北区のマンション管理計画認定制度|令和8年度の区手数料は基本4,100円・区独自基準なし【大規模修繕2026年度版】

先日、北区・王子のマンションで理事長さまから「管理計画認定って、結局いくらかかって、何がもらえるんですか」と真正面から聞かれました。制度の説明資料は読んだけれど、費用と見返りが一枚の絵にならない、というご相談です。

正直に申し上げます。この質問に一言で答えられない資料が多すぎるのだと思います。ですので今回は、北区の管理組合さま向けに、数字から先に並べます。

結論から言えば、北区は「取りにいきやすい区」です。理由は2つ。区独自の上乗せ基準がないこと、そして区へ納める手数料が基本4,100円と低いことです。私は大規模修繕の現場を20年以上見てきましたが、認定基準の中身は半分近くが長期修繕計画と修繕積立金の話です。つまり、工事の話と切り離せません。そこも含めて整理します。

結論:北区で管理計画認定を取ると何が変わるか

北区で認定を取得したときに変わることを、先に表にします。

論点 北区の場合
認定主体 東京都ではなく北区(特別区は区が認定主体)
区独自の上乗せ基準 なし。国が定める基準と同一の内容
区への手数料(当初認定・更新) 基本手数料4,100円 + 加算手数料1,800円(長期修繕計画が1つ増えるごと)
区以外への費用 (公財)マンション管理センターのシステム利用料+事前確認審査料
申請方法 事前確認適合証を取得後、支援システムからオンライン申請。その後、区発行の納付書で手数料を納付
有効期間 認定日から5年。更新申請をしなければ失効(区からの満了通知はありません)

出典:東京都北区「マンション管理計画認定制度」(更新日:2026年8月17日)

私はいつも理事長さまに「認定は、ご褒美をもらう制度ではなく、健康診断の結果票をもらう制度です」とお伝えしています。認定を取ること自体より、取りにいく過程で管理の穴が見えることのほうが、長い目では効きます。

北区で認定主体はどこか

管理計画認定制度は、令和4年4月に始まった国の制度です。ただし、審査して認定を出すのは国ではありません。

認定主体は次のように決まっています。

  • 市および東京23区の区域内にあるマンション → その市・区
  • 町村の区域内にあるマンション → 都道府県(法律の規定により事務を行う町村は当該町村)

出典:(公財)マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」

北区は特別区ですから、認定主体は北区です。東京都ではありません。窓口は都市整備部 住宅課 住宅政策係(北区王子本町1-2-11 北区役所第二庁舎3階9番/電話 03-3908-9201)になります。

もう1つ、見落とされがちな前提があります。認定申請ができるのは、マンション管理適正化推進計画を作成している自治体に立地するマンションの管理組合に限られるという点です。北区はこの推進計画を作成済みで、制度を運用しています。区内の既存の分譲マンションであれば、申請の土俵には立てます。

なお、新築マンションの管理計画案については、マンション管理センターが認定主体となる「予備認定」という別の仕組みがあります。既存マンションの認定とは入口が違うので、混同しないようご注意ください。

北区の管理計画認定17要件を、4つの塊で読む

国の認定基準は、細かく数えると17項目あります。条文どおりに読むと頭に入りませんので、私は4つの塊に分けてご説明しています。

1. 管理組合の運営(3項目)

  • 管理者等が定められていること
  • 監事が選任されていること
  • 集会(総会)が年1回以上開催されていること

2. 管理規約(3項目)

  • 管理規約が作成されていること
  • 災害等の緊急時や管理上必要なときの専有部分への立入り、修繕等の履歴情報の管理について定められていること
  • 管理組合の財務・管理に関する情報の書面交付(または電磁的方法による提供)について定められていること

3. 管理組合の経理(3項目)

  • 管理費と修繕積立金等が明確に区分して経理されていること
  • 修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと
  • 直前の事業年度末時点で、修繕積立金の3か月以上の滞納額が全体の1割以内であること

4. 長期修繕計画の作成及び見直し等(6項目)

ここが本丸です。

  • 長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠して作成され、計画の内容と修繕積立金額が総会で決議されていること
  • 長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われていること
  • 計画期間が30年以上で、かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれるよう設定されていること
  • 将来の一時金徴収を予定していないこと
  • 計画期間全体での修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと
  • 計画期間の最終年度において、借入金の残高がない長期修繕計画となっていること

5. その他(2項目)

  • 組合員名簿・居住者名簿を備え、年1回以上は内容の確認を行っていること
  • 都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること

出典:(公財)マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」

この基準の根拠となる国のガイドライン類は、直近で相次いで改訂されています。事務ガイドラインは令和8年3月改訂、マンション標準管理規約は令和7年10月改正、長期修繕計画標準様式・作成ガイドラインと修繕積立金ガイドラインは令和6年6月改訂です。古いひな形のまま総会に上程すると、事前確認で差し戻されます。ここは本当に多いので、先に確認してください。

北区に独自基準がない、ということの実務的な意味

23区の中には、国の基準に区独自の上乗せ基準を設けている区があります。たとえば文京区は令和7年4月から、渋谷区は令和8年4月から、防災やコミュニティ活動に関する独自基準を追加しました。

北区のホームページには、はっきりこう書かれています。

北区の独自基準はなく、国がマンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針で定めている基準と同一の内容です。

(出典:東京都北区「マンション管理計画認定制度」)

これは実務上、2つの意味を持ちます。

1つめ。事前相談が必須ではありません。 独自基準がある区では、マンション管理士による事前確認の対象外となる独自基準を確認するため、事前確認を依頼する前に区役所へ出向く必要があります。北区にはその工程がありません。その分、スケジュールが2〜4週間ほど短くて済む計算になります。

2つめ。判断のブレが小さい。 全国共通の基準だけで審査されますから、「うちのマンションは通るのか」を、マンション管理センターが公開している簡易チェックリストで、理事会レベルでかなり正確に自己診断できます。

ただし、独自基準がないことは「ハードルが低い」という意味ではありません。国基準の17項目自体が、そこそこ厳しいからです。私の経験上、北区の高経年マンションで最初につまずくのは、ほぼ決まって長期修繕計画の計画期間30年・大規模修繕2回以上と修繕積立金の平均額の2点です。

北区の手数料と申請ルート(当初認定・更新・変更認定)

お金の話を整理します。北区に納める手数料は次のとおりです。

当初認定申請・更新申請

内容 費用
基本手数料 4,100円
加算手数料 1,800円(長期修繕計画が1つ増えるごと)

変更認定申請

変更内容 基本手数料 加算手数料
「管理組合の運営」に係る事項 4,800円 2,600円
「管理規約」に係る事項 4,000円 2,600円
「管理組合の経理」に係る事項 4,600円 2,800円
「長期修繕計画の作成、見直し等」に係る事項 9,800円 5,200円
「その他」に係る事項 2,900円 1,700円
上記以外の事項の変更 2,000円 900円

出典:東京都北区「マンション管理計画認定制度」(更新日:2026年8月17日)

変更内容が複数ある場合は、各項目の手数料を合算します。北区は変更認定申請 手数料チェックシート(Excel)を公開していますので、見込み額はそこで計算できます。

区以外にかかる費用

区への手数料とは別に、(公財)マンション管理センターへの支払いが発生します。

  • システム利用料:1申請あたり 10,000円(10%対象、内消費税額909円)
  • 事前確認審査料:依頼先により異なります。日本マンション管理士会連合会経由(パターン③)または管理センターへ直接依頼(パターン④)の場合は、長期修繕計画1計画あたり10,000円(10%対象、内消費税額909円)。マンション管理士に個別に依頼する場合(パターン①)や管理会社経由(パターン②)は、管理組合と委託先との協議で決まります。

出典:(公財)マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」

つまり北区の標準的なケース(長期修繕計画1計画)では、区 4,100円+システム利用料 10,000円+事前確認審査料 10,000円=24,100円程度が見込み額になります。マンション管理士に個別依頼する場合は、審査料が別途の交渉になりますので、複数から見積りを取るのが無難です。

申請の流れ

北区の場合、認定申請は4つのパターンのいずれかで事前確認を受け、事前確認適合証を取得してからオンライン申請します。

No 事前確認の依頼先 備考
1 マンション管理士(管理会社所属を含む) —
2 管理委託先(管理会社等) マンション管理適正評価制度と同時申請可
3 (一社)日本マンション管理士会連合会 マンション管理適正化診断サービスと同時申請可
4 (公財)マンション管理センター —

認定の3つの経済効果を、金額で押さえる

認定そのものに補助金は出ません。効いてくるのは次の3つです。

1. マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)

一定の要件を満たす認定マンションが、長寿命化に資する大規模修繕工事を完了させた場合、工事完了日の翌年度分の固定資産税が減額されます。東京23区の場合、一戸あたり100㎡の床面積相当分まで、2分の1が減額されます。

対象となる工事は、外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事のすべてを実施することが条件です。加えて、管理計画認定マンションの場合は、令和3年9月1日以降に修繕積立金の額を認定基準まで引き上げていることが必要です。

北区のホームページでは、対象期間を「令和5年4月1日〜令和9年3月31日までの間に工事を完了させた場合」と案内しています。一方、国の令和8年度税制改正では、この特例措置の期限を延長する方向が示されています。期限は年度途中でも動きますので、工事の完了時期が令和9年3月に近い場合は、着工前に国土交通省「マンション税制」と都税事務所の両方で、必ずご確認ください。申告先は区役所ではなく都税事務所です。

制度の内容が複雑なため、国土交通省はマンション管理計画認定制度 相談ダイヤル(03-5801-0858)を設けています。月曜〜土曜10:00〜17:00です。

2. フラット35(維持保全型)の金利引下げ

認定を取得したマンションを購入する際、【フラット35】を利用すると、当初5年間、年0.25%の金利が引き下げられます。

これは管理組合が直接得をする話ではありません。ただ、売却時に「認定マンションです」と言えることは、資産価値の面で意味があります。私はこれを、理事会では「出口の話」としてご説明しています。

3. マンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ

認定を取得したマンションが共用部分の改修を行うとき、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」を利用すると、全期間で年0.2%の金利が引き下げられます。「マンションすまい・る債」の積立を行っていると、さらに引き下げられます。

また、認定マンションが「マンションすまい・る債」を購入する場合、利率が上乗せされます(令和5年度募集分から。上乗せ幅は各年度の利率決定時に決定)。

出典:東京都北区「マンション管理計画認定制度」、住宅金融支援機構

修繕積立金が足りず、大規模修繕で借入を検討する管理組合にとっては、この0.2%が一番実利のある話です。仮に3,000万円を10年で借りるなら、金利0.2%の差はおよそ30万円台の利息差になります(元利均等・概算)。

北区の管理組合がつまずきやすい3つの落とし穴

現場でご相談を受けていて、北区特有というより「北区のやり方を知らないとハマる」ポイントが3つあります。

落とし穴1:オンライン申請だけでは終わっていない

北区のページには明確に書かれています。支援システムでオンライン申請を行っただけでは、北区への申請は終了しません。オンライン申請の手続き終了後、北区発行の納付書で手数料を納付する必要があります。

「申請したつもり」で止まっているケースを、私は他区でも見たことがあります。納付書が届いたら、必ず期限内に納めてください。

落とし穴2:有効期間の満了通知が来ない

認定の有効期間は5年です。そして北区は、有効期間の満了に関する通知等を行いません。更新申請をしないまま満了日を過ぎると、認定は失効します。

理事が1〜2年で交代する管理組合では、5年後の更新は確実に引き継ぎから漏れます。私はいつも「認定通知書のコピーを、総会資料の定位置に綴じてください」とお伝えしています。管理規約や長期修繕計画と同じ場所です。

落とし穴3:変更認定申請はオンラインでできない

認定期間中に管理計画を変更する場合、軽微な変更を除き、変更認定申請が必要です。期限は、変更が生じた事実のあった日の翌日から起算して1年を経過する日、または有効期間の満了日の前日から起算して2か月前の日まで(一部例外あり)。

そして、この変更認定申請はオンライン申請ができません。郵送または窓口への提出となります。事前に北区住宅課へ問い合わせのうえ、変更理由に応じた書類を正本・副本それぞれに添付して提出してください。

なお、次のような変更は「軽微な変更」にあたり、変更認定申請は不要です。

  • 長期修繕計画の修繕内容・時期の変更で、計画期間や修繕資金計画の変更を伴わないもの
  • 修繕資金計画の変更で、修繕の実施に支障を及ぼすおそれのないもの
  • 2以上の管理者等を置く管理組合における、一部の管理者等の変更
  • 監事の変更
  • 規約の変更であって、監事の職務および施行規則第1条の5第4号に掲げる事項の変更を伴わないもの

判断に迷う場合は、北区が公開している「変更内容チェックシート(PDF)」で確認できます。

認定基準の本丸は長期修繕計画と修繕積立金——だから工事費の話になる

ここからが本題です。

前述のとおり、17項目のうち6項目が長期修繕計画に関するものです。そして、その長期修繕計画が通るかどうかは、突き詰めると「30年で、大規模修繕2回分の工事費を、一時金なし・借入残高なしで賄えるか」という一点に収束します。

分母(積立額)を上げるか、分子(工事費)を下げるか。この2つしかありません。総会で積立金の値上げを決議するのは大変ですから、私は必ず「工事費のほうも同時に見てください」とお伝えしています。

参考までに、大規模修繕の工事費の目安を挙げます。いずれも物件の規模・状態・立地で大きく変動しますので、あくまでレンジとしてご覧ください。

工種 ㎡単価の目安
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡
外壁打診調査 250〜500円/㎡
防水工事 5,000〜8,000円/㎡

30戸規模のマンションの大規模修繕であれば、総工費は3,500万〜5,000万円程度が一つの目安です。そして、この総工費のうち15〜25%を仮設足場が占めます。工事そのものではなく、工事のための「足場」にです。

ここに、私がロープアクセス工法をご提案する理由があります。たとえば10階建て・外周80m・工期3か月の建物で試算すると、仮設足場が約168万円かかるところ、ロープアクセス工法であれば約59万円程度に収まるケースがあります。差額はおよそ109万円です。

30年の長期修繕計画には大規模修繕が2回入りますから、この差は単純計算で2回分。長期修繕計画の帳尻を合わせるとき、この数字は効きます。

もちろん、すべての建物でロープアクセスが最適というわけではありません。株式会社明誠が3つの工法(通常足場/ロープアクセス/両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド)をそろえているのは、建物ごとに答えが違うからです。工法の考え方は明誠のロープアクセス工法の技術詳細と大規模修繕の料金の考え方にまとめています。

工法そのものの技術的な比較——ロープアクセスで何ができて何ができないのか、作業員の資格体系はどうなっているのか——については、同業者・技術者向けにまとめた姉妹サイトロープアクセスドットコムのほうが踏み込んで解説しています。理事会で工法を比較検討される際は、こちらも目を通していただくと判断材料が増えるはずです。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたり、品質管理はISO9001のマネジメントシステムに沿って運用しています。安全管理の具体的な考え方は明誠の安全管理体制をご覧ください。

総会から逆算する、北区の認定取得スケジュール

北区は事前相談が必須ではないため、他区より工程が1つ少なくなります。目安は5〜7か月です。

時期 やること 担当
6〜7か月前 理事会で認定取得の方針を確認。長期修繕計画の現状を点検(計画期間・大規模修繕の回数・一時金の有無・借入残高) 理事会
5〜6か月前 長期修繕計画の見直しが必要なら着手。標準様式(令和6年6月改訂)への準拠を確認 理事会+専門家
4〜5か月前 管理規約の点検。専有部立入り・履歴情報管理・情報提供の3点が規定されているか(令和7年10月改正の標準管理規約を参照) 理事会
3〜4か月前 総会で決議(長期修繕計画の内容・修繕積立金額・認定申請すること) 総会
2〜3か月前 事前確認の依頼先を決定(4パターンから選択)。見積りを比較 理事会
1〜2か月前 事前確認の実施 → 事前確認適合証の発行 マンション管理士等
申請月 支援システムから北区へオンライン申請 → 納付書で手数料納付 管理者等
申請後 北区の審査 → 認定通知書の発行 北区

注意点を1つ。総会決議を経ていない管理組合は、そもそも事前確認を受けられません。マンション管理センターの規定で、事前確認を行うマンション管理士は「総会決議を経ていない管理組合の事前確認はできない」とされています。順番を間違えると、丸ごと出直しになります。

通常総会が年1回の管理組合であれば、実質的に「次の総会に間に合わせる」という逆算になります。9月の今から動けば、春の通常総会での決議は十分に射程です。

北区の管理組合が使える無料の支援

いきなり有償の専門家に依頼する前に、無料で使える窓口があります。

東京都のマンションアドバイザー無料派遣は、公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターが実施しているもので、管理組合の運営や修繕に関する相談に専門家を派遣しています。詳細は東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」をご確認ください。

東京都マンションポータルサイトには、管理計画認定制度の全体像と、都内自治体の運用状況がまとまっています。あわせて東京都マンションポータルサイト「マンション管理計画認定制度」もご覧ください。

そして北区の窓口は、都市整備部 住宅課 住宅政策係(電話 03-3908-9201)です。制度の運用や手数料の納付方法について、直接確認できます。

よくあるご質問

Q. 北区で管理計画認定を取るのに、全部でいくらかかりますか?

A. 長期修繕計画が1計画の標準的なケースで、24,100円程度が目安です。内訳は北区への手数料4,100円、マンション管理センターのシステム利用料10,000円、事前確認審査料10,000円(管理センターまたは日本マンション管理士会連合会に依頼する場合)です。マンション管理士に個別に依頼する場合、審査料は協議で決まります。

Q. 北区に独自の認定基準はありますか?

A. ありません。北区のホームページに「北区の独自基準はなく、国が定めている基準と同一の内容です」と明記されています。文京区や渋谷区のように事前相談を経て独自基準の適合確認を行う工程がない分、スケジュールは短くなります。

Q. 認定を取ると、区から補助金がもらえますか?

A. 認定そのものに対する補助金はありません。経済的なメリットは、固定資産税の減額(マンション長寿命化促進税制)、フラット35の当初5年間・年0.25%引下げ、マンション共用部分リフォーム融資の全期間・年0.2%引下げ、マンションすまい・る債の利率上乗せの4つです。

Q. 修繕積立金が少ないと、認定は取れませんか?

A. 認定基準では「計画期間全体での修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと」が求められます。国のガイドライン(令和6年6月改訂)の水準を下回る場合は、専門家による「著しく低額でない旨の理由書」の提出が必要になります。なお、この理由書は事前確認を担当するマンション管理士が作成することはできません。別の専門家に依頼する必要があります。

Q. 認定の更新を忘れるとどうなりますか?

A. 有効期間(5年)の満了日までに更新申請を行わないと、認定は失効します。北区からは有効期間の満了に関する通知は行われませんので、管理組合側で期日を管理する必要があります。認定通知書を総会資料の定位置に綴じ、引継書に記載しておくことをおすすめします。

Q. 長期修繕計画を見直したら、毎回申請し直しですか?

A. 変更の内容によります。修繕の内容や時期の変更で計画期間や修繕資金計画の変更を伴わないものは「軽微な変更」にあたり、変更認定申請は不要です。判断は北区の「変更内容チェックシート」で確認できます。変更認定申請が必要な場合、「長期修繕計画の作成、見直し等」に係る事項の手数料は基本9,800円・加算5,200円です。

Q. 大規模修繕の工期はどれくらい見ればいいですか?

A. 足場を架ける従来工法では、10階建て・外周80m程度のマンションで約3か月が目安です。ロープアクセス工法を使う場合は1.5〜2か月程度に短縮できるケースがあります。足場の架設・解体そのものに時間がかかるため、その工程が丸ごと不要になる分の差です。ただし、工事範囲や部位によって適する工法は変わりますので、まずは建物を見せていただいてからのご判断になります。

Q. 認定と大規模修繕、どちらを先にやるべきですか?

A. 固定資産税の減額を狙うのであれば、認定が先です。長寿命化促進税制は「認定マンションが長寿命化に資する大規模修繕工事を完了させた場合」に適用されるためです。工事の着工予定がある管理組合さまは、スケジュールの前後関係を早めに整理されることをおすすめします。

まとめ:北区の管理組合が今週動けること3点

北区は、23区の中では管理計画認定を取りにいきやすい区です。独自基準がなく、手数料も基本4,100円。つまずくとすれば、制度の側ではなく、長期修繕計画と修繕積立金という管理組合の内側の問題です。

今週、理事会で動けることを3つ挙げます。

  1. 長期修繕計画の表紙を見る。 作成・見直しの日付が7年以内か、計画期間が30年以上か、大規模修繕が2回以上入っているか。この3点だけなら、その場で確認できます。
  2. 管理規約の3点を確認する。 専有部分への立入り、修繕等の履歴情報の管理、財務・管理情報の書面交付。この3つが規定されているかどうかで、規約改正の要否が決まります。
  3. 次の総会の議案に「認定申請の決議」を入れるか決める。 総会決議がないと事前確認に進めません。ここを逃すと1年待ちです。

この3点で引っかかる項目が出たら、そこが認定のボトルネックです。そして、そのボトルネックが「工事費が重くて積立が追いつかない」であれば、工法の選択肢を増やすことで解ける可能性があります。

明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。管理組合さま向けのサービス内容は管理組合向けの大規模修繕サービスにまとめました。工法ごとの技術的な違いをもう少し掘りたい方は、ロープアクセスドットコムもあわせてご参照ください。

認定を取るかどうかの前段階、「うちの長期修繕計画、そもそも通るのか」という整理だけでもお力になれることがあります。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください(お問合せフォーム)。

10月の理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。春の総会に間に合うかどうかは、そこで決まります。

出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月21日時点で公表されている東京都北区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特にマンション長寿命化促進税制の適用期限については、令和8年度税制改正による延長の動きがありますので、実際に申請される前に、必ず東京都北区(都市整備部 住宅課 住宅政策係 電話 03-3908-9201)および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月21日

「管理会社が組合の代表」マンションで大規模修繕はどう決まるのか|2026年4月施行の適正化法77条の2が義務づけた事前説明と相見積もり、管理組合・オーナーの使い方【2026年9月】

2026年9月21日 更新

Q. 管理会社が管理組合の「管理者」を務めているマンションで、大規模修繕工事はどう決まるのでしょうか。管理会社のグループ会社が工事を受注しても、区分所有者は何も言えないのでしょうか。

A. 2026年(令和8年)4月1日に施行された改正マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)第77条の2により、管理者である管理業者が「密接な関係を有する者」と取引をするときは、あらかじめ説明会を開催して重要な事実を説明することが義務づけられました。説明すべき内容には、取引の金額(内訳と算出の根拠を含む)、取引相手を選んだ理由、他社から見積りを取った場合はその内容、取らなかった場合はその理由までが含まれます(出典:国土交通省 「マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則」の一部改正(令和8年4月1日施行)第89条の4、および同省 マンション標準管理者事務委託契約書等の策定・改正について、令和7年12月12日)。つまり、区分所有者には「他にいくらの見積りがあったのか」を聞く法的な足場ができたということです。


この記事の結論を先にお伝えします

昨日(2026年9月20日)、朝日新聞がマンション管理をめぐる特集記事を出しました。朝刊紙面は「(ニュース特集)マンションの管理会社が組合代表、注意点は」、デジタル版は「修繕積立金が突然3倍に 管理会社の利益相反を招くマンションとは」という見出しです。修繕積立金が約3倍になるという通知を受けた投資用マンション所有者の例から、管理組合の代表を管理会社が兼ねる構図を掘り下げた内容でした。

私はこの2本を読んで、現場で何度も見てきた光景を思い出しました。理事会がないマンションで、管理会社が出してきた1社だけの見積書が、そのまま総会にかかる。区分所有者は比較する材料を持っていない。反対する材料もない。だから可決される。

この記事でお伝えしたいことは3つです。

ポイント 内容
① 法律は変わった 2026年4月1日施行の適正化法77条の2で、利益相反のおそれがある取引には事前の説明会開催が義務化。開示項目に「他社見積りの内容/取らなかった理由」が入った
② 見るべき数字は2つ 国交省調査で戸あたり工事金額の中央値は約110万円/戸(1回目)。そして総工事金額に占める仮設工事は平均22.3%
③ 動き方はシンプル 説明会で開示を求め、相見積りに1社だけ工法の違う会社を入れる。それだけで見積書の中身が読めるようになる

管理業者管理者方式そのものを否定するつもりは、私にはまったくありません。役員のなり手がいないマンションで、専門家が管理者を務める仕組みは必要です。ただ、発注のプロセスが見えないまま進むことだけは、資産価値の観点から見過ごせない。ここからが本題です。


何が起きたのか:2026年9月20日の報道

2026年9月20日、朝日新聞が「(ニュース特集)マンションの管理会社が組合代表、注意点は」を掲載しました。記事は「管理を任す側が、任される側も兼ねる」という構図を指摘し、役員を務める負担は減るものの、管理への関心が薄れる副作用を心配すべきだと整理しています(出典:朝日新聞デジタル、有料記事)。

同じ日のデジタル版では「修繕積立金が突然3倍に 管理会社の利益相反を招くマンションとは」の見出しで配信されています。修繕積立金が約3倍になるという通知を受けた投資用マンション所有者の例が紹介され、長期修繕計画の見直しを主導したのが管理組合の代表を兼ねる管理会社だった、という構図が語られています。

この報道は、業界にいる人間から見ると「ついに一般紙が正面から書いた」という印象です。そして重要なのは、この問題に対して国の制度側がすでに手を打っているという事実が、まだ管理組合やオーナーの手元に届いていないことです。

報道と制度の「時差」が損をつくる

私の経験上、制度が変わってから現場に浸透するまでには2〜3年のタイムラグがあります。2026年4月1日に施行された改正法は、施行から5か月半が経ったところ。ちょうど今、改正後はじめての大規模修繕の発注に入るマンションが出てきている時期です。

この時期に、区分所有者が「77条の2って何ですか」と一言聞けるかどうか。そこで数百万円単位の差がつくことがあります。


管理業者管理者方式(第三者管理方式)とは何か

まず言葉の整理をします。

管理者とは、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第25条に定められた、管理組合を代表して業務を執行する立場のことです。多くのマンションでは、理事会が置かれ、理事長が管理者を兼ねています。

管理業者管理者方式は、この管理者に、マンション管理業者(管理会社)自身が就任する方式です。一般には「第三者管理方式」「外部管理者方式」とも呼ばれます。理事会を置かず、管理会社が管理者として意思決定と業務執行を担います。

導入の背景は「なり手不足」

国土交通省は令和6年(2024年)6月7日に「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」を策定しました。その背景説明には、こうあります。

近年、マンションにおいて、役員の担い手不足等を背景として、マンション管理業者が管理事務を受託するのに加えて管理者として選任される事例や、新築マンションにおいて、管理業者が管理者に就任することを前提として分譲が行われる事例が出てきています。

そして同じ文書は、リスクもはっきり書いています。「区分所有者の意思から離れた不適切な管理、管理組合と管理業者との利益相反の発生、管理業者に支払うコストの増大等が生じるおそれがある」と。

国が「メリットもあるがデメリットもある。慎重に検討を」と言っている制度。それが管理業者管理者方式です。

なぜ「なり手不足」が深刻なのか

令和5年度マンション総合調査(国土交通省、令和6年6月21日公表)の数字を見ると、背景が立体的に見えてきます。

項目 数値 前回調査比
世帯主が70歳以上の割合 25.9% +3.7ポイント
うち昭和59年(1984年)以前のマンション 55.9% -
賃貸住戸のあるマンションの割合 77.8% +3.1ポイント
空室があるマンションの割合 34.0% -3.3ポイント
計画に対し修繕積立金が不足しているマンション 36.6% +1.8ポイント

出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果(とりまとめ)」(令和6年6月21日)

昭和59年(1984年)以前に完成したマンションでは、世帯主の55.9%が70歳以上です。しかも8割近いマンションに賃貸住戸があり、そのオーナーは現地に住んでいません。理事のなり手がいないのは、精神論の問題ではなく人口構成の問題です。

同時に、修繕積立金が計画に足りていないマンションが36.6%もある。工事の質と価格に対して、より敏感にならざるを得ない環境が揃っているわけです。


数字で見る:管理業者管理者方式はどこまで広がっているか

国土交通省は令和5年(2023年)12月4日〜15日に、一般社団法人マンション管理業協会の会員社351社を対象に「第三者管理者方式に関する実態調査」を実施しました。有効回答は152件(回収率43.3%)です。

