことで、総額を約15%圧縮し、工期も3週間ほど短縮できました。東松山市内でも、低地や河川沿いに接した物件では同じ判断が有効になる可能性があります。

モデルケースで見る費用感

あくまで目安ですが、東松山市内の物件を想定した試算を2つ紹介します。実際の見積は物件の規模・立地・劣化状況により大きく変動しますので、参考値としてご覧ください。

ケースA:東松山駅周辺の平坦な敷地、築30年・5階建て・40戸
足場工法の総工費目安は約4,200万円。外周に十分な平場が取れる立地のため、足場とロープアクセスを組み合わせたハイブリッド工法にすると、約3,600万円まで圧縮できる可能性があります(差額約600万円、1戸あたり約15万円)。工期も足場のみの4ヶ月前後から、3ヶ月前後への短縮が見込めます。

ケースB:都幾川沿いの低地に近い敷地、築35年・4階建て・24戸
敷地に余裕が少なく、足場の設置スペースが限られる立地です。足場工法だと約2,800万円かかるところ、ロープアクセス主体の工法にすると約2,300万円程度(差額約500万円、1戸あたり約21万円)、工期も4ヶ月前後から2.5ヶ月前後への短縮が見込めます。

㎡単価の目安は、外壁塗装3,500〜4,500円/㎡、打診調査250〜500円/㎡、防水5,000〜8,000円/㎡程度です。仮設足場の費用は総工費の15〜25%を占めることが多く、30戸規模のマンションで総工費3,500万〜5,000万円のうち、足場だけで500万〜1,200万円ほどになるのが一般的な相場感です。

見積書で見るべき5つのポイント

大規模修繕の見積書を理事会で比較するとき、私が必ずお伝えしている確認ポイントです。

  1. 「仮設工事一式」の中身:足場費用が一式表記でまとめられていると、架け払いの回数や工法の内訳が見えません。必ず内訳を出してもらってください。
  2. 仮定数量を超過した場合の単価:外壁の劣化状況は着工前の目視だけでは分からない部分があり、想定より補修範囲が増えることがあります。超過分の単価があらかじめ契約書に明記されているか確認してください。
  3. 足場リース期間が延びた場合の負担:天候不良などで工期が延びると、足場のリース費用が追加でかかることがあります。誰が負担するかを事前に決めておくべきです。
  4. 監理者と施工会社の資本関係:工事を監理する設計事務所と施工会社が実質的に同一グループである場合、チェック機能が働きにくくなります。独立性を確認してください。
  5. 東松山市固有の確認事項として、12条点検の未報告がないか:先述の通り、耐震診断助成等の一部制度は12条点検の報告状況が前提条件になり得ます。契約前に管理組合として報告状況を確認しておくと、後々のトラブルを避けられます。

利益相反の開示

正直に申し上げます。私は施工会社の人間であり、自社の工法を勧める立場にあります。その前提でこの記事を読んでいただければと思います。そのうえで、足場工法が有利になる条件(外周に十分な平場がある、タイル浮きが20%超、バルコニー内部主体、サッシ開口部交換を伴う)を隠さずに書きました。

株式会社明誠は、通常の足場仮設による工事、無足場工法であるロープアクセス工事、両者を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法をご提案できる、日本でも数少ない会社です。実績約6,000棟、ロープアクセス工法での高所作業において明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が在籍し、ISO9001品質マネジメントシステムを取得、日本ロープ高所作業協会の事務局も担っています。

明誠のロープアクセス工法の技術詳細はこちらのページ、大規模修繕工事のご紹介、料金の考え方、漏水対応、管理組合の皆さまへ、明誠のこれまでの施工事例からご覧いただけます。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームからご連絡ください。

この秋にやることの順番

時期 やること
9〜10月 12条点検の報告状況を確認し、未報告なら川越建築安全センター・埼玉県建築安全協会へ相談
10〜11月 劣化診断を依頼し、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3案で見積を取る
11〜12月 見積3社比較、仮定数量超過分の単価・足場リース延長費の負担を質問
12〜1月 マンション管理計画認定を理事会・総会の議案として検討
1〜3月 総会で工法と予算を決議、長寿命化促進税制の要件(令和9年3月31日完了)を意識した工程を確定
春以降 着工、資産税課へ税制優遇の適用可否を確認しつつ完了報告

よくあるご質問

Q. 東松山市には、マンションの大規模修繕に使える補助金がありますか?

A. 現時点で確認できた範囲では、共用部の大規模修繕そのものに直接使える東松山市独自の補助金はありません。耐震診断・改修補助や空き家関連の補助は、いずれも一戸建て・兼用住宅が対象で、区分所有のマンションは対象外です。詳しくは本文の「東松山市で『使えない』制度を、先に正直に書きます」をご覧ください。

Q. マンション管理計画認定を取ると、お金がもらえますか?

A. 市への申請手数料は無料ですが、認定自体で直接お金がもらえるわけではありません。ただし、認定を前提とした修繕積立金の引き上げ等を行うと、後述のマンション長寿命化促進税制の要件を満たしやすくなります。

Q. 固定資産税が3分の1になると聞きましたが本当ですか?

A. 一定の要件(築20年以上・10戸以上、外壁塗装等と床防水・屋根防水の一体実施、令和5年4月1日〜令和9年3月31日完了など)を満たせば、家屋の固定資産税が1戸あたり100㎡相当分まで、1年度分に限り3分の1減額されます。都市計画税は対象外で、恒久的な減税ではありません。

Q. 東松山市のマンションは12条点検の対象ですか?

A. 東松山市は「限定特定行政庁」のため、マンションのような大きな建物は埼玉県(川越建築安全センター)が定期報告の窓口になります。対象になる規模要件は建物ごとに異なるため、川越建築安全センターまたは一般財団法人埼玉県建築安全協会に棟の階数・延べ面積を伝えて確認するのが確実です。

Q. 埼玉県のマンション管理士派遣制度は使えますか?

A. 市部向けの派遣制度は熊谷市・久喜市など19市が対象で、東松山市は含まれていません。町村部向けの制度とも対象が異なりますので、まず対象市かどうかを確認してください。

Q. 足場とロープアクセス、どちらが東松山市の物件に向いていますか?

A. 敷地に十分な平場があり足場を外周に組める立地なら足場が有利、敷地に余裕がなく短工期を求める場合はロープアクセスやハイブリッドが有利です。台地上か低地に近いかなど、立地によって判断が分かれますので、一度現地を見せていただくのが確実です。

この記事のポイントまとめ

  • 東松山市に共用部の大規模修繕専用の補助金は現時点で確認できず
  • 使える実利はマンション管理計画認定制度と固定資産税の減額(長寿命化促進税制)
  • 東松山市は「限定特定行政庁」、大きな建物の12条点検は埼玉県(川越建築安全センター)が窓口
  • 市内36団地のうち1990年代竣工が最多、高経年化は今後10年で約2.7倍見込み
  • 埼玉県のマンション管理士派遣(市部)は東松山市が対象外

執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開。

最終更新:2026年9月23日

出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月23日時点で公表されている東松山市および埼玉県・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず東松山市および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

私はこれを、現場で20年見てきた嘘偽りのない感想としてお伝えしています。東松山市には使える補助金が少ない分、管理計画認定や税制優遇、そして工法選びという「自分たちで動かせる部分」を丁寧に積み重ねることが、結局は一番の近道だと私は考えています。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

久喜市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

久喜市の分譲マンションで大規模修繕を考えている管理組合が、いま真っ先に確認すべき補助金はどれか。答えは久喜市分譲マンション耐震診断助成金です。診断費用の2分の1、または戸数×5万円のいずれか低い額で、上限100万円。旧耐震のマンションなら、まずここから入るのが久喜市では正解です。

ただし、この助成にはほとんどの管理組合が気づいていない前提条件が1つ紛れ込んでいます。後半で詳しく書きますが、建築基準法第12条の報告を出していないマンションは、この助成の入口で止まります。

株式会社明誠の本間です。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。この記事では、久喜市の管理組合が令和8年度に使える制度を、市の要綱と計画書の原文にあたって整理します。数字はすべて出典リンク付きで書きます。

この記事の結論(先にお伝えします)

久喜市の分譲マンション管理組合が押さえるべきことは、次の3点です。

  1. 旧耐震なら耐震診断助成(上限100万円)が最初の一手。ただし交付決定前に業者と契約すると対象外になり、完了報告は申請年度の1月末が期限です。
  2. 久喜市のマンションは全国平均より速く高経年化しています。築40年以上は現在26棟・約870戸ですが、10年後には86棟・約2,800戸と約3.2倍。国全体の約2.1倍を大きく上回るペースです。
  3. 久喜市は団地型が棟数の66.4%。団地型は棟数のぶんだけ足場の外周が伸びるため、工法の選び方で総額が大きく動きます。

久喜市で令和8年度に管理組合が使える主な制度を、一覧にしておきます。

制度名 共用部に使えるか 金額 窓口
久喜市分譲マンション耐震診断助成金 使える 費用の1/2または戸数×5万円の低い方・上限100万円 建築審査課 企画指導係
マンション管理計画認定制度 制度の認定 市への申請手数料は無料 建築審査課 企画指導係
マンション長寿命化促進税制 使える(税の減額) 家屋の固定資産税を1年度分1/3減額 資産税課 家屋係
久喜市既存建築物耐震補強等助成金 使えない 一戸建ての木造住宅が対象 建築審査課 企画指導係
久喜市ゼロカーボン推進補助金 使えない見込み 屋根用高遮熱塗装1㎡400円・最大2万円(個人のみ) 環境課
埼玉県分譲マンションアドバイザー派遣 相談が無料 令和8年度は受付終了 埼玉県住宅課
久喜市マンション管理相談会 相談が無料 無料・各回1組 建築審査課 企画指導係

「使えない」も正直に並べました。期待させてから外すのが一番よくないと、私は思っています。

久喜市分譲マンション耐震診断助成金|上限100万円の中身

久喜市は、市内の分譲マンションで耐震診断を行う管理組合に対して、予算の範囲内で助成金を交付しています(出典:久喜市「分譲マンションの耐震診断に対し助成を行っています」)。

このページの更新日は2026年5月1日、掲載されている交付要綱のファイル名はmanshon_youkou2026.4.1.pdf、つまり令和8年4月1日施行版です。令和8年度の現行制度として読んで差し支えありません。

いくらもらえるのか|「戸数×5万円」の算数を先にやってください

要綱の助成額は、原文でこう書かれています。

耐震診断に要した費用の額に2分の1を乗じて得た額または、戸数に5万円を乗じた額のうち、いずれか低い額で、100万円を限度とします。

条件が3つ重なっているので、実際にいくらになるかを表にします。診断費用を200万円と仮定した場合の計算です。

戸数 戸数×5万円 診断費用200万円の場合の1/2 実際の助成額 効いている上限
12戸 60万円 100万円 60万円 戸数
16戸 80万円 100万円 80万円 戸数
20戸 100万円 100万円 100万円 戸数=100万円の天井
40戸 200万円 100万円 100万円 100万円の限度額
80戸 400万円 100万円 100万円 100万円の限度額

ここから読み取れることは、はっきりしています。

20戸を境に、効いている上限が入れ替わります。 20戸以上のマンションは、実質「診断費用の半額、ただし100万円まで」と考えればよい。20戸未満のマンションは、100万円の枠を使い切れません。12戸なら60万円が天井です。

私がこれを最初に表にするのは、理事会で「上限100万円だから100万円もらえる」と説明してしまう人が本当に多いからです。18戸のマンションで90万円が上限だと分かっていれば、見積の取り方も変わります。

要件は7つ(建物の要件5つ+診断の要件2つ)

要綱が定める対象建築物は、市内に存する昭和56年5月31日以前の建築確認を受けて建築された木造以外の共同住宅(2以上の区分所有者が存し、人の居住の用に供する専有部分があるもの)で、次の#1〜#5をすべて満たすものです。#6と#7は、要綱の別項「対象となる耐震診断」が定める診断そのものの要件です。合わせて7つ、すべてを満たす必要があります。

# 要件 見落としやすい点
1 地階を除く階数が3階以上、かつ延べ面積1,000㎡以上の耐火建築物または準耐火建築物 3階建ての小規模団地でも、延べ面積1,000㎡を超えれば入り得る
2 延べ面積の2分の1以上を居住の用に供していること 1階が店舗の物件は要確認
3 管理組合の総会で、助成金の交付申請の実施に係る決議がなされていること 理事会決議だけでは進めない
4 明らかな建築基準法の違反がないもの 増築・用途変更の履歴に注意
5 建築基準法第12条第1項に規定する建築物である場合は、同法に基づく報告を行っていること ★次の見出しで詳しく書きます
6 診断は一級建築士事務所に所属する一級建築士が行うこと 誰でもいいわけではない
7 診断結果が、既存建築物耐震診断・改修等推進全国ネットワーク委員会に登録されている判定委員会の判定を受けたもの 判定に時間がかかる。工程に効く

要件3と要件5が、久喜市の申請でつまずく二大ポイントだと私は見ています。

★12条点検の報告を出していないと、この100万円は取れません

要件5をもう一度読んでください。

建築基準法第12条第1項に規定する建築物である場合は、同法に基づく報告を行っていること

これは、定期報告(いわゆる12条点検)の対象建築物なのに報告を出していないマンションは、耐震診断助成の申請ができない、ということです。

ここで、久喜市の管理組合が取り違えやすい点を先に書きます。

久喜市は平成26年4月に建築基準法の規定による特定行政庁へ移行しており(出典:久喜市建築物耐震改修促進計画(令和8年3月改定))、報告対象の指定は久喜市が独自に行います。

参考までに、埼玉県知事が報告対象として指定している建築物の表では、共同住宅は「六階以上の階にあるもの」が報告の間隔3年とされています(出典:埼玉県「定期報告対象となる建築物等と報告の間隔」。同ページの掲載日は2026年9月2日)。ただしこれは埼玉県知事が特定行政庁となる市町村に適用されるもので、久喜市の物件にそのまま当てはまるとは限りません。 埼玉県自身も「建築物の所在地により、定期報告対象の建築物等と報告の間隔は、特定行政庁ごとに異なる場合がありますので、詳細は各特定行政庁にご確認ください」と案内しています。

自分のマンションが対象かどうかは、久喜市建築審査課が公表している「定期報告対象建築物等と報告期間」のPDFで必ず確認してください(出典:久喜市「建築物の定期報告」。ページ更新日は2025年7月16日です)。階数だけを見て「うちは5階建てだから関係ない」と自己判断すると、100万円の助成の可否を取り違えます。

ここで私が申し上げたいのは、順番の問題です。

旧耐震のマンションで6階以上、という条件は、昭和50年代に建った久喜市のマンションでは珍しくありません。その物件が「耐震診断の助成を取りにいこう」と動き出した瞬間に、12条報告を何年も出していなかったことが表に出る。しかも定期報告の未報告は、建築基準法第101条により100万円以下の罰金の対象です。

100万円の助成を取りにいったら100万円の罰金リスクが見つかった、という話にしないでください。順番は逆です。まず定期報告の状況を確認する。その次に助成の相談に行く。 これだけで話が滑らかに進みます。

定期調査(検査)報告書の提出窓口は、市役所ではなく一般財団法人埼玉県建築安全協会(skjak.jp)です。様式類も同協会のホームページからダウンロードします。一方、報告概要書の閲覧窓口は久喜市建築審査課(第二庁舎)で、閲覧時間は開庁日の8時45分から16時30分まで。出すところと見るところが別、という点は毎回どこかで混乱が起きます。

契約の順番を間違えると、全額が自腹になります

市のページには、こう明記されています。

市から助成金の交付決定通知が出るまでは業者と契約しないでください。先に業者と契約している場合、助成の対象となりません。

これは久喜市に限らず多くの自治体の補助制度に共通するルールですが、マンションの場合は特に危ないと私は思っています。理由は、総会のスケジュールです。

要件3で「総会で交付申請の実施に係る決議」が求められるので、多くの管理組合は総会で診断業者も一緒に決めてしまいたくなる。そこで「では発注しましょう」と話が進むと、交付決定前の契約になります。

私が理事会でお勧めしている進め方は、こうです。

  1. 総会では「耐震診断を実施し、市の助成金を申請すること」と「予算枠」を決議する
  2. 業者の選定は理事会に委任する旨も、同じ議案に入れておく
  3. 総会後に助成金を申請し、交付決定通知が届いてから契約を交わす

総会の議案書にこの3段構えを書いておけば、決議のやり直しも、助成の取りこぼしも避けられます。

1月末の完了報告から逆算してください

もう1つ、市のページにこうあります。

申請年度の1月末までに完了報告書を提出していただく必要があります。余裕を持って申請してください。

つまり、令和8年度の助成を使うなら、令和9年1月末までに耐震診断が完了して報告まで終わっている必要があります。今日(2026年9月23日)から数えると、残りは約4か月です。

ここで効いてくるのが、先ほどの要件7、判定委員会の判定です。耐震診断は「一級建築士が診断書をつくって終わり」ではなく、全国ネットワーク委員会に登録された判定委員会の判定を受ける必要があります。判定委員会は開催日が決まっていることが多く、申込から判定書の交付まで数週間から数か月を見ておくものです。

診断そのものに1〜2か月、判定に1〜2か月。そこから逆算すると、9月中に建築審査課へ相談を入れて、10月中に申請、11月に交付決定、という並びがぎりぎりのラインだと私は見ています。令和8年度中が厳しければ、令和9年度の4月に動き出せるよう、この秋に総会の議案を仕込んでおくほうが確実です。

★団地型の管理組合は「戸数の数え方」を窓口に確認してください

ここからは、久喜市だからこそ必ず聞いてほしい話です。

久喜市のマンションは、団地型が107棟中71棟=棟数の66.4%を占めます。戸数ベースでも45.8%。しかも2棟から最大21棟までの建物が一団地を形成しています(出典:久喜市マンション管理適正化推進計画)。

助成額の計算式は「戸数に5万円を乗じた額」でした。団地型の管理組合にとって、ここで決定的な問いが立ちます。

この「戸数」は、団地全体の戸数ですか。それとも診断を受ける1棟ごとの戸数ですか。

団地全体なら、多くの団地は20戸をはるかに超えるので100万円の限度額に届きます。1棟ごとなら、1棟20戸の団地で5棟を診断する場合の扱いは棟ごとの申請になるのか、団地で1回なのか。この違いで、受け取れる金額が何倍も変わります。

要綱の公表情報からは、この点を断定できませんでした。ですので、断定はしません。そのかわり、電話で聞く言葉をそのまま書いておきます。

「久喜市内の団地型の分譲マンションの管理組合です。分譲マンション耐震診断助成金について3点うかがいます。第一に、助成額の計算に使う『戸数』は団地全体の戸数でしょうか、それとも診断を行う棟ごとの戸数でしょうか。第二に、複数棟を診断する場合、申請は団地で1件でしょうか、棟ごとに複数件でしょうか。第三に、1つの管理組合が年度をまたいで複数回申請することは可能でしょうか」

連絡先は久喜市 まちづくり推進部 建築審査課 企画指導係、電話0480-22-1111(市の代表番号)です。所在地は〒346-0024 久喜市北青柳1404番地7で、市役所本庁(下早見85番地の3)とは別の建物です。電話番号は同じでも、行く場所が違います。

団地型が3分の2を占める久喜市で、この確認を最初にやるかどうかは、私は本当に大きいと思っています。

久喜市のマンションは、全国より速く古くなっています

久喜市が令和6年3月に策定した久喜市マンション管理適正化推進計画(計画期間:令和6年度から令和15年度までの10年間)には、この市の現実がかなり率直に書かれています。

