基準地価5年連続上昇・東京23区の住宅地は8.7%高|同じ日に出た賃料5,170円/㎡と労務単価25,834円が、管理組合・オーナーに突きつけた宿題【2026年9月】

2026年9月17日 更新

Q. 2026年9月16日に公表された基準地価(令和8年都道府県地価調査)で東京の地価がまた上がりました。私たちが持っている・管理しているマンションの大規模修繕と、これは何か関係があるのでしょうか。

A. 関係があります。しかも同じ9月16日に、東京23区の分譲マンション賃料が5,170円/㎡まで上がったという民間調査も出ています。つまり保有資産の価値は上がっている。一方で、工事を発注する側から見ると、令和8年3月から適用されている公共工事設計労務単価は全国全職種の加重平均で25,834円、単純平均では前年度比+4.5%(14年連続の引き上げ)です(出典:国土交通省)。資産価値が上がるスピードと、修繕コストが上がるスピードが、同時に進行している。この非対称を放置すると、積立金計画が立ち行かなくなるおそれがあります。

私は東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。この記事では、9月16日に公表された2つの最新指標と、今年3月から適用中の労務単価という3つの数字を、公的な一次情報だけを使って「理事会と、オーナーの手元の電卓」につなげる形に翻訳します。


結論:いま押さえるべき3つの数字を、1行ずつで

まず、今回の3つを整理します。ここだけ読んでいただければ、理事会で説明できる形になっています。

# 何が出たか 数字 発表日 出典
① 令和8年都道府県地価調査(基準地価) 全国の全用途平均・住宅地・商業地が5年連続で上昇。東京23区の住宅地は+8.7%、商業地は+13.3%で県庁所在都市トップ 2026年9月16日 国土交通省
② 2026年8月の分譲マンション賃料 東京23区は前月比+0.3%の5,170円/㎡で3ヵ月連続上昇。首都圏は+0.8%の4,242円/㎡ 2026年9月16日 東京カンテイ
③ 令和8年3月から適用の公共工事設計労務単価 全国全職種の加重平均25,834円/単純平均は前年度比+4.5%(14年連続の引き上げ) 2026年2月17日公表・3月適用 国土交通省

①と②は「あなたの資産は値上がりしています」というニュースです。③は「その資産を直す費用も値上がりしています」というニュースです。

私が理事長さまにいつもお伝えしているのは、この2つを別々のニュースとして読まないでください、ということです。地価と賃料が上がっている局面は、修繕を先送りしたときの機会損失がいちばん大きくなる局面でもあります。空室が1戸埋まらないことの痛みが、市況が弱いときよりも大きいからです。


① 令和8年都道府県地価調査を、東京・関東の目線で読む

都道府県地価調査は、国土利用計画法施行令第9条に基づき、都道府県知事が毎年7月1日時点の標準価格を判定する制度です。いわゆる「基準地価」と呼ばれるもので、1月1日時点の地価公示とは基準日が半年ずれています。令和8年調査は、令和7年7月から令和8年7月までの1年間の動きを映しています。

圏域別の平均変動率(令和8年)

用途 東京圏 大阪圏 名古屋圏 地方四市
住宅地 +4.0%(6年連続上昇・上昇幅拡大) +2.3%(5年連続上昇・上昇幅拡大) +1.5%(上昇幅縮小) +2.9%(上昇幅縮小)
商業地 +8.9%(14年連続上昇・上昇幅拡大) +6.8%(5年連続上昇・上昇幅拡大) +2.7%(上昇幅縮小) +6.0%(上昇幅縮小)
工業地 +6.4%(14年連続上昇・上昇幅縮小) +7.4% +3.3% +9.3%

(出典:国土交通省「令和8年地価調査結果の概要」)

注目すべきは、東京圏と大阪圏が住宅地・商業地の両方で上昇幅を拡大している点です。一方、名古屋圏と地方四市は上昇幅が縮んでいます。なかでも東京圏は住宅地・商業地とも最も高い上昇率でした。

都道府県別で最も上昇率が高かったのは東京都で、住宅地+5.8%、商業地+11.4%、工業地+10.8%。県庁所在都市ベースでも東京23区が住宅地+8.7%、商業地+13.3%、工業地+13.8%と、いずれも最も高い上昇率でした。

国土交通省は住宅地について「住宅需要は引き続き堅調であり、地価上昇が継続している。特に東京圏や大阪圏の中心部において高い地価上昇が継続している」と総括しています。商業地については「オフィスについても空室率の低下傾向や賃料の上昇傾向によって収益性が向上している」「マンション需要との競合が見られる地域では、高い地価上昇が継続している」とも書かれています。

東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬のオーナーが読み取るべきこと

私たち明誠が施工しているのは、東京都全域・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬、それに山梨県東部と静岡県東部です。この範囲は、ほぼそのまま「地価と賃料が上がり続けているエリア」と重なります。

ここで大事なのは、地価が上がったからといって、建物の価値まで勝手に上がるわけではないという点です。不動産の価格は土地と建物の合成ですが、建物部分は放っておけば劣化する一方です。土地の含み益が増えている今、建物側の減点をどれだけ小さく抑えられるかが、売却時にも、賃料設定時にも効いてきます。

大規模修繕の考え方については、明誠の大規模修繕工事の進め方にまとめています。


② 東京23区の分譲マンション賃料5,170円/㎡が意味すること

東京カンテイが2026年9月16日に公表した「分譲マンション賃料月別推移」によると、2026年8月の東京23区の平均募集賃料は前月比+0.3%の5,170円/㎡で、3ヵ月連続の上昇。首都圏全体では前月比+0.8%の4,242円/㎡で、こちらも3ヵ月連続の上昇です(出典:東京カンテイ)。

この数字を、オーナーの財布の感覚に換算してみます。

専有面積 東京23区の平均賃料水準(5,170円/㎡で換算) 月額
25㎡(単身向け) 5,170円 × 25㎡ 約12.9万円
40㎡(1LDK) 5,170円 × 40㎡ 約20.7万円
70㎡(ファミリー) 5,170円 × 70㎡ 約36.2万円

※これは分譲マンションの募集賃料の平均を面積で単純換算した参考値です。実際の賃料は立地・築年数・設備・階数で大きく変わります。

70㎡の住戸が1戸、3ヵ月空いたとします。約36.2万円 × 3ヵ月で、約109万円の逸失収入です。この「109万円」という数字は、後段でもう一度出てきます。

私が現場でよく耳にするのは、「外壁が汚れているから内見で決まらない」「バルコニーの鉄部が錆びていて、写真写りが悪い」という声です。賃料の市況がこれだけ強いのに決まらない物件には、たいてい建物の見た目という単純な理由があります。市況が弱いときには「市況のせい」で済んだ話が、市況が強いときには「この物件のせい」に見えてしまう。これが今いちばん怖いところです。

賃貸・収益物件のオーナーさま向けの考え方はマンション・ビルオーナー様向けの大規模修繕サービスに整理しています。


③ なぜ修繕費は下がらないのか──労務単価25,834円という現実

では、工事を出す側のコストはどうなっているか。ここが③の話です。

国土交通省は令和8年2月17日、令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価を公表しました。全国全職種の加重平均値は25,834円。単純平均では前年度比+4.5%の引き上げです。平成25年度の改定から14年連続の引き上げとなり、加重平均値が25,000円を超えたのは今回が初めてです(出典:国土交通省 報道発表)。

公共工事設計労務単価は公共工事の積算に使うものですが、この単価は建設業法第34条第2項に基づき中央建設業審議会から勧告された「労務費に関する基準」において、すべての建設工事の請負契約で確保されるべき「適正な労務費」の計算の基礎となる水準としても位置づけられています。民間の改修工事も無関係ではいられません。

大規模修繕の主要3工種は、とび工(仮設工事)・防水工(防水/シーリング工事)・塗装工(塗装工事)です。令和8年3月適用分の実額を見ると、次のとおりです。

職種 全国平均 東京都 神奈川県 埼玉県 千葉県
とび工 30,780円(前年比+4.0%) 33,100円 33,100円 32,400円 33,500円
防水工 ― 38,200円 34,800円 36,900円 36,900円
塗装工 ― 36,500円 36,300円 34,500円 34,700円
タイル工 ― 27,800円 27,600円 27,700円 27,700円

(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価」(PDF)。所定労働時間内8時間当たりの単価で、諸経費は含みません)

国土交通省の修繕積立金ガイドラインも、「労務費は建設業の担い手不足や技能労働者の就労環境の変化等により変動する可能性がありますので、必要に応じて上昇分について考慮することも重要です」と明記しています(出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定))。

正直に申し上げます。私は、ここ数年の見積で「去年と同じ金額で出してほしい」と言われて、頭を下げたことが何度もあります。単価が上がっているのに金額を据え置くということは、どこかの職人の手間を削るか、材料のグレードを落とすか、いずれかを選ばざるを得ない場面が増えます。そのどちらも、5年後・10年後に建物として返ってきます。


修繕積立金ガイドラインの目安と、あなたのマンションの現在地

工事費が上がっている以上、積立金の水準が足りているかを機械的に点検しておくのが、いちばん確実です。国土交通省のガイドライン(令和6年6月改定)は、計画期間全体での修繕積立金の平均額(専有面積あたり月額)の目安を、建物規模別に示しています。

地上階数/建築延床面積 事例の3分の2が包含される幅 平均値
20階未満・5,000㎡未満 235円〜430円/㎡・月 335円/㎡・月
20階未満・5,000㎡以上〜10,000㎡未満 170円〜320円/㎡・月 252円/㎡・月
20階未満・10,000㎡以上〜20,000㎡未満 200円〜330円/㎡・月 271円/㎡・月
20階未満・20,000㎡以上 190円〜325円/㎡・月 255円/㎡・月
20階以上 240円〜410円/㎡・月 338円/㎡・月

(出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」、機械式駐車場分を除く)

3分で終わる自己診断の手順

  1. 長期修繕計画から、計画期間当初の修繕積立金残高(A)、計画期間全体で集める修繕積立金の総額(B)、専用使用料等からの繰入額の総額(C) を拾う
  2. 総専有床面積(X) と 計画期間の月数(Y) で割る → (A+B+C)÷X÷Y
  3. 出てきた「円/㎡・月」を、上の表の自分の規模区分と見比べる

機械式駐車場がある場合は、機種別の1台あたり月額修繕工事費(2段(ピット1段)昇降式6,450円/台・月、3段(ピット2段)昇降式5,840円/台・月、3段(ピット1段)昇降横行式7,210円/台・月、エレベーター方式・垂直循環方式4,645円/台・月など)×台数÷総専有床面積 を加算します。

ここで注意していただきたいのは、幅に収まっていないからといって直ちに不適切と判断されるわけではない、とガイドライン自身が書いている点です。数字は議論の出発点であって、結論ではありません。それでも、下限を大きく割っている管理組合は、次の総会までに手を打っておく価値があります。

なお、積立方式についてガイドラインは「将来にわたって安定的な修繕積立金の積立てを確保する観点からは、均等積立方式が望ましい」としたうえで、段階増額積立方式を採る場合は「計画の初期額は基準額の0.6倍以上、計画の最終額は基準額の1.1倍以内」という考え方を令和6年改定で示しました。将来の大幅値上げを前提にした計画は、いま見直しの対象になっています。


工事費の内訳を見ると、削りしろは「仮設工事」にある

ここからが本題です。

同じガイドラインには、収集した366事例の長期修繕計画から算出した修繕工事費の項目別の内訳が載っています。これが、工法を選ぶうえで非常に示唆に富んでいます。

修繕工事項目 工事費に占める割合
外壁塗装等(外壁修繕・タイル修繕・塗装等) 13.6%
建具・金物等 9.7%
仮設工事 9.0%
給水設備 8.1%
屋根防水 6.1%
床防水 6.1%
排水設備 5.8%
立体駐車場設備 5.2%
昇降機設備 4.3%
鉄部塗装等 3.4%

(出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」、各事例の平均値を基に作成)

仮設工事だけで9.0%。しかも仮設工事は、それ自体では建物を1ミリも良くしません。外壁を塗るため、防水をやり直すため、鉄部を塗るための「足場」です。ガイドラインも「修繕工事の実施に当たり建物の周囲に仮設足場の設置を要する工事は、一般に、時期を合わせて一括して行なわれています」と説明しています。

つまり、足場を架けるという前提そのものが、工事のスケジュールと総額を縛っているわけです。

ここで分母に注意が必要です。ガイドラインの9.0%は「長期修繕計画の全期間の工事費に占める仮設工事の割合」です。これに対し、足場を架ける1回の大規模修繕工事だけを切り出すと、仮設の比率はもっと大きくなります。30戸規模の大規模修繕が3,500万〜5,000万円というレンジ(当社の施工実績に基づく目安で、物件により大きく変動します)で、仮設が工事費の15〜25%を占めるとすれば、仮設だけで525万〜1,250万円という計算です。

ここに、ロープアクセス工法という選択肢が効いてきます。ロープアクセス工法は、産業用ロープで作業員が建物外壁を昇降しながら施工する無足場工法です。足場を架けずに、外壁の調査・補修・塗装・シーリング・防水の一部までを進められます。ロープアクセス工法そのものの技術解説や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで体系的にまとめていますので、技術面を深く知りたい方はそちらをご覧ください。


足場とロープアクセスを、金額で並べてみる

抽象論では理事会は動きません。数字で並べます。

モデル:10階建・外周80m・工期3ヶ月のマンション

項目 通常足場工法 ロープアクセス工法
仮設費の目安 約168万円 約59万円
差額 — ▲約109万円
工期の目安 約3ヶ月 約1.5〜2ヶ月
居住者の生活影響 全戸のバルコニー・窓前に足場、養生シートで採光低下 施工中の面のみ一時的に影響
防犯リスク 足場からの侵入リスクへの対策が必要 足場を架けないため該当しにくい

※上記は当社の施工実績に基づく一般的な目安であり、建物形状・階数・外周長・施工範囲・立地条件により大きく変動します。実際の金額は現地調査に基づく見積でご確認ください。

参考までに、主要工種の㎡単価の目安も置いておきます。外壁塗装3,500〜4,500円/㎡、外壁打診調査250〜500円/㎡、防水5,000〜8,000円/㎡(いずれも当社実績に基づく目安)。これも仕様と数量で動くレンジです。

仮設費の差額は約109万円。これは偶然ですが、先ほど計算した「70㎡の住戸が3ヵ月空いた場合の逸失収入 約109万円」とほぼ同じ規模になりました。工期短縮そのものの効果は後段で試算するとおり別途十数万円規模ですが、賃料水準が高い市場では、コスト削減と工期短縮が二重に効いてくることは押さえておきたいところです。

ただし、ロープアクセスが向かないケースもあります

両論併記で書きます。ロープアクセス工法は万能ではありません。

  • 外壁の全面張り替えや大規模な躯体補修など、資材の搬出入量が多い工事は足場のほうが効率的です
  • バルコニー内部の大量の作業が必要な場合、足場があったほうが段取りが早いことがあります
  • 強風の日が続く立地では、ロープアクセスも足場も作業が止まります。特に高層・海沿いは風の影響を受けます
  • 施工会社の技能レベルに差が出やすい工法です。技能認定と安全管理体制を確認せず、単価だけで選ぶのは避けたほうが安全です

私が「必要な部位は足場、それ以外はロープアクセス」というハイブリッド工法を提案することが多いのは、この理由です。足場を全面に架けるか、まったく架けないかの二択にしてしまうと、コストか工期のどちらかで不利になりやすくなります。工法の使い分けの実際については、ロープアクセスドットコムでも事例ベースで解説しています。


明誠が3工法を持っている理由

手前味噌になりますが、判断材料としてお伝えしておきます。

株式会社明誠は、創業からマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を6,000棟超手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています(いずれも当社集計)。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受け、ISO9001の品質マネジメントシステムのもとで施工しています。日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。

そして、日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズ本部を立ち上げました。塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しているため、中間マージンを重ねずに専門工事を直接組み合わせられます。これが「高品質かつ低価格」を成立させている仕組みです。施工の進め方は明誠の大規模修繕工事、部分補修で費用を抑える考え方はピンポイント施工、工法の技術詳細は明誠のロープアクセス工法にまとめています。

これまでの施工事例(6,000棟超)は、明誠の実績一覧からご覧いただけます。


マンション長寿命化促進税制という出口

積立金を上げる話は、理事会でいちばん嫌われる議題です。ただ、上げた先に税制優遇があることは、意外と知られていません。

マンション管理適正化法第5条の4に基づく管理計画認定マンションのうち一定の要件を満たすものは、地方税法附則第15条の9の3第1項による固定資産税の減額措置(マンション長寿命化促進税制)を受けられます。適用期間内に一定の大規模修繕工事を行った場合、その翌年度分の建物部分の固定資産税が、6分の1から2分の1以下の範囲内で市町村(特別区にあっては都)の条例が定める割合(参酌基準は3分の1)だけ減額されます。減額の対象は1戸あたり100㎡相当分までです。

適用要件のひとつが「令和3年9月1日以降に、長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の平均額を、一定の基準まで引き上げたこと」です。具体的には、先ほどの表の「事例の3分の2が包含される幅」の下限値を下回る金額から上回る金額へ引き上げたマンションが対象になります(出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」)。

本税制の適用期間は令和5年4月1日から令和9年3月31日までです(2026年9月時点)。対象は築20年以上・10戸以上で管理計画の認定を受けたマンションに限られます。延長の有無を含め、最新の取扱いは所在自治体の課税窓口でご確認ください。

積立金の値上げは、単なる負担増ではなく、税の軽減と資産価値の維持につながる設計にできます。私はいつも、値上げ議案とセットで管理計画認定のスケジュールを並べてお出しするようにしています。管理組合さま向けの支援メニューはマンション管理組合様向けサービスにまとめています。


東京・関東のマンションで、今月できる7つのこと

最後に、行動に落とします。理事会の議題に1行で置ける形にしました。

  1. 令和8年の基準地価で、自分のマンションの所在地の変動率を確認する。国土交通省の不動産情報ライブラリで個別地点の価格が検索できます
  2. 長期修繕計画から(A+B+C)÷X÷Y を計算し、ガイドラインの規模別目安と比べる。ここまでで30分かかりません
  3. 直近の見積が何年時点の単価か確認する。労務単価は14年連続で上がっています。2〜3年前の概算をそのまま持ち歩いていないか
  4. 工事費内訳の「仮設工事」の金額と比率を確認する。長期修繕計画全体では9%前後、1回の大規模修繕工事単体では15〜25%程度が目安。自分の見積がどのあたりにいるか
  5. 足場前提の計画を、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3通りで見積比較する。工法比較の見積は、判断材料として理事会に出しやすい形になります
  6. 管理計画認定と長寿命化促進税制のスケジュールを確認する。積立金値上げ議案と同じ総会に乗せられるか
  7. 賃貸オーナーの方は、空室期間の逸失収入を㎡単価×専有面積×月数で算出する。工期短縮の価値が金額で見えます

賃貸オーナー向けの補足:数字で見る「工期短縮の価値」

分譲マンションの管理組合と違い、賃貸・収益物件のオーナーさまは、工事期間中の稼働率を自分で背負います。ここは分けて書きます。

東京23区の5,170円/㎡という水準で、20戸のマンションを想定してみます。平均専有面積30㎡、満室時の月額賃料収入は 5,170円 × 30㎡ × 20戸 = 約310万円/月。

足場工法で3ヶ月、ロープアクセス工法で1.8ヶ月とすると、工期差は1.2ヶ月。工事期間中に稼働率が5%下がると仮定すれば、差額は 310万円 × 5% × 1.2ヶ月 = 約18.6万円。ここに仮設費の差額(モデルケースで約109万円)が乗ります。

さらに、足場を架けない期間は、内見の印象が下がりません。賃料が上がっている市況で「内見できる状態を保てる」ことの価値は、上の計算に表れない部分で効いてきます。漏水などの緊急対応を含めた考え方は、漏水・雨漏りの調査と修繕にまとめています。


よくあるご質問

Q. 基準地価が上がると、固定資産税も上がりますか?

A. 固定資産税評価額は3年ごとの評価替えで見直され、基準地価や地価公示の動向が参考にされます。ただし負担調整措置があるため、地価の上昇率がそのまま税額に反映されるわけではありません。所在自治体の課税明細でご確認ください。

Q. 大規模修繕の費用相場はいくらですか?

A. 30戸規模のマンションで3,500万〜5,000万円程度が当社実績に基づく目安ですが、建物形状・階数・外壁仕様・劣化状況で大きく変動します。うち仮設足場が15〜25%程度を占めることが多いです。明誠では現地調査のうえ無料で概算をお出ししています。

Q. ロープアクセス工法にすると工期はどれくらい短くなりますか?

A. 10階建・外周80mのマンションで、足場工法3ヶ月に対しロープアクセス1.5〜2ヶ月が目安です。足場の架設・解体という工程自体が不要になるためですが、施工範囲と天候により変動します。

Q. 修繕積立金がガイドラインの下限を下回っています。すぐ値上げすべきでしょうか。

A. ガイドライン自身が「幅に収まっていないからといって直ちに不適切と判断されるわけではない」としています。まず長期修繕計画の内容と積立方式を点検し、そのうえで均等積立方式への移行を検討するのが順序です。値上げはマンション長寿命化促進税制の要件にもつながります。

Q. 足場を架けないと、外壁の全面調査はできないのでは?

A. 建築基準法第12条の定期報告に係る外壁全面打診等については、ロープアクセスやゴンドラ等でも実施されています。打診調査の㎡単価は250〜500円程度が目安です。調査方法の可否は特定行政庁の運用も関わるため、事前確認をおすすめします。

Q. ロープアクセス工法の安全性はどう確認すればよいですか?

A. 作業員の技能認定(IRATA水準の訓練歴など)、ロープ高所作業に関する特別教育の実施状況、過去の災害発生状況、保険加入状況の4点をご確認ください。明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では、過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。

Q. 相談だけでもお願いできますか?

A. もちろんです。長期修繕計画と直近の見積をお持ちいただければ、工法別の概算比較までお出しします。総会前の論点整理だけでもお力になれることがあります。明誠のお問い合わせ窓口からご連絡ください。


この記事のポイントまとめ

  • 令和8年基準地価は全国の全用途平均・住宅地・商業地が5年連続上昇、東京23区の住宅地は+8.7%
  • 東京23区の分譲マンション賃料は2026年8月に5,170円/㎡、3ヵ月連続で上昇
  • 公共工事設計労務単価は令和8年3月適用分で加重平均25,834円、単純平均で前年度比+4.5%・14年連続の引き上げ
  • 修繕工事費のうち仮設工事が9.0%を占め、ここが工法選択で動かせる最大の余地
  • 積立金はガイドラインの規模別目安(252〜338円/㎡・月)と自分の計画を比べて点検を

出典・参考資料

※制度・統計は変更される可能性があります。最新の内容は各公式ページでご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的・税務的助言ではありません。


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月17日

数字が3つ並んだ、というだけの話です。ただ、私の経験上、こういう数字を見た翌週に動いた管理組合とオーナーさんは、2年後の総会でいちばん楽をしています。理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

目黒区のマンション漏水・防災対策|目黒川の谷底・26か所の土砂災害警戒区域から逆算する大規模修繕2026年度版

2026年9月16日 更新

中目黒で賃貸マンションを1棟、洗足で分譲マンションの理事長をされているオーナーさまから、去年の秋にご相談をいただきました。「9月11日の大雨で、中目黒のほうだけ地下の駐車場に水が入った。洗足は何ともなかった。同じ目黒区内なのに、なぜこんなに違うのか」。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。

答えは単純でした。中目黒は目黒川が削った谷の底にあり、洗足は荏原台という台地の上にあります。目黒区は海に面していません。それなのに毎年のように水が出るのは、川からあふれる水ではなく、降った雨が谷底に集まってくるからです。

今日は、目黒区が公表している最新のハザード資料から逆算して、目黒区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。


結論:目黒区は「谷底の内水」と「斜面の土砂」を別々に見る区です

先に結論です。目黒区の建物では、自分の建物が次の3つのどれに立っているかを地図で確定させてから、修繕の順番を組みます。

立地 該当エリアの例 最優先の対策
目黒川・蛇崩川・立会川の谷底 中目黒、上目黒、青葉台、東山、目黒本町、原町、洗足の谷筋 屋上ドレン清掃/止水板/地下の電気設備の位置確認
台地の縁の斜面地(土砂災害警戒区域) 駒場一丁目、大橋二丁目、青葉台二・三丁目、中目黒一・四丁目、下目黒一・三丁目、三田一丁目、目黒一・三・四丁目、上目黒一丁目 擁壁の水抜き穴/斜面側の外壁とシーリング
台地の上(淀橋台・荏原台) 八雲、柿の木坂、平町、碑文谷、鷹番、中根、自由が丘の高い側 通常の劣化サイクルどおり。ただし雨水の行き先だけは確認

そのうえで、どの立地でも共通して最優先なのは屋上ドレン(屋上の排水口)の清掃履歴です。私が20年見てきた漏水事故の大半は、河川の氾濫ではなく、ドレンの詰まりとシーリングの切れから始まっています。派手な災害より、地味な詰まりのほうが高い確率で建物を傷めます。

目黒区には、読み違えやすい特徴がもうひとつあります。区の面積のうち高潮の想定区域はごくわずかで、洪水の想定も限定的という点です。だから「うちは海から遠いから大丈夫」と思われがちなのですが、実際に被害が出ているのは内水(ないすい)と土砂のほうです。ここからが本題です。


目黒区のハザード資料を4枚で読む

目黒区は、目黒区水害ハザードマップと土砂災害ハザードマップの2種類を公表しています。水害のほうは1枚に「洪水」「雨水出水」「高潮」の3種類がまとめて載っており、いずれも水防法に基づくものです(出典:目黒区「目黒区水害ハザードマップ」/更新日:2026年3月25日)。

理事会でお使いになるなら、この2枚で足ります。順に見ていきます。

1. 洪水(外水氾濫)

目黒川・渋谷川・立会川などが対象で、東京都建設局の「城南地区河川流域浸水予想区域図」に基づきます。想定した雨は総雨量690ミリ、時間最大雨量153ミリで、これは想定し得る最大規模の降雨として設定されたものです(出典:東京都建設局「城南地区河川流域浸水予想区域図」)。

東京の下水道は、おおむね時間50ミリ前後の雨を流せるように整備されてきました。153ミリはその3倍です。インフラ側の能力を大きく超える雨を前提にした地図だと押さえてください。

2. 雨水出水(内水氾濫)— 目黒区でいちばん効く地図

令和8年3月に東京都下水道局が都内の雨水出水浸水想定区域図を新たに作成し、これに伴って目黒区水害ハザードマップの雨水出水部分は、水防法に基づくものになりました(出典:東京都下水道局「城南地区河川流域 雨水出水浸水想定区域図」)。

「内水」とは、川から水が来るより先に、降った雨が足元からあふれてくる現象です。目黒川から離れた碑文谷・原町・洗足あたりでも、周囲より低い窪地なら水はたまります。

目黒区のマンションで実際に起きやすいのは、圧倒的にこちらです。私が呼ばれる漏水・浸水の現場も、9割以上が内水側です。

3. 高潮

東京都港湾局が令和6年12月に高潮浸水想定区域図を改定しました。これにより目黒区内の高潮による浸水面積は縮小し、下目黒2丁目1番、2番、15番が浸水想定区域から外れています(出典:目黒区「目黒区水害ハザードマップ」高潮浸水想定区域図について)。

区域が縮小したこと自体は良いニュースです。ただし、古いハザードマップのコピーを管理室に貼ったままの物件がかなりあります。改定前の図と改定後の図では、対象になる住戸が違います。長期修繕計画の資料として使うなら、差し替えをおすすめします。

4. 土砂災害 — 警戒区域26か所、特別警戒区域16か所

目黒区は23区のなかでも意外に斜面地が多い区です。土砂災害防止法に基づく指定状況は、次のとおりです(出典:目黒区「土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域等」/更新日:2025年8月6日)。

告示日 告示番号 警戒区域 特別警戒区域 内容
平成30年5月31日 東京都告示第806号 25 18 当初指定(K001〜K025)
令和4年11月18日 東京都告示第1490号 −2 −2 K002・K003を指定解除
令和7年4月25日 東京都告示第573号・第576号 — −2 K009〜K011を解除・区域変更
令和7年4月25日 東京都告示第576号 +3 +3 K026〜K028を新規指定
令和7年7月30日 東京都告示第821号・第829号 — −1 K012を解除・指定
計 26 16

区域を含む町丁は、区の早見表(令和7年4月25日更新)によると駒場一丁目、大橋二丁目、青葉台一・二・三丁目、上目黒一丁目、中目黒一丁目、中目黒四丁目、下目黒一丁目、下目黒三丁目、三田一丁目、目黒一丁目、目黒三丁目、目黒四丁目です。このほかに駒場四丁目6番1号(東京大学の敷地の一部)にも警戒区域があります。

