大規模修繕の費用が上がる2026年 コストの抑え方
大規模修繕の費用は、いま「静かに」上がり続けている
「前回の大規模修繕から12年。そろそろ二回目を、と長期修繕計画を開いたら、積み立てているお金では足りそうにない」。私が理事長さまからいちばん多くいただくご相談が、まさにこれです。
理由ははっきりしています。工事そのものの値段が、この数年で確実に上がっているからです。しかも、テレビのニュースで大きく騒がれるわけではなく、数字の上で静かに、しかし着実に上がり続けている。だからこそ、計画を立てた当時の見積もりと、実際に発注する段になっての見積もりのあいだに、大きな開きが生まれます。
一般財団法人 建設物価調査会が2026年8月10日に公表した最新の「建設物価 建築費指数」(東京、2015年平均=100)を見ると、その傾向がはっきり表れています。2026年7月時点で、集合住宅(鉄筋コンクリート造)の工事原価は146.5となり、前月比で0.6%上昇しました。事務所(鉄骨造)は145.3で前月比1.0%上昇、工場(鉄骨造)は143.8で0.8%上昇、木造住宅は152.3で0.5%上昇。つまり、代表的な四つの建物種類がそろって上がっているのです(出典:一般財団法人 建設物価調査会「建設物価 建築費指数」)。
この記事では、大規模修繕の費用がなぜ上がっているのかという背景を整理したうえで、コストを抑えるための三つの視点を、現場で20年やってきた私の言葉でお伝えします。マンション管理組合の理事長さまはもちろん、収益物件をお持ちのオーナーさまにも役立つ内容にしたつもりです。まずは、いま起きている事実から見ていきましょう。
2026年7月の建築費指数が示している事実
建築費指数というのは、資材の価格や職人さんの手間賃(労務費)などを組み合わせて、「工事の値段そのもの」がどう動いているかを示す物価の一種です。2015年の平均を100とすると、集合住宅(RC造)は146.5。ざっくり言えば、2015年に比べて工事原価が約46%上がっている、ということです。
ここで大切なのは、これは一時的な跳ね上がりではなく、毎月じわじわと更新され続けているという点です。前月比プラス0.6%は小さく見えるかもしれません。しかし、こうした小さな上昇が積み重なった結果が、いまの「約46%増」という水準です。次回の8月分は2026年9月10日に公表予定とされていますが、私の実感では、当面この流れが急に止まる気配はありません。
管理組合の長期修繕計画は、数年前、場合によっては10年以上前に立てられていることが珍しくありません。その当時の単価で積み立ててきたお金と、いまの工事原価。この二つのあいだに開きが生まれるのは、ある意味で当然のことなのです。
なぜ「工事原価」が理事会の想定を超えるのか
もう一つ知っておいていただきたいのが、国が公表している「建設工事費デフレーター」という指標です。これは国土交通省が毎月まとめているもので、名目上の工事費を基準年の実質的な価値に置き換えるための物差しです(出典:国土交通省「建設工事費デフレーター」)。
私がこの二つの公的な指標をあえてご紹介するのは、「値上がりは、うちの会社が勝手にそう言っているわけではありません」ということをお伝えしたいからです。理事会で「今回はずいぶん見積もりが高いですね」という声が上がったとき、感覚論ではなく、公的機関の数字を根拠にご説明できる。これは理事長さまが総会で住民のみなさまに説明されるときにも、必ず力になります。正直に申し上げます。値上がりの現実からは、誰も逃げられません。だからこそ、次に大事になるのが「その中でどう費用を抑えるか」なのです。
建築費が上がっている三つの背景
「なぜ上がっているのか」を理事会でひと言で説明できると、住民のみなさまの納得感がまるで変わります。背景は大きく三つに分けられます。
背景①:資材価格の上昇
まず、工事に使う材料そのものの値段です。鉄筋やコンクリート、外壁の塗料、防水シート、シーリング材。これらの多くは原油価格や為替、海外の需給の影響を受けます。私が現場に入り始めた頃と比べると、同じ品質の塗料でも仕入れ値は明確に上がりました。
材料費は工事費の中でも大きな割合を占めますから、ここが上がると全体を押し上げます。「前回と同じ仕様でお願いします」と言っても、材料の単価が変わっている以上、総額は同じにはなりません。これは、どの施工会社に頼んでも同じことです。
背景②:職人不足と労務費の上昇
二つ目が、人の問題です。建設業界は高齢化と担い手不足が長く言われてきました。腕のいい職人さんほど引く手あまたで、当然、手間賃も上がります。
私が現場で20年やってきて一番痛感しているのは、「良い工事は、良い職人さんがいて初めて成り立つ」ということです。値段を無理に叩けば、その皺寄せはどこかに出ます。だからこそ、適正な労務費はきちんとお支払いしたい。ただ、その分が工事費に反映されるのは避けられません。労務費の上昇は、品質を守るための必要なコストでもあるのです。
背景③:法改正と「2024年問題」の影響
三つ目が、制度面です。2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が本格適用されました。いわゆる「2024年問題」です。働き方が是正されるのは良いことですが、一人あたりの労働時間に上限ができれば、同じ工事に必要な人員や工期の組み方は変わります。これも、間接的に工事費へ効いてきます。
資材・労務・制度。この三つが同時に効いているのが、いまの建築費上昇の正体です。ひとつが落ち着いても、別のひとつが押し上げる。だから「静かに、しかし着実に」上がり続けているわけです。
費用が上がる時代に、修繕積立金が追いつかない現実
工事費が上がる一方で、多くのマンションでは修繕積立金(将来の大規模修繕にそなえて毎月積み立てるお金)が、計画どおりでも足りなくなりつつあります。ここには、制度側の見直しも関係しています。
国のガイドライン改定で「30年・大規模修繕2回分」へ
国土交通省は2024年6月に、「長期修繕計画作成ガイドライン」と「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を改定しました。大きな変更点の一つが、既存マンションの長期修繕計画の対象期間を「25年以上」から「30年以上」へと延ばし、大規模修繕工事を2回分含めることを標準としたことです(出典:国土交通省「住宅:マンション管理(長期修繕計画・修繕積立金ガイドライン)」)。
なぜ30年・2回分なのか。一回目の修繕は比較的軽く済んでも、二回目には給排水管の更新や、大がかりな防水のやり直しなど、費用のかさむ工事が重なりやすいからです。つまり、長い目で見て「本当に必要になるお金」を、早い段階から見積もっておきましょう、という趣旨です。
段階増額積立方式の落とし穴
修繕積立金の積み立て方には、大きく二つあります。計画期間を通じて毎月の額を一定にする「均等積立方式」と、最初は安く、あとから段階的に引き上げていく「段階増額積立方式」です。
新築時の販売現場では、月々の負担を軽く見せたい事情から、段階増額方式が選ばれがちです。ところが、いざ引き上げの局面になると総会での合意が得られず、値上げが先送りされる。その間にも工事費は上がっていく。気づけば、計画で想定した積立額そのものが、いまの工事費水準に足りていない——。私が現地調査でうかがう築古のマンションで、この構図は本当によく目にします。
ここで悲観する必要はありません。「積立金が足りないなら、工事費のほうを賢く抑える」という発想があるからです。ここからが、この記事の本題です。
コストを抑える視点①:工法を選んで「足場費」を圧縮する
大規模修繕の見積書を開いたとき、多くの理事長さまが驚かれるのが「仮設足場」の金額です。実は、この足場が総工事費に占める割合は決して小さくありません。ここに、コストを抑える最初の大きなヒントがあります。
足場費が総工事費に占める割合
一般的なマンションの大規模修繕では、外壁を塗り替えたり防水をやり直したりする「本体の工事」とは別に、まず建物のまわりを覆う仮設足場を組む必要があります。この足場の設置・解体・レンタル費用が、工事全体のかなりの部分を占めることがあります。
しかも足場は、組んでいる間じゅう費用がかかります。工期が延びれば延びるほど、足場の負担も膨らむ。私はいつも理事長さまに、「本体の工事だけでなく、足場という“土台のコスト”にも目を向けてください」とお伝えしています。
ロープアクセス(無足場工法)という選択肢
そこで有効なのが、ロープアクセス工法です。これは産業用のロープを使い、作業員が屋上から吊り下がって外壁の補修や塗装、防水、シーリングの打ち替えなどを行う「無足場工法」です。文字どおり、足場を組まずに施工します。
足場を架けない分、仮設にかかる費用と時間を大きく圧縮できるのが最大の利点です。加えて、足場がないので建物の景観や日当たりへの影響が少なく、足場を伝った侵入といった防犯上の不安も減らせます。工期が短く済めば、居住者や入居者のみなさまの生活へのストレスも小さくなります。
もちろん、万能ではありません。建物の形状や工事の範囲によっては、足場を組んだほうが合理的なケースもあります。そこは正直にお伝えします。大事なのは「最初から足場ありきで考えない」という姿勢です。
現場で見てきた、ある築古マンションの話
以前、私がうかがった高層のマンションでは、一部の外壁のひび割れとタイルの浮きだけが問題になっていました。理事会では「また全面に足場を組むのか」と、費用と工期の両面でため息が漏れていたのを覚えています。
このケースでは、傷んでいる箇所を狙ってロープアクセスで補修する方針をご提案しました。全面足場を前提にした当初の想定と比べ、仮設まわりの負担を抑えられ、工期も短くできた。理事長さまから「足場を組まないという発想が、そもそも頭になかった」と言われたのが、いまでも印象に残っています。私はこの工法を、条件が合えば必ず選択肢の一つとしてご提案するようにしています。
ロープアクセス工法の詳しい仕組みは、ロープアクセス工法のご紹介ページにまとめています。あわせてご覧ください。
コストを抑える視点②:3工法から「建物に最適」を選ぶ
視点①でお伝えしたロープアクセスは強力な選択肢ですが、それ一本槍でも不十分です。本当に費用を抑えるコツは、「足場」「ロープアクセス」「その両方の組み合わせ」という三つの工法から、その建物にいちばん合うやり方を選ぶことにあります。
足場・ロープアクセス・ハイブリッドの比較
三つの工法の特徴を、ざっくり整理するとこうなります。
- 通常足場工法:建物全体を足場で覆う従来型。作業が安定し、大量の工程を同時に進めやすい一方、仮設の費用と工期がかさむ。中低層や複雑な形状の建物に向く。
- ロープアクセス工法(無足場):足場を組まずロープで施工。仮設費と工期を圧縮でき、居住者・入居者への影響が小さい。高層や、足場を架けにくい物件、コストを最重視する物件に向く。
- ハイブリッド工法:足場とロープアクセスを、建物の部位ごとに使い分ける。大規模で複雑な物件の、総合的なコスト最適化に向く。
私の会社が大切にしているのは、この三つを「建物ごとに組み合わせて提案できる」ことです。たとえば、低層部やバルコニー側は足場、上層のフラットな外壁はロープアクセス、というように部位で分ける。これがハイブリッドの考え方です。三つの工法を持っているからこそ、「この建物なら、ここまで仮設を減らせます」という具体的な提案ができます。
デメリットや向き不向きも、正直にお話しします
工法選びで一番やってはいけないのは、「うちはこれしかできないから、これでいきましょう」という提案です。足場しか持たない会社なら足場を、ロープしか持たない会社ならロープを勧めることになりがちで、それが本当に建物にとって最適とは限りません。
ロープアクセスにも不向きな場面はあります。たとえば、外壁の全面をまとめて改修する必要があり、同時に多くの職人を投入したほうが早い、というケースでは足場が合理的です。逆に、傷みが局所的で、全面足場が過剰投資になる場面ではロープが効きます。こうした「向き・不向き」を両論できちんとお伝えできるかどうかが、施工会社の誠実さの分かれ目だと私は思っています。
3工法を使い分ける考え方や、大規模修繕全体の進め方については、大規模修繕工事のご紹介ページで詳しくご説明しています。
コストを抑える視点③:発注の仕方とタイミングで差がつく
工法の次に効いてくるのが、「どう発注するか」と「いつ動くか」です。ここは、理事会の進め方ひとつで結果が変わる部分です。
相見積もりは「仕様を揃えて」比べる
複数の会社から見積もりを取る「相見積もり」は基本です。ただ、ここで落とし穴があります。各社がバラバラの仕様・数量で見積もると、金額だけを並べても正しく比べられないのです。安く見える見積もりが、実は必要な工事を省いているだけ、ということも起こり得ます。
私がおすすめしているのは、工事の範囲や使う材料のグレード、数量の前提をできるだけ揃えたうえで比較することです。可能なら、第三者のコンサルタントや、信頼できる会社に「見積もりの読み解き方」を相談するのも良い方法です。値段の裏にある中身まで見て初めて、本当のコスト比較になります。
先送りが、いちばん高くつく
もう一つ、声を大にしてお伝えしたいことがあります。建築費が上がり続けているいま、「もう少し様子を見よう」という先送りは、多くの場合いちばん高くつきます。
理由は二つ。一つは、これまで見てきたとおり工事費そのものが毎月上がっていること。もう一つは、劣化を放置すると、傷みが下地まで進んで工事の範囲が広がり、結果として費用が膨らむからです。ひび割れから雨水が入り、内部の鉄筋が錆びてコンクリートを押し割る「爆裂」まで進むと、簡単な補修では済まなくなります。雨漏りが出てからでは、対応の選択肢も費用も、条件が悪くなる一方です。
「今年は見送って、来年に」と判断された理事会が、翌年さらに高い見積もりを前にため息をつく——。私は、この場面を何度も見てきました。だからこそ、まずは現状を正確に把握することから始めていただきたいのです。漏水や雨漏りの兆候が気になる場合は、漏水・雨漏り調査のご案内もご確認ください。
工期の短縮が、見えないコストまで下げる理由
工法を語るとき、私はいつも「工期」の話をセットでします。工期の長短は、見積書に載る金額だけでなく、そこに載らない“見えないコスト”にも効いてくるからです。
足場がある期間は、それ自体がコスト
前にもお伝えしたとおり、仮設足場は組んでいるあいだじゅう費用が発生します。工期が1か月延びれば、そのぶん足場のレンタル期間も延びる。ここは見積書に金額として表れる、わかりやすいコストです。
ロープアクセスやハイブリッドで工期を圧縮できれば、この仮設まわりの負担を素直に減らせます。私が現場で「まず工期を短くできないか」を考えるのは、それが金額に直結すると知っているからです。
居住者・入居者にかかる「見えない負担」
もう一つ、金額には出にくいけれど確実に存在するのが、住んでいる方・借りている方への負担です。足場が長く架かっていれば、その間は窓を開けづらく、洗濯物も外に干しにくい。日当たりもさえぎられます。防犯面の不安を口にされる住民の方も少なくありません。
マンションの管理組合であれば、この負担は住民の不満となって理事会に返ってきます。賃貸物件のオーナーさまであれば、工事期間中の住み心地の悪化が、更新をためらう入居者を生むこともあります。工期が短いということは、こうした見えない負担を小さくするということでもあるのです。私はこれを、金額の話と切り離さず、必ずワンセットでご説明するようにしています。
明誠が3工法とフランチャイズで実現していること
ここまで「工法を比べて選ぶことが大事」と繰り返してきました。では、なぜそれを一つの会社でできるのか。最後に、私たちの取り組みを少しだけご紹介させてください。手前味噌にならないよう、事実だけをお話しします。
私の会社は、通常の足場を使う工事、無足場のロープアクセス工事、そしてその両方を組み合わせるハイブリッド工法の三つを、建物に応じて選んでご提案できる、日本でも数少ない会社です。多くの施工会社は、いずれか一つか二つの工法しか手元に持っていません。だから、どうしても「自社ができる工法」に寄った提案になりがちです。三つとも持っているからこそ、私たちは建物の側に立って「この物件なら、この組み合わせがいちばん無駄がありません」と言えます。
加えて、ロープアクセス工事としては日本で初めてとなるフランチャイズ展開も行っています。塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しており、それぞれの得意を持ち寄ることで、高い品質と抑えた価格の両立をめざしています。専門職がそれぞれの領域に責任を持つ体制は、仕上がりの確かさにもつながります。私たちの強みや考え方は、明誠の3工法・コンセプトのご紹介にもまとめていますので、あわせてご覧いただければと思います。
収益物件オーナーの視点:NOIと出口を見据えた修繕投資
ここまでは主に管理組合の理事長さま向けにお話ししてきましたが、賃貸マンションやビルをお持ちのオーナーさまには、もう一段、経営目線での視点を加えさせてください。
オーナーさまにとって修繕は、単なる支出ではなく「NOI(実質的な賃料収入)と物件価値を守るための投資」です。外壁が傷んで見た目が古びれば、内見時の印象が落ち、空室期間の長期化や賃料の下落圧力として静かに効いてきます。入居率が1%変わるだけで、年間のキャッシュフローには無視できない差が生まれます。適切なタイミングでの修繕は、この下落圧力を抑える打ち手です。
税務面も見逃せません。工事の内容によって、その年の経費(修繕費)として損金算入できるものと、資産計上して減価償却していく「資本的支出」に分かれます。どちらに当たるかで、その年の手残りは大きく変わります。判断は税理士のご確認が必要ですが、発注前に「これは修繕費か、資本的支出か」を意識しておくだけでも、資金計画の精度が上がります。
そして出口。売却を見据えるなら、修繕の履歴と建物のコンディションは、収益還元で評価される物件価値そのものを底上げします。工法を工夫して仮設費を抑えられれば、同じ予算でより本質的な部分に手をかけられる。これは利回りの改善というより、資産価値の維持・向上に直結する話です。ビルやマンションを保有されているオーナーさま向けの考え方は、マンション・ビルオーナーさま向けページにもまとめています。
まとめ:費用が上がる今こそ、工法と計画を見直す
最後に、今日の話を整理します。
建築費は静かに、しかし着実に上がり続けています。2026年7月時点で、集合住宅(RC造)の工事原価は2015年比で約46%の水準に達し、代表的な四つの建物種類がそろって上昇しました。この流れの中で、修繕積立金が計画に追いつかないマンションは少なくありません。
けれど、打つ手はあります。第一に、ロープアクセス(無足場工法)を選択肢に入れ、大きな割合を占める足場費を圧縮すること。第二に、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの三つの工法から、建物にいちばん合うやり方を選ぶこと。第三に、仕様を揃えた相見積もりで中身を比べ、そして何より、先送りせずに早く動くこと。
私はいつも理事長さまに、そしてオーナーさまに、こうお伝えしています。「値上がりは止められません。でも、工法と計画の見直しで、支払う金額はまだ抑えられます」と。これは、現場で20年見てきた私の、嘘偽りのない実感です。
お持ちの建物で、まだ工法の比較検討を始めていない管理組合さま・オーナーさまは、ぜひ一度お声がけください。現地調査と、足場を減らせるかどうかの見立てだけでも承ります。総会や資金計画の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談はお問合せフォームから遠慮なくどうぞ。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
よくある質問(FAQ)
Q. 大規模修繕の費用は、これからも上がり続けるのですか。
A. 断定はできませんが、資材・労務・制度の三つの要因が同時に効いており、当面は上昇基調が続く可能性が高いと考えられます。建設物価調査会の建築費指数は毎月更新されており、2026年7月時点でも前月比で上昇しました。最新の動向は公的な指標でご確認いただくのが確実です。
Q. ロープアクセス工法にすれば、必ず安くなりますか。
A. 「必ず」とは申し上げられません。足場費を圧縮できるためコストを抑えやすい工法ですが、建物の形状や工事範囲によっては足場のほうが合理的な場合もあります。だからこそ、複数の工法を比較して建物ごとに最適解を選ぶことが大切です。
Q. 修繕積立金が足りない場合、どうすればよいですか。
A. 積立金の見直しと並行して、工事費そのものを抑える工夫が有効です。工法の選択、仕様を揃えた相見積もり、劣化が広がる前の早期着手などで、支払う総額を抑えられる余地があります。まずは現状把握のための調査からお勧めします。値上げの合意形成が難しい局面でも、工事側で抑えられる部分があると分かるだけで、理事会の議論は前に進みやすくなります。
Q. ハイブリッド工法とは、具体的にどういうものですか。
A. 一棟の建物の中で、部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける工法です。たとえば低層部やバルコニー側は足場で安定して作業し、上層のフラットな外壁面はロープアクセスで仮設を減らす、といった組み合わせ方をします。建物の形状や劣化の分布に合わせて設計するため、全面足場や全面ロープよりも無駄を減らせる場合があります。どの組み合わせが最適かは、現地調査のうえでご提案します。
Q. 調査や見積もりだけの相談でも受けてもらえますか。
A. もちろんです。現地調査と、足場を減らせるかどうかの見立てだけでも承っています。工事を前提としないご相談でも構いません。総会や資金計画の前に、いまの建物の状態と概算の見通しを整理しておくことは、その後の判断を大きく助けます。
出典・参考資料
- 一般財団法人 建設物価調査会「建設物価 建築費指数®(2026年7月分)」(2026年8月10日公表)
- 国土交通省「建設工事費デフレーター」
- 国土交通省「住宅:マンション管理(長期修繕計画作成ガイドライン/マンションの修繕積立金に関するガイドライン)」(令和6年6月改定)
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
改正建築物省エネ法が2026年に成立——建物のCO2が資産価値を左右する時代、収益物件オーナーと管理組合が大規模修繕・省エネ改修で先手を打つ実務【2026年7月】
「建てるときのCO2」まで問われる時代が来た——2026年、改正建築物省エネ法が成立した
正直に申し上げます。今回のニュースを最初に見たとき、私は「ついにここまで来たか」と背筋が伸びる思いがしました。
2026年7月24日、参議院本会議で「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律」の一部を改正する法律案、いわゆる改正建築物省エネ法が賛成多数で可決され、成立しました。衆議院ではすでに6月4日に可決されており、この日をもって法律として固まったことになります(出典:参議院 議案情報 第221回国会)。
私は大規模修繕の現場に20年近く立ってきました。マンション、ビル、ホテルの外壁を、足場を組んだり、ロープ一本でぶら下がったりしながら直してきた人間です。その私から見て、この法改正は「建物の価値の測り方そのものが変わる号砲」だと感じています。ここからが本題です。
何が新しいのか——「建てて壊すまで」のCO2を通算する
これまでの省エネの議論は、ほとんどが「建物を使っているとき」のエネルギー、つまり冷暖房や照明でどれだけ電気やガスを使うか、という話でした。
ところが今回の改正では、建物を建てる段階から使う段階までの各段階で出るCO2(二酸化炭素)を通算して評価する「建築物通算炭素排出量評価」という新しいものさしが創設されました(出典:Sustainable Japan「改正建築物省エネ法成立」、一次情報は上記・参議院議案情報)。
平たく言えば、「使うときのCO2」だけでなく「建てるときのCO2」まで含めて、建物一棟の生涯(ライフサイクル)でどれだけ炭素を出すかを見よう、という考え方です。専門用語では、建物を建てる・壊すときに出るCO2を「エンボディドカーボン(建設に埋め込まれた炭素)」、使っているときに出るCO2を「オペレーショナルカーボン(運用時の炭素)」と呼びます。今回の法律は、この両方を合わせて評価する枠組みを日本で初めて法制度に組み込んだ、という点が最大のポイントです。
誰に、どんな義務がかかるのか
条文で新たに設けられた努力義務・義務を、私なりに現場目線で整理すると次のようになります。
- 建築主(発注する側)には、建物のライフサイクル全体のCO2を減らす努力義務がかかります。
- 設計する建築士と、工事を請け負う建設業者には、建築主に対して「どうすればCO2を減らせるか」を説明する努力義務がかかります。
- 建材メーカーには、製造する建築材料などの炭素排出量の原単位(材料あたりのCO2の目安)を表示する努力義務がかかります。
- そして、一定規模以上の特定用途の建物を新築・増築・改築する建築主には、設計段階で通算炭素排出量の削減計画を作成することを義務化し、算定した評価結果とあわせて国土交通大臣に届け出るか通知することが求められます。
さらに、削減措置が著しく不十分だと国が判断した場合には、必要な措置をとるよう勧告できる仕組みも入りました。加えて、省エネ性能や環境負荷低減の程度を評価する認証制度も創設され、認証を取れば建物に認証標章を表示できるようになります。
「努力義務が中心なら、まだ先の話では」と思われた方もいらっしゃるでしょう。私の経験上、こういう制度は「努力義務から始まって、数年で本義務に格上げされる」というのが、日本の建築規制のいつものパターンです。実際、新築住宅・新築非住宅への省エネ基準適合義務化も、長い努力義務の時代を経て2025年4月に全面義務化されました(出典:国土交通省 令和4年度改正建築物省エネ法の概要)。今回の「通算炭素」も、同じ道をたどると見ておくのが安全だと私は考えています。
なぜ今、この法律なのか——2050年カーボンニュートラルという背景
そもそも、なぜ国はここまで建物のCO2にこだわるのか。理事会でこの改正を説明するとき、私はいつも背景から入るようにしています。背景を知ると、これが一過性の話ではないことが腹落ちするからです。
日本は2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を国際的に掲げ、その途中目標として2030年度に温室効果ガスを2013年度比で46%削減することを目指しています(出典:国土交通省 令和4年度改正建築物省エネ法の概要)。
ここで問題になるのが、建物の存在感の大きさです。日本のエネルギー消費のうち、住宅・建築物を含む民生部門は約3分の1を占めるとされ、ここを削らずに国全体の目標は達成できません。だからこそ、新築の省エネ基準適合義務化(2025年4月に全面義務化)、中規模の非住宅建築物の省エネ基準引き上げ、そして今回の「建てるときのCO2まで通算する」という一手が、段階的に打たれてきたわけです。流れは一貫しています。「建物のエネルギーとCO2を、少しずつ、しかし確実に締めていく」——これが国の方針です。
私はこれを、脅しではなく「予告」として受け止めています。予告された変化に、早く手を打った建物ほど有利になる。それだけの話です。
なぜこれが「既存の収益物件オーナー・管理組合」の話なのか
ここで、多くの方がこう思うはずです。「うちは新築じゃない。もう建っているマンションやビルの話なのだから、関係ないのでは」と。
私は、まったく逆だと考えています。この法改正は、すでに建っている建物を持っている人にこそ効いてくる話です。理由を順にお話しします。
当面の対象は大規模建築から——でも方向は一つ
今回の削減計画の義務がかかる「一定規模以上の特定用途建築物」の具体的な線引きは、これから政令で定められます。報道によれば、国土交通省は当面、延べ床面積5,000平方メートル以上の事務所を対象とする方針で、2028年度にも施行が見込まれています。制度の運用状況を踏まえて対象を広げることも検討されている、と報じられています(出典:日本経済新聞「大規模オフィス、CO2排出量を報告義務」、中日新聞「大規模建築のCO2算定を義務化 28年度にも」)。
つまり、いきなり中小のマンションや一棟ビルすべてに計画義務がかかるわけではありません。ですが、対象を段階的に拡大していく方針が示されている以上、「今は対象外だから」と構えている時間は、そう長くないと見るべきです。制度の方向は一つ、「建物のCO2を見える化し、減らす」で固まっています。
「増築・改築」に計画義務——大規模改修は射程に入りうる
もう一つ、私が現場の人間として見逃せないと思っているのが、義務の対象が「新築」だけでなく「増築・改築」にも及ぶという点です。
大規模修繕や改修が一定の規模になれば、法的には「改築」や「増築」として扱われる場面が出てきます。たとえば外皮を大きく作り替えるような改修、増床を伴う改修などです。すべての修繕が対象になるわけではありませんが、「既存だから制度と無縁」とは言い切れない、というのが正確なところです。だからこそ、オーナーさまや管理組合の理事長さまには、早いうちに「自分の建物のCO2」を意識していただきたいのです。
建物のCO2には「運用時」と「建設時」の2種類がある
話を分かりやすくするために、もう少しだけ「建物のCO2」を分解させてください。理事会でそのまま使えるように、噛みくだいてお話しします。
運用時のCO2は「断熱・遮熱・設備」で下げる
一つ目は、先ほど触れた運用時のCO2です。冷暖房、給湯、照明、換気など、住んだり使ったりしている間に消費するエネルギーから出る炭素です。
分譲マンションでも一棟ビルでも、ここを下げる王道は「建物の外皮(外壁・屋根・窓)の性能を上げること」と「設備を効率の良いものに替えること」です。夏の西日で室温が上がりきってしまう建物と、外壁や屋上に断熱・遮熱の手が入っている建物とでは、同じエアコンでも消費電力がまるで違います。私は現場で、屋上の防水改修に合わせて断熱を入れた建物の管理員さんから「最上階の住戸のクレームが減った」という声を、何度も聞いてきました。数字にも人の暮らしにも、はっきり効くところです。
建設時のCO2は「建て替えより直す」を有利にする
二つ目が建設時のCO2、つまりエンボディドカーボンです。コンクリート、鉄、アルミ、そうした資材を作って運んで組み立てるだけで、建物は膨大なCO2を生み出します。
ここが今回の法改正で新しく光の当たった部分です。そして、既存の建物を持つオーナーさまにとっては、実は追い風になり得る話でもあります。なぜなら、建て替えは新しい建物を一から作る分、大量のエンボディドカーボンを発生させます。一方、既存の建物を活かして直す「改修(ストック活用)」は、その炭素を新たに出さずに済むからです。「建てるより直すほうが、炭素の面でも有利」——この考え方が、これから制度の後押しを受けていくと私は見ています。
「建てるより直す」が、制度でも後押しされる
私はこれまでもこのブログで、「建てるより直す時代」という話を繰り返してきました。工事費の高騰、資材の値上がり、人手不足。こうした事情から、建て替えるより既存の建物を長く大切に使うほうが、経済的に合理的になる場面が増えています。
今回の法改正は、そこに「炭素」というもう一つの理由を加えました。既存ストックを直して使い続けることが、資産の面でも、環境規制の面でも、両方から評価される時代に入ったということです。
私の経験上、これは収益物件オーナーさまにとって、非常に相性の良い流れです。既存の建物の価値を、大がかりな建て替え投資なしに、修繕と改修で高めていける。それを制度が後押ししてくれる。20年この仕事をしてきて、ここまで「直す側」に順風が吹いたことは、そう多くありません。明誠が大切にしてきた「足場仮設とロープアクセス、両方の選択肢から建物に最適な工法を提案する」という姿勢も、まさにこの「直して価値を上げる」時代に噛み合うものだと考えています。
大規模修繕は、省エネ改修の絶好機
ここで強くお伝えしたいのが、「大規模修繕は、省エネ改修を同時に進める絶好のタイミングだ」ということです。
マンションの大規模修繕は、およそ12年周期で巡ってきます(長期修繕計画の一般的な目安)。このとき、外壁や屋上に一斉に手が入ります。せっかく外皮に触れるこの機会に、防水や塗装と一緒に遮熱・断熱の手を入れておけば、運用時のCO2も光熱費も同時に下げられます。工事を別々に発注するより、一度でまとめたほうが、足場代も手間も大きく節約できるのです。
現場で20年やってきて、私が一番もったいないと感じるのは、この「一度きりの機会」を、ただの塗り替えで終わらせてしまうケースです。以前、ある築古のマンションで、前回の大規模修繕では外壁を普通の塗料で塗り替えただけ、という物件を拝見しました。屋上防水も、断熱を入れずに防水層だけをやり直していた。最上階の理事さんは「毎年夏になると寝室が暑くてたまらない」とこぼしておられました。次の修繕で遮熱塗装と屋上の断熱を提案し、色も一新したところ、体感は目に見えて変わったそうです。同じ足場を組むなら、同じロープでぶら下がるなら、「守るだけの工事」で終わらせず「価値を足す工事」にする。この差が、10年後・20年後の資産価値に効いてきます。