数字で見る久喜市のマンションストック

項目 数値 基準時点
マンションストック 107棟・5,223戸 令和5年1月1日現在
単棟型 36棟・2,832戸 同上
団地型 71棟・2,391戸(棟数の66.4%) 同上
分譲マンションの管理組合数 47管理組合 令和5年度実態調査
築40年以上の高経年マンション 26棟・約870戸(すべて旧耐震基準) 同上
10年後の築40年以上 86棟・約2,800戸 推計
(参考)市の総人口/世帯数 150,987人/68,201世帯 令和5年1月現在・同計画より

立地は「駅周辺を中心とした利便性の良い地域を中心に立地しており、とりわけJR東鷲宮駅周辺及び久喜駅周辺に集中」とされています。

国の2.1倍に対して、久喜市は3.2倍

計画書が指摘しているのは、増え方のスピードです。

国全体の築40年以上のマンションストックの推移は、戸数ベースで10年後に約2.1倍、20年後には約3.5倍に増加する見込みに対し、市は10年後に約3.2倍、20年後には約4.3倍と、国の推移よりも速いペース

戸数で追うと、873戸(2023年)→2,857戸(2033年)→3,760戸(2043年)→5,023戸(2053年)。30年後には、現在のストック5,223戸のほぼ全量が築40年以上になる計算です。

1980年代から1990年代中頃にかけて集中的に供給された市ですから、これは構造的に避けられません。問題は、その波が来ることではなく、同じ時期に一斉に来ることです。

同じ年に市内の何十もの管理組合が同時に大規模修繕の発注をかけたら何が起きるか。施工会社の取り合いになり、見積は強気になり、足場の手配は遅れます。私が「早く動いた管理組合が得をする」と繰り返すのは、精神論ではなく需給の話です。

旧耐震マンションの耐震診断実施率は20%

もう1つ、令和5年度の実態調査(市内全分譲マンション47管理組合を対象、回収率72.3%)から、目を引く数字を挙げておきます。

  • 旧耐震マンションの耐震診断実施率:20%
  • 修繕積立金の改定を長期修繕計画に基づき実施:55.9%
  • 積立方式は均等積立67.7%/段階増額約32.3%
  • 長期修繕計画の策定済み85.3%/未作成8.8%
  • 将来の一時金徴収を「予定していない」72.4%

耐震診断の実施率20%。 旧耐震マンションの5棟に4棟が、診断すらしていません。市には上限100万円の助成制度があるのにです。

私はこれを「意識が低い」という話にはしたくありません。実態は、言い出す人がいなかっただけだと思っています。耐震診断は、やると決めた瞬間に「結果が悪かったらどうするのか」という重たい問いがついてきます。だから誰も議題に出さない。20%という数字は、その静けさの結果です。

ただ、大規模修繕を控えているなら話は別です。足場を架けるタイミングと、建物の構造を調べるタイミングは、本来そろえたほうが安い。 これは次の章で具体的に書きます。

団地型が3分の2を占める久喜市で、工法の選び方が効く理由

ここからは施工会社としての話です。

久喜市は「足場が組める街」です

まず正直に書きます。久喜市は、足場を組みやすい土地柄です。

市域は面積82.41平方キロメートル、地形はほぼ平坦です(出典:久喜市「市のプロフィール」)。山梨県や静岡県東部の記事では「敷地の3面が傾斜地で足場を組むこと自体が実質困難」という話を何度も書いてきましたが、久喜市ではそういう物件はまれです。

だから私は、久喜市の管理組合にこう申し上げます。

久喜市は足場が組める。だからこそ、足場にするかロープアクセスにするかを、金額と工期で選べます。 「足場が組めないから仕方なくロープ」ではなく、「どちらも選べる中で、どちらが安く早いか」で判断できる。これは恵まれた条件です。

ロープアクセス工法(産業用ロープで外壁を昇降しながら施工する無足場工法)の技術的な中身は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。工法そのものを知りたい方はそちらをご覧ください。

団地型では、足場費が棟数のぶんだけ増えます

では久喜市で何が効くのか。団地型の棟数です。

仮設足場の費用は、ごく大づかみに言えば「建物の外周×高さ」で決まります。ここが単棟型と団地型で決定的に違います。

条件 単棟型:10階建て1棟100戸 団地型:5階建て5棟100戸
総戸数 100戸 100戸
外周の合計 1棟ぶん 5棟ぶん
足場の掛け面積 外周×10階 外周5本ぶん×5階
足場の架け払い回数 1回 5回(棟ごとに移動)
仮設計画の手間 1棟ぶん 棟ごとに搬入経路・養生・近隣配慮

同じ100戸でも、団地型のほうが足場の総量も、架け払いの手間も増えます。久喜市には2棟から最大21棟で一団地を構成するマンションがあるわけですから、棟数が増えるほどこの差は開きます。

参考までに、一般的な目安をお示しします。

  • 外壁塗装:3,500〜4,500円/㎡
  • 外壁の打診調査:250〜500円/㎡
  • 屋上・バルコニーの防水:5,000〜8,000円/㎡
  • 仮設足場は総工費の15〜25%(30戸規模で総額3,500〜5,000万円のうち、足場だけで500万〜1,200万円)

いずれも物件の規模・形状・劣化の程度で大きく変わる目安です。実際の金額は現地を見ないと出せません。

団地型でロープアクセスやハイブリッド工法(部位ごとに足場とロープを使い分ける)が効くのは、棟ごとの足場の架け払いという工程を、そもそも発生させないからです。外壁の塗装・シーリング・タイル補修といった「外周を上下するだけで完結する作業」は、ロープでやれば棟の移動がほぼ人の移動だけで済みます。

一方で、バルコニー内部の防水や、サッシまわりの大がかりな改修は、工法にかかわらず住戸への立ち入りが必要です。ここを曖昧にしたまま「ロープなら立ち入りゼロ」と説明してしまうと、後で住民に叱られるのは施工会社ではなく、説明した理事会です。私はこの一点だけは、毎回しつこく申し上げています。

大規模修繕と耐震診断を、同じ足場で考える

先ほどの「耐震診断実施率20%」に戻ります。

耐震診断そのものには、必ずしも全面足場は要りません。ただ、診断の過程でコンクリートのコア抜き(試験体の採取)や中性化試験、外壁の詳細調査が入ることがあり、これらは大規模修繕の劣化診断と重なる部分があります。

私が理事会でお勧めするのは、耐震診断と大規模修繕の劣化診断を、同じ年度に同じ会社に頼むことです。別々の年度に別々に発注すると、調査のために2回現場を動かすことになり、費用も手間も二重になります。

しかも久喜市の耐震診断助成は上限100万円。診断費用の実質負担を半分にできるタイミングで、建物全体の状態を一度に把握しておく。これは予算が増える話ではなく、減る話です。だから総会でも通りやすい議題になります。

久喜市で「使えない制度」もはっきり書いておきます

補助金の記事でいちばん罪深いのは、使えない制度をそれらしく並べて期待させることだと思っています。ここは正直に書きます。

久喜市既存建築物耐震補強等助成金は、マンションには使えません

耐震診断5万円、耐震補強設計5万円、耐震補強工事50万円、建替え工事50万円という助成がありますが、対象は「市内に所在する一戸建ての自己用木造住宅」です(出典:久喜市「木造住宅の耐震診断や耐震補強工事等に対し助成を行っています」。ページ更新日2026年7月3日、要綱は令和8年4月1日施行版)。分譲マンションの共用部には使えません。

なお、この助成の耐震診断・設計は「久喜市既存住宅耐震診断・設計資格者名簿」に登録された建築士が行うのが原則で、登録要件に久喜市内の建築士事務所に所属していることが入っています。木造戸建てをお持ちの方は、市内の設計事務所を探すことになります。

久喜市ゼロカーボン推進補助金は、共用部には届かない見込みです

令和8年度の久喜市ゼロカーボン推進補助金(ページ更新日2026年8月28日)には、屋根用高遮熱塗装:1平方メートルあたり400円(最大20,000円)というメニューがあります。「屋根の塗装に補助が出るなら大規模修繕に使えるのでは」と思われるかもしれません。

ですが、対象者は個人(法人は対象外)で、久喜市に住民票があり、市税の滞納がない方です。管理組合が共用部の工事で申請する想定の制度ではありません。共用部には使えないとお考えください。

ついでに、この制度は理事会でも覚えておく価値のある特徴があります。

  • 対象期間:令和8年3月9日〜令和9年3月8日の引渡し
  • 申請受付:令和8年5月18日〜令和8年12月25日
  • 予算額:1,972万円
  • 予算超過時は先着順ではなく抽選

「早い者勝ちではない」制度です。専有部のリフォームを考えている居住者の方には、大規模修繕の説明会のついでに案内してあげると喜ばれます。

埼玉県の無料アドバイザー派遣は、令和8年度はもう受付が終わっています

これは残念なお知らせです。

埼玉県には、マンション管理組合に専門家を無料で派遣する「市部におけるマンション管理士等派遣制度創設促進事業」があり、久喜市も対象19市の1つです。ところが、県のページ冒頭には「令和8年度の申請は予算上限に達しましたので、終了しました。」と明記されています(出典:埼玉県「分譲マンションアドバイザー派遣」。掲載日2026年7月6日。2026年9月23日時点の記載)。

枠の小ささを見ていただきたいと思います。

年度 派遣予定の組合数 申請期間 状況
令和8年度 13組合程度 令和8年4月1日〜12月11日 予算上限に達し終了
令和9年度 9組合程度 未公表 令和9年度が最終年度

派遣回数は2回が上限、費用は無料。県のページには2026年7月6日の掲載時点ですでに受付終了が告知されていました。対象市で13組合の枠を取り合い、年度の前半で埋まったということです。

令和9年度はさらに少ない9組合程度で、しかもこの事業は令和9年度までの期間限定。県のページには「令和10年度以降、派遣については各市にお問い合わせください」とあります。

令和9年度の申請開始日は、この記事を書いている時点では公表されていません。令和8年度は4月1日開始でしたので、3月のうちに申請書と必要書類を揃え、県ホームページの公表を待って初日に申請する、というくらいの構えが必要です。申請窓口は埼玉県都市整備部住宅課マンション・居住支援担当(048-830-5573)、埼玉県電子申請・届出サービスからも申し込めます。

なお、この派遣は「測量器等による建物精密測定、長期修繕計画策定、修繕工事等の設計・工事監理及び工事・管理業務の受注など」は対象外です。工事の中身を決める場ではなく、組合運営の相談の場だと理解しておいてください。

緊急輸送道路の沿道でも、久喜市に独自の補助はありません

埼玉県内では、熊谷市のように緊急輸送道路の沿道建築物の耐震診断・改修に市独自の補助(改修で上限1,000万円)を設けている市があります。久喜市はどうか。

久喜市建築物耐震改修促進計画(令和8年3月改定)を読むと、久喜市は「埼玉県緊急輸送道路閉塞建築物等耐震化促進協議会」に参加して促進に努める立場で、費用の助成は埼玉県住宅供給公社が実施する「緊急輸送道路閉塞建築物の耐震化促進事業」が担い、「市は、公社の事業に関する情報提供をする」と書かれています。

つまり、久喜市で緊急輸送道路沿いのマンションをお持ちの管理組合は、市ではなく県の公社に問い合わせるのが筋です。同じ埼玉県内でも、市によって窓口が市なのか県なのかが変わります。ここを知らずに市役所に電話すると、一往復ぶん時間を損します。

ちなみに同計画では、久喜市の住宅の耐震化率は令和7年3月末時点で約94.2%、令和12年度の目標が95%。多数の者が利用する民間建築物は約95.7%で、目標は「おおむね解消」とされています。被害想定としては関東平野北西縁断層帯地震で最大震度7、全壊537棟、半壊2,566棟という数字が挙げられています。

マンション管理計画認定制度|久喜市への申請手数料は無料です

久喜市のマンション管理計画認定制度は、管理組合の管理計画が一定の基準を満たす場合に、市が「適切な管理計画を持つマンション」として認定する制度です。対象は市内の既存分譲マンション、申請者は管理組合の管理者等。

費用は「市は無料、事前確認は有料」

費用の種類 金額
久喜市への認定申請手数料 かかりません(無料)
マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービス システム利用料 1申請あたり10,000円
事前確認審査料 別途必要

山梨県の町村部では、事前確認の適合証がない場合に県の手数料が25,500円かかる例もありました。それに比べると、久喜市は市の手数料がゼロ。認定を取りにいくハードルは低いほうです。

認定基準で、実務上いちばん効くのは長期修繕計画です

認定基準は5分野。詳細は市のページに全文がありますが、大規模修繕の実務から見て重い項目を抜き出します。

分野 特に効く基準
経理 修繕積立金の3か月分以上の滞納額が全体の1割以内
長期修繕計画 「長期修繕計画標準様式」に準拠し、総会で決議されていること
長期修繕計画 作成または見直しが7年以内に行われていること
長期修繕計画 計画期間が30年以上で、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれること
長期修繕計画 将来の一時金徴収を予定しないこと/計画期間最終年度に借入金残高がないこと
その他 組合員名簿・居住者名簿を備え、1年に1回以上内容を確認していること
その他 久喜市マンション管理適正化指針に照らして適切であること

先ほどの実態調査で、久喜市の管理組合は「将来の一時金徴収を予定していない」が72.4%、長期修繕計画の未作成が8.8%でした。認定基準に照らすと、市内の管理組合の多くは十分に射程に入っています。

私が認定制度をお勧めする理由は、認定そのもののメリット(フラット35やマンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ、すまい・る債の利率上乗せ、そして次に書く税制)よりも、認定基準を埋める過程で、理事会が長期修繕計画の現実を直視せざるを得なくなることにあります。

「計画期間30年以上で大規模修繕2回以上」「一時金を予定しない」を満たそうとすると、修繕積立金の水準を数字で検証するしかありません。その作業こそが、本当の価値です。

認定の有効期間は5年。5年ごとに更新申請が必要で、これがそのまま5年ごとの棚卸しになります。

窓口は建築審査課 企画指導係。ただしこのページの更新日は2025年8月21日(令和7年度)で、令和8年度に入ってからの更新は確認できませんでした。申請の前に、手数料と手続きの流れを窓口でご確認ください。

マンション長寿命化促進税制|期限まで残り約6か月です

一定の要件を満たすマンションで、令和5年4月1日から令和9年3月31日までに長寿命化に資する大規模修繕工事が完了した場合、工事完了年の翌年度の建物部分の固定資産税が3分の1減額されます(出典:久喜市「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションにかかる固定資産税の減額措置」。ページ更新日2025年4月11日)。

令和9年3月31日まで、残り約6か月です。

見落とされやすい2つの要件

この制度は、要件を1つでも読み飛ばすと話が崩れます。久喜市のページの記載に沿って整理します。

# 要件 補足
1 築年20年以上が経過している10戸以上のマンション
2 長寿命化工事を過去に1回以上適切に実施していて、令和5年4月1日〜令和9年3月31日の間に2回目以降の工事を完了していること ★初回の大規模修繕では使えません
3 長寿命化工事の実施に必要な積立金を確保していること ★下の(1)(2)のどちらか

要件3は、具体的には次のいずれかです。

  • (1) 都道府県知事等の認定を受けた管理計画認定マンションのうち、認定を受ける際に認定基準に適合させるために修繕積立金の額の引上げを行った場合
  • (2) 都道府県等からの助言・指導を受け、大規模修繕工事が可能な水準まで長期修繕計画を適切に見直し、修繕積立金の積立てや額の引上げを行った場合

私がここを太字にするのは、「今回が初めての大規模修繕です」という管理組合にこの制度を説明してしまう事故が、現場で本当に多いからです。要件2にある通り、対象は2回目以降です。

また、過去の工事についてはこう書かれています。

過去に実施した長寿命化工事は屋根防水工事、床防水工事および外壁塗装等工事をすべて実施していれば、実施時期が異なっている場合も減額措置の対象となります。令和5年4月1日から令和9年3月31日の間に実施する長寿命化工事は、屋根防水工事、床防水工事および外壁塗装等工事をすべて一体で実施している必要があります。

過去の工事はバラバラの時期でもよい。今回の工事は3つ一体でなければならない。 予算の都合で「今回は外壁だけ、防水は次回」と分割発注すると、この要件を外すおそれがあります。

減額の中身と、申告の期限

  • 減額される割合:1戸当たり床面積100平方メートルに相当する部分の固定資産税を3分の1減額
  • 住宅部分のみ。都市計画税の減額はありません
  • 他の減額制度(耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修等)と重ねて適用できません
  • 本制度による減額は、当該マンションにつき1度しか受けられません
  • 減額期間:工事完了年の翌年度から1年度分
  • 申告期限:大規模修繕工事が完了した日から3か月以内に資産税課へ

理事会への説明で気をつけていただきたいのは、「税金が3分の1になる」ではないということです。減るのは家屋部分の固定資産税で、1戸100㎡相当まで、1年度分だけ、都市計画税は対象外。過大な期待を持たせると、あとで必ず揉めます。

申告は管理組合等の代表者がまとめて行えます。必要書類は、減額適用申告書(資産税課で配布)、総戸数を確認できる書類、管理計画の認定通知書の写しまたは助言・指導内容実施等証明書、大規模の修繕等証明書、過去工事証明書、修繕積立金引上証明書の6点。

窓口が2つに分かれている点に注意してください。 税の申告そのものは総務部 資産税課 家屋係(〒346-8501 久喜市下早見85番地の3、ファクス0480-22-3319)ですが、要件3の(1)(2)および関係書類については建築審査課に問い合わせるよう、市のページが指定しています。

12条点検(定期報告)|久喜市の提出先は市役所ではありません

すでに触れましたが、実務の要点をまとめておきます。

項目 内容
根拠 建築基準法第12条第1項・第3項
久喜市が指定する共同住宅の規模 久喜市建築審査課が公表する「定期報告対象建築物等と報告期間」で要確認(久喜市は特定行政庁のため、埼玉県知事指定の内容がそのまま適用されるわけではありません)/共同住宅の報告間隔は3年
建築設備・防火設備・昇降機 1年ごと(特定建築物より頻度が高い)
報告期限 特定建築物は調査後3か月以内、設備等は検査後2か月以内
報告書の提出窓口 一般財団法人埼玉県建築安全協会(市役所ではありません)
様式の入手 埼玉県建築安全協会のホームページからダウンロード
報告概要書の閲覧窓口 久喜市 建築審査課(第二庁舎)/開庁日8時45分〜16時30分
未報告の罰則 建築基準法第101条により100万円以下の罰金
所有者変更・除却・6か月以上の休業 変更届等を正副1部ずつ、埼玉県建築安全協会へ

久喜市は特定行政庁ですので、対象建築物の指定は市が行います。市のページに掲載されている「定期報告対象建築物等と報告期間」のPDFで、自分のマンションが対象かどうかを確認してください。

外壁の全面打診調査については、平成20年国土交通省告示第282号(平成28年改正)により、竣工・外壁改修等からおおむね10年を経過した後の最初の定期調査時に、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面打診等が必要とされています。なお令和4年4月1日の告示改正では、打診と同等以上の精度を有する無人航空機(ドローン)による赤外線調査が、調査方法として明確化されました。打診調査の単価は250〜500円/㎡が目安ですから、外壁2,000㎡なら50万〜100万円規模。

ここで毎回お伝えしていることを、久喜市でも書いておきます。12条点検の全面打診と、大規模修繕の劣化診断は、同じ足場・同じロープで1回にまとめられます。 別々にやれば2回ぶんの仮設費がかかる。まとめれば1回で済む。これは予算が増える提案ではなく減る提案なので、総会でも通ります。

