朝霞市のマンション管理組合が使える補助金・税制ガイド【2026年度版】
「うちのマンション、そろそろ大規模修繕の時期だけれど、朝霞市から何か支援はあるのだろうか」。理事会でそんな声が出はじめたら、この記事はまさに「うちの話」です。
私は大規模修繕の現場に20年近く立ってきました。マンション・ビル・ホテルの外壁や防水を、足場を組む工法と、ロープでぶら下がって施工する無足場の工法(ロープアクセス工法)の両方で手がけています。その中で、朝霞市の管理組合の理事長さまから一番多くいただく相談が、「補助金や税制で、修繕積立金の負担を少しでも軽くできないか」というものです。
正直に申し上げます。朝霞市には、共用部の大規模修繕そのものに直接お金を出してくれる「ど真ん中の補助金」は、現時点では用意されていません。ですが、使い方を間違えなければ管理組合の負担を確実に軽くできる制度が、いくつもあります。この記事では、朝霞市の分譲マンション管理組合が2026年度(令和8年度)に実際に使える制度を、現場目線で整理してお伝えします。
朝霞市には約250棟の分譲マンションが立地し、その数は毎年増え続けています。築30年以上のマンションは全体の約3割を占めており、建物の老朽化と居住者の高齢化が同時に進んでいます(出典:朝霞市「分譲マンション管理状況アンケート調査」)。つまり、大規模修繕と資金繰りの悩みは、もう一部の特別なマンションだけの話ではありません。
まず押さえる「制度の全体像」
朝霞市の管理組合が関わる制度は、大きく5つに分けて考えると整理しやすいです。最初に全体像を表でお見せします。それぞれの中身は、このあと順番に解説します。
| 制度 | 何に効くか | 共用部の修繕に直接使えるか | 担当窓口 |
|---|---|---|---|
| ① マンション管理計画認定制度 | 管理体制の「お墨付き」・税制や融資の入口 | 間接的(前提条件になる) | 開発建築課 |
| ② 建築物耐震診断・改修等補助金 | 旧耐震マンションの診断・耐震改修 | 使える(旧耐震が条件) | 開発建築課 |
| ③ マンション長寿命化促進税制 | 大規模修繕後の固定資産税を減額 | 間接的(税の軽減) | 課税課 |
| ④ 創エネ・省エネ設備設置費補助金 | 共用部の太陽光・雨水貯留槽・V2H | 一部使える | 環境推進課 |
| ⑤ 個人住宅リフォーム資金補助金 | 専有部のリフォーム | 使えない(専有部のみ) | 産業振興課 |
私はいつも理事長さまに、「補助金は1つを探すのではなく、この5つを組み合わせて考えてください」とお伝えしています。1つだけを見て「うちは対象外だった」とあきらめてしまう管理組合を、私は何度も見てきました。実際には、ある制度では対象外でも、別の制度や税制では恩恵を受けられることがほとんどです。1つずつ見ていきましょう。
少し私の現場の話をさせてください。以前、ある築35年・48戸のマンションで、理事会の皆さまが「補助金は調べたけれど、うちの共用部の塗装には1円も出ないと言われた」と肩を落としておられました。たしかに塗装そのものへの直接補助はありませんでした。ですが、長期修繕計画を整えて管理計画認定を取り、外壁塗装・床防水・屋根防水をワンセットで施工する計画に組み直したところ、長寿命化促進税制による固定資産税の減額が使える形になりました。「ダメだ」と思っていた制度が、見方を変えると効いてくる。これが補助金・税制の難しさであり、面白さでもあります。
① マンション管理計画認定制度 ― すべての入口になる「お墨付き」
最初にご紹介するのが、朝霞市マンション管理計画認定制度です。これは補助金そのものではありませんが、私はこの制度を「他の制度を有利に使うための入口」と位置づけています。
認定制度とは何か
マンション管理計画認定制度とは、管理組合がつくった管理計画が一定の基準を満たしているかを、自治体が審査して「認定」する仕組みです。マンション管理適正化法の改正を受け、朝霞市は令和6年2月に「朝霞市マンション管理適正化推進計画」を策定し、認定制度の運用を開始しました(出典:朝霞市マンション管理計画認定制度)。
ありがたいのは、朝霞市には市独自の上乗せ基準がない、という点です。つまり国が定めた基準を満たせば認定が受けられます。基準を大まかに言うと、管理者(理事長など)や監事が選任されていること、年1回以上の総会が開かれていること、管理規約が整っていること、管理費と修繕積立金が会計上きちんと分けられていること、そして長期修繕計画(30年以上の修繕の見通しを立てた計画書)が7年以内に見直され、総会で決議されていること、などです。
認定を受けるメリット
認定を受けると、朝霞市は次の効果を挙げています。資産価値の向上、住宅金融支援機構による金利等の優遇、区分所有者の意識醸成です。私の経験上、特に効いてくるのは2つあります。1つは、後述する長寿命化促進税制の「修繕積立金が確保されている」という条件を、この認定でクリアできること。もう1つは、フラット35などの融資で金利が下がることです。
手続きと費用
手続きは、(1)管理組合が総会で認定申請を決議し、(2)公益財団法人マンション管理センターの事前審査を受けて「事前確認適合証」の交付を受け、(3)市に認定を申請する、という3段階です。
費用について注意点があります。市への申請手数料は無料ですが、「管理計画認定手続支援サービス」のシステム利用料と事前確認審査料が別途かかります。また、認定の有効期間は5年で、更新しなければ認定は無効になります。詳細は開発建築課住宅政策係(電話048-423-3854)にご確認ください。
長期修繕計画の修繕積立金には、認定の前提として「平均額が著しく低額でないこと」という条件があります。国の目安をもとにした下限値の一部を、参考までに表にまとめます。自分のマンションの積立金が足りているかどうか、ざっくり当たりをつけるのにお使いください。
| 階数・延床面積 | 月額の専有面積あたり下限の目安 |
|---|---|
| 20階未満/延床5,000平方メートル未満 | 235円/平方メートル・月 |
| 20階未満/5,000〜10,000平方メートル未満 | 170円/平方メートル・月 |
| 20階未満/10,000〜20,000平方メートル未満 | 200円/平方メートル・月 |
| 20階未満/20,000平方メートル以上 | 190円/平方メートル・月 |
| 20階以上 | 240円/平方メートル・月 |
たとえば専有70平方メートルの住戸なら、20階未満・延床5,000平方メートル未満のケースで月額1万6,450円(70×235円)が一つの目安です。これを大きく下回っているなら、認定の前に積立金の見直しが必要になる可能性が高い、と私は理事会で必ずお伝えしています。
② 建築物耐震診断・改修等補助金 ― 旧耐震マンションの命綱
次が、共用部に「直接」使える数少ない補助金、建築物耐震診断・改修等補助金です。ただし大前提があります。対象は、原則として昭和56年5月31日以前に着工された建物、いわゆる旧耐震(新しい耐震基準より前に建てられた建物)のマンションです(出典:朝霞市 建築物耐震診断・改修等補助金)。マンションの場合、申請するのは管理組合です。
耐震診断の補助
まず耐震診断です。診断とは、建物がどれくらいの地震に耐えられるかを建築士が調べる作業のことです。共同住宅の場合、診断にかかった費用の50パーセント以内で、最大「戸数×2万円」かつ100万円までが補助されます。たとえば40戸のマンションなら、戸数換算で80万円が上限の目安になります。診断は、原則として市内の建築士事務所の建築士が行い、木造以外の建物では市が認めた耐震判定委員会の判定が必要です。
補助額のイメージがつかみやすいよう、戸数ごとの診断補助の上限を表にしておきます(あくまで「戸数×2万円」と「100万円」のいずれか小さい額が上限という計算上の目安です)。
| 総戸数 | 戸数×2万円 | 実際の診断補助上限の目安 |
|---|---|---|
| 20戸 | 40万円 | 40万円 |
| 40戸 | 80万円 | 80万円 |
| 50戸 | 100万円 | 100万円 |
| 80戸 | 160万円 | 100万円(上限が効く) |
50戸を超えると100万円の上限が先に効いてくる、という点が実務上のポイントです。
耐震改修の補助
診断の結果、耐震性が足りないと判定された場合の耐震改修にも補助があります。共同住宅では、改修にかかった費用の20パーセント以内で、最大「戸数×30万円」かつ1,000万円までです。40戸なら戸数換算で1,200万円ですが、上限の1,000万円が効いてきます。木造以外の建物では、構造耐震指標(Is値という耐震性の指標)が0.6以上になる改修計画が条件です。施工は原則として市内の建設業者が行い、中間検査も必須となっています。
最大の落とし穴 ―「申請前に着工したらゼロ」
ここが本題です。私が現場で一番悔しい思いをするのが、この制度で「申請より先に工事を始めてしまった」ケースです。耐震診断も耐震改修も、実施する前に申請書を提出する必要があります。さらに、補助金を申請した年度の1月31日までに完了報告を出さなければなりません。総会の決議や業者選定に時間がかかる管理組合では、このスケジュール管理がとても重要です。「見積もりを取って、いざ着工」の前に、必ず開発建築課(電話048-423-3854)へ一報を入れてください。
③ マンション長寿命化促進税制 ― 大規模修繕で固定資産税が3分の1に
3つ目は、補助金ではなく税制です。マンション長寿命化促進税制といい、一定の条件を満たす大規模修繕を行うと、翌年度の建物の固定資産税が減額される国の制度です。
対象になる条件
朝霞市の案内によると、令和5年4月1日から令和9年3月31日までの間に、長寿命化に資する大規模修繕工事を行った場合、工事完了年の翌年度分の固定資産税が3分の1減額されます(出典:朝霞市 家屋に対する課税)。条件として、新築から20年以上が経過していること、居住用の専有部分があること、そして対象工事として外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事のすべてを行っていることが必要です。
国の制度としては、総戸数10戸以上であること、過去に1回以上の長寿命化工事を行っていること、修繕積立金が一定額確保されていること(ここで①の管理計画認定が効いてきます)も要件になっています(出典:国土交通省 マンション長寿命化促進税制)。
朝霞市での減額幅と申告
減額割合は市町村の条例で6分の1から2分の1の範囲で定められますが、朝霞市は3分の1としています。注意したいのは、工事完了から3か月以内に申告が必要な点です。1戸あたり100平方メートル相当分まで、1回限りの減額です。詳しくは課税課(電話048-463-2875)へお問い合わせください。
私はこの税制を、外壁塗装と防水をワンセットで提案する大規模修繕と必ずセットで考えるようにしています。工事の中身を「外壁・床防水・屋根防水すべて」に整えることで、税の軽減という形でお金が戻ってくるからです。
④ 創エネ・省エネ設備設置費補助金 ― 共用部に使える貴重な制度
4つ目は、令和8年度(2026年度)の朝霞市創エネ・省エネ設備設置費補助制度です。多くの省エネ補助は「自分で住んでいる人」向けで共用部は対象外ですが、この制度には管理組合が共用部に使える枠があります。これは管理組合にとって貴重です(出典:令和8年度 朝霞市 創エネ・省エネ設備設置費補助制度 応募要領)。
共用部(管理組合)が対象になるもの・ならないもの
応募要領を読むと、設備ごとに対象者が細かく分かれています。共用部に設置する管理組合が対象になるのは、次の3つです。
- 住宅用太陽光発電システム(共用部に設置し、発電した電力を共用部で使う管理組合):1kWあたり35,000円、管理組合は上限500,000円
- 雨水貯留槽(共用部に設置する管理組合):費用の2分の1、管理組合は上限100,000円
- V2H(電気自動車から住宅へ給電する設備。共用部に設置する管理組合):100,000円
一方、家庭用燃料電池(エネファーム、補助5万円)、定置用リチウムイオン蓄電池(10万円)、HEMS(1万円)は、「自ら居住する集合住宅の専有部分に設置する個人」が対象で、共用部・管理組合は対象外です。ここを混同しないようにしてください。
金額・締切と申請の注意
受付期間は令和8年4月1日から令和9年2月26日まで、予算は620万円で、予算額に達し次第終了する先着順です。実績報告書の提出期限は令和9年3月12日です。管理組合が申請する場合、市税滞納の要件は除外されますが、管理者等が確認できる書類と、総会で設備設置を議決した議事録の写し(議事録署名人の署名入り)が必要です。そして耐震補助と同じく、交付決定の前に工事に着手すると補助金は出ません。問い合わせは環境推進課(電話048-463-1512)です。
⑤ 個人住宅リフォーム資金補助金 ―「共用部」には使えません
5つ目は、よく問い合わせをいただく個人住宅リフォーム資金補助金です。結論から申し上げると、管理組合の共用部の大規模修繕には使えません。正直にお伝えしておきます。
この制度は、自己の居住に供する自己所有の住宅のリフォームが対象で、対象工事費の5パーセント・上限5万円を補助するものです。集合住宅の場合は専有部分のみが対象で、共用部は対象外と明記されています。さらに、市・県・国の同様の補助金との併用ができません(出典:朝霞市 個人住宅リフォーム資金補助金)。
ですから、区分所有者さまが個人で室内をリフォームする場面では使えますが、管理組合の修繕では出番がない、と整理しておくのが正確です。窓口は産業振興課(電話048-463-1903)です。
国の制度との合わせ技 ― 「住宅省エネ2026」も視野に
ここまでは朝霞市の制度を中心に見てきましたが、私は理事長さまに「市の制度だけで考えないでください」とお伝えしています。国にも、マンションの省エネ改修や窓の断熱改修を後押しする「住宅省エネ2026キャンペーン」や「先進的窓リノベ2026事業」といった大型の支援があります。共用部の窓や玄関ドアの断熱改修、給湯設備の更新などは、これら国の事業の対象になることがあります。
ただし注意したいのは、朝霞市の個人住宅リフォーム資金補助金が「市・県・国の同様の補助金と併用できない」と定めているように、制度には併用の可否があるという点です。どれと、どれを、どの順番で使うのが一番得か。これは管理組合ごとに条件が違うため、私はいつも「総額で一番手元に残る組み合わせ」を一緒に試算するようにしています。補助金は足し算ではなく、組み合わせの最適化だとお考えください。
修繕積立金が足りないと、すべての入口が狭くなる
最後にもう一点、現場で痛感していることをお伝えします。ここまで紹介した制度の多くは、突き詰めると「長期修繕計画が整っているか」「修繕積立金が確保されているか」に行き着きます。管理計画認定の基準にも、長寿命化促進税制の要件にも、積立金の確保が顔を出します。
私の経験上、築20年を過ぎたあたりから、修繕積立金の不足に気づく管理組合が一気に増えます。新築時の積立金が低く設定されたまま据え置かれ、いざ2回目の大規模修繕という段階で「お金が足りない」と分かるのです。ここで安易に一時金を集めようとすると、区分所有者の合意形成が難航し、工事そのものが先送りになります。先送りは建物の劣化を進め、結果として将来の工事費を膨らませます。
だからこそ私は、補助金や税制の話と必ずセットで、長期修繕計画と積立金の見直しをお勧めしています。資産価値を守るというのは、こうした地味な土台づくりの積み重ねにほかなりません。制度を使う前に、まず足元を整える。遠回りに見えて、これが一番の近道です。
朝霞市の管理組合が動くべき「順番」
ここまで5つの制度を見てきました。読み終えた理事長さまが、次に何をすればよいのか。私がいつもお伝えしている順番でまとめます。
- まず長期修繕計画を最新の状態に整える。これが認定制度・税制すべての土台になります。
- ①の管理計画認定を検討する。認定が、③の税制と融資優遇の前提になります。
- 旧耐震(昭和56年5月以前着工)のマンションなら、②の耐震診断・改修補助を、必ず着工前に申請する。
- 大規模修繕では、外壁塗装・床防水・屋根防水をワンセットで計画し、③の長寿命化税制の減額(朝霞市は3分の1)を狙う。完了後3か月以内の申告を忘れない。
- 共用部に太陽光や雨水貯留槽を入れる計画があれば、④の補助を先着順のうちに押さえる。
戸あたりの財布感覚で言えば、たとえば40戸のマンションで耐震改修補助の上限1,000万円が出れば、1戸あたり25万円の負担軽減です。決して小さくありません。
近隣の和光市・新座市・志木市とどう違うのか
「隣の市では大規模修繕に補助が出ると聞いたが、朝霞市はどうなのか」。これも理事長さまからよくいただく質問です。私が現場で見てきた範囲でお答えすると、埼玉県南部の各市は、おおむね似た制度の組み合わせを採っています。
具体的には、マンション管理計画認定制度、旧耐震を対象とした耐震診断・改修補助、国のマンション長寿命化促進税制、そして省エネ設備の補助、というセットはどの市にも共通しています。一方で、共用部の外壁塗装や防水そのものに直接お金を出す「大規模修繕補助」は、和光市にも新座市にも、そして朝霞市にも明文化されていません。これは埼玉県南部に限らず、全国的にも珍しい部類の制度です。
ですから、「隣の市はうらやましい」と思う必要はあまりありません。違いが出るのは、耐震改修補助の上限額や、省エネ補助で共用部がどこまで対象になるか、といった細部です。朝霞市の場合、省エネ補助で太陽光・雨水貯留槽・V2Hの3つが共用部(管理組合)でも対象になる点は、むしろ使い勝手の良い部類だと私は感じています。大切なのは、隣の芝生を見ることではなく、自分のマンションがどの制度に当てはまるかを、一つずつ確認することです。
よくある質問(朝霞市の管理組合から)
最後に、現場でよくいただく質問を3つにしぼってお答えします。
Q. 大規模修繕の外壁塗装そのものに、朝霞市から補助は出ますか。
A. 残念ながら、塗装・防水そのものへの直接補助は朝霞市にはありません。ただし旧耐震のマンションなら耐震改修補助が、また工事の中身を整えれば長寿命化促進税制による固定資産税の減額が使えます。「補助金ゼロ」と「実質負担を軽くする方法ゼロ」は違う、とお考えください。
Q. 管理組合に滞納している区分所有者がいると、補助は受けられませんか。
A. 制度によります。省エネ設備の補助では、管理組合が申請する場合は「市税を滞納していない者」という要件から管理組合が除外されています。一方で、管理計画認定では、修繕積立金の3か月以上の滞納額が全体の1割以内であること、という基準があります。滞納の扱いは制度ごとに違うので、個別に確認が必要です。
Q. どこに相談すればよいか分かりません。
A. 制度ごとに窓口が分かれています。認定制度と耐震補助は開発建築課(048-423-3854)、税制は課税課(048-463-2875)、省エネ補助は環境推進課(048-463-1512)、専有部のリフォーム補助は産業振興課(048-463-1903)です。朝霞市には分譲マンション管理の無料相談窓口(事前予約制)もありますので、まずはそちらで全体像を整理するのも一つの手です。
補足:足場かロープアクセスかで、修繕費は変わります(自社のご案内)
最後に、私の本業に関わる話を一つだけ。利益相反にならないよう、ここからは自社のサービス紹介だと明記したうえでお伝えします。
補助金や税制で負担を軽くする努力と同じくらい大切なのが、工事費そのものを適正にすることです。大規模修繕の費用は、実は足場の仮設費が大きな割合を占めます。建物の形状や高さによっては、足場を全面に組むのではなく、ロープアクセス工法(産業用ロープで施工する無足場の工法)を使うことで、足場費と工期を抑えられる場合があります。詳しくはロープアクセス工法のご紹介をご覧ください。
私たちは、足場・ロープアクセス・その両方を組み合わせるハイブリッド工法の3つから、建物にとって一番無駄のない方法をご提案しています。これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない実感です。大規模修繕の全体像については大規模修繕工事のご紹介にまとめています。
朝霞市の補助金・税制は、申請の順番とタイミングを間違えなければ、管理組合の負担を確実に軽くしてくれます。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理や、長期修繕計画の見直しだけでも、お力になれることがあります。お問い合わせはこちらのフォームからどうぞ。
出典・参考資料
- 朝霞市「朝霞市マンション管理計画認定制度」
- 朝霞市「建築物耐震診断・改修等補助金」
- 朝霞市「家屋に対する課税(マンション長寿命化促進税制)」
- 朝霞市「令和8年度 創エネ・省エネ設備設置費補助制度 応募要領(PDF)」
- 朝霞市「個人住宅リフォーム資金補助金」
- 朝霞市「分譲マンション管理状況アンケート調査」
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」
本記事は2026年6月時点の公開情報に基づきます。補助金・税制は予算状況や年度によって変わります。申請の前に、必ず各担当窓口で最新の要件をご確認ください。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
修繕積立金が10年で5割増、それでも足りない——「住民格差」で大規模修繕が止まる前に。収益物件オーナーと管理組合がいま打つべき手【2026年6月】
修繕積立金が10年で5割増、それでも足りない——「住民格差」で大規模修繕が止まる前に。収益物件オーナーと管理組合がいま打つべき手【2026年6月】
先日、ある管理組合の理事長さまから、こんなご相談をいただきました。「毎月きちんと積み立ててきたつもりなのに、二回目の大規模修繕の見積もりを取ったら、積立金がまるで足りない。住民から一時金を集めるしかないと言われて、頭を抱えている」——。
これは、決して珍しい話ではありません。むしろ、いま全国のマンションで静かに進行している「共通の悩み」です。
ちょうどこの数日、分譲マンションの修繕積立金がこの10年で平均5割も上がったにもかかわらず、それでも修繕費が足りず、高額な一時金が請求されるケースがあるというニュースが出ていました。さらに深刻なのは、その負担をめぐって住民の間に温度差が生まれ、合意がまとまらずに大規模修繕そのものが止まってしまうという現象です。
今日は、このニュースの中身を整理したうえで、収益物件をお持ちのオーナーさま、そしてマンションの管理組合の理事長さま・修繕委員のみなさまが、「積立金が足りない」という壁にぶつかったとき、どう判断し、何から手を付ければいいのかを、現場の目線でお話しします。読み終えたときに「うちの管理組合でも、一度この観点で点検してみよう」と思っていただけたら幸いです。
まず何が起きているのか——「10年で5割増、それでも足りない」というニュースの中身
報じられたのは「積立金不足が修繕を止める」という現実
きっかけは、弁護士JPニュースが報じた一本の記事です。分譲マンションの修繕積立金は10年間で平均5割ほど負担が増えているにもかかわらず、それでも費用が足りず、住民に高額な一時金が請求されるケースがあるという内容でした。そして、その負担をめぐって入居時の一体感が薄れ、住民間の「格差」から合意形成が難しくなり、修繕が前に進まなくなる、という構図が描かれていました(出典:弁護士JPニュース「分譲マンション『修繕積立金』10年間で平均5割“負担増” それでも費用が足りず高額な一時金請求も」2026年6月)。
私がこの記事を読んで「これは多くの方に知っておいてほしい」と思ったのは、問題が「お金が足りない」だけにとどまっていないからです。お金の不足が、人間関係の対立を生み、その対立が建物の劣化を放置させる——この負の連鎖こそが、いちばん怖いところなのです。
国の数字でも「5割増」は裏付けられている
「5割増」という数字は、感覚論ではありません。国土交通省のデータでも、分譲マンションで必要とされる修繕積立金の平均は、2011年度の一戸あたり月額1万4,210円から、2021年度には月額2万1,420円へと、10年で約5割上昇しています。
つまり、住民のみなさんは「払う額」をきちんと増やしてきたのです。それでも足りない。ここに、この問題の根の深さがあります。値上げが足りなかったというより、そもそも当初の積立計画が低く設定されすぎていたことと、近年の資材高騰が重なった結果なのです。
実際、国の調査では、現在の積立額が長期修繕計画に対して不足しているマンションは全体の約36.6%にのぼると報告されています(出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査の結果について」)。およそ3棟に1棟が、計画どおりにはお金が貯まっていない計算です。
なぜ足りなくなるのか——「段階増額方式」という仕組みのカラクリ
新築の約99%が「最初は安く、あとから上げる」方式
ここで、多くのオーナーさま・理事長さまに知っておいていただきたいのが、修繕積立金の「集め方」には二つの方式があるということです。
一つは「均等積立方式」。これは、長期修繕計画の全期間で必要なお金を、最初からならして毎月一定額で集めていく方式です。家計でいえば、毎月決まった額を貯金箱に入れていくイメージで、見通しが立てやすいのが利点です。
もう一つが「段階増額積立方式」。こちらは、販売時は積立金を低めに設定しておき、5年・10年といった節目ごとに段階的に引き上げていく方式です。新築マンションの長期修繕計画の約99%がこの段階増額方式を採用している、というのが実態です。
なぜ新築でこの方式が多いのか。正直に申し上げます。販売時の月々の負担を少しでも軽く見せたほうが、マンションは売りやすいからです。これは販売側の事情であって、住民のためというより、売り手のための設定になりがちな構造があるのです。
「上げます」と決めても、住民の合意がいる
段階増額方式の落とし穴は、「あとから上げる」ことが計画書に書いてあっても、実際の値上げには総会での合意が必要だという点です。最初に安く設定された月々の負担に慣れた住民にとって、「来月から積立金を1.5倍にします」という提案は、なかなか受け入れがたいものです。
その結果、値上げの議案が否決されたり、先送りされたりして、計画よりも積み立てが進まない。気づいたときには、大規模修繕の直前になって「数十万円から百万円規模の一時金をお願いします」という事態になってしまう。これが、冒頭の理事長さまが直面したことの正体です。
令和6年改定で「上げ幅のルール」ができた
この問題を重く見て、国土交通省は令和6年6月、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を改定しました(出典:国土交通省「『長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント』及び『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』の改定について」令和6年6月)。
改定の目玉は、段階増額方式における「適切な引き上げの考え方」が示されたことです。具体的には、段階増額方式の月あたり徴収額について、均等積立方式とした場合の金額を基準額としたとき、計画の初期額は基準額の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内にとどめるべき、という目安が新たに盛り込まれました。
平たく言えば、「最初を極端に安くして、あとで急激に跳ね上げるようなやり方は、もうやめましょう」という国からのメッセージです。これからマンションを買うオーナーさまにとっては、この比率を逸脱した計画は要注意という判断材料になります。
あなたのマンションは大丈夫か——ガイドラインの「目安額」で自己診断する
「うちの積立金は、足りているのか、足りていないのか」。これを判断する手がかりが、令和6年6月改定の修繕積立金ガイドラインに示された専有面積あたりの目安額です(出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年6月改定)」)。
