修繕積立金が10年で5割増、それでも足りない——「住民格差」で大規模修繕が止まる前に。収益物件オーナーと管理組合がいま打つべき手【2026年6月】
修繕積立金が10年で5割増、それでも足りない——「住民格差」で大規模修繕が止まる前に。収益物件オーナーと管理組合がいま打つべき手【2026年6月】
先日、ある管理組合の理事長さまから、こんなご相談をいただきました。「毎月きちんと積み立ててきたつもりなのに、二回目の大規模修繕の見積もりを取ったら、積立金がまるで足りない。住民から一時金を集めるしかないと言われて、頭を抱えている」——。
これは、決して珍しい話ではありません。むしろ、いま全国のマンションで静かに進行している「共通の悩み」です。
ちょうどこの数日、分譲マンションの修繕積立金がこの10年で平均5割も上がったにもかかわらず、それでも修繕費が足りず、高額な一時金が請求されるケースがあるというニュースが出ていました。さらに深刻なのは、その負担をめぐって住民の間に温度差が生まれ、合意がまとまらずに大規模修繕そのものが止まってしまうという現象です。
今日は、このニュースの中身を整理したうえで、収益物件をお持ちのオーナーさま、そしてマンションの管理組合の理事長さま・修繕委員のみなさまが、「積立金が足りない」という壁にぶつかったとき、どう判断し、何から手を付ければいいのかを、現場の目線でお話しします。読み終えたときに「うちの管理組合でも、一度この観点で点検してみよう」と思っていただけたら幸いです。
まず何が起きているのか——「10年で5割増、それでも足りない」というニュースの中身
報じられたのは「積立金不足が修繕を止める」という現実
きっかけは、弁護士JPニュースが報じた一本の記事です。分譲マンションの修繕積立金は10年間で平均5割ほど負担が増えているにもかかわらず、それでも費用が足りず、住民に高額な一時金が請求されるケースがあるという内容でした。そして、その負担をめぐって入居時の一体感が薄れ、住民間の「格差」から合意形成が難しくなり、修繕が前に進まなくなる、という構図が描かれていました(出典:弁護士JPニュース「分譲マンション『修繕積立金』10年間で平均5割“負担増” それでも費用が足りず高額な一時金請求も」2026年6月)。
私がこの記事を読んで「これは多くの方に知っておいてほしい」と思ったのは、問題が「お金が足りない」だけにとどまっていないからです。お金の不足が、人間関係の対立を生み、その対立が建物の劣化を放置させる——この負の連鎖こそが、いちばん怖いところなのです。
国の数字でも「5割増」は裏付けられている
「5割増」という数字は、感覚論ではありません。国土交通省のデータでも、分譲マンションで必要とされる修繕積立金の平均は、2011年度の一戸あたり月額1万4,210円から、2021年度には月額2万1,420円へと、10年で約5割上昇しています。
つまり、住民のみなさんは「払う額」をきちんと増やしてきたのです。それでも足りない。ここに、この問題の根の深さがあります。値上げが足りなかったというより、そもそも当初の積立計画が低く設定されすぎていたことと、近年の資材高騰が重なった結果なのです。
実際、国の調査では、現在の積立額が長期修繕計画に対して不足しているマンションは全体の約36.6%にのぼると報告されています(出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査の結果について」)。およそ3棟に1棟が、計画どおりにはお金が貯まっていない計算です。
なぜ足りなくなるのか——「段階増額方式」という仕組みのカラクリ
新築の約99%が「最初は安く、あとから上げる」方式
ここで、多くのオーナーさま・理事長さまに知っておいていただきたいのが、修繕積立金の「集め方」には二つの方式があるということです。
一つは「均等積立方式」。これは、長期修繕計画の全期間で必要なお金を、最初からならして毎月一定額で集めていく方式です。家計でいえば、毎月決まった額を貯金箱に入れていくイメージで、見通しが立てやすいのが利点です。
もう一つが「段階増額積立方式」。こちらは、販売時は積立金を低めに設定しておき、5年・10年といった節目ごとに段階的に引き上げていく方式です。新築マンションの長期修繕計画の約99%がこの段階増額方式を採用している、というのが実態です。
なぜ新築でこの方式が多いのか。正直に申し上げます。販売時の月々の負担を少しでも軽く見せたほうが、マンションは売りやすいからです。これは販売側の事情であって、住民のためというより、売り手のための設定になりがちな構造があるのです。
「上げます」と決めても、住民の合意がいる
段階増額方式の落とし穴は、「あとから上げる」ことが計画書に書いてあっても、実際の値上げには総会での合意が必要だという点です。最初に安く設定された月々の負担に慣れた住民にとって、「来月から積立金を1.5倍にします」という提案は、なかなか受け入れがたいものです。
その結果、値上げの議案が否決されたり、先送りされたりして、計画よりも積み立てが進まない。気づいたときには、大規模修繕の直前になって「数十万円から百万円規模の一時金をお願いします」という事態になってしまう。これが、冒頭の理事長さまが直面したことの正体です。
令和6年改定で「上げ幅のルール」ができた
この問題を重く見て、国土交通省は令和6年6月、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を改定しました(出典:国土交通省「『長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント』及び『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』の改定について」令和6年6月)。
改定の目玉は、段階増額方式における「適切な引き上げの考え方」が示されたことです。具体的には、段階増額方式の月あたり徴収額について、均等積立方式とした場合の金額を基準額としたとき、計画の初期額は基準額の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内にとどめるべき、という目安が新たに盛り込まれました。
平たく言えば、「最初を極端に安くして、あとで急激に跳ね上げるようなやり方は、もうやめましょう」という国からのメッセージです。これからマンションを買うオーナーさまにとっては、この比率を逸脱した計画は要注意という判断材料になります。
あなたのマンションは大丈夫か——ガイドラインの「目安額」で自己診断する
「うちの積立金は、足りているのか、足りていないのか」。これを判断する手がかりが、令和6年6月改定の修繕積立金ガイドラインに示された専有面積あたりの目安額です(出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年6月改定)」)。
ガイドラインは、実際に作成された長期修繕計画の事例を集め、その「平均値」を専有面積1㎡あたりの月額で示しています。代表的な目安は次のとおりです。
| 建物の規模(地上階数/建築延床面積) | 月額の目安(平均値の例) |
|---|---|
| 20階未満/建築延床5,000㎡未満 | 約335円/㎡・月 |
| 20階未満/建築延床5,000〜10,000㎡未満 | 約252円/㎡・月 |
| 20階未満/建築延床10,000㎡以上 | 約271円/㎡・月 |
| 20階以上(タワー型など) | 別途の目安(一般に高め) |
※上記は全国の事例から算出された参考値です。実際の必要額は、建物の形状・立地・仕様・これまでの修繕履歴によって大きく変わります。正確な判断は専門家による長期修繕計画の見直しが前提です。
たとえば、専有面積70㎡・建築延床8,000㎡規模のマンションなら、「252円 × 70㎡ = 月額約1万7,640円」が一つの目安になります。ご自宅やお持ちの収益物件の積立金が、この水準を大きく下回っていないか。まずはここを確認してみてください。下回っているなら、いま足りていても、いずれ不足する可能性が高いというサインです。
ただし、ここで一つ申し添えたいことがあります。この目安額は、あくまで「これまでの相場」を集計したものです。ここ数年の資材・人件費の高騰は、まだ十分には織り込まれていない可能性があります。つまり、目安どおりに積み立てていても、これから工事をすると「目安では足りなかった」ということが起こり得る。だからこそ、次にお話しする「工事費そのものを下げる」という発想が効いてくるのです。
「一時金か、借入か」——足りないと分かったときの3つの選択肢と落とし穴
積立金の不足が判明したとき、管理組合が取り得る道は、大きく分けて三つです。それぞれにメリットと落とし穴があります。
選択肢1:一時金を徴収する。
最も直接的な方法ですが、冒頭の事例のとおり、住民間の合意形成が最大の壁になります。現金に余裕のある住民とそうでない住民、住んでいる区分所有者と賃貸に出しているオーナー、終の棲家と考える高齢世帯と将来売却を考える若い世帯——立場が違えば、一時金への賛否は割れます。ここで対立が深まると、修繕そのものが止まります。
選択肢2:金融機関から借り入れる。
住宅金融支援機構などの「マンション共用部分リフォーム融資」を使う方法です。一時金の重さを将来に分散できる利点がありますが、当然ながら利息という追加コストが発生します。借入には総会の特別決議が必要なことも多く、ここでも合意のハードルは残ります。
選択肢3:積立金を計画的に増額する。
本来あるべき正攻法ですが、すでに工事が目前に迫っている場合には間に合いません。早く気づけば気づくほど選べる選択肢だと言えます。
なお、いずれの選択肢にも共通するのが「住民の合意」という関門です。マンションの大規模修繕や借入、修繕積立金の変更は、区分所有法や管理規約に基づいて、総会での決議が必要になります。普通決議で足りる事項もあれば、特別決議(おおむね組合員および議決権の各4分の3以上の賛成)が求められる事項もあります。つまり、いくら理事会が「これがベストだ」と考えても、住民の理解を得られなければ前に進みません。だからこそ、住民が納得しやすい「負担の軽い案」を用意できるかどうかが、合意形成の成否を大きく左右します。負担が軽ければ軽いほど、反対する理由は減っていくからです。
私は、この三つはどれも「お金の集め方」をいじる話にすぎない、という点に注意していただきたいと思っています。どの道を選んでも、支払う総額(=工事費)そのものは変わりません。住民の負担を本当に軽くしたいなら、集め方だけでなく、工事費そのものを下げるという、もう一つの軸を持つことが大切なのです。
私が現場で最も効くと感じる一手——「工法の見直し」で修繕費そのものを下げる
大規模修繕費の中で、意外と大きい「足場費」という固定費
ここからは、私たちが日々現場で向き合っている「工事費の中身」の話です。
マンションの大規模修繕というと、塗装や防水、タイルの補修といった「仕上げ」に目が行きがちです。ですが、実は工事費のなかで無視できない割合を占めるのが、足場の仮設費用です。建物の周囲にぐるりと足場を組み、工事が終わったら解体して撤去する。この足場代だけで、工事全体のおおよそ2割前後を占めることも珍しくありません(建物の形状や規模によって変動します)。
しかも足場は、「修繕した成果」として建物に残るものではありません。工事のために一時的に必要なだけの、いわば“消えていく費用”です。ここに修繕積立金の少なくない部分が吸い込まれている、という事実は、もっと知られてよいと私は考えています。
足場を組まない「ロープアクセス工法」という選択肢
そこで近年、注目が高まっているのが、足場を組まずに作業員がロープで建物外壁を昇降しながら施工する「ロープアクセス工法(無足場工法)」です。ビルの窓ガラス清掃で、上からロープで降りてくる作業を見たことがあるかもしれません。あの技術を、塗装・防水・タイル補修・シーリング打ち替えといった修繕工事に応用したものです。
ロープアクセス工法には、修繕積立金の不足に悩む管理組合にとって、見逃せない利点があります。
| 比較項目 | 通常の足場工法 | ロープアクセス工法(無足場) | ハイブリッド工法 |
|---|---|---|---|
| 足場の仮設・解体費 | 必要(工事費の約2割前後) | 不要 | 必要な部位のみ |
| 工期 | 長め(足場の組立・解体に日数) | 短縮しやすい | 中間 |
| 居住者の生活影響 | 窓周りが覆われ採光・防犯面の不安 | 影響が小さい | 部位により異なる |
| 防犯面 | 足場が侵入経路になるリスク | リスクが低い | 部位により異なる |
| 適する建物 | 中低層・複雑な形状 | 高層・足場架設が難しい物件 | 大規模・複雑物件の総合最適 |
足場費がまるごと不要になれば、その分だけ工事費が下がり、結果として一時金の額を圧縮したり、借入を回避できたりする可能性が出てきます。これは「集め方」をいじる三つの選択肢とは、まったく次元の違うアプローチです。
「全部ロープ」でも「全部足場」でもない——ハイブリッドという発想
ただし、ここは正直にお伝えしなければなりません。ロープアクセス工法が万能というわけではありません。 大規模な打ち替えや、足場がないと品質・安全を確保しにくい部位もあります。低層で形状が複雑な建物では、足場を組んだほうが結果的に合理的なこともあります。
だからこそ私たちは、「足場かロープか」の二択ではなく、建物の部位ごとに最適な工法を組み合わせる「ハイブリッド工法」を基本に考えています。手の届きにくい高層部や、足場架設が難しい面はロープアクセスで、足場が必要な部位は足場で。こうして全体の総コストを最適化するのです。
通常足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つの工法から、建物にとって本当にベストな組み合わせを提案できる会社は、日本でもまだ多くありません。私たちが大切にしているのは、「自社が得意な工法に当てはめる」のではなく、「その建物にとっていちばん無駄のない工法を選ぶ」という姿勢です。
「百万円」を住民一人あたりに換算してみる
数字を体感に落とし込んでみましょう。仮に、総戸数50戸のマンションで、工法の見直しによって工事費全体を800万円圧縮できたとします。これを単純に戸数で割れば、一戸あたり16万円の負担軽減です。一時金として「一戸あたり50万円お願いします」と言われていたのが「34万円で済みます」となれば、合意形成のハードルはぐっと下がります。
金額の大小もさることながら、私が現場で実感するのは、「負担が減る」という事実そのものが、住民の対立をやわらげるということです。お金の話で人間関係がこじれるのを防ぐためにも、まず工事費を下げる努力をする。これは、技術の問題であると同時に、コミュニティを守る問題でもあるのです。
収益物件オーナーにとっての「修繕積立金問題」——利回りを守る視点
ここまでは管理組合の理事長さま・修繕委員のみなさまを主な読者として想定してお話ししてきました。ですが、この問題は区分マンションを賃貸に出している収益物件オーナーにとっても、決して他人事ではありません。むしろ、立場が違うぶん、別の難しさがあります。
賃貸に出しているオーナーは、その住戸に自分が住んでいるわけではありません。それでも、修繕積立金は所有者として支払う義務があり、一時金の請求が来れば、当然オーナーが負担します。家賃収入から見れば、これは利回りを直撃する想定外の支出です。たとえば年間の家賃収入が120万円の住戸で、50万円の一時金を求められれば、その年の手残りはほぼ吹き飛びます。
さらに悩ましいのが、総会での意思決定です。賃貸に出しているオーナーは総会に足を運びにくく、気づいたときには値上げや一時金が決まっていたということが起こりがちです。私がお伝えしたいのは、収益物件のオーナーこそ、「他人任せにしない」姿勢が利回りを守るということです。委任状を出して終わりにせず、長期修繕計画と積立金の水準にだけは目を通しておく。それだけで、突然の一時金に慌てる確率はぐっと下がります。
そして、もしオーナーとして修繕委員や理事に関わる機会があるなら、ぜひ「工法の見直し」を議題に出してみてください。工事費が下がれば、それは管理組合全体の利益であると同時に、オーナー自身の利回りを守ることに直結します。コスト感覚を持った所有者が一人いるだけで、管理組合の議論は驚くほど現実的になります。これは、私が数多くの現場でお手伝いしてきた中での、率直な実感です。
制度を味方につける——管理計画認定制度と長寿命化促進税制
工事費を下げるのと並行して、ぜひ活用していただきたいのが、国や自治体の制度です。
一つが、「マンション管理計画認定制度」です。これは、修繕積立金の積立てや長期修繕計画の作成など、管理状況が一定の基準を満たすマンションを、自治体が「適切に管理されている」と認定する仕組みです(出典:国土交通省「住宅:管理計画認定制度」)。
認定を受けるメリットは、主に次のようなものです。市場で「管理が行き届いたマンション」として評価されやすくなること。修繕積立金の運用に使える「マンションすまい・る債」の利率の上乗せを受けられること。そして、2023年度の税制改正で創設された「マンション長寿命化促進税制」(一定の要件を満たす大規模修繕工事を行ったマンションへの固定資産税の特例措置)の対象となり得ること、などです。
自治体の動きも進んでいます。たとえば神戸市では、令和4年9月から管理計画認定制度の受付が始まり、認定の前提としてマンションの「管理状況の届出」を求める運用がとられています(出典:神戸市「マンション管理計画認定制度」)。こうした「管理状況を行政に届け出る」流れは、今後ほかの自治体にも広がっていくと見られます。お住まいの、あるいは収益物件のある自治体の制度を、一度確認しておくことをおすすめします。
なお、これらの制度の要件・上限額・期限は年度や自治体によって変わります。「予算枠に達した時点で締め切られる」補助制度もあるため、検討される際は各制度の公募要領や自治体の最新の案内をご確認のうえで進めてください。
今日からの「次の一歩」——まず3つだけ点検してください
長くなりましたので、読み終えてすぐに動けるよう、要点を整理します。
第一に、自分のマンションの積立方式を確認すること。長期修繕計画書を開いて、「均等積立方式」か「段階増額方式」かを見てください。段階増額方式なら、将来の値上げが本当に計画どおり実行されているか、要チェックです。
第二に、ガイドラインの目安額と、いまの積立額を比べること。専有面積あたりの月額が目安を大きく下回っているなら、いずれ不足するサインです。
第三に、次の大規模修繕の見積もりを取るときに、工法の選択肢を比較すること。「足場ありき」で一社だけに見積もりを取るのではなく、ロープアクセスやハイブリッドを含めて、複数の工法で比べてみてください。ここで工事費が変われば、一時金や借入の話そのものが不要になることもあります。
この三つは、専門家でなくても、理事会や修繕委員会で今日から話題にできることです。
よくあるご質問(修繕積立金と大規模修繕)
最後に、現場でよくいただくご質問にお答えしておきます。
Q. 修繕積立金が不足していると、すぐに大規模修繕はできないのでしょうか。
A. そんなことはありません。不足が判明しても、借入の活用、工事範囲の優先順位づけ、そして工法の見直しによる工事費の圧縮など、打てる手はいくつもあります。大切なのは、足りないと分かった時点で早めに専門家に相談し、選べる選択肢が多いうちに動くことです。先送りするほど、劣化が進んで工事費が膨らみ、選択肢が狭まっていきます。
Q. ロープアクセス工法は、足場工法より品質が劣るのではないですか。
A. 工法によって品質が決まるわけではなく、施工する職人の技術と管理体制で決まる、というのが私の考えです。ロープアクセスは、技能を認定された作業員が間近で外壁に向き合うため、むしろ細部の状態を目視しやすいという面もあります。一方で、足場が向く部位があるのも事実です。だからこそ、部位ごとに最適な工法を組み合わせるハイブリッドの発想が活きてきます。
Q. 工法を見直すと、本当にどのくらい費用が下がるのですか。
A. 建物の高さ・形状・劣化状況によって幅があるため、一律に「何割下がる」とは申し上げられません。足場費は工事費の2割前後を占めることが多く、その全部または一部が圧縮できれば、相応のコスト効果が見込めます。正確な金額は、建物を実際に診断したうえでお出しするお見積もりでご確認いただくのが確実です。
Q. 自分のマンションの積立金が適正か、どこに相談すればいいですか。
A. まずは管理会社や、利害関係のない第三者の専門業者に、長期修繕計画と積立金水準の点検を依頼するのが第一歩です。複数の意見(セカンドオピニオン)を取ることで、提示された計画が妥当かどうかを冷静に判断できます。私たちも、こうした点検のご相談を承っています。
大規模修繕の「工法」と「費用」のご相談について(自社サービスのご案内)
ここからは、私たちのサービスのご案内です。押し売りをするつもりはありません。ただ、「うちの積立金で、本当にこの工事ができるのか」「足場を組まずに費用を下げられないか」と迷っておられるなら、判断材料を一緒に整理するお手伝いはできます。
私たちは、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を、通常の足場工法・ロープアクセス工法(無足場)・両者を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な形でご提案しています。ロープアクセス工法については、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟するロープアクセス工事のフランチャイズを展開し、高品質と低価格の両立をめざしています。
「まず自分のマンションの状態を知りたい」という方には、建物診断・長期修繕計画の見直しのご相談から承っています。具体的なお見積もりやセカンドオピニオンのご依頼は、お問い合わせ窓口よりお気軽にどうぞ。相談だけでも構いません。
あわせて、資材高騰やサプライチェーンの動きについては、これまでの記事もご参考になさってください(資材高騰と工事中断リスクを工法選択でどう守るか/今夏の大規模修繕に省エネ改修と補助金をどう組み込むか)。
修繕積立金が足りない、という現実は、決して恥ずかしいことでも、誰かの怠慢でもありません。多くは、新築時の設定と、その後の資材高騰という、住民の力では避けにくい事情が重なった結果です。大事なのは、足りないと分かったときに、「集め方」だけでなく「かかり方」にも手を入れられると知っておくことだと、私は思います。
今回ご紹介したニュースは、決して特別なマンションだけの話ではありません。築年数を重ねたすべての建物が、いつか必ず向き合うテーマです。だからこそ、まだ余裕のある今のうちに、長期修繕計画と積立金、そして工法の選択肢を一度きちんと点検していただきたいのです。早めに手を打てば打つほど、選べる道は広く、住民の負担は軽く済みます。
お金の話は、ときに住民同士の関係をぎくしゃくさせます。だからこそ、対立が深まる前に、工事費そのものを一円でも下げる工夫をする。それが、建物の資産価値を守るだけでなく、そこに暮らす人たちの穏やかな関係を守ることにもつながると、私は現場で何度も感じてきました。みなさまのマンションが、次の大規模修繕を気持ちよく乗り越えられるよう、心から願っています。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
市川市で使える賃貸オーナー向け補助金活用ガイド|給湯器・窓・耐震・断熱【2026年度】
まず結論:市川の賃貸オーナーが本当に狙うべき補助金
細かい話に入る前に、結論を先に置きます。私が市川市で収益物件を持つオーナーさまにご説明するなら、優先順位はこの順になります。
第一に、国の賃貸集合給湯省エネ2026事業。これは経済産業省が「既存の賃貸集合住宅」を名指しで対象にした、賃貸オーナー専用といってよい制度です。給湯器の交換という、いつかは必ず来る出費に補助が乗ります。第二に、国の先進的窓リノベ2026事業。断熱性の高い窓への改修で、入居者の光熱費と満足度に直接効きます。第三に、市川市の木造住宅耐震改修助成と分譲マンション耐震改修助成。旧耐震の木造アパートや、区分所有でお持ちのマンションをお持ちなら、ここが効く可能性があります。
一方で、市川市の看板制度であるあんしん住宅助成制度、住宅断熱改修促進事業、スマートハウス関連設備補助は、いずれも「市内に居住し住民登録している方が、自ら居住する住宅に対して」という要件が芯にあります。自分が住んでいない純粋な賃貸物件には、原則そのままでは使えません。ここを最初に知っておくだけで、無駄な動きがなくなります。
下の表が、全体像です。
| 制度 | 実施主体 | 賃貸物件への適用 | オーナーの旨味 |
|---|---|---|---|
| 賃貸集合給湯省エネ2026事業 | 国(経産省) | ◎ 賃貸集合住宅が対象 | 給湯器1台5〜10万円 |
| 先進的窓リノベ2026事業 | 国(環境省) | ○ 賃貸も活用可 | 断熱で賃料維持・入居率 |
| 木造住宅 耐震診断・改修助成 | 市川市 | △ 旧耐震木造(要件確認) | 改修費の4/5・上限100万円 |
| 分譲マンション 耐震診断・改修助成 | 市川市 | ○ 区分所有オーナー | 改修費1/3・上限1,000万円 |
| 危険コンクリートブロック塀等除却 | 市川市 | △ 道路面の危険塀(要件確認) | 撤去費の一部 |
| あんしん住宅助成制度 | 市川市 | ✕ 原則「自ら居住」要件 | 1/3・上限10万円(防災1/2・30万円) |
| 住宅断熱改修促進事業 | 市川市 | ✕ 原則「市内居住」要件 | 断熱で最大30万円 |
| スマートハウス関連設備補助 | 市川市 | ✕ 原則「自己の居住」要件 | 太陽光・蓄電池等 |
| マンションストック長寿命化等モデル事業 | 国(国交省) | ○ 先導的な再生案件 | 大規模再生の補助 |
ここからは、一つずつ、オーナー視点で深掘りします。
【国・本命】賃貸集合給湯省エネ2026事業 — オーナー専用のど真ん中
私がこの記事で一番にお伝えしたいのが、この制度です。なぜなら、数ある補助金の中で「賃貸集合住宅のオーナー」を正面から対象に据えた、数少ない制度だからです。市川市の制度の多くが自宅向けである中、ここは賃貸物件にそのまま使えます。
賃貸集合給湯省エネ2026事業(経済産業省)は、既存の賃貸集合住宅の住戸について、従来型の給湯器を、小型で省エネ性能の高い給湯器、具体的にはエコジョーズ(潜熱回収型ガス給湯器)やエコフィール(潜熱回収型石油給湯器)に交換する工事を補助します。リース利用も対象に含まれます。
補助額は、追い焚き機能なしで1台あたり5万円、追い焚き機能ありで1台あたり7万円が基本です。さらに一定の排水工事を伴う場合には、それぞれ最大8万円、10万円まで加算されます(出典:資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業について」、賃貸集合給湯省エネ2026事業 公式サイト)。交付申請の期限は令和8年(2026年)12月31日までですが、これは国の補助金の常で、予算枠に達した時点で受付が締め切られます。年末の期限より、予算切れのほうが先に来ると考えておいたほうが安全です。
オーナーにとっての意味
ここからが本題です。給湯器というのは、賃貸経営において「壊れてから慌てて交換する」設備の代表格です。冬場に給湯器が故障すれば、入居者からのクレームは即日。退去の引き金にもなります。私は現場で、入居者が「お湯が出ない一晩」をきっかけに更新を見送った例を、何度も見てきました。
その給湯器の更新に、1台あたり5万円から10万円の補助が乗る。10戸のアパートなら、単純計算で50万円から100万円のキャッシュアウトが圧縮されます。しかも省エネ給湯器は入居者のガス代・灯油代を下げますから、「光熱費が安い部屋」という訴求が一つ増える。これは退去抑制、つまり入居率維持に静かに効いてきます。
私はいつもオーナーさまに、「壊れる前に、補助金のあるうちに計画交換しましょう」とお伝えしています。故障対応の交換では、補助金の交付決定を待つ余裕がないからです。
【国】先進的窓リノベ2026事業 — 賃料維持と入居率の武器
次に、断熱の話です。先進的窓リノベ2026事業(環境省)は、高い断熱性能を持つ製品を用いた窓やドアなど開口部の改修を補助する制度で、賃貸物件でも活用できます(出典:先進的窓リノベ2026事業 公式サイト、住宅省エネ2026キャンペーン 公式)。
窓は、建物の中で最も熱が逃げる場所です。夏は暑く、冬は寒い部屋は、入居者にとってそのまま「光熱費が高い部屋」であり、退去理由になります。私は築古物件の調査で、結露でカビが出た窓まわりを数えきれないほど見てきました。内窓(インナーサッシ)の追加や、ガラスの交換は、工事自体は一日で終わるものも多く、入居者の生活への影響が小さいのが利点です。
オーナー視点で重要なのは、断熱改修が「賃料の下支え」と「入居率」の両方に効くことです。光熱費が安く、結露の少ない部屋は、同じ家賃でも選ばれやすい。築年数なりの設備の古さは、賃料の下落圧力として静かに効いてきますが、断熱はその圧力に抗うリフォームの一つです。給湯省エネと窓リノベは、住宅省エネ2026キャンペーンとして国がまとめて打ち出している制度群なので、給湯器交換と窓改修を同じタイミングで計画すると段取りがよくなります。
【市川市】木造住宅 耐震診断・改修助成 — 旧耐震の木造アパートに
ここからは市川市の制度です。まず、旧耐震の木造物件をお持ちのオーナーさまに関係するのが、建築指導課が所管する耐震診断・耐震改修の助成です(出典:市川市「建築物の耐震診断・改修工事の助成に関して」)。
市川市に登録された耐震診断士が、建物が地震にどの程度の強さを持っているかを調査(耐震診断)する費用の一部と、その診断にもとづいて行う改修工事の費用の一部を助成する制度です。耐震診断の対象は、平成12年(2000年)5月31日以前に着工した木造住宅。耐震改修の助成は、昭和56年(1981年)5月31日以前に着工した木造住宅で設計・工事・工事監理費の5分の4(上限100万円)、昭和56年6月1日から平成12年5月31日までの着工で5分の4(上限50万円)が目安です(出典:市川市「建築物の耐震診断・改修工事の助成に関して」)。年度により補助率・上限・受付期間は見直されるため、申請前に必ず最新の要綱を確認してください。
オーナーが押さえるべき注意点
この制度は本来「自宅の耐震化」を念頭に置いた設計です。賃貸に出している木造アパートが対象になるかどうかは、所有形態や用途によって扱いが分かれるため、建築指導課(耐震担当 電話047-712-6337)への事前確認が欠かせません。ここを曖昧にしたまま進めると、せっかくの工事が補助の対象外になりかねない。
それでも私が旧耐震の木造物件のオーナーさまに耐震をおすすめするのは、補助金のあるなしを超えて、出口(売却)と空室リスクに直結するからです。旧耐震の建物は、買い手の融資が付きにくく、売却価格に響きます。さらに、地震で外壁やブロック塀が崩れて第三者をケガさせれば、オーナーの工作物責任が問われます。耐震改修は「利回り改善」というより、「物件価値そのものを底上げし、最悪の事態を避ける」投資です。
なお、現行の耐震基準を満たす改修を行った場合、市の助成利用の有無を問わず、固定資産税の減額や所得税の特別控除を受けられる場合があります(出典:市川市「建築物の耐震診断・改修工事の助成に関して」)。補助金・税の減額・資産価値、この三つをセットで考えるのがオーナーの視点です。
【市川市】分譲マンション 耐震診断・改修助成 — 区分所有オーナーに
市川市で区分所有のマンションを賃貸に出しているオーナーさまには、分譲マンションの耐震診断・改修助成が関係します。昭和56年5月31日以前に建築された分譲マンションを対象に、耐震診断と耐震改修の費用の一部が助成され、改修工事については工事費の3分の1・上限1,000万円が目安とされています(出典:市川市「建築物の耐震診断・改修工事の助成に関して」)。