もう一つ申し添えると、省エネ改修は住民合意のハードルも下げてくれます。「積立金が上がるのに、見た目が新しくなるだけ」では、総会で反対の声が出やすい。ですが「光熱費が下がる」「夏の暑さがやわらぐ」「資産価値の維持につながる」という具体的な便益がセットになれば、住民の納得感はまるで違います。私はこれを、合意形成のための「もう一つの武器」だと考えています。
省エネ改修で効く工事は何か——外皮を制する者が炭素を制する
では、既存の建物で実際にCO2と光熱費に効く工事は何か。現場の実感を交えて、要点だけお伝えします。
| 部位 | 主な工事 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 外壁 | 断熱・遮熱塗装、ひび割れ・タイル補修 | 夏の熱負荷を抑え、劣化進行も止める |
| 屋上・屋根 | 防水改修+断熱 | 最上階の暑さ・寒さを緩和、雨漏り防止 |
| 窓・開口部 | 内窓・高断熱ガラスへの更新 | 熱の出入りが最も大きい部分を改善 |
| 設備 | 照明のLED化、給湯・空調の更新 | 共用部・専有部の消費電力を削減 |
遮熱・断熱塗装と防水を一体で施工する
とくに費用対効果が高いと私が感じているのは、外壁の遮熱・断熱塗装と屋上防水を一体で行う方法です。どうせ足場やロープで外皮に触れるなら、色を塗り替えるだけでなく、熱を跳ね返す・逃がさない機能まで持たせる。これで見た目も、資産の寿命も、光熱費も、まとめて手当てできます。屋上防水・漏水対策は、放っておくと躯体そのものを傷める大敵ですから、省エネと防水はセットで考えるのが賢いやり方です。
遮熱塗料は、屋根や外壁の表面温度を下げることで、室内に伝わる熱を抑える塗料です。屋上防水の上から遮熱仕様にすれば、防水層自体の熱による劣化もやわらぎ、防水の寿命を延ばす効果も期待できます。つまり一つの工事で「暑さ対策」「光熱費削減」「防水の長寿命化」の三つを同時に狙える。私が「必ずワンセットで」と申し上げるのは、こうした重なりがあるからです。もちろん、建物の向きや形状、既存の劣化状況によって最適な仕様は変わりますので、そこは現地を見て判断するのが鉄則です。
ここでロープアクセス(無足場工法)が効く理由
そして、私が「必ずワンセットで提案するようにしています」とお伝えしているのが、ロープアクセス工法(無足場工法)という選択肢です。
ロープアクセスとは、産業用のロープで職人が建物の外壁を上下しながら施工する工法で、大がかりな仮設足場を組まずに外壁の点検・補修・塗装ができます。この工法が省エネ改修の時代に効く理由は、大きく三つあります。
一つ目はコストです。足場の架設・解体費が丸ごと不要になる、あるいは大幅に減るため、浮いた予算を断熱・遮熱といった性能向上の工事に回せます。二つ目は工期です。足場を組む・ばらす時間がない分、工事が早く終わり、その間の居住者・テナントの負担も軽くなります。三つ目は、ここが今回の話とつながるのですが、足場そのものが持つCO2です。仮設足場は大量の鋼材を現場まで運び、組み、また運び出します。この運搬と設置にもエネルギーがかかっています。無足場で工事ができれば、この分の環境負荷も抑えられる、という見方ができるのです。
もちろん、ロープアクセスが万能というわけではありません。作業量が非常に多い全面改修や、部位によっては足場のほうが効率的な場合もあります。だからこそ明誠では、足場・ロープ・その両方を組み合わせるハイブリッドの三つから、建物ごとに最適な組み合わせをご提案しています。
コストと環境性能を両立させる「工法の選び方」
「省エネ改修は良さそうだが、費用が上がるのでは」——これは、理事会でもオーナーさまとの打ち合わせでも、必ず出るご質問です。ここは正直にお話しします。
性能を上げれば、材料費は多少上がります。ですが、工法の選び方次第で、その上乗せ分を足場費の削減で吸収できる場面は少なくありません。次の表は、あくまで考え方の整理ですが、工法ごとの向き・不向きの目安です。
| 工法 | 向いている場面 | コストの考え方 |
|---|---|---|
| 通常足場工法 | 全面改修、複雑な形状、作業量が多い | 足場費はかかるが大量施工で単価は安定 |
| ロープアクセス(無足場) | 部分補修、高層、足場架設が難しい建物 | 足場費が不要で総額を圧縮しやすい |
| ハイブリッド | 大規模・複雑物件で総合最適が必要 | 部位で使い分け、全体コストを最適化 |
数字の体感としては、たとえば足場費が総工費の2〜3割を占めるような物件で、その一部を無足場に置き換えられれば、戸あたりの負担はまとまった額で変わってきます。具体的な削減幅は建物の形状・高さ・工事範囲で大きく変わりますので、断定は避けますが、「費用の考え方から相談したい」という段階からお手伝いできます。
環境性能が、賃料・空室・資産価値に効く時代へ
もう一つ、収益物件オーナーさまに強調したいのが、環境性能が「規制対応」だけの話ではなくなってきている、という点です。
省エネ性能や環境負荷の低さは、今回創設された認証制度のように「見える化」される方向に進んでいます。見える化されれば、それは入居者やテナント、金融機関、買い手が建物を選ぶときの判断材料になります。光熱費の安い建物、環境性能の高い建物が選ばれやすくなれば、それは賃料や空室率、ひいては資産価値に効いてきます。マンション・ビルのオーナーさま向けのご提案でも、私はこの「守りの修繕から、価値を上げる修繕へ」という発想の転換を、いつもお伝えしています。
ホテル・宿泊施設のオーナーさまへ——「止められない営業」と省エネ改修
ここで一点、ホテルや商業ビルを持つオーナーさまにも触れさせてください。私はマンションだけでなく、ホテルの大規模修繕の現場にも数多く立ってきました。
ホテルや稼働中の商業施設で一番の悩みは、「営業を止められない」ことです。客室や店舗を閉めれば、そのぶん売上が消えます。ところが従来型の全面足場を組むと、外観が覆われ、窓がふさがれ、宿泊体験そのものが損なわれます。ここでも無足場のロープアクセスは強力な選択肢になります。足場で建物全体を覆わずに、必要な面だけを、必要なぶんだけ直していける。営業を続けながら、遮熱塗装や防水、外壁補修を進められるわけです。
ホテルは客室の冷暖房負荷が非常に大きい業態ですから、外皮の断熱・遮熱改修は光熱費に直接効きます。省エネ改修は、環境対応であると同時に、はっきりと収益改善の投資になります。ホテルオーナーさま向けのご提案でも、私は「営業を止めない工法設計」と「光熱費の下がる外皮改修」を、必ずセットでお話ししています。
管理組合・オーナーが今からできる実務ステップ
最後に、では明日から何をすればよいのか。理事会でそのまま議題にできる形で、実務のステップをまとめます。
- 自分の建物のエネルギーの弱点を知る。 まずは共用部の電気・ガスの使用状況、最上階や西側住戸の暑さ・寒さのクレーム、屋上防水と外壁の劣化度を洗い出します。ここが省エネ改修の優先順位を決める出発点になります。
- 長期修繕計画に「省エネ改修」を組み込む。 次の大規模修繕のタイミングで、防水・塗装と一緒に断熱・遮熱を入れられないかを検討します。別々に工事するより、足場を一度で使い回せるぶん、はるかに経済的です。定期的な点検・調査で現状を正確につかむことが、計画づくりの土台になります。
- 補助金・支援制度の併用を確認する。 省エネ改修は、国や自治体の補助・支援の対象になる場合があります。年度や制度で内容が変わり、予算枠に達すると締め切られることもありますので、最新の公募情報を必ず確認してください(この記事では特定の制度の採否は保証できません)。
- 総会で「制度が変わった」ことを共有する。 今回の法改正のように、建物のCO2が資産価値と規制の両面で問われ始めたという事実を、理事会・総会で1分でも共有しておく。これだけで、次の修繕の合意形成がずっとスムーズになります。
- 工法から相談できる専門家に、早めに声をかける。 見積書が出てから工法を悩むのではなく、計画の段階で「足場か、ロープか、その組み合わせか」を一緒に考えられる会社に相談する。ここで総額が大きく変わります。
私はいつも理事長さまに、「省エネ改修は、環境のためだけにやるものではありません」とお伝えしています。光熱費が下がり、建物が長持ちし、資産価値が守られる。住まう人の快適さも上がる。環境への貢献は、その結果としてついてくるものです。順番を間違えなければ、これは損な話ではありません。
よくあるご質問(改正建築物省エネ法と大規模修繕)
理事会やオーナーさまとの打ち合わせで実際によく出るご質問を、Q&A形式で整理しておきます。
Q. うちは築20年のマンションです。今回の法改正で、何か新しい義務がかかりますか。
A. 現時点で削減計画の作成が義務化される「一定規模以上の特定用途建築物」の具体的な線引きは、これから政令で定まります。報道では当面5,000平方メートル以上の事務所から始まる方針とされ、一般的な既存マンションにただちに義務がかかるわけではありません。ただし、対象を段階的に広げる方針が示されており、また大規模な改築・増築には計画義務が及びます。「今は対象外」でも、次の大規模修繕を省エネの視点で設計しておく価値は十分にあります。
Q. 省エネ改修をすると、修繕費はどのくらい上がりますか。
A. 断熱・遮熱の材料を加える分、材料費は上がります。ただし工法の選び方次第で、その上乗せ分を足場費の削減で吸収できる場面が少なくありません。上がり幅は建物の高さ・形状・工事範囲で大きく変わるため、一律の数字は申し上げられません。まずは現地を見て、工法とセットでお見積りするのが正確です。
Q. 足場を使わないロープアクセスで、本当に外壁全体を直せるのですか。
A. 部分補修や高層物件の外壁塗装・シール打ち替え・防水などは、無足場でも十分に対応できます。一方で作業量が非常に多い全面改修では足場が効率的な場合もあります。だからこそ、足場・ロープ・ハイブリッドの三つから、建物ごとに最適な組み合わせを選ぶことが大切です。
Q. 補助金は使えますか。
A. 省エネ改修は国や自治体の補助・支援の対象になる場合があります。ただし制度は年度ごとに変わり、予算枠に達すると締め切られます。採否を保証することはできませんので、必ず最新の公募情報をご確認のうえ、計画に織り込んでいくことをおすすめします。
Q. 何から始めればいいですか。
A. まずは建物の現状把握です。外壁・屋上の劣化度、最上階や西側住戸の暑さ、共用部の光熱費。この三つを押さえるだけで、次の修繕で優先すべき省エネ改修が見えてきます。調査だけのご相談でも構いません。
まとめ:制度は「直して価値を上げる」時代の追い風になる
2026年の改正建築物省エネ法は、「建物のCO2を、建てるときから使うときまで通算して評価する」という新しいものさしを日本にもたらしました。当面の義務の対象は大規模な建物からですが、方向はもう一つに定まっています。建物の環境性能が、規制でも、資産価値でも問われる時代です。
そしてこの流れは、既存の建物を大切に直して使い続ける——私たちが20年やってきた「直す」という仕事にとって、間違いなく追い風です。大規模修繕という12年に一度の機会に、防水・塗装と一緒に省エネの手を入れる。足場の要る・要らないから工法を最適化して、浮いた予算を性能向上に回す。これができる会社は、まだ日本に多くありません。
これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない感想です。制度の話は難しく聞こえますが、やることはシンプルで、「次の修繕を、少しだけ賢く設計する」だけです。総会前の整理だけでも、長期修繕計画の見直しだけでも構いません。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 参議院「議案情報 第221回国会(特別会)建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律案」
- 国土交通省「令和4年度改正建築物省エネ法の概要」(新築への省エネ基準適合義務化の経緯)
- 国土交通省「改正建築物省エネ法・建築基準法等に関する解説資料とQ&A」
- 日本経済新聞「大規模オフィス、CO2排出量を報告義務 改正建築物省エネ法成立」(対象規模・時期に関する報道)
- 中日新聞「大規模建築のCO2算定を義務化 28年度にも、改正法成立」(対象規模・時期に関する報道)
- Sustainable Japan「改正建築物省エネ法成立。建築物通算炭素排出量削減を努力義務化」(改正内容の解説)
※本記事は2026年7月31日時点の情報にもとづいています。制度の詳細や対象範囲、施行時期は今後の政令等で定まります。補助金・支援制度の採否や適用可否を保証するものではありません。実際のご検討にあたっては、最新の公的情報をご確認ください。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
取手市のマンション補助金・税制ガイド2026|管理組合が使える制度を、市の一次情報で整理しました
取手市の分譲マンションを見せていただくと、私はいつも同じことを感じます。「この街は、いい時期に、いい場所に、たくさんのマンションが建った。だからいま、まとまって修繕の山が来ている」と。
取手市は、JR常磐線と関東鉄道常総線が通り、上野・東京へ常磐線快速でおおむね45分という、昔から人気の高いベッドタウンです。高度成長期からバブル期にかけて、駅前や団地エリアに分譲マンションが一気に増えました。その建物が、いま築40年から50年にさしかかっています。2回目・3回目の大規模修繕を迎え、同時に修繕積立金の不足に頭を抱える管理組合が、本当に増えています。
私は塗装屋として二十年以上、マンションやビルの外壁と向き合ってきました。現場で一番悔しい思いをするのは、「使えるお金の制度があったのに、誰も知らないまま、言い値で工事を発注してしまっていた」というケースに出くわしたときです。取手市の理事長さんには、そういう思いをしてほしくない。だからこの記事を書きます。
この記事では、2026年(令和8年)7月時点で、取手市の分譲マンション管理組合が使える制度を、市役所の一次情報にあたって整理しました。先に、いちばん大事な結論から正直に申し上げます。取手市にも、「大規模修繕工事の費用そのものに現金を出してくれる市の補助金」は、残念ながら確認できませんでした。ここはごまかしません。
しかし、がっかりするのはまだ早いです。取手市には、管理組合が使える制度の「筋道」がちゃんと通っています。ひとつはマンション管理計画認定制度がすでに申請できる状態にあること。ふたつめは、マンション長寿命化促進税制で固定資産税が減額される道があり、しかも市のページが国の期限延長を正確に反映していて申告しやすいこと。この2つを軸に、認定から税制、融資、そして工法によるコスト削減まで、順番につないでいきましょう。
まず結論:取手市の管理組合が押さえるべき制度・早見表
理事会の配布資料にそのまま貼れるよう、先に一覧にします。詳しい中身は、このあと順番に解説していきます。
| # | 制度名 | 誰が出しているか | 管理組合にとっての意味 | 窓口 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 取手市マンション管理計画認定制度 | 取手市 | 管理レベルの公的なお墨付き。すべての入口 | 市 都市計画課 |
| 2 | マンション長寿命化促進税制(固定資産税3分の1減額) | 国/取手市 | 認定+大規模修繕で翌年度の固定資産税が3分の1減る | 市 課税課(資産税) |
| 3 | マンション共用部分リフォーム融資(すまい・る融資) | 住宅金融支援機構 | 認定等で金利引下げ。積立金不足の補完に | 住宅金融支援機構 |
| 4 | 住宅リノベーション補助金 | 取手市 | ※自己居住・専有部向け。共用部の大規模修繕は対象外 | 市 都市計画課 |
| 5 | 令和8年度木造住宅耐震改修費補助 | 取手市 | ※木造戸建向け。RC造マンション共用部は対象外 | 市 建築指導課 |
| 6 | 住宅用太陽光・自立分散型エネルギー補助 | 取手市 | ※基本は個人住宅向け。共用部利用は要確認 | 市 環境対策課 |
この表でいちばんお伝えしたいのは、「1番と2番はセットで効く」ということです。管理計画の認定を取り、その上できちんと大規模修繕をやると、翌年度の固定資産税が3分の1軽くなる。取手市は、この道がちゃんとつながっている街です。順番に見ていきます。
制度1:取手市マンション管理計画認定制度――すべての入口はここ
令和6年4月から、取手市で申請できるようになりました
まず大前提の話です。マンション管理計画認定制度とは、管理組合の運営や長期修繕計画などが国の基準を満たしていることを、市が公的に認定する仕組みです(マンションの管理の適正化の推進に関する法律の第3章に基づく制度です)。かみくだくと、「このマンションはちゃんと管理されています」という、行政のお墨付きだと考えてください。
この制度は、全国どこでも自動的に使えるわけではありません。各市区町村が「うちでも認定を始めます」と体制を整えて、はじめてその市のマンションが申請できるようになります。取手市は、この認定制度を令和6年4月1日から運用開始しています。つまり、取手市の分譲マンションは、いま申請しようと思えば申請できる状態にあります。「申請できる街」なのです。
対象は、市内にある既存の区分所有された分譲マンションです。申請できるのは、マンション管理組合の管理者等(理事長など)です。認定を受けると、市場価値の向上が期待できるほか、このあと説明する固定資産税の特例措置や、融資の金利引下げなどが利用できる、と市も明記しています。
認定基準は「国の基準そのまま」――取手市の上乗せはありません
取手市は、認定基準についてこう書いています。「国土交通省告示で定められた基準のとおりです。(市独自の基準はありません)」。
これは地味ですが、管理組合にとって大きな安心材料です。市が独自のハードルを追加していないので、全国共通の国の基準さえクリアすれば認定される。ほかの市の事例やマニュアルがそのまま参考にできる、ということです。取手市のホームページには、認定基準をまとめた「管理計画の認定基準(茨城県)」というPDFも用意されています。
国の認定基準を、理事長の目線でおおまかに噛みくだくと、次のような柱になります。
第一に、管理組合の運営。管理者等(理事長など)が定められ、監事も置かれ、集会(総会)が年1回以上ちゃんと開かれていること。第二に、管理規約。適切に定められ、緊急時の対応や、組合員名簿・修繕等の情報開示についても規定されていること。第三に、管理組合の経理。管理費と修繕積立金の会計が分かれ、区分経理されていること。第四に、いちばん実務的に大事な長期修繕計画。計画期間が30年以上あり、その中に大規模修繕工事が2回以上含まれ、かつ7年以内に見直されたものであること。そして、その計画に見合った修繕積立金が設定されていること。第五に、組合員名簿・居住者名簿を備え、1年に1回以上更新していること。
こうして並べると、これは「認定のための特別なハードル」というより、「そもそも健全な管理組合の姿」そのものです。認定を目指す過程で、管理が自然と整っていく。私はこれこそが認定制度の一番の価値だと考えています。
申請は「事前確認 → 市へ申請」の流れ。市の手数料は無料です
取手市が案内している認定手続きの流れは、次のとおりです。
まず、総会での合意が出発点です。認定申請を行うには、管理組合の総会で認定申請の承認を得る必要があります。ここは管理組合ならではのステップですので、総会のスケジュールから逆算して動きましょう。
次に、事前確認です。市に認定申請を行う前に、認定基準に適合しているかどうかの確認を、公益財団法人マンション管理センターに依頼します。基準を満たすと認められると、「管理計画認定手続支援サービス」という電子システムを通じて、マンション管理センターから「事前確認適合証」が発行されます。
最後に、市への認定申請です。都市計画課の窓口で申請します(先ほどの支援サービスを通じてオンラインで申請することも可能です)。審査が完了すると、市から管理計画認定通知が発行されます。
費用について、取手市は明快に書いています。「取手市への申請手数料は無料です」。ただし注意として、公益財団法人マンション管理センターが運用する支援サービスのシステム使用料と事前確認審査料が別途かかります。ここは「市に払うお金はゼロ、事前確認の実費だけがかかる」と整理して理解しておきましょう。認定の有効期限は、認定を受けた日から5年間です。
窓口は、取手市役所の都市計画課です。都市計画課は市役所の「分庁舎」内にあり、本庁舎とは場所が違いますのでご注意ください(住所は取手市西2-35-3、電話は0297-74-2141)。制度の入口として、まずここに一本電話を入れるところから始めるのが、いちばんの近道です。
なお取手市は、マンションの管理の適正化の推進に関する法律にもとづく「茨城県マンション管理適正化推進計画」を、茨城県と共同で作成しています。取手市のマンション施策は、この県との共同の枠組みの上に成り立っている、という点も知っておくとよいでしょう。
制度2:マンション長寿命化促進税制――取手市は「3分の1減額」、しかも期限が正確
大規模修繕をやると、翌年度の固定資産税が3分の1減ります
ここが、取手市の管理組合にとって、いちばん現金メリットの見えやすい制度です。
マンション長寿命化促進税制とは、一定の要件を満たすマンションが、長寿命化に資する大規模修繕工事を行った場合に、工事完了の翌年度分の家屋にかかる固定資産税を減額する制度です。取手市の場合、減額の範囲は「翌年度分の固定資産税(家屋分)の3分の1」で、住宅1戸あたり100平方メートル相当分まで(共用部分も含みます)が対象です。
正直にお伝えすると、この「3分の1」という割合は、国が示す標準的な水準です。日立市やひたちなか市のように「2分の1」まで踏み込んでいる市もあり、それらと比べると取手市は控えめです。ただ、それでも翌年度の固定資産税が3分の1減るのは、決して小さくありません。大規模修繕という大きな決断の背中を、確かに押してくれる制度です。
なお、都市計画税は減額の対象外です。また、耐震改修工事・バリアフリー改修工事・省エネ改修工事などの固定資産税減額とは、併せて適用することはできません。そして、過去にこの制度で減額を受けている場合、2回目の適用は受けられません。ここは「一世代に一度の切り札」だと考えておきましょう。
取手市の強み――市のページが「国の2年延長」を正しく反映しています
私がこの制度で取手市を評価しているのは、市のホームページが正確だという点です。
この長寿命化促進税制は、もともと令和5年度に始まった制度で、当初の対象期間は「令和5年4月1日から令和7年3月31日まで」でした。その後、国の税制改正で対象期間が2年延長され、いまは令和7年4月1日から令和9年3月31日までの工事が対象です。
ところが、この延長を市のページに反映しきれていない自治体が、実は少なくありません。古い期限のまま載っていて、「もう終わった制度だ」と誤解されてしまうのです。取手市のマンション長寿命化修繕に関する固定資産税減額のページは、更新日が2026年(令和8年)7月21日で、対象期間を「令和7年4月1日から令和9年3月31日まで」と正しく記載しています。制度が生きていることが、市の一次情報ではっきり確認できる。これは申告する管理組合にとって、大きな安心材料です。
要件は「3つの防水・塗装工事を一体で」――ここを外すと減額されません
減額を受けるための要件を、正確に押さえましょう。取手市のページには、次のように書かれています。
まず、大規模修繕工事の内容です。次の3つが、同一の工事請負契約の中で行われるなど、一体として扱われる工事である必要があります。
- マンションの外壁の修繕または模様替(外壁塗装等工事)
- 直接外気に開放されている廊下・バルコニーなどの防水措置のための修繕または模様替(床防水工事)
- 建物の屋上・屋根・ひさしなどの防水措置のための修繕または模様替(屋根防水工事)
ここが実務上いちばん大事なポイントです。「外壁だけ塗り替えました」「屋上防水だけやりました」では、この税制の対象になりません。外壁・床防水・屋根防水の3つを、ひとつの大規模修繕として一体で実施する必要があります。私が管理組合に「どうせやるなら、この3点をワンセットで計画に組み込みましょう」と必ずお伝えしているのは、まさにこの税制の要件に合わせるためです。
そのほかの要件は次のとおりです。築後20年以上が経過している、総戸数10戸以上のマンションであること。過去に大規模修繕工事を1回以上、適切に行っていること(複数回に分けて行った場合も対象になります)。そして、長寿命化に資する大規模修繕工事を適切に実施するために必要な修繕積立金が確保されていること。管理計画認定マンションの場合は、令和3年9月1日以降に、修繕積立金を認定基準未満から認定基準以上に引き上げていること、が積立金確保の要件になります(申告時に証明書が必要です)。
申告は、大規模修繕工事が完了してから3か月以内に、必要書類をそろえて市役所の課税課(資産税)へ提出します。工事が終わってから慌てないよう、着工前の段階で「この工事は税制の対象になるか」を、あらかじめ課税課(電話0297-74-2141)に確認しておくことを強くおすすめします。
制度3:住宅金融支援機構「マンションすまい・る融資」――積立金が足りないときの補完
大規模修繕を前にして、いちばん多いお悩みが「修繕積立金が足りない」というものです。そこで力になるのが、住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資(マンションすまい・る融資)です。これは管理組合が申し込める、共用部分の工事のための公的な融資制度です。
2026年度の案内によると、この融資には、認定マンションにとって有利なポイントがいくつかあります。まず、管理計画認定を取得しているマンションが一定の工事を行う場合、返済期間を最長35年とすることができます。さらに、浸水対策工事や省エネルギー対策工事を実施する場合は、それぞれ0.2パーセントずつ金利を引き下げることができます。融資金利は、借入申込み時の金利が全期間固定で適用されます。
ここでも、制度1の「管理計画認定」が効いてくることに気づいていただけると思います。認定を取ると、税制だけでなく融資でも優遇される。認定は、取手市の管理組合にとって「いろいろな扉を開ける共通のカギ」なのです。
融資には、公益財団法人マンション管理センターによる債務保証を利用でき、あわせて「マンションすまい・る債」で計画的に積立金を運用する仕組みもあります。「借りる」だけでなく「貯める」側も整えておくと、次の大規模修繕がぐっと楽になります。
正直に言います――「使えそうで使えない」制度も、ちゃんとお伝えします
ここからは、取手市のホームページで見かけるものの、分譲マンションの共用部大規模修繕には使いにくい・使えない制度を、正直に整理します。「あるはずだ」と探し回って時間を無駄にしないために、あえて書いておきます。
住宅リノベーション補助金――対象は自己居住・専有部です
取手市には「住宅リノベーション補助金」があります。工事費の10パーセント(上限30万円、加算を含めて最大55万円)が出る、なかなか手厚い制度です。マンションも居住用床面積40平方メートル以上なら対象に入っており、対象工事には屋根・外壁の塗り替えなども含まれます。
ここだけ見ると「共用部の大規模修繕にも使えるのでは」と期待してしまいますが、この補助金は、中古で購入した自宅を自分が住むために改修するかた向けの制度です。市街化区域内にあること、自己居住用であること、住宅の登記簿に所有者として登記されていること、などが要件になっています。つまり、管理組合が共用部全体を大規模修繕する場面ではなく、区分所有者の個人が、自分の部屋(専有部)を直す場面で使う補助金だと理解してください。制度の期限は令和10年3月31日までです。
区分所有者の中に「中古で買った部屋を、これからリフォームする」というかたがいれば、その個人にとっては使える可能性があります。管理組合として案内するなら、そういう位置づけです。
木造住宅耐震改修費補助――RC造・SRC造マンションは対象外です
取手市は「令和8年度木造住宅耐震改修費または耐震建替費の補助」を行っています。工事費の5分の4または115万円のいずれか少ない額という、かなり手厚い補助です(募集は先着1棟、申込期間は令和8年6月1日から8月31日まで)。
ただし、対象は昭和56年5月31日以前に建築された、地上2階以下の木造一戸建て住宅などに限られます。鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のマンション共用部は、この補助の対象外です。ここを勘違いして期待してしまう理事長さんが時々いらっしゃるので、はっきりお伝えしておきます。
とはいえ、旧耐震のマンションが打つ手がないわけではありません。耐震改修促進法という法律には、要耐震改修認定を受けたマンションについて、共用部分の耐震改修工事の決議要件を、通常の「各4分の3以上」から「各過半数」に緩和する仕組みがあります。旧耐震のマンションで耐震補強を進めたい場合、この決議緩和は大きな武器になります。まずは市の建築指導課(分庁舎2階、電話0297-74-2141)に相談してみてください。
太陽光・蓄電池などの省エネ補助――基本は個人住宅向けです
取手市の環境対策課は、住宅用太陽光発電システムの補助金や、蓄電池を含む自立・分散型エネルギー設備導入事業費補助金など、再生可能エネルギー関連の補助を用意しています(住宅用太陽光は、令和8年度分の受付が令和8年3月17日午前9時から始まる案内が出ています)。
これらは基本的に、住宅における温室効果ガス削減を目的とした個人住宅向けの制度です。分譲マンションの共用部での活用が可能かどうかは、募集要項や年度ごとの予算枠によって変わり、私の側で断定はできません。管理組合として共用部にこうした設備を検討する場合は、必ず事前に環境対策課(電話0297-74-2141)へ、管理組合名義での申請が可能かどうかを確認してください。年度ごとに予算枠に達し次第終了する制度が多いので、動くなら早めがよいです。
取手市のマンション事情――「まとまって修繕期が来ている」という現実
ここで、取手市という街の特徴を、修繕の観点から少し整理させてください。
取手市は、高度成長期からバブル期にかけて、常磐線沿線のベッドタウンとして大きく発展しました。駅前や団地エリアに、当時の「新しい住まい」として分譲マンションが数多く供給されました。その建物が、いま一斉に築40年から50年を迎えつつあります。
これが何を意味するか。建物の劣化の波が、街全体でほぼ同じ時期に来ているということです。外壁のタイルが浮いてくる(叩くと「ポンポン」と軽い音がします。これを「浮き」と呼び、放置すると剥落=落下の危険につながります)、屋上防水が寿命を迎える、鉄部の塗装が錆びてくる――こうした症状が、あちこちのマンションで同時に表面化しています。
そして、多くの管理組合が同じ悩みを抱えます。「2回目、3回目の大規模修繕が近いのに、修繕積立金が足りない」。当初の積立計画が甘かったマンションほど、この局面で苦しみます。私が取手市の管理組合に、「まず管理計画認定を取り、税制と融資という公的な仕組みをフルに使いましょう」と繰り返しお伝えしているのは、この街の建物事情を踏まえてのことです。
修繕積立金が足りないとき――理事会で検討したい4つの打ち手
「積立金が足りない」と分かったとき、選択肢は大きく4つあります。理事会で、この4つを机の上に並べて議論してみてください。
第一に、積立金の値上げです。いちばん王道ですが、住民合意のハードルは高い。ただし、先ほどの長寿命化促進税制の要件に「積立金を認定基準以上に引き上げていること」が入っていることを思い出してください。値上げは、税制メリットへの入場券でもあるのです。
第二に、一時金の徴収です。工事の直前に各戸から集める方法ですが、負担感が大きく、これも合意が難しい局面が多いです。
第三に、融資の活用です。先ほどのマンションすまい・る融資などを使い、工事を先に行って、返済を積立金で賄っていく方法です。「いま直さないと危険」という緊急性がある場合に有効です。
そして第四に、私がいちばん強調したいのが、工事費そのものを下げることです。積立金を増やす努力と同じくらい、「出ていくお金を減らす」努力が効きます。ここで効いてくるのが、次にお話しする工法の選択です。
工事費を下げる本命――足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法
大規模修繕の費用の中で、意外と大きな割合を占めるのが足場代です。建物の全面に足場を組むと、それだけで数百万円から、規模によっては一千万円を超えることもあります。しかも、足場を組んでいる間は日当たりや防犯の面で住民の生活にも影響が出ます。
私たち明誠は、この足場の問題に対して、3つの工法から建物にとってベストなものを選べる体制を持っています。
ひとつめが、通常の足場工法です。建物の全面に仮設足場を組む、いちばんオーソドックなやり方です。工事範囲が広く複雑な建物では、いまも足場が最適な場面は多くあります。
ふたつめが、ロープアクセス工法(無足場工法)です。屋上から専用のロープで作業員が降りながら、外壁の補修や塗装、防水を行う工法です。足場を組まないため、足場代を大きく削減でき、工期も短くできます。取手市に多い、部分的な補修や、限られた面の塗り替えでは、この工法が費用面で威力を発揮します。ロープアクセス工法の詳しい内容は、ロープアクセス工法のご紹介をご覧ください。
