厚木市で使える賃貸オーナー向け補助金活用ガイド|本厚木の築古マンション・ビルを「空室に強い資産」に変える2026年度の制度設計
厚木市で賃貸マンションやビル、アパートをお持ちのオーナーさまへ。この記事は「住民の安全のために耐震を」というお話ではありません。入居率と賃料、毎月手元に残るキャッシュフロー、そして将来の出口(売却)価格をどう守り、どう伸ばすかという、経営の話です。
私は20年近く、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕の現場に立ち続けてきました。県央エリア、本厚木駅周辺の物件もずいぶん見てきましたが、ここにははっきりした特徴があります。本厚木という強い駅力で賃貸需要は底堅い一方、駅近の新築・築浅供給が続くなかで、築古物件は「選ばれる理由」を失うと一気に空室が長期化しやすいこと。そして、相模川沿いの低地や丘陵地が混在し、想定される地震動が小さくないことです。外壁や鉄部の劣化は静かに、しかし確実に、賃料の下落圧力として効いてきます。
その劣化対策や設備更新のコストを、公的資金で圧縮できる制度が、厚木市・神奈川県・国にそれぞれ用意されています。ところが私の経験上、これらをきちんと使い切っているオーナーさまは、まだ少数派です。今日はその制度を、「いくら戻るのか」「税務でどう効くのか」「使えないのは誰か」まで、できるだけ正直にお話しします。
※本記事の金額・要件は2026年(令和8年)6月時点で各自治体・省庁が公表している一次情報に基づきます。補助金は予算枠や定員に達した時点で受付終了となる制度が多く、年度途中で条件が変わることもあります。実際の申請前には必ず最新の交付要綱と窓口でご確認ください。
まず結論:厚木市オーナーが押さえるべき「3つの財布」
厚木市の物件で使える補助は、大きく3つの出どころに分かれます。ご自身のケースを判定しやすいよう、先に全体像を示します。
| 出どころ | 主な制度 | 厚木市オーナーへの効き方 |
|---|---|---|
| 厚木市(市の財布) | 分譲マンション予備診断補助、木造住宅耐震(診断・設計・改修・除却)、住宅省エネ設備補助、事業所用省エネ設備導入促進補助 | 築古・旧耐震物件の安全性と資産価値を底上げ/省エネ設備で物件の競争力と経費を改善 |
| 国(省庁の財布) | 賃貸集合給湯省エネ2026、先進的窓リノベ2026、給湯省エネ2026 | 入居者満足度=賃料維持・空室短縮に直結 |
| 税制(取られる額を減らす財布) | 耐震改修の固定資産税減額・所得税控除、マンション長寿命化促進税制、修繕費の損金算入 | 受け取る補助とは別に、毎年のキャッシュフローを改善 |
ポイントは、「現金でもらう補助」と「税金が減る効果」と「損金で利益を圧縮する効果」は、別々に積み上げられるということです。一つの大規模修繕や設備更新で、複数の財布に同時に手を伸ばせるケースが、厚木市にも実際にあります。ここからが本題です。
1. 分譲マンション予備診断補助|「現状を数字で知る」費用を市が半分持つ
築古の分譲マンションを区分所有で複数戸お持ちのオーナーさま、あるいは管理組合の役員も兼ねているオーナーさまにとって、最初の入口がこの制度です。厚木市は、分譲マンションの管理組合に対して、耐震性の現状を把握する「予備診断」費用の一部を補助しています(出典:厚木市「分譲マンションへの予備診断補助」)。
補助額(2026年・令和8年時点)
- 予備診断に要する費用の合計の2分の1、かつ上限15万円(補助件数は予算の範囲内)
予備診断は、本格的な耐震診断の前に、まず簡易にリスクの当たりをつけるための入口です。「うちの旧耐震マンション、そもそも診断する価値があるのか」を、少ない自己負担で見極められます。
対象になる建物の条件
次の4点をすべて満たす分譲マンションの管理組合が対象です。①昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認を得て工事に着手したもの(いわゆる旧耐震基準)、②住戸数の過半を区分所有者の住居用に供するもの、③住宅部分の床面積の合計が住宅・非住宅部分の合計の過半であるもの、④管理組合の総会または理事会で予備診断実施の決議がなされたもの。
ここでオーナーさまに関わる重要な点を、正直に2つ申し上げます。
ひとつは、「住戸数の過半が区分所有者の居住用」という要件です。投資用に貸し出している住戸が多すぎるマンションでは、対象から外れる可能性があります。ご自身のマンションが該当するかは、事前相談で確認する価値があります。
もうひとつ、厚木市のこの制度は「予備診断」に対する補助が入口である点です。予備診断 → 本格的な耐震診断 → 改修、と段階を踏む設計になっており、まずは現状把握から、という考え方です。旧耐震のマンションは、耐震性が未知数のまま市場に出ると買い手から大きく値引きを迫られますが、診断で「安全」と分かれば出口価格を守れますし、「要改修」と分かれば、後述する税制と組み合わせた改修計画に進めます。まず現状を数字で押さえる——その費用を市が半分持ってくれるなら、使わない手はありません。
2. 木造住宅の耐震診断・改修・除却補助|店舗併用・木造アパートのオーナーへ、令和8年度に対象拡大
「うちは木造アパートや店舗併用だから関係ない」と思われたオーナーさまにこそ、知っていただきたい制度です。厚木市の木造住宅耐震補助は、診断から設計、改修工事、さらには除却(取り壊し)までを段階的に支援します。そして令和8年度から、対象が大きく広がりました(出典:厚木市「木造住宅の耐震診断・耐震改修設計・耐震改修工事・除却工事補助制度」)。
令和8年度の目玉:「グレーゾーン住宅」まで対象拡大
これまで旧耐震(昭和56年5月以前)が中心でしたが、令和8年度から対象建築物が「平成12年(2000年)5月31日以前に新築工事に着手した一戸建て住宅および兼用住宅」まで拡充されました。新耐震基準であっても平成12年改正前の木造には倒壊被害が見られたためで、対象となる築古アパート・併用住宅の範囲が一気に広がっています。
補助額の一覧(令和8年度)
| ステップ | 補助額 |
|---|---|
| ①耐震診断 | 診断費の全額(上限9万円) |
| ②耐震改修設計 | 設計費の3分の2(上限11万円) |
| ③耐震改修工事 | 工事費の3分の2(上限100万円)+工事監理費の3分の2(上限7万5千円)。市民税非課税世帯はさらに上限50万円加算 |
| ④除却工事 | 除却工事費の2分の1(上限50万円) |
対象は、地上2階建て以下の在来軸組工法による木造(ツーバイフォー・プレハブを除く)で、住宅用途の床面積が延べ面積の2分の1超のものなどです。改修補助は診断・設計の補助を受けたものが対象となる、段階制です。
申込のタイミングが命
令和8年度の受付は5月7日(木曜日)から。受付は5月上旬から12月頃まで、予算の範囲内で先着順です。受付件数が上限に達すると、期間内でも早期に締め切られます。先着順の制度は「予算が残っているうちに動いた人が勝つ」世界です。検討しているなら前倒しが鉄則です。
注意点も正直にお伝えします。この制度では、診断・設計・工事を市に登録された「耐震診断改修技術者」に依頼することが補助の条件です。登録のない業者に頼むと補助対象外になります。また、平成12年5月31日以降に増築している場合は対象外となることがあるため、まずは建築指導課(電話046-225-2434)への事前相談が欠かせません。
なお現場の人間として一言。耐震補強は、外壁・防水・塗装といった大規模修繕と工程が重なることが多い工事です。私はいつも、耐震とその他の修繕を別々に発注せず、ワンセットで計画することをお勧めしています。足場を二度架けるのは、まるごとお金をドブに捨てるようなものだからです。ここは、足場仮設と無足場のロープアクセスを物件ごとに使い分けてコストを最適化する、私たちの大規模修繕の考え方が効いてくる場面でもあります。
3. 厚木市の住宅省エネ設備補助|太陽光・蓄電池で「光熱費に強い物件」をつくる
劣化対策と並んで、これからの賃貸経営でじわじわ効くのが省エネ・創エネです。厚木市は、市内に住所のある個人が住宅用の省エネ設備を導入する際、費用の一部を助成しています(出典:厚木市カーボンニュートラル関係補助金/カーボンニュートラルプラットフォーム)。
主な対象機器と補助の目安は、太陽光発電システム(出力1kWあたり1万円、上限6万円)、蓄電池システム(5万円)、家庭用燃料電池エネファーム(5万円)、太陽熱利用システム(5万円)などです。金額単体は大きくありませんが、「この物件は太陽光・蓄電池付き」という訴求は、電気代高騰に敏感になっている入居者に対して確実に効きます。光熱費を抑えられる物件は、同じ家賃でも選ばれやすく、退去が減ります。
ひとつ注意点を。この住宅省エネ設備補助は「市内に住所登録のある個人」が主対象で、自宅併用や自身の居住を前提とする設計です。純投資の賃貸物件・法人所有物件は対象外となるケースがあるため、最新の要件はカーボンニュートラルプラットフォームと環境政策課(046-225-2749)で必ずご確認ください。法人・事業用ビルのオーナーさまは、次の事業所向け制度が本命になります。
4. 事業所用省エネ設備導入促進補助金|法人・自社ビル・テナントビルのオーナーへ
一棟ビルや事業用物件を法人で保有しているオーナーさま、あるいは個人事業主として物件を運用されている方には、住宅向けとは別の入口があります。厚木市は、脱炭素と地球温暖化防止を目的に、自家消費型の太陽光発電システムおよび蓄電池システムを導入した企業・団体・個人事業主に対して、予算の範囲内で補助金を交付しています(出典:補助金ポータル「厚木市事業所用省エネ設備導入促進補助金」)。
テナントビルや事務所、店舗の屋根に自家消費型の太陽光を載せれば、共用部電気代の圧縮に直結し、NOI(実質賃料収入)の改善とBCP(事業継続)の両方に効きます。停電に強いビルは、テナント企業にとっても価値が高い。なお、この制度は令和7年度の実績情報が中心で、令和8年度の上限額・要件・受付状況は環境政策課への事前相談が必須です。設備投資の前に、まず一本電話を入れる価値があります。
5. 神奈川県の既存住宅省エネ改修補助|市の制度と「県の財布」を重ねる
厚木市の制度に加えて、神奈川県にも「県の財布」があります。令和8年度 神奈川県既存住宅省エネ改修事業費補助金は、既存住宅の断熱改修などに対し、補助対象経費の3分の1、または15万円のいずれか低い額を上限に補助する制度です。申請期間は令和8年5月11日から令和8年10月30日までとされています(出典:神奈川県「令和8年度神奈川県既存住宅省エネ改修事業費補助金」)。
市と県、さらに次章の国の制度は、対象工事や併用の可否がそれぞれ異なります。「どれとどれが重ねられるか」を設計するのが、補助金活用のいちばんおいしいところであり、いちばん間違えやすいところでもあります。同じ窓の断熱工事に複数の補助を二重取りすることは原則できませんが、部位や工事を分けて設計すれば、市・県・国を組み合わせられるケースがあります。
6. 国の制度:入居率と賃料を守る「省エネ三本柱」
ここからは全国共通、国の制度です。賃貸オーナーにとって、入居者の満足度=賃料維持・空室短縮に直結するのがこの3本柱です。いずれも令和7年度補正予算を財源とする2026年版で、予算消化で早期終了する可能性があります。
(1) 賃貸集合給湯省エネ2026事業|賃貸オーナー専用の給湯器補助
賃貸集合住宅のオーナーを対象とした、給湯器交換専用の補助です。古いガス給湯器をエコジョーズ(潜熱回収型ガス給湯器)やエコフィール(同・石油)に交換する費用を支援します。補助額は機器1台あたり上限5〜7万円、給湯器交換とあわせてドレン排水工事を行う場合は1台あたり最大10万円まで補助されます(出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業【公式】)。
戸数の多い賃貸マンションなら、給湯器をまとめて更新するだけで補助総額が大きく積み上がります。古い給湯器は故障時の入居者クレームと緊急対応コストの温床ですから、「壊れてから慌てて交換」より「補助があるうちに計画交換」が、経営的にも合理的です。
(2) 先進的窓リノベ2026事業|結露・寒さ・暑さ対策で部屋の競争力を上げる
窓の断熱改修に対する、補助率の高い制度です。内窓設置・外窓交換・ガラス交換などが対象で、1戸あたり最大100万円まで補助されます。賃貸住宅の所有者も対象で、戸建・低層・中高層の集合住宅すべてが含まれます(出典:環境省「先進的窓リノベ2026事業」概要)。1回の申請で補助額合計が5万円以上になることが条件です。
窓は、入居者が体感する「寒い・暑い・結露する」の元凶です。ここを改善すると、退去理由を一つ潰せます。築古物件こそ、窓の性能差が競争力の差になります。
(3) 給湯省エネ2026事業|エコキュート等が入る物件はこちら
エコキュート(ヒートポンプ給湯機)やハイブリッド給湯機、エネファームを導入する場合は、こちらが対象になります。オール電化の物件や、給湯設備をまとめて高効率機に更新する物件に向いた制度です。前述の賃貸集合給湯省エネ2026事業とは対象機器が異なるため、お持ちの物件の給湯方式に応じて使い分けます。
7. 税務:補助金は「もらって終わり」ではない。3つの注意点
ここはオーナー経営でいちばん差がつくところなので、現場目線で正直にお話しします。税務の最終判断は必ず顧問税理士にご確認ください。
注意点1:補助金は受給時に「雑収入」として課税される
見落とされがちですが、受け取った補助金は、原則としてその年度の雑収入(不動産所得・事業所得)に計上され、課税対象になります。「100万円もらえた」と喜んでも、税引後の実質的な手残りはそれより小さくなります。補助金は満額がそのまま懐に入るわけではない、という前提で利回りを計算してください。
注意点2:「修繕費」か「資本的支出」かで結果が大きく変わる
同じ工事でも、その年に全額を経費にできる「修繕費」になるか、減価償却で複数年に分けて費用化する「資本的支出」になるかで、キャッシュフローと納税額のタイミングが大きく変わります。原状回復に近い塗り替え・防水は修繕費に寄りやすく、耐震性能や機能を明確に向上させる工事は資本的支出に寄りやすい、というのが大まかな考え方です。判断は税理士マターですが、工事の発注内容と見積書の書き方が、後の税務処理を左右することは、オーナーとして知っておく価値があります。
注意点3:耐震改修・長寿命化には固定資産税の減額がある
耐震改修を行った住宅には、一定要件のもとで固定資産税の減額措置があり、所得税の特別控除が使える場合もあります。さらにマンションについては、長期修繕計画の見直しなど一定要件を満たした管理組合に対し、マンション長寿命化促進税制(大規模修繕工事を行った翌年度の建物部分の固定資産税を一定割合減額)が設けられ、適用期限が令和9年(2027年)3月31日まで延長されています。受け取る補助とは別に、毎年の固定資産税を継続的に圧縮できるのがこの財布の強みです。要件は年度で変わるため、最新情報は必ず確認してください。
8. 数字で見る:築古RCマンション1棟のモデル試算
抽象論だけでは伝わりにくいので、あくまで一般化したモデルで、補助金が効くイメージを示します(実在物件ではありません)。
- 想定:本厚木エリアの築30年・RC造・20戸の賃貸マンション
- 工事:大規模修繕(外壁・防水・鉄部塗装)+全戸の給湯器交換+共用部の窓断熱
仮に給湯器交換で賃貸集合給湯省エネ2026事業を20戸分活用し、1台あたり7万円が出れば、それだけで約140万円。共用部・住戸の窓断熱で先進的窓リノベ2026事業を組み合わせれば、ここに数十万円〜が上乗せされます。さらに大規模修繕本体は、足場仮設とロープアクセスを部位ごとに使い分ければ、足場費そのものを圧縮できる。補助で取り戻すお金と、工法選択で削るお金は、別腹で効いてくるわけです。
ここで効いてくるのが「入居率」の視点です。仮に家賃8万円・20戸の物件で、入居率が3%改善する(実質0.6戸ぶん空室が埋まる)と、年間の賃料収入はおよそ57万円増えます。設備更新と劣化対策で「選ばれ続ける物件」にすることは、補助金の額そのもの以上に、長い目で見たキャッシュフローを底上げします。これがオーナー視点での補助金活用の本質です。
9. よくあるご質問(厚木市オーナー編)
Q. 市外・県外に住んでいますが、厚木市の補助は使えますか?
A. 制度によります。木造住宅の補助や住宅省エネ設備補助は「所有者本人の居住」や「市内に住所登録のある個人」を要件とするものがあり、純投資の遠隔地オーナーは対象外になることがあります。一方、分譲マンション予備診断補助は管理組合が申請主体です。事業所用の省エネ補助は法人・個人事業主が対象です。ご自身の保有形態に合う財布を選ぶのがコツで、まずは各担当課への事前相談をお勧めします。
Q. 補助金は工事が終わってからでも申請できますか?
A. ほとんどの制度で「交付決定の前に契約・着工してしまうと対象外」になります。順番は「相談 → 申請 → 交付決定 → 契約・着工」です。良かれと思って先に工事を始めると補助が消えます。ここは最も多い失敗です。
Q. 国・県・市の制度は全部まとめて使えますか?
A. 同一の工事・同一の費用に対する二重取りは原則できませんが、部位や工事内容を分ければ併用できるケースがあります。設計段階で「どの工事にどの補助を充てるか」を整理しておくことが、受給総額を最大化する鍵です。
Q. 先着順の制度は、いつ動けばいいですか?
A. 受付開始直後です。木造住宅の耐震補助は令和8年度5月7日受付開始で予算到達次第終了。年度初めに動くオーナーが取り、夏以降に検討を始めるオーナーは取り逃すのが実態です。
10. 医療・介護施設のオーナーさまへ|「止められない建物」の修繕とBCP
クリニック、サービス付き高齢者向け住宅、介護施設を運営・保有されているオーナーさまには、もう一段の視点を。これらは「営業を止められない建物」です。修繕中も入居者・患者さんの生活と治療が続くため、騒音・振動・粉じん・動線の確保が、賃貸住宅以上にシビアになります。
ここで、足場を組まずに施工できるロープアクセス(無足場工法)が大きな意味を持ちます。窓をふさがず、出入口の動線を殺さず、必要な部位だけピンポイントで補修できるため、施設を稼働させたまま外壁・防水・鉄部のメンテナンスを進めやすい。さらに、自家消費型太陽光・蓄電池の導入は、停電時にも医療・介護を止めないBCP対策として、補助金と相性が良い投資です。詳しくはロープアクセス工法のご案内もご覧ください。
11. 厚木市オーナーが取るべき動き:診断 → 計画 → 工事の順で
最後に、今日からの動き方を整理します。
第一に、現状を数字で把握すること。旧耐震の分譲マンションなら予備診断補助、木造アパート・併用住宅なら耐震診断補助から。診断費の多くは市が持ちます。第二に、年度初めに動くこと。先着順・予算枠の制度が多く、出遅れは即「来年回し」です。第三に、工事を分けて補助を重ねる設計をすること。市・県・国の財布を、部位ごとに割り当てる発想が効きます。そして第四に、契約・着工は必ず交付決定の後で。順番を間違えると補助はゼロになります。
私たち明誠は、足場仮設とロープアクセス、そして両者を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物ごとに最適な工法をご提案できる、日本でも数少ない会社です。私はこの20年、補助金の有無や工法の選び方ひとつで、オーナーさまの手残りが大きく変わる場面を何度も見てきました。だからこそ、補助金の活用と工法の最適化、その両輪で「かけるべきところにかけ、削れるところは削る」修繕投資を設計します。収益物件をお持ちの方向けの考え方は、オーナーさま向けサービスのご案内にもまとめています。
お持ちの厚木市の物件で、まだこうした補助金の検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度お問合せください。1棟の現地調査と、利回り改善シミュレーション・キャッシュフロー試算だけでも、ご相談を承ります。築年数なりの劣化は、放っておけば静かに賃料の下落圧力として効いてきます。出口を見据えた修繕投資は、利回り改善以上に、物件価値そのものを底上げします。
▶ [収益不動産オーナーさま向けサービスのご案内・お問合せはこ
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横須賀市で使える賃貸オーナー向け補助金活用ガイド|三浦半島の築古マンション・ビルを「選ばれ続ける資産」に変える2026年度の制度設計
横須賀市で賃貸マンションやビルをお持ちのオーナーさまへ。この記事は「住民の安全のために耐震を」という話ではありません。入居率・賃料・手残りのキャッシュフロー、そして出口(売却)価格をどう守り、どう伸ばすかという、経営の話です。
私は20年近く、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕の現場に立ち続けてきました。横須賀・三浦半島エリアの物件も数多く見てきましたが、ここにははっきりした特徴があります。海に近い塩害と湿気で外壁・鉄部の劣化が早く進みやすいこと、そして人口が緩やかに減るなかで、築古物件が「選ばれる理由」を失うと空室が長期化しやすいことです。劣化は静かに、しかし確実に、賃料の下落圧力として効いてきます。
その劣化対策のコストを公的資金で圧縮できる制度が、横須賀市と国には用意されています。ところが私の経験上、これをきちんと使い切っているオーナーさまは、まだ少数派です。今日はその制度を、「いくら戻るのか」「税務でどう効くのか」「使えないのは誰か」まで、正直にお話しします。
※本記事の金額・要件は2026年(令和8年)6月時点で各自治体・省庁が公表している一次情報に基づきます。補助金は予算枠や定員に達した時点で受付終了となる制度が多く、年度途中で条件が変わることもあります。実際の申請前には必ず最新の交付要綱と窓口でご確認ください。
まず結論:横須賀市オーナーが押さえるべき「3つの財布」
横須賀市の物件で使える補助は、大きく3つの出どころに分かれます。ご自身のケースを判定しやすいよう、先に全体像を示します。
| 出どころ | 主な制度 | 横須賀市オーナーへの効き方 |
|---|---|---|
| 横須賀市(市の財布) | マンション耐震診断等補助、木造住宅耐震(店舗併用含む)、緊急輸送道路沿道、アスベスト含有調査、創エネ・蓄電池 | 築古・旧耐震物件の安全性と資産価値を底上げ/省エネ設備で光熱費を圧縮 |
| 国(省庁の財布) | 賃貸集合給湯省エネ2026、先進的窓リノベ2026、給湯省エネ2026 | 入居者満足度=賃料維持・空室短縮に直結 |
| 税制(取られる額を減らす財布) | 耐震改修の固定資産税減額・所得税控除、修繕費の損金算入 | 受け取る補助とは別に、毎年のキャッシュフローを改善 |
ポイントは、「現金でもらう補助」と「税金が減る効果」と「損金で利益を圧縮する効果」は別々に積み上げられるということです。一つの大規模修繕で複数の財布に手を伸ばせるケースが、横須賀市にも実際にあります。ここからが本題です。
1. 横須賀市マンション耐震診断等補助金|「現状を数字で知る」費用を市が持つ
築古の分譲マンションを区分所有で複数戸お持ちのオーナーさま、あるいは管理組合の役員も兼ねているオーナーさまにとって、最初の入口がこの制度です。横須賀市は、分譲マンションの管理組合に対して、耐震診断にかかる費用の一部を補助しています(出典:横須賀市マンション耐震診断等補助金交付要綱)。
補助額(2026年・令和8年時点)
- 予備診断:予備診断費用の3分の2、かつ1棟あたり12万円が上限
- 耐震診断:耐震診断費用の2分の1、かつ1棟あたり「3万円 × 住戸数」が上限
たとえば30戸のマンションなら、耐震診断の上限は3万円×30戸=90万円が一つの目安になります。簡易にリスクを見る予備診断から、正式な耐震診断へと、段階を踏んで進められる設計です。
対象になる建物の条件
昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認を得て着工した、いわゆる旧耐震基準の建物が対象です。さらに、構造が鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄骨造であること、過半数の住戸が区分所有者の居住用であること、住宅部分の床面積が非住宅部分より大きいこと、そして管理組合の総会で耐震診断等の実施が決議されていることが要件です。
ここでオーナーさまに関わる重要な点を、正直に2つ申し上げます。
ひとつは、「過半数の住戸が区分所有者の居住用」という要件です。投資用に貸し出している住戸が多すぎると、対象から外れやすくなります。ご自身のマンションが該当するかは、事前相談で確認する価値があります。
もうひとつ、横須賀市のこの制度は「診断」に対する補助であり、耐震改修工事そのものへの直接補助は用意されていないという点です。藤沢市などのように改修工事費へ補助が出る自治体とは事情が異なります。とはいえ「診断補助がある」こと自体が大きな意味を持ちます。旧耐震のマンションは、耐震性が未知数のまま市場に出ると買い手から大きく値引きを迫られますが、診断で「安全」と分かれば出口価格を守れますし、「要改修」と分かれば、後述する国の補助や税制と組み合わせた改修計画に進めます。まず現状を数字で押さえる——その費用を市が持ってくれるなら、使わない手はありません。
2. 木造住宅耐震診断・補強工事助成|店舗併用アパートも対象、沿道なら上乗せ
「うちは木造アパートや店舗併用だから関係ない」と思われたオーナーさまにも、入口があります。横須賀市の木造住宅耐震助成は、平成12年(2000年)5月31日以前に着工した在来軸組工法の戸建木造(3階以下)を対象に、診断から補強工事までを段階的に支援します(出典:横須賀市「木造住宅の耐震診断・補強工事助成事業」)。令和8年度から自己負担額が変更されており、最新の数字は次のとおりです。
| ステップ | 自己負担額(通常) | 沿道木造住宅の場合 |
|---|---|---|
| ①耐震診断 | 47,000円 | 26,000円 |
| ②補強工事図面作成 | 74,000円 | 52,000円 |
| ③補強工事・工事監理 | 工事費の2分の1(上限100万円)を補助+工事監理の自己負担37,000円 | 工事費の3分の2(上限150万円)を補助+工事監理の自己負担26,000円 |
令和8年度の受付は、耐震診断が4月1日から電話で先着順、補強工事補助が5月11日から窓口で先着順、申込締切は12月28日です。ただし定員に達した時点で締切前でも受付終了となります。先着順の制度は「予算が残っているうちに動いた人が勝つ」世界です。検討しているなら前倒しが鉄則です。
ただし、ここも正直にお伝えすべき注意点があります。この木造助成は、所有者本人または配偶者・一親等以内の親族が居住している(または工事後に居住する)ことが要件です。市外にお住まいで、純粋に投資用として保有している木造アパートは対象外になる可能性が高い。さらに市税の滞納がないことも条件です。ご自身がどちらに当たるかは、事前に建築指導課でご確認ください。
なお現場の人間として一言。耐震補強は外壁・防水・塗装といった大規模修繕と工程が重なることが多い工事です。私はいつも、耐震とその他の修繕を別々に発注せず、ワンセットで計画することをお勧めしています。足場を二度架けるのは、まるごとお金をドブに捨てるようなものだからです。
3. 緊急輸送道路沿道建築物の耐震化|幹線道路沿いのビル・住宅は要チェック
横須賀市は、地震で倒壊すると緊急輸送道路をふさぐおそれのある建物の所有者に対し、耐震化への協力を求めています(出典:横須賀市「緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化について」)。横須賀市耐震改修促進計画では、第1次・第2次・市指定の緊急輸送道路すべてが対象とされています。
ここがオーナーにとって直接効くポイントです。前章の木造住宅耐震助成は、県指定の第1次緊急輸送道路に接する「沿道木造住宅」に該当すると、工事補助率が2分の1から3分の2(上限150万円)へ引き上げられ、診断・図面の自己負担も軽くなります。該当する可能性がある場合、市は耐震診断の前に無料で現地調査を行ってくれます。
築古の木造アパートや店舗併用住宅が幹線道路沿いに立っているオーナーさまは、まず「自分の物件が指定路線の沿道に当たるか」を調べてみる価値があります。災害リスクという一見マイナスの立地が、補助の文脈では上乗せという強力なプラス材料に変わるのです。
4. 民間建築物アスベスト含有調査補助|一棟ビル・古い物件のオーナーへ
築年数の古い一棟ビルや、吹付け材を使った可能性のある建物をお持ちのオーナーさまに知っておいていただきたいのが、この制度です。横須賀市は、吹付けアスベスト等の含有調査をまだ実施していない民間建築物の所有者などに対し、調査費用の一部を補助しています(出典:横須賀市「民間建築物吹付けアスベスト等含有調査事業補助金について」)。申請には事前相談が必要で、年度ごとに受付期限が設けられています。
なぜこれがオーナーの経営に効くのか。大規模修繕や解体の際、アスベストの有無が不明なままだと、工事の途中で想定外の除去費用や工期延長が発生し、計画が大きく狂うことがあります。修繕や売却の前に「含有調査」で建物の状態を確定させておくことは、出口戦略の地ならしそのものです。調査費の一部を市が持ってくれるうちに、自分の建物の素性をはっきりさせておく。これは投資判断のリスクを下げる、地味ですが堅実な一手です。
5. 創エネ・蓄電池の補助|光熱費を下げ、物件の「省エネ性能」を武器にする
