豊島区の管理組合が無料で使える相談・派遣11選|マンションアドバイザーは年4回・1回2時間まで無料、管理状況の届出は区の条例で義務【令和8年度版】
2026年9月20日 更新
豊島区の管理組合さまから伺う相談で、いちばん多いのはこれです。
「修繕の時期が近いのは分かっている。でも、誰に聞けばいいのか分からない」
管理会社に聞けば、管理会社の答えが返ってきます。施工会社に聞けば、施工会社の答えが返ってきます。どちらも嘘ではないのですが、組合の側に立った第三者の意見が一つも入らないまま、数千万円の工事を決める。これがいちばん危うい。
私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組んで建物を囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も自分の足で踏んできた人間です。
その立場から申し上げると、豊島区は23区のなかでも、管理組合向けの無料支援がよく整っている区です。しかも、豊島区には他区にない特徴が一つあります。管理状況の届出を、区の条例で「義務」としていることです。
豊島区は、区内の住宅のうち約8割がマンション(分譲マンションを含む共同住宅)であり、竣工後40年以上経過したマンションが今後急激に増加していくと公表しています(出典:豊島区「管理不全の予防~まずは、こちら!~」、2026年6月18日更新)。池袋・目白・大塚・巣鴨・要町と、駅ごとに性格の違うマンション群を抱えながら、そのストックが一斉に高齢化していく。区が支援制度を厚くしているのは、この事情があるからです。
今日は、豊島区の管理組合とビルオーナーさまが使える相談・派遣・助成を11個、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。
結論:豊島区で使える支援は11ある
先に一覧でお示しします。無料のものと、費用の一部が戻るものを分けて並べました。
| # | 制度・窓口 | 誰が対応するか | 費用 | 申込先 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 豊島区マンションアドバイザー派遣事業 | マンション管理士・一級建築士・税理士 | 無料/同一年度内4回・1回2時間まで | 住宅・マンション課マンショングループ 03-3981-1385 |
| 2 | 住宅・マンション課マンショングループの窓口・電話・メール相談 | 区職員 | 無料/平日9時〜17時 | 03-3981-1385 |
| 3 | 東京都マンション管理士会 電話相談 | マンション管理士 | 無料(通話料は自己負担)/30分程度 | 03-5829-9774 |
| 4 | 分譲マンション総合相談(東京都防災・建築まちづくりセンター) | 専門相談員 | 無料/平日+第1土曜・第3日曜 | 03-6427-4900 |
| 5 | 分譲マンション専門相談(東京都住宅政策本部) | 弁護士・一級建築士 | 無料/弁護士は月3回、建築士は月1回・完全予約制 | 区の住宅・マンション課経由 03-3981-1385 |
| 6 | 豊島区 法律相談(弁護士) | 弁護士 | 無料/1回30分以内・要予約 | 区民相談課 03-3981-4164 |
| 7 | (公財)マンション管理センター 電話相談 | 専門相談員 | 無料/平日9時30分〜17時 | 運営 03-3222-1517/建物・設備 03-3222-1519 |
| 8 | 分譲マンション計画修繕調査費助成 | ― | 調査費の2分の1(20万円限度) | 住宅・マンション課 03-3981-1385 |
| 9 | 分譲マンション耐震診断助成 | ― | 対象経費の3分の2(100万円限度) | 同上 |
| 10 | 分譲マンション耐震改修助成 | ― | 工事費の23%(1,000万円限度)、補強設計は3分の2(100万円限度) | 同上 |
| 11 | 建替え・改修アドバイザー制度利用助成 | 東京都のアドバイザー | 派遣料16,500円のうち10,000円を助成 | 同上 |
覚えておく電話番号は、実質2つで足ります。住宅・マンション課マンショングループ(03-3981-1385)と、東京都マンション管理士会の電話相談(03-5829-9774)。前者が豊島区の制度すべての入口で、後者は区役所の開いていない時間帯に考えを整理したいときの相手です。
ここからが本題です。
1. 豊島区マンションアドバイザー派遣:年4回・1回2時間が無料
豊島区の管理組合が最初に使うべき制度が、これです。
豊島区は、分譲マンションの管理組合にマンション管理士、一級建築士、税理士を無料で派遣し、維持管理・大規模修繕・建替えなどの疑問や相談について情報提供や助言を行っています(出典:豊島区「マンションアドバイザー派遣事業」、2026年7月1日更新)。
条件を整理します。
- 派遣対象:豊島区内に所在する分譲マンションの管理組合(管理組合が組織化されていない場合は要相談)
- 派遣時間:1回につき2時間まで(派遣開始時間の目安は午前10時〜午後6時)
- 派遣回数:1つのマンションにつき、同一年度内で4回まで
- 費用:無料。ただし会場費や資料代が発生した場合は管理組合の負担
- 専門家:マンション管理士/一級建築士/税理士
年4回×2時間で、合計8時間。マンション管理士を理事会に2回、一級建築士を修繕の検討会に2回、というように専門分野を分けて呼べるのがこの制度の大きな利点です。
申請前の「電話相談」が必須
ここを飛ばすと止まります。区は「派遣をご希望の場合、必ず“申請前に”住宅・マンション課マンショングループへお電話でご相談ください」と明記しています。電話番号は03-3981-1385です。
手続きの流れは次のとおりです。
- 事前電話相談(03-3981-1385)
- 「豊島区マンションアドバイザー派遣申請書」を記入(押印不要)し、窓口・郵送・メールのいずれかで提出。申請者は管理組合の代表者(理事長)
- 区から「派遣決定通知書」が届く
- アドバイザー本人から担当者へ直接連絡が入り、日程調整
- 訪問
- 終了後、「派遣結果報告書」を提出
原則として、派遣希望日の3週間前までに申請が必要です。理事会の日程が決まった時点で動かないと間に合いません。
対象外になる業務を先に知っておく
次の5つは、この派遣事業ではできません。
- 耐震診断の実施
- 長期修繕計画の作成
- 修繕工事等の設計書作成
- 係争中の事案
- 測定器による建物の精密測定
つまり、「作ってもらう」ことはできず、「判断を助けてもらう」制度だとご理解ください。長期修繕計画そのものを作りたい場合は、後述の計画修繕調査費助成(8番)のほうが筋がよいです。
なお区は、利用者が多い場合には年度途中で受付を終了することがあるとしています。年度前半に動くほうが確実です。
2. 区の窓口そのものが、最初の相談先になる
制度を使うほどではないけれど、方向だけ知りたい。そういうときは、住宅・マンション課マンショングループに直接聞けます。
区は、職員が窓口・電話・メール等で相談を受け、アドバイスや関係機関の紹介を行うと案内しています(出典:豊島区「分譲マンションの管理に関する相談窓口について知りたい」、2026年6月16日更新)。
- 受付:午前9時〜正午、午後1時〜5時(土日祝・年末年始を除く)
- 電話:03-3981-1385
- メール:A0022901@city.toshima.lg.jp
- 窓口:豊島区南池袋2-45-1 豊島区役所6階 住宅・マンション課マンショングループ
ただし、区は当事者間の仲裁に立つことや、特定の弁護士・企業・事業者を紹介することはできないと明記しています。「うちの管理会社と揉めているので間に入ってほしい」という使い方はできません。
私の経験上、この手の窓口は「答えをもらう場」というより「自分の物件の論点を整理する場」として使うのが正解です。外壁の浮きが何を意味するのか、いま動くべきか3年待てるのか。そこが整理できるだけで、次の理事会の議題が決まります。
3. 電話だけで済ませたいときの30分:東京都マンション管理士会
区役所が開いていない、あるいはまず匿名に近い形で聞いてみたい。そういう段階に向くのがこちらです。
一般社団法人 東京都マンション管理士会が、マンション管理士による電話相談を行っています(出典:前掲・豊島区の相談窓口ページ)。
- 電話:03-5829-9774
- 受付:月曜日〜金曜日 10時〜12時、13時〜16時(土日祝・振替休日は休み)
- 相談時間:30分程度
- 費用:相談は無料(ただし通話料は自己負担)
- 対面での相談は受け付けていません
30分という枠を活かすなら、聞きたいことを3つに絞って紙に書いてから電話してください。「修繕積立金が不足している」「見積りの金額差が説明できない」「理事のなり手がいない」——このくらい具体的なほうが、返ってくる答えも具体的になります。
4. 東京都の2つの窓口:総合相談と、区を経由する専門相談
豊島区の制度の外側に、東京都の窓口が2つあります。性格がまったく違うので分けて説明します。
分譲マンション総合相談(東京都防災・建築まちづくりセンター)
日常の維持管理、建替えや改修に関する相談、管理状況届出制度の問い合わせに応じる総合窓口です。
- 所在地:新宿区西新宿7-7-30 小田急西新宿O-PLACE 2F
- 電話:03-6427-4900/FAX:03-6427-4901
- 相談日:月曜日〜金曜日、第1土曜日および第3日曜日
- 相談時間:午前9時〜午後5時(水曜日は午後7時まで延長、受付は午後6時まで)
- 詳しくは公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター
平日に動けない理事の方にとって、第1土曜・第3日曜が開いているのは大きい。水曜の夜間延長も覚えておいて損はありません。
分譲マンション専門相談(東京都住宅政策本部)
弁護士や一級建築士に相談する必要があると考えられる案件に向けた、都の専門相談です。申込は区の窓口を経由します。
- 弁護士相談:月3回 午後1時〜3時(完全予約制)
- 建築士相談:月1回 午後1時〜3時(完全予約制)
- 利用の流れ:① 豊島区住宅・マンション課へ来庁し、相談内容と希望日を伝える → ② 相談日の3日前までに都の担当者から直接連絡 → ③ 当日、都庁第二本庁舎13階南(新宿区西新宿2-8-1)へ
- 問い合わせ:03-3981-1385(豊島区住宅・マンション課マンショングループ)
建築士相談は月1回しか枠がありません。大規模修繕の設計や工事監理について第三者の意見が欲しいなら、早めに区へ来庁予約の相談をしてください。
なお、区の相談窓口ページでは東京弁護士会マンション管理相談窓口(03-3581-2223)も案内されていますが、こちらは最初の電話で取扱対象かを確認したうえでの面接相談が30分5,500円(税込)の有料です。無料の窓口と混同しないようご注意ください。
5. 豊島区の法律相談:1回30分、予約は毎月20日から
区分所有者間のトラブルや、管理費の滞納、賃貸借に関する法律問題は、区の法律相談が使えます。
弁護士が土地・家屋・金銭貸借・相続など法律問題全般について、問題解決の糸口となる初歩的な法的アドバイスを行う相談です(出典:豊島区「法律相談(弁護士)」、2025年6月30日更新)。
- 1回30分以内、1日3人(組)まで
- 相談日時:月曜日〜金曜日 午後1時15分〜3時45分、毎月第2土曜日 午前10時15分〜午後0時45分
- 予約:毎月20日から翌月分の受付開始(20日が閉庁日の場合は翌開庁日から)
- 対象:豊島区在住・在勤・在学のかた。同じ内容での相談は1回のみ
- 予約・問い合わせ:区民相談課庶務・相談グループ 03-3981-4164
- 令和5年8月から、対面/電話/オンライン(ビデオトーク)を選べます
注意点として、調停や裁判で係争中の案件は受け付けられません。また、書類作成や相手方との交渉は行いません。あくまで入口です。
6. 豊島区は「届出が義務」の区である
ここが豊島区のいちばんの特徴です。
豊島区は、管理状況届出書の作成と届出を管理組合の義務としています。根拠は「豊島区マンション管理推進条例」と「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」の2つ。しかも区は、届出が無い場合等には条例に基づきマンション名を公表する場合があると明記しています(出典:豊島区「『管理状況届出制度』に関する届出について」、2026年3月5日更新)。
対象は豊島区内のすべての分譲マンションの管理組合です。東京都条例の届出義務が「昭和58年12月31日以前に新築された6戸以上」に限られるのに対し、豊島区は区の条例で全分譲マンションに広げている。ここが他区と違います。
届出書の様式も2種類に分かれます。
| 対象 | 根拠 | 様式 |
|---|---|---|
| 昭和58(1983)年12月31日以前に新築された6戸以上の分譲マンション | 東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例 | 都様式の管理状況届出書 |
| 上記以外の分譲マンション | 豊島区マンション管理推進条例 | 区様式の管理状況届出書(PDF・エクセル) |
平成25年(2013年)の制度開始以来、届出率は8割を超えたものの、約2割のマンションが未届出というのが区の公表している状況です。
届出は「義務」であると同時に、無料の自己診断ツールでもある
制度の主旨は取り締まりではありません。区は、総会の年1回開催、管理規約の作成・更新、長期修繕計画の作成・見直し、大規模修繕工事の実施といった「管理組合が必ず行わなければならないこと」を、届出書を作成する過程で自ら確認してもらうことが目的だと説明しています。
そして区は、届出書を作って改善点が見えたものの、課題の整理や優先順位づけができない場合はマンション専門家派遣事業を使ってほしいと案内しています。つまり、届出書の作成 → 課題の抽出 → アドバイザー派遣という流れが、区が想定している使い方です。ここまでの費用はゼロです。
届出先は住宅・マンション課マンショングループ。郵送・FAX(03-3980-5136)・メール(A0022901@city.toshima.lg.jp)・窓口持参のいずれでも受け付けています。
7. 調査には助成が出る:計画修繕調査費、2分の1・20万円限度
ここからは「無料ではないが、費用の一部が戻る」制度です。大規模修繕に直結するのはこちらです。
豊島区は、長期修繕計画の作成や大規模修繕工事のために行う建物診断(劣化診断)の費用の一部を助成しています(出典:豊島区「分譲マンション計画修繕調査費助成」、2026年3月10日更新)。
- 助成額:計画修繕調査に要する費用の2分の1(20万円限度)
- 令和8年度の受付は4月1日から開始。申請前に必ず住宅・マンション課マンショングループへ問い合わせ
- 申請は調査の契約締結前、調査完了は年度内のものが対象
- 予算の範囲内。予算を超えた場合は受付終了
対象となる管理組合の条件は4つです。
- 建築後8年以上を経過した分譲マンションの管理組合であること
- 管理規約が整備されていること
- 管理組合の集会で、計画修繕調査の実施について決議がなされていること
- 過去10年以内に、本要綱による助成を受けていないこと
対象となる調査は、共用部分について、大規模修繕工事のため、または長期修繕計画の作成・更新のために調査業者に委託して実施する劣化診断調査です。調査対象箇所は区が明示しています。
- 構造:外壁(塗装・タイル)、防水(屋上・ルーフバルコニー・開放廊下・屋外階段)、鉄部塗装、外構
- 設備:給排水設備、電気設備、消防設備、エレベーター、機械式駐車場
外壁とタイル、屋上・バルコニーの防水が正面から対象に入っています。2回目・3回目の大規模修繕を控えた豊島区のマンションにとって、いちばん実務的な助成がこれです。
注意すべきは順番です。契約してから申請しても対象外になります。総会で調査実施を決議 → 区へ事前相談 → 申請 → 承認通知を受けてから契約・着手、という順を崩さないでください。
8. 旧耐震なら:診断3分の2・100万円、改修23%・1,000万円
昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた分譲マンションには、別枠の助成があります。
耐震診断助成
(出典:豊島区「分譲マンションの耐震診断助成事業」、2025年8月12日更新)
- 助成額:助成対象経費の3分の2(100万円が限度)
- 対象建築物:昭和56年5月31日以前に建築基準法第6条に基づく確認を受けた分譲マンションで、3階(地階を除く)以上のもの/原則として建築基準法および関係法令に適合していること/耐火建築物または準耐火建築物であること/耐震診断に必要な図書に不備がないこと
- 対象者:管理組合
- 申請は耐震診断着手前、診断完了は年度内のものが対象
耐震改修助成
(出典:豊島区「分譲マンションの耐震改修助成事業」、2025年6月17日更新)
- 助成額:耐震改修工事に要した費用の23パーセント(1,000万円が限度)。利用の可否は事前に要問い合わせ
- 耐震補強設計:要した費用の3分の2(100万円が限度)
- 追加条件:耐震診断の結果、倒壊の危険があると判断されたもの/補強設計により構造耐震指標Is値が0.6以上となること/管理組合の総会で耐震改修工事を実施する決議がなされていること
- 申請は工事着手前、工事完了は年度内のものが対象
上記2ページは更新日が令和7年(2025年)中のものです。令和8年度の予算枠や運用に変更がないかは、申請前に必ず住宅・マンション課(03-3981-1385)へご確認ください。本記事では区ページに現在掲載されている内容をそのまま紹介しています。
建替えか改修かで迷っている段階なら
東京都の「分譲マンション建替え・改修アドバイザー制度」を利用する際、豊島区は派遣料の3分の2を助成します。Aコース入門編の派遣料16,500円(税込)に対し、助成額は10,000円です(出典:豊島区「分譲マンション建替え・改修アドバイザー制度利用助成」、2026年3月5日更新)。テキスト代・消費税・違約金は助成対象外で、助成は予算の範囲内です。
実質6,500円で、建替え円滑化法や税制、老朽度判定、合意形成の進め方についてアドバイザーの説明を受けられる。改修で延命するか建替えるかを判断する前の「共通言語づくり」として、費用対効果は高いと思います。
9. 管理計画認定制度:手数料が3,900円と29,500円で分かれる
豊島区は令和5年4月1日から、マンション管理計画認定制度を開始しています(出典:豊島区「豊島区マンション管理計画認定制度」、2026年8月14日更新)。
認定を受けると、次のような効果が期待されると区は説明しています。
- 一定水準以上の管理がされているマンションとして市場で評価される
- 認定取得後に大規模修繕工事を行った場合、その翌年度の固定資産税(建物部分)が減額される
- 住宅金融支援機構の【フラット35】およびマンション共用部分リフォーム融資の金利引き下げ等が適用される
有効期間は認定日から5年間(5年ごとの更新が可能)です。
手数料の差が7.5倍あるという事実
ここは金額を正確に押さえてください。豊島区の申請手数料は、申請ルートによって大きく変わります。
| 申請ルート | 基本手数料 | 長期修繕計画が複数ある場合の1件あたり加算 |
|---|---|---|
| (公財)マンション管理センターの事前確認を経て申請 | 3,900円 | 1,600円 |
| 豊島区に直接申請 | 29,500円 | 15,900円 |
ただし前者は、豊島区への手数料とは別に、マンション管理センターへの申請手数料20,000円が必要です。合計では23,900円。単純な比較ではなく、書類の整い方や手戻りの少なさまで含めて選ぶことになります。
豊島区には「独自の認定基準」がある
見落とされがちな点です。豊島区は国の認定基準に加えて区独自の認定基準を設けており、マンション管理センターでは区独自基準の適合確認を行いません。区は「事前確認適合証を受けた場合であっても、豊島区独自の認定基準に適合しない場合は認定が受けられません」と明記しています。
申請にあたっては、①区が発行した納付書で手数料を納付、②豊島区独自基準を反映した書式の認定申請書を提出、③区独自基準に関する表明保証書を作成して提出、という3点が必要です。いずれの方法で申請する場合も、事前に集会(臨時総会を含む)での決議が必要で、申請準備中に区独自基準を確認したうえでマンショングループへ事前相談することが求められます。
10. マンション防災:東京とどまるマンションと備蓄の補助
大規模修繕とは別の軸ですが、管理組合として動きやすいのがこちらです。
豊島区は、首都直下地震が発生した場合、区内の小中学校に救援センターを開設するものの、原則として住まいを失った方が避難する場所であるため、マンション居住者には在宅避難を推奨しています(出典:豊島区「マンション防災」、2026年8月10日更新)。
区はマンション防災マニュアルの作成例(ワード形式)を無料で配布しています。ゼロから書く必要はありません。
また東京都の「東京とどまるマンション」制度に登録すると、分譲マンションの管理組合や賃貸マンションの所有者等を対象に、簡易トイレやエレベーターに設置する防災キャビネットなどの防災備蓄資器材の購入等について補助を受けられます。豊島区版のリーフレットも区が作成しています。
賃貸マンションのオーナーさまも対象に含まれる点は、収益不動産をお持ちの方にとって見逃せないところです。
11. 相談の前に持っておきたい、修繕の相場観
窓口で「うちはいくらかかりそうか」と聞かれたとき、ゼロから説明するのは大変です。参考値として一般的なレンジを頭に入れておくと、話が早く進みます。
| 項目 | 参考値の目安 |
|---|---|
| 外壁打診調査 | 250〜500円/㎡ |
| 外壁塗装 | 3,500〜4,500円/㎡ |
| 屋上・バルコニー防水 | 5,000〜8,000円/㎡ |
| 30戸規模の大規模修繕 総額 | 3,500〜5,000万円 |
| うち仮設足場が占める割合 | 総額の15〜25% |
これらはあくまで目安・レンジであり、実際の見積は建物の形状、立地、劣化状況によって大きく変動します。断定的な数字としては扱わないでください。
それでも、仮設足場が総額の15〜25%を占めるという構造だけは知っておく価値があります。見積書の金額差の多くは、ここと、数量の拾い方の違いで説明がつきます。
たとえば10階建て・外周80m・工期3か月の物件で、仮設足場が約168万円かかるケースがあります。同じ範囲をロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が懸垂下降しながら施工する無足場工法)に置き換えると、仮設費が約59万円まで下がる試算になります。差額にして約109万円。これも条件次第で変わる参考値ですが、桁の感覚として頭に置いておくと、見積書の読み方が変わります。
豊島区は、池袋周辺の商業地と、目白・雑司が谷・要町といった住宅地が混在しています。隣地との離隔が取りにくい敷地、前面道路が狭く足場材の搬入が難しい敷地が少なくありません。足場が組みにくい外周だけロープアクセスで対応するハイブリッド工法という選び方もあります。工法ごとの違いは、明誠のロープアクセス工法の技術詳細と、同業者・技術者向けの姉妹サイトロープアクセスドットコムで解説しています。
株式会社明誠は、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業については、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業で過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟する体制をとっており、IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が現場に立ちます。安全管理の考え方は明誠の安全管理体制に、料金の組み立て方は大規模修繕の料金の考え方にまとめました。
12. 豊島区の管理組合が、今週動くこと3点
長くなりましたので、動き方だけ整理します。
1. 管理状況届出が済んでいるか確認する
豊島区では届出は義務です。未届出のまま放置すると、条例に基づきマンション名が公表される場合があります。過去に届け出ていても、管理費・修繕積立金・長期修繕計画・管理者等に変更があれば変更届出が必要です。最後の届出から5年経っていれば更新届出への協力も求められています。まず理事会で「うちは出したか」を確認してください。
2. アドバイザー派遣を、次の理事会に合わせて申請する
年4回・1回2時間が無料。原則3週間前までの申請です。逆算すると、来月の理事会に呼ぶなら今週中に03-3981-1385へ電話する必要があります。利用者多数の場合は年度途中で受付終了もあり得ます。
3. 調査を予定しているなら、契約前に区へ相談する
計画修繕調査費助成は、契約締結前の申請が条件で、調査完了は年度内。しかも予算の範囲内です。見積りを取り始める前に、住宅・マンション課へ一本入れてください。順番を間違えると、20万円が消えます。
この3つは、どれも理事会の決議を待たずに「問い合わせ」まで進められます。総会の前段階で情報を集めておくかどうかで、1年後の選択肢の数が変わります。
よくあるご質問
Q. 豊島区のマンションアドバイザー派遣は、何回まで無料ですか?
A. 1つのマンションにつき、同一年度内で4回までです。1回あたり2時間まで、費用は無料です(会場費や資料代が発生した場合は管理組合の負担になります)。利用者が多数の場合は年度途中で受付を終了することがあるため、早めの申請をおすすめします。
Q. アドバイザー派遣で、長期修繕計画を作ってもらえますか?
A. 作成はできません。豊島区は派遣対象外の業務として、耐震診断の実施、長期修繕計画の作成、修繕工事等の設計書作成、係争中の事案、測定器による建物の精密測定の5つを挙げています。長期修繕計画の作成や更新のための劣化診断調査については、計画修繕調査費助成(費用の2分の1・20万円限度)のほうが対象になります。
Q. 賃貸マンションやビルのオーナーでも使える制度はありますか?
A. 豊島区のマンションアドバイザー派遣や各種助成は、分譲マンションの管理組合が対象です。一方で、東京都の「東京とどまるマンション」制度の防災備蓄資器材の補助は、賃貸マンションの所有者等も対象に含まれます。区の法律相談(区民相談課 03-3981-4164)も、豊島区在住・在勤・在学であれば個人として利用できます。収益物件の維持管理・修繕についてはビル・収益不動産オーナー向けのご提案もご覧ください。
Q. 管理計画認定は、どちらのルートで申請すると安いですか?
A. 豊島区への手数料だけを見れば、マンション管理センターの事前確認を経るルートが3,900円、区に直接申請するルートが29,500円です。ただし前者はマンション管理センターへの手数料20,000円が別途必要なため、合計では23,900円になります。いずれの場合も豊島区独自の認定基準への適合が必要ですので、申請準備中にマンショングループ(03-3981-1385)へ事前相談してください。
Q. 外壁の打診調査にはいくらかかりますか?
A. 一般的な目安として250〜500円/㎡程度ですが、建物の形状、足場の要否、調査範囲によって大きく変わります。明誠ではロープアクセス工法を使い、足場を組まずに打診調査を行う方法もご提案しています。概算のお見積りをご希望でしたら明誠のお問い合わせ窓口からご連絡ください。
Q. 足場を組まないロープアクセス工法だと、工期はどれくらい短くなりますか?
A. 物件条件によりますが、仮設足場の架設・解体に要する期間が不要になるため、足場工法の6割程度の工期で完了するケースがあります。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場工法で約3か月のところ、ロープアクセスで1.5〜2か月が一つの目安です。工法ごとの技術的な条件はロープアクセスドットコムでも解説しています。
Q. 管理状況届出をしていないと、どうなりますか?
A. 豊島区は管理状況届出書の作成・届出を管理組合の義務としており、届出が無い場合等には区の条例に基づきマンション名を公表する場合があると明記しています。届出率は8割を超えていますが、約2割が未届出という状況です。様式は建築年と戸数によって都条例系・区条例系の2種類に分かれますので、住宅・マンション課(03-3981-1385)へご確認ください。