みっつめが、ハイブリッド工法です。これは、足場が要る面には足場を組み、ロープアクセスで対応できる面はロープで行う、という「使い分け」です。建物全体を一律の工法で縛らず、部位ごとに最適解を選ぶことで、総額を抑えます。私は大規模で複雑な建物ほど、このハイブリッドを提案するようにしています。大規模修繕の総合的な進め方については、大規模修繕工事のご紹介もあわせてご覧ください。
「足場を組まないと工事はできない」と思い込んでいる管理組合は、まだまだ多いです。しかし、工法の選択肢を持っているだけで、同じ工事が数百万円単位で変わることがあります。これは、脅しでも売り込みでもなく、私が現場で二十年見てきた事実です。ピンポイントの補修で足りる場合の考え方は、ピンポイント補修という選択肢でも紹介しています。
モデルケースで考える――「戸あたり」で見ると分かりやすい
制度と工法の話を、数字で体感していただくために、取手市に多いタイプの建物を想定した、2つのモデルケースで考えてみます。あくまで一般的な想定に基づく試算で、実際の金額は建物の状態によって変わりますが、考え方の参考にしてください。
ケースA:取手駅周辺、築28年・11階建て・48戸・新耐震のマンション
外壁・床防水・屋根防水を一体で行う、標準的な2回目の大規模修繕を想定します。全面足場で見積もると総額はおよそ9,000万円。これをハイブリッド工法に切り替えて足場を必要な面に絞ると、総額はおよそ7,800万円まで下がる、という試算になります。差額はおよそ1,200万円。48戸で割ると、1戸あたりおよそ25万円の差です。さらに、この工事は3工事を一体で行っているので、管理計画認定と積立金の引き上げをそろえれば、長寿命化促進税制で翌年度の固定資産税が3分の1減額される対象になり得ます。
ケースB:市街地の築44年・5階建て・18戸・旧耐震のマンション
こちらは規模が小さく、限られた面の補修が中心になるケースです。全面足場では過剰になりがちなので、ロープアクセスを主体にした計画が有効です。旧耐震のため、耐震改修促進法の要耐震改修認定を取れば、共用部の耐震改修の決議要件が各過半数に緩和されます。積立金が薄い場合は、マンションすまい・る融資で工事を先行させ、返済を平準化していく――こうした組み合わせで、無理なく前に進められます。
数字を「戸あたり」に落とすと、住民説明会での納得感がまるで違います。私は理事長さんに、必ず「総額」と「戸あたり」の両方で資料を作りましょう、とお伝えしています。
制度を使う順番――逆算カレンダーで動きましょう
制度はたくさんありますが、使う順番を間違えると、せっかくのメリットを取り逃します。取手市の管理組合が動くなら、次の8ステップの順番がおすすめです。
第一に、建物診断を受け、いまの劣化状況と、必要な工事の全体像をつかむ。第二に、長期修繕計画を見直す(30年以上・大規模修繕2回以上・7年以内見直し、という認定基準に合わせる)。第三に、修繕積立金の水準を点検し、必要なら引き上げの検討を始める。第四に、マンション管理計画認定の事前確認を、マンション管理センターに依頼する。第五に、総会で認定申請と大規模修繕の方針を決議する。第六に、外壁・床防水・屋根防水を一体にした工事内容で、工法(足場/ロープアクセス/ハイブリッド)を比較して発注する。第七に、必要に応じてマンションすまい・る融資を活用する。第八に、工事完了から3か月以内に、課税課へ長寿命化促進税制の申告を行う。
この順番の肝は、「認定と積立金の引き上げを、工事より前に段取りしておく」ことです。税制の申告は工事の後ですが、その資格づくりは工事の前から始まっています。総会は年に1回のことも多いので、逆算して1年から2年前には動き始めるのが現実的です。
住民合意を進める3つのコツ
制度と工法がそろっても、最後は住民の合意がなければ前に進みません。現場で見てきた、合意形成の3つのコツをお伝えします。
ひとつめは、「お金の話を、隠さず先に出す」こと。総額と戸あたり負担、そして使える制度(税制・融資)を、最初の説明会で正直に並べる。あとから小出しにすると、かえって不信感を招きます。
ふたつめは、「やらなかった場合のリスクを、具体的に見せる」こと。外壁タイルの浮きを放置すれば、剥落して通行人にケガをさせる恐れがあり、管理組合が責任を問われることもあります。「直すコスト」だけでなく「直さないリスク」を並べて示すと、判断が進みます。
みっつめは、「相談だけの段階から、専門家を入れる」こと。理事だけで抱え込まず、早い段階で診断や見積もりの妥当性を第三者にチェックしてもらう。これだけで、無駄な工事や過剰な金額を避けられることが多いです。
よくあるご質問(取手市のマンション管理組合向け)
Q. 取手市に、大規模修繕の工事費そのものへの補助金はありますか。
2026年7月時点で、市の一次情報を確認した限り、大規模修繕工事費に直接現金を出す市の補助金は確認できませんでした。代わりに、管理計画認定を土台とした固定資産税の減額(3分の1)や、機構融資の金利引下げが、実質的なメリットになります。
Q. 長寿命化促進税制は、いつまでの工事が対象ですか。
取手市のページ(更新日2026年7月21日)は、対象期間を令和7年4月1日から令和9年3月31日までと記載しています。国の2年延長が正しく反映されています。着工前に、最新の期限と要件を課税課(資産税)へご確認ください。
Q. 減額されるのは「3分の1」とのことですが、どのくらいの期間ですか。
減額されるのは、大規模修繕工事が完了した年の翌年度分の固定資産税(家屋分)で、1回限りです。住宅1戸あたり100平方メートル相当分まで(共用部分を含む)が対象です。都市計画税は対象外です。
Q. 外壁の塗り替えだけでも、税制の対象になりますか。
なりません。取手市の要件では、外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事の3つを、同一の工事請負契約の中で一体として行う必要があります。大規模修繕の計画段階から、この3点をワンセットで組み込んでおくことが大切です。
Q. 旧耐震のマンションですが、耐震の補助は使えますか。
取手市の耐震改修費補助は木造戸建てが対象で、RC造・SRC造マンションの共用部は対象外です。ただし、耐震改修促進法の要耐震改修認定を取れば、共用部の耐震改修の決議要件が各過半数に緩和されます。まずは建築指導課へご相談ください。
Q. 管理組合の運営や、見積もりの妥当性を相談できる窓口はありますか。
マンション管理計画認定制度に関する相談は、一般社団法人マンション管理士会連合会の相談ダイヤル(03-5801-0858、平日10時から17時)が利用できます。公益財団法人マンション管理センターも、管理や共用部リフォーム融資の相談に対応しています。
私たち明誠について
私たち明誠は、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を専門とする建設会社です。通常の足場工法、ロープアクセス工法(無足場工法)、そして両者を組み合わせたハイブリッド工法という3つの工法から、建物にとってベストなものを提案できる、日本でも数少ない会社です。
また、ロープアクセス工事としては日本で初めてとなるフランチャイズ展開も行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板工事など各分野の専門職が加盟しています。専門職が直接施工することで、中間マージンを削り、高品質と低価格を両立しています。詳しくは加盟店ネットワークのご紹介をご覧ください。
あわせて、私どもはJCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)を運営しています。全国の建設業者に向けて、経営支援情報の発信、オンラインセミナー、リアル交流会、ビジネスマッチングを行っている団体です。茨城県内の同業の方で、大規模修繕の技術や経営に関心のある方は、こちらものぞいてみてください。
取手市のマンションについて、「うちはどの工法が合うのか」「この制度は使えるのか」といったご相談は、お問合せフォームからお気軽にどうぞ。見積もりの前段階、総会に出す資料の整理だけでも、お力になれることがあります。
最後に、もう一度だけ。取手市は、高度成長期にたくさんの良いマンションが建った街です。その建物が、いま一斉に修繕の時期を迎えています。管理計画の認定を取り、税制で少し取り戻し、融資で資金を平準化し、工法で無駄を削る。この流れを順につないでいけば、大切な資産を、無理なく、確実に次の世代へ渡していけます。その道筋づくりを、ぜひ私たちにお手伝いさせてください。
出典・参考(すべて2026年7月時点)
- 取手市「マンション管理計画認定制度(令和6年4月1日運用開始)」 https://www.city.toride.ibaraki.jp/toshikeikaku/kurashi/sumai/sumai/manshonkanrikeikakuninteiseido.html
- 取手市「マンション長寿命化修繕に対する固定資産税の減額」 https://www.city.toride.ibaraki.jp/kazei-shisan/kurashi/zekin/koteshisan/daikibosyuuzen.html
- 取手市「住宅リノベーション補助金」 https://www.city.toride.ibaraki.jp/toshikeikaku/kurashi/sumai/sumai/hojosedo/jutakurenovation.html
- 取手市「令和8年度木造住宅耐震改修費または耐震建替費の補助」 https://www.city.toride.ibaraki.jp/kenchiku/kurashi/sumai/sumai/hojosedo/taishinhojo.html
- 取手市「住まい・土地の補助制度」 https://www.city.toride.ibaraki.jp/kurashi/sumai/sumai/hojosedo/index.html
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000121.html
- 住宅金融支援機構「2026年度お申込分 マンションすまい・る融資(マンション共用部分リフォーム融資)のご案内」 https://www.jhf.go.jp/files/topics/7113_ext_99_1.pdf
- 住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資等の融資金利」 https://www.jhf.go.jp/kinri/kyouyoureform.html
- 公益財団法人マンション管理センター https://www.mankan.or.jp/
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
三郷市マンション補助金2026|管理組合向けガイド
大規模修繕の見積書を前に、「この金額を、このまま総会にかけて本当に大丈夫だろうか」と手が止まった理事長さまは、決して少なくありません。私はこれまで20年近く、マンションやビルの大規模修繕の現場に立ってきましたが、埼玉県三郷市の管理組合さまからのご相談で一番多いのが、まさにこの「修繕積立金と工事費のにらめっこ」です。
先に、正直に申し上げます。三郷市には、東京23区のように「分譲マンションの大規模修繕そのものに何百万円も出ます」という華やかな現金補助は、残念ながらありません。けれども、令和6年(2024年)4月に三郷市で始まったマンション管理計画認定制度をはじめ、管理体制・税制・融資という切り口で見れば、管理組合さまが使える公的な後押しは確かにあります。しかも、これらを正しい順番で組み合わせると、工事のタイミングと資金計画がぐっと立てやすくなります。
三郷市は、つくばエクスプレスの三郷中央駅、JR武蔵野線の三郷駅・新三郷駅を抱え、都心へのアクセスの良さから住まいの選択肢としてマンションが根づいてきた街です。市の資料によれば、三郷市内の分譲マンションは令和4年1月時点でおよそ300棟・約14,000戸にのぼり、市民のおよそ2割にあたる約3万人がマンションで暮らしています。つくばエクスプレス開業からおよそ20年、三郷中央エリアなどに建った建物が、いままさに1回目・2回目の大規模修繕を迎える時期に差しかかっています。この記事では、三郷市のマンション管理組合さまが2026年(令和8年度)に活用できる制度を、私が現場で理事会に説明するときと同じ順番で整理しました。使えるものは使える、使いにくいものは使いにくいと、はっきりお伝えします。
この記事でわかること(3行まとめ)
まず結論からお伝えします。三郷市の管理組合さまが押さえるべき柱は、次の3つです。
- マンション管理計画認定制度:令和6年4月に三郷市で始まった制度です。直接お金が出るわけではありませんが、住宅ローン金利や国の税制優遇の「入口」になります。
- マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額):計画的に修繕を重ねてきた組合ほど、翌年度の固定資産税が減額される形で報われる、国の税制です。
- 埼玉県の無料アドバイザー派遣と機構融資:三郷市は県の無料アドバイザー派遣の対象市です。合意形成や長期修繕計画の見直しを、専門家の力を借りて進められます。
ここに住宅金融支援機構の融資、そして工法の最適化を重ね、資産価値の維持という長い視点で組み立てる——これが私のおすすめする考え方です。それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
1. マンション管理計画認定制度(三郷市が令和6年に始めた「新しい入口」)
最初にご紹介するのは、令和6年(2024年)4月から三郷市で始まったマンション管理計画認定制度です。三郷市は令和6年3月に「三郷市マンション管理適正化推進計画」を策定し、その計画期間の始まりにあわせて認定を開始しました。対象となるのは、三郷市内の分譲マンションです。
「これは補助金なんですか」と理事長さまによく聞かれます。正直にお答えすると、この制度そのものから直接お金が振り込まれるわけではありません。それでも私が毎回おすすめするのは、この認定が「管理のしっかりしたマンションである」という市の公的なお墨付きになり、そこから金融・税制の実利につながっていくからです。
どんな制度か
マンション管理計画認定制度とは、管理組合が作成した管理計画が一定の基準を満たす場合に、市が「適切な管理計画を有するマンション」として認定する制度です。手続きの流れは、まず公益財団法人マンション管理センターに基準適合の事前確認を依頼し、同センターが発行する事前確認適合証を得たうえで、「管理計画認定手続支援サービス」(インターネット上の電子申請システム)を通じて市へ申請する、という順番になります。三郷市では、この事前確認適合証を認定申請の必須の添付書類としているため、必ずマンション管理センターの事前確認を受ける必要があります。
代表的な流れは、(1)総会で管理計画認定申請の決議をとる、(2)事前確認の情報をシステムに入力し添付書類をアップロードする、(3)基準に適合すれば事前確認適合通知メール(事前確認適合証)が届く、(4)その適合証と自動作成された申請書を添えてシステム上で市に申請する、(5)市の審査を経て認定通知書が発行される——という5ステップです。
三郷市の認定基準
三郷市の認定基準は、国のガイドラインと同じ内容としており、三郷市独自の上乗せ基準はありません。大きく5つの分野に整理されています。管理組合の運営(管理者等が定められ、監事が選任され、総会が年1回以上開催されていること)、管理規約(緊急時の専有部立ち入りや修繕履歴の管理などが定められていること)、管理組合の経理(管理費と修繕積立金が明確に区分され、修繕積立金の3か月以上の滞納額が全体の1割以内であること)、長期修繕計画の作成および見直し(計画期間が30年以上で、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれ、7年以内に見直されていることなど)、そしてその他(組合員名簿・居住者名簿を備え、年1回以上内容を確認していること)です。
「当たり前のようでいて、意外とできていない」項目ばかりだと感じられたかもしれません。私の経験上、この基準に沿って自分たちの管理状態を点検するだけでも、組合の運営はかなり引き締まります。
費用と有効期間
気になる費用ですが、市への認定申請手数料はかかりません。ただし、管理計画認定手続支援サービスのシステム利用料、これに加えてマンション管理センターの事前確認審査料が別途かかります。金額は公益財団法人マンション管理センターのホームページに掲載されていますので、申請前にご確認ください。認定の有効期間は5年で、5年ごとに更新の認定申請を行わないと効力を失います。更新は、有効期間満了の6か月前以内に手続きが必要です。窓口は三郷市 まちづくり推進部 都市デザイン課 住宅政策係(電話048-930-7833)です。
認定を取ると何が変わるか
管理計画認定を受けたマンションには、一般に次のようなメリットが期待できます。適正に管理されたマンションとして売買時に市場で評価されやすくなること、住宅金融支援機構の「フラット35」および「マンション共用部分リフォーム融資」の金利が優遇されること、「マンションすまい・る債」の利率上乗せが適用されること、そして後述するマンション長寿命化促進税制による固定資産税の減額が適用される場合があること——です。認定そのものは現金給付ではありませんが、この先の税制と融資の優遇へとつながる「入口」だとお考えください。
2. マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)
次にご紹介するのが、国の制度であるマンション長寿命化促進税制です。三郷市のマンション管理計画認定制度の案内でも、認定のメリットとして「マンション長寿命化促進税制による固定資産税の減額が適用される場合があります」と明記されています。要件を満たすマンションが、令和5年(2023年)4月1日から令和9年(2027年)3月31日までに長寿命化に資する大規模修繕工事を完了した場合、工事完了年の翌年度分の固定資産税を減額する制度です。
減額の内容
減額されるのは、1住戸あたり床面積100平方メートルまでを限度に、建物の固定資産税額の一定割合です。減額割合は市区町村の条例で6分の1から2分の1の範囲内で定められ、多くの自治体が3分の1としています。三郷市の具体的な減額割合は、公表資料からは断定できませんでしたので、実際に適用を検討される際は三郷市役所の資産税課(家屋係 電話048-930-7709)へ必ずご確認ください。都市計画税は対象外で、適用は1度限りです。48戸規模のマンションであれば、翌年度に組合員全体で見て相応の負担軽減になります。
適用を受けるための3つの要件
要件は大きく3つです。第一に、築後20年以上が経過している10戸以上のマンションであること。第二に、外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事という3つの大規模修繕工事を過去に1回以上適切に行っていること(過去の工事は3つを一体で行っている必要はありません)。第三に、長寿命化に資する大規模修繕を適切に行うために必要な修繕積立金が確保されていることです。
この「積立金の確保」は、(1)管理計画認定マンションで、令和3年9月1日以降に修繕積立金の額を認定水準まで引き上げた場合、または(2)長期修繕計画に係る助言・指導を受けて計画を作成・見直しし、一定の基準に適合した場合——のいずれかで認められます。ここで、先ほどの管理計画認定が効いてくるわけです。認定を取っておくと、この税制の入口にも立てるのです。
なお、この税制は当初、令和7年(2025年)3月末までの工事完了分が対象でしたが、その後の税制改正で令和9年(2027年)3月末まで延長されています。さらに国は、令和8年度の税制改正で本特例をもう一段延長する方針を示しています。ただし、市の窓口での最新の運用や減額割合は変わり得るため、着工前に必ず資産税課で確認しておきましょう。
申告の手続き
減額を受けるには、大規模修繕工事の完了後3か月以内に、三郷市役所の資産税課へ必要な証明書等を添付して申告する必要があります。総戸数を確認できる書類、大規模修繕等証明書(建築士等が発行)、過去工事証明書、そして認定通知書または助言・指導内容実施等証明書などが必要です。工事が終わってから慌てないよう、着工前の段階から証明書の段取りを組んでおくことを強くおすすめします。
3. 埼玉県 分譲マンションアドバイザーの無料派遣(三郷市は対象市)
三郷市の管理組合さまにぜひ知っておいていただきたいのが、埼玉県による分譲マンションアドバイザーの無料派遣です。これは、市が独自の派遣制度を整えるまでの間、県が対象市のマンション管理組合へアドバイザーを無料で派遣する仕組みで、三郷市はこの対象市に含まれています。
令和8年度の派遣回数の目安は県全体で13組合程度、申請期間は令和8年(2026年)4月1日から12月11日までですが、予算の上限(令和8年度は13件)に達すると期間内でも受付を終了します。数に限りがあるため、活用を考える組合さまは早めに動くのが得策です。申請は埼玉県の電子申請・届出サービスからオンラインで行えます。
マンション管理士などの専門家が、長期修繕計画の見直し、修繕積立金の適正化、合意形成の進め方といった、理事会だけでは判断に迷いがちなテーマに助言をくれます。「管理計画認定を目指したいが、何から手をつければいいか分からない」という段階でこそ、この無料派遣は力を発揮します。窓口は埼玉県の住宅課(マンション居住支援担当)で、埼玉県住宅供給公社が運営に協力しています。
4. 住宅金融支援機構 共用部分リフォーム融資+すまい・る債
現金補助が薄い三郷市だからこそ、資金計画の柱として検討したいのが、独立行政法人住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資です。管理組合が借主となって大規模修繕の資金を借りられる制度で、返済期間は最長で長期にわたって設定できます。
ここでも管理計画認定が効きます。管理計画認定を取得していると、この融資の金利が引き下げられます。あわせて、計画的に積立てを行うための「マンションすまい・る債」を活用すれば、認定マンションは利率の上乗せも受けられます。積立てで貯めながら、足りない分を有利な条件で借りる——この2本立てが、無理のない資金計画の基本形です。最新の金利は毎月見直されますので、着工時期を検討する段階で機構のホームページをご確認ください。
5. 耐震の備え(木造戸建て制度・固定資産税の減額・そして「法律の武器」)
旧耐震(昭和56年5月31日以前)の建物をお持ちの組合さまには、耐震の話も避けて通れません。三郷市に関係する耐震の仕組みは、次のように整理できます。
まず、三郷市が独自に行っている木造一戸建て住宅の耐震診断・耐震改修補助制度です。令和8年度の受付はすでに始まっており、昭和56年5月31日以前に建てられた木造2階建て以下の一戸建て住宅が対象です。補助額は、耐震診断が費用の10分の10(上限10万円)、耐震改修が費用の3分の1(上限50万円)で、同時に行うリフォームにも補助があります。ただし、これは名前のとおり木造の一戸建て住宅が対象で、RC造・SRC造の分譲マンションの共用部は対象外です。ここは正直にお伝えしておきます。申請は事業の実施前(契約前)に行う必要があり、窓口は開発指導課 建築指導係(電話048-930-7743)です。
一方で、耐震改修を行った住宅には固定資産税の減額という後押しがあります。三郷市の資産税課の案内によれば、昭和57年1月1日以前から建っている住宅について、令和13年3月31日までに一定の耐震改修(費用50万円超)を行い、現行の耐震基準に適合すると、工事完了の翌年度分の固定資産税が2分の1減額されます(1戸あたり120平方メートル相当分まで)。適用には、増改築等工事証明書や住宅耐震改修証明書などを添えて、完了後3か月以内に資産税課へ申告が必要です。
では旧耐震のマンションは打つ手がないのかというと、そうではありません。ここで頼りになるのが「法律の武器」です。耐震改修促進法25条の認定を受けると、耐震改修に関わる共用部分の変更決議が、通常の「区分所有者および議決権の各4分の3以上」から「各過半数」へと緩和されます。合意形成の高いハードルを、法律の力で下げられるのです。同法17条・22条とあわせ、旧耐震のマンションで耐震と大規模修繕を一体で進めたい組合さまは、ぜひ選択肢に入れてください。
6. 使いにくい・使えないものも、正直に
「補助金一覧」を眺めると期待が膨らみますが、管理組合の共用部の大規模修繕に直接は使いにくいものも多いのが実情です。誤解のないよう、正直にお伝えします。
三郷市家庭用ゼロカーボン促進補助金は、脱炭素社会の実現に向けて、市内の自ら居住する個人住宅に太陽光発電や蓄電池などの省エネ・創エネ設備を導入した場合などに補助する制度で、太陽光発電と蓄電池をあわせて設置すると最大15万円といった内容です。ただしこれは市内に自ら居住する個人の住宅が対象で、あくまで各戸の省エネ設備向けと考えるのが正確です。分譲マンションの共用部の大規模修繕そのものに使う制度ではありませんし、共用部・管理組合名義での適用可否は環境の担当課へご確認ください。
木造一戸建て住宅の耐震診断・耐震改修補助制度も、前述のとおり木造戸建て向けで、RC・SRCの分譲マンション共用部は対象外です。
そして、繰り返しになりますが、三郷市が分譲マンションの大規模修繕工事費に直接現金を出す制度は、現時点で確認できていません。だからこそ、現金補助の有無だけで一喜一憂せず、認定・税制・融資・工法という「実質的な負担軽減」の全体で考えることが、三郷市では特に大切になります。
制度を使う「順番」——8つのステップ
制度は、バラバラに使うより「順番」が大事です。私が理事会でご案内している流れをまとめます。
- 管理状態の自己点検:長期修繕計画・修繕積立金・管理規約が認定基準を満たしているか確認する。
- 修繕積立金の健康診断:将来の工事費に対して積立てが足りているかを試算する。
- 積立金引上げの決議(必要な場合):令和3年9月1日以降の引上げは長寿命化税制の要件にも効く。
- 管理計画認定の申請:事前確認適合証を取り、システム上で市へ申請する。
- 大規模修繕の設計:外壁塗装・床防水・屋根防水を含む「3点セット」を計画に織り込む。
- 補助・融資の事前確認と申請:耐震関係の補助や機構融資は、必ず契約・着工の前に確認する。
- 施工:工法を最適化してコストと工期を抑える。
- 税の申告:工事完了後3か月以内に、長寿命化税制の減額申告を行う。
この順番で進めると、「認定→積立金の適正化→計画修繕→税制と融資の優遇」が一本の道でつながります。
制度早見表(三郷市の管理組合さま向け)
| 制度・仕組み | 内容の要点 | 主な窓口 |
|---|---|---|
| マンション管理計画認定制度 | 令和6年4月開始。市への申請手数料無料(システム利用料等は別)。有効5年 | 都市デザイン課 住宅政策係 048-930-7833 |
| マンション長寿命化促進税制 | 翌年度の固定資産税を減額(100㎡まで)。〜令和9年3月完了分。割合は要確認 | 資産税課 家屋係 048-930-7709 |
| 埼玉県アドバイザー無料派遣 | 三郷市は対象市。令和8年度は県全体で13組合目安 | 埼玉県 住宅課 |
| 機構 共用部分リフォーム融資 | 認定で金利引下げ+すまい・る債利率上乗せ | 住宅金融支援機構 |
| 木造戸建て耐震補助 | 診断上限10万円・改修上限50万円。マンション共用部は対象外 | 開発指導課 建築指導係 048-930-7743 |
※金額・割合・期限は年度や予算により変わります。申請前に必ず各窓口でご確認ください。
モデルケースで考える(三郷市の2つの想定)
ケースA:三郷中央駅周辺 築28年・11階建て・48戸(新耐震)
つくばエクスプレス三郷中央駅にほど近い、築28年・48戸のマンションを想定します。2回目の大規模修繕で外壁・防水を一体で計画。管理計画認定を取得したうえで、外壁塗装・床防水・屋根防水の3点セットを実施すれば、翌年度の固定資産税が減額される長寿命化税制の対象になり得ます。工法は、全面足場ではなく足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法を採用。仮に全面足場で9,000万円だった工事が、条件次第で7,800万円程度(およそ13%減)まで圧縮できるケースもあります。浮いた原資を次期の積立てに回す、という発想です。
ケースB:市街地 築44年・5階建て・18戸(旧耐震)
もう一つは、築44年・18戸の旧耐震マンション。ここは耐震改修促進法25条の認定を活用し、共用部変更の決議を各過半数へと緩和して合意形成を進めます。足場架設が難しい立地であれば、ロープアクセス工法(無足場工法)を中心に据え、機構の共用部分リフォーム融資で資金を手当てする——という組み立てが現実的です。旧耐震だからと諦めず、法律と工法と融資を重ねれば、道は開けます。
修繕積立金が足りないとき——4つの打ち手
「積立金が足りない」というご相談には、私はいつも4つの打ち手をお伝えしています。第一に、工法の最適化でそもそもの工事費を下げること。第二に、工事範囲の優先順位づけで、いま必ずやるべき部位と先送りできる部位を仕分けること。第三に、機構融資の活用で不足分を有利な条件で借りること。第四に、段階的な積立金の引上げで将来に備えること。この4つを組み合わせれば、「一気に大増額」という総会で最も揉めがちな結論を避けやすくなります。
合意形成を進める3つのコツ
大規模修繕は、技術より合意形成でつまずくことがほとんどです。私が現場で効果を感じている3つのコツをご紹介します。ひとつ目は、総額でなく「1戸あたり月額」に換算して示すこと。数千万円という総額は身構えられますが、月額に直すと納得が得られやすくなります。ふたつ目は、反対意見を先に拾うこと。総会でぶつける前に、懸念のある方の声を個別に聞いておくと、当日の紛糾を防げます。みっつ目は、工法の選択肢を見せること。足場・ロープアクセス・ハイブリッドという選択肢と、それぞれの金額・工期・生活への影響を並べて示すと、住民の皆さまが「自分たちで選んだ」という納得感を持てます。
なぜ「いま」動くべきか
理由は2つあります。ひとつは、建物の劣化は待ってくれないこと。外壁のひび割れやタイルの浮きは、放置すれば剥落事故のリスクに直結し、対応が遅れるほど工事費もかさみます。もうひとつは、制度には期限と予算枠があること。長寿命化税制は令和9年3月末の完了分まで(延長の動きはありますが最新の運用は要確認)、埼玉県のアドバイザー派遣も予算に達すれば締め切られます。「いつかやる」ではなく、「この年度のうちに段取りを組む」。それが、結果として組合の負担を最も軽くします。
よくあるご質問(三郷市の管理組合さまから)
Q. 三郷市には、大規模修繕の工事費そのものに出る補助金はないのですか。
現時点で、三郷市が分譲マンションの大規模修繕工事費に直接現金を出す制度は確認できていません。ただし、管理計画認定を前提とした固定資産税の減額(長寿命化促進税制)や、機構融資の金利引下げなど、実質的な負担軽減につながる仕組みは用意されています。現金補助の有無だけで判断せず、税制と融資まで含めて全体で考えることをおすすめします。
Q. うちは新耐震のマンションですが、使える制度はありますか。
はい。木造向けの耐震補助は旧耐震の戸建てが対象ですが、管理計画認定、長寿命化促進税制、埼玉県の無料アドバイザー派遣、そして大規模修繕そのものの工法最適化は、新耐震のマンションでも十分に検討価値があります。
Q. 管理計画認定は難しそうです。何から始めればいいですか。
まずは長期修繕計画と修繕積立金、管理規約が認定基準を満たしているかの自己点検からです。ここで課題が見えたら、三郷市が対象市になっている埼玉県の無料アドバイザー派遣を活用して専門家に相談するのが近道です。総会の前段階の整理だけでも、私たちがお力になれることがあります。
Q. 相見積もりを取ったのに、金額がバラバラで比べられません。
原因の多くは、工事範囲・仕様・工法の前提がそろっていないことにあります。A社は全面足場、B社は一部ロープアクセス、C社は仕様グレードが違う——これでは金額だけを並べても意味がありません。相見積もりの前に「どの範囲を、どの工法の前提で、どの仕様でやるのか」という土俵をそろえておくことが大切です。
3つの工法から、建物にとってのベストを
最後に、私たちの仕事の話を少しだけ。私たちは、大規模修繕を通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法という3つの工法から、建物の形状・立地・ご予算に応じて最適なものをご提案できる、日本でも数少ない会社です。
三郷市のマンションのように、隣地との距離が近い、あるいは早く終わらせて住民の生活への影響を抑えたい、という現場では、足場を架けないロープアクセス工法が力を発揮します。足場の設置・解体の費用と期間を抑えられ、防犯面の不安も小さく、居住者の生活への影響を最小限にできるからです。一方で、全面的に足場が必要な工事もあります。だからこそ、部位ごとに使い分けるハイブリッド工法で、総合的なコストと工期のバランスを最適化する——ここに、3つの工法を持つ私たちの強みがあります。
