板橋区の管理組合が無料で使える相談・助成13選|令和8年度の新規助成4本は申請締切が令和8年12月28日、長期修繕計画は上限20万円・防災は上限100万円【令和8年度版】
2026年9月22日 更新
板橋区の理事長さまから、春先にこんなご相談をいただきました。
「長期修繕計画が15年前のまま止まっている。作り直したいが、見積を取ったら60万円と言われた。修繕積立金からそこまで出していいものか、理事会で結論が出ない」
築32年・7階建て・44戸の分譲マンションでした。私が外周をひと回りして打診棒(タイルを軽く叩き、音で浮きを判別する道具)を当てたところ、南面のタイルに浮きが出はじめている。ただ、まだ全面改修が必要な段階ではありませんでした。むしろ急ぐべきは、計画と資金の組み立て直しのほうです。
このとき私が申し上げたのは、ひとつだけです。「その60万円、板橋区が一部を持ってくれる制度が令和8年度から始まっています」。
板橋区は令和8年度、分譲マンション向けの助成を4本まとめて新設しました。長期修繕計画の作成費、都のアドバイザー制度の利用料、建替え・改修アドバイザーの利用料、そしてマンション防災。いずれも「板橋区 令和8年度新規事業」として区のホームページにまとまっています。しかも、4本とも申請締切が令和8年12月28日で、予算の上限に達し次第終了です。
申し遅れました。私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組んで建物をすっぽり囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も自分の足で踏んできた人間です。
今日は、板橋区の管理組合と収益不動産オーナーさまが令和8年度に使える相談・派遣・助成を13個、一次情報で整理します。
結論:板橋区で使える支援は13ある
先に一覧でお示しします。費用がゼロのものと、費用の一部または全額が戻るものを分けました。
| # | 制度・窓口 | 誰が対応するか | 費用 | 申込先 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 板橋区マンション管理士会 無料相談会 | マンション管理士 | 無料/毎月第2日曜 13:00〜16:30 | 080-5503-2422(予約担当:坂本) |
| 2 | 東京都マンション管理士会 板橋支部 無料相談会 | マンション管理士 | 無料/毎月第1日曜 13:00〜16:00(受付15:30まで) | 090-6932-1416(事務局:森田) |
| 3 | 東京都 分譲マンション専門相談 | 弁護士(月3回)/一級建築士(月1回) | 無料/1件20分程度・完全予約制 | 板橋区住宅政策課 03-3579-2730 |
| 4 | 東京都 分譲マンション総合相談窓口 | マンション管理士 | 無料/Zoom相談あり | 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-6427-4900 |
| 5 | 東京都 マンションアドバイザー無料派遣 | マンション管理士等 | 無料(管理状況届の受理が条件) | 同センター 03-5989-1453 |
| 6 | 板橋区 マンション管理アドバイザー制度への助成 | — | 利用料を全額助成(テキスト代除く) | 住宅政策課 03-3579-2730 |
| 7 | 板橋区 マンション建替え・改修アドバイザー制度への助成 | — | 利用料を全額助成(テキスト代除く) | 住宅政策課 03-3579-2730 |
| 8 | 板橋区 長期修繕計画作成費の助成 | — | 上限20万円(税抜経費) | 住宅政策課 03-3579-2730 |
| 9 | 板橋区 マンション防災の助成(防災備蓄資器材) | — | 上限50万円/年度内1回 | 住宅政策課 03-3579-2730 |
| 10 | 板橋区 マンション防災の助成(非常用電源等) | — | 上限100万円/年度内1回 | 住宅政策課 03-3579-2730 |
| 11 | 板橋区 区民相談室 法律相談 | 弁護士 | 無料/30分以内・年度内3回 | 区民相談室 03-3579-2288 |
| 12 | 板橋区 区民相談室 建築相談 | 建築士 | 無料/木曜・45分以内 | 区民相談室 03-3579-2288 |
| 13 | 板橋区 区民相談室 不動産取引相談・登記相談 | 宅地建物取引士/司法書士 | 無料/45分以内・40分以内 | 区民相談室 03-3579-2288 |
1〜5と11〜13がお金のかからない相談・派遣、6〜10が令和8年度から始まった助成です。順番に見ていきます。
令和8年度から始まった板橋区の4つの新規助成
ここが板橋区の今年の目玉です。区は「令和8年度新規事業」というページを立て、4つの助成をまとめて公表しています(更新日2026年6月11日)。
| 助成 | 上限・内容 | 申請締切 |
|---|---|---|
| マンション管理アドバイザー制度(都制度)への助成 | Aコース・Cコースの利用料(テキスト代除く)。Aコース年度内3回、Cコース年度内2回 | 令和8年12月28日(必着) |
| マンション建替え・改修アドバイザー制度(都制度)への助成 | Aコース・Bコースの利用料(テキスト代除く)。Aコース年度内3回、Bコース年度内1回 | 令和8年12月28日 |
| 長期修繕計画作成費の助成 | 作成に要する経費(消費税等を除く)、上限20万円 | 令和8年12月28日(必着) |
| マンション防災の助成 | 防災備蓄資器材 上限50万円/非常用電源等 上限100万円/地域開放 1回につき上限5万円 | 令和8年12月28日(月曜日) |
(出典:板橋区「令和8年度新規事業」)
4本に共通する注意点を、先に3つ挙げます。ここを外すと、使えるはずの助成が使えなくなります。
ひとつ目。4本とも「予算の上限に達し次第終了」と明記されています。 締切は令和8年12月28日ですが、その日まで枠が残っている保証はありません。本記事執筆時点(2026年9月22日)で予算残額は公表されていませんので、検討中であれば住宅政策課(03-3579-2730)に残枠の状況を確認するのが確実です。
ふたつ目。申請は「事前」です。 管理アドバイザー助成と建替え・改修アドバイザー助成は「必ず公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターに利用を申し込む前」に申請が必要で、区は「申込後の申請はできません」と明記しています。長期修繕計画作成費の助成も「作成(または見直し)を開始する前」。防災助成は「事前相談」から始まります。先に動いてから申請する、は通りません。
みっつ目。令和8年度に限った経過措置があります。 4本のうち3本には、令和8年4月1日から令和8年11月30日までに料金を振り込んだ、あるいは契約した案件でも対象になる経過措置が設けられています。制度開始前に動き出してしまった管理組合の救済措置です。心当たりがあれば、諦める前に一本電話をかける価値があります。
長期修繕計画作成費の助成:上限20万円、ただし要件は10項目
大規模修繕を考えている管理組合にとって、いちばん出番が多いのはこれだと思います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成額 | 計画作成に要する経費(消費税及び地方消費税相当額を除く)、上限20万円 |
| 主な要件 | 区の条例に基づくマンション管理状況届を提出済/おおむね築5年以上/管理規約が制定されている/長期修繕計画が未作成、または既存計画を申請日以前に7年以上見直していない/作成と経費について総会で決議済/過去に本制度の助成を受けていない |
| 対象となる計画 | マンション管理計画の認定基準を満たす計画。国土交通省の長期修繕計画標準様式・作成ガイドラインに沿って作成 |
| 申請締切 | 令和8年12月28日まで(必着) |
| 提出先 | 郵送(〒173-8501 板橋区板橋二丁目66番1号 住宅政策課マンション政策係)または板橋区役所本庁舎北館5階14番窓口 |
(出典:板橋区「長期修繕計画作成費の助成」/更新日2026年6月11日)
見落とされやすいのが「既存の長期修繕計画がある場合、申請日以前に7年以上見直していない」という条件です。国のガイドラインは5年程度ごとの見直しを推奨していますから、真面目に5年ごとに更新してきた管理組合は対象外になります。逆に言えば、「うちの計画、もう10年以上いじっていない」という管理組合こそ、この助成の想定読者です。
申請に必要な書類も具体的です。申請書(第1号様式)、検査済証や登記簿謄本など工事完了日または新築年月日が確認できるもの、管理規約の写し、作成決議に係る集会の議事録の写し、見積書の写し、既存計画がある場合はその写しと決議議事録の写し、現在の理事長が確認できるもの。見積書と総会議事録が必要という点は、スケジュールに直結します。総会が年1回の管理組合なら、逆算して動く必要があります。
顧問契約しているマンション管理士が計画を作成する場合、作成に係る経費のみが対象で、顧問料は対象外です。ここも実務上よく問題になります。
マンション防災の助成:非常用電源等は上限100万円
もうひとつ金額の大きいのが防災助成です。
| 区分 | 上限額 | 回数 |
|---|---|---|
| (1)防災備蓄資器材購入費用 | 50万円 | 年度内1回 |
| (2)非常用電源等購入費用 | 100万円 | 年度内1回 |
| (3)災害・救命用具を地域開放したときの費用 | 1回につき5万円 | 備蓄品の使用後の補填は同一年度2回まで |
(出典:板橋区「マンション防災の助成」/更新日2026年8月28日)
対象物品が細かく列挙されているのが、この助成の特徴です。スタンドパイプ、階段避難車、救急用はしご、AED(リースを除く)、トランシーバー、簡易トイレ、エレベーター用防災キャビネット。非常用電源側では発電機、蓄電池、折り畳み式ソーラーパネル、投光器。浸水対策として止水板・止水パネル・排水ポンプ・逆流防止弁なども入っています(工事を伴わないものに限る、という条件付きです)。
ただし、対象は「板橋区管理計画認定マンションの管理組合」に限られます。しかも「管理計画の認定の更新(認定の5年ごと)の見込みがあること」まで求められます。つまり、認定を取っていない管理組合は、まず認定のほうから着手する必要がある。ハードルは正直に言って高めです。
防災備蓄資器材を申請する場合は、合同防災訓練計画書(第2号様式)と、地縁団体等との連携・位置関係が分かる書類も必要で、交付決定後に実際の訓練実施が求められます。「買って終わり」ではなく「地域と一緒に使うこと」が条件、と理解しておくのが正確です。実績報告は原則として令和9年3月31日までです。
すべての入口は「マンション管理状況届」
ここまで読んで、お気づきの方もいると思います。板橋区の助成も、東京都の無料派遣も、前提条件がほぼ共通しています。
平成30年7月1日に施行された「東京都板橋区良質なマンションの管理等の推進に関する条例」により、区内のすべてのマンションの管理者等には、管理状況を区へ届け出ることが義務づけられています。区はこの届出について「必要に応じてアドバイザー派遣制度やマンション管理セミナー等の適切な支援等を実施していくことも大きな目的の一つ」と説明しています。
(出典:板橋区「【板橋区】分譲マンションの管理状況届出制度について」/更新日2026年6月10日)
届出書類は区のページからPDFまたはExcelでダウンロードでき、郵送またはメール(mansion@city.itabashi.tokyo.jp)で提出できます。窓口へ出向く必要はありません。
東京都側も同じ構造です。東京都防災・建築まちづくりセンターは、管理状況届出制度の届出が受理された管理組合に対して、マンションアドバイザー(管理アドバイザーA・Bコース、建替え・改修アドバイザーAコース)を1回まで無料、管理不全の兆候があるマンションについては5回まで無料で派遣しています。各コース1回あたり2時間程度です。
(出典:(公財)東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」)
講座編(Aコース)には「長期修繕計画作成ガイドライン活用の手引きの解説」「計画修繕工事の進め方」、相談編(Bコース)には「修繕工事検討段階での相談」「修繕工事準備段階での相談」があります。B-5①は建物・設備の劣化状況の調査・診断や修繕工事の方式、B-5②は工事内容・業者選定の仕方・合意形成。大規模修繕の入口として、ほぼそのまま使える内容です。
届出1枚で、これだけの支援の扉が開く。 板橋区でいちばんもったいないのは、この届出が未提出のまま眠っている管理組合だと、私は思っています。
なお、外壁の劣化がどこまで進んでいるかを客観的に把握する方法については、明誠のロープアクセス工法による外壁調査の考え方をご覧いただくと、足場を組まずにどこまで見られるのかが分かります。技術的な仕組みそのものを深く知りたい方は、同業者向けに書いている姉妹サイトロープアクセスドットコムのほうが詳しいです。
板橋区で毎月2回開かれる管理士会の無料相談会
助成の話が続きましたので、完全に無料の窓口に戻ります。
板橋区の特徴は、区が後援する無料相談会が月2回あることです。しかも会場が同じ板橋区立グリーンホール(板橋区栄町36-1)。
| 主催 | 開催日時 | 予約先 |
|---|---|---|
| 板橋区マンション管理士会 | 毎月第2日曜 13:00〜16:30 | 080-5503-2422(予約担当:坂本) |
| (一社)東京都マンション管理士会 板橋支部 | 毎月第1日曜 13:00〜16:00(受付は15:30終了) | 090-6932-1416(事務局担当:森田) |
(出典:板橋区「マンション管理士会による無料相談会」/更新日2026年6月10日)
どちらも予約優先です。板橋区マンション管理士会は「予約なしで来場の場合、当日の状況によりお断りすることがある」と明記しています。東京都マンション管理士会板橋支部は事前予約なしでも受付しますが、重複した場合は予約者が優先されます。
日曜開催という点は、地味ですが大きい。理事の多くが現役で働いている管理組合にとって、平日日中の窓口は実質的に使えません。月2回、日曜午後に専門家と話せる場が区内にあるというのは、23区の中でも使い勝手のよい部類です。
会場手配ができない場合は中止になることがあるため、訪問前に一度お電話を。
東京都の無料相談・無料派遣を重ねて使う
区の制度と都の制度は、併用を前提に組み立てるのが効率的です。
東京都分譲マンション専門相談(弁護士・一級建築士)
東京都が、特に弁護士または一級建築士に相談することが必要と考えられる相談に対応します。無料・完全予約制です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 相談日 | 弁護士:月3回/一級建築士:月1回(都が指定した日) |
| 相談時間 | 1件20分程度 |
| 場所 | 都庁第二本庁舎 13階 南 |
| 申込 | 板橋区を通じて申し込む。住宅政策課 03-3579-2730 |
| 制度の問い合わせ | 東京都住宅政策本部 民間住宅部 マンション課 03-5320-5004 |
(出典:板橋区「東京都による分譲マンションの相談窓口」/更新日2026年6月10日)
一級建築士に無料で20分。これは建物側の相談ができる数少ない公的窓口です。相談日は月によって異なるため、板橋区住宅政策課への確認が必要になります。
東京都分譲マンション総合相談窓口
分譲マンションの管理や建替え、改修に関する相談に、マンション管理士が総合的に答える窓口です。相談は無料。
- 相談日:月曜〜金曜、第1土曜・第3日曜(祝日、年末年始を除く)
- 相談時間:9:00〜17:00(毎週水曜は延長あり)
- 方法:電話、メール、ファクス、対面に加え、Zoomによるweb相談(1週間前までに要予約)
- 問い合わせ:(公財)東京都防災・建築まちづくりセンター 03-6427-4900
相談内容の例として、区のページは「大規模修繕工事の検討や準備に関する相談」「改修や建替えに向けた合意形成のアドバイス」を挙げています。Zoom対応があるので、理事会の場に画面をつないで、その場で聞くという使い方もできます。
板橋区の区民相談室で使える11種目——建築相談が効く
多くの区で見落とされているのが、住宅部門ではなく広聴部門が持っている相談室です。板橋区の区民相談室は11種目を用意しており、マンション管理に関係するものが複数あります。
| 種目 | 担当 | 日時 | 時間 |
|---|---|---|---|
| 法律相談 | 弁護士 | 月〜金 13:00〜16:00(水曜夜間17:00〜19:00、水曜は赤塚支所でも実施) | 30分以内 |
| 建築相談 | 建築士 | 木曜 13:00〜16:00 | 45分以内 |
| 不動産取引相談 | 宅地建物取引士 | 火曜 13:00〜16:00 | 45分以内 |
| 登記相談 | 司法書士 | 木曜 13:00〜16:00 | 40分以内 |
(出典:板橋区「区民相談室」/更新日2026年9月7日)
- 場所:板橋区板橋二丁目65番6号 板橋区情報処理センター4階
- 予約電話:03-3579-2288(受付9:00〜17:00、水曜は19:00まで)
- 予約開始:相談希望日の1週間前(同じ曜日)の9時から、先着順
- 法律相談は年度内(4月1日〜翌3月31日)に3回まで。無断欠席も1回として数えられます
- 法律相談はZoomでのオンライン相談も可能(平日14:15〜14:45の1枠)
注意点をふたつ。対象は「区内在住・在勤・在学の個人」で、法人は対象外です。また法律相談について区は「法人等の営業上の相談はお受けしておりません」と明記しています。収益不動産を法人名義で所有されている方は、この窓口ではなく東京都分譲マンション専門相談や、次に述べる民間のセカンドオピニオンをお使いいただくことになります。
そのうえで、木曜の建築相談(建築士・45分以内)は覚えておく価値があります。「新築・増改築前後の手続き、設計・施工・請負契約など」が相談範囲ですので、大規模修繕の請負契約書を持ち込んで第三者の目を通す、という使い方が考えられます。45分は決して短くありません。
お金の話:板橋区で大規模修繕を検討するときの目安
制度の話ばかりでは実感が湧かないと思いますので、費用の目安も出しておきます。すべて参考値のレンジです。実際の見積は建物の形状・劣化状況・立地によって大きく変動します。
| 工種 | ㎡単価の目安 |
|---|---|
| 外壁塗装 | 3,500〜4,500円/㎡ |
| 外壁打診調査 | 250〜500円/㎡ |
| 屋上・バルコニー防水 | 5,000〜8,000円/㎡ |
30戸規模のマンションで大規模修繕を一巡させると、総額のレンジは3,500〜5,000万円程度。このうち仮設足場が15〜25%を占めます。足場だけで500万〜1,200万円という計算です。
私がロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が懸垂し、足場を組まずに外壁作業を行う無足場工法)をご提案することが多い理由は、ここにあります。10階建て・外周80m・工期3か月というモデルケースでは、足場の仮設費が約168万円に対し、ロープアクセスなら約59万円。差額は約109万円です。
ただし、どんな建物でもロープアクセスが最適というわけではありません。低層で形状が複雑な建物、外壁の改修範囲が広い建物は、足場を組んだほうが総合コストで有利になります。だからこそ明誠では、通常足場・ロープアクセス・両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから選べる体制をとっています。3工法を自社で提案できる会社は、国内でも多くありません。料金の考え方は明誠の大規模修繕の料金の考え方にまとめています。
株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けています。この安全体制の詳細はロープアクセスドットコムで公開しています。安全管理の考え方は明誠の安全管理への取り組みもあわせてご覧ください。
板橋区は、高島平・志村・常盤台・大山・成増と、地域ごとに建物のストック年齢が大きく異なる区です。高島平のように昭和40年代後半から50年代の大規模団地・マンションが集中する一角もあれば、板橋・大山周辺のように再開発が進んだ一角もある。同じ板橋区でも、打つべき手はまったく違います。
相談に行くとき、何を持っていけばいいか
20分や30分、45分という枠を最大限に使うために、私がいつもお伝えしている3点セットがあります。
- 直近3期分の総会議事録 — 何が決まり、何が先送りされてきたかが一目で分かります
- 長期修繕計画書 — 更新が10年以上止まっていても構いません。むしろ止まっていること自体が相談材料であり、板橋区の助成の対象要件(7年以上見直していない)にも直結します
- 管理規約(最新版) — 標準管理規約は令和7年に改正されています。自組合の規約がどの版に準拠しているかで、打てる手が変わります
余裕があれば、修繕積立金の残高が分かる直近の決算書と、気になっている箇所のスマホ写真を加えてください。写真は強力です。「南面3階のバルコニー下に白い筋が出ている」と口で説明するより、1枚見せたほうが専門家の判断は速くなります。
法令面では、令和7年5月30日公布の「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律」(令和7年法律第47号)が令和7年11月28日に一部施行されています。建替えや大規模な改修を視野に入れている管理組合は、この改正を踏まえた助言を受けられるかどうかで、相談の価値が変わってきます。
よくあるご質問
Q. 板橋区の4つの新規助成は、管理状況届を出していないと使えませんか?
A. 管理アドバイザー助成と長期修繕計画作成費の助成は、いずれも「区の条例に基づくマンション管理状況届が提出済み」が要件として明記されています。建替え・改修アドバイザー助成はさらに管理計画認定の取得(Aコースは検討中も可)、防災助成は板橋区管理計画認定マンションであることが条件です。まず届出、というのが順序になります。
Q. 長期修繕計画の作成費用はどれくらいかかりますか?
A. 建物規模や委託先によりますが、30〜50戸規模の分譲マンションで数十万円程度が一つの目安です。板橋区の助成は税抜経費の上限20万円ですので、たとえば60万円(税抜)の計画作成なら20万円が助成の上限額に当たります。劣化診断を伴う場合は別途費用がかかります。明誠では概算のお見積りを無料でお出ししていますので、金額感の確認だけでもお声がけください。
Q. 助成の申請は工事や計画作成を始めた後でもできますか?
A. 原則としてできません。区は「必ず利用を申し込む前に申請してください。申込後の申請はできません」(アドバイザー助成)、「作成を開始する前に申請」(長期修繕計画助成)と明記しています。ただし令和8年度に限り、令和8年4月1日から令和8年11月30日までに料金を振り込んだ、または契約した場合の経過措置が用意されています。該当しそうであれば住宅政策課(03-3579-2730)にご相談ください。
Q. 予算がなくなったらどうなりますか?
A. 4本とも「予算の上限に達し次第終了」と区が明記しています。申請締切の令和8年12月28日まで枠が残っている保証はありません。本記事執筆時点(2026年9月22日)で予算残額は公表されていませんので、検討中の管理組合は早めに残枠の状況をご確認ください。
Q. 大規模修繕の工期は、足場とロープアクセスでどれくらい違いますか?
A. ロープアクセス工法は足場の組立・解体の期間がまるごと不要になるため、足場工法のおよそ60%の工期が目安です。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場工法で3か月程度のところ、ロープアクセスなら1.5〜2か月程度になります。ただし改修範囲が広い場合は差が縮まります。
Q. 足場を組まないと、住民への負担は本当に減るのですか?
A. 足場とメッシュシートで建物を囲うと、日照と通風が数か月にわたって制限され、防犯上の不安も出ます。ロープアクセスは作業する面だけを順に進めるため、影響が及ぶ期間と範囲が限定されます。板橋区のように店舗併設や賃貸併用の物件が多い地域では、営業への影響という観点でも差が出ます。
Q. 管理会社を通さずに、明誠に直接相談してもいいのでしょうか?
A. もちろんです。セカンドオピニオンとしてお使いいただくケースが一番多いです。既存の見積書を拝見して、数量と単価の妥当性を一緒に確認するだけでも結構です。お問合せフォームからご連絡ください。管理組合向けのご案内は明誠の管理組合向けサービスにまとめています。
Q. 賃貸マンションのオーナーでも使える制度はありますか?
A. 板橋区の4つの助成と区の管理状況届出制度は、いずれも分譲マンションの管理組合が対象です。賃貸マンションのオーナーさまは区民相談室の建築相談・不動産取引相談(区内在住・在勤・在学の個人が対象)や、民間の第三者による診断をご検討ください。収益物件の維持管理については明誠のオーナー向けサービスをご覧ください。
まとめ:今週、板橋区の管理組合が動けること3つ
長くなりましたので、動き出しの3手に絞ります。
1. マンション管理状況届の提出状況を確認する
平成30年施行の区条例により、区内の全マンションに届出義務があります。届出が受理されれば、東京都のマンションアドバイザー派遣が無料になり、板橋区の助成の入口にも立てます。届出書類は区のページからダウンロードでき、メール(mansion@city.itabashi.tokyo.jp)でも提出できます。
2. 住宅政策課(03-3579-2730)に電話して、助成の残枠を聞く
4本とも締切は令和8年12月28日ですが、予算上限に達し次第終了です。特に長期修繕計画作成費の助成は総会決議と見積書が必要ですので、年内の理事会・総会スケジュールから逆算する必要があります。
3. 次の日曜の無料相談会を理事会カレンダーに入れる
第1日曜は東京都マンション管理士会板橋支部、第2日曜は板橋区マンション管理士会。どちらも板橋区立グリーンホールで、どちらも無料です。予約は電話一本。ここで「うちのマンションは助成の要件を満たすか」を整理しておくと、区役所への電話が具体的になります。
板橋区の令和8年度は、正直に申し上げて、分譲マンション支援としてかなり手厚い年です。長期修繕計画に20万円、防災に最大100万円、都のアドバイザー利用料は全額。これだけの制度が同時に走る年度は、そう多くありません。
一方で、どれも事前申請が絶対条件で、予算枠があるという共通の制約を持っています。制度は、知っていて、かつ順番を守った管理組合にしか届きません。
私は現場でこう思うことがあります。管理組合が損をするのは、悪い業者に当たったときよりも、相談しないまま時間だけが過ぎたときのほうがずっと多い、と。壁の浮きも、防水の切れも、待っていて良くなることはありません。
明誠のこれまでの明誠の施工事例もあわせてご覧いただければ、実際にどんな建物でどんな判断をしてきたかが伝わると思います。板橋区の物件で、区や都の制度を使いながら進めた案件もあります。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。
出典・参考資料
- 板橋区「令和8年度新規事業」(更新日2026年6月11日)
- 板橋区「マンション管理アドバイザー制度(都制度)への助成」(更新日2026年6月11日)
- 板橋区「マンション建替え・改修アドバイザー制度(都制度)への助成」(更新日2026年6月11日)
- 板橋区「マンション防災の助成」(更新日2026年8月28日)
- 板橋区「長期修繕計画作成費の助成」(更新日2026年6月11日)
- 板橋区「マンション管理士会による無料相談会」(更新日2026年6月10日)
- 板橋区「東京都による分譲マンションの相談窓口」(更新日2026年6月10日)
- 板橋区「【板橋区】分譲マンションの管理状況届出制度について」(更新日2026年6月10日)
- 板橋区「マンション管理計画認定制度」(認定マンション一覧は令和8年9月15日更新)
- 板橋区「区民相談室」(更新日2026年9月7日)
- (公財)東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」
- 国土交通省「マンションの管理計画認定の基準」(PDF)
- 国土交通省「長期修繕計画標準様式・作成ガイドライン・同コメント」(PDF)
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月22日時点で公表されている東京都板橋区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特に本記事で紹介した板橋区の4つの助成は「予算の上限に達し次第終了」とされています。実際に申請される前に、必ず東京都板橋区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月22日
練馬区のマンション管理計画認定制度|令和8年度の区手数料は4,100円・認定基準は20項目【大規模修繕2026年度版】
先月、練馬区・石神井町のマンションで理事長さまから「認定を取りたいが、うちは防災訓練をやっていない」というご相談をいただきました。
その方は制度をよく調べておられました。そして正しく気づいておられました。練馬区の管理計画認定は、防災訓練をやっていないと通りません。
これは国の認定基準には無い話です。練馬区が独自に足している基準です。逆に言えば、練馬区の管理組合さまが「国の17項目だけ見て準備した」場合、最後の最後で足踏みします。
私は大規模修繕の現場を20年以上見てきました。練馬区の分譲マンションは1,549棟。そのうち築30年以上が約37.1%を占めます(出典:練馬区マンション管理適正化推進計画、令和8年3月策定)。数字から整理していきます。
結論:練馬区で管理計画認定を取ると何が変わるか
先に一覧にします。
| 論点 | 練馬区の場合 |
|---|---|
| 認定主体 | 東京都ではなく練馬区(特別区は区が認定主体) |
| 認定基準の項目数 | 20項目(国17+練馬区独自3) |
| 区独自基準 | 災害対応マニュアル/防災訓練/温室効果ガス削減の表明保証 |
| 新規申請の区手数料 | 4,100円(長期修繕計画2つ目以降は1件あたり+1,800円) |
| 更新申請の区手数料 | 新規と同額(4,100円) |
| 事前確認適合証 | 必須(区へ直接申請するルートは設けられていない) |
| 認定の有効期間 | 5年。満了日前の6か月以内に更新手続き |
| 区内の認定件数 | 35件(令和8年2月末時点/東京都全体1,065件の約3.3%) |
出典:練馬区「練馬区マンション管理計画認定制度」(更新日:2026年4月15日)
区への手数料4,100円という数字は、23区のなかでもかなり低い水準です。たとえば板橋区は新規申請で24,200円(支援サービス利用時)です。練馬区は「お金の壁」がほとんど無い区だと言えます。
その代わり、中身の壁があります。そこを順に見ていきます。
練馬区の認定主体と窓口
特別区の区域では、その区が認定主体になります。練馬区内の分譲マンションであれば、東京都ではなく練馬区長が認定します。
窓口は練馬区建築・開発担当部 住宅課 管理係、電話03-5984-1289(直通)です。区は「来庁される場合は事前連絡が必要です」と明示しています。予約なしで行っても手続きは進みません。
対象は練馬区内にある分譲マンションの管理組合です。申請にあたっては管理組合の集会(総会等)での決議が必要になります。ワンオーナーの賃貸マンションは対象外です。
認定基準は20項目:国の17項目に、練馬区が3つ足している
国が定める認定基準は5分野17項目です。(公財)マンション管理センターの整理に沿って並べます。
管理組合の運営(3項目)
- 管理者等が定められていること
- 監事が選任されていること
- 集会(総会)が年1回以上開催されていること
管理規約(3項目)
- 管理規約が作成されていること
- 災害等の緊急時の専有部立ち入り、修繕等の履歴情報の管理について規約に定めがあること
- 財務・管理に関する情報の書面交付(または電磁的方法による提供)について規約に定めがあること
管理組合の経理(3項目)
- 管理費と修繕積立金等を明確に区分して経理していること
- 修繕積立金会計から他の会計への充当がないこと
- 直前年度末時点で、修繕積立金の3か月以上の滞納額が全体の1割以内であること
長期修繕計画の作成及び見直し等(6項目)
- 長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠して作成され、計画内容と修繕積立金額が総会で決議されていること
- 長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われていること
- 計画期間が30年以上で、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれること
- 将来の一時的な修繕積立金の徴収(一時金)を予定していないこと
- 計画期間全体での修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと
- 計画期間の最終年度に借入金の残高がない計画となっていること
その他(2項目)
- 組合員名簿・居住者名簿を備え、年1回以上内容を確認していること
- 練馬区マンション管理適正化指針に照らして適切であること
(出典:公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」。基準の詳細は国土交通省の事務ガイドライン令和8年3月改訂版に拠ります)
そして、ここに練馬区が3項目を足します。
練馬区の独自基準(3項目)
- 災害対応マニュアルを作成していること
- 定期的に防災訓練を実施していること
- 修繕に関して、温室効果ガスの排出量の削減に努めること(表明保証書の提出)
出典:練馬区「認定基準」
私の現場感覚でお伝えすると、国の17項目で引っかかるのは圧倒的に11・12・14です。7年以内に見直していない、計画期間が25年しかない、積立金が国のガイドライン水準を大きく下回る。この3つです。
そして練馬区では、これに18・19が上乗せされます。「規約はある、長期修繕計画もある、でも防災訓練は10年やっていない」という管理組合は、決して珍しくありません。
練馬区の独自基準は、事前確認では見てもらえない
ここが最大の落とし穴です。
(公財)マンション管理センターの事前確認では、地方公共団体の独自基準は確認の対象外とされています。センター自身が明記しています。
つまり、事前確認適合証が出ても、練馬区の18〜20が満たせていなければ認定は下りません。区が申請の流れのSTEP1に「区へ事前相談」を置き、「練馬区の独自基準認定等について、事前に相談をお願いします」と書いているのは、この順番を守ってほしいからです。
もうひとつ、練馬区で押さえておくべき点があります。マンション管理センターの支援サービスには5つの申請パターンがあり、パターン⑤は「管理組合が直接地方公共団体に申請する場合(事前確認なし)」です。しかし練馬区は申請の流れのSTEP3で事前確認適合証の取得を必須としています。事前確認を省くルートは用意されていない、と理解してください。
また、支援システムでオンライン申請をしただけでは手続きは終わりません。区の住宅課窓口へ、2部ずつの書類提出と手数料納付が別途必要です。
区へ持参する3点(各2部)
- 災害対応マニュアルの写し
- 防災訓練実施報告書、もしくは定期的な防災訓練の実施が確認できる書類の写し
- 表明保証書(修繕に関して温室効果ガスの排出量の削減に努めること)
2と3は区が様式(Word)を公開しています。災害対応マニュアルの作成にあたっての留意点は、区の「申請の手引き」23ページに記載があります。
費用の全体像:区に払うのは4,100円だが、総額はそれだけではない
練馬区の管理組合さまによく誤解されるところなので、表で整理します。
| 費目 | 金額 | 支払先 |
|---|---|---|
| 区の認定手数料(新規) | 4,100円 | 練馬区 |
| 長期修繕計画2つ目以降の加算 | 1件あたり1,800円 | 練馬区 |
| システム利用料 | 10,000円(1申請あたり、税込) | マンション管理センター |
| 事前確認審査料 | 10,000円(長期修繕計画1計画あたり、パターン③④の場合・税込) | マンション管理センター等 |
| 更新申請の区手数料 | 新規と同額 | 練馬区 |
出典:練馬区、マンション管理センター
単棟のマンションであれば、おおむね24,100円前後が目安になります(パターン④の場合。パターン①②では事前確認審査料が管理組合と委託先の取り決めになるため変動します)。
5年ごとの更新でも区へ4,100円が必要ですから、10年で2回、20年で4回。金額の重さより、更新を忘れないことのほうがはるかに重要です。有効期間は認定日から5年、更新手続きは満了日前の6か月以内です。区からの通知を待たず、管理組合側で認定日をカレンダー管理してください。
認定を取ると得られる3つの経済効果
1. マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)
管理計画認定マンションが長寿命化工事(外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事の3つすべて)を完了すると、翌年度の建物部分の固定資産税が減額されます。
東京23区の減額割合は2分の1(1戸あたり100㎡相当分まで)です。
主な要件は、築後20年以上、総戸数10戸以上、過去に長寿命化工事を行っている、令和3年9月1日以降に修繕積立金を認定基準まで引き上げている、の4点。そして工事完了が令和5年4月1日から令和9年3月31日までであることです。
申告期限は工事完了日から3か月以内、提出先は物件所在区にある都税事務所です。eLTAXでの申告も可能です。
出典:東京都主税局「長寿命化に資する大規模修繕工事が行われたマンションに対する固定資産税の減額制度」、国土交通省「マンション税制」
現時点(2026年9月22日)で公表されている適用期限は令和9年3月31日の工事完了分までです。大規模修繕は計画から着工まで1年以上かかることが普通ですから、この税制を使うつもりの練馬区の管理組合さまは、逆算するとすでに動き出していなければ間に合わない時期に来ています。
なお、耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修などの固定資産税減額とは、同じ年度に併用できません。
2. 住宅金融支援機構の金利優遇
認定を受けると、「フラット35」および「マンション共用部分リフォーム融資」等で金利優遇を受けられます。詳細は住宅金融支援機構でご確認ください。大規模修繕で借入を使う管理組合にとっては、総支払額に直接効いてきます。
3. 市場での評価
認定を受けた旨の公表に同意したマンションは、(公財)マンション管理センターの管理計画認定マンション閲覧サイトで、マンション名・所在地・認定コードが公表されます。売買時に「適正に管理されているマンション」として見てもらえる材料になります。
練馬区の管理組合に、いま起きていること
令和6年度に実施された練馬区分譲マンション実態調査(有効回答321件、回答率20.7%)の数字は、認定の実務に直結します。
| 項目 | 全体 | 築40年以上(高経年) |
|---|---|---|
| 修繕積立金(月額)15,000円未満 | ― | 85.6% |
| 長期修繕計画を作成していない | ― | 28.9% |
| 自主管理(管理業者に委託せず) | 9.3% | 27.8% |
| 管理費等を滞納する組合員がいる | ― | 41.1% |
| 計画期間30年以上の長期修繕計画あり | 61.7% | 45.6% |
出典:練馬区マンション管理適正化推進計画(令和8年3月)
認定基準9(滞納額が全体の1割以内)と14(積立金が著しく低額でない)が、高経年のマンションでどれだけ重い壁になるかが見える数字です。
そしてもう一点、練馬区の管理組合さまに知っておいていただきたいことがあります。
練馬区の高経年マンション(築40年以上)は現在6,260戸で、分譲マンション総数に占める比率は11.1%。東京都区部平均の17.3%より低い水準です。つまり今は比較的「若い」区です。
ところが区の推計では、令和25年には戸数で4.34倍(27,140戸)、棟数で3.32倍(1,062棟)に増えます。東京都区部全体の伸びは2.88倍ですから、練馬区の増加ペースは区部平均より明らかに速い。区自身が「今後10〜20年で東京都区部全体と比較して著しく高い状況」と書いています。
区は新しい推進計画(令和8年度〜令和17年度)で、認定マンションの目標を「新築マンションの5割、既存マンションの3割」と掲げました。現在の認定件数は35件。1,549棟に対して2%台です。区がこれから本気で認定を増やしにくるフェーズに入った、ということです。
練馬区が用意している「無料で使える」支援
認定を目指すうえで、練馬区の支援策は率直に言って手厚いです。
分譲マンションアドバイザー制度利用助成(派遣料の全額助成)
(公財)東京都防災・建築まちづくりセンターのアドバイザー派遣費用を、練馬区が全額助成します。
| 制度・コース | 派遣料 |
|---|---|
| マンション管理アドバイザー Aコース(講座編) | 16,500円 |
| マンション管理アドバイザー Bコース(相談編) | 25,300円 |
| 建替え・改修アドバイザー Aコース(入門編) | 16,500円 |
| 同 Aオプション | 8,800円 |
出典:練馬区「分譲マンションアドバイザー制度利用助成」(更新日:2026年7月3日)
大規模修繕と認定の文脈で特に使えるのは、Aコースの「A-2 長期修繕計画標準様式・作成ガイドライン活用の手引きの解説」「A-4 計画修繕工事の進め方」、Bコースの「B-4 修繕計画の作成や修繕積立金等の設定に関すること」「B-5(1)(2)修繕工事の検討・準備段階での相談」です。認定基準10〜15にそのまま対応します。
利用には練馬区の分譲マンション管理組合登録制度への登録が必要で、派遣希望日の約2か月前までに住宅課へ相談が必要です。助成は同一年度内に1回まで。テキスト代・キャンセル料、管理アドバイザーのB-7・B-8・Cコース、建替え・改修アドバイザーのBコースは助成対象外です。
分譲マンション管理運営無料相談(毎月2回・事前予約制)
区内マンション管理士の協力により、毎月2回開催されています。「うちの長期修繕計画で認定は通るのか」を最初に相談する場として、費用ゼロで使えます。
ねりまマンションセミナー“未来塾”
区が継続して開催している管理組合向けセミナーです。
認定の壁が「工事費」だったときに私がお話しすること
要件14「修繕積立金の平均額が著しく低額でない」で止まる管理組合は、本当に多いです。練馬区の高経年マンションの85.6%が積立金15,000円未満という数字が、それを裏づけています。
積立金を上げる決議は重い。だから止まる。
ここで私が必ずお伝えしているのは、分母(積立金)を上げる前に、分子(工事費)を見直す余地があるかどうかです。
30戸規模のマンションの大規模修繕は、総工費で3,500〜5,000万円がひとつの目安です。そのうち仮設足場が15〜25%を占めます。これは建物を直していない費用です。
たとえば10階建て・外周80m・工期3か月の物件で、仮設足場が約168万円かかるケースでも、ロープアクセス工法(足場を組まず、産業用ロープで作業員が壁面を上下する無足場工法)に置き換えると約59万円という試算になることがあります。差額は約109万円。これは目安であり、建物形状・付帯物・工事範囲で大きく変動しますが、長期修繕計画の総額が数百万円単位で動けば、積立金の月額設定も変わってきます。
外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、打診調査は250〜500円/㎡、防水は5,000〜8,000円/㎡が参考レンジです(いずれも目安であり、実際の見積は物件により変動します)。工法の選択肢が1つしかない会社と、3つある会社では、この数字の出方が変わります。
株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。工法ごとの技術的な違いをもう少し深く知りたい方は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで技術情報を公開しています。