調査項目 結果
第三者管理者方式を導入していると回答した管理業者 48社(約32%)
その48社が受託している管理組合数の合計 1,991件
新築マンションで「導入している/導入予定」 約半数(48%)
通常総会の議長を「管理者業務の担当者」が務める 81%
総会決議なしで発注できる金額の上限規定がある 15%(上限額は10万円〜140万円)
監事の報酬が「報酬はない」 53%
保管口座等の印鑑を「管理者として自社が保管」 60%(監事選任ケース)

出典:国土交通省「第三者管理者方式に関する実態調査(12月調査)」

なお、管理組合側から見た普及率は別の数字になります。令和5年度マンション総合調査では、区分所有者以外の第三者が管理者となっているマンションは3.7%にとどまっています。

つまり、既存のマンション全体ではまだ少数派。しかし新築では管理業者の約半数が導入または導入予定という構図です。これから供給される投資用ワンルームや自己居住用マンションでは、購入した時点ですでに管理業者管理者方式、ということが珍しくなくなります。

この調査で私がいちばん気になった数字

「通常総会の議長を管理者業務の担当者が務める」が81%。

議長が管理会社の社員である総会で、管理会社のグループ会社への工事発注が議案にかかる。この構図そのものが違法なわけではありません。ただ、区分所有者の側に判断材料がなければ、実質的な審議は成立しにくい。ここが、今回の法改正が手をつけた部分です。


2026年4月1日施行:適正化法77条の2で何が変わったか

令和7年5月23日、「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第47号)が成立し、同月30日に公布されました(出典:法務省「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について」)。

この一括法は、区分所有法、被災区分所有法、マンション管理適正化法、マンション建替え等円滑化法をまとめて改正するもので、区分所有法・被災区分所有法の改正部分、および本稿で扱うマンション管理適正化法の改正部分は、いずれも2026年(令和8年)4月1日から施行されています。

新設された第77条の2の中身

従来のマンション管理適正化法では、第77条で管理業者が区分所有者に管理事務を報告する義務は定められていましたが、利益相反のおそれのある行為そのものを規律する条文はありませんでした。

改正法で追加された第77条の2は、管理者となった管理業者が「密接な関係を有する者」と取引を行うとき(管理受託契約・管理者受託契約の締結を除く)は、あらかじめ説明会を開催し、区分所有者等に対して当該取引の重要な事実を説明しなければならないと定めています。

ただし書きとして、災害その他やむを得ない事由により取引を速やかに行う必要があると認められる場合は除外されます。ただしこの例外はかなり狭く、マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則第89条の5は、共用部分の損傷により居住者の日常生活に支障が生じるおそれがあると認められる場合で、その旨の決議が集会でなされている場合に限定しています。「災害が起きたから説明会は不要」と広く読める規定ではありません。また業界団体宛ての施行通知では、やむを得ず開催できない場合も「事後的に総会などで報告することが望ましい」とされています(出典:建設通信新聞「マンション管理適正化法 4月1日施行/利益相反で事前説明が義務化」)。

誰が「密接な関係を有する者」なのか

施行規則第89条の2が、対象を具体化しました。管理業者の親会社、子会社、関連会社などが該当します。標準管理者事務委託契約書では、この条項で示された対象企業を契約書に列挙することとされています。

ここが実務的に効きます。契約書を見れば、どの会社が「利益相反のおそれのある取引先」なのかが名前で分かるということです。


開示すべき6項目:ここが管理組合・オーナーの武器になる

施行規則第89条の4は、説明会で開示すべき事項を具体的に定めました。私が読んで「これは大きい」と思ったのが、この6項目です。

# 開示すべき事項 管理組合・オーナー側の読み方
1 管理業者と取引相手との関係 資本関係・役員兼任の有無を確認する
2 取引を行おうとする年月日 総会までの検討期間が足りているか
3 取引の内容 工事の範囲・仕様がどこまでか
4 取引の金額(内訳および算出の根拠を含む) 数量×単価まで見る。ここが本丸
5 取引を行おうとする理由 「グループだから」は理由にならない
6 相手方以外から見積りを取った場合はその内容/取らなかった場合はその理由 相見積りの有無が制度的に可視化される

とくに4番と6番です。

4番の「内訳および算出の根拠」。これは総額だけの見積書では説明義務を果たしたことにならない、という意味に読めます。大規模修繕の見積書は、本来なら「外壁塗装 ○○㎡ × ○,○○○円/㎡」という形で数量と単価が並びます。それが出てこない見積書は、そもそも比較ができません。

6番の「見積りを取らなかった理由」。建設通信新聞の解説によれば、標準管理者事務委託契約書のコメントでは、利益相反のおそれのある会社と取引する場合、組合員への事前説明と総会の承認の両方が必要とされ、相見積りを求める記載がされています。工事業者を公募したが他に参加者がいなかった場合も、その会社に発注する理由となり得る、という整理です。

つまり「公募して他に手が挙がらなかった」は理由になるが、「最初から1社しか当たっていない」は説明として弱い、ということになります。


標準契約書の「誠実義務等」(令和7年12月12日策定・改正)

国土交通省は令和7年12月12日、改正法の施行に向けて3つの文書を策定・改正しました。

文書 区分 主な内容
マンション標準管理者事務委託契約書 【策定】 管理業者の業務内容、印鑑等の保管、利益相反取引の制限 等
マンション標準管理委託契約書 【改正】 定期の説明会開催による組合員等への報告義務、契約行為の相手方、利益相反取引の制限 等
マンション標準管理規約(書き換え表) 【策定】 管理者に関する基本的事項、管理者の退任・辞任・解任時の措置、利益相反取引に関する事項 等

出典:国土交通省「マンション標準管理者事務委託契約書、マンション標準管理委託契約書、管理業者管理者方式を採用した場合におけるマンション標準管理規約(書き換え表)を策定・改正しました」(令和7年12月12日)

利益相反取引については、いずれも第26条「誠実義務等」に規定されました。

管理業者管理者方式でないマンションにも効く

ここを見落としてほしくありません。理事会がある一般的なマンションが結ぶ「マンション標準管理委託契約書」の側にも、第26条の誠実義務が置かれました。

そのコメントでは、透明性確保のため、紹介手数料・仲介料・謝礼など、実際の業務を伴わない金銭を管理組合の承認を経ずに授受してはならないことが明記されています。さらに工事発注プロセスについても、工事費用の内訳や積算根拠を管理組合に説明し、理事会から求めがあった場合は相見積りを取得することとされました。

理事会のあるマンションでも、理事会が「求めれば」相見積りが出てくる。これは理事長が知っているかどうかで結果が変わる話です。

私はいつも理事長さまに「標準管理委託契約書の第26条だけは読んでおいてください」とお伝えしています。1ページで済みますし、次の大規模修繕のときに効いてきます。


では、見積書のどこを見るのか:国交省データが示す2つの基準

ここからは、私が20年以上現場でやってきた側の話です。

制度が整っても、見積書を読む目がなければ使いこなせません。幸い、国土交通省は比較の基準になるデータを公表しています。「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」です。設計コンサルタント業務または施工の受注実績を持つ企業814社に配布し、200社から回収(回収率24.6%)、工事完了済みの818件を集計したものです。

基準①:戸あたり工事金額

大規模修繕工事の回数 下位25%値 中央値 上位25%値
1回目(n=331) 90.9万円/戸 110.2万円/戸 134.0万円/戸
2回目(n=194) 87.8万円/戸 106.1万円/戸 129.8万円/戸
3回目以上(n=242) 76.8万円/戸 97.0万円/戸 125.7万円/戸

全体の分布では「100〜125万円/戸」が27.0%で最多、次いで「75〜100万円/戸」が24.7%でした。工事金額そのものは、1回目の中央値が8,665万円、2回目が7,660万円、3回目以上が8,703万円です。

※この工事金額に共通仮設費は含まれていません。また令和3年度の調査であり、その後の資材価格・労務費の上昇は反映されていません。現在の見積りと比べる際は、水準そのものではなく「自分のマンションが分布のどのあたりにいるか」を見る指標として使ってください。

基準②:仮設工事が占める割合

こちらが、私がいちばんお伝えしたい数字です。

工事回数 建築系工事 仮設工事 諸経費① その他
全体 59.0% 22.3% 9.3% 6.2%ほか
1回目 63.6% 19.4% 9.4% 3.0%ほか
2回目 60.3% 22.8% 9.5% 3.8%ほか
3回目以上 58.8% 25.3% 9.6% 3.2%ほか

出典:同上(国土交通省 令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査)

総工事金額の約2割が仮設工事。そして1回目19.4%、2回目22.8%、3回目以上25.3%と、回数が進むほど仮設の比率が高い集計結果になっています(同調査のグラフ値。なお同資料の要約文には異なる傾向の記載があるため、ここでは集計グラフの数値を参照しています)。

この2割をどう扱うかで、総額は大きく動きます。そして仮設工事=足場の話ですから、ここは工法の選択がそのまま金額に出る領域です。

ちなみに建築系工事の内訳を見ると、全体で外壁塗装28.8%、床防水15.7%、建具・金物等15.3%、屋根防水12.9%、シーリング工事9.1%、鉄部等塗装8.8%、外壁タイル7.1%、共用内部2.4%。外壁塗装と防水で半分近くを占めます。


相見積りに「工法の違う1社」を入れると何が見えるか

ここで、私たち株式会社明誠が提案している無足場工法の話をさせてください。宣伝として読んでいただいても構いませんが、見積書を比較する道具として使えるという点だけは受け取っていただきたいのです。

足場とロープアクセスの差額は、ここまで開くことがあります

参考値として(いずれも当社の積算にもとづく試算です)、10階建て・外周80m・工期3か月のマンションで仮設計画を比較した場合、枠組足場の仮設費が約168万円、ロープアクセス工法(無足場工法)なら約59万円と、約109万円の差が出るケースがあります。もちろん建物形状・工事範囲・工期によって大きく変動しますので、あくまでレンジの目安です。

なぜ差が出るのか。ロープアクセス工法は、屋上に支点を設けて産業用ロープで作業員が懸垂下降し、外壁の打診調査・補修・塗装・シーリング・防水などを行う工法です。足場の組立・解体・リース期間がまるごと不要になります。

技術的な詳細や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで体系的に解説しています。工法そのものの仕組みを理解してから見積りを読むと、「仮設22.3%」の意味が変わって見えるはずです。

単価の目安も、あえて書いておきます

比較の物差しがないと、見積書は読めません。東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県でのマンション大規模修繕において、私たちが日常的に見ているレンジは次のとおりです。

工種 ㎡単価の目安
外壁打診調査 250〜500円/㎡
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/㎡

30戸規模のマンションの大規模修繕であれば、総工費3,500〜5,000万円程度、うち仮設が15〜25%というのが、私たちが日常的に見ているレンジです。いずれも物件の規模・劣化状況・足場架設の難易度で大きく変動しますので、断定できる数字ではありません。それでも「レンジを知っている」ことと「知らない」ことの差は、総会での発言力の差になります。

料金の考え方については、明誠の大規模修繕の料金の考え方にまとめています。

1社入れるだけで、見積書の構造が浮かび上がる

相見積りを3社取るとき、3社とも足場工法だと、比較できるのは「同じ土俵の中での値引き幅」だけです。仮設の2割は、3社とも似たような金額で並びます。

ここに無足場工法または足場とロープアクセスを併用するハイブリッド工法の1社を入れると、仮設費という項目そのものが動く。そのとき初めて、「この建物にとって足場は本当に必要か」「必要なのは北面だけではないか」という議論が始まります。

私はこれを、ワンセットでご提案するようにしています。足場を否定したいのではありません。足場が最適な建物は確実にあります。低層で複雑な形状、全面打ち替えが必要なタイル、住戸バルコニー内部まで手を入れる工事。こうしたケースでは足場のほうが安く、早く、安全です。

大事なのは「比べた結果、足場を選んだ」という記録が残ること。管理業者管理者方式のマンションなら、これが施行規則第89条の4の6番(他社見積りの内容)への回答そのものになります。

3つの工法の使い分けについては明誠のロープアクセス工法の技術詳細をご覧ください。


現場で私が見てきたこと

正直に申し上げます。私がいちばん悔しい思いをするのは、工事が終わってから呼ばれるときです。

数年前、都内のあるマンションで、大規模修繕の直後に外壁の一部から漏水が出たとご相談をいただきました。伺ってみると、工事そのものは決して手を抜いた内容ではありませんでした。ただ、足場を架けた範囲と、劣化が進んでいた範囲がずれていたのです。

そのマンションは中庭側に複雑な入隅があり、そこは足場が架けにくいという理由で、施工範囲から外されていました。悪意があったとは思いません。仮設計画上そうなった、というだけの話です。

ですが、もし発注前に「その入隅はどう施工するのか」という質問が1つ出ていたら。ロープアクセスなら入隅にも支点を取れますから、その部分だけを無足場で拾う提案ができたはずです。質問が1つあるかないかで、数年後の漏水修繕費が変わる。これが現場の実感です。

緊急の漏水対応については明誠の漏水対応にも実例をまとめていますが、いちばん安く済むのは「発注前に聞いておく」ことです。

私たちが数字で語れること

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。

作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けており、品質マネジメントはISO9001に基づいて運用しています。また、日本ロープ高所作業協会の事務局を担当しています。

私たちは日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズ本部を立ち上げました。塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しており、中間マージンを重ねずに各工種の専門会社が直接施工する構造になっています。高品質と低価格を両立させるための仕組みです。

安全管理の考え方は明誠の安全管理に、これまでの施工事例は明誠の施工事例一覧にまとめています。


管理組合・オーナーが今日からできる5つのこと

制度の話を、実務に落とし込みます。

1. 自分のマンションが管理業者管理者方式かどうかを確認する

管理規約を見てください。「管理者」が誰かが書いてあります。理事長が管理者なら従来型。管理会社名が入っていれば管理業者管理者方式です。2026年4月1日以降に新規購入した方は、宅地建物取引業法施行規則の改正により、重要事項説明で管理業者管理者方式を採用しているか否かの説明を受けているはずです。

2. 管理委託契約書の「第26条 誠実義務等」を読む

令和7年12月12日改正の標準管理委託契約書に準拠した契約であれば、第26条に誠実義務が置かれています。管理業者管理者方式なら、標準管理者事務委託契約書の別紙に利益相反のおそれのある取引先企業が列挙されているはずです。名前を確認してください。

3. 大規模修繕の話が出たら、説明会の開催予定を聞く

適正化法77条の2により、管理者である管理業者が密接な関係を有する者と取引をするなら、事前の説明会開催が必要です。「説明会はいつですか」と聞くだけで、話が動きます。

4. 説明会では6項目の開示を求める

施行規則第89条の4の6項目です。とくに「取引の金額の内訳および算出の根拠」と「他社から見積りを取った場合はその内容、取らなかった場合はその理由」。この2つを議事録に残してください。

5. 相見積りに、工法の違う1社を入れる

これが、私からの実務的なご提案です。足場工法の会社を3社比べるのではなく、無足場工法またはハイブリッド工法を提案できる会社を1社入れる。仮設の22.3%が動くかどうかを見てください。ロープアクセス工法そのものの安全基準や適用条件についてはロープアクセスドットコムに判断材料をまとめてあります。


管理業者管理者方式を「使いこなす」ための3つの条件

最後に、バランスを取った話をさせてください。

私は管理業者管理者方式に反対ではありません。役員のなり手がいないマンションで、誰も管理者を引き受けられないまま長期修繕計画が10年放置される。そのほうが、資産価値にとってはよほど危険です。

国交省の実態調査には、管理会社側の前向きな取り組みも記録されています。たとえば大規模修繕の検討体制について、「区分所有者による修繕委員会を設置している」という趣旨の回答が約15件あり、「管理組合内で修繕委員会を立ちあげて複数業者からの相見積もりで検討するのを通常としており、第三者管理者方式でもこの点は特に変わらない」という回答もありました。

さらに踏み込んだ例として、「当社が管理者となった場合は当社元請の工事は一切行わないこととしていることから、建物診断、仕様設計、施工、工事監理とも社外の事業者によって実施することとしている」という回答もあります。ここまでやっている管理会社もあるのです。

その上で、使いこなすための条件を3つ挙げます。

条件 確認する場所
① 監事が機能しているか 実態調査では監事の報酬が「報酬はない」が53%。無報酬の監事にどこまで監査を期待できるかは、現実的に考える必要があります
② 印鑑・通帳の保管体制が分離されているか 実態調査では「管理者として自社が保管」が6割前後。自社保管の場合、管理事務の部署とは別部署で保管しているかを確認
③ 発注の上限規定が妥当か 総会決議なしで発注できる上限を設けているのは15%、金額は10万円〜140万円。上限がない場合、何が総会にかかるのかを規約で確認

いずれも、国土交通省「第三者管理者方式に関する実態調査」に基づく数字です。

投資用マンションをお持ちのオーナーさまは、とくに③を見てください。実態調査では、第三者管理者方式を導入しているマンションのうち投資用が1,055組合と、自己居住用の306組合を大きく上回っています。現地に住んでいないオーナーほど、規約の確認が資産防衛になります。

オーナーさま向けの考え方は明誠のオーナー向けサービスにまとめています。


よくあるご質問

Q. 管理業者管理者方式だと、大規模修繕の工事会社は自分たちで選べないのですか?

A. 選べます。適正化法77条の2により、管理者である管理業者が密接な関係を有する者と取引をする場合は事前の説明会が必要で、標準管理者事務委託契約書のコメントでは組合員への事前説明と総会の承認の両方が必要とされています。総会で否決されれば、その発注は成立しません。

Q. 説明会で「内訳は企業秘密なので出せない」と言われたらどうすればいいですか?

A. 施行規則第89条の4は、開示すべき重要な事実として「取引の金額(内訳および算出の根拠を含む)」を挙げています。企業秘密を理由に総額だけの提示で済ませるのは、条文の趣旨に沿いにくい対応です。議事録に質問と回答を残したうえで、必要に応じて都道府県のマンション管理相談窓口や地域のマンション管理士会にご相談ください。

Q. 理事会があるマンションには関係のない話ですか?

A. いいえ。令和7年12月12日改正のマンション標準管理委託契約書にも第26条「誠実義務等」が置かれ、工事費用の内訳や積算根拠を管理組合に説明すること、理事会から求めがあった場合は相見積りを取得することが記載されました。理事会がある場合でも、求めれば相見積りが出てきます。

Q. 大規模修繕の適正価格の目安はありますか?

A. 国土交通省の令和3年度実態調査では、戸あたり工事金額の中央値が1回目で約110万円/戸、2回目で約106万円/戸、3回目以上で約97万円/戸でした。ただし共通仮設費は含まれておらず、その後の資材・労務費の上昇も反映されていません。水準そのものより、分布の中での位置を確認する指標としてお使いください。

Q. ロープアクセス工法にすると、工期はどれくらい変わりますか?

A. 建物形状と工事範囲によりますが、足場の組立・解体期間(一般に往復で2〜4週間程度)がなくなる分、全体工期が短縮されるケースが多くあります。10階建て・外周80m程度の物件で、足場工法3か月に対し1.5〜2か月が目安になることがあります。ただしバルコニー内部の工事量が多い場合は足場のほうが効率的で、一概には言えません。

Q. 足場とロープアクセスを組み合わせることはできますか?

A. できます。明誠ではハイブリッド工法と呼んでおり、部位ごとに使い分けます。たとえばバルコニー側は足場、足場が架けにくい中庭側や道路に面した狭小部はロープアクセス、という組み方です。仮設費を抑えつつ、施工性が必要な部位には足場を確保できます。

Q. 相見積りを取るのは、管理会社に失礼になりませんか?

A. なりません。むしろ2026年4月の法改正以降、相見積りの取得は管理業者の側にとっても「説明責任を果たした記録」になります。施行規則第89条の4は、他社見積りを取らなかった場合はその理由まで説明するよう求めています。相見積りは、管理組合と管理会社の双方を守る手続きです。

Q. うちは築45年で3回目の大規模修繕です。もう建て替えを考えるべきでしょうか?

A. 判断材料は複数あり、一律には申し上げられません。令和3年度実態調査では3回目以上の工事の戸あたり中央値は97.0万円/戸で、1回目より低くなっています。一方で仮設工事の比率は25.3%と最も高い。工事範囲が絞られる分、仮設の効率が総額を左右しやすい段階です。無足場工法で仮設を圧縮できれば、修繕を継続する選択肢の経済性が変わることがあります。まずは劣化診断からご相談ください。


この記事のポイントまとめ

  • 2026年4月1日施行の適正化法77条の2で、利益相反のおそれがある取引に事前説明会が義務化された
  • 開示6項目には「金額の内訳と算出根拠」「他社見積りの内容/取らなかった理由」が含まれる
  • 理事会のあるマンションでも、標準管理委託契約書26条で相見積りを求められる
  • 国交省調査の戸あたり中央値は1回目110.2万円/戸、仮設工事は総額の平均22.3%
  • 相見積りに工法の違う1社を入れると、仮設費という項目そのものが動く

出典・参考資料

※本記事の制度に関する記述は2026年9月21日時点の情報に基づきます。制度は変更される場合がありますので、実際の手続きの際は各官公庁の最新情報をご確認ください。工事金額はいずれも目安・参考値であり、物件の規模・形状・劣化状況により大きく変動します。


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月21日

制度の条文を読むのは、正直に申し上げて面白い作業ではありません。ですが今回の77条の2は、管理組合とオーナーの側に「聞いていい」という根拠をくれた改正です。総会の前に、理事会で1分だけでもこの話題を出してみてください。それだけで、次の大規模修繕の見え方が変わります。

見積書の読み方だけでも構いません。ご相談は明誠のお問い合わせフォームから遠慮なくお声がけください。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

豊島区の管理組合が無料で使える相談・派遣11選|マンションアドバイザーは年4回・1回2時間まで無料、管理状況の届出は区の条例で義務【令和8年度版】

2026年9月20日 更新

豊島区の管理組合さまから伺う相談で、いちばん多いのはこれです。

「修繕の時期が近いのは分かっている。でも、誰に聞けばいいのか分からない」

管理会社に聞けば、管理会社の答えが返ってきます。施工会社に聞けば、施工会社の答えが返ってきます。どちらも嘘ではないのですが、組合の側に立った第三者の意見が一つも入らないまま、数千万円の工事を決める。これがいちばん危うい。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組んで建物を囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も自分の足で踏んできた人間です。

その立場から申し上げると、豊島区は23区のなかでも、管理組合向けの無料支援がよく整っている区です。しかも、豊島区には他区にない特徴が一つあります。管理状況の届出を、区の条例で「義務」としていることです。

豊島区は、区内の住宅のうち約8割がマンション(分譲マンションを含む共同住宅)であり、竣工後40年以上経過したマンションが今後急激に増加していくと公表しています(出典:豊島区「管理不全の予防~まずは、こちら!~」、2026年6月18日更新)。池袋・目白・大塚・巣鴨・要町と、駅ごとに性格の違うマンション群を抱えながら、そのストックが一斉に高齢化していく。区が支援制度を厚くしているのは、この事情があるからです。

今日は、豊島区の管理組合とビルオーナーさまが使える相談・派遣・助成を11個、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。


結論:豊島区で使える支援は11ある

先に一覧でお示しします。無料のものと、費用の一部が戻るものを分けて並べました。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用 申込先
1 豊島区マンションアドバイザー派遣事業 マンション管理士・一級建築士・税理士 無料/同一年度内4回・1回2時間まで 住宅・マンション課マンショングループ 03-3981-1385
2 住宅・マンション課マンショングループの窓口・電話・メール相談 区職員 無料/平日9時〜17時 03-3981-1385
3 東京都マンション管理士会 電話相談 マンション管理士 無料(通話料は自己負担)/30分程度 03-5829-9774
4 分譲マンション総合相談(東京都防災・建築まちづくりセンター) 専門相談員 無料/平日+第1土曜・第3日曜 03-6427-4900
5 分譲マンション専門相談(東京都住宅政策本部) 弁護士・一級建築士 無料/弁護士は月3回、建築士は月1回・完全予約制 区の住宅・マンション課経由 03-3981-1385
6 豊島区 法律相談(弁護士) 弁護士 無料/1回30分以内・要予約 区民相談課 03-3981-4164
7 (公財)マンション管理センター 電話相談 専門相談員 無料/平日9時30分〜17時 運営 03-3222-1517/建物・設備 03-3222-1519
8 分譲マンション計画修繕調査費助成 ― 調査費の2分の1(20万円限度) 住宅・マンション課 03-3981-1385
9 分譲マンション耐震診断助成 ― 対象経費の3分の2(100万円限度) 同上
10 分譲マンション耐震改修助成 ― 工事費の23%(1,000万円限度)、補強設計は3分の2(100万円限度) 同上
11 建替え・改修アドバイザー制度利用助成 東京都のアドバイザー 派遣料16,500円のうち10,000円を助成 同上

覚えておく電話番号は、実質2つで足ります。住宅・マンション課マンショングループ(03-3981-1385)と、東京都マンション管理士会の電話相談(03-5829-9774)。前者が豊島区の制度すべての入口で、後者は区役所の開いていない時間帯に考えを整理したいときの相手です。

ここからが本題です。


1. 豊島区マンションアドバイザー派遣:年4回・1回2時間が無料

豊島区の管理組合が最初に使うべき制度が、これです。

豊島区は、分譲マンションの管理組合にマンション管理士、一級建築士、税理士を無料で派遣し、維持管理・大規模修繕・建替えなどの疑問や相談について情報提供や助言を行っています(出典:豊島区「マンションアドバイザー派遣事業」、2026年7月1日更新)。

条件を整理します。

  • 派遣対象:豊島区内に所在する分譲マンションの管理組合(管理組合が組織化されていない場合は要相談)
  • 派遣時間:1回につき2時間まで(派遣開始時間の目安は午前10時〜午後6時)
  • 派遣回数:1つのマンションにつき、同一年度内で4回まで
  • 費用:無料。ただし会場費や資料代が発生した場合は管理組合の負担
  • 専門家:マンション管理士/一級建築士/税理士

年4回×2時間で、合計8時間。マンション管理士を理事会に2回、一級建築士を修繕の検討会に2回、というように専門分野を分けて呼べるのがこの制度の大きな利点です。

申請前の「電話相談」が必須

ここを飛ばすと止まります。区は「派遣をご希望の場合、必ず“申請前に”住宅・マンション課マンショングループへお電話でご相談ください」と明記しています。電話番号は03-3981-1385です。

手続きの流れは次のとおりです。

  1. 事前電話相談(03-3981-1385)
  2. 「豊島区マンションアドバイザー派遣申請書」を記入(押印不要)し、窓口・郵送・メールのいずれかで提出。申請者は管理組合の代表者(理事長)
  3. 区から「派遣決定通知書」が届く
  4. アドバイザー本人から担当者へ直接連絡が入り、日程調整
  5. 訪問
  6. 終了後、「派遣結果報告書」を提出

原則として、派遣希望日の3週間前までに申請が必要です。理事会の日程が決まった時点で動かないと間に合いません。

対象外になる業務を先に知っておく

次の5つは、この派遣事業ではできません。

  • 耐震診断の実施
  • 長期修繕計画の作成
  • 修繕工事等の設計書作成
  • 係争中の事案
  • 測定器による建物の精密測定

つまり、「作ってもらう」ことはできず、「判断を助けてもらう」制度だとご理解ください。長期修繕計画そのものを作りたい場合は、後述の計画修繕調査費助成(8番)のほうが筋がよいです。

なお区は、利用者が多い場合には年度途中で受付を終了することがあるとしています。年度前半に動くほうが確実です。


2. 区の窓口そのものが、最初の相談先になる

制度を使うほどではないけれど、方向だけ知りたい。そういうときは、住宅・マンション課マンショングループに直接聞けます。

区は、職員が窓口・電話・メール等で相談を受け、アドバイスや関係機関の紹介を行うと案内しています(出典:豊島区「分譲マンションの管理に関する相談窓口について知りたい」、2026年6月16日更新)。

  • 受付:午前9時〜正午、午後1時〜5時(土日祝・年末年始を除く)
  • 電話:03-3981-1385
  • メール:A0022901@city.toshima.lg.jp
  • 窓口:豊島区南池袋2-45-1 豊島区役所6階 住宅・マンション課マンショングループ

ただし、区は当事者間の仲裁に立つことや、特定の弁護士・企業・事業者を紹介することはできないと明記しています。「うちの管理会社と揉めているので間に入ってほしい」という使い方はできません。

私の経験上、この手の窓口は「答えをもらう場」というより「自分の物件の論点を整理する場」として使うのが正解です。外壁の浮きが何を意味するのか、いま動くべきか3年待てるのか。そこが整理できるだけで、次の理事会の議題が決まります。