なお、私たちは全国の建設業を支援する一般社団法人全国建設業支援協会(JCSA)の運営にも携わっており、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職と連携しながら、高品質で無理のない大規模修繕をご提案しています。制度は年度で変わり、予算枠にも限りがあります。まずは理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。そして工事の契約前に、一度ご相談ください。総会にかける前の資料づくりの段階から、私たちがお手伝いできることは少なくありません。お問合せフォームから、お気軽にどうぞ。
大規模修繕の進め方や工法の違いについては、大規模修繕を安く抑える考え方、ロープアクセス工法について、私たちの3つの工法、管理組合さまへのサービスもあわせてご覧ください。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 三郷市「マンション管理計画認定制度」
- 三郷市「三郷市マンション管理適正化推進計画」
- 三郷市 資産税課「よくある質問(住宅耐震改修等に伴う固定資産税の減額)」
- 三郷市「木造一戸建て住宅の耐震診断・耐震改修補助制度」
- 埼玉県「市部における埼玉県分譲マンションアドバイザーの無料派遣について」
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」
- 住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資の融資金利について」
本記事は2026年7月時点で公開されている公的情報にもとづいて作成しています。補助率・上限額・期限・減額割合などは年度や予算の状況により変更される場合があります。申請前に必ず各窓口の最新情報をご確認ください。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
飯能市マンション補助金2026|管理組合向けガイド
「うちの市はお金がないから」で終わらせない――飯能市の管理組合が使える制度
大規模修繕の現場に立って、もうすぐ20年になります。管理組合の理事長さまとお話ししていると、飯能市では決まってこんな言葉が出ます。「うちの市は財政が厳しいから、補助金なんて期待できないでしょう」。
正直に申し上げます。この感覚は、半分は当たっています。飯能市は緊急財政対策を続けている自治体で、住宅用の省エネ設備補助金は現在休止中です。市が管理組合に現金を配る制度は、いま非常に薄い。ここを隠してもしかたがないので、先にはっきり書いておきます。
ですが、残りの半分は違います。市の外側――つまり国と埼玉県、そして住宅金融支援機構には、飯能市の分譲マンション管理組合が今すぐ使える制度がちゃんと残っています。市の財政に左右されない制度です。むしろ「市の現金補助が薄い街ほど、工事そのもののコストを下げる工夫が効く」というのが、私が現場で得た結論です。
この記事では、飯能市(埼玉県南西部・西武池袋線とJR八高線が走り、池袋まで約50分・ムーミンバレーパークやメッツァで知られる森林文化都市・人口約7.8万)の分譲マンション管理組合に向けて、2026年(令和8年度)にどの制度がどこまで使えるのかを、職人の目線で正直に整理します。数字と期日には必ず出典を付け、断定できないところは「要確認」とそのまま書きます。ここからが本題です。
【正直な話】飯能市の「市の直接補助」はいま薄い
最初に、期待とのギャップを埋めておきます。飯能市が市の予算で直接出している住宅系の補助は、2026年時点で次のような状況です。
まず、住宅用省エネ設備推進補助金(太陽光発電・蓄電池・エネファームなどへの補助)は、飯能市緊急財政対策により休止中で、再開は未定です(出典:飯能市 住宅用省エネ設備推進補助制度)。かつては太陽光1万円/kW(上限5万円)、蓄電池10万円といった補助がありましたが、いまは動いていません。省エネ設備そのものが分譲マンションの共用部と相性が良いとは限りませんが、「市に補助制度がある」という前提では話が進まない、ということです。
次に、木造住宅耐震診断・耐震改修補助金は動いていますが、これは名前のとおり木造住宅向けで、RC造・SRC造の分譲マンション共用部は対象外です(詳しくは後述します)。
つまり、飯能市の窓口に「大規模修繕の工事費に補助はありますか」と聞いても、現時点で「これに直接使えます」と即答できる現金補助は、私が調べた限り見当たりません。ここは正直にお伝えします。
では打つ手なしかというと、まったくそんなことはありません。むしろ本命は次章からの「市の外側の制度」です。市の財政状況とは無関係に、国と県と機構が用意している武器を、順番に見ていきましょう。
国のマンション長寿命化促進税制――いちばん大きい武器
飯能市の管理組合にとって、金額的にいちばん大きいのが、国が2023年(令和5年)に始めた「マンション長寿命化促進税制」です。これは市の財政とは関係なく、国の制度なので飯能市のマンションも対象になり得ます。
仕組みはシンプルです。一定の要件を満たすマンションが、長寿命化に資する大規模修繕(2回目以降)を行うと、工事が完了した翌年度分の建物の固定資産税が減額されます(出典:国土交通省 マンション長寿命化促進税制)。大規模修繕という「どのみち避けられない出費」に、税の見返りが付くわけです。
対象になるための主な要件
主な要件を整理すると、次のとおりです。
- 築20年以上が経過している
- 総戸数10戸以上
- 過去に1度以上、長寿命化工事(外壁塗装等・床防水・屋根防水のすべて)を実施済み
- 令和5年4月1日から令和9年3月31日までに、2回目以降の長寿命化工事を完了
- 令和3年9月1日以降に、長期修繕計画全体での修繕積立金の平均額を認定基準以上に引き上げている(または助言・指導を受けている)
- 工事完了から3か月以内に必要書類を提出して申告する
ここで見落とされがちなのが、「過去に1度以上、外壁塗装・床防水・屋根防水のすべてを実施済み」という条件です。つまり、この税制は1回目の大規模修繕では使えず、2回目以降の工事が対象になります。飯能市でも築25年、30年と歴を重ねた分譲マンションはこれに当てはまるところが多いはずです。ご自身のマンションが過去にどの工事をいつやったのか、修繕履歴を一度そろえておくと、要件に当たるかどうかがすぐ判断できます。私は理事会にお邪魔したとき、まずこの修繕履歴の棚卸しからお願いすることが多いです。
減額割合は「要確認」――思い込みは禁物
減額の「割合」は、実は市町村の条例で1/6から1/2の範囲で定めることになっています。国の資料では2分の1減額を基本としつつ、自治体によって1/3のところも多く、割合は自治体ごとに違います。飯能市が何分の1で運用しているかは、私が確認した範囲では断定できません。ここは飯能市の固定資産税の担当課(資産税の担当窓口)へ「マンション長寿命化促進税制の減額割合と申告方法」を直接確認してください。「1/2のはずだ」と思い込んで動くと、後で数字が変わって理事会が混乱します。要確認、とはっきり書いておきます。
なお、この税制は令和9年3月31日完了分までが対象です。国は令和8年度の税制改正で延長する方針も報じられていますが、これも飯能市での最新の運用が確定情報ではありません。「延長されるはず」で計画を組まず、いまの期限を前提に逆算するのが安全です。
マンション管理計画認定制度――飯能市で申請できるか、まず確認
長寿命化税制の要件にも出てきた「認定」。これが次のテーマ、マンション管理計画認定制度です。
これは、管理規約・会計・長期修繕計画などが一定の基準を満たす管理組合を、自治体が「きちんと管理されているマンション」として認定する制度です(出典:国土交通省 管理計画認定制度)。認定を受けると、後述する住宅金融支援機構の融資金利が下がったり、すまい・る債の利率が上乗せされたり、長寿命化税制の入口になったりと、実利が連鎖します。
ただし、ここに飯能市ならではの注意点があります。この制度で認定を出せるのは、「マンション管理適正化推進計画」を作った自治体だけです。埼玉県の案内では、県が担当するのは町村部で、市に立地するマンションは各市役所の窓口へ、とされています。そして埼玉県は「市が制度を整備するまでの間」、飯能市を含む対象市に県のアドバイザーを派遣する、と説明しています(出典:埼玉県 マンション管理計画認定制度について)。
この「市が制度を整備するまでの間」という言い回しが重要です。つまり、飯能市が独自に推進計画を策定して認定の受付を始めているかどうかは、私が確認した時点でははっきりしません。すでに始めている近隣市もあれば、これからの市もあります。ですから飯能市の管理組合は、まず市の担当課(建築課・都市計画課など住宅政策の窓口)へ「飯能市で管理計画認定の申請ができる街になっていますか」と一本、電話で確認してください。ここを飛ばして手続きを進めると、時間を無駄にします。
もし飯能市がまだ認定を始めていない場合でも、公益財団法人マンション管理センターの「予備認定」など、準備を進めておく道はあります。認定は一日にして成らずで、長期修繕計画の見直しと積立金の適正化がセットで必要になります。申請できる街になった瞬間に動けるよう、いまから足元を固めておくのが賢いやり方です。
埼玉県の分譲マンションアドバイザー無料派遣――合意形成の助っ人
飯能市の管理組合にとって、地味ですが非常にありがたいのが、埼玉県の分譲マンションアドバイザー無料派遣です。
これは、埼玉県が埼玉県住宅供給公社と協力し、課題を抱える管理組合にマンション管理士などの専門家を無料で派遣する制度です(出典:埼玉県 分譲マンションアドバイザー派遣)。前章で触れたとおり、県は「市が制度を整備するまでの間、令和9年度まで」対象市のマンションにも派遣する、としており、飯能市はその対象市に挙げられています。
「専門家を呼ぶとお金がかかる」と身構える理事長さまが多いのですが、これは無料です。長期修繕計画の見直し、修繕積立金の妥当性、大規模修繕の進め方、合意形成のこじれ――こうした「総会の前に整理しておきたいこと」を、中立の立場のプロに相談できます。
私の経験上、大規模修繕でいちばん時間がかかるのは工事そのものではなく、住民の合意形成です。反対する方の多くは「業者の言い値ではないか」という不信が根っこにあります。そこに市や県の後ろ盾がある無料アドバイザーが一枚入るだけで、話の通りがまるで違ってきます。申請窓口は埼玉県都市整備部住宅課のマンション・居住支援担当です。使わない手はありません。
住宅金融支援機構の融資とすまい・る債――資金繰りの武器
制度の話が続いたので、お金の「借り方・貯め方」にも触れます。ここも市の財政とは無関係の、国系の仕組みです。
一つ目が、住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資です。管理組合として大規模修繕の資金を借りられる制度で、修繕積立金をきちんと積み立てている組合は融資金利が年0.2%引き下げられ、(公財)マンション管理センターに保証委託する場合は保証料も2割程度割引されます(出典:住宅金融支援機構 マンションすまい・る融資)。積立金が一時的に足りなくても、工事を先送りせずに進められる選択肢になります。
二つ目が、マンションすまい・る債です。これは積立金を計画的に育てるための債券で、1口50万円から、最大10回まで継続購入できます。そして2023年4月以降の新規応募分からは、先ほどの管理計画認定を取得すると債券の利率が上乗せされます(出典:住宅金融支援機構 マンションすまい・る債)。認定を取ると、税・融資・積立の三方向で得をする。制度がきれいに連鎖しているのがお分かりいただけると思います。
飯能市独自の利子補給のような上乗せは、私が確認した範囲では見当たりませんでした。ですが、この機構の仕組みは全国共通で使えます。積立金不足に悩む組合ほど、早めに一度、資金計画を機構の制度に当てはめて眺めてみてください。
耐震:飯能市の補助は木造戸建て向け、RCマンションは法律を武器に
耐震についても正直に整理します。飯能市には木造住宅耐震診断補助金(診断費用の2/3以内・上限5万円)と、木造住宅耐震改修補助金(改修費用の23%以内・市内業者施工なら上限30万円、市外業者なら上限20万円)があります(出典:飯能市 木造住宅の耐震改修補助金)。
ただし対象は、昭和56年5月31日以前に着工した2階建て以下の木造住宅などに限られます。RC造・SRC造の分譲マンションの共用部は、この補助の対象外です。ここを勘違いして「マンションの耐震にも30万円もらえる」と理事会で説明してしまうと、後で恥をかきます。
申請の注意点も共通です。診断は4月1日から翌年2月末まで、改修は4月1日から1月末までの受付で、いずれも工事の契約前に申請する必要があります。契約してしまった後では対象外です。木造の付属棟や集会所が別棟である場合など、対象になる可能性があるものは、飯能市建築課(042-973-2170)へ確認してください。
では旧耐震(昭和56年以前)のRC造マンションは打つ手なしか、というとそうではありません。武器は補助金ではなく「法律」です。耐震改修促進法第25条には、耐震性が不足すると認定されたマンションについて、共用部分の耐震改修の決議を「区分所有者と議決権の各4分の3以上」から「各過半数」に緩和する規定があります。合意のハードルを法律で下げられる、ということです。まず耐震診断を受けて現状を把握し、認定制度と組み合わせて進める。この順番が正解です。
使えない・使いにくいものを正直に
期待させておいて後で外すのがいちばん良くないので、飯能市で「使えない・使いにくい」ものも先に挙げておきます。
- 住宅用省エネ設備推進補助金:緊急財政対策により休止中。再開未定。
- 木造住宅耐震診断・改修補助、木造住宅建替え補助:いずれも木造戸建て等が対象で、RC/SRC分譲マンションの共用部は対象外。
- 大規模修繕の工事費そのものへの飯能市の直接現金補助:私が確認した範囲では見当たらない。
裏を返せば、飯能市の管理組合が頼るべきは「国の長寿命化税制」「県の無料アドバイザー」「機構の融資・すまい・る債」、そして次章の工法によるコスト圧縮――この4本柱だ、ということです。市の現金が薄いぶん、工事費そのものを下げる工夫が、いちばん効きます。
早見表:飯能市の管理組合が押さえる制度
| 制度 | 主体 | 管理組合での使いやすさ |
|---|---|---|
| マンション長寿命化促進税制 | 国 | ◎ 大規模修繕に直結。減額割合は飯能市へ要確認 |
| マンション管理計画認定制度 | 市(推進計画策定が前提) | ○ 飯能市で申請可か要確認。税・融資の入口 |
| 分譲マンションアドバイザー無料派遣 | 埼玉県 | ◎ 無料。合意形成・計画見直しに有効 |
| 共用部分リフォーム融資・すまい・る債 | 住宅金融支援機構 | ○ 積立・認定で優遇。資金繰りの武器 |
| 木造住宅耐震診断・改修補助 | 飯能市 | △ 木造戸建て向け。RCマンション共用部は対象外 |
| 住宅用省エネ設備補助 | 飯能市 | × 緊急財政対策で休止中 |
ロープアクセス(無足場工法)が飯能のマンションと相性が良い理由
ここで工事側の話をします。飯能市のように市の現金補助が薄い街では、「そもそもの工事費をどう下げるか」が資産を守る最大の勝負どころになります。私たちが得意とするのが、ロープアクセス工法(産業用ロープで職人が壁面に下りて施工する、足場を組まない無足場工法)です。
足場を組まないから効く、3つのメリット
飯能のマンションと相性が良い理由は三つあります。
一つ目は、足場の仮設費・撤去費がまるごと不要になり、その分だけ総工事費を圧縮できること。大規模修繕では足場関連費が全体の2割前後を占めることも珍しくなく、ここを削れる意味は大きい。市の現金補助が薄い飯能市では、この「最初から下げる」効果がとりわけ効いてきます。
二つ目は、工期の短縮です。足場の組立・解体に取られる日数がなくなるので、居住者の生活が制約される期間が短くなります。共働きのご家庭が多いマンションほど、この差は喜ばれます。
三つ目は、防犯面と生活影響の小ささです。足場は空き巣の侵入経路にもなりがちですが、無足場なら窓の外に人が張り付く期間が最小限で済みます。バルコニーの物干しや窓の開閉を、長期間止めずに済むのも喜ばれます。
以前、奥武蔵の傾斜地に建つあるマンションで、足場を組むと隣地との距離が足りず設置費が跳ね上がる、という現場に出会いました。ロープアクセスに切り替えたことで足場問題そのものが消え、住民の駐車場も塞がずに済みました。立地に癖のある飯能だからこそ、無足場という選択肢を持っているかどうかで、結果が大きく変わります。
もちろん、すべてをロープアクセスでやるべきだとは申しません。建物の形状や劣化の程度によっては、足場が必要な部位もあります。だからこそ私たちは、足場・ロープアクセス・その両方を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法まで含めて、建物に一番合う組み合わせを提案しています。3つの工法から選べる会社は、日本でもそう多くありません。工法の詳しい説明はロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介にまとめています。
制度と工事を組み合わせる――使う順番8ステップ
制度は、使う順番を間違えると取りこぼします。飯能市の管理組合に私がお勧めする順番はこうです。
- 飯能市の窓口へ「管理計画認定の申請ができる街か」を電話で確認する
- 長期修繕計画と修繕積立金の「健康診断」をする(埼玉県の無料アドバイザーを活用)
- 必要なら修繕積立金の引き上げを総会で決議する
- 認定が可能なら管理計画認定を申請する(できない街なら予備認定で準備)
- 大規模修繕の設計で、外壁塗装・床防水・屋根防水の3点セットを長寿命化税制の要件に合わせる
- 補助や融資は必ず「契約前」に申請・審査を通す
- 工法(足場・ロープアクセス・ハイブリッド)を比較して工事費を最適化して施工する
- 工事完了から3か月以内に、長寿命化税制の減額を申告する
この順番で動けば、税・融資・積立・工法の4つが1本の道につながります。バラバラに手を付けるより、確実に得をします。
とくに大事なのが「契約前に申請」という鉄則です。補助や融資、そして各種の要件確認は、工事契約を結んでしまった後では間に合わないものが少なくありません。良い施工会社を見つけて気持ちが前のめりになったときこそ、いったん立ち止まって申請の順番を確認してください。私はいつも理事長さまに、「制度は、契約の判子を押す前がすべてです」とお伝えしています。
逆算で考える、年間のカレンダー
制度には受付期間があり、多くが年度単位(4月〜翌年2月・3月)で回っています。大規模修繕を来年度に控えている管理組合なら、いまの時期からこう逆算すると動きやすいはずです。まず夏から秋にかけて長期修繕計画と積立金を点検し、埼玉県の無料アドバイザーに相談する。冬までに総会で方針を固め、年明けから工法比較と見積もりを進める。そして新年度に入ったら、契約前に補助・融資・認定の手続きを走らせる。この流れに乗せておけば、期限切れで取りこぼす失敗が防げます。理事の任期は多くが1〜2年です。「次の代に丸投げ」にしないためにも、いま動ける準備だけは進めておきましょう。
モデルケースで見る、コストの動き
イメージが湧くよう、飯能市内を想定した2つのモデルケースを挙げます。金額は建物条件で大きく変わるため、あくまで考え方の例としてご覧ください。
ケース1:飯能駅周辺・築28年・11階建て・48戸・新耐震。足場を前提とした一般的な見積もりが9,000万円だったところ、外壁の状態を調査したうえで、開放廊下側は足場、外周はロープアクセスというハイブリッドに組み替え、約7,800万円まで圧縮できた想定です(およそ13%減)。3点セットを税制要件に合わせ、翌年度の固定資産税減額も申告します。
ケース2:市街地・築44年・5階建て・18戸・旧耐震。まず耐震診断を受け、耐震改修促進法25条の認定で合意形成のハードルを下げます。工事は足場が組みにくい立地のためロープアクセス中心とし、機構の共用部分リフォーム融資で資金を手当てする想定です。
どちらも共通するのは、「制度で戻る分」より「工法で最初から下げる分」のほうが金額が大きいことです。だから私は、制度探しと同じ熱量で工法の比較をお勧めしています。
修繕積立金が足りない――そのときの4つの打ち手
飯能市に限らず、いちばん多いご相談が積立金不足です。打ち手は主に4つあります。
一つ、修繕積立金の段階的な引き上げを総会で決議する。長寿命化税制や認定の要件にもつながります。二つ、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資で不足分を借りる。三つ、工事の優先順位を専門家と整理し、いま必要な部位に絞る。四つ、ロープアクセスやハイブリッドで工事費そのものを下げる。
「積立金が足りないから工事を先送り」がいちばん危険です。爆裂やタイルの浮きは、放置するほど補修範囲が広がり、結局は高くつきます。劣化がまだ部分的なうちなら、必要な箇所だけを直すピンポイント補修という選択肢で、全面改修を先送りしながら建物を守ることもできます。まず現状を把握するところから始めてください。合意形成でお困りなら、管理組合さま向けのご案内もご覧ください。
合意形成のコツ3点
最後に、総会を通すための現場のコツを3つだけ。
一つ目、金額は「総額」ではなく「1戸あたり月いくら」に換算して見せる。総額9,000万円より、戸あたり月◯円のほうが、住民の実感に届きます。二つ目、反対しそうな論点を先に拾う。「業者の言い値では」という不安には、相見積もりと工法比較の資料で正面から答えます。三つ目、工法の選択肢を見せる。足場ありきではなく、ロープアクセスやハイブリッドという選択肢があると分かるだけで、「安くする努力をしている」という信頼が生まれます。
もう一つ付け加えるなら、専門家の力を借りることをためらわないでください。理事は住民のボランティアであって、修繕や税制の専門家ではありません。分からないことを分からないまま総会にかけると、必ずどこかで話がこじれます。埼玉県の無料アドバイザーや、私たちのような施工会社を「使える駒」として上手に活用する理事会ほど、話がまとまるのが早い。これは飯能に限らず、20年見てきて例外がありません。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 飯能市には大規模修繕の工事費に使える市の補助金はありますか。
A. 私が確認した範囲では、工事費そのものへの飯能市の直接現金補助は見当たりません。市の省エネ補助は休止中、耐震補助は木造戸建て向けです。頼るのは国の長寿命化税制、県の無料アドバイザー、機構の融資が中心になります。
Q. マンション長寿命化促進税制で、飯能市はいくら減額されますか。
A. 減額割合は市町村の条例で1/6〜1/2の範囲で定められ、自治体ごとに違います。飯能市の割合は要確認です。固定資産税の担当課へ直接お問い合わせください。
Q. 飯能市で管理計画認定は申請できますか。
A. 認定を出せるのは推進計画を策定した自治体です。埼玉県は「市が制度を整備するまでの間」飯能市へアドバイザーを派遣すると案内しており、飯能市が独自に受付を始めているかは要確認です。まず市の担当課へご確認ください。
Q. 埼玉県の無料アドバイザーは本当に無料ですか。
A. はい。埼玉県が住宅供給公社と協力して派遣する制度で、対象市の管理組合は無料で利用できます。長期修繕計画や合意形成の相談に使えます。
Q. 旧耐震のマンションで耐震改修の合意が取れません。
A. 耐震改修促進法25条の認定を受けると、共用部分の耐震改修の決議要件が各過半数に緩和されます。まず耐震診断から始めてください。
Q. 積立金が足りなくても工事はできますか。
A. 機構の共用部分リフォーム融資という選択肢があります。あわせてロープアクセス等で工事費を下げれば、先送りせずに進められる場合が多いです。
Q. ロープアクセスはどんな建物でも使えますか。
A. 万能ではありません。形状や劣化状況によっては足場が適する部位もあります。だからこそ足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つから、建物ごとに最適な組み合わせを選ぶことが大切です。
Q. 相談だけでも大丈夫ですか。
A. もちろんです。総会前の整理だけでもお力になれます。
明誠がお手伝いできること
私たち株式会社明誠は、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つの工法から建物に最適な形で提案できる、日本でも数少ない会社です。日本初のロープアクセス工事のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟することで、高品質と低価格を両立しています。
また、当社は一般社団法人全国建設業支援協会(JCSA)を運営し、建設業の経営支援やビジネスマッチングにも取り組んでいます。飯能市の管理組合さまはもちろん、飯能・日高・入間・所沢・青梅といった周辺エリアまで対応しています。
制度は市の財政に左右されますが、工事費を下げる工夫と、国・県・機構の制度の組み合わせ方は、街が変わっても使えます。飯能市の管理組合さまは、まず「認定が申請できる街か」の確認と、「長期修繕計画の健康診断」から始めてみてください。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームからお気軽にどうぞ。
出典・参考資料
- 国土交通省 マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)
- 国土交通省 管理計画認定制度
- 埼玉県 マンション管理計画認定制度について
- 埼玉県 分譲マンションアドバイザー派遣
- 飯能市 木造住宅の耐震改修補助金
- 飯能市 住宅用省エネ設備推進補助制度(休止中)
- 住宅金融支援機構 マンションすまい・る融資(管理組合申込み)
- 住宅金融支援機構 マンションすまい・る債
※本記事の補助金額・要件・期日・減額割合は執筆時点の情報です。飯能市緊急財政対策による制度の休止・変更や、認定制度の運用状況は変わり得ます。申請前に必ず各窓口の最新情報をご確認ください。
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狭山市マンション補助金2026|管理組合が使える制度
この記事でわかること(3行まとめ)
大規模修繕の見積書を前に、「この金額のまま総会にかけていいのか」と手が止まった理事長さまは多いはずです。私はマンションやビルの大規模修繕の現場に20年近く立ってきましたが、埼玉県狭山市の管理組合さまからのご相談で一番多いのが、まさにこの「修繕積立金と工事費のにらめっこ」です。
正直に申し上げます。狭山市には、東京23区のように「分譲マンションの大規模修繕そのものに何百万円も出ます」という華やかな補助金は、残念ながらありません。それでも、耐震・管理体制・税制という切り口で見れば、管理組合さまが使える公的な支援は確かに存在します。まず結論からお伝えすると、狭山市のマンション管理組合さまが押さえるべき柱は次の3つです。
- 区分所有共同住宅の耐震改修工事補助金:旧耐震(昭和56年5月31日以前)のマンションなら、耐震改修工事の費用の一部が補助されます。
- 狭山市マンション管理計画認定制度:直接お金が出る制度ではありませんが、住宅ローン金利や国の税制優遇の「入口」になります。
- マンション長寿命化促進税制:大規模修繕を計画的に重ねてきた組合ほど、固定資産税の減額という形で報われます。
ここに省エネ補助(後述のとおり注意点あり)と埼玉県の支援を組み合わせ、資産価値の維持という長い視点で組み立てていく——これが私のおすすめする考え方です。それでは、私が理事会で説明するときと同じ順番で見ていきましょう。
1. 区分所有共同住宅の耐震改修工事補助金(旧耐震マンションの最優先チェック)
狭山市で、分譲マンションの管理組合さまが「工事費そのもの」に対して補助を受けられる、数少ない制度がこれです。正式には「狭山市建築物耐震改修促進事業補助金」といい、区分所有共同住宅(分譲マンション)向けの案内が別途用意されています。私は旧耐震マンションの理事長さまには、まずこの制度からお話しするようにしています。
対象になるマンション
対象になるのは、昭和56年5月31日以前に建築確認を受けて建築された区分所有共同住宅(分譲マンション)です。昭和56年(1981年)6月に建築基準法の耐震基準が大きく変わりました。この日付より前に確認を受けた建物は、現行の「新耐震基準」を満たしていない可能性があるため、耐震改修の支援対象になります。
ただし、マンションならどこでも使えるわけではありません。狭山市の要綱では、次の条件がそろっている必要があります。
- 全戸数(居住用のすべての戸数)の半数以上に、区分所有者またはその2親等以内の親族が居住していること。
- 区分所有者の集会(総会)で、耐震改修工事の実施が決議されていること。
- 耐震診断の結果、耐震改修工事を行う必要があると公的機関等の判定を受けていること。
ここでいう耐震性能の目安は、一般診断法または精密診断法による耐震指標(Is値など)が0.6以上を確保できること、そして地盤・基礎が安全であることの確認です。投資用の区分所有が多い物件だと「半数以上が居住」の要件で引っかかりやすいので、そこは早めに確認しておいてください。
補助の中身(改修工事費の23パーセント・200万円まで)
補助金の額は、市の交付要綱で次のように定められています。
| 区分 | 補助率 | 補助限度額 |
|---|---|---|
| 耐震改修工事 | 工事に要した費用の額の100分の23.0(1,000円未満切り捨て) | 1棟につき200万円 |
たとえば耐震改修工事に1,000万円かかった場合、その23パーセントで230万円ですが、限度額の200万円が上限になります。注意点として、国が定める限度額もあわせて適用されます。予算枠を超えた時点で受付終了になる点も、要綱に明記されています。大規模修繕の総額から見れば一部ではありますが、耐震補強を伴う工事を検討している組合さまにとっては、決して小さくない金額です。
なお、この案内は「耐震改修工事」への補助が中心です。耐震診断そのものへの補助の有無や、その年度の予算状況は年度ごとに変わりますので、詳細は必ず建築審査課へ事前にご確認ください。私の経験上、旧耐震のマンションでは、まず精密な耐震診断を行い、公的機関の判定を取るところで数か月かかることが珍しくありません。診断の段取りから逆算しておかないと、補助の申請期間に間に合わない、という事態も起こり得ます。
見落としがちな「契約前申請」の鉄則
この制度で私が理事長さまに一番強くお伝えしているのが、申請より先に工事契約を結んではいけないという点です。狭山市の要綱では、補助金交付の手続きを行う前に耐震改修工事の契約を締結(=工事に着手)してしまうと、補助が受けられなくなります。
流れとしては、相談 → 交付申請 → 「交付適合通知書」の受理 → 耐震改修設計の契約 → 設計届 → 「交付決定通知書」の受理 → 工事契約 → 工事 → 中間検査 → 実績報告、という順番です。工事契約は交付決定通知書の交付日以降にする、という順序が絶対条件です。
スケジュールも要注意です。申請の受付期間は各年度の4月1日から12月10日まで。そして工事を完了し、申請年度の2月末日までに実績報告書を提出、補助金の請求は3月10日までという締切があります。設計から工事、書類作成までの期間を逆算すると、年度後半の駆け込みでは間に合わないことも多いのです。私は「思い立った年度の春先に、まず建築審査課に相談の電話を入れましょう」とお伝えしています。施工者は原則として市内に本店・営業所を持つ建設業者で、3者以上の入札または見積の徴集も求められます。加えて、補助を受けて改修した建物を工事後10年以内に取り壊し・譲渡・貸付けなどする場合は、市や国の承認が必要で、補助金の返還を求められることもあります。長く保有する前提の管理組合であれば通常は問題になりませんが、こうした条件も念頭に置いておいてください。
2. 狭山市マンション管理計画認定制度(お金より「信用」を取りにいく制度)
2つ目の柱は、令和6年(2024年)4月から狭山市で始まった「狭山市マンション管理計画認定制度」です。これは補助金ではありません。管理組合の運営・規約・経理・長期修繕計画などが一定の基準を満たしているかを、市が認定してくれる制度です。「うちのマンションは、きちんと管理されています」という公的なお墨付き、と考えるとわかりやすいと思います。
16の認定基準の勘所
認定基準は全部で16項目あります。細かい話は市の手引きに譲りますが、私が現場で「ここは特に効いてきますよ」とお伝えしているのは次のあたりです。
- 管理者等・監事が定められ、総会が年1回以上開かれていること(運営の基本)。
- 管理規約が作成され、緊急時の専有部立入りや修繕履歴の管理などが定められていること。
- 管理費と修繕積立金が明確に区分経理され、修繕積立金の3か月以上の滞納が全体の1割以内であること。
- 長期修繕計画が標準様式に準拠し、計画期間が30年以上で、その残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれていること。作成・見直しは7年以内。
裏を返すと、この認定を取りにいく過程そのものが、長期修繕計画と修繕積立金の健全化になります。私は「認定はゴールではなく、管理の健康診断です」とお伝えしています。
認定で開く「金利」と「税制」の扉
では、認定を取ると何が変わるのか。狭山市が挙げているメリットは、市場での評価が高まることに加えて、次のような実利です。