横須賀市は、三浦半島4市1町(横須賀市・鎌倉市・逗子市・三浦市・葉山町)と連携し、太陽光発電設備や蓄電池などの導入を支援する補助金(重点対策加速化事業費補助金)を実施しています(出典:横須賀市「太陽光発電設備・併用蓄電池補助」、中小企業等省エネ化・生産性向上補助金)。事業者(中小企業等)向けの枠では、太陽光発電設備に1kWあたりの補助(令和7・8年度は加算あり)、蓄電池に費用の3分の1、高効率照明(LED)に2分の1といった支援が用意されています(金額・要件は年度の交付要綱でご確認ください。蓄電池単独設置は対象外など条件があります)。
賃貸物件にとって省エネ設備は、もはや「コスト」ではなく「集客装置」です。共用部のLED化や太陽光・蓄電池の導入は、ランニングコストを下げるだけでなく、「災害に強く、光熱費の安い物件」という選ばれる理由を作ります。横須賀のように物件間の入居者獲得競争が効いてくるエリアでは、この差が空室期間に表れます。法人名義・事業用としての保有なら、こうした事業者向け補助の対象になり得ます。物件の保有形態に合わせて、活用を検討する価値があります。
6. 国の制度:入居率と賃料を守る「省エネ三本柱」
ここからは、横須賀市に限らず全国の賃貸オーナーが使える国の制度です。私はこれらを「安全のための耐震」とは違う、「稼ぐための省エネ」と位置づけています。設備の新しさと光熱費の安さは、入居者が部屋を選ぶ決め手に直結するからです。
入居率1%の改善が、年間でどれだけのキャッシュフロー差を生むか。10戸の物件で家賃8万円なら、1%でも年間およそ10万円弱の差です。空室期間を1か月縮められれば、それだけで設備投資の何割かを取り返せます。省エネ補助は、その「入居者に選ばれる理由」を公的資金で作る制度なのです。
(1) 賃貸集合給湯省エネ2026事業|賃貸オーナー専用の給湯器補助
これはまさに賃貸集合住宅のオーナー等が対象者として明記された制度です。設置スペースの都合でヒートポンプ給湯機(エコキュート)の導入が難しい既存の賃貸集合住宅向けに、小型の省エネ給湯器(エコジョーズ・エコフィール)への交換を支援します(出典:資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業」、賃貸集合給湯省エネ2026事業 特設サイト)。
- 追い焚きなし:5万円/台
- 追い焚きあり:7万円/台
- 一定の排水工事を伴う場合:最大8万円/台・10万円/台まで加算
リースの利用も対象に含まれます。古い給湯器は故障リスクと光熱費の両面で入居者の不満の種になりがちです。退去のタイミングや故障対応のついでに、補助を使って省エネ機へ更新する。これは手堅い一手です。
(2) 先進的窓リノベ2026事業|結露・寒さ・暑さ対策で部屋の競争力を上げる
窓の断熱改修を支援する国の制度です。戸建てだけでなく低層集合住宅(3階建以下)・中高層集合住宅(4階建以上)も対象で、内窓設置や窓交換などに対し、1戸あたり最大100万円が補助されます(出典:環境省「先進的窓リノベ2026事業」)。
ただし2026年度は、1戸あたりの上限が前年度の最大200万円から100万円へと半減しています。早めに動くほど大きな予算枠の中で申請できるという意味でも、検討は前倒しが有利です。
横須賀の海沿いの物件は、潮風による結露や夏の西日が入居者の不満につながりやすい。内窓1枚で結露とカビが軽減され、退去時の原状回復コストまで下がるケースを、私は現場で何度も見てきました。窓の断熱は、入居者の快適性と原状回復費の両方に効く、費用対効果の高い改修です。
(3) 給湯省エネ2026事業|エコキュート等が入る物件はこちら
設置スペースに余裕があり、ヒートポンプ給湯機(エコキュート)やハイブリッド給湯機を導入できる物件は、こちらの本体「給湯省エネ2026事業」が使えます。賃貸集合住宅向けの (1) と対象機器・金額が異なりますので、物件の条件に合わせて使い分けてください。
7. 税務:補助金は「もらって終わり」ではない。3つの注意点
補助金を取るところまでで満足してしまうオーナーさまが多いのですが、手残りを最大化できるかは税務の処理で決まります。私は税理士ではありませんので一般的な情報としてお伝えしますが、必ず顧問税理士にご確認ください。
注意点1:補助金は受給時に「雑収入」として課税される
国・自治体から受け取った補助金は、原則としてその年の雑収入(益金)に計上され、課税対象になります。「100万円もらえた」と喜んでいても、そのまま手元に100万円残るわけではありません。圧縮記帳など税負担を平準化する手当てがある場合もあるため、受給が決まった段階で税理士に相談するのが安全です。
注意点2:「修繕費」か「資本的支出」かで結果が大きく変わる
同じ工事でも、原状回復に近いものは修繕費として一括で損金算入でき、その年の利益を大きく圧縮できます。一方、建物の価値を高めたり耐用年数を延ばしたりする工事は資本的支出として資産計上され、減価償却で複数年に分けて費用化します。耐震改修や省エネ改修は資本的支出に区分されやすい工事です。税務処理ひとつでキャッシュフローのタイミングが大きく変わりますので、工事の組み立て段階からこの区分を意識して計画することをお勧めします。
注意点3:耐震改修には固定資産税の減額・所得税控除がある
横須賀市でも、補助制度を利用して耐震補強工事を行うと、要件を満たせば翌年度から1年度分の固定資産税が2分の1減額され、さらに昭和56年5月31日以前に着工した住宅では所得税の控除(標準的な工事費用相当額から補助金を差し引いた額の10%相当、上限25万円)が受けられる場合があります(出典:横須賀市「木造住宅の耐震診断・補強工事助成事業」、国土交通省「住宅の耐震改修に関する特例措置」)。固定資産税の減額は工事完了から3か月以内に資産税課への申告が必要、所得税控除は確定申告が必要など、手続きと期限があります。賃貸・事業用としての適用可否は物件ごとに判断が分かれますので、市の資産税課と税理士に必ずご確認ください。
このように、横須賀市の現金補助・国の省エネ補助・固定資産税の減額・損金算入は、重ねて積み上げられるのが基本です。一つの大規模修繕を「ただの出費」で終わらせるか、「複数の財布から取り戻す投資」に変えるかは、計画の最初の設計で決まります。
8. 数字で見る:築古RCマンション1棟のモデル試算
抽象論だけでは財布の感覚が湧きにくいので、あくまで一般的な前提を置いたモデルケースで考えてみます。実際の金額は物件ごとに大きく変わりますので、目安としてご覧ください。
横須賀市内の旧耐震RCマンション、20戸を想定します。大規模修繕(外壁・防水・塗装)と省エネ更新を合わせて総額3,500万円かかったとしましょう。
- 耐震診断補助:横須賀市のマンション耐震診断補助で、耐震診断費用の2分の1(1棟あたり3万円×20戸=60万円が上限の目安)。まず現状把握の費用を圧縮。
- 給湯器の更新:20戸を追い焚きあり省エネ機に交換し7万円/台なら、賃貸集合給湯省エネ2026事業で140万円。
- 窓の断熱改修:先進的窓リノベ2026を併用すれば、戸あたり数万円〜数十万円の上乗せ。
- 共用部LED・創エネ:事業用なら横須賀市の省エネ・創エネ補助の対象になり得る。
- 税効果:修繕費に区分できた部分はその年の利益を圧縮。耐震改修の要件を満たせば固定資産税の減額も。
現金補助だけで数百万円規模、そこに税効果が重なります。何もしなければ3,500万円がまるごと自己負担ですが、制度を組み合わせれば実質負担は大きく圧縮できる——これがオーナー視点で補助金を見る、ということです。繰り返しますが、上記はあくまで枠組みを示すための仮の数字で、実際の補助額・税効果は要綱と物件条件、税務判断によって決まります。
9. よくあるご質問(横須賀市オーナー編)
Q. 市外に住んでいる投資家ですが、横須賀市の補助は使えますか?
制度によります。分譲マンションの耐震診断補助は管理組合が対象で、居住者の市内・市外は直接の要件ではありません(区分所有者の居住割合の要件は別途あります)。一方、木造住宅耐震助成は「所有者本人または配偶者・一親等以内の親族が居住」が要件で、純投資用の市外保有では対象外になりやすい。国の省エネ補助(給湯・窓)は居住地を問わず賃貸オーナーが使えます。物件ごとの確認が必要です。
Q. すでに工事を発注してしまいました。後から申請できますか?
横須賀市の耐震系補助は、いずれも事前相談・事前登録、そして交付決定後の着工が原則です。交付決定前に施工業者と契約すると補助対象外になります。次の修繕からは、必ず計画段階で窓口にご相談ください。
Q. 先着順の制度は、いつ動けばいいですか?
木造住宅耐震助成のように定員に達した時点で締切前でも終了する制度があります。年度初め(4〜5月)に受付が始まったら、できるだけ早く事前相談に動くのが安全です。「年末でいいや」と構えていると、枠が埋まって翌年度回しになることがあります。
Q. 国の省エネ補助と市の耐震補助は同時に使えますか?
対象となる工事・費用が重複していなければ、別制度の併用は基本的に可能です。ただし同一費用への二重補助は認められません。工種ごとに「どの財布から取るか」を整理して申請するのが鍵です。
10. 医療・介護施設のオーナーさまへ|BCPと「止められない建物」の修繕
ここで、クリニックやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、介護施設の建物をお持ちのオーナーさま・理事長さまにも一言お伝えします。医療・介護の建物は、賃貸住宅以上に「災害時に止められない」という性格を持っています。
横須賀市の耐震補助やアスベスト調査補助は、住宅部分の割合などの要件はありますが、店舗・事務所兼用や非住宅部分を含む建物にも入口があります。施設の耐震性とアスベストの安全性は、利用者・患者さまの安全であると同時に、事業継続計画(BCP=災害時にも事業を止めないための計画)の根幹でもあります。
私が現場で強く感じるのは、医療・介護施設の修繕は「営業を止められない」という制約が極端に大きいということです。足場を全面に架けて何か月も出入口を塞げば、利用者にも職員にも大きな負担がかかります。だからこそ、足場を架けないロープアクセス工法や、必要な部位だけ足場を使うハイブリッド工法が効いてきます。施設を動かしたまま、外壁・防水・塗装を進められるのです。省エネ改修も、空調・給湯の光熱費が経営を圧迫しやすい医療・介護分野では効果が大きく、利用者の快適性と光熱費削減の両方に効きます。
11. 横須賀市オーナーが取るべき動き:診断 → 計画 → 工事の順で
ここまでの制度を、実際の動き方に落とし込むとこうなります。
第一に、現状把握です。旧耐震の分譲マンションなら耐震診断補助、築古の木造アパート・店舗併用なら木造耐震助成、古い一棟ビルならアスベスト含有調査補助。まず自分の物件がどの制度の入口に立っているかを、事前相談で確認します。横須賀市の制度はいずれも「事前相談・事前登録が必須」「交付決定後に着工」「先着・定員あり」が基本です。いきなり工事を始めると補助対象外になりますし、年度後半では枠が埋まっていることもあります。
第二に、計画の一本化です。耐震・外壁・防水・省エネを別々に発注すると、足場代も諸経費も二重三重にかかります。一度の足場(あるいは無足場)で、市と国の複数の補助を取りに行く——この設計図を最初に描けるかどうかで、手残りは大きく変わります。
そして第三に、工法の最適化です。私ども明誠は、通常の足場仮設による工事、産業用ロープによる無足場のロープアクセス工法、その両方を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物にとって最も合理的な方法をご提案できます。足場費を抑え、入居者・利用者の生活影響を最小化しながら、外壁・防水・塗装を進められるのが強みです。塩害の進みやすい三浦半島の物件で、「いかに安く、いかに住まいを止めずに」資産価値を守るか——ここは私どもが最もお役に立てる領域です。
お持ちの物件で、まだこれらの補助金の検討を始めていない横須賀市のオーナーさまは、ぜひ一度お問い合わせください。1棟の現地調査と、補助金を織り込んだ利回り改善シミュレーションだけでも、ご相談を承ります。築年数なりの劣化を「静かな減収」で終わらせず、「選ばれ続ける資産」に変える。その第一歩を、横須賀の現場を知る私どもと一緒に踏み出していただければと思います。
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小田原市のマンションで使える補助金・支援制度まとめ【2026年度版】|大規模修繕前に管理組合が知るべきこと
「うちのマンション、そろそろ二回目の大規模修繕なんだが、小田原市から補助金は出ないのか」——先日、小田原市内の築22年・48戸のマンションで理事長さまから、開口一番こう聞かれました。総会で修繕積立金の値上げ議案を出したものの、住民から「補助金を使えば値上げしなくて済むのでは」という声が上がって板挟みになっている、というご相談でした。
私は大規模修繕の現場に20年近く携わってきましたが、この「補助金は出ないのか」という問いほど、答え方の難しいものはありません。なぜなら、正直に申し上げると、小田原市にはマンションの大規模修繕工事そのものに直接お金が出る補助金は、現時点では用意されていないからです。
ただし、です。ここからが本題です。「工事費の補助金がない」ことと「使える支援制度がない」ことは、まったく別の話です。固定資産税が安くなる制度、無料で専門家を呼べる制度、融資の金利が下がる制度——お金の出方が違うだけで、管理組合の負担を確実に軽くする仕組みは、小田原市にもきちんと存在します。
この記事では、小田原市のマンション管理組合・区分所有オーナーが2026年度(令和8年度)に実際に使える支援制度を、私が現場で説明するときの順番でひとつずつ整理します。読み終えるころには、次の理事会で何を議題に乗せればいいかが見えるはずです。
まず結論:小田原市のマンションが使える支援は「6つ」
細かい説明に入る前に、全体像をお見せします。小田原市のマンション(分譲・区分所有)に関係する公的支援は、大きく次の6つです。
| # | 制度名 | 何が得になるか | 窓口 |
|---|---|---|---|
| ① | マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額) | 大規模修繕の翌年度、建物部分の固定資産税が1/2減額 | 小田原市 資産税課 |
| ② | マンションの管理計画認定制度 | フラット35・共用部リフォーム融資の金利引下げ、資産価値の評価向上 | 小田原市 都市政策課 |
| ③ | 神奈川県マンションアドバイザー派遣事業 | 専門家(マンション管理士・建築士など)を無料で派遣 | 神奈川県 |
| ④ | 小田原市分譲マンション管理相談 | マンション管理士による無料相談 | 小田原市 都市政策課 |
| ⑤ | 地域経済循環型住宅リフォーム支援事業 | 市内業者で工事すると抽選で3万円相当の地場産品等 | 小田原市 産業政策課 |
| ⑥ | マンション共用部分リフォーム融資(住宅金融支援機構) | 管理組合向けの低利・長期融資 | 住宅金融支援機構 |
ポイントは、①〜④が「お金を直接もらう」のではなく「税金を減らす」「無料で専門家を使う」「金利を下げる」という支援だということ。派手さはありませんが、戸あたりに換算すると決して小さくありません。順番に見ていきましょう。
① マンション長寿命化促進税制——大規模修繕の「ごほうび」は固定資産税
私がいま、小田原のマンション管理組合に最初にお伝えしているのが、このマンション長寿命化促進税制です。正式には「長寿命化に資する大規模の修繕等を行ったマンションに係る固定資産税の減額制度」といいます。少し長いので、本記事では「長寿命化促進税制」と呼びます。
これは国の制度を小田原市が実施しているもので、一定の条件を満たすマンションが長寿命化工事(外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事)を完了すると、翌年度の建物部分の固定資産税が2分の1減額されるというものです(出典:小田原市「長寿命化に資する大規模の修繕等を行ったマンションに係る固定資産税の減額制度」)。
対象になるのはどんなマンションか
小田原市の案内によると、対象となるマンションの主な要件は次のとおりです。
- 新築された日から20年以上が経過し、総戸数が10戸以上であること
- 過去に1回以上、長寿命化工事(外壁塗装等・床防水・屋根防水)を適切に行っていること
- 長寿命化工事を適切に実施するために必要な修繕積立金が確保されていること
3つ目の「修繕積立金が確保されていること」が肝です。具体的には、(ア)市の認定を受けた管理計画認定マンションのうち、認定の際に基準へ適合させるため令和3年9月1日以降に修繕積立金を引き上げた場合、または(イ)市から助言・指導を受けて長期修繕計画を見直し、修繕積立金を積み増した場合、のいずれかが必要です。つまり、後ほど説明する②管理計画認定とセットで考えると話が早い、ということです。私はこれを、必ずワンセットでご提案するようにしています。
減額される範囲と期間
減額されるのは、居住用部分の床面積(一戸あたり100平方メートル相当分まで)にかかる固定資産税の2分の1です。期間は工事が完了した年の翌年度分の1年間。なお、都市計画税には減額はありません。
仮に一戸あたりの建物分固定資産税が年8万円のマンションなら、その年だけで一戸あたり約4万円、50戸なら単純計算で約200万円が軽くなる規模感です(実際の税額は評価額により異なります)。1回しか受けられない制度ですが、二回目・三回目の大規模修繕のタイミングに合わせれば、修繕積立金の負担感をやわらげる材料になります。
ここが落とし穴——申告期限は「工事完了から3か月以内」
正直に申し上げます。この制度で一番もったいないのが、申告のし忘れです。申告期限は工事完了から3か月以内。しかも対象期間は「令和5年4月1日から令和9年3月31日までに工事が完了したもの」と区切られています(同上)。耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修による減額とは同時に使えない点も要注意です。
工事のスケジュールを組む段階から、施工会社と税理士、そして市の資産税課(電話0465-33-1371)に動きを共有しておく。これだけで取りこぼしは防げます。私たちのような施工側も、工事完了証明書の発行を含めて段取りでお手伝いできる部分です。
② マンションの管理計画認定制度——「ちゃんと管理してます」を市のお墨付きに
次がマンションの管理計画認定制度です。これは、適切な管理が行われているマンションの管理計画を市が認定する制度で、令和4年4月にスタートした比較的新しい仕組みです(出典:小田原市「マンションの管理計画認定制度について」)。
認定を受けるには、マンション管理に関する16項目の基準を満たし、事前に管理組合の集会で認定申請の決議を得ておく必要があります。基準には、管理者等が定められていること、年1回以上の総会開催、修繕積立金が長期修繕計画に照らして適切に設定されていること、などが含まれます。
認定を取ると何がうれしいのか
認定マンションになると、次のようなメリットがあります。
- 住宅金融支援機構の融資金利が引き下げられる(フラット35、マンション共用部分リフォーム融資)
- 「適切に管理されたマンション」として、中古市場での評価につながる
- 前述の①長寿命化促進税制の要件(修繕積立金の確保)を満たしやすくなる
申請は市に直接出すのではなく、まず(公財)マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」で、講習を修了したマンション管理士による事前確認を受け、適合証を得たうえで申請する流れです。一連の手続きはオンライン上で行います。システム使用料と事前確認審査料がかかる点は、あらかじめ予算に入れておきましょう。
理事長さまには、「認定は手間がかかるけれど、一度取れば資産価値と資金調達の両面で効く投資です」とお伝えしています。窓口は小田原市 都市政策課(電話0465-33-1307)です。
③ 神奈川県マンションアドバイザー派遣事業——専門家を「無料で」呼べる
「修繕の見積もりが妥当か、第三者の目で見てほしい」「長期修繕計画の見直し方が分からない」——こうしたとき、まず使ってほしいのが神奈川県のマンションアドバイザー派遣事業です。
これは、神奈川県内の分譲マンションの管理組合などに、マンション管理士や建築士などの専門家を無料で派遣する制度です(出典:神奈川県「マンションアドバイザー派遣事業」)。管理運営の悩みから大規模修繕の進め方まで、幅広く相談できます。
ひとつ注意点があります。この県の事業は、独自に同種の制度を持つ横浜市・川崎市・相模原市・横須賀市を対象から除いています。裏を返せば、小田原市は対象に含まれるということです。小田原のマンションにとっては、まさに使える制度です。
私は施工会社の立場ですが、第三者のアドバイザーが入ることをむしろ歓迎しています。中立の専門家が「この修繕仕様は妥当」「この時期にやるべき」と整理してくれると、その後の工事提案も住民の納得感が段違いになるからです。
④ 小田原市分譲マンション管理相談——市の窓口でも無料で聞ける
県の派遣事業とあわせて知っておきたいのが、小田原市が独自に開いている分譲マンション管理相談です。マンション管理士が、管理組合の運営全般、規約の見直し、大規模修繕、長期修繕計画の見直し、日常のトラブルなどの相談を無料で受け付けています(出典:小田原市「住情報」内の分譲マンション管理相談)。
開催日が決まっている予約制の相談ですので、「総会の前に論点を整理したい」「役員のなり手がいなくて困っている」といった段階でも、気軽に使えます。③の県の派遣が「専門家にマンションへ来てもらう」のに対し、④は「まず窓口で相談する」イメージです。状況に応じて使い分けてください。
⑤ 地域経済循環型住宅リフォーム支援事業——市内業者で工事すると地場産品が当たる
少し毛色の違う支援が、産業政策課が所管する地域経済循環型住宅リフォーム支援事業です。これは市民の消費を促し地域経済を活性化させることを目的に、市内の施工業者で住宅リフォームを行った市民を対象に、抽選で地場産品等を進呈する制度です(出典:小田原市「令和7年度地域経済循環型住宅リフォーム支援事業について」)。
令和7年度は、支援件数65件(上限超過時は抽選)、内容は地場産品等と食事券の組み合わせで3万円相当、申請期間は令和7年6月2日〜10月31日でした。申請書には住宅の種類として「マンションなど」の選択肢があり、マンションのリフォームも対象に含まれます。
金額としては大きくありませんが、ポイントは「市内業者を使うことが条件」だという点です。地元の専門業者に発注することで地域にお金が回り、こうしたささやかな還元も受けられる。私は、地域に根ざした施工体制の価値が、こういう制度にも表れていると感じています。なお、2026年度(令和8年度)も同様の事業が実施されるかは、年度ごとに小田原市の公式サイトで最新情報をご確認ください。
⑥ マンション共用部分リフォーム融資——「借りる」という選択肢
補助金や減税で足りない分は、借りるという手もあります。住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資は、管理組合が共用部分の修繕工事のために利用できる、長期・固定金利の融資制度です(出典:小田原市「住情報」からのリンク先)。
修繕積立金が一時的に不足しても、工事の先送りはむしろ建物の傷みを進め、後の費用を膨らませます。私が現場で20年やってきて一番悔しい思いをするのは、「あと2年早く手を打っていれば、これほどかからなかった」という劣化を見たときです。融資を上手に使い、必要な時期に必要な工事を行うことも、長い目で見た資産防衛になります。
しかも前述の②管理計画認定を受けていれば、この融資の金利が引き下げられる。①②③が単独ではなく、つながっているのがお分かりいただけると思います。
すべての支援の「土台」は、長期修繕計画と修繕積立金
ここまで6つの制度を見てきて、勘のいい理事長さまならお気づきだと思います。①の固定資産税減額も、②の管理計画認定も、根っこにあるのは同じ条件——「修繕積立金が、長期修繕計画に照らして適切に確保されているか」です。逆に言えば、ここが整っていないと、せっかくの制度がどれも使えません。
私が現場でお会いする管理組合の多くは、ここでつまずきます。よくあるのが次の3つです。
- 修繕積立金が「均等積立」になっておらず、段階増額方式のまま値上げのタイミングを逃している
- 長期修繕計画が10年以上見直されておらず、物価上昇後の工事費に追いついていない
- 二回目の大規模修繕で、給排水管の更生・更新という大きな費用が見えていなかった
特に近年は資材費・人件費の上昇で、5年前の長期修繕計画の見積額では足りないケースが目立ちます。私の経験上、築20年を超えたマンションは、まず長期修繕計画を最新の単価で引き直すことが、すべての出発点になります。計画を引き直し、必要な積立水準を住民に説明し、合意形成する。この順番を踏んでおけば、①の税制要件(修繕積立金の確保)も②の認定基準も自然と満たせるようになります。
実際、私が小田原で関わった現場でも、長期修繕計画を最新単価で引き直したところ、当初の積立計画では二回目の大規模修繕の途中で資金がショートする見込みだったことが判明したマンションがありました。早めに気づけたおかげで、無理のない範囲での段階的な積立改定と、工法の見直しによるコスト圧縮で乗り切れました。計画の引き直しは、住民にとっては耳の痛い「値上げの話」になりがちですが、根拠となる数字と外部専門家の裏づけがあれば、総会での合意は決して不可能ではありません。むしろ、何も示さずに値上げだけを求めるほうが、住民の反発を招きます。
国土交通省は、長期修繕計画の標準的な様式や、修繕積立金の目安となるガイドラインを公表しています(出典:国土交通省「マンション管理について(標準管理規約・各種ガイドライン)」)。「うちの積立金は高いのか安いのか」を判断する物差しとして、一度目を通しておく価値があります。そしてこの引き直しこそ、③④の無料専門家相談がもっとも力を発揮する場面です。
小田原のマンションが取るべき進め方ロードマップ
「制度は分かった。で、何から手をつければいいのか」——最後に、私が理事会でお伝えしている現実的な順番を、ロードマップとして整理します。
- 【1〜2か月目】現状把握:直近の長期修繕計画と修繕積立金の残高・徴収額を確認する。前回の大規模修繕からの経過年数と、次回の想定時期を洗い出す。
- 【2〜3か月目】無料相談を使う:③神奈川県アドバイザー派遣、または④小田原市の管理相談を予約し、長期修繕計画の妥当性を第三者にチェックしてもらう。
- 【3〜6か月目】計画の引き直しと合意形成:最新単価で長期修繕計画を更新し、必要なら修繕積立金の改定案を総会に諮る。ここで②管理計画認定の取得も視野に入れる。
- 【6〜12か月目】工事の発注準備:複数社から見積もりを取り、工法(足場・ロープアクセス・ハイブリッド)を比較する。市内業者を使う場合は⑤地域リフォーム支援の申請期間も確認。
- 【工事〜完了後3か月】税制の申告:工事完了後、①長寿命化促進税制の申告を3か月以内に資産税課へ。完了証明書などの書類は施工会社と連携して準備する。
このロードマップで大事なのは、「工事を決めてから制度を探す」のではなく、「制度から逆算して工事計画を組む」という発想の転換です。順番を逆にするだけで、使える支援の数が変わります。
【正直な話】木造耐震補助は手厚いが、マンションは対象外
ここはあえて、はっきりお伝えします。小田原市には木造住宅耐震診断費補助金・木造住宅耐震改修費補助金があり、令和8年度の申請受付も始まっています。診断費は一戸建てで上限9万円、改修費は工事費の2分の1で上限85万円(要配慮者世帯は115万円)と、かなり手厚い内容です(出典:小田原市「木造住宅耐震診断費・耐震改修費補助金」)。
ただし、この補助の対象は昭和56年5月31日以前に着工した、地上2階建て以下の木造住宅です。鉄筋コンクリート造の分譲マンションは対象になりません。「耐震の補助があると聞いた」というご相談をよく受けますが、それは木造向けの制度であって、マンションには使えない——この線引きを誤ると総会で混乱します。マンションの場合は、①〜⑥の制度で組み立てるのが現実的です。
なお小田原市は、活断層である国府津-松田断層帯を抱える地域です。地震リスクが相対的に高い土地だからこそ、建物の維持管理と長期修繕計画は、資産価値の問題であると同時に、住民の安全の問題でもあります。
補助金・税制を「最大限」活かすには、工法選びが効く
ここまで制度の話をしてきましたが、最後に施工側の人間として一つだけ。同じ大規模修繕でも、工法の選び方で総額は大きく変わります。 補助金で数十万円を取りに行くのと並行して、工事そのもののコストを最適化する視点を、ぜひ持ってください。
大規模修繕の工法には、大きく3つあります。
- 通常の足場仮設工法:建物全体に仮設足場を架ける従来型。複雑な形状や全面的な改修に向く一方、足場の架設・撤去に相応の費用と工期がかかります。
- ロープアクセス工法(無足場工法):産業用ロープで作業員が懸垂下降して施工する方法。足場を架けないため足場費を抑えられ、工期も短縮しやすく、居住者の生活への影響(目隠し・防犯面の不安・駐車場制限など)も小さく抑えられます。高層部や、足場を架けにくい立地で特に強みを発揮します。
- ハイブリッド工法:足場とロープアクセスを部位ごとに使い分ける方法。たとえばバルコニー側は足場、外壁の一部はロープ、と最適配分することで、総コストと工期のバランスを取ります。
私たちは、この3つを建物の形状・立地・劣化状況に応じて使い分け、建物にとって本当にベストな工法をご提案しています(詳しくはロープアクセス工法のご紹介、大規模修繕工事のご紹介をご覧ください)。足場代が浮けば、その分を本当に必要な防水・タイル補修に回せます。補助金・減税で「もらう」工夫と、工法で「減らす」工夫。この両輪が、修繕積立金を守る一番の近道だと、私は考えています。
よくある質問(FAQ)