Q. 耐震改修の助成は、工事のあとでも申請できますか?
A. できません。耐震改修助成は工事着手前の申請、工事完了は年度内のものが対象です。耐震診断助成も同様に、診断着手前の申請が条件です。計画修繕調査費助成も契約締結前の申請が必要で、いずれも「先に契約してしまうと対象外」という共通の落とし穴があります。
まとめ
豊島区の管理組合とオーナーさまが使える支援は、無料の相談・派遣が7つ、費用の一部が戻る助成が4つ。合計11あります。
このうち、豊島区でいちばん使い勝手がいいのはマンションアドバイザー派遣(年4回・1回2時間・無料)です。マンション管理士・一級建築士・税理士という3つの専門を、年度内に使い分けて呼べる。これだけの枠を用意している区は多くありません。
そして、豊島区だけの論点が管理状況届出の義務化です。届出書を作る作業そのものが、総会の開催状況、管理規約、長期修繕計画、大規模修繕の実施状況を棚卸しする無料の自己診断になっています。届出 → 課題の抽出 → アドバイザー派遣。この順で進めれば、ここまで費用はかかりません。
制度は、知っている組合だけが使えます。私が現場で見てきたかぎり、修繕で苦労する組合とそうでない組合の差は、建物の状態よりも「相談先をいくつ持っているか」で決まります。管理会社が1社だけ、という状態が一番危うい。
明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。管理組合さま向けのサービス内容は管理組合向けの大規模修繕サポートに、私たちの仕事の考え方は明誠の理念にまとめました。
まずは03-3981-1385に一本。理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。
出典・参考資料
- 豊島区「マンションアドバイザー派遣事業」(2026年7月1日更新)
- 豊島区「分譲マンションの管理に関する相談窓口について知りたい」(2026年6月16日更新)
- 豊島区「管理不全の予防~まずは、こちら!~」(2026年6月18日更新)
- 豊島区「『管理状況届出制度』に関する届出について」(2026年3月5日更新)
- 豊島区「分譲マンション計画修繕調査費助成」(2026年3月10日更新)
- 豊島区「分譲マンションの耐震診断助成事業」(2025年8月12日更新)
- 豊島区「分譲マンションの耐震改修助成事業」(2025年6月17日更新)
- 豊島区「分譲マンション建替え・改修アドバイザー制度利用助成」(2026年3月5日更新)
- 豊島区「豊島区マンション管理計画認定制度」(2026年8月14日更新)
- 豊島区「マンション防災」(2026年8月10日更新)
- 豊島区「法律相談(弁護士)」(2025年6月30日更新)
- 公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター「分譲マンション総合相談」
- 一般社団法人 東京都マンション管理士会
- 公益財団法人 マンション管理センター
- 東京都マンションポータルサイト「東京とどまるマンション」
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月20日時点で公表されている豊島区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。分譲マンションの耐震診断助成・耐震改修助成のページは令和7年(2025年)中の更新であり、令和8年度の予算枠や運用が変更されている可能性があります。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず豊島区住宅・マンション課マンショングループ(03-3981-1385)および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月20日
杉並区の管理組合が無料で使える相談・派遣10選|マンション管理無料相談は毎月第2木曜、耐震助成の受付は10月30日まで【令和8年度版】
2026年9月20日 更新
「本間さん、見積りが3社で倍近く違うんですよ。どれが正しいんですか」
今年の春、杉並区の荻窪にある築34年・48戸のマンションで、理事長さまからそう伺いました。手元にあった3社の大規模修繕見積りは、7,800万円、1億200万円、1億4,000万円。同じ建物、同じ工事範囲のはずなのに、6,000万円以上の開きがある。理事会が完全に止まっていました。
私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組んで囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も自分の足で踏んできた人間です。
このときお伝えしたのは、施工の話ではありませんでした。まず、管理会社でも施工会社でもない第三者の目を、お金をかけずに入れましょう、ということです。杉並区には、マンション管理士が毎月応じる無料相談から、旧耐震の建物に専門家を無料で派遣する制度まで、段階に応じた窓口が揃っています。
杉並区は、阿佐ヶ谷・荻窪・西荻窪・高円寺という中央線沿線の中規模マンション群と、永福・浜田山・久我山といった住宅地のマンションが中心の区です。タワーマンションは多くない代わりに、築30年から40年の中規模マンションが厚い。ちょうど2回目の大規模修繕、あるいは耐震化の判断が迫る帯にストックが集中しています。
今日は、杉並区のマンション管理組合とビルオーナーさまが、お金をかけずに使える相談・派遣を10個、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。耐震化助成の受付が令和8年10月30日で締まるという、期限の近い話も含みます。
結論:杉並区で無料で使える相談・派遣は10ある
先に一覧でお示しします。
| # | 制度・窓口 | 誰が対応するか | 費用・頻度 | 申込先 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 杉並区 マンション管理無料相談 | マンション管理士 | 無料/毎月第2木曜・1件50分以内 | 杉並マンション管理士会 事務局 03-3393-3680(申込はWeb・FAX) |
| 2 | 杉並区 住まいの修繕・増改築相談 | 建築業者(杉並区小規模建設事業団体連絡会) | 無料/毎週月曜・金曜・予約不要 | 区役所1階ロビーへ直接 |
| 3 | 杉並区 不動産に関する無料相談 | 宅地建物取引士 | 無料/毎月第3木曜 | 東京都宅建協会第10ブロック 03-6407-9152 |
| 4 | 杉並区 耐震相談アドバイザー派遣 | 建築士等の専門家 | 無料/受付期間にかかわらず申込可 | NPO法人 耐震総合安全機構(JASO)03-5654-5765 |
| 5 | 杉並区 簡易診断 | 建築士等 | 無料/マンション等が対象 | アドバイザー派遣の結果報告時に案内 |
| 6 | 杉並区 耐震化助成(精密診断・補強設計・耐震改修) | ― | 費用の一部助成/受付は令和8年10月30日まで | 市街地整備課耐震改修担当 03-3312-2111 |
| 7 | 杉並区 法律相談(弁護士) | 弁護士 | 無料/30分以内・平日+第3土曜 | 予約専用 03-5307-0617 |
| 8 | 杉並区立消費者センター 消費者相談 | 消費生活相談員 | 無料/平日9時〜16時 | 相談専用 03-3398-3121 |
| 9 | 東京都 マンションアドバイザー無料派遣/管理士無料派遣 | マンション管理士等 | 無料/令和9年2月26日まで受付(防災・認知症枠) | 東京都マンション管理士会ほか |
| 10 | 分譲マンション総合相談窓口/マンション管理センター | マンション管理士等 | 無料/平日 | 03-6427-4900/03-5801-0858 |
電話番号は、実質3つ押さえておけば足ります。杉並マンション管理士会事務局(03-3393-3680)が管理の相談。JASO(03-5654-5765)が旧耐震建物の専門家派遣。東京都防災・建築まちづくりセンター(03-6427-4900)が都の制度全般の入口です。
ここからが本題です。
1. 杉並区マンション管理無料相談:毎月第2木曜、1件50分
杉並区の管理組合が最初に使うべき窓口が、これです。管理組合の運営や大規模修繕など、分譲マンションの管理に関する問題について、マンション管理士が相談に応じます(出典:杉並区「マンション管理無料相談」)。
マンション管理士というのは、管理組合の運営や建物の修繕管理について助言・指導を行う国家資格者です。管理会社の営業担当とは立場が違い、組合の側に立って意見をくれる専門家だとお考えください。
- 相談日時:毎月第2木曜日 午後1時30分〜午後4時30分(祝日・休日を除く)
- 相談時間:1件50分以内
- 相談場所:区役所1階ロビー(杉並区阿佐谷南1-15-1)
- 費用:無料
- 予約:原則、事前予約制
申し込みは「Webフォームかファクス」だけ
ここが杉並区の特徴で、うっかりすると空振りします。電話では申し込めません。区も、杉並マンション管理士会事務局も、電話での申込受付はしていないと明記しています。
申込方法は次の2つです。
- 一般社団法人 杉並マンション管理士会のホームページ内、専用フォームから申し込む
- 予約専用ファクス用紙(PDF)を使い、ファクス 03-3393-3652 へ送る
杉並区役所の窓口でも申し込みはできません。問い合わせ先は杉並マンション管理士会事務局(03-3393-3680、平日午前9時〜午後5時)ですが、ここも「申込は電話不可」です。
予約の申し込みが済むと、杉並マンション管理士会から相談日時などの連絡が来る流れになります。
なお、区が案内しているこのページの更新日は2020年6月24日であり、掲載されている案内チラシも令和2年度版のものです。相談日程や運用が現在も同じかどうかは、申込前に杉並マンション管理士会へご確認ください。本記事では区ページに記載されている内容をそのまま紹介していますが、年度をまたいで変更されている可能性を否定できません。
持っていく資料で、50分の密度が変わる
区は「管理規約など対象マンションの状況がわかる資料をご持参ください」とだけ書いています。50分という枠を考えると、私は次の3点セットをおすすめします。
- 管理規約(特別決議の要件、専有部分と共用部分の境界が分かる)
- 直近3年分の総会議事録(何が決まって、何が保留になっているか)
- 長期修繕計画書(次の大規模修繕の想定時期と想定金額)
これに、外壁の不具合箇所を撮った写真を加えると、話が一段深くなります。写真は地上からスマートフォンで撮ったもので構いません。ただし撮影日と、階数・方角のメモを添えてください。「北面3階バルコニー下、2026年9月撮影」まで書いてあると、専門家の見立てが速くなります。
2. 予約不要で使える、毎週2回の修繕相談
管理組合としてではなく「まず誰かに建物のことを聞きたい」という段階なら、こちらが手軽です。
杉並区は、住宅の修繕や増改築についての相談に、杉並区小規模建設事業団体連絡会の建築業者が応じる「住宅増改築無料相談」を実施しています(出典:杉並区「住まいの修繕・増改築相談」、2025年9月3日更新)。
- 開催日:毎週月曜日・金曜日(祝日および年末年始を除く)
- 受付:午後1時〜午後3時45分
- 場所:区役所1階ロビー
- 費用:無料
- 直接、相談会場へ行けばよい(予約不要)
週2回、予約なしで専門家に会える窓口は、23区でもそう多くありません。会場に行けない場合は、杉並区小規模建設事業団体連絡会事務局(東京土建杉並支部まちづくりセンター、03-3317-0450)へ相談できます。区の担当は住宅課管理係(03-5307-0661)です。
私の経験上、この手の相談窓口は「答えをもらう場」というより「自分の物件の論点を整理する場」として使うのが正解です。外壁の浮きが何を意味するのか、いま動くべきか3年待てるのか。そこが整理できるだけで、次の理事会の議題が決まります。
3. 不動産に関する無料相談:毎月第3木曜、宅建のプロに
区分所有の権利関係や、賃貸に出している住戸の扱い、売却を含めた出口の話。これらは、東京都宅地建物取引業協会第10ブロックが対応する窓口が向いています(出典:杉並区「不動産に関する無料相談」、2023年7月31日更新)。
- 相談日時:毎月第3木曜日 午後1時30分〜午後4時30分(祝日および年末年始を除く)
- 会場:区役所1階ロビー
- 費用:無料
- 予約:原則、電話での事前予約制。東京都宅地建物取引業協会第10ブロック(03-6407-9152、平日午前9時〜午後5時)
収益物件をお持ちのオーナーさまは、この窓口と後述の法律相談を組み合わせると、修繕と資産運用の両面から整理ができます。
4. 杉並区の「旧耐震マンション」向け、無料のアドバイザー派遣と簡易診断
ここが、杉並区の制度でいちばん見落とされやすい部分です。
杉並区は、昭和56年5月以前に建てられた木造以外の建物について、耐震診断・補強設計・耐震改修の費用の一部を助成し、あわせて耐震相談アドバイザー等を無料で派遣しています(出典:杉並区「木造以外の建物の耐震化に関する助成制度『マンション・ビルなどの耐震化を支援します』」、2026年4月1日更新)。
アドバイザー派遣(無料)
区は、こう案内しています。建物の耐震性に不安がある方、耐震化を進めようと考えている方は、まず耐震相談アドバイザー派遣により、耐震診断の必要性などについて専門家のアドバイスを受けてください、と。
重要なのは申込タイミングの扱いです。後述する助成の申請受付期間は年度内に区切られていますが、アドバイザー派遣および簡易診断は、その受付期間にかかわらず申し込めると区が明記しています。つまり、10月30日を過ぎても相談だけは続けられる、ということです。
申込方法は、耐震相談アドバイザー派遣申込書に記入して、郵送またはファクスで送るだけです。
- 申込書:耐震相談アドバイザー派遣申込書(PDF)
- 申込先:NPO法人 耐震総合安全機構(JASO)/文京区春日2-10-15 志知ビル3階/電話 03-5654-5765/ファクス 03-5654-5766
派遣内容の詳細は、区が公開している【パンフレット】マンション・ビルなどの耐震化を支援します(令和8年4月改訂)(PDF)に載っています。令和8年4月改訂版ですから、令和8年度の内容です。
簡易診断(無料)
さらに、簡易診断も無料で受けられます。ただし対象が限定されています。
- 簡易診断を受けられるのは、「マンション」および「特に耐震化を促進する地域や建物」のみ
- 対象者には、アドバイザー派遣結果報告書の送付時に簡易診断申込書が同封される
- 簡易診断は任意で、対象者でも簡易診断を受けずに精密診断へ進むこともできる
「マンションであれば簡易診断まで無料」という設計です。旧耐震のマンションを所有されている管理組合さまが、まず無料でどこまで進めるか。アドバイザー派遣 → 簡易診断、ここまでは費用ゼロで到達できる、と理解してください。
5. 杉並区の耐震化助成:受付は令和8年10月30日まで
無料で診てもらった先に、費用助成があります。
杉並区は、精密診断・補強設計・耐震改修の費用の一部を助成しています。そして、助成の申請受付期間は令和8年4月1日から10月30日までです(出典:前掲・杉並区「木造以外の建物の耐震化に関する助成制度」、2026年4月1日更新)。
この記事を書いている2026年9月20日時点で、残り約40日です。
区は同じページで、「事前に必ずご相談ください」「次年度は4月1日に受付を開始します」「受付期限を過ぎても受付可能な場合もありますので、必ずご相談ください」とも書いています。10月30日で機械的に閉まるわけではない可能性がありますが、それを前提に動くのは危うい。まず電話です。
助成額や対象要件は、建物の規模・用途・道路との関係によって変わります。私の立場で「いくら出ます」と断定することはできませんので、具体的な金額は必ず令和8年4月改訂のパンフレット(PDF)と、区の窓口でご確認ください。
- 問い合わせ:都市整備部市街地整備課耐震改修担当(区役所西棟3階)/電話 03-3312-2111/ファクス 03-3312-2907
なお、明治通りや環状七号線のような緊急輸送道路の沿道にある建物は、特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化に関する助成制度や一般緊急輸送道路沿道建築物の耐震化に関する助成制度という別枠の対象になる場合があります。自分の建物がどちらかは、電話で聞くのが確実です。
6. 杉並区の弁護士無料相談と、消費者センター
管理費や修繕積立金の滞納、専有部分の使用方法をめぐる対立。管理組合の悩みには、技術ではなく法律の話が混ざります。
杉並区は、弁護士による法律相談を予約制で実施しています(出典:杉並区「法律相談【弁護士による】(予約制)」)。
- 相談日時:月曜日〜金曜日 午後1時〜午後4時。加えて毎月第3土曜日 午後1時〜午後4時の土曜相談あり
- 相談時間:30分以内
- 予約:予約専用電話 03-5307-0617。来庁の場合は区政相談課(東棟1階)
- 予約受付:月曜〜金曜 午前8時30分〜午後5時(当日分は午後3時で受付終了)
平日に加えて第3土曜の枠があるのは、勤めのある理事長さまにはありがたい設計です。
工事契約でおかしいと思ったら、消費者センターへ
突然訪ねてきた業者に不安を煽られて契約してしまった、といったケースは、杉並区立消費者センターが窓口です。
- 相談専用電話:03-3398-3121(事務室 03-3398-3141)
- 受付:平日 午前9時〜午後4時
- 所在地:杉並区天沼3-19-16 ウェルファーム杉並複合施設棟3階
(出典:杉並区立消費者センター、国民生活センター「杉並区立消費者センター」)
現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、まっとうな相場の3倍で契約してしまった組合に、後から呼ばれるときです。契約前なら止められた話が、着工後ではどうにもなりません。少しでも引っかかったら、印鑑を押す前にこの番号へかけてください。
7. 東京都の無料派遣:届出を出していれば、専門家が来る
ここからは、杉並区だけでなく都内全域の管理組合が使える制度です。
マンションアドバイザー無料派遣
東京都は、管理状況届出制度による届出を行った管理組合に対し、その管理状況に応じてマンション管理士などの専門家を無料で派遣しています(出典:東京都マンションポータルサイト「マンションアドバイザー無料派遣のご案内」)。
管理状況届出制度は、「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」に基づく仕組みで、昭和58年以前に新築された6戸以上のマンションの管理組合に届出義務があります。杉並区内の物件であれば、提出先は杉並区です。
問い合わせは、東京都住宅政策本部 民間住宅部 マンション施策推進担当(03-5320-4913)へ。
私はいつも理事長さまに、届出は面倒でも出しておいてくださいとお伝えしています。届出を出しているかどうかで、無料になる支援の幅が変わるからです。
防災力向上・認知症対応のマンション管理士無料派遣
東京都は、防災力向上と認知症対応という2つのテーマに絞った無料派遣も行っています(出典:東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」)。
令和8年度の条件は次のとおりです。
- 受付期間:令和8年6月23日(火)から令和9年2月26日(金)まで
- 回数:1管理組合につき、防災力向上・認知症対応それぞれ2回まで
- 費用:無料
- 申込:東京都マンション管理士会のホームページから
- 申込が予定件数(防災力向上・認知症対応を合わせて160件)に達したときは、新規受付を締め切り
都内全域で160件です。この記事の公開時点(2026年9月20日)で、受付開始から約3か月が経っています。残枠は東京都マンション管理士会へご確認ください。
防災の話は大規模修繕と無関係に見えますが、私はそう思いません。工事期間中、バルコニーの荷物移動や在宅確認が必要になる場面で、居住者名簿の整備状況が工期に直結します。防災の名簿整備は、修繕の下ごしらえでもあるのです。
8. 「今日、誰かに聞きたい」ときの2つの電話番号
区の相談は月1回や週2回、都の派遣は件数制限あり。では、思い立ったその日に聞きたいときはどうするか。平日ならつながる窓口が2つあります。
分譲マンション総合相談窓口(東京都防災・建築まちづくりセンター)
- 電話:03-6427-4900
- 受付:月曜〜金曜 9時〜17時(土日祝・年末年始休)
- メール:mansion-soudan@tokyo-machidukuri.jp
相談できる内容には、管理組合の運営、大規模修繕工事の検討や準備、改修・建替えに向けた合意形成のアドバイス、都や区市町村が実施している助成制度の紹介などが挙げられています。
「うちのマンションで使える助成制度を一覧にしてほしい」という聞き方が、この窓口ではいちばん効率的です。詳しくは公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンターをご覧ください。
(公財)マンション管理センター
- 電話:03-5801-0858
- (公財)マンション管理センター
長期修繕計画の標準的な考え方や標準管理規約の解釈といった全国共通のテーマは、こちらが強い。管理計画認定制度の実務も担っています。
弁護士が必要なほどの紛争になりそうなら、日本司法支援センター(法テラス)も選択肢です。利用条件は法テラスへ直接ご確認ください。国の制度全体は国土交通省「マンション政策」にまとまっています。
9. 杉並区の物件で、相談前に持っておきたい「修繕の相場観」
窓口で「うちはいくらかかりそうか」を聞かれたとき、ゼロから説明するのは大変です。参考値として、一般的なレンジを頭に入れておくと話が早い。
| 項目 | 参考値の目安 |
|---|---|
| 外壁打診調査 | 250〜500円/㎡ |
| 外壁塗装 | 3,500〜4,500円/㎡ |
| 屋上・バルコニー防水 | 5,000〜8,000円/㎡ |
| 30戸規模の大規模修繕 総額 | 3,500〜5,000万円 |
| うち仮設足場が占める割合 | 総額の15〜25% |
これらはあくまで目安・レンジであり、実際の見積は建物の形状、立地、劣化状況によって大きく変動します。断定的な数字としては扱わないでください。
それでも、仮設足場が総額の15〜25%を占めるという構造だけは知っておく価値があります。冒頭の荻窪の組合で、3社の見積りが6,000万円も開いていた理由の大きな部分も、ここにありました。
たとえば10階建て・外周80m・工期3か月の物件で、仮設足場が約168万円かかるケースがあります。同じ範囲をロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が懸垂下降しながら施工する無足場工法)に置き換えると、仮設費が約59万円まで下がる試算になります。差額にして約109万円。これも条件次第で変わる参考値ですが、桁の感覚として頭に置いておくと、見積書の読み方が変わります。
杉並区のように、隣地との離隔が取りにくい住宅地の中規模マンションが多い区では、足場そのものが組みにくい面があります。足場が組めない外周だけロープアクセスで対応するハイブリッド工法という選び方もあります。工法ごとの違いは、明誠のロープアクセス工法の技術詳細と、同業者・技術者向けの姉妹サイトロープアクセスドットコムで解説しています。
株式会社明誠は、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業については、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業で過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟する体制をとっており、IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が現場に立ちます。安全管理の考え方は明誠の安全管理体制に、料金の組み立て方は大規模修繕の料金の考え方にまとめました。
10. 杉並区の管理組合が、今週動くこと3点
長くなりましたので、動き方だけ整理します。
1. 昭和56年5月以前の建物なら、今日JASOへファクスを送る
耐震相談アドバイザー派遣は無料、しかも助成の受付期間にかかわらず申し込めます。マンションなら簡易診断まで無料です。申込書は区のページからダウンロードして、FAX 03-5654-5766 へ。
2. 耐震化助成を使うつもりなら、10月30日までに区へ相談する
令和8年度の申請受付は令和8年4月1日から10月30日まで。残り約40日です。「受付期限を過ぎても受付可能な場合もある」と区は書いていますが、まず03-3312-2111へ電話して事前相談を入れてください。
3. 管理の相談は、杉並マンション管理士会へWebかファクスで
毎月第2木曜、1件50分。電話では申し込めない点にご注意ください。ページの更新日が古いため、日程は事務局(03-3393-3680)でご確認を。
この3つは、どれも理事会の決議を待たずに「問い合わせ」まで進められます。総会の前段階で情報を集めておくかどうかで、1年後の選択肢の数が変わります。
よくあるご質問
Q. 杉並区のマンション管理無料相談は、電話で予約できますか?
A. できません。杉並マンション管理士会ホームページ内の専用フォームからの申し込みか、予約専用ファクス用紙を使ったファクス(03-3393-3652)のいずれかになります。杉並区役所の窓口でも申し込みはできません。事務局(03-3393-3680)は問い合わせ用の番号です。
Q. 耐震相談アドバイザー派遣は、助成の受付期間が終わっても申し込めますか?
A. 申し込めます。杉並区は「アドバイザー派遣及び簡易診断は、(助成の申請)受付期間にかかわらずお申込みいただけます」と明記しています。助成申請の受付は令和8年10月30日までですが、無料の相談・診断だけならその後も進められます。
Q. 簡易診断は、どのマンションでも無料で受けられますか?
A. 簡易診断を受けられるのは「マンション」および「特に耐震化を促進する地域や建物」に限られます。対象者にはアドバイザー派遣結果報告書の送付時に申込書が同封される流れです。簡易診断は任意で、受けずに精密診断へ進むこともできます。
Q. 外壁の打診調査にはいくらかかりますか?
A. 一般的な目安として250〜500円/㎡程度ですが、建物の形状、足場の要否、調査範囲によって大きく変わります。明誠ではロープアクセス工法を使い、足場を組まずに打診調査を行う方法もご提案しています。概算のお見積りをご希望でしたら明誠のお問い合わせ窓口からご連絡ください。
Q. 足場を組まないロープアクセス工法だと、工期はどれくらい短くなりますか?
A. 物件条件によりますが、仮設足場の架設・解体に要する期間が不要になるため、足場工法の6割程度の工期で完了するケースがあります。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場工法で約3か月のところ、ロープアクセスで1.5〜2か月が一つの目安です。工法ごとの技術的な条件はロープアクセスドットコムでも解説しています。
Q. 東京都のマンションアドバイザー無料派遣は、杉並区のマンションでも使えますか?
A. 使えます。ただし「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」に基づく管理状況届出を行っていることが前提です。昭和58年以前に新築された6戸以上のマンションには届出義務があり、杉並区内の物件は杉並区が提出先になります。届出がまだであれば、区の担当課へご相談ください。