ガイドラインは、実際に作成された長期修繕計画の事例を集め、その「平均値」を専有面積1㎡あたりの月額で示しています。代表的な目安は次のとおりです。
| 建物の規模(地上階数/建築延床面積) | 月額の目安(平均値の例) |
|---|---|
| 20階未満/建築延床5,000㎡未満 | 約335円/㎡・月 |
| 20階未満/建築延床5,000〜10,000㎡未満 | 約252円/㎡・月 |
| 20階未満/建築延床10,000㎡以上 | 約271円/㎡・月 |
| 20階以上(タワー型など) | 別途の目安(一般に高め) |
※上記は全国の事例から算出された参考値です。実際の必要額は、建物の形状・立地・仕様・これまでの修繕履歴によって大きく変わります。正確な判断は専門家による長期修繕計画の見直しが前提です。
たとえば、専有面積70㎡・建築延床8,000㎡規模のマンションなら、「252円 × 70㎡ = 月額約1万7,640円」が一つの目安になります。ご自宅やお持ちの収益物件の積立金が、この水準を大きく下回っていないか。まずはここを確認してみてください。下回っているなら、いま足りていても、いずれ不足する可能性が高いというサインです。
ただし、ここで一つ申し添えたいことがあります。この目安額は、あくまで「これまでの相場」を集計したものです。ここ数年の資材・人件費の高騰は、まだ十分には織り込まれていない可能性があります。つまり、目安どおりに積み立てていても、これから工事をすると「目安では足りなかった」ということが起こり得る。だからこそ、次にお話しする「工事費そのものを下げる」という発想が効いてくるのです。
「一時金か、借入か」——足りないと分かったときの3つの選択肢と落とし穴
積立金の不足が判明したとき、管理組合が取り得る道は、大きく分けて三つです。それぞれにメリットと落とし穴があります。
選択肢1:一時金を徴収する。
最も直接的な方法ですが、冒頭の事例のとおり、住民間の合意形成が最大の壁になります。現金に余裕のある住民とそうでない住民、住んでいる区分所有者と賃貸に出しているオーナー、終の棲家と考える高齢世帯と将来売却を考える若い世帯——立場が違えば、一時金への賛否は割れます。ここで対立が深まると、修繕そのものが止まります。
選択肢2:金融機関から借り入れる。
住宅金融支援機構などの「マンション共用部分リフォーム融資」を使う方法です。一時金の重さを将来に分散できる利点がありますが、当然ながら利息という追加コストが発生します。借入には総会の特別決議が必要なことも多く、ここでも合意のハードルは残ります。
選択肢3:積立金を計画的に増額する。
本来あるべき正攻法ですが、すでに工事が目前に迫っている場合には間に合いません。早く気づけば気づくほど選べる選択肢だと言えます。
なお、いずれの選択肢にも共通するのが「住民の合意」という関門です。マンションの大規模修繕や借入、修繕積立金の変更は、区分所有法や管理規約に基づいて、総会での決議が必要になります。普通決議で足りる事項もあれば、特別決議(おおむね組合員および議決権の各4分の3以上の賛成)が求められる事項もあります。つまり、いくら理事会が「これがベストだ」と考えても、住民の理解を得られなければ前に進みません。だからこそ、住民が納得しやすい「負担の軽い案」を用意できるかどうかが、合意形成の成否を大きく左右します。負担が軽ければ軽いほど、反対する理由は減っていくからです。
私は、この三つはどれも「お金の集め方」をいじる話にすぎない、という点に注意していただきたいと思っています。どの道を選んでも、支払う総額(=工事費)そのものは変わりません。住民の負担を本当に軽くしたいなら、集め方だけでなく、工事費そのものを下げるという、もう一つの軸を持つことが大切なのです。
私が現場で最も効くと感じる一手——「工法の見直し」で修繕費そのものを下げる
大規模修繕費の中で、意外と大きい「足場費」という固定費
ここからは、私たちが日々現場で向き合っている「工事費の中身」の話です。
マンションの大規模修繕というと、塗装や防水、タイルの補修といった「仕上げ」に目が行きがちです。ですが、実は工事費のなかで無視できない割合を占めるのが、足場の仮設費用です。建物の周囲にぐるりと足場を組み、工事が終わったら解体して撤去する。この足場代だけで、工事全体のおおよそ2割前後を占めることも珍しくありません(建物の形状や規模によって変動します)。
しかも足場は、「修繕した成果」として建物に残るものではありません。工事のために一時的に必要なだけの、いわば“消えていく費用”です。ここに修繕積立金の少なくない部分が吸い込まれている、という事実は、もっと知られてよいと私は考えています。
足場を組まない「ロープアクセス工法」という選択肢
そこで近年、注目が高まっているのが、足場を組まずに作業員がロープで建物外壁を昇降しながら施工する「ロープアクセス工法(無足場工法)」です。ビルの窓ガラス清掃で、上からロープで降りてくる作業を見たことがあるかもしれません。あの技術を、塗装・防水・タイル補修・シーリング打ち替えといった修繕工事に応用したものです。
ロープアクセス工法には、修繕積立金の不足に悩む管理組合にとって、見逃せない利点があります。
| 比較項目 | 通常の足場工法 | ロープアクセス工法(無足場) | ハイブリッド工法 |
|---|---|---|---|
| 足場の仮設・解体費 | 必要(工事費の約2割前後) | 不要 | 必要な部位のみ |
| 工期 | 長め(足場の組立・解体に日数) | 短縮しやすい | 中間 |
| 居住者の生活影響 | 窓周りが覆われ採光・防犯面の不安 | 影響が小さい | 部位により異なる |
| 防犯面 | 足場が侵入経路になるリスク | リスクが低い | 部位により異なる |
| 適する建物 | 中低層・複雑な形状 | 高層・足場架設が難しい物件 | 大規模・複雑物件の総合最適 |
足場費がまるごと不要になれば、その分だけ工事費が下がり、結果として一時金の額を圧縮したり、借入を回避できたりする可能性が出てきます。これは「集め方」をいじる三つの選択肢とは、まったく次元の違うアプローチです。
「全部ロープ」でも「全部足場」でもない——ハイブリッドという発想
ただし、ここは正直にお伝えしなければなりません。ロープアクセス工法が万能というわけではありません。 大規模な打ち替えや、足場がないと品質・安全を確保しにくい部位もあります。低層で形状が複雑な建物では、足場を組んだほうが結果的に合理的なこともあります。
だからこそ私たちは、「足場かロープか」の二択ではなく、建物の部位ごとに最適な工法を組み合わせる「ハイブリッド工法」を基本に考えています。手の届きにくい高層部や、足場架設が難しい面はロープアクセスで、足場が必要な部位は足場で。こうして全体の総コストを最適化するのです。
通常足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つの工法から、建物にとって本当にベストな組み合わせを提案できる会社は、日本でもまだ多くありません。私たちが大切にしているのは、「自社が得意な工法に当てはめる」のではなく、「その建物にとっていちばん無駄のない工法を選ぶ」という姿勢です。
「百万円」を住民一人あたりに換算してみる
数字を体感に落とし込んでみましょう。仮に、総戸数50戸のマンションで、工法の見直しによって工事費全体を800万円圧縮できたとします。これを単純に戸数で割れば、一戸あたり16万円の負担軽減です。一時金として「一戸あたり50万円お願いします」と言われていたのが「34万円で済みます」となれば、合意形成のハードルはぐっと下がります。
金額の大小もさることながら、私が現場で実感するのは、「負担が減る」という事実そのものが、住民の対立をやわらげるということです。お金の話で人間関係がこじれるのを防ぐためにも、まず工事費を下げる努力をする。これは、技術の問題であると同時に、コミュニティを守る問題でもあるのです。
収益物件オーナーにとっての「修繕積立金問題」——利回りを守る視点
ここまでは管理組合の理事長さま・修繕委員のみなさまを主な読者として想定してお話ししてきました。ですが、この問題は区分マンションを賃貸に出している収益物件オーナーにとっても、決して他人事ではありません。むしろ、立場が違うぶん、別の難しさがあります。
賃貸に出しているオーナーは、その住戸に自分が住んでいるわけではありません。それでも、修繕積立金は所有者として支払う義務があり、一時金の請求が来れば、当然オーナーが負担します。家賃収入から見れば、これは利回りを直撃する想定外の支出です。たとえば年間の家賃収入が120万円の住戸で、50万円の一時金を求められれば、その年の手残りはほぼ吹き飛びます。
さらに悩ましいのが、総会での意思決定です。賃貸に出しているオーナーは総会に足を運びにくく、気づいたときには値上げや一時金が決まっていたということが起こりがちです。私がお伝えしたいのは、収益物件のオーナーこそ、「他人任せにしない」姿勢が利回りを守るということです。委任状を出して終わりにせず、長期修繕計画と積立金の水準にだけは目を通しておく。それだけで、突然の一時金に慌てる確率はぐっと下がります。
そして、もしオーナーとして修繕委員や理事に関わる機会があるなら、ぜひ「工法の見直し」を議題に出してみてください。工事費が下がれば、それは管理組合全体の利益であると同時に、オーナー自身の利回りを守ることに直結します。コスト感覚を持った所有者が一人いるだけで、管理組合の議論は驚くほど現実的になります。これは、私が数多くの現場でお手伝いしてきた中での、率直な実感です。
制度を味方につける——管理計画認定制度と長寿命化促進税制
工事費を下げるのと並行して、ぜひ活用していただきたいのが、国や自治体の制度です。
一つが、「マンション管理計画認定制度」です。これは、修繕積立金の積立てや長期修繕計画の作成など、管理状況が一定の基準を満たすマンションを、自治体が「適切に管理されている」と認定する仕組みです(出典:国土交通省「住宅:管理計画認定制度」)。
認定を受けるメリットは、主に次のようなものです。市場で「管理が行き届いたマンション」として評価されやすくなること。修繕積立金の運用に使える「マンションすまい・る債」の利率の上乗せを受けられること。そして、2023年度の税制改正で創設された「マンション長寿命化促進税制」(一定の要件を満たす大規模修繕工事を行ったマンションへの固定資産税の特例措置)の対象となり得ること、などです。
自治体の動きも進んでいます。たとえば神戸市では、令和4年9月から管理計画認定制度の受付が始まり、認定の前提としてマンションの「管理状況の届出」を求める運用がとられています(出典:神戸市「マンション管理計画認定制度」)。こうした「管理状況を行政に届け出る」流れは、今後ほかの自治体にも広がっていくと見られます。お住まいの、あるいは収益物件のある自治体の制度を、一度確認しておくことをおすすめします。
なお、これらの制度の要件・上限額・期限は年度や自治体によって変わります。「予算枠に達した時点で締め切られる」補助制度もあるため、検討される際は各制度の公募要領や自治体の最新の案内をご確認のうえで進めてください。
今日からの「次の一歩」——まず3つだけ点検してください
長くなりましたので、読み終えてすぐに動けるよう、要点を整理します。
第一に、自分のマンションの積立方式を確認すること。長期修繕計画書を開いて、「均等積立方式」か「段階増額方式」かを見てください。段階増額方式なら、将来の値上げが本当に計画どおり実行されているか、要チェックです。
第二に、ガイドラインの目安額と、いまの積立額を比べること。専有面積あたりの月額が目安を大きく下回っているなら、いずれ不足するサインです。
第三に、次の大規模修繕の見積もりを取るときに、工法の選択肢を比較すること。「足場ありき」で一社だけに見積もりを取るのではなく、ロープアクセスやハイブリッドを含めて、複数の工法で比べてみてください。ここで工事費が変われば、一時金や借入の話そのものが不要になることもあります。
この三つは、専門家でなくても、理事会や修繕委員会で今日から話題にできることです。
よくあるご質問(修繕積立金と大規模修繕)
最後に、現場でよくいただくご質問にお答えしておきます。
Q. 修繕積立金が不足していると、すぐに大規模修繕はできないのでしょうか。
A. そんなことはありません。不足が判明しても、借入の活用、工事範囲の優先順位づけ、そして工法の見直しによる工事費の圧縮など、打てる手はいくつもあります。大切なのは、足りないと分かった時点で早めに専門家に相談し、選べる選択肢が多いうちに動くことです。先送りするほど、劣化が進んで工事費が膨らみ、選択肢が狭まっていきます。
Q. ロープアクセス工法は、足場工法より品質が劣るのではないですか。
A. 工法によって品質が決まるわけではなく、施工する職人の技術と管理体制で決まる、というのが私の考えです。ロープアクセスは、技能を認定された作業員が間近で外壁に向き合うため、むしろ細部の状態を目視しやすいという面もあります。一方で、足場が向く部位があるのも事実です。だからこそ、部位ごとに最適な工法を組み合わせるハイブリッドの発想が活きてきます。
Q. 工法を見直すと、本当にどのくらい費用が下がるのですか。
A. 建物の高さ・形状・劣化状況によって幅があるため、一律に「何割下がる」とは申し上げられません。足場費は工事費の2割前後を占めることが多く、その全部または一部が圧縮できれば、相応のコスト効果が見込めます。正確な金額は、建物を実際に診断したうえでお出しするお見積もりでご確認いただくのが確実です。
Q. 自分のマンションの積立金が適正か、どこに相談すればいいですか。
A. まずは管理会社や、利害関係のない第三者の専門業者に、長期修繕計画と積立金水準の点検を依頼するのが第一歩です。複数の意見(セカンドオピニオン)を取ることで、提示された計画が妥当かどうかを冷静に判断できます。私たちも、こうした点検のご相談を承っています。
大規模修繕の「工法」と「費用」のご相談について(自社サービスのご案内)
ここからは、私たちのサービスのご案内です。押し売りをするつもりはありません。ただ、「うちの積立金で、本当にこの工事ができるのか」「足場を組まずに費用を下げられないか」と迷っておられるなら、判断材料を一緒に整理するお手伝いはできます。
私たちは、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を、通常の足場工法・ロープアクセス工法(無足場)・両者を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な形でご提案しています。ロープアクセス工法については、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟するロープアクセス工事のフランチャイズを展開し、高品質と低価格の両立をめざしています。
「まず自分のマンションの状態を知りたい」という方には、建物診断・長期修繕計画の見直しのご相談から承っています。具体的なお見積もりやセカンドオピニオンのご依頼は、お問い合わせ窓口よりお気軽にどうぞ。相談だけでも構いません。
あわせて、資材高騰やサプライチェーンの動きについては、これまでの記事もご参考になさってください(資材高騰と工事中断リスクを工法選択でどう守るか/今夏の大規模修繕に省エネ改修と補助金をどう組み込むか)。
修繕積立金が足りない、という現実は、決して恥ずかしいことでも、誰かの怠慢でもありません。多くは、新築時の設定と、その後の資材高騰という、住民の力では避けにくい事情が重なった結果です。大事なのは、足りないと分かったときに、「集め方」だけでなく「かかり方」にも手を入れられると知っておくことだと、私は思います。
今回ご紹介したニュースは、決して特別なマンションだけの話ではありません。築年数を重ねたすべての建物が、いつか必ず向き合うテーマです。だからこそ、まだ余裕のある今のうちに、長期修繕計画と積立金、そして工法の選択肢を一度きちんと点検していただきたいのです。早めに手を打てば打つほど、選べる道は広く、住民の負担は軽く済みます。
お金の話は、ときに住民同士の関係をぎくしゃくさせます。だからこそ、対立が深まる前に、工事費そのものを一円でも下げる工夫をする。それが、建物の資産価値を守るだけでなく、そこに暮らす人たちの穏やかな関係を守ることにもつながると、私は現場で何度も感じてきました。みなさまのマンションが、次の大規模修繕を気持ちよく乗り越えられるよう、心から願っています。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
和光市のマンション補助金2026年度版|管理組合が大規模修繕の前に押さえたい耐震・管理計画認定・長寿命化税制を本間が徹底解説
築20年を超えたマンションの理事会で、必ずと言っていいほど出てくるのが「次の大規模修繕、いくらかかるのか」という話です。そして、そのすぐ後に続くのが「和光市から、何か補助はもらえないのか」というご質問です。私はマンションの大規模修繕の現場に20年近く立ち会ってきましたが、この入り口の情報を正しく持っているかどうかで、管理組合の負担は数十万円、場合によっては百万円単位で変わります。
この記事では、埼玉県和光市で分譲マンションの管理組合が2026年度(令和8年度)に使える可能性のある制度を、和光市の公式情報をもとに整理します。結論を先にお伝えすると、和光市で管理組合が押さえるべき柱は「マンション管理計画認定制度」「住宅・建築物耐震改修補助金」「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)」、そして省エネ系の補助金の4つです。和光市は令和7年10月にできたばかりの制度もあり、近隣市と比べて耐震改修の補助上限が大きいという特徴もあります。ここからが本題です。
まず結論:和光市で管理組合が確認すべき4つの柱
細かい話に入る前に、全体像を一枚の表にまとめます。ご自身のマンションがどれに当てはまりそうか、ここで当たりをつけてください。
| 制度名 | ざっくり何がもらえる/得するか | 主な対象 | 和光市の窓口 |
|---|---|---|---|
| マンション管理計画認定制度 | 認定でフラット35等の金利優遇、資産価値の裏付け。市への申請手数料は無料 | 分譲マンションの管理組合 | 都市整備部 建築課 |
| 住宅・建築物耐震改修補助金 | 耐震診断:上限100万円/耐震改修:上限2,000万円 | 旧耐震(昭和56年5月31日以前着工)の分譲マンション | 建築課 審査住宅担当 048-424-9134 |
| マンション長寿命化促進税制 | 翌年度の建物の固定資産税をおおむね6分の1〜2分の1減額 | 築20年以上・10戸以上などの要件を満たすマンション | 課税課 資産税担当(国の制度) |
| ゼロカーボン推進事業補助金ほか省エネ系 | 省エネ家電の買い換え費用などを補助 | 主に居住者個人(専有部) | 環境課 048-424-9118 |
ここで一つ、正直に申し上げておきます。和光市にも「マンションの共用部の大規模修繕そのものに、まとまった金額を直接出す」という補助制度は、現時点で明文化されていません。これは和光市に限った話ではなく、多くの市で共通しています。だからこそ、「耐震」「管理計画認定」「税制」という、少し角度の違う3つの入り口から制度を取りに行く発想が要になります。一つずつご説明します。
制度1:マンション管理計画認定制度(令和7年10月運用開始)
最初にご紹介したいのが、和光市が令和7年(2025年)10月1日から運用を始めた「マンション管理計画認定制度」です。これは比較的新しい制度で、和光市でも始まってまだ日が浅いものですから、理事会でまだ話題に上っていない組合さんも多いはずです。
そもそもどんな制度か
マンション管理計画認定制度は、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」に基づく仕組みです。管理組合が作成・運用している管理計画(管理規約、長期修繕計画、修繕積立金の積立状況、総会の開催状況など)が一定の基準を満たしていることを、和光市が審査して「認定」するものです。和光市の認定基準は、国が定めたマンション管理適正化指針の基準と同一の内容とされています。つまり、和光市だけの特殊なハードルが上乗せされているわけではなく、全国共通のモノサシで自分たちの管理状態を確かめられる制度だとお考えください。
対象は和光市内に所在する分譲マンションで、認定基準を満たしたものです。賃貸マンションは対象外です。なお、販売前で管理組合がまだ組織されていない新築マンションについては、公益財団法人マンション管理センターが認定主体となる「予備認定制度」が別にあります。
何が得になるのか
「認定を取ると、お金がもらえるのですか」とよく聞かれますが、この制度は補助金が直接振り込まれるタイプではありません。得られるのは、主に次のようなメリットです。
第一に、住宅金融支援機構の「フラット35」の金利引下げや、マンション共用部分リフォーム融資の金利優遇の対象になり得ること。第二に、認定を受けたという事実が、適切に管理された資産であることの「お墨付き」になり、区分所有者が住戸を売却する際の訴求材料になること。第三に、後ほど説明するマンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)を受ける際、修繕積立金が確保されていることの裏付けとして、この認定が一つの根拠になり得ることです。
つまり、認定そのものは現金給付ではないものの、「融資条件」「資産価値」「税制優遇の入り口」という三方向で効いてくる、いわば土台づくりの制度です。これから大規模修繕や長期的な資産維持を考える組合にとって、最初に整えておく価値があります。
申請の流れと費用
申請者は、原則として管理組合の管理者等(理事長など)です。手続きは、公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援システム」を使い、まず事前確認を受け、その後に和光市へ認定申請を行う、という二段構えになっています。
費用面で押さえておきたいのは、和光市への申請手数料は無料である一方、マンション管理センターの事前確認に係る審査料と、システムの利用料は別途かかるという点です。「無料」という言葉だけが独り歩きすると、後で「センターの審査料は聞いていない」となりがちなので、理事会では最初から「市は無料、センターの実費は別」と共有しておくのが安全です。認定の有効期間は認定通知書の発行日から5年で、更新も申請と同じ手続きになります。
判断に迷ったときのために、国の制度として「マンション管理計画認定制度 相談ダイヤル」が用意されています。一般社団法人日本マンション管理士会連合会が、月曜から土曜の10時〜17時に無料で相談を受け付けています(電話 03-5801-0858)。和光市の制度の具体的な申請の手引きは市の公式ホームページからダウンロードできますので、まずは長期修繕計画と修繕積立金の現状が認定基準に届いているかを確認するところから始めるとよいでしょう。
制度2:和光市住宅・建築物耐震改修補助金(近隣より上限が大きい)
次が、旧耐震のマンションにとって金額的なインパクトが最も大きい「和光市住宅・建築物耐震改修補助金」です。和光市の建築課(審査住宅担当 048-424-9134)が窓口で、分譲マンション向けのメニューがきちんと用意されています。私が実務で見ている範囲でも、和光市はこの耐震改修補助の上限額が近隣市より大きく設定されているのが特徴です。
対象になるマンション
対象建築物は、建築確認を取得して昭和56年(1981年)5月31日以前に着工された分譲マンションです。いわゆる「旧耐震基準」の建物ですね。加えて、分譲マンションの場合は次の条件が付きます。申請者は分譲マンション等の管理組合であること、全戸数の半分以上に区分所有者が居住していること、管理組合で耐震診断・改修の決議がなされていること、そして市税の滞納がないことです。
「全戸数の半分以上に区分所有者が居住していること」という要件は、賃貸に出ている住戸が多いマンションでは引っかかる可能性があります。ご自身のマンションの居住実態を、申請前に一度確認しておいてください。
耐震診断の補助額
まず入り口となる耐震診断について。建築士事務所の登録をしている建築士の診断を受け、耐震判定委員会等の判定を受けることで、費用の一部が補助されます。補助額は、「耐震診断費用の3分の2」「戸数に2万円を乗じた額」「100万円」の3つのうち、最も少ない額です。
たとえば30戸のマンションであれば「戸数×2万円=60万円」が一つの目安になり、診断費用の3分の2と100万円のどちらより小さいかで決まります。診断は改修の要否を判断する出発点ですから、まずここから入るのが王道です。なお、診断にあたっては建築士事務所登録のある建築士に依頼し、さらに耐震判定委員会等の第三者判定を受けることが補助の条件になっています。「とりあえず付き合いのある工務店に簡単に見てもらった」というレベルでは補助の対象にならないことがあるため、診断の段階から要件に沿った進め方をすることが、後の改修補助までスムーズにつなげるコツです。
耐震改修の補助額(上限2,000万円)
そして本丸の耐震改修です。建築士の診断の結果「倒壊の恐れがある」と判定された分譲マンションについて、補強設計・工事監理を建築士が行い、建設業の許可を持つ業者が施工することを条件に補助されます。補助額は、「耐震改修費用の5分の1」「戸数に30万円を乗じた額」「2,000万円」の3つのうち、最も少ない額です。
ここで注目していただきたいのが、上限が2,000万円と設定されている点です。近隣の市では耐震改修の補助上限が一棟あたり200万円〜450万円程度というところが多いなかで、和光市の2,000万円という枠は明らかに大きい。もっとも、実際の交付額は「費用の5分の1」または「戸数×30万円」で頭打ちになることがほとんどですから、2,000万円がそのまま満額もらえるわけではありません。それでも、大規模なマンションで耐震改修費がかさむケースでは、この大きな上限が効いてくる場面は十分にあります。和光市は耐震化に本腰を入れている自治体だと、現場感覚としても受け止めています。
申請のタイミングという最大の落とし穴
耐震補助で最も多い失敗が、契約のタイミングです。和光市は要綱で「交付決定通知書の交付を受けてから、建築士事務所・建設業者と契約してください」「交付決定通知書の交付前に契約してしまうと補助金が受けられません」と明確に注意喚起しています。良かれと思って先に工事契約を結んでしまうと、対象工事であっても補助はゼロになります。
また、和光市の耐震改修補助は当該年度の予算の範囲内で行われ、毎年5月〜12月までに申請するよう求められています。年度後半に駆け込むと予算が尽きている恐れがあるため、検討段階で早めに建築課へ相談しておくのが鉄則です。なお、自己負担分だけを支払い、補助金相当額を市から直接業者に払ってもらう「受領委任払」も選べるので、組合のキャッシュフロー負担を軽くしたい場合は窓口で相談してみてください。
制度3:マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)
3つ目は、和光市独自ではなく国の制度ですが、効き目が大きいので必ず押さえてください。「マンション長寿命化促進税制」です。一定の要件を満たす大規模修繕(長寿命化工事)を行うと、工事が完了した年の翌年度の建物部分の固定資産税が、おおむね6分の1〜2分の1の範囲で減額されます(実際の減額割合は市区町村の条例で定められます)。1戸あたり床面積100平方メートル相当までが対象です。
主な要件
おおまかな要件は次のとおりです。築20年以上が経過していること、総戸数が10戸以上であること、過去に1回以上の長寿命化工事(屋根防水・床防水・外壁塗装等を含む大規模修繕)を行っていること、そして修繕積立金が一定の基準まで確保されていること。この「積立金の確保」を満たす経路として、先ほどのマンション管理計画認定を受けているか、あるいは市から助言・指導を受けて積立計画を引き上げているか、といった条件が関わってきます。制度1の管理計画認定が、ここで税制とつながってくるわけです。