Q. 小田原市から、大規模修繕の工事費そのものに補助金は出ますか?
A. 2026年6月時点では、マンションの大規模修繕工事に直接交付される市の補助金はありません。代わりに、①長寿命化促進税制(固定資産税の減額)、②管理計画認定による融資金利引下げ、③④の無料専門家相談、⑤地域リフォーム支援、⑥共用部分リフォーム融資を組み合わせて負担を軽減するのが現実的です。
Q. 固定資産税の減額は、どのマンションでも受けられますか?
A. いいえ。築20年以上・総戸数10戸以上で、過去に1回以上の長寿命化工事を行い、かつ管理計画認定または市の助言・指導を通じて修繕積立金を適切に確保していることなどの要件があります。詳細は資産税課(0465-33-1371)にご確認ください。
Q. うちは管理会社に任せきりですが、相談だけでもできますか?
A. できます。神奈川県のアドバイザー派遣も、小田原市の管理相談も、まずは相談から始められます。役員が建築の素人でも問題ありません。
Q. 制度の内容は今後変わりますか?
A. 補助金・税制は年度ごとに見直されます。特に長寿命化促進税制は令和9年3月31日完了分までという期限があります。最新情報は必ず小田原市の公式サイトと各担当課でご確認ください。
Q. 工法によって、どのくらいコストが変わりますか?
A. 建物の形状・高さ・劣化状況によって幅がありますが、足場費は大規模修繕費の大きな割合を占めるため、ロープアクセスやハイブリッドの活用で総額を抑えられるケースは少なくありません。まずは建物を見せていただいたうえで、複数の工法で比較見積もりを出すのが確実です。
まとめ——「補助金がない」で終わらせない
小田原市のマンションには、工事費そのものへの補助金はありません。けれど、固定資産税を半分にする制度があり、融資の金利を下げる認定があり、専門家を無料で呼べる仕組みがあり、市内業者で工事すれば地場産品が当たる制度もあります。お金の出方が違うだけで、管理組合の負担を軽くする手立ては、確かに用意されています。
そして、制度を使い切るには段取りが命です。①長寿命化促進税制は申告期限が工事完了から3か月以内、⑤地域リフォーム支援にも申請期間があります。動くなら、総会・理事会のスケジュールから逆算して、いまから準備を始めるのが分かれ目です。理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。
「うちの場合はどの制度が使えるのか」「足場とロープ、どちらが安く済むのか」——その整理だけでも、私たちでお力になれることがあります。総会の前段階の交通整理だけでも構いません。ご相談だけでも、遠慮なくお声がけください(お問合せフォームはこちら)。
次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 小田原市「長寿命化に資する大規模の修繕等を行ったマンションに係る固定資産税の減額制度」
- 小田原市「マンションの管理計画認定制度について」
- 小田原市「住情報(分譲マンション管理相談・各種支援制度)」
- 小田原市「木造住宅耐震診断費・耐震改修費補助金」
- 小田原市「令和7年度地域経済循環型住宅リフォーム支援事業について」
- 神奈川県「マンションアドバイザー派遣事業」
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」
- 国土交通省「マンション管理について(標準管理規約・各種ガイドライン)」
※本記事は2026年6月時点の公開情報をもとに作成しています。補助金・税制は年度途中で変更・終了する場合があり、予算枠到達により受付が締め切られることもあります。申請の際は必ず各担当課の最新情報をご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・法務判断については専門家にご相談ください。
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藤沢市で使える賃貸オーナー向け補助金活用ガイド|湘南の築古マンション・ビルを「稼ぐ資産」に変える2026年度の制度設計
藤沢市で賃貸マンションやビルをお持ちのオーナーさまへ。この記事は「住民の安心のために耐震を」という話ではありません。入居率・賃料・手残りキャッシュフロー、そして出口(売却)価格をどう守り、伸ばすかという、経営の話です。
私は20年近く、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕の現場に立ち続けてきました。藤沢・湘南エリアの物件も数多く見てきましたが、ここには一つ、はっきりした特徴があります。それは「築年数なりに静かに進む劣化」と「海に近い塩害・湿気」が、賃料の下落圧力として二重に効いてくるということです。
そして藤沢市には、その劣化対策のコストを公的資金で圧縮できる制度が、思いのほか手厚く用意されています。ところが私の経験上、これをきちんと使い切っているオーナーさまは、まだ少数派です。今日はその制度を、「いくら戻ってくるのか」「税務でどう効くのか」「使えないのは誰か」まで、正直にお話しします。
※本記事の金額・要件は2026年(令和8年)6月時点で各自治体・省庁が公表している一次情報に基づきます。補助金は予算枠に達した時点で受付終了となる制度が多く、年度途中で条件が変わることもあります。実際の申請前には必ず最新の交付要綱と窓口でご確認ください。
まず結論:藤沢市オーナーが押さえるべき「3つの財布」
藤沢市の物件で使える補助は、大きく3つの出どころに分かれます。読者のみなさまがご自身のケースを判定しやすいよう、先に全体像を示します。
| 出どころ | 主な制度 | 藤沢市オーナーへの効き方 |
|---|---|---|
| 藤沢市(市の財布) | 分譲マンション耐震診断・改修、緊急輸送道路沿道建築物、木造(店舗併用含む)耐震 | 築古・旧耐震物件の安全性と資産価値を底上げ |
| 国(省庁の財布) | 賃貸集合給湯省エネ2026、先進的窓リノベ2026、給湯省エネ2026 | 入居者満足度=賃料維持・空室短縮に直結 |
| 税制(取られる額を減らす財布) | 耐震改修の固定資産税減額、修繕費の損金算入 | 受け取る補助とは別に、毎年のキャッシュフローを改善 |
ポイントは、「現金でもらう補助」と「税金が減る効果」と「損金で利益を圧縮する効果」は別々に積み上げられるということです。一つの工事で複数の財布に手を伸ばせるケースが、藤沢市には実際にあります。ここからが本題です。
1. 藤沢市分譲マンション耐震診断補助金|「まず現状を知る」費用を市が半分持つ
築古の分譲マンションを区分所有で複数戸お持ちのオーナーさま、あるいは管理組合の役員も兼ねているオーナーさまにとって、最初の入口がこの制度です。
藤沢市は、分譲マンションの管理組合に対して、耐震診断にかかる費用の一部を補助しています(出典:藤沢市「分譲マンション耐震診断補助金交付制度について」)。
補助額(2026年4月時点)
- 予備診断:耐震診断費用の2分の1、かつ1棟あたり15万円が上限
- 本診断:次の①〜③のうち最も少ない額
- ① 耐震診断費用の2分の1
- ② 1棟あたり150万円
- ③ 延べ床面積に応じた額の2分の1(1,000㎡以内は4,580円/㎡、1,000〜2,000㎡は2,350円/㎡、2,000㎡超は1,570円/㎡が単価)
対象になる建物の条件
昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認を得て着工した、いわゆる旧耐震基準の建物が対象です。さらに、鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄骨造で地上2階以上、住宅部分が床面積の3分の2以上、原則6戸以上かつ1住戸40㎡以上、といった要件があります。
ここでオーナーさまに関わる重要な点が一つ。「区分所有者で自己または1親等の親族が住んでいる者が2分の1以上」という居住割合の条件です。つまり投資用に貸し出している住戸が多すぎると対象外になりやすい。ただし令和6年度からこの居住割合の条件は緩和されており、以前より使いやすくなっています。ご自身のマンションが該当するかは、事前相談で確認する価値があります。
旧耐震のマンションは、耐震性が「未知数」のまま市場に出ると、買い手から大きく値引きを迫られます。診断で「安全」と分かれば出口価格を守れますし、「要改修」と分かっても、次の改修補助につながります。診断費の半分を市が持ってくれるなら、まず現状を数字で押さえておく。私はそう考えます。
2. 藤沢市分譲マンション耐震改修工事等補助金|湘南ならではの「津波避難ビル割増」に注目
診断で耐震性が足りないと判明したら、次は改修です。藤沢市は設計と工事の両方に補助を用意しています(出典:藤沢市「分譲マンション耐震改修工事等補助金交付制度について」)。
耐震改修設計への補助
- 通常:設計費の2分の1、かつ1住戸につき5万円のいずれか少ない額
- 津波浸水想定区域内の津波避難ビルの場合:設計費の3分の2、かつ1住戸につき10万円
耐震改修工事への補助
通常の場合、次の①〜③のうち最も少ない額です。
- ① 工事費の2分の1
- ② 1住戸につき30万円
- ③ 延べ面積に応じた上限(5,000㎡未満は1,000万円、5,000〜10,000㎡は1,500万円、10,000㎡以上は2,000万円)
そして、津波浸水想定区域内の津波避難ビルである分譲マンションは、この上限が大きく引き上げられます。工事費の2分の1、1住戸につき60万円、延べ面積上限は最大5,000万円です。
これは湘南エリアならではの制度設計です。海沿いの物件を持つオーナーさまにとって、津波避難ビル指定は「災害リスク」というマイナス材料に見えがちですが、補助の文脈では上限額が倍増する強力なプラス材料に変わります。ご自身の物件が津波浸水想定区域・津波避難ビルに該当するかは、必ず確認しておきたいポイントです。
ここで現場の人間として一言。耐震改修は外壁・防水・塗装といった大規模修繕と工程が重なることが多い制度です。私はいつも、耐震とその他の修繕を別々に発注せず、ワンセットで計画することをお勧めしています。足場を二度架けるのは、まるごとお金をドブに捨てるようなものだからです。
3. 緊急輸送道路沿道建築物の耐震診断補助|ビル・店舗オーナーに直接効く制度
ここまでは分譲マンションの話でしたが、一棟ビルや店舗・事務所をお持ちのオーナーさまに直接効くのがこの制度です。藤沢市は、地震で倒壊すると緊急輸送道路をふさぐおそれのある建物の所有者に対し、耐震診断費用を補助します(出典:藤沢市「緊急輸送道路沿道建築物耐震診断補助制度について」)。
補助額
次の①〜③のうち最も少ない額です。
- ① 耐震診断費用の3分の2
- ② 延べ面積に応じた事業費限度額の3分の2(1,000㎡以内4,580円/㎡、1,000〜2,000㎡2,350円/㎡、2,000㎡超1,570円/㎡)
- ③ 200万円
対象
昭和56年5月31日以前に着工し、市が指定する第1次緊急輸送道路(耐震診断義務対象路線を除く)の沿道にある、一定の高さ以上の建物が対象です。事前登録が必要で、所有者に市税の滞納がないことも条件になります。
この制度の何がオーナーにとって大きいかというと、補助率が「3分の2」である点です。分譲マンション診断の2分の1より手厚い。築古ビルをお持ちで、その建物が幹線道路沿いに立っているなら、まず一度、自分の物件が指定路線の沿道に当たるかを調べてみる価値があります。
4. 木造の店舗併用・アパートをお持ちなら|木造住宅耐震補助も「店舗兼用」が対象
「うちは木造アパートや店舗併用だから関係ない」と思われたオーナーさまにも、入口があります。藤沢市の木造住宅耐震補助は、専用住宅だけでなく店舗・事務所兼用住宅も対象としています(出典:藤沢市「木造住宅耐震改修工事補助金交付について」)。
- 耐震診断:費用の2分の1、上限6万円
- 耐震改修工事等:費用の2分の1、上限90万円
令和7年度からは対象建築物が「平成12年(2000年)5月31日以前」に建てられた木造へと拡充されました。いわゆる新耐震(昭和56年6月以降)の木造でも、2000年基準より前のものは対象になり得るということです。
ただし注意点があります。この木造補助は「住宅の所有者が藤沢市内に居住していること」が要件です。市外にお住まいで投資用に保有しているケースでは対象外になる可能性が高い。ここは正直に申し上げておきます。ご自身がどちらに当たるかは、事前相談で確認してください。
なお藤沢市には、管理組合向けに専門家を無料で派遣する「マンション耐震アドバイザー派遣事業」もあります。合意形成や技術的な整理を進めたいとき、まずここから入るのも一手です。
5. 国の制度:入居率と賃料を守る「省エネ三本柱」
ここからは、藤沢市に限らず全国の賃貸オーナーが使える国の制度です。私はこれらを「安全のための耐震」とは違う、「稼ぐための省エネ」と位置づけています。なぜなら、設備の新しさと光熱費の安さは、入居者が部屋を選ぶ決め手に直結するからです。
入居率1%の改善が、年間でどれだけのキャッシュフロー差を生むか。10戸の物件で家賃8万円なら、1%でも年間およそ10万円弱の差です。空室期間を1か月縮められれば、それだけで設備投資の何割かを取り返せます。省エネ補助は、その「入居者に選ばれる理由」を公的資金で作る制度なのです。
(1) 賃貸集合給湯省エネ2026事業|賃貸オーナー専用の給湯器補助
これはまさに賃貸集合住宅のオーナー等が対象者として明記された制度です。設置スペースの都合でヒートポンプ給湯機(エコキュート)の導入が難しい既存の賃貸集合住宅向けに、小型の省エネ給湯器(エコジョーズ・エコフィール)への交換を支援します(出典:資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業」)。
- 追い焚きなし:5万円/台
- 追い焚きあり:7万円/台
- 一定の排水工事を伴う場合:最大8万円/台・10万円/台まで加算
リースの利用も対象に含まれます。古い給湯器は故障リスクと光熱費の両面で入居者の不満の種になりがちです。退去のタイミングや故障対応のついでに、補助を使って省エネ機へ更新する。これは手堅い一手です。
(2) 先進的窓リノベ2026事業|結露・寒さ・暑さ対策で部屋の競争力を上げる
窓の断熱改修を支援する国の制度です。戸建てだけでなく低層集合住宅(3階建以下)・中高層集合住宅(4階建以上)も対象で、内窓設置や窓交換に対し、1戸あたり5万円から最大100万円が補助されます(出典:環境省「先進的窓リノベ2026事業の概要」)。
ただし2026年度は、1戸あたりの上限が前年度の最大200万円から100万円へと半減しています。早めに動くほど、より大きな予算枠の中で申請できるという意味でも、検討は前倒しが有利です。
湘南エリアの物件は、海風による結露や夏の西日が入居者の不満につながりやすい。内窓1枚で結露とカビが軽減され、退去時の原状回復コストまで下がるケースを、私は現場で何度も見てきました。
(3) 給湯省エネ2026事業|エコキュート等が入る物件はこちら
設置スペースに余裕があり、ヒートポンプ給湯機(エコキュート)やハイブリッド給湯機を導入できる物件は、こちらの本体「給湯省エネ2026事業」が使えます。賃貸集合住宅向けの (1) と、対象機器・金額が異なりますので、物件の条件に合わせて使い分けてください。
6. 税務:補助金は「もらって終わり」ではない。3つの注意点
補助金を取るところまでで満足してしまうオーナーさまが多いのですが、手残りを最大化できるかは税務の処理で決まります。私は税理士ではありませんので一般的な情報としてお伝えしますが、必ず顧問税理士にご確認ください。
注意点1:補助金は受給時に「雑収入」として課税される
国・自治体から受け取った補助金は、原則としてその年の雑収入(益金)に計上され、課税対象になります。「100万円もらえた」と喜んでいても、そのまま手元に100万円残るわけではありません。圧縮記帳など税負担を平準化する手当てがある場合もあるため、受給が決まった段階で税理士に相談するのが安全です。
注意点2:「修繕費」か「資本的支出」かで結果が大きく変わる
同じ工事でも、原状回復に近いものは修繕費として一括で損金算入でき、その年の利益を大きく圧縮できます。一方、建物の価値を高めたり耐用年数を延ばしたりする工事は資本的支出として資産計上され、減価償却で複数年に分けて費用化します。
耐震改修や省エネ改修は資本的支出に区分されやすい工事です。修繕費か資本的支出か、税務処理ひとつでキャッシュフローのタイミングが大きく変わります。工事の組み立て段階から、この区分を意識して計画することをお勧めします。
注意点3:耐震改修には固定資産税の減額措置もある
一定の要件を満たす耐震改修を行った住宅には、翌年度の固定資産税(住宅床面積120㎡相当分まで)が2分の1減額される措置があります(出典:国土交通省「住宅の耐震改修に関する特例措置」)。
ただしこの制度は居住用住宅を主眼とした要件(工事費50万円超、居住部分が床面積の2分の1以上など)があり、適用期限も設けられています。賃貸・事業用としての扱いや適用可否は物件ごとに判断が分かれます。「使えるかもしれない」という前提で、必ず市の資産税課と税理士に確認してください。
このように、藤沢市の現金補助・国の省エネ補助・固定資産税の減額・損金算入は、重ねて積み上げられるのが基本です。一つの大規模修繕を「ただの出費」で終わらせるか、「複数の財布から取り戻す投資」に変えるかは、計画の最初の設計で決まります。
7. 数字で見る:築古RCマンション1棟のモデル試算
抽象論だけでは財布の感覚が湧きにくいので、あくまで一般的な前提を置いたモデルケースで考えてみます。実際の金額は物件ごとに大きく変わりますので、目安としてご覧ください。
ある藤沢市内の旧耐震RCマンション、20戸・延べ床2,500㎡を想定します。耐震改修工事に総額4,000万円かかったとしましょう。
- 市の改修工事補助:1住戸30万円×20戸=600万円が一つの目安(工事費2分の1・延べ面積上限1,500万円の枠内)。津波避難ビル指定なら1住戸60万円で1,200万円まで届く可能性があります。
- 給湯器の更新:20戸を追い焚きあり省エネ機に交換し7万円/台なら、賃貸集合給湯省エネ2026事業で140万円。
- 窓の断熱改修:先進的窓リノベ2026を併用すれば、戸あたり数万円〜数十万円の上乗せ。
- 固定資産税:要件を満たせば、翌年度の該当分が2分の1に。
- 損金・減価償却:修繕費に区分できた部分はその年の利益を圧縮。
現金補助だけで数百万円規模、そこに税効果が重なります。何もしなければ4,000万円がまるごと自己負担ですが、制度を組み合わせれば実質負担は大きく圧縮できる——これがオーナー視点で補助金を見る、ということです。繰り返しますが、上記はあくまで枠組みを示すための仮の数字で、実際の補助額・税効果は要綱と物件条件、税務判断によって決まります。
8. よくあるご質問(藤沢市オーナー編)
Q. 市外に住んでいる投資家ですが、藤沢市の補助は使えますか?
分譲マンションの耐震診断・改修補助は管理組合が対象で、居住者の市内・市外は直接の要件ではありません(居住割合の要件は別途あります)。一方、木造住宅耐震補助は「所有者が市内に居住」が要件です。制度によって扱いが異なるため、物件ごとの確認が必要です。