なお区は、この早見表について「記載の町丁全域が区域に該当しているということではない」と注記しています。必ず東京都の土砂災害警戒区域等マップで番地まで確認してください。区の土砂災害ハザードマップは、令和7年4月の東京都による新規指定を受けて令和7年10月に更新されています(出典:目黒区「土砂災害ハザードマップ」/更新日:2026年8月31日)。


令和7年の大雨で、目黒区で何が起きたか

ここは、ハザードマップのシミュレーションより重い情報です。

区の発表によると、令和7年7月10日と令和7年9月11日に区内各地で道路や緑道の冠水、家屋の浸水被害をもたらす大雨があり、特に9月11日の大雨では約400件の被害調査依頼がありました(出典:目黒区「目黒区豪雨対策サポートプランを取りまとめました」/令和7年11月26日発表)。

400件です。海に面していない区で、1日でこれだけの被害申告が出ています。

これを受けて区がまとめたのが「目黒区豪雨対策サポートプラン」です。主な内容は次のとおりです。

新規の取組

  • 浸水被害に対する消毒対応の支援
  • 排水ポンプの貸出(区内に10台程度を配備)
  • 災害時の相談窓口ワンストップ化・コールセンター
  • り災証明書の発行手続のオンライン化

拡充した取組

  • 止水板設置工事費助成の大幅拡充(詳細は後述)
  • 緊急用土のう保管箱の増設(地域偏在の軽減)

私がこの資料を読んで、管理組合さまに一番お伝えしたいのは排水ポンプの貸出が「10台程度」であるという点です。400件の被害が出た日に、区が貸せるポンプは10台。順番は回ってきません。自分の建物の排水は、自分の建物で持つ。これが目黒区の前提条件です。

浸水履歴は「町名・番」まで公表されています

もうひとつ、目黒区で必ず見ていただきたい資料があります。浸水履歴です。平成16年度から令和7年度までに区内で発生し、報告があった浸水被害が記録されています(出典:目黒区「浸水履歴」/更新日:2026年7月28日)。

個人情報保護の観点から「号」は非公表ですが、「町名」と「番」までは公表されています。ここまで細かく出している区は多くありません。

私はいつも理事長さまに「シミュレーションの色より、この履歴を先に見てください」とお伝えしています。実際に水が来た場所は、地形が変わらない限り、また来ます。ただし区も「報告を受けた浸水被害であり、区内で発生した全ての浸水被害を示すものではない」と注記していますので、履歴に載っていない=安全、ではありません。

目黒川沿いには12か所のサイレンがあります

目黒区は、集中豪雨のときに目黒川の水位をサイレンで知らせています。スピーカーは区内の目黒川沿い12か所に設置されています(出典:目黒区「目黒川水位警報」)。

種別 発報条件 鳴り方
警戒水位情報 目黒川の水位が上部まで2.5メートルに達したとき 15秒吹鳴+5秒休みを9回
危険水位警報 目黒川の水位が上部まで1メートルに達したとき 3分吹鳴+1分休みを2回

管理員さんや防災担当理事の方には、この2つの違いを共有しておいてください。15秒刻みが9回なら準備、3分の長鳴りが来たら地下から車を出す。それだけ決めておくと、当日の判断が速くなります。


目黒区の地形と、漏水事故の関係

現場の話に移ります。目黒区は東西に細長く、北から南へ目黒川が流れ、その両側に台地が迫る地形です。この形が、建物の傷み方をはっきり分けます。

谷底の建物で起きること

中目黒・上目黒・東山・青葉台の川沿い、目黒本町・原町の谷筋にある建物では、道路面に水がたまる→半地下駐車場や1階共用廊下に入る→電気室・受水槽室・エレベーターピットが濡れる、という順で問題が出ます。外壁の漏水よりも、設備が止まることのダメージのほうが大きいのが谷底の物件です。エレベーターが2週間止まれば、高齢の居住者から苦情が出ます。賃貸なら退去が出ます。

目黒区は平成23年4月に「目黒区建築物浸水予防対策指導要綱」を定めており、周囲の地面より低い位置に床を有する建築物を計画する際は、浸水予防対策の検討結果報告書の提出を求めています。区はすでに半地下駐車場や地下室をお持ちの方にも、同様の対策をとるよう呼びかけています(出典:目黒区「目黒区建築物浸水予防対策指導要綱」)。「新築時に基準がなかった」ことは、今対策しない理由にはならないというのが区の立場です。

斜面地の建物で起きること

駒場・大橋・青葉台・中目黒一丁目・下目黒一丁目などの斜面地では、話がまったく変わります。擁壁の水抜き穴が詰まって擁壁の裏に水がたまる。斜面側の外壁が常に湿り、塗膜が早く浮く。そして斜面側は足場が組みにくいため、点検が後回しになります。

私が現場で一番悔しい思いをするのは、この「斜面側だけ点検されていなかった」というケースです。足場の見積りを取ったら斜面側の仮設費が跳ね上がり、結局その面だけ見送った。数年後に室内側からカビが出て、初めて全面をやり直す。よくあります。

区は、令和2年の神奈川県逗子市のがけ崩れを踏まえて、国土交通省が示した斜面の自主点検ポイントを案内しています。見るのは3つだけです。斜面に亀裂がないか。浮き石がないか。落石がないか。植生が貧弱な場所は風化が進みやすく、無降雨でも崩れることがあります。変状があれば区(建築課 構造指導係/03-5722-9647)に相談できます。

台地の上の建物で起きること

八雲・柿の木坂・碑文谷・鷹番・中根など台地の上は、浸水・土砂ともにリスクの低い区域です。ただし自分の敷地の雨水がどこへ抜けているかだけは確認してください。台地の上から敷地外へ流した雨が、下の谷に集まります。目黒区が浸透ます・浸透トレンチの助成を出しているのは、この「流域全体で受け止める」考え方に基づくものです。


大規模修繕で先に見るべき漏水ポイント7つ

ここからは、実際に建物のどこを見るかです。目黒区の物件で、私が優先順に並べるとこうなります。

1. 屋上ドレン(排水口)と、その周辺の防水立ち上がり

最優先です。ストレーナー(ゴミよけのかご)が付いているか、直近1年で何回清掃したか。目黒区は住宅地に街路樹と緑が多く、落ち葉が屋上に乗ります。落ち葉1枚が詰まりの起点になります。

清掃の目安は年2回、台風シーズン前(6月)と落葉後(12月)。1回あたりの費用は小規模マンションで2〜4万円程度が目安です(物件の規模と屋上形状により変動します)。

2. 開口部まわりのシーリング

サッシ・面格子・換気口の周囲。目黒区の谷筋は湿度が高く、日照条件も面によって大きく違います。南面と北面でシーリングの寿命が2〜3年ずれるのは普通です。全面一律に交換するより、面ごとに劣化度を見て優先順位を付けたほうが費用対効果は高くなります。打ち替えの単価は、材料と部位にもよりますが1メートルあたり900〜1,600円程度が目安です。

3. 外壁のひび割れ(クラック)と浮き

幅0.3ミリを超えるひび割れは、雨水の侵入経路になり得ます。斜面側・谷側は特に注意してください。打診調査の単価は1平方メートルあたり250〜500円程度が目安です。

4. バルコニー・共用廊下の床防水と立ち上がり

床の防水は切れていないのに、立ち上がり(壁との取り合い)から漏るのが一番多いパターンです。ウレタン防水の改修単価は1平方メートルあたり5,000〜8,000円程度が目安になります。

5. 屋上・塔屋の笠木(かさぎ)とジョイント

笠木の継ぎ目から入った水が壁の中を伝い、離れた場所の天井に出る。「原因が特定できない漏水」と呼ばれるものの多くは、これです。

6. 擁壁の水抜き穴(斜面地の物件)

水抜き穴が土やコケで詰まっていないか。詰まっていれば擁壁の裏に水圧がかかります。外壁の問題ではなく構造の問題なので、優先度は高いと考えてください。

7. 地下ピット・電気室・エレベーターピットの位置

図面で確認してください。地下または1階にあるなら、止水板の設置と、可能なら設備の嵩上げ(かさあげ)を検討します。令和8年度の目黒区の止水板助成は、後述のとおりかなり手厚い内容です。


漏水の緊急対応で、ロープアクセスが強い理由

漏水は待ってくれません。「9月の台風で漏った、来月の総会まで待てない」という状況で、足場を組む選択肢はほぼ取れません。見積り、近隣挨拶、架設で着工まで2〜4週間が普通です。その間も雨は降ります。

明誠のロープアクセス工法なら、屋上からロープを下ろして当日または翌日に調査に入れます。原因箇所を特定し、その場で応急のシーリング補修まで済ませられるケースも少なくありません。

コスト面の差も無視できません。目安として、10階建て・外周80メートル・工期3ヶ月の物件で仮設足場を組むと約168万円。同じ条件でロープアクセスを使えば約59万円で、差額は約109万円です。30戸規模のマンションの大規模修繕総額が3,500〜5,000万円、そのうち仮設足場が15〜25パーセントを占めることを考えると、この差は修繕積立金の使い方を変えます。

なお、これらはあくまで参考値です。建物形状、外周の道路条件、隣地との距離、工事の範囲によって実際の見積りは大きく変わります。現地を見ないで金額を断定する会社には、気をつけてください。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けています。

技術的な仕組みや安全基準をもう少し詳しく知りたい方は、同業者・技術者向けの姉妹サイトロープアクセスドットコムにまとめていますので、あわせてご覧ください。

目黒区で特に相性がいいのは、斜面地の物件と、隣地が迫っている谷底の物件です。どちらも足場の架設条件が悪く、仮設費が跳ね上がる立地だからです。斜面側だけロープアクセス、平場側は足場、という組み合わせ(ハイブリッド工法)も現実的な選択肢になります。


防災上の共用部と、修繕の優先度

理事会で議論が割れたときの、優先順位の考え方を書いておきます。

優先度 対象 理由
最優先 屋上ドレン清掃、排水経路の確保 費用が小さく、効果が大きい。今週でもできる
高 電気室・受水槽・EVピットの止水(止水板・嵩上げ) 止まると生活が止まる。令和8年度は助成が手厚い
高 擁壁の水抜き穴(斜面地のみ) 構造リスク。放置すると工事規模が跳ね上がる
中 シーリング打ち替え、防水改修 計画修繕に組み込める。面別の優先順位付けが有効
中 外壁塗装 単価の目安は1平方メートルあたり3,500〜4,500円程度
検討 非常用電源、備蓄倉庫 大規模修繕と同時発注でコスト圧縮できる場合がある

もうひとつ、目黒区固有の重要な情報があります。風水害時には開設されない避難所があるという点です。

区は、下目黒小学校、向原小学校、田道小学校について「浸水想定区域内にあるため、風水害時に避難所の開設は行いません」と明記しています。一方、土砂災害の危険が高まったときに開設するのは、目黒区立第一中学校(大橋二丁目11番1号)、菅刈小学校(青葉台三丁目3番26号)、中目黒小学校(中目黒三丁目13番32号)、大鳥中学校(下目黒三丁目23番18号)の4か所です(出典:目黒区「土砂災害ハザードマップ」)。

管理組合の防災マニュアルに「最寄りの小学校へ避難」とだけ書いてある物件は、災害の種類によって開かない可能性があります。大規模修繕の打ち合わせのついででかまいませんので、記載を見直してください。マンションでは上階への「垂直避難」のほうが現実的なことも多く、その場合は非常用照明が生きているかも修繕時のチェック項目になります。


目黒区で使える令和8年度の助成制度

ここが今年の目玉です。目黒区の止水板助成は、令和7年11月の豪雨対策サポートプランで大幅に拡充されました。

目黒区止水板設置工事助成(令和8年度)

台風やゲリラ豪雨による浸水被害を軽減するため、住宅・店舗・事務所などに止水板等を設置する工事に対して、工事費の一部を助成する制度です。助成額は次のとおりです(出典:目黒区「住宅や店舗に止水板等を設置するための工事に対する助成」/更新日:2026年9月16日)。

区分 条件 限度額 助成率
個人 目黒区内に住所を有する個人 100万円 工事費の10分の9
個人 その他の個人 50万円 工事費の10分の9
法人 申請日の1年以上前から区内に本店または支店等の登記がある法人 150万円 工事費の4分の3
法人 その他の法人 75万円 工事費の4分の3

区の発表によると、拡充前の個人への助成率は4分の3、法人への助成額は100万円でした。個人への助成率は特別区でトップの水準、法人への助成率4分の3も特別区でトップの水準と区は説明しています。この拡充は令和10年度までの期限付きを予定しており、対象は令和7年7月10日以降の設置です。

助成対象になるのは、出入口等に浸水を防ぐ目的で設置する取り外しまたは移動が可能な金属板の設置工事、および止水効果を高めるための内外壁の止水工事・土間コンクリート打設工事です。止水板の購入だけでは対象になりません。

ここは間違えやすいので強調します。工事開始前に申請が必要です。道路公園課 補修調整係(03-5722-9775)への事前相談が前提で、着工後の申請は受け付けられません。また予算の範囲内での助成ですので、検討されている管理組合さま・オーナーさまは、残枠を窓口へご確認ください。

雨水流出抑制施設等(浸透ます・浸透トレンチ・雨水タンク)の助成

流域全体で雨を受け止めるための制度です(出典:目黒区「雨水流出抑制施設等の助成」/更新日:2026年8月7日)。

項目 内容
助成限度額 40万円
浸透ます・浸透トレンチ 標準工事費単価表に設置数量を乗じた額と実際の工事費のいずれか低い額
雨水タンク 5万6千円と実際の工事費のいずれか低い額(原則、浸透施設との併用かつ容量200リットル以上)
対象者 助成対象事業に係る住宅等の所有者で、個人に限る(個人所有の共同住宅も対象)
除外 敷地面積500平方メートル以上の新築住宅

注意点が2つあります。ひとつは、個人所有の共同住宅は対象になるが、法人所有は対象外であること。もうひとつは、こちらも工事着工前の交付申請が必須で、着工日以降の申請は対象外になることです。窓口は都市整備課 開発係(03-5722-9715)です。

予算枠のある事業は、年度途中で受付を終えることがあります。着工前に、残枠と申請順序を窓口へご確認ください。


背景データ:雨の降り方が変わっています

「昔はこんなに漏らなかった」というお声を、本当によくいただきます。感覚の問題ではありません。

気象庁は、全国のアメダスで観測した1時間降水量50ミリ以上の年間発生回数について、1980年ごろと比べて最近10年間はおおむね増加していることを公表しています。強い雨ほど頻度の増加率が高いという評価です(出典:気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」、気象庁「アメダスで見た短時間強雨発生回数の長期変化について」)。

目黒区も、豪雨対策サポートプランのなかで「東京都の役割である河川・下水道施設の取組が長期に渡ることが想定される現状を踏まえ」と書いています。インフラ側の整備には時間がかかる。その間の差は建物側で埋めるしかない——区も同じ認識だということです。区境をまたぐリスクは、国土地理院の重ねるハザードマップでも確認できます。


よくあるご質問

Q. 目黒区は海に面していないのに、なぜ浸水被害が出るのですか?

A. 川からあふれる外水氾濫ではなく、降った雨が下水道の処理能力を超えてあふれる内水氾濫が主な原因です。目黒川が削った谷の底に水が集まる地形のため、令和7年9月11日の大雨では区内で約400件の被害調査依頼がありました。

Q. 自分のマンションが土砂災害警戒区域に入っているか、どこで調べられますか?

A. 目黒区の早見表(令和7年4月25日更新)に該当する13町丁が載っていますが、町丁全域が対象というわけではありません。番地単位の確認は東京都の土砂災害警戒区域等マップで行うのが確実です。目黒区建築課や東京都建設局河川部で公示図書を閲覧することもできます。

Q. 止水板の工事に、いくらくらいかかりますか?

A. 出入口の幅や仕様によって大きく変わりますが、令和8年度の目黒区の助成を使えば、個人であれば工事費の10分の9(限度額100万円または50万円)、法人であれば4分の3(限度額150万円または75万円)が助成されます。事前相談が必須で、着工後の申請は受け付けられませんのでご注意ください。

Q. 漏水の原因調査だけをお願いすることはできますか?

A. できます。ロープアクセス工法なら足場を組まずに屋上から下りて調査できるため、足場を組む場合と比べて着工までの時間も費用も抑えられます。調査だけ、ご相談だけでも構いません。漏水・雨漏り調査のご案内もあわせてご覧ください。

Q. ロープアクセス工法だと工期はどれくらい短くなりますか?

A. 建物の形状によりますが、足場工法のおおむね60パーセント程度の工期が目安です。10階建て・外周80メートルのマンションであれば、足場工法で3ヶ月かかる工事が、ロープアクセスでは1.5〜2ヶ月程度になるケースが多くあります。

Q. 斜面地の物件で、斜面側だけ工事することはできますか?

A. できます。斜面側はロープアクセス、平場側は通常の足場、という組み合わせ(ハイブリッド工法)もご提案しています。斜面側は足場の架設費が跳ね上がりやすい部位なので、目黒区の斜面地の物件ではこの組み合わせが有効なことが多いです。料金の考え方もご参照ください。

Q. 大規模修繕と防災対策を、同時にやる意味はありますか?

A. あります。仮設費・足場費は工事の回数だけかかるため、止水板設置や設備の嵩上げを大規模修繕と同じタイミングで発注すると、共通仮設のコストを1回分に圧縮できます。ただし目黒区の止水板助成には工事着工前の申請という条件があるため、修繕工事のスケジュールに合わせて逆算しておく必要があります。


まとめ:今週、理事会・管理会社に投げられる3点

長くなりました。目黒区の建物で、今週すぐ動けることを3つに絞ります。

1. 水害ハザードマップと浸水履歴を、両方見る

目黒区水害ハザードマップで洪水・雨水出水・高潮の3つを確認し、そのうえで浸水履歴(平成16年度〜令和7年度)で自分の建物の「町名・番」が載っていないかを確認してください。10分で終わります。斜面地の物件は土砂災害ハザードマップもあわせて。

2. 屋上ドレンの清掃記録を、管理会社に出してもらう

直近1年で何回清掃したか。ストレーナーは付いているか。地下ピットがある物件は、排水ポンプの点検記録もあわせて。区が貸せる排水ポンプは区内で10台程度です。順番は回ってきません。台風シーズンの真っ最中ですから、今週が一番効きます。

3. 止水板助成の事前相談を、1本入れる

電気室・受水槽・エレベーターピットが地下または1階にある物件は、道路公園課 補修調整係(03-5722-9775)へ事前相談を入れてください。令和8年度の助成率は個人10分の9、法人4分の3で、令和10年度までの期限付き拡充です。斜面地の物件は、擁壁の水抜き穴の詰まりを現地で確認し、変状があれば建築課 構造指導係(03-5722-9647)へ。

令和10年度までに動けるかどうかが、この助成を使えるかどうかの分かれ目です。理事会で1分だけでもこの話題を出してみてください。調査だけ、ご相談だけでも構いません。総会前の整理の段階から、お力になれることがあります。お問合せフォームからお声がけください。

冒頭のオーナーさまには、結局こうお伝えしました。「中目黒と洗足は、別の建物として修繕計画を立ててください」と。同じ区内、同じ管理会社、同じ塗料でも、立っている地形が違えば傷み方が違う。目黒区で修繕積立金を有効に使う一番の近道は、区内の平均ではなく、自分の建物の地形で考えることだと、私は思っています。

明誠のこれまでの施工事例は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。ロープアクセス工法の技術情報・安全基準はロープアクセスドットコムにまとめています。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月16日


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月16日時点で公表されている目黒区および国土交通省・気象庁・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず目黒区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。ハザードマップの被害想定は東京都および区が公表したものであり、実際の被害状況と異なることがあります。また、費用に関する記述は当社の見積実績に基づく目安であり、公的な単価ではありません。


出典・参考資料


関連ページ

品川区のマンション漏水・防災対策|台地の縁・目黒川の低地・湾岸埋立地で変わる7つの漏水ポイント

2026年9月16日 更新

五反田で賃貸マンションを2棟、天王洲でオフィスビルを1棟持っておられるオーナーさまから、去年の秋にこう言われました。「同じ会社が管理して、同じ年に外壁を塗ったのに、天王洲のほうだけ傷みが早い。手抜きをされたんじゃないか」。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。

結論から申し上げると、手抜きではありませんでした。天王洲は東京港に面した埋立地で、五反田は目黒川が刻んだ谷のなかにあります。海からの塩分を含んだ風を1年中受ける建物と、内陸の谷にある建物では、同じ塗料・同じ職人でも傷み方が違います。品川区は、こういう「区内での差」がとりわけ大きい区です。

今日は、品川区が公表している最新のハザード資料から逆算して、品川区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。


結論:品川区は「台地・低地・埋立地」の3層で対策を分ける区です

先に結論です。品川区の建物では、自分の建物が次の3つのどれに立っているかを地図で確定させてから、修繕の順番を組みます。

立地 該当エリアの例 最優先の対策
台地の上・台地の縁(斜面地) 上大崎、東五反田(島津山・池田山)、西五反田、北品川の御殿山、荏原の台地部 擁壁の水抜き穴/斜面側の外壁とシーリング
目黒川・立会川沿いの低地 大崎、西五反田、東五反田の川沿い、東大井、南大井、勝島 屋上ドレン清掃/地下・1階の止水対策
湾岸の埋立地 八潮、東品川(天王洲)、勝島、大井ふ頭 塩害を前提とした鉄部・シーリングの前倒し更新

そのうえで、どの立地でも共通して最優先なのは屋上ドレン(屋上の排水口)の清掃履歴です。私が20年見てきた漏水事故の大半は、河川の氾濫ではなく、ドレンの詰まりとシーリングの切れから始まっています。派手な災害より、地味な詰まりのほうが高い確率で建物を傷めます。

品川区には、もうひとつ読み違えやすい特徴があります。荒川沿いのゼロメートル地帯を抱える区とは違い、台地と低地が細かく入り混じっていることです。だからこそ「うちは大丈夫」と「うちは危ない」が隣の街区で入れ替わります。ここからが本題です。


品川区のハザード資料を1枚で読む

品川区は、地震マップ・浸水ハザードマップ・高潮浸水ハザードマップ・多摩川洪水ハザードマップ・津波(立会川)ハザードマップ・土砂ハザードマップを、品川区防災地図(令和8年6月一部修正)として1冊にまとめています(出典:品川区「浸水に関するハザードマップと浸水実績」/更新日:令和8年9月1日)。

理事会でお使いになるなら、この防災地図1冊で足ります。

1. 浸水ハザードマップ(防災地図16〜23ページ)

東京都建設局の「城南地区河川流域浸水予想区域図」に基づいて区が作成したもので、河川からあふれる外水氾濫と、下水道が追いつかない内水氾濫の両方を示しています。想定した雨は総雨量690ミリ、時間最大雨量153ミリです。

東京の下水道は、おおむね時間50ミリ前後の雨を流せるように整備されてきました。153ミリはその3倍です。インフラ側の能力を大きく超える雨を前提にした地図だと押さえてください。

この地図には、平成元年と平成11年に品川区で実際に起きた浸水実績が青枠で重ねてあります。私はいつも理事長さまに「シミュレーションの色より、この青枠を先に見てください」とお伝えしています。実際に水が来た場所は、地形が変わらない限り、また来ます。

2. 雨水出水浸水ハザードマップ(防災地図26・27ページ)

内水氾濫だけを抜き出した地図です。東京都下水道局の「城南地区河川流域 雨水出水浸水想定区域図」(令和8年3月25日公表)に基づきます。品川区のマンションで実際に起きやすいのは、圧倒的にこちらです。

「内水」とは、川から水が来るより先に、降った雨が足元からあふれてくる現象です。目黒川や立会川から離れた荏原・小山あたりでも、窪地なら水はたまります。

さらに区は、落ち葉による雨ますの詰まりで起きる浸水は、シミュレーションに反映しきれないと明記しています。現場の人間として申し上げれば、この「反映しきれない部分」こそが、管理組合さまが自力で減らせる部分です。

3. 高潮・多摩川洪水ハザードマップ(防災地図24・25ページ)

高潮は東京都港湾局の「高潮浸水想定区域図」(令和6年12月19日公表の改定版)に基づき、室戸台風級(中心気圧910hPa)で堤防等の決壊も見込んだ想定です。八潮・東品川・勝島・北品川に物件をお持ちなら、この地図の浸水継続時間を見てください。区は「地盤高が満潮面より低い地域では、堤防等が決壊した場合、台風の通過後でも、日々の潮位変化によって浸水が継続する場合がある」と書いています。水が引かない前提で電気設備の位置を考える必要があります。

多摩川洪水は、国土交通省関東地方整備局京浜河川事務所の資料に基づき、多摩川が決壊して約8時間後に氾濫水が到達した場合を想定したものです(前提は流域48時間総雨量588ミリ)。8時間という猶予は、建物側から見れば土のうを積む、止水板を立てる、地下の車両を出す——手順書があれば間に合う時間です。なければ間に合いません。

4. 土砂ハザードマップ

品川区は23区のなかでも斜面地の多い区で、土砂災害防止法に基づく土砂災害(特別)警戒区域が指定されています。最新の告示は令和8年1月22日です(出典:品川区「土砂災害に備えて」/更新日:令和8年6月9日)。

指定の基準は、傾斜30度以上かつ高さ5メートル以上の傾斜地と、その上端から水平10メートル以内・下端からがけの高さの2倍以内(最大50メートル)の区域です。区が避難情報(高齢者等避難・避難指示)の発令対象としている区域は、次のとおりです。

地区 対象となる町丁(いずれも一部)
品川地区 北品川三・五・六丁目、南品川六丁目
大崎地区 東五反田一・三・四・五丁目、上大崎一・三・四丁目、西五反田三・八丁目
大井地区 東大井三・四丁目
八潮地区 八潮五丁目

御殿山、島津山、池田山といった高台の名前が並んでいるのに気づかれたと思います。品川区の「良い住宅地」は、多くが台地の縁にあります。眺望の良さと、がけのリスクは同じ地形から来ているわけです。


地域特性と漏水事故の関係

ここはハザードマップに書かれていない部分です。私が品川区で見てきた傾向を、正直に申し上げます。

湾岸の埋立地(八潮・東品川・勝島)——塩害とタワー物件の共用部

冒頭のオーナーさまの天王洲の物件が、まさにこれでした。海に面した立地では、塩分を含んだ風が1年中、建物の表面に当たり続けます。塗膜の劣化が早く、鉄部(手すり、避難ハッチ、屋外階段、設備架台)の錆の進行も内陸より速いのが実感です。

タワー物件の漏水で私が一番厄介だと感じるのは、高層部の風圧です。同じ雨でも、高さ100メートルでは横殴りの雨が窓まわりやシーリングの切れ目に押し込まれます。地上で「雨漏りするほどの雨じゃない」と感じる日に、上層階だけ漏るのはこれが理由です。

埋立地では、建物本体と外構の不同沈下にも注意が必要です。エントランスのタイルが浮き、目地が開き、そこから雨が入って地下ピットに回る。見落とされやすい経路です。

目黒川・立会川沿いの低地(大崎・五反田・東大井・南大井)——地下と1階が弱点

目黒川沿いの大崎・五反田は、再開発でビルが建ち並んだ一方、川面との高低差が小さいエリアです。立会川は上流部が暗渠(地下に埋められた水路)になっていて、その谷が刻んだ坂が入り組んでいます。暗渠の上は、地形としては谷の底です。

この帯で私が見てきた漏水は、屋上からではなく下から上がってくるものが多いです。地下駐車場、地下の機械室、1階の店舗。排水ポンプが止まれば、雨が止んでも水位は下がりません。

台地の上と台地の縁(上大崎・東五反田・西五反田・御殿山・荏原)——擁壁が主役

台地の上に建つ建物は、水害リスクとしては区内で最も低いグループです。ただし、台地の縁に建つ建物は話が別です。

斜面地の物件で私が最初に見るのは、擁壁の水抜き穴です。擁壁の壁面に等間隔で開いている、直径5〜7センチほどの穴のことです。あれは飾りではなく、土のなかの水を抜いて擁壁にかかる水圧を下げる装置です。穴が土や植栽の根で詰まると、擁壁の裏に水がたまり、擁壁の変形やはらみにつながります。

そして斜面側の外壁は、足場が組めないことが多い——この話は後ほど申し上げます。


大規模修繕で必ずチェックすべき漏水ポイント7つ

立地を問わず、大規模修繕のときに見ておいていただきたい7点です。私はこれを、ワンセットで提案するようにしています。

1. 屋上防水——防水層の膨れ、立上り部の口開き、保護モルタルのひび割れ。改修の目安はウレタン塗膜で10〜13年、シート防水で13〜20年程度ですが、湾岸の紫外線と塩害を受ける物件は短いほうで見ておくのが安全です。