工事の完了期限についても確認が必要です。この税制は、令和5年(2023年)4月1日から令和9年(2027年)3月31日までに対象工事が完了したものが対象とされています。期限が近づいていますので、これから大規模修繕を計画する組合は、スケジュールと完了見込みを早めに固めておく必要があります。申告は工事完了後おおむね3か月以内に行う点も忘れないでください。
手続きの窓口
固定資産税は和光市の課税課(資産税担当)が所管します。減額を受けるには、長寿命化工事を行ったことや積立金要件を満たすことの証明書類を添えて市へ申告します。減額割合の具体値は和光市の条例で定まるため、断定はせず、必ず課税課と国土交通省の最新情報の両方で確認してください。なお、自己負担額が50万円以上となる耐震改修については、別途、固定資産税が一定期間2分の1に減額される仕組みもあります(こちらは建築課で証明を受けます)。長寿命化の税制と耐震改修の税制は別物ですので、混同しないよう整理しておきましょう。
制度4:省エネ系の補助金(共用部に使えるかは要確認)
4つ目は省エネ・脱炭素系です。ここは管理組合の期待と実際の制度設計にズレが出やすいので、正直にお伝えします。
和光市は「和光市ゼロカーボン推進事業補助金」を令和8年度も実施しますが、令和8年度の対象設備は、現時点の市の公表内容ではエアコンと冷蔵庫の「買い換え」が中心です。補助額は対象経費の5割または3万円のいずれか少ない額で、1世帯につき1回まで。しかも「自らが居住する住宅に設置していること」「市内の店舗で購入した製品であること」が条件で、受付は令和8年7月1日から令和9年1月31日まで、設備設置後の事後申請、先着順で予算上限に達すると終了します(環境課 048-424-9118)。
おわかりのとおり、これは各戸の専有部・居住者個人向けの制度であって、マンションの共用部の大規模修繕や共用設備の更新に直接使えるものではありません。「省エネ補助で外壁や屋上防水の費用が出る」という期待は、残念ながら和光市のこの制度では当てはまりません。共用部のEV充電設備や太陽光・蓄電池といった脱炭素設備への補助については、年度ごとに枠や対象が変わりますので、検討している設備があれば、その都度、和光市環境課と埼玉県の制度(県の住宅用太陽光・蓄電池の補助や共同購入事業など)の両方を最新で確認するのが確実です。曖昧な情報で「使えるはず」と進めると、後で対象外と判明したときに組合の資金計画が崩れます。ここは慎重にいきましょう。
和光市のマンション事情と、なぜ「今」確認すべきか
和光市は東京都板橋区・練馬区に接し、東京メトロ有楽町線・副都心線と東武東上線が乗り入れる和光市駅を中心に、都心へのアクセスの良さから分譲マンションが数多く建っています。1980年代から1990年代にかけて供給されたマンションも一定数あり、ちょうど今、旧耐震基準の建物が耐震の節目を迎え、新耐震の建物も2回目・3回目の大規模修繕の時期に差しかかっています。
つまり和光市のマンションストックは、「耐震を考えるべき世代」と「修繕積立金の不足が表面化しやすい世代」が同時に存在している状況です。だからこそ、令和7年10月に始まった管理計画認定、近隣より手厚い耐震改修補助、令和9年3月で完了期限を迎える長寿命化促進税制という3つが、今まさに重なって効いてくるタイミングなのです。制度には期限と予算枠があり、いずれも「来年でいい」と先送りすると取りこぼします。今期の理事会で現状確認だけでも始めておく価値は十分にあります。
修繕積立金の確保が、すべての制度の前提になる
ここで強調しておきたいのが、修繕積立金の状況が、管理計画認定にも長寿命化促進税制にも共通する「前提条件」になっているという点です。国は近年、修繕積立金が長期修繕計画に対して不足しているマンションが多いことを問題視しており、認定基準でも積立金の額や計画の妥当性が問われます。
逆に言えば、積立金と長期修繕計画をきちんと整えることが、融資の優遇・税制の減額・資産価値の維持という複数のメリットへの「共通の鍵」になります。値上げの議論は総会で必ずもめるテーマですが、補助や税制という具体的なメリットと結びつけて説明すれば、区分所有者の理解も得やすくなります。「積立金を上げるための値上げ」ではなく、「認定と税制優遇を取りに行くための準備」として位置づけると、前向きな議論になりやすいものです。
制度を「取りに行く」順番
ここまで4つの柱をご説明しましたが、実務では順番が大切です。私がおすすめする進め方は次のとおりです。
最初に、長期修繕計画と修繕積立金の現状を点検し、マンション管理計画認定の基準に届いているかを確認します(制度1)。これは費用の優遇や税制の土台になります。次に、旧耐震のマンションであれば、耐震診断の補助を使って建物の現状を把握します(制度2の入り口)。診断の結果、改修が必要となれば、交付決定の前に契約しないことを厳守しながら耐震改修補助を申請します。そして大規模修繕の実施に合わせて、長寿命化促進税制による固定資産税の減額を狙います(制度3)。省エネ系(制度4)は、各戸や共用設備の更新計画があるときに、年度ごとの最新情報で個別に判断します。
この順番で進めると、「認定で土台を作る→診断で現状を知る→改修で安全性を上げる→税制で負担を取り戻す」という流れが自然につながります。バラバラに申請するのではなく、一本の線でとらえるのが、補助を最大化するコツです。
補助だけでなく「工事のやり方」でも費用は変わる
最後に、補助制度とは別の角度から、もう一つ重要な視点をお伝えします。それは「どの工法で大規模修繕を行うか」で、総費用そのものが変わるということです。
一般的なマンションの大規模修繕では、建物全体に仮設足場を組むのが当たり前とされてきました。しかし足場の架設・解体には相応の費用と工期がかかり、居住者にとっては窓の外に足場が立つことによる防犯やプライバシー、生活の不便も生じます。これに対し、産業用ロープを使って職人が直接アクセスする「ロープアクセス工法(無足場工法)」を部分的に取り入れると、足場費を抑え、工期を短縮し、居住者の生活への影響を小さくできる場合があります。さらに、足場が適している部位とロープアクセスが適している部位を建物ごとに使い分ける「ハイブリッド工法」という選択肢もあります。
どの工法が最適かは、建物の高さ・形状、劣化の状況、そして予算によって変わります。補助金で「いくら取り戻すか」と同じくらい、工法選びで「そもそもの工事費をいくらに抑えるか」が、管理組合の負担を左右します。和光市のように耐震改修の補助枠が大きい自治体であればなおさら、補助と工法の両面から検討する価値があります。私たちは、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つの工法から、その建物にとって最適な方法をご提案できる体制を持っています。補助金の使い方と合わせて、工法の選択肢も一度フラットに比較してみてください。
よくあるご質問(和光市の管理組合から多い相談)
最後に、和光市の管理組合の皆さまから実際によくいただく質問を、いくつか整理しておきます。
Q. 新耐震(昭和56年6月以降)のマンションは、耐震改修補助は使えませんか。
和光市の住宅・建築物耐震改修補助金は、昭和56年5月31日以前に着工された建物が対象です。新耐震のマンションは原則として対象外になります。ただし、新耐震であっても大規模修繕に合わせて長寿命化促進税制(固定資産税の減額)を狙うことはできますし、管理計画認定も築年数を問わず申請できます。「旧耐震でないから補助はない」と諦めず、税制と認定の側から検討してください。
Q. 認定を取らないと、長寿命化の税制は受けられないのですか。
管理計画認定は、長寿命化促進税制の積立金要件を満たす経路の一つではありますが、認定が唯一の道とは限りません。市の助言・指導を受けて積立金を適正な水準に引き上げる経路もあります。どの経路が自分たちのマンションに合うかは、和光市の担当課に確認するのが確実です。いずれにせよ、積立金の確保が鍵になる点は共通しています。
Q. 補助金の申請は、管理会社に任せておけば大丈夫ですか。
管理会社が手続きに慣れている場合は心強いですが、申請者はあくまで管理組合です。とくに耐震改修補助は「交付決定前に契約しない」という鉄則があり、ここを管理会社・施工会社・組合の三者で取り違えると補助がゼロになります。誰がいつ何を申請し、いつ契約してよいのか、スケジュールを一枚にまとめて共有しておくことを強くおすすめします。
Q. 工事費の総額を抑える方法はありますか。
補助金で取り戻すことと並行して、工事そのものの設計・工法を見直すのが効果的です。とくに足場費は総額に占める割合が大きいため、ロープアクセス(無足場工法)やハイブリッド工法を部分的に取り入れられないか、相見積もりの段階で比較しておくと、補助とは別の形で負担を圧縮できる可能性があります。
まとめ:まずは現状確認の一歩から
和光市で分譲マンションの管理組合が押さえるべき制度を、もう一度整理します。
ひとつ、令和7年10月に始まったマンション管理計画認定制度で管理の土台を整えること。ふたつ、旧耐震のマンションなら、近隣より上限の大きい和光市の耐震改修補助(診断上限100万円・改修上限2,000万円)を、交付決定前に契約しないことを守って活用すること。みっつ、大規模修繕に合わせてマンション長寿命化促進税制で固定資産税の減額を取りに行くこと。よっつ、省エネ系は専有部・居住者向けが中心で共用部には直接使いにくいことを理解し、年度ごとに最新情報を確認すること。
いずれの制度も、申請のタイミングと要件の確認が成否を分けます。まずはご自身のマンションの築年数、戸数、居住実態、長期修繕計画と修繕積立金の状況を一枚の紙に書き出すところから始めてみてください。そのうえで、和光市の建築課・課税課・環境課という3つの窓口に、それぞれ早めに相談しておくこと。これが、補助を取りこぼさないための一番確実な第一歩です。大規模修繕は、管理組合にとって十数年に一度の大きな意思決定です。正しい情報と段取りで、賢く、無理なく進めていきましょう。
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春日部市のマンション補助金2026年度版|管理組合が大規模修繕前に確認したい耐震・管理計画認定・長寿命化税制を本間が徹底解説
築年数が20年を超えたあたりから、理事会で必ず出てくるのが「次の大規模修繕、いくらかかるのか」という話です。そして、そのすぐ後に出てくるのが「春日部市から、何か補助はもらえないのか」というご質問です。私はマンションの大規模修繕の現場に20年近く立ち会ってきましたが、ここで正しい情報を持っているかどうかで、組合の負担は数十万円から、場合によっては百万円単位で変わります。
この記事では、埼玉県春日部市で分譲マンションの管理組合が2026年度(令和8年度)に使える可能性のある制度を、市の公式情報をもとに整理します。結論を先にお伝えすると、春日部市で管理組合が押さえるべき柱は「マンション管理計画認定制度」「既存建築物耐震改修等補助制度」「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)」、そして省エネ系の「太陽光・蓄電池補助金」の4つです。ここからが本題です。
まず結論:春日部市で管理組合が確認すべき4つの柱
細かい話に入る前に、全体像を一枚の表にまとめます。ご自身のマンションがどれに当てはまりそうか、ここで当たりをつけてください。
| 制度名 | ざっくり何がもらえる/得するか | 主な対象 | 春日部市の窓口 |
|---|---|---|---|
| マンション管理計画認定制度 | 認定によりフラット35等の金利優遇、資産価値の裏付け。市への申請手数料は無料 | 分譲マンションの管理組合 | 住宅政策課 048-796-8159 |
| 既存建築物耐震改修等補助制度 | 耐震診断:上限100万円/耐震改修:上限200万円 | 旧耐震(昭和56年5月31日以前)の分譲マンション | 建築課 建築安全担当 048-796-8046 |
| マンション長寿命化促進税制 | 翌年度の建物の固定資産税をおおむね2分の1減額 | 築20年以上・10戸以上などの要件を満たすマンション | 資産税課(国の制度) |
| 個人住宅 太陽光・蓄電池補助金 | 太陽光・蓄電池の設置費を補助(個人住宅向け) | 主に専有部・戸建て | 環境政策課 |
ここで一つ、正直に申し上げておきます。春日部市には「マンションの共用部の大規模修繕そのものに、まとまった金額を直接出す」という補助制度は、現時点で明文化されていません。これは春日部市に限った話ではなく、多くの市で同じです。だからこそ、「耐震」「管理計画認定」「税制」という、少し角度の違う3つの入り口から制度を取りに行く発想が要になります。順番にご説明します。
制度1:マンション管理計画認定制度(春日部市住宅政策課)
最初にご紹介したいのが「マンション管理計画認定制度」です。これは2022年(令和4年)に全国で始まった比較的新しい仕組みで、春日部市でも住宅政策課が窓口となって運用しています。
仕組みを素人の言葉で言い換えると、「このマンションは、管理組合がきちんと機能していて、修繕積立金や長期修繕計画も基準を満たしていますよ」と、市がお墨付きを与える制度です。総会で管理規約が定められ、長期修繕計画が概ね30年以上で見直しされ、修繕積立金が計画的に積み立てられている——こうした国の基準に適合していると認められたマンションが、市から「認定」を受けられます。
私がこの制度を最初にお勧めする理由は、お金が直接出るからではありません。認定を取ると、住宅金融支援機構の「フラット35」や「マンション共用部分リフォーム融資」の金利が引き下げられるなど、資金面の追い風が生まれます(出典:春日部市「マンション管理計画認定制度について」)。大規模修繕で借入を検討している組合にとって、金利が下がる効果は決して小さくありません。さらに、認定マンションであることは、いざ区分所有者が部屋を売るときの「資産価値の裏付け」にもなります。
申請の前に「事前確認適合証」が要る
ここで一点、見落としやすい段取りがあります。春日部市に認定を申請する前に、(公財)マンション管理センターの「管理計画認定手続き支援サービス(事前確認)」を利用し、マンション管理士が認定基準への適合を事前に確認した証である「事前確認適合証」の発行を受けることが必要です(出典:春日部市「マンション管理計画認定制度について」)。
費用については、春日部市への申請手数料は無料です。ただし、(公財)マンション管理センターの支援サービスの利用料および事前確認の審査料は別途かかります。つまり「市の手数料はゼロだが、事前確認の費用は組合が負担する」という構造です。ここを総会の予算説明で曖昧にすると、後で「聞いていなかった」という話になりがちなので、私はいつも理事長さまに、市とマンション管理センターの費用を分けて説明するようお伝えしています。
認定には総会での決議など、組合としての意思決定が前提になります。理事会だけで進められる話ではありませんから、通常総会の議案に乗せるスケジュールから逆算して動くのが現実的です。お問い合わせは住宅政策課(電話048-796-8159)です。
制度2:既存建築物耐震改修等補助制度(春日部市建築課)
4つの柱の中で、実際の工事に対して最もまとまった金額が出る可能性があるのが、この「既存建築物耐震改修等補助制度」です。春日部市は災害に強いまちづくりを進めるためにこの制度を設けており、令和8年(2026年)に、より使いやすくするための要綱改正を行っています(出典:春日部市「既存建築物耐震改修等補助制度」)。
対象になる建物と対象者
対象になるのは、昭和56年5月31日以前に建築確認を受けて工事に着手した、いわゆる「旧耐震基準」の建物です。分譲マンションの場合は、階数が3以上かつ延べ面積が1,000平方メートル以上の耐火建築物または準耐火建築物が対象となります(出典:春日部市「既存建築物耐震改修等補助制度」)。
申請できるのは、区分所有者または、区分所有者の団体(管理組合)の集会で決定された代表者です。ここでも、組合としての決議が前提になる点は押さえておいてください。
旧耐震というと「うちは新しいから関係ない」と思われがちですが、昭和56年は西暦1981年です。築44年前後の建物が該当します。春日部市内にも、この年代の分譲マンションは残っています。まず「自分のマンションが旧耐震かどうか」を、登記や確認済証で確認するところから始めてください。
耐震診断の補助額(上限100万円)
旧耐震だった場合、最初のステップは耐震診断です。分譲マンションの耐震診断に対する補助は、診断に要した費用の3分の2に相当する額、または「5万円×戸数」のいずれか低い額で、補助限度額は1棟につき100万円までです(出典:春日部市「既存建築物耐震改修等補助制度」)。
たとえば30戸のマンションなら「5万円×30戸=150万円」と「費用の3分の2」を比べて低い方になり、さらに上限100万円が天井になります。戸あたりに直せば、診断費用のかなりの部分を市が見てくれる計算です。なお、分譲マンションの耐震診断は、実施後に耐震判定委員会などの公的機関の判定を受けて適正と認められたものであることが要件です。診断は誰がやっても同じではない、という点にご注意ください。
耐震改修工事の補助額(上限200万円)
診断の結果、補強が必要となった場合の耐震改修工事については、分譲マンションは耐震補強に要する費用の23パーセントに相当する額、補助限度額は1棟につき200万円までです(出典:春日部市「既存建築物耐震改修等補助制度」)。
改修工事には要件があります。構造耐震指標(Is値。建物の地震に対する強さを示す数値)が0.6未満のものを、改修後に0.6以上にすること。建設業法上の許可を受け、原則として市内に営業所を有する建設業者が施工すること。そして1級建築士が耐震補強設計と工事監理を行うこと——この3つが揃って初めて補助対象になります(出典:春日部市「既存建築物耐震改修等補助制度」)。
段取りで失敗しないために
この制度で一番多い失敗は、段取りの順番を間違えることです。補助は事前相談が前提で、事業(工事)は年度末の3月15日までに完了する必要があります。先に契約・着工してしまうと対象外になる、というのは耐震補助の世界では珍しくありません。
私の経験上、耐震診断と大規模修繕は「ワンセット」で考えるのが得策です。診断のために足場やゴンドラを段取りするくらいなら、外壁・防水の調査や大規模修繕の検討と同じタイミングで動いた方が、トータルの手間も費用も圧縮できます。お問い合わせは建築課 建築安全担当(電話048-796-8046)、申請にあたっては必ず事前相談をしてください。
制度3:マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)
3つ目は補助金ではなく「税制」です。これは春日部市独自ではなく国の制度ですが、大規模修繕を控えた管理組合には見逃せません。正式名称は「マンション長寿命化促進税制」といいます。
仕組みを一言でいうと、一定の要件を満たすマンションが大規模修繕(長寿命化工事)を行うと、工事完了の翌年度分の建物部分の固定資産税が減額される、というものです。減額されるのは1戸あたり床面積100平方メートル相当分までで、減額割合はおおむね2分の1です(市町村の条例により6分の1から2分の1の範囲で定められます)(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制」)。
主な要件
主な要件は次のとおりです。築20年以上が経過していること。総戸数が10戸以上であること。居住部分が専有部分の床面積の2分の1以上であること。過去に外壁塗装、床防水、屋根防水の3種類の長寿命化工事を1回以上完了していること。そして、2回目以降の長寿命化工事を令和5年(2023年)4月1日から令和9年(2027年)3月31日までの間に完了させること。加えて、修繕積立金が一定水準確保されていることが求められます(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制」)。
ここで注意点を正直に申し上げます。春日部市の公式ページには、この税制の工事完了期限について「令和7年3月31日まで」と記載されている箇所があります。これは制度が当初設定していた期限で、その後、国の制度として完了期限は令和9年3月31日まで延長されています。年度をまたぐ制度は、こうした延長や条例改正で数字が動きます。実際に申告する前に、必ず春日部市資産税課と国土交通省の最新情報の両方をご確認ください。
申告は、工事完了後3か月以内に行う必要があります。期限が短いので、工事が終わってから慌てるのではなく、修繕委員会の段階で「税制の申告まで含めたスケジュール」を引いておくのが安全です。これは管理組合がまとめて手続きできます。
戸あたりの財布感覚で考える
「固定資産税が2分の1」と言われても、ピンと来ないという理事長さまは多いです。そこで、ざっくりした戸あたりの感覚でお話しします。仮に1戸あたりの建物部分の固定資産税が年間6万円だとすると、減額の対象となるのはそのうち床面積100平方メートル相当分まで。多くの分譲マンションの専有面積はこの範囲に収まりますから、おおむね2分の1が軽減されると、その年は1戸あたり約3万円が戻る計算になります。50戸のマンションなら、棟全体で年間150万円規模の負担軽減です。
もちろんこれは単年度限りの措置で、毎年続くわけではありません。けれども、大規模修繕という大きな出費の翌年に、組合員それぞれの固定資産税が軽くなるという事実は、総会で工事の合意形成を図るうえで、決して小さくない後押しになります。私は理事会でこの話をするとき、必ず「戸あたりいくら戻るのか」という財布感覚の数字に直してお伝えするようにしています。制度は、自分の家計に結びついて初めて「自分事」になるからです。
制度4:個人住宅 太陽光発電・蓄電池設置補助金(環境政策課)
4つ目は、省エネ・再エネ系の補助です。春日部市は令和8年度(2026年度)も、個人住宅における太陽光発電設備・蓄電池の設置に対する補助金を実施する予定で、環境省の交付金を財源としています(出典:春日部市「令和8年度春日部市個人住宅における太陽光発電設備・蓄電池設置補助金について」)。
補助額の目安(令和7年度実績ベース)は、太陽光発電が1キロワットあたり4万円・上限16万円(重点区域では1キロワットあたり5万円・上限25万円)、蓄電池が1キロワットアワーあたり4万円・上限20万円です。受付は令和8年5月11日から令和8年12月28日までを予定し、予算上限に達し次第終了します。対象は令和8年4月1日以降に契約する設備で、蓄電池のみの設置は対象外(太陽光発電との同時導入が条件)とされています(出典:春日部市環境政策課ページ)。
ただし、ここも正直に申し上げます。この補助金は「個人住宅」向けの制度設計です。マンションの共用部に太陽光や蓄電池を導入する場合に、そのまま適用できるかどうかは、設置形態や申請者の要件によって変わります。共用部での活用を検討する場合は、必ず事前に環境政策課に適用可否を確認してください。専有部(各戸のバルコニー等)への設置であれば、各区分所有者が個人として申請できる可能性があります。
正直に申し上げます——春日部市の「落とし穴」
ここまで4つの柱をご紹介してきましたが、期待だけを膨らませて終わるのは誠実ではありません。現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、「もらえると思っていた補助が、実は対象外だった」と後から分かるケースです。春日部市で特に気をつけたい点を3つ挙げます。
第一に、共用部の大規模修繕そのものへの直接補助は明文化されていません。外壁塗装や防水といった一般的な大規模修繕工事は、それ自体を対象にした市の補助金が用意されているわけではない、という前提で資金計画を立ててください。あくまで「耐震」という切り口、「税制」という切り口で取りにいく発想が必要です。
第二に、春日部市の「住宅リフォーム助成制度」(工事費の10パーセント・上限10万円)は、令和8年度(2026年度)は予算額に達したため受付を終了しています(出典:春日部市「住宅リフォーム助成制度」)。この制度はそもそも既存住宅向けで、上限額も管理組合の大規模修繕の規模に対しては小さく、共用部の修繕に使えるかは限定的です。マンションの大規模修繕の財源として当てにするには、性格が異なります。
第三に、補助金・税制はいずれも「予算枠到達で締切」「年度ごとに条件変更」「事前相談・事前申請が前提」という共通の落とし穴があります。良い制度ほど早く埋まります。「来年でいいや」と先延ばしにした結果、予算切れで使えなかった、という話を私は何度も見てきました。
すべての制度の「土台」は、長期修繕計画と修繕積立金
ここまで4つの制度を見てきて、お気づきの方もいるかもしれません。実は、これらの制度の多くが、共通して「長期修繕計画が適切に作られているか」「修繕積立金が計画的に確保されているか」を問うています。
マンション管理計画認定制度は、まさにこの2点が認定基準の中心です。長寿命化促進税制も、要件のひとつに修繕積立金の確保が入っています。つまり、計画と積立金という土台が崩れていると、どの制度の入り口にも立てない、ということです。
私が現場で見てきた中で、惜しいと感じるのは、建物自体はしっかりしているのに、長期修繕計画が10年以上見直されていなかったり、積立金が当初の安いままで実態に追いついていなかったりするケースです。国は「長期修繕計画作成ガイドライン」で、計画期間を30年以上、しかも大規模修繕を2回含む期間で設定することを目安として示しています。お手元の計画がこの水準を満たしているか、一度ご確認ください。
逆に言えば、計画と積立金を整えるだけで、認定制度・税制の両方への道が同時に開けます。補助金の金額ばかりに目が行きがちですが、私はいつも「まず足元の計画と積立金を点検しましょう」とお伝えしています。これは費用のかからない、けれども最も効果の大きい第一歩です。修繕積立金が不足している場合の引き上げや、長期修繕計画の見直しは、専門家を交えて総会の議案にしていくのが現実的な進め方になります。
制度を組み合わせる順番(現場目線の段取り)
では、これらをどう使うのが賢いのか。私が管理組合の理事会でお話しするときの「順番」を共有します。
最初にやるべきは、自分のマンションの「築年数」と「旧耐震かどうか」の確認です。昭和56年5月31日以前の建物なら、耐震診断補助(上限100万円)が最初の入り口になります。新耐震なら耐震補助の対象外ですが、その分、長寿命化税制と管理計画認定に力点を移します。
次に、長期修繕計画と修繕積立金の状態を点検します。これは管理計画認定の前提であると同時に、長寿命化税制の「積立金が確保されていること」という要件にも直結します。つまり、計画と積立金を整えておくことが、複数の制度の入場券になるのです。
そして、大規模修繕の検討時期が近いなら、その工事を長寿命化税制の対象になるよう設計します。過去に外壁塗装・床防水・屋根防水を一度行っていて、今回が2回目以降の長寿命化工事に当たるなら、令和9年3月31日までの完了を狙って逆算する。この「完了期限から逆算する」段取りが肝心です。
私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。耐震診断、管理計画認定、長寿命化税制、そして大規模修繕の工事計画——これらをバラバラに動かすと、足場やゴンドラを何度も架けることになり、かえって割高になります。一度の調査・一度の工事計画の中に、制度の要件を織り込んでしまうのが、組合の負担を最小にする道です。
大規模修繕の「工法」で、足場代そのものを圧縮する
ここまでは制度の話でしたが、もう一つ、組合の負担を直接下げる方法があります。それは「工法の選択」です。
大規模修繕の費用の中で、意外に大きいのが仮設足場の費用です。建物をぐるりと足場で囲むと、それだけで全体の1割前後を占めることも珍しくありません。私たちは、建物の形状や高さ、住民の生活への影響を見ながら、通常の足場仮設による工法、ロープアクセス工法(産業用ロープを使い、足場を架けずに高所作業を行う無足場工法)、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、その建物にとって最適な組み合わせをご提案しています。
