藤沢市の分譲マンション管理組合が使える補助金・税制活用ガイド|大規模修繕の負担を軽くする2026年度(令和8年度)の制度設計

「修繕積立金が思うように貯まっていないのに、そろそろ2回目の大規模修繕の時期が来てしまう」。

藤沢市内のあるマンションの理事長さまから、総会の直前にこんな相談をいただいたことがあります。築25年、全50戸。1回目の修繕のときに比べて、足場代も塗料も人件費もずいぶん上がっている。それでも積立金の値上げは住民の反発が怖くて手をつけられていない――。これは決して、その組合だけの特別な悩みではありません。

私は大規模修繕の現場で20年近く、足場の上とロープの先の両方から建物を見てきました。その経験から正直に申し上げます。修繕費そのものを下げる工夫はもちろん大切ですが、それと同じくらい効くのが「使える制度を取りこぼさないこと」です。藤沢市には、管理組合が使える補助金や専門家派遣の制度がきちんと用意されています。さらに国の省エネ補助や固定資産税の減額制度を重ねれば、総会で説明できる「実弾」は意外なほど揃うのです。

この記事では、藤沢市の分譲マンション管理組合が2026年度(令和8年度)に使える制度を、入口の相談から税制の出口まで、申請の順番に沿って整理します。専門用語にはそのつど補足を入れますので、建築が専門でない理事の方も安心して読み進めてください。

1. なぜ今、藤沢市の管理組合は「補助金・税制を絡めた大規模修繕」を考えるべきか

大規模修繕とは、外壁・屋上防水・鉄部塗装といった建物の共用部分をまとめて直す、おおむね12年周期の大きな工事のことです。1回あたり数千万円から、規模によっては億単位になります。この金額を修繕積立金だけで賄おうとすると、どうしても積立金の値上げや一時金の徴収という、住民にとって痛みのある話になりがちです。

ここで効いてくるのが、行政の支援制度です。藤沢市は2023年(令和5年)12月に「マンション管理計画認定制度」の運用を開始し、2024年(令和6年)6月からは管理組合向けの補助制度を本格的にそろえてきました。市が分譲マンションの管理にここまで踏み込むのは、藤沢市内でも高経年(築年数の経った)マンションが着実に増えているからです。

私がいつも理事長さまにお伝えしているのは、「補助金は工事費の足しになるだけでなく、住民を説得するための材料にもなる」ということです。「市の制度を使えば、この部分は実質これだけ軽くなります」と数字で示せれば、総会での合意形成は驚くほどスムーズになります。ここからが本題です。藤沢市で実際に何が使えるのか、順番に見ていきましょう。

藤沢市が管理組合支援に力を入れる背景には、国の大きな方針転換があります。2022年(令和4年)に施行された改正マンション管理適正化法によって、市区町村がマンションの管理状況を把握し、管理計画を認定する仕組みが全国に広がりました。藤沢市はこれを比較的早い段階で取り入れた自治体の一つです。つまり、いま藤沢市で管理支援を使うことは、単に目先の補助を受け取るだけでなく、「行政から見て管理の行き届いたマンション」という評価を積み上げることにもつながります。これは将来の資産価値や、いざ金融機関から修繕資金を借りるときの信用力にも、じわじわと効いてくる話です。

2. 藤沢市が令和8年度に用意する管理組合向け支援制度

藤沢市は令和8年度、2026年4月13日から3つの管理支援制度を実施しています(出典:藤沢市「マンション管理に関する支援制度などのご案内」)。いずれも分譲マンションが対象で、窓口は住まい暮らし政策課です。まず全体像を表で押さえておきましょう。

制度 補助・支援の内容 上限 主な対象
マンション管理アドバイザー派遣 マンション管理士を無料派遣(年度内5回まで) 無料 分譲マンション
マンション管理計画認定支援補助金 認定申請にかかる経費の2分の1 5万5千円 分譲マンション
マンション長期修繕計画作成等支援補助金 計画の作成・見直し費用の2分の1(建物調査費を含められる) 20万円 分譲マンション

それぞれの制度を、もう少し具体的に見ていきます。

2-1. まずは無料の専門家から――マンション管理アドバイザー派遣

マンション管理アドバイザー派遣は、マンション管理の専門家である「マンション管理士」(管理組合運営や長期修繕計画の国家資格者)を、藤沢市が無料で派遣してくれる制度です。派遣回数は年度内5回までとされています。

「何から手をつけていいか分からない」という段階こそ、この制度の出番です。長期修繕計画の妥当性、積立金の水準、管理規約の見直し、修繕委員会の立ち上げ方――こうした論点を、利害のない第三者に整理してもらえる価値は大きいと私は感じています。費用ゼロで専門家の目を一度入れられるのですから、使わない手はありません。

2-2. 認定申請の費用を半分に――マンション管理計画認定支援補助金

マンション管理計画認定支援補助金は、後述する「マンション管理計画認定制度」の認定申請にかかる経費の2分の1を補助するものです。上限は5万5千円です。

認定申請には、長期修繕計画の点検や必要書類の作成で専門家への委託費が発生することが多く、その負担を市が半分まで見てくれる、という位置づけです。金額の規模は大きくありませんが、後で触れる税制優遇の「入口」になる制度なので、押さえておく意味は十分にあります。

2-3. 修繕計画づくりに最大20万円――マンション長期修繕計画作成等支援補助金

マンション長期修繕計画作成等支援補助金は、長期修繕計画の作成や見直しにかかる費用の2分の1を補助する制度で、上限は20万円です。しかも、計画づくりに必要な建物調査の費用も補助の対象に含められます。

長期修繕計画とは、これから30年程度の修繕の時期・内容・費用を見通した「お金の地図」のことです。この地図が古いまま、あるいは存在しないままだと、積立金が足りているのかどうかすら判断できません。私の経験上、修繕でつまずく組合の多くは、工事そのものよりこの「地図の不在」でつまずいています。建物調査まで補助対象になるこの制度は、地図を引き直す絶好の機会だと考えています。

2-4. これらの土台となる「マンション管理計画認定制度」

3つの補助制度の背骨にあたるのが、藤沢市が2023年(令和5年)12月から運用している「マンション管理計画認定制度」です。これは、管理組合の運営体制、長期修繕計画の内容、修繕積立金の積立状況などが国の定めた基準を満たしている場合に、市が「適切に管理されたマンション」として認定する仕組みです(出典:藤沢市「マンション管理計画認定制度」)。

認定を受けると、後述する固定資産税の減額(長寿命化促進税制)の入口要件を満たせるほか、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」で金利の引き下げを受けられるといったメリットもあります。私はこの認定を、いわば「管理の通信簿」だと説明しています。良い通信簿は、住民の安心にも、外部からの信用にもつながるのです。

3. 旧耐震マンションの要――藤沢市の耐震診断・耐震改修補助

藤沢市には、上記の管理支援とは別に、耐震化のための補助制度があります。対象は昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認を受けて着工した、いわゆる「旧耐震」のマンションです。新耐震基準より前の建物は、地震に対する安全性の確認と補強が特に重要になります。

3-1. 分譲マンション耐震診断補助金

耐震診断は、建物が今の耐震基準に照らしてどれくらい安全かを調べる調査です。藤沢市の補助は「予備診断」と「本診断」の2段階に分かれています(出典:藤沢市「分譲マンション耐震診断補助金交付制度」)。

予備診断は、診断に要する費用の2分の1かつ1棟あたり15万円が上限です。本診断は、(1)費用の2分の1、(2)1棟あたり150万円、(3)延べ床面積に応じた単価で算定した額の2分の1――この3つのうち最も少ない額が補助されます。延べ面積1,000平方メートル以内なら1平方メートルあたり3,670円以内、1,000~2,000平方メートルは1,570円以内、2,000平方メートル超は1,050円以内、という単価が定められています。

対象には、RC造(鉄筋コンクリート造)などで2階建て以上、住宅部分が床面積の3分の2以上、区分所有者の居住が2分の1以上、原則6戸以上かつ1住戸40平方メートル以上、といった要件があります。申請受付は事前相談後に事前登録した管理組合に限られる点に注意してください。

3-2. 分譲マンション耐震改修工事等補助金

診断の結果、補強が必要と判定された場合に使えるのが耐震改修の補助です(出典:藤沢市「分譲マンション耐震改修工事等補助金交付制度」)。

耐震改修設計(補強の設計図づくり)は、費用の2分の1または1住戸あたり5万円のいずれか少ない額。耐震改修工事は、(1)費用の2分の1、(2)1住戸あたり30万円、(3)延べ面積に応じた上限額(5,000平方メートル未満は1,000万円、5,000~10,000平方メートル未満は1,500万円、10,000平方メートル以上は2,000万円)のうち最も少ない額が補助されます。

なお、津波浸水想定区域内の津波避難ビルに指定された分譲マンションは、補助上限が引き上げられます(工事は1住戸あたり60万円、延べ面積に応じた上限も最大5,000万円まで)。藤沢市は海に面した地域を抱えるだけに、湘南エリアの沿岸部のマンションでは確認しておきたいポイントです。詳細は市にお問い合わせください。

4. 固定資産税が1年間1/3に――マンション長寿命化促進税制

ここまでは「工事費への補助」でしたが、出口側、つまり税金を軽くする制度もあります。それが「マンション長寿命化促進税制」です。

4-1. 制度の中身

これは、長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションについて、工事の翌年度分の固定資産税(建物部分)を減額する国の特例措置です。減額幅は、1戸あたり100平方メートル相当分までを対象に、固定資産税額の3分の1を軽減します。自治体の条例により6分の1から2分の1の範囲で変わる場合があり、藤沢市での実際の割合は市にご確認ください(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制」)。

適用期間は、当初は令和7年(2025年)3月31日までとされていましたが、令和7年度の税制改正で2年間延長され、令和5年(2023年)4月1日から令和9年(2027年)3月31日までに工事が完了したものが対象となっています。

4-2. 適用要件と「管理計画認定」とのつながり

この税制を使うには、いくつかの要件をすべて満たす必要があります。築20年以上かつ10戸以上のマンションであること、過去に1回以上の長寿命化に資する工事を行っていること、そして「マンション管理計画認定を受けたマンション」または「管理の適正化について市区町村から助言・指導を受けた管理組合」であること、などです。

ここで第2章の「管理計画認定支援補助金」が効いてきます。認定を取っておくことが、この固定資産税減額の入口要件になっているからです。私はこれを、必ずワンセットで考えるようにしています。認定の取得 → 長期修繕計画の整備 → 大規模修繕の実施 → 固定資産税の減額、という一本の線でつながっているのです。

4-3. 申告のタイミングに注意

この税制は、工事をすれば自動で適用されるものではありません。工事完了後、原則として一定期間内(おおむね3か月以内)に、必要書類を添えて市の固定資産税担当課へ申告する必要があります。証明書の取得や書類の準備に手間がかかるため、工事の契約段階から「税制も使う」と決めて段取りしておくことが大切です。私はいつも、修繕の計画を立てる最初の打ち合わせで、この出口の税制まで含めてスケジュールに書き込むようにしています。後から「使えたのに申告し損ねた」となるのが、一番もったいないからです。

5. 国の「住宅省エネ2026キャンペーン」を戸あたりで効かせる

藤沢市・国の制度に加えて、省エネ改修の国費補助も大規模修繕に重ねられます。2026年度は、国土交通省・経済産業省・環境省の3省連携による「住宅省エネ2026キャンペーン」が動いています。これは「先進的窓リノベ2026事業」「給湯省エネ2026事業」「みらいエコ住宅2026事業」「賃貸集合給湯省エネ2026事業」の4事業の総称です(出典:住宅省エネ2026キャンペーン公式サイト)。

5-1. 先進的窓リノベ2026事業

分譲マンションの大規模修繕と特に相性がよいのが、環境省の先進的窓リノベ2026事業です。既存住宅の窓を断熱性能の高い窓に改修する工事を支援するもので、戸建て・住戸単位では1戸あたり最大100万円が補助されます(出典:環境省「先進的窓リノベ2026事業 対象要件の詳細」)。

注目したいのは、マンション全体で窓の断熱改修を行う場合、管理組合・管理組合法人が施主となって一括申請できる点です。大規模修繕に合わせて全戸の窓をまとめて断熱改修すれば、戸あたり換算でかなりの補助を引き込めます。50戸のマンションなら、窓改修の内容次第で総額は大きなものになり得ます。ただし補助には予算枠があり、登録事業者を通じた申請が必要です。

5-2. 給湯省エネ・賃貸集合向けの事業

給湯省エネ2026事業は、高効率給湯器(エコキュートなど省エネ性能の高い給湯機器)の導入を支援する経済産業省の事業です。また、賃貸集合住宅向けには「賃貸集合給湯省エネ2026事業」があり、1棟に2戸以上の賃貸住戸を有し、建築から1年以上が経過した建物が対象とされています。分譲と賃貸では使える事業が異なるため、自分のマンションがどの枠に当たるかは、最初に整理しておくと無駄がありません。

6. 申請タイミングという落とし穴――「交付決定前の契約」は対象外

ここで、補助金で最も多い失敗を申し上げます。それは「先に工事の契約をしてしまった」というケースです。

藤沢市の案内にも明記されていますが、補助金制度の活用を検討している場合、委託契約や事業着手は交付決定を受けてから進める必要があります。交付決定の前に契約・着手してしまうと、補助の対象外になってしまうのです(出典:藤沢市「マンション管理に関する支援制度などのご案内」)。

私が現場で一番悔しい思いをするのは、良い工事をしたのに「申請の順番」を間違えて補助を受け取れなかった組合を見るときです。総会で工事を決議し、勢いそのままに契約――この自然な流れが、補助金では命取りになります。正しい順番は、(1)事前相談、(2)申請、(3)交付決定、(4)契約・着工、(5)完了報告・補助金請求です。国の省エネ補助にも予算枠があり、枠に達した時点で締め切られます。「早く動いた組合から埋まっていく」と考えておくのが安全です。

7. 藤沢市の管理組合・補助金活用ロードマップ(着手順)

制度が多くて混乱しそうですが、やることの順番はシンプルです。私が組合にお勧めしている流れを整理します。

第一段階は「無料のアドバイザー派遣」。利害のない専門家に現状を見てもらい、長期修繕計画と積立金の妥当性を点検します。第二段階は「長期修繕計画作成等支援補助金(上限20万円)」を使った計画の整備。建物調査も補助対象に含められます。第三段階は「管理計画認定支援補助金(上限5.5万円)」で認定を取得し、固定資産税減額の入口要件を満たします。第四段階で、耐震が課題なら診断・改修補助を、省エネを絡めるなら先進的窓リノベ2026を組み込みます。そして第五段階、大規模修繕の完了後に長寿命化促進税制の固定資産税減額を申告する――この順で進めれば、取りこぼしが起きにくくなります。

すべての段階に共通する鉄則は、第6章で述べたとおり「契約は交付決定の後」です。

7-1. 数字で見る試算イメージ(藤沢市・50戸・築25年のケース)

イメージをつかんでいただくために、藤沢市内の50戸・築25年・延べ床面積4,000平方メートル程度のマンションを例に、ざっくりと試算してみます(あくまで概算のイメージであり、実際の補助額は審査・予算・工事内容で変わります)。

長期修繕計画の見直しに専門家委託で40万円かかったとすれば、補助でその2分の1・上限20万円が戻る計算です。窓の断熱改修を大規模修繕に合わせて全戸で行えば、先進的窓リノベ2026の補助を戸あたりで積み上げられます。さらに、要件を満たして長寿命化促進税制が適用されれば、工事翌年度の建物部分の固定資産税が1年間軽減されます。一つひとつは小さく見えても、戸あたりに割り戻すと住民の財布感覚で「これだけ軽くなる」と説明できる数字になります。総会では、この戸あたり換算が効きます。

7-2. 合意形成は「数字」と「順番」で決まる

私が現場でつくづく感じるのは、大規模修繕で本当に難しいのは工事そのものではなく、住民の合意形成だということです。修繕積立金の値上げや一時金の話になると、どうしても総会は紛糾しがちです。だからこそ、補助金や税制で「外から軽くできる部分」を先に整理し、「市の制度でここまでカバーでき、残りがこの金額です」と順序立てて示すことが効きます。漠然と「数千万円かかります」と言われるのと、「補助と税制でこれだけ軽くなり、戸あたりの実質負担はこの水準です」と言われるのとでは、住民の受け止めはまったく違います。理事会の段階で、この説明の骨組みをつくっておくこと。それが、私が組合にお渡しできる一番現実的な助けだと思っています。

8. 大規模修繕は「工法の選択肢」で総額が変わる――明誠の3工法提案

補助金で工事費の一部を軽くできても、工事そのものの設計が割高では本末転倒です。ここで私たち明誠の出番になります。

大規模修繕というと「建物全体に足場を組む」のが当たり前と思われがちですが、足場の設置・撤去だけで全体費用の2割前後を占めることも珍しくありません。私たちは、従来の足場を使う工法に加えて、産業用ロープで作業するロープアクセス工法(無足場工法)、そして両者を部位ごとに使い分ける「ハイブリッド工法」の3つから、建物に最適な方法をご提案できます。日本でもこの3択を一社で提案できる会社は多くありません。

ロープアクセス工法は、高層部や足場の架けにくい形状の建物で、足場費を抑えながら工期を短縮でき、しかも居住者の生活への影響を最小限にできるのが強みです。一方で、外壁全面を一度に大きく改修するような工事では足場が向く場面もあります。だからこそ「全部ロープ」でも「全部足場」でもなく、部位ごとに最適化するハイブリッドという発想が効いてくるのです。私はこれを、必ず建物を見てから提案するようにしています。

加えて明誠は、日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。専門工事会社が直接施工に入るため、中間マージンを抑えた高品質・低価格の工事が可能です。補助金で外から軽くし、工法の選択で中から軽くする。この二段構えが、積立金に余裕のない組合にとって現実的な解になります。

以前、ある沿岸寄りのマンションで、外壁の一部にだけ早期の補修が必要だが全面はまだ早い、というケースがありました。従来の発想なら「全面足場を組んで一気に」となりがちですが、それでは積立金を一度に大きく取り崩すことになります。私たちはロープアクセスで傷みの進んだ面だけを先行して手当てし、全面改修は数年後の本工事に回す段取りをご提案しました。結果として、その年の支出を抑えつつ、住民の不安が大きかった箇所を先に解消できました。「面の見極め」――どこを今やり、どこを待てるかを正しく判断することが、総額を左右します。これは机上の計算ではなく、現場で建物に触れてきた者の感覚です。

9. よくある質問(FAQ)

Q1. 藤沢市の管理支援補助金は、いつから申請できますか。
令和8年度は2026年4月13日から実施されています。ただし予算には限りがあり、いずれの制度も交付決定の前に契約・着手すると対象外になります。検討を始めた段階で、まず住まい暮らし政策課に事前相談されることをお勧めします。

Q2. 耐震診断の補助と省エネの補助は、両方使えますか。
制度の趣旨が異なるため、それぞれの要件を満たせば併用を検討できます。ただし対象経費の切り分けや申請窓口が異なるため、組み合わせ方は専門家やアドバイザーに整理してもらうのが安全です。

Q3. うちは新耐震のマンションです。耐震補助は関係ないですか。
耐震診断・改修の補助は昭和56年5月31日以前に着工した旧耐震が対象です。新耐震の建物は耐震補助の対象外ですが、管理計画認定支援・長期修繕計画作成支援・省エネ系の補助や長寿命化促進税制は活用の余地があります。

Q4. 補助金の手続きが複雑そうで不安です。
申請書類や要綱は藤沢市のサイトで公開されていますが、組合だけで完結させる必要はありません。無料のマンション管理アドバイザー派遣を入口に使い、工事の工法・見積りは私たちのような施工会社にご相談いただければ、全体の段取りを一緒に組み立てられます。

Q5. ロープアクセス工法だと、足場を組む工法に比べて品質は落ちませんか。
落ちません。ロープアクセス工法は産業用ロープで作業員が直接外壁に取り付いて施工する方法で、目の前の壁を間近で確認しながら作業できるため、むしろ細かな劣化の発見に向く場面もあります。日本でもロープアクセスの専門技術者は資格と訓練を経た者に限られます。ただし、外壁全面を一度に大きく改修する工事では足場が適することもあり、私たちは建物を見たうえで足場・ロープ・ハイブリッドのどれが最適かをご提案しています。

Q6. 認定や補助の検討は、総会のどのくらい前から動けばよいですか。
余裕をもって、工事を予定する年度の1年以上前から動かれることをお勧めします。アドバイザー派遣で現状を点検し、長期修繕計画を整え、認定や補助の事前相談を済ませておけば、総会では「すでに段取りができた状態」で決議に臨めます。交付決定の前に契約してはいけないという制約がある以上、前さばきの時間を確保しておくことが、結果的に最も費用を抑えます。

結語

藤沢市の制度を一つひとつ見ていくと、「知らなかったために使えなかった」という取りこぼしが、いかにもったいないかが分かります。無料のアドバイザー派遣から始め、計画を整え、認定を取り、工事に補助を重ね、最後に税制で出口を軽くする。この一本の線を、私はいつも理事長さまと一緒に引くようにしています。

工事の話はもちろん、その前段の「制度の整理」や「総会での説明資料づくり」だけでも、お力になれることがあります。藤沢の海風は塩害という形で建物にも効いてきますから、沿岸部のマンションは特に、早めの点検が後の費用を左右します。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理からでも、喜んでお手伝いします。

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出典・参考資料


※本記事は2026年6月時点で公開されている公的情報をもとに作成しています。補助率・上限額・適用期間・申請受付期間は予算や制度改正により変更される場合があります。実際の申請にあたっては、必ず藤沢市および各事業の公式情報をご確認のうえ、事前相談からお進めください。

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川崎市の分譲マンション管理組合が使える補助金・税制活用ガイド|大規模修繕の負担を軽くする2026年度(令和8年度)の制度設計

「修繕積立金が、計画より足りていない」――川崎市内の管理組合で理事長さまとお話しすると、最初の30分でほぼ決まってこの話になります。築20年を超えたあたりから、外壁や防水の劣化は待ったなしで進む一方、積立金の値上げは総会でなかなか通らない。このギャップに、理事会の皆さまは毎年頭を悩ませておられます。

私は20年近く、マンションやビルの大規模修繕の現場で叩き上げてきました。その経験から正直に申し上げます。川崎市の管理組合は、使える制度を「知らないまま」工事に入ってしまうケースが、本当に多い。川崎市・神奈川県・国には、管理組合が主体となって使える補助金や税の優遇が、実は何層にも用意されています。これらを工事計画と一緒に設計するだけで、戸あたりの負担は目に見えて変わります。

この記事では、川崎市の分譲マンション管理組合が2026年度(令和8年度)に活用できる支援制度を、入口の相談から、登録・認定、耐震、バリアフリー、省エネ、そして固定資産税の減額まで、申請の順番と落とし穴も含めて整理します。読み終えたとき、次の理事会で「まず何を確認すべきか」がはっきりしているはずです。


1. なぜ今、川崎市の管理組合は「補助金・税制を絡めた大規模修繕」を考えるべきか

川崎市は7つの行政区からなる政令指定都市で、武蔵小杉・溝の口・新百合ヶ丘といった主要駅を中心に分譲マンションのストックが非常に多い都市です。高度経済成長期からバブル期、そして近年のタワーマンション供給まで、幅広い世代の住棟が積み上がっており、いま多くの住棟が「2回目・3回目の大規模修繕」の時期を迎えています。

ここで管理組合が直面するのが、次の3つの壁です。

第一に、修繕積立金の不足です。国土交通省の「マンション総合調査」でも、長期修繕計画上の必要額に対して積立額が不足している組合が一定割合あることが繰り返し指摘されています(出典:国土交通省 マンションに関する統計・データ等)。工事の単価が上がっている近年、この不足は以前より重くのしかかります。

第二に、合意形成の難しさです。区分所有者の高齢化、賃貸化、空室化が進むと、総会で工事の議決を得ること自体が容易ではなくなります。

第三に、情報の非対称です。補助金や税制は、申請のタイミングや要件が細かく、しかも年度ごとに変わります。理事は数年で交代するため、ノウハウが組合に蓄積されにくい。

私はこれを、いつも「制度の取りこぼし」と呼んでいます。工事そのものは避けられない出費でも、制度を絡めれば「実質負担」は下げられる。たとえば固定資産税の減額は、工事費そのものを安くするわけではありませんが、工事後に区分所有者全員の税負担が軽くなるため、総会で工事を通すための「説明材料」になります。補助金は積立金不足の穴埋めに直接効きます。

