北区の12条点検・外壁打診調査|対象建築物と全面打診のタイミング【令和8年度版】

おはようございます。株式会社明誠の本間幸紘です。東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年近くやってきました。

先日、北区赤羽のオーナーさまから「区役所から定期報告の督促が来たのだが、うちは対象なのか」というご相談をいただきました。図面を拝見したところ、確かに対象でした。しかも前回の全面打診から12年が経っていました。

北区は、赤羽・王子・滝野川と、昭和40〜50年代に建った建物がまとまって残っているエリアです。私の感覚では、12条点検(建築基準法第12条第1項に基づく定期調査報告)の「全面打診」の期限が静かに過ぎている物件が、区内にはまだ相当数あります。

今日は北区の建物を持っておられる方に向けて、12条点検の対象・時期・費用、そして打診をどう安く早く終わらせるかを、現場の数字で整理します。

結論:北区で12条点検の対象になる建物と、全面打診が必要になる時期

先に結論からお伝えします。

対象になるのは、用途と規模で決まります。 東京都の場合、特定建築物定期調査報告の対象は「共同住宅」「事務所」「物販店舗」「飲食店」「ホテル・旅館」「病院」などの用途ごとに、階数と床面積で線引きされています。北区内の建物も、この東京都の基準がそのまま適用されます(出典:東京都都市整備局「3.定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧」)。

全面打診が必要になるのは、おおむね10年に一度です。 竣工、外壁改修、または前回の全面打診から10年を超えると、次の定期調査報告のタイミングで「落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分」の全面打診が求められます(出典:国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」)。

北区の報告書の提出先は、区役所ではありません。 北区の様式で作成したうえで、公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターに提出します(出典:東京都北区「定期報告【特定建築物定期調査報告書北区様式】」/2025年11月13日更新)。ここを勘違いされている管理組合が本当に多いので、後ほど詳しく書きます。

私がいつも理事長さまにお伝えしているのは、「12条点検は義務だから仕方なくやる支出ではなく、大規模修繕の設計図を無料で手に入れるチャンスです」という話です。ここからが本題です。

建築基準法第12条第1項とは:北区のオーナーが押さえるべき最低限

建築基準法第12条は、建物を安全に使い続けるための「健康診断」を所有者に義務づけた条文です。第1項と第3項があり、混同されやすいので整理します。

区分 対象 内容 報告先
第12条第1項 特定建築物 敷地・構造・外壁・防火区画などの定期調査と報告 特定行政庁(北区の場合は受付機関経由)
第12条第3項 建築設備・防火設備・昇降機等 設備の定期検査と報告 同上

つまり「12条点検」と一言で呼ばれていても、建物本体の調査(1項)と設備の検査(3項)は別物です。外壁の打診調査は、第1項の定期調査に含まれます。

報告の義務を負うのは誰か

報告義務は所有者または管理者にあります。分譲マンションであれば管理組合(理事長)、賃貸マンションやビルであればオーナーご本人です。管理会社に任せているつもりでも、法律上の義務者は変わりません。

報告の周期

特定建築物の定期調査報告は、東京都では用途ごとに「毎年」または「3年ごと」に区分されています。共同住宅(3年ごと報告)の報告年度は、令和6年度・令和9年度・令和12年度という並びです(出典:東京都都市整備局)。

ここが北区のマンションオーナーにとって、今いちばん重要なポイントです。

令和8年度(2026年度)は、共同住宅の報告年度ではありません。次は令和9年度(2027年5月1日〜10月31日)です。

「じゃあ来年でいいのか」と思われた方。そうではありません。調査自体は報告期間の前に済ませておく必要がありますし、打診で不具合が見つかれば補修が要ります。令和8年度の今こそ、令和9年度の報告に向けて動く時期なのです。

初回免除という制度

新築・改築した建物には「初回免除」があります。検査済証の交付を受けた日が属する年度の翌年度以降、2回目の報告時期から報告が必要になります。

たとえば令和5年度中に検査済証が交付された共同住宅なら、令和6年度の報告は免除され、令和9年度から報告が必要です(出典:東京都都市整備局)。北区でも近年、赤羽や王子の駅前で新しいマンションが建っていますが、そういう建物の1棟目の報告がちょうど令和9年度にやってくる計算になります。

北区で「全面打診」が必要になる4つのトリガー

外壁の調査には2段階あります。

  1. 通常調査:おおむね6ヶ月から3年以内に一度、開口部の隅や水平打継部など手の届く範囲をテストハンマーで打診し、それ以外は目視で確認
  2. 全面打診:おおむね10年に一度、落下して歩行者に危害を加えるおそれのある部分を全面的に打診

(出典:国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」)

全面打診のスイッチが入る条件は、実務上おおむね次の4つです。

トリガー1:竣工から10年を超えた

いちばん基本の条件です。新築から10年を超え、かつ次の報告時期が来たら、全面打診の対象になります。

トリガー2:外壁改修から10年を超えた

前回の大規模修繕で外壁を改修していれば、そこから10年カウントし直しです。北区で平成20年代前半に大規模修繕をされたマンションは、まさに今この10年目を迎えています。

トリガー3:前回の全面打診から10年を超えた

打診そのものを実施した日からもカウントされます。令和8年度・令和9年度に報告する建物であれば、平成28年(2016年)4月1日以降に全面打診を実施しているかが一つの目安になります。前回の報告書を引っ張り出して、日付を確認してみてください。

トリガー4:通常調査で異常が認められた

10年を待たずとも、手の届く範囲の打診や目視で浮き・ひび割れ・剥落が確認されれば、その部分は全面打診の対象になります。タイルが1枚落ちた、という段階で管理組合から連絡をいただくことが北区でも年に数件あります。

正直に申し上げます。私が現場で20年やってきて一番悔しい思いをするのは、「異常は分かっていたが総会が通らず先送りした」という物件で、実際に剥落が起きたときです。外壁タイルは1枚が数百グラムでも、5階から落ちれば十分な凶器になります。

なお、落下防止措置付きの外壁タイルの取扱いについては、令和7年6月30日付の技術的助言(国住参建第1579号)が最終改正として示され、さらに令和8年7月21日付の事務連絡で性能検証法が示されています(出典:国土交通省)。制度は年度をまたいで細かく動いていますので、調査者に最新の運用を確認しながら進めるのが安全です。

北区固有の運用:様式・提出先・オンライン化の状況

ここが北区の物件を持つ方に、いちばんお伝えしたいところです。

様式は北区のものを使う

北区は独自の様式を公開しています。

  • 第8号様式の2 特定建築物定期調査報告書(Word/PDF)
  • 特定建築物定期調査結果表(Word/PDF)

いずれも東京都北区の公式ページからダウンロードできます。あわせて定期調査報告概要書の提出も求められます。区によって書式が異なることは東京都も明記していますので、他区の様式を流用しないようご注意ください。

提出先は「東京都防災・建築まちづくりセンター」

北区の様式で作った報告書は、北区役所ではなく公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンター(新宿区西新宿7-7-30 小田急西新宿O-PLACE 2F/建築防災課 TEL 03-5989-1929)に提出します。受付時間は月〜金の9:00〜11:30/13:00〜16:00です(出典:公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンター)。

私も初めて北区の案件を担当したとき、この二段構えに戸惑いました。様式は区、提出は都の受付機関。ここを覚えておいてください。

制度の相談窓口は北区役所

一方、「うちの建物は対象か」「用途の判定が微妙だ」といった相談先は北区役所です。

東京都北区 都市整備部 建築課 設備審査担当
〒114-8508 東京都北区王子本町1-15-22 北区役所第一庁舎7階5番
電話:03-3908-9184

(出典:東京都北区/2025年11月13日更新。令和8年度の運用については、お問い合わせ前に同ページの最新情報をご確認ください)

オンライン化の状況:北区の物件は現時点で紙提出

東京都は令和8年3月27日から特定建築物定期調査報告のインターネット受付を開始しました。ただし、受付対象は東京都知事宛または多摩建築指導事務所長宛のみです(出典:公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンター)。

北区は建築主事を置く特定行政庁ですので、北区内の一般的な建物はこのインターネット受付の対象外になります。つまり、北区の物件は引き続き紙での提出が基本です。スケジュールを組むとき、この郵送・持参の日数を忘れないでください。

なお、敷地内に延べ面積1万㎡を超える建築物がある場合は、特別区の区域でも東京都市街地建築部建築企画課(建築安全担当 直通 03-5388-3344)の所管になります(出典:東京都都市整備局)。赤羽駅前や王子の大規模複合物件では、ここに該当するケースがあります。

北区のマンションストックから見た、12条点検の現実

北区が実施した分譲マンション実態調査(調査対象期間:令和4年8月〜10月)によると、区内の分譲マンションと思われる建物は1,022件。地域別では王子東と滝野川西が200件以上と多く、浮間は60件、王子西は78件と少なめです。

そして築年数の内訳がこうです(回答180件ベース)。

築年数 件数 割合
築10年未満 20件 11.1%
築10年以上20年未満 28件 15.6%
築20年以上30年未満 41件 22.8%
築30年以上40年未満 40件 22.2%
築40年以上 47件 26.1%

築30年以上が回答の約半数。そして築10年以上の建物は、回答全体の約87%を占めます。つまり北区の分譲マンションの大半が、すでに全面打診の10年サイクルに乗っているということです。

同じ調査で、管理上の不安として挙げられたのは「区分所有者・居住者の高齢化」96件、「理事の選任が困難」62件、「大規模修繕工事の実施」52件、「修繕積立金の不足」48件でした。

この数字を見て、私はため息が出ます。打診が必要な建物は多いのに、それを決める理事会の体力が落ちているという構図がはっきり出ているからです。

だからこそ、費用と工期を圧縮する工法の選択が効いてきます。

実務コスト感:打診調査の㎡単価と、足場・ロープアクセスの差

数字の話をします。以下は明誠の過去案件からの目安レンジであり、実際の見積は建物形状・タイル種別・立地条件で大きく変動します。参考値としてご覧ください。

打診調査そのものの単価

項目 目安単価
外壁全面打診(調査のみ) 250〜500円/㎡
外壁塗装(補修を伴う場合) 3,500〜4,500円/㎡
防水(屋上・バルコニー) 5,000〜8,000円/㎡

打診調査だけを見ると、㎡単価は決して高くありません。費用の大半を占めるのは、作業員を壁面まで運ぶ手段のコストです。ここが工法選択で差がつくところです。

足場とロープアクセスの費用差

10階建て・外周80m・工期3ヶ月というモデルケースで比較します。

項目 通常足場工法 ロープアクセス工法
仮設費(目安) 約168万円 約59万円
差額 — 約109万円の圧縮
工期 3ヶ月 1.5〜2ヶ月
居住者への影響 全戸にわたり窓周りに足場 作業日のみ部分的

30戸規模のマンションの大規模修繕は総額3,500万〜5,000万円がレンジで、そのうち仮設足場が15〜25%を占めます。打診調査のためだけに足場を架けるのは、正直に言って割に合いません。

私はいつも理事長さまに、「打診のためだけの足場は、いちど立ち止まって考えましょう」とお伝えしています。

工法ごとの技術的な違い、資格体系、適用できる建物条件については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで同業者向けに詳しく解説しています。発注者の立場でも、工法の中身を知っておくと見積の読み方が変わります。

ロープアクセス工法が北区の12条打診で選ばれる理由

北区の建物には、ロープアクセスと相性のよい条件がそろっています。

理由1:敷地に余裕のない物件が多い

赤羽・十条・東十条・滝野川の商店街沿いや、京浜東北線・埼京線の線路際には、隣地境界まで目一杯建っている物件が珍しくありません。足場を架けるには隣地の承諾や道路使用許可が要り、その調整だけで数週間かかることもあります。

ロープアクセスは屋上のアンカーやパラペットから降りるため、地上の足場スペースを必要としません。

理由2:居住者の生活影響を最小化できる

北区の分譲マンションは、実態調査で「区分所有者・居住者の高齢化」が最大の不安として挙がっています。足場が架かると、洗濯物が干せない、窓が開けられない、防犯上の不安がある、という状態が数ヶ月続きます。高齢の居住者にはこれが相当な負担です。

ロープアクセスなら、作業する面と日だけをピンポイントで押さえられます。「居ながら施工」という言い方をしますが、これは高齢化が進んだマンションほど価値が出ます。

理由3:調査と補修を同じ体制で流せる

打診で浮きが見つかったとき、足場工法だと「調査→報告→総会→補修の再発注→また足場」という流れになりがちです。ロープアクセスなら、同じ作業員が同じ日のうちに、あるいは短い再訪で補修まで対応できます。

明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業については、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業で過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が担当し、品質管理はISO9001のマネジメントシステムに沿って運用しています。

もちろん、ロープアクセスが常に最適とは限りません。複雑な形状、低層で全面改修を伴う物件、大規模な躯体補修が必要な物件では、通常足場やハイブリッド工法(足場とロープアクセスを部位ごとに使い分ける方法)のほうが総額で安くなることがあります。明誠が3工法を持っているのは、建物ごとに正直な答えを出すためです。

工法の詳細は明誠のロープアクセス工法のページにまとめています。ロープアクセスの安全管理体制や資格要件の技術的な背景はロープアクセスドットコムもあわせてご覧ください。

12条点検を大規模修繕と一体化する3つのメリット

私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。

メリット1:仮設費を二重に払わずに済む

12条点検の全面打診と、大規模修繕の劣化診断は、見ている対象がかなり重なります。時期をそろえれば、壁面にアクセスする費用が一度で済みます。

メリット2:打診結果が長期修繕計画の裏付けになる

打診で得られる浮きの位置・面積のデータは、次期大規模修繕の数量算出にそのまま使えます。「なんとなく12年周期だから」ではなく、実測データで総会に諮れるのは、理事会にとって大きな武器です。

北区の実態調査では、長期修繕計画を「立ててある」と答えたのが134件(74.4%)でした。計画はあるのに、その中身の根拠が薄いケースを私は数多く見てきました。打診データは、その根拠を埋めてくれます。

メリット3:報告期限に追われずに修繕計画を組める

令和9年度の報告に向けて、令和8年度のうちに打診を済ませておけば、補修の要否を落ち着いて判断できます。期限直前に不具合が見つかって慌てて発注するのが、いちばん高くつくパターンです。

管理組合としての進め方は管理組合さま向けサービスのご案内、賃貸マンション・テナントビルのオーナーさまはビルオーナーさま向けサービスのご案内をご覧ください。私たちがどういう考え方で工事に向き合っているかは明誠の理念のページに書いています。

打診調査から補修まで一貫して対応した実例は、明誠の施工事例からご覧いただけます。

よくあるご質問

Q. 北区の12条点検の報告書は、区役所に持っていけばよいですか?

A. いいえ。北区の様式で作成したうえで、公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンター(新宿区西新宿7-7-30)に提出します。制度や対象判定のご相談は北区役所 建築課 設備審査担当(03-3908-9184)が窓口です。

Q. 令和8年度は共同住宅の報告年度ではないと聞きました。何もしなくてよいですか?

A. 報告の提出は令和9年度(2027年5月1日〜10月31日)が次の時期ですが、調査と補修には準備期間が要ります。令和8年度のうちに前回報告書を確認し、全面打診の要否を判定しておくことをおすすめします。

Q. 外壁の全面打診の費用はいくらくらいですか?

A. 打診調査そのものは250〜500円/㎡が目安です。ただし総額は壁面へのアクセス方法で大きく変わり、10階建て・外周80mのモデルでは仮設費が足場約168万円に対しロープアクセス約59万円という差が出ます。物件ごとに無料で概算をお出しできます。

Q. 工期はどれくらい違いますか?

A. 10階建て・外周80mのマンションで、足場工法が約3ヶ月に対し、ロープアクセス工法は1.5〜2ヶ月が目安です。足場の組立・解体期間がまるごと不要になるためです。

Q. ドローンの赤外線調査で打診の代わりになりますか?

A. 令和4年1月18日付の告示改正で、無人航空機による赤外線調査のうち打診と同等以上の精度を有するものが調査方法として明確化されました。ただし適用には日本建築防災協会のガイドラインに沿った条件の確認が要ります。北区は住宅密集地や鉄道近接地が多く、飛行の可否も含めて事前確認が欠かせません。

Q. 全面打診で浮きが見つかったら、すぐ補修しなければなりませんか?

A. 落下のおそれがある部分は速やかな措置が求められます。一方で、緊急性の低い部分は次期大規模修繕に組み込んで一括で処理したほうが割安になることがあります。緊急度の切り分けをご提案するのも私たちの仕事です。

Q. 賃貸マンションやテナントビルも対象になりますか?

A. 用途と規模の条件を満たせば対象です。報告義務は所有者または管理者にあります。北区の賃貸物件でも対象になるケースは多く、まず用途コードと延べ面積から判定します。

Q. 報告しないとどうなりますか?

A. 建築基準法上の報告義務ですので、未報告は特定行政庁からの督促や指導の対象になります。それ以上に、剥落事故が起きた際の所有者責任が重くなる点を、私はいつも強くお伝えしています。

まとめ:北区のオーナー・管理組合が今週動くこと3点

長くなりましたので、今週できることに絞ります。

  1. 前回の定期調査報告書を探して、全面打診の実施日を確認する。 平成28年4月1日より前なら、次の報告で全面打診の対象になる可能性が高いです。
  2. 令和9年度の報告時期(2027年5月〜10月)を理事会の年間計画に書き込む。 調査は報告の半年以上前に着手するくらいで、ちょうどよい進み方です。
  3. 打診の見積を、足場工法とロープアクセス工法の両方で取る。 差額が見えると、総会の議論が一気に進みます。

12条点検は、やらされる義務ではありません。次の大規模修繕の設計図を、法定の枠組みで手に入れる機会です。北区のように高経年の建物が多いエリアでは、この一手の差が10年後の修繕積立金に効いてきます。

工法の比較や概算のご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。窓口は明誠のお問合せフォームです。

これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない感想です。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月22日時点で公表されている東京都北区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。北区の様式ページは2025年11月13日更新の内容を参照しており、令和8年度中に運用が変わる可能性があります。制度は年度途中でも改正があり得ますので、実際に報告される前に、東京都北区 都市整備部 建築課 設備審査担当および公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターへ最新の内容をご確認ください。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。ロープアクセスの技術情報は姉妹サイトロープアクセスドットコムでも発信しています。

最終更新:2026年9月22日

【令和8年度】荒川区の12条点検・外壁全面打診|報告時期・提出先・細街路で足場が組めない物件の進め方

荒川区でビルや賃貸マンションをお持ちの方から、この時期に必ず届く質問が2つあります。「調査報告書は区役所に出せばいいのか」「うちの前の道は3メートルしかないが、外壁の打診調査はできるのか」。

この記事では、令和8年度(2026年度)に荒川区で定期報告の対象年を迎えるのはどの用途の建物か、そして外壁の全面打診を、荒川区特有の道路条件のなかでどう進めるのかを整理します。荒川区は区の公式サイトが「道幅が4メートルに満たない狭い道路が多く残っております」と明言している区です。つまり、足場を前提に見積を取ると、荒川区の物件は調査費が不必要に膨らむ構造になっています。

私は本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。荒川区でも町屋、東尾久、西日暮里、南千住あたりの物件を見ています。制度の教科書的な解説ではなく、理事会やオーナーさまと実際に話している内容をそのまま書きます。

更新日:2026年9月22日

結論:令和8年度に荒川区で報告年を迎えるのは「用途コード30番台」。報告期間は10月31日まで

先に結論を表でまとめます。

項目 内容
令和8年度の特定建築物定期調査の報告年次 用途コード30番台(事務所、店舗、物販店、飲食店、遊技場など)
報告期間 令和8年5月1日〜令和8年10月31日
共同住宅(用途コード40番台) 令和8年度は報告年次ではない(3年周期で令和6年度・令和9年度・令和12年度が報告年次)
特定行政庁 荒川区(敷地内に延べ面積1万㎡超の建築物がある場合は東京都)
特定建築物の報告書の提出先 公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター 建築防災課(03-5989-1929)
荒川区の担当窓口 防災都市づくり部 建築指導課 審査係(03-3802-3111/設備担当 内線2846)
外壁全面打診の周期 竣工または外壁改修から10年ごと
報告を怠った場合 建築基準法第101条により100万円以下の罰金

この記事を書いている時点で、令和8年10月31日の報告期限まで残り約40日です。用途コード30番台の建物をお持ちで調査会社がまだ決まっていない方は、9月中が実質的な判断のリミットになります。

この記事で答える質問

  • 令和8年度に荒川区で12条報告が必要なのは、どんな建物か
  • 報告書はどこに出すのか(区役所ではありません)
  • 外壁の全面打診が必要になるのはどういうときか
  • 道幅4メートル未満の細街路に面した建物で、打診調査はどう進めるのか
  • 打診調査は実際いくらかかるのか。足場とロープアクセスでいくら差が出るのか

建築基準法第12条とは:4種類の報告があり、提出先がそれぞれ違います

まずここでつまずく方が非常に多いので、整理します。

建築基準法第12条第1項および第3項は、不特定多数の人が利用する建築物について、有資格者による定期的な調査・検査と、特定行政庁への報告を所有者・管理者に義務づけています。荒川区の場合、特定行政庁は荒川区そのものです(敷地内に延べ面積1万㎡を超える建築物がある場合のみ東京都所管)。

報告は4種類に分かれ、荒川区は公式サイトでそれぞれの提出先を明記しています。

種類 対象 報告受付機関 電話
特定建築物(調査) 敷地・地盤、建築物の外部、屋上・屋根、内部、避難施設等 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1929
防火設備(検査) 防火戸、防火シャッター、耐火クロススクリーン、ドレンチャー等 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1937
建築設備(検査) 換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給水及び排水設備 日本建築設備・昇降機センター 03-3591-2421
昇降機・遊戯施設(検査) エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機、遊戯施設等 東京都昇降機安全協議会 03-6304-2225

外壁の打診調査が関わるのは、一番上の「特定建築物(調査)」だけです。ここを押さえておいてください。

エレベーターの保守業者から「12条の検査は済んでいます」と言われても、それは昇降機等の定期検査であり、外壁の話は一切含まれていません。この混同のまま10年以上が過ぎている雑居ビルを、荒川区内でも何件も見てきました。

消防設備点検とは別制度です

荒川区は定期調査報告のページで、わざわざ注意書きを置いています。

建築基準法に基づく「定期調査・検査報告制度」は、消防法に基づく消防用設備等点検とは異なる制度ですので注意してください。

消火器、自動火災報知設備、誘導灯などの点検は消防法に基づくもので、建築基準法の定期報告とは別枠です。「毎年消防に出しているから大丈夫」は通用しません。

報告を怠った場合

定期報告は法令上の義務であり、報告を怠ることや虚偽の報告を行うことは法令違反です。建築基準法第101条により100万円以下の罰金が課される可能性があります。

ただ、実務上もっとこわいのは罰金ではありません。外壁タイルやモルタルが落下して第三者に当たった場合です。定期報告を出していなかった事実は、所有者・管理者の安全配慮義務が問われる局面でほぼ確実に持ち出されます。荒川区は歩道のない細街路が多く、建物と通行人の距離が近い区です。落下物のリスクは、区の条件としてむしろ高いほうだと考えるべきです。

誰が調べれば「報告」として通るのか:荒川区が示す資格者の範囲

これも問い合わせの多いところです。荒川区は資格と対象の対応を表で公開しています。

資格 特定建築物 防火設備 建築設備 昇降機等
1級建築士・2級建築士 〇 〇 〇 〇
特定建築物調査員 〇 × × ×
防火設備検査員 × 〇 × ×
建築設備検査員 × × 〇 ×
昇降機検査員 × × × 〇

つまり外壁の打診を含む特定建築物の調査は、1級・2級建築士または特定建築物調査員が行う必要があります。「足場屋さんに見てもらった」「塗装会社に外壁を叩いてもらった」では報告書は成立しません。

ここが実務上の分かれ目です。調査の打診作業そのものは高所作業の技能を持つ職人が行い、調査・判定・報告書の作成は資格者が担う、という体制を組めるかどうか。株式会社明誠がロープアクセス工法で打診調査に関わる場合も、この役割分担を前提に組み立てます。

外壁の「全面打診」が必要になる4つのトリガー

特定建築物の定期調査のなかで、外壁のタイル・モルタル等について全面打診等が求められるのは、次のいずれかに当たるときです(平成20年国土交通省告示第282号、令和4年1月18日一部改正)。

トリガー1:竣工から10年が経過し、直近10年以内に全面打診をしていない

最も多いパターンです。10年周期が起点になります。

トリガー2:外壁改修(タイル張替え・モルタル補修等)から10年が経過

大規模修繕で外壁を触っていれば、その時点がリセットの起点です。前回の大規模修繕が平成28年(2016年)頃なら、令和8年度が対象年になります。

トリガー3:手の届く範囲の打診等で異常が認められ、「要調査」と判定された

部分打診で浮きが出れば、全面打診に進みます。

トリガー4:落下があった、または落下のおそれが高いと判断された

実際に剥落した場合です。荒川区のような密集市街地では、この時点で近隣対応と並行することになり、選択の余地が一気に狭まります。

つまり、「前回いつ全面打診をしたか」が分からない建物は、それ自体がリスクです。長期修繕計画書、過去の大規模修繕の竣工図書、理事会議事録、前回の定期報告概要書を当たってください。荒川区では建築計画概要書等の閲覧・写しの交付制度があり、建築指導課で確認できます。

荒川区固有の事情:道幅4メートル未満の細街路と、2つの不燃化特区

ここが荒川区の記事で一番書きたかった部分です。

区自身が「4メートル未満の道路が多く残る」と明言している

荒川区は細街路拡幅整備事業のページで、次のように書いています。

荒川区には、道幅が4メートルに満たない狭い道路が多く残っております。このような道路は、日照・通風など生活環境を悪化させるばかりでなく、災害時の防災・避難等安全上問題があります。

区は、4メートル未満の道路(細街路)に面した敷地で新築・建替えを行う際に、道路中心線から2メートルのセットバック部分を順次拡幅整備する事業を進めています。助成単価も公開されていて、後退用地の整地が30,000円/㎡、すみきり用地の整地が60,000円/1ヶ所、私道電柱の移設は上限165万円/1本です(令和7年4月1日から申請書類が変更)。

この「順次整備」という言葉が実務では重要です。一時的に凹凸のある道路形状となると区自身が説明しているとおり、拡幅が完了していない区間が多数残っているということです。

これが12条点検にどう効くのか

外壁の全面打診のために仮設足場を組むには、次のどれかが必要になります。

  1. 敷地内に足場と作業通路の幅(おおむね1メートル前後)を確保する
  2. 前面道路を占用して足場を張り出す(道路占用許可・道路使用許可)
  3. 隣地の使用承諾を得て足場を越境させる

前面道路が4メートル未満で、なおかつ建物が敷地境界いっぱいに建っている——荒川区で頻繁に遭遇する条件です。この場合、1も2も3も難しい。道路占用は交通管理者との協議が必要で、幅員が狭いほど許可のハードルは上がります。

2つの不燃化特区

荒川区は東京都の不燃化特区制度に基づき、荒川・南千住地区と町屋・尾久地区の2地区を対象地区に指定しています。支援期間は令和12年度までで、建替え助成、解体助成、住み替え助成、密集住宅市街地整備促進事業、専門家派遣支援が用意されています(東京都の制度として固定資産税・都市計画税の減免もあり、窓口は荒川都税事務所 固定資産税課 03-3802-8116)。

不燃化特区に指定されているということは、木造住宅が密集し、地域危険度が高いと評価されているエリアだということです。そこに建つ賃貸マンションや雑居ビルの外壁調査を「足場ありき」で計画すると、見積が跳ね上がるか、そもそも成立しません。

なお、密集住宅市街地整備促進事業では、消防活動が困難な区域における幅員6メートル未満の道路を「優先整備路線」に指定して拡幅を進めています。整備の途上にある沿道の建物は、当面この道路条件のまま維持管理していくことになります。

実務コスト感:打診調査の㎡単価と、足場費の差額

ここは数字で話します。いずれも目安・参考レンジであり、実際の見積は建物の形状・立地・仕上げ材によって大きく変動します。

打診調査そのものの単価目安

項目 単価の目安
外壁全面打診(打診棒による目視・打診) 250〜500円/㎡
赤外線調査(地上または無人航空機) 200〜400円/㎡
報告書作成・図面化 10〜30万円(建物規模による)

仮設足場を組む場合の上乗せ

項目 単価の目安
枠組足場(架設・解体・養生込み) 900〜1,200円/㎡
道路占用・使用許可の手続き、ガードマン配置 10〜50万円

荒川区でよくある規模で比べてみます

7階建て・外周64m・高さ約21mの事務所併用ビルで試算します。町屋や西日暮里の幹線沿いから一本入った立地を想定しています。

  • 外壁面積の概算:64m × 21m = 約1,344㎡
  • 打診調査費:1,344㎡ × 350円 = 約47万円

ここに足場を組むと、こうなります。

工法 内訳 合計
足場を組む場合 打診47万円 + 足場1,344㎡×1,000円=134万円 + 道路占用等20万円 約201万円
ロープアクセス工法 打診47万円 + ロープ支点設置・安全設備15〜30万円 約62〜77万円
差額 — 約124〜139万円

打診調査のためだけに足場を組むと、調査費の3倍近い仮設費が乗ります。しかも足場は架設に1〜2週間、解体に1週間、道路占用の協議を含めると調査完了まで1〜2ヶ月です。ロープアクセス工法なら、同規模で実働3〜5日が目安になります。

もちろん、大規模修繕と一体で足場を組むなら話は別です。問題は「調査だけのために足場を組む」ケースで、荒川区のように道路条件が厳しい区では、この無駄が特に大きくなります。大規模修繕の費用構成の考え方は大規模修繕の料金の考え方でも整理しています。