たとえば、足場が架けにくい形状の建物や、足場の設置で居住者の生活・採光・防犯が大きく損なわれる物件では、ロープアクセス工法によって足場費を抑えつつ工期を短縮できる場合があります。一方で、全面的な打診調査や大面積の塗り替えが必要な部位は、足場の方が効率的なこともあります。だからこそ「全部ロープ」でも「全部足場」でもなく、部位ごとの最適化が効くのです。詳しくはロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。
補助金や税制で取り戻せる金額には上限があります。けれども、工法の選択は工事費そのものを設計段階から下げられます。制度の活用と工法の最適化、この両輪で考えるのが、私の20年の現場経験からの結論です。
よくあるご質問(春日部市のマンション補助金)
Q. 新耐震のマンションですが、使える制度はありますか。
A. 耐震改修等補助は旧耐震(昭和56年5月31日以前)が対象のため対象外ですが、マンション管理計画認定制度と長寿命化促進税制は新耐震でも要件を満たせば活用できます。まずは長期修繕計画と修繕積立金の点検から始めてください。
Q. 補助金は管理組合が申請するのですか、個人ですか。
A. 耐震補助や管理計画認定は、区分所有者の団体(管理組合)の集会で決定された代表者が申請します。一方、太陽光・蓄電池補助は個人住宅向けの設計です。制度ごとに申請主体が違う点にご注意ください。
Q. 工事を先に契約してしまいましたが、後から申請できますか。
A. 耐震補助は事前相談・事前申請が前提で、先に着工すると対象外になる可能性が高いです。長寿命化税制も完了後3か月以内の申告が必要です。いずれも「動く前に確認」が鉄則です。
Q. 春日部市に、大規模修繕そのものへの補助はありますか。
A. 共用部の大規模修繕工事に直接まとまった補助を出す制度は、現時点で明文化されていません。耐震・税制・管理計画認定という別の切り口で活用するのが現実的です。
まとめ:春日部市の管理組合が、今日からできること
春日部市で管理組合が押さえるべき柱は、マンション管理計画認定制度、既存建築物耐震改修等補助制度(耐震診断・上限100万円/改修・上限200万円)、マンション長寿命化促進税制(固定資産税のおおむね2分の1減額)、そして省エネ系の太陽光・蓄電池補助の4つです。共用部の大規模修繕そのものへの直接補助はないという前提に立ちつつ、これらを組み合わせ、さらに足場代を圧縮する工法選択を重ねることで、組合の負担は確実に変わります。
補助金も税制も、予算と期限という壁があります。令和9年3月31日までの長寿命化税制をはじめ、動ける時期が決まっている制度ほど、理事会で1分だけでも話題に出してみてください。総会の前段階の整理だけでも、私たちにお力になれることがあります。耐震診断や工法の比較、長期修繕計画の見直しなど、ご相談だけでも遠慮なくお問合せフォームからお声がけください。
これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない感想です。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 春日部市「マンション管理計画認定制度について」
- 春日部市「既存建築物耐震改修等補助制度」
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」
- 春日部市「令和8年度春日部市個人住宅における太陽光発電設備・蓄電池設置補助金について」
- 春日部市「住宅リフォーム助成制度(令和7年度の受付は終了しました)」
- 国土交通省「住宅:管理計画認定制度」
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遮熱塗料が猛暑で品薄——代替調達に走る塗装業界。今夏の大規模修繕で「省エネ改修+補助金」をどう組み込むか。収益物件オーナー・管理組合の判断軸【2026年6月】
毎年この時期になると、私のところには「今年の夏は最上階の住戸が暑くて、入居者からクレームが来ている」というご相談が増えます。
そして今年は、それに加えてもう一つ、見過ごせない動きが出てきました。遮熱塗料(しゃねつとりょう。太陽光の熱を反射して建物の温度上昇を抑える塗料)が、猛暑による需要急増で品薄になり始めているというニュースです。
「塗料がどこも値上がりしている」という話は、このブログでも何度かお伝えしてきました。ですが今回は少し毛色が違います。値段だけでなく「欲しい塗料が、欲しいタイミングで手に入らないかもしれない」という、段取りそのものの問題になってきているのです。
今日は、このニュースの中身を整理したうえで、収益物件をお持ちのオーナーさま、そしてマンションの管理組合の理事長さま・修繕委員のみなさまが、今年の夏から秋にかけての大規模修繕で何を判断材料にすべきかを、現場の目線でお話しします。読み終えたときに「うちの理事会で一度この話を出してみよう」と思っていただけたら、書いた甲斐があります。
まず何が起きているのか——「遮熱塗料が品薄」というニュースの中身
猛暑で需要が急増、調達は中国・インド頼みに
きっかけは、日本経済新聞が報じた一本の記事です。猛暑による遮熱塗料の需要増に対し、塗料メーカーや塗装会社が、塗料の下地材や容器を中国・インドなどから代替調達する動きに追われているという内容でした(出典:日本経済新聞「猛暑需要の遮熱塗料、代替調達へ中小企業奔走」2026年6月)。
遮熱塗料そのものは新しい製品ではありません。日経はかつて、工場向けの遮熱塗装が3年で需要倍増ペースにあると報じたこともあります(出典:日本経済新聞「猛暑をはね返せ、温度下げる遮熱塗装に商機」2024年)。つまり、もともと右肩上がりだった需要に、ここ数年の記録的な猛暑が拍車をかけている、という構図です。
ナフサショックの延長線上にある「目詰まり」
私がこのニュースを「ただの夏の風物詩」で済ませてはいけないと感じたのは、背景に中東情勢に端を発した原材料の供給不安があるからです。
塗料の多くは、原油から作られるナフサ(粗製ガソリン)を出発点とした石油化学製品です。2026年に入ってからの中東情勢の緊張で、このナフサの供給が不安定になり、塗料の値上げや一部製品の出荷調整が相次いでいます。日経ビジネスも、シンナー(塗料を薄める溶剤)の枯渇で塗装業の倒産が急増していると報じました(出典:日経ビジネス「シンナー枯渇で塗装業の倒産急増」2026年6月)。
私はこの一連の流れを、別の記事でも「サプライチェーンの目詰まり」とお伝えしてきました(参考:資材高騰と工事中断リスクを工法選択でどう守るか、塗料用シンナーの政府直接販売開始)。今回の遮熱塗料の品薄は、その目詰まりが「需要が一番伸びている商品」に最初に現れた、という見方ができます。
正直に申し上げます。「夏になったら遮熱塗料を塗ろう」と思い立っても、その夏に在庫が確保できるとは限らない。これが、いま現場で起きていることの本質です。
そもそも遮熱塗料とは——大規模修繕で何が変わるか
仕組みをかみ砕くと「光を跳ね返す塗膜」
専門用語が続くと読みにくいので、ここで一度かみ砕きます。
遮熱塗料とは、太陽光のなかでも熱に変わりやすい近赤外線を反射しやすくした塗料のことです。屋上やバルコニー、外壁、屋根といった「太陽が直接当たる面」に塗ることで、その面の表面温度が上がりにくくなります。表面が熱くならなければ、その熱が室内へ伝わる量も減る、という理屈です。
似た言葉に断熱塗料がありますが、こちらは熱を「伝えにくくする」もので、厳密には役割が違います。大規模修繕でよく使われるのは、屋上防水のトップコート(防水層を保護する仕上げ塗膜)や、屋根・外壁の仕上げ塗装に遮熱機能を持たせるタイプです。
数字で見る効果——ただし条件次第である点に注意
「で、実際どれくらい涼しくなるのか」が一番気になるところだと思います。
メーカーや業界の試験データでは、遮熱塗装によって屋根や屋上の表面温度が十数度から二十度近く下がるという結果が示されることが多く、それに伴って最上階の室温も数度下がる例が報告されています。環境省も、建物の屋根・外壁の高反射率化(クールルーフ)を、ヒートアイランド対策や省エネ対策の一つとして位置づけています(出典:環境省「ヒートアイランド対策」)。
ただし、ここは慎重にお伝えしなければなりません。効果は、建物の構造・断熱の有無・塗る面の方位・地域の気候によって大きく変わります。「塗れば必ず○度下がる」と断定する業者がいたら、私はむしろ警戒します。私がお客さまにご説明するときは、「最上階や西日の当たる住戸など、効果が出やすい面を見極めて使いましょう」という言い方をします。全面に塗ればよい、という単純な話ではないのです。
種類と選び方——「グレード」と「下地との相性」を見る
遮熱塗料とひとことで言っても、中身はさまざまです。大きくは、シンナー(溶剤)で薄めて使う溶剤系と、水で薄める水性(水系)に分かれます。
今回の供給不安との関係でいえば、溶剤系はシンナーの調達難の影響を受けやすく、ナフサショックの局面では水性のほうが相対的に手当てしやすいと見る向きもあります。実際、塗料各社は水性塗料への切り替えを進めてきました。一方で、下地や使用環境によっては溶剤系が向く場面もあり、「水性なら何でも安心」というわけではありません。
選ぶ際に私が必ず確認するのは、次の3点です。第一に、反射性能の数値(日射反射率)が第三者の試験で示されているか。第二に、既存の塗膜・防水層との相性。古い塗膜の上に相性の悪い塗料を重ねると、膨れや剥がれの原因になります。第三に、耐久年数とメンテナンス周期です。遮熱性能は汚れの付着で少しずつ落ちていくため、表面の汚れにくさ(低汚染性)も実質的な性能の一部だと考えています。
カタログの「○度下がる」という数字だけで決めず、自分の建物の下地と方位に合うかをセットで見る。地味ですが、ここを飛ばすと後悔します。
なぜ「今夏の大規模修繕」で検討すべきか——3つの理由
ここからが本題です。なぜ私が、今年の修繕計画でこの話を取り上げてほしいと考えているのか。理由は3つあります。
理由1:品薄だからこそ「早めの段取り」が効く
先ほどお伝えしたとおり、遮熱塗料は需要が伸びている一方で、供給に不安があります。秋の大規模修繕で遮熱仕様を入れたいなら、塗料の選定と発注のリードタイム(発注から納品までの期間)を、例年より長めに見ておく必要があります。「総会で決めてから塗料を探す」では間に合わないかもしれないのです。
理由2:猛暑は入居者・利用者の満足度に直結する
私の経験上、最上階や西向き住戸の「暑さクレーム」は、退去理由になりやすい要素です。賃貸であれば空室リスク、分譲であれば住民満足度の低下につながります。大規模修繕は十数年に一度の機会です。そのタイミングで、外壁や屋上の塗り替えに遮熱機能を「ついでに」持たせられるなら、足場代を二重に払わずに済む。これは費用対効果の面で非常に大きい。
理由3:資産価値と賃料を守る投資になる
遮熱改修は、単なる「涼しさ」だけでなく、空調コストの削減=ランニングコストの低減につながります。近年は不動産の選定でも省エネ性能が見られるようになってきました。「夏に強い建物」は、長い目で見れば賃料と資産価値を守る武器になるというのが、私の考えです。
遮熱塗料だけではない——「夏に強い建物」にする複合メニュー
ここで一つ、お伝えしておきたいことがあります。「暑さ対策=遮熱塗料を塗る」だけだと、効果が頭打ちになりやすいということです。遮熱塗料は強力な手段ですが、建物の暑さは複数の経路から入ってきます。大規模修繕という機会だからこそ、合わせて検討できるメニューがあります。
屋上は「遮熱」と「断熱」の合わせ技で考える
最上階の暑さの主犯は、多くの場合、屋上です。屋上防水の改修では、トップコートを遮熱仕様にして表面温度を下げると同時に、断熱材を入れて熱の伝わり自体を抑える「断熱防水」という選択肢もあります。
遮熱が「太陽光を跳ね返す」守りなら、断熱は「入ってきた熱を室内に通さない」もう一段の守りです。私はよく、「屋上は表と裏の二段構えで考えましょう」とお伝えします。防水のやり替えという十数年に一度のタイミングは、この二段構えを仕込む絶好の機会なのです。
ベランダ・共用廊下・外階段も「熱だまり」になる
意外と見落とされがちなのが、ベランダや共用廊下、外階段といった共用部の暑さです。コンクリートの床は日中に熱をため込み、夜になっても下がりにくい。ここに遮熱性のある床用塗料や防水を使うと、住戸への放射熱や、夕方の蒸し暑さがいくらか和らぎます。
賃貸物件であれば、内見に来た方が最初に通るのは共用部です。「足を踏み入れた瞬間の暑さ」は、その物件の印象を確実に左右します。私は、共用部の改修こそ入居率に効く地味な投資だと考えています。
日射そのものを遮る——庇やルーバーという発想
塗装の話からは少し離れますが、西日対策としては、窓の外側で日射を遮るのが理屈のうえでは最も効きます。後付けの庇(ひさし)やルーバー(羽根状の日除け)、外付けブラインドなどです。
すべてを一度にやる必要はありません。ですが、「うちの建物は西面の窓が大きい」「角部屋の暑さが特にひどい」といった特徴があるなら、塗装と一緒に検討する価値はあります。建物ごとに『暑さの入り口』は違うので、まずはどこから熱が入っているかを見極めることが先決です。
省エネ改修に使える補助金——令和8年度の主な制度
「やる意味は分かった。でもコストが」というのが、正直なところだと思います。そこで、省エネ・脱炭素の改修に使える可能性のある補助制度を、2026年6月時点で整理します。
なお、補助金は予算枠に達した時点で受付終了となるものが多く、年度ごとに要件が変わります。ここに書く内容は申請を保証するものではありません。実際の申請前には、必ず各制度の公募要領(公式の募集案内)で最新情報をご確認ください。
ビルオーナー向け:環境省「業務用建築物の脱炭素改修加速化事業」
オフィスビルや店舗など、事業用の建築物をお持ちのオーナーさま向けに、環境省が業務用建築物の脱炭素改修を支援する事業を進めています。令和8年度(2026年度)予算でも、この分野に予算が計上されています(出典:環境省「令和8年度予算及び令和7年度補正予算 脱炭素化事業一覧(エネ特ポータル)」、環境省「令和8年度(2026年度)当初予算」)。
この種の省CO2改修支援では、これまで補助率3分の1、上限数千万円規模といった水準で設計されてきました。外壁・屋根の高反射率化(遮熱改修)や断熱改修も、省エネに資する工事として対象に含まれ得ます。ただし、令和8年度分の具体的な補助率・上限額・対象工事は、公募要領の公開を待って確認する必要があります。「去年こうだったから今年も同じ」と決めつけないことが肝心です。
中小企業向け:横浜市「省エネルギー化支援助成金」
地域の制度として、横浜市の例をご紹介します。横浜市は、市内中小企業者の省エネ・再エネ設備導入を支援する省エネルギー化支援助成金(カーボンニュートラル設備投資助成事業)を実施しています。2026年度の事前申込は5月1日から6月30日17時までと案内されており、助成率2分の1、上限300万円といった条件が示されています(出典:横浜市「カーボンニュートラル設備投資助成事業」、横浜市「省エネルギー化支援助成金(簡易申請コース)」)。
ご覧のとおり、今年度分の事前申込締切は6月30日と目前に迫っています。お住まい・物件の所在地によって使える制度は変わりますので、横浜市以外のオーナーさまも「自分の自治体に似た制度がないか」を一度調べてみる価値があります。
制度の比較——まずは「どこの・誰向け」かを見極める
| 制度 | 主な対象 | 補助・助成の目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 環境省 業務用建築物の脱炭素改修加速化事業 | 事業用建築物(ビル・店舗等)のオーナー | 省CO2改修支援で補助率1/3前後・上限数千万円規模が従来水準 | 令和8年度の詳細は公募要領で要確認。予算枠あり |
| 横浜市 省エネルギー化支援助成金 | 横浜市内の中小企業者 | 助成率1/2・上限300万円 | 2026年度事前申込は6月30日17時まで |
| お住まいの自治体の同種制度 | 自治体により異なる | 自治体により異なる | 名称・要件・締切は各自治体の公式サイトで確認 |
私はいつも理事長さまに、「補助金は工法や仕様を決めてから探すのではなく、計画の入口で同時に並べて検討しましょう」とお伝えしています。後から「使える制度があった」と気づくのが、いちばんもったいないからです。
住宅・マンション向けの省エネ支援も押さえておく
事業用の建物だけでなく、住宅やマンションを対象とした省エネ改修の支援も国は続けています。たとえば環境省は、断熱窓への改修を促進する住宅の省エネ・省CO2加速化の支援事業を進めてきました(出典:環境省「断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業 採択結果」)。窓や外皮(建物の外側を覆う部分)の断熱と、屋根・外壁の遮熱は、「夏の暑さを防ぐ」という意味で相性のよい組み合わせです。
管理組合の場合、こうした制度を使うには総会での合意形成や、申請のための書類整備が必要になります。締切から逆算すると、理事会レベルでの検討開始が「半年前」では遅いこともある。これも、私が「早めに」と繰り返す理由のひとつです。
修繕積立金とのバランスをどう取るか
遮熱改修や省エネ改修は、確かに初期費用が上乗せになります。修繕積立金に余裕がない管理組合では、「そこまで手が回らない」という声も当然あります。
ですが、私はこう考えています。足場を組む大規模修繕のタイミングは、十数年に一度しか来ない。次にもう一度足場を組んで遮熱塗装だけをやり直すとなれば、足場代をもう一度払うことになります。だからこそ、「やるなら今回の足場のあるうちに」という判断には、財布の面でも合理性がある。補助金が使えれば、その上乗せ分の一部を埋められる可能性もあります。修繕積立金の使い道は、こうした「機会の重なり」で考えると見え方が変わってきます。
工法選択で「足場費」を抑える——遮熱塗装×ロープアクセスの相性
省エネ改修を検討するうえで、もう一つ知っておいていただきたいのが工法の選択肢です。ここは、私たち明誠が最も力を入れている部分でもあります。
ロープアクセス(無足場工法)という選択肢
大規模修繕というと、建物全体を足場で囲む光景を思い浮かべる方が多いと思います。ですが、工事の規模や部位によっては、ロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が壁面を昇降して施工する、足場を組まない工法)のほうが合理的なケースがあります。
足場を組まない分、足場の架設・解体費を抑えられ、工期も短縮しやすい。さらに、足場がないことで侵入経路が減り、居住者の防犯面の不安や、ベランダが足場で塞がれる生活ストレスも軽減されます。猛暑のなかで「窓を開けたいのに足場のシートで風が通らない」という入居者の不満は、実は毎年いただくのです。
ロープアクセスについては、別ページで詳しくご説明しています(参考:ロープアクセス工法のご紹介)。
ハイブリッド工法で「面ごとに最適化」する
とはいえ、私はロープアクセスを万能だとは申し上げません。広い面を一気に塗る作業や、複雑な納まりの部分は、足場を組んだほうが品質も効率も上がることがあります。
そこで私たちが提案しているのが、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法です。たとえば、入隅や複雑な低層部は足場で、平らで広い高層部の遮熱塗装はロープアクセスで——というように、面ごとに最適な工法を組み合わせる。これによって、足場費と工期と品質のバランスを取ります。
現場で20年やってきて、私が一番もったいないと感じるのは、「足場ありきで見積もりが組まれ、ロープアクセスという選択肢が最初から机に乗っていない」ケースです。私はこれを、必ず両方を並べて比較できる形でご提案するようにしています(参考:大規模修繕工事のご紹介)。
現場の話を一つ
以前、最上階の暑さに長年悩まされていた、築20年ほどのマンションを担当したことがあります。屋上防水の改修時期がちょうど重なっていたため、防水のトップコートを遮熱仕様に変え、あわせて西面の外壁の一部をロープアクセスで遮熱塗装しました。
全面足場を組まずに必要な面だけを狙ったことで、足場費を抑えつつ、夏場の最上階の体感が変わったと理事長さまに喜んでいただけました。「修繕のついでに、夏の悩みも一緒に片づいた」——これが、十数年に一度の大規模修繕というタイミングを活かす、ということだと私は思っています。
コストは「戸あたり」で考えると判断しやすい
工事費の話になると、どうしても「総額〇千万円」という大きな数字に圧倒されてしまいます。私が理事会でご説明するときに使うのが、「戸あたりいくらか」という換算です。
たとえば、ある工事で足場をロープアクセスやハイブリッドに切り替えることで仮設費を圧縮できたとします。その削減額を総戸数で割れば、「1戸あたり数万円分、別のところに回せる」という見え方になります。逆に、遮熱仕様の上乗せ分も戸あたりに直せば、「1戸あたり月々の積立に換算するといくらか」という、住民の財布感覚に近い数字で議論できます。
大切なのは、総額の大小ではなく、同じ足場のうちに「何を一緒にやれば、戸あたりの負担を最も有効に使えるか」という視点です。遮熱改修を単独でやるより、大規模修繕に抱き合わせたほうが戸あたりの効率がよくなる、という話は、この換算をすると腹落ちしやすくなります。
梅雨明け前後が分かれ目——スケジュールを逆算する
季節性の強い話なので、時間軸の整理もしておきます。遮熱改修を「今年の暑さ」に間に合わせたいのか、「来年に向けた仕込み」と割り切るのかで、動き方が変わります。
| 時期の目安 | やること | ねらい |
|---|---|---|
| 6〜7月(今) | 困りごとの棚卸し・補助金の有無を確認 | 締切の早い助成金を取りこぼさない |
| 7〜8月(猛暑期) | 暑さの実態を記録・専門家に相談 | 効果が出やすい面を見極める材料を集める |
| 秋(着工期) | 工法3案で見積もり・塗料の発注段取り | 品薄の遮熱塗料を確実に手当てする |
| 総会のタイミング | 仕様・予算・補助金活用を一括で諮る | 後戻りのない合意形成 |
ポイントは、塗料の調達と補助金の締切という「自分ではコントロールできない締切」から逆算することです。猛暑の真っ最中に慌てて動いても、塗料が間に合わず、補助金の受付も終わっている——これがいちばん避けたい展開です。6月中に「使える制度はないか」を一度だけでも調べておくと、秋の動きがぐっと楽になります。
失敗しないための実務ステップ——理事会・オーナーが今やること
最後に、読み終えたあとに何をすればよいかを、順番に整理します。難しいことはありません。
- 長期修繕計画の「次の塗装・防水の時期」を確認する。 来年・再来年に外壁や屋上の改修が控えているなら、今が情報収集のベストタイミングです。
- 最上階・西向きなど「暑さの困りごと」を棚卸しする。 入居者アンケートやクレーム記録があれば、それが遮熱改修の根拠資料になります。
- 使える補助金を「計画の入口」で同時に調べる。 自治体の省エネ・脱炭素関連の助成金は、締切が年度の早い時期に来ることが多いので注意です。
- 工法を1つに決め打ちしない。 足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3案で見積もりを取れる体制を作る。
- 塗料の調達リードタイムを確認する。 遮熱塗料は品薄傾向です。仕様を決めたら、早めに発注の段取りに入る。
この5つを理事会の議題に1分だけ載せるだけでも、来年の修繕の質はずいぶん変わります。
総会で「暑さ対策」を通すには——合意形成の現場感
6月は総会シーズンです。理事長さまや修繕委員の方から、「やる意味は分かったが、総会でどう説明すれば住民が納得するのか」というご相談を、この時期は特によくいただきます。現場で見てきた範囲で、通りやすくするコツをお話しします。
「感想」ではなく「記録」で語る
「最上階が暑い」というのは、当事者以外には伝わりにくい話です。そこで効くのが、事実の記録です。入居者からの暑さに関するクレーム件数、退去時のアンケート、夏場の空室期間、最上階と中間階の電気代の差——こうした数字は、総会の場で「個人の感想」を「組合全体の課題」に変えてくれます。
私はいつも、「暑さは、データにすると予算が付きやすくなります」とお伝えしています。声の大きい人の不満ではなく、記録に基づく課題として提示する。これが第一歩です。
「ついで工事」のコスト効率を見える化する
総会で反対が出やすいのは、「今やる必要があるのか」という点です。ここで効くのが、先ほどの戸あたり換算と、「足場のあるうちにやる」という機会の話です。
「単独で遮熱改修をすると足場代がもう一度かかるが、今回の大規模修繕に組み込めば追加の足場代はかからない」——この一点を図にして示すだけで、議論の空気はずいぶん変わります。お金の話は、必ず『今やる場合』と『あとでやる場合』を並べて見せる。これが私の鉄則です。
反対意見も「議事録に残す」
最後に、これは少し意外かもしれませんが、私は反対意見こそ丁寧に議事録へ残すことをおすすめしています。「暑さ対策より、まず防水の延命を優先すべきだ」といった意見は、それ自体が建物にとって大事な論点です。
賛成多数で押し切るのではなく、論点を全部テーブルに乗せたうえで決める。その過程が記録に残っていれば、数年後に「なぜあのとき遮熱をやったのか」を、新しい理事の方にも説明できます。合意形成とは、その場の多数決ではなく、後から検証できる意思決定の積み重ねだと、私は考えています。
よくある質問(FAQ)
Q. 遮熱塗料は普通の塗料よりどれくらい高いのですか。
A. 製品やグレードによりますが、一般的な仕上げ塗料より単価は高くなる傾向があります。ただし、屋上防水のトップコートを遮熱仕様に変える程度であれば、追加コストは限定的なことも多いです。空調コストの削減効果と合わせて、トータルで判断されることをおすすめします。
Q. 既存の外壁の上から塗れますか。
A. 多くの場合、下地の状態を点検したうえで塗り重ねが可能です。ただし、ひび割れや既存塗膜の劣化がある場合は、その補修が先になります。点検なしに「塗れます」と言い切る業者には注意してください。
Q. 補助金は個人のオーナーでも使えますか。
A. 制度によります。事業用建築物を対象とするもの、中小企業者を対象とするもの、住宅を対象とするものなど、対象がそれぞれ異なります。ご自身の物件の用途と所在自治体に合う制度を探すのが第一歩です。
Q. ロープアクセスは足場より品質が落ちませんか。
A. 適した部位を選べば、品質面で足場と遜色のない施工が可能です。一方で、広い面の一括施工などは足場が向く場面もあります。だからこそ、私たちは面ごとに工法を使い分けるご提案をしています。
Q. 遮熱塗料の効果は何年くらい持ちますか。
A. 製品やグレード、立地の汚れやすさによって変わりますが、遮熱性能は塗膜の汚れとともに少しずつ低下します。定期的な点検と、必要に応じた洗浄・再塗装で性能を保つ、という考え方が現実的です。「塗ったら一生もつ」というものではない、とご理解ください。
Q. 今年の夏に間に合わせたいのですが、可能ですか。
A. 建物の規模や下地の状態、塗料の調達状況によります。今年の品薄を踏まえると、規模の大きい工事を真夏に間に合わせるのは段取りが厳しいことも多いです。まずは点検と見積もりから始め、無理のないスケジュールを一緒に組むのが現実的だと思います。
Q. うちは横浜市ではありませんが、補助金は使えますか。
A. 本文の横浜市はあくまで一例です。多くの自治体が省エネ・脱炭素の改修支援を設けています。お住まい・物件所在地の自治体名と「省エネ 改修 補助金」などで検索し、公式サイトで対象・締切をご確認ください。見つけ方が分からなければ、私たちでも一緒にお調べします。
まとめ——「夏の困りごと」を修繕の機会に変える