- 住宅金融支援機構の「フラット35」やマンション共用部分リフォーム融資の金利の引下げ措置が講じられる場合がある。
- 住宅金融支援機構の「マンションすまい・る債」の利率の上乗せ措置が講じられる場合がある。
- 長寿命化工事を行った場合の固定資産税の減額(次章の税制)につながる。
つまり、この認定は3つ目の柱である長寿命化促進税制の「入場券」の一つでもあるのです。ここが狭山市の制度設計のうまいところで、私はいつも理事長さまに「認定・大規模修繕・税制の3点セットで考えましょう」とお伝えしています。
手数料と更新のこと
気になる費用ですが、狭山市への認定申請手数料は無料です。ただし、申請には公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援システム」の利用料(2024年3月時点で10,000円)や、事前確認適合証の発行手数料などが別途かかります。申請にはマンション管理士や管理会社などに事前確認を依頼する4つのパターンがあり、いずれも事前確認適合証が必要です。認定は5年ごとに更新しないと効力を失う点も覚えておいてください。制度そのものの相談は、日本マンション管理士会連合会の相談ダイヤル(03-5801-0858)でも受け付けています。
3. マンション長寿命化促進税制(計画的に修繕してきた組合が報われる仕組み)
3つ目の柱は、令和5年度の税制改正で創設された国の制度、通称「マンション長寿命化促進税制」です。狭山市でも資産税課が案内しており、要件を満たすと、大規模修繕工事の翌年度の建物部分の固定資産税が減額されます。「計画的に修繕を積み重ねてきた組合が、税の面で報われる」制度だと考えてください。
対象になるための6つの要件
狭山市の案内をもとに、対象マンションの要件を整理すると次のとおりです。申告時点と、賦課期日(工事完了の翌年1月1日)時点の両方で満たしている必要があります。
- 築後20年以上が経過していること。
- 総戸数が10戸以上であること。
- 過去に長寿命化工事を行っていること(外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事のすべて)。
- 管理計画認定マンション、または助言・指導を受けた管理組合のマンションであること。
- 上記3の長寿命化工事を、令和5年4月1日から令和9年3月31日までに完了したこと。
- 居住用の専有部分の床面積の割合が2分の1以上あること。
4番の「管理計画認定マンション」の場合は、令和3年(2021年)9月1日以降に修繕積立金の額を認定基準まで引き上げたことも条件になります。ここで、2つ目の柱(管理計画認定)とつながってくるわけです。
減額の中身と、見落としがちな注意点
減額の内容は、工事完了年の翌年度分について、一戸当たり100平方メートルの床面積相当分まで、固定資産税額の3分の1を減額というものです。金額のインパクトは物件によりますが、10戸以上のマンションであれば全体で見て相応の効果になります。
一方で、注意点も正直にお伝えします。申告は工事完了日から3か月以内が期限で、これを過ぎると受けられません。減額されるのは固定資産税のみで、都市計画税は対象外です。このマンションにつき1度しか受けられません。さらに、耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修などの減額と同時には適用できません。だからこそ、どの制度をどの順番で使うかの設計が効いてきます。申告先は狭山市の資産税課です。
4. 省エネ・クリーンエネルギー補助(管理組合には使いにくい点を正直に)
「省エネ改修で補助は出ないの?」というご質問もよくいただきます。狭山市には2026年度(令和8年度)のクリーンエネルギー推進補助制度があり、太陽光発電設備や蓄電池の設置を後押ししています。「みんなのおうちに太陽光」といった共同購入事業も動いています。
ただ、ここは正直に申し上げます。この種の補助は基本的に市内の住宅(戸建て中心)で自ら居住する方を想定した制度設計であることが多く、分譲マンションの共用部の大規模修繕そのものに使えるとは限りません。金額や対象設備、申請条件は年度ごとに変わりますので、共用部での活用を検討する場合は、必ず市の公式ページと環境課で最新の対象範囲をご確認ください。私は「使えたらラッキー、くらいの位置づけで、耐震・管理計画認定・税制の3本柱を主役に据えましょう」とお伝えしています。
5. 埼玉県の支援もあわせて使う(アドバイザー派遣・相談)
狭山市の制度だけでなく、埼玉県の支援も忘れないでください。埼玉県には分譲マンションアドバイザーの無料派遣制度があり、課題を抱えている管理組合に専門家を派遣してくれます(市部・町村部それぞれに制度があります)。長期修繕計画や大規模修繕の進め方に迷ったとき、中立の専門家に入ってもらえるのは心強いものです。
さらに、埼玉県住宅供給公社の「住まい相談プラザ」では、毎週日曜日にJR大宮駅構内でマンション管理の相談を受け付けています(電話予約048-658-3017)。管理規約・総会・財務・滞納から、長期修繕計画・大規模修繕まで幅広く相談できます。実は、こうした助言・指導を受けたことが、前章の長寿命化促進税制の要件(助言・指導ルート)につながる場合もあります。制度は単独ではなく、線でつながっていると考えてください。
6. 制度を「工事のタイミング」に落とし込む(順番の設計)
ここまでの4つ(+県の支援)を、実際の大規模修繕にどう当てはめるか。私が理事会でよくお見せする「順番」を、シンプルに整理します。
まず、旧耐震(昭和56年5月31日以前)のマンションなら、耐震改修の要否を診断で見極めるのが出発点です。改修が必要なら、契約前申請の鉄則を守って耐震改修補助を狙います。次に、築20年を越えていて2回目以降の大規模修繕を計画しているなら、管理計画認定を取り、長寿命化促進税制の要件(外壁塗装・床防水・屋根防水をワンセットで実施)を意識して工事内容を組み立てます。ここで大事なのは、税制の要件になっている3工事を、別々の年度にバラバラでやるのではなく、計画的に組み合わせることです。
私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。というのも、制度の締切(令和9年3月31日)と、皆さまの修繕周期がかみ合うかどうかで、受けられる恩恵が大きく変わるからです。○月までに動けるかどうかが分かれ目になる、というのはこういう意味です。理事会で1分だけでも、この「順番」の話題を出してみてください。
具体的に、築25年・40戸のマンションを例にイメージしてみます。まず前年度までに管理計画認定を取得し、修繕積立金を認定基準まで引き上げておきます。そのうえで、次の大規模修繕で外壁塗装・床防水・屋根防水の3工事をワンセットで実施し、令和9年3月31日までに完了させる。すると、翌年度の建物固定資産税が3分の1減額される要件を満たせます。旧耐震であれば、これに耐震改修補助を重ねる検討も可能です。ポイントは、思いついた順にバラバラと工事するのではなく、「認定を先に」「税制の対象3工事はまとめて」「締切から逆算して」という段取りを、最初の長期修繕計画の見直しの段階で決めておくことです。ここがずれると、せっかくの制度を取りこぼしてしまいます。
7. 工法の選択が、資金計画そのものを変える
最後に、補助金や税制と同じくらい——いえ、それ以上に資金計画を左右する話をさせてください。それは工法の選択です。
大規模修繕というと、建物をぐるりと足場で囲む光景を思い浮かべる方が多いと思います。ですが、足場の架設・解体には相応の費用と工期がかかり、しかも足場があること自体が防犯面や生活面で居住者さまの負担になります。私たち明誠は、従来の足場を組む工法に加えて、産業用ロープで作業する無足場のロープアクセス工法、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、その建物にとって一番いい方法をご提案できる、日本でも数少ない会社です。
たとえば、外壁の傷みが一部に集中しているのに、その一部のためだけに全面足場を組むのはもったいない。そういうときはロープアクセスや部分的な施工で、足場費用と工期を圧縮できることがあります。逆に、全面的に手を入れるべき建物なら足場を主体にしたほうが結果的に安い場合もあります。大切なのは「足場ありき」で考えないことです。工法の選択肢が増えれば、限られた修繕積立金の中で、補助金や税制の恩恵を最大限に活かす余地も広がります。
もう一つ、狭山市周辺のように建物の形状や隣地との距離がまちまちな地域では、足場が組みにくい面や、逆に足場が必須の面が混在します。そこを一律に「全面足場」で見積もると、使わない足場にまでお金を払うことになりかねません。私はいつも、まず建物をぐるりと診て、面ごとに最適な工法を割り付けてから見積書を作ります。これがハイブリッド工法の考え方で、補助金や税制の効果を「土台の工事費」から底上げする発想です。
明誠のロープアクセス工法は、ロープアクセス工法のご紹介で詳しくご覧いただけます。大規模修繕の全体像は大規模修繕工事のご紹介、傷んだ箇所だけを狙って直すコスト重視の考え方はピンポイント施工のご紹介にまとめています。管理組合さま向けのご相談窓口は管理組合のみなさまへをご覧ください。
コラム:現場で見た「戸あたりいくら」の話
数字の話を、現場の肌感覚に翻訳しておきます。以前、築22年・50戸ほどのあるマンションで、2回目の大規模修繕をお手伝いしたことがあります(守秘のため物件は特定しません)。理事長さまが最初に気にされていたのは、やはり「戸あたりいくらになるのか」でした。
私はいつも、総額だけでなく「戸あたり換算」で一緒に見るようにしています。たとえば工事総額を戸数で割り、そこから補助金や税制の効果を差し引くと、1戸あたりの実質負担がぐっと現実的な数字になります。50戸のマンションで足場費用を圧縮できれば、その差は戸あたりで見ても決して小さくありません。理事会で反対の声が出るのは、たいてい「総額の大きさ」に驚くからです。戸あたりに割り戻し、制度の効果を重ねて見せると、議論が前に進みやすくなります。これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない実感です。
大規模修繕の周期と、動くべき時期
大規模修繕は一般に12年前後を一つの目安に周期が語られますが、これはあくまで目安です。海に近いか、日当たりや風の当たり方はどうか、前回どんな材料で施工したか——条件によって傷み方は大きく変わります。私は「12年だから」と機械的に動くのではなく、まず建物の状態を診てから計画を立てることをおすすめしています。
そのうえで、今回ご紹介した狭山市・国・埼玉県の制度には、それぞれ締切や年度の区切りがあります。特に長寿命化促進税制は令和9年3月31日という工事完了の期限が定められています。「うちの修繕周期と、制度の締切はかみ合っているか」。この視点を持って逆算するだけで、受けられる恩恵はずいぶん変わってきます。
よくある質問(狭山市の管理組合から寄せられる声)
現場で理事長さまからよくいただく質問を、Q&A形式でまとめておきます。
Q1. うちは新耐震のマンションですが、耐震改修補助は使えませんか。
残念ながら、狭山市の区分所有共同住宅耐震改修工事補助金は、昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた「旧耐震」の建物が対象です。新耐震のマンションは対象外になります。ただし、その場合でも管理計画認定制度や長寿命化促進税制は、築年数や工事内容の要件を満たせば活用できます。耐震補助が使えないからといって、公的支援が何もない、というわけではありません。
Q2. 補助金の申請は、管理会社に任せておけば大丈夫でしょうか。
管理会社さんが窓口になってくださること自体は心強いのですが、耐震改修補助では「交付決定通知の前に工事契約をしない」という順序が絶対条件です。ここは管理組合として仕組みを理解しておかないと、良かれと思って動いた結果、補助の対象外になってしまうことがあります。私は「任せきりにせず、締切と順番だけは理事会でも共有しましょう」とお伝えしています。
Q3. 修繕積立金が足りない状態でも、制度は使えますか。
制度そのものの利用と、積立金の充足は別の話です。ただ、管理計画認定の基準には修繕積立金の滞納が1割以内であることや、長期修繕計画の健全性が含まれています。積立金が心もとない場合は、まず埼玉県の分譲マンションアドバイザー派遣や住まい相談プラザで長期修繕計画を見直すところから始めるのが現実的です。その助言・指導が、長寿命化促進税制の要件につながることもあります。
Q4. 長寿命化促進税制は、どのくらい得なのでしょうか。
減額されるのは、工事完了の翌年度分について、一戸当たり100平方メートル相当分まで固定資産税額の3分の1です。1戸あたりの金額は評価額によりますが、10戸以上のマンション全体で見れば、まとまった効果になります。ただし都市計画税は対象外で、1マンションにつき1度だけ、他の減額との併用不可という制約があります。「大きく儲かる制度」というより「計画的に修繕してきたご褒美」と捉えるのが正確です。
Q5. まず何から始めればいいですか。
旧耐震のマンションなら耐震診断の要否確認から、それ以外なら長期修繕計画の点検からです。並行して、建物の実際の傷み具合を専門家に診てもらうと、工事の規模感と制度の当てはめがはっきりします。私たち明誠は、無料の建物調査とお見積りを承っています。「制度が使えるかどうかも含めて相談したい」で構いません。
まとめ:狭山市の管理組合が今日からできること
長くなりましたので、最後に要点を整理します。狭山市のマンション管理組合さまが押さえるべき柱は、①旧耐震マンションの耐震改修工事補助(改修費の23パーセント・200万円まで、契約前申請が鉄則)、②管理計画認定制度(手数料無料、金利・税制の入口)、③マンション長寿命化促進税制(翌年度の固定資産税を3分の1減額、令和9年3月まで)の3つ。ここに省エネ補助と埼玉県のアドバイザー派遣を組み合わせ、工法の選択で工事費そのものを最適化していく——この順番で考えれば、修繕積立金の不安はかなり整理できます。
制度は毎年のように細部が変わります。数字や期限は、必ず本記事末尾の公的な出典と、狭山市の各担当課でご確認ください。そして、工法や資金計画で迷ったときは、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。まずは無料の建物調査・お見積りから、お問い合わせフォームでお気軽にどうぞ。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 狭山市「(分譲マンション)区分所有共同住宅耐震改修工事 補助金制度のご案内(狭山市建築物耐震改修促進事業補助金交付要綱)」(建築審査課/電話04-2953-1111 内線2177)
- 狭山市「狭山市マンション管理計画認定制度について」(建築住宅課/電話04-2946-8234、更新日2026年6月11日)
- 狭山市「長寿命化に資する大規模修繕工事が行われたマンションに対する固定資産税の減額措置」(資産税課/電話04-2937-5145、更新日2026年5月29日)
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」
- 狭山市「2026年度狭山市クリーンエネルギー推進補助制度」(環境課)
- 埼玉県「市部における埼玉県分譲マンションアドバイザーの無料派遣について」/埼玉県住宅供給公社 住まい相談プラザ(電話予約048-658-3017)
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マンション大規模修繕に「住民なりすまし」が潜り込む時代——修繕委員会を狙う利益誘導の手口と、管理組合・収益物件オーナーが修繕積立金を守る7つの実務【2026年7月】
今朝、いつものようにニュースに目を通していて、思わず手が止まりました。「マンション住民なりすまし、工事関係者が大規模修繕で利益誘導」——。分譲マンションの大規模修繕を話し合う住民の会合に、住民になりすました人物が入り込んでいた、という報道です(出典:読売新聞オンライン(Yahoo!ニュース転載)、日本経済新聞)。
正直に申し上げます。私はこの見出しを、ただの事件記事として読み流すことができませんでした。私たちは日々、マンションやビルの大規模修繕の現場に立っています。だからこそ、「修繕委員会」という場所が、住民の皆さんにとってどれほど大切で、同時にどれほど無防備になりやすいかを、身をもって知っているからです。
大規模修繕は、多くのマンションにとって12年に一度前後、数千万円から、規模によっては億単位のお金が動く一大事業です。その原資は、区分所有者の皆さんが毎月コツコツ積み立ててきた修繕積立金です。今回明らかになったのは、その大きなお金の流れを狙って、「住民のふり」をして意思決定の中枢に潜り込む手口があった、という事実でした。
今日は、この「住民なりすまし」というニュースを入口にして、管理組合の理事長さま、修繕委員の皆さま、そして収益物件をお持ちのオーナーさまが、自分たちの積立金と資産価値を守るために、明日からできる発注ガバナンスの実務を、現場の言葉で7つに絞ってお話しします。特定の会社を告発する話でも、業界を煽る話でもありません。仕組みで身を守る、という前向きな話です。
何が起きたのか——修繕委員会に「住民のふり」をして潜り込む
まず、報道されている事実を整理します。
複数のマンションで、大規模修繕を話し合う住民の会合に、その建物の住民ではない人物が「住民」あるいは「住民の親族」を名乗って参加していた事案が相次いで確認された、という内容です。目的は、工事関係者が自社側に工事の発注を誘導すること。つまり、意思決定のテーブルに味方を送り込み、内側から発注先の選定を有利に運ぼうとした、というわけです(出典:読売新聞オンライン)。
報道によれば、神奈川県内のマンションでは、大阪の工事会社の社員2人が住民になりすまして大規模修繕委員会に加わり、住居侵入の疑いで逮捕される事案も起きています。修繕委員会は、多くの場合マンションの集会室など「居住者しか入れない共用部」で開かれます。そこに部外者が身分を偽って立ち入れば、住居侵入という刑事事件になり得る——ここは押さえておくべき点です。
私が現場の人間として恐ろしいと感じるのは、手口の巧妙さそのものよりも、「気づかれにくさ」です。大規模修繕委員会は、ふだん顔を合わせない住民同士が、ある日突然「委員」として集められる場でもあります。誰が誰だか正確には分からない。その隙間に、なりすましは入り込みます。
「チラシルート」という手口——謝礼と引き換えに情報が抜かれる
報道でとりわけ注目されたのが、「チラシルート」と呼ばれる情報収集の手口です。
読売新聞オンラインによれば、工事会社グループ内の市場調査会社が、ターゲットにしたマンションに「内部調査のアルバイト募集」といった趣旨のチラシをまき、応募してきた住民に月1万5000円程度の謝礼を支払う。その見返りに、大規模修繕に関する住民側の情報——検討状況、予算感、有力視されている業者、住民の温度感など——を吸い上げていた、とされています。そして、潜入担当者が「住民の親族」を装って修繕委員会に加わる、という流れです(出典:読売新聞オンライン)。
ここで起きているのは、情報の非対称性の悪用です。工事を受注したい側が、管理組合が手の内にしている情報を先回りで握る。すると、相見積もりを取っても、あたかも競争しているように見えて、実は結論が最初から誘導されている、という状態が生まれかねません。国も、こうした事案を受けて、管理組合の役員選任時などに本人確認を徹底するよう注意を呼びかけています(出典:読売新聞オンライン)。
謝礼を受け取った住民の多くは、「アンケートに答える簡単なアルバイト」くらいの認識だったのかもしれません。悪意なく協力してしまう。ここに、この手口の一番いやらしいところがあります。だからこそ、個人の善悪ではなく、組合の「仕組み」で防ぐ必要があるのです。
なぜ大規模修繕が狙われるのか——動くお金の大きさ
そもそも、なぜ大規模修繕がこれほど狙われるのでしょうか。答えはシンプルで、動くお金が大きいからです。
国土交通省が初めて実施した「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」では、工事金額の目安が公表されています。1回目の大規模修繕では、戸あたりの工事金額が100万円超〜125万円以下という帯が最も多いという結果でした(出典:国土交通省「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」報道発表)。仮に50戸のマンションなら、単純計算で工事総額は5000万円〜6000万円規模。100戸なら1億円を超えます。
これだけの金額が、12年前後に一度、一つの意思決定の場——修繕委員会と総会——で決まっていきます。受注できるかどうかで、一社の売上が大きく変わる。だからこそ、正攻法で選ばれる努力をする会社もあれば、残念ながら裏口から入ろうとする者も出てくる。修繕積立金というまとまったお金の周りには、常にこうした緊張があると考えておいた方が、組合を守るうえでは健全です。
背景にある構造問題——談合とバックマージンの「死角」
「住民なりすまし」は、突然湧いて出た話ではありません。その背景には、大規模修繕という市場が長年抱えてきた構造問題があります。
2026年には、マンションの大規模修繕工事をめぐって談合を繰り返したとして、公正取引委員会が施工会社と設計コンサルタント計約40社の独占禁止法違反を認定し、うち38社に排除措置命令を出す方針を固め、計約16億円規模の課徴金納付も命じる——という報道がありました。各社は遅くとも2021年秋ごろ以降、関東地方のマンションを対象に、見積もり合わせや入札の際に事前調整で受注者や価格を決めていたとされています(出典:毎日新聞(Yahoo!ニュース転載))。この件は、当ブログでも6月に詳しく取り上げました(関連記事:マンション大規模修繕で16億円の談合課徴金——設計コンサル方式の死角と発注先の見極め方)。
実は、国土交通省はこうした事態に、かなり前から警鐘を鳴らしていました。2017年(平成29年)1月には「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」という通知を出し、「一部のコンサルタントが、自社にバックマージンを支払う施工会社が受注できるように不適切な工作を行い、割高な工事費や過剰な工事項目・仕様の設定等に基づく発注等を誘導する」事例があると、はっきり指摘しています(出典:国土交通省「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」)。
談合、バックマージン、そして今回のなりすまし。手口は違っても、狙いは一つです。管理組合が持っている「情報」と「意思決定」を、外側からコントロールすること。裏を返せば、組合がこの二つをしっかり自分の手に握っておけば、これらの手口はぐっと効きにくくなる、ということでもあります。
発注方式の基礎——「責任施工方式」と「設計監理方式」、それぞれの落とし穴
守りの実務に入る前に、土台となる「発注方式」を押さえておきます。ここを理解しないと、防衛線の意味が伝わらないからです。
マンション大規模修繕の発注方式は、大きく「責任施工方式」と「設計監理方式」の2つに整理されます。
責任施工方式は、建物の調査診断から工事の設計、施工までを、施工会社に一貫して任せる方式です。管理組合の理事会や修繕委員会が主体となり、数社を公募・比較して発注先を決めます。窓口が一本化されて話が早い、設計監理の専門家費用がかからない、というメリットがあります。一方で、設計から施工まで一社が担うため、工事内容と費用の内訳が不明瞭になりやすく、工事費が割高になりやすい、という弱点も指摘されています。
設計監理方式は、建築士のいる設計事務所やコンサルタントに、調査診断・工事設計・工事監理を委託し、施工とは別の主体に任せる方式です。「診断・設計」と「施工」を分けることで、必要な工事を第三者の目で見極め、競争入札で施工会社を選べる。国土交通省も、工事と監理を分ける考え方を合理的なものとして位置づけています(出典:国土交通省「住宅:マンション管理」)。ただし、設計監理方式だからといって万能ではありません。今回の談合やバックマージンの多くは、まさにこの設計監理方式で「監理する側のコンサル」が中立でなかったために起きています。方式そのものではなく、「中立性が担保されているか」が本質なのです。
つまり、どちらの方式にも落とし穴があります。大切なのは方式の名前ではなく、「情報が開かれているか」「意思決定に部外者の利害が紛れ込んでいないか」です。ここからが、その具体策です。
守りの実務①:役員・修繕委員の「本人確認」と参加者名簿の徹底
最初の防衛線は、拍子抜けするほど基本的なことです。「その場にいる人が、本当にこのマンションの関係者か」を確認する仕組みを持つこと。
今回のなりすましが成立した最大の理由は、修繕委員会の参加者が「顔見知り前提」で運営され、本人確認がなかったことにあります。対策はこうです。修繕委員や理事を選任する際は、区分所有者名簿と照合し、代理出席の場合は委任状と続柄を確認する。委員会には毎回、署名式の出席簿を用意し、「誰が」「どの住戸の関係者として」参加したかを記録に残す。オブザーバーや業者の同席者も、氏名・所属を明示してもらう。
国土交通省の「マンション標準管理規約」も、役員が組合の利益のために職務を行うべきこと、そして利益相反の場面での慎重な取り扱いを求めています(出典:国土交通省「住宅:マンション管理」(標準管理規約))。名簿と出席簿という地味な一手間が、なりすましに対する最も効く一手だと、私は思います。
守りの実務②:利益相反ルールを明文化する(標準管理規約 第37条の2)
二つ目は、利益相反の見える化です。
マンション標準管理規約には、第37条の2として「役員の利益相反取引の防止」の規定があります。役員が自己または第三者のために管理組合と取引しようとするとき、あるいは組合と役員の利益が相反する取引をしようとするときは、理事会でその取引に関する重要な事実を開示し、承認を受けなければならない、という内容です。さらに、その決議に特別の利害関係を持つ理事は議決に加われない、とも定められています(出典:国土交通省「住宅:マンション管理」)。
これを、修繕委員会にも準用する運用を強くおすすめします。委員に就任する際、「特定の工事業者・コンサルと利害関係がないか」を自己申告してもらう。もし関係があるなら、その業者に関わる議決からは外れてもらう。この一手で、「住民の顔をした業者の代理人」が意思決定に加わる余地を大きく減らせます。ルールとして紙に書いてあること自体が、抑止力になります。
守りの実務③:情報を「閉じる」——検討状況を安易に外に出さない
三つ目は、情報管理です。「チラシルート」で抜かれていたのは、まさに検討中の内部情報でした。
大規模修繕の検討過程では、予算感、有力候補、住民の意見といったデリケートな情報が飛び交います。これらが外に漏れると、受注したい側は「刺さる提案」を先回りで作れてしまう。だからこそ、委員会資料の配布範囲を管理し、議事録の取り扱いを決め、住民向けアンケートも組合が自前で(あるいは信頼できる第三者を介して)実施することが大切です。「アルバイト」「謝礼」「内部調査」といった外部からの働きかけには、組合として警戒する——この温度感を共有しておくだけでも、抜かれ方は変わります。
念のため申し添えますが、住民の皆さんが情報提供のアルバイトに応じること自体を責める話ではありません。ほとんどの方は善意で、軽い気持ちで協力しているだけです。だからこそ、「そういう誘いがあり得る」と組合全体で知っておくことが、いちばんの予防になります。
守りの実務④:相見積もりは「同じ土俵」で——数量内訳書をそろえる
四つ目は、見積もりの取り方です。相見積もりは基本ですが、取り方を間違えると意味をなしません。
よくあるのが、各社バラバラの様式・バラバラの前提で見積もりを出させて、総額だけを比べてしまうケース。これでは、安く見える会社が本当に安いのか、単に工事項目を削っているだけなのかが分かりません。おすすめは、共通の「数量内訳書(同じ工事項目・同じ数量が並んだ様式)」を組合側で用意し、各社に同じ土俵で単価を入れてもらう方法です。こうすれば、項目ごとの単価で横並び比較ができ、過剰な仕様や不自然に安い項目が浮かび上がります。
一般的なマンション大規模修繕では、施工会社の選定に「見積もり合わせ」が採用されることが多いのですが、その精度は「様式をそろえられているか」で決まります。ここは、組合が主導権を握るべき一番の勘所です。
守りの実務⑤:材料費と労務費を「分けて」出してもらう
五つ目は、見積書の中身の話です。総額の一行だけでなく、材料費(材)と労務費(工)を分けて記載してもらいましょう。いわゆる「材工分離」です。
材工が分かれていると、値上げや値引きの理由が追えます。「塗料が高くなったので上がりました」なら材料費に、「職人の手間が増えました」なら労務費に反映されるはずです。ここが一括りの「一式」になっていると、どこにいくら乗っているのかが分からず、交渉の土台も、比較の土台も失われます。私たち株式会社明誠がお見積りを差し上げるときも、この材工の内訳をできる限り開くようにしています。数字を開くことは、信頼していただくための最低条件だと考えているからです。
守りの実務⑥:工事費の最大の塊「足場」を見直す——工法という選択肢
六つ目は、コスト構造そのものに踏み込む話です。
大規模修繕の見積書で、実は最も大きな塊のひとつが「仮設足場」です。建物の規模や形状にもよりますが、足場の設置・解体・養生が工事費に占める割合は決して小さくありません。ここにメスを入れずに、塗料のグレードだけで数万円を削っても、全体最適にはなりません(塗料そのものの値上げと見積対策については、マンション大規模修繕の塗料が「買えない・高い」時代に——見積書で張るべき5つの防衛線もあわせてご覧ください)。
そこで検討していただきたいのが、工法の選択肢です。株式会社明誠は、大規模修繕を次の3つの工法から、建物にとって最適なものを中立的にご提案しています。
一つ目は、従来型の仮設足場を組む「通常足場工法」。二つ目は、足場を組まずに産業用ロープで高所へ直接アプローチする「ロープアクセス工法(無足場工法)」。三つ目は、足場が必要な箇所にだけ足場を使い、それ以外はロープで施工する「ハイブリッド工法」です。ロープアクセス工法には、足場コストを削減できる、工期を短縮できる、そして入居者の生活や日照・防犯への影響が小さい、という3つの明確な利点があります。足場が長期間建物を覆うことによる圧迫感や、足場を伝った侵入リスクを避けられるのは、居住者の皆さんにとって想像以上に大きな安心です(詳しくは:ロープアクセス工法のご案内、大規模修繕サービス)。
「足場ありき」でも「ロープありき」でもなく、建物にとってベストな工法を選べること。この3つを提案できる会社は日本でも数少なく、私たちが最も大切にしている強みです(私たちの考え方:株式会社明誠のコンセプト)。
守りの実務⑦:収益物件オーナーの自衛——「他人任せ」が一番危ない
七つ目は、収益物件をお持ちのオーナーさま向けです。
区分マンションを複数戸お持ちの方、あるいは一棟をお持ちの方は、管理組合の理事会や修繕委員会に出席する時間がなかなか取れない、というのが実情だと思います。しかし、大規模修繕の適否は、そのまま物件の資産価値と将来のキャッシュフローに直結します。割高な工事や不要な工事に積立金が消えれば、いずれ一時金の徴収や積立金の値上げという形で、オーナーの負担に跳ね返ってきます。
一棟オーナーの場合は、意思決定を丸ごとご自身で担うことになります。だからこそ、発注方式の選択、相見積もりの様式づくり、材工分離、工法の比較といった一連のプロセスを、信頼できる施工会社と一緒に組み立てることが、そのまま防御になります。私たちは、オーナーさま向けに建物の無料調査からお引き受けしています(収益物件オーナーさま向けサービス)。「まず自分の建物が今どういう状態なのか」を客観的に知ることが、あらゆる自衛の出発点です。
正直に申し上げます——設計監理方式もコンサルも、悪ではありません
ここまで読んで、「では設計監理方式やコンサルは避けるべきなのか」と感じた方がいるかもしれません。そうではありません。
診断・設計と施工を分ける設計監理方式は、本来とても合理的な仕組みです。中立なコンサルタントが入れば、専門知識のない管理組合を強力に支えてくれます。問題は方式ではなく、「中立性が担保されているか」の一点です。誠実に仕事をしているコンサルタントや設計事務所は数多くいます。今日お話しした防衛線は、そうした信頼できるパートナーを、悪意ある一部と区別して見極めるための道具でもあります。業界全体を疑うのではなく、仕組みで健全さを担保する——その姿勢が、結果的に真面目な事業者を守ることにもつながると、私は信じています。
そしてもう一つ、正直に。ロープアクセス工法にも、向かない建物があります。外壁の劣化が激しく打診や下地補修の範囲が広い場合、バルコニーの形状が複雑で作業効率が著しく落ちる場合、あるいは足場を使った方がトータルで安全・確実な場合。こうしたケースでは、無理にロープを勧めることはしません。だからこそ、私たちは3つの工法を持ち、建物を見てから最適を選ぶのです。「うちはロープ専門です」という会社よりも、選択肢を持って中立に判断できる会社の方が、オーナーさまにとって安心だと考えています。
よくある質問
Q1. 修繕委員会に部外者がいるかどうか、どうやって見抜けばいいですか?