料金の考え方や管理組合向けの大規模修繕サービスもあわせてご覧ください。
よくあるご質問
Q. 防災訓練は、どの程度やっていれば「定期的」と認められますか?
A. 区は「定期的な防災訓練の実施が確認できる書類の写し」の提出を求めており、防災訓練報告書の様式(Word)を公開しています。頻度の解釈で迷う場合が多いため、住宅課管理係(03-5984-1289)への事前相談で自組合の状況を確認してください。
Q. 災害対応マニュアルは、何を書けばよいですか?
A. 作成にあたっての留意点が、練馬区の「申請の手引き」23ページに記載されています。手引きは区のホームページからPDFでダウンロードできます。
Q. 表明保証書の「温室効果ガスの排出量の削減に努める」とは、具体的に何をすればよいのですか?
A. 区が様式(Word)を公開しており、提出は表明保証の形式です。実務上は、共用部照明のLED化、給排水設備更新時の省エネ機器選定、屋上・外壁の断熱性能を意識した仕様選定などが、長期修繕計画のなかで対応しやすい項目になります。
Q. 区へ直接申請して、事前確認を省くことはできますか?
A. 練馬区は申請の流れのSTEP3で、(公財)マンション管理センターが発行する事前確認適合証を必要としています。事前確認を省くルートは用意されていません。
Q. 更新のときも区の手数料はかかりますか?
A. かかります。認定申請の際と同額です(長期修繕計画1つなら4,100円)。有効期間は認定日から5年で、満了日前の6か月以内に更新手続きが必要です。
Q. 長期修繕計画が2つある団地型ですが、手数料は上がりますか?
A. 上がります。2つ目以降の長期修繕計画1件あたり1,800円が加算されます。マンション管理センターの事前確認審査料も長期修繕計画1計画あたり10,000円(パターン③④の場合)のため、そちらも増えます。
Q. 申請には総会決議が必要ですか?
A. 必要です。認定申請にあたっては、その旨を集会(総会等)で決議しておく必要があります。臨時総会でも構いません。
Q. 認定を取ると、大規模修繕の費用は安くなりますか?
A. 認定そのものが工事費を下げるわけではありません。ただし共用部分リフォーム融資の金利優遇が受けられるため、借入を使う場合の総支払額は下がります。工事費そのものは、工法選定と仕様の詰め方で変わります。
まとめ:今週、練馬区の管理組合さまが動けること3つ
- 直近の防災訓練がいつだったかを確認する。 練馬区は国の17項目に加えて防災訓練の実施が必須です。ここが未対応なら、他をどれだけ整えても認定は下りません。
- 住宅課管理係(03-5984-1289)に電話し、事前相談の日程を押さえる。 独自基準の解釈は区に聞くのが唯一の正解です。来庁には事前連絡が必要です。
- 長期修繕計画の「作成または見直し年月日」を確認する。 7年以内でなければ、そこが最優先課題です。アドバイザー派遣(Bコース25,300円)は区が全額助成しますが、派遣希望日の約2か月前までの相談が必要です。
この3点で引っかかる項目が出たら、そこが認定のボトルネックです。そのボトルネックが「工事費が重くて積立が追いつかない」であれば、工法の選択肢を増やすことで解ける可能性があります。
明誠の施工事例は https://rita-construction.com/renew/category/%e6%96%bd%e5%b7%a5%e4%ba%8b%e4%be%8b/ からご覧いただけます。ロープアクセスの訓練体制や技術基準についてはロープアクセスドットコムもご参照ください。
認定を取るかどうかの前段階、「うちの長期修繕計画、そもそも通るのか」という整理だけでもお力になれることがあります。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください(お問合せフォーム)。
10月の理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。練馬区は事前相談が起点になる区です。そこで春の総会に間に合うかどうかが決まります。
出典・参考資料
- 練馬区「練馬区マンション管理計画認定制度」(更新日:2026年4月15日)
- 練馬区「認定基準(PDF)」
- 練馬区「練馬区マンション管理適正化推進計画 令和8年度〜令和17年度」(令和8年3月)
- 練馬区「分譲マンションアドバイザー制度利用助成」(更新日:2026年7月3日)
- 公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」
- 東京都主税局「長寿命化に資する大規模修繕工事が行われたマンションに対する固定資産税の減額制度」
- 国土交通省「マンション税制(マンション長寿命化促進税制)」
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」
- 独立行政法人住宅金融支援機構「住宅金融支援機構ホームページ」
- 公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定マンション閲覧サイト」
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月22日時点で公表されている練馬区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特にマンション長寿命化促進税制の適用期限(現時点では令和9年3月31日の工事完了分まで)およびアドバイザー制度の助成内容については、実際に申請される前に、必ず練馬区建築・開発担当部 住宅課 管理係(電話 03-5984-1289)および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月22日
板橋区のマンション管理計画認定制度|令和8年度の区手数料は新規24,200円・更新は0円【大規模修繕2026年度版】
先週、板橋区・大山のマンションで理事長さまから「管理計画認定、事前確認は通ったのに区に怒られました」というご相談を受けました。話を聞くと、事前確認適合証を取ってから半年ほど寝かせてしまった、とのことでした。
正直に申し上げます。板橋区はここが独特です。私も最初は驚きました。
板橋区の管理計画認定は、23区のなかでも手続きの設計が細かい区です。区独自の認定基準があり、事前確認適合証の有効期間について区独自の運用があり、そのうえ認定を取ったマンションだけが申請できる区独自の第2の認定制度まであります。段取りを知らずに進むと、私のお客さまのように足踏みします。
私は大規模修繕の現場を20年以上見てきました。認定基準17項目のうち、6項目は長期修繕計画の話、3項目は経理の話です。つまり認定は、工事と資金の話と切り離せません。そこまで含めて、板橋区の管理組合さま向けに数字から整理します。
結論:板橋区で管理計画認定を取ると何が変わるか
先に一覧にします。
| 論点 | 板橋区の場合 |
|---|---|
| 認定主体 | 東京都ではなく板橋区(特別区は区が認定主体) |
| 区独自の認定基準 | あり。国基準に加えて区が独自基準を設定 |
| 新規申請の区手数料 | 支援サービス利用24,200円/区へ直接申請26,300円 |
| 更新申請の区手数料 | 区へ直接申請なら0円 |
| 変更申請の区手数料 | 0円(ただし区へ直接申請する方法のみ) |
| 事前確認適合証の扱い | 区が書類省略を認めるのは発行日から原則3か月 |
| 認定後の交付物 | 認定通知書+認定ステッカー(大190mm・中160mm・小80mm) |
| 上乗せ制度 | いたばし適正管理推進マンション認定制度(申請手数料なし) |
出典:板橋区「板橋区マンション管理計画認定制度(国の制度)」(更新日:2026年6月10日)
私はいつも理事長さまに「認定は、ご褒美をもらう制度ではなく、健康診断の結果票をもらう制度です」とお伝えしています。板橋区の場合は、そこに「区の条例を守っている証明書」が一枚追加されるイメージです。
板橋区で認定主体はどこか
特別区の区域では、その区が認定主体になります。板橋区内のマンションであれば、東京都ではなく板橋区が審査し、認定します。
窓口は板橋区都市整備部住宅政策課です。分譲マンション担当は北館5階14番窓口、電話03-3579-2730、メール mansion@city.itabashi.tokyo.jp。来庁前に電話連絡が必要と区が明示していますので、いきなり行かないでください。
町村部(島しょを含む)については東京都が認定事務を行いますが、板橋区は該当しません(出典:東京都マンションポータルサイト「マンション管理計画認定制度」)。
認定17要件:半分は長期修繕計画と修繕積立金の話
国が定める認定基準は、5分野17項目です。(公財)マンション管理センターの整理に沿って並べます。
管理組合の運営(3項目)
- 管理者等が定められていること
- 監事が選任されていること
- 集会(総会)が年1回以上開催されていること
管理規約(3項目)
- 管理規約が作成されていること
- 災害等の緊急時の専有部立ち入り、修繕等の履歴情報の管理について規約に定めがあること
- 財務・管理に関する情報の書面交付(または電磁的方法による提供)について規約に定めがあること
管理組合の経理(3項目)
- 管理費と修繕積立金等を明確に区分して経理していること
- 修繕積立金会計から他の会計への充当がないこと
- 直前年度末時点で、修繕積立金の3か月以上の滞納額が全体の1割以内であること
長期修繕計画の作成及び見直し等(6項目)
- 長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠して作成され、計画内容と修繕積立金額が総会で決議されていること
- 長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われていること
- 計画期間が30年以上で、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれること
- 将来の一時的な修繕積立金の徴収(一時金)を予定していないこと
- 計画期間全体での修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと
- 計画期間の最終年度に借入金の残高がない計画となっていること
その他(2項目)
- 組合員名簿・居住者名簿を備え、年1回以上内容を確認していること
- 都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切であること
(出典:公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」。基準の詳細は国土交通省の事務ガイドライン令和8年3月改訂版に拠ります)
現場感覚でお伝えすると、引っかかるのは圧倒的に11・12・14です。7年以内に見直していない、計画期間が25年しかない、積立金が国のガイドライン水準を大きく下回る。この3つです。
ちなみに認定基準は、国の「マンション標準管理規約」(令和7年10月改正)、「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改訂)、「修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改訂)の内容を満たす必要がある項目を含みます。古い版で作った長期修繕計画は、そのままでは通らない可能性があります。
板橋区の独自基準と、事前確認の落とし穴
ここからが本題です。板橋区は国の認定基準だけでなく、独自の認定基準を定めています。
そして重要なのが、次の一点です。
地方公共団体が独自の認定基準を設けている場合、当該独自基準はマンション管理士による事前確認の対象外となります。
つまり、(公財)マンション管理センターの事前確認適合証を取っても、板橋区独自の基準に適合していなければ認定は下りません。区自身も「マンション管理センターへ申請する前に板橋区へご相談又はお問い合わせください」と明記しています。順番を間違えると、お金と時間を二重に払うことになります。
独自基準の具体的な内容と確認書類は、区が公開している「認定基準及び確認書類一覧表」(令和7年4月1日更新)と「申請の手引き」(同)に掲載されています。必ず事前相談で、自組合の状況に照らして確認してください。
事前確認適合証は「3か月」で使いにくくなる
冒頭のご相談の正体がこれです。
マンション管理センターが発行する事前確認適合証そのものの有効期間は、センター側では「発行日から、自治体が管理計画を認定する日を起算日として5年を経過する日の前日まで」とされています。
ところが板橋区は、申請書類の一部(国の認定基準に該当する書類)の提出を免除できる事前確認適合証の有効期間を、原則「発行日から3か月」として運用しています。
さらに、3か月以内であっても事前確認後に内容に変更が生じていれば適合証は無効になります。役員改選や規約改正を挟むと、ここに当たる可能性があります。
私の経験上、これは「事前確認が終わったら、その足で区へ本申請」と覚えておくのが安全です。事前確認適合証の交付を受けただけでは、認定申請は完了していません。板橋区への本申請が別途必要です。
手数料と申請ルート:板橋区は「更新が0円」
板橋区の手数料は、申請ルートと申請種別で変わります。
新規の申請
| ルート | 基本手数料 | 長期修繕計画が複数の場合(2件目以降1件あたり) |
|---|---|---|
| 支援サービスを利用して申請 | 24,200円 | 11,600円 |
| 板橋区に直接申請 | 26,300円 | 14,900円 |
支援サービスを利用する場合は、区への手数料とは別に、(公財)マンション管理センターへシステム利用料10,000円と事前確認審査料10,000円(パターン③④の場合。長期修繕計画1計画あたり)の支払いが必要です。支払い窓口が分かれる点に注意してください。
注記:板橋区のページには、支援サービス利用時の基本手数料について「区に支払う基本手数料4,200円のほか」という記載もあります。表の24,200円との差異があるため、実際の納付額は必ず事前相談時に区へご確認ください。私も金額の断定は避けます。
更新の申請(5年ごと)
| ルート | 基本手数料 | 加算 |
|---|---|---|
| 板橋区に直接申請 | 0円 | 0円 |
| 支援サービスを利用 | 20,000円(管理センターへ) | 10,000円 |
更新は区へ直接申請すれば手数料がかかりません。 これは板橋区の大きな利点です。
変更の申請
手数料は0円。ただし変更申請は板橋区に直接申請する方法のみで、マンション管理センターでは受け付けていません。認定期間中に管理者変更や長期修繕計画の変更があった場合は、この窓口一本です。
認定の3つの経済効果
認定は名誉だけの制度ではありません。お金の話を3つ。
① マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)
一定の要件を満たす長寿命化工事(外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事のすべて)を行うと、工事完了の翌年度分の建物部分の固定資産税が2分の1減額されます。築20年以上、必要な修繕積立金が確保されていることなどが要件です。
この特例措置は、令和8年度税制改正で5年間(令和13年3月31日まで)延長されたと報じられています。適用期限と要件の最終確認は、国土交通省「マンション税制」か、マンション管理計画認定制度 相談ダイヤル(03-5801-0858)でお願いします。
② フラット35の金利引下げ
管理計画認定マンションは【フラット35】維持保全型の対象です。ポイント制により、当初5年間の借入金利が年0.25%引き下げられます。中古住宅の取得と組み合わせると引下げ幅はさらに広がります。組合の話ではなく、区分所有者ひとりひとりの購入者にとっての価値であり、これが市場評価につながります。
③ マンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ
住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資でも金利引下げ等が受けられます。引下げ幅と条件は年度で変わり得るため、板橋区が掲載している住宅金融支援機構の案内資料、または住宅金融支援機構でご確認ください。
大規模修繕で借入を使う組合にとっては、ここが一番効きます。
板橋区だけの上乗せ「いたばし適正管理推進マンション認定制度」
板橋区には、管理計画認定を取ったマンションだけが申請できる第2の認定制度があります。
「東京都板橋区良質なマンションの管理等の推進に関する条例」を遵守し、適正な管理を推進しているマンションであることを板橋区が認定する制度です。申請手数料はかかりません。
流れはシンプルです。
- 法律に基づく管理計画の認定を受ける
- いたばし適正管理推進マンション認定申請書(第1号様式)と管理計画認定通知書の写しを窓口へ
- 審査
- 認定通知書の交付
希望すればエントランス等に掲示できる認定証(横130mm×縦180mm)が交付されます。こちらは作製実費の負担が必要で、紙製が15,000円以内(税抜)、金属製が30,000円以内(税抜)です。金属製は耐候性が高いぶん高価です。
私はいつも「屋外掲示なら金属製を」とお伝えしています。紙製は設置環境によって退色します。どちらもデザインは同じです。
逆算スケジュール:春の総会に間に合わせるなら今月から
板橋区の場合、事前確認適合証の3か月ルールがあるので、段取りを詰める順番が特に重要です。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 今月(9月) | 理事会で17要件の自己チェック。長期修繕計画の作成・見直し年月日を確認 |
| 10月 | 板橋区へ事前相談(電話予約のうえ来庁)。独自基準の適合状況を確認 |
| 11〜12月 | 長期修繕計画の見直し・規約改正案の作成。必要なら専門家へ委託 |
| 1〜2月 | 総会議案の確定(認定申請の決議+長期修繕計画・修繕積立金額の決議) |
| 通常総会 | 決議 |
| 総会直後 | マンション管理士へ事前確認を依頼 |
| 適合証発行から3か月以内 | 板橋区へ本申請(独自基準の書類を添付) |
| 本申請後 | 審査・認定通知書+ステッカー交付 → いたばし認定を追加申請 |
ポイントは、区への事前相談を総会より先に置くことです。独自基準に引っかかる項目が総会議案に反映されていないと、決議のやり直しになります。1年待ちです。
認定の壁が「工事費」だったときに私がお話しすること
要件14「修繕積立金の平均額が著しく低額でない」で止まる組合は、本当に多いです。積立金を上げる決議は重い。だから止まる。
ここで私が必ずお伝えしているのは、分母(積立金)を上げる前に、分子(工事費)を見直す余地があるかどうかです。
30戸規模のマンションの大規模修繕は、総工費で3,500〜5,000万円がひとつの目安です。そのうち仮設足場が15〜25%を占めます。ここは建物を直していない費用です。
たとえば10階建て・外周80m・工期3か月の物件で、仮設足場が約168万円かかるケースでも、ロープアクセス工法(足場を組まず、産業用ロープで作業員が壁面を上下する無足場工法)に置き換えると約59万円という試算になることがあります。差額は約109万円。これは目安であり、建物形状・付帯物・工事範囲で大きく変動しますが、長期修繕計画の総額が数百万円単位で動けば、積立金の月額設定も変わってきます。
外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、打診調査は250〜500円/㎡が参考レンジです(いずれも目安であり、実際の見積は物件により変動します)。工法の選択肢が1つしかない会社と、3つある会社では、この数字の出方が変わります。
株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。工法ごとの技術的な違いをもう少し深く知りたい方は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで技術情報を公開しています。
料金の考え方や管理組合向けの大規模修繕サービスもあわせてご覧ください。
よくあるご質問
Q. 板橋区の独自基準の中身は、どこを見ればわかりますか?
A. 板橋区が公開している「認定基準及び確認書類一覧表」(令和7年4月1日更新)と「マンション管理計画認定制度申請の手引き(板橋区)」に掲載されています。ただし解釈で迷う項目があるため、住宅政策課(03-3579-2730)への事前相談を強くおすすめします。