ここからが本題です。川崎市の管理組合が使える制度を、順番に見ていきましょう。


2. 川崎市が独自に持つ管理組合向け支援制度

川崎市は、管理組合への支援の「入口」として、まず登録制度を整えているのが特徴です。ここを起点に、相談・助成・認定がつながっていきます。順番に紹介します。

2-1. すべての起点――川崎市マンション管理組合登録・支援制度

川崎市の管理組合支援は、「川崎市マンション管理組合登録・支援制度」への登録が事実上の入口になっています。登録した管理組合には、後述する無料アドバイザー派遣の回数が増える、市の「川崎市マンション便り」が年2回届く、管理組合交流会に参加できる、そして段差解消工事等費用助成制度を利用できる――といったメリットがあります(出典:川崎市「川崎市マンション管理組合登録・支援制度」)。

私が川崎市の組合にまずお伝えするのは、「補助や助成を使いたいなら、まず登録から」ということです。段差解消助成のように、登録が利用要件になっている制度があるため、登録していないと入口でつまずきます。費用がかかるものではないので、未登録の組合は早めに済ませておくのが得策です。

2-2. 入口の相談――マンション管理アドバイザー派遣

「何から手をつければいいか分からない」という組合に、私が最初におすすめするのがこの制度です。川崎市は、川崎市住宅供給公社のハウジングサロンに相談したうえで派遣が適当と判断された場合に、専門家のアドバイザーを派遣しています。

回数の扱いに、登録制度のメリットがはっきり出ます。登録済みのマンションは年3回まで、未登録は年1回まで、無料で専門家の派遣を受けられます(出典:川崎市「マンション管理組合を支援する制度について」)。管理運営、規約の見直し、財務(積立金)、長期修繕計画や大規模修繕の進め方まで、幅広く相談できます。

工事業者に相談する前に、まず中立的な専門家に現状を見てもらう。これが遠回りに見えて、いちばん安全な入口です。ハウジングサロンの予約は火曜から土曜(祝日・年末年始を除く)に受け付けています。

2-3. 共用部のバリアフリー化――川崎市マンション段差解消工事等費用助成制度

高齢化が進む住棟では、共用部のバリアフリー化が切実な課題になります。川崎市には、分譲マンション共用部の段差解消工事に要する費用の3分の1を助成する制度があります。敷地内通路、外部出入口、廊下、階段に、傾斜路(スロープ)、手すり、車いす使用者用昇降機などを新規に設置する工事が対象です(出典:川崎市「川崎市マンション段差解消工事等費用助成制度」)。

助成の中身は次のとおりです。

項目 内容
助成率 工事費(消費税相当額を除く)の3分の1(千円未満切捨て)
上限 住戸数 × 10,000円(=1戸あたり1万円)、かつ予算の範囲内
対象 段差箇所への傾斜路・手すり等の新規設置(改修は対象外)
要件 RC・SRC・S造、原則6戸以上、管理組合登録・支援制度に登録済みであること
受付 計画書の受付期間は概ね4月〜9月末

ここで効いてくるのが、前述の登録制度です。登録していなければ、この助成は使えません。また、「新規設置」が対象で、既存設備の改修は対象外という点も見落としがちなので、計画段階で工事内容を確認しておくことが大切です。

2-4. 旧耐震マンションの要――川崎市マンション耐震改修等事業助成制度

1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けて着工された、いわゆる「旧耐震」の分譲マンションには、川崎市の手厚い耐震改修助成があります。耐震診断・耐震設計・耐震改修が対象で、令和8年4月から補助額が拡充されています(出典:川崎市「川崎市マンション耐震改修等事業助成制度」)。

助成の水準は次のとおりです。

区分 助成内容
耐震診断 費用の2/3(1住戸あたり上限5万円)
耐震設計 費用の2/3(1住戸あたり上限5万円)
耐震改修 費用の1/3(1住戸あたり上限50万円。51,700円/㎡を限度)

対象は、RC・SRC・S造で地階を除く階数が3以上、専有部分の数が6以上などの要件を満たす分譲マンションです。耐震設計には耐震診断で「安全でない」と判定されていること、耐震改修には耐震判定委員会等の評価や法に基づく計画認定が前提になります。

ひとつ、現場の人間として強くお伝えしたいことがあります。この助成は助成金額が100万円を超える場合、市内中小企業者による入札、または市内中小企業者2者以上からの見積りが必要とされています。施工会社の選び方が補助の要件に直結するということです。さらに、令和5年度からは代理受領制度も使えるようになっており、組合が一時的に全額を立て替えずに済む仕組みも整っています。順番と段取りを間違えると、せっかくの助成が受けにくくなります。私が一番悔しい思いをするのは、工事内容は良かったのに、申請手順の前後で補助を取り逃した組合を見たときです。なお、耐震診断の前段として「川崎市マンション耐震診断に係る予備調査事業」も用意されており、診断・設計・改修を一連の流れで設計できます。

2-5. 川崎市マンション管理計画認定制度

川崎市は、管理組合の運営や長期修繕計画が一定の基準を満たしていることを市が認定する「マンション管理計画認定制度」を設けています(出典:川崎市「川崎市マンション管理計画認定制度」)。

認定を取ると、市場での評価が高まるほか、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」の金利優遇や「フラット35(維持保全型)」の借入金利の引き下げなど、波及するメリットがあります。そして川崎市では、後述する長寿命化促進税制の入口要件としても、この認定が効いてきます。私はこれを、補助金・税制を効かせるための「土台づくり」と位置づけて、登録制度とワンセットで理事会にご提案するようにしています。


3. 固定資産税が半額に――マンション長寿命化促進税制

補助金が「入口の出費」を軽くするのに対し、税制は「工事後の負担」を軽くします。なかでも管理組合がぜひ知っておくべきなのが、マンション長寿命化促進税制です。

3-1. 制度の中身

一定の要件を満たすマンションで、長寿命化工事(外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事)を実施すると、工事完了の翌年度分の建物部分の固定資産税が2分の1減額されます。川崎市の案内では、減額される範囲は次のとおりです(出典:川崎市「大規模の修繕等が行われたマンションに係る固定資産税の減額」)。

1戸あたりの床面積 減額の範囲
100㎡以下 居住部分の固定資産税額の2分の1を減額
100㎡超 100㎡相当分の居住部分の固定資産税額の2分の1を減額

減額されるのは、長寿命化工事完了年の翌年1月1日を賦課期日とする課税年度分です。

ここがこの制度の優れたところで、減額は区分所有者全員に及びます。総会で「工事をすると、来年の皆さんの固定資産税が半分になります」と説明できれば、合意形成の追い風になります。数字の体感としては、たとえば建物部分の固定資産税が1戸あたり年5万円のマンションなら、その年は2.5万円が軽くなる計算です。50戸あれば組合全体で年125万円規模の効果になります。しかも川崎市では、管理組合の管理者等が必要書類を提出すれば、各区分所有者から個別に申告書が出ていなくても減額を適用できる仕組みになっています。理事会主導でまとめて手続きできるのは、実務上たいへん大きい利点です。

3-2. 適用要件と「管理計画認定」との関係

この税制を使うには、川崎市の案内で、次の要件を満たす必要があります。

  • 新築から20年以上が経過していること
  • 総戸数が10戸以上であること
  • 過去に1度以上の長寿命化工事を行っており、令和5年4月1日から令和9年3月31日までに2回目以降の長寿命化工事を完了していること
  • 管理計画認定マンションであること(令和3年9月1日以降に修繕積立金を認定基準まで引き上げ済み)、または長期修繕計画に係る助言・指導を受けて計画を作成・見直しし、一定基準に適合したこと

ここで川崎市の「管理計画認定制度」や「長期修繕計画に係る助言・指導」が、税制の入口要件として直結していることが分かります。また、耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修など他の固定資産税減額措置との同時適用はできず、過去にこの長寿命化の減額を受けたことがないことも条件です。どの減額を使うのが得かは、工事内容とセットで判断する必要があります。


4. 国・神奈川県の制度(2026年度)で省エネ改修を「戸あたり」で効かせる

川崎市の制度に、国と神奈川県の省エネ補助を重ねると、大規模修繕に「断熱」や「設備更新」を組み込んだときの戸あたり負担がさらに下がります。2026年度(令和8年度)の主役は次の制度群です。

4-1. 先進的窓リノベ2026事業

窓を断熱性能の高いものに交換・設置する工事に、国(環境省)が大型の補助を出す制度です。2026年は補助上限が100万円となっています(2025年の上限200万円から変更)。重要なのは、管理組合が施主となって建物全体を一括でリフォームするケースも対象になる点です(戸単位での申請も可)。出典:先進的窓リノベ2026事業【公式】。

申請は「窓リノベ事業者」として登録された施工会社が行う仕組みで、区分所有者や組合が直接申請するものではありません。だからこそ、制度に精通した施工会社を選ぶことが、そのまま補助の取りこぼし防止につながります。

4-2. 給湯省エネ2026・みらいエコ住宅2026事業

高効率給湯器(エコキュート等)の導入を補助する「給湯省エネ2026事業」、断熱改修や設備更新を幅広く対象にする制度群も走っています。これらは併用が可能で、窓の断熱改修と給湯器交換を同時に行えば、それぞれの補助を受けられます(出典:住宅省エネ2026キャンペーン)。

なお、2025年度の「子育てグリーン住宅支援事業」は、2026年度から内容を一新した「みらいエコ住宅2026事業」(国土交通省・環境省連携)に引き継がれています。一定の省エネ性能を満たす住宅の新築・購入のほか、戸建・共同住宅を問わず既存住宅の省エネ改修等が補助対象とされており、共用部を含む大規模修繕に断熱改修を組み込む際の選択肢になります。対象工事や共用部の取り扱いの詳細は公式サイトでご確認ください(出典:みらいエコ住宅2026事業【公式】)。

大規模修繕のタイミングは、足場が架かる、あるいはロープアクセスで建物全周にアクセスできる「またとない機会」です。このときに窓や設備の更新をまとめて行うと、後から単独で工事するより足場・仮設のコストを節約でき、補助の対象工事も増やせます。

4-3. 神奈川県の省エネ補助も重ねる

神奈川県も「令和8年度神奈川県既存住宅省エネ改修事業費補助金」を用意しています。指定の省エネ改修が対象で、補助対象経費の3分の1または15万円のいずれか低い額が上限とされ、外気に接する窓(玄関ドア等を含む)の改修が必須です。申請は事業着手の2か月以上前に行い、交付決定を受けた後に着工することが条件です(出典:神奈川県「令和8年度神奈川県既存住宅省エネ改修事業費補助金」)。国・県・市の制度の重複利用の可否は、必ず各窓口で確認が必要です(参考:川崎市「国・神奈川県の省エネに関する制度について」)。


5. 申請タイミングという落とし穴――「交付決定前の契約」は全部パー

ここまで多くの制度を紹介しましたが、すべてに共通する、いちばん大事な原則を改めて強調させてください。

「補助金は、交付決定を受ける前に契約・着工したものは対象外になる」

神奈川県の省エネ補助は「交付決定前に着工しないこと」が明記された条件です。川崎市の耐震改修等事業も、事前相談票の提出や計画承認の手続きが先で、その後に着工する流れになっています。段差解消助成も、計画書の受付期間(概ね4月〜9月末)に間に合わせる必要があります。

私の経験上、ここでつまずく組合が本当に多い。総会で工事業者を決め、契約を交わし、いざ着工してから「補助金を使いたい」と相談に来られても、もう間に合わない。制度は「動き出す前」に組み込むものです。理事会のスケジュールを引くとき、私はいつも「①事前相談 → ②申請 → ③交付決定 → ④契約・着工」という順番を最初に書き出すようお伝えしています。

逆に言えば、この順番さえ守れば、複数の制度を計画的に重ねられます。早めに動くこと――それが川崎市で補助金を取りこぼさない、最大のコツです。


6. 川崎市の管理組合・補助金活用ロードマップ(着手順)

ここまでの制度を、実際に動かす順番でまとめます。

  1. 川崎市マンション管理組合登録・支援制度に登録する。段差解消助成やアドバイザー派遣(年3回)の前提になる、すべての起点。
  2. マンション管理アドバイザー派遣で現状把握。ハウジングサロンに相談し、管理運営・積立金・長期修繕計画の課題を洗い出す。
  3. 長期修繕計画の作成・見直し(助言・指導の活用を検討)。工事範囲と積立金の水準を確定させ、長寿命化促進税制の入口要件も整える。
  4. マンション管理計画認定の取得を検討。税制・融資優遇の土台を作る。
  5. 旧耐震なら耐震診断(予備調査)→耐震設計→耐震改修を事前相談。100万円超の助成は市内中小企業者への発注要件に注意。
  6. 共用部のバリアフリー化は段差解消助成を申請(登録済み・新規設置が前提、受付は4月〜9月末)。
  7. 大規模修繕の本体工事に、国・県の省エネ補助を組み込む(窓・給湯・断熱)。施工会社は制度対応の実績で選ぶ。
  8. 工事完了後3か月以内に長寿命化促進税制を申告し、翌年度の固定資産税減額を受ける。管理者等による一括申告が可能。

この順番の肝は、「お金を出す前に、登録と認定で土台を作り、制度の交付決定を取りに行く」ことに尽きます。

6-1. 数字で見る試算イメージ(川崎市・50戸・築25年のケース)

あくまで考え方を示すためのイメージで、実際の金額は建物の状態・面積・工事内容により変わりますが、効果の「桁感」をつかんでいただくために置いてみます。

項目 概算
大規模修繕工事費(本体) 約9,000万円
省エネ改修(窓・断熱を組み込み) 上乗せ工事費の一部を国・県補助でカバー
段差解消工事(共用部バリアフリー) 工事費の1/3(上限:50戸×1万円=50万円)
固定資産税減額(長寿命化促進税制) 翌年度、建物部分の固定資産税が組合全体で半額(戸あたり数万円規模)

工事費そのものを大きく削るというより、「省エネ部分の上乗せを補助で吸収」「翌年度の税が軽くなる」という形で、実質負担を多面的に下げるのが川崎市での王道です。


7. 大規模修繕は「工法の選択肢」で総額が変わる――明誠の3工法提案

ここからは、私たち株式会社明誠のサービスのご案内です(自社紹介のセクションとして明確に区切ります)。

補助金や税制で「実質負担」を下げる一方、工事の総額そのものを左右するのが工法の選び方です。マンションの大規模修繕というと、建物全体に足場を架ける「通常足場工法」が当たり前だと思われがちです。しかし足場の仮設・解体には相応の費用と工期がかかり、足場が架かっている間は居住者の生活にも影響が出ます。

明誠は、建物の特性に応じて3つの工法から最適な提案ができる、日本でも数少ない会社です。

第一に、通常足場工法。中低層や複雑な形状の建物に向きます。第二に、ロープアクセス工法。産業用ロープで作業員が壁面を昇降して施工する「無足場工法」で、足場費の削減・工期短縮・居住者の生活影響の最小化が強みです。高層や、足場の架設が難しい物件、コストを重視する物件に向きます。第三に、ハイブリッド工法。部位ごとに足場とロープアクセスを使い分け、大規模・複雑な物件で総合的にコストを最適化します。

私はこの3つを、必ずワンセットで比較してご提案するようにしています。なぜなら、同じ建物でも「どこに足場を架け、どこをロープで攻めるか」で、総額も工期も、そして補助金を組み込む余地も変わってくるからです。武蔵小杉や溝の口のような高層物件が多い川崎市では、ロープアクセスやハイブリッドの強みが特に活きます。

明誠はさらに、日本で初めてとなるロープアクセス工事のフランチャイズを展開しており、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。これにより、高品質と低価格の両立を図っています。川崎市の補助金・税制の活用と、工法の最適化。この2つを同時に設計できるのが、私たちの強みです。

工法の詳細はロープアクセス工法のご紹介を、大規模修繕の総合的な進め方は大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。


8. よくある質問(FAQ)

Q1. 補助金と長寿命化促進税制は、両方使えますか。
A. 制度の趣旨と要件が異なるため、要件を満たせば併用できる場合があります。ただし、長寿命化促進税制は、耐震・バリアフリー・省エネの各固定資産税減額措置との同時適用ができません。税制は「工事後の固定資産税」、補助金は「工事費」と、効くタイミングが違うと整理すると分かりやすいです。重複利用の可否は各窓口で確認するのが前提です。

Q2. 登録していない管理組合は、何も使えないのでしょうか。
A. アドバイザー派遣は未登録でも年1回まで無料で使えますが、段差解消助成のように登録が利用要件になっている制度があります。登録は費用がかからないので、まず登録から始めるのが川崎市での王道です。

Q3. 申請の事務作業が大変そうで不安です。
A. 川崎市のアドバイザー派遣や、制度に精通した施工会社のサポートを使えば、書類の準備は大きく軽くなります。長寿命化促進税制は、管理者等がまとめて申告できる仕組みがあり、先進的窓リノベ2026などは登録事業者が申請を代行します。組合だけで抱え込まず、入口で専門家に相談するのが結局いちばん早い、というのが私の実感です。

Q4. 耐震改修助成で「市内中小企業者への発注」が要件と聞きました。
A. 助成金額が100万円を超える場合、市内中小企業者による入札、または市内中小企業者2者以上からの見積りが必要です。施工会社の選定が補助の要件に直結するため、見積りの段取りを早い段階で組んでおくことが大切です。


結語

川崎市の管理組合が使える制度は、決して少なくありません。むしろ「多すぎて分かりにくい」こと、そして「登録や認定という土台づくりを飛ばしてしまうこと」が、取りこぼしの最大の原因だと、私は現場で感じてきました。大事なのは、工事を決める前に、制度の地図を一度広げてみること。そして「登録 → 相談 → 申請 → 交付決定 → 契約」の順番を守ることです。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階、長期修繕計画の確認や工法の比較だけでも、お力になれることがあります。川崎の街には、これから2回目・3回目の修繕を迎える住棟がたくさんあります。その一棟一棟を、無理のない負担で長く使えるようにすること。それが、私たちの仕事です。

次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


出典・参考資料

本記事は2026年6月8日時点で公開されている情報をもとに作成しています。補助率・上限額・申請期限・受付状況は年度や予算の状況により変更される場合があります。実際の申請にあたっては、必ず各制度の公式窓口で最新情報をご確認ください。また、税制・法務に関わる個別の判断は、税理士・行政書士等の専門家にご相談ください。

▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

収益不動産の資産価値は「大規模修繕」で守る時代に——企業の不動産売却18年ぶり高水準が映す“持つ・持たない”の分かれ目【2026年6月】

収益不動産の資産価値は「大規模修繕」で守る時代に——企業の不動産売却18年ぶり高水準が映す“持つ・持たない”の分かれ目【2026年6月】

おはようございます。明誠の本間です。

先日、ある新聞の見出しに目が留まりました。「企業の不動産売却、18年ぶり高水準」。あの味の素さんが、京橋の本社ビルを手放したというのです。私はこの記事を、現場へ向かう車の中で読みました。そして正直に申し上げます。これは収益不動産をお持ちのオーナーさまにとって、他人事ではない話だと感じました。

なぜなら、大きな会社が「不動産を持たない」方向へ舵を切る一方で、個人や中小法人のオーナーさまは、これからも「持ち続ける」前提で資産と向き合っていく方が多いからです。同じ不動産でも、立場が違えば判断はまるで逆になります。そして「持ち続ける」と決めた瞬間から、本当の勝負が始まります。その勝負を左右するのが、ほかでもない大規模修繕(建物全体を一定周期でまとめて直す計画的な工事)なのです。

今日は、このニュースを入り口に、収益ビル・マンション・ホテルをお持ちのオーナーさまが、これからの時代に資産価値をどう守り、どう高めていくのか。現場で20年やってきた私の視点で、できるだけ具体的にお話しします。

「持つ会社」が減り始めた——18年ぶりの売却ラッシュが意味すること

まず、ニュースの中身を正確に押さえておきます。

報道によれば、2025年に上場企業が国内不動産を売却した金額は約1兆2318億円にのぼり、これは18年ぶりの高水準だといいます(出典:日本経済新聞「企業の不動産売却18年ぶり高水準 味の素は本社ビル、資産効率を改善」)。味の素さんは京橋の本社ビルを売却し、近隣の複合ビルへ本社機能を移すと報じられています。ほかにもIHIさんが都内の不動産を、松竹さんや三陽商会さんも保有物件の売却を決めたとされています。

なぜ、いま売るのか。背景には、不動産市況が好調であること、そしてROE(自己資本利益率=株主が出したお金でどれだけ効率よく稼いだかを示す指標)やPBR(株価純資産倍率)の改善を求める投資家からの圧力があると見られています。平たく言えば、「使っていない、あるいは効率の悪い不動産は、持っているより売って身軽になった方が、会社の数字が良く見える」という判断です。

これは、企業経営としては合理的な動きです。本社ビルを所有していれば、固定資産税もかかり、維持管理費もかかり、何より多額の資金が建物に縛り付けられます。その資金を本業に回した方が稼げる、と考える会社が増えているわけです。

ただ、私がここで立ち止まってほしいと思うのは、「だから不動産はもう持つ価値がないのか」という早合点です。話はそう単純ではありません。

法人と個人で逆向きの判断——なぜオーナーは「持ち続ける」前提で考えるべきか

大企業が本社ビルを売るのと、収益不動産オーナーさまが物件と向き合うのとでは、そもそもの目的が違います。

事業会社にとって、本社ビルは「コストセンター」、つまりお金を生まない費用のかたまりです。だから身軽にしたい。一方、オーナーさまにとっての収益物件は「プロフィットセンター」、毎月家賃という収益を生み続ける装置です。性格がまったく逆なのです。

収益物件は、保有し続けて家賃収入を得ながら、出口(売却)のタイミングで売却益も狙える。これが不動産投資の基本構造です。途中で安易に手放してしまえば、その収益装置そのものを失うことになります。ですから多くのオーナーさまは、「いつ売るか」よりも「どう持ち続けるか」を軸に考える方が、長期の収益は安定しやすいのです。

もちろん、これは投資判断であり、私は不動産の専門アドバイザーでも金融の専門家でもありません。売る・持つの最終判断は、税理士さんやファイナンシャルプランナーなど専門家と相談のうえ、ご自身で決めていただくべきものです。私がお伝えできるのは、あくまで「建物を維持する側」から見た現実です。

その現実とは——「持ち続ける」と決めたなら、建物の状態こそが資産価値を決める、という一点に尽きます。

価格はもう「立地と築年数」だけでは決まらない——二極化の本当の分岐点

「うちの物件は駅から近いし、まだ価格は大丈夫」。そうおっしゃるオーナーさまは少なくありません。たしかに立地は重要です。しかし、いま市場で起きているのは、もう一段深い変化です。

国土交通省の不動産価格指数を見ると、マンション(区分所有)の全国指数は2010年平均を100として、2025年12月時点で225.1まで上昇しています(出典:国土交通省「不動産価格指数」)。長い目で見れば、マンション価格は大きく上がってきました。新築価格の高騰が中古価格をも押し上げる流れも続いています。

ただ、この「上昇」は全部の物件に等しく恵みをもたらすわけではありません。市場関係者の多くが指摘するのは、二極化です。都心・駅近・築浅・そして「管理状態の良い物件」は価格が底堅い。一方で、郊外・築古・そして「修繕に不安のある物件」は価格が伸びにくく、調整を受けやすい。

ここで注目していただきたいのが、「管理状態の良し悪し」「修繕への備え」が、立地や築年数と並ぶ価格の分岐点として、はっきり語られるようになったことです。同じ駅、同じ築年数でも、外壁がきれいで修繕履歴が整った建物と、シーリング(目地のゴム状の防水材)がひび割れ、外壁に汚れが目立つ建物とでは、買い手の評価がまったく違います。私は仲介会社の方から、「修繕履歴がしっかりしている物件は、商談が早い」という話を何度も聞いてきました。

つまり、これからの収益不動産は、「建物をどう維持してきたか」という履歴そのものが、資産価値として値付けされる時代に入ったのです。

数字で見る「修繕の備え不足」——36.6%という現実

では、世の中のオーナーや管理組合は、その備えが十分にできているのでしょうか。残念ながら、データは厳しい現実を示しています。

国土交通省の令和5年度マンション総合調査によれば、計画上の積立額に対して現在の修繕積立金が不足しているマンションは36.6%にのぼります(出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」)。3棟に1棟以上が、計画通りにお金を貯められていないということです。

同じ調査では、修繕積立金の額(駐車場使用料等からの充当額を除く月・戸当たり)の平均は13,054円。長期修繕計画(これから数十年でいつ・何を・いくらで直すかを定めた計画書)を作成している管理組合は88.4%ある一方で、25年以上の計画期間で積立額を設定しているのは62.4%にとどまります。