ロープアクセス工法が荒川区の12条打診で選ばれる4つの理由

ロープアクセス工法は、産業用ロープで屋上から作業員が降下し、外壁に直接アクセスする無足場工法です。荒川区の物件で選ばれる理由は4つあります。

1. 前面道路が狭くても、隣地が迫っていても成立する

必要なのは屋上の支点だけです。道路占用も、隣地への足場越境も原則として発生しません。細街路や不燃化特区の内側のように道路条件が厳しいエリアでは、これが決定的な差になります。荒川区の物件では、そもそも足場が組めるかどうかの検討に時間を取られるケースが少なくありませんが、その工程自体が不要になります。

2. テナント・居住者の生活影響と営業影響が小さい

足場と養生シートで建物を覆えば、看板は隠れ、窓は塞がれ、1階店舗の視認性は失われます。ロープアクセスなら、作業している面だけが一時的に影響を受けます。1階に店舗が入る建物では、この差がそのまま賃料収入の差になります。賃貸物件の収益維持という視点はオーナー向けの提供価値のページでも整理しています。

3. 打診と同時に「補修すべき箇所」を確定できる

作業員が外壁に直接触れているので、浮き・ひび割れ・シーリングの劣化をその場で記録し、位置と数量を確定できます。赤外線調査だけでは「疑わしい範囲」までしか分かりません。調査結果がそのまま次の大規模修繕の見積根拠になります。

4. 部分的に足場が必要な箇所だけハイブリッドにできる

バルコニーが深い面、庇が大きく張り出している面、屋上に支点が取れない構造など、ロープだけでは届きにくい箇所もあります。株式会社明誠では、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法から建物に合わせて選べる体制を取っています。「全面足場」か「全面ロープ」かの二択ではなく、面ごとに最適解を組み合わせるのが実際のコスト最適化です。

安全面について数字で申し上げます。株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では、ロープアクセス工法での高所作業において過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工し、明誠は日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。技術者向け・同業者向けの詳細な技術情報は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。

明誠のロープアクセス工法の技術詳細と高所作業の安全管理体制は、それぞれのページでご確認いただけます。

令和4年の告示改正:ドローン赤外線という第3の選択肢と、荒川区での限界

令和4年1月18日の告示改正により、無人航空機(ドローン)による赤外線調査が、外壁全面打診に代わる手法として正式に位置づけられました。国土交通省と一般財団法人日本建築防災協会が「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドライン」を公表しています。

ただし、荒川区での実務上の制約は小さくありません。

  • 気象条件:日射量、外気温の日較差、風速が条件を満たす必要があり、曇天・雨天・無風では実施できない
  • 飛行環境:荒川区は全域が人口集中地区(DID)に該当する市街地であり、第三者上空の飛行や目視外飛行には国土交通省の許可・承認が必要
  • 離隔距離:建物が密接して建つ細街路沿いでは、機体と建物・第三者との離隔距離を確保することが難しい
  • 判定精度:赤外線は「温度差のある範囲」を示すもので、浮きの有無を直接断定するものではない。疑わしい箇所は結局、打診で確認することになる

私の実感として、荒川区のように建物が密集し、隣接建物からの輻射熱の影響を受けやすいエリアでは、ドローン赤外線を単独で使うのは条件が厳しいというのが正直なところです。北面など日射の乏しい面では特にそうです。

現実的には、赤外線で当たりをつけ、疑わしい箇所をロープアクセスで打診確認する組み合わせが、精度とコストのバランスが良い。赤外線調査とロープアクセス打診の使い分けの技術的な条件は、ロープアクセスドットコムで詳しく整理しています。ドローン単独での適用条件と限界についてはドローン調査の適用条件もご覧ください。

初回免除の落とし穴:増築・大規模の修繕には初回免除がない

特定建築物の定期報告には「初回免除」という制度があります。東京都都市整備局の説明では、新築・改築後は、検査済証の交付を受けた日の属する年度の翌年度以降の「2回目」の報告時期から報告が必要になります。

3年周期の共同住宅を例に、都が示している具体例がこうです。

ケース 検査済証の交付 初回報告の時期
令和5年度中に交付 R5年4月1日〜R6年3月31日 令和9年度(R9年5月1日〜10月31日)
令和6〜8年度中に交付 R6年4月1日〜R8年3月31日 令和12年度(R12年5月1日〜10月31日)

令和6年度の報告年次が「直近の時期」として免除されるため、次の令和9年度が初回になる、という仕組みです。検査済証の取得時期によって、最初の報告までの期間に最大3年近い幅が出ます。

ここで注意していただきたいのが、建築設備・昇降機等は取扱いが違うという点です。こちらは新築・改築後、検査済証の交付を受けた日の翌日から起算して2年を経過する日までに初回の定期検査報告を提出する必要があります。都は「令和6年6月17日交付なら初回報告は令和8年6月17日まで」という例を挙げています。特定建築物の初回免除と混ぜて考えると、確実にずれます。

そして最大の落とし穴が、増築や、建築確認が必要な大規模の修繕・大規模の模様替えには初回免除が適用されないという運用です。新築と同じ感覚で「まだ先だろう」と構えていると、報告年を1回分飛ばすことになります。

なお、ここでいう建築基準法上の「大規模の修繕・大規模の模様替え」は、主要構造部の一種以上について行う過半の修繕・模様替えを指すもので、管理組合が言う「大規模修繕工事」とは範囲が異なります。外壁塗装や防水の更新だけであれば通常は建築確認を要しませんが、確認申請を出した工事があったかどうかは必ず確認してください。判断がつかない場合は、竣工図書と確認済証・検査済証を揃えたうえで、荒川区 建築指導課にご相談ください。

荒川区の報告・届出手続き:LoGoフォームで完結するもの/しないもの

荒川区はこの分野の電子化が進んでいる区です。ここは実務でそのまま使える情報なので、細かく書きます。

報告書の提出先は区役所ではありません

特定建築物の定期調査報告書は、荒川区役所ではなく公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター 建築防災課(〒160-8353 新宿区西新宿7-7-30 小田急西新宿O-PLACE 2階/03-5989-1929)に提出します。受付時間は月〜金(祝祭日を除く)の9:00〜11:30、13:00〜16:00です。報告書の様式は各受付機関のサイトからダウンロードできます。

なお、すべての特定行政庁で報告書の押印は省略できるようになっています。

届出類はLoGoフォームで区に電子申請できる

一方、次の届出は荒川区の電子申請システム「LoGoフォーム」で、来庁せずにパソコン・スマートフォンから提出できます。

  • 建築物等の所有者等変更届
  • 建築物除却・使用休止届
  • 建築物再使用届
  • 特定建築設備等廃止・使用休止届
  • 特定建築設備等再使用届
  • 改善完了報告書・改善計画書

書面で出す場合は、荒川区建築基準法施行細則の別記様式(建築物除却・使用休止届=別記第8号様式の3、建築物再使用届=別記第8号様式の4、特定建築設備等廃止・使用休止届=別記第11号様式、再使用届=別記第12号様式、所有者等変更届=別記第12号様式の2)をダウンロードして建築指導課の窓口に提出します。

改善完了報告書の出し先には注意

ここは間違えやすいところです。荒川区が受け付ける改善完了報告書・改善計画書は、特定建築物の定期調査報告および防火設備の定期検査報告における要是正箇所についてのものです。建築設備および昇降機等の定期検査報告に関する改善報告は、区が委託した受付団体に提出する必要があります。検査を行った検査員に確認してください。

外壁の浮き・剥落は「要是正」に分類されることが多い項目です。調査で要是正が出た場合、改善計画書と改善完了報告書までがセットで発生する——ここを見込んで年間の予算とスケジュールを組んでおくと、後が楽になります。

昇降機の電子提出は令和7年4月1日から

荒川区では、昇降機の報告書の提出について、従来の書面(紙)に加えて、令和7年4月1日からインターネットを利用した電子提出の受付を開始しています。外壁の話ではありませんが、同じ建物の管理業務として押さえておくと手間が減ります。

所管が東京都になる場合

敷地内に延べ面積1万㎡を超える建築物がある場合、所管は荒川区ではなく東京都です。特定建築物・防火設備は市街地建築部建築企画課(建築安全担当/03-5388-3344)、建築設備・昇降機等は同課(設備担当/03-5388-3349)が窓口になります。

12条点検を大規模修繕と一体化する3つのメリット

荒川区の物件で私がいつも提案するのは、12条の全面打診を単独の出費として見ないという考え方です。

メリット1:仮設を1回で済ませられる

足場を組むなら、調査と補修を分けて2回組むのは明確な無駄です。ロープアクセスで進める場合も、支点設置と安全設備の段取りを1回にまとめられます。

メリット2:調査結果がそのまま補修数量になる

打診で浮きの位置と面積を確定できれば、それが補修の数量表になります。「概算〇〇万円」ではなく、根拠のある見積が出せます。相見積を比べるときの精度も上がります。

メリット3:長期修繕計画の見直し材料になる

外壁の実際の劣化状況が分かれば、次回の大規模修繕の時期と規模を現実的な数字で置き直せます。修繕積立金の議論は、この材料がないまま進めても結論が出ません。明誠が何を大事にしているかは明誠の理念に書いています。管理組合向けの進め方は管理組合向けサービス、ビルオーナー向けはビルオーナー向けサービスをご覧ください。

明誠の施工事例は明誠の施工事例からご覧いただけます。打診調査から補修までを一貫して進めた事例も掲載しています。

よくあるご質問

Q. 令和8年度に荒川区で12条報告が必要なのは、どんな建物ですか?

A. 用途コード30番台(事務所、店舗、物販店、飲食店、遊技場など)で、規模の要件を満たす建築物です。用途と規模で報告年度が決まるため、まずは荒川区が公開している「定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧」で用途コードを確認してください。判断がつかない場合は、全体の階数・面積、各用途に供する面積、各階の用途を整理したうえで荒川区 建築指導課にお問い合わせください。

Q. うちは分譲マンションです。令和8年度は関係ないということですか?

A. 共同住宅(用途コード40番台)は3年周期で、報告年次は令和6年度・令和9年度・令和12年度です。令和8年度は報告年ではありません。ただし準備は令和8年度中に始めるのが実務的です。全面打診の対象になるかの確認、調査会社の選定、予算の総会決議には数ヶ月かかります。

Q. 報告書は荒川区役所に持っていけばいいのですか?

A. 特定建築物の定期調査報告書は区役所ではなく、公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター(03-5989-1929)が受付窓口です。区役所(建築指導課)に提出するのは、所有者等変更届、除却・使用休止届、改善完了報告書などの届出類で、これらはLoGoフォームで電子申請もできます。

Q. 外壁の全面打診は、いくらくらいかかりますか?

A. 打診調査そのものは250〜500円/㎡が目安です。7階建て・外周64mの建物なら外壁面積約1,344㎡で、調査費は約47万円が目安になります。これに仮設費が乗ります。足場を組むと約134万円+道路占用等、ロープアクセス工法なら支点設置・安全設備で15〜30万円程度です。いずれも目安であり、物件条件で変動します。

Q. 前の道が3メートルしかありません。打診調査はできますか?

A. できます。ロープアクセス工法なら必要なのは屋上の支点で、道路占用も隣地への足場越境も原則として発生しません。荒川区は区の公式サイトが「道幅が4メートルに満たない狭い道路が多く残っております」と説明しているとおり、細街路沿いの物件が多い区です。無足場の選択肢を持っているかどうかで、見積が100万円単位で変わります。

Q. 打診調査の工期はどれくらいですか?

A. 7階建て・外周64m程度の規模で、ロープアクセス工法なら実働3〜5日が目安です。足場を組む場合は、架設1〜2週間、調査、解体1週間で、道路占用の協議を含めると1〜2ヶ月を見ておく必要があります。

Q. ドローンの赤外線調査だけで報告は通りますか?

A. 令和4年1月18日の告示改正で赤外線調査は正式に位置づけられましたが、日射量・外気温の日較差・風速などの気象条件、撮影距離と角度の条件を満たす必要があります。荒川区のような密集市街地では飛行の許可・承認と離隔距離の確保がハードルになります。赤外線で当たりをつけ、疑わしい箇所をロープアクセスで打診確認する組み合わせを提案することが多いです。

Q. 大規模修繕を終えたばかりですが、報告は免除されませんか?

A. 新築・改築には初回免除がありますが、増築や建築確認が必要な大規模の修繕・大規模の模様替えには初回免除が適用されません。また、建築基準法上の「大規模の修繕」と管理組合の言う「大規模修繕工事」は範囲が異なります。確認申請を出した工事があったかどうかを、確認済証・検査済証で確認してください。

Q. 調査で浮きが見つかったら、すぐ全部直さないといけませんか?

A. 「要是正」と判定された箇所については、改善計画書と改善完了報告書の提出が求められます。優先順位をつけて段階的に進める計画を立てるのが現実的です。落下の危険が高い箇所は先行して処置し、残りを次回の大規模修繕に組み込む、という進め方をよく採ります。

この記事のポイントまとめ

  • 令和8年度に荒川区で報告年次を迎えるのは用途コード30番台。報告期間は令和8年5月1日〜10月31日
  • 荒川区の特定行政庁は荒川区だが、特定建築物の報告書の提出先は東京都防災・建築まちづくりセンター(03-5989-1929)。区役所ではない
  • 届出類(所有者変更・除却・使用休止・再使用・改善完了報告)は荒川区のLoGoフォームで電子申請可能
  • 改善完了報告書は、特定建築物・防火設備は区へ、建築設備・昇降機等は区が委託した受付団体へ
  • 共同住宅(40番台)は3年周期で令和6・9・12年度が報告年次。令和8年度は対象外
  • 外壁全面打診は竣工または外壁改修から10年ごと。前回の大規模修繕から10年なら令和8年度が動きどき
  • 増築・大規模の修繕には初回免除がない。建築設備・昇降機は検査済証交付の翌日から2年以内が初回
  • 7階建て・外周64mの試算では、足場約201万円に対しロープアクセス約62〜77万円。差額は約124〜139万円
  • 荒川区は区自身が「4メートル未満の道路が多く残る」と明言する区。不燃化特区は荒川・南千住地区と町屋・尾久地区の2地区(支援期間は令和12年度まで)

まとめ:荒川区で今週動くこと3点

長くなったので、実際に何をすればいいかだけ書きます。

1. 用途コードを確認する

建物の用途コードが30番台なら、令和8年度が報告年次です。荒川区が公開している報告時期一覧のPDFで確認できます。判断がつかなければ、階数・面積・各階の用途を整理して建築指導課審査係(03-3802-3111/内線2846)へ。

2. 「前回いつ全面打診をしたか」を調べる

これが分からない管理組合・オーナーさまが本当に多いところです。長期修繕計画書、過去の大規模修繕の竣工図書、理事会議事録、前回の定期報告概要書。10年以上前だったら、令和8年度が動きどきです。

3. 足場前提の見積を、無足場でも取ってみる

すでに調査会社から見積が出ている方も、比較のために無足場の見積を1本取ってみてください。荒川区の物件は、道路条件と隣地条件のせいで足場費が想定より膨らんでいることがよくあります。差額が100万円単位で出るなら、理事会や社内の会議に報告する価値があります。なお、前面道路の種別は荒川区地図情報(wagmap)でも確認できます。

令和8年10月31日までが報告期間です。用途コード30番台のビルをお持ちの方は、9月中に調査会社を押さえないと間に合わない可能性があります。1階に店舗が入っている建物なら、営業影響の少ない工法を選べるかどうかも含めて、一度検討してみてください。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会や取締役会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問い合わせはこちらから承っています。

関連リソース:明誠が提供している価値の全体像は明誠の提供価値、技術者向け・同業者向けの情報はロープアクセスドットコム(https://rope-access-method.com/)にまとめています。


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月22日時点で公表されている荒川区、東京都都市整備局、公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンターおよび国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。荒川区の定期調査報告ページの更新日は2025年12月4日(令和7年度中の更新)であり、令和8年度中の運用変更が反映されていない可能性があります。制度は年度途中でも改正・運用変更があり得ますので、実際に報告や申請をされる前に、必ず荒川区 防災都市づくり部 建築指導課審査係および該当の受付機関へ最新の内容をご確認ください。記載の金額はすべて目安・参考レンジであり、実際の見積は物件条件により変動します。

出典・参考資料


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市

マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月22日

荒川区の管理組合が無料で使える相談・派遣12選|コンサルタント派遣は防災3回+通算6回・1回2時間まで無料、耐震アドバイザーは1棟3回【令和8年度版】

2026年9月21日 更新

荒川区の管理組合さまとお話ししていて、いつも引っかかる数字が一つあります。

年4件。

これは荒川区が公表している、アドバイザー派遣の年間利用件数(令和4年度実績)です。区内には分譲マンションが何百棟とあるのに、区が用意した専門家派遣を使った管理組合は、1年でたった4つ。区自身も、令和10年度までにこれを10件へ増やすことを目標に掲げています(出典:荒川区マンション管理適正化推進計画(概要))。

つまり荒川区では、制度が足りないのではなく、制度が知られていないのです。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組んで建物をすっぽり囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も自分の足で踏んできた人間です。

その立場から申し上げると、荒川区の支援メニューは決して薄くありません。むしろ「防災」に特化した専門家枠を別建てで用意しているという、他区にあまりない特徴を持っています。荒川区は荒川・隅田川に挟まれた低地を抱える区ですから、防災に厚いのは必然と言えます。

今日は、荒川区の管理組合とビル・収益不動産オーナーさまが使える相談・派遣・助成を12個、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。


結論:荒川区で使える支援は12ある

先に一覧でお示しします。無料のものと、費用の一部が戻るものを分けて並べました。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用 申込先
1 荒川区コンサルタント派遣制度(マンション) マンション管理士・防災士・一級建築士 無料/1回2時間以内 住まい街づくり課 03-3802-4454
2 分譲マンション耐震アドバイザー派遣事業 区登録の一級建築士・マンション管理士 無料/1棟3回まで 住まい街づくり課住宅係(内線2826)
3 住まい街づくり課住宅係の窓口・電話相談 区職員 無料/平日8時30分〜17時15分 03-3802-4454
4 荒川区分譲マンションセミナー 外部講師 無料/年2回 住まい街づくり課(内線2824)
5 東京都マンションアドバイザー無料派遣 マンション管理士ほか 無料/届出受理で1回、管理不全の兆候ありで5回 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1453
6 分譲マンション総合相談窓口 専門相談員 無料 03-6427-4900
7 マンション管理計画認定制度「相談ダイヤル」 マンション管理士会の相談員 無料/月〜土10時〜17時 03-5801-0858
8 荒川区の法律相談(弁護士) 弁護士 無料/火・金曜13時〜16時・要予約 区民相談所(区役所3階)
9 分譲マンション防災対策費助成 ― 工事最大400万円/資器材50万円/備蓄品10万円(いずれも費用の3分の2) 住まい街づくり課(内線2822)
10 非木造建物耐震化推進事業(分譲) ― 診断3分の2・400万円/設計3分の2・100万円/工事3分の2・1,000万円 同(内線2822・2826)
11 非木造建物耐震化推進事業(賃貸) ― 診断2分の1・200万円/設計2分の1・50万円/工事2分の1・500万円 同上
12 荒川区マンション管理計画認定制度 ― 区への手数料は当面無料 住まい街づくり課住宅係

覚えておく電話番号は、実質1つで足ります。住まい街づくり課 03-3802-4454。荒川区のマンション施策はほぼすべてこの課が窓口です。

ここからが本題です。


1. 荒川区コンサルタント派遣制度:1回2時間が無料、防災は別枠で年3回

荒川区の管理組合が最初に使うべき制度が、これです。

区は、分譲マンションの管理組合が抱えている困りごとの相談に対して、コンサルタントを派遣する「出張相談」を行っています。派遣されるのはマンション管理士、防災士、一級建築士などの専門家で、相談内容に応じた専門家を区が選んで送り込んでくれます(出典:荒川区「コンサルタント派遣制度(マンション)」、2026年9月4日更新)。

条件を整理します。

  • 対象:区内の分譲マンション管理組合(管理組合のないマンションは別途相談)
  • 派遣時間:1回につき2時間以内
  • 利用料:無料
  • 回数:防災に関する助言業務は1年度につき3回まで(回数は毎年リセット)/それ以外の助言業務は1管理組合につき通算6回まで(回数は次年度へ引き継がれる)

この「回数の分け方」が、荒川区の制度でいちばん大事なところです。

防災枠は毎年リセットされる

区のパンフレットには、防災に関する助言は年3回まで使え、回数は毎年リセットされると明記されています(出典:荒川区「コンサルタント派遣制度パンフレット」)。

つまり防災テーマであれば、毎年3回×2時間=6時間の専門家の時間を、費用ゼロで使い続けられる。10年使えば60時間です。これは相当な資源です。

一方、防災以外の助言(管理組合の運営、管理会社との関係、修繕積立金の滞納対策など)は通算6回で、使い切ったら翌年度に戻ってはきません。こちらは大事に使う必要があります。

相談できること・できないこと

相談内容として区が挙げているのは次の6つです。

  • 管理組合の運営(総会、理事会、管理規約など)
  • 管理会社との関係
  • マンション内のトラブル対策(騒音、生活マナーなど)
  • 修繕積立金、管理費に関する基本的な情報提供、滞納対策
  • マンション防災対策の進め方
  • マンション管理計画認定制度の申請にあたっての相談

逆に、次のものは対象外です。ここを知らずに申し込むと止まります。

  • 管理規約、長期修繕計画等の書類作成
  • 見積の作成
  • 修繕工事の設計
  • 建物に関する耐震等の診断・調査
  • 居住者間・近隣住民間の紛争解決、仲裁、権利調整
  • 特定業者の紹介

要するに、「作ってもらう」ことはできず、「判断を助けてもらう」制度です。長期修繕計画そのものを作りたいなら、この制度ではなく設計事務所やコンサルタントへの発注が必要になります。ただ、「いまの長期修繕計画が妥当かどうか、専門家の目で見てほしい」という相談なら、この枠でできます。私の経験では、この使い方がいちばん費用対効果が高い。

申請の流れ:事前相談 → 7日前までに書類

手続きはシンプルです。

  1. 事前相談。申請の前に、派遣を希望する内容と派遣日を区に相談します(03-3802-4454)
  2. 申込。派遣希望日の7日前までに、申請書+相談内容に関係する資料(管理規約、図面、長期修繕計画書など)+理事長が確認できる書類(総会議事録、役員名簿など)を提出
  3. 派遣決定。区から日時・場所の通知が届きます

区は「調整にお時間をいただきますので、お早めにご相談ください」と注意書きを添えています。理事会の日程が決まった時点で動くのが正解です。なお、個人への派遣はできず、コンサルタントの指名も原則できません(管理計画認定や法律相談など、2回目以降も同じコンサルタントが望ましいと区が判断した場合は例外)。


2. 分譲マンション耐震アドバイザー派遣:旧耐震なら1棟3回まで無料

荒川区にはもう一つ、別枠の無料派遣があります。あまり知られていませんが、旧耐震のマンションにとってはこちらのほうが重要です。

区は、区に登録された一級建築士またはマンション管理士を「分譲マンション耐震アドバイザー」として無料で派遣し、耐震化のアドバイスを1棟につき3回まで行っています(出典:荒川区「非木造建物耐震化推進事業のご案内」)。

内容は次の3つです。

  • 建物現地調査の実施(建物目視調査、設計図書確認等)
  • 耐震化の必要性や技術的なアドバイス
  • 耐震化に向けた区分所有者間の合意形成の支援

3つ目に注目してください。合意形成の支援まで無料枠に入っているのは、かなり踏み込んだ制度です。耐震改修が進まない最大の理由は技術でも費用でもなく、総会で決まらないことですから、ここに第三者が入ってくれる意味は大きい。

対象は、区内にある分譲マンションで、昭和56年5月31日以前に建築(新築や増築)された建物、かつ建築基準法その他の関係法令等に違反していない建物です。申請には建物全部事項証明書、確認通知書(写)または建築年月日を証する書類、管理組合の規約および理事長であることを証する書類が必要です。

現地調査が無料、というのが効く

私たち施工会社の立場から言うと、「建物現地調査(目視調査、設計図書確認)」が無料で受けられるのは、思っている以上に価値があります。

大規模修繕の検討でいちばん最初につまずくのは、自分の建物の状態を誰も客観的に語れないことだからです。管理会社の言い分と、飛び込みで来た業者の言い分がずれる。どちらが正しいか判断できない。そこで理事会が止まる。

区の登録建築士が1回現地を見て所見を出してくれれば、その後のすべての議論の土台ができます。外壁の状態については、明誠のロープアクセス工法による外壁調査の考え方もあわせてご覧いただくと、調査方法ごとの違いがつかめると思います。


3. 荒川区の窓口・セミナー・マンション通信:情報を取る3つの経路

制度を使うほどではないけれど、方向だけ知りたい。そういうときの入口が3つあります。

窓口・電話相談(無料)

荒川区役所 防災都市づくり部 住まい街づくり課 住宅係が、マンション管理に関する相談の窓口です。

  • 電話:03-3802-4454
  • 所在:〒116-8502 荒川区荒川二丁目11番1号(北庁舎2階)
  • 区役所の開庁時間:月曜〜金曜 午前8時30分〜午後5時15分(祝日・休日・年末年始を除く)

荒川区分譲マンションセミナー(無料・年2回)

区は、分譲マンションの管理運営について理解を深めることを目的として、分譲マンションセミナーを年2回開催しています。毎回、管理組合の運営や大規模修繕、長期修繕計画等をテーマにした講演会と、参加者相互で話し合う交流会の2部構成です(出典:荒川区「荒川区分譲マンションセミナー」、2026年9月2日更新)。

令和8年度第1回は、令和8年10月3日(土曜)に開催が予定されています。

過去のテーマを見ると、区が何を課題と見ているかがよく分かります。

開催日 テーマ
令和8年2月28日 管理組合の財政対策(適正な修繕積立金とお金のため方)
令和7年10月18日 外部管理者方式導入する?しない?(生成AIと一緒に学ぶ体験型)
令和7年2月15日 在宅避難を進めましょう!
令和6年10月19日 マンション管理の要点整理(大規模修繕・管理計画認定・防災)
令和6年2月24日 いまのお住まいを終の棲家とするために

令和8年2月の「管理組合の財政対策」は講演資料(PDF)が公開されています。セミナーに行けなかった年度でも、資料だけは無料で読めるということです。

交流会が付いている、という価値

私が「このセミナーは出る価値がある」と申し上げるのは、第2部の交流会があるからです。

管理組合の理事は数年で入れ替わります。だから知識が組織に蓄積しない。隣のマンションが3年前にどんな失敗をしたのか、どこで見積が跳ねたのか、それを聞ける場が荒川区内にほとんどない。年2回のこの交流会は、その数少ない機会です。


4. 管理状況届出を出すと、東京都のアドバイザー派遣が無料になる

ここが、荒川区の管理組合が取りこぼしやすいポイントです。

東京都は「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」により、昭和58年(1983年)12月31日以前に新築され、居住用の独立部分が6以上ある分譲マンションに、管理状況の届出を義務づけています(出典:荒川区「マンション管理状況届出制度」、2026年8月20日更新)。届出先は荒川区役所 住まい街づくり課 住宅係(03-3802-4454)です。

そして、この届出が受理された管理組合は、東京都のマンションアドバイザー派遣を無料で使えます(出典:東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」)。

無料になる回数は次のとおりです。

  • 届出が受理された要届出マンション:1回まで無料
  • 届出が受理されたマンションのうち、管理不全の兆候があるマンション:5回まで無料

各コース1回あたり2時間程度。使えるコースは大きく2系統あります。

管理アドバイザー(講座編A・相談編B)

講座編は、マンションの管理のポイントの解説(A-1)、長期修繕計画作成ガイドライン活用の手引きの解説(A-2)、管理委託の仕方(A-3)、計画修繕工事の進め方(A-4)、滞納管理費・修繕積立金督促の仕方(A-5)、管理組合の設立の仕方(A-6)。

相談編は、管理組合の運営(B-1)、財務(B-2)、管理委託契約(B-3)、修繕計画の作成や修繕積立金等の設定(B-4)、修繕工事検討段階での相談(B-5①:建物・設備等の劣化状況の調査・診断、修繕工事の検討組織、修繕工事の方式等)、修繕工事準備段階での相談(B-5②:修繕工事の内容、業者選定の仕方、合意形成等)、その他の維持管理(B-6)。

大規模修繕を控えた管理組合なら、B-5①とB-5②が本命です。「修繕工事の方式」「業者選定の仕方」について、利害関係のない第三者に2時間話を聞ける。これを無料で使わない手はありません。

建替え・改修アドバイザー(Aコース)

建替え入門(A-1)、老朽度判定・建替えと修繕の費用対効果の説明(A-2)、合意形成の進め方(A-3)、改修によるマンション再生(A-4)。

申込は、申込書に必要事項を記載のうえ、FAX・メール・郵送で東京都防災・建築まちづくりセンター(03-5989-1453)へ。申込後1〜2週間程度でアドバイザーから日程調整の連絡が入ります。

荒川区の制度と都の制度は別枠です。両方使えます。順番としては、区のコンサルタント派遣で論点を整理し、都のアドバイザーB-5で工事方式を詰める、という流れが噛み合います。


5. 電話1本で聞ける無料相談ダイヤル

区役所が開いていない時間や、名乗らずに一般論だけ聞きたいときは、電話相談があります。

窓口 電話番号 受付
分譲マンション総合相談窓口(東京都防災・建築まちづくりセンター) 03-6427-4900 管理状況届出制度に関することを含む
マンション管理計画認定制度「相談ダイヤル」(日本マンション管理士会連合会) 03-5801-0858 月曜〜土曜 午前10時〜午後5時(祝日・休日、年末年始を除く)
管理計画認定手続支援システムに関する相談(マンション管理センター) 03-6261-1274 月曜〜金曜 午前9時30分〜午後5時(祝日・休日、年末年始を除く)
管理状況届出システムのログインID・パスワード(東京都住宅政策本部マンション課) 03-5320-4913 ―