Q. すでに工事を発注してしまいました。後から申請できますか?
藤沢市の耐震系補助は、いずれも事前相談・事前登録が必須です。着工後の申請は対象外になるのが原則です。次の修繕からは、必ず計画段階で窓口にご相談ください。
Q. 国の省エネ補助と市の耐震補助は同時に使えますか?
対象となる工事・費用が重複していなければ、別制度の併用は基本的に可能です。ただし同一費用への二重補助は認められません。工種ごとにどの財布から取るかを整理して申請するのが鍵です。
9. 医療・介護施設のオーナーさまへ|防災・BCPと「止められない建物」の修繕
ここで、クリニックやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、介護施設の建物をお持ちのオーナーさま・理事長さまにも一言お伝えします。医療・介護の建物は、賃貸住宅以上に「災害時に止められない」という性格を持っています。
藤沢市の耐震補助は、住宅部分の割合などの要件はありますが、店舗・事務所兼用や非住宅部分を含む建物にも入口があります。緊急輸送道路沿道の建物であれば、診断費の3分の2補助という手厚い枠も使えます。施設の耐震性は、入居者・患者さまの安全であると同時に、事業継続計画(BCP=災害時にも事業を止めないための計画)の根幹でもあります。
私が現場で強く感じるのは、医療・介護施設の修繕は「営業を止められない」という制約が極端に大きいということです。足場を全面に架けて何か月も出入口を塞げば、利用者にも職員にも大きな負担がかかります。だからこそ、足場を架けないロープアクセス工法や、必要な部位だけ足場を使うハイブリッド工法が効いてきます。施設を動かしたまま、外壁・防水・塗装を進められるのです。
省エネ改修も、医療・介護施設では空調・給湯の光熱費が経営を圧迫しやすいだけに、効果が大きい分野です。窓の断熱や給湯の更新は、利用者の快適性と光熱費削減の両方に効きます。施設の安全・快適性は、稼働率や評判に直結する経営資源です。「建物を止めずに、安全と省エネを同時に進める」——ここは私どもが最もお役に立てる領域だと考えています。
10. 藤沢市オーナーが取るべき動き:診断 → 計画 → 工事の順で
ここまでの制度を、実際の動き方に落とし込むとこうなります。
第一に、現状把握です。旧耐震の分譲マンションなら耐震診断補助、幹線道路沿いのビルなら緊急輸送道路沿道の診断補助。まず自分の物件がどの制度の入口に立っているかを、事前相談で確認します。藤沢市の制度はいずれも「事前相談・事前登録が必須」で、いきなり工事を始めると補助対象外になります。ここは要注意です。
第二に、計画の一本化です。耐震・防水・外壁塗装・給湯・窓——これらを別々に発注すると、足場代も諸経費も二重三重にかかります。私はいつも、複数の補助制度と複数の工種を一枚の長期計画にまとめ、足場を架けるなら一度で済ませることをお勧めしています。
第三に、工法の選択です。ここが私ども明誠の出番です。藤沢・湘南エリアには、海に近く足場が架けにくい立地、駐車場や通路が狭く仮設足場で収益スペースを潰してしまう物件が少なくありません。
私どもは、通常の足場仮設による工事に加え、足場を架けないロープアクセス工法、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、その建物にとって最もコスト効率の良い方法をご提案できます。ロープアクセスなら足場費そのものを圧縮でき、工期も短縮できる。何より、足場で物件全体を覆わないので入居中のテナントやお店への影響を最小限にできる——これは、空室や賃料引き下げを何より避けたいオーナーさまにとって、見逃せないメリットです。詳しくはロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介もご覧ください。
補助金で工事費を圧縮し、工法で工事費をさらに圧縮し、税務で手残りを守る。この三段構えができたとき、大規模修繕は「重い出費」から「物件価値と利回りを底上げする投資」に変わります。出口を見据えた修繕投資は、目先の利回り改善以上に、収益還元で評価される物件価値そのものを引き上げるのです。
まとめ:藤沢市の制度は「動いたオーナー」にだけ開く
藤沢市には、分譲マンションの耐震診断・改修、緊急輸送道路沿道建築物、木造店舗併用の耐震、そしてアドバイザー無料派遣まで、オーナーが使える制度が揃っています。さらに国の省エネ三本柱と税制を重ねれば、一回の大規模修繕で取り戻せる金額は決して小さくありません。
ただし、補助金はどれも予算枠に達すれば締め切られ、事前相談を経なければ対象外になります。築年数なりの劣化は、賃料の下落圧力として静かに、しかし確実に効いてきます。動くなら、制度が開いている今のうちです。
お持ちの物件で、まだこうした補助の検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度お問合せください。1棟の現地調査と、補助金を織り込んだ利回り改善シミュレーション・キャッシュフロー試算だけでも、喜んでご相談を承ります。これは私が湘南の現場で見てきた、嘘偽りのない実感です。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
ご相談はこちらから:お問合せフォーム
出典・参考資料
- 藤沢市「分譲マンション耐震診断補助金交付制度について」
- 藤沢市「分譲マンション耐震改修工事等補助金交付制度について」
- 藤沢市「緊急輸送道路沿道建築物耐震診断補助金交付制度について」
- 藤沢市「木造住宅耐震改修工事補助金交付について」
- 藤沢市「補助対象事業一覧」
- 資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業」
- 環境省「先進的窓リノベ2026事業の概要」
- 国土交通省「住宅の耐震改修に関する特例措置」
(本記事の制度内容・金額は2026年6月時点の各機関公表情報に基づきます。最新の交付要綱・予算状況は各窓口でご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・法務に関する助言ではありません。)
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
鎌倉市の分譲マンション管理組合が使える補助金・税制活用ガイド|大規模修繕の負担を軽くする2026年度(令和8年度)の制度設計
「築30年を超えて、そろそろ2回目の大規模修繕。でも、足場が架けにくい場所が多くて見積もりが読めない」——大船・深沢・腰越、そして由比ガ浜や材木座といった鎌倉市内のマンションにお住まいの理事長さまから、こうしたご相談を続けていただいています。鎌倉は、海と山がすぐ近くにある、全国でも独特の地形を持つ街です。相模湾から吹き上げる潮風が外壁や鉄部を早く傷ませる一方、谷戸(やつ)と呼ばれる谷あいや斜面地に建つマンションも多く、隣地との境界が狭くて足場を組みにくい——そんな現場が、内陸の街よりずっと多いのです。
私は大規模修繕の現場で20年近く、足場の上とロープの先から建物を見続けてきました。そのなかで一番もったいないと感じるのは、「使える制度を知らないまま工事を終えてしまった管理組合」に出会うときです。固定資産税の減額、耐震診断の補助、無料の専門家派遣、低利の公的融資——鎌倉市には、管理組合が活用できる制度がきちんとそろっています。知っているか知らないかで、組合の負担は数十万円から、規模によってはそれ以上変わってきます。
この記事では、鎌倉市の分譲マンション管理組合が2026年度(令和8年度)に使える制度を、申請の順番に沿って、現場目線で整理しました。専門用語にはそのつど補足を入れますので、建築にお詳しくない理事長さまも、最後までお付き合いください。ここからが本題です。
鎌倉市のマンション管理組合が使える支援制度【2026年度・一覧】
まず全体像を押さえましょう。鎌倉市の分譲マンション管理組合が、大規模修繕や維持管理の場面で活用できる主な制度は、大きく「税」「耐震」「資金」「相談・認定」の4つに分けられます。
| 区分 | 制度名 | 概要 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| 税の優遇 | マンション長寿命化促進税制 | 一定要件を満たす長寿命化工事で、翌年度の固定資産税(家屋分)が3分の1減額 | 鎌倉市 資産税課 |
| 耐震の補助 | マンション耐震診断補助金 | 旧耐震マンションの耐震診断費用の2分の1(上限150万円)を補助 | 鎌倉市 建築指導課 |
| 耐震の支援 | 耐震改修アドバイザー派遣 | 勉強会・検討会へ建築士を無料で派遣(耐震診断補助の前提) | 鎌倉市 建築指導課 |
| 資金の調達 | マンション共用部分リフォーム融資 | 管理組合向けの低利・長期の公的融資(住宅金融支援機構) | 住宅金融支援機構/マンション管理センター |
| 相談・認定 | マンション管理計画認定制度 | 適正管理のお墨付き+融資金利の引下げ、税制の入口 | 鎌倉市 都市整備総務課/マンション管理センター |
ここで強調しておきたいのは、これらは「どれか一つを選ぶ」ものではなく、組み合わせて使う発想が大切だということです。私はいつも理事長さまに、「工事の中身を決める前に、まず使える制度の地図を広げてください」とお伝えしています。順番が逆になると、せっかくの優遇を取り逃すことがあるからです。なぜそうなるのかは、記事の後半でご説明します。
なお、各制度には年度ごとの受付期間や予算枠、細かな要件があります。本記事の数値は2026年6月時点で鎌倉市・国の公式情報を確認したものですが、申請前には必ず各窓口の最新情報をご確認ください。
【税】マンション長寿命化促進税制:固定資産税が3分の1に
最初にご紹介したいのが、令和5年度の税制改正で創設された「マンション長寿命化促進税制」です。これは、一定の要件を満たしたうえで長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションについて、翌年度の建物部分の固定資産税を減額する制度です(出典:鎌倉市 マンション長寿命化大規模修繕工事に伴う固定資産税の減額について)。
鎌倉市の場合、減額の割合は翌年度分の家屋に係る固定資産税の3分の1です。ここは市町村によって条例で定める割合が異なる部分で、鎌倉市は「3分の1」と定めています。報道や他市の解説で「2分の1」という数字を目にすることがありますが、鎌倉市にお住まいの管理組合が確認すべきは、あくまで鎌倉市の公式情報です。なお、都市計画税(建物・土地にかかるもう一つの市税)は、この減額の対象にはなりません。
対象となる工事の中身
この税制が想定している「長寿命化に資する大規模修繕工事」とは、屋根防水工事、床防水工事、外壁塗装等工事といった、建物の寿命を延ばす王道メニューの工事を指します。大規模修繕の基本そのものですから、多くの管理組合にとって、ふだんの修繕計画の延長線上にある話だとお考えください。鎌倉のような海沿いの立地では、塩害で傷んだ外壁塗装や鉄部塗装、屋上・バルコニーの防水は、まさに「長寿命化」の中心になる工事です。
工事の要件としては、まず長寿命化に資する大規模修繕工事を過去に1度以上実施していること、そして2回目以降の大規模修繕工事が、令和5年(2023年)4月1日から令和9年(2027年)3月31日までの間に完了していることが求められます。期間が区切られている制度ですので、これから2回目の修繕を計画する管理組合は、この適用期間を意識してスケジュールを組むことが大切です。
対象となるマンションの要件
この制度の対象になるには、鎌倉市が示す要件を「すべて」満たす必要があります。要点を理事長さま向けにかみ砕くと、次のとおりです。
- 「管理計画認定マンション」または「市から助言・指導を受けた管理組合のマンション」であること
- 新築された日から20年以上が経過していること
- 総戸数が10戸以上であること
- 併用住宅の場合は、2分の1以上が居住用部分であること
そして、上記1の「管理計画認定」または「助言・指導」については、修繕積立金に関する条件が加わります。管理計画認定マンションの場合は、令和3年(2021年)9月1日以降に修繕積立金の額を認定基準まで引き上げていること。助言・指導を受けたマンションの場合は、長期修繕計画について市の助言・指導を受けて作成・見直しを行い、一定の基準に適合していることが必要です。
ここが、この税制のいちばんのポイントです。固定資産税の減額を受けたいなら、その前提として「管理計画の認定」または「市の助言・指導にもとづく長期修繕計画の整備と修繕積立金の確保」が必要になる、ということです。だからこそ、工事に取りかかる前に、認定や相談の段取りから始めるのが正解になります。詳しくは記事後半の着手順でご説明します(認定・助言指導など制度の詳細は、鎌倉市 都市整備総務課 住宅担当、直通0467-61-3679へ)。
減額の範囲と申告のしかた
減額の対象になる床面積は、住宅1戸あたり100平方メートル相当分まで、という上限があります。一般的なファミリータイプの住戸であれば、多くがこの範囲に収まります。そして大切なのが申告期限です。工事完了から3か月以内に、鎌倉市 資産税課へ申告しなければなりません。減額は自動では適用されず、申告がなければ受けられません。
申告には、減額適用申告書のほか、「総戸数が確認できる書類(設計図等)」「建築士または住宅瑕疵担保責任保険法人が発行する大規模の修繕等証明書」「マンション管理士または建築士が発行する過去工事証明書」などが必要です。管理計画認定マンションの場合は認定通知書や修繕積立金引上証明書を、助言・指導を受けた場合は助言・指導内容実施等証明書を添えます。これらの証明書の様式は国土交通省のホームページにありますが、工事を担う施工会社や設計事務所が発行・準備に関わる書類も多いので、工事の契約前から「税制を使うつもりだ」と施工側に伝えておくことが、書類の取りこぼしを防ぐコツです。窓口は鎌倉市 資産税課(電話0467-61-3931)です。
なお、この長寿命化促進税制には、いくつか注意点があります。この制度による減額は、対象マンション1棟につき1回のみです。また、耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修にかかる固定資産税の減額制度とは同時に適用することはできません。複数の減額制度の対象になりそうな工事を計画している場合は、どれを使うのが得かを早めに比較しておきましょう。
【耐震】マンション耐震診断補助金:まず「現状を知る」費用を軽くする
次にご紹介するのが、鎌倉市の「マンション耐震診断補助金交付制度」です。これは、旧耐震基準のマンションが耐震診断を行う際の費用の一部を市が補助する制度です(出典:鎌倉市 マンション耐震診断補助金交付制度について)。
「耐震診断」とは、建物が大きな地震に対してどれくらい耐えられるかを、専門の資格者が調べる調査のことです。昭和56年(1981年)以前の旧耐震基準で建てられたマンションは、現在の耐震基準(新耐震)を満たしていない可能性があり、まずは現状を正確に知ることが、その後の判断のすべての出発点になります。
鎌倉市の補助は「アドバイザー派遣を受けたマンション」が対象
鎌倉市の耐震診断補助でまず押さえておきたいのが、対象の入口です。鎌倉市の制度は、「耐震改修アドバイザーの派遣を受けたマンションが耐震診断を実施する場合」に補助が受けられる、という設計になっています。つまり、いきなり診断の補助申請をするのではなく、まずアドバイザー派遣(後述)で勉強会・検討会を行い、そのうえで診断に進む、という流れが想定されています。
そのほかの対象要件は、次のとおりです。
- 住戸の過半に区分所有者が居住していること
- 住宅部分の延べ面積が全体の過半であること
- 建築図面があること
- 管理組合の集会において、耐震診断の実施に関する決議がなされていること
- 耐震診断結果について、耐震判定委員会により適正であるとの評価を受けていること
- 耐震診断を同一年度中に実施可能であること
補助額は「診断費用の2分の1・上限150万円」
鎌倉市の耐震診断補助の金額は、耐震診断に要する費用の2分の1、かつ上限150万円です。なお、延べ面積が1000平方メートル未満のマンションについては、1平方メートルあたり1,500円を限度とし、1,000円未満の端数を切り捨てた額が上限になります。
ここは、近隣の市と方式が異なる部分です。たとえば茅ヶ崎市のように「戸数×3万円」と「診断費用の2分の1」を比べて少ないほう、という設計の自治体もありますが、鎌倉市は「2分の1・上限150万円」というシンプルな上限方式です。診断費用が300万円なら、その2分の1の150万円が上限いっぱいの補助になり、診断費用が200万円なら、その2分の1の100万円が補助額になる、というイメージです。耐震診断は数百万円規模になることもあり、「まず調べる」の一歩を踏み出しにくい組合は少なくありません。その最初のハードルを下げてくれるのが、この補助制度です。
申請とスケジュールの注意点
この補助で気をつけたいのが、着手前の申請です。補助金の交付を受けて耐震診断を行おうとする場合、診断に着手する前に補助金交付申請の手続きが必要です。申請前に診断を始めてしまうと補助が受けられなくなりますので、ここは順番が肝心です。あわせて、診断の実施について集会で決議していること、診断結果が耐震判定委員会の評価を受けること、年度内に診断を完了できること、といった要件も満たす必要があります。窓口は鎌倉市 都市調整部 建築指導課(電話0467-61-3586)です。
【耐震】耐震改修アドバイザー派遣事業:無料で「検討の入口」をつくる
耐震診断補助の前段として、ぜひ活用していただきたいのが「耐震改修アドバイザー派遣事業」です。これは、役員会・理事会・総会などで行う耐震診断や耐震改修の勉強会・検討会に、市が依頼した建築士をアドバイザーとして無料で派遣してくれる制度です(出典:鎌倉市 鎌倉市耐震改修アドバイザーの派遣事業)。
対象は、昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた共同住宅などです。派遣の回数は1施設につき3回まで、1回あたりの派遣時間は2時間以内で、午前9時から午後9時の間、土日でも可能です。アドバイザーの費用は市が負担します(会場は申込み側で用意)。前述のとおり、鎌倉市の耐震診断補助は「アドバイザー派遣を受けたマンション」が対象という建付けですので、旧耐震マンションの耐震対策は、この無料のアドバイザー派遣から始めるのが、制度的にも実務的にも自然な第一歩になります。
なお、耐震診断の結果を受けて耐震改修工事に進む場合、鎌倉市には「耐震改修工事費等補助金交付制度」もありますが、こちらは木造2階建て以下の一戸建て住宅などが対象で、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の分譲マンションは対象外です(出典:鎌倉市 耐震改修工事等費用の補助制度について)。マンションの場合は、診断後の改修について、神奈川県や国の支援メニュー、また管理計画認定にもとづく融資の活用などを、建築指導課や専門家と相談しながら検討することになります。「マンションも工事費補助が出る」と早合点しないよう、ここは正確に押さえておきましょう。
【資金】住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資
3つ目は、工事費そのものの資金調達です。修繕積立金だけでは大規模修繕の費用をまかないきれない——これは、私が現場で本当によく耳にする悩みです。そんなときの選択肢が、独立行政法人・住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)の「マンション共用部分リフォーム融資」です。これは管理組合が借り入れの主体となれる、公的な低利・長期の融資制度です(出典:住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資)。
民間のマンション修繕ローンと比べたこの融資の特長は、3つあります。第一に、管理組合名義で借りられること。個々の区分所有者が個人ローンを組む必要がありません。第二に、(公財)マンション管理センターの債務保証を利用することで、担保(土地・建物への抵当権設定など)を入れずに借りられること。第三に、金利が比較的低く、固定で見通しが立てやすいことです。金利は毎月見直されますが、お申込み時の金利が全期間にわたって固定で適用される仕組みになっています(出典:公益財団法人マンション管理センター 共用部分リフォーム融資と債務保証)。
そして見逃せないのが、後ほどご説明する「管理計画認定」を受けていると、この融資の金利が引き下げられるという連動です。適正に管理されているマンションほど、資金調達でも有利になる。制度どうしがつながっているわけです。金利は市場の動きで変わりますので、検討の際は必ず住宅金融支援機構の最新の金利情報をご確認ください。
【認定・相談】マンション管理計画認定制度をどう使うか
ここまで読まれて、「管理計画認定」という言葉が何度も出てきたことにお気づきだと思います。鎌倉市の「マンション管理計画認定制度」は、マンションの管理の適正化の推進に関する法律にもとづき、国の定める認定基準を満たし、適切な管理が行われているマンションの管理計画を、市が認定する制度です(出典:鎌倉市 マンション管理計画認定制度)。
認定を受けるメリット
管理計画認定を受けると、一般に次のようなメリットがあります。
- 住宅金融支援機構の【フラット35】やマンション共用部分リフォーム融資の金利が引き下げられる
- 住宅金融支援機構の【マンションすまい・る債】の利率が上乗せされる
- 適正に管理されたマンションとして、不動産市場で評価されやすくなる
- 住人の管理意識が保たれ、管理水準を維持・向上しやすくなる
加えて、これまで見てきたとおり、認定(とそれに伴う修繕積立金の引上げ)は、固定資産税の長寿命化促進税制を使うための「入口」にもなります。認定そのものに費用や手間はかかりますが、税の減額・融資の金利引下げ・資産価値の評価という複数のリターンにつながる、いわば「土台」の制度だと考えてください。
認定申請の流れ
鎌倉市の認定で、ひとつ実務的に重要な注意点があります。それは、申請方法や必要書類については(公財)マンション管理センターへ問い合わせる必要があり、市へ直接申請することはできないという点です。一般的な流れとしては、まずマンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」で、国の認定基準に適合しているかの事前確認を受け、適合していれば事前確認適合証が発行されます。その適合証を受けたうえで市へ認定の本申請を行い、市の確認を経て認定通知書が交付される、という段取りです。
実務的には、管理計画の中身——とくに長期修繕計画の内容や修繕積立金の水準——を、認定基準に合わせて整える作業が中心になります。ここは管理会社やマンション管理士、そして工事の見通しを示せる施工会社と連携しながら進めるのが現実的です。鎌倉市の制度の詳細は、都市整備総務課 住宅担当(直通0467-61-3679)にご確認ください。
どの制度を、どの順番で使うか【着手の5ステップ】
ここまでの内容を、実際の動きに落とし込みます。私が理事長さまにいつもお伝えしている、無理のない進め方が次の5ステップです。
ステップ1:現状把握と相談(今すぐ)。 まずは長期修繕計画と修繕積立金の現状を確認します。旧耐震マンションなら、建築指導課に耐震改修アドバイザー派遣を申し込み、無料の勉強会から始めましょう。あわせて、管理計画認定や長期修繕計画の助言・指導について、都市整備総務課に相談を。ここはすべて無料でできる範囲です。
ステップ2:管理計画の整備と認定(工事の前年〜当年)。 固定資産税の減額を見据えるなら、認定(または市の助言・指導にもとづく長期修繕計画の見直しと、必要な修繕積立金の引上げ)を、工事に着手する前に整えておきます。順番を逆にすると、税制の要件を満たせなくなる恐れがあります。
ステップ3:資金計画の確定(工事の半年前まで)。 積立金で足りない分は、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資を検討します。認定を受けていれば金利引下げの対象になります。借入額・返済期間・月々の負担を、戸あたりに換算して総会で共有しましょう。
ステップ4:工事の発注と「税制を使う」宣言(契約時)。 施工会社との契約前に、「長寿命化促進税制を使うので、必要な証明書を出してほしい」と明確に伝えます。証明書の準備は施工側の協力が不可欠です。工事内容も、屋根・床の防水や外壁塗装など、長寿命化に資するメニューが軸になっているかを確認します。
ステップ5:工事完了と申告(完了後3か月以内)。 工事が終わったら、3か月以内に資産税課へ固定資産税減額の申告を行います。耐震診断補助を使った場合は、年度内に診断・支払い・報告まで終える段取りも忘れずに。
この順番を守るだけで、「制度はあったのに使えなかった」という取りこぼしは、ほとんど防げます。
工事の工法をどう選ぶか:足場・ロープアクセス・ハイブリッド
制度の話に続けて、工事そのものの「やり方」についても、現場の立場から少しだけお話しさせてください。大規模修繕の費用は、工事の中身だけでなく、どうやって建物の外側に手が届くようにするか(仮設のしかた)で、大きく変わるからです。とりわけ鎌倉は、谷戸や斜面地、海沿いといった、足場の条件が物件ごとに大きく違う街です。私たちは、建物に合わせて3つの工法を提案しています。
ひとつめは、従来からの足場(仮設足場)工法です。建物全体を足場で囲い、職人が安定した足場の上で作業します。複雑な形状の建物や、広い面を一度に塗り替える工事、低中層のマンションに向いています。一方で、足場の設置・撤去に費用と工期がかかり、足場が建つあいだは窓を開けにくい、防犯面が気になる、といった居住者への影響が生じます。鎌倉では、隣地との境界が狭い物件や斜面地の物件で、そもそも足場を全面に架けにくい、というケースも少なくありません。
ふたつめが、ロープアクセス工法です。これは、屋上などから下ろした産業用ロープに作業者がぶら下がり、足場を架けずに外壁の補修や塗装、シーリング(目地の打ち替え)などを行う「無足場工法」です。足場の設置費用がかからない分コストを抑えやすく、工期も短く、足場で建物を囲わないため居住者の生活への影響を最小限にできます。鎌倉のように、谷戸の狭い敷地や斜面に建ち、足場が架けにくい物件、あるいは海沿いで塩害により鉄部や外壁が部分的に傷んでいる物件では、必要なところにピンポイントで素早く手を入れられるロープアクセスの利点が、とくに生きます。ただし、塗り替える面が非常に広い全面改修では、足場のほうが効率的なこともあります。
みっつめが、両者を組み合わせるハイブリッド工法です。たとえば、面積の大きい正面や複雑な低層部は足場で、足場の架けにくい高層部や斜面側・海側の妻面はロープアクセスで、というように部位ごとに使い分けます。これにより、足場の総量を減らして費用と工期を抑えつつ、品質も確保する——大規模・複雑な物件で、総合的なコスト最適化が必要なケースに向いています。
なお、鎌倉は歴史的なまちなみを守るため、地区によっては建物の色やデザインに関する景観上の配慮が求められることがあります。大規模修繕で外壁色を選ぶ際は、こうした地域のルールを踏まえる必要がある場面もありますので、計画の早い段階で確認しておくと安心です。大切なのは、「最初からこの工法ありき」で決めないこと。私たちは3つの工法すべてを提案できる立場だからこそ、建物の形・立地・予算・居住者の事情を見たうえで、その物件にとっていちばん合理的な組み合わせをご提案できます。工法の選び方そのものが、修繕積立金を守る一つの手段になるのです。ロープアクセス工法の詳しい内容はロープアクセス工事のご案内を、大規模修繕全般の進め方は大規模修繕のサポートをご覧ください。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 鎌倉市の固定資産税の減額は、結局いくら安くなりますか?
減額されるのは、住宅1戸あたり100平方メートル相当分までの「家屋にかかる翌年度分の固定資産税」の3分の1です。実際の金額は、各住戸の家屋の評価額によって変わります。ご自宅の固定資産税額(家屋分)のおよそ3分の1が、1年度分軽くなるとイメージしてください。都市計画税は対象外です。正確な見込みは、工事内容が固まった段階で鎌倉市 資産税課にご確認ください。
Q2. 築20年ですが、まだ一度も大規模修繕をしていません。税制は使えますか?