3. 電話だけで済ませたいときの30分:東京都マンション管理士会

区役所が開いていない、あるいはまず匿名に近い形で聞いてみたい。そういう段階に向くのがこちらです。

一般社団法人 東京都マンション管理士会が、マンション管理士による電話相談を行っています(出典:前掲・豊島区の相談窓口ページ)。

  • 電話:03-5829-9774
  • 受付:月曜日〜金曜日 10時〜12時、13時〜16時(土日祝・振替休日は休み)
  • 相談時間:30分程度
  • 費用:相談は無料(ただし通話料は自己負担)
  • 対面での相談は受け付けていません

30分という枠を活かすなら、聞きたいことを3つに絞って紙に書いてから電話してください。「修繕積立金が不足している」「見積りの金額差が説明できない」「理事のなり手がいない」——このくらい具体的なほうが、返ってくる答えも具体的になります。


4. 東京都の2つの窓口:総合相談と、区を経由する専門相談

豊島区の制度の外側に、東京都の窓口が2つあります。性格がまったく違うので分けて説明します。

分譲マンション総合相談(東京都防災・建築まちづくりセンター)

日常の維持管理、建替えや改修に関する相談、管理状況届出制度の問い合わせに応じる総合窓口です。

  • 所在地:新宿区西新宿7-7-30 小田急西新宿O-PLACE 2F
  • 電話:03-6427-4900/FAX:03-6427-4901
  • 相談日:月曜日〜金曜日、第1土曜日および第3日曜日
  • 相談時間:午前9時〜午後5時(水曜日は午後7時まで延長、受付は午後6時まで)
  • 詳しくは公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター

平日に動けない理事の方にとって、第1土曜・第3日曜が開いているのは大きい。水曜の夜間延長も覚えておいて損はありません。

分譲マンション専門相談(東京都住宅政策本部)

弁護士や一級建築士に相談する必要があると考えられる案件に向けた、都の専門相談です。申込は区の窓口を経由します。

  • 弁護士相談:月3回 午後1時〜3時(完全予約制)
  • 建築士相談:月1回 午後1時〜3時(完全予約制)
  • 利用の流れ:① 豊島区住宅・マンション課へ来庁し、相談内容と希望日を伝える → ② 相談日の3日前までに都の担当者から直接連絡 → ③ 当日、都庁第二本庁舎13階南(新宿区西新宿2-8-1)へ
  • 問い合わせ:03-3981-1385(豊島区住宅・マンション課マンショングループ)

建築士相談は月1回しか枠がありません。大規模修繕の設計や工事監理について第三者の意見が欲しいなら、早めに区へ来庁予約の相談をしてください。

なお、区の相談窓口ページでは東京弁護士会マンション管理相談窓口(03-3581-2223)も案内されていますが、こちらは最初の電話で取扱対象かを確認したうえでの面接相談が30分5,500円(税込)の有料です。無料の窓口と混同しないようご注意ください。


5. 豊島区の法律相談:1回30分、予約は毎月20日から

区分所有者間のトラブルや、管理費の滞納、賃貸借に関する法律問題は、区の法律相談が使えます。

弁護士が土地・家屋・金銭貸借・相続など法律問題全般について、問題解決の糸口となる初歩的な法的アドバイスを行う相談です(出典:豊島区「法律相談(弁護士)」、2025年6月30日更新)。

  • 1回30分以内、1日3人(組)まで
  • 相談日時:月曜日〜金曜日 午後1時15分〜3時45分、毎月第2土曜日 午前10時15分〜午後0時45分
  • 予約:毎月20日から翌月分の受付開始(20日が閉庁日の場合は翌開庁日から)
  • 対象:豊島区在住・在勤・在学のかた。同じ内容での相談は1回のみ
  • 予約・問い合わせ:区民相談課庶務・相談グループ 03-3981-4164
  • 令和5年8月から、対面/電話/オンライン(ビデオトーク)を選べます

注意点として、調停や裁判で係争中の案件は受け付けられません。また、書類作成や相手方との交渉は行いません。あくまで入口です。


6. 豊島区は「届出が義務」の区である

ここが豊島区のいちばんの特徴です。

豊島区は、管理状況届出書の作成と届出を管理組合の義務としています。根拠は「豊島区マンション管理推進条例」と「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」の2つ。しかも区は、届出が無い場合等には条例に基づきマンション名を公表する場合があると明記しています(出典:豊島区「『管理状況届出制度』に関する届出について」、2026年3月5日更新)。

対象は豊島区内のすべての分譲マンションの管理組合です。東京都条例の届出義務が「昭和58年12月31日以前に新築された6戸以上」に限られるのに対し、豊島区は区の条例で全分譲マンションに広げている。ここが他区と違います。

届出書の様式も2種類に分かれます。

対象 根拠 様式
昭和58(1983)年12月31日以前に新築された6戸以上の分譲マンション 東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例 都様式の管理状況届出書
上記以外の分譲マンション 豊島区マンション管理推進条例 区様式の管理状況届出書(PDF・エクセル)

平成25年(2013年)の制度開始以来、届出率は8割を超えたものの、約2割のマンションが未届出というのが区の公表している状況です。

届出は「義務」であると同時に、無料の自己診断ツールでもある

制度の主旨は取り締まりではありません。区は、総会の年1回開催、管理規約の作成・更新、長期修繕計画の作成・見直し、大規模修繕工事の実施といった「管理組合が必ず行わなければならないこと」を、届出書を作成する過程で自ら確認してもらうことが目的だと説明しています。

そして区は、届出書を作って改善点が見えたものの、課題の整理や優先順位づけができない場合はマンション専門家派遣事業を使ってほしいと案内しています。つまり、届出書の作成 → 課題の抽出 → アドバイザー派遣という流れが、区が想定している使い方です。ここまでの費用はゼロです。

届出先は住宅・マンション課マンショングループ。郵送・FAX(03-3980-5136)・メール(A0022901@city.toshima.lg.jp)・窓口持参のいずれでも受け付けています。


7. 調査には助成が出る:計画修繕調査費、2分の1・20万円限度

ここからは「無料ではないが、費用の一部が戻る」制度です。大規模修繕に直結するのはこちらです。

豊島区は、長期修繕計画の作成や大規模修繕工事のために行う建物診断(劣化診断)の費用の一部を助成しています(出典:豊島区「分譲マンション計画修繕調査費助成」、2026年3月10日更新)。

  • 助成額:計画修繕調査に要する費用の2分の1(20万円限度)
  • 令和8年度の受付は4月1日から開始。申請前に必ず住宅・マンション課マンショングループへ問い合わせ
  • 申請は調査の契約締結前、調査完了は年度内のものが対象
  • 予算の範囲内。予算を超えた場合は受付終了

対象となる管理組合の条件は4つです。

  1. 建築後8年以上を経過した分譲マンションの管理組合であること
  2. 管理規約が整備されていること
  3. 管理組合の集会で、計画修繕調査の実施について決議がなされていること
  4. 過去10年以内に、本要綱による助成を受けていないこと

対象となる調査は、共用部分について、大規模修繕工事のため、または長期修繕計画の作成・更新のために調査業者に委託して実施する劣化診断調査です。調査対象箇所は区が明示しています。

  • 構造:外壁(塗装・タイル)、防水(屋上・ルーフバルコニー・開放廊下・屋外階段)、鉄部塗装、外構
  • 設備:給排水設備、電気設備、消防設備、エレベーター、機械式駐車場

外壁とタイル、屋上・バルコニーの防水が正面から対象に入っています。2回目・3回目の大規模修繕を控えた豊島区のマンションにとって、いちばん実務的な助成がこれです。

注意すべきは順番です。契約してから申請しても対象外になります。総会で調査実施を決議 → 区へ事前相談 → 申請 → 承認通知を受けてから契約・着手、という順を崩さないでください。


8. 旧耐震なら:診断3分の2・100万円、改修23%・1,000万円

昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた分譲マンションには、別枠の助成があります。

耐震診断助成

(出典:豊島区「分譲マンションの耐震診断助成事業」、2025年8月12日更新)

  • 助成額:助成対象経費の3分の2(100万円が限度)
  • 対象建築物:昭和56年5月31日以前に建築基準法第6条に基づく確認を受けた分譲マンションで、3階(地階を除く)以上のもの/原則として建築基準法および関係法令に適合していること/耐火建築物または準耐火建築物であること/耐震診断に必要な図書に不備がないこと
  • 対象者:管理組合
  • 申請は耐震診断着手前、診断完了は年度内のものが対象

耐震改修助成

(出典:豊島区「分譲マンションの耐震改修助成事業」、2025年6月17日更新)

  • 助成額:耐震改修工事に要した費用の23パーセント(1,000万円が限度)。利用の可否は事前に要問い合わせ
  • 耐震補強設計:要した費用の3分の2(100万円が限度)
  • 追加条件:耐震診断の結果、倒壊の危険があると判断されたもの/補強設計により構造耐震指標Is値が0.6以上となること/管理組合の総会で耐震改修工事を実施する決議がなされていること
  • 申請は工事着手前、工事完了は年度内のものが対象

上記2ページは更新日が令和7年(2025年)中のものです。令和8年度の予算枠や運用に変更がないかは、申請前に必ず住宅・マンション課(03-3981-1385)へご確認ください。本記事では区ページに現在掲載されている内容をそのまま紹介しています。

建替えか改修かで迷っている段階なら

東京都の「分譲マンション建替え・改修アドバイザー制度」を利用する際、豊島区は派遣料の3分の2を助成します。Aコース入門編の派遣料16,500円(税込)に対し、助成額は10,000円です(出典:豊島区「分譲マンション建替え・改修アドバイザー制度利用助成」、2026年3月5日更新)。テキスト代・消費税・違約金は助成対象外で、助成は予算の範囲内です。

実質6,500円で、建替え円滑化法や税制、老朽度判定、合意形成の進め方についてアドバイザーの説明を受けられる。改修で延命するか建替えるかを判断する前の「共通言語づくり」として、費用対効果は高いと思います。


9. 管理計画認定制度:手数料が3,900円と29,500円で分かれる

豊島区は令和5年4月1日から、マンション管理計画認定制度を開始しています(出典:豊島区「豊島区マンション管理計画認定制度」、2026年8月14日更新)。

認定を受けると、次のような効果が期待されると区は説明しています。

  • 一定水準以上の管理がされているマンションとして市場で評価される
  • 認定取得後に大規模修繕工事を行った場合、その翌年度の固定資産税(建物部分)が減額される
  • 住宅金融支援機構の【フラット35】およびマンション共用部分リフォーム融資の金利引き下げ等が適用される

有効期間は認定日から5年間(5年ごとの更新が可能)です。

手数料の差が7.5倍あるという事実

ここは金額を正確に押さえてください。豊島区の申請手数料は、申請ルートによって大きく変わります。

申請ルート 基本手数料 長期修繕計画が複数ある場合の1件あたり加算
(公財)マンション管理センターの事前確認を経て申請 3,900円 1,600円
豊島区に直接申請 29,500円 15,900円

ただし前者は、豊島区への手数料とは別に、マンション管理センターへの申請手数料20,000円が必要です。合計では23,900円。単純な比較ではなく、書類の整い方や手戻りの少なさまで含めて選ぶことになります。

豊島区には「独自の認定基準」がある

見落とされがちな点です。豊島区は国の認定基準に加えて区独自の認定基準を設けており、マンション管理センターでは区独自基準の適合確認を行いません。区は「事前確認適合証を受けた場合であっても、豊島区独自の認定基準に適合しない場合は認定が受けられません」と明記しています。

申請にあたっては、①区が発行した納付書で手数料を納付、②豊島区独自基準を反映した書式の認定申請書を提出、③区独自基準に関する表明保証書を作成して提出、という3点が必要です。いずれの方法で申請する場合も、事前に集会(臨時総会を含む)での決議が必要で、申請準備中に区独自基準を確認したうえでマンショングループへ事前相談することが求められます。


10. マンション防災:東京とどまるマンションと備蓄の補助

大規模修繕とは別の軸ですが、管理組合として動きやすいのがこちらです。

豊島区は、首都直下地震が発生した場合、区内の小中学校に救援センターを開設するものの、原則として住まいを失った方が避難する場所であるため、マンション居住者には在宅避難を推奨しています(出典:豊島区「マンション防災」、2026年8月10日更新)。

区はマンション防災マニュアルの作成例(ワード形式)を無料で配布しています。ゼロから書く必要はありません。

また東京都の「東京とどまるマンション」制度に登録すると、分譲マンションの管理組合や賃貸マンションの所有者等を対象に、簡易トイレやエレベーターに設置する防災キャビネットなどの防災備蓄資器材の購入等について補助を受けられます。豊島区版のリーフレットも区が作成しています。

賃貸マンションのオーナーさまも対象に含まれる点は、収益不動産をお持ちの方にとって見逃せないところです。


11. 相談の前に持っておきたい、修繕の相場観

窓口で「うちはいくらかかりそうか」と聞かれたとき、ゼロから説明するのは大変です。参考値として一般的なレンジを頭に入れておくと、話が早く進みます。

項目 参考値の目安
外壁打診調査 250〜500円/㎡
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/㎡
30戸規模の大規模修繕 総額 3,500〜5,000万円
うち仮設足場が占める割合 総額の15〜25%

これらはあくまで目安・レンジであり、実際の見積は建物の形状、立地、劣化状況によって大きく変動します。断定的な数字としては扱わないでください。

それでも、仮設足場が総額の15〜25%を占めるという構造だけは知っておく価値があります。見積書の金額差の多くは、ここと、数量の拾い方の違いで説明がつきます。

たとえば10階建て・外周80m・工期3か月の物件で、仮設足場が約168万円かかるケースがあります。同じ範囲をロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が懸垂下降しながら施工する無足場工法)に置き換えると、仮設費が約59万円まで下がる試算になります。差額にして約109万円。これも条件次第で変わる参考値ですが、桁の感覚として頭に置いておくと、見積書の読み方が変わります。

豊島区は、池袋周辺の商業地と、目白・雑司が谷・要町といった住宅地が混在しています。隣地との離隔が取りにくい敷地、前面道路が狭く足場材の搬入が難しい敷地が少なくありません。足場が組みにくい外周だけロープアクセスで対応するハイブリッド工法という選び方もあります。工法ごとの違いは、明誠のロープアクセス工法の技術詳細と、同業者・技術者向けの姉妹サイトロープアクセスドットコムで解説しています。

株式会社明誠は、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業については、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業で過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟する体制をとっており、IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が現場に立ちます。安全管理の考え方は明誠の安全管理体制に、料金の組み立て方は大規模修繕の料金の考え方にまとめました。


12. 豊島区の管理組合が、今週動くこと3点

長くなりましたので、動き方だけ整理します。

1. 管理状況届出が済んでいるか確認する

豊島区では届出は義務です。未届出のまま放置すると、条例に基づきマンション名が公表される場合があります。過去に届け出ていても、管理費・修繕積立金・長期修繕計画・管理者等に変更があれば変更届出が必要です。最後の届出から5年経っていれば更新届出への協力も求められています。まず理事会で「うちは出したか」を確認してください。

2. アドバイザー派遣を、次の理事会に合わせて申請する

年4回・1回2時間が無料。原則3週間前までの申請です。逆算すると、来月の理事会に呼ぶなら今週中に03-3981-1385へ電話する必要があります。利用者多数の場合は年度途中で受付終了もあり得ます。

3. 調査を予定しているなら、契約前に区へ相談する

計画修繕調査費助成は、契約締結前の申請が条件で、調査完了は年度内。しかも予算の範囲内です。見積りを取り始める前に、住宅・マンション課へ一本入れてください。順番を間違えると、20万円が消えます。

この3つは、どれも理事会の決議を待たずに「問い合わせ」まで進められます。総会の前段階で情報を集めておくかどうかで、1年後の選択肢の数が変わります。


よくあるご質問

Q. 豊島区のマンションアドバイザー派遣は、何回まで無料ですか?

A. 1つのマンションにつき、同一年度内で4回までです。1回あたり2時間まで、費用は無料です(会場費や資料代が発生した場合は管理組合の負担になります)。利用者が多数の場合は年度途中で受付を終了することがあるため、早めの申請をおすすめします。

Q. アドバイザー派遣で、長期修繕計画を作ってもらえますか?

A. 作成はできません。豊島区は派遣対象外の業務として、耐震診断の実施、長期修繕計画の作成、修繕工事等の設計書作成、係争中の事案、測定器による建物の精密測定の5つを挙げています。長期修繕計画の作成や更新のための劣化診断調査については、計画修繕調査費助成(費用の2分の1・20万円限度)のほうが対象になります。

Q. 賃貸マンションやビルのオーナーでも使える制度はありますか?

A. 豊島区のマンションアドバイザー派遣や各種助成は、分譲マンションの管理組合が対象です。一方で、東京都の「東京とどまるマンション」制度の防災備蓄資器材の補助は、賃貸マンションの所有者等も対象に含まれます。区の法律相談(区民相談課 03-3981-4164)も、豊島区在住・在勤・在学であれば個人として利用できます。収益物件の維持管理・修繕についてはビル・収益不動産オーナー向けのご提案もご覧ください。

Q. 管理計画認定は、どちらのルートで申請すると安いですか?

A. 豊島区への手数料だけを見れば、マンション管理センターの事前確認を経るルートが3,900円、区に直接申請するルートが29,500円です。ただし前者はマンション管理センターへの手数料20,000円が別途必要なため、合計では23,900円になります。いずれの場合も豊島区独自の認定基準への適合が必要ですので、申請準備中にマンショングループ(03-3981-1385)へ事前相談してください。

Q. 外壁の打診調査にはいくらかかりますか?

A. 一般的な目安として250〜500円/㎡程度ですが、建物の形状、足場の要否、調査範囲によって大きく変わります。明誠ではロープアクセス工法を使い、足場を組まずに打診調査を行う方法もご提案しています。概算のお見積りをご希望でしたら明誠のお問い合わせ窓口からご連絡ください。

Q. 足場を組まないロープアクセス工法だと、工期はどれくらい短くなりますか?

A. 物件条件によりますが、仮設足場の架設・解体に要する期間が不要になるため、足場工法の6割程度の工期で完了するケースがあります。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場工法で約3か月のところ、ロープアクセスで1.5〜2か月が一つの目安です。工法ごとの技術的な条件はロープアクセスドットコムでも解説しています。

Q. 管理状況届出をしていないと、どうなりますか?

A. 豊島区は管理状況届出書の作成・届出を管理組合の義務としており、届出が無い場合等には区の条例に基づきマンション名を公表する場合があると明記しています。届出率は8割を超えていますが、約2割が未届出という状況です。様式は建築年と戸数によって都条例系・区条例系の2種類に分かれますので、住宅・マンション課(03-3981-1385)へご確認ください。

Q. 耐震改修の助成は、工事のあとでも申請できますか?

A. できません。耐震改修助成は工事着手前の申請、工事完了は年度内のものが対象です。耐震診断助成も同様に、診断着手前の申請が条件です。計画修繕調査費助成も契約締結前の申請が必要で、いずれも「先に契約してしまうと対象外」という共通の落とし穴があります。


まとめ

豊島区の管理組合とオーナーさまが使える支援は、無料の相談・派遣が7つ、費用の一部が戻る助成が4つ。合計11あります。

このうち、豊島区でいちばん使い勝手がいいのはマンションアドバイザー派遣(年4回・1回2時間・無料)です。マンション管理士・一級建築士・税理士という3つの専門を、年度内に使い分けて呼べる。これだけの枠を用意している区は多くありません。

そして、豊島区だけの論点が管理状況届出の義務化です。届出書を作る作業そのものが、総会の開催状況、管理規約、長期修繕計画、大規模修繕の実施状況を棚卸しする無料の自己診断になっています。届出 → 課題の抽出 → アドバイザー派遣。この順で進めれば、ここまで費用はかかりません。

制度は、知っている組合だけが使えます。私が現場で見てきたかぎり、修繕で苦労する組合とそうでない組合の差は、建物の状態よりも「相談先をいくつ持っているか」で決まります。管理会社が1社だけ、という状態が一番危うい。

明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。管理組合さま向けのサービス内容は管理組合向けの大規模修繕サポートに、私たちの仕事の考え方は明誠の理念にまとめました。

まずは03-3981-1385に一本。理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月20日時点で公表されている豊島区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。分譲マンションの耐震診断助成・耐震改修助成のページは令和7年(2025年)中の更新であり、令和8年度の予算枠や運用が変更されている可能性があります。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず豊島区住宅・マンション課マンショングループ(03-3981-1385)および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月20日

杉並区の管理組合が無料で使える相談・派遣10選|マンション管理無料相談は毎月第2木曜、耐震助成の受付は10月30日まで【令和8年度版】

2026年9月20日 更新

「本間さん、見積りが3社で倍近く違うんですよ。どれが正しいんですか」

今年の春、杉並区の荻窪にある築34年・48戸のマンションで、理事長さまからそう伺いました。手元にあった3社の大規模修繕見積りは、7,800万円、1億200万円、1億4,000万円。同じ建物、同じ工事範囲のはずなのに、6,000万円以上の開きがある。理事会が完全に止まっていました。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組んで囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も自分の足で踏んできた人間です。

このときお伝えしたのは、施工の話ではありませんでした。まず、管理会社でも施工会社でもない第三者の目を、お金をかけずに入れましょう、ということです。杉並区には、マンション管理士が毎月応じる無料相談から、旧耐震の建物に専門家を無料で派遣する制度まで、段階に応じた窓口が揃っています。

杉並区は、阿佐ヶ谷・荻窪・西荻窪・高円寺という中央線沿線の中規模マンション群と、永福・浜田山・久我山といった住宅地のマンションが中心の区です。タワーマンションは多くない代わりに、築30年から40年の中規模マンションが厚い。ちょうど2回目の大規模修繕、あるいは耐震化の判断が迫る帯にストックが集中しています。

今日は、杉並区のマンション管理組合とビルオーナーさまが、お金をかけずに使える相談・派遣を10個、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。耐震化助成の受付が令和8年10月30日で締まるという、期限の近い話も含みます。


結論:杉並区で無料で使える相談・派遣は10ある

先に一覧でお示しします。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用・頻度 申込先
1 杉並区 マンション管理無料相談 マンション管理士 無料/毎月第2木曜・1件50分以内 杉並マンション管理士会 事務局 03-3393-3680(申込はWeb・FAX)
2 杉並区 住まいの修繕・増改築相談 建築業者(杉並区小規模建設事業団体連絡会) 無料/毎週月曜・金曜・予約不要 区役所1階ロビーへ直接
3 杉並区 不動産に関する無料相談 宅地建物取引士 無料/毎月第3木曜 東京都宅建協会第10ブロック 03-6407-9152
4 杉並区 耐震相談アドバイザー派遣 建築士等の専門家 無料/受付期間にかかわらず申込可 NPO法人 耐震総合安全機構(JASO)03-5654-5765
5 杉並区 簡易診断 建築士等 無料/マンション等が対象 アドバイザー派遣の結果報告時に案内
6 杉並区 耐震化助成(精密診断・補強設計・耐震改修) ― 費用の一部助成/受付は令和8年10月30日まで 市街地整備課耐震改修担当 03-3312-2111
7 杉並区 法律相談(弁護士) 弁護士 無料/30分以内・平日+第3土曜 予約専用 03-5307-0617
8 杉並区立消費者センター 消費者相談 消費生活相談員 無料/平日9時〜16時 相談専用 03-3398-3121
9 東京都 マンションアドバイザー無料派遣/管理士無料派遣 マンション管理士等 無料/令和9年2月26日まで受付(防災・認知症枠) 東京都マンション管理士会ほか
10 分譲マンション総合相談窓口/マンション管理センター マンション管理士等 無料/平日 03-6427-4900/03-5801-0858

電話番号は、実質3つ押さえておけば足ります。杉並マンション管理士会事務局(03-3393-3680)が管理の相談。JASO(03-5654-5765)が旧耐震建物の専門家派遣。東京都防災・建築まちづくりセンター(03-6427-4900)が都の制度全般の入口です。

ここからが本題です。


1. 杉並区マンション管理無料相談:毎月第2木曜、1件50分

杉並区の管理組合が最初に使うべき窓口が、これです。管理組合の運営や大規模修繕など、分譲マンションの管理に関する問題について、マンション管理士が相談に応じます(出典:杉並区「マンション管理無料相談」)。

マンション管理士というのは、管理組合の運営や建物の修繕管理について助言・指導を行う国家資格者です。管理会社の営業担当とは立場が違い、組合の側に立って意見をくれる専門家だとお考えください。

  • 相談日時:毎月第2木曜日 午後1時30分〜午後4時30分(祝日・休日を除く)
  • 相談時間:1件50分以内
  • 相談場所:区役所1階ロビー(杉並区阿佐谷南1-15-1)
  • 費用:無料
  • 予約:原則、事前予約制

申し込みは「Webフォームかファクス」だけ

ここが杉並区の特徴で、うっかりすると空振りします。電話では申し込めません。区も、杉並マンション管理士会事務局も、電話での申込受付はしていないと明記しています。

申込方法は次の2つです。

杉並区役所の窓口でも申し込みはできません。問い合わせ先は杉並マンション管理士会事務局(03-3393-3680、平日午前9時〜午後5時)ですが、ここも「申込は電話不可」です。

予約の申し込みが済むと、杉並マンション管理士会から相談日時などの連絡が来る流れになります。

なお、区が案内しているこのページの更新日は2020年6月24日であり、掲載されている案内チラシも令和2年度版のものです。相談日程や運用が現在も同じかどうかは、申込前に杉並マンション管理士会へご確認ください。本記事では区ページに記載されている内容をそのまま紹介していますが、年度をまたいで変更されている可能性を否定できません。

持っていく資料で、50分の密度が変わる

区は「管理規約など対象マンションの状況がわかる資料をご持参ください」とだけ書いています。50分という枠を考えると、私は次の3点セットをおすすめします。

  1. 管理規約(特別決議の要件、専有部分と共用部分の境界が分かる)
  2. 直近3年分の総会議事録(何が決まって、何が保留になっているか)
  3. 長期修繕計画書(次の大規模修繕の想定時期と想定金額)

これに、外壁の不具合箇所を撮った写真を加えると、話が一段深くなります。写真は地上からスマートフォンで撮ったもので構いません。ただし撮影日と、階数・方角のメモを添えてください。「北面3階バルコニー下、2026年9月撮影」まで書いてあると、専門家の見立てが速くなります。


2. 予約不要で使える、毎週2回の修繕相談

管理組合としてではなく「まず誰かに建物のことを聞きたい」という段階なら、こちらが手軽です。

杉並区は、住宅の修繕や増改築についての相談に、杉並区小規模建設事業団体連絡会の建築業者が応じる「住宅増改築無料相談」を実施しています(出典:杉並区「住まいの修繕・増改築相談」、2025年9月3日更新)。

  • 開催日:毎週月曜日・金曜日(祝日および年末年始を除く)
  • 受付:午後1時〜午後3時45分
  • 場所:区役所1階ロビー
  • 費用:無料
  • 直接、相談会場へ行けばよい(予約不要)

週2回、予約なしで専門家に会える窓口は、23区でもそう多くありません。会場に行けない場合は、杉並区小規模建設事業団体連絡会事務局(東京土建杉並支部まちづくりセンター、03-3317-0450)へ相談できます。区の担当は住宅課管理係(03-5307-0661)です。

私の経験上、この手の相談窓口は「答えをもらう場」というより「自分の物件の論点を整理する場」として使うのが正解です。外壁の浮きが何を意味するのか、いま動くべきか3年待てるのか。そこが整理できるだけで、次の理事会の議題が決まります。


3. 不動産に関する無料相談:毎月第3木曜、宅建のプロに

区分所有の権利関係や、賃貸に出している住戸の扱い、売却を含めた出口の話。これらは、東京都宅地建物取引業協会第10ブロックが対応する窓口が向いています(出典:杉並区「不動産に関する無料相談」、2023年7月31日更新)。

  • 相談日時:毎月第3木曜日 午後1時30分〜午後4時30分(祝日および年末年始を除く)
  • 会場:区役所1階ロビー
  • 費用:無料
  • 予約:原則、電話での事前予約制。東京都宅地建物取引業協会第10ブロック(03-6407-9152、平日午前9時〜午後5時)