(出典:荒川区「荒川区マンション管理計画認定制度」、2026年9月17日更新/荒川区「マンション管理状況届出制度」)

とくに相談ダイヤル(03-5801-0858)は土曜も受け付けています。平日に動けない理事長さんにとって、土曜に電話できる窓口があるのは実務的に大きい。認定制度だけでなく、長寿命化促進税制やマンション管理適正化法に関する幅広い質問に、マンション管理士会の相談員が答えてくれます。

区民の個人的な法律問題であれば、荒川区の法律相談(弁護士)が火曜・金曜の午後1時〜4時に区民相談所(区役所3階)で無料・要予約で受けられます(出典:荒川区「相談窓口」)。司法書士相談(第2水曜)、行政書士相談(第1・第4水曜)もいずれも午後1時〜4時です。


6. 荒川区で使える助成:防災に最大400万円、耐震改修に最大1,000万円

ここからは、無料ではないけれど費用の一部が戻る制度です。

分譲マンション防災対策費助成

区は、分譲マンション管理組合に対して、防災対策工事・防災資器材・共同備蓄品の購入費用の一部を助成しています(出典:荒川区「分譲マンションの防災対策を支援します」、2026年8月31日更新)。

助成メニュー 対象例 要件 助成額
防災対策工事 エレベーター防災対策改修工事、防災備蓄倉庫設置工事、耐震ドア改修工事 など 管理規約がある/総会が行われている/防災マニュアルを備えている/防災訓練を実施する/新耐震性能を有している 最大400万円(費用の3分の2)
防災資器材配備 エレベーター用防災チェア、階段避難車、電動階段台車、ポータブル発電機 など 管理規約がある/総会が行われている/防災マニュアルを備えている/防災訓練を実施する 最大50万円(費用の3分の2)
共同備蓄品配備 携帯トイレ、おむつ、生理用品、保存水 等 管理規約がある/総会が行われている 最大10万円(費用の3分の2)

注意点が一つ。区は「必ず工事の契約又は物品の購入をする前に、申請手続きを行ってください」と明記しています。先に契約すると対象外です。これは助成制度に共通する落とし穴で、私が現場で見てきたなかでもいちばん多い失敗です。

また、防災対策工事と防災資器材には「防災マニュアルを備えている」「防災訓練を実施する」という要件があります。防災マニュアルがまだない管理組合は、区が防災マニュアル作成例(ワード)を公開していますので、まずそこから。前述のコンサルタント派遣の防災枠(年3回)を、このマニュアル作成の助言に使うのが、いちばん筋のよい組み合わせです。

非木造建物耐震化推進事業(分譲マンション)

昭和56年5月31日以前に建築された分譲マンションには、耐震化の三段構えの補助があります(出典:荒川区「木造・非木造建物耐震化推進事業」、2026年4月1日更新)。

事業 補助率 補助限度額 必要な同意
耐震診断 3分の2 400万円(延べ面積に応じた限度額あり) 区分所有者の2分の1以上
耐震補強設計 3分の2 100万円 区分所有者の2分の1以上
耐震補強工事 3分の2 1,000万円 区分所有者の4分の3以上

耐震診断の補助対象費用の限度額は、床面積1,000㎡以内の部分が3,670円/㎡、1,000㎡超2,000㎡以内の部分が1,570円/㎡、2,000㎡を超える部分が1,050円/㎡で算出した額の合算です。設計図書が備わっていない場合の設計図書復元費用も補助対象にできます。

耐震補強設計・工事の対象は、区の耐震診断支援事業を受けた建物で、Is値0.6未満(診断後5年以内)のものです。


7. 賃貸マンション・ビルオーナーが使える枠

ここは収益不動産をお持ちの方向けです。荒川区の耐震化推進事業は、分譲だけでなく賃貸マンションにも枠がある点が重要です。

事業 分譲マンション 賃貸マンション
耐震診断 3分の2・400万円 2分の1・200万円
耐震補強設計 3分の2・100万円 2分の1・50万円
耐震補強工事 3分の2・1,000万円 2分の1・500万円

一般緊急輸送道路沿道建物(道路幅員の概ね2分の1以上の高さのもの)に該当する場合は、耐震診断が3分の2・100万円、補強設計が3分の2・100万円、補強工事が3分の2・1,000万円、耐震建替え工事が3分の2・1,500万円という別枠になります。荒川区内の幹線道路沿いに物件をお持ちのオーナーさまは、ご自身の建物が沿道建物に当たるかどうかを住まい街づくり課(内線2822・2826)で確認する価値があります。

防災面では、東京都の「東京とどまるマンション」事業が、登録したマンションの管理組合や賃貸オーナーを対象に防災資器材の購入などの補助を実施しています(出典:荒川区「東京とどまるマンション事業(東京都)」、2025年8月4日更新)。賃貸物件も対象になる数少ない防災補助です。

収益物件の維持管理・修繕の考え方については、ビル・収益不動産オーナー向けのご提案にまとめています。


8. 荒川区マンション管理計画認定制度:区への手数料は当面無料

荒川区は令和5年11月1日から管理計画認定制度の運用を開始しています。特筆すべきは費用です。

荒川区への申請・変更・更新手数料は当面無料(出典:荒川区「荒川区マンション管理計画認定制度」、2026年9月17日更新)。

多くの区が3,000円台から3万円近い手数料を取るなかで、荒川区は区の手数料を取っていません。ただし、管理計画認定手続支援システムの利用料および事前確認審査料は別途必要です(申請は公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援システム」経由のみで、区の窓口での申請はできません)。

認定の有効期間は5年間。荒川区の独自基準は1つで、「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例の要届出マンションに該当するマンションは、管理状況の届出が行われていること」です。つまり届出を出していない要届出マンションは、認定を取れません。

令和8年9月15日時点で、荒川区の認定マンションは33件。令和6年2月の1件目から、着実に増えています。区は令和10年度の目標値を20件と設定していましたが、すでに大きく上回っている計算です。

認定を受ける実利は、次の3つに集約されます。

外壁塗装と防水が税制優遇の対象になるというのは、大規模修繕を控えた管理組合にとって直接的な意味があります。工事の内容を決める前に、認定の取得と工事時期の関係を整理しておくと、同じ工事で戻ってくるお金が変わります。


9. 荒川区の管理組合が直面している数字

区の計画書に載っている数字を、そのまま並べます。耳の痛い話ですが、自分のマンションがどこに当てはまるかを確認する価値があります(出典:荒川区マンション管理適正化推進計画(概要)、令和4年度荒川区マンション実態調査ほか)。

指標 令和4年度の実績 区の令和10年度目標
長期修繕計画を作成している管理組合の割合 80.2% 100%
アドバイザー派遣の利用数 4件/年 10件/年
管理計画認定を受けたマンション数 0件 20件
災害対策を実施している管理組合の割合 59.5% 70%

さらに実態調査からは、こんな姿が見えます。

  • 区内の区分所有建物の築年数は「20年以上」の割合が50%を超えている(令和4年7月時点の登記情報)
  • 修繕積立金の額が「不足している」と3割弱が回答
  • 自主防災組織が「ない」マンションが78.5%
  • 総会に出席する区分所有者の割合が「2割未満」のマンションが35.6%

耐震診断を実施していない理由として「費用」を挙げるマンションもある、と区は書いています。しかし前述のとおり、荒川区の耐震診断補助は3分の2・400万円、そもそも耐震アドバイザーの現地調査は無料です。費用が理由で止まっているなら、その前提はもう変わっています。

築20年超が半数を超えたということは、2回目・3回目の大規模修繕が視野に入っている物件が荒川区内に大量にあるということです。1回目は新築時の保証や分譲会社の紹介でなんとかなる。難しくなるのは2回目からです。


10. 大規模修繕の費用を実際に下げる:足場とロープアクセスの差額

制度の話を一通りしたので、最後に工事そのもののコストに触れます。無料相談で方向が決まったあと、必ず突き当たる壁だからです。

マンションの大規模修繕では、総工費のうち仮設足場が15〜25%程度を占めるのが一般的です。30戸規模のマンションで総工費3,500万〜5,000万円とすると、足場だけで500万〜1,000万円という計算になります。しかも足場は、建物を1ミリも良くしません。職人を高所に運ぶための、純粋な移動コストです。

ロープアクセス工法は、この足場を組まずに、産業用ロープで作業員が屋上から降下して施工する方法です。目安として、10階建て・外周80m・工期3か月の物件で、仮設足場168万円に対してロープアクセス59万円(差額およそ109万円)という試算になります。工期も、足場の架設・解体期間が不要になる分、足場工法の6割程度で収まるケースがあります。

実際の見積は物件の形状、開口部の位置、屋上のアンカー設置可否によって大きく変わりますので、あくまで参考値としてご理解ください。外壁の打診調査だけであれば、一般的な目安は250〜500円/㎡程度、外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、防水は5,000〜8,000円/㎡あたりが相場のレンジです。

荒川区の建物条件とロープアクセス

荒川区は、道路が狭く隣棟間隔の詰まった敷地が少なくない区です。足場を組もうとすると、隣地の承諾が要る、道路占用の調整が要る、そもそも組む幅がない。こうした条件の建物では、ロープアクセスやハイブリッド工法(足場とロープアクセスを部位ごとに使い分ける方法)の適合性が高くなります。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業については、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業で過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けており、品質面ではISO9001のマネジメントシステムに基づいて管理しています。

日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟しているため、工種ごとに元請を立てずに施工できる点も、コストが下がる理由の一つです。

工法ごとの技術的な条件、どういう建物に向き・不向きがあるかは、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。同業の方やフランチャイズ加盟をご検討の方は、ロープアクセスドットコムの技術情報もあわせてご覧ください。

料金の考え方については大規模修繕の料金の考え方に、安全管理の体制は明誠の安全管理にまとめています。


よくあるご質問

Q. 荒川区のコンサルタント派遣は、何回まで無料ですか?

A. 防災に関する助言業務は1年度につき3回まで(回数は毎年リセットされます)、それ以外の助言業務は1管理組合につき通算6回まで(回数は次年度へ引き継がれます)です。1回につき2時間以内で、利用料は無料です。個人への派遣はできず、対象は区内の分譲マンション管理組合となります。

Q. コンサルタント派遣で、長期修繕計画を作ってもらえますか?

A. 作成はできません。荒川区は対象外として、管理規約・長期修繕計画等の書類作成、見積の作成、修繕工事の設計、建物に関する耐震等の診断・調査、居住者間の紛争解決・仲裁、特定業者の紹介を挙げています。ただし「いまの長期修繕計画の内容について専門家の意見が聞きたい」という相談は対象です。作成そのものを発注する場合は、設計事務所やコンサルタントへの委託が必要になります。

Q. 耐震アドバイザーとコンサルタント派遣は、どちらを使えばいいですか?

A. 建物の耐震化がテーマなら分譲マンション耐震アドバイザー派遣(1棟3回まで無料、対象は昭和56年5月31日以前建築の分譲マンション)、管理組合の運営や修繕積立金、防災対策の進め方がテーマならコンサルタント派遣制度です。耐震アドバイザーは建物現地調査と合意形成支援まで含むので、旧耐震の物件であればまずこちらから使うほうが実務的です。両方とも申込先は住まい街づくり課(03-3802-4454)です。

Q. 賃貸マンションやビルのオーナーでも使える制度はありますか?

A. 荒川区の非木造建物耐震化推進事業には賃貸マンションの枠があり、耐震診断は2分の1・200万円、耐震補強設計は2分の1・50万円、耐震補強工事は2分の1・500万円が限度です。東京都の「東京とどまるマンション」の防災資器材補助も、登録すれば賃貸オーナーが対象に含まれます。一方、コンサルタント派遣や防災対策費助成は分譲マンション管理組合が対象です。収益物件の修繕計画についてはビル・収益不動産オーナー向けのご提案もご覧ください。

Q. 管理計画認定を取ると、大規模修繕で得をしますか?

A. 屋根防水工事、床防水工事、外壁塗装等工事といった長寿命化工事を実施した場合に、マンション長寿命化促進税制による固定資産税額の減額措置を受けられます。また住宅金融支援機構のフラット35やマンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ、マンションすまい・る債の利率上乗せもあります。荒川区への申請・変更・更新手数料は当面無料ですが、管理計画認定手続支援システムの利用料と事前確認審査料は別途かかります。適用にはほかにも要件がありますので、工事の内容を決める前に住まい街づくり課へご相談ください。

Q. 外壁の打診調査にはいくらかかりますか?

A. 一般的な目安として250〜500円/㎡程度ですが、建物の形状、足場の要否、調査範囲によって大きく変わります。明誠ではロープアクセス工法を使い、足場を組まずに打診調査を行う方法もご提案しています。概算のお見積りをご希望でしたら明誠のお問い合わせ窓口からご連絡ください。

Q. 足場を組まないロープアクセス工法だと、工期はどれくらい短くなりますか?

A. 物件条件によりますが、仮設足場の架設・解体に要する期間が不要になるため、足場工法の6割程度の工期で完了するケースがあります。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場工法で約3か月のところ、ロープアクセスで1.5〜2か月が一つの目安です。荒川区のように隣棟間隔の詰まった敷地では、そもそも足場が組みにくいという物理的な制約もあわせて検討する価値があります。

Q. 防災対策費助成は、工事のあとでも申請できますか?

A. できません。荒川区は「必ず工事の契約又は物品の購入をする前に、申請手続きを行ってください」と明記しています。耐震診断・耐震補強設計・耐震補強工事の補助も、内定決定後に契約を行う流れです。いずれも「先に契約してしまうと対象外」という共通の落とし穴がありますので、見積を取った段階で一度区にご相談ください。


まとめ

荒川区の管理組合とオーナーさまが使える支援は、無料の相談・派遣が8つ、費用の一部が戻る助成が4つ。合計12あります。

このうち、荒川区でいちばん特徴的なのはコンサルタント派遣制度の「防災枠が毎年3回リセットされる」設計です。管理組合の運営相談は通算6回で終わりですが、防災テーマであれば毎年使えます。防災マニュアルの作成、在宅避難の準備、防災訓練の設計、そして防災対策費助成の申請準備。ここまでを毎年3回の枠で回していけば、費用はかかりません。

そして、旧耐震の物件であれば耐震アドバイザーの現地調査(1棟3回まで無料)が、大規模修繕の検討にそのまま使えます。建物の状態を第三者の建築士に一度見てもらう。それだけで、理事会の議論の質が変わります。

年4件。冒頭の数字に戻ります。これだけの制度が用意されていて、使われているのが年4件だというのは、率直に言ってもったいない。制度は、知っている組合だけが使えます。私が現場で見てきたかぎり、修繕で苦労する組合とそうでない組合の差は、建物の状態よりも「相談先をいくつ持っているか」で決まります。管理会社が1社だけ、という状態が一番危うい。

明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。管理組合さま向けのサービス内容は管理組合向けの大規模修繕サポートに、私たちの仕事の考え方は明誠の理念にまとめました。

まずは03-3802-4454に一本。次の理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月21日時点で公表されている荒川区および東京都・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。分譲マンション耐震アドバイザー派遣事業の詳細を記載した「非木造建物耐震化推進事業のご案内」は令和6年12月作成の資料であり、補助率・限度額については令和8年4月1日更新の区ホームページの記載を優先して掲載しました。また、荒川区の管理計画認定手数料は「当面無料」という記載であり、将来的に有料化される可能性があります。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず荒川区 防災都市づくり部 住まい街づくり課(電話 03-3802-4454/耐震関係は03-3802-3111 内線2822・2826)および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月21日

渋谷区の管理組合が無料で使える相談・派遣9選|管理士派遣は年度内4回・無料、相談会は10月16日で申込は10月1日から【令和8年度版】

2026年9月21日 更新

「本間さん、うちは管理会社に全部お任せなんですよ。だから相談する相手がいなくてね」

今年の夏、渋谷区幡ヶ谷のマンションの理事長さまから、そう伺いました。築29年、48戸。2回目の大規模修繕をそろそろ、という時期です。管理会社から出てきた見積が1億円近く、修繕積立金がまったく足りない。でも、その見積が高いのか妥当なのか、判断できる人が組合の中に誰もいない、と。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンションやビル、ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組んで建物を丸ごと囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も自分の足で踏んできた人間です。

その理事長さまにお伝えしたのは、ひとつだけでした。見積の是非を最初に工事会社へ聞くのは順序が逆です。渋谷区には、マンション管理士が2時間かけて管理組合のもとへ出向いてくれる制度が、無料であります。まずそこで、第三者の目を1回入れましょう、と。

渋谷区は、代官山・恵比寿・広尾のような高額な分譲マンションが集まる地域と、笹塚・幡ヶ谷・本町のような昭和のストックが厚い地域が、同じ区の中に同居しています。管理組合が抱える悩みの中身も、地域によってまるで違う。だからこそ渋谷区は、窓口で待つ相談と、専門家がマンションまで来る派遣の両方を揃えています。

今日は、渋谷区のマンション管理組合とビルオーナーさまが、お金をかけずに使える相談・派遣を9つ、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。


結論:渋谷区で無料で使える相談・派遣は9つある

先に一覧でお示しします。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用・回数 申込先
1 渋谷区 分譲マンション管理士派遣制度 マンション管理士 無料/1回2時間・年度内4回まで 住宅政策課 03-3463-3548
2 渋谷区 マンション管理無料相談会 マンション管理士(東京山手支部) 無料/毎月第3金曜・先着2組 住宅政策課 03-3463-3548
3 東京都 マンションアドバイザー無料派遣 マンション管理士等 無料/要届出1回・管理不全の兆候ありは5回 まちづくりセンター 03-5989-1453
4 東京都 マンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応) マンション管理士 無料/各テーマ2回まで 東京都マンション管理士会
5 東京都 マンション耐震化推進サポート事業 建築士等 無料/回数は相談内容による まちづくりセンター 03-5989-1453
6 渋谷区 法律相談 弁護士 無料/40分・年度内3回 渋谷区コールセンター 03-3463-1211
7 渋谷区 消費者相談コーナー 消費生活相談員 無料 03-3406-7644
8 東京都 分譲マンション総合相談窓口 マンション管理士 無料/常設 まちづくりセンター 03-6427-4900
9 (公財)マンション管理センター 電話相談 専門相談員 無料/1件15分前後 03-3222-1517 / 03-3222-1519

電話番号は、実質ひとつ押さえておけば動き出せます。渋谷区 住宅政策課 住環境整備係(03-3463-3548)。1と2の入口が、ここに集約されています。

ここからが本題です。


1. 渋谷区 分譲マンション管理士派遣制度:1回2時間、年度内4回まで無料

渋谷区の制度で、私がいちばん強いと思っているのがこれです。

区の公式ページには、次のように書かれています(出典:渋谷区「分譲マンション管理士派遣制度」、2026年4月1日更新)。

  • 派遣するのは:マンション管理士(国家資格者)
  • 相談時間:1回につき2時間
  • 費用:無料(ただし配付物の印刷費や登記簿謄本の取得など、一定の実費が発生する場合あり)
  • 回数:同一マンションで年度内4回まで
  • 申込:派遣を希望する3週間前までに申請書を住宅政策課へ持参または郵送

「窓口に出向く30分の相談」ではなく、管理士が会合の場に来て2時間つきあってくれる。しかも年度内4回。理事会に1回、修繕委員会に1回、総会前の説明に1回、総会当日に1回――と割り振れば、1年分の意思決定をまるごと伴走してもらえる計算になります。

対象要件は「7つのうち1つでも当てはまれば」

対象は、次の7つの要件のいずれか1つ以上に該当する区内分譲マンションの管理組合です。

  1. 管理組合がないこと
  2. 管理者などが定められていないこと
  3. 管理規約が存在しない、または必要に応じた改正がされていないこと
  4. 集会(総会)が年1回以上開催されていないこと
  5. 管理費と修繕積立金の区分経理、適正管理がされていないこと
  6. 適宜適切な維持修繕を行うための修繕積立金が積み立てられていないこと
  7. 築20年以上のマンションで、過去に大規模修繕工事(外壁塗装など工事、床防水工事および屋根防水工事)を実施していないこと

管理組合設立を自主的に行おうとする区分所有者の団体も申請できます。

7番目に注目してください。築20年以上で、まだ一度も大規模修繕をやっていない。渋谷区の昭和・平成初期ストックには、これに当てはまるマンションが相当数あります。「うちは何も問題がないから対象外だろう」と思い込んで使わないのが、いちばんもったいないパターンです。

支援の対象外になるもの

ここは正直にお伝えします。次のものは支援対象外です。

  • 耐震診断、測定器などを使用した建物の精密測定、劣化診断・調査
  • 大規模修繕計画、長期修繕計画の作成
  • 修繕工事などの設計
  • 管理規約の作成
  • 見積書などの比較検討
  • 工事および維持管理業務の受注・発注ならびに業者の紹介
  • 居住者間および居住者・近隣住民間の紛争解決および権利調整

つまり「この見積、高いですか?」という問いに、この制度で直接答えてもらうことはできません。できるのは意見の整理とアドバイス、対応策の資料作成、関係資料の収集・提供、総会および理事会の開催支援です。

私はそれでも十分だと考えています。見積の金額そのものではなく、「どういう手順で業者を選べば組合として説明責任を果たせるか」「総会で何を諮るべきか」を整理してもらう。そこが固まっていない組合が、実際とても多いからです。

なお、令和9年2月以降の申請は、事業スケジュールの都合で受付できない場合があると区が明記しています。年明けに思い立つと間に合いません。動くなら年内です。


2. 渋谷区 マンション管理無料相談会:毎月第3金曜、先着2組

派遣までは大げさだ、まず話を聞いてもらいたい。そういうときはこちらです。

東京都マンション管理士会東京山手支部の協力で、渋谷区が毎月開催しています(出典:渋谷区「マンション管理無料相談会」、2026年4月1日更新)。

  • 開催:毎月第3金曜日
  • 対象:区内の分譲マンション管理組合役員および区分所有者、1組あたり2人以内
  • 定員:各開催日 先着2組まで
  • 回数:1組につき原則年度内3回まで
  • 申込:住宅政策課住環境整備係(03-3463-3548)へ電話

令和8年度の残りの日程は、次のとおりです。

開催日 時間 場所 申込期間
10月16日 14時〜16時 渋谷区役所本庁舎8階 810会議室 10月1日〜9日
11月20日 15時30分〜16時30分 渋谷区役所本庁舎8階 813-1.2.3会議室 11月4日〜13日
12月18日 14時〜16時 渋谷区役所本庁舎8階 810会議室 12月1日〜11日
令和9年1月15日 14時〜16時 渋谷区役所本庁舎8階 810会議室 1月4日〜8日
令和9年2月19日 15時30分〜16時30分 渋谷区役所本庁舎8階 813-1.2.3会議室 2月1日〜12日
令和9年3月19日 14時〜16時 渋谷区役所本庁舎8階 811-2会議室 3月1日〜12日

次回は10月16日、申込開始は10月1日です。定員が先着2組と極端に少ないので、申込開始日に電話するくらいの気持ちでちょうどいい。

この相談会のもうひとつの価値は、6月と11月に専門家によるセミナー、2月に交流会が併催される点です。11月20日と令和9年2月19日が15時30分〜16時30分と時間帯が違うのは、そのためと読めます。他のマンションの理事と話せる機会は、輪番制の組合にとって貴重です。

なお、事業者の紹介、居住者間および居住者・近隣住民間との紛争解決・権利調整については対応していません。そこは6番の法律相談の領域になります。


3. 東京都 マンションアドバイザー無料派遣:要届出マンションなら回数が増える

渋谷区の制度と併用できるのが、東京都の制度です。

「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」に基づき、昭和58年12月31日以前に新築された、居住用の独立部分が6以上ある分譲マンションは、管理状況の届出が義務づけられています(要届出マンション)。この届出が受理されていると、マンションアドバイザーの派遣が無料になります(出典:(公財)東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」)。

  • 届出が受理された要届出マンション:1回まで無料
  • 届出が受理されたマンションのうち、管理不全の兆候があるマンション:5回まで無料
  • 1回あたり2時間程度
  • 申込先:まちづくり推進課 03-5989-1453

コースは細かく分かれていて、大規模修繕に直結するのは相談編のB-5①(修繕工事検討段階:劣化状況の調査・診断、検討組織、工事方式)とB-5②(修繕工事準備段階:工事の内容、業者選定の仕方、合意形成)です。講座編にもA-2「長期修繕計画作成ガイドライン活用の手引きの解説」、A-4「計画修繕工事の進め方」があります。

渋谷区の管理士派遣が「見積の比較検討は対象外」だったのに対し、こちらのB-5②は業者選定の仕方そのものを相談できる。役割が違うので、両方使うのが正解です。

ただし、無料派遣を利用した相談内容等は東京都・区市町村で共有されること、講座編には有料のテキストが必要なものがあることは、申し込む前に頭に入れておいてください。


4. 東京都 マンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応):令和9年2月26日まで

令和5年度から続いている、東京都のもう一つの派遣事業です(出典:東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」)。

  • 対象:都内に所在するマンション管理組合(築年数・届出の有無を問わない)
  • 回数:1管理組合につき、防災力向上と認知症対応それぞれ2回まで(無料)
  • 受付期間:令和8年6月23日から令和9年2月26日まで
  • 募集数:防災力向上・認知症対応合わせて160件に達し次第、新規受付を締切
  • 申込:(一社)東京都マンション管理士会のHPから

注意点が2つあります。ひとつは通算カウントであること。令和5年度から令和7年度に本事業の派遣を受けている場合、その回数も各テーマ2回の上限に含まれます。もうひとつは160件で締切という点。年度後半に思い立っても枠が残っていない可能性があります。

防災力向上では「自主防災組織の設置や強化の方法」「災害時にも活用できる居住者等名簿の作成」「発災時の緊急対応を定める管理規約の整備方法」などが相談できます。認知症対応では「バリアフリー改修を含む長期修繕計画の策定」まで扱う。長期修繕計画の見直しを、防災・福祉の切り口から進められるのは、この制度ならではです。


5. 渋谷区で耐震化を考えるなら:令和8年度から対象が広がったサポート事業

旧耐震基準(昭和56年以前)のマンションをお持ちなら、ここは必ず確認してください。

東京都のマンション耐震化推進サポート事業は、令和8年度から、耐震診断を行っていないマンションに対しても専門家派遣の対象を拡大しました(出典:東京都マンションポータルサイト「マンション耐震化プロモーション事業(個別訪問・専門家派遣)」)。

これは大きな変更です。これまでは「耐震診断をやったうえで、耐震化の必要性が判明したマンション」が中心でした。令和8年度からは、診断の前の段階でも建築士等の専門家を呼べます。

  • 対象:管理状況届出を行い、管理活動が健全なマンションのうち、耐震診断未実施のマンション、または耐震診断実施後に耐震化の必要性が判明したマンション
  • 支援内容:問題点の整理と情報提供、区分所有者間の合意形成支援、耐震改修計画案・建替え計画案の作成・提案、耐震改修を見据えた長期修繕計画の見直しの支援
  • 窓口:(公財)東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1453(土日祝を除く9時〜17時)

また、令和8年度から5年間で、届出制度等で把握した耐震診断未実施のマンション約3,700棟を対象に、都と区市が連携した個別訪問が始まりました。外観等の簡易な目視調査と耐震化のアドバイスを無料で受けられます。訪問対象には事前に通知が郵送されます。

渋谷区のマンションに、東京都職員や区職員、都の委託事業者からの通知が届いたら、それは営業ではなく行政の事業です。捨てずに理事会へ上げてください。


6. 渋谷区 法律相談:管理費滞納・区分所有トラブルは弁護士へ

管理費や修繕積立金の滞納、騒音、専有部分の工事をめぐる区分所有者同士の対立。マンション管理士では踏み込めない領域は、弁護士に相談します。

渋谷区の法律相談は、次のとおりです(出典:渋谷区「法律相談」、2026年4月21日更新)。

  • 相談日:毎週月曜日・木曜日(月曜が祝日・休日の場合は翌火曜に振替)。電話相談可
  • 相談時間:40分間
  • 相談枠:13時〜、13時45分〜、14時30分〜、15時25分〜、16時10分〜
  • 定員:月曜は各枠2人(合計10人)、木曜は各枠3人(合計15人)
  • 対象:区在住または在勤の人
  • 回数:おひとりにつき年度内3回まで
  • 予約:LINE(渋谷区公式アカウント @shibuyacity)、区民相談WEBメニュー、または渋谷区コールセンター 03-3463-1211。いずれも先着順
  • 予約枠の開放:毎月第3火曜日9時から、翌月1か月分

40分という枠は、法律相談としては短くありません。ただし木曜のほうが定員が多いので、取りやすいのは木曜です。当日朝9時以降のキャンセルは相談1回分としてカウントされる点にご注意ください。

詳しい利用方法は区のR8年度区民相談のしおり(PDF)にまとまっています。

訪問販売・飛び込み営業のトラブルは消費者相談コーナーへ

「無料点検です」と言って屋上に上がり、撮った写真を見せて不安を煽り、その場で契約を迫る。残念ながら、この手の業者は今も渋谷区内で動いています。

区分所有者の個人宅に訪問販売が入った場合の相談先は、渋谷区 消費者相談コーナー(03-3406-7644)です。相談日時は月曜〜金曜(祝休日、年末年始を除く)9時30分〜16時、区内在住・在勤・在学の人が対象です(出典:渋谷区「消費者相談」、2025年10月1日更新)。