ただし分譲マンションの耐震改修は、建物全体の話なので、一区分所有者の判断だけでは進みません。管理組合の合意形成が前提になります。賃貸に出している区分所有者の立場からは、「自分の一票」と「管理組合への働きかけ」の両面で関わることになります。とはいえ、旧耐震マンションは賃貸需要にも売却価格にも逆風ですから、区分所有オーナーとして耐震化の議論を後押しすることには、十分な経済合理性があります。
私たち明誠は、こうした分譲マンションの大規模修繕や改修で、足場を組む工法と、足場を使わないロープアクセス工法、そして両者を組み合わせるハイブリッド工法を、建物の形状とコストに応じて使い分けてご提案しています。足場費を抑えながら居住者・入居者の生活影響を最小化したい、という分譲マンションのニーズにこそ、無足場の選択肢が効いてきます。
【市川市】危険コンクリートブロック塀等除却事業 — 塀の崩壊リスクとオーナー責任
意外と見落とされがちなのが、敷地まわりのブロック塀です。市川市は、道路に面した危険なコンクリートブロック塀等の撤去について、費用の一部を助成しています(出典:市川市「危険コンクリートブロック塀等除却事業の助成に関して」、市川市「地震に備えるための助成制度」)。
老朽化したブロック塀や、現行の建築基準に適合していない塀は、地震時に倒壊して通行人に被害を与え、避難や緊急車両の通行を妨げる恐れがあります。賃貸物件の敷地境界にこうした塀があるなら、これはオーナーにとって、補助金の話である以前に「責任の話」です。塀の倒壊で通行人がケガをすれば、所有者であるオーナーの工作物責任が問われます。補助があるうちに、リスクの芽を摘んでおく。これは利回り計算には乗りませんが、賃貸経営の土台を守る投資です。受付期間や対象条件、賃貸物件・法人所有の扱いは年度ごとに異なるため、建築指導課に確認してください。
【市川市】自宅向けで「賃貸には使いにくい」3制度の正体
ここで、市川市の看板制度でありながら、純粋な賃貸物件には原則使えない制度を、正直に整理しておきます。検索で上位に出てくる制度ほど、ここに該当します。期待して調べたのに対象外、という空振りを避けるためです。
あんしん住宅助成制度は、バリアフリー・防災性向上・省エネ・子育て配慮のいずれかの改修に、対象工事費の3分の1(上限10万円)、防災性向上で一定基準を満たす場合は2分の1(上限30万円)を助成する制度です。しかし補助対象は「現に市内に所有し、自ら居住している住宅」、補助対象者は「申請時に市内在住で住民登録をしている方」と明記されています(出典:市川市「あんしん住宅助成制度」)。つまり、オーナーが住んでいない賃貸物件は、原則として対象外です。
住宅断熱改修促進事業補助金も同じ構造です。窓の断熱化で上限10万円、窓の高断熱化で上限20万円、壁・床・天井の断熱化で上限30万円という手厚い内容ですが、申請要件は「市内在住で住民登録している方」。やはり自宅向けの制度です(出典:市川市「住宅断熱改修促進事業補助金」)。賃貸物件の断熱は、前述の国の先進的窓リノベ2026事業で攻めるのが筋になります。
スマートハウス関連設備導入費補助金(太陽光発電・蓄電池・エネファーム等)も、「自己の居住の用に供するもの」「本市に居住し住民基本台帳法に基づく記録をされている方」が要件です。令和8年度からはリースで導入した設備も対象になりましたが、自ら居住する住宅であることが前提という芯は変わりません(出典:市川市「スマートハウス関連設備導入費補助金交付事業」)。賃貸物件に太陽光を載せたい場合は、市の制度ではなく、国や千葉県の事業者・集合住宅向けの枠組みを当たることになります。
この3つを「自宅なら市の制度、賃貸なら国の制度」と整理しておくだけで、申請の方向性を間違えずに済みます。
アスベスト・解体を控えた築古ビルオーナーへ
解体や大規模改修を控えた築古ビルをお持ちのオーナーさまは、アスベスト(石綿)の事前調査が法令上の義務になっている点に注意してください。市川市でも、建築物の解体・改修時の石綿事前調査と報告について、大気汚染防止法の改正にもとづく規制が周知されています(出典:市川市「石綿の規制強化に伴う大気汚染防止法の改正」)。
アスベストの調査・除去費用については、国が社会資本整備総合交付金を通じて補助の枠組みを設けており、各自治体がこれを活用して独自の補助制度を設けている例があります。市川市について現時点で「民間建築物アスベスト除去の独自補助制度」が公開されているかは、本記事執筆時点では明確に確認できませんでした。ここは正直にお伝えします。解体・改修の予定があるオーナーさまは、市の建築指導課・生活環境保全課、および千葉県の窓口に、最新の補助制度の有無を直接確認することをおすすめします。
調査や除去には専門の有資格者が必要で、費用も小さくありません。だからこそ、補助の有無を事前に確認し、工事計画に織り込んでおくことが、想定外の出費を避けるコツです。
税務の話 — 補助金は「もらって終わり」ではない
オーナーにとって、補助金は受け取った瞬間に税務の論点が立ち上がります。ここを押さえないと、手残りの計算が狂います。
第一に、受け取った補助金は原則として雑収入として課税対象になります。給湯器交換で10戸分100万円の補助を受ければ、その100万円は収入に計上されます。圧縮記帳という、課税を繰り延べる方法が使える場合もありますが、適用には要件があるため、顧問税理士への確認が必須です。
第二に、その工事が「修繕費」なのか「資本的支出」なのかで、税務上の扱いが大きく変わります。原状回復に近い修理は修繕費として一括で損金算入できますが、性能を高めるグレードアップは資本的支出として減価償却の対象になります。給湯器を同等品に交換するのか、断熱や耐震で性能を上げるのか――工事の中身によって、その年の所得への効き方が変わるのです。私はいつも、「補助金の額だけでなく、修繕費か資本的支出かまで含めて初めて、本当の手残りが見える」とお伝えしています。
これらは一般的な考え方であり、個別の判断は税理士の領域です。本記事は法的・税務的な助言ではありませんので、必ず専門家にご相談ください。
工法の選択で「補助金以上の差」が出る
最後に、私たち施工会社の立場から、一つだけ。補助金は初期負担を軽くする追い風ですが、賃貸物件の修繕で本当に総額を左右するのは、実は「工法の選び方」です。
中高層のマンションやビルの外壁・防水工事では、足場の架設費が工事費全体の大きな割合を占めます。私たち明誠は、従来の足場仮設に加えて、産業用ロープで施工する無足場のロープアクセス工法、そして部位ごとに足場とロープを使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な方法をご提案できる、日本でも数少ない会社です。
ロープアクセスは、足場の設置・解体が不要なため、工期の短縮とコスト圧縮につながりやすく、何より足場を組まないぶん、入居者の生活への影響や、空き巣などの防犯リスクを抑えられます。賃貸経営では、工事中の入居者ストレスがそのまま退去につながることがあります。「足場で部屋が一日中暗い」「ベランダが使えない」という不満を最小化できることは、入居率の観点でも価値があります。私たちは塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟するフランチャイズのネットワークを通じて、高品質と低価格を両立しています。
付け加えるなら、外壁や防水には更新の周期があります。一般に、外壁塗装はおおむね十数年、屋上やバルコニーの防水も同程度の周期で見直しが必要になり、放置すれば雨漏りや躯体の劣化が進み、結果として工事費が膨らみます。賃貸物件は、この周期を逃すと「入居者からのクレーム」と「想定外の大規模出費」が同時に来ます。だからこそ、補助金が使えるタイミングと、修繕の周期、そして工法の選択を一枚の計画にまとめておくことが、長い目で見たコスト最適化になります。私たちは、現地調査のうえで、この周期と総額の見通しを数字でお示しします。
補助金で初期負担を軽くし、工法でランニングと入居者影響を抑える。この二段構えが、オーナーの利回りと物件価値を同時に守ります。市川という街は、都心へのアクセスがよく賃貸需要が底堅い一方、築年数の進んだ物件も多いエリアです。だからこそ、適切なタイミングの修繕投資が、競合物件との差を生みます。
入居率1%の改善は、いくらのキャッシュフローか
ここで、補助金と修繕の話を「オーナーの財布の感覚」に翻訳しておきます。なぜ私が、給湯器や窓や断熱の話をしつこく繰り返すのか。それは、これらが入居率と賃料に直結し、入居率1%の差が、想像以上に大きなキャッシュフローの差になるからです。
仮に、家賃8万円の部屋を20戸お持ちのオーナーさまを考えます。満室なら月160万円、年1,920万円の家賃収入です。ここで入居率が95%から96%に1ポイント上がると、年間でおよそ19万円の収入増になります。たった1%、と思われるかもしれません。しかし、これは何もせずに毎年積み上がる差です。さらに、退去が1件減れば、原状回復費・募集の広告料・空室期間の家賃ロスを合わせて、1戸あたり数十万円の支出を回避できます。給湯器が壊れにくく、冬に寒くなく、結露でカビが出ない部屋は、この退去を静かに減らします。
補助金は、この「入居率を守る修繕」の初期負担を軽くする道具です。給湯省エネで給湯器の更新費を圧縮し、窓リノベで断熱性能を底上げする。そのコストの一部を国が負担してくれるなら、同じ手残りでより多くの部屋に手を入れられる。これが、補助金をオーナー視点で使うということです。利回りの計算は、家賃の増減だけでなく、退去率と修繕費の両面で見て初めて正確になります。
千葉県・空き家活用という選択肢
市川市の自宅向け制度が賃貸に使いにくい一方で、賃貸オーナーに関係しうる広域の枠組みもあります。一つは、千葉県が実施する太陽光発電設備・蓄電池の共同購入支援事業のような、県レベルの省エネ支援です。市の補助とは併用の可否や対象が異なるため、設備投資を検討する際は県の制度も並行して確認する価値があります。
もう一つが、空き家・空室の活用に関する国の枠組みです。国土交通省は、高齢者・障害者・子育て世帯などの居住の安定確保を図るため、一定の質を備えた低廉な家賃の賃貸住宅を供給する目的で、空き家等の改修工事を支援する事業を設けてきました(出典:市川市「あんしん住宅助成制度」関連リンク)。長期空室に悩む物件をお持ちなら、こうした住宅セーフティネット系の制度を、出口の一つとして調べておく意味はあります。制度の最新状況は、国交省および市の住宅担当窓口でご確認ください。
よくある質問(市川市の賃貸オーナー編)
Q. 市川市の補助金は、貸している物件にも使えますか?
A. 制度によります。国の賃貸集合給湯省エネ2026事業は賃貸集合住宅が正面から対象で、先進的窓リノベ2026事業も賃貸で活用できます。一方、市川市のあんしん住宅助成制度・住宅断熱改修促進事業・スマートハウス補助は、いずれも「市内に居住し住民登録している方が、自ら居住する住宅に対して」が原則要件で、純粋な賃貸物件には使いにくい制度です。所有形態と用途で結論が変わるため、申請前の確認が欠かせません。
Q. 自宅向けの市の制度を、賃貸物件で使う裏ワザはありますか?
A. 要件を満たさないのに無理に使うことはおすすめしません。要綱に「自ら居住」と明記されている以上、賃貸物件での利用は対象外です。賃貸物件は、国の制度(給湯・窓)と、市の耐震系制度(要件確認のうえ)で攻めるのが正攻法です。
Q. 木造アパートの耐震改修助成は、賃貸でも対象になりますか?
A. 市川市の耐震助成は本来自宅を念頭に置いた制度のため、賃貸に出している木造物件が対象になるかは、所有形態や用途で扱いが分かれます。建築指導課の耐震担当(047-712-6337)に事前確認してください。対象外でも、耐震化自体は出口価格と空室リスクの観点から検討する価値があります。
Q. 工事を先に始めても、後から申請できますか?
A. できません。市川市の助成も、国の事業も、交付決定(または交付申請)の前に契約・着工すると、補助の対象外になるのが原則です。あんしん住宅助成では、交付決定通知書の日付以降に契約・着工するよう明記されています。故障対応の緊急交換では補助に間に合わないことが多いため、更新時期が読める設備は壊れる前の計画交換を。
Q. 予算枠はいつ埋まりますか?
A. 市川市の制度も国の事業も先着・予算枠制で、年度の早い時期に埋まる傾向があります。期限の日付より、予算切れのほうが先に来ると考えて、年度初めに動くのが安全です。
Q. 補助金をもらうと税金が増えますか?
A. 受け取った補助金は原則として雑収入として課税対象になります。圧縮記帳で課税を繰り延べられる場合もありますが要件があるため、顧問税理士にご確認ください。
まとめ — 1棟の現地調査からでも、ご相談を
市川市の賃貸オーナーが2026年度に押さえるべき補助金を、賃貸物件に使えるかどうかを軸に整理してきました。最後に要点を一つにまとめます。賃貸物件のど真ん中は、国の賃貸集合給湯省エネ2026事業と先進的窓リノベ2026事業。旧耐震の木造アパートや区分所有マンションなら市の耐震診断・改修助成(要件確認のうえ)、敷地の危険な塀ならブロック塀除却助成。一方、市のあんしん住宅助成・断熱改修・スマートハウス補助は自ら居住する住宅向けで、純粋な賃貸には使いにくい――この線引きを最初に持っておくことが、無駄のない一歩です。
そして、補助金はあくまで「初期負担を軽くする追い風」です。修繕費か資本的支出かの税務、入居率とNOIへの効き方、出口での物件価値まで含めて初めて、本当の投資判断ができます。
お持ちの物件で、まだこれらの補助金の検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度お問合せください。お問合せフォームから、1棟の現地調査と利回り改善シミュレーションだけでも、ご相談を承ります。どの補助が使えて、どの工法なら総額と入居者への影響を抑えられるか、数字でお示しします。これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない実感です。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業について」
- 賃貸集合給湯省エネ2026事業「公式サイト」
- 国土交通省ほか「住宅省エネ2026キャンペーン 公式」
- 環境省「先進的窓リノベ2026事業 公式」
- 市川市「建築物の耐震診断・改修工事の助成に関して」
- 市川市「危険コンクリートブロック塀等除却事業の助成に関して」
- 市川市「地震に備えるための助成制度」
- 市川市「あんしん住宅助成制度」
- 市川市「住宅断熱改修促進事業補助金」
- 市川市「スマートハウス関連設備導入費補助金交付事業」
- 市川市「石綿の規制強化に伴う大気汚染防止法の改正」
- 市川市「住宅に関連する支援制度のご案内」
- 国土交通省「マンションストック長寿命化等モデル事業」
本記事は2026年6月23日時点の公開情報に基づきます。補助率・上限額・期間・要件は変更されること、予算枠到達で受付が締め切られることがあります。申請にあたっては必ず各制度の公式情報および市川市の担当窓口でご確認ください。税務処理は顧問税理士にご相談ください。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
遮熱塗料が猛暑で品薄——代替調達に走る塗装業界。今夏の大規模修繕で「省エネ改修+補助金」をどう組み込むか。収益物件オーナー・管理組合の判断軸【2026年6月】
毎年この時期になると、私のところには「今年の夏は最上階の住戸が暑くて、入居者からクレームが来ている」というご相談が増えます。
そして今年は、それに加えてもう一つ、見過ごせない動きが出てきました。遮熱塗料(しゃねつとりょう。太陽光の熱を反射して建物の温度上昇を抑える塗料)が、猛暑による需要急増で品薄になり始めているというニュースです。
「塗料がどこも値上がりしている」という話は、このブログでも何度かお伝えしてきました。ですが今回は少し毛色が違います。値段だけでなく「欲しい塗料が、欲しいタイミングで手に入らないかもしれない」という、段取りそのものの問題になってきているのです。
今日は、このニュースの中身を整理したうえで、収益物件をお持ちのオーナーさま、そしてマンションの管理組合の理事長さま・修繕委員のみなさまが、今年の夏から秋にかけての大規模修繕で何を判断材料にすべきかを、現場の目線でお話しします。読み終えたときに「うちの理事会で一度この話を出してみよう」と思っていただけたら、書いた甲斐があります。
まず何が起きているのか——「遮熱塗料が品薄」というニュースの中身
猛暑で需要が急増、調達は中国・インド頼みに
きっかけは、日本経済新聞が報じた一本の記事です。猛暑による遮熱塗料の需要増に対し、塗料メーカーや塗装会社が、塗料の下地材や容器を中国・インドなどから代替調達する動きに追われているという内容でした(出典:日本経済新聞「猛暑需要の遮熱塗料、代替調達へ中小企業奔走」2026年6月)。
遮熱塗料そのものは新しい製品ではありません。日経はかつて、工場向けの遮熱塗装が3年で需要倍増ペースにあると報じたこともあります(出典:日本経済新聞「猛暑をはね返せ、温度下げる遮熱塗装に商機」2024年)。つまり、もともと右肩上がりだった需要に、ここ数年の記録的な猛暑が拍車をかけている、という構図です。
ナフサショックの延長線上にある「目詰まり」
私がこのニュースを「ただの夏の風物詩」で済ませてはいけないと感じたのは、背景に中東情勢に端を発した原材料の供給不安があるからです。
塗料の多くは、原油から作られるナフサ(粗製ガソリン)を出発点とした石油化学製品です。2026年に入ってからの中東情勢の緊張で、このナフサの供給が不安定になり、塗料の値上げや一部製品の出荷調整が相次いでいます。日経ビジネスも、シンナー(塗料を薄める溶剤)の枯渇で塗装業の倒産が急増していると報じました(出典:日経ビジネス「シンナー枯渇で塗装業の倒産急増」2026年6月)。
私はこの一連の流れを、別の記事でも「サプライチェーンの目詰まり」とお伝えしてきました(参考:資材高騰と工事中断リスクを工法選択でどう守るか、塗料用シンナーの政府直接販売開始)。今回の遮熱塗料の品薄は、その目詰まりが「需要が一番伸びている商品」に最初に現れた、という見方ができます。
正直に申し上げます。「夏になったら遮熱塗料を塗ろう」と思い立っても、その夏に在庫が確保できるとは限らない。これが、いま現場で起きていることの本質です。
そもそも遮熱塗料とは——大規模修繕で何が変わるか
仕組みをかみ砕くと「光を跳ね返す塗膜」
専門用語が続くと読みにくいので、ここで一度かみ砕きます。
遮熱塗料とは、太陽光のなかでも熱に変わりやすい近赤外線を反射しやすくした塗料のことです。屋上やバルコニー、外壁、屋根といった「太陽が直接当たる面」に塗ることで、その面の表面温度が上がりにくくなります。表面が熱くならなければ、その熱が室内へ伝わる量も減る、という理屈です。
似た言葉に断熱塗料がありますが、こちらは熱を「伝えにくくする」もので、厳密には役割が違います。大規模修繕でよく使われるのは、屋上防水のトップコート(防水層を保護する仕上げ塗膜)や、屋根・外壁の仕上げ塗装に遮熱機能を持たせるタイプです。
数字で見る効果——ただし条件次第である点に注意
「で、実際どれくらい涼しくなるのか」が一番気になるところだと思います。
メーカーや業界の試験データでは、遮熱塗装によって屋根や屋上の表面温度が十数度から二十度近く下がるという結果が示されることが多く、それに伴って最上階の室温も数度下がる例が報告されています。環境省も、建物の屋根・外壁の高反射率化(クールルーフ)を、ヒートアイランド対策や省エネ対策の一つとして位置づけています(出典:環境省「ヒートアイランド対策」)。
ただし、ここは慎重にお伝えしなければなりません。効果は、建物の構造・断熱の有無・塗る面の方位・地域の気候によって大きく変わります。「塗れば必ず○度下がる」と断定する業者がいたら、私はむしろ警戒します。私がお客さまにご説明するときは、「最上階や西日の当たる住戸など、効果が出やすい面を見極めて使いましょう」という言い方をします。全面に塗ればよい、という単純な話ではないのです。
種類と選び方——「グレード」と「下地との相性」を見る
遮熱塗料とひとことで言っても、中身はさまざまです。大きくは、シンナー(溶剤)で薄めて使う溶剤系と、水で薄める水性(水系)に分かれます。
今回の供給不安との関係でいえば、溶剤系はシンナーの調達難の影響を受けやすく、ナフサショックの局面では水性のほうが相対的に手当てしやすいと見る向きもあります。実際、塗料各社は水性塗料への切り替えを進めてきました。一方で、下地や使用環境によっては溶剤系が向く場面もあり、「水性なら何でも安心」というわけではありません。
選ぶ際に私が必ず確認するのは、次の3点です。第一に、反射性能の数値(日射反射率)が第三者の試験で示されているか。第二に、既存の塗膜・防水層との相性。古い塗膜の上に相性の悪い塗料を重ねると、膨れや剥がれの原因になります。第三に、耐久年数とメンテナンス周期です。遮熱性能は汚れの付着で少しずつ落ちていくため、表面の汚れにくさ(低汚染性)も実質的な性能の一部だと考えています。
カタログの「○度下がる」という数字だけで決めず、自分の建物の下地と方位に合うかをセットで見る。地味ですが、ここを飛ばすと後悔します。
なぜ「今夏の大規模修繕」で検討すべきか——3つの理由
ここからが本題です。なぜ私が、今年の修繕計画でこの話を取り上げてほしいと考えているのか。理由は3つあります。
理由1:品薄だからこそ「早めの段取り」が効く
先ほどお伝えしたとおり、遮熱塗料は需要が伸びている一方で、供給に不安があります。秋の大規模修繕で遮熱仕様を入れたいなら、塗料の選定と発注のリードタイム(発注から納品までの期間)を、例年より長めに見ておく必要があります。「総会で決めてから塗料を探す」では間に合わないかもしれないのです。
理由2:猛暑は入居者・利用者の満足度に直結する
私の経験上、最上階や西向き住戸の「暑さクレーム」は、退去理由になりやすい要素です。賃貸であれば空室リスク、分譲であれば住民満足度の低下につながります。大規模修繕は十数年に一度の機会です。そのタイミングで、外壁や屋上の塗り替えに遮熱機能を「ついでに」持たせられるなら、足場代を二重に払わずに済む。これは費用対効果の面で非常に大きい。
理由3:資産価値と賃料を守る投資になる
遮熱改修は、単なる「涼しさ」だけでなく、空調コストの削減=ランニングコストの低減につながります。近年は不動産の選定でも省エネ性能が見られるようになってきました。「夏に強い建物」は、長い目で見れば賃料と資産価値を守る武器になるというのが、私の考えです。
遮熱塗料だけではない——「夏に強い建物」にする複合メニュー
ここで一つ、お伝えしておきたいことがあります。「暑さ対策=遮熱塗料を塗る」だけだと、効果が頭打ちになりやすいということです。遮熱塗料は強力な手段ですが、建物の暑さは複数の経路から入ってきます。大規模修繕という機会だからこそ、合わせて検討できるメニューがあります。
屋上は「遮熱」と「断熱」の合わせ技で考える
最上階の暑さの主犯は、多くの場合、屋上です。屋上防水の改修では、トップコートを遮熱仕様にして表面温度を下げると同時に、断熱材を入れて熱の伝わり自体を抑える「断熱防水」という選択肢もあります。
遮熱が「太陽光を跳ね返す」守りなら、断熱は「入ってきた熱を室内に通さない」もう一段の守りです。私はよく、「屋上は表と裏の二段構えで考えましょう」とお伝えします。防水のやり替えという十数年に一度のタイミングは、この二段構えを仕込む絶好の機会なのです。
ベランダ・共用廊下・外階段も「熱だまり」になる
意外と見落とされがちなのが、ベランダや共用廊下、外階段といった共用部の暑さです。コンクリートの床は日中に熱をため込み、夜になっても下がりにくい。ここに遮熱性のある床用塗料や防水を使うと、住戸への放射熱や、夕方の蒸し暑さがいくらか和らぎます。
賃貸物件であれば、内見に来た方が最初に通るのは共用部です。「足を踏み入れた瞬間の暑さ」は、その物件の印象を確実に左右します。私は、共用部の改修こそ入居率に効く地味な投資だと考えています。
日射そのものを遮る——庇やルーバーという発想
塗装の話からは少し離れますが、西日対策としては、窓の外側で日射を遮るのが理屈のうえでは最も効きます。後付けの庇(ひさし)やルーバー(羽根状の日除け)、外付けブラインドなどです。
すべてを一度にやる必要はありません。ですが、「うちの建物は西面の窓が大きい」「角部屋の暑さが特にひどい」といった特徴があるなら、塗装と一緒に検討する価値はあります。建物ごとに『暑さの入り口』は違うので、まずはどこから熱が入っているかを見極めることが先決です。
省エネ改修に使える補助金——令和8年度の主な制度
「やる意味は分かった。でもコストが」というのが、正直なところだと思います。そこで、省エネ・脱炭素の改修に使える可能性のある補助制度を、2026年6月時点で整理します。
なお、補助金は予算枠に達した時点で受付終了となるものが多く、年度ごとに要件が変わります。ここに書く内容は申請を保証するものではありません。実際の申請前には、必ず各制度の公募要領(公式の募集案内)で最新情報をご確認ください。
ビルオーナー向け:環境省「業務用建築物の脱炭素改修加速化事業」
オフィスビルや店舗など、事業用の建築物をお持ちのオーナーさま向けに、環境省が業務用建築物の脱炭素改修を支援する事業を進めています。令和8年度(2026年度)予算でも、この分野に予算が計上されています(出典:環境省「令和8年度予算及び令和7年度補正予算 脱炭素化事業一覧(エネ特ポータル)」、環境省「令和8年度(2026年度)当初予算」)。
この種の省CO2改修支援では、これまで補助率3分の1、上限数千万円規模といった水準で設計されてきました。外壁・屋根の高反射率化(遮熱改修)や断熱改修も、省エネに資する工事として対象に含まれ得ます。ただし、令和8年度分の具体的な補助率・上限額・対象工事は、公募要領の公開を待って確認する必要があります。「去年こうだったから今年も同じ」と決めつけないことが肝心です。
中小企業向け:横浜市「省エネルギー化支援助成金」
地域の制度として、横浜市の例をご紹介します。横浜市は、市内中小企業者の省エネ・再エネ設備導入を支援する省エネルギー化支援助成金(カーボンニュートラル設備投資助成事業)を実施しています。2026年度の事前申込は5月1日から6月30日17時までと案内されており、助成率2分の1、上限300万円といった条件が示されています(出典:横浜市「カーボンニュートラル設備投資助成事業」、横浜市「省エネルギー化支援助成金(簡易申請コース)」)。
ご覧のとおり、今年度分の事前申込締切は6月30日と目前に迫っています。お住まい・物件の所在地によって使える制度は変わりますので、横浜市以外のオーナーさまも「自分の自治体に似た制度がないか」を一度調べてみる価値があります。
制度の比較——まずは「どこの・誰向け」かを見極める
| 制度 | 主な対象 | 補助・助成の目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 環境省 業務用建築物の脱炭素改修加速化事業 | 事業用建築物(ビル・店舗等)のオーナー | 省CO2改修支援で補助率1/3前後・上限数千万円規模が従来水準 | 令和8年度の詳細は公募要領で要確認。予算枠あり |
| 横浜市 省エネルギー化支援助成金 | 横浜市内の中小企業者 | 助成率1/2・上限300万円 | 2026年度事前申込は6月30日17時まで |
| お住まいの自治体の同種制度 | 自治体により異なる | 自治体により異なる | 名称・要件・締切は各自治体の公式サイトで確認 |
私はいつも理事長さまに、「補助金は工法や仕様を決めてから探すのではなく、計画の入口で同時に並べて検討しましょう」とお伝えしています。後から「使える制度があった」と気づくのが、いちばんもったいないからです。
住宅・マンション向けの省エネ支援も押さえておく
事業用の建物だけでなく、住宅やマンションを対象とした省エネ改修の支援も国は続けています。たとえば環境省は、断熱窓への改修を促進する住宅の省エネ・省CO2加速化の支援事業を進めてきました(出典:環境省「断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業 採択結果」)。窓や外皮(建物の外側を覆う部分)の断熱と、屋根・外壁の遮熱は、「夏の暑さを防ぐ」という意味で相性のよい組み合わせです。
管理組合の場合、こうした制度を使うには総会での合意形成や、申請のための書類整備が必要になります。締切から逆算すると、理事会レベルでの検討開始が「半年前」では遅いこともある。これも、私が「早めに」と繰り返す理由のひとつです。
修繕積立金とのバランスをどう取るか
遮熱改修や省エネ改修は、確かに初期費用が上乗せになります。修繕積立金に余裕がない管理組合では、「そこまで手が回らない」という声も当然あります。
ですが、私はこう考えています。足場を組む大規模修繕のタイミングは、十数年に一度しか来ない。次にもう一度足場を組んで遮熱塗装だけをやり直すとなれば、足場代をもう一度払うことになります。だからこそ、「やるなら今回の足場のあるうちに」という判断には、財布の面でも合理性がある。補助金が使えれば、その上乗せ分の一部を埋められる可能性もあります。修繕積立金の使い道は、こうした「機会の重なり」で考えると見え方が変わってきます。
工法選択で「足場費」を抑える——遮熱塗装×ロープアクセスの相性
省エネ改修を検討するうえで、もう一つ知っておいていただきたいのが工法の選択肢です。ここは、私たち明誠が最も力を入れている部分でもあります。
ロープアクセス(無足場工法)という選択肢
大規模修繕というと、建物全体を足場で囲む光景を思い浮かべる方が多いと思います。ですが、工事の規模や部位によっては、ロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が壁面を昇降して施工する、足場を組まない工法)のほうが合理的なケースがあります。
足場を組まない分、足場の架設・解体費を抑えられ、工期も短縮しやすい。さらに、足場がないことで侵入経路が減り、居住者の防犯面の不安や、ベランダが足場で塞がれる生活ストレスも軽減されます。猛暑のなかで「窓を開けたいのに足場のシートで風が通らない」という入居者の不満は、実は毎年いただくのです。
ロープアクセスについては、別ページで詳しくご説明しています(参考:ロープアクセス工法のご紹介)。
ハイブリッド工法で「面ごとに最適化」する
とはいえ、私はロープアクセスを万能だとは申し上げません。広い面を一気に塗る作業や、複雑な納まりの部分は、足場を組んだほうが品質も効率も上がることがあります。
そこで私たちが提案しているのが、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法です。たとえば、入隅や複雑な低層部は足場で、平らで広い高層部の遮熱塗装はロープアクセスで——というように、面ごとに最適な工法を組み合わせる。これによって、足場費と工期と品質のバランスを取ります。
現場で20年やってきて、私が一番もったいないと感じるのは、「足場ありきで見積もりが組まれ、ロープアクセスという選択肢が最初から机に乗っていない」ケースです。私はこれを、必ず両方を並べて比較できる形でご提案するようにしています(参考:大規模修繕工事のご紹介)。
現場の話を一つ
以前、最上階の暑さに長年悩まされていた、築20年ほどのマンションを担当したことがあります。屋上防水の改修時期がちょうど重なっていたため、防水のトップコートを遮熱仕様に変え、あわせて西面の外壁の一部をロープアクセスで遮熱塗装しました。