長寿命化促進税制は「長寿命化に資する大規模修繕工事を過去に1度以上実施していること」が要件のひとつで、2回目以降の工事が対象になるのが基本です。1回目の大規模修繕では要件を満たしませんが、1回目をきちんと記録に残し、長期修繕計画を整えておくことが、2回目で税制を使うための準備になります。なお、対象となるのは令和5年4月1日から令和9年3月31日までに完了する工事ですので、2回目の時期が見えてきたら、適用期間を意識して計画を立てましょう。
Q3. まず何から始めればいいですか?
旧耐震(昭和56年以前)のマンションなら、まずは無料の「耐震改修アドバイザー派遣」を建築指導課に申し込み、勉強会で現状の共有から始めるのがおすすめです。耐震が気にならない築年数のマンションでも、長期修繕計画と修繕積立金の点検、そして管理計画認定の検討は、税制や融資の優遇につながる土台になります。いずれも、最初の相談はすべて無料の範囲でできます。
Q4. 谷戸で道が狭く、足場が架けにくい立地です。工事はできますか?
できます。むしろ、こうした立地こそロープアクセス工法が力を発揮する場面です。足場を全面に組まなくても、ロープで必要な箇所に作業者が下りて、外壁補修・塗装・シーリングなどを行えます。足場が架けにくい部分はロープ、広い面は足場、というハイブリッドでコストと品質を両立させる方法もあります。現地を見れば、その物件に合うやり方が必ず見つかります。点検だけでも早めに入れておくと、傷みが軽いうちに小さな費用で手を打てます。
おわりに——「知っているか」で、組合の未来は変わる
海と山に抱かれた鎌倉は、暮らしには豊かで、建物には少しだけ手間のかかる街です。潮風、斜面、狭い谷戸の道、そして守るべきまちなみ——だからこそ、この街のマンション管理組合には、使える制度を一つずつ味方につけてほしいと、現場を歩いてきた私は思います。固定資産税の3分の1減額、耐震診断費用の補助、無料の専門家派遣、低利の公的融資、そして管理計画の認定。一つひとつは小さく見えても、組み合わせて、正しい順番で使えば、組合の負担は確かに軽くなります。
そして、制度を使いこなす土台になるのは、「自分たちのマンションを、長く大切に住み継ぐ」という管理組合の意思です。長期修繕計画を整え、積立金を備え、適正な管理を続ける——その延長線上に、税制や融資の優遇が用意されています。難しく感じられるかもしれませんが、最初の一歩は「市の窓口に相談してみる」「アドバイザー派遣を申し込む」「現状を点検してもらう」だけで十分です。
私たちは、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つの工法から、その建物にいちばん合うやり方をご提案できる、数少ない会社です。制度の使い方から工法の選び方まで、押し売りはいたしませんので、まずは相談だけでもかまいません。鎌倉のマンションを、次の世代まで気持ちよく住み継いでいくお手伝いができれば、これほど嬉しいことはありません。ご相談はお問い合わせからお気軽にどうぞ。
参考・出典(2026年6月時点)
- 鎌倉市 マンション長寿命化大規模修繕工事に伴う固定資産税の減額について
- 鎌倉市 マンション耐震診断補助金交付制度について
- 鎌倉市 鎌倉市耐震改修アドバイザーの派遣事業
- 鎌倉市 耐震改修工事等費用の補助制度について
- 鎌倉市 マンション管理計画認定制度
- 国土交通省 マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)
- 住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資
- 公益財団法人マンション管理センター 共用部分リフォーム融資と債務保証
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
茅ヶ崎市の分譲マンション管理組合が使える補助金・税制活用ガイド|大規模修繕の負担を軽くする2026年度(令和8年度)の制度設計
「そろそろ2回目の大規模修繕だが、海風で外壁の傷みが思ったより早い」——茅ヶ崎・香川・松浪・浜見平といった茅ヶ崎市内のマンションにお住まいの理事長さまから、最近こうしたご相談を立て続けにいただいています。相模湾に面した茅ヶ崎は、暮らしの心地よさと引き換えに、塩分を含んだ潮風が建物に休みなく当たり続ける土地です。鉄部のサビ、塗膜の劣化、タイルの浮き——内陸のマンションより一歩早く、外壁や鉄部の傷みが顔を出します。築20年、30年を超えれば、外壁の塗り替えや屋上防水、給排水管の更新といったまとまった出費が、一度に押し寄せてきます。
私は大規模修繕の現場で20年近く、足場の上とロープの先から建物を見続けてきました。そのなかで一番悔しい思いをするのは、「使える制度を知らないまま工事を終えてしまった管理組合」に出会うときです。固定資産税の減額、耐震診断の補助、低利の公的融資、無料の専門家相談——茅ヶ崎市には、管理組合が活用できる制度がきちんとそろっています。知っているか知らないかで、組合の負担は数十万円から、規模によってはそれ以上変わってきます。
この記事では、茅ヶ崎市の分譲マンション管理組合が2026年度(令和8年度)に使える制度を、申請の順番に沿って、現場目線で整理しました。専門用語にはそのつど補足を入れますので、建築にお詳しくない理事長さまも、最後までお付き合いください。ここからが本題です。
茅ヶ崎市のマンション管理組合が使える支援制度【2026年度・一覧】
まず全体像を押さえましょう。茅ヶ崎市の分譲マンション管理組合が、大規模修繕や維持管理の場面で活用できる主な制度は、大きく「税」「耐震」「資金」「相談・認定」の4つに分けられます。
| 区分 | 制度名 | 概要 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| 税の優遇 | マンション長寿命化促進税制 | 一定要件を満たす長寿命化工事で、翌年度の固定資産税(家屋分)が3分の1減額 | 茅ヶ崎市 資産税課 |
| 耐震の補助 | 分譲マンション耐震診断事業補助金 | 旧耐震マンションの耐震診断費用の一部を補助 | 茅ヶ崎市 建築指導課 |
| 資金の調達 | マンション共用部分リフォーム融資 | 管理組合向けの低利・長期の公的融資(住宅金融支援機構) | 住宅金融支援機構/マンション管理センター |
| 相談・認定 | マンション管理計画認定制度/専門家相談 | 適正管理のお墨付き+融資金利の引下げ | 茅ヶ崎市 都市政策課/神奈川県 |
ここで強調しておきたいのは、これらは「どれか一つを選ぶ」ものではなく、組み合わせて使う発想が大切だということです。私はいつも理事長さまに、「工事の中身を決める前に、まず使える制度の地図を広げてください」とお伝えしています。順番が逆になると、せっかくの優遇を取り逃すことがあるからです。なぜそうなるのかは、記事の後半でご説明します。
なお、各制度には年度ごとの受付期間や予算枠、細かな要件があります。本記事の数値は2026年6月時点で茅ヶ崎市・国の公式情報を確認したものですが、申請前には必ず各窓口の最新情報をご確認ください。
【税】マンション長寿命化促進税制:固定資産税が3分の1に
最初にご紹介したいのが、令和5年度の税制改正で創設された「マンション長寿命化促進税制」です。これは、一定の要件を満たしたうえで長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションについて、翌年度の建物部分の固定資産税を減額する制度です(出典:茅ヶ崎市 長寿命化に資する大規模修繕工事が行われたマンションに対する固定資産税の減額について)。
茅ヶ崎市の場合、減額の割合は翌年度分の家屋に係る固定資産税の3分の1です。ここは市町村によって条例で定める割合が異なる部分で、茅ヶ崎市は「3分の1」と定めています。報道や他市の解説で「2分の1」という数字を目にすることがありますが、茅ヶ崎市にお住まいの管理組合が確認すべきは、あくまで茅ヶ崎市の公式情報です。なお、都市計画税(土地・建物にかかるもう一つの市税)は、この減額の対象にはなりません。
対象となる工事の中身
この税制が想定している「長寿命化に資する大規模修繕工事」とは、外壁や屋上防水、床防水といった、建物の寿命を延ばす王道メニューの工事を指します。大規模修繕の基本そのものですから、多くの管理組合にとって、ふだんの修繕計画の延長線上にある話だとお考えください。茅ヶ崎のような海沿いの立地では、塩害で傷んだ外壁塗装や鉄部塗装、屋上・バルコニーの防水は、まさに「長寿命化」の中心になる工事です。
対象となるマンションの要件
この制度の対象になるには、茅ヶ崎市が示す要件を「すべて」満たす必要があります。要点を理事長さま向けにかみ砕くと、次のとおりです。
- 居住用専有部分(専有床面積の2分の1以上が人の居住の用に供される部分)を有していること
- 新築された日から20年以上が経過していること
- 総戸数が10戸以上であること
- 過去に1回以上、大規模修繕工事を適切に行っていること
- 長寿命化のために必要な修繕積立金が確保されていること
5番目の「修繕積立金が確保されている」という要件は、具体的には次のどちらかに当てはまる必要があります。ひとつは、茅ヶ崎市の管理計画認定マンションのうち、認定を受ける際に認定基準に適合させるために修繕積立金の引上げを行った場合。もうひとつは、茅ヶ崎市から長期修繕計画に係る助言または指導を受けて、長期修繕計画を作成・見直しし、一定の基準に適合することとなった場合です。
ここが、この税制のいちばんのポイントです。固定資産税の減額を受けたいなら、その前提として「管理計画の認定」または「市の助言・指導にもとづく長期修繕計画の整備」が必要になる、ということです。だからこそ、工事に取りかかる前に、認定や相談の段取りから始めるのが正解になります。詳しくは記事後半の着手順でご説明します(認定・助言指導の窓口は、茅ヶ崎市 都市政策課 住宅政策担当、電話0467-81-7181です)。
減額の範囲と申告のしかた
減額の対象になる床面積は、住宅1戸あたり100平方メートル相当分まで、という上限があります。一般的なファミリータイプの住戸であれば、多くがこの範囲に収まります。そして大切なのが申告期限です。工事完了から3か月以内に、茅ヶ崎市へ申告しなければなりません。減額は自動では適用されず、管理組合(または各区分所有者)からの申告が必要です。管理組合等の代表者が、各所有者の申告をまとめて行うこともできます。
申告には、申告書のほか、「大規模の修繕等証明書」「過去工事証明書」「総戸数が分かる書類」などが必要です。管理計画認定マンションの場合は認定通知書や修繕積立金引上証明書、助言・指導を受けた場合は実施等証明書を添えます。これらの証明書の様式は国土交通省のホームページにありますが、工事を担う施工会社や設計事務所が発行・準備に関わる書類も多いので、工事の契約前から「税制を使うつもりだ」と施工側に伝えておくことが、書類の取りこぼしを防ぐコツです。窓口は茅ヶ崎市 資産税課 家屋評価担当(電話0467-81-7142)です。
なお、この長寿命化促進税制は、住宅の省エネ改修、高齢者等居住(バリアフリー)改修、耐震改修にかかる固定資産税の減額制度とは併用できません。複数の減額制度の対象になりそうな工事を計画している場合は、どれを使うのが得かを早めに比較しておきましょう。
【耐震】分譲マンション耐震診断事業補助金:まず「現状を知る」費用を軽くする
次にご紹介するのが、茅ヶ崎市の「分譲マンション耐震診断事業補助金」です。これは、昭和56年5月31日以前の旧耐震基準で建てられた分譲マンションが、耐震診断を行う際の費用の一部を市が補助する制度です(出典:茅ヶ崎市 分譲マンション耐震診断事業補助金のご案内)。
「耐震診断」とは、建物が大きな地震に対してどれくらい耐えられるかを、専門の資格者が調べる調査のことです。旧耐震のマンションは、現在の耐震基準(新耐震)を満たしていない可能性があり、まずは現状を正確に知ることが、その後の判断のすべての出発点になります。
補助の対象になるマンション
茅ヶ崎市の補助対象になるのは、市内にある旧耐震基準の分譲マンションで、次の条件をすべて満たすものです。
- 住宅部分の床面積の合計が、延べ面積の過半であること
- 住戸の総数の過半を、区分所有者が居住の用に供していること
- 昭和56年5月31日以前に建築され、または工事に着手されたものであること
- 地階を除く階数が3以上であること
- 鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、または鉄骨造であること
- 管理組合の集会等で、耐震診断の実施を決議していること
- 避難路沿道建築物耐震診断事業補助金を受けていないこと
補助額は「2つを比べて少ないほう」
茅ヶ崎市の耐震診断補助の金額は、次の2つを比較して、いずれか少ない額になります。
- 耐震診断に要した費用に2分の1を乗じて得た額
- 区分所有者が居住する住戸の数に3万円を乗じて得た額
たとえば区分所有者居住の住戸が40戸であれば、2番の上限は40戸×3万円=120万円。診断費用が240万円なら、その2分の1の120万円と比べて、どちらも120万円ですから補助は120万円。診断費用が180万円なら、その2分の1の90万円と120万円を比べて少ないほう、つまり90万円が補助額になります。戸数が多いマンションほど2番の枠が大きくなり、実質的に「診断費用の半額」が出やすくなる、という設計です。
戸あたりの感覚に置き換えると、たとえば50戸のマンションで診断費用の半額・100万円の補助が出れば、1戸あたり2万円の負担軽減です。耐震診断は数百万円規模になることもあり、「まず調べる」の一歩を踏み出しにくい組合は少なくありません。その最初のハードルを下げてくれるのが、この補助制度です。
申請とスケジュールの注意点
この補助で気をつけたいのが、段取りと期限です。まず、耐震診断を実施する前に、集会等で区分所有者の合意決議が必要です。そして、診断の検討を始めた段階で、補助金交付要件の確認を兼ねて、建築指導課へ事前相談をしておくことが推奨されています。診断は「耐震診断資格者」など、法令で定められた技術者が行う必要があります。
スケジュール面では、耐震診断事業と費用の支払いまですべて完了したうえで、市へ実績報告書を3月20日までに提出する必要があります。年度内に完了・支払い・報告まで終える段取りが求められるということです。また、補助金の申請額が市の単年度予算額を超える場合は、翌年度の予算計上が必要になるため、10月までに建築指導課へ相談するよう案内されています。「やろうと決めたら、年度の早い段階で動く」のが鉄則です。窓口は茅ヶ崎市 建築指導課 建築安全担当(電話0467-81-7185)です。
なお、外壁改修にあわせて吹付け材などのアスベスト(石綿)含有が心配な場合は、茅ヶ崎市に「民間建築物アスベスト含有調査事業補助金」もあります。築年数の古い建物では、調査の要否もあわせて早めに確認しておくと安心です。
【資金】住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資
3つ目は、工事費そのものの資金調達です。修繕積立金だけでは大規模修繕の費用をまかないきれない——これは、私が現場で本当によく耳にする悩みです。そんなときの選択肢が、独立行政法人・住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)の「マンション共用部分リフォーム融資」です。これは管理組合が借り入れの主体となれる、公的な低利・長期の融資制度です(出典:住宅金融支援機構 ご利用条件(管理組合申込みの場合))。
民間のマンション修繕ローンと比べたこの融資の特長は、3つあります。第一に、管理組合名義で借りられること。個々の区分所有者が個人ローンを組む必要がありません。第二に、(公財)マンション管理センターの債務保証を利用することで、担保(土地・建物への抵当権設定など)を入れずに借りられること。第三に、金利が比較的低く、固定で見通しが立てやすいことです。金利は毎月見直されますが、お申込み時の金利が全期間にわたって固定で適用される仕組みになっています(出典:公益財団法人マンション管理センター 共用部分リフォーム融資と債務保証)。
そして見逃せないのが、後ほどご説明する「管理計画認定」を受けていると、この融資の金利が引き下げられるという連動です。適正に管理されているマンションほど、資金調達でも有利になる。制度どうしがつながっているわけです。金利は市場の動きで変わりますので、検討の際は必ず住宅金融支援機構の最新の金利情報をご確認ください。
【認定・相談】マンション管理計画認定制度をどう使うか
ここまで読まれて、「管理計画認定」という言葉が何度も出てきたことにお気づきだと思います。茅ヶ崎市の「マンション管理計画認定制度」は、国の定める認定基準を満たし、適切な管理が行われているマンションの管理計画を、市が認定する制度です(出典:茅ヶ崎市 マンション管理計画認定制度)。
認定を受けるメリット
茅ヶ崎市が挙げている認定のメリットは、次のとおりです。
- 住宅金融支援機構の【フラット35】やマンション共用部分リフォーム融資の金利が引き下げられる
- 住宅金融支援機構の【マンションすまい・る債】の利率が上乗せされる
- 適正に管理されたマンションとして、不動産市場で評価される
- 住人の管理意識が保たれ、管理水準を維持・向上しやすくなる
加えて、これまで見てきたとおり、認定(とそれに伴う修繕積立金の引上げ)は、固定資産税の長寿命化促進税制を使うための「入口」にもなります。認定そのものに費用や手間はかかりますが、税の減額・融資の金利引下げ・資産価値の評価という複数のリターンにつながる、いわば「土台」の制度だと考えてください。
認定申請の流れ
茅ヶ崎市の認定申請は、おおむね次の流れで進みます。まず、認定の本申請の前に、(公財)マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」で、国の認定基準に適合しているかの事前確認を受けます。審査に係る講習を受けたマンション管理士が確認を行い、基準に適合していれば事前確認適合証が発行されます。その適合証を受けたうえで、市へ認定の本申請を行い、市の確認を経て認定通知書が交付される、という段取りです。
実務的には、管理計画の中身——とくに長期修繕計画の内容や修繕積立金の水準——を、認定基準に合わせて整える作業が中心になります。ここは管理会社やマンション管理士、そして工事の見通しを示せる施工会社と連携しながら進めるのが現実的です。窓口は茅ヶ崎市 都市政策課 住宅政策担当(電話0467-81-7181)です。神奈川県や国土交通省のマンション施策の情報も、市のサイトからたどれます。
どの制度を、どの順番で使うか【着手の5ステップ】
ここまでの内容を、実際の動きに落とし込みます。私が理事長さまにいつもお伝えしている、無理のない進め方が次の5ステップです。
ステップ1:現状把握と相談(今すぐ)。 まずは長期修繕計画と修繕積立金の現状を確認し、茅ヶ崎市 都市政策課に管理計画認定や長期修繕計画の助言・指導について相談します。旧耐震マンションなら、建築指導課への耐震診断補助の事前相談も同時に。ここはすべて無料でできる範囲です。
ステップ2:管理計画の整備と認定(工事の前年〜当年)。 固定資産税の減額を見据えるなら、認定(または市の助言・指導にもとづく長期修繕計画の見直しと、必要な修繕積立金の引上げ)を、工事に着手する前に整えておきます。順番を逆にすると、税制の要件を満たせなくなる恐れがあります。
ステップ3:資金計画の確定(工事の半年前まで)。 積立金で足りない分は、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資を検討します。認定を受けていれば金利引下げの対象になります。借入額・返済期間・月々の負担を、戸あたりに換算して総会で共有しましょう。
ステップ4:工事の発注と「税制を使う」宣言(契約時)。 施工会社との契約前に、「長寿命化促進税制を使うので、必要な証明書を出してほしい」と明確に伝えます。証明書の準備は施工側の協力が不可欠です。工事内容も、外壁・防水など長寿命化に資するメニューが軸になっているかを確認します。
ステップ5:工事完了と申告(完了後3か月以内)。 工事が終わったら、3か月以内に資産税課へ固定資産税減額の申告を行います。耐震診断補助を使った場合は、年度内(3月20日まで)の実績報告も忘れずに。
この順番を守るだけで、「制度はあったのに使えなかった」という取りこぼしは、ほとんど防げます。
工事の工法をどう選ぶか:足場・ロープアクセス・ハイブリッド
制度の話に続けて、工事そのものの「やり方」についても、現場の立場から少しだけお話しさせてください。大規模修繕の費用は、工事の中身だけでなく、どうやって建物の外側に手が届くようにするか(仮設のしかた)で、大きく変わるからです。私たちは、建物に合わせて3つの工法を提案しています。
ひとつめは、従来からの足場(仮設足場)工法です。建物全体を足場で囲い、職人が安定した足場の上で作業します。複雑な形状の建物や、広い面を一度に塗り替える工事、低中層のマンションに向いています。一方で、足場の設置・撤去に費用と工期がかかり、足場が建つあいだは窓を開けにくい、防犯面が気になる、といった居住者への影響が生じます。
ふたつめが、ロープアクセス工法です。これは、屋上などから下ろした産業用ロープに作業者がぶら下がり、足場を架けずに外壁の補修や塗装、シーリング(目地の打ち替え)などを行う「無足場工法」です。足場の設置費用がかからない分コストを抑えやすく、工期も短く、足場で建物を囲わないため居住者の生活への影響を最小限にできます。とくに茅ヶ崎のような海沿いの立地では、塩害で傷みやすい鉄部や外壁の部分補修を、必要なところにピンポイントで素早く入れられるのが利点です。高層部や、足場が架けにくい狭い隣地境界の物件とも相性がよい工法です。ただし、塗り替える面が非常に広い全面改修では、足場のほうが効率的なこともあります。
みっつめが、両者を組み合わせるハイブリッド工法です。たとえば、面積の大きい正面や複雑な低層部は足場で、足場の架けにくい高層部や海側の妻面はロープアクセスで、というように部位ごとに使い分けます。これにより、足場の総量を減らして費用と工期を抑えつつ、品質も確保する——大規模・複雑な物件で、総合的なコスト最適化が必要なケースに向いています。
大切なのは、「最初からこの工法ありき」で決めないことです。私たちは3つの工法すべてを提案できる立場だからこそ、建物の形・立地・予算・居住者の事情を見たうえで、その物件にとっていちばん合理的な組み合わせをご提案できます。工法の選び方そのものが、修繕積立金を守る一つの手段になるのです。ロープアクセス工法の詳しい内容はロープアクセス工事のご案内を、大規模修繕全般の進め方は大規模修繕のサポートをご覧ください。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 茅ヶ崎市の固定資産税の減額は、結局いくら安くなりますか?
減額されるのは、住宅1戸あたり100平方メートル相当分までの「家屋にかかる翌年度分の固定資産税」の3分の1です。実際の金額は、各住戸の家屋の評価額によって変わります。ご自宅の固定資産税額(家屋分)のおよそ3分の1が、1年度分軽くなるとイメージしてください。都市計画税は対象外です。正確な見込みは、工事内容が固まった段階で茅ヶ崎市 資産税課にご確認ください。
Q2. 築20年ですが、まだ一度も大規模修繕をしていません。税制は使えますか?
長寿命化促進税制は「過去に1回以上、大規模修繕工事を適切に行っていること」が要件のひとつです。1回目の大規模修繕では要件を満たさず、2回目以降が対象になるのが基本です。ただし、1回目をきちんと記録に残し、長期修繕計画を整えておくことが、2回目で税制を使うための準備になります。早いうちから段取りをしておく価値は十分にあります。
Q3. 耐震診断補助と固定資産税の減額は、両方使えますか?
耐震診断補助(建築指導課)と長寿命化促進税制(資産税課)は、目的の異なる別の制度なので、それぞれの要件を満たせば両方の検討が可能です。ただし、固定資産税の「耐震改修にかかる減額」と「長寿命化促進税制の減額」は併用できません。診断の結果、耐震改修と長寿命化工事の両方を考える場合は、どの減額を使うのが有利かを早めに整理しておきましょう。
Q4. 海沿いなので外壁の傷みが早い気がします。工法で差は出ますか?