今日お伝えしたことを、最後に一言でまとめます。
遮熱塗料の品薄は、裏を返せば「省エネ改修の需要がそれだけ高まっている」というサインです。 そして大規模修繕は、その省エネ改修を、足場代を二重に払わずに組み込める数少ない機会です。猛暑、資材の供給不安、補助金の締切——いくつもの要素が、今年は同じタイミングで動いています。
私はいつも、修繕は「守りの出費」ではなく「資産を守り、育てる投資」だとお伝えしています。遮熱改修と工法の選択、そして補助金の活用を、ぜひ計画の入口でセットにして考えてみてください。
ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理や、「うちの建物で遮熱改修に意味があるのか」という見極めだけでも、お力になれることがあります(お問合せフォーム)。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 日本経済新聞「猛暑需要の遮熱塗料、代替調達へ中小企業奔走」2026年6月
- 日本経済新聞「猛暑をはね返せ、温度下げる遮熱塗装に商機」2024年
- 日経ビジネス「シンナー枯渇で塗装業の倒産急増 ホルムズ危機が暴いた「目詰まり」の正体」2026年6月
- 環境省「令和8年度予算及び令和7年度補正予算 脱炭素化事業一覧(エネ特ポータル)」
- 環境省「令和8年度(2026年度)当初予算 地球環境・国際環境協力」
- 環境省「ヒートアイランド対策」
- 環境省「断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業 採択結果」
- 横浜市「カーボンニュートラル設備投資助成事業」
- 横浜市「省エネルギー化支援助成金(簡易申請コース)」
本記事は2026年6月23日時点の公開情報をもとに作成しています。補助金・助成金の要件や締切は変更される場合があります。申請の際は必ず各制度の公式の公募要領をご確認ください。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
上尾市のマンション補助金2026年度版|管理組合が大規模修繕前に確認したい耐震・管理計画認定・長寿命化税制を本間が徹底解説
上尾市のマンション補助金2026年度版|管理組合が大規模修繕前に確認したい耐震・管理計画認定・長寿命化税制を本間が徹底解説
「うちのマンションも、上尾市から何か支援を受けられないだろうか」。理事会で大規模修繕の話題が出るたびに、そんな声を耳にします。このページにたどり着いた理事長さま、理事さまも、同じ疑問をお持ちなのではないでしょうか。
私はマンション・ビルの大規模修繕の現場に20年近く立ち会ってきました。その経験から正直に申し上げると、上尾市の管理組合が使える制度は「これ一発で工事費が半額になる」といった派手なものではありません。けれど、耐震・管理・税制・省エネという切り口で丁寧に見ていくと、年度ごとに予算が組まれ、申請のタイミングさえ外さなければ着実に活用できる支援が用意されています。やっかいなのは、担当する課がバラバラで、情報が一カ所にまとまっていないことです。耐震は建築安全課、税の話は資産税課、省エネはゼロカーボン推進室、といった具合に、組合の側で「点」を「線」につなぐ必要があります。
この記事では、上尾市の分譲マンション管理組合が2026年度(令和8年度)に確認しておきたい制度を、市と国の一次情報をもとに整理しました。読み終えたときに「次の理事会で、これを議題に出そう」と思っていただけるよう、申請の順番や、つまずきやすい落とし穴まで踏み込んでお伝えします。
この記事は制度の概要をわかりやすくお伝えするものです。補助率・上限額・受付期間・税制の適用期限は、年度や予算状況、税制改正で変わります。実際の申請前には、必ず各担当課の最新の要綱でご確認ください。本記事の数字は2026年6月時点で公開されている情報に基づいています。
まず押さえたい「上尾市は管理に前向きな自治体」という事実
制度の中身に入る前に、上尾市という街の前提を共有させてください。
上尾市は、JR高崎線で大宮から二駅という立地に、戸建てと分譲マンションがバランスよく広がる住宅都市です。高度成長期からバブル期にかけて供給されたマンションが多く、これらが今まさに、二度目・三度目の大規模修繕を迎える時期に差しかかっています。全国的に見ても、築40年を超える分譲マンションは令和元年(2019年)末時点の約81.4万戸から、20年後には約3.9倍に膨らむと国土交通省は試算しており、上尾市も例外ではありません。老朽化と、理事のなり手不足という二つの波が、これから同時に押し寄せてきます。
だからこそ上尾市は、マンションの「管理」そのものに手を打ってきました。市は「上尾市マンション管理適正化推進計画(令和6年度から令和15年度)」を策定し、これに基づいて令和6年4月1日から「マンション管理計画認定制度」をスタートさせています。
なぜこの話を最初にするかというと、上尾市の管理組合向け支援は、この「適正な管理を後押しする」という市の姿勢とワンセットになっているからです。耐震にしても税制優遇にしても、土台にあるのは「きちんと管理されているマンションかどうか」。私はいつも理事長さまに「補助金は出口の話ではなく、管理を整える入口の話ですよ」とお伝えしています。理事会のメンバーは数年で交代していくのが普通ですから、市の制度を一度通しておくことは、次の世代への引き継ぎ資料にもなります。修繕とは別軸の、組合運営そのものへの投資だと考えています。
制度1|マンション管理計画認定制度 ― すべての土台になる「管理の見える化」
最初にご紹介したいのが、マンション管理計画認定制度です。これは令和2年6月の「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」改正で創設された国の制度を受けて、上尾市で令和6年4月1日から運用が始まったもので、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、市が「適切に管理されたマンション」として認定します。
認定の対象は、上尾市内に所在する分譲マンションです。認定基準には、管理組合の運営、管理規約、管理組合の経理、そして長期修繕計画の作成および見直しなどが含まれます。上尾市は独自の上乗せ基準を設けておらず、国の基準に沿って判断される点が、組合にとっては分かりやすいところです。
手続きの流れも押さえておきましょう。まず認定の申請について総会で決議をとり、公益財団法人マンション管理センターのオンラインシステム「管理計画認定支援サービス」を使って事前確認を受けます。この事前確認は、講習を受けたマンション管理士による「事前確認適合書」の取得が前提です。適合書を添えて市に申請し、審査を経て認定通知書が交付されるという順番になります。市への申請手数料は無料ですが、事前確認適合証の発行には、支援サービスのシステム利用料と事前確認審査料が別途かかる点には注意してください。認定の有効期間は5年間で、5年ごとの更新が必要です。窓口は上尾市役所本庁舎6階の建築安全課(電話 048-775-8490)です。
「認定を取ると、何が得なのか」。これがいちばん多い質問です。直接お金が振り込まれる制度ではありませんが、認定マンションは不動産市場で「適正に管理された物件」として評価されやすくなり、住宅金融支援機構のフラット35や共用部分のリフォーム融資で金利優遇が用意されている場合があります。そして、次の次にご説明する固定資産税の減額制度を使う際にも、この「管理がきちんとしている」という土台が効いてきます。私の現場感覚で言えば、認定取得の作業を通じて長期修繕計画を見直すこと自体が、結果として修繕積立金の過不足に気づく良い機会になります。制度に関する一般的な相談は、全国共通のマンション管理計画認定制度相談ダイヤル(電話 03-5801-0858)も利用できます。
制度2|分譲マンション耐震診断補助制度 ― 旧耐震の組合がまず動くべき制度
昭和56年(1981年)5月以前の旧耐震基準で建てられたマンションをお持ちの組合に、まず確認していただきたいのが、上尾市分譲マンション耐震診断補助制度です。
対象となるのは、上尾市内にある分譲マンションのうち、昭和56年5月31日以前に着工された建築物で、居住の用に供する部分の床面積が延べ面積の3分の2以上を占めるものです。加えて、建築基準法その他の法令に明らかに違反していないこと、管理組合の集会で耐震診断の実施を決議していること、そして全戸数の2分の1以上で区分所有者またはその2親等以内の親族が居住していること、という要件があります。申請できるのは、区分所有者の団体・管理者、または団地建物所有者の団体・管理者です。
補助の中身は具体的です。補助対象建築物1棟につき、補助対象経費の3分の2に相当する額、または住戸の戸数に5万円を乗じた額の、いずれか低い額となり、上限は100万円です。たとえば30戸のマンションなら「30戸×5万円=150万円」と「経費の3分の2」を比べ、低いほうかつ100万円までが補助される、という計算になります。補助は1棟につき1回限りです。耐震診断は、建築士事務所または建設業者に属する1級建築士が行い、診断後には市が認める第三者機関による評価を受けることが条件となっています。窓口は建築安全課(電話 048-775-8490)です。
ここで一つ、現場目線の注意を添えます。耐震は「診断して終わり」ではありません。診断で課題が見えたら、その先に耐震改修という大きな工事が控えています。そして後ほど「落とし穴」でも触れますが、上尾市の耐震改修補助は木造住宅向けが中心で、分譲マンションの改修工事への直接の補助は、診断補助のように明文化されてはいません。だからこそ、診断の段階から「改修まで進んだ場合に、埼玉県や国の制度を含めてどの支援が使えるのか」を建築安全課に確認しておくと、総会での合意形成がスムーズになります。診断結果が出てから慌てて資金計画を組むより、入口で全体像を描いておくほうが、理事会の負担はずっと軽くなります。
制度3|マンション長寿命化促進税制 ― 大規模修繕で固定資産税が翌年度3分の1に
ここが、大規模修繕を控えた管理組合にとって、いちばん見逃せない制度です。国の「マンション長寿命化促進税制」を受けて、上尾市でも、一定の要件を満たすマンションが長寿命化に資する大規模修繕工事を行った場合に、工事が完了した年の翌年度分の建物部分の固定資産税を3分の1減額します。都市計画税は減額の対象外です。
対象となるマンションの要件は、次の三つをすべて満たすことです。第一に、築後20年以上が経過している10戸以上のマンションであること。第二に、長寿命化工事を過去に1回以上適切に実施していて、令和5年4月1日から令和9年3月31日の間に2回目以降の長寿命化工事を完了していること。ここでいう長寿命化工事とは、屋根防水工事・床防水工事・外壁塗装等工事を指し、今回の工事ではこれらを一体で実施している必要があります。第三に、工事に必要な修繕積立金を確保していること。具体的には、管理計画認定を受ける際に積立金の額を引き上げた場合か、都道府県等からの助言・指導を受けて長期修繕計画を見直し、積立金を引き上げた場合のいずれかが求められます。ここでも、制度1の管理計画認定が効いてくるわけです。
減額の対象は家屋部分のみで、1戸あたり床面積100平方メートル相当分まで。減額を受けられるのは当該マンションにつき1度限りで、耐震改修やバリアフリー改修、省エネ改修など他の固定資産税減額制度とは重ねて適用できません。手続きで何より重要なのは、大規模修繕工事が完了した日から3カ月以内に、必要書類を資産税課(市役所2階・家屋担当 電話 048-775-5134)へ申告する必要があるという点です。工事が終わってからでは間に合わないこともあるため、施工会社・管理会社と「いつ、誰が、どの書類を出すか」を着工前に決めておくことを強くお勧めします。分譲マンションでは区分所有者ごとに申告が必要ですが、管理組合が取りまとめて提出することが認められています。
適用期限についても触れておきます。この税制は、令和9年(2027年)3月31日までに大規模修繕工事が完了したものが対象です。税制の適用期限や条件は改正で動きますので、検討の段階で必ず市の資産税課と最新の取り扱いをご確認ください。
制度4|令和8年度 上尾市再エネ・省エネ対策推進奨励金 ― 法人も対象、共用部の脱炭素を検討する好機
省エネ・脱炭素の補助金は「個人の戸建て向けで、マンションには関係ない」と思い込まれがちです。ところが上尾市の令和8年度再エネ・省エネ対策推進奨励金は、対象者に個人だけでなく「市内に事業所を有する法人、もしくは市内で事業を営む個人」も含まれています。共用部の設備を法人や事業用として整備するケースを念頭に、検討の余地を残しておきたい制度です。
奨励金の中身を見ると、太陽光発電システムは1キロワットあたり2万円・上限9万円、定置用蓄電池システム(太陽光設置が条件・容量4キロワットアワー以上)は5万円、エネファームは5万円、V2H充放電設備は5万円、電気自動車・燃料電池自動車は各5万円、普通充電設備は1万円、といったメニューが用意されています。いずれも上限額または購入・設置費用(税抜)の2分の1の、低いほうが交付されます。令和8年4月1日以降に購入・設置したものが対象で、令和9年3月31日までに申請手続きを完了する必要があります。同一年度内に、一機器につき1回、一世帯につき3つまで申請できます。受付は先着順で、予算額は約2,926万円。市税の滞納がないことも条件です。窓口は本庁舎5階のゼロカーボン推進室(電話 048-775-7308)です。
ただし、ここは正直にお伝えします。この奨励金は「自己の家庭用または事業用に購入・設置したもの」が要件であり、基本は各戸・各家庭の設備を想定した制度です。管理組合が共用部にまとめて太陽光や蓄電池を導入する場合に、どこまで対象になるかは個別の判断になります。一方で、マンション共用部のEV充電設備(普通充電設備やV2H)は、入居者サービスや資産価値の観点でニーズが高まっており、メニューにも含まれています。共用部の脱炭素設備を検討する際は、適用の可否と申請主体の扱いを、必ず事前にゼロカーボン推進室へ確認してください。受付が先着順で予算に達し次第終了する点も、早めに動く理由になります。
制度を活かす前提|長期修繕計画と修繕積立金の点検を忘れずに
ここまで4つの制度を見てきましたが、どれにも共通する「効きを左右する土台」があります。長期修繕計画と修繕積立金です。
たとえば長寿命化促進税制は、要件のひとつに「工事に必要な修繕積立金が確保されていること」を挙げています。つまり、積立金が不足していて借入頼みの工事では、せっかくの税制優遇に手が届かないことがある。管理計画認定制度の審査でも、長期修繕計画の作成・見直しの状況が見られます。制度を使えるかどうかは、日頃の積立と計画づくりで決まると言っても過言ではありません。
国の調査では、修繕積立金が長期修繕計画で必要とされる水準に達していないマンションが相当数あると指摘されています。築年数の進んだマンションが今後増えていく上尾市でも、これは他人事ではありません。私が現場で痛感するのは、積立金が足りないと「本来やるべき工事」を「予算でできる工事」に縮めざるを得なくなり、結果として建物の寿命を縮めてしまうということです。逆に、計画的に積み立てている組合は、補助や税制という追い風も受けやすく、工法の選択肢も広く持てます。
だからこそ、補助金を調べるのと同じ熱量で、一度「うちの長期修繕計画は実態に合っているか」「積立金は計画に追いついているか」を点検していただきたいのです。計画の見直しは管理会社や専門家に依頼することもできますし、それ自体が管理計画認定の準備にもなります。制度はあくまで、土台が整った組合に微笑む仕組みなのです。
つまずきやすい落とし穴|「マンションの共用部に使える一般リフォーム補助」は限られる
最後に、誤解の多い点を整理しておきます。上尾市には住宅の断熱改修などを後押しする制度がありますが、その多くは「実際に居住する住宅」や「木造戸建て住宅」を念頭に置いたものです。たとえば耐震改修補助は、昭和56年5月31日以前に着工された木造の戸建て・兼用住宅が対象で、分譲マンションの共用部の耐震改修工事に、そのまま使える制度としては明文化されていません(マンションは「診断」に補助があります)。断熱改修の支援も、国の住宅省エネキャンペーン登録製品を使い、自ら居住する住宅で工事をすることが前提です。
つまり、管理組合が行う共用部の大規模修繕(外壁・屋上・廊下など)そのものを直接安くする「一般リフォーム補助」は、上尾市では限られているのが実情です。共用部については制度2(耐震診断)・制度3(長寿命化税制)・制度4(脱炭素設備)を、専有部のリフォームについては各戸が使える制度を、と切り分けて理解してください。「市の補助金があるから大規模修繕も丸ごと安くなる」と早合点すると、資金計画が狂います。埼玉県や国の制度も含めてどこまで使えるかは、建築安全課・資産税課・ゼロカーボン推進室の各窓口で、着工前に確認するのが確実です。
上尾市の管理組合が「動く順番」 ― 実務カレンダー
制度がそろっても、順番を間違えると取りこぼします。私が理事長さまにお伝えしている流れは、こうです。
まず最初に、マンション管理計画認定の取得を検討します。これがすべての土台です。次に、旧耐震のマンションであれば耐震診断補助を申請し、建物の現状を把握します。並行して長期修繕計画と修繕積立金の状況を点検し、大規模修繕の実施時期を固めます。大規模修繕の計画が固まったら、長寿命化促進税制の要件(築20年以上・10戸以上・過去に1回以上の長寿命化工事・積立金の確保)を満たすかを確認し、必要書類と申告のタイミング(完了後3カ月以内)を施工会社と詰めます。屋上防水のやり直しに合わせて共用部の脱炭素設備を入れるなら、令和8年度内の申請期限と先着順の予算状況をにらみながら、ゼロカーボン推進室に適用可否を相談します。
ポイントは、「工事の見積もりを取る前に、使える制度を洗い出しておく」こと。順番が逆になると、書類の出し直しや、補助・税制の対象外になるといった取りこぼしが起きます。管理計画認定には総会決議が要りますし、税制には積立金の引き上げという前提が絡みます。いずれも一朝一夕には整いませんから、大規模修繕の1年から2年前から逆算して動くのが理想です。
大規模修繕そのもののコストを下げる ― 3つの工法から最適を選ぶという発想
補助金や税制は、あくまで工事費の一部を後から軽くするものです。土台となる工事そのものの費用と、住民への負担をどう抑えるか。ここが、実は最も効果の大きい論点です。
私たちは、大規模修繕を「通常の足場を組む工法」「足場を架けないロープアクセス(無足場)工法」「その二つを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法」という3つの選択肢から、建物の形状・高さ・立地・予算に応じて最適なものをご提案しています。たとえば高層で足場の架設が難しい建物や、足場の設置・撤去だけで大きな費用がかかる物件では、ロープアクセスを併用することで仮設費を抑え、工期も短縮できるケースがあります。足場が建物を覆っている期間が短くなれば、洗濯物が干せない、ベランダが使えない、防犯面が不安、といった居住者の生活ストレスも小さくできます。
もう少し具体的にお話しします。一般的な大規模修繕では、仮設足場の設置・撤去だけで工事費全体の2割前後を占めることも珍しくありません。足場は工事のための「道具」であって、建物の品質そのものを上げるものではない。ここに費用がかかりすぎているケースを、私は数多く見てきました。隣地との距離が近くて足場を架けにくい面、あるいは一部の補修だけのためにフルの足場を組むのがもったいない面では、ロープアクセスやハイブリッドが効いてきます。部分補修や、定期的な点検・タッチアップにも、無足場は相性が良い工法です。浮いた仮設費を、本来かけるべき防水や塗装のグレードに回せば、同じ予算でも建物の寿命を確実に伸ばせます。
私たちは、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟するフランチャイズのネットワークを持ち、それぞれの工事を適正な価格で組み合わせられる点も強みにしています。「高品質を、できるだけ低価格で」。上尾市で大規模修繕を控えた管理組合さまには、補助金・税制の活用と、工法・体制の最適化を、両輪で考えていただきたいのです。
埼玉県・国の制度も視野に ― 「市だけ」で完結させない
上尾市の制度を軸に整理してきましたが、耐震や省エネの分野では、埼玉県や国の制度と組み合わせられる場面があります。たとえば耐震分野では、埼玉県が県内市町村と連携して、住宅・建築物の耐震診断・耐震改修に関する補助制度の案内をまとめています。市の診断補助を入口にしつつ、改修段階では県や国の枠組みで使える支援がないかを、あわせて確認する価値があります。省エネ分野でも、国の「住宅省エネ2026キャンペーン」のように、複数の省庁が連携した大型の支援が継続される見込みです。
ここで現場からお伝えしたいのは、「市の窓口に行ったついでに、県・国の制度も一緒に聞く」という動き方です。担当課は、上の制度との併用や、対象の重複可否についても情報を持っていることが多いものです。制度は単独で見ると小さく感じても、市・県・国を縦に積み上げると、まとまった金額になることがあります。逆に、片方を申請したことで、もう片方が対象外になるケースもあります。だからこそ、申請を始める前に「重ねて使えるか、使えないか」を確認しておくことが、取りこぼしと二度手間を防ぐ近道になります。
よくあるご質問
Q. 補助金の申請は、管理会社に任せきりで大丈夫ですか。
A. 実務の多くは管理会社や専門家に委託できますが、管理計画認定や税制の前提には「総会決議」や「修繕積立金の確保」など、組合の意思決定が必要なものが含まれます。最終的な判断と決議は組合自身が行う必要がありますから、「丸投げ」ではなく「二人三脚」で進めるのが安全です。
Q. 築20年に少し足りないのですが、長寿命化促進税制は使えませんか。
A. 税制の対象は「築後20年以上・10戸以上」など複数の要件を満たすマンションです。築年数が足りない場合は今回の対象外ですが、その間に管理計画認定の取得や積立金の見直しを進めておけば、要件を満たしたタイミングで速やかに申請できます。今は準備の期間と捉えてください。
Q. 旧耐震ではありませんが、確認すべき制度はありますか。
A. 新耐震のマンションでも、管理計画認定制度と長寿命化促進税制、そして共用部の脱炭素設備に関する奨励金は検討の対象になります。耐震診断補助は旧耐震が中心ですが、それ以外の制度は築年数や耐震基準だけで線引きされるものではありません。
まとめ|上尾市の管理組合が2026年度に確認すべきこと
上尾市の管理組合が使える主な制度は、(1) マンション管理計画認定制度、(2) 分譲マンション耐震診断補助制度、(3) マンション長寿命化促進税制(固定資産税の3分の1減額)、(4) 令和8年度再エネ・省エネ対策推進奨励金の4つです。いずれも「管理がきちんとしている」「長期修繕計画と積立金が整っている」という土台の上で、最大の効果を発揮します。まずは管理計画認定と長期修繕計画の点検から着手し、大規模修繕の1年から2年前を目安に、各担当課へ相談を始めてください。
そのうえで、工事そのものの費用と住民負担を抑える工法選びまで含めて考えると、限られた修繕積立金を最大限に活かせます。「補助金が使えるか」だけでなく「そもそも工事費をどう下げるか」まで一緒に考えたい、という管理組合さまは、どうぞお気軽にご相談ください。建物の状態と予算をうかがったうえで、3つの工法から最適なご提案をい
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【2026年度・草加市】分譲マンションの大規模修繕で使える補助金・税優遇を管理組合向けにすべて解説
「修繕積立金が思ったより貯まっていない」「次の大規模修繕の見積りを見て、理事会が静まり返った」。私が草加市やその周辺で理事長さまとお話ししていると、いま一番多いのがこの手のご相談です。築20年、25年と年数を重ねたマンションほど、外壁・防水・鉄部、そして給排水まで、直すべきところが一度に押し寄せてきます。
正直に申し上げます。この負担を「補助金だけで一気に解決」できる魔法はありません。ですが、草加市には分譲マンションの管理組合が使える制度がきちんと用意されていて、知っているか知らないかで、判断の幅も総会での説明のしやすさも大きく変わります。
この記事では、2026年(令和8年)時点で草加市の分譲マンションが使える支援制度を、管理組合の目線で一つずつ整理します。耐震、管理体制、税の優遇、省エネ、そして最後に「工事のやり方そのものでコストを下げる」という、私たち施工会社だからお伝えできる視点まで踏み込みます。読み終えたときに、次の理事会で出す一言が決まっている。そんな記事を目指します。
なお、ここで挙げる金額や期限は、執筆時点で草加市や国の公式ページに掲載されている内容です。補助金は年度ごとに条件が変わり、予算枠に達すれば締め切られます。実際に動くときは、必ず各担当課の最新情報をご確認ください。
まず全体像——草加市のマンション支援は「3つの柱」で捉える
草加市が分譲マンションに向けて用意している支援は、性格の違う3つの柱で捉えると整理しやすくなります。
ひとつ目は「建物の安全性」に関わる支援です。具体的には耐震診断と耐震改修への補助で、旧耐震基準のマンションが対象になります。
ふたつ目は「管理体制そのもの」を評価する仕組みです。マンション管理計画認定制度がこれにあたります。直接お金がもらえるわけではありませんが、融資の金利優遇や税の減額につながる「土台」になります。
みっつ目は「税の優遇」です。長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションへの固定資産税の減額制度が中心で、これは補助金とは別の角度から組合の負担を軽くします。
この3つに、居住者個人が使える省エネ系の補助や、市内事業者を使ったリフォームへの補助が周辺制度として加わります。まずはこの地図を頭に入れてから、一つずつ見ていきましょう。
草加市内の分譲マンションは、民間のデータベースで300棟を超える規模が登録されています(出典:全国マンションデータベース 草加市。登録ベースの数値です)。1980年代から1990年代に建てられた建物も多く、まさにいま大規模修繕や設備更新の山場を迎えている物件が少なくありません。だからこそ、制度を使えるうちに使う発想が効いてきます。
柱1:耐震は「診断」と「改修」の二段構え——どちらもマンションが対象
旧耐震基準のマンションにお住まいなら、まず押さえていただきたいのが耐震関連の補助です。草加市は木造住宅だけでなく、分譲マンションも診断・改修の両方で補助の対象にしています。ここが、自治体によっては戸建中心になりがちな中で、草加市の手厚いところです。
耐震診断の補助——「自分の建物の体力」を測る第一歩
耐震診断とは、簡単に言えば「地震に対して建物がどれくらい踏ん張れるか」を専門家が数値で出す作業です。マンションの場合は構造耐震指標(Is値)という指標で評価します。Is値が0.6以上あれば、おおむね倒壊・崩壊の危険性が低いと判断される、というのが目安です。
草加市の既存住宅耐震診断補助では、対象となるのは昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認を受けて工事に着手した分譲マンションです。申請できるのは管理組合等、または区分所有者を代表する者として選出された方です。つまり、個人ではなく組合として動く前提の制度です。
補助額は次のとおりです(出典:草加市「既存住宅耐震診断の補助」、更新日2026年4月1日)。
| 区分 | 補助額 |
|---|---|
| マンション耐震診断 | 診断費用の2分の1以内、または住戸の戸数×5万円のいずれか少ない額で、上限100万円 |
| マンション簡易診断 | 診断費用の2分の1以内で、上限10万円 |
戸あたりで考えると、50戸のマンションなら「戸数×5万円=250万円」ですが、上限100万円が効くので、ここまで規模が大きいと診断費用の2分の1か100万円の小さいほうという計算になります。いきなり本格診断はハードルが高い、という場合は、まず上限10万円の簡易診断から入る手もあります。