Q. 事前確認適合証を取ってから、3か月を過ぎてしまいました。
A. 区が書類省略を認める有効期間(原則3か月)を過ぎた場合、国の認定基準に該当する書類も改めて提出が必要になる可能性があります。まずは区へご相談ください。期間内でも、事前確認後に内容変更があれば適合証は無効になります。
Q. 更新のとき、区から「そろそろ期限です」と通知は来ますか?
A. 認定の有効期間は認定日から5年で、更新には申請と認定が必要です。区からの満了通知を前提にせず、管理組合側で認定日をカレンダー管理してください。更新は区へ直接申請すれば手数料0円です。
Q. 賃貸マンション(ワンオーナー)でも申請できますか?
A. できません。この制度の対象はいわゆる分譲マンションの管理組合です。
Q. 認定を取ると、大規模修繕の費用は安くなりますか?
A. 認定そのものが工事費を下げるわけではありません。ただし共用部分リフォーム融資の金利引下げが受けられるため、借入を使う場合の総支払額は下がります。工事費そのものは、工法選定と仕様の詰め方で変わります。
Q. 長期修繕計画が2つある団地型ですが、手数料は上がりますか?
A. 上がります。支援サービス利用なら2件目以降1件あたり11,600円、区へ直接申請なら14,900円が基本手数料に加算されます。
Q. 申請には総会決議が必要ですか?
A. 必要です。認定申請にあたっては、その旨を集会(総会)で決議しておく必要があります(管理規約で別段の定めがある場合はその定めによります)。臨時総会でも構いません。
まとめ:今週、板橋区の管理組合さまが動けること3つ
- 長期修繕計画の「作成または見直し年月日」を確認する。 7年以内でなければ、まずここが最優先です。
- 住宅政策課(03-3579-2730)に電話し、事前相談の日程を押さえる。 板橋区は独自基準があるため、ここを飛ばせません。
- 次の総会議案に「認定申請の決議」を入れるか決める。 総会決議がないと事前確認に進めません。
この3点で引っかかる項目が出たら、そこが認定のボトルネックです。そのボトルネックが「工事費が重くて積立が追いつかない」であれば、工法の選択肢を増やすことで解ける可能性があります。
明誠の施工事例は https://rita-construction.com/renew/category/%e6%96%bd%e5%b7%a5%e4%ba%8b%e4%be%8b/ からご覧いただけます。ロープアクセスの訓練体制や技術基準についてはロープアクセスドットコムもご参照ください。
認定を取るかどうかの前段階、「うちの長期修繕計画、そもそも通るのか」という整理だけでもお力になれることがあります。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください(お問合せフォーム)。
10月の理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。板橋区は事前相談が起点になる区です。そこで春の総会に間に合うかどうかが決まります。
出典・参考資料
- 板橋区「板橋区マンション管理計画認定制度(国の制度)」(更新日:2026年6月10日)
- 板橋区「いたばし適正管理推進マンション認定制度(板橋区の制度)」(更新日:2026年6月10日)
- 公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」
- 国土交通省「マンション税制(マンション長寿命化促進税制)」
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」
- 東京都マンションポータルサイト「マンション管理計画認定制度」
- 独立行政法人住宅金融支援機構「住宅金融支援機構ホームページ」
- 公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定マンション閲覧サイト」
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月22日時点で公表されている板橋区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特に支援サービス利用時の区手数料(区ページ内に24,200円と4,200円の両記載あり)およびマンション長寿命化促進税制の適用期限については、実際に申請される前に、必ず板橋区都市整備部住宅政策課(電話 03-3579-2730)および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月22日
熊谷市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版
埼玉県熊谷市で、マンションの大規模修繕を控えている管理組合の方に向けて、熊谷市で使える補助金と制度を2026年度(令和8年度)版で整理しました。
先に結論を書きます。熊谷市には、管理組合が共用部の工事で使える可能性のある補助金が2本あります。ひとつは緊急輸送道路沿いの旧耐震建築物に対する耐震診断・耐震改修補助で、改修工事は最大1,000万円。もうひとつは吹付けアスベスト等の含有調査に対する補助で、1棟25万円を上限に費用が補助されます。
そして、よく名前が挙がる「熊谷市住宅リフォーム資金補助金」は、マンションの場合は専有部分の工事しか対象になりません。共用部の大規模修繕には使えません。ここを勘違いしたまま総会に諮ると、あとで説明のやり直しになります。
私は株式会社明誠の本間です。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。関東と山梨・静岡の190を超える市区町村について、大規模修繕に関わる制度を1件ずつ調べて記事にしてきましたが、熊谷市は共用部に直接効く補助の金額が大きいという点で、これまで調べてきた自治体のなかでも上位に入ります。
この記事では、その2本の補助を中心に、建築基準法第12条の定期報告、マンション管理計画認定制度、そして「熊谷市だから避けて通れない暑さと建物の劣化」までを、順番に書いていきます。
熊谷市の管理組合が使える制度:まず結論の一覧
2026年9月22日時点で、熊谷市の公表情報から確認できた制度を先に一覧にします。
| 制度・手続き | 共用部の大規模修繕に | 補助の内容 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| 緊急輸送道路閉塞建築物 耐震診断補助 | 使える可能性がある | 費用の2/3。重点23路線は上限300万円、その他は上限100万円 | 建築審査課 0493-39-4809 |
| 緊急輸送道路閉塞建築物 耐震改修補助 | 使える可能性がある | 費用の2/3。上限1,000万円 | 建築審査課 0493-39-4809 |
| 吹付けアスベスト等含有調査補助 | 使える可能性がある | 費用の全額(1棟につき25万円が上限・1棟1回限り) | 建築審査課 0493-39-4809 |
| 熊谷市住宅リフォーム資金補助金 | 使えない(専有部分のみ) | 税抜20万円以上の工事費の5%・上限10万円 | 企業活動支援課 048-594-6820 |
| 木造住宅耐震診断・耐震改修等補助金 | 使えない(木造住宅が対象) | ── | 建築審査課 |
| ブロック塀等撤去・生け垣設置奨励補助 | 敷地の塀が該当すれば可能性あり | 要確認 | 建築審査課 |
| 建築基準法第12条の定期報告 | 6階以上の共同住宅は3年ごとに義務 | ── | 埼玉県建築安全協会(提出窓口) |
| マンション管理計画認定制度 | 認定申請ができる | 市への申請手数料は無料 | 都市計画課 0493-39-4813 |
| マンション長寿命化促進税制 | 要件を満たせば固定資産税が減額 | 家屋の固定資産税を1/3減額 | 国土交通省・市資産税課 |
熊谷市は自ら建築主事を置く特定行政庁で、マンション管理適正化推進計画も持っています。町村部と違って、市の窓口でほとんどの話が完結するのが特徴です。順に見ていきます。
緊急輸送道路沿いなら、耐震改修に最大1,000万円
制度の概要
熊谷市は平成25年4月1日から、震災時に緊急輸送道路を閉塞するおそれのある建築物に対して補助を実施しています。ページの更新日は2026年4月1日で、令和8年度の内容であることを確認しました。
補助の額は次のとおりです。
| 区分 | 補助率 | 限度額 |
|---|---|---|
| 耐震診断(県指定の重点23路線) | 費用の2/3 | 300万円(用途・規模の制限あり) |
| 耐震診断(その他の路線) | 費用の2/3 | 100万円 |
| 耐震改修工事 | 費用の2/3 | 1,000万円 |
(1,000円未満の端数は切り捨て。出典:熊谷市 緊急輸送道路閉塞建築物耐震診断・耐震改修補助金交付制度について)
補助対象者は「当該建築物を所有しているかた」です。分譲マンションの場合、区分所有者の全員または管理組合が該当します。
自分のマンションが対象かどうかの見分け方
対象となる建築物には、3つの条件があります。
1つめ。緊急輸送道路に面していること。
埼玉県地域防災計画に定められた第一次特定緊急輸送道路、第一次緊急輸送道路、第二次緊急輸送道路のいずれかに面し、建築物の敷地がその道路に接していることが条件です。熊谷市は北関東と都心を結ぶ幹線道路を持つ市なので、該当する路線は市内に複数あります。国道17号、国道125号、国道140号、国道407号といった幹線沿いのマンションは、確認する価値があります。
県内の緊急輸送道路は、埼玉県のホームページで確認できます。
2つめ。昭和56年5月31日以前に着工していること。
いわゆる旧耐震基準の建物です。「昭和56年以前に建った」ではなく「昭和56年5月31日以前に着工した」です。竣工が昭和57年でも、着工が昭和56年5月以前なら対象になり得ます。竣工年だけで判断せず、確認済証や工事契約書の日付を確認してください。
3つめ。道路を閉塞するおそれのある高さがあること。
市のページには次の基準が図で示されています。
| 前面道路の幅員 | 対象となる建築物の高さ |
|---|---|
| 12メートルを超える場合 | 幅員の2分の1の高さを超える建築物 |
| 12メートル以下の場合 | 6メートルの高さを超える建築物 |
6メートルを超えるということは、共同住宅ならおおむね3階建て以上が目安になります(階高3mなら2階建てで約6m、3階建てで約9m)。幅員12m以下の道路に面している3階建て以上のマンションは、該当する可能性が高いとお考えください。幅員が20mの道路なら10m超、つまり4階建て以上が目安です。
加えて、建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成7年法律第123号)第14条第3号に規定する特定建築物であることが要件です。ここは専門的な判断になりますので、建築審査課に確認してください。
理事会がまず確認すべき3点
この補助は金額が大きい分、確認すべきことも多くなります。窓口に電話するときは、次の3点をまとめて聞いてください。
「熊谷市◯◯の分譲マンションです。前面道路は◯◯で、建物は◯階建て、着工は昭和◯年です。(1)この道路は緊急輸送道路に該当しますか。(2)該当する場合、県指定の重点23路線ですか、その他の路線ですか。(3)当マンションは耐震改修促進法第14条第3号の特定建築物にあたりますか。」
建築審査課は大里庁舎にあり、直通は0493-39-4809です。市役所本庁舎(048-524-1111)ではなく大里庁舎ですので、電話番号にご注意ください。
耐震改修と大規模修繕を同時にやる意味
ここが実務の勘所です。
耐震改修は、外壁に鉄骨ブレースを入れたり、耐震スリットを設けたり、柱に補強を巻いたりする工事です。外壁に手を入れるという点で、大規模修繕と作業の場所が重なります。
別々の年度に発注すると、仮設足場を2回かけることになります。仮設足場は総工費の15〜25%が目安ですから、30戸規模のマンションなら足場だけで500万〜1,200万円。これを2回払うのは、金額としてかなり大きな損失です。
耐震改修の補助が1,000万円出るなら、その資金計画に大規模修繕を重ねるのが合理的です。理事会での議題は「耐震改修をやるかどうか」ではなく、「次回の大規模修繕の時期に、耐震改修を合わせられないか」という立て方をおすすめします。
なお、ロープアクセス工法は外壁の塗装・防水・タイル補修には向きますが、鉄骨ブレースの設置のような構造補強には足場や重機が必要です。この場合は部位ごとに工法を使い分けるハイブリッド工法が現実的な選択になります。工法の技術的な比較は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。
アスベスト含有調査の補助:大規模修繕の前に必ず通る道です
熊谷市の制度
熊谷市は、民間建築物に吹き付けられたアスベスト等の含有調査を行う建築物の所有者等に対し、費用を予算の範囲内で補助しています。ページの更新日は2026年4月8日、交付要綱も令和8年4月1日施行版が公開されています。要綱から要点を拾います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助金の額 | 調査に要する費用の額(1,000円未満切捨て)。1棟につき250,000円が上限 |
| 回数 | 補助対象建築物1棟につき1回限り |
| 申請できる人 | 建築物の所有者、または区分所有法第3条に規定する区分所有者の団体(=管理組合) |
| 対象となる調査 | 吹付けアスベスト、吹付けロックウール、吹付けパーライト、吹付けバーミキュライト(ひる石) で石綿の重量が0.1%を超えるものが施工されているおそれがある建築物の含有調査 |
| 調査を行う者 | 建築物石綿含有建材調査者 |
| その他の要件 | 市内に存する建築物/過去に国・自治体等から同様の補助を受けていない建築物 |
| 着手の時期 | 交付決定の通知を受けた後でなければ着手できない(要綱第8条) |
| 要綱の失効 | 令和13年3月31日 |
(出典:熊谷市 吹付けアスベスト等含有調査補助金交付制度について)
管理組合にとって重要な点が2つあります。
ひとつめ。申請者に「区分所有者の団体」が明記されています。 管理組合が直接申請できるということです。ただし要綱は添付書類として「区分所有者の集会等において、当該事業を実施する決議がなされたことを証する書類」を求めています。総会の決議が必要です。理事会だけでは進みません。
ふたつめ。交付決定の前に着手できません。 市のページにも次の注意書きがあります。
補助金の交付を希望される場合は、委託業者と契約される前に、建築審査課にご相談ください。
調査会社と契約してから「そういえば補助があったな」と気づいても遅い、ということです。
対象になるのは「吹付け材」の調査だけです
ここは正確に書きます。この補助の対象は、要綱の定義により吹付けアスベスト、吹付けロックウール、吹付けパーライト、吹付けバーミキュライトの含有調査です。
つまり、外壁の仕上塗材、シーリング材、成形板(スレート等)の調査費は、この補助の対象にならない可能性が高いということです。マンションで吹付け材が使われているのは、機械室、電気室、駐車場、パイプスペース、天井裏といった部位が中心になります。
大規模修繕で必要になる石綿の事前調査は、この補助でカバーされる範囲より広い、と理解しておいてください。どこまでが補助の対象になるかは、建築審査課に図面を見せて確認するのが確実です。
なぜ大規模修繕で関係してくるのか
ここは管理組合の方にあまり知られていないので、少し丁寧に書きます。
石綿障害予防規則により、建築物の解体・改修工事を行う前には、石綿(アスベスト)の有無について事前調査を行うことが義務づけられています。有資格者による調査が必要で、一定規模以上の工事では調査結果を電子システムで報告することも義務です。
大規模修繕は「改修工事」です。外壁の塗り替え、シーリングの打ち替え、屋上防水の改修。これらはすべて事前調査の対象になります。
そして、築年数の古いマンションでは、次のような部位にアスベストが含まれている可能性があります。
| 部位 | 含有の可能性がある材料 |
|---|---|
| 機械室・駐車場などの天井・壁 | 吹付け石綿、石綿含有吹付けロックウール |
| 外壁の仕上塗材 | 石綿含有仕上塗材(リシン、スタッコ、吹付けタイルなど) |
| 目地・接合部 | 石綿含有シーリング材 |
| 屋上・ベランダ | 石綿含有成形板(スレート、けい酸カルシウム板など) |
特に注意が必要なのが外壁の仕上塗材です。これは大規模修繕でそのまま上から塗り重ねるか、除去するかで工法が変わります。除去するなら、石綿則に基づく作業が必要になり、費用も工期も大きく変わります。
見積の前にやるべきこと
私が管理組合にお伝えしているのは、次の順番です。
- 竣工年を確認する。おおむね平成18年(2006年)以前の建物は、事前調査が必要と考える
- 設計図書・仕様書に仕上材の記載があるか探す(残っていないことが多い)
- 機械室・電気室・駐車場・パイプスペースなど、吹付け材が使われていそうな部位を洗い出す
- 調査会社と契約する前に、建築審査課(0493-39-4809)に補助の相談をする。どこまでが補助対象になるかを、図面を見せて確認する
- 総会で調査の実施を決議する(要綱が決議の証明書を求めています)
- 交付決定の通知を受けてから、建築物石綿含有建材調査者に調査を依頼する
- 調査結果を持って、3社に見積を依頼する
調査を後回しにして見積を取ると、各社が〈アスベストがあった場合は別途〉という条件付きの見積を出してきます。そうなると金額の比較ができません。調査を先に済ませておけば、全社が同じ前提で見積を作れます。結果として、価格競争が正しく働きます。
吹付け材の調査については1棟25万円を上限に補助が出ます。全額が補助される可能性もある制度ですから、該当しそうな部位があるなら相談しておく価値は十分にあります。
熊谷市住宅リフォーム資金補助金:共用部には使えません
制度の内容
熊谷市の補助金として最もよく知られているのが、この住宅リフォーム資金補助金です。令和8年度の内容は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受付期間 | 令和8年4月1日から令和9年3月31日まで |
| 申請期限 | 工事完了日の翌日から起算して90日以内 |
| 補助率 | 税抜き20万円以上の改修工事費用の5パーセント(千円未満切捨て) |
| 限度額 | 10万円 |
| 交付方法 | 地域電子マネー「クマPAY」(スマートフォン型/カード型を選択) |
| 回数 | 一住宅につき1回限り |
| 対象工事 | 屋根の改修、外壁の改修(塗装含む)、床の改修、間取りの変更、防音・断熱工事、水回りの改修など |
| 対象外工事 | 新築・建替え、エクステリア(門・塀・車庫・物置・造園等)、太陽光発電装置の設置、バルコニー・ベランダの増築・設置など |
| 窓口 | 市役所本庁舎7階 企業活動支援課(048-594-6820)平日9時〜16時 |
決定的な注釈
市のページには、次の1行があります。
マンションなどの場合は、個人の専有部分の工事が対象となります。
つまり、管理組合が行う共用部の大規模修繕は対象外です。外壁の改修(塗装含む)が対象工事の例に挙がっているので期待してしまいますが、それは戸建住宅や、マンションの専有部分の話です。
もうひとつ、対象者の要件も見ておいてください。
- リフォームを実施した熊谷市内の住宅に居住していることが住民基本台帳で確認できること
- 対象住宅の所有者であること。または2親等以内の親族が所有する住宅に居住すること
- 市税に滞納がないこと
「居住していること」が条件ですので、賃貸に出しているオーナーの物件は対象になりません。投資用にマンションを保有されている方は、この点にご注意ください。
さらに、補助対象工事の要件に「市内の事業者(市内に本店・支店・営業所がある事業者)に依頼した改修工事であること」とあります。
正直に書いておきます。株式会社明誠は東京都東大和市の会社です。熊谷市内に本店・支店・営業所を持っていないため、当社に発注された工事はこの補助の対象になりません。自社の不利になる情報ですが、後から知って落胆されるより、先に申し上げておくべきだと考えています。
それでも、理事会が知っておく価値はあります
共用部に使えないなら関係ない、とは思わないでください。使い道が2つあります。
ひとつめ。大規模修繕に合わせて専有部分を直す住民がいます。
足場が架かるタイミングで、サッシまわりの補修や内窓の設置、バルコニーに面した部分の断熱工事を考える方は必ずいます。そういう方には、この補助が使えます。総会の資料に1行入れておくだけで、理事会が住民の側に立っていることが伝わります。
ふたつめ。「住宅省エネ2026キャンペーン」と併用できます。
市のページには「熊谷市住宅リフォーム資金補助金は、国の補助金を充当していないため、併用が可能です」と明記されています。国の住宅省エネ2026キャンペーンと市の補助を重ねられるということです。内窓の設置などは、国と市の両方から補助が出る可能性があります。
補助金が電子マネー「クマPAY」で交付されるという点も、あまり他の自治体では見かけない仕組みです。現金ではなく市内で使える電子マネーで返ってくるので、地域にお金が回る設計になっています。
熊谷市で外壁と屋上を考えるなら、暑さの話は避けて通れません
2018年7月23日、41.1℃
熊谷市は、2018年7月23日に41.1℃を観測しました。これは当時の国内観測史上最高気温でした。
念のため正確に書いておきます。その後、2025年7月30日に兵庫県丹波市柏原町が記録を更新し、さらに2025年8月5日に群馬県伊勢崎市が41.8℃を観測しています。2026年現在、国内最高気温の記録は熊谷市ではありません。それでも、熊谷市が国内有数の高温地域であることに変わりはなく、市自身が長年にわたり暑さ対策に取り組んできた都市です。
なぜこの話を大規模修繕の記事に書くのか。建物の劣化速度が違うからです。
高温が建物に与える3つの影響
1. 屋上防水の熱劣化が早い
屋上のアスファルト防水やシート防水は、紫外線と熱で劣化します。夏場の屋上表面温度は、気温が40℃なら70℃を超えることも珍しくありません。防水層は温度差で伸縮を繰り返し、これが繰り返されると、シートの継ぎ目が開いたり、アスファルトが硬化してひび割れたりします。
一般的な屋上防水の改修周期は12〜15年とされますが、熊谷市のような高温地域では、同じ仕様でも早めに点検する意識が必要です。トップコートの塗り替えは5年前後で検討する価値があります。
2. シーリングの寿命が短くなる
外壁の目地やサッシまわりのシーリング材も、熱と紫外線で硬化します。硬化すると弾性を失い、建物の動きに追従できなくなって切れます。ここが切れると雨水が入り、内部の鉄筋を錆びさせます。
シーリングの一般的な耐用年数は10年前後ですが、南面・西面の日射が強い面から先に傷みます。方位で劣化の進み方が違うことを前提に、点検の優先順位をつけてください。
3. タイルの浮きが熱膨張で進行する
タイル張りの外壁では、下地のモルタルとタイルの熱膨張率の差が問題になります。夏の日中に膨張し、夜に収縮する。これを毎日繰り返すと、接着層に疲労が蓄積します。
厄介なのは、タイルは接着層が剥離しても表面は割れないので、目視では分からないことです。打診調査をして初めて「この範囲が浮いている」と分かります。だからこそ、劣化診断では目視だけでなく打診が必要になります。
方位別に見る、熊谷市のマンションの点検ポイント
| 方位 | 主な劣化要因 | 重点的に見る箇所 |
|---|---|---|
| 南面 | 紫外線・熱 | シーリングの硬化、塗膜のチョーキング、タイルの浮き |
| 西面 | 夕方の強い日射・熱 | 最も温度が上がる面。シーリング、外壁のひび割れ |
| 東面 | 朝の結露と日射 | 塗膜の膨れ、北寄りの部分の藻 |
| 北面 | 湿気・乾きにくさ | 藻・カビ、シーリングの黒ずみ |
| 屋上 | 熱と紫外線 | 防水層の継ぎ目、パラペット天端、笠木の固定、ドレン周り |
熊谷市では、西面と屋上が最優先です。劣化診断を依頼するときに「西面と屋上を重点的に見てほしい」と伝えるだけで、報告書の精度が変わります。
遮熱塗料という選択肢
熊谷市は「スマートハウス補助金」など、環境・省エネの補助制度を複数持っています。マンションの共用部に直接使えるとは限りませんが、大規模修繕で塗料を選ぶときに、遮熱塗料や高耐候性塗料を検討する価値はあります。
遮熱塗料は一般的な塗料より単価が高くなりますが、屋上や最上階の室温低減に効果が期待できます。外壁塗装の㎡単価の目安は3,500〜4,500円ですが、遮熱仕様にすると1割から2割程度上がるのが一般的です。外壁全面ではなく、屋上と最上階だけ仕様を変えるという提案もできます。
このあたりは、明誠の大規模修繕の料金の考え方のページでも触れています。どこにお金をかけ、どこを抑えるかの判断材料にしてください。
12条点検:熊谷市は6階以上の共同住宅が3年ごとです
対象と報告時期
熊谷市は特定行政庁として、建築基準法第12条の定期報告制度を運用しています。共同住宅に関係する部分を抜き出します。
| 対象 | 規模の要件 | 報告の間隔 |
|---|---|---|
| 共同住宅(サービス付き高齢者向け住宅を除く) | 6階以上の階にあるもの | 3年 |
| 共同住宅(サービス付き高齢者向け住宅に限る) | 3階以上の階の床面積>100㎡ など | 3年 |
| 建築設備(換気・排煙・非常用照明・給排水。共同住宅の住戸に設けるものを除く) | 上記の特定建築物に設けられるもの | 1年 |
| 昇降機(エレベーター等) | かごが住戸内のみを昇降するものを除く | 1年 |
(出典:熊谷市 定期報告制度について)
ここで押さえておきたいのは、建物本体(特定建築物)は3年ごとでも、エレベーターと建築設備は毎年だということです。「うちは12条点検をやっている」と思っていても、エレベーターの定期検査報告しか出していないケースは珍しくありません。理事会で確認してみてください。
提出窓口は市役所ではありません
熊谷市の場合、定期調査(検査)報告書の提出窓口は一般財団法人埼玉県建築安全協会です。市役所に持って行くのではありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出先 | 一般財団法人 埼玉県建築安全協会 |
| 提出部数 | 定期調査(検査)報告書 正副1部ずつ(計2部)+ 定期調査(検査)概要書1部 |
| 様式 | 埼玉県建築安全協会のホームページからダウンロード |
| 所有者変更・除却・休業の届出 | いずれも埼玉県建築安全協会が窓口 |
常時閉鎖式防火扉の扱いに注意してください
細かい話ですが、調査を発注するときに効いてくるので書いておきます。
令和6年6月28日および令和7年1月29日に、定期報告制度に係る国土交通省告示が改正されました。これを受けて、熊谷市は熊谷市建築基準法施行細則を改正し、令和7年7月1日から施行しています。
市のページには次のように書かれています。
本市における「常時閉鎖式防火扉」については、従来どおり「特定建築物定期調査」による調査対象とし、「防火設備定期検査」上では報告を求めないものとします。
つまり、常時閉鎖式の防火扉について、熊谷市では防火設備定期検査での報告は不要で、特定建築物定期調査の中で見る、という整理です。同様の整理は埼玉県の施行細則改正でも採られており、県内では共通の運用とみられますが、特定行政庁ごとに扱いが分かれる論点です。県外の調査会社に依頼する場合は、熊谷市の細則を確認しているかを聞いてください。
また、告示改正で報告様式が変わっています。令和7年7月1日以降に実施する調査・検査は新しい様式を使う必要があります。
12条点検と劣化診断は1回にまとめられます
これは費用に直結する話なので、毎回書いています。
特定建築物定期調査では、外壁の全面打診が必要になる場合があります(竣工または外壁改修から10年を超えたタイミングなど)。一方、大規模修繕の前には劣化診断をします。どちらも外壁を叩いて浮きを探す作業で、中身がほとんど同じです。
打診調査の㎡単価の目安は250〜500円。外壁2,000㎡なら50万〜100万円です。別々に発注すれば、単純に2倍払うことになります。
理事会での議題の立て方は、「調査を追加する」ではなく「もともと予定していた劣化診断を、12条点検に合わせて前倒しする」です。予算が増えるのではなく減る話なので、総会でも通りやすくなります。
足場を組まずに全面打診から補修まで一貫して行う方法については、明誠のロープアクセス工法の技術詳細をご覧ください。調査のためだけに足場を組む必要がなくなるというのが、この工法のいちばん分かりやすい利点です。
マンション管理計画認定制度:熊谷市は申請手数料が無料です
制度の概要
熊谷市はマンション管理適正化推進計画を策定しており、市内の分譲マンションの管理組合は、市から管理計画の認定を受けることができます。ページの更新日は2026年3月19日です。
| 項目 | 熊谷市の内容 |
|---|---|
| 対象 | 市内にある分譲マンションの管理組合 |
| 市への申請手数料 | 無料 |
| 別途かかる費用 | 管理計画認定手続支援システムの利用料および事前確認審査料 |
| 有効期間 | 5年(更新しない場合は効力を失う) |
| 申請方法 | 公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援システム」から |
| 事前確認 | 事前確認講習を受講したマンション管理士による事前確認が必要 |
| 窓口 | 都市計画課(大里庁舎)0493-39-4813 |
市への申請手数料が無料というのは、率直に言って大きいです。町村部を県が所管している地域では、適合証がない場合の手数料が2万5千円を超えることもあります。熊谷市は市が直接所管しているうえに手数料を取っていません。
ただし、マンション管理センターのシステム利用料と事前確認審査料は別途かかります。この金額はマンション管理センターにお問い合わせください。
申請の流れで、最初にやることは「総会の決議」です
市が示している申請の流れは次のとおりです。
- 管理計画の認定の申請について、総会で決議をとる
- 事前確認に関する情報を管理計画認定手続支援システムに入力し、添付書類をアップロードする
- 認定基準に適合していることが確認されると、適合通知メールが届く
- システム上で、事前確認適合証および認定申請書を添付して市に申請する
- 市が審査した後、認定通知書が届く
- 認定マンション閲覧サイトおよび市のホームページでマンション名が公表される(公表に同意した場合のみ)
1番目が総会の決議である点に注意してください。理事会の判断だけでは進められません。総会は年1回が普通ですから、思い立ってから最短でも数か月かかります。逆算して動いてください。
なお、熊谷市は認定を受けたマンションの一覧をPDFで公開しています。近隣で認定を取っているマンションがあるかどうかを見ておくと、総会での説得材料になります。
認定を取る本当の価値
認定を取るとフラット35の金利引き下げや税制上の優遇が受けられる、という説明がよくされます。それも事実ですが、私が管理組合にお伝えしているいちばんの価値は別のところにあります。
長期修繕計画の見直しが、認定基準に沿って強制的に進むことです。
認定基準には、長期修繕計画が7年以内に作成または見直しされていること、計画期間が30年以上かつ大規模修繕工事が2回以上含まれていること、といった要件があります。これを埋めようとすると、理事会は否応なく自分たちの修繕積立金と工事予定を直視することになります。
認定そのものより、認定基準を埋める過程で、理事会が現実を見ることに意味があります。
そして有効期間は5年です。5年ごとに同じ作業が回ってくるということは、5年ごとに長期修繕計画が棚卸しされるということでもあります。管理組合の運営という意味では、これが最大の効能だと考えています。
マンション長寿命化促進税制:令和9年3月31日まで
国の制度です。令和5年4月1日から令和9年3月31日までに、長寿命化に資する大規模修繕工事を完了したマンションについて、申告により翌年度分の家屋の固定資産税が減額されます。
ここは要件が多く、誤解されやすい制度です。熊谷市が公表している要件を漏らさず書きます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 工事完了の期限 | 令和9年3月31日 |
| 築年数の要件 | 新築された日から20年以上 |
| 総戸数の要件 | 10戸以上 |
| 用途の要件 | 店舗等が併存する場合、専有部分の2分の1以上が居住部分であること |
| 工事の要件 | 外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事を一体として実施 |
| 工事回数の要件 | 過去に長寿命化工事を1回以上実施しており、令和5年4月1日〜令和9年3月31日の間に「2回目以降」の長寿命化工事を完了していること |
| 管理体制の要件 | 次のいずれか。(A) 管理計画認定マンションで、令和3年9月1日以降に修繕積立金の額を認定基準まで引き上げていること。(B) 市から助言または指導を受けた管理組合で、長期修繕計画を作成または見直し、それが一定の基準に適合していること |
| 申告の期限 | 工事完了日から3か月以内 |
| 減額の内容 | 翌年度分の家屋の固定資産税額を1/3減額(1戸あたり100㎡相当分まで) |
(出典:熊谷市 長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに係る固定資産税の減額制度について/国土交通省 マンション税制)
2026年9月22日時点で、令和9年3月31日まで残り約6か月半です。
見落とされやすい2つの要件
ひとつめ。これから初めて大規模修繕をするマンションは対象外です。
「過去に長寿命化工事を1回以上実施しており、令和5年4月1日以降に2回目以降の工事を完了する」ことが要件です。築22年で初回の大規模修繕を迎えるマンションは、この税制の対象になりません。ここを読み飛ばすと、総会で「税金が安くなります」と説明した後に取り消すことになります。
ふたつめ。管理計画認定か、市からの助言・指導のどちらかが必要です。
工事をやれば自動的に減額される制度ではありません。熊谷市は管理計画認定制度の申請手数料を無料にしていますので、この税制を狙うなら、まず管理計画認定を取りに行くのが最短ルートになります。ただし認定を取るには修繕積立金を認定基準まで引き上げている必要があり、そこにも総会の決議が要ります。
この2つを踏まえると、令和9年3月31日という期限は、2回目以降の大規模修繕を控えていて、かつ管理計画認定の準備が進んでいるマンションにとっての期限です。該当しないマンションは、この期限に振り回される必要はありません。
理事会に説明するときの注意点
「税金が3分の1になる」と説明しないでください。 減額されるのは家屋分の固定資産税だけです。土地の固定資産税は対象外ですし、都市計画税も対象外です。総会で「税金が3分の1」と説明してしまうと、翌年の納税通知書を見た区分所有者から苦情が来ます。
分割発注は要件を外すおそれがあります。 外壁塗装等・床防水・屋根防水を「一体として」実施することが要件です。予算の都合で「今年は外壁だけ、来年は屋上防水」と分けると、要件を満たさなくなる可能性があります。
申告の期限は工事完了日から3か月以内です。 工事が終わって引渡しが済み、ほっとしているうちに過ぎます。工程表を作る段階で、完了後の申告まで含めてスケジュールに入れておいてください。
なお、この税制と前述の耐震改修補助を組み合わせられるかどうかは個別の判断になります。市の資産税課(048-524-1111)と建築審査課の両方に確認してください。
熊谷市のマンションストックと、市の姿勢
熊谷市は「熊谷市マンション管理適正化推進計画」(令和5年4月〜令和15年3月)を策定しています。計画の策定資料によれば、令和3年1月時点で市内の分譲マンション(3階建て以上の居住用分譲マンション)は78棟とされています。
78棟という数字は、さいたま市や川口市に比べれば少ないですが、市が10年計画を作り、管理計画認定制度を手数料無料で運用しているという事実のほうが重要です。市として、マンションの管理水準を上げることに予算と人を割いている、ということだからです。
これは管理組合にとって追い風です。窓口に相談したときに「マンションのことはよく分からない」と言われる自治体と、推進計画を持っている自治体とでは、相談の密度がまったく違います。
そして、市自身も公共施設の長寿命化に取り組んでいます。市が公共施設に対してやっていることと、管理組合が共用部に対してやるべきことは、構造としては同じです。計画をつくり、点検し、優先順位をつけて直す。それだけのことですが、それができている管理組合とそうでない管理組合で、20年後の資産価値は大きく変わります。
管理組合向けの当社のサービスについては、管理組合向けサービスのページをご覧ください。漏水などの緊急対応は明誠の漏水対応にまとめています。
熊谷市のモデルケース:2つの立地で試算してみます
実際の見積は物件の状態により大きく変動しますので、以下はあくまで考え方を示すための参考値です。
ケースA:幹線道路沿い、旧耐震、6階建て
築45年、6階建て、32戸、国道に面する立地。緊急輸送道路沿いで耐震改修補助の対象になった場合。
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 大規模修繕(足場工法) | 4,200万円 |
| 耐震改修工事 | 2,400万円 |
| 耐震改修補助(費用の2/3・上限1,000万円) | ▲1,000万円 |
| 大規模修繕をハイブリッド工法に変更 | ▲600万円 |
| 実質負担の目安 | 5,000万円 |
このケースの要点は、別々にやると足場が2回分かかるということです。耐震改修と大規模修繕を同じ工期で回せれば、仮設費が1回で済みます。32戸なら1戸あたり50万円前後の差になります。
なお、6階建てですので12条点検の対象(3年ごと)にも該当します。劣化診断と打診を1回にまとめてください。
ケースB:住宅地、新耐震、4階建て
築28年、4階建て、20戸、緊急輸送道路には面していない立地。
| 項目 | 足場工法 | ハイブリッド工法 |
|---|---|---|
| 工事費の目安 | 2,900万円 | 2,450万円 |
| 差額 | ── | ▲450万円(1戸あたり約22万円) |
| 工期 | 4.5か月 | 3か月 |
こちらは耐震補助の対象外ですが、アスベスト含有調査の補助は使える可能性があります。築28年(平成10年前後)なら、外壁の仕上塗材に石綿が含まれている可能性は否定できません。調査費に補助が出るなら、先に調べておくべきです。
参考までに㎡単価の目安を再掲します。外壁塗装3,500〜4,500円/㎡、打診調査250〜500円/㎡、防水5,000〜8,000円/㎡。30戸規模のマンションの大規模修繕は総額3,500万〜5,000万円が目安で、うち仮設足場が15〜25%、金額にして500万〜1,200万円を占めます。
見積書で必ず見てほしい5点(熊谷市版)
1. アスベスト事前調査の費用がどこに入っているか
一式表記になっていないか。調査費と、石綿があった場合の除去・封じ込めの単価が分かれているか。市の補助を使う前提で見積を作ってもらえるか。
2. 遮熱仕様の提案があるか
熊谷市で施工するのに、屋上防水のトップコートの仕様が標準品のままなら、その会社は地域の条件を考えていません。遮熱仕様の場合の差額を数字で出してもらってください。
3. 仮定数量を超えた分の単価
「タイル浮き補修 ◯㎡(仮定数量)」という項目は必ず入ります。実際に調査したら想定より多かった場合の単価を、契約書に明記しておいてください。高温地域ではタイルの浮きが想定を超えることがあります。
4. 足場リース延長費の負担
工期が延びたときのリース延長費を誰が負担するのか。天候による延長は施工会社の責任か、管理組合の負担か。熊谷市は夏場の猛暑日が多く、作業員の熱中症対策で午後の作業を止める判断が必要になる日があります。この場合の工程遅延をどう扱うかを、契約前に決めておいてください。
5. 12条点検の様式改正に対応しているか
令和7年7月1日施行の様式改正と、熊谷市建築基準法施行細則の「常時閉鎖式防火扉」の扱いを知っているか。この質問への回答の速さで、その会社が熊谷市の運用を調べているかが分かります。
あわせて、工事監理者と施工会社の資本関係も確認しておいてください。監理者が施工会社の関連会社では、チェック機能が働きません。
私は施工会社の人間です:利益相反について
ここまで読んでいただいて、「ロープアクセスを売り込みたいだけだろう」と思われた方もいると思います。そのとおりです。私は施工会社の人間で、自社の工法を勧める立場にあります。その前提で読んでください。
そのうえで、正直に書きます。ロープアクセス工法は万能ではありません。私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる現場は、普通にあります。
足場が有利になる条件は、だいたい次の4つです。
- タイルの浮きが外壁面積のおおむね20%を超えている(補修量が多く、作業効率で足場が勝つ)
- バルコニー内部の作業が主体になる
- サッシなど開口部の交換を伴う
- 構造補強(鉄骨ブレースの設置など)を伴う
熊谷市の場合、4番目が特に効いてきます。緊急輸送道路沿いの旧耐震マンションで耐震改修をやるなら、構造補強の部分は足場が必要です。この記事で1,000万円の耐震補助を紹介しておきながら「ロープアクセスでやりましょう」と言うのは筋が通りません。部位ごとに使い分けるハイブリッド工法が、この条件では最適解になります。
もうひとつ、よく誤解される点を書いておきます。「ロープアクセスなら住戸への立ち入りはゼロです」というのは正しくありません。バルコニー内部の作業は、工法にかかわらず立ち入りが必要です。ここを曖昧にして契約すると、工事が始まってから住民に叱られるのは、施工会社ではなく、説明した理事会です。
3つの工法を持っている意味についても書かせてください。足場しか持たない会社は足場を勧めるしかありません。ロープしか持たない会社はロープを勧めるしかありません。3つ持っているから、足場を勧められます。
株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員、ISO9001品質マネジメントシステム、日本ロープ高所作業協会の事務局を担当しており、日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟しています。安全管理の考え方は明誠の安全管理への取り組みに、これまでの施工事例は明誠の施工事例にまとめています。
同業者やフランチャイズ加盟をご検討の方向けの技術情報は、ロープアクセスドットコムのほうが詳しく書いています。
この秋、熊谷市の理事会がやることの順番
令和9年3月31日の税制期限から逆算した工程表です。
| 時期 | やること | 連絡先 |
|---|---|---|
| 9〜10月 | 前面道路が緊急輸送道路か確認。旧耐震なら耐震補助の対象になるか照会 | 建築審査課 0493-39-4809 |
| 9〜10月 | アスベスト含有調査の補助を相談(調査会社と契約する前に) | 建築審査課 0493-39-4809 |
| 10月 | 12条点検の報告年度を確認。劣化診断を前倒しで実施 | 埼玉県建築安全協会 |
| 10〜11月 | アスベスト調査を実施。結果を見積の前提に組み込む | ── |
| 11〜12月 | 見積3社。遮熱仕様の差額、仮定数量超過分の単価を質問項目に | ── |
| 12〜1月 | 管理計画認定を取るなら、総会の議案に入れる | 都市計画課 0493-39-4813 |
| 1〜3月 | 総会。工事契約。補助金の交付申請 | ── |
| 4月以降 | 着工(夏の猛暑期を避けた工程を組む) | ── |
窓口について、熊谷市ならではの注意点を3つ書いておきます。
ひとつ。建築審査課と都市計画課は大里庁舎にあります。 市役所本庁舎(熊谷市宮町二丁目47番地1、048-524-1111)ではありません。建築審査課の直通は0493-39-4809、都市計画課の直通は0493-39-4813です。市外局番が048ではなく0493である点にご注意ください。旧大里町の区域にあるためです。
ふたつ。住宅リフォーム資金補助金の窓口だけは本庁舎7階です。 企業活動支援課(048-594-6820)で、受付時間は平日の午前9時から午後4時までと、開庁時間より短く設定されています。
みっつ。12条点検の提出先は市役所ではなく、一般財団法人埼玉県建築安全協会です。 市に持って行っても受け取ってもらえません。
よくあるご質問
Q. 熊谷市の補助金で、マンションの大規模修繕に使えるものはありますか?
A. 一般的な大規模修繕に対する補助はありませんが、2つの制度が使える可能性があります。ひとつは緊急輸送道路沿いの旧耐震建築物に対する耐震診断・耐震改修補助(改修は費用の2/3・上限1,000万円)、もうひとつは吹付けアスベスト等含有調査補助(1棟25万円が上限)です。いずれも建築審査課(0493-39-4809)にご相談ください。
Q. 熊谷市住宅リフォーム資金補助金は、管理組合が使えますか?
A. 使えません。市のページに「マンションなどの場合は、個人の専有部分の工事が対象となります」と明記されています。共用部の大規模修繕は対象外です。ただし、区分所有者が専有部分のリフォームをする場合は対象になり得ますので、大規模修繕に合わせて専有部を直す方には案内する価値があります。
Q. うちのマンションが緊急輸送道路に面しているかどうか、どう調べますか?
A. 埼玉県のホームページで県内の緊急輸送道路を確認できます。ただし、補助の対象になるかは道路の該当性だけでなく、着工日(昭和56年5月31日以前)、建物の高さ(前面道路の幅員が12m以下なら6m超、12m超なら幅員の1/2超)、耐震改修促進法第14条第3号の特定建築物に該当するか、で決まります。住所と階数と着工年を伝えて建築審査課に照会するのが確実です。
Q. アスベストの調査は、大規模修繕で必ず必要ですか?
A. 石綿障害予防規則により、建築物の改修工事の前には有資格者による事前調査が義務づけられています。大規模修繕は改修工事にあたりますので、原則として必要です。熊谷市には吹付け材の含有調査への補助制度(1棟25万円が上限・1棟1回限り)がありますので、調査会社と契約する前に建築審査課にご相談ください。なお外壁の仕上塗材やシーリング材の調査は、この補助の対象外となる可能性が高い点にご注意ください。