全面足場を組まずに必要な面だけを狙ったことで、足場費を抑えつつ、夏場の最上階の体感が変わったと理事長さまに喜んでいただけました。「修繕のついでに、夏の悩みも一緒に片づいた」——これが、十数年に一度の大規模修繕というタイミングを活かす、ということだと私は思っています。
コストは「戸あたり」で考えると判断しやすい
工事費の話になると、どうしても「総額〇千万円」という大きな数字に圧倒されてしまいます。私が理事会でご説明するときに使うのが、「戸あたりいくらか」という換算です。
たとえば、ある工事で足場をロープアクセスやハイブリッドに切り替えることで仮設費を圧縮できたとします。その削減額を総戸数で割れば、「1戸あたり数万円分、別のところに回せる」という見え方になります。逆に、遮熱仕様の上乗せ分も戸あたりに直せば、「1戸あたり月々の積立に換算するといくらか」という、住民の財布感覚に近い数字で議論できます。
大切なのは、総額の大小ではなく、同じ足場のうちに「何を一緒にやれば、戸あたりの負担を最も有効に使えるか」という視点です。遮熱改修を単独でやるより、大規模修繕に抱き合わせたほうが戸あたりの効率がよくなる、という話は、この換算をすると腹落ちしやすくなります。
梅雨明け前後が分かれ目——スケジュールを逆算する
季節性の強い話なので、時間軸の整理もしておきます。遮熱改修を「今年の暑さ」に間に合わせたいのか、「来年に向けた仕込み」と割り切るのかで、動き方が変わります。
| 時期の目安 | やること | ねらい |
|---|---|---|
| 6〜7月(今) | 困りごとの棚卸し・補助金の有無を確認 | 締切の早い助成金を取りこぼさない |
| 7〜8月(猛暑期) | 暑さの実態を記録・専門家に相談 | 効果が出やすい面を見極める材料を集める |
| 秋(着工期) | 工法3案で見積もり・塗料の発注段取り | 品薄の遮熱塗料を確実に手当てする |
| 総会のタイミング | 仕様・予算・補助金活用を一括で諮る | 後戻りのない合意形成 |
ポイントは、塗料の調達と補助金の締切という「自分ではコントロールできない締切」から逆算することです。猛暑の真っ最中に慌てて動いても、塗料が間に合わず、補助金の受付も終わっている——これがいちばん避けたい展開です。6月中に「使える制度はないか」を一度だけでも調べておくと、秋の動きがぐっと楽になります。
失敗しないための実務ステップ——理事会・オーナーが今やること
最後に、読み終えたあとに何をすればよいかを、順番に整理します。難しいことはありません。
- 長期修繕計画の「次の塗装・防水の時期」を確認する。 来年・再来年に外壁や屋上の改修が控えているなら、今が情報収集のベストタイミングです。
- 最上階・西向きなど「暑さの困りごと」を棚卸しする。 入居者アンケートやクレーム記録があれば、それが遮熱改修の根拠資料になります。
- 使える補助金を「計画の入口」で同時に調べる。 自治体の省エネ・脱炭素関連の助成金は、締切が年度の早い時期に来ることが多いので注意です。
- 工法を1つに決め打ちしない。 足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3案で見積もりを取れる体制を作る。
- 塗料の調達リードタイムを確認する。 遮熱塗料は品薄傾向です。仕様を決めたら、早めに発注の段取りに入る。
この5つを理事会の議題に1分だけ載せるだけでも、来年の修繕の質はずいぶん変わります。
総会で「暑さ対策」を通すには——合意形成の現場感
6月は総会シーズンです。理事長さまや修繕委員の方から、「やる意味は分かったが、総会でどう説明すれば住民が納得するのか」というご相談を、この時期は特によくいただきます。現場で見てきた範囲で、通りやすくするコツをお話しします。
「感想」ではなく「記録」で語る
「最上階が暑い」というのは、当事者以外には伝わりにくい話です。そこで効くのが、事実の記録です。入居者からの暑さに関するクレーム件数、退去時のアンケート、夏場の空室期間、最上階と中間階の電気代の差——こうした数字は、総会の場で「個人の感想」を「組合全体の課題」に変えてくれます。
私はいつも、「暑さは、データにすると予算が付きやすくなります」とお伝えしています。声の大きい人の不満ではなく、記録に基づく課題として提示する。これが第一歩です。
「ついで工事」のコスト効率を見える化する
総会で反対が出やすいのは、「今やる必要があるのか」という点です。ここで効くのが、先ほどの戸あたり換算と、「足場のあるうちにやる」という機会の話です。
「単独で遮熱改修をすると足場代がもう一度かかるが、今回の大規模修繕に組み込めば追加の足場代はかからない」——この一点を図にして示すだけで、議論の空気はずいぶん変わります。お金の話は、必ず『今やる場合』と『あとでやる場合』を並べて見せる。これが私の鉄則です。
反対意見も「議事録に残す」
最後に、これは少し意外かもしれませんが、私は反対意見こそ丁寧に議事録へ残すことをおすすめしています。「暑さ対策より、まず防水の延命を優先すべきだ」といった意見は、それ自体が建物にとって大事な論点です。
賛成多数で押し切るのではなく、論点を全部テーブルに乗せたうえで決める。その過程が記録に残っていれば、数年後に「なぜあのとき遮熱をやったのか」を、新しい理事の方にも説明できます。合意形成とは、その場の多数決ではなく、後から検証できる意思決定の積み重ねだと、私は考えています。
よくある質問(FAQ)
Q. 遮熱塗料は普通の塗料よりどれくらい高いのですか。
A. 製品やグレードによりますが、一般的な仕上げ塗料より単価は高くなる傾向があります。ただし、屋上防水のトップコートを遮熱仕様に変える程度であれば、追加コストは限定的なことも多いです。空調コストの削減効果と合わせて、トータルで判断されることをおすすめします。
Q. 既存の外壁の上から塗れますか。
A. 多くの場合、下地の状態を点検したうえで塗り重ねが可能です。ただし、ひび割れや既存塗膜の劣化がある場合は、その補修が先になります。点検なしに「塗れます」と言い切る業者には注意してください。
Q. 補助金は個人のオーナーでも使えますか。
A. 制度によります。事業用建築物を対象とするもの、中小企業者を対象とするもの、住宅を対象とするものなど、対象がそれぞれ異なります。ご自身の物件の用途と所在自治体に合う制度を探すのが第一歩です。
Q. ロープアクセスは足場より品質が落ちませんか。
A. 適した部位を選べば、品質面で足場と遜色のない施工が可能です。一方で、広い面の一括施工などは足場が向く場面もあります。だからこそ、私たちは面ごとに工法を使い分けるご提案をしています。
Q. 遮熱塗料の効果は何年くらい持ちますか。
A. 製品やグレード、立地の汚れやすさによって変わりますが、遮熱性能は塗膜の汚れとともに少しずつ低下します。定期的な点検と、必要に応じた洗浄・再塗装で性能を保つ、という考え方が現実的です。「塗ったら一生もつ」というものではない、とご理解ください。
Q. 今年の夏に間に合わせたいのですが、可能ですか。
A. 建物の規模や下地の状態、塗料の調達状況によります。今年の品薄を踏まえると、規模の大きい工事を真夏に間に合わせるのは段取りが厳しいことも多いです。まずは点検と見積もりから始め、無理のないスケジュールを一緒に組むのが現実的だと思います。
Q. うちは横浜市ではありませんが、補助金は使えますか。
A. 本文の横浜市はあくまで一例です。多くの自治体が省エネ・脱炭素の改修支援を設けています。お住まい・物件所在地の自治体名と「省エネ 改修 補助金」などで検索し、公式サイトで対象・締切をご確認ください。見つけ方が分からなければ、私たちでも一緒にお調べします。
まとめ——「夏の困りごと」を修繕の機会に変える
今日お伝えしたことを、最後に一言でまとめます。
遮熱塗料の品薄は、裏を返せば「省エネ改修の需要がそれだけ高まっている」というサインです。 そして大規模修繕は、その省エネ改修を、足場代を二重に払わずに組み込める数少ない機会です。猛暑、資材の供給不安、補助金の締切——いくつもの要素が、今年は同じタイミングで動いています。
私はいつも、修繕は「守りの出費」ではなく「資産を守り、育てる投資」だとお伝えしています。遮熱改修と工法の選択、そして補助金の活用を、ぜひ計画の入口でセットにして考えてみてください。
ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理や、「うちの建物で遮熱改修に意味があるのか」という見極めだけでも、お力になれることがあります(お問合せフォーム)。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 日本経済新聞「猛暑需要の遮熱塗料、代替調達へ中小企業奔走」2026年6月
- 日本経済新聞「猛暑をはね返せ、温度下げる遮熱塗装に商機」2024年
- 日経ビジネス「シンナー枯渇で塗装業の倒産急増 ホルムズ危機が暴いた「目詰まり」の正体」2026年6月
- 環境省「令和8年度予算及び令和7年度補正予算 脱炭素化事業一覧(エネ特ポータル)」
- 環境省「令和8年度(2026年度)当初予算 地球環境・国際環境協力」
- 環境省「ヒートアイランド対策」
- 環境省「断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業 採択結果」
- 横浜市「カーボンニュートラル設備投資助成事業」
- 横浜市「省エネルギー化支援助成金(簡易申請コース)」
本記事は2026年6月23日時点の公開情報をもとに作成しています。補助金・助成金の要件や締切は変更される場合があります。申請の際は必ず各制度の公式の公募要領をご確認ください。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
船橋市で使える賃貸オーナー向け補助金活用ガイド|給湯器・窓・耐震・アスベスト【2026年度】
賃貸マンションやアパート、ビルを船橋市内でお持ちのオーナーさまへ。本間です。私は20年近く、現場でマンションやビルの大規模修繕に携わってきました。その立場から、まず一つだけ正直に申し上げます。船橋市の賃貸オーナーが2026年度に使える補助金には、「賃貸物件にそのまま使えるもの」と「自宅でないと使えないもの」がはっきり分かれている、ということです。
ここを取り違えると、申請書を書く時間も、現地調査の段取りも、ぜんぶ空振りに終わります。逆に、自分の物件がどの制度のど真ん中に入っているかを最初に見極めれば、給湯器1台あたり最大10万円、窓改修や耐震改修ではもっと大きな金額が、修繕費の一部を確実に軽くしてくれます。
この記事では、船橋市と千葉県、そして国の制度を「賃貸物件に使えるか・使えないか」を明示しながら整理します。入居率や賃料への効き方、損金算入と資本的支出の税務の話、出口(売却)を見据えた投資判断まで、オーナーの財布の感覚で書いていきます。
まず結論:船橋の賃貸オーナーが本当に狙うべき補助金
細かい話に入る前に、結論を先に置きます。私が船橋市で収益物件を持つオーナーさまにご説明するなら、優先順位はこの順になります。
第一に、国の賃貸集合給湯省エネ2026事業。これは経済産業省が「既存の賃貸集合住宅」を名指しで対象にした、賃貸オーナー専用の制度です。給湯器の交換という、いつかは必ず来る出費に補助が乗ります。第二に、国の先進的窓リノベ2026事業。断熱性の高い窓への改修で、入居者の光熱費と満足度に直接効きます。第三に、船橋市の木造住宅耐震改修助成と民間建築物アスベスト補助。旧耐震の木造アパートや、解体・改修を控えた築古ビルをお持ちなら、ここが効きます。
一方で、太陽光・蓄電池などの市の脱炭素設備補助は、原則として「その住宅に居住し住民登録している方」が要件になります。つまり、自分が住んでいない純粋な賃貸物件には、そのままでは使いにくい。ここを最初に知っておくだけで、無駄な動きがなくなります。
下の表が、全体像です。
| 制度 | 実施主体 | 賃貸物件への適用 | オーナーの旨味 |
|---|---|---|---|
| 賃貸集合給湯省エネ2026事業 | 国(経産省) | ◎ 賃貸集合住宅が対象 | 給湯器1台5〜10万円 |
| 先進的窓リノベ2026事業 | 国(環境省) | ○ 賃貸も活用可 | 断熱で賃料維持・入居率 |
| 木造住宅耐震改修助成 | 船橋市 | △ 旧耐震木造に(要件確認) | 工事費の4/5・上限115万円 |
| 危険ブロック塀撤去助成 | 船橋市 | △ 個人所有のみ(法人除く) | 上限10万円 |
| 分譲マンション耐震診断・改修助成 | 船橋市 | ○ 区分所有オーナー | 改修上限3,300万円 |
| 民間建築物アスベスト補助 | 船橋市 | ◎ 用途問わず | 除去費2/3・上限120万円 |
| 住宅用脱炭素化促進事業(太陽光等) | 船橋市 | ✕ 原則「居住・住民登録」要件 | (自宅併用なら可) |
| 住宅バリアフリー・断熱改修支援 | 船橋市 | △ 自宅向け色が強い | 工事費3/10・上限8万円 |
| マンションストック長寿命化等モデル事業 | 国(国交省) | ○ 先導的な再生案件 | 大規模再生の補助 |
ここからは、一つずつ、オーナー視点で深掘りします。
【国・本命】賃貸集合給湯省エネ2026事業 — オーナー専用のど真ん中
私がこの記事で一番にお伝えしたいのが、この制度です。なぜなら、数ある補助金の中で「賃貸集合住宅のオーナー」を正面から対象に据えた、数少ない制度だからです。
賃貸集合給湯省エネ2026事業(経済産業省)は、既存の賃貸集合住宅の住戸について、従来型の給湯器を、小型で省エネ性能の高い給湯器、具体的にはエコジョーズ(潜熱回収型ガス給湯器)やエコフィール(潜熱回収型石油給湯器)に交換する工事を補助します。リース利用も対象に含まれます。
補助額は、追い焚き機能なしで1台あたり5万円、追い焚き機能ありで1台あたり7万円が基本です。さらに一定の排水工事を伴う場合には、それぞれ最大8万円、10万円まで加算されます(出典:資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業について」、経済産業省 報道発表)。
交付申請(予約を含む)の受付は令和8年(2026年)3月31日から始まっており、交付申請の期限は令和8年12月31日までです(出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業 公式サイト)。ただし、これは国の補助金の常で、予算枠に達した時点で受付が締め切られます。年末の期限より、予算切れのほうが先に来ると考えておいたほうが安全です。
オーナーにとっての意味
ここからが本題です。給湯器というのは、賃貸経営において「壊れてから慌てて交換する」設備の代表格です。冬場に給湯器が故障すれば、入居者からのクレームは即日。退去の引き金にもなります。私は現場で、入居者が「お湯が出ない一晩」をきっかけに更新を見送った例を、何度も見てきました。
その給湯器の更新に、1台あたり5万円から10万円の補助が乗る。10戸のアパートなら、単純計算で50万円から100万円のキャッシュアウトが圧縮されます。しかも省エネ給湯器は入居者のガス代・灯油代を下げますから、「光熱費が安い部屋」という訴求が一つ増える。これは退去抑制、つまり入居率維持に静かに効いてきます。
私はいつもオーナーさまに、「壊れる前に、補助金のあるうちに計画交換しましょう」とお伝えしています。故障対応の交換では、補助金の交付決定を待つ余裕がないからです。
【国】先進的窓リノベ2026事業 — 賃料維持と入居率の武器
次に、断熱の話です。先進的窓リノベ2026事業(環境省)は、高い断熱性能を持つ製品を用いた窓やドアなど開口部の改修を補助する制度です。
2026年度の事業では、窓の工事が必須となり、改修後の窓の性能区分は「A(熱貫流率1.9以下)」「S(同1.5以下)」「P(同1.1以下)」のいずれかに限られます(出典:住宅省エネ2026キャンペーン 公式、先進的窓リノベ2026事業 公式)。熱貫流率というのは、窓を通して熱がどれだけ逃げるかを示す数値で、小さいほど断熱性能が高い、と考えてください。
この制度は、賃貸住宅でも活用できます。先ほどの給湯省エネと合わせて「住宅省エネ2026キャンペーン」という国の大きな枠組みの一部であり、複数の事業を組み合わせて申請できる点も特徴です。
窓が入居率に効く理由
窓の断熱は、地味ですが入居者の体感に直結します。冬の結露、夏の西日、エアコンの効きの悪さ――これらは内見では分かりにくいのに、住み始めると確実にストレスになる要素です。
私の経験上、築20年を超えたアパートで「なんとなく決まりが悪い部屋」には、たいてい窓まわりに原因があります。単板ガラスのアルミサッシは、冬は冷気が伝わり、結露でカビが出やすい。これを内窓設置や複層ガラスへ替えるだけで、部屋の印象がはっきり変わります。
賃料を下げずに入居率を保つ、あるいは原状回復のたびにカビ補修に追われる状況から抜け出す。窓改修は、そういう「静かな減収」を止める投資です。出口を見据えても、断熱改修済みという履歴は物件価値の説明材料になります。
【船橋市】木造住宅耐震改修助成 — 旧耐震の木造アパートを底上げする
ここからは船橋市の制度です。まず、木造アパートをお持ちのオーナーさまに直結するのが、木造住宅耐震改修助成事業です。
令和8年度分の交付申請を受付中で、助成内容は耐震改修工事費と工事監理費の5分の4、上限115万円です。2段階に分けて耐震改修工事を行う場合は、段階ごとに上限57万5千円となります。対象は、船橋市内で平成12年5月以前(2段階耐震改修の場合は昭和56年5月以前)に新築された、平屋または2階建ての木造住宅です。受付の締切は令和8年11月30日ですが、これも予算に達し次第、締め切られます(出典:船橋市「木造住宅耐震改修助成事業」)。
注意点として、交付申請書を提出して交付決定通知書を受け取る前に工事に着手したり契約を締結したりすると、助成金は交付されません。「先に工事、後から申請」は通用しない、ということです。これは船橋市の助成制度に共通する鉄則なので、頭に入れておいてください。
オーナーが確認すべきこと
この制度は「住宅」の耐震改修を対象としています。木造アパートが対象になるか、オーナーが居住していない賃貸でも使えるかは、物件の登記や用途によって判断が分かれる部分があるため、申請前に必ず船橋市の住宅政策課へ事前相談することをおすすめします。私は、こうした「使えるかどうか微妙な制度」こそ、自己判断せず行政に当てにいくべきだと考えています。
旧耐震、つまり昭和56年5月以前の建物は、現行の耐震基準を満たしていません。賃貸として回っているうちは問題が見えませんが、大きな地震があれば一気に資産価値とキャッシュフローを失います。耐震改修は、利回りを上げる投資ではなく、ゼロになるリスクを避ける投資です。出口で「旧耐震のまま」では、買い手の融資が付きにくく、売却価格にも響きます。
【船橋市】危険コンクリートブロック塀等撤去助成 — 個人オーナー限定の落とし穴
意外と見落とされるのが、ブロック塀の撤去助成です。そして、ここにはオーナーが必ず知っておくべき「落とし穴」があります。
船橋市危険コンクリートブロック塀等撤去助成事業は、建築基準法に規定する道路、または小学校の通学路に面したコンクリートブロック塀等で、市長が危険と判断するものの撤去を助成します。具体的には、道路面からの高さが1mを超えるもの、または擁壁の上にあって高さの合計が1mを超え、かつ塀の高さが60cmを超えるものが対象です(出典:船橋市「危険なコンクリートブロック塀等の撤去について費用の一部を助成します」)。
助成金額は、撤去に要する費用の合計額、または塀の長さ1mあたり1万円を乗じた金額のいずれか少ないほうで、上限は10万円です。
ここが落とし穴:法人所有は対象外
助成対象者はブロック塀等の所有者ですが、明確に除外される条件があります。市税を滞納している者、すでに同種の補助を受けた者、販売目的で解体する者、そして――ブロック塀等を法人等が所有する場合です。
つまり、賃貸物件を法人名義で所有しているオーナーは、この助成を使えません。個人名義で物件を持つオーナーだけが対象になる、ということです。私は、所有形態によって使える制度・使えない制度が変わる、という点を、オーナーさまにいつもお伝えしています。法人化が進んだ収益不動産では、このタイプの「個人限定」制度を取りこぼしやすいのです。
なお、助成を受けるには建築指導課との事前相談が必須で、工事契約の前に交付申請を行う必要があります。ブロック塀の倒壊は、地震時に入居者や通行人を巻き込む賠償リスクそのものです。補助が使えない法人所有でも、危険な塀の撤去・フェンス化は、リスク管理として優先度を上げて検討すべきだと考えます。
【船橋市】分譲マンション耐震診断・改修助成 — 区分所有オーナーへ
一棟物だけでなく、分譲マンションの一室を投資用に区分所有しているオーナーさまもいらっしゃいます。その場合に関わってくるのが、分譲マンションの耐震助成です。
対象は、昭和56年5月以前に建築された、地上3階以上の分譲マンション(鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、または鉄骨造で、延べ面積1,000平方メートル以上)です。耐震診断助成は、令和7年度より上限額が180万円から350万円に引き上げられました。耐震改修助成は、工事費の3分の1、上限3,300万円です(出典:船橋市「耐震診断・改修費助成」、船橋市「マンション耐震診断助成事業」)。
ただし、この助成は管理組合が主体です。対象になるマンションの集会において、耐震診断を行うことと助成金の交付申請を行うことの決議を得た管理組合が申請者となります。区分所有オーナー個人が単独で申請するものではありません。
投資オーナーとしての関わり方
それでも、区分所有オーナーがこの制度を知っておく意味は大きい。旧耐震のマンションを投資用に持っているなら、その管理組合が耐震診断・改修に動くかどうかは、あなたの物件価値と出口価格を左右するからです。
総会で耐震の議題が出たとき、「この補助を使えば自己負担はこれだけ圧縮される」と数字で語れるオーナーは強い。私は、区分所有のオーナーさまには「管理組合任せにせず、補助制度を握っておく」ことをおすすめしています。修繕積立金の話と耐震の話は、出口価格に直結する経営判断です。
【船橋市】民間建築物アスベスト補助 — 解体・改修前の必須チェック
築古のビルやアパートをお持ちなら、解体や大規模改修の前に必ず確認したいのが、アスベスト(石綿)の補助です。
船橋市の民間建築物アスベスト分析調査・除去等の補助では、分析調査について上限10万円(全額)、除去工事について費用の3分の2・上限120万円が補助されます(出典:船橋市「民間建築物アスベスト分析調査・除去等の補助」)。
アスベストは、おおむね2006年以前に建てられた建物の吹付け材や保温材などに使われている可能性があります。大気汚染防止法の改正で、解体・改修工事の前には事前調査と報告が義務付けられており、これを怠ると工事そのものが止まります。私は現場で、調査を後回しにしたために工程が大幅に遅れ、結果的に空室期間が延びてしまった例を見ています。
オーナー視点での効き方
このアスベスト補助は、住宅用途に限定されない「民間建築物」が対象です。賃貸ビルでも、店舗でも、用途を問わず関わってきます。除去工事の3分の2、上限120万円というのは、補助金の中ではかなり大きい部類です。
賃貸ビルの大規模改修や、出口での解体・建替えを視野に入れているなら、まず分析調査の補助で「自分の建物にアスベストがあるか」を確定させる。ここを早めに押さえておくと、後の工程と資金計画が大きくぶれずに済みます。
【船橋市】住宅用脱炭素化促進事業(太陽光・蓄電池等) — 「居住要件」という壁
省エネ・脱炭素の補助は、ニュースでもよく取り上げられます。船橋市にも、太陽光発電システム、定置用リチウムイオン蓄電システム、燃料電池システム(エネファーム)、電気自動車・プラグインハイブリッド自動車、V2H充放電設備、集合住宅用充電設備を対象とした補助があります。令和8年度分の申請書類は令和8年5月1日以降に配布される予定で、先着順での受付です(出典:船橋市「住宅向け補助金 太陽光・省エネ設備等」、令和8年度 概要)。
ただし、賃貸オーナーにとっては、ここに大きな壁があります。申請者の要件として、「補助を受ける対象設備が設置された住宅に居住し、住民登録を完了している方」であることが求められるのです。つまり、自分が住んでいない純粋な賃貸物件に太陽光や蓄電池を入れても、原則としてこの補助は使えません。
集合住宅用充電設備(EV充電器)についても、設置された住宅に居住していること、所有者全員の同意が取れていることなどが要件です(出典:船橋市 令和8年度 概要)。
正直に申し上げます
正直に申し上げます。この制度は、賃貸オーナーが期待するほどには使えません。船橋市の脱炭素設備補助は、基本的に「自宅に設備を入れる市民」を想定した制度設計です。
例外は、オーナー自身が住む併用住宅や、自宅兼賃貸の物件の場合。ここなら居住要件を満たせる可能性があります。私は、こうした「使えそうで使えない」制度ほど、最初に線を引いておくべきだと考えています。賃貸物件の脱炭素・省エネで補助を狙うなら、先にご紹介した国の給湯省エネ・窓リノベのほうが現実的です。
【船橋市】住宅バリアフリー・断熱改修支援事業 — 断熱の使いどころ
もう一つ、断熱に関わる市の制度として、住宅バリアフリー・断熱改修支援事業があります。
令和8年度の内容は、合算額が3万円以上の対象工事を行った場合、工事費用の10分の3、上限8万円を助成するものです。対象工事には、手すりの設置、スロープの設置、室間の段差解消、浴室・トイレの改修、引戸等への変更、廊下等の拡幅、そして断熱改修、椅子式階段昇降機の設置が含まれます。申請受付は4月1日から翌年1月13日までで、受付順、予算枠に達した時点で終了します。工事着手前の申請と書類審査が必要です(出典:船橋市「令和8年度住宅バリアフリー・断熱改修支援事業について」)。
この制度は、名称からも分かるとおり、高齢者の事故防止や、住み慣れた住宅への長期居住を支援する性格が強く、基本は自宅向けです。賃貸物件にそのまま適用できるかは、要件確認が必要になります。
ただ、バリアフリー化という観点は、賃貸経営でも見逃せません。高齢入居者の比率が上がる中で、段差のない部屋、手すりのある浴室は、長期入居につながる要素です。補助が使えるかどうかは別として、「どの設備が入居率と退去抑制に効くか」という発想で、断熱・バリアフリーを検討する価値はあります。
【国】マンションストック長寿命化等モデル事業 — 大規模再生を狙うなら
最後に、規模の大きな再生を考えているオーナー・管理組合向けの制度です。マンションストック長寿命化等モデル事業(国土交通省)は、今後急増する高経年マンションについて、老朽化マンションの再生検討から、長寿命化に資する改修や建替え等を支援する制度です。
令和8年度の提案受付期間は、第1回が令和8年4月1日〜4月15日、第2回が令和8年6月22日〜6月26日、第3回が令和8年9月14日〜9月18日と、複数回に分かれています。事業タイプは、先導性の高い新工法・材料・新機能の導入等を検討する「先導的再生モデルタイプ」と、管理水準の低いマンションが地方公共団体と協力して管理適正化を図る「管理適正化モデルタイプ」の2つです(出典:国土交通省「マンション総合対策モデル事業」、令和8年度提案募集のお知らせ)。
これは公募・採択型のため、誰でも受けられるものではありません。ただ、複数棟を保有し、大規模な再生・長寿命化を視野に入れる投資型オーナーにとっては、検討に値する選択肢です。
税務の話:損金算入・資本的支出・補助金の課税
補助金の金額だけを見て喜ぶのは、まだ早い。オーナーにとっては、税務処理まで含めて初めて「いくら手元に残るか」が決まります。私が必ずワンセットで説明するようにしているのが、この税務の話です。
修繕費か、資本的支出か
賃貸物件の工事費は、税務上「修繕費」と「資本的支出」に分かれます。修繕費なら、その年に全額を損金算入できます。一方、建物の価値を高めたり耐用年数を延ばしたりする工事は資本的支出と扱われ、減価償却を通じて複数年に分けて費用化することになります。
たとえば、原状回復に近い給湯器の交換や塗り替えは修繕費に寄りますが、グレードアップを伴う大規模な改修や耐震補強は資本的支出になりやすい。どちらに区分されるかで、その年の課税所得が大きく変わります。修繕費か資本的支出か、税務処理で結果が大きく変わる、ということです。
補助金は雑収入として課税される
もう一つ、見落としがちな点。受け取った補助金は、原則として受給時に「雑収入」として計上が必要で、課税の対象になります。100万円の補助を受けたら、その100万円も収入として税金がかかる、ということです。
国庫補助金等の圧縮記帳という制度を使えば課税を繰り延べられる場合もありますが、適用には要件があります。ここは個別性が高いので、必ず顧問税理士に確認してください。私は工事の提案をする立場であって税理士ではありませんから、税務の最終判断は専門家に委ねるべきだと考えています。補助金の「額面」と「手残り」は別物だ、という感覚だけは持っておいてください。
入居率1%とNOI — 数字で考える修繕投資
ここで、オーナーの財布の感覚に引き寄せて考えてみます。入居率1%の改善が、年間どれだけのキャッシュフロー差になるか。
仮に、家賃8万円の部屋を20戸持つアパートを考えます。満室なら年間家賃収入は8万円×20戸×12カ月=1,920万円。入居率が95%なら1,824万円、96%なら約1,843万円です。たった1%でも、年間で約19万円の差。これが10年続けば約190万円。修繕投資の判断は、この「静かな差」をどう動かすかの勝負です。
築年数なりの劣化は、賃料の下落圧力として静かに効いてきます。古びた外観、結露する窓、お湯の出が悪い給湯器――一つひとつは小さくても、内見での印象と退去率にじわじわ効く。補助金を使った計画的な更新は、この下落圧力に逆らうための、もっとも費用対効果の高い手段の一つです。
そして、NOI(純営業収益、家賃収入から運営費を引いた実質的な儲け)が改善すれば、収益還元法で評価される物件価値そのものが上がります。出口を見据えた修繕投資は、目先の利回り改善以上に、物件価値そのものを底上げします。補助金は、その投資の初期負担を軽くしてくれる「追い風」だと捉えるのが、私の考え方です。
工法の選択 — 足場・ロープアクセス・ハイブリッド
補助金で初期負担を軽くしたうえで、もう一段コストを下げる鍵が、工法の選択です。私たち明誠は、通常の足場を組む工法、足場を組まないロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が建物を昇降しながら施工する無足場工法)、そしてその両方を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法――この3つから、建物にとって最適なものをご提案できる、日本でも数少ない会社です。
賃貸オーナーにとって、足場の有無は単なる工事費の問題ではありません。足場を組むと、その期間は窓を開けにくく、外からの視線も気になり、防犯上の不安から入居者の不満が出やすい。退去や賃料交渉の口実になることもあります。
ロープアクセスなら足場の架設費がかからず、工期も短く、入居者の生活への影響を最小限にできます。一方で、建物の形状や工事内容によっては足場のほうが適している場合もある。だからこそ「両方を提案できる」ことに意味があります。詳しくはロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介もご覧ください。
補助金で初期費用を抑え、工法の最適化で総額を抑え、入居者への影響を抑える。この3つを同時に成立させるのが、収益物件の修繕の理想形だと私は考えています。
よくある質問(FAQ)