ひとつ注意点があります。契約済み・診断完了済みのものは申請できません。そして診断が適正に行われたことを確認するため、公的機関等の判定を受ける必要があります。順番を間違えると補助が受けられないので、動く前に建築安全課へ一報を入れるのが安全です。
耐震改修の補助——Is値を基準まで引き上げる工事に最大200万円
診断の結果、Is値が0.6未満と出た場合、補強してⅠs値を0.6以上に引き上げる改修が補助の対象になります。
対象は、昭和56年5月31日以前に建築確認を受けて工事に着手した、延べ床面積1,000平方メートル以上・地上3階以上の耐火または準耐火建築物のマンションです。補助額は改修に要した費用の23%に相当する額で、上限200万円となっています(出典:草加市「既存住宅耐震改修の補助」、更新日2026年4月1日)。
ここで現場目線の話をひとつ。耐震改修は、外壁や防水といった通常の大規模修繕とは別物に見えますが、足場を架けて建物の外側を触るという点では重なる部分が大きい工事です。私はいつも理事長さまに、「耐震とそれ以外の修繕を、別々の年に別々の足場でやると、足場代を二度払うことになりますよ」とお伝えしています。診断でⅠs値の課題が見えているなら、大規模修繕と工程を合わせられないか、設計段階で一度検討する価値があります。
なお改修補助にも、診断と同じく「契約済み・工事完了済みは対象外」「交付決定後に着工」「その年度の3月1日までに実績報告」という時間のルールがあります。交付申請から交付決定まで2〜3週間かかるとされていますので、総会・理事会のスケジュールから逆算して、余裕を持って準備してください。
耐震診断・改修のいずれも、窓口は草加市 建築安全課(電話048-922-1949)です。
柱2:マンション管理計画認定制度——お金より先に「信用」をつくる仕組み
次は、直接の補助金ではないけれど、私が管理組合に「土台として効く」とお伝えしている制度です。それがマンション管理計画認定制度です。
これは、管理組合が作った管理計画が一定の基準を満たす場合に、「適切な管理計画を持つマンション」として市が認定する仕組みです。草加市は令和5年(2023年)9月25日に「草加市マンション管理適正化推進計画」を策定し、市内の分譲マンションを対象に運用しています(出典:草加市「マンション管理計画認定制度」、更新日2025年12月9日)。
認定を受けると何が変わるのか
認定そのものでお金が振り込まれるわけではありません。効いてくるのは、その先です。草加市が挙げているメリットは次のとおりです。
- 適正に管理されているマンションとして、売買時に市場で評価されることが期待される
- 住宅金融支援機構の【フラット35】および【マンション共用部分リフォーム融資】の金利優遇が適用される
- 住宅金融支援機構の【マンションすまい・る債】の利率上乗せが適用される
- 後述するマンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)が適用される場合がある
特に大きいのが、共用部分リフォーム融資の金利優遇と、固定資産税減額への連動です。大規模修繕で借入を起こす組合にとって金利の差は無視できませんし、税の減額は次の柱3に直結します。認定は「単体の制度」ではなく、他の優遇を呼び込む鍵だと考えてください。
申請の流れと、見落としやすい手数料
申請は、公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援システム」を使って行います。草加市の特徴は、マンション管理センターが発行する「事前確認適合証」を必須の添付書類にしている点です。先にセンターの事前確認を受ける流れになります。
おおまかには、(1)システムに情報を入力し事前確認を申請、(2)センターが事前確認、(3)適合通知、(4)システム上で市に認定申請、(5)市の審査を経て認定通知、という順番です。申請前に管理組合の総会で決議をとる必要がある点もお忘れなく。
費用面では、市への申請手数料は無料です。ただし、管理計画認定手続支援システムの利用料と事務確認審査料は別途かかります。「市は無料」という言葉だけが独り歩きすると総会で話がこじれるので、センター側の費用も含めて説明するのが親切です。
必要書類は、総会議事録の写し、管理規約の写し、貸借対照表、収支計算書、修繕積立金の滞納状況がわかる書類、長期修繕計画の写し、区分所有者・居住者名簿の整備状況がわかる書類、そして事前確認適合証など、全部で10種類ほど。認定は5年ごとに更新が必要です。
書類の顔ぶれを見て気づかれたと思いますが、これは「ふだんからきちんと管理している組合」ほどラクに通る制度です。逆に言えば、認定にチャレンジする過程で、長期修繕計画や積立金の見直しが自然と進みます。私はこの「副産物」こそ価値だと思っています。窓口は草加市 住宅政策課(電話048-922-1798)です。
柱3:長寿命化の大規模修繕で固定資産税が減額に——令和7年改正で使いやすく
3つ目の柱は税の優遇です。長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する固定資産税の減額制度は、大規模修繕を「やった後」に効いてくる、数少ない直接的なメリットです。
これは国の制度(マンション長寿命化促進税制)を草加市が運用しているもので、一定の要件を満たすマンションが、令和5年4月1日から令和9年(2027年)3月31日までに長寿命化に資する大規模修繕工事を完了した場合、工事完了の翌年度分の固定資産税が減額されます(出典:草加市「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する固定資産税の減額制度について」、更新日2025年4月22日/国の制度は国土交通省「マンション長寿命化促進税制」)。
減額の中身と要件
減額の対象は建物部分の固定資産税で、1住戸あたり100平方メートルまでを限度に、3分の1が減額されます。適用は1回限り、対象は翌年度分のみです。都市計画税は減額されない点にもご注意ください。
要件は次のように整理できます。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 築年数・規模 | 築後20年以上が経過した、10戸以上のマンション |
| 過去の修繕実績 | 屋根防水・床防水・外壁塗装の大規模修繕を過去に1回以上適切に実施 |
| 積立金の確保 | 長寿命化の工事に必要な修繕積立金が確保されていること(下記いずれか) |
| 工事の時期 | 令和5年4月1日〜令和9年3月31日に工事完了 |
| 申告期限 | 改修後3か月以内に申告(やむを得ない理由があれば例外あり) |
「積立金の確保」の部分は、(a)市の認定を受けた管理計画認定マンションで、令和3年9月1日以降に積立金を認定基準以上に引き上げた場合か、(b)市の助言・指導を受けて長期修繕計画を適切に見直し、積立金を引き上げた場合、のいずれかが必要です。ここで柱2の管理計画認定がつながってくるわけです。
令和7年の改正で、申告のハードルが下がった
実務で大きいのが、令和7年(2025年)の改正です。従来は区分所有者ひとりひとりが申告書を出す必要がありましたが、改正により、マンション管理組合の管理者等から必要書類の提出があり要件に該当すると認められれば、各区分所有者からの申告がなくても減額が適用できるようになりました。
これは現場感覚で言うと、相当ありがたい変更です。何十戸、何百戸の区分所有者に一人ずつ申告書を書いてもらう手間を考えれば、管理者がまとめて動ける意味は大きい。総会で「税の減額も狙えますし、申告は管理者側で一括対応できる方向です」と説明できると、修繕予算の議論の温度感が変わります。
問い合わせは、制度(管理適正化)に関することは住宅政策課(048-922-1798)、固定資産税の減額そのものは資産税課 家屋係(048-922-1092)と窓口が分かれています。
周辺制度1:居住者個人で使える省エネ補助——ただし共用部は要注意
ここからは、管理組合「そのもの」ではなく、主に居住者個人が使う制度です。総会で質問が出やすいので、押さえておきましょう。
草加市には地球温暖化防止活動補助金があり、令和8年度(2026年度)は太陽光発電システム、燃料電池給湯器(エネファーム)、定置型家庭用蓄電池、V2H(電気自動車等充給電設備)の設置が対象です。太陽光発電システムの交付額は5万円に設定されています。受付期間は令和8年4月1日〜令和8年12月28日で、予算(1,000万円)に達した時点で終了、購入・設置工事の前に申請が必要です(出典:草加市「令和8年度草加市地球温暖化防止活動補助金」、更新日2026年6月5日)。
ただし、ここは正直に申し上げます。この補助金は「自ら居住の用に供する住宅に設置し、一般家庭で使用するもの」が対象で、店舗や事業で使うものは対象外とされています。つまり、マンションの共用部に組合として設備を入れるケースは、基本的にこの制度の想定とは異なります。各住戸の居住者が自分の専有部に蓄電池を入れる、といった使い方が中心です。
「うちのマンションで共用部に太陽光や蓄電池を入れたいが、この補助は使えるのか」というご質問は実際よく出ます。結論は「そのままでは対象になりにくい」。共用部での導入を考えるなら、対象範囲を環境課(電話048-922-1519)に直接確認したうえで、国や埼玉県の事業者向け・共同住宅向けメニューも併せて探すのが現実的です。なお令和7年度から令和8年度にかけて、太陽光の交付額が5万円に整理され、HEMSが対象から外れるなどの変更もありました。年度をまたぐと条件が動く典型例として、頭の片隅に置いてください。
周辺制度2:市内事業者を使うリフォームへの補助など
もうひとつ、住戸単位や小規模な工事で知られているのが、市内のリフォームに対する補助です。草加市内で行う建物・付属設備のリフォーム(改修・修繕・補修)について、割引を行った認定施工業者経由で、請負額の20%相当(1工事あたり5,000円以上・上限10万円)が補助される、という制度が案内されています(出典:草加市内リフォーム補助事業の案内)。
ただしこの制度は運用主体や年度ごとの受付状況の確認が欠かせません。金額の規模からして、マンションの大規模修繕そのものを支えるというより、専有部の小工事向けと捉えるのが実態に近いでしょう。組合として大規模修繕の財源を考えるなら、本記事の柱1〜3が主役で、この種の制度は補完と位置づけるのが整理しやすいはずです。
使う順番に並べ替える——草加市のマンションが動くなら
制度を並べただけでは、理事会は動けません。私の経験上、大事なのは「どれを、どの順で」です。築20〜25年あたりで、そろそろ2回目の大規模修繕、という草加市のマンションを想定して、現実的な順番を描いてみます。
- 長期修繕計画と修繕積立金の現状を点検する。柱2・柱3のどちらも、計画と積立金が整っていることが前提になります。ここが弱いと、制度の入口に立てません。
- 旧耐震(昭和56年5月以前着工)なら、耐震診断補助で現状を数値化する。Is値が見えれば、耐震改修補助(上限200万円)を大規模修繕と同じ足場でやる選択肢が検討できます。
- マンション管理計画認定にチャレンジする。フラット35・共用部リフォーム融資の金利優遇、すまい・る債の利率上乗せ、そして固定資産税減額の前提が一度に整います。
- 大規模修繕を実施し、長寿命化の固定資産税減額を申告する。令和7年改正で管理者の一括申告が可能になりました。工事完了から3か月以内、令和9年3月31日完了が期限です。
- 省エネ設備は居住者個人の制度として案内し、共用部導入は別ルートで検討する。
この順番のいいところは、ひとつの大規模修繕に、補助・融資優遇・税減額を重ねられる点です。バラバラに動くと、足場も二度手間、制度の前提も後追いになりがちです。「制度ありき」ではなく「修繕計画ありき」で、そこに制度を載せていく。これが私のおすすめする組み立て方です。
工事のやり方そのものでコストは変わる——ここが施工会社の本音
補助金や税の話をさんざんしてきましたが、最後に、私たち施工会社だからお伝えできる視点をひとつ。補助金で取り戻せる金額より、工事のやり方で変わる金額のほうが、しばしば大きいということです。
大規模修繕のコストで意外と大きいのが、実は足場代です。建物の全面に足場を架ければ、それだけで数百万円規模になることも珍しくありません。そこで私たちが提案しているのが、ロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が壁面を降りながら施工する、足場を架けない無足場工法)や、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法です。
たとえば、外壁の大部分はロープアクセスで対応し、バルコニーまわりや工程の集中する面だけ足場を架ける。こうした使い分けで、足場の総量を抑えられれば、その分が浮きます。さらにロープアクセスは、足場の組立・解体期間がないぶん工期が短く、居住者の生活への影響——目隠しシートで暗くなる、窓を開けにくい、防犯面が不安、といったストレス——も小さくできます。
私はこれを、必ず建物ごとに見極めてご提案するようにしています。高層で足場架設が難しい物件、コストを最優先したい物件はロープアクセスが効きますし、複雑な形状や大規模で総合的な最適化が要る物件はハイブリッドが向きます。逆に、低中層で形状が入り組んでいれば、素直に足場のほうが安く確実なこともあります。
大事なのは、「3つの工法を、建物にとってベストな形で比較できる」こと。足場一択、ロープ一択ではなく、両方を持っているからこそ中立に比べられます。詳しくはロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介もご覧ください。補助金で十数万円〜数百万円を取り戻す努力と並べて、工法でどれだけ変わるかも、ぜひ一度天秤にかけてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 補助金と税の減額は、両方使えますか。
A. 性格が違う制度なので、要件を満たせば重ねて狙えます。たとえば耐震改修補助(柱1)を受けつつ、管理計画認定(柱2)を経て長寿命化の固定資産税減額(柱3)を申告する、という組み合わせが考えられます。ただし、省エネ系の補助は国・県の補助との併用に制限がある場合があります。併用前に各窓口へご確認ください。
Q. 旧耐震ではないマンションは、耐震補助は使えませんか。
A. 耐震診断・改修の補助は昭和56年5月31日以前に着手した建物が対象です。新耐震のマンションは対象外ですが、管理計画認定や長寿命化の固定資産税減額は築20年以上などの別要件なので、そちらは検討できます。
Q. 申請は管理組合がやるのですか、個人ですか。
A. 耐震、管理計画認定、長寿命化の税減額は、いずれも管理組合(管理者等)が主体で動く制度です。一方、省エネの地球温暖化防止活動補助金は、居住者個人が自分の住戸について申請する制度です。主語が変わる点に注意してください。
Q. いつ動き始めればいいですか。
A. どの制度も「契約前・着工前の申請」「年度内の実績報告」がルールです。総会・理事会のサイクルを考えると、工事の1年前から準備を始めるくらいでちょうどよいことが多いです。早すぎて困ることはまずありません。
最後に
草加市は、分譲マンションに対して耐震・管理体制・税の三方向から支援を用意している、比較的手厚い自治体だと感じています。制度は確かに複雑ですが、「修繕計画を整える→耐震を数値化する→管理計画認定で土台をつくる→大規模修繕で税減額を取りに行く」という一本の道に並べてしまえば、理事会でも説明しやすくなります。
私たちは、その道筋の整理から、工法の比較によるコストの最適化まで、総会の前段階のお手伝いができます。制度の対象になるかどうかの当たりをつけるだけでも、次の一手が見えてくるものです。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームからお気軽にどうぞ。
次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 草加市「既存住宅耐震診断の補助」(更新日2026年4月1日)
- 草加市「既存住宅耐震改修の補助」(更新日2026年4月1日)
- 草加市「マンション管理計画認定制度」(更新日2025年12月9日)
- 草加市「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する固定資産税の減額制度について」(更新日2025年4月22日)
- 草加市「令和8年度草加市地球温暖化防止活動補助金」(更新日2026年6月5日)
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制」
- 草加地域経済活性化事業「草加市内リフォーム補助事業」
- 全国マンションデータベース「草加市 登録分譲マンション一覧」(登録ベースの参考値)
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
越谷市のマンション補助金2026年度版|管理組合が使える耐震・管理計画認定・長寿命化税制を本間が徹底解説
越谷市のマンション補助金2026年度版|管理組合が大規模修繕前に確認したい耐震・管理計画認定・長寿命化税制を本間が徹底解説
「うちのマンションも越谷市から何か支援を受けられないだろうか」。理事会で大規模修繕の話が出るたびに、そんな声を耳にします。このページにたどり着いた理事長さま、理事さまも、同じ疑問をお持ちなのではないでしょうか。
私はマンション・ビルの大規模修繕の現場に20年近く立ち会ってきました。その経験から正直に申し上げると、越谷市の管理組合が使える制度は「これ一発で工事費が半額になる」といった派手なものではありません。けれど、耐震・管理・税制・省エネという切り口で丁寧に見ていくと、年度ごとに予算が組まれ、申請のタイミングさえ外さなければ着実に活用できる支援が用意されています。やっかいなのは、担当する課がバラバラで、情報が一カ所にまとまっていないことです。
この記事では、越谷市の分譲マンション管理組合が2026年度(令和8年度)に確認しておきたい制度を、市と国の一次情報をもとに整理しました。読み終えたときに「次の理事会でこれを議題に出そう」と思っていただけるよう、申請の順番や、つまずきやすい落とし穴まで踏み込んでお伝えします。
この記事は制度の概要をわかりやすくお伝えするものです。補助率・上限額・受付期間・税制の適用期限は、年度や予算状況、税制改正で変わります。実際の申請前には、必ず各担当課の最新の要綱でご確認ください。
まず押さえたい「越谷市はマンションの街であり、管理に前向きな自治体」という事実
制度の中身に入る前に、越谷市という街の前提を共有させてください。
越谷市の発表によれば、市内には令和4年1月1日時点で279団地・330棟・23,308戸の分譲マンションが供給されており、市民のおよそ14.6%が分譲マンションに住んでいます。越谷市は埼玉県内でも有数の「マンションの街」なのです。そして全国的に、築40年を超える分譲マンションは令和元年時点の約91.8万戸から、20年後には約4.2倍に膨らむと国は試算しています。越谷市も例外ではなく、老朽化と管理組合の担い手不足という二つの波が、これから同時に押し寄せてきます。
だからこそ越谷市は、マンションの「管理」そのものに早くから手を打ってきました。市は分譲マンションの実態調査を行い、独自の「越谷市分譲マンション登録制度」を設け、さらに令和6年(2024年)4月1日からは「越谷市マンション管理計画認定制度」をスタートさせています。
なぜこの話を最初にするかというと、越谷市の管理組合向け支援は、この「適正な管理を後押しする」という市の姿勢とワンセットになっているからです。耐震にしても税制優遇にしても、土台にあるのは「きちんと管理されているマンションかどうか」。私はいつも理事長さまに「補助金は出口の話ではなく、管理を整える入口の話ですよ」とお伝えしています。理事会のメンバーは数年で交代していくのが普通ですから、市への登録や認定を一度通しておくことは、次の世代への引き継ぎ資料にもなる。修繕とは別軸の、組合運営そのものへの投資だと考えています。
制度1|越谷市マンション管理計画認定制度 ― すべての土台になる「管理の見える化」
最初にご紹介したいのが、越谷市マンション管理計画認定制度です。これは国の制度を受けて、令和6年4月1日から越谷市で始まったもので、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、市が「適切に管理されたマンション」として認定します。
ここで越谷市ならではのポイントが一つあります。認定を申請する前提として、そのマンションが市独自の「越谷市分譲マンション登録制度」へ登録されていることが求められる点です。まだ登録していない組合でも、その場で登録は可能とされています。つまり越谷では、「登録 → 認定」という二段構えになっていると理解しておくと、手続きの流れが見えてきます。
認定の基準には、管理組合の運営、管理規約、管理組合の経理、そして長期修繕計画の作成および見直しなどが含まれます。申請は原則として「管理計画認定手続支援サービス」というオンラインシステムから行い、市への申請手数料は無料、認定の有効期間は5年間とされています。窓口は越谷市役所の建築住宅課(電話 048-963-9205)です。
「認定を取ると、何が得なのか」。これがいちばん多い質問です。直接お金が振り込まれる制度ではありませんが、認定マンションは不動産市場で「適正に管理された物件」として評価されやすくなり、住宅ローンの金利優遇など金融面のメリットが用意されている場合があります。そして、次にご説明する固定資産税の減額制度を使う際にも、この「管理がきちんとしている」という土台が効いてきます。私の現場感覚で言えば、認定取得の作業を通じて長期修繕計画を見直すこと自体が、結果として修繕積立金の過不足に気づく良い機会になります。
制度2|分譲マンション耐震診断の助成 ― 旧耐震の組合がまず動くべき制度
昭和56年(1981年)5月以前の旧耐震基準で建てられたマンションをお持ちの組合に、まず確認していただきたいのが耐震診断の助成です。
越谷市は「越谷市既存建築物耐震診断補助金交付要綱」に基づき、市内の分譲マンションの管理組合に対して耐震診断費用の一部を助成しています。対象となるのは、市内にある分譲マンションで、昭和56年5月31日以前の耐震基準で建てられ、地階を除く階数が3以上、かつ延べ面積が1,000平方メートル以上のものです。
助成の中身を具体的に見ると、マンションの耐震予備診断については、1棟あたり予備診断に要した費用(税抜)の3分の2に相当する額、かつ10万円を上限とする、とされています。令和8年度(2026年度)の耐震診断・耐震改修に関する申請の受付は、令和8年4月6日(月曜日)から始まっています。窓口での申請のほか、電子による24時間申請も可能です。
ここで一つ、現場目線の注意を添えます。耐震は「診断して終わり」ではありません。診断で課題が見えたら、その先に耐震改修という大きな工事が控えています。改修費の補助については建物の区分や年度予算によって扱いが変わるため、診断の段階から「改修まで進んだ場合にどの支援が使えるのか」を建築住宅課に確認しておくと、総会での合意形成がスムーズになります。診断結果が出てから慌てて資金計画を組むより、入口で全体像を描いておくほうが、理事会の負担はずっと軽くなります。
制度3|マンション長寿命化促進税制 ― 大規模修繕で固定資産税が翌年度1/2に
ここが、大規模修繕を控えた管理組合にとって、いちばん見逃せない制度です。国の「マンション長寿命化促進税制」は、一定の要件を満たすマンションが長寿命化に資する大規模修繕工事を行った場合に、翌年度分の家屋にかかる固定資産税を2分の1(おおむね6分の1から2分の1の範囲で市町村の条例による)減額するものです。
対象となるマンションの主な要件は、築20年以上、総戸数10戸以上、過去に1回以上の長寿命化に資する工事を行っていること、そして工事に必要な修繕積立金が確保されていることです。対象となる工事には、外壁塗装等の外壁の修繕、床防水、屋根防水といった、まさに大規模修繕の中核となる工事が含まれます。減額の対象は家屋部分のみで、1戸あたり床面積100平方メートル相当分まで、都市計画税は対象外という点も押さえておきましょう。
手続きで重要なのは、工事完了後3カ月以内に必要書類を市区町村へ提出(申告)する必要があるという点です。工事が終わってからでは間に合わないこともあるため、施工会社・管理会社と「いつ、誰が、どの書類を出すか」を着工前に決めておくことを強くお勧めします。
適用期限についても触れておきます。この税制は令和7年度(2025年度)の税制改正で延長され、長寿命化に資する大規模修繕工事が令和9年(2027年)3月31日までに完了したものが対象とされています。さらに、管理組合から市町村長へ必要書類の提出があれば、申告書の提出がなかった場合でも減額措置を適用できるよう手続きが緩和される方向で見直しが進んでいます。ただし税制の適用期限や条件は改正で動きますので、検討の段階で必ず市の資産税担当課と最新の取り扱いをご確認ください。そして、ここでも効いてくるのが制度1の管理計画認定です。認定マンションであることが、この税制を使ううえでの大きな後押しになります。
制度4|越谷市家庭用ゼロカーボン推進補助金 ― 管理組合が「対象者」に入っている貴重な制度
省エネ・脱炭素の補助金は「個人の戸建て向けで、マンションの共用部には使えない」と思い込まれがちです。ところが越谷市の家庭用ゼロカーボン推進補助金は、補助対象者に「マンション管理適正化法に規定する管理組合」が明記されています。これは管理組合にとって、共用部の脱炭素設備を検討する好機です。
制度の内容を見ると、太陽光発電設備は最大出力1キロワットあたり2万円、蓄電池とセットで導入した場合は最大15万円の補助が受けられるとされています(戸建ての上限額など、設備区分ごとに条件があります)。令和8年度の受付は前期が令和8年5月21日から6月5日まで、後期が令和8年10月5日から10月16日までと、募集期間が短く区切られているのが特徴です。窓口は越谷市役所の環境政策課(電話 048-963-9183)です。
大規模修繕のタイミングで屋上防水をやり直すなら、その機会に共用部の太陽光・蓄電池を検討すると、足場や下地工事を兼ねられてコスト効率が高まります。受付期間が短いので、「修繕計画に脱炭素設備を組み込むかどうか」を一年前から逆算しておくと、募集に間に合わせやすくなります。共用部の電気代は管理費から出ていますから、太陽光や蓄電池の導入は、長い目で見れば管理組合の固定費を下げ、修繕積立金に回せる原資を生むという側面もあります。脱炭素は「環境のため」というだけでなく、組合の家計を整える話でもある。私はそう捉えています。
制度を活かす前提|長期修繕計画と修繕積立金の点検を忘れずに
ここまで4つの制度を見てきましたが、どれにも共通する「効きを左右する土台」があります。長期修繕計画と修繕積立金です。
たとえば長寿命化促進税制は、要件のひとつに「工事に必要な修繕積立金が確保されていること」を挙げています。つまり、積立金が不足していて借入頼みの工事では、せっかくの税制優遇に手が届かないことがある。管理計画認定制度の審査でも、長期修繕計画の作成・見直しの状況が見られます。制度を使えるかどうかは、日頃の積立と計画づくりで決まると言っても過言ではありません。
国の調査では、修繕積立金が長期修繕計画で必要とされる水準に達していないマンションが相当数あると指摘されています。越谷市のように高経年マンションが今後増えていく街では、これは他人事ではありません。私が現場で痛感するのは、積立金が足りないと「本来やるべき工事」を「予算でできる工事」に縮めざるを得なくなり、結果として建物の寿命を縮めてしまうということです。逆に、計画的に積み立てている組合は、補助や税制という追い風も受けやすく、工法の選択肢も広く持てる。