なお、消費者からの相談のみが対象で、事業者や個人事業主からの相談は受け付けていません。管理組合としての相談は、1〜3の窓口へ回すのが筋です。


7. 都と国の常設窓口:予約が取れないときの逃げ道

渋谷区の相談会は先着2組。都の派遣は年度の枠がある。今週中に誰かに聞きたい、というときの受け皿が2つあります。

東京都 分譲マンション総合相談窓口は、(公財)東京都防災・建築まちづくりセンターに令和元年9月から開設されている常設窓口です。マンション管理士が、日常の維持管理・再生に関する相談、管理状況届出制度に関する問い合わせに応じます。大規模修繕工事の検討や準備に関する相談、改修や建替えに向けた合意形成のアドバイス、都や区市町村が実施している助成制度の紹介まで扱います。

  • 電話:03-6427-4900(月〜金 9時〜17時、土日祝・年末年始休業)
  • メール:mansion-soudan@tokyo-machidukuri.jp

(公財)マンション管理センターは、マンション管理適正化法に基づく「マンション管理適正化推進センター」の指定を国から受けている唯一の団体です。公平・中立な立場で電話・面談・メールの相談に応じます。

  • 管理組合運営、管理規約等のご相談:03-3222-1517
  • 建物・設備の維持管理のご相談:03-3222-1519
  • 受付:月〜金(祝日・年末年始を除く)9時30分〜17時
  • 1件あたり15分前後を目安

(出典:(公財)マンション管理センター「相談窓口について」)

15分という制約があるので、質問を1つに絞ってからかけてください。「築29年48戸、2回目の大規模修繕、積立金が足りない。組合としてまず何を決めるべきか」――このくらい具体的に切り出すのが、いちばん実のある15分になります。


8. 渋谷区で相談に行く前に、用意しておく書類

どの窓口でも、手ぶらで行くと一般論で終わります。渋谷区自身が、マンション管理無料相談会のページで用意すべき資料を挙げてくれています。

  • 管理規約
  • 総会議案書・議事録
  • 理事会の議事録
  • 管理委託契約書
  • 滞納記録
  • 不具合箇所の写真
  • 長期修繕計画書
  • 修繕工事記録

全部そろえるのは大変です。優先順位をつけるなら、私は管理規約・長期修繕計画書・直近の総会議案書の3点をおすすめします。この3つがあれば、「管理組合としてどこまで決められるのか」「お金がいつ足りなくなるのか」「前回の総会で何が保留になったのか」が、専門家の側から見えます。

不具合箇所の写真は、スマートフォンで撮ったもので構いません。ただしいつ撮ったものかが分かるようにしておいてください。外壁のひび割れやタイルの浮きは、進行の速さが判断材料になります。同じ箇所を半年前と今とで比べられれば、それだけで話が早い。


9. 相談の先で必ず出てくる「足場をどうするか」というお金の話

ここからは、工事会社としての私の話です。

無料相談や派遣で管理組合の課題を整理していくと、ほぼ必ず「で、大規模修繕にいくらかかるのか」という壁に突き当たります。目安としては、30戸規模のマンションの大規模修繕で総額3,500万〜5,000万円のレンジ。物件により大きく変動しますので、あくまで参考値です。

問題は、その中の仮設足場が総工費の15〜25%を占めるという点です。

たとえば10階建て・外周80m・工期3ヶ月のマンション。仮設足場を全面に架けると、足場だけで168万円前後かかる場合があります。同じ建物をロープアクセス工法(無足場工法)で施工すると、仮設費は59万円前後。差額で約109万円です。もちろん建物の形状、バルコニーの出、屋上のアンカー設置可否によって数字は動きますが、桁が変わるほどの差が出ることは珍しくありません。

打診調査だけを見ても、㎡あたり250〜500円が目安。これを足場ありでやるか、ロープで降りながらやるかで、調査費と工期がまるで変わってきます。

私は、なんでもロープアクセスにすべきだとは思っていません。低層で複雑な形状の建物なら足場のほうが速く、安く、きれいに仕上がることもあります。だから明誠では、通常足場工法・ロープアクセス工法・両方を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物ごとに選んでご提案しています。3工法を自社で持っている会社は、日本でも多くありません。

なぜこれが無料相談の話とつながるのか。相談の場で「足場以外の選択肢があるかどうか」を知っているかどうかで、管理組合が組み立てられる予算計画が変わるからです。足場ありきの長期修繕計画しか持っていない組合は、積立金の不足を値上げか借入でしか埋められません。

工法の技術的な中身をもっと深く知りたい方は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムをご覧ください。同業者・フランチャイズ加盟希望者向けに、訓練体系や安全管理の詳細をまとめています。管理組合の方でも、「どんな訓練を受けた人間が壁を降りてくるのか」を確認する材料になります。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工し、日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。安全管理の考え方はロープアクセスドットコムでも公開しています。

明誠のこれまでの施工事例は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。管理組合向けのサービス内容、料金の考え方もあわせてどうぞ。


まとめ:渋谷区の管理組合が今週動くこと3点

長くなりましたので、動き方だけ3つに絞ります。

1つ目。10月1日に、住宅政策課(03-3463-3548)へ電話する。 10月16日のマンション管理無料相談会は先着2組です。申込期間は10月1日から9日まで。この1本の電話が、いちばん費用対効果が高い。

2つ目。築20年以上でまだ大規模修繕をやっていないなら、分譲マンション管理士派遣制度の申請書を取り寄せる。 1回2時間、年度内4回まで無料。申請は希望日の3週間前まで、令和9年2月以降は受付できない場合があります。動くなら年内です。

3つ目。昭和58年以前の建物なら、管理状況届出が受理されているかを確認する。 届出が受理されていれば東京都のアドバイザー派遣が無料になり、管理不全の兆候ありと判定されていれば5回まで使えます。耐震診断未実施でも、令和8年度から専門家派遣の対象です。まちづくりセンター(03-5989-1453)で確認できます。

そのうえで工事の話になったら、そのときに我々のような会社を呼んでください。順番はそれで正しい。明誠の考え方は、いつでもご覧いただけます。


よくあるご質問

Q. 渋谷区の管理士派遣と東京都のアドバイザー派遣は、両方使えますか?

A. 申請先も根拠制度も別なので、要件を満たせば併用できます。渋谷区の管理士派遣は年度内4回、東京都のアドバイザー派遣は要届出マンションで1回(管理不全の兆候ありは5回)です。ただし同じ内容を重ねて相談するより、区は運営・規約、都は修繕工事の検討と準備、と役割を分けるほうが実りがあります。

Q. 賃貸マンションのオーナーですが、これらの制度は使えますか?

A. 1〜4は分譲マンションの管理組合が対象で、賃貸オーナーは対象外です。賃貸マンション向けには東京都が別途、防災アドバイザーの無料派遣を実施しています。建物の劣化や修繕の相談であれば、私たちのような工事会社が無料で現地を拝見し、概算をお出しできます。

Q. 相談会は年度内3回までとのことですが、理事が交代したら回数はリセットされますか?

A. 渋谷区の相談会は「1組につき原則年度内3回まで」で、組合単位の運用です。理事が交代しても年度内の回数は引き継がれるとお考えください。4回目以降は断られる場合があると区が明記しています。

Q. 大規模修繕の費用はいくらかかりますか?

A. 30戸規模のマンションで総額3,500万〜5,000万円がひとつのレンジですが、階数・外周長・劣化の程度で大きく変わります。うち仮設足場が15〜25%を占めるため、ここを無足場のロープアクセス工法に置き換えられるかどうかが、総額に最も効きます。明誠では無料で概算お見積りをお出ししています。

Q. ロープアクセス工法だと工期はどれくらい変わりますか?

A. 足場工法の約60%が目安です。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場で3ヶ月のところ、ロープアクセスで1.5〜2ヶ月程度。足場の架設と解体だけで2〜3週間かかりますが、それが不要になるためです。

Q. 無料相談で工事会社を紹介してもらえますか?

A. できません。渋谷区の管理士派遣も相談会も、業者の紹介・受発注は対象外と明記されています。これは制度の欠陥ではなく、公平性を担保するための設計です。業者選定の「進め方」は東京都のアドバイザー派遣B-5②で相談できますので、そちらをお使いください。

Q. 管理費の滞納者がいます。どこに相談すべきですか?

A. 督促の手順と管理規約の整備は東京都のアドバイザー講座編A-5「滞納管理費・修繕積立金督促の仕方」、法的措置の検討は渋谷区の法律相談(弁護士・40分・年度内3回)です。滞納記録を持参してください。

Q. 「無料点検」と言って屋上に上がりたがる業者が来ました。断って大丈夫ですか?

A. 断って構いません。理事会の承認なく共用部に立ち入らせる必要はありません。不安を煽ってその場で契約を迫るのは典型的な手口です。個人宅への訪問販売であれば渋谷区消費者相談コーナー(03-3406-7644)へご相談ください。


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月21日時点で公表されている渋谷区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず渋谷区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

大規模修繕の工法選定や概算のご相談は、お問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。渋谷区内の物件も数多く手がけております。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月21日

板橋区のマンション漏水・防災対策|崖152か所と荒川低地、ハザードが二層になる区【大規模修繕2026年度版】

2026年9月21日 更新

板橋区の中台で、築28年の分譲マンションの理事長さまから「3階の角部屋だけ、毎年梅雨に壁紙が浮く」とご相談をいただいたことがあります。前の調査では「外壁のクラックだろう」という診断でした。ところが足場を組む前にロープで下りて実際に触ってみると、外壁のクラックはほとんど動いていませんでした。水を運んでいたのは、建物の背面にある高さ4mほどの擁壁でした。擁壁の水抜き管が土砂で詰まっていて、雨のたびに背面土が水を溜め、壁体を伝って建物側に染み出していたのです。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。

板橋区という区は、私の感覚では23区のなかでもっとも「同じ区内なのに答えが変わる」区です。理由ははっきりしていて、崖の多い台地と、荒川沿いの低地が、1つの区のなかに同居しているからです。常盤台の物件と舟渡の物件では、漏水の原因も、修繕の優先順位も、まるで違うものになります。

今日は、板橋区が公表している最新のハザード資料から逆算して、板橋区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。


結論:板橋区は「自分の物件がどちらの板橋区にあるか」を先に確定させる区です

先に結論から申し上げます。板橋区で大規模修繕の優先順位を決めるとき、私が最初に確認するのは屋上でも外壁でもありません。その物件が「崖側の板橋区」なのか「低地側の板橋区」なのかです。

板橋区の土砂災害警戒区域は、令和8年3月25日の公示時点で警戒区域152か所、特別警戒区域118か所あります(出典:板橋区「板橋区土砂災害ハザードマップ」/ページ更新日 2026年8月12日、マップは令和8年8月時点の内容)。これは23区のなかでは飛び抜けて多い数字です。赤塚・徳丸・西台・中台・志村・小豆沢といった、武蔵野台地の北端が荒川低地に落ち込む線に沿って、崖と擁壁が連なっています。

一方で、舟渡・新河岸・高島平・蓮根のあたりは荒川の沖積低地です。荒川氾濫版の洪水ハザードマップは、荒川流域で3日間の総雨量632ミリメートルという想定最大規模の降雨を前提にしています(出典:板橋区「板橋区洪水ハザードマップ」/ページ更新日 2026年8月12日、荒川氾濫版は令和7年12月改訂)。

私が理事長さま・オーナーさまにお伝えしているのは、この3つです。

  1. 敷地に高低差があるなら、外壁より先に擁壁と水抜き管を見る(崖側の板橋区)
  2. 低地側なら、1階まわりと電気・給水・エレベーターの「高さ」を確認する(低地側の板橋区)
  3. どちらでも、内水(雨水出水)のマップは洪水マップとは別に必ず開く

この3つを先に決めてしまえば、限られた修繕積立金をどこに寄せるかの議論が、驚くほど早く終わります。


板橋区のハザードマップを1枚で読む(洪水・内水・高潮・土砂)

板橋区は、水防法に基づくハザードマップを種類ごとに分けて公表しています。区の公式ページにある一覧を、マンション修繕の視点で読み直すと次のようになります。

種類 区のマップ 改訂時点 想定の前提
洪水(荒川) 洪水ハザードマップ(荒川氾濫版) 令和7年12月改訂 荒川流域で3日間総雨量632mm
洪水(荒川・継続時間) 洪水ハザードマップ(荒川浸水継続時間版) 令和7年12月改訂 浸水深0.5m以上が引くまでの時間を図示
洪水(中小河川) 洪水ハザードマップ(中小河川版) 令和8年8月改訂 1時間雨量153mm・総雨量690mm/石神井川・新河岸川・白子川
雨水出水(内水) 雨水出水ハザードマップ 令和8年8月改訂 令和8年3月に東京都が公表した雨水出水浸水想定区域図
高潮 高潮ハザードマップ(氾濫版・浸水継続時間版) 令和7年12月改訂 令和6年12月に東京都が公表した高潮浸水想定区域図
土砂災害 土砂災害ハザードマップ(オモテ・ウラ) 令和8年8月改訂 令和8年3月25日公示/警戒152か所・特別警戒118か所
津波 — — 区に津波が到達する想定はありません

(出典:板橋区「板橋区洪水ハザードマップ」、板橋区「板橋区雨水出水ハザードマップ」、板橋区「板橋区高潮ハザードマップ」、板橋区「板橋区土砂災害ハザードマップ」)

この表で、実務上いちばん見落とされやすいのが中小河川版と雨水出水版が令和8年8月に改訂されたばかりだという点です。長期修繕計画の見直しで「以前ハザードを確認したから大丈夫」と言われることがありますが、その「以前」が令和7年以前なら、中小河川と内水については見直したほうが安全です。

区は洪水ハザードマップのページで、荒川氾濫版・荒川浸水継続時間版は令和7年12月時点、中小河川版は令和8年8月時点の内容であると、わざわざ分けて注記しています。マップごとに基準時点が違う。ここを揃えて読まないと、理事会での議論が噛み合いません。

もうひとつ、区は「板橋区に津波が到達する想定はありません」と明記しています。これは予算配分の話としては地味に大きな情報です。津波を心配するための予算は要らないということが、公式に確定しているわけですから、その分を擁壁と内水に寄せられます。


板橋区の土砂災害警戒区域は「去年と今年で答えが変わった」物件があります

板橋区の漏水・防災を語るうえで、いちばん重要なのがここです。

令和8年3月25日の告示で、板橋区内の土砂災害(特別)警戒区域の指定状況が17か所で変更されました。内訳を区の公表表から整理すると、次のようになります(出典:板橋区「板橋区土砂災害ハザードマップ」/ページ更新日 2026年8月12日)。

変更の種類 該当地区
指定追加 西台二丁目、西台一丁目、板橋四丁目、小豆沢三丁目、志村二丁目(2か所)、徳丸三丁目、徳丸一丁目
指定解除 西台一丁目、徳丸六丁目
特別警戒区域の一部解除 西台一丁目(2か所)、志村二・三丁目
特別警戒区域の解除 中台二丁目
区域の縮小 西台一丁目、中台二丁目、小豆沢三丁目

管理組合の実務でいうと、これは「重要事項説明の内容が変わった」「修繕の優先順位が変わった」物件が区内に十数件あるということです。

とくに注意していただきたいのが指定追加された側です。西台二丁目・板橋四丁目・小豆沢三丁目・志村二丁目・徳丸一丁目/三丁目で、令和8年3月25日から新たに区域に入った箇所があります。これらの物件では、これまで「うちは土砂災害と無関係」という前提で長期修繕計画を組んでいた可能性があります。擁壁の点検も水抜き管の清掃も、計画に入っていないかもしれません。

逆に解除・縮小された側も見逃せません。西台一丁目や徳丸六丁目、中台二丁目では、区域から外れた、あるいは特別警戒区域から警戒区域に格下げされた箇所があります。ここは「崖の心配で止めていた外壁・防水の予算を、本来やるべき工事に戻してよい」という判断ができるということです。

なお、区域の指定そのものは東京都建設局が土砂災害防止法に基づいて行っています。自分の物件の番地が該当するかどうかは、東京都土砂災害警戒区域マップで番地単位まで確認できます。理事会の資料としては、このマップの該当箇所を印刷して添付するのがいちばん早いです。


崖側の板橋区で、漏水が起きる本当の場所

擁壁のある敷地で起きる漏水は、外壁の漏水とはメカニズムがまったく違います。私が板橋区の台地側で実際に見てきた順に、多いものを挙げます。

1位:擁壁の水抜き管の詰まり

これが圧倒的に多いです。擁壁には通常、3平方メートルに1か所程度の割合で内径75mm以上の水抜き管が設けられています。ところが20年、30年と経つと、背面の土砂や根が入り込んで詰まります。水が抜けなくなった擁壁は、背面土の水圧を受け続け、目地やクラックから水を滲ませます。建物が擁壁に近接していると、その水が建物の基礎や1階外壁に回る。

水抜き管の清掃は、大規模修繕の費用全体からするとごく小さな金額です。にもかかわらず、修繕項目に入っていないことが本当に多い。擁壁のある物件では、これを見積書に入れてもらってください。

2位:斜面地の建物の「半地下」部分

板橋区の崖線沿いには、道路から見ると2階建てでも、裏側から見ると4階建て、という構成の建物がよくあります。この「道路から見えない下階」は、三方を土に囲まれていることがあり、構造的に漏水しやすい。しかも外部から目視できないため、発見が遅れます。

3位:斜面地特有の外壁の目地切れ

高低差のある敷地では、建物に不同沈下方向の力がかかりやすく、シーリングの目地が片側だけ先に切れることがあります。「北面だけ、なぜか5年でシーリングが痩せる」という物件は、たいてい地形が原因です。

こういう建物こそ、ロープアクセス工法の得意分野です。斜面地・狭隘地では足場の架設そのものが難しく、組めたとしても架設費が跳ね上がります。ロープアクセスなら屋上のアンカーから下りていくため、地上の条件にほとんど左右されません。工法の技術的な詳細は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで整理しています。


低地側の板橋区で、先に確認すべき3つの「高さ」

舟渡・新河岸・高島平・蓮根といった荒川沿いの低地側では、話がまったく変わります。ここで私が最初に確認するのは、エレベーター機械室・受電設備(キュービクル)・給水ポンプの3つが、地上何メートルにあるかです。

理由は単純で、この3つが止まると上階は生活できなくなるからです。水が引くまで何日もかかる地域では、「建物は無事でも住めない」という状況が現実に起こります。区が荒川浸水継続時間版のハザードマップをわざわざ別に作っているのは、まさにこの「引くまでの時間」が避難の判断を変えるからです。

分譲マンションの理事会でこの話をすると、「移設には大金がかかるのでは」と言われます。確かに設備一式の移設は簡単ではありません。ただ、大規模修繕のタイミングであれば、次のような部分的な対策なら現実的な費用で入れられます。

  • キュービクル基礎のかさ上げ
  • 受電盤・分電盤まわりの止水処理
  • 給水ポンプ室の出入口への止水板の設置
  • 機械式駐車場のピット排水ポンプの二重化
  • エレベーターの浸水時管制運転(最上階待機)の設定確認

このうち止水板については、板橋区に助成制度があります。止水板設置工事等に要した費用の2分の1以内、1つの建築物について上限50万円です(出典:板橋区「止水板設置工事助成制度」/ページ更新日 2025年2月14日)。助成には要件があるため、設置を検討する段階で区の土木部土木計画・交通安全課(電話 03-3579-2297)に相談してほしい、と区は案内しています。

なお、この助成制度のページの更新日は2025年2月14日で、令和8年度としての受付内容が明示されているわけではありません。金額や要件が変わっている可能性があるため、申請前に必ず区の窓口で令和8年度の取扱いをご確認ください。


板橋区の浸水履歴が教えてくれること

ハザードマップと同じくらい、私が重視しているのが実際に水が出た記録です。板橋区は、昭和43年4月30日以降の浸水被害を町丁目別にPDFで公開しています(出典:板橋区「浸水履歴」/ページ更新日 2025年12月3日)。

この資料が優れているのは、次の3点です。

  • 平成10年以降は床上・床下浸水を分けて「番」まで掲載している
  • 平成12年9月12日以降の道路冠水被害を日付ごとに掲載している
  • 令和7年3月から、地域別浸水履歴にも道路冠水箇所を併記するようになった

つまり、自分の物件の町丁目のPDFを1枚開けば、「この町丁目で、いつ、どこまで水が来たか」が番地レベルで分かるということです。理事会の資料としてこれ以上のものはなかなかありません。

そして、区は逆の情報も公開しています。浸水記録がないため添付ファイルがない町丁目が、次の12か所として明記されています。

赤塚七丁目/大谷口一丁目/上板橋一丁目/志村二丁目/大門/高島平四丁目/常盤台二丁目/常盤台三丁目/徳丸八丁目/西台四丁目/南常盤台二丁目/四葉一丁目

(出典:板橋区「浸水履歴」)

これは修繕の予算配分としてはかなり強い情報です。昭和43年以降、区が把握している範囲で浸水記録がない町丁目であれば、1階まわりの浸水対策に厚く予算を置く必要性は相対的に低いと判断できます。その分を屋上防水やシーリング、あるいは擁壁に回したほうが、費用対効果は明らかに高くなります。

ただし、注意点が1つあります。この12か所のうち、志村二丁目・西台四丁目・徳丸八丁目・高島平四丁目は、台地側または台地と低地の境目に位置します。浸水記録がないことと、崖の心配がないことは別の話です。志村二丁目は先ほどの令和8年3月25日の告示で土砂災害警戒区域が2か所追加されている町丁目でもあります。水の履歴だけを見て安心しないでください。


「1時間153mm」という数字をどう受け止めるか

中小河川版の洪水ハザードマップが前提にしている1時間雨量153ミリメートルという数字は、はじめて見ると現実感がないかもしれません。ただ、板橋区では令和8年8月22日に集中豪雨があり、区は罹災証明書の発行や家屋等の消毒といった被災者支援を実施しています(出典:板橋区「8月22日の集中豪雨により被災された方へ」/ページ更新日 2026年8月26日)。想定の話ではなく、この夏に現実に起きたことです。

短時間の強い雨は、統計としても増え続けています。気象庁の観測では、1時間降水量50ミリメートル以上の年間発生回数は、統計開始からの最初の10年間と直近10年間を比べておおむね1.5倍に増えています(出典:気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」)。

この変化が、建物にとって何を意味するか。私の現場感覚では、次の2つです。

1つは、屋上ドレンと縦樋の設計流量が足りなくなってきていること。築30年前後の建物は、当時の降雨強度を前提にドレンの径と数が決まっています。1時間100mmを超えるような雨では、屋上のプールに水が溜まり、防水層の立ち上がりを越える。オーバーフロー管が付いていない、あるいは詰まっている物件では、それがそのまま最上階の漏水になります。

もう1つは、横殴りの雨でサッシまわりの止水が抜けること。通常の雨なら問題ない目地でも、風速20m/s以上の雨では水が上向きに動きます。シーリングの劣化した目地、ビス穴、換気口が一気に弱点になる。「台風のときだけ濡れる」という相談は、ほぼこれです。

大規模修繕の見積を取るときは、ドレンの増設・オーバーフロー管の新設・サッシまわりのシーリング打ち替えの3点が入っているかを確認してください。この3点は金額としては大きくありませんが、効き方が大きい項目です。詳しくは明誠の漏水調査・漏水対応の考え方にも整理しています。


板橋区のマンションで使える工法の選び方と、かかる費用の目安

ここまでの話を、費用の話につなげます。板橋区のように擁壁がある・斜面地である・敷地に余裕がないという条件が重なると、足場の架設費が想定以上に膨らみます。

一般的な目安として、10階建て・外周80m・工期3か月の物件で、仮設足場の費用は168万円程度になることがあります。同じ範囲をロープアクセス工法で施工した場合、仮設にあたる費用は59万円程度で、差額はおよそ109万円です。あくまで参考値であり、実際の金額は建物形状・下地の状態・工事範囲によって大きく変わりますが、仮設費が総工費の15〜25%を占めることを考えると、無視できない差です。

工種ごとの㎡単価の目安も挙げておきます。いずれも参考値で、実際の見積は物件により変動します。

工種 単価の目安
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡
外壁打診調査 250〜500円/㎡
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/㎡

30戸規模のマンションの大規模修繕全体では、3,500万〜5,000万円程度がひとつのレンジになります。このうち仮設足場が15〜25%を占めるため、足場を減らせるかどうかで、同じ予算でできる工事の中身が変わるわけです。

ただし、私は「ロープアクセスがいつでも最適」とは考えていません。板橋区の物件でいえば、次のような整理になります。

建物の条件 向いている工法
敷地に余裕があり、全面的な下地補修が必要 通常足場工法
斜面地・狭隘地・擁壁隣接で足場の架設が難しい ロープアクセス工法(無足場工法)
低層部は補修量が多く、高層部は塗装中心 ハイブリッド工法(足場とロープの併用)

株式会社明誠は、この3工法から建物の特性に応じて選べる、日本でも数少ない会社です。どれか1つの工法しか持たない会社は、どうしても自社が持っている工法に寄せた提案になります。明誠の料金の考え方でも書いていますが、工法の選択肢を持っていること自体が、発注者にとってのコストメリットになります。


安全と品質について、数字でお伝えできること

高所作業を伴う工事を発注するとき、価格と同じくらい気にしていただきたいのが安全です。数字でお伝えできることを挙げます。

  • 株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました
  • ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています
  • 作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けています。品質面ではISO9001のマネジメントシステムに沿って施工管理を行い、日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています
  • 明誠は日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部です。塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟しており、工種ごとに専門会社が直接施工します

フランチャイズという形をとっているのは、中間マージンを減らしながら専門性を確保するためです。明誠の安全管理の考え方に、現場での具体的な運用を記載しています。

なお、擁壁や斜面地で建物全体の劣化状況を把握したいときは、ドローンによる外観調査を先行させることもあります。ドローンによる外壁調査は、足場やロープを出す前の一次スクリーニングとして有効です。

これまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。


板橋区の管理組合・オーナーさまへ:今期の理事会で決めておきたい5つのこと

長期修繕計画の見直しや、次回大規模修繕の準備をされている方向けに、板橋区の条件を踏まえた実務チェックリストを置いておきます。

  1. 令和8年3月25日の土砂災害区域の告示を、自分の物件の番地で確認する(東京都土砂災害警戒区域マップで番地単位まで確認できます)
  2. 雨水出水(内水)ハザードマップを、洪水マップとは別に開く(令和8年8月改訂版があります)
  3. 町丁目の浸水履歴PDFを1枚印刷し、理事会の資料に添付する(道路冠水箇所も令和7年3月から併記されています)
  4. 擁壁がある物件は、水抜き管の清掃を見積項目に入れる
  5. エレベーター機械室・キュービクル・給水ポンプの設置高さを図面で確認する

この5つは、専門家に頼まなくても理事会で進められます。そのうえで、実際に修繕項目と金額に落とし込む段階でご相談いただければ、板橋区の地形条件を踏まえた優先順位をご提案できます。管理組合さま向けのサポート内容は管理組合向けサービスに、賃貸オーナーさま向けの考え方は収益不動産オーナー向けサービスにまとめています。

工法そのものをもう少し深く知りたいという方は、技術情報を扱っているロープアクセスドットコムもご覧ください。同業の方やフランチャイズ加盟をご検討の方向けの情報も、こちらに集めています。


よくあるご質問

Q. 板橋区は土砂災害警戒区域が多いと聞きましたが、マンションでも関係ありますか?

A. 関係します。板橋区の土砂災害警戒区域は令和8年3月25日公示時点で152か所、特別警戒区域は118か所あります。区分所有のマンションでも、敷地に高さ2mを超える崖や擁壁がある場合は、擁壁の水抜き管・目地・クラックが修繕項目になります。まずは東京都土砂災害警戒区域マップで自分の物件の番地を確認してください。

Q. 擁壁の水抜き管の清掃は、いくらぐらいかかりますか?

A. 擁壁の長さ・高さ・水抜き管の本数によりますが、大規模修繕の総額から見ればごく小さな項目です。むしろ問題は、見積書に項目自体が入っていないケースが多いことです。擁壁のある物件では、見積依頼の段階で「擁壁の水抜き管清掃と目地補修を含めてほしい」と明示することをおすすめします。無料で概算のお見積りを提示できますので、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

Q. 足場を組まないロープアクセス工法だと、どれくらい安くなりますか?

A. 10階建て・外周80m・工期3か月の物件で、仮設足場168万円に対してロープアクセスは59万円程度、差額およそ109万円というのが参考値です。ただし下地補修の量が多い物件では足場のほうが有利になることもあります。物件を拝見したうえで、3工法それぞれの概算を比較できる形でお出しします。

Q. 工期はどれくらい変わりますか?

A. ロープアクセス工法なら足場工法の約60%の工期が目安です。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場3か月に対しロープアクセス1.5〜2か月程度になります。加えて、足場の架設・解体の期間中に発生する居住者の生活影響(洗濯物・窓の開閉・防犯面の不安)がないことも、板橋区のようなファミリー層の多い区では大きな違いになります。

Q. 板橋区の止水板設置工事助成は、分譲マンションでも使えますか?

A. 助成額は工事費用の2分の1以内、1つの建築物について上限50万円です。助成には要件があるため、設置を検討する段階で板橋区土木部土木計画・交通安全課(電話 03-3579-2297)へご相談ください、と区は案内しています。制度内容は年度により変わる可能性がありますので、令和8年度の取扱いは必ず区の窓口でご確認ください。

Q. 「毎年、特定の部屋だけ濡れる」という漏水は、外壁を塗り直せば直りますか?

A. 直らないことがあります。私の経験では、特定の部屋だけ・毎年同じ季節に、というパターンは、外壁のクラックより先に、サッシまわりのシーリング、屋上ドレンの詰まり、擁壁や隣接する土からの水の回り込みを疑います。外壁塗装をしても原因がそこになければ再発します。塗る前に原因を特定することが、結果として費用を抑えます。