Q. 賃貸マンションやビルのオーナーでも、これらの制度は使えますか?
A. 杉並区のマンション管理無料相談は分譲マンションの管理に関する相談が対象ですが、耐震相談アドバイザー派遣と耐震化助成は「木造以外の建物」が対象で、分譲マンションに限られません。ビルや賃貸マンションのオーナーさまも対象になり得ます。住まいの修繕・増改築相談、不動産無料相談、法律相談、消費者相談も利用できます。収益物件の維持管理・修繕についてはビル・収益不動産オーナー向けのご提案もご覧ください。
まとめ
杉並区の管理組合とオーナーさまが使える無料の相談・派遣は、区の制度が8つ、都と国の制度が2つ。合計10あります。
このうち、期限があるのは耐震化助成の令和8年10月30日と、東京都の管理士無料派遣の令和9年2月26日の2つ。残りは通年です。
そして、旧耐震のマンションであれば、アドバイザー派遣 → 簡易診断までは費用ゼロで到達できる。ここは杉並区のなかでも、いちばん使い勝手のいい設計だと私は見ています。
制度は、知っている組合だけが使えます。私が現場で見てきたかぎり、修繕で苦労する組合とそうでない組合の差は、建物の状態よりも「相談先をいくつ持っているか」で決まります。管理会社が1社だけ、という状態が一番危うい。
明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。管理組合さま向けのサービス内容は管理組合向けの大規模修繕サポートに、私たちの仕事の考え方は明誠の理念にまとめました。
10月30日までに動けるかどうかが、耐震化については分かれ目です。理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。
出典・参考資料
- 杉並区「マンション管理無料相談」(2020年6月24日更新)
- 杉並区「住まいの修繕・増改築相談」(2025年9月3日更新)
- 杉並区「不動産に関する無料相談」(2023年7月31日更新)
- 杉並区「木造以外の建物の耐震化に関する助成制度『マンション・ビルなどの耐震化を支援します』」(2026年4月1日更新)/パンフレット(令和8年4月改訂・PDF)
- 杉並区「法律相談【弁護士による】(予約制)」
- 杉並区「杉並区立消費者センター」/国民生活センター「杉並区立消費者センター」
- 東京都マンションポータルサイト「マンションアドバイザー無料派遣のご案内」
- 東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」
- 公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー」
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本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月20日時点で公表されている杉並区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。杉並区「マンション管理無料相談」のページは2020年6月24日更新、「不動産に関する無料相談」のページは2023年7月31日更新であり、現在の運用と異なる可能性があります。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず杉並区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月20日
杉並区のマンション漏水・防災対策|水は川から来るのではなく足元から出る。時間153ミリ想定の区で先に直す場所【大規模修繕2026年度版】
2026年9月20日 更新
杉並区の堀ノ内で、築31年の賃貸マンションのオーナーさまから「1階のトイレから水が逆流した」とご相談をいただいたことがあります。台風でも何でもない、夏の夕立の日でした。川は近くを流れていますが、護岸から水があふれた形跡はどこにもありません。原因は建物側でも屋上でもなく、短時間に集中した雨で下水道管の中の水位が上がり、行き場をなくした水が宅地内の排水管を逆にのぼってきたことでした。
私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。
杉並区という区は、私の感覚では23区のなかでもっとも「水のリスクが誤解されている」区です。高潮のハザードマップはありません。津波災害警戒区域もありません。土砂災害警戒区域も、区内にわずか6か所しかない。数字だけを並べれば、23区でも安全な部類に見えます。ところが杉並区のマンションでは、漏水と浸水の相談が途切れません。理由ははっきりしていて、杉並区の水は川から来るのではなく、足元から出てくるからです。
今日は、杉並区が公表している最新のハザード資料から逆算して、杉並区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。
結論:杉並区は「外水」より「内水」で設計を考える区です
先に結論から申し上げます。杉並区で大規模修繕の順番を決めるとき、私が最初に見るのは屋上ではありません。その建物の1階床面が、前面道路より高いか低いか。半地下・地下ピット・ドライエリアがあるか。排水がどこへ抜けるかの3点です。
杉並区の「わが家の水害ハザードマップ」は、洪水(河川の氾濫)だけでなく、下水道の溢水による内水氾濫も同じ1枚に重ねて表示しています。浸水予想に使われた条件は、想定最大規模降雨として時間最大雨量153ミリメートル、総雨量690ミリメートルが区の全域に降った場合です(出典:杉並区「わが家の水害ハザードマップ」/更新日 2026年5月27日)。この数字を、ぜひ理事会で一度声に出して読んでみてください。1時間に153ミリという雨は、どんな排水設計でも受けきれません。
そして杉並区は、高潮によるハザードマップを作成していません。区内に津波災害警戒区域もありません。土砂災害警戒区域は6か所、うち土砂災害特別警戒区域は5か所だけです(出典:杉並区「土砂災害ハザードマップ」/更新日 2026年5月29日)。
つまり杉並区は、リスクの種類が少ないぶん、内水という1点に対策を集中できる区です。これは実はとても有利な条件です。北区や江東区のように低地・崖線・高潮を同時に抱える区と違い、杉並区の管理組合は予算の配分先を迷わずに済みます。問題は、その1点にきちんとお金を向けている管理組合が、まだ少ないことです。
| 立地 | 該当エリアの例 | 主なリスク | 最優先の対策 |
|---|---|---|---|
| 神田川の谷 | 和田・方南・成田東・永福・浜田山 | 内水氾濫+下水道逆流 | 逆流防止弁、1階廻りの止水、敷地雨水桝 |
| 善福寺川の谷 | 堀ノ内・成田西・荻窪・宮前・善福寺 | 河川水位上昇+内水 | 半地下・ドライエリアの止水、受電設備の位置 |
| 妙正寺川の谷 | 清水・本天沼・下井草・井草 | 内水氾濫 | 敷地排水、1階外壁の立上り防水 |
| 武蔵野台地の平坦部 | 阿佐谷・高円寺・西荻・上荻の台地側 | 道路からの流れ込み(窪地) | 前面道路との高低差の確認、止水板 |
| 崖線の6か所 | 久我山・高井戸・堀ノ内・和泉の各一部 | がけ崩れ・擁壁劣化 | 擁壁の水抜き穴、斜面側外壁のシーリング |
杉並区の理事会で私がいつも最初にお伝えしているのは、この5類型のどこに当たるかを、工事の話を始める前に確定させてください、という一点です。順番を1つ間違えるだけで、数百万円が効かない場所に消えます。
杉並区のハザード資料を1枚で読む
管理組合の書類棚に、この表を1枚コピーして貼っておくだけで、総会の議論が早くなります。
| 資料 | 対象 | 現在の版 | 備考 |
|---|---|---|---|
| わが家の水害ハザードマップ(地図面) | 洪水+内水 | 令和8年3月改訂 | 想定最大規模降雨・時間153ミリ/総雨量690ミリ |
| 同(学習面・マイタイムライン編) | 備え・避難行動 | 令和8年3月改訂 | 国標準配色版のPDFもあり |
| 土砂災害ハザードマップ | がけ崩れ | 令和8年5月29日 情報更新 | 警戒6か所/特別警戒5か所 |
| 高潮ハザードマップ | 高潮 | 作成なし | 杉並区は対象外 |
| 津波災害警戒区域 | 津波 | 区内に指定なし | — |
| 善福寺川流域の浸水対策 | 治水事業の進捗 | 令和8年7月17日 更新 | 上流地下調節池が令和8年5月に準備工着手 |
注意していただきたいのは、地図面の前提条件です。浸水予想に使われた河川と下水道の整備状況は「平成28年時点」のものです。それ以降に完成した調節池や幹線の効果は、この地図には反映されていません。ですから、この地図は「これから良くなる前の、少し厳しめの姿」として読むのが正しい使い方になります。逆に言えば、この地図で色が付いていない場所が安全という意味には、まったくならないということでもあります。内水は、地形のわずかな窪みで簡単に起きます。
杉並区で「いま効いている」最新情報は3つあります
正直に申し上げます。自治体のハザード資料は、紙の冊子とウェブの記載が食い違うことが珍しくありません。杉並区で2026年9月時点で押さえておくべき更新は、次の3つです。
1つめ。水害ハザードマップが令和8年3月に改訂されました。
PDFは学習面・地図面ともに差し替えられており、色覚に配慮した国標準配色版も同じ令和8年3月改訂版で提供されています。理事会の防災資料が平成31年版や令和6年版のままなら、この時点で情報が古いということになります。区の電子地図サービス「すぎナビ」を使えば、自分のマンションの街区まで拡大して印刷できますので、総会資料にはこちらを使うほうが議論が具体的になります。
2つめ。令和8年5月29日から、気象庁の新たな防災気象情報の運用が始まりました。
従来の「土砂災害警戒情報」は「警戒レベル4土砂災害危険警報」に相当するものへ名称が整理されました。区は「情報の性質・意味に変更はない」と明記していますが、管理組合の防災マニュアルに旧名称がそのまま書かれていると、実際の放送や通知と言葉が合わず、避難のタイミングの判断が一拍遅れます。久我山・高井戸・堀ノ内・和泉の警戒区域に接するマンションは、ここを直してください。
3つめ。令和8年5月から、善福寺川上流地下調節池の準備工が始まりました。
都立善福寺川緑地での準備工着手にあたり、令和8年4月17日・18日に都による工事説明会が開かれています。この調節池は、荒川水系神田川流域河川整備計画(令和5年3月改定)で必要とされた約30万立方メートル規模のもので、完成すれば善福寺川流域の浸水リスクは相当に下がります(出典:杉並区「善福寺川流域の浸水対策について」/更新日 2026年7月17日、東京都建設局「善福寺川上流地下調節池事業の整備について」)。
ただし、ここが大事なところです。調節池が効き始めるのは完成後であって、工事期間中ではありません。長期修繕計画を「そのうち都が直してくれるから」という前提で先送りするのは、いちばん危ない判断です。私は工事の打合せの最初に、必ずこの点を確認するようにしています。工事の内容そのものより、どのリスクにお金を使うかの前提が変わってしまうからです。
3つの谷と、漏水事故は、こうつながっています
神田川の谷(和田・方南・成田東・永福・浜田山)
神田川沿いは、区内でも歴史的にもっとも水に悩まされてきたエリアです。善福寺川流域全体では、平成17年9月の集中豪雨で約1,600棟、平成26年7月の集中豪雨で約60棟の浸水被害が発生しています。その後、都による河川の拡幅、神田川・環状七号線地下調節池(貯留量54万立方メートル)の整備、下水道の和田・弥生幹線の整備によって、浸水被害は大きく減少しました。
ここで管理組合の方に知っておいていただきたいのは、減ったのは「川があふれる被害」であって、「下水道からの逆流」ではないということです。冒頭の堀ノ内の事例がまさにそれでした。1階のトイレや浴室から下水が噴き出すタイプの被害は、川の整備とは別の対策が要ります。具体的には排水設備への逆流防止弁、1階床面の立上り防水、そして敷地雨水桝の清掃です。
このエリアで多い漏水は、上からではなく横と下からです。敷地の雨水桝の詰まり、半地下駐輪場・ドライエリアへの流入、基礎の打継ぎ目からの染み。外壁と屋上を完璧に直しても、この3つは1ミリも改善しません。
善福寺川の谷(堀ノ内・成田西・荻窪・宮前・善福寺)
善福寺川では、1時間あたり50ミリメートルの降雨に対応できる護岸整備の整備率が約63パーセントです(令和6年度末時点)。現在も大成橋付近、白山前橋付近、西田端橋付近、宮木橋付近で工事が進んでいます。都の目標は1時間あたり85ミリメートル規模の降雨への対応ですから、いまはまだ道半ばということになります。
区の資料には「近年でも、松見橋・西田端橋付近などでは水位が頻繁に護岸天端付近まで上昇しています」と率直に書かれています。この一文は重いと思います。あふれてはいないが、毎年ぎりぎりまで来ているという意味だからです。
このエリアのマンションで私が真っ先に確認するのは、受電設備と給水ポンプの位置です。外壁も屋上もきれいに直したマンションで、地下の受電盤がひと晩で使い物にならなくなるのを見るのは、現場の人間として本当に悔しい。浸水深が50センチでも、盤の位置が床置きなら結果は同じです。低地側の物件では、外壁より先にここを議題にしてください。
妙正寺川の谷と台地の窪地(清水・本天沼・下井草・井草・阿佐谷・高円寺)
区北部の妙正寺川沿い、そして台地上に見える阿佐谷・高円寺・西荻あたりでも、道路からの流れ込みは起きます。台地は「平ら」ではなく、細かい窪地の集合だからです。
気象庁の「アメダスで見た短時間強雨発生回数の長期変化について」によれば、1時間50ミリメートル以上の短時間強雨の発生回数は、1976〜2024年の期間で約1.5倍に増加しています(出典:気象庁)。設計当時の排水能力の前提が、そもそも変わってきているということです。築30年のマンションの雨樋・ルーフドレン・敷地排水は、いまの雨を想定して作られていません。
杉並区でいちばん多いのは「半地下と地下ピット」の漏水です
杉並区が公式に注意喚起しているとおり、半地下家屋や地下室では2つの経路で浸水が起きます。下水道管からの逆流と、道路側からの雨水の流れ込みです。区はさらに「水の圧力で半地下、地下部のドアは開きにくくなり危険です」とまで書いています(出典:杉並区「半地下家屋、地下室では浸水被害に十分なご注意をお願いします」/更新日 2026年4月1日)。
杉並区の築古マンションには、敷地を有効に使うために半地下の駐車場・駐輪場・ゴミ置き場を設けたものが数多くあります。ここが、区内でいちばん事故が起きている場所です。私が現場で見てきた順に並べると、次のようになります。
- 半地下駐車場のスロープ下端から雨水が流入し、機械式駐車場のピットが水没する
- ドライエリアの排水桝が落ち葉で詰まり、地下住戸の掃き出し窓から浸水する
- 1階トイレ・浴室からの下水逆流(逆流防止弁の未設置または故障)
- 地下ピットに常時水が溜まり、配管・鉄筋が長期的に腐食する
- 基礎の打継ぎ目からの毛細管現象による染み(原因が配管漏水と誤診されやすい)
このうち3番と4番は、発生しても数年間は誰も気づかないタイプです。管理会社の日常点検では地下ピットの蓋を開けないことが多く、大規模修繕の調査で初めて発覚します。だから私は、杉並区の物件では必ず地下ピットと機械式駐車場のピットを開けて見せてくださいとお願いしています。
なお、浸水の恐れのある地域に地下室を新設する場合は、建築確認などの申請日までに区への浸水対策の届け出が必要です。既存建物の改修でも、ここは事前に区の建築課へ確認しておくと後戻りがありません。
漏水の原因調査そのものについては、明誠の漏水調査・漏水対応の考え方にまとめています。杉並区のように「上からではない漏水」が多い地域では、原因特定の手順を間違えると調査費だけが積み上がります。
土砂災害警戒区域は6か所——数が少ないからこそ見落とされます
杉並区内の土砂災害警戒区域は6か所、うち特別警戒区域は5か所。「久我山」「高井戸」「堀ノ内」「和泉」の4地区に分かれています。23区の他区と比べれば、確かに少ない数字です。
ただ、数が少ないことには副作用があります。該当する管理組合ですら、自分が該当していることを知らないのです。私が伺った久我山のマンションでは、擁壁の水抜き穴が全数詰まった状態で15年が経過していました。がけ崩れのリスクという以前に、擁壁の背面に水圧がかかり続け、擁壁に接する外壁の裏側がずっと湿った状態になり、内部の鉄筋が錆びます。
もう1つ、令和6年10月18日に和泉4丁目18番の一部について、土砂災害特別警戒区域および土砂災害警戒区域の解除が東京都から公表されています(公示図書 区域番号K004)。解除されたなら防災マニュアルの記載も直すべきですが、そのまま放置されている管理組合が少なくありません。指定も解除も、どちらも情報の更新が必要だということです。
そして崖面側の外壁は、足場が組めません。敷地に余裕がなく、隣地が斜面で、道路からも回り込めない。杉並区の該当地区では、これが本当によくある条件です。結果として「その面だけ10年以上手つかず」になっているマンションを、私は何棟も見てきました。
杉並区のマンションで、先に直すべき順番と費用の目安
私が杉並区で提案するときの優先順位は、だいたい次のようになります。金額はあくまで目安のレンジで、物件の規模・状態・立地により大きく変動します。
| 優先 | 工事項目 | 費用の目安 | 効く理由 |
|---|---|---|---|
| 1 | 排水設備の逆流防止弁設置・更新 | 1系統あたり8万〜25万円 | 下水道逆流は杉並区で最も発生頻度が高い |
| 2 | 敷地雨水桝・側溝の清掃と改修 | 10万〜60万円 | 詰まりが半地下浸水の直接原因になる |
| 3 | 半地下出入口の止水板設置 | 1か所30万〜120万円 | 令和8年度の区助成の対象になり得る |
| 4 | 受電設備・給水ポンプの嵩上げ・移設 | 80万〜400万円 | 復旧不能期間を決定づける |
| 5 | 1階廻り・立上り部の防水改修 | 5,000〜8,000円/平方メートル | 基礎打継ぎ目からの染みを止める |
| 6 | 外壁打診調査・シーリング打替え | 打診250〜500円/平方メートル | 12条点検と合わせて実施すると効率的 |
| 7 | 外壁塗装 | 3,500〜4,500円/平方メートル | 防水性能の回復(優先度は上記の後) |
| 8 | 屋上防水改修 | 5,000〜8,000円/平方メートル | 杉並区では上からの漏水は相対的に少ない |
30戸規模のマンションの大規模修繕全体では3,500万〜5,000万円がひとつのレンジで、そのうち仮設足場が15〜25パーセントを占めます。杉並区のように「1階と地下に手を入れたいが、予算は外壁で消える」という構図の区では、この足場比率をどう圧縮するかが、防災対策の原資を生むかどうかを決めます。
株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。そのなかで一貫してお伝えしているのは、「全面足場が唯一の正解ではない」ということです。料金の考え方については明誠の大規模修繕の料金の考え方にまとめています。
足場が組めない面、組まなくていい面をどうするか
杉並区の物件でロープアクセス工法が効くのは、主に次の3つの場面です。
1つめは、崖線や隣地に接して足場が組めない面。 久我山・高井戸・堀ノ内・和泉の斜面側がこれに当たります。ロープアクセス工法なら屋上から吊り下げて施工しますから、地上に作業スペースが要りません。
2つめは、部分補修で足りる面。 3面は健全で1面だけ劣化している、というケースで全面足場を組むと、足場代のほうが補修費より高くつきます。10階建て・外周80メートル・工期3か月の条件では、仮設足場が約168万円なのに対し、ロープアクセス工法では約59万円という差が出ることがあります(▲109万円/物件条件により変動します)。この差額が、そのまま逆流防止弁と止水板の予算になります。
3つめは、居住者の生活影響を抑えたい場合。 足場を組むと約3か月、全住戸が窓を開けられず、ベランダも使えず、防犯上の不安も抱えます。ロープアクセス工法なら、その期間を約60パーセントに短縮できます。賃貸マンションのオーナーさまにとっては、退去リスクの差として跳ね返ります。
もちろん、ロープアクセス工法が万能なわけではありません。外壁全面の塗替えやタイルの大量張替えが必要な物件では、足場を組んだほうが結果的に安くなります。だから明誠では、通常足場・ロープアクセス・ハイブリッド(部位ごとに使い分け)の3工法から、建物ごとに最適な組み合わせをご提案しています。3つとも自社で施工できる会社は、日本でも多くありません。工法の技術的な詳細は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで解説しています。
安全面についても正直に書いておきます。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工し、明誠は日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。訓練体制や資格制度の詳細はロープアクセスドットコムをご覧ください。技術面の考え方は明誠のロープアクセス工法と安全管理の取り組みにもまとめています。
杉並区で使える助成制度(令和8年度)
杉並区は総合治水対策の一環として、個人を対象とした助成制度を用意しています。金額は令和8年度の公表値です。
| 制度 | 助成額 | 情報の状態 |
|---|---|---|
| 防水板設置工事費の助成 | 工事費の4分の3、1建物あたり100万円限度(千円未満切捨て) | 区ページ更新日 2026年4月1日=令和8年度現行 |
| 雨水浸透施設工事費の助成 | 施設の種類・規模による | 区の総合治水対策ページで要確認 |
| 水害予防住宅 高床化工事の助成 | 標準工事費単価×高床部分床面積の2分の1、200万円限度 | 区ページ更新日が2023年4月18日のため、令和8年度の適用可否と金額は必ず区へ直接ご確認ください |
防水板の助成では、設置する防水板にJISの定める止水性能の等級がWs-3相当以上であることの証明書類が求められます。手順は「事前相談 → 交付申請 → 交付決定通知 → 工事着手 → 完了届 → 現地検査 → 請求」で、交付決定前に工事を始めると対象外になります。ここは毎年いちばん多い失敗です(出典:杉並区「防水板設置工事費の助成」/更新日 2026年4月1日)。
ひとつ注意点を正直に書きます。防水板助成の対象者は「個人が使用する建築物に防水板の設置および関連工事を行う個人」と明記されています。分譲マンションの管理組合が共用部の出入口に設置する場合に対象となるかどうかは、区の土木計画課(電話 03-5307-0739)への事前相談が必須です。賃貸マンションをオーナー個人名義で所有されている場合は、要件に合う可能性があります。ここを確認せずに工事を先に発注してしまうと、助成は受けられません。
収益不動産としての判断材料は、オーナー向けの大規模修繕の考え方にまとめています。
大規模修繕の中に、防災を組み込むという考え方
最後に、私がいちばんお伝えしたいことを書きます。
杉並区のマンションで防災対策が進まない理由は、予算がないからではありません。防災が長期修繕計画の外に置かれているからです。逆流防止弁も、止水板も、受電盤の嵩上げも、標準的な長期修繕計画の項目表には載っていません。載っていないものは、総会の議題にもなりません。
私の提案は単純です。次回の大規模修繕の設計段階で、防災項目を修繕項目と同じ表に並べてしまう。 そのうえで、足場のかけ方を工夫して浮いた費用を、その防災項目に充てる。これだけで、追加の一時金を集めずに防災対策が進んだ管理組合を、私は何組も見てきました。
調査の段階でも工夫の余地があります。近年はドローンによる外壁調査を併用することで、足場を組む前に劣化の分布を把握し、どの面に費用をかけるべきかを事前に判断できるようになりました。杉並区のように敷地の狭い物件が多い区では、この事前判断の精度がそのまま総額に響きます。
管理組合としての進め方は管理組合向けのサービス案内をご覧ください。これまでの施工事例(約6,000棟)はhttps://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。
よくあるご質問
Q. 杉並区のハザードマップで色が付いていなければ、浸水対策は不要ですか?
A. いいえ。区の地図面が前提としている河川・下水道の整備状況は平成28年時点のもので、さらに内水は地形のわずかな窪みで発生します。色の有無にかかわらず、前面道路と1階床面の高低差と半地下の有無を実地で確認することをおすすめします。
Q. 逆流防止弁の設置費用はどれくらいですか?
A. 1系統あたり8万〜25万円が目安です。既存配管の状態や設置位置によって変動します。杉並区で発生頻度が最も高いタイプの被害に対して、費用対効果はかなり高い部類の工事です。
Q. 防水板設置の助成は、分譲マンションの管理組合でも使えますか?
A. 令和8年度の区の要件では、助成対象者は「個人が使用する建築物に防水板の設置および関連工事を行う個人」と記載されています。管理組合による共用部への設置が対象となるかは個別判断になりますので、工事の計画段階で杉並区都市整備部土木計画課(電話 03-5307-0739)へ事前相談してください。交付決定前に着工すると対象外になります。
Q. 善福寺川上流地下調節池ができれば、もう浸水対策は要らなくなりますか?
A. 完成すれば流域の浸水リスクは相当に下がりますが、効果が出るのは完成後です。令和8年5月に準備工へ着手した段階ですので、工事期間中は現状のリスクが続きます。また調節池は河川の氾濫を抑えるものであり、下水道からの逆流や道路からの流れ込みは別の対策が必要です。
Q. 足場を組まずに外壁を直せるというのは本当ですか?
A. 部分補修、シーリング打替え、タイル浮き部の補修、防水の部分改修などはロープアクセス工法で施工できます。10階建て・外周80メートル・工期3か月の条件では、仮設足場約168万円に対しロープアクセス約59万円という差が出た例があります(物件条件により変動)。ただし外壁全面の塗替えなど、足場のほうが適する工事もありますので、建物ごとの判断になります。
Q. 工期はどれくらい違いますか?
A. ロープアクセス工法なら足場工法の約60パーセントの工期が目安です。10階建て・外周80メートルのマンションであれば、足場3か月に対しロープアクセス1.5〜2か月程度になります。居住者が窓を開けられない期間も、それだけ短くなります。
Q. 地下ピットの水は、放っておくとどうなりますか?
A. 常時水が溜まった状態が続くと、配管の腐食、基礎コンクリートの中性化促進、鉄筋の発錆が進みます。表に症状が出るまで時間がかかるぶん、発覚したときには補修費が大きくなりがちです。大規模修繕の調査時に必ず蓋を開けて確認してください。
Q. まず何から相談すればいいですか?
A. 建物の図面(配置図・各階平面図)と、直近の長期修繕計画があれば十分です。現地で1階廻りと地下、屋上を確認したうえで、優先順位と概算をお出しします。無料でご相談いただけますので、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月20日時点で公表されている杉並区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず杉並区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月20日
北区のマンション漏水・防災対策|荒川の低地と97か所の崖線、同じ区の中で対策が真逆になります【大規模修繕2026年度版】
2026年9月20日 更新
北区の志茂で、築29年の賃貸マンションのオーナーさまから「1階の廊下がいつも湿っている」とご相談をいただいたことがあります。最初に疑われたのは給水管でした。ところが調べてみると、原因は屋上でも配管でもなく、前年の台風で敷地の雨水桝が土砂で埋まり、行き場を失った雨水が半地下の駐輪場に流れ込み、基礎の打継ぎ目からじわじわ染みていたことでした。荒川の堤防からは歩いて5分。けれど川は一滴もあふれていません。
私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。
北区という区は、私の感覚では23区のなかでもっとも「同じ区なのに対策が真逆になる」区です。荒川沿いの低地に建つマンションと、赤羽台の崖の上に建つマンションでは、守るべきものも、お金をかける順番もまったく違います。それなのに、修繕計画の雛形はどちらも同じものが使われている。ここが北区の一番もったいないところだと思っています。
今日は、北区が公表している最新のハザード資料から逆算して、北区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。
結論:北区は「低地と崖線が同居する二層構造の区」です
先に結論から申し上げます。北区で大規模修繕の順番を決めるとき、私が最初に見るのは屋上ではありません。その建物が荒川・新河岸川の低地にあるのか、石神井川の谷にあるのか、武蔵野台地の崖線に接しているのかです。
北区は洪水ハザードマップを1枚ではなく4種類公表しています。荒川が氾濫した場合、隅田川・新河岸川・神田川が氾濫した場合、石神井川が氾濫した場合、そして高潮の4つです(出典:東京都北区「東京都北区水害ハザードマップ」/更新日 2025年12月20日)。マップが4枚ある区は、それだけ水のリスクの種類が多いということです。
そのうえで北区は、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)を97か所、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)を71か所抱えています(令和6年12月現在。出典:東京都北区「土砂災害対策 水害対応避難場所の開設・ハザードマップ」/更新日 2026年7月21日)。区内で起こりうる土砂災害は「急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)」に限られますが、数としては23区でも上位です。
つまり北区は、水が来る低地と、土が動く崖線の両方を1つの区の中に持っている。この構造を最初に確定させることが、費用対効果を決めます。
| 立地 | 該当エリアの例 | 主なリスク | 最優先の対策 |
|---|---|---|---|
| 荒川・新河岸川沿いの低地 | 志茂・岩淵町・神谷・豊島・堀船・浮間 | 外水(荒川氾濫)+長時間の浸水継続 | 受電設備・給水ポンプの位置、地下・半地下の止水、逆流防止 |
| 石神井川・隅田川沿いの谷 | 王子・堀船・滝野川・上中里 | 石神井川氾濫+内水氾濫 | 敷地雨水桝、地下階段・ドライエリアの止水、1階廻りの防水 |
| 武蔵野台地の崖線 | 赤羽西・赤羽台・赤羽北・桐ケ丘・中十条・上十条・十条仲原・王子本町・岸町・西ケ原・田端・滝野川 | がけ崩れ・擁壁の劣化 | 擁壁の点検と改修、斜面側の排水、崖面側外壁のシーリング |
北区の理事会で私がいつも最初にお伝えしているのは、この3類型のどこに当たるかを、工事の話を始める前に確定させてください、という一点です。順番を1つ間違えるだけで、数百万円が効かない場所に消えます。
北区のハザード資料を1枚で読む
管理組合の書類棚に、この表を1枚コピーして貼っておくだけで、総会の議論が早くなります。
| 資料 | 対象 | 現在の版 | 該当の有無 |
|---|---|---|---|
| 洪水ハザードマップ(荒川) | 荒川の氾濫 | 令和7年9月改定 | 区東部・北部の低地が広く該当 |
| 洪水ハザードマップ(隅田川・新河岸川・神田川) | 中小河川の氾濫 | 令和7年9月改定 | 区東部・南部 |
| 洪水ハザードマップ(石神井川) | 石神井川の氾濫 | 令和7年9月改定 | 王子〜滝野川の谷筋 |
| 高潮ハザードマップ | 高潮 | 令和7年9月に想定区域図を更新 | 区南東部の一部 |
| 土砂災害ハザードマップ | がけ崩れ | 平成29年3月公表/令和7年3月改訂 | 警戒97・特別警戒71か所 |
| 雨水出水(内水)浸水想定区域 | 下水道の能力超過 | 令和8年3月に東京都が指定 | 区の水害マップには未反映 |
北区の水害ハザードマップは令和7年9月に改定されており、このときの主な改定点は「高潮浸水想定区域図の更新」「土砂災害(特別)警戒区域の更新」「耳で聴くハザードマップの導入」の3つです。令和7年12月には多言語版(英語・中国語・韓国語)も作成されています。理事会の防災資料が令和4年版のままなら、この時点で情報が2世代古いということになります。
北区で「いま効いている」最新情報は3つあります
正直に申し上げます。自治体のハザード資料は、紙の冊子とウェブの記載が食い違うことが珍しくありません。北区で2026年9月時点で押さえておくべき更新は、次の3つです。
1つめ。令和8年3月に、東京都が雨水出水浸水想定区域を指定しました。
これは水防法第14条の2に基づく指定で、下水道の能力を超える雨が降ったとき、どこにどれだけ水が溜まるかを示すものです。北区の水害ハザードマップはこの指定をまだ反映しておらず、区の洪水ハザードマップの改定は令和8年度末頃を予定とされています。それまでの間、内水の想定は東京都下水道局の雨水出水浸水想定区域図で確認することになります。区のPDFだけを見て「うちは白いから大丈夫」と判断してしまうと、いちばん起きやすいタイプの浸水を見落とします。
2つめ。令和6年12月27日付で、土砂災害警戒区域が2か所追加されました。
赤羽北2丁目・3丁目(K100、土砂災害特別警戒区域を含む)と、赤羽台2丁目(K101)です。東京都はおおむね5年に1回、区域の見直しを行っています。この追加にともない、赤羽西地区・桐ケ丘地区・赤羽北地区では指定避難場所への避難経路も一部変更になっています。防災マニュアルに書かれた避難経路が古いままの管理組合は、ここを直してください。
3つめ。令和8年5月29日付で、土砂災害ハザードマップの読み替えが告知されています。
新たな防災気象情報の運用開始にともなうもので、区は「修正箇所について」という別紙を出しています。冊子の記載をそのまま信じると、避難のタイミングの判断がずれます。
私はこういう更新を、工事の打合せの最初に必ず確認するようにしています。工事の内容そのものより、どのリスクにお金を使うかの前提が変わってしまうからです。
地域特性と漏水事故は、こうつながっています
荒川・新河岸川沿いの低地(志茂・岩淵町・神谷・豊島・堀船・浮間)
荒川の洪水ハザードマップは、荒川流域の72時間総雨量632mmという想定最大規模の降雨を前提に作られています。この規模になると、問題は浸水深だけではなく浸水継続時間です。国土交通省荒川下流河川事務所は、浸水継続時間を「氾濫水到達後、浸水深が0.5mに達してからその浸水深を下回るまでの時間」と定義して荒川3D洪水浸水想定区域図で公表しています。北区では、街角の電柱などに想定浸水深を表示する取り組みも行われています。
水が引かない、ということは何を意味するか。受電設備と給水ポンプが水没したまま、何日も復旧できないということです。私が現場で一番悔しい思いをするのは、外壁も屋上もきれいに直したマンションで、地下の受電盤がひと晩で使い物にならなくなるのを見るときです。低地の物件では、外壁より先にここを議題にしてください。
このエリアで多い漏水は、意外にも上からではなく横と下からです。敷地の雨水桝の詰まり、半地下駐輪場・ドライエリアへの流入、基礎の打継ぎ目からの染み。冒頭の志茂の事例がまさにこれでした。
石神井川・隅田川沿いの谷(王子・堀船・滝野川・上中里)
北区は「水害対応避難場所」を、石神井川の氾濫とがけ崩れを想定して12か所開設する仕組みを持っています。荒川の氾濫を想定した「高台水害対応避難場所」とは別物です。この2つを混同している管理組合は、私の実感でかなり多いです。
このエリアで効くのは、屋上防水よりも先に敷地排水と1階廻りの防水です。谷筋は、降った雨が周辺から集まってきます。気象庁の「日本の気候変動2025」によれば、1時間50mm以上の短時間強雨の発生回数は1976〜2024年の期間で約1.5倍に増えています(出典:気象庁「アメダスで見た短時間強雨発生回数の長期変化について」)。設計当時の排水能力の前提が、そもそも変わってきているということです。
武蔵野台地の崖線(赤羽西・赤羽台・十条・王子本町・岸町・西ケ原・田端)
崖線沿いのマンションで私が真っ先に見るのは、擁壁の水抜き穴です。ここが詰まると、擁壁の背面に水圧がかかります。がけ崩れのリスクという以前に、擁壁に接する外壁の裏側がずっと湿った状態になり、内部の鉄筋が錆びます。
そして崖面側の外壁は、足場が組めません。敷地に余裕がなく、隣地が斜面で、道路からも回り込めない。北区の崖線では、これが本当によくある条件です。結果として「その面だけ10年以上手つかず」になっているマンションを、私は何棟も見てきました。ここが後述するロープアクセス工法の出番です。
大規模修繕でチェックすべき漏水ポイント7つ
立地にかかわらず、私が調査で必ず見る7か所です。総会資料に、この7項目を表にして貼っていただくだけで、見積書の抜けが減ります。
| # | 部位 | 見るポイント | 目安単価 |
|---|---|---|---|
| 1 | 屋上防水 | 膨れ・立上りの浮き・保護層の割れ | 5,000〜8,000円/㎡ |
| 2 | 外壁シーリング | 打継ぎ目・目地の切れ・肉やせ | 900〜1,300円/m |
| 3 | バルコニー床・排水 | 防水層の摩耗、排水口の詰まり | 3,500〜5,000円/㎡ |
| 4 | ルーフドレン | ストレーナー(落ち葉よけの目皿)の詰まり、周囲の防水切れ | 1か所 2〜5万円(改修ドレン) |
| 5 | 立上り・パラペット天端 | 笠木の継ぎ目、天端のひび割れ | 都度 |
| 6 | サッシまわり | 四隅のシーリング切れ、水切りの劣化 | 900〜1,300円/m |
| 7 | エキスパンションジョイント | カバーのずれ、下地の防水切れ | 都度 |
※いずれも参考値です。実際の見積は建物の規模・形状・劣化状況により大きく変わります。外壁の打診調査は250〜500円/㎡、外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡が一つの目安です。料金の考え方は大規模修繕の料金の考え方にまとめています。
この7か所のうち、4番のルーフドレンと3番のバルコニー排水は、費用ゼロで今日できる点検です。管理員さんに依頼できる範囲の作業で、台風シーズンの漏水リスクがはっきり下がります。私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。
漏水の緊急対応で、ロープアクセスが強い理由
漏水は待ってくれません。そして、足場は待たせます。
10階建て・外周80mのマンションで仮設足場を組む場合、架設だけで3〜7日、費用は168万円程度(800〜1,200円/㎡が目安)。これに対してロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が直接壁面に下りる無足場工法)なら、同じ条件で59万円前後、着手は当日から翌日です。差額でおよそ109万円、時間では1週間近い差が出ます。
北区の崖線沿いや、志茂・岩淵の密集した敷地では、そもそも足場を組むスペースがないことも多い。こういう現場では、ロープアクセスは「安いから選ぶ」のではなく「それしか手がない」のが実際のところです。工法の詳細はロープアクセス工法のご紹介、漏水そのものへの対応は漏水調査・補修のページをご覧ください。技術的な背景をもう一段深く確認されたい方には、姉妹サイトのロープアクセスドットコムが参考になると思います。
安全面についても正直に申し上げておきます。株式会社明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では、ロープアクセス工法での高所作業について過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたり、明誠はISO9001品質マネジメントシステムを取得しています。安全管理の考え方は明誠の安全管理に記載しています。
防災上の共用部は、どこから直すか
外壁や屋上と違って、共用部の設備は「劣化が目に見えない」ため、修繕計画から漏れやすい部分です。北区の立地別に、私が考える優先度を整理します。
| 共用部 | 低地(志茂・岩淵・堀船) | 崖線(赤羽西・十条・田端) |
|---|---|---|
| 受電設備・キュービクル | 最優先。設置位置の嵩上げ・移設の検討 | 通常優先度 |
| 給水ポンプ・受水槽 | 最優先。水没すると断水が長期化 | 通常優先度 |
| エレベーター機械室・ピット | 高(冠水で長期停止) | 中 |
| 自家発電設備・非常用電源 | 高(燃料タンクの位置も確認) | 中 |
| 避難通路・外階段 | 中 | 高(崖側の通路は土砂で塞がれる) |
| 擁壁・法面 | 低 | 最優先 |
| 屋外配電盤・分電盤 | 高 | 中 |
低地の物件では、国土交通省の建築物における電気設備の浸水対策ガイドラインと地下空間における浸水対策ガイドラインが実務の下敷きになります。設計事務所に相談する前に、理事会でこの2つに目を通しておくと話が早くなります。
ビルオーナーさま・収益物件をお持ちの方向けの考え方はビルオーナー向けサービスとオーナー向けの提供価値に整理しています。
北区で使える助成:分譲マンション耐震化支援事業
防災という観点では、北区の分譲マンション耐震化支援事業が直接使える制度です。対象は、北区内にある分譲マンションで、昭和56年5月31日以前に建築に着手し、その後新耐震基準に適合する改修を行っていないもの。管理組合があり、理事長が申請者であることが条件です。
| メニュー | 助成内容 |
|---|---|
| アドバイザー助成(3回まで) | 耐震アドバイザーに要する費用/限度額49,000円 |
| 診断助成 | 耐震診断費用の2分の1/限度額100万円(+評定費用 限度額15万円) |
| 設計助成 | 補強設計費用の2分の1/限度額100万円(+評定費用 限度額30万円) |
| 工事助成 | 改修工事費用の2分の1/延床面積に応じた限度額 |
各助成の申請期間および交付申請期間は、原則4月から12月までです(出典:東京都北区「分譲マンション耐震化支援事業」/更新日 2026年4月13日)。国と都の補助制度を活用しているため、各申請に期限があります。
実務上の注意点を3つだけ。事前相談を経てから申請すること、申請の結果を受けてから契約・着手すること、事業内容・金額・期間に変更が出たら速やかに区へ連絡すること。区に相談なく申請内容と異なる工事を行った場合、助成の対象外となることがあります。ここは毎年、どこかの管理組合がつまずく箇所です。
工事期間が2か年度にまたがる場合は全体設計承認申請が必要になり、進め方に制限がかかります。9月の今から動くなら、令和8年度中の診断助成に間に合わせるか、令和9年度の予算に乗せるかの判断が分かれ目になります。詳細は北区建築課 構造・耐震化促進係(03-3908-1240)へご確認ください。