この数字を、私は現場の感覚と重ねて読みます。計画は作ったものの、資材価格や人件費の上昇に積立額が追いついていない。気づいたときには、いざ大規模修繕という段になって「お金が足りない」。だから工事を先送りする。先送りしている間に劣化が進み、いざ着工すると追加の補修が増えてさらに費用がかさむ——この悪循環を、私は何度も見てきました。

賃貸オーナーさまの場合、管理組合という仕組みがない分、この「備え」はすべてご自身の判断にかかってきます。毎月の家賃が入ってくると、つい修繕の積み立てを後回しにしてしまう。お気持ちはよく分かります。ですが、後回しにしたツケは、必ず建物の劣化と価値の下落という形で返ってきます。

私が現場で20年見てきた、「価値が落ちる建物」と「落ちない建物」の差

少し、現場の話をさせてください。

私はこれまで、数えきれないほどのマンションやビルの外壁に、足場やロープでよじ登り、手で叩き、目で見てきました。築20年を超えた建物を前にすると、その建物が「どう扱われてきたか」が、手に取るように分かります。

価値が落ちない建物には、共通点があります。劣化が「小さいうちに」手当てされているのです。たとえば、シーリングの軽いひび割れ。これを早めに打ち替えておけば、水は壁の中に入りません。ところが放置すると、雨水が外壁の内部に回り、鉄筋を錆びさせ、コンクリートを内側から押し割る「爆裂」という現象を引き起こします。こうなると、補修費は桁が一つ変わります。

私が一番悔しい思いをするのは、「あと2年早く相談してくださっていれば、この費用の半分で済んだのに」という現場に立ち会うときです。タイル(外壁に貼られた化粧材)が浮いて、いつ落ちてもおかしくない状態になっている。下は人が通る歩道。こうなると、資産価値どころか、第三者への落下事故という賠償リスクまで背負うことになります。

逆に、価値が落ちない建物のオーナーさまは、決まって「早めの点検」を習慣にされています。派手なことではありません。年に一度、専門家の目で建物をぐるりと見てもらう。それだけで、大きな出費の芽を小さいうちに摘めるのです。私はいつもオーナーさまに、「建物は人間の体と同じで、人間ドックが一番安い投資です」とお伝えしています。

大規模修繕は「コスト」ではなく「資産価値の維持装置」

ここからが本題です。

大規模修繕というと、多くの方が「大きな出費」「できれば避けたいもの」と捉えがちです。気持ちは分かります。一回あたり数百万円から、規模によっては数千万円、大型物件なら億単位になることもあります。

しかし、視点を変えてみてください。先ほど見たように、いまや「修繕の状態」そのものが資産価値の値付けに直結する時代です。だとすれば、大規模修繕は単なる出費ではなく、資産価値を維持し、ときに高めるための「投資」と捉えるべきものです。

私は、これを「資産価値の維持装置」と呼んでいます。きちんと修繕された建物は、家賃を維持でき、空室を埋めやすく、出口で高く売れる。逆に修繕を怠った建物は、家賃を下げざるを得ず、空室が増え、売るに売れなくなる。同じ建物が、修繕という一手で正反対の道をたどるのです。

ですから私は、収益物件のオーナーさまにこそ、修繕を「守り」ではなく「攻め」の経営判断として位置づけていただきたいと考えています。物件の利回りを守るのは、新しい入居者を探すこと以上に、いまある建物の価値を落とさないことなのですから。

足場を二度組まない——工法選択が利回りを左右する

では、その大規模修繕を、いかに賢く行うか。ここで効いてくるのが「工法の選択」です。

実は、大規模修繕の費用のうち、決して小さくない割合を占めるのが「足場代」です。建物の周りに仮設足場を組み、終わったら解体して撤去する。この足場の架設・解体だけで、工事全体の2割前後を占めることも珍しくありません。しかも足場は、組んでいる間ずっとレンタル料がかかり、工期が延びればその分コストも膨らみます。

私が現場で20年やってきて確信しているのは、「足場を二度組まない」ことの大切さです。たとえば外壁塗装と防水工事を別々の年に発注すれば、足場を二度組むことになります。これは本当にもったいない。同時に行えば、足場代は一回で済みます。だから私は、複数の工事はできる限り「一つの足場でまとめて」提案するようにしています。

そして、もう一歩進んだ選択肢があります。そもそも足場を組まずに工事ができないか、という発想です。これが、無足場工法(足場を架設せずに行う施工方法)、なかでもロープアクセス工法という選択です。

ロープアクセスという選択肢が、なぜ収益物件と相性がいいのか

ロープアクセス工法とは、産業用のロープを使い、技術者が建物の屋上から吊り下がって、外壁の点検・補修・塗装・防水などを行う工法です。橋梁やダム、高層ビルの点検で発展してきた技術で、私たちはこれをマンション・ビル・ホテルの大規模修繕に応用しています。

この工法が収益物件と相性がいい理由を、私は3つお伝えしています。

第一に、足場代を大きく削減できることです。足場を組まないので、その費用がまるごと不要になる。部分的な補修や、高層階だけの工事では、コスト差がとくに大きく出ます。

第二に、工期が短く、入居者・利用者への影響が小さいことです。足場を組むと、組むだけで数日、解体にも数日かかります。その間、窓の外に人が立ち、足場用のネットで日当たりや眺望がさえぎられる。賃貸物件なら入居者の不満につながり、ホテルなら稼働への影響が出ます。ロープアクセスなら、必要な場所だけを、必要な期間だけ施工できます。私はこれを「住みながら、営業しながら直せる工法」とお伝えしています。

第三に、足場を組みにくい立地でも施工できることです。隣地との距離が近い、前面道路が狭い、敷地形状が複雑——足場の架設が難しい物件ほど、ロープアクセスの価値は際立ちます。

もちろん、ロープアクセスが万能だと申し上げるつもりはありません。建物全体を一度に塗り替えるような大規模な工事や、複雑な造作を伴う工事では、足場の方が効率的なこともあります。ですから私たちは、足場・ロープアクセス・そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、その建物にとって本当に最適な組み合わせをご提案しています。3つの工法を建物特性に応じて選べる会社は、日本でもまだ多くありません。私はここに、現場叩き上げの会社としての矜持を持っています。

工法の詳しい比較は、ロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介のページでも整理していますので、あわせてご覧ください。

総会・理事会で、今月できること

6月は、マンション管理組合にとって総会シーズンです。賃貸オーナーさまにとっても、年度の折り返しに向けて、修繕計画を見直すよい時期です。

私から、今月できることを3つ提案させてください。

ひとつ目は、長期修繕計画の「賞味期限」を確認することです。計画は作って終わりではありません。国の調査でも、5年ごとを目安に見直している管理組合が63.2%です(出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」)。前回の見直しから5年以上経っているなら、資材高騰を反映できていない可能性が高い。まずはここを点検してください。

ふたつ目は、修繕積立金の水準を、現在の工事相場と突き合わせることです。計画当時の金額のままでは、いざというとき足りないかもしれません。値上げは住民や共同オーナーの合意が要りますから、早く議題に上げるほど、丁寧な説明の時間がとれます。

みっつ目は、次の大規模修繕で「足場を二度組まない」設計になっているかを確認することです。外壁・防水・鉄部塗装などを、できるだけ一つの工事機会にまとめられないか。工法をロープアクセスやハイブリッドに切り替える余地はないか。この一手で、総工費が大きく変わることがあります。

総会の場で、1分でもこの話題を出してみてください。「修繕の備えは足りているか」「足場代は減らせないか」。この二つの問いが、数年後のあなたの資産価値を守ります。

「持ち続ける」と決めたなら、まず長期修繕計画の棚卸しから

冒頭の話に戻ります。大企業が不動産を手放す時代に、あなたはその収益物件を持ち続けるのか。これは経営判断であり、私が口を出すことではありません。

ただ、もし「持ち続ける」と決めたのなら、やるべきことは明確です。建物の価値を、計画的に守り続けること。そのために、長期修繕計画を棚卸しし、積立の備えを点検し、次の工事を賢い工法で行うこと。この地道な積み重ねこそが、二極化の時代に「価値が落ちない側」に立つための、唯一の確実な方法だと私は考えています。

国土交通省も、長期修繕計画の作成・見直しの考え方を「長期修繕計画作成ガイドライン」として公開しています(出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン/長期修繕計画作成ガイドライン」)。まずはこうした公的な資料に一度目を通すだけでも、見えてくるものがあります。

よくある質問(FAQ)

Q. 築浅なので、まだ大規模修繕は関係ないのでは?
建物にもよりますが、外壁やシーリング、防水は新築から10〜15年程度で最初の本格的な手当ての時期を迎えるのが一般的です。築浅のうちから劣化の進み方を把握しておくと、最初の大規模修繕を最小コストで迎えられます。早すぎる相談はありません。

Q. ロープアクセスにすると、品質は足場より落ちませんか?
作業の中身は、足場であってもロープであっても、人の手で行う点検・補修・塗装です。大切なのは技術者の技量と管理体制です。私たちはフランチャイズに塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟する体制で、高品質と低価格の両立をめざしています。工法の違いより、誰がどう施工するかが品質を決めます。

Q. まず何から始めればいいですか?
建物の現状を知ることからです。点検は、その後の判断のすべての土台になります。費用感や工法の向き不向きは、建物を一度見てからでないと正確には申し上げられません。

まとめ——価値は「持ち方」で決まる

今日は、企業の不動産売却が18年ぶり高水準になったというニュースを入り口に、収益不動産オーナーさまが資産価値を守るために何ができるかを、現場の視点でお話ししました。

要点を3つに絞ります。第一に、不動産価値はもう「立地と築年数」だけでなく、「どう維持されてきたか」で二極化していること。第二に、大規模修繕は出費ではなく「資産価値の維持装置」であり、攻めの経営判断であること。第三に、足場を二度組まない設計と、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの最適な工法選択が、利回りと出口価格を左右すること。

これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない感想です。大きな会社が身軽になる時代だからこそ、持ち続けると決めたオーナーさまには、建物という資産にきちんと手をかけていただきたい。それが、いちばん確実な資産防衛だと信じています。

点検や工法の見直しは、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会や来期予算の前段階で、現状を整理するだけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームからお気軽にどうぞ。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


出典・参考資料

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の不動産の売買・投資・税務に関する助言ではありません。個別の判断にあたっては、税理士・不動産鑑定士などの専門家にご相談ください。

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千葉市の分譲マンション管理組合が使える補助金・税制活用ガイド|大規模修繕の負担を軽くする2026年度(令和8年度)の制度設計

「修繕積立金が、計画より足りていない」――千葉市内の管理組合で理事長さまとお話しすると、最初の30分でほぼ決まってこの話になります。築20年を超えたあたりから、外壁や防水の劣化は待ったなしで進む一方、積立金の値上げは総会でなかなか通らない。このギャップに、理事会の皆さまは毎年頭を悩ませておられます。

私は20年近く、マンションやビルの大規模修繕の現場で叩き上げてきました。その経験から正直に申し上げます。千葉市の管理組合は、使える制度を「知らないまま」工事に入ってしまうケースが、本当に多い。千葉市・千葉県・国には、管理組合が主体となって使える補助金や税の優遇が、実は何層にも用意されています。これらを工事計画と一緒に設計するだけで、戸あたりの負担は目に見えて変わります。

この記事では、千葉市の分譲マンション管理組合が2026年度(令和8年度)に活用できる支援制度を、入口の相談から、長期修繕計画づくり、管理計画の認定、耐震、老朽化マンションの再生、省エネ、そして固定資産税の減額まで、申請の順番と落とし穴も含めて整理します。読み終えたとき、次の理事会で「まず何を確認すべきか」がはっきりしているはずです。


1. なぜ今、千葉市の管理組合は「補助金・税制を絡めた大規模修繕」を考えるべきか

千葉市は、中央区・花見川区・稲毛区・若葉区・緑区・美浜区の6つの行政区からなる政令指定都市です。海浜幕張のタワーマンションのような新しい住棟から、美浜区の海浜ニュータウンに代表される高度経済成長期からの大規模団地まで、実に幅広い世代の分譲マンションが積み上がっています。いま、その多くが「2回目・3回目の大規模修繕」、あるいは「修繕か、再生か」という重い判断の時期を迎えています。

ここで管理組合が直面するのが、次の3つの壁です。

第一に、修繕積立金の不足です。国土交通省の「マンション総合調査」でも、長期修繕計画上の必要額に対して積立額が不足している組合が一定割合あることが繰り返し指摘されています(出典:国土交通省 マンションに関する統計・データ等)。工事の単価が上がっている近年、この不足は以前より重くのしかかります。

第二に、合意形成の難しさです。区分所有者の高齢化、賃貸化、空室化が進むと、総会で工事の議決を得ること自体が容易ではなくなります。とりわけ千葉市は大規模団地型マンションが多く、棟数・戸数が多いほど、合意形成のハードルは上がります。

第三に、情報の非対称です。補助金や税制は、申請のタイミングや要件が細かく、しかも年度ごとに変わります。理事は数年で交代するため、ノウハウが組合に蓄積されにくい。

私はこれを、いつも「制度の取りこぼし」と呼んでいます。工事そのものは避けられない出費でも、制度を絡めれば「実質負担」は下げられる。たとえば固定資産税の減額は、工事費そのものを安くするわけではありませんが、工事後に区分所有者全員の税負担が軽くなるため、総会で工事を通すための「説明材料」になります。補助金は積立金不足の穴埋めに直接効きます。

ここからが本題です。千葉市の管理組合が使える制度を、順番に見ていきましょう。


2. まずは「入口」から――千葉市の相談・計画づくり支援

千葉市の管理組合支援は、いきなり工事の補助金から入るのではなく、「相談」と「計画づくり」を入口に置いているのが特徴です。ここを起点に、認定・税制・工事補助がつながっていきます。順番に紹介します。

2-1. 何から手をつければいいか分からない組合へ――分譲マンション相談会・アドバイザー派遣

「何から手をつければいいか分からない」という組合に、私が最初におすすめするのがこの制度です。千葉市は、分譲マンションの維持管理や管理組合の運営、居住者間トラブル、管理規約や関連法律、大規模修繕や建替えまで、幅広い相談に応じる相談会を開いています。相談に応じるのは、千葉市分譲マンション相談連絡協議会の弁護士・建築士・マンション管理士です(出典:千葉市「分譲マンション相談会・アドバイザー派遣」)。

相談会は毎月第2・第3木曜日(祝祭日・年末年始を除く)に開かれ、1回45分程度。さらに、相談会で希望するアドバイスの内容を伝えたうえで申込書に「派遣希望」と記入すると、現地にアドバイザーを派遣してもらえます。申込先は「すまいのコンシェルジュ」です。

工事業者に相談する前に、まず中立的な専門家に現状を見てもらう。これが遠回りに見えて、いちばん安全な入口です。お問い合わせは千葉市都市局建築部住宅政策課(電話 043-245-5809)が窓口です。

2-2. 計画づくりに補助――マンション長期修繕計画作成支援制度

大規模修繕も補助金も税制も、その土台になるのが長期修繕計画です。千葉市は、長期修繕計画の作成・見直しを専門家などに委託する費用の一部を補助しています(出典:千葉市「マンション長期修繕計画作成支援制度」)。

補助の中身は次のとおりです。

項目 内容
補助率・上限 補助対象経費の2分の1以内、かつ25万円を上限(予算の範囲内)
対象組合 千葉市内の分譲、区分所有者5人以上、延べ面積の1/2以上が住宅用途、建築後5年以上
計画の要件 長期修繕計画が未作成、または計画期間30年未満等・積立金が判定式に適合しない等
内容 国交省の長期修繕計画作成ガイドライン(令和6年6月改訂)に沿った作成・見直し
受付 令和8年6月1日〜6月12日(超過時は抽選、未達なら12月11日まで先着)

ここで現場の人間として強くお伝えしたいのが、「専門家に委託する前に申請する」という順番です。契約してしまってからでは間に合いません。また、他機関(国など)から補助を受けている管理組合は対象外になる点にも注意が必要です。まずは住宅政策課(電話 043-245-5849)に相談するのが確実です。

2-3. 管理の質を「見える化」する――千葉市マンション管理計画認定制度

千葉市は、管理組合の運営や長期修繕計画が一定の基準を満たしていることを市が認定する「マンション管理計画認定制度」を、令和5年7月1日から運用しています(出典:千葉市「マンションの管理計画認定制度について」)。

認定には総会での決議が必要で、有効期間は5年(5年ごとの更新)。千葉市への申請手数料はかからず、認定基準は国と同じで独自基準はありません。マンション管理センターの事前確認講習を修了したマンション管理士が認定基準への適合を確認し、「事前確認適合証」が発行される流れです。

認定を取ると、適切に管理されたマンションとして市場での評価が高まるほか、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」の金利優遇や「フラット35(維持保全型)」の金利引き下げなど、波及するメリットがあります。そして後述する長寿命化促進税制では、この管理計画認定が事実上の入口要件になります。私はこれを、補助金・税制を効かせるための「土台づくり」と位置づけて、長期修繕計画の見直しとワンセットで理事会にご提案するようにしています。


3. 老朽化が進んだマンションには――マンション再生等合意形成支援制度

築年数が進み、「修繕で延命するのか、それとも建替えや敷地売却を含めて考えるのか」という岐路に立つ組合もあります。千葉市には、こうした再生の方向性を決めるための合意形成費用を補助する制度があります(出典:千葉市「マンション再生等合意形成支援制度」)。

項目 内容
対象活動 現状調査、老朽度判定、再生方法(修繕・改修・建替え・敷地売却等)の比較検討、意向調査(アンケート)、基本構想・事業計画の作成
補助率・上限 対象経費の2分の1以内、かつ最大25万円(予算の範囲内)
対象組合 千葉市内の分譲、区分所有者5人以上、延床1/2以上が住宅、耐用年数の1/2を経過(RC造なら約23.5年)
受付 令和8年6月1日〜6月12日(超過時は抽選、未達なら12月11日まで先着)

ここで、私が必ず理事会にお伝えする注意点が3つあります。まず、この制度は「合意形成(検討)」のための補助であり、修繕そのものや工事費(施工費・材料費)は対象外だということ。次に、補助金の交付決定を受けてから契約・実施した活動が対象で、先に動いてしまうと対象外になること。そして、他機関(国等)から補助を受けている組合は対象外になることです。

この制度は、いわば「自分たちのマンションを、これからどうしていくか」を専門家の力を借りて冷静に検討するための入口です。千葉市は団地型マンションの再生にも力を入れており、「団地型マンション再生マニュアル」やUR都市機構との建替え支援協定なども整えています。修繕一辺倒で考える前に、一度この検討費補助を使って選択肢を並べてみる――それも、長い目で見れば資産を守る賢い一手です。


4. 旧耐震マンションの要――令和8年度 分譲マンション耐震改修補助制度

1981年(昭和56年)5月31日以前の旧耐震基準で建てられた分譲マンションには、千葉市の手厚い耐震改修補助があります。令和8年度の内容を、市の公式案内で確認しました(出典:千葉市「令和8年度分譲マンション耐震改修補助制度のご案内」)。

補助の水準は次のとおりです。

区分 補助内容
設計 設計費の3分の2(1戸あたり5万円、または1棟あたり500万円を上限)
工事・監理 工事費・監理費の3分の1。上限は(1)1棟あたり3,000万円、(2)補助対象床面積×単価(Is値0.3以上は51,700円/㎡、0.3未満は56,900円/㎡)の合計の1/3

※いずれも消費税を除く額で、当該年度の予算の範囲内です。

ひとつ、現場の人間として強くお伝えしたいことがあります。この補助は、申請の前年(9月〜11月)に事前相談を行うことが必須とされています。つまり、令和8年度の本申請を考えるなら、その前年の秋には動き出していなければならない。私が一番悔しい思いをするのは、工事内容は良かったのに、申請手順の前後で補助を取り逃した組合を見たときです。耐震は「思い立ってすぐ」では間に合わない、典型的な「段取りが命」の制度です。

なお、令和5年度以降は代理受領制度も用意されており、組合が一時的に全額を立て替えずに済む仕組みも整っています。また、複数回に分けて段階的に安全な構造とする「部分改修工事」も、出来高に応じて工事ごとに補助の対象になります。耐震改修の前段として、千葉市には分譲マンション耐震診断補助制度もあり、診断・設計・改修を一連の流れで設計できます。お問い合わせは都市局建築部建築指導課(電話 043-245-5836)です。


5. 固定資産税が半額に――マンション長寿命化促進税制

補助金が「入口の出費」を軽くするのに対し、税制は「工事後の負担」を軽くします。なかでも管理組合がぜひ知っておくべきなのが、マンション長寿命化促進税制です。

5-1. 制度の中身

一定の要件を満たすマンションで、長寿命化工事(屋根防水工事・床防水工事・外壁塗装等工事)を実施すると、工事完了の翌年度分の建物部分の固定資産税が2分の1減額されます。千葉市の案内では、減額の対象になるのは居住部分のみで、1戸あたり100㎡までが限度、対象は改修完了年の翌年度分(1年度分)です(出典:千葉市「固定資産税(家屋)の減額」、国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」)。

ここがこの制度の優れたところで、減額は区分所有者全員に及びます。総会で「工事をすると、来年の皆さんの固定資産税が半分になります」と説明できれば、合意形成の追い風になります。数字の体感としては、たとえば建物部分の固定資産税が1戸あたり年4万円のマンションなら、その年は2万円が軽くなる計算です。100戸あれば組合全体で年200万円規模の効果になります。

5-2. 適用要件と「管理計画認定」との関係

この税制を使うには、次の要件を満たす必要があります。

  • 新築から20年以上が経過していること
  • 過去に1度以上の長寿命化工事(屋根防水・床防水・外壁塗装等)を行っており、令和5年4月1日から令和9年3月31日までに次の長寿命化工事を完了していること
  • 令和3年9月1日以降に修繕積立金を引き上げ(または引き上げ予定)であり、工事完了日の翌年1月1日(賦課期日)時点かつ申告時点で管理計画の認定を取得していること

ここで、第2章で紹介した千葉市の「管理計画認定制度」が、税制の入口要件として直結していることが分かります。認定をまだ取っていない組合は、長期修繕計画の見直しと積立金の引き上げを進めながら、認定取得を計画に組み込んでおくのが得策です。なお、耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修など他の固定資産税減額措置とは要件・趣旨が異なるため、どの減額を使うのが得かは工事内容とセットで判断する必要があります。


6. 国・千葉県・千葉市の省エネ補助を「戸あたり」で効かせる

千葉市・千葉県・国の省エネ補助を大規模修繕に重ねると、「断熱」や「設備更新」を組み込んだときの戸あたり負担がさらに下がります。2026年度(令和8年度)の主役は次の制度群です。

6-1. 先進的窓リノベ2026事業

窓を断熱性能の高いものに交換・設置する工事に、国(環境省)が大型の補助を出す制度です。2026年は補助上限が100万円となっています(2025年の上限200万円から変更)。重要なのは、管理組合が施主となって建物全体を一括でリフォームするケースも対象になる点です(戸単位での申請も可)。出典:先進的窓リノベ2026事業【公式】。

申請は「窓リノベ事業者」として登録された施工会社が行う仕組みで、区分所有者や組合が直接申請するものではありません。だからこそ、制度に精通した施工会社を選ぶことが、そのまま補助の取りこぼし防止につながります。

6-2. 給湯省エネ2026・みらいエコ住宅2026事業

高効率給湯器(エコキュート等)の導入を補助する「給湯省エネ2026事業」、断熱改修や設備更新を幅広く対象にする制度群も走っています。これらは併用が可能で、窓の断熱改修と給湯器交換を同時に行えば、それぞれの補助を受けられます(出典:住宅省エネ2026キャンペーン)。

なお、2025年度の「子育てグリーン住宅支援事業」は、2026年度から内容を一新した「みらいエコ住宅2026事業」(国土交通省・環境省連携)に引き継がれています。一定の省エネ性能を満たす住宅の新築・購入のほか、戸建・共同住宅を問わず既存住宅の省エネ改修等が補助対象とされており、共用部を含む大規模修繕に断熱改修を組み込む際の選択肢になります。詳細は公式サイトでご確認ください(出典:みらいエコ住宅2026事業【公式】)。

6-3. 千葉市独自の省エネ補助は「個人・専有部」向け――誤解しやすいポイント

千葉市にも独自の「住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金(住宅向け)」があり、窓の断熱改修は最大8万円(補助対象経費の4分の1)などのメニューが用意されています(出典:千葉市「住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金(住宅向け)」)。

