湖西市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

湖西市には、マンションが7棟しかありません

株式会社明誠の本間です。

この連載では、静岡県内の市や町を1つずつ取り上げて、分譲マンションの大規模修繕で使える補助金・税制を、市の一次情報だけを頼りに整理してきました。浜松市、磐田市、掛川市、袋井市と西へ東へ回ってきて、今回はいよいよ県の最西端、湖西市です。

湖西市の資料を開いて、私は少し手が止まりました。

湖西市が公表している「湖西市マンション管理適正化推進計画」には、こう書かれています。

本市には、令和6年度末時点で7棟のマンションがあり、そのうち、4棟が建築後20年を超えています。

(出典:湖西市マンション管理適正化推進計画)

7棟。しかも、計画書には7棟すべての竣工年・階数・戸数を並べた一覧表と、位置図まで載っています。

浜松市や静岡市のように何百棟とある都市では、行政の資料は「棟数の推計」で終わります。湖西市は違う。市が、市内のマンションを1棟ずつ把握したうえで計画を立てている。これはつまり、この記事を読んでいるあなたの管理組合も、湖西市の計画のなかに名前入りで載っているということです。

その前提で、以下を読み進めてください。今回は一般論の割合を減らして、湖西市の資料に実際に書いてあることと、書いていないことの線引きに集中します。


湖西市のマンション7棟|築年数の分布から見えること

市の計画に載っている7棟を、名称を伏せて竣工年順に並べ直すと、こうなります。

竣工年 2026年時点の築年数 階数 戸数
1986年 築40年 5階 45戸
1991年 築35年 10階 39戸
1995年 築31年 5階 12戸
2003年 築23年 5階 38戸
2007年 築19年 10階 88戸
2009年 築17年 9階 35戸
2017年 築9年 7階 46戸

(出典:湖西市マンション管理適正化推進計画より作成)

合計303戸。1棟あたり平均43戸です。

この表から、私が実務者として読み取ることを3つ挙げます。

1つ目。戸数が小さい。 平均43戸、最小は12戸です。首都圏の感覚だと「小規模マンション」に分類されます。後で詳しく書きますが、戸数が小さいほど、1戸あたりの工事費負担は重くなります。同じ5,000万円の工事でも、150戸なら1戸33万円、40戸なら1戸125万円です。だからこそ、工法選定による削減が効いてくる。

2つ目。高層が混ざっている。 7棟中、9階建て以上が3棟あります。地方都市のマンション群としては珍しい構成です。仮設足場は高さが上がるほど1平方メートルあたりの単価も、架設・解体の日数も増えます。10階建ての建物にぐるりと足場を架けるのと、5階建てに架けるのとでは、費用の桁が違ってきます。

3つ目。1棟には「リゾート」の区分が付いている。 市の計画表には、リゾートマンションかどうかを示す欄があります。リゾートマンションの管理組合には固有の難しさがあります。区分所有者の多くが市外・県外に住んでいるため、総会の定足数を満たすのに時間がかかる。委任状・議決権行使書の回収に、通常のマンションの倍近い期間を見ておく必要があります。もしお心当たりがあるなら、大規模修繕の議案は、通常より半年ほど前倒しでスケジュールを組むことをお勧めします。

築20年を超えた4棟のうち、築31年と築35年、築40年の3棟は、すでに2回目・3回目の大規模修繕の周期に入っています。


湖西市のマンション管理計画認定制度|手数料は無料、独自基準もなし

まず、湖西市で最も条件が良い制度から紹介します。マンション管理計画認定制度です。

湖西市は、マンション管理適正化法の改正を受けて「湖西市マンション管理適正化推進計画」(計画期間:令和6年10月〜令和15年9月)を策定し、市として認定事務を行っています。計画目標は「市内全てのマンションの管理計画の認定」。7棟全部です。

湖西市の条件を、市のページから抜き出します。

項目 湖西市の内容
認定申請手数料 無料
市独自の上乗せ基準 設けていない(国の基準どおり)
必要書類 (公財)マンション管理センター発行の事前確認適合証
申請ルート マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービス経由
窓口 建築住宅課 建築住宅係 053-576-4549

(出典:湖西市マンション管理適正化推進計画の策定)

この2つ、地味に見えて大きい話です。

「市に支払う手数料は無料」。 自治体によっては数千円から3万円弱の手数料を取ります。この連載で回った静岡県内の町のなかにも、28,100円という設定のところがありました。湖西市は0円です。

「湖西市独自の基準は設けていません」。 これは、国が示した認定基準(管理者の設置、集会の年1回以上の開催、管理規約の適切な作成、長期修繕計画の期間30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれること、修繕積立金の額が明確に定められていること、など)をそのまま満たせばよい、という意味です。市の独自要件を別途調べる手間がかかりません。国の様式のまま準備を進められます。

ただし、市に払う費用が0円であることと、認定にお金がかからないことは別です。(公財)マンション管理センターのシステム利用料と事前確認審査料は別途かかります。合計で2万円前後を見ておくと、理事会での説明がぶれません。

認定を取ると何が得られるか。市のページは4つ挙げています。区分所有者の管理意識が高く保たれること、市場で適正管理として評価されること、地域価値の維持向上、そして──

  • 住宅金融支援機構の【フラット35】およびマンション共用部分リフォーム融資の金利引き下げ
  • マンション長寿命化促進税制の適用(各区分所有者が翌年度支払う固定資産税が減額される)

税制については後述しますが、認定単体でもフラット35と共用部分リフォーム融資の金利優遇という実利がある点は、総会で説明するときに効きます。「税制に間に合わなかったら無駄になる」わけではない、ということです。

認定制度についての相談は、一般社団法人日本マンション管理士会連合会が相談ダイヤル(03-5801-0858、月〜土10時〜17時、祝日・年末年始を除く)を設けています。市の窓口に電話する前の予習として、こちらを使う手もあります。


湖西市の耐震補助は「木造住宅だけ」──では、マンションは?

ここからが、この記事で一番慎重に書かなければならない部分です。

湖西市は令和8年4月に「湖西市耐震改修促進計画(第4期・令和8年度〜令和12年度)」を改訂しました。この計画の第2章に、市の補助制度の一覧表(表2-1「補助制度の概要(令和8年4月現在)」)があります。

そこに載っているのは、次の3つだけです。

事業 対象建築物 補助率(国・県・市)
木造住宅 耐震改修事業(補強計画一体型) 昭和56年5月以前・耐震評点1.0未満を1.0以上に 1/2・1/4・1/4
木造住宅 除却事業 昭和56年5月以前・耐震評点1.0未満 1/2・1/4・1/4
木造住宅 移転事業 同上・高齢者等世帯に限る ―

(出典:湖西市耐震改修促進計画(令和8年4月))

すべて「木造住宅」です。 鉄筋コンクリート造の分譲マンションを対象にした耐震診断補助は、この表に載っていません。

一方で、同じ計画の実績表(表1-3)には、こういう行があります。

事業名 H13〜R2 R3 R4 R5 R6 合計
既存建築物耐震診断事業(建築物の耐震診断) 10 0 0 0 0 10

「既存建築物耐震診断事業」──これは木造住宅ではなく、木造住宅以外の建築物の耐震診断に対する補助事業の名称です。掛川市や袋井市の計画には、この事業が補助率3分の2(国1/3+県1/6+市1/6)で現行制度として載っていました。

湖西市の計画では、実績表には出てくるのに、令和8年4月現在の補助制度一覧表には出てこない。 そして直近4年間(令和3〜6年度)の実績は0件です。

ここで私が言えるのは、ここまでです。

  • 「湖西市にはマンションの耐震診断補助がない」と断定はできません。表に載っていないだけで、要綱としては生きている可能性があります。
  • 「使える」と断定することもできません。市が公表している令和8年4月現在の支援策一覧に載っていない以上、それは推測になります。

推測で埋めるくらいなら、電話1本かけたほうが早い。 建築住宅課 建築住宅係(053-576-4549)に、次の3点をそのまま読み上げてください。

  1. 「湖西市耐震改修促進計画の実績表にある既存建築物耐震診断事業は、令和8年度も申請を受け付けていますか」
  2. 「対象に分譲マンション(鉄筋コンクリート造の共同住宅)は含まれますか。含まれる場合、補助率と限度額を教えてください」
  3. 「申請者は管理組合でよいですか。それとも区分所有者個人になりますか」

そして最後に、この一言を添えてください。

「工事はこれからです。まだ何も契約していません。」

耐震関係の補助は、着手前の申請が原則です。工事が始まってから電話をすると、その時点で対象外が確定します。「これからです」と伝えるだけで、窓口の答えが変わります。


令和8年度から「TOUKAI-0」は「TOUKAI-0+」に変わりました

もうひとつ、2026年度ならではの話をひとつ。

静岡県が平成13年度から続けてきた木造住宅の耐震化プロジェクト「TOUKAI-0(東海ゼロ)」は、令和7年度をもって終了しました。令和8年度からは、新たに「TOUKAI-0+(プラス)」総合支援事業として継続されています。

(出典:湖西市耐震改修促進計画(令和8年4月))

25年続いた県の看板事業が名前を変えた年です。窓口では制度の呼び名が切り替わった直後で、市のパンフレット類も更新の途中かもしれません。古い年度の資料をお持ちの管理組合は、条件が変わっていないか一度確認する価値があります。

なお、この「+(プラス)」が何を指すのかは、湖西市の計画に基本方針として書かれています。

「地震による住宅・建築物の倒壊から、一人でも多くの市民の命を守り、助かった命をつなぐ」

「命を守る」に「命をつなぐ」が足された、というのが今回の改訂の骨格です。地震後の避難生活の基本は在宅避難である。だから、倒壊しないだけでなく、住み慣れた自宅で生活を継続できる程度に被害を抑える耐震性能が要る──国が令和7年7月に公表した「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」を受けた考え方です。

これはマンションの大規模修繕の話にも、そのままつながります。地震後に住み続けられるかどうかを分けるのは、躯体の強さだけではありません。給排水管が生きているか、エレベーターが復旧できるか、外壁のタイルが落ちて出入口が塞がっていないか。そのほとんどが、共用部の維持管理の話です。


非木造住宅の耐震化率96.9%|湖西市には、まだ252戸残っている

湖西市の住宅の耐震化状況を、計画の表1-2から整理します。

区分 昭和56年以降 昭和56年以前 住宅数 耐震性のある住宅 耐震化率
木造 10,720戸 3,860戸 14,580戸 12,732戸 87.3%
非木造 7,506戸 874戸 8,380戸 8,128戸 96.9%
合計 18,226戸 4,734戸 22,960戸 20,860戸 90.9%

(出典:湖西市耐震改修促進計画(令和8年4月)、令和5年住宅・土地統計調査)

この連載で、私は掛川市(非木造99.1%)と袋井市(同99.1%)について、「その市では耐震訴求はもう刺さらない」と正直に書きました。

湖西市は少し違います。 96.9%。8,380戸のうち、耐震性が確認できていない住戸が252戸残っている計算になります。昭和56年5月以前に建てられた非木造住宅874戸のうち、耐震性があるとされたのは622戸。差の252戸が、まだ課題として残っている。

冒頭の7棟のうち、昭和56年5月以前に竣工したマンションはありません(最も古い1棟が1986年=昭和61年築です)。ですから、湖西市の分譲マンション7棟は、いずれも新耐震基準で建てられていると読むのが自然です。

ここは、はっきり書きます。新耐震基準のマンションについて、「耐震性が不安だから工事しましょう」という言い方を、私はしません。 それは不安を煽る話であって、事実ではありません。

では、湖西市の計画は、新耐震のマンションについて何と言っているか。ここが本題です。


市の計画が書いている「経年劣化による耐震性能の低下」=大規模修繕そのもの

湖西市耐震改修促進計画の第4章(4)に、こう書かれています。

新築時は耐震性能が確保されていても、その後の適切なメンテナンスが行われていない建築物は、時間の経過とともに、ひび割れや変形、老朽化などに見舞われ、経年劣化による耐震性能の低下が懸念される。

そして、続けて熊本地震(震度7が2回発生し、1回目に耐えた建物が2回目で倒壊した例)、能登半島地震(群発地震でダメージが蓄積した可能性)に触れたうえで、現行耐震基準の建築物であっても、地震により被害を受けた建築物、経年劣化が進んだ建築物については注意喚起を行い、啓発に力を入れていく、と明記しています。

さらに、第4章(5)「屋内における安全性確保について」には、こうあります。

  • 特定天井の落下防止対策(定期報告制度で安全性の確保を指導)
  • 建築設備の安全対策:エレベーターの支持部材の耐震化、釣合いおもりの脱落対策、地震時の運行方法や閉じ込め時の対処方法の周知、所有者・管理者に対する定期検査に併せた改善の促進

(出典:湖西市耐震改修促進計画(令和8年4月))

読み替えます。

ひび割れ。外装材の劣化。エレベーターの支持部材。釣合いおもり。天井。

これは全部、マンションの共用部の話です。そして、大規模修繕工事とエレベーターの改修・定期検査で扱う対象そのものです。

つまり湖西市は、その計画のなかで「新耐震のマンションであっても、メンテナンスをしていない建物は耐震性能が落ちる」「設備の落下・脱落対策を進める」と明言している。ということは、管理組合が行う大規模修繕は、湖西市の防災施策の文脈にきちんと位置づけられる、ということです。

総会の議案書の書き出しに、そのまま使えます。文案を置いておきます。

【議案書 記載例】
本工事は、建物の美観を維持するためだけに行うものではありません。湖西市耐震改修促進計画(第4期・令和8年度〜令和12年度)は、新耐震基準で建てられた建築物であっても、適切なメンテナンスが行われない場合に「経年劣化による耐震性能の低下が懸念される」と明記しています。また同計画は、エレベーターの支持部材の耐震化や釣合いおもりの脱落対策を、建築設備の安全対策として掲げています。本工事はこれらに対応するものであり、本マンションの防災性能と資産価値を維持するために実施するものです。

「美観のため」と書かれた議案書と、上のように書かれた議案書とでは、総会での通り方が変わります。私が現場で何度も見てきたことです。


ブロック塀補助|湖西市は「フェンス」より「生け垣」を厚く支援している

湖西市のブロック塀補助は、この連載で見てきたどの自治体とも設計が違います。令和8年4月27日(月)から令和8年度分の受付が始まっています。

緊急輸送路沿道の場合

工事内容 補助率 上限額 基準額
ブロック塀等の撤去 3分の2 132,000円 13,000円/m
撤去+フェンス等を設置して改善 3分の1 80,000円 38,400円/m
撤去+生け垣・植え込みを設置して改善 3分の2 164,000円 38,400円/m

緊急輸送路沿道でない、その他沿道の場合

工事内容 補助率 上限額 基準額
ブロック塀等の撤去 2分の1 100,000円 13,000円/m

(出典:ブロック塀などの撤去・改善に対する補助金)

気づかれたでしょうか。同じ「改善」でも、フェンスは3分の1・上限8万円、生け垣は3分の2・上限16万4千円。倍以上の差があります。

これは湖西市の政策的な意思表示です。緑化を進めたい、という自治体としての方針が補助率に表れている。他市では見なかった設計です。

管理組合の実務としては、こう考えます。

  • 敷地の外周にブロック塀があり、大規模修繕に合わせて手を入れる予定があるなら、「フェンスに建て替える」を既定路線にせず、生け垣・植え込みという選択肢を一度検討する価値がある。
  • ただし生け垣には継続的な剪定費用が発生します。年2回の剪定を外注すれば、長期的にはフェンスより高くつく可能性もある。補助額の差(8万円 vs 16万4千円=差額8万4千円)と、10年20年の維持費を並べて比較してください。
  • 生け垣・植え込みで補助を受けるには市の整備基準があります(市が基準のPDFを公開しています)。植える樹種や高さの条件が定められているため、造園業者に基準を渡してから見積りを取ってください。

そして、撤去と改善の補助金は併用できます。撤去で最大132,000円、生け垣改善で最大164,000円、合わせて最大296,000円。ここは押さえておく価値があります。

補助対象経費は「実際の工事費(見積金額)」と「基準額×延長」を比較して少ない方です。延長別に試算しておきます(緊急輸送路沿道・撤去の場合、基準額13,000円/m)。

ブロック塀の延長 基準額×延長 3分の2の額 実際の補助額(上限132,000円)
10m 130,000円 約86,600円 約86,600円
15m 195,000円 130,000円 130,000円
20m 260,000円 約173,300円 132,000円(上限)
30m 390,000円 260,000円 132,000円(上限)

延長20mを超えると上限に張り付きます。 逆に言えば、15m前後までは延長に比例して補助が増える。まずはメジャーを持って敷地の外周を歩き、塀の延長を測ってください。15分で終わります。

なお、湖西市の実績を見ておくと、示唆的な数字が出てきます。

事業名 H13〜R2 R3 R4 R5 R6 合計
ブロック塀等撤去事業 225 11 12 9 5 262件
ブロック塀等撤去事業(緊急輸送路沿道) 3 4 0 1 0 8件

補助率が高い緊急輸送路沿道のほうが、25年間で8件しか使われていません。「自分の敷地の前の道が緊急輸送路かどうか」を知らないまま、条件の悪いほうで申請している方がいる可能性があります。

湖西市は緊急輸送路図(PDF)を公開しています。まずこの地図でご自身の敷地の前面道路を確認してください。 判断がつかなければ建築住宅課の窓口で確認できます。補助額が最大で6万円以上変わります。

そして最も重要な注意書きを、市のページから引きます。

いずれの補助金申請も、撤去・改善をする前に、申請が必要となります。

大規模修繕の工事が始まってから「ついでにブロック塀も」とやってしまうと、その瞬間に補助が消えます。工程表にマイルストーンとして立ててください。


マンション長寿命化促進税制|湖西市の都市計画税は0.2%です

ここは、総会で数字を間違えると信用を失う論点なので、丁寧に書きます。

マンション長寿命化促進税制は、一定の要件を満たす大規模修繕工事を行ったマンションについて、各区分所有者が翌年度に支払う固定資産税を減額する制度です。国の制度で、地方税法にもとづきます。期限は令和9年3月31日までに工事完了。残り約19か月です。

湖西市の税率を確認します。

税目 湖西市の税率
固定資産税 1.4%
都市計画税 0.2%

(出典:税額の計算|湖西市)

都市計画税0.2%。 これは、この連載で初めて出てきた数字です。都市計画税の制限税率は0.3%で、袋井市は0.3%、掛川市はそもそも市街化区域が定められていないという特殊な形でした。湖西市は0.2%──制限税率より低く設定しているわけです。

なぜこれが総会で効くのか。長寿命化促進税制で減額されるのは固定資産税だけで、都市計画税は減額されません。つまり──

「税金が3分の1になります」と説明すると、不正確です。減額されるのは固定資産税(1.4%分)だけで、都市計画税(0.2%分)はそのまま残ります。

理事長が総会でこの説明を間違えると、あとで納税通知書を見た区分所有者から「話が違う」と言われます。私はこの手の行き違いを、他所の現場で何度も見てきました。最初から正確に説明したほうが、結果的に理事会が楽になります。

確かめ方は簡単です。毎年5月頃に届く納税通知書の1枚目に、固定資産税と都市計画税がそれぞれいくらか書かれています。湖西市は年税額を4期に分けて納付します。

もうひとつ、湖西市の資料の並びについて実務的なメモを。

湖西市の税務課のページには、マンション長寿命化促進税制の専用ページがありません。 家屋に関する減額制度として並んでいるのは次の3つです。

長寿命化促進税制は、税務課ではなく建築住宅課の「マンション管理適正化推進計画」のページに書かれています。磐田市・袋井市と同じ「住宅ページ型」の配置です。

「税のページにないから、湖西市では使えない」は誤りです。 探す場所が違うだけ。制度は地方税法にもとづく全国共通のものです。ただし申告先は税務課 資産税係(053-576-1217)になります。建築住宅課(053-576-4549)と税務課(053-576-1217)の2本立て、と覚えておいてください。

減額を受けるための大枠の要件(国の制度)は次のとおりです。管理組合として押さえるべきは3点セットが一体で必要だという点です。

  1. 管理計画の認定を受けていること(または市から助言・指導を受けて長期修繕計画を適切に見直したこと)
  2. 築20年以上・総戸数10戸以上であること
  3. 過去に一定の長寿命化工事(外壁塗装等・床防水・屋根防水)を実施しており、今回の工事もそれに該当すること

減額の対象は1戸あたり床面積100平方メートルまでの部分、減額割合は6分の1〜2分の1の範囲で市町村の条例で定める割合(参酌基準は3分の1)、減額されるのは工事完了の翌年度分の1年間です。

そして期限。令和9年3月31日までに工事を完了していなければなりません。


固定資産税の3つの改修減額|管理組合は「周知役」に徹する

上の3つの減額制度(耐震・バリアフリー・省エネ)は、基本的に専有部分の改修が対象です。管理組合が共用部の工事で使うものではありません。

ただし、大規模修繕の説明会は、区分所有者が一堂に会する年に数少ない機会です。「共用部の話ではないが、皆さんの専有部で使える制度がある」と1ページ挟むだけで、理事会の信頼度が上がります。

説明会資料に入れる文案です。

【お知らせ】 湖西市には、住宅の耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修を行った場合に、翌年度の固定資産税が減額される制度があります。いずれも専有部分の改修が対象で、共用部の本工事とは別の制度です。適用の可否は個別の判断になりますので、湖西市税務課 資産税係(053-576-1217)へ直接お問い合わせください。

管理組合が税務判断をしてはいけません。 「あなたのお宅は対象です」と誰かが言った瞬間に、理事会が責任を負うことになります。周知役に徹してください。これは私が理事長さまに毎回お伝えしていることです。


家庭用脱炭素化補助は、共用部に使えるか

令和8年度の「湖西市家庭用脱炭素化促進設備等導入支援補助金」の内容を確認します。

対象機器 補助金額
家庭用蓄電池 10,000円/kWh・上限40,000円
太陽光発電システム 10,000円/kW・上限40,000円(蓄電池と同時申請なら15,000円/kW・上限60,000円)
V2H充放電設備 40,000円
電気自動車・PHV 50,000円
燃料電池自動車 150,000円
家庭用コージェネレーション(エネファーム) 60,000円

補助対象者は「市内に住民登録がある人」「市税の滞納がない人」「過去に同様の設備の補助金を受領していない人」。各補助金は年度に関係なく一世帯につき1回限り。受付は令和8年4月1日〜令和9年3月31日で、先着順です。

(出典:令和8年度湖西市家庭用脱炭素化促進設備等導入支援補助金)

対象者が「市内に住民登録がある人」で、単位が「一世帯につき」である以上、管理組合が共用部に蓄電池や太陽光を入れるための補助として使うことは、この要綱の書きぶりからは読み取れません。 専有部(各戸)向けの制度と理解するのが自然です。

したがって、共用部への蓄電池・太陽光の導入議案を、市の補助金ありきで組み立てないでください。 予算が付かない前提で採算を検討し、市の補助が出れば上振れ、という組み方が安全です。

なお、令和8年度の予算と執行状況が市のページに公開されています。

予算額 4,100,000円
交付決定額 1,090,000円
予算残額(令和8年7月31日現在) 3,010,000円

年度の3分の1が過ぎて、残額は約73%。先着順の制度としては、まだ十分に余裕があります。区分所有者の方に周知するなら、今が良いタイミングです。窓口は環境課 脱炭素推進係(053-576-4921、市役所1階)。電子申請にも対応しています。


湖西市の制度を「共用部の大規模修繕で使えるか」で仕分けた一覧

理事会の時間は限られています。「使えない制度を調べる時間」を節約するために、私のほうで仕分けておきます。

制度 共用部の大規模修繕で 窓口
マンション管理計画認定制度(手数料無料) ◎ 使える 建築住宅課 053-576-4549
マンション長寿命化促進税制(固定資産税減額) ◎ 使える(認定+工事要件) 建築住宅課/税務課 053-576-1217
ブロック塀等の撤去・改善補助(緊急輸送路沿道) ○ 使える可能性が高い 建築住宅課 053-576-4549
ブロック塀等の撤去補助(その他沿道) ○ 使える可能性が高い 建築住宅課 053-576-4549
既存建築物耐震診断事業(非木造) △ 要確認(令和8年度の一覧に記載なし) 建築住宅課 053-576-4549
木造住宅 耐震改修事業(TOUKAI-0+) × 木造住宅のみ 建築住宅課
木造住宅 除却・移転事業 × 木造住宅のみ 建築住宅課
耐震シェルター・防災ベッド整備補助 × 木造住宅の所有者・居住者 建築住宅課
家庭用脱炭素化促進設備等導入支援補助金 × 個人・一世帯単位 環境課 053-576-4921
住宅耐震改修に伴う固定資産税減額 × 専有部(周知はできる) 税務課 053-576-1217
住宅バリアフリー改修に伴う固定資産税減額 × 専有部(周知はできる) 税務課 053-576-1217
住宅省エネ改修に伴う固定資産税減額 × 専有部(周知はできる) 税務課 053-576-1217

◎2つ、○2つ、△1つ、×7つ。

正直に申し上げます。湖西市は、共用部の大規模修繕そのものに直接お金を出す補助金を持っていません。 それは掛川市も袋井市も同じでした。地方都市ではむしろこれが標準です。

だからこそ、確実に取れる◎2つ(認定制度と税制)を確実に取り、△の1つを電話で確かめ、×の7つには理事会の時間を1分も使わない。これが、限られた任期のなかで理事会ができる最も効率のいい動き方だと私は思っています。


南海トラフ巨大地震|湖西市の被害想定と、造成地について

湖西市の防災上の前提を、市の計画から引いておきます。想定は南海トラフ巨大地震のレベル2(震度6強〜7、マグニチュード9.0程度)、静岡県第4次地震被害想定にもとづくものです。

項目 湖西市の想定(最大ケース)
死者 約5,000人(うち建物倒壊による死者 約500人)
重傷者 約1,200人
建物棟数 24,570棟
全壊・焼失 約15,000棟(建物被害率 約57〜61%)
半壊 約7,000〜7,400棟

(出典:湖西市耐震改修促進計画(令和8年4月)、湖西市地域防災計画)

建物被害率が6割近い。これは津波被害を含む数字で、遠州灘と浜名湖に挟まれた湖西市の地理的条件を反映しています。死者約5,000人のうち、建物倒壊によるものが約500人──裏を返せば、約4,500人は津波等によるものという想定です。

この数字をどう扱うか。私は、大規模修繕の議案書に被害想定の数字を大きく載せることを勧めません。 恐怖で決議を通しても、後から不信感が残るだけです。

そのかわり、こう使ってください。「地震のとき、この建物で暮らし続けられるか」という観点で、修繕の優先順位を組み替える材料にする。屋上防水が切れていれば、地震で断水したときに雨水すら使えません。給排水管が更新されていなければ、躯体が無事でも在宅避難ができません。「命を守る」から「命をつなぐ」へ、という県と市の方針転換は、そのまま修繕の優先順位の話です。

もうひとつ、湖西市固有の安心材料も書いておきます。

湖西市は令和4年度に「大規模盛土造成地」の第二次スクリーニング計画(安全性把握調査の実施優先度評価)を作成しました。その結果は──

優先度評価の結果、早期に第二次スクリーニング(安全性把握調査)を実施すべき盛土は、ありませんでした。

(出典:宅地耐震化推進事業|湖西市)

袋井市では液状化と人工造成地の被害想定が明示されていましたが、湖西市では「早急に調査すべき盛土なし」と評価されています。これは、丘陵地に建つマンションの管理組合にとって、地盤について過度に心配しなくてよいという材料になります。ただし市は今後も経過観察を続けるとしています。擁壁がある敷地では、大規模修繕の劣化診断のときに擁壁のひび割れも一緒に見てもらってください。追加費用はほとんどかかりません。


仮設足場は工事費の15〜25%|最初に削れるのはここです

ここから先は、株式会社明誠のサービスの話を含みます。利益相反がありますので、先に明示しておきます。

大規模修繕工事の見積書を開くと、いちばん上のほうに「仮設工事一式」という行があります。金額は、工事費全体のおおむね15〜25%。私の経験上、ここが最も動く部分です。

工事費総額 仮設足場費の目安(15〜25%)
3,000万円 450万〜750万円
5,000万円 750万〜1,250万円
8,000万円 1,200万〜2,000万円

理事会でこんな場面を、私は何度も見てきました。植栽の剪定20万円については30分議論されるのに、750万円と書かれた「仮設工事一式」の1行は、そのまま可決される。

理事の皆さんが不真面目なのではありません。判断材料が渡されていないだけです。

見積書を受け取ったら、この1文を施工会社に伝えてください。

「仮設工事一式を、架面積の平米単価とリース期間に分解して出してください。」

これで、足場の総面積が何平方メートルで、1平方メートルあたりいくらで、何か月分のリース料が乗っているのかが見えます。ここが見えると、工期が1か月延びたときにいくら増えるのかも計算できるようになります。


湖西市のマンションに効く、ハイブリッド工法の3つの配分

大規模修繕の工法には、大きく3つあります。

  • 通常足場工法:外周に仮設足場を架ける従来型。低層や複雑形状の建物に向く。
  • ロープアクセス工法(無足場工法):産業用ロープで作業員が降下しながら施工する。足場費が不要で、工期が短く、居住者の生活への影響が小さい。
  • ハイブリッド工法:部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける。

弊社は、この3つすべてを自社で提案できる、日本でも数少ない会社です。詳しくはロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。ロープアクセス専門の情報はロープアクセスドットコムにまとめています。

湖西市のマンションに当てはめると、配分の考え方は3つに整理できます。

1つ目|駐車場を潰さない配分。 遠州地域は自動車保有率が高く、1世帯1台以上が前提です。全周に6か月足場を架けると、その間ずっと一部の駐車区画が使えません。近隣に代替駐車場を借りれば、それだけで数十万円から百万円単位の追加費用です。2面ずつ各1.5か月に分けるか、駐車場側だけロープアクセスにするか。この2択で、駐車区画の閉鎖期間はかなり短縮できます。

2つ目|低層は足場、高層はロープ。 湖西市の7棟のうち3棟が9階建て以上でした。高さが上がるほど足場の単価と架設日数は増えます。低層階のバルコニー廻りなど細かい作業が多い部分は足場、上層階の外壁面はロープアクセス、という分け方は、この階数構成に素直に効きます。

3つ目|前面道路が狭く4トン車が入らない立地。 これは営業トークではなく物流の話です。足場部材は4トン車で運びます。道路が狭くて入れなければ、小型車に積み替える手間賃が乗るか、そもそも部材が現場に届きません。足場を架けられない現場では、ロープアクセスは「安い選択肢」ではなく「唯一の選択肢」になります。

そのうえで、正直に申し上げます。

ロープアクセス工法は万能ではありません。 私が「今回は足場でいきましょう」とお伝えする現場は、普通にあります。足場が有利になるのは、次の4つの条件が重なるときです。

  1. 下地補修の数量が多いことが事前調査でわかっている(作業量が多いほど足場の効率が上がる)
  2. 建物の形状が複雑で、ロープの支点が確保しづらい
  3. 低層(3〜4階建て)で、足場の架設面積そのものが小さい
  4. サッシ交換や大がかりな設備更新を同時施工する

そして、これも正直に書きます。バルコニー内部の作業が必要な点は、工法にかかわらず同じです。 ロープアクセスにしても、居住者の立ち入りがゼロになるわけではありません。減るのは、外部足場が窓の前に架かっている期間です。防犯上の不安や、洗濯物を干せない期間が短くなる。ここが本当の価値です。


モデルケース|湖西市の規模感で試算すると

弊社が実際に扱った案件の傾向をもとにした試算です。個別の物件の見積りではありません。 建物の状態によって上下します。

ケースA|JR鷲津駅圏・築30年前後・5階建て・40戸

項目 通常足場工法 ハイブリッド工法
工事費 約6,000万円 約5,150万円
差額 ― ▲約850万円
1戸あたり 約150万円 約129万円(▲約21万円)
工期 約5.5か月 約4か月

ケースB|新居・浜名湖岸方面・築20年前後・9階建て・60戸

項目 通常足場工法 ロープアクセス主体
工事費 約8,600万円 約7,150万円
差額 ― ▲約1,450万円
1戸あたり 約143万円 約119万円(▲約24万円)
工期 約6.5か月 約4.5か月

注目していただきたいのは、1戸あたりの金額です。

40戸で6,000万円なら1戸150万円。同じ6,000万円でも150戸なら1戸40万円です。戸数が小さいマンションほど、1戸あたりの負担が重く、工法選定の効果が大きい。 湖西市の7棟は平均43戸、最小12戸でした。この連載で回ったどの市よりも、工法選定が効く規模です。

そしてもうひとつ、これは強調しておきます。

工法は、設計を発注する前でなければ、実質的に選べません。

設計事務所に「足場を架ける前提」で設計・積算を進めてもらったあとで「やっぱりロープで」と言っても、設計をやり直すことになります。工法の検討は、設計者を選ぶ段階と同時です。理事会のスケジュールでいうと、着工の15〜13か月前。


修繕積立金が足りないとき、打ち手は4つあります

私が最も多く相談を受けるのが、この話です。積立金が足りない。打ち手は4つしかありません。

1|工事範囲を絞る。 今回は屋上防水と外壁、次回にサッシ廻り、という分け方です。ただし注意点があります。段階施工にすると仮設費が回数分かかります。 足場を2回架ければ、足場代は2回分です。そして、長寿命化促進税制は「外壁塗装等・床防水・屋根防水」の3点セットが一体で必要なので、分けた瞬間に税制の要件を外します。

2|工法を変える。 上に書いたとおりです。設計発注前でなければ選べません。

3|一時金を徴収する。 1戸50万円といった形です。可決のハードルは高いですが、明快です。

4|借入れをする。 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資があります。管理計画の認定を受けていれば金利の引き下げを受けられます。ここで、冒頭の認定制度が効いてきます。

議案書を作るときのコツを1つ。「一時金50万円」と「月々3,000円の値上げ」を、両方載せてください。 片方だけを出すと「高い」で終わりますが、両方並べると「どちらが自分にとって楽か」という議論に変わります。決議の通り方が変わります。


見積書で確認したい5点|1つ目が最重要です

1|下地補修の仮定数量を超えた分の単価を、契約前に契約書へ明記する。

これが最重要です。大規模修繕の見積書には、たいてい「下地補修 タイル張替え ○○枚(仮定)」という項目が入っています。実際の数量は足場を架けて調べないと分かりません。

問題は、超過分の単価が契約書に書かれていないケースです。

工事が始まり、足場が架かった状態で「タイルが想定より500枚多かったので追加費用が」と言われたとき、管理組合が対等に交渉することはできません。工事を止められないからです。

契約書に、この1行を入れてください。

「下地補修工事において仮定数量を超過した場合の追加単価は、○○円/枚(○○円/平方メートル)とし、契約時の単価を工期中に変更しない。」

これを嫌がる会社は、そこで分かります。

2|仮設工事一式を、架面積の平米単価とリース期間に分解してもらう。(前述)

3|高圧洗浄の排水計画を確認する。 湖西市は浜名湖と遠州灘に挟まれ、市内に水路が多い地域です。洗浄水と塗料カスの処理をどうするかは、環境の話であると同時に、近隣の住民合意の話でもあります。

4|予備日を超過した場合の足場リース延長費用は、誰の負担になるか。 雨天が続いて工期が延びたとき、リース延長費用を管理組合が負担するのか施工会社が負担するのか。契約前に確認してください。

5|工事監理者が施工会社と資本関係にないか。 設計・監理と施工が同じグループだと、チェック機能が働きません。


湖西市の工事適期と、方位別の劣化要因

湖西市の気候条件に合わせて、工事適期を整理します。

時期 適性 理由
3〜5月 ○ 気温・湿度が安定。ただし年度替わりで業者が混み合う
6〜7月 △ 梅雨。予備日を7〜10日多めに
8〜9月 △ 猛暑と台風期。作業員の熱中症対策が工程に影響
10〜11月 ◎ 気温・湿度ともに塗装に最適。最有力
12〜2月 ○ 温暖で晴天率は高いが、遠州の空っ風で予備日3〜5日を追加

そして、湖西市固有の方位別の劣化要因です。同じ建物でも、面によって傷み方がまったく違います。

方位 湖西市での主な劣化要因 重点的に見る箇所
西〜北西面 遠州の空っ風による塗膜の摩耗、シーリングの早期硬化。メッシュシートの開放・復旧の人工が工程に乗る 塗膜の劣化、目地シーリング
南面(遠州灘側) 飛来塩分による鉄部の腐食 手すり、避難ハッチ、屋外階段、庇の鉄部
東面(浜名湖側) 朝日による温度変化でシーリングが伸縮疲労 開口部廻りの目地
北面 放射冷却による結露 → コケ・藻の発生 防藻・防カビ仕様の検討

湖西市は、西から遠州の空っ風、南から遠州灘の潮風、東から浜名湖の湿気を受ける、三方向から条件を突きつけられる立地です。「南面だけ鉄部の腐食が早い」「北面だけ緑色になっている」というのは、放置の結果ではなく、立地の必然です。

劣化診断を依頼するときは、方位別に報告書を分けてもらってください。 「外壁全体で○○%劣化」という報告書は、補修数量の根拠になりません。


国のモデル事業と、静岡県の支援メニュー

国のマンション長寿命化・再生モデル事業は、令和8年度の第3回募集が9月14日(月)〜18日(金)の予定です。事務局は03-6801-5902。

正直に書きます。この記事の公開から2週間で応募書類を揃えるのは、現実的ではありません。 管理組合の意思決定は総会を経ますから、2週間では動けない。

そのかわり、必要書類の一覧だけ印刷しておいてください。15分で終わります。 次回募集のときに、どの資料に何か月かかるのかが分かっているだけで、動きがまるで変わります。

静岡県の支援については、湖西市の計画にこう書かれています。

静岡県及び市町で構成する「静岡県マンション管理適正化推進協議会」において、マンション管理セミナーの開催やマンション管理士の派遣等を実施します。

(出典:湖西市マンション管理適正化推進計画)

マンション管理士の派遣制度は、専門家に無料または低額で相談できる仕組みです。申込期限や派遣期限は年度ごとに設定されますので、最新の日程は静岡県の担当課、または湖西市建築住宅課(053-576-4549)で確認してください。 湖西市の場合、県西部のセミナー会場は浜松になることが多く、JR東海道本線で30分程度です。

このとき、私からのお願いを1つ。理事長ひとりで行かないでください。 次期理事候補と2人で行ってください。理事は1年で交代します。ひとりで聞いた話は、その人の任期とともに消えます。


逆算カレンダーと、今週できること5つ

長寿命化促進税制の期限(令和9年3月31日 工事完了)から逆算すると、こうなります。

時期 やること
19〜16か月前 管理計画認定の準備開始・劣化診断の発注
15〜13か月前 工法をここまでに決める(設計発注と同時)
12か月前 定時総会で工事実施を決議
6か月前 施工会社の選定・契約
着工直前 改修前の写真撮影(高圧洗浄後は二度と撮れません)
着工〜完了 工事
完了後3か月以内 税の申告(税務課 053-576-1217)

律速になるのは工事ではありません。総会です。 総会は年1回。ここを外すと1年ずれます。

証明書まわりの落とし穴を3つ、書いておきます。

  1. 建築士との契約書に「大規模の修繕等証明書の発行」を明記する。 あとから頼むと追加費用になります。
  2. 着工前の写真は、高圧洗浄後には二度と撮れません。 理事会の議事録に「着工前写真の撮影担当者」を書いてください。3行で済みます。
  3. 前回工事の施工会社が廃業していることがあります。 前回の工事記録を先に探してください。

そして、今週できることを5つ。

  1. 建築住宅課(053-576-4549)に電話。 既存建築物耐震診断事業がマンションに使えるか、管理計画認定の受付状況を聞く。──今日中に
  2. 税務課 資産税係(053-576-1217)に電話。 長寿命化促進税制の申告手続きの確認。──今日中に
  3. 緊急輸送路図で、敷地の前面道路を確認。 ──5分
  4. 敷地外周のブロック塀の延長をメジャーで測る。 ──15分
  5. 前回の大規模修繕の書類一式を探す。 ──15分

合わせて1時間かかりません。電話2本が、この記事の結論です。


よくある質問

Q1|湖西市に、大規模修繕そのものへの補助金はありますか。
共用部の大規模修繕工事費に直接出る補助金は、令和8年9月時点で市のサイトから確認できません。使えるのは、管理計画認定制度(手数料無料)、マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)、ブロック塀の撤去・改善補助です。

Q2|築40年ですが、耐震診断の補助は使えますか。
湖西市耐震改修促進計画の令和8年4月現在の補助制度一覧には、木造住宅向けの制度しか記載されていません。非木造向けの「既存建築物耐震診断事業」は実績表には登場しますが、現行の一覧には出てきません。建築住宅課(053-576-4549)へ直接ご確認ください。

Q3|「税金が3分の1減る」と説明していいですか。
不正確になります。減額されるのは固定資産税(税率1.4%)のみで、都市計画税(湖西市は0.2%)は減額されません。この点は分けて説明してください。

Q4|管理計画の認定に、市の手数料はいくらかかりますか。
市に支払う認定申請手数料は無料です。ただし(公財)マンション管理センターのシステム利用料と事前確認審査料が別途かかります。

Q5|ブロック塀は、フェンスにするのと生け垣にするのと、どちらが得ですか。
補助額は生け垣のほうが有利です(3分の2・上限164,000円 対 3分の1・上限80,000円)。ただし生け垣には剪定費用が継続的にかかります。10年20年の維持費を含めて比較してください。

Q6|リゾートマンションで、総会の定足数が集まりません。
区分所有者が市外・県外に多い場合、委任状・議決権行使書の回収に通常の倍の期間を見てください。大規模修繕の議案は、半年ほど前倒しでスケジュールを組むことをお勧めします。

Q7|湖西市は遠いので、施工会社が限られませんか。
湖西市はJR東海道本線と国道1号(潮見バイパス)が通り、名古屋圏・浜松市街ともに日帰り圏です。「遠方だから割高」という前提は、湖西市にはあまり当てはまりません。相見積りは3社以上を推奨します。

Q8|工事の見積りを取るのは、いつがいいですか。
劣化診断の結果が出てからです。診断なしの見積りは、下地補修の数量が仮定だらけになり、比較の意味を持ちません。


まとめ

湖西市の分譲マンション管理組合が、2026年度に押さえるべき点をまとめます。

  • 湖西市内のマンションは7棟・303戸。市が1棟ずつ把握し、全棟の管理計画認定を目標に掲げている
  • 管理計画認定制度の市手数料は無料。市独自の上乗せ基準もなし。国の様式のまま準備できる
  • 認定はフラット35と共用部分リフォーム融資の金利引き下げにもつながる。税制と切り離しても価値がある
  • マンション長寿命化促進税制の期限は令和9年3月31日(工事完了ベース)。残り約19か月
  • 減額されるのは固定資産税1.4%分のみ。都市計画税0.2%は減額されない
  • 長寿命化促進税制の情報は税務課ではなく建築住宅課のページにある。窓口は建築住宅課と税務課の2本立て
  • 非木造の耐震診断補助は令和8年度の一覧に記載がない。断定せず、053-576-4549へ確認を
  • 湖西市の非木造耐震化率は96.9%。まだ252戸が課題として残っている
  • 市の計画は「経年劣化による耐震性能の低下」とエレベーター支持部材・釣合いおもりの対策を明記。大規模修繕は防災施策として議案書に書ける
  • ブロック塀は生け垣2/3・上限164,000円 対 フェンス1/3・上限80,000円。撤去との併用可。着手前申請が原則
  • 令和8年度から静岡県の耐震事業はTOUKAI-0+に切り替わった。古い資料は要確認
  • 大規模盛土造成地は「早期に調査すべき盛土なし」と評価済み
  • 仮設足場費は工事費の15〜25%。架面積の平米単価とリース期間に分解させる
  • 戸数が小さいほど1戸あたりの負担は重い。湖西市の平均43戸は、工法選定が最も効く規模
  • 工法は設計発注前でなければ選べない。着工の15〜13か月前が判断期限
  • 見積書の最重要チェックは下地補修の超過単価を契約書に明記すること

最後に。

湖西市は、浜名湖の西岸にあり、東は湖、南は遠州灘、西は愛知県境という土地です。県庁所在地からも浜松市街からも離れていて、行政の情報が大きく取り上げられることは多くありません。

けれど、私は今回、湖西市の資料を読んで感心しました。市内にマンションが7棟しかないのに、市はその7棟の竣工年と階数と戸数を1棟ずつ把握し、位置図まで添えて計画を公表している。認定の手数料を0円にして、独自基準も設けていない。「数が少ないから後回し」にしていないのです。

7棟の管理組合の皆さんは、そのことをもう少し知っていていいと思います。窓口に電話をかければ、担当の方は7棟のうちのどれかを頭に思い浮かべながら答えてくれるはずです。人口何十万人の都市では、そうはいきません。

制度がないのではなく、知られていないだけのものが、まだ残っています。

今日の結論は、電話2本です。建築住宅課(053-576-4549)と、税務課 資産税係(053-576-1217)。それだけで、来年の総会に出せる材料が1つ増えます。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。工法の話をする前に、まず建物を見せていただくところからです。


主なお問い合わせ先(湖西市)

用件 窓口 電話番号
管理計画認定制度・耐震・ブロック塀 湖西市 建築住宅課 建築住宅係 053-576-4549(FAX 053-576-1897)
固定資産税・長寿命化促進税制の申告 湖西市 税務課 資産税係 053-576-1217(FAX 053-576-1896)
家庭用脱炭素化補助 湖西市 環境課 脱炭素推進係 053-576-4921
市代表 湖西市役所(〒431-0492 湖西市吉美3268番地) 053-576-1111
管理計画認定制度の相談 (一社)日本マンション管理士会連合会 相談ダイヤル 03-5801-0858(月〜土10〜17時)
国のモデル事業 モデル事業事務局 03-6801-5902

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出典・参考資料

湖西市

国

関係団体


執筆者|本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役。大規模修繕の現場に20年近く携わり、通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3工法から建物に最適な方法を提案。日本初となるロープアクセス工事のフランチャイズ展開を行い、塗装・防水・タイル・電気・看板工事などの専門職が加盟することで、高品質と低価格を両立させています。

免責事項
本記事は2026年9月2日時点で公開されている情報にもとづいて作成しています。補助制度の内容・予算・受付期間は変更される場合があります。申請にあたっては、必ず各制度の担当窓口で最新の要綱をご確認ください。税務上の取り扱いについては、湖西市税務課または税理士にご相談ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の判断を保証するものではありません。

「開所1年半で、また足場」札幌・147億円の新庁舎でシート1500枚がめくれた件を、オーナーと管理組合はどう読むか|熱伸縮・契約不適合責任・そして工事費を決めている仮設の話【2026年9月】

2026年9月2日 更新

この記事で答える質問

  • 札幌市中央区の複合庁舎で何が起きたのか。事実関係はどこまで確認できているのか。
  • 「熱でシートがめくれた」とは、建築の現場では何が起きている現象なのか。
  • 費用を工事会社が負担することになったのは、どういう法的な仕組みによるのか。民間のマンションやビルでも同じことが起きるのか。
  • 築1年半の建物に足場が架かるという事態から、収益不動産オーナーと管理組合は何を学ぶべきなのか。
  • 修繕費のうち、実は何が一番効いているのか。それを下げる方法はあるのか。

1. 結論

2026年8月末、札幌市中央区の複合庁舎(中央区役所・中央保健センター・中央区民センターが入る施設)が、開所からわずか1年半で大がかりな改修工事に入ると報じられました。約147億円をかけて2025年2月に開所した建物です。

窓ガラスの内側に貼られた装飾用の木材シートが、774か所あるほぼすべての窓でめくれ上がり、その枚数は1500枚以上。原因は「熱」でした。

この話は、公共施設の失敗談として消費されがちです。しかし大規模修繕の現場から見ると、収益不動産のオーナーとマンション管理組合にとって、極めて実務的な教訓が3つ含まれています。

  1. 建物の不具合は「築年数」ではなく「納まりと材料の選定」で起きる。 築1年半でも起きるときは起きます。長期修繕計画を「築12年で1回目」といったカレンダーだけで運用していると、こういう事象を拾えません。
  2. 費用の話は、材料費ではなく仮設と工期で決まる。 今回、シートそのものの単価より、建物全体に足場を架け、ガラスを外し、約1年かけて直すという段取りのほうが、はるかに大きなコストを生んでいます。テラスは合計4か月閉鎖されます。
  3. 「誰が払うのか」は契約と時間で決まる。 今回は施工会社の負担と報じられていますが、これは契約不適合責任という制度が生きている時間帯だったからです。この時計は、黙っていると止まります。

そして3番目に付け加えるなら、修繕費を実質的に決めているのは、工事の中身よりも「どうやって外壁に人を近づけるか」という一点です。ここに選択肢を持っているかどうかで、総額は変わります。


2. 何が起きたのか──報道で確認できる事実

まず、事実関係を整理します。以下は複数の報道で共通して確認できる内容です。

項目 内容
施設 札幌市中央区複合庁舎(中央区役所・中央保健センター・中央区民センター)
開所 2025年2月
事業費 約147億円
不具合 窓ガラス内側に貼られた装飾用の木材シートのめくれ・剥離
規模 庁舎の774か所あるほぼ全ての窓、シート1500枚以上
原因 直射日光等により、施工会社の想定を上回る熱がガラス内側にこもり、シートが伸縮して剥離
対策 段階的に足場を設置し、ガラスを取り外して、木目調のアルミ製板に交換
期間 改修工事は2027年8月末まで、約1年かかる見込み
利用者への影響 4階テラスを2026年10〜11月、2027年6〜7月の合計4か月閉鎖
費用負担 工事を行った会社側がすべて負担(金額は未公表)

道産木材やレンガを用い、自然と調和した意匠を売りにした庁舎でした。その意匠の核だった木材シートが、開所1年半で全面的にやり直しになったことになります。

なお、報道各社で工期の見立てには幅があります。「6〜8か月かかる見通しで年内に着手」と報じたものもあれば、「2027年8月末まで約1年」と報じたものもあります。段階的な足場設置を含む全体工程と、実作業の期間の切り分けの違いと考えられます。本記事では、工程と閉鎖期間まで具体的に報じられている内容を基準にしています。

2-1. これは「特殊な失敗」ではない

読者の多くは、「うちのマンションやビルには、窓の内側に木材シートなんて貼っていない」と思われるかもしれません。そのとおりです。

しかし、この事象の本質は「材料が、その場所の熱環境に耐えられなかった」ということであって、材料がシートであるかどうかは本質ではありません。

同じ構図の不具合は、民間の建物で日常的に起きています。

  • 南面・西面の外壁塗膜だけが、他の面より数年早くチョーキング(白亜化)する
  • 屋上防水のシートが、押さえのない部分で膨れる・端部が浮く
  • アルミ笠木やシーリングが、日射を受ける面から先に切れる
  • 濃色系の塗装をした金属部分が、熱で反る・目地が開く
  • 外壁タイルが、日射と凍結融解の繰り返しで浮く

いずれも「日が当たる」「温度が動く」という、どの建物にもある条件が引き金です。今回の庁舎は、その現象がガラスの内側という熱がこもりやすい最悪の条件で、しかも建物のほぼ全面で同時に起きたために、極端な形で表面化しました。


3. 「熱伸縮」という、設計と見積で最も軽く扱われる変数

3-1. 何が起きているのか

物質は温度が上がれば伸び、下がれば縮みます。これ自体は当たり前の話ですが、建築の外皮では、この「当たり前」がかなり過酷な条件で起きます。

夏の晴天時、日射を受けた外壁表面の温度は、気温よりはるかに高くなります。ガラスの内側であればさらに条件は厳しく、いわゆる温室状態になります。冬の札幌なら、朝は氷点下です。同じ材料が、1年のうちに極めて大きな温度幅を往復するわけです。

材料と下地の伸縮率が違えば、その差は接着面に応力として溜まります。接着剤が耐えられる限界を超えたところから、端部が浮き、つなぎ目が開き、めくれます。今回、報道で「シートのつなぎ目が大きく離れている」と描写されているのは、まさにこの応力の逃げ場が継ぎ目だったということです。

3-2. 意匠を優先すると、なぜ修繕費が上がるのか

デザインを重視した仕様は、それ自体が悪いわけではありません。問題は、意匠材ほど「その場所の熱・水・紫外線の条件で、何年もつか」という検証が甘くなりやすいという点です。

しかも意匠材は、たいてい目立つ場所に使われます。目立つ場所は、劣化したときに真っ先に見つかり、真っ先に「みっともない」と言われる場所でもあります。つまり、放置できない。

収益不動産のオーナーにとって、これは資産価値の問題に直結します。エントランス廻りの意匠材、外壁のアクセントパネル、サイン廻りの化粧材──こうした部位が劣化すると、建物全体の印象が一段落ちます。内見時の第一印象が落ちれば、募集条件に跳ね返ります。

だからこそ、新築時・大規模修繕時の仕様決定の段階で、「この材料は、この面で、何年もつのか」を問うことが必要です。カタログの耐候性データは、多くの場合「標準的な条件下」の値です。西日が直撃する面や、ガラス越しに熱がこもる部位は、標準的な条件ではありません。


4. 「工事会社が全額負担」を成立させているもの──契約不適合責任

4-1. 時計は動いている

今回の改修費用は、施工した会社側がすべて負担すると報じられています。これは施工会社の善意ではなく、契約上の責任の話です。

民法では、引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合、注文者は履行の追完(修補)、代金の減額、損害賠償、契約の解除を請求できます。これがいわゆる契約不適合責任です。建設工事の請負契約では、この責任を負う期間が契約約款で定められています。

公共工事では、国土交通省が公表している公共建築工事標準仕様書等の官庁営繕関係基準と標準的な請負契約約款の体系のもとで、この責任関係が整理されています。今回のケースは、その枠組みが機能した事例と見ることができます。

4-2. 民間のマンション・ビルではどうなるか

分譲マンションの新築については、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)により、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について、10年間の瑕疵担保責任(契約不適合責任)が義務づけられています。

ただし、注意が必要なのは次の点です。

  • 10年の対象は「構造」と「雨水の浸入」に限られる。 意匠材の剥がれ、塗装の変色、タイルの浮きの一部などは、この10年保証の対象外になることがあります。
  • 大規模修繕工事のアフター保証は、契約で決まる。 法定ではありません。塗装3〜5年、シーリング5年、防水10年といった年数が一般的ですが、これは見積書と契約書に書いてあるかどうかがすべてです。
  • 期間内に「言う」ことが必要。 不具合を認識しながら通知しないまま期間が過ぎれば、請求できなくなります。

つまり、管理組合やオーナーの側に、点検と記録の体制がなければ、この制度は使えないということです。

実務的には、次の3点をおすすめしています。

  1. 大規模修繕の契約時に、部位ごとの保証年数一覧を書面で受け取る(口頭の「10年もちます」は保証ではありません)
  2. 保証年数の満了半年前に、必ず点検を入れる。管理会社任せにせず、日付を長期修繕計画に書き込む
  3. 不具合を見つけたら、写真・日付・部位をセットで記録し、書面で通知する

この3つを回しているだけで、後年の「言った・言わない」がほぼ消えます。


5. 本当に高いのは、シート代ではない

ここからが、大規模修繕の実務者として最も申し上げたい点です。

今回の改修で発生するコストの中身を、報道されている工程から分解してみます。

コスト要素 内容
仮設 建物全体に段階的に足場を設置・解体
撤去・復旧 窓ガラスを取り外し、旧シートを撤去し、ガラスを復旧
材料・施工 木目調アルミ製板の製作・取付
期間 約1年(段階施工)
機会損失 4階テラスの合計4か月閉鎖、庁舎の景観低下

材料そのものの単価が占める割合は、この中で決して大きくありません。

大規模修繕工事において、仮設足場が工事費全体に占める割合は、一般に2割前後になることが多く、建物の形状・高さ・敷地条件によってはさらに大きくなります。加えて、足場は「架けている期間」がそのまま工期であり、工期はそのまま近隣対応・警備・現場管理費・そして利用者への影響に変換されます。

つまり、建物に人を近づける方法が、工事費と生活影響の両方を決めているのです。

5-1. 収益不動産では、この「閉鎖」が直接キャッシュに効く

庁舎であればテラスの閉鎖は「市民の不便」で済みます。しかし収益不動産では、同じことが数字になります。

  • テナントビル:足場・養生シートによるファサードの視認性低下、看板の隠蔽、来客動線の制限
  • ホテル:客室からの眺望の消失、バルコニー使用不可、稼働率と客室単価への影響、口コミ評価の低下
  • 賃貸マンション:バルコニー使用制限、洗濯物、防犯不安、内見時の印象低下、更新時の交渉力低下
  • 商業施設:ファサード隠蔽による集客への影響