2. シーリング(目地のゴム状の充填材)——外壁の板と板のあいだ、サッシのまわりを埋めている材料です。硬化して縮み、切れます。漏水の入口として最も件数が多いのがここだと私は考えています。高層部・海側の面から先に切れるのが定石です。

3. バルコニー排水——排水口に落ち葉や土がたまると床に水がたまり、笠木や壁との取り合いから室内側に回ります。共用部の工事だけでは解決しません。居住者さまへの声かけが半分です。

4. 屋上ドレンとストレーナー——ストレーナーは排水口のゴミ受けの網です。これが外れたまま何年も放置されている物件を、私は毎年いくつも見ます。清掃記録の有無だけで、その建物の漏水リスクは大きく変わります。

5. 立上り・パラペット(屋上外周の立ち上がり壁)——防水層が壁面に立ち上がって終わる末端の処理です。ここが浮くと雨は防水層の裏に回り、表面からは見えません。

6. サッシまわり——サッシと外壁の取り合い、窓台の水切り、サッシ自体の劣化。台地の縁や湾岸の高層部では、風で雨が押し込まれる前提で見ます。

7. エキスパンションジョイント(建物どうしの継ぎ目)——棟が分かれた団地型や増築を重ねたビルにあります。動きを許容する構造だからこそ切れやすく、品川区の大規模団地ではここが漏水源になっている例をよく見ます。


漏水の緊急対応でロープアクセスが強い理由

台風が抜けた翌朝、「最上階の3戸で天井から漏っている」という連絡が入る。これが私どもの仕事で一番多い緊急案件です。

このとき、足場を組む工事だと近隣調整・申請・資材搬入・組立で数日から数週間かかります。品川区の場合、これがさらに重くなる条件が揃っています。

  • 台地の縁の斜面地では、足場を建てる平地そのものがない
  • 大崎・五反田の高密度な街区では、隣地との距離が取れず足場の外側に道路占用が必要になる
  • 湾岸のタワー物件では、高さ100メートル超に足場をかける費用と工期が現実的でない

ロープアクセス工法(産業用ロープで屋上から降りて作業する無足場工法)なら、屋上に支点を取れれば、その日のうちに漏水箇所まで降りられます。原因のシーリング1本、ドレン1カ所を直接見て、その場で止水処置を打てるわけです。

私の経験上、漏水の緊急対応で本当に必要なのは「全面工事」ではなく「原因の特定と応急止水」です。そこを数日で押さえられるかどうかで、内装被害の範囲がまるで変わります。工法の詳細はロープアクセス工法のご紹介と、施工事例をまとめたロープアクセスドットコムを、原因調査は漏水・雨漏り調査をご覧ください。

もうひとつ、ハイブリッド工法という選択もあります。足場が組める低層部は足場で、斜面側や高層部はロープアクセスで、と部位ごとに使い分けるやり方です。台地の縁に建つ物件や敷地が変形している物件では、総額でこれが最も安くなるケースが少なくありません。3つの工法を比べてから決められるのは、品川区のような複雑な地形の区ではとりわけ効きます。


防災上の共用部と、修繕の優先度

漏水と防災は、共用部の設備というところで1本につながります。図面を開いて、次の5つがどの階にあるかを確認してください。

共用部 確認すること 修繕優先度の考え方
受電設備(電気室・キュービクル) 地下か1階か屋上か 浸水域なら最優先。水に浸かると全館停電
給水ポンプ・受水槽 地下ピットか屋上か 停止すれば断水。地下設置は止水板とセットで
エレベーター(機械室・ピット) ピットの排水経路 ピット浸水で長期停止。管制運転の設定も確認
自家発電設備 燃料タンクの位置と運転可能時間 浸水域では燃料タンクの位置が生死を分ける
避難通路・屋外階段 鉄部の腐食、床防水、手すりの根元 湾岸物件は塩害で進行が早い。大規模修繕で必ず範囲に入れる

私がこの表を作るとき、いつも最初に見るのは受電設備の階です。地下の電気室が水に浸かると、ポンプもエレベーターも止まり、給水も排水もできなくなります。建物が無事でも、住み続けられなくなる。この一点は、浸水域の物件の管理組合さまに強くお伝えしています。

屋外階段と避難通路の鉄部は、防災と漏水の両方にかかる部位です。錆が進むと階段が避難に使えなくなり、床防水が切れれば下階へ漏れます。湾岸の物件は、ここを大規模修繕の範囲から外さないでください。詳しい考え方はビルオーナーさま向けサービスと管理組合さま向けサービスにまとめています。


品川区の防災補助・耐震助成(令和8年度)

制度の話は、年度で中身が変わります。ここは令和8年(2026年)9月16日時点で区の公式ページに掲載されている内容を、そのまま整理します。

がけ・擁壁の安全化対策支援——令和8年度の改修工事受付は終了

品川区は、がけ・擁壁の安全化対策工事に助成を出しています。ただし区の公式ページには、「令和8年度は予算額に達したため、改修工事の申請受付は終了しました」と明記されています(出典:品川区「がけ・擁壁の安全化対策支援について」/更新日:令和8年6月25日)。

令和8年度の助成内容は、次のとおりです(助成額【A】【B】は拡充されています)。

対象 擁壁の新設 がけ・擁壁の補強 防護壁の新設
土砂災害警戒区域内 工事費の1/2(限度額2,000万円)【A】 工事費の1/2(限度額100万円)【C】 工事費の1/2(限度額200万円)【D】
区内の道路または公共施設に面するもの 工事費の1/2(限度額600万円)【B】 工事費の1/2(限度額100万円)【C】 工事費の1/2(限度額200万円)【D】

道路・公共施設に面するものは、高さ2メートル超かつ傾斜角30度超に限られます。手続きは事前協議→助成申請→区の審査→工事契約→着手届→中間検査→完了検査→交付という流れで、工事契約より前に事前協議と申請を済ませる建て付けです。

令和9年度の受付開始を待ってから動くと、また予算枠との競争になります。擁壁に不安がある物件は、年度が替わる前に事前協議までを済ませておくのが現実的です。窓口は建築課審査担当(構造/03-5742-9172)です。

耐震化支援事業——令和8年度は12月4日が申請期限

品川区の耐震化支援事業は、令和8年4月1日(水)に申請開始、令和8年12月4日(金)が申請期限です(一部の制度は通年受付)。出典は品川区「耐震化支援事業」(更新日:令和8年8月12日)です。

分譲マンションの管理組合さまに関係するメニューは4つあります。

  • 耐震化アドバイザー派遣:理事会や総会の場に建築士を無料で派遣し、耐震診断・耐震改修・建替えの助言を受けられる制度
  • 耐震診断の助成
  • 補強設計の助成
  • 耐震改修工事の助成

申請は窓口と電子申請の両方に対応しています。なお同じページには、特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震診断の助成制度は終了した旨も記載されています。該当する物件をお持ちのオーナーさまはご注意ください。

まず使っていただきたいのは、アドバイザー派遣です。費用がかからず、理事会に第三者の建築士が入る。それだけで総会の議論の質が変わります。窓口は建築課 耐震化促進担当(03-5742-6634)です。

予算枠のある事業は、がけ・擁壁助成のように年度途中で受付を終えることがあります。検討されている管理組合さまは、着工前に、残枠と申請順序を窓口へご確認ください。着工後の申請は受け付けられないのが通例です。


背景データ:雨の降り方が変わっています

「昔はこんなに漏らなかった」というお声を、本当によくいただきます。感覚の問題ではありません。

気象庁は、全国のアメダスで観測した1時間降水量50ミリ以上の年間発生回数について、1980年ごろと比べて最近10年間はおおむね増加していることを公表しています。強い雨ほど頻度の増加率が高いという評価です(出典:気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」、気象庁「アメダスで見た短時間強雨発生回数の長期変化について」)。

インフラ側の対策には限界があり、その差は建物側で埋めるしかありません。屋上ドレンの清掃と、シーリングの前倒し更新。地味ですが、これが一番効きます。区境をまたぐリスクは、国土地理院の重ねるハザードマップで確認できます。


まとめ:今週、理事会・管理会社に投げられる3点

長くなりました。品川区の建物で、今週すぐ動けることを3つに絞ります。

1. 品川区防災地図で、自分の建物の4つのリスクを確認する

品川区防災地図(令和8年6月一部修正)で、浸水・雨水出水(内水)・高潮・土砂の4つを順に見る。あわせて平成元年・平成11年の浸水実績の青枠に自分の住所が入っていないかを確認してください。10分で終わります。

2. 屋上ドレンの清掃記録を、管理会社に出してもらう

直近1年で何回清掃したか。ストレーナーは付いているか。地下ピットがある物件は、排水ポンプの点検記録もあわせて。台風シーズンの真っ最中ですから、今週が一番効きます。

3. 擁壁と受電設備を、図面と現地で確認する

斜面地の物件は、擁壁の水抜き穴の詰まりを現地で見る。浸水域の物件は、電気室・給水ポンプ・エレベーターピットの設置階を図面で確認し、地下または1階なら止水板の見積りを1本取っておく。あわせて、がけ・擁壁助成の事前協議は建築課審査担当(03-5742-9172)、耐震化アドバイザー派遣は建築課 耐震化促進担当(03-5742-6634)へ。耐震化支援事業の令和8年度申請期限は12月4日です。

12月までに動けるかどうかが、令和8年度の分かれ目です。理事会で1分だけでもこの話題を出してみてください。調査だけ、ご相談だけでも構いません。総会前の整理の段階から、お力になれることがあります。お問合せフォームからお声がけください。

冒頭のオーナーさまには、結局こうお伝えしました。「天王洲と五反田は、別の建物として修繕計画を立ててください」と。同じ区内、同じ管理会社、同じ塗料でも、立っている地形が違えば傷み方が違う。品川区で修繕積立金を有効に使う一番の近道は、区内の平均ではなく、自分の建物の地形で考えることだと、私は思っています。


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月16日時点で公表されている品川区および国土交通省・気象庁・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず品川区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。ハザードマップの被害想定は東京都および区が公表したものであり、実際の被害状況と異なることがあります。


出典・参考資料


関連ページ

ロープアクセス工法の詳しい解説・施工事例はこちら → https://rope-access-method.com/

新城市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

2026年9月16日 更新

新城市でマンションの理事をされている方から、私がいちばん多く受ける質問はこれです。「新城市に、大規模修繕で使える補助金はありますか?」

この記事は、その問いに正面から答えます。結論から申し上げます。

令和8年度(2026年度)時点で、新城市が公表している住宅関連の補助制度のうち、分譲マンションの共用部改修に直接ひもづく制度は、公式サイト上では確認できませんでした。 新城市の耐震化支援は木造住宅を対象としたものが中心で、鉄筋コンクリート造の分譲マンションはその枠組みの外にあります(出典:新城市「住宅耐震化促進事業」2026年8月1日更新)。

がっかりさせる話から始めて申し訳ありません。ですが、私はここで記事を終えるつもりはありません。補助金が薄い地域のマンションほど、打つ手は別にあるからです。国の制度、税制、そして工法の選び方。この3つを順番に押さえれば、1戸あたりの負担は確実に変わります。

現場で20年近くやってきて、私が一番悔しい思いをするのは、「補助金がないから」という理由だけで修繕の検討そのものが止まってしまう管理組合を見たときです。止まっている間も、建物は劣化を続けます。今日はその止まり方をほどく話をします。


この記事で答える3つの質問

  1. 新城市に、マンションの共用部で使える補助金はあるのか?
  2. マンション管理計画認定制度は、新城市で申請できるのか?
  3. 補助金が薄いなら、修繕費はどこで下げればいいのか?

順に、公的な一次情報を示しながら答えていきます。


【早見表】新城市のマンション管理組合が使える制度・使えない制度

まず全体像です。「共用部の大規模修繕に使えるか」という一点で仕分けしました。理事会の資料にそのまま貼っていただいて構いません。

制度名(正式名称) 主体 共用部に使えるか 根拠・注記
木造住宅無料耐震診断 新城市 使えない 対象は木造住宅。RC造マンションは対象外(新城市)
新城市木造住宅耐震化促進事業補助金(最大120万円) 新城市 使えない 同上。木造住宅の耐震改修が対象
新城市木造住宅取壊し工事費補助金(最大20万円) 新城市 使えない 木造住宅の解体が対象
新城市木造住宅耐震シェルター整備費補助金(最大30万円) 新城市 使えない 木造住宅の居室内シェルター設置が対象
耐震改修時省エネ改修補助金(最大10万円) 新城市 使えない 木造住宅の耐震改修との同時施工が前提
令和8年度住宅用地球温暖化対策設備導入促進費補助金 新城市 条件付き(要確認) 太陽熱利用システム・蓄電設備等が対象。令和8年度予算残額615,000円(新城市)
合併処理浄化槽設置補助制度 新城市 条件付き 単独処理浄化槽等からの転換が対象。新築・建替え・増築に伴う設置は対象外(新城市)
マンションストック長寿命化等モデル事業 国土交通省 使える(公募制) 令和8年度第3回の応募期間は令和8年9月14日〜9月18日(国土交通省)
先進的窓リノベ2026事業 環境省 使える 管理組合も補助対象者。共用部扱いの窓・玄関ドアが対象になり得る(環境省)
マンション長寿命化促進税制 国/市町村 使える(税の減額) 築20年以上等の要件。令和8年度税制改正で期限延長(国土交通省)
マンション管理計画認定制度 市が所管 要確認 愛知県は町村区域のみ所管。市の区域は当該市が所管(愛知県)

この表を一目見て「市の欄がほとんど使えないになっている」と気づかれたと思います。そのとおりです。ここが新城市の特徴で、この記事のいちばん大事な論点でもあります。以下、一つずつ根拠を確認していきます。


新城市の耐震補助は「木造住宅」限定。マンションが対象外になる理由

制度の中身は充実している。ただし木造の話である

誤解のないように申し上げますが、新城市の耐震化支援そのものは、決して手薄ではありません。むしろ丁寧です。

新城市公式サイトの「住宅耐震化促進事業」ページ(2026年8月1日更新)には、令和8年度の制度として次の内容が掲載されています。

  • 木造住宅無料耐震診断:平成12年5月31日以前に着工した木造住宅は、無料で耐震診断を受けられる
  • 新城市木造住宅耐震化促進事業補助金:無料耐震診断で耐震性が低いと診断された住宅の耐震改修工事に、最大120万円
  • 新城市木造住宅取壊し工事費補助金:耐震性が低いと診断された住宅を解体する場合に、最大20万円
  • 新城市木造住宅耐震シェルター整備費補助金:高齢者・障がい者が居住する住宅の居室一室にシェルターを設置する場合に、最大30万円
  • 耐震改修時省エネ住宅耐震改修支援事業:耐震改修工事にあわせて省エネ改修を行う場合に、最大10万円

(出典:新城市「住宅耐震化促進事業」、窓口は建設部 都市計画課 電話0536-23-7640)

診断の対象が「昭和56年5月31日以前」ではなく「平成12年5月31日以前」まで広げられている点は、私は率直に評価しています。いわゆる新耐震基準の住宅でも、平成12年の基準改正前のものは金物や壁配置に弱点が残ることがあり、そこまで拾いにいく設計だからです。

さらに、代理受領制度があります。これは補助金の受け取りを施工事業者に委任できる仕組みで、申請者が工事費の全額を一度立て替える必要がなくなります。所得税の特別控除も、耐震改修工事を令和10年12月31日までに行った場合、標準的な費用の10%相当(上限25万円)が控除対象です(同ページ)。

それでも、分譲マンションはこの枠に入らない

ここまでの制度は、いずれも「木造住宅」が対象と明記されています。分譲マンションの多くは鉄筋コンクリート造(RC造)または鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)で、木造ではありません。

私は念のため、新城市の「補助金・助成金」一覧ページも確認しました。「耐震」カテゴリに掲載されているのは耐震改修時省エネ改修補助金の1件のみ、「住宅・土地・移住」カテゴリに掲載されているのは空き家や新築住宅に係る補助制度の1件のみでした(出典:新城市「補助金・助成金」)。

つまり、新城市公式サイト上では、非木造住宅(分譲マンション等)を対象とする耐震診断・耐震改修の補助制度を確認できませんでした。

愛知県は「非木造住宅の耐震診断・耐震改修は、市町村によって補助制度の有無や内容が異なる」という趣旨の案内をしており、県内でも対応は分かれています(出典:愛知県「住宅・建築物の耐震診断・耐震改修について(補助制度)」)。実際、同じ東三河の蒲郡市には非木造住宅の耐震診断費補助がありますが、新城市では公式サイトで確認できませんでした。

これは新城市を批判する話ではありません。市域の住宅ストックの構成が違えば、行政が優先順位をつける先も違って当然だからです。新城市は広い市域に戸建住宅と中山間集落が広がる市であり、限られた予算を木造住宅の耐震化に集中させるのは、政策判断として筋が通っています。

ただ、マンションの理事会としては、「うちの市には非木造向けの制度がない」という前提から計画を立て直す必要がある。そこが出発点です。

なお、制度は年度途中に新設・改正されることがあります。分譲マンションの耐震診断について補助の可否を判断される際は、必ず新城市 建設部 都市計画課(0536-23-7640)にご確認ください。私の記事は判断材料であって、窓口の回答に代わるものではありません。


マンション管理計画認定制度は、新城市で申請できるのか

「県がやってくれる」とは限らない

マンション管理計画認定制度は、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)にもとづき、管理組合が作成した管理計画が一定の基準を満たす場合に、地方公共団体が認定する制度です。2022年4月1日から運用が始まりました。

ここで見落とされやすいのが、所管の分かれ方です。愛知県は自らの推進計画の中で、次のように明記しています。

愛知県内の町村の区域(中略)市の区域は当該市、町村の区域は愛知県が所管します。

(出典:愛知県「愛知県マンション管理適正化推進計画」)

つまり、新城市は「市」ですから、県の推進計画の対象区域ではありません。 新城市の区域でこの制度を運用するかどうかは、新城市自身がマンション管理適正化推進計画を定めるかどうかにかかっています。

新城市の公表情報では確認できなかった

私が新城市公式サイトを確認した範囲では、マンション管理適正化推進計画の策定、およびマンション管理計画認定制度の運用・認定申請の受付・手数料について、公表されている情報を確認できませんでした。

ですので、この記事では「新城市で認定が取れます」とも「取れません」とも書きません。書けません。事実として言えるのは、次の2点だけです。

  • 愛知県は町村区域のみを所管しており、新城市の区域は県の対象外である(県公式サイトに明記)
  • 新城市公式サイトでは、認定制度の運用に関する案内を確認できなかった

認定制度の利用を検討される管理組合は、新城市 建設部 都市計画課(0536-23-7640)に、推進計画の有無と認定申請の受付可否を直接ご確認ください。

なぜこれが大事なのか

認定が取れるかどうかは、単なる「お墨付き」の話ではありません。実務上、次の3つに効きます。

  1. 住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資で、認定マンションは金利の引下げが受けられる場合がある
  2. マンション長寿命化促進税制の適用ルートの一つになる(後述)
  3. 売却時の評価に影響する。管理状態が可視化されるためです

私はいつも理事長さまに、「認定が取れるか取れないかを、まず窓口に一本電話して確かめてください」とお伝えしています。5分の電話で、その後2年間の計画の立て方が変わることがあるからです。


令和8年度住宅用地球温暖化対策設備導入促進費補助金:予算残額615,000円という現実

新城市が令和8年度に運用している住宅関連の補助金で、金額と残額が明示されている数少ない制度がこれです。

新城市公式サイト(2026年9月1日更新)によれば、令和8年度予算残額は615,000円(8月31日現在受付)とされています(出典:新城市「令和8年度住宅用地球温暖化対策設備導入促進費補助金」)。

補助対象設備と上限額は次のとおりです。

区分 対象設備 上限額
一体的導入補助 太陽光発電設備+HEMS+(蓄電設備/V2H/断熱窓改修のいずれか1つ) 70,000円
一体的導入補助 ZEH(高性能外皮等) 100,000円
一体的導入補助 GXZEH水準(高性能外皮等) 150,000円
単体導入補助 家庭用エネルギー管理設備(HEMS) 5,000円
単体導入補助 太陽熱利用システム(自然循環) 10,000円
単体導入補助 太陽熱利用システム(強制循環) 40,000円
単体導入補助 定置用リチウムイオン蓄電設備 50,000円
単体導入補助 家庭用燃料電池設備(エネファーム) 50,000円
単体導入補助 電気自動車充給電設備(V2H) 50,000円

(同ページより。ZEH・GXZEH水準は新築住宅に設置するものに限られます)

正直に申し上げます

この制度は、住宅用の設備導入を支援するものです。マンションの共用部を大規模修繕するための制度ではありません。共用部への適用可否は要綱の解釈になりますので、環境政策課(0536-23-7690)への確認が必須です。

そのうえで、注目していただきたいのは残額615,000円という数字です。上限70,000円の一体的導入補助なら、あと8〜9件で枯れる規模です。予算枠に達し次第終了する制度ですから、「年度内ならいつでも」は通用しません。

手続き上の注意点も、実務では致命的になります。

  • 交付申請書は工事着工予定日の10日前までに提出。ただし審査にも同程度の時間がかかる
  • 実際の着工は交付決定日以降。フライングは対象外
  • 実績報告書の提出期限は、事業完了日から20日以内または令和9年3月10日のいずれか早い日
  • 申請時に市税の完納証明書が必要(令和8年4月1日の要綱改正で「滞納のない証明書」から名称変更)

(同ページ「交付申請書提出時の注意点」「実績報告書提出時の注意点」より)

私の経験上、補助金を落とす管理組合の失敗理由で最も多いのは、金額の読み違いではなく「先に契約して着工してしまった」です。交付決定前の着工は、ほぼ例外なく対象外になります。理事会で工事業者を決めた高揚感のまま契約書に押印してしまう。気持ちはわかります。ですが、そこで一呼吸置けるかどうかが、数十万円の差になります。


国の制度で取りに行く:今週が締切のモデル事業と、窓リノベ

市の制度が薄い以上、新城市のマンション管理組合は国の制度で取りにいくのが現実的な戦略です。

マンションストック長寿命化等モデル事業(国土交通省)

高経年マンションの再生検討から、長寿命化に資する先導的な再生プロジェクトまでを支援する公募型の事業です。国土交通省の令和8年6月22日付報道発表によれば、令和8年度の応募スケジュールは次のとおりです。

  • 第1回:令和8年4月1日〜4月15日(応募4者4件、採択1者1件)
  • 第2回:令和8年6月22日(月)〜6月26日(金)
  • 第3回:令和8年9月14日(月)〜9月18日(金)

(出典:国土交通省「マンションストック長寿命化等モデル事業の採択プロジェクトを決定しました!」令和8年6月22日)

この記事を公開している2026年9月16日は、第3回募集期間のまさに真っ只中です。準備がある組合は、今日明日で動けます。

事業タイプは「先導的再生モデルタイプ」と「管理適正化モデルタイプ」に分かれ、それぞれ計画支援(事業前の立ち上げ・準備段階)と工事支援(改修工事・建替工事の実施段階)が用意されています。第1回は応募4件に対し採択1件でしたから、狭き門ではあります。ですが、応募数そのものが1桁という事実は、逆に言えば「知られていない」ということでもあります。

補助の詳細は国土交通省のマンション総合対策モデル事業ページをご確認ください。

先進的窓リノベ2026事業(環境省)

住宅省エネ2026キャンペーンの一翼を担う、断熱窓への改修を支援する事業です。補助対象者に管理組合が含まれており、マンションでは窓や玄関ドアが共用部として扱われることが一般的なため、管理組合の決議を経て申請する流れになります(出典:環境省「先進的窓リノベ2026事業」)。

大規模修繕の足場やロープを架けるタイミングと、窓改修のタイミングを合わせられるか。ここが原価に効きます。私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。別々にやれば仮設費を二度払うことになるからです。

給湯設備については、新城市の補助対象外でも国の制度で拾える場合があります。新城市自身が給湯省エネ2026事業(経済産業省)への確認を案内しています。


税制で取り返す:マンション長寿命化促進税制

補助金ではありませんが、結果として組合員の手元に残るお金という意味では同じです。

マンション長寿命化促進税制は、新築から20年以上経過した一定のマンションで、長寿命化に資する大規模修繕工事を実施した場合に、翌年度の建物部分の固定資産税を減額する制度です。1戸あたり100平方メートル相当分までが減額対象になります。

そして重要な点として、令和8年度税制改正により、この特例措置は5年間(令和8年4月1日〜令和13年3月31日)延長されました(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」)。

主な要件は次のとおりです。

  1. 築20年以上であること
  2. 総戸数が一定以上であること
  3. 長寿命化に資する大規模修繕工事(屋根防水工事・床防水工事・外壁塗装工事等)を一体で実施すること
  4. 必要な修繕積立金が確保されていること
  5. 管理計画の認定を受けている、または助言・指導を受けて長期修繕計画を適切に見直していること

ここで前述の管理計画認定制度の話がつながります。要件5のルートを認定で通すのか、助言・指導で通すのか。新城市の運用状況によって、組合が取るべき手順が変わります。

減額割合は市町村の条例で定められ、自治体によって異なります。 新城市における適用の可否と割合については、新城市の税務担当窓口にご確認ください。ここを推測で書くと読者に不利益が生じますので、断定を避けます。

要件3の「一体で実施」は実務上とても大事です。屋根防水だけ先にやって、外壁塗装を翌々年に回すという分割発注は、資金繰りとしては楽に見えますが、この税制の要件から外れる可能性があります。長期修繕計画を組み直す段階で、税制要件を意識した工事区分にしておく。それだけで結果が変わります。


補助金が薄い地域こそ、原価を「工法」で下げる

ここからが本題です。

新城市のマンション管理組合にとって、市の補助金は当てにしづらい。国の制度は公募制で確実ではない。税制は工事後の話。では、確実に効くレバーは何か。

私の答えははっきりしています。工法の選び方です。

仮設足場は、工事費の2〜3割を占めることがある

大規模修繕工事の見積書を開くと、最初に出てくるのが「直接仮設工事」、つまり足場代です。建物の形状や敷地条件によりますが、総工事費のなかで無視できない比率を占めるのが実情です。しかも足場は、建物を直す費用ではありません。職人が作業する場所を作るための費用です。

ここを削れるなら、削るべきです。

ロープアクセス工法という選択肢

ロープアクセス工法(無足場工法)は、産業用のロープで屋上から降下し、外壁の調査・補修・塗装・シーリング打ち替えなどを行う工法です。足場を架けないため、次の効果が期待できます。

  • 仮設足場の架設・解体費用が不要または大幅縮小
  • 工期の短縮(足場の架設・解体に要する日数がなくなる)
  • 居住者の生活影響の最小化(窓の外に足場がない=視線・防犯・採光の不安が減る)
  • 部分補修への即応性(劣化が見つかった箇所だけ、すぐ降りて直せる)

ロープアクセスの技術情報・安全基準・工法の考え方については、姉妹サイト ロープアクセスドットコム に詳しくまとめています。工法の仕組みそのものを理事会で説明する必要がある場面では、こちらをご覧いただくのが早いと思います。

ただし、ロープアクセスが不向きなケースもあります

正直に申し上げます。ロープアクセスは万能ではありません。

  • 屋上に十分な支点が取れない建物
  • バルコニー内部の広範囲な補修が必要な場合
  • 外壁の全面打診調査で、足場や高所作業車のほうが合理的な場合
  • 資材の大量搬入を伴う工事(外壁タイルの全面張り替え等)

こうしたケースでは、素直に足場を架けたほうが安く、早く、安全です。「無足場なら必ず安い」という営業トークを、私は信用しません。

だから、ハイブリッド工法という発想になる

株式会社明誠が提案しているのは、通常足場工法・ロープアクセス工法・その両方を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、その建物にとって最適な組み合わせを選ぶやり方です。

たとえば、こういう組み方をします。

  • 北面と東面は劣化が軽微 → ロープアクセスで部分補修
  • 南面はタイル浮きが多く全面打診が必要 → 足場を架ける
  • 屋上防水 → 足場とは独立して施工

こうすると、足場の面積そのものが減ります。全面足場と比べたときの差が、そのまま管理組合の手元に残るわけです。

以前、東海地方の築30年ほどのマンションで、当初の全面足場前提の見積から、面ごとに工法を分けた設計に組み替えた案件がありました。理事長さまが最初におっしゃったのは「安くなるのは嬉しいが、品質が落ちないか」でした。当然の心配です。私がご説明したのは、ロープアクセスは職人が壁に近い位置で作業するため、むしろ細かい劣化の見落としが減る場面があるということでした。足場の上からだと、手が届く範囲が板の高さに制約されます。ロープなら、気になる箇所まで数十センチ単位で降りられるのです。