収益物件をお持ちのオーナーさまは、この窓口と後述の法律相談を組み合わせると、修繕と資産運用の両面から整理ができます。


4. 杉並区の「旧耐震マンション」向け、無料のアドバイザー派遣と簡易診断

ここが、杉並区の制度でいちばん見落とされやすい部分です。

杉並区は、昭和56年5月以前に建てられた木造以外の建物について、耐震診断・補強設計・耐震改修の費用の一部を助成し、あわせて耐震相談アドバイザー等を無料で派遣しています(出典:杉並区「木造以外の建物の耐震化に関する助成制度『マンション・ビルなどの耐震化を支援します』」、2026年4月1日更新)。

アドバイザー派遣(無料)

区は、こう案内しています。建物の耐震性に不安がある方、耐震化を進めようと考えている方は、まず耐震相談アドバイザー派遣により、耐震診断の必要性などについて専門家のアドバイスを受けてください、と。

重要なのは申込タイミングの扱いです。後述する助成の申請受付期間は年度内に区切られていますが、アドバイザー派遣および簡易診断は、その受付期間にかかわらず申し込めると区が明記しています。つまり、10月30日を過ぎても相談だけは続けられる、ということです。

申込方法は、耐震相談アドバイザー派遣申込書に記入して、郵送またはファクスで送るだけです。

派遣内容の詳細は、区が公開している【パンフレット】マンション・ビルなどの耐震化を支援します(令和8年4月改訂)(PDF)に載っています。令和8年4月改訂版ですから、令和8年度の内容です。

簡易診断(無料)

さらに、簡易診断も無料で受けられます。ただし対象が限定されています。

  • 簡易診断を受けられるのは、「マンション」および「特に耐震化を促進する地域や建物」のみ
  • 対象者には、アドバイザー派遣結果報告書の送付時に簡易診断申込書が同封される
  • 簡易診断は任意で、対象者でも簡易診断を受けずに精密診断へ進むこともできる

「マンションであれば簡易診断まで無料」という設計です。旧耐震のマンションを所有されている管理組合さまが、まず無料でどこまで進めるか。アドバイザー派遣 → 簡易診断、ここまでは費用ゼロで到達できる、と理解してください。


5. 杉並区の耐震化助成:受付は令和8年10月30日まで

無料で診てもらった先に、費用助成があります。

杉並区は、精密診断・補強設計・耐震改修の費用の一部を助成しています。そして、助成の申請受付期間は令和8年4月1日から10月30日までです(出典:前掲・杉並区「木造以外の建物の耐震化に関する助成制度」、2026年4月1日更新)。

この記事を書いている2026年9月20日時点で、残り約40日です。

区は同じページで、「事前に必ずご相談ください」「次年度は4月1日に受付を開始します」「受付期限を過ぎても受付可能な場合もありますので、必ずご相談ください」とも書いています。10月30日で機械的に閉まるわけではない可能性がありますが、それを前提に動くのは危うい。まず電話です。

助成額や対象要件は、建物の規模・用途・道路との関係によって変わります。私の立場で「いくら出ます」と断定することはできませんので、具体的な金額は必ず令和8年4月改訂のパンフレット(PDF)と、区の窓口でご確認ください。

  • 問い合わせ:都市整備部市街地整備課耐震改修担当(区役所西棟3階)/電話 03-3312-2111/ファクス 03-3312-2907

なお、明治通りや環状七号線のような緊急輸送道路の沿道にある建物は、特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化に関する助成制度や一般緊急輸送道路沿道建築物の耐震化に関する助成制度という別枠の対象になる場合があります。自分の建物がどちらかは、電話で聞くのが確実です。


6. 杉並区の弁護士無料相談と、消費者センター

管理費や修繕積立金の滞納、専有部分の使用方法をめぐる対立。管理組合の悩みには、技術ではなく法律の話が混ざります。

杉並区は、弁護士による法律相談を予約制で実施しています(出典:杉並区「法律相談【弁護士による】(予約制)」)。

  • 相談日時:月曜日〜金曜日 午後1時〜午後4時。加えて毎月第3土曜日 午後1時〜午後4時の土曜相談あり
  • 相談時間:30分以内
  • 予約:予約専用電話 03-5307-0617。来庁の場合は区政相談課(東棟1階)
  • 予約受付:月曜〜金曜 午前8時30分〜午後5時(当日分は午後3時で受付終了)

平日に加えて第3土曜の枠があるのは、勤めのある理事長さまにはありがたい設計です。

工事契約でおかしいと思ったら、消費者センターへ

突然訪ねてきた業者に不安を煽られて契約してしまった、といったケースは、杉並区立消費者センターが窓口です。

  • 相談専用電話:03-3398-3121(事務室 03-3398-3141)
  • 受付:平日 午前9時〜午後4時
  • 所在地:杉並区天沼3-19-16 ウェルファーム杉並複合施設棟3階

(出典:杉並区立消費者センター、国民生活センター「杉並区立消費者センター」)

現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、まっとうな相場の3倍で契約してしまった組合に、後から呼ばれるときです。契約前なら止められた話が、着工後ではどうにもなりません。少しでも引っかかったら、印鑑を押す前にこの番号へかけてください。


7. 東京都の無料派遣:届出を出していれば、専門家が来る

ここからは、杉並区だけでなく都内全域の管理組合が使える制度です。

マンションアドバイザー無料派遣

東京都は、管理状況届出制度による届出を行った管理組合に対し、その管理状況に応じてマンション管理士などの専門家を無料で派遣しています(出典:東京都マンションポータルサイト「マンションアドバイザー無料派遣のご案内」)。

管理状況届出制度は、「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」に基づく仕組みで、昭和58年以前に新築された6戸以上のマンションの管理組合に届出義務があります。杉並区内の物件であれば、提出先は杉並区です。

問い合わせは、東京都住宅政策本部 民間住宅部 マンション施策推進担当(03-5320-4913)へ。

私はいつも理事長さまに、届出は面倒でも出しておいてくださいとお伝えしています。届出を出しているかどうかで、無料になる支援の幅が変わるからです。

防災力向上・認知症対応のマンション管理士無料派遣

東京都は、防災力向上と認知症対応という2つのテーマに絞った無料派遣も行っています(出典:東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」)。

令和8年度の条件は次のとおりです。

  • 受付期間:令和8年6月23日(火)から令和9年2月26日(金)まで
  • 回数:1管理組合につき、防災力向上・認知症対応それぞれ2回まで
  • 費用:無料
  • 申込:東京都マンション管理士会のホームページから
  • 申込が予定件数(防災力向上・認知症対応を合わせて160件)に達したときは、新規受付を締め切り

都内全域で160件です。この記事の公開時点(2026年9月20日)で、受付開始から約3か月が経っています。残枠は東京都マンション管理士会へご確認ください。

防災の話は大規模修繕と無関係に見えますが、私はそう思いません。工事期間中、バルコニーの荷物移動や在宅確認が必要になる場面で、居住者名簿の整備状況が工期に直結します。防災の名簿整備は、修繕の下ごしらえでもあるのです。


8. 「今日、誰かに聞きたい」ときの2つの電話番号

区の相談は月1回や週2回、都の派遣は件数制限あり。では、思い立ったその日に聞きたいときはどうするか。平日ならつながる窓口が2つあります。

分譲マンション総合相談窓口(東京都防災・建築まちづくりセンター)

  • 電話:03-6427-4900
  • 受付:月曜〜金曜 9時〜17時(土日祝・年末年始休)
  • メール:mansion-soudan@tokyo-machidukuri.jp

相談できる内容には、管理組合の運営、大規模修繕工事の検討や準備、改修・建替えに向けた合意形成のアドバイス、都や区市町村が実施している助成制度の紹介などが挙げられています。

「うちのマンションで使える助成制度を一覧にしてほしい」という聞き方が、この窓口ではいちばん効率的です。詳しくは公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンターをご覧ください。

(公財)マンション管理センター

長期修繕計画の標準的な考え方や標準管理規約の解釈といった全国共通のテーマは、こちらが強い。管理計画認定制度の実務も担っています。

弁護士が必要なほどの紛争になりそうなら、日本司法支援センター(法テラス)も選択肢です。利用条件は法テラスへ直接ご確認ください。国の制度全体は国土交通省「マンション政策」にまとまっています。


9. 杉並区の物件で、相談前に持っておきたい「修繕の相場観」

窓口で「うちはいくらかかりそうか」を聞かれたとき、ゼロから説明するのは大変です。参考値として、一般的なレンジを頭に入れておくと話が早い。

項目 参考値の目安
外壁打診調査 250〜500円/㎡
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/㎡
30戸規模の大規模修繕 総額 3,500〜5,000万円
うち仮設足場が占める割合 総額の15〜25%

これらはあくまで目安・レンジであり、実際の見積は建物の形状、立地、劣化状況によって大きく変動します。断定的な数字としては扱わないでください。

それでも、仮設足場が総額の15〜25%を占めるという構造だけは知っておく価値があります。冒頭の荻窪の組合で、3社の見積りが6,000万円も開いていた理由の大きな部分も、ここにありました。

たとえば10階建て・外周80m・工期3か月の物件で、仮設足場が約168万円かかるケースがあります。同じ範囲をロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が懸垂下降しながら施工する無足場工法)に置き換えると、仮設費が約59万円まで下がる試算になります。差額にして約109万円。これも条件次第で変わる参考値ですが、桁の感覚として頭に置いておくと、見積書の読み方が変わります。

杉並区のように、隣地との離隔が取りにくい住宅地の中規模マンションが多い区では、足場そのものが組みにくい面があります。足場が組めない外周だけロープアクセスで対応するハイブリッド工法という選び方もあります。工法ごとの違いは、明誠のロープアクセス工法の技術詳細と、同業者・技術者向けの姉妹サイトロープアクセスドットコムで解説しています。

株式会社明誠は、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業については、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業で過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟する体制をとっており、IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が現場に立ちます。安全管理の考え方は明誠の安全管理体制に、料金の組み立て方は大規模修繕の料金の考え方にまとめました。


10. 杉並区の管理組合が、今週動くこと3点

長くなりましたので、動き方だけ整理します。

1. 昭和56年5月以前の建物なら、今日JASOへファクスを送る

耐震相談アドバイザー派遣は無料、しかも助成の受付期間にかかわらず申し込めます。マンションなら簡易診断まで無料です。申込書は区のページからダウンロードして、FAX 03-5654-5766 へ。

2. 耐震化助成を使うつもりなら、10月30日までに区へ相談する

令和8年度の申請受付は令和8年4月1日から10月30日まで。残り約40日です。「受付期限を過ぎても受付可能な場合もある」と区は書いていますが、まず03-3312-2111へ電話して事前相談を入れてください。

3. 管理の相談は、杉並マンション管理士会へWebかファクスで

毎月第2木曜、1件50分。電話では申し込めない点にご注意ください。ページの更新日が古いため、日程は事務局(03-3393-3680)でご確認を。

この3つは、どれも理事会の決議を待たずに「問い合わせ」まで進められます。総会の前段階で情報を集めておくかどうかで、1年後の選択肢の数が変わります。


よくあるご質問

Q. 杉並区のマンション管理無料相談は、電話で予約できますか?

A. できません。杉並マンション管理士会ホームページ内の専用フォームからの申し込みか、予約専用ファクス用紙を使ったファクス(03-3393-3652)のいずれかになります。杉並区役所の窓口でも申し込みはできません。事務局(03-3393-3680)は問い合わせ用の番号です。

Q. 耐震相談アドバイザー派遣は、助成の受付期間が終わっても申し込めますか?

A. 申し込めます。杉並区は「アドバイザー派遣及び簡易診断は、(助成の申請)受付期間にかかわらずお申込みいただけます」と明記しています。助成申請の受付は令和8年10月30日までですが、無料の相談・診断だけならその後も進められます。

Q. 簡易診断は、どのマンションでも無料で受けられますか?

A. 簡易診断を受けられるのは「マンション」および「特に耐震化を促進する地域や建物」に限られます。対象者にはアドバイザー派遣結果報告書の送付時に申込書が同封される流れです。簡易診断は任意で、受けずに精密診断へ進むこともできます。

Q. 外壁の打診調査にはいくらかかりますか?

A. 一般的な目安として250〜500円/㎡程度ですが、建物の形状、足場の要否、調査範囲によって大きく変わります。明誠ではロープアクセス工法を使い、足場を組まずに打診調査を行う方法もご提案しています。概算のお見積りをご希望でしたら明誠のお問い合わせ窓口からご連絡ください。

Q. 足場を組まないロープアクセス工法だと、工期はどれくらい短くなりますか?

A. 物件条件によりますが、仮設足場の架設・解体に要する期間が不要になるため、足場工法の6割程度の工期で完了するケースがあります。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場工法で約3か月のところ、ロープアクセスで1.5〜2か月が一つの目安です。工法ごとの技術的な条件はロープアクセスドットコムでも解説しています。

Q. 東京都のマンションアドバイザー無料派遣は、杉並区のマンションでも使えますか?

A. 使えます。ただし「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」に基づく管理状況届出を行っていることが前提です。昭和58年以前に新築された6戸以上のマンションには届出義務があり、杉並区内の物件は杉並区が提出先になります。届出がまだであれば、区の担当課へご相談ください。

Q. 賃貸マンションやビルのオーナーでも、これらの制度は使えますか?

A. 杉並区のマンション管理無料相談は分譲マンションの管理に関する相談が対象ですが、耐震相談アドバイザー派遣と耐震化助成は「木造以外の建物」が対象で、分譲マンションに限られません。ビルや賃貸マンションのオーナーさまも対象になり得ます。住まいの修繕・増改築相談、不動産無料相談、法律相談、消費者相談も利用できます。収益物件の維持管理・修繕についてはビル・収益不動産オーナー向けのご提案もご覧ください。


まとめ

杉並区の管理組合とオーナーさまが使える無料の相談・派遣は、区の制度が8つ、都と国の制度が2つ。合計10あります。

このうち、期限があるのは耐震化助成の令和8年10月30日と、東京都の管理士無料派遣の令和9年2月26日の2つ。残りは通年です。

そして、旧耐震のマンションであれば、アドバイザー派遣 → 簡易診断までは費用ゼロで到達できる。ここは杉並区のなかでも、いちばん使い勝手のいい設計だと私は見ています。

制度は、知っている組合だけが使えます。私が現場で見てきたかぎり、修繕で苦労する組合とそうでない組合の差は、建物の状態よりも「相談先をいくつ持っているか」で決まります。管理会社が1社だけ、という状態が一番危うい。

明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。管理組合さま向けのサービス内容は管理組合向けの大規模修繕サポートに、私たちの仕事の考え方は明誠の理念にまとめました。

10月30日までに動けるかどうかが、耐震化については分かれ目です。理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月20日時点で公表されている杉並区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。杉並区「マンション管理無料相談」のページは2020年6月24日更新、「不動産に関する無料相談」のページは2023年7月31日更新であり、現在の運用と異なる可能性があります。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず杉並区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月20日

杉並区のマンション漏水・防災対策|水は川から来るのではなく足元から出る。時間153ミリ想定の区で先に直す場所【大規模修繕2026年度版】

2026年9月20日 更新

杉並区の堀ノ内で、築31年の賃貸マンションのオーナーさまから「1階のトイレから水が逆流した」とご相談をいただいたことがあります。台風でも何でもない、夏の夕立の日でした。川は近くを流れていますが、護岸から水があふれた形跡はどこにもありません。原因は建物側でも屋上でもなく、短時間に集中した雨で下水道管の中の水位が上がり、行き場をなくした水が宅地内の排水管を逆にのぼってきたことでした。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。

杉並区という区は、私の感覚では23区のなかでもっとも「水のリスクが誤解されている」区です。高潮のハザードマップはありません。津波災害警戒区域もありません。土砂災害警戒区域も、区内にわずか6か所しかない。数字だけを並べれば、23区でも安全な部類に見えます。ところが杉並区のマンションでは、漏水と浸水の相談が途切れません。理由ははっきりしていて、杉並区の水は川から来るのではなく、足元から出てくるからです。

今日は、杉並区が公表している最新のハザード資料から逆算して、杉並区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。


結論:杉並区は「外水」より「内水」で設計を考える区です

先に結論から申し上げます。杉並区で大規模修繕の順番を決めるとき、私が最初に見るのは屋上ではありません。その建物の1階床面が、前面道路より高いか低いか。半地下・地下ピット・ドライエリアがあるか。排水がどこへ抜けるかの3点です。

杉並区の「わが家の水害ハザードマップ」は、洪水(河川の氾濫)だけでなく、下水道の溢水による内水氾濫も同じ1枚に重ねて表示しています。浸水予想に使われた条件は、想定最大規模降雨として時間最大雨量153ミリメートル、総雨量690ミリメートルが区の全域に降った場合です(出典:杉並区「わが家の水害ハザードマップ」/更新日 2026年5月27日)。この数字を、ぜひ理事会で一度声に出して読んでみてください。1時間に153ミリという雨は、どんな排水設計でも受けきれません。

そして杉並区は、高潮によるハザードマップを作成していません。区内に津波災害警戒区域もありません。土砂災害警戒区域は6か所、うち土砂災害特別警戒区域は5か所だけです(出典:杉並区「土砂災害ハザードマップ」/更新日 2026年5月29日)。

つまり杉並区は、リスクの種類が少ないぶん、内水という1点に対策を集中できる区です。これは実はとても有利な条件です。北区や江東区のように低地・崖線・高潮を同時に抱える区と違い、杉並区の管理組合は予算の配分先を迷わずに済みます。問題は、その1点にきちんとお金を向けている管理組合が、まだ少ないことです。

立地 該当エリアの例 主なリスク 最優先の対策
神田川の谷 和田・方南・成田東・永福・浜田山 内水氾濫+下水道逆流 逆流防止弁、1階廻りの止水、敷地雨水桝
善福寺川の谷 堀ノ内・成田西・荻窪・宮前・善福寺 河川水位上昇+内水 半地下・ドライエリアの止水、受電設備の位置
妙正寺川の谷 清水・本天沼・下井草・井草 内水氾濫 敷地排水、1階外壁の立上り防水
武蔵野台地の平坦部 阿佐谷・高円寺・西荻・上荻の台地側 道路からの流れ込み(窪地) 前面道路との高低差の確認、止水板
崖線の6か所 久我山・高井戸・堀ノ内・和泉の各一部 がけ崩れ・擁壁劣化 擁壁の水抜き穴、斜面側外壁のシーリング

杉並区の理事会で私がいつも最初にお伝えしているのは、この5類型のどこに当たるかを、工事の話を始める前に確定させてください、という一点です。順番を1つ間違えるだけで、数百万円が効かない場所に消えます。


杉並区のハザード資料を1枚で読む

管理組合の書類棚に、この表を1枚コピーして貼っておくだけで、総会の議論が早くなります。

資料 対象 現在の版 備考
わが家の水害ハザードマップ(地図面) 洪水+内水 令和8年3月改訂 想定最大規模降雨・時間153ミリ/総雨量690ミリ
同(学習面・マイタイムライン編) 備え・避難行動 令和8年3月改訂 国標準配色版のPDFもあり
土砂災害ハザードマップ がけ崩れ 令和8年5月29日 情報更新 警戒6か所/特別警戒5か所
高潮ハザードマップ 高潮 作成なし 杉並区は対象外
津波災害警戒区域 津波 区内に指定なし —
善福寺川流域の浸水対策 治水事業の進捗 令和8年7月17日 更新 上流地下調節池が令和8年5月に準備工着手

注意していただきたいのは、地図面の前提条件です。浸水予想に使われた河川と下水道の整備状況は「平成28年時点」のものです。それ以降に完成した調節池や幹線の効果は、この地図には反映されていません。ですから、この地図は「これから良くなる前の、少し厳しめの姿」として読むのが正しい使い方になります。逆に言えば、この地図で色が付いていない場所が安全という意味には、まったくならないということでもあります。内水は、地形のわずかな窪みで簡単に起きます。


杉並区で「いま効いている」最新情報は3つあります

正直に申し上げます。自治体のハザード資料は、紙の冊子とウェブの記載が食い違うことが珍しくありません。杉並区で2026年9月時点で押さえておくべき更新は、次の3つです。

1つめ。水害ハザードマップが令和8年3月に改訂されました。
PDFは学習面・地図面ともに差し替えられており、色覚に配慮した国標準配色版も同じ令和8年3月改訂版で提供されています。理事会の防災資料が平成31年版や令和6年版のままなら、この時点で情報が古いということになります。区の電子地図サービス「すぎナビ」を使えば、自分のマンションの街区まで拡大して印刷できますので、総会資料にはこちらを使うほうが議論が具体的になります。

2つめ。令和8年5月29日から、気象庁の新たな防災気象情報の運用が始まりました。
従来の「土砂災害警戒情報」は「警戒レベル4土砂災害危険警報」に相当するものへ名称が整理されました。区は「情報の性質・意味に変更はない」と明記していますが、管理組合の防災マニュアルに旧名称がそのまま書かれていると、実際の放送や通知と言葉が合わず、避難のタイミングの判断が一拍遅れます。久我山・高井戸・堀ノ内・和泉の警戒区域に接するマンションは、ここを直してください。

3つめ。令和8年5月から、善福寺川上流地下調節池の準備工が始まりました。
都立善福寺川緑地での準備工着手にあたり、令和8年4月17日・18日に都による工事説明会が開かれています。この調節池は、荒川水系神田川流域河川整備計画(令和5年3月改定)で必要とされた約30万立方メートル規模のもので、完成すれば善福寺川流域の浸水リスクは相当に下がります(出典:杉並区「善福寺川流域の浸水対策について」/更新日 2026年7月17日、東京都建設局「善福寺川上流地下調節池事業の整備について」)。

ただし、ここが大事なところです。調節池が効き始めるのは完成後であって、工事期間中ではありません。長期修繕計画を「そのうち都が直してくれるから」という前提で先送りするのは、いちばん危ない判断です。私は工事の打合せの最初に、必ずこの点を確認するようにしています。工事の内容そのものより、どのリスクにお金を使うかの前提が変わってしまうからです。


3つの谷と、漏水事故は、こうつながっています

神田川の谷(和田・方南・成田東・永福・浜田山)

神田川沿いは、区内でも歴史的にもっとも水に悩まされてきたエリアです。善福寺川流域全体では、平成17年9月の集中豪雨で約1,600棟、平成26年7月の集中豪雨で約60棟の浸水被害が発生しています。その後、都による河川の拡幅、神田川・環状七号線地下調節池(貯留量54万立方メートル)の整備、下水道の和田・弥生幹線の整備によって、浸水被害は大きく減少しました。

ここで管理組合の方に知っておいていただきたいのは、減ったのは「川があふれる被害」であって、「下水道からの逆流」ではないということです。冒頭の堀ノ内の事例がまさにそれでした。1階のトイレや浴室から下水が噴き出すタイプの被害は、川の整備とは別の対策が要ります。具体的には排水設備への逆流防止弁、1階床面の立上り防水、そして敷地雨水桝の清掃です。

このエリアで多い漏水は、上からではなく横と下からです。敷地の雨水桝の詰まり、半地下駐輪場・ドライエリアへの流入、基礎の打継ぎ目からの染み。外壁と屋上を完璧に直しても、この3つは1ミリも改善しません。

善福寺川の谷(堀ノ内・成田西・荻窪・宮前・善福寺)

善福寺川では、1時間あたり50ミリメートルの降雨に対応できる護岸整備の整備率が約63パーセントです(令和6年度末時点)。現在も大成橋付近、白山前橋付近、西田端橋付近、宮木橋付近で工事が進んでいます。都の目標は1時間あたり85ミリメートル規模の降雨への対応ですから、いまはまだ道半ばということになります。

区の資料には「近年でも、松見橋・西田端橋付近などでは水位が頻繁に護岸天端付近まで上昇しています」と率直に書かれています。この一文は重いと思います。あふれてはいないが、毎年ぎりぎりまで来ているという意味だからです。

このエリアのマンションで私が真っ先に確認するのは、受電設備と給水ポンプの位置です。外壁も屋上もきれいに直したマンションで、地下の受電盤がひと晩で使い物にならなくなるのを見るのは、現場の人間として本当に悔しい。浸水深が50センチでも、盤の位置が床置きなら結果は同じです。低地側の物件では、外壁より先にここを議題にしてください。

妙正寺川の谷と台地の窪地(清水・本天沼・下井草・井草・阿佐谷・高円寺)

区北部の妙正寺川沿い、そして台地上に見える阿佐谷・高円寺・西荻あたりでも、道路からの流れ込みは起きます。台地は「平ら」ではなく、細かい窪地の集合だからです。

気象庁の「アメダスで見た短時間強雨発生回数の長期変化について」によれば、1時間50ミリメートル以上の短時間強雨の発生回数は、1976〜2024年の期間で約1.5倍に増加しています(出典:気象庁)。設計当時の排水能力の前提が、そもそも変わってきているということです。築30年のマンションの雨樋・ルーフドレン・敷地排水は、いまの雨を想定して作られていません。


杉並区でいちばん多いのは「半地下と地下ピット」の漏水です

杉並区が公式に注意喚起しているとおり、半地下家屋や地下室では2つの経路で浸水が起きます。下水道管からの逆流と、道路側からの雨水の流れ込みです。区はさらに「水の圧力で半地下、地下部のドアは開きにくくなり危険です」とまで書いています(出典:杉並区「半地下家屋、地下室では浸水被害に十分なご注意をお願いします」/更新日 2026年4月1日)。

杉並区の築古マンションには、敷地を有効に使うために半地下の駐車場・駐輪場・ゴミ置き場を設けたものが数多くあります。ここが、区内でいちばん事故が起きている場所です。私が現場で見てきた順に並べると、次のようになります。

  1. 半地下駐車場のスロープ下端から雨水が流入し、機械式駐車場のピットが水没する
  2. ドライエリアの排水桝が落ち葉で詰まり、地下住戸の掃き出し窓から浸水する
  3. 1階トイレ・浴室からの下水逆流(逆流防止弁の未設置または故障)
  4. 地下ピットに常時水が溜まり、配管・鉄筋が長期的に腐食する
  5. 基礎の打継ぎ目からの毛細管現象による染み(原因が配管漏水と誤診されやすい)

このうち3番と4番は、発生しても数年間は誰も気づかないタイプです。管理会社の日常点検では地下ピットの蓋を開けないことが多く、大規模修繕の調査で初めて発覚します。だから私は、杉並区の物件では必ず地下ピットと機械式駐車場のピットを開けて見せてくださいとお願いしています。

なお、浸水の恐れのある地域に地下室を新設する場合は、建築確認などの申請日までに区への浸水対策の届け出が必要です。既存建物の改修でも、ここは事前に区の建築課へ確認しておくと後戻りがありません。

漏水の原因調査そのものについては、明誠の漏水調査・漏水対応の考え方にまとめています。杉並区のように「上からではない漏水」が多い地域では、原因特定の手順を間違えると調査費だけが積み上がります。


土砂災害警戒区域は6か所——数が少ないからこそ見落とされます

杉並区内の土砂災害警戒区域は6か所、うち特別警戒区域は5か所。「久我山」「高井戸」「堀ノ内」「和泉」の4地区に分かれています。23区の他区と比べれば、確かに少ない数字です。

ただ、数が少ないことには副作用があります。該当する管理組合ですら、自分が該当していることを知らないのです。私が伺った久我山のマンションでは、擁壁の水抜き穴が全数詰まった状態で15年が経過していました。がけ崩れのリスクという以前に、擁壁の背面に水圧がかかり続け、擁壁に接する外壁の裏側がずっと湿った状態になり、内部の鉄筋が錆びます。

もう1つ、令和6年10月18日に和泉4丁目18番の一部について、土砂災害特別警戒区域および土砂災害警戒区域の解除が東京都から公表されています(公示図書 区域番号K004)。解除されたなら防災マニュアルの記載も直すべきですが、そのまま放置されている管理組合が少なくありません。指定も解除も、どちらも情報の更新が必要だということです。

そして崖面側の外壁は、足場が組めません。敷地に余裕がなく、隣地が斜面で、道路からも回り込めない。杉並区の該当地区では、これが本当によくある条件です。結果として「その面だけ10年以上手つかず」になっているマンションを、私は何棟も見てきました。


杉並区のマンションで、先に直すべき順番と費用の目安

私が杉並区で提案するときの優先順位は、だいたい次のようになります。金額はあくまで目安のレンジで、物件の規模・状態・立地により大きく変動します。

優先 工事項目 費用の目安 効く理由
1 排水設備の逆流防止弁設置・更新 1系統あたり8万〜25万円 下水道逆流は杉並区で最も発生頻度が高い
2 敷地雨水桝・側溝の清掃と改修 10万〜60万円 詰まりが半地下浸水の直接原因になる
3 半地下出入口の止水板設置 1か所30万〜120万円 令和8年度の区助成の対象になり得る
4 受電設備・給水ポンプの嵩上げ・移設 80万〜400万円 復旧不能期間を決定づける
5 1階廻り・立上り部の防水改修 5,000〜8,000円/平方メートル 基礎打継ぎ目からの染みを止める
6 外壁打診調査・シーリング打替え 打診250〜500円/平方メートル 12条点検と合わせて実施すると効率的
7 外壁塗装 3,500〜4,500円/平方メートル 防水性能の回復(優先度は上記の後)
8 屋上防水改修 5,000〜8,000円/平方メートル 杉並区では上からの漏水は相対的に少ない