Q. 足場を組まないロープアクセス工法だと、どれくらい安くなりますか?
A. 物件の条件により大きく変わりますが、仮設足場は総工費の15〜25%が目安です。30戸規模で総額3,500万〜5,000万円の工事なら、足場だけで500万〜1,200万円になります。本記事のモデルケースでは、4階20戸でハイブリッド工法により約450万円の差が出る計算になりました。無料で概算のお見積りを出せますので、お気軽にご相談ください。
Q. 熊谷市は暑いですが、工事は夏を避けたほうがよいですか?
A. 塗装工事は気温5℃以上・湿度85%未満が一般的な施工条件で、上限側の制約は塗料の種類によります。ただし、熊谷市で夏場に施工する場合は、品質より先に作業員の安全の問題が出ます。猛暑日には午後の作業を止める判断が必要になり、その分工期が延びます。工期に余裕があるなら、春(4〜6月)または秋(9〜11月)の着工をおすすめします。工程表を見るときは、真夏に塗装工程が入っていないかを確認してください。
Q. 12条点検は何階建てから対象になりますか?
A. 熊谷市では、共同住宅(サービス付き高齢者向け住宅を除く)は6階以上の階にあるものが対象で、報告の間隔は3年です。5階建て以下なら特定建築物としての定期報告の対象外ですが、エレベーターと建築設備(換気・排煙・非常用照明・給排水。住戸内のものを除く)は毎年報告が必要です。階数だけで「うちは関係ない」と判断しないでください。
Q. マンション管理計画認定の申請には、いくらかかりますか?
A. 熊谷市への申請手数料は無料です。ただし、公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援システム」の利用料と、事前確認審査料が別途かかります。金額はマンション管理センターにお問い合わせください。なお、申請の最初のステップは総会での決議ですので、逆算して準備してください。認定の有効期間は5年です。
Q. 耐震改修と大規模修繕は、同時にやったほうがよいですか?
A. 緊急輸送道路沿いで耐震補助の対象になるなら、同時をおすすめします。理由は仮設足場です。別々の年度に発注すると足場を2回かけることになり、30戸規模なら500万〜1,200万円を2回払うことになります。工期が長くなり住民の負担は増えますが、金額の差は大きくなります。
出典・参考資料
- 熊谷市ホームページ
- 熊谷市 緊急輸送道路閉塞建築物耐震診断・耐震改修補助金交付制度について(2026年4月1日更新)
- 熊谷市 吹付けアスベスト等含有調査補助金交付制度について(2026年4月8日更新)
- 熊谷市住宅リフォーム資金補助金をご利用ください!(2026年4月1日更新)
- 熊谷市 定期報告制度について(2025年6月27日更新)
- 熊谷市 マンション管理計画認定制度について(2026年3月19日更新)
- 熊谷市 マンション管理適正化推進計画について
- 熊谷市 長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに係る固定資産税の減額制度について
- 熊谷市民間建築物吹付けアスベスト等含有調査事業補助金交付要綱(令和8年4月1日施行・PDF)
- 熊谷市 建築物の耐震化について
- 熊谷市 住まいの補助・助成一覧
- 埼玉県 緊急輸送道路
- 埼玉県 定期報告制度について
- 一般財団法人 埼玉県建築安全協会
- 国土交通省 マンション管理計画認定制度
- 国土交通省 マンション税制
- 国土交通省 アスベスト問題への対応について
- 環境省 石綿(アスベスト)問題への取組
- 住宅省エネ2026キャンペーン
- 気象庁 2018年7月23日の高温について(報道発表)
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月22日時点で公表されている熊谷市および国土交通省・埼玉県の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特に補助金は予算の範囲内での交付となるため、年度後半には枠が残っていない場合があります。実際に申請される前に、必ず熊谷市および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
大規模修繕の工法の選び方、概算のお見積りについては、お問い合わせからお気軽にご相談ください。熊谷市を含む埼玉県全域は、株式会社明誠の施工エリア内です。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月22日
荒川区の管理組合が無料で使える相談・派遣12選|コンサルタント派遣は防災3回+通算6回・1回2時間まで無料、耐震アドバイザーは1棟3回【令和8年度版】
2026年9月21日 更新
荒川区の管理組合さまとお話ししていて、いつも引っかかる数字が一つあります。
年4件。
これは荒川区が公表している、アドバイザー派遣の年間利用件数(令和4年度実績)です。区内には分譲マンションが何百棟とあるのに、区が用意した専門家派遣を使った管理組合は、1年でたった4つ。区自身も、令和10年度までにこれを10件へ増やすことを目標に掲げています(出典:荒川区マンション管理適正化推進計画(概要))。
つまり荒川区では、制度が足りないのではなく、制度が知られていないのです。
私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組んで建物をすっぽり囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も自分の足で踏んできた人間です。
その立場から申し上げると、荒川区の支援メニューは決して薄くありません。むしろ「防災」に特化した専門家枠を別建てで用意しているという、他区にあまりない特徴を持っています。荒川区は荒川・隅田川に挟まれた低地を抱える区ですから、防災に厚いのは必然と言えます。
今日は、荒川区の管理組合とビル・収益不動産オーナーさまが使える相談・派遣・助成を12個、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。
結論:荒川区で使える支援は12ある
先に一覧でお示しします。無料のものと、費用の一部が戻るものを分けて並べました。
| # | 制度・窓口 | 誰が対応するか | 費用 | 申込先 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 荒川区コンサルタント派遣制度(マンション) | マンション管理士・防災士・一級建築士 | 無料/1回2時間以内 | 住まい街づくり課 03-3802-4454 |
| 2 | 分譲マンション耐震アドバイザー派遣事業 | 区登録の一級建築士・マンション管理士 | 無料/1棟3回まで | 住まい街づくり課住宅係(内線2826) |
| 3 | 住まい街づくり課住宅係の窓口・電話相談 | 区職員 | 無料/平日8時30分〜17時15分 | 03-3802-4454 |
| 4 | 荒川区分譲マンションセミナー | 外部講師 | 無料/年2回 | 住まい街づくり課(内線2824) |
| 5 | 東京都マンションアドバイザー無料派遣 | マンション管理士ほか | 無料/届出受理で1回、管理不全の兆候ありで5回 | 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1453 |
| 6 | 分譲マンション総合相談窓口 | 専門相談員 | 無料 | 03-6427-4900 |
| 7 | マンション管理計画認定制度「相談ダイヤル」 | マンション管理士会の相談員 | 無料/月〜土10時〜17時 | 03-5801-0858 |
| 8 | 荒川区の法律相談(弁護士) | 弁護士 | 無料/火・金曜13時〜16時・要予約 | 区民相談所(区役所3階) |
| 9 | 分譲マンション防災対策費助成 | ― | 工事最大400万円/資器材50万円/備蓄品10万円(いずれも費用の3分の2) | 住まい街づくり課(内線2822) |
| 10 | 非木造建物耐震化推進事業(分譲) | ― | 診断3分の2・400万円/設計3分の2・100万円/工事3分の2・1,000万円 | 同(内線2822・2826) |
| 11 | 非木造建物耐震化推進事業(賃貸) | ― | 診断2分の1・200万円/設計2分の1・50万円/工事2分の1・500万円 | 同上 |
| 12 | 荒川区マンション管理計画認定制度 | ― | 区への手数料は当面無料 | 住まい街づくり課住宅係 |
覚えておく電話番号は、実質1つで足ります。住まい街づくり課 03-3802-4454。荒川区のマンション施策はほぼすべてこの課が窓口です。
ここからが本題です。
1. 荒川区コンサルタント派遣制度:1回2時間が無料、防災は別枠で年3回
荒川区の管理組合が最初に使うべき制度が、これです。
区は、分譲マンションの管理組合が抱えている困りごとの相談に対して、コンサルタントを派遣する「出張相談」を行っています。派遣されるのはマンション管理士、防災士、一級建築士などの専門家で、相談内容に応じた専門家を区が選んで送り込んでくれます(出典:荒川区「コンサルタント派遣制度(マンション)」、2026年9月4日更新)。
条件を整理します。
- 対象:区内の分譲マンション管理組合(管理組合のないマンションは別途相談)
- 派遣時間:1回につき2時間以内
- 利用料:無料
- 回数:防災に関する助言業務は1年度につき3回まで(回数は毎年リセット)/それ以外の助言業務は1管理組合につき通算6回まで(回数は次年度へ引き継がれる)
この「回数の分け方」が、荒川区の制度でいちばん大事なところです。
防災枠は毎年リセットされる
区のパンフレットには、防災に関する助言は年3回まで使え、回数は毎年リセットされると明記されています(出典:荒川区「コンサルタント派遣制度パンフレット」)。
つまり防災テーマであれば、毎年3回×2時間=6時間の専門家の時間を、費用ゼロで使い続けられる。10年使えば60時間です。これは相当な資源です。
一方、防災以外の助言(管理組合の運営、管理会社との関係、修繕積立金の滞納対策など)は通算6回で、使い切ったら翌年度に戻ってはきません。こちらは大事に使う必要があります。
相談できること・できないこと
相談内容として区が挙げているのは次の6つです。
- 管理組合の運営(総会、理事会、管理規約など)
- 管理会社との関係
- マンション内のトラブル対策(騒音、生活マナーなど)
- 修繕積立金、管理費に関する基本的な情報提供、滞納対策
- マンション防災対策の進め方
- マンション管理計画認定制度の申請にあたっての相談
逆に、次のものは対象外です。ここを知らずに申し込むと止まります。
- 管理規約、長期修繕計画等の書類作成
- 見積の作成
- 修繕工事の設計
- 建物に関する耐震等の診断・調査
- 居住者間・近隣住民間の紛争解決、仲裁、権利調整
- 特定業者の紹介
要するに、「作ってもらう」ことはできず、「判断を助けてもらう」制度です。長期修繕計画そのものを作りたいなら、この制度ではなく設計事務所やコンサルタントへの発注が必要になります。ただ、「いまの長期修繕計画が妥当かどうか、専門家の目で見てほしい」という相談なら、この枠でできます。私の経験では、この使い方がいちばん費用対効果が高い。
申請の流れ:事前相談 → 7日前までに書類
手続きはシンプルです。
- 事前相談。申請の前に、派遣を希望する内容と派遣日を区に相談します(03-3802-4454)
- 申込。派遣希望日の7日前までに、申請書+相談内容に関係する資料(管理規約、図面、長期修繕計画書など)+理事長が確認できる書類(総会議事録、役員名簿など)を提出
- 派遣決定。区から日時・場所の通知が届きます
区は「調整にお時間をいただきますので、お早めにご相談ください」と注意書きを添えています。理事会の日程が決まった時点で動くのが正解です。なお、個人への派遣はできず、コンサルタントの指名も原則できません(管理計画認定や法律相談など、2回目以降も同じコンサルタントが望ましいと区が判断した場合は例外)。
2. 分譲マンション耐震アドバイザー派遣:旧耐震なら1棟3回まで無料
荒川区にはもう一つ、別枠の無料派遣があります。あまり知られていませんが、旧耐震のマンションにとってはこちらのほうが重要です。
区は、区に登録された一級建築士またはマンション管理士を「分譲マンション耐震アドバイザー」として無料で派遣し、耐震化のアドバイスを1棟につき3回まで行っています(出典:荒川区「非木造建物耐震化推進事業のご案内」)。
内容は次の3つです。
- 建物現地調査の実施(建物目視調査、設計図書確認等)
- 耐震化の必要性や技術的なアドバイス
- 耐震化に向けた区分所有者間の合意形成の支援
3つ目に注目してください。合意形成の支援まで無料枠に入っているのは、かなり踏み込んだ制度です。耐震改修が進まない最大の理由は技術でも費用でもなく、総会で決まらないことですから、ここに第三者が入ってくれる意味は大きい。
対象は、区内にある分譲マンションで、昭和56年5月31日以前に建築(新築や増築)された建物、かつ建築基準法その他の関係法令等に違反していない建物です。申請には建物全部事項証明書、確認通知書(写)または建築年月日を証する書類、管理組合の規約および理事長であることを証する書類が必要です。
現地調査が無料、というのが効く
私たち施工会社の立場から言うと、「建物現地調査(目視調査、設計図書確認)」が無料で受けられるのは、思っている以上に価値があります。
大規模修繕の検討でいちばん最初につまずくのは、自分の建物の状態を誰も客観的に語れないことだからです。管理会社の言い分と、飛び込みで来た業者の言い分がずれる。どちらが正しいか判断できない。そこで理事会が止まる。
区の登録建築士が1回現地を見て所見を出してくれれば、その後のすべての議論の土台ができます。外壁の状態については、明誠のロープアクセス工法による外壁調査の考え方もあわせてご覧いただくと、調査方法ごとの違いがつかめると思います。
3. 荒川区の窓口・セミナー・マンション通信:情報を取る3つの経路
制度を使うほどではないけれど、方向だけ知りたい。そういうときの入口が3つあります。
窓口・電話相談(無料)
荒川区役所 防災都市づくり部 住まい街づくり課 住宅係が、マンション管理に関する相談の窓口です。
- 電話:03-3802-4454
- 所在:〒116-8502 荒川区荒川二丁目11番1号(北庁舎2階)
- 区役所の開庁時間:月曜〜金曜 午前8時30分〜午後5時15分(祝日・休日・年末年始を除く)
荒川区分譲マンションセミナー(無料・年2回)
区は、分譲マンションの管理運営について理解を深めることを目的として、分譲マンションセミナーを年2回開催しています。毎回、管理組合の運営や大規模修繕、長期修繕計画等をテーマにした講演会と、参加者相互で話し合う交流会の2部構成です(出典:荒川区「荒川区分譲マンションセミナー」、2026年9月2日更新)。
令和8年度第1回は、令和8年10月3日(土曜)に開催が予定されています。
過去のテーマを見ると、区が何を課題と見ているかがよく分かります。
| 開催日 | テーマ |
|---|---|
| 令和8年2月28日 | 管理組合の財政対策(適正な修繕積立金とお金のため方) |
| 令和7年10月18日 | 外部管理者方式導入する?しない?(生成AIと一緒に学ぶ体験型) |
| 令和7年2月15日 | 在宅避難を進めましょう! |
| 令和6年10月19日 | マンション管理の要点整理(大規模修繕・管理計画認定・防災) |
| 令和6年2月24日 | いまのお住まいを終の棲家とするために |
令和8年2月の「管理組合の財政対策」は講演資料(PDF)が公開されています。セミナーに行けなかった年度でも、資料だけは無料で読めるということです。
交流会が付いている、という価値
私が「このセミナーは出る価値がある」と申し上げるのは、第2部の交流会があるからです。
管理組合の理事は数年で入れ替わります。だから知識が組織に蓄積しない。隣のマンションが3年前にどんな失敗をしたのか、どこで見積が跳ねたのか、それを聞ける場が荒川区内にほとんどない。年2回のこの交流会は、その数少ない機会です。
4. 管理状況届出を出すと、東京都のアドバイザー派遣が無料になる
ここが、荒川区の管理組合が取りこぼしやすいポイントです。
東京都は「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」により、昭和58年(1983年)12月31日以前に新築され、居住用の独立部分が6以上ある分譲マンションに、管理状況の届出を義務づけています(出典:荒川区「マンション管理状況届出制度」、2026年8月20日更新)。届出先は荒川区役所 住まい街づくり課 住宅係(03-3802-4454)です。
そして、この届出が受理された管理組合は、東京都のマンションアドバイザー派遣を無料で使えます(出典:東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」)。
無料になる回数は次のとおりです。
- 届出が受理された要届出マンション:1回まで無料
- 届出が受理されたマンションのうち、管理不全の兆候があるマンション:5回まで無料
各コース1回あたり2時間程度。使えるコースは大きく2系統あります。
管理アドバイザー(講座編A・相談編B)
講座編は、マンションの管理のポイントの解説(A-1)、長期修繕計画作成ガイドライン活用の手引きの解説(A-2)、管理委託の仕方(A-3)、計画修繕工事の進め方(A-4)、滞納管理費・修繕積立金督促の仕方(A-5)、管理組合の設立の仕方(A-6)。
相談編は、管理組合の運営(B-1)、財務(B-2)、管理委託契約(B-3)、修繕計画の作成や修繕積立金等の設定(B-4)、修繕工事検討段階での相談(B-5①:建物・設備等の劣化状況の調査・診断、修繕工事の検討組織、修繕工事の方式等)、修繕工事準備段階での相談(B-5②:修繕工事の内容、業者選定の仕方、合意形成等)、その他の維持管理(B-6)。
大規模修繕を控えた管理組合なら、B-5①とB-5②が本命です。「修繕工事の方式」「業者選定の仕方」について、利害関係のない第三者に2時間話を聞ける。これを無料で使わない手はありません。
建替え・改修アドバイザー(Aコース)
建替え入門(A-1)、老朽度判定・建替えと修繕の費用対効果の説明(A-2)、合意形成の進め方(A-3)、改修によるマンション再生(A-4)。
申込は、申込書に必要事項を記載のうえ、FAX・メール・郵送で東京都防災・建築まちづくりセンター(03-5989-1453)へ。申込後1〜2週間程度でアドバイザーから日程調整の連絡が入ります。
荒川区の制度と都の制度は別枠です。両方使えます。順番としては、区のコンサルタント派遣で論点を整理し、都のアドバイザーB-5で工事方式を詰める、という流れが噛み合います。
5. 電話1本で聞ける無料相談ダイヤル
区役所が開いていない時間や、名乗らずに一般論だけ聞きたいときは、電話相談があります。
| 窓口 | 電話番号 | 受付 |
|---|---|---|
| 分譲マンション総合相談窓口(東京都防災・建築まちづくりセンター) | 03-6427-4900 | 管理状況届出制度に関することを含む |
| マンション管理計画認定制度「相談ダイヤル」(日本マンション管理士会連合会) | 03-5801-0858 | 月曜〜土曜 午前10時〜午後5時(祝日・休日、年末年始を除く) |
| 管理計画認定手続支援システムに関する相談(マンション管理センター) | 03-6261-1274 | 月曜〜金曜 午前9時30分〜午後5時(祝日・休日、年末年始を除く) |
| 管理状況届出システムのログインID・パスワード(東京都住宅政策本部マンション課) | 03-5320-4913 | ― |
(出典:荒川区「荒川区マンション管理計画認定制度」、2026年9月17日更新/荒川区「マンション管理状況届出制度」)
とくに相談ダイヤル(03-5801-0858)は土曜も受け付けています。平日に動けない理事長さんにとって、土曜に電話できる窓口があるのは実務的に大きい。認定制度だけでなく、長寿命化促進税制やマンション管理適正化法に関する幅広い質問に、マンション管理士会の相談員が答えてくれます。
区民の個人的な法律問題であれば、荒川区の法律相談(弁護士)が火曜・金曜の午後1時〜4時に区民相談所(区役所3階)で無料・要予約で受けられます(出典:荒川区「相談窓口」)。司法書士相談(第2水曜)、行政書士相談(第1・第4水曜)もいずれも午後1時〜4時です。
6. 荒川区で使える助成:防災に最大400万円、耐震改修に最大1,000万円
ここからは、無料ではないけれど費用の一部が戻る制度です。
分譲マンション防災対策費助成
区は、分譲マンション管理組合に対して、防災対策工事・防災資器材・共同備蓄品の購入費用の一部を助成しています(出典:荒川区「分譲マンションの防災対策を支援します」、2026年8月31日更新)。
| 助成メニュー | 対象例 | 要件 | 助成額 |
|---|---|---|---|
| 防災対策工事 | エレベーター防災対策改修工事、防災備蓄倉庫設置工事、耐震ドア改修工事 など | 管理規約がある/総会が行われている/防災マニュアルを備えている/防災訓練を実施する/新耐震性能を有している | 最大400万円(費用の3分の2) |
| 防災資器材配備 | エレベーター用防災チェア、階段避難車、電動階段台車、ポータブル発電機 など | 管理規約がある/総会が行われている/防災マニュアルを備えている/防災訓練を実施する | 最大50万円(費用の3分の2) |
| 共同備蓄品配備 | 携帯トイレ、おむつ、生理用品、保存水 等 | 管理規約がある/総会が行われている | 最大10万円(費用の3分の2) |
注意点が一つ。区は「必ず工事の契約又は物品の購入をする前に、申請手続きを行ってください」と明記しています。先に契約すると対象外です。これは助成制度に共通する落とし穴で、私が現場で見てきたなかでもいちばん多い失敗です。
また、防災対策工事と防災資器材には「防災マニュアルを備えている」「防災訓練を実施する」という要件があります。防災マニュアルがまだない管理組合は、区が防災マニュアル作成例(ワード)を公開していますので、まずそこから。前述のコンサルタント派遣の防災枠(年3回)を、このマニュアル作成の助言に使うのが、いちばん筋のよい組み合わせです。
非木造建物耐震化推進事業(分譲マンション)
昭和56年5月31日以前に建築された分譲マンションには、耐震化の三段構えの補助があります(出典:荒川区「木造・非木造建物耐震化推進事業」、2026年4月1日更新)。
| 事業 | 補助率 | 補助限度額 | 必要な同意 |
|---|---|---|---|
| 耐震診断 | 3分の2 | 400万円(延べ面積に応じた限度額あり) | 区分所有者の2分の1以上 |
| 耐震補強設計 | 3分の2 | 100万円 | 区分所有者の2分の1以上 |
| 耐震補強工事 | 3分の2 | 1,000万円 | 区分所有者の4分の3以上 |
耐震診断の補助対象費用の限度額は、床面積1,000㎡以内の部分が3,670円/㎡、1,000㎡超2,000㎡以内の部分が1,570円/㎡、2,000㎡を超える部分が1,050円/㎡で算出した額の合算です。設計図書が備わっていない場合の設計図書復元費用も補助対象にできます。
耐震補強設計・工事の対象は、区の耐震診断支援事業を受けた建物で、Is値0.6未満(診断後5年以内)のものです。
7. 賃貸マンション・ビルオーナーが使える枠
ここは収益不動産をお持ちの方向けです。荒川区の耐震化推進事業は、分譲だけでなく賃貸マンションにも枠がある点が重要です。
| 事業 | 分譲マンション | 賃貸マンション |
|---|---|---|
| 耐震診断 | 3分の2・400万円 | 2分の1・200万円 |
| 耐震補強設計 | 3分の2・100万円 | 2分の1・50万円 |
| 耐震補強工事 | 3分の2・1,000万円 | 2分の1・500万円 |
一般緊急輸送道路沿道建物(道路幅員の概ね2分の1以上の高さのもの)に該当する場合は、耐震診断が3分の2・100万円、補強設計が3分の2・100万円、補強工事が3分の2・1,000万円、耐震建替え工事が3分の2・1,500万円という別枠になります。荒川区内の幹線道路沿いに物件をお持ちのオーナーさまは、ご自身の建物が沿道建物に当たるかどうかを住まい街づくり課(内線2822・2826)で確認する価値があります。
防災面では、東京都の「東京とどまるマンション」事業が、登録したマンションの管理組合や賃貸オーナーを対象に防災資器材の購入などの補助を実施しています(出典:荒川区「東京とどまるマンション事業(東京都)」、2025年8月4日更新)。賃貸物件も対象になる数少ない防災補助です。
収益物件の維持管理・修繕の考え方については、ビル・収益不動産オーナー向けのご提案にまとめています。
8. 荒川区マンション管理計画認定制度:区への手数料は当面無料
荒川区は令和5年11月1日から管理計画認定制度の運用を開始しています。特筆すべきは費用です。
荒川区への申請・変更・更新手数料は当面無料(出典:荒川区「荒川区マンション管理計画認定制度」、2026年9月17日更新)。
多くの区が3,000円台から3万円近い手数料を取るなかで、荒川区は区の手数料を取っていません。ただし、管理計画認定手続支援システムの利用料および事前確認審査料は別途必要です(申請は公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援システム」経由のみで、区の窓口での申請はできません)。
認定の有効期間は5年間。荒川区の独自基準は1つで、「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例の要届出マンションに該当するマンションは、管理状況の届出が行われていること」です。つまり届出を出していない要届出マンションは、認定を取れません。
令和8年9月15日時点で、荒川区の認定マンションは33件。令和6年2月の1件目から、着実に増えています。区は令和10年度の目標値を20件と設定していましたが、すでに大きく上回っている計算です。
認定を受ける実利は、次の3つに集約されます。
- マンション長寿命化促進税制:屋根防水工事、床防水工事、外壁塗装等工事といった長寿命化工事が実施された場合、固定資産税額の減額措置を受けられます(国土交通省「マンション長寿命化促進税制」)
- 融資の金利引下げ:住宅金融支援機構のフラット35やマンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ
- すまい・る債の利率上乗せ:マンションすまい・る債の利率上乗せ
外壁塗装と防水が税制優遇の対象になるというのは、大規模修繕を控えた管理組合にとって直接的な意味があります。工事の内容を決める前に、認定の取得と工事時期の関係を整理しておくと、同じ工事で戻ってくるお金が変わります。
9. 荒川区の管理組合が直面している数字
区の計画書に載っている数字を、そのまま並べます。耳の痛い話ですが、自分のマンションがどこに当てはまるかを確認する価値があります(出典:荒川区マンション管理適正化推進計画(概要)、令和4年度荒川区マンション実態調査ほか)。
| 指標 | 令和4年度の実績 | 区の令和10年度目標 |
|---|---|---|
| 長期修繕計画を作成している管理組合の割合 | 80.2% | 100% |
| アドバイザー派遣の利用数 | 4件/年 | 10件/年 |
| 管理計画認定を受けたマンション数 | 0件 | 20件 |
| 災害対策を実施している管理組合の割合 | 59.5% | 70% |
さらに実態調査からは、こんな姿が見えます。
- 区内の区分所有建物の築年数は「20年以上」の割合が50%を超えている(令和4年7月時点の登記情報)
- 修繕積立金の額が「不足している」と3割弱が回答
- 自主防災組織が「ない」マンションが78.5%
- 総会に出席する区分所有者の割合が「2割未満」のマンションが35.6%
耐震診断を実施していない理由として「費用」を挙げるマンションもある、と区は書いています。しかし前述のとおり、荒川区の耐震診断補助は3分の2・400万円、そもそも耐震アドバイザーの現地調査は無料です。費用が理由で止まっているなら、その前提はもう変わっています。
築20年超が半数を超えたということは、2回目・3回目の大規模修繕が視野に入っている物件が荒川区内に大量にあるということです。1回目は新築時の保証や分譲会社の紹介でなんとかなる。難しくなるのは2回目からです。
10. 大規模修繕の費用を実際に下げる:足場とロープアクセスの差額
制度の話を一通りしたので、最後に工事そのもののコストに触れます。無料相談で方向が決まったあと、必ず突き当たる壁だからです。
マンションの大規模修繕では、総工費のうち仮設足場が15〜25%程度を占めるのが一般的です。30戸規模のマンションで総工費3,500万〜5,000万円とすると、足場だけで500万〜1,000万円という計算になります。しかも足場は、建物を1ミリも良くしません。職人を高所に運ぶための、純粋な移動コストです。
ロープアクセス工法は、この足場を組まずに、産業用ロープで作業員が屋上から降下して施工する方法です。目安として、10階建て・外周80m・工期3か月の物件で、仮設足場168万円に対してロープアクセス59万円(差額およそ109万円)という試算になります。工期も、足場の架設・解体期間が不要になる分、足場工法の6割程度で収まるケースがあります。
実際の見積は物件の形状、開口部の位置、屋上のアンカー設置可否によって大きく変わりますので、あくまで参考値としてご理解ください。外壁の打診調査だけであれば、一般的な目安は250〜500円/㎡程度、外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、防水は5,000〜8,000円/㎡あたりが相場のレンジです。
荒川区の建物条件とロープアクセス
荒川区は、道路が狭く隣棟間隔の詰まった敷地が少なくない区です。足場を組もうとすると、隣地の承諾が要る、道路占用の調整が要る、そもそも組む幅がない。こうした条件の建物では、ロープアクセスやハイブリッド工法(足場とロープアクセスを部位ごとに使い分ける方法)の適合性が高くなります。
株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業については、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業で過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けており、品質面ではISO9001のマネジメントシステムに基づいて管理しています。
日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟しているため、工種ごとに元請を立てずに施工できる点も、コストが下がる理由の一つです。
工法ごとの技術的な条件、どういう建物に向き・不向きがあるかは、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。同業の方やフランチャイズ加盟をご検討の方は、ロープアクセスドットコムの技術情報もあわせてご覧ください。
料金の考え方については大規模修繕の料金の考え方に、安全管理の体制は明誠の安全管理にまとめています。
よくあるご質問
Q. 荒川区のコンサルタント派遣は、何回まで無料ですか?
A. 防災に関する助言業務は1年度につき3回まで(回数は毎年リセットされます)、それ以外の助言業務は1管理組合につき通算6回まで(回数は次年度へ引き継がれます)です。1回につき2時間以内で、利用料は無料です。個人への派遣はできず、対象は区内の分譲マンション管理組合となります。
Q. コンサルタント派遣で、長期修繕計画を作ってもらえますか?
A. 作成はできません。荒川区は対象外として、管理規約・長期修繕計画等の書類作成、見積の作成、修繕工事の設計、建物に関する耐震等の診断・調査、居住者間の紛争解決・仲裁、特定業者の紹介を挙げています。ただし「いまの長期修繕計画の内容について専門家の意見が聞きたい」という相談は対象です。作成そのものを発注する場合は、設計事務所やコンサルタントへの委託が必要になります。
Q. 耐震アドバイザーとコンサルタント派遣は、どちらを使えばいいですか?
A. 建物の耐震化がテーマなら分譲マンション耐震アドバイザー派遣(1棟3回まで無料、対象は昭和56年5月31日以前建築の分譲マンション)、管理組合の運営や修繕積立金、防災対策の進め方がテーマならコンサルタント派遣制度です。耐震アドバイザーは建物現地調査と合意形成支援まで含むので、旧耐震の物件であればまずこちらから使うほうが実務的です。両方とも申込先は住まい街づくり課(03-3802-4454)です。
Q. 賃貸マンションやビルのオーナーでも使える制度はありますか?
A. 荒川区の非木造建物耐震化推進事業には賃貸マンションの枠があり、耐震診断は2分の1・200万円、耐震補強設計は2分の1・50万円、耐震補強工事は2分の1・500万円が限度です。東京都の「東京とどまるマンション」の防災資器材補助も、登録すれば賃貸オーナーが対象に含まれます。一方、コンサルタント派遣や防災対策費助成は分譲マンション管理組合が対象です。収益物件の修繕計画についてはビル・収益不動産オーナー向けのご提案もご覧ください。
Q. 管理計画認定を取ると、大規模修繕で得をしますか?
A. 屋根防水工事、床防水工事、外壁塗装等工事といった長寿命化工事を実施した場合に、マンション長寿命化促進税制による固定資産税額の減額措置を受けられます。また住宅金融支援機構のフラット35やマンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ、マンションすまい・る債の利率上乗せもあります。荒川区への申請・変更・更新手数料は当面無料ですが、管理計画認定手続支援システムの利用料と事前確認審査料は別途かかります。適用にはほかにも要件がありますので、工事の内容を決める前に住まい街づくり課へご相談ください。
Q. 外壁の打診調査にはいくらかかりますか?
A. 一般的な目安として250〜500円/㎡程度ですが、建物の形状、足場の要否、調査範囲によって大きく変わります。明誠ではロープアクセス工法を使い、足場を組まずに打診調査を行う方法もご提案しています。概算のお見積りをご希望でしたら明誠のお問い合わせ窓口からご連絡ください。
Q. 足場を組まないロープアクセス工法だと、工期はどれくらい短くなりますか?
A. 物件条件によりますが、仮設足場の架設・解体に要する期間が不要になるため、足場工法の6割程度の工期で完了するケースがあります。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場工法で約3か月のところ、ロープアクセスで1.5〜2か月が一つの目安です。荒川区のように隣棟間隔の詰まった敷地では、そもそも足場が組みにくいという物理的な制約もあわせて検討する価値があります。