工法の考え方についてはロープアクセス工法のご紹介、大規模修繕全体の進め方については大規模修繕工事のご紹介で整理しています。


新城市固有の論点:市域の広さが見積に乗る

もう一つ、新城市のマンションだからこそ考えていただきたい論点があります。移動距離と職人の確保です。

新城市は2005年に旧新城市・鳳来町・作手村が合併して誕生した市で、市街地から山間部まで非常に広い市域を持ちます。市役所は新城市字東入船にありますが、市内の物件によっては、名古屋や豊橋から通う施工班の移動時間が大きく変わります。

これが見積にどう効くか。

  1. 常駐費・交通費が距離に応じて乗る
  2. 工期が長いほど、その積み上げが効いてくる
  3. 足場工法は工期が長い=距離コストの影響を受けやすい

つまり、移動距離のある地域ほど、工期短縮の価値が大きくなるのです。都心のマンションで工期が2週間縮んだときの効果と、新城市のマンションで2週間縮んだときの効果は、同じではありません。

私はこれを、新城市に限らず中山間地を抱える市町村のマンションで必ずお伝えしています。「工法で工期を縮める」ことの金額的な意味が、都市部より大きいからです。

もう一点。地方のマンションでは、修繕積立金の水準が都市部より低く設定されていることが珍しくありません。分譲当初の価格設定を引きずっているケースです。積立金が薄い状態で全面足場の見積が出てくれば、理事会は「今回は見送ろう」という結論に流れます。そして5年後、劣化はもっと進み、見積はもっと高くなります。

この悪循環を断つ入口が、工法の見直しです。 補助金がない地域でも、ここは自分たちの意思決定だけで動かせます。


新城市のマンション管理組合が、明日から動くための手順

具体的な順序を示します。理事会の議事にそのまま載せられる粒度で書きました。

ステップ1:窓口に2本、電話をかける(今週中)

  • 新城市 建設部 都市計画課(0536-23-7640):分譲マンション(非木造)向けの耐震診断・改修補助の有無、マンション管理適正化推進計画の策定状況、管理計画認定制度の申請受付可否と手数料
  • 新城市 市民協働部 環境政策課(0536-23-7690):住宅用地球温暖化対策設備導入促進費補助金の共用部への適用可否、令和8年度の予算残額の最新状況

この2本で、市の制度に関する不確実性はほぼ消えます。

ステップ2:建物の現況を押さえる(1〜2か月)

劣化診断です。ここでロープアクセスを使うと、調査だけのために足場を架ける必要がなくなります。 私が調査段階でロープをおすすめする理由は、調査費用そのものより、「調査のための仮設費」が消えるからです。

ステップ3:長期修繕計画を、税制要件を意識して組み直す(2〜3か月)

マンション長寿命化促進税制の要件である「屋根防水・床防水・外壁塗装等を一体で実施」を満たす工事区分になっているか。修繕積立金は確保されているか。ここを設計段階で織り込みます。

ステップ4:国の制度の公募カレンダーに合わせる

マンションストック長寿命化等モデル事業は年3回程度の公募です。令和8年度は4月・6月・9月でした。来年度に応募するなら、今年度中に計画を固めておく必要があります。逆算すると、動き出しは早いほうがいい。

ステップ5:工法を比較した見積を取る

全面足場の見積だけで判断しない。「足場のみ」「ロープアクセスのみ」「ハイブリッド」の3パターンを並べてもらう。並べれば、理事会でも判断できます。

新城市のマンションで、この比較見積を出せる会社は限られます。多くの会社は1つか2つの工法しか持っていないからです。株式会社明誠は3つすべてを自社の提案の中に持っているため、比較そのものを1社で完結できます。


よくある質問(FAQ)

Q1. 新城市に、マンションの大規模修繕で使える補助金はありますか?
A. 2026年9月16日時点で、新城市公式サイト上では、分譲マンションの共用部改修に直接ひもづく市の補助制度を確認できませんでした。市の耐震関連補助は木造住宅が対象です(出典:新城市)。国の制度・税制での対応が現実的です。詳しくは本文の「早見表」をご覧ください。

Q2. マンション管理計画認定制度は、新城市で申請できますか?
A. 愛知県は町村の区域のみを所管しており、市の区域は当該市が所管します(出典:愛知県)。新城市公式サイトでは認定制度の運用に関する情報を確認できませんでした。新城市 都市計画課(0536-23-7640)へ直接ご確認ください。

Q3. 国のマンションストック長寿命化等モデル事業は、いつ応募できますか?
A. 令和8年度は第1回が4月1日〜4月15日、第2回が6月22日〜6月26日、第3回が9月14日〜9月18日の予定とされています(出典:国土交通省)。次年度の公募日程は公表を待つ必要があります。

Q4. 住宅用地球温暖化対策設備の補助金は、まだ残っていますか?
A. 新城市公式サイトによれば、令和8年度予算残額は615,000円(8月31日現在受付)と公表されています(出典:新城市)。予算枠に達し次第終了しますので、最新の残額は環境政策課(0536-23-7690)へご確認ください。

Q5. ロープアクセス工法にすれば、必ず工事費は安くなりますか?
A. いいえ。屋上に支点が取れない建物、外壁の全面打診が必要な面、資材の大量搬入を伴う工事では、足場のほうが合理的です。だからこそ明誠では、面ごとに工法を使い分けるハイブリッド工法を含めた3パターンの比較をお出ししています。


この記事のポイントまとめ

  • 新城市の耐震関連補助は木造住宅が対象で、分譲マンション共用部には使えない
  • マンション管理計画認定制度は市が所管。新城市の運用状況は窓口で要確認
  • 住宅用地球温暖化対策設備補助の令和8年度予算残額は615,000円(8月31日現在)
  • マンションストック長寿命化等モデル事業の令和8年度第3回は9月14日〜18日
  • マンション長寿命化促進税制は令和13年3月31日まで5年間延長された
  • 補助金が薄い地域では、工法選択(足場/ロープ/ハイブリッド)が最大のレバー
  • 市域が広い新城市では、工期短縮の金額的価値が都市部より大きい

出典・参考資料


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月16日時点で公表されている新城市および国土交通省・環境省・愛知県の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず新城市および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

本記事は制度の一般的な解説であり、個別の申請可否や税務上の取扱いを保証するものではありません。判断にあたっては各窓口および税理士等の専門家にご相談ください。


補助金が少ない地域のマンションほど、私は工法の話から始めます。行政の制度は待つしかありませんが、工法は理事会の意思で今日決められるからです。新城市で長期修繕計画の見直しをお考えでしたら、お問合せフォームからご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:通常足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法をご提案できる改修会社です。日本で初めてとなるロープアクセス工事のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟することで、高品質と低価格の両立を図っています。

最終更新:2026年9月16日

【令和8年度版】目黒区のマンション管理計画認定制度|独自基準ゼロ・区手数料ゼロ、それでも26棟しか取れていない理由

2026年9月16日 更新

「目黒区って、認定のハードルが高いんでしょうか」——中目黒のマンションの理事長さまから、そうご相談をいただいたことがあります。総会で「認定を取ってはどうか」という話が出たものの、どこから手をつけていいか分からない、と。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも自分の手でやってきた人間です。

結論から申し上げます。目黒区の認定基準は、23区のなかでも「素直」なほうです。 区独自の上乗せ基準はひとつもありません。区へ払う申請手数料もゼロ円です。

それでも、令和8年8月10日時点で目黒区の認定マンションは26棟にとどまっています。区内には分譲マンションが何百棟とあることを考えれば、ごく一部です。

つまり、目黒区でつまずくのは基準ではなく、その手前にある2つの入口なのです。ひとつは長期修繕計画。もうひとつは「オンライン申請以外は受け付けない」という目黒区固有の運用です。

今日は、目黒区のマンションが認定を取るために、実際に何をいくらで、どの順番でやるのか——ここに絞ってお話しします。


結論:目黒区の管理計画認定は「3つのゼロと1つの縛り」

先に全体像を置いておきます。

項目 目黒区での扱い
認定主体 目黒区(住宅課 居住支援係)
区への申請手数料 0円(新規・更新とも)
区独自の上乗せ基準 なし(国の基準のみ)
申請ルート オンライン申請のみ。区への直接申請・書面申請は不可
事前確認適合証 必須
システム利用料 1申請あたり10,000円(マンション管理センターへ支払い)
認定の有効期間 認定日から5年間
変更申請 書面のみ(支援システムでは不可)
認定実績 26棟(令和8年8月10日時点)

(出典:目黒区「マンション管理計画認定制度」更新日:2026年8月21日)

ゼロが3つ並びます。区の手数料がゼロ、独自基準がゼロ、書類の窓口持ち込みもゼロ(そもそも受け付けていない)。

そして縛りがひとつ。オンライン申請一択です。ここを知らずに「区役所に書類を持っていけばいいんですよね」と考えていると、最初の一歩で止まります。


認定主体はどこか——目黒区は「区」が審査します

まず、申請先を間違えないでください。

マンション管理適正化法(マンションの管理の適正化の推進に関する法律)にもとづく管理計画認定の事務は、市および東京23区の区域では、その市・区が行います。町村の区域は都道府県が担当します。

目黒区は特別区ですから、目黒区が認定主体です。窓口は住宅課 居住支援係(電話 03-5722-6841)、区役所は目黒区上目黒二丁目19番15号。

目黒区は令和5年4月に「目黒区マンション管理適正化推進計画」を策定し、それに合わせて同月から認定制度の運用を始めました。制度が始まって3年半、認定は26棟です。この数字をどう読むかは後述します。


目黒区の最大の特徴:独自基準が「ない」

23区のなかには、国の基準に区独自の項目を上乗せしているところがあります。たとえば「町会・自治会との連絡担当者を決めていること」「防災訓練を実施していること」といった内容です。

目黒区は違います。区の公式ページに、こう明記されています。

項目5(2)の基準について、目黒区では、国の基準以外の独自基準を設けていません。

つまり、目黒区で満たすべきは国の基準(項目1(1)〜5(1))だけということです。

これは実務上、かなり大きな意味を持ちます。区独自の基準がある区では、その部分が事前確認の対象外になるため、管理組合が自分で書類を用意して区に直接出す必要が出てきます。目黒区ではその二度手間がありません。事前確認適合証が取れれば、そのままオンラインで申請が完結します。

では、その国の基準とは何か。目黒区が示している一覧を、実務の言葉に置き換えて整理します。

1 管理組合の運営

  • 管理者等(理事長など)が定められていること
  • 監事が選任されていること
  • 集会(総会)が年1回以上開催されていること

意外な落とし穴が監事です。規約には監事の定めがあるのに、実際には長らく空席、というマンションが現実にあります。次の総会で選任してください。それだけでクリアします。

2 管理規約

  • 管理規約が作成されていること
  • 災害等の緊急時や管理上必要なときの専有部分への立ち入り、修繕等の履歴情報の管理について定められていること
  • 管理組合の財務・管理に関する情報の書面交付(または電磁的方法による提供)について定められていること

ここでつまずく管理組合が一番多い、というのが私の実感です。昭和・平成初期に作られたままの規約には、この3項目がそっくり抜けていることがあります。規約改正には総会の特別決議(一般に組合員および議決権の各4分の3以上)が必要ですから、気づくのが遅れると1年単位で遅れます。

国土交通省の標準管理規約は令和7年にも改正されていますので、規約を見直すなら最新版を下敷きにするのが早道です。

3 管理組合の経理

  • 管理費と修繕積立金等が明確に区分経理されていること
  • 修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと
  • 直前の事業年度末時点で、3か月以上の滞納額が全体の1割以内であること

3つ目は数字の話なので、会計担当理事に確認すれば即日で分かります。

4 長期修繕計画の作成及び見直し等

  • 「長期修繕計画標準様式」に準拠して作成され、計画の内容と修繕積立金額が総会で決議されていること
  • 作成または見直しが7年以内に行われていること
  • 計画期間が30年以上で、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれること
  • 将来の一時的な修繕積立金の徴収(一時金)を予定していないこと
  • 計画期間全体での修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと
  • 計画期間の最終年度に借入金の残高がないこと

目黒区で認定が伸びない最大の理由は、ほぼここに集約されます。 6項目のうち、どれか1つでも外れると通りません。

とくに効いてくるのが「一時金を予定しないこと」と「平均額が著しく低額でないこと」の2つです。修繕積立金を低く抑えたまま、計画の後半で一時金を徴収する前提になっている——そういう長期修繕計画は、決して珍しくありません。

5 その他

  • 組合員名簿・居住者名簿を備え、1年に1回以上は内容の確認を行っていること
  • 都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切であること(目黒区は独自基準なし)

名簿の年1回確認は、やっていても記録が残っていないケースがあります。理事会議事録に「○月○日、名簿の内容確認を実施」と一行残すだけで足ります。


いくらかかるか——目黒区は区の手数料が0円

費用は3層に分かれます。目黒区の公式ページの区分に沿って整理します。

費用の種類 支払先 金額
ア システム利用料 マンション管理センター 1申請あたり10,000円(全パターン共通)
イ 事前確認審査料 各依頼先 パターンにより異なる(下表)
ウ 区への申請手数料 目黒区 0円

事前確認の依頼先は4パターンから選べます。

パターン 内容 事前確認審査料(税込)
1 管理組合が直接マンション管理士に依頼し、事前確認完了後に支援システム経由で申請 委託先のマンション管理士に要確認
2 管理会社等を経由し、マンション管理業協会の「マンション管理適正評価制度」と併せて申請 管理会社等に要確認
3 日本マンション管理士会連合会を経由し、「マンション管理適正化診断サービス」と併せて申請 長期修繕計画1計画あたり10,000円
4 マンション管理センターに事前確認を依頼して申請 長期修繕計画1計画あたり10,000円

(注)パターン1の事前確認を行えるのは、マンション管理センターの事前確認講習を修了したマンション管理士(有効期間5年)に限られます。

つまり、パターン3または4なら、実費は合計20,000円程度(システム利用料10,000円+事前確認審査料10,000円)から見込めます。棟数や長期修繕計画の本数が多い場合は加算されますので、依頼前に見積を取ってください。

パターン2は、すでに管理会社に管理を委託していて、適正評価制度も併せて受けるなら合理的です。管理会社に「認定申請も一緒にお願いできますか」と一言聞くところから始めるのが、実務としては一番速いと思います。


目黒区固有の「縛り」:オンライン申請以外は受け付けない

ここが目黒区でもっとも注意すべき点です。区の公式ページには、こう書かれています。

マンション管理センターが運営する管理計画認定手続支援システムを利用し、インターネットによる申請手続き(オンライン申請)を行ってください。目黒区への直接申請、書面による申請はできません。

紙で区役所に持ち込むという選択肢が、そもそも存在しないということです。

これは裏を返せば、事前確認適合証を取ることが事実上の必須条件だという意味でもあります。支援システムを通す=事前確認を受ける、という一本道だからです。

高齢の理事長さまだけで進めようとすると、この入口で止まります。私がお勧めしているのは、パソコンに明るい組合員を1人、認定担当として理事会に入れてしまうことです。書類を揃えるのは理事会、システムに入力するのはその担当、と分けるだけで、ずいぶん進みが変わります。

変更申請だけは「紙」

もうひとつ、見落としやすい運用があります。

認定の申請を受けた管理計画の変更をしようとするときは、事前に目黒区に相談の上、(中略)目黒区にご提出ください。マンション管理センターの支援システムでは、変更申請を行うことができません。

新規申請はオンラインのみ、変更申請は書面のみ。逆になっているのです。

そして目黒区は、変更申請が必要になる代表例をはっきり書いています。

(注記)申請した時の管理者等(理事長・理事)が全員変わった時は、変更申請が必要です。

理事の任期が1〜2年のマンションでは、認定から2年も経てば申請時の理事が全員入れ替わっているということが普通に起こります。ここで変更申請を出し忘れたまま5年後の更新を迎える、というのが一番ありがちな事故です。

対策はシンプルです。引継書に「管理計画認定:変更申請の要否を確認」の一行を入れておく。それだけで防げます。


認定を取ると何が変わるか——目黒区のマンションにとっての実利

目黒区が挙げている効果は5つです。そのうち、金額として効いてくる3つを見ていきます。

1 固定資産税の減額(マンション長寿命化促進税制)

一定の要件を満たすマンションで、長寿命化に資する大規模修繕工事を実施すると、翌年度の建物部分の固定資産税が減額されます。東京都では2分の1の減額です。

対象工事は、屋根防水・床防水・外壁塗装の3点セット。「外壁だけ」「防水だけ」では対象になりません。

適用期限にご注意ください。 目黒区の公式ページには「措置期間は2年間(令和5年4月1日から令和7年3月31日の予定)」と制度開始時の記載が残っていますが、この措置は2年間延長され、令和9年3月31日までの工事完了が対象となっています(国土交通省・令和7年度税制改正)。

つまり、令和9年3月31日までに工事を終える必要があるということです。今日が令和8年9月16日ですから、残りは1年半。設計・合意形成・発注のリードタイムを考えると、今から動いてぎりぎり間に合うという時間感覚になります。

なお令和7年度からは、管理組合の管理者等が必要書類を提出すれば、区分所有者一人ひとりの申告書がなくても減額の適用を受けられるようになりました。理事長の側の手間はむしろ減っています。

2 住宅金融支援機構の融資・債券が有利になる

  • マンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ
  • 【フラット35】維持保全型(区分所有者が売買するときに効きます)
  • マンションすまい・る債の利率上乗せ

修繕積立金が足りず借入を検討している管理組合にとって、金利引下げは実額で効きます。

3 市場評価の向上

同意があれば、認定マンション情報(名称、所在地、認定コード、認定日)が区のホームページとマンション管理センターの閲覧サイトで公表されます。

私はこの3つ目を、理事長さまに一番強くお伝えしています。税と金利は金額で測れますが、資産価値の評価は、修繕積立金の値上げを総会で通すときの説得力そのものになるからです。目黒区は中目黒・自由が丘・学芸大学・都立大学と、中古マンションの流通が活発なエリアです。「うちは区の認定マンションです」と言えるかどうかは、10年後に効いてきます。


工事のコストをどう下げるか——目黒区の建物事情から

ここからが、私が工事屋として一番お話ししたいところです。

認定基準のうち、多くの管理組合が本当に苦しむのは「一時金を予定しないこと」と「積立金の平均額が著しく低額でないこと」です。この2つは、突き詰めれば「将来の工事費をどう見積もるか」という話に行き着きます。

長期修繕計画の工事費は、多くの場合、足場を組む前提で積算されています。そして足場の架設費は、大規模修繕工事の総額のなかで無視できない比率を占めます。

目黒区は、中目黒や大橋のような幹線沿いの中高層、碑文谷・八雲・平町のような低層住宅地、目黒本町・洗足のような密集市街地と、建物の条件がかなり幅広い区です。密集した敷地では、そもそも足場を組むこと自体に無理が出ます。隣地との間隔が詰まっている、前面道路が狭くて資材が入らない、といった物件は目黒区に少なくありません。

ここで選択肢になるのが、ロープアクセス工法(無足場工法)です。産業用ロープで職人が壁面に降りて作業する方法で、足場を架けずに施工できます。

私はいつも、理事長さまにこうお伝えしています。「全部をロープでやる必要はありません」と。

現実的な最適解は、たいていハイブリッド工法です。バルコニー側のように足場を組んだほうが効率のいい面は足場で、妻面や搭屋のようにロープが有利な面はロープで。部位ごとに工法を切り替えて、総額を落とす。明誠は足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3つを自社で持っているので、「うちはロープしかできないので全面ロープです」という提案にはなりません。

さらに、ロープアクセスには金額以外の効きどころがあります。足場を組まない面は、居住者の生活影響が小さいのです。窓の外が単管とメッシュシートで塞がれない。洗濯物が干せる。防犯面の不安も減る。長く住み続けている高齢の居住者にとって、これは工期の数字以上に大きな話です。

工法の詳細は、明誠の専門サイトロープアクセスドットコムにまとめています。実際の施工の様子は、写真で見ていただくのが一番早いと思います。

長期修繕計画で「30年後に一時金」とせざるを得なかったマンションが、工法の見直しで一時金をなくせたケースを、私は何度も見てきました。認定基準の「一時金を予定していないこと」は、積立金を上げる以外にも道があるということです。

大規模修繕工事のご紹介とロープアクセス工法のご紹介も、あわせてご覧ください。


逆算スケジュール——総会から認定交付まで

目黒区で認定を取るまでの流れを、時間軸で並べます。目安として見てください。

時期 やること
6〜8か月前 長期修繕計画の状況を確認(見直しは7年以内か/計画期間30年以上か/大規模修繕2回以上か/一時金の有無/最終年度の借入金残高)。必要なら建物調査と計画見直しに着手
5か月前 管理規約の3項目(緊急時の専有部立入り、修繕等の履歴情報の管理、財務・管理情報の書面交付)を点検。不足があれば規約改正を総会議案に
4か月前 監事の選任状況を確認。組合員名簿・居住者名簿の年1回確認の記録を整える
3か月前 事前確認の依頼先(パターン1〜4)を決定。見積を取る。オンライン申請の担当者を決める
2か月前 総会で「認定申請を行うこと」を決議。長期修繕計画と修繕積立金額の決議も必要なら同時に議案化
1〜2か月前 事前確認を受ける。事前確認適合証の発行を待つ
申請 管理計画認定手続支援システムからオンライン申請(区への持ち込みは不可)
交付 区の審査後、認定通知書が郵送で交付。有効期間は認定日から5年間

一番見落とされやすいのが、総会決議のタイミングです。認定申請には集会(総会)の決議が前提であり、決議を経ていない管理組合は事前確認そのものが進みません。事前確認を先に走らせようとしても止まります。

目黒区の管理組合は通常総会が春に集中します。ということは、次の総会の議案に間に合わせるかどうかが、令和8年度の分かれ目です。そして長寿命化促進税制の令和9年3月31日という期限を併せて考えると、動き出しの遅れがそのまま税制の取りこぼしにつながります。


新築マンションは「予備認定」を

区内で新築の分譲が動いている場合は、管理計画認定制度とは別枠の予備認定制度があります。認定主体はマンション管理センターで、分譲業者や再開発事業の施行者が、管理事務の受託予定者(管理会社等)と連名で申請する仕組みです。

購入検討中の方が「このマンションは予備認定を受けているか」を見るのは、管理の質を測るひとつの目安になります。


まとめ|目黒区の理事会が今週できる3つのこと

長くなりましたので、整理します。

  • 目黒区は認定主体が区。区への申請手数料は0円、区独自の上乗せ基準もなし。国の基準だけを満たせば通ります
  • ただしオンライン申請一択。区への直接申請・書面申請は受け付けていません。事前確認適合証は必須です
  • 実費はパターン3・4なら合計20,000円程度から(システム利用料10,000円+事前確認審査料10,000円/長期修繕計画1計画あたり)
  • 変更申請だけは書面。しかも申請時の理事が全員入れ替わったら変更申請が必要。引継書に一行入れておいてください
  • 長寿命化促進税制は令和9年3月31日までの工事完了が条件(区ページには制度開始時の令和7年3月31日という記載が残っていますが、2年延長されています)。対象は屋根防水・床防水・外壁塗装の3点セット、23区の減額は2分の1
  • 認定期間は5年。更新を忘れると失効します

そのうえで、今週、理事会で確認していただきたいのは次の3点です。

  1. 長期修繕計画の最終見直し日はいつか——7年を超えていたら、まずそこからです
  2. 監事は実際に選任されているか——空席なら、次の総会の議案に1行足すだけで済みます
  3. 管理規約に「緊急時の専有部立入り」「修繕履歴の管理」「財務・管理情報の書面交付」の3項目があるか——なければ規約改正が要ります。これだけは半年単位で時間がかかるので、最優先で確認してください

3つとも、お金はかかりません。理事会で1分ずつ確認すれば済む話です。9月中に確認できるかどうかが、春の総会に間に合うかどうかを決めます。

冒頭の26棟という数字に戻ります。目黒区は基準を厳しくしていません。むしろ手数料をゼロにして、独自基準も置かずに、間口を広げている区です。それでも26棟にとどまっているのは、多くの管理組合が「長期修繕計画」と「管理規約」という、認定以前からの宿題を抱えたままだからだと私は見ています。

言い換えれば、認定を取りにいく作業は、そのまま管理の棚卸しになるということです。私はそこに価値があると思っています。

うちのマンションは足場が組めるのか、ロープアクセスで何がどこまでできるのか。そういう工法の相談だけでも構いません。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームから、遠慮なくお声がけください。

次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


出典・参考資料


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月16日時点で公表されている目黒区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。なお、目黒区の公式ページにはマンション長寿命化促進税制の措置期間について制度開始時(令和5年4月1日〜令和7年3月31日)の記載が残っていますが、本記事では国土交通省の公表にもとづき令和9年3月31日までの延長を反映しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず目黒区住宅課および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

免責:本記事は情報提供を目的としたものであり、個別の申請の可否や税額の判断を保証するものではありません。税制の適用については、税理士および所管の都税事務所にご確認ください。


株式会社明誠|東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事/足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法

ロープアクセス工法の詳細はこちら → https://rope-access-method.com/

【令和8年度版】品川区のマンション管理計画認定制度|オンライン申請なら区手数料0円・独自基準3点の実務手順

2026年9月16日 更新

「認定の申請書一式、管理会社さんに揃えてもらったんです。これで出せますよね」——大井町のマンションの理事長さまから、そうお電話をいただいたことがあります。書類を拝見したところ、国の基準の分は完璧でした。ただ、品川区の窓口に出すには、あと2枚足りませんでした。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも自分の手でやってきた人間です。

結論から申し上げます。品川区で管理計画認定を取るなら、国の17基準だけを見ていると必ずつまずきます。 品川区には区独自の認定基準が上乗せされていて、しかもその部分は、事前確認をお願いしたマンション管理士さんのチェック範囲の外にあるからです。

一方で、品川区はオンライン申請なら区への手数料を無料にしています。紙で出すと29,000円かかるものが、ルートを選ぶだけでゼロになる。ここを知らずに紙で出してしまう管理組合が、実際にあります。

今日は、品川区のマンションが認定を取ると何が変わり、いくらかかり、独自基準をどう潰すか——この一点に絞ってお話しします。


結論:品川区で認定を取ると何が変わり、いくらかかるか

先に全体像を置いておきます。

項目 品川区での扱い
認定主体 品川区(都市環境部 住宅課 住宅運営担当)
区への申請手数料(新規・更新) オンライン申請=無料 / 紙で直接申請=29,000円
加算手数料 長期修繕計画が2つ目以降、1計画につき16,000円(紙申請の場合)
独自基準 あり(3項目)。町会・自治会との連絡調整担当者/災害時対応マニュアルまたは防災訓練/区の適正化指針への適合
認定の有効期間 認定日から5年間
申請の前提 管理組合の集会(総会)での決議

(出典:品川区「マンション管理計画認定制度(令和5年4月1日開始)」更新日:令和8年7月1日)

認定を取ると変わるのは、主に次の3つです。

  1. 長寿命化に資する大規模修繕工事を終えると、固定資産税が減額される(東京23区では2分の1)
  2. 住宅金融支援機構の融資条件が良くなる(共用部分リフォーム融資の金利引下げ、フラット35維持保全型、マンションすまい・る債の利率上乗せ)
  3. 管理計画認定マンション閲覧サイトで公表され、売買のときに「管理が良い物件」として見られる

私はこの3つ目を、理事長さまに一番強くお伝えしています。税と金利は金額で測れますが、資産価値の評価は、修繕積立金の値上げを総会で通すときの説得力そのものになるからです。「うちは区の認定を取っているマンションです」と言えるかどうかは、10年後に効いてきます。


認定主体はどこか——品川区は「区」が審査します

まず、申請先を間違えないでください。

マンション管理適正化法にもとづく管理計画認定の事務は、市および東京23区の区域では、その市・区が行います。町村の区域は都道府県(東京都であれば東京都住宅政策本部)が担当します。

品川区は特別区ですから、品川区が認定主体です。窓口は都市環境部 住宅課 住宅運営担当(電話 03-5742-6776)、書類提出先は品川区広町2-1-36 本庁舎6階です。東京都のマンション課に送っても受け付けてもらえません。

東京都のマンションポータルサイトにも、「区市の区域のマンションの認定事務は、各区市が行います」と明記されています(出典:東京都「マンション管理計画認定制度」)。

この「誰が認定するか」が、後で出てくる独自基準の話と直結します。認定主体が区である以上、区が上乗せした基準も区が審査するわけです。


国の認定基準17項目——どこで落ちるのか

国が定める認定基準は、5分野・17項目です。品川区の手引きにも同じ表が載っています。

1. 管理組合の運営

  • 管理者等(理事長など)が定められていること
  • 監事が選任されていること
  • 集会(総会)が年1回以上開催されていること

2. 管理規約

  • 管理規約が作成されていること
  • 災害等の緊急時や管理上必要なときの専有部分への立ち入り、修繕等の履歴情報の管理について定められていること
  • 管理組合の財務・管理に関する情報の書面交付(または電磁的方法による提供)について定められていること