出ます。塩害は、鉄部のサビや塗膜・シーリングの劣化を早めます。傷みが部分的に進んでいる段階なら、ロープアクセスで必要な箇所をピンポイントに、足場費用をかけずに素早く補修できます。劣化が全面に及んでいるなら足場での全面改修が効率的なこともあります。どちらが得かは現地を見て判断するのが確実です。点検だけでも早めに入れておくと、傷みが軽いうちに小さな費用で手を打てます。
おわりに——「知っているか」で、組合の未来は変わる
茅ヶ崎の海風は、暮らしには心地よく、建物には少しだけ厳しい。だからこそ、この街のマンション管理組合には、使える制度を一つずつ味方につけてほしいと、現場を歩いてきた私は思います。固定資産税の3分の1減額、耐震診断費用の補助、低利の公的融資、そして無料の専門家相談。一つひとつは小さく見えても、組み合わせて、正しい順番で使えば、組合の負担は確かに軽くなります。
そして、制度を使いこなす土台になるのは、「自分たちのマンションを、長く大切に住み継ぐ」という管理組合の意思です。長期修繕計画を整え、積立金を備え、適正な管理を続ける——その延長線上に、税制や融資の優遇が用意されています。難しく感じられるかもしれませんが、最初の一歩は「市の窓口に相談してみる」「現状を点検してもらう」だけで十分です。
私たちは、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つの工法から、その建物にいちばん合うやり方をご提案できる、数少ない会社です。制度の使い方から工法の選び方まで、押し売りはいたしませんので、まずは相談だけでもかまいません。茅ヶ崎のマンションを、次の世代まで気持ちよく住み継いでいくお手伝いができれば、これほど嬉しいことはありません。ご相談はお問い合わせからお気軽にどうぞ。
参考・出典(2026年6月時点)
- 茅ヶ崎市 長寿命化に資する大規模修繕工事が行われたマンションに対する固定資産税の減額について
- 茅ヶ崎市 分譲マンション耐震診断事業補助金のご案内
- 茅ヶ崎市 マンション管理計画認定制度
- 茅ヶ崎市 民間建築物アスベスト含有調査事業補助金のご案内
- 国土交通省 マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)
- 住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資 ご利用条件(管理組合申込みの場合)
- 公益財団法人マンション管理センター 共用部分リフォーム融資と債務保証
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
相模原市で使える賃貸オーナー向け補助金活用ガイド|橋本・相模大野の築古物件を「NOI」で再生する2026年度の制度設計
相模原市で収益マンション・賃貸ビルを保有しているオーナーさまにとって、2026年度(令和8年度)は「修繕を、補助金と税制が乗っているうちに前倒しする」判断がしやすい年です。市の分譲マンション耐震補助、中小規模事業者向けの省エネ設備補助、そこに国の「住宅省エネ2026キャンペーン」と、賃貸オーナーを名指しで対象にした給湯省エネ制度が重なります。
本記事は、相模原市内に収益物件を持つ個人・法人オーナーさまを読者に想定し、補助金を「入居率・賃料・NOI(純営業収益=家賃収入から運営経費を引いた利益)・出口価格・税務処理」という収益指標に翻訳して整理します。制度の正確な金額・要件はすべて市・国の公式情報に基づき、出典を末尾に明記しました。判断材料としてお使いください。
私は大規模修繕の現場を長く見てきましたが、相模原のオーナーさまから一番多くいただく相談は「補助金は気になるが、自分の物件が対象なのかが分からない」というものです。結論から言えば、相模原市は「市の制度は管理組合・個人住宅・事業用設備に寄っていて、1棟所有の賃貸住宅オーナーがそのまま使える場面は限られる」という構造です。だからこそ、国の制度と市の制度を棲み分けて設計できるかどうかが、使える金額を大きく分けます。
1. なぜ今、相模原市の賃貸オーナーは「補助金を絡めた修繕」を投資判断に組み込むべきか
賃貸経営において、外壁・屋上防水・給湯設備・窓は「いずれ必ず手を入れる部分」です。問題は「いつやるか」。どうせ来る支出なら、補助金と税制優遇が乗っているタイミングで前倒しするほうが、保有中の利回りにも、売却時の出口価格にも有利に働きます。
私が現場で繰り返し感じるのは、築年数なりの劣化は「賃料の下落圧力」として静かに効いてくる、ということです。外壁の色あせ、共用部の古びた照明、冬場に寒いと言われる窓。一つひとつは小さくても、内見時の第一印象と退去理由に積み上がります。入居率1%の差は、20戸・平均賃料8万円の物件なら年間約19万円のキャッシュフロー差です。これが10年続けば、それだけで小規模な改修費に届きます。
相模原市は政令指定都市として緑区・中央区・南区の3区を擁し、橋本(リニア中央新幹線の神奈川県駅が予定される拠点)、相模大野、淵野辺、古淵など、エリアごとに賃貸需要の性格が異なります。橋本周辺は再開発と将来の交通結節点としての期待、相模大野は商業集積と住居需要、淵野辺は大学・学生需要。築古ストックが厚いエリアでは、設備の新しさと断熱性能が「選ばれる物件」と「見送られる物件」を分けます。補助金を使った計画修繕は、こうした競争環境のなかで物件のポジションを一段引き上げる手段でもあります。
「補助金で工事費が下がる」だけが価値ではありません。空室期間の短縮(設備の新しさ)、賃料の維持・微増(断熱・省エネ)、修繕履歴の明確化(売却時の評価)。この3つが、NOIと出口の両方を底上げします。
2. オーナーの物件タイプ別――相模原市の耐震補助は「分譲を貸しているか」で入口が変わる
相模原市の耐震補助は、賃貸オーナーにとって「自分がどのタイプの物件を持っているか」で入口がまったく変わります。ここを取り違えると、使えない制度に時間をかけてしまいます。
2-1. 分譲マンションの一室・複数室を貸している方――管理組合経由で耐震診断・改修補助
旧耐震基準(昭和56年5月31日以前に建築確認を得て着工)の分譲マンションを区分所有して貸している場合、相模原市の補助は「管理組合」を単位として使えます。
「相模原市マンション耐震診断補助制度」では、耐震診断に係る費用の6分の5以内の額で、1住戸あたり5万円を限度に補助されます(市の予算の範囲内)。対象は、市の耐震巡回相談を受けて耐震診断を行う決議書を得ており、昭和56年5月31日以前に着工した鉄筋コンクリート造(RC造)・鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)・鉄骨造(S造)の分譲マンション管理組合です。
診断の結果、耐震改修が必要となった場合は「分譲マンション耐震改修補助制度」に進みます。耐震改修計画の作成費用は3分の2以内の額で1住戸あたり5万円を限度に、耐震改修工事費用についても費用の一部が助成されます(工事費の補助額は要問い合わせ)。補助対象は住居用に供する部分で、店舗等の用途部分は除かれます。
ポイントは、これが「オーナー単独の投資判断」では完結せず、管理組合の合意形成(総会・理事会)を起点にする点です。区分所有オーナーとしては、総会でこの補助制度を議題に上げ、共用部の耐震化を補助付きで進める形になります。
2-2. 一棟所有(賃貸マンション・ビル)の方――市の「分譲向け」制度は対象外、入口は別に設計する
ここが相模原市で最も誤解されやすい点です。上記の耐震補助は「分譲マンション」が対象であり、オーナーが1棟丸ごと所有する賃貸マンション・賃貸ビルは、この制度の枠組みからは外れます。市の補助メニューは「分譲マンション管理組合」「個人住宅(持ち家)」「中小規模事業者の事業用設備」に寄っており、賃貸住宅の居住部分にそのまま使える市単独の補助は限定的、というのが正直なところです。
では一棟所有のオーナーは打つ手がないのか。そうではありません。入口は二つあります。一つは後述する国の制度(賃貸集合給湯省エネ・先進的窓リノベ)で、これは賃貸物件を明確に対象に含みます。もう一つは、店舗・事務所・医療介護施設を併設・運営しているオーナー向けの「中小規模事業者省エネルギー設備等導入支援補助」です(第4章で詳述)。
2-3. まずは「無料の巡回相談・建築相談」を起点にする
相模原市には、既存分譲マンション向けの「耐震巡回相談(無料)」や建築相談(耐震)の窓口があります。分譲を貸しているオーナーは、ここを起点に管理組合での議論につなげるのが定石です。一棟所有のオーナーも、建築政策課(耐震推進班 電話042-769-8252)に自分の物件タイプを伝え、使える制度の有無を確認するところから始めると、無駄足を避けられます。
3. 省エネ改修を「賃料維持装置」に変える――国の2026年度制度
相模原市の賃貸オーナーにとって、2026年度の主軸は国の「住宅省エネ2026キャンペーン」です。市の制度が分譲・個人向けに寄っている分、国の制度が賃貸オーナーの実弾になります。
3-1. 賃貸集合給湯省エネ2026事業(賃貸オーナーを名指しで対象にした制度)
これは賃貸集合住宅のオーナーを正面から対象にした、経済産業省の制度です。賃貸アパート・マンションの既存給湯器を、省エネ型(エコジョーズ等の高効率給湯器)へ取り替える工事が対象になります。令和7年(2025年)11月28日以降に着工した工事が対象とされており、戸数の多い賃貸オーナーほど効きます。
給湯器は退去・入居のたびに必ず話題になる設備で、故障してからの緊急交換は単価も割高になりがちです。「どうせ取り替えるなら、補助が乗る今、計画的に」という判断が、もっとも素直に効く領域です。最新の補助単価・受付状況は公式サイトでご確認ください。
3-2. 先進的窓リノベ2026事業
環境省の制度で、既存の戸建住宅・集合住宅(新築は対象外)が対象です。重要なのは、賃貸物件にも適用でき、マンションの管理組合名義での申請も可能とされている点です。工事契約日から遡って1年以上前に建築された住宅が条件です。
補助単価は窓のサイズ区分(小・中・大・特大)と住宅区分(戸建てか集合住宅か)で細かく変わり、戸建住宅の場合の上限は1戸あたり100万円、240平方メートルを超える非住宅建築物の場合は最大1,000万円とされています。窓の断熱改修は、冬場の「寒い」というクレームと結露・カビの低減に直結し、賃料維持・退去抑制の観点で投資対効果を説明しやすい工事です。
3-3. 国の制度は「外壁・防水と同時施工」で足場を一度に使い切る
窓・給湯の省エネ改修は、外壁塗装や屋上防水といった大規模修繕と「同じ足場のうちに」まとめると、仮設費を二重に払わずに済みます。ここが工法選定と補助制度をつなぐ勘所で、後段(第7章)で改めて触れます。
4. 店舗・医療・介護を運営するオーナーへ――中小規模事業者省エネ補助(令和8年度)
テナントに飲食・物販を入れている、あるいはご自身でクリニック・サービス付き高齢者向け住宅・介護施設を運営しているオーナーには、相模原市の「中小規模事業者省エネルギー設備等導入支援補助」が有効です。令和8年度の内容は公式に公表されています。
補助率は補助対象経費の3分の1以内、上限100万円。さらに太陽光発電設備・蓄電池には特例加算があり、条件を満たせば合計で最大326万円(通常100万円+太陽光特例100万円+蓄電池特例126万円)に達する設計です。募集期間は令和8年5月15日~10月30日、予算額は3,200万円。予算枠に達すると締め切られるため、早めの動きが要点です。
対象は「中小規模事業者」で、事業者全体の年間エネルギー使用量が原油換算1,500キロリットル未満の事業者などが該当します。重要なのは、相模原市はこの定義に「病院」「学校」「社会福祉施設」を運営する事業者も含むと明記している点です。医療・介護施設オーナーにとっては、BCP(事業継続計画)と光熱費削減を兼ねた設備更新を補助付きで進める好機といえます。
対象設備は、高効率空調・高効率照明(LED)・高効率給湯・高効率ボイラー・業務用冷凍冷蔵設備・変圧器・建築物断熱工事・再生可能エネルギー設備など。条件として、(1) 市へ「地球温暖化対策計画書」を提出、(2) 過去3年以内に省エネアドバイザー派遣(相模原商工会議所 経営支援課 電話042-753-8135が窓口)を受けた設備であること、(3) 補助対象経費の総額が30万円以上、(4) 交付決定後に着工、が挙げられています。
ここで賃貸オーナーが必ず押さえるべき制約が一つあります。補助対象は「事業の用にのみ供する設備」であり、店舗兼住宅の居住スペース等へ効果が波及する設備・工事は対象外です。つまり、純粋な賃貸住宅の居住部分の空調・給湯には使いにくく、店舗・事務所・施設部分が主戦場になります。また、リースによる導入は対象外、設備を導入する事業所が自己所有でない場合は所有者の書面承諾が必要です。問い合わせ先は相模原市ゼロカーボン推進課(電話042-769-8240)です。
なお、神奈川県にも「自家消費型再生可能エネルギー導入補助金」「中小企業エネルギー設備導入費補助金」があり、市の制度と国・県の制度は要件次第で組み合わせも検討できます。
5. 税務で結果が変わる――損金算入・固定資産税減額・補助金の課税
補助金の損得は、税務処理まで含めて初めて確定します。私は工事屋ですので税の最終判断は税理士の領域ですが、現場で「ここを知らずに発注すると損をしやすい」という勘所だけ整理します。
第一に、修繕費か資本的支出かで税務処理が大きく変わります。原状回復・維持管理の範囲は修繕費として単年度で損金算入できる一方、価値を高めたり耐用年数を延ばしたりする支出は「資本的支出」として減価償却の対象になります。同じ外壁工事でも、内容により扱いが分かれるため、見積段階で工事区分を意識しておくと、キャッシュフロー計画が立てやすくなります。
第二に、耐震改修に伴う固定資産税の減額措置です。一定の耐震改修工事を行った住宅で要件を満たすと、工事完了の翌年度に、住宅床面積120平方メートル相当分までの固定資産税額の2分の1が減額されます(長期優良住宅の認定を受けた改修の場合は3分の2)。要件には、昭和57年1月1日以前から所在する住宅であること、耐震改修に要した工事費が一戸あたり50万円を超えることなどが含まれます。賃貸住宅にそのまま適用できるかは床面積要件や居住部分割合の判定が絡むため、相模原市の固定資産税担当窓口での事前確認が確実です。国土交通省の2026年税制改正でも、良質な住宅ストック形成に向けた措置として延長・拡充の方向が示されています。
第三に、補助金は受給時に原則として益金(雑収入)として課税対象になる点です。「補助で工事費が3分の1下がった」と思っても、その補助額に課税が乗れば手残りは変わります。修繕費による損金算入、固定資産税の減額、補助金の課税。この三者を発注前に税理士と一度整理しておくことを強くお勧めします。
6. 数字で見る――相模原市・1棟16戸・築30年のNOI改善シミュレーション
抽象論ではイメージが湧きにくいので、相模原市内によくある「築30年・RC造・16戸・1K中心」の賃貸マンションを例に、ざっくりとした考え方を示します(あくまで一般的な試算で、実際は物件・賃料相場により変動します)。
入居率が現状92%だとして、設備更新と窓断熱で内見時の印象が改善し、退去抑制と空室期間短縮で実質入居率が95%へ上がったとします。平均賃料6.5万円なら、3ポイントの改善はおよそ年間28万円の家賃収入差です。これは表面的な数字ですが、退去のたびに発生する原状回復・募集広告費・フリーレントの削減を含めると、体感のキャッシュフロー改善はさらに大きくなります。
ここに、給湯省エネ・窓リノベの国補助で初期費用を圧縮し、外壁・防水と同時施工で足場費を一度に使い切れば、「投資額あたりの利回り改善」と「物件価値(収益還元価格)そのものの底上げ」が同時に進みます。たとえばキャップレート(還元利回り)6%の市場で年間NOIが30万円改善すれば、収益還元の考え方では物件評価額が単純計算で約500万円押し上がります。出口を見据えるオーナーにとって、この「評価額への波及」こそが補助金活用の本丸です。
逆に言えば、補助の有無だけで工事の可否を決めるのは惜しい判断です。補助は「どうせやる工事の背中を押す材料」であって、補助がゼロでも収益的に合う修繕は前倒しすべきですし、補助に振り回されて不要な設備を入れるのは本末転倒です。
7. 工法の選択がNOIを左右する――明誠の「3工法」提案
ここまで制度の話をしてきましたが、最終的にオーナーの手残りを左右するのは「どう施工するか」です。私たち株式会社明誠は、通常の足場仮設、ロープアクセス(無足場工法)、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物にとってベストな工法をご提案できる、日本でも数少ない会社です。
なぜ工法がNOIに効くのか。足場の架設・解体には相応の仮設費と工期がかかり、その間は建物に足場とメッシュシートが回り、入居者・テナントの生活や営業に影響します。高層部や狭隘地、足場架設が難しい立地では、ロープアクセス(産業用ロープによる無足場施工)が足場費の削減と工期短縮、そして居住者の生活影響の最小化に効くことが多くあります。一方で、全面改修や複雑な形状では、足場やハイブリッドのほうが総コストで有利になる場合もあります。
賃貸オーナーの視点で言えば、工期が短く生活影響が小さい工法は「工事期間中の退去・クレームリスク」を下げ、結果としてNOIを守ります。さらに明誠は、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟する、日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開しており、専門職の連携によって高品質と低価格を両立しています。補助制度の対象工事と工法選定をセットで設計できるのが、私たちの強みです。
大切なのは、補助金の制度設計(どの制度をどの工事に割り付けるか)と、工法選定(足場かロープアクセスかハイブリッドか)を、別々ではなく一体で考えることです。窓・給湯・外壁・防水を、足場を一度立てるうちにまとめ、補助が乗る工事から優先的に組み込む。この設計ができると、同じ予算でも手残りが変わります。
8. 申請の落とし穴と着手順ロードマップ
最後に、現場でよく見る「もったいない失敗」と、相模原市での実務的な進め方を整理します。
最大の落とし穴は「交付決定の前に契約・着工してしまう」ことです。市の中小規模事業者省エネ補助は、補助金の交付決定後に契約(発注)・工事着手することが明確に求められており、交付決定前に着手したものは補助対象になりません。良かれと思って早く動くと、補助がまるごと消えます。
第二に、予算枠と募集期間です。市の省エネ補助は予算額3,200万円・募集令和8年5月15日~10月30日と区切られており、枠に達すると締め切られます。第三に、省エネアドバイザー派遣(相模原商工会議所が窓口)を「過去3年以内に受けた設備」が対象という前提条件を満たしているか。これらは着工前に押さえる必要があります。
実務の着手順は、(1) 自分の物件タイプの確定(分譲を貸しているのか/一棟所有か/店舗・施設併設か)、(2) 使える制度の棚卸し(市の耐震・省エネは建築政策課・ゼロカーボン推進課へ、賃貸向けは国の制度を中心に)、(3) 工事内容と工法の設計(外壁・防水・窓・給湯をまとめ、足場の使い方を最適化)、(4) 補助の交付決定→契約→着工、(5) 完了報告・実績報告、という流れです。順番を守るだけで、取りこぼしは大きく減ります。
9. よくある質問(FAQ)
Q. 一棟所有の賃貸マンションですが、相模原市の耐震補助は使えますか?
A. 市の耐震補助は「分譲マンション管理組合」が対象で、1棟所有の賃貸マンションはこの制度の枠組みからは外れます。賃貸オーナーは国の省エネ制度(賃貸集合給湯省エネ・先進的窓リノベ)や、店舗・施設併設なら市の中小規模事業者省エネ補助を入口に検討するのが現実的です。