これらは見積書に書かれません。しかし、オーナーの手元に残る金額には確実に効いています。工事費の総額だけを比較する見積比較は、この部分を丸ごと無視しているということです。

5-2. 国も「仮設が効く」と明記している

これは現場感覚だけの話ではありません。国土交通省のマンションの修繕積立金に関するガイドライン(平成23年4月策定/令和6年6月改定)では、超高層マンション(一般に20階以上)について、外壁等の修繕のために特殊な足場が必要となること等から、修繕工事費が高くなる傾向にあると整理されています。

同ガイドラインでは、20階以上のマンションの修繕積立金の目安として338円/平方メートル・月という水準が示されています。仮に専有面積70平方メートルであれば、月額約2万3,660円という計算になります。

国が公式文書で「仮設のせいで高くなる」と書いているという事実は、管理組合の総会で工法を議論するときに、そのまま使える材料です。


6. 「築浅だから大丈夫」は、計画ではない

6-1. 長期修繕計画は30年以上が基本

国土交通省の長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント(平成20年6月策定/令和6年6月改定)では、長期修繕計画の計画期間を30年以上とし、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とすることが標準とされています。令和6年6月の改定では、修繕周期についても一律の年数ではなく幅を持たせた考え方が示されました(改定の概要は国土交通省の報道発表で確認できます)。

「幅を持たせる」という改定の意味は重要です。建物の劣化は、築年数だけで決まらないという前提に、国のガイドラインが寄ったということだからです。

海に近いか。日射条件はどうか。前回どんな材料でどんな下地処理をしたか。これらによって、次の修繕が必要な時期は前後します。札幌の庁舎は、その極端な例にすぎません。

6-2. 制度としての点検は、すでに存在している

一定規模以上の建築物には、建築基準法第12条に基づく定期報告制度があります。外壁のタイル・モルタル等の仕上げについては、定期報告制度における外壁のタイル等の調査として、打診等による調査が求められ、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分については、一定期間ごとに全面的な打診等による調査を行うこととされています。

近年は、打診と同等以上の精度を確保できる場合に、赤外線調査(無人航空機によるものを含む)を用いる方法についても、国土交通省のガイドラインが整備されています。

つまり、「調べる」ための手段は、法制度の側でも広がっているということです。にもかかわらず、多くの建物で調査が形骸化しているのは、「調べるためにわざわざ足場を架けるのは高い」という壁があるからです。

ここは、後述する工法の選択で解ける問題です。


7. オーナーの85.4%が不安、最大の懸念は「修繕費と維持管理コスト」

2026年8月、株式会社中央プロパティーが全国の40代以上の不動産オーナー137名を対象に実施した調査結果が公表されました。所有不動産の資産価値見直しと組み換えに関する実態調査です。

主な結果は次のとおりです。

項目 数値
将来への不安または現状への不満を抱えている 85.4%
「収益を生んでおらず、税金等の持ち出しになっている」 34.3%
今後の運用における懸念のトップ「建物の修繕費や維持管理コストの増大」 43.1%
資産組み換えに踏み切れない理由「新たな借入をしてまでリスクを背負いたくない」 30.6%

(出典:株式会社中央プロパティー「インフレ・市況変化に伴う、所有不動産の『資産価値見直し』と『組み換え』に関する実態調査」2026年8月、n=137)

サンプル数137という規模ですので、この数字を過度に一般化することは避けるべきです。しかし、懸念のトップが「修繕費・維持管理コストの増大」であり、同時に「新たな借入は避けたい」が組み換えの最大の障壁になっているという構図は、現場での相談内容と一致します。

つまり、多くのオーナーが置かれている状況は、こうです。

建物は直さなければいけない。しかし、これ以上の借入はしたくない。売却も簡単ではない。

この条件下でできることは、実はそれほど多くありません。「工事の必要性を減らす」(=点検と予防保全の精度を上げる)か、「同じ工事を安くやる」(=工法を選ぶ)かの二つです。

札幌の庁舎の件は、前者を怠ると後者の負担がどれだけ重くなるかを、非常に分かりやすい形で示した事例だと言えます。


8. 「同じ工事を安くやる」ための、たった一つの大きな変数

8-1. 仮設足場を前提にしない、という選択肢

株式会社明誠では、大規模修繕工事において次の3つの工法を扱っています。

工法 概要 向いている条件
通常足場工法 従来型の仮設足場を架設して施工 中低層、施工範囲が全面的、形状が複雑
ロープアクセス工法(無足場工法) 産業用ロープで作業員が外壁に直接アクセスして施工 高層、足場架設が困難、部分補修、居住者・利用者への影響を抑えたい
ハイブリッド工法 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける 大規模・複雑な建物で総合的なコスト最適化が必要

ロープアクセス工法の本質は、「安い工法」ではありません。足場という巨大な固定費を、必要な部位だけに限定できるという点にあります。

  • 足場の架設・解体そのものが不要(または最小限)になる
  • 工期が短縮される(架設・解体の期間がゼロに近づく)
  • 足場・養生シートによる採光と眺望の阻害がない
  • 足場を伝った侵入という防犯上の懸念が生じない
  • 部分補修に、その日のうちに着手できる

札幌の庁舎のように「特定の部位(窓廻り)だけを、建物のほぼ全面にわたって直す」という工事は、本来、工法選択の効果が最も大きく出るタイプの工事です。もちろん今回はガラスの取り外しを伴うため、足場が必要な判断だったと考えられますが、「足場か、そうでないか」を検討する余地があったかどうかは、民間建物でも常に問うべき論点です。

8-2. 「安いから無足場」ではありません

誤解のないよう申し上げますが、ロープアクセス工法がすべての建物・すべての工事で最適なわけではありません。

  • 外壁の全面改修で、施工面積が非常に大きい場合は、足場のほうが総合的に有利になることがあります
  • サッシ交換や躯体補修など、資機材の揚重が必要な工事には足場が必要です
  • 建物の形状によっては、支点が取れず適用できない部位があります

だからこそ、3つの工法をすべて自社で扱えることに意味があると考えています。足場工事会社は足場を、無足場業者はロープアクセスを勧めます。それぞれの立場では自然なことですが、建物にとって最適とは限りません。

明誠は、日本で初めてとなるロープアクセス工事のフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟しています。工法と職種の両方に選択肢を持っているため、「この建物のこの部位には、この工法」という組み合わせを、利害から切り離して提案できます。

工法別の詳しい比較や施工事例は、ロープアクセス工法の専門サイトにまとめています。

8-3. まず「調べる」から始める

最も費用対効果が高いのは、実は工事ではなく調査です。

ロープアクセスであれば、足場を架けずに、外壁の任意の位置に人が到達して、目視と打診で確認できます。ドローンによる赤外線調査と組み合わせれば、面的なスクリーニングと点的な精査を役割分担させることもできます。

これにより、次のような判断が可能になります。

  • 本当に全面をやる必要があるのか、部分補修で足りるのか
  • 次の大規模修繕を、計画どおりの時期にやるべきか、前倒し・後ろ倒しすべきか
  • 前回工事の保証期間内に対応すべき不具合が残っていないか

調査の精度が上がると、長期修繕計画の精度が上がり、修繕積立金の設定根拠が変わります。 これは、値上げの説明にも、値上げを回避する説明にも使えます。


9. オーナー・管理組合の実務チェックリスト

今日から確認できる項目を並べます。

契約と保証

  • [ ] 前回の大規模修繕工事の契約書に、部位ごとの保証年数一覧が添付されているか
  • [ ] その保証年数の満了日を、カレンダーまたは長期修繕計画に書き込んでいるか
  • [ ] 満了半年前の点検が、誰の担当として決まっているか
  • [ ] 新築後10年未満の建物の場合、品確法の10年保証の対象部位を把握しているか

建物の状態

  • [ ] 南面・西面の外壁・シーリング・意匠材の状態を、他の面と比較して見たことがあるか
  • [ ] 建築基準法第12条の定期報告を提出している建物か。直近の報告内容を読んだか
  • [ ] 外壁の打診調査を、最後にいつ、どの範囲で実施したか記録があるか
  • [ ] 「見た目が悪い」で放置している部位のリストがあるか

計画とお金

  • [ ] 長期修繕計画の計画期間は30年以上あるか。最終見直しはいつか
  • [ ] 修繕積立金の水準を、国のガイドラインの目安と比較したことがあるか
  • [ ] 次回工事の想定額に、仮設足場費が全体の何割として計上されているか把握しているか

工法

  • [ ] 前回の見積は、足場前提の1パターンだけだったか
  • [ ] 部分補修で対応できる部位と、全面改修が必要な部位を切り分けたことがあるか
  • [ ] 工事期間中のバルコニー使用制限・眺望阻害・稼働率への影響を、金額に換算したことがあるか

チェックが3つ以上つかなかった項目があれば、そこが次の一手です。


10. よくある質問

Q1. 築1年半で不具合が出た場合、必ず施工会社の負担になるのですか。

必ずではありません。契約不適合責任の対象となるかどうかは、その不具合が「契約の内容に適合しないもの」と評価できるかによります。設計上の指示に従って施工した結果である場合や、注文者の指定した材料に起因する場合など、責任の所在が単純でないケースもあります。重要なのは、不具合を発見した時点で速やかに書面で通知し、記録を残すことです。

Q2. うちのマンションは築15年ですが、意匠材のチェックはどうすればいいですか。

まず、南面と西面を優先して確認してください。日射条件が最も厳しい面から症状が出ます。次に、金属と樹脂・シートなど、異なる材料が接している部分を見てください。伸縮率の違いが最も出やすいのが、この接合部です。目視で判断がつかない場合は、部分的な打診調査から始めることをおすすめします。

Q3. ロープアクセス工法は、足場と比べて品質が落ちませんか。

作業員が外壁面に直接近づいて施工するという点では、足場と同じです。むしろ、足場の場合は建地・布・ブラケットが邪魔になる位置が生じますが、ロープアクセスでは支点を変えることで死角を減らせます。一方で、大量の資機材を持ち込む工事や、揚重が必要な工事には向きません。品質の問題ではなく、工事の種類との相性の問題とご理解ください。

Q4. 修繕積立金が国のガイドラインの目安より低い場合、すぐに値上げすべきですか。

即断は避けたほうがよいと考えます。ガイドラインの数値は目安であり、実際に必要な額は建物の仕様・形状・立地・前回工事の内容によって変わります。まず現状の建物の状態を調査し、次回工事の実額の見通しを立てること。その上で、必要額から逆算するのが順序です。値上げの提案は、根拠となる調査結果があるかどうかで、総会での通り方がまったく変わります。

Q5. テナントビルやホテルのオーナーですが、分譲マンション向けの話とどう違いますか。

構造はほぼ同じですが、工事の影響がそのまま収益に直結する点が決定的に違います。ホテルであれば、足場と養生シートによる眺望の消失は客室単価と口コミに影響します。テナントビルであれば、ファサードの隠蔽は入居企業の来客対応に影響します。この「営業への影響」を金額に換算すると、工法選択の損益分岐点は、分譲マンションの場合とは別の場所に来ます。

Q6. 相談だけでもできますか。

可能です。図面と過去の修繕履歴をお持ちいただければ、現状の把握と工法の方向性についてお話しできます。他社で取得済みのお見積りの内容確認だけでも構いません。特に「仮設費が総額のどれくらいを占めているか」は、その場で確認できます。


11. まとめ

札幌市中央区の複合庁舎で起きたことを、もう一度整理します。

  • 約147億円をかけた建物が、開所1年半で、774か所ほぼ全ての窓・1500枚以上のシートの張り替えを迫られた
  • 原因は、施工会社の想定を上回る熱によるシートの伸縮
  • 対策は、建物全体への段階的な足場設置とガラス取り外しを伴う、約1年の工事
  • 費用は工事会社が負担するが、テラスは合計4か月閉鎖され、利用者への影響は避けられない

ここから読み取るべきことは、「公共工事はずさんだ」ではありません。

建物の不具合は築年数と無関係に起こりうること。そして、それを直すコストの大部分は、材料ではなく「外壁に人を近づける方法」が決めているということ。 この2点です。

不動産オーナーの85.4%が将来に不安を抱え、その最大の懸念が修繕費と維持管理コストの増大である、という調査結果があります。借入を増やさずに建物を維持していくには、工事を減らすか、同じ工事を安くやるしかありません。

そのどちらにも、「足場を架けずに調べられる」「部位ごとに工法を選べる」という選択肢が効いてきます。

株式会社明誠は、通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3つを自社で扱い、建物ごとに最適な組み合わせをご提案しています。工法比較と施工事例はこちらをご覧ください。

まずは、お手元の長期修繕計画と、前回工事の保証年数一覧を開いてみてください。話はそこから始まります。


参考・一次情報


執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役

マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事を専門とし、通常の足場仮設工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・両者を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物ごとに最適な工法をご提案しています。ロープアクセス工事としては日本で初めてとなるフランチャイズ展開を行い、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟することで、高品質かつ適正価格の施工体制を構築しています。

また、一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)を運営し、全国の建設業者に向けた経営支援情報の発信、オンラインセミナー、交流会、ビジネスマッチングを行っています。

株式会社明誠
TEL:042-508-3567
Mail:info@meiseitosou.com

最終更新日:2026年9月2日

袋井市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

袋井市の分譲マンションで大規模修繕を控えている管理組合の理事長・理事の方から、いちばん多くいただく質問はこれです。

「袋井市に、マンションの大規模修繕で使える補助金はありますか?」

先に結論を申し上げます。袋井市には、分譲マンションの外壁塗装や防水工事そのものに直接出る市の補助金は、公開されている情報の範囲では見当たりません。 ただし、これで話が終わるわけではありません。袋井市には、市に支払う手数料が0円で使えるマンション管理計画認定制度があり、7年間ほとんど誰も使っていない耐震診断の補助制度があり、1敷地あたり33万3,000円まで出るブロック塀の補助があります。そして、補助金よりもはるかに大きな金額が動く「仮設足場費」という論点があります。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事を、通常の足場を架ける工法と、足場を架けないロープアクセス工法、その両方を組み合わせたハイブリッド工法の3つから選んでご提案しています。この記事では、袋井市の管理組合が2026年度に実際に使える制度を、市の一次情報だけを根拠に整理します。最終更新:2026年9月1日


この記事の結論(先にお伝えします)

論点 袋井市の結論
外壁塗装・防水への市の直接補助 公開情報では見当たらない
マンション管理計画認定制度 袋井市が認定権者。市に支払う手数料等は0円(袋井市)
木造住宅以外の建築物の耐震診断補助 制度は計画書に存在。ただし令和元年度以降の実績は0件(袋井市耐震改修促進計画)
ブロック塀の撤去・改善 最大33万3,000円/1敷地(袋井市)
マンション長寿命化促進税制 令和9年3月31日までの工事完了が期限。残り約19か月
いちばん金額が動く論点 仮設足場費。工事費の15〜25%を占める

管理組合の理事長にとって、この記事でいちばん持ち帰っていただきたいのは最後の行です。3,000万円の工事なら450万〜750万円、5,000万円なら750万〜1,250万円が仮設足場に使われています。補助金を探すことと同じくらい、この1行を見直すことに時間を使う価値があります。


袋井市はどんなまちか(制度を読む前提として)

袋井市は静岡県西部、遠州地域の中央に位置する市です。令和8年8月1日現在の人口は87,007人、世帯数は37,798世帯(袋井市 最新の人口・世帯数)。平成17年に旧袋井市と旧浅羽町が合併して現在の市域になりました。

東海道五十三次の27番目の宿場である袋井宿が、江戸から数えても京から数えてもちょうど真ん中にあたることから、「東海道どまん中」を名乗っています。JR東海道本線の袋井駅、東名高速道路の袋井インターチェンジがあり、浜松市と磐田市、掛川市に隣接しています。法多山尊永寺・可睡斎・油山寺の遠州三山、クラウンメロンの温室、南部の遠州灘といった要素が、この市の地理を形づくっています。

この地理は、制度の読み方に3つ効いてきます。

  1. 市域の南部(国道150号より南側)は津波避難困難地域に指定されており、ブロック塀の補助率が上がる区域と重なります
  2. 市内全域が都市計画区域であり、都市計画税の課税区域が広い(後述しますが、これは税制の説明で効いてきます)
  3. 浜松市・磐田市・掛川市が隣接しており、相見積りを取るときに「遠方だから割高」という前提が当てはまりにくい

【本題1】袋井市のマンション管理計画認定制度は、市に払う手数料が0円

まずいちばん大きな話からです。

袋井市は、マンションの管理の適正化の推進に関する法律の改正を受けて「袋井市マンション管理適正化推進計画」を策定し、管理計画認定制度を創設しています。計画期間は令和6年度から令和15年度までの10年間です(袋井市 マンション管理適正化推進計画について)。

ここで大事なのは、袋井市が認定権者であるという点と、市のページに次のように書かれている点です。

管理計画認定手続支援サービスの利用には、別途(公財)マンション管理センターにシステム利用料及び事前確認審査料の支払いが必要です。市に支払う手数料等はありません。

静岡県内の自治体で比べると、この意味がわかります

私はこの連載で静岡県内の自治体を順番に取り上げてきました。並べるとこうなります。

自治体 認定権者 市町に支払う手数料
浜松市 浜松市(政令指定都市) 0円(令和9年3月31日まで)
磐田市 磐田市 0円
袋井市 袋井市 0円
掛川市 公開情報から確認できず 確認できず
長泉町・清水町・函南町 静岡県 県に4,000円または28,100円

静岡県のページは見出しからして「マンション管理計画認定制度(対象:県内の町域)」となっており、県が扱うのは町域のみです。つまり市域は各市が自前で対応しています。そのなかで袋井市は、一般市でありながら自前の推進計画を持ち、しかも手数料を取らないと決めているわけです。

制度を作るだけならどの自治体でもできます。手数料を取らないと決めるのは、そこに人手と予算を割く判断をしたということです。

さらに、袋井市は「独自の基準を設けていない」と明記しています

市のページには、認定基準についてこう書かれています。

国のマンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針及び静岡県マンション管理適正化指針と同様の内容で定めています。※袋井市独自の基準は設けていません。

これは管理組合にとって、地味ですが効く一文です。自治体によっては上乗せ基準を設けることがあり、その場合は国の様式どおりに準備しても足りないことがあります。袋井市は「上乗せはしません」と先に宣言しているので、国土交通省が公開している認定基準と記入例をそのまま準備すればよいということになります。

認定を取ると何が変わるか(市のページが挙げている4つ)

袋井市のページは、認定のメリットを次の4つで説明しています。

  1. 適正に管理されているマンションとして、売買時に市場で評価される
  2. 住宅金融支援機構の「フラット35」および「マンション共用部分リフォーム融資」の金利引下げが適用される
  3. 住宅金融支援機構の「マンションすまい・る債」の利率上乗せが適用される
  4. 「マンション長寿命化促進税制」が適用され、翌年度に課される建物部分の固定資産税が減額される

理事会でこの4つを説明するとき、私は2番目と3番目を先に出すことをおすすめしています。税制の減額は工事とセットで期限があり、条件も細かい。一方で金利の引下げと利率の上乗せは、工事の時期にかかわらず効くからです。修繕積立金を借入れでまかなう可能性がある組合ほど、認定の価値は税制と切り離しても残ります。

費用は「20,000円前後」で申請までたどり着ける

市に払う手数料が0円だとすると、実際にかかるのは何か。整理するとこうなります。

費目 支払先 目安
市の審査手数料 袋井市 0円
システム利用料 (公財)マンション管理センター 10,000円(税込)
事前確認審査料 (公財)マンション管理センター 長期修繕計画1計画あたり10,000円(税込)のパターン

つまり合計20,000円前後で申請までたどり着ける計算になります。ただし金額は改定されることがあるので、(公財)マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスで最新をご確認ください。

もうひとつ実務上の注意です。申請できるのは本人か、行政書士に限られる代理人のみです。管理会社に丸投げできる手続きではありません。 理事会で「管理会社さんにお願いしておいて」と決めても進まないので、誰が手を動かすかを議事録に残しておいてください。

窓口はここです

  • 袋井市 建築住宅課 住宅土地対策係 電話 0538-44-3123(市役所3階)
  • マンション管理計画認定制度 相談ダイヤル(一般社団法人 日本マンション管理士会連合会) 03-5801-0858(月〜金・祝日年末年始を除く・午前10時〜午後5時)

【本題2】制度はあるのに、7年間ほとんど誰も使っていない耐震診断の補助

ここからが、袋井市を調べていていちばん驚いた話です。

袋井市のホームページの「各種補助制度」(建築住宅課 施設営繕係)に並んでいるのは、次の4つだけです。

  1. ブロック塀の安全点検・撤去一部補助について
  2. 住まいの地震対策等(木造住宅が対象)
  3. 住宅の瓦屋根の耐風診断と耐風改修に関する補助制度
  4. 木造住宅の除却(取壊し)・建替えに関する補助制度

しかも「住まいの地震対策等」のページには、はっきりこう書かれています。

※昭和56年6月以降に建築された住宅や、鉄骨造、鉄筋コンクリート造などの住宅、過去に市の補助を受けて耐震診断や耐震補強を行った住宅は対象外です。

RC造の分譲マンションは、このページの制度からは外れます。ここだけ見ると「袋井市にはマンション向けの耐震補助はない」と結論しそうになります。

ところが、耐震改修促進計画の中には制度が載っています

袋井市耐震改修促進計画(令和8年4月改訂)の表3-1「プロジェクト『TOUKAI-0+』総合支援事業による補助事業の概要(令和8年4月1日現在)」には、こう書かれています。

事業名 対象建築物 国 県 市
建築物等耐震診断事業(耐震診断に対する補助) 昭和56年5月以前の木造住宅以外の建物 1/3 1/6 1/6
建築物等耐震診断事業(公会堂の耐震診断) 自治会公会堂 1/3 1/6 1/2

「木造住宅以外の建物」。分譲マンションはこれに含まれると読むのが自然です。国・県・市を合わせた補助率は3分の2になります。

つまり袋井市には、旧耐震の分譲マンションが耐震診断を受けるときの補助制度が、制度としては存在している。ただしホームページの補助制度一覧には専用ページがない、ということです。

実績は「令和元年度から令和7年度まで0件」

同じ計画書の表2-4「プロジェクト『TOUKAI-0』総合支援事業の実績(袋井市)」には、事業ごとの件数が並んでいます。建築物等耐震診断事業(建築物の耐震診断)の行を抜き出すとこうです。

区分 ~H28 H29 H30 R1 R2 R3 R4 R5 R6 R7 合計
建築物等耐震診断事業(建築物の耐震診断) 10 0 1 0 0 0 0 0 0 0 11

平成30年度の1件を最後に、令和元年度から令和7年度まで7年連続で0件です。制度が始まってからの累計でも11件しかありません。

これをどう読むか。私は3つの意味があると考えています。

1. 「先着順で夏に終わってしまう」心配がほぼない

袋井市の補助制度のページには、どれにも「予算の範囲内で補助金交付を行うため、年度途中で補助金交付申請の受付を終了する場合があります」と書かれています。これは自治体として当然の注記です。ただ、7年間0件の制度で、年度途中に枠が埋まる可能性は現実的に低いと考えられます。急かされずに検討できる制度だということです。

2. 窓口が丁寧に対応してくれる可能性が高い

年間何十件も来る制度は、窓口も定型的な対応にならざるを得ません。ほとんど問い合わせがない制度は、逆に一件ずつ丁寧に見てもらえます。これは実務上、かなり大きな違いです。

3. ただし、前例が少ないぶん、確認が要る

原文には「木造住宅以外の建物」としか書かれておらず、「共同住宅」「マンション」「管理組合」という言葉は一度も出てきません。補助限度額の記載も、この計画書の表からは読み取れません。推測で埋めるわけにいきません。

窓口にそのまま読み上げていただける質問文

理事長が電話一本で確認できるように、質問文を書いておきます。宛先は袋井市 建築住宅課 施設営繕係 電話 0538-44-3120です。

「袋井市耐震改修促進計画の表3-1にある『建築物等耐震診断事業』について3点うかがいたいのですが、
①昭和56年5月以前に建てられた分譲マンション(鉄筋コンクリート造の共同住宅)は、『木造住宅以外の建物』に含まれますか。
②含まれる場合、補助額の算定方法と限度額を教えてください。
③申請者は管理組合になりますか、それとも区分所有者個人になりますか。
なお、工事はこれからです。 これから検討する段階でうかがっています。」

最後の一文を付けてください。理由は3つあります。補助制度のほとんどが「着手前の申請」を条件にしているため、着工済みだと相談自体が意味を失うこと。窓口が回答の前提を組み立てやすくなること。そして、工事前に相談してくる管理組合は、行政の側から見ても歓迎される相手だからです。


【本題3】袋井市の非木造住宅の耐震化率は99.1%。だから訴求軸を変える

もうひとつ、耐震改修促進計画から重要な数字を拾っておきます。

令和5年の住宅・土地統計調査による袋井市の住宅の耐震化の状況です。

区分 S56年以降の住宅 S55年以前の住宅 住宅数 耐震性有 耐震化率
木造 17,771 4,109 21,880 21,116 96.5%
非木造 11,276 704 11,980 11,879 99.1%
合計 29,047 4,813 33,860 32,995 97.4%

非木造住宅は11,980戸のうち11,879戸に耐震性があり、耐震化率は99.1%。昭和55年以前の非木造住宅は704戸しかなく、そのうち137戸はすでに耐震工事済みです。

正直に申し上げます。袋井市の分譲マンションで、「耐震性が心配だから工事を」という訴えは、多くの組合には刺さりません。 数字がそう言っています。旧耐震のマンションにお住まいなら話は別ですが、母数として少数派です。

では、袋井市の計画は何を課題としているか

同じ計画書の「(4)地震時の総合的な安全対策」には、こう書かれています。

過去の震災における被害の状況から、津波対策、液状化対策、ブロック塀等の安全対策、窓ガラスの飛散防止対策、照明器具の落下防止対策、エレベーターの閉じ込め防止対策及び大規模空間を持つ建築物の天井の落下防止対策の必要性が改めて指摘されている。

窓ガラス。照明器具。エレベーター。これは全部、マンションの共用部の話です。

さらに「(6)非構造部材等の落下防止対策」という独立した節があります。ただし正直に書いておくと、袋井市のこの節は瓦屋根の耐風改修に絞られており、外装材の落下防止までは触れていません。掛川市の計画のように「外装材」まで明記しているわけではないのです。ここは事実として書いておきます。

それでも、(4)に列挙された3項目が共用部そのものであるという事実は動きません。総会議案書の書き出しに使えます。

「本大規模修繕工事は、外観の美観維持のためだけに行うものではありません。袋井市耐震改修促進計画が地震時の総合的な安全対策として挙げる窓ガラスの飛散防止、照明器具の落下防止、エレベーターの安全対策は、いずれも本マンションの共用部に該当し、劣化した状態を放置することは居住者および通行者の安全に直結します。」

「きれいにするために1億円」ではなく「安全のために1億円」。同じ工事でも、議案書の1行目が変わると総会の空気が変わります。これは私が現場で何度も見てきたことです。

袋井市で想定されている地震の規模

議案書に説得力を持たせるための数字も置いておきます。静岡県第4次地震被害想定における袋井市の被害想定(レベル2=南海トラフ巨大地震・東側ケース)です。

項目 想定
震度分布 震度6強(13.9%)・震度7(86.1%)
マグニチュード 9.0程度
建物被害(全壊・焼失) 約15,000棟
建物被害(半壊) 約9,600棟
人的被害(死者) 約600人

全壊・焼失約15,000棟の内訳は、揺れ約12,000棟、人工造成地約1,900棟、火災約800棟、液状化約40棟です。市は「袋井市液状化危険度マップ」を作成して市民に配布しています。造成地に建つマンションの管理組合は、劣化診断の際に基礎まわりと敷地の擁壁も一緒に見てもらう価値があります。


【本題4】ブロック塀は最大33万3,000円。ただし教育委員会にも行く必要がある

袋井市の制度のなかで、管理組合が「共用部の工事で実際に使える」可能性がいちばん高いのが、ブロック塀の補助です(袋井市 ブロック塀の安全点検・撤去一部補助について)。

補助額は2系統・3パターン

事業 対象地域 基準額 補助率 限度額
撤去事業 市内全域の危険なブロック塀等 長さ×8,900円 1/2以内 1敷地20万円
撤去事業 改善事業の対象となる地域 長さ×8,900円 2/3以内 1敷地26万6,000円
改善事業(建替え) 緊急輸送路沿い等・津波避難困難地域(国道150号より南側の地域)・通学路沿い 長さ×38,400円 2/3以内 1敷地33万3,000円

事業の経費と基準額を比べて少ない金額に補助率を掛ける、という計算方式です。

長さ別の試算(改善事業の場合)

基準額が長さ×38,400円ですから、限度額33万3,000円に届く長さを逆算できます。

ブロック塀の長さ 基準額(長さ×38,400円) 基準額の2/3 実際の補助額
10m 384,000円 256,000円 256,000円
13m 499,200円 332,800円 332,800円(ほぼ限度額)
20m 768,000円 512,000円 333,000円(限度額)
40m 1,536,000円 1,024,000円 333,000円(限度額)

※工事費が基準額を下回る場合は工事費のほうで計算されます。あくまで基準額側の試算です。

つまり13m前後で限度額に届く計算です。マンションの敷地境界のブロック塀は、それより長いことのほうが多いでしょう。ということは、多くの場合、限度額の33万3,000円で頭打ちになります。

「33万円か」と思われるかもしれません。ただ、これは工事のついでにやると0円になる補助です。33万円は、理事会の1年分の運営費に匹敵することもある金額です。

★ここが袋井市の実務上のポイント:教育委員会にも書類を出す

袋井市の制度で他の自治体と明確に違うのが、通学路確認依頼書です。市のページにはこう書かれています。

補助申請の際には、あらかじめ袋井市教育委員会学校教育課(教育会館1階)において通学路の確認が必要となります。次の通学路確認依頼書へ必要事項を記載のうえ、位置図とともに学校教育課へ提出してください。

そして添付書類の一覧にも「通学路確認依頼書」が太字で入っています。

これは、役所が2か所に分かれているということです。ブロック塀の申請は市役所3階の建築住宅課施設営繕係、通学路の確認は教育会館1階の学校教育課。理事長が平日に動く回数が1回増えます。

段取りとしては、こうなります。

  1. 位置図を用意して、教育会館1階の学校教育課へ通学路確認依頼書を提出(先)
  2. 確認が取れたら、市役所3階の建築住宅課施設営繕係へ補助金交付申請書と添付書類一式を提出(後)
  3. 交付決定通知を受けてから工事に着手

順番を間違えると、そのぶん時間が余計にかかります。工程表に「教育委員会の確認」というマイルストーンを立てておいてください。

添付書類と注意事項

添付書類(撤去事業)

  • 案内図
  • 配置図及び断面図
  • 施工前の写真
  • 見積書の写し
  • 通学路確認依頼書

改善事業はこれに加えて

  • 改善後の設計図(配置図、平面図、立面図および断面図)

注意事項(原文より)

  • 各年度内に工事が完了することが条件。年度内に工事着手した物件は、同年度2月末を目処に事業完了実績報告書の提出が必要
  • 工事の着手前に補助金交付申請を行い、交付決定通知を受けた後に工事に着手すること
  • 撤去、改善ともに、同一年度内に工事を完了させること
  • 市税を滞納している方は、本補助金の交付を受けることができません

最後の一項は、管理組合の場合にどう扱われるのかが原文からは読み取れません。管理組合は法人格を持たない場合が多く、市税の納税義務者としての立ち位置が個人所有者とは異なります。ここも推測では書けませんので、0538-44-3120にご確認ください。

なぜ大規模修繕と同じ議案にまとめるべきなのか

理由は4つあります。

  1. 足場や重機の搬入経路がブロック塀と重なることが多い。どのみち一度は触ることになる
  2. 交付決定前の着手が対象外なので、「工事が始まってからついでに撤去」をした瞬間に補助が消える
  3. 年度内完了・2月末実績報告という縛りがあり、工期のどこに入れるかを最初に決めておく必要がある
  4. そしていちばん大きな理由は、管理組合が意思決定できるのは年に1回の定時総会だけだからです

4番目が本質です。理事会で「あとでやろう」と決めたことは、次の総会まで1年間動きません。同じ議案にまとめてしまえば、1回の決議で両方が進みます。


【本題5】住宅省エネ改修の補助は、マンション共用部に使えるのか

袋井市には、住宅の省エネ改修に対するかなり手厚い補助制度があります(袋井市 住宅の省エネ改修に関する補助制度)。金額を見てください。

区分 補助率 補助限度額
省エネ設計(調査・設計・計画、BELS等の第三者認定の取得) 2/3 38.8万円/戸
省エネ改修(全体改修または部分改修) 23% 102.5万円/戸
構造補強工事加算 23% 36万円/戸
しずおか優良木材等加算 3,500円/㎡ 14万円/戸
森林認証材補助加算 1,000円/㎡ 4万円/戸

「戸」単位です。ここに管理組合が反応するのは自然なことだと思います。

対象者の書きぶりが、他の制度と違う

市のページの「対象者」はこうです。

市内に住宅を所有する方又は住宅の所有者の承諾を得て事業を行う者

そして「対象住宅」は、

現に断熱等性能等級5相当未満、かつ現に又は補助事業完了後に地震に対して安全な構造が確認できる住宅

この連載でこれまで見てきた他市の住宅リフォーム系補助は、「市内に住宅を所有し、そこに住んでいる人」という書き方が多く、それが共用部を排除する根拠になっていました。袋井市の書きぶりには「住んでいる」という条件が入っていません。

ただし、だからマンションの共用部に使える、と私が書くわけにはいきません。 要綱本文に「共同住宅」「管理組合」「共用部」という語があるかどうかを、私はこの記事の執筆時点で公開情報から確認できていません。補助対象は「開口部、躯体等の断熱化及び設備の効率化に係る改修」であり、住宅全体をZEH水準または断熱等性能等級5相当以上にすることが要件です。分譲マンションの共用部改修だけでこの要件を満たせるかは、別途の判断が要ります。

窓口にそのまま読み上げていただける質問文

宛先は袋井市 建築住宅課 住宅土地対策係 電話 0538-44-3123です。

「住宅省エネ改修推進事業費補助金について2点うかがいます。
①分譲マンションの管理組合が、共用部の外壁・屋根の断熱改修や共用部の設備更新を行う場合、この補助金の対象になりますか。
②対象になる場合、『補助限度額102.5万円/戸』の『戸』は、マンションの住戸数で数えるという理解でよいですか。
工事はこれからです。」

もし①が「対象になる」という回答であれば、袋井市の管理組合にとってこれは相当大きな話になります。逆に「対象外」であれば、その時点で理事会の検討課題からきれいに外せます。どちらの答えでも、電話1本の価値があります。

なお、この制度も「予算の範囲内で実施するため年度途中で受付を終了する場合があります」「補助申請は工事着手前に」「同年度2月末を目安に完了・実績報告」という共通の縛りがあります。年度をまたぐ大規模修繕とは相性を確認する必要があります。


【本題6】瓦屋根の耐風改修補助は、RC造マンションには関係ありません

袋井市には、瓦屋根の耐風診断・耐風改修に対する補助もあります(袋井市 住宅の瓦屋根の耐風診断と耐風改修に関する補助制度)。

区分 基準額 補助率 上限
耐風診断 37,800円 2/3 25,000円
耐風改修 屋根面積1㎡あたり30,000円(上限300万円) 23% 690,000円

対象は令和3年12月31日以前に工事に着工した瓦屋根で、瓦葺きの住宅が対象(カラーベスト葺きや金属葺きの住宅は対象外)と明記されています。

正直に書きます。陸屋根のRC造マンションには関係ありません。 該当するかどうかは、屋上に上がれば5分でわかります。

ただし、袋井市に共同住宅として瓦屋根の物件をお持ちのオーナーの方であれば、検討の余地はあります。診断だけでも補助対象になり(診断の結果、耐風性能があると判断された場合は診断のみが補助対象)、25,000円が戻ります。


【本題7】固定資産税の減額制度:袋井市のページ構成には特徴があります

ここからは税金の話です。管理組合が誤解しやすいポイントが袋井市には2つあります。

まず、長寿命化促進税制の専用ページは「税のページ」にありません

袋井市の課税課資産税係の「固定資産税・都市計画税」のページには、子ページが24件並んでいます。そのなかに改修関係の減額は3つあります。

  • 住宅のバリアフリー改修に伴う固定資産税の減額
  • 住宅の省エネ改修に伴う固定資産税の減額
  • 住宅耐震改修に伴う固定資産税の減額

マンション長寿命化促進税制の専用ページは、この24件のなかにありません。

では袋井市に情報がないのかというと、そうではありません。建築住宅課のマンション管理適正化推進計画のページの「6」に書かれています。

マンションの長寿命化を促進させるため、一定の要件を満たすマンションについて、過去に長寿命化工事を行っており、令和9年3月31日までに、長寿命化に資する大規模修繕工事(長寿命化工事)を行った場合、固定資産税の一部が減額されます。
※特例措置の期間が令和7年3月31日から令和9年3月31日まで延長されました。
※減額措置の対象になるためには、申告前かつ工事完了年度の賦課期日(1月1日)までに管理計画の認定を受ける必要があります。

この連載で、清水町・函南町は「どこにも書かれていない」、磐田市は「住宅のページに書いてある」というパターンでした。袋井市も磐田市と同じ「住宅のページ型」です。

だから何かというと、探す場所が違うだけだということです。税金の話だから税のページを見る、というのは自然な発想ですが、マンションの制度は建築住宅課が持っていることが多い。理事長が「袋井市には長寿命化促進税制のページがないから対象外なのだろう」と判断してしまうのが、いちばんもったいない誤解です。ページがないことと使えないことは別です。この税制は地方税法にもとづく全国共通の制度です。

★注意:袋井市は市内全域が都市計画区域です

そしてこれが、袋井市でとくに気をつけていただきたい論点です。

袋井市の都市計画税の課税区域は、都市計画区域(市内全域)です。ただし農用地区域(青地)および用途地域以外の農地は除かれます(袋井市 平成23年度から都市計画税の課税区域を変更しました)。税率は0.3%です。

つまり、袋井市の分譲マンションは、ほぼ確実に固定資産税と都市計画税の両方が課税されています。

一方で、袋井市の減額制度のページには、いずれもこう書かれています。

  • 省エネ改修の減額:「翌年度分の固定資産税の3分の1が減額されます(都市計画税は減額されません)」
  • 耐震改修の減額:「固定資産税を一定期間減額します(都市計画税は減額されません)」

長寿命化促進税制も、市のページの表現は「建物部分の固定資産税が減額されます」です。

したがって、総会で「税金が3分の1減ります」と説明すると、不正確になります。 正確には「固定資産税が減額されます。都市計画税は減額されません」です。

区分所有者の方が納税通知書を見て「思ったより減っていない」となると、理事会への信頼が下がります。議案書には最初から『固定資産税のみ』と書いておいてください。 確かめ方は簡単で、毎年届く固定資産税・都市計画税の納税通知書に、両方の内訳が載っています。

隣の掛川市は市街化区域が定められておらず、都市計画税は条例で定める区域のみの課税でした。袋井市は市内全域が都市計画区域です。同じ静岡県中西部でも、税の前提が違います。 他市の記事を読んでそのまま説明すると、袋井では合いません。

3つの改修減額の比較表(袋井市の原文ベース)

制度 減額割合 面積上限 期間 主な要件
耐震改修 1/2 120㎡ 翌年度分(工事完了がH25.1.1〜R8.3.31の場合) 昭和57年1月1日以前に建てた住宅/1戸当たり工事費50万円以上/完了から3か月以内に申告
省エネ改修 1/3 120㎡ 翌年度分 平成26年4月1日までに新築(賃貸住宅を除く)/自己負担60万円超/H28.4.1〜R8.3.31
バリアフリー改修 (市ページを参照) - - 省エネ改修との併用が可能

併用の可否(袋井市の原文で確認できたもの)

組み合わせ 可否 根拠(袋井市の原文)
省エネ改修 × バリアフリー改修 可 「バリアフリー改修に伴う減額措置と併用ができます」(省エネのページ)
耐震改修 × バリアフリー改修 不可 「バリアフリー改修に伴う減額措置、省エネ改修に伴う減額措置との併用はできません」(耐震のページ)
耐震改修 × 省エネ改修 不可 同上
新築住宅軽減措置 × 省エネ改修 不可 「新築住宅軽減措置、耐震改修に伴う減額措置を同時に併用することはできません」(省エネのページ)

管理組合の実務としては、ここは深入りしないでください。これらの減額は専有部の話であり、申告するのは区分所有者ご本人です。管理組合の役割は税務判断ではなく、周知です。お知らせ文にはこの1行で足ります。

「本工事に伴い、専有部で断熱改修等を実施された方は、固定資産税の減額を受けられる場合があります。適用の可否は課税課資産税係(0538-44-3110)にお問い合わせください。」

期限は令和9年3月31日。残り約19か月

長寿命化促進税制の期限は令和9年3月31日の工事完了です。この記事を書いている2026年9月1日から数えて、残り約19か月です。

管理組合の意思決定が年1回の総会に律速されることを考えると、19か月は「たっぷりある」とは言えません。逆算するとこうなります。

時期 やること
19〜16か月前(2026年9月〜12月) 管理計画認定の準備開始。長期修繕計画の点検。劣化診断の発注
15〜13か月前(2027年1月〜3月) 工法をここまでに決める(設計発注前でなければ実質選べません)
12か月前(2027年4月頃) 定時総会で工事議案を決議。管理計画認定の申請
着工直前 改修前の写真を撮る(高圧洗浄後は二度と撮れません)
完了後3か月以内 資産税課へ申告

律速は工事ではなく総会です。 そして、認定は工事完了年度の賦課期日(1月1日)までに受けている必要があります。

19か月では間に合わない組合もあると思います。それでも準備が無駄にならない理由を3つ書いておきます。第一に、期限の延長を前提に計画を立てるのは危険ですが、過去に一度延長された実績はあります(令和7年3月31日→令和9年3月31日)。第二に、管理計画認定はフラット35と共用部分リフォーム融資の金利優遇という価値があり、税制と切り離しても意味があります。第三に、認定基準の項目(長期修繕計画の点検、修繕積立金の水準)は、税制と関係なくどのみち必要な作業です。


【本題8】袋井市の住宅系制度を「共用部の大規模修繕で使えるか」で仕分ける

理事会の時間を節約するために、一覧にしておきます。◎=使える可能性が高い、○=条件次第、△=要確認、×=共用部には使えない、です。

制度名 所管 共用部の大規模修繕で使えるか 根拠
マンション管理計画認定制度 建築住宅課 住宅土地対策係 ◎ 市が認定権者。手数料0円
ブロック塀等の撤去・改善事業 建築住宅課 施設営繕係 ◎ 道路に面したブロック塀が対象。最大33.3万円
マンション長寿命化促進税制 建築住宅課/課税課 ◎ 令和9年3月31日までの工事完了が期限
建築物等耐震診断事業 建築住宅課 施設営繕係 ○(要確認) 「木造住宅以外の建物」。補助率2/3。実績は7年連続0件
住宅省エネ改修推進事業 建築住宅課 住宅土地対策係 △(要確認) 対象者の書きぶりに「住んでいる」条件がない
住宅の瓦屋根の耐風診断・耐風改修 建築住宅課 施設営繕係 △ 瓦葺きのみ。陸屋根のRC造は対象外
わが家の専門家診断(無料) 建築住宅課 施設営繕係 × 木造住宅のみ。「鉄骨造、鉄筋コンクリート造などの住宅は対象外」
木造住宅耐震改修助成事業 建築住宅課 施設営繕係 × 木造住宅のみ。補助額は工事費と115万円の少ない額
木造住宅除却等助成事業 建築住宅課 施設営繕係 × 木造住宅のみ
住宅のがけ地移転補助制度 建築住宅課 住宅土地対策係 × 移転が対象
狭あい道路拡幅整備事業 建築住宅課 住宅土地対策係 × 道路後退が対象
空き家のリフォーム工事補助制度 建築住宅課 住宅土地対策係 × 空き家が対象
住宅耐震改修に伴う固定資産税の減額 課税課 資産税係 ×(専有部の話) 昭和57年1月1日以前の住宅。区分所有者が申告
住宅の省エネ改修に伴う固定資産税の減額 課税課 資産税係 ×(専有部の話) 賃貸住宅を除く。区分所有者が申告
住宅のバリアフリー改修に伴う固定資産税の減額 課税課 資産税係 ×(専有部の話) 区分所有者が申告

◎が3つ、○が1つ、△が2つ。×だとわかっている制度に理事会の時間を使わずに済むことにも価値があります。


【本題9】いちばん金額が動くのは、補助金ではなく仮設足場費です

ここまで制度の話をしてきました。ここから先は、私の本業の話が含まれます。ここから先は株式会社明誠のサービスの話を含みますので、そのつもりでお読みください。

大規模修繕工事の見積書で、仮設足場は工事費全体の15〜25%を占めます。 金額にするとこうです。

工事費総額 仮設足場費の目安(15〜25%)
3,000万円 450万〜750万円
5,000万円 750万〜1,250万円
8,000万円 1,200万〜2,000万円

私が現場でいつも不思議に思うことがあります。植栽の剪定20万円は理事会で真剣に議論されるのに、750万円の「仮設足場一式」という1行は、そのまま通ってしまう。

理事の方が不真面目なのではありません。判断材料が渡されていないのです。「仮設足場一式 750万円」と書かれた1行を見て、高いか安いか判断できる人はほとんどいません。

見積書を受け取ったら、この1文を送ってください

「仮設足場費について、架面積の平米単価とリース期間に分解してお示しください。」

これだけで、比較できる数字になります。架面積が何㎡で、平米単価がいくらで、リース期間が何か月か。3社の見積りを並べたときに、初めて意味のある比較ができます。

ロープアクセス工法とハイブリッド工法

株式会社明誠は、通常の足場を架ける工法、足場を架けないロープアクセス工法、その両方を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物に合った工法をご提案しています。ロープアクセス工法の技術的な解説は姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。

袋井市の分譲マンションで、この3工法の使い分けが効きやすいのは、次の3つのケースです。

(1)駐車場を潰したくない物件

袋井市を含む遠州地域は、1世帯1台以上の自動車保有が前提の生活圏です。全周に足場を架けて6か月間、駐車場の一部が使えなくなると、代替駐車場の費用と居住者の不満が総会の議決に直結します。

配分の工夫として、全周を6か月ではなく、2面ずつ各1.5か月で回す、あるいは駐車場側の面だけロープアクセスにするという選択肢があります。工期の総日数は同じでも、「自分の車がいつ使えないか」が短くなると、住民説明会の空気は変わります。

(2)低層は足場、高層はロープの組み合わせ

低層階はバルコニー内部の作業や下地補修の物量が多く、足場のほうが効率的です。高層階は外壁の塗り替えと目地打ち替えが中心で、ロープアクセスが向きます。上下で分けるだけで、仮設費が下がることがあります。

(3)前面道路が狭く、4トン車が入らない立地

これはコストの話というより、物流の話です。ロープアクセス工法では、足場部材がそもそも存在しません。トラックが入れない、資材置場が取れない、という現場では、選択肢がこれしかないこともあります。営業トークではなく、物理的な条件の話です。

正直に申し上げておきます

ロープアクセス工法は万能ではありません。 私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる現場は普通にあります。足場が有利なのは、次のような条件のときです。

  1. 下地補修の物量が多く、作業員の滞在時間が長くなる場合
  2. バルコニー内部の作業が工事の中心になる場合
  3. タイルの張替え面積が広く、資材の上げ下ろしが頻繁な場合
  4. 建物の形状が複雑で、ロープの支点が取りにくい場合

もうひとつ、誠実に書いておきます。ロープアクセスでも、バルコニー内部の作業が必要な点は工法にかかわらず同じです。 居住者の立ち入りがゼロになるわけではありません。減るのは、外部足場が窓の前に架かっている期間です。

モデルケース2本(袋井市の物件規模を想定)

ケースA:JR袋井駅圏/築26年・6階建て・44戸

項目 全周足場 ハイブリッド
工事費 6,900万円 5,950万円
差額 - ▲950万円(1戸あたり約22万円)
工期 5.5か月 4か月
駐車場の制限 全周5.5か月 2面ずつ各1.5か月

ケースB:南部(浅羽・湊方面)/築33年・4階建て・26戸

項目 全周足場 ロープ主体
工事費 3,900万円 3,150万円
差額 - ▲750万円(1戸あたり約29万円)
工期 4.5か月 3か月

※上記は建物形状・劣化度・仕様により大きく変動します。参考値としてご覧ください。

ここで注目していただきたいのは、戸数が小さいほど1戸あたりの効果が大きいという点です。26戸で3,900万円なら1戸あたり150万円。150戸の大規模マンションなら1戸あたり26万円前後です。袋井市は政令指定都市の浜松市と比べれば中小規模の分譲マンションが多い地域ですから、工法選定が効きやすい市場だと言えます。

そしてもうひとつ。工法は設計発注前でなければ、実質的に選べません。 設計事務所が全周足場を前提に設計図と数量表を作ってしまうと、そのあとで工法を変えるには設計をやり直すことになります。先ほどの逆算カレンダーで「15〜13か月前に工法を決める」と書いたのは、この理由です。

明誠の工法別の考え方はロープアクセス工法のご紹介に、調査・診断の進め方は建物調査・劣化診断にまとめています。ロープアクセスの安全基準や施工事例はロープアクセスドットコムをご覧ください。


【本題10】修繕積立金が足りないときの4つの打ち手

袋井市の管理組合からのご相談で、補助金の次に多いのがこれです。順番に書きます。

1. 借入れ(住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資)

管理計画認定を受けていると金利が引き下げられます。袋井市が認定権者で手数料0円ですから、この経路は現実的です。

2. 一時金の徴収

議案書には「一時金50万円」と「月々3,000円の値上げ」を両方載せてください。 選択肢が1つだと、区分所有者は賛成か反対かで考えます。2つあると、どちらがましかで考えます。これは総会の可決率にはっきり効きます。

3. 工事範囲の見直し

ただし段階施工には注意が必要です。理由は2つあります。ひとつは、仮設費が回数分かかること。もうひとつは、長寿命化促進税制の対象工事が「外壁塗装等・床防水・屋根防水」の3点セットを一体で実施することを求めているため、「積立金が足りないから屋上防水は5年後に」と決めた瞬間に、税制の要件から外れてしまうことです。

これは工事の話ではなく、設計の段階での落とし穴です。見積りを取る前に、設計事務所に一言確認するだけで選択肢が残ります。

4. 工法の見直しによる原価低減

先ほどの仮設足場費の話です。積立金を増やすより先に、支出側を見直すほうが総会は通りやすい。これは実務上の経験則です。

住宅金融支援機構の制度はマンション共用部分リフォーム融資(住宅金融支援機構)をご覧ください。「マンションすまい・る債」やライフサイクルシミュレーションも同機構が提供しています。


【本題11】見積書で確認すべき5点

私が管理組合の理事長に必ずお伝えしている5点です。

1. 下地補修の「仮定数量」の超過分の単価を、契約前に契約書へ明記する

これがいちばん重要です。大規模修繕の見積書では、ひび割れ補修やタイル張替えの数量は「仮定数量」として計上されます。足場を架けて調査するまで、正確な数量はわからないからです。

問題は、足場が架かってから数量が増えたときです。 そのときに管理組合が対等に交渉することはできません。工事を止めるわけにいかないからです。

契約書に入れる文例を書いておきます。

「下地補修工事における仮定数量の超過分については、本契約書に記載した単価を適用するものとし、単価の変更を要する場合は、事前に書面により甲(管理組合)の承認を得るものとする。」

これを嫌がる会社は、そこでわかります。

2. 工事保証の範囲と年数

外壁塗装、防水、シーリングでそれぞれ年数が違います。「10年保証」と書かれていても、どの部位が10年なのかを確認してください。

3. 高圧洗浄の排水計画

袋井市は太田川と原野谷川に挟まれ、南は遠州灘に面しています。高圧洗浄の排水をどう処理するかは、環境の話であると同時に、住民合意の話です。「洗浄の水がベランダに流れてきた」というクレームは、工事期間中の理事長をいちばん疲弊させます。

4. 予備日の設定と、超過したときの費用負担

質問文はこれです。

「予備日を超過した場合の足場リース延長費用は、誰の負担になりますか。」

この1文への答え方で、その会社の姿勢がかなり見えます。

5. 居住者への周知の役割分担

誰が、いつ、どの形式で(掲示・ポスティング・説明会)周知するのか。工事会社側の担当者が常駐するのかどうか。ここが曖昧だと、全部が理事長に降ってきます。


【本題12】袋井市の気候と方位別の劣化要因

工事の適期と、劣化診断で重点的に見るべき箇所を、袋井市の条件で整理します。

工事適期(袋井市版)

時期 評価 理由
3〜5月 ○ 気温・湿度とも安定。ただし繁忙期で価格が上がりやすい
6〜7月 △ 梅雨。予備日を7〜10日は見込む
8〜9月 △ 猛暑と台風。塗膜の乾燥は早いが作業者の負荷が大きい
10〜11月 ◎ 晴天率が高く気温も安定。最も条件がよい時期
12〜2月 ○ 温暖で晴天率は高い。ただし遠州の空っ風で予備日を3〜5日追加

方位別の劣化要因(袋井市固有)

方位・立地 主な劣化要因 診断で重点的に見る箇所
西〜北西面 遠州の空っ風による塗膜の摩耗、シーリングの早期硬化 目地の硬化・痩せ。メッシュシートの開放復旧の人工が工程に乗る
南面(浅羽・湊など海側) 遠州灘からの飛来塩分による鉄部腐食 手すり、避難ハッチ、屋外階段の鉄部。下地処理を厚めに
北面(内陸側) 放射冷却による朝の結露、コケ・藻の発生 防藻・防カビ仕様の要否
東面 朝日による温度変化でシーリングの伸縮疲労 打ち替え周期の見直し
人工造成地・低地 液状化リスク。地下水位が高い箇所は湿気 基礎まわり、1階外壁の含水率、擁壁

劣化診断を依頼するときに、「海側の物件です」「造成地に建っています」と一言伝えるだけで、診断の重点が変わります。 これはお金のかからない工夫です。


【本題13】今週できること(3時間以内)

理事長が今週動けることを5つに絞りました。1と2は今日中に電話1本ずつです。

1. 建築住宅課 住宅土地対策係(0538-44-3123)に電話を1本

3つの用件をまとめてください。

  • マンション管理計画認定制度の申請手続きと、市の受付状況
  • 住宅省エネ改修推進事業費補助金が共用部に使えるかどうか
  • 長寿命化促進税制の助言・指導内容実施等証明書の発行者

2. 建築住宅課 施設営繕係(0538-44-3120)に電話を1本

  • 建築物等耐震診断事業に分譲マンションが該当するか、限度額はいくらか
  • ブロック塀の補助について、管理組合が申請者になれるか(市税滞納要件の扱いを含む)

3. 屋上に上がって、屋根の形状を5分で確認する

陸屋根か、瓦屋根か。瓦屋根なら耐風改修の補助が視野に入ります。

4. 敷地境界のブロック塀の長さを測る

メジャー1本と15分あれば終わります。13mを超えていれば、改善事業の限度額33万3,000円に届く計算になります。

5. 前回工事の書類が書庫にあるか確認する

長寿命化促進税制は「過去に長寿命化工事を行っていること」が要件です。前回の工事の契約書・完了報告書・写真が残っているかどうかを、今日15分で確認してください。前回の施工会社が廃業していると、あとから証明書が取れなくなります。


証明書まわりの落とし穴3つ

長寿命化促進税制の申告で、実務上つまずきやすい点を書いておきます。

1. 建築士との契約に「大規模の修繕等証明書の発行」を業務範囲として明記する

設計監理を依頼する建築士事務所との契約書に、この一文が入っていないと、あとで「別料金です」となることがあります。契約時に入れておけば、追加費用は発生しません。

2. 着工前の写真は、足場を架けて高圧洗浄したあとでは二度と撮れない

議事録に3行だけ残してください。

「改修工事の着工前写真について、高圧洗浄の実施前に、外壁・屋上・バルコニーの各部位を撮影し、撮影日がわかる形で保管する。撮影の担当は施工会社とし、データは工事完了後に管理組合へ引き渡す。」

3. 過去の工事の証明書は、前回の施工会社が廃業すると取れなくなる

これは急いでください。前回工事から10年以上経っている組合ほど、リスクが高くなります。


国と県の制度も押さえておきましょう

マンションストック長寿命化等モデル事業(国土交通省)