打診調査をロープアクセスで行う場合の進め方や、作業員の資格・安全管理の考え方は、明誠のロープアクセス工法の技術詳細のページでご覧いただけます。足場を仮設して行う大規模修繕の考え方は明誠の大規模修繕工事のページにまとめています。

久喜市で無料で使える相談窓口は4つあります

お金をかけずに専門家の意見を聞ける場が、久喜市には4つあります(出典:久喜市「マンション管理に関する相談について」。ページ更新日2026年8月31日)。

① 久喜市マンション管理相談会(市が主催・無料)

市が主催し、一般社団法人埼玉県マンション管理士会に所属するマンション管理士が相談に応じます。

項目 内容
直近の開催日 令和8年9月30日(水曜日)
時間 (1) 14時00分〜14時50分/(2) 15時00分〜15時50分
会場 鷲宮行政センター 405会議室
対象 市内分譲マンション管理組合の役員、居住者、区分所有者
費用 無料
定員 各回1組、計2組
申込み 必要。令和8年9月24日(木曜日)までにファクスまたはメールで建築審査課企画指導係へ(市のページに申込書のWord/PDFあり)
持ち物 管理規約、総会資料等
その他 10月以降も実施予定

(出典:久喜市「市内分譲マンション管理組合、居住者及び区分所有者を対象としたマンション管理士による無料相談を実施します」。ページ更新日2026年8月31日)

この記事が公開される2026年9月23日の翌日、9月24日が申込締切です。 定員は各回1組、計2組。狭き門ですが、逆に言えばマンション管理士を50分間ひとり占めできるということです。

申込時に「氏名(フリガナ明記)、人数、住所、電話番号、希望時間、相談内容の要点」を書くことになっています。この「相談内容の要点」を丁寧に書くかどうかで、50分の密度がまったく変わります。「大規模修繕について」ではなく、「築38年・5棟98戸の団地型。長期修繕計画は10年前に作成したきり。耐震診断は未実施。次回大規模修繕を令和10年度に予定。修繕積立金は月額8,000円」と書けば、相談員が下調べをして来てくれます。

今回に間に合わなくても、10月以降も実施予定とのことですから、次回の開催をこまめに確認してください。

② 住まい相談プラザ(埼玉県住宅供給公社・無料)

マンション管理に関する情報提供や相談を無料で実施しています。専門相談員によるマンション管理相談や、弁護士による法律相談は事前予約制です(住まい相談プラザ)。

③ 公益財団法人マンション管理センター(無料)

マンション管理適正化法に基づくマンション管理適正化推進センターとして国の指定を受けた団体で、管理組合運営や建物・設備の維持管理の相談を電話・面談・メール等で受け付けています(マンション管理センター 相談窓口)。

④ 埼玉県分譲マンションアドバイザー派遣(令和8年度は終了)

先に書いたとおり、令和8年度は予算上限に達して受付終了です。令和9年度は9組合程度の枠で、4月の受付開始と同時に動く必要があります。

この4つを、私は使う順番で考えることをお勧めしています。まず①の市の相談会(直接会って話せる)、日程が合わなければ②③(予約すればいつでも相談できる)、本腰を入れて組合運営を見直すなら④(2回まで専門家が来てくれる)。

モデルケース|久喜市の2つの典型でいくらになるか

あくまで一般的な目安であり、実際の見積は現地調査なしには出せません。その前提でお読みください。

ケースA:東鷲宮駅周辺の団地型(築38年・5階建て5棟・98戸・旧耐震)

久喜市で最も多いタイプです。

項目 足場工法 ハイブリッド工法
大規模修繕の工事費 約1億1,800万円 約9,900万円
うち仮設足場 約2,200万円 約700万円
工期 約8か月 約5.5か月
1戸あたりの差額 — 約19万円の減

差の源は棟ごとの足場の架け払いです。5棟あれば5回。ハイブリッド工法では、外壁の塗装・シーリング・タイル補修をロープアクセスで行い、バルコニー内部や階段室まわりなど立ち入りが必要な部位に限って部分足場を架けます。

さらにこのケースでは、旧耐震・3階以上・延べ1,000㎡以上を満たすので、耐震診断助成(上限100万円)の対象になり得ます。診断費用200万円なら、実質負担100万円。ただし要件5のとおり、12条報告を出しているかを先に確認してください。

ケースB:久喜駅近くの単棟型(築42年・8階建て・52戸・旧耐震)

項目 足場工法 ロープアクセス主体
大規模修繕の工事費 約6,400万円 約5,500万円
うち仮設足場 約1,300万円 約380万円
工期 約6か月 約4か月
1戸あたりの差額 — 約17万円の減

8階建て52戸は、12条点検の対象になり得る規模の物件です。対象かどうかは久喜市建築審査課が公表する「定期報告対象建築物等と報告期間」で必ず確認してください。定期報告と耐震診断助成と大規模修繕を、1本の線でつなげるべきケースだと言えます。

駅近の敷地は余裕が少ないことが多く、足場を組むと駐車場を何台分か潰します。駐車場を潰すと駐車場収入が止まる。ここは見積書に出てこない費用なので、理事会で必ず計算してください。月8,000円×10台×6か月なら48万円です。

見積書で必ず確認していただきたい5点

久喜市の管理組合に向けて、この市ならではの2点を含めて挙げます。

  1. 団地型の場合、足場の架け払い回数と、その費用の内訳。「仮設工事一式」で済ませている見積は、棟数が増えるほど中身が見えなくなります。棟ごとに分けて出してもらってください。
  2. 耐震診断助成を使う場合、交付決定前に契約しない工程になっているか。見積書の有効期限と、市の交付決定の見込み時期がかみ合っているかを確認します。
  3. 仮定数量を超過した場合の単価が契約書に明記されているか。タイルの浮き・欠損の補修数量は、足場を架けてみないと確定しません。「超過分は別途協議」は危ない書き方です。
  4. 足場のリース期間が延びた場合、誰が負担するか。天候不良や住民対応で工期が延びたとき、延長料を誰が持つのかを先に決めておきます。
  5. 監理者と施工会社の資本関係。設計監理方式をとるなら、監理する側と施工する側が同じグループでないことを確認してください。

この5点を質問したとき、その場で数字で答えられるかどうかで、会社の姿勢はだいたい分かります。必要な範囲だけを施工して費用を抑える考え方は明誠のピンポイント施工にまとめています。

正直に申し上げます|私は施工会社の人間です

ここまで読んでいただいた方に、隠さず書いておきます。

私は施工会社の人間なので、自社の工法を勧める立場にあります。 その前提で読んでください。そのうえで、足場工法のほうが有利な条件を挙げます。

足場が有利な条件 理由
タイルの浮き・欠損が広範囲(目安として概ね20%超) 補修数量が多いと、足場で一斉に作業したほうが効率がよい
工事の主対象がバルコニー内部 立ち入りが前提なら、足場の優位性が出る
サッシ・開口部の交換を伴う 大きな資材の搬出入に足場が要る
構造補強(鉄骨ブレースの設置等)を伴う 補強部材の設置には足場が必要
外周に十分な平場があり、敷地に余裕がある 久喜市の多くの物件が該当

最後の行を太字にしたのは、これが久喜市の実情だからです。平坦で敷地に余裕がある物件が多い久喜市では、足場という選択肢が最初から使える。だからこそ、ロープアクセスを「唯一の解」として売り込むのは筋が通りません。

私が3つの工法を持っている意味は、ここにあります。足場しか持たない会社は足場を勧めるしかなく、ロープしか持たない会社はロープを勧めるしかない。3つ持っているから、足場を勧めることもできます。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員、ISO9001品質マネジメントシステム、日本ロープ高所作業協会の事務局。そして、日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟しています。

フランチャイズの仕組みで各分野の専門会社が直接施工に入るため、中間マージンを圧縮しながら品質を保てます。これが「高品質で低価格」を成り立たせている仕組みです。技術面の詳しい解説はロープアクセスドットコムでご覧いただけます。

管理組合さま向けのサービス内容はマンション管理組合向けの大規模修繕サービスに、これまでの施工実績は明誠の施工事例にまとめています。漏水が起きている物件については漏水調査・止水工事もあわせてご覧ください。

この秋、久喜市の管理組合がやることの順番

日付のあるものから並べます。

時期 やること 窓口・備考
9月24日(木)まで 9月30日のマンション管理相談会に申し込む(ファクスまたはメール) 建築審査課 企画指導係/定員 計2組
9月〜10月 12条点検の報告状況を確認する(対象建築物か/最後に出したのはいつか) 建築審査課(第二庁舎)で概要書を閲覧、提出は埼玉県建築安全協会
9月〜10月 耐震診断助成の相談(団地型は戸数の数え方を必ず質問) 建築審査課 企画指導係 0480-22-1111
10月 令和8年度中に診断するなら申請。1月末の完了報告から逆算 交付決定前の契約は不可
10月〜11月 大規模修繕の劣化診断を前倒しし、耐震診断と工程を重ねられないか検討 2回の調査を1回に
11月〜12月 見積を3社。団地型は棟ごとの足場費の内訳を必須項目に
12月〜1月 管理計画認定を総会議案へ(市の手数料は無料) 長期修繕計画の見直しとセット
1月〜3月 総会・契約。長寿命化促進税制を使うなら令和9年3月31日完了から逆算 申告は完了日から3か月以内
令和9年度の受付開始日 埼玉県アドバイザー派遣に申請(枠は9組合程度) 開始日は未公表。3月中に書類を揃え、県HPを確認

こう並べると、9月24日の締切だけが突出して近いことが分かります。もし対象になりそうなら、この記事を読んだその日に申込書を送ってください。

よくあるご質問

Q. 久喜市の耐震診断助成は、新耐震(昭和56年6月以降)のマンションでも使えますか。

A. 使えません。対象は昭和56年5月31日以前の建築確認を受けて建築された、木造以外の共同住宅です。新耐震のマンションは、この助成の対象外になります。

Q. 築25年で旧耐震ではありません。久喜市で共用部に使える補助金はありますか。

A. 共用部の工事費そのものに直接出る市の補助は、令和8年度の公表情報からは確認できませんでした。使える可能性があるのは、マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)ですが、こちらは2回目以降の長寿命化工事が対象のため、築25年で初回の大規模修繕という場合は要件を満たしません。管理計画認定の取得と、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資の金利優遇を検討されるとよいと思います。

Q. 耐震診断の費用はいくらくらいかかりますか。

A. 建物の規模・構造・図面の有無で大きく変わるため一概には言えませんが、中規模の分譲マンションで100万〜300万円程度になることが多いと私は見ています。久喜市の助成は費用の2分の1または戸数×5万円のいずれか低い額(上限100万円)ですので、20戸以上で、かつ診断費用が200万円以上であれば100万円が上限いっぱいになります。診断費用が150万円なら助成は75万円です。「戸数×5万円」と「費用の2分の1」の両方を計算して、低いほうが実際の額とお考えください。正確な金額は、現地を見たうえでお見積りします。

Q. 総会を待っていると耐震診断助成の申請が間に合いません。理事会だけで申請できますか。

A. できません。交付要綱の対象要件に「管理組合の総会で、この助成金の交付申請の実施に係る決議がなされていること」が入っています。臨時総会を開くか、次の定時総会で決議するかのいずれかです。なお、決議の対象は「申請すること」ですので、業者の選定は理事会に委任する旨を同じ議案に入れておくと、交付決定前の契約という事故を避けられます。

Q. 団地型で5棟あります。耐震診断助成は5棟ぶん申請できますか。

A. 公表されている要綱の記載からは断定できませんでした。助成額が「戸数に5万円を乗じた額」で計算されるため、団地全体の戸数で数えるのか、棟ごとに数えるのかで金額が大きく変わります。申請前に必ず建築審査課 企画指導係(0480-22-1111)へ、「戸数は団地全体か棟ごとか」「申請は団地で1件か棟ごとに複数件か」の2点をご確認ください。久喜市は団地型が棟数の66.4%を占めるので、多くの管理組合に関係する論点です。

Q. 大規模修繕の工期はどれくらいですか。ロープアクセスだと短くなりますか。

A. 足場工法の場合、100戸規模のマンションでおおむね6〜8か月が目安です。ロープアクセス工法やハイブリッド工法では、足場の架設・解体にかかる期間がなくなるぶん、おおむね6〜7割程度の工期に収まることが多くあります。団地型で棟数が多いほど、この差は大きくなります。

Q. ロープアクセスにすれば、住戸への立ち入りは一切なくなりますか。

A. いいえ。バルコニー内部の防水やサッシまわりの改修は、工法にかかわらず住戸への立ち入りが必要です。「ロープアクセスなら立ち入りゼロ」という説明は正確ではありません。どの部位に何日間立ち入るのかを、契約前に工程表で明示してもらってください。

Q. 久喜市に相談に行きたいのですが、市役所に行けばよいですか。

A. 用件によって場所が変わります。耐震診断助成・管理計画認定・定期報告の相談は建築審査課(〒346-0024 久喜市北青柳1404番地7/第二庁舎)、長寿命化促進税制の申告は資産税課 家屋係(〒346-8501 久喜市下早見85番地の3/本庁)です。電話番号はどちらも代表の0480-22-1111ですが、建物が違います。訪問前に、どちらの庁舎かを電話で確認されることをお勧めします。

出典・参考資料


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月23日時点で公表されている久喜市および国土交通省・埼玉県の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず久喜市および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。なお、本記事で参照した久喜市のページのうち、マンション管理計画認定制度(2025年8月21日)、長寿命化促進税制(2025年4月11日)、建築物の定期報告(2025年7月16日)の3ページは、令和8年度に入ってからの更新が確認できませんでした。手数料・要件については窓口でのご確認をお願いします。

久喜市の管理組合さまへ。この秋は、9月24日の相談会の申込締切と、耐震診断助成の1月末の完了報告期限、2つの日付が効いてきます。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。

ご相談は株式会社明誠のお問い合わせフォームから承っています。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月23日

マンション大規模修繕談合、公取委が40社超に排除措置命令へ|関東100件超・東海3県にも拡大、管理組合とオーナーが今すぐ点検すべき7つの自衛策【2026年9月】

皆さまのマンションで進めている、あるいはこれから進める大規模修繕工事の見積もりは、本当に「競争」の結果でしょうか。私はこの数か月、理事長さまからこの質問を何度も受けるようになりました。

結論から申し上げます。公正取引委員会(公取委)は、2026年6月にマンション大規模修繕工事をめぐる談合で施工会社・設計コンサルタント計40社前後に独占禁止法違反を認定し、うち38社程度に排除措置命令を出す方針を固めたと報じられています。対象は2021年秋ごろから関東で100件を超える工事、課徴金は合計16億円規模とされ、2026年7月には調査が東海3県(愛知・岐阜・三重)にも広がりました。9月に入り、毎日新聞は住民側が契約書に「談合発覚時の違約金条項」などの特約を加える自衛の動きを報じています。

私は株式会社明誠の本間と申します。東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。この記事では、この談合問題の全体像を公的な一次情報と報道であたりながら整理し、管理組合の理事長さまやオーナーさまが今すぐ点検できることを具体的にお伝えします。

この記事で答える質問:マンション大規模修繕の談合事件で何が起きたのか、うちの修繕積立金や見積もりに影響はあるのか、管理組合とオーナーは今、何を点検すればよいのか?


結論:まず点検すべき3つのポイント

先に全体像をお示しします。私が理事長さまにお伝えしているのは、次の3点です。

優先順位 点検すること 目安の期限 ポイント
1. 発注方式の確認 過去・現在進行中の修繕工事が「設計監理方式」か「責任施工方式」か、コンサルと施工会社の資本関係はないか 次の理事会まで コンサルが施工会社からバックマージンを受け取る覚書を交わしていた事例が今回の核心
2. 見積もりの中身の再確認 総額だけでなく、仮設工事費・下地補修費など内訳を複数社で比較したか 発注前(今回工事中なら速やかに) 統一仕様で見積もらせると価格調整が見えにくい
3. 契約条項の見直し 「談合発覚時の違約金条項」などの特約が入っているか 次回契約時までに検討 住民側の自衛策として報道でも紹介されている

すでに工事が終わっている管理組合さまも、過去の発注記録を保管しておくことをおすすめします。今回のように数年越しで事実関係が明るみに出るケースがあるためです。

私はいつも理事長さまに、「コンサルタントに一任することと、コンサルタントを信頼することは別の話です」とお伝えしています。チェック役だと思っていた専門家自身が、今回の問題の当事者になっていたからです。


何が起きたのか|公取委が認定した「マンション大規模修繕談合」の全体像

2021年秋から関東で100件超、2025年3月に立入検査

複数の報道によると、談合は2021年秋ごろから始まり、首都圏を中心に100件を超える大規模修繕工事が対象になったとされています。公正取引委員会は2025年3月以降、関係する施工会社・設計コンサルタントへの立入検査に着手しました(出典:日本経済新聞、時事通信)。

2026年6月、40社前後に違反認定・課徴金は計16億円規模

2026年6月12日前後の報道では、公取委が施工会社と設計コンサルタント計40社程度に独占禁止法(不当な取引制限)違反を認定し、うち38社程度に近く排除措置命令を出す方針を固めたと伝えられました。課徴金は合計で約16億円にのぼる見通しとされています(出典:日本経済新聞、時事通信)。本稿執筆時点(2026年9月23日)で、正式な排除措置命令の発出日を確認できる一次情報は見当たらないため、最新の状況は公正取引委員会の公表資料でご確認いただくことをおすすめします。

2026年7月、東海3県にも調査が拡大

2026年7月28日には、公取委が愛知・岐阜・三重の東海3県で、施工会社・設計事務所20社超に立入検査を行ったと報じられました(出典:日本経済新聞)。関東の事案で名前が挙がった企業に加え、東海地方の地元企業も対象になったとされ、関東だけの問題ではなくなっていることがうかがえます。

2026年9月、住民側の「特約」による自衛が報道に

そして今月、毎日新聞は、修繕工事の不正を防ぐために住民が契約書に特約条項を加えるなど、「自衛」に動く管理組合の様子を報じました。関東・東海の広い範囲で、管理組合自身が発注プロセスを見直す動きが出ています(出典:毎日新聞)。


なぜ起きたのか|「設計監理方式」に空いていた死角

多くの管理組合が採用している発注方式は、大きく2つに分かれます。国土交通省の「マンション改修マニュアル」(令和8年3月改訂)でも、この2方式が整理されています(出典:国土交通省「マンション改修マニュアル」)。

  • 設計監理方式:調査診断・設計とコンサルタント業務を、施工から切り離す方式。「競争入札等の競争原理を導入して施工会社を選定できる」のが利点とされています。
  • 責任施工方式:設計から施工まで一社に任せる方式。工事内容と費用内訳の関係が不明瞭になりやすいという課題が指摘されています。

今回問題になったのは、この設計監理方式そのものの信頼性でした。報道によれば、本来は中立な立場でチェック役を務めるはずの設計コンサルタントが、複数の施工会社を集めて「見積もり合わせ」をさせる際に、あらかじめ受注予定者を決めておき、他の会社には当て馬の見積もりを依頼していたとされています。さらに、コンサルタントが施工会社からバックマージンを受け取る覚書を交わし、工事費が上乗せされていた疑いも指摘されています。

つまり、「専門家に任せているから安心」という前提そのものが崩れていたわけです。私はこれを、現場で20年やってきた立場から見ても、非常に厄介な構造だと感じます。工事の品質や価格の妥当性を見抜く目を、管理組合の理事会だけで持つのは簡単ではありません。だからこそ専門家に依頼するわけですが、その専門家自身の利益相反が管理されていなければ、チェック機能は形だけのものになってしまいます。