まずは出席簿と本人確認の仕組みを導入することです。「どの住戸の、誰の関係者か」を毎回記録し、区分所有者名簿と照合します。代理出席には委任状を求めます。見抜くというより、「なりすませない仕組み」を先に作るのが本筋です。
Q2. 相見積もりは何社くらい取ればよいですか?
一般には3社程度が目安とされますが、社数より「同じ数量内訳書で、同じ土俵で比較できているか」が重要です。バラバラの様式で10社集めるより、そろえた様式で3社を比べる方が、はるかに正確に判断できます。
Q3. すでにコンサルに委託していますが、中立性が不安です。
利益相反の自己申告書を求め、施工会社との資本・取引関係の開示を依頼してください。国土交通省は管理組合向けの相談窓口の周知も行っています(国土交通省 2017年通知)。第三者のセカンドオピニオンを取るのも有効です。
Q4. ロープアクセス工法にすると、本当に足場代は下がりますか?
足場の設置・解体・養生にかかる費用が抑えられるため、多くのケースでコスト削減につながります。ただし建物形状や工事範囲によって効果は変わります。まずは無料調査で、その建物に本当に合うかを見極めるのが確実です。
Q5. 入居者への影響は、足場とロープでどれくらい違いますか?
足場は建物を長期間覆うため、日照・通風・圧迫感に加え、足場を伝った侵入への防犯上の不安があります。ロープアクセスは足場を組まないため、こうした生活影響を小さく抑えられます。工期も短くなる傾向があり、賃貸物件では空室・退去リスクの低減にもつながります。
Q6. 明誠に相談すると、必ずロープアクセスを勧められませんか?
いいえ。私たちは3つの工法を持ち、建物にとって最適なものを中立にご提案します。足場が最適なら足場を、組み合わせが最適ならハイブリッドをお勧めします。まずは現状を知っていただくことを大切にしています(お問い合わせ)。
まとめ——積立金は「仕組み」で守る
「住民なりすまし」というニュースは、衝撃的な事件であると同時に、大規模修繕という市場が抱える構造——情報と意思決定を外から握ろうとする力——を、改めて可視化しました。談合も、バックマージンも、なりすましも、狙いは同じです。
だからこそ、守り方も一つに集約できます。管理組合とオーナーが、情報と意思決定を自分の手に握り、プロセスを開いておくこと。本人確認と出席簿、利益相反ルールの明文化、情報管理、そろえた様式での相見積もり、材工分離、工法という選択肢の検討、そしてオーナー自身の関与。今日の7つは、どれも特別な専門知識を必要としません。仕組みとして持つかどうか、それだけです。
私たち株式会社明誠は、3つの工法を中立にご提案できる立場から、皆さまの積立金と資産価値を守るお手伝いをしています。「うちの建物は今どういう状態で、どの工法が合うのか」——その最初の一歩として、建物の無料調査とお見積りをいつでもお引き受けします。相談だけでも構いません。気になることがあれば、お問い合わせページからお気軽にお声がけください。大切な積立金を、誰かの利益誘導のためではなく、皆さんの建物のために使い切る。そのお手伝いができれば、これに勝る喜びはありません。
出典・参考資料
- 読売新聞オンライン(Yahoo!ニュース転載)「マンション住民なりすまし、工事関係者が大規模修繕で利益誘導…チラシで報酬うたい代理人として会議に出席」 https://news.yahoo.co.jp/articles/b450bf2850b94cb551c26e5091107cc47f6e0d1e
- 日本経済新聞「マンション修繕不正、住人になりすまし利益誘導 渦中の社長に直撃」 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC283AW0Y6A420C2000000/
- 毎日新聞(Yahoo!ニュース転載)「マンション修繕談合、38社に排除命令へ 計16億円課徴金方針」 https://news.yahoo.co.jp/articles/5ea9e87a5718b6e476fa0be0807558072a4e8a37
- 国土交通省「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」(平成29年1月) https://www.mlit.go.jp/common/001230147.pdf
- 国土交通省「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」報道発表資料 https://www.mlit.go.jp/report/press/house06_hh_000154.html
- 国土交通省「住宅:マンション管理」(マンション標準管理規約 第37条の2 ほか) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html
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マンション大規模修繕の塗料が「買えない・高い」時代に——日本ペイントHDの1.4兆円買収提案が映す世界再編と、管理組合・収益物件オーナーが見積書で張るべき5つの防衛線【2026年7月】
今朝、いつものようにニュースに目を通していると、塗装業界の人間なら誰もが二度見するであろう見出しが並んでいました。「日本ペイントHD、蘭アクゾに建築塗料事業の買収を提案 1.4兆円規模」。日本ペイントホールディングスが、塗料世界3位のオランダ・アクゾノーベルに対して、建築用塗料事業を総額75億ユーロ(約1兆3850億円)で買い取りたいと提案した、という内容です。
正直に申し上げます。私はこのニュースを、「業界の遠い話」として読み飛ばすことができませんでした。なぜなら、いま日本の塗装現場で起きていることと、この巨額のM&A(企業の合併・買収)は、間違いなく地続きだからです。
そして、この話の行き着く先にいるのは、私たち施工会社ではありません。マンションの管理組合であり、収益物件をお持ちのオーナーさまです。塗料の値段が上がり、モノが入りにくくなる。その最終的なツケは、12年に一度回ってくる大規模修繕の見積書の一番下の数字に、静かに乗ってきます。
今日は、この「塗料の世界再編」というニュースを入口にして、2026年のいま、管理組合と収益物件オーナーが自分の建物を守るために見積書のどこに線を引くべきかを、現場の言葉でお話しします。相場を当てにいく話ではありません。値上げの波を、工法と発注の仕方でどう受け流すか、という実務の話です。
何が起きたのか——日本ペイントHDが「建築用塗料」だけを1.4兆円で取りに行った
まず、ニュースの中身を整理します。
日本ペイントホールディングス(以下、日本ペイントHD)は2026年7月13日、オランダのアクゾノーベルに対し、その建築用塗料事業の買収を提案していると発表しました。金額は総額75億ユーロ、日本円でおよそ1兆3850億円。実現すれば同社として過去最大級の買収になります(出典:日本経済新聞「日本ペイントHD、蘭アクゾに建築塗料事業の買収を提案 1.4兆円規模」、時事通信)。
ここで大事なのは、「会社ごと」ではなく「建築用塗料事業だけ」を狙った提案だという点です。
実は日本ペイントHDは、これに先立って米国の塗料世界首位シャーウィン・ウィリアムズと組み、アクゾノーベル全体を約2兆円で共同買収する構想を進めていましたが、これは拒否され、2026年6月に断念したと発表しています(出典:日本経済新聞「日本ペイントHD、蘭塗料大手アクゾ・ノーベルの共同買収を断念」)。今回はそこから戦略を切り替え、自分たちの本丸である建築用塗料(住宅・ビル・マンションの外壁や屋根に塗る塗料)だけを単独で取りに行ったわけです。
現時点でアクゾ側の経営陣はこの提案に応じておらず、成立するかどうかは分かりません。ここは断定を避けます。ただ、方向性ははっきりしています。世界の塗料メーカーは、建築用塗料という土俵で、国境を越えた大きな塊になろうとしている。
なぜか。私はここに、2026年の塗料が置かれた苦しい現実が透けて見えると思っています。
その前に起きていたこと——2026年、日本の塗装現場は「塗料が買えない」状態に陥っていた
このニュースを理解するには、この春に日本の塗装現場で何が起きていたかを知っておく必要があります。
一般社団法人日本塗装工業会(全国の塗装工事業者が加盟する業界団体)は、2026年4月14日、国土交通省に対して「中東情勢に伴う塗料原材料の安定供給及び価格高騰に関する緊急要望」を提出しました(出典:一般社団法人日本塗装工業会)。
この要望の背景にある数字が、私には衝撃でした。同会が4月6日〜10日に会員に対して行った緊急アンケート(回答850社)では、塗料の希釈や道具の洗浄に不可欠なシンナーが「通常どおり入手できる」と答えた会社はわずか2.7%。「手に入らない」が55.1%、「数量制限あり」が42.2%。つまり、全国の塗装会社の97%が、シンナーを普通には買えない状態にあったということです(出典:日本塗装時報)。
シンナーが無ければ、溶剤系の塗料はそもそも塗れません。塗料そのものも同じ理由で品薄になりました。
原因は中東情勢です。ホルムズ海峡をめぐる緊張から原油とナフサ(石油化学製品の原料)の供給不安が広がり、そこから作られるトルエン・キシレンといった溶剤の流通が滞りました。
面白いのは、政府の説明と現場の感覚がまるで違っていたことです。経済産業省の赤澤大臣は2026年4月14日の記者会見で、こう説明しています。「原油や石油製品については、代替調達や備蓄石油の放出により、我が国全体として必要となる量は確保できている」。ではなぜ現場で足りないのか。大臣が挙げた実例が、実に人間くさい。
川上の石油化学メーカーが「4月までは前年並みに供給。5月は未定」とシンナーメーカーに伝えた。すると、シンナーメーカーと卸・小売は5月に備えて4月の出荷を直ちに半減した——。
(出典:経済産業省「赤澤経済産業大臣の閣議後記者会見の概要」2026年4月14日)
政府はこれを「卸の目詰まり」と呼び、4月13日に局長名で「原料調達に課題が生じても、それだけを理由に即座に生産を抑制しないでほしい」という要請を出しました。全体量は足りている。それでも現場には届かない。モノ不足ではなく、不安が作った品切れだったわけです。
私はこの一件を、20年の現場人生で忘れないと思います。材料は、世界のどこかの海峡の話ひとつで、あっけなく止まる。
塗料の値上げは、大規模修繕の見積にどう跳ね返るか
供給が細れば、値段は上がります。2026年に入ってから、大手塗料メーカー各社は相次いで値上げを公表しました。溶剤系塗料で20〜30%台、シンナー類にいたっては大幅な引き上げが公表されたケースもあります(各社の値上げ発表・業界報道による。数字はメーカー・製品ごとに幅があり、実際の見積単価は仕入れルートや時期で変わります)。
ここで、管理組合の理事長さまからよく聞かれる質問に先回りしてお答えします。
「塗料が3割上がったら、大規模修繕の総額も3割上がるんですか?」
答えは、いいえ、です。ここが一番誤解されるところなので、丁寧に説明します。
マンションの大規模修繕工事は、大きく分けて次のような費用でできています。
| 費用の区分 | 中身 | 私の感覚値 |
|---|---|---|
| 仮設工事費 | 足場、養生シート、仮設トイレ、資材置場など | 工事費の約2割 |
| 直接仮設以外の労務費 | 職人の手間(下地処理・塗装・防水・シーリング) | 大きい |
| 材料費 | 塗料、防水材、シーリング材、タイル補修材 | 塗料だけなら数%〜十数% |
| 現場管理費・諸経費 | 現場監督、保険、書類、利益 | 一定割合 |
※上表の「約2割」は、当社がこれまで見積を突き合わせてきた経験にもとづく体感値であり、公的統計に基づく数字ではありません。物件形状や工事内容で大きく上下します。
つまり、塗料そのものが工事費に占める割合は、多くの物件でそこまで大きくありません。塗料が30%上がっても、総額に効いてくるのは数%というのが実務の感覚です。
では、なぜ皆さんの見積が跳ね上がるのか。塗料だけが上がっているのではないからです。 シーリング材も、防水材も、鋼材(足場)も、そして何より職人の労務費が上がっています。全部が同じ方向に動いているとき、総額は静かに、しかし確実に押し上げられます。
国土交通省の「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」では、1回目の大規模修繕工事の戸あたり工事金額は「100万円超〜125万円以下」が最も多いという結果でした(出典:国土交通省「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」)。この調査は数年前のものです。2026年のいま、同じ内容の工事を同じ金額でできるとは、私は口が裂けても言えません。
だからこそ、見積書に線を引くのです。
見積書の防衛線①:材料費と労務費を「分けて」出してもらう
ここからが本題です。私が理事長さまやオーナーさまにお伝えしている、5つの防衛線をお話しします。
第一の防衛線は、材工分離(ざいこうぶんり)。材料費と手間賃(労務費)を分けて記載してもらう、ということです。
多くの見積書は「外壁塗装 ○○㎡ × 単価○○円 = ○○円」という書き方になっています。この単価の中には、塗料代も職人の手間も一緒くたに入っています。これだと、値上げの説明を受けたときに、本当に材料が上がったのか、それとも別の何かが上がったのかが分からないのです。
「塗料が高騰しているので」という一言で、労務費や諸経費まで一緒に膨らんでいないか。分けて書いてもらえば、そこが見えます。私は自分の会社の見積でも、聞かれれば必ず内訳をお出しします。隠すことは何もありませんし、隠す会社を私は信用しません。
理事会での一言:「材料費と労務費、分けて出していただけますか。値上げの根拠を組合員に説明する必要があるので」。これで十分です。これは値切りではなく、説明責任のための資料請求です。
見積書の防衛線②:「見積の有効期限」と「単価スライド条項」を確認する
第二の防衛線。これは2026年に特に効きます。
塗料の値段が半年で二段階も上がるような局面では、見積書の有効期限が極めて重要になります。総会で承認を取るまでに3か月、契約から着工までに2か月——気づけば、見積を出した時点の材料単価はもう存在しない、ということが普通に起こります。
このとき、施工会社側は2つのどちらかを選びます。
1. 値上がりリスクを見込んで、あらかじめ高めの単価で見積を出しておく
2. 契約後に「材料が上がったので追加をください」と言う
正直に申し上げて、どちらも組合にとって嬉しくありません。1は最初から高い。2は総会をもう一度開く羽目になります。
だから私は、こう提案しています。「材料単価が◯%以上変動した場合は協議する」というスライド条項を、契約書に最初から入れておきましょうと。上がったら上がったで協議する。下がったら下がったで返す。互いに逃げ道を用意しておくほうが、結果として安く、そして揉めません。
なお、日本塗装工業会が国交省に出した緊急要望でも、発注者に対して価格変更・工期延長の協議に応じるよう求める趣旨が盛り込まれています(出典:日本塗装時報)。業界としても、そこは正面から議論しようとしている段階だとご理解ください。
見積書の防衛線③:塗料のグレードは「金額」ではなく「年数あたりの金額」で比べる
第三の防衛線。塗料選びの話です。
外壁に使う塗料には、大まかに次のようなグレードがあります。カッコ内は、あくまで一般的に言われている耐用年数の目安であり、環境(海沿い・日照・立地)によって大きく変わります。
| グレード | 一般的な耐用年数の目安 | 単価 |
|---|---|---|
| ウレタン系 | 短め | 安い |
| シリコン系 | 中くらい | 標準的 |
| フッ素系 | 長め | 高い |
| 無機系・無機ハイブリッド系 | 長め | 高い |
塗料が値上がりすると、多くの管理組合が「じゃあ一段安いグレードに落とそう」と考えます。気持ちはよく分かります。でも、私はここで必ず立ち止まっていただきます。
大事なのは1回の工事費ではなく、次に足場を組むまでの年数で割った金額です。
たとえば、塗料のグレードを一段下げて工事費を数百万円下げられたとします。でも、それによって次の塗り替えが数年早く来るなら、その数年で「足場代をもう一回払う」ことになる。先ほど申し上げたとおり、足場は工事費のおよそ2割を占めます。塗料代を削って足場代を増やす——これは私が現場で一番悔しい思いをする、典型的な失敗です。
長期修繕計画は、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」でも、おおむね12年程度の周期を目安に外壁塗装などを見込むという考え方が示されています(出典:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」)。この「12年」を守れる塗料なのか、それとも8年で色褪せる塗料なのか。年数で割って比べる。 これだけで判断はぐっと楽になります。
見積書の防衛線④:メーカー名より「下地処理の仕様」を読む
第四の防衛線。ここは職人としての本音を書かせてください。
塗料メーカーの再編ニュースを見て、「うちのマンションは大丈夫か、○○社の塗料が使えなくなるのでは」と心配される方がいるかもしれません。念のため申し上げると、その心配はほぼ要りません。塗料は代替が効きます。 同等性能の製品は各社が持っていますし、仮に世界の再編でブランドが変わっても、建物に必要な性能を満たす製品は必ず調達できます。
私が本当に心配してほしいのは、そこではありません。
塗膜(とまく:塗った塗料の膜)の寿命を決めるのは、塗料のグレードよりも、その下に何をしたかです。
- 高圧洗浄で汚れとチョーキング(劣化して粉を吹いた状態)をきちんと落としたか
- ひび割れ(クラック)を、幅に応じた正しい方法で処理したか
- 浮いているタイルや爆裂(鉄筋が錆びて膨張しコンクリートを押し出した状態)を、塗る前に直したか
- シーリング(目地に詰めるゴム状の充填材)を打ち替えたか、それとも上から重ねただけか
- 下塗り材(プライマー・シーラー)を、素地に合ったものを規定量使ったか
高級な塗料を、汚れた壁にペタッと塗る。これほど無駄なお金の使い方はありません。逆に、標準的なシリコン系でも、下地処理が丁寧なら12年しっかり持ちます。私は自信を持ってそう言えます。
見積書で見るべきは、塗料の商品名の欄ではなく、その上に並んでいる「洗浄」「下地処理」「シーリング」の項目が、きちんと数量と単価をもって書かれているかどうかです。 ここが「一式」で済まされている見積書は、私なら質問します。
見積書の防衛線⑤:工事費で最も大きな塊は、塗料ではなく「足場」だと知る
そして、第五の防衛線。これが今日、一番お伝えしたいことです。
ここまで塗料の話をしてきて、こう言うのは妙に聞こえるかもしれません。でも、事実です。
塗料が20%上がっても、工事費全体に効くのはせいぜい数%。一方、足場は工事費のおよそ2割を占めます。 つまり、塗料の単価を1円単位で削る努力より、「そもそもその足場、全面に必要ですか?」という問いのほうが、桁ひとつ大きい。
これは私の会社の宣伝がしたくて言っているのではありません。理事会で3時間かけて塗料のグレードを議論した組合が、足場の仮設計画については施工会社の提案をそのまま受け入れている——そういう場面を、私は何度も見てきました。時間の使い方が、逆なのです。
(ここから先は自社サービスの話を含みます。判断材料のひとつとしてお読みください。)
工法を変えるという選択肢——ロープアクセスとハイブリッド工法
株式会社明誠では、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を、3つの工法から建物に合わせて提案しています。
1. 通常の足場仮設工法
従来どおり、建物の周囲に足場を組む方法です。作業効率が高く、全面的な補修や複雑な形状の建物に向きます。
2. ロープアクセス工法(無足場工法)
産業用ロープで作業員が屋上から吊り下がり、足場を組まずに施工する方法です。足場の架設費・解体費がまるごと不要になるため、足場費(工事費の約2割)を大きく圧縮できる可能性があります。工期も短くなりやすく、足場のシートで建物が覆われないため、居住者の生活影響や、収益物件であれば入居募集への悪影響を最小限にできます。
3. ハイブリッド工法
建物を部位ごとに切り分け、足場が必要な面(大規模な補修が必要な面、開口部の多い面など)には足場を組み、ロープで足りる面(傷みの少ない面、隣地が迫って足場が組めない面)はロープアクセスで対応する方法です。全面足場と全面ロープの、いいとこ取りです。
塗料が上がる。労務費も上がる。それでも総額を抑えたいなら、「削る」のではなく「組み替える」。私はこれを、必ずワンセットでご提案するようにしています。詳しくは大規模修繕工事のご紹介と明誠の3工法の考え方をご覧ください。収益物件をお持ちのオーナーさま向けの考え方はマンション・ビルオーナーさま向けページにまとめています。
正直に申し上げます——ロープアクセスが向かない建物もあります
両論併記のために、デメリットもはっきり書きます。ロープアクセス工法は万能ではありません。
- 屋上に支点(アンカー)が取れない建物では、そもそも施工できません。屋上の構造物や躯体の状態を必ず現地で確認する必要があります。
- 外壁の劣化が全面的に進んでいる建物では、補修する面積が広すぎて、ロープでの作業効率が足場に劣る場合があります。この場合は足場のほうが安く、早い。
- 低層で敷地に余裕のある建物は、足場の架設費がそもそも安く済むため、ロープにする金銭的メリットが小さいことがあります。
- バルコニー内部など、ロープでは届きにくい部位は、別途の段取りが必要です。
だから私たちは、「まず現地を見せてください」としか言えません。図面と写真だけで「ロープなら安くなります」と言い切る会社があったら、私はむしろ警戒します。建物ごとに答えは違うからです。
塗料の世界再編は、管理組合とオーナーにとって何を意味するのか
最後に、冒頭のニュースに戻ります。
日本ペイントHDがアクゾノーベルの建築用塗料事業を1.4兆円で取りに行った。この動きが意味するのは、建築用塗料が、規模を持たなければ原料の調達も価格交渉も生き残れない産業になりつつある、ということだと私は読んでいます。
原料は石油から来ます。その石油は、海峡ひとつの緊張で止まる。2026年春に日本の塗装現場が経験したのは、まさにそれでした。世界中の塗料メーカーが同じ不安を抱えているからこそ、巨大な塊になろうとしている。
では、この構造変化は建物の所有者にとって何を意味するか。私の見立ては、次の3点です。
1. 「安い塗料を探す」戦略の賞味期限は切れつつある
原料コストの上昇は、業界全体に等しくかかります。特定のメーカーだけが安く出し続けられる状況は、そう長くは続かないでしょう。材料単価の勝負から降りて、工法と工程で戦うほうが合理的です。
2. 見積の「時間的な鮮度」がこれまで以上に重要になる
半年前の見積は、もう別の建物の見積です。総会のスケジュールと見積の有効期限を、逆算して組んでください。
3. 修繕積立金の前提が古くなっている可能性がある
5年前・10年前に作った長期修繕計画の金額は、いまの材料費・労務費を織り込んでいません。値上げのニュースを見たら、塗料の心配をする前に、長期修繕計画の数字を見直す。これが一番効きます。
よくある質問
Q1. 塗料が値上がりしているなら、大規模修繕を数年先送りしたほうが得ではないですか?