令和8年度の第3回募集は令和8年9月14日(月)から9月18日(金)です。この記事の公開から2週間後です。

正直に書きますが、2週間で申請書類を揃えるのは現実的ではありません。 今週やることは、募集要領のPDFをダウンロードして、必要書類の一覧だけを印刷すること(15分)です。それだけで、来年度の第1回募集に間に合う準備ができます。事務局の電話は03-6801-5902です。

制度の全体像は国土交通省 マンション政策のページをご覧ください。

静岡県マンション管理士無料派遣

静岡県は、県内のマンション管理組合にマンション管理士を無料で派遣する事業を実施しています。県内10件・各組合2回まで、申込締切は令和8年11月14日(土)、派遣期限は令和9年1月31日です。申込先は静岡県マンション管理士会(FAX 0544-27-6561)です。

申込書に書く内容を、袋井版で具体化しておきます。

  1. 管理計画認定を取得するにあたって、現在の長期修繕計画に不足している項目
  2. 長寿命化促進税制の2ルート(認定ルートと助言・指導ルート)のどちらを選ぶべきか
  3. 修繕積立金の引き上げについて、総会での説明の組み立て方

静岡県マンション管理セミナー

県は毎年、県内各地でマンション管理セミナーを開催しています。袋井市から現実的に通えるのは浜松会場(令和9年2月予定)です。JR東海道本線で袋井駅から浜松駅まで30分弱です。

ひとつだけお願いがあります。理事長おひとりで行かないでください。 次期理事候補の方と2人で行ってください。理事長は1年で交代します。おひとりで得た知識は、1年で組合から失われます。


長寿命化促進税制の2ルート比較

最後に、税制の適用ルートを整理しておきます。分かれ目は修繕積立金の引き上げ決議をしているかどうかです。

項目 認定ルート 助言・指導ルート
前提 管理計画認定を受ける 市から助言・指導を受け、証明書の発行を受ける
積立金の要件 令和3年9月1日以降に引き上げの決議(20階未満・建築延床5,000㎡未満なら月額235円/㎡など) 基準額(月額91円/㎡など)以上
長期修繕計画 認定基準による 計画期間30年以上
長寿命化工事の実績 - 過去に2回以上
その他 - 一時金の予定なし/借入金残高なし
手続きの窓口 袋井市 建築住宅課 住宅土地対策係 同左(発行者は要確認)

共通要件は、築20年以上、10戸以上、過去に長寿命化工事の実績があること、そして令和9年3月31日までに長寿命化に資する大規模修繕工事(外壁塗装等・床防水・屋根防水の3点セット)を完了することです。減額されるのは翌年度分の固定資産税で、1戸あたり100㎡までの部分について6分の1〜2分の1(参酌基準は3分の1)です。

国土交通省が様式と記入例を公開しています。理事会で回すなら、記入例のPDFを1枚印刷するのがいちばん早いです。

なお、助言・指導内容実施等証明書の発行者について。国の通知は「都道府県等」としており、法の定義では市の区域は当該市が該当すると読めます。袋井市はマンション管理適正化推進計画を策定して認定権者になっていますので、袋井市が発行者になると考えるのが自然です。ただし市のページに明示がありませんので、推測で埋めずに0538-44-3123にご確認ください。 そのときも「工事はこれからです」を添えてください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 袋井市に、マンションの外壁塗装に直接使える補助金はありますか?
A. 公開されている情報の範囲では、分譲マンションの外壁塗装・防水工事そのものに出る市の補助金は見当たりません。使えるのは、管理計画認定制度(市の手数料0円)、ブロック塀の補助(最大33万3,000円)、長寿命化促進税制です。

Q2. 管理計画認定制度は、袋井市に申請するのですか?
A. はい。袋井市がマンション管理適正化推進計画を策定して認定権者になっています。ただし申請は(公財)マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを経由します。市に支払う手数料等はありません(出典:袋井市)。

Q3. 旧耐震のマンションですが、耐震診断の補助は使えますか?
A. 袋井市耐震改修促進計画の表3-1に「建築物等耐震診断事業(昭和56年5月以前の木造住宅以外の建物・国1/3・県1/6・市1/6)」があります。ただし市サイトに専用ページがなく、実績は令和元年度以降0件です。該当するかは建築住宅課施設営繕係(0538-44-3120)にご確認ください。

Q4. ブロック塀の補助はいくらまで出ますか?
A. 撤去は市内全域で1/2以内・1敷地20万円まで。改善事業の対象地域(緊急輸送路沿い等・津波避難困難地域=国道150号より南側・通学路沿い)は撤去が2/3以内・26万6,000円まで、建替えを伴う改善が2/3以内・33万3,000円までです。申請前に袋井市教育委員会学校教育課での通学路確認が必要です。

Q5. 長寿命化促進税制で、都市計画税も減額されますか?
A. いいえ。減額されるのは固定資産税のみです。袋井市は市内全域が都市計画区域で都市計画税(税率0.3%)が課税されていますので、総会では「固定資産税のみが減額される」と説明してください。

Q6. 工法は、いつまでに決めればよいですか?
A. 設計発注前です。工事完了の15〜13か月前が目安になります。設計事務所が全周足場を前提に数量表を作ってしまうと、あとから工法を変えるのは実務上むずかしくなります。

Q7. 袋井は都市部から遠いので、工事費が割高になりませんか?
A. その前提は、袋井市には当てはまりにくいと考えています。JR東海道本線と東名高速道路の袋井インターチェンジがあり、浜松市・磐田市・掛川市が隣接しています。名古屋圏からも首都圏からも日帰りで動ける距離です。相見積りの候補は、地元だけに絞る必要はありません。

Q8. 補助金の申請は、工事が始まってからでも間に合いますか?
A. 間に合いません。袋井市の補助制度はいずれも「工事の着手前に補助金交付申請を行い、交付決定通知を受けた後に工事に着手」が条件です。交付申請前に着手していると対象外になります。


この記事のポイントまとめ

  • 袋井市には、外壁塗装・防水に直接出る市の補助金は見当たらない
  • 一方で、袋井市は自前のマンション管理適正化推進計画を持ち、市の手数料は0円
  • 認定基準は国・県と同じ内容で、袋井市独自の上乗せ基準はない
  • 認定申請の実費は、システム利用料+事前確認審査料で合計20,000円前後
  • 「建築物等耐震診断事業」は木造住宅以外が対象で補助率2/3。実績は7年連続0件
  • 制度は計画書にあるが市サイトに専用ページがない。電話で確認する価値がある
  • 非木造住宅の耐震化率は99.1%。耐震訴求より「非構造部材の安全対策」が実態に合う
  • 市の計画は窓ガラス・照明器具・エレベーターの安全対策を課題として列挙している
  • これは全部、マンション共用部の話。総会議案書の書き出しに使える
  • ブロック塀は撤去1/2・20万円、改善2/3・最大33万3,000円
  • 改善事業の対象は緊急輸送路沿い・国道150号より南側・通学路沿い
  • 申請前に袋井市教育委員会学校教育課で通学路確認が必要(役所が2か所)
  • 住宅省エネ改修補助は設計38.8万円/戸+改修102.5万円/戸。共用部の可否は要確認
  • 対象者の書きぶりに「住んでいる」条件がなく、確認する価値がある
  • 瓦屋根の耐風改修補助は瓦葺きのみ。陸屋根のRC造マンションには関係ない
  • 長寿命化促進税制のページは税のページではなく建築住宅課のページにある
  • 袋井市は市内全域が都市計画区域。都市計画税は減額されないので説明に注意
  • 隣の掛川市とは税の前提が違う。他市の説明をそのまま使うと合わない
  • 期限は令和9年3月31日の工事完了。残り約19か月
  • 逆算すると15〜13か月前に工法を決めるのが実務上の分岐点
  • 律速は工事ではなく総会。決められるのは年1回
  • 仮設足場は工事費の15〜25%。5,000万円の工事なら750万〜1,250万円
  • 見積書には「架面積の平米単価とリース期間に分解して」と依頼する
  • 工法は3つ。ロープアクセスは万能ではなく、足場が有利な現場も普通にある
  • 今週やることは電話2本と、屋上の確認とブロック塀の採寸

主なお問い合わせ先

用件 窓口 電話
管理計画認定制度/省エネ改修補助 袋井市 建築住宅課 住宅土地対策係(3階) 0538-44-3123
耐震診断/ブロック塀/瓦屋根耐風 袋井市 建築住宅課 施設営繕係(3階) 0538-44-3120
固定資産税の減額の申告 袋井市 課税課 資産税係(2階) 0538-44-3110
通学路の確認 袋井市教育委員会 学校教育課(教育会館1階) 市代表 0538-43-2111
袋井市役所 代表 〒437-8666 静岡県袋井市新屋1-1-1 0538-43-2111
建築住宅課 ファクス - 0538-44-3145
マンション管理計画認定制度 相談ダイヤル (一社)日本マンション管理士会連合会 03-5801-0858(月〜金 10:00〜17:00)
静岡県マンション管理士会 申込はファクスで FAX 0544-27-6561
マンションストック長寿命化等モデル事業 事務局 - 03-6801-5902

袋井市役所の開庁時間は午前8時30分から午後5時15分、閉庁日は土曜日・日曜日・祝日・年末年始です。建築住宅課は3階、課税課は2階と、階が分かれています。1回の来庁で両方を回るなら、順路を考えておくと時間が節約できます。


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おわりに:東海道どまん中のまちで

袋井市を調べていて、私がいちばん印象に残ったのは、耐震改修促進計画の表のなかにひっそり載っていた「建築物等耐震診断事業 昭和56年5月以前の木造住宅以外の建物」という1行でした。

補助率は3分の2。実績は7年連続で0件。ホームページの補助制度一覧には専用ページがない。

これは、袋井市が不親切なのではないと思います。木造住宅の耐震化率が96.5%、非木造住宅にいたっては99.1%まで到達した市にとって、非木造建築物の耐震診断は「もう終わった課題」に近い。だから力を入れて広報する対象から外れている。それだけのことです。

でも、旧耐震のマンションにお住まいの方にとっては、まだ終わっていません。制度がないのではなく、知られていないだけのものが、袋井市にはまだ残っています。

袋井市は東海道五十三次の27番目、江戸からも京からもちょうど真ん中にあたることから「東海道どまん中」を名乗っています。真ん中というのは、どちらから来た人も一度は足を止める場所だということです。宿場町というのは、そういう機能を果たしてきました。

大規模修繕も同じだと思っています。マンションの寿命を仮に60年とすると、築30年前後の2回目の大規模修繕は、ちょうど真ん中にあたります。ここで一度足を止めて、何にいくらかかっているのかを確かめる。その1回が、そのあとの30年を変えます。

そして袋井市の管理組合にとって、その一歩は電話2本から始まります。0538-44-3123と0538-44-3120。どちらも市役所3階の建築住宅課です。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、東京・関東一円および全国のフランチャイズ加盟店とともに、ロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社です。日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズを展開しています。塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しており、工法の選択肢を持つことで、建物ごとに適した進め方をご提案しています。

大規模修繕の工法についてのご相談はお問い合わせフォームから承っています。

最終更新:2026年9月1日


出典・参考資料

袋井市

  1. マンション管理適正化推進計画について
  2. ブロック塀の安全点検・撤去一部補助について
  3. 住まいの地震対策等
  4. 住宅の瓦屋根の耐風診断と耐風改修に関する補助制度
  5. 住宅の省エネ改修に関する補助制度
  6. 袋井市耐震改修促進計画(令和8年4月改訂)PDF
  7. 住宅耐震改修に伴う固定資産税の減額
  8. 住宅の省エネ改修に伴う固定資産税の減額
  9. 平成23年度から都市計画税の課税区域を変更しました
  10. 固定資産税・都市計画税(一覧)
  11. 最新の人口・世帯数

国土交通省

  1. マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)
  2. マンション管理計画認定制度の認定基準(PDF)
  3. マンション政策

関係団体

  1. (公財)マンション管理センター 管理計画認定手続支援サービス
  2. (一社)日本マンション管理士会連合会 相談ダイヤル
  3. 住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資

本記事は2026年9月1日時点で公開されている情報にもとづいています。補助金・税制の内容は変更されることがありますので、実際のご検討にあたっては各窓口で最新の情報をご確認ください。金額や要件について断定的な判断が必要な場合は、所管課へのご確認をお願いいたします。

掛川市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

静岡県掛川市で分譲マンションの大規模修繕を考えている管理組合の方へ、2026年度に使える制度を、市の公表資料そのままの数字で整理しました。

先に結論を申し上げます。掛川市には、分譲マンションの共用部の大規模修繕工事そのものに現金が出る市独自の補助金は、私が確認したかぎり見当たりません。使える可能性があるのは、旧耐震のマンションに対する既存建築物耐震診断事業(費用の3分の2以内・200万円限度)という「診断費」の補助と、国のマンション長寿命化促進税制、そして敷地のブロック塀に対する補助です。

そのうえで、この記事でいちばんお伝えしたいのは金額の話ではありません。掛川市が2026年6月に公表した第4期耐震改修促進計画のなかに、こう書かれた一行があります。

既存建築物の耐震診断の補助実績は、令和4年度・令和5年度・令和6年度がいずれも0件(累計27件)

3年間、誰も使っていません。制度は用意されているのに、使う人がいない。掛川市の管理組合にとって、これはむしろ好機です。理由は本文で説明します。


この記事でわかること

項目 内容
市の共用部工事への直接補助 確認できず(外壁塗装・防水そのものへの補助は見当たらない)
既存建築物耐震診断事業 費用の3分の2以内・200万円限度(一戸建て住宅以外)
危険ブロック塀の除却・建替え 避難路沿道等は3分の2・限度額なし
マンション長寿命化促進税制 固定資産税の3分の1減額(工事完了は令和9年3月31日まで)
都市計画税 掛川市は市街化区域が定められていない特殊な市。課税区域を要確認
最初の一歩 くらしデザイン課 建築営繕係 0537-21-1152 と 資産税課 0537-21-1137 への電話2本

1. まず「掛川市には共用部の工事補助がない」ことを確定させる

管理組合の理事会でいちばん時間を溶かすのが、「どこかに補助金があるはずだ」という探索です。誰かが「隣の市にはあるらしい」と言い出し、次の理事会までの宿題になり、また1か月が過ぎる。この繰り返しを止めるために、まず「ない」ことを確定させます。

私が確認した掛川市の住まい関係のページは以下のとおりです。

「住まいの融資・助成」のページに並んでいるもの

  • 令和8年度 掛川市空き家活用モデル事業費補助金
  • 住まいの融資・助成(静岡県住まいづくり支援ガイドへの案内のみ)
  • 長期優良住宅の認定制度
  • 低炭素建築物の認定申請
  • 空き家除却事業費補助金
  • ようこそ掛川空き家流通応援補助金
  • 勤労者住宅建設等資金貸付制度(掛川市住宅ローン)

「住まい(建築物)の耐震・防災対策」のページに並んでいるもの

  • 緊急輸送ルート等沿道建築物に係る耐震診断結果の公表
  • 掛川市耐震改修促進計画
  • 既存建築物耐震診断事業
  • 住宅耐震調査結果/専門家による無料耐震診断
  • 木造住宅の耐震補助事業/木造住宅建替え等事業費補助金/木造住宅耐震補強工事(補強計画一体型)
  • 危険ブロック塀の除却・建替え補助事業

このうち、分譲マンションの共用部に関係し得るのは太字の2つだけです。空き家系は対象外、木造住宅系は構造が違います。勤労者住宅ローンは新築・増改築・購入のための個人向け融資です。

さらに、令和8年度については市の新エネルギー機器等設置支援事業のページに「令和8年度は、太陽光発電や蓄電池設置など新エネルギー機器等に関する補助金はありません」と明記されています。共用部に蓄電池を、という議案を市の補助前提で組み立てることは、今年度についてはできません。

ここまでを理事会で共有できれば、「補助金探し」に使う時間はゼロにできます。掛川市で削れるのは補助金ではなく、仮設費です。この記事の後半はその話になります。


2. 【この記事の背骨】3年間、誰も使っていない診断補助

2-1. 制度の中身

既存建築物耐震診断事業(掛川市くらしデザイン課建築営繕係)の内容は次のとおりです。

項目 原文の内容
概要 木造住宅以外の建築物について、建築士事務所に依頼して耐震精密診断を行う場合、その費用に対して補助金が受けられます
対象建築物 昭和56年5月31日以前に建築された木造住宅以外の建築物
申請できる人 対象建築物の所有者、居住者または使用者(所有者以外による申請は所有者の承諾書が必要)
補助率(一戸建て住宅以外) 1棟ごとに、経費と基準額のいずれか少ない額の3分の2以内、200万円を限度
補助率(一戸建て住宅) 経費と基準額のいずれか少ない額の3分の2以内

基準額の単価は延べ面積で3段階に分かれています。

延べ床面積(戸建住宅以外) 単価
1,000平方メートル以下 3,670円/平方メートル
1,000平方メートル超〜2,000平方メートル以下 1,570円/平方メートル
2,000平方メートル超 1,050円/平方メートル

これを延べ面積別に試算すると、次のような規模感になります(基準額がそのまま経費を下回る前提での目安です)。

延べ面積 基準額の目安 3分の2 200万円の限度を適用した額
1,000平方メートル 約367万円 約244万円 200万円
2,000平方メートル 約524万円 約349万円 200万円
3,000平方メートル 約629万円 約419万円 200万円
5,000平方メートル 約839万円 約559万円 200万円

つまり、ある程度の規模のマンションであれば、限度額の200万円に張り付きます。耐震精密診断の実費が200万円を超えることは珍しくありませんから、「200万円が上限」という設計は、実務的には「200万円が出る」に近い意味を持ちます。

2-2. なぜ「3年間0件」が好機なのか

掛川市第4期耐震改修促進計画(令和8年度〜令和12年度)に掲載された補助実績によれば、既存建築物の耐震診断は令和3年度までで累計27件、令和4年度・令和5年度・令和6年度はいずれも0件です。

この数字の読み方は2つあります。

ひとつは「掛川市の非木造建築物は、もう耐震化がほぼ終わっている」。実際、同じ計画の推計では非木造住宅13,410戸のうち耐震性ありが13,294戸で、耐震化率99.1%です。昭和55年以前に建てられた非木造住宅は462戸しかなく、そのうち346戸は耐震性ありと推計されています。掛川市で「旧耐震のマンション」に該当する物件は、そもそも数が少ないのです。

もうひとつの読み方が、管理組合にとって重要です。制度が余っているということです。年度予算のなかで、この事業の枠を取り合う相手がいません。木造住宅の補助のように「先着順で夏には終了」という心配をしなくてよい可能性が高い。窓口の職員も、年に何件も処理する業務ではないぶん、一件ごとに丁寧に相談に乗ってもらえる可能性が高い。

制度は、使う人が少ないうちがいちばん使いやすい。これは前回、磐田市の管理計画認定制度についても申し上げたことですが、掛川市の診断補助はそれ以上に空いています。

2-3. ただし、原文に「マンション」の文字はありません

ここは正直に書かなければなりません。掛川市の既存建築物耐震診断事業のページには、「共同住宅」「マンション」「管理組合」という言葉が一度も出てきません。「木造住宅以外の建築物」という包括的な表現があるだけです。

この連載で扱ってきた静岡県内の他市町と並べると、公表の粒度の違いがはっきりします。

自治体 非木造・共同住宅の名指し 補助率の明示
浜松市 「マンション 階数3以上かつ延べ面積1,000平方メートル以上」と専用行あり あり(3分の2以内)
函南町 「非木造住宅(マンション含む)」と括弧書き 記載なし
磐田市 記載なし(要綱の「共同住宅等にあっては1棟を1戸とみなす」との整合が不明) あり
掛川市 記載なし(「木造住宅以外の建築物」のみ) あり(3分の2以内・200万円限度)

掛川市は「補助率と限度額ははっきりしているが、共同住宅かどうかが書かれていない」というパターンです。これは掛川市が不親切なのではなく、非木造の申請がほぼないため、ページを細かく書き分ける必要が生じてこなかったのだと思います。

2-4. 電話でそのまま読み上げる質問文

推測で埋めるより、電話1本のほうが早いです。くらしデザイン課 建築営繕係 0537-21-1152 に、次の3点をそのまま読み上げてください。

「既存建築物耐震診断事業についてお尋ねします。市内の分譲マンションの管理組合です。3点うかがいます。
① 昭和56年5月31日以前に建築された分譲マンションは、この事業の『一戸建て住宅以外のもの』として、3分の2以内・200万円限度の対象になりますか。
② 申請者は管理組合(管理者等)名義で構いませんか。区分所有者全員の承諾書が必要でしょうか。
③ 診断業務の契約前に交付申請をする必要がありますか。契約後の申請は受けられませんか。
工事はまだこれからで、来年度の総会に向けて準備している段階です」

最後の一文を必ず添えてください。「工事はこれからです」と伝えると、窓口は手続きの順序を先に教えてくれます。掛川市のこの事業のページには「契約前に申請」という明示の文言が見当たりませんが、提出書類に「耐震診断に要する経費の見積書の写し」が挙げられていることから、実務上は契約前の申請が前提になっている可能性が高いと私は考えています。ただしこれは推測ですので、①〜③を電話で確定させてください。


3. 掛川市の管理組合が本当に向き合うべきもの

耐震化率99.1%という数字は、掛川市の管理組合にとって「耐震では話が進まない」ことを意味します。では何を軸に議案を組み立てるか。答えは、市自身の計画書のなかに書かれています。

掛川市第4期耐震改修促進計画は、耐震性そのものとは別に、次の3つを課題として明記しています。

① 経年劣化

定期的な調査により劣化状況を把握し、必要な対策を講じるなど適切なメンテナンスにより、安全性確保を目指す

② 非構造部材(外装材・窓ガラス・瓦屋根・屋外広告物)の落下防止

瓦屋根、窓ガラス、外装材等/屋外広告物の落下防止対策

③ 建築設備の安全対策

エレベーターの支持部材の耐震化、釣合いおもりの脱落対策やエスカレーター落下防止対策などの防災対策改修/給湯設備などの転倒防止対策やそれらに付随する配管等の落下防止対策

この3つは、まさに大規模修繕でやっていることそのものです。外壁タイルの浮きを打診で洗い出して張り替えるのは②です。シーリングの打ち替えと防水改修は①です。共用部の給湯・給水配管の点検は③です。

つまり掛川市は、大規模修繕を「防災施策」として計画書のなかに位置づけている、と読むことができます。これは総会議案書の書き出しに使える一行です。

本工事は美観の維持のためだけに行うものではありません。掛川市耐震改修促進計画(第4期)が課題として挙げる「経年劣化への対応」および「外装材等の非構造部材の落下防止」に該当する、居住者と通行人の安全に直結する工事です。

「そろそろ12年経つので塗り替えます」と書くのと、上の一行を書くのとでは、総会の空気がまるで違います。理事会が何を根拠に判断したのかが、反対する側にも見えるからです。

なお、想定される地震の規模についても計画は静岡県第4次被害想定を引いて記載しています。私はここで危機感をあおるつもりはありません。ただ、外壁タイルは地震のときだけ落ちるものではない、ということだけは申し上げておきます。剥落は、風の強い日にも、大雨の翌日にも起きます。


4. 危険ブロック塀の除却・建替え補助——「限度額なし」は見逃せない

掛川市のブロック塀補助は、この連載で扱った自治体のなかでも設計が細かく、そして一部に限度額の定めがありません。

事業 面する道路 単価 補助率 限度額
除却 一般道(市内全域) 9,200円/m 2分の1 200,000円
除却 避難路沿道等 19,980円/m 3分の2 限度額なし
建替え 避難路沿道等 58,380円/m 3分の2 限度額なし

「避難路沿道等」とは、掛川市耐震改修促進計画に規定する通学路・緊急輸送路・広域避難所の沿道を指します。通学路は「小学生が市内の小学校に通学するために移動する経路」と定義されています。

限度額がない、というのはかなり大きな話です。たとえば敷地の道路側に40メートルのブロック塀があり、そこが通学路に面していた場合を試算してみます。

塀の長さ 除却の基準額(19,980円/m) 補助見込(3分の2)
20m 399,600円 約266,000円
40m 799,200円 約532,000円
60m 1,198,800円 約799,000円
塀の長さ 建替えの基準額(58,380円/m) 補助見込(3分の2)
20m 1,167,600円 約778,000円
40m 2,335,200円 約1,556,000円
60m 3,502,800円 約2,335,000円

もちろん実際の交付額は「工事費」と「基準額」の少ないほうが基礎になりますし、予算の範囲内で危険度の高いものから優先されます。それでも、外構をあわせて直したい組合にとっては桁がひとつ違う話です。

4-1. 順番を間違えると補助が消える一行

条件のなかに、次の一文があります。

ブロック塀等の解体前に市職員による写真確認もしくは現地調査を受けること。

壊してからでは対象になりません。 大規模修繕の工事中に「ついでに古い塀も撤去しておきました」となった瞬間に、この補助は消えます。工程表に「塀の解体前に市の現地確認」というマイルストーンを一本立ててください。

もうひとつ、当該年度内(2月末まで)に工事が完了することという条件もあります。3月完了予定の工程では間に合いません。

4-2. 大規模修繕と同じ議案にまとめるべき理由

外構工事を別の年に回さず、大規模修繕と同一の議案にすることをお勧めします。理由は4つあります。

  1. ガードマン・仮囲い・養生を共用でき、単独発注より安くなる
  2. 近隣へのあいさつが1回で済む
  3. 新しい外壁色にあわせてフェンスの色を選べる
  4. 管理組合が意思決定できるのは、原則として年1回の定時総会だけ。別々の年に議案を立てれば、それだけで2年かかる

4つ目が最大の理由です。管理組合の時間は、工期ではなく総会の周期で流れています。

窓口は除却・建替えとも くらしデザイン課 建築営繕係 0537-21-1152 です。診断補助と同じ窓口ですから、電話は1本で足ります。


5. マンション長寿命化促進税制——掛川市のサイトには書かれていません

5-1. まず事実関係

掛川市の固定資産税・都市計画税のページの子ページは、次の7件です。

  • 固定資産税の減免について
  • 固定資産税・都市計画税納税通知書について
  • 固定資産税・都市計画税のあらましについて
  • 土地・家屋について
  • 償却資産について
  • 各種様式
  • 共有名義の固定資産税・都市計画税について

さらに「土地・家屋について」の下も確認しましたが、改修に関する減額の説明は「新築住宅に対する固定資産税の軽減について」の1本だけで、マンション長寿命化促進税制の専用ページは掛川市のサイトに存在しません。耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修による減額の説明ページも見当たりませんでした。

この連載では、同じ構図に3回目の遭遇です。清水町・函南町には税制の専用ページがなく、磐田市では税金のページではなく住宅政策のページに書かれていました。掛川市は、私が確認できた範囲ではどちらにも見当たらない、というパターンです。

ここで大事なのは、「市のサイトにページがないこと」と「制度が使えないこと」は別だという点です。マンション長寿命化促進税制は地方税法にもとづく全国共通の制度で、市町村が実施するかどうかを選べる制度ではありません。ページの有無は、市の規模と職員数の差であって、区分所有者の権利の差ではありません。

5-2. 制度の要点(国の制度として)

項目 内容
減額される税 固定資産税(都市計画税は対象外)
減額割合 3分の1(参酌基準)
対象 居住用専有部分。1戸あたり100平方メートル相当分まで
期間 工事完了年の翌年度分の1年度分
工事完了期限 令和9年3月31日
申告期限 工事完了から3か月以内
共通要件 築20年以上・10戸以上・過去に長寿命化工事の実績があること等
対象工事 外壁塗装等・床防水・屋根防水の3点セットを一体で実施

この記事の公開日から、工事完了期限まで残り約19か月です。

5-3. 設計段階でしか選べないこと

対象工事は「外壁塗装等」「床防水」「屋根防水」の3つが揃っている必要があります。ここに落とし穴があります。

積立金が心もとない組合で、「屋上防水は次回に回そう」という判断はごく自然に出ます。しかしその判断をした時点で、この税制の対象から外れる可能性があります。そしてこの判断は、見積りを取る前の設計段階でしか巻き戻せません。

設計事務所に一言、「長寿命化促進税制の対象工事要件を外さない構成にできますか」と聞くだけで、選択肢が残ります。聞かなければ、選択肢はなかったことになります。

5-4. 2つのルートと、その分かれ目

税制を使うには2つの入口があります。

認定ルート 助言・指導ルート
前提 管理計画認定を受けている 市区町村長の助言または指導を受けている
積立金の要件 令和3年9月1日以降に修繕積立金を引き上げていること等 積立金額が基準額以上であること等
総会への影響 積立金引上げの決議が必要になり得る 引上げ決議が不要な場合がある

分かれ目は修繕積立金の引き上げ決議が要るかどうかです。ここは総会運営そのものに直結します。国土交通省が令和8年4月1日付の通知(国住参マ第305号・第306号)にもとづく最新の様式と記入例を公開しています。理事会で「制度がよく分からない」という話になったら、記入例のPDFを1枚印刷して回すのがいちばん早い方法です。

5-5. 掛川市に電話で確かめること

資産税課 0537-21-1137 に、次のように尋ねてください。

「マンション長寿命化促進税制についてお尋ねします。市内の分譲マンションの管理組合です。
① 掛川市でこの減額の申告を受け付けていますか。必要書類の一覧をいただけますか。
② 管理組合の管理者等による一括申請は可能ですか。それとも区分所有者が各自で申告する必要がありますか。
③ 助言・指導ルートの『助言・指導内容実施等証明書』は、どの部署に申請すればよいですか。
工事はまだこれからです」

②は総会の通りやすさに直結します。「各自で申告してください」と「理事会でまとめて申告します」とでは、議案の重みがまるで違うからです。


6. 掛川市は「市街化区域が定められていない市」——都市計画税の論点

これは掛川市固有の、この連載で初めて扱う論点です。

掛川市の固定資産税・都市計画税のあらましには、次のように書かれています。

市街化区域が定められていない掛川市の場合は、都市計画区域のうち、条例で定める区域内に所在する土地・家屋

そして課税区域から除かれる地区として、原田・原泉・松葉・初馬西山・本谷地区、用途地区外の山林・白地農地、青地農地が挙げられています。税率は固定資産税1.4%、都市計画税0.3%です。

なぜこれが管理組合に関係するのか。マンション長寿命化促進税制で減額されるのは固定資産税だけで、都市計画税は減額されないからです。

したがって、総会で減額効果を説明するときに、「固定資産税と都市計画税をあわせて3分の1安くなります」と言ってしまうと不正確になります。正しくは「固定資産税部分の3分の1」です。しかも掛川市の場合、そもそも都市計画税がかかっていない区域の物件もあり得ます。

確かめ方は簡単で、毎年5月10日ごろに届く納税通知書を1枚見れば済みます。納期は6月・8月・10月・12月の4期です。理事会で「どなたか納税通知書をお持ちいただけますか」と一言お願いするだけで、説明の精度が上がります。


7. 管理計画認定制度——掛川市の申請先は確認できませんでした

静岡県のマンション管理計画認定制度のページは、見出しからして「対象:県内の町域」となっています。県が扱うのは町域だけで、市域は各市が担当するという整理です。

この連載で扱ってきた自治体を並べると、次のようになります。

自治体 認定の申請先 手数料
浜松市(政令市) 市 電子申請なら令和9年3月31日まで0円
磐田市 市(推進計画を策定して認定権者に) 市に支払う手数料等はなし
長泉町・清水町・函南町 静岡県 事前確認適合証あり4,000円/なし28,100円
掛川市 市サイトに記載を確認できず 不明

掛川市は「市」ですから県には申請できないはずですが、市がマンション管理適正化推進計画を策定しているかどうか、認定申請を受け付けているかどうかを、私は公開情報から確認できませんでした。確認できないことを、確認できたかのように書くわけにはいきません。

前項の資産税課への電話とあわせて、くらしデザイン課 0537-21-1152 に次の1文を足してください。

「掛川市はマンション管理計画認定制度の認定申請を受け付けていますか。受け付けていない場合、長寿命化促進税制の助言・指導ルートで使う証明書は、どちらで発行していただけますか」

なお認定を受けること自体には、税制とは切り離した価値もあります。フラット35の金利引下げや、住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資の金利優遇の対象になり得るからです。税制の期限に間に合わなくても、準備が無駄になるわけではありません。

平日の日中に役所へ電話しづらい理事長には、一般社団法人 日本マンション管理士会連合会の相談ダイヤル(月〜土 10時〜17時)という選択肢もあります。土曜に相談できるのは、勤め人の理事長にとって現実的な逃げ道です。


8. 掛川市の住宅系制度を「共用部の大規模修繕で使えるか」で仕分けする

理事会の時間を節約するために、判定を一覧にしておきます。

制度 共用部の大規模修繕で使えるか 根拠
既存建築物耐震診断事業 ○ 「木造住宅以外の建築物」。ただし共同住宅の明記なし・要確認
危険ブロック塀の除却・建替え ○ 敷地の塀が対象。避難路沿道等なら限度額なし
マンション長寿命化促進税制 ○ 国の制度。市サイトに記載はないが地方税法にもとづく
管理計画認定制度 △ 掛川市の受付状況を確認できず
住宅用防災施設等設置事業費補助金(感震ブレーカー) × 「1世帯1台限り」の世帯単位。共同住宅・共用部の記載なし
防災ベッド・耐震シェルター × 対象は木造住宅
新エネルギー機器等設置支援事業 × 令和8年度は制度自体がありません(市が明記)
木造住宅の耐震補助事業/建替え等 × 木造住宅限定
空き家除却/空き家流通応援/空き家活用モデル × 空き家が対象
勤労者住宅建設等資金貸付制度 × 新築・増改築・購入のための個人向け融資
長期優良住宅/低炭素建築物の認定 × 認定制度であって補助ではない

○が3つ。少なく見えるかもしれませんが、×だと分かっている制度に理事会の時間を使わずに済むことに価値があります。

なお感震ブレーカーは共用部には使えませんが、区分所有者個人には使えます(補助率3分の2、限度額1万5千円、1世帯1台限り、設置前に申請が必要、危機管理課 0537-21-1131)。説明会資料の最後の1ページに3行だけ入れておくと、「この理事会はちゃんと調べている」という印象につながります。議決の空気を変えるのは、こういう細部です。


9. 国のマンションストック長寿命化等モデル事業

国土交通省の令和8年度第3回の募集は令和8年9月14日(月)から9月18日(金)です。この記事の公開日から2週間足らずですので、今から書類を揃えるのは現実的ではありません。

今週やるべきことは1つだけです。公募要領のPDFを開いて、必要書類の一覧のページだけ印刷する(15分)。 それを次の理事会の資料に挟んでおけば、来年度の第1回募集には間に合います。


10. 掛川市の管理組合が使える県の無料資源

制度 内容
静岡県 マンション管理士派遣 県内10件程度・各組合2回まで・無料。令和8年11月14日(土)締切、派遣期限は令和9年1月31日
静岡県 マンション管理セミナー 県内各会場で開催。掛川市からはJR在来線で浜松会場(令和9年2月予定)が現実的
日本マンション管理士会連合会 相談ダイヤル 月〜土 10時〜17時
住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資/すまい・る債/ライフサイクルシミュレーション

管理士派遣の申込書に書く相談内容は、具体的なほど有効です。掛川市の組合であれば、たとえば次の3行です。

① 掛川市の既存建築物耐震診断事業を管理組合名義で申請できるか、手続の進め方を知りたい
② マンション長寿命化促進税制の2つのルートのうち、当組合はどちらを選ぶべきか
③ 修繕積立金の引き上げについて、総会で説明する資料の組み立て方

セミナーに行くときは、理事長ひとりで行かないでください。次期理事候補と2人で行ってください。 理事は1〜2年で交代します。ひとりで得た知識は、任期とともに消えます。


11. ここからは工事費の話——仮設費という「1行」

補助金の話が一段落したので、掛川市の管理組合が実際に削れるところに入ります。

大規模修繕の見積書のなかで、工事費全体の15〜25%程度を占めるのが仮設足場費です。金額にすると次のようになります。

工事費総額 仮設足場費の目安(15〜25%)
3,000万円 450万〜750万円
5,000万円 750万〜1,250万円
8,000万円 1,200万〜2,000万円

理事会では、20万円の植栽剪定は真剣に議論されるのに、750万円の「仮設工事一式」の1行はそのまま通ることがあります。理事の方が不真面目なのではありません。判断材料が渡されていないだけです。

見積書を受け取ったら、この1文を施工会社に伝えてください。

「仮設工事の金額を、架面積の平方メートル単価とリース期間に分解して出してください」

分解された瞬間に、議論できる数字になります。


12. 掛川市の物件でのハイブリッド工法の考え方

※ここから先は、私が代表を務める株式会社明誠のサービスの話を含みます。 そのつもりでお読みください。

私どもは、通常の足場を架ける工法、ロープアクセスによる無足場工法、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つを、建物の条件に合わせて選べるようにしています。詳しくはロープアクセス工法の解説サイトにまとめています。

掛川市の物件で効きやすい配分は、私の経験では次の3パターンです。

① 駐車場を潰さない配分

掛川市は自動車の保有率が高く、1世帯1台以上が前提の地域です。全周に足場を架けて6か月間ずっと駐車場が使えない、という工程は、住民の不満に直結します。総会の議決に効いてくるのはこの部分です。全周を一度に囲うのではなく、2面ずつ各1.5か月に分けるか、駐車場側だけロープアクセスに置き換えるという設計が可能です。代替駐車場の借上げ費が数か月分浮けば、それだけで金額の差が出ます。

② 低層は足場、高層はロープ

下地補修の数量が読みにくい低層階は足場で押さえ、面積が大きく数量が読みやすい高層階をロープに置き換える配分です。仮設費を抑えながら、補修の精度は落としません。

③ 前面道路が狭く、4トン車が入らない立地

足場材はトラック数台分の物量になります。前面道路が狭い、あるいは資機材置場が敷地内に取れない物件では、搬入自体に費用と日数がかかります。ロープアクセスは、そもそも足場部材が存在しません。これは営業トークではなく、物流の話です。道路条件が厳しい物件ほど、差が金額に出ます。

正直に申し上げること

ロープアクセス工法は万能ではありません。 私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる現場は、普通にあります。足場が有利になるのは、たとえば次のような場合です。

  1. 下地補修の数量が事前に読めず、大幅に増える見込みがある
  2. タイルの浮きが広範囲に及んでいる
  3. 外壁の形状が複雑で、ロープの支点が取りづらい
  4. 同時に外部建具やサッシまわりの大掛かりな改修を行う

また、バルコニー内部の作業が必要な点は、工法にかかわらず変わりません。 ロープアクセスにすれば居住者の立ち入りがゼロになる、ということはありません。減るのは、外部足場が窓の前に架かっている期間です。そこは誤解のないようにお伝えしています。

モデルケース(掛川市の一般的な条件を想定した試算)

JR掛川駅圏 郊外(大東・大須賀方面)
規模 築26年 6階 44戸 築33年 4階 26戸
工法 ハイブリッド ロープアクセス主体
従来(全面足場) 6,900万円 / 工期5.5か月 3,900万円 / 工期4.5か月
提案 5,950万円 / 工期4か月 3,150万円 / 工期3か月
差 ▲950万円(1戸あたり約22万円) ▲750万円(1戸あたり約29万円)

26戸で3,900万円なら1戸あたり150万円、150戸なら1戸あたり26万円前後です。戸数が小さいほど、工法の選定が1戸あたりの負担に効きます。 掛川市は政令市の浜松市と比べて中小規模の分譲マンションが多い地域ですから、この差は無視できません。

そして最も重要なことをもう一度書きます。工法は、設計を発注する前でなければ実質的に選べません。 全面足場を前提に設計図と数量が固まった後で「ロープでどうですか」と言っても、設計をやり直すことになります。工法の議論は、設計者を決める段階でしてください。


13. 修繕積立金が足りないときの4つの打ち手

打ち手 注意点
工事範囲を絞る 段階施工は仮設費が回数分かかる。税制の3点セット一体要件も外れ得る
借入れ 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資
一時金の徴収 総会の合意形成が最も重いが、借入利息はかからない
積立金の引き上げ 長寿命化促進税制の認定ルートの要件にもなり得る

議案書には、「一時金50万円」と「月々3,000円」の両方を載せてください。 選択肢が1つだと人は賛成か反対かで考えますが、2つあるとどちらがましかで考えます。通り方がまるで違います。


14. 見積書のチェックポイント5点

  1. 下地補修の仮定数量を超えた分の単価を、契約前に契約書へ明記させる(最重要)
  2. 仮設工事を架面積の平方メートル単価とリース期間に分解させる
  3. 高圧洗浄の排水計画が仕様書に書かれているか
  4. 気象条件による作業中止の判断基準と予備日の日数、予備日を超過した場合の足場リース延長費用の負担者
  5. 部位別の保証年数(外壁・シーリング・防水でそれぞれ違う)

1つ目について、もう少し書きます。契約書に、たとえば「ひび割れ補修○円/m、欠損部補修○円/箇所、タイル張替え○円/平方メートル」と単価を明記させてください。

なぜなら、工事が始まって足場が架かった状態で、管理組合が対等に交渉することはできないからです。工事を止めるわけにいかないからです。契約前に単価を決めておけば、数量が増えても計算するだけで済みます。これを嫌がる会社は、そこで分かります。


15. 掛川市の工事適期と、方位別に見るべきところ

時期 評価 理由
3月下旬〜5月上旬 ◎ 気温・湿度が安定。最も条件が良い
5月中旬〜6月 △ 梅雨。降雨中止で工期が延びる
7〜8月 △ 熱中症対策で作業時間に制限がかかる
9〜10月中旬 △ 台風
10月下旬〜11月 ◎ 秋晴れが続く
12〜2月 ○ 温暖で晴天率は高いが、遠州の空っ風で予備日が3〜5日増える

塗料の仕様書には、多くの場合「気温5℃以下・湿度85%以上では施工しない」といった条件が書かれています。冬季の掛川は気温そのものは比較的高いのですが、風速の条件で中止になる日が出ます。見積りの段階で「12月着工なら金額と工期はどうなりますか」と一言聞いてください。

方位別に見るべきところも、掛川の地形で変わります。

方位・立地 見るべき劣化
西〜北西面 遠州の空っ風が当たる面。塗膜の摩耗とシーリングの早期硬化。メッシュシートの開放・復旧の人工が工程に乗る
南面(大東・大須賀など海側) 遠州灘からの飛来塩分。鉄部の腐食と塗膜劣化が早い。手すり・避難ハッチを重点点検
北面(内陸・粟ヶ岳側) 放射冷却で朝の結露が出やすく、コケ・藻が付きやすい。防藻・防カビ仕様で対処
東面 朝日で温度変化が大きく、シーリングの伸縮疲労が出やすい

劣化診断を依頼するときに、「海側の物件です」あるいは「風の当たる面があります」と一言伝えるだけで、診断の重点が変わります。


16. 今週できること(合計3時間以内)

  1. 【今日中・電話1本】 くらしデザイン課 建築営繕係 0537-21-1152 へ。既存建築物耐震診断事業の3つの質問+管理計画認定の受付状況(本文2-4・7参照)
  2. 【今日中・電話1本】 資産税課 0537-21-1137 へ。長寿命化促進税制の3つの質問(本文5-5参照)
  3. 【15分】 国交省のモデル事業 令和8年度第3回の公募要領を開き、必要書類一覧のページだけ印刷する
  4. 【30分】 長期修繕計画書を出し、作成年月日と計画期間を確認する。25年以上の計画になっているか
  5. 【15分】 管理事務室の書庫で、前回の大規模修繕の契約書・竣工図・工事写真が残っているか確認する

5つ目は地味ですが、後で効きます。前回の施工会社が廃業していると、過去工事の証明書が二度と取れなくなるからです。今日なら、書庫を開けるだけで確認できます。


17. 令和9年3月31日から逆算するカレンダー

長寿命化促進税制の工事完了期限まで、公開日時点で約19か月です。

完了までの残り やること
19か月前(今) 電話2本。長期修繕計画の確認
18〜16か月前 劣化診断。設計者の選定
15〜13か月前 工法をここまでに決める(設計発注前)
13〜12か月前 設計・数量算出
12〜10か月前 施工会社の選定(相見積り)
定時総会 議決。ここが律速です
総会後 着工前写真の撮影(足場が架かる前)
着工〜完了 工期3〜6か月
完了後3か月以内 減額申告

工程を並べると分かるとおり、律速は工事ではなく総会です。年に1回しか意思決定の機会がないからです。

間に合わない組合もあると思います。それでも準備が無駄にならない理由を3つ挙げておきます。

  1. 期限が延長された実績はありますが、それを前提にするのは危険です。ただし準備した組合だけが恩恵を受けます
  2. 管理計画認定は、フラット35や共用部分リフォーム融資の金利優遇という、税制と切り離した価値があります
  3. 認定基準の項目(長期修繕計画の期間、積立金の設定、管理規約の整備)は、どのみち必要になります

証明書の落とし穴3つ

  • 建築士との契約に、「大規模の修繕等証明書」の発行を業務範囲として明記する。 後から頼むと追加費用になるか、断られます
  • 着工前の写真は、足場が架かり高圧洗浄が終わったら二度と撮れません。 撮影範囲と枚数を仕様書に明記し、議事録に残してください
  • 過去工事の証明書は、前回の施工会社が廃業していると取れません。 今日、書庫を確認してください

18. よくあるご質問

Q1. 掛川市に外壁塗装の補助金はありますか。
A. 私が確認した範囲では、共用部の外壁塗装そのものに対する市の補助は見当たりません。使える可能性があるのは耐震診断費の補助、ブロック塀の補助、そして国の長寿命化促進税制です。

Q2. うちは新耐震ですが、診断補助は使えますか。
A. 対象は昭和56年5月31日以前に建築された建物です。新耐震の物件は対象外です。掛川市は非木造の耐震化率が99.1%と高く、該当する物件は多くありません。

Q3. 診断補助の申請は管理組合名義でできますか。
A. 市のページには「所有者、居住者または使用者」とあるだけで、管理組合や区分所有についての記載がありません。0537-21-1152 でご確認ください。

Q4. ブロック塀の補助は、大規模修繕の途中で申請してもよいですか。
A. 解体前に市職員の写真確認または現地調査を受ける必要があります。壊してからでは対象外です。工程表に確認のタイミングを組み込んでください。

Q5. 長寿命化促進税制で、都市計画税も安くなりますか。
A. 減額されるのは固定資産税だけです。都市計画税は対象外です。掛川市は市街化区域が定められておらず、条例で定める区域内のみ課税されますので、納税通知書で課税の有無をご確認ください。

Q6. 「1年分だけ3分の1」では効果が小さいのでは。
A. 1戸あたりで見ると小さく感じますが、100戸規模なら組合全体では相応の金額になります。手続きは、管理者等による一括申請が可能であれば1回で済みます。費用対効果で判断してください。

Q7. 相見積りは何社取ればよいですか。
A. 3社が目安です。掛川市は東海道新幹線が停車し、東名・新東名のインターも近いため、浜松・磐田・袋井の会社に加えて名古屋圏・首都圏の会社も日帰り圏内です。「遠方だから割高」という前提は、掛川では当てはまりにくいと思います。

Q8. ロープアクセスにすれば足場は不要になりますか。
A. 建物によります。私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる現場も普通にあります。まずは現地を見せていただかないと判断できません。ご相談はお問い合わせページからお願いします。


19. ポイントまとめ

  1. 掛川市に共用部の工事そのものへの補助は見当たらない。探す時間はゼロにしてよい
  2. 既存建築物耐震診断事業は3分の2以内・200万円限度
  3. 対象は昭和56年5月31日以前の非木造建築物
  4. ただし原文に「共同住宅」「マンション」の記載はない。0537-21-1152 で確認
  5. 非木造の診断補助は令和4〜6年度の3年間で0件。制度は空いている
  6. 掛川市の非木造耐震化率は99.1%。訴求軸は耐震ではなく経年劣化と落下防止
  7. 市の耐震改修促進計画が「経年劣化」「外装材の落下防止」「設備配管」を明記
  8. 総会議案書の書き出しに、市の計画を根拠として引用できる
  9. ブロック塀は避難路沿道等なら3分の2・限度額なし
  10. 解体前に市職員の確認が必要。壊してからでは対象外
  11. ブロック塀は2月末までに工事完了が条件
  12. 外構は大規模修繕と同じ議案にまとめる。総会は年1回しかない
  13. 長寿命化促進税制の専用ページは掛川市サイトにない。だが制度は全国共通
  14. 減額されるのは固定資産税のみ。都市計画税は対象外
  15. 掛川市は市街化区域が定められていない。都市計画税の課税区域は納税通知書で確認
  16. 工事完了期限は令和9年3月31日。残り約19か月
  17. 対象工事は外壁塗装等・床防水・屋根防水の3点セット一体
  18. 「屋上防水は次回に」という判断が税制を外す。設計段階でしか戻せない
  19. 管理計画認定の掛川市での受付状況は確認できず。要問い合わせ
  20. 令和8年度の新エネ機器補助は市が「ありません」と明記
  21. 感震ブレーカーは共用部に使えないが、区分所有者への周知はできる
  22. 仮設足場は工事費の15〜25%。平方メートル単価とリース期間に分解させる
  23. 見積書の最重要点は、下地補修の数量超過分の単価を契約前に決めること
  24. 工法は設計発注前でなければ実質選べない
  25. 律速は工事ではなく総会。逆算して動く

20. 主なお問い合わせ先

窓口 電話 用件
掛川市 くらしデザイン課 建築営繕係 0537-21-1152 既存建築物耐震診断事業、ブロック塀補助、耐震改修促進計画
掛川市 財務部 資産税課 0537-21-1137 長寿命化促進税制、固定資産税・都市計画税
掛川市 危機管理課 防災対策係 0537-21-1131 感震ブレーカー等(区分所有者向け)
掛川市役所(代表) 0537-21-1111 〒436-8650 掛川市長谷一丁目1番地の1
静岡県 住まいづくり課 054-221-3084 マンション管理士派遣、セミナー
静岡県マンション管理士会 FAX 0544-27-6561 管理士派遣の申込
日本マンション管理士会連合会 相談ダイヤル 03-5801-0858 月〜土 10時〜17時

くらしデザイン課建築営繕係と資産税課は、いずれもFAXが 0537-21-1164 です。書類のやり取りが必要になったときのために控えておいてください。


21. おわりに——「積小為大」の土地で

掛川は、報徳のまちです。二宮尊徳の教えを受け継ぐ大日本報徳社が、掛川城のすぐ隣に本社を構えています。その中心にあるのが「積小為大」——小さな積み重ねが大きな成果になる、という考え方です。

修繕積立金という制度は、まさにこの言葉そのものだと思います。毎月数千円を、10年、20年と積む。1回の入金は小さくても、それが1億円の工事を可能にする。これほど「積小為大」を体現している仕組みも、そうないのではないでしょうか。

掛川市には、共用部の工事に現金が出る補助金はありません。それでも、市の耐震診断補助は3年間ずっと空いたまま用意されており、ブロック塀の補助には限度額がなく、国の税制は全国どこでも同じように使えます。制度がないのではなく、知られていないだけのものが、まだ残っています。

私がこの連載でいちばん惜しいと思うのは、制度があるのに知らずに諦めてしまう管理組合があることです。大きな市には丁寧なページと担当職員がいます。そうでない市では、自分から電話をかけないと情報にたどりつけません。その差が、そのまま各戸の負担の差になってしまいます。

ですから、この記事の結論は電話2本です。

掛川市 くらしデザイン課 建築営繕係 0537-21-1152。
掛川市 財務部 資産税課 0537-21-1137。

どちらも、今日かけられます。


大規模修繕の工法選定については、ロープアクセス工法の解説サイト(rope-access-method.com)で、足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の違いを写真つきで解説しています。掛川市周辺の物件についてのご相談は、ロープアクセスによる大規模修繕のページ、および施工事例のページもあわせてご覧ください。


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出典・参考資料

掛川市

国

関係団体


執筆者:本間幸紘(株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市)
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事を手がけています。足場工法、ロープアクセス工法(無足場工法)、両者を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物の条件に合った工法をご提案しています。

免責事項:本記事は2026年9月1日時点で公開されている情報にもとづいて作成しています。制度の内容・金額・期限は変更される場合があり、また予算枠に達した時点で受付が終了することがあります。申請にあたっては、必ず各窓口の最新情報をご確認ください。本記事は税務・法務に関する助言を目的としたものではありません。個別の判断については、各自治体の窓口および税理士等の専門家にご相談ください。

富士宮市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

2026年8月31日 更新

富士宮市で分譲マンションの理事長を務めている方、あるいは市内に賃貸マンションをお持ちのオーナーの方から、私がよく受ける質問があります。

「富士宮市に、マンションの大規模修繕そのものにお金を出してくれる補助金はありますか?」

正直に申し上げます。2026年8月31日時点で、富士宮市が分譲マンションの共用部の外壁塗装や防水工事に対して直接現金を出す、という制度は確認できませんでした。ただ、これで話が終わるなら、この記事を9,000字も書く意味がありません。

富士宮市には、マンションの管理組合が使える市の補助金が確かに存在します。耐震診断への補助は工事費の3分の2、上限240万円。ブロック塀の撤去は最大26.6万円。エレベーターの防災対策改修にも補助枠があります。しかも、これらの制度は驚くほど使われていません。市の公式資料によれば、特定建築物を除く建築物の耐震診断補助の実績は、令和3年度から令和6年度までの4年間でわずか5件です(出典:富士宮市耐震改修促進計画(第4期・令和8~12年度))。

私は株式会社明誠の本間と申します。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を、足場工法とロープアクセス工法(無足場工法)の両方で手がけてきました。この記事では、富士宮市の管理組合とオーナーが2026年度に本当に使える制度を、市役所の一次情報だけを頼りに整理します。


この記事で答える3つの質問

  1. 富士宮市のマンション管理組合が2026年度に使える市の補助金は何か?
  2. 国の制度(税制・モデル事業・融資)のうち、富士宮市のマンションに現実的に効くのはどれか?
  3. 補助金を待つより先に、修繕コストそのものを下げる方法はないのか?