国土交通省は2026年4月1日施行の「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」改訂で、外部の専門家が管理組合の意思決定に関わる場面での利益相反防止プロセスを整理しています(出典:国土交通省 報道発表資料)。今回の談合問題とは制度上の直接の対象は異なりますが、「外部専門家と施工会社側の利害関係をどう遮断するか」という論点は共通しています。


私たちの修繕積立金はどうなる?|数字で見る影響

具体的な影響額は各マンションの契約内容によって異なるため、この記事で断定的な数字をお示しすることはできません。ただし、構造として押さえておきたい点が2つあります。

1つ目は、対象が100件を超える規模だということです。関東で100件超、東海3県でも20社超が調査対象になったという規模感からすると、多くの管理組合にとって「うちには関係ない話」と言い切れない広がりを持っています。

2つ目は、談合によって上乗せされた分は、修繕積立金から支払われているという点です。大規模修繕工事は多くの場合、数千万円から数億円単位の工事になります。仮に価格調整によって数%でも上乗せされていたとすれば、修繕積立金の取り崩し額や将来の積立金不足に直結します。私が現場で見てきた感覚では、見積もりの内訳をきちんと比較検討するかどうかで、総額が1割前後変わることは珍しくありません。

比較の視点 統一仕様・一任型の見積もり 内訳比較・複数社見積もり型
価格の見えやすさ 総額のみ比較しがちで調整に気づきにくい 仮設工事・下地補修などの内訳で異常値に気づきやすい
業者間の提案の自由度 同一仕様のため横並びになりやすい 各社が自由に提案するため似通った金額が並べば違和感に気づける
管理組合の負担 少ない(一任できる) 増える(比較検討の手間がかかる)

手間をかけるかどうかは、そのまま「気づけるかどうか」に直結します。この点は、次の章で具体的な自衛策としてお伝えします。


築15〜25年の管理組合が「うちの話」と感じる3つのサイン

ここまで読んで、「うちのマンションは大丈夫だろうか」と感じられた理事長さまもいらっしゃると思います。私の経験上、次の3つに当てはまる場合は、一度立ち止まって確認する価値があります。

サイン1:見積もり合わせの参加社が、毎回ほぼ同じ顔ぶれである
地域の施工会社の数が限られているため、ある程度の重複は自然です。ただし、何年も同じ数社しか声がかからず、その中で毎回似たような金額が並ぶ場合は、選定過程を一度見直す価値があります。

サイン2:コンサルタントが「この会社なら安心です」と特定の1社を強く推してくる
中立な立場のはずのコンサルタントが、比較検討の材料を十分に示さないまま特定の業者を推す場合、その業者との関係を確認しておいた方がよいでしょう。

サイン3:見積書の内訳が「一式」表記ばかりで、数量や単価が書かれていない
仮設工事や下地補修など、本来は数量×単価で積算できる項目が「一式○○円」とだけ書かれている見積書は、比較検討そのものが難しくなります。

いずれか1つでも当てはまるからといって、直ちに不正があるという意味ではありません。ただ、これらは「比較検討の材料が不足している状態」のサインでもあり、談合の有無にかかわらず、適正な価格で工事を発注するために確認しておく価値があると、私は考えています。


国が示す「適正発注」の考え方

国土交通省の「マンション改修マニュアル」(令和8年3月改訂)では、発注先を決める方式として「見積合わせ方式」が紹介されています。「複数の発注先候補に見積の提出を求め、見積金額の総額の大小だけではなく、見積内容等を比較検討して発注先を決定する方式」とされており、選定における透明性確保の観点からは「公募サイトや業界紙等による公募が望ましい」との記述もあります(出典:国土交通省「マンション改修マニュアル」)。

ここで強調されているのは、「総額の大小だけで決めない」という点です。総額だけを見て安いところに決めると、後から追加工事費が積み上がるケースもありますし、逆に今回のような価格調整があった場合には、総額の比較だけでは気づきにくいという弱点もあります。

横浜市のマンション管理ポータルサイトのコラムでも、今回のような談合の手口と管理組合の対策が整理されており、業者選定過程の議事録化や、複数業者からの見積もり比較の重要性が紹介されています(出典:横浜市「マンション大規模修繕工事の談合について」)。


管理組合とオーナーが今すぐできる7つの自衛策

私が理事長さまにお伝えしている自衛策を、7つにまとめました。すでに工事が完了している管理組合さまも、次回以降の参考にしていただければと思います。

  1. 丸投げにしない:専門家に一任するのではなく、修繕委員会が工事項目ごとの仕様をある程度理解したうえで発注プロセスに関わる
  2. 統一仕様を避ける:全社に同じ仕様書で見積もらせるのではなく、ある程度の自由提案を認め、似通いすぎた金額が並んだら違和感を持つ
  3. 内訳まで比較する:総額だけでなく、仮設工事費・下地補修費・諸経費などの項目別に複数社を比較する
  4. 選定プロセスを透明化する:応募書類をコンサルタント1人が受け取るのではなく、理事会にも同じ情報を共有する
  5. 第三者チェックを入れる:利害関係のない専門家やコンサルタントに、見積書・選定プロセスの検証を依頼する
  6. 契約条項を見直す:談合が発覚した場合の違約金条項などの特約を、工事請負契約書に加えることを検討する
  7. 住民全体で意識を共有する:今回のような事案が実際に起きていたという事実を総会などで共有し、発注プロセスへの関心を保つ

いずれも、明日から始められることばかりです。私はこれを、理事会が特別な専門知識を持たなくても実践できる範囲でお伝えするようにしています。


明誠が現場で実践している「談合を起こしにくくする仕組み」

ここからは、当社の取り組みについて少しお話しさせてください。株式会社明誠は、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事を、通常の足場仮設工法、足場を組まないロープアクセス工法(無足場工法)、両方を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法をご提案できる会社です。この3工法を扱える会社は、日本でも多くありません。

私がこの3工法にこだわる理由の一つは、「工法ありき」で提案しない体制そのものが、価格の妥当性を検証しやすくするからです。足場仮設だけを前提にすると、仮設工事費が総工事費の15〜25%を占めることも珍しくなく、この部分の内訳が見えにくいまま「一式」で計上されがちです。ロープアクセス工法を含めて比較検討すると、仮設費という大きな項目そのものを分解して検討できるようになります。

ロープアクセス工法の技術的な背景や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。当社は日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板工事など各分野の専門職が加盟しています。専門職が直接施工する体制のため、中間マージンを重ねにくく、高品質かつ低価格な工事を実現しやすいという特徴があります。この加盟店ネットワークの技術情報もロープアクセスドットコムにまとまっていますので、コンサルタントや管理組合の皆さまが第三者の目で技術的な妥当性を確認したい場合にも、参考にしていただけると思います。

また、当社では見積もりをお出しする際、仮設工事・本工事・諸経費を分けて内訳を明示することを徹底しています。総額だけを見せて「お任せください」とは申し上げません。理事会の皆さまが、他社の見積もりと項目ごとに比較できる状態でご提案するのが、私の考える最低限の誠実さです。

工法選定の考え方については明誠のコンセプト、大規模修繕工事の総合的なご提案については大規模修繕工事のご紹介、ロープアクセス工法そのものについてはロープアクセス工法のご紹介のページで詳しくご紹介しています。


東京都・関東エリアのオーナー・管理組合が使える相談先

「うちの見積もりが適正かどうか、自分たちだけでは判断できない」という場合、まずは第三者に相談することをおすすめします。

  • 横浜市など各自治体のマンション管理ポータルサイトでは、大規模修繕に関する相談窓口や講座が案内されています(出典:横浜市マンション管理ポータルサイト)。
  • 当社では、収益不動産を所有されるオーナーさま向けに賃貸マンションオーナー向けサービス、管理組合の理事長さま向けに管理組合向けサービスをそれぞれご用意しています。見積もりの内訳確認だけでも構いませんので、お気軽にご相談ください。
  • 投資用不動産としてマンション・ビルを保有されているオーナーさまには、収益不動産オーナーさま向けページもご参考にしていただけます。
  • 私が代表理事を務める一般社団法人全国建設業支援協会(JCSA)でも、建設業向けの経営支援情報の発信やオンラインセミナー、ビジネスマッチングを行っています。発注する側だけでなく、受注する側の建設業者さまにとっても、適正な取引慣行を学ぶ機会として活用いただければと思います。

よくある質問(FAQ)

Q. 今回の談合事件は、まだ工事をしていない新築マンションにも関係ありますか?

A. 直接的には、これから大規模修繕を計画する既存マンションの管理組合・オーナーさまに関係する話です。ただし、将来的に修繕を迎える新築マンションでも、発注方式や見積もり比較の考え方を早い段階から理事会で共有しておくことは、無駄にはならないと思います。

Q. 過去に大規模修繕を終えているマンションでも、今から確認できることはありますか?

A. あります。当時の発注記録や見積書、コンサルタントとの契約関係を保管しておき、次回の修繕計画や長期修繕計画の見直し時に参考にすることができます。談合の有無を後から証明するのは簡単ではありませんが、記録を残しておくこと自体に意味があると、私は考えています。

Q. コンサルタントに依頼せず、施工会社に直接相見積もりを取ってもよいのでしょうか?

A. 可能です。ただし専門的な仕様書の作成や工事監理まで管理組合だけで行うのは負担が大きいため、利害関係のない第三者(コンサルタントや建築士)に選定プロセスの検証だけを依頼する、といった部分的な活用の仕方もあります。

Q. 見積もりが1社しか集まらない場合、談合を疑うべきでしょうか?

A. 1社しか集まらないこと自体は、地域や時期によって珍しくありません。談合の有無とは別の問題として、複数の候補にあたる努力をしたうえで、それでも1社になった場合は、その内訳を特に丁寧に確認することをおすすめします。

Q. ロープアクセス工法を取り入れると、談合のリスクは下がりますか?

A. 工法そのものが談合を防ぐわけではありません。ただし、足場仮設だけを前提にした見積もりに、ロープアクセス工法という選択肢を加えて比較検討することで、仮設費という大きな項目の内訳がより見えやすくなる、というのが私の実感です。


この記事のポイントまとめ

  • 公取委がマンション大規模修繕談合で施工会社等40社前後に違反認定、38社程度に排除措置命令の方針
  • 対象は2021年秋から関東で100件超、課徴金は合計16億円規模と報道されている
  • 2026年7月には東海3県(愛知・岐阜・三重)にも調査が拡大
  • 設計コンサルタントが受注予定者を事前決定し、バックマージンを受け取る覚書があったとされる
  • 国交省マニュアルは「総額だけでなく内訳を比較する」発注方式を推奨
  • 管理組合の自衛策は「丸投げにしない」「内訳を比較する」「特約を検討する」の3本柱
  • 正式な排除措置命令の発出時期は本稿執筆時点で未確定のため、最新情報は公取委の公表資料を確認する

出典・参考資料

※本記事は、記事作成時点(2026年9月23日)で確認できる報道・公開情報にもとづいて構成しています。公正取引委員会による排除措置命令・課徴金納付命令の正式な発出内容や日付は変更・確定していく可能性があるため、最新情報は公正取引委員会の公表資料および各報道機関の続報でご確認ください。個別の工事契約が今回の事案の対象かどうかは、この記事だけでは判断できません。気になる点がある場合は、コンサルタントや弁護士など専門家にご相談ください。


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月23日

今回のニュースは、正直なところ、この業界にいる私にとっても後味のよいものではありません。ただ、こうした事案が明るみに出ることで、発注プロセスを見直すきっかけになるのであれば、業界全体にとって悪いことばかりではないとも思っています。

見積もりの内訳を一緒に確認するだけでも構いません。総会の前段階の整理として、遠慮なくお声がけください。お問合せフォームからご連絡をお待ちしております。

これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない感想です。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

深谷市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

深谷市のマンションで大規模修繕を控えている管理組合が、令和8年度に実際に使える補助金はどれか。 この記事は、その一点にだけ答えます。

深谷市の分譲マンションは、市が令和6年に実施した実態調査の対象がちょうど21件。市内の全管理組合にアンケートを郵送できてしまう規模です(出典:深谷市「マンション管理について」)。数が少ないということは、深谷市の管理組合にとって「隣のマンションはどうしたか」という前例がほとんど手に入らないということでもあります。

私は20年以上、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を見てきました。前例が少ない街の理事会ほど、業者の言い値で決まりやすい。だからこそ、公的な制度だけは先に正確に押さえておいていただきたいと思っています。

最終更新:2026年9月22日


【結論・早見表】深谷市で共用部の大規模修繕に使える制度・使えない制度

まず結論から。令和8年度(2026年度)時点で、深谷市の分譲マンション共用部に関係する制度を「使えるか/使えないか」で仕分けると、次のとおりです。

制度名 共用部の大規模修繕に 内容(令和8年度) 出典
深谷市マンション管理計画認定制度 ○ 使える 市への申請手数料は無料。事前確認適合証が必須 深谷市
マンション長寿命化促進税制(固定資産税) ○ 使える 翌年度の建物分固定資産税を1/2〜1/6に減額。令和9年3月31日までの工事完了が条件 国土交通省
深谷市ブロック塀撤去等補助制度 △ 敷地の塀なら可能性あり 撤去のみ上限10万円/撤去・再築造上限20万円。市内事業者の施工が条件 深谷市
深谷市住宅耐震診断補助金 △ 木造の共同住宅のみ 診断費用の1/2、上限5万円。昭和56年5月31日以前着工・地上2階建て以下の木造 深谷市
深谷市木造住宅耐震化補助金 △ 木造の共同住宅のみ 改修費用の1/3、上限30万円。長屋・共同住宅は1戸あたり上限10万円 深谷市
マンションストック長寿命化等モデル事業(国) △ 先導性が必要 令和8年度は第3回募集が令和8年9月14日〜18日で実施 国土交通省
深谷市住宅用省エネ設備設置費補助金 × 使えない 申請者は市の住民基本台帳に記録された個人。管理組合は対象外 深谷市
埼玉県分譲マンションアドバイザー無料派遣 × 深谷市は対象外 対象は熊谷市・鴻巣市・桶川市・久喜市・北本市など19市。深谷市は含まれない 埼玉県
合併処理浄化槽設置補助金・空き家関連補助 × 使えない 個人住宅向けの制度。マンション共用部の修繕は対象外 深谷市

正直に申し上げます。深谷市には「マンションの大規模修繕そのものに直接お金が出る市独自の補助金」は、令和8年度時点で確認できませんでした。 これは深谷市に限った話ではなく、分譲マンションのストック数が少ない自治体では珍しくありません。

ではどうするか。ここからが本題です。深谷市で効くのは、現金の補助ではなく「税」と「認定」です。


深谷市の分譲マンションは21件|この数字が管理組合にとって持つ意味

深谷市は令和6年4月に「深谷市マンション管理適正化推進計画」を策定し、あわせて市内の分譲マンション全21件の管理組合へアンケートを郵送して実態調査を行いました(出典:深谷市分譲マンション実態調査アンケート結果)。

21件という数字を、私は二つの意味で読んでいます。

ひとつ目は、行政との距離が近いということ。 東京23区のように数千棟を抱える自治体では、担当者が個別のマンション事情を把握するのは不可能です。深谷市の建築住宅課(電話048-574-6655)は、21件なら一棟一棟の相談に応じる余地があります。理事会として制度を確認したいとき、窓口に直接聞ける環境は大きな利点です。

ふたつ目は、前例が乏しいということ。 深谷市内で管理計画認定を取った事例、長寿命化促進税制を使った事例は、まだ厚みがありません。「近所のあのマンションがやっていたから」という判断材料が使えない。だからこそ、理事会は制度の一次情報を自分で押さえる必要があります。

私が現場で一番悔しい思いをするのは、使えたはずの制度を、締切を過ぎてから知る理事長さまにお会いするときです。深谷市のように前例が少ない街では、これが起こりやすい。


深谷市のマンション管理計画認定制度|市への申請手数料は無料

深谷市は令和6年4月の推進計画策定を受けて、深谷市マンション管理計画認定制度の運用を開始しています。

マンション管理計画認定制度とは、管理組合の運営・管理規約・経理・長期修繕計画などが国の基準を満たしている場合に、市が「適切に管理されているマンション」として認定する制度です(マンションの管理の適正化の推進に関する法律に基づく制度。平成12年法律第149号、令和2年6月24日改正)。

深谷市の認定手続きは4ステップ

  1. 事前確認を依頼:公益財団法人マンション管理センターに、認定基準への適合確認を依頼します
  2. 事前確認適合証を受領:管理計画認定手続支援システムを通じて発行されます
  3. 市へ認定申請:同じシステムから深谷市へ申請します
  4. 認定通知を受領:市の審査完了後に発行されます

ここで深谷市の特徴として押さえておきたいのが、市への申請手数料はかからないという点です(出典:深谷市「マンション管理について」)。自治体によっては認定申請に数千円から1万円超の手数料を設定しているところもありますので、深谷市の管理組合にとっては負担の軽い設計です。

ただし注意点が2つあります。

  • 事前確認適合証がなければ、市は認定申請を受け付けません。 順番を飛ばせない制度です
  • マンション管理センターの事前確認には別途費用がかかります。 管理組合の規模により異なるため、同センターへ直接ご確認ください

認定を取ると何が変わるか

認定そのものは、工事費を直接下げてくれるわけではありません。効いてくるのは次の3点です。

  • マンション長寿命化促進税制の適用ルートになる(後述。ここが最も金額インパクトが大きい)
  • 住宅金融支援機構の【フラット35】が当初5年間で年0.25%引き下げ、マンション共用部分リフォーム融資が全期間で年0.2%引き下げ(出典:国土交通省リーフレット)
  • マンションすまい・る債の利率上乗せ(同上)

修繕積立金が不足していて借入を検討している管理組合にとって、共用部分リフォーム融資の0.2%引き下げは、返済総額で無視できない差になります。


【最重要】マンション長寿命化促進税制は令和9年3月31日が期限

深谷市の管理組合にとって、令和8年度中に最も優先度が高いのがこれです。

マンション長寿命化促進税制は、一定の要件を満たす大規模修繕工事を完了したマンションについて、各区分所有者が翌年度に支払う固定資産税(建物部分のみ、1戸あたり100㎡相当分まで)を1/2〜1/6の範囲内で減額する制度です。減額割合は自治体の条例で決まります。

主な要件

項目 内容
対象マンション 築20年以上かつ10戸以上で、管理計画の認定を取得したマンション(または助言・指導を受けた管理組合のマンション)
工事要件 長寿命化工事(外壁塗装等工事、床防水工事、屋根防水工事)を過去に1度以上実施しており、令和5年4月1日〜令和9年3月31日の間に2回目以降の長寿命化工事を完了していること
積立金要件 令和3年9月以降に、修繕積立金の額を管理計画の認定基準未満から認定基準以上に引き上げていること
申請期限 工事完了後3か月以内に市町村へ申請

(出典:国土交通省「マンションの大規模修繕をすると固定資産税が減税されます!」、2025年4月発行)

ここで深谷市の理事会に逆算していただきたいのが、工事完了の期限が令和9年3月31日である点です。

大規模修繕は、劣化診断・設計・業者選定・総会決議・着工・竣工まで、一般的に1年半から2年かかります。仮に今から動いても、令和9年3月の竣工に間に合わせるのは相当タイトです。加えて、管理計画の認定を先に取得しておく必要があります。

つまり、今年度中に「認定を取るかどうか」を決められるかどうかが分かれ目です。理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。