だからこそ、補助金を調べるのと同じ熱量で、一度「うちの長期修繕計画は実態に合っているか」「積立金は計画に追いついているか」を点検していただきたいのです。計画の見直しは管理会社や専門家に依頼することもできますし、それ自体が管理計画認定の準備にもなります。制度はあくまで、土台が整った組合に微笑む仕組みなのです。
つまずきやすい落とし穴|住宅・店舗改修補助金は「専有部限定」
最後に、誤解の多い制度を一つ挙げておきます。越谷市には「越谷市住宅・店舗改修促進補助金」があり、令和8年度第1期は、補助対象工事費の20%・上限10万円(市内施工業者を利用し、税抜20万円以上の工事が条件、予算超過時は抽選)という、使い勝手の良い制度です。
ただし注意したいのは、共同住宅の場合、補助の対象は「専有部分に限る」とされている点です。つまり、管理組合が行う共用部の大規模修繕(外壁・屋上・廊下など)には、この補助金は使えません。あくまで個々の区分所有者が自室をリフォームする際の制度です。「越谷市の改修補助金があるから大規模修繕も安くなる」と早合点すると、資金計画が狂います。共用部は制度2・3・4で、専有部はこの制度で、と切り分けて理解してください。窓口は経済振興課(電話 048-967-4680)です。
越谷市の管理組合が「動く順番」 ― 実務カレンダー
制度がそろっても、順番を間違えると取りこぼします。私が理事長さまにお伝えしている流れは、こうです。
まず最初に、市の分譲マンション登録制度への登録と、管理計画認定の取得を検討します。これがすべての土台です。次に、旧耐震のマンションであれば耐震診断の助成を申請し、建物の現状を把握します。並行して長期修繕計画と修繕積立金の状況を点検し、大規模修繕の実施時期を固めます。大規模修繕の計画が固まったら、長寿命化促進税制の要件(築年数・戸数・過去の工事・積立金)を満たすかを確認し、必要書類と申告のタイミングを施工会社と詰めます。屋上防水のやり直しに合わせて共用部の脱炭素設備を入れるなら、ゼロカーボン推進補助金の短い募集期間に合わせて準備します。
ポイントは、「工事の見積もりを取る前に、使える制度を洗い出しておく」こと。順番が逆になると、書類の出し直しや、補助の対象外になるといった取りこぼしが起きます。
大規模修繕そのもののコストを下げる ― 3つの工法から最適を選ぶという発想
補助金や税制は、あくまで工事費の一部を後から軽くするものです。土台となる工事そのものの費用と住民への負担をどう抑えるか。ここが、実は最も効果の大きい論点です。
私たちは、大規模修繕を「通常の足場を組む工法」「足場を架けないロープアクセス(無足場)工法」「その二つを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法」という3つの選択肢から、建物の形状・高さ・立地・予算に応じて最適なものをご提案しています。たとえば高層で足場の架設が難しい建物や、足場の設置・撤去だけで大きな費用がかかる物件では、ロープアクセスを併用することで仮設費を抑え、工期も短縮できるケースがあります。足場が建物を覆っている期間が短くなれば、洗濯物が干せない、ベランダが使えない、防犯面が不安、といった居住者の生活ストレスも小さくできます。
もう少し具体的にお話しします。一般的な大規模修繕では、仮設足場の設置・撤去だけで工事費全体の2割前後を占めることも珍しくありません。足場は工事のための「道具」であって、建物の品質そのものを上げるものではない。ここに費用がかかりすぎているケースを、私は数多く見てきました。バルコニー側や、隣地との距離が近くて足場を架けにくい面、あるいは一部の補修だけで足場をフルに組むのがもったいない面では、ロープアクセスやハイブリッドが効いてきます。部分補修や定期的な点検・タッチアップにも、無足場は相性が良い工法です。
加えて、越谷市のように駅周辺に中高層マンションが集まる街では、足場を長期間架けることによる近隣への配慮や、通行・防犯への影響も無視できません。足場のある期間を短くできれば、居住者の生活ストレスだけでなく、そうした周辺への影響も小さくできます。
もちろん、すべての建物にロープアクセスが最適というわけではありません。広い壁面を一気に塗るなら足場のほうが効率的な場面もありますし、塗膜の厚みや作業の安全性から足場が望ましいケースもあります。大切なのは「足場ありき」「無足場ありき」で決めるのではなく、建物ごとに最もコストと品質のバランスが取れる工法を選べること。複数の工法を持っているからこそ、特定のやり方に当てはめるのではなく、その建物にとってのベストをご提案できると考えています。補助金で外側から軽くしつつ、工法の最適化で内側からも費用を抑える。この両輪が、修繕積立金を守りながら資産価値を維持する近道です。なお、実際の工法選定は建物診断の結果を踏まえて行うものですので、まずは現状把握から始めるのが順序です。
管理組合にとっての最大の関門 ― 総会での「合意形成」をどう進めるか
制度を調べ、工法を比較し、見積もりをそろえても、最後に必ず立ちはだかるのが区分所有者の合意形成です。理事会で方針を固めても、大規模修繕の実施には総会での決議が必要であり、工事の内容によっては特別決議(区分所有者および議決権の各4分の3以上)が求められる場面もあります。ここでつまずいて、計画が一年、二年と先送りになる管理組合を、私は数多く見てきました。
合意形成がうまくいかない理由の多くは、「情報が一部の理事にしか共有されていない」ことにあります。なぜ今やる必要があるのか、やらないと何が起きるのか、費用はいくらで、補助や税制でどこまで軽くなるのか。これらが資料として見える化されていないと、総会では「もっと安くならないのか」「まだ早いのでは」といった声に押し戻されてしまいます。
私がお勧めしているのは、二つの準備です。一つは、建物診断にもとづいて「劣化の事実」を写真と数値で示すこと。感覚論ではなく、現状を客観的に共有することが、住民の納得の出発点になります。もう一つは、工法の選択肢を複数提示することです。「足場で行うとこの費用、無足場やハイブリッドを組み合わせるとこの費用」と並べて見せると、住民は『きちんと比較検討してくれている』と受け止めます。一つの方法を押し付けられるより、選択肢を示されるほうが、人は前向きに合意しやすいものです。補助金や税制の話は、この合意形成の場で「だから今動く価値がある」という後押しの材料として効いてきます。なお、こうした資料づくりや工法ごとの概算比較は、施工会社に早い段階で相談すると精度が上がります。総会の半年前、できれば一年前から準備に入れば、住民への説明にも余裕が生まれ、結果として条件の良い時期に工事を発注できる。急いで決めるほど選択肢は狭まり、余裕を持つほど制度も工法も味方につけられる。これは20年の現場で何度も実感してきたことです。
よくあるご質問(越谷市の管理組合向け)
Q1. 補助金を使えば大規模修繕の工事費そのものが安くなりますか。
共用部の大規模修繕費を直接補助する制度は、越谷市には基本的にありません。効くのは長寿命化促進税制による固定資産税の減額(翌年度分)や、耐震診断の助成、共用部に脱炭素設備を入れる場合のゼロカーボン推進補助金です。工事費そのものは、工法の選び方や複数社の比較で下げるのが現実的です。
Q2. 管理計画の認定を取らないと、ほかの制度は使えませんか。
耐震診断助成やゼロカーボン補助金は、認定がなくても要件を満たせば申請できます。ただし長寿命化促進税制や金融面の優遇では、認定マンションであることが有利に働きます。長い目で見れば、認定取得は損のない投資です。
Q3. 旧耐震かどうか分かりません。どう調べればよいですか。
おおむね昭和56年(1981年)6月以降に建築確認を受けた建物が新耐震です。竣工年だけで判断せず、建築確認の時期で見るのが正確です。検査済証や竣工図書で確認できますし、越谷市役所の建築住宅課に相談すれば調べ方を案内してもらえます。
Q4. 長寿命化促進税制は、いくらくらい安くなるのですか。
減額されるのは家屋部分の固定資産税の翌年度分で、市町村の条例により2分の1(おおむね6分の1〜2分の1の範囲)が減額されます。1戸あたり床面積100平方メートル相当分までが対象で、都市計画税は対象外です。実際の減額幅は各戸の評価額によって変わるため、金額の目安は越谷市の資産税担当課にご確認ください。戸数の多いマンションでは、組合全体で見れば無視できない規模になります。
Q5. 大規模修繕は何年ごとに行うべきですか。
一般的には12年前後が一つの目安とされますが、建物の立地や仕様、前回工事の品質によって最適な周期は変わります。海に近い、交通量が多いといった条件では劣化が早まることもあります。周期ありきで決めるのではなく、建物診断で劣化の実態をつかんでから計画するのが、結果的にムダの少ないやり方です。
Q6. 受付期間や金額は記事の通りですか。
本記事は執筆時点の公表情報に基づいています。補助率・上限・受付期間・税制の適用期限は年度や予算、税制改正で変わります。申請前には必ず各担当課(建築住宅課・環境政策課・経済振興課・資産税担当課)の最新要綱でご確認ください。
まとめ|越谷市のマンション補助金は「管理を整える入口」から
越谷市の管理組合が2026年度に確認すべき制度を、もう一度整理します。土台となるのが分譲マンション登録制度と管理計画認定制度。旧耐震なら耐震診断の助成。大規模修繕に合わせて狙うのが長寿命化促進税制による固定資産税の減額。共用部に脱炭素設備を入れるならゼロカーボン推進補助金。そして専有部のリフォームには住宅・店舗改修促進補助金(共用部には使えない点に注意)。それぞれ担当課が異なるので、工事の見積もりを取る前に全体像を描いておくことが、取りこぼしを防ぐ最大のコツです。
制度で外側から負担を軽くし、工法の最適化で工事費そのものを抑える。この両輪で、修繕積立金を守りながら建物の資産価値を維持していきましょう。越谷市での大規模修繕や、足場・ロープアクセス・ハイブリッドのどの工法が自分たちの建物に合うのかといったご相談は、いつでもお受けしています。次の理事会の議題づくりに、この記事がお役に立てば幸いです。
参考にした主な一次情報(越谷市・国土交通省ほか)
- 越谷市「令和6年4月1日から『越谷市マンション管理計画認定制度』がスタートしました」 https://www.city.koshigaya.saitama.jp/kurashi_shisei/kurashi/sumai/sumaishieijutaku/apartment/ninteiseido.html
- 越谷市「越谷市分譲マンション登録制度について」 https://www.city.koshigaya.saitama.jp/kurashi_shisei/kurashi/sumai/sumaishieijutaku/apartment/touroku.html
- 越谷市「分譲マンション耐震診断費用の一部を助成します」 https://www.city.koshigaya.saitama.jp/kurashi_shisei/kurashi/sumai/taisinsindasn/taishintorikumi_jose/mansyontaisinsindan.html
- 越谷市「越谷市既存建築物耐震診断補助金交付要綱」 https://www1.g-reiki.net/koshigaya/reiki_honbun/e323RG00001095.html
- 越谷市「令和8年度 越谷市住宅・店舗改修促進補助金(第1期)について」 https://www.city.koshigaya.saitama.jp/kurashi_shisei/kurashi/sumai/sien/kaisyusokusin2026-1.html
- 越谷市「令和8年度越谷市家庭用ゼロカーボン推進補助金」 https://www.city.koshigaya.saitama.jp/kurashi_shisei/kurashi/kankyo/kankyoseisaku/zerocarbon.html
- 越谷市「分譲マンション実態調査の結果について」 https://www.city.koshigaya.saitama.jp/kurashi_shisei/kurashi/sumai/sumaishieijutaku/apartment/jittaichousa.html
- 国土交通省「住宅:マンション税制(マンション長寿命化促進税制)」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000121.html
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所沢市のマンション補助金・助成金2026|管理組合が大規模修繕前に確認したい制度の全体像
「うちのマンション、そろそろ大規模修繕の時期だが、所沢市から何か支援は受けられないのか」。理事会でそんな声が上がって、このページにたどり着いた理事長さまも多いのではないでしょうか。
私は20年近く、マンションやビルの大規模修繕の現場に立ち会ってきました。その経験から正直に申し上げます。所沢市の管理組合が使える制度は、決して「派手」ではありません。けれど、耐震・管理・省エネという三つの切り口で見ていくと、年度ごとに予算が組まれ、申請のタイミングさえ外さなければ着実に使える支援が用意されています。問題は、それぞれ担当課がバラバラで、情報が一カ所にまとまっていないことです。
この記事では、所沢市の分譲マンション管理組合が2026年度(令和8年度)に確認しておきたい制度を、公的な一次情報をもとに整理しました。読み終えたときに「次の理事会でこれを議題に出そう」と思っていただけるよう、申請の順番や注意点まで踏み込んでお伝えします。
この記事は制度の概要をわかりやすくお伝えするものです。補助率・上限額・受付期間は年度や予算状況で変わります。実際の申請前には、必ず各担当課の最新の要綱でご確認ください。
まず押さえたい「所沢市はマンション管理に前向きな自治体」という事実
制度の中身に入る前に、ひとつ知っておいていただきたいことがあります。所沢市は、マンションの「管理」そのものに早くから力を入れてきた自治体だということです。
所沢市は「所沢市マンション管理適正化推進条例」と「所沢市マンション管理適正化推進計画」を整備し、分譲マンションの管理状況を市に届け出る制度(届出制度)を設けています。さらに、後述する国の「マンション管理計画認定制度」では、埼玉県内で初めて認定を行った市でもあります(2023年4月、市の発表より)。
なぜこの話を最初にするかというと、所沢市の管理組合向け支援は、この「適正な管理を後押しする」という市の姿勢とワンセットになっているからです。耐震にしても、長期修繕計画にしても、「きちんと管理されているマンション」であることが、結果的に制度の活用や資産価値の維持につながる。私はいつも理事長さまに「補助金は出口の話ではなく、管理を整える入口の話ですよ」とお伝えしています。
少し補足すると、所沢市の届出制度では、分譲マンションの管理組合が管理の状況を市に届け出ることになっています。届出というと面倒に聞こえるかもしれませんが、実際には「自分たちのマンションの管理状態を、第三者の目で一度棚卸しする」きっかけになります。理事会のメンバーは数年で交代していくのが普通ですから、こうした外部への届出や認定を一度通しておくと、引き継ぎの土台にもなる。私はこれを、修繕の話とは別に、組合運営そのものへの投資だと考えています。
制度1|マンション管理計画認定制度 ― 管理を「見える化」して金利優遇につなげる
最初にご紹介したいのが「マンション管理計画認定制度」です。これは2022年(令和4年)4月にスタートした国の制度で、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、市が「適切に管理されたマンション」として認定するものです。
所沢市の場合、対象は市内にある分譲マンション。認定の基準には、管理組合の運営、管理規約、管理組合の経理、そして長期修繕計画の作成および見直しなどが定められています。所沢市はこれに加えて、市の条例に基づく届出を行っていることを「市独自の基準」としています。
認定を受けると、どんな良いことがあるのか。所沢市が挙げているのは次のような効果です。
- 区分所有者の管理への意識が高く保たれ、管理水準を維持・向上しやすくなる
- 適正に管理されたマンションとして、不動産市場で評価されやすくなる
- 独立行政法人住宅金融支援機構の「フラット35」およびマンション共用部分リフォーム融資の金利が引き下げられる
特に三つ目は実利が大きいところです。共用部分リフォーム融資というのは、大規模修繕などで管理組合がまとまったお金を借りる際に使う融資のこと。その金利が下がるということは、修繕積立金(将来の大規模修繕に備えて毎月積み立てるお金)の負担を間接的に軽くすることにつながります。中古マンションを探す買い手にとっても、「管理計画認定マンション」という肩書きは安心材料になります。私の感覚では、これからの中古市場は「立地と築年数」だけでなく「管理が行き届いているか」で価格差がつく方向に進んでいます。認定は、その流れに先回りして資産価値を守る一手だと考えています。
なお、この認定の事前確認は、マンション管理業協会や日本マンション管理士連合会による他の管理評価サービスと連携して一緒に申請することもできます。すでに管理会社による評価を受けている組合は、それを足がかりにできる場合があるので、まずは今お付き合いのある管理会社やマンション管理士に「認定を取りたい」と相談してみるのが現実的な第一歩です。
申請の流れも押さえておきましょう。所沢市が示しているステップはこうです。まず総会で認定申請の決議をとります。次に、公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援システム」を使い、マンション管理士による事前確認を受けます。基準に適合していれば適合通知が届き、システム経由で市に申請。市の審査を経て認定通知書が交付されます。認定の有効期間は5年で、5年ごとの更新(更新時も総会決議が必要)となります。
費用面で注意したいのは、市への申請手数料は無料ですが、認定手続支援システムの利用料と事前確認審査料は別途かかる点です。金額はマンション管理センターに確認が必要です。「無料」という言葉だけを見て総会に諮ると、後で「事前確認の費用は誰が出すのか」という話になりがちなので、私は先に費用の全体像を整理しておくことをおすすめしています。
問い合わせ先は、所沢市 街づくり計画部 都市計画課(電話04-2998-9192)です。
制度の土台になる「長期修繕計画」 ― 6月の総会シーズンこそ見直しを
ここで一度、すべての制度の土台になる「長期修繕計画」について触れておきます。長期修繕計画とは、将来の大規模修繕や設備更新を、いつ・いくらで行うかをおおむね30年程度の期間で見通した計画書のこと。修繕積立金の金額も、本来はこの計画から逆算して決まります。
なぜ今この話かというと、6月はマンションの定期総会が集中する時期だからです。先ほどの管理計画認定制度も、国の固定資産税の特例も、いずれも「長期修繕計画が適切に作られ、定期的に見直されていること」を前提にしています。つまり、計画が10年前のまま放置されていると、せっかくの制度の入口に立てないのです。
私が現場でよく見かけるのは、「修繕積立金が計画に追いついておらず、いざ大規模修繕の段になって一時金を集める羽目になる」というケースです。国土交通省のガイドラインでも、長期修繕計画はおおむね5年ごとに見直すことが望ましいとされています。総会の議案に「長期修繕計画の見直し」をひと言入れておくだけで、翌年以降の選択肢がぐっと広がります。正直に申し上げます。補助金そのものより、この計画の鮮度のほうが、十年後のマンションの体力を決めると私は思っています。
制度2|耐震診断・耐震改修の補助 ― 旧耐震マンションは必ず確認を
築年数の経ったマンションで避けて通れないのが耐震の問題です。所沢市は、住宅・建築物の耐震診断と耐震改修に対する補助事業を実施しています。
対象となるのは、原則として昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認を得て建築された、いわゆる「旧耐震」の建物です。1981年6月に建築基準法の耐震基準が大きく変わったため、それ以前の建物は耐震性に不安があるケースが少なくありません。ご自身のマンションがこの「旧耐震」に当たるかどうかは、まず確認のスタート地点になります。
所沢市の耐震に関する補助は、大きく分けて次の三つがあります。
第一に「耐震診断」の補助。旧耐震の住宅・特定既存耐震不適格建築物について、診断費用の一部を補助する制度です。第二に「構造計算再チェック」の補助。これは昭和56年6月1日以降に建てられた共同住宅で、耐震性に不安をお持ちの方向けに、構造計算を再チェックする費用の一部を補助するものです。所沢市が新耐震の共同住宅まで対象に含めているのは、私の経験上わりと珍しい配慮で、「うちは新耐震だから関係ない」と思っていた組合にも一度は確認をおすすめしたい点です。第三に「耐震改修」の補助。診断の結果、補強が必要となった建物の改修工事費の一部を補助します。
耐震改修の補助は、建物の種類で枠組みが分かれています。長屋・共同住宅については、補助対象経費の23パーセント、かつ「住戸数×20万円」を上限とし、上限額300万円という枠組みが市の要綱で示されてきました(出典:所沢市の耐震改修補助事業要綱)。分譲マンションについては、これより手厚い上限額が設定されているとの情報もありますが、補助率・上限額は年度の要綱で変わり得るため、最新の数字は必ず建築指導課でご確認ください。ここを曖昧なまま総会資料に書くと、後で金額が違って信頼を損ねます。
そして耐震の補助で最も大事な注意点を、もう一度強調させてください。所沢市は「契約を行う前に申請手続きがなされていない場合、補助金は受けられません」と明記しています。診断も改修も、業者と契約する前に申請する。この順番を逆にしてしまうと、どれだけ条件を満たしていても一円も出ません。現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、工事の中身ではなく、この「申請の順番」だけで補助を取り逃すケースを見たときです。
なお、耐震改修の設計・工事監理者や施工者は、原則として市内に営業所を有する事業者であることが求められています。問い合わせ先は、所沢市 街づくり計画部 建築指導課(電話04-2998-9180)です。
制度3|共用部の省エネ補助 ― 管理組合がそのまま使える「スマートハウス化推進補助金」
所沢市の制度のなかで、管理組合に「直接」当てはまるものとして、ぜひ知っておいていただきたいのが「スマートハウス化推進補助金」の【自治会・管理組合用】の枠です。これは、マンションの共用部に太陽光発電システムや省エネ機器などを導入する管理組合に対して、市が経費の一部を補助する制度です(令和8年度・更新日2026年4月1日)。
補助の対象となるのは、主に次の項目です。太陽光発電システム、蓄電池、太陽熱利用システムの三つは、自治会・管理組合のいずれも対象。加えて、高効率の空調・給湯機器は、自治会等が管理する地域の集会施設に設置する場合が対象とされています。
気になる補助金額ですが、いずれも補助対象経費の2分の1。上限額は、高効率機器のみで100万円まで、太陽光・蓄電池・太陽熱の三項目は合算で100万円まで、という設計です。共用部の照明や設備の更新を検討している組合にとっては、検討の後押しになる金額だと思います。
申請のタイミングにも注意が必要です。太陽光発電・蓄電池・太陽熱利用システムは「工事完了後」の申請で、受付期間は令和8年4月1日から令和9年3月19日まで。一方、高効率機器は「着工前」の申請です。設備によって申請の前後が違うので、ここは混同しないようにしてください。そしてこの制度も先着順で、予算額に達し次第その年度の受付は終了します。「年度末でいいや」と構えていると、夏前に締め切られてしまうこともある。私は省エネ系の補助について、思い立った段階で早めに枠の残りを確認するようお伝えしています。
この補助を「環境のため」とだけ捉えると、管理組合にはピンと来ないかもしれません。けれど、共用部の電気代は年々じわじわと組合の支出を圧迫しています。共用灯のLED化や、エントランス・駐車場まわりの設備更新を、ちょうど大規模修繕のタイミングに合わせて行えば、足場や仮設を共有できて工事費の無駄も減ります。私は「省エネ投資は、環境というより管理組合の家計の話です」とお伝えしています。電気自動車の充電設備のように、これから居住者から要望が出てきそうな設備も、共用部の電源計画と一緒に考えておくと後の工事が楽になります。
問い合わせ先は、所沢市 環境クリーン部 マチごとエコタウン推進課(電話04-2998-9133)です。
制度4|国の「マンション長寿命化に資する大規模修繕」固定資産税の特例
ここまでは所沢市の制度でしたが、国の制度で大規模修繕に関わるものとして、固定資産税の減額特例にも触れておきます。これは、一定の要件を満たすマンションが長寿命化に資する大規模修繕工事を行った場合に、その翌年度分の建物部分の固定資産税が減額されるという仕組みで、適用期限は令和9年(2027年)3月31日までとされています。
主な要件としては、築20年以上であること、総戸数10戸以上であること、過去に一定の長寿命化工事を行っているか、または管理計画の認定を受けているといった管理面の条件、そして長寿命化に資する大規模修繕工事を実施することなどが挙げられます。減額される割合は市区町村の条例で定めることとされているため、所沢市での具体的な減額率は市の最新情報でご確認ください。ここでも先ほどの「管理計画認定制度」が効いてくる。管理を整えておくことが、税の特例の入口にもなっているわけです。詳しい要件は国土交通省の案内をご覧ください。
実務的に大事なのは、この特例には適用期限がある点です。令和9年3月までという区切りがある以上、これから大規模修繕を計画する組合は、「工事の時期」と「制度の期限」を見比べておく必要があります。私は理事長さまに、修繕の時期を一年前倒しにするか後ろ倒しにするかを検討するとき、この税の特例も判断材料の一つに入れるようお伝えしています。ただし、税の特例を取りに行くために工事内容を無理に膨らませるのは本末転倒です。あくまで「やるべき修繕の時期が制度の期限と重なるなら、忘れずに使う」という順番で考えるのが健全だと思います。
工事の中身も「補助金ありき」で選ばないでほしい
制度の話を整理してきましたが、最後に施工会社の立場から、ひとつだけ申し上げたいことがあります。それは「補助金が出るから」という理由だけで工事の中身を決めないでほしい、ということです。
たとえば大規模修繕では、足場をどう架けるかでコストも工期も大きく変わります。私はいつも、従来の足場を組む工法と、ロープアクセス(産業用のロープを使って職人が壁面を上下し、足場を架けずに施工する無足場工法)、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の三つを、建物の形状や立地に応じて比較してご提案するようにしています。足場が架けにくい高層階や、敷地に余裕のない物件では、ロープアクセスを組み合わせることで足場の仮設費を抑え、居住者の生活への影響を小さくできることがあるからです。
三つの工法のおおまかな違いを、表に整理しておきます。あくまで一般的な傾向で、実際の向き不向きは建物ごとに変わります。
| 工法 | 向いている建物の傾向 | 押さえておきたい点 |
|---|---|---|
| 通常足場工法 | 中低層・形状が複雑な物件 | 全面に足場を架けるため安心感がある一方、仮設費と工期がかさみやすい |
| ロープアクセス工法(無足場) | 高層・足場が架けにくい立地・部分補修 | 足場の仮設費を抑えられ居住者の影響も小さいが、施工範囲や作業内容に向き不向きがある |
| ハイブリッド工法 | 大規模・複雑で総額最適化が必要な物件 | 部位ごとに足場とロープを使い分け、コストと品質のバランスを取る |