3. 管理組合の経理

  • 管理費と修繕積立金が明確に区分経理されていること
  • 修繕積立金会計から他の会計へ充当されていないこと
  • 直前の事業年度末時点で、3か月以上滞納している修繕積立金の額が全体の1割以内であること

4. 長期修繕計画の作成・見直し等

  • 長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠して作成され、計画内容と修繕積立金額が総会で決議されていること
  • 作成または見直しが7年以内に行われていること
  • 計画期間が30年以上で、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれること
  • 将来の一時金徴収を予定していないこと
  • 計画期間全体での修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと
  • 計画期間の最終年度において借入金の残高がないこと

5. その他

  • 組合員名簿・居住者名簿を備え、年1回以上内容を確認していること
  • 都道府県等マンション管理適正化指針(品川区の場合は品川区の指針)に照らして適切であること

(出典:公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」/国土交通省「マンションの管理計画認定に関する事務ガイドライン」令和8年3月改訂)

私の経験上、ここで足が止まるのはほぼ4番の長期修繕計画です。とくに「計画期間30年以上・大規模修繕2回以上」と「一時金を予定していない」の2つ。

現場で一番悔しい思いをするのは、長期修繕計画の中身が「30年後に一時金500万円」でつじつまを合わせてあるケースです。紙の上では帳尻が合っている。でも認定は通りません。そして何より、その一時金は本当には集まりません。

ここは、修繕積立金を上げるか、工事側のコストを下げるかの二択です。私が工事屋として提案できるのは後者ですが、それについては後ろの章でお話しします。


品川区の独自基準3点——ここが本番です

品川区の認定基準表には、国の17項目に加えて、「5. その他」の中に品川区だけの項目が入っています。

独自基準 内容 必要書類
① 地域との連絡調整 管理組合が町会・自治会との連絡担当者を選任し、町会との交流に努めること 第1号様式「町会・自治会との連絡担当者報告書」
② 防災の実践 災害時の対応マニュアルの作成、または年1回以上の定期的な防災訓練の実施のいずれか1つ以上を、管理組合として実施していること 対応マニュアル、または防災訓練の実施日時・内容が明記された書類
③ 指針適合 品川区マンション管理適正化指針に照らして適切であること (区の審査事項)

(出典:品川区「マンション管理計画認定制度」/品川区マンション管理適正化指針(PDF))

そして、ここが実務で一番刺さるポイントです。

品川区の手引きには、こう書かれています。独自基準に係る必要書類(上の表の①と②)は、事前確認の時点では提出不要。ただし、オンライン申請でも紙申請でも、別途、直接品川区に提出する必要がある、と。

これは仕組みの問題です。マンション管理センターの事前確認は、事前確認講習を修了したマンション管理士が国の基準への適合を見るもので、地方公共団体の独自基準は事前確認の対象外と明記されています。つまり、マンション管理士さんが「適合しています」と事前確認適合証を出してくれても、品川区の独自基準は誰もチェックしていない状態で残るわけです。

冒頭の大井町の理事長さまで足りなかった2枚が、まさにこれでした。事前確認適合証はお持ちで、書類は完璧だと思っておられた。悪いのは理事長さまではありません。仕組み上、そこは見えないようになっているのです。

私はいつも理事長さまに、こうお伝えしています。「事前確認と区提出は、別々の工程だと思ってください」と。

②の防災要件については、少し補足させてください。「マニュアルの作成」または「年1回以上の防災訓練」のどちらか1つで足ります。理事会の負担を考えると、すでに実施している防災訓練の記録を整えるほうが早いことが多いはずです。実施日時と実施内容が明記されていることが条件なので、写真だけでなく、日付・参加人数・実施項目を書いた記録を残しておいてください。

品川区は大井町・大崎・天王洲を中心に中高層の物件が多く、高層階の居住者にとって防災は「訓練の紙」ではなく生活の問題です。認定のためだけに書類を作るのは、私は正直、もったいないと思っています。


手数料と申請ルート——ルート選びで29,000円が0円になります

品川区の申請ルートは5パターンあります。1〜4は各機関に事前確認を依頼してオンラインで申請する方法、5は品川区へ直接、書類を郵送・持参する方法です。

  1. マンション管理士に事前確認を依頼
  2. 管理委託先(管理会社)に事前確認を依頼(マンション管理業協会の「マンション管理適正評価制度」とワンストップ)
  3. (一社)日本マンション管理士会連合会に事前確認を依頼(「マンション管理適正化診断サービス」とワンストップ)
  4. (公財)マンション管理センターに事前確認を依頼
  5. 品川区に直接申請

区への手数料は、こうなります。

申請方法 基本手数料 加算手数料(長期修繕計画2つ目以降・1計画につき)
オンラインによる申請 無料 —
紙ベースで品川区に直接申請 29,000円 16,000円

(出典:品川区「マンション管理計画認定制度」更新日:令和8年7月1日)

ただし、オンライン=タダではありません。オンライン申請には事前確認が伴い、その依頼先に別途費用がかかります。マンション管理センター経由(パターン④)の場合、公表されている金額は次のとおりです。

  • システム利用料:1申請あたり10,000円(税込)
  • 事前確認審査料:長期修繕計画1計画あたり10,000円(税込)

(出典:公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」)

パターン①のように個別のマンション管理士に依頼する場合、事前確認審査料は管理組合と管理士の間で決めることになっています(センターは関与しません)。

整理すると、長期修繕計画が1つの標準的なマンションなら、オンラインで約2万円、紙なら29,000円。金額差そのものは大きくありませんが、オンラインには別のメリットがあります。

事前確認適合証を持っていれば、区への提出書類のうち「基本的に必要な書類」1〜7と「必要に応じて提出を求める書類」がすべて不要になるのです。総会議事録の写し、管理規約の写し、貸借対照表、滞納状況の書類、長期修繕計画の写し、名簿の表明保証書——理事会で集めるのが一番大変な束が、まるごと省けます。

紙で直接申請する場合は、正本1部・副本2部。同じ書類を3セット作ることになります。

私が理事長さまにお勧めしているのは、管理会社に管理を委託しているならパターン②、自主管理に近いならパターン④です。どちらにしても、独自基準の2枚(町会連絡担当者報告書と防災の記録)は自分たちで区に出す。ここだけは変わりません。


認定の3つの経済効果——工事とセットで考える

認定は「取って終わり」ではありません。むしろ、認定を持った状態で大規模修繕をやると、お金の戻りが変わるというのが本質です。

① マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)

過去に長寿命化に資する大規模修繕工事を実施していて、さらに令和5年4月1日から令和9年3月31日までの間に長寿命化工事を完了した、築20年以上かつ10戸以上のマンションは、工事完了の翌年度に課される家屋の固定資産税が減額されます。東京23区における減額割合は2分の1です。

対象となるのは、屋根防水工事・床防水工事・外壁塗装工事——この3つが揃った工事です。1住戸あたり100平方メートル分までが限度となります。

(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」/東京都主税局「長寿命化に資する大規模修繕工事が行われたマンションに対する固定資産税の減額制度」)

令和9年3月31日という期限を、私は重く見ています。 2026年9月の今から逆算すると、工事完了まで残り約1年半。大規模修繕は、調査・設計・業者選定・総会決議で1年前後かかるのが普通です。つまり、令和8年度中に動き出さないと間に合わない可能性があるという意味になります。

ただし、この税制には他にも要件があり、適用の可否は個別判断です。断定は避けます。必ず品川都税事務所と税理士にご確認ください。

② フラット35 維持保全型(区分所有者向け)

管理計画認定を受けたマンションを購入する場合、当初5年間の借入金利が年0.25%引き下げられます。他の引下げメニューとの併用も可能です。これは組合ではなく、買う人・売る人に効くメリットです。中古で売りに出したときの見え方が変わります。

(出典:住宅金融支援機構「【フラット35】維持保全型」)

③ マンション共用部分リフォーム融資(管理組合向け)

管理組合が共用部分の修繕資金を借りる場合、管理計画認定の取得により融資金利が年0.2%引き下げられます。耐震改修・浸水対策・省エネ対策工事による引下げ、マンションすまい・る債の積立てによる引下げとも組み合わせられます。

(出典:住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資(管理組合申込み)」)


工事のコストをどう下げるか——品川区の建物事情から

ここからが、私が工事屋として一番お話ししたいところです。

長寿命化促進税制の対象は、屋根防水・床防水・外壁塗装の3点セットです。「外壁だけ」「防水だけ」では対象になりません。3つ揃えるとなると、当然、工事金額は上がります。

そして品川区は、大崎・大井町・天王洲・武蔵小山を中心に、中高層のマンションが多い区です。高層になるほど、足場の架設費が工事費全体に占める割合は大きくなります。敷地に余裕がない物件、前面道路が狭い物件、隣棟間隔が詰まっている物件では、足場を組むこと自体に無理が出ます。

ここで選択肢になるのが、ロープアクセス工法(無足場工法)です。産業用ロープで職人が壁面に降りて作業する方法で、足場を架けずに施工できます。

私はいつも、理事長さまにこうお伝えしています。「全部をロープでやる必要はありません」と。

現実的な最適解は、たいていハイブリッド工法です。バルコニー側のように足場を組んだほうが効率のいい面は足場で、妻面や搭屋のようにロープが有利な面はロープで。部位ごとに工法を切り替えて、総額を落とす。明誠は足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3つを自社で持っているので、「うちはロープしかできないので全面ロープです」という提案にはなりません。

さらに、ロープアクセスには金額以外の効きどころがあります。足場を組まない面は、居住者の生活影響が小さいのです。窓の外が単管とメッシュシートで塞がれない。洗濯物が干せる。防犯面の不安も減る。高層階の高齢の居住者にとって、これは工期の数字以上に大きな話です。

工法の詳細は、明誠の専門サイトロープアクセスドットコムにまとめています。実際の施工の様子は、写真で見ていただくのが一番早いと思います。

長期修繕計画で「30年後に一時金」とせざるを得なかったマンションが、工法の見直しで一時金をなくせたケースを、私は何度も見てきました。認定基準の「一時金を予定していないこと」は、積立金を上げる以外にも道があるということです。

大規模修繕工事のご紹介とロープアクセス工法のご紹介も、あわせてご覧ください。


逆算スケジュール——総会から認定交付まで

品川区で認定を取るまでの流れを、時間軸で並べます。目安として見てください。

時期 やること
6〜8か月前 長期修繕計画の作成・見直し状況を確認(7年以内か/30年以上か/大規模修繕2回以上か/一時金の有無)。必要なら建物調査と計画の見直しに着手
5か月前 管理規約の3項目(緊急時の専有部立入り、修繕履歴の管理、財務・管理情報の書面交付)を点検。不足があれば規約改正を総会議案に
4か月前 独自基準の準備開始。町会・自治会の連絡担当者を決める/防災訓練の実施または対応マニュアルの作成
3か月前 事前確認の依頼先を決定(管理会社/マンション管理士/日管連/マンション管理センター)。見積を取る
2か月前 総会で「認定申請を行うこと」を決議。長期修繕計画と修繕積立金額の決議も同時に必要なら議案化
1〜2か月前 事前確認を受ける。適合証の発行を待つ
申請 オンライン申請(または紙で区へ)。独自基準の書類は別途、直接品川区へ提出
交付 区の審査後、認定通知。有効期間は認定日から5年間

一番見落とされやすいのが、総会決議のタイミングです。管理計画認定手続支援サービスの利用規約には、「総会決議を経ていない管理組合の事前確認はできません」と明記されています。事前確認を先に走らせようとしても止まります。

品川区の通常総会が春に集中することを考えると、次の総会の議案に間に合わせるかどうかが、令和8年度の分かれ目になります。


まとめ|品川区の理事会が今週できる3つのこと

長くなりましたので、整理します。

  • 品川区は認定主体が区。オンライン申請なら区への手数料は無料、紙なら29,000円(長期修繕計画2つ目以降は1計画16,000円加算)
  • 独自基準は3点。町会・自治会の連絡担当者/災害時対応マニュアルまたは年1回以上の防災訓練/区の適正化指針への適合。この部分は事前確認の対象外なので、必ず自分たちで区に提出する
  • 事前確認適合証があれば、区への提出書類の大半が不要になる。ルート選びは手数料より書類量で決めたほうが実務的
  • 長寿命化促進税制は令和9年3月31日までの工事完了が条件。対象は屋根防水・床防水・外壁塗装の3点セット。23区の減額は2分の1
  • 認定期間は5年。更新を忘れると失効する

そのうえで、今週、理事会で確認していただきたいのは次の3点です。

  1. 長期修繕計画の最終見直し日はいつか——7年を超えていたら、そこからです
  2. 昨年度、防災訓練をやったか。記録は残っているか——日付・内容が書かれた記録があれば、独自基準②は今日クリアできます
  3. 町会・自治会の窓口になっている人は誰か——実質的に誰かがやっているはずです。それを第1号様式に書いて正式化するだけです

3つとも、お金はかかりません。理事会で1分ずつ確認すれば済む話です。9月中に確認できるかどうかが、春の総会に間に合うかどうかを決めます。

品川区は、独自基準で「地域とのつながり」と「防災」を求めている区です。私はこれを、単なるハードルだとは思っていません。高層マンションが増え続けるこの街で、管理組合が町会と顔をつないでいるか、災害の日に動けるかを制度に組み込んだ、真っ当な設計だと感じています。

うちのマンションは足場が組めるのか、ロープアクセスで何がどこまでできるのか。そういう工法の相談だけでも構いません。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームから、遠慮なくお声がけください。

次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


出典・参考資料


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月16日時点で公表されている品川区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず品川区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

免責:本記事は情報提供を目的としたものであり、個別の申請の可否や税額の判断を保証するものではありません。税制の適用については、税理士および所管の都税事務所にご確認ください。


株式会社明誠|東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事/足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法

ロープアクセス工法の詳細はこちら → https://rope-access-method.com/

田原市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

2026年9月16日 更新

田原市の分譲マンションで大規模修繕を控えている管理組合の方から、いちばん多くいただく質問はこれです。「うちの市に、共用部の工事に使える補助金はありますか」。

この記事は、その質問に令和8年度(2026年度)時点の田原市の一次情報だけで答えるものです。結論から申し上げますし、使えないものは使えないとはっきり書きます。

私は株式会社明誠の本間と申します。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を、足場・ロープアクセス(無足場)・両者を組み合わせたハイブリッドの3工法で提案してきました。この連載は今回で181自治体目になります。毎回、その市や町の要綱を一行ずつ読んでから書いています。田原市は、その中でも「読み込む価値のある一行」が複数あった自治体でした。


結論:共用部に直接出る市の補助金はない。ただし入口は2つ開いている

先に結論です。

田原市には、分譲マンションの共用部の大規模修繕そのものに直接お金を出す補助金は、令和8年9月16日時点で公表されている情報の範囲では見当たりません。

これは田原市が不親切なのではありません。人口5万人台の市ではむしろ標準的です。私が見てきた181自治体のうち、共用部の大規模修繕に直接補助を出している市町村は1割もありません。

その代わり、田原市には他市にはない入口が2つあります。

  1. 非木造住宅等耐震診断事業に「一戸建て以外の住宅」という区分がある(延べ面積に応じた単価計算、上限100万円)
  2. マンション管理適正化支援法人の登録制度を、市として実際に立ち上げている(令和8年1月16日に審査基準を公表)

この2つは、私がこの連載で扱った他の多くの自治体にはありませんでした。順に見ていきます。


田原市の制度を「共用部の大規模修繕に使えるか」で仕分ける

まず全体像です。理事会の時間は有限ですから、×だと分かっているものに議論の時間を使わなくて済むこと自体に価値があります。

制度名 共用部に使えるか 補助率・限度額 窓口
非木造住宅等耐震診断事業 ○(一戸建て以外の住宅の区分あり) 延べ面積×単価と実費の少ない額/上限100万円 建築課 0531-27-8606
非木造住宅耐震改修事業 ×(一戸建て住宅限定) 上限140万円 建築課 0531-27-8606
木造住宅耐震改修事業 ×(木造限定) 最大170万円 建築課 0531-27-8606
木造住宅無料耐震診断 ×(木造限定) 無料 建築課 0531-27-8606
簡易耐震対策事業 ×(木造の簡易対策) ― 建築課 0531-27-8606
木造住宅解体事業 ×(木造限定) ― 建築課 0531-27-8606
ブロック塀等安全対策事業 ○(敷地の塀が対象) 撤去2分の1・上限20万円/建替2分の1・上限30万円 建築課 0531-27-8606
マンション管理適正化支援法人の登録 △(お金ではないが関係する) ― 住宅政策課 0531-23-3684
空き家等活用促進事業補助金 ×(空き家対象) ― 住宅政策課 0531-23-3684
定住・移住促進奨励金 ×(個人向け) ― 住宅政策課 0531-23-3684

○が2つ、△が1つ、残りは×です。この表を理事会の資料に1枚貼るだけで、「補助金を調べる」という宿題が一度で終わります。

(出典:田原市 耐震改修促進事業、田原市 住宅・空き家)


【本題】非木造住宅等耐震診断事業に「一戸建て以外の住宅」の行がある

ここからが本題です。

田原市の非木造住宅等耐震診断事業のページには、補助額が2つの区分に分けて書かれています。

一戸建て住宅の場合

実費の額、ただし上限30万円。

一戸建て以外の住宅の場合

次の1・2・3のうち、一番少ない額。

  1. 実費
  2. 延べ面積(平方メートル)× 下記の単価
    – 延べ面積1,000平方メートル未満:3,670円
    – 1,000〜2,000平方メートル未満:1,570円
    – 2,000平方メートル以上:1,050円
  3. 上限100万円

(出典:田原市 非木造住宅等耐震診断事業|ページ更新日2026年4月2日)

「一戸建て以外の住宅」というのは、共同住宅を含む書き方です。私がこの連載で回ってきた静岡県の掛川市・袋井市・湖西市の要綱には、「共同住宅」「マンション」「管理組合」という語が一度も出てきませんでした。田原市は、少なくとも診断の区分としては一戸建てと一戸建て以外を分けて書いている。ここは押さえておく価値があります。

延べ面積別に試算するとこうなる

単価が段階制なので、実際にいくらになるのかを表にしました。

延べ面積 該当単価 面積×単価 上限100万円との比較
500平方メートル 3,670円 1,835,000円 上限100万円で頭打ち
800平方メートル 3,670円 2,936,000円 上限100万円で頭打ち
1,500平方メートル 1,570円 2,355,000円 上限100万円で頭打ち
3,000平方メートル 1,050円 3,150,000円 上限100万円で頭打ち

つまり、面積×単価の側は、よほど小規模でない限り100万円を超える。ですから実際に効いてくるのは「実費」と「上限100万円」の2つです。

ただし、ここは正直に書きます。この制度で100万円を満額受け取るには、耐震診断の実費が100万円以上かかっている必要があります。 RC造の耐震診断は規模と2次診断・3次診断の別で金額が大きく変わります。中規模のマンションで現実的な着地は、実費次第で数十万円から100万円の間、というのが私の感覚です。

対象条件は3つ

  1. 田原市内の住宅等
  2. 現在住んでいる住宅
  3. 昭和56年5月以前に着工した非木造住宅

3番目が最大の関門です。昭和56年(1981年)6月以降に着工した、いわゆる新耐震のマンションはこの制度の対象外です。田原市の分譲マンションの多くは新耐震と思われますので、まず「うちは旧耐震か新耐震か」を確認するところから始まります。確認方法は、家屋課税証明書、建築基準法に基づく確認済証および検査済証、その他建築時期が確認できる書類のいずれかです。

申請前に必ず「事前相談」

田原市のページには、太字でこう書かれています。

補助金交付申請の前に必ず田原市役所建築課で事前相談を行ってください。交付申請前に着手された方については、補助を受けることができません。

この「着手前」は、この連載で何度も見てきた最大の落とし穴です。診断業者と契約してから市役所に行くと、その瞬間に補助がゼロになります。順番は、市役所 → 総会(または理事会)決議 → 契約です。逆にしてはいけません。


一方で、非木造の「改修」は一戸建て住宅限定という非対称

ここが田原市でいちばん重要な論点です。

非木造住宅耐震改修事業のページを見ると、対象はこう書かれています。

耐震診断の結果、地震時に安全でないと診断された非木造の一戸建て住宅

補助額は設計・監理・工事に係る実費の額、ただし上限140万円。

(出典:田原市 非木造住宅耐震改修事業|ページ更新日2026年4月2日)

つまり田原市の制度はこうなっています。

事業 対象 限度額
非木造住宅等耐震診断事業 一戸建て住宅/一戸建て以外の住宅 30万円/100万円
非木造住宅耐震改修事業 非木造の一戸建て住宅のみ 140万円

診断の入口は共同住宅にも開いているのに、改修の出口は一戸建てだけ。 この非対称は、私が181自治体を回ってきて初めて見る構造です。

これをどう読むか。私は2つのことを申し上げています。

1つめ。 診断は使える可能性があるのだから、まずそこだけ電話で確かめる価値がある。改修が対象外だからといって診断まで諦める必要はありません。耐震診断の報告書は、耐震のためだけの書類ではありません。長期修繕計画の見直しにも、劣化診断の発注仕様を組み立てるときにも使えます。

2つめ。 改修が一戸建て限定である以上、マンションの共用部改修の財源として市の補助金を当てにした議案書は作れない、ということです。総会の議案書に「補助金が出る見込み」と書いて、後から出ないと分かったときの信頼の失い方を、私は何度も見てきました。書かないほうがいいのです。

電話で読み上げる質問文(3点)

建築課 開発指導係(0531-27-8606)にかけるときの文面をそのまま用意しました。理事長ご本人がお読みになれる長さにしてあります。

「令和8年度の非木造住宅等耐震診断事業についてお尋ねします。
① 補助額の『一戸建て以外の住宅』の区分に、分譲マンション(区分所有の共同住宅)は含まれますか。
② 含まれる場合、申請者は管理組合になりますか、それとも区分所有者個人になりますか。
③ 令和8年度の受付期間と、診断の完了期限はいつまででしょうか。
工事や契約はまだこれからです。事前相談としてお伺いしたいのですが、いつ伺えばよろしいでしょうか。」

最後の「工事はこれからです」は必ず添えてください。着手前であることが伝われば、窓口の方の説明の順番が変わります。


令和8年度の受付期間について、正直に書いておくこと

ここは記事として誠実に扱わなければならない点です。

田原市の非木造住宅等耐震診断事業のページは更新日が2026年4月2日となっています。ところが、そのページの「受付期間」欄には次のように書かれたままです。

令和7年12月末まで(令和7年度受付分)
(注)ただし、令和8年2月15日までに完了する診断に限ります。

非木造住宅耐震改修事業のページも同様に「令和7年10月末まで(令和7年度受付分)」、木造住宅耐震改修事業のページも「令和7年11月末まで(令和7年度受付分)」となっています。

つまり、令和8年度の受付期間が市のページに反映されていません。 例年どおりなら令和8年12月末あたりが診断の締切と推測できますが、推測を記事に書くわけにはいきません。

ですから、受付期間だけは電話で確認してください。上の質問文の③がそれです。また、いずれの事業にも「本年度予算範囲内での受付」「予定件数に達した場合、申請をお断りする場合があります」と書かれています。年度の後半になるほど枠は細くなります。

もう一点、細かいことですが申し添えます。非木造住宅等耐震診断事業のページの添付書類欄には「旧基準の木造住宅であることを証明する以下のいずれかの書類」と書かれています。非木造のページなのに木造と書かれている。これはおそらく様式の写し間違いですが、こういう箇所があるからこそ、現地の窓口に一度確認を入れる価値があるということでもあります。


木造住宅耐震改修事業の最大170万円──マンションには使えないが、知っておく意味はある

田原市の木造住宅耐震改修事業は、設計・監理・工事の実費に対して140万円を基本とし、そこに上乗せがあります。

区分 金額
基本 140万円
市内の事業者による施工 +10万円
高齢者(満65歳以上)のみ住宅 +20万円
最大 170万円

(出典:田原市 木造住宅耐震改修事業)

この「市内の事業者による施工で10万円」という加算は、この連載でも数えるほどしか見ていません。地域経済振興の考え方が耐震補助に組み込まれているということです。

RC造のマンション共用部には関係ありません。ただし2つ、理事会に意味があります。

1つめ。 区分所有者のご家族が市内に木造住宅を持っている、というケースは田原市では珍しくありません。管理組合の掲示板に「市の制度です」と1枚貼るだけで、それは立派な周知です。お金はかかりません。

2つめ。 このページには「住宅のリフォームや外壁の張り替え等と同時に、耐震改修を行う場合には、リフォームや外壁の施工費の一部(耐震改修に要した費用)を補助金の対象とすることができます」という一文があります。工事を一体で発注したときに、どこまでが補助対象経費として切り分けられるか、という考え方が示されている。これは共用部の工事でも同じ整理が必要になる場面があり、発想として覚えておく価値があります。


ブロック塀等安全対策事業──敷地内の塀は共用部です

マンションの敷地に面した塀は、区分所有者全員の共用部分です。ここは田原市の補助が使える数少ない箇所になります。

対象条件(3つすべてに該当すること)

  1. 地震時に倒壊または転倒の危険性があるもの
  2. 道路または避難地に面しているもの
  3. 道路面からの高さが1メートル以上のもの

補助額

撤去工事は、次の1・2・3のうち一番少ない額。

  1. 実費の2分の1の額
  2. 5,000円 × 撤去する長さ(メートル)
  3. 上限20万円

建替工事は、次の1・2・3のうち一番少ない額。

  1. 実費の2分の1の額
  2. 20,000円 × 建替する長さ(メートル)
  3. 上限30万円

(出典:田原市 ブロック塀等安全対策事業)

延長別の試算表

現場で数字がすぐ出せるように表にしました。

塀の延長 撤去:5,000円×m 建替:20,000円×m 撤去の上限 建替の上限
10メートル 50,000円 200,000円 20万円 30万円
15メートル 75,000円 300,000円 20万円 30万円で頭打ち
20メートル 100,000円 400,000円 20万円 30万円で頭打ち
40メートル 200,000円 800,000円 20万円で頭打ち 30万円で頭打ち
60メートル 300,000円 1,200,000円 20万円で頭打ち 30万円で頭打ち

読み取れることが2つあります。

撤去は40メートルで、建替は15メートルで、それぞれ限度額に届きます。 それ以上の長さがあっても補助額は増えません。

そしてもうひとつ。「実費の2分の1」という条件が常にかかります。たとえば40メートルの撤去で実費が30万円なら、2分の1は15万円。面積換算の20万円よりも少ないので、交付されるのは15万円です。3つの数字のうち一番少ない額という読み方を間違えないでください。

見落としやすい実務条件

  • 受付期間は申請しようとする年度の12月末まで。ただし当該年度の2月末までに完了する工事に限る
  • 申請する前に業者と契約しない
  • 道等に面している危険なブロック塀等は、すべて撤去する
  • 新設する塀は、建築基準法42条の道路内には築造しない
  • 建替を行う場合は、新設する塀に対し建築士等による安全確認が必要

最後の「建築士等による安全確認」は、見積りの前提が変わる条件です。塀の建替えを大規模修繕と同じ議案にするなら、設計事務所との契約書にこの安全確認の業務を入れておかないと、後から追加費用の話になります。

そして、危険な箇所は「すべて撤去」です。工事の途中で「ついでにここも」と手を付けると補助が消えます。工程表にマイルストーンを立ててください。

なお、このページの更新日は2025年7月10日、掲載されている申請様式は令和7年4月版です。令和8年度も同じ内容で運用されているかは、上と同じく事前相談で確認してください。


田原市の特筆すべき一手:マンション管理適正化支援法人の登録制度

ここは、この連載181自治体のなかで田原市が初めて見せた一手です。

田原市は令和8年1月16日付で、マンション管理適正化支援法人の登録に関する審査基準等を公表しました。根拠は、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成12年法律第149号)第5条の3第1項です。

(出典:田原市 マンション管理適正化支援法人の登録について|ページ更新日2026年1月16日)

これが何かというと、令和7年5月30日公布の「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律」(令和7年法律第47号)に伴う制度改正で新設された、管理組合を支援する法人を行政が登録する仕組みです。登録主体は、市の区域はその市、町村の区域は都道府県になります。

私はこの連載で、静岡県の町を書いた回に「静岡県は現段階では登録制度を実施していません」と書きました。人口5万人台の田原市が、審査基準まで作って公表している。 これは正直に言って驚きました。

管理組合にとっての意味はこうです。

  • 田原市は、マンション管理を「住宅政策課の所管業務」として制度的に位置づけている
  • つまり、管理組合が住宅政策課(0531-23-3684)に相談を持ち込むこと自体が、制度の想定内である
  • 今後、市に登録された支援法人ができれば、相談先の選択肢が公的に整理される