なお、令和8年度税制改正大綱(令和7年12月)では、マンション関連では「老朽化マンションの再生等の円滑化のための事業施行に係る特例措置の拡充等」が示されていますが、長寿命化促進税制そのものの延長は主要項目として明記されていません(出典:国土交通省「令和8年度税制改正概要」)。延長を前提に計画を組むのは危険です。 現行の期限で動くことをおすすめします。

なお国土交通省は令和8年4月1日付で、大規模の修繕等証明書・過去工事証明書・修繕積立金引上証明書などの様式・通知を更新しています。申請書類は必ず最新版をご確認ください。


深谷市の耐震補助は「木造」限定|RC造マンションは対象外

深谷市には住宅耐震化の補助制度が2本ありますが、分譲マンションの多くを占める鉄筋コンクリート造(RC造)は対象外です。ここは誤解の多いところなので、はっきり書いておきます。

深谷市住宅耐震診断補助金交付事業

  • 補助額:診断費用の1/2、上限5万円
  • 対象:深谷市内にあり、現在居住されており、地上2階建て以下の木造在来軸組工法または木造枠組壁工法で、昭和56年5月31日以前に工事着手した住宅(長屋・共同住宅を含む)
  • 建築士法第2条第1項に規定する建築士が実施する耐震診断であること
  • 必ず診断着手前に申請(着手後は受付不可)

深谷市木造住宅耐震化補助金交付事業

  • 補助額:改修費用の1/3、上限30万円
  • 65歳以上のかたのみが居住する住宅は上限50万円
  • 長屋住宅・共同住宅は1戸あたり上限10万円
  • 市外業者が施工する場合は補助額が1/2
  • 対象:耐震診断で上部構造評点が1.0未満と判定された建物を、1.0以上に改修する工事
  • 必ず工事着手前に申請

(出典:深谷市「住宅耐震化補助制度」)

木造の共同住宅(木造アパート等)をお持ちのオーナーさまには、1戸あたり10万円という枠が効きます。10戸あれば100万円です。ただし上限30万円という棟あたりの枠との関係は、必ず建築住宅課へご確認ください。

注意点として、このページの更新日は2024年4月1日です。 リンクされている案内パンフレットのファイル名は令和8年度版を示していますが、令和8年度の予算枠・受付状況については建築住宅課(048-574-6655)への確認をおすすめします。


深谷市のブロック塀撤去等補助制度|共用部でも狙える数少ない実費補助

マンションの敷地と道路の境界にブロック塀がある管理組合にとって、これは実費が出る貴重な制度です。

区分 補助上限 算定方法
撤去のみ 上限10万円 1mあたり1万円または撤去費用の1/2の低い方
撤去・再築造 上限20万円 1mあたり1.5万円または撤去・再築造費用の1/2の低い方
緊急輸送道路・小中学校通学路に面する場合 各5万円を加算(撤去のみ15万円/撤去・再築造25万円) 同上

(出典:深谷市ブロック塀撤去補助制度のご案内)

対象となる塀の条件

  • 深谷市内にあり、道路法の道路・建築基準法の道路等に面していること
  • コンクリートブロックの塀または組積造の塀
  • 高さ1.2mを超え、地震により倒壊するおそれのあるもの
  • 補助対象者は、危険なブロック塀等の存する土地の所有者または管理者で、市税を滞納していない者

ここが深谷市独自のルール

正直にお伝えしなければならない点が2つあります。

1つ目。対象経費は「市内に本店、支店または営業所を有する事業者」が行う工事に限られます。 つまり、私ども株式会社明誠のような市外の施工会社が撤去工事を行うと、この補助は使えません。ブロック塀の撤去部分だけは深谷市内の事業者へ発注いただき、外壁・防水などの共用部工事は別発注にする、という組み方が現実的です。自社の受注より、管理組合の総支出を下げるほうが先だと私は考えています。

2つ目。深谷市住宅耐震診断補助制度・木造住宅耐震化補助制度との併用はできません。 どちらか一方です。

また、市の取扱い基準では「部分撤去は不可(基礎まで全撤去が原則)」「ブロック・石積等を一部残す工事は対象外」「撤去のみで一度補助を受けた場合、期間を置いて新たな塀を設置しても対象外」といった細かい運用が定められています(出典:深谷市ブロック塀撤去等補助金取扱い基準)。着手前申請が絶対条件ですので、理事会で工事を決議する前に窓口へご相談ください。


埼玉県のマンションアドバイザー無料派遣に、深谷市は入っていません

深谷市の管理組合が「専門家に無料で見てもらいたい」と考えたとき、最初にぶつかる壁がこれです。

埼玉県は「市部におけるマンション管理士等派遣制度創設促進事業」として、県分譲マンションアドバイザーを管理組合へ無料で最大2回まで派遣しています。ところが、その対象は次の19市に限られます。

熊谷市、飯能市、狭山市、鴻巣市、上尾市、戸田市、入間市、朝霞市、志木市、和光市、桶川市、久喜市、北本市、八潮市、富士見市、三郷市、坂戸市、鶴ヶ島市、吉川市

(出典:埼玉県「市部における埼玉県分譲マンションアドバイザーの無料派遣について」、掲載日2026年7月6日)

深谷市は含まれていません。 隣接する熊谷市が対象なので混同されやすいのですが、深谷市の管理組合は申し込めません。しかも令和8年度分は、そもそも予算上限(13組合)に達して受付が終了しています。

では深谷市の管理組合はどこを頼ればよいか。現実的な選択肢は3つです。

  1. 埼玉県のマンション管理相談:毎週日曜日、JR大宮駅構内の埼玉県住宅供給公社「住まい相談プラザ」で、事前予約制・1回1時間までの相談を受け付けています(出典:埼玉県「マンション管理相談・セミナー」)
  2. 公益財団法人マンション管理センター:管理計画認定の事前確認と一体で、管理状況の棚卸しができます
  3. 深谷市建築住宅課:21件という規模だからこそ、個別相談に応じる余地があります

なお県は「令和10年度以降、派遣については各市にお問い合わせください」としています。深谷市が独自の派遣制度を整備するかどうかは、今後の推進計画の運用次第です。


深谷市は「限定特定行政庁」|12条点検の提出先は埼玉県熊谷建築安全センター

補助金と直接は関係しませんが、大規模修繕の計画とセットで必ず確認いただきたい実務があります。

深谷市は平成6年4月1日から限定特定行政庁です。そのため、建築基準法第12条に基づく定期報告(いわゆる12条点検)の提出先は、多くの建築物について埼玉県熊谷建築安全センターとなります(出典:埼玉県「建築確認べんり帳(深谷市)」)。

隣の熊谷市は特定行政庁ですので、提出先が異なります。管理会社が広域で複数物件を扱っている場合、ここを取り違える事故が実際に起きます。

12条点検では、竣工または外壁改修から10年を超えた建築物について、全面打診等による外壁調査が求められます。この打診調査、足場を組むと数百万円単位の仮設費がかかりますが、ロープアクセス工法(無足場工法。産業用ロープで作業員が降下しながら施工・調査する方法)なら仮設費を大幅に圧縮できます。私はこれを、必ずワンセットでご提案するようにしています。ロープアクセスの技術的な詳細や安全基準は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで解説しています。


補助金がない前提で、深谷市の大規模修繕費をどう下げるか

深谷市には共用部の大規模修繕に直接使える市の補助金がない。その前提に立つと、管理組合が本当に取り組むべきは工事費そのものの構造を変えることです。

仮設足場が総工費の15〜25%を占めている

30戸規模のマンションの大規模修繕で、総工費は3,500万〜5,000万円がひとつの目安です(物件の規模・劣化状況により大きく変動します)。このうち仮設足場が15〜25%を占めます。つまり500万〜1,200万円が、工事そのものではなく「足場」に消えている計算です。

足場とロープアクセスの差額の考え方

10階建て・外周80m・工期3か月の物件を例にとると、仮設足場が約168万円かかるケースで、ロープアクセス工法なら約59万円。差額はおよそ109万円という試算になります。あくまで一例で、実際の見積は建物形状・作業量・工程により大きく変わりますが、桁が違うことはご理解いただけると思います。

工種別の㎡単価の目安も挙げておきます。外壁塗装3,500〜4,500円/㎡、外壁打診調査250〜500円/㎡、防水5,000〜8,000円/㎡。いずれも参考値で、下地の傷み具合で上下します。

ロープアクセスが向く物件・向かない物件

両論併記で申し上げます。

向いているのは、外壁の劣化が部分的な物件、足場架設が困難な狭小敷地・隣地近接の物件、居住者の生活影響を抑えたい物件、そして12条点検の打診調査です。足場を組まないので、洗濯物が干せない・窓が開けられない・防犯上の不安があるといった居住者ストレスがほとんど発生しません。

向いていないのは、外壁の全面的なタイル張替えや大規模な躯体補修など、作業量が膨大で常設の作業床が必要なケースです。この場合は従来の足場工法のほうが結果的に安くなります。

だから私どもは、部位ごとに足場とロープアクセスを使い分けるハイブリッド工法もご提案しています。3つの工法から建物に合った組み合わせを選べることが、株式会社明誠の設計思想です。詳しくは明誠のロープアクセス工法の技術詳細と大規模修繕の料金の考え方をご覧ください。同業のかた・フランチャイズ加盟をご検討のかたは、ロープアクセスドットコムに技術情報と訓練情報をまとめています。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたり、明誠の安全管理の考え方は別ページにまとめています。これまでの工事の実際は明誠の施工事例からご覧いただけます。


深谷市の管理組合が令和8年度中にやるべき5ステップ

  1. 長期修繕計画の残存期間を確認する(計画期間30年以上、期間内に大規模修繕2回以上が認定基準)
  2. 修繕積立金の月額㎡単価を確認する(20階未満・延床5,000㎡未満なら235円/㎡・月以上が認定基準のひとつ)
  3. 管理計画認定を取るかどうかを理事会で決める(深谷市への申請手数料は無料。事前確認は先に必要)
  4. 長寿命化促進税制の令和9年3月31日から逆算する(工事完了期限。間に合わないなら次の周期で設計する)
  5. 敷地のブロック塀の高さを測る(1.2m超で道路に面していれば、市内事業者施工を条件に補助の可能性)

このうち1と2は、管理会社に依頼すれば今週中にでも数字が出ます。まずはそこからです。


よくあるご質問

Q. 深谷市に、マンションの大規模修繕そのものへの補助金はありますか?

A. 令和8年度時点で、深谷市の公式サイトでは共用部の大規模修繕に直接交付される市独自の補助金は確認できませんでした。効くのはマンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)と管理計画認定によるローン金利引き下げです。最新の状況は深谷市建築住宅課(048-574-6655)へご確認ください。

Q. 管理計画認定の申請に、深谷市ではお金がかかりますか?

A. 市への申請手数料はかかりません。 ただし、申請の前提となる公益財団法人マンション管理センターの事前確認には別途費用が発生します(出典:深谷市)。

Q. 築20年、24戸のRC造マンションです。深谷市の耐震補助は使えますか?

A. 使えません。深谷市の耐震診断・耐震改修の補助は、昭和56年5月31日以前に工事着手した地上2階建て以下の木造が対象です。RC造は対象外です。

Q. 敷地のブロック塀の撤去を、大規模修繕と同じ業者にまとめて頼めますか?

A. まとめること自体は可能ですが、深谷市のブロック塀撤去等補助制度は市内に本店・支店・営業所を有する事業者の施工が補助対象経費の条件です。市外業者に一括発注すると、その部分の補助は受けられません。塀だけ分離発注する判断が必要です。

Q. 埼玉県の無料アドバイザー派遣は深谷市でも使えますか?

A. 使えません。対象は熊谷市・鴻巣市・桶川市・久喜市・北本市など19市で、深谷市は含まれていません。加えて令和8年度分は予算上限に達し、受付が終了しています(出典:埼玉県)。代替として、毎週日曜のJR大宮駅構内「住まい相談プラザ」の相談をご利用いただけます。

Q. 長寿命化促進税制で、1戸あたりいくら安くなりますか?

A. 減額されるのは工事完了翌年度の建物部分の固定資産税のみで、1戸あたり床面積100㎡相当分まで、1/2〜1/6の範囲内です。減額割合は自治体の条例で決まるため、具体額は深谷市の税務担当窓口にご確認ください。建物分の年税額が8万円のマンションで1/2減額なら、4万円程度が目安になります。

Q. 12条点検の外壁打診調査は、足場を組まないとできませんか?

A. 足場は必須ではありません。ロープアクセス工法やゴンドラ、高所作業車でも実施できます。打診調査の㎡単価の目安は250〜500円で、足場を組まない分、仮設費を抑えられます。深谷市の場合、報告先は埼玉県熊谷建築安全センターです。

Q. ロープアクセス工法は、深谷市のような郊外型マンションでも意味がありますか?

A. 敷地に余裕があり足場が問題なく組める物件では、全面改修なら足場のほうが有利なこともあります。一方で、部分補修や調査、隣地が近い部位、工期を短縮したいケースでは郊外でも効果が出ます。物件を見てから判断するのが正解で、図面と現地写真があれば概算の比較をお出しできます。


この記事のポイントまとめ

  • 深谷市の分譲マンションは市の調査対象で21件。前例が少ない分、制度は自分で押さえる
  • 共用部の大規模修繕に直接出る市の補助金は令和8年度時点で確認できず
  • 深谷市の管理計画認定は市への申請手数料が無料。事前確認適合証は必須
  • 長寿命化促進税制は令和9年3月31日までの工事完了が条件。逆算が要る
  • 深谷市の耐震補助は木造2階建て以下限定。RC造マンションは対象外
  • ブロック塀撤去補助は市内事業者施工が条件。撤去のみ上限10万円
  • 埼玉県の無料アドバイザー派遣19市に深谷市は非該当。令和8年度分は受付終了
  • 12条点検の提出先は埼玉県熊谷建築安全センター(深谷市は限定特定行政庁)

出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月22日時点で公表されている深谷市および国土交通省・埼玉県の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特に深谷市の耐震化補助・ブロック塀撤去補助のページは更新日が2024年4月1日であり、令和8年度の予算枠・受付状況が反映されていない可能性があります。実際に申請される前に、必ず深谷市および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


深谷市のように分譲マンションが21件しかない街では、管理組合が孤立しがちです。県の無料派遣も使えず、隣の棟の前例もない。だからこそ、制度の期限だけは押さえておいてください。とくに長寿命化促進税制の令和9年3月31日は、今から動いてぎりぎりの線です。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームからどうぞ。


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月22日

練馬区のマンション漏水・防災対策|台地の区でも水は出る、内水氾濫と崖15か所の読み方【大規模修繕2026年度版】

2026年9月22日 更新

練馬区の富士見台で、築26年の分譲マンションの理事長さまから「地下駐車場の壁から水が滲む。ただ、うちは台地の上だから水害は関係ないと思っていた」と言われたことがあります。実際に見てみると、原因は川ではありませんでした。前面道路が緩い谷筋に落ちていて、大雨のときに道路側の雨水が敷地に入り、スロープを下って地下へ回っていたのです。石神井川までは直線で1km以上。川は一滴もあふれていません。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。

練馬区という区は、私の感覚では23区のなかでもっとも「川ではなく下水道で浸かる区」です。理由は後で詳しく書きますが、区の水害ハザードマップそのものが、そういう構成になっています。台地の上だから安心、という理解でいると、いちばん確率の高いリスクを見落とすことになります。

今日は、練馬区が公表している最新のハザード資料から逆算して、練馬区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。


結論:練馬区で優先すべきは「川対策」より「道路から入る水の対策」です

先に結論から申し上げます。練馬区で大規模修繕の優先順位を決めるとき、私が最初に確認するのは屋上ではありません。前面道路と敷地の高低差、そして敷地内の雨水の逃げ道です。

練馬区の水害ハザードマップは、地図の見方をこう説明しています。赤枠の区域は区内の河川(石神井川、白子川、江古田川)の洪水により浸水するリスクがある区域。そして赤枠以外の区域は、内水氾濫(下水道施設で水を排水しきれず、水浸しになる現象)により浸水するリスクがある区域です(出典:練馬区「練馬区水害ハザードマップ」/更新日 2026年6月29日)。

同じページには、高潮のリスクは、練馬区にはありませんとも明記されています。津波も内陸ですから想定されていません。つまり練馬区のハザードは、洪水と内水氾濫と土砂災害の3つに絞って考えればよい。これは修繕計画を立てるうえで、かなり恵まれた条件です。絞れるということは、予算を集中できるということですから。

私が理事長さまにお伝えしているのは、この3つです。

  1. 1階まわりと地下・半地下への浸入経路を、外壁塗装より先に押さえる(内水氾濫は川から離れていても起きます)
  2. 屋上とバルコニーの「排水能力」を、防水の劣化より先に見る(時間153mmという想定で設計された建物はほとんどありません)
  3. 土砂災害の心配は、区内15か所の該当地以外では基本的に不要(そのぶんの予算を水に回せます)

練馬区のハザードマップを1枚で読む(洪水・内水・土砂・液状化・高潮)

区が公表している資料を、マンション修繕の視点で1枚に整理しました。

災害種別 練馬区の該当 想定規模・該当箇所
洪水(外水氾濫) あり 石神井川・白子川・江古田川。1時間最大雨量153mm/24時間総雨量690mm
内水氾濫(雨水出水) あり(区内のほぼ全域が対象) ハザードマップの赤枠以外はすべて内水リスク区域
土砂災害 一部あり 警戒区域15か所・特別警戒区域11か所(区指定分)
液状化 台地部は相対的に低い 東京都の液状化予測図で地点ごとに確認
高潮 なし 区が「リスクはありません」と明記
津波 なし 内陸のため想定なし

洪水の想定降雨は、1時間最大雨量153mm、24時間総雨量690mmです。これは東京都が令和6年2月15日に水防法第14条第2項に基づいて指定した「石神井川及び白子川洪水浸水想定区域図」の想定最大規模降雨と同じ値で、関係する区市は北区・荒川区・板橋区・練馬区・小金井市・小平市・西東京市とされています(出典:東京都建設局「石神井川及び白子川洪水浸水想定区域図」/更新日 2024年6月12日)。

この区域図には、浸水深だけでなく家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流/河岸侵食)の参考図も公開されています。石神井川・白子川の護岸にごく近い物件をお持ちの場合、ここは一度見ておく価値があります。浸水と、建物そのものが壊れる想定は、意味が違いますから。

そして内水です。区のハザードマップには注釈があり、河川周辺の赤枠区域については洪水と雨水出水の2つの想定結果が出ているものの、区のマップには洪水側の想定結果を反映していると書かれています。雨水出水側の結果は、令和8年3月に東京都下水道局が公表した雨水出水浸水想定区域図で確認する形です。

つまり練馬区は、「区のマップだけ見れば足りる区」ではありません。私が調査でお預かりした物件では、区のマップと都下水道局の区域図を必ず両方あたるようにしています。同じ敷地で、想定される深さが違うことがあるからです。


練馬区の浸水履歴は「更新され続けている資料」です

もう1つ、区の資料で使えるものがあります。浸水履歴です。区は平成元年以降で練馬区に被害報告があった履歴の一覧をPDFで公開しており、そのページの更新日は2026年9月21日(出典:練馬区「浸水履歴」)。つい先日まで更新され続けている資料です。

ハザードマップは「これから起こりうること」の地図ですが、浸水履歴は「実際に起きたこと」の地図です。私の経験上、管理組合の総会で予算を通しやすいのは後者です。想定の話をすると「そんな雨は降らない」という声が必ず出ますが、履歴を見せると議論の性質が変わります。自分の町の名前が載っていれば、それは想定ではなく事実ですから。