結論から言います。富士宮市の管理組合が最初に電話すべき番号は2つです。建築住宅課(0544-22-1229/0544-22-1163)と、資産税課家屋係(0544-22-1249)。理由はこれから説明します。


結論:富士宮市のマンションで使える制度は「市3つ・国4つ」

まず全体像を1枚の表にします。2026年8月31日時点で、私が市の公式ページから確認できたものだけを載せています。

制度名 実施主体 内容 マンション共用部への適用 出典
建築物の耐震診断事業 富士宮市 費用の2/3、上限240万円 ◎ 非木造住宅として対象 市
ブロック塀等の安全確保事業 富士宮市 撤去 上限26.6万円/フェンス・生垣 上限33.3万円 ◎ 敷地内の塀が対象 市
住宅リフォーム宮クーポン事業 富士宮市 10万〜20万円分のクーポン券 △ 専有部のみ(共用部は対象外) 市
ゼロカーボン推進設備等導入費補助金 富士宮市 太陽光・蓄電池・省エネ設備等 △ 一般住宅用/事業者用/自治会用で条件が分かれる 市
マンション長寿命化促進税制 国(市が窓口) 翌年度の固定資産税を1/3減額 ◎ 大規模修繕そのものが対象 市
マンションストック長寿命化等モデル事業 国土交通省 調査・設計・工事費を補助 ◎ ただし先導性の審査あり 国交省
マンション共用部分リフォーム融資 住宅金融支援機構 管理組合名義の長期固定金利融資 ◎ 補助金ではなく融資 機構
みらいエコ住宅2026事業 国(3省連携) 省エネリフォームへの補助 △ 工事内容により判断が分かれる 国交省

この表を見て「思ったより多いな」と感じた方が多いはずです。私も富士宮市を調べ直して、正直に驚きました。市のホームページには制度がきちんと並んでいるのに、使われていない。ここが富士宮市の最大の特徴です。

なぜ「使われていない」と言い切れるのか

富士宮市が令和8年4月に策定した第4期耐震改修促進計画には、補助実績の実数が載っています。

区分 令和3年度 令和4年度 令和5年度 令和6年度 合計
建築物の耐震診断(特定建築物を除く) 2件 1件 0件 2件 5件
ブロック塀等の撤去 36件 20件 23件 14件 93件
ブロック塀等の建替え 7件 3件 2件 7件 19件
昇降機の防災対策改修 0件 0件 1件 0件 1件

(出典:富士宮市耐震改修促進計画(第4期)表2-11)

4年間で耐震診断が5件、エレベーターの防災対策改修に至っては1件。富士宮市には昭和55年以前に建てられた非木造住宅が1,473戸あり、そのうち400戸には耐震性がないと推計されています(令和5年住宅・土地統計調査に基づく市の推計)。400戸分の耐震性不足がある一方で、診断補助の利用は年1件前後。制度が足りないのではなく、制度に気づかれていないのです。


富士宮市の耐震診断補助は、マンションが正面から対象になる

私が富士宮市の制度で最も注目しているのが、この「建築物の耐震診断事業」です。

補助の中身:2/3補助・上限240万円

  • 対象:昭和56年5月31日以前に着工された非木造住宅および住宅以外の建築物の耐震診断
  • 補助額:事業に要する経費と基準額を比較して少ない方の額の3分の2以内、上限240万円
  • 基準額(非木造住宅):136,000円
  • 基準額(上記以外の建築物):1,000平方メートル以内は1平方メートルあたり3,670円、1,000平方メートル超2,000平方メートル以内は1,570円、2,000平方メートル超は1,050円
  • 財源内訳:国1/3・県1/6・市1/6
  • 窓口:建築住宅課建築指導係(0544-22-1229)

(出典:富士宮市「建築物・非木造住宅の耐震診断事業」)

分譲マンションは鉄筋コンクリート造ですから、この制度の「非木造住宅」に該当します。旧耐震基準(昭和56年5月31日以前着工)の分譲マンションをお持ちの管理組合であれば、正面から対象です。

「基準額」の読み方でつまずかないでください

ここは専門的なので丁寧に説明します。この補助は「かかった費用の3分の2」ではなく、「かかった費用と基準額を比べて、少ない方の3分の2」です。

たとえば延床3,000平方メートルのマンションで耐震診断を行い、見積が400万円だったとします。基準額は面積区分に応じて計算されるため、実際の補助額は市の算定によります。ここで大事なのは、見積を取る前に建築住宅課に電話して、自分の建物の基準額がいくらになるかを聞いておくことです。

私が現場で一番悔しい思いをするのは、理事長さんが善意で先に業者と契約してしまい、後から「事前申請が必要でした」と言われるケースです。富士宮市の要綱にもはっきり書かれています。

耐震診断をおこなう前に申請が必要となります。事後申請では補助の対象になりませんので、事前に建築住宅課までご相談ください。

これは太字で覚えてください。契約書にハンコを押す前に、電話1本。それだけで240万円の上限枠が生きるか死ぬかが決まります。

診断方法にも指定がある

富士宮市は診断方法として、平成18年1月25日国土交通省告示第184号の別添による方法(大臣が同等以上と認める方法を含む)を指定し、判定には静岡県耐震判定指標値(ET)を用いることを求めています。階数が3以上で床面積の合計が1,000平方メートル以上の建築物などでは、耐震診断評定書の写しも必要になります。

つまり、どの設計事務所に頼んでもよいわけではなく、静岡県の判定指標に対応できる構造設計者が必要です。これも事前相談の段階で確認しておくべき項目です。


富士宮市が2026年に「予防保全」へ舵を切ったことの意味

ここからが本題です。制度の話だけなら他のサイトにも書いてあります。私が富士宮市の管理組合にお伝えしたいのは、市の姿勢が2026年度に変わったということです。

令和8年度施政方針に書かれた2つの文章

令和8年度施政方針に、こういう一節があります。

市道及び橋りょうの長寿命化については、舗装及び橋りょうの安全確保のため、これまでの事後保全対応から一部を計画的かつ予防的な対応へと転換し、修繕費用のコスト削減を図ります。

もう一つ。

現在の市立病院は、建設から40年が経過し、建物の老朽化対策や病院運営の見直しを検討していかなければならない時期となっています。(中略)令和8年度から令和9年度にかけて、施設の長寿命化やリノベーション(大規模修繕)等に向けた施設改修検討業務を実施します。

(出典:富士宮市 令和8年度施政方針)

壊れてから直す「事後保全」から、壊れる前に手を打つ「予防保全」へ。そしてコスト削減。市立病院という築40年の巨大な建物について、市自身が「リノベーション(大規模修繕)」の検討に2年をかける。

これは、マンションの管理組合が直面している悩みとまったく同じ構造です。市が公共施設で予防保全に踏み出した年に、市内のマンションが事後保全のままでいる理由はありません。総会で「なぜ今なのか」と聞かれたら、私はこの施政方針を引用することをおすすめしています。行政と歩調が合っている、という説明は理事会での説得力が違います。

第4期耐震改修促進計画が「劣化」を防災問題として扱った

もう一つ、私が富士宮市の資料を読んで手が止まった箇所があります。令和8年4月に策定された第4期富士宮市耐震改修促進計画の「定性的な目標」です。

新築時は耐震性能が確保されていても、時間の経過とともに、ひび割れや変形、老朽化などの経年劣化による耐震性能の低下が懸念されるため、定期的な調査により劣化状況を把握し、必要な対策を講じるなど適切なメンテナンスにより、安全性確保を図るように周知する。

さらに、非構造部材についてもこう書かれています。

地震によって瓦屋根、窓ガラス、外装材等(以下「非構造部材等」という。)が落下すると、通行人等に死傷者が出るおそれがあるだけではなく、道路通行の妨げとなり避難や救助・消火活動にも影響を及ぼすことから、非構造部材等の安全性確保を図るように周知する。

(出典:富士宮市耐震改修促進計画(第4期)第2章2(3))

外装材の落下防止。これは大規模修繕そのものです。タイルの浮き、モルタルの浮き、シーリングの劣化、鉄部の腐食。管理組合が「そろそろ12年経つから」と考えている工事が、市の防災計画では「命を守るための対策」に位置づけられている。

私は理事長さまとお話しするとき、大規模修繕を「資産価値の維持」だけで説明しないようにしています。富士宮市のように断層帯を抱える地域では、外壁からタイルが1枚落ちて通行人に当たれば、管理組合が工作物責任を問われる可能性があります。防災と資産価値は、同じコインの裏表です。

富士宮市が抱える地震リスクは「2種類」ある

富士宮市の第4期計画には、この地域特有の指摘があります。

  • 南海トラフ巨大地震:マグニチュード9.0程度、静岡県全体で全壊・焼失棟数約30万棟の想定
  • 相模トラフ沿いの地震(元禄型関東地震):マグニチュード8.2程度
  • 富士川河口断層帯における地震:駿河トラフで発生する海溝型地震と連動して同時に活動すると推定され、この場合マグニチュード8程度になる可能性がある。陸上部で認められている断層が単独で活動する可能性もある

3つ目が富士宮市の固有リスクです。市の計画は、富士川河口断層帯を「比較的発生頻度が高いとされる地震」と明記しています。海溝型地震だけを想定していると、内陸直下の揺れを見落とすことになります。

また、計画は長周期地震動についても触れています。周期2秒から20秒の揺れは、木造住宅よりも固有周期の長い中高層建築物や免震建築物に効きます。マンションは、まさにこの帯域に入ります。

そしてもう一つ、私が現場屋として付け加えたいのは、熊本地震の教訓です。

平成28年4月の熊本地震では震度7の地震が2回発生し、1回目は地震に耐えることができたものの、そのダメージにより2回目で倒壊に至るものがあった。

繰り返しの揺れで蓄積したダメージは、外から見えません。外壁の目地に走った細いひび、屋上防水の立ち上がり部分のわずかな浮き。これを「定期的な調査により劣化状況を把握」することが、市の計画が求めている中身です。


マンション長寿命化促進税制:富士宮市は「窓口が明記されている」珍しい自治体

ここから国の制度に移ります。ただし、申告先は富士宮市です。

制度の概要

正式には「長寿命化に資する大規模の修繕等が行われたマンションに対する固定資産税の減額措置」といいます。要件を満たすマンションが長寿命化に資する大規模修繕を実施すると、工事完了の翌年度分の家屋にかかる固定資産税が3分の1減額されます(都市計画税は減額されません)。

富士宮市の公式ページに書かれた要件を、そのまま整理します。

項目 内容
建物の要件 居住用専有部分を有し、新築された日から20年以上経過している10戸以上のマンション
工事の履歴 大規模修繕工事を過去に1回以上適切に行っていること
積立金の要件 長寿命化に資する大規模修繕工事を適切に実施するために必要な修繕積立金が確保されていること
減額割合 翌年度分の家屋にかかる固定資産税の3分の1
減額期間 工事完了の翌年度から1年分
対象床面積 住宅一戸あたり100平方メートル相当分まで
申告期限 工事が完了した日から3か月以内
併用 耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修の減額制度とは併用不可
回数 適用は1回限り

(出典:富士宮市「大規模修繕等が行われたマンションに対する固定資産税の減額制度」)

「積立金が確保されている」を証明する2つのルート

多くの管理組合がつまずくのが、3つ目の「修繕積立金が確保されていること」です。富士宮市のページは、これを具体的に2つのルートで示しています。

ルートA:市から長期修繕計画に係る助言または指導を受ける

市から長期修繕計画に係る助言または指導を受けて、長期修繕計画の作成または見直しを行い、長期修繕計画が一定の基準に適合することとなった場合。

ルートB:管理計画認定を受ける際に積立金を引き上げる

市の認定を受けた管理計画認定マンションのうち、認定を受ける際に認定基準に適合させるために修繕積立金の引き上げを行った場合。

そして、ここが富士宮市の親切なところです。ページにはこう書かれています。

長期修繕計画に係る助言・指導や管理計画認定マンションに関しては、都市整備部建築住宅課(電話:0544-22-1163)にお問い合わせください。

部署名と直通番号が明記されている。私はこれまで多くの自治体のページを読んできましたが、「税務課に聞いてください」で終わっているところが少なくありません。富士宮市は、税の窓口(資産税課家屋係 0544-22-1249)と、計画・認定の窓口(建築住宅課 0544-22-1163)を分けて書いています。管理組合にとっては、これだけで無駄な電話のたらい回しが1回減ります。

申告に必要な書類

  • マンションの長寿命化のための大規模修繕に伴う固定資産税減額申告書(市の様式)
  • 大規模の修繕等証明書またはその写し
  • 過去工事証明書またはその写し
  • (ルートAの場合)助言・指導内容実施等証明書またはその写し ※富士宮市が発行
  • (ルートBの場合)修繕積立金引上証明書またはその写し
  • 総戸数が分かる書類(設計図書など)

申告書と総戸数が分かる書類以外の様式は、国土交通省のマンション長寿命化促進税制のページからダウンロードできます。

私が理事長さまに必ずお伝えする順番

この制度で最も多い失敗は、工事が終わってから慌てて調べ始めることです。申告期限は工事完了から3か月以内。証明書は建築士等が発行するもので、工事内容が要件を満たしていることを事後に証明できなければ出せません。

私はいつも、この順番でお願いしています。

  1. 総会の1年前:建築住宅課(0544-22-1163)に電話し、長期修繕計画の助言・指導の受け方を確認する
  2. 設計段階:施工会社と設計者に「長寿命化促進税制の証明書を出せる工事内容か」を確認する
  3. 契約前:過去の大規模修繕の記録(過去工事証明書の元になる資料)を探しておく
  4. 着工前:資産税課家屋係(0544-22-1249)に申告の段取りを確認する
  5. 完了後3か月以内:申告

3番の「過去の記録」が意外と厄介です。管理会社が変わっていたり、前回工事が20年前で書類が残っていなかったり。私が携わった現場でも、竣工図と請求書控えを引っ張り出すのに理事の方が2か月かけたことがあります。早めに動いてください。

住宅リフォーム宮クーポン事業は「専有部」で使う制度です

富士宮市を検索すると必ず出てくるのが、この「住宅リフォーム宮クーポン事業」です。地元の塗装店のサイトでも大きく紹介されています。ただ、管理組合の立場では誤解しやすい制度なので、丁寧に説明します。

令和8年度の内容

種類 交付クーポン券
一般 10万円分(うち5万円分は大型店舗でも使用可能)
子育て(未就学児童がいる世帯または妊婦がいる世帯) 15万円分(うち7万5千円分は大型店舗でも使用可能)
三世代同居(三世代が新たに同居するためのリフォーム) 20万円分(うち10万円分は大型店舗でも使用可能)
  • 予算額:4,500万円
  • 受付:郵便申請は令和8年4月1日から。窓口申請は子育て・三世代同居が4月13日から、一般が4月14日から。いずれも予算終了まで
  • 受付場所:富士宮商工会議所(0544-26-3101)
  • クーポン利用期間:令和8年8月1日から令和9年1月31日まで。令和9年2月1日以降は使用不可
  • 完了報告:令和8年11月30日までに提出できる方に限る

(出典:富士宮市「住宅リフォーム宮クーポン事業の受付について」)

対象になる人の条件を正確に読む

市のページには、対象者の条件がこう書かれています。

  • 市内に住宅を所有し、住んでいる人
  • 市税の滞納がないこと
  • 令和8年4月1日以降に着工するリフォーム工事であること
  • リフォーム工事の費用が30万円以上であること
  • 市内に本店がある事業者がリフォーム工事を行っていること
  • 過去に住宅リフォーム宮クーポン事業を利用していない人(三世代同居の場合を除く)

「市内に住宅を所有し、住んでいる人」。これが鍵です。申請主体は個人であり、管理組合ではありません。したがって、管理組合が発注する共用部の大規模修繕工事に、このクーポンを充てることはできないと読むのが自然です。

一方で、区分所有者ご自身が専有部(室内、玄関ドアの内側、専用使用部分の一部など)をリフォームする場合には使えます。私が現実的だと思うのは、大規模修繕でバルコニーの防水や手すりを直すタイミングに合わせて、各戸が窓や室内をリフォームするという組み合わせです。足場やゴンドラが架かっているタイミングは、専有部の窓交換をするには理想的な時期です。

ただし条件が2つあります。「令和8年4月1日以降に着工」「市内に本店がある事業者が施工」。市外の大手リフォーム会社ではクーポンが使えません。ここは管理組合として、住民の皆さまに情報提供する価値がある部分です。

予算枠との競争であることを忘れずに

予算額4,500万円。仮に一般(10万円分)だけで消化されれば450件で終わる計算です。市のページには「申請額がクーポン予算額に達した日の受付分は、抽選となります」「クーポン予算額に達した日以降は、申請の受付を終了します」と明記されています。2026年8月31日時点での残額は市のページに掲載されていないため、検討中の方は富士宮商工会議所(0544-26-3101)に直接ご確認ください。


ゼロカーボン推進設備等導入費補助金:残額が制度ごとに大きく違う

富士宮市の環境未来課が所管する「ゼロカーボン推進設備等導入費補助金」は、一般住宅用・事業者用・自治会用の3本立てです。マンション関係者にとっては、どれに当てはまるかで金額も残額もまったく変わります。

一般住宅用(区分所有者・自宅として住んでいる方)

設備 補助金額
住宅用太陽光発電システム 出力1kWあたり20,000円
家庭用燃料電池(エネファーム) 上限100,000円(リースは上限50,000円)
定置用リチウムイオン電池 上限100,000円(リースは上限50,000円)
ビークル・トゥ・ホームシステム 上限50,000円
クリーンエネルギー自動車 上限50,000円
HEMS 上限10,000円
ZEH 上限300,000円

応募期間は令和8年4月1日から令和9年1月29日まで。実績報告の提出期限は令和9年3月10日必着です。令和8年8月7日時点の予算残額は14,392,000円(自治会集会所等への補助額を含む)と公表されています。

(出典:富士宮市「ゼロカーボン推進設備等導入費補助金(一般住宅用)」)

事業者用(賃貸マンションのオーナー・法人)

賃貸マンションを法人・個人事業として所有している方は、こちらが該当します。

設備 補助金額
太陽光発電システム 1kWあたり20,000円(上限1,000,000円)
定置用リチウムイオン蓄電池 上限100,000円(リースは上限50,000円)
ビークル・トゥ・ホームシステム 上限50,000円
クリーンエネルギー自動車 上限50,000円
省エネ設備(空調・給湯・照明) 上限2,000,000円、下限200,000円

省エネ設備は、既存設備を更新し、更新前と比べて二酸化炭素排出量を5%以上削減できる設備に限られます。共用廊下の照明をLEDに全面更新する、共用部の給湯設備を高効率機に替える、といった工事が想定できます。

ただし、令和8年8月7日時点の予算残額は494,000円です。省エネ設備だけで44件の申請が入っており、事実上ほぼ枯渇しています。

(出典:富士宮市「ゼロカーボン推進設備等導入費補助金(事業者用)」)

この差は象徴的です。一般住宅用は1,439万円残っているのに、事業者用は49万円。同じ市の同じ名前の補助金でも、枠の減り方はまったく違う。オーナーの方は、令和9年度の枠を狙って年度当初(4月1日)に動く前提で計画を立てるのが現実的です。

なお、マンションの管理組合が自治会組織を持ち、集会所を所有している場合は「自治会用」の枠もあります。該当しそうな組合は環境未来課ゼロカーボン推進係(0544-22-1131)にご相談ください。


ブロック塀と、エレベーターという「盲点」

大規模修繕の話をしていると、必ず後回しにされる2つがあります。敷地の塀と、エレベーターです。

ブロック塀等の安全確保事業

富士宮市の第4期耐震改修促進計画(令和8年4月時点の制度概要)によると、補助内容は次のとおりです。

区分 対象 一敷地における上限額
撤去 避難路または避難地沿いの危険なブロック塀等 26.6万円
撤去 上記以外の道路沿いの危険なブロック塀等 20万円
建替(フェンス設置) 避難路または避難地沿い、ブロック塀等撤去後 33.3万円
建替(生垣設置) 避難路沿い、ブロック塀等撤去後 33.3万円

避難路沿いの撤去は国1/3・県1/6・市1/6、それ以外の道路沿いは国1/4・県1/8・市1/8という財源構成です。対象となる避難路は「住宅や事務所から避難所や避難地へ至る道」とされています(建築基準法第42条に基づく道路に該当しない私道を除く)。

マンションの敷地境界に古いブロック塀が残っている物件は、富士宮市内にもまだあります。大規模修繕の足場を組むタイミングで塀を撤去してフェンスに替えれば、足場・仮囲いの費用を二重に払わずに済みます。私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。

昇降機の防災対策改修

第4期計画の補助実績表には「昇降機の防災対策改修」という行があります。令和3年度から令和6年度までの実績は、令和5年度の1件のみ。

計画本文では、こう書かれています。

平成23年3月の東日本大震災では、エレベーターの釣合いおもりやエスカレーターの落下被害が発生するとともに、平成30年6月の大阪府北部地震では、多くのビルでエレベーターの緊急異常停止により、エレベーター内に人が閉じこめられるなどの事案が発生した

エレベーターの釣合いおもり脱落対策、地震時管制運転装置の設置、閉じ込め対策。中高層マンションでは、外壁より先に検討すべき項目かもしれません。制度の詳細と現在の運用は建築住宅課(0544-22-1229)にご確認ください。

国の制度:9月14日からの第3回募集に間に合うか

市の制度と並行して、国の制度も押さえておきます。

マンションストック長寿命化等モデル事業(令和8年度)

国土交通省が、老朽化マンションの再生検討から長寿命化に資する先導的な再生プロジェクトを公募し、優良事例やノウハウを収集して全国へ普及展開することを目的とする事業です。令和8年度の募集スケジュールは次のとおりです。

回 募集期間
第1回 令和8年4月1日〜4月15日
第2回 令和8年6月22日〜6月26日
第3回 令和8年9月14日〜9月18日

(出典:国土交通省「マンション総合対策モデル事業」、令和8年度提案募集のお知らせ)

第3回の募集期間は令和8年9月14日から9月18日まで。この記事を公開している8月31日から数えて2週間後です。第1回は4者4件の応募に対し1者1件の採択(出典:国土交通省 報道発表)。採択率は決して高くありませんが、応募数そのものが少ないことも事実です。

正直に申し上げます。この事業は「先導性」が審査されるため、一般的な外壁塗装と防水の更新だけでは通りません。ただ、次のような要素があるマンションは検討の価値があります。

  • 旧耐震基準で、耐震改修と長寿命化改修を一体で行う計画がある
  • 高経年で、バリアフリー化や省エネ改修を同時に行う
  • 管理不全の兆候があり、再生計画の検討そのものから支援を受けたい

準備には時間がかかります。今回の第3回に間に合わなくても、令和9年度の第1回(例年4月上旬)を狙って今から動くというのが現実的な選択です。

住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資

補助金ではありませんが、管理組合が使える資金調達の柱です。管理組合名義で申し込め、申込時の金利が全期間固定で適用されます。金利は毎月見直されるため、最新値は住宅金融支援機構の金利ページでご確認ください。参考までに、同ページに掲載されている災害復興住宅融資(マンション共用部分補修・管理組合申込み)の2026年9月1日からの適用金利は、返済期間1年以上10年以内で年2.56%です。

修繕積立金が不足している場合、私は「借りてでも今やるべきか」を一緒に計算するようにしています。工事を5年先送りすれば、劣化が進んで工事範囲が広がり、資材と労務の単価も上がります。借入金利と、5年分の工事費上昇率のどちらが大きいか。この比較を数字でやると、理事会の議論は驚くほど早く前に進みます。

みらいエコ住宅2026事業

国土交通省・環境省・経済産業省が連携する「住宅省エネ2026キャンペーン」の一環で、GX志向型住宅の新築、子育て世帯等を対象とする長期優良住宅・ZEH水準住宅の新築、住宅の省エネリフォーム等を支援する制度です(出典:国土交通省)。

マンションの共用部改修が対象になるかどうかは工事内容によって判断が分かれます。窓の断熱改修などは検討の余地がありますが、断定は避けます。適用可否は必ず、住宅省エネ2026キャンペーン補助事業合同お問い合わせ窓口(0570-081-789、受付9時から17時、土日祝を含む)にご確認ください。

管理計画認定制度

マンションの管理状況が一定の基準を満たすことを自治体が認定する制度です。認定を受けると、長寿命化促進税制のルートBが使えるほか、住宅金融支援機構の融資で金利引下げが受けられる場合があります。富士宮市の場合、認定に関する問い合わせ先は建築住宅課(0544-22-1163)と市のページに明記されています。


補助金より先に効く「工法の選択」という話

ここまで制度の話をしてきました。ここからが、私が本当にお伝えしたい部分です。

富士宮市のマンションは、足場代が重い

大規模修繕の見積書を開くと、たいてい一番上に「仮設工事」があります。全体の20%から25%を占めることも珍しくありません。塗料や防水材を1円単位で値切っても、この20%には手が付かない。

富士宮市の物件を見ていて、私が特に感じるのは次の3点です。

1. 敷地に余裕がない市街地物件が多い

富士宮駅周辺や中心市街地のマンションは、隣地との距離が近く、足場を組むための空間そのものが限られています。狭小地では足場の組み立て単価が上がります。

2. 風の影響を受けやすい

富士山南西麓という立地は、季節によって強い風が吹きます。足場にメッシュシートを張れば、それは巨大な帆になります。台風シーズンにシートを畳む・張り直すという作業が発生し、工期にも安全にも影響します。

3. 降灰・降雨・凍結のリスク

富士宮市は標高が高く、冬季の冷え込みが平野部より厳しい地域があります。塗装や防水は温度・湿度の管理がシビアで、足場を長期間架けたまま天候待ちになると、工期がずるずる延びます。工期が延びれば、その分の仮設費もかかります。

ロープアクセス工法という選択肢

ロープアクセス工法は、産業用ロープで職人が壁面に直接アプローチして施工する無足場工法です。ヨーロッパの産業ロープアクセス技術をベースにしたもので、日本でも建物の改修に本格的に使われるようになってきました。ロープアクセス工法の詳細な解説や安全基準については、姉妹サイトロープアクセスドットコムにまとめています。

この工法の利点を、富士宮市の状況に当てはめて整理します。

課題 足場工法 ロープアクセス工法
仮設費 全体の20〜25%程度を占めることが多い 大幅に圧縮できる
敷地の制約 組み立てスペースが必要 屋上の支点と壁面があれば施工可能
強風時 メッシュシートが受風面になる 受風面が小さい
居住者の生活 全戸のバルコニー前が塞がる期間が長い 施工箇所ごとに短期間
防犯 足場が侵入経路になるリスク 足場を組まないため該当しない
部分補修 足場を組み直すため割高 必要な面だけ即応できる
全面改修の効率 広い面を一度に施工でき有利 面積が大きいと工程管理が重要

大事なのは、ロープアクセスが万能ではないということです。塗り替え面積が非常に大きく、全面をまとめて仕上げる工事では、足場のほうが効率的で結果的に安いこともあります。ここを正直に言わない会社は信用しないでください。

だから明誠はハイブリッド工法を提案します

私たちは、足場・ロープアクセス・その両方を組み合わせたハイブリッド工法という3つの選択肢を持っています。

たとえば、こういう組み合わせです。

  • 道路側の低層部(1〜3階):足場を架けて、タイル打診と補修を丁寧に行う
  • 中高層部と、隣地に近くて足場が組みにくい面:ロープアクセスで施工
  • 屋上防水:足場とは無関係に並行施工
  • 5年後・10年後の部分補修:ロープアクセスで、足場を組まずに即応

この組み合わせによって、仮設費を圧縮しつつ、丁寧さが必要な部位には手をかけることができます。私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。

そして、この考え方は富士宮市の第4期耐震改修促進計画が求めている「定期的な調査により劣化状況を把握し、必要な対策を講じるなど適切なメンテナンス」と、ぴったり噛み合います。12年に一度だけ足場を組んで全部やる、という発想から、5年ごとに軽く点検・部分補修し、15年に一度しっかり全面改修するという発想へ。ロープアクセスがあると、この切り替えが現実的な費用でできるようになります。

大規模修繕の全体像については大規模修繕工事のご紹介を、無足場工法の考え方についてはロープアクセス工法のご紹介をご覧ください。

富士宮市の管理組合が今月中にやるべき5つのこと

制度を並べただけでは動けません。総会までの逆算で、具体的な行動に落とします。

1. 建物の着工年月日を確認する(所要時間:30分)

昭和56年5月31日以前に着工していれば、市の耐震診断補助(2/3・上限240万円)の対象です。竣工年ではなく着工年月日である点に注意してください。確認書や検査済証、竣工図の表紙で確認できます。

2. 建築住宅課に電話する(所要時間:15分)

  • 耐震診断補助について:0544-22-1229(建築指導係)
  • 長期修繕計画の助言・指導、管理計画認定について:0544-22-1163

聞くことは3つです。「うちの建物は耐震診断補助の対象か」「長期修繕計画の助言・指導はどう申し込むのか」「管理計画認定の申請手順と手数料は」。

3. 過去の大規模修繕の記録を探す(所要時間:数週間)

長寿命化促進税制には「過去に1回以上適切に大規模修繕を行っていること」という要件があり、過去工事証明書が必要になります。管理会社が変わっている場合、この探索に一番時間がかかります。今日から始めてください。

4. 修繕積立金の残高と長期修繕計画の更新年を確認する(所要時間:1時間)

長期修繕計画が5年以上更新されていないなら、それ自体が問題です。国土交通省の長期修繕計画標準様式では、おおむね5年ごとの見直しが想定されています。市の助言・指導を受けるルートAは、この見直しとセットで進めるのが効率的です。

5. 現状の劣化を「数字」で把握する(所要時間:1〜2か月)

タイルの浮きが何平方メートルあるのか。屋上防水の残存期間はどれくらいか。鉄部の腐食はどの階に集中しているのか。これがわからないまま総会に諮ると、「いくらかかるのかわからないものに賛成できない」で終わります。

私たちは、ロープアクセスによる調査もお請けしています。足場を組まずに全面を打診・目視でき、調査だけなら費用も工期も抑えられます。調査は工事の一部ではなく、意思決定の材料をつくる作業です。ここにお金をかけることを、私は惜しまないでほしいと思っています。


よくある質問(FAQ)

Q1. 富士宮市に、マンションの外壁塗装そのものへの補助金はありますか?

A. 2026年8月31日時点で、分譲マンションの共用部の外壁塗装に直接交付される市独自の補助金は確認できませんでした。ただし、旧耐震基準の建物であれば耐震診断に費用の3分の2(上限240万円)の補助があり、敷地のブロック塀撤去にも補助があります。工事完了後には長寿命化促進税制で固定資産税が1年分3分の1減額される可能性があります。

Q2. 住宅リフォーム宮クーポンを管理組合の工事に使えますか?

A. 対象者は「市内に住宅を所有し、住んでいる人」と定められているため、管理組合が発注する共用部工事には使えないと読むのが自然です。区分所有者ご自身の専有部リフォームには使えます。工事費30万円以上、市内に本店がある事業者による施工が条件です。詳細は富士宮商工会議所(0544-26-3101)へ。(出典:富士宮市)

Q3. 築25年でも長寿命化促進税制の対象になりますか?

A. なります。要件は「新築された日から20年以上経過している10戸以上のマンション」で、過去に1回以上適切に大規模修繕工事を行っていることなどが必要です。ただし適用は1回限りで、耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修の減額制度とは併用できません。申告は工事完了から3か月以内です。(出典:富士宮市)

Q4. ゼロカーボン補助金は、賃貸マンションのオーナーでも使えますか?

A. 事業者用の枠があり、共用部の照明・空調・給湯設備の更新などが「省エネ設備」(上限200万円、下限20万円)に該当し得ます。ただし令和8年8月7日時点の予算残額は494,000円で、事実上ほぼ枯渇しています。令和9年度の枠を4月1日の受付開始と同時に狙う前提で計画してください。問い合わせは環境未来課ゼロカーボン推進係(0544-22-1131)。(出典:富士宮市)

Q5. ロープアクセス工法は、足場より必ず安いのですか?

A. いいえ。塗り替え面積が大きく全面を一度に仕上げる工事では、足場のほうが効率的で結果的に安くなることがあります。ロープアクセスが強いのは、敷地に余裕がない物件、部分補修、調査、工期を短くしたい場合、居住者の生活影響を抑えたい場合です。建物ごとに比較して選ぶべきもので、私たちは足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つを比較した見積をお出ししています。

Q6. マンションストック長寿命化等モデル事業の令和8年度第3回募集はいつですか?

A. 令和8年9月14日から9月18日までです。先導性が審査されるため準備には相応の時間が必要で、間に合わない場合は令和9年度の募集を見据えて動くのが現実的です。(出典:国土交通省)


この記事のポイントまとめ

  • 富士宮市に共用部塗装への直接補助はないが、耐震診断2/3・上限240万円の補助が使える
  • その耐震診断補助の利用は4年間で5件のみ。制度は余っている
  • 長寿命化促進税制の窓口は建築住宅課0544-22-1163と資産税課0544-22-1249の2本立て
  • 宮クーポンは専有部向け。共用部工事には充てられないと読むのが自然
  • ゼロカーボン補助は事業者用の残額が49.4万円とほぼ枯渇(令和8年8月7日時点)
  • 市は令和8年度、公共施設で事後保全から予防保全へ転換を宣言した
  • 第4期耐震改修促進計画は外装材の落下防止を防災課題として明記している
  • 仮設費は工事費の20〜25%。工法選択が補助金より効くことがある

最後に

私は、補助金の記事を書きながら、いつも少し複雑な気持ちになります。制度を調べれば調べるほど、制度で埋められる金額には限りがあることがはっきりするからです。

固定資産税の1年分3分の1。耐震診断の240万円。ブロック塀の26.6万円。どれもありがたい制度ですが、数千万円規模になる大規模修繕の総額から見れば一部です。それでも私が一次情報を丁寧に拾って書くのは、制度を調べる過程で、管理組合が自分たちの建物を正確に知ることになるからです。

着工年月日を調べる。過去の工事記録を探す。長期修繕計画を開き直す。市役所に電話する。この一連の作業を終えたとき、理事会の議論の質は確実に上がっています。補助金は結果であって、目的ではありません。

富士宮市は令和8年度、市道も橋りょうも市立病院も「予防保全」で行くと決めました。行政が舵を切った年に、同じ市内のマンションが「壊れたら直す」のままでいる必要はないと、私は思います。

9月14日からのモデル事業第3回募集まで2週間。理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。

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出典・参考資料

※本記事は2026年8月31日時点で公開されている一次情報に基づいて作成しています。補助制度は予算の消化状況により受付を終了する場合があり、要件も年度途中で変更されることがあります。申請の前に必ず各窓口の最新情報をご確認ください。また、税制の適用可否については税務署または富士宮市資産税課にご確認ください。本記事は税務・法務の助言を目的とするものではありません。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円および静岡県でロープアクセス工法・足場工法・両者を組み合わせたハイブリッド工法を提案できる改修会社です。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟しています。

最終更新:2026年8月31日

ロープアクセス工法の技術情報・安全基準・施工事例は、姉妹サイトロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。

磐田市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

磐田市で分譲マンションの理事長をされている方に、この記事でお答えしたい質問は1つです。「磐田市には、うちの大規模修繕に使える制度が本当にあるのか」。

結論から申し上げます。磐田市には、外壁塗装や外壁改修そのものに現金が出る市の補助金はありません。これは私の推測ではなく、磐田市が公式サイトのよくある質問で「磐田市では、現在お住まいの住宅に行う外壁塗装、外壁改修等に対する助成制度(補助金等)はありません」とはっきり書いています(出典:磐田市 よくある質問「外壁塗装等の助成制度はありますか」)。

ここで記事を閉じてしまえば、それまでの話です。ただ、私はこの連載で静岡県内の市町を1つずつ調べてきて、磐田市で初めて出会った事実があります。磐田市は、政令指定都市ではない普通の市でありながら、マンション管理計画認定制度を自前で運用していて、しかも市に支払う手数料がゼロです。

これがどれだけ珍しいことかは、あとで数字で示します。先に申し上げたいのは、磐田市の管理組合にとって、いま最も費用対効果の高い行動は「補助金を探すこと」ではなく「無料で取れる認定を取って、固定資産税の減額につなげること」だということです。

私は東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事を20年近くやってきました。足場を架ける工事も、ロープアクセス工法(産業用ロープで職人が下りながら施工する無足場工法)も、その両方を組み合わせるハイブリッド工法も自社で提案できる立場から、磐田市の管理組合が今日から動ける形で整理します。

最終更新:2026年8月31日


この記事の結論|磐田市の管理組合が今週やるべきことは3つ

長い記事になりますので、先に結論を3行で置きます。

  1. 磐田市 建設部 建築住宅課 住宅管理グループ(0538-37-4851)に電話し、管理計画認定の申請手順を聞く。 市に払う手数料はゼロです。
  2. 着工前の写真を撮る段取りを、施工会社との契約に書き込む。 足場が架かって高圧洗浄が終わったら、改修前の状態はこの世に存在しなくなります。
  3. 補助金を探す時間を、工法の比較と業者の相見積りに振り替える。 磐田市に外壁の補助金はありません。削れるのは仮設費です。

以下、この3つの根拠を1つずつ説明していきます。


Q. 磐田市のマンションは、管理計画認定をどこに申請するのか

A. 磐田市に申請します。静岡県ではありません。

これは制度の設計上、とても大きな意味を持ちます。マンション管理計画認定制度は、マンションの管理組合が管理計画を自治体に申請し、一定の基準を満たしていれば「適正に管理されているマンション」として認定を受けられる制度です。認定を出せるのは、マンション管理適正化推進計画を作成した都道府県または市町村に限られます。

静岡県のページを見ると、見出しからして「マンション管理計画認定制度(対象:県内の町域)」と書かれています(出典:静岡県 マンション管理・分譲マンション対策)。つまり静岡県が認定事務を行うのは町の区域だけで、市の区域は各市が自分で認定権者になっているかどうかで決まります。

この連載で私が扱ってきた静岡県内の市町を並べると、構図が見えてきます。

自治体 区分 管理計画認定の申請先 市町に払う手数料
長泉町・清水町・函南町 町 静岡県 4,000円(事前確認適合証あり)/28,100円(なし)
牧之原市・島田市・菊川市・御前崎市 市 公開情報からは申請先を確認できず ―
浜松市 政令指定都市 浜松市 電子申請なら令和9年3月31日まで0円
磐田市 市(政令市ではない) 磐田市 0円

(出典:静岡県、磐田市 マンション管理、浜松市 マンション管理計画認定制度)

磐田市のページには、こう書かれています。

「管理計画の認定基準は、国の基本的な方針で定められています。※磐田市独自の基準は設けていません。」
「申請には、(公財)マンション管理センターが発行する事前確認適合証が必要です。」
「市に支払う手数料等はありません。」

(出典:磐田市 マンション管理、更新日2026年8月21日)

私はこの3行を読んで、正直に言うと少し驚きました。人口16万人規模の市が、独自基準を設けず国の基準そのままで、手数料も取らずに認定制度を回している。県の町域なら28,100円かかるケースがある手続きが、磐田市では市への支払いがゼロです。


磐田市マンション管理適正化推進計画|目標は「15棟の認定」

磐田市が認定権者になれているのは、磐田市マンション管理適正化推進計画を策定しているからです。計画期間は令和6年4月1日から令和16年3月31日までの10年間で、目標として「15棟のマンションの管理計画の認定」が掲げられています(出典:磐田市マンション管理適正化推進計画 PDF)。

この「15棟」という数字を、私は2つの意味で読みました。

1つ目。市が本気で数を追いかけている。 目標を掲げている以上、担当課には認定を増やしたい動機があります。管理組合から相談が来ることを、市は歓迎する立場にあるということです。理事長が電話をかけて迷惑がられる話ではありません。

2つ目。まだ認定件数が多くない可能性がある。 10年で15棟という目標設定は、決して大きな数字ではありません。裏を返せば、いま相談すれば窓口の担当者と丁寧にやり取りできる可能性が高いということです。認定が殺到している自治体では、こうはいきません。

私はいつも理事長さまに、「制度は、使う人が少ないうちが一番使いやすい」とお伝えしています。行列ができてから並ぶより、行列ができる前に窓口に行ったほうが、教えてもらえる情報の密度が違います。


認定を取るには何が要るのか|事前確認適合証が入口

磐田市の認定申請には、(公財)マンション管理センターが発行する事前確認適合証が必要です。これは市独自のルールではなく、多くの自治体が採用している「管理計画認定手続支援サービス」という仕組みです。

流れはこうなります。

  1. マンション管理センターの電子システムに、管理組合の情報と長期修繕計画の内容を入力する
  2. 事前確認講習を修了したマンション管理士が、国の認定基準に適合しているかを事前に確認する
  3. 適合していれば事前確認適合証が発行される
  4. その適合証を添えて、磐田市に認定申請する(市への手数料は0円)

(出典:(公財)マンション管理センター 管理計画認定手続支援サービス)

費用がかかるのは、市ではなくセンター側です。システム利用料が1申請あたり10,000円(税込)、これに事前確認審査料が加わります。センターに直接申し込むパターンや日本マンション管理士会連合会の適正化診断サービスを併用するパターンでは、事前確認審査料は長期修繕計画1計画あたり10,000円(税込)です(出典:同上)。

つまり長期修繕計画が1本の一般的な管理組合なら、合計20,000円前後で認定申請までたどり着ける計算になります。県の町域で事前確認適合証なしに申請すると28,100円かかることを思えば、磐田市の管理組合が置かれた条件はかなり良い部類です。

なお、申請できるのは申請者本人か、委任を受けた代理人(行政書士に限る)のみです。管理会社に丸投げできる手続きではない点は、理事会で共有しておいてください。

認定基準についての注意点を1つ。 令和7年のマンション関係法改正により、令和9年4月1日から管理計画認定制度が拡充され、認定基準も見直されることが公表されています(出典:国土交通省 マンションの管理計画認定制度)。長期の準備を進める組合は、令和9年4月以降の申請には新しい基準が適用されることを頭に置いてください。


マンション長寿命化促進税制|期限は令和9年3月31日、残り約19か月

認定を取ることの実利は、固定資産税にあります。マンション長寿命化促進税制です。

この税制は、一定の要件を満たすマンションが長寿命化に資する大規模修繕工事を行った場合に、工事完了の翌年度分の固定資産税(建物部分)を、1戸あたり100㎡相当分まで減額するというものです。減額の割合は市町村の条例で1/6から1/2の範囲内で定められ、国が示す参酌基準は1/3です(出典:国土交通省 マンションに関する税制、令和8年4月1日 国住参マ第306号 PDF)。

磐田市のページにも、明確に書かれています。

「一定の要件を満たすマンションについて、令和9年3月31日までに、長寿命化に資する大規模修繕工事(長寿命化工事)を行った場合、固定資産税の一部が減額されます。」
「※減額措置の対象になるためには、申告前かつ工事完了年度の賦課期日(1月1日)までに管理計画の認定を受ける必要があります。」

(出典:磐田市 マンション管理)

工事完了の期限は令和9年3月31日です。この記事を公開している2026年8月31日から数えて、残り約19か月しかありません。

対象となる工事は3点セット

対象になる長寿命化工事は、次の3つです。

# 工事の種類 補足
1 外壁塗装等工事 外壁の塗替え・タイル補修等
2 床防水工事 開放廊下・バルコニー等の床防水
3 屋根防水工事 屋上・屋根の防水

(出典:国土交通省 マンションに関する税制)

この3つを、同一の工事請負契約など一体として実施することが要件です。 ここが実務で最も落とし穴になります。

私は現場で何度も見てきました。積立金が足りないという理由で、「今回は外壁と廊下の床までにして、屋上防水は5年後にやりましょう」という結論になる理事会が本当に多い。判断としては理解できます。ただ、その決定をした瞬間に、この税制の対象から外れる可能性が出てきます。

設計の段階で工事範囲を決めるとき、税制のことを誰も口にしないまま議案が固まってしまう。これが一番もったいないパターンです。工事の見積りを取る前に、「長寿命化促進税制の3点セットを一体で施工した場合と、分割した場合で、税制の適用がどう変わりますか」と設計事務所に一言聞いておくだけで、選択肢が残ります。

なお、共通の要件として、①築20年以上、②総戸数10戸以上、③過去に長寿命化工事の実績があること、が必要です(出典:同上)。


2つのルートの分かれ目は「修繕積立金の引き上げ」

長寿命化促進税制を使うには、上の共通要件に加えて、次のどちらか一方のルートを通る必要があります。

ルートA:管理計画認定ルート ルートB:助言・指導ルート
前提 管理計画の認定を取得している 法第5条の2に基づく助言・指導を受けている
積立金の要件 令和3年9月1日以降に、長期修繕計画期間全体の修繕積立金平均額を認定基準の引上げ基準額まで引き上げたこと(20階未満・5,000㎡未満なら235円/㎡月など) 修繕積立金の平均額が基準額(20階未満・5,000㎡未満なら91円/㎡月など)以上であること
主な必要書類 認定通知書の写し/修繕積立金引上証明書/過去工事証明書/大規模の修繕等証明書 助言・指導内容実施等証明書/過去工事証明書/大規模の修繕等証明書
総会との関係 積立金の引き上げ決議が必要になる可能性が高い 引き上げは必須ではない

(出典:国土交通省 概要PDF(認定ルート)、概要PDF(助言・指導ルート))

2つのルートの実質的な分かれ目は、修繕積立金を引き上げる決議が要るかどうかです。 そしてこれは、管理組合にとって総会運営の話に直結します。

積立金の値上げは、どこの組合でも最も通しにくい議案です。一方で、助言・指導ルートなら引き上げそのものは要件ではありません。ただし、長期修繕計画の期間が30年以上あること、残存期間中に長寿命化工事等が2回以上計画されていること、一時金の徴収予定がないこと、最終年度に借入金残高がないことなど、計画の中身に条件がつきます。

どちらが自分の組合に向いているかは、長期修繕計画書を1冊開けばだいたい判断がつきます。理事会で1時間取って、計画の作成年月日と計画期間、そして修繕積立金の月額(㎡あたりに割り戻した数字)を確認してみてください。

なお、様式と記入例はすべて国土交通省のサイトで公開されています。理事会で「制度がよく分からない」という話になったら、記入例のPDFを1枚印刷して回すのが一番早いです。

助言・指導内容実施等証明書は誰が出すのか

助言・指導ルートを選ぶ場合、「助言・指導内容実施等証明書」を誰が発行するのかという疑問が必ず出ます。

国土交通省の通知には「助言・指導内容実施等証明書を発行できるのは、都道府県等とされています」と書かれています(出典:令和8年4月1日 国住参マ第306号 PDF)。この「都道府県等」は、マンション管理適正化法の定義上、市の区域内にあっては当該市を指します。したがって磐田市のマンションであれば、発行者は磐田市になると読めます。

ただし、磐田市のサイトに「当市が発行します」という直接の記載は見つかりませんでした。推測で埋めずに、窓口に確認してください。 電話で読み上げる質問文を用意しておきます。

「磐田市の分譲マンションの管理組合です。マンション長寿命化促進税制の助言・指導ルートを検討しています。助言・指導内容実施等証明書は、磐田市が発行していただけるものでしょうか。申請の窓口と、必要な書類の一覧をいただけますか。工事はこれからです。」

最後の「工事はこれからです」を必ず添えてください。 理由は3つあります。着工前でなければ撮れない写真があること、様式を先に知っていれば施工会社に必要書類の準備を指示できること、そして工事が始まってからでは間に合わない手続きがあることです。

問い合わせ先は、建設部 建築住宅課 住宅管理グループ 0538-37-4851(西庁舎2階)です。税の申告そのものについては、企画部 資産税課 家屋グループ 0538-37-4809(本庁舎1階)が窓口になります。磐田市は建築住宅課が西庁舎、資産税課が本庁舎と、建物が分かれています。訪問する場合は要注意です。


証明書の落とし穴3つ|着工前の写真は二度と撮れない

この連載で毎回書いていることですが、磐田市の理事長さまにも同じことをお伝えします。制度そのものより、証明書が取れなくなる事故のほうが、はるかに現実的なリスクです。

落とし穴1:大規模の修繕等証明書の発行が、建築士との契約に入っていない

この証明書は建築士等が発行します。ところが、設計監理を依頼する契約書の業務範囲に「大規模の修繕等証明書の発行」が書かれていないことがあります。工事が終わってから頼むと、追加費用や日程調整で揉めます。契約前に業務範囲へ明記させてください。

落とし穴2:改修前の写真が撮れていない

これが最も取り返しがつきません。足場が架かり、高圧洗浄が終わり、下地補修が始まったら、改修前の状態はこの世に存在しなくなります。

議事録に残す3行を、そのまま使ってください。

  1. 税制申告用の着工前写真について、施工会社に撮影を明示的に指示すること。
  2. 撮影範囲(各面・各階・部位別)と枚数を、仕様書に明記すること。
  3. 大規模の修繕等証明書の発行を、建築士との契約の業務範囲に含めること。

落とし穴3:過去工事証明書が取れない

過去に長寿命化工事を行った実績が要件になっているため、前回工事の記録が必要になります。ところが、前回の施工会社が廃業していて書類が取れないという事態は、実際にあります。

これは今日でも確認できます。管理事務室の書庫を開けて、前回の大規模修繕の契約書・工事写真・完了報告書が残っているかを見る。それだけです。15分で終わります。


磐田市は「外壁塗装の補助金はない」と明言している

ここからは、税制以外の話に移ります。まず、正直に書かなければならないことがあります。

冒頭に引用したとおり、磐田市はよくある質問のページで「磐田市では、現在お住まいの住宅に行う外壁塗装、外壁改修等に対する助成制度(補助金等)はありません」と明言しています(出典:磐田市 FAQ)。

この連載で、市自身がここまではっきり「ありません」と書いている自治体は初めてでした。多くの自治体は、該当ページが存在しないだけで、明言はしていません。磐田市は先回りして書いている。私はこれを、不親切ではなくむしろ誠実な対応だと受け止めました。管理組合が探し回る時間を減らしてくれているからです。

ですから磐田市の管理組合に対して、私は「補助金で工事費が安くなります」という提案は一切しません。磐田市で削れるのは、補助金ではなく仮設費です。この話は記事の後半で詳しくします。


それでも磐田市に4つある「使えるかもしれない」制度

外壁そのものへの補助はありません。ただし、大規模修繕に付帯して使える可能性がある制度は、私が調べた限り4つあります。いずれも建設部 建築住宅課 建築グループ(0538-37-4899)の所管です。1本の電話で4つとも聞けます。


【連載初】瓦屋根の耐風改修は「共同住宅を含む」と明文で書かれている

磐田市の制度で、私が最も注目したのがこれです。

住宅の瓦屋根の耐風診断・改修工事の助成制度の対象に、こう書かれています。

「令和3年12月31日以前に建築された瓦屋根の住宅(長屋、共同住宅、併用住宅を含む)」

(出典:磐田市 住宅の瓦屋根の耐風診断・改修工事の助成制度、更新日2026年4月27日)

「共同住宅」が括弧書きで名指しされています。 この連載で扱ってきた自治体の多くは、住宅系の補助について共同住宅を明示しておらず、対象かどうかを窓口に聞くしかありませんでした。磐田市は書いてある。書いてあるということは、想定されているということです。

助成の内容は次のとおりです。

事業 補助率 上限
耐風診断 診断費用の2/3 21,000円/棟
耐風改修 工事費用の23% 552,000円/棟

(出典:同上)

条件は、令和3年12月31日以前の建築であること、原則として屋根の全面について改修を行うこと、瓦屋根診断技士等が在籍する工事店に依頼することです。契約前(事業着手前)に交付決定が必要で、完了報告の提出期限は2月末です。

ただし、正直に申し上げます。この制度が効くのは、瓦屋根の共同住宅に限られます。 中高層のRC造マンションで陸屋根(平らな屋上)の物件には関係ありません。該当するのは、低層の長屋型・タウンハウス型の分譲住宅や、瓦屋根の共同住宅です。磐田市内にそうした物件が一定数あることを考えれば、確認する価値はあります。

自分の物件が該当するかは、屋上に上がって見れば5分で分かります。


建築物耐震診断の助成|ただし共同住宅の基準額には読み解きが要る

昭和56年5月31日以前に建築された非木造の建築物であれば、建築物耐震診断事業の対象になり得ます。

磐田市のページには、こう書かれています。

補助率:耐震診断費用と基準額を比較して、少ない額の3分の2以内 ※補助金交付額の限度 100万円
非木造戸建住宅 基準額:136,000円
木造住宅・非木造戸建住宅 以外 基準額:延べ面積×1,050円

(出典:磐田市 建築物耐震診断の助成制度)

一方、令和8年度の交付要綱を見ると、既存住宅の耐震診断について「136,000円/戸 共同住宅等にあっては、1棟を1戸とみなす」という記載があります(出典:令和8年度 磐田市建築物等耐震改修促進事業費補助金交付要綱 PDF)。

ここは断定を避けます。 分譲マンションが「延べ面積×1,050円」の区分で扱われるのか、「1棟を1戸とみなして136,000円」の区分で扱われるのかによって、補助額が桁違いに変わるからです。仮に延べ面積3,000㎡のマンションなら、前者は基準額315万円で補助上限100万円に到達しますが、後者なら約9万円です。

私が推測で数字を書いても、理事会の役には立ちません。建築住宅課 建築グループ 0538-37-4899 に、そのまま読み上げてください。

「昭和56年5月31日以前に建築された分譲マンションの管理組合です。建築物耐震診断事業の補助を検討しています。共同住宅の場合、基準額は『延べ面積×1,050円』と『1棟を1戸とみなして136,000円』のどちらで計算されますか。また、申請者は管理組合でよいのか、区分所有者個人になるのかも教えてください。」

申請者を誰にするかは、要綱に「管理組合」「区分所有」「共用部」という言葉が一切出てこないため、必ず事前確認が必要です。これは磐田市に限らず、多くの自治体で共通する論点です。

参考までに、他自治体との比較を置いておきます。

自治体 非木造の耐震診断の基準額単価
浜松市 1,000㎡以内 3,670円/㎡/1,000〜2,000㎡ 1,570円/㎡/2,000㎡超 1,050円/㎡
函南町 同上(3区分)
磐田市 区分なしの一律 1,050円/㎡(ページ記載)

(出典:浜松市、函南町、磐田市)

延べ面積が大きいマンションでは差は縮まりますが、小規模な物件では浜松市のほうが手厚い設計です。同じ静岡県内でも、制度の設計思想は自治体ごとに違います。これは磐田市が悪いという話ではなく、限られた予算をどこに配分するかという判断の差です。

なお、この制度には予算枠があり「予算の範囲内で補助金交付を行うため、上限に達した時点で年度途中であっても受付を終了します」と明記されています。契約締結前の申請が必須で、市税完納要件もあります。


緊急輸送路沿道なら、話が一段大きくなる

磐田市の耐震関連で、金額が大きく動く可能性があるのが建築物補強計画策定事業・建築物耐震化助成事業です。ただし対象は限定されています。

対象になるのは、次のいずれかです。

  1. 静岡県指定の緊急輸送路の沿道にあり、倒壊した場合に通行を妨げるおそれのある建築物
  2. 耐震改修促進法第7条第2号に規定する要安全確認計画記載建築物

(出典:磐田市 建築物の補強計画、耐震化の助成制度)

「緊急輸送路の通行を妨げるおそれのある建築物」の判定基準は、高さ12mを超える道路沿道の建築物のうち、高さが「道路幅の1/2+建物から道路境界線までの長さ」を超えるもの、などと定められています。中高層のマンションが幹線道路に面していれば、該当する可能性があります。

補強計画策定事業の基準額は、規模別に次のとおりです(戸建住宅を除く建築物)。

延べ面積(棟ごと) 基準額
1,000㎡未満 3,000,000円
1,000㎡以上 2,000㎡未満 4,800,000円
2,000㎡以上 3,000㎡未満 6,000,000円
3,000㎡以上 5,000㎡未満 7,200,000円
5,000㎡以上 10,000㎡未満 9,000,000円
10,000㎡以上 10,800,000円

補助率は、緊急輸送路沿道建築物なら2/3以内、要安全確認計画記載建築物なら5/6以内(要綱上は10/10の区分もあります)。耐震化助成については、緊急輸送路沿道の既存住宅で延べ面積(㎡)×34,100円を基準額とし、その2/3という設計です(出典:同上、および令和8年度交付要綱 PDF)。

つまり、旧耐震のマンションが県指定の緊急輸送路沿道にある場合、金額の桁が一段変わります。

自分の物件が沿道に該当するかは、電話1本で確認できます。

「磐田市内の分譲マンションです。所在地は○○です。この建物が静岡県指定の緊急輸送路の沿道建築物に該当するかを確認したいのですが。」

そして、旧耐震のマンションで大規模修繕を検討している組合には、順序の話を必ずお伝えしています。診断が先、外装が後です。 耐震補強で外壁に手を入れる可能性があるのに先に塗装をしてしまえば、足場を二度架けることになります。仮設費を二重に払うことほど無駄なことはありません。

自分の建物が旧耐震かどうかは、建築確認済証の交付日で確認できます。管理事務室の書庫か、登記簿謄本の新築年月日、あるいは重要事項説明書で分かります。


ブロック塀の撤去・建替えは、大規模修繕と同じ議案にまとめる

敷地の外周にブロック塀がある管理組合には、ブロック塀等の撤去・建替えの助成制度が使える可能性があります。

対象は「倒壊の危険のある4段積み以上のブロック塀、石塀、レンガ塀など(高さ60cm超)」で、避難路・通学路・緊急輸送路に面していることが条件です。

区分 事業 基準額 補助率
緊急輸送路沿道 撤去 19,980円/m 2/3以内
緊急輸送路沿道 建替え 58,380円/m 2/3以内
避難路沿道 撤去 9,200円/m 1/2以内
通学路沿道(市立小中学校の指定通学路) 撤去 9,200円/m 1/2以内
通学路沿道 建替え 47,600円/m 1/2以内

(出典:磐田市 ブロック塀等の撤去・建替えの助成制度、更新日2026年4月27日)

注意点を3つ。

1つ目。上限額(限度額)は、市のページとパンフレットのいずれにも記載が見当たりませんでした。 総額でいくらまでかは、要綱を確認するか窓口に聞いてください。ここは推測で書けません。

2つ目。ブロック塀への建替えは対象外です。 金属製フェンス、木塀、生け垣などへの造り替えが対象で、「原則として、現状の基礎の再利用はできません」と明記されています。

3つ目。撤去前に補助金の申請と交付決定が必要です。 パンフレットには「業者との契約は交付決定通知を受けた後に行ってください。事前に契約をしてしまうと補助対象とすることができません」と書かれています。

そのうえで、私からの実務提案です。ブロック塀の工事は、大規模修繕と同じ議案にまとめてください。

理由は3つあります。ガードマンと養生を共用できること、近隣へのあいさつが1回で済むこと、そして外構の色を新しい外壁の色と揃えられること。ただし、最大の理由は別にあります。