Q. 大規模修繕の前に、まず何をすればよいですか?

A. 建物の現況を客観的に把握することです。外観の劣化状況であればドローン調査、外壁タイルの浮きであれば打診調査(目安250〜500円/㎡)という順になります。板橋区の物件では、これに加えて敷地の高低差と擁壁の状態、そして町丁目の浸水履歴を確認しておくと、優先順位の議論が早く進みます。


板橋区の物件に関するご相談

板橋区は、常盤台・ときわ台の住宅地、赤塚・徳丸の台地、志村・小豆沢の崖線、高島平・舟渡・新河岸の低地と、同じ区内で条件がまったく違います。ですから「板橋区のマンションはこうです」という一般論は、あまり役に立ちません。

大切なのは、自分の物件がどちらの板橋区にあるのかを先に確定させ、そこから修繕項目を組み立てることです。そうすれば、限られた修繕積立金を、効く場所に集中させられます。

現地を拝見したうえで、通常足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法それぞれの概算を比較できる形でお出しします。お問い合わせはこちらのフォームから承っています。理事会の日程が決まっている場合は、その前にお声がけいただければ資料の形でご用意します。


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月21日時点で公表されている板橋区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。ハザードマップ・土砂災害警戒区域の指定・助成制度は年度途中でも改正や予算終了があり得ます。実際に申請・判断される前に、必ず板橋区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

免責事項:本記事に記載の費用はいずれも目安・参考値であり、実際のお見積りは建物の規模・形状・劣化状況により変動します。制度の適用可否についても、必ず所管窓口の判断をご確認ください。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月21日

荒川区のマンション漏水・防災対策|ほぼ全域が浸水想定、崖は西日暮里の7か所だけ【大規模修繕2026年度版】

2026年9月21日 更新

荒川区の南千住で、築31年の賃貸マンションのオーナーさまから「1階の店舗区画の壁際に、雨のたびに水が回る」とご相談をいただいたことがあります。前の業者さんは外壁のクラックを疑って、その面だけを補修していました。ところが実際に見てみると、原因は外壁ではありませんでした。道路との高低差がほとんどない敷地で、前面道路の雨水が敷地に入り込み、駐輪場の土間から基礎の打継ぎ目に回っていたのです。荒川の堤防までは歩いて8分。けれど川は一滴もあふれていません。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。

荒川区という区は、私の感覚では23区のなかでもっとも「逃げる」より「耐える」を設計すべき区です。理由は単純で、区のほぼ全域が浸水想定区域だからです。隣の区へ水平に避難するという前提が、そもそも成り立ちにくい。だとすれば、建物そのものの水への強さと、上階で生活を続けられるかどうかが、そのまま住民の安全に直結します。

今日は、荒川区が公表している最新のハザード資料から逆算して、荒川区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。


結論:荒川区は「水平避難ではなく垂直避難を前提に建物を仕上げる区」です

先に結論から申し上げます。荒川区で大規模修繕の優先順位を決めるとき、私が最初に確認するのは屋上ではありません。1階から地上3mまでの水まわりと、上階で生活を続けるための共用設備がどこにあるかです。

荒川区の水害ハザードマップは、荒川が氾濫した場合に区内のほぼ全域が浸水想定地域に入り、最大約5m以上の浸水が想定されるとしています(出典:荒川区「荒川区水害ハザードマップ」/ページ更新日 2026年9月1日)。5mというのは、一般的なマンションで言えば2階の床を越える高さです。

一方で、荒川区の土砂災害警戒区域は西日暮里地域の7か所(うち特別警戒区域6か所)だけです(出典:荒川区「荒川区土砂災害ハザードマップ」/ページ更新日 2025年7月18日)。区のほとんどが低地で、崖に接しているのはごく一部。この非対称が、荒川区のマンション修繕の方針をかなり明快にしてくれます。

私が理事長さまにお伝えしているのは、この3つです。

  1. 1階と地下・半地下の浸水対策を、外壁塗装より先に置く
  2. エレベーター・受電設備・給水ポンプの「高さ」を確認する(この3つが止まると、上階は生活できません)
  3. 土砂災害の心配は、西日暮里3丁目・4丁目の該当番地以外では基本的に不要(そのぶんの予算を水に回せます)

荒川区のハザードマップを1枚で読む(洪水・内水・土砂・高潮・液状化)

荒川区は、水防法に基づくハザードマップを種類ごとに分けて公表しています。区の公式ページにある一覧を、マンション修繕の視点で読み直すと次のようになります。

種類 区のマップ 想定の前提 区内での影響範囲
洪水(荒川) 荒川区防災地図(水害版) 荒川流域72時間総雨量632mm・堤防が複数箇所決壊 区内ほぼ全域/最大約5m以上
洪水(石神井川) 荒川区石神井川洪水ハザードマップ 1時間最大雨量153mm・24時間総雨量690mm 西尾久7・8丁目/最大約2m
雨水出水(内水) 作成中 令和8年3月に東京都下水道局が区域指定 都の区域図で確認(神田川流域/隅田川・新河岸川流域)
高潮 荒川区高潮浸水ハザードマップ 令和4年4月の東京都高潮浸水想定区域図 区内約5割/最大約3m
土砂災害 荒川区土砂災害ハザードマップ 平成30年1月の東京都指定 西日暮里3・4丁目の一部/警戒7か所・特別警戒6か所

(出典:荒川区「荒川区水害ハザードマップ」、荒川区「荒川区土砂災害ハザードマップ」)

ここで実務上いちばん大事なのが、内水(雨水出水)のマップがまだ作成中であるという点です。令和8年3月に東京都下水道局が水防法第14条の2に基づく「雨水出水浸水想定区域図」を公表し、荒川区でも区域指定がされました。区はこれを踏まえた荒川区版を現在作成中で、公表までは都の区域図で確認してほしい、としています。

大規模修繕の検討中に理事会でハザードを確認する場合は、区のマップだけを見て「うちは大丈夫」と判断しないほうが安全です。内水は別の図を見る。これだけ覚えておいていただければ十分です。

土砂災害の該当番地は明確に公表されています。西日暮里3丁目5番・6番・7番・10番・11番、西日暮里4丁目1番・2番・7番。ここに接している物件だけ、擁壁と斜面地の排水を修繕項目に入れてください。それ以外の物件では、同じ予算を屋上防水とシーリングに回したほうが、費用対効果は明らかに高くなります。

液状化については、区は独自の予測図を持たず、東京都の資料を案内しています(出典:荒川区「建築物における液状化対策」/ページ更新日 2025年4月28日)。区のページから、東京の液状化予測と地盤柱状図(ボーリングデータ)にたどり着けます。荒川区は沖積低地が広がる区ですので、外構・敷地排水の設計を見直すときは、このボーリングデータを一度は見ておく価値があります。


荒川区の道路冠水履歴が教えてくれること

私がこの区の物件を見るときに、ハザードマップと同じくらい重視しているのが道路の冠水履歴です。荒川区は平成16年度以降の道路冠水履歴図を年度別に公開しており、令和7年度分まで追加されています(出典:荒川区「道路の冠水履歴を公開しています」/ページ更新日 2026年8月18日)。

公開されている平成16年度から令和7年度までの22年度のうち、「道路冠水履歴なし」と明記されているのは平成18・19・20・24・30年度、令和元・3年度の7年度だけです。つまり22年度のうち15年度で、区内のどこかの道路が冠水しているということになります。

これは私にとって、かなり重い数字です。荒川の堤防が決壊するかどうかという話の手前で、ほぼ2年に1回以上のペースで、身近な道路が水に浸かっている。ゲリラ豪雨の頻度はこの間ずっと上がり続けており、気象庁の観測でも1時間降水量50mm以上の年間発生回数は統計開始からの10年間と直近10年間を比べておおむね1.5倍に増えています(出典:気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」)。

冠水履歴図は、自分の建物の前面道路が着色されているかどうかを1分で確認できます。着色されていたら、その建物の1階まわりは「浸水する前提」で仕上げる。私はそう判断しています。


荒川区の地域特性と漏水事故の関係

荒川区は、町屋・南千住・東尾久・西尾久・荒川・東日暮里と、ほぼ全域が低地です。そこに西日暮里から日暮里にかけて、上野台地の端が細く食い込んでいる。この地形が、漏水事故の出方をかなり特徴づけます。

低地エリア(町屋・南千住・東尾久・荒川・東日暮里)で多い漏水

  • 敷地と道路の高低差が小さく、大雨時に雨水が敷地内に逆流する
  • 1階の店舗・駐輪場・機械室に水が入り、基礎の打継ぎ目や配管貫通部から内部に回る
  • 排水桝・雨水桝が土砂で埋まり、排水能力が設計値を下回っている
  • 築30年超の建物が多く、ルーフドレンのストレーナー欠損が放置されている

崖線エリア(西日暮里3・4丁目の一部)で多い漏水

  • 擁壁の水抜き穴の詰まりによる背面土の飽和と、擁壁クラックからの滲み
  • 斜面地に接する外壁面の常時湿潤によるシーリングの早期劣化
  • 敷地が狭く足場が組めないため、外壁調査そのものが後回しになる

区内共通で多い漏水

  • 隣地との離隔が小さく、外壁の1面だけ足場が組めない(ここが未調査のまま残る)
  • 旧耐震・旧仕様のサッシまわりシーリングの硬化
  • エキスパンションジョイントのカバー材の変形・脱落

現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、「調査できなかった面から漏った」というケースです。荒川区のように敷地が詰まっている区では、これが本当に多い。足場が組めないから見送る、が積み重なって、10年後に一番弱い面が残ります。


大規模修繕で先に見るべき漏水ポイント7つ

荒川区の物件で、私が見積前の調査で優先して確認する7か所です。順番にも意味があります。

1. 屋上防水とルーフドレン
ドレンのストレーナー(ごみ除けのカゴ)が欠けているだけで、排水口が詰まり、屋上がプール状態になります。防水層の寿命より先に、ここが原因で漏るケースが多い。防水改修の目安単価は5,000〜8,000円/㎡程度ですが、ドレン交換は数万円単位で済みます。

2. 外壁シーリングの打継ぎ目
コンクリートの打継ぎ部分のシーリングは、外壁塗装より先に切れます。特に荒川区の築30年前後の物件では、既存シーリングの硬化が進んでいるものが目立ちます。

3. バルコニーの排水口とドレン
専有使用部分なので管理組合の調査範囲から外れやすい場所です。ここが詰まると、階下への漏水として現れます。

4. 排水立上り管の貫通部
スラブ貫通部のモルタル充填が痩せている箇所から、上階の水が下階へ回ります。

5. サッシまわりのシーリングと水切り
台風時の吹き上げで、サッシ上部から室内に回るパターン。荒川区は高い建物の少ないエリアが多く、風が直接当たる面がはっきりしています。

6. エキスパンションジョイント
棟が分かれている建物の接続部。カバー材が変形していると、そのまま雨の入口になります。

7. 敷地の雨水桝と前面道路との高低差
荒川区ではここが本丸です。道路冠水履歴図で着色されている道路に面しているなら、止水板の検討とセットで考えてください。

この7か所のうち、1・2・5・6は外壁面からの調査が必要です。足場を組めない面があるなら、ロープアクセス工法かドローンによる外観調査で埋める。ここを空白にしないことが、荒川区では特に効きます。工法そのものの技術的な中身を確認されたい方は、同業者・技術者向けにまとめている姉妹サイトロープアクセスドットコムもあわせてご覧ください。


荒川区で使える防災・耐震の助成(令和8年度)

荒川区は、分譲マンションの防災対策にかなり手厚い制度を用意しています。令和8年度時点で公表されている内容を整理します。

分譲マンションへの防災対策費助成

助成メニュー 対象例 助成額
防災対策工事 エレベーター防災対策改修工事、防災備蓄倉庫設置工事、耐震ドア改修工事 など 最大400万円(費用の3分の2)
防災資器材配備 エレベーター用防災チェア、階段避難車、電動階段台車、ポータブル発電機 など 最大50万円(費用の3分の2)
共同備蓄品配備 携帯トイレ、おむつ、生理用品、保存水 など 最大10万円(費用の3分の2)

要件は、管理規約があること、総会が行われていること、防災マニュアルを備えていること、防災訓練を実施すること、新耐震性能を有すること(メニューにより要件は異なります)。工事の契約や物品の購入をする前に申請手続きを行う必要があります(出典:荒川区「分譲マンションの防災対策を支援します」/ページ更新日 2026年8月31日)。

止水板設置の助成

区内のマンション・住宅・店舗・事業所の所有者または使用者が対象で、1件あたり150万円を限度に工事費の2分の1まで。上記の分譲マンション防災対策工事支援制度の助成を受ける場合は、1件あたり150万円を限度に工事費の3分の2までに上がります。工事を伴わない簡易型止水板の購入も助成の範囲に含まれます。ただし制度開始以降に建設した建物は対象外です(出典:荒川区「止水板設置の助成」/ページ更新日 2025年5月1日)。

荒川区のように区内ほぼ全域が浸水想定に入る区で、150万円を上限に止水板の工事費が3分の2まで見てもらえるというのは、率直に申し上げて相当に有利な制度だと思います。

木造・非木造建物耐震化推進事業(令和8年度)

建物の種類 事業の種類 補助率 補助限度額
分譲マンション 耐震診断 3分の2 400万円(延べ面積に応じた限度額あり)
分譲マンション 耐震補強設計 3分の2 100万円
分譲マンション 耐震補強工事 3分の2 1,000万円
賃貸マンション 耐震診断 2分の1 200万円(延べ面積に応じた限度額あり)
賃貸マンション 耐震補強設計 2分の1 50万円
賃貸マンション 耐震補強工事 2分の1 500万円

対象は非木造の場合、昭和56年5月31日以前に建築された旧耐震の建物です。区は、都心南部直下地震(マグニチュード7.3)が発生した場合、区内では最大震度7となり、ゆれや火災による建物被害は約7,100棟、死者数は359人と想定されているとしています(出典:荒川区「木造・非木造建物耐震化推進事業」/ページ更新日 2026年4月1日)。

いずれの制度も要件確認と事前相談が前提です。年度途中で予算が終了する可能性もありますので、総会にかける前に窓口で現行の取扱いをご確認ください。


漏水の緊急対応で、ロープアクセスが強い理由

漏水は、雨のときにしか症状が出ません。ここが厄介なところです。

足場を組む場合、部材の搬入・組立・近隣への挨拶を含めて、着手までに1〜2週間かかるのが一般的です。その間にも雨は降ります。漏水の原因箇所は、雨が降っている最中に見るのが一番わかりやすいのに、足場が立つころには乾いている。

ロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が上から降りて施工する無足場工法)であれば、屋上のアンカーが取れれば当日から翌日の着手が可能なケースが多くなります。調査と応急止水をその場で同時に進められるので、「原因がわからないまま次の台風を迎える」という状況を避けやすい。

費用面でも差が出ます。10階建て・外周80m・工期3か月の建物を例に取ると、仮設足場の費用が168万円程度かかるところ、ロープアクセスであれば59万円程度に収まる、というのが一つの目安です(差額はおよそ109万円)。打診調査の㎡単価は250〜500円程度、外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡程度が目安になります。いずれも物件の形状・階数・立地条件で大きく変動しますので、参考値としてお考えください。料金の考え方のページでも、この考え方をまとめています。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたります。漏水対応の具体的な流れは漏水対応のページをご覧ください。技術的な条件や訓練体系についてはロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。


防災上の共用部は「高さ」で優先度が決まります

荒川区のように水平避難が難しい区では、上階で生活を続けられるかどうかが防災のすべてになります。そこで効いてくるのが共用設備の設置高さです。

共用部 確認すること 修繕の優先度
受変電設備(キュービクル) 地上何mに置かれているか。地下・1階にあるか 最優先。浸水で止まると全館停電
給水ポンプ・受水槽 機械室の位置。地下ピットにないか 最優先。止まると上階が断水
エレベーター機械室・ピット ピットへの浸水経路。地震時管制運転装置の有無 高。止まると高齢の居住者が孤立
自家発電設備 燃料タンクの位置と稼働可能時間 中〜高
避難通路・非常階段 手すり・床防水・照明。物置化していないか 中。費用対効果は高い
防災備蓄倉庫 数階ごとに分散設置されているか 中。区の助成対象

国土交通省は建築物の電気設備について浸水対策のガイドラインを公表しています(出典:国土交通省「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」)。受変電設備の位置を上げる、あるいは防水区画を設ける工事は、大規模修繕と同時に行うほうが仮設費を二重に払わずに済みます。

私はこれを、外壁改修とワンセットで提案するようにしています。理由は単純で、足場やロープを出すタイミングは10〜12年に1回しか来ないからです。ビルオーナーさま向けのご支援内容はビルオーナー向けサービス、管理組合さま向けは管理組合向けサービスにまとめています。


よくあるご質問

Q. 荒川区の内水(雨水出水)ハザードマップは、いつ公表されますか?

A. 区は「公表まで今しばらくお時間をいただく見込み」としており、時期は明示されていません。それまでは東京都下水道局が公表した神田川流域および隅田川・新河岸川流域の雨水出水浸水想定区域図で確認するよう案内されています。区の水害ハザードマップのページからPDFに直接たどり着けます。

Q. うちのマンションが土砂災害警戒区域に入っているか、どう調べますか?

A. 荒川区の該当は西日暮里3丁目5番・6番・7番・10番・11番、西日暮里4丁目1番・2番・7番です。この番地以外であれば、区の土砂災害ハザードマップの対象外になります。東京都の土砂災害警戒区域等マップでも確認できます。

Q. 止水板の助成と、分譲マンションの防災対策工事助成は併用できますか?

A. 区のページでは、分譲マンションへの防災対策工事支援制度の助成を受ける場合、止水板助成の補助率が2分の1から3分の2に上がると案内されています。上限は1件150万円です。組み合わせ方は物件条件によりますので、申請前に住まい街づくり課へご相談ください。

Q. 大規模修繕と防災対策工事は、同じ年に申請したほうがいいですか?

A. 工事の内容によります。ただ、仮設費(足場やロープの設置費用)を一度で済ませられる分、同時期にまとめたほうが総額は抑えやすくなります。助成は工事契約の前に申請手続きが要る点にご注意ください。

Q. 足場が組めない面の外壁調査は、どうすればいいですか?

A. ロープアクセス工法での打診調査(250〜500円/㎡が目安)か、ドローンによる外観調査を組み合わせます。荒川区は隣地との離隔が小さい物件が多く、実務上はこの2つのどちらかになることがほとんどです。

Q. 台風のあと、まず何を見ればいいですか?

A. 屋上ドレンのストレーナー、バルコニー排水口、敷地の雨水桝、前面道路との高低差の4か所です。詰まりを取るだけで、次の大雨での漏水リスクはかなり下がります。費用はかかりません。

Q. 賃貸マンションのオーナーでも相談できますか?

A. できます。収益物件では、漏水を1件起こすと原状回復費と空室期間の両方が効いてきます。荒川区は日暮里・町屋を中心に賃貸需要の厚いエリアですので、稼働率を落とさない工期の組み方まで含めてご提案しています。オーナーさま向けの考え方は収益物件オーナー向けページにまとめています。

Q. 漏水が起きてから連絡した場合、どれくらいで来てもらえますか?

A. ロープアクセスであれば足場の架設が不要なため、当日から翌日の着手が可能なケースが多いです。まずはお問合せフォームからご連絡ください。


まとめ:今週、荒川区の理事会で動けること3つ

  1. 道路冠水履歴図で、自分の建物の前面道路を確認する — 平成16年度以降の22年度のうち15年度で区内に冠水が記録されています。着色されていれば、1階まわりは浸水する前提で仕上げる判断になります
  2. 内水は区のマップではなく、東京都下水道局の区域図で確認する — 区版は作成中です
  3. 受変電設備・給水ポンプ・エレベーターピットの設置高さを実物で見る — 費用ゼロで、防災上いちばん効く確認です

荒川区は、隣の区へ水平に逃げるという前提が成り立ちにくい区です。だからこそ、建物そのものを「上で耐えられる箱」に仕上げておくことの意味が、他区より大きくなります。外壁をきれいにすることと、水を入れないことは、同じ工事のなかで同時にできます。順番を決めるだけの話なのですが、これを工事の前に整理できているかどうかで、同じ予算の効き方がまるで変わります。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談はお問合せフォームからどうぞ。

株式会社明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月21日時点で公表されている荒川区および東京都・国土交通省・気象庁の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。荒川区の雨水出水(内水)ハザードマップは区が作成中で、現時点では区の水害ハザードマップに内水の想定は反映されていません。助成制度の申請にあたっては、防災都市づくり部 住まい街づくり課 住宅係(03-3802-3111 内線2822・2826)、止水板助成は土木管理課 管理係(03-3802-4296)、ハザード情報は危機管理部 危機管理課 防災管理係(03-3802-3111 内線492)へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月21日

荒川区のマンション管理計画認定制度|令和8年度の区手数料は当面無料・独自基準は管理状況届出【大規模修繕2026年度版】

先週、荒川区の町屋で理事会にお邪魔したとき、副理事長さまからこう聞かれました。「認定を取った近所のマンションが何棟もあるらしいんですが、うちは何から手を付ければいいんでしょうか」。

ご近所の動きが気になる、というのは正しい感覚だと思います。荒川区の管理計画認定は、令和6年2月の1件目から令和8年9月まで、公表されているだけで33棟。南千住、町屋、東日暮里、西尾久と、区内にまんべんなく広がっています。

そして荒川区には、他区にない分かりやすい追い風が1つあります。区へ納める手数料が、当面無料であることです。当初認定も、変更も、更新もです。

ただし、油断できない点も1つあります。荒川区には区独自の認定基準があるということです。しかもその独自基準は、マンション管理士による事前確認の対象外です。つまり、事前確認を通っても区の審査で止まり得ます。

今回は荒川区の管理組合さま向けに、費用と落とし穴を数字から先に整理します。私は大規模修繕の現場を20年以上見てきましたが、認定基準の中身は半分近くが長期修繕計画と修繕積立金の話です。工事の話と切り離せませんので、そこも含めてお話しします。

結論:荒川区で管理計画認定を取ると何が変わるか

荒川区で認定を取得したときに変わることを、先に表にします。

論点 荒川区の場合
認定主体 東京都ではなく荒川区(特別区は区が認定主体)
制度の運用開始 令和5年11月1日
区独自の上乗せ基準 あり。「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」の要届出マンションは、管理状況の届出が行われていること
区への手数料(当初・変更・更新) 当面無料(0円)
区以外への費用 (公財)マンション管理センターのシステム利用料10,000円+事前確認審査料
申請方法 事前確認適合証を取得後、管理計画認定手続支援システムから申請(区の窓口での申請は不可)
審査期間 区に申請後、認定まで概ね1か月(不備がない場合)
有効期間 認定日から5年。満了日までに更新申請が必要
認定実績 令和8年9月15日時点で33件(公表に同意したマンション)

出典:荒川区「荒川区マンション管理計画認定制度」(更新日:2026年9月17日)

私はいつも理事長さまに「認定は、ご褒美をもらう制度ではなく、健康診断の結果票をもらう制度です」とお伝えしています。認定を取ること自体より、取りにいく過程で管理の穴が見えることのほうが、長い目では効きます。

荒川区で認定主体はどこか

管理計画認定制度は、令和4年4月に始まった国の制度です。ただし、審査して認定を出すのは国ではありません。

認定主体は次のように決まっています。

  • 市および東京23区の区域内にあるマンション → その市・区
  • 町村の区域内にあるマンション → 都道府県(法律の規定により事務を行う町村は当該町村)

出典:(公財)マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」

荒川区は特別区ですから、認定主体は荒川区です。東京都ではありません。窓口は防災都市づくり部 住まい街づくり課 住宅係(荒川区荒川二丁目11番1号 北庁舎2階/電話 03-3802-4454)になります。

もう1つ、見落とされがちな前提があります。認定申請ができるのは、マンション管理適正化推進計画を作成している自治体に立地するマンションの管理組合に限られるという点です。荒川区は「荒川区マンション管理適正化推進計画」(令和5年11月〜令和10年度末)を策定済みで、令和5年11月1日から制度を運用しています。

対象になるのは、区内に所在するいわゆる分譲マンションです。ワンオーナーの賃貸マンションは対象外とはっきり書かれていますので、投資用の一棟物件をお持ちのオーナーさまは、この制度ではなく別の打ち手(長寿命化工事そのものの費用対効果や、管理の見える化)で資産価値を組み立てることになります。

なお、新築マンションの管理計画案については、マンション管理センターが認定主体となる「予備認定」という別の仕組みがあります。既存マンションの認定とは入口が違うので、混同しないようご注意ください。

荒川区の管理計画認定基準を、5つの塊で読む

国の認定基準は、細かく数えると17項目あります。荒川区はこれに独自基準を1つ足した形です。条文どおりに読むと頭に入りませんので、5つの塊に分けてご説明します。

1. 管理組合の運営(3項目)

  • 管理者等が定められていること
  • 監事が選任されていること
  • 集会(総会)が年1回以上開催されていること

2. 管理規約(3項目)

  • 管理規約が作成されていること
  • 災害等の緊急時や管理上必要なときの専有部分への立入り、修繕等の履歴情報の管理について定められていること
  • 管理組合の財務・管理に関する情報の書面交付(または電磁的方法による提供)について定められていること

3. 管理組合の経理(3項目)

  • 管理費と修繕積立金等が明確に区分して経理されていること
  • 修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと
  • 直前の事業年度末時点で、修繕積立金の3か月以上の滞納額が全体の1割以内であること

4. 長期修繕計画の作成及び見直し等(6項目)

ここが本丸です。

  • 長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠して作成され、計画の内容と修繕積立金額が総会で決議されていること
  • 長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われていること
  • 計画期間が30年以上で、かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれるよう設定されていること
  • 将来の一時金徴収を予定していないこと
  • 計画期間全体での修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと
  • 計画期間の最終年度において、借入金の残高がない長期修繕計画となっていること

5. その他(3項目・ここに荒川区独自基準が入る)

  • 組合員名簿・居住者名簿を備え、年1回以上は内容の確認を行っていること
  • 荒川区マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること
  • 【荒川区独自基準】「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」の要届出マンションに該当する場合、管理状況の届出が行われていること

出典:荒川区「荒川区マンション管理計画認定制度」、(公財)マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」

この基準の根拠となる国のガイドライン類は、直近で相次いで改訂されています。事務ガイドラインは令和8年3月改訂、マンション標準管理規約は令和7年10月改正、長期修繕計画標準様式・作成ガイドラインと修繕積立金ガイドラインは令和6年6月改訂です。古いひな形のまま総会に上程すると、事前確認で差し戻されます。ここは本当に多いので、先に確認してください。

荒川区独自基準「管理状況届出」の正体と、実務上の意味

荒川区の独自基準は1つだけ。しかし、高経年マンションにとっては無視できない1つです。

東京都には「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」という条例があり、昭和58年(1983年)12月31日以前に新築されたマンションは、管理状況を届け出る義務があります。これを「要届出マンション」と呼びます。

荒川区の認定基準では、この要届出マンションに該当する場合、管理状況の届出が済んでいることが認定の条件になります。

出典:荒川区「マンション管理状況届出制度」(更新日:2026年8月20日)

ここで実務上、決定的に重要な点があります。

区独自基準は、マンション管理士による事前確認の対象外です。

マンション管理センターのページにも、「地方公共団体が独自の認定基準を設けている場合、当該独自基準はマンション管理士による事前確認の対象外となります」と明記されています。つまり、事前確認適合証が出たからといって、荒川区の審査を通る保証にはなりません。届出が未済のまま申請すると、区の段階で止まります。

築40年を超える荒川区内のマンションは、この条件に該当する可能性が高いと考えたほうが安全です。昭和58年以前の竣工であれば、まず管理状況の届出を済ませているかを、理事会の議事録か引継書で確認してください。届出先は荒川区役所 住まい街づくり課 住宅係(電話 03-3802-4454)、届出システムのID・パスワードに関する問い合わせは東京都住宅政策本部マンション課(電話 03-5320-4913)です。

逆に言えば、昭和59年以降に新築されたマンションであれば、この独自基準は実質的に関係ありません。国の基準17項目だけを見ればよいことになります。

築年で分岐する、というのが荒川区の特徴です。ここを最初に仕分けてください。

荒川区の手数料は「当面無料」——では総額はいくらか

お金の話を整理します。荒川区のホームページにはこう書かれています。

荒川区への申請・変更・更新手数料は当面無料です。

※注釈 管理計画認定手続支援システム利用料及び事前確認審査料が別途必要です。

(出典:荒川区「荒川区マンション管理計画認定制度」)

23区の中には、当初認定で4,000円前後の手数料を条例で定めている区もあります。荒川区はそこが0円です。金額そのものは大きくありませんが、変更認定と更新も無料である点は効きます。5年ごとの更新に手数料がかからないということは、10年、15年と続ける前提で考えたときに差が出ます。

ただし「当面」という言葉には注意してください。条例改正で有料化される可能性はゼロではありません。申請の直前に、区のページで最新の記載を確認してください。

区への手数料が無料でも、認定取得は無料ではありません。区の外に支払う費用があります。

総額の目安(長期修繕計画が1計画の場合)

費目 支払先 金額の目安
区への認定手数料 荒川区 0円(当面無料)
システム利用料 (公財)マンション管理センター 10,000円(1申請あたり、税込。うち消費税909円)
事前確認審査料 依頼先による 10,000円(長期修繕計画1計画あたり、税込。パターン③・④の場合)
合計 — 20,000円程度