すぐにお金になる制度ではありません。 そこは正直に書きます。ただ、「うちの市はマンションのことなど考えていない」と思い込んでいる理事長さんに、私はこのページを見せています。考えていないわけではないのです。


管理計画認定制度と長寿命化促進税制の、田原市での正しい扱い方

一方で、記事として断定できないことがあります。

田原市の住宅・空き家のページに、マンション管理計画認定制度の専用ページは見当たりません。 公営住宅、空き家等対策、定住・移住促進奨励金、民間宅地開発奨励金、宅地分譲、各種計画等、ユニバーサルデザイン、そしてマンション管理適正化支援法人の登録。この8項目が並んでいて、認定制度のページがありません。

ここで大事なのは、「ページがないこと」と「使えないこと」は別だという点です。

制度の仕組みはこうです。マンション管理計画認定制度は、その市区町村がマンション管理適正化推進計画を作っていることが前提になります。愛知県の場合、県が作った推進計画は「町村の区域」を対象としており、市の区域は当該市が自ら計画を策定する必要があります(出典:愛知県 マンション管理について)。

田原市が推進計画を策定しているかどうかは、公表情報からは確認できませんでした。ですから、この記事では「田原市で管理計画認定が受けられる/受けられない」の断定はしません。

確かめ方は電話1本です。

「マンション管理計画認定制度についてお尋ねします。田原市はマンション管理適正化推進計画を策定していますか。策定している場合、認定申請の窓口と手数料を教えてください。」

住宅政策課(0531-23-3684)です。支援法人の登録を所管している課ですから、この質問はまさに担当業務の範囲です。

なぜこの確認が大事なのか──長寿命化促進税制

認定が取れるかどうかは、マンション長寿命化促進税制の入口に関わります。この税制は、一定の要件を満たした大規模修繕工事を行った翌年度の固定資産税を、1戸あたり床面積100平方メートルまでの部分について6分の1から2分の1の範囲(参酌基準は3分の1)で減額するというものです。

現行の適用期限は令和9年(2027年)3月31日までに工事完了です。今日(2026年9月16日)から数えて、およそ18か月半しかありません。

そして、私が毎回申し上げていることがあります。律速になるのは工事ではなく総会です。

工事完了までの期間 やること
18〜15か月前 認定・税制の可否確認、劣化診断の発注
15〜13か月前 工法を決める(ここを過ぎると実質選べない)
12か月前 定時総会で工事議案を決議
着工直前 改修前の写真を撮る(高圧洗浄後は二度と撮れない)
完了後3か月以内 税の申告

この表の3行目が要点です。設計を発注してしまってから「足場ではなくロープアクセスで」と言っても、設計をやり直す時間もお金もありません。工法は設計発注前でなければ実質選べない。 これは営業トークではなく、工程の話です。

(出典:国土交通省 マンション管理計画認定制度、公益財団法人マンション管理センター 管理計画認定手続支援サービス)

なお、認定は税制だけのためのものではありません。住宅金融支援機構のフラット35およびマンション共用部分リフォーム融資の金利引下げの対象にもなります。税制の期限に間に合わなくても、認定そのものに価値が残るのはこのためです(出典:住宅金融支援機構)。


田原市の固定資産税と都市計画税──減るのはどちらか

総会の場で理事長さんが不正確なことを言ってしまう典型が、ここです。

田原市の固定資産税の税率は1.4パーセントです。都市計画税は、道路・下水道・公園の整備など都市計画事業に要する費用に充てるための目的税として課されます(出典:田原市 固定資産税・都市計画税)。

長寿命化促進税制で減額されるのは、固定資産税だけです。都市計画税は減りません。

ですから総会で「税金が3分の1になります」と言うと不正確になります。正しくは「固定資産税が、1戸あたり100平方メートルまでの部分について、翌年度1年間だけ、およそ3分の1減額されます」です。

確かめ方は簡単です。毎年春に届く納税通知書を1枚見れば、固定資産税と都市計画税がそれぞれいくらかが書いてあります。理事会で「ご自宅の納税通知書をお持ちください」と1行お願いするだけで、議論の前提が揃います。


渥美半島という立地が、外壁に何をしているか

ここからは制度の話を離れて、現場の話をします。

田原市は渥美半島のほぼ全域を市域とする市です。人口は57,157人、世帯数は23,957世帯(令和8年8月31日現在)。北は三河湾、南は太平洋(遠州灘)。市域の幅が狭く、建物のほとんどが海から数キロ以内にあります。

これは外壁にとって、かなり厳しい条件です。私が田原市の現場に立ったときに最初に見るのは、バルコニー手すりの付け根と、避難ハッチの蝶番です。

方位別の劣化要因(田原市版)

方位 主な劣化要因 重点的に見るところ
南〜南西面(遠州灘側) 飛来塩分+強い紫外線+季節風 鉄部の腐食、塗膜のチョーキング、シーリングの早期硬化
北〜北西面(三河湾側) 冬季の季節風、放射冷却による結露 コケ・藻の発生、北面の防藻防カビ仕様
東面 朝日による日較差 シーリングの伸縮疲労、目地の切れ
屋上・パラペット 風圧と塩分の複合 笠木のシーリング、ドレン周り、手すり基部

渥美半島には風力発電の風車が並んでいます。あれが立っているということは、年間を通じて安定した強い風が吹いているということです。風は塩分を運びます。そして風が強いということは、足場に張ったメッシュシートを開放しなければならない日が増えるということでもあります。

この連載で静岡県の西伊豆町を書いたとき、「夕陽が長く当たる=西面が午後じゅう紫外線と熱を浴び続ける」と書きました。田原市はそれに加えて、南面が海に正対している。紫外線と塩分が同じ面に集中します。

私が理事長さんにお伝えしているのは、劣化診断の報告書を方位別に分けてもらってくださいということです。「外壁全体の劣化率○パーセント」という報告書は、補修数量の根拠になりません。南面と北面を同じ仕様で見積もると、南面が足りず北面が余ります。

12年周期は田原市の建物に当てはまるか

前倒しを検討したほうがよいサイン(4つ)。

  1. 南面のバルコニー手すり基部に、点ではなく線で錆が出ている
  2. シーリングを指で押すと戻らない(硬化しきっている)
  3. 屋上の笠木の継ぎ目が開いている
  4. 外壁を手で触ると白い粉が付く(チョーキング)

待ってよいサイン(3つ)。

  1. 前回工事から10年未満で、南面にも異常がない
  2. 屋上防水が保証期間内で、ドレンに詰まりがない
  3. 塗り替えではなく部分補修で足りる範囲に収まっている

見積書で私が見る5つのポイント

補助金の話よりも、実はここのほうが金額のインパクトが大きい、というのが私の正直な感想です。

1. 下地補修の「仮定数量」を超えた分の単価を、契約前に契約書へ明記する

これが最重要です。ひび割れ補修○メートル、爆裂補修○か所という数量は、足場を架けて初めて実数が分かります。足場が架かった状態で管理組合が施工会社と対等に交渉することは、現実にはできません。

契約書に入れる文例を置いておきます。

「下地補修工事のうち、見積書記載の仮定数量を超過した部分については、見積書の単価を適用する。超過数量は工事監理者立会いのもとで計測し、計測記録および写真を添付のうえ書面で報告するものとする。」

これを嫌がる会社は、そこで分かります。

2. 仮設足場の内訳を、架面積の平米単価とリース期間に分解してもらう

仮設足場は工事費の15〜25パーセントを占めます。金額にするとこうです。

工事費総額 仮設足場の目安(15〜25パーセント)
3,000万円 450万〜750万円
5,000万円 750万〜1,250万円
8,000万円 1,200万〜2,000万円

20万円の植栽剪定は総会で真剣に議論されるのに、750万円の「仮設一式」という1行はそのまま可決されます。理事が不真面目なのではありません。判断材料が渡されていないだけです。

質問はこの1文で足ります。「仮設足場の金額を、架面積の平米単価とリース期間に分解して出してください。」

3. 予備日を超過した場合の足場リース延長費用は誰の負担か

田原市は風が強い土地です。高所作業の中止日は、他の地域より多く出ます。予備日の設定と、それを超えたときの負担を契約前に決めてください。

4. 高圧洗浄の排水計画

三河湾と太平洋に挟まれた地形です。排水は環境の話であると同時に、近隣との関係の話でもあります。

5. 工事監理者と施工会社の資本関係

監理者が施工会社の関連会社である場合、監理は機能しにくくなります。聞くだけです。


ここから先は、株式会社明誠のサービスの話を含みます

利益相反を明示しておきます。ここから先は私の商売の話が入ります。読み飛ばしていただいてかまいません。

私どもは、足場工法、ロープアクセス工法(無足場工法)、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから提案します。ロープアクセス工法の技術的な解説は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。

そのうえで先に申し上げます。ロープアクセス工法は万能ではありません。 私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる現場は普通にあります。

足場が有利な条件は、こういうときです。

  1. 下地補修の想定数量が多く、全面に長時間の作業が必要
  2. 外壁の形状が複雑で、水平移動の回数が多くなる
  3. バルコニー内部の作業が工事の主体を占める
  4. 屋上に十分な支点が取れない構造

逆に、田原市の立地でロープアクセスが効く条件を整理すると次のようになります。

田原市の立地条件 ロープアクセスの効き方
前面道路が狭く、4トン車が入らない 足場部材がそもそも現場に届かない。営業トークではなく物流の話
駐車場が建物に近接している 全周に足場を架けると駐車場が長期間潰れる
海沿いで風が強い 足場は風荷重の対策が必要。ロープは中止日が出るが復旧が早い
南面だけ劣化が突出している 劣化の重い面だけ手厚く、軽い面は軽くという配分ができる

そして正直に書いておくべきことがもう1つ。バルコニー内部の作業が必要な点は、工法にかかわらず同じです。 立ち入りがゼロになるわけではありません。減るのは、外部足場が窓の前に架かっている期間です。

田原市向けハイブリッドの3配分

  1. 駐車場を潰さない配分。渥美半島は1世帯1台以上が前提の土地です。全周6か月ではなく、2面ずつ各1.5か月に分ける。駐車場側だけロープにする。
  2. 低層は足場、高層はロープ。バルコニー作業が多い低層階は足場、外壁主体の高層階はロープ。
  3. 劣化度による配分。南面(遠州灘側)は足場で手厚く、北面は部分補修主体でロープ。

モデルケース2本(田原市内の一般的な規模で試算)

ケース1:田原市街地(田原駅圏)/築28年・6階建て・42戸

項目 全面足場 ハイブリッド
工事費 6,400万円 5,500万円
差額 ― ▲900万円(1戸あたり約21万円)
工期 5.5か月 4か月

ケース2:海側(赤羽根・渥美方面)/築33年・5階建て・30戸

項目 全面足場 ロープ主体
工事費 4,500万円 3,650万円
差額 ― ▲850万円(1戸あたり約28万円)
工期 5か月 3.5か月

上記は一般的な条件での目安であり、建物形状・劣化状況・仕様により変動します。

ここで申し上げたいのは金額そのものではありません。30戸で4,500万円は1戸あたり150万円。同じ工事を150戸のマンションでやれば1戸あたり30万円です。戸数が小さいほど、工法の選択が1戸あたりの負担に効く。 田原市のマンションの規模感では、ここがいちばん効きます。


今週できること(合計1時間かかりません)

  1. 建築課 開発指導係 0531-27-8606 に電話(非木造耐震診断の対象と令和8年度受付期間/10分)
  2. 住宅政策課 0531-23-3684 に電話(管理計画認定と推進計画の有無/10分)
  3. 敷地のブロック塀を採寸(道路面からの高さが1メートル以上か、延長は何メートルか/15分)
  4. 屋上に上がって笠木とドレンを見る(5分)
  5. 前回の大規模修繕の書類を確認(施工会社・時期・保証の有無/15分)

電話2本は今日中にかけられます。市役所の開庁時間は平日8時30分から17時15分です。


よくある質問(FAQ)

Q1. 田原市に、マンション共用部の大規模修繕そのものに使える補助金はありますか。
A. 令和8年9月16日時点で公表されている情報の範囲では、共用部の大規模修繕に直接出る市の補助金は見当たりません。使える可能性があるのは非木造住宅等耐震診断事業(上限100万円)とブロック塀等安全対策事業(撤去上限20万円・建替上限30万円)の2つです。

Q2. 非木造住宅等耐震診断事業は、分譲マンションでも使えますか。
A. 補助額の区分に「一戸建て以外の住宅」があり、延べ面積1,000平方メートル未満なら1平方メートルあたり3,670円、上限100万円と定められています。ただし対象は昭和56年5月以前に着工した非木造住宅です。分譲マンションが該当するかは建築課(0531-27-8606)への事前相談で確認してください(出典:田原市)。

Q3. 耐震診断が使えるなら、耐震改修も補助されますか。
A. 田原市の非木造住宅耐震改修事業の対象は「非木造の一戸建て住宅」と明記されています。共同住宅は対象外と読めます。診断は対象でも改修は対象外という非対称になっている点にご注意ください。

Q4. ブロック塀の補助はいくらですか。
A. 撤去は「実費の2分の1」「5,000円×長さ(メートル)」「上限20万円」のうち一番少ない額、建替は「実費の2分の1」「20,000円×長さ(メートル)」「上限30万円」のうち一番少ない額です。受付は年度の12月末まで、工事は年度の2月末までの完了が条件です。

Q5. 申請の前に工事契約をしてしまいました。補助は受けられますか。
A. 田原市の各ページには「交付申請前に着工(着手)された方については、補助を受けることができません」と明記されています。順番は市役所での事前相談が先です。

Q6. 長寿命化促進税制で、固定資産税も都市計画税も減りますか。
A. 減額されるのは固定資産税のみです。都市計画税は減額されません。総会の説明では「固定資産税が」と限定して言ってください。

Q7. 大規模修繕の工法は、いつまでに決めればよいですか。
A. 工事完了の15〜13か月前が目安です。設計を発注してしまってからでは、実質的に工法を選び直せません。律速になるのは工事ではなく総会です。

Q8. マンション管理適正化支援法人の登録は、管理組合に何かメリットがありますか。
A. 直接の補助金ではありません。ただし田原市がマンション管理を住宅政策課の所管業務として制度的に位置づけている証拠であり、相談を持ち込む先が明確にあるということです。


この記事のポイントまとめ

  • 田原市に共用部の大規模修繕へ直接出る補助金は見当たらない(令和8年9月16日時点)
  • 非木造住宅等耐震診断事業には「一戸建て以外の住宅」の区分があり上限100万円
  • ただし非木造住宅耐震改修事業は「一戸建て住宅」限定で、診断と改修が非対称
  • ブロック塀は撤去上限20万円・建替上限30万円、どちらも実費の2分の1が上限
  • 各制度とも交付申請前の着手は補助対象外。事前相談が最初の一手
  • 市ページの受付期間が令和7年度のままのため、令和8年度の期限は要電話確認
  • 田原市はマンション管理適正化支援法人の登録審査基準を令和8年1月16日に公表済み
  • 管理計画認定制度の市ページは見当たらず、推進計画の有無は住宅政策課へ確認
  • 長寿命化促進税制で減るのは固定資産税のみ。都市計画税は減らない
  • 渥美半島は南面に紫外線と飛来塩分が集中。劣化診断は方位別に分けて発注する
  • 仮設足場は工事費の15〜25パーセント。平米単価とリース期間に分解させる
  • 工法は工事完了の15〜13か月前までに決める。律速は工事ではなく総会

主なお問い合わせ先

窓口 電話 所管
都市建設部 建築課 開発指導係 0531-27-8606(直通) 耐震診断・耐震改修・ブロック塀の各補助
都市建設部 住宅政策課 0531-23-3684 マンション管理、空き家、住宅政策
田原市役所 代表 0531-22-1111 全般
建築課・住宅政策課 FAX 0531-22-3811 両課共通
公益財団法人マンション管理センター ― 管理計画認定の事前確認
日本マンション管理士会連合会 相談ダイヤル 03-5801-0858 管理組合の一般相談

実務メモ:建築課と住宅政策課はどちらも都市建設部で、FAX番号も0531-22-3811で共通です。市役所は田原町南番場30-1、開庁時間は平日8時30分から17時15分(本庁舎窓口は9時から16時30分)。1回の来庁で両方回れます。


出典・参考資料


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月16日時点で公表されている田原市および国土交通省・愛知県の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず田原市および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。とくに田原市の各補助金ページは、更新日が2026年4月2日でありながら受付期間欄が令和7年度受付分の記載のままとなっているため、令和8年度の受付期間は建築課(0531-27-8606)へ直接お問い合わせください。


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田原市は、共用部に直接お金を出す補助金こそ持っていません。けれども、人口5万人台の市が、マンション管理適正化支援法人の登録審査基準をわざわざ作って公表している。非木造の耐震診断に「一戸建て以外の住宅」という行を残している。私はこれを、市がマンションを忘れていない証拠だと読んでいます。

制度がないのではなく、知られていないだけのものが、まだ残っています。

総会にかける前の整理だけでも、お力になれることがあります。工法の話をする前に、まず何にいくらかかっているのかを一緒に確かめるところから。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法(無足場工法)/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法・足場工法・ハイブリッド工法の3つから最適な工法を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開しています。

最終更新:2026年9月16日

免責事項:本記事は情報提供を目的としたものであり、法務・税務の助言を目的としたものではありません。個別の判断にあたっては、各制度の所管窓口および専門家にご確認ください。

建築基準法施行令の改正政令が本日9月16日公布|11月1日施行「4つの合理化」を、マンションオーナー・管理組合はどう読むか【2026年9月】

2026年9月16日 更新

Q. 本日(2026年9月16日)公布される建築基準法施行令の改正で、私たちが所有・管理しているマンションの大規模修繕は何か変わるのでしょうか。

A. 結論から申し上げます。今回の改正4項目は、いずれも新築・供給側の手続きを軽くする方向の合理化です。既存マンションの大規模修繕の工事内容そのものを変える改正ではありません。ただし「建築規制は合理化の流れにある」という一点だけを切り取って、維持保全の義務まで緩んだと誤解するのは危険です。むしろ外壁落下に関する国の技術的助言は、この2026年に入ってからも更新され続けています。

株式会社明誠の本間です。今日は、本日公布の政令の中身を正確に押さえたうえで、「オーナー・管理組合の実務では何が変わり、何が変わらないのか」を切り分けてお話しします。


1. 結論先出し:今回の改正で「変わること」と「変わらないこと」

まず全体像を1枚の表にします。

論点 今回の改正で 管理組合・オーナーへの実務影響
型式適合認定の類型追加 変わる(拡充) 新築・建替え時の審査で影響。既存改修は原則対象外
採光規制の対象 変わる(除外対象を追加) 児童福祉施設等が中心。共同住宅の住戸には直接効かない
防火・避難規制の対象 変わる(除外対象を追加) 既存建物の改修・用途変更で緩和の可能性。告示待ち
用途地域の危険物総量規制 変わる(除外対象を追加) 燃料電池等の新設備導入で影響しうる。告示待ち
維持保全義務(建築基準法第8条) 変わらない 所有者・管理者の責任は従前どおり
定期報告・全面打診(同法第12条) 変わらない おおむね10年に一度の全面打診等は継続

出典:国土交通省「『建築基準法施行令の一部を改正する政令』を閣議決定」(令和8年9月11日報道発表)

私が理事会でこの手の話をするとき、いちばん気をつけているのは「規制が緩くなった=点検も手を抜いていい」という受け取られ方をさせないことです。今回は、緩和されたのは入口(つくるとき)の手続き、緩和されていないのは出口(持ち続けるとき)の責任、という整理をしていただくのが正確だと考えています。


2. 何が変わるのか:改正政令の4項目を整理する

国土交通省の報道発表によれば、政令の概要は次の4点です。公布は令和8年9月16日(水)、施行は令和8年11月1日(日)を予定しています。

2-1. 型式適合認定の類型の追加

現行の型式適合認定(あらかじめ国の認定を受けた型式について、建築確認の審査を省略できる制度)の類型は、①建築物全体、②建築物全体から建築設備を除いたもの、③建築設備、の3つでした。

ここに、「建築物の構造耐力に係る規定の適合についての型式」が追加されます。

なぜこれが必要になったのか。報道発表の背景欄には「近年の建築資材の供給環境の変化」と明記されています。つまり、認定を取った型式のうち特定の建材だけが調達できなくなったとき、これまでは全体の型式が使えなくなる可能性がありました。今後は構造耐力部分の審査省略は維持したまま、調達できなくなった資材だけを個別に確認審査にかけるという柔軟な運用が可能になります。

2-2. 採光規制の対象の合理化

採光規制の対象となる児童福祉施設等から、「利用者の滞在時間が短いことその他の理由により衛生上支障がないものとして国土交通大臣が定めるもの」を除外します。具体的な基準は別途告示で規定されます。

2-3. 防火上及び避難上の規制の対象の合理化

建築基準法施行令第109条の2の2、ならびに第112条第1項・第4項・第5項・第11項の規制対象となっている建築物のうち、「その構造及び用途並びに周囲の状況を考慮して(避難上及び)防火上支障がないものとして国土交通大臣が定めるもの」を除外します。こちらも具体的な基準は告示で規定されます。

令第112条は防火区画(火災の延焼を区切るための壁・床・防火設備による区画)に関する条文の中心です。共同住宅の改修や用途変更で、この条文が壁になって計画が進まない——という場面を、私も現場で何度か見てきました。

2-4. 用途地域における危険物の総量規制の合理化

圧縮ガス又は可燃性ガスを燃料として使用する設備等のうち、「安全上及び防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合する設備」によって貯蔵・処理されるものについては、用途規制における危険物から除外されます。

報道発表のタイトルにある「新たな設備の導入を促進するため」というのは、主にここを指しています。


3. 「告示待ち」であることの実務上の意味

ここが今回いちばん大事な実務ポイントです。4項目のうち3項目(採光・防火・危険物)は、具体的な基準が「別途告示で規定」とされています。

つまり、9月16日に政令が公布されても、11月1日の施行日時点で告示の内容を確認しないと、自分の物件が除外対象に当たるかどうかは判断できません。

私はこれを、設計事務所や施工会社に対して次のように確認するようお勧めしています。

  1. 検討中の改修・用途変更計画が、令第112条や令第109条の2の2に抵触しているか
  2. 抵触している場合、今回の告示で除外対象になり得る性格のものか
  3. 告示の公表時期と、それを待って計画を組み直す場合のスケジュール影響

「法律が変わったから安くなる」と早合点して工期を組み替えると、告示の中身次第では逆に遅れます。正直に申し上げますが、私はこの手の前のめりで痛い目を見た現場を、20年近いなかで何度も見てきました。制度は、条文と告示がそろって初めて実務になります。


4. では、大規模修繕への影響はどこにあるのか

読者のみなさまが知りたいのは、ここだと思います。私の見立ては次のとおりです。

4-1. 直接の影響は限定的

外壁改修、屋上防水、鉄部塗装、シーリング打ち替え、タイル補修といった一般的な大規模修繕の工事項目に、今回の改正が直接効くことはほぼありません。これらは建築確認を要しない修繕・模様替えに該当することが多く、型式適合認定とも採光規制とも接点が薄いためです。

自社に有利な方向に話を膨らませるつもりはありません。「法改正で大規模修繕が安くなります」といった営業トークを見かけたら、その根拠条文を聞いてみてください。

4-2. 間接の影響が出うる3つのケース

一方で、次のようなケースでは影響が出る可能性があります。

ケース 関係する改正項目 想定される影響
1階店舗部分の用途変更を伴う改修 防火・避難規制の合理化 防火区画の要求が緩和され、工事範囲が縮小する可能性
共用部への燃料電池・非常用発電設備の導入 危険物総量規制の合理化 用途地域の制約で断念していた設備が検討可能になる可能性
建替え・一部建替えの検討 型式適合認定の類型追加 建材調達難による計画停止のリスクが下がる可能性

いずれも「可能性」までで、告示を待たなければ確定的なことは申し上げられません。


5. 合理化が進んでも緩まないもの——維持保全と定期報告

ここからが本題です。

建築基準法第8条は、建築物の所有者・管理者・占有者に対して、建築物とその敷地・設備を常時適法な状態に維持するよう努めることを求めています。これは今回の改正で何も変わっていません。

そして第12条の定期報告制度。国土交通省の解説によれば、①建築物、②建築設備、③昇降機等、④防火設備について、一定条件を満たす建築物等の所有者・管理者の義務として、専門技術を有する資格者に調査・検査をさせ、結果を特定行政庁へ報告することが定められています(出典:国土交通省「建築基準法に基づく定期報告制度について」)。

5-1. 外壁の「10年に一度の全面打診」は継続

外壁調査の要求水準は、以下のとおりです。

外装仕上げ材等におけるタイル、石貼り等(乾式工法によるものを除く。)、モルタル等の劣化及び損傷の状況の調査については、平成20年国土交通省告示第282号において、おおむね6ヶ月から3年以内に一度の手の届く範囲の打診等に加え、おおむね10年に一度、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等を行うこととされています。

出典:国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」

さらに同ページによれば、令和4年1月18日付けで告示第282号が一部改正され、打診以外の調査方法として、無人航空機(ドローン)による赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するものが明確化されています。同等以上の精度の判定にあたっては、一般財団法人日本建築防災協会が取りまとめたガイドラインを参照することとされています。

5-2. 2026年に入ってからも更新が続いている

注目していただきたいのは、この分野の技術的助言が今も更新中だという事実です。同じ国交省のページには、令和7年6月30日付「建築物の定期調査報告における落下防止措置付き外壁タイルの取扱いについて(技術的助言)【最終改正】」、そして令和8年7月21日付事務連絡「落下防止措置付き外壁タイルの性能検証法について」が掲載されています。

つまり、入口(新築の手続き)は合理化の方向に動いている一方で、出口(外壁の落下防止)はむしろ精緻化されているわけです。私はこの非対称を、オーナー・管理組合のみなさまに知っておいていただきたいと思っています。


6. 数字で見る「なぜ今、維持保全なのか」

制度の話が続いたので、ストックの数字を確認します。

指標 数値 時点 出典
分譲マンションストック総数 約723.6万戸 2025年末 国土交通省
うち旧耐震基準ストック 約103万戸 1981年5月31日以前建設分 同上(グラフ注記)
築40年以上のマンション 約158.8万戸 2025年末 国土交通省
10年後(2035年末)の築40年以上 約313.1万戸(約2.0倍) 推計 同上
20年後(2045年末)の築40年以上 約503.6万戸(約3.2倍) 推計 同上

いずれも国土交通省が2026年8月31日に更新した最新版の資料です。

築40年以上が10年で2.0倍、20年で3.2倍。これは「いずれ来る話」ではなく、今まさに始まっている話です。単純に言えば、今後10年で築40年以上の戸数が今より約154万戸増える計算になります。点検・診断の需要が積み上がっていくなかで、それを実際に見て回る職人の数が追いつくかどうか。私が業界の内側でいちばん現実的に心配しているのは、そこです。

数字を戸あたりに直すと実感が湧くかもしれません。総戸数100戸のマンションで、大規模修繕の総額が1億5,000万円だとすると1戸あたり150万円。このうち仮設足場費が全体の2割を占めるなら、1戸あたり30万円が「工事そのものではない費用」ということになります。もちろん建物の形状と規模で比率は大きく動きますので、これは考え方の例としてお受け取りください。


7. 現場から:10年に一度の全面打診を、どう組み立てるか

ここからは制度解説ではなく、私の現場での実感をお話しします。

全面打診等が必要になったとき、選択肢は大きく3つあります。

7-1. 足場仮設による打診

もっとも確実で、そのまま補修工事に移行できるのが強みです。ただし足場費が先に発生するため、「調査のためだけに足場を架ける」という判断は、コスト面でどうしても重くなります。修繕工事と同時に実施する前提なら、これが第一候補になります。

7-2. ロープアクセス工法(無足場工法)による打診

産業用ロープで職人が壁面に直接アクセスし、テストハンマーで打診していく方法です。足場を架けないため仮設費を大きく抑えられ、居住者のバルコニー前に足場が立たないので生活への影響も小さく済みます。一方で、庇や入隅が複雑な形状、上部にアンカーを取れない構造では適用が難しくなります。万能ではないというのが、私が現場で20年近く見てきた率直な結論です。ロープアクセス工法の技術的な背景や安全基準は、姉妹サイトロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。

7-3. ドローンによる赤外線調査

前述のとおり、告示改正で打診と同等以上の精度を有するものが明確化されました。広い面を短時間でスクリーニングできるのが利点です。ただし、天候・日射条件・撮影角度の制約があり、ガイドラインに沿った実施体制が求められます。私の経験上、ドローンで面を絞り、怪しい箇所をロープアクセスで打診するという組み合わせが、費用と精度のバランスが取りやすい場面が多いと感じています。