管理組合が物事を決められるのは、年1回の定時総会だけだからです。 別々の年に議案を立てれば、単純に2年かかります。理事も入れ替わります。同じ議案にまとめる価値は、金額よりもそこにあります。

申請前には市が現地調査を行いますが、「調査にはおおよそ2週間程度かかります。なお、現地での立ち合いは不要です」とされています。立会い不要ということは、理事長は電話をかけるだけでよいということです。先に調査を申し込んでおいて損はありません。


磐田市の住宅系17制度を「共用部の大規模修繕で使えるか」で一覧にした

理事会の時間は限られています。使えないと分かっている制度に時間を使わずに済むことにも、価値があります。 私が調べた範囲で、磐田市(および磐田市民が使える県事業)の住宅・環境系の制度を、共用部の大規模修繕で使えるかという一列で判定しました。

制度名 共用部の大規模修繕で使えるか 根拠・注意点 窓口
マンション管理計画認定制度 ◎ 磐田市が認定権者。市への手数料0円 建築住宅課 住宅管理 0538-37-4851
マンション長寿命化促進税制 ◎ 令和9年3月31日までの工事完了が期限 資産税課 0538-37-4809
住宅の瓦屋根の耐風診断・改修 ◎(瓦屋根の共同住宅に限る) 「長屋、共同住宅、併用住宅を含む」と明文 建築住宅課 建築 0538-37-4899
建築物耐震診断事業(非木造) ◯ 昭和56年5月31日以前。基準額の区分は要確認 建築住宅課 建築 0538-37-4899
ブロック塀等撤去・建替え ◯ 避難路・通学路・緊急輸送路沿いが条件 建築住宅課 建築 0538-37-4899
建築物補強計画策定・耐震化助成 △ 静岡県指定の緊急輸送路沿道等に限定 建築住宅課 建築 0538-37-4899
見付地区景観形成モデル事業 △ 見付地区の対象範囲に限定。事前相談必須 都市計画課 0538-37-4907
みんなのおうちに太陽光(県事業) △ 共同購入支援。管理組合名義の可否は要確認 県事務局 0120-752-300
浄化槽設置事業費補助金 △ 令和8年度は受付終了。共同住宅の可否は要確認 上下水道総務課 0538-58-3086
既存住宅取得等事業費補助金 × 「戸建ての住宅」に限定 建築住宅課 住宅管理 0538-37-4851
新エネ・省エネ設備普及促進奨励金 × 「法人は対象外」「賃貸住宅は対象外」 環境課 0538-37-4874
感震ブレーカー設置事業費補助金 × 「アパートやマンションなどの共同住宅は対象外」と明記。令和8年度は受付終了 危機管理課 0538-37-2116
雨水流出抑制貯留施設設置費補助 × 平成21年度で廃止 道路河川課 0538-37-4993
危険空き家等除却事業費補助金 × 除却(解体)が対象 建築住宅課 住宅管理 0538-37-4851
脱炭素投資促進事業費補助金 × 対象は中小企業者等。融資手数料の補助 産業政策課 0538-37-4904
いわた省エネ家電買替キャンペーン × 家電が対象。令和8年度の実施は未確認 環境課 0538-37-4874
外壁塗装・外壁改修の助成 × 「磐田市では…助成制度はありません」と市が明言 建築住宅課 住宅管理 0538-37-4851

(出典:各制度の磐田市公式ページ。詳細は記事末尾の出典欄を参照)

この表を見て、落胆された理事長さまもいると思います。◎が3つ、◯が2つ。決して多くはありません。

ただ、私はこう考えています。◎が3つあるということは、その3つに集中できるということです。 磐田市の管理組合は、10件の制度を1つずつ調べて時間を浪費する必要がありません。認定と税制と、(該当すれば)瓦屋根。この3つに絞って、あとは工事そのもののコストダウンに理事会の時間を使う。それが合理的です。


固定資産税の3つの改修減額|併用できる組み合わせとできない組み合わせ

磐田市の固定資産税のページには、長寿命化促進税制の専用ページはありません。固定資産税の軽減措置の子ページは9件あり、住宅用地特例、新築住宅、認定長期優良住宅、耐震改修、バリアフリー改修、省エネ改修、サービス付き高齢者向け住宅、空き家解体、わがまち特例です(出典:磐田市 固定資産税の軽減措置)。

長寿命化促進税制の説明は、税務側ではなく建築住宅課所管の「マンション管理」ページに置かれています。これは磐田市に限った話ではなく、この連載で扱った多くの自治体に共通する構図でした。ただ磐田市の場合、清水町や函南町と違って「どこかに書いてある」という点で条件は良いほうです。探す場所が税金のページではなく住宅のページだった、というだけの話です。

そして磐田市には、他の自治体ではあまり見かけない親切な記載があります。3つの改修減額の併用可否が、原文ではっきり書かれているのです。

組み合わせ 併用
耐震改修 × バリアフリー改修 できない
耐震改修 × 省エネ改修 できない
バリアフリー改修 × 省エネ改修 できる

(出典:耐震改修による減額、バリアフリー改修による減額、省エネ改修による減額)

各制度の内容も整理しておきます。

減額 減額割合 面積の上限 期間 主な要件
耐震改修 1/2(長期優良住宅の認定を受けた場合は2/3) 120㎡まで 翌年度1年間 昭和57年1月1日以前から所在。工事費50万円超
バリアフリー改修 1/3 100㎡まで 翌年度1年間 新築から10年以上経過。自己負担50万円超。居住者要件あり
省エネ改修 1/3(長期優良住宅の認定を受けた場合は2/3) 120㎡まで 翌年度1年間 平成26年4月1日以前から所在。工事費60万円超

いずれも改修工事完了後3か月以内の申告が必要です。「申請が改修工事完了日から3ヶ月を経過した場合は、減額が受けられない場合があります」と明記されています。

ここで、管理組合にとって重要な論点が1つ出てきます。共用部の申告(長寿命化促進税制)と、区分所有者個人の専有部の申告(窓の断熱改修など)が、同じ年度に重なる可能性があります。

管理組合が大規模修繕をやる年に、たまたま何戸かの区分所有者が個人で内窓を入れていた、というのはよくある話です。そのとき「両方申告できるのか」という質問が理事長のところに来ます。

私からの提案は、管理組合が税務判断をしないことです。 管理組合は、次の1行を工事のお知らせに入れるだけでよいと思います。

「本工事に伴い、区分所有者の皆さまの固定資産税に減額措置が適用される場合があります。ご自身で専有部の改修(内窓の設置等)を行っている方は、減額の重複について磐田市資産税課家屋グループ(0538-37-4809)へご相談ください。」

これで十分です。管理組合は周知役に徹する。判断は市がします。

なお、耐震改修による減額については、市のページ(HTML)に「令和8年3月31日までに」、添付されている令和8年度版のPDFに「令和13年3月31日までに」と、適用期限の表記が異なっていました。どちらが最新かは私には判断できません。この制度を使う予定がある方は、資産税課(0538-37-4809)に必ず確認してください。ウェブページの更新は、どの自治体でも追いつかないことがあります。


【要注意】令和8年11月2日から、磐田市の窓口受付時間が変わります

実務に直結する情報なので、独立した見出しにします。

磐田市は、令和8年11月2日(月曜)から窓口受付時間を「午前9時〜午後4時30分」に変更すると公表しています。対象は本庁舎(防災センター含む)、西庁舎、各支所、iプラザです(出典:磐田市 令和8年11月から窓口受付時間を変更します、更新日2026年7月28日)。

ただし、同じページにこう書かれています。

「職員の勤務時間や電話の受付時間(午前8時30分から午後5時15分)については、変更ありません。」

つまり、11月以降は「窓口は9時から16時30分、電話は8時30分から17時15分」になります。

これが理事長にとって何を意味するか。平日に休みが取りにくい理事長ほど、窓口ではなく電話を使うべきだということです。 朝8時30分から9時までの30分と、夕方16時30分から17時15分までの45分は、電話でしか市とやり取りできない時間帯になります。出勤前や退勤後に電話をかけるという選択肢が残っているのは、実は大きいことです。

私の経験上、自治体の窓口に電話がつながりやすいのは午前10時前後か午後2時台です。始業直後と昼休み明けは混みます。


静岡県のマンション管理セミナー|磐田会場は2日前に終わってしまいました

正直に書きます。静岡県が実施している令和8年度のマンション管理セミナーの磐田会場は、令和8年8月29日(土)に磐田商工会議所で開催され、この記事を公開する2日前に終了しています。申込期間も7月24日から8月17日までで、すでに締め切られていました(出典:静岡県 マンション管理・分譲マンション対策、磐田市 マンション管理)。

これを書かずに済ませることもできましたが、書きます。来年も同じ時期に開催される可能性が高いからです。 今年逃した組合は、来年7月にはアンテナを張っておいてください。

そして、県内の他会場ならまだ参加できます。令和8年度の日程は次のとおりです。

開催地 開催日 会場
浜松市 令和8年7月25日(土) 可美公園総合センター(終了)
磐田市 令和8年8月29日(土) 磐田商工会議所(終了)
三島市 令和8年9月12日(土) 三島市役所
熱海市 令和8年10月予定 未定
沼津市 令和8年10月予定 未定
静岡市 令和8年11月予定 未定
伊東市 令和8年12月予定 未定
富士市 令和9年2月予定 未定
浜松市 令和9年2月予定 未定

(出典:静岡県)

磐田市の管理組合にとって現実的なのは、令和9年2月予定の浜松市会場です。磐田駅から浜松駅までは在来線で20分程度、車でも東名高速で近い距離です。

そして毎回書いていることを、磐田市の理事長さまにも。理事長ひとりで行かないでください。次期理事の候補と2人で行ってください。 理事は毎年替わります。1人で聞いてきた話は、その人が理事を降りた瞬間に組合から消えます。2人で聞けば、翌年に引き継がれます。


静岡県のマンション管理士無料派遣|締切は令和8年11月14日

セミナーに間に合わなくても、こちらはまだ間に合います。

静岡県は、管理組合にマンション管理士を無料で派遣する制度を実施しています。令和8年度の条件は次のとおりです。

項目 内容
受付件数 10件(上限に達した時点で終了)
申込締切 令和8年11月14日(土)まで(定数に達し次第、早期終了)
派遣回数 各管理組合2回まで
派遣期限 令和9年1月31日(日)
申込先 一般社団法人 静岡県マンション管理士会
メール t_gotoh@tx.thn.ne.jp/FAX 0544-27-6561

(出典:静岡県 マンション管理・分譲マンション対策、令和8年度 派遣業務の概要 PDF、申込書 Word)

県内で10件です。 早い者勝ちの側面があります。申込書の「相談内容」欄に何を書くかで、派遣される管理士の準備が変わります。磐田市の組合であれば、私ならこの3行を書きます。

  1. 磐田市の管理計画認定を取得する場合の、当組合の長期修繕計画の不足点を確認したい。
  2. マンション長寿命化促進税制の2つのルート(認定ルート/助言・指導ルート)のうち、当組合はどちらを選ぶべきか助言がほしい。
  3. 修繕積立金の引き上げを総会に諮る場合の、区分所有者への説明の組み立て方を相談したい。

2回の派遣のうち1回目でこれを聞き、2回目に総会の直前で説明資料を見てもらう。この使い方が一番効率的だと思います。


国のモデル事業|令和8年度 第3回は9月14日〜18日

国土交通省のマンションストック長寿命化等モデル事業は、令和8年度は全3回の提案受付が予定されており、第1回と第2回はすでに終了しています。

回次 受付期間 状況
第1回 令和8年4月1日(水)〜4月15日(水) 終了
第2回 令和8年6月22日(月)〜6月26日(金) 終了
第3回 令和8年9月14日(月)〜9月18日(金) これから

(出典:国土交通省 マンションストック長寿命化等モデル事業、令和8年3月 募集要領 PDF)

正直に申し上げますが、この記事の公開から第3回の受付開始まで2週間しかありません。今から書類を揃えて応募するのは、多くの管理組合にとって現実的ではないと思います。

ですから、今週やることは1つだけに絞ってください。募集要領PDFを開いて、必要書類の一覧のページだけ印刷する。15分です。それを理事会の資料に挟んでおけば、来年度の第1回(例年4月)に間に合います。

問い合わせは、マンションストック長寿命化等モデル事業評価室事務局 03-6801-5902(平日10時〜16時、12時〜13時を除く)です。


ここからが本題です|磐田市で削れるのは、補助金ではなく仮設費

制度の話はここまでです。ここからが、私が現場の人間として一番お伝えしたい話になります。

大規模修繕工事の見積書を開くと、必ず一番上のほうに「仮設工事」という行があります。この仮設足場の費用は、工事費全体の15〜25%を占めるのが一般的です。

金額に置き換えると、こうなります。

工事費総額 仮設足場の概算(15〜25%)
3,000万円 450万〜750万円
5,000万円 750万〜1,250万円
8,000万円 1,200万〜2,000万円

私が理事会に呼ばれてよく感じることがあります。植栽の剪定20万円の是非は、みなさん真剣に議論されます。ところが750万円の足場の1行は、そのまま通っていくのです。

これは理事のみなさんが不真面目だからではありません。判断材料が渡されていないからです。「仮設工事一式 750万円」と書かれた1行に対して、素人が何を言えばいいのか分かるはずがありません。

ですから、見積書を受け取ったら、この1文を施工会社に伝えてください。

「仮設工事の金額を、架面積の平米単価とリース期間に分解して出してください。」

これだけで、議論できる形になります。架面積が何㎡で、単価が何円で、何か月借りるのか。分解されて初めて、「工期が1か月短くなればいくら安くなるのか」という話ができます。


磐田市の管理組合に、私が提案する3つのハイブリッド配分

ここで、私の会社がやっているロープアクセス工法の話をします。利益相反になりますので、はっきり申し上げておきます。以下は自社サービスの紹介です。そのうえで、押し売りにならないように、向かない場合も正直に書きます。

ロープアクセス工法は、産業用ロープで職人が屋上から下りながら施工する無足場工法です。足場を架けないので、仮設費が大きく削れ、工期も短くなります。ロープアクセス工法の技術情報や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。

磐田市の物件で、私が実際に提案することが多い配分は次の3つです。

配分1:駐車場を潰さない配分

磐田市は自動車の保有率が高い地域です。1世帯1台以上が前提の生活圏で、マンションの敷地内駐車場を長期間使えなくすることは、住民の不満に直結します。代替駐車場を借りれば、その費用が工事費に上乗せされます。

そこで、全周に足場を架けて6か月間すべての駐車場を潰すのではなく、面ごとに分けて2面ずつ各1.5か月で回す、あるいは駐車場側の面だけロープアクセスに置き換えるという配分をします。これは金額の話であると同時に、総会の議決の話です。

配分2:低層は足場、高層はロープ

下層階は下地補修の数量が読みにくく、足場を架けたほうが確実なことがあります。一方、上層階は劣化の程度が読みやすい面が多い。部位ごとに使い分けるのがハイブリッド工法の本質です。

配分3:隣地側・道路が狭い側だけロープ

磐田市内でも、前面道路が狭く4トン車が入らない立地の物件があります。足場は部材の搬入が必要で、10階建て1棟でトラック数台分になります。ロープアクセス工法は、そもそも足場部材が存在しません。これは営業トークではなく、物流の話です。道路条件が厳しい物件ほど、差が金額に出ます。

正直に申し上げます。ロープアクセス工法は万能ではありません

私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる現場は、普通にあります。次のような場合です。

  • 下地補修(ひび割れ・欠損部・タイル浮き)の数量が事前に読めない
  • タイルの浮きが広範囲に及んでいる可能性が高い
  • 外壁の形状が複雑で、ロープの支点が取りにくい
  • バルコニーの内部作業が広範囲にわたる

そして、これも正直に書きます。ロープアクセス工法でも、バルコニー内部の作業が必要な点は工法にかかわらず同じです。「ロープアクセスなら住戸への立ち入りがゼロになる」ということはありません。減るのは、外部足場が住戸の窓の前に架かっている期間です。


モデルケース2本|磐田駅圏と、海側の物件

具体的な数字がないとイメージしにくいと思いますので、実際の提案に近い形でモデルケースを2つ示します。実在の物件ではなく、条件を一般化したものです。

ケース1|JR磐田駅圏 築26年・6階建て・44戸

項目 全面足場 ハイブリッド
工事費 6,900万円 5,950万円
差額 ― ▲950万円(1戸あたり約22万円)
工期 5.5か月 4か月
駐車場の制限 全周5.5か月 2面ずつ各1.5か月

ケース2|海側(福田・竜洋方面) 築33年・4階建て・26戸

項目 全面足場 ロープアクセス主体
工事費 3,900万円 3,150万円
差額 ― ▲750万円(1戸あたり約29万円)
工期 4.5か月 3か月

ここで注目していただきたいのは、1戸あたりの金額です。

26戸で3,900万円なら、1戸あたり150万円。これが150戸の大規模マンションなら、同じ工事費でも1戸あたり26万円前後になります。戸数が小さいほど、工法の選定が1戸あたりの負担に効きます。

磐田市は、政令指定都市の浜松市と比べれば、中小規模の分譲マンションが多い地域です。だからこそ、工法の選定が効きます。

そして、これが最も重要な点です。工法は、設計を発注する前でなければ実質的に選べません。 設計事務所が「全面足場」を前提に図面と仕様書を作ってしまえば、後から工法を変えるのは事実上不可能です。


修繕積立金が足りないときの4つの打ち手

多くの管理組合が直面する現実の話をします。積立金が足りない。このとき取れる打ち手は、大きく4つです。

# 打ち手 注意点
1 工事範囲を絞る(段階施工) 仮設費が施工回数分かかります。また長寿命化促進税制の「3点セット一体施工」の要件を外す可能性があります
2 一時金を徴収する 総会の議決が最も重い。滞納リスクも
3 積立金を値上げする 認定ルートの要件にもつながる。ただし議決が重い
4 借入れる 住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資など

1番の段階施工は、一見すると賢い選択に見えて、実は割高になることが多い打ち手です。足場を2回架ければ、仮設費を2回払うことになります。そして先ほど書いたとおり、税制の要件からも外れかねません。

住宅金融支援機構には、管理組合が使える制度が3つあります。

  • 共用部分リフォーム融資:管理組合が借主となる融資
  • マンションすまい・る債:積立金を計画的に運用する仕組み
  • マンションライフサイクルシミュレーション:修繕積立金の計画を試算できる無料ツール

(出典:独立行政法人 住宅金融支援機構)

そして、総会に議案を出すときの実務的なコツを1つ。「一時金50万円」と「月々3,000円の値上げ」を、両方とも議案書に載せてください。

人は、選択肢が1つだけだと「賛成か反対か」で考えます。選択肢が2つあると「どちらがましか」で考えます。この違いは、議決の空気をかなり変えます。


見積書のチェック5点|足場が架かってからでは交渉できない

大規模修繕の見積書を受け取ったとき、素人でも確認できる5点を挙げます。

1. 下地補修の「仮定数量」を超えた分の単価が、契約書に明記されているか

これが最重要です。大規模修繕の見積書には、ひび割れ補修○m、欠損部補修○箇所、タイル張替え○㎡といった「仮定数量」が書かれています。実際に足場を架けて調べたら、この数量を超えることが普通にあります。

そのとき、超過分の単価が契約書に書かれていなければ、工事が始まって足場が架かった状態で、管理組合が対等に交渉することはできません。工事を止めるわけにいかないからです。

契約前に、この文を入れてもらってください。

「下地補修について、仮定数量を超過した部分の単価は、ひび割れ補修○円/m、欠損部補修○円/箇所、タイル張替え○円/㎡とし、実数精算とする。」

これを嫌がる会社は、そこで分かります。

2. 仮設工事が「一式」ではなく分解されているか

架面積の平米単価とリース期間に分解されているか。前述のとおりです。

3. 部位別の保証年数が明記されているか

外壁塗装、シーリング、防水はそれぞれ耐用年数が違います。「保証5年」と一括りにされている見積書は、内容を確認してください。

4. 気象条件による作業中止の基準と、予備日の扱い

見積書というより仕様書の話ですが、重要です。次の3文を聞いてください。

「強風・降雨による作業中止の判断基準は、仕様書のどこに書かれていますか。予備日は何日みていますか。予備日を超過した場合の足場リース延長費用は、誰の負担になりますか。」

3つ目が本命です。足場は日数で借りています。工期が延びれば、その分の費用が発生します。それを誰が負担するのかを、契約前に決めておいてください。

5. 高圧洗浄の排水計画が仕様書に入っているか

磐田市は天竜川と太田川に挟まれ、南は遠州灘に面しています。高圧洗浄で使った水の排水計画が仕様書に1ページあるだけで、住民説明会の質疑の空気が変わります。これは環境の話であると同時に、住民合意の話です。


磐田の工事適期と、方位別の劣化要因

工事適期

磐田市は温暖で晴天率が高い地域ですが、季節ごとの制約はあります。

時期 評価 理由
3月下旬〜5月上旬 ◎ 気温・湿度とも安定
5月中旬〜6月 △ 梅雨。工程に予備日が必要
7〜8月 △ 熱中症対策で作業時間に制限がかかる
9月〜10月中旬 △ 台風期
10月下旬〜11月 ◎ 最も条件が良い
12月〜2月 ◯ 温暖で晴天率が高く閑散期。ただし冬季の季節風で予備日が必要

塗装や防水には「気温5℃以下・湿度85%以上では施工しない」といった仕様条件が付くのが一般的です。12月着工を検討する場合は、こう聞いてください。

「12月着工なら、金額と工期はどうなりますか。閑散期の単価と、予備日の日数を教えてください。」

方位別の劣化要因(磐田市版)

方位・立地 主な劣化要因 対処の方向
南面 日照時間が長く紫外線量が大きい。チョーキング(塗膜の白亜化)が先行 耐候性の高い塗料の検討
南面(海側・福田/竜洋方面) 遠州灘からの飛来塩分。鉄部の腐食と塗膜劣化が早い 鉄部の下地処理の仕様を厚めに。手すり・避難ハッチの点検を重点化
北西面 冬季の季節風による雨がかり シーリングの早期劣化に注意
北面 日照が少なく乾きにくい。コケ・藻が発生しやすい 防藻・防カビ塗料の検討
磐田原台地の上(見付・国府台周辺) 風が抜けやすく、乾燥と季節風の影響が強い 予備日の設定を厚めに
低地(天竜川・太田川沿い) 地下水位が高く湿度が高い。1階まわりの湿気 基礎まわり・1階外壁の含水率確認

海に近い物件かどうかで、外壁の劣化のしかたはかなり変わります。築年数が同じでも、鉄部の傷み方がまるで違うことは珍しくありません。劣化診断を頼むときは、「海側の物件です」と一言伝えるだけで、診断の重点が変わります。


今週できること5項目|合計3時間以内

長い記事になりました。読み終えたあと何をすればいいのかを、5つに絞ります。

# やること 所要時間 期限
1 建築住宅課 住宅管理グループ(0538-37-4851)に電話し、管理計画認定の申請手順と必要書類を聞く 15分 今日中
2 建築住宅課 建築グループ(0538-37-4899)に電話し、①耐震診断の共同住宅の基準額 ②緊急輸送路沿道に該当するか ③ブロック塀の現地調査申込 を一度に聞く 20分 今日中
3 管理事務室の書庫で、前回の大規模修繕の契約書・工事写真・完了報告書が残っているかを確認する 15分 今週中
4 長期修繕計画書を開き、作成年月日・計画期間・修繕積立金の㎡単価を確認する 30分 今週中
5 静岡県マンション管理士無料派遣の申込書をダウンロードし、相談内容の3行を下書きする 30分 11月14日まで

1と2は、今日中の電話1本ずつです。磐田市の窓口は電話が8時30分から17時15分まで通じます(令和8年11月以降も電話の時間は変わりません)。


令和9年3月31日から逆算するカレンダー

長寿命化促進税制の工事完了期限(令和9年3月31日)から逆算すると、残り約19か月です。工程を並べてみます。

時期 やること
完了の18〜19か月前 劣化診断(1〜2か月)
完了の16〜17か月前 設計(2〜3か月)
完了の13〜16か月前 施工会社の選定(2〜3か月)
完了の12か月前まで 工法をここまでに決める(設計発注前が実質の分かれ目)
完了の最大12か月前 総会(年1回。ここが律速です)
完了の3〜6か月前 工事(3〜6か月)
着工直前 改修前の写真を撮る
完了後3か月以内 減額の申告

この表を見て気づいていただきたいのは、律速になっているのが工事ではなく総会だということです。

管理組合が物事を決められるのは、原則として年1回の定時総会だけです。そこで議案が通らなければ、次は1年後になります。19か月という残り時間の中に、総会は1回か2回しか入りません。

正直に書きます。この期限に間に合わない組合は、あります。それでも準備が無駄にならない理由を3つ挙げます。

  1. 期限が延長された実績はありますが、それを前提に計画を立てるのは危険です。ただ、準備を進めていた組合だけが延長の恩恵を受けられます。
  2. 管理計画の認定は、税制と切り離しても価値があります。フラット35や住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資で金利の優遇を受けられる場合があります。
  3. 認定基準の項目は、どのみち必要になるものばかりです。長期修繕計画の期間、修繕積立金の水準、総会の運営、管理規約の整備。認定を取らなくても、これらを整えること自体が資産価値の維持につながります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 磐田市に、マンションの外壁塗装に使える補助金はありますか。
A. ありません。磐田市が公式のよくある質問で「外壁塗装、外壁改修等に対する助成制度(補助金等)はありません」と明言しています(出典:磐田市 FAQ)。

Q2. 管理計画認定は、静岡県と磐田市のどちらに申請しますか。
A. 磐田市です。静岡県が認定事務を行うのは県内の町域のみで、磐田市は自らマンション管理適正化推進計画を策定し、認定権者になっています。市に支払う手数料はありません(出典:磐田市 マンション管理)。

Q3. 認定を取るのに、いくらかかりますか。
A. 磐田市への手数料は0円です。ただし(公財)マンション管理センターの事前確認適合証が必要で、システム利用料1申請10,000円(税込)と事前確認審査料(長期修繕計画1計画あたり10,000円税込のパターンあり)がかかります(出典:マンション管理センター)。

Q4. マンション長寿命化促進税制の期限はいつですか。
A. 令和9年3月31日までに長寿命化工事を完了することが要件です。減額は工事完了の翌年度分の固定資産税で、1戸あたり100㎡相当分まで、1/6〜1/2の範囲内で市町村条例が定める割合(国の参酌基準は1/3)です(出典:国土交通省)。

Q5. 築25年でも対象になりますか。
A. はい。長寿命化促進税制の共通要件は築20年以上、総戸数10戸以上、過去に長寿命化工事の実績があることです。築25年は要件を満たします(出典:同上)。

Q6. 外壁と床防水だけやって、屋上防水は次回に回してもいいですか。
A. 工事としては可能ですが、長寿命化促進税制の対象からは外れる可能性があります。対象工事は外壁塗装等・床防水・屋根防水の3点を一体で実施することが要件とされています。設計の段階で設計事務所に確認してください(出典:同上)。

Q7. 瓦屋根の共同住宅ですが、何か使える制度はありますか。
A. 住宅の瓦屋根の耐風診断・改修工事の助成制度が「長屋、共同住宅、併用住宅を含む」と明記しています。診断は2/3で最大21,000円/棟、改修は工事費の23%で最大552,000円/棟です。令和3年12月31日以前の建築で、屋根の全面改修が条件です(出典:磐田市)。

Q8. 昭和55年築の旧耐震マンションです。何から手を付けるべきですか。
A. 耐震診断が先、外装が後です。耐震補強で外壁に手を入れる可能性があるのに先に塗装をすると、足場を二度架けることになります。まず建築住宅課 建築グループ(0538-37-4899)に、耐震診断の助成と、物件が緊急輸送路沿道に該当するかを確認してください。


この記事のポイントまとめ

  • 磐田市に外壁塗装・外壁改修の補助金はなく、市自身がその旨を明言している
  • 磐田市は政令指定都市ではないが、自らマンション管理適正化推進計画を策定し認定権者になっている
  • 管理計画認定の市への手数料は0円。県の町域なら最大28,100円かかる手続き
  • 磐田市マンション管理適正化推進計画の目標は「15棟の認定」(令和6〜15年度)
  • マンション長寿命化促進税制の工事完了期限は令和9年3月31日、残り約19か月
  • 対象工事は外壁塗装等・床防水・屋根防水の3点セットを一体で施工すること
  • 2つのルートの分かれ目は、修繕積立金の引き上げ決議が要るかどうか
  • 改修前の写真は、足場が架かって高圧洗浄が終われば二度と撮れない
  • 瓦屋根の耐風改修は「長屋、共同住宅」を明文で対象にしている(最大552,000円/棟)
  • 建築物耐震診断の共同住宅の基準額は、ページと要綱で読み方が分かれるため要確認
  • 緊急輸送路沿道なら、補強計画と耐震化の助成で金額の桁が変わる
  • ブロック塀の助成は現地調査に約2週間、立会いは不要
  • 固定資産税の3つの改修減額は、耐震とバリアフリー・省エネは併用不可、バリアフリーと省エネは併用可
  • 令和8年11月2日から磐田市の窓口受付は9時〜16時30分に変更(電話は8時30分〜17時15分のまま)
  • 県のマンション管理セミナー磐田会場は8月29日に終了。次に近いのは令和9年2月予定の浜松会場
  • 静岡県のマンション管理士無料派遣は県内10件、締切は令和8年11月14日(土)
  • 国のモデル事業 令和8年度第3回は9月14日〜18日
  • 仮設足場は工事費の15〜25%。「一式」ではなく平米単価とリース期間に分解させる
  • 下地補修の仮定数量を超過した分の単価は、必ず契約前に明記させる
  • 戸数が小さいマンションほど、工法の選定が1戸あたりの負担に効く
  • 工法は設計を発注する前でなければ、実質的に選べない
  • 律速になるのは工事ではなく、年1回の総会

主なお問い合わせ先

用件 窓口 電話
管理計画認定・マンション管理全般 磐田市 建設部 建築住宅課 住宅管理グループ(西庁舎2階) 0538-37-4851
耐震診断・耐震化・瓦屋根・ブロック塀 磐田市 建設部 建築住宅課 建築グループ(西庁舎2階) 0538-37-4899
固定資産税の減額申告 磐田市 企画部 資産税課 家屋グループ(本庁舎1階) 0538-37-4809
市役所代表 磐田市役所(国府台3-1) 0538-37-2111
県のマンション施策全般 静岡県 くらし・環境部 建築住宅局 住まいづくり課 054-221-3084
マンション管理士 無料派遣の申込 一般社団法人 静岡県マンション管理士会 FAX 0544-27-6561
管理計画認定の相談(土曜も可) 一般社団法人 日本マンション管理士会連合会 相談ダイヤル 03-5801-0858(月〜土 10:00〜17:00)
事前確認適合証・支援サービス 公益財団法人 マンション管理センター 03-3222-1516
国のモデル事業 マンションストック長寿命化等モデル事業評価室事務局 03-6801-5902

磐田市の窓口の受付時間は、令和8年11月2日から午前9時〜午後4時30分に変わります。ただし電話の受付時間(午前8時30分〜午後5時15分)は変わりません。電話がつながりやすいのは、私の経験では午前10時前後か午後2時台です。


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明誠にご相談いただく場合

私どもは、足場を架ける従来工法、ロープアクセス工法(無足場工法)、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つを、自社で提案できる体制を取っています。日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しています。

「補助金があるから工事をしましょう」という話は、磐田市に関してはできません。制度がないからです。私どもがお手伝いできるのは、工法の選定によって仮設費と工期をどこまで圧縮できるか、という一点です。

見積りの前段階、理事会での論点整理だけでもお力になれることがあります。「まだ工法を決める段階ではない」という状態でこそ、聞いていただく価値があると思っています。


磐田市を調べていて、私が一番印象に残ったのは「市に支払う手数料等はありません」という一行でした。

制度を作るだけなら、どこの自治体でもできます。手数料を取らないと決めるのは、そこに人手と予算を割く判断をしたということです。10年で15棟という目標も、決して派手ではありませんが、地に足がついた数字だと感じました。

一方で、外壁塗装の補助金はないと先回りして書いてある。期待させないという誠実さと、使える制度は無料で開けておくという姿勢が、同じ市のサイトに同居しています。

ですから、この記事の結論は電話2本です。建築住宅課 住宅管理グループ 0538-37-4851、そして建築住宅課 建築グループ 0538-37-4899。どちらも西庁舎2階にあります。

制度があるのに知らずに諦めてしまう管理組合があることが、私はいちばん惜しいと思っています。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開しています。

最終更新:2026年8月31日


出典・参考資料

磐田市

静岡県

国

関係団体


免責事項:本記事は2026年8月31日時点で公開されている情報にもとづいて作成しています。制度の内容・金額・期限は変更される場合があり、また予算枠に達した時点で受付が終了することがあります。申請にあたっては、必ず各窓口の最新情報をご確認ください。本記事は税務・法務に関する助言を目的としたものではありません。個別の判断については、各自治体の窓口および税理士等の専門家にご相談ください。

浜松市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

この記事で答える質問は、ひとつです。浜松市の分譲マンション管理組合は、大規模修繕工事にあたって、どの公的支援をどの順番で使えばいいのか。

2026年8月30日 更新。

先に結論を書きます。浜松市の管理組合は、この連載でこれまで扱ってきたどの自治体よりも恵まれています。理由は制度の数ではありません。手続きの経路が短いからです。

私は東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事を20年近くやってきました。足場を架ける工事も、ロープアクセス工法(無足場工法)も、その両方を組み合わせるハイブリッド工法も、どれも現場で回してきた人間です。この連載では静岡県内の市町を順番に取り上げてきましたが、浜松市は少し性格が違います。政令指定都市だからです。

これが何を意味するのか。ここから具体的に書いていきます。

結論:浜松市の管理組合は、制度が「市の中だけで」完結する

長泉町・清水町・函南町の記事では、私は毎回こう書かなければなりませんでした。「この町は『町』なので、マンション管理計画の認定は静岡県に申請してください」と。牧之原市・島田市・菊川市・御前崎市の記事では逆に、「この市は『市』なので、県には申請できません。市に確認してください」と書きました。

浜松市は、そのどちらとも違います。

浜松市はマンション管理計画認定制度の認定権者であり、同時に、長寿命化促進税制で必要になる「助言・指導内容実施等証明書」の発行者でもあり、さらに固定資産税の減額申告を受け付ける課税庁でもあります。この3つがすべて浜松市役所の中にあります。

浜松市の資産税課のページには、証明書の発行者が明記されています。

証明書の種類 発行者
大規模の修繕等証明書 建築士事務所に所属する建築士、または住宅瑕疵担保責任保険法人
過去工事証明書 マンション管理士または建築士
修繕積立金引上証明書 マンション管理士または建築士
助言・指導内容実施等証明書 都道府県等(都道府県、政令指定都市)

(出典:浜松市「7.長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに係る固定資産税の減額」)

最後の行の括弧書きを、もう一度読んでください。「都道府県等(都道府県、政令指定都市)」。浜松市は政令指定都市です。つまり、この証明書を出すのは浜松市自身です。

函南町の管理組合が助言・指導ルートを使おうとすれば、静岡県住まいづくり課(054-221-3084/静岡市葵区)に連絡することになります。浜松市の管理組合は、市役所の住宅課(053-457-2457)に連絡すれば済みます。市役所本館は浜松市中央区元城町103-2、JR浜松駅から歩ける距離です。

「近い」というのは、行政手続きにおいて思っている以上に大きな要素です。理事長が平日に半日だけ時間を作れるかどうかで、制度を使えるかどうかが決まってしまう。これは制度設計の問題ではなく、管理組合の現実の問題です。

浜松市の窓口は3つだけ覚えればいい

大規模修繕まわりで浜松市の管理組合が関わる窓口は、実質3つです。

用件 課 電話番号 場所
管理計画認定、助言・指導、マンション管理全般、無料相談会 都市整備部 住宅課 053-457-2457 市役所本館(中央区元城町103-2)
固定資産税の減額申告(長寿命化促進税制ほか) 財務部 資産税課 053-457-2155 元目分庁舎(中央区元目町120-1)
耐震診断・耐震補強・アスベスト・ブロック塀の補助 都市整備部 建築行政課 053-457-2471 市役所本館4階

(出典:各制度ページの問い合わせ欄/浜松市)

資産税課だけ場所が違う点に注意してください。市役所本館ではなく、元目町の元目分庁舎です。申告書を持参するつもりで本館に行くと二度手間になります。

どこに聞けばいいか分からないときは、市民コールセンター(053-457-2111、8時30分〜17時15分)があります。開庁時間は月曜〜金曜の8時30分〜17時15分です。

【本記事の核心1】管理計画認定の手数料が、令和9年3月31日まで0円

ここが浜松市の最大の「使い時」です。

浜松市の管理計画認定の申請手数料は、次のとおりです。

管理計画認定手続支援サービスを利用する場合 利用しない場合
1件につき 0円(令和9年4月1日以降は4,000円) 28,100円
追加の長期修繕計画1つあたりの加算額 0円(令和9年4月1日以降は1,800円) 16,200円

(出典:浜松市「マンション管理計画認定制度」/更新日2026年7月2日)

浜松市のページには「制度開始から5年間(令和9年3月31日まで)は無料とします」と書かれています。

比較してみます。静岡県の町域(長泉町・清水町・函南町など)で県に申請する場合、事前確認の適合証があれば4,000円、なければ28,100円でした(令和8年4月1日改定)。浜松市は、支援サービスを利用した電子申請であれば、令和9年3月31日までは0円です。

一団地に複数の住棟があるマンションで長期修繕計画が3本あるケースなら、支援サービスを使わない場合は28,100円+16,200円×2=60,500円。使えば0円です。差は60,500円。

もちろん、管理計画認定手続支援サービスの利用には、(公財)マンション管理センターへのシステム利用料と事前確認審査料が別途かかります。ここは正直に書いておきます。それでも、市の手数料が0円である期間は限られている、という事実は変わりません。

令和9年3月31日は、浜松市の管理組合にとって「二重の締切」

ここで気づいてほしいことがあります。

  • 管理計画認定の手数料無料期間の終わり:令和9年3月31日
  • マンション長寿命化促進税制の対象工事の完了期限:令和9年3月31日

同じ日です。

長寿命化促進税制は、令和5年4月1日から令和9年3月31日までに長寿命化工事が完了したマンションが対象です(出典:浜松市 固定資産税の減額ページ)。そして認定制度の手数料無料期間も同じ日に終わる。

本記事の公開日から令和9年3月31日まで、およそ19か月です。

この19か月で何が起きるかを、工事屋の感覚で並べておきます。

段階 標準的にかかる期間
劣化診断・調査 1〜2か月
設計・仕様の確定 2〜3か月
施工会社の選定(相見積り・比較・面談) 2〜3か月
総会での議決 最大12か月待ち(定時総会が年1回のため)
工事 3〜6か月
完了後の減額申告 完了日から3か月以内

合計だけ見れば19か月に収まりそうに見えます。しかし律速になるのは総会です。管理組合が意思決定できるのは、原則として年1回の定時総会だけだからです。次の定時総会で議決できるかどうかが分岐点になります。

正直に書きますが、これから検討を始めて令和9年3月31日までに工事を完了させられる管理組合は、多くはありません。それでも今から動く価値がある理由を3つ挙げます。

  1. 税制の期限は延長されてきた実績がある。 令和8年度税制改正でも延長と要件緩和が行われています。ただし「延長されるはずだ」という前提で計画を組むのは危険です。
  2. 管理計画認定は税制と切り離しても価値がある。 【フラット35】および住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資で金利優遇を受けられます(出典:浜松市 認定制度ページ)。
  3. 準備が無駄にならない。 長期修繕計画の見直し、修繕積立金の水準確認、区分所有者名簿の整備。これらは認定基準の項目であると同時に、どのみち管理組合がやらなければならないことです。

【本記事の核心2】長寿命化促進税制は、管理者等が「一括申請」できる

これは、この連載で初めて明確に書ける論点です。浜松市のページに、はっきり書かれています。

マンション管理組合の管理者等による一括申請が可能です。
マンション管理組合の管理者等から必要な書類の提出があり、要件に該当すると認められる場合には、当該マンションの各納税義務者(区分所有者)からの申告書の提出がなくても、減額措置の適用が受けられます。

(出典:浜松市 固定資産税の減額ページ)

しかも同ページには「(マンション管理組合の管理者等が必要な書類を提出する場合は減額申告書は不要です。)」とも書かれています。

これが実務的に何を意味するか。

100戸のマンションで、区分所有者100人がそれぞれ申告書を書いて資産税課に出す——これは現実的ではありません。賃貸に出しているオーナーは市外に住んでいます。相続で名義が変わったばかりの住戸もあります。高齢で書類の記入が難しい方もいます。100人全員の足並みを揃えるのは、理事会の仕事としては重すぎる。

一括申請が可能なら、理事長(管理者等)が書類を揃えて資産税課に1回持っていけば、全戸に減額が適用されるということです。

理事会でこの制度を説明するとき、「各自で申告してください」と言うのと「理事会でまとめて申告します」と言うのとでは、議案の通りやすさがまるで違います。後者にできる、という点を必ず確認してください。確認先は資産税課(053-457-2155)です。

長寿命化促進税制の中身を、要件から確認する

制度の中身を整理します。すべて浜松市のページの記載に基づきます。

対象になるマンション((1)か(2)のどちらか)

(1)管理計画認定マンションの場合

項目 要件
対象家屋 管理計画認定マンションであること/居住用専有部分を有すること/新築から20年以上経過/総戸数10戸以上
過去の工事 過去に長寿命化工事が行われたもの(外壁・床防水・屋根防水が同時期である必要はない)
修繕積立金 令和3年9月1日以降に修繕積立金の平均額を管理計画の認定基準まで引き上げたもの

(2)助言又は指導を受けた管理組合の場合

項目 要件
対象家屋 マンション管理適正化法第5条の2第1項に基づく助言又は指導を受けた管理組合の管理者等に係るマンション/居住用専有部分を有すること/新築から20年以上経過/総戸数10戸以上
過去の工事 過去に長寿命化工事が行われたもの
長期修繕計画 助言又は指導を受けて長期修繕計画を作成または見直し、基準に適合することとなったもの

ここが分かれ目です。(1)は修繕積立金の引き上げが要件に入っています。(2)には入っていません。

修繕積立金の引き上げは総会決議事項です。つまりどちらのルートを選ぶかが、管理組合の総会運営そのものを左右します。(1)を選ぶなら「積立金の値上げ」という重い議案を通さなければならない。(2)なら長期修繕計画の見直しで足りる可能性がある。

そして浜松市は、(2)の助言・指導を出す主体でもあります。ここが政令指定都市の強みです。県に問い合わせて、県から様式をもらって、という往復が発生しません。

対象になる工事

次の3つすべてが、同一の工事請負契約の中で行われるなど、一体として扱われる工事であることが必要です。

  1. 外壁について行う修繕又は模様替(外壁塗装工事)
  2. 直接外気に開放されている廊下・バルコニー等について行う防水の措置(床防水工事)
  3. 屋上部分・屋根・ひさし等について行う防水の措置(屋根防水工事)

工事屋として、ここは強く言っておきたいところです。「屋上防水は積立金が厳しいから次回に回そう」という判断が、この税制の対象から外れる原因になります。

大規模修繕の設計段階で予算が足りないとき、削られやすいのが屋上防水です。外壁とバルコニー床防水は見た目に直結するので残る。屋上は住民の目に触れないので後回しになる。よくある話です。

しかしこの3点セットが揃わないと、税制は使えません。設計事務所や施工会社に見積りを依頼する段階で、「この3つを同一契約に入れた場合と入れない場合で、金額がどう変わるか」を出させてください。分けたほうが安く見えても、税の減額と、次回の仮設費が二重にかかることを合わせると、逆転するケースがあります。

減額の内容

項目 内容
対象税額 1戸あたり居住部分100平方メートルまでに相当する額(100平方メートル以下の家屋は全額)
減額率 3分の1
減額期間 1年間
都市計画税 減額なし

正直に書きます。1年間・3分の1です。固定資産税が年10万円の住戸なら、減額されるのは約3.3万円。「その程度か」と思う理事の方もいると思います。

ですが100戸のマンションなら、組合全体では300万円規模になり得ます。そして手続きは理事長の一括申請1回で済む。費用対効果でいえば、大規模修繕にまつわる事務作業の中で、これはかなり上位に来ます。

申告の手続きと必要書類

長寿命化工事が完了した日から3か月以内に、資産税課へ申告します。

必要な書類は以下のとおりです。

  • 大規模修繕工事等を行ったマンションに対する固定資産税の減額申告書(管理者等が提出する場合は不要)
  • 大規模の修繕等証明書
  • 過去工事証明書
  • 総戸数が分かる書類
  • 管理計画の認定通知書(認定マンションの場合)
  • 修繕積立金引上証明書(認定マンションの場合)
  • 助言・指導内容実施等証明書(助言・指導ルートの場合)

浜松市は申告書のPDF・Word・記載例(PDF)を公開しています。理事会で「制度がよく分からない」という話になったら、記載例を1枚印刷して回すのが最短です。

証明書には、着工前でないと取れないものがある

ここが実務上いちばん大事なところです。

上記の書類のうち、「大規模の修繕等証明書」は建築士事務所に所属する建築士が発行します。工事が終わってから「証明書を出してください」と頼んでも、工事前・工事中の状況を確認していない建築士は書けません。

だから、こうしてください。

  1. 設計監理を委託する建築士との契約に、「長寿命化促進税制の大規模の修繕等証明書の発行」を業務範囲として明記する。後から追加で頼むと別料金になるか、そもそも受けてもらえません。
  2. 着工前の写真を、施工会社に明示的に指示して撮らせる。足場が架かり、高圧洗浄が終わり、下地補修が始まったら、改修前の状態はもう存在しません。撮影範囲と枚数を仕様書に書いてください。
  3. 「過去工事証明書」は、前回工事の資料が必要になる。前回の施工会社が廃業していると、契約書も竣工図書も取れなくなります。理事会の書庫に何が残っているか、今のうちに確認してください。これは今日でもできます。

証明書が1枚足りないだけで、100戸分の減額が丸ごと消えます。工事の品質とは無関係のところで損をするのは、あまりに惜しい。

【本記事の核心3】浜松市の補助制度には「マンション」という行がある

ここからは金額の話です。この連載でこれまで扱ってきた市町の中で、浜松市の建築物耐震補強助成事業は、群を抜いて金額が大きい制度です。

浜松市の建築物耐震補強助成事業の対象用途一覧には、こう書かれています。

用途 規模
(中略:学校・病院・ホテル・事務所・工場など) 延べ面積1,000平方メートル以上
マンション 階数3以上かつ延べ面積1,000平方メートル以上

(出典:浜松市「建築物耐震補強助成事業」/更新日2026年4月8日)

用途の一覧の中に、独立した行として「マンション」があります。しかも規模の条件が他の用途と違う(階数3以上という条件が加わっている)。これは、浜松市が分譲マンションを補助対象として個別に想定していることの証拠です。

さらに補助金額の基準額表を見てください。

免震工法で施工する場合 83,800円/平方メートル
免震工法以外で施工する場合 マンション 50,200円/平方メートル
マンション以外 51,200円/平方メートル

基準額の単価表に「マンション」という専用行がある。これも本シリーズ初です。函南町では「非木造住宅(マンション含む)」という括弧書きを見つけて驚きましたが、浜松市は単価表のレベルでマンションを分けています。

補助金額の計算方法

浜松市のページの記載はこうです。

耐震改修工事に要する経費と基準額とを比較して、いずれか少ない額の23%の3分の2以内(上限1,600万円)

計算してみます。実際の耐震改修工事費が基準額を下回る一般的なケースで試算します。

耐震改修工事費 23%相当額 その3分の2 補助額(上限1,600万円)
3,000万円 690万円 460万円 460万円
5,000万円 1,150万円 766万円 766万円
8,000万円 1,840万円 1,226万円 1,226万円
1億2,000万円 2,760万円 1,840万円 1,600万円(上限)

(筆者試算。実際の交付額は建築行政課の審査によります)

上限1,600万円。この連載で扱ってきた制度の中で、桁がひとつ違います。ブロック塀の上限が20万円台、アスベスト除去が300万円、そして耐震補強が1,600万円です。

なお「要緊急安全確認大規模建築物」に該当する場合は607/1,800という別の率が適用されます。該当するかどうかは建築行政課に確認してください。

また、この事業は代理受領制度が使えます。補助金を管理組合が受け取ってから施工会社に払うのではなく、市から施工会社へ直接支払う仕組みです。管理組合の資金繰りの負担が軽くなります。これも見積り段階で施工会社に伝えておいてください。

ただし、対象は旧耐震(昭和56年5月31日以前)に限られます

条件を正確に書きます。次のすべてに該当することが必要です。

  • 昭和56年5月31日以前に建築された建築物
  • 倒壊の危険性がある建築物(Is値0.6未満またはq値1.0未満等)
  • 上記の用途・規模に該当する
  • 建築基準法第10条に規定する耐震改修に係る命令を受けていない
  • 耐震改修後に地震に対して安全な構造(Is値0.6以上かつq値1.0以上等)となる工事を実施する

つまり、築45年以上の分譲マンションの話です。浜松市内に該当する物件は決して多くはありません。しかし該当するなら、1,600万円という金額は管理組合の意思決定を根本から変えます。

自分のマンションが旧耐震かどうかは、建築確認済証の交付日で判断するのが確実です。管理組合の書庫か、管理会社の保管書類にあります。昭和56年5月31日以前の交付なら、旧耐震基準で確認を受けた建物です。

旧耐震なら、外装より耐震が先です

これは工事屋として毎回書いていることですが、浜松市は補助額が大きいぶん、より強く言います。

旧耐震のマンションで、耐震診断をしないまま大規模修繕(外壁・防水)を先に発注するのは、順番を間違えています。

理由は単純で、耐震補強工事は壁を壊し、ブレースや耐震壁を入れ、外壁の一部をやり直す工事だからです。先に外壁をきれいに塗ってから耐震補強をすれば、塗ったばかりの外壁を壊すことになります。そして足場を2回架けることになります。

仮設足場は工事費の15〜25%を占めます。5,000万円の工事なら750万円〜1,250万円。これを2回払うのか1回で済ませるのか。管理組合にとっては、そのまま積立金の話です。

耐震診断も、補助率は3分の2と明記されている

耐震補強の前段には耐震診断があります。浜松市の「非木造住宅・建築物耐震診断事業」の対象には、こう書かれています。

昭和56年5月31日以前に建築された非木造住宅、住宅以外の建築物及びマンション(※)
(※)マンションとは、地上3階以上かつ延べ面積1,000平方メートル以上のものをいいます。

(出典:浜松市「建築物耐震診断事業」/更新日2026年4月16日)

補助金額は、耐震診断に要する経費と基準額とを比較して少ない額の3分の2以内。基準額の単価は次のとおりです。

延べ面積の区分 単価
1,000平方メートル以内の部分 3,670円/平方メートル
1,000平方メートル超〜2,000平方メートル以内の部分 1,570円/平方メートル
2,000平方メートルを超える部分 1,050円/平方メートル

延べ面積ごとに基準額と補助上限(基準額の3分の2)を試算すると、次のようになります。

延べ面積 基準額 補助額の目安(基準額×2/3)
1,000平方メートル 367万円 約244万円
2,000平方メートル 524万円 約349万円
3,000平方メートル 629万円 約419万円
5,000平方メートル 839万円 約559万円
8,000平方メートル 1,154万円 約769万円

(筆者試算。実際の交付額は経費と基準額の少ないほうが基礎になります)

ここで連載の流れを補足しておきます。函南町の記事では、同じ単価表(3,670円/1,570円/1,050円)が公表されているものの、マンションを含む「その他建築物」欄に補助率の記載がなかったため、「基準額がそのまま交付額かどうかは分からない」と正直に書きました。浜松市は「3分の2以内」と明記しています。同じ静岡県内でも、公表の粒度がこれだけ違います。

なお、一定規模以上のものについては第三者機関による評定書の取得が必要です。診断費用の見積りには、現場調査費・耐震診断費・図面作成費・報告書作成費・各種試験費用・耐震評定書の費用が含まれます。

【最重要の落とし穴】浜松市の補助は、全部「契約前」です

浜松市の補助制度のページを順番に読んでいくと、同じ文言が繰り返し出てきます。

  • 建築物耐震診断事業:「手続きをする前に建築士事務所と契約等を進めてしまった場合は、補助の対象となりません」
  • 建築物耐震補強助成事業:同上
  • アスベスト対策事業:「事後の申請はできませんので、分析機関や飛散防止工事の施工業者と契約する前に、建築行政課と事前協議を行ってください」
  • ブロック塀等撤去改善事業:「決定通知書が届いてから契約をしてください。既に着手または完了している場合は補助金をお出しできません」

浜松市の補助制度は、例外なく「交付決定 → 契約 → 着工」の順序を要求します。

管理組合にとって、これは総会運営の問題です。よくある失敗はこうです。

総会で「大規模修繕工事を〇〇社に発注する件」を可決 → 理事長が工事請負契約を締結 → その後に「そういえば補助金があるらしい」と気づく → 手遅れ

これを防ぐために、総会議案書に次の一文を入れてください。

「本工事のうち補助制度の対象となり得る部分については、市の交付決定を受けた後に契約を締結するものとし、交付決定に至らない場合の対応は理事会に一任する。」

この一文があるだけで、理事長は「補助金の結果を待つ」という判断ができます。ない場合、理事長は総会決議を早く執行しなければならないというプレッシャーの中で、契約を急いでしまいます。

【本シリーズ初】吹付けアスベスト対策事業と、その正直な限界

これは、この連載でまだ一度も取り上げていない制度です。浜松市には民間建築物吹付けアスベスト対策事業があります(令和8年4月1日改正)。

事業 補助率 上限
アスベスト分析調査事業 分析調査に要する経費の10分の10以内 1棟あたり25万円
アスベスト除去等事業 除去等に要する経費の3分の2以内 1敷地あたり300万円

(出典:浜松市「民間建築物吹付けアスベスト対策事業について」/更新日2026年4月3日)

分析調査は10分の10、つまり全額です(上限25万円)。

なぜ大規模修繕の記事でアスベストを扱うのか

昭和50年代までに建てられたマンションでは、共用部の一部に吹付け材が使われていることがあります。具体的には、機械室・電気室、エレベーターシャフト内、パイプスペース、駐車場や自転車置場の天井、屋上塔屋の内部などです。

大規模修繕工事では、これらの場所に足場が架かり、人が入り、場合によっては下地を触ります。吹付け材が石綿を含有していれば、大規模修繕の工程そのものが変わります。作業計画も、届出も、養生も、費用も変わる。だから工事の設計に入る前に、有無を確定させておくほうがいい。

分析調査が全額補助(上限25万円)で受けられるのなら、これは使わない理由がありません。

ただし、外壁の仕上塗材は対象外です

ここは正直に、はっきり書きます。浜松市のページには注記があります。

(※1)バーミキュライト、パーライト、仕上塗材の除去等は対象外です。
成形板(スレート波板、ケイ酸カルシウム板、カラーベスト屋根材、ビニル床タイル材等)は対象外です。

大規模修繕でいちばん問題になりやすいのは、実は外壁の石綿含有仕上塗材です。古いマンションの吹付けタイルやリシンに石綿が含まれていることがあり、これを剥がす作業には石綿則に基づく措置が必要になります。そしてこの補助金は、そこには使えません。

対象になるのは「規制の対象となる吹付けアスベスト」、つまり鉄骨梁や天井などに吹き付けられたアスベストです。外壁の仕上塗材は別扱いです。

「アスベストの補助があるから外壁の石綿対策費が減る」と期待して見積りを組むと、そこは補助の対象外です。この線引きを、設計段階で施工会社と共有しておいてください。

手続きの注意点

  • 申請窓口は建築行政課(市役所本館4階)のみ。区役所や協働センターでは申請できません。
  • 事後の申請はできません。分析機関や施工業者と契約する前に、建築行政課と事前協議を行ってください。
  • 調査は建築物石綿含有建材調査者による調査に基づいて実施する必要があります。
  • 申請時の添付書類に「対象経費の見積書の写し(2社以上)」が含まれます。1社見積りでは受け付けられません。
  • 「予算がなくなり次第、受付終了となります」と明記されています。年度の早い時期に動くほうが有利です。

ブロック塀等撤去改善事業|調査結果は「翌々年度まで有効」

敷地の外周にブロック塀があるマンションは、この制度を大規模修繕と同じ議案にまとめることを検討してください。

区分 基準額の単価 補助率 上限
撤去費 14,000円/メートル 3分の2以内 200,000円
新設費(安全な塀) 38,400円/メートル 3分の2以内 250,000円