Q. 分譲マンションの一室を貸しています。耐震診断補助の単位は?
A. 管理組合が単位となります。区分所有者単独ではなく、総会での提案を起点に、管理組合として耐震診断・改修補助を進める形です。
Q. 給湯器の交換はいつの工事から対象ですか?
A. 賃貸集合給湯省エネ2026事業では、令和7年11月28日以降に着工した、従来型から省エネ型(エコジョーズ等)への取替が対象とされています。最新の受付状況は公式サイトでご確認ください。
Q. 市の省エネ補助は賃貸住宅の部屋のエアコンに使えますか?
A. 補助対象は「事業の用にのみ供する設備」で、居住スペースへ効果が波及する設備は対象外です。賃貸住宅の居住部分よりも、店舗・事務所・医療介護施設部分が主な対象になります。
Q. 補助金は課税されますか?
A. 原則として益金(雑収入)として課税対象です。修繕費・減価償却・固定資産税減額との組み合わせで実質負担が変わるため、発注前に税理士と整理することをお勧めします。
Q. どの工法が安いですか?
A. 一概には言えません。高層・足場架設が難しい立地ではロープアクセスが有利なことが多く、全面改修や複雑形状では足場やハイブリッドが適する場合もあります。現地調査のうえ、補助制度と合わせて総コストで比較するのが確実です。
結語
相模原市の賃貸オーナーさまにとって、2026年度は「どのみち来る更新を、補助と税制が乗るうちに前倒しで投資に変える」好機です。給湯・窓・耐震は、いずれ必ず手を入れる部分。だとすれば、空室率と賃料という「静かな数字」を底上げできるタイミングで実行するのが、保有中の利回りにも、出口の売却価格にも効いてきます。
特に相模原市は「市の補助は分譲マンション・個人住宅・事業用設備が中心で、一棟所有の賃貸住宅オーナーは国の制度が主軸」という棲み分けを理解しているかどうかで、使える金額が変わります。制度の割り付けと着手順、そして工法選定。この3点を設計できれば、補助金は単なる値引きではなく、NOIと出口価格を動かすテコになります。
お持ちの物件で、まだこの検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度ご相談・お問合せください。1棟の現地調査と、利回り改善シミュレーション・工法比較(足場かロープアクセスか)だけでも承ります。補助金の制度設計から工法選定まで、数字でご一緒に試算しましょう。
なお、近隣の政令市・自治体のオーナー向け補助金については、横浜市の賃貸オーナー向け補助金ガイド、川崎市の賃貸オーナー向け補助金ガイド、千葉市の賃貸オーナー向け補助金ガイドもあわせてご覧ください。エリアごとに使える制度と限度額が異なります。
出典・参考資料
- 相模原市|旧耐震基準の分譲マンションの地震対策を支援します(耐震診断・改修補助)
- 相模原市|中小規模事業者省エネルギー設備等導入支援補助(令和8年度)
- 相模原市|助成・補助制度(住まい)
- 賃貸集合給湯省エネ2026事業【公式】(経済産業省)
- 先進的窓リノベ2026事業【公式】(環境省)
- 住宅省エネ2026キャンペーン【公式】(国交省・経産省・環境省)
- 神奈川県|自家消費型再生可能エネルギー導入補助金
- 神奈川県|中小企業エネルギー設備導入費補助金
- 国土交通省 2026年度税制改正(良質な住宅ストック形成に向けた措置の延長・拡充)
本記事は2026年6月13日時点の公開情報に基づきます。各補助制度は予算上限・受付期間・要件が変更される場合があります。申請前に必ず各窓口の最新情報をご確認ください。
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平塚市の分譲マンション管理組合が使える補助金・税制活用ガイド|大規模修繕の負担を軽くする2026年度(令和8年度)の制度設計
「そろそろ2回目の大規模修繕を考えないと——でも、積立金が足りるか不安で」。平塚駅周辺や紅谷町、八重咲町、四之宮、撫子原といった平塚市内のマンションにお住まいの理事長さまから、最近こうしたご相談を立て続けにいただいています。湘南・相模湾に面した平塚市は、東海道線の主要駅をかかえ、昭和から平成にかけて分譲されたファミリー向けマンションが数多く立ち並ぶまちです。築20年、30年を超えれば、外壁の塗り替えや屋上防水、給排水管の更新といったまとまった出費が、一度に押し寄せてきます。
私は大規模修繕の現場で20年近く、足場の上とロープの先から建物を見続けてきました。そのなかで一番もったいないと感じるのは、「使える制度を知らないまま工事を終えてしまった管理組合」に出会うときです。固定資産税の減額、耐震診断の補助、低利の公的融資、無料の専門家派遣——平塚市には、管理組合が活用できる制度がきちんとそろっています。知っているか知らないかで、組合の負担は数十万円から、規模によってはそれ以上変わってきます。
この記事では、平塚市の分譲マンション管理組合が2026年度(令和8年度)に使える制度を、申請の順番に沿って、現場目線で整理しました。専門用語にはそのつど補足を入れますので、建築にお詳しくない理事長さまも、最後までお付き合いください。ここからが本題です。
平塚市のマンション管理組合が使える支援制度【2026年度・一覧】
まず全体像を押さえましょう。平塚市の分譲マンション管理組合が、大規模修繕や維持管理の場面で活用できる主な制度は、大きく「税」「耐震」「資金」「相談・認定」の4つに分けられます。
| 区分 | 制度名 | 概要 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| 税の優遇 | マンション長寿命化促進税制 | 一定要件を満たす長寿命化工事で、翌年度の固定資産税(家屋分)が2分の1減額 | 平塚市 固定資産税課 |
| 耐震の補助 | マンション耐震化促進事業(予備診断・耐震診断) | 旧耐震マンションの予備診断・耐震診断の費用の一部を補助 | 平塚市 建築指導課 |
| 専門家の派遣 | 耐震改修アドバイザー派遣事業 | 耐震診断・改修の専門家(建築士)を管理組合の集会へ無料派遣 | 平塚市 建築指導課 |
| 資金の調達 | マンション共用部分リフォーム融資 | 管理組合向けの低利・長期の公的融資(住宅金融支援機構) | 住宅金融支援機構/マンション管理センター |
| 相談・認定 | マンション管理計画認定制度 | 適正管理のお墨付き+税・融資の優遇につながる入口 | 平塚市 建築指導課 |
ここで強調しておきたいのは、これらは「どれか一つを選ぶ」ものではなく、組み合わせて使う発想が大切だということです。私はいつも理事長さまに、「工事の中身を決める前に、まず使える制度の地図を広げてください」とお伝えしています。順番が逆になると、せっかくの優遇を取り逃すことがあるからです。なぜそうなるのかは、記事の後半でご説明します。
なお、各制度には年度ごとの受付期間や予算枠、細かな要件があります。本記事の数値は2026年6月時点で平塚市・国の公式情報を確認したものですが、申請前には必ず各窓口の最新情報をご確認ください。
【税】マンション長寿命化促進税制:固定資産税が1年間2分の1に
最初にご紹介したいのが、令和5年度の税制改正で創設された「マンション長寿命化促進税制」です。これは、一定の要件を満たしたうえで長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションについて、工事が完了した年の翌年度分の建物部分の固定資産税を2分の1に減額する制度です(出典:平塚市 マンション長寿命化促進税制)。
ここでいう「長寿命化に資する大規模修繕工事」とは、次の3つを指します。
- 屋根防水工事(屋上・屋根などの防水)
- 床防水工事(直接外気に開放された廊下・バルコニーなどの防水)
- 外壁塗装等工事(外壁の塗り替え・補修)
つまり、屋根・床・外壁の3点セットの工事です。大規模修繕の王道メニューそのものですから、多くの管理組合にとって、ふだんの修繕計画の延長線上にある話だとお考えください。
対象となるマンションの要件
この制度の対象になるには、平塚市が示す要件を「すべて」満たす必要があります。要点を理事長さま向けにかみ砕くと、次のとおりです。
- 新築された日から20年以上が経過していること
- 総戸数が10戸以上であること
- 区分所有者の専有部分の床面積の2分の1以上が居住用であること
- 「平塚市マンション管理計画認定制度、助言・指導について」の建築指導課での手続きが完了していること
そのうえで、工事の要件として「過去に長寿命化工事(屋根防水・床防水・外壁塗装等)を1度以上実施していること」「令和5年4月1日から令和9年3月31日までの間に、2回目以降の長寿命化工事を完了していること」が求められます。
少し専門的なので、鍵になるところだけ。要件4の「管理計画認定または市の助言・指導」と、工事要件の「2回目の3点セット工事」がポイントです。日頃から修繕積立金をきちんと積み、長期修繕計画を整えている管理組合ほど、この税制に手が届きやすい設計になっています。逆に言えば、「2回目の大規模修繕を控えていて、積立金の見直しもこれから」という組合でも、今から準備すれば十分に間に合う可能性があります。
減額の中身:戸あたりで考える
減額の対象は、各区分所有者が翌年度に支払う「建物部分」の固定資産税です。これが1年間、2分の1に減額されます。ただし、対象になるのは1戸あたり100平方メートル(共用部分を含む)までで、これを超える部分は減額されません。また、都市計画税には減額がない点にもご注意ください。
実務でとくに大切なのが、申告のタイミングです。工事が完了した日から3か月以内に、平塚市固定資産税課(本館2階・213窓口)へ減額措置を申告する必要があります。「工事が終わってひと安心」と気を抜くと、この3か月をうっかり過ぎてしまいがちです。私は理事長さまに、工事の竣工前から申告書類の準備を始めておくようお願いしています。
申告できるのは、本人(納税義務者・所有者)やその相続人のほか、管理組合等の代表者です。管理組合の代表者が必要書類を提出することで、各所有者の申告をまとめて行うこともできます。なお、申告書はマンションの全戸数分(全部屋分)を提出する必要があります。
注意点として、この制度による減額は1棟につき「1度のみ」の適用です。さらに、耐震改修工事・バリアフリー改修工事・省エネルギー改修工事による固定資産税の減額措置とは重複して適用できません。どの優遇を使うのが組合にとって有利か、工事の計画段階で見極めておくことが欠かせません。
【入口】平塚市マンション管理計画認定制度:税と融資の「鍵」になる
長寿命化促進税制の要件4で出てきた「管理計画認定」。これは、平塚市が令和5年4月に創設した「マンション管理計画認定制度」のことです(出典:平塚市マンション管理計画認定制度、助言・指導について)。
この制度は、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、「適切な管理計画を持つマンション」として市の認定を受けられる仕組みです。平塚市は、マンション管理適正化推進計画を「平塚市空家等対策計画」のなかに位置づけて、この認定制度を運用しています。
認定を取ると、何がいいのか
認定の効果は、平塚市が公式に次の5つを挙げています。
- 区分所有者の管理への意識が高く保たれ、管理水準を維持向上しやすくなる
- 適正に管理されたマンションとして、市場において評価される
- 適正に管理されたマンションが存在することで、地域価値の維持向上につながる
- 住宅金融支援機構の「フラット35」および「マンション共用部分リフォーム融資」の金利引下げ等が受けられる
- 固定資産税の優遇(前述の長寿命化促進税制)が受けられる
理事長さまの視点で言い換えると、認定は「資産価値」と「資金調達」の両面で効いてくる、ということです。2の市場評価は、将来お部屋を売却・賃貸する区分所有者にとって追い風になりますし、4・5は管理組合の財布に直接効きます。私が「制度の地図をまず広げて」とお伝えするのは、この認定が税制と融資の入口になっているからにほかなりません。
申請の方法と手数料
申請は、(公財)マンション管理センターの申請システム「管理計画認定手続支援サービス」で事前確認を行ったうえで、同システムを経由して市に申請します。システムを使わずに直接市へ申請することはできません。
費用については、システムの利用料と、マンション管理士による事前確認審査料が必要です(金額はマンション管理センターでご確認ください)。一方で、システムを経由して市へ認定申請する際に、市の手数料はかかりません。認定の有効期間は5年です。
なお、管理計画認定の手前にある「助言・指導」を市から受け、長期修繕計画の作成・見直しを行うルートでも、一定の要件を満たせば固定資産税の優遇を受けられます。「いきなり認定はハードルが高い」という組合でも、まずは建築指導課に相談する道があるとお考えください。制度全般の相談窓口としては、一般社団法人日本マンション管理士会連合会の「マンション管理計画認定制度相談ダイヤル(電話:03-5801-0858、月曜から土曜の午前10時から午後5時)」も用意されています。
【耐震】平塚市マンション耐震化促進事業:旧耐震マンションの命綱
平塚市は、湘南エリアとして大規模地震への備えが欠かせない立地です。とくに昭和56年(1981年)の建築基準法改正前の「旧耐震基準」で設計されたマンションは、耐震性が十分でないと指摘されています。平塚市では、こうしたマンションの耐震化を後押しするため、「マンション耐震化促進事業」として段階的な補助を用意しています(出典:平塚市 分譲マンションの耐震改修アドバイザー派遣事業・マンション耐震化促進事業)。
支援は、(1) 耐震改修アドバイザー派遣(無料)、(2) 予備診断費の補助、(3) 耐震診断費の補助——という3段階です。ただし「アドバイザー派遣を受けずに予備診断の補助を受ける」など、それぞれを個別に利用することもできます。
まずは無料の「耐震改修アドバイザー派遣」から
最初のきっかけづくりに使えるのが、無料のアドバイザー派遣です。マンションの耐震診断・耐震改修に関する専門知識を持つ建築士を、管理組合が開く集会などにアドバイザーとして無料で派遣してくれます。「うちのマンションは耐震性が大丈夫なのか」「何から手をつければいいのか」——そんな漠然とした不安を、専門家と一緒に整理できる機会です。総会で住民の合意を形成する前段階として、私は活用をおすすめしています。
予備診断費の補助:費用の10分の9、上限18万円
「予備診断」とは、設計図書の保存状況や建物の経年劣化、平面・立面の形状などを調べ、本格的な「耐震診断」を受ける必要があるかどうかを判断する、いわば一次スクリーニングです。
平塚市の予備診断費の補助は、予備診断に要した費用(税込み)の10分の9で、補助金の上限額は18万円です。補助率が9割と高いのが特徴で、最初の一歩のハードルを大きく下げてくれます。
対象となるのは、平塚市内にあるマンションで、(1) 昭和56年5月31日以前に建築確認を得て工事に着手したもの、(2) 住戸数の過半が区分所有者の住居用、(3) 住宅部分の床面積が過半、(4) 集会または管理規約に基づく会で予備診断の実施を決議したもの、(5) 床面積の合計が1,000平方メートル以上のもの——これらすべてに該当する建物です。1つの管理組合につき1棟までが対象です。
耐震診断費の補助:費用の2分の1、1住戸あたり4万円
予備診断の結果、本格的な「耐震診断」が必要と判断された場合は、耐震診断費の補助に進みます。耐震診断は、現地調査や材料強度試験、設計図書をもとに構造計算を行い、数値で耐震性を判定するものです。
補助額は、耐震診断に要した費用と、耐震判定委員会等による評価・判定に要した費用の2分の1で、上限は1住戸あたり4万円(区分所有者が居住する住戸に限る)です。たとえば30戸のマンションなら、単純計算で最大120万円が補助の上限ということになります。耐震診断費の補助を受けるには、既存建築物耐震診断・改修等推進全国ネットワーク委員会等に登録された耐震判定委員会等の評価を取得する必要があります。
手続きの順番に注意——「決議」のタイミング
耐震化促進事業で実務上とくに気をつけたいのが、手続きの順番です。平塚市では、市に「計画承認申請」を行い、市の承認通知書を受け取った後に、管理組合の総会(または集会)で実施を決議する流れになっています。さらに、補助金交付決定通知書を受け取った後に、耐震診断者と診断の契約を締結します。
つまり「先に総会で決議して、業者と契約してから市に申請」という、つい無意識にやってしまいがちな順番だと、補助の対象外になりかねないということです。窓口は平塚市建築指導課(電話:0463-21-9731)。総会のスケジュールを組む前に、まず建築指導課へ相談されることを強くおすすめします。
【資金】住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資
補助金や税制で負担を軽くしても、大規模修繕には数千万円単位のまとまった資金が必要になることがあります。修繕積立金だけでは足りない——そんなときの選択肢が、住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)の「マンション共用部分リフォーム融資」です。
これは管理組合が借主となる、共用部分の修繕・改修のための公的融資です。民間ローンに比べて低利・長期での借入れがしやすく、マンション管理センターの保証を利用することで無担保化も可能です。そして前述のとおり、平塚市の管理計画認定を取得していれば、この融資や「フラット35」で金利の引下げ等が受けられます。
私の現場経験から言えば、資金計画は「工事の前」に固めておくほど、組合の選択肢が広がります。融資ありきで工事内容を削るのではなく、「使える制度をフル活用したうえで、最適な工法を選ぶ」。この順番が、結果として総コストを下げます。金利は毎月見直されるため、検討の際は最新の条件を住宅金融支援機構でご確認ください。
制度を「取り逃さない」ための着手順【5ステップ】
ここまでの制度を、実際の動きに落とし込みます。私が理事長さまにおすすめしている順番は、次の5ステップです。
- 現状把握と相談(無料):まず建築指導課に相談し、必要に応じて耐震改修アドバイザー派遣(無料)を受ける。自分のマンションが旧耐震かどうか、管理計画の状態はどうかを確認する。
- 管理計画の整備と認定:長期修繕計画と修繕積立金を見直し、マンション管理計画認定の取得(または市の助言・指導)を進める。これが税制・融資の入口になる。
- 資金計画の確定:修繕積立金に加え、共用部分リフォーム融資の活用可否を検討。認定取得による金利引下げも織り込む。
- 工事内容と工法の決定:必要な工事(屋根防水・床防水・外壁塗装等の3点セットを含む)を確定し、足場・ロープアクセス・ハイブリッドのなかから建物に最適な工法を選ぶ。
- 工事完了後の申告(3か月以内):長寿命化促進税制の減額措置を、工事完了から3か月以内に固定資産税課へ申告する。
このうち2の「管理計画認定」を起点に据えるのが、私からの一番のおすすめです。認定が固定資産税の減額と融資の金利引下げの両方に効いてくるため、ここを早めに動かしておくと、後段の選択肢が大きく広がります。
制度を活かす工法選び——足場・ロープアクセス・ハイブリッド
制度で負担を軽くしたら、次は「工事そのものの最適化」です。私たち明誠は、大規模修繕において3つの工法を建物の特性に応じて使い分け、最適な形をご提案できる、日本でも数少ない会社です。それぞれの向き・不向きを正直にお伝えします。
通常の足場工法は、中低層で形状が複雑な建物、あるいは全面的に大規模な改修を行う場合に向いています。作業の安定性が高く、広い面を一度に施工できる反面、足場の架設・解体に費用と工期がかかり、設置期間中は居住者の窓まわりやプライバシー、防犯面への配慮も必要になります。
ロープアクセス工法(無足場工法)は、産業用ロープを使って足場を架けずに施工する方法です。足場費がかからないぶんコストを抑えやすく、工期も短縮できます。高層で足場の架設が難しい建物、部分的な補修、居住者の生活への影響を最小化したい物件に向いています。一方で、全面的な大改修や、足場が必要な重量物の取り回しには不向きな場面もあります。
ハイブリッド工法は、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分ける方法です。たとえば施工量の多い面は足場、足場の架けにくい面はロープアクセス、といった具合に組み合わせることで、大規模・複雑な物件でも総合的なコストと工期の最適化を図れます。
平塚市内のマンションは、駅前の中高層から郊外のファミリータイプまで形状もさまざまです。「足場ありき」でも「無足場ありき」でもなく、建物を見たうえで最適な工法をご提案する——これが私たちの基本姿勢です。長寿命化促進税制の対象となる屋根・床・外壁の3工事も、工法の選び方次第で総コストは変わってきます。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 築年数が新しく旧耐震ではないのですが、使える制度はありますか。
A. はい。耐震化促進事業(予備診断・耐震診断の補助)は旧耐震(昭和56年5月31日以前に建築確認)が対象ですが、マンション長寿命化促進税制は「新築から20年以上・総戸数10戸以上」などの要件を満たせば、新耐震のマンションでも対象になり得ます。管理計画認定や共用部分リフォーム融資も、築年数を問わず活用できます。
Q2. 長寿命化促進税制で、本当にどのくらい安くなりますか。
A. 減額されるのは建物部分の固定資産税の2分の1(1戸あたり100平方メートルまで、1年間)です。金額は各戸の評価額によって異なるため一律には言えませんが、戸数の多いマンションほど組合全体での効果は大きくなります。具体額は固定資産税課(家屋担当・電話:0463-21-8768)にご確認ください。
Q3. 管理計画認定は、手間に見合いますか。
A. 認定は固定資産税の減額・公的融資の金利引下げ・市場での評価という複数の効果につながる「入口」です。長期修繕計画や積立金の整備は、認定の有無にかかわらずマンションの健全運営に欠かせないものですから、その延長で認定を取得できれば、得られるメリットは小さくありません。まずは建築指導課にご相談ください。
Q4. 補助や税制の手続きと工事の段取りを、まとめて相談できますか。
A. はい。私たちは制度の活用を前提に、工事の計画段階から「どの制度をどの順番で使うか」を含めてご提案しています。申請のタイミングを誤ると優遇を取り逃すこともあるため、工事を決める前のご相談が効果的です。
まとめ——「知っている管理組合」が、負担を軽くする
平塚市の分譲マンション管理組合が使える制度を、申請の順番に沿って整理してきました。マンション長寿命化促進税制による固定資産税の減額、耐震化促進事業の予備診断(費用の9割・上限18万円)・耐震診断(1住戸4万円)の補助、無料の耐震改修アドバイザー派遣、共用部分リフォーム融資、そしてそれらの入口となる管理計画認定制度。これらを「組み合わせて」「正しい順番で」使うことが、組合の負担を確実に軽くします。
冒頭でお伝えしたとおり、私が現場で一番もったいないと感じるのは、使える制度を知らないまま工事を終えてしまうケースです。逆に言えば、制度を知り、早めに動き出した管理組合は、同じ工事でも負担を大きく減らせます。
「うちのマンションだと、どの制度が使えるのか」「2回目の大規模修繕に向けて、何から準備すればいいのか」。そうした疑問が少しでもあれば、まずは情報を集めるところから始めてください。私たち明誠は、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法と制度活用の両面から、平塚市のマンションにとって最適な大規模修繕をご提案します。ご相談はいつでもお気軽にどうぞ。
- 明誠のロープアクセス工法について:https://meiseitosou.com/rope/
- 明誠の大規模修繕・調査について:https://meiseitosou.com/sure/
- ご相談・お問い合わせ:https://meiseitosou.com/contact/
出典(2026年6月時点・公式一次情報)
- 平塚市 マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)
- 平塚市マンション管理計画認定制度、助言・指導について
- 平塚市 分譲マンションの耐震改修アドバイザー派遣事業・マンション耐震化促進事業
- 平塚市 分譲マンションの予備診断費の補助
- 平塚市 分譲マンションの耐震診断費の補助
- 国土交通省 マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)
- 住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資
- (公財)マンション管理センター 管理計画認定手続支援サービス
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
大和市の分譲マンション管理組合が使える補助金・税制活用ガイド|大規模修繕の負担を軽くする2026年度(令和8年度)の制度設計
「うちのマンションも、そろそろ2回目の大規模修繕の時期だ」——中央林間やつきみ野、南林間、鶴間といった大和市内のマンションにお住まいの理事長さまから、最近こうしたご相談を立て続けにいただいています。東急田園都市線や小田急江ノ島線の沿線として発展してきた大和市には、昭和から平成初期に分譲されたファミリー向けマンションがたくさんあります。築20年、30年を超えれば、外壁の塗り替えや屋上防水、給排水管の更新といったまとまった出費が、一度に押し寄せてきます。
私は大規模修繕の現場で20年近く、足場の上とロープの先から建物を見続けてきました。そのなかで一番悔しい思いをするのは、「使える制度を知らないまま工事を終えてしまった管理組合」に出会うときです。固定資産税の減額や耐震診断の補助、低利の公的融資、無料の専門家相談——大和市には、管理組合が活用できる制度がきちんとそろっています。知っているか知らないかで、組合の負担は数十万円から、規模によってはそれ以上変わってきます。
この記事では、大和市の分譲マンション管理組合が2026年度(令和8年度)に使える制度を、申請の順番に沿って、現場目線で整理しました。専門用語にはそのつど補足を入れますので、建築にお詳しくない理事長さまも、最後までお付き合いください。ここからが本題です。
大和市のマンション管理組合が使える支援制度【2026年度・一覧】
まず全体像を押さえましょう。大和市の分譲マンション管理組合が、大規模修繕や維持管理の場面で活用できる主な制度は、大きく「税」「耐震」「資金」「相談・認定」の4つに分けられます。
| 区分 | 制度名 | 概要 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| 税の優遇 | マンション長寿命化促進税制 | 一定要件を満たす長寿命化工事で、翌年度の固定資産税(家屋分)が2分の1減額 | 大和市 資産税課 |
| 耐震の補助 | マンション耐震診断費補助金 | 旧耐震マンションの予備診断・本診断の費用の一部を補助 | 大和市 建築指導課 |
| 資金の調達 | マンション共用部分リフォーム融資 | 管理組合向けの低利・長期の公的融資(住宅金融支援機構) | 住宅金融支援機構/マンション管理センター |
| 相談・認定 | マンション管理計画認定制度/専門家相談 | 適正管理のお墨付き+無料の専門家相談 | 大和市 建築指導課/神奈川県 |
ここで強調しておきたいのは、これらは「どれか一つを選ぶ」ものではなく、組み合わせて使う発想が大切だということです。私はいつも理事長さまに、「工事の中身を決める前に、まず使える制度の地図を広げてください」とお伝えしています。順番が逆になると、せっかくの優遇を取り逃すことがあるからです。なぜそうなるのかは、記事の後半でご説明します。
なお、各制度には年度ごとの受付期間や予算枠、細かな要件があります。本記事の数値は2026年6月時点で大和市・国の公式情報を確認したものですが、申請前には必ず各窓口の最新情報をご確認ください。
【税】マンション長寿命化促進税制:固定資産税が2分の1に
最初にご紹介したいのが、令和5年度の税制改正で創設された「マンション長寿命化促進税制」です。これは、一定の要件を満たしたうえで長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションについて、翌年度の建物部分の固定資産税を2分の1に減額する制度です(出典:大和市 大規模修繕等が行われたマンションに対する固定資産税の減額措置)。
ここでいう「長寿命化に資する大規模修繕工事」とは、次の3つを「すべて」実施するものを指します。
- 外壁塗装等工事(外壁の塗り替え・補修)
- 床防水工事(直接外気に開放された廊下・バルコニーなどの防水)
- 屋根防水工事(屋上・屋根などの防水)
つまり、外壁・床・屋根の3点セットの工事です。大規模修繕の王道メニューそのものですから、多くの管理組合にとって、ふだんの修繕計画の延長線上にある話だとお考えください。
対象となるマンションの要件
この制度の対象になるには、大和市が示す要件を「すべて」満たす必要があります。要点を理事長さま向けにかみ砕くと、次のとおりです。
- 新築された日から20年以上が経過していること
- 総戸数が10戸以上であること
- 専有部分の2分の1以上が、人の居住の用に供する部分であること
- 次のいずれかに該当すること——(A)大和市の「マンション管理適正化推進計画」に基づき、修繕積立金を一定以上に引き上げたうえで管理計画の認定を受けたマンション、または(B)市から管理の適正化に必要な助言・指導を受け、その日以後に長期修繕計画を作成または基準に適合するよう変更したマンション
- 工事の要件として、過去に長寿命化に資する大規模修繕工事(前述の外壁・床・屋根の3工事すべて)を実施していること
- 令和9年3月31日までに、2回目以降の長寿命化工事(同じく3工事すべて)が完了していること
少し専門的なので、鍵になるところだけ。要件4の「管理計画認定」と、要件5・6の「2回目の3点セット工事」がポイントです。日頃から修繕積立金をきちんと積み、長期修繕計画を整えている管理組合ほど、この税制に手が届きやすい設計になっています。逆に言えば、「2回目の大規模修繕を控えていて、積立金の見直しもこれから」という組合でも、今から準備すれば十分に間に合う可能性があります。
減額の中身:戸あたりで考える
減額されるのは、工事が完了した年の翌年度分の固定資産税(家屋分)で、減額率は2分の1です。対象となる範囲は1戸あたり床面積100平方メートル分までで、それを超える部分や土地分は対象外です(出典:大和市 同ページ)。
「2分の1」と聞いてもピンとこないかもしれませんので、財布感覚に直してみましょう。仮に1戸あたりの建物分の固定資産税が年7万円のマンションなら、1戸あたり年3万5千円ほどの軽減です。50戸のマンションなら、組合全体で年間150万円規模の負担減になる計算です。1年分とはいえ、決して小さな金額ではありません。
ここで一つ、大事な注意点があります。この減額措置は、ほかの固定資産税の減額措置とは併用できず、1戸につき一度しか受けられません。だからこそ、「いつの工事で、どのタイミングで申告するか」を、工事計画と一緒に設計しておくことが効いてきます。
申告の流れと注意点
この税制は、工事をすれば自動で適用されるものではありません。長寿命化工事が完了した日から3か月以内に、大和市役所の資産税課へ申告する必要があります。
申告には、市の窓口に備え付けの申告書に加えて、「大規模修繕等証明書」「過去工事証明書」、総戸数が10戸以上であることを確認できる書類、そして管理認定マンションの場合は「管理計画認定通知書の写し」と「修繕積立金引上証明書」などの添付が求められます。証明書は建築士やマンション管理士などが作成するもので、準備に時間がかかります。私はこの「証明書の前さばき」を、いつも工事計画とワンセットでご案内するようにしています。完成してから慌てて集めると、3か月の期限に追われることになるからです。
なお、この制度は要件が細かいため、対象になるかどうかの最終判断は必ず市の窓口で確認してください。税制の要件にかかわる「管理計画認定」「助言・指導」については大和市建築指導課(電話046-260-5422)、申告手続きそのものは資産税課(家屋償却資産係046-260-5237)が窓口です。
【耐震】マンション耐震診断費補助金:まず「現状を知る」
次は耐震です。大和市には、分譲マンションの耐震診断にかかる費用の一部を補助する制度があります。「うちは大丈夫だろう」と思われがちですが、対象は昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認を得て新築工事に着手した、いわゆる旧耐震基準のマンションです。築40年を超える物件をお持ちの組合は、ぜひ一度確認してください(出典:大和市 マンション耐震診断費補助金制度)。
ここでいう「旧耐震基準」とは、現在の耐震基準(新耐震基準)が導入される前の古い基準のことです。大きな地震に対する想定が今より緩く、専門家による診断で安全性を確かめておく意味が大きい建物です。
対象と補助額
補助の対象になるのは、次の条件をすべて満たす分譲マンションです。昭和56年5月31日以前に建築確認を得て着工していること、区分所有者がいて住戸数の過半数が区分所有者の居住用であること、延べ面積の2分の1を超える部分が共同住宅であること、そして平面図・構造図などの建築図面があること。申請できるのは管理組合(団体または法人)です。
補助の中身は、診断の段階によって分かれています。
| 区分 | 内容 | 補助額 |
|---|---|---|
| 予備診断 | 簡易な方法で本診断の要否を判断 | 1棟あたり上限20万円 |
| 本診断(緊急輸送路を塞ぐおそれのあるもの) | 耐震改修促進法に基づく安全性評価 | 費用の3分の2(1棟あたり上限200万円。1,000平方メートル未満は1平方メートルあたり2,000円) |
| 本診断(その他) | 同上 | 費用の2分の1(1棟あたり上限150万円。1,000平方メートル未満は1平方メートルあたり1,500円) |
「緊急輸送路を塞ぐおそれのあるもの」とは、災害時に救助や物資輸送の動脈となる道路沿いの建物のことです。倒れると道路をふさいでしまうため、補助率が手厚く設定されています。自分のマンションが該当するかどうかは、事前相談の際に市が判断してくれます。
「事前相談」と「総会・理事会決議」がカギ
この補助で気をつけたいのが、手続きの順番です。予備診断・本診断のいずれも、申請の前に必ず市との事前相談が必要で、診断を実施する前には管理規約や細則に基づく総会または理事会の決議が求められます(出典:大和市 同ページ)。
つまり、「理事会で耐震診断を話題に出す」→「市へ事前相談する」→「総会・理事会で決議する」→「申請する」という流れを、年度のなかで段取りよく進める必要があります。受付期間はおおむね当該年度の4月頃から12月末頃までとされていますので、総会のタイミングから逆算して、早めに動き出すことをおすすめします。私はいつも、「耐震は、まず現状を数字で知るところから」とお伝えしています。診断結果がなければ、改修が必要かどうかも、住民への説明もできないからです。
【資金】住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」
制度を使っても、大規模修繕には相応の自己資金が必要です。積立金が計画どおりに貯まっていればよいのですが、現実には「2回目の修繕で積立金が足りない」という組合は少なくありません。そんなときの選択肢が、独立行政法人住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」です(出典:住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資 ご利用条件(管理組合申込みの場合))。
これは、管理組合が共用部分のリフォーム工事資金を借り入れるための、公的な長期・固定金利の融資です。利用にあたっては、管理規約で必要な事項が定められていること、総会で工事の実施・借入れ・修繕積立金からの返済などが決議されていることが条件になります。
ポイントは、後述する管理計画認定を受けたマンションや、耐震改修を伴う工事などでは金利の引き下げが受けられる場合があることです。また、公益財団法人マンション管理センターの保証を利用すると、無担保で借りられるなどのメリットがあります(出典:マンション管理センター 共用部分リフォーム融資と債務保証)。金利は毎月見直されますので、検討時には必ず最新の適用金利をご確認ください。
私は、融資ありきで工事を組むことはおすすめしません。ですが、「積立金の不足で必要な工事を先送りし、傷みが進んで結局高くつく」という事態こそ避けたいのです。資金の選択肢を知ったうえで、無理のない返済計画を立てる。これも理事長さまの大切な仕事だと思います。
【相談・認定】管理計画認定制度と無料の専門家相談
最後は、すべての土台になる「相談・認定」です。
管理計画認定制度——税制・融資とつながる「適正管理のお墨付き」
大和市は令和6年4月から、「マンション管理計画認定制度」を始めています。これは、適切な管理が行われているマンションの管理計画を市が認定する制度で、認定を受けるには国の指針に沿った16項目の基準を満たす必要があります。大和市には独自の上乗せ基準はなく、国の基準と同じ内容です(出典:大和市 マンション管理計画認定制度について)。
この認定が効いてくるのは、まさに前述の制度との「つながり」です。認定を取得したマンションは、適正に管理されている物件として市場での評価につながるうえ、長寿命化促進税制の入口要件になり、住宅金融支援機構の融資(フラット35やマンション共用部分リフォーム融資)の金利引き下げといったメリットも受けられます。大和市では制度開始から着実に認定が進んでおり、令和8年4月時点で21件のマンションが認定を受けています。
申請の前には、公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」で、国の基準に適合しているかの事前確認を受ける必要があります。この事前確認は講習を修了したマンション管理士が行い、適合すれば「事前確認適合証」が発行されます。利用料は10,000円(税込)で、市への申請手数料は当面の間かからないとされています(出典:マンション管理センター 管理計画認定手続支援サービス)。認定の有効期間は5年間で、申請には総会での決議が前提となります。
神奈川県・市の無料相談を使い倒す
「制度は分かったが、誰に相談すればいいのか」——これが理事長さまの本音だと思います。大和市の制度に関する一次窓口は建築指導課建築住宅係(電話046-260-5422)ですが、より幅広い管理運営や大規模修繕、耐震化、建替えなどの相談には、神奈川県の支援も活用できます。神奈川県は、マンション管理の専門家を管理組合へ派遣する支援や、役員・区分所有者向けのセミナー、相談窓口を用意しています(出典:神奈川県 マンション施策)。
私はいつも、「最初の一歩は、お金のかからない相談から」とお伝えしています。いきなり工事会社に見積もりを取る前に、公的な相談窓口で全体像を整理しておくと、後の判断がぶれません。
制度を「組み合わせて」使う:大規模修繕の進め方
ここまでの制度を、実際の大規模修繕の流れに当てはめてみましょう。私がおすすめしている順番は、次のとおりです。
- 長期修繕計画と積立金の点検——まず、今の計画と積立金で何ができるかを把握する。神奈川県や市の無料相談を入口に。
- 管理計画認定の取得を検討——税制・融資の入口になるため、早めに動く価値が大きい。事前確認から逆算してスケジュールを引く。
- (旧耐震の場合)耐震診断——事前相談・総会決議を経て補助を活用し、まず現状を数字で知る。
- 工事計画の確定と資金計画——3点セット工事(外壁・床・屋根)を軸に、自己資金と融資のバランスを設計。
- 工事の実施と、完了後3か月以内の税制申告——証明書を前さばきしておき、期限に追われない。
この順番が大切な理由は、冒頭で「順番が逆になると優遇を取り逃す」と申し上げたことに関係します。たとえば、管理計画認定や積立金の引き上げを済ませないまま工事を終えてしまうと、長寿命化促進税制の入口要件を満たせず、減額を受けられないことがあるのです。だからこそ、工事の中身を決める前に、制度の地図を広げておく必要があります。
3つの工法、それぞれの向き・不向き
大規模修繕の費用を左右する大きな要素が、外壁などにアクセスするための「足場」です。私たちは、建物の特性に応じて3つの工法をご提案しています。
- 通常足場工法:建物全体に仮設足場を架ける従来型。全面的な工事や複雑な形状に向きますが、足場の架設・解体に費用と工期がかかり、居住者の生活への影響(窓が開けにくい、防犯面の不安など)も大きくなりがちです。
- ロープアクセス工法(無足場工法):産業用ロープを使い、足場を架けずに職人が外壁面で作業する工法です。足場費を抑えられ、工期も短縮しやすく、居住者の生活への影響を最小化できます。高層部や、足場が架けにくい立地で特に効果を発揮します。ただし、全面的な打診調査や大面積の改修には不向きな場合もあります。
- ハイブリッド工法:足場とロープアクセスを部位ごとに使い分け、総合的なコストと工期を最適化する考え方です。大規模・複雑な物件で、無理なく費用を抑えたいときの選択肢です。
どれが正解かは、建物ごとに違います。私はこれを、必ず現地を見たうえでご提案するようにしています。ロープアクセスについてはロープアクセス工法のご紹介、大規模修繕の総合的な進め方については大規模修繕工事のご紹介もあわせてご覧ください。
「修繕積立金の引き上げ」を総会で通すために
長寿命化促進税制の入口にもなる「修繕積立金の引き上げ」。頭では必要と分かっていても、総会で住民の合意を得るのは簡単ではありません。私が現場で見てきたなかで、合意形成がうまくいく組合には共通点があります。
それは、「数字を、住民の財布感覚に翻訳して伝えている」ことです。たとえば「積立金が不足しています」だけでは動きません。「今のままだと2回目の修繕で○百万円足りず、一時金が1戸あたり△万円になる可能性があります。月△千円の引き上げで、それを避けられます」という形で、自分ごととして見える数字に変える。さらに、税制の減額や補助、融資といった「負担を軽くする選択肢」をセットで示すと、前向きな議論になりやすいのです。正直に申し上げます。値上げの提案は誰にとっても気が重いものですが、先送りのツケは必ず大きくなります。
よくある質問(大和市のマンション補助・税制)
Q1. 賃貸に出している区分所有者がいても、長寿命化促進税制の対象になりますか?