7-4. 私が理事長さまにいつもお伝えしていること

3つの工法を持っている会社と、1つしか持っていない会社では、出てくる提案がまるで変わります。足場しか持たない会社は足場の見積を出し、ロープしか持たない会社はロープの見積を出す。当たり前のことですが、これが見積比較を難しくしている最大の理由です。

明誠では、通常の足場仮設・ロープアクセス工法・その両方を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物の形状と予算に合わせて組み立てるようにしています。詳しくはロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。

なお、この章は自社サービスの紹介を含みます。判断の材料としてお読みいただき、他社の提案と比較していただくのが健全だと考えています。

7-5. 3つの工法を、コストと制約で比べる

判断の材料として、3つの手法を同じ軸で並べておきます。数値は建物の形状・階数・立地で大きく変動しますので、傾向としてお読みください。

手法 仮設費 居住者への影響 精度 向かないケース
足場仮設+打診 高い(比率は建物ごとに大きく異なります) 大きい(バルコニー前の視界・防犯・日照) 高い。そのまま補修に移行できる 調査のみを目的とする場合
ロープアクセス工法+打診 低い(足場を架けない) 小さい(作業時間帯のみ) 高い。触って確かめられる 上部にアンカーを取れない構造、庇や入隅が複雑な形状
ドローン赤外線調査 低い ほぼない スクリーニング向き。ガイドライン準拠が前提 悪天候、日射条件が取れない面、飛行制限区域

私がいちばんもったいないと感じるのは、「調査のために足場を架けるのは高いから」という理由で、全面打診等の実施そのものを先送りしてしまうケースです。先送りしているあいだにタイルの浮きが進行し、いざ工事となったときに補修数量が跳ね上がる——これは私が現場で何度も見てきた、いちばん悔しいパターンです。足場が高いなら、足場を使わない方法を検討するという選択肢が、今はあります。

7-6. 発注者が見積時に確認したい3点

工法を問わず、高所作業を伴う調査・工事を発注する際に、発注者側で確認しておきたい項目です。

  1. 作業員の保有資格:どの資格を持つ技術者が、何名配置されるか
  2. 墜落制止用器具・アンカーの計画:どこに、どのように支点を取るか
  3. 安全管理体制と保険:作業手順書の有無、労災保険・請負業者賠償責任保険の加入状況

これらを書面で提示できない業者は、価格が安くても候補から外していただいて構わないと私は考えています。安全にかかる費用は、削ってはいけない部分です。


8. 今回の改正で外壁の全面打診は不要になる?→いいえ、継続します

よく聞かれる論点を、Yes/Noで答えられる形に整理します。

質問 答え 補足
今回の改正で大規模修繕の工事費は下がる? いいえ 新築・供給側の手続き合理化が中心
施行は今日から? いいえ 公布が2026年9月16日、施行は2026年11月1日予定
除外対象かどうかは今わかる? いいえ 採光・防火・危険物の3項目は告示待ち
外壁の全面打診は不要になる? いいえ 告示第282号の枠組みは継続
ドローン調査は打診の代わりになる? 条件付きで可 打診と同等以上の精度とガイドライン準拠が前提
分譲マンションは全て定期報告の対象? いいえ 対象は規模・用途等により特定行政庁が指定

最後の行は誤解が多いところです。定期報告の対象となる建築物(特定建築物)の範囲は、政令で定めるもののほか特定行政庁が指定します。つまり、同じ規模のマンションでも、東京都と他県、あるいは区によって扱いが異なることがあります。ご自身の物件がどうかは、所在地の特定行政庁(都道府県または建築主事を置く市区)の建築指導課にご確認いただくのが確実です。


9. 管理組合・オーナーが、この9月にやっておきたい5つのこと

読み終えたあと何をすればいいのか。5つに絞ります。

(1)前回の定期調査報告書を引っ張り出す

全面打診等を最後に行ったのがいつか。報告書の「外装仕上げ材等」の欄に日付が入っています。10年を超えていないか、まずそこを確認してください。

(2)台風期を越えたあとの目視点検を予定に入れる

9月は台風シーズンです。強風のあとは、外壁タイルの浮きやシーリングの破断、笠木の浮き上がりが顕在化しやすくなります。エントランス上部、バルコニー先端、庇の裏側——人が通る場所の真上を、まず見てください。

(3)長期修繕計画に「調査費」の行があるか確認する

修繕工事費は載っていても、調査・診断費が抜けている計画書をよく見ます。全面打診等を足場で行う前提なのか、無足場で行う前提なのかで、計画上の金額は変わります。

(4)11月1日以降、告示の内容を設計者に確認する

用途変更や大掛かりな改修を検討中の管理組合・オーナーは、施行日以降に告示の中身を設計事務所に照会してください。今の時点で結論を出す必要はありません。

(5)見積は「工法が違う3社」から取る

同じ工法の3社から取っても、比べているのは単価だけです。工法そのものの選択肢を比べられる形にしておくと、判断材料が一段増えます。


10. よくある質問(FAQ)

Q1. 建築基準法施行令の改正政令は、いつ施行されますか。

A. 公布が令和8年(2026年)9月16日(水)、施行は令和8年11月1日(日)を予定しています(出典:国土交通省報道発表)。ただし採光規制・防火避難規制・危険物規制の3項目については、具体的な基準が別途告示で規定されるとされており、告示の内容確認が実務上の前提になります。

Q2. 今回の改正で、マンションの大規模修繕の補助金が増えることはありますか。

A. 今回の政令改正は建築規制の合理化を内容とするもので、補助制度の改正ではありません。補助金・助成金は国の予算事業や各自治体の制度として別途運用されていますので、そちらの募集要項をご確認ください。年度によって補助率・上限額・受付期間が変わることがあります。

Q3. 「型式適合認定」とは何ですか。素人にもわかるように教えてください。

A. あらかじめ国(または指定認定機関)が「この型式なら建築基準法の規定に適合している」と認定しておく制度です。認定を受けた型式を使う建築物は、建築確認の審査でその部分の審査を省略できます。工業化住宅やプレハブ工法などで広く使われています。今回、この認定の単位に「構造耐力に係る規定への適合」という類型が追加されました。

Q4. 外壁の全面打診を、ドローンだけで済ませることはできますか。

A. 平成20年国土交通省告示第282号は令和4年1月に一部改正され、打診以外の調査方法として、無人航空機による赤外線調査であってテストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するものが明確化されました。同等以上の精度の判定にあたっては、一般財団法人日本建築防災協会が設置した委員会で取りまとめられたガイドラインを参照することとされています。したがって「ドローンなら何でも可」ではなく、ガイドラインに沿った実施体制が前提になります。詳細は所在地の特定行政庁にご確認ください。

Q5. ロープアクセス工法は足場より安全性が劣るのではないですか。

A. どちらが安全かを一般論で断じることはできません。ロープアクセス工法は、二重のロープ系統(作業用と墜落制止用)を基本とし、アンカーの設置強度、資格を持つ技術者の配置、作業手順書の整備といった条件が満たされて初めて成立する工法です。逆に言えば、それらの条件が満たされているかどうかを発注者側が確認しないまま安さだけで選ぶと、リスクは上がります。見積を取る際は、作業員の保有資格、アンカーの設置計画、安全管理体制の3点を書面で確認されることをおすすめします。


11. 出典・参考資料

※本記事は2026年9月16日時点で公表されている情報にもとづいています。制度は変更される可能性がありますので、最新の内容は各公式サイトでご確認ください。また、個別の物件が定期報告の対象となるかどうか、告示の除外対象に当たるかどうかの判断は、所在地の特定行政庁および設計者にご確認ください。本記事は法的助言を目的としたものではありません。


おわりに

制度が合理化されるのは、基本的には良いことだと私は思っています。使えない規制が現場を縛り続けても、誰も得をしません。

ただ、合理化のニュースが流れると、決まって「もう点検しなくていいらしい」という話が独り歩きします。今回の改正は入口の手続きの話で、みなさまが持ち続けている建物の責任の話ではありません。ここだけは、混ぜずに読んでいただきたいと思います。

10年に一度の全面打診が近いかもしれない、長期修繕計画に調査費が入っていないかもしれない——そう思い当たった方は、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームからどうぞ。

次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


株式会社明誠 代表取締役 本間 幸紘
東京都知事認可(般-29)第148121号
専門分野:マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事、ロープアクセス工法(無足場工法)、ハイブリッド工法による工法最適化提案
実務経験:建設業界20年近く。首都圏を中心に大規模修繕工事を手がけ、日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズ展開を行う。一般社団法人全国建設業支援協会(JCSA)代表理事。


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江東区の管理組合・オーナーが無料で使える相談と派遣9選|10月3日のよろず相談会は9月18日17時締切、耐震化アドバイザーは8回まで無料

江東区の管理組合・オーナーが無料で使える相談と派遣9選|10月3日のよろず相談会は9月18日17時締切、耐震化アドバイザーは8回まで無料

2026年9月15日 更新

「うちは賃貸なので、区の相談窓口は関係ないと思っていました」

先月、東陽町の賃貸マンションのオーナーさまから、そう言われました。築31年、5階建て24戸。外壁の塗り替えをそろそろ考えたいが、どこに聞けばいいのか分からない、というご相談でした。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンションやビルの外壁の仕事をしてきました。足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、両方の現場を経験してきた人間です。

このオーナーさまの思い込みは、江東区に限っては外れています。江東区の無料メニューは、分譲マンションの管理組合だけでなく、賃貸マンションの所有者も対象に含めているものが複数あるのです。マンションアドバイザー派遣事業も、10月3日に開かれるマンションよろず相談会も、対象に賃貸オーナーが明記されています。

そしてもうひとつ。そのよろず相談会の申込締切は、2026年9月18日(金曜日)17時です。この記事を公開している時点で、残り3日しかありません。

今日は、江東区のマンション管理組合と賃貸マンションオーナーさまが、お金をかけずに使える相談・派遣を9つ、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の情報で整理します。


結論:江東区で無料で使える相談・派遣は9つある

先に一覧でお示しします。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用 申込先
1 マンションよろず相談会 マンション管理士・弁護士・一級建築士 無料(10月3日・1件1時間) 住宅課 03-3647-9473
2 分譲マンション無料相談会(区) マンション管理士 無料(毎月第2水曜・1件1時間) 住宅課 03-3647-9473
3 分譲マンション専門相談(東京都) 弁護士・一級建築士 無料(1回20分) 区の窓口経由で都へ
4 マンションアドバイザー派遣事業 管理/建替え・改修アドバイザー 派遣料無料 住宅課 03-3647-9473
5 耐震化アドバイザー派遣制度 区に登録した建築士 無料(同一建物8回まで) 安全都市づくり課 03-3647-9764
6 建築・測量登記無料相談 建築士・土地家屋調査士 無料(予約不要) 建築調整課 03-3647-9754
7 東京都 マンション管理士無料派遣 マンション管理士 無料(防災・認知症 各2回まで) 東京都マンション管理士会
8 分譲マンション総合相談窓口(東京都) 相談員 無料 03-6427-4900
9 消費者相談(江東区消費者センター) 消費生活相談員 無料(予約不要) 03-3647-9110

これに加えて、勉強会や交流会に講師を派遣する「マンション支援事業」、調査費の3分の1を助成する「マンション計画修繕調査支援事業」もあります。後者は費用助成なので9つの外に置きますが、後半で触れます。

ここからが本題です。


1. マンションよろず相談会:管理士・弁護士・建築士が同じ日に揃う

江東区の窓口をひととおり見てきた私の感覚で言うと、この相談会が一番お得です。理由は3つあります。

3職種が同じ日に揃う

区の公式ページには、次のように書かれています。

項目 内容
名称 マンションよろず相談会~集合住宅に関するさまざまなお悩みに対応~
相談員 マンション管理士、弁護士、一級建築士
日時 2026年10月3日(土曜日)9時30分~12時30分
場所 文化センター6階
対象 区内の分譲マンションにお住まいの方、区内賃貸マンションのオーナーの方
定員 申込順15件・1件1時間以内
費用 無料
募集期間 2026年9月4日(金曜日)8時30分~9月18日(金曜日)17時まで
申込 電話または窓口(住宅課 03-3647-9473)

(出典:江東区「分譲マンション相談会」/更新日 2026年8月31日)

普通、こういう相談会は職種が1つです。マンション管理士の相談会に行けば、規約や総会の話はできますが、「この外壁はあと何年もつのか」を聞いても専門外です。逆に建築士の相談会では、管理会社との契約の話は踏み込めません。

よろず相談会は、そこが違います。区が示している相談テーマは、維持管理、売買や契約、建築・設備・耐震、隣人トラブル、そして賃貸マンションの維持管理まで。1件1時間という枠も、他の窓口(20分〜30分が多い)と比べて長い。

賃貸マンションのオーナーも対象

冒頭の東陽町のオーナーさまに私がお伝えしたのは、この一点です。「区内賃貸マンションのオーナーの方」が対象に明記されている。区の無料窓口は分譲マンションの管理組合向けが中心ですが、この相談会は違います。

収益不動産として賃貸マンションを持っておられる方は、修繕のタイミングと資金計画を一人で抱え込みがちです。管理組合のように議論する相手がいませんから、判断がすべて自分に返ってくる。だからこそ、外部の専門家に1時間もらえる機会は貴重だと思います。

締切は9月18日17時

申込は9月18日(金曜日)17時まで。定員15件の申込順です。この記事をお読みになった時点で枠が残っているかは分かりませんが、電話1本の確認で済みます。住宅課 03-3647-9473。

もし今回間に合わなくても、次の2で触れる毎月の相談会があります。


2. 分譲マンション無料相談会:毎月第2水曜、1件1時間

区が原則として毎月1回開いている、マンション管理士による無料相談会です。

項目 内容
相談員 マンション管理士
対象 区内分譲マンションの管理組合役員、区分所有者等
日時 原則毎月第2水曜日の午後
定員 予約制・6件(1件1時間以内)
費用 無料
申込 電話または窓口(住宅課 03-3647-9473)

(出典:江東区「分譲マンション相談会」)

ここで気をつけていただきたいのが、募集期間の告知のされ方です。区のページには、原則として毎月21日号の区報に掲載し、25日頃から第1金曜日までを募集期間としている、と書かれています(GWや年末年始を挟む場合は11日号に掲載されることもあるとの注釈つき)。

つまり、申し込める期間は月の下旬から翌月第1金曜日までの10日ほどしかありません。「来月の理事会の前に相談したい」と思った時点で募集が終わっていた、ということが起こりやすい仕組みです。

私が理事長さまにお勧めしているのは、区報の21日号を毎月見る習慣をつけるか、住宅課に電話して「次回の募集はいつからですか」と先に聞いておくことです。定員6件という枠も、決して大きくありません。

相談時間は1件1時間。冒頭に述べたとおり、他区の相談会が30分のところが多いなかで、江東区は長いほうです。1時間あれば、議事録を広げて具体的な話ができます。


3. 分譲マンション専門相談(東京都):区の相談を受けた次の段階

区の相談会で「これは弁護士や建築士の領域だ」と判断された場合に進める、東京都の相談枠があります。

項目 内容
実施 東京都都市整備局
位置づけ 区における相談体制の補完
対象となる相談 特に弁護士、一級建築士に相談することが必要と考えられる相談
弁護士相談 月3回 13時〜15時(完全予約制)
建築士相談 月1回 13時〜15時(完全予約制)
相談時間 1回20分程度
申込 区の窓口を経由して都へ申込

(出典:江東区「分譲マンション相談会」)

区のページには、まず区の分譲マンション無料相談会に参加し、東京都での相談が適切と相談員が判断した場合に利用できる、と明記されています。いきなり都に申し込む窓口ではありません。

この順番は、意外と知られていません。「管理会社との契約でもめている」「施工不良の疑いがある」といった、法律や技術の専門性が要る話でも、入口は区の相談会です。2の毎月第2水曜の枠を押さえることが、都の専門相談への通り道になっています。

制度が階段になっている、ということです。私はこれを、理事長さまにホワイトボードに描いてお見せするようにしています。


4. マンションアドバイザー派遣事業:区が派遣料を負担する

ここからが、江東区の主力メニューです。

公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターが実施する「マンション管理アドバイザー制度」と「マンション建替え・改修アドバイザー制度」のアドバイザーを、区が無料で派遣します。

項目 内容
派遣内容 マンション管理アドバイザー制度(講座編・相談編)/マンション建替え・改修アドバイザー制度(入門編・検討書の作成)
派遣対象 区内の分譲マンション管理組合(管理組合設立に向けて結成された区分所有者の任意の団体を含む)および区内にある賃貸マンションの所有者
費用 派遣料は無料(選択コースにより必要なテキスト代、キャンセル時の違約金等は申請者負担)
申請期限 派遣希望日の30日前まで
申請者名義 分譲は管理組合理事長名、賃貸は所有者名

(出典:江東区「マンションアドバイザー派遣事業」/更新日 2026年3月13日)

ここで押さえていただきたい点が3つあります。

① 管理組合がなくても申請できる

派遣対象に「管理組合設立に向けて結成された区分所有者の任意の団体を含む」とあります。理事会が機能していない、そもそも管理組合がない、という物件でも、設立に向けた任意の団体であれば申請できるということです。

江東区の内陸側、東陽・木場・南砂・大島のあたりには、20戸前後の中層マンションが数多くあります。「うちは組合がないから相談もできない」という思い込みは、ここで外れます。

② 賃貸マンションの所有者も対象

ここでも賃貸オーナーが対象です。江東区の無料メニューの設計思想が、区内のマンションストック全体の維持管理水準を上げることにある、と読めます。

③ 30日前という締切

派遣希望日の30日前まで。1で触れたよろず相談会が「3日後が締切」なのに対して、こちらは「1か月先の予定を今決める」制度です。

理事会の年間スケジュールを立てる段階で、アドバイザーを呼ぶ回を決めておく。これだけで使い勝手がまるで変わります。私が現場で見ていて一番もったいないと感じるのは、「使えたはずの無料枠を、締切を知らずに逃している」ケースです。

なお申請は電子申請にも対応しており、区の公式ページから「江東区マンション【管理】アドバイザー派遣申請」「江東区マンション【建替え・改修】アドバイザー派遣申請」のフォームに進めます。辞退届や完了報告書も電子申請が用意されています。窓口に行く時間が取りにくい理事長さまには、こちらが現実的だと思います。

管理計画認定を目指すならCコースの派遣料助成も

区は、管理計画認定の取得を促進するため、まちづくりセンターのマンション管理アドバイザーCコース(支援編)を利用して管理計画認定を取得した管理組合に、アドバイザー派遣料を助成しています。あわせて、認定を取得した管理組合には、マンション内に掲示できる区独自の管理計画認定証が進呈されます。

(出典:江東区「マンション管理計画認定制度」/更新日 2026年9月1日)

管理計画認定制度は、マンション管理適正化法に基づき、管理状況が一定水準にあることを自治体が認定する制度です。認定を受けると、住宅金融支援機構のフラット35やマンション共用部分リフォーム融資、マンションすまい・る債の優遇、マンション長寿命化促進税制の適用要件への該当といった効果が期待できます。

なお江東区の認定基準には区独自の基準が含まれており、認定基準の資料では該当箇所に下線が引かれています。申請を検討している管理組合は、まず区の住宅課住宅指導係に事前相談を行うよう、区が明記しています。ここは飛ばせません。


5. 耐震化アドバイザー派遣制度:同一建物で8回まで無料

住宅課ではなく、安全都市づくり課が所管している無料派遣です。私は、江東区のメニューのなかでこれが一番「回数が太い」と思っています。

項目 内容
派遣される専門家 区が委託した派遣機関(一般社団法人東京都建築士事務所協会江東支部)が選任し、区に登録した建築士
派遣対象者 派遣対象建築物を所有する個人・法人(中小企業に限る)、分譲マンションの管理組合(管理組合法人を含む)
対象建築物 昭和56年5月31日以前に建築(工事着工)された非木造の建築物ほか、区の助成要綱に定める建築物
回数の上限 同一の派遣対象建築物につき原則8回
費用 無料
令和8年度の申請受付期限 2026年12月28日(月曜日)
問合せ 都市整備部 安全都市づくり課 安全都市づくり係 03-3647-9764

(出典:江東区「耐震化アドバイザー派遣制度」/更新日 2026年4月1日)

助言の中身は「合意形成」まで含む

区が示しているアドバイザーの業務は、次の3つです。

  1. 耐震計画、構造及び設備等の建築技術的事項の助言
  2. 耐震診断・耐震設計及び耐震改修に関する事項等の助言
  3. 管理組合等の合意形成に関する事項等の助言

3つ目を太字にしました。技術の話だけでなく、総会で決議までもっていくプロセスの助言が業務に入っている。これは大きいと思います。耐震改修が進まない理由は、技術的に難しいからではなく、住民の合意が取れないからであることのほうが多いからです。

提出書類は4点(分譲マンションの場合)

  1. 耐震化アドバイザー派遣申請書(別記第1号様式)
  2. 建築確認通知書、検査済証の写し、または台帳記載事項証明書
  3. 委任状(申請者以外が代理で手続きする場合)
  4. マンション管理規約の写し

このうち2番の「建築確認通知書、検査済証」が、実務では一番のつまずきどころです。築40年を超える物件では、書類が管理会社の倉庫の奥にあるか、そもそも所在不明ということが起こります。台帳記載事項証明書で代替できますので、早めに確認しておかれるとよいと思います。

なお、令和6年11月1日から新様式になっていますので、申請書は区の公式ページから最新のものをダウンロードしてください。

耐震化の費用助成との併用ができる

区のページには「耐震化の費用助成制度との併用ができます」と明記されています。アドバイザーの助言を受けながら、診断や改修の助成を申請していく流れが想定されています。

受付期限は2026年12月28日。年内です。昭和56年5月31日以前に着工された建物をお持ちの管理組合・オーナーさまは、年度が変わるのを待たずに動かれるほうが確実です。


6. 建築・測量登記無料相談:予約不要で建築士に聞ける

ここまで紹介した窓口は、すべて予約制でした。予約なしで行けるのが、この相談です。

項目 内容
相談員 一般社団法人東京都建築士事務所協会江東支部会員、東京土地家屋調査士会江東支部会員
開催日時 原則毎月第2水曜日(8月と2月は第1水曜日)13時00分〜15時00分(受付は14時50分まで)
開催場所 原則として区役所庁舎2階ホール(エレベーター前)
相談内容 新築・増改築・耐震・空家・大雨浸水の改修等に関するプラン、資金、日照問題、登記、土地測量等
費用 無料
予約 不要

(出典:江東区「建築・測量登記無料相談」/更新日 2026年3月16日)

区のページには「設計図面や資料のある方はご持参ください」「事前予約等は必要ありませんので、お気軽にお越しください」と書かれています。

相談テーマに「大雨浸水の改修等」が入っているのが、江東区らしいところだと思います。区の東半分は海抜ゼロメートル地帯を含む低地です。豪雨時の地下ピットや機械式駐車場の浸水、受変電設備の位置といった相談は、この窓口が受け止めてくれます。

なお、2の分譲マンション無料相談会も原則第2水曜日の午後です。日程が重なる月であれば、午前に管理士、午後に建築士、と1日でまとめてしまう使い方も考えられます。開催日は年度によって変わりますので、事前に区の案内チラシでご確認ください。


7. 東京都のマンション管理士無料派遣:防災・認知症の2テーマ

区の制度とは別枠で、東京都が実施している無料派遣があります。防災力向上と認知症対応の研修を受けたマンション管理士が派遣される事業です。

項目 内容
対象 都内に所在するマンション管理組合
回数 防災力向上・認知症対応 各2回まで(無料)
回数の通算 令和5〜7年度に本事業の派遣を受けている場合、その回数も上限に含まれる
令和8年度の受付期間 2026年6月23日(火曜日)〜2027年2月26日(金曜日)
募集数 防災力向上・認知症対応あわせて160件(達したときは新規申込を締切)
申込 東京都マンション管理士会のホームページから

(出典:東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」)

アドバイスの例として都が挙げているのは、自主防災組織の設置や強化の方法、災害時にも活用できる居住者等名簿の作成、発災時の緊急対応を定める管理規約の整備方法、カード式防災マニュアル等の効果的な手法(防災力向上)、認知症の可能性のある居住者への理解や対応方法、地域包括支援センター等との連携方法、バリアフリー改修を含む長期修繕計画の策定(認知症対応)などです。

江東区は、荒川と隅田川に挟まれた低地と、湾岸の埋立地からなる区です。水害対策は避けて通れないテーマですし、豊洲・東雲・辰巳の大規模マンションでは、初期入居層の高齢化が同時に進みます。防災と高齢化は、江東区の管理組合にとって同じ時期に来る課題です。

注意点は2つ。過去の派遣回数が通算でカウントされることと、160件という募集上限があることです。令和5年度から続いている事業ですので、すでに使っている管理組合は残り回数を確認してから動かれるとよいと思います。

区のアドバイザー派遣(4)と都の無料派遣(7)は別枠です。両方を組み合わせれば、年間で確保できる専門家の時間はかなりのものになります。


8. 分譲マンション総合相談窓口:管理状況届出の相談はここ

東京都には「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」があり、これに基づく管理状況届出制度が令和2年4月から始まっています。

項目 内容
届出が必要なマンション 昭和58(1983)年12月31日以前に新築された分譲マンションのうち、居住の用に供する独立部分が6戸以上のもの
任意の届出 これ以外の分譲マンションも任意で届出可能
更新 前回の届出から5年以内ごとに更新の届出が必要
届出方法 管理状況届出システムへの入力、または区への届出書の提出
届出先(郵送・持参) 江東区都市整備部住宅課住宅指導係(区役所5階1番窓口)
届出制度の相談 分譲マンション総合相談窓口(公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンター)03-6427-4900
条例に関する問合せ 東京都住宅政策本部マンション課 03-5320-5004

(出典:江東区「「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」に基づく管理状況届出制度」/更新日 2026年3月2日)

区のページには、届出がない場合(更新を含む)、条例に基づき調査または指導勧告を行う場合があると書かれています。これは「使える制度」というより「果たすべき義務」ですが、無料の相談窓口が用意されているという意味で、9つのなかに入れました。

そして私が申し上げたいのは、ここが更新漏れの起きやすい制度だということです。5年以内ごとの更新。理事が1年や2年で交代する管理組合では、5年前に誰が何を届け出たかの記憶が組織から消えています。届出書の控えがファイルに残っていなければ、まず総合相談窓口(03-6427-4900)に電話して、自分のマンションの届出状況を確認するところからです。


9. 消費者相談:管理会社・工事業者とのトラブル窓口

管理組合の相談は住宅課、区分所有者個人の消費者トラブルは消費者センター。窓口が分かれます。

項目 内容
名称 江東区消費者センター 消費者相談
相談専用ダイヤル 03-3647-9110
相談時間 9時30分〜16時30分
休業日 日曜日・祝日、第2・第4月曜日(祝日と重なる場合は火曜日も休み)、土曜日不定休、年末年始
対象 江東区在住・在勤・在学の方
相談方法 電話または来所(予約不要)
費用 無料(通話料は自己負担)

(出典:江東区「消費者相談」/更新日 2026年3月31日)

時間外や休館日で急ぐ場合は、東京都消費生活総合センター(03-3235-1155、祝日・年末年始を除く月曜〜土曜の9時〜17時)が案内されています。

私がこの窓口を記事に入れているのには、理由があります。大規模修繕の時期が近づくと、区分所有者のご自宅に「お宅の外壁、危ないですよ」と訪問してくる業者が増えるからです。

足場も組まずに外から見ただけで「危ない」と断定できる範囲は、実はそれほど広くありません。屋上の防水層も、タイルの浮きも、外から見えない部分に本当の劣化が出ます。訪問を受けて不安になった区分所有者の方が、理事会を通さずに個別に契約してしまう。そういう事例を、私は何度か見てきました。

区のページには、相談は原則ご本人からとしたうえで、判断力が低下していたり病気などで電話が難しい場合は、介護や見守りをしている方からの相談も受け付ける、と書かれています。高齢の区分所有者が多いマンションでは、この一文を掲示板に貼っておく価値があると思います。


番外:無料ではないが効く支援

無料ではないので9つの外に置きますが、江東区には費用助成と活動支援のメニューもあります。

マンション計画修繕調査支援事業

大規模修繕の前に行う建物調査の費用を助成する制度です。

項目 内容
対象住宅 区内の建築後7年以上経過した耐火建築物の民間マンション
助成対象 防水、外壁・内壁・天井・床などの壁面、鉄製品(設備を含む)、給水管及び排水管に関する調査費
助成金額 調査費用の3分の1(千円未満切捨て)。ただし戸数規模ごとの助成限度額まで
助成限度額 60戸以下 219,000円/61〜90戸 282,000円/91〜120戸 287,000円/121〜200戸 388,000円/201〜300戸 520,000円/301〜400戸 624,000円/401〜500戸 709,000円/501戸以上 793,000円
申込資格 10年以内に調査費の助成を受けていないこと、調査を実施する1か月前までに申請すること 等