出典:(公財)マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」

事前確認審査料は、申請パターンによって決まり方が変わります。

  • パターン①:事前確認講習を修了したマンション管理士に個別に依頼 → 審査料は管理組合と管理士の協議で決定(センターは関与しません)
  • パターン②:管理会社経由で(一社)マンション管理業協会の「マンション管理適正評価制度」と併せて申請 → 審査料は委託先との協議
  • パターン③:(一社)日本マンション管理士会連合会経由で「マンション管理適正化診断サービス」と併せて申請 → 長期修繕計画1計画あたり10,000円
  • パターン④:管理組合が直接マンション管理センターに申込 → 長期修繕計画1計画あたり10,000円
  • パターン⑤:管理組合が直接自治体に申請 → 事前確認は行われない

荒川区は「区の窓口での申請はできません」と明記しており、区への申請には事前確認適合証が必要とされています。したがって、荒川区の管理組合が現実的に選ぶのは①〜④です。パターン⑤は想定されていないと考えてください。

費用を確定させたいならパターン④が最も読みやすい、というのが私の実感です。合計20,000円で天井が見えます。一方、管理会社に管理を委託していて、管理会社が適正評価制度を使っているならパターン②が手間は少なくて済みます。

見落としやすい費用

表に出てこない費用が2つあります。

1つは、長期修繕計画の見直し費用です。作成・見直しが7年以内でない場合、あるいは計画期間が30年に届いていない場合、計画そのものを作り直す必要があります。管理会社や設計事務所に依頼すれば、規模によりますが数十万円単位の費用になります。

もう1つは、管理規約の改正費用です。専有部立入り・履歴情報の管理・情報の書面交付の3点が規約にない場合、規約改正が必要です。総会の特別決議(区分所有者および議決権の各4分の3以上)が要りますので、日程も含めて余裕を見てください。

認定手数料が無料だからといって、認定取得が無料とは限らない。ここは正直にお伝えしておきます。

認定の3つの経済効果を、金額で押さえる

「20,000円払って、何が返ってくるのか」。ここが一番知りたいところだと思います。荒川区のページに挙げられているメリットを、お金の話に翻訳します。

1. 固定資産税の減額(マンション長寿命化促進税制)

一定の要件を満たす長寿命化工事(屋根防水工事・床防水工事・外壁塗装等工事)を実施した場合、工事の翌年度に課される建物部分の固定資産税が2分の1に減額されます。

対象期間は令和5年4月1日から令和9年3月31日までに長寿命化に資する大規模の修繕等が行われたマンションです(当初の令和7年3月31日から、令和7年度税制改正で2年延長されました)。

出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」

ここで順番の話をします。この税制を狙うなら、認定が先、工事が後です。 工事を終えてから認定を取っても、その工事には適用されません。大規模修繕の着工予定がある荒川区の管理組合さまは、今すぐスケジュールの前後関係を整理してください。令和9年3月31日という期限を考えると、逆算できる時間は決して長くありません。

2. フラット35の金利引下げ

管理計画認定マンションは、フラット35の借入金利が当初5年間・年0.25%引下げの対象になります。これは区分所有者個人が住宅を購入・借換えする際の話ですので、管理組合の会計に直接効くものではありません。

ただし、売却時に効きます。買主のローン金利が下がるということは、同じ返済負担で買える価格が上がるということです。中古市場での競争力に響きます。

3. マンション共用部分リフォーム融資・すまい・る債

住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資では、認定マンションは全期間・年0.2%の金利引下げを受けられます。大規模修繕で借入れを行う管理組合には直接効きます。

さらに、マンションすまい・る債の利率上乗せも受けられます。修繕積立金を運用している管理組合にとっては、こちらも実利です。

出典:荒川区「荒川区マンション管理計画認定制度」、住宅金融支援機構

なお、いずれの制度も認定以外に固有の要件があります。詳細は各制度のページで必ずご確認ください。

4. 数字にならないメリット

荒川区は、認定を受けたマンションを区のホームページとマンション管理センターの閲覧サイトで公表しています(公表に同意した場合)。実際、区のページには33棟のマンション名と所在地が並んでいます。

これは、不動産仲介会社や買主が誰でも見られる「公的なお墨付き」です。管理状態を数字で示せない中古マンション市場において、第三者が確認できる看板がある意味は小さくありません。

荒川区の管理組合がつまずきやすい4つの落とし穴

現場で見てきた範囲で、荒川区の管理組合が引っかかりやすいポイントを4つ挙げます。

落とし穴1:独自基準(管理状況届出)を事前確認で拾えると思っている

繰り返しになりますが、独自基準は事前確認の対象外です。マンション管理士は国の基準しか見ません。昭和58年12月31日以前に新築されたマンションは、申請前に自分で届出の有無を確認してください。

落とし穴2:総会決議の前に事前確認を頼んでしまう

マンション管理センターの規定で、事前確認を行うマンション管理士は「総会決議を経ていない管理組合の事前確認はできない」とされています。順番は、総会決議 → 事前確認 → 区への申請です。逆にすると、丸ごと出直しになります。

落とし穴3:有効期間5年の満了を忘れる

認定の有効期間は5年です。満了日までに更新申請をしなければ失効します。理事が毎年入れ替わる管理組合では、5年前の書類は引き継がれないことが多い。認定通知書を総会資料の定位置に綴じ、引継書に「認定有効期限:令和◯年◯月◯日」と明記しておくことを強くおすすめします。

荒川区の場合、更新手数料も当面無料ですから、更新のコスト負担は事前確認とシステム利用料だけです。忘れさえしなければ、負担は軽い。

落とし穴4:修繕積立金の「著しく低額でない」で引っかかる

私の経験上、荒川区の高経年マンションで最初につまずくのは、ほぼ決まって長期修繕計画の計画期間30年・大規模修繕2回以上と修繕積立金の平均額の2点です。

国のガイドライン(令和6年6月改訂)の水準を下回る場合、専門家による「修繕積立金の平均額が著しく低額でない旨の理由書」の提出が必要になります。しかもこの理由書は、事前確認を担当するマンション管理士が作成することはできません。別の専門家を探す必要があり、その分の費用と時間がかかります。

認定基準の本丸は長期修繕計画——だから工事費の話になる

ここから先は、大規模修繕の施工業者としての話です。

認定基準17項目のうち6項目が長期修繕計画に関するものです。そして、その長期修繕計画が通るかどうかは、突き詰めると「30年分の工事費を、今の積立で賄えるか」という一点に収束します。

このとき、多くの管理組合が「積立金を上げる」という解法しか検討しません。しかし、方程式の右辺——つまり工事費のほうを下げるという解法もあります。

仮設費という、意外に大きな塊

30戸規模のマンションの大規模修繕は、総額3,500万〜5,000万円程度がレンジです(建物の状態・仕様により大きく変動します)。このうち仮設足場が15〜25%を占めるのが一般的です。

仮設足場は、建物を1ミリも良くしません。作業員が高所に届くための手段です。にもかかわらず、総工費の5分の1前後を持っていく。

ここを圧縮できると、長期修繕計画の帳尻が変わります。

足場とロープアクセスの費用差(目安)

10階建て・外周80m・工期3か月のマンションを想定した目安です。

項目 通常足場工法 ロープアクセス工法
仮設費 約168万円 約59万円
差額 — ▲約109万円
工期の目安 約3か月 約1.5〜2か月
居住者への影響 全戸のベランダ・窓に足場。防犯・日照・プライバシーの影響が大きい 作業箇所のみ。生活影響を局所化できる

※あくまで目安・参考値です。建物形状、劣化状況、工事範囲、近隣条件によって実際の金額は大きく変わります。必ず現地調査のうえでのお見積りをご確認ください。

参考までに、㎡単価の目安も挙げておきます。外壁塗装3,500〜4,500円/㎡、外壁打診調査250〜500円/㎡、防水5,000〜8,000円/㎡といったレンジです(いずれも仕様・数量により変動します)。

30年の長期修繕計画に大規模修繕が2回入るとすれば、仮設費の圧縮効果も2回分効きます。100万円の差が2回で200万円。修繕積立金の月額に換算すれば、30戸で30年なら月額185円分に相当します。「著しく低額でない」のラインぎりぎりで悩んでいる管理組合にとって、この差は小さくありません。

もちろん、すべての建物にロープアクセス工法が向くわけではありません。バルコニー内部の広範囲な工事や、大掛かりな躯体補修が必要な場合は足場のほうが合理的です。だからこそ株式会社明誠では、通常足場・ロープアクセス・両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物特性に応じてご提案しています。3工法を自社で持っている会社は、日本でも多くありません。

明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたります。工法選定の考え方は明誠のロープアクセス工法の技術詳細に、費用の考え方は大規模修繕の料金の考え方にまとめています。技術的な比較をさらに深掘りしたい方は、同業者・技術者向けの姉妹サイトロープアクセスドットコムもご覧ください。

総会から逆算する、荒川区の認定取得スケジュール

認定取得は、総会決議が必須です。年1回の通常総会しか開かない管理組合であれば、そこから逆算するしかありません。目安は5〜7か月です。

時期 やること 担当
6〜7か月前 理事会で認定取得の方針を確認。築年を確認し、昭和58年以前なら管理状況届出の有無をチェック(荒川区独自基準) 理事会
5〜6か月前 長期修繕計画の現状を点検(計画期間・大規模修繕の回数・一時金の有無・借入残高)。見直しが必要なら着手。標準様式(令和6年6月改訂)への準拠を確認 理事会+専門家
4〜5か月前 管理規約の点検。専有部立入り・履歴情報管理・情報提供の3点が規定されているか(令和7年10月改正の標準管理規約を参照) 理事会
3〜4か月前 総会で決議(長期修繕計画の内容・修繕積立金額・認定申請すること) 総会
2〜3か月前 事前確認の依頼先を決定(パターン①〜④から選択)。費用を比較 理事会
1〜2か月前 事前確認の実施 → 事前確認適合証の発行 マンション管理士等
申請月 支援システムから荒川区へ申請(区の窓口では受け付けられません) 管理者等
申請後 荒川区の審査(概ね1か月)→ 認定通知書の発行 荒川区

荒川区は、申請から認定まで「概ね1か月」と明示しています(不備等がない場合)。この見通しが公表されているのは、スケジュールを組む側としてはありがたい情報です。

9月の今から動けば、春の通常総会での決議は十分に射程です。

荒川区の管理組合が使える無料の支援

いきなり有償の専門家に依頼する前に、無料で使える窓口があります。荒川区は、ここが手厚い区です。

荒川区のコンサルタント派遣制度(出張相談)

荒川区は、分譲マンションの管理組合に対してコンサルタント(マンション管理士、一級建築士、防災士など)を派遣する「出張相談」を実施しています。相談内容には、管理計画認定制度の申請にあたっての相談が明示的に含まれています。

利用回数は、防災に関する助言が1年度につき3回まで(毎年リセット)、それ以外の助言が1管理組合につき通算6回まで(次年度へ繰越)です。申込は、派遣希望日の7日前までに申請書と関連資料を区へ提出します。事前相談が必要です。

ただし、管理規約や長期修繕計画等の書類作成、見積の作成、修繕工事の設計、耐震等の診断・調査、特定業者の紹介は対象外です。「相談」と「実務」の線引きは明確ですので、そこは押さえておいてください。

出典:荒川区「コンサルタント派遣制度(マンション)」(更新日:2026年9月4日)

マンション管理計画認定制度「相談ダイヤル」

(一社)日本マンション管理士会連合会が運営する専用ダイヤルです。認定制度や長寿命化促進税制について、マンション管理士の相談員が回答します。

  • 電話番号:03-5801-0858
  • 受付時間:月曜〜土曜 午前10時〜午後5時(祝日・休日、年末年始を除く)

管理計画認定手続支援システムに関する相談

システムの操作や申請パターンについては、(公財)マンション管理センターへ。

  • 電話番号:03-6261-1274
  • 受付時間:月曜〜金曜 午前9時30分〜午後5時(祝日・休日、年末年始を除く)

荒川区の窓口

制度そのものの運用や独自基準については、荒川区役所 防災都市づくり部 住まい街づくり課 住宅係(北庁舎2階/電話 03-3802-4454)へ。申請の全体像は、区が公開している荒川区マンション管理計画認定制度・認定申請の手引き(PDF)が最もまとまっています。最初にここを読むのが早道です。

よくあるご質問

Q. 荒川区で管理計画認定を取るのに、全部でいくらかかりますか?

A. 長期修繕計画が1計画の標準的なケースで、20,000円程度が目安です。内訳は荒川区への手数料0円(当面無料)、マンション管理センターのシステム利用料10,000円、事前確認審査料10,000円(マンション管理センターまたは日本マンション管理士会連合会経由の場合)です。マンション管理士に個別に依頼する場合、審査料は協議で決まります。ただし、長期修繕計画の見直しや管理規約の改正が必要な場合は、別途その費用がかかります。

Q. 荒川区に独自の認定基準はありますか?

A. あります。「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」の要届出マンション(昭和58年12月31日以前に新築されたマンション)に該当する場合、管理状況の届出が行われていることが条件です。この独自基準はマンション管理士による事前確認の対象外ですので、申請前にご自身で届出の有無を確認してください。

Q. 賃貸マンションでも認定は取れますか?

A. 取れません。荒川区の制度対象は区内の分譲マンションで、ワンオーナーの賃貸マンションは対象外と明記されています。一棟オーナーさまの資産価値対策としては、長寿命化工事そのものの費用対効果と、修繕履歴の記録という別の切り口でのご提案になります。詳しくはオーナー向けの大規模修繕をご覧ください。

Q. 認定を取ると、区から補助金がもらえますか?

A. 認定そのものに対する補助金はありません。経済的なメリットは、固定資産税の減額(マンション長寿命化促進税制)、フラット35の当初5年間・年0.25%引下げ、マンション共用部分リフォーム融資の全期間・年0.2%引下げ、マンションすまい・る債の利率上乗せの4つです。

Q. 認定と大規模修繕、どちらを先にやるべきですか?

A. 固定資産税の減額を狙うのであれば、認定が先です。長寿命化促進税制は、認定マンションが長寿命化に資する大規模修繕工事を完了させた場合に適用されるためです。しかも対象期間は令和9年3月31日まで。着工予定のある管理組合さまは、前後関係を早めに整理されることをおすすめします。

Q. 修繕積立金が少ないと、認定は取れませんか?

A. 認定基準では「計画期間全体での修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと」が求められます。国のガイドライン(令和6年6月改訂)の水準を下回る場合は、専門家による「著しく低額でない旨の理由書」の提出が必要になります。なお、この理由書は事前確認を担当するマンション管理士が作成することはできませんので、別の専門家に依頼する必要があります。積立の増額だけでなく、工事費側を圧縮して計画の帳尻を合わせる選択肢もあります。

Q. 大規模修繕の工期はどれくらい見ればいいですか?

A. 足場を架ける従来工法では、10階建て・外周80m程度のマンションで約3か月が目安です。ロープアクセス工法を使う場合は1.5〜2か月程度に短縮できるケースがあります。足場の架設・解体そのものに時間がかかるため、その工程が丸ごと不要になる分の差です。ただし、工事範囲や部位によって適する工法は変わりますので、まずは建物を見せていただいてからのご判断になります。

Q. 認定の更新を忘れるとどうなりますか?

A. 有効期間(5年)の満了日までに更新申請を行わないと、認定は失効します。荒川区は更新手数料も当面無料ですので、忘れさえしなければ負担は軽い制度です。認定通知書を総会資料の定位置に綴じ、引継書に有効期限を明記しておくことをおすすめします。

まとめ:荒川区の管理組合が今週動けること3点

荒川区は、区への手数料が当面無料で、審査期間の目安も公表されており、無料のコンサルタント派遣も使える区です。認定を取りにいく環境としては、恵まれているほうだと思います。

つまずくとすれば、制度の側ではなく、長期修繕計画と修繕積立金という管理組合の内側の問題です。あとは、築年によっては管理状況届出という独自基準が1つ。

今週、理事会で動けることを3つ挙げます。

  1. 建物の竣工年を確認する。 昭和58年12月31日以前なら、管理状況届出が済んでいるかを引継書か議事録で確認してください。これが荒川区独自基準の入口です。
  2. 長期修繕計画の表紙を見る。 作成・見直しの日付が7年以内か、計画期間が30年以上か、大規模修繕が2回以上入っているか。この3点だけなら、その場で確認できます。
  3. 次の総会の議案に「認定申請の決議」を入れるか決める。 総会決議がないと事前確認に進めません。ここを逃すと1年待ちです。

この3点で引っかかる項目が出たら、そこが認定のボトルネックです。そして、そのボトルネックが「工事費が重くて積立が追いつかない」であれば、工法の選択肢を増やすことで解ける可能性があります。

明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。管理組合さま向けのサービス内容は管理組合向けの大規模修繕サービスにまとめました。工法ごとの技術的な違いをもう少し掘りたい方は、ロープアクセスドットコムもあわせてご参照ください。

認定を取るかどうかの前段階、「うちの長期修繕計画、そもそも通るのか」という整理だけでもお力になれることがあります。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください(お問合せフォーム)。

10月の理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。春の総会に間に合うかどうかは、そこで決まります。

出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月21日時点で公表されている東京都荒川区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特に荒川区の認定手数料は「当面無料」という記載であり、将来的に有料化される可能性があります。また、マンション長寿命化促進税制の適用期限は令和9年3月31日です。実際に申請される前に、必ず荒川区(防災都市づくり部 住まい街づくり課 住宅係 電話 03-3802-4454)および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月21日

北区のマンション管理計画認定制度|令和8年度の区手数料は基本4,100円・区独自基準なし【大規模修繕2026年度版】

先日、北区・王子のマンションで理事長さまから「管理計画認定って、結局いくらかかって、何がもらえるんですか」と真正面から聞かれました。制度の説明資料は読んだけれど、費用と見返りが一枚の絵にならない、というご相談です。

正直に申し上げます。この質問に一言で答えられない資料が多すぎるのだと思います。ですので今回は、北区の管理組合さま向けに、数字から先に並べます。

結論から言えば、北区は「取りにいきやすい区」です。理由は2つ。区独自の上乗せ基準がないこと、そして区へ納める手数料が基本4,100円と低いことです。私は大規模修繕の現場を20年以上見てきましたが、認定基準の中身は半分近くが長期修繕計画と修繕積立金の話です。つまり、工事の話と切り離せません。そこも含めて整理します。

結論:北区で管理計画認定を取ると何が変わるか

北区で認定を取得したときに変わることを、先に表にします。

論点 北区の場合
認定主体 東京都ではなく北区(特別区は区が認定主体)
区独自の上乗せ基準 なし。国が定める基準と同一の内容
区への手数料(当初認定・更新) 基本手数料4,100円 + 加算手数料1,800円(長期修繕計画が1つ増えるごと)
区以外への費用 (公財)マンション管理センターのシステム利用料+事前確認審査料
申請方法 事前確認適合証を取得後、支援システムからオンライン申請。その後、区発行の納付書で手数料を納付
有効期間 認定日から5年。更新申請をしなければ失効(区からの満了通知はありません)

出典:東京都北区「マンション管理計画認定制度」(更新日:2026年8月17日)

私はいつも理事長さまに「認定は、ご褒美をもらう制度ではなく、健康診断の結果票をもらう制度です」とお伝えしています。認定を取ること自体より、取りにいく過程で管理の穴が見えることのほうが、長い目では効きます。

北区で認定主体はどこか

管理計画認定制度は、令和4年4月に始まった国の制度です。ただし、審査して認定を出すのは国ではありません。

認定主体は次のように決まっています。

  • 市および東京23区の区域内にあるマンション → その市・区
  • 町村の区域内にあるマンション → 都道府県(法律の規定により事務を行う町村は当該町村)

出典:(公財)マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」

北区は特別区ですから、認定主体は北区です。東京都ではありません。窓口は都市整備部 住宅課 住宅政策係(北区王子本町1-2-11 北区役所第二庁舎3階9番/電話 03-3908-9201)になります。

もう1つ、見落とされがちな前提があります。認定申請ができるのは、マンション管理適正化推進計画を作成している自治体に立地するマンションの管理組合に限られるという点です。北区はこの推進計画を作成済みで、制度を運用しています。区内の既存の分譲マンションであれば、申請の土俵には立てます。

なお、新築マンションの管理計画案については、マンション管理センターが認定主体となる「予備認定」という別の仕組みがあります。既存マンションの認定とは入口が違うので、混同しないようご注意ください。

北区の管理計画認定17要件を、4つの塊で読む

国の認定基準は、細かく数えると17項目あります。条文どおりに読むと頭に入りませんので、私は4つの塊に分けてご説明しています。

1. 管理組合の運営(3項目)

  • 管理者等が定められていること
  • 監事が選任されていること
  • 集会(総会)が年1回以上開催されていること

2. 管理規約(3項目)

  • 管理規約が作成されていること
  • 災害等の緊急時や管理上必要なときの専有部分への立入り、修繕等の履歴情報の管理について定められていること
  • 管理組合の財務・管理に関する情報の書面交付(または電磁的方法による提供)について定められていること

3. 管理組合の経理(3項目)

  • 管理費と修繕積立金等が明確に区分して経理されていること
  • 修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと
  • 直前の事業年度末時点で、修繕積立金の3か月以上の滞納額が全体の1割以内であること

4. 長期修繕計画の作成及び見直し等(6項目)

ここが本丸です。

  • 長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠して作成され、計画の内容と修繕積立金額が総会で決議されていること
  • 長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われていること
  • 計画期間が30年以上で、かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれるよう設定されていること
  • 将来の一時金徴収を予定していないこと
  • 計画期間全体での修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと
  • 計画期間の最終年度において、借入金の残高がない長期修繕計画となっていること

5. その他(2項目)

  • 組合員名簿・居住者名簿を備え、年1回以上は内容の確認を行っていること
  • 都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること

出典:(公財)マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」

この基準の根拠となる国のガイドライン類は、直近で相次いで改訂されています。事務ガイドラインは令和8年3月改訂、マンション標準管理規約は令和7年10月改正、長期修繕計画標準様式・作成ガイドラインと修繕積立金ガイドラインは令和6年6月改訂です。古いひな形のまま総会に上程すると、事前確認で差し戻されます。ここは本当に多いので、先に確認してください。

北区に独自基準がない、ということの実務的な意味

23区の中には、国の基準に区独自の上乗せ基準を設けている区があります。たとえば文京区は令和7年4月から、渋谷区は令和8年4月から、防災やコミュニティ活動に関する独自基準を追加しました。

北区のホームページには、はっきりこう書かれています。

北区の独自基準はなく、国がマンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針で定めている基準と同一の内容です。

(出典:東京都北区「マンション管理計画認定制度」)

これは実務上、2つの意味を持ちます。

1つめ。事前相談が必須ではありません。 独自基準がある区では、マンション管理士による事前確認の対象外となる独自基準を確認するため、事前確認を依頼する前に区役所へ出向く必要があります。北区にはその工程がありません。その分、スケジュールが2〜4週間ほど短くて済む計算になります。

2つめ。判断のブレが小さい。 全国共通の基準だけで審査されますから、「うちのマンションは通るのか」を、マンション管理センターが公開している簡易チェックリストで、理事会レベルでかなり正確に自己診断できます。

ただし、独自基準がないことは「ハードルが低い」という意味ではありません。国基準の17項目自体が、そこそこ厳しいからです。私の経験上、北区の高経年マンションで最初につまずくのは、ほぼ決まって長期修繕計画の計画期間30年・大規模修繕2回以上と修繕積立金の平均額の2点です。

北区の手数料と申請ルート(当初認定・更新・変更認定)

お金の話を整理します。北区に納める手数料は次のとおりです。

当初認定申請・更新申請

内容 費用
基本手数料 4,100円
加算手数料 1,800円(長期修繕計画が1つ増えるごと)

変更認定申請

変更内容 基本手数料 加算手数料
「管理組合の運営」に係る事項 4,800円 2,600円
「管理規約」に係る事項 4,000円 2,600円
「管理組合の経理」に係る事項 4,600円 2,800円
「長期修繕計画の作成、見直し等」に係る事項 9,800円 5,200円
「その他」に係る事項 2,900円 1,700円
上記以外の事項の変更 2,000円 900円

出典:東京都北区「マンション管理計画認定制度」(更新日:2026年8月17日)

変更内容が複数ある場合は、各項目の手数料を合算します。北区は変更認定申請 手数料チェックシート(Excel)を公開していますので、見込み額はそこで計算できます。

区以外にかかる費用

区への手数料とは別に、(公財)マンション管理センターへの支払いが発生します。

  • システム利用料:1申請あたり 10,000円(10%対象、内消費税額909円)
  • 事前確認審査料:依頼先により異なります。日本マンション管理士会連合会経由(パターン③)または管理センターへ直接依頼(パターン④)の場合は、長期修繕計画1計画あたり10,000円(10%対象、内消費税額909円)。マンション管理士に個別に依頼する場合(パターン①)や管理会社経由(パターン②)は、管理組合と委託先との協議で決まります。

出典:(公財)マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」

つまり北区の標準的なケース(長期修繕計画1計画)では、区 4,100円+システム利用料 10,000円+事前確認審査料 10,000円=24,100円程度が見込み額になります。マンション管理士に個別依頼する場合は、審査料が別途の交渉になりますので、複数から見積りを取るのが無難です。

申請の流れ

北区の場合、認定申請は4つのパターンのいずれかで事前確認を受け、事前確認適合証を取得してからオンライン申請します。

No 事前確認の依頼先 備考
1 マンション管理士(管理会社所属を含む) —
2 管理委託先(管理会社等) マンション管理適正評価制度と同時申請可
3 (一社)日本マンション管理士会連合会 マンション管理適正化診断サービスと同時申請可
4 (公財)マンション管理センター —

認定の3つの経済効果を、金額で押さえる

認定そのものに補助金は出ません。効いてくるのは次の3つです。

1. マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)

一定の要件を満たす認定マンションが、長寿命化に資する大規模修繕工事を完了させた場合、工事完了日の翌年度分の固定資産税が減額されます。東京23区の場合、一戸あたり100㎡の床面積相当分まで、2分の1が減額されます。

対象となる工事は、外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事のすべてを実施することが条件です。加えて、管理計画認定マンションの場合は、令和3年9月1日以降に修繕積立金の額を認定基準まで引き上げていることが必要です。

北区のホームページでは、対象期間を「令和5年4月1日〜令和9年3月31日までの間に工事を完了させた場合」と案内しています。一方、国の令和8年度税制改正では、この特例措置の期限を延長する方向が示されています。期限は年度途中でも動きますので、工事の完了時期が令和9年3月に近い場合は、着工前に国土交通省「マンション税制」と都税事務所の両方で、必ずご確認ください。申告先は区役所ではなく都税事務所です。

制度の内容が複雑なため、国土交通省はマンション管理計画認定制度 相談ダイヤル(03-5801-0858)を設けています。月曜〜土曜10:00〜17:00です。

2. フラット35(維持保全型)の金利引下げ

認定を取得したマンションを購入する際、【フラット35】を利用すると、当初5年間、年0.25%の金利が引き下げられます。

これは管理組合が直接得をする話ではありません。ただ、売却時に「認定マンションです」と言えることは、資産価値の面で意味があります。私はこれを、理事会では「出口の話」としてご説明しています。

3. マンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ

認定を取得したマンションが共用部分の改修を行うとき、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」を利用すると、全期間で年0.2%の金利が引き下げられます。「マンションすまい・る債」の積立を行っていると、さらに引き下げられます。

また、認定マンションが「マンションすまい・る債」を購入する場合、利率が上乗せされます(令和5年度募集分から。上乗せ幅は各年度の利率決定時に決定)。

出典:東京都北区「マンション管理計画認定制度」、住宅金融支援機構

修繕積立金が足りず、大規模修繕で借入を検討する管理組合にとっては、この0.2%が一番実利のある話です。仮に3,000万円を10年で借りるなら、金利0.2%の差はおよそ30万円台の利息差になります(元利均等・概算)。

北区の管理組合がつまずきやすい3つの落とし穴

現場でご相談を受けていて、北区特有というより「北区のやり方を知らないとハマる」ポイントが3つあります。

落とし穴1:オンライン申請だけでは終わっていない

北区のページには明確に書かれています。支援システムでオンライン申請を行っただけでは、北区への申請は終了しません。オンライン申請の手続き終了後、北区発行の納付書で手数料を納付する必要があります。

「申請したつもり」で止まっているケースを、私は他区でも見たことがあります。納付書が届いたら、必ず期限内に納めてください。

落とし穴2:有効期間の満了通知が来ない

認定の有効期間は5年です。そして北区は、有効期間の満了に関する通知等を行いません。更新申請をしないまま満了日を過ぎると、認定は失効します。

理事が1〜2年で交代する管理組合では、5年後の更新は確実に引き継ぎから漏れます。私はいつも「認定通知書のコピーを、総会資料の定位置に綴じてください」とお伝えしています。管理規約や長期修繕計画と同じ場所です。

落とし穴3:変更認定申請はオンラインでできない

認定期間中に管理計画を変更する場合、軽微な変更を除き、変更認定申請が必要です。期限は、変更が生じた事実のあった日の翌日から起算して1年を経過する日、または有効期間の満了日の前日から起算して2か月前の日まで(一部例外あり)。

そして、この変更認定申請はオンライン申請ができません。郵送または窓口への提出となります。事前に北区住宅課へ問い合わせのうえ、変更理由に応じた書類を正本・副本それぞれに添付して提出してください。

なお、次のような変更は「軽微な変更」にあたり、変更認定申請は不要です。

  • 長期修繕計画の修繕内容・時期の変更で、計画期間や修繕資金計画の変更を伴わないもの
  • 修繕資金計画の変更で、修繕の実施に支障を及ぼすおそれのないもの
  • 2以上の管理者等を置く管理組合における、一部の管理者等の変更
  • 監事の変更
  • 規約の変更であって、監事の職務および施行規則第1条の5第4号に掲げる事項の変更を伴わないもの