よくあるご質問
Q. 北区の洪水ハザードマップは、いつ更新されますか?
A. 区の水害ハザードマップは令和7年9月に改定されています。ただし令和8年3月に東京都が指定した雨水出水(内水)浸水想定区域は未反映で、区は洪水ハザードマップの改定を令和8年度末頃に予定しているとしています。それまでの内水の確認は東京都下水道局のページで行ってください。
Q. うちのマンションが土砂災害警戒区域に入っているか、どう調べますか?
A. 北区が地域別の土砂災害ハザードマップ(赤羽西・赤羽台・赤羽北・桐ケ丘/中十条・十条仲原・西が丘ほか/王子・岸町・滝野川/王子・西ヶ原/田端の各地域版)と住所索引を公開しています。東京都の土砂災害警戒区域等マップでも確認できます。
Q. 擁壁の調査も大規模修繕の見積に含められますか?
A. 含められます。ただし標準的な見積書では調査範囲から外れていることが多いので、見積依頼の段階で「擁壁と敷地排水を含む」と書き添えてください。崖線沿いの物件では、ここが漏水の本丸であることが珍しくありません。
Q. 足場が組めない面の外壁調査は、どうすればいいですか?
A. ロープアクセス工法での打診調査(250〜500円/㎡が目安)か、ドローンによる外観調査を組み合わせます。北区の崖線沿いや敷地に余裕のない物件では、この2つのどちらかになることがほとんどです。ドローン調査のページもあわせてご覧ください。
Q. 台風のあと、まず何を見ればいいですか?
A. 屋上ドレンのストレーナー、バルコニー排水口、敷地の雨水桝、擁壁の水抜き穴の4か所です。この詰まりを取るだけで、次の大雨での漏水リスクはかなり下がります。費用はかかりません。
Q. 賃貸マンションのオーナーでも相談できますか?
A. できます。収益物件では、漏水を1件起こすと原状回復費と空室期間の両方が効いてきます。北区は賃貸需要の厚いエリアですので、稼働率を落とさない工期の組み方まで含めてご提案しています。
Q. 漏水が起きてから連絡した場合、どれくらいで来てもらえますか?
A. ロープアクセスであれば足場の架設が不要なため、当日から翌日の着手が可能なケースが多いです。まずはお問合せフォームからご連絡ください。
まとめ:今週、北区の理事会で動けること3つ
- 自分の建物が3類型のどれかを確定させる — 低地(荒川・新河岸川)/谷(石神井川・隅田川)/崖線(武蔵野台地)。ここが決まらないと、工事の順番は決められません
- 内水の想定を東京都下水道局の図で確認する — 区の水害ハザードマップは令和8年3月の指定を反映しておらず、改定は令和8年度末頃の予定です
- 屋上ドレン・バルコニー排水・雨水桝・擁壁の水抜き穴を実物で見る — 費用ゼロで、効果がいちばん確実な作業です
北区は、荒川という大きな川と、武蔵野台地という高低差を、1つの区のなかに同時に抱えています。だからこそ、「23区の平均的な修繕計画」をそのまま当てはめてしまうと、いちばん弱いところが最後まで残ります。志茂のマンションと赤羽台のマンションでは、守るべきものが違う。それだけの話なのですが、これを工事の前に整理できているかどうかで、同じ予算の効き方がまるで変わります。
ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。管理組合向けのご支援内容は管理組合向けサービス、ご相談はお問合せフォームからどうぞ。工法の技術面を深く確認されたい方は、ロープアクセスドットコムもあわせてご覧ください。
株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。施工事例は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。
出典・参考資料
- 東京都北区「東京都北区水害ハザードマップ」(更新日 2025年12月20日/令和7年9月改定・令和7年12月多言語版)
- 東京都北区「宅地建物取引業者の方へ(東京都北区水害ハザードマップ)」
- 東京都北区「土砂災害対策 水害対応避難場所の開設・ハザードマップ」(更新日 2026年7月21日/警戒区域97・特別警戒区域71、令和6年12月27日付新規指定2か所)
- 東京都北区「分譲マンション耐震化支援事業」(更新日 2026年4月13日)
- 東京都北区「北区防災ポータルサイト」
- 東京都下水道局「雨水出水浸水想定区域図」(令和8年3月指定)
- 東京都建設局「土砂災害(特別)警戒区域の指定」
- 東京都「土砂災害警戒区域等マップ」
- 国土交通省 関東地方整備局 荒川下流河川事務所「荒川3D洪水浸水想定区域図(下流域)」
- 国土交通省 関東地方整備局 荒川下流河川事務所「洪水浸水想定区域」
- 国土交通省「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」
- 国土交通省「地下空間における浸水対策ガイドライン」
- 国土交通省「重ねるハザードマップ」
- 気象庁「アメダスで見た短時間強雨発生回数の長期変化について」
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月20日時点で公表されている東京都北区および東京都・国土交通省・気象庁の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。土砂災害(特別)警戒区域の指定数は令和6年12月現在の区公表値であり、令和8年5月29日付で防災気象情報の運用変更にともなう読み替えが告知されています。また北区の洪水ハザードマップは令和8年度末頃に改定が予定されており、内水(雨水出水)の想定は現時点では区の水害ハザードマップに反映されていません。助成制度の申請にあたっては、北区建築課 構造・耐震化促進係(03-3908-1240)、ハザード情報については北区危機管理室 防災・危機管理課(03-3908-8184)または土木部 道路公園課 河川係(03-3908-9213)へ最新の内容をご確認ください。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月20日
中野区のマンション管理計画認定制度|区独自基準なし・手数料4,100円と、令和9年3月31日で切れる減税【大規模修繕2026年度版】
中野区の管理組合さまから、この夏に続けていただいたご質問があります。「管理計画認定、うちの区はどこまで書類を求められるんですか」というものです。
結論から申し上げます。中野区は、国が定める認定基準だけで判断します。区独自の上乗せ基準はありません。中野区の公式ページにも「中野区独自の基準はございません」と明記されています(出典:中野区「マンション管理計画認定制度」)。
つまり中野区では、認定を取りにいくときに迷う論点が1つ少ない。そのぶん、管理組合として集中すべきは「長期修繕計画と修繕積立金が国の基準を満たしているか」の一点になります。そして、ここが大規模修繕工事の話と完全に地続きです。私は大規模修繕の現場を20年以上見てきましたが、認定基準の実質的な重心は工事計画とお金の側にあります。
もう一つ、中野区の管理組合さまにお伝えしたいのが期限の話です。認定とセットで語られる固定資産税の減額措置(マンション長寿命化促進税制)は、令和9年3月31日までに工事が完了したものが対象です。今日は令和8年9月20日。逆算すると、判断に使える時間はそれほど残っていません。
結論:中野区で管理計画認定を取ると何が変わるか
| 変わること | 中野区での内容 |
|---|---|
| 審査の対象 | 国の認定基準のみ。区独自の上乗せ基準なし(中野区公式ページ明記) |
| 区に納める費用 | 基本手数料4,100円+加算手数料1,800円(長期修繕計画が1つ増えるごと) |
| 有効期間 | 認定日から5年間。中野区から満了通知は届かないため、管理組合側で管理が必要 |
| 経済効果 | 長寿命化促進税制(固定資産税の減額)/フラット35維持保全型/共用部分リフォーム融資の金利引下げ/マンションすまい・る債の利率上乗せ |
中野区が本制度の受付を始めたのは令和5年8月1日です。対象は中野区内の既存の分譲マンション。新築は対象外で、新築には別途マンション管理センターの「予備認定制度」があります。
中野区の認定主体と相談窓口
認定主体は東京都ではなく中野区です。東京23区内のマンションは、都ではなく区が認定主体になります。
窓口は中野区の都市基盤部 住宅課。住宅政策係は区役所9階4番窓口、電話は03-3228-5581、受付は月曜日から金曜日の午前8時30分から午後5時まで(祝日を除く)です(出典:中野区「分譲マンション支援」)。
技術的な内容の相談については、区から専門家相談窓口を案内される場合があります。申請の流れや書類の不明点は、事前に住宅課へ確認しておくと手戻りが減ります。
中野区に独自基準がないことの、実務上の意味
ここは意外と見落とされます。マンション管理センターの事前確認は、国の認定基準のみを対象としており、地方公共団体が独自基準を設けている場合、その独自基準は事前確認の対象外になります(出典:(公財)マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」)。
独自基準を設けている区では、「事前確認は通ったのに区の審査で止まる」という段差が起こり得ます。中野区にはその段差がありません。事前確認適合証が出れば、区の審査で新たな基準が追加されることは原則ないという構造です。
ただし中野区は、事前確認適合証を取得していても「区における認定審査において、必要に応じて申請内容に関するヒアリングや確認資料の提出等を求めることがある」としています。書類が揃っていれば自動的に通る、という理解は避けてください。
国の認定基準17項目のうち、工事の話に直結する6項目
認定基準は「管理組合の運営」「管理規約」「管理組合の経理」「長期修繕計画の作成及び見直し等」「その他」の5分野に分かれます。このうち、大規模修繕と直結するのが長期修繕計画の6項目です。
| 項目 | 基準の中身 |
|---|---|
| ① 様式 | 長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠して作成され、その内容と修繕積立金額が総会で決議されていること |
| ② 更新 | 長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われていること |
| ③ 期間 | 計画期間が30年以上で、かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれること |
| ④ 一時金 | 将来の一時的な修繕積立金の徴収を予定していないこと |
| ⑤ 水準 | 計画期間全体での修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと |
| ⑥ 借入金 | 計画期間の最終年度において、借入金の残高がない計画であること |
現場で最も引っかかるのが③と⑤です。計画期間が25年で組まれている、大規模修繕が1回しか入っていない、という長期修繕計画は中野区でも珍しくありません。この場合は認定申請の前に、長期修繕計画そのものを作り直す必要があります。
なお認定基準は、国の「マンション標準管理規約」(令和7年10月改正)、「長期修繕計画標準様式・長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改訂)、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改訂)の内容を満たす必要がある項目を含みます。事務ガイドラインは令和8年3月に改訂されていますので、古いテキストで準備を進めていた管理組合さまは現行版をご確認ください。
中野区での費用と申請ルート
中野区に納める手数料は明快です。
| 区分 | 金額 |
|---|---|
| 当初認定申請・更新申請 基本手数料 | 4,100円 |
| 同 加算手数料(長期修繕計画が1つ増えるごと) | 1,800円 |
| 変更認定申請「長期修繕計画の作成、見直し等」 | 基本9,800円+加算5,200円 |
| 変更認定申請「管理組合の運営」 | 基本4,800円+加算2,600円 |
注意点は、オンライン申請だけでは中野区への手続きが終わらないことです。管理計画認定手続支援サービスでオンライン申請したあと、中野区が発行する納付書で手数料を納付して初めて認定手続きが始まります。
区の手数料とは別に、次の費用がかかります。
- システム利用料:1申請あたり10,000円(マンション管理センター)
- 事前確認審査料:依頼先により異なる。日本マンション管理士会連合会経由、または管理組合が直接センターに申し込む場合は、長期修繕計画1計画あたり10,000円
30戸前後のマンションで長期修繕計画が1つであれば、区の4,100円と合わせて総額2万5,000円前後が目安になります。大規模修繕工事そのものの金額から見れば、認定手続きの費用は誤差の範囲です。判断材料はコストではなく、基準を満たすために長期修繕計画をどう作り直すか、の方にあります。
なお変更認定申請だけは、マンション管理センターのシステムからオンライン申請ができません。郵送または窓口への提出となります。
認定の3つの経済効果
① マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)
長寿命化工事(外壁塗装等工事、床防水工事、屋根防水工事)を完了した認定マンションは、工事完了翌年度の建物部分の固定資産税額が1/6〜1/2の範囲内で減額されます。対象は専有部分の居住用部分、100㎡相当分までです。
適用要件は次のとおりです(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制の要件」)。
- 新築から20年以上が経過していること
- 総戸数が10戸以上であること
- 過去に長寿命化工事を行っていること
- 管理計画の認定を取得している、または取得予定であること
- 令和3年9月1日以降に修繕積立金の額を認定基準まで引き上げていること
- 工事完了が令和5年4月1日から令和9年3月31日までの間であること
最後の期限が、中野区の管理組合さまにとって今いちばん重要な数字です。
② フラット35維持保全型
管理計画認定マンションは【フラット35】維持保全型の対象になり、当初5年間、借入金利が年0.25%引き下げられます(出典:住宅金融支援機構【フラット35】維持保全型)。
これは購入者側のメリットですが、管理組合にとっては売却時の競争力に直結します。中野区は中野駅周辺の再開発で住宅需要が動いている地域です。同じ築年・同じ立地で、認定の有無が買い手の資金計画に差をつけるという構図は、今後さらに効いてきます。
③ 共用部分リフォーム融資・すまい・る債
認定マンションが住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」を利用する場合、金利の引下げが受けられます。また「マンションすまい・る債」を購入する場合は利率が上乗せされます。いずれも中野区の公式ページがメリットとして挙げているものです。具体的な引下げ幅や上乗せ幅は募集回ごとに設定されますので、実際の資金計画に組み込む際は機構の最新の条件をご確認ください。
中野区の管理組合に残された時間
令和8年9月20日時点から、令和9年3月31日の工事完了期限まで、およそ6か月です。
外壁塗装・屋上防水・床防水を含む大規模修繕工事は、足場を架ける一般的な工法で3〜6か月かかります。つまり、今から着工の判断をして間に合うかどうかは、かなりきわどいラインです。
| 前提条件 | 現実的な見通し |
|---|---|
| すでに認定取得済み+施工会社決定済み | 工期次第では令和9年3月31日に間に合う可能性がある |
| 認定未取得+長期修繕計画が基準未達 | 令和9年3月31日には間に合わない前提で計画を立てる方が安全 |
| 認定は取るが工事は令和9年度以降 | 税制以外の3つのメリット(フラット35・融資・すまい・る債)と資産価値評価を目的に据える |
ここで申し上げたいのは、「減税に間に合わないなら認定は無意味」ではない、ということです。認定基準を満たす過程で長期修繕計画と修繕積立金が整うこと自体が、管理組合にとって最大の資産です。減税は結果であって目的ではありません。
中野区で認定を取るための逆算スケジュール
総会から逆算すると、おおむね6か月の準備期間を見ておくと余裕が生まれます。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 総会の6か月前 | 中野区住宅課(03-3228-5581)へ事前相談。現行の長期修繕計画が基準を満たすか確認 |
| 5か月前 | 長期修繕計画の見直し発注。計画期間30年以上・大規模修繕2回以上・借入金残高ゼロで組み直す |
| 4か月前 | 修繕積立金の改定案を作成。ガイドラインの水準と照合 |
| 3か月前 | 事前確認を依頼するマンション管理士を選定 |
| 総会 | 長期修繕計画・修繕積立金額・認定申請について決議 |
| 総会後1か月 | 事前確認 → 事前確認適合証の取得 → 支援システム経由で中野区へオンライン申請 |
| その後 | 中野区から届く納付書で手数料を納付 → 区の審査 → 認定通知書の交付 |
総会決議が前提条件である点にご注意ください。総会決議を経ていない管理組合の事前確認は、マンション管理士が受けられない仕組みになっています。
中野区の管理状況届出制度との関係
中野区では、東京都の「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」に基づく管理状況届出制度が令和2年4月1日から始まっています。昭和58年12月31日以前に新築され、居住用の独立部分が6戸以上のマンション(要届出マンション)は、5年以内ごとに管理状況を届け出る必要があります(出典:東京都マンションポータルサイト「管理状況届出制度」)。
届出制度と認定制度は別の仕組みですが、届出で整理した情報はそのまま認定申請の下地になります。中野区の高経年マンションで、届出は済ませたが認定は未検討、という管理組合さまは、実は認定へのハードルが低い位置にいます。
大規模修繕のコストと、修繕積立金の要件は直結している
認定基準⑤「修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと」は、実質的に修繕積立金の値上げを求めてきます。国のガイドラインが示す引上げ基準額の下限値は次のとおりです(機械式駐車場分を除く)。
| 地上階数/建築延床面積 | 月額の専有面積当たり修繕積立金額 |
|---|---|
| 20階未満・5,000㎡未満 | 235円/㎡・月 |
| 20階未満・5,000㎡以上10,000㎡未満 | 170円/㎡・月 |
| 20階未満・10,000㎡以上20,000㎡未満 | 200円/㎡・月 |
| 20階未満・20,000㎡以上 | 190円/㎡・月 |
| 20階以上 | 240円/㎡・月 |
70㎡の住戸で235円/㎡・月なら、月額16,450円。現在の積立金が月8,000円の管理組合であれば、倍増の提案を総会にかけることになります。合意形成の難易度は決して低くありません。
ここで効いてくるのが、工事側のコストです。大規模修繕の総工費のうち、仮設足場が占める割合はおおむね15〜25%。30戸規模のマンションで総工費3,500万〜5,000万円とすると、仮設だけで500万〜1,200万円が消えていきます。
私たち株式会社明誠が扱うロープアクセス工法(無足場工法)は、この仮設費を直接削ります。10階建て・外周80m・工期3か月の条件で試算すると、仮設足場が約168万円に対し、ロープアクセスは約59万円。差額は約109万円です(あくまで目安であり、実際の金額は建物形状・工事範囲・部位により大きく変動します)。
| 項目 | 足場工法 | ロープアクセス工法 |
|---|---|---|
| 仮設費の目安(10階建て・外周80m) | 約168万円 | 約59万円 |
| 工期の目安 | 3か月 | 1.5〜2か月 |
| 居住者への影響 | 全戸が足場と養生に囲まれる期間が長い | 作業中の部位のみ。バルコニー利用の制限期間が短い |
| 適する場面 | 全面打診・広範囲の一体施工 | 部分補修、足場架設が難しい形状、コスト最優先 |
参考までに、外壁塗装の㎡単価の目安は3,500〜4,500円/㎡、屋上・床防水は5,000〜8,000円/㎡、外壁打診調査は250〜500円/㎡が一般的なレンジです。仮設費を削った分をこうした本体工事に回せれば、同じ修繕積立金でも工事の中身が変わります。
明誠は約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けており、日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。
工法の詳細は明誠のロープアクセス工法の技術解説、費用の考え方は大規模修繕の料金の考え方をご覧ください。技術的な仕様や安全管理体制をさらに深く知りたい方は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで工法別の解説を公開しています。
管理組合さま向けのサービス全体像は管理組合向けサービスのご案内にまとめています。
よくあるご質問
Q. 中野区に独自の認定基準は本当にないのですか?
A. 中野区の公式ページに「中野区独自の基準はございません」と明記されています。審査は国の認定基準に基づいて行われます。ただし、区の審査で申請内容に関するヒアリングや確認資料の提出を求められる場合はあります。
Q. 中野区への手数料はいくらですか?
A. 当初認定申請・更新申請は基本手数料4,100円、長期修繕計画が1つ増えるごとに加算手数料1,800円です。これとは別に、マンション管理センターのシステム利用料10,000円と事前確認審査料が必要です。中野区の公式ページの更新日は2024年3月26日ですので、申請前に必ず住宅課へ現行の金額をご確認ください。
Q. 長期修繕計画が25年で組まれています。作り直しが必要ですか?
A. 必要です。認定基準は計画期間30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれることを求めています。25年計画のままでは基準を満たしません。作り直しには2〜3か月を見込んでください。
Q. 認定を取れば固定資産税は必ず下がりますか?
A. いいえ。認定に加えて、築20年以上、総戸数10戸以上、過去の長寿命化工事の実績、令和3年9月1日以降の修繕積立金引上げ、そして令和5年4月1日から令和9年3月31日までの工事完了、という要件をすべて満たす必要があります。減額幅は1/6〜1/2の範囲内で市町村の条例により決まります。
Q. 令和9年3月31日に間に合わない場合、認定を取る意味はありますか?
A. あります。フラット35維持保全型の金利引下げ、共用部分リフォーム融資の金利引下げ、すまい・る債の利率上乗せは期限と無関係です。何より、認定基準を満たす過程で長期修繕計画と修繕積立金が整うこと自体が管理組合の資産になります。
Q. 認定の有効期間は何年ですか?
A. 認定日から5年間です。中野区からは有効期間満了に関する通知が届きませんので、管理組合側で満了日を管理し、更新申請の時期を逃さないようご注意ください。
Q. 大規模修繕の施工会社選びと認定申請は、どちらを先にすべきですか?
A. 長期修繕計画の見直しを先に進めることをおすすめします。計画期間や修繕積立金の水準が決まらないと工事の適正な規模が定まらず、見積の比較もできません。ただし工法の選択肢(足場かロープアクセスか)は計画段階から検討しておくと、積立金の水準設定が現実的になります。