マンション全体として「専有部分の2分の1以上が居住用」などの要件を満たすかどうかで判断されます。一部に賃貸住戸があっても、ただちに対象外になるわけではありません。詳細は大和市資産税課にご確認ください。
Q2. 1回目の大規模修繕でも、固定資産税の減額は受けられますか?
この税制は「過去に長寿命化に資する大規模修繕工事を実施していること」が要件で、2回目以降の工事が対象です。1回目の工事は対象外となるため、長期的な計画のなかで位置づけて考える必要があります。
Q3. 旧耐震ではない(新耐震の)マンションですが、何か使える制度はありますか?
耐震診断補助は旧耐震が対象ですが、長寿命化促進税制や共用部分リフォーム融資、管理計画認定は新耐震のマンションでも活用できます。築年数や管理状況に応じて、使える制度は変わってきます。
Q4. 管理会社に任せているので、自分たちで動く必要はないのでは?
最終的に申請するのは管理組合です。管理会社と役割分担しながらも、理事会として制度の全体像を把握しておくことが、取りこぼしを防ぐ最大のポイントです。
まとめ:まず動くべき3つのこと
最後に、理事長さまに今日から動いていただきたいことを3つに絞ります。
第一に、長期修繕計画と修繕積立金の現状を確認すること。これがすべての出発点です。第二に、管理計画認定の取得を検討すること。税制と融資の入口になり、メリットが連鎖します。第三に、旧耐震のマンションなら、まず耐震診断の事前相談をすること。現状を数字で知ることから、すべてが始まります。
大和市と神奈川県には、無料で使える相談窓口があります。いきなり工事の話に進む前に、まずは制度の地図を広げてみてください。私たち明誠は、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つの工法から、建物にとって本当に必要な工事だけをご提案することを大切にしています。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください(お問合せフォーム)。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 大和市「大規模修繕等が行われたマンションに対する固定資産税の減額措置」
- 大和市「マンション耐震診断費補助金制度」
- 大和市「大和市マンション管理計画認定制度について」
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」
- 住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資 ご利用条件(管理組合申込みの場合)」
- 公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」/「共用部分リフォーム融資と債務保証」
- 神奈川県「マンション施策」
※本記事は2026年6月時点で公開されている公的情報をもとに作成しています。補助率・上限額・受付期間・要件は年度や予算枠によって変わることがあります。申請前には必ず各窓口の最新情報をご確認ください。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
厚木市の分譲マンション管理組合が使える補助金・税制活用ガイド|大規模修繕の負担を軽くする2026年度(令和8年度)の制度設計
「次の大規模修繕、いくらかかるんだろう」——厚木市内の分譲マンションで理事長を務める方から、最近こうしたご相談を続けていただいています。築20年を超えると、外壁の塗り替え、屋上やバルコニーの防水、給排水管の更新といった工事がまとまって押し寄せます。修繕積立金は足りるのか、住民の合意は取れるのか。理事長さまの肩には、重い宿題がのしかかります。
私は大規模修繕の現場で20年近く、足場の上とロープの先から建物を見てきました。そのなかで痛感しているのは、「使える制度を知らないまま工事をしてしまう管理組合が、本当に多い」ということです。厚木市には、分譲マンションの管理組合が活用できる税の優遇、耐震診断の補助、低利の公的融資、そして無料の専門家派遣がそろっています。知っているか知らないかで、組合の負担は数十万円から、規模によってはそれ以上変わってきます。
この記事では、厚木市の管理組合が2026年度(令和8年度)に使える制度を、現場目線で整理しました。専門用語にはそのつど補足を入れますので、建築にお詳しくない理事長さまも、最後までお付き合いください。ここからが本題です。
厚木市のマンション管理組合が使える支援制度【2026年度・一覧】
まず全体像を押さえましょう。厚木市の分譲マンション管理組合が、大規模修繕や維持管理の場面で活用できる主な制度は、大きく「税」「耐震」「資金」「相談」の4つに分けられます。
| 区分 | 制度名 | 概要 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| 税の優遇 | マンション長寿命化促進税制 | 一定要件を満たす長寿命化工事で翌年度の固定資産税が2分の1に減額 | 厚木市 資産税課 / 住宅課 |
| 耐震の補助 | 分譲マンションへの予備診断補助 | 耐震の予備診断費用の2分の1(上限15万円)を補助 | 厚木市 建築指導課 |
| 耐震の支援 | 耐震アドバイザー派遣 | 一級建築士が耐震診断の相談に無料で対応 | 厚木市 建築指導課 |
| 資金の調達 | マンション共用部分リフォーム融資 | 管理組合向けの低利・長期の公的融資(住宅金融支援機構) | 住宅金融支援機構 |
| 相談・支援 | 分譲マンションアドバイザー派遣/管理計画認定制度 | マンション管理士等の無料派遣と、管理の適正化を後押しする認定 | 厚木市 住宅課 |
ここで強調しておきたいのは、これらは「どれか一つを選ぶ」ものではなく、組み合わせて使う発想が大切だということです。私はいつも理事長さまに、「工事の中身を決める前に、まず使える制度の地図を広げてください」とお伝えしています。順番が逆になると、せっかくの優遇を取り逃すことがあるからです。理由は記事の後半でご説明します。
なお、各制度には年度ごとの受付期間や予算枠、細かな要件があります。本記事の数値は2026年6月時点で厚木市・国の公式情報を確認したものですが、申請前には必ず各窓口の最新情報をご確認ください。
【税】マンション長寿命化促進税制:固定資産税が2分の1に
最初にご紹介したいのが、令和5年度の税制改正で創設された「マンション長寿命化促進税制」です。これは、一定の要件を満たしたうえで長寿命化工事を実施したマンションについて、翌年度の建物部分の固定資産税を2分の1に減額する制度です。厚木市でも条例で導入されており、市の公式ページに要件が公開されています(出典:厚木市 長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する固定資産税の減額について)。
ここでいう「長寿命化工事」とは、次の3つを「すべて一体として」実施するものを指します。
- 外壁塗装等工事
- 床防水工事(廊下・バルコニーなどの防水)
- 屋根防水工事(屋上・屋根などの防水)
つまり、外壁・床・屋根の3点セットの工事です。大規模修繕の王道メニューそのものですから、多くの管理組合にとって、ふだんの修繕計画の延長線上にある話だとお考えください。なお「一体として」とは、同一の工事請負契約の中で行われる場合や、同一の総会決議で決議されている場合などを指します。3つをバラバラの年度・契約で実施すると要件を外れるおそれがあるため、ここは注意が必要です。
対象となるマンションの要件
この制度の対象になるには、厚木市が示すマンションの要件と工事の要件を「すべて」満たす必要があります。要点を理事長さま向けにかみ砕くと、次のとおりです。
- 新築から20年以上が経過している、10戸以上のマンションであること
- 過去に長寿命化工事を1回以上、適切に行っていること(=今回が2回目以降の長寿命化工事にあたること)
- 次のいずれかに該当すること
– 管理計画認定マンションのうち、令和3年9月1日以降に、長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の平均額を、認定基準まで引き上げたもの
– 厚木市(住宅課住宅政策係)から長期修繕計画に係る助言・指導を受けて、長期修繕計画を作成または見直し、一定の基準に適合することとなったもの - 令和5年4月1日から令和9年3月31日までの間に工事が完了するものであること
少し専門的なので、ポイントだけ。鍵になるのは要件3の「管理計画認定または市の助言・指導」と、「修繕積立金の引き上げ」です。日頃から修繕積立金をきちんと積み、長期修繕計画を整えている管理組合ほど、この税制に手が届きやすい設計になっています。逆に言えば、「2回目の大規模修繕を控えていて、積立金の見直しもこれから」という組合は、今から準備すれば令和9年3月の期限に十分間に合う可能性があります。
ここで一点、用語の補足です。「管理計画認定制度」とは、マンションの管理体制や長期修繕計画、修繕積立金の積み立て状況などが国の基準を満たしているかを市が認定する仕組みです。認定を受けると、この税制の入口に立てるだけでなく、後述する公的融資の金利引き下げなど、複数のメリットにつながります。
減額の中身:戸あたりで考える
減額されるのは、工事が完了した年の翌年度分の固定資産税です。減額される額は固定資産税額の2分の1で、対象は居住部分のみ。1戸あたり床面積100平方メートルまでが対象で、それを超える部分や、店舗・事務所部分、都市計画税は対象外です(出典:厚木市 同ページ)。なお、工事が1月2日から3月31日までに完了した場合は、翌々年度の固定資産税が減額対象になります。
「2分の1」と聞いてもピンとこないかもしれませんので、財布感覚に直してみましょう。仮に1戸あたりの建物分の固定資産税が年7万円のマンションなら、1戸あたり年3万5千円ほどの軽減です。50戸のマンションなら、組合全体で年間150万円規模の負担減になる計算です。1年分とはいえ、決して小さくありません。
申告の流れと注意点
この税制は、工事をすれば自動で適用されるものではありません。長寿命化工事の完了後3か月以内に、厚木市の資産税課(家屋・償却資産係)へ申告する必要があります。
申告には、固定資産税減額申告書のほか、建築士事務所に属する建築士などが発行する「大規模の修繕等証明書」、マンション管理士または建築士が発行する「過去工事証明書」、さらに管理計画認定マンションの場合は「管理計画認定通知書の写し」と「修繕積立金引上証明書」などの添付が求められます。証明書の準備には時間がかかりますので、工事の発注段階から、施工会社や管理会社と段取りを共有しておくことをおすすめします。私はこの「証明書の前さばき」を、いつも工事計画とワンセットでご案内するようにしています。完成してから慌てて集めると、3か月の期限に追われることになるからです。
制度の詳しい要件や証明書については、厚木市住宅課住宅政策係(電話046-225-2330)と、資産税課家屋・償却資産係(電話046-225-2031)が窓口です。
【耐震】予備診断補助と耐震アドバイザー派遣
厚木市は、分譲マンションの耐震化を後押しする制度も用意しています。とくに昭和56年(1981年)以前の旧耐震基準で建てられたマンションは、ここを起点に検討を始めるとよいでしょう。
分譲マンションへの予備診断補助
厚木市では、分譲マンションを対象に「予備診断」の費用を補助しています。予備診断とは、本格的な耐震診断の前に、建物の図面や現況をもとに耐震性のおおよその見当をつける、いわば一次スクリーニングです。補助額は予備診断に要する費用の2分の1で、上限15万円。管理組合の総会または理事会で予備診断の実施を決議していることが条件です(出典:厚木市 分譲マンションへの予備診断補助)。
対象となるのは、昭和56年5月31日以前に建築確認を受けて工事に着手したマンションで、住戸の過半が区分所有者の住居として使われ、住宅部分の床面積が全体の過半を占めるものです。「うちは旧耐震かもしれない」という管理組合は、まずこの予備診断から入るのが、費用面でも合意形成の面でも現実的です。
耐震アドバイザー派遣(無料)
もう一つ、ぜひ知っておいていただきたいのが「耐震アドバイザー派遣」です。市が委嘱した耐震アドバイザー(一級建築士)が管理組合に出向き、建物の耐震性について資料を用いて説明し、保存図書の有無や現場を確認したうえで、そのマンションに適した診断方法を助言してくれます。派遣費用は市が負担するため、管理組合の負担はありません(出典:厚木市 分譲マンションへの耐震アドバイザー派遣)。
理事会で「耐震診断をやるべきか」を議論する前に、まず専門家の話を無料で聞ける——これは合意形成の第一歩として非常に有効です。耐震に関する窓口は、厚木市建築指導課(電話046-225-2434)です。
【資金】住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資
補助や減税で負担を抑えても、大規模修繕にはまとまった初期費用が必要です。修繕積立金だけでは足りないとき、頼りになるのが住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)の「マンション共用部分リフォーム融資」です。これは管理組合が借入主体となって、共用部分の修繕資金を低利・長期で借りられる公的融資です。
注目すべきは、金利の引き下げ制度です。住宅金融支援機構によると、マンション管理計画認定を取得していると融資金利が年0.2%引き下げられます。さらに、耐震改修工事・浸水対策工事・省エネルギー対策工事を行う場合にも年0.2%、「マンションすまい・る債」の残高がある管理組合にはさらに年0.2%の引き下げが用意されています(出典:住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資の融資金利について)。
ここで先ほどの「管理計画認定」が、税制だけでなく融資の金利にも効いてくることに気づいていただけると思います。認定を取っておくことは、いわば複数の制度に共通する「鍵」なのです。借入を検討する管理組合は、金利情報が毎月見直される点も踏まえ、早めに資金計画を立てておくと安心です。
【相談】分譲マンションアドバイザー派遣と管理計画認定制度
最後は、これらすべての土台になる「相談・支援」の制度です。
分譲マンションアドバイザー派遣(無料)
厚木市は、維持管理に課題を抱える管理組合へ、マンション管理士などの専門家をアドバイザーとして無料で派遣しています。対象は、昭和58年5月31日以前に建設されたマンション、改修・建替えを検討しているマンション、長期修繕計画の作成・見直しを検討しているマンション、大規模修繕工事を予定しているマンション、組合員の高齢化などで管理機能が低下しているマンション、自主管理のマンションなど。利用は年度内2回までです(出典:厚木市 厚木市分譲マンションアドバイザー派遣【無料】)。
「大規模修繕を予定している」「長期修繕計画を見直したい」——まさに今、この記事をお読みの管理組合に当てはまる対象です。第三者の専門家に無料で相談できる機会は、ぜひ活用していただきたいと思います。なお、神奈川県も「マンションアドバイザー派遣事業」として、マンション管理士・建築士等を無料派遣しています(出典:神奈川県 マンションアドバイザー派遣事業)。市と県、二つの相談ルートがあると考えてください。
管理計画認定制度
そして、ここまで何度も登場した「管理計画認定制度」です。これは、長期修繕計画や修繕積立金、管理組合の運営体制などが国の基準を満たしているマンションを、市が認定する仕組みです。認定を受けると、適正に管理されたマンションとして市場での評価が高まるだけでなく、先ほどの固定資産税の減額や、住宅金融支援機構の融資金利の引き下げといった具体的なメリットにつながります(出典:厚木市 マンションの管理計画認定制度について)。
認定の申請前には、公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」で、国の基準に適合しているかを事前確認する流れになります。窓口は厚木市住宅課住宅政策係(電話046-225-2330)です。
制度は「順番」が命:管理計画認定を起点に組み立てる
ここまで個別に見てきた制度を、どう組み合わせるか。私が現場でお伝えしている考え方は、ひとつだけです。「管理計画認定」を起点に据えること。
なぜなら、固定資産税の2分の1減額も、融資金利の0.2%引き下げも、入口は管理計画認定(または市の助言・指導による長期修繕計画の適正化)だからです。工事の中身を先に決めてから「使える制度はないか」と探すと、認定や修繕積立金の引き上げが間に合わず、本来取れたはずの優遇を逃すことがあります。順番としては、(1)アドバイザー派遣で現状を診てもらい、(2)長期修繕計画と修繕積立金を整え、(3)管理計画認定を取り、(4)そのうえで工事の設計・発注と税・融資の手続きを並走させる——この流れが、もっとも無駄がありません。
時間がかかる手続きほど、前倒しが効きます。「次の大規模修繕は2年後」という組合こそ、今が制度準備のベストタイミングです。
工法の選択が、コストと住民負担を左右する
制度で負担を抑えたら、次は工事そのものの最適化です。ここは私たちの本業ですので、現場の知見を少しだけ。
大規模修繕の費用のうち、意外に大きいのが「足場」の仮設費用です。建物をぐるりと囲う仮設足場(建物の外周に組む作業用の足場)は、組み立て・解体・リース費だけで全体の1〜2割を占めることもあります。そこで近年広がっているのが、ロープアクセス工法です。これは産業用ロープで作業員が壁面を上下しながら施工する「無足場工法」で、足場費の削減、工期の短縮、そして足場がないことによる防犯面・生活面での住民負担の軽減が期待できます。
一方で、すべての建物にロープアクセスが最適なわけではありません。低層で複雑な形状の建物や、広い面積を一度に仕上げたい工事では、従来の足場のほうが効率的なこともあります。そこで私たちは、足場・ロープアクセス・両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物の形状・高さ・劣化状況・予算に応じて最適な組み合わせをご提案しています。3つの工法を自前で提案できる会社は、日本でも多くありません。制度で「入口」を、工法で「中身」を最適化する——この両輪で、管理組合の負担は大きく変わります。
実務の段取り表:いつ、何を、どこへ
「順番が大事」と言われても、具体的な時間軸が見えないと動きづらいものです。次の大規模修繕を2年後に控えた管理組合を例に、おおまかな段取りを整理してみました。あくまでモデルケースですが、検討の出発点にしてください。
| 時期の目安 | やること | 窓口・相手 |
|---|---|---|
| 2年前 | アドバイザー派遣で現状把握、建物の劣化と耐震の見当をつける | 厚木市 住宅課/建築指導課 |
| 1年半前 | 長期修繕計画の見直し、修繕積立金の水準を点検・必要なら引き上げ決議 | 管理組合(総会)・管理会社 |
| 1年前 | 管理計画認定の事前確認・申請、工事の基本計画と工法の比較検討 | マンション管理センター/厚木市 住宅課・施工会社 |
| 半年前 | 施工会社の選定、資金計画(自己資金+共用部分リフォーム融資)の確定 | 住宅金融支援機構・施工会社 |
| 着工〜完了 | 大規模修繕工事の実施、各種証明書の準備を並行 | 施工会社・建築士・マンション管理士 |
| 完了後3か月以内 | 固定資産税減額の申告 | 厚木市 資産税課 |
ご覧のとおり、税の優遇を受けるための「管理計画認定」や「修繕積立金の引き上げ」は、工事のかなり前から動き出す必要があります。ここを後回しにすると、工事は終わったのに減額が受けられない、という残念な結果になりかねません。
よくあるご質問
Q. 旧耐震ではない、比較的新しいマンションでも使える制度はありますか。
A. はい。固定資産税の長寿命化促進税制は、新築20年以上で過去に長寿命化工事を1回以上行っているマンションが対象です。築20年を超えていれば、旧耐震・新耐震を問わず検討できます。耐震の予備診断補助は旧耐震(昭和56年5月31日以前)が主な対象ですが、管理計画認定や共用部分リフォーム融資、アドバイザー派遣は築年数を問わず活用できます。
Q. 自主管理(管理会社に委託していない)のマンションでも相談できますか。
A. できます。厚木市の分譲マンションアドバイザー派遣は、自主管理のマンションも対象に明記されています。管理会社がいない分、第三者の専門家に相談する価値はむしろ大きいといえます。
Q. 固定資産税の減額は、管理組合がまとめて申請するのですか。
A. 減額の対象は各区分所有者の固定資産税ですが、申告手続きでは管理組合が証明書類の準備の中心的な役割を担います。証明書の取得には建築士やマンション管理士の関与が必要なため、工事の発注段階から管理組合・施工会社・専門家が連携して進めるのが現実的です。
Q. 補助や融資は、どのくらい早めに動けばよいですか。
A. 補助制度は予算枠があり、受付が先着順・期間限定のものもあります。融資の金利も毎月見直されます。「やると決めてから窓口へ」では間に合わないことがあるため、検討段階で一度、各窓口に問い合わせておくことを強くおすすめします。
まとめ:厚木の管理組合が、今日からできること
厚木市の分譲マンション管理組合には、固定資産税の2分の1減額、予備診断費の補助、無料の耐震アドバイザー派遣、低利の公的融資、そして無料の専門家派遣という、現実的な支援がそろっています。共通する鍵は「管理計画認定」と「長期修繕計画・修繕積立金の整備」です。
まずは、市の分譲マンションアドバイザー派遣(無料・年2回)に申し込み、自分たちの管理組合がどの制度に手が届くのかを棚卸しすることから始めてみてください。制度の地図を広げ、認定を取り、工法でコストを締める。この順番で進めれば、大規模修繕は「重い宿題」から「資産価値を守る投資」へと姿を変えます。私たちも、現場の立場から一緒に考えてまいります。
参考・出典(2026年6月時点)
- 厚木市 長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する固定資産税の減額について
- 厚木市 マンションの管理計画認定制度について
- 厚木市 分譲マンションへの予備診断補助
- 厚木市 分譲マンションへの耐震アドバイザー派遣
- 厚木市 厚木市分譲マンションアドバイザー派遣【無料】
- 住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資の融資金利について
- 神奈川県 マンションアドバイザー派遣事業
※本記事は2026年6月時点の公開情報をもとに作成しています。各制度には受付期間・予算枠・要件があり、内容は変更される場合があります。申請前に必ず各窓口で最新情報をご確認ください。
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