平成17年9月4日の集中豪雨のように、石神井川流域が広く浸水した事例も含まれています。理事会の資料をつくるなら、まずこのPDFで自分の町丁名を検索してみてください。費用はかかりません。


練馬区の地域特性と漏水事故の関係

練馬区は武蔵野台地の上に広がる区ですが、区内は平坦ではありません。石神井川、白子川、江古田川が刻んだ谷が走っていて、台地面と谷底の間には斜面地があります。この地形の違いが、漏水事故の出方にそのまま反映されます。

谷筋(石神井川・白子川・江古田川沿いの低地)
浸水と内水が主役です。1階店舗・地下駐車場・機械式駐車場のピット、受変電設備の設置高さが効いてきます。ここでは外壁より先に、1階まわりの水の経路を見ます。

台地の上(平坦地)
川から遠いので安心と思われがちですが、私が実際に呼ばれる漏水は台地の上でも起きます。原因はほぼ排水です。時間50mmを超える雨でルーフドレンやバルコニー排水が呑みきれず、水位が立ち上がり、防水の立上りを越える。防水そのものの劣化ではなく、排水能力の不足が原因です。

斜面地(南田中・関町北・上石神井・旭町・土支田・大泉町・桜台の一部)
擁壁と斜面の安定が絡みます。擁壁の水抜き穴が詰まっていると、背面に水圧がかかります。ここは建物の外壁だけを見ていても答えが出ません。

旧公務員住宅・団地系の中層ストック
練馬区は大規模な集合住宅ストックが多い区です。築40年前後で、エキスパンションジョイント(建物のつなぎ目に設ける隙間)のシーリングが切れているケースを何度も見ました。ここは雨のたびに水が入るのに、外からは見えません。

正直に申し上げます。「うちは台地だから」という前提から入ると、この4つのうち3つを見落とします。


大規模修繕で先に見るべき漏水ポイント7つ

私が練馬区の物件で調査に入るとき、優先順位をつけて見る7か所です。

  1. 屋上防水の立上りと押えコンクリートの打継ぎ — 平場より先に立上りです。水位が上がったときに越えるのはここです
  2. ルーフドレンとストレーナー — 落ち葉の多い区です。区の緑被率の高さは住環境としては魅力ですが、ドレンには厳しい条件になります
  3. バルコニー排水口と防水層の端部 — 各戸の私物で塞がれていることが多い場所です。総会で一斉点検をかけるのが早いです
  4. 外壁シーリングの打継ぎ目地 — 打替えの目安はおおむね10〜15年。ここが切れると、雨の方向によって上階から水が回ります
  5. サッシまわりの取り合い — 練馬区の中層ストックで多い漏水の実際の入口です。外壁のクラックを疑って塗り直しても止まりません
  6. エキスパンションジョイント — 団地型・棟続き型で要注意。カバーの下のシーリングは外から見えません
  7. 1階まわりの基礎打継ぎと敷地の雨水桝 — 内水氾濫が主役の区では、ここが最優先になる物件があります

金額の目安も書いておきます。実際の見積は物件の規模・形状・劣化状況で大きく変わりますので、あくまで参考値としてご覧ください。

工種 単価の目安
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡
打診調査(外壁タイル・モルタル) 250〜500円/㎡
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/㎡
30戸規模マンションの大規模修繕総額 3,500〜5,000万円(うち仮設足場が15〜25%)

仮設足場が総額の15〜25%というのは、言い換えれば工事費の5分の1前後が「作業員が登るための費用」だということです。ここに手を入れられるかどうかが、同じ予算で直せる範囲を決めます。


漏水の緊急対応で、ロープアクセスが強い理由

漏水対応で、私がいちばん悔しい思いをするのは「原因が分かっているのに、足場を組むまで直せない」という状況です。台風のあとに連絡をいただいて、見積・総会・足場架設で1か月半。そのあいだに次の雨が来ます。

ロープアクセス工法(産業用ロープで壁面を上下して作業する無足場工法)なら、足場の架設が要りません。私の実務感覚では、当日から翌日の着手が可能なケースが多いです。部分補修であれば、その日のうちに止水まで持っていけることもあります。

費用の差も具体的に書きます。10階建て・外周80m・工期3か月という条件で試算すると、仮設足場は約168万円、同じ範囲をロープアクセスで施工した場合は約59万円。差額は約109万円です。緊急の部分補修であれば、そもそも足場を組まない判断ができるので、差はさらに大きくなります。

技術的な裏付けについては、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで、器具構成・二重確保・作業手順まで公開しています。同業の方やフランチャイズ加盟をご検討の方は、そちらのほうが情報が濃いはずです。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。そしてロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を前提にした体制で、私は日本ロープ高所作業協会の事務局も担っています。安全の話を先にするのは、緊急対応こそ段取りが雑になりがちだからです。

工法の考え方は明誠のロープアクセス工法の技術詳細、漏水対応の進め方はマンション・ビルの漏水調査と補修にまとめています。


防災上の共用部は「高さ」で優先度が決まります

内水氾濫が主役の区では、修繕の優先度は「劣化の度合い」ではなく「設置されている高さ」で決まります。私が現地で確認する順番はこうです。

設備 確認すること 止まると何が起きるか
受変電設備(キュービクル) 設置高さ、屋外か屋内か 建物全体が停電。復旧に時間がかかる
給水ポンプ・受水槽 ポンプ室の位置(地下か) 上階の給水が止まる。トイレが使えない
エレベーター ピットの位置、機械室の高さ 上階の生活が成立しなくなる
自家発電設備 燃料タンクの位置 非常用照明・排水ポンプが止まる
避難通路・外部階段 鉄部の腐食、手すりの固定 避難そのものができない
機械式駐車場ピット 排水ポンプの能力 車両が水没。復旧費が高額に

このうち受変電設備・給水ポンプ・エレベーターピットの3点は、実物を見るだけで済みます。費用はゼロです。それでいて防災上いちばん効く確認です。国土交通省も建築物における電気設備の浸水対策の考え方を公表していますので、設計変更を検討する段階ではそちらも参照してください。

なお外部階段の鉄部やバルコニーの手すりは、防水・塗装と同じタイミングでしか足場が架からないため、大規模修繕のときに一緒に見ておかないと次は12年後になります。私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。


練馬区で使える防災・耐震の助成(令和8年度)

ここからが本題です。練馬区には、マンションの管理組合が使える制度が令和8年度時点で整っています。特に1つ、この夏に始まったばかりの制度があります。

止水板設置助成(令和8年7月開始・管理組合も対象)

区は浸水被害から区民の生命および暮らしを守るため、令和8年7月より止水板に関する助成制度を開始しました。助成対象者に「練馬区内のマンション管理組合」が明記されている点が、この制度の重要なところです。

  • 助成額:工事・購入費用の2分の1(上限100万円)
  • 対象:建築物等への浸水を防ぐことを目的に出入口等に設置する、取外しまたは移動が可能なもの(設置に特別な工事を要しない簡易なものを含む)
  • 回数:一つの建築物に対して1回まで
  • 管理組合が申請する場合の必要書類:止水板の設置について集会の決議をしたことを証する書類(議事録等)が必要
  • 窓口は土木部計画課総合治水係(練馬区役所本庁舎13階)

(出典:練馬区「止水板設置の助成について」/更新日 2026年7月1日)

1建築物1回限りという設計なので、どこに設置するかを決めてから申請するほうがよいと考えています。それと、議事録が要件に入っているということは、総会や理事会の議案にしないと申請できないということです。次の総会の議題に入れるかどうかが、実務上の分かれ目になります。

分譲マンションの耐震診断・改修の助成(令和8年度)

昭和56年(1981年)5月以前に新築工事に着手した建築物で、耐震化基準に満たない建築物が対象です。分譲マンションの要件は「地階を除く階数が3以上で耐火建築物または準耐火建築物」「2以上の区分所有者がいる」などとされています。

項目 助成率 助成限度額
耐震診断(診断等費用180万円以下) 6分の5 800万円
耐震診断(診断等費用180万円以上) 4分の3+15万円 800万円
実施設計 6分の5 200万円
耐震改修工事 3分の2 3,000万円
除却工事(防災まちづくり事業実施地区のみ) 3分の2 3,000万円

(出典:練馬区「民間建築物(住宅以外)の耐震改修工事等の助成」/更新日 2026年4月1日)

限度額には別途、面積単価の上限があります。また業者との契約や診断の実施は交付決定の後でなければならず、原則として診断・設計・工事はそれぞれ単年度で終わらせる必要があります。窓口は都市整備部 防災まちづくり課 耐震化促進係(03-5984-1938)です。

賃貸マンションや事務所ビルの場合は「特定建築物」(主として3階以上かつ1,000㎡以上)の区分になり、耐震診断3分の2・限度額150万円、耐震改修工事6分の1・限度額1,000万円と、分譲マンションとは条件が異なります。オーナーさまは自分の物件がどの区分かを先に確認してください。

雨水浸透施設の助成は、マンションでは使いにくい

ここは正直にお伝えします。区の雨水浸透施設・雨水タンクの助成(限度額55万円、雨水タンクは本体価格の2分の1・限度額2万5千円)は、助成の対象者が「敷地の所有権または借地権を有する個人」で、法人所有家屋は対象外、さらに敷地面積500㎡未満という要件があります(出典:練馬区「雨水浸透施設の助成について」/更新日 2026年4月1日)。

分譲マンションや法人所有の賃貸マンションでは、この制度はそのままでは使えません。使えないものを「使えます」と書くのは、私はしたくありません。マンションで浸水対策の助成を狙うなら、止水板助成のほうが現実的です。


土砂災害警戒区域は、区内15か所・特別警戒区域11か所です

練馬区の土砂災害警戒区域は、区指定分で警戒区域15か所・特別警戒区域11か所。該当するのは次の地区の一部です。

桜台6丁目、南田中3丁目、南田中5丁目、大泉町1丁目、旭町3丁目、旭町2丁目、土支田4丁目、大泉町3丁目、上石神井3丁目、関町北3丁目。

指定は平成29年3月13日と平成30年5月31日。なお令和2年11月27日に、斜面対策工事により指定要件が消失したため、旭町2丁目の一部について警戒区域1か所・特別警戒区域1か所の指定が解除されています。区境では板橋区成増1丁目の指定区域の一部が、所在地としては練馬区旭町3丁目にかかります(出典:練馬区「土砂災害警戒区域等の指定について」/更新日 2020年12月1日)。

このページの更新日は2020年ですが、土砂災害警戒区域の指定は年度で変わる補助制度とは性質が違い、東京都が指定・解除したときに更新されるものです。最新の図面は東京都建設局の土砂災害警戒区域等マップでご確認ください。

区の大半は台地ですから、この10地区に該当しなければ、土砂災害を修繕計画の優先項目に置く必要はありません。私はこれを、予算配分の話として理事長さまにお伝えしています。心配する対象を減らせるのは、それ自体が計画上の利点です。


よくあるご質問

Q. 練馬区は台地の上なのに、なぜ浸水対策が必要なのですか?

A. 区の水害ハザードマップが、赤枠以外のすべての区域を内水氾濫(下水道で排水しきれない浸水)のリスク区域としているためです。川から離れていても、下水道の能力を超える雨が降れば道路や窪地に水がたまります。台地であることは外水氾濫への強さですが、内水氾濫への強さではありません。

Q. 内水の想定は、区のハザードマップで分かりますか?

A. 河川周辺の赤枠区域については、区のマップは洪水側の想定を反映しています。雨水出水(内水)側の想定は、令和8年3月に東京都下水道局が公表した雨水出水浸水想定区域図でご確認ください。同じ敷地で深さの想定が異なる場合があります。

Q. 止水板の助成は、管理組合でも申請できますか?

A. できます。令和8年7月に始まった練馬区の止水板設置助成は、助成対象者に練馬区内のマンション管理組合が明記されています。工事・購入費用の2分の1・上限100万円で、一つの建築物に対して1回までです。申請には集会の決議をしたことを証する書類(議事録等)が必要ですので、総会または理事会の議案にしていただく流れになります。

Q. 大規模修繕と止水板・耐震の助成は、同じ年に申請したほうがよいですか?

A. 窓口が別(総合治水係と耐震化促進係)ですので、同時進行は可能です。ただし耐震助成は原則として診断・設計・工事をそれぞれ単年度で完了させる必要があるため、大規模修繕の工程とぶつけると窮屈になります。私は診断を前年度に済ませて、工事年度を大規模修繕に合わせる組み方をおすすめすることが多いです。

Q. 足場が組めない面の外壁調査は、どうすればよいですか?

A. ロープアクセス工法での打診調査(250〜500円/㎡が目安)か、ドローンによる外観調査を組み合わせます。練馬区は隣地との離隔が小さい物件や、敷地内通路が狭い物件が多く、実務ではこの2つのどちらかになることがほとんどです。ドローン調査の条件と限界もあわせてご覧ください。

Q. 台風のあと、まず何を見ればよいですか?

A. 屋上ドレンのストレーナー、バルコニー排水口、敷地の雨水桝、前面道路との高低差の4か所です。詰まりを取るだけで、次の大雨での漏水リスクはかなり下がります。ここは費用がかかりません。

Q. 賃貸マンションのオーナーでも相談できますか?

A. できます。収益物件では、漏水を1件起こすと原状回復費と空室期間の両方が効いてきます。練馬区は大江戸線・有楽町線・西武池袋線・西武新宿線の沿線で賃貸需要が厚いエリアですので、稼働率を落とさない工期の組み方まで含めてご提案しています。考え方は収益物件オーナー向けページとビルオーナー向けのご案内にまとめています。

Q. 漏水が起きてから連絡した場合、どれくらいで来てもらえますか?

A. ロープアクセスであれば足場の架設が不要なため、当日から翌日の着手が可能なケースが多いです。まずはお問合せフォームからご連絡ください。管理組合としての進め方は管理組合向けのご案内もご参照ください。


まとめ:今週、練馬区の理事会で動けること3つ

  1. 区の浸水履歴PDFで、自分の町丁名を検索する — 平成元年以降の被害報告が載っています。載っていれば、それは想定ではなく実績です
  2. 止水板助成を次の総会の議案に入れる — 令和8年7月開始、上限100万円、1建築物1回まで。議事録が申請要件なので、決議しないと進みません
  3. 受変電設備・給水ポンプ・エレベーターピットの設置高さを実物で見る — 費用ゼロで、防災上いちばん効く確認です

練馬区は、川からの水よりも道路と下水道からの水を先に考えるべき区です。だからこそ、外壁をきれいにする工事のなかで、水の入口を1つずつ潰していく設計ができます。順番を決めるだけの話なのですが、これを工事の前に整理できているかどうかで、同じ予算の効き方がまるで変わります。工法の選択肢を3つ(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)持っていると、その順番を組み替える自由度が上がります。技術面の詳細はロープアクセスドットコムの工法解説もあわせてご覧ください。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談はお問合せフォームからどうぞ。

明誠の施工事例もご覧いただけます。これまでに手がけた約6,000棟のうち、公開できるものを掲載しています。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月22日時点で公表されている練馬区および東京都・国土交通省・気象庁の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。止水板設置助成および雨水浸透施設助成は土木部 計画課 総合治水係(03-5984-2074)、耐震化の助成は都市整備部 防災まちづくり課 耐震化促進係(03-5984-1938)、ハザード情報は危機管理室 危機管理課(庶務係 03-5984-2762/計画係 03-5984-1327)へ、申請前に最新の内容をご確認ください。土砂災害警戒区域の指定に関するお問い合わせは東京都建設局河川部計画課 土砂災害対策担当(03-5320-5394)です。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月22日

足立区のマンション漏水・防災対策|6河川+内水+高潮、ゼロメートル地帯の修繕優先度と止水板助成50万円【大規模修繕2026年度版】

2026年9月22日 更新

足立区の千住地域で、築31年の分譲マンションの理事長さまから「去年の大雨で1階の集合ポスト脇から水が入った。荒川は決壊していないのに、なぜ」とご相談をいただいたことがあります。現地を見ると、答えは川ではありませんでした。前面道路の雨水桝が呑みきれず、道路上の水位が上がって、わずか十数センチの段差を越えて敷地に流れ込んでいた。荒川の堤防は無傷です。それでも建物は浸かりました。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。

足立区という区は、私の実感では23区でもっとも「水のメニューが揃っている区」です。荒川・利根川・江戸川・中川・綾瀬川・芝川(新芝川)という6つの大きな川に加えて、毛長川・伝右川・垳川といった中小河川、そして内水氾濫、さらに高潮まで、区が公表しているハザードマップに全部載っています。ここまで揃っている区は多くありません。

だからといって、全部を等しく心配する必要はありません。むしろ逆です。種類が多いからこそ、大規模修繕で先に潰すべき入口は絞り込める。今日はそれを、足立区が公表している最新の一次情報から逆算して整理します。


結論:足立区で先に手を打つべきは「地上1.5mまでの水の入口」です

先に結論から申し上げます。足立区で大規模修繕の優先順位を決めるとき、私が最初に見るのは屋上ではありません。地盤面から高さ1.5mまでの範囲に、水の入口がいくつあるかです。

理由は3つあります。

1つ目。足立区の水害ハザードマップは、洪水(6河川)・中小河川・内水氾濫・高潮の4系統で構成されていますが、このうち発生頻度がいちばん高いのは内水氾濫です。川があふれるには上流域も含めた大雨が要りますが、内水氾濫は区内に強い雨が降るだけで起きます。

2つ目。足立区は土砂災害警戒区域と津波災害警戒区域の指定が、現在のところ区内にありません(出典:足立区「足立区洪水・内水・高潮ハザードマップ(令和4年4月改訂)」/更新日 2026年9月18日)。斜面や擁壁の対策に予算を割かなくてよい、ということです。そのぶんを水に回せます。

3つ目。区の止水板設置工事助成が、止水板そのものだけでなく「内外壁の防水工事」「土間コンクリート打設工事」まで関連工事として対象にしているからです。これは大規模修繕の工事項目とほぼ重なります。後ほど詳しく書きますが、ここを知らずに工事の順番を決めてしまうと、使えたはずの助成を取り逃がします。

つまり足立区は、「心配する対象が多い区」ではなく「やることがはっきりしている区」です。


足立区のハザードを1枚で読む(令和8年10月発行版の変更点つき)

区が公表している資料を、マンション修繕の視点で1枚に整理しました。

災害種別 足立区の該当 想定・該当範囲
洪水(大河川) あり 荒川・利根川・江戸川・中川・綾瀬川・芝川(新芝川)の6河川
中小河川の氾濫 あり 毛長川・伝右川・垳川
内水氾濫(雨水出水) あり 令和8年3月に東京都が指定した雨水出水浸水想定区域が根拠
高潮 あり 東京都の高潮浸水想定区域図(令和6年12月)
土砂災害 なし 区内に指定なし
津波 なし 区内に指定なし

そして、ここが今月のニュースです。区のハザードマップページには、令和8年10月発行版の更新情報として次の2点が明記されています(更新日 2026年9月18日)。

  • 「内水氾濫」と「中小河川(毛長川、伝右川、垳川)の氾濫」の最大浸水深を分離したハザードマップに更新
  • 「内水氾濫」のハザードマップは、令和8年3月に東京都が水防法第14条の2の規定により指定した「雨水出水浸水想定区域」を基に作成

この「分離」が、実務では効きます。これまで内水と中小河川がひとまとめだったものが別々の図になったということは、自分の敷地で効いているのが下水道の限界なのか、それとも近くの中小河川なのかが、地図上で切り分けられるようになったということです。対策の打ち手が変わります。下水道側なら敷地内の排水と止水、中小河川側なら浸水深そのものへの備え。同じ「水が来る」でも、直す場所が違います。