補助金で多少の費用が戻っても、工法選びを誤って総額が膨らんでしまっては本末転倒です。制度は「使えるものは使う」。けれど工事そのものは、お住まいの方の暮らしと建物の二十年先を見据えて選ぶ。この二つは、必ずワンセットで考えていただきたいと私は思っています。所沢市のように足場の架けにくい中高層マンションが点在するエリアでは、工法の選択肢を一つしか持たない会社に相談すると、その会社が得意な工法に話が寄ってしまいがちです。私は複数の工法を比較したうえで「この建物にはこれが一番です」と理由までお伝えするようにしています。ロープアクセス工法の詳細はロープアクセス工法のご紹介を、大規模修繕の進め方は大規模修繕工事のご紹介もあわせてご覧ください。
申請の段取り ― 「いつ・どこに・何を」を一枚にしておく
制度がいくつもあって担当課も分かれていると、理事会のなかで「誰がどこに問い合わせるのか」が宙に浮きがちです。私がおすすめしているのは、検討段階で次の三つを一枚の紙に書き出しておくことです。
第一に「いつ動くか」。耐震の補助は契約前申請が絶対条件、省エネの補助は先着順で予算が尽き次第終了、固定資産税の特例は令和9年3月までの期限つき、と時間軸がバラバラです。動く順番を間違えると、条件を満たしていても受けられません。第二に「どこに聞くか」。耐震は建築指導課、管理計画認定は都市計画課、共用部の省エネはマチごとエコタウン推進課、と窓口が分かれます。第三に「何を決議するか」。管理計画認定の申請や更新には総会の決議が必要で、議事録の写しも求められます。総会のタイミングを逃すと、次の機会まで一年待つことにもなりかねません。
この三つを最初に押さえておくだけで、制度を取り逃すリスクはぐっと下がります。私たちが管理組合のお手伝いに入るときも、まずこの「段取りの地図」を一緒に描くところから始めます。
よくあるご質問
Q. 補助金の申請は工事のあとでもできますか。
制度によります。耐震診断・耐震改修は「契約前」の申請が必須で、後からでは受けられません。一方、共用部の太陽光・蓄電池などは「工事完了後」の申請です。制度ごとに前後が異なるので、検討を始めた段階で担当課に確認するのが安全です。
Q. 管理計画認定を受けると、すぐに補助金がもらえるのですか。
認定そのものは補助金の給付ではありません。認定によって得られるのは、フラット35や共用部分リフォーム融資の金利引下げといった金融面のメリットや、市場での評価向上です。修繕費が直接戻るわけではない点は、総会で誤解が生じやすいので丁寧に説明することをおすすめします。
Q. 予算がなくなると締め切られると聞きました。本当ですか。
省エネ系の補助など、先着順で予算額に達し次第その年度の受付を終了する制度があります。実際に2026年6月時点で、家庭用の一部メニューは早々に予算到達で受付を終えています。早めの確認が肝心です。
Q. 新耐震(1981年6月以降)のマンションは、耐震の補助とは無縁ですか。
そうとは限りません。所沢市は、昭和56年6月1日以降の共同住宅向けに「構造計算再チェック」費用の補助を用意しています。「新耐震だから大丈夫」と決めつけず、一度確認してみる価値はあります。
Q. 工法は会社にお任せでよいのでしょうか。
最終的にお任せいただくのは構いませんが、少なくとも「なぜその工法なのか」の説明は受けてください。足場かロープアクセスか、あるいは併用か。理由を聞いて納得できる会社かどうかは、見積金額と同じくらい大切な判断材料だと私は思います。
まとめ ― 次の理事会でできる「3分の確認」
所沢市の管理組合が確認したい制度を、もう一度だけ整理します。管理を整えて金利優遇につなげる「マンション管理計画認定制度」、旧耐震マンションの「耐震診断・耐震改修補助」、共用部の省エネを支える「スマートハウス化推進補助金(自治会・管理組合用)」、そして国の「長寿命化に資する大規模修繕の固定資産税特例」。担当課は都市計画課・建築指導課・マチごとエコタウン推進課と分かれていますが、いずれも「適正に管理されたマンション」であることが土台になっています。
まずは、ご自身のマンションが旧耐震かどうか、長期修繕計画が直近で見直されているかどうかを確認するところからで構いません。理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。制度は動ける人にだけ味方します。
総会の前段階の整理だけでも、私たちでお力になれることがあります。工法の比較や概算の取り方など、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。お問合せフォームからお気軽にどうぞ。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 所沢市「マンション管理計画認定制度」
- 所沢市「所沢市マンション管理適正化推進計画について」
- 所沢市「我が家の耐震診断補助事業のお知らせ」
- 所沢市「我が家の耐震改修補助事業のお知らせ」
- 所沢市「令和8年度【自治会・管理組合用】「所沢市スマートハウス化推進補助金」のご案内」
- 所沢市「令和8年度【家庭用】創エネ・蓄エネ「所沢市スマートハウス化推進補助金」のご案内」
- 国土交通省「マンションの管理の適正化・再生の円滑化(マンション長寿命化に資する大規模修繕工事を行った場合の固定資産税の特例措置)」
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
川越市のマンション補助金2026年度版|管理組合が使える耐震・管理計画認定・修繕の支援を本間が徹底解説
川越市のマンション補助金2026年度版|管理組合が使える耐震・管理計画認定・修繕の支援を本間が徹底解説
「川越でマンションをやっていると、補助金の話がいちばん後回しになるんですよ」――先日、川越市内の理事長さまからこう言われて、私は思わず苦笑いしました。蔵造りの町並みで知られる川越は、観光のイメージが強い一方で、駅周辺を中心に分譲マンションのストックがしっかりと積み上がっている街です。そして、その多くが築20年、30年と年輪を重ね、最初の、あるいは2回目の大規模修繕を目前にしています。
私は大規模修繕の現場に20年近く立ってきました。足場を組む従来工法も、ロープ一本でぶら下がって外壁を直していく無足場のロープアクセス工法も、その両方を見てきた人間です。だからこそ正直に申し上げます。川越市の分譲マンション向けの「使える制度」は、派手な現金給付がずらりと並んでいるわけではありません。けれども、知っているか知らないかで、結果は確実に変わります。診断費の補助、管理の質を行政が保証してくれる認定制度、そして国の固定資産税の減額まで――組み合わせ方を間違えなければ、管理組合の負担はじわりと、しかし確実に軽くなります。
この記事では、2026年度(令和8年度)に川越市内の分譲マンション管理組合が活用を検討できる制度を、私なりに一枚の地図にまとめました。すべて川越市や国の一次情報のリンクを付けています。総会や理事会の前に、5分だけお付き合いください。
※本記事は2026年6月20日時点で公開されている川越市・国土交通省等の情報をもとに、本間がまとめたものです。補助率・上限額・受付期間・要件は年度や予算状況で変わります。申請前には必ず各担当窓口および交付要綱・募集要項でご確認ください。本記事は制度の概要を紹介するもので、個別の申請可否を保証するものではありません。
まず押さえたい「川越市のマンション補助金」の全体像
川越市は埼玉県南西部の中核市で、人口は約35万人。県内でも有数の都市規模を持ち、分譲マンションのストックも厚い街です。市としても「マンション管理の適正化」に本腰を入れていて、マンション管理適正化法の改正を受けて川越市マンション管理適正化推進計画を策定し、分譲マンションの実態調査も進めています。つまり川越市は、「マンションをきちんと管理してもらう」ことに行政として旗を振っている自治体だ、ということです。
その流れの中で、管理組合が関わりうる支援を私なりに整理すると、大きく次の柱になります。
| 制度 | ざっくり何の制度か | 主な窓口 |
|---|---|---|
| 旧耐震建築物の耐震診断・耐震改修補助制度 | 旧耐震マンションの診断・改修費を支援 | 都市計画部 建築指導課 049-224-5974 |
| マンション管理計画認定制度 | 管理の質を市が「お墨付き」。金利・税制の優遇に連動 | 建築指導課 マンション管理支援担当 049-224-5974 |
| 国・マンション長寿命化促進税制 | 大規模修繕後の固定資産税を減額 | 資産税課/建築指導課 |
| 住宅用脱炭素化設備等導入奨励金ほか | 太陽光・蓄電池・V2H等を支援(個人向け) | 環境部門 |
ここで、私がいつも理事長さまに最初にお伝えしていることがあります。それは、「使える順番」と「動く順番」を間違えないこと。補助金は申請のタイミングを一つ間違えるだけで、まるごと対象外になってしまうものが少なくないのです。ここからが本題です。順番に見ていきましょう。
【制度1】旧耐震建築物の耐震診断・耐震改修補助制度 ― まず「診断」から動く
最初に取り上げるのは、川越市の旧耐震建築物の耐震診断・耐震改修補助制度です。これは「川越市建築物耐震改修促進計画」に基づいて、昭和56年(1981年)5月31日以前の旧耐震基準で建てられた建築物の、耐震診断や耐震改修にかかる費用の一部を市が補助する制度です。
分譲マンションの場合、旧耐震基準の建物は構造的なリスクを抱えている可能性があり、まず「自分たちの建物が今どういう状態なのか」を把握することがスタートラインになります。そのための耐震診断費の補助が、この制度の入口です。
令和8年度の受付には、見落としやすい「3つの落とし穴」がある
ここが、私がいちばん声を大にしてお伝えしたいところです。市の案内をよく読むと、令和8年度の運用には実務上きわめて重要な条件がいくつも書かれています。
第一に、受付期間。令和8年度の募集は、原則として令和8年(2026年)4月1日から12月4日までとされています。年度末ギリギリではなく、年内に締め切られる点に注意が必要です。
第二に、「改修」の募集状況。市の案内には、令和8年度における「共同住宅」および「多数の者が利用する建築物」の「改修」の募集は行っていません、という趣旨の記載があります。つまり、マンションが該当する区分では、令和8年度は耐震「改修」の補助枠が用意されていない可能性が高い。一方で、耐震「診断」については引き続き案内されています。「改修補助が出ると思って計画を組んでいたら、その年度は枠がなかった」という事態を避けるためにも、まずは窓口で最新の枠の有無を確認してください。
第三に、契約前申請の原則と先着順。補助金は「事業契約を結ぶ前」に申請する必要があり、すでに契約・着手してしまった事業は対象外になります。さらに、予算の範囲内で先着順の受付であり、予算額に達し次第、募集期間内でも受付が終了することがあります。総会で承認を取ってから動こうとすると、年度内の予算が尽きていた――これは本当によくある話です。
補助率や限度額は「建物区分」で変わる。だから窓口確認が先
耐震診断・改修の補助率や上限額は、建物の用途区分(戸建住宅か、共同住宅か、多数の者が利用する建築物か、緊急輸送道路沿道かなど)によって細かく分かれています。市の一般的な改修補助では「費用の一定割合・上限あり」という設計が取られていますが、マンションが該当する区分の正確な補助率・限度額は年度の要綱で確認するのが確実です。数字を曖昧な記憶で動かすのが、いちばん危ない。私は現場でそう学んできました。
ちなみに川越市には、専門家による正式な診断の前段階として、所有者自身が建物の状態をチェックできる簡易耐震診断の案内もあります。「いきなり費用をかけて診断するのは…」とためらう管理組合は、まずここから入るのも一つの手です。
本間のひとこと:耐震は「お金が出るかどうか」より前に、「うちの建物は本当に旧耐震なのか」を確定させるのが先決です。昭和56年5月以前に建築確認を受けた建物かどうか。これは検査済証や建築確認の年月日で判断します。ここが曖昧なまま補助金の話を進めても、土台がぐらつきます。
【制度2】マンション管理計画認定制度 ― 川越は「防災」を独自基準にした街
次が、私が川越のマンションに必ずおすすめしている川越市マンション管理計画認定制度です。令和5年(2023年)4月にスタートした制度で、国の法律に基づいて市町村が運用しています。
ひとことで言えば、「このマンションは、管理組合がきちんと機能していて、長期修繕計画も積立金も適切に整っていますよ」と市がお墨付きを与える制度です。お金が直接振り込まれるわけではありません。けれども、この「お墨付き」が、後で効いてきます。
川越市ならではの「独自基準」――防災への取り組み
国の管理計画認定には、全国共通の基準があります。管理者(理事長など)が定められていること、集会が年1回以上開催されていること、管理規約が適切に作成されていること、長期修繕計画が一定の要件(おおむね30年以上・修繕周期など)を満たし、それに基づく修繕積立金が設定されていること――おおよそこうした項目です。
川越市が面白いのは、この国基準に市独自の基準を上乗せしている点です。市の案内によれば、防災計画の作成や防災訓練の実施、その他の防災に向けた取り組みに努めること、といった「防災」に関する項目が独自基準として設けられています。地震や水害のリスクと向き合う川越という街らしい設計だと、私は思います。逆に言えば、川越で認定を取りに行くなら、長期修繕計画だけでなく「防災」の備えも整えておく必要がある、ということです。
申請の流れや必要書類は、市が公開している「マンション管理計画認定制度認定申請の手引き」にまとまっています。窓口は建築指導課のマンション管理支援担当(049-224-5974)。申請にあたっては、事前に管理組合の総会で長期修繕計画や積立金の水準を整えておくのが定石です。
認定を取ると、何が「効いて」くるのか
管理計画の認定を受けると、主に次のようなメリットが連動します。
第一に、住宅金融支援機構の【フラット35】の金利引き下げなど、住宅ローン関連の優遇につながる場合があります。これは区分所有者が住戸を売買する際の付加価値になります。
第二に、後述する国のマンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)の入口になります。認定を受けていることが、税制の適用要件の一つに位置づけられているのです。
第三に、資産価値そのものです。「管理計画認定マンション」であることは、買い手にとって「管理がしっかりしている安心な物件」というシグナルになります。中古マンションの取引で「管理を買う」という言葉が定着しつつある今、認定の有無は無視できない差になっていきます。
本間のひとこと:認定制度は「今すぐ現金が手に入る」制度ではありません。だから後回しにされがちです。でも私は、これは「数年がかりで効いてくる、いちばん利回りの高い手続き」だと考えています。総会のたびに少しずつ書類と計画を整えて、認定を取りに行く。地味ですが、いちばん資産価値に効きます。
【制度3】国のマンション長寿命化促進税制 ― 大規模修繕の「ご褒美」が5年延長された
ここが、大規模修繕を控えた管理組合にとって、いちばん金額インパクトのある話です。国が運用するマンション長寿命化促進税制、正式には「大規模の修繕等が行われたマンションに係る固定資産税の減額措置」です。
これは、一定の要件を満たす長寿命化工事(大規模修繕)を行ったマンションについて、工事の翌年度分の家屋にかかる固定資産税を6分の1から2分の1の範囲(条例で定める割合)で減額する、というものです。標準的には2分の1の減額が基準とされています。区分所有者一人ひとりの固定資産税が、1年分とはいえ軽くなる。これは総会で説明したときの納得感が違います。
2026年度の税制改正で「2031年3月末まで」延長された
この制度、もともとは期限付きの特例措置でした。ところが、令和8年度(2026年度)の税制改正で、適用期限が令和13年(2031年)3月31日まで、5年間延長される方針が示されています。「うちの修繕は数年後だから間に合わないかも」と諦めていた管理組合にも、十分に射程が広がったということです。
適用には「順番」がある ― ここで制度2が効いてくる
ただし、この税制は誰でも自動的に使えるわけではありません。主な要件を私なりに整理すると、こうなります。
| 要件の柱 | 内容(概要) |
|---|---|
| 築年数・規模 | 築20年以上・総戸数10戸以上などの要件 |
| 過去の工事 | 過去に1回以上の長寿命化工事(大規模修繕)が完了していること |
| 今回の工事 | 外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事の「すべて」を含む長寿命化工事を行うこと |
| 管理状態 | マンション管理計画の認定を受けている、または市から助言・指導を受けて長寿命化に資する計画を持っていること |
| 積立金 | 修繕積立金が一定の基準額以上に引き上げられていること |
お気づきでしょうか。この税制の要件のひとつに「管理計画の認定」が入っているのです。だから私は、制度2(管理計画認定)と制度3(長寿命化税制)はセットで考えてください、とお伝えしています。認定を取っておく → 要件を満たした大規模修繕を行う → 固定資産税の減額を受ける。この「順番」を意識して長期修繕計画に落とし込むと、補助金や税制が一本の線でつながります。
なお、減額を受けるには、工事完了後に市の資産税担当窓口へ申告手続きが必要です。工事をしただけでは自動的に減額されません。施工会社や管理会社と連携して、必要書類(工事内容を証する書類など)を揃えておきましょう。
具体的にイメージしてみましょう。仮に1戸あたりの家屋の固定資産税が年間8万円のマンションで、要件を満たす長寿命化工事を行い、条例で2分の1の減額が適用されたとします。すると、その住戸の家屋分の固定資産税は翌年度に4万円ほど軽くなる計算です。これが総戸数50戸であれば、マンション全体では年間200万円規模の負担軽減になり得る、ということになります。あくまで概算であり、評価額や床面積、条例で定める割合によって実際の額は変わりますが、「1棟まとめて見ると決して小さくない金額が動く」ことは感じていただけると思います。区分所有者一人ひとりにとっては「修繕で積立金を使ったのに、翌年は税金が少し戻ってきた」という体験になり、総会で大規模修繕の合意形成を進めるうえでも、説明材料として効いてきます。
【制度4】省エネ・脱炭素の支援 ― ただし「管理組合の共用部」は対象を要確認
四つ目は、省エネ・脱炭素に関する支援です。川越市には令和8年度 住宅用脱炭素化設備等導入奨励金があり、太陽光発電、蓄電池、V2H(電気自動車の充放電設備)などの脱炭素化設備の導入を奨励金で後押ししています。例えば太陽光・蓄電池・V2Hを同時に導入すると合計9万円、ZEH区分なら10万円(他区分との併用不可)といった設計です。前期は令和8年4月1日から9月30日までに完了する事業が対象とされています。
ただし、ここはマンション管理組合として注意が必要です。この奨励金は、案内上「個人」を対象としており、法人は対象外とされています。マンションの共用部に管理組合として太陽光や蓄電池を入れる場合、この個人向け奨励金がそのまま使えるとは限りません。一方で、各住戸の区分所有者が専有部に設備を導入する場合は、個人として活用できる可能性があります。
このほか、市には家庭における省エネ・再エネ活用設備導入補助金もあります。共用部の脱炭素化を検討する管理組合は、これらの市の制度に加え、埼玉県や国(マンション共用部の省エネ改修支援など)の制度も含めて、「どの主体が・どの部分に・何を入れるか」で使える制度が変わってくる、と理解しておくのが安全です。詳細は必ず環境部門の窓口で確認してください。
本間のひとこと:省エネ設備は「補助金が出るから入れる」と順番が逆になりがちです。共用部の照明をLEDにする、給水ポンプを高効率機に替える――こうした更新は、大規模修繕や設備更新のタイミングと合わせると工事費も足場費も二重取りされずに済みます。補助金は「ついで」に取りに行くくらいがちょうどいい。本体の計画が先です。
工法の選び方で「修繕費そのもの」が変わる ― 補助金の前にやるべきこと
ここまで補助金や税制の話をしてきましたが、私が現場の人間として最後に申し上げたいのは、「制度で取り戻せる額」より「工事費そのものを最適化する額」のほうが、たいてい大きいということです。
川越市内のマンションは、駅近の比較的高層なものから、住宅地の中低層のものまで実にさまざまです。建物の形状・高さ・立地によって、最適な工法は変わります。私ども明誠は、次の3つの工法を建物に合わせて選べる、全国でも数少ない会社です。
第一に、従来の足場仮設工法。中低層で形状が複雑な建物や、全面的な改修を要する場合に向きます。第二に、ロープアクセス工法(無足場工法)。産業用ロープで作業員がぶら下がって施工する方法で、足場の架設費がかからず、工期も短く、何より住民の皆さまの生活への影響(窓が塞がる、防犯上の不安、騒音期間)を最小化できます。高層物件や、足場が組みにくい立地、コストを最重視する物件で力を発揮します。詳しくはロープアクセス工法のページをご覧ください。第三に、両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法。大規模で複雑な物件の、総合的なコスト最適化に適しています。
「足場を組むのが当たり前」と思い込んでいると、見えない費用を払い続けることになります。足場費は大規模修繕の総額の2〜3割を占めることも珍しくありません。そこをロープアクセスやハイブリッドで圧縮できれば、補助金の数十万円とは桁の違う差が出ることもあるのです。まずは建物を見て、どの工法が合うのかを冷静に診断する。大規模修繕の進め方も、ぜひ参考になさってください。
管理組合が「損をしない」ための実務カレンダー
最後に、川越市のマンション管理組合が一年を通してどう動けば制度を取りこぼさないか、私なりの実務カレンダーをお示しします。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 通常総会の前(春先) | 長期修繕計画・修繕積立金の水準を点検。管理計画認定の要件を満たしているか確認 |
| 年度初め(4月〜) | 耐震診断・脱炭素奨励金など、年度の募集要項が出る時期。枠の有無・受付期間・予算状況を窓口で確認 |
| 大規模修繕の検討段階 | 工法(足場/ロープアクセス/ハイブリッド)を比較。長寿命化税制の工事要件を満たす設計か施工会社と確認 |
| 契約・着工の前 | 補助金は「契約前申請」が原則。先着順で予算が尽きる前に申請 |
| 工事完了後 | 長寿命化促進税制の固定資産税減額は、完了後に市へ申告。書類を揃えて忘れず手続き |
この流れを理事会で一度共有しておくだけで、「気づいたら受付が終わっていた」「契約してから補助金に気づいた」という取りこぼしは、ぐっと減ります。補助金は、知っている人が、正しい順番で動いた分だけ受け取れる仕組みです。
よくあるご質問 ― 川越市のマンション管理組合から
実際に理事長さまや理事の皆さまから現場でいただく質問を、いくつか取り上げておきます。総会前の予習にお使いください。
Q1. 旧耐震ではない(新耐震の)マンションでも、補助金は使えますか
耐震診断・改修の補助は、原則として昭和56年(1981年)5月31日以前の旧耐震基準で建てられた建築物が対象です。新耐震基準の建物は、この耐震補助の枠では対象外になることが多い。ただし、新耐震のマンションでも、管理計画認定制度や、要件を満たす大規模修繕に対する国の長寿命化促進税制は利用できる可能性があります。「耐震補助は使えないが、認定と税制は狙える」というケースは少なくありません。築年数だけで諦めず、自分たちが使える制度を仕分けることが大切です。
Q2. 管理会社に任せきりですが、認定は管理会社が取ってくれるのですか
認定の申請主体は、あくまで管理組合です。管理会社が実務をサポートしてくれることは多いのですが、長期修繕計画の内容や修繕積立金の水準、総会での決議は、管理組合が主体的に整える必要があります。特に川越市は防災に関する独自基準があるため、防災計画や防災訓練の実績づくりは、管理会社任せにできない部分です。理事会で「うちは認定要件のどこが足りていないのか」を一度棚卸しすることをおすすめします。
Q3. 修繕積立金が足りていません。それでも補助や税制は狙えますか
正直に申し上げると、積立金不足は多くの管理組合が抱える共通の悩みです。国の長寿命化促進税制は、修繕積立金が一定の基準額以上に引き上げられていることを要件の一つにしています。つまり「積立金を適正な水準に見直すこと」が、税制適用の前提条件にもなっているのです。これは負担に感じられるかもしれませんが、見方を変えれば「積立金を見直す総会の議論に、税制優遇という後押しの材料が使える」ということでもあります。私は、積立金の見直しと管理計画認定、そして大規模修繕の計画を、一つのパッケージとして数年がかりで進めることをおすすめしています。
Q4. ロープアクセス工法だと、補助金や税制の対象から外れませんか
よくいただく誤解ですが、補助金や長寿命化促進税制が見ているのは「どの工法で施工したか」ではなく「どの部位を、どういう内容で工事したか」です。長寿命化促進税制でいえば、外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事のすべてを含む長寿命化工事であることが要件であって、その施工手段が足場なのかロープアクセスなのかは問われません。むしろロープアクセスやハイブリッド工法で工事費そのものを圧縮できれば、限られた積立金の中で要件を満たす工事を実現しやすくなる、というメリットがあります。
まとめ ― 川越のマンションは「管理を整えた組合」から得をする
川越市の制度を改めて並べてみると、現金がドンと出るわかりやすい補助金は多くありません。けれども、耐震診断で建物の状態を把握し、管理計画の認定で管理の質を市に認めてもらい、その土台の上で要件を満たした大規模修繕を行えば、国の固定資産税減額まで一本の線でつながる――そういう設計になっています。川越市は「きちんと管理しているマンションが得をする」街なのです。
そして、その大規模修繕そのものを、足場・ロープアクセス・ハイブリッドのどの工法で行うかで、総額は大きく変わります。補助金の交通整理と、工法の最適化。この二つを両輪で回すことが、修繕積立金とにらめっこしている管理組合にとって、いちばん確実な「負担軽減」だと、私は現場で確信しています。
出典・参考資料
- 川越市「旧耐震建築物の耐震診断・耐震改修補助制度」
- 川越市「簡易耐震診断をご利用ください」
- 川越市「川越市マンション管理計画認定制度(令和5年4月開始)」
- 川越市「川越市マンション管理適正化推進計画」
- 川越市「令和8年度 住宅用脱炭素化設備等導入奨励金(前期)」
- 川越市「令和8年度 家庭における省エネ・再エネ活用設備導入補助金」
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」
- 国土交通省「マンション管理・再生ポータルサイト」
- 埼玉県「マンション管理計画認定制度について」
補助金や税制の制度は、毎年のように受付期間や金額、要件が変わります。今日ご紹介した内容も、来年にはまた装いが変わっているはずです。それでも、「使える順番」と「動く順番」さえ押さえておけば、川越市のマンション管理組合が損をすることは、ぐっと減ります。
私ども明誠は、川越をはじめとした首都圏で、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つの工法から、建物にいちばん合うやり方をご提案してきました。補助金の使いどころの整理から、工法の比較、長期修繕計画の見直しまで、総会の前段階の交通整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。一棟一棟、丁寧に向き合うのが、私のやり方です。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
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