ただし、この市の補助は「市民の方(法人は除く)」が対象で、既築住宅の窓断熱など、基本的には区分所有者が個人として自分の専有部に行う工事を想定したものです。管理組合が共用部としてまとめて使う制度ではない点に注意してください。私が現場で見てきた「誤解」のひとつが、ここです。共用部の大規模修繕に組み込む省エネ改修は国の「窓リノベ2026」など、専有部の窓は各区分所有者が市の脱炭素化補助で――と、施主と対象部位で制度を使い分けるのが正しい設計です。国等の補助を受ける場合は市の補助対象経費から国の補助相当額を差し引くなど、重複利用には細かなルールもあります。可否は必ず各窓口で確認してください。

大規模修繕のタイミングは、足場が架かる、あるいはロープアクセスで建物全周にアクセスできる「またとない機会」です。このときに窓や設備の更新をまとめて行うと、後から単独で工事するより足場・仮設のコストを節約でき、補助の対象工事も増やせます。


7. 申請タイミングという落とし穴――「交付決定前の契約」は全部パー

ここまで多くの制度を紹介しましたが、すべてに共通する、いちばん大事な原則を改めて強調させてください。

「補助金は、交付決定を受ける前に契約・着工したものは対象外になる」

千葉市のマンション長期修繕計画作成支援も再生等合意形成支援も、「補助金交付決定後に契約・実施したもの」が対象だと明記されています。耐震改修補助に至っては、申請の前年(9月〜11月)の事前相談が必須です。さらに、千葉市の長期修繕計画作成支援と再生等合意形成支援は、いずれも他機関(国など)からの補助を受けている組合は対象外という条件もあります。「市と国、両方もらえるだろう」と安易に考えると、足をすくわれます。

私の経験上、ここでつまずく組合が本当に多い。総会で工事業者を決め、契約を交わし、いざ着工してから「補助金を使いたい」と相談に来られても、もう間に合わない。制度は「動き出す前」に組み込むものです。理事会のスケジュールを引くとき、私はいつも「①事前相談 → ②申請 → ③交付決定 → ④契約・着工」という順番を最初に書き出すようお伝えしています。

逆に言えば、この順番さえ守り、市の制度と国の制度の「すみ分け」を最初に設計しておけば、複数の制度を計画的に重ねられます。早めに動くこと――それが千葉市で補助金を取りこぼさない、最大のコツです。


8. 千葉市の管理組合・補助金活用ロードマップ(着手順)

ここまでの制度を、実際に動かす順番でまとめます。

  1. 分譲マンション相談会・アドバイザー派遣で現状把握。すまいのコンシェルジュに相談し、管理運営・積立金・長期修繕計画の課題を、弁護士・建築士・マンション管理士に洗い出してもらう。
  2. 長期修繕計画の作成・見直しに、作成支援補助(1/2・上限25万円)を活用。受付は令和8年6月1日〜6月12日。委託契約の前に申請するのが鉄則。
  3. マンション管理計画認定の取得を検討。長寿命化促進税制・融資優遇の土台を作る。手数料は無料。
  4. 老朽化で「修繕か再生か」を迷うなら、再生等合意形成支援(1/2・上限25万円)で選択肢を比較。検討費が対象で、工事費は対象外。
  5. 旧耐震なら、前年(9月〜11月)の事前相談から耐震改修補助の段取りを開始。設計2/3・工事1/3、代理受領も活用。
  6. 大規模修繕の本体工事に、国の省エネ補助を組み込む(窓リノベ2026・給湯省エネ2026・みらいエコ住宅2026)。専有部の窓は各区分所有者が市の脱炭素化補助で。施工会社は制度対応の実績で選ぶ。
  7. 工事完了後、長寿命化促進税制を申告し、翌年度の固定資産税減額を受ける(管理計画認定が前提)。

この順番の肝は、「お金を出す前に、相談と計画と認定で土台を作り、各制度の交付決定を取りに行く」ことに尽きます。

8-1. 数字で見る試算イメージ(千葉市・100戸・築25年のケース)

あくまで考え方を示すためのイメージで、実際の金額は建物の状態・面積・工事内容により変わりますが、効果の「桁感」をつかんでいただくために置いてみます。

項目 概算
大規模修繕工事費(本体) 約1.5〜2億円
長期修繕計画の作成・見直し 委託費の1/2(上限25万円)を市補助でカバー
省エネ改修(窓・断熱を組み込み) 上乗せ工事費の一部を国補助(窓リノベ等)でカバー
固定資産税減額(長寿命化促進税制) 翌年度、建物部分の固定資産税が組合全体で半額(戸あたり数万円規模)

工事費そのものを大きく削るというより、「計画づくりの費用を補助で抑える」「省エネ部分の上乗せを補助で吸収」「翌年度の税が軽くなる」という形で、実質負担を多面的に下げるのが千葉市での王道です。


9. 大規模修繕は「工法の選択肢」で総額が変わる――明誠の3工法提案

ここからは、私たち株式会社明誠のサービスのご案内です(自社紹介のセクションとして明確に区切ります)。

補助金や税制で「実質負担」を下げる一方、工事の総額そのものを左右するのが工法の選び方です。マンションの大規模修繕というと、建物全体に足場を架ける「通常足場工法」が当たり前だと思われがちです。しかし足場の仮設・解体には相応の費用と工期がかかり、足場が架かっている間は居住者の生活にも影響が出ます。

明誠は、建物の特性に応じて3つの工法から最適な提案ができる、日本でも数少ない会社です。

第一に、通常足場工法。中低層や複雑な形状の建物に向きます。第二に、ロープアクセス工法。産業用ロープで作業員が壁面を昇降して施工する「無足場工法」で、足場費の削減・工期短縮・居住者の生活影響の最小化が強みです。高層や、足場の架設が難しい物件、コストを重視する物件に向きます。第三に、ハイブリッド工法。部位ごとに足場とロープアクセスを使い分け、大規模・複雑な物件で総合的にコストを最適化します。

私はこの3つを、必ずワンセットで比較してご提案するようにしています。なぜなら、同じ建物でも「どこに足場を架け、どこをロープで攻めるか」で、総額も工期も、そして補助金を組み込む余地も変わってくるからです。海浜幕張のような高層物件や、美浜区の大規模団地のように棟数が多く戸数の多い物件が混在する千葉市では、ロープアクセスやハイブリッドの強みが特に活きます。

明誠はさらに、日本で初めてとなるロープアクセス工事のフランチャイズを展開しており、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。これにより、高品質と低価格の両立を図っています。千葉市の補助金・税制の活用と、工法の最適化。この2つを同時に設計できるのが、私たちの強みです。

工法の詳細はロープアクセス工法のご紹介を、大規模修繕の総合的な進め方は大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。


10. よくある質問(FAQ)

Q1. 千葉市の補助金と国の補助金は、両方使えますか。
A. 制度によります。国の省エネ補助(窓リノベ2026等)は施工会社経由で申請しますが、千葉市の長期修繕計画作成支援や再生等合意形成支援は「他機関(国など)から補助を受けている組合は対象外」と明記されています。市と国で対象が重なる場合は、どちらを使うか最初に整理しておく必要があります。重複利用の可否は必ず各窓口で確認してください。

Q2. 長期修繕計画作成支援と再生等合意形成支援は、何が違うのですか。
A. 前者は「長期修繕計画そのものを作る・見直す」委託費への補助、後者は「修繕か建替えか敷地売却か」といった再生の方向性を決める検討・合意形成への補助です。どちらも補助率1/2・上限25万円、受付は令和8年6月1日〜6月12日と共通ですが、目的が違います。築年が浅めで計画を整えたい組合は前者、老朽化で岐路に立つ組合は後者が向きます。

Q3. 固定資産税の減額は、組合がまとめて手続きできますか。
A. マンション長寿命化促進税制は、工事完了後に申告が必要です。前提として、令和3年9月1日以降の積立金引き上げと管理計画認定の取得が要件になります。手続きの詳細や必要書類は、千葉市の固定資産税の案内と、市の住宅政策課・資産税部門で確認するのが確実です。

Q4. 耐震改修補助で「前年の事前相談が必須」と聞きました。いつ動けばいいですか。
A. 千葉市の分譲マンション耐震改修補助は、申請の前年(9月〜11月)に事前相談を行うことが必須です。令和8年度の本申請を考えるなら、前年の秋には動き出していなければ間に合いません。耐震は段取りに最も時間がかかる制度なので、早めに建築指導課(043-245-5836)へ相談するのが大切です。


結語

千葉市の管理組合が使える制度は、決して少なくありません。むしろ「多すぎて分かりにくい」こと、そして「相談・計画・認定という土台づくりを飛ばしてしまうこと」が、取りこぼしの最大の原因だと、私は現場で感じてきました。大事なのは、工事を決める前に、制度の地図を一度広げてみること。そして「相談 → 計画 → 申請 → 交付決定 → 契約」の順番を守り、市と国の制度のすみ分けを最初に設計しておくことです。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階、長期修繕計画の確認や工法の比較だけでも、お力になれることがあります。千葉の街には、海浜幕張のタワーから美浜区の大規模団地まで、これから2回目・3回目の修繕を迎える住棟がたくさんあります。その一棟一棟を、無理のない負担で長く使えるようにすること。それが、私たちの仕事です。

次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


出典・参考資料

本記事は2026年6月7日時点で公開されている情報をもとに作成しています。補助率・上限額・申請期限・受付状況は年度や予算の状況により変更される場合があります。実際の申請にあたっては、必ず各制度の公式窓口で最新情報をご確認ください。また、税制・法務に関わる個別の判断は、税理士・行政書士等の専門家にご相談ください。

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建築基準法12条「定期報告」を放置していませんか——高知市89施設の点検漏れに学ぶ、収益ビル・マンションオーナーの法的義務と外壁打診の備え【2026年6月】

先日、こんなニュースが目に飛び込んできました。高知市が、市の公共施設588施設のうち89施設で、建築基準法で義務づけられた定期点検を行っていなかった——。市の桑名市長が2026年6月5日の定例会見でこの事実を認め、市民に陳謝した、という報道です(出典:RKC高知放送・テレビ高知ほか 2026年6月5日報道)。

正直に申し上げます。私はこの記事を読んで、まず「うちのお客さまは大丈夫だろうか」と思いました。

なぜなら、ここで問題になっている「定期点検」——正式には建築基準法第12条に基づく定期報告制度——は、公共施設だけの話ではないからです。賃貸ビル、テナントビル、ホテル、そして分譲マンションの共用部。つまり、このブログを読んでくださっている収益不動産オーナーや管理組合の理事長さまの建物にも、まったく同じ義務がかかっている可能性が高いのです。

しかも、この定期報告には外壁の「全面打診調査」という、私たち大規模修繕の現場と直結する項目が含まれています。築10年を超えたタイル張りやモルタル外壁の建物では、これが避けて通れません。そして、その調査をどうやるか——足場を架けるのか、ゴンドラを使うのか、ロープアクセスで降りるのか——で、点検そのもののコストが何倍にも変わります。

今日は、6月の総会シーズンにこそ理事会で一度確認していただきたい「定期報告」の中身と、放置したときのリスク、そして点検・修繕を一体で考えるとコストが下がる理由を、現場の目線で整理してお伝えします。

ここからが本題です——「定期報告制度」とは何か

建築基準法第12条に基づく定期報告制度とは、ひとことで言えば「人がたくさん使う建物は、安全かどうかを専門家に定期的にチェックさせて、その結果を役所に報告しなさい」という仕組みです(出典:国土交通省 建築基準法に基づく定期報告制度について)。

報告先は「特定行政庁」、つまりお住まいの都道府県や市区町村の建築主務部局です。報告するのは建物の所有者または管理者。調査・検査をするのは、一級建築士・二級建築士、あるいは国に認められた「特定建築物調査員」などの有資格者です。

ここで大事なのは、「自分でやればいい点検」ではない、という点です。資格を持った第三者が見て、決められた様式で役所に出す。ここまでがワンセットの法的義務です。私はこれを、管理組合の理事長さまには「車の車検と同じです」とお伝えしています。乗っている本人が『大丈夫』と思っていても、整備士が見て、陸運局に通すまでが車検。建物も同じだ、と。

定期報告は1種類ではない——4つの区分を押さえる

「定期報告」と一括りにされがちですが、実は内容の違う4つの区分があります(出典:東京都都市整備局 定期調査・検査報告制度)。

ひとつ目が「特定建築物定期調査」。建物本体——敷地、構造、外壁、防火・避難設備など、いわば建物のガワと骨格を見る調査です。

ふたつ目が「建築設備定期検査」。換気設備、排煙設備、非常用照明、給排水設備など、建物に組み込まれた設備を見ます。

三つ目が「防火設備定期検査」。防火扉や防火シャッターなど、火災時に人の命を守る設備です。

四つ目が「昇降機等定期検査」。エレベーターやエスカレーター、立体駐車場の機械装置などが対象です。

この4つは、それぞれ報告の周期が違います。特定建築物定期調査は用途や規模に応じておおむね3年に1回(建物によっては毎年)、建築設備・防火設備・昇降機の各検査は原則毎年というのが一般的です。ただし、対象となる建物の用途・規模や報告の頻度は特定行政庁(自治体)ごとに指定が異なります。「うちの建物は対象なのか」「何年に一度なのか」は、必ずお住まいの自治体の建築指導課でご確認ください(例:港区 定期報告制度、渋谷区 定期報告について)。

私が「断定しないでください」と申し上げるのは、ここです。ネット上には「マンションは3年ごと」と言い切る情報もありますが、地域によって違います。正確な答えは特定行政庁にしかありません。

あなたの収益物件は「対象」かもしれない

ここで多くのオーナーさまが「そんな話、聞いたことがない」とおっしゃいます。無理もありません。新築で建てたとき、あるいは中古で購入したときに、不動産会社や管理会社がこの義務を丁寧に説明してくれるとは限らないからです。

定期報告の対象になりやすいのは、不特定多数の人が利用する一定規模以上の特殊建築物です。具体的には、共同住宅(分譲・賃貸マンションの共用部)、ホテル・旅館、物販店舗、飲食店、事務所が入るテナントビルなどが、規模に応じて対象に挙がります。

たとえば3階建て以上で一定の床面積を超える共同住宅、あるいは多数の人が出入りするホテルやテナントビルは、対象になっている可能性が高い。私の経験上、「築20年で一度も定期報告を出していない」という収益物件は、決して珍しくありません。高知市のケースで20年近く未点検の施設があったのと、構図はまったく同じです。

「対象かどうか分からない」——それ自体が、いちばん危ない状態です。

高知市の事例が教えてくれること

今回の高知市のニュースを、もう少し具体的に見てみましょう。

報道によれば、対象となった588施設のうち、点検が行われていなかったのは89施設。全体の約15%にあたります。このうち、法律で定められた点検がすべて未実施だった施設は36施設にのぼり、中央公園地下駐車場や県庁前通り地下駐車場など、なかには20年近く点検がされていなかったものもあったといいます。市はこれを今年度中にすべて点検する方針で、市長は「市民のみなさまに不安や心配をおかけし、お詫び申し上げる」と陳謝しました(出典:テレビ高知 2026年6月5日)。

私がこの数字を見て一番ぞっとしたのは、「15%」という比率です。公共施設、つまり本来は管理体制がしっかりしているはずの組織でさえ、7棟に1棟は点検が抜けていた。では、専任の管理担当者がいない個人オーナーや、理事が毎年入れ替わる管理組合では、どうでしょうか。

これは高知市だけの問題ではありません。報道のきっかけは、高知県の公共施設で定期点検の未実施が見つかったことでした。一つの自治体で見つかれば、横並びで全国の役所が点検を始める。そして役所が動けば、次は民間の建物にも目が向く。私はそう見ています。

放置するとどうなるか——罰則と、それ以上に怖いこと

「報告しなかったら、どうなるんですか」。これはよく聞かれる質問です。

まず制度上の話をすると、定期報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合は、建築基準法第101条により100万円以下の罰金が科される可能性があります(出典:国土交通省 定期報告制度パンフレット)。

ただ、私が本当に怖いと思うのは、罰金そのものではありません。罰金より重いリスクが3つあります。

ひとつ目は、事故が起きたときの責任です。外壁タイルが剥がれて落ち、通行人がケガをした。もし定期報告を怠っていたとなれば、所有者・管理者の管理責任が厳しく問われます。これは民事の損害賠償だけでなく、場合によっては刑事責任にも及びかねません。

ふたつ目は、資産価値への影響です。収益物件を売却するとき、買主側のデューデリジェンス(資産精査)で「定期報告が未提出」と分かれば、価格交渉で必ず不利になります。「直してから出してください」と言われ、慌てて調査・修繕に走る——これがいちばん高くつくパターンです。

三つ目は、入居者・利用者の信頼です。ホテルやテナントビルなら、安全管理がずさんだという評判は、そのまま稼働率に跳ね返ります。

罰金100万円が怖いのではありません。点検を怠ったという「事実」が、いざというときにすべての交渉を不利にする。それが本当の怖さです。

大規模修繕と直結する「外壁全面打診調査」

ここから、私たち大規模修繕の現場の話に入ります。

特定建築物定期調査のなかに、外壁の安全性を確認する項目があります。そして、ある条件を満たした建物では、外壁の「全面打診調査」が求められます。

打診調査とは、外壁を専用の道具で叩き、その音の違いでタイルやモルタルの浮き・剥離を見つける調査です。「打診」という言葉が分かりにくいので、私はいつも「壁を叩いて、音で異常を聞き分ける健康診断です」とお伝えしています。

この全面打診が必要になるのは、平成20年(2008年)4月1日に施行された改正と、それに伴う国土交通省告示第282号で定められた条件です。要点をかみ砕くと、タイル張りなどの外壁を持つ建物で、竣工・外壁改修・前回の全面打診等から10年を超え、かつ直近3年以内に全面打診等を行っていない場合、落下によって歩行者などに危害を加えるおそれのある部分について、定期調査の際に全面打診等を行う、というものです(出典:国土交通省 定期報告制度パンフレット)。

つまり、築10年を超えたタイル張りのマンションやビルは、原則として外壁の全面打診から逃げられない。これが、定期報告が大規模修繕と切っても切れない理由です。

「点検のための足場」が、いちばんもったいない

ここが、私がオーナーさまや理事長さまに一番お伝えしたいポイントです。

外壁の全面打診をするには、外壁の全面に人が手の届く状態を作らなければなりません。そのための手段は、大きく3つあります。

ひとつは、仮設足場を建物の外周にぐるりと架ける方法。確実ですが、足場の設置・解体だけで相当な費用と工期がかかります。点検のためだけに足場を架けるのは、正直、もったいない。

ふたつ目は、ゴンドラを屋上から吊って降ろす方法。建物の形状によっては有効ですが、設置できる屋上の条件や、建物形状による死角の問題があります。

三つ目が、私たちが日本でも数少ない選択肢として提案しているロープアクセス工法(無足場工法)です。産業用ロープで作業員が外壁を上下し、足場を架けずに打診や調査を行います。足場費がかからず、調査だけなら数日で終わるケースも多い。居住者の生活やテナントの営業への影響も最小限です(参考:ロープアクセス工法のご紹介)。

私はこれを、必ずワンセットで考えるようにしています。「点検だけ」で足場を架けて、数年後に「修繕」でまた足場を架ける——この二度手間が、大規模修繕でいちばん無駄な出費です。

点検と修繕を「一気通貫」で考えると、コストはこう下がる

理想は、定期報告の外壁調査と、その後の補修・大規模修繕を、できるだけ一体で設計することです。

たとえば、ロープアクセスでまず全面打診を行い、浮きや剥離の「面」を正確に把握する。軽微な補修ならそのままロープアクセスで直してしまう。そして、本格的な大規模修繕が必要な範囲が広いと分かったら、その部分だけ足場を組む。足場が必要な面とロープで足りる面を切り分ける——これが、私たちがハイブリッド工法と呼んでいる考え方です。

「全部足場」でも「全部ロープ」でもなく、建物の形状・劣化状況・コストのバランスで最適な組み合わせを選ぶ。一棟まるごと足場を架ける前提で見積もると数千万円かかる物件でも、調査結果に応じて工法を切り分ければ、足場費を大きく圧縮できることがあります。

私が現場で20年やってきて思うのは、「点検は点検、修繕は修繕」と別々に発注するオーナーさまほど、トータルでは高くついているということです。点検結果を見てから工法を決める。逆に言えば、工法を一社で柔軟に提案できる会社に点検段階から相談しておくと、無駄な足場を一度減らせる。ここに、足場とロープの両方を持っている会社の価値があると、私は考えています(参考:大規模修繕工事のご紹介)。

外壁調査の3工法を、正直に比較します

「で、結局どの方法がいちばんいいんですか」。理事長さまからよく聞かれます。私はいつも「建物によります」とお答えするのですが、それでは不親切なので、判断材料として3つの工法を正直に比較しておきます。

比較項目 仮設足場 ゴンドラ ロープアクセス(無足場)
概算コスト(点検目的) 高い(足場費が大きい) 中 低い〜中
工期(調査のみ) 設置・解体に日数 中 短い(数日のことも)
居住者・テナントへの影響 大(外周を覆う) 中 小
死角の出にくさ 出にくい 建物形状で死角 形状次第で柔軟
防犯面 足場からの侵入リスク 限定的 侵入経路を作らない
向く建物 低中層・複雑形状・大規模補修併用 屋上条件が整う高層 高層・足場困難・コスト重視

表にすると分かりやすいのですが、どれか一つが万能というわけではありません。たとえば、外壁の劣化がすでに広範囲で、点検と同時に大規模な補修が確定しているなら、最初から足場を架けたほうが結局は安い。一方、「まず状態を知りたい」「軽微な補修で済みそう」という段階なら、足場を架けずにロープアクセスで調べるほうが、何倍も合理的です。

私が大切にしているのは、「工法ありき」で提案しないことです。足場しか持っていない会社は足場を勧めますし、ロープしか持っていない会社はロープを勧めます。私たちが足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つを揃えているのは、建物にとって本当に最適な選択を、しがらみなく選べるようにするためです。

分譲マンションと、一棟所有の収益物件で「責任者」が違う

もう一つ、混同されやすい点を整理しておきます。定期報告の義務を負う「所有者または管理者」が誰になるか、という問題です。

分譲マンションの場合、共用部分の管理責任は管理組合にあります。したがって、定期報告の実務上の担い手は管理組合(理事長)と、委託を受けた管理会社になることが一般的です。つまり、理事長さまが「自分の任期中に出ているか」を把握しておく必要があります。理事が毎年交代する組合ほど、「前の理事のときに出したはず」と引き継ぎが曖昧になり、抜けが生じやすい。私が現場で20年見てきて、いちばん点検漏れが多いのは、まさにこのパターンです。

一棟所有の賃貸マンションやテナントビル、ホテルの場合は、話がシンプルです。所有者であるオーナーさま自身が、報告義務の主体になります。管理会社に任せきりにしていても、最終的な責任はオーナーに残る。「管理会社がやってくれていると思っていた」は、いざ事故が起きたときに通用しない、と考えておいたほうが安全です。

どちらのケースでも共通して言えるのは、「誰かがやっているはず」がいちばん危ない、ということです。責任の所在を一度はっきりさせておく。これだけで、点検漏れのリスクはぐっと下がります。

打診調査で「何が」見つかるのか——現場で見てきたこと

「打診で具体的に何が分かるんですか」とよく聞かれるので、現場の言葉で説明します。

打診で見つかる代表的な異常が、タイルの「浮き」です。タイルとその下地(モルタル)の間に隙間ができ、接着が切れかかっている状態を指します。叩くと「コンコン」ではなく「ポンポン」と軽い、抜けたような音がする。これを放っておくと、ある日タイルごと剥がれて落ちます。

もうひとつが「爆裂(ばくれつ)」。外壁の内部にある鉄筋が、ひび割れから入った雨水でサビて膨張し、コンクリートを内側から押し割る現象です。難しい言葉ですが、要は「鉄筋がサビて、壁を内側から破裂させる」と考えてください。

私が忘れられないのが、ある築18年の賃貸マンションです。オーナーさまは「うちは見た目もきれいだし、まだ大丈夫」とおっしゃっていました。ところが、ロープアクセスで全面を打診してみると、道路に面した一面だけ、タイルの浮きが想定の何倍も広がっていた。日当たりと雨がかりの差で、その面だけ劣化が一気に進んでいたのです。地上から見上げただけでは、まず分かりません。

正直に申し上げて、あのとき打診をしていなければ、遠からず歩道側にタイルが落ちていたと思います。点検は「異常がないことを確認する」ためだけのものではありません。目視では絶対に気づけない一面を、先に見つけるためのものです。私が点検を「地図」と呼ぶのは、こういう経験があるからです。