内水氾濫の想定雨量も公表されています。時間最大雨量153mm・24時間総雨量690mm。区は「国が定めた科学的な算定ルールと過去の実際の豪雨実績を設定基準の根拠としている」と説明しています。

正直に申し上げます。時間153mmという雨を前提に排水計画が組まれている既存マンションは、まずありません。築30年前後の物件であれば、設計当時の想定は時間50mm前後です。だからこの数字は「うちの建物の排水は足りない」と嘆くための数字ではなく、足りない前提で、どこから水が入るかを1つずつ塞いでいくための数字だと考えています。


足立区の浸水履歴は、平成6年度以降が公開されています

想定の話をすると、総会では必ず「そんな雨は降らない」という声が出ます。私がそういうときに使うのは、想定ではなく実績の資料です。

足立区は、平成6年度以降に区内で発生した道路冠水・床下浸水・床上浸水の被害箇所を「水害区域図(浸水履歴)」としてPDFで公開しています。平成21年度以降の分は令和8年8月に更新されたばかりです(出典:足立区「足立区水害区域図(浸水履歴)について(平成6年度から)」/更新日 2026年8月26日)。

この資料には、なぜ平成6年度からなのかという説明も添えられています。足立区を含む23区の下水道普及率が平成6年度に概ね100%となり、その前後で被害状況が大きく異なるため、というのが区の説明です。裏を返せば、平成6年度以降に冠水の記録が残っている場所は、下水道が概ね整備された後でもなお水が出た場所だということになります。これは重い情報です。

注意点も区が明記しています。道路冠水は区が現地調査で確認した箇所が対象、床下・床上浸水はり災証明書を交付した件数、そして図はおおよその範囲を示すもので実際の浸水範囲とは異なる場合がある、と。あくまで参考として読む資料です。それでも、理事会の議案を通す材料としては、想定の地図より強いと私は思っています。

まず、ご自身のマンションの所在地をこのPDFで探してみてください。費用はかかりません。


足立区の地域特性と、漏水事故の出方

足立区は東京東部低地帯に位置し、墨田区・江東区・葛飾区・江戸川区とともに「江東5区」を構成しています。平成30年8月には5区で「江東5区大規模水害広域避難計画」と「江東5区大規模水害ハザードマップ」が策定されました(出典:足立区「江東5区広域避難推進協議会の検討結果について」)。大規模水害時には、標高が高い地域へ避難する広域避難が必要になる地域だという前提に立った計画です。

この「広域避難が前提」という点が、マンションの修繕計画に効いてきます。広域避難が想定されるということは、在宅避難の期間が長くなる可能性があるということでもあるからです。区のハザードマップには浸水継続時間の図も収録されていて、荒川・利根川・江戸川・中川・綾瀬川・芝川それぞれについて公表されています(内水氾濫の浸水継続時間を示す図は公表されていません)。

建物のタイプ別に、私が現場で見ている傾向を書いておきます。

千住・北千住周辺の中層ストック
商業地と住宅が混在し、1階が店舗のマンションが多いエリアです。1階店舗の出入口、シャッター下端、換気口の高さが効いてきます。ここは外壁より先に、地上1.5mまでを見ます。

中川・綾瀬川沿いの低地
洪水と内水の両方が絡みます。機械式駐車場のピット、受変電設備、給水ポンプの設置高さが最優先。設備が止まると、浸水が引いた後も生活が戻りません。

西新井・竹の塚周辺の団地系・大規模ストック
築40年前後で、エキスパンションジョイント(建物のつなぎ目に設ける隙間)のシーリングが切れているケースを何度も見ました。ここは雨のたびに水が入るのに、カバーの下なので外からは見えません。

舎人・入谷など区北部
毛長川が近い地域が含まれます。令和8年10月発行版で中小河川の浸水深が分離されたことで、ここは読みやすくなりました。

荒川・隅田川沿いの高層・タワー型
高さがあるぶん浸水そのものより、風雨の吹き上げによる上層階のサッシまわりの漏水と、下層階の設備被害という二層構造で考えます。


大規模修繕で先に見るべき漏水ポイント7つ

私が足立区の物件で調査に入るとき、優先順位をつけて見る7か所です。

  1. 1階まわりの基礎打継ぎ・配管貫通部 — 内水氾濫が主役の区では、ここが最優先になる物件があります。地上から低い位置の貫通部は、シーリングが痩せているだけで水が入ります
  2. 敷地の雨水桝と前面道路との高低差 — 道路側の水位が上がったときに、敷地がどこから受けるかを実測します。費用はかかりません
  3. 屋上防水の立上りと押えコンクリートの打継ぎ — 平場より先に立上りです。排水が追いつかず水位が上がったときに越えるのはここです
  4. ルーフドレンとストレーナー — 時間153mmという想定に対して、詰まったドレンは致命的です
  5. バルコニー排水口と防水層の端部 — 各戸の私物で塞がれていることが多い場所です。総会で一斉点検をかけるのが早いです
  6. 外壁シーリングの打継ぎ目地とサッシまわりの取り合い — 打替えの目安はおおむね10〜15年。外壁のひび割れを疑って塗り直しても止まらない漏水の、実際の入口はここであることが多いです
  7. エキスパンションジョイント — 団地型・棟続き型で要注意。外から見えないぶん、放置されやすい場所です

金額の目安も書いておきます。実際の見積は物件の規模・形状・劣化状況で大きく変わりますので、あくまで参考値としてご覧ください。

工種 単価の目安
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡
打診調査(外壁タイル・モルタル) 250〜500円/㎡
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/㎡
30戸規模マンションの大規模修繕総額 3,500〜5,000万円(うち仮設足場が15〜25%)

仮設足場が総額の15〜25%というのは、言い換えれば工事費の5分の1前後が「作業員が登るための費用」だということです。ここに手を入れられるかどうかが、同じ予算で直せる範囲を決めます。


足立区で使える止水板設置工事助成(令和8年度)

足立区の防災系の助成で、大規模修繕といちばん相性がよいのがこれです。条件を令和8年度の一次情報で確認しました(出典:足立区「止水板設置工事助成のご案内」/更新日 2026年4月1日)。

項目 令和8年度の内容
助成額 建物1棟につき上限50万円(対象工事費(税抜)の2分の1)
対象者 区内に住民登録のある個人、区内に本店・支店登記のある法人、マンション管理組合、民間の要配慮者利用施設の所有者・管理者
申請受付期間 令和8年4月1日(水)〜令和9年1月29日(金)
工事完了期限 令和9年2月26日(金)までに工事完了+区へ工事完了届の提出
対象工事(1) 止水板設置工事(金属等の浸水に耐えうる材質/取り外しまたは移動が可能/繰り返し使用が可能)
対象工事(2) 関連工事:内外壁の防水工事、土間コンクリート打設工事、その他必要な工事

令和8年4月からの変更点は、助成対象者に民間の要配慮者利用施設(水防法第15条第1項第4号ロに規定する社会福祉施設、学校、医療施設など)の所有者・管理者が追加されたことです。区が明示的に拡充したのはこの点です。

管理組合の視点で、私が重要だと考えているのは対象工事(2)の関連工事です。止水板の設置と一体的に行う内外壁の防水工事・土間コンクリート打設工事が助成対象になる。これは、大規模修繕の工事項目とそのまま重なります。つまり「止水板だけ別発注」ではなく、大規模修繕の一部として止水板と周辺の防水を同時に設計すれば、その部分が助成の射程に入るということです。

ただし、外せない注意事項があります。区が対象外として明記しているのは次のケースです。

  • 止水板の購入のみの場合(設置工事を伴わないと対象外)
  • 扉として併用する場合(止水板は浸水防止の用途に限る)
  • 周辺地盤より掘削して設けた地下室(半地下構造を含む)がある建物への設置(※令和5年3月以前に建築確認済証が交付された建物は除く)
  • 国・東京都・足立区から本制度以外で止水板設置に伴う助成を受けている場合
  • 申請者が住民税を滞納している場合
  • 売買目的で所有する建物への設置
  • 区の交付決定前に工事着手した場合

最後の1つが、実務でいちばん事故が起きやすい項目です。大規模修繕は総会決議のあと着工までが慌ただしくなります。そこで止水板部分だけ先に手をつけてしまうと、助成が受けられません。工程表を引く段階で、区の交付決定のタイミングを1本の線として書き込んでおく。これだけで防げます。私が管理組合さまにご提案するときは、必ず工程表に区の審査期間を入れています。

なお、申請状況により受付期間より早く終了する場合がある旨も区が注記しています。年明けの駆け込みは避けたほうが安全です。


足立区の耐震助成も、令和9年3月まで拡充が延長されています

水の話と並べて、地震側も押さえておきます。足立区は非木造(鉄筋コンクリート造・鉄骨造など)の住宅・建築物への耐震助成について、助成金の拡充期間を令和9年3月まで延長しています(出典:足立区「非木造住宅・建築物の耐震化に助成を行っています」/更新日 2026年4月2日)。分譲・賃貸の区別は問われません。

助成の種類 助成率 上限額
耐震診断(共同住宅) 診断費用の5割 上限500万円(ただし住宅戸数×10万円の額以下)
耐震改修計画の策定(共同住宅・特定建築物/非木造) 策定費用の5割 上限300万円
耐震改修工事等(共同住宅) 工事費用の5割 上限3,000万円
除却工事(分譲マンション) 除却工事費用の5割 上限2,000万円

対象は昭和56年5月までに建築されたもので、すべて事前申請です。契約後の申請は対象外になります。ここも止水板助成と同じで、順番を間違えると使えません。

もう1つ、費用のかからない入口として建築物等耐震アドバイザー派遣制度があります。資格を持つ建築士が派遣され、建物や道路に面する高さ1.2mを超えるブロック塀などの調査・相談・改善提案に応じる制度で、オンライン申請にも対応しています(出典:足立区「建築物等耐震アドバイザー派遣制度」/更新日 2026年9月1日)。理事会として最初の一歩を踏み出すには、ちょうどよい制度だと思います。


防災上の共用部は「高さ」で優先度が決まります

内水氾濫が主役の区では、修繕の優先度は劣化の度合いではなく設置されている高さで決まります。私が現地で確認する順番です。

設備 確認すること 止まると何が起きるか
受変電設備・キュービクル 地盤面からの設置高さ、周囲の止水 全館停電。エレベーター・給水ポンプ・照明が同時に止まります
給水ポンプ・受水槽まわり ポンプ室の床レベル、排水経路 断水。高置水槽式でも揚水が止まれば同じです
エレベーターピット ピット内の湧水・排水ポンプの有無 復旧に時間がかかり、高層階の高齢の居住者に直接影響します
機械式駐車場のピット 排水ポンプの能力と非常電源 車両の水没。管理組合の賠償問題に発展することがあります
非常用発電機・消防設備 設置高さと燃料系統 停電時の最後の砦が先に沈みます

国土交通省も「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」を公開しています。新築向けの内容が中心ですが、既存建物でも「設置高さを上げる」「防水区画で囲う」という2つの考え方は流用できます。大規模修繕のタイミングは、この見直しを入れる数少ない機会です。

これは費用ゼロでできる確認です。次の理事会で、メジャーを1本持って地下や設備室を回ってみてください。設置高さを実測してメモするだけで、優先順位がはっきりします。


漏水の緊急対応で、ロープアクセスが強い理由

漏水対応で私がいちばん悔しい思いをするのは、「原因が分かっているのに、足場を組むまで直せない」という状況です。台風のあとにご連絡をいただいて、調査・見積・総会・足場架設で1か月半。そのあいだに次の雨が来ます。

ロープアクセス工法(産業用ロープで壁面を上下して作業する無足場工法)なら、足場の架設が要りません。私の実務感覚では、当日から翌日の着手が可能なケースが多いです。部分補修であれば、その日のうちに止水まで持っていけることもあります。

費用の差も具体的に書きます。10階建て・外周80m・工期3か月という条件で試算すると、仮設足場は約168万円、同じ範囲をロープアクセスで施工した場合は約59万円。差額は約109万円です。緊急の部分補修であれば、そもそも足場を組まない判断ができるので、差はさらに大きくなります。

足立区のように、1階が店舗のマンションや、隣地との離隔が小さい物件が多いエリアでは、この「足場を組まずに済む」という選択肢の価値が上がります。足場を組むと1階店舗の視認性が落ち、テナントの売上に影響します。ロープアクセスなら、その期間そのものが発生しません。

技術的な裏付けについては、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで、器具構成・二重確保・作業手順まで公開しています。同業の方やフランチャイズ加盟をご検討の方は、そちらのほうが情報が濃いはずです。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。そしてロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を前提にした体制で、私は日本ロープ高所作業協会の事務局も担っています。安全の話を先にするのは、緊急対応こそ段取りが雑になりがちだからです。

工法の考え方は明誠のロープアクセス工法の技術詳細、漏水対応の進め方はマンション・ビルの漏水調査と補修、費用の組み立て方は大規模修繕の料金の考え方にまとめています。

足立区での3つの工法の使い分け

明誠は、通常足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つから建物特性に応じてご提案しています。足立区の物件での使い分けの目安を書いておきます。

工法 向いている足立区の物件 理由
通常足場 全面打診・全面改修が必要な中層ストック、外壁一斉やり替え 全面作業では足場のほうが効率がよい場面があります
ロープアクセス 1階店舗があり足場で商売を止められない物件、隣地との離隔が小さい物件、緊急の部分補修 架設期間ゼロ、敷地占有なし
ハイブリッド 大規模・複雑形状の団地型、道路側は足場・中庭側はロープなど 部位ごとに最適化して総額を下げられます

「うちはどれですか」というご質問には、図面と現地を見ないと答えられません。ただ、3つの選択肢を持っている会社に相談すると、工事の順番そのものを組み替えられるという点は申し上げておきたいと思います。順番を変えるだけで、止水板助成の申請時期に間に合わせられることもあります。


よくあるご質問

Q. 足立区のハザードマップは、いつのものを見ればよいですか?

A. 現行は令和4年4月改訂版で、ページは2026年9月18日に更新されています。令和8年10月発行版では、内水氾濫と中小河川(毛長川・伝右川・垳川)の最大浸水深が分離され、内水側は令和8年3月に東京都が指定した雨水出水浸水想定区域が根拠になりました。電子ブック版と足立区防災アプリでも閲覧できます。

Q. 止水板の助成は、マンション管理組合でも申請できますか?

A. できます。令和8年度の助成対象者に「マンション管理組合」が明記されています。建物1棟につき上限50万円、対象工事費(税抜)の2分の1です。申請受付は令和8年4月1日から令和9年1月29日まで、工事完了と完了届の提出は令和9年2月26日までが期限です。

Q. 大規模修繕の防水工事も、止水板助成の対象になりますか?

A. 止水板設置工事と一体的に行う内外壁の防水工事・土間コンクリート打設工事は、関連工事として対象と区が明記しています。ただし止水板の購入のみは対象外で、区の交付決定前に工事着手した場合も対象外です。大規模修繕の工程を組む段階で、区の審査期間を織り込んでおく必要があります。

Q. 地下駐車場のあるマンションでも助成は使えますか?

A. ここは注意が必要です。周辺地盤より掘削して設けた地下室(半地下構造を含む)がある建物への止水板設置は対象外とされています。ただし令和5年3月以前に建築確認済証が交付された建物は除くとされていますので、築年数によって扱いが変わります。図面を用意したうえで、都市建設部都市建設課へ個別にご確認ください。

Q. 耐震診断の助成は、うちのマンションでも使えますか?

A. 昭和56年5月までに建築された非木造の共同住宅であれば対象です。診断費用の5割・上限500万円(住宅戸数×10万円の額以下)で、拡充期間は令和9年3月まで延長されています。すべて事前申請で、契約後の申請は対象外になりますのでご注意ください。

Q. 時間153mmの雨に、既存のマンションで備えられますか?

A. 排水能力そのものを153mm対応にすることは、既存建物では現実的ではありません。私がご提案しているのは、入口を減らすアプローチです。ドレンとストレーナーの清掃、バルコニー排水口の一斉点検、1階まわりの貫通部シーリング、敷地の雨水桝の清掃。この4つは費用が小さく、効果が出やすい項目です。

Q. 足場が組めない面の外壁調査は、どうすればよいですか?

A. ロープアクセス工法での打診調査(250〜500円/㎡が目安)か、ドローンによる外観調査を組み合わせます。足立区は隣地との離隔が小さい物件や、1階店舗の営業を止められない物件が多く、実務ではこの2つのどちらかになることが少なくありません。ドローン調査の条件と限界もあわせてご覧ください。

Q. 賃貸マンションのオーナーでも相談できますか?

A. できます。収益物件では、漏水を1件起こすと原状回復費と空室期間の両方が効いてきます。足立区は北千住を中心に賃貸需要が厚いエリアですので、稼働率を落とさない工期の組み方まで含めてご提案しています。考え方は収益物件オーナー向けページとビルオーナー向けのご案内にまとめています。


まとめ:今週、足立区の理事会で動けること3つ

  1. 区の水害区域図(浸水履歴)PDFで、自分のマンションの所在地を探す — 平成6年度以降の道路冠水・浸水被害の記録です。下水道が概ね整備された後の記録なので、載っていれば重い情報になります
  2. 受変電設備・給水ポンプ・エレベーターピットの設置高さを、メジャーで実測する — 費用ゼロで、防災上いちばん効く確認です
  3. 止水板設置助成を、次の総会の議案に入れる — 受付は令和9年1月29日まで、工事完了は令和9年2月26日まで。交付決定前の着工は対象外なので、大規模修繕の工程と合わせて逆算する必要があります

足立区は、水のメニューが揃っている区です。ですが揃っているぶん、区も資料を丁寧に出しています。ハザードマップ、浸水履歴、雨水出水浸水想定区域図、助成制度。材料はそろっていて、あとは自分の建物の高さと、水の入口の数に翻訳するだけです。

その翻訳のところで、工法の選択肢を3つ(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)持っていると、工事の順番を組み替える自由度が上がります。順番が変われば、同じ予算で直せる範囲が変わります。技術面の詳細はロープアクセスドットコムの工法解説もあわせてご覧ください。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談はお問合せフォームから、管理組合としての進め方は管理組合向けのご案内をご覧ください。

明誠の施工事例もご覧いただけます。これまでに手がけた約6,000棟のうち、公開できるものを掲載しています。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月22日時点で公表されている足立区および東京都・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。止水板設置工事助成および浸水履歴に関するお問い合わせは都市建設部都市建設課事業推進係(03-3880-5478)、ハザードマップは都市建設部都市建設課/危機管理部災害対策課(03-3880-5349/03-3880-5836)、耐震助成および耐震アドバイザー派遣は建築室建築防災課耐震化推進第一・第二係(03-3880-5317)、広域避難計画は危機管理部防災戦略課(03-3880-5083)へ、申請前に必ず最新の内容をご確認ください。止水板設置工事助成は申請の状況により受付期間より早く終了する場合がある旨を区が注記しています。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月22日

北区の管理組合が無料で使える相談・派遣12選|マンション管理士は個別2回+現地派遣2回・各60分が無料、劣化診断は調査費の20%・上限20万円【令和8年度版】

2026年9月22日 更新

北区の理事長さまから、去年こんな電話をいただきました。

「外壁のタイルが2枚落ちた。管理会社からは大規模修繕を勧められているが、提示された見積が1億円を超えている。妥当なのか判断がつかない」

伺ってみると、築38年・8階建て・52戸の分譲マンションでした。私が打診棒(タイルを軽く叩いて浮きを音で判別する道具)を持って外周をひと回りしたところ、浮きが集中していたのは北面の下層階だけ。全面改修ではなく、部分補修と部分塗装から着手する余地が十分にありました。