A. おすすめしません。値下がりを待つ根拠がないうえに、先送りしている間に劣化は進みます。ひび割れから水が入って鉄筋が錆びれば、塗装だけでは済まなくなり、躯体の補修という高額な工事が追加されます。ただし、「全部を一度にやる」以外の選択肢はあります。緊急性の高い部位だけを先に直す(ピンポイント施工)という考え方も含めて、点検・調査からご相談ください。
Q2. 見積書で「一式」と書かれている項目が多いのですが、問題ですか?
A. すべてが悪いとは言いません。ただ、金額の大きい項目——足場、下地処理、シーリング、塗装——が「一式」で書かれているなら、数量と単価の内訳を求めてください。比較検討のしようがありませんし、後から追加請求が出やすくなります。
Q3. 塗料メーカーの再編で、うちのマンションで使っている塗料が製造中止になったらどうなりますか?
A. 同等性能の代替品は必ず存在します。むしろ、既存の塗膜との相性(付着性)の確認のほうが実務的には重要で、これは施工会社が試験や調査で確認します。ブランド名にこだわりすぎる必要はありません。
Q4. 値上げを理由に、契約後に追加請求されました。応じるべきですか?
A. まず契約書を確認してください。単価スライドや物価変動に関する条項があるか、その発動条件を満たしているか。条項がないのに一方的な請求であれば、根拠資料(メーカーの値上げ通知など)の提示を求め、協議の場を持つのが筋です。個別の契約解釈については、管理組合の顧問弁護士やマンション管理士にご相談ください。
Q5. ロープアクセス工法にすると、工事の品質は落ちませんか?
A. 工法と品質は別の問題です。品質を決めるのは下地処理と職人の腕、そして施工管理の体制です。当社はロープアクセスの技術者に加え、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門会社がフランチャイズとして加盟しており、専門職が専門部位を担当します。ロープだから雑になる、ということはありません。
Q6. 収益物件のオーナーです。空室が出ている時期に工事をすべきでしょうか?
A. 工事期間中に足場とシートで建物が覆われると、内見のたびに説明が必要になり、募集に響きます。ロープアクセスやハイブリッド工法は建物を覆わないため、この影響を抑えられます。工事時期と募集時期は、必ずセットで考えてください。
まとめ——値上げの波は、工法と発注で受け流す
長くなりましたので、要点を整理します。
- 日本ペイントHDが、アクゾノーベルの建築用塗料事業に約1兆3850億円の買収提案(2026年7月13日発表、成立は未定)。世界の塗料業界は再編局面に入っている。
- その背景には、2026年春に日本の塗装現場を襲ったシンナー・塗料の供給難(日本塗装工業会の調査で、シンナーを通常どおり入手できる会社は2.7%)と、相次ぐ値上げがある。
- しかし、塗料代が20〜30%上がっても、大規模修繕の総額に効くのは数%。総額を押し上げているのは、材料・労務・仮設の全方位的な上昇である。
- 管理組合・オーナーが張るべき防衛線は5つ。①材工分離で内訳を出させる ②見積の有効期限と単価スライド条項 ③塗料は「年数で割った金額」で比較 ④塗料名より下地処理の仕様を読む ⑤工事費の最大の塊は足場。
- そして最後の一手が、工法の組み替え。ロープアクセス工法・ハイブリッド工法で足場費そのものを圧縮する。ただし建物によって向き不向きがあり、現地調査なしに断定はできない。
塗料が上がったというニュースを見て、理事会で「どこを削るか」の議論を始める前に、まず「どこを組み替えられるか」を考えてみてください。削れば建物が痩せます。組み替えれば、建物は痩せずに費用だけが下がる余地があります。
私は現場で20年、建物が痩せていくのを見てきました。修繕積立金が足りないから、塗料のグレードを落とす。足場代がもったいないから、次の工事まで我慢する。その積み重ねが、10年後、20年後の資産価値の差になって、はっきりと表れます。
見積書を前に迷われたら、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せはこちらから。現地を拝見したうえで、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つを並べて、正直な金額と正直なデメリットをお出しします。
次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 経済産業省「赤澤経済産業大臣の閣議後記者会見の概要(2026年4月14日)」
- 国土交通省「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」
- 国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」
- 一般社団法人日本塗装工業会「中東情勢に伴う塗料原材料の安定供給及び価格高騰に関する緊急要望」
- 日本塗装時報「シンナー等の供給が危機的状況に 発注者は価格変更・工期延長の協議に対応を」
- 日本経済新聞「日本ペイントHD、蘭アクゾに建築塗料事業の買収を提案 1.4兆円規模」
- 日本経済新聞「日本ペイントHD、蘭塗料大手アクゾ・ノーベルの共同買収を断念」
- 時事通信「日本ペイント、オランダ大手に買収提案=建築塗料部門、総額1.4兆円」
※本記事に記載した工事費の構成比(足場が工事費の約2割 等)は、当社がこれまで見積を比較してきた経験にもとづく体感値であり、公的統計に基づく数値ではありません。物件の規模・形状・劣化状況により大きく変動します。また、契約・税務・法務に関する個別のご判断は、専門家(弁護士・マンション管理士・税理士等)にご相談ください。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
大規模修繕をすると固定資産税が下がる——「マンション長寿命化促進税制」で減税を取り逃す組合の“3つの落とし穴”。収益物件オーナーと管理組合が2027年3月の期限までに動く実務【2026年7月】
今朝、いつものようにニュースに目を通していると、神奈川県三浦市の地域メディアが「マンションの長寿命化に資する大規模修繕工事を行うと固定資産税が減額される制度」を取り上げている記事が目に留まりました(出典:湘南人「【三浦市】三浦市のマンション長寿命化大規模修繕工事で固定資産税が減額される制度とは?」)。
同じ日のニュースには、「修繕積立金が足りないマンションが急増し、大規模修繕を“借金”で乗り切るケースが増えている」という論考も流れてきました(出典:アゴラ「修繕積立金が足りないマンション急増:大規模修繕を『借金』で乗り切る危うさ」)。
この2本が同じ朝に並んでいたことに、私は正直、少し複雑な気持ちになりました。片方では「お金が足りないから工事ができない」と言われ、もう片方では「工事をすれば税金が安くなる制度がある」と言われている。それなのに、私が日々うかがう管理組合の理事会で、この減税制度の名前が最初から出てきたことは、体感でほとんどありません。
正直に申し上げます。この制度は、知らないまま工事を終えてしまうと、後から取り返しがつきません。申告期限があるからです。
今日は、この「マンション長寿命化促進税制」を、制度の説明ではなく現場の実務として整理します。何がいくら安くなるのか。どういう組合が使えて、どういう組合が取り逃すのか。そして収益物件をお持ちのオーナーさまが、まず何を確認すべきか。ここからが本題です。
まず結論:大規模修繕をした「翌年度の建物分の固定資産税」が減る
制度の正式名称は「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」といいます。国土交通省が所管し、令和5年(2023年)4月からスタートしました(出典:国土交通省「マンション税制/マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」)。
ざっくり言えば、こうです。
一定の要件を満たすマンションが、長寿命化に資する大規模修繕工事を行うと、その翌年度分の「建物部分」の固定資産税が減額される。
ポイントを3つに絞ります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 減額の対象 | 各区分所有者に課される建物部分の固定資産税(土地は対象外) |
| 減額の割合 | 1/6〜1/2の範囲内で市町村の条例が定める(国が示す参酌基準は1/3) |
| 減額の範囲・期間 | 1戸あたり床面積100㎡相当分まで/工事完了の翌年度分(1年分) |
減額割合が「1/6〜1/2」と幅を持っているのは、これが市町村の条例で決まるからです。たとえば東京都(23区)は「2分の1」で運用されています(出典:東京都主税局「長寿命化に資する大規模修繕工事が行われたマンションに対する固定資産税の減額制度」)。横浜市、横須賀市、西宮市なども、それぞれ自治体のページで制度を案内しています(出典:横浜市、横須賀市、西宮市)。
つまり、同じ工事をしても、建物が建っている自治体によって減額幅が違う。ここが最初の実務ポイントです。「うちの市はいくらなのか」は、必ず所管の市区町村(資産税課・固定資産税課)に確認してください。ネット記事や一般論で判断しないでいただきたいのです。
三浦市のようなニュースが地域メディアに載る、というのは、裏を返せば「自治体側も、この制度がまだ十分に知られていないと分かっている」ということだと私は受け止めています。
「たかが1年分」と侮ってはいけない理由
ここで、こう思われた方も多いはずです。
「1年分だけ、しかも建物分だけ。大した額じゃないでしょう?」
たしかに、金額のインパクトだけを見れば、大規模修繕の工事費そのものに比べれば小さい。数万円から十数万円という水準になる住戸が多いでしょう(実際の税額は評価額・自治体・住戸面積で変わるため、ここでは断定しません)。
それでも私が「無視してはいけない」と申し上げるのは、この減税が、総会の空気を変えるからです。
大規模修繕の総会で、いちばん強い反対意見は何か。私の経験上、それは「工事の必要性がわからない」ではありません。「お金がない/これ以上負担したくない」です。修繕積立金の値上げ議案がセットになっていれば、なおさら空気は重くなります。
そこで、こう説明できたらどうでしょうか。
「今回の工事は、要件を満たせば来年度の建物分の固定資産税が減額される対象になり得ます。負担が増えるだけの話ではありません」
金額の大小ではなく、「この工事は、行政も後押ししている“正しい投資”である」という一言が、議案を通す力になる。私は理事長さまに、いつもそうお伝えしています。修繕積立金の値上げと減税をワンセットで説明できる組合は、合意形成が明らかに速いのです。
そして、この制度の設計思想そのものが、実はそこにあります。国交省は制度の目的を「必要な修繕積立金の確保や適切な長寿命化工事の実施に向けた管理組合の合意形成を後押しすること」と明記しています(出典:国土交通省 マンション税制)。減税は目的ではなく、合意形成のための道具として用意されている。この理解が、現場ではいちばん実用的です。
適用要件を、現場の言葉で分解する
制度のパンフレットは丁寧ですが、正直、理事会で回し読みするには少し硬い。私はいつも、要件を「建物の話/工事の話/管理の話」の3つに分けてご説明しています。
① 建物の要件——築20年以上・10戸以上
- 新築された日から20年以上が経過していること
- 総戸数10戸以上であること
- 居住用の専有部分を有するマンション(区分所有建物)であること
築20年というのは、多くのマンションで「2回目の大規模修繕」が視野に入る時期です。つまりこの制度は、はじめから2回目以降の工事を想定して作られています。
② 工事の要件——「長寿命化工事」を過去に1回以上+今回
ここが技術的にいちばん大事なところです。制度が言う「長寿命化工事」とは、次の3つをすべて含む工事を指します。
- 外壁塗装等工事
- 床防水工事(開放廊下・バルコニー等)
- 屋根防水工事
この3点セットです。「外壁だけ塗り替えた」「屋上防水だけやった」という単発の工事は、ここで言う長寿命化工事にはあたりません。
そのうえで、
- 過去に1回以上、この長寿命化工事を実施していること
- 令和5年(2023年)4月1日から令和9年(2027年)3月31日までの間に、2回目以降の長寿命化工事を完了していること
が求められます(出典:国土交通省 マンション税制(告示・制度概要))。
適用期限は2027年3月31日。ここから逆算すると、大規模修繕は計画から着工まで1年〜1年半かかることが珍しくありません。「まだ先の話」ではないのです。
③ 管理の要件——「積立金を上げた」または「行政の助言・指導を受けた」
3つ目が、実はいちばん取り逃しの多いところです。次のどちらかに該当する必要があります。
A:管理計画認定マンションの場合
→ 令和3年(2021年)9月1日以降に、修繕積立金の額を管理計画の認定基準未満から認定基準以上に引き上げたこと
B:助言・指導を受けた管理組合の場合
→ 行政から助言または指導を受け、長期修繕計画の見直し等を行い、その長期修繕計画が一定の基準に適合することとなったこと
(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制の要件(助言又は指導を受けた管理組合の管理者等に係るマンションの場合)」PDF)
要するに、「工事をした」だけでは足りない。「管理を立て直した」ことがセットで求められるわけです。国が減税というインセンティブで動かしたいのは工事そのものではなく、修繕積立金と長期修繕計画の適正化だ、ということが要件からはっきり読み取れます。
落とし穴①:「過去に1回」を証明する書類が出てこない
ここからが、私が現場でいちばんヒヤリとしている話です。
要件②で「過去に1回以上、長寿命化工事を実施していること」とありました。この“過去の工事”は、証明書で示す必要があります。国交省は「過去工事証明書」の様式を用意しています(出典:国土交通省 マンション税制(証明書の様式等))。
問題は、その「過去の工事」が10年前、15年前だということです。
- 当時の施工会社がすでに廃業している
- 工事書類が管理会社の交代時に散逸した
- 竣工図書はあるが、外壁・床防水・屋根防水の3点すべてをやった証拠が残っていない
- 「たしか屋上防水は次回に見送った」と、当時の理事の記憶だけが頼り
——こういうケースを、私は何度も見ています。
大規模修繕の見積もりや工法の相談で管理組合にうかがい、話の流れで「前回の工事の書類、残っていますか」とお尋ねすると、理事長さまが倉庫の段ボールをひっくり返すことになる。そして半分くらいの確率で、必要な部分が出てこないのです。
私が申し上げたいのは、書類の確認は“工事の相談”と同時にやるべきだということです。工事が終わってから探し始めると、間に合いません。理由は落とし穴③で説明します。
もしお手元の書類で判断がつかない場合は、施工会社に「当時の工事内容が長寿命化工事の3要件を満たしていたか」を確認できることがあります。私どももご相談を受けたときは、まずここから一緒に整理します(お問合せはこちら)。
落とし穴②:修繕積立金の「引上げのタイミング」が合っていない
要件③のAをもう一度読んでください。
令和3年9月1日以降に、修繕積立金の額を認定基準未満から認定基準以上に引き上げたこと
ここには、2つの罠があります。
罠1:引き上げたのが令和3年8月以前だと、この要件に乗らない
「うちはとっくに積立金を上げているから大丈夫」——そう思っていたら、値上げの決議が令和3年(2021年)8月の総会だった。日付が1か月違うだけで、この要件から外れてしまう可能性がある。
罠2:もともと積立金が十分だった“優等生”組合が、逆に乗りにくい
「認定基準未満から認定基準以上に引き上げた」という書き方なので、最初から基準を満たしていた組合は、この経路に乗せられないことがあります。この場合はB(助言・指導ルート)の検討になります。
制度の趣旨からすれば当然の設計ではあるのですが、現場感覚では「まじめにやってきた組合ほど、要件の当てはめに一手間かかる」ように見えることがある。だからこそ、自己判断せず、所管自治体のマンション管理担当課に早い段階で相談することを、私は強くおすすめしています。
なお、修繕積立金の水準そのものについては、国交省が「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を公表しています。理事会で議論する際の共通のものさしとして、こちらを一度は開いておくと話が早くなります。
落とし穴③:申告は「工事完了後3か月以内」——ここで一番多く取り逃す
そして、最大の落とし穴です。
この減税は、自動では適用されません。所有者(区分所有者)が、市区町村に申告する必要があります。
そして申告期限は、一般に「長寿命化工事が完了した日から3か月以内」とされています(各自治体の案内で確認できます/出典:横須賀市、西宮市)。
大規模修繕の竣工直後というのは、現場も組合もいちばんバタバタしている時期です。検査、手直し、精算、竣工報告、総会報告——そのうえ理事の任期が切り替わることも多い。そこに「3か月以内に、証明書を揃えて、各区分所有者が申告する」という作業が乗ってきます。
正直に申し上げて、これは段取りを事前に組んでおかないと、まず流れます。
私はいつも、次の順番で準備することをお願いしています。
- 工事の相談段階で、過去工事の書類と積立金の引上げ時期を確認する
- 着工前に、所管自治体に「この工事で要件を満たすか」を照会しておく
- 工事中に、施工会社に「大規模の修繕等証明書」の発行段取りを確認する(発行には建築士等の証明が必要になります)
- 竣工と同時に、証明書一式を揃えて各区分所有者に配布し、申告してもらう
つまり、税制の話は工事が終わってからではなく、工事を発注する前に始める。これに尽きます。
収益物件オーナーが最初に確認すべき「一棟か、区分か」
ここまでは管理組合の話でした。ここからは、収益物件をお持ちのオーナーさま向けの話です。
まず、身も蓋もない確認から入ります。
この制度は、区分所有マンション(=管理組合があるマンション)を前提に設計されています。築20年以上・10戸以上・居住用専有部分を有する、といった要件も、管理計画認定制度や修繕積立金という管理組合の仕組みとひもづいています。
したがって、
-
区分所有の1室〜数室を投資用に持っているオーナーさま
→ 管理組合が要件を満たせば、ご自身の住戸の建物分の固定資産税が減額対象になり得ます。ただし賃貸中の住戸の扱いを含め、個別の判断は所管自治体と税理士にご確認ください。 -
賃貸マンションを一棟まるごと単独所有しているオーナーさま
→ 区分所有・管理組合という枠組みから外れるため、この制度の対象にならない可能性が高いと考えられます。適用可否は必ず所管自治体にご確認ください。
私は、この2つ目のパターンのオーナーさまにこそ、正面から申し上げたいことがあります。
減税が使えないなら、工事費そのものを下げるしかない。
そして、そこには制度に頼らずに動かせる、大きな余地があるのです。
減税額より、はるかに大きい「足場」という費目
大規模修繕の見積書を、私は年間に何十枚と見ます。そのなかで、多くの理事長さま・オーナーさまが見落としている費目があります。
仮設足場です。
私どもが日々見積書を拝見するなかでの実感値として、マンションの大規模修繕において、仮設足場(および仮設工事)は工事費全体の2割前後を占めることが少なくありません。建物の形状、階数、隣地との距離によって上下しますので、あくまで目安として受け取ってください(公的な統計値ではなく、当社の見積比較にもとづく体感値です)。
つまり、こういうことです。
減税で戻ってくるのが「建物分の固定資産税の1/3〜1/2を1年分」だとすれば、
足場を見直すことで動くのは「工事費そのものの数%〜十数%」。
桁が違うのです。
もちろん、減税は取れるなら取るべきです。両方やればいい。ですが、優先順位を間違えないでいただきたいというのが、20年近く現場に立ってきた私の本音です。
ロープアクセス・ハイブリッド工法という、第3の選択肢
ここで、私どもがご提案している工法の話を少しだけさせてください。押し売りをするつもりはありません。選択肢を知らないまま発注してしまうことが、いちばんもったいないと思っているからです。
大規模修繕の工法には、大きく3つあります。
| 工法 | 概要 | 向いている建物 |
|---|---|---|
| 通常足場工法 | 建物全体を仮設足場で覆う従来型 | 中低層、形状が複雑、全面的に躯体補修が必要な建物 |
| ロープアクセス工法(無足場工法) | 産業用ロープで作業員が壁面に直接アクセスして施工。足場を組まない | 高層、足場の架設が難しい、居住・稼働を止めたくない建物 |
| ハイブリッド工法 | 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける | 大規模・複雑で、総合的なコスト最適化が必要な建物 |
ロープアクセス工法の要点は、単に「安い」ことではありません。建物の使い方を止めないことです。
足場を組むと、外壁は約2〜4か月にわたってメッシュシートで覆われます。窓は開けにくくなり、日当たりは落ち、防犯上の不安も生まれます。分譲マンションなら住民の不満として現れますが、収益物件では、これが「空室が埋まらない」という形で現金に直撃します。
内見に来たお客さまが、足場とシートに覆われた建物を見上げて、そのまま帰ってしまう。私はこの場面を何度も見てきました。工事費を数十万円削るために、賃料収入を数十万円逃している——そういう構図が、実際に起きているのです。
一方で、私は「何でもロープアクセスにすべき」とは決して申し上げません。躯体の劣化が広範囲に及んでいる建物、タイルの浮きが大量にある建物では、足場を組んだほうが結果的に安く、確実です。建物を見ずに工法を決める会社は、信用しないでいただきたい。これは同業として、はっきり言います。
だからこそ、私どもは3つの工法をすべて自社の選択肢として持っています。詳しくはロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。
「減税の要件を満たす工事」と「工法の選択」は両立する
ここで、大事な整理をしておきます。
長寿命化工事の要件は「外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事のすべて」を含むこと、でした。ここに工法の指定はありません。
つまり、
ロープアクセス工法やハイブリッド工法で施工しても、工事の内容が要件を満たしていれば、減税の対象になり得る。
ということです(最終的な適用可否は、証明書の内容と所管自治体の判断になりますので、事前照会を必ず行ってください)。
これは、私が理事会でお話しすると、いちばん驚かれるポイントです。「無足場だと、ちゃんとした工事とみなされないのでは」と心配される方が本当に多い。そんなことはありません。求められているのは工事の内容と品質であって、足場を組んだかどうかではないのです。
私はこれを、必ずワンセットでご提案するようにしています。
- 工法で工事費を下げる(足場費・工期・空室リスクの圧縮)
- 要件を満たして減税を取る(建物分の固定資産税の減額)
- その分を修繕積立金に残す(次回の工事に備える)
3つ目がいちばん大事です。工事費を下げて浮いたお金を、そのまま積立金に残せた組合は、次の12年がまるで違います。
2027年3月31日から逆算する、現実的なスケジュール
適用期限は令和9年(2027年)3月31日までに完了した長寿命化工事です。今日は2026年7月14日。残りは約20か月です。
大規模修繕の標準的な流れから逆算すると、こうなります。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 2026年7〜9月 | 過去工事の書類確認/積立金の引上げ時期の確認/自治体への事前照会 |
| 2026年9〜12月 | 建物調査・診断、工法の比較検討(足場/ロープアクセス/ハイブリッド)、見積取得 |
| 2027年1〜3月※ | 総会決議、施工会社決定 |
| 2027年春〜 | 着工(※この時点では2027年3月末の期限に間に合いません) |
——お気づきでしょうか。今から動いても、2027年3月31日の完了には間に合わない可能性が高いのです。
正直に申し上げます。すでに調査・診断が終わっていて、あとは総会決議と発注だけ、という段階の組合でなければ、期限内完了は現実的ではありません。
では、意味がないのか。そうではありません。
理由1:制度の延長・見直しが議論される可能性がある
この特例措置は、これまでにも適用期限の延長が行われてきました。今後の税制改正で扱いがどうなるかは、現時点では確定していません。断定はできませんので、最新情報は必ず国土交通省と所管自治体でご確認ください。
理由2:要件の整備そのものが、組合にとって資産になる
過去工事の書類を揃え、修繕積立金を適正水準に引き上げ、長期修繕計画を見直す——これは減税のためだけの作業ではありません。マンションの管理状況が「見える化」される時代に、そのまま資産価値の裏づけになります。管理計画認定を取っておくことの意味は、減税だけにとどまりません。
理由3:工法の比較検討は、いつやっても効く
足場を見直してコストを下げるという打ち手は、税制の期限とは無関係です。
ですから、「間に合わないから何もしない」ではなく、「要件整備と工法比較は今から始めて、工事のタイミングは制度の動向を見て決める」——これが、私が今いちばん現実的だと考えている進め方です。
現場から:段ボール3箱の書類と、20万円
最後に、ひとつだけ現場の話をさせてください。
築28年、48戸の分譲マンション。2回目の大規模修繕の相談で、理事長さまからお電話をいただきました。積立金は決して潤沢ではなく、見積もりを取ったら想定より2割以上高かった、と。
私は建物を拝見して、外壁の劣化が全面的ではなく、足場が本当に必要なのは一部だと判断しました。ハイブリッド工法をご提案し、仮設費を圧縮する方向で計画を組み直しました。
そのうえで、私はこうお尋ねしました。
「前回の工事、外壁と床防水と屋上防水、全部やっていますか。書類は残っていますか」
理事長さまは、管理員室の倉庫から段ボールを3箱、引っ張り出してこられました。埃をかぶった竣工書類のなかから、前回(14年前)の工事の内訳書が出てきました。外壁塗装、開放廊下の床防水、屋上防水——3点、すべて入っていた。
私は、その場でこう申し上げました。
「長寿命化促進税制、対象になる可能性があります。市役所に事前に照会しておきましょう。工事が終わってから探し始めていたら、3か月では間に合いませんでした」
減額される税額は、1戸あたり十数万円ではありません。数万円規模です。48戸でも、金額としては決して大きくない。
それでも、あの日の理事長さまの表情を、私は忘れません。「工事費が下がって、税金も下がる」——その2つが揃ったことで、総会の議案は、驚くほどすんなり通りました。
現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、「知っていれば取れたものを、知らずに取り逃した」場面に立ち会うときです。この記事が、その一つでも防げるなら、書いた甲斐があります。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 減額されるのは何年分ですか?
A. 長寿命化工事が完了した翌年度分の、建物部分の固定資産税です。継続的に毎年減額される制度ではありません。
Q2. 減額の割合は全国一律ですか?
A. いいえ。1/6〜1/2の範囲内で市町村の条例により定められます(国が示す参酌基準は1/3)。たとえば東京23区は1/2で運用されています。必ず所管自治体にご確認ください。
Q3. 賃貸に出している区分所有の住戸でも対象になりますか?
A. 制度は居住用の専有部分を対象としており、所有者が居住しているかどうかで一律に線を引く制度ではありません。ただし、個別の適用可否は所管自治体の判断となります。税務の個別判断は税理士および所管自治体にご確認ください。
Q4. 一棟まるごと所有している賃貸マンションは使えますか?
A. この制度は区分所有マンション(管理組合・管理計画認定制度)を前提とした設計になっているため、対象外となる可能性が高いと考えられます。必ず所管自治体にご確認ください。一棟オーナーさまは、工法選択による工事費の最適化のほうが効果が大きい場合があります。
Q5. ロープアクセス工法で施工しても、減税の要件を満たせますか?
A. 要件は工事の内容(外壁塗装等・床防水・屋根防水のすべてを含むこと)で定められており、工法の指定はありません。したがって内容が要件を満たしていれば対象になり得ます。ただし証明書の内容と自治体の判断によりますので、着工前の事前照会をおすすめします。
Q6. 申告を忘れてしまいました。あとから申告できますか?