Q. 賃貸物件でも本当に補助金は使えますか?
A. 制度によります。国の賃貸集合給湯省エネ2026事業は賃貸集合住宅が正面から対象です。先進的窓リノベ2026事業も賃貸で活用できます。一方、船橋市の太陽光・蓄電池などの脱炭素設備補助は原則「居住・住民登録」が要件で、純粋な賃貸物件には使いにくい制度です。物件の所有形態や用途で結論が変わるため、申請前の確認が欠かせません。
Q. 法人名義の物件だと不利ですか?
A. 制度ごとに異なります。たとえば船橋市の危険ブロック塀撤去助成は、法人所有が明確に対象外です。一方、国の賃貸集合給湯省エネ事業のような賃貸住宅向け制度は、法人オーナーでも対象になります。法人化が進むほど「個人限定」の市の制度を取りこぼしやすいので、所有形態と制度の相性を一度棚卸しすることをおすすめします。
Q. 工事を先に始めても、後から申請できますか?
A. できません。船橋市の助成も、国の事業も、交付決定(または交付申請)の前に契約・着工すると、補助の対象外になるのが原則です。故障対応の緊急交換では補助に間に合わないことが多いため、給湯器のように更新時期が読める設備は、壊れる前の計画交換をおすすめします。
Q. 予算枠はいつ埋まりますか?
A. 多くの制度が先着・予算枠制で、年度の早い時期に埋まる傾向があります。期限の日付より、予算切れのほうが先に来ると考えて、年度初めに動くのが安全です。
Q. 補助金をもらうと税金が増えますか?
A. 受け取った補助金は原則として雑収入として課税対象になります。圧縮記帳で課税を繰り延べられる場合もありますが要件があるため、顧問税理士にご確認ください。
まとめ — 1棟の現地調査からでも、ご相談を
船橋市の賃貸オーナーが2026年度に押さえるべき補助金を、賃貸物件に使えるかどうかを軸に整理してきました。最後に要点を一つにまとめます。賃貸物件のど真ん中は、国の賃貸集合給湯省エネ2026事業と先進的窓リノベ2026事業。築古の木造アパートなら市の耐震改修助成、解体・改修を控えるならアスベスト補助。一方、市の太陽光・蓄電池補助は居住要件があり、純粋な賃貸には使いにくい――この線引きを最初に持っておくことが、無駄のない一歩です。
そして、補助金はあくまで「初期負担を軽くする追い風」です。修繕費か資本的支出かの税務、入居率とNOIへの効き方、出口での物件価値まで含めて初めて、本当の投資判断ができます。
お持ちの物件で、まだこれらの補助金の検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度お問合せください。お問合せフォームから、1棟の現地調査と利回り改善シミュレーションだけでも、ご相談を承ります。どの補助が使えて、どの工法なら総額と入居者への影響を抑えられるか、数字でお示しします。これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない実感です。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 経済産業省「『給湯省エネ2026事業』及び『賃貸集合給湯省エネ2026事業』の交付申請の受付開始」
- 資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業について」
- 賃貸集合給湯省エネ2026事業「公式サイト」
- 国土交通省ほか「住宅省エネ2026キャンペーン 公式」
- 環境省「先進的窓リノベ2026事業 公式」
- 船橋市「木造住宅耐震改修助成事業」
- 船橋市「危険なコンクリートブロック塀等の撤去について費用の一部を助成します」
- 船橋市「耐震診断・改修費助成」
- 船橋市「マンション耐震診断助成事業」
- 船橋市「民間建築物アスベスト分析調査・除去等の補助」
- 船橋市「住宅向け補助金(太陽光・省エネ設備等)トップページ」
- 船橋市「令和8年度 太陽光・省エネ設備等補助金の概要」
- 船橋市「令和8年度住宅バリアフリー・断熱改修支援事業について」
- 国土交通省「マンション総合対策モデル事業(マンションストック長寿命化等モデル事業)」
- 国土交通省「マンションストック長寿命化等モデル事業 令和8年度提案募集のお知らせ」
本記事は2026年6月22日時点の公開情報に基づきます。補助率・上限額・期間・要件は変更されること、予算枠到達で受付が締め切られることがあります。申請にあたっては必ず各制度の公式情報および船橋市の担当窓口でご確認ください。税務処理は顧問税理士にご相談ください。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
小田原市で使える賃貸オーナー向け補助金活用ガイド|耐震・省エネ・給湯器交換【2026年度】
「小田原で持っている賃貸物件、そろそろ手を入れたいけれど、補助金は管理組合や持ち家向けばかりで、オーナーには関係ないのでは」——私が小田原エリアのオーナーさまから一番よく聞くのが、この声です。
結論から申し上げます。2026年度(令和8年度)の小田原市には、賃貸経営をしているオーナーが現実に使える制度が複数あります。ただし「賃貸は対象外」という落とし穴もはっきり存在します。今日は、使える制度と使えない制度を、オーナーの財布の感覚で整理してお伝えします。
小田原は、海沿いの塩害、旧耐震の木造アパート、駅前のRCマンション、相続で引き継いだ築古物件と、物件の事情が実に多様な街です。だからこそ「うちの物件はどれが使えるのか」を見極めることが、そのままNOI(実質的な賃料収益)の差になって効いてきます。
最初にお伝えしておきたいのは、補助金には大きく分けて「オーナー(賃貸事業)を正面から対象にしているもの」と「自分が住む持ち家を主な対象にしていて、賃貸は対象外、または要件確認が必要なもの」の2系統があるということです。この線引きを知らずに「補助金があるらしい」と工事を進めてしまうと、申請段階で対象外と分かって落胆する、という残念な展開になりがちです。だからこそ、工事の計画と同時に「自分の物件はどの制度の対象になるのか」を先に押さえておくことが、遠回りに見えて一番の近道になります。
まず全体像:小田原オーナーが押さえる「3つの財布」
補助金は、出どころで3つに分けて考えると整理しやすくなります。
ひとつ目は国の財布。給湯器交換や窓の断熱など、賃貸住宅オーナーを正面から対象にした事業があります。金額が大きく、賃料維持に直結するのが特徴です。
ふたつ目は小田原市の財布。ブロック塀の撤去、太陽光・蓄電池、耐震、感震ブレーカーなど、地域防災と脱炭素が中心です。市の制度は予算枠が小さく、先着順で締め切るものが多いのが要注意点です。
みっつ目は税の財布。固定資産税の減額措置です。現金が振り込まれるわけではありませんが、翌年度の税額が軽くなる形でキャッシュフローに効きます。ただし賃貸住宅は要件が厳しく、ここに一番大きな落とし穴があります。
以下、オーナーにとって使い勝手のよい順にご説明します。先に、本記事で取り上げる主な制度を一覧で整理しておきます。ご自分の物件に当てはまりそうなものから読み進めてください。
| 制度名 | 出どころ | 賃貸物件での使いやすさ | 補助の目安 | 申請の主体 |
|---|---|---|---|---|
| 賃貸集合給湯省エネ2026事業 | 国 | ◎(賃貸オーナー専用) | 1台5万〜10万円 | 登録事業者が代行 |
| 先進的窓リノベ2026事業 | 国 | ○(賃貸も対象) | 工事内容で変動(大型枠あり) | 登録事業者が代行 |
| ブロック塀等撤去費補助金 | 小田原市 | ○(個人・法人問わず可) | 1mあたり1万円・上限10万円 | オーナー本人 |
| 重点対策加速化事業費補助金 | 小田原市 | △〜○(事業用枠あり) | 区分により変動 | 本人またはPPA・リース事業者 |
| 木造住宅耐震改修・診断費補助金 | 小田原市 | △(自己居住が主対象) | 改修上限115万円 | 要件確認のうえ本人 |
| 感震ブレーカー設置費補助金 | 小田原市 | ○(防災対策) | 小規模 | オーナー本人 |
| 省エネ改修の固定資産税減額 | 税(市) | ×〜△(完全賃貸は対象外) | 翌年度税額の1/3減 | 申告で本人 |
「◎○△×」はあくまで賃貸経営者から見た使い勝手の目安です。最終的な対象可否は、必ず各制度の窓口でご確認ください。
1. 賃貸集合給湯省エネ2026事業|賃貸オーナー専用の「本命」
まず本命からいきます。国(経済産業省・資源エネルギー庁)の賃貸集合給湯省エネ2026事業は、その名のとおり賃貸の集合住宅を持つオーナーが対象の、数少ない「オーナー直撃型」の制度です。
対象は、既存のアパート・マンションで、従来型給湯器を高効率給湯器(エコジョーズ・エコフィール)へ交換する工事です。補助額は、追い焚き機能なしで1台あたり5万円、追い焚き機能ありで1台あたり7万円が基本。一定の排水(ドレン水)工事を伴う場合は、それぞれ最大8万円・10万円まで加算されます(出典:資源エネルギー庁 賃貸集合給湯省エネ2026事業、同 公式サイト)。
例えば10戸のアパートで追い焚きありの給湯器を全戸更新すれば、単純計算で70万円規模の補助になり得ます。給湯器はいずれ寿命を迎える設備ですから、「どうせ替えるなら補助の出るうちに替える」という判断が、そのまま手残りの差になります。
給湯器は、入居者が毎日触れる設備の代表格です。冬場にお湯の出が悪い、設定温度が安定しない、といった不具合は、退去や更新拒否の引き金になります。私の現場感覚では、エアコンと給湯器は「壊れてから替える」設備の典型で、壊れてからの緊急対応は単価も上がりがちです。計画的に、しかも補助が出るタイミングで更新できれば、コストと入居者満足の両面で得をします。高効率給湯器はガス代・灯油代も抑えられますから、その分は入居者のランニングコスト低減として、間接的に物件の競争力にもつながります。
注意点が2つあります。ひとつは、2025年11月28日以降に着工した工事が対象であること。もうひとつは、オーナーが直接申請するのではなく、登録された「賃貸集合給湯省エネ事業者」が申請を代行する仕組みである点です。事務局のホームページは2026年2月16日に開設されています。施工を依頼する業者が事業者登録をしているか、必ず確認してください。
2. 先進的窓リノベ2026事業|断熱で「結露・寒さのクレーム」を減らす
国(環境省)の先進的窓リノベ2026事業は、断熱性能の高い窓への改修を支援する制度で、賃貸住宅も対象になります(出典:環境省 先進的窓リノベ2026事業)。
窓の断熱は、オーナーにとって見落とされがちですが、入居者満足に直結する投資です。冬の結露、夏の暑さ、外の騒音——これらは退去理由になり、内見時の印象も左右します。私の経験上、築年数なりの「住み心地の劣化」は、賃料の下落圧力として静かに効いてきます。窓を一枚替えるだけで、その圧力をかなり抑えられることがあります。
補助額は窓の性能とサイズで決まり、戸建住宅で最大100万円、240平方メートル超の非住宅で最大1,000万円という大きな枠も用意されています。この制度も窓リノベ事業者を通じた申請になりますので、対応業者かどうかの確認が前提です。
国の住宅省エネ支援(給湯・窓・断熱)は年度ごとに名称や条件が変わります。最新の枠組みは国土交通省の住宅省エネキャンペーン関連ページもあわせてご確認ください。
3. ブロック塀等撤去費補助金|法人オーナーも使える「外構の盲点」
小田原市の制度に移ります。賃貸オーナーが意外と使えるのが、令和8年度 小田原市ブロック塀等撤去費補助金です。所有者が個人か法人かを問わず利用でき、外構という見落としやすい部分の安全対策に効きます。
補助額は、撤去するブロック塀等の長さ1メートルあたり1万円(限度額10万円)。工事見積額(消費税抜き)が限度額を下回る場合はその額が上限になります。対象は、市内の道路・通学路(私道含む)・公共施設などに面し、高さ1メートルを超えるブロック塀等です(出典:小田原市 令和8年度ブロック塀等撤去費補助金)。
申請には条件があります。同じ道路に面する塀をすべて撤去すること、撤去後に塀を設けるなら高さ40センチ以下にすること(フェンス設置は可)、そして工事の着工前に申請することです。家屋の建て替えや解体を伴う工事は対象外です。
期間は、交付申請が令和8年5月11日〜11月27日、実績報告期限が令和8年12月25日。先着順で、予算額に達すると期間中でも受付終了になります。古い物件の道路沿いブロック塀は、地震時の倒壊リスクであると同時に、通行人を巻き込めばオーナーの賠償責任問題にもなり得ます。「いつか直そう」を、補助の出るうちに片付けておく価値は十分にあります。
4. 重点対策加速化事業費補助金|太陽光・蓄電池、事業用の枠もある
脱炭素分野では、小田原市の令和8年度 重点対策加速化事業費補助金があります。自家消費型の太陽光発電設備と蓄電池が中心で、家庭用に加えて事業用(自己所有)の自家消費型太陽光発電設備の区分も用意されています。さらに、建物所有者の初期投資がゼロになるPPA・リース方式も対象です(この場合の申請者はPPA・リース事業者)(出典:小田原市 重点対策加速化事業費補助金)。
令和8年度の補助金交付要綱は、2026年5月12日に公開されています。一方で、高効率空調・高効率照明の補助は令和8年度の募集を行っていない点には注意してください。共用部の電気代や、店舗・事務所が入るビルの電力コストを下げたいオーナーにとって、太陽光・蓄電池は運営費の構造を変える投資になり得ます。
事業用物件なら「自家消費型」を投資判断の材料に
賃貸ビルや事業用区画を持つオーナーの場合、自家消費型の太陽光は、共用部電力の自家供給によるランニングコスト削減という形で利回りに効きます。導入形態(自己所有かPPA・リースか)で初期投資もキャッシュフローも変わりますので、「何年で回収できるか」を試算してから判断するのが筋です。
神奈川県の制度もあわせて確認を
太陽光・蓄電池や省エネ改修については、市の制度とは別に神奈川県の支援メニューが用意される年度もあります。ただし県の住宅向け省エネ改修支援は、自己居住の持ち家を対象とし賃貸を対象外とするものも見られます。市・県・国は対象や条件が重なったり食い違ったりしますので、「市がだめでも県、県がだめでも国」と、出どころを横断して確認するのが、取りこぼしを防ぐコツです。県の最新メニューは神奈川県の環境・エネルギー関連ページでご確認ください。
5. 木造住宅耐震改修・診断費補助金|「自己居住要件」を正直に解説します
ここは、正直に申し上げます。小田原市の木造住宅耐震改修費補助金・耐震診断費補助金は、オーナーが期待するほど賃貸物件に使いやすい制度ではありません。
制度の中身としては手厚く、耐震設計・工事監理は費用の3分の2、改修工事は費用の2分の1で、改修補助の上限は115万円(条件により拡充あり)。対象は、おおむね昭和56年(1981年)5月31日以前に着工された旧耐震基準の木造住宅です(出典:小田原市 木造住宅耐震診断費補助金・木造住宅耐震改修費補助金)。
ただし、この種の市の耐震補助は所有者自身が居住する住宅を主な対象としているのが一般的で、純粋な賃貸アパートは対象外、あるいは要件確認が必要になるケースが少なくありません。小田原は海沿いを中心に旧耐震の木造アパートが今も多く残っています。「うちの古いアパートも対象かも」と思ったら、思い込みで動かず、まず建築指導課(電話:0465-33-1433)に自分の物件の所有・利用形態を伝えて確認してください。これが遠回りに見えて一番確実です。
なお、自治体の補助対象から外れる賃貸物件でも、旧耐震の建物の耐震性は出口(売却)価格や入居者確保に直結します。補助の有無とは切り離して、収益物件としての耐震投資の要否は別途検討する価値があります。
6. 感震ブレーカー設置費補助金|小さいが防災の底上げに
小田原市には令和8年度 感震ブレーカー設置費補助金もあります(出典:小田原市 防災対策課 補助金一覧)。地震時の通電火災を防ぐ装置で、金額は大きくありませんが、木造アパートの火災リスクを下げる地味に効く対策です。入居者の安全は、長く見れば空室率と評判に効いてきます。詳細・対象要件は市の防災対策課のページでご確認ください。
通電火災は、地震で停電したあと電気が復旧したときに、倒れた電気器具や傷んだ配線から出火する現象です。木造の集合住宅が密集するエリアでは、一棟の出火が周囲に広がるリスクもあります。オーナーにとっては、入居者の生命と財産を守るという責任の問題であると同時に、火災による物件の毀損・賃料収入の途絶という経営リスクの問題でもあります。費用が小さく効果のはっきりした対策は、優先して取り入れておく価値があります。
7. 固定資産税の省エネ改修減額|賃貸の「落とし穴」をはっきり書きます
最後に税の財布です。省エネ改修を行った住宅には、翌年度分の固定資産税が減額される制度があります。具体的には、120平方メートル相当分までの税額の3分の1が、改修完了の翌年度に限って減額されます(出典:小田原市 省エネ改修を行った住宅に対する固定資産税の減額制度、制度の枠組みは国土交通省 省エネ改修に係る固定資産税の減額措置)。
ここがオーナーにとっての落とし穴です。この減額は、居住部分の割合が家屋の2分の1以上であることが要件で、賃貸専用部分は対象になりません。完全な賃貸住宅(自分が住んでいない丸ごと貸している物件)は、本制度の対象外と整理されています。「省エネ改修したから固定資産税も下がるはず」と当て込むと、賃貸物件では当てが外れます。
オーナー兼自宅のような併用建物では、要件を満たす可能性があります。判断はケースバイケースなので、資産税課への確認が前提です。耐震改修・バリアフリー改修の固定資産税減額にもそれぞれ別の要件があり、賃貸での適用可否は一律ではありません。
8. 税務の落とし穴|「もらって終わり」ではない3つの注意点
補助金は、受け取ったら終わりではありません。オーナーとして必ず押さえておきたい税務上の論点が3つあります。
ひとつ目は、補助金は原則として課税対象になること。 受給した補助金は、多くの場合その年度の収入(雑収入など)として計上が必要です。「10万円もらえた」が、そのまま10万円の手残りにはなりません。最終的な税負担まで含めて損得を見てください。
ふたつ目は、修繕費か資本的支出かで税務処理が大きく変わること。 原状回復に近い修繕は、その年に全額を経費(修繕費)にできます。一方、性能を上げたり耐用年数を延ばしたりする工事は資本的支出として資産計上し、減価償却で複数年に分けて費用化することになります。給湯器交換、窓の断熱改修、耐震補強がどちらに当たるかは、工事内容と金額しだいです。
みっつ目は、補助金で取得した資産の「圧縮記帳」など、専門的な処理があること。 ここは判断を誤ると後で響きます。具体的な処理は、必ず顧問税理士にご相談ください。本記事は制度の紹介であって、税務上の助言ではありません。
9. 数字で考える|入居率1%とNOIの話
補助金の話を、最後にオーナーの言葉、つまり数字に翻訳しておきます。
仮に、家賃8万円・10戸のアパートを考えます。満室なら月80万円、年960万円の賃料です。もし入居率が1%下がる、つまり年間でおよそ0.1戸分が空く状態が続くと、ざっくり年10万円前後の減収になります。たった1%でも、毎年効いてくると無視できない金額です。
給湯器の更新や窓の断熱は、この「入居率」と「賃料の維持」に効く投資です。設備が古いままだと、内見での見劣り、結露や寒さのクレーム、退去の増加という形で、じわじわと収益を削っていきます。補助金は、その必要投資の一部を国や市が肩代わりしてくれる仕組みだ、ととらえると判断しやすくなります。
「補助が出るから工事をする」のではなく、「いずれ必要な工事を、補助の出るタイミングで前倒しする」。これが、私がオーナーさまにいつもお伝えしている考え方です。
もう一段踏み込むと、修繕投資には「利回りを上げる投資」と「物件価値そのものを底上げする投資」の2種類があります。給湯器や窓のような設備更新は、入居率と賃料を守ることで利回りを下支えします。一方、外壁・防水・耐震といった建物本体への投資は、出口、つまり売却時の収益還元価格を底上げする方向に効きます。出口を見据えた修繕投資は、目先の利回り改善以上に、物件価値の維持・向上という形で長期の収益に効いてくる、というのが私の実感です。補助金は、この両方の投資の「初期負担」を軽くしてくれる存在だと位置づけると、使いどころが見えてきます。
10. 工法の選択で総額が変わる|足場・ロープアクセス・ハイブリッド
補助金は工事費の一部を軽くする手段ですが、工事費そのものを下げることも、同じくらい収益に効きます。ここで効いてくるのが工法の選び方です。
私たち明誠は、大規模修繕や外壁・防水の工事を、3つの工法から建物に合わせて選べる体制を持っています。ひとつは従来型の足場仮設。ひとつは無足場のロープアクセス工法(産業用ロープで職人が下りながら施工する方法)。そしてその両方を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法です。
小田原のように、海風による塩害で外壁や鉄部の劣化が進みやすく、敷地に余裕のない物件も多い地域では、この使い分けが効きます。例えば、足場を全面に組むと費用も工期もかさむ物件でも、傷んでいる面だけをロープアクセスでピンポイント補修すれば、総額を抑えつつ入居者への影響も小さくできます。足場の設置・解体には相応の費用と期間がかかりますから、「足場を組まずに済む部分はないか」を最初に検討するだけで、見積りが変わることがあります。
入居中の物件では、工法の選択は「工事のしやすさ」だけの問題ではありません。足場を組むと、その期間は外からの視線や窓の開けづらさ、防犯面の不安などで、入居者に少なからずストレスがかかります。これが退去のきっかけになることもあります。ロープアクセスやハイブリッドで工期を短く、影響を小さく抑えられれば、入居率を守りながら工事を進められます。つまり工法の選択は、工事費の話であると同時に、工事期間中の賃料収入を守る話でもあるのです。私が「建物にとってのベスト」を考えるとき、施工のしやすさとオーナーの収益、入居者の暮らしの三つを必ず一緒に見るようにしています。
工法の詳しい違いはロープアクセス工法のご紹介、大規模修繕の進め方は大規模修繕工事のご紹介、3工法を建物ごとに最適提案する考え方は明誠の強み・コンセプトで詳しくご説明しています。雨漏り・漏水でお困りの場合は漏水・雨漏り対応もご覧ください。マンション・ビルオーナーさま向けの窓口はオーナー様向けサービスにまとめています。
11. よくあるご質問(小田原市で賃貸経営をするオーナー編)
Q. 個人オーナーでも市の補助金は使えますか。
ブロック塀等撤去費補助金は所有者が個人か法人かを問わず利用できます。一方、木造住宅の耐震補助は自己居住を主な対象とする傾向があり、賃貸物件は要件確認が必要です。制度ごとに対象が異なるとお考えください。
Q. 国の給湯器・窓の補助は、自分で申請するのですか。
いいえ。賃貸集合給湯省エネ2026事業も先進的窓リノベ2026事業も、登録された事業者が申請を代行する仕組みです。施工業者がその事業者登録をしているかが前提条件になります。
Q. 補助金がもらえれば、工事は実質タダになりますか。
なりません。多くの制度で補助は工事費の一部ですし、受給した補助金は課税対象になり得ます。手残りベースでの損得計算をおすすめします。
Q. 申請の締切はいつですか。
制度ごとに異なります。小田原市の制度は先着順で予算到達次第終了するものが多く、年度の早い時期に動くほど有利です。国の事業も予算上限に達すると締め切られます。
Q. うちの古い木造アパート、何から手をつけるべきですか。
まずは現地調査で劣化の状態を把握することです。緊急性の高い箇所(外壁の浮き、防水切れ、危険な塀)と、補助が使える工事を整理してから順番を決めると、無駄がありません。
Q. 海に近い物件で塗装がすぐ傷みます。何か対策はありますか。
小田原の沿岸部は塩害で塗膜や鉄部の劣化が早く進みます。塩分は定期的な洗浄である程度落とせますし、耐候性・防錆性の高い仕様を選ぶことで塗り替え周期を延ばせます。傷みが一部に偏っている場合は、その面だけをロープアクセスで先行補修し、全面工事の時期を後ろにずらす、という総額を抑える組み立ても可能です。
Q. 補助金の申請に必要な書類は、自分で全部そろえるのですか。
市の制度は申請者本人がそろえる書類が中心ですが、図面や工事内容に関する資料は施工業者の協力が要ります。国の給湯・窓の事業は事業者が申請主体なので、必要書類の多くは事業者側で用意します。いずれにしても、補助金の扱いに慣れた業者を選ぶと手間が大きく変わります。
Q. 1棟だけでなく複数棟を持っています。まとめて相談できますか。
もちろんです。複数棟を保有されている場合は、棟ごとの劣化状況と使える補助を一覧化し、年度をまたいで工事と申請を割り振る「ポートフォリオ単位」の計画づくりが効果的です。1年に使える予算枠や締切は制度ごとに限りがあるため、計画的に分散させたほうが取りこぼしを減らせます。
12. 小田原市オーナーが取るべき順番:調査 → 計画 → 申請 → 工事
最後に、動き方の順番を整理します。
第一に、現地調査で物件の状態を把握すること。劣化箇所と緊急度、そして使える補助金の候補を洗い出します。第二に、工事計画と資金計画を立てること。補助の締切と予算枠を踏まえ、今年度に何を、来年度に何を、と振り分けます。第三に、着工前に申請すること。多くの制度は着工後の申請を認めません。ここを間違えると、せっかくの補助がゼロになります。第四に、工事と実績報告です。
私たち明誠は、現地調査と、補助金も見据えた工事計画づくりからお手伝いできます。小田原で賃貸物件をお持ちで、まだこうした制度の検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度お声がけください。1棟の現地調査と、利回り改善を見据えた工事プランのご提案だけでも承ります。ご相談はお問合せフォームからどうぞ。
補助金は年度で変わり、予算枠で締め切られます。本記事の金額・期間は2026年6月時点で確認した内容です。申請前には必ず各制度の公式ページと窓口で最新情報をご確認ください。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 小田原市「令和8年度小田原市ブロック塀等撤去費補助金」
- 小田原市「重点対策加速化事業費補助金(令和8年度)」
- 小田原市「木造住宅耐震診断費補助金・木造住宅耐震改修費補助金」
- 小田原市「防災対策課 補助金・証明」
- 小田原市「省エネ改修を行った住宅に対する固定資産税の減額制度」
- 資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業について」
- 賃貸集合給湯省エネ2026事業「公式サイト」
- 環境省「先進的窓リノベ2026事業」
- 国土交通省「住宅省エネ関連支援」
- 国土交通省「省エネ改修に係る固定資産税の減額措置」
※本記事は制度の概要を分かりやすくお伝えするもので、税務・法務上の個別助言ではありません。具体的な申請可否や税務処理は、各制度の窓口および顧問税理士にご確認ください。
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鎌倉市で使える賃貸オーナー向け補助金活用ガイド|耐震・省エネ・ブロック塀・給湯器交換【2026年度】
鎌倉市内に賃貸マンションやアパート、テナントビルをお持ちのオーナーさま。「補助金は管理組合や持ち家の話で、収益物件には関係ない」と思っていませんか。私は大規模修繕の現場を回るなかで、この思い込みのせいで本来もらえたはずのお金を取りこぼしているオーナーさまを、何人も見てきました。
鎌倉は、海風による塩害、起伏の多い地形、そして築古物件の多さという、賃貸経営にとってなかなかタフな土地です。外壁やシーリングの劣化は、観光地ゆえに「見た目」がそのまま入居率に響きます。だからこそ、修繕に使える公的なお金は一円も無駄にしたくない。この記事では、2026年度(令和8年度)に鎌倉市のオーナーが実際に使える制度を、「賃貸物件に使えるか/使えないか」をはっきりさせながら整理します。私は塗装会社の人間ですが、ここでは営業ではなく、現場で本当に役立つ情報だけをお伝えします。
なお、本記事の金額・要件・期限はすべて2026年6月時点の鎌倉市・神奈川県・国の公開情報に基づいています。多くの制度が予算上限に達した時点で受付終了となる先着順ですので、最終的な判断の前に必ず各窓口で最新情報をご確認ください。
まず全体像:鎌倉市オーナーが押さえる「3つの財布」
補助金や優遇は、お金の出どころで「市」「県」「国」の3つに分かれます。それぞれ性格が違うので、最初に地図を頭に入れておくと、自分の物件にどれが効くかが見えてきます。
| 区分 | 主な制度 | 賃貸物件への向き |
|---|---|---|