Q. 足場を架けずに大規模修繕はできますか?
A. 建物形状と工事範囲によります。外壁塗装・シーリング打ち替え・タイル補修・防水はロープアクセス工法で施工可能なケースが多く、足場と組み合わせるハイブリッド工法という選択肢もあります。中野区内のマンションであれば現地を拝見したうえで、3工法から最適な組み合わせをご提案します。
まとめ:中野区の管理組合さまが今週動けること
- 現行の長期修繕計画を開く。計画期間は30年以上か、大規模修繕は2回以上入っているか、最終年度に借入金残高はないか、この3点を確認する
- 中野区住宅課(03-3228-5581)へ電話する。認定申請の現行の手数料と、区の審査で求められる確認資料を聞いておく
- 令和9年3月31日という期限を、理事会の議題に載せる。間に合う前提で動くのか、次のサイクルを狙うのかを早めに決める
- 修繕積立金の現在の㎡単価を計算する。ガイドラインの下限値と比べて、どれだけ差があるかを数字で把握する
明誠のこれまでの施工事例は施工事例一覧からご覧いただけます。中野区のマンションで長期修繕計画の見直しと工事計画をセットで検討されている管理組合さまは、お問い合わせフォームからご相談ください。現地調査と概算のお見積りは無料で承ります。工法ごとの技術的な比較資料はロープアクセスドットコムにも掲載しています。
出典・参考資料
- 中野区「マンション管理計画認定制度」(ページ更新日:2024年3月26日)
- 中野区「分譲マンション支援」
- (公財)マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」
- 国土交通省「マンション税制(マンション長寿命化促進税制)」
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制の要件」(PDF)
- 国土交通省「マンションの管理計画認定に関する事務ガイドライン」(令和8年3月改訂・PDF)
- 住宅金融支援機構【フラット35】維持保全型
- 東京都マンションポータルサイト「管理状況届出制度」
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月20日時点で公表されている中野区および国土交通省・東京都・住宅金融支援機構の公式情報をもとに執筆しています。中野区の管理計画認定制度のページは2024年3月26日更新であり、手数料や運用が変更されている可能性があります。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ますので、実際に申請される前に、必ず中野区住宅課および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月20日
渋谷区のマンション管理計画認定制度|令和8年度は区独自基準スタート+区手数料が無料化【大規模修繕2026年度版】
渋谷区の理事長さまから、この夏に立て続けに同じご相談をいただきました。「管理計画認定、うちも取ろうと思って調べたら、渋谷区だけ書類が増えていませんか」というご質問です。
結論から申し上げます。増えています。渋谷区は令和8年4月から、国の認定基準に区独自の上乗せ基準を追加しました。その一方で、区へ納める申請手数料は令和8年4月1日から無料になっています。ハードルが1つ上がって、コストが1つ下がった、というのが渋谷区の現在地です。
私は大規模修繕の現場を20年以上見てきましたが、管理計画認定は「工事の話」と切り離せません。認定基準の半分近くが長期修繕計画と修繕積立金の話だからです。今回は渋谷区の管理組合さま向けに、制度の中身と、認定を取りにいくときの実務の順番を整理します。
結論:渋谷区で管理計画認定を取ると何が変わるか
渋谷区で認定を取得した場合に変わるのは、大きく次の3点です。
| 変わること | 内容 |
|---|---|
| 費用 | 渋谷区への申請手数料は令和8年4月1日より無料。かかるのは(公財)マンション管理センターへの手数料のみ |
| 手続き | 事前確認を依頼する前に、渋谷区への事前相談が必要。独自基準の適合状況をここで確認する |
| 経済効果 | 長寿命化促進税制(固定資産税の減額)/フラット35の金利引下げ/共用部分リフォーム融資の金利引下げが視野に入る |
渋谷区の申請手数料が無料である点は、区の公式ページに明記されています(出典:渋谷区「マンション管理計画認定制度」/2026年6月3日更新)。
なお、令和8年3月31日までに事前確認申請を済ませた管理組合については経過措置が設けられています。昨年度から準備を進めていた組合さまは、この経過措置に該当するかどうかを先に確認したほうが早いです。
渋谷区の認定主体はどこか
管理計画認定の認定主体は、マンションの所在地によって決まります。東京23区内のマンションは、都ではなくその区が認定事務を行います。渋谷区内のマンションであれば、渋谷区が認定主体です。
東京都のポータルサイトにも「区市の区域のマンションの認定事務は、各区市が行います」と明記されています(出典:東京都マンションポータルサイト「マンション管理計画認定制度」)。都が認定事務を担うのは町村の区域だけです。
渋谷区の窓口は住宅政策課住環境整備係(電話 03-3463-3548)になります。私が理事長さまにお伝えしているのは、「まずここに電話を1本入れてから動き始めてください」ということです。理由は次のとおりです。
渋谷区の独自基準と、実務への影響
渋谷区は令和8年4月から、国の基準に加えて区独自の上乗せ基準を設けました。ここが渋谷区で認定を目指すうえでの最大のポイントです。
重要なのは、独自基準はマンション管理士による事前確認の対象外だということです。マンション管理センターの事前確認は国の基準しか見てくれません。だから渋谷区は「事前確認を依頼する前に区へ事前相談に来てください」という運用にしています。
事前相談で渋谷区に持参する書類は、区のページで次のように整理されています。
① 渋谷区独自基準に係る申出書(第2号様式)
② 防災マニュアルを作成していることが確認できる書類(防災マニュアルの写し)
③ 防災対策について、次の4つのうち1つ以上を満たすことが確認できる書類
- 防災訓練を年1回以上実施していること(実施計画書・実施報告書)
- 自主防災組織があること(防災組織の規約などの写し)
- 防災資材および備蓄物資を整備していること(写真、物品リスト)
- 避難行動要支援者等の把握をしていること(名簿などの写し)
④ コミュニティ活動について、次の4つのうち1つ以上を満たすことが確認できる書類
- マンション内で自治会を設置または設置計画していること
- 地域の町会・自治会等に区分所有者および居住者等が加入していること
- 美化活動・防災訓練などの地域活動を行っていること
- 町会・自治会との連絡担当者を選任していること
加えて、認定基準の「組合員名簿・居住者名簿」と「渋谷区マンション管理適正化指針に照らして適切であること」については、第1号様式の表明保証書を提出します。長期修繕計画については、マンション管理センターに出すPDFとは別に、Excel形式のファイルを渋谷区へ直接提出する必要があります(出典:前掲 渋谷区ページ)。
正直に申し上げます。③と④は、書類の有無というより「日頃やっているかどうか」がそのまま出る項目です。私が現場で見てきた渋谷区内のマンションでも、防災訓練は毎年やっているのに実施報告書を残していなかった、というケースが少なくありませんでした。訓練当日に写真を10枚撮って、A4一枚の報告書を理事会議事録に添えておく。これだけで③はクリアできます。今年の防災訓練が済んでいる組合さまは、記録の形を整えるところから始めるのが最短です。
国の認定基準17項目(ここが工事の話に直結する)
国が定める認定基準は5分野17項目です。(公財)マンション管理センターが公表している一覧を整理すると、次のようになります(出典:マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」)。
| 分野 | 項目数 | 主な中身 |
|---|---|---|
| 管理組合の運営 | 3 | 管理者等が定められている/監事が選任されている/集会が年1回以上 |
| 管理規約 | 3 | 管理規約が作成されている/緊急時の専有部立入り・履歴情報の管理を規定/財務・管理情報の書面交付を規定 |
| 管理組合の経理 | 3 | 管理費と修繕積立金を区分経理/修繕積立金会計から他会計へ充当していない/3か月以上の滞納額が全体の1割以内 |
| 長期修繕計画の作成・見直し | 6 | 標準様式に準拠し総会決議/作成または見直しが7年以内/計画期間30年以上かつ大規模修繕2回以上/一時徴収を予定していない/積立金平均額が著しく低額でない/最終年度に借入金残高なし |
| その他 | 2 | 組合員名簿・居住者名簿を備え年1回以上内容確認/都道府県等の適正化指針に照らして適切 |
17項目のうち6項目、つまり3分の1以上が長期修繕計画と修繕積立金の話です。ここが、私が「管理計画認定は工事の話だ」と申し上げる理由です。
特に引っかかりやすいのが「計画期間30年以上、かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上」という要件です。現在の長期修繕計画が25年で組まれている組合さまは、ここで作り直しが発生します。
もう1つが「修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと」です。国の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改訂)の水準を下回る場合は、専門家による理由書が必要になります。
なお、認定基準の前提となる各資料は改訂が続いています。事務ガイドラインは令和8年3月改訂版、マンション標準管理規約は令和7年10月改正版、長期修繕計画標準様式・作成ガイドラインは令和6年6月改訂版が現行です。古い様式のまま総会に諮ると、あとで組み直しになります。
渋谷区での費用と申請ルート
費用の全体像を整理します。
| 費目 | 金額の目安 | 支払先 |
|---|---|---|
| 渋谷区への申請手数料 | 0円(令和8年4月1日より無料) | 渋谷区 |
| システム利用料 | 1申請あたり10,000円(税込・内消費税909円) | マンション管理センター |
| 事前確認審査料 | 長期修繕計画1計画あたり10,000円(税込)※パターン③④の場合 | マンション管理センター等 |
事前確認審査料は申請ルートによって変わります。管理会社経由(マンション管理適正評価制度と併用)や、個別のマンション管理士に依頼する場合は、審査料を管理組合と委託先の間で決める形になるため、この金額どおりにはなりません(出典:前掲 マンション管理センター)。
申請は、渋谷区へ直接ではなく、マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービス(事前確認)を利用して行います。変更認定申請以外は区へ直接申請できない運用です。また、支援サービスで手続きできるのは申請者本人か、委任を受けた行政書士に限られます。
実務の順番はこうなります。
- 渋谷区 住宅政策課へ事前相談(独自基準の適合を確認)
- 総会決議(認定申請について承認を得る)
- マンション管理士による事前確認 → 事前確認適合証の発行
- 支援サービス経由で渋谷区へ認定申請
- 渋谷区が審査・認定(有効期間5年、5年ごとに更新申請が可能)
総会決議を経ていない管理組合の事前確認は受けられません。ここを飛ばすと3で止まります。
認定の3つの経済効果
① マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)
築20年以上のマンションで長寿命化に資する大規模修繕工事を行い、管理計画認定を受けているなどの要件を満たすと、工事の翌年度の建物部分の固定資産税が減額されます。減額割合は1/6〜1/2の範囲で市町村の条例が定め、参酌基準は1/3です。
この特例は令和8年度税制改正で、令和8年4月1日から令和13年3月31日までの5年間、延長されました(出典:国土交通省「マンション税制」、令和8年度税制改正概要)。
渋谷区のマンションの場合、固定資産税減額の申告先は都税事務所です。区ではありません。適用要件は相談ダイヤル(03-5801-0858)でも確認できます。
私の経験上、この税制は「大規模修繕をやる年」と「認定を取る年」の順番でつまずく組合さまが多いです。工事の着工前に認定のスケジュールを引いておかないと、要件を満たせずに1回分を取り逃がします。ここは修繕委員会の立ち上げと同時に確認しておく論点です。
② フラット35の金利引下げ
管理計画認定マンション(既存住宅)を購入する場合、【フラット35】維持保全型として借入金利が当初5年間 年0.25%引き下げられます。組合にとっては直接の支出減ではありませんが、中古市場での売りやすさに効いてきます。
③ マンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ
住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資では、管理計画認定の取得により融資金利が年0.2%引き下げられます(出典:住宅金融支援機構)。大規模修繕の資金を一部借入でまかなう組合さまには、こちらが実利です。
渋谷区で認定を取るための逆算スケジュール
渋谷区は事前相談が挟まる分、他区より1〜2か月の余裕を見ておくのが現実的です。年1回の通常総会で決議する前提で逆算します。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 総会の6か月前 | 渋谷区 住宅政策課へ事前相談。独自基準(防災・コミュニティ)の不足を洗い出す |
| 総会の5か月前 | 長期修繕計画の見直し要否を判定(計画期間30年以上/大規模修繕2回以上/7年以内の見直し) |
| 総会の4〜3か月前 | 長期修繕計画の作成・見直し、修繕積立金の水準検討。Excel版フォーマットも並行作成 |
| 総会の2か月前 | 防災マニュアル・訓練記録・町会加入記録などの独自基準書類を整える |
| 総会 | 長期修繕計画・修繕積立金額・認定申請の承認を決議 |
| 総会後1〜2か月 | マンション管理士による事前確認 → 適合証取得 |
| 事前確認後 | 支援サービス経由で渋谷区へ申請 → 認定 |
長期修繕計画の見直しが必要だと分かった時点で、工事の見積も同時に動かすのが効率的です。計画の数字は工事の単価で決まるからです。
大規模修繕のコストと、修繕積立金の要件は直結している
ここからが本題です。「修繕積立金の平均額が著しく低額でない」という要件を満たすのに、値上げ以外の手がないと思い込んでいる組合さまが本当に多いのです。
もう1つの方法は、長期修繕計画に載せる工事費そのものを下げることです。
渋谷区のような都心部のマンションでは、総工費に占める仮設足場の比率が効いてきます。一般に30戸規模のマンションの大規模修繕は総額3,500〜5,000万円程度、そのうち仮設足場が15〜25%というのが目安です(物件の形状・立地で大きく変動します)。
ここにロープアクセス工法(足場を架けずに産業用ロープで職人が降下しながら施工する無足場工法)を組み合わせると、数字が変わります。私が実際にお出しする概算の一例です。
| 条件 | 足場工法 | ロープアクセス工法 |
|---|---|---|
| 10階建て・外周80m・工期3か月 | 仮設費 約168万円 | 約59万円 |
| 差額 | — | 約109万円の圧縮 |
| 工期 | 3か月 | 1.5〜2か月が目安 |
※物件の形状、開口部の状況、施工部位によって変動します。上記はあくまで参考値です。
外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、打診調査は250〜500円/㎡、防水は5,000〜8,000円/㎡あたりがひとつの目安になります。渋谷区は隣地との離隔が取りにくい物件や、店舗併用で足場を架けると営業に影響が出る物件が多いエリアです。全面足場ではなく、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法が効く現場が、私の感覚ではかなりあります。
仮設費が圧縮できれば、長期修繕計画に載る1回あたりの工事費が下がります。その分、必要な修繕積立金の水準も下がる。これが、認定基準と工法選びがつながる理由です。工法ごとの技術的な違いは、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。
株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法による高所作業については、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業で過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工し、ISO9001の品質マネジメントシステムに基づいて管理しています。安全管理の考え方は大規模修繕工事の安全管理体制に、料金の組み立て方は大規模修繕の料金の考え方にまとめています。
作業手順や資格要件といった技術面をさらに掘り下げたい方は、ロープアクセスドットコムの技術情報をご覧ください。
管理組合向けのサービス内容は管理組合さま向け大規模修繕サービス、工法の詳細は明誠のロープアクセス工法の技術詳細にあります。これまでの施工事例は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。
よくあるご質問
Q. 渋谷区への申請手数料は本当に無料ですか?
A. 渋谷区の公式ページに「区への申請手数料は令和8年4月1日より無料になりました」と明記されています。ただしマンション管理センターのシステム利用料(1申請10,000円)と事前確認審査料は別途かかります。
Q. 渋谷区の独自基準は事前確認で見てもらえますか?
A. 見てもらえません。マンション管理士による事前確認は国の基準のみが対象です。独自基準は渋谷区への事前相談で確認する運用になっています。この順番を逆にすると手戻りが出ます。
Q. 防災訓練をやっていないと認定は取れませんか?
A. 渋谷区の独自基準は、防災訓練・自主防災組織・防災資材の整備・避難行動要支援者の把握の4つのうち、1つ以上を満たせば要件を満たす形になっています。訓練が未実施でも、備蓄物資の整備状況で対応できる場合があります。
Q. 長期修繕計画が25年で組まれています。作り直しですか?
A. 国の基準は「計画期間30年以上、かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上」です。25年の計画では要件を満たさないため、見直しが必要になります。見直しは工事費の精査と同時に進めるのが効率的です。
Q. 認定を取れば固定資産税は下がりますか?
A. 認定だけでは下がりません。築20年以上であること、長寿命化に資する大規模修繕工事を完了していることなど、複数の要件を満たす必要があります。渋谷区内のマンションの申告先は都税事務所です。
Q. 認定の有効期間は何年ですか?
A. 5年です。5年ごとに更新申請が可能です。認定期間中に管理計画を変更する場合は変更認定申請が必要で、その場合も有効期間は延長されません。
Q. 大規模修繕の工事会社選びは、認定申請とどちらを先にすべきですか?
A. 並行して進めるのが現実的です。長期修繕計画に載せる工事費の根拠が必要になるため、概算見積を取りながら計画を組むと、修繕積立金の水準検討が一度で済みます。
Q. 足場を架けずに大規模修繕はできますか?
A. 建物の形状と工事範囲によります。全面をロープアクセスで施工できる物件もあれば、低層部は足場、高層部はロープアクセスというハイブリッドが最適な物件もあります。渋谷区内の隣地が狭い物件では、後者の提案になることが多いです。
まとめ:渋谷区の管理組合さまが今週動けること
3点だけ挙げます。
1. 渋谷区 住宅政策課住環境整備係(03-3463-3548)に電話を入れる。 独自基準の運用は令和8年4月に始まったばかりです。自分のマンションが経過措置に該当するかも含めて、口頭で確認するのが一番早いです。
2. 長期修繕計画の「計画期間」と「最終見直し日」を確認する。 30年未満、または見直しから7年超なら、そこが最初のボトルネックです。
3. 防災訓練とコミュニティ活動の記録を探す。 実施していても記録が残っていないだけ、というケースが多いです。写真と報告書を1枚にまとめておけば、独自基準は通しやすくなります。
管理計画認定は、書類仕事のように見えて、その中身は建物をどう維持していくかという判断の積み重ねです。長期修繕計画の数字が動けば積立金も動き、積立金が動けば工法の選択肢も変わります。
ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問い合わせフォームからどうぞ。
出典・参考資料
- 渋谷区「マンション管理計画認定制度」(2026年6月3日更新)
- 東京都マンションポータルサイト「マンション管理計画認定制度」
- 公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」
- 国土交通省「マンション税制」
- 国土交通省「令和8年度税制改正概要」
- 住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」
- 【フラット35】「制度変更事項のお知らせ」
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月20日時点で公表されている渋谷区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず渋谷区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月20日
杉並区の12条点検・外壁全面打診|令和8年度の締切10月31日と費用の目安【2026年版】
「杉並区の店舗ビル、今年が定期報告の年だと管理会社から言われました。外壁の打診までやるとなると、足場代でいくらかかるのでしょうか」——先週、阿佐ヶ谷のオーナーさまから、こんなご相談をいただきました。
株式会社明誠の本間です。東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。
杉並区は、JR・私鉄・地下鉄あわせて31の駅があり、住宅の多くが駅から徒歩圏に収まる住宅都市です。そのぶん、幹線道路から一本入ると生活道路がすぐ狭くなる。1階が店舗・2階以上が住宅という小ぶりな複合用途ビルも多い。この「用途の判定がややこしく、しかも足場を組む余地がない」という組み合わせが、杉並区の12条点検を難しくしています。
そして、今日いちばんお伝えしたいことがあります。令和8年度(2026年度)に杉並区で報告年次を迎える建物の提出期限は、令和8年10月31日です。この記事を公開している2026年9月20日から数えると、残りおよそ6週間しかありません。
この記事では、令和8年度時点の公的一次情報にもとづいて、杉並区の12条点検(外壁打診調査)の対象・時期・費用を、現場の数字とあわせて整理します。
結論:令和8年度の杉並区で報告年次を迎えるのは「30番台」の建物
先に結論から申し上げます。
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 誰が報告するのか | 建築物の所有者・管理者(区分所有マンションなら管理組合、代表は理事長) |
| 誰に報告するのか | 特定行政庁は杉並区長。特定建築物の受付窓口は公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター |
| 令和8年度の対象 | 用途コード30番台(物販店舗、飲食店・遊技場等、複合用途建築物、事務所) |
| 令和8年度の報告期間 | 令和8年5月1日〜令和8年10月31日 |
| 共同住宅(40番台)は | 令和9年度(2027年度)が次の報告年次 |
| 外壁の全面打診 | 検査済証交付等の翌年度4月1日から10年を超えて、最初の報告日までに必要 |
| 報告しないと | 建築基準法第101条により100万円以下の罰金が科されることがある |
杉並区が公開している対象建築物報告時期一覧表(PDF)を見ると、3年ごと報告のグループが3つに分かれていることがわかります。
| 用途コード | 主な用途 | 報告年次 |
|---|---|---|
| 20番台(21〜24, 28) | 児童福祉施設等、病院・診療所、学校、体育館・図書館等、共同住宅等の複合用途(5階以上) | 令和元年、令和4年、令和7年、令和10年… |
| 30番台(31〜34) | 物販店舗、飲食店・遊技場・公衆浴場等、複合用途建築物、事務所 | 令和2年、令和5年、令和8年、令和11年… |
| 40番台(40, 41) | 下宿・共同住宅・寄宿舎(5階以上かつ1,000㎡超)、高齢者等就寝用の共同住宅等 | 令和3年、令和6年、令和9年、令和12年… |
つまり令和8年度は、杉並区でいえば「駅前の店舗ビル」「飲食店の入った雑居ビル」「事務所ビル」「1階店舗+上階住戸の複合ビル」が一斉に報告年を迎える年です。分譲マンションの管理組合さまは、今年ではなく来年度が本番になります。
ただし、10番台(劇場、観覧場・集会場、旅館・ホテル、百貨店、地下街)は毎年報告で、期間は11月1日から翌年1月31日まで。杉並区内でホテルや集会場を運営されている方は、こちらのスケジュールになります。
建築基準法第12条第1項とは|杉並区の定期報告のきほん
12条点検という呼び方が定着していますが、正式には「特定建築物定期調査報告」といいます。建築基準法第12条第1項にもとづき、不特定多数が利用する建築物や一定規模以上の共同住宅について、防火・避難の安全性や劣化の状況を有資格者が調査し、特定行政庁へ報告する制度です。
調査できるのは、一級建築士・二級建築士、または特定建築物調査員(国の資格者証を持つ技術者)に限られます。杉並区は調査員の紹介を行っていないため、管理会社、建物を建てた施工会社、あるいは一般財団法人日本建築防災協会が公開している特建全国名簿から探すのが一般的です。
ここで一つ、誤解の多いところを。平成28年6月の法改正で「特殊建築物等定期調査報告」から「特定建築物定期調査報告」に名称が変わりました。名前が変わっただけで、報告が2種類に増えたわけではありません(出典:東京都都市整備局 定期報告に関するQ&A Q1-10)。古い書類と新しい案内で呼び名が違い、二重に発注しかけたオーナーさまを、私は実際に見たことがあります。
もう一つ。消防法の消防用設備等点検や、ビル管理法(建築物衛生法)の報告とは、まったく別の制度です。消防点検をやっているから12条点検も済んでいる、ということにはなりません。
報告には4種類ある
- 特定建築物定期調査報告:建物本体(外壁、屋上、避難施設など)→ 東京都防災・建築まちづくりセンター
- 防火設備定期検査報告:随時閉鎖式の防火扉・防火シャッター等 → 同センター
- 建築設備定期検査報告:換気・排煙・非常用照明・給排水 → 日本建築設備・昇降機センター
- 昇降機等定期検査報告:エレベーター、エスカレーター等 → 東京都昇降機安全協議会
杉並区では昇降機等について、令和7年度から電子報告の限定運用が始まり、令和7年度中の全面運用が予定されています(出典:杉並区 特定建築物の定期調査・検査報告、更新日2025年6月9日)。報告方法が変わる過渡期なので、管理会社任せにせず、どの方式で出したのかを控えておくと安心です。
新築直後は「初回免除」がある
新築・改築した建物は、検査済証の交付を受けた日が属する年度の翌年度以降、2回目の報告時期から報告が必要になります。直近の1回は免除されるという意味です。
東京都都市整備局の例示によれば、令和6年度から令和8年度までの間に検査済証が交付された共同住宅なら、令和9年度の報告が免除され、令和12年度(令和12年5月1日〜10月31日)から報告が必要になります(出典:東京都都市整備局 定期報告対象建築物・報告時期一覧)。
ここで注意していただきたいのが、建築設備と昇降機は扱いが違うことです。こちらは初回免除がなく、検査済証交付日の翌日から起算して2年を経過する日までに初回報告が必要です。たとえば検査済証が令和6年6月17日なら、初回報告は令和8年6月17日まで。建物本体は免除でも、エレベーターは待ってくれません。
外壁の全面打診が必要になるタイミング|10年ルールの起算点
杉並区のオーナーさま・理事長さまからいちばん多いご質問が、これです。
東京都都市整備局のQ&A(Q4-7)は、こう定めています。
落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的なテストハンマーによる打診等が完了した日、検査済証の交付を受けた日又は外壁の全面改修が完了した日が属する年度の翌年度の開始の日から起算して10年を超え、最初の報告日までに、全面打診等が必要です。
文章だけだと分かりにくいので、起算点を3つに分解します。
| 起算点になる日 | 具体例 |
|---|---|
| ① 検査済証の交付を受けた日 | 新築・改築の完了時 |
| ② 外壁の全面改修が完了した日 | 大規模修繕で外壁を全面的にやり直した時 |
| ③ 前回の全面打診等が完了した日 | 前回の12条点検で全面打診をやった時 |
この①〜③のうちいちばん新しい日が属する年度の、翌年度4月1日から10年。それを超えたあと最初に来る報告日までに、全面打診等を終えていなければなりません。
都の例示では、2012年7月10日に検査済証が交付された建物なら、起算開始日は2013年4月1日。したがって2023年4月1日以降の直近の報告時期までに全面打診が必要、となります。
逆算すると、検査済証が2016年度(平成28年度)以前の建物は、令和8年度の報告でほぼ確実に全面打診の対象になります。杉並区の駅前にある築10年超の店舗ビル・事務所ビルは、まずここを疑ってください。
「落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分」とはどこか
全面打診が必要なのは外壁の全部ではありません。都のQ4-9によれば、当該壁面の前面かつ壁面高さのおおむね2分の1の水平面内に、公道、不特定または多数の人が通行する私道、構内通路、広場を有する壁面が対象です。
ただし、壁面直下に鉄筋コンクリート造・鉄骨造などの強固な落下物防御施設(屋根、庇など)があるか、植込み等で影響角が完全にさえぎられ、災害の危険がないと判断される部分は除かれます。
杉並区のように建物が密集し、隣地との離隔が小さい街では、この判定が実務上とても効いてきます。私の経験上、道路に面した一面だけが対象になるケースと、四周ぜんぶが対象になるケースで、調査費用が3倍近く変わることがあります。だからこそ、現地で調査員と一緒に「どの面が対象か」を最初に詰めておく価値があるのです。
ドローン・赤外線調査という選択肢も明確化された
都のQ4-8では、赤外線調査によって劣化・損傷の状況が正確に判断できる場合、赤外線調査での確認が可能とされています。判定の精度については、一般財団法人日本建築防災協会が設置した委員会がとりまとめた「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドライン」を参照することとされています。
ただし、正直に申し上げます。赤外線調査は万能ではありません。日射の当たり方、外気温との温度差、撮影角度、タイルの浮きの深さによって、判定しづらい条件が出てきます。杉並区のように建物どうしが近く、影になる壁面が多い環境では、なおさらです。
私はいつも理事長さまに、「赤外線で全体をスクリーニングして、怪しい箇所と条件の悪い面をロープアクセスで打診する」というハイブリッドの組み立てをご提案しています。全面足場を前提にしないだけで、総額はかなり変わります。ドローンによる外壁調査の考え方はドローン調査のページに、赤外線と打診をどう組み合わせるかという技術的な整理はロープアクセスドットコムにまとめています。
杉並区の窓口・提出先と報告の流れ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特定行政庁 | 杉並区長 |
| 区の担当 | 都市整備部 建築課 設備担当(〒166-8570 杉並区阿佐谷南1-15-1/電話 03-3312-2111) |
| 特定建築物・防火設備の提出先 | 公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター(新宿区西新宿7-7-30 小田急西新宿O-PLACE 2階/特定建築物 03-5989-1929、防火設備 03-5989-1937) |
| 建築設備の提出先 | 一般財団法人 日本建築設備・昇降機センター(03-3591-2421) |
| 昇降機等の提出先 | 一般社団法人 東京都昇降機安全協議会(03-6304-2225) |
| 延べ面積1万㎡超の建物 | 東京都都市整備局 市街地建築部 建築企画課(建築安全担当 03-5388-3344/設備担当 03-5388-3349) |
敷地内に延べ面積1万㎡を超える建築物がある場合は、区ではなく東京都が所管になります。杉並区内でも、大規模な複合施設や工場跡地の再開発物件はここに該当することがあります。
杉並区は、所有者変更届・除却届・改善報告書などについてLoGoフォームによる電子申請に対応しています。添付は1ファイルにつき最大20MBのPDFのみ、副本の返却はありません。売却で所有者が替わった、テナントビルを使用休止した、といった場合も届出が必要なので、あわせて確認しておくと安心です。
案内が来ないから報告不要、ではありません
都のQ1-8には、はっきりこう書かれています。報告義務は所有者・管理者に課せられており、特定行政庁等からの「案内の有無」と「報告義務の有無」は無関係である、と。
過去に一度も報告していない建物には、そもそも案内が届きません。心当たりのある方は、新規登録用紙(定期報告基本台帳連絡票)を出すところから始めてください。相続や売買で代替わりした杉並区の中小ビルで、この登録が途切れているケースを、私は何度も見ています。
なお、区分所有マンションの場合、報告義務を負う「管理者」は原則として区分所有者からなる管理組合(代表者は理事長)です(Q2-3)。清掃や日常メンテナンスだけを受託している管理会社は、制度上の管理者には該当しません。ここは理事会で共有しておいたほうがよい論点です。
杉並区で外壁打診を発注するときの実務コスト感
ここからが本題です。制度の話より、みなさまが知りたいのは金額だと思います。
まず、明誠が現場で扱っている目安のレンジを正直に出します。物件により大きく変動しますので、あくまで参考値としてご覧ください。
| 項目 | 目安単価・金額 |
|---|---|
| 打診調査(テストハンマー) | 250〜500円/㎡ |
| 外壁塗装(下地補修別) | 3,500〜4,500円/㎡ |
| 防水工事 | 5,000〜8,000円/㎡ |
| 仮設足場 | 700〜1,200円/㎡(架面積) |
| 30戸規模マンションの大規模修繕総額 | 3,500〜5,000万円(うち仮設足場が15〜25%) |
お気づきでしょうか。打診そのものの単価は、外壁工事の中でいちばん安いのです。にもかかわらず調査費用が高くなるのは、打診の単価ではなく「そこへ人を届けるための仮設費」が乗るからです。
私がよくお見せする比較が、これです。
10階建て・外周80m・工期3ヶ月の建物で、外壁調査のためだけに仮設を組む場合
| 工法 | 仮設・アクセス費の目安 | 差額 |
|---|---|---|
| 全面足場 | 約168万円 | — |
| ロープアクセス工法 | 約59万円 | ▲約109万円 |
数字にすると、100万円以上の差が「調査するためだけ」に発生していることが分かります。杉並区のように、隣地との離隔が狭く、足場を組むのに近隣調整や道路占用の手続きが必要な立地では、この差がさらに開きます。仮設が組めないばかりに調査が先送りされ、結果としてタイルの浮きが広がってしまった建物を、私は現場で何度も見てきました。料金の考え方は大規模修繕の料金の考え方に整理しています。
杉並区の12条点検でロープアクセス工法が選ばれる理由
ロープアクセス工法(無足場工法)は、産業用ロープで作業員が壁面を降下しながら、調査・補修・塗装を行う工法です。ヨーロッパの石油プラットフォームの保守から発展し、日本では平成28年の労働安全衛生規則改正で「ロープ高所作業」として法令上の位置づけが明確になりました。
杉並区の建物でこの工法が効く理由を、3つに絞ります。
1. 狭い立地でも調査に着手できる
足場は、建物と隣地のあいだに一定の空間が要ります。杉並区の住宅地に建つ中小ビル・中低層マンションでは、この空間が取れないことがしばしばあります。ロープアクセスなら屋上に支点を取るため、地上の空間をほとんど使いません。
2. 打診から補修まで一気通貫でできる
打診で浮きが見つかったとき、足場方式だといったん足場を解体し、後日また組み直す——という無駄が生じがちです。ロープアクセスなら、調査でマーキングした箇所を、そのまま同じ体制でアンカーピンニング等の補修まで進められます。工期とコストの両方で効いてきます。
3. 居住者・テナントの生活影響が小さい
足場は防犯面の不安、洗濯物、日照、そして工事期間中の圧迫感という負担を居住者に強います。杉並区のように住民の定着率が高い街では、ここが理事会での争点になりやすい。ロープアクセスは仮設期間そのものが短く、バルコニー前を長期間ふさぎません。
株式会社明誠は、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたり、安全管理の考え方は明誠の安全管理にまとめています。工法そのものの技術的な詳細、訓練体系、器具の規格については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで公開しています。
12条点検を大規模修繕と一体で考える
杉並区の理事会で私がいつもお伝えしているのは、「12条点検を単独の出費として見ないでください」ということです。
全面打診は10年に一度めぐってきます。そして大規模修繕の周期も、多くのマンションで12〜15年。この2つは、ほぼ必ず近い時期に重なります。
ですから私は、次の3点を必ずワンセットでご提案するようにしています。
- 調査と修繕の同一年度化:打診調査の結果をそのまま修繕の数量拾いに使う。調査と見積のための2回の仮設をなくす
- 長期修繕計画への打診時期の書き込み:10年ルールの起算点(検査済証日 or 前回全面打診日)を計画表に明記しておく。理事が交代しても引き継がれる
- 報告年次のカレンダー化:杉並区の共同住宅なら令和9年度、令和12年度…と、3年刻みで理事会資料に落とす
とくに2番目。検査済証の日付は、10年ルールの起算点そのものです。ここが不明なまま「たぶん前回やったはず」で進めると、報告時に調査員から差し戻されます。検査済証が見当たらない場合は、まず台帳記載事項証明の取得から始めてください。