Q. 防災対策費助成は、工事のあとでも申請できますか?
A. できません。荒川区は「必ず工事の契約又は物品の購入をする前に、申請手続きを行ってください」と明記しています。耐震診断・耐震補強設計・耐震補強工事の補助も、内定決定後に契約を行う流れです。いずれも「先に契約してしまうと対象外」という共通の落とし穴がありますので、見積を取った段階で一度区にご相談ください。
まとめ
荒川区の管理組合とオーナーさまが使える支援は、無料の相談・派遣が8つ、費用の一部が戻る助成が4つ。合計12あります。
このうち、荒川区でいちばん特徴的なのはコンサルタント派遣制度の「防災枠が毎年3回リセットされる」設計です。管理組合の運営相談は通算6回で終わりですが、防災テーマであれば毎年使えます。防災マニュアルの作成、在宅避難の準備、防災訓練の設計、そして防災対策費助成の申請準備。ここまでを毎年3回の枠で回していけば、費用はかかりません。
そして、旧耐震の物件であれば耐震アドバイザーの現地調査(1棟3回まで無料)が、大規模修繕の検討にそのまま使えます。建物の状態を第三者の建築士に一度見てもらう。それだけで、理事会の議論の質が変わります。
年4件。冒頭の数字に戻ります。これだけの制度が用意されていて、使われているのが年4件だというのは、率直に言ってもったいない。制度は、知っている組合だけが使えます。私が現場で見てきたかぎり、修繕で苦労する組合とそうでない組合の差は、建物の状態よりも「相談先をいくつ持っているか」で決まります。管理会社が1社だけ、という状態が一番危うい。
明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。管理組合さま向けのサービス内容は管理組合向けの大規模修繕サポートに、私たちの仕事の考え方は明誠の理念にまとめました。
まずは03-3802-4454に一本。次の理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。
出典・参考資料
- 荒川区「コンサルタント派遣制度(マンション)」(更新日:2026年9月4日)
- 荒川区「コンサルタント派遣制度パンフレット(PDF)」
- 荒川区「分譲マンションの防災対策を支援します」(更新日:2026年8月31日)
- 荒川区「非木造建物耐震化推進事業のご案内(PDF)」(令和6年12月作成/分譲マンション耐震アドバイザー派遣事業を含む)
- 荒川区「木造・非木造建物耐震化推進事業」(更新日:2026年4月1日/令和8年度の補助率・限度額)
- 荒川区「マンション管理状況届出制度」(更新日:2026年8月20日)
- 荒川区「荒川区マンション管理計画認定制度」(更新日:2026年9月17日/認定マンション一覧は令和8年9月15日認定分まで)
- 荒川区「荒川区分譲マンションセミナー」(更新日:2026年9月2日)
- 荒川区「荒川区マンション管理適正化推進計画(概要)(PDF)」(令和5年10月/令和4年度荒川区マンション実態調査を含む)
- 荒川区「荒川区マンション実態調査」
- 荒川区「東京とどまるマンション事業(東京都)」(更新日:2025年8月4日)
- 荒川区「相談窓口」
- 公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」
- 東京都マンションポータルサイト「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制」
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」
- 公益財団法人 マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」
- 住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月21日時点で公表されている荒川区および東京都・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。分譲マンション耐震アドバイザー派遣事業の詳細を記載した「非木造建物耐震化推進事業のご案内」は令和6年12月作成の資料であり、補助率・限度額については令和8年4月1日更新の区ホームページの記載を優先して掲載しました。また、荒川区の管理計画認定手数料は「当面無料」という記載であり、将来的に有料化される可能性があります。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず荒川区 防災都市づくり部 住まい街づくり課(電話 03-3802-4454/耐震関係は03-3802-3111 内線2822・2826)および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月21日
渋谷区の管理組合が無料で使える相談・派遣9選|管理士派遣は年度内4回・無料、相談会は10月16日で申込は10月1日から【令和8年度版】
2026年9月21日 更新
「本間さん、うちは管理会社に全部お任せなんですよ。だから相談する相手がいなくてね」
今年の夏、渋谷区幡ヶ谷のマンションの理事長さまから、そう伺いました。築29年、48戸。2回目の大規模修繕をそろそろ、という時期です。管理会社から出てきた見積が1億円近く、修繕積立金がまったく足りない。でも、その見積が高いのか妥当なのか、判断できる人が組合の中に誰もいない、と。
私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンションやビル、ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組んで建物を丸ごと囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も自分の足で踏んできた人間です。
その理事長さまにお伝えしたのは、ひとつだけでした。見積の是非を最初に工事会社へ聞くのは順序が逆です。渋谷区には、マンション管理士が2時間かけて管理組合のもとへ出向いてくれる制度が、無料であります。まずそこで、第三者の目を1回入れましょう、と。
渋谷区は、代官山・恵比寿・広尾のような高額な分譲マンションが集まる地域と、笹塚・幡ヶ谷・本町のような昭和のストックが厚い地域が、同じ区の中に同居しています。管理組合が抱える悩みの中身も、地域によってまるで違う。だからこそ渋谷区は、窓口で待つ相談と、専門家がマンションまで来る派遣の両方を揃えています。
今日は、渋谷区のマンション管理組合とビルオーナーさまが、お金をかけずに使える相談・派遣を9つ、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。
結論:渋谷区で無料で使える相談・派遣は9つある
先に一覧でお示しします。
| # | 制度・窓口 | 誰が対応するか | 費用・回数 | 申込先 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 渋谷区 分譲マンション管理士派遣制度 | マンション管理士 | 無料/1回2時間・年度内4回まで | 住宅政策課 03-3463-3548 |
| 2 | 渋谷区 マンション管理無料相談会 | マンション管理士(東京山手支部) | 無料/毎月第3金曜・先着2組 | 住宅政策課 03-3463-3548 |
| 3 | 東京都 マンションアドバイザー無料派遣 | マンション管理士等 | 無料/要届出1回・管理不全の兆候ありは5回 | まちづくりセンター 03-5989-1453 |
| 4 | 東京都 マンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応) | マンション管理士 | 無料/各テーマ2回まで | 東京都マンション管理士会 |
| 5 | 東京都 マンション耐震化推進サポート事業 | 建築士等 | 無料/回数は相談内容による | まちづくりセンター 03-5989-1453 |
| 6 | 渋谷区 法律相談 | 弁護士 | 無料/40分・年度内3回 | 渋谷区コールセンター 03-3463-1211 |
| 7 | 渋谷区 消費者相談コーナー | 消費生活相談員 | 無料 | 03-3406-7644 |
| 8 | 東京都 分譲マンション総合相談窓口 | マンション管理士 | 無料/常設 | まちづくりセンター 03-6427-4900 |
| 9 | (公財)マンション管理センター 電話相談 | 専門相談員 | 無料/1件15分前後 | 03-3222-1517 / 03-3222-1519 |
電話番号は、実質ひとつ押さえておけば動き出せます。渋谷区 住宅政策課 住環境整備係(03-3463-3548)。1と2の入口が、ここに集約されています。
ここからが本題です。
1. 渋谷区 分譲マンション管理士派遣制度:1回2時間、年度内4回まで無料
渋谷区の制度で、私がいちばん強いと思っているのがこれです。
区の公式ページには、次のように書かれています(出典:渋谷区「分譲マンション管理士派遣制度」、2026年4月1日更新)。
- 派遣するのは:マンション管理士(国家資格者)
- 相談時間:1回につき2時間
- 費用:無料(ただし配付物の印刷費や登記簿謄本の取得など、一定の実費が発生する場合あり)
- 回数:同一マンションで年度内4回まで
- 申込:派遣を希望する3週間前までに申請書を住宅政策課へ持参または郵送
「窓口に出向く30分の相談」ではなく、管理士が会合の場に来て2時間つきあってくれる。しかも年度内4回。理事会に1回、修繕委員会に1回、総会前の説明に1回、総会当日に1回――と割り振れば、1年分の意思決定をまるごと伴走してもらえる計算になります。
対象要件は「7つのうち1つでも当てはまれば」
対象は、次の7つの要件のいずれか1つ以上に該当する区内分譲マンションの管理組合です。
- 管理組合がないこと
- 管理者などが定められていないこと
- 管理規約が存在しない、または必要に応じた改正がされていないこと
- 集会(総会)が年1回以上開催されていないこと
- 管理費と修繕積立金の区分経理、適正管理がされていないこと
- 適宜適切な維持修繕を行うための修繕積立金が積み立てられていないこと
- 築20年以上のマンションで、過去に大規模修繕工事(外壁塗装など工事、床防水工事および屋根防水工事)を実施していないこと
管理組合設立を自主的に行おうとする区分所有者の団体も申請できます。
7番目に注目してください。築20年以上で、まだ一度も大規模修繕をやっていない。渋谷区の昭和・平成初期ストックには、これに当てはまるマンションが相当数あります。「うちは何も問題がないから対象外だろう」と思い込んで使わないのが、いちばんもったいないパターンです。
支援の対象外になるもの
ここは正直にお伝えします。次のものは支援対象外です。
- 耐震診断、測定器などを使用した建物の精密測定、劣化診断・調査
- 大規模修繕計画、長期修繕計画の作成
- 修繕工事などの設計
- 管理規約の作成
- 見積書などの比較検討
- 工事および維持管理業務の受注・発注ならびに業者の紹介
- 居住者間および居住者・近隣住民間の紛争解決および権利調整
つまり「この見積、高いですか?」という問いに、この制度で直接答えてもらうことはできません。できるのは意見の整理とアドバイス、対応策の資料作成、関係資料の収集・提供、総会および理事会の開催支援です。
私はそれでも十分だと考えています。見積の金額そのものではなく、「どういう手順で業者を選べば組合として説明責任を果たせるか」「総会で何を諮るべきか」を整理してもらう。そこが固まっていない組合が、実際とても多いからです。
なお、令和9年2月以降の申請は、事業スケジュールの都合で受付できない場合があると区が明記しています。年明けに思い立つと間に合いません。動くなら年内です。
2. 渋谷区 マンション管理無料相談会:毎月第3金曜、先着2組
派遣までは大げさだ、まず話を聞いてもらいたい。そういうときはこちらです。
東京都マンション管理士会東京山手支部の協力で、渋谷区が毎月開催しています(出典:渋谷区「マンション管理無料相談会」、2026年4月1日更新)。
- 開催:毎月第3金曜日
- 対象:区内の分譲マンション管理組合役員および区分所有者、1組あたり2人以内
- 定員:各開催日 先着2組まで
- 回数:1組につき原則年度内3回まで
- 申込:住宅政策課住環境整備係(03-3463-3548)へ電話
令和8年度の残りの日程は、次のとおりです。
| 開催日 | 時間 | 場所 | 申込期間 |
|---|---|---|---|
| 10月16日 | 14時〜16時 | 渋谷区役所本庁舎8階 810会議室 | 10月1日〜9日 |
| 11月20日 | 15時30分〜16時30分 | 渋谷区役所本庁舎8階 813-1.2.3会議室 | 11月4日〜13日 |
| 12月18日 | 14時〜16時 | 渋谷区役所本庁舎8階 810会議室 | 12月1日〜11日 |
| 令和9年1月15日 | 14時〜16時 | 渋谷区役所本庁舎8階 810会議室 | 1月4日〜8日 |
| 令和9年2月19日 | 15時30分〜16時30分 | 渋谷区役所本庁舎8階 813-1.2.3会議室 | 2月1日〜12日 |
| 令和9年3月19日 | 14時〜16時 | 渋谷区役所本庁舎8階 811-2会議室 | 3月1日〜12日 |
次回は10月16日、申込開始は10月1日です。定員が先着2組と極端に少ないので、申込開始日に電話するくらいの気持ちでちょうどいい。
この相談会のもうひとつの価値は、6月と11月に専門家によるセミナー、2月に交流会が併催される点です。11月20日と令和9年2月19日が15時30分〜16時30分と時間帯が違うのは、そのためと読めます。他のマンションの理事と話せる機会は、輪番制の組合にとって貴重です。
なお、事業者の紹介、居住者間および居住者・近隣住民間との紛争解決・権利調整については対応していません。そこは6番の法律相談の領域になります。
3. 東京都 マンションアドバイザー無料派遣:要届出マンションなら回数が増える
渋谷区の制度と併用できるのが、東京都の制度です。
「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」に基づき、昭和58年12月31日以前に新築された、居住用の独立部分が6以上ある分譲マンションは、管理状況の届出が義務づけられています(要届出マンション)。この届出が受理されていると、マンションアドバイザーの派遣が無料になります(出典:(公財)東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」)。
- 届出が受理された要届出マンション:1回まで無料
- 届出が受理されたマンションのうち、管理不全の兆候があるマンション:5回まで無料
- 1回あたり2時間程度
- 申込先:まちづくり推進課 03-5989-1453
コースは細かく分かれていて、大規模修繕に直結するのは相談編のB-5①(修繕工事検討段階:劣化状況の調査・診断、検討組織、工事方式)とB-5②(修繕工事準備段階:工事の内容、業者選定の仕方、合意形成)です。講座編にもA-2「長期修繕計画作成ガイドライン活用の手引きの解説」、A-4「計画修繕工事の進め方」があります。
渋谷区の管理士派遣が「見積の比較検討は対象外」だったのに対し、こちらのB-5②は業者選定の仕方そのものを相談できる。役割が違うので、両方使うのが正解です。
ただし、無料派遣を利用した相談内容等は東京都・区市町村で共有されること、講座編には有料のテキストが必要なものがあることは、申し込む前に頭に入れておいてください。
4. 東京都 マンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応):令和9年2月26日まで
令和5年度から続いている、東京都のもう一つの派遣事業です(出典:東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」)。
- 対象:都内に所在するマンション管理組合(築年数・届出の有無を問わない)
- 回数:1管理組合につき、防災力向上と認知症対応それぞれ2回まで(無料)
- 受付期間:令和8年6月23日から令和9年2月26日まで
- 募集数:防災力向上・認知症対応合わせて160件に達し次第、新規受付を締切
- 申込:(一社)東京都マンション管理士会のHPから
注意点が2つあります。ひとつは通算カウントであること。令和5年度から令和7年度に本事業の派遣を受けている場合、その回数も各テーマ2回の上限に含まれます。もうひとつは160件で締切という点。年度後半に思い立っても枠が残っていない可能性があります。
防災力向上では「自主防災組織の設置や強化の方法」「災害時にも活用できる居住者等名簿の作成」「発災時の緊急対応を定める管理規約の整備方法」などが相談できます。認知症対応では「バリアフリー改修を含む長期修繕計画の策定」まで扱う。長期修繕計画の見直しを、防災・福祉の切り口から進められるのは、この制度ならではです。
5. 渋谷区で耐震化を考えるなら:令和8年度から対象が広がったサポート事業
旧耐震基準(昭和56年以前)のマンションをお持ちなら、ここは必ず確認してください。
東京都のマンション耐震化推進サポート事業は、令和8年度から、耐震診断を行っていないマンションに対しても専門家派遣の対象を拡大しました(出典:東京都マンションポータルサイト「マンション耐震化プロモーション事業(個別訪問・専門家派遣)」)。
これは大きな変更です。これまでは「耐震診断をやったうえで、耐震化の必要性が判明したマンション」が中心でした。令和8年度からは、診断の前の段階でも建築士等の専門家を呼べます。
- 対象:管理状況届出を行い、管理活動が健全なマンションのうち、耐震診断未実施のマンション、または耐震診断実施後に耐震化の必要性が判明したマンション
- 支援内容:問題点の整理と情報提供、区分所有者間の合意形成支援、耐震改修計画案・建替え計画案の作成・提案、耐震改修を見据えた長期修繕計画の見直しの支援
- 窓口:(公財)東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1453(土日祝を除く9時〜17時)
また、令和8年度から5年間で、届出制度等で把握した耐震診断未実施のマンション約3,700棟を対象に、都と区市が連携した個別訪問が始まりました。外観等の簡易な目視調査と耐震化のアドバイスを無料で受けられます。訪問対象には事前に通知が郵送されます。
渋谷区のマンションに、東京都職員や区職員、都の委託事業者からの通知が届いたら、それは営業ではなく行政の事業です。捨てずに理事会へ上げてください。
6. 渋谷区 法律相談:管理費滞納・区分所有トラブルは弁護士へ
管理費や修繕積立金の滞納、騒音、専有部分の工事をめぐる区分所有者同士の対立。マンション管理士では踏み込めない領域は、弁護士に相談します。
渋谷区の法律相談は、次のとおりです(出典:渋谷区「法律相談」、2026年4月21日更新)。
- 相談日:毎週月曜日・木曜日(月曜が祝日・休日の場合は翌火曜に振替)。電話相談可
- 相談時間:40分間
- 相談枠:13時〜、13時45分〜、14時30分〜、15時25分〜、16時10分〜
- 定員:月曜は各枠2人(合計10人)、木曜は各枠3人(合計15人)
- 対象:区在住または在勤の人
- 回数:おひとりにつき年度内3回まで
- 予約:LINE(渋谷区公式アカウント @shibuyacity)、区民相談WEBメニュー、または渋谷区コールセンター 03-3463-1211。いずれも先着順
- 予約枠の開放:毎月第3火曜日9時から、翌月1か月分
40分という枠は、法律相談としては短くありません。ただし木曜のほうが定員が多いので、取りやすいのは木曜です。当日朝9時以降のキャンセルは相談1回分としてカウントされる点にご注意ください。
詳しい利用方法は区のR8年度区民相談のしおり(PDF)にまとまっています。
訪問販売・飛び込み営業のトラブルは消費者相談コーナーへ
「無料点検です」と言って屋上に上がり、撮った写真を見せて不安を煽り、その場で契約を迫る。残念ながら、この手の業者は今も渋谷区内で動いています。
区分所有者の個人宅に訪問販売が入った場合の相談先は、渋谷区 消費者相談コーナー(03-3406-7644)です。相談日時は月曜〜金曜(祝休日、年末年始を除く)9時30分〜16時、区内在住・在勤・在学の人が対象です(出典:渋谷区「消費者相談」、2025年10月1日更新)。
なお、消費者からの相談のみが対象で、事業者や個人事業主からの相談は受け付けていません。管理組合としての相談は、1〜3の窓口へ回すのが筋です。
7. 都と国の常設窓口:予約が取れないときの逃げ道
渋谷区の相談会は先着2組。都の派遣は年度の枠がある。今週中に誰かに聞きたい、というときの受け皿が2つあります。
東京都 分譲マンション総合相談窓口は、(公財)東京都防災・建築まちづくりセンターに令和元年9月から開設されている常設窓口です。マンション管理士が、日常の維持管理・再生に関する相談、管理状況届出制度に関する問い合わせに応じます。大規模修繕工事の検討や準備に関する相談、改修や建替えに向けた合意形成のアドバイス、都や区市町村が実施している助成制度の紹介まで扱います。
- 電話:03-6427-4900(月〜金 9時〜17時、土日祝・年末年始休業)
- メール:mansion-soudan@tokyo-machidukuri.jp
(公財)マンション管理センターは、マンション管理適正化法に基づく「マンション管理適正化推進センター」の指定を国から受けている唯一の団体です。公平・中立な立場で電話・面談・メールの相談に応じます。
- 管理組合運営、管理規約等のご相談:03-3222-1517
- 建物・設備の維持管理のご相談:03-3222-1519
- 受付:月〜金(祝日・年末年始を除く)9時30分〜17時
- 1件あたり15分前後を目安
(出典:(公財)マンション管理センター「相談窓口について」)
15分という制約があるので、質問を1つに絞ってからかけてください。「築29年48戸、2回目の大規模修繕、積立金が足りない。組合としてまず何を決めるべきか」――このくらい具体的に切り出すのが、いちばん実のある15分になります。
8. 渋谷区で相談に行く前に、用意しておく書類
どの窓口でも、手ぶらで行くと一般論で終わります。渋谷区自身が、マンション管理無料相談会のページで用意すべき資料を挙げてくれています。
- 管理規約
- 総会議案書・議事録
- 理事会の議事録
- 管理委託契約書
- 滞納記録
- 不具合箇所の写真
- 長期修繕計画書
- 修繕工事記録
全部そろえるのは大変です。優先順位をつけるなら、私は管理規約・長期修繕計画書・直近の総会議案書の3点をおすすめします。この3つがあれば、「管理組合としてどこまで決められるのか」「お金がいつ足りなくなるのか」「前回の総会で何が保留になったのか」が、専門家の側から見えます。
不具合箇所の写真は、スマートフォンで撮ったもので構いません。ただしいつ撮ったものかが分かるようにしておいてください。外壁のひび割れやタイルの浮きは、進行の速さが判断材料になります。同じ箇所を半年前と今とで比べられれば、それだけで話が早い。
9. 相談の先で必ず出てくる「足場をどうするか」というお金の話
ここからは、工事会社としての私の話です。
無料相談や派遣で管理組合の課題を整理していくと、ほぼ必ず「で、大規模修繕にいくらかかるのか」という壁に突き当たります。目安としては、30戸規模のマンションの大規模修繕で総額3,500万〜5,000万円のレンジ。物件により大きく変動しますので、あくまで参考値です。
問題は、その中の仮設足場が総工費の15〜25%を占めるという点です。
たとえば10階建て・外周80m・工期3ヶ月のマンション。仮設足場を全面に架けると、足場だけで168万円前後かかる場合があります。同じ建物をロープアクセス工法(無足場工法)で施工すると、仮設費は59万円前後。差額で約109万円です。もちろん建物の形状、バルコニーの出、屋上のアンカー設置可否によって数字は動きますが、桁が変わるほどの差が出ることは珍しくありません。
打診調査だけを見ても、㎡あたり250〜500円が目安。これを足場ありでやるか、ロープで降りながらやるかで、調査費と工期がまるで変わってきます。
私は、なんでもロープアクセスにすべきだとは思っていません。低層で複雑な形状の建物なら足場のほうが速く、安く、きれいに仕上がることもあります。だから明誠では、通常足場工法・ロープアクセス工法・両方を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物ごとに選んでご提案しています。3工法を自社で持っている会社は、日本でも多くありません。
なぜこれが無料相談の話とつながるのか。相談の場で「足場以外の選択肢があるかどうか」を知っているかどうかで、管理組合が組み立てられる予算計画が変わるからです。足場ありきの長期修繕計画しか持っていない組合は、積立金の不足を値上げか借入でしか埋められません。
工法の技術的な中身をもっと深く知りたい方は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムをご覧ください。同業者・フランチャイズ加盟希望者向けに、訓練体系や安全管理の詳細をまとめています。管理組合の方でも、「どんな訓練を受けた人間が壁を降りてくるのか」を確認する材料になります。
株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工し、日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。安全管理の考え方はロープアクセスドットコムでも公開しています。
明誠のこれまでの施工事例は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。管理組合向けのサービス内容、料金の考え方もあわせてどうぞ。
まとめ:渋谷区の管理組合が今週動くこと3点
長くなりましたので、動き方だけ3つに絞ります。
1つ目。10月1日に、住宅政策課(03-3463-3548)へ電話する。 10月16日のマンション管理無料相談会は先着2組です。申込期間は10月1日から9日まで。この1本の電話が、いちばん費用対効果が高い。
2つ目。築20年以上でまだ大規模修繕をやっていないなら、分譲マンション管理士派遣制度の申請書を取り寄せる。 1回2時間、年度内4回まで無料。申請は希望日の3週間前まで、令和9年2月以降は受付できない場合があります。動くなら年内です。
3つ目。昭和58年以前の建物なら、管理状況届出が受理されているかを確認する。 届出が受理されていれば東京都のアドバイザー派遣が無料になり、管理不全の兆候ありと判定されていれば5回まで使えます。耐震診断未実施でも、令和8年度から専門家派遣の対象です。まちづくりセンター(03-5989-1453)で確認できます。
そのうえで工事の話になったら、そのときに我々のような会社を呼んでください。順番はそれで正しい。明誠の考え方は、いつでもご覧いただけます。
よくあるご質問
Q. 渋谷区の管理士派遣と東京都のアドバイザー派遣は、両方使えますか?
A. 申請先も根拠制度も別なので、要件を満たせば併用できます。渋谷区の管理士派遣は年度内4回、東京都のアドバイザー派遣は要届出マンションで1回(管理不全の兆候ありは5回)です。ただし同じ内容を重ねて相談するより、区は運営・規約、都は修繕工事の検討と準備、と役割を分けるほうが実りがあります。
Q. 賃貸マンションのオーナーですが、これらの制度は使えますか?
A. 1〜4は分譲マンションの管理組合が対象で、賃貸オーナーは対象外です。賃貸マンション向けには東京都が別途、防災アドバイザーの無料派遣を実施しています。建物の劣化や修繕の相談であれば、私たちのような工事会社が無料で現地を拝見し、概算をお出しできます。
Q. 相談会は年度内3回までとのことですが、理事が交代したら回数はリセットされますか?
A. 渋谷区の相談会は「1組につき原則年度内3回まで」で、組合単位の運用です。理事が交代しても年度内の回数は引き継がれるとお考えください。4回目以降は断られる場合があると区が明記しています。
Q. 大規模修繕の費用はいくらかかりますか?
A. 30戸規模のマンションで総額3,500万〜5,000万円がひとつのレンジですが、階数・外周長・劣化の程度で大きく変わります。うち仮設足場が15〜25%を占めるため、ここを無足場のロープアクセス工法に置き換えられるかどうかが、総額に最も効きます。明誠では無料で概算お見積りをお出ししています。
Q. ロープアクセス工法だと工期はどれくらい変わりますか?
A. 足場工法の約60%が目安です。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場で3ヶ月のところ、ロープアクセスで1.5〜2ヶ月程度。足場の架設と解体だけで2〜3週間かかりますが、それが不要になるためです。
Q. 無料相談で工事会社を紹介してもらえますか?
A. できません。渋谷区の管理士派遣も相談会も、業者の紹介・受発注は対象外と明記されています。これは制度の欠陥ではなく、公平性を担保するための設計です。業者選定の「進め方」は東京都のアドバイザー派遣B-5②で相談できますので、そちらをお使いください。