| 鎌倉市 | 危険ブロック塀等除却費補助、住宅用再エネ・省エネ機器等設置費補助金、木造住宅耐震改修補助、マンション耐震診断補助 | ブロック塀・太陽光は賃貸オーナー向き。耐震改修・固定資産税減額は要件に注意 |
| 神奈川県 | 既存住宅省エネ改修補助、ZEH導入費補助金 | 既存住宅省エネ改修は「賃貸は対象外」。新築ZEH系が中心 |
| 国 | 賃貸集合給湯省エネ2026事業、先進的窓リノベ2026事業、住宅省エネ2026キャンペーン | 賃貸集合住宅専用の枠があり、オーナーに最も効く |
結論から言えば、鎌倉市の純粋な賃貸オーナーにとって主役になりやすいのは、「市のブロック塀・太陽光補助」と「国の賃貸集合住宅向け省エネ事業」です。耐震改修や固定資産税の減額は「自分が住んでいること」が条件になっている制度が多く、賃貸専用物件では使えないケースがあります。ここを正確に切り分けることが、ムダな期待と書類づくりを避ける第一歩です。順番に見ていきましょう。
1. 危険ブロック塀等除却費補助|法人オーナーも使える「外構の盲点」
私がオーナーさまに最初におすすめするのが、これです。なぜなら、賃貸物件で見落とされがちな「外構の塀」を、法人名義でも申請できるからです。
鎌倉市の「危険ブロック塀等対策事業補助金」は、地震時に倒れて避難路をふさぐ危険のあるブロック塀の除却費用を補助する制度です。対象は、第三者が通行する道路等に面し、延長が1メートル以上、かつ高さが1メートル以上(擁壁の上にある場合は擁壁を含む高さ1メートル以上かつ塀の高さ60センチ以上)のブロック塀で、市から危険である旨の指導または勧告を受けたものです。除却したあとに軽量なフェンス等を設置する工事も対象になります。
補助額は、市が定めた単位当たりの標準工事費に塀の面積(基礎は延長)を乗じた額と、除却工事の見積金額の、いずれか少ない額の2分の1です。さらに、鎌倉市立小学校の通学路に面した塀であれば、補助率は10分の9まで跳ね上がります。フェンス設置についても同じ考え方です。
ここがオーナーにとって重要な点ですが、鎌倉市はこの制度の申請にあたり「法人用の個人情報取扱同意書」を用意しています。つまり、個人オーナーだけでなく、不動産保有法人としての申請が想定されているということです。アパートの境界塀、駐車場まわりの古い塀、これらは「もらい事故」の温床です。万が一倒れて通行人がケガをすれば、所有者の責任が問われます。賃料を生まない外構部分こそ、補助金を使って先に手を打っておくべき場所だと私は考えます。
注意点として、令和8年度の補助金交付申請は2026年10月末日までです。そして必ず交付決定通知日以降に工事へ着手する必要があり、先に発注すると対象外になります。また、過去にこの補助を一度受けた塀は再度の対象になりません。問い合わせは鎌倉市建築指導課(0467-61-3589)です。
2. 住宅用再エネ・省エネ機器等設置費補助金|「貸し出す人」が対象に明記された数少ない市制度
太陽光や蓄電池の補助は「自分の家に付ける人だけ」と思われがちですが、鎌倉市の制度は違います。ここは私も提案でよく使うポイントです。
鎌倉市の「住宅用再生可能エネルギー・省エネ機器等設置費補助金」(令和8年度)は、対象者として「市内に所有する住宅に補助対象設備を設置し、かつ当該設備を所有して、他者に居住の目的で当該住宅を貸し出す者」を明確に含めています。つまり、賃貸オーナーが自分の所有する賃貸住宅に太陽光や蓄電池を設置する場合でも、補助の対象になり得るということです。市の補助制度でここまではっきり「貸し出す者」を対象に入れている例は、実はそう多くありません。
補助額は次のとおりです。住宅用太陽光発電システムは、太陽電池モジュールの公称最大出力(キロワット)に1万円を乗じた額で上限5万円。家庭用燃料電池システム(エネファーム)は上限4万円。定置用リチウムイオン蓄電システムは上限5万円。電気自動車充給電設備(V2H)は上限3万円です。なお令和7年度からの変更点として、蓄電池が4万円から5万円に、V2Hが2万円から3万円に増額され、その一方で電気自動車(EV)本体への補助は終了しました。
ただし注意が必要です。共同住宅等に設置する場合は、居住部分で使われる設備に限られ、共用部分で使う設備は補助対象外です。賃貸マンションの共用廊下や共用灯のための設備、という発想では使えないということです。また予算には限りがあり、令和8年度の予算額は600万円、2026年5月15日時点の執行率は約11%でした。年度の早い段階なら枠に余裕がある一方、後半は埋まりやすいので注意してください。申請は工事の着工前、提出は3月1日までです。問い合わせは鎌倉市環境政策課(0467-61-3421)です。
事業用なら「重点対策加速化事業費補助金」も視野に
もう少し規模の大きい投資を考えているオーナーさまには、国の交付金を財源とする「鎌倉市重点対策加速化事業費補助金」も選択肢です。こちらは住宅用だけでなく事業用、さらにリースやPPA(電力購入契約)による設置も対象になります。太陽光発電設備の補助額は、家庭用7万円/kW、事業用5万円/kWと、前述の市単独補助よりも手厚い設定です。ただしFIT・FIP制度を使わずに自家消費(家庭用30%、事業用50%以上)を行うことが条件で、前述の住宅用補助との併用はできません。物件の電力使用実態に合わせて、どちらが有利かを見極める必要があります。申請開始は2026年5月以降、コールセンター(0120-201-603)が窓口です。
3. 木造住宅耐震改修・マンション耐震診断補助|「自己居住要件」を正直に解説します
ここは期待してアクセルを踏むと空振りしやすい領域なので、私はあえて正直にお伝えします。
鎌倉市の「木造住宅耐震改修工事費等補助金」は、補助額が工事費等の2分の1で上限115万円(低所得者世帯等は上限135万円)と、金額だけ見れば非常に魅力的です。対象は2000年(平成12年)5月31日以前に工事着手した木造2階建て以下の一戸建て・二世帯・店舗兼用住宅で、現地耐震診断の総合評点が1.0未満だったもの。しかし条件をよく読むと、「市民自らが所有し、居住する建築物」とあります。つまり、自分が住んでいない純粋な賃貸アパートは、そのままでは対象外になります。店舗兼用住宅でオーナー自身が住んでいる、といったケースなら可能性がありますが、投資用の一棟アパートには使いにくい制度です。
一方で、区分所有の分譲マンションを投資用にお持ちのオーナーさまには、「マンション耐震診断補助金」が関係してきます。これは耐震改修アドバイザーの派遣を受けたマンションが耐震診断を実施する場合に、診断費用の2分の1(上限150万円。延べ面積1000平方メートル未満は1平方メートルあたり1,500円が限度)を補助するものです。ただし申請者は管理組合であり、住戸の過半に区分所有者が居住していること、管理組合の集会で耐震診断の実施を決議していること、などが要件です。区分所有オーナーは、自分一人で申請するのではなく、管理組合・理事会を通じて制度を動かす形になります。投資判断として「この物件の耐震性を数字で把握しておきたい」と思ったら、まず管理会社や理事会に診断補助の活用を相談するのが入り口です。耐震関連の問い合わせは建築指導課(0467-61-3586)です。
4. 国の「賃貸集合給湯省エネ2026事業」|賃貸オーナー専用の本命
ここからが、鎌倉市の賃貸オーナーにとって最も実弾になりやすい国の制度です。私が今、一棟物オーナーさまに「今年やるなら、まずこれ」と言っているのがこの事業です。
「賃貸集合給湯省エネ2026事業」(令和7年度補正予算「既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業」)は、その名のとおり賃貸物件のオーナーを対象に、省エネ性能の高い給湯器への交換を支援する補助金です。補助額は、追い焚き機能なしのエコジョーズ・エコフィールへの取替が1台あたり5万円、追い焚き機能ありが1台あたり7万円。共用廊下を横断してドレン排水ガイドを敷設した場合は8万円、浴室へのドレン水排水工事を伴う場合は10万円と上乗せされます。
対象は既存の賃貸集合物件で、1棟に2戸以上の賃貸住戸を有する建物。オーナーや親族が居住する住戸は対象に含みません。1棟あたり1台以上の取替で申請できるため、規模の小さいアパートでも使えます。着工時期は2025年(令和7年)11月28日以降が対象です。なお、この事業の対象はガスや石油を燃料とする小型給湯器で、電気のエコキュートは別の補助金事業(給湯省エネ2026事業)の対象になります。
給湯器は入居者の生活満足度に直結する設備です。古い給湯器は故障リスクが高く、真冬に止まれば即クレーム、最悪の場合は退去につながります。「壊れてから慌てて交換」ではなく、補助金が出るうちに計画的に新しい省エネ給湯器へ更新しておく。これは入居率の維持と修繕費の平準化を同時に実現する、極めて費用対効果の高い一手だと私は考えています。
5. 先進的窓リノベ2026事業|賃貸集合住宅も対象、入居者満足と賃料維持の両取り
国の「住宅省エネ2026キャンペーン」の柱のひとつ「先進的窓リノベ2026事業」も、賃貸集合住宅のオーナーが使える制度です。所有者の定義に「賃貸に供する個人または法人」が含まれており、賃貸物件も補助対象になります。
補助額は住宅1戸につき最大100万円、240平方メートルを超える非住宅建築物の場合は最大1,000万円。ただし、この事業を使うには補助額が5万円以上になる工事規模が必要です。申請期限は遅くとも2026年12月31日まで(予算上限に達した場合はその時点まで)です。
窓の断熱は、入居者にとって「夏は涼しく、冬は暖かい」という体感の差になり、結露やカビの苦情を減らします。築年数なりの設備の古さは、賃料の下落圧力として静かに効いてきます。窓まわりのアップグレードは、その圧力に対する数少ない反撃手段です。なお、断熱改修やサッシ交換を外壁の大規模修繕と同じタイミングでまとめて行えば、足場や養生のコストを共有でき、トータルの工事費を圧縮できます。窓だけ単独で動くより、修繕計画全体のなかに組み込むほうが、補助金の効きも費用対効果も良くなります。
参考までに、神奈川県にも「既存住宅省エネ改修事業費補助金」(令和8年度、補助対象経費の3分の1または15万円のいずれか低い額)がありますが、こちらは賃貸住宅が対象外です。県の枠は持ち家向け、賃貸は国の枠、と切り分けて設計するのが現実的です。
6. 固定資産税の減額措置|耐震・省エネ・バリアフリーの「翌年度効果」と賃貸の落とし穴
補助金は現金が入る制度ですが、固定資産税の減額は「出ていくお金を減らす」制度です。キャッシュフローへの効き方が違うので、合わせて押さえておきましょう。ただし、ここも賃貸には要注意です。
鎌倉市の改修工事に伴う固定資産税の減額措置は、大きく3種類あります。
- 耐震改修:昭和57年1月1日以前に建築された住宅で、現行の耐震基準に適合させる改修を行い、50万円を超える工事費を支払った場合、工事完了の翌年度の固定資産税が2分の1減額(床面積120平方メートルまでの分)されます。減額は翌年度の1年度のみです。
- バリアフリー改修:新築から10年以上経過、改修後の床面積が50〜280平方メートル、補助金等を差し引いた工事費が50万円超などの要件で、翌年度の固定資産税が3分の1減額(100平方メートルまでの分)されます。
- 省エネ改修:平成26年4月1日以前から存在する家屋で、床面積50〜280平方メートル、窓の断熱改修を必須として工事費60万円超(または工事費50万円超で太陽光・高効率空調等と合わせて60万円超)の場合、翌年度の固定資産税が3分の1減額(120平方メートルまでの分)されます。
いずれも都市計画税には減額措置がありません。そして賃貸オーナーが最も注意すべきは、バリアフリー改修と省エネ改修の減額には「貸家用以外の居住用部分があること」という要件がある点です。つまり、純粋な賃貸専用住宅は、この2つの減額の対象外になります。耐震改修の減額にはこの居住用部分の要件は明記されていませんが、適用関係は物件ごとに異なるため、必ず事前に確認してください。なお、区分所有のマンションも減額対象で、その場合は1棟全体ではなく専有部分ごとが対象です。また、一定要件を満たすサービス付き高齢者向け賃貸住宅には新築後5年間の減額もあります。固定資産税の減額に関する問い合わせは資産税課(0467-61-3936)です。
7. 税務の落とし穴|「もらって終わり」ではない3つの注意点
ここは塗装会社の領分を少し越えますが、現場で必ず聞かれるので触れておきます。最終的な判断は税理士にご相談いただく前提で、考え方だけお伝えします。
第一に、補助金は受け取った時点で「雑収入」として課税対象になります。 100万円の補助が出たからといって、丸ごと手元に残るわけではありません。法人なら益金、個人なら不動産所得等に算入され、税負担が発生します。手取りベースで効果を試算しておくことが大切です。
第二に、工事費が「修繕費」か「資本的支出」かで、税務処理がまったく変わります。 原状回復に近い塗装や防水のやり直しは修繕費として一括損金にできる可能性がありますが、性能を明らかに向上させる改修は資本的支出として減価償却の対象になります。同じ工事でも、内容と契約書の書き方によって落としどころが変わるため、見積段階から意識しておくべきです。
第三に、補助金と税の減額・控除は、併用の可否が制度ごとに決まっています。 たとえば固定資産税の省エネ減額では、補助金等を差し引いた後の工事費で要件を判定します。「補助も減税も両方フルでもらえる」と早合点せず、各制度の要綱で重複や調整の有無を確認してください。
これらを工事計画と切り離して後から考えると、効果が半減します。私は補助金・工法・税務の3点を、最初からワンセットで提案するようにしています。
8. 数字で考える|入居率1%とNOIの話
最後に、オーナーの財布感覚に引き寄せて考えてみます。たとえば家賃8万円・20戸の賃貸マンションなら、満室の年間賃料は約1,920万円です。ここで入居率が1%下がるだけで、年間およそ19万円の賃料収入が消えます。給湯器の故障による退去や、外壁の劣化による内見時の印象悪化は、こうした形で静かにNOI(実質賃料収入)を削っていきます。
逆に言えば、補助金を使って給湯器を更新し、窓や外壁を整えることで入居率を1%押し上げられれば、それだけで年間約19万円のキャッシュフロー改善になります。そこに補助金そのものの現金効果と、修繕費の損金算入による税効果が乗ってきます。さらに、計画的に手を入れた物件は、出口(売却)の場面で「収益還元価格」そのものが底上げされます。利回り改善だけでなく、物件価値そのものを守る投資だと考えると、補助金が出る年に動く意味が見えてくるはずです。
9. 工法の選択で総額が変わる|足場・ロープアクセス・ハイブリッド
補助金で工事費の一部を取り戻すのと同じくらい、私が大事だと考えているのが「そもそもの工事費を下げる」ことです。とくに鎌倉のように起伏が多く、隣地や道路との距離が近い物件では、足場の架設費がばかになりません。
私たちは、通常の足場仮設による工事に加えて、足場を架けずに産業用ロープで施工するロープアクセス工法、そして足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の、3つの工法から建物にとってベストな方法をご提案できます。たとえば、足場が架けにくい高層部や狭小地ではロープアクセスで足場費を圧縮し、低層部や複雑な部位は足場で確実に施工する、といった組み合わせです。足場費を抑えられれば、その分だけ自己負担が減り、補助金の効果が相対的に大きくなります。
賃貸物件の場合、足場を長期間架けること自体が入居者にとってのストレスであり、防犯面の不安にもつながります。工期短縮と生活影響の最小化という点でも、無足場のロープアクセスは賃貸オーナーと相性の良い工法です。詳しくは弊社の大規模修繕のご案内やロープアクセス工法のページもご覧ください。
10. よくあるご質問(鎌倉市で賃貸経営をするオーナー編)
Q. 自分が住んでいない賃貸アパートでも、市の耐震改修補助は使えますか。
A. 木造住宅耐震改修工事費等補助金は「市民自らが所有し居住する建築物」が対象とされており、自分が住んでいない純粋な賃貸物件はそのままでは対象外です。まずは建物の状態を診断で数字にする入り方を含め、建築指導課(0467-61-3586)に物件の使い方を正確に伝えて確認してください。
Q. 分譲マンションの一室を投資用に持っています。耐震診断補助は使えますか。
A. マンション耐震診断補助金の申請者は管理組合です。区分所有オーナーは管理組合・理事会を通じて制度を活用する形になります。集会での決議などの運用ルールがあるので、管理会社と早めに共有しておくのがおすすめです。
Q. 賃貸マンションに太陽光や蓄電池を付けたいのですが、市の補助は使えますか。
A. 鎌倉市の住宅用再エネ・省エネ機器等設置費補助金は、対象者に「市内に所有する住宅を他者に貸し出す者」が含まれており、賃貸オーナーも対象になり得ます。ただし共同住宅では居住部分で使う設備に限られ、共用部分は対象外です。予算上限と着工前申請にご注意ください。
Q. 国の補助と市の補助は両方もらえますか。
A. 制度によります。対象工事が違えば併用できる設計のものもあれば、市の住宅用補助と重点対策加速化補助のように併用不可のものもあります。組み合わせの可否は、各制度の最新の要綱で必ず確認してください。
Q. いつ動くのが得ですか。
A. 多くの制度が「予算がなくなり次第終了」の先着順です。鎌倉市の太陽光補助は年度予算600万円、ブロック塀補助の申請は10月末まで、国の各事業も年度後半は枠が埋まりがちです。やると決めたら、年度の早い段階で申請準備に入るのが有利です。
11. 鎌倉市オーナーが取るべき順番:診断 → 計画 → 申請 → 工事
最後に、動き方の順番を整理します。補助金は「工事の前に申請」が大原則で、先に発注すると対象外になる制度がほとんどです。鎌倉市のブロック塀補助も太陽光補助も、交付決定の前に着工してはいけません。これは致命傷になります。
まず、建物の現状を「数字」で把握します。外壁・シーリング・防水・給湯器・窓の状態確認、必要なら耐震診断です。次に、どの工事にどの補助を当てるか、市・県・国の制度を併用可否と申請期間を踏まえて全体設計します。そのうえで、各制度の交付決定を受けてから工事に着手します。
私はこの「補助金を取りに行く工事計画」「工法による総額圧縮」「税務処理の最適化」を、必ずワンセットで考えるべきだとお伝えしています。別々に進めると、せっかくの効果が半分になってしまうからです。
お持ちの鎌倉市内の物件で、まだこうした制度の検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度ご相談ください。1棟の現地調査と、利回り改善シミュレーション、そして補助金が使える工事の棚卸しだけでも承ります。塩害エリアの物件は、動ける年に動くのが一番得です。ご相談はお問合せフォームから、お気軽にどうぞ。近隣エリアの事例として、平塚市のオーナー向け補助金ガイドや茅ヶ崎市のオーナー向け補助金ガイドもあわせてご覧ください。
出典・参考資料
- 鎌倉市「耐震改修工事等費用の補助制度について」(更新日:2026年4月27日)
- 鎌倉市「マンション耐震診断補助金交付制度について」
- 鎌倉市「危険なブロック塀等の除却費用補助制度について」(更新日:2026年4月10日)
- 鎌倉市「住宅用再生可能エネルギー・省エネ機器等設置費補助金」(更新日:2026年5月15日)
- 鎌倉市「改修工事(耐震・バリアフリー・省エネ)等に伴う減額措置について」
- 神奈川県「令和8年度神奈川県既存住宅省エネ改修事業費補助金」
- 経済産業省 資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業」
- 環境省「先進的窓リノベ2026事業」
- 国土交通省・経済産業省・環境省「住宅省エネ2026キャンペーン」
※本記事の補助金額・要件・期限は2026年6月時点の公開情報に基づきます。各制度は予算上限到達で受付終了となる場合があり、申請前に必ず各窓口で最新情報をご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、税務・法務上の個別判断は税理士・専門家にご相談ください。
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茅ヶ崎市で使える賃貸オーナー向け補助金活用ガイド|湘南・塩害エリアの収益物件を「空けない資産」に変える2026年度の制度設計
茅ヶ崎市で賃貸マンションやアパート、テナントビルを運用していると、海風の心地よさと引き換えに、ある現実が静かに進行します。塩分を含んだ潮風は、外壁や鉄部、シーリングの劣化を内陸より早く進めます。気づけば外壁の白華やサビが目立ち、内見時の第一印象が落ち、空室が長引き、賃料を下げざるを得なくなる——そうしてNOI(純営業収益=家賃収入から運営費を差し引いた、物件が実際に生み出す利益)がじわじわ削られていきます。これは湘南エリアで築古の収益物件を持つオーナーに共通する悩みです。
その打ち手の中心が大規模修繕や耐震・省エネ改修ですが、ここで多くのオーナーが取りこぼしているのが「茅ヶ崎市・神奈川県・国の補助金と税制」です。同じ工事でも、制度を組み合わせるだけで手出しのキャッシュを数十万円から数百万円単位で圧縮できることがあります。本記事は、茅ヶ崎市で賃貸経営を行うオーナー(個人・法人)を対象に、2026年度(令和8年度)に使える制度を、入居率・賃料・NOI・出口戦略・税務という「お金の視点」から整理しました。分譲マンション管理組合向けの解説とは切り口を変え、あくまで「物件を持って稼ぐ側」の判断材料としてまとめています。
先に正直に申し上げます。補助金は年度ごとに予算・要件が変わり、受付期間も限られます。金額や条件は本記事執筆時点(2026年6月)の公開情報に基づくため、申請前には必ず茅ヶ崎市の担当課と国・県の公式サイトで最新情報をご確認ください。私はいつもオーナーさまに「制度は生き物です。使える年に動いた人が一番得をします」とお伝えしています。
まず全体像:茅ヶ崎市オーナーが押さえる「3つの入口」
茅ヶ崎市で収益物件のオーナーが使える支援は、大きく3つの入口に分けて考えると整理しやすくなります。
ひとつ目は茅ヶ崎市の防災・安全系の補助金です。木造住宅の耐震診断・補強、分譲マンションの耐震診断、危険ブロック塀の撤去、旧耐震木造の除却、民間建築物のアスベスト調査がここに含まれます。建物の安全性と資産寿命、そして「事故が起きたときのオーナー責任」に直結する部分です。
ふたつ目は省エネ・創エネ系の補助金です。ここは率直にお伝えすると、茅ヶ崎市には個人向けの太陽光・蓄電池の独自補助が現状ありません。そのぶん、神奈川県の既存住宅省エネ改修、そして国の住宅省エネ2026キャンペーンが主役になります。光熱費の削減と、「省エネ性能」という新しい競争力を物件に持たせる投資です。
みっつ目は国の賃貸オーナー専用枠です。給湯器・窓の補助で、金額が大きく、何より「賃貸物件のオーナーが使える」と制度側が明記しているのが特徴です。
この3つを「どの工事に、どれを当てるか」で組み合わせるのが基本戦略です。以下、ひとつずつオーナー視点で見ていきます。
1. 木造住宅の耐震診断・補強|木造アパート・併用物件オーナーは要件を正確に
茅ヶ崎市で木造アパートや店舗併用の木造物件を持つオーナーが、まず知っておきたいのが木造住宅耐震改修促進事業補助金です。市は平成18年度から、木造住宅の耐震診断と補強に補助を設けています。
まず耐震診断です。茅ヶ崎市の場合、診断費用は建物一棟あたり一律108,900円(税込)と決まっており、補助によって自己負担が圧縮される仕組みです。世帯全員が65歳以上で市民税非課税の世帯なら自己負担9,900円(補助99,000円)、それ以外の方は自己負担35,900円(補助73,000円)です。対象は、市内にある昭和56年5月31日以前に建築(または工事着手)された木造で、在来軸組構法または枠組壁構法、地階を除く階数が2以下の一戸建て・長屋(2戸まで)・兼用住宅(延べ面積の2分の1以上が住宅)などの条件を満たすものです。診断の対象者要件は「自己が所有し居住」「配偶者・一親等の親族が居住」のほか「自己が所有するもの」も含まれており、申請は診断を受ける日の14日前までに建築指導課へ提出します(出典:茅ヶ崎市「木造住宅耐震改修促進事業補助金のご案内」)。
続く耐震補強工事は、補助を使った診断で上部構造評点が1.0未満(倒壊の危険性あり)と判定された建物を、改修後に評点1.0以上にする工事が対象です。補助は工事費(税別)の2分の1で、上限50万円。65歳以上の高齢者世帯等は20万円が上乗せされ、最大70万円になります。着工する日の14日前までに申請が必要です。
ここで賃貸オーナーが正直に向き合うべき注意点があります。補強工事の補助は、対象者要件が「自己が所有し、かつ自己(または配偶者・一親等の親族)が居住している」ことに絞られています。つまり、自分が住んでいない純粋な賃貸用木造アパートは、この補強補助の枠ではそのまま使えないケースが想定されます。一方で、診断の補助は「所有のみ」も含む整理になっているため、まずは診断で建物の状態を数字にしておく、という入り方は十分にあり得ます。私はこういうとき、オーナーさまに「使える・使えないは、電話一本で確かめましょう」とお伝えしています。併用住宅(自宅兼賃貸)や所有形態によって扱いが変わるため、茅ヶ崎市建築指導課(電話:0467-81-7185)に建物の使い方を正確に伝えて確認するのが最短です。
それでも木造物件オーナーが耐震を放置できない理由は明確です。耐震性が不足したまま運用すると、地震リスクそのものに加えて、入居付けや売却時の説明責任、火災保険・地震保険の条件にまで影響します。補助が使えない場合でも、「現状を耐震診断で数字にしておく」ことは、出口戦略(売却・建替え)の局面で必ず効いてきます。
2. 分譲マンション耐震診断事業補助金|区分所有オーナーは管理組合経由で使う
茅ヶ崎市には「分譲マンション耐震診断事業補助金」があり、旧耐震基準の分譲マンションの耐震診断費の一部を補助します。
補助額は、(1)耐震診断に要した費用の2分の1、(2)区分所有者が居住する住戸の数に30,000円を乗じた額、のいずれか少ない額です。対象は、市内にある昭和56年5月31日以前に建築(または工事着手)された分譲マンションで、鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄骨造、地階を除く階数が3以上、住宅部分の床面積が延べ面積の過半、住戸総数の過半を区分所有者が居住の用に供している、管理組合の集会等で耐震診断の実施を決議している、避難路沿道建築物の耐震診断補助を受けていない、というすべての条件を満たすものです(出典:茅ヶ崎市「分譲マンション耐震診断事業補助金のご案内」)。
ここでオーナーが押さえるべきは「申請者は管理組合」という点です。分譲マンションの一室を投資用に区分所有しているオーナーであれば、自分が単独で動くのではなく、管理組合を通じてこの制度の恩恵を受ける形になります。耐震診断の前に集会での合意決議が必要で、実績報告書は3月20日までに提出、申請額が市の単年度予算を超える場合は翌年度の予算計上が必要になるため10月までに建築指導課へ相談、という運用上のルールもあります。区分所有オーナーとしては、理事会・管理会社にこの制度の存在を早めに共有しておくのが第一歩です。
一方、一棟物のRC・鉄骨造の賃貸マンションを所有しているオーナーの場合、この「分譲マンション(区分所有)向け」の枠は、そのままの形では当てはまりません。後述する避難路沿道建築物の制度や、用途・規模に応じた別の枠の検討が必要になるため、まずは建築指導課に「一棟RCの賃貸で耐震診断を考えている」と具体的に相談するのが確実です。
3. 避難路沿道建築物・アスベスト調査|ビル・一棟物オーナーの専用ルート
一棟物のビルや大型建築物を持つオーナーに見落としてほしくないのが、避難路沿道建築物耐震診断事業補助金です。地震時に避難や緊急車両の通行を確保すべき道路に面し、その通行を妨げるおそれのある旧耐震の建築物について、耐震診断費を補助する制度です(出典:茅ヶ崎市「避難路沿道建築物耐震診断事業補助金のご案内」)。住宅向けの補助とは別ルートで、テナントビルや事務所ビルのオーナーが使える可能性のある枠です。自分の建物が指定された避難路沿道に該当するかどうかは外形では判断しづらいため、建築指導課で確認するのが第一歩になります。
あわせて、改修工事に踏み込む前に効いてくるのが民間建築物アスベスト含有調査事業補助金です(出典:茅ヶ崎市「民間建築物アスベスト含有調査事業補助金のご案内」)。一定年代より前の建物では、外壁の吹付け材や内装材にアスベストが含まれている可能性があり、大規模修繕や解体の前に調査が必要になることがあります。調査費の補助を使えれば、改修計画の入口コストを抑えられます。築古ビルの修繕・建替えを検討するオーナーにとって、調査は「やらされる手続き」ではなく、工程とコストを読むための先行投資です。