(出典:江東区「マンション計画修繕調査支援事業」)

分譲マンション管理組合の場合は、管理組合が適正に運営されていると認められること、調査の実施について管理組合で決議されていることが条件です。賃貸マンション所有者の場合は、管理が適正に行われていると認められること、住民税または法人税を滞納していないことが条件になります。

注意点:このページの更新日は2023年4月7日です。助成率・限度額・申込資格は年度ごとに変わり得ますので、令和8年度の内容は必ず住宅課(03-3647-9473)にご確認ください。この記事の数字は、あくまで公表されている内容の引き写しです。

もうひとつ実務的な注意を。調査を実施する1か月前までに申請という条件があります。「業者に調査してもらってから助成を申請しよう」という順番では、対象外になります。順番が逆です。4のアドバイザー派遣(30日前まで)と同じで、江東区の制度は「先に区へ、あとから実行」が基本形だとお考えください。

マンション支援事業

管理組合や専門家の情報交換・ネットワーク化を促進するための活動を支援する事業です。

項目 内容
支援対象 区内のマンション居住者等の自発的参加の機会が保障されている、集合住宅問題・管理組合運営等に関するセミナー、講演会・勉強会・交流会など
支援基準 おおむね5つ以上の管理組合等または非営利団体が開催、30名以上の参加見込み、営利活動を目的としないもの 等
支援の内容 講師の派遣、事務用品等の提供(資料用紙、筆記用具、郵送料等)

(出典:江東区「マンション支援事業」/更新日 2026年2月27日)

これは、1つの管理組合では使えません。近隣の管理組合と組んで勉強会を開く形になります。同じ築年数・同じ工法のマンションが並んでいる地域では、有効な使い方だと思います。

区のセミナー

区は、初めて理事に就任した方向けの「江東区マンション管理基礎セミナー」を例年6月頃に、「マンションセミナー」を例年1月に開催しています。令和8年度の基礎セミナーは2026年6月27日に開催済みで、区のページには来年度も6月頃の開催を予定している旨が記載されています(出典:江東区「江東区マンション管理基礎セミナー」/更新日 2026年6月30日)。

このほか、区の公式サイトには「江東区マンションセミナー(令和8年1月24日)」「江東区マンション再生セミナー(令和8年2月28日)」の案内ページが用意されています。冬に向けて、詳細が順次公開されていくことになります。


何を用意していけばいいか:3点セット+1

無料の窓口へ手ぶらで行くと、一般論しか返ってきません。私が理事長さまに毎回お伝えしているのは、次の3点を持参することです。

3点セット

# 書類 なぜ要るか
1 総会議事録(直近2〜3年分) 何が決議済みで何が未決議かが分かる。相談員は最初にここを見る
2 長期修繕計画書 次の大規模修繕の時期と想定費用の前提が分かる
3 管理規約(+使用細則) 工事の決議要件、専有と共用の区分、理事会の権限が書かれている

賃貸マンションのオーナーさまの場合は、3の代わりに直近の修繕履歴(いつ、どこを、いくらで直したか)をまとめたメモをお持ちください。

+1:修繕積立金の残高と滞納額

修繕積立金の現在残高と滞納額を数字で言えるようにしておいてください。この2つがあるかないかで、相談の解像度がまるで変わります。

「積立金は足りていますか」と聞かれて「たぶん足りないと思います」と答える理事長さまを、私は何度も見てきました。残高が分からないと、工法の選択肢も絞れません。

写真があればもっといい

外壁のひび割れ、タイルの浮き、鉄部のさび、屋上の防水層の膨れ。スマートフォンで撮った写真で構いません。建築の話をするとき、写真1枚が説明の10分を短縮します。撮影日を記録しておくと、劣化の進み方を後から追えます。

5の耐震化アドバイザーを使う場合は、もう1点

建築確認通知書、検査済証の写し、または台帳記載事項証明書。これは相談の場で出てくる書類ではなく、申請の必須書類です。所在を確認しておかれると、いざ申請という段階で止まりません。


江東区の物件で、私が工法の話を急がない理由

ここで少しだけ工法の話に触れます。

江東区は、性格の違う2つのマンションストックが同居している区です。

ひとつは、湾岸の高層・超高層マンション。豊洲、有明、東雲、辰巳、枝川のあたりです。ここでは、そもそも足場を組むという前提が成り立ちにくい。高さが出るほど仮設足場の費用と工期は跳ね上がりますし、海に近い立地は風の条件も厳しい。塩分を含んだ風にさらされる面と、そうでない面とで、劣化の進み方も変わります。

もうひとつは、内陸の中低層マンション。東陽、木場、南砂、大島、亀戸寄りの一帯です。こちらは隣地との距離が取れない物件が多く、道路も狭い。大型車両の搬入経路が限られる立地で足場を組む前提だけで予算を組むと、見積金額が想定を大きく超えることがあります。仮設足場の費用が工事全体の2割から3割を占めることも珍しくありません。

性格は違いますが、どちらも「足場一択では最適解になりにくい」という点では共通しています。

そこで選択肢に入るのが、ロープアクセス工法(無足場工法)です。産業用ロープで作業員が壁面に取り付き、足場を組まずに塗装や補修を行う工法です。私は「ロープアクセスならいつでも安い」とは申し上げません。全面的にタイルを貼り替えるような工事では、足場のほうが向く場面もあります。私が提案しているのは、部位ごとに足場と無足場を使い分けるハイブリッド工法という選び方です。この考え方は明誠の考え方にまとめています。

無足場工法の技術的な中身、適した建物の条件、安全管理の考え方は、ロープアクセス工法の専門サイト(rope-access-method.com)に整理しています。区の相談会やアドバイザー派遣に行かれる前にこちらのサイトに目を通しておかれると、相談員から引き出せる話の質が上がります。「足場とロープアクセスの使い分けは、うちの建物だとどう考えますか」という質問ができるようになるからです。

ただ、この判断は劣化の実態が分かってからの話です。だから私は、区や都の無料派遣で劣化と工法の考え方を先に聞いていただくことをお勧めしています。工法を決めてから調査する順番では、選択肢が残りません。

管理組合向けのサービス全体像は管理組合さま向けサービスのご案内にまとめてあります。


まとめ:今週動くこと3点

長くなりました。江東区の管理組合の理事長さま、賃貸マンションのオーナーさまが、今週できることを3点に絞ります。

① 9月18日(金)17時までに、10月3日のよろず相談会に申し込む

マンション管理士・弁護士・一級建築士が同じ日に揃い、1件1時間。分譲の区分所有者も賃貸のオーナーも対象です。定員15件の申込順ですので、まず住宅課(03-3647-9473)に電話して枠の有無を確認してください。締切は9月18日(金曜日)17時です。

② 住宅課(03-3647-9473)に、管理状況届出の状況を確認する

昭和58年12月31日以前に新築された6戸以上の分譲マンションは、条例に基づく管理状況の届出が義務です。しかも5年以内ごとに更新が必要です。前回いつ届け出たかが分からなければ、分譲マンション総合相談窓口(03-6427-4900)でも確認できます。あわせて、毎月第2水曜の無料相談会の次回募集期間も聞いておくと、10月以降の動きが決まります。

③ 3点セットを1冊のファイルにまとめる

総会議事録(直近2〜3年分)、長期修繕計画書、管理規約。この3つをファイル1冊にまとめておく。理事が交代しても引き継げます。修繕積立金の残高と滞納額をメモに書き添えておくと、相談の質が変わります。

昭和56年5月31日以前に着工された建物をお持ちなら、耐震化アドバイザー派遣(同一建物8回まで無料、令和8年度の受付期限は2026年12月28日)もあわせてご検討ください。建築確認通知書か検査済証、なければ台帳記載事項証明書の所在確認から始まります。


無料の窓口は、使わなければゼロですが、使えば専門家の時間そのものです。江東区は、よろず相談会が年に数回、毎月の無料相談会が年12回、アドバイザー派遣が派遣料無料、耐震化アドバイザーが8回まで、都の管理士派遣が各2回。これを使い切っている管理組合と、1回も使っていない管理組合の差は、5年後の修繕積立金残高に出ます。

冒頭の東陽町のオーナーさまは、あのあとマンションアドバイザー派遣の申請を出されました。外壁の調査をどこまでやるかの相談は、そこから動き始めています。

大規模修繕の工法や見積書の読み方について、総会前の段階の整理だけでもお力になれることがあります。お問合せフォームからご相談だけでも遠慮なくお声がけください。どの制度をどの順番で使うかの整理からご一緒できます。


出典・参考資料


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月15日時点で公表されている江東区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。マンション計画修繕調査支援事業のページは更新日が2023年4月で、助成率・限度額・申込資格が現在も同一であることの確認は取れていません。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず江東区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


株式会社明誠|東京都東大和市
大規模修繕・足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法
ロープアクセス工法の専門情報:https://rope-access-method.com/

墨田区の管理組合が無料で使える相談・派遣8選|管理ドクターは年4回×2時間、要支援認定なら年8回まで

墨田区の管理組合が無料で使える相談・派遣8選|管理ドクターは年4回×2時間、要支援認定なら年8回まで

2026年9月15日 更新

「区役所の1階でやっていた相談会、行こうと思ったらなくなっていたんですよ」

今年の夏、錦糸町のマンションの理事長さまから、そう言われました。築38年、48戸。長期修繕計画は分譲時のまま一度も見直されていない、という物件です。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンションやビルの外壁の仕事をしてきました。足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、両方の現場を経験してきた人間です。

その相談会は、なくなっていませんでした。庁舎の改修工事に伴って、令和8年4月から会場が東京都マンション管理士会墨田支部(石原二丁目)に移り、予約制になっただけです。毎月第2土曜日の午後、区内の分譲マンションの区分所有者であれば無料で相談できる。中身は変わっていません。

情報が更新されたことを知らないまま「もう使えない」と思い込んでいる。これが、私が現場で一番もったいないと感じる瞬間です。

墨田区は、私の見る限り、23区のなかでも管理組合向けの無料メニューが厚い区です。特に「マンション管理ドクター派遣制度」は、マンション管理士を年4回、1回2時間まで無料で理事会に呼べる。さらに健康診断で「要支援」と判定されれば、2年間で16回まで使える集中治療支援に切り替わります。

今日は、墨田区のマンション管理組合とオーナーさまが、お金をかけずに使える相談・派遣・診断を8つ、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の情報で整理します。


結論:墨田区で無料で使える相談・派遣は8つある

先に一覧でお示しします。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用 申込先
1 分譲マンション管理ドクター派遣制度 マンション管理士 無料(年4回・1回2時間以内) 住宅課計画担当 03-5608-6215
2 管理ドクター集中治療支援 マンション管理士 無料(2年で16回・年8回以内) 住宅課計画担当 03-5608-6215
3 分譲マンションの健康診断制度 マンション管理士 診断書・改善工程表の交付 住宅課計画担当 03-5608-6215
4 マンション管理無料相談会 東京都マンション管理士会墨田支部 無料(毎月第2土曜・30分) 03-5608-6215/専用フォーム
5 すみだ消費者センター 消費生活相談員 無料(電話・来所) 03-5608-1773
6 東京都 マンション管理士無料派遣 マンション管理士 無料(防災・認知症 各2回まで) 東京都マンション管理士会
7 (公財)マンション管理センター 電話相談 マンション管理士等 無料(15分程度) 03-3222-1517 ほか
8 大規模修繕相談室・住まいるダイヤル 建築士等 無料 各団体の窓口

これに加えて、都のアドバイザー派遣料を区が肩代わりする「分譲マンションアドバイザー制度利用助成」や、劣化診断費用の一部を助成する「分譲マンション計画修繕調査支援制度」もあります。こちらは費用助成なので8つの外に置きますが、後半で触れます。

ここからが本題です。


1. 分譲マンション管理ドクター派遣制度:墨田区の主力

墨田区の支援メニューのなかで、私が「まず理事会で使ってください」とお勧めしているのがこれです。

内容と回数

区の公式ページには、次のように書かれています。

項目 内容
派遣される専門家 マンション管理士(国家資格)
対象 区内の分譲マンション管理組合(組合が未組織なら区分所有者3名以上の合意でも可)
支援方法 助言・アドバイス
派遣回数 同一年度内4回まで
派遣時間 1回あたり2時間以内
費用 無料

(出典:墨田区「墨田区分譲マンション管理ドクター派遣制度」)

ここで注目していただきたいのは、管理組合が組織されていなくても、区分所有者3名以上の合意があれば使えるという点です。墨田区には、20戸前後の小規模マンションで、そもそも理事会が機能していない物件が少なくありません。「組合がないから相談できない」という思い込みは、ここで外れます。

相談できる内容

区が示している支援内容は、次のとおりです。

  • 管理組合の設立、運営、管理規約に関すること
  • 管理費、修繕積立金等に関すること
  • 管理委託契約等に関すること
  • 修繕計画・修繕積立金等の見直しに関すること
  • 会計処理体制の整備に関すること
  • 大規模修繕の実施に関すること
  • 建替え・改修に関すること
  • 管理計画認定に関すること
  • その他マンションの維持管理に関すること

太字にした2つが、私の仕事と直接つながる部分です。大規模修繕の進め方も、管理計画認定(マンション管理適正化法に基づく、管理状況が一定水準にあることを自治体が認定する制度)の準備も、この無料枠で相談できます。

申請の流れ

  1. 区に事前相談(どちらのメニューが使えるかを確認)
  2. 集会等で利用の決議(組合が未組織の場合は不要)
  3. 希望日の2週間前までに申請書を提出
  4. 区から派遣決定通知、その後マンション管理士から日程調整の連絡
  5. 派遣の実施
  6. 2週間以内に派遣内容確認書を提出

私がここで強調したいのは、2週間前までという締切です。「来週の理事会に呼びたい」では間に合いません。理事会の年間スケジュールを立てる段階で、派遣を使う回を決めておく。これだけで年4回の枠が生きます。


2. 管理ドクター集中治療支援:年8回、2年で16回

同じドクター派遣制度のなかに、もう一段深いメニューがあります。

項目 内容
対象 健康診断制度の診断で要支援マンションと認定された管理組合
派遣回数 2年間で16回まで(同一年度内8回まで)
派遣時間 1回あたり2時間以内
費用 無料

支援方法も、単なる助言にとどまりません。

  • 改善計画書の作成
  • 意見の整理及び助言
  • 議事録及び対応策の資料作成
  • 関係資料の収集及び提供
  • 総会及び理事会の開催支援

(出典:墨田区「墨田区分譲マンション管理ドクター派遣制度」)

議事録の作成や総会の開催支援まで無料で入ってもらえる制度を、私は他区であまり見たことがありません。理事のなり手がいない、議事録を書ける人がいない、総会が成立しない。この三重苦にはまっている管理組合にとって、年8回の伴走は現実的な突破口になります。

ただし入口は「要支援マンションと認定されること」です。その入口が次の健康診断制度です。


3. 分譲マンションの健康診断制度:診断書と改善工程表がもらえる

マンション管理士を派遣して、管理状況そのものを診断してもらう制度です。

診断後に受け取れるのは、次の2点です。

  • 診断書……(1)現在の管理状況、(2)課題を放置した場合のリスク、(3)改善策をまとめたもの
  • 改善工程表……課題解決までの道筋を示したもの

(出典:墨田区「墨田区分譲マンションの健康診断制度」)

対象は区内の分譲マンションの管理組合で、管理組合が組織されていない場合は区分所有者1名以上でも申請できます。ドクター派遣(3名以上)よりさらに入口が広い。

資格要件は4つ

  1. 「墨田区分譲マンションの適正管理に関する条例」に基づく管理状況の届出を行っていること
  2. 次のいずれかに該当すること
  3. 管理組合が組織されていない
  4. 管理者等が設置されていない
  5. 管理規約がない、または分譲時から改正されていない
  6. 年1回以上の総会開催および総会議事録がない
  7. 管理費が適正に設定されていない
  8. 修繕積立金が適正に積み立てられていない
  9. 長期修繕計画が作成されていない、または作成しているが見直されたことがない
  10. 計画的な修繕が実施されていない
  11. その他マンションの管理運営に課題がある
  12. 過去3年以内に本制度による診断を受けていないこと
  13. 他の区分所有者と診断結果を共有すること

太字にした3つは、私が現場で見る築30年超の物件のかなりの割合が当てはまる項目です。冒頭にご紹介した錦糸町の理事長さまのマンションも、「長期修繕計画が分譲時から見直されていない」で要件を満たしていました。

最初の関門は「管理状況の届出」

要件1にあるとおり、条例に基づく管理状況の届出を済ませていることが前提です。墨田区は「墨田区分譲マンションの適正管理に関する条例」を持っており、管理状況の届出はこの条例に基づく仕組みです。届出がまだであれば、そこから始まります。

順番はこうです。届出 → 健康診断 → 要支援認定 → 集中治療支援(年8回)。届出という入口を通っていない管理組合は、その先のメニューにたどり着けません。逆に言えば、届出さえ済ませておけば、無料枠が一気に開きます。

私はこの順番を、理事長さまにホワイトボードに書いてお見せするようにしています。制度は点で存在しているように見えて、実は階段になっています。


4. マンション管理無料相談会:毎月第2土曜、次回は10月10日

ここが冒頭の理事長さまの話につながります。

これまで毎月第2土曜日の午後、区役所1階で開かれていたマンション管理無料相談会は、庁舎改修工事に伴い、令和8年4月以降は会場を変更し、予約制で実施されています。

項目 内容
主催 (一社)東京都マンション管理士会 墨田支部
日時 毎月第2土曜日 13:00〜16:00(お一人30分まで)
会場 東京都マンション管理士会 墨田支部(墨田区石原二丁目26番7号)
対象 区内分譲マンションの区分所有者等
費用 無料
申込 電話(03-5608-6215)または専用フォーム、開催日の前日正午まで
当日の問合せ 墨田支部 03-6413-8727

2026年の残りの開催日は、10月10日、11月14日、12月12日。2027年は1月9日、2月13日、3月13日です。

(出典:墨田区「【令和8年4月から会場変更】分譲マンションの管理に関する無料相談会を開催します」/更新日 2026年3月13日)

区が挙げている相談事例は次の4つです。

  • 管理組合の運営に関する相談
  • 管理会社の選定に関する相談
  • 大規模修繕工事の検討や準備の相談
  • 管理規約の改定に関する相談

土曜の午後という時間帯は、平日に動けない理事の方でも参加しやすい枠です。1人30分と短いので、聞きたいことを事前に3つに絞っておかれると濃い時間になります。


5. すみだ消費者センター:管理会社・工事業者とのトラブル窓口

管理組合の相談は住宅課、区分所有者個人の消費者トラブルは消費者センター。窓口が分かれます。

項目 内容
名称 すみだ消費者センター(消費者相談室)
電話 03-5608-1773
受付 月曜〜土曜 9:00〜16:30(祝日・年末年始を除く/土曜は電話のみ)
対象 墨田区に在住・在勤・在学の方
費用 無料

(出典:墨田区「消費生活相談窓口のご案内(すみだ消費者センター)」)

私がこの窓口を記事に入れているのには、理由があります。大規模修繕の時期が近づくと、区分所有者のご自宅に「お宅の外壁、危ないですよ」と訪問してくる業者が増えるからです。

足場も組まずに外から見ただけで「危ない」と断定できる範囲は、実はそれほど広くありません。屋上の防水層も、タイルの浮きも、外から見えない部分に本当の劣化が出ます。訪問を受けて不安になった区分所有者の方が、理事会を通さずに個別に契約してしまう。そういう事例を、私は何度か見てきました。

土曜も電話相談を受けている窓口があることは、掲示板に貼っておく価値があると思います。


6. 東京都のマンション管理士無料派遣:防災・認知症の2テーマ

区の制度とは別枠で、東京都が実施している無料派遣があります。防災力向上と認知症対応の研修を受けたマンション管理士が派遣される事業です。

項目 内容
対象 東京都内の分譲マンションの管理組合
回数 防災力向上・認知症対応 各2回まで
費用 無料
令和8年度の受付期間 2026年6月23日(火)〜2027年2月26日(金)
件数 防災・認知症あわせて160件(上限)

(出典:東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」、東京都「マンション管理士無料派遣事業の受付を開始」)

墨田区は、荒川と隅田川に挟まれた低地が広がる区です。水害対策と高齢化対応は、どちらも管理組合が避けて通れないテーマになっています。区のドクター派遣(年4回)と都の無料派遣(各2回)は別枠なので、併用すれば年間で最大8回、専門家の時間を無料で確保できる計算になります。

ただし160件という上限があります。年度後半に申し込もうとして枠が埋まっていた、という話は他区でも聞きます。使う予定があるなら、早めに動かれるほうが確実です。


7. (公財)マンション管理センター:国指定の相談窓口

国土交通大臣の指定を受けた「マンション管理適正化推進センター」です。墨田区も公式サイトの相談窓口ページで紹介しています。

相談内容 電話
管理組合運営、管理規約等 03-3222-1517
建物・設備の維持管理 03-3222-1519

受付は月曜から金曜(祝日・年末年始を除く)の9時30分から17時。1件あたり15分前後のアドバイスとされています(出典:(公財)マンション管理センター「相談窓口について」)。

公平・中立の立場が原則です。特定の業者を紹介したり、個別の見積金額の妥当性を判定したりする窓口ではありません。標準管理規約や法令に照らして一般的な考え方を確認する場、とご理解いただくのがよいと思います。


8. 大規模修繕相談室・住まいるダイヤル:建築士に直接聞ける窓口

墨田区が公式に案内している、区外の無料窓口が2つあります。

窓口 内容
大規模修繕相談室(東京都建築士事務所協会) 建築士に大規模修繕に関する相談ができる
住まいるダイヤル(住宅リフォーム・紛争処理支援センター) 国土交通大臣指定。マンションの修繕・建替え等の相談に対応

(出典:墨田区「分譲マンションの相談窓口」)

マンション管理士に聞くべきことと、建築士に聞くべきことは違います。規約・総会・管理会社の話は管理士、劣化診断・工事仕様・見積の考え方は建築士。私はこの使い分けを理事長さまにお伝えしています。


番外:無料ではないが効く費用助成

無料ではないので8つの外に置きますが、墨田区には費用助成のメニューもあります。

助成 主な内容 出典
分譲マンションアドバイザー制度利用助成 都の「マンション管理アドバイザー」「マンション建替え・改修アドバイザー」の派遣料を、管理アドバイザーA・Bコースと建替え・改修Aコースは全額、建替え・改修Bコースは2/3助成 墨田区「分譲マンションアドバイザー制度利用助成」
分譲マンション計画修繕調査支援制度 大規模修繕の前に行う建物調査(劣化診断等)の費用を助成 墨田区「分譲マンション計画修繕調査支援制度」

アドバイザー制度利用助成は、対象が「条例に規定する管理状況の届出書を提出している管理組合」で、ここでも届出が前提になります。回数は同一管理組合で一年度あたり、管理アドバイザーA・Bコースは各コース1回ずつ。手続きは年度単位で、申請と同じ年度内(2月末まで)に派遣を完了して完了報告を出す必要があります。

順番にもご注意ください。防災・建築まちづくりセンターに派遣を申し込む前に、区へ助成申請書を出すのが正しい流れです。先に派遣を申し込んでしまうと、助成の対象外になる可能性があります。

助成制度についての問合せは区の住宅課計画担当(03-5608-6215)、アドバイザー派遣そのものの申込は(公財)東京都防災・建築まちづくりセンター まちづくり推進課(03-5989-1453)と、窓口が分かれています。

なお、これらの助成ページの更新日は2025年3月です。令和8年度の助成率・上限額・予算残額は年度ごとに変わり得ますので、動かれる前に区の窓口で最新の内容をご確認ください。


何を用意していけばいいか:3点セット+1

無料の窓口へ手ぶらで行くと、一般論しか返ってきません。私が理事長さまに毎回お伝えしているのは、次の3点を持参することです。

3点セット

# 書類 なぜ要るか
1 総会議事録(直近2〜3年分) 何が決議済みで何が未決議かが分かる。相談員は最初にここを見る
2 長期修繕計画書 次の大規模修繕の時期と想定費用の前提が分かる
3 管理規約(+使用細則) 工事の決議要件、専有と共用の区分、理事会の権限が書かれている

+1:修繕積立金の残高と滞納額

修繕積立金の現在残高と滞納額を数字で言えるようにしておいてください。この2つがあるかないかで、相談の解像度がまるで変わります。

「積立金は足りていますか」と聞かれて「たぶん足りないと思います」と答える理事長さまを、私は何度も見てきました。残高が分からないと、工法の選択肢も絞れません。

写真があればもっといい

外壁のひび割れ、タイルの浮き、鉄部のさび、屋上の防水層の膨れ。スマートフォンで撮った写真で構いません。建築の話をするとき、写真1枚が説明の10分を短縮します。撮影日を記録しておくと、劣化の進み方を後から追えます。


墨田区の物件で、私が工法の話を急がない理由

ここで少しだけ工法の話に触れます。

墨田区は、隅田川と荒川に挟まれた低地に、中低層の住宅と中小の工場・店舗が密に混ざって建っている区です。両国、錦糸町、菊川、八広、押上のあたりには、隣地との距離が数十センチしか取れない物件が数多くあります。道路も狭く、大型車両の搬入経路が限られる。こうした条件で足場を組む前提だけで予算を組むと、見積金額が想定を大きく超えることがあります。仮設足場の費用が工事全体の2割から3割を占めることも珍しくありません。

そこで選択肢に入るのが、ロープアクセス工法(無足場工法)です。産業用ロープで作業員が壁面に取り付き、足場を組まずに塗装や補修を行う工法です。私は「ロープアクセスならいつでも安い」とは申し上げません。全面的にタイルを貼り替えるような工事では、足場のほうが向く場面もあります。私が提案しているのは、部位ごとに足場と無足場を使い分けるハイブリッド工法という選び方です。この考え方は明誠の考え方にまとめています。

無足場工法の技術的な中身、適した建物の条件、安全管理の考え方は、ロープアクセス工法の専門サイト(rope-access-method.com)に整理しています。区の相談会や派遣に行かれる前にこちらのサイトに目を通しておかれると、相談員から引き出せる話の質が上がります。

ただ、この判断は劣化の実態が分かってからの話です。だから私は、区や都の無料派遣で劣化と工法の考え方を先に聞いていただくことをお勧めしています。工法を決めてから調査する順番では、選択肢が残りません。

管理組合向けのサービス全体像は管理組合さま向けサービスのご案内にまとめてあります。


まとめ:今週動くこと3点

長くなりました。墨田区の管理組合の理事長さまが、今週できることを3点に絞ります。

① 住宅課計画担当(03-5608-6215)に電話して、管理状況の届出の有無を確認する

墨田区の無料メニューは、条例に基づく管理状況の届出が入口になっているものが複数あります。届出が済んでいるかどうかが分からなければ、まずここを確認する。届出がまだなら、そこから始まります。あわせて、今年度のドクター派遣の残り回数も聞いておくと、年度末までの使い方が見えます。

② 3点セットを1冊のファイルにまとめる

総会議事録(直近2〜3年分)、長期修繕計画書、管理規約。この3つをファイル1冊にまとめておく。理事が交代しても引き継げます。修繕積立金の残高と滞納額をメモに書き添えておくと、相談の質が変わります。

③ 10月10日(土)の無料相談会を、10月9日(金)正午までに予約する

次回の無料相談会は10月10日(土)13時から16時、会場は東京都マンション管理士会墨田支部(石原二丁目26番7号)です。申込は前日正午まで、電話(03-5608-6215/平日のみ)か専用フォームから。1人30分ですから、聞きたいことを3つに絞って持っていかれるとよいと思います。

東京都のマンション管理士無料派遣は令和9年2月26日まで受付ですが、160件に達した時点で締切です。防災や認知症対応のテーマで使う予定があるなら、年度後半を待たないほうが確実です。


無料の窓口は、使わなければゼロですが、使えば専門家の時間そのものです。墨田区はドクター派遣が年4回、要支援認定なら年8回、都の派遣が各2回、毎月の相談会が年12回。これを使い切っている管理組合と、1回も使っていない管理組合の差は、5年後の修繕積立金残高に出ます。

冒頭の錦糸町の理事長さまは、あのあと健康診断制度の事前相談に電話をされました。長期修繕計画の見直しは、そこから動き始めています。

大規模修繕の工法や見積書の読み方について、総会前の段階の整理だけでもお力になれることがあります。お問合せフォームからご相談だけでも遠慮なくお声がけください。どの制度をどの順番で使うかの整理からご一緒できます。


出典・参考資料


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月15日時点で公表されている墨田区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。ドクター派遣制度・健康診断制度・アドバイザー制度利用助成の各ページは、更新日が2024年から2025年のものを含みます。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず墨田区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


株式会社明誠|東京都東大和市
大規模修繕・足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法
ロープアクセス工法の専門情報:https://rope-access-method.com/

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