30戸規模のマンションの大規模修繕全体では3,500万〜5,000万円がひとつのレンジで、そのうち仮設足場が15〜25パーセントを占めます。杉並区のように「1階と地下に手を入れたいが、予算は外壁で消える」という構図の区では、この足場比率をどう圧縮するかが、防災対策の原資を生むかどうかを決めます。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。そのなかで一貫してお伝えしているのは、「全面足場が唯一の正解ではない」ということです。料金の考え方については明誠の大規模修繕の料金の考え方にまとめています。


足場が組めない面、組まなくていい面をどうするか

杉並区の物件でロープアクセス工法が効くのは、主に次の3つの場面です。

1つめは、崖線や隣地に接して足場が組めない面。 久我山・高井戸・堀ノ内・和泉の斜面側がこれに当たります。ロープアクセス工法なら屋上から吊り下げて施工しますから、地上に作業スペースが要りません。

2つめは、部分補修で足りる面。 3面は健全で1面だけ劣化している、というケースで全面足場を組むと、足場代のほうが補修費より高くつきます。10階建て・外周80メートル・工期3か月の条件では、仮設足場が約168万円なのに対し、ロープアクセス工法では約59万円という差が出ることがあります(▲109万円/物件条件により変動します)。この差額が、そのまま逆流防止弁と止水板の予算になります。

3つめは、居住者の生活影響を抑えたい場合。 足場を組むと約3か月、全住戸が窓を開けられず、ベランダも使えず、防犯上の不安も抱えます。ロープアクセス工法なら、その期間を約60パーセントに短縮できます。賃貸マンションのオーナーさまにとっては、退去リスクの差として跳ね返ります。

もちろん、ロープアクセス工法が万能なわけではありません。外壁全面の塗替えやタイルの大量張替えが必要な物件では、足場を組んだほうが結果的に安くなります。だから明誠では、通常足場・ロープアクセス・ハイブリッド(部位ごとに使い分け)の3工法から、建物ごとに最適な組み合わせをご提案しています。3つとも自社で施工できる会社は、日本でも多くありません。工法の技術的な詳細は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで解説しています。

安全面についても正直に書いておきます。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工し、明誠は日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。訓練体制や資格制度の詳細はロープアクセスドットコムをご覧ください。技術面の考え方は明誠のロープアクセス工法と安全管理の取り組みにもまとめています。


杉並区で使える助成制度(令和8年度)

杉並区は総合治水対策の一環として、個人を対象とした助成制度を用意しています。金額は令和8年度の公表値です。

制度 助成額 情報の状態
防水板設置工事費の助成 工事費の4分の3、1建物あたり100万円限度(千円未満切捨て) 区ページ更新日 2026年4月1日=令和8年度現行
雨水浸透施設工事費の助成 施設の種類・規模による 区の総合治水対策ページで要確認
水害予防住宅 高床化工事の助成 標準工事費単価×高床部分床面積の2分の1、200万円限度 区ページ更新日が2023年4月18日のため、令和8年度の適用可否と金額は必ず区へ直接ご確認ください

防水板の助成では、設置する防水板にJISの定める止水性能の等級がWs-3相当以上であることの証明書類が求められます。手順は「事前相談 → 交付申請 → 交付決定通知 → 工事着手 → 完了届 → 現地検査 → 請求」で、交付決定前に工事を始めると対象外になります。ここは毎年いちばん多い失敗です(出典:杉並区「防水板設置工事費の助成」/更新日 2026年4月1日)。

ひとつ注意点を正直に書きます。防水板助成の対象者は「個人が使用する建築物に防水板の設置および関連工事を行う個人」と明記されています。分譲マンションの管理組合が共用部の出入口に設置する場合に対象となるかどうかは、区の土木計画課(電話 03-5307-0739)への事前相談が必須です。賃貸マンションをオーナー個人名義で所有されている場合は、要件に合う可能性があります。ここを確認せずに工事を先に発注してしまうと、助成は受けられません。

収益不動産としての判断材料は、オーナー向けの大規模修繕の考え方にまとめています。


大規模修繕の中に、防災を組み込むという考え方

最後に、私がいちばんお伝えしたいことを書きます。

杉並区のマンションで防災対策が進まない理由は、予算がないからではありません。防災が長期修繕計画の外に置かれているからです。逆流防止弁も、止水板も、受電盤の嵩上げも、標準的な長期修繕計画の項目表には載っていません。載っていないものは、総会の議題にもなりません。

私の提案は単純です。次回の大規模修繕の設計段階で、防災項目を修繕項目と同じ表に並べてしまう。 そのうえで、足場のかけ方を工夫して浮いた費用を、その防災項目に充てる。これだけで、追加の一時金を集めずに防災対策が進んだ管理組合を、私は何組も見てきました。

調査の段階でも工夫の余地があります。近年はドローンによる外壁調査を併用することで、足場を組む前に劣化の分布を把握し、どの面に費用をかけるべきかを事前に判断できるようになりました。杉並区のように敷地の狭い物件が多い区では、この事前判断の精度がそのまま総額に響きます。

管理組合としての進め方は管理組合向けのサービス案内をご覧ください。これまでの施工事例(約6,000棟)はhttps://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。


よくあるご質問

Q. 杉並区のハザードマップで色が付いていなければ、浸水対策は不要ですか?

A. いいえ。区の地図面が前提としている河川・下水道の整備状況は平成28年時点のもので、さらに内水は地形のわずかな窪みで発生します。色の有無にかかわらず、前面道路と1階床面の高低差と半地下の有無を実地で確認することをおすすめします。

Q. 逆流防止弁の設置費用はどれくらいですか?

A. 1系統あたり8万〜25万円が目安です。既存配管の状態や設置位置によって変動します。杉並区で発生頻度が最も高いタイプの被害に対して、費用対効果はかなり高い部類の工事です。

Q. 防水板設置の助成は、分譲マンションの管理組合でも使えますか?

A. 令和8年度の区の要件では、助成対象者は「個人が使用する建築物に防水板の設置および関連工事を行う個人」と記載されています。管理組合による共用部への設置が対象となるかは個別判断になりますので、工事の計画段階で杉並区都市整備部土木計画課(電話 03-5307-0739)へ事前相談してください。交付決定前に着工すると対象外になります。

Q. 善福寺川上流地下調節池ができれば、もう浸水対策は要らなくなりますか?

A. 完成すれば流域の浸水リスクは相当に下がりますが、効果が出るのは完成後です。令和8年5月に準備工へ着手した段階ですので、工事期間中は現状のリスクが続きます。また調節池は河川の氾濫を抑えるものであり、下水道からの逆流や道路からの流れ込みは別の対策が必要です。

Q. 足場を組まずに外壁を直せるというのは本当ですか?

A. 部分補修、シーリング打替え、タイル浮き部の補修、防水の部分改修などはロープアクセス工法で施工できます。10階建て・外周80メートル・工期3か月の条件では、仮設足場約168万円に対しロープアクセス約59万円という差が出た例があります(物件条件により変動)。ただし外壁全面の塗替えなど、足場のほうが適する工事もありますので、建物ごとの判断になります。

Q. 工期はどれくらい違いますか?

A. ロープアクセス工法なら足場工法の約60パーセントの工期が目安です。10階建て・外周80メートルのマンションであれば、足場3か月に対しロープアクセス1.5〜2か月程度になります。居住者が窓を開けられない期間も、それだけ短くなります。

Q. 地下ピットの水は、放っておくとどうなりますか?

A. 常時水が溜まった状態が続くと、配管の腐食、基礎コンクリートの中性化促進、鉄筋の発錆が進みます。表に症状が出るまで時間がかかるぶん、発覚したときには補修費が大きくなりがちです。大規模修繕の調査時に必ず蓋を開けて確認してください。

Q. まず何から相談すればいいですか?

A. 建物の図面(配置図・各階平面図)と、直近の長期修繕計画があれば十分です。現地で1階廻りと地下、屋上を確認したうえで、優先順位と概算をお出しします。無料でご相談いただけますので、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月20日時点で公表されている杉並区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず杉並区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月20日

北区のマンション漏水・防災対策|荒川の低地と97か所の崖線、同じ区の中で対策が真逆になります【大規模修繕2026年度版】

2026年9月20日 更新

北区の志茂で、築29年の賃貸マンションのオーナーさまから「1階の廊下がいつも湿っている」とご相談をいただいたことがあります。最初に疑われたのは給水管でした。ところが調べてみると、原因は屋上でも配管でもなく、前年の台風で敷地の雨水桝が土砂で埋まり、行き場を失った雨水が半地下の駐輪場に流れ込み、基礎の打継ぎ目からじわじわ染みていたことでした。荒川の堤防からは歩いて5分。けれど川は一滴もあふれていません。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。

北区という区は、私の感覚では23区のなかでもっとも「同じ区なのに対策が真逆になる」区です。荒川沿いの低地に建つマンションと、赤羽台の崖の上に建つマンションでは、守るべきものも、お金をかける順番もまったく違います。それなのに、修繕計画の雛形はどちらも同じものが使われている。ここが北区の一番もったいないところだと思っています。

今日は、北区が公表している最新のハザード資料から逆算して、北区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。


結論:北区は「低地と崖線が同居する二層構造の区」です

先に結論から申し上げます。北区で大規模修繕の順番を決めるとき、私が最初に見るのは屋上ではありません。その建物が荒川・新河岸川の低地にあるのか、石神井川の谷にあるのか、武蔵野台地の崖線に接しているのかです。

北区は洪水ハザードマップを1枚ではなく4種類公表しています。荒川が氾濫した場合、隅田川・新河岸川・神田川が氾濫した場合、石神井川が氾濫した場合、そして高潮の4つです(出典:東京都北区「東京都北区水害ハザードマップ」/更新日 2025年12月20日)。マップが4枚ある区は、それだけ水のリスクの種類が多いということです。

そのうえで北区は、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)を97か所、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)を71か所抱えています(令和6年12月現在。出典:東京都北区「土砂災害対策 水害対応避難場所の開設・ハザードマップ」/更新日 2026年7月21日)。区内で起こりうる土砂災害は「急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)」に限られますが、数としては23区でも上位です。

つまり北区は、水が来る低地と、土が動く崖線の両方を1つの区の中に持っている。この構造を最初に確定させることが、費用対効果を決めます。

立地 該当エリアの例 主なリスク 最優先の対策
荒川・新河岸川沿いの低地 志茂・岩淵町・神谷・豊島・堀船・浮間 外水(荒川氾濫)+長時間の浸水継続 受電設備・給水ポンプの位置、地下・半地下の止水、逆流防止
石神井川・隅田川沿いの谷 王子・堀船・滝野川・上中里 石神井川氾濫+内水氾濫 敷地雨水桝、地下階段・ドライエリアの止水、1階廻りの防水
武蔵野台地の崖線 赤羽西・赤羽台・赤羽北・桐ケ丘・中十条・上十条・十条仲原・王子本町・岸町・西ケ原・田端・滝野川 がけ崩れ・擁壁の劣化 擁壁の点検と改修、斜面側の排水、崖面側外壁のシーリング

北区の理事会で私がいつも最初にお伝えしているのは、この3類型のどこに当たるかを、工事の話を始める前に確定させてください、という一点です。順番を1つ間違えるだけで、数百万円が効かない場所に消えます。


北区のハザード資料を1枚で読む

管理組合の書類棚に、この表を1枚コピーして貼っておくだけで、総会の議論が早くなります。

資料 対象 現在の版 該当の有無
洪水ハザードマップ(荒川) 荒川の氾濫 令和7年9月改定 区東部・北部の低地が広く該当
洪水ハザードマップ(隅田川・新河岸川・神田川) 中小河川の氾濫 令和7年9月改定 区東部・南部
洪水ハザードマップ(石神井川) 石神井川の氾濫 令和7年9月改定 王子〜滝野川の谷筋
高潮ハザードマップ 高潮 令和7年9月に想定区域図を更新 区南東部の一部
土砂災害ハザードマップ がけ崩れ 平成29年3月公表/令和7年3月改訂 警戒97・特別警戒71か所
雨水出水(内水)浸水想定区域 下水道の能力超過 令和8年3月に東京都が指定 区の水害マップには未反映

北区の水害ハザードマップは令和7年9月に改定されており、このときの主な改定点は「高潮浸水想定区域図の更新」「土砂災害(特別)警戒区域の更新」「耳で聴くハザードマップの導入」の3つです。令和7年12月には多言語版(英語・中国語・韓国語)も作成されています。理事会の防災資料が令和4年版のままなら、この時点で情報が2世代古いということになります。


北区で「いま効いている」最新情報は3つあります

正直に申し上げます。自治体のハザード資料は、紙の冊子とウェブの記載が食い違うことが珍しくありません。北区で2026年9月時点で押さえておくべき更新は、次の3つです。

1つめ。令和8年3月に、東京都が雨水出水浸水想定区域を指定しました。
これは水防法第14条の2に基づく指定で、下水道の能力を超える雨が降ったとき、どこにどれだけ水が溜まるかを示すものです。北区の水害ハザードマップはこの指定をまだ反映しておらず、区の洪水ハザードマップの改定は令和8年度末頃を予定とされています。それまでの間、内水の想定は東京都下水道局の雨水出水浸水想定区域図で確認することになります。区のPDFだけを見て「うちは白いから大丈夫」と判断してしまうと、いちばん起きやすいタイプの浸水を見落とします。

2つめ。令和6年12月27日付で、土砂災害警戒区域が2か所追加されました。
赤羽北2丁目・3丁目(K100、土砂災害特別警戒区域を含む)と、赤羽台2丁目(K101)です。東京都はおおむね5年に1回、区域の見直しを行っています。この追加にともない、赤羽西地区・桐ケ丘地区・赤羽北地区では指定避難場所への避難経路も一部変更になっています。防災マニュアルに書かれた避難経路が古いままの管理組合は、ここを直してください。

3つめ。令和8年5月29日付で、土砂災害ハザードマップの読み替えが告知されています。
新たな防災気象情報の運用開始にともなうもので、区は「修正箇所について」という別紙を出しています。冊子の記載をそのまま信じると、避難のタイミングの判断がずれます。

私はこういう更新を、工事の打合せの最初に必ず確認するようにしています。工事の内容そのものより、どのリスクにお金を使うかの前提が変わってしまうからです。


地域特性と漏水事故は、こうつながっています

荒川・新河岸川沿いの低地(志茂・岩淵町・神谷・豊島・堀船・浮間)

荒川の洪水ハザードマップは、荒川流域の72時間総雨量632mmという想定最大規模の降雨を前提に作られています。この規模になると、問題は浸水深だけではなく浸水継続時間です。国土交通省荒川下流河川事務所は、浸水継続時間を「氾濫水到達後、浸水深が0.5mに達してからその浸水深を下回るまでの時間」と定義して荒川3D洪水浸水想定区域図で公表しています。北区では、街角の電柱などに想定浸水深を表示する取り組みも行われています。

水が引かない、ということは何を意味するか。受電設備と給水ポンプが水没したまま、何日も復旧できないということです。私が現場で一番悔しい思いをするのは、外壁も屋上もきれいに直したマンションで、地下の受電盤がひと晩で使い物にならなくなるのを見るときです。低地の物件では、外壁より先にここを議題にしてください。

このエリアで多い漏水は、意外にも上からではなく横と下からです。敷地の雨水桝の詰まり、半地下駐輪場・ドライエリアへの流入、基礎の打継ぎ目からの染み。冒頭の志茂の事例がまさにこれでした。

石神井川・隅田川沿いの谷(王子・堀船・滝野川・上中里)

北区は「水害対応避難場所」を、石神井川の氾濫とがけ崩れを想定して12か所開設する仕組みを持っています。荒川の氾濫を想定した「高台水害対応避難場所」とは別物です。この2つを混同している管理組合は、私の実感でかなり多いです。

このエリアで効くのは、屋上防水よりも先に敷地排水と1階廻りの防水です。谷筋は、降った雨が周辺から集まってきます。気象庁の「日本の気候変動2025」によれば、1時間50mm以上の短時間強雨の発生回数は1976〜2024年の期間で約1.5倍に増えています(出典:気象庁「アメダスで見た短時間強雨発生回数の長期変化について」)。設計当時の排水能力の前提が、そもそも変わってきているということです。

武蔵野台地の崖線(赤羽西・赤羽台・十条・王子本町・岸町・西ケ原・田端)

崖線沿いのマンションで私が真っ先に見るのは、擁壁の水抜き穴です。ここが詰まると、擁壁の背面に水圧がかかります。がけ崩れのリスクという以前に、擁壁に接する外壁の裏側がずっと湿った状態になり、内部の鉄筋が錆びます。

そして崖面側の外壁は、足場が組めません。敷地に余裕がなく、隣地が斜面で、道路からも回り込めない。北区の崖線では、これが本当によくある条件です。結果として「その面だけ10年以上手つかず」になっているマンションを、私は何棟も見てきました。ここが後述するロープアクセス工法の出番です。


大規模修繕でチェックすべき漏水ポイント7つ

立地にかかわらず、私が調査で必ず見る7か所です。総会資料に、この7項目を表にして貼っていただくだけで、見積書の抜けが減ります。

# 部位 見るポイント 目安単価
1 屋上防水 膨れ・立上りの浮き・保護層の割れ 5,000〜8,000円/㎡
2 外壁シーリング 打継ぎ目・目地の切れ・肉やせ 900〜1,300円/m
3 バルコニー床・排水 防水層の摩耗、排水口の詰まり 3,500〜5,000円/㎡
4 ルーフドレン ストレーナー(落ち葉よけの目皿)の詰まり、周囲の防水切れ 1か所 2〜5万円(改修ドレン)
5 立上り・パラペット天端 笠木の継ぎ目、天端のひび割れ 都度
6 サッシまわり 四隅のシーリング切れ、水切りの劣化 900〜1,300円/m
7 エキスパンションジョイント カバーのずれ、下地の防水切れ 都度

※いずれも参考値です。実際の見積は建物の規模・形状・劣化状況により大きく変わります。外壁の打診調査は250〜500円/㎡、外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡が一つの目安です。料金の考え方は大規模修繕の料金の考え方にまとめています。

この7か所のうち、4番のルーフドレンと3番のバルコニー排水は、費用ゼロで今日できる点検です。管理員さんに依頼できる範囲の作業で、台風シーズンの漏水リスクがはっきり下がります。私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。


漏水の緊急対応で、ロープアクセスが強い理由

漏水は待ってくれません。そして、足場は待たせます。

10階建て・外周80mのマンションで仮設足場を組む場合、架設だけで3〜7日、費用は168万円程度(800〜1,200円/㎡が目安)。これに対してロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が直接壁面に下りる無足場工法)なら、同じ条件で59万円前後、着手は当日から翌日です。差額でおよそ109万円、時間では1週間近い差が出ます。

北区の崖線沿いや、志茂・岩淵の密集した敷地では、そもそも足場を組むスペースがないことも多い。こういう現場では、ロープアクセスは「安いから選ぶ」のではなく「それしか手がない」のが実際のところです。工法の詳細はロープアクセス工法のご紹介、漏水そのものへの対応は漏水調査・補修のページをご覧ください。技術的な背景をもう一段深く確認されたい方には、姉妹サイトのロープアクセスドットコムが参考になると思います。

安全面についても正直に申し上げておきます。株式会社明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では、ロープアクセス工法での高所作業について過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたり、明誠はISO9001品質マネジメントシステムを取得しています。安全管理の考え方は明誠の安全管理に記載しています。


防災上の共用部は、どこから直すか

外壁や屋上と違って、共用部の設備は「劣化が目に見えない」ため、修繕計画から漏れやすい部分です。北区の立地別に、私が考える優先度を整理します。

共用部 低地(志茂・岩淵・堀船) 崖線(赤羽西・十条・田端)
受電設備・キュービクル 最優先。設置位置の嵩上げ・移設の検討 通常優先度
給水ポンプ・受水槽 最優先。水没すると断水が長期化 通常優先度
エレベーター機械室・ピット 高(冠水で長期停止) 中
自家発電設備・非常用電源 高(燃料タンクの位置も確認) 中
避難通路・外階段 中 高(崖側の通路は土砂で塞がれる)
擁壁・法面 低 最優先
屋外配電盤・分電盤 高 中

低地の物件では、国土交通省の建築物における電気設備の浸水対策ガイドラインと地下空間における浸水対策ガイドラインが実務の下敷きになります。設計事務所に相談する前に、理事会でこの2つに目を通しておくと話が早くなります。

ビルオーナーさま・収益物件をお持ちの方向けの考え方はビルオーナー向けサービスとオーナー向けの提供価値に整理しています。


北区で使える助成:分譲マンション耐震化支援事業

防災という観点では、北区の分譲マンション耐震化支援事業が直接使える制度です。対象は、北区内にある分譲マンションで、昭和56年5月31日以前に建築に着手し、その後新耐震基準に適合する改修を行っていないもの。管理組合があり、理事長が申請者であることが条件です。

メニュー 助成内容
アドバイザー助成(3回まで) 耐震アドバイザーに要する費用/限度額49,000円
診断助成 耐震診断費用の2分の1/限度額100万円(+評定費用 限度額15万円)
設計助成 補強設計費用の2分の1/限度額100万円(+評定費用 限度額30万円)
工事助成 改修工事費用の2分の1/延床面積に応じた限度額

各助成の申請期間および交付申請期間は、原則4月から12月までです(出典:東京都北区「分譲マンション耐震化支援事業」/更新日 2026年4月13日)。国と都の補助制度を活用しているため、各申請に期限があります。

実務上の注意点を3つだけ。事前相談を経てから申請すること、申請の結果を受けてから契約・着手すること、事業内容・金額・期間に変更が出たら速やかに区へ連絡すること。区に相談なく申請内容と異なる工事を行った場合、助成の対象外となることがあります。ここは毎年、どこかの管理組合がつまずく箇所です。

工事期間が2か年度にまたがる場合は全体設計承認申請が必要になり、進め方に制限がかかります。9月の今から動くなら、令和8年度中の診断助成に間に合わせるか、令和9年度の予算に乗せるかの判断が分かれ目になります。詳細は北区建築課 構造・耐震化促進係(03-3908-1240)へご確認ください。


よくあるご質問

Q. 北区の洪水ハザードマップは、いつ更新されますか?

A. 区の水害ハザードマップは令和7年9月に改定されています。ただし令和8年3月に東京都が指定した雨水出水(内水)浸水想定区域は未反映で、区は洪水ハザードマップの改定を令和8年度末頃に予定しているとしています。それまでの内水の確認は東京都下水道局のページで行ってください。

Q. うちのマンションが土砂災害警戒区域に入っているか、どう調べますか?

A. 北区が地域別の土砂災害ハザードマップ(赤羽西・赤羽台・赤羽北・桐ケ丘/中十条・十条仲原・西が丘ほか/王子・岸町・滝野川/王子・西ヶ原/田端の各地域版)と住所索引を公開しています。東京都の土砂災害警戒区域等マップでも確認できます。

Q. 擁壁の調査も大規模修繕の見積に含められますか?

A. 含められます。ただし標準的な見積書では調査範囲から外れていることが多いので、見積依頼の段階で「擁壁と敷地排水を含む」と書き添えてください。崖線沿いの物件では、ここが漏水の本丸であることが珍しくありません。

Q. 足場が組めない面の外壁調査は、どうすればいいですか?

A. ロープアクセス工法での打診調査(250〜500円/㎡が目安)か、ドローンによる外観調査を組み合わせます。北区の崖線沿いや敷地に余裕のない物件では、この2つのどちらかになることがほとんどです。ドローン調査のページもあわせてご覧ください。

Q. 台風のあと、まず何を見ればいいですか?

A. 屋上ドレンのストレーナー、バルコニー排水口、敷地の雨水桝、擁壁の水抜き穴の4か所です。この詰まりを取るだけで、次の大雨での漏水リスクはかなり下がります。費用はかかりません。

Q. 賃貸マンションのオーナーでも相談できますか?

A. できます。収益物件では、漏水を1件起こすと原状回復費と空室期間の両方が効いてきます。北区は賃貸需要の厚いエリアですので、稼働率を落とさない工期の組み方まで含めてご提案しています。

Q. 漏水が起きてから連絡した場合、どれくらいで来てもらえますか?

A. ロープアクセスであれば足場の架設が不要なため、当日から翌日の着手が可能なケースが多いです。まずはお問合せフォームからご連絡ください。


まとめ:今週、北区の理事会で動けること3つ

  1. 自分の建物が3類型のどれかを確定させる — 低地(荒川・新河岸川)/谷(石神井川・隅田川)/崖線(武蔵野台地)。ここが決まらないと、工事の順番は決められません
  2. 内水の想定を東京都下水道局の図で確認する — 区の水害ハザードマップは令和8年3月の指定を反映しておらず、改定は令和8年度末頃の予定です
  3. 屋上ドレン・バルコニー排水・雨水桝・擁壁の水抜き穴を実物で見る — 費用ゼロで、効果がいちばん確実な作業です

北区は、荒川という大きな川と、武蔵野台地という高低差を、1つの区のなかに同時に抱えています。だからこそ、「23区の平均的な修繕計画」をそのまま当てはめてしまうと、いちばん弱いところが最後まで残ります。志茂のマンションと赤羽台のマンションでは、守るべきものが違う。それだけの話なのですが、これを工事の前に整理できているかどうかで、同じ予算の効き方がまるで変わります。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。管理組合向けのご支援内容は管理組合向けサービス、ご相談はお問合せフォームからどうぞ。工法の技術面を深く確認されたい方は、ロープアクセスドットコムもあわせてご覧ください。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。施工事例は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月20日時点で公表されている東京都北区および東京都・国土交通省・気象庁の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。土砂災害(特別)警戒区域の指定数は令和6年12月現在の区公表値であり、令和8年5月29日付で防災気象情報の運用変更にともなう読み替えが告知されています。また北区の洪水ハザードマップは令和8年度末頃に改定が予定されており、内水(雨水出水)の想定は現時点では区の水害ハザードマップに反映されていません。助成制度の申請にあたっては、北区建築課 構造・耐震化促進係(03-3908-1240)、ハザード情報については北区危機管理室 防災・危機管理課(03-3908-8184)または土木部 道路公園課 河川係(03-3908-9213)へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月20日

小菅村のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

小菅村で建物の大規模修繕を考えている理事会・オーナーの方に、最初にお伝えしたいことがあります。小菅村で外壁を高圧洗浄したとき、その水が流れ着く先には450万人の水道水源があります。これは情緒的な話ではなく、見積書のどの項目を確認すべきかという、きわめて実務的な話です。

私は株式会社明誠の本間幸紘です。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。この連載では関東・山梨・静岡の自治体を1つずつ調べて、その地域の建物で実際に使える制度と、現場でつまずく点を書いています。今回は山梨県北都留郡の小菅村です。

小菅村は人口619人、高齢化率47%(令和6年4月末現在/出典:小菅村「位置と地勢・人口」)。総面積5,265haのうち森林が95%を占め、そのうち約3割にあたる1,625haが明治34年から続く東京都の水源涵養林です。分譲マンションのストックは多くありません。それでも私がこの村を1本書く価値があると考えたのは、小菅村には、大規模修繕の「色」と「水」を直接縛る条文とルールがあるからです。しかも村の補助金は、共用部の修繕には使えません。この2つを先に押さえておけば、理事会が空振りする時間を丸ごと省けます。

結論から先に:小菅村の大規模修繕で押さえるべき5点

# 論点 小菅村での結論
1 村の補助金で共用部の修繕に使えるもの 令和8年9月21日時点で公表情報上は確認できません(空き家系2制度は目的が別)
2 源流景観条例の届出 景観計画区域は村全域。届出対象行為は条例別表第1。要否は源流振興課へ確認
3 色の決め方 村が「屋根の色に青はできるだけ避ける」「基本は木の色・土の色」と明記
4 高さ10m超の建築物 自然公園普通地域ではあらかじめ村長と協議が必要
5 12条点検(定期報告) 山梨県細則で共同住宅が対象になり得る。提出は報告年度の4月1日〜9月30日

この表の1行目から正直に申し上げます。小菅村には、管理組合やオーナーが共用部の大規模修繕で申請できる村独自の補助制度が、公表されている情報の範囲では見当たりません。「補助金の記事」を期待して読み始めた方には申し訳ないのですが、無いものを有るように書くわけにはいきません。

ただし「ページが無いこと」と「使えないこと」は別です。村の要綱には公表されていない運用があり得ますし、県と国の制度は別にあります。この記事では、使えないものは使えないと書き、代わりに何を使い、何を工程表に書き込むべきかを整理します。


この記事で答える質問

  • 小菅村の建物の大規模修繕で使える補助金は令和8年度にありますか?
  • 外壁を塗り替えるとき、村への届出は必要ですか? 色に決まりはありますか?
  • 小菅村の建物は12条点検(外壁の全面打診)の対象になりますか?
  • 急な斜面で足場が組めない物件はどうすればよいですか?
  • 費用はいくらが目安で、ロープアクセス工法にするといくら変わりますか?