管理組合さま向けのご提案の考え方は管理組合向けサービス、テナントビルのオーナーさま向けはビルオーナー向けサービスに整理しています。
よくあるご質問
Q. 杉並区の小規模な賃貸マンションでも12条点検は必要ですか?
A. 共同住宅(用途コード40)が対象になるのは、原則として5階以上の階にその用途の床面積が100㎡を超えてあり、かつ用途部分の延べ面積が1,000㎡を超える建物です。4階建ての小規模な賃貸マンションは、通常は対象外になります。ただし1階に飲食店や店舗が入る複合用途の場合は判定が変わるため、各階の用途と面積を整理したうえで杉並区建築課へご確認ください。
Q. 令和8年度は報告年ではありません。何もしなくてよいですか?
A. 報告の義務は生じませんが、建築基準法第8条は所有者・管理者に建物を常時適法な状態に維持する努力義務を課しています。とくに共同住宅の次の報告は令和9年度(2027年度)です。全面打診の対象になりそうな建物は、報告年の前年に調査を済ませ、必要な補修まで終えておくのが実務的におすすめです。報告年に入ってから浮きが大量に見つかると、10月31日の期限に間に合いません。
Q. 外壁の全面打診の費用はいくらくらいですか?
A. 打診そのものは250〜500円/㎡が目安ですが、総額を左右するのはアクセス手段です。10階建て・外周80mの建物で比較すると、全面足場が約168万円に対しロープアクセスは約59万円、差額は約109万円が目安になります。建物の形状・対象面の数・立地によって変わりますので、無料で概算のお見積りをお出しできます。
Q. 工期はどれくらいかかりますか?
A. 調査のみであれば、ロープアクセス工法で10階建て・外周80m規模なら数日から2週間程度が目安です。足場方式は、架設と解体だけで2〜3週間を見込む必要があります。補修まで含めた場合も、ロープアクセスは足場工法のおおむね60%の工期が目安です。
Q. ドローンの赤外線調査だけで全面打診の代わりになりますか?
A. 劣化・損傷の状況が正確に判断できる場合には可能とされていますが、日本建築防災協会のガイドラインに沿った条件を満たす必要があります。日射条件や壁面の向き、隣接建物の影などで精度が確保できない面は、打診での確認が要ります。杉並区のように建物が密集した立地では、赤外線とロープアクセス打診の組み合わせが現実的です。
Q. 報告を怠るとどうなりますか?
A. 建築基準法第12条に定められた義務であり、報告を怠ることは法令違反にあたります。建築基準法第101条により、100万円以下の罰金が科されることがあります。また事故が起きた場合、定期報告の有無とその内容は重要な参考資料になるとされています。
Q. 案内のハガキが届きません。対象外ということですか?
A. いいえ。報告義務の有無と、案内の有無は無関係です。これまで一度も報告していない建物には案内が届きません。定期報告基本台帳への新規登録から始める必要があります。杉並区建築課、または受付機関である東京都防災・建築まちづくりセンターへご相談ください。
この記事のポイントまとめ
- 杉並区の特定行政庁は杉並区長。特定建築物の提出先は東京都防災・建築まちづくりセンター
- 令和8年度(2026年度)は用途コード30番台(店舗・飲食・複合用途・事務所)の報告年次。期限は令和8年10月31日
- 共同住宅(40番台)の次の報告年次は令和9年度(2027年度)、5月1日〜10月31日
- 旅館・ホテル・劇場等の10番台は毎年報告で、11月1日〜翌年1月31日
- 全面打診は、検査済証交付日等の翌年度4月1日から10年を超えて最初の報告日まで
- 打診調査は250〜500円/㎡が目安。費用差の本体は打診単価ではなく仮設費にある
- 建物が密集する杉並区では、ロープアクセス工法が仮設費と近隣調整の負担を圧縮する
まとめ|杉並区のオーナー・理事会が今週動くこと3点
長くなりましたので、最後に3つだけ。
- 用途コードを確定する:各階の用途と床面積を出し、20番台・30番台・40番台のどれかを判定する。1階店舗+上階住宅の複合用途は、とくに間違えやすいところです
- 検査済証の日付を調べる:ここが全面打診10年カウントの起算点です。見当たらなければ、台帳記載事項証明の取得から
- 30番台の建物は今週中に調査員を押さえる:令和8年10月31日まで残り約6週間。9月後半から10月にかけて、調査員も受付窓口も混み合います
杉並区は、駅近の暮らしやすさと引き換えに、建物どうしの距離が近い街です。だからこそ「足場が組めないから調査を先送りする」という判断が起きやすい。私が現場で20年やってきて、一番悔しい思いをするのは、先送りの数年でタイルの浮きが広がり、補修費が当初の見積の何倍にもなってしまった現場に呼ばれたときです。
明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)のどれが建物に合うかという考え方はロープアクセス工法のご紹介に、技術的な深掘りはロープアクセスドットコムにまとめています。
10月31日までに動けるかどうかが分かれ目です。理事会や社内の定例で、1分だけでもこの話題を出してみてください。用途コードの判定や起算点の整理だけでも、お力になれることがあります。お問い合わせはこちらから承っています。
出典・参考資料
- 杉並区「特定建築物の定期調査・検査報告」(都市整備部 建築課設備担当、更新日2025年6月9日)
- 杉並区「定期報告が必要な特定建築物・防火設備・建築設備・昇降機等及び報告時期一覧(PDF)」
- 東京都都市整備局「3.定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧」
- 東京都都市整備局「12.定期報告に関するQ&A」(全面打診の時期、落下危害のおそれのある部分、赤外線調査の扱い)
- 公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター「特定建築物定期調査報告」
- 一般財団法人 日本建築防災協会「特定建築物定期調査資格者技術力向上講習受講者名簿(特建全国名簿)」
- 国土交通省「定期報告制度に係る関係条文等(PDF)」(建築基準法第12条ほか)
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月20日時点で公表されている杉並区および東京都・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度や運用は年度途中でも改正されることがあります。実際に報告・申請される前に、必ず杉並区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月20日
中野区の12条点検・外壁全面打診|令和8年度の対象と費用の目安【2026年版】
「うちのビルは中野区で定期報告の対象なのか。対象だとして、今年、外壁の全面打診まで求められるのか」——中野区のオーナーさまと理事長さまから、この夏いちばん多くいただいた質問がこれでした。
株式会社明誠の本間です。東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。中野区は駅前の再開発が進む一方で、狭あい道路に面した築30年・40年の中低層ビルとマンションが密集している街です。この「調査はしたいが足場が組めない」という中野区特有の悩みを、私は現場で何度も見てきました。
この記事では、令和8年度(2026年度)時点の公的一次情報にもとづいて、中野区の12条点検(外壁打診調査)の対象・時期・費用を整理します。
結論:中野区で12条点検の対象になる建物と、全面打診が必要になるタイミング
先に結論から申し上げます。
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 誰が報告するのか | 建築物の所有者・管理者(管理組合、ビルオーナー、ホテル運営者) |
| 誰に報告するのか | 特定行政庁である中野区長(受付窓口は公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター) |
| いつ報告するのか | 用途コードごとに毎年または3年ごと。3年ごとの特定建築物は5月1日〜10月31日 |
| 令和8年度の報告年次 | 用途コード30番台(複合用途建築物、事務所、物販店舗、飲食店等) |
| 全面打診はいつ | 検査済証交付・外壁全面改修・前回全面打診のいずれかの翌年度4月1日から10年を超えて最初の報告日まで |
| 対象の仕上げ材 | タイル貼り・石貼り(乾式工法を除く)・モルタル塗り |
つまり、中野区で複合用途ビルや事務所ビル、店舗ビルをお持ちの方にとって、令和8年度は「報告年」です。報告期間は令和8年5月1日から令和8年10月31日まで(出典:中野区「定期報告とは」)。この記事を公開している9月下旬時点で、締切まで残り1か月強という計算になります。
分譲マンション・賃貸マンション(用途コード40番台)の報告年次は令和9年度(2027年度)です。「今年じゃないから安心」ではなく、今年のうちに全面打診の要否を判定しておけば、来年あわてずに済みます。私はいつも理事長さまに、この「1年前倒しの確認」をお伝えしています。
建築基準法第12条第1項とは|定期調査報告のきほん
建築基準法第12条第1項は、不特定多数の人が使う「特定建築物」について、所有者・管理者が有資格者に調査させ、その結果を特定行政庁へ定期的に報告することを義務づけた条文です。ここでいう有資格者とは、一級建築士・二級建築士、または特定建築物調査員のことです。
ここで混同されやすいのが、消防法の消防用設備等点検との違いです。中野区の公式ページでも「建築基準法に基づく定期調査・検査報告制度は、消防法に基づく消防用設備等点検とは異なる制度です」と明記されています。私の経験上、「消防の点検はやっているから12条も大丈夫」と思い込んでいるオーナーさまは、中野区に限らず一定数いらっしゃいます。
定期報告は4種類に分かれます。
- 特定建築物の定期調査報告(毎年または3年ごと):敷地、一般構造、構造強度、防火・避難関係。外壁の打診はここに含まれます
- 防火設備の定期検査報告(毎年):随時閉鎖式の防火扉・防火シャッター等
- 建築設備の定期検査報告(毎年):機械換気設備、排煙設備、非常用照明、給排水設備
- 昇降機等の定期検査報告(毎年):エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機
外壁の落下事故に直結するのは1番です。この記事は1番を扱います。
令和8年度に中野区で報告年次を迎えるのはどの建物か
3年ごと報告の特定建築物は、用途コードによって報告年度が決まっています。中野区が公表している一覧を整理すると、次のとおりです。
| 用途コード | 主な用途 | 規模要件の例 | 報告年度 |
|---|---|---|---|
| 20番台 | 病院、旅館・ホテル(毎年報告分を除く)、学校、体育館、児童福祉施設等 | 3階以上かつ一定面積超 等 | 2022・2025・2028年度 |
| 30番台 | 物販店舗、飲食店、遊技場、公衆浴場、複合用途建築物、事務所等 | 3階以上でA>500㎡ 等(事務所は5階建て以上・延べ2,000㎡超のうち一定規模) | 2023・2026(令和8)・2029年度 |
| 40番台 | 下宿、共同住宅、寄宿舎 | 5階以上かつA>1,000㎡ | 2021・2024・2027年度 |
(出典:中野区「定期報告とは」、東京都都市整備局「3.定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧」)
中野駅周辺や新井薬師前、東中野あたりには、1階が店舗で上階が事務所や住戸という複合用途の中層ビルが本当に多い。これらは30番台に該当しやすく、令和8年度が報告年です。自社ビルを「事務所だから関係ない」と判断する前に、テナント構成と各階の用途面積を一度整理してみてください。
新築直後は「初回免除」がある
新築・改築した建物は、検査済証の交付を受けた日が属する年度の翌年度以降、2回目の報告時期から報告が必要になります。直近の1回は免除されるという意味です。たとえば令和5年度中に検査済証が交付された建物なら、令和6年度の報告が免除され、令和9年度から報告義務が生じます(出典:東京都都市整備局)。
なお、建築設備と昇降機等は取扱いが違い、検査済証交付の翌日から起算して2年を経過する日までに初回報告が必要です。ここは間違えやすいので注意が必要です。
外壁の全面打診が必要になる4つのトリガー
平成20年国土交通省告示第282号は、タイル、石貼り等(乾式工法によるものを除く)、モルタル等の仕上げについて、おおむね6か月から3年以内に一度の手の届く範囲の打診等に加え、おおむね10年に一度、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等を行うこととしています(出典:国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」)。
実務上、全面打診のスイッチが入るのは次の4つです。
- 検査済証の交付を受けた日が属する年度の翌年度4月1日から10年を超えたとき
- 外壁の全面改修が完了した日が属する年度の翌年度4月1日から10年を超えたとき
- 前回の全面打診が完了した日が属する年度の翌年度4月1日から10年を超えたとき
- 目視・部分打診で異常が見つかったとき(10年を待たずに全面打診が必要になります)
たとえば平成25年度に検査済証を取得した建物なら、起算日は平成26年4月1日。令和6年度以降の報告日までに全面打診が要る、という数え方になります(出典:板橋区「建築基準法に基づく特定建築物の外壁全面打診などの調査について」)。
例外:3年以内に改修が確実な場合と、防護措置がある場合
調査の実施から3年以内に外壁改修または全面打診が行われることが確実な場合、あるいは落下物防護ネットの設置など歩行者の安全を確保する別の対策を講じている場合は、全面打診が猶予されます。ただし前者は、維持保全計画書等で時期が明確にされ、その計画に従って実施される見込みがあることが条件で、調査結果表の特記事項欄への記載と計画書の添付が求められます。
「大規模修繕を再来年やるから今回は見送る」という判断は、計画書という形になっていて初めて通る話です。口頭の理事会決議だけでは根拠になりません。ここは正直に申し上げます。
ドローン赤外線調査という選択肢も明確化された
令和4年1月18日付けの告示改正で、打診以外の調査方法として「無人航空機による赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するもの」が明確化されました。判定にあたっては一般財団法人日本建築防災協会がまとめた外壁調査ガイドラインを参照します(出典:国土交通省)。
明誠でもドローンによる外壁調査は行います。ただし中野区のように隣棟間隔が狭く、上空にも電線や隣地がかぶる立地では、ドローンだけで全面をカバーしきれないケースが少なくありません。私はドローンとロープアクセスを組み合わせる前提で計画を立てることが多いです。
中野区の窓口・提出先と報告のながれ
中野区内の建築物の定期報告は、次の流れになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特定行政庁 | 中野区(担当:都市基盤部 建築課)。ただし敷地内に延べ面積1万㎡超の建築物がある場合は東京都 市街地建築部 建築企画課 |
| 特定建築物・防火設備の提出先 | 公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター(新宿区西新宿7-7-30) |
| 建築設備の提出先 | 一般財団法人 日本建築設備・昇降機センター |
| 昇降機等の提出先 | 一般社団法人 東京都昇降機安全協議会 |
| 報告期間(3年ごとの特定建築物) | 5月1日〜10月31日 |
| 新規登録 | 整理番号(014-○○-○○○○)がない場合、区の「定期報告対象建築物 概要調査票」をメール提出して取得 |
(出典:中野区「定期報告とは」、公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター)
整理番号を持っていない建物は、その場で報告できません。私の経験上、相続や売買でオーナーが替わった中野区の中小ビルは、この整理番号が引き継がれていないことがよくあります。着手前に番号の有無を確認しておくと、10月の駆け込みで慌てずに済みます。
中野区で外壁打診を発注するときの実務コスト感
ここからが本題です。費用の話をします。以下はあくまで目安・参考値で、実際の見積りは建物の形状、階数、隣地との離れ、仕上げ材、足場の可否によって大きく変動します。
| 項目 | 費用の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 外壁打診調査 | 250〜500円/㎡ | 足場・ゴンドラ・ロープ等の仮設費は別 |
| 仮設足場 | 700〜1,200円/㎡ | 中野区の狭あい道路沿いは道路使用許可・養生費が加算されやすい |
| 外壁塗装 | 3,500〜4,500円/㎡ | 打診後の補修・塗替えを同時施工する場合 |
| 防水(屋上・バルコニー) | 5,000〜8,000円/㎡ | 大規模修繕と一体化する場合 |
もっとも差が出るのが仮設費です。10階建て・外周80m・工期3か月という条件のモデルケースでは、仮設足場が約168万円かかるのに対し、ロープアクセス工法なら約59万円。差額はおよそ109万円という試算になります。打診調査だけのために足場を1棟分組むのは、正直に申し上げて費用対効果が合いません。
料金の考え方については明誠の大規模修繕の料金の考え方にも整理していますので、あわせてご覧ください。
中野区の12条点検でロープアクセス工法が選ばれる理由
ロープアクセス工法(無足場工法)は、屋上から産業用ロープで作業員が降下して外壁に取り付く工法です。中野区の物件でこの工法が効く理由は、大きく3つあります。
1つめは、足場が組めない・組みにくい立地が多いこと。 中野区は狭あい道路(幅員4m未満のいわゆる2項道路)が多く、区が拡幅整備事業を継続しています(参考:中野区「狭あい道路の拡幅整備事業」)。隣地境界まで数十センチという建物で足場を組もうとすると、隣地の借地交渉や道路占用の調整だけで1か月以上かかることがあります。ロープアクセスなら屋上の支点だけで作業が成立します。
2つめは、居住者・テナントの生活と営業を止めないこと。 足場を組むと窓の外に他人が立ち、防犯上の不安が出ます。1階店舗は看板が隠れます。ロープアクセスは必要な面に必要な日数だけ人が下りるので、営業補償や空室リスクを抑えられます。
3つめは、部分補修へそのまま移行できること。 打診で浮きが見つかった箇所を、同じロープ上でアンカーピンニング等の補修まで一気通貫で行えます。調査と補修で2回仮設を組む無駄がなくなります。
工法そのものの技術的な解説——支点の取り方、バックアップロープの考え方、SRT(シングルロープテクニック)の安全基準などは、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。同業の方や、発注前に技術を確かめたい管理会社の方はそちらもご覧ください。
なお株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけ、ロープアクセス工法による高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業で過去16年間、墜落による労働災害ゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたり、ISO9001の品質マネジメントシステムを運用しています。日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しており、安全基準の整備そのものに関わってきました。明誠のロープアクセス工法の技術詳細もご確認ください。
12条点検を大規模修繕と一体化する3つのメリット
私はこれを、必ずワンセットでご提案するようにしています。理由は3つです。
- 仮設費が1回で済む:調査と補修・塗装・防水を別々に発注すると、仮設費を二重に払うことになります。中野区のような狭小敷地ではこの二重負担が特に重くのしかかります
- 長期修繕計画の精度が上がる:全面打診の結果(浮き面積率、ひび割れ延長、シーリング劣化)は、次の大規模修繕の数量根拠そのものです。数量が固まれば見積りのブレが小さくなり、修繕積立金の計画も立てやすくなります
- 是正指摘への対応が早い:定期報告で「要是正」と判定された箇所は、改善計画書の提出が求められます。修繕工事とセットで動いていれば、改善完了報告までの道筋が最初から見えています
ロープアクセス工法の全体像と対応範囲は、ロープアクセスドットコムの工法解説もあわせてお読みいただくと理解が早いと思います。
管理組合さま向けのご支援内容はマンション管理組合向けサービス、ビルオーナーさま向けはビルオーナー向けサービスに整理しています。
よくあるご質問
Q. 中野区の小規模な賃貸マンションでも12条点検は必要ですか?
A. 共同住宅(用途コード40番台)は「5階以上かつ用途に供する部分の床面積の合計が1,000㎡超」が目安です。4階建てや小規模な物件は定期報告の対象外となることが多いですが、対象外でも外壁タイルの落下責任は所有者に残ります。対象外の建物こそ、任意の打診調査をおすすめしています。
Q. 外壁の全面打診の費用はいくらくらいですか?
A. 打診そのものは250〜500円/㎡が目安で、これに仮設費が加わります。差が出るのは仮設費のほうで、10階建て・外周80mのモデルケースでは足場約168万円に対しロープアクセス約59万円という試算です。物件により変動しますので、概算お見積りは無料で提示しています。
Q. 工期はどれくらいかかりますか?
A. 打診調査のみであれば、中規模のビルで数日から2週間程度が目安です。足場を組む場合は架設・解体だけで1〜2週間が加わります。ロープアクセスは仮設の組立解体が不要なぶん、全体工期を短縮できます。
Q. ドローンの赤外線調査だけで全面打診の代わりになりますか?
A. 令和4年の告示改正で、打診と同等以上の精度を有する無人航空機による赤外線調査が明確化されました。ただし精度の判定は日本建築防災協会のガイドラインに沿う必要があり、天候・日射条件・撮影角度の制約もあります。中野区のように隣棟間隔が狭い立地では、ドローンとロープアクセスの併用が現実的です。
Q. 今年は報告年ではありません。何もしなくてよいですか?
A. 報告年でなくても、おおむね6か月から3年以内に一度は手の届く範囲の打診等が必要とされています。また全面打診の10年判定は報告年とは別に進みます。共同住宅(40番台)の次の報告年次は令和9年度ですので、令和8年度のうちに要否を確認しておくと、来年の総会に間に合います。