判断に迷う場合は、北区が公開している「変更内容チェックシート(PDF)」で確認できます。

認定基準の本丸は長期修繕計画と修繕積立金——だから工事費の話になる

ここからが本題です。

前述のとおり、17項目のうち6項目が長期修繕計画に関するものです。そして、その長期修繕計画が通るかどうかは、突き詰めると「30年で、大規模修繕2回分の工事費を、一時金なし・借入残高なしで賄えるか」という一点に収束します。

分母(積立額)を上げるか、分子(工事費)を下げるか。この2つしかありません。総会で積立金の値上げを決議するのは大変ですから、私は必ず「工事費のほうも同時に見てください」とお伝えしています。

参考までに、大規模修繕の工事費の目安を挙げます。いずれも物件の規模・状態・立地で大きく変動しますので、あくまでレンジとしてご覧ください。

工種 ㎡単価の目安
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡
外壁打診調査 250〜500円/㎡
防水工事 5,000〜8,000円/㎡

30戸規模のマンションの大規模修繕であれば、総工費は3,500万〜5,000万円程度が一つの目安です。そして、この総工費のうち15〜25%を仮設足場が占めます。工事そのものではなく、工事のための「足場」にです。

ここに、私がロープアクセス工法をご提案する理由があります。たとえば10階建て・外周80m・工期3か月の建物で試算すると、仮設足場が約168万円かかるところ、ロープアクセス工法であれば約59万円程度に収まるケースがあります。差額はおよそ109万円です。

30年の長期修繕計画には大規模修繕が2回入りますから、この差は単純計算で2回分。長期修繕計画の帳尻を合わせるとき、この数字は効きます。

もちろん、すべての建物でロープアクセスが最適というわけではありません。株式会社明誠が3つの工法(通常足場/ロープアクセス/両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド)をそろえているのは、建物ごとに答えが違うからです。工法の考え方は明誠のロープアクセス工法の技術詳細と大規模修繕の料金の考え方にまとめています。

工法そのものの技術的な比較——ロープアクセスで何ができて何ができないのか、作業員の資格体系はどうなっているのか——については、同業者・技術者向けにまとめた姉妹サイトロープアクセスドットコムのほうが踏み込んで解説しています。理事会で工法を比較検討される際は、こちらも目を通していただくと判断材料が増えるはずです。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたり、品質管理はISO9001のマネジメントシステムに沿って運用しています。安全管理の具体的な考え方は明誠の安全管理体制をご覧ください。

総会から逆算する、北区の認定取得スケジュール

北区は事前相談が必須ではないため、他区より工程が1つ少なくなります。目安は5〜7か月です。

時期 やること 担当
6〜7か月前 理事会で認定取得の方針を確認。長期修繕計画の現状を点検(計画期間・大規模修繕の回数・一時金の有無・借入残高) 理事会
5〜6か月前 長期修繕計画の見直しが必要なら着手。標準様式(令和6年6月改訂)への準拠を確認 理事会+専門家
4〜5か月前 管理規約の点検。専有部立入り・履歴情報管理・情報提供の3点が規定されているか(令和7年10月改正の標準管理規約を参照) 理事会
3〜4か月前 総会で決議(長期修繕計画の内容・修繕積立金額・認定申請すること) 総会
2〜3か月前 事前確認の依頼先を決定(4パターンから選択)。見積りを比較 理事会
1〜2か月前 事前確認の実施 → 事前確認適合証の発行 マンション管理士等
申請月 支援システムから北区へオンライン申請 → 納付書で手数料納付 管理者等
申請後 北区の審査 → 認定通知書の発行 北区

注意点を1つ。総会決議を経ていない管理組合は、そもそも事前確認を受けられません。マンション管理センターの規定で、事前確認を行うマンション管理士は「総会決議を経ていない管理組合の事前確認はできない」とされています。順番を間違えると、丸ごと出直しになります。

通常総会が年1回の管理組合であれば、実質的に「次の総会に間に合わせる」という逆算になります。9月の今から動けば、春の通常総会での決議は十分に射程です。

北区の管理組合が使える無料の支援

いきなり有償の専門家に依頼する前に、無料で使える窓口があります。

東京都のマンションアドバイザー無料派遣は、公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターが実施しているもので、管理組合の運営や修繕に関する相談に専門家を派遣しています。詳細は東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」をご確認ください。

東京都マンションポータルサイトには、管理計画認定制度の全体像と、都内自治体の運用状況がまとまっています。あわせて東京都マンションポータルサイト「マンション管理計画認定制度」もご覧ください。

そして北区の窓口は、都市整備部 住宅課 住宅政策係(電話 03-3908-9201)です。制度の運用や手数料の納付方法について、直接確認できます。

よくあるご質問

Q. 北区で管理計画認定を取るのに、全部でいくらかかりますか?

A. 長期修繕計画が1計画の標準的なケースで、24,100円程度が目安です。内訳は北区への手数料4,100円、マンション管理センターのシステム利用料10,000円、事前確認審査料10,000円(管理センターまたは日本マンション管理士会連合会に依頼する場合)です。マンション管理士に個別に依頼する場合、審査料は協議で決まります。

Q. 北区に独自の認定基準はありますか?

A. ありません。北区のホームページに「北区の独自基準はなく、国が定めている基準と同一の内容です」と明記されています。文京区や渋谷区のように事前相談を経て独自基準の適合確認を行う工程がない分、スケジュールは短くなります。

Q. 認定を取ると、区から補助金がもらえますか?

A. 認定そのものに対する補助金はありません。経済的なメリットは、固定資産税の減額(マンション長寿命化促進税制)、フラット35の当初5年間・年0.25%引下げ、マンション共用部分リフォーム融資の全期間・年0.2%引下げ、マンションすまい・る債の利率上乗せの4つです。

Q. 修繕積立金が少ないと、認定は取れませんか?

A. 認定基準では「計画期間全体での修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと」が求められます。国のガイドライン(令和6年6月改訂)の水準を下回る場合は、専門家による「著しく低額でない旨の理由書」の提出が必要になります。なお、この理由書は事前確認を担当するマンション管理士が作成することはできません。別の専門家に依頼する必要があります。

Q. 認定の更新を忘れるとどうなりますか?

A. 有効期間(5年)の満了日までに更新申請を行わないと、認定は失効します。北区からは有効期間の満了に関する通知は行われませんので、管理組合側で期日を管理する必要があります。認定通知書を総会資料の定位置に綴じ、引継書に記載しておくことをおすすめします。

Q. 長期修繕計画を見直したら、毎回申請し直しですか?

A. 変更の内容によります。修繕の内容や時期の変更で計画期間や修繕資金計画の変更を伴わないものは「軽微な変更」にあたり、変更認定申請は不要です。判断は北区の「変更内容チェックシート」で確認できます。変更認定申請が必要な場合、「長期修繕計画の作成、見直し等」に係る事項の手数料は基本9,800円・加算5,200円です。

Q. 大規模修繕の工期はどれくらい見ればいいですか?

A. 足場を架ける従来工法では、10階建て・外周80m程度のマンションで約3か月が目安です。ロープアクセス工法を使う場合は1.5〜2か月程度に短縮できるケースがあります。足場の架設・解体そのものに時間がかかるため、その工程が丸ごと不要になる分の差です。ただし、工事範囲や部位によって適する工法は変わりますので、まずは建物を見せていただいてからのご判断になります。

Q. 認定と大規模修繕、どちらを先にやるべきですか?

A. 固定資産税の減額を狙うのであれば、認定が先です。長寿命化促進税制は「認定マンションが長寿命化に資する大規模修繕工事を完了させた場合」に適用されるためです。工事の着工予定がある管理組合さまは、スケジュールの前後関係を早めに整理されることをおすすめします。

まとめ:北区の管理組合が今週動けること3点

北区は、23区の中では管理計画認定を取りにいきやすい区です。独自基準がなく、手数料も基本4,100円。つまずくとすれば、制度の側ではなく、長期修繕計画と修繕積立金という管理組合の内側の問題です。

今週、理事会で動けることを3つ挙げます。

  1. 長期修繕計画の表紙を見る。 作成・見直しの日付が7年以内か、計画期間が30年以上か、大規模修繕が2回以上入っているか。この3点だけなら、その場で確認できます。
  2. 管理規約の3点を確認する。 専有部分への立入り、修繕等の履歴情報の管理、財務・管理情報の書面交付。この3つが規定されているかどうかで、規約改正の要否が決まります。
  3. 次の総会の議案に「認定申請の決議」を入れるか決める。 総会決議がないと事前確認に進めません。ここを逃すと1年待ちです。

この3点で引っかかる項目が出たら、そこが認定のボトルネックです。そして、そのボトルネックが「工事費が重くて積立が追いつかない」であれば、工法の選択肢を増やすことで解ける可能性があります。

明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。管理組合さま向けのサービス内容は管理組合向けの大規模修繕サービスにまとめました。工法ごとの技術的な違いをもう少し掘りたい方は、ロープアクセスドットコムもあわせてご参照ください。

認定を取るかどうかの前段階、「うちの長期修繕計画、そもそも通るのか」という整理だけでもお力になれることがあります。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください(お問合せフォーム)。

10月の理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。春の総会に間に合うかどうかは、そこで決まります。

出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月21日時点で公表されている東京都北区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特にマンション長寿命化促進税制の適用期限については、令和8年度税制改正による延長の動きがありますので、実際に申請される前に、必ず東京都北区(都市整備部 住宅課 住宅政策係 電話 03-3908-9201)および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月21日

【令和8年度】豊島区の12条点検・外壁全面打診|報告時期・罰則・無足場調査の実務

豊島区でビルやマンションを所有されている方から、この9月に入って立て続けに同じ質問をいただいています。「東京都防災・建築まちづくりセンターから封筒が届いたが、うちは報告が必要なのか」「大規模修繕をやったばかりなのに、また報告しろと言われた」。この2つです。

この記事では、令和8年度(2026年度)に豊島区で定期報告の対象年を迎えるのはどの用途の建物か、そして外壁の全面打診をいつ・いくらで・どうやって進めるのかを、現場の実務感覚を添えて整理します。豊島区は面積が23区で2番目に小さく、池袋周辺の雑居ビルから東池袋・上池袋の密集市街地まで、足場を組みにくい物件が極端に多い区です。だからこそ「足場ありき」で見積を取ると、豊島区の物件は調査費が跳ね上がります。

私は本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。豊島区でも南池袋、東池袋、巣鴨、要町あたりの物件をいくつも見ています。教科書的な解説ではなく、実際に理事会やオーナーさまと膝を突き合わせて話している内容をそのまま書きます。

更新日:2026年9月21日

結論:令和8年度に豊島区で報告年を迎えるのは「用途コード30番台」。締切は10月31日

先に結論をまとめます。

項目 内容
令和8年度の特定建築物定期調査の報告年次 用途コード30番台(事務所、店舗、飲食店、物販、遊技場など)
報告期間 令和8年5月1日〜令和8年10月31日
共同住宅(用途コード40番台) 令和8年度は報告年次ではない(直近の報告年次は令和9年度)
提出先 公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター(03-5989-1929)
豊島区の窓口 建築課 設備審査グループ(03-3981-2198/本庁舎6階10番窓口)
敷地内に1万㎡超の建築物がある場合 所管は東京都(03-5388-3344)
報告を怠った場合 建築基準法第101条により100万円以下の罰金(豊島区が公式に明記)
外壁全面打診の周期 竣工または外壁改修から10年ごと

この記事の執筆時点で、令和8年10月31日の締切まで残り約40日です。用途コード30番台の建物をお持ちで、まだ調査会社を手配していない方は、今週が判断の分かれ目になります。

この記事で答える質問

  • 令和8年度に豊島区で12条報告が必要なのはどんな建物か
  • 外壁の全面打診が必要になるのはどういうときか
  • 吹付タイル仕上げの外壁でも打診は必要なのか(豊島区の公式見解)
  • 大規模修繕をしたばかりの建物は報告を免除されるのか
  • 打診調査は実際いくらかかるのか、足場とロープアクセスでいくら差が出るのか

建築基準法第12条とは:「定期調査」と「定期検査」は別物です

まずここでつまずく方が非常に多いので、整理します。

建築基準法第12条は、一定規模以上の建築物について、有資格者による定期的なチェックと特定行政庁への報告を義務づけています。豊島区の場合、特定行政庁は豊島区そのものです(敷地内に延べ面積1万㎡を超える建築物がある場合のみ東京都所管)。

報告は4種類に分かれ、それぞれ提出先が違います。

種類 対象 提出先 電話
特定建築物(調査) 敷地・地盤、建築物の外部、屋上・屋根、内部、避難施設等 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1929
防火設備(検査) 防火扉、防火シャッター、耐火クロススクリーン、ドレンチャー 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1937
建築設備(検査) 換気設備、排煙設備、非常用照明、給排水設備 日本建築設備・昇降機センター 03-3591-2421
昇降機等(検査) エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機、遊戯施設 東京都昇降機安全協議会 03-6304-2225

外壁の打診調査が関わるのは、一番上の「特定建築物(調査)」だけです。エレベーターの点検業者から「12条やっておきました」と言われても、それは昇降機の定期検査であって、外壁の話は一切含まれていません。ここを混同したまま何年も過ぎているビルを、私は豊島区内でも何件も見てきました。

消防点検や保健所の届出とは別物

豊島区はFAQのなかで、このよくある誤解にはっきり答えています。

  • 消防用設備の点検(消火器、自動火災報知設備、誘導灯等)は消防法に基づくもので、建築基準法の定期報告とは別
  • 保健所への特定建築物の届出は建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)に基づくもので、これも別

「毎年消防に出しているから大丈夫」は通用しません。

報告を出さなかった場合の罰則

豊島区は公式FAQで次のように明記しています。

定期報告制度は建築基準法第12条に定められており、報告を怠ることや虚偽の報告を行うことは法令違反になります。その場合、建築基準法101条により100万円以下の罰金が課されることがあります。

罰金の有無以上に実務上こわいのは、外壁タイルが落下して第三者に当たった場合です。定期報告を怠っていた事実は、所有者・管理者の安全配慮義務を問われる局面でほぼ確実に持ち出されます。「知らなかった」は、報告義務がある建築物では通りません。

外壁の「全面打診」が必要になる4つのトリガー

12条の定期調査のなかでも、コストと工事計画に直結するのが外壁の全面打診です。平成20年国土交通省告示第282号(令和4年1月18日一部改正)によって、次のいずれかに当てはまると全面打診が必要になります。

トリガー1:竣工から10年が経過し、直近10年以内に全面打診をしていない

タイル張り、石張り(乾式工法を除く)、モルタル塗りなどの外壁が対象です。10年に1回、手の届く範囲ではなく外壁全面を叩いて浮きを確認します。

トリガー2:外壁改修(タイル張替え・モルタル補修等)から10年が経過

前回の大規模修繕で外壁を触っている場合、その竣工日が起点になります。「うちは10年前に大規模修繕をやったから大丈夫」ではなく、10年前にやったからこそ今年が対象というケースが非常に多い。

トリガー3:手の届く範囲の打診等で異常が認められ、「要調査」と判定された

通常年の調査で、テラスや廊下から手の届く範囲を叩いて浮きが見つかった場合。この場合は10年周期を待たずに全面打診に移行します。

トリガー4:実際に落下があった/落下のおそれが高いと判断された

これは説明不要でしょう。すでに1枚落ちている建物は、全面打診が前提になります。

外壁改修工事を伴う大規模修繕を実施した場合、その完了から10年が次の全面打診の起点になります。逆に言えば、大規模修繕と12条の全面打診は、10年サイクルで必ず同期します。ここを意識して計画を立てると、コストが大きく変わります。詳しくは後述します。

豊島区固有の事情:4つの不燃化特区と、5路線7区間の特定整備路線

ここからが豊島区の話です。

豊島区は、東京都の防災都市づくり推進計画のなかで木造住宅密集地域(木密地域)を多く抱える区として位置づけられてきました。令和7年3月に東京都が同計画の基本方針を改定し、計画期間は2026(令和8)年度から2035(令和17)年度に改められています。

豊島区の現況(令和8年4月時点、豊島区公表)は次のとおりです。

  • 不燃化特区:4地区(従来の5地区から見直しで4地区に継続指定)
  • 不燃化集中促進地区:1地区(池袋本町・上池袋地区/不燃化特区からは除外され、東京都の「整備地域等不燃化集中促進事業」に移行)
  • 特定整備路線:5路線7区間(補助第26号線=千早・南長崎、補助第73号線=池袋本町、補助第82号線=池袋本町〜上池袋、補助第81号線=巣鴨〜駒込・南池袋、補助第172号線=長崎)

特定整備路線は令和12年度までに全線整備を目指す方針です。

これが12条点検にどう効くのか

密集市街地の実務的な意味は、はっきりしています。

  1. 前面道路が狭く、足場の資材搬入と道路占用が難しい。4m未満の生活道路に面した建物では、足場を組むだけで道路使用許可・占用許可の調整に数週間かかることがあります
  2. 隣地との離隔が取れず、そもそも足場が建てられない面がある。豊島区の雑居ビルでは、隣のビルと数十センチしか空いていない面が普通にあります
  3. 特定整備路線の事業区間に近い物件は、仮設計画そのものが制約を受ける

もう一つ、豊島区で見落とされがちなのが池袋周辺の中小規模雑居ビルです。用途コード30番台(事務所、飲食店、物販店舗、遊技場など)に該当する建物が集中しているエリアであり、まさに令和8年度が報告年次にあたります。テナントが日々営業している建物に足場を組むと、看板が隠れ、客足が落ち、テナントから賃料減額の相談が来ます。調査のために営業補償の話になるというのは、豊島区のオーナーさまから実際に聞く悩みです。

豊島区の公式見解:吹付タイル仕上げの外壁に打診調査は必要か

これは豊島区のFAQに載っている、他区ではあまり明示されていない論点です。

Q. 吹付タイル仕上げの外壁に打診調査は必要ですか。
A. 下地材にモルタルが使用されている場合、モルタルの厚みによって、調査が必要となる場合があります。判断しがたい場合はお電話にてご相談ください。

つまり、「タイルじゃないから打診は不要」とは言い切れないということです。吹付タイル(複層仕上塗材)は塗装材であってタイルではありませんが、その下地がモルタル塗りであれば、モルタルの浮きが落下リスクになります。昭和40〜50年代の豊島区のビルには、RC躯体+モルタル下地+吹付仕上げという構成が非常に多い。

実務上は、次のように判断しています。

  • 設計図書で下地仕様を確認する(仕様書の「外部仕上表」を見る)
  • 図書がない場合は、部分的に打診して下地の状況を確かめる
  • そのうえで、判断がつかなければ豊島区建築課 設備審査グループ(03-3981-2198)に電話で相談する

区の側も「電話で相談してほしい」と明示しています。自己判断で「不要」と決めてしまうのが一番危険です。

実務コスト感:打診調査の㎡単価と、足場費の差額

ここは数字で話します。いずれも目安・参考レンジであり、実際の見積は建物の形状・立地・仕上げ材によって大きく変動します。

打診調査そのものの単価目安

項目 単価の目安
外壁全面打診(打診棒による目視・打診) 250〜500円/㎡
赤外線調査(地上または無人航空機) 200〜400円/㎡
報告書作成・図面化 10〜30万円(建物規模による)

仮設足場を組む場合の上乗せ

項目 単価の目安
枠組足場(架設・解体・養生込み) 900〜1,200円/㎡
道路占用・使用許可の手続き、ガードマン 10〜50万円

具体例で比べてみます

豊島区でよくある規模——8階建て・外周70m・高さ約24mの事務所ビルで試算します。

  • 外壁面積の概算:70m × 24m = 約1,680㎡
  • 打診調査費:1,680㎡ × 350円 = 約59万円

ここに足場を組むと、こうなります。

工法 内訳 合計
足場を組む場合 打診59万円 + 足場1,680㎡×1,000円=168万円 + 道路占用等20万円 約247万円
ロープアクセス工法 打診59万円 + ロープ支点設置・安全設備15〜30万円 約74〜89万円
差額 — 約158〜173万円

打診調査のためだけに足場を組むと、調査費の3倍近い仮設費がかかります。しかも足場は架設に1〜2週間、解体に1週間、道路占用の調整を含めると調査完了までに1〜2ヶ月です。ロープアクセス工法なら、同規模で実働3〜5日が目安になります。

もちろん、大規模修繕と一体で足場を組むなら話は別です。問題は「調査だけのために足場を組む」ケースで、豊島区のように道路条件が厳しい区では、この無駄が特に大きくなります。

ロープアクセス工法が豊島区の12条打診で選ばれる理由

ロープアクセス工法は、産業用ロープで屋上から作業員が降下し、外壁に直接アクセスする無足場工法です。豊島区の物件で選ばれる理由は4つあります。

1. 前面道路が狭くても、隣地が迫っていても成立する

必要なのは屋上の支点だけです。道路占用も、隣地への足場越境も原則として発生しません。不燃化特区や特定整備路線の周辺のように道路条件が厳しいエリアでは、これが決定的な差になります。

2. テナント・居住者の営業影響が小さい

足場と養生シートで建物を覆うと、看板は隠れ、窓は塞がり、飲食店の客席からの見晴らしは失われます。ロープアクセスなら、作業している面だけが一時的に影響を受けます。池袋周辺のテナントビルでは、この差がそのまま賃料収入の差になります。

3. 打診と同時に「補修すべき箇所」を確定できる

作業員が外壁に直接触れているので、浮き・ひび割れ・シーリングの劣化をその場で記録し、位置と数量を確定できます。赤外線調査だけでは「疑わしい範囲」までしか分かりません。調査結果がそのまま次の大規模修繕の見積根拠になります。

4. 部分的に足場が必要な箇所だけハイブリッドにできる

バルコニーが深い面、庇が大きく張り出している面など、ロープだけでは届きにくい箇所があります。株式会社明誠では、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法から建物に合わせて選べる体制を取っています。「全面足場」か「全面ロープ」かの二択ではなく、面ごとに最適解を組み合わせるのが実際のコスト最適化です。

安全面について、数字で申し上げます。明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では、ロープアクセス工法での高所作業において過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工し、明誠は日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。技術者向け・同業者向けの詳細な技術情報は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。

明誠のロープアクセス工法の技術詳細と高所作業の安全管理体制は、それぞれのページでご確認いただけます。

令和4年の告示改正:ドローン赤外線という第3の選択肢

令和4年1月18日の告示改正により、無人航空機(ドローン)による赤外線調査が、外壁全面打診に代わる手法として正式に位置づけられました。国土交通省と日本建築防災協会が「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドライン」を公表しています。

ただし、実務上の制約は小さくありません。

  • 気象条件:日射量、外気温の日較差、風速が条件を満たす必要があり、曇天・雨天・無風では実施できない
  • 撮影条件:外壁面と撮影角度、距離、解像度の要件がある
  • 豊島区での飛行環境:池袋周辺は人口集中地区(DID)であり、第三者上空の飛行や目視外飛行には国土交通省の許可・承認が必要。建物が密集しているため、離隔距離の確保も難しい
  • 判定精度:赤外線は「温度差のある範囲」を示すもので、浮きの有無を直接断定するものではない。疑わしい箇所は結局、打診で確認する

私の実感として、豊島区のように建物が密集し、隣接建物の輻射熱の影響を受けやすいエリアでは、ドローン赤外線を単独で使うのは条件が厳しいというのが正直なところです。北面など日射の乏しい面では特にそうです。赤外線調査とロープアクセス打診の使い分けについては、ロープアクセスドットコムで技術的な条件を詳しく整理しています。

現実的には、赤外線で当たりをつけ、疑わしい箇所をロープアクセスで打診確認するという組み合わせが、精度とコストのバランスが良い。豊島区の物件ではこの組み合わせを提案することが多いです。ドローン調査の適用条件と限界については別ページで詳しく整理しています。

見落とされやすい落とし穴:大規模修繕をした建物に「初回免除」はない

ここが、豊島区のFAQを読んでいて最も実務的だと感じた部分です。

特定建築物の定期報告には「初回免除」という制度があります。新築・改築後は、検査済証の交付を受けた日の属する年度の翌年度以降の2回目の報告時期から報告すればよい、というものです。豊島区は具体例まで示しています。

ケース 検査済証交付 初回報告
共同住宅(用途コード40) 令和7年7月1日 令和12年5月1日〜10月31日
事務所(用途コード34) 令和7年7月1日 令和11年5月1日〜10月31日

問題はここからです。豊島区は、増築工事と、建築確認が必要な大規模の修繕・大規模の模様替えについては「初回免除はありません」と明記しています。

工事の種類 特定建築物の初回報告
新築・改築 翌年度以降の2回目の報告時期から(初回免除あり)
増築 1回目の報告時期から(初回免除なし)
大規模の修繕・大規模の模様替え(確認申請が必要なもの) 1回目の報告時期から(初回免除なし)
用途変更 直近の対象年度に報告(初回免除の対象外)

たとえば共同住宅(用途コード40)で令和7年7月1日に検査済証が交付された増築・大規模修繕であれば、令和9年5月1日〜10月31日が初回報告になります。新築と同じ感覚で「まだ先だろう」と構えていると、2回分ずれます。

なお、ここでいう「大規模の修繕・大規模の模様替え」は建築基準法上の定義(主要構造部の一種以上について行う過半の修繕・模様替え)であり、いわゆる管理組合の「大規模修繕工事」とは範囲が異なります。外壁塗装や防水の更新だけであれば通常は建築確認を要しませんが、確認申請を出した工事があったかどうかは必ず確認してください。判断がつかない場合は、竣工図書と確認済証・検査済証を揃えたうえで、豊島区建築課にご相談ください。

12条点検を大規模修繕と一体化する3つのメリット

10年周期の全面打診と、12〜15年周期の大規模修繕。この2つを別々に発注しているケースが非常に多いのですが、一体で考えると実務上のメリットがはっきりあります。

メリット1:仮設を1回で済ませられる

足場を組む計画なら、調査と工事で足場費が二重になるのを避けられます。ロープアクセスの場合も、支点設置や安全設備の段取りを1回にまとめられます。

メリット2:調査結果がそのまま補修数量になる

打診調査で「どこに、何㎡の浮きがあるか」が確定していれば、見積書の数量根拠が明確になります。「タイル補修一式」ではなく「浮き部タイル張替え 〇〇㎡」で見積を取れるようになり、相見積の比較精度が上がります。これは発注側にとって非常に大きい。

メリット3:長期修繕計画の見直し材料になる

調査結果は、次の修繕時期と概算費用を組み替える一次資料です。修繕積立金の不足が見えているマンションほど、調査データを持っているかどうかで理事会の議論の質が変わります。大規模修繕の料金の考え方については別ページにまとめています。ビルオーナーの方はビルオーナー向けのサービス内容もあわせてご覧ください。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。調査から補修まで一貫して対応した施工事例は、明誠の施工事例一覧からご覧いただけます。

豊島区の報告手続き:提出先・窓口・電子申請

豊島区の手続きは、23区のなかでも電子申請(WEBフォーム)の整備が進んでいるのが特徴です。

調査報告書の提出先は区役所ではない

特定建築物定期調査の報告書そのものは、公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター(03-5989-1929)に提出します。豊島区役所の窓口ではありません。ここを間違えて区役所に持ち込む方が毎年いらっしゃいます。

一方、各種届出は豊島区に提出します。

届出 提出先 窓口 メール 郵送 電子申請
建築物等の所有者等変更届 豊島区 ○ ○ ○ ○
建築物除却・使用休止届 豊島区 ○ ○ ○ ○
建築物再使用届 豊島区 ○ ○ ○ ○
特定建築設備等廃止・使用休止届 豊島区 ○ ○ ○ ○
特定建築物登録申請 豊島区 ○ ○ ○ ○
特定建築物対象外届 豊島区 ○ ○ ○ ○
改善完了報告書(特定建築物) 豊島区 ○ ○ ○ ×

窓口は本庁舎6階10番窓口(開庁日:平日8時30分〜17時15分)。メール提出も可能で、送信先は建築課宛(件名に提出内容、本文に担当者名と電話番号を記載、PDF化して5MB以下)です。

整理番号が分からないとき

報告には用途ごとの整理番号が必要ですが、これが分からない所有者・管理者は非常に多い。豊島区はWEBフォームによる照会を用意しているので、電話で待たされる前にこちらを使ってください。区の定期報告案内ページから照会フォームにアクセスできます。

概要書の閲覧・写しの交付

平成17年6月以降に豊島区へ報告された現存する特定建築物の定期報告概要書は、建築課(本庁舎6階10番窓口)で閲覧できます。写しの交付は1通300円(非課税・現金のみ)。取扱時間は平日の午前8時30分〜午後4時30分です。前回の報告内容を確認したいときに使えます。

調査資格者の紹介はしてもらえない

豊島区は「区では紹介を行っていません」と明記しています。建物管理会社、設計者、施工会社に相談するか、一般財団法人日本建築防災協会が公開している特定建築物調査員の名簿から探すことになります。

敷地内に1万㎡超の建築物がある場合

この場合、所管の特定行政庁は豊島区ではなく東京都です。特定建築物・防火設備は東京都都市整備局 建築企画課 建築安全担当(03-5388-3344)、建築設備・昇降機等は設備担当(03-5388-3349)が窓口になります。池袋周辺の大規模複合ビルは該当する可能性があるので、面積を確認してください。

よくあるご質問

Q. 令和8年度に豊島区で12条報告が必要なのは、どんな建物ですか?

A. 特定建築物定期調査は用途コードごとに報告年度が定められており、令和8年度は用途コード30番台(事務所、店舗、飲食店、物販、遊技場など)が報告年次にあたります。報告期間は令和8年5月1日から10月31日までです。自分の建物の用途コードと規模の該当有無は、豊島区が公開している「定期報告が必要な建築物及び報告時期一覧」で確認できます。