4. 危険ブロック塀等撤去費補助金|駐車場・外構の「もらい事故」リスクを消す
意外と見落とされがちなのが、敷地まわりのブロック塀です。茅ヶ崎市には「危険ブロック塀等の撤去費補助金」があり、道路等からの高さが0.8mを超えるブロック塀等を、0.8m以下まで撤去する工事などを補助します。補助対象は、ブロック塀等を所有し市税を滞納していない方で、世帯全員が65歳以上かつ市民税非課税の場合は上限30万円という枠が設けられています(出典:茅ヶ崎市「危険ブロック塀等の撤去費補助金のご案内」)。面している道路の種類によって申請窓口が異なるため、まず建築指導課に相談するのが確実です。
この制度は、2018年の大阪府北部地震でブロック塀の倒壊により犠牲者が出たことを受けて全国で整備が進んだ、減災目的の補助です。オーナーにとっては「もらい事故」防止の意味合いが大きい。賃貸物件の敷地境界や駐車場まわりのブロック塀が倒れて通行人がケガをすれば、工作物責任を問われるのは所有者です。古い塀を抱えている茅ヶ崎市内の物件オーナーは、外構の安全点検と合わせて、撤去・フェンス化を補助とセットで検討する価値があります。金額そのものは大きくありませんが、リスクの大きさに対して費用対効果は高い投資です。
5. 木造住宅除却事業補助金|出口・建替えを見据えるオーナーへ
築年数が進んだ木造の収益物件で、「補強して延命する」より「いったん壊して建て替える・更地で出口を取る」方が合理的なケースもあります。茅ヶ崎市には旧耐震の木造住宅の除却(解体)を支援する木造住宅除却事業補助金があります(出典:茅ヶ崎市「木造住宅除却事業補助金のご案内」)。
オーナー視点では、これは「出口戦略の選択肢を増やす制度」です。耐震性が不足し、補強コストが見合わない木造アパートを抱えている場合、除却補助を活用して解体費を圧縮し、新築の賃貸物件への建替えや、土地としての売却に切り替えるという判断があり得ます。除却補助にも対象要件や申請のタイミングのルールがあるため、建替え・売却の計画段階で建築指導課に相談し、「補強・除却・建替えのどれが一番得か」を数字で比較しておくのがおすすめです。
6. 省エネ補助の現実|茅ヶ崎市は独自枠なし、県と国を主役に据える
ここは正直にお伝えします。太陽光・蓄電池について、茅ヶ崎市には現状、個人住宅向けの独自補助金がありません。市内で事業活動を行う団体が、多くの人が利用する施設に太陽光発電設備を設置して普及啓発を行う取り組み向けの補助はありますが、一般のオーナーが自分の収益物件に付けるための市独自の補助は用意されていないのが実情です。また、神奈川県が実施していた住宅用太陽光発電・蓄電池の導入費補助は、令和7年度分が2025年6月20日をもって受付を終了しています。
では打つ手がないかというと、そうではありません。茅ヶ崎市オーナーが省エネ投資で使うべき主役は、神奈川県の既存住宅省エネ改修事業費補助金と、後述する国の住宅省エネ2026キャンペーンです。
神奈川県の既存住宅省エネ改修事業費補助金は、令和8年度も実施されています。郵送による申請は2026年5月11日(消印有効)から受け付けられており、外気に接する窓の改修を含むこと、事業着手の2か月前までに申請すること、交付決定後に着工することなどが条件とされています(出典:神奈川県「令和8年度神奈川県既存住宅省エネ改修事業費補助金」)。ただし、賃貸物件での適用可否は所有・居住の形態によって分かれるため、賃貸経営で使えるかは必ず県・市の窓口で具体的に確認してください。太陽光・蓄電池についても、国のDR(デマンドレスポンス)関連補助など国の枠を組み合わせる選択肢があるため、「市の独自補助がない=省エネはあきらめる」ではなく、県・国の枠で設計し直すのが正解です。
7. 国の省エネ補助|賃貸オーナー専用枠がある「3本柱」
茅ヶ崎市・神奈川県の制度に加えて、必ず併せて検討したいのが国の住宅省エネ2026キャンペーンです。賃貸物件のオーナーにとって、金額の大きさと「賃貸でも使える」という明快さで、ここが本命になります(出典:国土交通省ほか「住宅省エネ2026キャンペーン」)。
(1) 賃貸集合給湯省エネ2026事業|賃貸オーナー専用の給湯器補助
その名のとおり、既存の賃貸集合住宅のオーナー向けに用意された専用事業です。従来型給湯器をエコジョーズ/エコフィールへ交換する際、追い焚きなしで5万円/台、追い焚きありで7万円/台が基本補助。一定の排水工事を伴う場合は、最大8万円/台・10万円/台まで加算されます。申請は工事を行う登録事業者が代理で行い、補助は現金振込か工事代金からの相殺で還元される仕組みです(出典:経済産業省 資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業」、賃貸集合給湯省エネ2026事業 公式サイト)。給湯器は入居者の生活満足度に直結する設備です。古い給湯器の故障対応に追われているオーナーには、計画的な更新の好機です。
(2) 先進的窓リノベ2026事業|結露・寒さ・暑さ対策で部屋の競争力を上げる
窓の断熱改修を支援する事業で、賃貸住宅のオーナーも対象です。内窓設置や複層ガラスへの交換で、結露・寒さ・夏の暑さを軽減できます。窓まわりの不満は内見時の印象や退去理由に直結するため、競争力の底上げに効きます。補助額が大きい年度事業なので、外壁・防水の大規模修繕と工程を合わせると、足場の共用などで総額を抑えられます。
(3) 給湯省エネ2026事業|エコキュート等が入る物件はこちら
エコキュート(ヒートポンプ給湯機)などの高効率給湯器が対象の事業です。エコジョーズ中心の(1)とは対象機器が異なるため、物件の給湯方式に応じて使い分けます(出典:給湯省エネ2026事業 公式サイト)。窓の断熱改修(先進的窓リノベ)と給湯器交換(給湯省エネ/賃貸集合給湯)は、要件が合えば同じ住戸で同時に使うことも可能です。
8. 税務:補助金は「もらって終わり」ではない、3つの落とし穴
ここからが本題です。補助金は受け取って終わりではありません。賃貸経営では、税務処理を間違えると「せっかくの補助が手取りで目減りする」ことがあります。私は税の専門家ではありませんので、最終判断は必ず税理士にご相談いただく前提で、現場でよく聞く3つの落とし穴を整理します。
落とし穴1:補助金は受給時に課税される
個人・法人を問わず、受け取った補助金は原則として収入(雑収入等)に計上され、課税対象になります。「100万円もらえた」と喜んでも、その分だけ所得が増え、税負担も増えるのが基本です。法人や個人事業では圧縮記帳など課税の繰り延べが使える場合がありますが、要件が細かいため、補助金の受給が決まったら早めに税理士へ相談するのが安全です。
落とし穴2:「修繕費」か「資本的支出」かで手取りが変わる
外壁塗装や防水などの工事費は、原状回復に近ければ「修繕費」として一括で経費にでき、その年の利益を圧縮できます。一方、建物の価値や耐用年数を高める工事は「資本的支出」として資産計上され、減価償却で何年もかけて費用化することになります。同じ工事でも処理の仕方で当期の手取りが大きく変わります。大規模修繕の見積りは、この観点で内訳を整理しておくと、税理士との相談がスムーズです。
落とし穴3:固定資産税の減額と「賃貸部分」の扱い
茅ヶ崎市では、一定の耐震改修を行った住宅について、要件を満たせば固定資産税が減額される取り扱いがあり、所得税額の特別控除もあわせて整理されています。これらの適用には、市や建築士、指定確認検査機関などが発行する証明書が必要です(市の補助制度を受けていない場合は市で証明書を発行できないことがあります)。固定資産税の減額は茅ヶ崎市財務部資産税課家屋評価担当(電話:0467-82-1111)、所得税の特別控除は藤沢税務署(電話:0466-22-2141)が窓口です(出典:茅ヶ崎市「家屋の改修工事に伴う固定資産税の減額について」)。ただし、こうした税の優遇は「居住用」「賃貸用」で扱いが分かれることがあり、固定資産税の減額や所得税の特例が賃貸部分には適用されない、あるいは要件が異なるケースがあります。自宅兼賃貸(併用物件)のオーナーは特に注意が必要です。補助金で初期コストを圧縮し、税の減額でランニングコストも下げる——この「初期×ランニング」の二段構えこそ、オーナーが本当に手にすべき効果です。
9. 数字で見る:茅ヶ崎市の築古一棟物件・モデル試算
抽象論だけでは判断できないので、ざっくりとしたモデルで考えてみます。あくまで考え方の例であり、実際の金額は物件・制度の要件で変わります。
茅ヶ崎市内の築25年・全8戸の集合住宅で、外壁・屋上防水の大規模修繕と、給湯器の更新、窓の断熱改修をまとめて実施するとします。給湯器を賃貸集合給湯省エネ2026事業で8台更新すれば、追い焚きありで1台7万円×8台=56万円。窓の断熱改修に先進的窓リノベを併用すれば、さらに数十万円規模の補助が見込めます。条件が合えば、国の枠だけでも合わせて100万円前後の補助を引き出せる計算です。
ここにNOIの視点を重ねます。仮に1戸の月額賃料が7万円の物件で、設備更新によって空室期間が平均1か月短縮し、退去時の賃料下落を1戸あたり月3,000円抑えられたとします。8戸なら、空室短縮で年56万円、賃料維持で年28.8万円。補助による初期コスト圧縮と合わせれば、修繕投資の回収速度はまったく違ってきます。入居率1%の改善が、年間どれだけのキャッシュフロー差になるか——この感覚を持って投資判断をすると、補助金は「おまけ」ではなく「戦略」になります。茅ヶ崎の物件は塩害で劣化が早いぶん、「先送りした分だけ傷む」性質があります。動ける年に動くことの価値が、内陸の物件より大きいのです。
10. 工法の選択:足場・ロープアクセス・ハイブリッドで総額が変わる
補助金で工事費の一部が戻るとしても、そもそもの工事総額を抑えられれば、オーナーの手出しはさらに小さくなります。ここで効いてくるのが工法の選択です。
大規模修繕というと、建物全体に足場を架ける「通常足場工法」が一般的です。しかし足場の架設・解体には相応の費用と工期がかかり、足場があること自体が入居者のストレス(圧迫感・防犯不安・日当たり減)になります。工事中の不満は、回り回って退去や空室損につながります。
これに対して、私たちが得意とするのがロープアクセス工法(無足場工法)です。産業用ロープで職人が壁面に降りて施工するため、足場費を圧縮でき、工期も短縮できます。何より、足場がないぶん入居者の生活影響を最小限にできるのが、賃貸オーナーにとって大きい。部分補修や外壁・シーリングの打ち替え、鉄部塗装など、塩害エリアで頻度が上がりがちな工事との相性も良い工法です。
そして、建物の形状や規模に応じて足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法なら、総コストの最適化が図れます。茅ヶ崎市は湘南らしい海風・塩害の影響を受けやすい立地の物件が多く、外壁・鉄部・シーリングの劣化が内陸より早い傾向があります。だからこそ、建物の特性を見極めて最適な工法を選ぶことが、修繕費の総額を左右します。私は現場で長くやってきて、「工法をひとつしか持たない会社に頼むと、その会社のやり方に合わせた見積りしか出てこない」と痛感しています。当社は3つの工法から建物にとってベストな提案ができる、日本でも数少ない会社です(参考:ロープアクセス工法のご紹介、大規模修繕工事のご紹介)。
11. 医療・介護施設、テナントビルのオーナーさまへ
茅ヶ崎市で病院・クリニックや介護施設、テナントビルを所有されているオーナーさまには、もう一段の視点を加えてください。
医療・介護施設では、建物の安全性がそのまま事業継続(BCP)と直結します。地震で外壁タイルが落下すれば、利用者・通行人の安全はもちろん、施設の信用にも傷がつきます。耐震・防災改修は、診療や介護サービスを止めないための投資でもあります。テナントビルでは、外観の劣化がテナント満足度と賃料水準に直結し、空室が出れば賃料下落圧力が一気に強まります。
これらの非住宅系・大規模建築物では、前述の避難路沿道建築物の耐震診断補助やアスベスト調査補助のように、住宅向けとは別枠の制度が使える場合があります。建物用途・規模によって入口が変わるため、まず「自分の建物はどの制度の対象になりうるか」を整理することが重要です。当社では用途・規模に応じた制度の棚卸しからお手伝いできます。
12. よくあるご質問(茅ヶ崎市で賃貸経営をするオーナー編)
Q. 賃貸用の木造アパートでも、茅ヶ崎市の耐震補強補助は使えますか。
A. 補強工事の補助は「自己が所有し、かつ自己または配偶者・一親等の親族が居住している」ことが対象者の条件とされており、自分が住んでいない純粋な賃貸物件はそのままでは対象外となるケースがあります。一方、耐震診断の補助は「所有のみ」も対象に含む整理です。まず診断で状態を数字にする入り方を含め、建築指導課(0467-81-7185)に建物の使い方を正確に伝えて確認してください。
Q. 分譲マンションの一室を投資用に持っています。耐震診断補助は使えますか。
A. 申請者は管理組合です。区分所有オーナーは管理組合・理事会を通じて制度を活用する形になります。集会での決議や実績報告(3月20日まで)など運用ルールがあるので、管理会社と早めに共有しておくのがおすすめです。
Q. 茅ヶ崎市に太陽光・蓄電池の補助はありますか。
A. 個人住宅向けの市独自補助は現状ありません。神奈川県の住宅用太陽光・蓄電池補助も令和7年度で受付を終了しています。国のDR関連補助など国の枠や、神奈川県の省エネ改修補助を組み合わせて設計するのが現実的です。
Q. 国の補助と県の補助は、両方もらえますか。
A. 制度によります。国の住宅省エネ2026の各事業は、対象工事が違えば併用できる設計です。一方、県の省エネ改修補助は要件や併用の可否が制度ごとに定められています。組み合わせの可否は、各制度の最新の要綱で必ず確認してください。
Q. いつ動くのが得ですか。
A. 多くの制度が「予算がなくなり次第終了」の先着順です。国の各事業も年度後半は枠が埋まりがちで、県の省エネ改修は着工の2か月前までの申請が条件です。やると決めたら、年度の早い段階で申請準備に入るのが有利です。
13. 茅ヶ崎市オーナーが取るべき順番:診断 → 計画 → 申請 → 工事
最後に、動き方の順番を整理します。補助金は「工事の前に申請」が大原則で、先に発注してしまうと対象外になる制度がほとんどです。茅ヶ崎市の耐震診断・補強は申請から実施・着工まで14日前提出、県の省エネ改修は着工2か月前申請、と「前倒し」が共通ルールです。
まず、建物の現状を「数字」で把握します。耐震診断、劣化診断、給湯・窓・外壁・シーリングの状態確認です。次に、どの工事にどの補助を当てるかの計画を立てます。市・県・国の制度は併用可否や申請期間が異なるため、ここで全体設計をするのが肝心です。そのうえで、各制度の交付決定・承認を受けてから工事に着手します。決定前の着工は致命傷になります。
私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。「補助金を取りに行く工事計画」と「工法による総額圧縮」「税務処理の最適化」は、別々に考えると効果が半減するからです。
お持ちの茅ヶ崎市内の物件で、まだこうした制度の検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度お問合せください。1棟の現地調査と、利回り改善シミュレーション、補助金が使える工事の棚卸しだけでも、ご相談を承ります。塩害エリアの物件は、動ける年に動くのが一番得です。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします(ご相談はこちら:お問合せフォーム)。
出典・参考資料
- 茅ヶ崎市「木造住宅耐震改修促進事業補助金のご案内」(更新日:令和7年7月15日)
- 茅ヶ崎市「分譲マンション耐震診断事業補助金のご案内」
- 茅ヶ崎市「避難路沿道建築物耐震診断事業補助金のご案内」
- 茅ヶ崎市「危険ブロック塀等の撤去費補助金のご案内」
- 茅ヶ崎市「木造住宅除却事業補助金のご案内」
- 茅ヶ崎市「民間建築物アスベスト含有調査事業補助金のご案内」
- 茅ヶ崎市「家屋の改修工事に伴う固定資産税の減額について」
- 神奈川県「令和8年度神奈川県既存住宅省エネ改修事業費補助金」
- 国土交通省ほか「住宅省エネ2026キャンペーン」
- 経済産業省 資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業」
- 賃貸集合給湯省エネ2026事業 公式サイト(https://chintai-shoene2026.meti.go.jp/)
- 給湯省エネ2026事業 公式サイト(https://kyutou-shoene2026.meti.go.jp/)
※本記事の補助金額・要件・期限は2026年6月時点の公開情報に基づきます。各制度は予算上限到達で受付終了となる場合があり、申請前に必ず各窓口で最新情報をご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、税務・法務上の個別判断は税理士・専門家にご相談ください。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
公共施設4施設で「外壁打診調査」未実施が発覚——建築基準法12条の“10年ごとの義務”を、収益物件オーナーと管理組合はどう守るか【2026年6月】
朝のニュースで「外壁の調査を実施していなかった」という見出しを見て、ご自分の物件の顔——つまり外壁を、最後にいつ点検したか思い出せたでしょうか。正直に申し上げます。多くのオーナーさまは、ここで言葉に詰まります。
2026年6月16日、静岡県の吉田町が、建築基準法で義務付けられている外壁の全面打診(だしん)などによる調査を、町内の公共施設4施設で実施していなかったと発表しました(出典:静岡新聞「吉田町役場など4施設 外壁調査実施せず」)。打診とは、専用の道具で壁面を叩き、その音の違いから内部の浮きや剥離を見つける調査方法です。
これは行政の不手際という話で片付けられがちですが、私はまったくそう思いません。なぜなら、この「外壁全面打診調査」の義務は、行政の建物だけでなく、一定規模以上のマンションやビル、ホテルを持つ民間のオーナーさま・管理組合にも、まったく同じようにかかっているからです。
ここからが本題です。今日は、このニュースを入り口に、収益不動産をお持ちのオーナーさまと、マンション管理組合の理事長さま・修繕委員のみなさまが、「自分の建物は大丈夫か」を確かめるための要点を、現場の言葉で整理します。
ニュースの要点——吉田町で何が起きたか
まず、報じられた事実を冷静に押さえます。煽るためではなく、判断の土台にするためです。
吉田町は2026年6月16日、町役場を含む公共施設4施設について、建築基準法で義務付けられた外壁の全面打診などの調査を実施していなかったと発表しました。同法は、外壁材が剥がれて歩行者などに危害を及ぼすことを防ぐため、一定の建物に定期的な調査を求めています。
ここで早合点しないでいただきたいのです。「行政ですら忘れていたのだから、民間は仕方ない」という話ではありません。むしろ逆で、専門部署を持つ行政でさえ抜け落ちるほど、この義務は見落とされやすいということです。
私が現場で20年見てきて感じるのは、外壁調査は「やらなくても、すぐには困らない」種類の義務だということです。だからこそ後回しになる。そして、後回しにした建物に限って、ある日タイルが落ちます。順番が逆なのです。
公共施設で見落としが起きる理由は、おそらく担当者の異動や、施設ごとに管理部署が分かれていることにあると私は見ています。これは民間でもまったく同じです。賃貸物件を複数お持ちのオーナーさまほど、「どの物件が、いつ点検対象になるか」を一覧で把握できていないことが多い。管理会社に任せきりで、報告の有無まで確認していないケースもよく見かけます。
つまり今回のニュースは、「規模の大小にかかわらず、外壁調査の義務は抜け落ちやすい」という共通の弱点を、たまたま行政が先に露呈しただけ、と私は受け止めています。
なぜ今、この話題なのか。日本のマンションストックは年々高経年化が進んでいます。築40年を超える分譲マンションは年々増え続けており、それに比例して外壁の経年劣化に直面する建物も増えています。築10年の壁、築20年の壁、築30年の壁——どの節目でも、外壁は確実に老いていきます。吉田町のニュースは、その「老いていく建物をどう管理するか」という、これからの日本全体の課題を、たまたま一足先に映し出したものだと私は受け止めています。
そしてもう一つ、私が強調したいのは「自分の番で事故を起こさない」という発想です。築20年、築30年と引き継がれてきた建物には、歴代のオーナーや理事の判断が積み重なっています。たまたま自分が管理している期間に落下事故が起きれば、責任を問われるのは「今の」所有者・管理者です。前任者の先送りのツケを払わされる前に、自分の代でいったん全面的に診ておく。これが、長く資産を守るうえでの基本姿勢だと考えています。
そもそも「外壁全面打診調査」とは——建築基準法12条の義務
ニュースの背景にある制度を、素人のオーナーさまにも分かるように整理します。
根拠は建築基準法第12条です。この条文は、一定の特定建築物(不特定多数が利用する建物など)の所有者・管理者に対して、専門資格者による定期的な調査と、その結果の行政への報告を義務付けています(出典:国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」)。これを一般に「12条点検」「特定建築物定期調査」と呼びます。
対象になる建物
対象は自治体ごとに指定が異なりますが、一般的には共同住宅・ホテル・店舗・事務所などで、規模(階数や床面積)が一定以上のものが含まれます。賃貸マンションや分譲マンション、テナントビル、ホテルは、規模次第で十分に対象になり得ます。
「うちは小さいから関係ない」と思い込む前に、所在地の特定行政庁(都道府県や市区の建築部局)の指定を確認することをお勧めします。東京都の場合、調査・報告の対象や手続きは都市整備局が公開しています(出典:東京都都市整備局「定期調査・検査報告制度」)。
ここで一つ補足します。同じ「マンション」でも、不特定多数が出入りする賃貸マンションやワンルーム投資物件は対象になりやすく、一方で居住者が固定的な分譲マンションは、自治体によって扱いが分かれます。だからこそ「マンションだから対象/対象外」と一括りにせず、所在地の行政庁で個別に確認する必要があるのです。私はオーナーさまに、まずこの一次確認から始めましょう、とお伝えしています。
誰が調査するのか
この調査は、誰でもできるわけではありません。一級建築士・二級建築士、または国土交通大臣の登録を受けた「特定建築物調査員」という資格を持つ専門家が行う必要があります。報告書には資格者の署名が入り、特定行政庁へ提出されます。
逆に言えば、有資格者が関与しない自己点検だけでは、制度上の「調査・報告」を満たしたことになりません。ここを誤解して「うちは管理人が見回っているから大丈夫」と考えているオーナーさまが、実際にいらっしゃいます。見回りは大切な日常管理ですが、12条の定期報告とは別物だとご理解ください。
調査の周期——“10年に一度”の全面打診
定期報告そのものは、自治体の指定に応じておおむね1〜3年ごとに行います。問題はそこに含まれる外壁調査です。
タイルやモルタルなど、落下すれば歩行者に危害を及ぼしうる外壁については、竣工または前回の外壁改修から10年を超えた最初の報告のタイミングで、原則として「全面打診等」による調査が求められます。これは2008年4月に制度が見直されてからのルールで、過去のタイル落下事故を受けて強化された経緯があります(出典:国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」)。
つまり、築10年・築20年といった節目は、修繕積立金の使いどきであると同時に、「外壁を全面的に診る義務」が発生する節目でもあるのです。
怠った場合の罰則
調査・報告を怠ったり、虚偽の報告をした場合、建築基準法上は100万円以下の罰金が定められています。罰金そのものより私が重く見るのは、調査を怠った状態でタイルが落ち、誰かが怪我をしたときの責任です。これは次の章で詳しくお話しします。
「うちは関係ない」が一番危ない——オーナーの無過失責任
ここが、収益物件をお持ちのオーナーさまに最もお伝えしたい部分です。
過去、マンションやビルの外壁タイルが落下する事故は各地で起きています。剥がれたタイルが歩道に落ちれば、通行人の頭部を直撃しかねません。実際に人身被害につながった事例も報じられてきました。古い例では1989年に北九州市で外壁タイルが落下し通行人が亡くなる痛ましい事故があり、これが現在の調査制度強化の一つのきっかけになったとされています。
記憶に新しいところでも、2019年には横浜市や京都府舞鶴市、2020年には前橋市で、建物外壁のタイルなどが落下する事故が相次いで報じられました。幸い大事に至らなかったものもありますが、「たまたま下に人がいなかった」だけのケースも少なくありません。運に任せてよい話ではないのです。
外壁タイルやモルタルの剥離は、ある日突然始まるわけではありません。雨水の浸入、温度変化による伸び縮み、躯体(くたい/建物の骨組み)の動きが、10年・20年とかけて少しずつ接着を弱らせていきます。だからこそ「見た目はまだきれい」な段階でも、内部では浮きが進んでいることが珍しくないのです。打診調査が重視されるのは、この目に見えない浮きを音で拾えるからにほかなりません。
私が現場でよく申し上げるのは、「外壁の傷みは、地上から見上げて分かるようになった時点で、かなり進んでいる」ということです。下から見て明らかにひび割れや浮きが分かる状態は、初期ではなく中期以降です。だからこそ、症状が出る前の定期的な調査に意味があります。
工作物責任は「無過失責任」
建物の外壁が原因で他人に損害を与えた場合、民法第717条の「土地工作物責任」が問われます。条文では、工作物の設置・保存に瑕疵(かし/欠陥のこと)があって他人に損害が生じたとき、まず占有者(管理する人)が、そして占有者が必要な注意をしていたと証明できれば所有者が、賠償責任を負うとされています。
そして、ここが肝心です。所有者の責任は「無過失責任」と解されています。つまり「自分は知らなかった」「悪意はなかった」では、原則として免れられません。建物を所有しているという事実だけで、最終的な責任が回ってくる構造なのです。
私はオーナーさまにいつもお伝えしています。「外壁調査は、コストではなく保険です」と。年に一度の点検費用を惜しんだ結果、無過失で数千万円の賠償を負うリスクを抱え続けるのは、収益不動産の経営として割に合いません。
しかも、賠償リスクだけが問題ではありません。外壁の落下事故が一度でも起きれば、その物件は「危ない物件」という評判がつきます。入居者は離れ、空室が増え、賃料を下げざるを得なくなる。最終的には売却時の価格にも響きます。私はこれを「資産価値の静かな目減り」と呼んでいます。目に見える賠償金よりも、こちらのほうが長期では大きいことすらあります。
施設賠償責任保険などに加入していても、点検義務を怠っていた事実があると、保険金の支払いで不利に扱われる可能性も否定できません。「保険に入っているから大丈夫」と調査を後回しにするのは、順序が逆だと私は考えています。
管理組合の理事長さまも他人事ではない
分譲マンションの場合、共用部分である外壁の管理責任は管理組合にあります。理事長さまが「前の理事会から引き継いでいないから分からない」という状態は、決して珍しくありません。だからこそ、総会シーズンの今、「うちの外壁は、いつ、誰が、どう調べたか」を一度棚卸しする価値があります。
調査の壁は「足場」——なぜ先送りされるのか
ここまで読んで、「では調べよう」と思っていただけたなら、次にぶつかるのが費用と手間の問題です。
外壁の全面打診調査を従来のやり方で行う場合、建物の周囲に仮設足場を組むのが一般的でした。ところが、この足場が曲者です。足場の架設・解体だけで、規模によっては調査費用の何倍にもなることがあります。
私が現場で一番悔しい思いをするのは、この「足場代がネックで調査そのものを諦めてしまう」ケースです。義務だと分かっていても、調査のためだけに大きな仮設費をかけるのは気が進まない。その気持ちは、20年現場にいる私にはよく分かります。けれど、その先送りが事故と賠償につながるのです。
なお、制度上も「3年以内に外壁改修や全面打診を行うことが確実な場合」や「落下防止の別途措置を講じている場合」など、一定の条件で取り扱いが変わる場面はあります。ただし、これは免除を狙うための抜け道ではなく、計画的に修繕へつなげるための猶予と捉えるべきだと私は考えています。