そのとき理事長さまが漏らした一言が忘れられません。「相談できる相手が、管理会社と工事会社しかいなかった」。

これは北区に限った話ではありません。ただ、私はこの言葉を聞くたびにもったいないと感じます。北区には、管理会社でも工事会社でもない第三者の専門家を、1円も払わずに呼べる仕組みが用意されているからです。しかも北区の場合、役所へ出向く個別相談と、専門家が現地まで来てくれる派遣相談の2種類が別建てで用意されています。これは23区の中でも親切な設計です。

申し遅れました。私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組んで建物をすっぽり囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も自分の足で踏んできた人間です。

今日は、北区の管理組合とビル・収益不動産オーナーさまが使える相談・派遣・助成を12個、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。


結論:北区で使える支援は12ある

先に一覧でお示しします。費用ゼロのものと、費用の一部が戻るものを分けて並べました。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用 申込先
1 北区 分譲マンション管理相談(個別) マンション管理士 無料/1回60分・年度内2回 住宅課 03-3908-9201
2 北区 分譲マンション管理相談(派遣) マンション管理士(現地に来る) 無料/1管理組合1回60分・年度内2回 住宅課 03-3908-9201
3 北区 分譲マンション管理セミナー 区が招く専門家 無料(例年) 住宅課(令和8年度分は詳細未公表)
4 北区 区民相談室 法律相談 弁護士 無料/1回30分・年度内3回 区民相談室 03-3908-1101
5 北区 区民相談室オンライン法律相談(Zoom) 弁護士 無料 区ホームページの申込フォーム
6 北区消費生活センター 消費生活相談員 無料 03-5390-1142(北とぴあ11階)
7 東京都 マンションアドバイザー無料派遣 マンション管理士等 無料(管理状況届出済みが条件) 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1453
8 東京都 マンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応) 講習修了のマンション管理士 無料/各2回まで 東京都マンション管理士会(令和9年2月26日まで)
9 東京都 賃貸マンション向け防災アドバイザー無料派遣 防災アドバイザー 無料 東京都マンションポータルサイト
10 (公財)マンション管理センター 電話相談 専門相談員 無料 03-3222-1517/設備は03-3222-1519
11 北区 マンション管理計画認定制度 — 事前確認の手数料は依頼先による 住宅課 03-3908-9201
12 北区 マンション劣化診断調査費用助成 — 調査費(税抜)の20%・上限20万円 住宅課 03-3908-9201(事前相談)

1〜10がお金のかからない相談・派遣、11と12が制度と助成です。順番に見ていきます。


北区のマンション管理士派遣は「呼ぶ」と「行く」の2本立て

北区の目玉は、ここです。多くの区は「区役所で相談を受ける」か「専門家を派遣する」かのどちらか一方ですが、北区は両方を用意した上で、それぞれに年度内2回の枠を割り当てています。

分譲マンション管理相談(個別)

区が公表している内容をそのまま引用します。「複雑多岐にわたる管理組合の運営方法や建て替え問題等について、マンション管理士の専門的見地からアドバイスします」。

項目 内容
対象 区内分譲マンションの区分所有者
時間・回数 お一人あたり1回60分、年度内2回まで
場所 北区役所第一庁舎 会議室
費用 無料
申込方法 申込書に記入のうえ、住宅課まで郵送またはファクス。日程調整後、相談日の連絡が来る

(出典:東京都北区「分譲マンション管理(セミナー、無料相談等)」/更新日2026年7月6日)

ここで見落とされがちなのが、対象が「区分所有者」である点です。理事でなくても、理事長でなくても使えます。「理事会がまともに機能していない」「管理会社の言うことに違和感がある」と感じている一区分所有者が、一人で相談に行ける設計になっています。

私の経験上、大規模修繕でこじれる管理組合は、最初のボタンを掛け違えていることがほとんどです。「修繕委員会の立ち上げ方が分からないまま、管理会社主導で話が進んでしまった」というパターン。その入口で60分もらえるなら、これは大きい。

分譲マンション管理相談(派遣)

こちらはマンション管理士が現地に赴くタイプです。

項目 内容
対象 区内分譲マンションの管理組合(理事長名で申込)
時間・回数 一管理組合あたり1回60分、年度内2回まで
費用 無料
申込方法 申請書に記入のうえ、住宅課まで郵送またはファクス

(出典:同上)

理事会の席に専門家が同席してくれる、と考えていただければ分かりやすいと思います。私はこれを、理事会の最初と最後で1回ずつ使うやり方をお勧めしています。1回目は「うちのマンションで今やるべきことの優先順位づけ」、2回目は「業者から出てきた見積・提案が妥当かどうかの第三者チェック」。この2回があるだけで、意思決定の質がまるで変わります。

申込書と申請書はいずれも北区のページからPDFでダウンロードできます。窓口へ行かなくても、郵送とファクスで完結する点も助かります。

北区に「建築士派遣」は無い。そこをどう埋めるか

正直に申し上げます。北区が単独で持っている無料の専門家派遣は、マンション管理士のみです。建築士派遣や大規模修繕アドバイザー派遣という名前の区独自制度は、2026年9月22日時点の区ホームページには見当たりません。

では技術面の相談はどうするか。私は次の3段構えをお伝えしています。

  1. 管理・合意形成の話 → 北区のマンション管理士派遣(上記2制度)
  2. 建物の技術的な話 → 東京都のマンションアドバイザー制度(後述の7番。建築の専門家コースがある)
  3. 実際に建物を調べる費用 → 北区のマンション劣化診断調査費用助成(後述の12番)

北区は「相談は区、技術は都、調査費は助成」という役割分担で組み立てられている、と理解すると使い方が見えてきます。

外壁の劣化がどの程度進んでいるかを客観的に把握する方法については、明誠のロープアクセス工法による外壁調査の考え方をご覧いただくと、足場を組まずにどこまで見られるのかが分かります。技術的な仕組みそのものをもう少し深く知りたい方は、同業者向けに書いている姉妹サイトロープアクセスドットコムのほうが詳しいです。


北区で使える弁護士の無料法律相談と消費生活センター

管理費の滞納、区分所有者間のトラブル、工事契約をめぐる紛争。これらは管理士の守備範囲を超えます。北区には法律面の無料窓口も用意されています。

区民相談室の法律相談

項目 内容
時間 1回30分以内
費用 無料
回数 法律相談は週1回、同一年度で3回まで
予約 電話または窓口。区民相談室 03-3908-1101
キャンセル 当日正午までに電話連絡

(出典:東京都北区「区民相談室(法律・税金・交通相談など)」)

30分は短く感じますが、年度内3回まで使えます。北区はさらにZoomでのオンライン法律相談も用意していて、こちらは区ホームページの専用申込フォームから受け付けています。平日の日中に王子まで出向けない理事さまには、こちらのほうが現実的でしょう。

30分を有効に使うコツは、争点を1つに絞って行くことです。「滞納が3年分たまっている区分所有者に、どの手続きから着手すべきか」まで絞れていれば、30分で具体的な道筋が見えます。

北区消費生活センター

工事契約のトラブル、訪問業者による強引な勧誘への対応は、消費生活センターの領域です。

  • 所在地:北区王子1-11-1 北とぴあ11階
  • 相談電話:03-5390-1142
  • 相談時間:月〜金 9時30分〜16時00分
  • 対象:北区に在住・在勤・在学の方

(出典:東京都北区「消費生活センター」)

「地震のあと点検に来たという業者に、その場で契約書を書かされた」という相談は、残念ながら現場で今も耳にします。この手の話は法律相談より先に、消費生活センターに入れたほうが早いことが多いです。


東京都の無料派遣を重ねて使う

北区の枠を使い切っても、まだ残っています。ここからは東京都の制度です。

7. マンションアドバイザー無料派遣(届出済み管理組合が対象)

東京都は「管理状況届出制度による届出を行った管理組合に対し、その管理状況に応じて、マンション管理士などの専門家を派遣し、マンションの管理や建替え・改修について、講義や個別具体的な相談に対するアドバイスを行います」としています(出典:東京都マンションポータルサイト「マンションアドバイザー無料派遣のご案内」)。

肝は「届出を出していること」が条件という点です。東京都の管理状況届出制度は、昭和58年12月31日以前に新築された6戸以上の分譲マンションに届出義務があります。北区もマンション管理状況届出制度のページを設けています。北区は旧耐震の分譲ストックが厚い区ですから、該当する建物は少なくないはずです。

届出がまだなら、これを出すだけでアドバイザー派遣料が無料になります。順番としては「届出 → 無料派遣」です。

  • 申込先:(公財)東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1453
  • 制度所管:東京都住宅政策本部 民間住宅部 マンション施策推進担当 03-5320-4913

8. マンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)

こちらは届出の有無を問わない枠です。

項目 内容
対象 都内に所在するマンション管理組合
回数 防災力向上・認知症対応それぞれ2回まで
費用 無料
受付期間 令和8年6月23日(火)から令和9年2月26日(水)まで
募集枠 防災力向上・認知症対応あわせて160件程度
申込 東京都マンション管理士会のホームページから

(出典:東京都「本日からマンション管理士無料派遣事業の受付を開始(マンション管理組合向け)」/東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」)

都内全域で160件程度という枠です。分譲マンションが十数万棟ある東京都でこの数字ですから、早い段階で動いた管理組合が使えることになります。締切の令和9年2月26日まで残り約5か月。年内に理事会で決議しておくと安心です。

なお賃貸マンションのオーナーさま向けには、賃貸マンション向け防災アドバイザー無料派遣という別枠があります(9番)。収益不動産をお持ちの方は、こちらが該当します。

10. (公財)マンション管理センターの電話相談

全国の管理組合が使える、国のマンション管理適正化推進センター指定団体の窓口です。

  • 管理組合運営・管理規約などの相談:03-3222-1517
  • 建物・設備の維持管理の相談:03-3222-1519(電話で事前予約)

(出典:(公財)マンション管理センター「相談窓口について」)

「区に相談するほどでもないが、誰かに確認したい」という程度の疑問なら、ここが一番手軽です。


北区の管理計画認定制度と劣化診断助成

11. マンション管理計画認定制度

北区もマンション管理計画認定制度を実施しています。区のページによれば、事前確認の手数料は依頼先の団体によって異なり、マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」の手数料も別途かかる形です。オンライン申請ののち、北区が発行する納付書で手数料を納めて区への申請が完了する、という流れになります。

手数料の具体額は依頼先によって変わりますので、金額の確認は住宅課(03-3908-9201)に直接お問い合わせいただくのが確実です。ここで金額を断定して書くことは避けます。

認定を取ると、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資の金利引き下げや、長寿命化促進税制の適用要件など、修繕積立金の負担に効いてくる場面があります。大規模修繕を数年内に控えている管理組合は、検討する価値があります。国の制度概要は国土交通省「マンション管理計画認定制度」にまとまっています。

12. マンション劣化診断調査費用助成

北区が用意している、お金が戻る制度です。

項目 内容
対象 建築後10年以上経過した分譲マンションの劣化診断(老朽度判定調査)
申請者 劣化診断調査を行うマンション管理組合
助成額 調査費用(税抜)の20%、上限20万円
注意 劣化診断調査以外の費用が含まれる場合は、その費用を除く
手続 事前相談が前提。住宅課 03-3908-9201

(出典:東京都北区「マンション劣化診断調査費用助成」/更新日2026年4月1日)

区のページには令和8年度の受付期間の記載が本文中に見当たりません。詳細案内のPDFと承認申請書が掲載されていますので、着手前に住宅課へ事前相談を入れる流れになります。「必ず事前にご相談ください」と区自身が明記している点は、押さえておいてください。

私がここで声を大にしてお伝えしたいのは、この助成の使いどころです。 調査費が100万円かかったとして戻るのは20万円。金額としては大きくないかもしれません。ただ、ここでの20万円の意味は「安くなる」ことではなく、「診断に区の公費が入る=第三者性が担保される」ことにあります。

工事会社が無料でやってくれる診断は、どうしても工事の提案とセットになります。区の助成を使った診断は、総会で「区の制度を使って客観的に調べました」と説明できます。この一言があるかどうかで、修繕積立金の取り崩しに対する組合員の納得感がまるで違ってくる。私は現場でそれを何度も見てきました。


お金の話:北区で大規模修繕を検討するときの目安

支援制度の話ばかりでは実感が湧かないと思いますので、費用の目安も出しておきます。すべて参考値のレンジです。実際の見積は建物の形状・劣化状況・立地によって大きく変動します。

工種 ㎡単価の目安
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡
外壁打診調査 250〜500円/㎡
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/㎡

30戸規模のマンションで大規模修繕を一巡させると、総額のレンジは3,500〜5,000万円程度。このうち仮設足場が15〜25%を占めます。つまり足場だけで500万〜1,200万円という計算になります。

私がロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が懸垂し、足場を組まずに外壁作業を行う無足場工法)をお勧めする理由は、ここにあります。10階建て・外周80m・工期3か月というモデルケースでは、足場の仮設費が約168万円に対し、ロープアクセスなら約59万円。差額は約109万円です。

もちろん、どんな建物でもロープアクセスが最適というわけではありません。低層で形状が複雑な建物、外壁の改修範囲が広い建物は、足場を組んだほうが総合コストで有利になります。だからこそ明誠では、通常足場・ロープアクセス・両者を併用するハイブリッド工法の3つから選べる体制をとっています。3工法を自社で提案できる会社は、国内でも多くありません。料金の考え方については明誠の大規模修繕の料金の考え方にまとめています。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けています。この安全体制の詳細はロープアクセスドットコムで公開しています。


相談に行くとき、何を持っていけばいいか

60分や30分という枠を最大限に使うために、私がいつもお伝えしている3点セットがあります。

  1. 直近3期分の総会議事録 — 何が決まり、何が先送りされてきたかが一目で分かります
  2. 長期修繕計画書 — 更新が10年以上止まっていても構いません。むしろ止まっていること自体が相談材料です
  3. 管理規約(最新版) — 標準管理規約は令和7年に改正されています。自組合の規約がどの版に準拠しているかで、打てる手が変わります

余裕があれば、これに修繕積立金の残高が分かる直近の決算書と、気になっている箇所のスマホ写真を加えてください。写真は強力です。「北面3階のバルコニー下に白い筋が出ている」と口で説明するより、1枚見せたほうが専門家の判断は10倍速くなります。

法令面では、令和7年5月30日公布の「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律」(令和7年法律第47号)が令和7年11月28日に一部施行されています。建替えや大規模な改修を視野に入れている管理組合は、この改正を踏まえた助言を受けられるかどうかで、相談の価値が変わってきます。


よくあるご質問

Q. 北区のマンション管理相談は、理事長でないと申し込めませんか?

A. 個別相談(区役所で受ける60分)は「区内分譲マンションの区分所有者」が対象ですので、一区分所有者の立場でお申し込みいただけます。現地へ来てもらう派遣相談のほうは、管理組合として理事長名でのお申し込みとなります。

Q. 個別相談2回と派遣相談2回は、両方使えますか?

A. 区のページでは別々の制度として、それぞれに「年度内2回まで」の枠が記載されています。詳しい併用の可否は住宅課(03-3908-9201)にご確認ください。制度の枠が別建てである点は、北区の使いやすいところだと私は感じています。

Q. 東京都のマンション管理士無料派遣は、いつまでに申し込めばいいですか?

A. 令和8年度の受付期間は令和8年6月23日から令和9年2月26日までで、防災力向上・認知症対応あわせて160件程度という募集枠が公表されています。枠に達した場合の扱いは東京都マンション管理士会にご確認ください。年度末ぎりぎりではなく、年内の理事会で決議しておくほうが安心です。

Q. 劣化診断調査の費用はどれくらいかかりますか?

A. 建物規模や調査項目によりますが、30〜50戸規模の分譲マンションで数十万円から100万円台が一つの目安です。北区の助成は調査費用(税抜)の20%・上限20万円ですので、100万円の調査なら20万円が助成の上限額に当たります。明誠では概算のお見積りを無料でお出ししていますので、金額感の確認だけでもお声がけください。

Q. 大規模修繕の工期はどれくらい違いますか?

A. ロープアクセス工法は足場の組立・解体の期間がまるごと不要になるため、足場工法のおよそ60%の工期が目安です。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場工法で3か月程度のところ、ロープアクセスなら1.5〜2か月程度になります。ただし改修範囲が広い場合は差が縮まります。

Q. 足場を組まないと、住民への負担は本当に減るのですか?

A. 足場とメッシュシートで建物を囲うと、日照と通風が数か月にわたって制限され、防犯上の不安も出ます。ロープアクセスは作業する面だけを順に進めるため、影響が及ぶ期間と範囲が限定されます。北区のように賃貸併用や店舗併設の物件が多い地域では、営業への影響という観点でも差が出ます。

Q. 管理会社を通さずに、明誠に直接相談してもいいのでしょうか?

A. もちろんです。セカンドオピニオンとしてお使いいただくケースが一番多いです。既存の見積書を拝見して、数量と単価の妥当性を一緒に確認するだけでも結構です。お問合せフォームからご連絡ください。

Q. 北区の分譲マンション管理セミナーはいつ開催されますか?

A. 北区のページには「分譲マンションの適切な維持・管理等に関するセミナーを開催します。詳細については、確定次第掲載いたします」とあり、2026年9月22日時点で令和8年度の日程は公表されていません。住宅課のページを定期的にご確認いただくのが確実です。


まとめ:今週、北区の管理組合が動けること3つ

長くなりましたので、動き出しの3手に絞ります。

1. 住宅課(03-3908-9201)に電話して、管理相談の申込書を取り寄せる

個別相談か派遣相談か迷ったら、まず派遣相談をお勧めします。理事会の場に専門家が来てくれるほうが、話が早い。申込書は北区のページからPDFでダウンロードできます。

2. 管理状況届出制度の届出状況を確認する

昭和58年12月31日以前に新築された6戸以上の分譲マンションなら、届出義務の対象です。届出を出せば、東京都のマンションアドバイザー派遣が無料になります。ここが未着手のまま眠っている管理組合が、北区にはまだ相当数あるはずです。

3. 東京都のマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)を理事会の議題に載せる

受付は令和9年2月26日まで。枠は都内全体で160件程度です。防災と認知症対応で各2回、計4回の専門家訪問が無料で受けられる計算になります。


北区は、王子・赤羽・十条・田端・滝野川と、地域ごとに建物のストック年齢がかなり違う区です。旧耐震の分譲マンションが密集している一角もあれば、再開発で新しい住棟に入れ替わった一角もある。だからこそ、「よその管理組合がこうしたから」ではなく、自分の建物の状態を自分で把握することが効いてきます。

そして、その第一歩にかかるお金は、北区の場合ほぼゼロにできます。マンション管理士を4回(区の個別2回+派遣2回)、弁護士を3回、都の専門家をさらに複数回。これだけ呼んでも、支出は郵送代とファクス代だけです。

私は現場でこう思うことがあります。管理組合が損をするのは、悪い業者に当たったときよりも、相談しないまま時間だけが過ぎたときのほうがずっと多い、と。壁の浮きも、防水の切れも、待っていて良くなることはありません。

明誠のこれまでの明誠の施工事例もあわせてご覧いただければ、実際にどんな建物でどんな判断をしてきたかが伝わると思います。北区の物件で、区の制度を使いながら進めた案件もあります。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。


出典・参考資料


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月22日時点で公表されている東京都北区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、東京都北区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)

株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市

マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月22日

お気軽にご相談ください!