(出典:浜松市「ブロック塀等撤去改善事業」/更新日2026年4月7日)

対象になるのは、道路等に沿っている(または転倒時に道路等に影響を及ぼす)、道路からの高さ80センチメートル以上かつ2段以上積まれた塀で、市が実施する事前現地調査を受けたものです。

この制度で、いちばん実務的に効く一文

浜松市のページには、こう書かれています。

調査結果は、ブロック塀等の状況が変わらない限り、翌々年度まで有効です。

これは管理組合にとって大きい。今年度のうちに事前現地調査だけ受けておけば、その結果は翌々年度まで使えます。大規模修繕の工事年度が令和9年度や令和10年度になっても、調査は今受けておいていい、ということです。

事前現地調査は電話・窓口・オンラインフォームから申し込めます。申込から調査までは3週間程度。立会いは基本的に不要です。理事長が現地に行く必要すらありません。

今週やれることのリストに、これを入れてください。電話1本と、3週間後に市職員が来て見ていくだけです。

大規模修繕と同じ議案にまとめる理由

ブロック塀の工事を別の年に立てると、次のことが起きます。

  • 近隣へのあいさつ回りが2回になる
  • ガードマンと車両誘導の費用が2回かかる
  • 外構の色を新しい外壁色に合わせられない(先に塀を替えると色が合わない、後に替えると足場の後の再工事になる)
  • そして最大の理由:管理組合が決められるのは年1回の定時総会だけ。別々の年に議案を立てれば2年かかる。

注意:法人格のある管理組合はオンライン申請ができません

浜松市のブロック塀補助はオンライン申請に対応していますが、「浜松市職員による事前現地調査が完了済みの個人が対象」であり、「申請区分が法人の場合は、窓口又は郵送での申請が必要」と明記されています。

管理組合法人の場合は、窓口か郵送になります。マイナンバーカードを用意して申請しようとして、当日になって使えないと分かると時間を失います。事前に建築行政課(053-457-2471)に確認してください。

浜松市の住宅系制度を「共用部の大規模修繕で使えるか」で1列判定する

浜松市の「はままつ住まいづくりガイド」には、公的助成制度が数十本並んでいます。管理組合の理事が全部読むのは現実的ではありません。共用部の大規模修繕という観点だけで判定した表を作りました。

制度 共用部の大規模修繕で使えるか 一言
マンション管理計画認定制度 ◎ 令和9年3月31日まで手数料0円(支援サービス利用時)
長寿命化促進税制(固定資産税の減額) ◎ 管理者等の一括申請が可能。外壁・床防水・屋根防水の3点セットが要件
建築物耐震診断事業 ◎(旧耐震・3階以上・1,000平方メートル以上) 3分の2以内
建築物耐震補強助成事業 ◎(同上) 上限1,600万円。代理受領制度あり
民間建築物吹付けアスベスト対策事業 ◯ 分析調査は全額(上限25万円)。ただし外壁の仕上塗材は対象外
ブロック塀等撤去改善事業 ◯ 事前現地調査が必須。結果は翌々年度まで有効
感震ブレーカー設置費助成事業 △ 共用部設置の可否は要確認(危機管理課)
創エネ・省エネ・蓄エネ型住宅推進事業費補助金 △ 個人住宅向けの設計。共用部での適用可否は要確認
木造住宅耐震補強助成事業 × 木造限定
住宅の省エネ改修に伴う固定資産税の減額措置 × 専有部の話。区分所有者個人が申告
住宅のバリアフリー改修に伴う固定資産税の減額措置 × 同上
まちなか定住促進・子育て応援環境づくり補助金 × 取得・移住向け
空き家等除却促進事業費補助金 × 除却向け
がけ地近接等危険住宅移転事業 × 移転向け

(出典:浜松市「2 浜松市の公的助成制度」/更新日2026年6月3日をもとに筆者が判定)

「×」だと分かっている制度に理事会の時間を使わずに済むこと。これにも価値があります。理事の任期は1年か2年です。時間は有限です。

なお、省エネ改修とバリアフリー改修の固定資産税減額は、区分所有者個人が専有部で申告するものです。管理組合が判断することではありません。ただし、同じ年度に共用部の長寿命化促進税制と個人の専有部の減額が重なるケースはあり得ます。減額措置には併用できる組み合わせとできない組み合わせがあるので、管理組合は税務判断をせず、「各自で資産税課にご確認ください」と周知する役割に徹するのが正解です。

工事完了後の周知文に、この1行を入れておいてください。

「共用部の工事について、管理組合が固定資産税の減額申告を一括で行います。専有部の窓の断熱改修などで個人の減額申告を予定されている方は、同じ年度に重なる場合の取扱いを資産税課(053-457-2155)にご確認ください。」

浜松市自身が「10年後に37%」と書いている

浜松市は、令和4年4月に浜松市マンション管理適正化推進計画を策定・公表しています。計画期間は令和4年度から令和13年度の10年間(5年後に見直し)。

この計画に、市内マンションの実態として次の数字が載っています。

築40年を超えるマンションが急増(現在:8%、10年後:37%、20年後:70%)し、適切な管理がなされないと居住者・近隣住民等の生命・身体・財産に危害を及ぼす恐れがあります。

(出典:浜松市マンション管理適正化推進計画/更新日2026年4月16日)

そして市が掲げる目標はこれです。

25年以上の長期修繕計画に基づく修繕積立金額を設定しているマンション管理組合の割合を現状の51%から令和13年度までの10年間で75%以上に引き上げる。

この数字の読み方を書いておきます。

現状51%ということは、浜松市内の分譲マンション管理組合のおよそ半分が、25年以上の長期修繕計画に基づく積立金設定をしていないということです。市が実態調査をして出した数字です。

私は現場で、長期修繕計画が実質的に機能していない管理組合をたくさん見てきました。10年前に作ったきり見直していない。作った当時の物価で組まれている。前回工事の実績が反映されていない。そういう計画は「ある」けれども「基づいていない」。

浜松市はそれを51%と数字にして、市の計画に書きました。自分たちの組合がその51%側にいるのか49%側にいるのかを確かめることが、大規模修繕の出発点です。確かめ方は簡単で、長期修繕計画の作成年月日と計画期間を見るだけです。

そして市の施策として、次の3つが計画に書かれています。

  • 分譲マンション管理セミナーの開催
  • マンション管理士の派遣
  • 分譲マンション管理に関する相談会の実施

このうち、いま日程が確定しているものがあります。

10月27日の無料相談会|定員10組・申込開始は9月15日

浜松市は、分譲マンションの管理組合役員や区分所有者を対象とした無料相談会を開催します。

項目 内容
日時 令和8年10月27日(火曜日)午前10時00分〜午後4時00分
場所 浜松市役所本館5階 51会議室(中央区元城町103-2)
対象 浜松市民の方で分譲マンションに関する相談がある方
相談員 静岡県マンション管理士会のマンション管理士
定員 10組(先着順)
参加費 無料
相談時間 1組あたり30分まで(時間帯は市が指定・後日通知)
申込期間 令和8年9月15日(火曜日)〜10月2日(金曜日)
申込方法 所定の申込用紙をファクス・Eメール・持参、またはインターネット
結果通知 令和8年10月8日(木曜日)以降に郵送

(出典:浜松市「分譲マンションについての無料相談会のご案内」/更新日2026年8月20日)

相談内容として市が挙げているのは、次のとおりです。

  • 総会・理事会、滞納処理対策、大規模修繕工事等の管理組合の運営
  • 管理規約・使用細則の作成および改正に係る問題
  • 管理会社・分譲会社との関わり など

「大規模修繕工事等」が、市が例示する相談内容に明記されています。遠慮なく大規模修繕の相談をしていい相談会だ、ということです。

この相談会を使い切るための、現実的な注意点

正直に書きます。この相談会には3つのハードルがあります。

  1. 定員10組・先着順。浜松市内の分譲マンション管理組合の数を考えると、10組は多くありません。
  2. 申込開始は9月15日(火)。それより前には申し込めません。
  3. 平日火曜日の10時〜16時。働いている理事長は有給休暇が必要です。

だから、こうしてください。

今日のうちに、9月15日(火)にリマインダーを設定する。これだけです。スマートフォンのカレンダーに「浜松市マンション無料相談会 申込開始」と入れて、通知をオンにする。所要時間1分。

そして相談の30分をどう使うか、事前に決めておいてください。30分は短い。世間話をしていたら終わります。私なら、この3点に絞ります。

  1. 「うちの長期修繕計画は、管理計画認定の基準を満たしていますか」(計画期間30年以上、残存期間内に大規模修繕2回以上、積立金の平均額が著しく低額でないか)
  2. 「認定ルートと助言・指導ルート、うちの組合はどちらが現実的ですか」(積立金の引き上げ議案を通せるかどうかが分岐点)
  3. 「相見積りの比較で、素人がいちばん見落とすのはどこですか」

そして持っていくものは3点。長期修繕計画書、直近の総会議事録、修繕積立金の残高が分かる書類。これがないと、相談員は一般論しか答えられません。

もう1つ。理事長ひとりで行かないでください。次期理事の候補と2人で行く。理事の任期は短く、引き継ぎで抜け落ちる情報は必ずあります。同じ話を2人が聞いていることの価値は大きい。

なお、市が実施する施策にはマンション管理士の派遣も含まれています(推進計画に記載)。相談会とは別枠の可能性があるので、住宅課(053-457-2457)に「派遣制度の実施状況」を併せて確認してください。1回の電話で2つの用件を済ませられます。

国の制度|モデル事業の第3回公募は令和8年9月14日〜18日

国土交通省のマンションストック長寿命化等モデル事業は、令和8年度も提案募集が行われています。第3回の受付期間は令和8年9月14日(月曜日)から9月18日(金曜日)までです(出典:国土交通省 報道発表)。

本記事の公開日から2週間ほどしかありません。正直に書きます。今から準備して第3回に間に合う管理組合は、限られます。

それでもこの情報を書く理由が3つあります。

  1. 年度内に複数回の募集がある。令和8年度は第1回(4月)、第2回(6月)、第3回(9月)という構成でした。次年度も同様の構成になる可能性があります。
  2. 公募要領の必要書類一覧が、そのまま良い準備リストになる。申請しなくても、何を揃えるべきかが分かります。
  3. 先導性の要件に、工法の工夫が入り込む余地がある。無足場工法による居住者負担の軽減や工期短縮は、モデル性として説明できる論点です。

今週やることは1つだけでいいです。公募要領の必要書類一覧のページだけ印刷する。所要時間15分。理事会の書類ばさみに入れておく。それだけで来年度の初動が変わります。

長寿命化促進税制は、国レベルで延長・緩和されています

令和8年度税制改正で、マンション長寿命化促進税制について適用期限の延長と要件の見直しが行われています(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制」)。床面積の下限についても見直しが行われています。

ここで注意です。自治体のページの更新が、国の改正に追いついていないことがあります。浜松市の減額ページの更新日は2026年6月18日で比較的新しいのですが、それでも記載内容と最新の国の制度が完全に一致しているかは、市に確認するのが確実です。

理事会の宿題として、「住戸タイプ別の専有面積一覧を管理会社に依頼し、40平方メートル台と50平方メートル台が何戸あるか数える」を出しておいてください。30分の作業です。床面積要件が話題になったときに、即答できるかどうかで議論のスピードが変わります。

静岡県の支援|マンション管理士の無料派遣と県セミナー

浜松市の制度とは別に、静岡県の制度も使えます。

静岡県マンション管理士無料派遣は、県内10件程度・各組合2回まで、費用は無料です。申込先は静岡県マンション管理士会(ファクス 0544-27-6561)、制度の窓口は静岡県住まいづくり課(054-221-3084)です。派遣の期限があるため、年度後半は締切に注意してください。

2回の使い方を、浜松版に具体化しておきます。

  • 1回目: 長期修繕計画と修繕積立金の水準確認。管理計画認定の基準に照らして、どこが足りないかを洗い出す。
  • 2回目: 相見積りの比較と施工会社の選定。見積書を3社分持参して、どこを見るべきかを教わる。

申込書の「相談内容」欄には、次の3行を書いてください。抽象的に書くと、抽象的な回答しか返ってきません。

  1. 「管理計画認定と長寿命化促進税制について、認定ルートと助言・指導ルートのどちらが当組合にとって現実的か判断したい」
  2. 「長期修繕計画が管理計画認定の基準(計画期間30年以上・残存期間内に大規模修繕2回以上)を満たしているか確認したい」
  3. 「大規模修繕の相見積り3社の比較で、管理組合が見落としやすい点を教えてほしい」

県のマンション管理セミナーも県内各地で開催されています。浜松市は県西部の中心都市なので、県が会場を設定する際の主要都市のひとつです。開催予定は静岡県住まいづくり課に確認してください。

住宅金融支援機構の3制度も、忘れずに

修繕積立金が足りないときの選択肢として、独立行政法人 住宅金融支援機構の制度があります。

制度 内容
マンション共用部分リフォーム融資 管理組合が借主となる融資。管理計画認定を受けていると金利が引き下げられます
マンションすまい・る債 修繕積立金を積み立てながら運用する仕組み。認定を受けていると利率が上乗せされる取扱いがあります
マンションライフサイクルシミュレーション 積立金の将来推計を無料で試算できるツール

(出典:住宅金融支援機構)

浜松市の認定制度ページにも、認定のメリットとして「(独)住宅金融支援機構の【フラット35】及びマンション共用部リフォーム融資の金利優遇を受けることができる」と明記されています。

認定の価値は、税制だけではありません。融資条件と、将来の売却時の市場評価にも効きます。ここは理事会で説明するときに落としやすいポイントです。

ここからは工事屋の話です|遠州のからっ風と、足場

制度の話はここまでです。ここからは、浜松市の建物を工事する側から見た話を書きます。

浜松には「遠州のからっ風」という言葉があります。冬になると北西から強い季節風が吹く。地元の方には説明不要でしょうが、これは大規模修繕にとって、はっきりとした技術的条件です。

強風が工期と金額に効く仕組み

足場を架けると、建物の外周にメッシュシートが張られます。塗料の飛散を防ぎ、工具の落下を防ぐためです。このメッシュシートが、風を受けます。

強風が予想される日は、シートの一部を開放するか、たたんで縛ります。作業が終わったら戻します。この開放と復旧の作業が、そのまま人工(にんく)として工程に乗ります。そして強風の日は高所作業そのものを中止します。

つまり冬季の浜松では、次のことが起きます。

  • 予備日を多めに見ておく必要がある
  • 足場の控え(壁つなぎ)の本数が増えることがある
  • 工期が延びれば、足場のリース期間が延びる

足場は日数で借りています。工期が延びれば仮設費が増える。これは避けようがありません。

見積書に、この1文を質問してください

「強風・降雨による作業中止の判断基準は仕様書のどこに書かれていますか。予備日は何日みていますか。予備日を超過した場合の足場リース延長費用は、誰の負担になりますか。」

3つ目が本命です。予備日を超過したときの足場延長費用の負担者が契約書に書かれていないまま着工すると、工期が延びたときに揉めます。天候は誰のせいでもないので、なおさら揉めます。

方位別の劣化要因を、浜松版で整理する

方位・部位 主な劣化要因 現場で出やすい症状
北西面 冬季の強い季節風と雨がかり シーリングの早期硬化、塗膜の摩耗が他面より進む
南面 日照時間が長く、紫外線量が大きい チョーキング(白亜化)の進行が早い、塗膜の退色
北面 日照が少なく乾きにくい コケ・藻の付着、防水層の乾燥不良
屋上 日射と温度差による伸縮 防水層のふくれ、押えコンクリートのひび
海側に近い立地 飛来塩分 鉄部の腐食が早い、手すり根元の膨張
バルコニー床 生活動線・排水 防水層のすり減り、排水ドレン周りの詰まり

浜松は日照時間が長い地域です。これは南面の塗膜にとっては厳しい条件です。「外壁塗装 一式」という1行の見積書では、南面と北面で仕様を変えているのかどうかが分かりません。方位別に数量と仕様を分けて出させてください。

仮設足場は、工事費の15〜25%を占めます

これは全国どこでも変わらない数字です。大規模修繕工事の総額に占める仮設足場費の割合は、おおむね15〜25%です。

工事総額 仮設足場費の目安(15〜25%)
3,000万円 450万円〜750万円
5,000万円 750万円〜1,250万円
8,000万円 1,200万円〜2,000万円
1億2,000万円 1,800万円〜3,000万円

見積書では、この金額が「仮設工事 一式 〇〇円」というたった1行で出てくることがあります。

理事会でよく起きることを書きます。植栽の剪定費20万円については活発に議論が起きるのに、仮設工事750万円の1行には誰も質問しない。これは理事が不真面目だからではありません。判断材料が渡されていないからです。20万円の剪定は想像できるが、750万円の足場が高いのか安いのか、判断する物差しがない。

物差しを手に入れる質問は1文です。

「仮設工事の金額を、架面積の平米単価とリース期間に分解して出してください。」

架面積(足場を架ける面積)×単価×期間。この3つに分解されれば、3社の見積りを比較できるようになります。単価が同じで期間が違えば、工程の組み方が違うということです。

浜松市のマンション向け|ハイブリッド工法の3パターン

ここで私の会社の話を少しだけします。株式会社明誠は、通常の足場を架ける工法、ロープアクセス工法(無足場工法)、そしてその両方を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つを、建物の条件に応じて提案できる会社です。日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。ロープアクセス工法の技術的な情報は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。

先に、いちばん大事なことを書きます。ロープアクセス工法は万能ではありません。私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる現場は、普通にあります。

足場が有利になる条件は、はっきりしています。

  • 下地補修(コンクリートの欠損・ひび割れ・タイル浮き)の数量が読めない場合。開けてみないと分からない補修が多いなら、足場のほうが結果的に安く早い。
  • タイルの浮きが広範囲に及ぶ場合。打診調査の結果次第です。
  • 外壁の形状が複雑で、凹凸やルーバーが多い場合。
  • サッシ廻りや手すりの取替など、資材の搬入が多い工事を同時にやる場合。

そのうえで、浜松市のマンションで実際に効きやすい組み合わせを3つ挙げます。

パターン1:風の当たる面だけ、ロープアクセスに置き換える

冬季の北西面は、メッシュシートが風を受けて工程が乱れやすい面です。この面を足場ではなくロープアクセスで施工すると、風による中止判断の影響を受ける範囲が小さくなります。足場の架面積が減れば、そのまま仮設費が減ります。

パターン2:低層は足場、高層はロープアクセス

建物の上に行くほど風は強くなります。上層階を足場で覆わないことで、風圧を受ける面積そのものを減らせます。下層階は資材の出し入れが多いので足場を残す。この組み合わせは、工期の安定性という意味でも合理的です。

パターン3:駐車場を潰さない配分

浜松市は自動車の保有率が高い地域です。1世帯1台以上が前提のマンションが多い。足場を建物の全周に架けると、外周の駐車スペースが工事期間中ずっと使えなくなります。代替駐車場を借りれば、その費用は工事費とは別に管理組合の負担になります。

ロープアクセスは足場の部材を地上に置く必要がないため、駐車場を残したまま施工できる面が出てきます。これは金額だけの話ではありません。「半年間、車をどこに置けばいいのか」という住民の不満は、総会の議決そのものに影響します。

ロープアクセス工法の安全基準や実際の施工事例については、ロープアクセスドットコムで解説しています。工法の技術的な背景を理事会で説明する際の資料としてもお使いいただけます。

モデルケース2本|浜松市の管理組合を想定した試算

実在の物件ではありません。浜松市内でよくある条件を想定した試算です。数字は目安であり、実際の金額は建物ごとに変わります。

ケースA:JR浜松駅圏の中規模マンション

項目 内容
条件 築26年・8階建て・56戸・敷地内に平面駐車場
全面足場の場合 工事費 8,800万円/工期 6か月/駐車場は全周6か月使用制限
ハイブリッド工法の場合 工事費 7,500万円/工期 4.5か月/駐車場は2面ずつ各1.5か月の制限
差額 ▲1,300万円(1戸あたり約23万円)/工期1.5か月短縮

ケースB:郊外の小規模マンション

項目 内容
条件 築33年・5階建て・28戸・前面道路が狭く4トン車が入らない
全面足場の場合 工事費 4,400万円/工期 5か月
ロープアクセス主体の場合 工事費 3,550万円/工期 3.5か月
差額 ▲850万円(1戸あたり約30万円)/工期1.5か月短縮

ケースBについて補足します。28戸で4,400万円ということは、1戸あたり157万円です。同じ工事内容でも150戸のマンションなら1戸あたり30万円前後になります。

戸数が小さいマンションほど、1戸あたりの負担が重くなる。そして戸数が小さいほど、工法の選択が効きます。仮設足場は建物の大きさに応じてかかりますが、それを頭数で割るときの分母が小さいからです。

もう1つ、道路条件の話です。前面道路が狭くて4トン車が入らないと、足場材を2トン車で分割搬入することになります。搬入回数が増え、道路使用許可と警備員が必要になり、その費用は「仮設工事一式」の中に埋もれます。ロープアクセス工法は足場材の搬入そのものがないため、道路条件が厳しい現場ほど、差が金額に出ます。これは営業トークではなく、単純な物流の話です。

最後にひとつ、時期の話

工法は、設計を発注してからでは実質的に選べません。

設計事務所が全面足場を前提に設計図と数量表を作ってしまえば、その後の見積りはすべて足場前提で出てきます。工法を比較したいなら、設計を発注する前に「足場前提とハイブリッド前提の両方で概算を出してほしい」と伝えてください。これは設計事務所に対して失礼な要求ではなく、当然の要求です。

工法選定と概算のご相談は、明誠のお問合せフォームからお受けしています。

修繕積立金が足りないときの4つの打ち手

浜松市の推進計画にあった「25年以上の長期修繕計画に基づく積立金設定は51%」という数字を思い出してください。積立金が足りないのは、あなたの組合だけではありません。

打ち手は4つです。

  1. 一時金を徴収する。総会で決議が必要。金額が大きいと反対が出ます。
  2. 積立金を値上げする。将来のためには最も健全ですが、決議のハードルは高い。
  3. 借入れる。住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資など。管理計画認定で金利優遇があります。
  4. 工事を段階的に分ける。

4番目には、はっきり注意点があります。

段階施工は、仮設費が回数分かかります。外壁を今年、屋上防水を3年後にすれば、足場も2回架けることになります。そして長寿命化促進税制は「外壁・床防水・屋根防水が同一の工事請負契約の中で一体として行われること」を要件にしているので、分けた瞬間に税制の対象から外れる可能性があります。

段階施工を検討する際は、この2点を必ず試算に入れてください。

議案書には「一時金」と「月々」の両方を載せてください

理事会が議案を作るとき、「一時金50万円」だけを書くと反対されます。「月々3,000円の値上げ」だけを書いても、実感が湧きません。

両方を並べて書いてください。

「不足額を賄う方法として、(A)1戸あたり一時金50万円、(B)修繕積立金を月額3,000円値上げ(〇年間)、の2案を比較しました。」

人は、選択肢が2つあると比較して考えます。1つしかないと、賛成か反対かしか考えません。これは総会運営の技術です。

見積書チェック5点|最重要は「下地補修の超過分」

3社から見積書が届いたとき、どこを見るか。私が管理組合の理事だったら、この5点を見ます。

1. 数量の根拠

外壁塗装の面積、シーリングの延長メートル数。この数字がどこから来たのかを聞いてください。図面から拾ったのか、現地で測ったのか。3社で数量が大きく違うなら、どれかが間違っています。

2. 仕様の具体性

「外壁塗装 一式」ではなく、塗料のメーカー名・製品名・仕様(下塗り・中塗り・上塗りの回数)まで書かれているか。方位別に仕様が分かれているか。

3. ★下地補修の仮定数量を超えた分の単価が、契約前に明記されているか

これが最重要です。

下地補修(ひび割れ、欠損、タイルの浮き)は、足場を架けて調査するまで正確な数量が分かりません。だから見積書には「仮定数量」が入ります。ひび割れ100メートル、タイル張替え50平方メートル、といった具合です。

問題は、実際にはこれを超えるのが普通だということです。

そして超過分の単価が契約書に書かれていないと、工事が始まってから「追加で〇〇万円です」と言われます。そのとき管理組合は交渉できません。工事を止めるわけにいかないからです。足場が架かり、住民が不便を我慢している状況で、「その単価は高い」と言えるでしょうか。言えません。

だから、契約前にこう書かせてください。

「下地補修の仮定数量を超過した場合の単価を、ひび割れ〇円/メートル、欠損部補修〇円/箇所、タイル張替え〇円/平方メートル、として契約書に明記する。」

これを嫌がる会社は、そこで分かります。

4. 仮設工事の内訳

架面積の平米単価とリース期間に分解されているか。前述のとおりです。

5. 「別途」の中身

見積書の最後に「別途工事」として並んでいる項目を必ず読んでください。そこに書かれているものは、この見積金額に含まれていません。産業廃棄物処分費、仮設電気・水道、駐車場代、近隣対策費。これらが「別途」になっていると、最終的な支払額は見積額を上回ります。

より詳しい調査・診断の考え方については、明誠の建物調査・劣化診断のページもご覧ください。

工事適期カレンダー(浜松版)

時期 評価 理由
3月下旬〜5月上旬 ◎ 気温・湿度が安定。塗膜の乾燥条件が最も良い
5月中旬〜6月 △ 梅雨入り。降雨による中止日が増える
7月〜8月 △ 高温。熱中症対策で作業時間が制限される日がある
9月〜10月中旬 △ 台風期。強風・大雨のリスク
10月下旬〜11月 ◎ 気候が安定し、日照時間も確保できる
12月〜2月 ◯ 温暖で晴天率は高い。ただしからっ風で予備日が3〜5日増える

一般的な塗装の施工条件は「気温5度以下、湿度85%以上では施工しない」とされています。浜松市の平地であれば、冬でもこの条件に引っかかる日は多くありません。冬は閑散期なので、価格交渉の余地がある時期でもあります。

見積り依頼のときに、この1文を添えてみてください。

「12月着工の場合、金額と工期はどうなりますか。からっ風による予備日は何日みていますか。」

季節を変えるだけで金額が動くことは、普通にあります。聞かなければ、動きません。

相見積りの環境は、この連載でいちばん良い

これは正直に評価します。浜松市は、相見積りを揃えるという意味で、この連載で扱ってきたどの自治体よりも条件が良いです。

理由は単純です。人口が静岡県内最大の政令指定都市であり、市内に建設会社・改修会社・設計事務所が集中しているからです。伊豆半島の町の記事では「まず車で20分圏の隣町から、次に県東部の中核市へ」と段階的に広げる提案をしましたが、浜松市では市内だけで3社を揃えることが現実的に可能です。

そのうえで、比較の組み方を提案します。

段階 声をかける先 ねらい
第1段階 浜松市内の改修専門会社 移動費が乗らない。緊急時の対応が早い
第2段階 磐田市・袋井市・湖西市・掛川市など西部の会社 価格の相場観を市外から検証する
第3段階 首都圏・名古屋圏の改修専門会社 工法の選択肢を広げる。無足場工法などの専門性

第3段階について補足します。浜松市は東海道新幹線の停車駅があり、東名・新東名の両方が通っています。名古屋から約35分、東京から約1時間半(新幹線)という立地は、市外の専門会社が日帰りで現場対応できる距離です。「遠方だから割高になる」という前提は、浜松市には当てはまりにくい。

比較のときは、次の2つを必ず統一してください。

  1. 移動費・現場管理費が、諸経費に含まれているのか別途なのかを、最初に明記させる。含まれ方が違う見積りを比べても意味がありません。
  2. 現地調査は、同じ日にまとめて実施する。建物の状態は日々変わります。3社が別々の日に見れば、見ているものが微妙に違います。同日に来てもらえば、条件が揃います。

浜松市の管理組合は、補助金を探す時間と同じくらい、業者を比べる時間に投資する価値があります。制度も、業者の選択肢も、両方ある珍しい市だからです。

今週できること5つ(合計3時間以内)

理事会の次の集まりまでに、これだけやってください。

1. 【今日・1分】9月15日(火)にリマインダーを設定する

浜松市の無料相談会の申込開始日です。定員10組・先着順。カレンダーに「浜松市マンション無料相談会 申込開始」と入れる。それだけです。

2. 【今日・10分】ブロック塀の事前現地調査を申し込む

敷地の外周にブロック塀があるなら、建築行政課(053-457-2471)に電話するか、オンラインフォームから申し込む。調査まで3週間程度。立会い不要。結果は翌々年度まで有効なので、工事年度が先でも今受けておいて損はありません。

3. 【15分】建築確認済証の交付日を確認する

管理組合の書庫か管理会社の保管書類を確認します。昭和56年5月31日以前なら旧耐震です。該当するなら、建築行政課に耐震診断事業の相談を。上限1,600万円の補強助成が視野に入ります。

4. 【30分】長期修繕計画の作成年月日と計画期間を確認する

計画期間が30年以上あるか。残存期間内に大規模修繕が2回以上含まれているか。作成から何年経っているか。これが管理計画認定の入口です。浜松市が言う「51%」のどちら側にいるかが分かります。

5. 【30分・電話1本】資産税課に長寿命化促進税制を確認する

053-457-2155(資産税課)に電話して、こう聞いてください。

「分譲マンションの管理組合の者です。長寿命化に資する大規模修繕工事の固定資産税減額について、管理組合の管理者等による一括申請の具体的な手続きと、着工前に準備しておくべき書類・写真を教えてください。工事はこれからです。」

「工事はこれからです」を必ず添えてください。着工前に様式を知れば、工事中に撮る写真と、施工会社に用意させる証明書を、先に指定できます。工事が終わってから聞くのとでは、価値がまるで違います。

19か月逆算カレンダー

令和9年3月31日(長寿命化促進税制の工事完了期限/認定手数料無料期間の終了)から逆算します。

時期 やること
今週 上記の5項目
1か月以内 管理計画認定のルート(認定ルート/助言・指導ルート)を理事会で仮決め
2か月以内 10月27日の無料相談会に参加(申込は9月15日〜10月2日)
3か月以内 劣化診断・調査の実施。設計事務所の選定
6か月前まで 工法をここまでに決める(設計発注前でないと実質選べない)
6〜9か月 設計・仕様確定。相見積り3社の取得と比較
総会 工事の議決。「交付決定後に契約する」旨を議案に明記
着工直前 改修前の写真を撮影(撮影範囲と枚数を仕様書に明記済みであること)
工事期間 各補助制度の交付決定 → 契約 → 着工の順序を守る
完了後3か月以内 資産税課へ減額申告(管理者等による一括申請)

太字にした2つ——工法の決定時期と改修前の写真——が、後から取り返しのつかない項目です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 浜松市に、マンションの大規模修繕工事そのものへの補助金はありますか。

A. 工事費に直接現金が出る市独自の補助金は、2026年8月30日時点の公開情報では確認できません。使えるのは、固定資産税の減額(長寿命化促進税制)、旧耐震建物の耐震診断・耐震補強助成、吹付けアスベスト対策、ブロック塀等撤去改善です。

Q2. 管理計画認定の申請手数料はいくらですか。

A. 管理計画認定手続支援サービスを利用する場合、令和9年3月31日までは0円です(令和9年4月1日以降は4,000円)。利用しない場合は28,100円です。(出典:浜松市 マンション管理計画認定制度)

Q3. 固定資産税の減額は、区分所有者が全員申告しないといけませんか。

A. いいえ。管理組合の管理者等による一括申請が可能です。管理者等が必要書類を提出し要件に該当すると認められれば、各区分所有者からの申告書がなくても減額の適用を受けられます。

Q4. 築25年のマンションですが、耐震補強の助成は使えますか。

A. 使えません。建築物耐震補強助成事業の対象は昭和56年5月31日以前に建築された建築物です。築25年(1990年代後半〜2000年代の建築)は新耐震基準の建物です。

Q5. 補助金の申請は、工事契約の後でもできますか。

A. できません。浜松市の補助制度は、耐震診断・耐震補強・アスベスト・ブロック塀のいずれも「契約前の申請・事前協議」を要件としています。契約や着工の後では対象外になります。

Q6. 外壁塗装だけを先にやって、屋上防水は次回にしてもいいですか。

A. 大規模修繕としては可能ですが、長寿命化促進税制の対象からは外れる可能性があります。この税制は外壁塗装・床防水・屋根防水の3つが同一の工事請負契約の中で一体として行われることを要件としています。

Q7. ロープアクセス工法にすれば、住戸に立ち入られずに済みますか。

A. いいえ。バルコニー内部の作業(床防水、手すりの塗装、避難ハッチ周りなど)が必要な点は、工法にかかわらず同じです。ロープアクセスでも立ち入りがゼロになるわけではありません。ただし足場が架からないぶん、防犯上の不安や日照・視線の問題は生じません。

Q8. 相談会に行けない場合、どこに相談すればいいですか。

A. 平日に時間が取れない場合は、静岡県マンション管理士会への無料派遣制度の申込(ファクス 0544-27-6561)を検討してください。制度の一般的な質問であれば、浜松市住宅課(053-457-2457)が窓口です。

この記事のポイントまとめ

  • 浜松市は政令指定都市なので、認定・助言指導・税の減額がすべて市内で完結する
  • 管理計画認定の手数料は、支援サービス利用なら令和9年3月31日まで0円
  • 令和9年3月31日は、手数料無料期間と長寿命化促進税制の工事完了期限が重なる日
  • 長寿命化促進税制は管理組合の管理者等による一括申請が可能で、区分所有者の申告は不要
  • 対象工事は外壁塗装・床防水・屋根防水の3点セットが同一契約であること
  • 減額は固定資産税の3分の1・1年間・1戸100平方メートルまで。都市計画税は減額なし
  • 建築物耐震補強助成事業の対象用途表に「マンション」の行があり、上限は1,600万円
  • 基準額の単価表にも「マンション 50,200円/平方メートル」という専用行がある
  • 耐震診断の補助率は3分の2以内。延べ面積3,000平方メートルなら約419万円が目安
  • 対象は昭和56年5月31日以前の建築物のみ。建築確認済証の交付日で判断する
  • 吹付けアスベストの分析調査は全額補助(上限25万円/棟)。除去等は3分の2(上限300万円/敷地)
  • ただし外壁の仕上塗材はアスベスト補助の対象外という線引きがある
  • ブロック塀の事前現地調査の結果は翌々年度まで有効。今年度受けておく価値がある
  • 浜松市の補助はすべて「交付決定 → 契約 → 着工」の順序。契約後の申請は対象外
  • 総会議案書に「交付決定後に契約する」旨の一文を入れておく
  • 市の推進計画によれば、築40年超のマンションは現在8%、10年後37%、20年後70%
  • 25年以上の長期修繕計画に基づく積立金設定は現状51%(市の目標は令和13年度に75%)
  • 無料相談会は令和8年10月27日(火)、定員10組・先着順、申込は9月15日から
  • 仮設足場は工事費の15〜25%。架面積の平米単価とリース期間に分解させる
  • 遠州のからっ風は予備日と足場リース期間に効く。超過時の費用負担者を契約前に決める
  • 下地補修の仮定数量を超えた分の単価は、契約前に契約書へ明記させる
  • 工法は設計を発注する前でなければ実質的に選べない
  • 浜松市は市内だけで相見積り3社を揃えられる、この連載で最も条件の良い自治体

主なお問い合わせ先

用件 窓口 連絡先
マンション管理計画認定・助言指導・無料相談会 浜松市 都市整備部 住宅課 053-457-2457
固定資産税の減額申告(長寿命化促進税制) 浜松市 財務部 資産税課(元目分庁舎) 053-457-2155
耐震診断・耐震補強・アスベスト・ブロック塀 浜松市 都市整備部 建築行政課 053-457-2471
担当課が分からないとき 浜松市 市民コールセンター 053-457-2111(8:30〜17:15)
マンション管理士の無料派遣の申込 静岡県マンション管理士会 ファクス 0544-27-6561
県のマンション施策全般 静岡県 くらし・環境部 住まいづくり課 054-221-3084

浜松市役所の開庁時間は月曜〜金曜の8時30分〜17時15分(土日祝日・年末年始を除く)です。経験上、電話がつながりやすいのは午前10時前後か午後2時台です。

出典・参考資料

浜松市

国土交通省

その他

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執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法(無足場工法)/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事を行っています。通常の足場仮設による工法、ロープアクセス工法(無足場工法)、その両方を組み合わせるハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法をご提案できる、日本でも数少ない会社です。ロープアクセス工事としては日本で初めてとなるフランチャイズ展開も行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板工事など各分野の専門職が加盟しています。ロープアクセス工法のご紹介もあわせてご覧ください。

最終更新:2026年8月30日

免責事項:本記事は2026年8月30日時点で公開されている情報をもとに作成しています。補助制度・税制は年度や国の改正によって内容が変更されることがあり、予算の上限に達した時点で受付が終了する制度もあります。実際の申請にあたっては、必ず各窓口の最新情報をご確認ください。本記事の内容によって生じたいかなる結果についても、当社は責任を負いかねます。

函南町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

函南町の分譲マンションで大規模修繕を控えている管理組合が、町の補助金として最初に確認すべき制度はどれでしょうか。

答えを先に書きます。函南町「建築物耐震診断事業」です。 対象が「昭和56年5月31日以前に建築された非木造住宅(マンション含む)」と、町のページに括弧書きで名指しされています(出典:函南町 建築物耐震診断事業)。

私はこの連載で、静岡県内の市町を1つずつ調べてきました。島田市、牧之原市、菊川市、御前崎市、長泉町、清水町。その多くで「分譲マンションの共用部を直接補助する制度は確認できませんでした」と、正直に書かざるを得ませんでした。RC造(鉄筋コンクリート造)マンションの耐震診断についても、町のページで対象だと読み取れる自治体はほとんどありませんでした。

函南町は違いました。「マンション含む」と、書いてあるのです。

この記事では、函南町の管理組合が2026年度に使える制度を、町の公式ページの一次情報だけを根拠に整理します。使えないものは「使えない」とはっきり書きます。理事会の時間は、×だと分かっている制度を調べることに使うべきではないからです。

最終更新:2026年8月30日

結論:函南町の管理組合が今週やるべきことは3つだけ

長い記事になりますので、先に結論を置きます。

  1. 旧耐震(昭和56年5月31日以前着工)のマンションなら、都市計画課(055-979-8117)に「建築物耐震診断事業はうちのマンションで使えますか」と電話する
  2. 税務課資産税係(055-979-8108)に「マンション長寿命化促進税制の申告書の様式をください」と電話する
  3. 理事会で、着工前の写真を誰が撮るかを決める

3つとも、電話1本か会議での5分で終わります。そして3つとも、着工してからでは間に合いません。

やること 窓口 所要時間 期限の考え方
耐震診断補助の可否確認 都市計画課 055-979-8117 電話10分 契約・着手前に申請が必要
長寿命化促進税制の様式入手 税務課資産税係 055-979-8108 電話10分 工事完了後3か月以内に申告
着工前写真の担当決め 理事会 5分 足場が架かる前・洗浄前

函南町の住宅系補助金を「共用部の大規模修繕で使えるか」で仕分ける

函南町の都市計画課が所管する補助金は、補助金の一覧ページに9本並んでいます。管理組合の視点で1列にして判定すると、こうなります。

制度名 共用部の大規模修繕で使えるか 根拠
建築物耐震診断事業 ◯(旧耐震のRC造なら本命) 「非木造住宅(マンション含む)」と明記
雨水浸透施設・雨水貯留施設設置補助金 △(敷地1,000㎡未満なら可能性) 対象者に「共同住宅を含む」と明記
ブロック塀等撤去事業・建替え事業 △(敷地の塀が条件に合えば) 避難路等に面する高さ60cm以上の塀
木造住宅耐震補強助成事業 × 木造住宅が対象
木造住宅除却助成事業 × 木造住宅が対象
耐震シェルター・防災ベッド設置事業 × 木造住宅への設置が対象
がけ地近接危険住宅移転事業 × 除却・移転が対象
空き家バンク登録奨励金 × 空き家の登録が対象

9本のうち、管理組合が共用部の工事で検討する価値があるのは3本。少ないと感じるかもしれません。ただ、私はこう考えています。3本に絞れたということは、残りの6本に理事会の時間を使わなくて済むということです。

制度が少ない町だからこそ、順番が効く

補助金の数が多い自治体では、どれから調べるかで迷います。函南町では迷う必要がありません。旧耐震なら耐震診断、そうでなければ税制。この2本です。

建築物耐震診断事業——「マンション含む」と書いてある補助金

本題です。函南町の建築物耐震診断事業は、事業内容の1行目にこう書かれています。

昭和56年5月31日以前に建築された非木造住宅(マンション含む)の耐震診断を行う方に対し、補助金を交付します。

(出典:函南町 建築物耐震診断事業、更新日2026年4月1日)

補助基準額は延べ面積の区分ごとに単価が公表されている

しかも、金額の出し方まで公表されています。

構造・用途 延べ面積 補助基準額
木造以外の一戸建て住宅 面積区分なし 耐震診断経費と136,000円を比較して少ない額の3分の2以内の額
その他建築物 1,000㎡以内の部分 延べ面積に1㎡あたり3,670円を乗じて得た額
その他建築物 1,000㎡超〜2,000㎡以内の部分 延べ面積に1㎡あたり1,570円を乗じて得た額
その他建築物 2,000㎡を超える部分 延べ面積に1㎡あたり1,050円を乗じて得た額

分譲マンションは「その他建築物」に当たります。この単価で、延べ面積別に補助基準額を計算するとこうなります。

延べ面積 補助基準額の計算 補助基準額
1,000㎡ 1,000×3,670 3,670,000円
2,000㎡ 1,000×3,670+1,000×1,570 5,240,000円
3,000㎡ 上記+1,000×1,050 6,290,000円
5,000㎡ 上記+2,000×1,050 8,390,000円

延べ面積3,000㎡というと、おおよそ5階建て40戸前後のマンションです。その規模で補助基準額が629万円。桁を見間違えたのかと思って、私は3回読み直しました。

ただし「補助率」は表に書かれていません

ここは正直に書きます。木造以外の一戸建て住宅の欄には「3分の2以内の額」と補助率が明記されていますが、「その他建築物」の欄には基準額の計算式だけで、補助率の記載がありません。

つまり、この基準額がそのまま交付額になるのか、基準額に補助率を掛けるのかは、町のページだけでは断定できません。 私はここを推測で書きません。管理組合が確認すべき質問は、この1文です。

「昭和56年5月31日以前に着工した分譲マンションです。建築物耐震診断事業を使いたいのですが、その他建築物の補助基準額に対する補助率と、1棟あたりの上限額を教えてください」

窓口は函南町役場 建設経済部 都市計画課(055-979-8117)です。

契約前に申請しなければ対象外になります

もう1つ、外せない注意点があります。函南町のTOUKAI-0⁺総合支援事業のページには、こう明記されています。

補助制度を利用する場合は契約(着手)前に申請が必要となります。申請前に事業を進めた場合は、補助の対象になりません。
補助事業は年度毎の予算の範囲内で交付する事業であり、予算の状況によっては交付を受けられないことがあります。

管理組合の意思決定は、年1回の定時総会が基本です。「総会で診断業者を決めてから申請」という段取りだと、契約と申請の前後が逆になる危険があります。私が理事長さまにお伝えしているのは、総会議案に「補助金の交付申請を先に行い、交付決定後に契約する」という一文を入れておいてくださいということです。

診断が先、修繕が後。順番を間違えると足場を二度架けることになります

旧耐震のマンションで私がいちばん悔しい思いをするのは、外壁と防水を先にきれいにした2年後に耐震補強の話が出てくるケースです。

耐震補強は、外壁に鉄骨ブレースを入れたり、柱に炭素繊維を巻いたりします。仕上げた外壁を壊すことになります。そして足場をもう一度架けます。仮設足場は工事費の15〜25%を占めますから、二度架ければその分がまるごと余計にかかります。

順番 1回目 2回目 仮設費
正しい順番 耐震診断→(必要なら)補強と外装を同時 — 1回分
よくある失敗 外壁・防水 数年後に耐震補強 2回分

函南町は、その診断に補助を用意している町です。旧耐震のマンションであれば、外装の話より先に、診断の話を理事会の議題に載せてください。

昭和56年5月31日以前かどうかの確認方法

「うちは旧耐震かどうか分からない」という理事長さまは少なくありません。確認は3つの書類のどれかでできます。

  • 建築確認済証(確認通知書)の日付
  • 検査済証の日付
  • 管理会社が保管している竣工図の表題欄

いちばん確実なのは建築確認済証です。管理会社に「建築確認済証の写しをください」と依頼してください。これは無料で、たいてい1週間以内に出てきます。

雨水浸透施設・雨水貯留施設補助——「共同住宅を含む」のもう1本

函南町の補助金でもう1本、対象者に共同住宅が明記されている制度があります。雨水浸透施設・雨水貯留施設設置に対する補助金です。

町内に敷地面積が1,000平方メートル未満の居住の用に供する住宅(併用住宅及び共同住宅を含む)の所有者(これから建築しようとするものを含む)で、雨水浸透施設または雨水貯留施設を設置する方。

補助額は次のとおりです。

施設 型 補助金の額
雨水浸透施設 A型 工事に要する経費または6万円のいずれか少ない額
雨水浸透施設 B型 工事に要する経費または5万円のいずれか少ない額
雨水貯留施設 浄化槽転用型 工事に要する経費の2分の1以内または8万円のいずれか少ない額
雨水貯留施設 簡易貯留型 工事に要する経費の2分の1以内または5万円のいずれか少ない額

敷地面積1,000㎡未満という条件がハードルです

正直に申し上げます。分譲マンションの敷地は1,000㎡を超えることが多く、この条件で外れる組合のほうが多いと思います。

ただ、函南町には小規模なマンションもあります。敷地面積は登記簿謄本(全部事項証明書)の土地の表示欄に書いてあります。 管理会社に「敷地の登記簿の面積を教えてください」と聞けば5分で分かります。1,000㎡未満だった組合は、都市計画課に相談する価値があります。

屋上防水の改修と同じタイミングでしか検討できない工事です

この補助は「屋根に降った雨水」を浸透・貯留させる施設が対象です。マンションでいえば、屋上の雨水が流れ込む先の縦樋と、地上の排水設備をいじる話になります。

大規模修繕で屋上防水をやり直すときは、屋上から地上までの排水経路を全部点検する数少ない機会です。 このタイミングを逃すと、次は12〜15年後です。補助金の額そのものは5万円から8万円と大きくありませんが、「検討したうえで見送った」と議事録に残せることには意味があります。

なお、設置(購入)前の申請が必要で、完了届には「工事着工前、工事中、完了後」の写真が必要と要綱に定められています(出典:函南町雨水浸透施設・雨水貯留施設設置費補助金交付要綱)。ここでも写真です。

ブロック塀等撤去・建替え事業を、大規模修繕と同じ議案にまとめる

函南町のブロック塀等撤去事業・ブロック塀等建替え事業は、金額の水準が目を引きます。

事業 単価 補助率 1敷地あたり上限
撤去事業 延長1mにつき2万円 3分の2以内 26万6,000円
建替え事業 延長1mにつき5万8,380円 3分の2以内 59万9,000円

条件は2つです。

  • 避難路や通学路(私道を除く)に面した高さ60cm以上のブロック塀であること
  • 工事後にブロック塀の高さが避難路等から60cm以下となる工事であること

撤去より建替えのほうが上限が2倍以上手厚い

この町の設計は、はっきりしています。撤去して更地にするより、安全な塀に造り替えるほうを厚く支援する設計です。上限で26万6,000円と59万9,000円。倍以上の差があります。

マンションの敷地境界にブロック塀が残っている組合は、大規模修繕で外壁の色を変えるタイミングで塀も造り替えられます。外構の色を新しい外壁色と揃えられるのは、この機会だけです。

別の年に議案を立てると2年かかります

私が「同じ議案にまとめてください」とお伝えする最大の理由は、金額ではありません。

管理組合が正式に物事を決められるのは、原則として年1回の定時総会だけだからです。 大規模修繕を今年の総会で決め、ブロック塀を来年の総会で決めれば、それだけで2年が過ぎます。近隣へのあいさつも2回、警備員の手配も2回、養生も2回です。

函南町にマンション長寿命化促進税制の専用ページはありません。それでも使えます

ここからは税金の話です。

函南町の固定資産・都市計画税のページには15本のページが並んでいます。そのうち改修に伴う減額制度は4本です。

ページがある減額制度 対象
新築された認定長期優良住宅に係る減額 新築
耐震改修工事が行われた住宅に係る減額 耐震改修
バリアフリー改修が行われた住宅に係る減額 バリアフリー改修
省エネ(熱損失防止)改修工事が行われた住宅に係る減額 省エネ改修

マンション長寿命化促進税制の専用ページは、2026年8月30日時点で確認できませんでした。

ページが無いことと、制度が使えないことは別です

マンション長寿命化促進税制は、地方税法にもとづく制度です。市町村が「やる・やらない」を選べる制度ではありません。国土交通省がマンション税制のページで、証明書の様式まで公開しています。

私はこの連載で、前日に隣の清水町を扱いました。清水町にも専用ページはありませんでした。一方、その前日の長泉町には専用ページと必要書類一覧がありました。同じ静岡県東部の、車で20分と離れていない3つの町です。

この差は、町の規模と職員数の差であって、区分所有者の権利の差ではありません。

制度の概要(2026年8月30日時点)

項目 内容
対象 築後20年以上の分譲マンション(10戸以上)
工事 令和5年4月1日から令和9年3月31日までに長寿命化に資する大規模修繕工事が完了
過去要件 過去に1回以上、長寿命化工事を実施していること
減額 家屋の固定資産税額の3分の1(1戸あたり100㎡相当分まで)
期間 工事完了の翌年度分に限る
前提 管理計画認定を受けている、または助言・指導を受けて修繕積立金を引き上げていること

※制度の詳細・最新の取扱いは国土交通省および函南町税務課でご確認ください。

町のバリアフリー改修減額の様式が教えてくれる「工事中に撮る写真」

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい実務の話です。

函南町に長寿命化促進税制の専用ページはありません。けれど、バリアフリー改修減額のページには、必要書類が6点すべて列挙されています(出典:函南町 バリアフリー改修が行われた住宅に係る固定資産税の減額制度)。

  1. 減額申告書
  2. 改修工事の明細書(工事内容を確認することができる書類)
  3. 改修前、改修後の工事箇所の写真
  4. 改修費用を確認することができる書類(領収書等)
  5. 補助金や給付金を受けた場合はそれが確認できる書類
  6. 要件に該当する方が居住していることを証するもの

そして「改修工事が完了した日から3ヶ月以内に税務課資産税係へ提出」と書かれています。申告書の様式(PDF)もダウンロードできます。

減額制度の申告実務は、どれも形が似ています

長寿命化促進税制も、完了後3か月以内の申告、100㎡までの部分に3分の1という点でバリアフリー改修の減額と同じ形です。必要書類の考え方も似ています。

つまり、函南町の税務課資産税係は、改修に伴う減額の申告を日常的に処理している窓口です。 「ページが無いから扱えない」ということではありません。

3番の写真は、着工してからでは二度と撮れません

書類1・2・4・5は、工事が終わってからでも施工会社に頼めば出てきます。

3番の「改修前の写真」だけは違います。 足場が架かり、高圧洗浄が終わり、下地補修が始まってしまったら、改修前の状態はもうこの世に存在しません。

私が現場で20年やってきて、最後の最後で管理組合に頭を下げさせてしまうのは、たいていこれです。工事は完璧に終わったのに、減額の申告に必要な着工前の写真が撮られていない。

理事会で決めておく3行

議事録にこの3行を残してください。

  1. 着工前の外観・屋上・バルコニー・共用廊下の写真を、施工会社に「税制申告用」として明示的に撮影・保管させる
  2. 撮影範囲と枚数は工事請負契約の仕様書に明記する
  3. 大規模の修繕等証明書の発行を、設計監理を委託する建築士との契約に含める

3番目は落とし穴です。証明書は建築士等が発行します。工事が終わってから「証明書もお願いします」と言うと、別料金の見積が出てくることがあります。契約の段階で含めておけば、その交渉は不要です。

証明書の様式は国土交通省が公開しています(大規模の修繕等証明書 様式、記入例)。契約前に印刷して、建築士に見せてください。

減額措置は、重ねられるものと重ねられないものがあります

函南町のバリアフリー改修減額のページには、こういう注意書きがあります。

新築住宅に係る減額措置及び耐震改修に係る減額措置を受けている場合は対象となりませんが、省エネ改修を同時に実施した場合は、併せて減額措置の対象となります。

私はこれを読んで、この町のページは丁寧だと思いました。「併用できない組み合わせ」と「併用できる組み合わせ」の両方が、1行に書かれています。

管理組合と区分所有者で申告する年が重なる可能性

考えてみてください。大規模修繕が終わった翌年度、管理組合は共用部について長寿命化促進税制の申告をします。同じ年、ある区分所有者が専有部の内窓を入れて省エネ改修の減額を申告するかもしれません。別の区分所有者は手すりを付けてバリアフリー改修の減額を申告するかもしれません。

同じ家屋の、同じ年度の固定資産税に、複数の減額が関わってくる。ここがどう扱われるかは、私が判断してよい領域ではありません。税の判断は税務課の仕事です。

管理組合がやるべきなのは「周知」だけです

管理組合が税務判断をする必要はありません。むしろしてはいけません。工事完了のお知らせに、この1行を入れてください。

「共用部の大規模修繕にともなう固定資産税の減額申告を組合で行います。専有部でバリアフリー改修や省エネ改修をされた方、または今年度される予定の方は、申告の取扱いについて函南町税務課資産税係(055-979-8108)にご相談ください」

これで十分です。組合は情報を渡す役割だけを担い、判断は各区分所有者と町に委ねる。この線引きが、あとで揉めない管理組合のやり方です。

函南町は「町」なので、静岡県に管理計画認定を申請できます

マンション管理計画認定制度は、マンション管理適正化推進計画をつくった市・特別区が窓口になり、町村部は都道府県が窓口になる仕組みです(出典:国土交通省 マンション管理計画認定制度)。

函南町は田方郡函南町、つまり「町」です。ですから静岡県に申請できます。私が扱ってきた島田市・牧之原市・菊川市・御前崎市の4市では「県には申請できません」と書かざるを得なかった論点が、函南町では反転します。

問い合わせ先は静岡県くらし・環境部 住まいづくり課(054-221-3084)です。

認定より先に、助言・指導ルートの様式を見てください

長寿命化促進税制を使うには、2つのルートがあります。

ルート 内容 修繕積立金引上証明書
A:管理計画認定 県の認定を受ける 不要
B:助言・指導 助言・指導を受けて積立金を引き上げる 必要

そして、Bルートの様式は国土交通省のサイトで誰でもダウンロードできます。

いずれも令和8年4月1日付の通知(国住参マ第305号・第306号)にもとづく最新様式です。

理事会で「制度がよく分からない」という話になったとき、記入例のPDFを1枚印刷して回すのが、いちばん早いというのが私の実感です。何を書かされるのかが分かれば、あとは事務です。

なお、Bルートは修繕積立金の引き上げが前提になります。積立金の引き上げは総会の決議事項ですから、どちらのルートを選ぶかは、総会でどんな議案を立てるかに直結します。 ここは早めに決めてください。

相談ダイヤルもあります

制度そのものの質問は、一般社団法人日本マンション管理士会連合会のマンション管理計画認定制度 相談ダイヤル(03-5801-0858、月〜土 10:00〜17:00、祝日・年末年始を除く)で受け付けています。役場の開庁時間に電話できない理事長さまは、土曜日にこちらへ。

国のマンションストック長寿命化等モデル事業 令和8年度第3回

国土交通省のマンションストック長寿命化等モデル事業は、計画支援型・工事支援型で補助が出る制度です。令和8年度の第3回提案募集は、令和8年9月14日(月)から9月18日(金)です。

この記事の公開日から2週間しかありません。正直に申し上げます。今から書類を揃えて間に合う管理組合は、限られます。

それでも書く理由が3つあります。

  1. 年度内に複数回の募集がある制度なので、次の回に向けた準備ができる
  2. 公募要領の必要書類一覧が、そのまま良い準備リストになる
  3. 先導性が評価される制度なので、無足場工法の採用が提案の材料になりうる

今週やることは1つだけです。公募要領の必要書類の一覧ページだけ印刷してください。 15分で終わります。それが次の募集の準備リストになります。

静岡県のマンション管理士無料派遣とセミナー

静岡県は、分譲マンションの管理組合にマンション管理士を無料で派遣する事業を行っています。令和8年度は県内10件程度、1組合あたり2回という規模です。詳細と申込は静岡県マンション管理士会(FAX 0544-27-6561)、制度の窓口は静岡県住まいづくり課(054-221-3084)です。