Q. 管理費の滞納者がいます。どこに相談すべきですか?
A. 督促の手順と管理規約の整備は東京都のアドバイザー講座編A-5「滞納管理費・修繕積立金督促の仕方」、法的措置の検討は渋谷区の法律相談(弁護士・40分・年度内3回)です。滞納記録を持参してください。
Q. 「無料点検」と言って屋上に上がりたがる業者が来ました。断って大丈夫ですか?
A. 断って構いません。理事会の承認なく共用部に立ち入らせる必要はありません。不安を煽ってその場で契約を迫るのは典型的な手口です。個人宅への訪問販売であれば渋谷区消費者相談コーナー(03-3406-7644)へご相談ください。
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月21日時点で公表されている渋谷区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず渋谷区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
大規模修繕の工法選定や概算のご相談は、お問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。渋谷区内の物件も数多く手がけております。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月21日
板橋区のマンション漏水・防災対策|崖152か所と荒川低地、ハザードが二層になる区【大規模修繕2026年度版】
2026年9月21日 更新
板橋区の中台で、築28年の分譲マンションの理事長さまから「3階の角部屋だけ、毎年梅雨に壁紙が浮く」とご相談をいただいたことがあります。前の調査では「外壁のクラックだろう」という診断でした。ところが足場を組む前にロープで下りて実際に触ってみると、外壁のクラックはほとんど動いていませんでした。水を運んでいたのは、建物の背面にある高さ4mほどの擁壁でした。擁壁の水抜き管が土砂で詰まっていて、雨のたびに背面土が水を溜め、壁体を伝って建物側に染み出していたのです。
私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。
板橋区という区は、私の感覚では23区のなかでもっとも「同じ区内なのに答えが変わる」区です。理由ははっきりしていて、崖の多い台地と、荒川沿いの低地が、1つの区のなかに同居しているからです。常盤台の物件と舟渡の物件では、漏水の原因も、修繕の優先順位も、まるで違うものになります。
今日は、板橋区が公表している最新のハザード資料から逆算して、板橋区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。
結論:板橋区は「自分の物件がどちらの板橋区にあるか」を先に確定させる区です
先に結論から申し上げます。板橋区で大規模修繕の優先順位を決めるとき、私が最初に確認するのは屋上でも外壁でもありません。その物件が「崖側の板橋区」なのか「低地側の板橋区」なのかです。
板橋区の土砂災害警戒区域は、令和8年3月25日の公示時点で警戒区域152か所、特別警戒区域118か所あります(出典:板橋区「板橋区土砂災害ハザードマップ」/ページ更新日 2026年8月12日、マップは令和8年8月時点の内容)。これは23区のなかでは飛び抜けて多い数字です。赤塚・徳丸・西台・中台・志村・小豆沢といった、武蔵野台地の北端が荒川低地に落ち込む線に沿って、崖と擁壁が連なっています。
一方で、舟渡・新河岸・高島平・蓮根のあたりは荒川の沖積低地です。荒川氾濫版の洪水ハザードマップは、荒川流域で3日間の総雨量632ミリメートルという想定最大規模の降雨を前提にしています(出典:板橋区「板橋区洪水ハザードマップ」/ページ更新日 2026年8月12日、荒川氾濫版は令和7年12月改訂)。
私が理事長さま・オーナーさまにお伝えしているのは、この3つです。
- 敷地に高低差があるなら、外壁より先に擁壁と水抜き管を見る(崖側の板橋区)
- 低地側なら、1階まわりと電気・給水・エレベーターの「高さ」を確認する(低地側の板橋区)
- どちらでも、内水(雨水出水)のマップは洪水マップとは別に必ず開く
この3つを先に決めてしまえば、限られた修繕積立金をどこに寄せるかの議論が、驚くほど早く終わります。
板橋区のハザードマップを1枚で読む(洪水・内水・高潮・土砂)
板橋区は、水防法に基づくハザードマップを種類ごとに分けて公表しています。区の公式ページにある一覧を、マンション修繕の視点で読み直すと次のようになります。
| 種類 | 区のマップ | 改訂時点 | 想定の前提 |
|---|---|---|---|
| 洪水(荒川) | 洪水ハザードマップ(荒川氾濫版) | 令和7年12月改訂 | 荒川流域で3日間総雨量632mm |
| 洪水(荒川・継続時間) | 洪水ハザードマップ(荒川浸水継続時間版) | 令和7年12月改訂 | 浸水深0.5m以上が引くまでの時間を図示 |
| 洪水(中小河川) | 洪水ハザードマップ(中小河川版) | 令和8年8月改訂 | 1時間雨量153mm・総雨量690mm/石神井川・新河岸川・白子川 |
| 雨水出水(内水) | 雨水出水ハザードマップ | 令和8年8月改訂 | 令和8年3月に東京都が公表した雨水出水浸水想定区域図 |
| 高潮 | 高潮ハザードマップ(氾濫版・浸水継続時間版) | 令和7年12月改訂 | 令和6年12月に東京都が公表した高潮浸水想定区域図 |
| 土砂災害 | 土砂災害ハザードマップ(オモテ・ウラ) | 令和8年8月改訂 | 令和8年3月25日公示/警戒152か所・特別警戒118か所 |
| 津波 | — | — | 区に津波が到達する想定はありません |
(出典:板橋区「板橋区洪水ハザードマップ」、板橋区「板橋区雨水出水ハザードマップ」、板橋区「板橋区高潮ハザードマップ」、板橋区「板橋区土砂災害ハザードマップ」)
この表で、実務上いちばん見落とされやすいのが中小河川版と雨水出水版が令和8年8月に改訂されたばかりだという点です。長期修繕計画の見直しで「以前ハザードを確認したから大丈夫」と言われることがありますが、その「以前」が令和7年以前なら、中小河川と内水については見直したほうが安全です。
区は洪水ハザードマップのページで、荒川氾濫版・荒川浸水継続時間版は令和7年12月時点、中小河川版は令和8年8月時点の内容であると、わざわざ分けて注記しています。マップごとに基準時点が違う。ここを揃えて読まないと、理事会での議論が噛み合いません。
もうひとつ、区は「板橋区に津波が到達する想定はありません」と明記しています。これは予算配分の話としては地味に大きな情報です。津波を心配するための予算は要らないということが、公式に確定しているわけですから、その分を擁壁と内水に寄せられます。
板橋区の土砂災害警戒区域は「去年と今年で答えが変わった」物件があります
板橋区の漏水・防災を語るうえで、いちばん重要なのがここです。
令和8年3月25日の告示で、板橋区内の土砂災害(特別)警戒区域の指定状況が17か所で変更されました。内訳を区の公表表から整理すると、次のようになります(出典:板橋区「板橋区土砂災害ハザードマップ」/ページ更新日 2026年8月12日)。
| 変更の種類 | 該当地区 |
|---|---|
| 指定追加 | 西台二丁目、西台一丁目、板橋四丁目、小豆沢三丁目、志村二丁目(2か所)、徳丸三丁目、徳丸一丁目 |
| 指定解除 | 西台一丁目、徳丸六丁目 |
| 特別警戒区域の一部解除 | 西台一丁目(2か所)、志村二・三丁目 |
| 特別警戒区域の解除 | 中台二丁目 |
| 区域の縮小 | 西台一丁目、中台二丁目、小豆沢三丁目 |
管理組合の実務でいうと、これは「重要事項説明の内容が変わった」「修繕の優先順位が変わった」物件が区内に十数件あるということです。
とくに注意していただきたいのが指定追加された側です。西台二丁目・板橋四丁目・小豆沢三丁目・志村二丁目・徳丸一丁目/三丁目で、令和8年3月25日から新たに区域に入った箇所があります。これらの物件では、これまで「うちは土砂災害と無関係」という前提で長期修繕計画を組んでいた可能性があります。擁壁の点検も水抜き管の清掃も、計画に入っていないかもしれません。
逆に解除・縮小された側も見逃せません。西台一丁目や徳丸六丁目、中台二丁目では、区域から外れた、あるいは特別警戒区域から警戒区域に格下げされた箇所があります。ここは「崖の心配で止めていた外壁・防水の予算を、本来やるべき工事に戻してよい」という判断ができるということです。
なお、区域の指定そのものは東京都建設局が土砂災害防止法に基づいて行っています。自分の物件の番地が該当するかどうかは、東京都土砂災害警戒区域マップで番地単位まで確認できます。理事会の資料としては、このマップの該当箇所を印刷して添付するのがいちばん早いです。
崖側の板橋区で、漏水が起きる本当の場所
擁壁のある敷地で起きる漏水は、外壁の漏水とはメカニズムがまったく違います。私が板橋区の台地側で実際に見てきた順に、多いものを挙げます。
1位:擁壁の水抜き管の詰まり
これが圧倒的に多いです。擁壁には通常、3平方メートルに1か所程度の割合で内径75mm以上の水抜き管が設けられています。ところが20年、30年と経つと、背面の土砂や根が入り込んで詰まります。水が抜けなくなった擁壁は、背面土の水圧を受け続け、目地やクラックから水を滲ませます。建物が擁壁に近接していると、その水が建物の基礎や1階外壁に回る。
水抜き管の清掃は、大規模修繕の費用全体からするとごく小さな金額です。にもかかわらず、修繕項目に入っていないことが本当に多い。擁壁のある物件では、これを見積書に入れてもらってください。
2位:斜面地の建物の「半地下」部分
板橋区の崖線沿いには、道路から見ると2階建てでも、裏側から見ると4階建て、という構成の建物がよくあります。この「道路から見えない下階」は、三方を土に囲まれていることがあり、構造的に漏水しやすい。しかも外部から目視できないため、発見が遅れます。
3位:斜面地特有の外壁の目地切れ
高低差のある敷地では、建物に不同沈下方向の力がかかりやすく、シーリングの目地が片側だけ先に切れることがあります。「北面だけ、なぜか5年でシーリングが痩せる」という物件は、たいてい地形が原因です。
こういう建物こそ、ロープアクセス工法の得意分野です。斜面地・狭隘地では足場の架設そのものが難しく、組めたとしても架設費が跳ね上がります。ロープアクセスなら屋上のアンカーから下りていくため、地上の条件にほとんど左右されません。工法の技術的な詳細は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで整理しています。
低地側の板橋区で、先に確認すべき3つの「高さ」
舟渡・新河岸・高島平・蓮根といった荒川沿いの低地側では、話がまったく変わります。ここで私が最初に確認するのは、エレベーター機械室・受電設備(キュービクル)・給水ポンプの3つが、地上何メートルにあるかです。
理由は単純で、この3つが止まると上階は生活できなくなるからです。水が引くまで何日もかかる地域では、「建物は無事でも住めない」という状況が現実に起こります。区が荒川浸水継続時間版のハザードマップをわざわざ別に作っているのは、まさにこの「引くまでの時間」が避難の判断を変えるからです。
分譲マンションの理事会でこの話をすると、「移設には大金がかかるのでは」と言われます。確かに設備一式の移設は簡単ではありません。ただ、大規模修繕のタイミングであれば、次のような部分的な対策なら現実的な費用で入れられます。
- キュービクル基礎のかさ上げ
- 受電盤・分電盤まわりの止水処理
- 給水ポンプ室の出入口への止水板の設置
- 機械式駐車場のピット排水ポンプの二重化
- エレベーターの浸水時管制運転(最上階待機)の設定確認
このうち止水板については、板橋区に助成制度があります。止水板設置工事等に要した費用の2分の1以内、1つの建築物について上限50万円です(出典:板橋区「止水板設置工事助成制度」/ページ更新日 2025年2月14日)。助成には要件があるため、設置を検討する段階で区の土木部土木計画・交通安全課(電話 03-3579-2297)に相談してほしい、と区は案内しています。
なお、この助成制度のページの更新日は2025年2月14日で、令和8年度としての受付内容が明示されているわけではありません。金額や要件が変わっている可能性があるため、申請前に必ず区の窓口で令和8年度の取扱いをご確認ください。
板橋区の浸水履歴が教えてくれること
ハザードマップと同じくらい、私が重視しているのが実際に水が出た記録です。板橋区は、昭和43年4月30日以降の浸水被害を町丁目別にPDFで公開しています(出典:板橋区「浸水履歴」/ページ更新日 2025年12月3日)。
この資料が優れているのは、次の3点です。
- 平成10年以降は床上・床下浸水を分けて「番」まで掲載している
- 平成12年9月12日以降の道路冠水被害を日付ごとに掲載している
- 令和7年3月から、地域別浸水履歴にも道路冠水箇所を併記するようになった
つまり、自分の物件の町丁目のPDFを1枚開けば、「この町丁目で、いつ、どこまで水が来たか」が番地レベルで分かるということです。理事会の資料としてこれ以上のものはなかなかありません。
そして、区は逆の情報も公開しています。浸水記録がないため添付ファイルがない町丁目が、次の12か所として明記されています。
赤塚七丁目/大谷口一丁目/上板橋一丁目/志村二丁目/大門/高島平四丁目/常盤台二丁目/常盤台三丁目/徳丸八丁目/西台四丁目/南常盤台二丁目/四葉一丁目
(出典:板橋区「浸水履歴」)
これは修繕の予算配分としてはかなり強い情報です。昭和43年以降、区が把握している範囲で浸水記録がない町丁目であれば、1階まわりの浸水対策に厚く予算を置く必要性は相対的に低いと判断できます。その分を屋上防水やシーリング、あるいは擁壁に回したほうが、費用対効果は明らかに高くなります。
ただし、注意点が1つあります。この12か所のうち、志村二丁目・西台四丁目・徳丸八丁目・高島平四丁目は、台地側または台地と低地の境目に位置します。浸水記録がないことと、崖の心配がないことは別の話です。志村二丁目は先ほどの令和8年3月25日の告示で土砂災害警戒区域が2か所追加されている町丁目でもあります。水の履歴だけを見て安心しないでください。
「1時間153mm」という数字をどう受け止めるか
中小河川版の洪水ハザードマップが前提にしている1時間雨量153ミリメートルという数字は、はじめて見ると現実感がないかもしれません。ただ、板橋区では令和8年8月22日に集中豪雨があり、区は罹災証明書の発行や家屋等の消毒といった被災者支援を実施しています(出典:板橋区「8月22日の集中豪雨により被災された方へ」/ページ更新日 2026年8月26日)。想定の話ではなく、この夏に現実に起きたことです。
短時間の強い雨は、統計としても増え続けています。気象庁の観測では、1時間降水量50ミリメートル以上の年間発生回数は、統計開始からの最初の10年間と直近10年間を比べておおむね1.5倍に増えています(出典:気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」)。
この変化が、建物にとって何を意味するか。私の現場感覚では、次の2つです。
1つは、屋上ドレンと縦樋の設計流量が足りなくなってきていること。築30年前後の建物は、当時の降雨強度を前提にドレンの径と数が決まっています。1時間100mmを超えるような雨では、屋上のプールに水が溜まり、防水層の立ち上がりを越える。オーバーフロー管が付いていない、あるいは詰まっている物件では、それがそのまま最上階の漏水になります。
もう1つは、横殴りの雨でサッシまわりの止水が抜けること。通常の雨なら問題ない目地でも、風速20m/s以上の雨では水が上向きに動きます。シーリングの劣化した目地、ビス穴、換気口が一気に弱点になる。「台風のときだけ濡れる」という相談は、ほぼこれです。
大規模修繕の見積を取るときは、ドレンの増設・オーバーフロー管の新設・サッシまわりのシーリング打ち替えの3点が入っているかを確認してください。この3点は金額としては大きくありませんが、効き方が大きい項目です。詳しくは明誠の漏水調査・漏水対応の考え方にも整理しています。
板橋区のマンションで使える工法の選び方と、かかる費用の目安
ここまでの話を、費用の話につなげます。板橋区のように擁壁がある・斜面地である・敷地に余裕がないという条件が重なると、足場の架設費が想定以上に膨らみます。
一般的な目安として、10階建て・外周80m・工期3か月の物件で、仮設足場の費用は168万円程度になることがあります。同じ範囲をロープアクセス工法で施工した場合、仮設にあたる費用は59万円程度で、差額はおよそ109万円です。あくまで参考値であり、実際の金額は建物形状・下地の状態・工事範囲によって大きく変わりますが、仮設費が総工費の15〜25%を占めることを考えると、無視できない差です。
工種ごとの㎡単価の目安も挙げておきます。いずれも参考値で、実際の見積は物件により変動します。
| 工種 | 単価の目安 |
|---|---|
| 外壁塗装 | 3,500〜4,500円/㎡ |
| 外壁打診調査 | 250〜500円/㎡ |
| 屋上・バルコニー防水 | 5,000〜8,000円/㎡ |
30戸規模のマンションの大規模修繕全体では、3,500万〜5,000万円程度がひとつのレンジになります。このうち仮設足場が15〜25%を占めるため、足場を減らせるかどうかで、同じ予算でできる工事の中身が変わるわけです。
ただし、私は「ロープアクセスがいつでも最適」とは考えていません。板橋区の物件でいえば、次のような整理になります。
| 建物の条件 | 向いている工法 |
|---|---|
| 敷地に余裕があり、全面的な下地補修が必要 | 通常足場工法 |
| 斜面地・狭隘地・擁壁隣接で足場の架設が難しい | ロープアクセス工法(無足場工法) |
| 低層部は補修量が多く、高層部は塗装中心 | ハイブリッド工法(足場とロープの併用) |
株式会社明誠は、この3工法から建物の特性に応じて選べる、日本でも数少ない会社です。どれか1つの工法しか持たない会社は、どうしても自社が持っている工法に寄せた提案になります。明誠の料金の考え方でも書いていますが、工法の選択肢を持っていること自体が、発注者にとってのコストメリットになります。
安全と品質について、数字でお伝えできること
高所作業を伴う工事を発注するとき、価格と同じくらい気にしていただきたいのが安全です。数字でお伝えできることを挙げます。
- 株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました
- ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています
- 作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けています。品質面ではISO9001のマネジメントシステムに沿って施工管理を行い、日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています
- 明誠は日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部です。塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟しており、工種ごとに専門会社が直接施工します
フランチャイズという形をとっているのは、中間マージンを減らしながら専門性を確保するためです。明誠の安全管理の考え方に、現場での具体的な運用を記載しています。
なお、擁壁や斜面地で建物全体の劣化状況を把握したいときは、ドローンによる外観調査を先行させることもあります。ドローンによる外壁調査は、足場やロープを出す前の一次スクリーニングとして有効です。
これまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。
板橋区の管理組合・オーナーさまへ:今期の理事会で決めておきたい5つのこと
長期修繕計画の見直しや、次回大規模修繕の準備をされている方向けに、板橋区の条件を踏まえた実務チェックリストを置いておきます。
- 令和8年3月25日の土砂災害区域の告示を、自分の物件の番地で確認する(東京都土砂災害警戒区域マップで番地単位まで確認できます)
- 雨水出水(内水)ハザードマップを、洪水マップとは別に開く(令和8年8月改訂版があります)
- 町丁目の浸水履歴PDFを1枚印刷し、理事会の資料に添付する(道路冠水箇所も令和7年3月から併記されています)
- 擁壁がある物件は、水抜き管の清掃を見積項目に入れる
- エレベーター機械室・キュービクル・給水ポンプの設置高さを図面で確認する
この5つは、専門家に頼まなくても理事会で進められます。そのうえで、実際に修繕項目と金額に落とし込む段階でご相談いただければ、板橋区の地形条件を踏まえた優先順位をご提案できます。管理組合さま向けのサポート内容は管理組合向けサービスに、賃貸オーナーさま向けの考え方は収益不動産オーナー向けサービスにまとめています。
工法そのものをもう少し深く知りたいという方は、技術情報を扱っているロープアクセスドットコムもご覧ください。同業の方やフランチャイズ加盟をご検討の方向けの情報も、こちらに集めています。
よくあるご質問
Q. 板橋区は土砂災害警戒区域が多いと聞きましたが、マンションでも関係ありますか?
A. 関係します。板橋区の土砂災害警戒区域は令和8年3月25日公示時点で152か所、特別警戒区域は118か所あります。区分所有のマンションでも、敷地に高さ2mを超える崖や擁壁がある場合は、擁壁の水抜き管・目地・クラックが修繕項目になります。まずは東京都土砂災害警戒区域マップで自分の物件の番地を確認してください。
Q. 擁壁の水抜き管の清掃は、いくらぐらいかかりますか?
A. 擁壁の長さ・高さ・水抜き管の本数によりますが、大規模修繕の総額から見ればごく小さな項目です。むしろ問題は、見積書に項目自体が入っていないケースが多いことです。擁壁のある物件では、見積依頼の段階で「擁壁の水抜き管清掃と目地補修を含めてほしい」と明示することをおすすめします。無料で概算のお見積りを提示できますので、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
Q. 足場を組まないロープアクセス工法だと、どれくらい安くなりますか?
A. 10階建て・外周80m・工期3か月の物件で、仮設足場168万円に対してロープアクセスは59万円程度、差額およそ109万円というのが参考値です。ただし下地補修の量が多い物件では足場のほうが有利になることもあります。物件を拝見したうえで、3工法それぞれの概算を比較できる形でお出しします。
Q. 工期はどれくらい変わりますか?
A. ロープアクセス工法なら足場工法の約60%の工期が目安です。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場3か月に対しロープアクセス1.5〜2か月程度になります。加えて、足場の架設・解体の期間中に発生する居住者の生活影響(洗濯物・窓の開閉・防犯面の不安)がないことも、板橋区のようなファミリー層の多い区では大きな違いになります。
Q. 板橋区の止水板設置工事助成は、分譲マンションでも使えますか?
A. 助成額は工事費用の2分の1以内、1つの建築物について上限50万円です。助成には要件があるため、設置を検討する段階で板橋区土木部土木計画・交通安全課(電話 03-3579-2297)へご相談ください、と区は案内しています。制度内容は年度により変わる可能性がありますので、令和8年度の取扱いは必ず区の窓口でご確認ください。
Q. 「毎年、特定の部屋だけ濡れる」という漏水は、外壁を塗り直せば直りますか?
A. 直らないことがあります。私の経験では、特定の部屋だけ・毎年同じ季節に、というパターンは、外壁のクラックより先に、サッシまわりのシーリング、屋上ドレンの詰まり、擁壁や隣接する土からの水の回り込みを疑います。外壁塗装をしても原因がそこになければ再発します。塗る前に原因を特定することが、結果として費用を抑えます。
Q. 大規模修繕の前に、まず何をすればよいですか?
A. 建物の現況を客観的に把握することです。外観の劣化状況であればドローン調査、外壁タイルの浮きであれば打診調査(目安250〜500円/㎡)という順になります。板橋区の物件では、これに加えて敷地の高低差と擁壁の状態、そして町丁目の浸水履歴を確認しておくと、優先順位の議論が早く進みます。
板橋区の物件に関するご相談
板橋区は、常盤台・ときわ台の住宅地、赤塚・徳丸の台地、志村・小豆沢の崖線、高島平・舟渡・新河岸の低地と、同じ区内で条件がまったく違います。ですから「板橋区のマンションはこうです」という一般論は、あまり役に立ちません。
大切なのは、自分の物件がどちらの板橋区にあるのかを先に確定させ、そこから修繕項目を組み立てることです。そうすれば、限られた修繕積立金を、効く場所に集中させられます。
現地を拝見したうえで、通常足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法それぞれの概算を比較できる形でお出しします。お問い合わせはこちらのフォームから承っています。理事会の日程が決まっている場合は、その前にお声がけいただければ資料の形でご用意します。
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月21日時点で公表されている板橋区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。ハザードマップ・土砂災害警戒区域の指定・助成制度は年度途中でも改正や予算終了があり得ます。実際に申請・判断される前に、必ず板橋区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
免責事項:本記事に記載の費用はいずれも目安・参考値であり、実際のお見積りは建物の規模・形状・劣化状況により変動します。制度の適用可否についても、必ず所管窓口の判断をご確認ください。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月21日
荒川区のマンション漏水・防災対策|ほぼ全域が浸水想定、崖は西日暮里の7か所だけ【大規模修繕2026年度版】
2026年9月21日 更新
荒川区の南千住で、築31年の賃貸マンションのオーナーさまから「1階の店舗区画の壁際に、雨のたびに水が回る」とご相談をいただいたことがあります。前の業者さんは外壁のクラックを疑って、その面だけを補修していました。ところが実際に見てみると、原因は外壁ではありませんでした。道路との高低差がほとんどない敷地で、前面道路の雨水が敷地に入り込み、駐輪場の土間から基礎の打継ぎ目に回っていたのです。荒川の堤防までは歩いて8分。けれど川は一滴もあふれていません。
私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。
荒川区という区は、私の感覚では23区のなかでもっとも「逃げる」より「耐える」を設計すべき区です。理由は単純で、区のほぼ全域が浸水想定区域だからです。隣の区へ水平に避難するという前提が、そもそも成り立ちにくい。だとすれば、建物そのものの水への強さと、上階で生活を続けられるかどうかが、そのまま住民の安全に直結します。
今日は、荒川区が公表している最新のハザード資料から逆算して、荒川区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。
結論:荒川区は「水平避難ではなく垂直避難を前提に建物を仕上げる区」です
先に結論から申し上げます。荒川区で大規模修繕の優先順位を決めるとき、私が最初に確認するのは屋上ではありません。1階から地上3mまでの水まわりと、上階で生活を続けるための共用設備がどこにあるかです。
荒川区の水害ハザードマップは、荒川が氾濫した場合に区内のほぼ全域が浸水想定地域に入り、最大約5m以上の浸水が想定されるとしています(出典:荒川区「荒川区水害ハザードマップ」/ページ更新日 2026年9月1日)。5mというのは、一般的なマンションで言えば2階の床を越える高さです。
一方で、荒川区の土砂災害警戒区域は西日暮里地域の7か所(うち特別警戒区域6か所)だけです(出典:荒川区「荒川区土砂災害ハザードマップ」/ページ更新日 2025年7月18日)。区のほとんどが低地で、崖に接しているのはごく一部。この非対称が、荒川区のマンション修繕の方針をかなり明快にしてくれます。
私が理事長さまにお伝えしているのは、この3つです。
- 1階と地下・半地下の浸水対策を、外壁塗装より先に置く
- エレベーター・受電設備・給水ポンプの「高さ」を確認する(この3つが止まると、上階は生活できません)
- 土砂災害の心配は、西日暮里3丁目・4丁目の該当番地以外では基本的に不要(そのぶんの予算を水に回せます)
荒川区のハザードマップを1枚で読む(洪水・内水・土砂・高潮・液状化)
荒川区は、水防法に基づくハザードマップを種類ごとに分けて公表しています。区の公式ページにある一覧を、マンション修繕の視点で読み直すと次のようになります。
| 種類 | 区のマップ | 想定の前提 | 区内での影響範囲 |
|---|---|---|---|
| 洪水(荒川) | 荒川区防災地図(水害版) | 荒川流域72時間総雨量632mm・堤防が複数箇所決壊 | 区内ほぼ全域/最大約5m以上 |
| 洪水(石神井川) | 荒川区石神井川洪水ハザードマップ | 1時間最大雨量153mm・24時間総雨量690mm | 西尾久7・8丁目/最大約2m |
| 雨水出水(内水) | 作成中 | 令和8年3月に東京都下水道局が区域指定 | 都の区域図で確認(神田川流域/隅田川・新河岸川流域) |
| 高潮 | 荒川区高潮浸水ハザードマップ | 令和4年4月の東京都高潮浸水想定区域図 | 区内約5割/最大約3m |
| 土砂災害 | 荒川区土砂災害ハザードマップ | 平成30年1月の東京都指定 | 西日暮里3・4丁目の一部/警戒7か所・特別警戒6か所 |
(出典:荒川区「荒川区水害ハザードマップ」、荒川区「荒川区土砂災害ハザードマップ」)
ここで実務上いちばん大事なのが、内水(雨水出水)のマップがまだ作成中であるという点です。令和8年3月に東京都下水道局が水防法第14条の2に基づく「雨水出水浸水想定区域図」を公表し、荒川区でも区域指定がされました。区はこれを踏まえた荒川区版を現在作成中で、公表までは都の区域図で確認してほしい、としています。
大規模修繕の検討中に理事会でハザードを確認する場合は、区のマップだけを見て「うちは大丈夫」と判断しないほうが安全です。内水は別の図を見る。これだけ覚えておいていただければ十分です。
土砂災害の該当番地は明確に公表されています。西日暮里3丁目5番・6番・7番・10番・11番、西日暮里4丁目1番・2番・7番。ここに接している物件だけ、擁壁と斜面地の排水を修繕項目に入れてください。それ以外の物件では、同じ予算を屋上防水とシーリングに回したほうが、費用対効果は明らかに高くなります。
液状化については、区は独自の予測図を持たず、東京都の資料を案内しています(出典:荒川区「建築物における液状化対策」/ページ更新日 2025年4月28日)。区のページから、東京の液状化予測と地盤柱状図(ボーリングデータ)にたどり着けます。荒川区は沖積低地が広がる区ですので、外構・敷地排水の設計を見直すときは、このボーリングデータを一度は見ておく価値があります。
荒川区の道路冠水履歴が教えてくれること
私がこの区の物件を見るときに、ハザードマップと同じくらい重視しているのが道路の冠水履歴です。荒川区は平成16年度以降の道路冠水履歴図を年度別に公開しており、令和7年度分まで追加されています(出典:荒川区「道路の冠水履歴を公開しています」/ページ更新日 2026年8月18日)。
公開されている平成16年度から令和7年度までの22年度のうち、「道路冠水履歴なし」と明記されているのは平成18・19・20・24・30年度、令和元・3年度の7年度だけです。つまり22年度のうち15年度で、区内のどこかの道路が冠水しているということになります。
これは私にとって、かなり重い数字です。荒川の堤防が決壊するかどうかという話の手前で、ほぼ2年に1回以上のペースで、身近な道路が水に浸かっている。ゲリラ豪雨の頻度はこの間ずっと上がり続けており、気象庁の観測でも1時間降水量50mm以上の年間発生回数は統計開始からの10年間と直近10年間を比べておおむね1.5倍に増えています(出典:気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」)。
冠水履歴図は、自分の建物の前面道路が着色されているかどうかを1分で確認できます。着色されていたら、その建物の1階まわりは「浸水する前提」で仕上げる。私はそう判断しています。
荒川区の地域特性と漏水事故の関係
荒川区は、町屋・南千住・東尾久・西尾久・荒川・東日暮里と、ほぼ全域が低地です。そこに西日暮里から日暮里にかけて、上野台地の端が細く食い込んでいる。この地形が、漏水事故の出方をかなり特徴づけます。
低地エリア(町屋・南千住・東尾久・荒川・東日暮里)で多い漏水
- 敷地と道路の高低差が小さく、大雨時に雨水が敷地内に逆流する
- 1階の店舗・駐輪場・機械室に水が入り、基礎の打継ぎ目や配管貫通部から内部に回る
- 排水桝・雨水桝が土砂で埋まり、排水能力が設計値を下回っている
- 築30年超の建物が多く、ルーフドレンのストレーナー欠損が放置されている
崖線エリア(西日暮里3・4丁目の一部)で多い漏水
- 擁壁の水抜き穴の詰まりによる背面土の飽和と、擁壁クラックからの滲み
- 斜面地に接する外壁面の常時湿潤によるシーリングの早期劣化
- 敷地が狭く足場が組めないため、外壁調査そのものが後回しになる
区内共通で多い漏水
- 隣地との離隔が小さく、外壁の1面だけ足場が組めない(ここが未調査のまま残る)
- 旧耐震・旧仕様のサッシまわりシーリングの硬化
- エキスパンションジョイントのカバー材の変形・脱落
現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、「調査できなかった面から漏った」というケースです。荒川区のように敷地が詰まっている区では、これが本当に多い。足場が組めないから見送る、が積み重なって、10年後に一番弱い面が残ります。
大規模修繕で先に見るべき漏水ポイント7つ
荒川区の物件で、私が見積前の調査で優先して確認する7か所です。順番にも意味があります。
1. 屋上防水とルーフドレン
ドレンのストレーナー(ごみ除けのカゴ)が欠けているだけで、排水口が詰まり、屋上がプール状態になります。防水層の寿命より先に、ここが原因で漏るケースが多い。防水改修の目安単価は5,000〜8,000円/㎡程度ですが、ドレン交換は数万円単位で済みます。
2. 外壁シーリングの打継ぎ目
コンクリートの打継ぎ部分のシーリングは、外壁塗装より先に切れます。特に荒川区の築30年前後の物件では、既存シーリングの硬化が進んでいるものが目立ちます。
3. バルコニーの排水口とドレン
専有使用部分なので管理組合の調査範囲から外れやすい場所です。ここが詰まると、階下への漏水として現れます。
4. 排水立上り管の貫通部
スラブ貫通部のモルタル充填が痩せている箇所から、上階の水が下階へ回ります。
5. サッシまわりのシーリングと水切り
台風時の吹き上げで、サッシ上部から室内に回るパターン。荒川区は高い建物の少ないエリアが多く、風が直接当たる面がはっきりしています。
6. エキスパンションジョイント
棟が分かれている建物の接続部。カバー材が変形していると、そのまま雨の入口になります。
7. 敷地の雨水桝と前面道路との高低差
荒川区ではここが本丸です。道路冠水履歴図で着色されている道路に面しているなら、止水板の検討とセットで考えてください。
この7か所のうち、1・2・5・6は外壁面からの調査が必要です。足場を組めない面があるなら、ロープアクセス工法かドローンによる外観調査で埋める。ここを空白にしないことが、荒川区では特に効きます。工法そのものの技術的な中身を確認されたい方は、同業者・技術者向けにまとめている姉妹サイトロープアクセスドットコムもあわせてご覧ください。
荒川区で使える防災・耐震の助成(令和8年度)
荒川区は、分譲マンションの防災対策にかなり手厚い制度を用意しています。令和8年度時点で公表されている内容を整理します。
分譲マンションへの防災対策費助成
| 助成メニュー | 対象例 | 助成額 |
|---|---|---|
| 防災対策工事 | エレベーター防災対策改修工事、防災備蓄倉庫設置工事、耐震ドア改修工事 など | 最大400万円(費用の3分の2) |
| 防災資器材配備 | エレベーター用防災チェア、階段避難車、電動階段台車、ポータブル発電機 など | 最大50万円(費用の3分の2) |
| 共同備蓄品配備 | 携帯トイレ、おむつ、生理用品、保存水 など | 最大10万円(費用の3分の2) |
要件は、管理規約があること、総会が行われていること、防災マニュアルを備えていること、防災訓練を実施すること、新耐震性能を有すること(メニューにより要件は異なります)。工事の契約や物品の購入をする前に申請手続きを行う必要があります(出典:荒川区「分譲マンションの防災対策を支援します」/ページ更新日 2026年8月31日)。
止水板設置の助成
区内のマンション・住宅・店舗・事業所の所有者または使用者が対象で、1件あたり150万円を限度に工事費の2分の1まで。上記の分譲マンション防災対策工事支援制度の助成を受ける場合は、1件あたり150万円を限度に工事費の3分の2までに上がります。工事を伴わない簡易型止水板の購入も助成の範囲に含まれます。ただし制度開始以降に建設した建物は対象外です(出典:荒川区「止水板設置の助成」/ページ更新日 2025年5月1日)。
荒川区のように区内ほぼ全域が浸水想定に入る区で、150万円を上限に止水板の工事費が3分の2まで見てもらえるというのは、率直に申し上げて相当に有利な制度だと思います。
木造・非木造建物耐震化推進事業(令和8年度)
| 建物の種類 | 事業の種類 | 補助率 | 補助限度額 |
|---|---|---|---|
| 分譲マンション | 耐震診断 | 3分の2 | 400万円(延べ面積に応じた限度額あり) |
| 分譲マンション | 耐震補強設計 | 3分の2 | 100万円 |
| 分譲マンション | 耐震補強工事 | 3分の2 | 1,000万円 |
| 賃貸マンション | 耐震診断 | 2分の1 | 200万円(延べ面積に応じた限度額あり) |
| 賃貸マンション | 耐震補強設計 | 2分の1 | 50万円 |
| 賃貸マンション | 耐震補強工事 | 2分の1 | 500万円 |
対象は非木造の場合、昭和56年5月31日以前に建築された旧耐震の建物です。区は、都心南部直下地震(マグニチュード7.3)が発生した場合、区内では最大震度7となり、ゆれや火災による建物被害は約7,100棟、死者数は359人と想定されているとしています(出典:荒川区「木造・非木造建物耐震化推進事業」/ページ更新日 2026年4月1日)。
いずれの制度も要件確認と事前相談が前提です。年度途中で予算が終了する可能性もありますので、総会にかける前に窓口で現行の取扱いをご確認ください。
漏水の緊急対応で、ロープアクセスが強い理由
漏水は、雨のときにしか症状が出ません。ここが厄介なところです。
足場を組む場合、部材の搬入・組立・近隣への挨拶を含めて、着手までに1〜2週間かかるのが一般的です。その間にも雨は降ります。漏水の原因箇所は、雨が降っている最中に見るのが一番わかりやすいのに、足場が立つころには乾いている。
ロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が上から降りて施工する無足場工法)であれば、屋上のアンカーが取れれば当日から翌日の着手が可能なケースが多くなります。調査と応急止水をその場で同時に進められるので、「原因がわからないまま次の台風を迎える」という状況を避けやすい。
費用面でも差が出ます。10階建て・外周80m・工期3か月の建物を例に取ると、仮設足場の費用が168万円程度かかるところ、ロープアクセスであれば59万円程度に収まる、というのが一つの目安です(差額はおよそ109万円)。打診調査の㎡単価は250〜500円程度、外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡程度が目安になります。いずれも物件の形状・階数・立地条件で大きく変動しますので、参考値としてお考えください。料金の考え方のページでも、この考え方をまとめています。
株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたります。漏水対応の具体的な流れは漏水対応のページをご覧ください。技術的な条件や訓練体系についてはロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。
防災上の共用部は「高さ」で優先度が決まります
荒川区のように水平避難が難しい区では、上階で生活を続けられるかどうかが防災のすべてになります。そこで効いてくるのが共用設備の設置高さです。
| 共用部 | 確認すること | 修繕の優先度 |
|---|---|---|
| 受変電設備(キュービクル) | 地上何mに置かれているか。地下・1階にあるか | 最優先。浸水で止まると全館停電 |
| 給水ポンプ・受水槽 | 機械室の位置。地下ピットにないか | 最優先。止まると上階が断水 |
| エレベーター機械室・ピット | ピットへの浸水経路。地震時管制運転装置の有無 | 高。止まると高齢の居住者が孤立 |
| 自家発電設備 | 燃料タンクの位置と稼働可能時間 | 中〜高 |
| 避難通路・非常階段 | 手すり・床防水・照明。物置化していないか | 中。費用対効果は高い |
| 防災備蓄倉庫 | 数階ごとに分散設置されているか | 中。区の助成対象 |
国土交通省は建築物の電気設備について浸水対策のガイドラインを公表しています(出典:国土交通省「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」)。受変電設備の位置を上げる、あるいは防水区画を設ける工事は、大規模修繕と同時に行うほうが仮設費を二重に払わずに済みます。
私はこれを、外壁改修とワンセットで提案するようにしています。理由は単純で、足場やロープを出すタイミングは10〜12年に1回しか来ないからです。ビルオーナーさま向けのご支援内容はビルオーナー向けサービス、管理組合さま向けは管理組合向けサービスにまとめています。
よくあるご質問
Q. 荒川区の内水(雨水出水)ハザードマップは、いつ公表されますか?
A. 区は「公表まで今しばらくお時間をいただく見込み」としており、時期は明示されていません。それまでは東京都下水道局が公表した神田川流域および隅田川・新河岸川流域の雨水出水浸水想定区域図で確認するよう案内されています。区の水害ハザードマップのページからPDFに直接たどり着けます。
Q. うちのマンションが土砂災害警戒区域に入っているか、どう調べますか?
A. 荒川区の該当は西日暮里3丁目5番・6番・7番・10番・11番、西日暮里4丁目1番・2番・7番です。この番地以外であれば、区の土砂災害ハザードマップの対象外になります。東京都の土砂災害警戒区域等マップでも確認できます。
Q. 止水板の助成と、分譲マンションの防災対策工事助成は併用できますか?
A. 区のページでは、分譲マンションへの防災対策工事支援制度の助成を受ける場合、止水板助成の補助率が2分の1から3分の2に上がると案内されています。上限は1件150万円です。組み合わせ方は物件条件によりますので、申請前に住まい街づくり課へご相談ください。
Q. 大規模修繕と防災対策工事は、同じ年に申請したほうがいいですか?
A. 工事の内容によります。ただ、仮設費(足場やロープの設置費用)を一度で済ませられる分、同時期にまとめたほうが総額は抑えやすくなります。助成は工事契約の前に申請手続きが要る点にご注意ください。
Q. 足場が組めない面の外壁調査は、どうすればいいですか?
A. ロープアクセス工法での打診調査(250〜500円/㎡が目安)か、ドローンによる外観調査を組み合わせます。荒川区は隣地との離隔が小さい物件が多く、実務上はこの2つのどちらかになることがほとんどです。
Q. 台風のあと、まず何を見ればいいですか?
A. 屋上ドレンのストレーナー、バルコニー排水口、敷地の雨水桝、前面道路との高低差の4か所です。詰まりを取るだけで、次の大雨での漏水リスクはかなり下がります。費用はかかりません。
Q. 賃貸マンションのオーナーでも相談できますか?
A. できます。収益物件では、漏水を1件起こすと原状回復費と空室期間の両方が効いてきます。荒川区は日暮里・町屋を中心に賃貸需要の厚いエリアですので、稼働率を落とさない工期の組み方まで含めてご提案しています。オーナーさま向けの考え方は収益物件オーナー向けページにまとめています。