Q. 報告を怠るとどうなりますか?
A. 建築基準法上、報告義務違反には罰則規定があります。それ以上に重いのは、落下事故が起きたときの所有者・管理者の責任です。私が現場で一番悔しい思いをするのは、事前の調査で防げたはずの剥落が起きてしまったときです。
Q. 整理番号がわからないのですが、どうすればよいですか?
A. 中野区の公式ページから「定期報告対象建築物 概要調査票」をダウンロードし、区の担当部署へメールで送付すると整理番号が発行されます。オーナーが替わった建物では番号が引き継がれていないことがあるため、早めの確認をおすすめします。
この記事のポイントまとめ
- 中野区の特定行政庁は中野区長、特定建築物の提出先は東京都防災・建築まちづくりセンター
- 令和8年度(2026年度)は用途コード30番台の報告年次、期間は5月1日〜10月31日
- 共同住宅(40番台)の次の報告年次は令和9年度(2027年度)
- 全面打診は検査済証交付等の翌年度4月1日から10年を超えて最初の報告日まで
- 打診調査は250〜500円/㎡が目安、費用差の本体は仮設費にある
- 狭あい道路の多い中野区では、ロープアクセス工法が仮設費と調整期間を圧縮する
まとめ|中野区のオーナー・理事会が今週動くこと3点
長くなりましたので、最後に3つだけ。
- 建物の用途コードを確定する:各階の用途と面積を出して、20番台・30番台・40番台のどれかを判定する。複合用途は特に間違えやすい
- 検査済証の日付を調べる:ここが全面打診の10年カウントの起算点です。検査済証が見当たらない場合は、台帳記載事項証明の取得から始めます
- 整理番号の有無を確認する:番号がなければ概要調査票の提出から。10月31日が近づくほど窓口は混み合います
中野区は、建物が建て込んでいるぶん、足場という選択肢が取りづらい街です。だからこそ「調査だけでこの金額か」と諦めてしまうオーナーさまが多い。私はそこに、もう一つの選択肢があることをお伝えしたいのです。
明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。明誠がどういう考え方で建物と向き合っているかは明誠の理念に書きました。
ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理や、用途コードの判定だけでも、お力になれることがあります。お問い合わせはこちらから承っています。技術面をもう一段深く知りたい方は、ロープアクセスドットコムもあわせてご覧ください。
出典・参考資料
- 中野区「定期報告とは」(都市基盤部 建築課)
- 東京都都市整備局「3.定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧」
- 国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」(平成20年国土交通省告示第282号、令和4年1月18日一部改正)
- 板橋区「建築基準法に基づく特定建築物の外壁全面打診などの調査について」
- 公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター「特定建築物定期調査報告」
- 中野区「狭あい道路の拡幅整備事業」
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月20日時点で公表されている中野区および東京都・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度や運用は年度途中でも改正されることがあります。実際に報告・申請される前に、中野区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月20日
中野区の管理組合・オーナーが無料で使える相談9選|土地建物無料相談会は毎月1回木曜(次は10月29日・申込10月23日まで)、リフォーム相談は毎週金曜・予約不要【令和8年度版】
2026年9月19日 更新
中野区で大規模修繕を検討している管理組合とビルオーナーさまへ。中野区には、無料で使える相談窓口と専門家派遣が9つあります。まずはそこからです。
「本間さん、うちは前の道が4メートルないんです。足場、組めますかね」
先月、中野区野方のマンションのオーナーさまから、こんなご相談をいただきました。築31年、18戸の賃貸マンション。外壁の塗膜が白く粉を吹き、シーリングが痩せているのはご本人も分かっている。ただ、前面道路が狭く、隣地との離隔も50センチあるかどうか。足場を組む前提で見積りを取ったら、仮設だけで想定の倍近い金額が返ってきた、というお話でした。
私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組んで建物を囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も自分の足で踏んできた人間です。
そのオーナーさまに最初にお伝えしたのは、工法の話ではありませんでした。見積りを比べる前に、中野区と東京都の無料の窓口を先に使いましょう、ということです。
中野区は、23区のなかでも道路の狭い住宅地が多く、建物が密集しているエリアです。中野・東中野・新井薬師前・沼袋・野方・鷺ノ宮といった沿線に、20戸前後の分譲マンションや賃貸マンションがびっしりと建っています。この「狭い」「近い」という条件は、大規模修繕の費用を押し上げる最大の要因になります。だからこそ、判断を誤らないための無料の相談窓口が、中野区では特に効くのです。
今日は、中野区のマンション管理組合とビルオーナーさまが、お金をかけずに使える相談・派遣を9つ、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。
結論:中野区で無料で使える相談・派遣は9ある
先に一覧でお示しします。
| # | 制度・窓口 | 誰が対応するか | 費用・回数 | 申込先 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 中野区 土地建物無料相談会 | 建築士・宅建業者・土地家屋調査士・司法書士ほか5団体 | 無料/1人30分・毎月1回木曜 | 司法書士坂本洋事務所 03-3385-8523 |
| 2 | 中野区 すまいのリフォーム相談 | 区内建設事業者の相談員 | 無料/毎週金曜・予約不要 | 住宅課住宅政策係 03-3228-5564 |
| 3 | 中野区 専門相談(不動産相談) | 宅地建物取引士 | 無料/25分・毎月3回 | 区民相談係 03-3228-8802 |
| 4 | 中野区 専門相談(法律相談) | 弁護士 | 無料/25分・1人1年に1回 | 区民相談係 03-3228-8802 |
| 5 | 中野区 専門相談(登記・境界/税務) | 司法書士・土地家屋調査士・税理士 | 無料/25分 | 区民相談係 03-3228-8802 |
| 6 | 中野区 消費生活相談 | 消費生活相談員 | 無料/月〜金 9時30分〜16時 | 03-3228-5438 |
| 7 | 中野区 分譲マンション支援(届出→専門家派遣・セミナー) | マンション管理士等 | 無料 | 住宅課住宅政策係 03-3228-5564 |
| 8 | 東京都 マンションアドバイザー無料派遣 | マンション管理士・建築士等 | 要届出マンションは1回、管理不全の兆候ありは5回まで無料 | 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1453 |
| 9 | 東京都 マンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応) | マンション管理士 | 各テーマ2回まで無料/令和9年2月26日まで | 東京都マンション管理士会HP |
このうち 1・2・3 は、予約のハードルが低く、今月中に動ける窓口です。7・8・9 は東京都の制度と連動していて、腰を据えて使うタイプのものです。
私が現場でもったいないと感じるのは、この9つを1つも使わないまま、いきなり工事業者に見積りを頼んでしまう管理組合やオーナーさまが多いことです。順番が逆なのです。
中野区の管理組合が最初に使うべき「土地建物無料相談会」
中野区の窓口のなかで、大規模修繕の入口として一番使いやすいのがこれです。
民間5団体が合同で対応する、中野区独自の枠組み
土地建物無料相談会は、まちづくり推進土地建物協議会(区内の民間事業者5団体で構成)が開いている無料相談会です。建物の設計や施工、登記、売買など、土地建物に関するさまざまな相談に答えてくれます(出典:中野区「土地建物無料相談会(令和8年度)」/2026年3月26日更新)。
構成団体は次の5つです。
- 社団法人東京都建築士事務所協会 中野支部
- 公益社団法人東京都宅地建物取引業協会 第十ブロック
- 中野建設まちづくり協議会
- 東京土地家屋調査士会 中野支部
- 東京司法書士会 中野支部
建築士事務所協会と建設まちづくり協議会が入っているというのが、この相談会の性格をよく表しています。区分所有や相続の話だけでなく、「この建物、どこから手を付けるべきか」という技術寄りの相談にも答えられる布陣です。
令和8年度の残り日程と申込期限
| 開催日 | 会場 | 申込期限 |
|---|---|---|
| 10月29日(木) | 区役所1階 ミーティングルームB | 10月23日(金) |
| 11月19日(木) | 区役所1階 ミーティングルームB | 11月13日(金) |
| 12月10日(木) | 区役所1階 ミーティングルームB | 12月4日(金) |
| 令和9年1月28日(木) | 区役所1階 ミーティングルームB | 1月22日(金) |
| 令和9年2月18日(木) | 区役所1階 ミーティングルームB | 2月12日(金) |
| 令和9年3月18日(木) | 区役所1階 ミーティングルームB | 3月12日(金) |
開催時間は10時から15時30分。相談時間は1人あたり30分です。予約優先ですが、当日の飛び込みも受け付けています。 予約先は司法書士坂本洋事務所(担当:坂本/電話:03-3385-8523)です。
対象は「中野区民の方、中野区内に土地や建物をお持ちの方」。つまり、区外にお住まいのビルオーナーさまでも、中野区内に物件を持っていれば使えるということです。ここは見落とされがちなポイントだと思います。
なお、8月は毎年開催していません。9月17日の回はすでに終了していますので、次に狙うのは10月29日(申込は10月23日まで)です。
30分で成果を出すための持ち物
1人30分は、決して長くありません。私が現場でお勧めしているのは、次の3点を持っていくことです。
- 不具合箇所の写真5枚以上(スマートフォンで構いません)
- 長期修繕計画書と、直近の修繕工事の記録
- 修繕積立金の残高が分かる直近の決算書
とくに写真は効きます。外壁のひび割れ、タイルの浮き、屋上の水たまり、シーリングの切れ。5枚もあれば、建築士は建物の状態をかなり正確に推測できます。逆に、口頭の説明だけで30分を使うと、状況の共有だけで終わってしまいます。
予約不要で毎週使える「すまいのリフォーム相談」
中野区の窓口のなかで、もっともハードルが低いのがこれです。
新築や増改築、簡易な修繕、バリアフリー化などの相談を、区内建設事業者の相談員が無料で受けてくれます(出典:中野区「すまいのリフォーム相談」/2026年4月1日更新)。
- 日時:毎週金曜日(祝日を除く)10時〜16時(12時〜13時は昼休憩)
- 場所:中野区役所 1階
- 費用:無料
- 予約不要
年間の開催日程は、区が公開している令和8年度のリフォーム相談チラシ(PDF)で確認できます。お問い合わせは住宅課住宅政策係(電話:03-3228-5564)です。
相談員は区内の建設事業者ですので、雨漏りの修繕、ベランダ・屋根・壁の修繕、設計や見積りの考え方といった、実務寄りの話ができます。
ただし、性格を正しく理解しておく必要があります。これは「工事の一般論を聞く窓口」であって、「特定の見積りの妥当性を判定してもらう窓口」ではありません。 相談員も同じ業界の事業者ですから、他社の見積りの是非を断じる立場にはないのです。
それでも、予約なしで毎週金曜に行ける窓口というのは、とても貴重です。理事会の議論が止まったとき、「金曜に区役所1階に寄ってみる」という選択肢を持っているだけで、話が前に進みます。
区役所4階の「専門相談」を、目的別に使い分ける
中野区は、区役所4階の専門相談室で、予約制の無料相談を実施しています(出典:中野区「中野区の専門相談」/2026年6月25日更新)。
相談時間はお1人につき25分以内。相談は無料で、秘密は厳守されます。
管理組合・オーナーに関係が深い4つ
| 相談名 | 相談日 | 定員 | 担当 |
|---|---|---|---|
| 不動産相談 | 毎月第1金曜・第3火曜・第4火曜 13時〜16時 | 6人 | 宅地建物取引士 |
| 法律相談 | 毎週月曜・水曜、毎月第3日曜 13時〜16時 | 12人 | 弁護士 |
| 登記・境界相談 | 毎月第2火曜 13時〜16時 | 6人 | 司法書士・土地家屋調査士 |
| 税務相談 | 毎月第1火曜 13時〜16時 | 12人 | 税理士 |
登記・境界相談が入っているのは、中野区の地域特性を考えると大きいと思います。隣地との境界が曖昧なまま何十年も経っている物件は、中野区に少なくありません。足場を建てるとき、隣地に少しでもかかるなら、境界の確認と隣地所有者の同意が要ります。ここが不明確なままだと、着工直前に工事が止まります。土地家屋調査士に無料で25分聞けるというのは、実務的に効く窓口です。
予約方法と、押さえておくべき制約
予約はWebと電話の2経路です。
- Web予約:相談日の1週間前の同一曜日(午前0時)から、相談日前日(午後11時59分)まで、先着順
- 電話予約:相談日の1週間前の同一曜日(午前9時)から、先着順。電話番号 03-3228-8802(区民相談係)
直接、区役所窓口での受付は行っていません。また、専門相談は祝日・休日と、12月20日から1月10日までは実施されません。年末年始に動こうと思っていると空振りしますので、ご注意ください。
制約もあります。法律相談は、お1人さま1年に1回しか受けられません(次回の利用は、相談日の翌日から1年経過した以降分の予約が可能)。係争中の事案や、すでに弁護士に依頼済みの案件は受け付けられません。年に1回という枠ですので、理事会で「誰が、何を聞くか」を決めてから使うことをお勧めします。
当日は、相談される方の氏名・住所が確認できるもの(運転免許証、マイナンバーカード、公共料金の請求書など)と、聞きたいことのメモ、関係資料をお持ちください。部屋には最大3名まで入室できますので、理事長と修繕委員の2〜3名で行くという使い方もできます。
工事業者とのトラブルは「消費生活相談」へ
管理組合やオーナーの悩みは、建物のことばかりではありません。訪問販売による強引な勧誘、契約後の不当な追加請求、期日を守らない業者。こうしたトラブルの窓口が、中野区消費生活センターです(出典:中野区「消費生活に関する相談窓口」/2026年6月5日更新)。
- 受付日時:月曜日から金曜日 9時30分〜16時(土日祝・年末年始は休み)
- 電話番号:03-3228-5438(中野区役所4階)
- 対象:中野区在住・在勤・在学の方
- 費用:無料(通話料は自己負担)
Teamsを使ったオンライン相談も実施されています(月〜金 10時〜12時、14時〜16時、30分以内)。まず電話で相談内容を伝えたうえで、予約方法を案内してもらう流れです。
相談件数が多いため、1回あたりの相談時間は原則30分以内が目安とされています。契約関係の書類をそろえてから電話をかけるのが、結果的に一番早いです。
なお、個人間のトラブル、人間関係のトラブル、労働問題、相続や家族関係に関する相談は受け付けていません。管理組合内部の対立は、この窓口ではなく法律相談の領域です。
管理状況届出を出せば、東京都の専門家派遣が無料で使える
ここからが、中野区の大規模修繕にとって本丸の部分です。
まず「要届出マンション」かどうかを確認する
東京都は「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」(平成31年3月制定)に基づき、令和2年4月から管理状況届出制度を実施しています。
昭和58(1983)年12月31日以前に新築され、居住用の独立部分が6戸以上ある分譲マンションは、管理状況の届出が義務付けられています。これを「要届出マンション」といいます(出典:公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」)。
中野区では、東京都のマンション管理状況届出システムへ入力するか、届出書を中野区役所住宅課へ郵送するか、どちらかの方法を選べます(出典:中野区「分譲マンション支援」)。
築43年以上ということですから、中野区内の分譲マンションではかなりの数が該当します。まず、自分のマンションが要届出かどうか、そして届出が受理されているかどうかを、住宅課(03-3228-5564)に確認してください。
届出が受理されると、無料派遣の回数が決まる
| 区分 | 無料回数 |
|---|---|
| 届出が受理された要届出マンション | 1回まで無料 |
| うち管理不全の兆候があるマンション | 5回まで無料 |
各コース1回あたり2時間程度です。コースは講座編(A-1〜A-6)と相談編(B-1〜B-6)に分かれており、大規模修繕に直結するのは次のあたりです。
- A-4 計画修繕工事の進め方(講座編)
- A-2 長期修繕計画作成ガイドライン活用の手引きの解説(講座編)
- B-4 修繕計画の作成や修繕積立金等の設定に関すること(相談編)
- B-5① 修繕工事検討段階での相談(建物・設備等の劣化状況の調査・診断、修繕工事の検討組織、修繕工事の方式等)
- B-5② 修繕工事準備段階での相談(修繕工事の内容、業者選定の仕方、合意形成等)
B-5①とB-5②は、区の窓口では踏み込めない「劣化診断の考え方」と「業者選定の仕方」を、正面から扱えます。 ここが区の相談会との決定的な違いです。
申込は、申込書に必要事項を記入のうえ、FAX・メール・郵送で東京都防災・建築まちづくりセンター(まちづくり推進課/TEL 03-5989-1453/FAX 03-5989-1548)へ。申込後1〜2週間程度で、派遣されるアドバイザーから日程調整の連絡が入ります。
管理不全の兆候があるマンションは、Cコースの費用助成も
管理不全の兆候があるマンション向けには、マンション管理アドバイザーCコース(支援編)の派遣費用助成も用意されています(出典:東京都マンションポータルサイト「マンション管理アドバイザーCコース(支援編)派遣費用の助成」)。
「管理不全の兆候」の判定基準は、管理組合の有無、管理者等の有無、管理規約の有無、年1回以上の総会開催の有無、管理費の有無、修繕積立金の有無、そして修繕の計画的な実施(大規模な修繕工事)の有無。これらのいずれかが「ない」「いない」と回答したマンションが該当します。
つまり、大規模修繕を計画的に実施していない、というだけで該当し得るということです。ネガティブに聞こえるかもしれませんが、私はむしろ逆だと思っています。該当するなら、5回まで無料で専門家を呼べるのです。使わない手はありません。
防災と認知症対応の「マンション管理士無料派遣」は令和9年2月26日まで
東京都が令和5年度から実施している事業で、令和8年度も継続しています(出典:東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」)。
- 対象:都内の分譲マンション管理組合
- 回数:1管理組合につき、防災力向上と認知症対応それぞれ2回まで(無料)
- 受付期限:令和9年2月26日(金)まで
- 申込:一般社団法人 東京都マンション管理士会のHPから
注意点が2つあります。
ひとつは、募集数に達した時点で締め切られること。都内全域が対象の枠ですので、年明けまで待つのは得策ではありません。
もうひとつは、派遣回数が通算でカウントされること。令和5年度から令和7年度までに本事業で派遣を受けている場合、その回数も各テーマ2回の上限に含まれます。過去に使ったことがある組合は、残り回数を確認してから申し込んでください。
お問い合わせは東京都住宅政策本部 民間住宅部 マンション課(03-5320-5004)です。
なお、東京都は日常の維持管理・再生に関する相談に応じる分譲マンション総合相談窓口も設けています。窓口の一覧は東京都マンションポータルサイトの相談窓口ページから確認できます。
中野区で大規模修繕を検討するとき、無料相談では埋まらない部分
ここまで9つの窓口をご紹介しました。正直に申し上げます。
無料の相談窓口は、「何を検討すべきか」を整理するのには非常に有効です。しかし、「この建物で、実際にいくらかかるか」「どの工法が成立するか」という問いには、原理的に答えられません。区の相談会が1人30分、専門相談が25分という設計になっているのは、そういう理由です。
そして中野区の場合、この「いくらかかるか」が、他区より読みにくいという事情があります。
中野区は「仮設足場が高くつく区」である
冒頭の野方のオーナーさまの話に戻ります。前面道路が狭く、隣地との離隔が50センチ。この条件だと、足場を組むために次のことが必要になります。
- 隣地所有者との事前協議(足場が越境する場合)
- 道路使用許可(歩道や車道に足場や資材置場がかかる場合)
- 狭小地用の特殊な足場計画(通常より単価が上がる)
- 資材搬入の小運搬(大型車が入れない場合、人力での搬入が増える)
これらは、すべて見積りに乗ってきます。中野区・杉並区のように道路が狭く建物が密集している地域では、仮設足場の費用が想定の1.3〜1.5倍になることが珍しくありません。
一般的な目安として、30戸規模のマンションの大規模修繕は総額3,500万〜5,000万円というレンジで、そのうち仮設足場が15〜25%を占めます。これが条件の悪さで1.4倍になれば、それだけで200万〜300万円が上振れします。しかもその200万〜300万円は、建物の性能を1ミリも向上させません。
足場とロープアクセスで、いくら違うのか
参考値として、当社が扱った条件に近いケースをお示しします。10階建て・外周80m・工期3か月の物件で、
| 工法 | 仮設費の目安 |
|---|---|
| 通常足場工法 | 約168万円 |
| ロープアクセス工法(無足場) | 約59万円 |
差額はおよそ109万円。工期も、足場工法の約60%が目安です。10階建て・外周80mであれば、足場工法で3か月かかるところ、ロープアクセス工法なら1.5〜2か月程度です。足場の組立・解体に必要な期間がまるごと不要になるためです。
もちろん、これは目安です。実際の見積りは、劣化状況・仕上材の種類・屋上の支持点の有無で大きく変動します。それでも、「仮設で100万円単位が動く」という感覚は、持っておいていただきたいと思います。
工事単価の目安も申し上げます。外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、外壁打診調査は250〜500円/㎡、屋上防水は5,000〜8,000円/㎡。これも物件により変動しますが、無料相談の場で「うちは㎡いくらくらいが妥当ですか」と聞くときの物差しにはなります。
工法の技術的な背景を詳しく知りたい方は、同業者・技術者向けにまとめている姉妹サイトロープアクセスドットコムをご覧ください。ロープの二重化や墜落制止用器具の運用など、安全管理の実務をそのまま公開しています。
すべてをロープアクセスにする必要はない
誤解のないよう申し添えます。私は、ロープアクセスが万能だとは考えていません。
低層部の作業、共用廊下の内側、大量の材料を使う工程は、足場のほうが速くて確実です。だから私は、部位ごとに分けるハイブリッド工法をご提案することが多いのです。低層部と共用廊下は足場、高層部の外壁とシーリングはロープアクセス。これで総額を抑えつつ、品質も工期も守れます。
考え方の詳細は明誠のロープアクセス工法の技術詳細と大規模修繕の料金の考え方にまとめています。
数字も申し上げます。株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工しており、安全管理の考え方は明誠の安全管理への取り組みに公開しています。
また当社は、日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズ本部を立ち上げ、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職に加盟いただいています。各工種を専門職が直接担当するため、重層下請けによる中間マージンが発生しにくい構造です。
実際の施工事例は施工実績ページ(約6,000棟)からご覧いただけます。中野区と条件の近い、狭小地・隣地近接の物件の事例もあります。
中野区の管理組合・オーナーが相談に持っていく「3点セット」
どの窓口を使う場合でも、これだけは持っていってください。
1. 不具合箇所の写真(5枚以上)
外壁のひび割れ、タイルの浮き、シーリングの切れ、屋上の水たまり、鉄部のサビ。スマートフォンで十分です。撮影日が分かるようにしておくと、なお良いです。
2. 長期修繕計画書(あれば)
なければ「ない」で構いません。むしろ、ないこと自体が東京都の「管理不全の兆候」の判定に関わり、無料派遣の回数が5回に増える根拠になり得ます。 無理に取り繕う必要はありません。
3. 修繕積立金の残高が分かる直近の決算書
「いくら使えるか」が分からないと、専門家も答えようがありません。総会資料の写しで構いません。
この3点があれば、25分でも30分でも、話は驚くほど前に進みます。
よくあるご質問
Q. 中野区の土地建物無料相談会は、区外に住んでいるオーナーでも使えますか?
A. 使えます。対象は「中野区民の方、中野区内に土地や建物をお持ちの方」です。区外在住でも、中野区内に賃貸マンションやビルをお持ちであれば相談できます。予約先は司法書士坂本洋事務所(03-3385-8523)で、予約優先ですが当日の飛び込みも可能です。
Q. すまいのリフォーム相談で、大規模修繕の見積りをチェックしてもらえますか?
A. 見積書の妥当性を判定する窓口ではありません。相談員は区内の建設事業者ですので、工事の一般的な進め方や考え方についてのアドバイスが中心になります。見積りの内容を第三者に検証してもらいたい場合は、東京都のマンションアドバイザー制度のB-5②コース(修繕工事準備段階での相談/修繕工事の内容、業者選定の仕方、合意形成等)を使うか、複数の施工会社から相見積りを取るのが現実的です。
Q. 中野区の法律相談は、何回でも使えますか?
A. お1人さま1年に1回までです。次回の利用は、相談日の翌日から1年経過した以降分の予約が可能になります。また、係争中の事案やすでに弁護士に依頼済みの案件は受け付けられません。予約は区民相談係(03-3228-8802)へ、相談日の1週間前の同一曜日の午前9時から先着順です。年1回という貴重な枠ですので、理事会で論点を整理してから臨むことをお勧めします。
Q. 東京都のマンションアドバイザー無料派遣は、どのマンションでも使えますか?
A. 無料になるのは、東京都の管理状況届出制度で届出が受理された要届出マンション(昭和58年12月31日以前に新築、居住用の独立部分6戸以上)に限られます。1回まで無料、管理不全の兆候がある場合は5回まで無料です。まずは届出の有無を中野区住宅課住宅政策係(03-3228-5564)にご確認ください。
Q. 東京都のマンション管理士無料派遣(防災・認知症)は、いつまで申し込めますか?
A. 令和8年度の受付期限は令和9年2月26日(金)です。ただし募集数に達した時点で締め切られます。また、令和5年度から令和7年度に本事業を利用している場合、その回数も各テーマ2回の上限に通算されます。申込は東京都マンション管理士会のHPからです。
Q. 中野区は道が狭い物件が多いですが、足場が組めない場合はどうなりますか?
A. 隣地との離隔や前面道路の幅によっては、足場の設置に道路使用許可や隣地所有者との協議が必要になり、想定外のコストと期間が発生することがあります。そうした条件の建物こそ、ロープアクセス工法やハイブリッド工法が効きます。屋上に支持点を確保できるかどうかが成立条件の中心で、現地を一度拝見すれば、その場でお答えできます。管理組合向けサービスページに、ご相談から着工までの流れをまとめています。
Q. 中野区の大規模修繕は、だいたいいくらかかりますか?
A. 30戸規模のマンションで総額3,500万〜5,000万円というレンジが一般的で、うち仮設足場が15〜25%を占めます。外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、屋上防水は5,000〜8,000円/㎡が目安です。ただし中野区は狭小地・隣地近接の物件が多く、仮設費が想定より上振れしやすい地域です。概算のお見積りは無料でお出しできますので、明誠のお問い合わせフォームからご連絡ください。