1. 小菅村に共用部の大規模修繕で使える村の補助金があるか

村が公表している住宅関連の補助は「空き家」の2系統

小菅村役場の公表情報を令和8年9月21日時点で確認したところ、住宅・建物に関わる村の補助は次の2系統でした。いずれも源流振興課の所管です。

制度名 補助額 共用部の大規模修繕に使えるか
小菅村空き家改修等補助事業 改修費用の1/2・上限100万円、ごみ処分費上限10万円 移住・定住促進が目的。管理組合の共用部工事は対象外
小菅村空き家解体撤去補助事業 解体工事費の1/2以内・上限50万円 老朽空き家の解体が対象。修繕には使えません

空き家改修等補助は、要件に「補助金の交付を受けた日から5年以上貸し出しする意思のある者」「賃貸借契約日から1年以内の者」が入っています。つまり貸すための改修に絞った制度で、既に住んでいる建物の共用部を直す工事とは設計思想が違います。

空き家解体撤去補助のほうも、対象は「小菅村内にある空き家で、1年以上使用されていないこと」「倒壊により周囲の住家や国道、県道、村道、農道、林道、避難路に被害を及ぼすおそれのある老朽空き家」等と限定されています。法人等が所有する老朽空き家は対象になりません(村のQ&Aに明記)。

ただしオーナーの方には、村のQ&Aの1行を読んでいただきたい

空き家解体撤去補助のページに、村が自分で書いている注意書きがあります。

空き家を解体した宅地は、この軽減措置から外れるため『固定資産税評価額×税率』で通常通り計算されます。そのため、空き家の固定資産税は下がり、土地の固定資産税は上がります。結果的に固定資産税は、上がってしまう場合があります。

これは空き家の話として書かれていますが、空室の増えた賃貸物件を「もう潰すか」と考えている所有者の方にそのまま当てはまります。私は現場で「解体すれば税が軽くなる」と思い込んでいるオーナーに何度も会ってきました。実際には住宅用地の特例が外れて土地の税負担が上がり、更地のまま数年置いてしまうと、直して貸し続けたほうが有利だったという結論になることがあります。

解体か修繕かを決める前に、まず村の税務担当に現況の評価額を聞く。これが順番です。小菅村役場の代表番号は0428-87-0111です。

小さな実務メモですが、この電話番号の市外局番「0428」は東京都の青梅・奥多摩と同じ番号です。 山梨県の村なのに東京の局番なのは、小菅村が東京都奥多摩町と接しており、電話の交換区域が多摩側に属しているためです。私も最初に村へ電話したとき、番号を打ち間違えたかと確認し直しました。掛け間違いではありませんので、そのまま掛けてください。


2. 小菅村の大規模修繕で本当に効くのは「源流景観条例」

ここからが本題です。補助金より先に工程表に書き込むべきなのは、村の景観のルールです。

景観計画区域は村全域。外れる場所はない

小菅村は平成17年に景観行政団体となり、平成23年度に景観法に基づく「小菅村源流景観計画」を策定しました。県の一覧では施行日が平成26年4月1日と記載されています(出典:山梨県「市町村景観計画の策定状況」)。

そしてこの計画には、はっきりこう書かれています。

小菅村源流景観計画区域は小菅村全域とします。

村のどこであっても景観計画の区域内です。「うちは中心部から離れているから関係ない」は成り立ちません。

届出対象行為は条例の別表第1。ここは電話で確認してください

小菅村源流景観条例第27条は、景観法第16条第1項に規定する届出を要する行為を別表第1に定める行為としています。私が確認できた公表情報の範囲では、別表第1の具体的な規模要件(延床面積や高さの数値)までは読み取れませんでした。

ここは断定しません。外壁の塗り替えが届出対象になるかどうかは、源流振興課(0428-87-0111)に物件の住所・規模・工事内容を伝えて確認してください。 その際に聞くべきことは3つです。

  1. 当該敷地は景観形成重点地区に含まれるか
  2. 外観を変更する修繕・模様替・色彩の変更は届出対象か。対象なら規模の下限は何か
  3. 着手日の何日前までに出すのか。部数は何部か

近隣の町村の例をお伝えすると、山梨県景観条例の大規模行為届出制度では「着手日の30日前まで・3部」という運用が取られています。小菅村がこれと同じとは限りませんが、「30日は見ておく」という感覚で工程を引き、正確な日数は窓口で確定させるのが安全です。総会で工期を説明したあとに届出期間が判明して着工が1か月ずれる、というのがいちばん避けたい事態です。

高さ10mを超える建物は、村長との事前協議が立つ

条例には、もう一つ見逃せない定めがあります。届出対象行為のうち、

  • 自然公園普通地域における高さが10mを超える建築物の建築等および工作物の建設等
  • 河川区域において占用許可を必要とする行為

については、あらかじめ村長と協議する必要があるとされています。

小菅村は村の半分が秩父多摩甲斐国立公園に指定されています。そして3階建て以上の共同住宅は、軒高・最高高さのいずれかで10mを超えることが珍しくありません。つまり、

敷地が自然公園普通地域内にあり、建物の高さが10m超 → 届出の前に村長との協議が立つ可能性がある

という二段構えになります。私がこれまで調べてきた自治体では、「届出の前に事前協議」という構造は道志村にもありましたが、自然公園法の区域と高さ10mという二つの条件で協議の入口が決まる書き方は小菅村で初めて見ました。

対応はシンプルです。見積依頼の段階で、各社に「この物件は自然公園普通地域か」「高さは10mを超えるか」を調べさせてください。 答えられない会社は、この村の制度を調べていないということです。


3. 色の話:小菅村には「屋根に青は避ける」という明文がある

大規模修繕で理事会がいちばん揉めるのは、実は工法でも金額でもなく色です。小菅村には、その揉めごとを先回りできる材料が村の公式文書に書かれています。

村が採用しているのはJIS Z8721=マンセル値

小菅村源流景観計画は、色彩の表示方法について明確に書いています。

色彩の規格は、日本工業規格 JIS Z8721(色の表示方法―三属性による表示)に定められています。この色彩方針でも、JIS 規格に従って、色の三属性である色相、明度、彩度の組み合わせで景観の色彩を表示します。

マンセル値というのは、色を「色相・明度/彩度」の3つの数字で表す世界共通の表記法です(例:10Y8/1 は「緑に近い黄色で、かなり明るく、ほとんど鮮やかさがない色」)。塗料メーカーの色見本帳には必ずマンセル値が載っていますので、窓口とのやり取りはこの数字で行うのがいちばん早い。「ベージュっぽい色」では話が進みません。

「小菅カラー」は木の色と土の色。屋根の青は避ける

計画本文には、建物の色についてこう書かれています。

部位 村が示している考え方
屋根 遠くからよく見えるので、周囲の自然になじんだ色が相応しい。無彩色やアースカラー系は使える範囲が広く、その対立色である青系は範囲が狭くなる
外壁 伝統的に土や石灰と木材が用いられてきた。白や無彩色、アースカラーが小菅らしい色遣い。色相は屋根と同じく青系では範囲が狭い
手すり・フェンス 従来は薄い青や緑が多かったが、最近は茶系にして他の道路構造物と合わせることが多く、小菅村でも基本は茶色
ガードレール・電柱 自然の多い場所では白ではなく茶色

さらに村は景観形成の目標として、はっきりこう書いています。

屋根の色に青はできるだけ避けるようにします。

これは大規模修繕の現場に直撃します。理由を3つ挙げます。

①屋上防水のトップコートは、既製品でグレー系と緑系が主流ですが、青みの強いグレーが選ばれることがあります。ここは無彩色〜アースカラー寄りに寄せておくのが無難です。

②笠木・パラペット天端の塗装色は、下から見えないからと安易に決められがちですが、小菅村は谷の村です。向かいの斜面や上の集落から屋根面が見下ろされます。 平地の街と条件が違います。

③バルコニーの手すり・隔て板・階段の鉄部は、既存色をそのまま踏襲することが多い部位です。既存が薄い青や薄い緑なら、村の方針は茶系です。塗り替えのタイミングは、色を村の方向に寄せられる数少ない機会でもあります。

理事会での決め方をひとつ提案します

私はいつも理事長さまに、候補色を3案に絞って、マンセル値を添えて窓口に当てておくことをお勧めしています。順番はこうです。

  1. 施工会社に現況の色をマンセル値で測らせる(色差計または色見本帳で照合)
  2. 候補色3案をマンセル値で用意する(例:屋根=無彩色寄りのグレー、外壁=10YR系のベージュ、鉄部=茶系)
  3. 源流振興課に3案を持って相談する
  4. 窓口の反応を議事録に残してから、総会に諮る

総会で色を決めてから窓口に持って行くと、差し戻しになったとき理事会が二重に説明することになります。逆にしてください。これは小菅村に限らず、景観計画を持つ自治体すべてに共通する順番です。

なお、村の色彩方針には良識的な一文も添えられています。

色そのものが良い悪いということではなく、同じ色でも使える場所と使えない場所があるということになります。

村は色を機械的に禁じているのではありません。だから相談する価値があるのです。


4. 集落ごとに景観の目標が違う。自分の物件がどの地区かを確認する

小菅村は8つの集落から構成され、7集落が多摩川水系の小菅川沿い、長作集落だけが相模川水系の鶴川の最上流にあります。1つの村が2つの水系にまたがっているのは、源流の村ならではです。

そして源流景観計画は、8地区それぞれに景観形成の目標を別個に定めています。

地区 景観形成の目標(計画本文より要約) 大規模修繕で意識すること
橋立 掛け軸畑を源流景観のシンボルとして保全・継承 急傾斜の畑に囲まれ、上ノ山から見下ろされる。屋根面の色が効く
川池 歴史の森づくりを進め村の顔に相応しい公園をつくる 役場・学校・診療所が集まる中心部。通行量が多く仮設の安全計画が重い
田元 もみじ橋周辺整備を進め新しい観光スポットをつくる 村営住宅があり移住者が多い。国道沿いで桜並木が近い
中組 魅力ある散策ルートを整えくつろぎと開放感のある山里へ 小菅の湯があり来訪者の目に触れる
東部 玄関口の魅力を高め都市と山村の交流拠点づくり 国道139号で東京都に接する県境。余沢・大成・金風呂
白沢 源流大学を活用し学びと湧水・水車の里づくり 湧水が豊富。排水の扱いがとくに問われる
小永田 神々と村人が集い伝統的な神楽と調和した景観 風格ある石垣。「石垣に調和した家づくり」と計画に明記
長作 歴史と文化が息づき豊かな森と水辺の山村風景を育てる 相模川水系。標高700m。他7集落と下流が違う

すべての地区を覚える必要はありません。窓口に電話するとき、「◯◯地区の物件です」と最初に言えるかどうかが重要です。地区名が出た時点で、担当者は計画のどのページを開けばいいかが分かります。これだけで相談の密度が変わります。


5. 小菅村でいちばん重い論点は、高圧洗浄の「水」です

下流には450万人が暮らしている

小菅村源流景観計画には、こう書かれています。

小菅村は、多摩川の源流にあり、多摩川流域には450万の住民が暮らしています。源流域の美しい景観や水や森林などの資源は、流域社会共有の財産であり、次の世代に受け継ぐことは私たちの務めです。

そして村面積の約3割・1,625haが明治34年から続く東京都の水源涵養林です。124年以上にわたって、都民の水道水源として管理されてきた森です。

大規模修繕で最初に行う工程は、外壁の高圧洗浄です。30戸規模のマンションで外壁面積2,000㎡なら、洗浄水は数十トン単位になります。その水には、既存塗膜の劣化片、カビ・藻、旧塗料の粉化物(チョーキング)が混ざります。

私は道志村の記事でも同じ論点を書きましたが、道志村は横浜市の水源林でした。小菅村は東京都の水源涵養林であり、しかも多摩川そのものの源流です。「下流に配慮しましょう」という一般論ではなく、この村では流域社会との約束として位置づけられています。

村は平成6年に下水道普及率100%を達成している

もう一つ、驚いた事実があります。景観計画にこう書かれています。

源流に住む住民は、綺麗な水を下流に流すことが務めであると考え、公共下水道の普及に取り組み、平成6年には下水道普及率100パーセントを達成しました。

人口600人台、8集落が山間に点在する村が、平成6年の時点で下水道普及率100%です。これがどれほど異例か、建設業に20年いる私にはよく分かります。集落が離れていれば管路の距離は伸び、戸数が少なければ1戸あたりの負担は跳ね上がる。それを村は30年以上前にやり切っています。

だから小菅村では、水の扱いは「気をつけましょう」ではなく「村が投資してきた仕組みを壊さない」という話になります。

見積書で確認する水まわりの4項目

以上を踏まえて、小菅村の物件で見積を取るときに必ず確認していただきたいのが次の4点です。

# 確認項目 質問の仕方
1 洗浄排水の集水と処理 「洗浄水はどこで受けて、どこへ流しますか。沈殿処理はしますか」
2 塗料の飛散防止と作業中止風速 「何m/sで塗装を中止するルールですか。養生の範囲は」
3 水系(水性)材料を使える部位 「溶剤系でなく水系にできる部位はどこですか。耐久性の差は」
4 産業廃棄物とマニフェスト 「旧塗膜の剥離片・シーリング撤去材のマニフェストは誰が保管しますか」

この4つを聞かれて、すらすら答えられる会社と、「ええと、現場でうまくやります」と答える会社があります。私は後者の見積を安いからという理由で選んだ理事会が、着工後に村から指導を受けて工期が止まった現場を見たことがあります。水の話は、小菅村では価格の話より先です。

そして、ここでロープアクセス工法の話になります

正直に申し上げます。ここからは自社の工法の話です。読み飛ばしていただいても構いません。

足場を組む工法とロープアクセス工法(無足場工法)を比べたとき、小菅村の条件に効いてくる差が3つあります。

①使用水量と養生範囲を抑えやすい。 足場工法は建物の外周全体をメッシュシートで覆い、面で洗います。ロープアクセス工法は作業員が降下しながら区画ごとに施工するため、洗浄・塗装の範囲を区切って進められます。排水の集水も、面ではなく区画単位で管理できます。

②足場材の搬入が要らない。 国道139号と県道上野原丹波山線が村の幹線ですが、集落へ入る道は狭く、曲がりが多い。足場材を積んだ4トン車が何往復もする工程は、それ自体が村の負担になります。ロープアクセス工法で運ぶのはロープと資機材だけです。

③そもそも足場が組めない敷地がある。 これは次の章で詳しく書きます。

ロープアクセス工法の技術的な仕組み、二重系統のロープによる安全確保、適用できる部位と適用できない部位については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。工法の詳細を知りたい方はそちらをご覧ください。


6. 小菅村の地形:足場を組むための「地面」があるか

標高530mから1,991m。集落は540〜780m

小菅村の標高差を整理します。

地点 標高
奥多摩湖面(村の最低地点) 530m
集落(7集落+長作) 540〜780m
鹿倉山 1,288m
三頭山 1,527m
熊沢山(大菩薩連嶺・村の最高峰) 1,991m

村の総面積5,265haに対し、森林が95%。平地はほとんどありません。集落は「山と山の間の深い谷間に点在」(景観計画本文)しています。

この地形が大規模修繕に何をもたらすか。足場を組むには、建物の外周に平らな地面が要るということです。ロープアクセス工法に必要なのは屋上の支点であって、地面ではありません。

敷地条件 足場工法の可否 私の判断
外周4面に幅1m以上の平場が連続 可能 足場・ロープ・ハイブリッドを金額で比較
1〜2面が擁壁・法面に接する 部分的に可能 ハイブリッド工法(足場とロープの併用)が有利
3面以上が傾斜地・河川に接する 実質困難 ロープアクセス主体
搬入路が狭く大型車が入れない 組めても高コスト ロープアクセス主体

村は「大規模盛土造成地マップ」を公開している

そしてもう一つ、小菅村固有の材料があります。村は大規模盛土造成地マップを公開しています。

小菅村では、谷間や斜面に広範囲の造成を行った地区(大規模盛土造成地)の把握をするため調査を実施しました。大規模盛土造成地が身近に存在するかどうかを知っていただくため、調査結果を「大規模盛土造成地マップ」として公開します。(出典:小菅村「大規模盛土造成地マップ公開」)

これは本来、宅地防災(地震時の盛土の滑動崩落対策)の話です。国土交通省の宅地耐震化に関するページと紐づいた取り組みです。

ただ、大規模修繕の実務でもこのマップは使えます。自分の建物が盛土造成地の上にあるかどうかが分かれば、足場の base(脚部)をどこに据えるかの判断材料になるからです。谷を埋めた造成地の上に足場を組む場合、仮設計画で地耐力の確認が必要になることがあります。逆に、この確認が要らない工法を選ぶという判断もあります。

私は理事会に、劣化診断を依頼する段階でこのマップを施工会社に渡すことをお勧めしています。無料で手に入る、その土地の情報です。使わない手はありません。


7. 12条点検(定期報告):提出は9月30日まで、残り9日です

ここは期限の話なので、先に結論を書きます。

山梨県の定期報告の提出は、報告年度の4月1日から9月30日までです。 この記事が公開される令和8年9月21日時点で、残り9日しかありません。

対象になるかどうかの確認方法

建築基準法第12条に基づく定期報告は、国と県が指定する特定建築物等の所有者・管理者に義務付けられています。山梨県では〔下宿・共同住宅・寄宿舎〕が県細則で指定されており、5階以上の階にあり、かつ対象用途の床面積が1,000㎡以上といった規模要件で対象になり得ます。

ただし、令和8年度が共同住宅の報告年度に当たるかどうかは、県が公開している定期報告年度一覧表で確認する必要があります。ここは推測で書きません。電話で確認してください。

確認先:山梨県県土整備部建築住宅課 建築防災担当 055-223-1734

聞くことは2つです。

  1. 「建物の所在地は北都留郡小菅村です。共同住宅で◯階建て・延床◯㎡ですが、令和8年度は報告年度に当たりますか」
  2. 「当たる場合、令和8年度の提出期限は9月30日で間違いありませんか。間に合わない場合はどうすればよいですか」
項目 内容 出典
提出先 山梨県庁建築住宅課 建築防災担当(甲府市丸の内1-6-1 県庁別館3階) 山梨県
提出時期 報告年度の4月1日〜9月30日 同上
部数 2部(正本1部・副本1部) 同上
郵送 可(返却希望なら返信用封筒を同封) 同上
様式 令和7年7月1日施行で改正済 同上
代行 一般社団法人山梨県建築設計協会に代行依頼が可能 同上
資格者 一級建築士・二級建築士・特定建築物調査員 同上

なお、県の定期報告ページの更新日は2026年8月31日です。令和8年度内に更新されている情報であることを確認したうえで掲載しています。

打診調査と劣化診断は、1回にまとめてください

ここが私の一番言いたいところです。

12条点検の特定建築物定期調査では、外壁タイル等の全面打診が求められる場合があります。打診調査の相場は1㎡あたり250〜500円です。外壁面積2,000㎡なら50万〜100万円。

一方、大規模修繕の前には劣化診断を行います。ここでも打診をします。

同じ調査を、別の年に、別の会社に、2回発注している管理組合が本当に多いのです。 甲府から小菅村までは車で1時間以上かかります。調査員の移動時間も、当然費用に乗ります。

私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。「12条点検の全面打診と、大規模修繕の劣化診断を同じ年にまとめて1回で実施する」。これだけで数十万円が浮きます。理事会の議題としても通りやすい。予算が増えるわけではなく、減るからです。

なお、外壁の打診調査そのものも、ロープアクセス工法で足場を組まずに実施できます。調査のためだけに足場を組むのは、コストとしては相当に重い。足場を組まない打診調査と補修については、明誠のロープアクセス工法による外壁調査・大規模修繕のページで工法の考え方を説明しています。


8. マンション管理計画認定制度:小菅村は山梨県が所管します

マンション管理計画認定制度は、管理計画が一定の基準を満たす場合に、管理組合が地方公共団体から認定を受けられる制度です。

小菅村を含む町村部のマンションは、山梨県が所管しています。 県は令和4年4月1日から認定の受付を開始しました(出典:山梨県「マンション管理計画認定制度について」/ページ更新日 2025年12月24日)。

手数料は「適合証あり」と「なし」で21,900円違います

区分 適合証あり 適合証なし 差額
認定(更新)申請・長期修繕計画が1つ 3,600円 25,500円 21,900円
長期修繕計画が2以上(1計画あたり加算) +1,600円 +14,700円 +13,100円
変更認定申請 適合証なしの金額の1/2(100円未満切捨て) 同左 —

適合証とは、公益財団法人マンション管理センターが事前に発行するものです。県は適合証を受けてから県へ申請する方法を原則としています。

差額の21,900円をどう見るか。私は「差し戻しで総会日程が崩れるリスクを消す費用」だと理事長さまにお伝えしています。認定が下りないまま次の総会まで持ち越すと、修繕の工程全体が1年ずれることがあります。2万円強でその不確実性を減らせるなら、安い保険です。

山梨県独自の基準はありません。 国の基準がそのまま適用されます。申請を検討する場合は、申請前に県の建築住宅課企画担当(055-223-1730)へ相談するよう県が案内しています。

認定を取る実利は3つ。私が一番推すのは3つ目です

  1. 管理計画認定マンションはフラット35の金利引き下げ等の対象になり得る
  2. マンション長寿命化促進税制(後述)の要件を満たしやすくなる
  3. 長期修繕計画の見直しが、認定基準に沿って強制的に進む

3つ目を、私は最大の価値だと考えています。築20年を過ぎた建物の長期修繕計画が、10年以上見直されないまま置かれているのは珍しくありません。認定を取ろうとすると、計画期間・修繕積立金の額・総会での決議といった項目を一つずつ埋めることになります。認定そのものより、埋める過程で理事会が現実を直視することに意味があります。


9. マンション長寿命化促進税制:令和9年3月31日まで、残り約6か月半

これは国の制度です。小菅村でも使えます。

令和5年4月1日から令和9年3月31日までに、長寿命化に資する大規模修繕工事を完了した場合、申告により固定資産税が減額されます(出典:国土交通省「マンション税制」)。

項目 内容
対象マンション 新築から20年以上経過、総戸数10戸以上
対象工事 外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事が一体として実施されたもの
完了期限 令和9年3月31日
減額内容 1戸あたり100㎡相当分まで、家屋の固定資産税額を3分の1減額
注意 減額されるのは固定資産税のみ。都市計画税は対象外

この制度で私が理事会に必ず念を押すのが2点あります。

①「税金が3分の1になる」と説明しないでください。 減るのは固定資産税の家屋分だけで、1戸あたり100㎡相当分が上限です。総会で誤って説明すると、あとで信頼を失います。

②分割発注は要件を外すおそれがあります。 外壁塗装等・床防水・屋根防水が一体として実施されることが要件です。「今年は外壁だけ、再来年に防水」という分け方をすると、適用できなくなる可能性があります。予算の都合で分けたい気持ちは分かりますが、税制の期限とセットで判断してください。

国土交通省の関連通知(国住参マ第305号・第306号)は令和8年4月1日付で出されています。令和8年度時点の様式・証明事務として最新のものです。

そして小菅村の場合、景観の届出・協議の日数が工期の前に上乗せされます。 令和9年3月31日の完了期限から逆算すると、工期4か月+届出・協議・総会で、令和8年秋には動き出していないと間に合わない計算になります。 これが、この記事を9月に書いている理由です。


10. 費用の目安:小菅村の条件でいくら変わるか

金額の話をします。あくまで目安のレンジであり、実際の見積は物件の規模・劣化状況・敷地条件で大きく変動します。

工種別の㎡単価(目安)

工種 単価の目安
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡
外壁打診調査 250〜500円/㎡
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/㎡
仮設足場 総工費の15〜25%

30戸規模の建物で大規模修繕の総工費が3,500万〜5,000万円とすると、仮設足場だけで500万〜1,200万円という計算になります。この部分が、工法の選択で動く金額です。

モデルケース2例(小菅村の実情に合わせた想定)

ケースA:村中心部(川池・田元地区)の開けた立地

項目 足場工法 ハイブリッド工法
築年数・規模 築27年・5階建て・26戸 同左
総工費 3,600万円 3,100万円
差額 — ▲500万円(1戸あたり約19万円)
工期 4.5か月 3.5か月

中心部は平場が取れます。足場でも工程は回ります。判断軸は金額です。

ケースB:擁壁・法面に接する斜面地の立地

項目 足場工法 ロープアクセス主体
築年数・規模 築33年・4階建て・18戸 同左
総工費 2,600万円(組める場合) 2,050万円
差額 — ▲550万円(1戸あたり約30万円)
工期 4か月 2.5か月

ケースBで重要なのは差額ではありません。3面以上が傾斜地や河川に接する敷地では、足場を組むこと自体が実質的に困難になります。 その場合、比較の前提そのものが変わります。「足場だと高い」ではなく「足場という選択肢がない」のです。

料金の考え方と内訳の開示方針については、大規模修繕の料金の考え方のページにまとめています。


11. 正直に申し上げます:ロープアクセス工法が向かない現場もあります

ここは見出しで明確に区切ります。私は施工会社の人間なので、自社の工法を勧める立場にあります。 その前提で読んでください。

そのうえで申し上げると、ロープアクセス工法は万能ではありません。私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる現場は、普通にあります。

足場工法のほうが有利になる4条件

  1. 外壁タイルの浮きが面積の概ね20%を超える(補修数量が多く、面で作業したほうが速い)
  2. 工事の中心がバルコニー内部(室内側の作業が多い)
  3. サッシ・開口部の交換を伴う(資材の搬入・搬出に足場が要る)
  4. 外周に十分な平場があり、足場単価が安く収まる

もう一つ、契約前に必ず確認していただきたいことがあります。

「ロープアクセスなら住戸への立ち入りゼロ」は正しくありません。 バルコニー内部の防水・手すりの塗装・隔て板の更新は、工法にかかわらず立ち入りが必要です。ここを曖昧にしたまま契約すると、着工後に住民から苦情が出ます。そして叱られるのは施工会社ではなく、説明した理事会です。

私が3つの工法(通常足場・ロープアクセス・ハイブリッド)を持っている意味は、ここにあります。足場しか持たない会社は足場を勧めるしかなく、ロープしか持たない会社はロープを勧めるしかない。3つ持っているから、足場を勧められるのです。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練、ISO9001品質マネジメントシステム、日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズ本部を立ち上げたのも当社です。安全管理の具体的な体制については明誠の安全管理のページをご覧ください。

工法選定の技術的な根拠、他社の施工事例を含む工法の一般的な解説については、ロープアクセスドットコムで同業者向けにも情報を公開しています。セカンドオピニオンとしてお使いください。

これまでの施工事例は明誠の施工実績(約6,000棟)からご覧いただけます。


12. 小菅村の物件で、この秋にやることの順番

月ごとに整理しました。

時期 やること
9月中(残り9日) 12条点検の報告年度を県(055-223-1734)へ電話で確認。対象なら9月30日の期限
9〜10月 源流振興課(0428-87-0111)へ電話。重点地区の該当/届出対象/日数/自然公園普通地域と高さ10m超の協議要否を確認
10月 劣化診断をこの秋に前倒し。大規模盛土造成地マップを施工会社に渡す
11〜12月 候補色3案をマンセル値で用意し、窓口に当てる
12〜1月 見積3社。届出図書の作成費が見積のどの項目に入っているかを質問項目に入れる
1〜3月 総会。届出・事前協議の提出
春以降 着工。長寿命化促進税制を使うなら令和9年3月31日までの完了を逆算

見積書で見るべき5点(小菅村版)