Q. 漏水が起きてから連絡した場合、どれくらいで来てもらえますか?
A. ロープアクセスであれば足場の架設が不要なため、当日から翌日の着手が可能なケースが多いです。まずはお問合せフォームからご連絡ください。
まとめ:今週、荒川区の理事会で動けること3つ
- 道路冠水履歴図で、自分の建物の前面道路を確認する — 平成16年度以降の22年度のうち15年度で区内に冠水が記録されています。着色されていれば、1階まわりは浸水する前提で仕上げる判断になります
- 内水は区のマップではなく、東京都下水道局の区域図で確認する — 区版は作成中です
- 受変電設備・給水ポンプ・エレベーターピットの設置高さを実物で見る — 費用ゼロで、防災上いちばん効く確認です
荒川区は、隣の区へ水平に逃げるという前提が成り立ちにくい区です。だからこそ、建物そのものを「上で耐えられる箱」に仕上げておくことの意味が、他区より大きくなります。外壁をきれいにすることと、水を入れないことは、同じ工事のなかで同時にできます。順番を決めるだけの話なのですが、これを工事の前に整理できているかどうかで、同じ予算の効き方がまるで変わります。
ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談はお問合せフォームからどうぞ。
株式会社明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。
出典・参考資料
- 荒川区「荒川区水害ハザードマップ」(ページ更新日 2026年9月1日/荒川流域72時間総雨量632mm・最大約5m以上、石神井川・高潮の各マップ、内水は作成中)
- 荒川区「荒川区土砂災害ハザードマップ」(ページ更新日 2025年7月18日/西日暮里地域 警戒区域7か所・特別警戒区域6か所)
- 荒川区「道路の冠水履歴を公開しています」(ページ更新日 2026年8月18日/平成16年度〜令和7年度)
- 荒川区「建築物における液状化対策」(ページ更新日 2025年4月28日)
- 荒川区「分譲マンションの防災対策を支援します」(ページ更新日 2026年8月31日/防災対策工事 最大400万円ほか)
- 荒川区「止水板設置の助成」(ページ更新日 2025年5月1日/1件150万円限度)
- 荒川区「木造・非木造建物耐震化推進事業」(ページ更新日 2026年4月1日/令和8年度の補助率・限度額)
- 荒川区「マンションにお住まいの方の防災対策」
- 荒川区「荒川区地域防災計画(令和6年修正)」
- 東京都土木技術支援・人材育成センター「東京の液状化予測」
- 東京都「土砂災害警戒区域等マップ」
- 国土交通省 関東地方整備局 荒川下流河川事務所「荒川3D洪水浸水想定区域図(下流域)」
- 国土交通省 関東地方整備局 荒川下流河川事務所「洪水浸水想定区域」
- 国土交通省「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」
- 気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月21日時点で公表されている荒川区および東京都・国土交通省・気象庁の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。荒川区の雨水出水(内水)ハザードマップは区が作成中で、現時点では区の水害ハザードマップに内水の想定は反映されていません。助成制度の申請にあたっては、防災都市づくり部 住まい街づくり課 住宅係(03-3802-3111 内線2822・2826)、止水板助成は土木管理課 管理係(03-3802-4296)、ハザード情報は危機管理部 危機管理課 防災管理係(03-3802-3111 内線492)へ最新の内容をご確認ください。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月21日
丹波山村のマンション補助金|大規模修繕2026年度版
「丹波山村で共用部の大規模修繕をするとき、村から補助金は出るのか。工事の前に何か役所の手続きは要るのか」 ——この2つに、令和8年度(2026年度)時点の一次情報だけで答えます。
先に結論だけ申し上げます。丹波山村には、分譲マンションの共用部改修に直接お金が出る村独自の補助金は、公開情報の範囲では確認できません。そのかわり丹波山村には、他の自治体にはほとんどない「工事の前に通さなければならない手続き」があります。村の全域が秩父多摩甲斐国立公園に含まれるため、外壁や屋根の色を変える工事が自然公園法の対象になり得るのです。
私は20年近く、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕の現場に立ってきました。その経験から申し上げると、丹波山村のような条件の地域で管理組合が失敗するのは、補助金が取れなかったときではありません。「色の手続きに1か月かかると知らないまま、総会で工期を決めてしまったとき」です。この記事は、そこを外さないために書きました。
この記事の早見表|丹波山村のマンション共用部に使える制度・使えない制度
まず全体像を1枚で押さえてください。令和8年度時点で、丹波山村の分譲マンション共用部(外壁・屋上防水・鉄部・給排水など)に「使える/使えない」を仕分けた表です。
| 制度・手続き | 主体 | 共用部の大規模修繕に | 要点 |
|---|---|---|---|
| 自然公園法の許可・届出 | 国(環境大臣)/山梨県知事 | △ 義務として関係する | 村全域が秩父多摩甲斐国立公園。屋根・壁面の色彩に基準あり |
| マンション管理計画認定制度 | 山梨県 | ○ 間接的に効く | 丹波山村は町村部のため県が認定主体。手数料3,600円〜 |
| マンション長寿命化促進税制 | 国(固定資産税の減額) | ○ 効く | 認定または助言・指導ルート。令和8年4月1日付通知で運用中 |
| 住宅省エネ2026キャンペーン(4事業) | 国 | ○ 部分的に効く | 窓・給湯など省エネ工事が対象。外壁塗装単体は対象外 |
| 建築基準法第12条 定期報告 | 山梨県 | △ 調査義務 | 提出は毎年4月1日〜9月30日。提出先は県庁建築住宅課 |
| 丹波山村「わが家の耐震診断」支援事業 | 丹波山村 | × 対象外 | 昭和56年5月31日以前の木造住宅限定 |
| 丹波山村「わが家の耐震化」支援事業 | 丹波山村 | × 対象外 | 同上。費用の1/2以下かつ60万円限度 |
| 太陽熱温水器設置費補助金 | 丹波山村 | △ 設備なら接点あり | 村の補助金申請書に様式あり。金額は村へ要確認 |
| 賃貸住宅入居者助成金 | 丹波山村 | × 工事は対象外 | 入居者向け。オーナーの入居率対策としては参考になる |
| 村独自の共用部改修補助 | 丹波山村 | × 確認できず | 村公式サイト上に該当ページなし |
表の読み方の要点はひとつです。丹波山村では「もらう制度」より「通す手続き」のほうが、工期と費用に効きます。 以下、順に根拠を示していきます。
丹波山村という村の建物事情を、数字で押さえる
丹波山村は山梨県の北東端、北都留郡にある村です。多摩川の源流である丹波川が村の中央を流れ、雲取山・飛龍山・大菩薩嶺といった山々に囲まれています(出典:丹波山村ホームページ)。
人口と世帯数は、村が公表している住民基本台帳ベースで次のとおりです。
| 時点 | 人口 | 世帯数 |
|---|---|---|
| 令和8年1月1日 | 492人 | 285世帯 |
| 令和8年2月1日 | 490人 | 283世帯 |
| 令和8年3月1日 | 489人 | 282世帯 |
(出典:丹波山村「人口と世帯」)
国勢調査ベースでは、昭和35年の2,261人から令和2年の530人まで、60年で4分の1以下になっています。山梨県内でも最小規模の自治体のひとつです。
「共同住宅は5戸」という数字をどう読むか
建物ストックの構成は、村の『丹波山村耐震改修促進計画』に具体的な数字が載っています。平成18年度末の家屋集計値です。
| 区分 | 戸数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 住宅総数 | 417戸 | 100% |
| うち戸建て | 412戸 | 98.8% |
| うち共同建て | 5戸 | 1.2% |
| うち木造 | 415戸 | 99.5% |
| うち非木造 | 2戸 | 0.5% |
(出典:丹波山村耐震改修促進計画。※平成18年度末時点の集計であり、現在の数値ではありません)
正直に申し上げます。この数字が、丹波山村に村独自のマンション共用部補助金が存在しない理由そのものです。 鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の建物が村内に2戸しかないのなら、自治体としてそこに予算を立てる合理性は薄い。これは村の怠慢ではなく、単なる必然です。
ただし、ここで話を終わらせるわけにはいきません。丹波山村には村営住宅があり、村外資本の宿泊施設もあり、そして近年は二地域居住や親子山村留学の受け皿としての共同住宅需要もあります。「村に制度がない」ことと「管理組合が何もできない」ことは、まったく別の話です。
市外局番が0428であることの実務的な意味
丹波山村役場の電話番号は 0428(88)0211 です(出典:丹波山村ホームページ)。0428は東京都青梅市・奥多摩町と同じ市外局番です。郵便番号も409-0300。
これは雑学ではなく、大規模修繕の実務に直結する話です。丹波山村へ職人と資材を入れるルートは、甲府盆地側から柳沢峠を越えるより、国道411号(青梅街道)を東京都奥多摩町側から遡るほうが現実的な場合が多い。つまり丹波山村の工事は、山梨県の業者ではなく東京・多摩地区の業者の施工圏に入ります。
私は見積書を拝見するとき、必ず「この会社はどちら側から入るつもりか」を確認します。往復の移動時間は、そのまま人件費と工期に跳ね返るからです。株式会社明誠は東京都東大和市に拠点を置いており、青梅街道経由で丹波山村へ入るルートは日常的な施工圏内です。
【丹波山村固有】村の補助金申請書は3本だけ。その中身を読む
丹波山村の公式サイトには「申請届出書ダウンロード」というページがあります。そこに「各種補助金申請書」という見出しがあり、並んでいるのは次の3本だけです。
- 賃貸住宅入居者助成金交付申請書
- 生ごみ処理器購入補助金交付申請書
- 太陽熱温水器設置費補助金交付申請書
(出典:丹波山村「申請届出書ダウンロード」)
耐震診断・耐震改修・ブロック塀撤去・アスベスト調査・住宅リフォーム——他の市町村の記事でお馴染みの制度が、この一覧には1本もありません。私はこのシリーズで100を超える自治体を調べてきましたが、補助金の様式が3本という自治体は初めてでした。
建物に関係するのは「太陽熱温水器設置費補助金」1本
3本のうち、建物工事に接点があるのは太陽熱温水器設置費補助金だけです。
マンションの大規模修繕では、屋上防水のやり替えに合わせて屋上設備を一度撤去・再設置します。もし対象建物の屋上に太陽熱温水器を新設する計画があるなら、防水工事と同じタイミングで施工したほうが足場・揚重・防水納まりのすべてで有利です。その新設分にこの補助金が使える可能性があります。
ただし、補助率・限度額・対象要件・管理組合名義での申請可否は、村のページ上では確認できませんでした。 様式PDFが置かれているだけです。ですから私はここで金額を書きません。書けば嘘になります。
- 確認先:丹波山村役場 TEL 0428(88)0211
- 確認すべきこと:①令和8年度の受付継続の有無 ②補助率と限度額 ③共用部(管理組合名義)での申請可否 ④交付決定前着工の扱い
補助金の実務では、「交付決定前に工事を始めると対象外」というルールがほぼ例外なく置かれています。総会で工事契約を承認する前に、この確認だけは済ませておいてください。
【本記事の背骨】村全域が秩父多摩甲斐国立公園。外壁の色を変えるのに「手続き」が要る
ここからが本題です。丹波山村の大規模修繕で、私が最も重く見ている論点です。
山梨県内には富士箱根伊豆国立公園・秩父多摩甲斐国立公園・南アルプス国立公園の3つの国立公園があり、合計面積は約10.2万ヘクタール、県土の約22.8%を占めます。丹波山村は秩父多摩甲斐国立公園の区域内にあります(出典:山梨県「自然公園Q&A」。同ページに「丹波山村、小菅村付近」の地種区分図が掲載されています)。
自然公園は、景観や植生の重要度に応じて特別保護地区・特別地域・普通地域の3つに区分されます。そして山梨県は次のように明記しています。
自然公園内では、自然公園法または山梨県立自然公園条例に基づく規制があり、工作物の新築や木竹の伐採など様々な行為について、許可または届出が必要になります。
この許可または届出は、国、県、市町村等が所有している公有地だけでなく、個人などが所有している私有地での行為でも必要となります。
(出典:山梨県「自然公園Q&A」A5)
秩父多摩甲斐国立公園の「色」の基準
問題は色彩基準です。山梨県のQ&Aは、秩父多摩甲斐国立公園管理計画書に基づく建築物の基準を次のように掲載しています。
| 部位 | 基準 |
|---|---|
| 屋根の形状 | 切妻、寄棟、入母屋、方形等の勾配屋根とし、勾配を10分の2以上とする |
| 屋根の色彩 | 茶色系、焦茶色系、暗灰色系または黒色とする。ただし自然材料(銅板を含む)を使用する場合は素材色も可 |
| 壁面の色彩 | 茶色系または灰色系とし、周囲の風致又は景観と調和した配色とする。ただし自然材料を用いた場合は素材色も可 |
(出典:山梨県「自然公園Q&A」Q20、秩父多摩甲斐国立公園管理計画書)
さらに許可審査基準として「建築物の屋根及び壁面の色彩並びに形態がその周辺の風致又は景観と著しく不調和でないこと」が規定されています。
大規模修繕の現場感覚で言い換えると、こうなります。「理事会で好きな色を選べる前提で外壁の色決めを進めると、後戻りが発生する」ということです。白系・アイボリー系の明るい外壁にしたい、という希望は管理組合で非常によく出ます。私も何度も聞いてきました。しかし丹波山村では、その希望が基準と衝突する可能性があります。
罰則がある手続きである、という点は軽視できない
山梨県は罰則についても明記しています。
自然公園内でこうした許可又は届出を行わずに自然や風景を変えてしまうような建物を建てたり、木竹を伐採したりすることなどは原則として禁止されており、定められた手続きを行わない場合は、自然公園法第83条の罰則が適用され、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
(出典:山梨県「自然公園Q&A」A5)
管理組合の理事長さまがこのリスクを負う理由はどこにもありません。「うちの工事は手続きが要るのか、要らないのか」を工事の前に確定させる。それだけで済む話です。
なお、自然公園法における「改築」とは、既に土地に定着している工作物の規模・構造・形態等を変える行為のうち、既存の規模を超えない範囲のものを指します(出典:山梨県「自然公園Q&A」A22)。また、通常の管理行為や軽易な行為で規則に定めるものは許可・届出を要しないとされ、県は「特別地域内」「特別保護地区内」「普通地域内」それぞれの不要行為一覧をPDFで公開しています。該当するかどうかは、物件の所在地がどの地種区分に入るかで変わります。地図だけで自己判断しないでください。
ロープアクセス工法そのものの技術的な内容や、足場を組まずに外壁を仕上げる際の品質管理については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで体系的に解説しています。
自然公園法の手続きに何日かかるか|総会日程からの逆算
「手続きが要る」と分かったら、次に押さえるべきは日数です。山梨県は標準処理期間を公表しています。
| 区分 | 権限 | 標準処理期間 | 提出部数 |
|---|---|---|---|
| 知事権限の許可 | 山梨県知事 | 市町村受理後1か月 | 県1部+市町村1部の計2部 |
| 環境大臣権限の許可 | 環境大臣 | 2〜3か月 | 環境省の自然保護官事務所へ要確認 |
(出典:山梨県「自然公園Q&A」A11・A14)
環境大臣の許可が必要になるのは、国立公園の特別保護地区内の全ての行為と、特別地域内で高さ13メートルを超える、または水平投影面積が1,000平方メートルを超える工作物の新築・改築・増築などです(出典:山梨県「自然公園Q&A」A12)。
高さ13メートル超という数字に注目してください。マンションで言えば、おおむね4〜5階建てを超える規模がこのラインに触れます。丹波山村で4階建て以上の共同住宅が特別地域内にあるなら、環境大臣案件として2〜3か月を見込む必要があるということです。
手続きの流れは「事前相談 → 村役場へ提出」
提出先が独特なので、順番を整理しておきます。
- 事前相談:行為の場所と内容が分かる資料を持って、相談窓口へ
- 許可申請または届出の提出:事前相談が終了した後、行為地を所管する市町村役場(=丹波山村役場)に提出
- 県が受理・審査(知事権限の場合、標準処理期間1か月)
(出典:山梨県「自然公園Q&A」A9・A10)
相談窓口
| 用途 | 窓口 | 電話 |
|---|---|---|
| 自然公園法全般の相談 | 山梨県森林環境部 自然共生推進課 | 055(223)1520 |
| 環境大臣権限の相談(秩父多摩甲斐国立公園) | 環境省 奥多摩自然保護官事務所 | 環境省サイトで確認 |
| 申請・届出の提出先 | 丹波山村役場 | 0428(88)0211 |
逆算するとこうなります
私が理事会でご説明するときの逆算です。
- 6月の通常総会で工事契約を承認したい
- → 5月中旬には色を確定した見積書が揃っている必要がある
- → 4月上旬には自然公園法の事前相談を終え、色の方向性について役所の感触を得ている必要がある
- → 3月には設計コンサルまたは施工会社と色彩計画を詰めておく必要がある
つまり、総会の3か月前には動き出している必要があります。 環境大臣案件に該当する規模なら、さらに1〜2か月前倒しです。「補助金の締切に間に合わない」より、「役所の処理期間に間に合わない」ほうが、丹波山村では現実的なリスクです。
丹波山村の耐震補助は「木造住宅」限定。しかも3年連続0件という現実
村の補助制度で、住宅に関するものがまったく無いわけではありません。『丹波山村住宅耐震化緊急促進アクションプログラム2026』という、令和8年度版の文書が村のサイトに公開されています。これは令和8年度の現行文書です。
そこに記載された対象は、次のとおりです。
【対象区域】丹波山村全域
【対象建築物】昭和56年5月31日以前に建築された木造住宅
(出典:丹波山村住宅耐震化緊急促進アクションプログラム2026)
「木造住宅」と明記されています。 鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の分譲マンション共用部は、この制度の対象外です。断定を避けたいところですが、ここは文書がはっきり限定しているので、正直に書きます。
補助の中身(木造住宅向け)
参考として、村の『耐震改修促進計画』に記載された2つの支援事業を掲載します。
| 事業名 | 対象 | 補助率・限度額 |
|---|---|---|
| 「わが家の耐震診断」支援事業 | 昭和56年5月31日以前に建築された木造住宅 | 全額村負担 |
| 「わが家の耐震化」支援事業 | 耐震診断の結果、倒壊の危険があると診断された木造住宅 | 耐震改修に要した費用の1/2以下かつ600千円(60万円)を限度 |
(出典:丹波山村耐震改修促進計画)
情報の鮮度について一点、正直にお断りします。 この『耐震改修促進計画』は計画期間を「平成20年度から平成27年度までの8年間」としており、計画期間そのものは既に終了しています。一方でアクションプログラム2026は令和8年度の文書として現行です。したがって上記の補助率・限度額が令和8年度も同額かどうかは、必ず村へご確認ください。私はここで「令和8年度も60万円です」とは書きません。
3年連続で補助実績ゼロ、という数字
アクションプログラム2026には、実績が正直に記載されています。
| 年度 | 耐震診断補助件数 | 耐震改修補助件数 |
|---|---|---|
| 令和5年度 | 0件 | 0件 |
| 令和6年度 | 0件 | 0件 |
| 令和7年度(見込み) | 0件 | 0件 |
| 令和8年度目標 | 2件 | 1件 |
(出典:丹波山村住宅耐震化緊急促進アクションプログラム2026)
村自身が挙げている課題は、「耐震改修の重要性が理解されていない」「補助制度の周知が不足している」の2点。改善策として「耐震改修の重要性の啓発を強化」「地域と連携した補助制度の周知」を掲げ、令和8年度の取組として戸別訪問5件の実施、自治会等を通じた啓発活動、耐震診断後おおむね1年経過しても未着手の所有者へのダイレクトメール・電話、県と連携した改修事業者向け講習会、年1回以上の住民向け説明会・無料相談会などが列挙されています。
私はこの文書を読んで、正直なところ少し胸が痛みました。制度があり、担当者が動いていて、それでも3年間ゼロなのです。 全国の小規模自治体で似た状況を何度も見てきました。使われない制度は、翌年度の予算査定で削られていきます。丹波山村で建物をお持ちの方は、木造・非木造を問わず、まず一度村役場に「うちの建物は何か使えますか」と聞いてみるところから始めてください。それが制度を残すことにもつながります。
マンション管理計画認定制度は「山梨県」が窓口|手数料3,600円から
ここから、丹波山村の管理組合が実際に動かせる制度の話に移ります。
マンション管理計画認定制度は、管理計画が一定の基準を満たす場合に、管理組合が地方公共団体から「適切な管理計画を持つマンション」として認定を受けられる制度です。
丹波山村で最も重要なポイントは、認定主体が村ではなく山梨県であることです。
県(町村部にあるマンションのみ対象)では、令和4年4月1日から認定の受付を開始しました。
(出典:山梨県「マンション管理計画認定制度について」。ページ更新日2025年12月24日)
丹波山村は北都留郡丹波山村、すなわち町村部です。したがって申請先は丹波山村役場ではなく、山梨県県土整備部建築住宅課 企画担当(055-223-1730)になります。甲府市のような市部は市が認定主体ですが、丹波山村は県です。ここを間違えると、書類を持ち込む先から違ってしまいます。
認定申請手数料(山梨県)
| 区分 | 適合証あり | 適合証なし |
|---|---|---|
| 認定(更新)申請・長期修繕計画が1つ | 3,600円 | 25,500円 |
| 長期修繕計画が2以上ある場合の加算 | 1計画あたり+1,600円 | 1計画あたり+14,700円 |
| 変更認定申請 | 適合証なしの金額の1/2(100円未満切捨て) | 同左 |
適合証の有無で7倍近い差があります。 適合証は公益財団法人マンション管理センターが発行するもので、山梨県は「1の方法(適合証を受けてから県へ申請する)による申請を原則としています」と明記しています(出典:同上/マンション管理センター 管理計画認定手続支援サービス)。
また、山梨県には県独自の認定基準はありません(出典:同上)。国の基準(管理組合の運営、管理規約、管理組合の経理、長期修繕計画の作成及び見直し等)をそのまま満たせばよい、ということです。独自基準を上乗せしている自治体もある中で、これは申請側にとって素直な条件です。
なお、申請を予定される場合は「申請の前に建築住宅課企画担当へご相談ください」と案内されています。ページの更新日が2025年12月24日(令和7年度)である点にはご注意ください。 令和8年度の手数料改定の有無を含め、申請前に必ず県へご確認をお願いします。
認定を取ると効く|マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)
管理計画認定を取る実利は、この税制にあります。
マンション長寿命化促進税制は、一定の要件を満たすマンションが長寿命化に資する大規模修繕工事を行った場合に、翌年度の固定資産税(建物部分)が減額される制度です。減額割合は6分の1から2分の1の範囲内で、各自治体の条例で決まります。
国土交通省のページには、令和8年4月1日付の通知(国住参マ第305号・第306号)が掲載されており、令和8年度も現行制度として運用されていることが確認できます(出典:国土交通省「マンション税制」)。
同ページには「大規模の修繕等証明書」「過去工事証明書」「修繕積立金引上証明書」「助言・指導内容実施等証明申請書・証明書」の各様式と記入例が公開されています。管理計画認定を取っていなくても、管理組合が助言又は指導を受けたルートで適用できる道が用意されている点は、丹波山村のような小規模自治体の管理組合にとって現実的な選択肢です。
適用期限については、令和7年度税制改正で延長されていますが、税制は毎年度の改正対象です。適用可否と期限は、必ず工事着手前に国土交通省の最新ページと山梨県・丹波山村の税務担当でご確認ください。
相談窓口として、国土交通省は一般社団法人日本マンション管理士会連合会の「マンション管理計画認定制度 相談ダイヤル(TEL 03-5801-0858、月〜土 10:00〜17:00)」を案内しています。
私はこの税制について、理事会では「工事の是非を決める材料ではなく、工事を決めた後で取りこぼさないための確認事項」とお伝えしています。減税額は建物規模と条例次第で変わりますし、それを当て込んで工事仕様を決めるのは本末転倒だからです。ただし、取れるのに取らないのは、ただの損です。
国の制度|住宅省エネ2026キャンペーンの4事業と、共用部への効き方
令和8年度の国の省エネ補助は、国土交通省・環境省・経済産業省の3省連携による「住宅省エネ2026キャンペーン」に整理されています。山梨県建築住宅課も情報提供ページで次の4事業を案内しています(出典:山梨県「住宅の省エネに関する国補助金(情報提供)」。ページ更新日2026年4月27日)。
| 事業名 | 主な対象 |
|---|---|
| みらいエコ住宅2026事業 | GX志向型住宅の新築、長期優良住宅・ZEH水準住宅の新築、住宅の省エネリフォーム等 |
| 先進的窓リノベ2026事業 | 内窓設置、窓・ドア交換などの開口部断熱 |
| 給湯省エネ2026事業 | 高効率給湯器の設置 |
| 賃貸集合給湯省エネ2026事業 | 賃貸集合住宅の給湯省エネ |
「みらいエコ住宅2026事業」は、前年度の「子育てグリーン住宅支援事業」からの後継事業として令和7年11月28日の予算案閣議決定で創設が発表され、令和8年2月4日に公式サイトが公開されました(出典:国土交通省「みらいエコ住宅2026事業について」)。主な変更点として「補助対象となるリフォーム工事の組合せの設定」が挙げられており、リフォーム側の要件が前年度から変わっています。
管理組合が誤解しやすい点を3つ
① 外壁塗装や屋上防水そのものは、省エネ補助の対象工事ではありません。
これは毎年、理事会で必ず出る誤解です。省エネキャンペーンはあくまで断熱・省エネ性能の向上に対する補助です。大規模修繕の主要工種である外壁塗装・シーリング打ち替え・屋上防水・鉄部塗装は、単体では対象になりません。
② ただし「抱き合わせ」で効くことがあります。
外壁足場やロープアクセスを掛けているタイミングは、窓まわりの工事をする絶好の機会です。大規模修繕と同時に共用部の窓を断熱仕様に更新する計画なら、先進的窓リノベ2026事業の枠が視野に入ります。別々の年度にやれば二度手間、同時にやれば一度で済む。 これは補助金の話である以上に、工事の段取りの話です。
③ マンションで建物全体を一括してリフォームする場合、管理組合が施主(申請者)になります。
区分所有者が個別に申請するのか、管理組合が一括で申請するのかで、必要書類も合意形成の手順も変わります。総会決議の文言の作り方にも関わりますので、早い段階で事務局に確認してください。
問い合わせ先:住宅省エネ2026キャンペーン補助事業合同お問い合わせ窓口(コールセンター 0570-081-789/IP電話等の場合 03-6629-1646/受付9:00〜17:00、土日祝含む)
なお、これらは予算上限に達し次第受付終了となる性質の制度です。山梨県も「県ではご相談等をお受けすることができません。各補助制度の事務局へお問い合わせください」と明記しています。予算の残枠は年度途中で動きます。必ず公式サイトで最新の状況をご確認ください。
丹波山村の12条点検(定期報告)は山梨県へ。受付は4月1日〜9月30日
建築基準法第12条に基づく定期報告制度についても、丹波山村は山梨県が所管です。
山梨県のページ(更新日2026年8月31日)によると、要点は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 国と県が指定する特定建築物等(建築物・建築設備・防火設備・昇降機・準用工作物) |
| 提出期間 | 報告年度の4月1日から9月30日まで |
| 提出先(建築物・建築設備・防火設備) | 山梨県庁 建築住宅課 建築防災担当(甲府市丸の内1-6-1 県庁別館3階) |
| 提出部数 | 2部(正本1部、副本1部) |
| 調査可能な資格者 | 一級建築士、二級建築士、特定建築物調査員 等 |
| 様式 | 令和7年7月1日施行で改正済 |
| 昇降機・準用工作物 | 一般社団法人北関東ブロック昇降機等検査協会へ提出 |
(出典:山梨県「定期報告制度について」)
甲府市内のみ甲府市が所管しますが、丹波山村は県です。また、一般社団法人山梨県建築設計協会に県への報告を代行してもらうことも可能とされています(昇降機・準用工作物を除く)。
外壁の「全面打診」が、大規模修繕の計画と直結する
12条点検で管理組合に最も効くのは、外壁の調査方法です。通常の3年ごとの調査では手の届く範囲を打診し、その他は目視で調査します。しかし竣工または外壁改修から10年を経てから最初の調査の際には、歩行者等に危害を加えるおそれのある部分について全面打診等による調査が義務づけられています。
ここが実務上の分岐点です。全面打診が必要になるタイミングで、選択肢は3つあります。
- 全面打診のためだけに足場を組む → 足場費が調査のためだけに発生する
- 大規模修繕とタイミングを合わせる → 足場1回分で調査と工事を済ませる
- ロープアクセス工法で打診調査を行う → 足場を組まずに全面打診を実施する
私がいつも理事長さまにお伝えしているのは、「調査と工事を別々の年に分けないでください」ということです。丹波山村のように職人の移動距離が長い地域では、仮設を2回組むコストの重さが都市部の比ではありません。
打診調査の㎡単価はおおむね250〜500円/㎡が目安ですが、これは調査単体の価格であって、そこに仮設費が乗ると総額は大きく変わります。仮設をどう組むかが、調査費の総額を決めるのです。ロープアクセスによる打診調査の技術的な手順や、足場を用いない場合の品質確保の考え方は、ロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。
丹波山村でロープアクセス工法が効く3つの理由
ここは自社サービスの話になりますので、見出しで明確に区切ります。
理由1|仮設足場の資材運搬距離が、そのまま費用になる地域だから
丹波山村へ足場材を搬入するには、国道411号を長距離走らせる必要があります。足場は「資材の量×運搬距離×積み下ろしの手間」で費用が決まります。ロープアクセス工法は、資材が作業員の装備とロープだけです。4トン車で何往復もする必要がありません。
参考として、10階建て・外周80m・工期3か月規模の建物で仮設足場が約168万円かかるケースで、ロープアクセスなら約59万円(差額約109万円)という試算があります。これは物件条件による参考値であり、実際の見積は建物形状・作業量・立地で大きく変動します。 ただし、運搬距離が長い地域ほどこの差が開く方向に働く、という傾向は申し上げられます。
理由2|自然公園法の手続き対象を増やさないという発想
先に述べたとおり、丹波山村では工作物の設置が自然公園法の許可・届出の検討対象になり得ます。仮設足場が手続き上どう扱われるかは、地種区分と規模、そして「通常の管理行為・軽易な行為」への該当性によって判断が分かれるため、ここで断定はできません。
ただ、現場に持ち込む構造物が少ないほど、確認すべき論点が減るのは事実です。事前相談の段階で「足場は組まず、屋上支点からのロープアクセスで施工します」と説明できる状態にしておくことは、手続きを軽くする方向に働きます。これは必ず事前相談で確認してください。
理由3|急傾斜地・河岸段丘で、足場を組む「地面」が足りない
丹波山村の集落は、丹波川沿いの限られた平坦地と斜面に張り付くように形成されています。建物の外周に足場を組むだけの余地がない、隣地が斜面、建物の背面が擁壁——こうした条件は、山間部の建物で日常的に起こります。
足場は地面がないと組めません。ロープアクセスは屋上に支点が取れれば降りられます。 これは工法の優劣ではなく、適用条件の違いです。私は必ず現地で「どちら側から降ろせるか」「どこなら足場が立つか」の両方を見てから、通常足場・ロープアクセス・両方を組み合わせるハイブリッド工法の3案でご提案しています。
株式会社明誠は、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕に携わってきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたり、ISO9001品質マネジメントシステムのもとで管理しています。また、日本ロープ高所作業協会の事務局を担当しています。
工法の考え方は明誠のロープアクセス工法の技術詳細、大規模修繕の全体像は大規模修繕工事のご案内、価格の考え方は大規模修繕の料金の考え方にまとめています。管理組合向けのサービス内容は管理組合向けサービスをご覧ください。
費用の目安|丹波山村で見積書を見るときのチェックポイント
具体的な数字を出します。すべて目安・参考値であり、物件により大きく変動します。
| 工種 | 単価の目安 |
|---|---|
| 外壁塗装 | 3,500〜4,500円/㎡ |
| 外壁打診調査 | 250〜500円/㎡ |
| 屋上・バルコニー防水 | 5,000〜8,000円/㎡ |
| 30戸規模マンションの大規模修繕総工費 | 3,500〜5,000万円 |
| うち仮設足場が占める割合 | 総工費の15〜25% |
丹波山村のような山間部では、この表に「移動と運搬」という見えない費目が乗ります。見積書を受け取ったら、次の3点を必ず確認してください。
- 仮設費の内訳:足場の材料費と運搬費・組立解体費が分かれているか。運搬費が「一式」で丸められていないか
- 現場までの移動をどう計上しているか:宿泊を伴うのか、日帰り往復なのか。工期日数に直結します
- 雨天中止日の扱い:山間部は天候による中止が出やすい地域です。工期に予備日が織り込まれているか
そして、相見積もりを取るときは必ず「同じ仮設条件」で比較してください。 A社が全面足場、B社がロープアクセスの見積を出してきた場合、総額だけを並べても意味がありません。工法が違えば、足場の有無だけでなく、作業日数も品質管理の方法も変わるからです。