いま、もうひとつ気をつけたいこと——「直したくても材料がない」

タイミングの話も、正直にお伝えしておきます。

いま、大規模修繕の現場は資材の調達難に直面しています。マンション計画修繕施工協会が2026年4月に施工会社87社へ行ったアンケートでは、「建設資材の納期遅延などで工期が遅れた」または「今後遅れる可能性がある」と答えた企業が51社、全体の約6割にのぼりました。中東情勢の悪化で、ナフサ(石油由来の原料)を主原料とする防水材・塗料・シーリング材の調達が難しくなっているためです(出典:日本経済新聞 2026年6月5日「マンション大規模修繕、遅延が6割」)。

これは、定期報告の話と無関係ではありません。点検で外壁の異常が見つかってから「さあ直そう」と動いても、いまは材料がすぐ手に入るとは限らない。点検→発見→発注→着工のリードタイムが、以前より長くなっているのです。

だからこそ、私は申し上げたい。点検は「いつかやればいい」ものではなく、修繕のスケジュールを逆算するための起点だと。早めに建物の状態を把握しておけば、材料が逼迫している今でも、余裕を持って手配ができます。

なぜ点検漏れは起きてしまうのか——3つの落とし穴

高知市のような点検漏れは、決して「だらしないから」起きるわけではありません。私が見てきた限り、抜けが生じるのには、はっきりした理由が3つあります。

ひとつ目は、「義務の存在を知らない」こと。先ほど申し上げたとおり、建物を取得したときに定期報告の義務をきちんと説明されるとは限りません。知らなければ、やりようがない。これがいちばん多い落とし穴です。

ふたつ目は、「担当が変わると引き継がれない」こと。管理組合は理事が毎年のように交代します。一棟オーナーでも、相続や売買で持ち主が変われば、過去の経緯は途切れます。「前の人がやっていたはず」で、誰も確認しないまま年月が過ぎる。高知市で20年近く未点検だった施設があったのも、根は同じだと私は見ています。

三つ目は、「点検=お金がかかる、と身構えてしまう」こと。外壁を見るには足場が要る、足場は高い、だから先送り——この思い込みが、結果的にいちばん高い代償を生みます。実際には足場を架けずに調べる方法があるのに、です。

裏を返せば、この3つを潰せば点検漏れはほぼ防げます。「義務を知る」「担当が変わっても記録を残す」「足場前提で諦めない」。難しいことではありません。

6月の総会で、理事会で、一度だけ確認してほしいこと

最後に、すぐにできるチェックを整理します。難しいことではありません。

まず、「うちの建物は定期報告の対象か」を、特定行政庁(自治体の建築指導課)に確認してください。電話一本で教えてくれます。

次に、「直近で定期報告を出したのはいつか」を、管理会社や過去の理事会資料で確認してください。書類が見当たらない場合は、未提出の可能性を疑ったほうがいい。

そして、「外壁の全面打診をいつやったか」。築10年を超えていて、ここ3年以内に全面打診の記録がなければ、次の定期調査で必要になる可能性が高いと考えてください。

このうち一つでも「分からない」があれば、それは放置されているサインです。総会や理事会で、議題に1分だけでも出してみてください。「定期報告、出していますか?」——この一言が、将来の大きな出費と事故リスクを防ぎます。

総会・理事会でよく聞かれる5つの質問

6月は管理組合の総会シーズンです。定期報告の話を出すと、必ずと言っていいほど出てくる質問があります。私が現場でお答えしている内容を、そのまま共有します。

Q1. 定期報告って、毎年やらないといけないんですか?
区分によって違います。特定建築物定期調査は、用途・規模・自治体によっておおむね3年に1回というケースが多い一方、建築設備や防火設備、昇降機の検査は原則毎年です。まずは管轄の特定行政庁に「うちは何が、何年ごとか」を確認するのが先決です。

Q2. 外壁の打診調査って、毎回足場が要るんですか?
いいえ。足場以外に、ゴンドラやロープアクセス(無足場工法)という選択肢があります。点検だけが目的なら、足場を架けないほうがコストも工期も抑えられることが多いです。「点検のたびに足場」という思い込みが、いちばん無駄を生みます。

Q3. 点検で異常が見つかったら、すぐ大規模修繕しないといけませんか?
程度によります。軽微な浮きや剥離なら、ロープアクセスで部分補修して様子を見る判断もあります。大切なのは、異常の「面(範囲)」を正確に把握してから、修繕の規模と時期を決めること。慌てて全面足場を架ける前に、まず状態を知ることです。

Q4. うちは築浅だから、まだ関係ないですよね?
外壁の全面打診が問題になるのは、おおむね築10年を超えてからです。ただし、設備や防火設備の定期検査は築年数に関係なく対象になり得ます。築浅でも「対象かどうか」は一度確認しておいてください。

Q5. 報告していなかった場合、今からでも間に合いますか?
間に合います。むしろ、気づいた今が動きどきです。未報告のまま放置するより、専門家に調査を依頼して速やかに報告するほうが、はるかにリスクは小さい。高知市も「今年度中に点検する」と表明しています。建物の規模が大きいほど段取りに時間がかかるので、早めの相談をおすすめします。

おわりに

高知市のニュースは、決して「よその役所の失敗談」ではありません。公共施設で15%が点検漏れだったということは、管理が手薄になりがちな民間の収益物件では、もっと高い比率で抜けが起きていてもおかしくない、ということです。

私は、点検を「コスト」だとは思っていません。点検は、修繕という大きな投資を、いちばん安く・いちばん安全に進めるための「地図」です。地図がないまま足場を架けるから、無駄が出る。地図を先に手に入れておけば、足場が要る面とロープで足りる面を切り分けられる。

定期報告は法的義務であると同時に、資産を守る最初の一歩です。もし「うちは大丈夫だろうか」と少しでも引っかかったなら、調査の段取りや工法の組み立てだけでも、遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります(お問合せフォームはこちら)。

次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


出典・参考資料

本記事は2026年6月7日時点の公開情報をもとに作成しています。定期報告の対象建築物・報告頻度・調査方法は特定行政庁(自治体)により異なります。具体的な義務の有無は、必ず管轄の建築指導課にご確認ください。

▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

さいたま市の分譲マンション管理組合が使える補助金・税制活用ガイド|大規模修繕の負担を軽くする2026年度(令和8年度)の制度設計

「修繕積立金が、長期修繕計画に追いついていない」――さいたま市内の管理組合で理事長さまとお話しすると、最初の30分でほぼ決まってこの話になります。築20年を超えたあたりから、外壁や防水の劣化は待ったなしで進む一方、積立金の値上げは総会でなかなか通らない。このギャップに、理事会の皆さまは毎年頭を悩ませておられます。

私は20年近く、マンションやビルの大規模修繕の現場で叩き上げてきました。その経験から正直に申し上げます。さいたま市の管理組合は、使える制度を「知らないまま」工事に入ってしまうケースが、本当に多い。さいたま市・埼玉県・国には、管理組合が主体となって使える相談制度・補助金・税の優遇が、実は何層にも用意されています。これらを工事計画と一緒に設計するだけで、戸あたりの負担は目に見えて変わります。

この記事では、さいたま市の分譲マンション管理組合が2026年度(令和8年度)に活用できる支援制度を、入口の無料相談から、省エネ改修の補助金、耐震、そして固定資産税の減額まで、申請の順番と落とし穴も含めて整理します。読み終えたとき、次の理事会で「まず何を確認すべきか」がはっきりしているはずです。


1. なぜ今、さいたま市の管理組合は「補助金・税制を絡めた大規模修繕」を考えるべきか

さいたま市は10区からなる人口130万人超の政令指定都市で、大宮・浦和・武蔵浦和といった主要駅を中心に分譲マンションのストックが非常に多い都市です。バブル期に供給された住棟から、近年の大宮・武蔵浦和エリアのタワーマンションまで、幅広い世代の建物が積み上がっており、いま多くの住棟が「2回目・3回目の大規模修繕」の時期を迎えています。

ここで管理組合が直面するのが、次の3つの壁です。

第一に、修繕積立金の不足です。国土交通省の「マンション総合調査」でも、長期修繕計画上の必要額に対して積立額が不足している組合が一定割合あることが繰り返し指摘されています(出典:国土交通省 マンション政策)。工事の単価が上がっている近年、この不足は以前より重くのしかかります。

第二に、合意形成の難しさです。区分所有者の高齢化、賃貸化、空室化が進むと、総会で工事の議決を得ること自体が容易ではなくなります。

第三に、情報の非対称です。補助金や税制は、申請のタイミングや要件が細かく、しかも年度ごとに変わります。理事は数年で交代するため、ノウハウが組合に蓄積されにくい。

私はこれを、いつも「制度の取りこぼし」と呼んでいます。工事そのものは避けられない出費でも、制度を絡めれば「実質負担」は下げられる。たとえば固定資産税の減額は、工事費そのものを安くするわけではありませんが、工事後に区分所有者全員の税負担が軽くなるため、総会で工事を通すための「説明材料」になります。省エネ改修の補助金は、積立金不足の穴埋めに直接効きます。

実際、私が以前に関わったある組合では、窓の断熱改修を大規模修繕と一緒にやる計画だったのに、国の補助金の存在を知らずに契約を進めかけていました。気づいたのがぎりぎりだったため事なきを得ましたが、あと数日遅ければ、戸あたり数十万円の補助を丸ごと取り逃すところでした。「知っていれば防げた取りこぼし」は、現場では決して珍しくありません。

ここからが本題です。さいたま市の管理組合が使える制度を、順番に見ていきましょう。


2. さいたま市が独自に持つ管理組合向け支援制度――まずは「無料の相談」から

さいたま市の管理組合支援は、いきなり補助金ではなく、無料の相談・診断窓口が手厚いのが特徴です。ここを起点に、長期修繕計画の精度を上げてから工事に入ると、結果的に補助金や税制を取りこぼしにくくなります。順番に紹介します(出典:さいたま市「さいたま市のマンション管理支援について」、2026年4月1日更新)。

2-1. 入口の相談――マンション管理相談・マンション大規模修繕相談

さいたま市住宅政策課は、令和8年度もマンション管理相談とマンション大規模修繕相談を無料・予約制で実施しています。大規模修繕相談は、さいたま市役所(浦和区)で毎月第4木曜日(祝日を除く)に開かれており、相談日の5開庁日前までに申込書を提出すれば利用できます。管理相談のほうは、南区役所・市役所・大宮区役所で、月によって曜日を分けて開催されています。

「うちの長期修繕計画はこのままで大丈夫か」「管理会社が出してきた見積りの妥当性を第三者に見てほしい」――こうした疑問を、工事を決める前に専門家へぶつけられるのが、この相談窓口の価値です。私はいつも、見積りを取る前にこの種の窓口を一度通すことをおすすめしています。

2-2. マンション管理士を呼べる――分譲マンションアドバイザー派遣制度

さいたま市は、マンション管理士の資格を持つ分譲マンションアドバイザーを市内の分譲マンションに派遣する制度を、令和8年度も実施しています(出典:さいたま市分譲マンションアドバイザー派遣制度、2026年4月1日更新)。

ポイントを押さえておきましょう。派遣費用は無料で、同一年度内に2回まで利用できます。相談できる案件には「大規模修繕計画・長期修繕計画の作成及び見直しに関すること」「管理費・修繕積立金等の財務に関すること」が明記されており、まさに大規模修繕の前段階で使える制度です。ただし注意点として、アドバイザーとの日程調整に時間がかかるため、派遣希望日の30日以上前に申請が必要です。そして予算がなくなり次第、受付は締め切られます。「使おう」と思ったら早めに動くのが鉄則です。

なお、この制度は工事の受注や業者の紹介、紛争の調停などは対象外で、あくまで中立的な助言を受けるためのものです。だからこそ、組合にとって利害のない立場の専門家の意見が聞けます。

2-3. 長期修繕計画の精度を上げる――マンションライフサイクルシミュレーション相談

さいたま市は、独立行政法人住宅金融支援機構と連携して、マンションライフサイクルシミュレーション相談(無料)を設けています。これは、修繕積立金の将来推移や長期修繕計画の作成・見直しをシミュレーションで支援するものです。「30年後に積立金が枯渇しないか」を数字で可視化できるため、値上げの合意形成の材料としても使えます。令和8年度の受付はすでに開始されています。

2-4. 県のネットワークも使える――住まい相談プラザ

さいたま市の制度に加えて、埼玉県マンション居住支援ネットワークが運営する住まい相談プラザ(埼玉県住宅供給公社、JR大宮駅コンコース内)でも、マンション管理の相談を受け付けています。毎週日曜日に開かれているため、平日に動きにくい理事の方でも利用しやすい窓口です。市の窓口と県のネットワーク、両方を知っておくと、相談のタイミングを逃しにくくなります。

ここまでが「無料で使える土台」です。私の経験上、この土台を整えてから工事と補助金の計画に進む組合ほど、取りこぼしが少なく、総会もスムーズです。市の窓口(住宅政策課 電話048-829-1518)は、特定の業者の紹介や斡旋は一切行っていません。だからこそ、利害のない立場で計画の妥当性を確認できる場として、まず一度通しておく価値があります。


3. 固定資産税が半額に――マンション長寿命化促進税制

大規模修繕と「税」を結びつける制度の代表が、マンション長寿命化促進税制です。これは国の制度で、さいたま市でも適用されます(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」)。

仕組みはこうです。一定の要件を満たすマンションが、令和5年4月1日から令和9年3月31日までの間に長寿命化に資する大規模修繕を完了させると、工事完了の翌年度分の固定資産税が、各戸あたり2分の1に減額されます(減額対象は床面積100平方メートル相当分まで、減額割合は市の条例で6分の1〜2分の1の範囲)。たとえば工事完了が令和8年中なら、令和9年度の固定資産税が対象です。

対象となる工事は、外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事のすべてを実施すること。まさに大規模修繕の中核そのものです。さらに、築20年以上・総戸数10戸以上、長期修繕計画が一定の基準を満たすこと、過去に大規模修繕を実施済みであることなど、いくつかの要件があります。

実務上もっとも注意したいのが、申告期限です。工事が完了した日から3か月以内に、必要書類をマンションの所在区の区役所税務課(家屋担当)へ提出しなければなりません。ここを逃すと、せっかく要件を満たしても減額が受けられません。「工事が終わってから考えよう」では間に合わないのです。私は、工事の発注段階で「税制の申告までを工程表に入れておく」ことを強くおすすめしています。

イメージをつかむために、ごく単純化した例で考えてみましょう。仮に1戸あたりの家屋分の固定資産税が年8万円のマンションで、要件を満たす長寿命化工事を行ったとします。翌年度はその家屋分が2分の1に減額されますから、1戸あたりおよそ4万円分が軽くなる計算です。これが50戸の住棟であれば、住棟全体で見ればそれなりの規模の負担軽減になります(実際の減額幅は評価額・床面積・市の条例で定める減額割合により変わります)。金額そのものより、「工事をすると区分所有者全員の税が軽くなる」という事実が、総会で工事を後押しする説明材料になる点が大きいのです。

なお、この税制は、耐震・バリアフリー・省エネの各固定資産税減額措置とは同時に適用できません。どの減額を狙うかは、工事内容に合わせて事前に整理しておく必要があります。区役所税務課(家屋担当)の窓口は区ごとに分かれていますので、自分のマンションの所在区がどこかを確認したうえで、申告先と必要書類を早めに押さえておくと安心です。


4. 国・埼玉県・さいたま市の省エネ改修支援――「戸あたり」で効かせる

近年いちばん動きが大きいのが、省エネ改修まわりの補助です。大規模修繕のタイミングで窓や断熱に手を入れるなら、ここは必ず押さえてください。制度は「国 → 県 → 市」が層になっていて、併用できる組み合わせがあります。

4-1. 国・先進的窓リノベ2026事業――管理組合の一括申請が可能

国の先進的窓リノベ2026事業は、窓の断熱改修に対する補助で、上限は1戸あたり100万円と非常に手厚い制度です(出典:環境省「先進的窓リノベ2026事業【公式】」)。補助額は工事内容に応じて1戸あたり5万円から最大100万円までで、マンションでは管理組合(管理組合法人を含む)が施主となって一括申請できます。共用部・専有部の窓をまとめて改修する大規模修繕とは相性が良い制度です。

申請にあたっては、2025年11月28日以降に着手した工事が対象で、申請期限は2026年12月31日。ただし予算上限に達すると早期終了するため、2026年前半に動くのが安全です。実際の手続きは、原則として登録事業者(施工会社)が代行します。

戸あたりの効き方をイメージしておきましょう。たとえば共用部・専有部を含めて全戸の窓を断熱改修し、1戸あたり数十万円規模の補助が出るとすれば、50戸の住棟では合計で1千万円を超える補助が積み上がる可能性もあります。窓の改修は、結露やカビ、冷暖房費といった居住者の「生活の質」に直結するため、大規模修繕の中でも合意を得やすいメニューです。補助でその負担が下がるなら、なおさら総会は通りやすくなります。私は、外壁・防水の修繕と窓の断熱改修を「同じ足場・同じ工期でまとめてやる」ことを、よくご提案しています。別々にやるより、足場や仮設のコストを一度で済ませられるからです。

4-2. さいたま市・省エネ・断熱住宅普及促進補助金――管理組合でも申請できる

さいたま市は、令和8年度に省エネ・断熱住宅普及促進補助金を実施しています(出典:さいたま市「令和8年度 省エネ・断熱住宅普及促進補助金」、2026年4月1日更新)。対象はZEH・高効率給湯機・断熱改修で、断熱改修については管理組合による申請が可能(専用の交付申請書様式が用意されています)。先進的窓リノベ2026・給湯省エネ2026・みらいエコ住宅2026といった国の制度と併用が可能な点が大きな利点です。

申請受付は令和8年4月1日から令和9年3月1日までで、先着順。予算(断熱改修は1,500万円)がなくなれば期間内でも受付終了となり、予算残額が200万円を下回ると抽選になります。実績報告書の提出期限は令和9年3月23日です。市の補助金を申請する際は、国や県の補助金の申請額(予定を含む)も申告する仕組みになっているため、どの制度をどう組み合わせるかは早い段階で整理しておきましょう。問い合わせはゼロカーボン推進戦略課(電話048-829-1316)です。

ファクトの補足: 以前さいたま市にあった「スマートホーム推進・創って減らす」機器設置補助金(高遮熱塗装などが対象)は令和6年度で終了し、令和7年4月から上記の省エネ・断熱住宅普及促進補助金に再編されました。古い情報のまま「高遮熱塗装の補助が今もある」と案内している外部サイトも見かけますので、最新の制度名と対象でご確認ください。

4-3. 埼玉県・窓断熱リフォーム支援事業――国の制度の「上乗せ」

埼玉県には窓断熱リフォーム支援事業があり、断熱窓・断熱扉の改修が対象です。ただしこれは、先進的窓リノベ2026事業またはみらいエコ住宅2026事業の交付決定を受けていることが利用の前提になります(出典:さいたま市「令和8年度 省エネ・断熱住宅普及促進補助金(9.国や県の補助金)」内リンク集)。つまり「国を取る → 県が乗る → 市も併用」という設計ができるわけです。順番と要件さえ間違えなければ、戸あたりの実質負担はかなり圧縮できます。


5. 耐震という土台――さいたま市の耐震補強等助成(区分所有共同住宅)

旧耐震基準の住棟では、大規模修繕の前に耐震を整理しておくべきケースがあります。さいたま市は、昭和56年5月31日以前に着手して建てられた区分所有共同住宅について、耐震診断・耐震補強設計・耐震補強工事・建替え工事の費用の一部を助成する耐震補強等助成事業を令和8年度も実施しています(出典:さいたま市「耐震補強」)。

実務で最重要なのは、着手前に申請して交付決定を受ける必要があるという点です。先に契約・着工してしまうと対象外になります。対象建築物には一定の要件があり、助成額・上限は工事区分によって異なるため、計画の早い段階で建築総務課(電話048-829-1539)に相談しておくと安心です。耐震は前述の固定資産税の減額(耐震改修分)とも関わるため、長寿命化促進税制とどちらを狙うか、工事内容と合わせて整理しておきましょう。

旧耐震の住棟では、「耐震に手をつけるべきか、大規模修繕を先に回すべきか」で理事会が悩むことがよくあります。私がお伝えしているのは、耐震診断はまず受けておく、ということです。診断には助成が用意されており、結果次第で補強が必要かどうかが客観的に分かります。診断を飛ばしたまま外壁や防水だけ直してしまうと、数年後に「やはり耐震補強が必要」となったとき、せっかく整えた外装に再び手を入れることになりかねません。順番を誤らないためにも、診断という入口を早めに通しておくことをおすすめします。


6. 申請タイミングという落とし穴――「交付決定前の契約」は全部パー

ここまで制度を並べてきましたが、現場で最も多い失敗は、制度の中身ではなく順番の間違いです。声を大にしてお伝えします。

多くの補助金・助成金は、交付決定の前に工事契約・着工をしてしまうと、対象外になります。さいたま市の耐震補強等助成も「着手前申請」が明記されていますし、省エネ・断熱住宅普及促進補助金も交付決定後に実績報告を行う流れです。固定資産税の長寿命化促進税制に至っては、逆に「工事完了から3か月以内の申告」という後ろ側の期限があります。

つまり、大規模修繕の工程は「制度の申請・交付決定 → 契約 → 着工 → 完了 → 実績報告・税の申告」という順番で組まなければなりません。総会で工事を決議し、勢いそのままに契約……としてしまうと、補助の権利を失うことがあるのです。私はこれを「いちばんもったいない取りこぼし」と呼んでいます。制度を使うと決めたら、契約のサインの前に、必ず交付決定の有無を確認してください。


7. さいたま市の管理組合・補助金活用ロードマップ(着手順)

ここまでをふまえ、理事会で「次に何をするか」が分かるよう、着手順に整理します。

第一段階:無料相談で現状を棚卸しする。マンション管理相談・大規模修繕相談、分譲マンションアドバイザー派遣(無料・年2回)、ライフサイクルシミュレーション相談を使い、長期修繕計画と積立金の現状を可視化します。

第二段階:工事内容を固め、使える制度を洗い出す。外壁塗装・床防水・屋根防水をすべて行うなら長寿命化促進税制、窓を触るなら先進的窓リノベ2026(管理組合一括申請)と市の断熱改修補助、旧耐震なら耐震補強等助成――というように、工事メニューと制度を紐づけます。

第三段階:併用の可否と申請順を確定する。国 → 県 → 市の重ね方、税制と各減額措置の排他関係を、各窓口で確認します。

第四段階:交付決定を取ってから契約する。ここを絶対に逆にしない。

第五段階:工事を実施し、実績報告・税の申告まで完了させる。特に長寿命化促進税制の「完了から3か月以内の申告」を工程表に入れておく。

この5段階を、理事の任期をまたいでも引き継げるよう、組合の文書として残しておくことを強くおすすめします。ノウハウが人に依存しなくなるだけで、取りこぼしは大きく減ります。


8. 大規模修繕は「工法の選択肢」で総額が変わる――明誠の3工法提案

ここからは、私たち株式会社明誠のサービスのご案内です(自社紹介のセクションとして明確に区切ります)。

補助金や税制で「実質負担」を下げる一方、工事の総額そのものを左右するのが工法の選び方です。マンションの大規模修繕というと、建物全体に足場を架ける「通常足場工法」が当たり前だと思われがちです。しかし足場の仮設・解体には相応の費用と工期がかかり、足場が架かっている間は居住者の生活にも影響が出ます。

明誠は、建物の特性に応じて3つの工法から最適な提案ができる、日本でも数少ない会社です。

第一に、通常足場工法。中低層や複雑な形状の建物に向きます。第二に、ロープアクセス工法。産業用ロープで作業員が壁面を昇降して施工する「無足場工法」で、足場費の削減・工期短縮・居住者の生活影響の最小化が強みです。高層や、足場の架設が難しい物件、コストを重視する物件に向きます。第三に、ハイブリッド工法。部位ごとに足場とロープアクセスを使い分け、大規模・複雑な物件で総合的にコストを最適化します。

私はこの3つを、必ずワンセットで比較してご提案するようにしています。なぜなら、同じ建物でも「どこに足場を架け、どこをロープで攻めるか」で、総額も工期も、そして補助金を組み込む余地も変わってくるからです。大宮や武蔵浦和のような高層物件が増えているさいたま市では、ロープアクセスやハイブリッドの強みが特に活きます。

明誠はさらに、日本で初めてとなるロープアクセス工事のフランチャイズを展開しており、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。これにより、高品質と低価格の両立を図っています。さいたま市の補助金・税制の活用と、工法の最適化。この2つを同時に設計できるのが、私たちの強みです。