Q. うちは分譲マンションです。令和8年度は関係ないということですか?

A. 共同住宅(用途コード40番台)は3年周期で、直近の報告年次は令和9年度です。ただし、増築や確認申請を伴う大規模の修繕を行った場合は初回免除がなく、扱いが変わります。また、店舗と共同住宅の複合建築物では面積が大きいほうの用途で判断されるため、下層階に店舗が入っているマンションは要注意です。

Q. 吹付タイル仕上げなのですが、打診調査は必要ですか?

A. 豊島区は「下地材にモルタルが使用されている場合、モルタルの厚みによって、調査が必要となる場合があります」としています。吹付タイル=不要ではありません。竣工図書の外部仕上表で下地仕様を確認し、判断がつかない場合は豊島区建築課 設備審査グループ(03-3981-2198)にご相談ください。

Q. 外壁の全面打診は、いくらくらいかかりますか?

A. 打診調査そのものは250〜500円/㎡が目安です。これに加えて仮設費がかかります。8階建て・外周70mの事務所ビルでは、足場を組むと合計約247万円、ロープアクセス工法なら約74〜89万円が目安で、差額は約158〜173万円です。いずれも参考レンジで、実際の見積は建物条件により変動します。無料で概算をお出しできますので、お気軽にお問い合わせください。

Q. 打診調査の工期はどれくらいですか?

A. 8階建て・外周70m規模であれば、ロープアクセス工法で実働3〜5日が目安です。足場を組む場合は、架設1〜2週間、調査、解体1週間に加えて道路占用の調整が入るため、調査完了まで1〜2ヶ月を見ておく必要があります。

Q. ドローンの赤外線調査だけで報告は通りますか?

A. 令和4年の告示改正で赤外線調査は正式な手法として位置づけられていますが、日射量・外気温の日較差・風速などの気象条件、撮影角度や距離の要件を満たす必要があります。豊島区は人口集中地区にあたり飛行許可・承認の手続きも必要です。疑わしい箇所は結局打診で確認することになるため、赤外線とロープアクセス打診の組み合わせをおすすめしています。

Q. 大規模修繕を終えたばかりですが、報告は免除されませんか?

A. 増築、および建築確認が必要な大規模の修繕・大規模の模様替えについて、豊島区は「初回免除はありません」と明記しています。新築・改築とは扱いが異なり、1回目の報告時期から報告が必要です。確認申請を出した工事があったかどうかを、確認済証・検査済証でご確認ください。

Q. 調査で浮きが見つかったら、すぐ全部直さないといけませんか?

A. 全量を即時補修する必要はありませんが、落下のおそれがある箇所は速やかな措置が必要です。実務では、緊急性の高い箇所を先行補修し、残りを次の大規模修繕にまとめる進め方が一般的です。調査で位置と数量が確定していれば、優先順位をつけた計画が立てられます。

Q. 豊島区は道が狭くて足場が組めないと言われました。打つ手はありますか?

A. ロープアクセス工法なら、屋上に支点が取れれば道路占用も隣地越境も原則として発生しません。バルコニーが深い面や庇が張り出している面だけ部分足場を併用するハイブリッド工法も可能です。豊島区は不燃化特区や特定整備路線の沿道など道路条件が厳しいエリアが多く、無足場の選択肢を持っているかどうかで見積が大きく変わります。

この記事のポイントまとめ

  • 令和8年度に豊島区で報告年次を迎えるのは用途コード30番台。報告期間は令和8年5月1日〜10月31日
  • 特定建築物の調査報告書の提出先は区役所ではなく東京都防災・建築まちづくりセンター(03-5989-1929)。届出類は豊島区(03-3981-2198)で、電子申請にも対応
  • 報告を怠ると建築基準法第101条により100万円以下の罰金(豊島区が公式に明記)
  • 外壁全面打診は竣工または外壁改修から10年ごと。前回の大規模修繕から10年なら今年が対象
  • 吹付タイル仕上げでも、モルタル下地なら打診が必要になる場合がある(豊島区FAQ)
  • 増築・大規模の修繕には初回免除がない。1回目の報告時期から報告が必要
  • 8階建て・外周70mの試算では、足場約247万円に対しロープアクセス約74〜89万円。差額は約158〜173万円
  • 豊島区は不燃化特区4地区・不燃化集中促進地区1地区・特定整備路線5路線7区間を抱える密集市街地。足場前提の見積は割高になりやすい

まとめ:豊島区で今週動くこと3点

長くなったので、実際に何をすればいいかだけ書きます。

1. 用途コードと整理番号を確認する

建物の用途コードが30番台なら、令和8年度が報告年次です。整理番号が分からなければ、豊島区の電子申請フォームから照会してください。電話より早い場合があります。

2. 「前回いつ全面打診をしたか」を調べる

これが分からない管理組合・オーナーさまが本当に多い。長期修繕計画書、過去の大規模修繕の竣工図書、理事会議事録、前回の定期報告概要書(区役所6階で1通300円で写しが取れます)。このあたりを当たってください。10年以上前だったら、令和8年度が動きどきです。

3. 足場ありきの見積を、無足場でも取ってみる

すでに調査会社から見積が出ている方も、比較のために無足場の見積を1本取ってみてください。豊島区の物件は、道路条件と隣地条件のせいで足場費が想定より膨らんでいることがよくあります。差額が100万円単位で出るなら、理事会や社内の会議に報告する価値があります。

令和8年10月31日までが報告期間です。用途コード30番台のビルをお持ちの方は、9月中に調査会社を押さえないと間に合わない可能性があります。テナントが入っている建物なら、営業影響の少ない工法を選べるかどうかも含めて、一度検討してみてください。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会や取締役会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問い合わせはこちらから承っています。

関連リソース:明誠の考え方は明誠の理念、技術者向け・同業者向けの情報はロープアクセスドットコム(https://rope-access-method.com/)にまとめています。


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月21日時点で公表されている豊島区、東京都都市整備局、公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンターおよび国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・運用変更があり得ます。実際に報告や申請をされる前に、必ず豊島区 建築課 設備審査グループおよび該当窓口へ最新の内容をご確認ください。記載の金額はすべて目安・参考レンジであり、実際の見積は物件条件により変動します。

出典・参考資料


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市

マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月21日

【令和8年度】中野区の12条点検・外壁全面打診|報告年度早見表と無足場での進め方

中野区でビルやマンションをお持ちの方から、毎年この時期に決まっていただく質問があります。「うちの建物、今年は12条の報告を出さないといけないんでしょうか」「外壁の打診調査は、足場を組まないとできないんですか」。この2つです。

この記事では、令和8年度(2026年度)に中野区で定期報告の対象年を迎えるのはどの用途の建物か、そして外壁の全面打診をいつ・いくらで・どうやって進めるのかを、現場の実務感覚を添えて整理します。中野区は生活道路が狭く、隣地との離隔が取りにくい土地柄です。だからこそ「足場を組む前提」だけで考えると、中野区の物件は工事費が跳ね上がります。

私は本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。中野区でも新井、東中野、鷺宮あたりの物件をいくつも見ています。教科書的な解説ではなく、実際に理事会やオーナーさまと膝を突き合わせて話している内容をそのまま書きます。

更新日:2026年9月21日

結論:令和8年度に中野区で報告年を迎えるのは「用途コード30番台」。締切は10月31日

先に答えを出します。

中野区の特定建築物定期調査報告は、用途と規模によって「何年度に報告するか」が決まっています。中野区公式サイトの定期報告とはに掲載されている報告時期一覧によると、3年ごと報告の区分は次の周期です。

用途コード 主な用途 報告年(3年ごと) 報告期間
20番台 病院・診療所、旅館・ホテル(毎年報告を除く)、学校、体育館、図書館等 2022年・2025年・2028年 5月1日〜10月31日
30番台 物品販売店舗、展示場・飲食店・遊技場等、複合用途建築物、事務所 2023年・2026年・2029年 5月1日〜10月31日
40番台 共同住宅・寄宿舎(5階以上かつ1,000㎡超)、高齢者等の就寝用途 2021年・2024年・2027年 5月1日〜10月31日

(出典:中野区「定期報告とは」/同ページ更新日 2024年4月23日、令和8年9月時点で掲載継続を確認)

つまり、令和8年度(2026年度)に中野区で報告年を迎えるのは用途コード30番台です。中野駅北口の飲食ビル、中野ブロードウェイ周辺の物販・複合ビル、中野坂上のオフィスビル。このあたりが該当します。そして報告期間は令和8年5月1日から令和8年10月31日まで。この記事を公開している令和8年9月21日時点で、締切まで約40日です。

一方、分譲マンション・賃貸マンション(用途コード40番台)の次の報告年は令和9年度(2027年度)です。「まだ1年ある」と思われるかもしれませんが、私の経験上、ここが一番危ない。理由は後述します。

なお、劇場・映画館・公会堂、一定規模以上の旅館・ホテル、大型百貨店、地下街は毎年報告で、報告期間は11月1日〜翌1月31日です。

この記事で答える質問

  • 中野区で令和8年度に12条報告が必要なのはどの建物か
  • 外壁の「全面打診」はいつ求められるのか
  • 打診調査は㎡いくらか。足場を組むといくら上乗せになるか
  • 足場を組まずに全面打診を成立させる方法はあるか

建築基準法第12条とは:「定期調査」と「定期検査」は別物です

まず用語を整理します。ここを混同したまま見積を取ると、後で金額が合わなくなります。

建築基準法第12条第1項は、特定建築物(不特定多数が利用する一定規模以上の建築物)の所有者・管理者に対して、有資格者による調査と、特定行政庁への報告を義務づけた条文です。中野区の場合、特定行政庁は原則として中野区長になります。

12条には4つの報告があります。

  1. 特定建築物定期調査報告(12条1項)── 敷地、構造、防火・避難関係。外壁の打診調査はここに含まれます
  2. 防火設備定期検査報告(12条3項)── 随時閉鎖式の防火扉・防火シャッター等。毎年
  3. 建築設備定期検査報告(12条3項)── 換気設備、排煙設備、非常用照明、給排水設備。毎年
  4. 昇降機等定期検査報告(12条3項)── エレベーター、エスカレーター等。毎年

「12条点検」と一口に言われますが、外壁の話をしているときは1番の特定建築物定期調査のことです。消防法に基づく消防用設備等点検とはまったく別の制度で、消防点検を出したから建築基準法の報告も済んでいる、ということにはなりません。中野区も公式サイトでこの点にわざわざ注意書きを載せています。

私はいつも理事長さまに、「消防の点検は年2回、建築の12条は3年に1回。両方出して初めてワンセットです」とお伝えしています。

報告を出さなかった場合

建築基準法第101条により、第12条第1項の報告をせず、または虚偽の報告をした者は、100万円以下の罰金に処される定めがあります(建築基準法|e-Gov法令検索)。

ただ、私が現場で本当に怖いと思っているのは罰金ではありません。タイルが落ちて人が怪我をしたとき、「定期報告を出していなかった」という事実が、所有者の管理責任を問う場面でそのまま効いてくることです。民法上の工作物責任は、所有者にとって非常に重い責任です。報告書は、適正に管理してきた証跡でもあります。

外壁の「全面打診」が必要になる4つのトリガー

ここからが本題です。12条の定期調査の中で、費用と段取りが一番重いのが外壁の全面打診です。

根拠は平成20年国土交通省告示第282号。国土交通省の定期報告制度における外壁のタイル等の調査についてに、こう書かれています。

外装仕上げ材等におけるタイル、石貼り等(乾式工法によるものを除く。)、モルタル等の劣化及び損傷の状況の調査については、おおむね6ヶ月から3年以内に一度の手の届く範囲の打診等に加え、おおむね10年に一度、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等を行うこととされています。

整理すると、全面打診が必要になるのは次の4つの場面です。

トリガー1:竣工から10年が経過し、直近10年以内に全面打診をしていない

最も基本的なトリガーです。令和8年度に報告するなら、平成28年4月1日以降に全面打診等を実施している必要がある、という整理になります。10年以内に一度もやっていなければ、今回が対象です。

トリガー2:外壁改修(タイル張替え・モルタル補修等)から10年が経過

「大規模修繕をやったから10年リセットされた」と考える方が多いのですが、正確には外装仕上げ材の改修工事を行った時点からの10年です。前回の大規模修繕が平成27年だった中野区の物件は、令和7年〜8年で再び全面打診の対象になります。

トリガー3:手の届く範囲の打診等で異常が認められ、「要調査」と判定された

3年ごとの通常の定期調査で、目視または手の届く範囲の打診(テストハンマーで叩いて音の違いを聴く調査)で浮きや剥離の疑いが出た場合。竣工10年未満でも、この判定が出れば全面打診が求められます。

トリガー4:実際に落下があった/落下のおそれが高いと判断された

タイルが1枚でも落ちた場合。あるいは台風や地震の後に明らかな変状が出た場合。これは年数に関係ありません。

私が現場で一番悔しい思いをするのは、トリガー4で呼ばれるときです。令和5年の秋、中野区内のあるビルで、歩道に面した4階のタイルが3枚落ちました。幸い夜間で通行人はいませんでしたが、オーナーさまが真っ青な顔で電話をくださった。調べたら、前回の全面打診から13年経っていました。3年前の定期調査では「手の届く範囲では異常なし」で通っていたのです。手の届く範囲、というのは地上2階分くらいまでの話です。上層階は見ていない。だから見つからなかった。

ロープアクセス工法の技術的な背景や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。

中野区固有の事情:生活道路の43%が幅員4m未満という現実

ここが、中野区の12条打診を考えるうえで避けて通れない話です。

中野区の狭あい道路の拡幅整備事業に関する資料によれば、区内には幅員4メートル未満で整備を必要とする道路が約211kmあり、区内道路の約43%を占めています。南台一・二丁目地区、南台四丁目地区、平和の森公園周辺地区は、区自身が「木造住宅が密集し狭い道路が多く、都内でも災害危険度の高い地域」と位置づけているエリアです。

この数字が、外壁調査の現場では何を意味するか。

足場が、組みにくい。組めても高い。

前面道路が4m未満だと、道路使用許可の条件が厳しくなります。隣地との離隔が50cmしかなければ、そもそも枠組足場が入りません。近隣への事前承諾の取り付けに1〜2ヶ月かかることもあります。中野区で「足場を組んで全面打診をやろう」とすると、調査そのものより段取りのコストと時間が効いてくるのです。

一方で、中野駅周辺は再開発が進んでいます。パークシティ中野が令和8年7月に入居開始、囲町西地区が令和9年度竣工予定、中野四丁目西地区では地上48階・高さ約180mの計画が動いています。新しい建物が増える一方で、昭和50〜平成初期に建った中層のタイル貼りビル・マンションが区内には大量に残っている。この層が、今まさに全面打診の対象になっています。

中野区の建物は「狭い敷地に建つ、10年超のタイル貼り中層物件」が主力です。足場前提の見積は、この条件と相性が悪い。

実務コスト感:打診調査の㎡単価と、足場費の差額

数字の話をします。ここは見積書を読むうえで一番役に立つところです。

注意:以下はあくまで目安・参考レンジです。実際の金額は建物形状、外壁材、階数、前面道路条件、足場の架設難易度で大きく変動します。

打診調査そのものの単価目安

項目 単価の目安 備考
外壁全面打診(打診棒による直接打診) 250〜500円/㎡ 外壁材・高さ・足元条件で変動
赤外線調査(地上設置型/ドローン) 150〜350円/㎡ 天候・日射条件に左右される
調査報告書作成・図面化 10〜30万円/棟 規模による

仮設足場を組む場合の上乗せ

項目 単価の目安 備考
枠組足場(架設・解体・運搬込み) 900〜1,300円/㎡(足場面積) メッシュシート込み
道路占用・使用許可申請 5〜20万円 中野区は前面道路が狭い物件が多く、条件付きになりやすい
近隣説明・養生 5〜15万円 隣地離隔が小さいほど手間が増える

具体例で比べてみます

中野区に多い「10階建て・外周80m・高さ約30m」のマンションで考えます。足場面積は概算で80m × 30m = 2,400㎡。

  • 足場架設費:2,400㎡ × 約700円/㎡ = 約168万円(打診調査のためだけに組む場合)
  • ロープアクセスによる全面打診:外壁面積2,400㎡ × 約250円/㎡ + 段取り費 = 約59万円

差額はおよそ109万円。しかも足場は架設と解体で1〜2週間、組んでいる間は全戸のバルコニーが使いづらく、防犯上の不安も出ます。ロープアクセスなら、同じ規模で3〜5日程度で打診を終えられるケースが多い。

私はいつも理事長さまに、こうお伝えしています。「打診調査のためだけに168万円の足場を組むのは、修繕積立金の使い方としてもったいない。大規模修繕と一体でやるなら足場は活きますが、調査だけを先行させるなら無足場を検討する価値があります」と。

料金に対する明誠の考え方は大規模修繕の料金の考え方にまとめています。

ロープアクセス工法が中野区の12条打診で選ばれる理由

ロープアクセス工法とは、建物の屋上から産業用ロープ2本(メインロープとバックアップロープ)を垂らし、技能訓練を受けた作業員が懸垂下降しながら外壁に直接アクセスする無足場工法です。窓拭きのゴンドラに近いイメージをされる方が多いのですが、ゴンドラと違って設備の設置が不要で、建物側の条件をほとんど選びません。

中野区の物件で、この工法が効く理由は4つあります。

1. 前面道路が狭くても成立する

ロープは屋上から下ろすので、地上に占用スペースがほぼ要りません。作業員が着地する足元と、資材の一時置き場があれば足ります。幅員4m未満の道路に面した物件でも、道路使用許可のハードルが大きく下がります。

2. 居住者・テナントの生活影響が小さい

足場を組むと、シートで囲われて部屋が暗くなり、洗濯物が干せず、窓を開けづらくなる。中野区は単身者向け賃貸の多いエリアでもあり、入居者からのクレームがそのまま空室リスクになるというのはオーナーさまの実感だと思います。ロープアクセスなら囲いがないので、日照も通風も確保されます。

3. 打診と同時に「補修すべき箇所」を確定できる

全面打診をして浮きが見つかれば、次は補修です。ロープアクセスなら、打診のロープを下ろしたそのまま、注入・張替えの補修工事に移行できます。調査と補修で2回段取りを組む必要がない。ここが、コスト面でも工期面でも大きい。

4. 部分的に足場が必要な箇所だけハイブリッドにできる

1階まわりの庇、バルコニー内部、入隅の深い部分など、ロープでは届きにくい箇所は出ます。株式会社明誠では、ロープアクセスと足場を部位ごとに使い分ける「ハイブリッド工法」を標準的な選択肢として持っています。全面足場でも全面ロープでもなく、建物ごとに最適配分を設計する。3つの工法から選べる会社は、日本でもそう多くありません。

明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けており、ISO9001の品質マネジメントシステムのもとで施工管理をしています。日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。

工法の技術詳細は明誠のロープアクセス工法の技術解説、同業者向けの技術情報・訓練情報はロープアクセスドットコムをご覧ください。

令和4年の告示改正:ドローン赤外線という第3の選択肢

もう一つ、令和8年度の実務で押さえておきたい改正があります。

国土交通省は令和4年1月18日付で平成20年国土交通省告示第282号を一部改正し、打診以外の調査方法として、無人航空機(ドローン)による赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するものを明確化しました(出典:国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」)。

ただし、何をもって「打診と同等以上の精度」とするかには基準があります。一般財団法人日本建築防災協会が設置した委員会がまとめた「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドライン」を満たす必要があり、日射条件・外気温差・撮影角度・解像度などの制約がかかります。

私の正直な感想を申し上げます。ドローン赤外線は、広い面を短時間でスクリーニングするには優秀です。しかし中野区のように隣地が近く、上空の飛行スペースが取りにくい密集市街地では、飛行計画そのものが組みにくい。北面や日陰になる面は温度差が出ず、判定精度が落ちます。

そこで私がよく提案するのは、赤外線で当たりをつけて、疑わしい範囲をロープアクセスで直接打診するという組み合わせです。全面を人力で叩くよりコストが下がり、赤外線だけより確度が上がります。中野区の物件では、この併用が一番現実的だと感じています。

なお国土交通省は令和7年6月30日付で「建築物の定期調査報告における落下防止措置付き外壁タイルの取扱いについて(技術的助言)」を最終改正し、令和8年7月21日付でも「落下防止措置付き外壁タイルの性能検証法について」の事務連絡を出しています。ネット付きタイルなど落下防止措置を施した外壁の取扱いは動きがありますので、既に剥落防止工法を施工済みの建物は、調査者と扱いをすり合わせておくことをお勧めします。

ドローンを使った外壁調査については明誠のドローン調査でもご紹介しています。

12条点検を大規模修繕と一体化する3つのメリット

中野区の管理組合さま・ビルオーナーさまに、私が一番お伝えしたいのはここです。

メリット1:足場を1回で済ませられる

全面打診のために足場を組み、翌年また大規模修繕で足場を組む。これが一番もったいない使い方です。逆に、大規模修繕の年に12条の全面打診をぶつけられれば、足場費は実質ゼロになります。

用途コード40番台(5階建て以上・1,000㎡超の共同住宅)の中野区の次の報告年は令和9年度(2027年度)。令和9年度に大規模修繕を予定しているマンションなら、報告と工事を重ねる設計ができます。

メリット2:調査結果がそのまま補修数量になる

全面打診で「浮き○○㎡、欠損○○箇所」というデータが出れば、それが補修工事の数量根拠になります。別々に発注すると、調査会社の報告書と施工会社の見積がかみ合わず、追加工事が発生しやすい。一体で受けている会社なら、そこがつながります。

メリット3:長期修繕計画の見直し材料になる

12条の調査報告書は、外壁の劣化状況を第三者が記録した公的な書類です。長期修繕計画の見直しや、修繕積立金の改定を総会に諮るときの説得材料として、これほど使いやすいものはありません。「なんとなく古くなってきたから」ではなく、「令和8年度の定期調査でタイル浮きが外壁面積の12%で確認されたから」と言えるかどうかで、総会の通りやすさが変わります。

管理組合さま向けのサービスは管理組合向け大規模修繕サポート、ビルオーナーさま向けはビルオーナー向け改修サービスにまとめています。

明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は施工事例一覧からご覧いただけます。

中野区の報告手続き:窓口・提出先・様式

実務の段取りです。中野区は少し独特なので、ここを間違えると往復が発生します。

提出先は区役所ではなく「東京都防災・建築まちづくりセンター」

特定建築物定期調査報告と防火設備定期検査報告の提出先は、中野区役所ではなく、公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンターです。

項目 内容
所在地 〒160-8353 新宿区西新宿7-7-30 小田急西新宿O-PLACE 2階
電話(特定建築物) 03-5989-1929
電話(防火設備) 03-5989-1937
受付時間 月〜金(祝祭日を除く)9:00〜11:30/13:00〜16:00

(出典:公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター、中野区「定期報告とは」)

建築設備は一般財団法人 日本建築設備・昇降機センター(03-3591-2421)、昇降機等は一般社団法人 東京都昇降機安全協議会(03-6304-2225)と、提出先が分かれます。

敷地内に1万㎡超の建築物がある場合は東京都が所管

特別区内でも、敷地内に延べ面積1万㎡を超える建築物がある場合は、所管が東京都市街地建築部建築企画課(建築安全担当 03-5388-3344)になります(出典:東京都都市整備局)。中野駅周辺の大規模複合施設はここに該当する可能性があります。

整理番号がない場合

「014-○○-○○○○」という整理番号を取得していない建物は、中野区の定期報告対象建築物 概要調査票をメールで送って番号を取得するところから始まります。中古で建物を取得したオーナーさまは、前所有者から引き継げていないことがよくあります。制度全般の質問は中野区 都市基盤部 建築課(代表 03-3389-1111)へ。

初回免除に注意

新築・改築後は、検査済証の交付を受けた日の属する年度の翌年度以降の2回目の報告時期から報告が必要になります。東京都都市整備局の例示では、令和5年度中に検査済証が交付された共同住宅は、令和6年度の報告が免除され、令和9年度(令和9年5月1日〜10月31日)から報告が必要となります。検査済取得の時期によって最初の報告までの期間に幅が出るので、ここは早見表で確認してください。

よくあるご質問

Q. 令和8年度に中野区で12条報告が必要なのは、どんな建物ですか?

A. 3年ごと報告の区分では、用途コード30番台(物品販売店舗、展示場・飲食店・遊技場等、複合用途建築物、事務所)が令和8年度(2026年度)の報告年です。報告期間は令和8年5月1日〜10月31日。加えて、劇場・大規模ホテル・大型百貨店・地下街などの毎年報告物件は11月1日〜翌1月31日が報告期間です(出典:中野区)。

Q. うちは分譲マンションです。今年は関係ないということですか?

A. 5階建て以上かつ1,000㎡超の共同住宅(用途コード40番台)の中野区の報告年は2021年・2024年・2027年なので、次は令和9年度です。ただし全面打診の10年周期は報告年度とは別に進みます。前回の全面打診または外壁改修から令和9年度時点で10年を超えるなら、令和8年度のうちに調査計画を立てておくのが実務的です。調査会社も施工会社も、報告年度に予約が集中します。

Q. 外壁の全面打診は、いくらくらいかかりますか?

A. 打診そのものは250〜500円/㎡が目安です。問題は足場で、10階建て・外周80mの建物なら足場だけで約168万円が上乗せになります。ロープアクセス工法で調査のみ行う場合は約59万円が目安で、差額はおよそ109万円です。いずれも建物条件で大きく変動しますので、参考レンジとしてご覧ください。概算のお見積りは無料でお出しします。

Q. 打診調査の工期はどれくらいですか?

A. 足場を組む場合は、架設・解体を含めて2〜3週間が目安です。ロープアクセス工法なら、同規模で3〜5日程度で打診を終えられるケースが多くあります。足場の架設・解体期間がまるごと不要になるためです。

Q. ドローンの赤外線調査だけで報告は通りますか?

A. 令和4年1月18日の告示改正で、打診と同等以上の精度を有する無人航空機による赤外線調査は認められています。ただし日本建築防災協会のガイドラインが定める条件(日射・外気温差・撮影距離等)を満たす必要があり、北面や日陰面、隣地が近く飛行スペースが取りにくい中野区の密集地では制約が出ます。赤外線でスクリーニングし、疑わしい範囲をロープアクセスで直接打診する併用が現実的です。

Q. 報告を出していなかった期間があります。どうすればいいですか?

A. 遡って出せるものではありませんが、気づいた時点で調査を実施し、報告を提出するのが最善です。中野区または東京都防災・建築まちづくりセンターに事情を伝えれば、手続きの進め方を案内してもらえます。未報告のまま放置している状態が、管理責任の観点で最もリスクが高い状態です。

Q. 調査で浮きが見つかったら、すぐ全部直さないといけませんか?

A. 調査結果に基づく改善は、緊急度に応じた段階的な計画で進めるのが一般的です。歩行者や居住者に危害が及ぶおそれのある箇所を先行補修し、残りを次回の大規模修繕に組み込む、という設計が多い。中野区には改善計画書の様式も用意されています。

Q. 中野区は道が狭くて足場が組めないと言われました。打つ手はありますか?

A. ロープアクセス工法なら屋上からロープを下ろすため、地上の占用スペースがほぼ不要です。幅員4m未満の道路に面した物件でも成立するケースが大半です。庇やバルコニー内部など一部だけ足場が要る場合は、ロープアクセスと足場を組み合わせるハイブリッド工法で対応します。お問合せフォームから現地条件をお知らせいただければ、工法の当たりをつけてご返信します。

この記事のポイントまとめ

  • 令和8年度に中野区で報告年を迎えるのは用途コード30番台。締切は令和8年10月31日
  • 共同住宅(40番台)の次の報告年は令和9年度。準備は令和8年度中が実務的
  • 全面打診のトリガーは「竣工10年」「外壁改修10年」「要調査判定」「落下発生」の4つ
  • 中野区は区内道路の約43%が幅員4m未満。足場前提の見積は割高になりやすい
  • 打診は250〜500円/㎡。10階建て・外周80mで足場約168万円 vs ロープアクセス約59万円が目安
  • 令和4年改正でドローン赤外線も選択肢に。中野区では赤外線+ロープ打診の併用が現実的

まとめ:中野区で今週動くこと3点

長くなりました。最後に、明日からできることを3つだけ。

1. 自分の建物の用途コードと前回報告年を確認する

管理会社か、過去の報告書の控えを見れば分かります。整理番号「014-○○-○○○○」が書かれているはずです。見当たらなければ、中野区 都市基盤部 建築課に問い合わせれば台帳を確認できます。

2. 「前回いつ全面打診をしたか」を調べる

これが分からない管理組合が本当に多い。長期修繕計画書、過去の大規模修繕の竣工図書、理事会議事録。このあたりを当たってください。10年以上前だったら、今年度が動きどきです。

3. 足場ありきの見積を、無足場でも取ってみる

すでに調査会社から見積が出ている方も、比較のために無足場の見積を1本取ってみてください。中野区の物件は、道路条件のせいで足場費が想定より膨らんでいることがよくあります。差額が100万円単位で出るなら、理事会に報告する価値があります。

令和8年10月31日までが報告期間です。用途コード30番台のビルをお持ちの方は、9月中に調査会社を押さえないと間に合わない可能性があります。理事会や社内の会議で1分だけでも、この話題を出してみてください。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。

関連リソース:明誠の考え方は明誠の理念、技術者向け・同業者向けの情報はロープアクセスドットコム(https://rope-access-method.com/)にまとめています。


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月21日時点で公表されている中野区、東京都都市整備局、公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンターおよび国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・運用変更があり得ます。実際に報告や申請をされる前に、中野区 都市基盤部 建築課および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。記載の金額はすべて目安・参考レンジであり、実際の見積は物件条件により変動します。

出典・参考資料


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市

マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月21日

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