  1. 景観条例の届出・事前協議に必要な図書の作成費がどの項目に入っているか。築30年超で竣工図が残っていない場合、彩色立面図の起こしから発生します。この質問への回答の速さで、その会社が小菅村の制度を調べているかが分かります。
  2. 高圧洗浄の排水計画(東京都水源涵養林の流域/下水道普及率100%の村)
  3. 仮定数量を超過した場合の単価を契約書に明記させる(タイル補修は必ず数量が動きます)
  4. 足場リース期間が延長になった場合の費用を誰が負担するか
  5. 工事監理者と施工会社に資本関係がないか

よくあるご質問

Q. 小菅村に、マンションの大規模修繕に使える村の補助金はありますか?

A. 令和8年9月21日時点の公表情報では、共用部の大規模修繕に直接使える村独自の補助制度は確認できませんでした。村の住宅関連補助は空き家改修等(1/2・上限100万円)と空き家解体撤去(1/2以内・上限50万円)の2系統で、いずれも目的が異なります。県・国の制度(管理計画認定、長寿命化促進税制)は別途使えますので、そちらを検討してください。

Q. 外壁を塗り替えるとき、村への届出は必要ですか?

A. 小菅村源流景観条例第27条により、景観法第16条第1項の届出を要する行為は同条例別表第1に定められています。外壁の塗り替えが該当するか、規模の下限がいくつかは、源流振興課(0428-87-0111)に物件の住所・規模・工事内容を伝えてご確認ください。景観計画区域は村全域なので、「区域外だから不要」ということはありません。

Q. 屋根や外壁の色に決まりはありますか?

A. 数値による一律の禁止ではありませんが、小菅村源流景観計画は「屋根の色に青はできるだけ避けるようにします」と明記し、建物の基本色は木の色・土の色(アースカラー)としています。手すり・フェンスは基本を茶色としています。候補色はJIS Z8721のマンセル値を添えて、総会の前に窓口へ当てておくことをお勧めします。

Q. 3階建てのマンションですが、村長との協議は必要ですか?

A. 条例上、自然公園普通地域における高さ10mを超える建築物の建築等は、あらかじめ村長と協議することとされています。まず敷地が自然公園普通地域に該当するか、建物の高さが10mを超えるかを確認してください。小菅村は村の半分が秩父多摩甲斐国立公園に指定されています。判定は源流振興課へ。

Q. 12条点検の期限はいつですか?

A. 山梨県では報告年度の4月1日から9月30日までです。令和8年度が共同住宅の報告年度に当たるかは県の定期報告年度一覧表でご確認ください。提出先は山梨県庁建築住宅課建築防災担当(055-223-1734)、2部(正本1・副本1)、郵送も可能です。一般社団法人山梨県建築設計協会への代行依頼もできます。

Q. 斜面地に建っていて足場が組めそうにありません。どうすればよいですか?

A. ロープアクセス工法(無足場工法)で施工できる可能性があります。この工法に必要なのは屋上の支点であって、地面ではありません。外周の3面以上が傾斜地・擁壁・河川に接する場合、足場工法は実質的に困難で、比較の前提が変わります。まず現地を見せていただければ、屋上の支点が取れるかどうかを判断できます。

Q. 費用はどれくらい変わりますか?

A. 仮設足場は総工費の15〜25%を占めます。30戸規模・総工費3,500万〜5,000万円なら、足場だけで500万〜1,200万円です。本記事のモデルケースでは、5階建て26戸でハイブリッド工法にして▲500万円(1戸あたり約19万円)、斜面地の4階建て18戸でロープアクセス主体にして▲550万円(1戸あたり約30万円)という試算になりました。実際の金額は物件により変動します。


この記事のポイントまとめ

  • 小菅村に共用部の大規模修繕で使える村の補助金は、公表情報上は確認できない
  • 景観計画区域は村全域。届出の要否と日数は源流振興課(0428-87-0111)で確定させる
  • 村は「屋根の色に青はできるだけ避ける」と明記。色はマンセル値で窓口に当てる
  • 自然公園普通地域で高さ10m超の建築物は、あらかじめ村長との協議が必要
  • 12条点検の提出は9月30日まで。打診調査は大規模修繕の劣化診断と1回にまとめる
  • 村面積の3割が東京都の水源涵養林。高圧洗浄の排水計画は見積確認の最優先項目
  • 長寿命化促進税制の完了期限は令和9年3月31日。届出日数を含めると今秋が動き出しの目安

出典・参考資料


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月21日時点で公表されている小菅村および国土交通省・山梨県の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず小菅村および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


小菅村で1本書いてみて、私はこの村の姿勢に敬意を持ちました。人口600人台の村が、平成6年に下水道普及率100%を達成し、明治34年から続く水源林を守り、村全域を景観計画の区域にしている。下流450万人に綺麗な水を流すことを「務め」と書いている。

その村で建物を直すということは、その仕組みの中で工事をするということです。私はそこに手抜きをしたくありません。届出の日数を工程に入れ、排水の行き先を見積に書き、色は窓口に当ててから総会に出す。手間はかかりますが、この順番でやれば理事会が二度手間になりません。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問い合わせはこちらから承ります。管理組合さま向けのサービス内容は管理組合さま向けページに、漏水などの緊急対応は漏水対応のページにまとめています。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
最終更新:2026年9月21日


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

中野区のマンション管理計画認定制度|区独自基準なし・手数料4,100円と、令和9年3月31日で切れる減税【大規模修繕2026年度版】

中野区の管理組合さまから、この夏に続けていただいたご質問があります。「管理計画認定、うちの区はどこまで書類を求められるんですか」というものです。

結論から申し上げます。中野区は、国が定める認定基準だけで判断します。区独自の上乗せ基準はありません。中野区の公式ページにも「中野区独自の基準はございません」と明記されています(出典:中野区「マンション管理計画認定制度」)。

つまり中野区では、認定を取りにいくときに迷う論点が1つ少ない。そのぶん、管理組合として集中すべきは「長期修繕計画と修繕積立金が国の基準を満たしているか」の一点になります。そして、ここが大規模修繕工事の話と完全に地続きです。私は大規模修繕の現場を20年以上見てきましたが、認定基準の実質的な重心は工事計画とお金の側にあります。

もう一つ、中野区の管理組合さまにお伝えしたいのが期限の話です。認定とセットで語られる固定資産税の減額措置(マンション長寿命化促進税制)は、令和9年3月31日までに工事が完了したものが対象です。今日は令和8年9月20日。逆算すると、判断に使える時間はそれほど残っていません。

結論:中野区で管理計画認定を取ると何が変わるか

変わること 中野区での内容
審査の対象 国の認定基準のみ。区独自の上乗せ基準なし(中野区公式ページ明記)
区に納める費用 基本手数料4,100円+加算手数料1,800円(長期修繕計画が1つ増えるごと)
有効期間 認定日から5年間。中野区から満了通知は届かないため、管理組合側で管理が必要
経済効果 長寿命化促進税制(固定資産税の減額)/フラット35維持保全型/共用部分リフォーム融資の金利引下げ/マンションすまい・る債の利率上乗せ

中野区が本制度の受付を始めたのは令和5年8月1日です。対象は中野区内の既存の分譲マンション。新築は対象外で、新築には別途マンション管理センターの「予備認定制度」があります。

中野区の認定主体と相談窓口

認定主体は東京都ではなく中野区です。東京23区内のマンションは、都ではなく区が認定主体になります。

窓口は中野区の都市基盤部 住宅課。住宅政策係は区役所9階4番窓口、電話は03-3228-5581、受付は月曜日から金曜日の午前8時30分から午後5時まで(祝日を除く)です(出典:中野区「分譲マンション支援」)。

技術的な内容の相談については、区から専門家相談窓口を案内される場合があります。申請の流れや書類の不明点は、事前に住宅課へ確認しておくと手戻りが減ります。

中野区に独自基準がないことの、実務上の意味

ここは意外と見落とされます。マンション管理センターの事前確認は、国の認定基準のみを対象としており、地方公共団体が独自基準を設けている場合、その独自基準は事前確認の対象外になります(出典:(公財)マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」)。

独自基準を設けている区では、「事前確認は通ったのに区の審査で止まる」という段差が起こり得ます。中野区にはその段差がありません。事前確認適合証が出れば、区の審査で新たな基準が追加されることは原則ないという構造です。

ただし中野区は、事前確認適合証を取得していても「区における認定審査において、必要に応じて申請内容に関するヒアリングや確認資料の提出等を求めることがある」としています。書類が揃っていれば自動的に通る、という理解は避けてください。

国の認定基準17項目のうち、工事の話に直結する6項目

認定基準は「管理組合の運営」「管理規約」「管理組合の経理」「長期修繕計画の作成及び見直し等」「その他」の5分野に分かれます。このうち、大規模修繕と直結するのが長期修繕計画の6項目です。

項目 基準の中身
① 様式 長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠して作成され、その内容と修繕積立金額が総会で決議されていること
② 更新 長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われていること
③ 期間 計画期間が30年以上で、かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれること
④ 一時金 将来の一時的な修繕積立金の徴収を予定していないこと
⑤ 水準 計画期間全体での修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと
⑥ 借入金 計画期間の最終年度において、借入金の残高がない計画であること

現場で最も引っかかるのが③と⑤です。計画期間が25年で組まれている、大規模修繕が1回しか入っていない、という長期修繕計画は中野区でも珍しくありません。この場合は認定申請の前に、長期修繕計画そのものを作り直す必要があります。

なお認定基準は、国の「マンション標準管理規約」(令和7年10月改正)、「長期修繕計画標準様式・長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改訂)、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改訂)の内容を満たす必要がある項目を含みます。事務ガイドラインは令和8年3月に改訂されていますので、古いテキストで準備を進めていた管理組合さまは現行版をご確認ください。

中野区での費用と申請ルート

中野区に納める手数料は明快です。

区分 金額
当初認定申請・更新申請 基本手数料 4,100円
同 加算手数料(長期修繕計画が1つ増えるごと) 1,800円
変更認定申請「長期修繕計画の作成、見直し等」 基本9,800円+加算5,200円
変更認定申請「管理組合の運営」 基本4,800円+加算2,600円

注意点は、オンライン申請だけでは中野区への手続きが終わらないことです。管理計画認定手続支援サービスでオンライン申請したあと、中野区が発行する納付書で手数料を納付して初めて認定手続きが始まります。

区の手数料とは別に、次の費用がかかります。

  • システム利用料:1申請あたり10,000円(マンション管理センター)
  • 事前確認審査料:依頼先により異なる。日本マンション管理士会連合会経由、または管理組合が直接センターに申し込む場合は、長期修繕計画1計画あたり10,000円

30戸前後のマンションで長期修繕計画が1つであれば、区の4,100円と合わせて総額2万5,000円前後が目安になります。大規模修繕工事そのものの金額から見れば、認定手続きの費用は誤差の範囲です。判断材料はコストではなく、基準を満たすために長期修繕計画をどう作り直すか、の方にあります。

なお変更認定申請だけは、マンション管理センターのシステムからオンライン申請ができません。郵送または窓口への提出となります。

認定の3つの経済効果

① マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)

長寿命化工事(外壁塗装等工事、床防水工事、屋根防水工事)を完了した認定マンションは、工事完了翌年度の建物部分の固定資産税額が1/6〜1/2の範囲内で減額されます。対象は専有部分の居住用部分、100㎡相当分までです。

適用要件は次のとおりです(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制の要件」)。

  • 新築から20年以上が経過していること
  • 総戸数が10戸以上であること
  • 過去に長寿命化工事を行っていること
  • 管理計画の認定を取得している、または取得予定であること
  • 令和3年9月1日以降に修繕積立金の額を認定基準まで引き上げていること
  • 工事完了が令和5年4月1日から令和9年3月31日までの間であること

最後の期限が、中野区の管理組合さまにとって今いちばん重要な数字です。

② フラット35維持保全型

管理計画認定マンションは【フラット35】維持保全型の対象になり、当初5年間、借入金利が年0.25%引き下げられます(出典:住宅金融支援機構【フラット35】維持保全型)。

これは購入者側のメリットですが、管理組合にとっては売却時の競争力に直結します。中野区は中野駅周辺の再開発で住宅需要が動いている地域です。同じ築年・同じ立地で、認定の有無が買い手の資金計画に差をつけるという構図は、今後さらに効いてきます。

③ 共用部分リフォーム融資・すまい・る債

認定マンションが住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」を利用する場合、金利の引下げが受けられます。また「マンションすまい・る債」を購入する場合は利率が上乗せされます。いずれも中野区の公式ページがメリットとして挙げているものです。具体的な引下げ幅や上乗せ幅は募集回ごとに設定されますので、実際の資金計画に組み込む際は機構の最新の条件をご確認ください。

中野区の管理組合に残された時間

令和8年9月20日時点から、令和9年3月31日の工事完了期限まで、およそ6か月です。

外壁塗装・屋上防水・床防水を含む大規模修繕工事は、足場を架ける一般的な工法で3〜6か月かかります。つまり、今から着工の判断をして間に合うかどうかは、かなりきわどいラインです。

前提条件 現実的な見通し
すでに認定取得済み+施工会社決定済み 工期次第では令和9年3月31日に間に合う可能性がある
認定未取得+長期修繕計画が基準未達 令和9年3月31日には間に合わない前提で計画を立てる方が安全
認定は取るが工事は令和9年度以降 税制以外の3つのメリット(フラット35・融資・すまい・る債)と資産価値評価を目的に据える

ここで申し上げたいのは、「減税に間に合わないなら認定は無意味」ではない、ということです。認定基準を満たす過程で長期修繕計画と修繕積立金が整うこと自体が、管理組合にとって最大の資産です。減税は結果であって目的ではありません。

中野区で認定を取るための逆算スケジュール

総会から逆算すると、おおむね6か月の準備期間を見ておくと余裕が生まれます。

時期 やること
総会の6か月前 中野区住宅課(03-3228-5581)へ事前相談。現行の長期修繕計画が基準を満たすか確認
5か月前 長期修繕計画の見直し発注。計画期間30年以上・大規模修繕2回以上・借入金残高ゼロで組み直す
4か月前 修繕積立金の改定案を作成。ガイドラインの水準と照合
3か月前 事前確認を依頼するマンション管理士を選定
総会 長期修繕計画・修繕積立金額・認定申請について決議
総会後1か月 事前確認 → 事前確認適合証の取得 → 支援システム経由で中野区へオンライン申請
その後 中野区から届く納付書で手数料を納付 → 区の審査 → 認定通知書の交付

総会決議が前提条件である点にご注意ください。総会決議を経ていない管理組合の事前確認は、マンション管理士が受けられない仕組みになっています。

中野区の管理状況届出制度との関係

中野区では、東京都の「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」に基づく管理状況届出制度が令和2年4月1日から始まっています。昭和58年12月31日以前に新築され、居住用の独立部分が6戸以上のマンション(要届出マンション)は、5年以内ごとに管理状況を届け出る必要があります(出典:東京都マンションポータルサイト「管理状況届出制度」)。

届出制度と認定制度は別の仕組みですが、届出で整理した情報はそのまま認定申請の下地になります。中野区の高経年マンションで、届出は済ませたが認定は未検討、という管理組合さまは、実は認定へのハードルが低い位置にいます。

大規模修繕のコストと、修繕積立金の要件は直結している

認定基準⑤「修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと」は、実質的に修繕積立金の値上げを求めてきます。国のガイドラインが示す引上げ基準額の下限値は次のとおりです(機械式駐車場分を除く)。

地上階数/建築延床面積 月額の専有面積当たり修繕積立金額
20階未満・5,000㎡未満 235円/㎡・月
20階未満・5,000㎡以上10,000㎡未満 170円/㎡・月
20階未満・10,000㎡以上20,000㎡未満 200円/㎡・月
20階未満・20,000㎡以上 190円/㎡・月
20階以上 240円/㎡・月

70㎡の住戸で235円/㎡・月なら、月額16,450円。現在の積立金が月8,000円の管理組合であれば、倍増の提案を総会にかけることになります。合意形成の難易度は決して低くありません。

ここで効いてくるのが、工事側のコストです。大規模修繕の総工費のうち、仮設足場が占める割合はおおむね15〜25%。30戸規模のマンションで総工費3,500万〜5,000万円とすると、仮設だけで500万〜1,200万円が消えていきます。

私たち株式会社明誠が扱うロープアクセス工法(無足場工法)は、この仮設費を直接削ります。10階建て・外周80m・工期3か月の条件で試算すると、仮設足場が約168万円に対し、ロープアクセスは約59万円。差額は約109万円です(あくまで目安であり、実際の金額は建物形状・工事範囲・部位により大きく変動します)。

項目 足場工法 ロープアクセス工法
仮設費の目安(10階建て・外周80m) 約168万円 約59万円
工期の目安 3か月 1.5〜2か月
居住者への影響 全戸が足場と養生に囲まれる期間が長い 作業中の部位のみ。バルコニー利用の制限期間が短い
適する場面 全面打診・広範囲の一体施工 部分補修、足場架設が難しい形状、コスト最優先

参考までに、外壁塗装の㎡単価の目安は3,500〜4,500円/㎡、屋上・床防水は5,000〜8,000円/㎡、外壁打診調査は250〜500円/㎡が一般的なレンジです。仮設費を削った分をこうした本体工事に回せれば、同じ修繕積立金でも工事の中身が変わります。

明誠は約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けており、日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。

工法の詳細は明誠のロープアクセス工法の技術解説、費用の考え方は大規模修繕の料金の考え方をご覧ください。技術的な仕様や安全管理体制をさらに深く知りたい方は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで工法別の解説を公開しています。

管理組合さま向けのサービス全体像は管理組合向けサービスのご案内にまとめています。

よくあるご質問

Q. 中野区に独自の認定基準は本当にないのですか?

A. 中野区の公式ページに「中野区独自の基準はございません」と明記されています。審査は国の認定基準に基づいて行われます。ただし、区の審査で申請内容に関するヒアリングや確認資料の提出を求められる場合はあります。

Q. 中野区への手数料はいくらですか?

A. 当初認定申請・更新申請は基本手数料4,100円、長期修繕計画が1つ増えるごとに加算手数料1,800円です。これとは別に、マンション管理センターのシステム利用料10,000円と事前確認審査料が必要です。中野区の公式ページの更新日は2024年3月26日ですので、申請前に必ず住宅課へ現行の金額をご確認ください。

Q. 長期修繕計画が25年で組まれています。作り直しが必要ですか?

A. 必要です。認定基準は計画期間30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれることを求めています。25年計画のままでは基準を満たしません。作り直しには2〜3か月を見込んでください。

Q. 認定を取れば固定資産税は必ず下がりますか?

A. いいえ。認定に加えて、築20年以上、総戸数10戸以上、過去の長寿命化工事の実績、令和3年9月1日以降の修繕積立金引上げ、そして令和5年4月1日から令和9年3月31日までの工事完了、という要件をすべて満たす必要があります。減額幅は1/6〜1/2の範囲内で市町村の条例により決まります。

Q. 令和9年3月31日に間に合わない場合、認定を取る意味はありますか?

A. あります。フラット35維持保全型の金利引下げ、共用部分リフォーム融資の金利引下げ、すまい・る債の利率上乗せは期限と無関係です。何より、認定基準を満たす過程で長期修繕計画と修繕積立金が整うこと自体が管理組合の資産になります。

Q. 認定の有効期間は何年ですか?

A. 認定日から5年間です。中野区からは有効期間満了に関する通知が届きませんので、管理組合側で満了日を管理し、更新申請の時期を逃さないようご注意ください。

Q. 大規模修繕の施工会社選びと認定申請は、どちらを先にすべきですか?

A. 長期修繕計画の見直しを先に進めることをおすすめします。計画期間や修繕積立金の水準が決まらないと工事の適正な規模が定まらず、見積の比較もできません。ただし工法の選択肢(足場かロープアクセスか)は計画段階から検討しておくと、積立金の水準設定が現実的になります。

Q. 足場を架けずに大規模修繕はできますか?

A. 建物形状と工事範囲によります。外壁塗装・シーリング打ち替え・タイル補修・防水はロープアクセス工法で施工可能なケースが多く、足場と組み合わせるハイブリッド工法という選択肢もあります。中野区内のマンションであれば現地を拝見したうえで、3工法から最適な組み合わせをご提案します。

まとめ:中野区の管理組合さまが今週動けること

  1. 現行の長期修繕計画を開く。計画期間は30年以上か、大規模修繕は2回以上入っているか、最終年度に借入金残高はないか、この3点を確認する
  2. 中野区住宅課(03-3228-5581)へ電話する。認定申請の現行の手数料と、区の審査で求められる確認資料を聞いておく
  3. 令和9年3月31日という期限を、理事会の議題に載せる。間に合う前提で動くのか、次のサイクルを狙うのかを早めに決める
  4. 修繕積立金の現在の㎡単価を計算する。ガイドラインの下限値と比べて、どれだけ差があるかを数字で把握する

明誠のこれまでの施工事例は施工事例一覧からご覧いただけます。中野区のマンションで長期修繕計画の見直しと工事計画をセットで検討されている管理組合さまは、お問い合わせフォームからご相談ください。現地調査と概算のお見積りは無料で承ります。工法ごとの技術的な比較資料はロープアクセスドットコムにも掲載しています。

出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月20日時点で公表されている中野区および国土交通省・東京都・住宅金融支援機構の公式情報をもとに執筆しています。中野区の管理計画認定制度のページは2024年3月26日更新であり、手数料や運用が変更されている可能性があります。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ますので、実際に申請される前に、必ず中野区住宅課および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月20日

渋谷区のマンション管理計画認定制度|令和8年度は区独自基準スタート+区手数料が無料化【大規模修繕2026年度版】

渋谷区の理事長さまから、この夏に立て続けに同じご相談をいただきました。「管理計画認定、うちも取ろうと思って調べたら、渋谷区だけ書類が増えていませんか」というご質問です。

結論から申し上げます。増えています。渋谷区は令和8年4月から、国の認定基準に区独自の上乗せ基準を追加しました。その一方で、区へ納める申請手数料は令和8年4月1日から無料になっています。ハードルが1つ上がって、コストが1つ下がった、というのが渋谷区の現在地です。

私は大規模修繕の現場を20年以上見てきましたが、管理計画認定は「工事の話」と切り離せません。認定基準の半分近くが長期修繕計画と修繕積立金の話だからです。今回は渋谷区の管理組合さま向けに、制度の中身と、認定を取りにいくときの実務の順番を整理します。

結論:渋谷区で管理計画認定を取ると何が変わるか

渋谷区で認定を取得した場合に変わるのは、大きく次の3点です。

変わること 内容
費用 渋谷区への申請手数料は令和8年4月1日より無料。かかるのは(公財)マンション管理センターへの手数料のみ
手続き 事前確認を依頼する前に、渋谷区への事前相談が必要。独自基準の適合状況をここで確認する
経済効果 長寿命化促進税制(固定資産税の減額)/フラット35の金利引下げ/共用部分リフォーム融資の金利引下げが視野に入る

渋谷区の申請手数料が無料である点は、区の公式ページに明記されています(出典:渋谷区「マンション管理計画認定制度」/2026年6月3日更新)。

なお、令和8年3月31日までに事前確認申請を済ませた管理組合については経過措置が設けられています。昨年度から準備を進めていた組合さまは、この経過措置に該当するかどうかを先に確認したほうが早いです。

渋谷区の認定主体はどこか

管理計画認定の認定主体は、マンションの所在地によって決まります。東京23区内のマンションは、都ではなくその区が認定事務を行います。渋谷区内のマンションであれば、渋谷区が認定主体です。

東京都のポータルサイトにも「区市の区域のマンションの認定事務は、各区市が行います」と明記されています(出典:東京都マンションポータルサイト「マンション管理計画認定制度」)。都が認定事務を担うのは町村の区域だけです。

渋谷区の窓口は住宅政策課住環境整備係(電話 03-3463-3548)になります。私が理事長さまにお伝えしているのは、「まずここに電話を1本入れてから動き始めてください」ということです。理由は次のとおりです。

渋谷区の独自基準と、実務への影響

渋谷区は令和8年4月から、国の基準に加えて区独自の上乗せ基準を設けました。ここが渋谷区で認定を目指すうえでの最大のポイントです。

重要なのは、独自基準はマンション管理士による事前確認の対象外だということです。マンション管理センターの事前確認は国の基準しか見てくれません。だから渋谷区は「事前確認を依頼する前に区へ事前相談に来てください」という運用にしています。

事前相談で渋谷区に持参する書類は、区のページで次のように整理されています。

① 渋谷区独自基準に係る申出書(第2号様式)

② 防災マニュアルを作成していることが確認できる書類(防災マニュアルの写し)

③ 防災対策について、次の4つのうち1つ以上を満たすことが確認できる書類

  • 防災訓練を年1回以上実施していること(実施計画書・実施報告書)
  • 自主防災組織があること(防災組織の規約などの写し)
  • 防災資材および備蓄物資を整備していること(写真、物品リスト)
  • 避難行動要支援者等の把握をしていること(名簿などの写し)

④ コミュニティ活動について、次の4つのうち1つ以上を満たすことが確認できる書類

  • マンション内で自治会を設置または設置計画していること
  • 地域の町会・自治会等に区分所有者および居住者等が加入していること
  • 美化活動・防災訓練などの地域活動を行っていること
  • 町会・自治会との連絡担当者を選任していること

加えて、認定基準の「組合員名簿・居住者名簿」と「渋谷区マンション管理適正化指針に照らして適切であること」については、第1号様式の表明保証書を提出します。長期修繕計画については、マンション管理センターに出すPDFとは別に、Excel形式のファイルを渋谷区へ直接提出する必要があります(出典:前掲 渋谷区ページ)。

正直に申し上げます。③と④は、書類の有無というより「日頃やっているかどうか」がそのまま出る項目です。私が現場で見てきた渋谷区内のマンションでも、防災訓練は毎年やっているのに実施報告書を残していなかった、というケースが少なくありませんでした。訓練当日に写真を10枚撮って、A4一枚の報告書を理事会議事録に添えておく。これだけで③はクリアできます。今年の防災訓練が済んでいる組合さまは、記録の形を整えるところから始めるのが最短です。

国の認定基準17項目(ここが工事の話に直結する)

国が定める認定基準は5分野17項目です。(公財)マンション管理センターが公表している一覧を整理すると、次のようになります(出典:マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」)。

分野 項目数 主な中身
管理組合の運営 3 管理者等が定められている/監事が選任されている/集会が年1回以上
管理規約 3 管理規約が作成されている/緊急時の専有部立入り・履歴情報の管理を規定/財務・管理情報の書面交付を規定
管理組合の経理 3 管理費と修繕積立金を区分経理/修繕積立金会計から他会計へ充当していない/3か月以上の滞納額が全体の1割以内
長期修繕計画の作成・見直し 6 標準様式に準拠し総会決議/作成または見直しが7年以内/計画期間30年以上かつ大規模修繕2回以上/一時徴収を予定していない/積立金平均額が著しく低額でない/最終年度に借入金残高なし
その他 2 組合員名簿・居住者名簿を備え年1回以上内容確認/都道府県等の適正化指針に照らして適切

17項目のうち6項目、つまり3分の1以上が長期修繕計画と修繕積立金の話です。ここが、私が「管理計画認定は工事の話だ」と申し上げる理由です。

特に引っかかりやすいのが「計画期間30年以上、かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上」という要件です。現在の長期修繕計画が25年で組まれている組合さまは、ここで作り直しが発生します。

もう1つが「修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと」です。国の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改訂)の水準を下回る場合は、専門家による理由書が必要になります。

なお、認定基準の前提となる各資料は改訂が続いています。事務ガイドラインは令和8年3月改訂版、マンション標準管理規約は令和7年10月改正版、長期修繕計画標準様式・作成ガイドラインは令和6年6月改訂版が現行です。古い様式のまま総会に諮ると、あとで組み直しになります。

渋谷区での費用と申請ルート

費用の全体像を整理します。

費目 金額の目安 支払先
渋谷区への申請手数料 0円(令和8年4月1日より無料) 渋谷区
システム利用料 1申請あたり10,000円(税込・内消費税909円) マンション管理センター
事前確認審査料 長期修繕計画1計画あたり10,000円(税込)※パターン③④の場合 マンション管理センター等

事前確認審査料は申請ルートによって変わります。管理会社経由(マンション管理適正評価制度と併用)や、個別のマンション管理士に依頼する場合は、審査料を管理組合と委託先の間で決める形になるため、この金額どおりにはなりません(出典:前掲 マンション管理センター)。

申請は、渋谷区へ直接ではなく、マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービス(事前確認)を利用して行います。変更認定申請以外は区へ直接申請できない運用です。また、支援サービスで手続きできるのは申請者本人か、委任を受けた行政書士に限られます。