工法の詳細はロープアクセス工法のご紹介を、大規模修繕の総合的な進め方は大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。


9. よくある質問(FAQ)

Q1. 補助金と長寿命化促進税制は、両方使えますか。
A. 制度の趣旨と要件が異なるため、要件を満たせば併用できる場合があります。ただし、長寿命化促進税制は、耐震・バリアフリー・省エネの各固定資産税減額措置とは同時に適用できません。税制は「工事後の固定資産税」、補助金は「工事費」と、効くタイミングが違うと整理すると分かりやすいです。重複利用の可否は各窓口で確認するのが前提です。

Q2. 何から手をつければいいか分かりません。
A. まずは無料の相談窓口です。さいたま市のマンション大規模修繕相談(毎月第4木曜・要予約)や、分譲マンションアドバイザー派遣(無料・年2回)を使えば、長期修繕計画の確認から制度の当たりづけまで、費用をかけずに進められます。いずれも予算や枠に限りがあるので、早めの申込をおすすめします。

Q3. 窓の断熱改修は、本当に管理組合でまとめて申請できますか。
A. はい。国の先進的窓リノベ2026事業は、管理組合(管理組合法人を含む)が施主となって一括申請できます。上限は1戸あたり100万円で、さいたま市の断熱改修補助とも併用が可能です。手続きは原則として登録事業者が代行しますので、制度に精通した施工会社を選ぶことが結果的に近道になります。

Q4. 申請の事務作業が大変そうで不安です。
A. 市のアドバイザー派遣や、制度に精通した施工会社のサポートを使えば、書類の準備は大きく軽くなります。長寿命化促進税制は管理者等がまとめて申告でき、先進的窓リノベ2026などは登録事業者が申請を代行します。組合だけで抱え込まず、入口で専門家に相談するのが結局いちばん早い、というのが私の実感です。

Q5. 補助金は「予算がなくなり次第終了」とよく聞きます。いつ動けばいいですか。
A. さいたま市の省エネ・断熱住宅普及促進補助金もアドバイザー派遣も、いずれも予算や枠に限りがあり、年度の後半になるほど受付終了のリスクが高まります。とくに省エネ・断熱住宅普及促進補助金は、予算残額が一定額を下回ると抽選に切り替わる仕組みです。大規模修繕は計画から工事まで1年以上かかることも多いので、「使うかもしれない制度」は年度の早い段階で当たりをつけ、申請のタイミングを工程表に落とし込んでおくのが安全です。動き出しが早いほど、選べる制度の幅も広がります。


結語

さいたま市の管理組合が使える制度は、決して少なくありません。むしろ「多すぎて分かりにくい」こと、そして「無料の相談という土台づくりを飛ばしてしまうこと」が、取りこぼしの最大の原因だと、私は現場で感じてきました。大事なのは、工事を決める前に、制度の地図を一度広げてみること。そして「相談 → 計画 → 申請 → 交付決定 → 契約」の順番を守ることです。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階、長期修繕計画の確認や工法の比較だけでも、お力になれることがあります。大宮・浦和の街には、これから2回目・3回目の修繕を迎える住棟がたくさんあります。その一棟一棟を、無理のない負担で長く使えるようにすること。それが、私たちの仕事です。

次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


出典・参考資料

本記事は2026年6月6日時点で公開されている情報をもとに作成しています。補助率・上限額・申請期限・受付状況は年度や予算の状況により変更される場合があります。実際の申請にあたっては、必ず各制度の公式窓口で最新情報をご確認ください。また、税制・法務に関わる個別の判断は、税理士・行政書士等の専門家にご相談ください。

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大規模修繕で「1年3カ月の全館休館」——東京国際フォーラムの決断から、マンション・ビルオーナーが学ぶ『閉めずに直す』への分岐点【2026年6月】

「あの東京国際フォーラムが、1年3カ月もまるごと閉まるらしい」。このニュースを見て、「大きな施設は大変だな」で終わらせてしまったとしたら、少しもったいないと私は思います。

なぜなら、これは「築30年前後の建物に何が起きるか」を、日本で一番分かりやすく示してくれた発表だからです。マンションでも、テナントビルでも、ホテルでも、建物が30年目に差しかかると、外壁や屋上だけでなく「建物の心臓部」である設備に寿命が来ます。そのとき、何の準備もしていなければ「閉めて直す」しか選択肢が残らない——今日はその話を、現場20年の視点でお話しします。

東京国際フォーラムが発表した「15カ月の全館休館」——まず事実関係から

最初に、何が発表されたのかを整理します。東京都と東京国際フォーラム(千代田区丸の内)は2026年6月4日、大規模改修工事を行うため、2029年1月1日から2030年3月31日までの15カ月間、全館を休館すると発表しました(出典:読売新聞オンライン「東京国際フォーラム、2029年1月から30年3月末に全館休館…老朽化進み大規模改修工事」)。

休館の対象は、ホールや会議室といった全貸出施設だけではありません。全店舗、駐車場、駐輪場まで含まれ、休館中は敷地内への立ち入りや通行もできなくなると案内されています(出典:展示会とMICE「東京国際フォーラム、2029年1月から15カ月全館休館 大規模修繕で」、東京国際フォーラム公式サイト)。

東京国際フォーラムは1997年1月の開館で、今年で29年。ガラス棟の大屋根で知られる、年間およそ4,000件のイベントが開かれ、2,300万人が訪れる日本有数の施設です(出典:前掲・読売新聞オンライン)。開館以来初めての全館休館であり、施設の側も「苦渋の決断」であったことは、発表文からも伝わってきます。

注目すべきは休館の理由です。報道によれば、改修の中心は受変電設備の更新で、工事中は電気や空調が使えなくなるため、全面的に休館せざるを得ない、とされています(出典:東京新聞「東京国際フォーラムが2029年から全館休館 オープンから約30年、電気設備など大規模改修へ」)。外壁や他の設備の修繕も、この休館期間に合わせて実施されます。

なぜ「閉めるしかない」のか——受変電設備という建物の心臓部

ここで出てきた「受変電設備」という言葉、聞き慣れない方も多いと思いますので補足します。受変電設備とは、電力会社から送られてくる高い電圧の電気を、建物の中で使える電圧に変換して各フロアへ配る設備のことです。屋上や地下にある「キュービクル」と呼ばれる金属の箱、と言えばピンとくる方もいるかもしれません。

人間の体にたとえるなら、外壁が「皮膚」、防水が「雨合羽」だとすれば、受変電設備は「心臓」です。心臓が止まれば、エレベーターも、空調も、照明も、給水ポンプも、すべて止まります。だからこの設備を丸ごと更新するとなると、建物への送電そのものを止める必要があり、「営業しながら」が極めて難しくなるのです。

そして重要なのは、この心臓部の寿命です。受変電設備の主要機器は、一般に20〜30年程度で更新時期を迎えるといわれています。外壁塗装のように「見た目が傷んできたから直す」のではなく、見えない場所で静かに寿命が進行し、ある日突然、停電や火災のリスクという形で表面化します。築29年の東京国際フォーラムが「いま」決断したのは、時期として必然だったと私は見ています。

私が以前ご相談を受けた、築30年・地下1階地上9階のテナントビルでも、まさにこの問題が起きました。受変電設備の更新には全館停電が避けられない。しかしテナントは20社以上入っていて、「1週間閉めてください」とは口が裂けても言えない。最終的には、連休の夜間2晩・各8時間の計画停電に工程を圧縮し、仮設発電機2台でサーバー室など止められない設備だけを生かして乗り切りました。テナント向けの説明会は3回開きました。ここまでやれば「閉めずに」心臓部を直すこともできる——ただし、それには周到な準備と工程設計が要る、という話です。

発表から休館まで「2年半」ある理由——大規模修繕は段取りが9割

もう一つ、この発表で見逃せないのは時間軸です。発表が2026年6月、休館の開始は2029年1月。つまり2年半も前にアナウンスしているのです。なぜそんなに早いのか。

第一の理由は、利用者への配慮です。コンサートや国際会議は、2年から3年先の会場を押さえて動きます。直前に「来年から閉めます」と言えば、主催者は行き場を失い、施設は信頼を失います。テナントビルなら入居者の移転や契約満了の調整、マンションなら総会での決議に、それぞれ相応の時間がかかるのと同じ構図です。

第二の理由は、工事そのものの準備です。受変電設備のような特注の機器は、発注から納品まで1年以上かかることが珍しくありません。加えて、調査・設計・施工者の選定・近隣調整と、着工前にやるべきことは山ほどあります。私の経験上、大規模修繕の成否は、着工してからの腕前よりも、着工までの段取りで7割方決まります。

これをご自身の建物に引き付けると、こういうことです。「30年目の壁」が築25年で見えてきたなら、検討を始めるのは築22〜23年がちょうどいい。劣化診断(建物の傷み具合を専門家が調べる調査)に半年、計画と合意形成に1年、施工者選定と準備に1年。これで、ようやく東京国際フォーラムと同じ「2年半前スタート」です。決して早すぎることはありません。

「止まる15カ月」の重み——工事費よりも痛い機会損失

オーナーの立場で考えるべきは、「工事費がいくらか」だけではありません。年間2,300万人が訪れる施設が15カ月閉まるということは、その間の貸出収入、店舗のテナント収入、駐車場収入が、まるごと止まるということです。

私はこれを「二つ目の工事費」と呼んでいます。一つ目は見積書に載る工事費。二つ目は、見積書には載らないけれど確実に発生する、営業を止めることによる機会損失です。収益不動産では、この二つ目が一つ目を上回ることも珍しくありません。

身近な数字に置き換えてみましょう。仮に月額家賃20万円のテナントが10区画入ったビルなら、月の収入は200万円。これが15カ月止まれば3,000万円です。工事費を1割削る交渉に時間をかけるより、「止める期間を3カ月縮める」工程を組むほうが、手元に残るお金が大きくなるケースは、実際にいくらでもあります(金額は説明のための仮定の試算です)。

さらに、いまは工事費そのものが上がり続けている局面です。国土交通省が定める公共工事設計労務単価(公共工事の予定価格に使われる職人さんの日当の基準)は、令和8年3月適用分で全国全職種平均25,834円となり、初めて25,000円を超えました。14年連続の上昇です(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」)。「待てば安くなる」が通用しない時代に、機会損失まで膨らませてしまうのは、オーナーにとって二重の痛手です。

あなたの建物にも来る「30年目の壁」——設備は外壁より先に音を上げる

「うちはまだ築20年だから関係ない」と思われた方にこそ、お伝えしたいことがあります。大規模修繕というと、足場を組んで外壁を塗り直す姿を思い浮かべる方が多いのですが、建物の寿命を左右するのは、実は外から見えない部分です。

マンションの修繕周期の目安として、国土交通省の長期修繕計画作成ガイドライン(マンションの修繕を30年以上先まで見通して計画するための国の指針。令和6年6月改定)では、外壁塗装や屋上防水はおおむね12〜15年程度の周期で計画することが例示されています。一方で、受変電設備や給水設備、エレベーターといった設備系は、2回目の大規模修繕が終わった後、つまり築25〜35年のゾーンで更新時期が集中します(出典:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント等の改定について」、同ガイドライン本文PDF)。

つまり「30年目の壁」とは、外壁・防水・設備という周期の異なる工事が、同じ時期に束になって押し寄せてくる壁のことです。東京国際フォーラムが外装の修繕を受変電設備の更新と同じ休館期間にまとめたのも、この「束になって来る」性質を逆手に取り、止める期間を一度で済ませる判断だったと読み解けます。

実は、こうした動きは東京国際フォーラムだけではありません。横浜の大型コンベンション施設であるパシフィコ横浜の国立大ホールも、2027年5月からの休館が伝えられています(出典:展示会とMICE「パシフィコ横浜国立大ホール休館 2027年5月から」)。1990年代に建てられた大型施設が、申し合わせたように修繕期へ入り始めているのです。バブル期からその直後にかけて建てられた建物の「30年目」が、いま一斉に到来している——これが2020年代後半の偽らざる風景だと、私は現場で感じています。

国内の分譲マンションストックは約700万戸にのぼり、築40年超のマンションが今後急増していくことが国の統計で示されています(出典:国土交通省「マンションに関する統計・データ等」)。30年目の壁は、特別な建物だけの話ではなく、これから日本中の建物が順番に直面していく話なのです。

「閉めないと直せない工事」と「閉めずに直せる工事」の見分け方

では、何が「閉めないと直せない工事」で、何が「閉めずに直せる工事」なのか。私が現場でオーナーさまにご説明するときの、ざっくりした整理をお見せします。

閉める(止める)ことが避けにくい工事

  • 受変電設備の全面更新(全館停電を伴う)
  • 給水・排水の本管の全面更新(長時間の断水を伴う場合)
  • エレベーターの更新(その号機は数週間使えない)
  • 構造体に手を入れる耐震改修の一部

閉めずにできることが多い工事

  • 外壁の補修・塗装、タイルの浮き補修
  • 屋上・バルコニーの防水
  • シーリング(外壁の目地のゴム状の防水材)の打ち替え
  • 鉄部塗装、手すり・看板まわりの補修

ポイントは二つあります。第一に、「閉めずにできる工事」を普段から計画的に済ませておけば、いざ「閉めないと直せない工事」が来たときに、束ねる工事の量を減らし、止める期間を短くできるということ。第二に、「閉める工事」ですら、工程の工夫次第で「夜間だけ」「連休だけ」「一部系統だけ」に圧縮できる余地があるということです。先ほどのテナントビルの計画停電の例が、まさにそれです。

逆に言うと、長期修繕計画を放置して30年目を迎えると、外壁も防水も設備も一斉に限界が来て、「全部まとめて、閉めて直すしかない」状況に追い込まれます。全館休館は、決断としては立派ですが、オーナーとしては本来できるだけ避けたい「最後の手段」のはずです。

マンション管理組合の場合——「お金」と「合意」の二つの準備

ここまで主にテナントビルやホテルを例にしてきましたが、分譲マンションの管理組合には、もう一段固有の難しさがあります。「お金」と「合意」です。

お金の面では、修繕積立金(毎月積み立てる将来の修繕のための資金)が、設備更新まで見込んだ水準になっているかが分かれ目です。外壁と防水だけを前提にした積立額のまま30年目を迎えると、受変電設備や給水設備の更新費用が丸ごと不足します。国土交通省はガイドラインで、計画期間30年以上・大規模修繕2回を含む長期修繕計画に基づいて積立額を設定することを標準としています(出典:前掲・国土交通省ガイドライン)。いまの積立額が「何を含んだ計画」から逆算されたものか、一度確認してみてください。

また、東京都内の分譲マンションであれば、劣化診断や計画の見直しに使える助成制度が用意されています(出典:東京都マンションポータルサイト「分譲マンションの修繕への助成」)。お住まいの自治体にも同様の制度があることが多いので、「調査のお金がないから先送り」の前に、まず制度を調べる価値があります。

合意の面では、住民のみなさんに「見えない設備」の重要性をどう伝えるかが鍵になります。外壁のひび割れは写真で示せますが、受変電設備の劣化は写真では伝わりません。私はいつも理事長さまに、「停電したらエレベーターも水も止まります、という生活の言葉に翻訳して説明しましょう」とお伝えしています。専門用語のまま総会に出せば反対され、生活の言葉に翻訳すれば通る。20年間、何度も見てきた光景です。

閉めずに直すための工法——足場・ロープアクセス・ハイブリッド

ここからは、私たちの専門分野である「建物の外まわりを、営業や生活を止めずに直す」方法の話をします。手前味噌に聞こえないよう、それぞれの長所と短所を正直に並べます。

通常足場工法は、建物の周りに仮設の足場を組んで施工する従来型の方法です。作業性が高く、面で広く直す工事に向いています。一方で、足場の架設・解体に時間と費用がかかり、建物がシートで覆われるため、テナントの看板が隠れる、ホテルでは眺望が失われる、マンションでは防犯面の不安が出る、といった「営業・生活への圧迫」が避けられません。

ロープアクセス工法(無足場工法)は、産業用ロープで技術者が屋上から降下して施工する方法です。足場を組まないため、足場費用がまるごと不要になり、工期も短縮できます。建物を覆わないので、店舗やホテルは営業しながら、マンションは普段の生活を保ったまま、外壁補修や防水、シーリングの打ち替えができます。ただし、広い面を一度に塗り替えるような工事では、足場を組んだほうが効率的な場合もあります(詳しくはロープアクセス工法のご紹介をご覧ください)。

ハイブリッド工法は、この二つを部位ごとに使い分ける方法です。たとえば、低層部の広い面は足場で、高層部や塔屋・狭い面はロープアクセスで、といった具合に組み合わせ、建物全体での費用と工期、営業への影響を最適化します。

私はいつもオーナーさまに、「工法ありき」ではなく「止めたくないものは何か」から逆算しましょう、とお伝えしています。テナントの売上か、客室の稼働か、住民の暮らしか。守りたいものが決まれば、足場・ロープアクセス・ハイブリッドのどれを、どの部位に使うべきかは、おのずと絞られてきます。この3つの工法を建物特性に応じて比較提案できる会社は、日本ではまだ多くありません(大規模修繕全体の進め方は大規模修繕工事のご紹介にまとめています)。

30年目に慌てないために——長期修繕計画の「設備」の欄を見てほしい

ここまで読んでくださった方に、今日からできる具体的な行動をお伝えします。6月は多くの管理組合で通常総会の季節、法人オーナーにとっても計画を見直しやすい時期です。

1.長期修繕計画の「設備更新」の欄を確認する。 外壁や防水の周期は書かれていても、受変電設備・給水設備・エレベーターの更新時期と概算費用が空欄、あるいは「未定」となっている計画を、私は数えきれないほど見てきました。国のガイドラインは計画期間30年以上・2回の大規模修繕を含む計画を標準としています(出典:前掲・国土交通省ガイドライン)。まず自分の建物の計画に「心臓部」が載っているかを確かめてください。

2.「閉めずにできる工事」の積み残しを点検する。 外壁のひび割れ、タイルの浮き、シーリングの劣化、屋上防水の膨れ。これらを放置したまま30年目を迎えると、設備更新と束になって「全部まとめて閉めて直す」コースに近づきます。部分的な点検・補修であれば、ロープアクセスで足場を組まずに、費用を抑えて実施できます。

3.「止めた場合の損失額」を一度計算してみる。 月の賃料収入×止まる月数。この単純な掛け算をするだけで、工事の工程設計にどれだけ価値があるかが、数字で見えてきます。修繕の見積もりを比較するときも、「工事費の安さ」だけでなく「止める期間の短さ」を採点項目に入れることをお勧めします。

「束ねる」か「分ける」か——工事のまとめ方にも戦略がある

東京国際フォーラムは、受変電設備の更新という「閉めるしかない工事」に、外装などの修繕を束ねました。閉める期間が一度で済むからです。これは合理的な判断ですが、「束ねるのが常に正解」というわけではない点も、正直にお伝えしておきます。

束ねる利点は、止める期間・仮設費・近隣調整が一度で済むこと。欠点は、一度に出ていくお金が大きくなり、工事の規模が膨らむぶん、計画の難易度も上がることです。

分ける利点は、資金繰りが平準化され、「閉めずにできる工事」を営業しながら先に片付けられること。欠点は、足場を二度組むなど、仮設費が重複し得ることです。

私が現場でお勧めしている考え方は、こうです。「閉めるしかない工事」を核に据え、その時期に重なる工事だけを束ねる。閉めずにできる工事は、束を小さくするために、むしろ前倒しで分けて済ませておく。たとえば、外壁の部分補修やシーリングの打ち替えをロープアクセスで先行実施しておけば、30年目の「束」から外壁工事の大部分を外せます。結果として、止める期間は短く、一度に動くお金も小さくできます。

このあたりの組み立ては、建物の形状、テナント構成、資金計画によって正解が変わります。だからこそ、足場とロープアクセスの両方を持ち、束ね方・分け方から一緒に考えられる施工者を選ぶことが、オーナーの利益に直結すると私は考えています。

「法定点検はしているから大丈夫」の落とし穴——点検と劣化診断は別物

最後にもう一つ、オーナーさまとの会話でよくすれ違いが起きるポイントに触れておきます。「うちは毎年ちゃんと点検しているから大丈夫」というお話です。

たしかに、一定規模の建物には、建築基準法に基づく定期報告(建物や設備の状態を有資格者が調査し、行政に報告する制度)や、電気設備の保安点検が義務付けられています。これらは安全を守るうえで欠かせない仕組みです。しかし、法定点検の目的はあくまで「いま危険な状態でないか」の確認であって、「あと何年もつか」「いつ・いくらかけて更新すべきか」を教えてくれるものではありません。

その「あと何年もつか」を調べるのが劣化診断です。外壁なら打診調査(タイルやモルタルを軽く叩いて浮きを探す調査)や赤外線調査、設備なら機器ごとの劣化度評価。これらの結果を長期修繕計画に反映して、はじめて「30年目の壁」の正確な高さと時期が見えてきます。

ここでもロープアクセスは役に立ちます。従来、外壁の打診調査は足場かゴンドラが必要で、「調査のためだけに数百万円」という壁がありました。ロープアクセスなら足場なしで技術者が直接壁面に到達できるため、調査費用を大きく抑えられます。「まず正確に知る」ことのハードルが下がった分、計画づくりは確実にやりやすくなっています。点検記録は毎年ファイルされているのに、劣化診断は一度もしたことがない——そんな建物こそ、最初の一歩として診断をご検討ください。

よくあるご質問(FAQ)

Q1.受変電設備の更新は、必ず全館停電になりますか?
規模と構成によります。系統を分けて部分的に切り替えられる場合もあれば、夜間・休日の計画停電に圧縮できる場合もあります。早い段階で電気設備の専門家を交えて工程を検討することが、停電時間を最小化する一番の近道です。

Q2.築20年ですが、何から手を付けるべきですか?
まず長期修繕計画の更新をお勧めします。2回目の大規模修繕と設備更新が重なる「30年目の壁」までに10年あれば、修繕積立金の見直しも、工事の分散も、十分間に合います。

Q3.ロープアクセスはどんな建物でも使えますか?
屋上にロープを固定できる構造があれば、多くの建物で使えます。ただし、広い面の全面塗り替えなど、足場のほうが効率的なケースもあります。だからこそ、両方の工法を持つ会社に「どちらが得か」を比較させるのが、オーナーにとって一番損のない頼み方だと私は思います。

Q4.工事費の高騰は、待てば落ち着きますか?
断定はできませんが、職人さんの日当の基準である労務単価は14年連続で上昇しており(出典:前掲・国土交通省)、少なくとも「待てば下がる」と期待できる材料は乏しいのが実情です。必要な修繕を先送りすると、劣化が進んで工事範囲が広がり、かえって高くつくことが多い、というのが私の実感です。

Q5.「閉めずに直す」工程は、結局割高になりませんか?
ケースバイケースですが、判断の物差しは「工事費の差額」と「止めずに済んだ収益」の比較です。夜間作業や仮設発電機で工事費が1〜2割増えても、テナント収入が止まらないなら、トータルでは閉めるより安く済むことが多い、というのが現場の感覚です。見積もりの段階で、この比較表を施工者に作らせてみてください。作れない会社なら、工程設計の経験が浅いと判断してよいと思います。

Q6.発表から休館まで2年半は長すぎませんか?うちはそんなに待てません。
劣化が進んでいる場合は、応急処置と本工事の二段構えにします。落下の危険があるタイルの浮きや漏水は、ロープアクセスで即応的に部分補修し、時間を稼いだうえで本工事の計画を練る。「急ぐ箇所」と「練る計画」を切り分けるのが鉄則です。

まとめ——「閉める決断」の前に、できることがある

東京国際フォーラムの全館休館は、年間2,300万人を迎える施設が、安全のために15カ月の沈黙を選んだ、重い決断です。私はこの決断に敬意を持っています。同時に、現場で20年やってきた人間として、こうも思うのです。「閉めて直す」が最後の手段なら、その手前には「閉めずに直す」ための工夫が、まだいくつも残されている、と。

外壁や防水を計画的に直しておく。設備の寿命を長期修繕計画に書き込んでおく。止めたくないものから逆算して、足場・ロープアクセス・ハイブリッドを使い分ける。この積み重ねが、30年目の壁を「全館休館」ではなく「営業しながらの修繕」で越えるための、いちばん確実な道筋です。2029年の東京国際フォーラムの休館が明けたとき、「うちは閉めずに乗り切れた」と言えるオーナーさまが一人でも増えるように。私たちも現場から、そのお手伝いを続けていきます。

ご自身の建物の長期修繕計画に「設備」がきちんと載っているか不安な方、閉めずに直す工程が組めるのか知りたい方は、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります(お問合せフォーム)。