ロープアクセスという解——足場を組まずに調査する
ここで、私たちがよくお伝えしている選択肢が「無足場工法」、すなわちロープアクセス工法です。
ロープアクセスとは、産業用のロープを使って作業員が壁面を上下移動しながら、調査や施工を行う方法です。ビルの窓清掃で、ゴンドラではなくロープでぶら下がっている作業を見たことがあるかもしれません。あれの専門技術版とお考えください。詳しくはロープアクセス工法のご紹介で図解しています。
打診・赤外線・目視を無足場で
外壁調査には、打診のほか、赤外線サーモグラフィー(壁面の温度差から内部の浮きを推定する方法)や、近年はドローンを使う手法もあります。ロープアクセスなら、これらの調査を足場なしで、しかも作業員が壁面に直接触れて確認できます。
ドローンや地上からの赤外線だけでは「疑わしい箇所」までしか分からないことがありますが、ロープアクセスは作業員がその場で打診まで行えるため、調査の確度が上がります。足場を組まない分、費用と工期を抑えられるのも大きな利点です。
調査手法ごとの特徴を整理すると、次のようになります。どれか一つが万能なのではなく、建物の条件に応じて組み合わせるのが現実的です。
| 調査手法 | 仕組み | 長所 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 足場+打診 | 仮設足場上から全面を打診 | 全面を確実に確認、補修にそのまま移行可 | 仮設費が高く工期も長い |
| ロープアクセス+打診 | ロープで昇降しながら直接打診 | 足場不要で低コスト・短工期、生活影響小 | 一度に扱える面積に限り |
| 赤外線サーモグラフィー | 表面温度差から内部の浮きを推定 | 広範囲を短時間でスクリーニング | 天候・時間帯に左右され、確定診断には打診併用が要 |
| ドローン撮影 | 上空から高解像度撮影・赤外線 | 高所や複雑形状を安全に俯瞰 | 飛行規制・風の影響、直接打診はできない |
私の実感では、まず赤外線やドローンで全体の当たりをつけ、怪しい面をロープアクセスで直接打診して確定させる、という組み合わせが、確度とコストのバランスに優れています。
調査と補修を“ワンセット”にする
私はこれを、よくワンセットで提案するようにしています。調査で浮きや剥離が見つかったら、同じロープアクセスの体制でそのまま補修まで進める。足場を二度組まずに済むので、トータルコストが大きく変わります。
以前、首都圏の築22年・約60戸のマンションで、足場見積もりにためらっていた管理組合さまに、ロープアクセスでの調査と部分補修をご提案したことがあります。足場を全面に組む前提の当初計画と比べ、仮設費の負担を抑えられ、しかも居住者のみなさまの生活への影響——洗濯物が干せない、窓を開けられない、防犯上の不安——を最小限にできた、と理事長さまに喜んでいただきました。数字以上に、住んでいる方の安心が違ったのです。大規模修繕全体の進め方は大規模修繕工事のご紹介にまとめています。
無足場の業者を選ぶときの3つの確認ポイント
ロープアクセスは専門技術です。だからこそ、依頼先を選ぶときに見ていただきたい点が3つあります。
一つ目は、有資格者が在籍しているかです。産業用ロープアクセスには国際的な技能認証の仕組みがあり、安全管理の体制が整っているかを確認してください。高所作業ですから、ここは妥協できません。
二つ目は、調査だけでなく補修まで一貫してできるかです。調査会社と施工会社が別々だと、足場を二度組むのと同じで手間とコストが二重にかかります。私たちが調査と補修をワンセットでお勧めするのは、この無駄をなくすためです。
三つ目は、塗装・防水・タイル・シーリングといった各専門職をそろえているかです。外壁の不具合は一種類とは限りません。明誠はロープアクセスのフランチャイズネットワークに各分野の専門職が加盟しているため、複数の不具合をまとめて、高い品質で対応できます。窓口を一本化できると、管理組合さまの負担はぐっと軽くなります。
3つの工法から最適を選ぶ——明誠の考え方
ここで誤解のないように申し上げます。私はロープアクセスが万能だとは考えていません。建物の形状や規模、傷み具合によっては、足場を組んだほうが結果的に合理的なこともあります。
明誠が他社と違うのは、足場仮設工法・ロープアクセス工法・両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つを、すべて自前で提案できることです。だからこそ、「足場ありき」でも「ロープありき」でもなく、その建物にとって本当に合う方法を選べます。
| 工法 | 向いている場面 | 主なメリット | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 足場仮設工法 | 全面改修、複雑な形状、大量の補修箇所 | 作業範囲が広く安定、大規模施工向き | 仮設費が大きい、工期が長め、生活影響大 |
| ロープアクセス(無足場) | 調査、部分補修、高層、足場架設が困難な物件 | 足場費を抑制、工期短縮、生活影響が小さい | 一度に扱える作業量に限りがある |
| ハイブリッド | 大規模だが部位で傷みに差がある物件 | 足場とロープを最適配分し総コスト最適化 | 計画段階での見極めが要 |
調査という入口の段階から、この3択を前提に相談できるかどうかで、その後の修繕計画の総額は変わってきます。1社の工法ありきで見積もりを取ると、その工法に都合のよい前提で話が進みがちです。複数の工法を比較できる相手に相談することが、結果的にオーナーさまの利益を守ります。
調査結果を“修繕の設計図”に変える
外壁調査は、義務を果たして終わり、ではありません。私は、調査の本当の価値はその後にあると考えています。
全面打診や赤外線で得られるのは、「どの面の、どの高さに、どれくらいの浮き・剥離があるか」という、いわば建物の健康診断書です。この情報があると、長期修繕計画(おおむね30年程度を見据えた修繕の年次計画)の精度が一気に上がります。
たとえば、北面と南面で傷みの進み方が大きく違うことはよくあります。日当たりや風雨の当たり方が違うからです。調査でそれが分かれば、「傷みの早い面を先に、遅い面は次回に」と、工事を分割して資金を平準化する判断ができます。修繕積立金が潤沢でない管理組合さまほど、この「優先順位づけ」が効いてきます。
逆に、調査をせずに「築20年だから全面改修」と一括で発注すると、まだ持つ面まで一度に直すことになり、お金の使い方として効率が落ちます。私が調査を入口に置くことをお勧めするのは、ここに理由があります。診てから、必要なところに、必要な分だけ。これが収益不動産の修繕の基本だと、現場で20年やってきて考えています。
加えて、調査報告書はオーナーさまの「武器」にもなります。売却時に買い手へ建物の状態を示せれば、価格交渉で値引きの口実を与えにくくなりますし、金融機関からの修繕資金の借り入れでも、客観的な根拠資料として説得力を持ちます。調査は守りだけでなく、攻めの材料にもなるのです。
総会でよく聞かれる5つの質問と、私ならこう答える
6月は管理組合の総会が集中する季節です。外壁調査や修繕の話題が出たとき、理事長さま・修繕委員のみなさまが組合員から問われやすい質問を、5つに絞って整理しました。私が理事会に呼ばれたとき、実際にお答えしている内容です。
Q1.「うちは本当に調査の義務があるの?」
まずは所在地の特定行政庁に、自分の建物が12条の定期報告対象かを確認するのが先決です、とお答えします。対象であれば、竣工または前回改修から10年を超えた最初の報告で外壁の全面打診等が求められます。「義務かどうか分からない」状態のまま放置するのが、最もリスクの高い選択です。
Q2.「調査にいくらかかるの?」
建物の規模・形状・調査手法で大きく変わるため、ここで安易な金額は申し上げません。ただ一つ言えるのは、足場を前提にするか無足場(ロープアクセス)にするかで、仮設費の有無の分だけ総額が変わるということです。複数の手法で相見積もりを取ることをお勧めします。
Q3.「調査中、住んでいる人の生活はどうなるの?」
足場を全面に組む場合、工事期間中は窓を開けにくく、洗濯物も干しづらく、防犯面の不安も出ます。ロープアクセスは作業箇所が限定的なので、生活への影響を抑えやすいのが特徴です。居住者の納得感は、総会での合意形成にも直結します。
Q4.「調査でアラが出たら、修繕費が膨らむのでは?」
気持ちは分かります。けれど、浮きや剥離は調べなければ消えるものではありません。むしろ早く見つけて部分補修で済ませるほうが、放置して全面剥離になるより安く済みます。調査と補修をワンセットで考えれば、足場も一度で済みます。
Q5.「今すぐやらないとダメ?総会の後ではダメ?」
緊急性は建物の状態によります。ただ、剥離が進んでいる物件で「次の総会まで」と先送りした結果、その間に落下事故が起きれば、責任は所有者・管理組合に及びます。少なくとも「いつ・どう調べるか」の方針だけは、今回の総会で決めておくことをお勧めします。
総会前にやるべき3つのこと
最後に、明日からでもできる確認事項を3つに絞ってお伝えします。
第一に、築年数の確認です。竣工または前回の外壁改修から10年を超えているなら、外壁の全面打診等の調査が視野に入ります。図面や過去の修繕履歴を引っ張り出してください。
第二に、特定行政庁への該当確認です。所在地の建築部局に、自分の建物が定期報告(12条点検)の対象かどうかを問い合わせます。対象なら、直近の報告がいつだったかも合わせて確認します。
第三に、調査方法の相談です。「足場が高いから」で止まっている場合こそ、無足場という選択肢があることを知っておいてください。調査と補修をワンセットで考えれば、総額の見え方が変わります。
外壁は、建物の安全と資産価値の両方を背負っています。点検を先送りにしてきた年月は、そのまま見えないリスクの蓄積です。総会で1分だけでも「うちの外壁、最後にいつ全面で診ましたか」と問いを投げてみてください。そこから動けるかどうかが分かれ目になります。判断の入口の整理だけでも、私たちでお力になれることがあります。お問合せフォームから、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。
出典・参考資料
- 静岡新聞「吉田町役場など4施設 外壁調査実施せず」(2026年6月16日報道)
- 国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」
- 東京都都市整備局「定期調査・検査報告制度」
- 国土交通省「建築基準法第12条に基づく定期報告制度」
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
平塚市で使える賃貸オーナー向け補助金活用ガイド|湘南・東海道沿線の収益物件を「埋まり続ける資産」に変える2026年度の制度設計
平塚市で収益マンションやアパート、テナントビルを所有していると、毎年どこかで頭をよぎる問いがあります。「この物件、あと何年いまの賃料で回せるのか」。築20年を超えたあたりから外壁の色あせや鉄部のサビが目立ち始め、内見時の第一印象が落ちます。やがて空室が長引き、賃料を下げざるを得なくなり、NOI(純営業収益=家賃収入から運営費を引いた、物件が本当に生み出す利益)がじわじわと削られていく——これは平塚市に限らず、築古物件オーナー共通の悩みです。
その対策の中心が大規模修繕や耐震・省エネ改修ですが、ここで多くのオーナーが見落としているのが「平塚市・神奈川県・国の補助金と税制」です。同じ工事でも、制度を組み合わせれば手出しのキャッシュを数十万円から数百万円単位で圧縮できます。本記事は、平塚市で賃貸経営を行うオーナー(個人・法人)を対象に、2026年度(令和8年度)に使える制度を、入居率・賃料・NOI・出口戦略・税務という「お金の視点」から整理しました。分譲マンション管理組合向けの解説とは切り口を変え、あくまで「物件を所有して稼ぐ側」の判断材料としてまとめています。
正直に申し上げます。補助金は年度ごとに予算・要件が変わり、受付期間も限られます。金額や条件は本記事執筆時点(2026年6月)の公開情報に基づくため、申請前には必ず平塚市の担当課と国・県の公式サイトで最新情報をご確認ください。私はいつもオーナーさまに「制度は水もの。動ける年に動くのが一番得です」とお伝えしています。
まず全体像:平塚市オーナーが押さえる「3つの財布」
平塚市で収益物件のオーナーが使える支援は、大きく3つの財布に分かれます。
ひとつ目は平塚市の建物系補助金です。分譲マンションの耐震診断、木造住宅の耐震診断・改修、危険なブロック塀の撤去がここに含まれます。建物の安全性と資産寿命、そして「事故が起きたときのオーナー責任」に直結する部分です。
ふたつ目は省エネ・創エネ系の補助金です。平塚市の太陽光・蓄電池補助、神奈川県の既存住宅省エネ改修、そして国の住宅省エネ2026キャンペーンがここに入ります。光熱費の削減と、「省エネ性能」という新しい競争力を物件に持たせる投資です。
みっつ目は国の賃貸オーナー専用枠です。給湯器・窓の補助で、金額が大きく、何より「賃貸物件のオーナーが使える」と制度側が明記しているのが特徴です。
この3つを「どの工事に、どれを当てるか」で組み合わせるのが基本戦略です。以下、ひとつずつオーナー視点で見ていきます。
1. 分譲マンションの耐震診断費補助|区分所有オーナーは管理組合経由で使う
平塚市には「マンション耐震化促進事業」の一環として、分譲マンションの耐震診断費を補助する制度があります(最終更新:2026年4月1日)。
補助の中身は、耐震診断に要した費用と、耐震判定委員会等による評価・判定に要した費用の合計の2分の1で、上限は1住戸あたり4万円(区分所有者が居住する住戸に限る)です。1つの管理組合につき1棟までという枠があります。
対象となるのは、平塚市内にあり、(1)昭和56年5月31日以前に建築確認を得て工事に着手、(2)住戸数の過半を区分所有者が住居として使用、(3)住宅部分の床面積が全体の過半、(4)管理組合の集会で耐震診断の実施を決議、(5)床面積の合計が1,000平方メートル以上、というすべての条件を満たすマンションです(出典:平塚市「分譲マンションの耐震診断費の補助」)。
ここでオーナーが押さえるべきは「申請者は管理組合」という点です。つまり、分譲マンションの一室を投資用に区分所有しているオーナーであれば、自分が動くのではなく、管理組合を通じてこの制度の恩恵を受けることになります。総会で診断の決議を取り、市の計画承認→交付決定という順番を踏みます。手続きの順序が決まっていて、「承認通知を受け取った後に総会決議」「交付決定通知を受け取った後に診断契約」という流れを外すと対象外になりかねません。区分所有オーナーとしては、理事会・管理会社にこの制度の存在を共有しておくのが第一歩です。
一方、RC造の賃貸マンションを一棟まるごと所有しているオーナーの場合、この「分譲マンション(区分所有)向け」の枠は、そのままの形では当てはまりません。一棟所有・賃貸経営の建物については、市の制度の対象範囲や運用が異なるため、まずは平塚市建築指導課(電話:0463-21-9731)に「賃貸の一棟RCで耐震診断を考えている」と具体的に相談するのが確実です。制度の入口で空振りしないために、この一手間が効きます。
2. 木造住宅の耐震診断・耐震改修|木造アパート・併用物件オーナーは要件を正確に
平塚市で木造アパートや店舗併用の木造物件を持つオーナーにとって、まず知っておきたいのが木造住宅の耐震診断・改修補助です。
木造住宅耐震診断補助金は、診断費用を定額で補助します。床面積150平方メートル以下なら定額92,000円、150平方メートル超なら定額101,000円が目安です。続く木造住宅耐震改修工事の補助金は、耐震診断の評点が1.0未満の建物を、改修後に評点1.0以上にする工事が対象。補助率は工事費の5分の4で、上限は区分1で耐震改修工事費90万円・現場監理費4万円、区分2で工事費45万円・監理費2万円です(非課税世帯は工事費に30万円、監理費に2万円が上乗せ)。令和8年度の申請受付はすでに始まっており、受付期限は令和8年11月末を予定、予算がなくなり次第締切です(出典:平塚市「木造住宅耐震改修工事の補助金」)。
ここで賃貸オーナーが正直に向き合うべき注意点があります。平塚市の木造住宅耐震補助は、原則として「その住宅を所有し、かつ居住している」ことを対象者の条件としています。つまり、自分が住んでいない純粋な賃貸用木造アパートは、この枠ではそのまま使えないケースが想定されます。私はこういうとき、オーナーさまに「使える・使えないを電話一本で確かめましょう」とお伝えしています。併用住宅(自宅兼賃貸)や、所有形態によっては検討余地があるため、平塚市建築指導課(電話:0463-21-9731)に建物の使い方を正確に伝えて確認するのが最短です。
それでも木造物件オーナーが耐震を放置できない理由は明確です。耐震性が不足したまま運用すると、地震リスクそのものに加えて、入居付けや売却時の説明責任、火災保険・地震保険の条件にまで影響します。補助が使えない場合でも、「現状を耐震診断で数字にしておく」ことは出口戦略(売却・建替え)の局面で必ず効いてきます。
3. ブロック塀等倒壊予防策補助金|駐車場・外構の「もらい事故」リスクを消す
意外と見落とされがちなのが、敷地まわりのブロック塀です。平塚市には「ブロック塀等倒壊予防策補助金制度」があり、危険なブロック塀等の撤去費用を補助します。補助額は一般世帯で上限15万円、非課税世帯で上限30万円。市職員が現地調査を行い、危険度「大」と判定された、コンクリートブロック塀・万年塀・大谷石塀等が対象です(出典:平塚市「ブロック塀等倒壊予防策補助金制度」)。
この制度は2018年の大阪府北部地震でブロック塀の倒壊により犠牲者が出たことを受けて整備された、減災目的の補助です。オーナーにとっては「もらい事故」防止の意味合いが大きい。賃貸物件の敷地境界や駐車場まわりのブロック塀が倒れて通行人がケガをすれば、工作物責任を問われるのは所有者です。古い塀を抱えている平塚市内の物件オーナーは、外構の安全点検と合わせて、撤去・フェンス化を補助とセットで検討する価値があります。金額は大きくありませんが、リスクの大きさに対して費用対効果は高い投資です。
4. 平塚市の太陽光・蓄電池補助|光熱費を下げ、物件を「省エネ仕様」にする
平塚市は脱炭素に積極的な自治体で、太陽光発電設備導入補助金を設けています。補助額は1kWあたり5万円(上限20万円)で、太陽光発電設備の設置費(税抜)の2分の1までが目安。定置用蓄電池を太陽光と同時に設置すると、さらに5万円が加算されます。令和8年度の申請は2026年4月1日から始まっており、先着順で予算上限に達し次第終了です(出典:平塚市「太陽光発電設備導入補助金」)。
注意したいのは適用条件です。この補助は申請者が市内の住宅に「居住する、または居住予定」であること、市税の滞納がないこと、新品設備であること(中古・リースは対象外)、平塚市ゼロエネルギーハウス導入補助金を受けていないことなどが求められます。また、神奈川県の補助とは併用できるが、国の補助とは併用できないという整理になっています。賃貸物件にそのまま当てはまるかは物件の使い方によるため、平塚市環境政策課(電話:0463-21-9762)に確認するのが確実です。
オーナー視点で太陽光・蓄電池を考えるなら、ポイントは「共用部の電気代削減」と「物件の付加価値」です。共用灯やポンプ、エレベーターの電力を太陽光でまかなえば運営費(OPEX)が下がり、その分NOIが改善します。蓄電池は停電時の共用部バックアップになり、防災性能を入居者にアピールできます。光熱費が高止まりする時代に「省エネ仕様の物件」は、賃料維持と空室対策の両面で効いてきます。
5. 国の省エネ補助|賃貸オーナー専用枠がある「3本柱」
平塚市・神奈川県の補助に加えて、必ず併せて検討したいのが国の住宅省エネ2026キャンペーンです。賃貸物件のオーナーにとって、金額の大きさと「賃貸でも使える」という明快さで、ここが本命になります(出典:国土交通省ほか「住宅省エネ2026キャンペーン」)。
(1) 賃貸集合給湯省エネ2026事業|賃貸オーナー専用の給湯器補助
その名のとおり、既存の賃貸集合住宅のオーナー向けに用意された専用事業です。従来型給湯器をエコジョーズ/エコフィールへ交換する際、追い焚きなしで5万円/台、追い焚きありで7万円/台が基本補助。一定の排水工事を伴う場合は、最大8万円/台・10万円/台まで加算されます。申請は工事を行う登録事業者が代理で行い、補助は現金振込か工事代金からの相殺で還元される仕組みです。交付申請は2026年3月下旬から予算上限まで(遅くとも12月頃まで)の予定です(出典:経済産業省 資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業」、賃貸集合給湯省エネ2026事業 公式サイト)。給湯器は入居者の生活満足度に直結する設備です。古い給湯器の故障対応に追われているオーナーには、計画的な更新の好機です。
(2) 先進的窓リノベ2026事業|結露・寒さ・暑さ対策で部屋の競争力を上げる
窓の断熱改修を支援する事業で、賃貸住宅のオーナーも対象です。内窓設置や複層ガラスへの交換で、結露・寒さ・夏の暑さを軽減できます。窓まわりの不満は内見時の印象や退去理由に直結するため、競争力の底上げに効きます。補助額が大きい年度事業なので、外壁・防水の大規模修繕と工程を合わせると足場の共用などで総額を抑えられます。
(3) 給湯省エネ2026事業|エコキュート等が入る物件はこちら
エコキュート(ヒートポンプ給湯機)などの高効率給湯器が対象の事業です。エコジョーズ中心の(1)とは対象機器が異なるため、物件の給湯方式に応じて使い分けます(出典:給湯省エネ2026事業 公式サイト)。窓の断熱改修(先進的窓リノベ)と給湯器交換(給湯省エネ/賃貸集合給湯)は、要件が合えば同じ住戸で同時に使うことも可能です。
6. 神奈川県の補助と固定資産税の減額|重ねて効かせる
国・市に加えて、神奈川県の既存住宅省エネ改修事業費補助金も視野に入ります。工事費の3割(上限15万円)が目安で、令和8年度の申請期間は2026年5月11日から10月30日まで、外気に接する窓の改修を含むことや、着工の2か月前までの申請が条件とされています(出典:神奈川県「令和8年度神奈川県既存住宅省エネ改修事業費補助金」)。
ただし正直にお伝えすると、この県の制度は「賃貸物件を借りている入居者が自費で改修する」ようなケースは対象外と整理されており、所有・居住の形態によって使える・使えないが分かれます。賃貸経営での適用可否は、必ず県・市の窓口で具体的に確認してください。
補助金とセットで忘れてはならないのが固定資産税の減額です。平塚市では、一定の耐震改修を行った住宅について、要件を満たせば固定資産税が減額される取り扱いがあります(出典:平塚市「固定資産税の減額」)。補助金で初期コストを圧縮し、税の減額でランニングコストも下げる——この「初期×ランニング」の二段構えこそ、オーナーが本当に手にすべき効果です。
7. 税務:補助金は「もらって終わり」ではない、3つの落とし穴
ここからが本題です。補助金は受け取って終わりではありません。賃貸経営では、税務処理を間違えると「せっかくの補助が手取りで目減りする」ことがあります。私は専門家ではありませんので、最終判断は必ず税理士にご相談いただく前提で、現場でよく聞く3つの落とし穴を整理します。
落とし穴1:補助金は受給時に課税される
個人・法人を問わず、受け取った補助金は原則として収入(雑収入等)に計上され、課税対象になります。「100万円もらえた」と喜んでも、その分だけ所得が増え、税負担も増えるのが基本です。法人や個人事業では圧縮記帳など課税の繰り延べが使える場合がありますが、要件が細かいため、補助金の受給が決まったら早めに税理士へ相談するのが安全です。
落とし穴2:「修繕費」か「資本的支出」かで手取りが変わる
外壁塗装や防水などの工事費は、原状回復に近ければ「修繕費」として一括で経費にでき、その年の利益を圧縮できます。一方、建物の価値や耐用年数を高める工事は「資本的支出」として資産計上され、減価償却で何年もかけて費用化することになります。同じ工事でも処理の仕方で当期の手取りが大きく変わります。大規模修繕の見積りは、この観点で内訳を整理しておくと、税理士との相談がスムーズです。
落とし穴3:耐震・省エネ改修と「賃貸部分」の扱い
耐震改修や省エネ改修に伴う税の優遇は、制度ごとに「居住用」「賃貸用」で扱いが分かれることがあります。固定資産税の減額や所得税の特例は、賃貸部分には適用されない、あるいは要件が異なるケースがあるため、自宅兼賃貸(併用物件)のオーナーは特に注意が必要です。「使えると思っていたら賃貸部分は対象外だった」という取り違えを避けるためにも、工事の前に確認しておきましょう。
8. 数字で見る:平塚市の築古一棟物件・モデル試算
抽象論だけでは判断できないので、ざっくりとしたモデルで考えてみます。あくまで考え方の例であり、実際の金額は物件・制度の要件で変わります。
平塚市内の築25年・全8戸の集合住宅で、外壁・屋上防水の大規模修繕と、給湯器の更新、窓の断熱改修をまとめて実施するとします。給湯器を賃貸集合給湯省エネ2026事業で8台更新すれば、追い焚きありで1台7万円×8台=56万円。窓の断熱改修に先進的窓リノベを併用すれば、さらに数十万円規模の補助が見込めます。太陽光・蓄電池を共用部向けに導入すれば、平塚市の補助で最大25万円。制度が要件に合えば、合わせて100万円前後の補助を引き出せる計算です。
ここにNOIの視点を重ねます。仮に1戸の月額賃料が7万円の物件で、設備更新によって空室期間が平均1か月短縮し、退去時の賃料下落を1戸あたり月3,000円抑えられたとします。8戸なら、空室短縮で年56万円、賃料維持で年28.8万円。補助による初期コスト圧縮と合わせれば、修繕投資の回収速度はまったく違ってきます。入居率1%の改善が、年間どれだけのキャッシュフロー差になるか——この感覚を持って投資判断をすると、補助金は「おまけ」ではなく「戦略」になります。
9. 工法の選択:足場・ロープアクセス・ハイブリッドで総額が変わる
補助金で工事費の一部が戻るとしても、そもそもの工事総額を抑えられれば、オーナーの手出しはさらに小さくなります。ここで効いてくるのが工法の選択です。
大規模修繕というと、建物全体に足場を架ける「通常足場工法」が一般的です。しかし足場の架設・解体には相応の費用と工期がかかり、足場があること自体が入居者のストレス(圧迫感・防犯不安・日当たり減)になります。
これに対して、私たちが得意とするのがロープアクセス工法(無足場工法)です。産業用ロープで職人が壁面に降りて施工するため、足場費を圧縮でき、工期も短縮できます。何より、足場がないぶん入居者の生活影響を最小限にできるのが、賃貸オーナーにとって大きい。工事中の退去や苦情は、回り回って空室損につながるからです。
そして、建物の形状や規模に応じて足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法なら、総コストの最適化が図れます。平塚市には湘南エリアらしい海風や塩害の影響を受けやすい立地の物件も多く、外壁・鉄部の劣化が早い傾向があります。だからこそ、建物の特性を見極めて最適な工法を選ぶことが、修繕費の総額を左右します。私は現場で20年やってきて、「工法をひとつしか持たない会社に頼むと、その会社のやり方に合わせた見積りしか出てこない」と痛感しています。当社は3つの工法から建物にとってベストな提案ができる、日本でも数少ない会社です(参考:ロープアクセス工法のご紹介、大規模修繕工事のご紹介)。
10. 医療・介護施設、テナントビルのオーナーさまへ
平塚市で病院・クリニックや介護施設、テナントビルを所有されているオーナーさまには、もう一段の視点を加えてください。
医療・介護施設では、建物の安全性がそのまま事業継続(BCP)と直結します。地震で外壁タイルが落下すれば、利用者・通行人の安全はもちろん、施設の信用にも傷がつきます。耐震・防災改修は、診療や介護サービスを止めないための投資でもあります。テナントビルでは、外観の劣化がテナント満足度と賃料水準に直結し、空室が出れば賃料下落圧力が一気に強まります。
これらの非住宅系・大規模建築物では、住宅向けの補助とは別枠の制度(省エネ診断や事業者向け補助など)が使える場合があります。建物用途によって入口が変わるため、まず「自分の建物はどの制度の対象になりうるか」を整理することが重要です。当社では用途・規模に応じた制度の棚卸しからお手伝いできます。
11. よくあるご質問(平塚市で賃貸経営をするオーナー編)
Q. 賃貸用の木造アパートでも、平塚市の耐震改修補助は使えますか。
A. 平塚市の木造耐震補助は「所有し、かつ居住している」ことが原則の条件とされており、自分が住んでいない純粋な賃貸物件はそのままでは対象外となるケースがあります。併用住宅などは検討余地があるため、建築指導課(0463-21-9731)に建物の使い方を正確に伝えて確認してください。