2回の使い方を、函南町の組合向けに具体化するとこうなります。

回 相談テーマ
1回目 長期修繕計画と修繕積立金。標高差のある立地で冬季の工程がどう影響するかを含めて
2回目 相見積りの比較と業者選定。三島・沼津・熱海の業者をどう並べるか

申込書の相談内容欄には、次の3行を書いてください。

  1. 旧耐震のため、町の建築物耐震診断事業を使った診断と外装改修の順序を相談したい
  2. 町に共用部の直接補助がないため、長寿命化促進税制のルート選択を相談したい
  3. 区分所有者に町外・県外居住者が多く、総会の議決権行使書の回収に不安がある

3番目は、次の章の話です。

函南町の地形が、見積書の数字を動かします

函南町は、箱根西麓から丹那盆地、狩野川沿いの低地まで、標高差の大きい町です。丹那盆地は標高およそ230m。同じ町内でも、JR函南駅周辺の低地とはまるで気候が違います。

標高で工事適期が変わる町

塗料も防水材も、施工できる気温・湿度の条件があります。一般に、気温5℃以下または湿度85%以上では施工しないという条件が仕様書に書かれます。

低地では問題にならない冬の朝の気温が、箱根西麓や丹那では条件を割ります。同じ函南町のマンションでも、標高によって「12月着工」の意味が変わるということです。

見積書を受け取ったら、この1文を聞いてください。

「気温と湿度による施工中止の条件は仕様書のどこに書かれていますか。予備日は何日みていますか」

予備日の日数が明記されていない見積は、工期が延びたときに誰の責任かで揉めます。

方位別・立地別の劣化要因

部位・方位 函南町で起きやすいこと
南面 紫外線によるチョーキング(塗膜が白い粉になる現象)が先行
北面 山際・谷筋は日照が短くコケ・藻が出やすい。防藻・防カビ塗料の検討
高台の物件全般 冬季の凍結融解によるタイル浮き・シーリングの早期硬化
傾斜地の敷地 足場のベースを段組みにする必要があり仮設費が上がる
旧集落部 4t車が入らず2t車での分割搬入。道路使用許可と警備員

凍結融解というのは、コンクリートやタイルの隙間に入った水が凍って膨らみ、溶けて縮むのを繰り返すうちに、材料が割れたり剥がれたりする現象です。高台の物件で「築年数の割にタイルが浮いている」場合、これを疑います。

丹那断層のある町であること

函南町の丹那盆地には、国の天然記念物に指定されている丹那断層があります。昭和5年(1930年)の北伊豆地震で動いた断層で、地表のずれが今も保存されています。

私は不安を煽るつもりはありません。ただ、町が非木造住宅の耐震診断に「マンション含む」と書いて補助を用意しているのは、この土地の歴史と無関係ではないだろうと思っています。制度は、その土地の必要から生まれます。

リゾート型マンションという、函南町固有の論点

函南町には、JR函南駅・伊豆仁田駅周辺の中層マンションと、箱根西麓や畑毛温泉周辺の別荘的な区分所有マンションが併存しています。伊豆半島の玄関口という立地の特徴です。

この2つは、管理組合としての性格がまったく違います。

論点 駅周辺の居住型 高台のリゾート型
区分所有者の居住地 町内・近隣市 首都圏・県外が多い
総会出席率 比較的高い 低くなりがち
最大のボトルネック 合意形成の内容 議決権行使書・委任状の回収
在宅確認 平日夜・土日で可能 数か月連絡がつかない住戸が出る

工法を選ぶ前に、委任状の回収スケジュールを決めてください

リゾート型の組合で私が何度も見てきたのは、内容の議論は済んでいるのに、書面が集まらずに総会が成立しないという事態です。

工法選定より前に、「いつまでに、誰が、どうやって回収するか」を決めてください。 発送から締切まで最低3週間、督促を2回。これができていない組合は、良い提案があっても1年遅れます。

遠隔地オーナーにとって、工期の短さは実利です

もう1つ、リゾート型に固有の話をします。

大規模修繕では、バルコニーの防水や手すりの塗装、避難ハッチの点検で、専有部分に立ち入らせていただく日が必ず出ます。区分所有者が町外にお住まいだと、その日程調整が工程の律速になります。

工期が6か月と4か月では、遠隔地の所有者が「現地に来るかどうかを気にしなければならない期間」が2か月違います。これは金額に表れない、しかし所有者にとって実際の負担の差です。

ロープアクセス工法は足場を組まないため、工期が短くなる傾向があります。ロープアクセス工法の技術的な解説は、姉妹サイトロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。

ただし、バルコニー内部の作業が必要な点は工法にかかわらず同じです。 「ロープアクセスなら立ち入りゼロ」ではありません。ここは正直に申し上げます。

仮設足場は、工事費の15〜25%を占めます

大規模修繕の見積書で、金額が大きいのに中身が見えにくいのが仮設工事です。私の経験では、総工事費の15〜25%が目安になります。

総工事費 仮設足場の概算(15〜25%)
3,000万円 450万〜750万円
5,000万円 750万〜1,250万円
8,000万円 1,200万〜2,000万円

理事会で「仮設工事一式 750万円」という1行を見せられて、その場で判断できる方はほとんどいません。質問はこの1文で足ります。

「仮設工事の金額を、平米単価とリース期間に分解して出してください」

20万円の支出は判断できて、750万円の1行は判断できない。 理事の皆さまが不真面目なのではありません。判断材料が渡されていないだけです。

函南町向け、ハイブリッド工法の3パターン

私どもは、通常の足場仮設による工事と、無足場工法であるロープアクセスによる工事、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから提案しています。函南町の物件条件でよく採る配分は、次の3つです。

パターン 内容 効きやすい物件
① 傾斜面だけロープ 高低差があり足場のベースが段組みになる面をロープに置き換える 箱根西麓・高台の物件
② 低層足場/高層ロープ 下層は足場、上層はロープで風圧を受ける面積を減らす 冬季の季節風が強い立地
③ 駐車場を潰さない配分 足場を架ける面を分割し、代替駐車場の費用と期間を圧縮 1戸1台前提の敷地

③は地方の物件で効きます。都市部と違い、代替駐車場を近所で借りるのは簡単ではありません。駐車場が半年使えないことは、居住者にとって金額以上の負担です。

ロープアクセス工法は万能ではありません

はっきり書きます。私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる現場は、普通にあります。

  • 下地補修の数量が読めないほど劣化が進んでいる
  • タイルの浮きが広範囲で、打診調査の結果次第で工事量が大きく変わる
  • 外壁の形状が複雑で、ロープでは届かない部位が多い

こういう現場では足場のほうが結果的に安く、確実です。工法は目的ではなく手段です。ロープアクセス工法と足場工法の使い分けについてはロープアクセスドットコムでも解説していますが、最終的には現地を見ないと分かりません。

大規模修繕の全体像は大規模修繕工事のご紹介、ロープアクセスによる施工事例はロープアクセス工法のご紹介にまとめています。

モデルケース2本(函南町の物件条件を想定した試算)

実在の物件ではなく、函南町でよくある条件を想定した試算です。

ケース1:JR函南駅圏/築25年・6階建て・42戸

項目 全面足場 ハイブリッド
工事費 6,600万円 5,700万円
差額 — ▲900万円(1戸あたり約21万円)
工期 5.5か月 4か月
駐車場の制限 全周5.5か月 2面ずつ各1.5か月

ケース2:箱根西麓の高台/築32年・4階建て・24戸

項目 全面足場 ロープ主体
工事費 3,800万円 3,050万円
差額 — ▲750万円(1戸あたり約31万円)
工期 4.5か月 3か月
傾斜地の段組み足場 必要 不要

ケース2で1戸あたりの効果が大きいのは、戸数が小さいからです。24戸で3,800万円なら1戸あたり約158万円。同じ工事を150戸で割れば1戸あたり25万円前後です。戸数が小さい組合ほど、工法選定が1戸あたりの負担に効きます。

そして重要な前提が1つ。工法は、設計を発注する前でなければ実質的に選べません。 足場を前提にした設計図と数量表ができてしまうと、あとから工法だけ変えることはできないからです。

修繕積立金が足りないときの4つの打ち手

打ち手 内容 注意点
① 一時金の徴収 総会で議決し各戸から徴収 合意形成の難易度が高い
② 借入 住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資など 返済計画を長期修繕計画に反映
③ 工事範囲の見直し 優先順位をつけて絞る 段階施工は仮設費が回数分かかる
④ 工法の見直し ロープアクセス/ハイブリッドで仮設費を圧縮 設計発注前に決める必要あり

③には落とし穴が2つあります。段階施工にすると仮設費が施工回数分かかり、総額はかえって増えることがあります。 そしてもう1つ、長寿命化促進税制の対象工事要件(外壁塗装等・床防水・屋根防水)から外れる可能性があります。「屋上防水は次回にしましょう」という判断が、税制の適用を落とすことがあるということです。

議案書の書き方についても1つだけ。「一時金50万円」と「月額3,000円の値上げ」を、両方載せてください。 総額だけを見せると否決されやすく、月額だけを見せると総額の重さが伝わりません。両方あって初めて、区分所有者は自分の財布で判断できます。

見積書のチェックは、この5点です

# チェック項目 見るところ
1 数量の根拠 「一式」ではなく㎡・m・箇所で書かれているか
2 仕様の具体性 塗料・防水材のメーカー名と製品名、塗り回数
3 下地補修の超過単価 仮定数量を超えた分の㎡単価・m単価が契約前に書いてあるか
4 仮設の内訳 平米単価とリース期間
5 「別途」の中身 何が含まれず、いくらかかりうるのか

3番が最重要です。下地補修は、足場を架けて打診調査をするまで正確な数量が分かりません。だから見積では仮定数量で計上されます。

工事が始まって足場が架かった状態で、管理組合が対等に交渉することはできません。工事を止めるわけにいかないからです。 超過分の単価は、契約前に紙に書かせてください。

函南町の工事適期(標高別)

時期 低地(函南駅周辺) 高台(丹那・箱根西麓)
3月下旬〜5月上旬 ◎ ◯(朝の気温に注意)
5月中旬〜6月 △(梅雨) △(梅雨・霧)
7〜8月 △(熱中症で作業時間に制限) ◯(低地より涼しい)
9〜10月中旬 △(台風期) △(台風期)
10月下旬〜11月 ◎ ◎
12〜2月 ◯(閑散期で価格交渉の余地) △(凍結・低温で予備日が必要)

高台の物件では、冬季施工の予備日を3〜5日多めに見てください。そのうえで、業者にはこう聞いてください。

「12月着工なら金額はどうなりますか」

閑散期の価格には、交渉の余地があります。

今週できること(合計3時間以内)

  1. 管理会社に建築確認済証の写しを依頼する(メール5分)
  2. 旧耐震なら都市計画課055-979-8117に電話し、建築物耐震診断事業の補助率と上限を聞く(10分)
  3. 税務課資産税係055-979-8108に電話し、長寿命化促進税制の申告書様式を依頼する(10分)
  4. 管理会社に敷地の登記簿面積を確認する(メール5分・雨水施設補助の判定用)
  5. 国交省サイトから証明書の記入例3本をダウンロードして印刷する(15分)

1と3は、今日中でもできます。

18か月の逆算カレンダー

時期 やること
18か月前 耐震診断の補助申請(旧耐震の場合)/管理士派遣の申込
15か月前 劣化診断・建物調査
12か月前 設計・数量拾い(工法をここまでに決める)
9か月前 業者選定・相見積り(3社以上)
6か月前 定時総会で議決
5か月前 着工前写真の撮影・近隣あいさつ
0か月 着工
完了後3か月以内 固定資産税の減額申告

よくある質問(FAQ)

Q1. 函南町に、分譲マンションの共用部の大規模修繕そのものを補助する制度はありますか。
A. 2026年8月30日時点の公開情報では、工事費を直接補助する町独自の制度は確認できませんでした。ただし旧耐震のマンションについては、耐震診断に対する建築物耐震診断事業が「非木造住宅(マンション含む)」を対象としています。

Q2. 築25年の分譲マンションですが、耐震診断の補助は使えますか。
A. 対象は昭和56年5月31日以前に建築(着工)された建築物です。築25年(1990年代後半以降の建築)であれば新耐震基準ですので対象外です。この場合は長寿命化促進税制のほうを検討してください。

Q3. マンション長寿命化促進税制は、函南町でも使えますか。
A. 地方税法にもとづく全国共通の制度ですので、市町村が実施の可否を選ぶ制度ではありません。町のサイトに専用ページがないだけです。手続きは函南町税務課資産税係(055-979-8108)にご確認ください。

Q4. 管理計画認定は、函南町に申請するのですか。
A. いいえ。函南町は町村部にあたるため、静岡県が窓口です。静岡県住まいづくり課(054-221-3084)へお問い合わせください(出典:国土交通省 マンション管理計画認定制度)。

Q5. 補助金の申請は、工事契約の後でも間に合いますか。
A. 函南町は「補助制度を利用する場合は契約(着手)前に申請が必要」「申請前に事業を進めた場合は補助の対象になりません」と明記しています(出典:TOUKAI-0⁺のご案内)。順番を逆にしないでください。

Q6. ブロック塀の補助は、マンションの敷地でも使えますか。
A. 避難路や通学路(私道を除く)に面した高さ60cm以上のブロック塀であることなど、条件があります。敷地の塀が該当するかは都市計画課(055-979-8117)にご確認ください。

Q7. 着工前の写真は、何をどこまで撮ればよいですか。
A. 外壁の各面、屋上、バルコニー、共用廊下・階段、鉄部など、工事対象となる部位すべてです。「税制申告用の記録写真」として仕様書に明記し、施工会社に撮影・保管させてください。

Q8. ロープアクセス工法なら、必ず安くなりますか。
A. いいえ。下地補修の数量が読めない現場や、外壁形状が複雑な物件では、足場のほうが結果的に安く確実なことがあります。物件を見ないと判断できません。

この記事のポイントまとめ

  • 函南町の建築物耐震診断事業は対象に「非木造住宅(マンション含む)」と明記されている
  • 補助基準額は延べ面積区分ごとの単価(3,670円/1,570円/1,050円)で公表されている
  • ただし「その他建築物」の補助率は町ページに記載がなく、都市計画課への確認が必要
  • 補助制度は契約(着手)前の申請が必須。総会の議決順序に注意
  • 旧耐震は診断が先、外装が後。逆にすると足場を二度架けることになる
  • 雨水浸透・貯留施設補助は対象者に「共同住宅を含む」と明記。ただし敷地1,000㎡未満が条件
  • ブロック塀は撤去上限26万6,000円、建替え上限59万9,000円。建替えのほうが手厚い
  • 町サイトにマンション長寿命化促進税制の専用ページはないが、制度は全国共通で使える
  • バリアフリー改修減額の必要書類6点が、税制申告の準備リストとして使える
  • 改修前の写真だけは、着工してからでは二度と撮れない
  • 減額措置には併用できる組み合わせと、できない組み合わせがある
  • 函南町は「町」なので、管理計画認定は静岡県が窓口
  • 助言・指導ルートの証明書様式は国交省サイトから誰でも入手できる
  • 国のモデル事業 令和8年度第3回は9月14日〜18日
  • 標高差の大きい町なので、冬季の施工可否と予備日が立地で変わる
  • リゾート型の組合は、工法選定より先に委任状の回収スケジュールを決める
  • 戸数が小さい組合ほど、工法選定が1戸あたりの負担に効く
  • 工法は設計を発注する前でなければ実質的に選べない

主なお問い合わせ先

用件 窓口 電話番号
耐震診断・ブロック塀・雨水施設の補助 函南町 建設経済部 都市計画課 055-979-8117
固定資産税の減額申告 函南町 総務部 税務課 資産税係 055-979-8108
町役場代表 函南町役場(8:30〜17:15) 055-978-2250
管理計画認定・管理士派遣 静岡県 住まいづくり課 054-221-3084
管理士派遣の申込 静岡県マンション管理士会(FAX) 0544-27-6561
認定制度・税制の一般的な相談 日本マンション管理士会連合会 相談ダイヤル 03-5801-0858

各課の連絡先一覧は函南町 各課へのお問い合わせにまとまっています。

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出典・参考資料

おわりに

函南町は、補助金という形で工事費に現金が出る町ではありません。けれど、町の補助金のページには「マンション含む」「共同住宅を含む」という言葉が、たしかに書かれています。書いてあるということは、想定されているということです。

制度が少ない町の管理組合ほど、自分たちで動いた分がそのまま結果に出ます。逆に言えば、動かなければ何も起きません。大きな市には丁寧な解説ページと担当者がいますが、小さな町では、こちらから電話をかけないと情報にたどりつけないのが実際のところです。

ですからこの記事の結論は、電話2本と写真1組です。都市計画課に055-979-8117、税務課資産税係に055-979-8108。そして、足場が架かる前に写真を撮っておくこと。

総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。工法の相談でも、見積書の読み方でも、お問合せフォームから遠慮なくお声がけください。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、東京・関東一円および静岡県でロープアクセス工法・足場工法・ハイブリッド工法の3つから建物に最適な工法をご提案できる改修会社です。日本初となるロープアクセス工事のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板などの専門職が加盟しています。

最終更新:2026年8月30日

※本記事は2026年8月30日時点で公開されている情報にもとづいて作成しています。補助金・税制の内容や期限は変更される場合がありますので、実際のお手続きの前に各窓口の最新情報をご確認ください。本記事は税務・法務に関する助言を行うものではありません。

清水町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

この記事で答える質問:静岡県駿東郡清水町の分譲マンション管理組合は、2026年度(令和8年度)の大規模修繕でどの制度を使えるのか。町のホームページに載っていない制度は、使えないということなのか。何から手をつければいいのか。

株式会社明誠の本間です。この連載では、自治体を1つずつ取り上げて、その町の管理組合が実際に使える制度を公的な一次情報だけで整理しています。

今日は静岡県駿東郡清水町です。

先に結論から申し上げます。清水町には、分譲マンションの共用部改修に現金を出す町独自の補助金は、2026年8月29日時点の公開情報では確認できませんでした。ここは正直に書きます。

そのうえで、この記事でいちばんお伝えしたいのは、次の一点です。

清水町の公式サイトには「マンション長寿命化促進税制」の専用ページがありません。しかし、ページがないことと、制度が使えないことは、まったく別の話です。

昨日まで、私はこの連載で静岡県内の市と町を続けて扱ってきました。そのうち隣の長泉町には、町の公式サイトに「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する減額」という専用ページがあり、必要書類の一覧まで公開されていました。

清水町には、それがありません。町の固定資産税「家屋」のページに並んでいるのは、課税のしくみと、長期優良住宅・耐震・省エネ・バリアフリーの4つの減額だけです(出典:清水町 家屋)。

マンション長寿命化促進税制は、地方税法にもとづく全国共通の制度です。町がページを作っているかどうかで、適用の可否が決まるものではありません。

つまり清水町の管理組合は、「町のサイトに書いていないから、うちは対象外だ」と判断してはいけない立場にあります。これがこの記事の背骨です。以下、順番に説明します。


結論:清水町の管理組合が2026年度に検討すべき制度は6つ

先に全体像を1枚の表にします。詳細はこのあと1つずつ解説します。

制度 実施主体 清水町の管理組合が使えるか 窓口
マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額) 市町村(清水町) ◯ 要件を満たせば対象。町サイトに専用ページはないが制度は全国共通 清水町 税務課 資産税係 055-981-8220
マンション管理計画認定制度 静岡県(町域のため) ◯ 清水町は「町」なので県に直接申請できる 静岡県 くらし・環境部 住まいづくり課 054-221-3084
マンションストック長寿命化等モデル事業 国土交通省 ◯ 全国の管理組合が対象。令和8年度第3回は9月14日〜18日 事務局(公募要領に記載)
ブロック塀等耐震改修事業 清水町 △ 敷地の塀が避難路に面していれば対象になり得る 清水町 くらし安全課 防災対策係 055-981-8205
感震ブレーカー設置助成事業 清水町 △ 共用部ではなく区分所有者個人が使う。組合は周知役 清水町 くらし安全課 防災対策係 055-981-8205
マンション管理士の無料派遣/管理セミナー 静岡県 ◯ 県内の管理組合が対象。セミナー会場は隣の三島市 一般社団法人 静岡県マンション管理士会

この表を見て、「◯が思ったより多い」と感じた方がいらっしゃると思います。私もそう思いました。

清水町は面積8.81平方キロメートル、静岡県で最も面積の小さい市町です(出典:清水町 町の概要・アクセス)。役場の職員数にも限りがあります。マンション専門のページを作る余力がないことと、制度が使えないことは、繰り返しますが別の話です。


核心1:町のサイトに「長寿命化促進税制」のページがない。それでも申告できる

清水町の固定資産税「家屋」ページに並ぶ4本

まず事実を正確に置きます。清水町の公式サイトで、固定資産税の「家屋」カテゴリに掲載されているのは次の5ページです。

  1. 家屋に対する課税のしくみ
  2. 長期優良住宅に対する固定資産税の減額について
  3. 住宅耐震改修に伴う固定資産税の減額について
  4. 住宅の省エネ改修に伴う固定資産税の減額について
  5. 住宅のバリアフリー改修に伴う固定資産税の減額について

(出典:清水町 家屋)

このうち2から5は、いずれも個人が自分の住まいに対して行う改修を前提とした制度です。省エネ改修の減額は「賃貸住宅を除く」と明記され、バリアフリー改修の減額も「賃貸住宅は除く」うえで65歳以上の方・要介護認定を受けた方・障害のある方が居住することが要件です(出典:清水町 住宅の省エネ改修に伴う固定資産税の減額について、清水町 住宅のバリアフリー改修に伴う固定資産税の減額について)。

つまり、管理組合が発注する共用部の大規模修繕を正面から扱ったページは、清水町のサイトには存在しません。

「ページがない」を「制度がない」と読み替えてはいけない

ここが分岐点です。

マンション長寿命化促進税制、正式には「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに係る固定資産税の減額措置」は、国が地方税法で定めた全国共通の特例です。新築から20年以上経過し、令和5年4月1日から令和9年3月31日までの間に一定の要件を満たす大規模修繕工事を完了したマンションについて、翌年度分の家屋の固定資産税を3分の1減額するものです(出典:国土交通省 マンション長寿命化促進税制)。

減額の対象は1戸あたり床面積100平方メートル分までです。都市計画税は減額されません。

この制度の実施主体は市町村ですが、市町村が「やる/やらない」を選べる制度ではありません。要件を満たしたマンションから申告があれば、清水町も減額を適用することになります。

私はこの連載で、自治体のページの更新が追いついていない例を何度も見てきました。ページがないこと、更新日が古いことは、担当課の忙しさの反映であって、制度の有無ではありません。管理組合の側が、それを知らずに諦めてしまうことのほうが、はるかにもったいないと思っています。

清水町の税務課に電話で聞くときの1文

とはいえ、「地方税法にあるはずだから対象です」と管理組合が自分で判断するのも、実務としては危ういやり方です。

清水町 税務課 資産税係の直通番号は 055-981-8220、役場2階にあります(出典:清水町 住宅の省エネ改修に伴う固定資産税の減額について)。理事会の誰かが、次の1文をそのまま電話で読み上げれば足ります。

「分譲マンションの管理組合です。長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに係る固定資産税の減額措置について、清水町での申告書の様式と、添付が必要な書類の一覧を教えていただけますか。工事はこれからです。」

「工事はこれからです」を必ず添えてください。理由は次のとおりです。

  • 着工前に様式を知っておくと、工事中に撮るべき写真や、施工会社に用意させる証明書を先に指定できる
  • 完了後に「その書類は出せません」と言われる事故を防げる
  • 申告期限は工事完了後3か月以内。あとから探し始めると間に合わないことがある

私が現場で見てきたなかで、いちばん多い取りこぼしはこれです。制度を知らなかったのではなく、書類が揃わなかった。着工前の30分の電話が、それを防ぎます。

建築士への依頼は「証明書の発行まで」を契約に入れる

長寿命化促進税制の申告には、工事内容を証明する書類が要ります。この証明を出せるのは、建築士、指定確認検査機関、登録性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人などです。

設計監理を建築士事務所に依頼している組合は、契約の段階で「固定資産税減額の申告に必要な証明書の発行まで含む」と書面に入れてください。工事が終わってから追加でお願いすると、別料金になるか、そもそも受けてもらえないことがあります。

清水町の省エネ改修の減額ページにも、証明書を出せる主体が同じように列挙されています。町の窓口が求める証明のかたちは、この線から大きく外れないはずです。

核心2:清水町のページに書いてある「併用できません」という一行

減額どうしはぶつかる

清水町の省エネ改修の減額ページには、注意書きとして次の趣旨が書かれています。

他の固定資産税の減額を受けている人は、対象になりません。ただし、住宅のバリアフリー改修の減額と同時に減額を受けられます。

バリアフリー改修の減額ページにも、同じ形で「他の固定資産税の減額を受けている人は、対象になりません。ただし、住宅の省エネ改修の減額と同時に減額を受けられます」と書かれています(出典:清水町 住宅の省エネ改修に伴う固定資産税の減額について、清水町 住宅のバリアフリー改修に伴う固定資産税の減額について)。

短い一行ですが、マンションの管理組合にとっては見過ごせない意味を持ちます。

なぜ管理組合が気にする必要があるのか

固定資産税の減額は、建物ではなく、区分所有者ひとりひとりの家屋の税額に対してかかります。管理組合が申告する長寿命化促進税制も、最終的には各戸の固定資産税が3分の1減額されるという形で効きます。

ここで、こういう年が起こり得ます。

  • 管理組合が共用部の大規模修繕を完了し、長寿命化促進税制の減額を申告した
  • 同じ年に、ある区分所有者が自室の内窓を入れる省エネ改修を行い、省エネ改修の減額を申告した

このとき、その区分所有者の家屋に2つの減額が同時に乗ることになります。清水町のページの書き方に照らせば、そのまま両方が通るとは限りません。

表にすると、こうなります

減額制度 対象 減額割合 対象床面積 期間
長寿命化に資する大規模修繕(マンション長寿命化促進税制) 管理組合が行う共用部の大規模修繕 3分の1 1戸あたり100平方メートルまで 翌年度分
住宅耐震改修 個人の住宅の耐震改修 町ページ参照 町ページ参照 翌年度分
住宅の省エネ改修 個人の住宅の省エネ改修(賃貸を除く) 3分の1(長期優良住宅なら3分の2) 120平方メートルまで 翌年度分
住宅のバリアフリー改修 高齢者等が居住する住宅の改修(賃貸を除く) 3分の1 100平方メートルまで 翌年度分

(出典:清水町 家屋 配下の各ページ、国土交通省 マンション長寿命化促進税制)

管理組合が総会前にやっておくこと

私からの提案は、難しいことではありません。大規模修繕の実施が決まった段階で、区分所有者向けのお知らせに次の1行を入れてください。

「共用部の工事完了により、翌年度の固定資産税の減額を申告する予定です。同じ年度にご自宅の窓の断熱改修などで減額を申告される予定がある方は、清水町税務課(055-981-8220)にご相談ください。」

これだけで、区分所有者の側が窓リノベの時期を1年ずらす、といった判断ができます。管理組合が税務判断をする必要はありません。「窓口に相談してください」と伝える役割だけを担えば十分です。

私はこの連載で20を超える自治体を扱ってきましたが、この論点を明示的に書くのは清水町が初めてです。理由は単純で、清水町のページに「他の減額を受けている人は対象になりません」という一行がはっきり書かれていたからです。書いてある自治体だからこそ、書いておく価値があります。


清水町は「町」。だから県に管理計画認定を直接申請できる

市の管理組合には書けなかったこと

静岡県のマンション管理計画認定制度は、県内の町域を対象としています(出典:静岡県 マンションの管理)。

私はこの連載で、静岡県内の市を続けて扱ってきました。島田市、牧之原市、菊川市、御前崎市。どの市でも、この制度については「市が実施しているかどうかを市に確認してください」としか書けませんでした。

清水町は駿東郡の町です。ですから、静岡県 くらし・環境部 住まいづくり課(054-221-3084)に直接申請できます。

手数料は「事前確認適合証」の有無で7倍違う

静岡県は令和8年4月1日に認定申請手数料を改定しました。金額は次のとおりです。

事前確認適合証 長期修繕計画の数 手数料(令和8年4月1日から)
有り 1 4,000円
有り 2以上 4,000円+1,800円×(計画数−1)
無し 1 28,100円
無し 2以上 28,100円+16,200円×(計画数−1)

(出典:静岡県 マンションの管理)

適合証があれば4,000円、なければ28,100円。差額は24,100円、率にして7倍です。

事前確認適合証とは、公益財団法人マンション管理センターが「認定基準に適合している」と確認して交付する書面です。センターの管理計画認定手続支援サービスを通すと、この適合証が得られます(出典:公益財団法人マンション管理センター 管理計画認定手続支援サービス)。

支援サービス自体には別途費用がかかりますので、単純に24,100円が浮く話ではありません。ただ、事前確認を通しておくと、書類の不備で県とやり取りが往復する回数が減ります。理事の任期が1年で回っている組合ほど、この「往復が減る」ことの価値は大きいと私は思っています。

認定を取ると、減額の道筋が1本増える

長寿命化促進税制の適用にあたっては、修繕積立金が適切に確保されていることの確認が求められます。この確認の方法として、管理計画認定を受けているという道筋と、都道府県等から助言・指導を受けて長期修繕計画を適切に見直したという道筋の2つが、国の制度設計上あります(出典:国土交通省 マンション長寿命化促進税制)。

隣の長泉町は、この2つのルートで必要書類がどう変わるかを町のページで公開しています。清水町にはそのページがありません。

ですから清水町の管理組合は、税務課に電話をするときに「認定を取るルートと、県の助言・指導を受けるルートで、必要書類はどう変わりますか」と一緒に聞いてください。1回の電話で2つ聞けます。

両ルートの実務上の分かれ目は、修繕積立金の引上げに関する証明を求められるかどうかです。積立金の引上げは総会の決議事項ですから、どちらのルートを選ぶかは、そのまま組合の総会運営の段取りに直結します。ここは早めに確定させたほうがいい部分です。

支援法人の登録は、県は「現段階では実施していない」

正確に書いておきます。

改正法で新設された「マンション管理適正化支援法人」の登録制度について、静岡県のページには「静岡県は、現段階では、登録制度は実施していません」と記載されています(出典:静岡県 マンションの管理)。

清水町域でも、支援法人という枠組みはまだ動いていません。ここは期待せず、後述する県のマンション管理士無料派遣を使うのが現実的です。

核心3:面積8.81平方キロメートル。清水町は「仮設計画で金額が決まる町」です

まず、数字を置きます

清水町の公式サイトが公開している町の概要は、次のとおりです。

項目 数値
面積 8.81平方キロメートル(静岡県内で最小)
東西 2.7キロメートル
南北 4.54キロメートル
最高地点 海抜256メートル(徳倉山)
平均 海抜18メートル
最低地点 海抜2.9メートル(徳倉矢崎河川敷)
アクセス 東名沼津インターから車で6キロ/新東名長泉沼津インターから車で8キロ/JR三島駅からバスで約15分/JR沼津駅からバスで約20分

(出典:清水町 町の概要・アクセス)

この表を、大規模修繕の見積書を読む目で見直してみます。すると、他の自治体では出てこない論点が3つ浮かびます。

論点1:東西2.7キロの町に、鉄道駅がない

町の公式アクセス案内は、JR三島駅からバス約15分、JR沼津駅からバス約20分です。町内で完結する鉄道駅の案内はありません。

これは工事にとって何を意味するか。職人の移動は、原則すべて車になります。

大規模修繕の現場では、常時10人から20人の職人が出入りします。全員が車で来るということは、その台数分の駐車スペースを、工期のあいだ確保し続ける必要があるということです。

分譲マンションの敷地内で駐車場を空けるには、区分所有者に協力をお願いすることになります。これは、金額よりも先に住民合意のハードルになります。私が実務で見てきた範囲でも、「駐車場を何台、何か月空けるのか」が総会でいちばん揉める論点になった現場は少なくありません。

見積書を取るときに、次の1文を必ず質問に入れてください。

「工事期間中、常時何台分の駐車スペースが必要ですか。近隣の月極駐車場を借りる場合の費用は、見積書のどの項目に入っていますか。」

この質問に即答できる会社は、現場を具体的に想像しています。答えが曖昧な会社は、あとから「駐車場代が別途かかります」と言ってくる可能性があります。

論点2:面積が小さい町は、敷地に余白が少ない

面積8.81平方キロメートルの町に、約3万2千人が暮らしています。単純計算で1平方キロメートルあたり3,600人前後。静岡県内でも屈指の人口密度です。

密度が高いということは、建物と建物の間が近いということです。大規模修繕の実務では、これが直接コストに跳ね返ります。

足場を組むには、建物の外周に幅600ミリから900ミリ程度のスペースが要ります。さらに、足場の外側にメッシュシートが張り出します。隣地との離隔がこれより狭い面では、次のいずれかが発生します。

  1. 隣地の所有者に越境の承諾をもらう(交渉と書面が必要。断られることもある)
  2. 狭小部専用の足場を組む(部材が変わり、単価が上がる)
  3. その面だけ足場を諦め、別の方法で施工する

3番目の選択肢が、ロープアクセス工法(無足場工法)です。ロープアクセス工法は建物の屋上から産業用ロープで降下して施工するため、外周にスペースを必要としません。隣地との離隔が400ミリしかない面でも、屋上に支点が取れれば施工できます。ロープアクセス工法の技術情報は姉妹サイト ロープアクセスドットコム に詳しくまとめています。

論点3:資機材置場が取れない

もう1つ、面積の小さい町で効いてくるのが資機材置場です。

大規模修繕では、塗料、シーリング材、下地補修材、防水材、そして足場部材を現場に置きます。足場部材は量が多く、10階建てのマンション1棟分でトラック数台分になります。敷地に余白がなければ、外部にヤードを借りるか、搬入回数を増やすことになります。どちらも金額に乗ります。

ロープアクセス工法は、足場部材そのものが存在しません。ロープ、ハーネス、器具、材料。これだけです。置場の問題が構造的に発生しません。

清水町のように敷地の余白が少ない地域で、私が「工法を先に決めてください」と申し上げるのは、この理由からです。

誤解のないように書きます

ここで、はっきり書いておきたいことがあります。

ロープアクセス工法は万能ではありません。

  • 下地補修の数量が読めない建物では、足場を架けて全面を叩いて確認したほうが結果的に安いことがあります
  • タイルの浮きが広範囲に及ぶ場合も、足場のほうが向いています
  • バルコニー内部の作業が多い場合は、足場のほうが効率的です

私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる現場は、普通にあります。株式会社明誠が通常の足場仮設工事、ロープアクセス工事、その両方を組み合わせたハイブリッド工法の3つを扱っているのは、建物ごとに答えが違うからです。

清水町向けのハイブリッド工法、3つの当てどころ

清水町の建物条件を前提にすると、足場とロープアクセスの組み合わせは、次の3パターンが考えられます。

パターン 使い方 効く条件
隣地側だけロープ 離隔の取れる面は足場、狭い面はロープ 隣地との離隔が確保できない面がある建物
駐車場を潰さない配分 駐車区画に接する面をロープにして、区画を残す 駐車場の台数に余裕がない敷地
低層足場・高層ロープ 下層階は足場、上層階はロープ 上層階の作業量が少なく、バルコニー内作業が下層に集中する建物

いずれも、設計を発注する前でなければ実質的に選べません。設計事務所が足場前提の図面と数量を作ってしまうと、後から工法を変えるのは手戻りになります。工法の話は、設計者を決める段階でしてください。


核心4:柿田川の町で、外壁を洗うということ

洗浄水は、どこへ行くのか

清水町の中央部には柿田川が流れています。町は西に黄瀬川、南に狩野川を持ち、公式サイトは町を「緑と清流の美しい町」と紹介しています(出典:清水町 町の概要・アクセス)。

大規模修繕の初日にやることは、高圧洗浄です。外壁とバルコニーの汚れ、旧塗膜の浮き、コケやカビを、水で落とします。

このとき出る水は、どこへ行くか。多くの現場では、敷地の雨水排水に流れます。

高圧洗浄の水そのものは、基本的にただの水です。ただし、そこには旧塗膜の粉、外壁の付着物、シーリングの破片が混ざります。塗装工程に入れば、養生の隙間から塗料が落ちることもあります。

清水町で工事をする以上、ここは仕様書に書かせたほうがいいと私は考えています。

仕様書に入れてほしい3行

見積依頼のときに、次の3項目を仕様に入れるようお願いしてください。追加費用が大きく発生する性質のものではありません。

  1. 高圧洗浄水の排水経路を工事計画書に明記すること
  2. 洗浄で発生する固形物(旧塗膜片、コケ、シーリング片)を回収し、排水に流さないこと
  3. 塗料・溶剤・洗浄剤の保管場所と、こぼれた場合の処置を定めること

これは環境の話であると同時に、住民合意の話です

工事の説明会で、いちばん質問が出るのは「臭い」と「水」です。

清水町のように、水が町のアイデンティティになっている地域では、この関心はさらに強くなります。説明会の資料に「洗浄水の排水計画」の1ページがあるだけで、質疑の空気が変わります。

私は、これを施工会社のアピールとしてではなく、管理組合が住民に対して説明責任を果たすための道具として使うことをお勧めします。理事会が「そこまで見ている」と伝わることは、そのあとの合意形成をかなり楽にします。

なお、ロープアクセス工法は足場を架けないぶん、メッシュシートの張り替えや足場解体時に発生する粉じんが構造的に少なくなります。これは金額には表れませんが、住民の体感には表れる差です。

核心5:ブロック塀の撤去補助は、大規模修繕と同じ年にやると効く

清水町のブロック塀等耐震改修事業

清水町は、地震時に倒壊・転倒の危険があるブロック塀等の撤去・改善に補助を出しています。金額は次のとおりです。

事業 補助内容 限度額
ブロック塀撤去事業 施工業者に支払う額と、補助基準の計算単価(1メートルあたり20,000円)で算出した額のうち少ないほうの3分の2 266,000円
ブロック塀等改善事業 施工業者に支払う額と、補助基準の計算単価(1メートルあたり38,400円)で算出した額のうち少ないほうの3分の1 166,000円

(出典:清水町 防災対策における各種助成事業について)

撤去事業には条件があります。対象は、住宅・事業所等から清水町地域防災計画にもとづく広域避難地・避難路に至る道路(一般国道、県道、町道に限る)に面するブロック塀等です。

なぜ管理組合に関係があるのか

分譲マンションの敷地境界には、ブロック塀があることがあります。特に築30年前後の物件では、道路側にブロック塀を立てている例をよく見ます。

その塀が町道に面していれば、この補助の対象になり得ます。

そして、ここが本題です。大規模修繕と同じタイミングでやると、実務上いくつも噛み合います。

  1. 仮設のガードマン、カラーコーン、養生を共用できる
  2. 近隣へのあいさつ回りが1回で済む
  3. 撤去後にフェンスを立てるなら、外構の色を外壁の新色と揃えられる
  4. 総会の議案を1本にまとめられる

4番目が、いちばん大きいと私は思っています。分譲マンションの管理組合が動けるのは、原則として年1回の定時総会だけです。別々の年に議案を立てれば、それだけで2年かかります。

注意点を3つ

正直に書いておきます。

  • 補助の対象は「危険性のあるブロック塀等」です。危険性の判断は町が行います。事前にくらし安全課 防災対策係(055-981-8205)に相談してください
  • 撤去補助は避難路に面する塀に限定されています。敷地の奥や隣地境界の塀は対象外の可能性があります
  • 工事中や工事後では補助の対象になりません。町のページに明記されています。着手前の申請が必要です

3つ目が決定的です。大規模修繕の工程が動き出してから思い出しても遅い。外構をどうするかは、劣化診断の段階で一緒に見てもらってください。


核心6:共用部に補助がない町で、管理組合ができるもう1つのこと

感震ブレーカーの補助は、区分所有者個人が使える

清水町は、感震ブレーカーの設置費用に補助を出しています。

項目 内容
補助額 補助対象経費の3分の2以内(千円未満切り捨て)/上限20,000円
対象製品 一般社団法人日本配線システム工業会の規格による感震機能付住宅用分電盤(JWDS0007付2)の構造・機能を有するもの
対象者 町内の自己所有住宅に居住する方、または所有者の承諾を得て居住している方など
申請期間 令和8年4月1日から令和9年2月26日まで(予算上限に達した時点で終了)
注意 工事を依頼する前に申請すること

(出典:清水町 防災対策における各種助成事業について)

これは共用部の制度ではありません。専有部の分電盤の話です。ですから管理組合が申請するものではありません。

それでも、この記事に書いておきたい理由があります。

管理組合には「周知する」という仕事がある

清水町には、共用部の大規模修繕に現金を出す補助金がありません。理事会としては、「調べたけれど何もなかった」で報告を終えたくなる場面です。

けれど、制度の情報を区分所有者に届ける役割は、管理組合にしかできません。

大規模修繕の説明会は、全戸の関心が最も集まる場です。その資料の最後の1ページに、次の3行を入れてみてください。

【清水町の個人向け制度のお知らせ】
・感震ブレーカー設置助成:補助対象経費の3分の2以内、上限2万円。令和9年2月26日まで(予算上限に達し次第終了)
・お問い合わせ:清水町 くらし安全課 防災対策係 055-981-8205(工事の依頼前に申請が必要です)

理事会が動いたことが、住民の実利として目に見える形になります。大規模修繕の議案を通すうえで、これは効きます。私の経験上、「この理事会はちゃんと調べている」と思ってもらえるかどうかは、議決の空気を確実に変えます。

家庭用蓄電池の補助は、共用部には難しい

もう1つ、清水町には家庭用蓄電池システムの補助があります。

項目 内容
補助額 家庭用蓄電池 50,000円
令和8年度予算額 2,400,000円(執行済額700,000円/6月1日現在)
対象 町内の住宅に補助対象設備を設置する個人。自ら居住し、または居住予定の個人住宅であること
前提 対象住宅に太陽光発電システムが設置済みまたは設置予定(契約済)であること
注意 必ず対象設備の設置前に申請すること。交付決定前に着手したものは対象外

(出典:清水町 家庭用蓄電池システムの補助、2026年6月2日更新)

対象が「個人」「自ら居住する個人住宅」と書かれているため、管理組合が共用部に設置する蓄電池が対象になるかは、公開情報からは読み取れません。

災害時の共用部電源として蓄電池を検討している組合は、くらし安全課 生活環境係(055-981-8216)に直接確認してください。予算額240万円に対して6月1日時点で70万円が執行済みという情報が公開されていますので、残額の状況も同時に聞けます。


清水町の住宅系制度を「共用部の大規模修繕で使えるか」で判定する

理事会の時間を節約するために、1枚にまとめます。使えないことを早く確定させるのも、理事会の仕事です。

制度 共用部の大規模修繕で使えるか 理由
マンション長寿命化促進税制(固定資産税減額) ◯ 全国共通制度。町サイトに専用ページはないが、要件を満たせば申告できる
ブロック塀等耐震改修事業 △ 敷地の塀が避難路に面していれば対象になり得る。要事前相談
感震ブレーカー設置助成事業 △ 共用部ではなく専有部。組合は周知役
家庭用蓄電池システムの補助 △ 対象は「自ら居住する個人住宅に設置する個人」。共用部設置は要確認
TOUKAI-0+(木造住宅耐震対策事業) × 昭和56年5月31日以前の木造住宅が対象。鉄筋コンクリート造のマンションは対象外
木造住宅建替助成・移転事業 × 木造住宅が対象
清水町勤労者住宅資金利子補給制度 × 新築・増改築・土地建物購入の借入が対象。共用部の修繕資金は対象外
住宅の省エネ改修・バリアフリー改修の固定資産税減額 ×(共用部としては) 賃貸を除く個人住宅の改修が対象。専有部の話

(出典:清水町 防災対策における各種助成事業について、清水町 清水町勤労者住宅資金利子補給制度、清水町 家庭用蓄電池システムの補助、清水町 家屋)

×が多いことを、隠すつもりはありません。ただ、×だと分かっている制度に理事会の時間を使わずに済むことには、確かな価値があります。

なお、TOUKAI-0+については、清水町が「令和8年度の補助事業の受付を開始しました。補助事業実施に係る実績報告の提出期限は、令和9年2月末です」と公表しています。木造住宅にお住まいの方には有用な情報ですので、書き添えておきます(出典:清水町 防災対策における各種助成事業について)。


国の制度:モデル事業の第3回募集は9月14日から18日まで

マンションストック長寿命化等モデル事業

国土交通省のマンションストック長寿命化等モデル事業は、令和8年度の第3回募集を令和8年9月14日(月)から9月18日(金)に予定しています(出典:国土交通省 マンション総合対策モデル事業)。

この記事の公開日から数えて2週間ほどです。正直に申し上げて、いまから理事会を開いて申請書類を揃えるのは、多くの組合にとって現実的ではありません。

それでも、この2週間でやる価値があることが3つあります。

  1. 公募要領の「必要書類一覧」を印刷して、理事会のファイルに挟む(所要15分)
  2. そのうち、自分たちが今すぐ出せる書類と、出せない書類に印をつける
  3. 出せない書類を、次の1年の宿題にする

モデル事業は「先導性」が評価されます。無足場工法による工期短縮や、居住者負担の軽減は、先導性を説明する材料になり得ます。

長寿命化促進税制の期限は令和9年3月31日

繰り返しになりますが、マンション長寿命化促進税制の対象となる工事の完了期限は、現時点の制度で令和9年3月31日です。

2026年8月29日から数えると、残りは約19か月。工程を並べてみます。

工程 標準的な期間
劣化診断 1〜2か月
設計・仕様書作成 2〜3か月
施工会社の選定(相見積り・比較) 2〜3か月
総会での議決 定時総会まで最大12か月
工事 3〜6か月
申告 工事完了後3か月以内

見てのとおり、律速になるのは総会です。定時総会が年1回しかない組合では、次の総会で議決できるかどうかが分岐点になります。

間に合わない組合があることも、正直に書いておきます。ただし、準備が無駄になることはありません。理由は3つです。

  1. 国の税制は延長されることがあります。令和8年度税制改正でも、適用期間の延長や対象住戸の床面積要件の見直しが行われています(出典:国土交通省 マンション管理計画認定制度)
  2. 管理計画認定そのものが、区分所有者の資産価値と売却時の説明材料になります
  3. 長期修繕計画を見直す作業は、税制の有無にかかわらず必要です

住宅金融支援機構の3つのツール

積立金が不足している組合には、住宅金融支援機構の制度があります。

制度 使いどころ
マンション共用部分リフォーム融資 管理組合が共用部の修繕資金を借りる。積立金不足の穴埋めに使える
マンションすまい・る債 積立金を債券で運用する。計画的に積み立てている組合向け
マンションライフサイクルシミュレーション 長期修繕計画と積立金の過不足を試算できる無料ツール

3番目は無料です。理事会でパソコンを開いて、その場で数字を入れられます。総会の議案書に、根拠のある将来グラフを1枚載せられるだけで、説明の説得力が変わります。

県の無料支援:管理士派遣の締切は11月14日、セミナー会場は隣の三島市

マンション管理士の無料派遣

静岡県は、マンション管理士を管理組合に無料で派遣しています。

項目 内容
費用 無料
令和8年度の受付件数 県内全体で10件
派遣回数 各管理組合2回まで
申込期限 令和8年11月14日(土曜)
派遣期限 令和9年1月31日(日曜)
申込先 一般社団法人 静岡県マンション管理士会(メール t_gotoh@tx.thn.ne.jp/ファクス 0544-27-6561)

(出典:静岡県 マンションの管理)

県内全体で10件です。上限に達した時点で受付は終了します。

申込書の「相談したい内容」の欄には、清水町の管理組合であれば、次の3行を書くことをお勧めします。

  1. 町域のため静岡県に管理計画認定を申請できる立場だが、認定基準に対して現状どこが不足しているか
  2. 清水町には長寿命化促進税制の案内ページがないが、申告に必要な準備を町の窓口とどう詰めればよいか
  3. 敷地に余白が少ない建物で、工法選定を含めた見積比較をどう進めればよいか

2番目は、この記事の核心をそのまま相談内容にしたものです。専門家に同席してもらって町に確認するのが、いちばん確実です。

管理セミナーは9月12日、三島市役所

静岡県は令和8年度、県内9会場でマンション管理セミナーを開催します。

開催地 開催日 会場
浜松市 令和8年7月25日(土) 可美公園総合センター
磐田市 令和8年8月29日(土) 磐田商工会議所
三島市 令和8年9月12日(土) 三島市役所
熱海市 令和8年10月予定 ―
沼津市 令和8年10月予定 ―
静岡市 令和8年11月予定 ―
伊東市 令和8年12月予定 ―
富士市 令和9年2月予定 ―
浜松市 令和9年2月予定 ―

(出典:静岡県 マンションの管理)

清水町は三島市と沼津市の両方に接しています。町の公式アクセス案内が「JR三島駅からバスで約15分、JR沼津駅からバスで約20分」であることを思い出してください。

9月12日の三島市会場も、10月予定の沼津市会場も、清水町の管理組合にとっては生活圏の中です。この連載で扱ってきた自治体のなかで、清水町は会場へのアクセスが最も良い部類に入ります。

理事長おひとりではなく、次期理事の候補と2名で行ってください。行きと帰りの車の中が、いちばん本音で話せる時間になります。これは私の経験上、間違いありません。


工法で削る:仮設足場は工事費の15〜25パーセント

金額のレンジ

大規模修繕の工事費に占める仮設足場の割合は、一般的に15〜25パーセント程度です。金額に置き換えると次のようになります。

工事費総額 仮設足場の目安(15〜25パーセント)
3,000万円 450万円〜750万円
5,000万円 750万円〜1,250万円
8,000万円 1,200万円〜2,000万円

この金額が、工事そのものではなく、工事をするための足場にかかっています。

見積書に投げる質問、1文

理事会で足場の金額を検討するとき、次の1文を施工会社に投げてください。

「仮設足場の費用を、平米単価とリース期間に分解して出してください。」

分解された数字が出てくると、次の3つが見えます。

  1. 平米単価が相場から外れていないか
  2. リース期間が工期に対して長すぎないか
  3. 工期が縮めば、いくら減るのか

3番目が肝心です。足場はリースですから、工期が縮めば費用が減ります。ロープアクセス工法やハイブリッド工法で工期を短縮できる建物では、この分がそのまま金額に効きます。

20万円は判断できて、750万円は判断できない

私が現場で何度も見てきた光景があります。

理事会は、20万円の備品購入には慎重に議論します。ところが、750万円の仮設足場費は「そういうものだから」で通ってしまう。

これは、理事の方々が不真面目なのではありません。判断材料が渡されていないからです。平米単価とリース期間に分解された数字がなければ、誰にも判断できません。

管理組合の側から質問の1文を投げることで、判断材料は手に入ります。


モデルケース:清水町の建物条件で試算すると

実在の物件ではなく、清水町でよく見る建物条件を前提にした試算です。金額は建物の状態と仕様によって変わりますので、あくまで比較の考え方としてご覧ください。

ケース1:柿田川周辺 築24年・6階建て・44戸

項目 足場のみ ハイブリッド工法
工事費 6,800万円 5,900万円
差額 ― ▲900万円(1戸あたり約20万円)
工期 5.5か月 4か月
駐車場の制限 全周・5.5か月 2面ずつ・各1.5か月

隣地との離隔が取れない2面をロープアクセスに切り替え、離隔の取れる2面は足場を使う想定です。駐車区画に接する面をロープにすることで、区画の閉鎖期間を短縮しています。

ケース2:徳倉・伏見周辺 築31年・4階建て・26戸

項目 足場のみ ロープアクセス主体
工事費 3,900万円 3,150万円
差額 ― ▲750万円(1戸あたり約29万円)
工期 4.5か月 3か月

戸数が少ない建物ほど、1戸あたりの負担は重くなります。26戸で3,900万円なら1戸あたり150万円。150戸のマンションなら1戸あたり26万円前後です。

同じ工事でも、戸数が小さいほど1戸の負担は大きい。だからこそ、小規模な組合ほど工法の選定が効きます。清水町は面積の小さい町ですから、大規模団地よりも中小規模の分譲マンションが多い地域です。この点は、特に強調しておきたいところです。

そして繰り返しますが、工法は設計を発注する前でなければ、実質的に選べません。


修繕積立金が足りないとき、打ち手は4つ

「制度は分かった。でも、そもそもお金が足りない」。この連載でいちばん多くいただく声です。

打ち手は、大きく4つです。

打ち手 内容 注意点
1. 借入 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資など 総会決議が必要。返済原資として積立金の引上げがセットになることが多い
2. 一時金の徴収 各戸から一時金を集める 反対が出やすい。金額の根拠を数字で示す必要がある
3. 積立金の引上げ 月々の積立金を上げる 効果が出るまで時間がかかる。ただし長寿命化促進税制の要件との関係で有利に働くことがある
4. 工事範囲・工法の見直し 工法選定で総額を下げる 早い段階でしか選べない

段階施工(今回は外壁だけ、次回は防水だけ)を検討される組合もありますが、注意点があります。仮設費が回数分かかります。足場を2回架ければ、足場代も2回分です。

さらに、長寿命化促進税制の対象工事には、外壁の塗装等・屋根の防水・床の防水といった要件があります。段階施工で工事を分けると、この要件を1回の工事で満たせなくなる可能性があります。段階施工を検討する際は、税制の要件を先に確認してください。

総会の議案書には、両方の数字を載せる

積立金の引上げを議案にするとき、私がお勧めしているのは「一時金で50万円」と「月々3,000円」を両方載せるやり方です。

同じ金額でも、受け取り方はまったく違います。一時金の総額を見て反対していた方が、月額に直すと「それなら」となることがあります。逆もあります。どちらの数字も出すのが、誠実なやり方だと私は思っています。

見積書のチェックポイント5つ

1. 下地補修の「仮定数量」を超えた分の単価を、契約前に確定させる

これが最重要です。

大規模修繕の見積書には、必ず「仮定数量」という項目があります。外壁のひび割れ、タイルの浮き、爆裂。これらは足場を架けて叩いてみないと正確な数量が分かりません。そこで、見積段階では仮の数量を入れます。

問題は、実際の数量が仮定を超えたときです。

超過分の平米単価・メートル単価が契約書に書かれていないと、工事が始まってから金額を決めることになります。足場が架かった状態で、管理組合が対等に交渉することはできません。工事を止めるわけにいかないからです。

契約前に、次の1文を確認してください。

「仮定数量を超過した場合の単価は、契約書のどこに記載されていますか。」

2. 仮設足場が平米単価とリース期間に分解されているか

前述のとおりです。

3. 駐車場・資機材置場の費用がどこに入っているか

清水町のように敷地に余白が少ない地域では、これが後から出てくることがあります。「別途」と書かれていたら、金額の目安を必ず聞いてください。

4. 高圧洗浄水の排水計画が工事計画書に含まれているか

柿田川の町ですから、ここは仕様に入れておく価値があります。前述のとおりです。

5. 保証の対象と期間が、部位ごとに書かれているか

「5年保証」と一言で書かれている見積書は要注意です。外壁塗装、シーリング、屋上防水、鉄部塗装。それぞれ耐用年数が違います。部位ごとに保証年数が分かれていない見積書は、あとで揉めます。


清水町で工事をするなら、いつが適期か

清水町は温暖な気候に恵まれた地域です。ただし、大規模修繕には向き不向きの季節があります。

時期 評価 理由
3月下旬〜5月上旬 ◎ 気温・湿度ともに塗装に最適。降雨も比較的少ない
5月中旬〜6月 △ 梅雨。塗装・防水の乾燥待ちで工程が伸びる
7月〜8月 △ 熱中症対策で作業時間に制限が出る。ロープアクセスは特に配慮が必要
9月〜10月中旬 △ 台風シーズン。足場の養生・メッシュシート開放の手間が発生する
10月下旬〜11月 ◎ 空気が乾き、気温も安定。塗装には好条件
12月〜2月 ◯ 温暖で晴天率が高い。閑散期のため見積が有利になることがある。ただし富士山からの北西風で予備日が要る

清水町は狩野川と黄瀬川に挟まれた低地です。平均海抜18メートル、最低地点は海抜2.9メートル(出典:清水町 町の概要・アクセス)。台風期の増水と、川沿いの風の抜けは、工程を組むうえで考慮すべき条件です。

閑散期の12月〜2月に着工できる建物であれば、見積依頼のときに次の1文を添えてみてください。

「12月着工の場合、金額はどうなりますか。」

これで金額が動く会社と、動かない会社があります。その反応自体が、会社を見分ける材料になります。

方位別の劣化要因(清水町版)

方位 主な劣化要因
南面 紫外線による塗膜の劣化・チョーキング
西面 西日と昼夜の温度差によるシーリングの伸縮疲労
北面 日照不足によるコケ・藻。湧水地帯で湿度が高い清水町では特に注意
北西面 冬季の北西風による雨がかりと、風による汚れの付着
東面 朝露と結露。低地では特に発生しやすい

北面の記述は、清水町に特有の事情です。柿田川湧水群を抱える町は、地下水位が高く、地表付近の湿度が高くなりやすい。築年数の割に北面のコケが目立つ物件を見かけたら、この条件を疑ってみてください。塗料の選定(防藻・防カビ性能)で対処できます。


今週できること(3時間以内・うち2つは今日中)

理事会の負担にならない範囲で、順番を書きます。

  1. 清水町 税務課 資産税係(055-981-8220)に電話し、長寿命化促進税制の申告様式と必要書類を聞く(15分・今日中にできます)
  2. 清水町 くらし安全課 防災対策係(055-981-8205)に電話し、敷地のブロック塀が補助対象になるか相談する(15分・今日中にできます)
  3. 静岡県マンション管理士会に無料派遣の申込書を請求する(メール t_gotoh@tx.thn.ne.jp/ファクス 0544-27-6561。締切は令和8年11月14日)(10分)
  4. 9月12日(土)の三島市役所のセミナーを理事会の予定に入れる。理事長と次期理事の候補の2名で(5分)
  5. 住宅金融支援機構のマンションライフサイクルシミュレーションで、積立金の過不足を試算する(無料・30分)

このうち1と2は、電話1本です。担当課に「マンションの管理組合です」と名乗るだけで、話は前に進みます。

19か月の逆算カレンダー

長寿命化促進税制の完了期限(令和9年3月31日)から逆算した目安です。

時期 やること
2026年9月 町・県の窓口確認。セミナー参加。管理士派遣の申込
2026年10月〜11月 劣化診断。設計者の選定。工法の方針を決める
2026年12月〜2027年2月 設計・仕様書作成。相見積りの取得と比較
2027年春 定時総会で議決
2027年春〜秋 工事
工事完了後3か月以内 清水町へ固定資産税減額の申告

間に合うかどうかを判断する最初の分岐は、「次の定時総会に議案を出せるか」です。そこから逆算すると、劣化診断は年内に始めたいところです。

証明書の落とし穴、2つ

最後に、実務で事故が起きやすい点を2つ挙げます。

  1. 建築士との契約に「証明書の発行まで」を含める。前述のとおりです
  2. 過去の修繕工事の記録を、今のうちに集めておく。長寿命化促進税制は「過去に1回以上の長寿命化工事を実施していること」が要件です。前回の施工会社が廃業していると、書類が取れなくなることがあります。管理会社に依頼して、過去の工事記録・竣工図書の所在を確認しておいてください

2番目は、古い組合ほど早く着手すべき項目です。


よくある質問(FAQ)

Q1. 清水町に、マンションの大規模修繕に使える町独自の補助金はありますか?