お知らせ(株式会社明誠のサービス)

株式会社明誠は、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を、通常足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3つから建物に合わせてご提案しています。日本初のロープアクセス工事のフランチャイズ網により、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が連携し、高品質と適正価格の両立を目指しています。

出典・参考資料

※本記事の休館期間・工事内容は2026年6月6日時点の発表・報道に基づきます。工事の進捗により変更となる可能性があります。

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横浜市の分譲マンション管理組合が使える補助金・税制活用ガイド|大規模修繕の負担を軽くする2026年度(令和8年度)の制度設計

「修繕積立金が、計画より足りていない」――横浜市内の管理組合で理事長さまとお話しすると、最初の30分でほぼ決まってこの話になります。築20年を超えたあたりから、外壁や防水の劣化は待ったなしで進む一方、積立金の値上げは総会でなかなか通らない。このギャップに、理事会の皆さまは毎年頭を悩ませておられます。

私は20年近く、マンションやビルの大規模修繕の現場で叩き上げてきました。その経験から正直に申し上げます。横浜市の管理組合は、使える制度を「知らないまま」工事に入ってしまうケースが、本当に多い。横浜市・神奈川県・国には、管理組合が主体となって使える補助金や税の優遇が、実は何層にも用意されています。これらを工事計画と一緒に設計するだけで、戸あたりの負担は目に見えて変わります。

この記事では、横浜市の分譲マンション管理組合が2026年度(令和8年度)に活用できる支援制度を、入口の相談から、検討費、耐震、省エネ、そして固定資産税の減額まで、申請の順番と落とし穴も含めて整理します。読み終えたとき、次の理事会で「まず何を確認すべきか」がはっきりしているはずです。


1. なぜ今、横浜市の管理組合は「補助金・税制を絡めた大規模修繕」を考えるべきか

横浜市は政令指定都市の中でも分譲マンションのストックが非常に多い都市です。高度経済成長期からバブル期にかけて大量に供給された住棟が、いま一斉に「2回目・3回目の大規模修繕」の時期を迎えています。築30年、40年という住棟も珍しくありません。

ここで管理組合が直面するのが、次の3つの壁です。

第一に、修繕積立金の不足です。国土交通省の「マンション総合調査」でも、長期修繕計画上の必要額に対して積立額が不足している組合が一定割合あることが繰り返し指摘されています(出典:国土交通省 マンションに関する統計・データ等)。工事の単価が上がっている近年、この不足は以前より重くのしかかります。

第二に、合意形成の難しさです。区分所有者の高齢化、賃貸化、空室化が進むと、総会で工事の議決を得ること自体が容易ではなくなります。

第三に、情報の非対称です。補助金や税制は、申請のタイミングや要件が細かく、しかも年度ごとに変わります。理事は数年で交代するため、ノウハウが組合に蓄積されにくい。

私はこれを、いつも「制度の取りこぼし」と呼んでいます。工事そのものは避けられない出費でも、制度を絡めれば「実質負担」は下げられる。たとえば固定資産税の減額は、工事費そのものを安くするわけではありませんが、工事後に区分所有者全員の税負担が軽くなるため、総会で工事を通すための「説明材料」になります。補助金は積立金不足の穴埋めに直接効きます。

ここからが本題です。横浜市の管理組合が使える制度を、順番に見ていきましょう。


2. 横浜市が独自に持つ管理組合向け支援制度

横浜市は「ヨコハマ分譲マンションポータル」を整備し、管理組合向けの支援メニューをかなり手厚く揃えています。順番に紹介します。

2-1. まずは入口――マンション・アドバイザー派遣

「何から手をつければいいか分からない」という組合に、私が最初におすすめするのがこの制度です。横浜市は、管理組合の運営、管理規約の作成・見直し、財務(積立金)、管理委託契約、そして長期修繕計画や大規模修繕に関する相談に、専門家を派遣しています。

費用面が良心的で、初回の相談は無料、2回目以降も令和8年度(2026年度)時点で税込12,650円という低額で利用でき、原則6回まで利用できます(出典:横浜市「管理全般について相談ができる専門家の派遣、顧問の導入」)。さらに、令和8年度以降にこの派遣を通算6回利用した組合には、専門家を継続して顧問に迎えられる「顧問導入支援制度」(1か月あたり税込25,300円。本来50,600円のところを横浜市が半額負担)も用意されています。

管理組合が組織されていない、総会や理事会を開いていない、積立金を積んでいない、長期修繕計画がない――そうした「これから整えていく」段階の組合ほど、この派遣制度が効きます。工事業者に相談する前に、まず中立的な専門家に現状を見てもらう。これが遠回りに見えて、いちばん安全な入口です。

2-2. 長期修繕計画の作成・見直し費用への補助

大規模修繕の前提になるのが、信頼できる長期修繕計画(今後25〜30年の修繕項目と費用、積立金の水準を定めた計画)です。横浜市は、長期修繕計画がない、または長年見直していないマンションに対し、計画作成にかかる費用の一部を補助しています(出典:横浜市「長期修繕計画がない、長年更新していないマンションへの補助金」)。

専門家がヒアリングと建築図面の確認を行い、公益財団法人マンション管理センターの「長期修繕計画作成・修繕積立金算出サービス」を使って計画を作成し、見直しのアドバイスまで行う仕組みです。私の経験上、計画が古いまま工事に突入した組合は、工事中に「想定外の劣化」が出て追加費用に苦しむことが多い。計画の更新は、補助を使ってでも先にやっておく価値があります。

2-3. マンション再生支援事業――検討・合意形成の費用を補助

横浜市の「マンション再生支援事業」は、高経年マンションの将来検討にかかる費用を補助する制度です。大きく2つの活動が対象になります(出典:横浜市「マンションの改修や建替え、敷地売却、敷地分割に関する検討、合意形成費用補助」)。

ひとつは、このまま修繕して住み続けるか、建替え・敷地売却・敷地分割をするかを比較検討する活動。もうひとつは、バリアフリー化、省エネ化、防犯対策、宅配ボックス設置など、性能向上を検討する活動です。

補助額は次のとおりです。

項目 内容
補助率 1年度あたり検討活動費用の1/2まで
上限 30万円(複数の管理組合が共同で行う活動は60万円)
期間 5年(5回)まで

ただし、ここに重要な注意点があります。この制度は「大規模修繕工事そのものの検討」は補助対象ではありません。あくまで建替えとの比較や、性能向上の検討に対する補助です。また、性能向上の検討を補助対象にするには、後述する管理計画認定を取得済み、または取得予定(総会で承認済み)であることが求められます。

申請者は管理組合、または管理組合の承認を得た区分所有者からなる検討組織で、対象は築30年以上かつ横浜市マンション登録制度に登録済みのマンションです。長期修繕計画が定められ、7年以内に見直されていることなどの管理状況要件もあります。

2-4. 旧耐震マンションの要――横浜市マンション耐震改修促進事業

1981年(昭和56年)5月末日以前に建築確認を得て着工された、いわゆる「旧耐震」の分譲マンションには、横浜市の手厚い耐震改修補助があります。耐震改修設計費、耐震改修工事費、工事監理費が対象です(出典:横浜市マンション耐震改修促進事業)。

補助の水準は次のとおりで、政令市の中でもかなり踏み込んだ内容です。

区分 補助内容
耐震改修設計 設計費の2/3(延べ面積に応じた算定額の2/3が上限)
工事監理 工事監理費の2/3
全体改修工事 工事費の1/3(延べ面積5,000m²未満で限度額2,000万円、5,000〜10,000m²未満で3,500万円、10,000m²以上で5,000万円)

利用には、市の制度による本診断(精密診断)で「耐震改修が必要」と判定されていることが前提になります。診断には別途「横浜市マンション耐震診断支援事業」があり、改修とセットで考える流れです。

ひとつ、現場の人間として強くお伝えしたいことがあります。この事業は予算の状況によっては受付ができない場合があり、見積書の徴収や総会の決議の前に、必ず建築防災課への事前相談が必要とされています。なお、令和7年度の補助申請の受付はすでに終了しています(記事公開時点)。令和8年度の動向は市の最新情報をご確認ください。順番を間違えると、せっかくの補助が受けられなくなります。私が一番悔しい思いをするのは、工事内容は良かったのに、申請手順の前後で補助を取り逃した組合を見たときです。

2-5. バリアフリー化への補助

高齢化が進む住棟では、共用部のバリアフリー化が切実な課題になります。横浜市には、廊下や階段の段差解消、手すりの設置などにかかる費用を補助する制度があり、報道・実務情報では工事費用の1/3(上限30万円)が補助される旨が紹介されています。こちらも予算に達し次第、受付終了となる枠であるため、年度の早い段階での確認が要です(出典:横浜市「マンション管理組合お悩み別支援・補助制度一覧」)。


3. 固定資産税が半額に――マンション長寿命化促進税制

補助金が「入口の出費」を軽くするのに対し、税制は「工事後の負担」を軽くします。なかでも管理組合がぜひ知っておくべきなのが、マンション長寿命化促進税制です。

3-1. 制度の中身

一定の要件を満たすマンションで、長寿命化工事(外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事のすべて)を実施すると、工事完了の翌年度分の建物部分の固定資産税が2分の1減額されます(減額割合は1/6〜1/2の範囲で市町村の条例により定められ、横浜市は2分の1)。横浜市の案内では、令和5年4月1日から令和9年3月31日までに工事が完了し、完了後3か月以内に申告したものが対象とされています(出典:横浜市「大規模の修繕等が行われたマンションに係る固定資産税の減額制度(マンション長寿命化促進税制)」)。

ここがこの制度の優れたところで、減額は区分所有者全員に及びます。総会で「工事をすると、来年の皆さんの固定資産税が半分になります」と説明できれば、合意形成の追い風になります。数字の体感としては、たとえば建物部分の固定資産税が1戸あたり年5万円のマンションなら、その年は2.5万円が軽くなる計算です。50戸あれば組合全体で年125万円規模の効果になります。

3-2. 適用要件と「管理計画認定」との関係

この税制を使うには、次のいずれかに該当する必要があります(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」)。

  • 管理計画の認定を受けたマンションであること
  • 管理組合が市から助言または指導を受けていること(一定の要件を満たす場合)

加えて、築20年以上、総戸数10戸以上、過去に長寿命化工事を行っていること、修繕積立金が一定基準に達していることなど、複数の前提があります。

ここで横浜市の「管理計画認定制度」が効いてきます。これは、管理組合の運営や長期修繕計画が一定の基準を満たしていることを市が認定する制度で、認定を取ると長寿命化促進税制の入口要件をクリアしやすくなるほか、住宅金融支援機構の修繕積立金関連の優遇など、波及するメリットがあります。私はこれを、補助金・税制を効かせるための「土台づくり」と位置づけて、必ずワンセットで理事会にご提案するようにしています。


4. 国の制度(2026年度)で省エネ改修を「戸あたり」で効かせる

横浜市の制度に、国の省エネ補助を重ねると、大規模修繕に「断熱」や「設備更新」を組み込んだときの戸あたり負担がさらに下がります。2026年度(令和8年度)の主役は次の制度群です。

4-1. 先進的窓リノベ2026事業

窓を断熱性能の高いものに交換・設置する工事に、国(環境省)が大型の補助を出す制度です。2026年は補助上限が100万円となっています(2025年の上限200万円から変更)。重要なのは、管理組合が施主となって建物全体を一括でリフォームするケースも対象になる点です(戸単位での申請も可)。出典:先進的窓リノベ2026事業【公式】。

申請は「窓リノベ事業者」として登録された施工会社が行う仕組みで、区分所有者や組合が直接申請するものではありません。だからこそ、制度に精通した施工会社を選ぶことが、そのまま補助の取りこぼし防止につながります。

4-2. 給湯省エネ2026・みらいエコ住宅2026

高効率給湯器(エコキュート等)の導入を補助する「給湯省エネ2026事業」、断熱改修や設備更新を幅広く対象にする「みらいエコ住宅2026事業」も走っています。これら3制度は併用が可能で、窓の断熱改修と給湯器交換を同時に行えば、それぞれの補助を受けられます(出典:住宅省エネ2026キャンペーン)。

大規模修繕のタイミングは、足場が架かる、あるいはロープアクセスで建物全周にアクセスできる「またとない機会」です。このときに窓や設備の更新をまとめて行うと、後から単独で工事するより足場・仮設のコストを節約でき、補助の対象工事も増やせます。

4-3. 神奈川県の省エネ補助も重ねる

神奈川県も「令和8年度神奈川県既存住宅省エネ改修事業費補助金」を用意しています。指定製品を使った省エネ改修が対象で、概ね工事費の1/3・上限20万円前後とされ、着工の2か月前までの申請と交付決定前に着工しないことが条件です(出典:神奈川県「令和8年度神奈川県既存住宅省エネ改修事業費補助金」)。横浜市にも「令和8年度 既存住宅断熱改修補助制度」があり、国・県・市の制度の重複利用の可否は、必ず各窓口で確認が必要です。


5. 申請タイミングという落とし穴――「交付決定前の契約」は全部パー

ここまで多くの制度を紹介しましたが、すべてに共通する、いちばん大事な原則を改めて強調させてください。

「補助金は、交付決定を受ける前に契約・着工したものは対象外になる」

横浜市のマンション再生支援事業の案内にも、「申請し、市より補助金の交付決定を受ける前に購入、契約したものは補助金の対象となりません」と明記されています。神奈川県の省エネ補助も「交付決定前に着工しないこと」が条件です。耐震改修も、見積書の徴収や総会決議の前に事前相談が必要とされています。

私の経験上、ここでつまずく組合が本当に多い。総会で工事業者を決め、契約を交わし、いざ着工してから「補助金を使いたい」と相談に来られても、もう間に合わない。制度は「動き出す前」に組み込むものです。理事会のスケジュールを引くとき、私はいつも「①事前相談 → ②申請 → ③交付決定 → ④契約・着工」という順番を最初に書き出すようお伝えしています。

逆に言えば、この順番さえ守れば、複数の制度を計画的に重ねられます。早めに動くこと――それが横浜市で補助金を取りこぼさない、最大のコツです。


6. 横浜市の管理組合・補助金活用ロードマップ(着手順)

ここまでの制度を、実際に動かす順番でまとめます。

  1. マンション・アドバイザー派遣で現状把握(初回無料)。管理運営・積立金・長期修繕計画の課題を洗い出す。
  2. 横浜市マンション登録制度・管理計画認定の取得を検討。再生支援事業や長寿命化促進税制の前提になる土台を整える。
  3. 長期修繕計画の作成・見直し(補助の活用を検討)。工事範囲と積立金の水準を確定させる。
  4. 再生支援事業で性能向上・将来検討の費用補助を申請(築30年以上・登録済みが前提)。
  5. 旧耐震なら耐震診断支援・耐震改修促進事業を事前相談(受付状況の確認は早めに)。
  6. 大規模修繕の本体工事に、国・県・市の省エネ補助を組み込む(窓・給湯・断熱)。施工会社は制度対応の実績で選ぶ。
  7. 工事完了後3か月以内に長寿命化促進税制を申告し、翌年度の固定資産税減額を受ける。

この順番の肝は、「お金を出す前に、制度の交付決定を取りに行く」ことに尽きます。

6-1. 数字で見る試算イメージ(横浜市・50戸・築25年のケース)

あくまで考え方を示すためのイメージで、実際の金額は建物の状態・面積・工事内容により変わりますが、効果の「桁感」をつかんでいただくために置いてみます。

項目 概算
大規模修繕工事費(本体) 約9,000万円
省エネ改修(窓・断熱を組み込み) 上乗せ工事費の一部を国・県・市補助でカバー
長期修繕計画見直し費 一部を市補助でカバー
固定資産税減額(長寿命化促進税制) 翌年度、建物部分の固定資産税が組合全体で半額(戸あたり数万円規模)

工事費そのものを大きく削るというより、「省エネ部分の上乗せを補助で吸収」「翌年度の税が軽くなる」という形で、実質負担を多面的に下げるのが横浜市での王道です。


7. 大規模修繕は「工法の選択肢」で総額が変わる――明誠の3工法提案

ここからは、私たち株式会社明誠のサービスのご案内です(自社紹介のセクションとして明確に区切ります)。

補助金や税制で「実質負担」を下げる一方、工事の総額そのものを左右するのが工法の選び方です。マンションの大規模修繕というと、建物全体に足場を架ける「通常足場工法」が当たり前だと思われがちです。しかし足場の仮設・解体には相応の費用と工期がかかり、足場が架かっている間は居住者の生活にも影響が出ます。

明誠は、建物の特性に応じて3つの工法から最適な提案ができる、日本でも数少ない会社です。

第一に、通常足場工法。中低層や複雑な形状の建物に向きます。第二に、ロープアクセス工法。産業用ロープで作業員が壁面を昇降して施工する「無足場工法」で、足場費の削減・工期短縮・居住者の生活影響の最小化が強みです。高層や、足場の架設が難しい物件、コストを重視する物件に向きます。第三に、ハイブリッド工法。部位ごとに足場とロープアクセスを使い分け、大規模・複雑な物件で総合的にコストを最適化します。

私はこの3つを、必ずワンセットで比較してご提案するようにしています。なぜなら、同じ建物でも「どこに足場を架け、どこをロープで攻めるか」で、総額も工期も、そして補助金を組み込む余地も変わってくるからです。

明誠はさらに、日本で初めてとなるロープアクセス工事のフランチャイズを展開しており、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。これにより、高品質と低価格の両立を図っています。横浜市の補助金・税制の活用と、工法の最適化。この2つを同時に設計できるのが、私たちの強みです。

工法の詳細はロープアクセス工法のご紹介を、大規模修繕の総合的な進め方は大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。


8. よくある質問(FAQ)

Q1. 補助金と長寿命化促進税制は、両方使えますか。
A. 制度の趣旨と要件が異なるため、要件を満たせば併用できる場合があります。ただし、同じ工事費に対する国・県・市の補助の重複利用には制限があることが多いため、各窓口での確認が前提です。税制は「工事後の固定資産税」、補助金は「工事費」と、効くタイミングが違うと整理すると分かりやすいです。

Q2. 築年数が新しいと、何も使えないのでしょうか。
A. そんなことはありません。旧耐震でなくても、省エネ改修の国・県・市補助や、長期修繕計画作成の支援、アドバイザー派遣は使えます。長寿命化促進税制は築20年以上などの要件がありますが、まだ早い組合でも、いまから管理計画認定の取得を進めておくと、将来の工事で効いてきます。

Q3. 申請の事務作業が大変そうで不安です。
A. 横浜市のアドバイザー派遣や、制度に精通した施工会社のサポートを使えば、書類の準備は大きく軽くなります。先進的窓リノベ2026などは、そもそも登録事業者が申請を代行する仕組みです。組合だけで抱え込まず、入口で専門家に相談するのが結局いちばん早い、というのが私の実感です。

Q4. 受付終了と書かれた制度は、もう使えないのですか。
A. 多くの補助は年度ごとの予算枠で運用され、年度が替われば新たに受付が始まることが一般的です。令和7年度に終了した枠も、令和8年度の動向を市の最新情報で確認する価値があります。予算枠に達し次第終了となるものは、年度の早い時期の事前相談が要です。


結語

横浜市の管理組合が使える制度は、決して少なくありません。むしろ「多すぎて分かりにくい」ことが、取りこぼしの最大の原因だと、私は現場で感じてきました。大事なのは、工事を決める前に、制度の地図を一度広げてみること。そして「事前相談 → 申請 → 交付決定 → 契約」の順番を守ることです。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階、長期修繕計画の確認や工法の比較だけでも、お力になれることがあります。横浜の街には、これから2回目・3回目の修繕を迎える住棟がたくさんあります。その一棟一棟を、無理のない負担で長く使えるようにすること。それが、私たちの仕事です。

次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


出典・参考資料

*本記事は2026年6月5日時点で公開されている情報をもとに作成しています。補助率・上限額・申

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【2026年6月】塗料・防水材が「入荷未定」に|ナフサ不足で大規模修繕の工期が遅れる前に、マンション・ビルオーナーがやるべきこと

「来月から外壁の塗り替えに入る予定なのに、塗料が手に入らないかもしれない」。

先日、あるマンションの理事長さまから、こんなご相談をいただきました。総会で修繕予算をようやく通したばかり。なのに「材料が止まっている」という話が耳に入り、不安になられたのです。

結論から申し上げます。この不安は、決して大げさではありません。いま全国の建設現場で、塗料・防水材・接着剤といった「石油から生まれる資材」の品薄が現実に起きています。そして大規模修繕を控えるオーナーさま・管理組合にとって、これは「工期の遅れ」と「コストの上振れ」に直結する話です。

私は塗装・防水・タイルの大規模修繕を20年近くやってきました。正直に申し上げて、材料がここまで読めない局面は、そう何度もありません。この記事では、いま何が起きているのか、それがあなたの建物にどう響くのか、そして慌てず・損せず動くために今この時期にやるべきことを、現場の視点で整理します。


まず、ニュースの要点を3行で

  • 中東情勢(イラン戦争)の長期化で、塗料・防水材・接着剤の原料である「ナフサ」由来の化学品が不足し、建設現場で出荷制限・受注停止・納期長期化が広がっています。
  • 全国建設業協会は2026年4月30日、国土交通大臣に緊急要望を行い、「工事の中止や遅延が避けられない状況も発生している」と表明しました(出典:全国建設業協会/ブルームバーグ報道)。
  • 政府は2026年6月2日、塗料・シンナーの原料となるトルエンなどを最大で例年の約1.8倍まで供給を拡大し、「年度を越えて供給を継続できる」見通しを示しました(出典:時事ドットコム 2026年6月2日)。

つまり「足りない」という事実と、「政府が手を打ち始めた」という事実が、同時に進行している状況です。ここからが本題です。


なぜ塗料や防水材が止まるのか——「ナフサ」という言葉をかみ砕く

ニュースで連呼される「ナフサ」。聞き慣れない方も多いと思いますので、まずここを丁寧に説明します。

ナフサとは、原油を精製してできる「粗製ガソリン」のことです。これがプラスチックや塗料、ゴム、接着剤など、私たちの身の回りのありとあらゆる化学製品の「おおもとの材料」になります。

大規模修繕に関わる流れをごく簡単に書くと、こうなります。

原油 → ナフサ → トルエン・キシレンなど(溶剤の原料) → シンナー・塗料・防水材・接着剤 → 現場

ここで重要なのが「シンナー」です。シンナーは塗料を薄めて塗りやすくする溶剤(うすめ液)で、油性塗料を使う現場では欠かせません。このシンナーの原料であるトルエン・キシレンが、中東からのナフサ供給の目詰まりで不足しているわけです。

さらに、防水工事で使うウレタン防水材やシーリング材(窓まわりや目地を埋める弾力性のある充填材)、屋上の塩ビシート、下地に使う接着剤——これらもほとんどが石油由来です。だから「塗装だけ」の話ではなく、大規模修繕の主要工種がまとめて影響を受けるのです。

私がこの構造をしつこく説明するのには理由があります。原因が「一つの材料」ではなく「石油という川上」にあるため、ある材料を別の材料で代替しようとしても、その代替材料も同じ川から流れてきている、という逃げ場のなさがあるからです。


どの資材が、どれくらい厳しいのか

全国建設業協会が71種類の建設資材について行った2026年4月の調査では、塗料・断熱材・防水剤・ポリ塩化ビニル管(塩ビ管)を中心に、出荷制限・受注停止・数量割り当てが拡大していると報告されています。これまで数日で入手できていた塗料や電線、設備機器までもが「入荷未定」になるなど、納期の長期化が顕著だとされています(出典:ブルームバーグ報道(全国建設業協会の発表))。

大規模修繕に関わる工種に当てはめると、影響の出やすさはおおむね次のように整理できます。

工種 主に使う資材 影響の受けやすさ 補足
外壁塗装(油性) 油性塗料・シンナー 大 溶剤系の調達が特に逼迫。色番号によっては納期未定も
防水(ウレタン・塩ビシート) ウレタン材・塩ビシート・接着剤 大 屋上・バルコニーの工期に直結
シーリング 変成シリコン等の充填材 中〜大 目地・サッシまわり。劣化放置は漏水リスク
タイル張替・補修 接着剤・エポキシ 中 接着剤の納期に左右される
給排水・配管 塩ビ管 中〜大 設備改修を同時に行う場合は要注意

※上記は2026年4〜6月時点で報じられている傾向にもとづく整理です。資材ごとの状況は週単位で動いており、メーカーや在庫状況によって差があります。実際の納期は必ず施工会社・メーカーにご確認ください。