Q. 分譲マンションの一室を投資用に持っています。耐震診断補助は使えますか。
A. 申請者は管理組合です。区分所有オーナーは管理組合・理事会を通じて制度を活用する形になります。総会決議や市の計画承認の順序が決まっているので、管理会社と早めに共有しておくのがおすすめです。
Q. 国の補助と平塚市の補助は、両方もらえますか。
A. 制度によります。たとえば平塚市の太陽光補助は「国の補助とは併用不可、県の補助とは併用可」と整理されています。一方、国の住宅省エネ2026の各事業は、対象工事が違えば併用できる設計です。組み合わせの可否は、各制度の最新の要綱で必ず確認してください。
Q. いつ動くのが得ですか。
A. 多くの制度が「予算がなくなり次第終了」の先着順です。平塚市の太陽光補助や木造耐震補助、国の各事業も同様で、年度後半は枠が埋まりがちです。やると決めたら、年度の早い段階で申請準備に入るのが有利です。
Q. 工事は市内業者に頼まないとダメですか。
A. 制度ごとに異なります。木造耐震改修については市の業者指定はありませんが、ブロック塀など制度によっては条件が付く場合があります。補助の要綱を確認のうえ、要件を満たす施工体制を組むことが大切です。
12. 平塚市オーナーが取るべき順番:診断 → 計画 → 申請 → 工事
最後に、動き方の順番を整理します。補助金は「工事の前に申請」が大原則で、先に発注してしまうと対象外になる制度がほとんどです。
まず、建物の現状を「数字」で把握します。耐震診断、劣化診断、給湯・窓・外壁の状態確認です。次に、どの工事にどの補助を当てるかの計画を立てます。市・県・国の制度は併用可否や申請期間が異なるため、ここで全体設計をするのが肝心です。そのうえで、各制度の交付決定・承認を受けてから工事に着手します。決定前の着工は致命傷になります。
私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。「補助金を取りに行く工事計画」と「工法による総額圧縮」「税務処理の最適化」は、別々に考えると効果が半減するからです。
お持ちの平塚市内の物件で、まだこうした制度の検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度お問合せください。1棟の現地調査と、利回り改善シミュレーション、補助金が使える工事の棚卸しだけでも、ご相談を承ります。制度は動ける年に動くのが一番得です。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします(ご相談はこちら:お問合せフォーム)。
出典・参考資料
- 平塚市「木造住宅耐震改修工事の補助金」(最終更新:2026年4月13日)
- 平塚市「木造住宅の耐震診断補助金」
- 平塚市「分譲マンションの耐震診断費の補助」(最終更新:2026年4月1日)
- 平塚市「ブロック塀等倒壊予防策補助金制度」
- 平塚市「太陽光発電設備導入補助金」
- 平塚市「固定資産税の減額」
- 神奈川県「令和8年度神奈川県既存住宅省エネ改修事業費補助金」
- 国土交通省ほか「住宅省エネ2026キャンペーン」
- 経済産業省 資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業」
- 賃貸集合給湯省エネ2026事業 公式サイト(https://chintai-shoene2026.meti.go.jp/)
- 給湯省エネ2026事業 公式サイト(https://kyutou-shoene2026.meti.go.jp/)
※本記事の補助金額・要件・期限は2026年6月時点の公開情報に基づきます。各制度は予算上限到達で受付終了となる場合があり、申請前に必ず各窓口で最新情報をご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、税務・法務上の個別判断は税理士・専門家にご相談ください。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
分譲マンション賃料が首都圏で2カ月ぶり下落——「賃料は頭打ち」の局面で収益不動産オーナーが利回りを守る一手は、大規模修繕の“工法選択”にある【2026年6月】
家賃の入金明細を眺めて、「去年と同じ家賃で、ずっと回せるだろうか」とふと不安になったことはないでしょうか。私はこの数年、収益物件をお持ちのオーナーさまとお話しするたびに、その不安が少しずつ濃くなっているのを感じています。
正直に申し上げます。2026年6月16日、不動産調査会社の東京カンテイが発表した5月の分譲マンション賃料調査で、首都圏の平均募集賃料が2カ月ぶりに下落しました。下げ幅そのものは小さいのですが、私はこの数字を「潮目が変わりつつある合図」として受け止めています。
ここからが本題です。賃料という「入り」が頭打ちになったとき、オーナーの利回りを守れる場所は、実は「出」——つまりコストの側にしか残されていません。そして、収益物件にとって最大級の支出である大規模修繕は、「どの工法で直すか」という一点で、総額が大きく変わります。今日は、賃料下落のニュースを入り口に、収益不動産オーナーさまと管理組合の理事長さま・修繕委員のみなさまが、いま何を点検すべきかを、現場の言葉で整理します。
まず、東京カンテイの数字を正しく読む
最初に、ニュースの数字を冷静に押さえておきます。煽るためではなく、判断の土台にするためです。
東京カンテイが2026年6月16日に発表した5月の分譲マンション賃料調査によると、首都圏(東京都・神奈川・埼玉・千葉)の平均募集賃料は1平方メートルあたり4,111円で、前月比0.8%の下落となりました。下落は2カ月ぶりですが、年初来は4,000円台を維持しています。東京23区に限ると5,078円で、前月比0.2%安。こちらも2カ月ぶりの下落でした(出典:日本経済新聞「東京23区の分譲マンション賃料、小幅下落 5月は0.2%安」、住宅新報web「首都圏分譲マンション賃料、2カ月ぶり下落 東京カンテイ5月調査」)。
ここで早合点しないでいただきたいのです。「賃料が下落した=市況が崩れた」ではありません。23区の0.2%安は誤差の範囲とも言える小幅な動きですし、年初来で4,000円台を保っているという事実は、むしろ底堅さの表れでもあります。
私が注目しているのは、下げ幅の大きさそのものではなく、「これまで上がり続けてきた募集賃料が、ついに頭打ちのサインを見せ始めた」という方向性のほうです。賃料は、上げようと思えばいつでも上げられるものではありません。周辺相場と空室リスクという二つの天井に縛られています。その天井が近づいているとすれば、オーナーの戦い方は変わります。
| 区分 | 5月の平均募集賃料(1㎡あたり) | 前月比 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 首都圏 | 4,111円 | ▲0.8% | 2カ月ぶり下落/年初来4,000円台を維持 |
| 東京23区 | 5,078円 | ▲0.2% | 2カ月ぶり下落/小幅 |
(東京カンテイ2026年5月調査・上記報道による)
数字を体感に置き換えてみます。仮に70㎡の住戸を貸している場合、首都圏平均の1㎡あたり4,111円なら、月額の募集賃料はおよそ28.8万円。前月比0.8%という下げ幅は、月あたりに直すと2,000円強です。1戸ではわずかでも、10戸、20戸と束ねれば、年間で数十万円の「入りの目減り」になり得ます。これが、賃料下落を軽視できない理由です。
賃料が頭打ちなら、利回りは「コスト側」で守るしかない
収益物件の利回りは、ごく単純化すると「年間の家賃収入 − 年間の経費 ÷ 物件価格」で決まります。家賃収入という分子の上限が見えてきたいま、利回りを守る余地は、経費という側にしか残されていません。
経費の中でも、毎月のように発生する管理費や清掃費は、すでに削るところを削り尽くしているオーナーさまが多いはずです。一方で、十数年に一度しか来ないがゆえに、つい「言い値」で受け入れてしまいがちな支出があります。それが大規模修繕です。
私はいつもオーナーさまに、こうお伝えしています。「大規模修繕は、十数年に一度の“利回り圧縮イベント”です。ここで数百万円から、規模によっては一千万円単位の差が出ると、その後の利回りが何年分も変わってしまいます」と。
外壁の塗装や防水、タイルの補修——これらは資産を守るために避けて通れない工事です。やらなければ、雨漏りや外壁の剥落といった、もっと大きな損失とリスクを抱え込むことになります。だからこそ、「やるか・やらないか」ではなく、「同じ品質を、いくらで実現するか」が、賃料下落局面のオーナーにとっての本当の論点になります。
修繕費の大半は「足場・仮設」——ここが工法選択で動く
ここで、多くのオーナーさまが意外に思われる事実をお伝えします。外壁の大規模修繕にかかる費用のうち、塗料や防水材といった「材料費」は、全体の一部にすぎません。見積書を開くと、かなりの割合を「仮設費」、とりわけ足場の架設・解体・養生が占めているのです。
材料費は、原油やナフサの相場といった外部要因に左右され、私たち施工側の努力では下げにくい部分です。実際、2026年は中東情勢などを背景に塗料の供給が滞り、現場に影響が出ているとの報道もありました(各種報道による。詳しくは前回の記事「大規模修繕の『資材高騰・工事中断』リスク」でも取り上げています)。つまり、材料費は「下がるのを待つ」しかない領域です。
一方で、仮設費は「工法の選び方」で動かせる領域です。ここに、賃料下落局面のオーナーが利回りを守る、現実的な一手があります。
私たち明誠が、足場仮設・ロープアクセス(産業用ロープを使った無足場の高所作業)・両者を組み合わせたハイブリッドという3つの工法を扱い、建物ごとに最適なものをご提案しているのは、まさにこの「仮設費を建物特性に合わせて最適化する」ためです。日本では、3工法すべてを自社で提案できる会社はまだ多くありません。下の表で、それぞれの考え方を整理します。
| 工法 | 仮設費の考え方 | 向いている建物・場面 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 通常足場工法 | 建物全面に足場を架設。面積が大きいほど費用も工期も増える | 中低層、複雑な形状、全面的な打診・補修が必要な建物 | 足場費が総額を押し上げる。設置・解体に時間がかかる |
| ロープアクセス工法(無足場) | 足場を架けず、屋上から吊ったロープで作業。足場費を圧縮できる | 高層、足場の架設が難しい立地、部分補修、コスト最重視の物件 | 大規模な全面改修や重量物の搬入には不向きな場面がある |
| ハイブリッド工法 | 足場が必要な部位とロープで足りる部位を使い分ける | 大規模・複雑物件で、総合的にコストを最適化したいケース | 設計段階での見極めが品質と費用を左右する |
(工法の特徴は明誠の施工方針による)
ご相談だけでも結構ですので、まずは建物の形状と劣化の状態を見せていただければ、3つの工法のどれが、あるいはどの組み合わせが御物件にとって一番無駄のない選択かを、根拠とともにお示しできます。ロープアクセス工法のご紹介もあわせてご覧ください。
ロープアクセスが効くケース、効かないケース
ここは公平に申し上げます。無足場のロープアクセス工法は万能ではありません。「足場を組まないから、どんな建物でも安くなる」と説明する業者がいたら、私はむしろ慎重に話を聞くべきだと思っています。
ロープアクセスが効くのは、たとえば足場を架けるスペースがない密集地の建物、高層で足場費がかさむ建物、あるいは外壁の一部だけを部分的に補修したいケースです。足場の架設・解体という大きな費用と工期がまるごと不要になるため、条件が合えば仮設費を大きく圧縮できます。居住者やテナントの生活・営業への影響が小さく、足場による圧迫感や防犯面の不安が出にくいことも、収益物件では見逃せない利点です。
一方で、建物の全面にわたって大量の補修が必要なケースや、重量のある資材を頻繁に上げ下ろしする工事では、足場を組んだほうが結果的に効率的で、品質も安定することがあります。「ただし御物件の状態によっては、ロープアクセスより足場のほうが適している」——私はこの一言を、必ずお客さまにお伝えするようにしています。
大切なのは、工法を先に決めてしまわないことです。建物の劣化状況を診断したうえで、部位ごとに最適な工法を割り当てる。その積み上げが、結果として一番無駄のない見積りになります。これは、3つの工法を手の内に持っているからこそできる提案です。
「ハイブリッド工法」という第3の解
実務で一番多いのは、実は「全面足場」でも「全面ロープアクセス」でもなく、その中間です。
たとえば、足場が組みやすい低層部やバルコニー側は足場で丁寧に仕上げ、足場費が跳ね上がる高層部や、建物が隣地に迫っていて足場を架けにくい面はロープアクセスで対応する。こうして部位ごとに工法を使い分けるのが、ハイブリッド工法です。
私はこれを、御物件の図面と現地調査の結果を突き合わせて、必ずワンセットで検討するようにしています。「ここは足場、この面はロープ」と一枚の計画図に落とし込むと、全面足場の見積りと比べて仮設費がどれだけ変わるか、はっきりと数字で見えてきます。賃料が頭打ちの局面では、この「仮設費の最適化分」が、そのまま利回りを守る原資になります。
なお、明誠は塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟するフランチャイズのネットワークを持っています。工法を使い分けても、それぞれの工程を、その道の専門職が責任をもって施工する。高品質と低価格を両立できるのは、この体制があるからこそだと、私は考えています。
賃料下落局面でこそ「資産価値の維持」が効く理由
賃料が頭打ちのときほど、私が強くお伝えしたいことがあります。それは、「修繕を先送りすると、入りの目減りが二重三重になる」という現実です。
外壁が色あせ、シーリング(外壁の目地を埋める防水材)が切れ、共用部に劣化が目立ってくると、内見に来た方の第一印象が確実に下がります。同じ間取り・同じ立地でも、外観が手入れされている建物とそうでない建物では、募集にかかる時間も、最終的に決まる家賃も変わってきます。賃料相場が下がり気味の局面では、この差がより残酷に効いてきます。
逆に言えば、賃料が頭打ちのいまこそ、適切な大規模修繕で資産価値と「募集力」を保つことの価値が、相対的に高まっているとも言えます。私が現場で20年やってきて一番悔しい思いをするのは、修繕の先送りで建物の魅力が落ち、本来取れたはずの家賃を取りこぼしているケースに出会うときです。
しかも、長寿命化に資する大規模修繕に対しては、一定の要件を満たすと固定資産税の減額措置や自治体の補助制度の対象になる場合があります。ただし、これらは年度ごと・自治体ごとに内容が異なり、予算枠に達すると締め切られることもあります。御物件の所在地で使える制度があるかは、計画の早い段階で確認しておくことをおすすめします(制度の有無・要件は各自治体・年度により異なります)。
オーナーが今すぐできる、3つの点検
「では、何から手をつければいいのか」。賃料下落のニュースを読んだ今日、すぐにできることを3つに絞ってお伝えします。
第一に、長期修繕計画と修繕積立金の残高を、もう一度開いてみてください。次の大規模修繕がいつで、いくら積み上がっているのか。賃料の伸びが鈍るなら、修繕資金の見通しはより保守的に見ておく必要があります。
第二に、直近で大規模修繕の見積りを取っている、あるいは管理会社から提案を受けているなら、その見積りの「仮設費」の欄を確認してください。総額に占める足場費の割合が大きいほど、工法の見直しで圧縮できる余地が残っている可能性があります。
第三に、複数の視点で意見を聞くことです。一社の見積りだけで判断せず、足場・ロープアクセス・ハイブリッドという複数の選択肢を比較できる相手に、一度建物を見てもらう。それだけで、同じ品質をより無駄なく実現する道が見えてくることがあります。
総会シーズンのこの時期、理事会で1分だけでも「次の大規模修繕、工法の選択肢を比べてみないか」という話題を出してみてください。それが、賃料が頭打ちの時代に資産を守る、最初の一歩になります。
見積書の「仮設費」を、こう読み解く
ここで、もう一歩だけ実務に踏み込みます。賃料が頭打ちのいま、私がオーナーさまに一番お見せしたいのは、見積書の「どこを見れば、工法で差が出る部分が分かるか」という勘所です。
大規模修繕の見積書は、おおむね「直接仮設費(足場・養生・昇降設備など)」「外壁補修費」「塗装費」「防水費」「シーリング費」「諸経費」といった項目に分かれています。このうち、塗装や防水といった「実際に建物を直す費用」は、工法を変えてもそれほど大きくは動きません。直す面積と劣化の程度で決まるからです。
大きく動くのは、冒頭の「直接仮設費」です。建物の規模や形状にもよりますが、外壁の大規模修繕では、仮設費が総額の二〜三割を占めることも珍しくありません。全面に足場を組めば、その架設・解体・運搬・養生に相応の費用と日数がかかります。逆に、ロープアクセスやハイブリッドで足場の範囲を絞れれば、この項目を圧縮できる可能性が出てきます。
そこで、御手元に見積書があれば、まず「直接仮設費」が総額の何割を占めているかを電卓で確かめてみてください。その割合が大きいほど、工法の見直しで利回りを守れる余地が残っているサインです。私はいつも、「材料費は相場任せ、でも仮設費はやり方で変えられます」とお伝えしています。
なお、ここで一つ釘を刺しておきます。「仮設費が安い=良い見積り」と短絡してはいけません。足場には、職人が安定した足場の上で隅々まで丁寧に作業できるという品質面の利点があります。ロープアクセスで仮設費を下げても、必要な打診や補修が省かれていては本末転倒です。見るべきは「同じ品質を、どの工法で、いくらで実現しているか」。この視点を外さないことが、賃料下落局面でのコスト判断の肝になります。
収益物件ならではの落とし穴——「工事中の空室・解約」をどう防ぐか
自宅としてお住まいの分譲マンションと違い、収益物件の大規模修繕には、もう一つ固有の論点があります。それは、工事そのものが入居者・テナントの満足度に直結し、家賃収入を左右しかねない、という点です。
足場を全面に組むと、どうしても各住戸の窓がふさがれ、採光や眺望が一時的に損なわれます。バルコニーが使えなくなる期間も生じます。養生シートで建物全体が覆われると、防犯面の不安を口にする入居者もいます。実際、足場の設置期間中に「環境が変わった」として更新を見送る、あるいは賃料の減額を求められる——そうした声を、私は現場で何度も耳にしてきました。賃料が頭打ちの局面で、工事をきっかけに退去や解約が出てしまえば、コスト削減どころか、入りの側でさらに傷を負うことになります。
ここで、無足場のロープアクセス工法が持つ「生活影響の小ささ」が効いてきます。足場を組まないため、建物全体が覆われる期間が短く、窓やバルコニーがふさがれる時間も限定的です。テナント営業中のビルや、稼働を止めたくないホテル、入居者が生活している賃貸マンションでは、この差が満足度の維持、ひいては家賃収入の維持に直結します。
もちろん、これも建物次第です。だからこそ私は、「コストの数字」だけでなく、「工事期間中に入居者・テナントがどれだけ普段どおり過ごせるか」という軸も、必ず御提案の中に入れるようにしています。収益物件のオーナーさまにとっては、工事中の家賃を守ることも、立派なコスト最適化だからです。
「誰に頼むか」も、利回りを守る一部です
最後に、工法と並んで大切な話をひとつ。それは「どの会社に頼むか」です。
どんなに優れた工法を選んでも、施工する職人の技術が伴わなければ、品質は出ません。とりわけロープアクセスは、高所でロープに身を預けて作業する以上、安全管理と技術の裏づけが欠かせません。安さだけを売りに、経験の浅い体制で請け負う業者もないとは言えない世界です。
明誠が、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟するフランチャイズのネットワークで施工しているのは、工法を使い分けても、それぞれの工程をその道のプロが責任をもって仕上げるためです。私はこの体制を、品質と価格を両立させる土台だと考えています。賃料が頭打ちのいまこそ、「安かろう悪かろう」で資産を傷つけない発注先選びが、利回りを守る一部になります。
長期修繕計画は「12年に一度」だけではもう古い
もう一つ、賃料が頭打ちの局面でこそ見直したいのが、長期修繕計画そのものの考え方です。
これまで、大規模修繕といえば「12年に一度」が一つの目安とされてきました。けれども国土交通省は、令和6年(2024年)6月に「長期修繕計画作成ガイドライン」を改定し、既存マンションの長期修繕計画の計画期間を30年以上とすることや、大規模修繕工事の修繕周期の目安を見直すなど、より実態に即した長寿命化の考え方を示しています(出典:国土交通省「マンション管理(長期修繕計画作成ガイドライン等)」)。建材や工法の進化を踏まえ、適切な点検と部分補修を組み合わせて周期を長く取る「長周期化」の発想が、公的なガイドラインの側からも後押しされているということです。
ここで誤解しないでいただきたいのは、「長周期化=手を抜く」ではない、ということです。むしろ逆で、こまめに状態を把握し、傷んだ部位を早め早めに直すからこそ、大がかりな全面改修の回数を減らせる、という発想です。そして、この「こまめな点検と部分補修」こそ、足場を組まずに身軽に動けるロープアクセスが最も得意とするところです。
私はオーナーさまに、こうお話しします。「足場を組む大規模修繕は十数年に一度でも、その間の点検と部分補修を無足場で機動的に回せれば、建物はずっと良い状態を保てます。結果として、十数年単位で見たときの総コストはむしろ下がることがあります」と。賃料の伸びが鈍る時代には、この「長い目で見たコスト」の発想が、利回りを守るうえでますます大切になります。
長期修繕計画は、一度作って終わりの書類ではありません。賃料相場や資材価格、建物の劣化状況に合わせて、数年に一度は見直す「生きた計画」であるべきだと、私は考えています。
数字で見る、工法選択の「効き方」
最後に、工法選択がどれくらい効くのか、ごく簡単なイメージをお持ちいただくために、あくまで考え方の例として整理します(実際の金額は建物の規模・形状・劣化状況で大きく変わるため、ここでの数字は概算のイメージにすぎません)。
たとえば、ある外壁修繕の見積総額のうち、仮設費(足場費)が3割を占めていたとします。残り7割が塗装・防水・補修などの「直す費用」です。この場合、もし建物の条件が合い、足場の一部をロープアクセスやハイブリッドに置き換えて仮設費を圧縮できれば、総額に占める3割の部分にメスを入れられることになります。
ここで大事なのは、「7割の直す費用」は基本的に削らない、という点です。品質に直結する塗装や防水の工程を削ってしまえば、安物買いの銭失いになります。手を入れるのは、あくまで「足場という、やり方次第で変えられる3割」のほうです。同じ品質を保ったまま、仮設の部分だけを最適化する——これが、私たちの提案の基本姿勢です。
戸あたりに換算してみると、効き方はより実感できます。仮に全体で数百万円の差が出たとして、それを総戸数で割れば、1戸あたりの負担や積立金への影響が見えてきます。賃料が月あたり数千円下がる時代に、修繕で1戸あたり数十万円の差をならせるなら、それは何年分もの賃料下落を埋め合わせる力を持ちます。私が「大規模修繕はコントロールできる支出」と申し上げるのは、こういう意味です。
繰り返しますが、ここでの数字はイメージです。御物件で実際にどれだけ効くかは、建物を一度きちんと見せていただいて、図面と現地調査を突き合わせなければ分かりません。だからこそ、思い込みで工法を決めず、まずは現状を診断することから始めていただきたいのです。
「無足場=危ない」は誤解です——安全管理の話
ロープアクセスとお伝えすると、「ロープ1本で高所作業なんて、危なくないのか」とご心配される方が少なくありません。お気持ちはよく分かります。ですので、ここは正面からお答えします。
産業用のロープアクセスは、命を預けるメインロープと、万一に備えるバックアップロープという、独立した2本のロープで身体を支えるのが基本です。1本に不測の事態があっても、もう1本が体を保持する。この「二重の備え」が、無足場作業の安全の土台になっています。高所作業に関する法令やルールに沿って、装備の点検と作業手順を徹底することも欠かせません。
私が一番こだわっているのは、結局のところ「人」です。どれだけ装備が整っていても、扱うのは現場の職人です。だからこそ、技術と安全意識を備えた職人が施工することが、無足場工法の品質と安全をともに支えます。賃料が頭打ちで一円を大切にしたい局面だからこそ、安さの裏で安全や品質が削られていないか——そこを見極める目を、オーナーさまにも持っていただきたいと思っています。
私はこれまで、足場の現場も無足場の現場も、数えきれないほど見てきました。その経験から申し上げれば、事故の多くは「工法そのもの」ではなく、「準備不足」や「無理な工程」から生まれます。逆に言えば、きちんとした計画と訓練された人による施工なら、無足場であっても安心して任せていただける、というのが私の正直な実感です。
なお、点検や部分補修を無足場で機動的に回す体制を整えておけば、台風や地震の後に「気になる箇所だけをすぐ見てもらう」といった機動的な対応もしやすくなります。足場を一から組む必要がないぶん、初動が速いのです。これも、無足場という選択肢を持っておく価値の一つだと、私は考えています。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 賃料が下がっているなら、大規模修繕はむしろ先送りすべきでは?
気持ちはよく分かりますが、私は逆だと考えています。修繕を先送りすると外観や共用部の劣化が進み、募集力が落ちて家賃の取りこぼしが増えます。賃料が頭打ちの局面でこそ、資産価値と募集力を保つ修繕の価値は相対的に高まります。やるか・やらないかではなく、「同じ品質をいくらで実現するか」で考えるのが現実的です。
Q2. ロープアクセス工法は、足場より本当に安くなるのですか?
条件が合えば、足場の架設・解体費がまるごと不要になるため、仮設費を大きく圧縮できます。ただし、全面的に大量の補修が必要な建物や重量物の搬入が多い工事では、足場のほうが適している場合もあります。御物件の形状と劣化状況を診断したうえで判断するのが確実です。安さだけを強調する説明には、慎重になることをおすすめします。
Q3. 自治体の補助金や税の減額は、どの物件でも使えますか?
いいえ。長寿命化に資する大規模修繕への固定資産税の減額措置や自治体の補助制度は、要件・対象・期限が年度ごと・自治体ごとに異なり、予算枠に達すると締め切られることもあります。御物件の所在地で使える制度があるかは、計画の早い段階で個別にご確認ください。
最後に
賃料という「入り」の天井が見えてきたいま、オーナーさまが利回りを守れる場所は、コストの側に移りつつあります。そして、十数年に一度の大規模修繕は、工法の選び方ひとつで総額が大きく変わる、数少ない「コントロールできる支出」です。
私たちが足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つを扱っているのは、御物件にとって一番無駄のない選び方を、根拠とともにお示しするためです。大規模修繕工事のご紹介もご覧いただけます。
総会の前段階の整理だけでも、見積りの仮設費の読み解きだけでも、お力になれることがあります。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください(お問合せフォーム)。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 日本経済新聞「東京23区の分譲マンション賃料、小幅下落 5月は0.2%安」(2026年6月16日)
- 住宅新報web「首都圏分譲マンション賃料、2カ月ぶり下落 東京カンテイ5月調査」
- 東京カンテイ「市況レポート:賃料月別推移」
- 国土交通省「マンション管理(長期修繕計画標準様式・作成ガイドライン等/令和6年6月改定)」
※本記事の賃料数値は東京カンテイ2026年5月調査および上記報道によります。塗料・材料の供給状況は各種報道によります。固定資産税の減額措置や自治体補助制度の有無・要件・期限は、年度・自治体により異なります。最新の内容は各公的機関の一次情報をご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の投資判断や工事内容を保証するものではありません。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