Q. 賃貸マンションのオーナーでも、これらの窓口は使えますか?
A. 窓口によります。土地建物無料相談会(中野区内に土地建物を所有)、すまいのリフォーム相談、専門相談の不動産・登記・税務相談は、賃貸オーナーでも使えます。一方、東京都のマンションアドバイザー無料派遣とマンション管理士無料派遣は分譲マンションの管理組合が対象ですので、賃貸物件は対象外です。賃貸物件の収支を踏まえた修繕の考え方はオーナー向けサービスページにまとめています。工法の技術的な比較はロープアクセスドットコムもあわせてご覧ください。
中野区の管理組合・オーナーが、今月やるべき3つのこと
1. 10月23日までに、土地建物無料相談会(10月29日開催分)を予約する
司法書士坂本洋事務所(03-3385-8523)へ電話を1本。建築士・宅建業者・土地家屋調査士・司法書士が揃う場で、30分使えます。写真5枚を忘れずに。
2. 住宅課に「うちは要届出マンションか」を確認する
住宅課住宅政策係(03-3228-5564)へ。昭和58年12月31日以前に新築、居住用6戸以上なら該当します。届出が受理されていれば、東京都の専門家派遣が最低1回、管理不全の兆候があれば5回まで無料で使えます。
3. 今週の金曜、区役所1階に寄ってみる
すまいのリフォーム相談は予約不要、毎週金曜10時〜16時。理事会で議論が止まっているなら、まずここで区内の建設事業者に一般論を聞いてみる。それだけでも、次の一手が見えてくることがあります。
中野区は、道が狭く、建物が近く、そのぶん工事の条件が厳しい区です。だからこそ、判断材料を無料で集められる窓口の価値が大きい。9つも用意されているのに、ほとんど使われないまま年度が終わってしまうのは、あまりにもったいないと思うのです。
冒頭の野方のオーナーさまは、結局この秋に区の土地建物無料相談会と、東京都のアドバイザー派遣の両方を使われました。そのうえで「足場を前提にしない選択肢も聞かせてほしい」とご連絡をいただきました。私はその順番が、正しいと思っています。
出典・参考資料
- 中野区「土地建物無料相談会(令和8年度)」(2026年3月26日更新)
- 中野区「すまいのリフォーム相談」(2026年4月1日更新)
- 中野区「【Web予約を開始しました】中野区の専門相談」(2026年6月25日更新)
- 中野区「消費生活に関する相談窓口」(2026年6月5日更新)
- 中野区「分譲マンション支援」
- 中野区「マンション管理計画認定制度」(2024年3月26日更新)
- 中野区「住宅課」(2024年6月24日更新)
- 公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」
- 東京都マンションポータルサイト「マンションアドバイザー無料派遣のご案内」
- 東京都マンションポータルサイト「マンション管理アドバイザーCコース(支援編)派遣費用の助成」
- 東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」
- 東京都マンションポータルサイト「分譲マンション総合相談窓口」
- 一般社団法人 東京都マンション管理士会「公式サイト」
- 国土交通省「マンション政策」
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月19日時点で公表されている中野区および東京都・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特に、中野区「分譲マンション支援」ページは執筆時点で掲載日の確認ができず、中野区「マンション管理計画認定制度」ページの更新日は2024年3月26日、「住宅課」ページの更新日は2024年6月24日であり、令和8年度の運用や連絡先に変更が加えられている可能性があります。また、東京都のマンション管理士無料派遣は募集数に達し次第締め切られます。実際に申請される前に、必ず中野区 都市基盤部 住宅課 住宅政策係(03-3228-5564)および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の建物に対する診断・助言ではありません。工法の適否や費用は、現地調査のうえで判断する必要があります。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月19日
渋谷区の管理組合が無料で使える相談・派遣10選|マンション相談は毎月第3金曜・区役所8階(次は10月16日・申込10月1日から)、管理士派遣は年度内4回まで無料【令和8年度版】
2026年9月19日 更新
「本間さん、うちは28戸しかないんです。管理会社に相談しても、なんだか後回しにされている気がしてね」
今年の夏、幡ヶ谷のマンションの理事長さまから、そう伺いました。築29年、28戸。1回目の大規模修繕から14年が経ち、外壁のタイルが数か所浮いているのは分かっている。でも、次に何をすればいいのかが分からない、というご相談でした。
私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンションやビル、ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組んで建物を囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も自分の足で踏んできた人間です。
その理事長さまにお伝えしたのは、ひとつだけでした。見積りを取る前に、渋谷区と東京都の無料の窓口を先に使いましょう、と。
渋谷区は、23区のなかでも小規模マンションの比率が高い区です。代官山・恵比寿・松濤のような住宅地にも、幡ヶ谷・笹塚・初台のような沿線エリアにも、30戸前後の分譲マンションが数多く建っています。戸数が少ないということは、修繕積立金の総額も小さく、理事のなり手も限られるということです。だからこそ、外部の専門家を無料で呼べる制度の価値が、大きい区でもあります。
今日は、渋谷区のマンション管理組合とビルオーナーさまが、お金をかけずに使える相談・派遣を10個、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。
結論:渋谷区で無料で使える相談・派遣は10ある
先に一覧でお示しします。
| # | 制度・窓口 | 誰が対応するか | 費用・回数 | 申込先 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 渋谷区 マンション管理無料相談会 | マンション管理士(東京都マンション管理士会 東京山手支部) | 無料/毎月第3金曜・先着2組・年度内3回まで | 住宅政策課 03-3463-3548 |
| 2 | 渋谷区 分譲マンション管理士派遣制度 | マンション管理士 | 無料/1回2時間・年度内4回まで | 住宅政策課 03-3463-3548 |
| 3 | 渋谷区 住宅相談会(庁内相談会) | 一級建築士 | 無料/45分・先着6組 | LINEまたは 03-3463-3548 |
| 4 | 渋谷区 専門家セミナー(6月・11月) | 外部専門家 | 無料/年2回 | 住宅政策課 03-3463-3548 |
| 5 | 渋谷区 管理組合交流会(2月) | ― | 無料/年1回 | 住宅政策課 03-3463-3548 |
| 6 | 渋谷区 法律相談 | 弁護士 | 無料/40分・年度内3回まで | 渋谷区コールセンター 03-3463-1211 |
| 7 | 渋谷区 消費者相談コーナー | 消費生活相談員 | 無料/月〜金 9時30分〜16時 | 03-3406-7644 |
| 8 | 東京都 分譲マンション総合相談窓口 | マンション管理士 | 無料/随時 | 03-6427-4900 |
| 9 | 東京都 マンションアドバイザー無料派遣 | マンション管理士・建築士等 | 要届出マンションは1回、管理不全の兆候ありは5回まで無料 | 03-5989-1453 |
| 10 | 東京都 マンション管理士無料派遣(防災・認知症) | マンション管理士 | 各テーマ2回まで無料/令和9年2月26日まで | 東京都マンション管理士会HP |
このうち 1・2・3 は渋谷区が独自に持っている窓口で、区内の管理組合なら真っ先に検討すべきものです。8・9・10 は東京都の制度で、渋谷区の窓口と併用できます。
私が現場で一番もったいないと感じるのは、この10個を1つも使わないまま、いきなり工事業者に見積りを頼んでしまう組合が多いことです。順番が逆なのです。
渋谷区の管理組合が最初に使うべき「マンション管理無料相談会」
渋谷区の相談窓口のなかで、管理組合にとって入口になるのがこれです。
開催は毎月第3金曜、先着2組
渋谷区は東京都マンション管理士会 東京山手支部の協力を得て、毎月第3金曜日にマンション管理無料相談会を開いています(出典:渋谷区「マンション管理無料相談会」/2026年4月1日更新)。
令和8年度の残りの日程は次のとおりです。
| 開催日 | 時間 | 場所 | 申込期間 |
|---|---|---|---|
| 10月16日(金) | 14時〜16時 | 区役所本庁舎8階 810会議室 | 10月1日〜9日 |
| 11月20日(金) | 15時30分〜16時30分 | 区役所本庁舎8階 813-1.2.3会議室 | 11月4日〜13日 |
| 12月18日(金) | 14時〜16時 | 区役所本庁舎8階 810会議室 | 12月1日〜11日 |
| 令和9年1月15日(金) | 14時〜16時 | 区役所本庁舎8階 810会議室 | 1月4日〜8日 |
| 令和9年2月19日(金) | 15時30分〜16時30分 | 区役所本庁舎8階 813-1.2.3会議室 | 2月1日〜12日 |
| 令和9年3月19日(金) | 14時〜16時 | 区役所本庁舎8階 811-2会議室 | 3月1日〜12日 |
対象は区内の分譲マンション管理組合の役員および区分所有者で、1組あたり2人以内。定員は各開催日先着2組まで。1組につき原則として年度内3回までです。
先着2組というのは、正直に申し上げてかなり狭い枠です。申込期間は開催の1〜2週間前しか開いていませんので、次の10月16日を狙うなら、10月1日の朝に電話するくらいの構えでちょうどいいと思います。申込先は住宅政策課住環境整備係(電話:03-3463-3548)です。
11月20日と2月19日は中身が違う
一覧をよく見ると、11月20日と2月19日だけ時間が15時30分〜16時30分と短くなっています。これは渋谷区が、6月と11月に専門家によるセミナー、2月に交流会を組み合わせているためです。
セミナーは、他のマンションがどう考えているかを知る機会になります。交流会はさらに直接的で、区内の他の管理組合の役員と情報交換ができます。
私は、これを軽く見ないほうがいいと考えています。私が理事長さまからよく伺うのは「うちだけがおかしいのかと思っていた」という言葉です。修繕積立金が足りない、理事のなり手がいない、管理会社の提案が妥当か分からない。こうした悩みは、ほとんどの組合が同じように抱えています。それを知るだけで、判断が落ち着きます。
持っていくと話が早くなる資料
渋谷区は、相談内容によって用意すると良い資料を具体的に挙げています。管理規約、総会議案書・議事録、理事会の議事録、管理委託契約書、滞納記録、不具合箇所の写真、長期修繕計画書、修繕工事記録です。
30分から2時間の枠で、資料なしに口頭だけで説明すると、状況の共有だけで時間が終わります。不具合箇所の写真は、特に効きます。 スマートフォンで撮った写真で構いません。外壁のひび割れ、タイルの浮き、屋上の水たまり。5枚もあれば、専門家は建物の状態をかなり正確に推測できます。
なお、この相談会では事業者の紹介、居住者間や近隣とのトラブルの解決・権利調整は対応していません。そこは別の窓口(後述の法律相談)の役割です。
専門家に来てもらう「分譲マンション管理士派遣制度」
相談会が「区役所に行く」制度なら、こちらは「マンションに来てもらう」制度です。渋谷区の制度のなかで、私が最も価値が高いと考えているのがこれです。
1回2時間、年度内4回まで、費用は無料
渋谷区は、マンション管理士を管理組合の会合などに無料で派遣しています(出典:渋谷区「分譲マンション管理士派遣制度」/2026年4月1日更新)。
- 相談時間:1回につき2時間
- 費用:無料(ただし配付物の印刷費や登記簿謄本の取得など一定の実費が発生する場合あり)
- 回数:同一マンションで年度内4回まで
年度内4回、1回2時間ということは、合計8時間ぶんの専門家の時間を無償で使えるということです。マンション管理士に個別に業務委託すれば、相応の費用がかかります。それが4回無料というのは、区の制度としてはかなり手厚いほうです。
対象になる7つの要件
ただし、誰でも使えるわけではありません。次の7つのうちいずれか1つ以上に該当する区内分譲マンションの管理組合が対象です。
- 管理組合がないこと
- 管理者などが定められていないこと
- 管理規約が存在しない、または必要に応じた改正がされていないこと
- 集会(総会)が年1回以上開催されていないこと
- 管理費と修繕積立金の区分経理、適正管理がされていないこと
- 適宜適切な維持修繕を行うための修繕積立金が積み立てられていないこと
- 築20年以上のマンションで、過去に大規模修繕工事(外壁塗装など工事、床防水工事および屋根防水工事)を実施していないこと
私が特に申し上げたいのは7番目です。築20年以上で一度も大規模修繕をしていないというだけで、この制度の対象になります。渋谷区の築古マンションには、該当する物件が相当数あるはずです。
また、管理組合設立を自主的に行おうとする区分所有者の団体も申請できます。管理組合そのものが機能していない建物にも、入口が用意されているということです。
支援の対象になること・ならないこと
ここは誤解が多いところなので、正確に整理します。
支援を受けられること
- 意見の整理およびアドバイス
- 対応策などの資料作成
- 関係資料の収集および提供
- 管理組合の総会および理事会に係る開催支援
支援の対象外
- 耐震診断、測定器などを使用した建物の精密測定、劣化診断・調査
- 大規模修繕計画、長期修繕計画の作成
- 修繕工事などの設計
- 管理規約の作成
- 見積書などの比較検討
- 工事および維持管理業務の受注および発注並びに業者の紹介
- 居住者間および居住者・近隣住民間の紛争解決および権利調整
正直に申し上げます。「劣化診断」も「長期修繕計画の作成」も「見積書の比較検討」も、この制度では対象外です。
つまり、外壁の状態を実際に測ってもらったり、修繕費がいくらかかるかを計算してもらったりすることはできません。できるのは、理事会や総会の場で「今どういう状態で、次に何を検討すべきか」を整理してもらうことです。
私はこれを、限界ではなく役割分担だと考えています。合意形成と情報整理はマンション管理士、建物の物理的な状態の診断は施工会社や設計事務所。この線引きがはっきりしているほうが、組合にとってはむしろ安全です。中立の立場の人に「業者を紹介してもらう」形だと、その中立性が疑わしくなりますから。
申請は希望日の3週間前まで、理事長名で
手続きの流れは4段階です。
- 申請:派遣を希望する3週間前までに「分譲マンション管理士派遣事業マンション管理士派遣申請書」を住宅政策課の窓口へ持参または郵送
- 派遣決定の通知:承認されると決定通知書が届く
- 派遣:マンション管理士が訪問してアドバイス
- 報告:終了後、派遣結果報告書を区へ提出
申請は理事長名です。管理組合設立前で理事長名での申請が困難な場合は、設立を自主的に行おうとする団体の長が申請できます。
ひとつ注意点があります。区の案内には「令和9年2月以降に申請される場合は、事業スケジュールの都合により受付できない場合がございます」と明記されています。年度末に駆け込もうとすると間に合わない可能性があるということです。今が9月ですから、動くなら秋のうちです。
申請書と案内チラシは区の公式ページからダウンロードできます。
建築士に建物のことを聞ける「住宅相談会(庁内相談会)」
マンション管理士は管理・運営の専門家ですが、建物そのものの話をしたいときは、建築士のいる窓口が別にあります。
渋谷区は東京土建一般労働組合渋谷支部との共催で、「建築士」資格を有した相談員による無料相談会を開いています(出典:渋谷区「住宅相談会(庁内相談会)」/2026年3月11日更新)。
- 相談時間:1組につき45分(13時30分〜/14時20分〜/15時10分〜の3枠)
- 場所:区役所本庁舎1階ロビースペース
- 定員:各開催日先着6組(空きがあれば当日参加も可能)
- 対象:区内在住の人
令和8年度の残りの開催日は、10月21日(申込期間8月19日〜10月20日)、11月18日(10月22日〜11月17日)、12月16日(10月22日〜12月15日) です。
先ほどのマンション管理無料相談会と比べると、定員が6組と多く、申込期間も長いのが特徴です。空きがあれば当日参加もできます。ハードルはこちらのほうが低いということです。
申込はLINE(渋谷区公式アカウント @shibuyacity を友だち登録後、住宅相談会予約画面から)か、住宅政策課住環境整備係への電話(03-3463-3548)です。
私がこの窓口をお勧めするのは、「外壁の写真を見せて、これは急ぐのか急がないのかを聞く」という使い方です。45分あれば十分に話せます。管理会社から「そろそろ大規模修繕を」と言われたけれど本当に今なのか、という判断に迷っている段階で、利害関係のない建築士の意見を聞けるのは大きいと思います。
滞納・トラブルに使える「法律相談」と「消費者相談」
管理組合の悩みは、建物のことばかりではありません。管理費の滞納、区分所有者間のトラブル、リフォーム工事をめぐる業者との紛争。こうしたときの窓口も、渋谷区は無料で持っています。
弁護士による法律相談(毎週月・木)
渋谷区は、毎週月曜日・木曜日(月曜が祝日・休日の場合は翌火曜に振替)に弁護士による法律相談を行っています(出典:渋谷区「法律相談」/2026年4月21日更新)。
- 相談時間:40分間
- 相談枠:13時〜、13時45分〜、14時30分〜、15時25分〜、16時10分〜の5枠
- 定員:月曜は各枠2人(合計10人)、木曜は各枠3人(合計15人)
- 対象:区在住または在勤の人
- 回数:おひとりにつき年度内3回まで
- 電話相談も可
相談内容は相続関係、離婚、土地、家屋、相隣関係、金銭問題など。管理費滞納の督促や、区分所有者間の権利関係の整理は、ここに含まれます。
予約は3つの経路があります。渋谷区公式LINE、区民相談WEBメニュー、または渋谷区コールセンター(電話:03-3463-1211)。いずれも先着順です。
ひとつ、押さえておくべき運用ルールがあります。予約枠は毎月第3火曜日の9時から、翌月1か月分が開放されます。 つまり10月分の枠は9月15日(第3火曜)の9時に開いており、11月分は10月20日の9時に開きます。人気の枠は早く埋まりますので、この日時を理事会の誰かがカレンダーに入れておくと確実です。
なお、当日朝9時以降のキャンセルや日程変更は、相談実施1回分としてカウントされます。年度内3回という枠を無駄にしないよう、ご注意ください。
詳しい利用方法は区が公開しているR8年度区民相談のしおり(PDF)にまとまっています。
消費者相談コーナー(業者トラブル)
工事業者との契約トラブル、不当な請求、強引な訪問販売。こうした消費生活に関するトラブルは、消費者相談コーナーが窓口です(出典:渋谷区「消費者相談」/2025年10月1日更新)。
- 相談専用電話:03-3406-7644
- 相談日時:月曜日〜金曜日(祝休日・年末年始を除く)9時30分〜16時
- 対象:区内在住・在勤・在学の人
- 相談方法:電話または来所(まずは電話で問い合わせ)
ここで重要な制約があります。消費者相談コーナーは「消費者からの相談のみを受け付けています。事業者や個人事業主からの相談はお受けできません」と明記されています。
管理組合は法人格の有無によって扱いが変わり得ますので、組合として相談したい場合は、まず電話で「管理組合の立場だが受け付けてもらえるか」を確認するのが確実です。区分所有者個人としてのご相談であれば、問題なく受け付けてもらえます。
私が現場で見てきたなかで、いちばん多いトラブルは「点検に来た業者に、その場で屋上防水の緊急工事を勧められて契約してしまった」というパターンです。屋上に上がって写真を見せられると、素人目には確かに緊急に見えます。ですが、本当に急ぐ劣化かどうかは、複数の目で確認してから判断すべきです。 契約直後であればクーリング・オフが使える場合もありますので、迷ったらすぐ03-3406-7644に電話してください。
東京都の3制度:区の窓口と併用できる
渋谷区の窓口と並行して、東京都の制度も使えます。ここを知らずに区の窓口だけで終わっている組合が、かなり多いというのが私の実感です。
分譲マンション総合相談窓口(電話1本で聞ける)
公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンターに「分譲マンション総合相談窓口」が置かれています。マンション管理士が、日常の維持管理・再生に関する相談に応じます。
- 電話:03-6427-4900
- 受付:月曜日〜金曜日 9時〜17時(土日祝・年末年始休み)
- メール:mansion-soudan@tokyo-machidukuri.jp
- FAX:03-6427-4901
相談できる内容は、管理組合の運営、大規模修繕工事の検討や準備、改修や建替えに向けた合意形成のアドバイス、都や区市町村が実施している助成制度の紹介、管理状況届出制度に関する説明などです。
(注:この窓口を案内する渋谷区の該当ページは2023年3月17日更新のため、最新の運用は上記センターに直接ご確認ください。)
予約不要で電話1本、というのが最大の利点です。区の相談会は先着2組ですが、こちらは平日いつでもつながります。まず何から手をつけるべきか分からないという段階なら、ここが一番早い。
マンションアドバイザー無料派遣(要届出マンション向け)
こちらは、東京都の条例に基づく管理状況届出制度とセットになった制度です。
「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」により、昭和58(1983)年12月31日以前に新築された、居住用の独立部分が6戸以上の分譲マンションは、管理状況の届出が義務付けられています(要届出マンション)。渋谷区の場合、届出書の提出先は渋谷区です。
この届出が受理されると、マンションアドバイザー派遣を無料で使えます(出典:東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」)。
| 区分 | 無料回数 |
|---|---|
| 届出が受理された要届出マンション | 1回まで無料 |
| うち管理不全の兆候があるマンション | 5回まで無料 |
各コース1回あたり2時間程度。コースは講座編(A-1〜A-6)と相談編(B-1〜B-6)に分かれており、大規模修繕に直結するのは次のあたりです。
- A-2:長期修繕計画作成ガイドライン活用の手引きの解説
- A-4:計画修繕工事の進め方
- B-4:修繕計画の作成や修繕積立金等の設定に関すること
- B-5①:修繕工事検討段階での相談(建物・設備等の劣化状況の調査・診断、修繕工事の検討組織、修繕工事の方式等)
- B-5②:修繕工事準備段階での相談(修繕工事の内容、業者選定の仕方、合意形成等)
B-5①とB-5②は、渋谷区の管理士派遣では対象外だった「修繕工事の検討」を正面から扱えます。 ここが区の制度との大きな違いです。
申込は申込書に記入のうえ、FAX・メール・郵送で東京都防災・建築まちづくりセンター(まちづくり推進課/TEL 03-5989-1453)へ。申込後1〜2週間程度でアドバイザーから日程調整の連絡が入ります。
Cコース(支援編)の派遣費用助成
さらに、管理不全の兆候があるマンション向けに、Cコース(支援編)の派遣料助成があります(出典:東京都マンションポータルサイト「マンション管理アドバイザーCコース(支援編)派遣費用の助成」)。
対象は、①都マンション管理条例に基づく要届出マンション、②届出が受理されたマンション、③管理不全の兆候があるマンション──のすべてに該当する分譲マンションです。
助成内容は次のとおりです。
- 「状況確認・課題整理、コース案内」と「総会立会等」:各1回まで全額助成
- 「管理組合運営体制の整備に関すること」「長期修繕計画見直し案及び修繕積立金見直し案に関すること」など9コース:合計2回まで半額助成
「管理不全の兆候」の判定は、管理組合の有無、管理者等の有無、管理規約の有無、年1回以上の総会開催の有無、管理費の有無、修繕積立金の有無、修繕の計画的な実施(大規模な修繕工事)の有無──これらのいずれかが「ない」「いない」と回答したマンション、という基準です。
大規模修繕を計画的に実施していない、というだけで該当し得るということです。お問い合わせは東京都防災・建築まちづくりセンター まちづくり推進課(03-5989-1453/平日9時〜17時)へ。
マンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)
東京都が令和5年度から実施している事業で、令和8年度も継続しています(出典:東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」)。
- 対象:都内に所在するマンション管理組合(築年数や届出の有無は問わない)
- 回数:1管理組合につき、防災力向上と認知症対応それぞれ2回まで(無料)
- 受付期間:令和8年6月23日(火)から令和9年2月26日(金)まで
- 申込:東京都マンション管理士会のHPから
注意点が2つあります。ひとつは、申込が募集数(防災力向上・認知症対応 合わせて160件)に達した時点で新規受付が締め切られること。都内全体で160件ですから、決して多い枠ではありません。
もうひとつは、派遣回数は通算でカウントされること。令和5〜7年度に本事業で派遣を受けている場合、その回数も各テーマ2回の上限に含まれます。過去に使ったことがある組合は、残り回数を確認してから申し込んでください。
お問い合わせは東京都住宅政策本部 民間住宅部 マンション課 マンション管理担当(03-5320-5004)です。
国の窓口:(公財)マンション管理センターの無料電話相談
区でも都でもない、国の指定を受けた窓口もあります。
公益財団法人マンション管理センターは、マンション管理適正化法に基づく「マンション管理適正化推進センター」の指定を受けている唯一の団体です(出典:マンション管理センター「相談窓口について」)。
| 相談内容 | 電話番号 |
|---|---|
| 管理組合運営、管理規約等のご相談 | 03-3222-1517 |
| 建物・設備の維持管理のご相談 | 03-3222-1519 |
- 受付:月曜日〜金曜日(祝日・年末年始を除く)9時30分〜17時
- 費用:無料
- 1件あたりの目安:15分前後
メールでの相談も受け付けています(回答は口頭)。面談は要予約です。
「公平・中立的な立場でアドバイス」を明示しており、特定の弁護士や企業を紹介することはしないと明記されています。だからこそ信頼できる、という見方もできます。
ただし制約もあります。専門家レベルの法律相談や税務相談、修繕等に関する個別具体的なアドバイスは行っていません。また、書面での回答はなく、個別事案の適法性の判断もしません。15分という時間も踏まえると、「一般論として、この進め方は妥当か」を確認する窓口と考えるのが実態に近いと思います。
なお、賃貸マンションに関する相談はこのセンターの担当外で、(公財)日本賃貸住宅管理協会が窓口になります。
渋谷区で大規模修繕を検討するとき、無料相談では埋まらない部分
ここまで10個の窓口をご紹介してきました。ここからが本題です。
無料の相談窓口は、「何を検討すべきか」を整理するのには非常に有効です。しかし、「実際にいくらかかるか」「この建物ならどの工法が最適か」という問いには、原理的に答えられません。渋谷区の管理士派遣が劣化診断と見積比較を対象外にしているのは、そういう理由です。
そして、この最後の部分で、渋谷区の建物には特有の事情があります。
渋谷区の狭小・近接立地では、足場が組みにくい
渋谷区の分譲マンションは、敷地に余裕のない物件が多いのが特徴です。隣地との離隔が1メートルを切っている、前面道路が細い、1階に店舗が入っていてシャッターを塞げない。私が実際に見てきた渋谷区の現場でも、こうした条件は珍しくありませんでした。
こういう建物で足場を組もうとすると、道路使用許可の取得、隣地所有者との協議、店舗の営業補償といった、工事費とは別のコストと時間が発生します。
足場費とロープアクセスの差額は、100万円規模になることがある
具体的な数字でお示しします。10階建て・外周80m・工期3か月という条件のマンションで、仮設足場を組む場合の費用はおよそ168万円。同じ範囲をロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が懸垂下降しながら施工する無足場工法)で施工した場合、およそ59万円。差額は109万円という試算になります。
30戸規模のマンションの大規模修繕は、総額3,500万〜5,000万円というレンジが一般的で、そのうち仮設足場が15〜25%を占めます。仮設の部分を圧縮できれば、その分を外壁や防水の品質に回せる、という考え方ができます。
工種別の㎡単価の目安も挙げておきます。外壁塗装3,500〜4,500円/㎡、打診調査250〜500円/㎡、屋上防水5,000〜8,000円/㎡。いずれも目安のレンジであり、劣化状況・足場条件・数量によって大きく変動します。実際の金額は現地を見なければ確定しません。
工法の技術的な背景を詳しく知りたい方は、同業者・技術者向けにまとめている姉妹サイトロープアクセスドットコムをご覧ください。ロープの二重化や墜落制止用器具の運用など、安全管理の実務をそのまま公開しています。
3つの工法から選べるということ
私がこの仕事で一番大切にしているのは、建物に合った工法を選ぶことです。
株式会社明誠は、通常の仮設足場工法、ロープアクセス工法(無足場工法)、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法──この3つを自社で提案できます。日本では数少ない体制だと思っています。
なぜ3つ持っているかというと、どの工法にも向き不向きがあるからです。ロープアクセスは万能ではありません。バルコニー内部の細かい作業や、大量の資材を上げ下ろしする工種では、足場のほうが効率的です。逆に、隣地に余裕がない高層部や、店舗の営業を止められない建物では、ロープアクセスが圧倒的に有利になります。
だから私は、部位ごとに分けるハイブリッド工法を提案することが多いのです。低層部と共用廊下は足場、高層部の外壁とシーリングはロープアクセス。これで総額を抑えつつ、品質も工期も守れます。詳しくは明誠のロープアクセス工法の技術詳細と大規模修繕の料金の考え方にまとめています。
数字も申し上げます。株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工し、安全管理の考え方は明誠の安全管理への取り組みに公開しています。
実際の施工事例は施工実績ページ(約6,000棟)からご覧いただけます。渋谷区と条件の近い、狭小地・隣地近接の物件の事例もあります。
相談に行く前に用意する「3点セット」
どの窓口に行くにしても、これだけは揃えておいてください。私が理事長さまにいつもお伝えしている3点です。
1. 総会議事録(直近3年分)
管理組合として何を決めてきたかが分かります。大規模修繕の検討が議題に上がった記録があるかどうかで、話の出発点が変わります。
2. 長期修繕計画書(あれば最新版)
なければ「ない」で構いません。むしろ、ないこと自体が渋谷区の管理士派遣制度の対象要件に該当し得ます。 無理に取り繕う必要はありません。
3. 不具合箇所の写真(スマートフォンで5枚)
外壁のひび割れ、タイルの浮き、屋上の水たまり、共用廊下の鉄部のサビ、エントランスの床の欠け。手が届く範囲で撮れるもので十分です。
この3つを1つのクリアファイルか、PDFにまとめておく。それだけで、45分や2時間という限られた相談枠を、状況説明ではなく中身の議論に使えます。
管理委託契約書と滞納記録も、内容によっては持参すると話が早くなります。渋谷区の相談会は、用意すべき資料を公式ページに明記していますので、申込の電話で「何を持っていけばいいか」を直接確認するのが確実です。
よくあるご質問
Q. 渋谷区のマンション管理無料相談会は、区分所有者個人でも申し込めますか?
A. 申し込めます。対象は「区内の分譲マンション管理組合役員および区分所有者」で1組あたり2人以内です。理事でなくても構いません。ただし定員が各回先着2組と少ないため、申込期間の初日に電話(03-3463-3548)するのが確実です。
Q. 分譲マンション管理士派遣制度で、大規模修繕の見積りをチェックしてもらえますか?
A. できません。渋谷区は支援の対象外として「見積書などの比較検討」「大規模修繕計画、長期修繕計画の作成」「劣化診断・調査」を明記しています。見積りの妥当性を確認したい場合は、東京都のマンションアドバイザー制度のB-5②コース(修繕工事準備段階での相談/業者選定の仕方、合意形成等)を検討するか、複数の施工会社から相見積りを取るのが現実的です。
Q. 東京都のマンションアドバイザー無料派遣は、どのマンションでも使えますか?
A. 無料になるのは、東京都の管理状況届出制度で届出が受理された要届出マンション(昭和58年12月31日以前に新築、居住用独立部分6戸以上)に限られます。1回まで無料、管理不全の兆候がある場合は5回まで無料です。要届出に該当しないマンションでも制度自体は有料で利用できます。まずは届出の有無を渋谷区住宅政策課(03-3463-3548)にご確認ください。
Q. 東京都のマンション管理士無料派遣(防災・認知症)は、いつまで申し込めますか?
A. 令和8年度の受付期間は令和9年2月26日(金)までです。ただし申込が募集数(防災力向上・認知症対応 合わせて160件)に達した時点で締め切られます。都内全体の枠ですので、年明けまで待たずに動くことをお勧めします。申込は東京都マンション管理士会のHPからです。
Q. 管理費の滞納について、渋谷区の無料相談で対応してもらえますか?
A. 渋谷区の法律相談(弁護士/毎週月・木、40分、年度内3回まで)で「金銭問題」として相談できます。ただし相談会のほうのマンション管理無料相談会は、居住者間の紛争解決や権利調整を対象外としています。督促の一般的な進め方はマンション管理士、法的手続きが視野に入るなら弁護士、と使い分けてください。法律相談の予約枠は毎月第3火曜9時から翌月分が開放されます。
Q. 30戸規模の大規模修繕は、だいたいいくらかかりますか?
A. 総額3,500万〜5,000万円というレンジが一般的です。うち仮設足場が15〜25%を占めます。外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、屋上防水は5,000〜8,000円/㎡が目安ですが、劣化状況と足場条件で大きく変動します。概算のお見積りは無料でお出しできますので、明誠のお問い合わせフォームからご連絡ください。
Q. ロープアクセス工法にすると工期はどれくらい短くなりますか?
A. 足場工法の約60%が目安です。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場工法で3か月かかるところ、ロープアクセス工法なら1.5〜2か月程度。足場の組立・解体に必要な期間がまるごと不要になるためです。居住者の方がバルコニーを使えない期間も、その分短くなります。工法ごとの適用条件はロープアクセスドットコムで技術的に整理しています。
Q. 渋谷区は敷地が狭い物件が多いのですが、足場は組めますか?
A. 隣地との離隔や前面道路の幅によっては、足場の設置に道路使用許可や隣地所有者との協議が必要になり、想定外のコストと期間が発生することがあります。そうした条件の建物こそ、ロープアクセス工法やハイブリッド工法が効きます。管理組合向けサービスページに、ご相談から着工までの流れをまとめています。現地を一度拝見すれば、どの工法が成立するかをその場でお答えできます。
まとめ:今週、渋谷区の管理組合が動けること3つ
長くなりましたので、動くべきことだけ3つに絞ります。
1. 10月1日の朝、マンション管理無料相談会に電話する(10月16日開催分)
申込期間は10月1日から9日まで。定員は先着2組です。区役所本庁舎8階、14時から16時。電話は住宅政策課住環境整備係 03-3463-3548。同じ番号で、10月21日の住宅相談会(建築士・45分・先着6組)も申し込めます。1本の電話で両方押さえるのが効率的です。
2. 管理士派遣制度の7要件に該当するか、理事会で確認する
とくに「築20年以上で、過去に大規模修繕工事(外壁塗装・床防水・屋根防水)を実施していない」に当てはまるなら、年度内4回・1回2時間の派遣を無料で使えます。申請は希望日の3週間前まで、理事長名。令和9年2月以降は受付できない場合があると区が明記していますので、動くなら秋のうちです。
3. 3点セットを1つのファイルにまとめる
総会議事録(直近3年分)・長期修繕計画(あれば)・不具合箇所の写真5枚。次の理事会で、誰が用意するかだけ決めてしまってください。これがあるかないかで、どの窓口でも話の進み方がまるで違います。
渋谷区は、小規模マンションが多いぶん、管理組合の負担が一人ひとりに重くのしかかりやすい区です。だからこそ、無料で外部の専門家を呼べる制度を、遠慮なく使っていただきたい。10個も用意されているのに、ほとんど使われないまま年度が終わってしまうのは、あまりにもったいないと思うのです。
冒頭の幡ヶ谷の理事長さまは、結局この秋に区の相談会と東京都の総合相談窓口の両方を使われました。そのうえで「工法の選択肢だけ聞かせてほしい」とご連絡をいただきました。私はその順番が、正しいと思っています。
10月1日という申込開始日がある以上、次の理事会を待っていると1か月ずれます。1分だけでも、この話題をメールで共有してみてください。工法の選択肢や概算のご相談だけでも、私どもでお力になれることがあります。
出典・参考資料
- 渋谷区「マンション管理無料相談会」(2026年4月1日更新)
- 渋谷区「分譲マンション管理士派遣制度」(2026年4月1日更新)
- 渋谷区「住宅相談会(庁内相談会)」(2026年3月11日更新)
- 渋谷区「法律相談」(2026年4月21日更新)
- 渋谷区「消費者相談」(2025年10月1日更新)
- 渋谷区「分譲マンション総合相談窓口・管理状況届出制度」(2023年3月17日更新)
- 公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」
- 東京都マンションポータルサイト「マンション管理アドバイザーCコース(支援編)派遣費用の助成」
- 東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」
- 公益財団法人 マンション管理センター「相談窓口について」
- 一般社団法人 東京都マンション管理士会「公式サイト」
- 国土交通省「マンション政策」
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月19日時点で公表されている渋谷区および東京都・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特に消費者相談は参照した渋谷区公式ページの更新日が2025年10月1日、分譲マンション総合相談窓口は2023年3月17日であり、令和8年度の運用に変更が加えられている可能性があります。また、東京都のマンション管理士無料派遣は募集数160件に達し次第締め切られ、渋谷区の分譲マンション管理士派遣制度は令和9年2月以降の申請を受け付けられない場合があります。実際に申請される前に、必ず渋谷区 住宅政策課住環境整備係(03-3463-3548)および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月19日