A. 申告期限は一般に工事完了後3か月以内とされています。期限を過ぎた場合の取扱いは自治体により異なりますので、まずは所管自治体の資産税担当課にご相談ください。この「3か月」が、実務上いちばんの落とし穴です。
まとめ——制度は、動いた組合の側にしか味方しない
今日の要点を、もう一度だけ整理します。
- マンション長寿命化促進税制は、長寿命化に資する大規模修繕工事をしたマンションの、翌年度の建物分の固定資産税を1/6〜1/2(参酌1/3)減額する制度。
- 要件は「築20年以上・10戸以上」「外壁・床防水・屋根防水の3点セットを過去に1回以上+今回」「積立金の引上げ、または助言・指導を受けた計画見直し」。
- 落とし穴は3つ——①過去工事の証明書類、②積立金引上げのタイミング(令和3年9月1日以降)、③申告は工事完了後3か月以内。
- 適用期限は2027年3月31日(今後の税制改正での扱いは確定していないため、最新情報は要確認)。
- 収益物件オーナーは、まず「区分所有か、一棟所有か」を確認する。一棟所有なら、減税より工法によるコスト最適化が本丸。
- ロープアクセス工法・ハイブリッド工法でも、工事内容が要件を満たせば減税の対象になり得る。
制度というのは、待っていても向こうからは来ません。申告しなければ減額されないし、書類がなければ証明できない。動いた組合の側にしか、味方をしてくれないのです。
私どもは、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法から、その建物にとって本当に最適なものをご提案できる、日本でも数少ない会社です(私たちの考え方)。工事のご依頼をいただく前の、「そもそもうちは減税の対象になるのか」「工法で本当に安くなるのか」という段階のご相談だけでも、遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。
これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない感想です。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 国土交通省「住宅:マンション税制(マンション長寿命化促進税制/固定資産税の特例措置)」
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制の要件(助言又は指導を受けた管理組合の管理者等に係るマンションの場合)」(PDF)
- 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」
- 東京都主税局「長寿命化に資する大規模修繕工事が行われたマンションに対する固定資産税の減額制度」
- 横浜市「大規模の修繕等が行われたマンションに係る固定資産税の減額制度(マンション長寿命化促進税制)」
- 横須賀市「大規模の修繕等が行われたマンションに係る固定資産税の減額制度(マンション長寿命化促進税制)」
- 西宮市「マンション長寿命化に資する大規模修繕工事に伴う固定資産税の減額措置について」
- 湘南人「【三浦市】三浦市のマンション長寿命化大規模修繕工事で固定資産税が減額される制度とは?」(2026年7月)
- アゴラ「修繕積立金が足りないマンション急増:大規模修繕を『借金』で乗り切る危うさ」(2026年7月)
※本記事は制度の概要を一般的に解説したものであり、個別の税務判断を行うものではありません。適用可否・減額割合・申告手続きは、必ず所管の市区町村および税理士にご確認ください。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
四街道市のマンション補助金|管理組合の大規模修繕2026
四街道市の分譲マンションは、いま「一斉に」修繕期を迎えている
四街道市は千葉県北部、千葉市に隣接し、都心から40km圏にあります。JR総武本線の快速で東京駅までおよそ50分、成田国際空港まではおよそ30分。東西7km・南北9kmというコンパクトな市域に、自然環境と都市機能が同居している街です。人口はおよそ9万6千人、世帯数はおよそ4万3千。この10年で人口は6%、世帯数は16%増えており、子育て世代の転入が続いています(出典:千葉県移住ポータル「四街道市」)。
世帯数の伸びが人口の伸びを大きく上回っている——これは、単身・少人数世帯が増え、集合住宅の需要が底堅いことを示す数字です。実際、四街道駅徒歩7分の総戸数524戸という大規模マンションをはじめ、駅周辺には分譲マンションのストックが積み上がっています。
ここで管理組合の理事の皆さまに考えていただきたいのが、「うちの建物は何回目の大規模修繕か」です。
一般的に、大規模修繕は12〜15年周期で回ってきます。1回目は外壁塗装と防水中心で済むことが多い。問題は2回目以降です。給排水管、鉄部、シーリング、そして手すりやサッシといった付帯部の劣化が一斉に顕在化し、工事金額は1回目の1.3〜1.8倍に膨らむことが珍しくありません。しかも修繕積立金は、多くのマンションで「1回目の工事を基準に」設計されている。ここに、全国の管理組合が共通して踏み抜く落とし穴があります。
私は現場で、こういう理事長さんの声を何度も聞いてきました。
「見積もりを取ったら、積立金が3千万円足りませんでした。どうすればいいですか」
打ち手は4つしかありません。①一時金の徴収、②修繕積立金の値上げ、③借入、④工事費そのものを下げる。四街道市の制度は、この4つのうち②③④を後押しする形で組み立てられています。順番に見ていきましょう。
【結論】四街道市の管理組合が使える制度は、この6本
まず全体像を早見表にします。詳細はこの後、一つずつ解説します。
| # | 制度名 | 誰が使えるか | 金額・効果のイメージ | 担当窓口 |
|---|---|---|---|---|
| ① | マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額) | 管理組合+区分所有者 | 工事完了の翌年度分の家屋固定資産税を3分の1減額(1戸100㎡まで/1回限り) | 四街道市 建築課 043-421-6147 |
| ② | マンション管理計画認定制度 | 管理組合 | ①の入口。融資金利引下げ・資産価値評価にも直結 | 四街道市 建築課(住まい担当) |
| ③ | 住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資(マンションすまい・る融資) | 管理組合 | 積立金不足の穴埋め。認定マンションは金利年0.2%引下げ | 住宅金融支援機構 |
| ④ | マンションすまい・る債 | 管理組合 | 積立金の運用・計画的な積み増し | 住宅金融支援機構 |
| ⑤ | 千葉県マンション管理士会の無料相談・セミナー | 管理組合・区分所有者 | 長期修繕計画、積立金、合意形成の壁打ち | 千葉県マンション管理士会 |
| ⑥ | 住宅用設備等脱炭素化促進事業補助制度(令和8年度) | 原則は住宅所有者 | 太陽光・蓄電池等。共用部・管理組合名義の可否は要確認 | 四街道市 環境政策課 |
そして、使えないもの・使いにくいものも正直に書いておきます。ここを曖昧にする業者の資料が多いのですが、期待させておいて後で「対象外でした」となるのが管理組合にとって一番の損失です。
- 四街道市の耐震診断・耐震改修補助は「木造住宅」向けです。RC造・SRC造の分譲マンション共用部は、公表されている要件からは原則対象外と読むのが妥当です。
- 四街道市住宅リフォーム補助金は、市内に住宅を所有し、かつ居住している方が対象。専有部リフォーム向けの制度であり、管理組合名義の共用部大規模修繕に充てる想定にはなっていません。
- 市が大規模修繕工事費そのものに出す直接補助は、公表情報の範囲では確認できませんでした。
「使えない」を先に潰すことで、理事会の限られた時間を「使えるもの」に集中投下できます。
【目玉】マンション長寿命化促進税制——四街道市は「3分の1」と明記している
制度のかたち
これは国の制度ですが、実際に減額するのは市町村です。一定の要件を満たしたマンションが長寿命化に資する大規模修繕工事を行うと、工事が完了した年の翌年度分について、居住用専有部分の家屋にかかる固定資産税が減額されます。
重要なのは、減額割合が市町村の条例に委ねられている点です。法律上は6分の1から2分の1の範囲。ですから「うちのマンションは2分の1減る」と書いてある一般記事を鵜呑みにするのは危険です。
四街道市の場合、市の公表ページには「工事が完了した年の翌年度分の固定資産税額の3分の1(1戸当たり100平方メートルまで)に相当する額が減額される」と明記されています(出典:四街道市「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに係る固定資産税の減額制度」)。また、この制度による減額は、当該マンションにつき一度しか受けられないことも明記されています。
数字を出しておきます。仮に1戸あたりの家屋分固定資産税が年間5万円のマンションで、48戸が対象になった場合。
- 減額額:5万円 × 1/3 = 約1万6,600円/戸
- 全戸合計:約1万6,600円 × 48戸 = 約80万円
「たった80万円か」と思われるかもしれません。しかし、これは工事費が1円も増えずに戻ってくるお金です。しかも申告作業は、証明書を集めて期限内に出すだけ。やらない理由がないというのが私の考えです。
建物側の主な要件
- 新築された日から20年以上が経過していること
- 総戸数10戸以上であること
- 区分所有者が2人以上おり、居住用専有部分が専有部分の床面積の2分の1以上であること
- 過去に1回以上、長寿命化工事を適切に行っていること
- 長寿命化工事を適切に実施するために必要な修繕積立金が確保されていること
工事側の要件——「3点セット」を一体で行うこと
対象となる「長寿命化工事」は、外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事のすべてを実施することです(令和5年国土交通省告示第290号)。どれか1つでは要件を満たしません。
ここは工事計画に直結します。「今回は外壁だけ」「防水は次回でいい」と分割してしまうと、税制の土俵から降りることになる。設計段階で3点セットを一体化しておくこと。これは工事会社との打合せで必ず確認してください。
入口の要件——「認定」か「積立金の引上げ」か
さらに、次のいずれかが必要です。
- マンション管理計画認定を受けていること
- 令和3年9月1日以降に、修繕積立金の額を適正な水準に引き上げていること
- (令和5年改正で追加)管理適正化法第5条の2に基づく助言または指導を受け、その内容を実施したこと
②があるのがポイントです。認定を取っていなくても、「積立金を適正水準に引き上げた」という事実があれば入口に立てる。積立金不足に悩んでいる管理組合ほど、値上げ決議と税制がセットで効く構造になっています。
適用期間——ここは最新情報の確認を
制度は令和5年4月1日にスタートしました。四街道市の公表ページには「令和5年4月1日から令和7年3月31日までに工事が完了したマンション」という記載が確認できますが、国は令和8年度税制改正で本特例措置を5年間(令和8年4月1日〜令和13年3月31日)延長する方針を示しています(出典:国土交通省「令和8年度税制改正概要」)。国土交通省のマンション税制ページでも、令和8年4月1日付の通知や各種証明書様式が更新されています。
つまり、市のページの記載が更新前の可能性があるということです。ここは断定を避けます。工事を計画中の管理組合は、必ず四街道市 建築課(043-421-6147)と資産税担当課の両方に、令和8年度以降の取扱いを確認してください。「ホームページに古い期間が書いてあったので諦めました」——これが一番もったいない。
申告期限は「工事完了後3か月以内」
見落としが最も多いのがここです。工事完了後3か月以内に市へ申告しなければなりません。竣工検査が終わって、理事会が打ち上げをして、決算をまとめて……とやっているうちに3か月は簡単に過ぎます。
工事着工の時点で、申告のスケジュールを工程表に書き込んでおく。私が管理組合さまにお願いしているのはこれだけです。必要書類(大規模の修繕等証明書、過去工事証明書、修繕積立金引上証明書など)の様式は国土交通省のサイトから入手できます。証明書は建築士等が作成しますので、工事会社の選定時に「長寿命化税制の証明書対応ができるか」を確認しておくと安全です。
入口を開ける鍵——マンション管理計画認定制度
四街道市は「申請できる自治体」です
管理計画認定制度は、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、適切な管理計画を持つマンションとして市の認定を受ける制度です。この認定を市が行うためには、市が「マンション管理適正化推進計画」を策定している必要があります。
四街道市は、この推進計画を策定済みです(出典:四街道市「マンション管理適正化推進計画策定について」)。市は「市場において評価が上がる」「住宅金融支援機構の金利優遇措置等が適用される」といったメリットを明示しています。つまり四街道市の分譲マンションは、今日から認定申請の土俵に立てるということです。
申請の流れ
四街道市の場合、いきなり市に持ち込むのではありません。
- (公財)マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」を利用する
- 同サービスで「事前確認適合証」の発行を受ける
- 支援サービス経由で四街道市に認定申請する
この2段構えです。事前確認にはマンション管理センターのシステム使用料等がかかりますし、事前確認を行うマンション管理士への費用も発生します。市の手数料の有無・金額については、建築課へ直接ご確認ください(自治体によって扱いが異なるため、ここは断定を避けます)。
認定の有効期間は5年間です。5年ごとの更新が必要になります。
認定基準の中身(国の基準16項目・要旨)
- 管理者等が定められていること/監事が選任されていること/集会が年1回以上開催されていること
- 管理規約が最新のマンション標準管理規約に照らして適切に作成されていること
- 緊急時の専有部立入り、修繕等の履歴情報の管理等について、管理規約に定めがあること
- 長期修繕計画が7年以内に作成または見直しされていること
- 長期修繕計画の計画期間が30年以上、かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれること
- 長期修繕計画において、将来の一時金徴収を前提としていないこと
- 修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと
- 管理費・修繕積立金の滞納者への督促等の対応が規定されていること
- 区分所有者名簿・居住者名簿を備え、年1回以上更新していること
ご覧のとおり、認定基準の中心は「長期修繕計画」と「修繕積立金」です。逆に言えば、認定を目指すプロセスそのものが、管理組合の財務体質改善になる。私はこれを「認定は目的ではなく、健康診断だ」と説明しています。
認定のメリットは3つ
- マンション長寿命化促進税制の入口になる(前述)
- 住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資の金利が年0.2%引下げになる
- フラット35の金利引下げが適用され、中古売買時の訴求材料になる(=資産価値の維持・向上)
3つ目は、オーナー・区分所有者の資産価値に直結します。「管理を買う時代」と言われて久しいですが、認定はその管理品質を第三者が証明してくれる唯一の公的ラベルです。
積立金が足りない——住宅金融支援機構という現実解
四街道市には、大規模修繕への独自の利子補給制度は公表情報の範囲では確認できませんでした。ですので、借入の主役は住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資(マンションすまい・る融資)」になります。
- 借りるのは管理組合(個人の連帯保証は原則不要。マンション管理センターの債務保証を利用する形が一般的)
- 返済原資は毎月の修繕積立金
- 管理計画認定マンションは融資金利を年0.2%引下げ
- 耐震改修工事・浸水対策工事・省エネルギー対策工事のいずれかを行い、かつ管理計画認定を取得している場合、返済期間を最長35年とすることができる
(出典:住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資……の融資金利について」/「マンションすまい・る融資」)
金利は毎月見直されますので、具体的な水準は機構本支店にご確認ください。ここで申し上げたいのは、「借りる」は敗北ではないということです。
一時金の徴収は、住民の合意形成コストが極めて高い。特に高齢の区分所有者にとって、数十万円の一時金は現実的な負担です。一方で借入は、修繕を必要なタイミングで実施でき、負担を平準化できる。建物の劣化を放置して躯体まで痛めれば、後の工事費は跳ね上がります。時間を買うための借入は、経営判断として十分に合理的です。
あわせて、積立金を計画的に積み増していく手段として「マンションすまい・る債」があります。管理組合が積立金を安全に運用しながら積み立てる仕組みで、次回工事に向けた体力づくりに使えます。
四街道市の耐震補助は、マンションに使えるのか
正直に書きます。
四街道市には木造住宅耐震診断費補助制度・木造住宅耐震改修工事費補助制度があります。
- 耐震診断:診断に要した費用の3分の2、上限8万円
- 耐震改修工事:補助対象経費の合計額の3分の1、上限50万円
- 耐震診断の結果「倒壊する可能性がある」「倒壊する可能性が高い」と診断され、改修工事後に「倒壊しない」「一応倒壊しない」となることが見込まれるものが対象
- 問い合わせ:四街道市 建築課 043-421-6144
(出典:四街道市「木造住宅耐震診断費補助制度・木造住宅耐震改修工事費補助制度」)
制度名のとおり、「木造住宅」の制度です。RC造・SRC造の分譲マンション共用部の耐震診断・耐震改修に、この枠をそのまま適用するのは、公表要件からは難しいと読むのが妥当です。
近隣を見ると、成田市には管理組合を対象としたマンション予備診断の助成枠があり、佐倉市には管理組合が申請者になれるマンション耐震診断補助金があります。同じ千葉県内でも自治体によって整備状況に差がある、というのが実情です。
四街道市について、旧耐震(昭和56年5月31日以前)の分譲マンションを対象とした診断・改修補助が今後整備される可能性はあります。四街道市は耐震改修促進計画を策定しており、市所有の特定建築物の耐震化率は平成19年6月末時点の約77%から令和7年3月31日時点で約98%まで引き上げています(出典:四街道市「市所有建築物の耐震化の取組状況」)。行政として耐震化に取り組む姿勢は明確です。
旧耐震のマンションにお住まいの管理組合は、まず建築課(043-421-6144)に「分譲マンション向けの診断・改修補助の予定はありますか」と一本電話を入れてください。 制度は問い合わせの数で動きます。これは、私が各地の自治体を回って実感していることです。
「使えそうで使えない」制度を、先に潰しておく
四街道市住宅リフォーム補助金(令和8年度)
市内の住宅関連産業の活性化と定住促進を目的に、市内に住宅を所有し、かつ居住する方が市内業者を使って行うリフォームを支援する制度です。
- 補助額:対象工事費(消費税抜き)の10%、上限10万円
- 申請期間:令和8年4月6日(月)〜5月7日(木)。申請多数の場合は抽選。予算に残があれば、その後は先着順で令和8年11月30日まで受付
- 問い合わせ:四街道市 建築課
(出典:四街道市「住宅リフォーム補助金制度」)
読んでいただければ分かるとおり、「所有し、かつ居住する者が行う」個人向けの制度です。管理組合名義で行う共用部の大規模修繕に充当する想定にはなっていません。対象工事の金額要件など細部は市の交付要綱・案内で異なる場合がありますので、断定は避けます。ただ、共用部工事の財源としては期待しないというのが現実的な判断です。
一方で、区分所有者が個人で行う専有部リフォーム(内窓の設置、断熱、水回りなど)には使える可能性があります。大規模修繕の説明会で「専有部のリフォームを考えている方は、市のリフォーム補助金の申請期間が4月上旬です」と一言アナウンスするだけで、住民の満足度は上がります。管理組合が住民に価値を届ける方法は、共用部だけではないのです。
住宅用設備等脱炭素化促進事業補助制度(令和8年度)
太陽光発電、蓄電池、燃料電池、EV/PHV等を対象とした四街道市の補助制度です。
- 申請期間:令和8年4月13日(月)〜令和9年1月29日(金)(市役所開庁日の9:00〜16:30)
- 先着順、予算がなくなり次第終了
- 申請は市役所本庁舎1棟2階・環境政策課(12番窓口)に持参。郵送不可。書類確認に20分程度
- 蓄電池・EV・PHVは、住宅用太陽光発電設備が設置済みであることが条件
- 工事の着手から完了、支払いまでを当該年度内に完了していること
(出典:四街道市「住宅用設備等脱炭素化促進事業補助制度(令和8年度)」)
ここで管理組合の皆さまが気になるのは、「共用部への太陽光設置に使えるか」「管理組合名義で申請できるか」でしょう。制度の建付けは「住宅用設備」であり、共用部・管理組合名義の可否は要綱の解釈次第です。環境政策課への事前確認が必須です。断定はできません。
ただ、方向性としては押さえておいてください。大規模修繕で屋上防水をやり直すタイミングは、太陽光パネルを載せる最良のタイミングでもあります。防水の後にパネルを載せれば、パネルを一度撤去する二重コストを避けられる。「防水と太陽光は同じ工程で考える」——これは覚えて帰っていただきたい原則です。
相談先——お金をかけずに専門家に当たる方法
四街道市独自の「マンション管理アドバイザー派遣事業」は、公表情報の範囲では確認できませんでした(この点も建築課へご確認ください)。近隣では船橋市、千葉市、市川市、我孫子市、浦安市、成田市などが管理組合向けの相談・派遣制度を持っています。
四街道市の管理組合が今すぐ使えるのは、一般社団法人 千葉県マンション管理士会の無料セミナー・相談会です。長期修繕計画の見直し、修繕積立金の適正化、規約改正、合意形成といったテーマで、マンション管理士に直接相談できます。開催日程は同会のサイトでご確認ください。
「工事会社に相談する前に、利害関係のない専門家に一度当ててみる」。これは私が工事会社の立場で申し上げるのも妙な話ですが、本気でそう思っています。第三者の目を通した長期修繕計画は、その後の見積比較の精度を格段に上げます。結果として、良い工事会社が正当に評価される。業界全体にとっても健全です。
四街道市の管理組合が「使う順番」——8ステップ
制度は、順番を間違えると効きません。
- 千葉県マンション管理士会の無料相談で、長期修繕計画と積立金を点検する(費用0円)
- 修繕積立金の水準を見直す。引上げが必要なら総会決議へ(※令和3年9月1日以降の引上げは、長寿命化税制の入口要件になります)
- マンション管理計画認定を申請する(マンション管理センターの事前確認 → 四街道市 建築課へ)
- 大規模修繕の工事計画を「外壁塗装等+床防水+屋根防水」の3点セット一体で組む(税制要件)
- 工法を比較検討する(足場/ロープアクセス/ハイブリッド)——ここが工事費そのものを下げる唯一の場面
- 資金が足りなければ、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資(認定済なら金利年0.2%引下げ)
- 工事完了
- 完了後3か月以内に、四街道市へ長寿命化税制の減額申告(証明書を忘れずに)
この順番が重要な理由は、②③が④以降の条件を作るからです。工事が終わってから「認定を取っておけばよかった」と気づいても、時計は戻せません。大規模修繕の2年前から動き始めるのが理想です。
モデルケースで考える
ケースA:築28年・48戸・11階建て(新耐震・四街道駅徒歩10分)
2回目の大規模修繕。外壁タイルの浮き、屋上防水の劣化、鉄部の錆が出ている。見積は約9,000万円。積立金残高は約6,500万円。2,500万円不足。
- 管理計画認定を取得(長期修繕計画を30年計画に作り直し、積立金を月額200円/㎡へ引上げ決議)
- 3点セット一体で工事計画を組み、長寿命化税制の要件を満たす
- 不足分2,500万円は機構融資(認定により金利年0.2%引下げ)
- 工法をハイブリッドに変更:低層部と共用廊下側は足場、高層部の外壁・タイル補修はロープアクセス。仮設費が圧縮され、工事費は約9,000万円 → 約7,800万円へ(=借入は1,300万円で足りる)
- 完了翌年度、固定資産税が3分の1減額(48戸で概算80万円前後)
結果として、一時金の徴収はゼロ、値上げは月200円/㎡で着地。これが「4枚重ね」の効果です。
ケースB:築42年・18戸・5階建て(旧耐震)
小規模・旧耐震。積立金は2,000万円弱。躯体の劣化と耐震性の両方が心配。
- まず千葉県マンション管理士会の無料相談で現状を整理
- 四街道市 建築課に、分譲マンション向けの耐震診断補助の有無を確認(木造向け制度は対象外の可能性が高いことを前提に)
- 総戸数10戸以上・築20年以上の要件は満たすため、長寿命化税制は射程内。ただし「過去に1回以上の長寿命化工事」の履歴確認が必要
- 18戸で足場を組むと、1戸あたりの仮設費負担が重い。ロープアクセス(無足場工法)で仮設費を大幅圧縮する余地が大きい
- 積立金不足分は機構融資で平準化
小規模マンションほど、「足場を組むか組まないか」が総額を左右します。ここは後述します。
補助金の前に——工事費そのものを2割下げる話
ここからは、工事会社としての本音です。
大規模修繕の工事費のうち、仮設足場が占める割合は15〜25%程度になることが少なくありません。1億円の工事なら、1,500万〜2,500万円が「工事をするための土台」に消えている計算です。
私どもは3つの工法から、建物にとって最適なものをご提案しています。
① 通常足場工法
従来型の仮設足場です。中低層、形状が複雑な建物、全面的な躯体改修が必要なケースでは、これが最も合理的です。作業効率が高く、多職種が同時に入れる。「足場が悪」なのではありません。足場しか選択肢がないことが問題なのです。
② ロープアクセス工法(無足場工法)
産業用ロープで作業員が壁面に直接アクセスして施工します。メリットは3つ。
- 仮設費の大幅削減:足場の架設・解体費が不要
- 工期短縮:足場の組立・解体期間(数週間)がまるごと消える
- 居住者の生活影響が最小:足場とメッシュシートで建物が覆われないため、日照・通風・視界が保たれ、窓を開けられる。足場を伝った侵入リスクの不安も生じにくい
分譲マンションで最も苦情が出るのが「足場があるから洗濯物が干せない」「カーテンを開けられない」です。ロープアクセスは、この住民ストレスを構造的に減らします。→ ロープアクセス工法の詳細はこちら
③ ハイブリッド工法
足場とロープアクセスを、部位ごとに使い分ける方法です。バルコニー側は足場、外壁面はロープ、といった具合に。総合的なコスト最適化を狙うなら、これが最も現実的な解になることが多い。→ 3工法の考え方はこちら
日本で、この3つを自社で提案できる会社はほとんどありません。1つか2つの工法しか持たない会社は、「自社が持っている工法」を勧めるしかない。それは提案ではなく、在庫の押し付けです。
私どもは、日本初となるロープアクセス工事のフランチャイズを展開しており、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しています。中間マージンを削り、高品質と低価格を両立させる——それがこの仕組みの狙いです。→ なぜ低価格が実現できるのか
補助金で数十万円を取りに行くことと、工法選択で1,000万円単位のコストを下げること。どちらが管理組合の財布に効くかは、計算するまでもありません。もちろん、両方やるのが最善です。
合意形成のコツ——理事会が総会で勝つために
制度を理解しても、総会で否決されれば意味がありません。私が現場で見てきた「うまくいく理事会」には共通点があります。
1. 「いくら高くなるか」ではなく「何もしないといくら損するか」を示す
外壁の劣化を放置すれば、雨水が躯体に浸入し、鉄筋が錆び、爆裂に至ります。そうなれば工事費は跳ね上がる。「先送りのコスト」を数字で見せることが、最も強い説得材料です。
2. 制度を使って「戻ってくるお金」を明示する
「値上げをお願いします」だけでは通りません。「値上げをすれば長寿命化税制の要件を満たし、固定資産税が全戸で約80万円戻ります」——これは同じ提案でも、まったく違う話に聞こえます。
3. 工法の選択肢を、住民に選ばせる
「足場だと工期5か月・生活影響大・9,000万円」「ハイブリッドだと工期3.5か月・生活影響中・7,800万円」。選択肢を並べて住民に判断させると、決議は驚くほどスムーズに通ります。人は、押し付けられた結論には抵抗し、自分で選んだ結論は支持するからです。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 四街道市に、大規模修繕そのものへの補助金はありますか。
A. 公表情報の範囲では、市が工事費に直接補助を出す制度は確認できませんでした。ただし長寿命化促進税制(固定資産税の3分の1減額)は市が実施しており、これが実質的な支援策になります。
Q2. 長寿命化税制の減額割合は、本当に3分の1ですか。
A. 四街道市の公表ページには3分の1と明記されています。ただし条例改正の可能性がありますので、申告前に建築課(043-421-6147)および資産税担当課へ最新の割合をご確認ください。
Q3. 外壁塗装だけでも税制の対象になりますか。
A. なりません。外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事のすべてを実施することが要件です。工事計画の段階で一体化してください。
Q4. 管理計画認定は、市に直接申請できますか。
A. できません。(公財)マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」で事前確認適合証の発行を受けたうえで、同サービス経由で四街道市に申請します。
Q5. 認定を取らずに、長寿命化税制だけ使えますか。
A. 可能性はあります。令和3年9月1日以降に修繕積立金を適正水準へ引き上げていること、または管理適正化法に基づく助言・指導を受けてその内容を実施したこと、のいずれかを満たせば入口に立てます。
Q6. 旧耐震のマンションです。耐震改修に市の補助は使えますか。
A. 四街道市の耐震診断・改修補助は木造住宅向けの制度で、RC造の分譲マンション共用部は原則対象外と読むのが妥当です。ただし今後の制度整備の可能性もあるため、建築課(043-421-6144)へご確認ください。
Q7. 修繕積立金が全く足りません。工事を延期すべきですか。
A. 延期は劣化を進め、将来の工事費を押し上げます。①機構融資で資金を確保する、②工法を見直して工事費そのものを下げる——この2つを先に検討してください。延期は最後の手段です。
Q8. 減額申告を忘れた場合、後から申請できますか。
A. 工事完了後3か月以内という期限があります。過ぎてしまうと適用を受けられません。工程表に申告日を書き込んでおいてください。
まとめ——四街道市の管理組合が、今日やるべきこと
四街道市には、大規模修繕への直接補助はありません。しかし、
- 長寿命化促進税制の減額割合を3分の1と明示して運用している
- マンション管理適正化推進計画を策定し、管理計画認定の申請を受け付けている
- 認定を取れば、機構融資の金利が年0.2%下がる
この3つが揃っています。あとは管理組合が順番どおりに動くだけです。
そして最後にもう一度。制度で取り返せるのは数十万円、工法で削れるのは数百万〜1,000万円単位です。両方やってください。
株式会社明誠では、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法から、建物の形状・階数・劣化状況・居住者の生活パターンに応じた最適な工法をご提案しています。四街道市の分譲マンションについても、現地調査とお見積りは無料でお受けしています。ドローンによる外壁調査もご相談ください。
「まず、うちの建物はどの工法が向いているのか知りたい」——その一言からで結構です。→ 無料調査・お見積りのご相談はこちら
また、管理組合さま向けのサービス内容はこちらのページにまとめております。建物の資産価値を守る、という視点での長期的なご提案はこちらをご覧ください。
なお、私どもは一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)を運営し、全国の建設業者に向けた経営支援・セミナー・ビジネスマッチングも行っています。地域の施工品質を底上げすることが、結果的に管理組合の皆さまの利益になると信じています。
出典
- 四街道市「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに係る固定資産税の減額制度」 https://www.city.yotsukaido.chiba.jp/smph/kurashi/zeikin/koteishisan/gengaku/ykkazei2023_ap.html
- 四街道市「マンション管理適正化推進計画策定について」 https://www.city.yotsukaido.chiba.jp/smph/kurashi/sumai/sumai/manshonkanritekisei.html
- 四街道市「木造住宅耐震診断費補助制度・木造住宅耐震改修工事費補助制度」 https://www.city.yotsukaido.chiba.jp/kurashi/sumai/kenchiku/taisinhojo.html
- 四街道市「住宅リフォーム補助金制度」 https://www.city.yotsukaido.chiba.jp/smph/kurashi/sumai/kenchiku/jyuutakureform.html
- 四街道市「住宅用設備等脱炭素化促進事業補助制度(令和8年度)」 https://www.city.yotsukaido.chiba.jp/kurashi/kankyo/energy_saving_eco/datutannso8.html
- 四街道市「市所有建築物の耐震化の取組状況」 https://www.city.yotsukaido.chiba.jp/smph/kurashi/sumai/kenchiku/taisinjoukyou.html
- 国土交通省「住宅:マンション税制(マンション長寿命化促進税制)」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000121.html
- 国土交通省「住宅:管理計画認定制度」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/keikakunintei.html
- 国土交通省「令和8年度税制改正概要」 https://www.mlit.go.jp/page/content/001975596.pdf
- 住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資等の融資金利について」 https://www.jhf.go.jp/kinri/kyouyoureform.html
- 住宅金融支援機構「マンションすまい・る融資(管理組合申込みの場合)」 https://www.jhf.go.jp/kanri/mansionreform_kanri/index.html
- 公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」 https://www.mankan.or.jp/11_managementplan/mpsupport.html
- 一般社団法人 千葉県マンション管理士会 https://www.chiba-mankan.jp/
- 千葉県移住・二地域居住ポータルサイト「四街道市」 https://life-style.chiba.jp/areasearch/yotsukaido/
※本記事は2026年7月12日時点で確認できた公表情報に基づいて作成しています。制度の内容・金額・期間・受付状況は変更される場合があります。実際のご検討にあたっては、必ず各窓口へ最新情報をご確認ください。
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