A. 共用部の改修工事費に直接補助を出す町独自の制度は、2026年8月29日時点の公開情報では確認できませんでした。ただし、固定資産税の減額(マンション長寿命化促進税制)は全国共通の制度として使える可能性があり、ブロック塀の撤去・改善補助は敷地の条件によって対象になり得ます。

Q2. 清水町のホームページに「マンション長寿命化促進税制」のページがありません。対象外ということですか?

A. いいえ。この制度は地方税法にもとづく全国共通の特例で、市町村が実施の可否を選べるものではありません。清水町の固定資産税「家屋」ページに掲載されているのは、課税のしくみと長期優良住宅・耐震・省エネ・バリアフリーの減額だけですが、それは案内ページの有無の話です。清水町 税務課 資産税係(055-981-8220)にご確認ください(出典:清水町 家屋、国土交通省 マンション長寿命化促進税制)。

Q3. 管理計画認定は、清水町と静岡県のどちらに申請しますか?

A. 静岡県です。静岡県のマンション管理計画認定制度は「県内の町域」を対象としており、清水町は駿東郡の町なので対象になります。窓口は静岡県 くらし・環境部 住まいづくり課(054-221-3084)です(出典:静岡県 マンションの管理)。

Q4. 認定申請の手数料はいくらですか?

A. 令和8年4月1日改定後の額で、事前確認適合証がある場合は長期修繕計画1本につき4,000円、ない場合は28,100円です。計画が2本以上ある場合は、適合証ありで1本増えるごとに1,800円、なしで16,200円が加算されます(出典:静岡県 マンションの管理)。

Q5. 共用部の大規模修繕と、自宅の窓の断熱改修を同じ年に行っても大丈夫ですか?

A. 清水町の省エネ改修・バリアフリー改修の減額のページには「他の固定資産税の減額を受けている人は、対象になりません」と記載されています。同じ年度に複数の減額申告が重なる予定がある場合は、清水町 税務課 資産税係(055-981-8220)にご相談ください(出典:清水町 住宅の省エネ改修に伴う固定資産税の減額について)。

Q6. マンションの敷地のブロック塀は、補助の対象になりますか?

A. 清水町のブロック塀撤去事業は、住宅・事業所等から広域避難地・避難路に至る道路(一般国道・県道・町道に限る)に面するブロック塀等が対象です。限度額は撤去が266,000円、改善が166,000円です。工事中や工事後では対象になりませんので、着手前に清水町 くらし安全課 防災対策係(055-981-8205)にご相談ください(出典:清水町 防災対策における各種助成事業について)。

Q7. 県のマンション管理士派遣は有料ですか?

A. 無料です。ただし令和8年度の受付件数は県内全体で10件、各管理組合2回までです。申込期限は令和8年11月14日(土曜)、派遣期限は令和9年1月31日(日曜)です。上限に達した時点で受付が終了します(出典:静岡県 マンションの管理)。

Q8. ロープアクセス工法のほうが、いつでも安いのですか?

A. いいえ。下地補修の数量が読めない建物や、タイルの浮きが広範囲に及ぶ建物では、足場を架けたほうが結果的に安くなることがあります。建物ごとに答えが違うため、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つを比較できる会社に見てもらうことをお勧めします。ロープアクセス工法の技術情報は ロープアクセスドットコム にまとめています。


この記事のポイントまとめ

  • 清水町に共用部の大規模修繕へ直接補助を出す町独自制度は確認できなかった
  • 町サイトに専用ページがなくても、マンション長寿命化促進税制は全国共通制度として使える
  • 窓口は清水町 税務課 資産税係 055-981-8220。着工前に様式と必要書類を聞く
  • 清水町の省エネ・バリアフリー減額には「他の減額との併用不可」の記載がある
  • 共用部と専有部の減額申告が同じ年度に重なる場合は、事前に窓口へ相談する
  • 清水町は「町」なので、静岡県に管理計画認定を直接申請できる
  • 認定手数料は事前確認適合証ありで4,000円、なしで28,100円と7倍差
  • 面積8.81平方キロメートルで県内最小。敷地に余白が少なく仮設計画が金額を決める
  • 町内に鉄道駅がなく職人の移動は車。駐車スペースの確保が工程と合意形成を左右する
  • ブロック塀撤去は限度額266,000円。大規模修繕と同時に議案化すると1年短縮できる
  • 感震ブレーカー補助(上限2万円・令和9年2月26日まで)は組合が周知役を担える
  • 柿田川の町。高圧洗浄水の排水計画を仕様書に入れると説明会の空気が変わる
  • 仮設足場は工事費の15〜25パーセント。平米単価とリース期間に分解して質問する
  • 県セミナーは9月12日に三島市役所、10月に沼津市予定。どちらも生活圏内
  • 県のマンション管理士無料派遣は県内10件のみ。締切は令和8年11月14日
  • 長寿命化促進税制の完了期限は令和9年3月31日。残り約19か月で律速は総会

主なお問い合わせ先

用件 窓口 電話
固定資産税の減額(長寿命化促進税制ほか) 清水町 税務課 資産税係(役場2階) 055-981-8220
ブロック塀・感震ブレーカー・TOUKAI-0+ 清水町 くらし安全課 防災対策係(役場3階) 055-981-8205
家庭用蓄電池の補助 清水町 くらし安全課 生活環境係(役場3階) 055-981-8216
勤労者住宅資金利子補給制度 清水町 産業観光課 産業振興係(役場2階) 055-981-8239
清水町役場(代表) 清水町役場 055-973-1111
マンション管理計画認定、セミナー 静岡県 くらし・環境部 住まいづくり課 054-221-3084
マンション管理士の無料派遣 一般社団法人 静岡県マンション管理士会 ファクス 0544-27-6561

役場の開庁時間は平日9時から16時30分まで(短縮試行中)です(出典:清水町 町の概要・アクセス)。お昼前後は窓口が混みます。電話は午前10時前後か、午後2時台がつながりやすい時間帯です。


出典・参考資料

清水町

静岡県

国土交通省ほか

制度は改正されます。この記事の内容は2026年8月29日時点で公開されている情報にもとづくものです。申請の可否、金額、期限は必ず各窓口の最新情報をご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務判断や法的助言を行うものではありません。


おわりに

清水町を調べていて、手が止まった瞬間がありました。

固定資産税の「家屋」のページを開いたとき、そこに並んでいたのは4つの減額だけでした。前日に調べた隣の長泉町には、マンションの大規模修繕に特化した専用ページがあり、必要書類の一覧まで公開されていた。同じ駿東郡の町で、この違いは何だろうと考えました。

答えは単純だと思います。清水町は面積8.81平方キロメートル、静岡県で最も小さい町です。役場の職員数も、担当課の人数も限られています。マンション向けの専用ページを作る余力は、正直なところ厚くはないでしょう。

けれど、それは制度が使えないという意味ではありません。

マンション長寿命化促進税制は、国が地方税法で定めた全国共通の制度です。清水町の管理組合が申告すれば、清水町は減額を適用することになります。ページがないのは案内の話であって、権利の話ではない。

この連載を書いていて、私がいちばん惜しいと思うのは、制度があるのに、知らずに諦めてしまう管理組合があることです。大きな市であれば、丁寧なページがあって、担当者もいる。小さな町では、自分から電話をかけないと情報にたどりつけない。その差が、そのまま各戸の固定資産税の差になってしまう。

だから、この記事の結論は1本の電話です。

清水町 税務課 資産税係、055-981-8220。

「分譲マンションの管理組合です。長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションの固定資産税の減額について、申告様式と必要書類を教えてください。工事はこれからです。」

これだけです。15分で終わります。そして9月12日、三島市役所。バスで行ける距離にセミナー会場があります。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。工法の比較についても、ロープアクセス工法のご紹介や施工事例をご覧いただいたうえで、お問合せフォームからどうぞ。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事を行っています。通常の足場仮設による工事、無足場工法であるロープアクセス工事、その両方を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法をご提案できる日本でも数少ない会社です。ロープアクセス工事としては日本で初めてとなるフランチャイズ展開も行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板工事など各分野の専門職が加盟しています。

最終更新:2026年8月29日

長泉町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

この記事で答える質問:静岡県駿東郡長泉町の分譲マンション管理組合は、2026年度(令和8年度)の大規模修繕でどの制度を使えるのか。町の補助金はあるのか。何から手をつければいいのか。

株式会社明誠の本間です。この連載では、自治体を1つずつ取り上げて、その町の管理組合が実際に使える制度を公的な一次情報だけで整理しています。

今日は静岡県駿東郡長泉町です。

先に結論から申し上げます。長泉町には、分譲マンションの共用部改修に現金を出す町独自の補助金は、2026年8月29日時点の公開情報では確認できませんでした。ここは正直に書きます。

ただし長泉町は、私がこの連載で扱ってきた静岡県内の市とは、決定的に違う点が1つあります。

長泉町は「市」ではなく「町」です。だから、静岡県のマンション管理計画認定制度を、県に直接申請できます。

これは小さな違いに見えて、実務では大きな差になります。島田市も牧之原市も菊川市も御前崎市も、この制度を県に申請することはできませんでした。静岡県の制度は「県内の町域」が対象と明記されているからです(出典:静岡県 マンションの管理)。

そして長泉町は、その認定とセットで効く固定資産税の減額について、町の公式サイトに専用ページを設け、提出書類の一覧まで確定させて公開しています(出典:長泉町 長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する減額)。

「補助金はないが、制度の受け皿は整っている」。これが長泉町の現在地です。この記事では、その受け皿の使い方を、順番まで含めて具体的に書きます。

2026年8月29日 更新


結論:長泉町の管理組合が握るべきは「県の認定」と「町の税」の2枚看板

最初に全体像を表で示します。長泉町の管理組合が2026年度に検討できる制度は、大きく5系統です。

制度・支援 主体 長泉町の管理組合が使えるか 窓口
マンション管理計画認定制度 静岡県 ◯ 町域が対象なので県に申請可 県住まいづくり課 054-221-3084
長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する減額(固定資産税) 長泉町 ◯ 町が専用ページで運用中 町税務課 資産税チーム 055-989-5508
マンションストック長寿命化等モデル事業 国土交通省 ◯ 全国の管理組合が対象 事務局(公募要領に記載)
マンション管理士の無料派遣/管理セミナー 静岡県 ◯ 県内の管理組合が対象 静岡県マンション管理士会
サステナブル住宅支援事業費補助金 長泉町 △ 対象が「自己が所有し居住する住宅」。共用部の扱いは要確認 町くらし環境課 055-989-5514

このうち、◯が4つ並んでいる自治体は、この連載でもそう多くありません。制度の数だけ見れば、長泉町は静岡県東部の管理組合にとって恵まれた側です。

ただし、どれも「申請すれば自動的にお金が入る」たぐいのものではありません。順番を間違えると、工事が終わってから「もう申告できません」と言われます。私が現場で一番悔しい思いをするのは、まさにこのパターンです。

だからこの記事では、金額の話より先に順番の話をします。


【この連載で初めて】長泉町は「町」だから、静岡県の管理計画認定を直接使える

「市の区域は市、町の区域は県」という線引き

マンション管理計画認定制度は、管理組合がつくった管理計画を、行政が「一定の基準を満たしている」と認定する仕組みです。マンションの管理の適正化の推進に関する法律にもとづく国の制度で、認定を受けると、あとで説明する固定資産税の減額を受ける入口になります。

この認定を出す主体(認定権者)は、市の区域ならその市、町の区域なら都道府県です。

静岡県のページには、はっきりこう書かれています。

マンション管理計画認定制度(対象:県内の町域)

(出典:静岡県 マンションの管理)

長泉町は駿東郡の町ですから、この「県内の町域」に当たります。つまり、長泉町のマンション管理組合は、静岡県住まいづくり課に管理計画認定を申請できます。

私はこの連載で、静岡県内の市を続けて扱ってきました。島田市、牧之原市、菊川市、御前崎市。どの市でも、この制度については「市が実施しているかどうかを市に確認してください」としか書けませんでした。県のページが「町域が対象」と明記している以上、市の管理組合を県に案内するわけにはいかないからです。

長泉町では、その但し書きが要りません。ここが本題です。

手数料は「事前確認適合証」の有無で7倍違う

静岡県は、令和8年4月1日に認定申請手数料を改定しました。金額は次のとおりです。

事前確認適合証 長期修繕計画の数 手数料(令和8年4月1日から)
有り 1 4,000円
有り 2以上 4,000円+1,800円×(計画数−1)
無し 1 28,100円
無し 2以上 28,100円+16,200円×(計画数−1)

(出典:静岡県 マンションの管理)

適合証があれば4,000円、なければ28,100円。差は24,100円、率にして7倍です。

事前確認適合証とは、公益財団法人マンション管理センターが「認定基準に適合している」と確認して交付する書面のことです。県のページでは、申請方法が2つに整理されています。

  • 【1】マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを利用する → 事前確認適合証あり
  • 【2】県住まいづくり課へ直接申請する → 事前確認適合証なし

(出典:静岡県 マンションの管理、公益財団法人マンション管理センター 管理計画認定手続支援サービス)

センターの支援サービス自体には別途費用がかかりますので、単純に24,100円が浮くという話ではありません。ただ、事前確認を通しておくと、書類の不備で県とやり取りが往復する回数が減ります。理事会の任期が1年や2年で回っている組合ほど、この「往復が減る」ことの価値は大きいと私は思っています。

長期修繕計画を2本以上持っている(棟別に分けているなど)大規模な組合では、差額はさらに開きます。計画3本なら、適合証ありで7,600円、なしで60,500円です。

支援法人の登録は、県は「現段階では実施していない」

もう1つ、正確に書いておきます。

令和7年5月30日に公布され、同年11月28日に一部施行された改正法で、「マンション管理適正化支援法人」の登録制度が新設されました。専門知見をもつ民間団体が都道府県等の登録を受け、公的立場から管理組合を支援する仕組みです。

この登録主体も、市の区域は市、町の区域は県です。ただし静岡県のページには、こう書かれています。

静岡県は、現段階では、登録制度は実施していません。

(出典:静岡県 マンションの管理)

つまり長泉町域では、支援法人という枠組みはまだ動いていません。ここは期待せず、後述する県のマンション管理士無料派遣を使うのが現実的です。


長泉町の固定資産税減額:町が「書類の一覧」まで確定させている

制度の中身

長泉町の税務課は、「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する減額」という専用ページを公開しています。要件と減額内容は次のとおりです。

項目 内容
築年数 築後20年以上
戸数 10戸以上
管理の状態 マンションの管理の適正化の推進に関する法律に規定する管理計画の認定を取得したマンションなど、一定の要件を満たすこと
工事の履歴 長寿命化工事(外壁塗装等工事、屋根防水工事、床防水工事)を過去に1度以上実施済み
今回の工事 令和5年4月1日から令和9年3月31日までの間に、2回目以降の長寿命化工事が完了していること
減額の内容 各区分所有者が工事完了の翌年度に支払う固定資産税(家屋)について、100平方メートルまでの部分を3分の1減額
都市計画税 減額なし
申告期限 工事完了後3か月以内

(出典:長泉町 長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する減額)

読んでいただきたいのは、最後の行です。工事完了後3か月以内。

大規模修繕の現場は、工事が終わった直後がいちばん慌ただしい。手直し工事、住民説明、竣工図書の受領、最終金の支払い。そこに「3か月以内に税の申告」が乗ります。私はいつも理事長さまに、「申告書は工事が始まる前に印刷して、理事会の書類ばさみに挟んでおいてください」とお伝えしています。

町のページからは、申告書のWordファイルがそのままダウンロードできます。

【重要】必要書類が「2ルート」で書き分けられている

長泉町のページで、私がいちばん感心したのはここです。必要書類が、次の2ルートに分けて書かれています。

ルートA:静岡県から管理計画認定を受けたマンションの場合

  1. 建築士が発行する大規模の修繕等証明書
  2. 建築士またはマンション管理士が発行する過去工事証明書
  3. 建築士またはマンション管理士が発行する修繕積立金引上証明書
  4. 静岡県が発行するマンション管理計画の認定通知書または変更認定通知書の写し

ルートB:静岡県から助言または指導を受けた管理組合の管理者等に係るマンションの場合

  1. 建築士が発行する大規模の修繕等証明書
  2. 建築士またはマンション管理士が発行する過去工事証明書
  3. 静岡県が発行する助言・指導内容実施等証明書

(出典:長泉町 長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する減額)

差はどこか。ルートAには「修繕積立金引上証明書」があり、ルートBにはありません。

これは実務上、重い違いです。修繕積立金の引上げは総会の決議事項です。認定ルートで進むなら、積立金を引き上げた事実を証明できる状態にしておく必要があります。逆に、県の助言・指導を受けるルートなら、その証明書は求められていません。

どちらが自分たちの組合に合っているか。これは理事会だけで決められる話ではないので、県住まいづくり課(054-221-3084)に「うちは認定ルートと助言・指導ルート、どちらで進めるべきか」と1本電話を入れるところから始めるのが早いと私は思います。

なお、町のページの更新日は2025年4月2日です。この制度は令和8年度税制改正で期間の延長などが議論されている領域ですので、期限や要件が町のページの記載と変わっていないかは、税務課資産税チーム(055-989-5508)にご確認ください。制度は変わります。私が書いた記事より、役場の電話のほうが正確です。


令和9年3月31日から逆算すると、動ける時間は多くない

町のページに書かれている工事完了の期限は、令和9年3月31日です。

この記事の公開日は2026年8月29日。令和9年3月31日まで、残り約19か月です。

大規模修繕の一般的な工程を並べてみます。

段階 目安期間
劣化診断・調査 1〜2か月
修繕設計・仕様確定 2〜3か月
業者選定(相見積り・ヒアリング) 2〜3か月
総会決議 定時総会に合わせるなら最大12か月待ち
工事 3〜6か月
竣工・税の申告 完了後3か月以内

足し算すると、順調にいって10〜14か月。ここに総会のタイミングが噛みます。多くの管理組合は、定時総会が年1回しかありません。

つまり、令和9年3月31日の完了を狙うなら、実質的には「次の定時総会で工事を議決できるかどうか」が分岐点です。今から診断に入り、次の総会に議案を上げる。これが最短ルートです。

正直に申し上げます。この記事を読んだ今日から動いても、間に合わない組合はあります。それでも書いているのは、理由が3つあるからです。

  1. 長寿命化促進税制は国の制度で、期間が延長される改正が行われる場合があります。町のページの期限が更新される可能性があるので、今から準備した書類は無駄になりにくい。
  2. 認定を取ること自体が、マンションの資産価値の説明材料になります。中古で売買されるとき、認定の有無は買い手が見る情報です。
  3. 何より、準備の過程で長期修繕計画と積立金の実態が可視化されます。これは税の話とは別に、組合にとって価値があります。

長泉町の住宅系補助金を「共用部で使えるか」の1列で判定する

長泉町にも住宅関連の補助制度はあります。ただし、そのほとんどは戸建て・専有部・個人向けです。管理組合が共用部の大規模修繕で使えるかどうか、という1列で判定してみます。

制度 所管 共用部の大規模修繕で使えるか
サステナブル住宅支援事業費補助金 くらし環境課 055-989-5514 △ 対象が「自己が所有し居住する町内の住宅」。共用部設置の扱いは要確認
木造住宅耐震補強計画及び耐震補強工事事業 建設計画課 055-989-5520 × 木造住宅が対象。RC造マンションは対象外。加えて令和7年度で終了と明記
木造住宅除却支援事業 建設計画課 055-989-5520 × 木造住宅の除却が対象
空き家改修事業補助金 建設計画課 055-989-5520 × 空き家バンク経由の売買が前提。共用部は対象外
がけ地近接危険住宅移転事業 建設計画課 055-989-5520 × 移転が対象

(出典:長泉町 木造住宅耐震補強計画及び耐震補強工事事業、長泉町 サステナブル住宅支援事業費補助金、長泉町 空き家改修事業)

×が並んでいます。ここを曖昧に書く記事が多いのですが、私は「使えないことを早く確定させるのも、理事会の時間の節約だ」と考えています。使えない制度を3か月調べ続けるより、使える制度に3か月かけたほうがいい。

そのうえで、△が1つあります。次に説明します。

サステナブル住宅支援事業費補助金:「30日ルール」が工程と衝突する

長泉町のくらし環境課が所管する制度です。ZEH(ゼッチ。年間の一次エネルギー消費量が実質ゼロに近い住宅のこと)の認証取得や、再生可能エネルギー設備の設置に補助が出ます。

対象機器 補助額
ZEH 30万円
ZEH+ 40万円
太陽光発電システム 10万円
家庭用蓄電池 10万円
家庭用コージェネレーションシステム 10万円
V2H充放電設備 5万円
電気自動車、プラグインハイブリッド車 10万円

※ZEH・ZEH+は、太陽光・蓄電池・コージェネとの併用不可。

(出典:長泉町 サステナブル住宅支援事業費補助金。ページ更新日 2026年4月1日)

補助対象者は「自己が所有し居住する町内の住宅において、ZEHの認証を取得した者または、太陽光発電システム等を自らが設置した若しくは購入した者」と書かれています。管理組合が共用部(屋上や駐車場)に太陽光や蓄電池を設置する場合にこの補助が使えるかは、この文言だけでは判断できません。くらし環境課くらし環境チーム(055-989-5514)にご確認ください。

そのうえで、私が工事屋として気になったのは金額ではなく、申請期限の書き方です。

補助対象機器を設置した日若しくは工事代金を支払った日のいずれか遅い日から起算して30日以内又は設置完了日の属する年度の3月10日のいずれか早い日。

30日以内。しかも「3月10日のいずれか早い日」という上限つき。

大規模修繕と絡めて考えると、これは相当タイトです。たとえば屋上防水の改修と同時に太陽光を載せる計画を組んだとして、工事の完了検査、是正、最終金の支払いを終えてから30日。竣工引き渡しがバタつく現場では、普通に飛びます。

しかも「1住宅1回に限る」という制限もあります(V2Hと電気自動車の同時設置を除く)。

もしこの補助を大規模修繕と組み合わせて狙うなら、私はこう提案します。

  • 設備の引き渡し日を、外装工事の竣工日とあえて分ける(設備が先に完了する工程を組む)
  • 申請書類一式を、着工前に事前に揃えておく
  • 年度末(3月10日)を跨ぐ工程には、この補助を織り込まない

金額は10万円や30万円です。工事全体から見れば小さい。ただ、「30日以内」という制約は、工程表の書き方そのものを変えます。そこだけは、業者に工程を組ませる前に伝えておいてください。


木造住宅の耐震補助は令和7年度で終了。RC造の受け皿は薄いと正直に書く

長泉町は静岡県と一体で「TOUKAI-0(東海・倒壊ゼロ)」プロジェクトを推進してきました。昭和56年5月31日以前に建築され、耐震評点1.0未満の木造住宅を対象に、補強計画と補強工事の経費の5分の4(一般世帯上限100万円、高齢者世帯等120万円)を補助する制度です。

ただし、町のページには次の1行があります。

木造住宅耐震補強計画及び耐震補強工事事業費補助金は令和7年度で終了します。

(出典:長泉町 木造住宅耐震補強計画及び耐震補強工事事業)

そもそもRC造(鉄筋コンクリート造)の分譲マンションは、この制度の対象ではありません。木造住宅が対象だからです。加えて、木造分も終了と明記されている。

長泉町のサイト上で、非木造(RC造)建築物の耐震診断・耐震改修に対する一般的な補助制度は、2026年8月29日時点では確認できませんでした。

ここは断定を避けます。ページに載っていない制度が窓口では動いている、ということは実際にあります。旧耐震基準(昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた建物)のマンションにお住まいなら、建設計画課計画チーム(055-989-5520)に、次の1文で聞いてみてください。

「昭和56年以前に建築確認を受けた鉄筋コンクリート造の分譲マンションについて、耐震診断や耐震改修に使える町または県の補助制度はありますか」

そして、旧耐震のマンションでは順番が逆にならないようにしてください。外壁や防水を先にやり直してから耐震補強に入ると、足場を二度架けることになります。仮設足場は工事費の相当部分を占めますから、二度架けは金額に直結します。耐震が先、外装が後です。私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。


国の制度:モデル事業の第3回募集は9月14日から18日まで

町と県の話が終わりましたので、国の制度に移ります。

マンションストック長寿命化等モデル事業

国土交通省が、老朽化マンションの再生・長寿命化のモデルとなる事業を公募し、調査設計計画や改修工事の費用を補助する制度です。計画支援型と工事支援型があります。

令和8年度の第3回募集は、令和8年9月14日(月)から9月18日(金)です。

(出典:国土交通省 マンション総合対策モデル事業)

この記事の公開日から、約2週間後です。

正直に申し上げます。2週間で応募できる管理組合は、限られます。総会決議も、設計図書も、事業計画も要ります。今から間に合う組合は、すでに準備が進んでいるところだけでしょう。

それでも書いているのは、次の3点のためです。

  1. 年度内に複数回の募集がある制度です。第3回に間に合わなくても、次の機会に向けて動き出せます。
  2. 公募要領の必要書類一覧が、そのまま良い準備リストになります。印刷して理事会で回覧するだけで、自分たちに何が足りないかが見えます。
  3. モデル事業は「先導性」が評価されます。無足場工法による工期短縮や居住者負担の軽減は、先導性を説明する材料になり得ます。

今週やることは1つで足ります。公募要領の必要書類一覧だけを印刷する。所要15分です。

マンション長寿命化促進税制

先ほど長泉町のページで見た固定資産税の減額は、国が定めた「マンション長寿命化促進税制」を、町が実際に運用しているものです。

国の制度としては、令和8年度税制改正において適用期間の延長や、対象となる住戸の床面積要件の見直しが行われています(出典:国土交通省 マンション管理計画認定制度)。

長泉町のページに書かれている期限は令和9年3月31日です。国の制度と町のページの記載が一致しているかは、必ず町税務課に確認してください。私はここを断定しません。自治体ページの更新タイミングは制度改正から遅れることがあり、この差で管理組合が損をするのは避けたいからです。

床面積要件が関係する点も、地方都市では見落とされがちです。住戸タイプ別の専有面積一覧を管理会社に依頼し、40平方メートル台と50平方メートル台がそれぞれ何戸あるかを数えてください。30分で終わる宿題です。長泉町は単身・二人世帯向けの住戸を含むマンションもありますから、この確認は効きます。

住宅金融支援機構の3つの仕組み

補助金ではありませんが、資金繰りの選択肢として押さえておくべきものです。

仕組み 内容
マンション共用部分リフォーム融資 管理組合が共用部の修繕資金を借りる。積立金不足の穴埋めに使える
マンションすまい・る債 積立金を債券で運用する。計画的に積み立てている組合向け
マンションライフサイクルシミュレーション 長期修繕計画と積立金の過不足を試算できる無料ツール

(出典:静岡県のマンション関連リンクより)

3つ目のシミュレーションは無料です。理事会のパソコンで30分あれば、「このままの積立金だと何年後にいくら足りなくなるか」が数字で出ます。総会で積立金の値上げを提案するとき、この画面のスクリーンショット1枚が、私の説明より説得力を持ちます。


県の無料支援:管理士派遣の締切は11月14日、セミナー会場は隣の三島市

長泉町の管理組合にとって、いちばん距離が近くて、いちばん使われていない資源がこれです。

マンション管理士の無料派遣(令和8年度)

項目 内容
受付件数 10件(上限に達した時点で終了)
派遣回数 各管理組合 2回まで
申込期限 令和8年11月14日(土曜)まで
派遣期限 令和9年1月31日(日曜)まで
申込先 一般社団法人静岡県マンション管理士会(メール t_gotoh@tx.thn.ne.jp/ファクス 0544-27-6561)
費用 無料

(出典:静岡県 マンションの管理)

静岡県内全体で10件です。県内の分譲マンションの数を考えれば、少ない。早い者勝ちの側面があります。

2回の使い方を、長泉町版に具体化するとこうなります。

  • 1回目:長期修繕計画と修繕積立金の妥当性。あわせて「管理計画認定を取るならどこが足りないか」を洗い出してもらう
  • 2回目:相見積りの読み方と業者選定の進め方。認定申請の書類のチェック

申込書に書く「相談したい内容」の欄には、次の3行を入れることをお勧めします。

  1. 町域のため静岡県に管理計画認定を申請できる立場だが、認定基準に対して現状どこが不足しているか
  2. 長泉町の固定資産税減額(令和9年3月31日完了分まで)に間に合う工程が組めるか
  3. 修繕積立金の引上げが必要な場合、総会でどう説明すればよいか

管理セミナーは9月12日、三島市役所

静岡県は令和8年度、県内9会場でマンション管理セミナーを開催します。

開催地 開催日 会場
浜松市 令和8年7月25日(土) 可美公園総合センター
磐田市 令和8年8月29日(土) 磐田商工会議所
三島市 令和8年9月12日(土) 三島市役所
熱海市 令和8年10月予定 ―
沼津市 令和8年10月予定 ―
静岡市 令和8年11月予定 ―
伊東市 令和8年12月予定 ―
富士市 令和9年2月予定 ―
浜松市 令和9年2月予定 ―

(出典:静岡県 マンションの管理)

長泉町の管理組合にとって、この表は他のどの自治体よりも恵まれています。

三島市役所は、長泉町役場から車でおよそ10分。沼津市も隣接しています。しかも9月12日は、この記事の公開から2週間後の土曜日です。

私はこの連載で、「最寄りの会場まで車で1時間」と書いてきた自治体がいくつもありました。長泉町は、歩いても行ける距離に会場がある。使わない理由がありません。

理事長おひとりではなく、次期理事の候補と2名で行ってください。行きと帰りの車の中が、いちばん本音で話せる時間になります。これは私の経験上、間違いありません。


高齢化率22.5%という長泉町の特殊性が、大規模修繕を変える

ここからは制度の話を離れて、長泉町という町の性格が、大規模修繕にどう効くかを書きます。

数字で見る長泉町

指標 数値
人口 約43,000人。全国的な人口減少の中で微増を続けている
高齢化率(65歳以上の割合) 22.5%。静岡県内で最も低く、13年連続
自立持続可能性自治体 令和6年4月、人口戦略会議のレポートで静岡県内で唯一選出(全国65自治体)
街の住みここちランキング(静岡県版) 7年連続1位
財政力指数 昭和58年度以降、1を超える水準で推移

(出典:長泉町を知る(町の概要)、長泉町 財政力指数の推移)

この連載で扱ってきた自治体の中で、高齢化率が県内最低の自治体は初めてです。

多くの記事では、こう書いてきました。「高齢化で理事のなり手がいない」「役員のなり手不足で管理不全に向かう」。長泉町では、その前提が違います。

高齢化率が低いことは、管理組合にとって有利なのか

有利な面と、そうでない面の両方があります。正直に両方書きます。

有利な面

  • 理事のなり手が確保しやすい。輪番制が回る
  • 現役世代が多いため、修繕積立金の引上げに対する支払い余力がある世帯が相対的に多い
  • 首都圏からの移住者が多く、前の住まいで大規模修繕を経験している区分所有者がいる可能性が高い。この人を理事会に巻き込めると、議論の質が変わります

そうでない面

  • 現役世代は平日の日中に不在です。工事の立会いや在宅確認が取りにくい。バルコニーの片付け依頼、避難ハッチ前の荷物移動、洗濯物の制限。これらの周知が、高齢者中心のマンションより難しくなります
  • 小さなお子さんのいる世帯が多い。足場が架かっている期間の防犯と、子どもの安全が、他の自治体以上に重い論点になります
  • 築浅のマンションが多い分、1回目の大規模修繕を迎える組合が多い。前例がないので、見積書を比較する基準を誰も持っていません

とくに2つ目です。足場を架けるということは、建物の外周に「登れる構造物」を作るということです。夜間はメッシュシートを閉じ、はしごを外し、警備を入れる。これは足場工事の標準的な安全対策ですが、見積書に明記されているかどうかは組合が確認すべきことです。

私はこう考えています。子育て世帯が多いマンションほど、「足場を架けない工法」の価値が金額以外のところに出る。ロープアクセス工法なら、建物の外周に登れる構造物ができません。工事期間中の防犯不安が、そもそも発生しない。

ロープアクセス工法の技術情報や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。

1回目の大規模修繕を迎える組合が多いということ

築15年から20年で1回目を迎える組合には、共通のつまずきがあります。

「見積書が3社から出てきたが、金額が違う理由が分からない」

これは理事が不真面目なのではありません。構造の問題です。数量も仕様も揃っていない見積書を3枚並べても、比較できるはずがない。後半で、この揃え方を具体的に書きます。

愛鷹山の南麓という地形が、足場計画に効いてくる

長泉町は静岡県東部、富士山と愛鷹(あしたか)山を背にし、黄瀬川に沿って南へ下る町です。北部は愛鷹山麓の傾斜地、南部は三島市・沼津市・清水町と接する平坦地。町の中を東名高速道路が横切り、新東名高速道路の長泉沼津インターチェンジと東名の沼津インターチェンジの両方に近い。JR御殿場線の下土狩駅・長泉なめり駅があり、東海道新幹線の三島駅までは町の南端からごく近い距離です。

この地形と立地が、大規模修繕の見積書に効いてきます。

1.傾斜地の敷地は、足場の割増が出やすい

北部の傾斜地に建つマンションでは、建物の周囲に高低差があります。足場は水平に組むものですから、高低差のある敷地では足場のベース(土台)を段組みにする必要が出ます。手間がかかる分、仮設費が上がります。

見積書を見るときは、「仮設工事一式」で済ませず、足場の架け方に敷地条件の割増が入っているかどうかを聞いてください。「一式」の中に隠れる部分です。

2.冬の北西風は、足場のメッシュシート運用に影響する

富士山と愛鷹山を背にした地形で、冬季の北西風は決して弱くありません。強風の日にメッシュシートを開放する(風を逃がすためにシートをまとめる)作業が入ると、その日の外壁作業は止まります。工程表に「風待ち」の余裕がどれだけ見てあるかは、着工前に確認しておくべきです。

ロープアクセス工法では、そもそも面で風を受けるメッシュシートを張りません。風の影響の受け方が構造的に違います。強風日の作業中止判断は必要ですが、シートの開閉に人工(にんく)を割かれることはありません。

3.幹線道路と生活道路が混在する

東名・新東名・伊豆縦貫自動車道に近く、幹線道路のアクセスは県内屈指です。相見積りに来てもらう業者にとって、長泉町は「行きやすい町」です。これは後で説明する競争環境の話につながります。

一方で、旧来からの集落部や住宅地の中には、大型車両が入りにくい道もあります。足場材を積んだ4トン車が入れない道の場合、2トン車に分けて搬入することになり、その分の運搬費が乗ります。道路使用許可と交通誘導員が必要になるケースもあります。

ロープアクセス工法は、足場材そのものの搬入がありません。道路条件が厳しい現場ほど、この差は金額に出ます。これは営業トークではなく、単純な技術的な必然です。

方位別に見た、長泉町のマンションの劣化要因

方位 主な劣化要因 現場で先に出る症状
南面 紫外線量が最大 塗膜のチョーキング(表面が白く粉を吹く)、シーリングの硬化・ひび割れ
北面 日照不足と湿気 藻・カビの発生、塗膜の膨れ
西面 西日と昼夜の温度差 塗膜の劣化、目地シーリングの伸縮疲労
北西面 冬季の季節風 雨がかりの増加、笠木・シーリング部からの水の回り込み

「外壁塗装 一式」という1行の見積書では、どの面をどう直すのかが分かりません。方位別に数量と仕様を分けて出してもらってください。これは業者に嫌がられる要求ではありません。まともな業者ほど、最初からそう出してきます。


仮設足場は工事費の15〜25%。ここが最大の削りしろ

大規模修繕の見積書を分解すると、仮設足場が全体のおおむね15〜25%を占めます。マンションの形状、階数、敷地条件によって上下します。

金額に置き換えると、こうなります。

工事総額 仮設足場の目安(15〜25%)
3,000万円 450万〜750万円
5,000万円 750万〜1,250万円
8,000万円 1,200万〜2,000万円

理事会で20万円の備品購入は1時間議論するのに、750万円の仮設費は「一式」の1行で通ってしまう。私はこれを何度も見てきました。

理事が不真面目なのではありません。20万円は判断できて、750万円は判断できない。構造の問題です。判断できるようにするには、質問を1文だけ用意すればいい。

「仮設足場の費用を、平米単価とリース期間に分解して出してください」

この1文で、見積書の見え方が変わります。平米単価が分かれば他社と比較できます。リース期間が分かれば、工期が延びたときにいくら増えるかが分かります。

そして、ここが本題です。足場を架けない部分を作れば、この費用そのものが減ります。


長泉町のマンション向け、ハイブリッド工法の3パターン

株式会社明誠は、通常の仮設足場による工事と、無足場工法であるロープアクセス工事、その両方を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法を提案しています。日本でも数少ない立場だと思っています。

だからこそ先に書きます。ロープアクセス工法は万能ではありません。私が「これは足場でいきましょう」とお伝えする現場は、普通にあります。バルコニー内部の大規模な改修、サッシの交換、外壁の全面的な打ち替えなど、作業量が多く長時間の足元が要る工事は、足場のほうが合理的です。

そのうえで、長泉町のマンションで検討価値が高い組み合わせを3つ挙げます。

パターン1:傾斜地の高低差がある面だけロープアクセス

北部の傾斜地に建つマンションで、敷地の一部だけ大きな高低差がある場合。高低差のある面だけをロープアクセスで処理し、平坦な面を足場で組む。段組み足場の割増分が丸ごと消えます。

パターン2:低層部は足場、高層部はロープアクセス

風の影響を受ける高さの範囲を、足場から外す考え方です。メッシュシートで風を受ける面積が減るため、強風日の作業中止リスクが下がります。低層部は住民の出入りが多く、丁寧な養生が要る部分ですから、足場のほうが向いています。

パターン3:駐車場を潰さない配分

長泉町は自動車の保有率が高い地域です。マンションの駐車場が1戸1台を前提に設計されている物件も多い。足場を全周に架けると、建物の周囲の駐車区画が数か月間使えなくなります。

近隣に代替の駐車場を借りれば、その費用は工事費に上乗せされます。さらに、居住者は毎日そこまで歩くことになります。これは金額に出ない不便です。

駐車場に面した側だけロープアクセスにする。それだけで、代替駐車場の台数と期間が減ります。私はこの提案を、地方都市のマンションで最もよく使います。

明誠は、ロープアクセス工事として日本で初めてとなるフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しています。だから、工法を組み替えても品質の担い手が変わりません。詳しくはロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。工法の安全基準や一般的な事例はロープアクセスドットコムにまとめています。


モデルケース2本:数字にすると、こう変わる

実在の物件ではなく、長泉町でよくある条件を組み合わせたモデルケースです。金額は概算であり、実際の建物では調査のうえで見積りを行います。

ケースA:長泉なめり駅圏、築22年・7階建て・52戸

傾斜地に建ち、駐車場は敷地の南面と西面。1回目の大規模修繕。

項目 全面足場の場合 ハイブリッドの場合
工事総額 約8,200万円 約7,000万円
差額 ― 約1,200万円の削減
1戸あたり 約158万円 約135万円(1戸あたり約23万円の削減)
工期 約6か月 約4.5か月
駐車場の使用制限 全周・約6か月 北面・東面のみ・約3か月

ケースB:下土狩駅圏、築30年・5階建て・28戸

旧来の住宅地の中にあり、4トン車が敷地前まで入りにくい。2回目の大規模修繕。

項目 全面足場の場合 ロープアクセス主体の場合
工事総額 約4,300万円 約3,500万円
差額 ― 約800万円の削減
1戸あたり 約154万円 約125万円(1戸あたり約29万円の削減)
工期 約5か月 約3.5か月

ケースBで注目していただきたいのは、1戸あたりの金額です。28戸で4,300万円だと1戸154万円。同じ工事内容でも、150戸のマンションなら1戸あたり30万円前後まで下がります。

固定費(仮設、現場管理、諸経費)が戸数で割られるからです。つまり、戸数の小さいマンションほど、工法の選び方が1戸あたりの負担に効いてくる。長泉町のように中小規模のマンションが中心の地域では、ここが分岐点になります。

もう1つ、大事な注意点です。工法は、設計を発注する前でなければ実質的に選べません。足場を前提とした修繕設計が出来上がってから「ロープアクセスにできますか」と聞かれても、数量も仕様も足場前提で組まれています。組み替えるには設計をやり直すことになります。

工法の相談は、設計事務所を決める前。これだけは、順番を間違えないでください。


修繕積立金が足りないときの4つの打ち手

見積りが出てから「積立金が足りない」と分かる。これも、私が何度も立ち会ってきた場面です。打ち手は4つあります。

  1. 一時金の徴収:総会決議が要ります。まとまった負担になるため、反対が出やすい
  2. 月々の積立金の値上げ:即効性はありませんが、次回以降の工事にも効きます
  3. 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資:管理組合として借り入れる。返済は積立金から
  4. 工事範囲の段階施工:今回は外壁と屋上防水、次回にバルコニー、というように分ける

4つ目には、はっきり落とし穴があります。段階施工にすると、仮設費が回数分かかります。足場を2回架ければ、足場代も2回分です。総額では高くつくことが少なくありません。さらに、長寿命化促進税制の対象工事の要件(外壁塗装等工事、屋根防水工事、床防水工事)を満たさなくなる可能性があります。

「屋上防水は次回にしましょう」という判断が、税の減額を丸ごと落とすことがある。これは知っておいてください。

総会の議案書に載せるときは、私はいつも「一時金50万円」と「月々3,000円の値上げ」を両方併記することをお勧めしています。同じ金額でも、見え方が全く違うからです。前者だけを出すと否決され、両方出すと後者で通る。何度もありました。


相見積り:長泉町は「制度は薄いが、競争環境は良い」

人口43,000人の町で、相見積りを3社そろえられるのか。よく聞かれます。

長泉町については、心配は少ないと私は考えています。理由は立地です。

段階 声をかける範囲 移動時間の目安
第1段階 長泉町・三島市・沼津市・裾野市・清水町 車で10〜20分
第2段階 富士市・御殿場市・伊豆の国市 車で30〜45分
第3段階 静岡市・神奈川県西部・首都圏 新幹線・高速道路で1時間前後

第1段階だけで、静岡県東部の中核である沼津市・三島市が含まれます。この連載で扱ってきた自治体の中で、これほど条件の良い地域はほとんどありません。伊豆半島の市では、第1段階で3社そろえること自体が課題でした。

さらに、東海道新幹線の三島駅と、東名・新東名のインターチェンジが至近です。首都圏の業者にとっても、長泉町は「日帰りで現場調査に行ける場所」です。

そのうえで、2つだけ気をつけてください。

  • 移動費・出張費が諸経費に含まれるのか、別途なのかを最初に明記させる。遠方の業者に声をかけるなら、必須の確認事項です
  • 現地調査は同じ日にまとめる。理事の立会いの負担が減りますし、各社が同じ条件で建物を見ることになります

制度は薄い。でも競争環境は良い。長泉町の管理組合は、「補助金を探す時間」より「業者を比べる時間」に投資したほうが、金額に効きます。これが私の正直な見立てです。


見積書のチェックポイント5点

1回目の大規模修繕を迎える組合が多い町なので、ここは丁寧に書きます。

1.数量の根拠が示されているか

外壁の塗装面積、シーリングの延長(メートル数)、タイルの補修枚数。「一式」ではなく数字で出ているか。数字が違えば、金額が違うのは当たり前です。

2.仕様が具体的か

塗料であれば、メーカー名・製品名・塗り回数・希釈率まで。「アクリルシリコン系」だけでは比較できません。

3.【最重要】下地補修の超過分の単価が、契約前に決まっているか

大規模修繕でいちばん揉めるのがここです。ひび割れ補修や欠損補修は、足場を架けて近づいてみないと数量が確定しません。だから見積書には「仮に○○メートル」と仮定数量が入ります。

問題は、実際にそれを超えたときの単価が契約書に書かれていない場合です。

工事が始まって、足場が架かって、そこから追加費用の交渉をする。この状況で、管理組合が対等に交渉することはできません。工事を止めるわけにいかないからです。

仮定数量を超えた分の平米単価・メートル単価を、契約前に明記させてください。これだけで、後の紛争の大半は防げます。

4.仮設工事の内訳が分かれているか

前述のとおり、平米単価とリース期間に分解してもらいます。

5.「別途」の中身が列挙されているか

見積書の末尾に「※以下は別途」とある場合、その中身が具体的に列挙されているかを確認してください。「別途」が抽象的な見積書は、後から金額が動きます。


長泉町の工事適期カレンダー

静岡県東部は温暖ですが、季節ごとに条件が変わります。

時期 評価 理由
3月下旬〜5月上旬 ◎ 気温・湿度が塗装に最適。業者の繁忙期でもある
5月中旬〜6月 △ 梅雨入り。防水工事の工程が読みにくい
7月〜8月 △ 高温で塗膜の乾燥は早いが、職人の熱中症対策で作業時間が制限される
9月〜10月中旬 △ 台風期。工程に余裕が要る
10月下旬〜11月 ◎ 気温・湿度ともに良好。おすすめ
12月〜2月 ◯ 温暖で晴天率が高い。閑散期のため価格交渉の余地がある。ただし冬季の北西風による作業中止日を見込む必要あり

12月から2月は、業者にとって閑散期です。「12月着工なら金額はどうなりますか」と聞くだけで、答えが変わることがあります。ただし長泉町の場合、冬の風は考慮に入れてください。工程に3〜5日の予備日を見ておくのが現実的です。


今週できること(合計3時間以内)

理事会で「まず何から」と聞かれたら、私はこの5つをお伝えしています。

  1. 町税務課資産税チーム(055-989-5508)に電話し、長寿命化に資する大規模修繕工事の固定資産税減額について、期限と必要書類の最新版を確認する(15分)
  2. 県住まいづくり課(054-221-3084)に電話し、町域として管理計画認定を申請する場合の流れと、認定ルート/助言・指導ルートのどちらが適しているかを相談する(20分)
  3. 静岡県マンション管理士会に無料派遣の申込書を請求する(メール t_gotoh@tx.thn.ne.jp/ファクス 0544-27-6561。締切は令和8年11月14日)(10分)
  4. 9月12日(土)の三島市役所のセミナーを理事会の予定に入れる。理事長と次期理事候補の2名で(5分)
  5. 管理会社に住戸タイプ別の専有面積一覧を依頼する。40平方メートル以上50平方メートル未満が何戸あるかを数える(依頼5分・確認30分)

このうち4と5は、今日中に終わります。


18か月逆算カレンダー

令和9年3月31日の工事完了を狙う場合の、大まかな逆算です。総会の時期は組合によって違いますので、目安としてお読みください。

時期 やること
今から1か月以内 町税務課・県住まいづくり課への確認。管理士派遣の申込。長期修繕計画と積立金残高の確認
2〜3か月後 劣化診断の実施。工法の相談(設計発注の前に)
4〜6か月後 修繕設計・仕様の確定。概算予算の作成
6〜8か月後 相見積り3社。ヒアリング。管理計画認定の申請準備
9か月後 総会で工事と資金計画を決議
10〜15か月後 着工〜工事(3〜6か月)
竣工〜3か月以内 固定資産税減額の申告(建築士等の証明書の手配は工事中から)

証明書の手配について1つだけ。大規模の修繕等証明書や過去工事証明書は、建築士やマンション管理士に発行してもらうものです。工事が終わってから探し始めると、間に合わないことがあります。工事監理をお願いする建築士に、契約の段階で「証明書の発行までお願いします」と伝えておいてください。

そして、過去工事の証明書類は、前回の施工会社が廃業していると取れなくなります。築30年前後のマンションでは、実際に起こります。今のうちに、前回工事の竣工図書と契約書が組合の書庫にあるかを確認しておいてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 長泉町に、マンション共用部の大規模修繕を直接補助する町独自の補助金はありますか?

A. 2026年8月29日時点の公開情報では確認できませんでした。町の住宅系補助金は、戸建て・専有部・個人を対象としたものが中心です。ただし長泉町には、工事後の固定資産税を減額する制度があります。詳しくは本文の「長泉町の固定資産税減額」を参照してください。

Q2. 長泉町の管理組合は、マンション管理計画認定をどこに申請するのですか?

A. 静岡県です。静岡県のマンション管理計画認定制度は「県内の町域」を対象としており、長泉町は駿東郡の町なので対象になります。窓口は静岡県住まいづくり課(054-221-3084)です(出典:静岡県 マンションの管理)。

Q3. 認定申請の手数料はいくらですか?

A. 令和8年4月1日改定後の額で、事前確認適合証がある場合は長期修繕計画1本につき4,000円、ない場合は28,100円です。計画が2本以上ある場合は、適合証ありで1本増えるごとに1,800円、なしで16,200円が加算されます(出典:静岡県 マンションの管理)。

Q4. 固定資産税の減額は、いくら安くなりますか?

A. 各区分所有者が工事完了の翌年度に支払う固定資産税の家屋分について、100平方メートルまでの部分が3分の1減額されます。都市計画税は減額されません。申告は工事完了後3か月以内です(出典:長泉町)。

Q5. 築15年で1回目の大規模修繕ですが、固定資産税の減額は使えますか?

A. 長泉町のページに記載された要件では、築後20年以上、10戸以上、かつ長寿命化工事を過去に1度以上実施していることが求められます。1回目の工事では、この「過去に1度以上」の要件を満たしません。ただし、今回の工事を記録として残しておけば、次回の工事のときに効いてきます。竣工図書と工事写真は必ず保管してください。

Q6. ロープアクセス工法は、どんなマンションでも使えますか?

A. いいえ。バルコニー内部の大規模な改修やサッシ交換など、長時間の足元と作業スペースが必要な工事は、足場のほうが合理的です。私は「これは足場でいきましょう」とお伝えする現場が普通にあります。だからこそ、部位ごとに使い分けるハイブリッド工法をご提案しています。

Q7. 静岡県のマンション管理士無料派遣は、費用がかかりますか?

A. 無料です。ただし令和8年度の受付件数は県内全体で10件、各管理組合2回までです。申込期限は令和8年11月14日(土曜)、派遣期限は令和9年1月31日(日曜)です。上限に達した時点で受付が終了します(出典:静岡県 マンションの管理)。


この記事のポイントまとめ

  • 長泉町に共用部を直接補助する町独自制度は、2026年8月29日時点で確認できず
  • 長泉町は「町」なので、静岡県の管理計画認定を県に直接申請できる
  • 認定手数料は事前確認適合証ありで4,000円、なしで28,100円と7倍差
  • 町は固定資産税減額の専用ページを持ち、必要書類を2ルートに分けて公開
  • 認定ルートには修繕積立金引上証明書が要り、助言・指導ルートには不要
  • 町の工事完了期限は令和9年3月31日。公開日から残り約19か月
  • 申告は工事完了後3か月以内。申告書は着工前に印刷しておく
  • 国のモデル事業 令和8年度第3回募集は9月14日〜18日
  • 県のマンション管理士無料派遣は県内10件のみ。締切は11月14日
  • 県セミナーの三島市会場は9月12日。長泉町役場から車で約10分
  • 木造住宅耐震補強の町補助は令和7年度で終了。RC造の受け皿は薄い
  • サステナブル住宅支援事業費補助金は申請期限が30日以内。工程に影響
  • 高齢化率22.5%は県内最低。1回目の大規模修繕を迎える組合が多い
  • 仮設足場は工事費の15〜25%。平米単価とリース期間に分解させる
  • 下地補修の超過単価は、契約前に必ず明記させる
  • 工法の相談は、修繕設計を発注する前に

主なお問い合わせ先

用件 窓口 電話
固定資産税の減額、申告書 長泉町 税務課 資産税チーム 055-989-5508
空き家改修事業、耐震、住宅施策 長泉町 建設計画課 計画チーム 055-989-5520
サステナブル住宅支援事業費補助金 長泉町 くらし環境課 くらし環境チーム 055-989-5514
町の統計・計画 長泉町 企画財政課 企画調整チーム 055-989-5504
マンション管理計画認定、セミナー 静岡県 くらし・環境部 住まいづくり課 054-221-3084
マンション管理士の無料派遣 一般社団法人静岡県マンション管理士会 ファクス 0544-27-6561

長泉町役場:〒411-8668 静岡県駿東郡長泉町中土狩828(代表 055-986-2131)


出典・参考資料

長泉町

静岡県

国土交通省ほか

制度は改正されます。この記事の内容は2026年8月29日時点で公開されている情報にもとづくものです。申請の可否、金額、期限は必ず各窓口の最新情報をご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務判断や法的助言を行うものではありません。


おわりに

長泉町を調べていて、印象に残ったことが1つあります。

町の固定資産税のページに、「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する減額」という専用ページがあり、そこに必要書類が2ルートに分けて書かれていました。申告書のWordファイルもダウンロードできる状態で置かれていました。

分譲マンションの数が多いとは言えない町で、ここまで書いてある。これは、町として「マンションの管理組合が申告してくること」を前提に準備しているということだと私は受け取りました。

補助金という形で現金が出る町ではありません。けれど、制度の受け皿は静かに整えられている。あとは、管理組合が動くかどうかです。

そして長泉町の管理組合には、他の自治体にない条件が2つあります。県に認定を直接申請できること。県のセミナー会場が車で10分の距離にあること。

9月12日、三島市役所。まずはここからでいいと思います。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームからどうぞ。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事を行っています。通常の足場仮設による工事、無足場工法であるロープアクセス工事、その両方を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法をご提案できる日本でも数少ない会社です。ロープアクセス工事としては日本で初めてとなるフランチャイズ展開も行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板工事など各分野の専門職が加盟しています。

最終更新:2026年8月29日

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