これまでの施工事例は明誠の施工実績(約6,000棟)からご覧いただけます。漏水など緊急性のあるご相談は漏水調査・緊急対応をご参照ください。
丹波山村の管理組合|工事までの12か月逆算カレンダー
最後に、理事会でそのまま使える段取りをまとめます。丹波山村の事情を織り込んだ順番です。
| 時期 | やること | 相手先 |
|---|---|---|
| 12か月前 | 建物の地種区分(特別保護地区/特別地域/普通地域)を確認 | 山梨県 自然共生推進課 055-223-1520 |
| 11か月前 | 劣化診断・修繕範囲の洗い出し。12条点検の報告年度を確認 | 施工会社/設計コンサル、山梨県建築住宅課 055-223-1734 |
| 10か月前 | 村の補助制度の有無と要件を確認(太陽熱温水器を含む) | 丹波山村役場 0428-88-0211 |
| 9か月前 | 色彩計画のたたき台を作成(茶色系・灰色系を軸に) | 施工会社/設計コンサル |
| 8か月前 | 自然公園法の事前相談 | 山梨県 自然共生推進課/丹波山村役場 |
| 7か月前 | 相見積もり(同一仮設条件で3社)。工法比較 | 施工会社3社 |
| 6か月前 | 管理計画認定の適合証取得を検討 | マンション管理センター/山梨県 055-223-1730 |
| 5か月前 | 許可申請・届出を丹波山村役場へ提出(知事権限なら処理1か月) | 丹波山村役場 |
| 4か月前 | 国の省エネ補助の対象工事があれば予算枠を確認 | 0570-081-789 |
| 3か月前 | 総会資料の作成。工期・色・金額を確定 | 理事会 |
| 2か月前 | 総会決議 | 管理組合 |
| 1か月前 | 契約・着工準備 | 施工会社 |
| 工事完了後 | 長寿命化促進税制の申告 | 丹波山村役場 税務担当 |
この表で一番大事なのは「8か月前の事前相談」です。 ここが遅れると、後ろが全部ずれます。
よくあるご質問
Q. 丹波山村に、マンション共用部の大規模修繕に直接使える補助金はありますか?
A. 令和8年9月21日時点で公開されている村の情報の範囲では、確認できませんでした。村の補助金申請書ダウンロード欄にあるのは賃貸住宅入居者助成金・生ごみ処理器購入補助金・太陽熱温水器設置費補助金の3本のみです(出典:丹波山村 申請届出書ダウンロード)。ただし公開されていない要綱がある可能性は否定できませんので、村役場(0428-88-0211)へ直接ご確認ください。
Q. 外壁の色を変えるだけでも、役所の手続きは必要ですか?
A. 物件が国立公園のどの地種区分にあるかによって変わります。 丹波山村は秩父多摩甲斐国立公園の区域内にあり、特別地域・普通地域では工作物に関する許可または届出が必要になる場合があります。一方で「通常の管理行為、軽易な行為」として許可・届出を要しない行為も規則で定められています。自己判断せず、山梨県自然共生推進課(055-223-1520)へ事前相談してください(出典:山梨県 自然公園Q&A)。
Q. 許可が下りるまでどれくらいかかりますか?
A. 知事権限の許可は市町村受理後の標準処理期間が1か月、環境大臣権限の許可は2〜3か月です(出典:同上)。特別地域内で高さ13m超または水平投影面積1,000㎡超の工作物は環境大臣権限になります。総会の日程から逆算して動いてください。
Q. 手続きをしないで工事を始めてしまったらどうなりますか?
A. 山梨県は「自然公園法第83条の罰則が適用され、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる可能性があります」と明記しています(出典:同上)。管理組合の理事長さまが個人としてこのリスクを負う必要はありません。事前相談は無料です。
Q. マンション管理計画認定は、村役場と県のどちらに申請しますか?
A. 山梨県です。 丹波山村は町村部のため、県(県土整備部建築住宅課 企画担当 055-223-1730)が認定主体になります。手数料は長期修繕計画が1つの場合、適合証ありで3,600円、適合証なしで25,500円です(出典:山梨県 マンション管理計画認定制度について/同ページ更新日2025年12月24日。令和8年度の改定有無は県へご確認ください)。
Q. 村の耐震補助は、鉄筋コンクリート造のマンションでも使えますか?
A. 使えません。 『丹波山村住宅耐震化緊急促進アクションプログラム2026』は対象建築物を「昭和56年5月31日以前に建築された木造住宅」と明記しています(出典:同プログラム)。
Q. ロープアクセス工法にすると、工期はどれくらい短くなりますか?
A. 物件によりますが、足場の組立・解体に要する日数がまるごと不要になる分、足場工法の6割程度の工期で完了するケースがあります。ただし作業可能面積は天候と支点条件に左右されますので、必ず現地を見てからのご回答になります。目安として、10階建て・外周80mのマンションで足場3か月に対しロープアクセス1.5〜2か月が一つの参考値です。
Q. 丹波山村まで来てもらえますか?
A. はい。株式会社明誠は東京都東大和市を拠点としており、国道411号(青梅街道)経由で丹波山村へ入るルートは施工圏内です。ご相談だけでも承ります。お問い合わせはこちら。
この記事のポイントまとめ
- 丹波山村には共用部の大規模修繕に直接使える村独自の補助金は確認できない
- 村の補助金申請書は3本のみ。建物関連は太陽熱温水器設置費補助金だけ
- 村全域が秩父多摩甲斐国立公園。屋根・壁面の色彩に基準がある
- 自然公園法の許可は知事権限で1か月、環境大臣権限で2〜3か月かかる
- 無手続きの工事は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金の対象になり得る
- 村の耐震補助は木造住宅限定。令和5〜7年度は3年連続で実績0件
- マンション管理計画認定の窓口は村ではなく山梨県。手数料は3,600円から
- 総会の3か月前ではなく、8か月前から事前相談を始めるのが丹波山村の正解
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月21日時点で公表されている丹波山村および国土交通省・環境省・山梨県の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。また、引用元のうち山梨県マンション管理計画認定制度のページは2025年12月24日更新、丹波山村耐震改修促進計画は計画期間が平成27年度で終了している文書である旨を本文中に明記しました。実際に申請される前に、必ず丹波山村役場および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
出典・参考資料
- 丹波山村「丹波山村ホームページ」
- 丹波山村「申請届出書ダウンロード」
- 丹波山村「丹波山村住宅耐震化緊急促進アクションプログラム2026(PDF)」
- 丹波山村「丹波山村耐震改修促進計画(PDF)」
- 丹波山村「人口と世帯」
- 丹波山村「各種計画等」
- 山梨県「自然公園Q&A」(更新日2026年7月9日)
- 環境省「秩父多摩甲斐国立公園管理計画書(PDF)」
- 山梨県「マンション管理計画認定制度について」(更新日2025年12月24日)
- 山梨県「定期報告制度について」(更新日2026年8月31日)
- 山梨県「住宅の省エネに関する国補助金(情報提供)」(更新日2026年4月27日)
- 国土交通省「みらいエコ住宅2026事業について」
- 国土交通省「マンション税制(マンション長寿命化促進税制)」
- 公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
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この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月21日
丹波山村のように、村の制度だけを見ていると「何もない」に見える地域があります。けれど実際には、県と国の制度と、工事前に通すべき手続きが必ずあります。私はそういう場所こそ、早めにご相談いただきたいと思っています。総会の前段階、たとえば「うちの建物、色を変えるのに手続きが要るのか」だけでも構いません。お問合せフォームから遠慮なくお声がけください。
荒川区のマンション管理計画認定制度|令和8年度の区手数料は当面無料・独自基準は管理状況届出【大規模修繕2026年度版】
先週、荒川区の町屋で理事会にお邪魔したとき、副理事長さまからこう聞かれました。「認定を取った近所のマンションが何棟もあるらしいんですが、うちは何から手を付ければいいんでしょうか」。
ご近所の動きが気になる、というのは正しい感覚だと思います。荒川区の管理計画認定は、令和6年2月の1件目から令和8年9月まで、公表されているだけで33棟。南千住、町屋、東日暮里、西尾久と、区内にまんべんなく広がっています。
そして荒川区には、他区にない分かりやすい追い風が1つあります。区へ納める手数料が、当面無料であることです。当初認定も、変更も、更新もです。
ただし、油断できない点も1つあります。荒川区には区独自の認定基準があるということです。しかもその独自基準は、マンション管理士による事前確認の対象外です。つまり、事前確認を通っても区の審査で止まり得ます。
今回は荒川区の管理組合さま向けに、費用と落とし穴を数字から先に整理します。私は大規模修繕の現場を20年以上見てきましたが、認定基準の中身は半分近くが長期修繕計画と修繕積立金の話です。工事の話と切り離せませんので、そこも含めてお話しします。
結論:荒川区で管理計画認定を取ると何が変わるか
荒川区で認定を取得したときに変わることを、先に表にします。
| 論点 | 荒川区の場合 |
|---|---|
| 認定主体 | 東京都ではなく荒川区(特別区は区が認定主体) |
| 制度の運用開始 | 令和5年11月1日 |
| 区独自の上乗せ基準 | あり。「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」の要届出マンションは、管理状況の届出が行われていること |
| 区への手数料(当初・変更・更新) | 当面無料(0円) |
| 区以外への費用 | (公財)マンション管理センターのシステム利用料10,000円+事前確認審査料 |
| 申請方法 | 事前確認適合証を取得後、管理計画認定手続支援システムから申請(区の窓口での申請は不可) |
| 審査期間 | 区に申請後、認定まで概ね1か月(不備がない場合) |
| 有効期間 | 認定日から5年。満了日までに更新申請が必要 |
| 認定実績 | 令和8年9月15日時点で33件(公表に同意したマンション) |
出典:荒川区「荒川区マンション管理計画認定制度」(更新日:2026年9月17日)
私はいつも理事長さまに「認定は、ご褒美をもらう制度ではなく、健康診断の結果票をもらう制度です」とお伝えしています。認定を取ること自体より、取りにいく過程で管理の穴が見えることのほうが、長い目では効きます。
荒川区で認定主体はどこか
管理計画認定制度は、令和4年4月に始まった国の制度です。ただし、審査して認定を出すのは国ではありません。
認定主体は次のように決まっています。
- 市および東京23区の区域内にあるマンション → その市・区
- 町村の区域内にあるマンション → 都道府県(法律の規定により事務を行う町村は当該町村)
出典:(公財)マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」
荒川区は特別区ですから、認定主体は荒川区です。東京都ではありません。窓口は防災都市づくり部 住まい街づくり課 住宅係(荒川区荒川二丁目11番1号 北庁舎2階/電話 03-3802-4454)になります。
もう1つ、見落とされがちな前提があります。認定申請ができるのは、マンション管理適正化推進計画を作成している自治体に立地するマンションの管理組合に限られるという点です。荒川区は「荒川区マンション管理適正化推進計画」(令和5年11月〜令和10年度末)を策定済みで、令和5年11月1日から制度を運用しています。
対象になるのは、区内に所在するいわゆる分譲マンションです。ワンオーナーの賃貸マンションは対象外とはっきり書かれていますので、投資用の一棟物件をお持ちのオーナーさまは、この制度ではなく別の打ち手(長寿命化工事そのものの費用対効果や、管理の見える化)で資産価値を組み立てることになります。
なお、新築マンションの管理計画案については、マンション管理センターが認定主体となる「予備認定」という別の仕組みがあります。既存マンションの認定とは入口が違うので、混同しないようご注意ください。
荒川区の管理計画認定基準を、5つの塊で読む
国の認定基準は、細かく数えると17項目あります。荒川区はこれに独自基準を1つ足した形です。条文どおりに読むと頭に入りませんので、5つの塊に分けてご説明します。
1. 管理組合の運営(3項目)
- 管理者等が定められていること
- 監事が選任されていること
- 集会(総会)が年1回以上開催されていること
2. 管理規約(3項目)
- 管理規約が作成されていること
- 災害等の緊急時や管理上必要なときの専有部分への立入り、修繕等の履歴情報の管理について定められていること
- 管理組合の財務・管理に関する情報の書面交付(または電磁的方法による提供)について定められていること
3. 管理組合の経理(3項目)
- 管理費と修繕積立金等が明確に区分して経理されていること
- 修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと
- 直前の事業年度末時点で、修繕積立金の3か月以上の滞納額が全体の1割以内であること
4. 長期修繕計画の作成及び見直し等(6項目)
ここが本丸です。
- 長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠して作成され、計画の内容と修繕積立金額が総会で決議されていること
- 長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われていること
- 計画期間が30年以上で、かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれるよう設定されていること
- 将来の一時金徴収を予定していないこと
- 計画期間全体での修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと
- 計画期間の最終年度において、借入金の残高がない長期修繕計画となっていること
5. その他(3項目・ここに荒川区独自基準が入る)
- 組合員名簿・居住者名簿を備え、年1回以上は内容の確認を行っていること
- 荒川区マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること
- 【荒川区独自基準】「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」の要届出マンションに該当する場合、管理状況の届出が行われていること
出典:荒川区「荒川区マンション管理計画認定制度」、(公財)マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」
この基準の根拠となる国のガイドライン類は、直近で相次いで改訂されています。事務ガイドラインは令和8年3月改訂、マンション標準管理規約は令和7年10月改正、長期修繕計画標準様式・作成ガイドラインと修繕積立金ガイドラインは令和6年6月改訂です。古いひな形のまま総会に上程すると、事前確認で差し戻されます。ここは本当に多いので、先に確認してください。
荒川区独自基準「管理状況届出」の正体と、実務上の意味
荒川区の独自基準は1つだけ。しかし、高経年マンションにとっては無視できない1つです。
東京都には「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」という条例があり、昭和58年(1983年)12月31日以前に新築されたマンションは、管理状況を届け出る義務があります。これを「要届出マンション」と呼びます。
荒川区の認定基準では、この要届出マンションに該当する場合、管理状況の届出が済んでいることが認定の条件になります。
出典:荒川区「マンション管理状況届出制度」(更新日:2026年8月20日)
ここで実務上、決定的に重要な点があります。
区独自基準は、マンション管理士による事前確認の対象外です。
マンション管理センターのページにも、「地方公共団体が独自の認定基準を設けている場合、当該独自基準はマンション管理士による事前確認の対象外となります」と明記されています。つまり、事前確認適合証が出たからといって、荒川区の審査を通る保証にはなりません。届出が未済のまま申請すると、区の段階で止まります。
築40年を超える荒川区内のマンションは、この条件に該当する可能性が高いと考えたほうが安全です。昭和58年以前の竣工であれば、まず管理状況の届出を済ませているかを、理事会の議事録か引継書で確認してください。届出先は荒川区役所 住まい街づくり課 住宅係(電話 03-3802-4454)、届出システムのID・パスワードに関する問い合わせは東京都住宅政策本部マンション課(電話 03-5320-4913)です。
逆に言えば、昭和59年以降に新築されたマンションであれば、この独自基準は実質的に関係ありません。国の基準17項目だけを見ればよいことになります。
築年で分岐する、というのが荒川区の特徴です。ここを最初に仕分けてください。
荒川区の手数料は「当面無料」——では総額はいくらか
お金の話を整理します。荒川区のホームページにはこう書かれています。
荒川区への申請・変更・更新手数料は当面無料です。
※注釈 管理計画認定手続支援システム利用料及び事前確認審査料が別途必要です。
23区の中には、当初認定で4,000円前後の手数料を条例で定めている区もあります。荒川区はそこが0円です。金額そのものは大きくありませんが、変更認定と更新も無料である点は効きます。5年ごとの更新に手数料がかからないということは、10年、15年と続ける前提で考えたときに差が出ます。
ただし「当面」という言葉には注意してください。条例改正で有料化される可能性はゼロではありません。申請の直前に、区のページで最新の記載を確認してください。
区への手数料が無料でも、認定取得は無料ではありません。区の外に支払う費用があります。
総額の目安(長期修繕計画が1計画の場合)
| 費目 | 支払先 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 区への認定手数料 | 荒川区 | 0円(当面無料) |
| システム利用料 | (公財)マンション管理センター | 10,000円(1申請あたり、税込。うち消費税909円) |
| 事前確認審査料 | 依頼先による | 10,000円(長期修繕計画1計画あたり、税込。パターン③・④の場合) |
| 合計 | — | 20,000円程度 |
出典:(公財)マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」
事前確認審査料は、申請パターンによって決まり方が変わります。
- パターン①:事前確認講習を修了したマンション管理士に個別に依頼 → 審査料は管理組合と管理士の協議で決定(センターは関与しません)
- パターン②:管理会社経由で(一社)マンション管理業協会の「マンション管理適正評価制度」と併せて申請 → 審査料は委託先との協議
- パターン③:(一社)日本マンション管理士会連合会経由で「マンション管理適正化診断サービス」と併せて申請 → 長期修繕計画1計画あたり10,000円
- パターン④:管理組合が直接マンション管理センターに申込 → 長期修繕計画1計画あたり10,000円
- パターン⑤:管理組合が直接自治体に申請 → 事前確認は行われない
荒川区は「区の窓口での申請はできません」と明記しており、区への申請には事前確認適合証が必要とされています。したがって、荒川区の管理組合が現実的に選ぶのは①〜④です。パターン⑤は想定されていないと考えてください。
費用を確定させたいならパターン④が最も読みやすい、というのが私の実感です。合計20,000円で天井が見えます。一方、管理会社に管理を委託していて、管理会社が適正評価制度を使っているならパターン②が手間は少なくて済みます。
見落としやすい費用
表に出てこない費用が2つあります。
1つは、長期修繕計画の見直し費用です。作成・見直しが7年以内でない場合、あるいは計画期間が30年に届いていない場合、計画そのものを作り直す必要があります。管理会社や設計事務所に依頼すれば、規模によりますが数十万円単位の費用になります。
もう1つは、管理規約の改正費用です。専有部立入り・履歴情報の管理・情報の書面交付の3点が規約にない場合、規約改正が必要です。総会の特別決議(区分所有者および議決権の各4分の3以上)が要りますので、日程も含めて余裕を見てください。
認定手数料が無料だからといって、認定取得が無料とは限らない。ここは正直にお伝えしておきます。
認定の3つの経済効果を、金額で押さえる
「20,000円払って、何が返ってくるのか」。ここが一番知りたいところだと思います。荒川区のページに挙げられているメリットを、お金の話に翻訳します。
1. 固定資産税の減額(マンション長寿命化促進税制)
一定の要件を満たす長寿命化工事(屋根防水工事・床防水工事・外壁塗装等工事)を実施した場合、工事の翌年度に課される建物部分の固定資産税が2分の1に減額されます。
対象期間は令和5年4月1日から令和9年3月31日までに長寿命化に資する大規模の修繕等が行われたマンションです(当初の令和7年3月31日から、令和7年度税制改正で2年延長されました)。
出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」
ここで順番の話をします。この税制を狙うなら、認定が先、工事が後です。 工事を終えてから認定を取っても、その工事には適用されません。大規模修繕の着工予定がある荒川区の管理組合さまは、今すぐスケジュールの前後関係を整理してください。令和9年3月31日という期限を考えると、逆算できる時間は決して長くありません。
2. フラット35の金利引下げ
管理計画認定マンションは、フラット35の借入金利が当初5年間・年0.25%引下げの対象になります。これは区分所有者個人が住宅を購入・借換えする際の話ですので、管理組合の会計に直接効くものではありません。
ただし、売却時に効きます。買主のローン金利が下がるということは、同じ返済負担で買える価格が上がるということです。中古市場での競争力に響きます。
3. マンション共用部分リフォーム融資・すまい・る債
住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資では、認定マンションは全期間・年0.2%の金利引下げを受けられます。大規模修繕で借入れを行う管理組合には直接効きます。
さらに、マンションすまい・る債の利率上乗せも受けられます。修繕積立金を運用している管理組合にとっては、こちらも実利です。
出典:荒川区「荒川区マンション管理計画認定制度」、住宅金融支援機構
なお、いずれの制度も認定以外に固有の要件があります。詳細は各制度のページで必ずご確認ください。
4. 数字にならないメリット
荒川区は、認定を受けたマンションを区のホームページとマンション管理センターの閲覧サイトで公表しています(公表に同意した場合)。実際、区のページには33棟のマンション名と所在地が並んでいます。
これは、不動産仲介会社や買主が誰でも見られる「公的なお墨付き」です。管理状態を数字で示せない中古マンション市場において、第三者が確認できる看板がある意味は小さくありません。
荒川区の管理組合がつまずきやすい4つの落とし穴
現場で見てきた範囲で、荒川区の管理組合が引っかかりやすいポイントを4つ挙げます。
落とし穴1:独自基準(管理状況届出)を事前確認で拾えると思っている
繰り返しになりますが、独自基準は事前確認の対象外です。マンション管理士は国の基準しか見ません。昭和58年12月31日以前に新築されたマンションは、申請前に自分で届出の有無を確認してください。
落とし穴2:総会決議の前に事前確認を頼んでしまう
マンション管理センターの規定で、事前確認を行うマンション管理士は「総会決議を経ていない管理組合の事前確認はできない」とされています。順番は、総会決議 → 事前確認 → 区への申請です。逆にすると、丸ごと出直しになります。
落とし穴3:有効期間5年の満了を忘れる
認定の有効期間は5年です。満了日までに更新申請をしなければ失効します。理事が毎年入れ替わる管理組合では、5年前の書類は引き継がれないことが多い。認定通知書を総会資料の定位置に綴じ、引継書に「認定有効期限:令和◯年◯月◯日」と明記しておくことを強くおすすめします。
荒川区の場合、更新手数料も当面無料ですから、更新のコスト負担は事前確認とシステム利用料だけです。忘れさえしなければ、負担は軽い。
落とし穴4:修繕積立金の「著しく低額でない」で引っかかる
私の経験上、荒川区の高経年マンションで最初につまずくのは、ほぼ決まって長期修繕計画の計画期間30年・大規模修繕2回以上と修繕積立金の平均額の2点です。
国のガイドライン(令和6年6月改訂)の水準を下回る場合、専門家による「修繕積立金の平均額が著しく低額でない旨の理由書」の提出が必要になります。しかもこの理由書は、事前確認を担当するマンション管理士が作成することはできません。別の専門家を探す必要があり、その分の費用と時間がかかります。
認定基準の本丸は長期修繕計画——だから工事費の話になる
ここから先は、大規模修繕の施工業者としての話です。
認定基準17項目のうち6項目が長期修繕計画に関するものです。そして、その長期修繕計画が通るかどうかは、突き詰めると「30年分の工事費を、今の積立で賄えるか」という一点に収束します。
このとき、多くの管理組合が「積立金を上げる」という解法しか検討しません。しかし、方程式の右辺——つまり工事費のほうを下げるという解法もあります。
仮設費という、意外に大きな塊
30戸規模のマンションの大規模修繕は、総額3,500万〜5,000万円程度がレンジです(建物の状態・仕様により大きく変動します)。このうち仮設足場が15〜25%を占めるのが一般的です。
仮設足場は、建物を1ミリも良くしません。作業員が高所に届くための手段です。にもかかわらず、総工費の5分の1前後を持っていく。
ここを圧縮できると、長期修繕計画の帳尻が変わります。
足場とロープアクセスの費用差(目安)
10階建て・外周80m・工期3か月のマンションを想定した目安です。
| 項目 | 通常足場工法 | ロープアクセス工法 |
|---|---|---|
| 仮設費 | 約168万円 | 約59万円 |
| 差額 | — | ▲約109万円 |
| 工期の目安 | 約3か月 | 約1.5〜2か月 |
| 居住者への影響 | 全戸のベランダ・窓に足場。防犯・日照・プライバシーの影響が大きい | 作業箇所のみ。生活影響を局所化できる |
※あくまで目安・参考値です。建物形状、劣化状況、工事範囲、近隣条件によって実際の金額は大きく変わります。必ず現地調査のうえでのお見積りをご確認ください。
参考までに、㎡単価の目安も挙げておきます。外壁塗装3,500〜4,500円/㎡、外壁打診調査250〜500円/㎡、防水5,000〜8,000円/㎡といったレンジです(いずれも仕様・数量により変動します)。
30年の長期修繕計画に大規模修繕が2回入るとすれば、仮設費の圧縮効果も2回分効きます。100万円の差が2回で200万円。修繕積立金の月額に換算すれば、30戸で30年なら月額185円分に相当します。「著しく低額でない」のラインぎりぎりで悩んでいる管理組合にとって、この差は小さくありません。
もちろん、すべての建物にロープアクセス工法が向くわけではありません。バルコニー内部の広範囲な工事や、大掛かりな躯体補修が必要な場合は足場のほうが合理的です。だからこそ株式会社明誠では、通常足場・ロープアクセス・両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物特性に応じてご提案しています。3工法を自社で持っている会社は、日本でも多くありません。
明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたります。工法選定の考え方は明誠のロープアクセス工法の技術詳細に、費用の考え方は大規模修繕の料金の考え方にまとめています。技術的な比較をさらに深掘りしたい方は、同業者・技術者向けの姉妹サイトロープアクセスドットコムもご覧ください。
総会から逆算する、荒川区の認定取得スケジュール
認定取得は、総会決議が必須です。年1回の通常総会しか開かない管理組合であれば、そこから逆算するしかありません。目安は5〜7か月です。
| 時期 | やること | 担当 |
|---|---|---|
| 6〜7か月前 | 理事会で認定取得の方針を確認。築年を確認し、昭和58年以前なら管理状況届出の有無をチェック(荒川区独自基準) | 理事会 |
| 5〜6か月前 | 長期修繕計画の現状を点検(計画期間・大規模修繕の回数・一時金の有無・借入残高)。見直しが必要なら着手。標準様式(令和6年6月改訂)への準拠を確認 | 理事会+専門家 |
| 4〜5か月前 | 管理規約の点検。専有部立入り・履歴情報管理・情報提供の3点が規定されているか(令和7年10月改正の標準管理規約を参照) | 理事会 |
| 3〜4か月前 | 総会で決議(長期修繕計画の内容・修繕積立金額・認定申請すること) | 総会 |
| 2〜3か月前 | 事前確認の依頼先を決定(パターン①〜④から選択)。費用を比較 | 理事会 |
| 1〜2か月前 | 事前確認の実施 → 事前確認適合証の発行 | マンション管理士等 |
| 申請月 | 支援システムから荒川区へ申請(区の窓口では受け付けられません) | 管理者等 |
| 申請後 | 荒川区の審査(概ね1か月)→ 認定通知書の発行 | 荒川区 |
荒川区は、申請から認定まで「概ね1か月」と明示しています(不備等がない場合)。この見通しが公表されているのは、スケジュールを組む側としてはありがたい情報です。
9月の今から動けば、春の通常総会での決議は十分に射程です。
荒川区の管理組合が使える無料の支援
いきなり有償の専門家に依頼する前に、無料で使える窓口があります。荒川区は、ここが手厚い区です。
荒川区のコンサルタント派遣制度(出張相談)
荒川区は、分譲マンションの管理組合に対してコンサルタント(マンション管理士、一級建築士、防災士など)を派遣する「出張相談」を実施しています。相談内容には、管理計画認定制度の申請にあたっての相談が明示的に含まれています。
利用回数は、防災に関する助言が1年度につき3回まで(毎年リセット)、それ以外の助言が1管理組合につき通算6回まで(次年度へ繰越)です。申込は、派遣希望日の7日前までに申請書と関連資料を区へ提出します。事前相談が必要です。
ただし、管理規約や長期修繕計画等の書類作成、見積の作成、修繕工事の設計、耐震等の診断・調査、特定業者の紹介は対象外です。「相談」と「実務」の線引きは明確ですので、そこは押さえておいてください。
出典:荒川区「コンサルタント派遣制度(マンション)」(更新日:2026年9月4日)
マンション管理計画認定制度「相談ダイヤル」
(一社)日本マンション管理士会連合会が運営する専用ダイヤルです。認定制度や長寿命化促進税制について、マンション管理士の相談員が回答します。
- 電話番号:03-5801-0858
- 受付時間:月曜〜土曜 午前10時〜午後5時(祝日・休日、年末年始を除く)
管理計画認定手続支援システムに関する相談
システムの操作や申請パターンについては、(公財)マンション管理センターへ。
- 電話番号:03-6261-1274
- 受付時間:月曜〜金曜 午前9時30分〜午後5時(祝日・休日、年末年始を除く)
荒川区の窓口
制度そのものの運用や独自基準については、荒川区役所 防災都市づくり部 住まい街づくり課 住宅係(北庁舎2階/電話 03-3802-4454)へ。申請の全体像は、区が公開している荒川区マンション管理計画認定制度・認定申請の手引き(PDF)が最もまとまっています。最初にここを読むのが早道です。
よくあるご質問
Q. 荒川区で管理計画認定を取るのに、全部でいくらかかりますか?
A. 長期修繕計画が1計画の標準的なケースで、20,000円程度が目安です。内訳は荒川区への手数料0円(当面無料)、マンション管理センターのシステム利用料10,000円、事前確認審査料10,000円(マンション管理センターまたは日本マンション管理士会連合会経由の場合)です。マンション管理士に個別に依頼する場合、審査料は協議で決まります。ただし、長期修繕計画の見直しや管理規約の改正が必要な場合は、別途その費用がかかります。
Q. 荒川区に独自の認定基準はありますか?
A. あります。「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」の要届出マンション(昭和58年12月31日以前に新築されたマンション)に該当する場合、管理状況の届出が行われていることが条件です。この独自基準はマンション管理士による事前確認の対象外ですので、申請前にご自身で届出の有無を確認してください。
Q. 賃貸マンションでも認定は取れますか?
A. 取れません。荒川区の制度対象は区内の分譲マンションで、ワンオーナーの賃貸マンションは対象外と明記されています。一棟オーナーさまの資産価値対策としては、長寿命化工事そのものの費用対効果と、修繕履歴の記録という別の切り口でのご提案になります。詳しくはオーナー向けの大規模修繕をご覧ください。
Q. 認定を取ると、区から補助金がもらえますか?
A. 認定そのものに対する補助金はありません。経済的なメリットは、固定資産税の減額(マンション長寿命化促進税制)、フラット35の当初5年間・年0.25%引下げ、マンション共用部分リフォーム融資の全期間・年0.2%引下げ、マンションすまい・る債の利率上乗せの4つです。
Q. 認定と大規模修繕、どちらを先にやるべきですか?
A. 固定資産税の減額を狙うのであれば、認定が先です。長寿命化促進税制は、認定マンションが長寿命化に資する大規模修繕工事を完了させた場合に適用されるためです。しかも対象期間は令和9年3月31日まで。着工予定のある管理組合さまは、前後関係を早めに整理されることをおすすめします。
Q. 修繕積立金が少ないと、認定は取れませんか?
A. 認定基準では「計画期間全体での修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと」が求められます。国のガイドライン(令和6年6月改訂)の水準を下回る場合は、専門家による「著しく低額でない旨の理由書」の提出が必要になります。なお、この理由書は事前確認を担当するマンション管理士が作成することはできませんので、別の専門家に依頼する必要があります。積立の増額だけでなく、工事費側を圧縮して計画の帳尻を合わせる選択肢もあります。
Q. 大規模修繕の工期はどれくらい見ればいいですか?
A. 足場を架ける従来工法では、10階建て・外周80m程度のマンションで約3か月が目安です。ロープアクセス工法を使う場合は1.5〜2か月程度に短縮できるケースがあります。足場の架設・解体そのものに時間がかかるため、その工程が丸ごと不要になる分の差です。ただし、工事範囲や部位によって適する工法は変わりますので、まずは建物を見せていただいてからのご判断になります。
Q. 認定の更新を忘れるとどうなりますか?
A. 有効期間(5年)の満了日までに更新申請を行わないと、認定は失効します。荒川区は更新手数料も当面無料ですので、忘れさえしなければ負担は軽い制度です。認定通知書を総会資料の定位置に綴じ、引継書に有効期限を明記しておくことをおすすめします。
まとめ:荒川区の管理組合が今週動けること3点
荒川区は、区への手数料が当面無料で、審査期間の目安も公表されており、無料のコンサルタント派遣も使える区です。認定を取りにいく環境としては、恵まれているほうだと思います。
つまずくとすれば、制度の側ではなく、長期修繕計画と修繕積立金という管理組合の内側の問題です。あとは、築年によっては管理状況届出という独自基準が1つ。
今週、理事会で動けることを3つ挙げます。
- 建物の竣工年を確認する。 昭和58年12月31日以前なら、管理状況届出が済んでいるかを引継書か議事録で確認してください。これが荒川区独自基準の入口です。
- 長期修繕計画の表紙を見る。 作成・見直しの日付が7年以内か、計画期間が30年以上か、大規模修繕が2回以上入っているか。この3点だけなら、その場で確認できます。
- 次の総会の議案に「認定申請の決議」を入れるか決める。 総会決議がないと事前確認に進めません。ここを逃すと1年待ちです。
この3点で引っかかる項目が出たら、そこが認定のボトルネックです。そして、そのボトルネックが「工事費が重くて積立が追いつかない」であれば、工法の選択肢を増やすことで解ける可能性があります。
明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。管理組合さま向けのサービス内容は管理組合向けの大規模修繕サービスにまとめました。工法ごとの技術的な違いをもう少し掘りたい方は、ロープアクセスドットコムもあわせてご参照ください。
認定を取るかどうかの前段階、「うちの長期修繕計画、そもそも通るのか」という整理だけでもお力になれることがあります。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください(お問合せフォーム)。
10月の理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。春の総会に間に合うかどうかは、そこで決まります。
出典・参考資料
- 荒川区「荒川区マンション管理計画認定制度」(更新日:2026年9月17日)
- 荒川区「荒川区マンション管理計画認定制度・認定申請の手引き」(PDF)
- 荒川区「マンション管理状況届出制度」(更新日:2026年8月20日)
- 荒川区「コンサルタント派遣制度(マンション)」(更新日:2026年9月4日)
- 公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」
- 住宅金融支援機構「住宅金融支援機構ホームページ」
- 東京都マンションポータルサイト「マンション管理計画認定制度」
- 公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定マンション閲覧サイト」
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月21日時点で公表されている東京都荒川区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特に荒川区の認定手数料は「当面無料」という記載であり、将来的に有料化される可能性があります。また、マンション長寿命化促進税制の適用期限は令和9年3月31日です。実際に申請される前に、必ず荒川区(防災都市づくり部 住まい街づくり課 住宅係 電話 03-3802-4454)および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月21日