実務の順番はこうなります。

  1. 渋谷区 住宅政策課へ事前相談(独自基準の適合を確認)
  2. 総会決議(認定申請について承認を得る)
  3. マンション管理士による事前確認 → 事前確認適合証の発行
  4. 支援サービス経由で渋谷区へ認定申請
  5. 渋谷区が審査・認定(有効期間5年、5年ごとに更新申請が可能)

総会決議を経ていない管理組合の事前確認は受けられません。ここを飛ばすと3で止まります。

認定の3つの経済効果

① マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)

築20年以上のマンションで長寿命化に資する大規模修繕工事を行い、管理計画認定を受けているなどの要件を満たすと、工事の翌年度の建物部分の固定資産税が減額されます。減額割合は1/6〜1/2の範囲で市町村の条例が定め、参酌基準は1/3です。

この特例は令和8年度税制改正で、令和8年4月1日から令和13年3月31日までの5年間、延長されました(出典:国土交通省「マンション税制」、令和8年度税制改正概要)。

渋谷区のマンションの場合、固定資産税減額の申告先は都税事務所です。区ではありません。適用要件は相談ダイヤル(03-5801-0858)でも確認できます。

私の経験上、この税制は「大規模修繕をやる年」と「認定を取る年」の順番でつまずく組合さまが多いです。工事の着工前に認定のスケジュールを引いておかないと、要件を満たせずに1回分を取り逃がします。ここは修繕委員会の立ち上げと同時に確認しておく論点です。

② フラット35の金利引下げ

管理計画認定マンション(既存住宅)を購入する場合、【フラット35】維持保全型として借入金利が当初5年間 年0.25%引き下げられます。組合にとっては直接の支出減ではありませんが、中古市場での売りやすさに効いてきます。

③ マンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ

住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資では、管理計画認定の取得により融資金利が年0.2%引き下げられます(出典:住宅金融支援機構)。大規模修繕の資金を一部借入でまかなう組合さまには、こちらが実利です。

渋谷区で認定を取るための逆算スケジュール

渋谷区は事前相談が挟まる分、他区より1〜2か月の余裕を見ておくのが現実的です。年1回の通常総会で決議する前提で逆算します。

時期 やること
総会の6か月前 渋谷区 住宅政策課へ事前相談。独自基準(防災・コミュニティ)の不足を洗い出す
総会の5か月前 長期修繕計画の見直し要否を判定(計画期間30年以上/大規模修繕2回以上/7年以内の見直し)
総会の4〜3か月前 長期修繕計画の作成・見直し、修繕積立金の水準検討。Excel版フォーマットも並行作成
総会の2か月前 防災マニュアル・訓練記録・町会加入記録などの独自基準書類を整える
総会 長期修繕計画・修繕積立金額・認定申請の承認を決議
総会後1〜2か月 マンション管理士による事前確認 → 適合証取得
事前確認後 支援サービス経由で渋谷区へ申請 → 認定

長期修繕計画の見直しが必要だと分かった時点で、工事の見積も同時に動かすのが効率的です。計画の数字は工事の単価で決まるからです。

大規模修繕のコストと、修繕積立金の要件は直結している

ここからが本題です。「修繕積立金の平均額が著しく低額でない」という要件を満たすのに、値上げ以外の手がないと思い込んでいる組合さまが本当に多いのです。

もう1つの方法は、長期修繕計画に載せる工事費そのものを下げることです。

渋谷区のような都心部のマンションでは、総工費に占める仮設足場の比率が効いてきます。一般に30戸規模のマンションの大規模修繕は総額3,500〜5,000万円程度、そのうち仮設足場が15〜25%というのが目安です(物件の形状・立地で大きく変動します)。

ここにロープアクセス工法(足場を架けずに産業用ロープで職人が降下しながら施工する無足場工法)を組み合わせると、数字が変わります。私が実際にお出しする概算の一例です。

条件 足場工法 ロープアクセス工法
10階建て・外周80m・工期3か月 仮設費 約168万円 約59万円
差額 — 約109万円の圧縮
工期 3か月 1.5〜2か月が目安

※物件の形状、開口部の状況、施工部位によって変動します。上記はあくまで参考値です。

外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、打診調査は250〜500円/㎡、防水は5,000〜8,000円/㎡あたりがひとつの目安になります。渋谷区は隣地との離隔が取りにくい物件や、店舗併用で足場を架けると営業に影響が出る物件が多いエリアです。全面足場ではなく、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法が効く現場が、私の感覚ではかなりあります。

仮設費が圧縮できれば、長期修繕計画に載る1回あたりの工事費が下がります。その分、必要な修繕積立金の水準も下がる。これが、認定基準と工法選びがつながる理由です。工法ごとの技術的な違いは、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法による高所作業については、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業で過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工し、ISO9001の品質マネジメントシステムに基づいて管理しています。安全管理の考え方は大規模修繕工事の安全管理体制に、料金の組み立て方は大規模修繕の料金の考え方にまとめています。

作業手順や資格要件といった技術面をさらに掘り下げたい方は、ロープアクセスドットコムの技術情報をご覧ください。

管理組合向けのサービス内容は管理組合さま向け大規模修繕サービス、工法の詳細は明誠のロープアクセス工法の技術詳細にあります。これまでの施工事例は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。

よくあるご質問

Q. 渋谷区への申請手数料は本当に無料ですか?

A. 渋谷区の公式ページに「区への申請手数料は令和8年4月1日より無料になりました」と明記されています。ただしマンション管理センターのシステム利用料(1申請10,000円)と事前確認審査料は別途かかります。

Q. 渋谷区の独自基準は事前確認で見てもらえますか?

A. 見てもらえません。マンション管理士による事前確認は国の基準のみが対象です。独自基準は渋谷区への事前相談で確認する運用になっています。この順番を逆にすると手戻りが出ます。

Q. 防災訓練をやっていないと認定は取れませんか?

A. 渋谷区の独自基準は、防災訓練・自主防災組織・防災資材の整備・避難行動要支援者の把握の4つのうち、1つ以上を満たせば要件を満たす形になっています。訓練が未実施でも、備蓄物資の整備状況で対応できる場合があります。

Q. 長期修繕計画が25年で組まれています。作り直しですか?

A. 国の基準は「計画期間30年以上、かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上」です。25年の計画では要件を満たさないため、見直しが必要になります。見直しは工事費の精査と同時に進めるのが効率的です。

Q. 認定を取れば固定資産税は下がりますか?

A. 認定だけでは下がりません。築20年以上であること、長寿命化に資する大規模修繕工事を完了していることなど、複数の要件を満たす必要があります。渋谷区内のマンションの申告先は都税事務所です。

Q. 認定の有効期間は何年ですか?

A. 5年です。5年ごとに更新申請が可能です。認定期間中に管理計画を変更する場合は変更認定申請が必要で、その場合も有効期間は延長されません。

Q. 大規模修繕の工事会社選びは、認定申請とどちらを先にすべきですか?

A. 並行して進めるのが現実的です。長期修繕計画に載せる工事費の根拠が必要になるため、概算見積を取りながら計画を組むと、修繕積立金の水準検討が一度で済みます。

Q. 足場を架けずに大規模修繕はできますか?

A. 建物の形状と工事範囲によります。全面をロープアクセスで施工できる物件もあれば、低層部は足場、高層部はロープアクセスというハイブリッドが最適な物件もあります。渋谷区内の隣地が狭い物件では、後者の提案になることが多いです。

まとめ:渋谷区の管理組合さまが今週動けること

3点だけ挙げます。

1. 渋谷区 住宅政策課住環境整備係(03-3463-3548)に電話を入れる。 独自基準の運用は令和8年4月に始まったばかりです。自分のマンションが経過措置に該当するかも含めて、口頭で確認するのが一番早いです。

2. 長期修繕計画の「計画期間」と「最終見直し日」を確認する。 30年未満、または見直しから7年超なら、そこが最初のボトルネックです。

3. 防災訓練とコミュニティ活動の記録を探す。 実施していても記録が残っていないだけ、というケースが多いです。写真と報告書を1枚にまとめておけば、独自基準は通しやすくなります。

管理計画認定は、書類仕事のように見えて、その中身は建物をどう維持していくかという判断の積み重ねです。長期修繕計画の数字が動けば積立金も動き、積立金が動けば工法の選択肢も変わります。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問い合わせフォームからどうぞ。

出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月20日時点で公表されている渋谷区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず渋谷区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月20日

国交省が「水災害調査・対策検討委員会」を新設|9月18日初会合・年内とりまとめへ。内水氾濫でマンションが止まる3つの急所と、管理組合・オーナーが今できる備え【2026年9月】

2026年9月20日 更新

Q. 国土交通省が新しく立ち上げた「都市型水害」の検討委員会は、東京・関東のマンションやビルを持つ私たちに、具体的に何を意味するのでしょうか。

A. 短く申し上げます。国が「河川があふれる被害」ではなく「下水道が処理しきれずに街にあふれる被害(内水氾濫)」を正面から扱い、年内に対策をとりまとめる、ということです。そして内水氾濫でマンションが本当に困るのは、水が室内に入ることそのものよりも、地下の電気室が水没して建物全体が止まることです。ここは大規模修繕の計画と切り離して考えるべきではない、と私は思っています。


結論:9月18日に動いたのは「内水氾濫を都市問題として扱う」という国の姿勢

国土交通省は令和8年9月15日付の報道発表で、「水災害調査・対策検討委員会」(座長:中北 英一 京都大学総長特別補佐 名誉教授)を新たに設置し、第1回を9月18日(金)16時00分から18時00分に開催すると公表しました。今後、年内を目途に、都市型の内水氾濫対策等についてとりまとめるとしています(出典:国土交通省「千葉豪雨等の集中豪雨を踏まえ調査・対策検討委員会を新たに設置」(令和8年9月15日))。

第1回の議題は「令和8年8月千葉豪雨などを踏まえた都市型水害の特徴とその課題について(仮)」。設置の直接のきっかけは、令和8年8月13日に発生した千葉県の豪雨で、道路や市街地に水が滞留する「内水氾濫」による浸水被害が甚大なものとなったことだと、同発表は明記しています。

ここで押さえておきたい点を3つに整理します。

  1. 国が扱う主戦場が「河川の堤防」から「街なかの排水能力」へ広がった
  2. とりまとめは年内。つまり令和9年度(2027年度)の制度・予算に反映される可能性がある
  3. 建物側の自衛策(止水板・電気室の嵩上げ・排水まわりの改修)は、国の結論を待たずに今日から着手できる

私は3つ目がいちばん大事だと考えています。国の対策は下水道やポンプ場といった「公共側」の話が中心になります。敷地の中に降った雨、建物の中に入ってくる水は、結局のところ所有者・管理者が守るしかありません。


「内水氾濫」と「外水氾濫」の違いを1分で

専門用語なので、最初に整理しておきます。

区分 何が起きているか 起きる場所の特徴
外水氾濫 河川の水が堤防を越える・決壊してあふれる 河川沿い、低地
内水氾濫 街に降った雨が下水道の排水能力を上回る/河川水位が高くて下水道から河川へ放流できない 舗装された市街地全般。河川から離れていても起こる

国土交通省の資料では、内水氾濫を「下水道の雨水排水能力を上回り浸水、または河川水位の上昇により、下水道から河川へ放流できず浸水」と定義しています(出典:国土交通省「近年の降雨及び内水被害の状況、下水道整備の現状について」)。

「うちは川から離れているから大丈夫」が通用しないのが内水氾濫です。ここが、管理組合の理事会で最も誤解されているポイントだと、私は現場で何度も感じてきました。

Yes/Noで確認:川から1km以上離れていれば安心?

→ いいえ。 内水氾濫はアスファルトとマンホールの街で起こります。むしろ、地下駐車場や地下の電気室を持つ市街地のマンションほど、内水に弱い構造になっていることが少なくありません。


数字で見る内水氾濫:被害額の約4割、東京都では約7割

抽象論ではなく、数字で見ます。国土交通省が水害統計(平成20〜29年の10年間の合計)をもとに整理した数値は次のとおりです(出典:国土交通省「近年の降雨及び内水被害の状況、下水道整備の現状について」)。

指標 全国 東京都
水害被害額の合計(10年間) 約1.8兆円 約605億円(内水+洪水氾濫等)
うち内水氾濫による被害額 41%(約0.7兆円) 71%(約429億円)
浸水棟数のうち内水氾濫によるもの(全国) 68%(約22万棟) —

東京都では、水害被害額の約7割が内水氾濫によるもの。この一文だけでも、23区や多摩地域にマンションを持つ方には十分な材料だと思います。

あわせて、下水道の整備水準についても数字があります。同資料によれば、雨水排除計画で採用する確率年は5〜10年が標準(下水道施設計画・設計指針と解説)とされ、都市浸水対策達成率は平成30年度末時点で約59%でした。この達成率は「概ね5年に1回程度発生する規模の降雨に対応する下水道整備が完了した区域面積の割合」です。数値としてはやや古い時点のものですが、公表資料で確認できる整理として引用します(浸水対策の最新の考え方は国土交通省の下水道による浸水対策をご参照ください)。

つまり、多くの市街地の下水道は「5年に1回程度の雨」を前提に設計されている。そこに100年に1回級の雨が降れば、設計を超えるのは構造上の帰結です。今回の検討委員会が扱おうとしているのは、まさにこの設計思想の見直しだと私は理解しています。


令和8年8月千葉豪雨で、インフラ側に何が起きていたか

今回の委員会設置の引き金になった豪雨について、国土交通省の災害情報から事実だけを拾います。以下は第3報(令和8年8月14日17時時点)の速報値であり、その後の続報で更新されている項目があります(出典:国土交通省「令和8年8月千葉豪雨による被害状況等について(第3報)」)。

  • 千葉県では13日夕方以降に線状降水帯が発生し、14日6時まで24時間降水量が200ミリを超える記録的な大雨
  • 特に千葉市では、8月の平年1ヶ月分の3倍以上となる360ミリを超える降水量を観測し、24時間降水量として観測史上1位を更新
  • 13日19時30分から14日5時15分まで、レベル5大雨特別警報を広い範囲に発表
  • 下水道施設では、印旛沼流域下水道の八千代ポンプ場(汚水)、千葉市の越智ポンプ場(汚水)、茂原市の道目木ポンプ場(汚水)が浸水により機能停止。マンホール蓋の飛散、マンホールポンプの機能停止、市原市・菊間処理場の汚泥圧送機能停止も発生
  • 国道16号(千葉市中央区村田町)が冠水し通行止め。冠水箇所で水没した車両の乗員1名が搬送されたほか、運行中のタクシーが水没し乗客1名が亡くなられています

最後の一行は、書くべきか迷いました。ただ、内水氾濫は「床が濡れる」だけの災害ではないということは、正確にお伝えすべきだと思いました。亡くなられた方に、お悔やみを申し上げます。

注目していただきたいのは、下水道インフラの側の設備が、浸水によって次々に機能を止めているという事実です。上に挙がっているのは汚水系の施設が中心ですが、雨水の排除と汚水の処理が同時に揺らぐ状況が、市街地で現実に起きたということです。これは建物側の対策が「余計な備え」ではなく「前提」になりつつあることを示していると、私は受け止めています。


マンションが止まる3つの急所——電気室・昇降機・給水

ここからが本題です。内水氾濫でマンション・ビルの資産価値に効いてくるのは、次の3点です。

急所①:地下の電気室(高圧受変電設備)

令和元年東日本台風(台風第19号)では、大雨に伴う内水氾濫により、高層マンションの地下部分に設置されていた高圧受変電設備が冠水して停電し、エレベーター・給水設備等のライフラインが一定期間使用不能となる被害が発生しました。これを受けて国土交通省と経済産業省は、令和2年6月に「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」をとりまとめています(出典:国土交通省・経済産業省「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」(令和2年6月)、報道発表資料)。

ガイドラインが示す対策の考え方は、大きく3段構えです。

  1. 浸水そのものを防ぐ(止水板・防水扉、開口部・貫通部の閉塞)
  2. 浸水量を軽減する(浸水経路の限定、排水設備の確保)
  3. 浸水しても被害を最小化する(重要機器の上階移設・嵩上げ、早期復旧体制)

急所②:エレベーター

電気が落ちれば昇降機は止まります。高層階に高齢のご入居者がいらっしゃる場合、これは生活の停止に直結します。復旧には点検業者の到着を待つ必要があり、広域災害では順番待ちになります。

急所③:給水ポンプ

加圧給水方式のマンションでは、停電=断水です。トイレが使えないという状況は、想像以上に生活を痛めます。

この3つは、すべて「電気室が沈むかどうか」で連鎖します。私はいつも理事長さまに、「浸水対策の優先順位は、住戸より先に電気室です」とお伝えしています。順番を間違えると、同じ予算で守れる範囲が大きく変わってしまうからです。


東京・関東で使える止水板設置助成(2026年9月20日時点)

建物側の一次防衛線が止水板です。東京23区では助成制度を持つ区が増えています。制度は年度で内容が変わりますので、各区の公式ページで最新の受付状況をご確認ください。

自治体 助成内容 期限・備考 出典
江戸川区 止水板の設置に係る費用の2分の1(上限50万円)。関連する内外壁の止水工事、土間コンクリート打設工事も対象 申込期限:令和8年12月25日(金)。全手続きを期限までに完了する必要あり。承認通知書の受領前に契約・着手すると対象外 江戸川区 止水板設置等助成(2026年6月1日更新)
世田谷区 令和8年度より開始。止水板の設置工事費用/簡易型止水板の購入費用が対象(助成額は区の案内図表を要確認) 令和7年7月10日〜令和8年3月31日に設置・購入した分も対象。JIS A 4716に準じた性能などの要件あり 世田谷区 止水板設置等助成制度(2026年9月15日更新)
板橋区 止水板設置工事等への助成制度あり(金額・要件は区の要綱による) 区ページの更新日は2025年2月14日のため、令和8年度の受付状況・助成額は区へ直接ご確認ください 板橋区 止水板設置工事助成制度
東京都(参考) 都として「止水板設置促進アクション」を展開 区市町村制度の一覧・考え方の整理 東京都都市整備局 止水板設置促進アクション

江戸川区の「承認通知書を受け取る前に契約すると対象外」という条件は、実務上いちばん事故が起きやすいところです。管理会社経由で見積を取り、勢いで発注してしまってから助成に気づく——このパターンを、私は何度も見てきました。先に区へ、次に発注。この順番だけは崩さないでいただきたいと思います。


費用の目安:浸水対策と外壁改修を「一緒にやる」と何が変わるか

金額の話をします。以下は東京・関東一円での一般的な目安(参考値)であり、物件の規模・形状・劣化状況により大きく変動します。実際の金額は現地調査のうえでの見積によります。

工種 単価の目安 補足
外壁打診調査 250〜500円/㎡ 建築基準法第12条に基づく定期調査とも関連
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡ 下地補修の量で上下
防水(屋上・バルコニー等) 5,000〜8,000円/㎡ 工法(ウレタン・塩ビシート等)で差
30戸規模マンションの大規模修繕 総額 3,500〜5,000万円 うち仮設足場が15〜25%

ここで効いてくるのが仮設足場の比率です。総工費の15〜25%、つまり30戸規模なら500万〜1,200万円前後が「作業のために組んで、終わったら外す構造物」に消えていきます。

無足場工法であるロープアクセス工法(産業用ロープで屋上から降下して作業する無足場の施工方法)を使うと、この部分を圧縮できます。一例として、10階建て・外周80m・工期3ヶ月の物件で、外壁作業に必要な範囲の仮設費を比較すると、足場が約168万円のところ、ロープアクセスなら約59万円、差額は約109万円という試算になります(当社の一般的な条件での参考値。実際は形状・搬入条件で変動します)。なお、この168万円は外壁作業に必要な範囲に限定した比較例であり、上表の「大規模修繕一式に占める仮設足場15〜25%」とは対象範囲が異なります。

そして内水氾濫対策の文脈では、もう一つ大きな意味があります。豪雨の後に「どこから水が入ったか」を調べるとき、足場の架設工程を挟むと、着手までに相応の期間が必要になります。ロープアクセスなら、条件が整えば数日から1週間程度で外壁・目地・ドレンまわりを上から順に確認できるケースがあります(繁忙状況や天候により変動します)。ロープアクセス工法の技術的な背景は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。

当社は足場・ロープアクセス・両者を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物特性に応じて提案しています。料金の考え方については大規模修繕の料金の考え方、技術面については明誠のロープアクセス工法の技術詳細をご覧ください。


大規模修繕のタイミングで一緒にやりたい「雨水まわり」5点

内水氾濫対策を単独工事でやると、仮設費を二重に負担することになり、割高になりやすい傾向があります。足場やロープを出すタイミングで一緒にやるのが、最もコスト効率が良い進め方です。理事会でご提案するなら、次の5点を候補にしていただくと話が早いと思います。

  1. 屋上・バルコニーのドレン(排水口)の更新・増設
    詰まったドレン1箇所が、屋上をプールに変えます。改修用ドレンの挿入は、防水改修と同時なら追加費用を抑えられます。
  2. 雨水竪樋・横引き管の内部調査と洗浄
    築20年を超えると、内部に土砂と根が溜まっている物件が珍しくありません。
  3. 外壁目地シーリングの打ち替え
    横殴りの雨は、シーリングの切れ目から入ります。大規模修繕の標準工種です。
  4. 電気室・機械室の開口部への止水板・防水扉
    上記の助成制度が使える可能性があります。
  5. 地下駐車場スロープの止水対策と排水ピットのポンプ点検
    ポンプの能力と非常電源の有無を、図面ベースで確認しておきます。

私の経験上、この5点のうち1と2は、目視点検だけならほとんど費用をかけずに確認できます。長期修繕計画の見直し時に、まずここだけでも点検項目に入れていただければと思います。漏水の原因調査については漏水対応の考え方にまとめています。


現場から:ドレン1箇所で、階下3戸が水浸しになった話

数年前、都内のある築24年・8階建てのマンションで、台風の翌朝に「最上階の3戸から水が落ちてきている」とご連絡をいただきました。

屋上に上がると、防水層は生きていました。原因はドレンです。落ち葉と経年の土砂で排水口が塞がり、屋上に10cm近く水が溜まっていた。そのまま笠木の取り合いからオーバーフローして、躯体の中を伝って下へ落ちていました。

そのとき私が悔しかったのは、その年の春に屋上点検の見積を出していて、「今年は見送り」と理事会で決まっていたことです。金額は数万円でした。結果として、内装復旧と原因調査で数十万円かかりました。

正直に申し上げます。私はこの手の話を、営業のために使いたくありません。ただ、雨水の出口の点検は、建物の中でいちばん費用対効果が高い部類の投資だというのは、20年近く現場を見てきた実感です。

なお当社は、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕に携わってきました。ロープアクセス工法での高所作業については、当社および全国のフランチャイズ加盟企業で過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練、ISO9001品質マネジメントシステム、日本ロープ高所作業協会の事務局運営——この体制があるからこそ、豪雨の翌週に「すぐ上から見に行く」という対応ができます。安全管理の考え方は明誠の安全管理体制に記載しています。

これまでの施工事例(約6,000棟)は施工事例一覧からご覧いただけます。


東京23区・千葉・埼玉のオーナー物件で、収益面に効いてくること

賃貸マンションをお持ちのオーナーさまには、もう一段別の論点があります。

  • 停電・断水が1日続けば、入居者の退去理由になり得ます。とくに単身者向け物件では、原状回復よりも空室期間の損失のほうが大きくなります
  • ハザードマップ上の位置について、仲介の現場で説明を求められる場面が増えています。物件側で「止水板を設置済み」「電気室は2階」と言えるかどうかは、競合との差になります
  • 保険の観点:水災補償の付帯有無と免責額は、この機会に一度確認しておく価値があります

東京23区・千葉・埼玉の内水ハザードマップは各自治体が公表しています。ご自身の物件が「浸水想定区域の外」でも安心はできません。令和8年8月千葉豪雨では、浸水被害報告のうち相当数が浸水想定区域の外で発生していたとの民間分析も出ています(参考:ウェザーニューズ「令和8年8月千葉豪雨、2人に1人が浸水想定区域“外”で被災か」)。

オーナーさま向けの改修の考え方は収益物件オーナー向けのご提案にまとめています。技術的な工法選定の判断材料はロープアクセスドットコムも参考になさってください。


管理組合・オーナーが年内にできる5ステップ

国の検討委員会は年内にとりまとめを行う予定です。それを待つ間に、建物側でできることを順番に並べます。

順番 やること 目安の期間 費用感
1 電気室・機械室の位置と床レベルを図面で確認(地下か、1階か、嵩上げされているか) 1日 実質0円
2 自治体の内水ハザードマップで建物位置の想定浸水深を確認 1日 実質0円
3 屋上ドレン・雨樋の目視点検と清掃 半日〜1日 数万円〜
4 止水板設置の可否と助成制度の確認(区の窓口へ相談→承認→発注の順) 1〜3ヶ月 助成で1/2・上限50万円の区あり
5 長期修繕計画に「雨水まわり」の項目を追加し、次回大規模修繕と統合 理事会2回分 計画見直し費用のみ

1と2は、今週の理事会で「資料を用意する」と決めるだけで進みます。お金をかける前に、現状を知る。ここを飛ばして工事の話から入ると、たいてい高くつきます。

10月までに動けるかどうかが、令和8年度の助成に間に合うかの分かれ目になる区もあります。理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。


よくあるご質問

Q. 築25年のマンションですが、今から電気室の移設は現実的ですか?

A. 移設は大がかりで、費用も数百万円単位になることが一般的です。多くの物件では、まず開口部への止水板・防水扉の設置と、貫通部の閉塞から検討します。国土交通省・経済産業省のガイドラインも、浸水を防ぐ/量を軽減する/被害を最小化する、という段階的な考え方を示しています(出典:建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン)。

Q. 止水板の助成は、分譲マンションの管理組合でも使えますか?

A. 区によって対象者の定義が異なります。たとえば世田谷区は「区内で止水板の設置工事又は簡易型止水板の購入を行う住宅、事務所等の所有者又は使用者」を対象としています(出典:世田谷区)。共用部の工事として管理組合が申請できるかは、事前に区の担当課へご確認ください。

Q. 屋上ドレンの点検には足場が必要ですか?

A. 屋上のドレンそのものは屋上からアクセスできます。問題は外壁側の縦樋や、バルコニー・庇まわりの排水で、ここは上からの確認が必要になります。ロープアクセス工法なら足場を組まずに点検でき、10階建て・外周80m程度の物件なら、仮設費の目安で約168万円(足場)に対し約59万円(ロープアクセス)という差が出る場合があります(参考値・条件により変動)。

Q. 内水氾濫の被害は、水災保険で全部カバーされますか?

A. 保険の内容によります。水災補償が付帯されているか、免責金額がいくらか、共用部と専有部でどう分かれているか——この3点を保険証券でご確認ください。保険の可否について当社が判断することはできませんので、保険代理店へのご相談をおすすめします。

Q. 「川から離れているから内水氾濫は関係ない」は本当ですか?

A. 内水氾濫は、街に降った雨が下水道の排水能力を上回って発生します。河川からの距離とは別の話です。国土交通省の集計では、東京都の水害被害額の約7割が内水氾濫によるものでした(平成20〜29年の10年間合計/出典:国土交通省資料)。

Q. 大規模修繕と浸水対策、どちらを先にやるべきですか?

A. 分けずに同じ工事の中で計画するのが、費用面では有利になりやすいと考えています。仮設(足場やロープ)を出すタイミングは年に何度もありません。長期修繕計画の見直し時に、雨水まわりの項目を組み込んでおくのが現実的です。

Q. 見積だけ取りたいのですが、相談できますか?

A. もちろんです。概算のお見積りと、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3案比較をお出ししています。お問い合わせフォームからご連絡ください。総会前の情報整理だけでも、お力になれることがあります。


この記事のポイントまとめ

  • 国交省が9月18日に「水災害調査・対策検討委員会」の初会合を開催、年内に都市型内水氾濫対策をとりまとめる
  • 過去10年の全国水害被害額の約4割、東京都では約7割が内水氾濫によるもの
  • マンションが止まる急所は電気室・エレベーター・給水の3点で、すべて電気室に連鎖する
  • 江戸川区は費用の1/2・上限50万円(令和8年12月25日まで)、世田谷区は令和8年度から制度開始
  • 止水板・ドレン更新は大規模修繕と統合すると仮設費を二重に払わずに済む

▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
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この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

最終更新:2026年9月20日

制度の内容は年度や予算の状況により変更される場合があります。申請の可否・金額・期限については、各自治体の公式ページおよび担当課で最新の情報をご確認ください。


出典・参考資料

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