水性塗料は比較的影響が小さいと言われますが、すべての部位を水性で賄えるわけではありません。下地や旧塗膜との相性、耐久性の要求によっては油性を選ばざるを得ない場面があり、「水性に切り替えれば解決」という単純な話にはなりません。ここは専門家が現場ごとに判断すべきところです。


政府の対応——「1.8倍供給」は朗報。ただし“即解消”ではない

2026年6月2日、高市首相は中東情勢に関する関係閣僚会議で、塗料やシンナーの流通に目詰まりが生じていることを踏まえ、原料となるトルエンなどを最大で例年の約1.8倍供給する方針を示しました。あわせて、商社経由だけでなく、石油化学メーカーや石油元売りからシンナー・塗料メーカーへ直接供給する仕組みも設けるとしています。ナフサの代替調達は従来の約85%の水準まで回復しているとも説明されました(出典:時事ドットコム 2026年6月2日、NHKニュース)。

これは現場にとって、間違いなく前向きな話です。私も少しほっとしました。

ただし——ここは正直に申し上げます。「方針が示された」ことと「現場に物が届く」ことの間には、必ずタイムラグがあります。原料が増産されてから、それがシンナーや塗料になり、問屋を経て現場に並ぶまでには時間がかかります。色番号ごとの在庫の偏りも残ります。

ですから「政府が動いたからもう大丈夫」と工程を楽観し切るのは早計です。逆に「全部止まるから今すぐ全部発注しろ」と慌てるのも違います。大事なのは、自分の建物の修繕がどの工種に、どの時期に、どれだけ依存しているかを把握したうえで、優先順位をつけて動くことです。


あなたの建物に、具体的にどう響くのか

ここからが、オーナーさま・管理組合にとっての実務の話です。資材逼迫は、主に三つの形で跳ね返ってきます。

1. 工期の遅延

材料が入らなければ、職人がいても工事は進みません。特に梅雨明け後の夏場は防水・塗装の需要が一斉に高まる時期で、ただでさえ職人と材料の取り合いになります。そこに資材不足が重なると、「足場を組んだのに材料待ちで止まる」という最悪の事態が起こり得ます。足場は組んでいる期間そのものが費用ですから、待ち時間がそのまま無駄なコストになります。

2. 見積りの“賞味期限”切れ

資材価格が動いている局面では、見積りの有効期限が短くなりがちです。半年前にもらった見積りが、今はもう通用しない、ということが普通に起こります。総会で承認した予算と、実際の発注額がズレる原因になります。

3. 価格転嫁・スライド条項の発動

公共工事の世界では、資材高騰に対応するため、実勢価格の調査頻度を上げ、設計変更や価格転嫁(いわゆるスライド条項=資材価格が一定以上動いたら契約金額を見直す仕組み)を適切に運用するよう、業界団体から国に要請が出ています。民間の大規模修繕でも、契約書に資材スライドの取り決めがあるかどうかで、もめ方が大きく変わります。

私がいつも理事長さまにお伝えしているのは、「安いか高いかの前に、止まらないか・もめないかを見てください」ということです。資材が読めない時期は、価格の数%より、工期の数週間と契約の一文のほうが、結果的に大きな差になります。


現場で実際に起きたこと

少しだけ、私の現場の話をさせてください。

数年前、ある別の理由で塗料の特定色が全国的に品薄になったことがありました。あるマンションの大規模修繕で、外壁の指定色がちょうどその色番号に当たってしまったのです。足場はすでに全面に架かっている。職人も手配済み。なのに塗料だけが来ない。

あのとき私は、メーカーの担当者に何度も頭を下げ、近い色番号への変更を理事会に提案し、一部の面を先行して別工程に振り替えて、なんとか足場の延長を最小限に抑えました。それでも、当初より工期は10日ほど延びました。足場費にしておよそ数十万円。住民の皆さまにも、ベランダが使えない期間が延びるご不便をおかけしました。

このとき骨身にしみたのは、「材料が読めない時期は、工程を一本道で組んではいけない」ということです。どこかが止まっても全体が止まらないよう、先行できる工種・後回しにできる工種をあらかじめ仕分けしておく。これができるかどうかで、資材逼迫の局面では結果がまるで変わります。

いま起きているナフサ不足は、当時の「一色だけ」とは比べ物にならない、塗料・防水・接着剤を横断する逼迫です。だからこそ、工程の組み方と工法の選び方が、これまで以上にものを言います。


工法の選び方で「工期リスク」は下げられる——足場・ロープアクセス・ハイブリッド

ここで、私たちのような施工会社の出番です。資材が読めない時期に効いてくるのが、「どの工法で工事を組むか」という設計です。

大規模修繕には、大きく三つの工法があります。当社はこの三つすべてを建物の特性に応じて提案できる、日本でも数少ない会社です(→大規模修繕工事のご紹介)。

工法 仕組み 資材逼迫期の強み 向いている建物
通常足場工法 建物全体に仮設足場を架ける 面で一気に施工できる 中低層・複雑形状
ロープアクセス工法(無足場) 産業用ロープで吊り下がって施工 足場の架設・解体が不要。部分先行・部分対応が機動的 高層・足場が架けにくい・コスト最重視
ハイブリッド工法 部位ごとに足場とロープを使い分け 「待てる面は後回し、急ぐ面は先行」の工程設計ができる 大規模・複雑物件

注目していただきたいのは、ロープアクセス工法(建物の外壁に足場を架けず、産業用ロープで作業者が吊り下がって作業する無足場の工法)の機動力です。

足場工法は、全面に足場を架けてから工事を始めます。だから「材料待ちで全体が止まる」と、架けっぱなしの足場費がのしかかります。一方ロープアクセスは、足場の架設・解体という大がかりな前後工程がないため、材料が入った面から順に、小さく着手して小さく仕上げることができます。資材が小ロットでしか入らない局面では、この「小回り」が効きます。

そしてハイブリッド工法なら、たとえば「材料が確保できている北面の防水は先に着手し、塗料待ちの南面は工程を後ろにずらす」といった設計が可能です。一本道の工程ではなく、止まりにくい工程を組む。これが資材逼迫期の工期を守るうえで、私が最も重視している点です(→ロープアクセス工法のご紹介)。


なぜ専門職フランチャイズが、資材逼迫期に強いのか

もう一つ、当社の強みをお話しさせてください。

当社は、ロープアクセス工事として日本で初めてフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しています。一見すると資材不足とは関係なさそうですが、こういう局面でこそ効いてきます。

理由は二つあります。

一つは、各分野の専門職が直接つながっていること。塗料が厳しければ防水を先に、という工種の組み替えを、間に何社も挟まずに現場の判断で素早くできます。元請—下請—孫請と何層も重なっていると、こうした柔軟な組み替えは時間がかかりますが、専門職が同じネットワークにいれば話が早いのです。

もう一つは、中間マージンを削れること。資材が高騰している局面では、施工側のコストはどうしても上がります。そのなかで仕上がりの品質を落とさず価格を抑えるには、施工体制そのものの無駄を削るしかありません。専門職が直接加盟する仕組みは、いわゆる「中抜き」を減らし、高品質と低価格を両立させるための土台になっています。

私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。工法の選択肢と、専門職のネットワーク。この二つがそろって初めて、「資材が読めない時期でも、止めずに・もめずに・品質を落とさず」修繕をやり切れるからです。


今この時期に、オーナー・管理組合がやるべき5つのこと

では、具体的に何をすればよいのか。優先度順に5つ挙げます。

1. 修繕の「時期」を施工会社と再確認する
今年〜来年に塗装・防水を予定しているなら、まず施工会社に「現時点で、想定している資材の納期はどうか」を確認してください。色番号・材料メーカーまで踏み込んで聞くのがコツです。

2. 見積りの有効期限と、資材スライドの扱いを確認する
見積りがいつまで有効か。資材価格が一定以上動いたときに契約金額をどう扱うか(スライド条項の有無)。この二点を、契約前に必ず文書で確認してください。後から「言った・言わない」でもめるのが一番つらいので。

3. 工程を「一本道」にしない設計を相談する
材料待ちで全体が止まらないよう、先行できる工種・後回しにできる工種を仕分けてもらいましょう。足場工法だけでなく、ロープアクセスやハイブリッドで工期リスクを下げられないか、複数案を出してもらうのが理想です。

4. 緊急性の高い劣化(漏水・剥落リスク)を優先する
シーリング切れや防水の劣化を放置すると、漏水という二次被害につながります。資材が逼迫していても、安全・漏水に直結する部位は優先して手当てすべきです。「全部待つ」ではなく「危ない所から」です。

5. 総会・理事会で、この状況を共有しておく
6月は総会シーズンです。「資材高騰と納期長期化が起きている」という事実を、今のうちに理事会で共有しておくと、後で工期や金額が動いたときの合意形成がぐっと楽になります。


ただし——慌てて発注すべきではないケースもあります

ここは両論併記で正直にお伝えします。

「資材が止まるなら、今すぐ前倒しで発注しよう」——この判断が、必ずしも正解とは限りません。

たとえば、長期修繕計画上まだ数年先でよい工事を、不安だけで前倒しすると、本来不要な出費を早めることになります。劣化が進んでいない部位を慌てて触る必要はありません。また、価格が高止まりしている今まさに発注すると、割高な単価で契約してしまう可能性もあります。政府の供給拡大策が効いてくれば、半年〜1年で状況が緩む可能性も指摘されています。

だからこそ、判断の軸は「不安」ではなく「劣化の実態と緊急度」であるべきです。漏水・剥落につながる部位は急ぐ。まだ余裕のある部位は、状況を見ながら最適なタイミングを計る。この見極めこそ、専門家に相談する価値のあるところだと、私は考えています。


よくあるご質問(FAQ)

Q1. ナフサ不足はいつまで続きますか?
正確な終息時期を断言できる人はいません。政府は供給拡大と年度を越えた供給継続の見通しを示していますが、中東情勢に左右されるため流動的です。「数か月で楽になる」という見方もあれば「価格は元には戻らない」という見方もあります。確実なのは、今は週単位で状況が動いているということです。

Q2. 水性塗料に変えれば問題は解決しますか?
部分的には有効ですが、万能ではありません。下地や旧塗膜との相性、求める耐久性によっては油性が必要な場面があります。「水性に統一すれば解決」と単純化せず、部位ごとに専門家の判断を仰いでください。

Q3. 見積りが半年前より上がっていました。ぼったくられているのでしょうか?
資材価格が実際に上がっているため、適正な見積りでも金額が上がっている可能性は十分あります。大切なのは、見積りの内訳(材料費・労務費・足場費)が明示され、値上がりの根拠が説明できるかどうかです。複数社で内訳を比べると、適正さが見えてきます。

Q4. 工期が延びると、足場代も増えますか?
足場工法の場合、足場を架けている期間が延びれば、そのぶん費用が増えるのが基本です。だからこそ、材料待ちで止まらない工程設計や、足場に依存しないロープアクセスの活用が、コスト面でも意味を持ちます。

Q5. 今、相談だけしておくことに意味はありますか?
大いにあります。むしろ今やるべきは「発注」より「整理」です。自分の建物がどの工種にどれだけ依存しているかを把握し、優先順位をつけておくだけで、いざ動くときの判断が速く・正確になります。


まとめ——「止めない・もめない・品質を落とさない」修繕へ

最後に、要点をもう一度整理します。

いま、ナフサ不足によって塗料・防水材・接着剤の品薄が現実に起きており、全国建設業協会も「工事の中止や遅延が避けられない状況」と表明しました。政府は原料供給を例年の約1.8倍に拡大する方針を示しましたが、現場に物が行き渡るまでにはタイムラグがあります。

この局面で大規模修繕を控えるオーナーさま・管理組合がやるべきは、不安に駆られて慌てることでも、楽観して放置することでもありません。自分の建物の劣化の実態と緊急度を把握し、工程を一本道にしない設計と、最適な工法の選択で、工期とコストのリスクを下げることです。

私たちは、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの三つの工法から建物にとってベストな組み方を提案でき、塗装・防水・タイルなどの専門職が直接つながるネットワークを持っています。資材が読めない時期だからこそ、この組み合わせが効きます。

総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。「うちの修繕、このまま予定通りいくのか」と少しでも不安に感じたら、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください(→お問合せフォーム)。資材の状況も、工法の選択肢も、まずは一緒に整理するところから始めましょう。


出典・参考資料

※本記事の数値・日付は、上記の報道・公的情報にもとづき2026年6月5日時点で整理したものです。資材の納期・価格は週単位で変動しており、実際の状況は施工会社・メーカーへ個別にご確認ください。

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ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

建設費高騰で、ついに業界団体が「初めて」動いた——労務単価14年連続増・初の2.5万円超の時代に、マンション・ビルオーナーが大規模修繕で“足場を二度組まない”ためにできること【2026年6月】

総会の季節になると、私のところへ「本間さん、今年の修繕、また見積もりが上がったんですが、これ普通なんですか」というご相談が増えます。築20年前後のマンションをお持ちの理事長さま、収益物件を何棟か回しているオーナーさま。皆さま、決まって同じ顔をされます。「自分の物件だけが割高なのか、それとも世の中全体がそうなのか」が分からない、という顔です。

結論から申し上げます。それは、あなたの物件だけの話ではありません。日本全体で、建物を直すコストそのものが構造的に上がり続けています。そして2026年6月、その流れに対して業界団体が「初めて」と言われる動きを取りました。今日は、そのニュースを入り口に、現場で20年やってきた私が「値上げの前に必ず確認すること」を、できるだけ正直にお話しします。

2026年6月、建設業界で「初めて」の協議体ができた

2026年6月1日、デベロッパーが加盟する不動産協会と、建設大手が加盟する日本建設業連合会(以下、日建連)が、建設費高騰への対応を話し合う協議会を設置しました。報道によれば、両者が共同で協議体を設けるのは初めてのことです(出典:日本経済新聞「不動産と建設の業界2団体、建設費高騰で協議会 生産性向上など議論」)。

協議会は1年後をめどに、連携して解決すべき優先課題を整理し、取り組み方針をまとめる想定です。具体的なテーマごとの議論は実務者レベルの幹事会が担い、2026年度中に2〜3カ月に1回ほど開かれる予定とされています。背景には、再開発の停滞があります。建てる側も、発注する側も、「このままでは事業が成り立たない」という危機感を共有し始めた、ということです。

実はこの協議会、降って湧いた話ではありません。不動産協会は2025年11月に、建設費高騰への対応をめぐって日建連へ緊急の申し入れを行い、協議の場の設置を求めていました(出典:建設通信新聞Digital「建設費高騰問題で日建連に異例の申し入れ/実務協議の設置へ調整/不動産協会」)。発注者側が「異例の申し入れ」をするほど、現場の数字は逼迫していた、ということです。

ここで一度、立ち止まっていただきたいことがあります。これは新築の再開発や超大型案件だけの話だと思われがちですが、そうではありません。建物を直すための単価が上がっているという事実は、あなたのマンションやビルの「次の大規模修繕(建物全体を一斉に直す十数年に一度の大工事)」の見積もりにも、確実に効いてきます。ここからが本題です。

値上がりは「直す」だけでなく「建てる」も止め始めている

この建設費高騰は、修繕の現場だけの話ではありません。象徴的なのが、大型ホテルの建て替え計画にまで遅れが出ていることです。報道では、建設費の高騰を背景に、著名なホテルの建て替えで解体工事の着工時期が延期されるなど、計画の見直しが相次いでいるとされています(出典:朝日新聞「帝国ホテルも…建設費高騰で相次ぐ計画遅れ 業界は『異例』の協議会」)。「建てる」という最も体力のある事業者ですら、いったん立ち止まらざるを得ない。それが今の建設コストの水準だ、ということです。

加えて、足元では資材調達の不安も重なっています。中東情勢などを背景に、石油由来の建築資材の供給不安が指摘され、建築資材の品切れ・品薄が相次いでいるという報道もあります。塗料をはじめ、修繕に欠かせない資材が「お金を出しても、すぐには手に入らない」局面が出てきている、ということです。私の周りでも、特定の塗料や副資材の納期が読みにくくなったという声を、現場から実際に耳にします。

私がここで申し上げたいのは、不安を煽ることではありません。むしろ逆で、「価格が下がるのを待つ」という選択肢が現実的ではなくなりつつある、という事実を冷静に共有したいのです。待っている間にも資材費と人件費は上がり、必要な資材が手に入りにくくなる。だとすれば、限られた予算の中で「工法と段取りで賢く削る」ことに知恵を集中させるほうが、ずっと建設的だと私は考えています。

なぜここまで上がったのか——労務単価14年連続増という「構造」

「資材が高い」「人手が足りない」という話は、皆さまも耳にされていると思います。ただ、なんとなくの印象ではなく、公的な数字で押さえておくと、総会での説明がぐっと楽になります。

国土交通省は、令和8年(2026年)3月から適用する公共工事設計労務単価を、全国全職種の単純平均で前年度比4.5%引き上げました。全国全職種の加重平均値は25,834円となり、初めて25,000円を超えています。しかもこれは、平成25年度の改定から数えて14年連続の上昇です(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」)。

公共工事設計労務単価というのは、国が公共工事の予算を組むときに使う「職人さん一人を一日雇うといくらか」の基準額です。民間の大規模修繕に直接そのまま使うわけではありませんが、職人さんの賃金相場を映す代表的な指標として、民間工事の見積もりにも影響します。これが14年連続で上がり、ついに一日2.5万円を超えたという事実は、「人件費が一時的に跳ねている」のではなく「もう戻らない水準で上がり続けている」ことを意味します。

資材側も同じ方向です。日建連の整理では、2021年1月と比べて全建設コストは25〜29%ほど上昇しているとされています(2025年8月版の試算)。直近でも建設物価は前年同月比でプラス数%の上昇が続いており、ある調査では2025年8月の建設総合の建設物価指数(東京)は143、前年同月比+3.2%という水準が示されています。

私が現場で20年やってきて、一番悔しい思いをするのは、こうした「構造的な値上がり」を、まるで施工会社のさじ加減のように受け止められてしまうときです。値上がりの大半は、職人さんの正当な賃金と、世界的な資材コストの上昇から来ています。ここを誤解したまま総会で「もっと安い会社はないのか」という議論だけを続けると、肝心の「どこで本当にコストを削れるのか」という話にたどり着けません。

なお、大規模修繕は塗装・防水といった人件費の比重が高い工事が多いのも特徴です。つまり、労務単価の上昇がそのまま効きやすい構造を持っています。一般的な建築物価の上昇率よりも、修繕工事のほうが上振れしやすい、と私は現場感覚として受け止めています。

大規模修繕費は、この10年あまりで「約1.6倍」になった

数字を、皆さまの財布の感覚に置き換えてみます。

民間のコスト試算では、マンション大規模修繕の費用は1戸あたりで、2013年ごろの約93万円から、2025年には約150万円へと、この十数年で約1.6倍に上昇したとされています。2026年の予測値は1戸あたり約161万円という試算もあり、工事内容によっては1戸あたり200万円を超えるケースも珍しくない、というのが各社の見立てです(民間試算のため、あくまで目安としてご覧ください。出典:新東亜工業「マンション大規模修繕の費用推移」)。

100戸のマンションなら、1戸あたり50万円の差は、それだけで総額5,000万円の差です。これは決して小さな端数ではありません。だからこそ、私はオーナーさま・理事会に「総額の数字だけを見て一喜一憂しないでください」とお伝えしています。見るべきは「総額のうち、どこが構造的に動かせない費用で、どこが工夫の余地のある費用か」です。

そして、ここに収益不動産オーナーならではの論点が加わります。修繕の遅れや、見栄えの劣化は、空室率や家賃水準にそのまま跳ね返ります。直近では各地で募集家賃が最高値を更新したという調査も出ており、立地と建物の状態が良ければ賃料を維持・向上できる地合いではあります。逆に言えば、修繕を先送りして建物の印象を落とすことは、いまの市況では「取れるはずの家賃を自ら手放す」ことになりかねません。コスト削減と資産価値維持は、本来セットで考えるべきものなのです。

値上げの前に、私が必ず確認する「3つの工法」

ここからが、私が一番お伝えしたい部分です。建設費が構造的に上がっている時代に、オーナー・管理組合ができる現実的なコスト最適化は、「職人さんの賃金を値切ること」ではありません。それは品質低下と事故のリスクを呼ぶだけで、長い目で見れば最も高くつきます。

私が必ず確認するのは、「その建物に、どの工法が一番合っているか」です。大規模修繕の費用のうち、無視できない割合を占めるのが「仮設足場(建物の周りに組む作業用の足場)」の費用です。建物をぐるりと囲う足場は、組むのにも解体するのにも費用と工期がかかり、しかも工事が終われば撤去してしまう、いわば「直接は建物に残らないコスト」です。ここに手を入れられるかどうかが、総額を左右します。

私の会社では、次の3つの工法を、建物の特性に応じて使い分けています。

  • 通常足場工法:従来どおり建物の周囲に仮設足場を組む方法です。複雑な形状や、中低層で全面的に手を入れる物件では、結局これが最も確実で合理的なことも多いです。
  • ロープアクセス工法(無足場工法):産業用のロープで作業員が壁面に直接アクセスし、足場を組まずに塗装・防水・タイル補修などを行う方法です。足場費を圧縮でき、工期も短縮しやすく、居住者・利用者の生活への影響も抑えられます。高層物件や、足場が組みにくい敷地、コストを最重視する物件で力を発揮します。
  • ハイブリッド工法:建物の部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける方法です。「正面は足場、背面や塔屋まわりはロープ」といった具合に組み合わせ、総合コストを最適化します。

正直に申し上げます。世の中の施工会社の多くは、この3つのうち1つか2つしか持っていません。足場しか持たない会社に相談すれば、当然「足場ありき」の見積もりが出てきます。ロープしか扱わない会社なら、足場が本当は最適な物件にも無理にロープを当てようとするかもしれません。私はこれを、必ず3つ並べて比較したうえでご提案するようにしています。なぜなら、建物にとってベストな工法は、会社の都合ではなく建物の形と状態が決めるものだからです。詳しくはロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介もご覧ください。

もう一つ、私たちには日本で初めてとなるロープアクセス工事のフランチャイズ展開があります。塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しているため、中間に余計な業者を挟まずに、高品質と低価格を両立しやすい体制になっています。建設費が上がる時代ほど、この「無駄な中抜きを減らす」という発想が効いてきます。

「足場を二度組まない」という考え方

建設費高騰の時代に、私が最ももったいないと感じるのは、「足場を何度も組み直すこと」です。

たとえば、外壁塗装のために足場を組み、その数年後に防水のためにまた足場を組み、さらに数年後に省エネ改修でもう一度組む。仮設足場の費用は、組むたびに丸ごとかかります。先ほど申し上げたとおり、足場費は建物に残らないコストです。これを二度、三度と払うのは、構造的に値上がりしている時代には特に大きな損失になります。

だからこそ私は、「次に足場を組むなら、そのタイミングで一緒にやれることはないか」を必ず一緒に考えます。外壁・防水・必要なら省エネ改修まで、一度の仮設で束ねられないか。あるいは、足場を組むほどではない部分はロープアクセスで先に手当てして、足場の規模そのものを小さくできないか。こうした「段取りの設計」こそが、建設費高騰時代のコスト最適化の本丸だと、私は考えています。

現場で実際にあった話——足場の規模を3割減らせた管理組合

少し、現場の具体的な話をさせてください。あるとき、首都圏の築22年・80戸ほどのマンションで、理事長さまから「3回目の大規模修繕の見積もりが、前回の1.4倍近くになってしまった」とご相談をいただいたことがあります。最初に出ていた見積もりは、建物全面に足場を組む前提のものでした。

私は現地で建物を一周し、図面と劣化状況を照らし合わせました。すると、足場が本当に必要なのは正面と妻側(建物の短い側面)のタイル・シーリングの打ち替え部分で、背面とバルコニー側の塗装・防水のかなりの範囲は、ロープアクセスで十分に手が届くことが分かりました。そこで、足場を組む範囲を建物の一部に絞り、残りをロープアクセスで受け持つハイブリッドの組み方に変えました。

結果として、仮設足場の規模を当初案からおおむね3割ほど縮小でき、その分だけ総額を圧縮することができました。さらに副次的な効果として、足場で覆われる期間と面積が小さくなったため、「日当たりが悪くなる」「外から室内が見えて不安」といった居住者の不満も減りました。理事長さまからは「数字が下がったことより、住人からのクレームが減ったことのほうが助かった」と言われたのを、今でも覚えています。

ここで強調したいのは、「ロープアクセスにしたから安くなった」という単純な話ではない、ということです。建物を一度きちんと見て、どの部位にどの工法を当てるのが最適かを設計し直したから、足場の規模を適正化できた。工法は目的ではなく手段です。私はいつも理事長さまに、「まず建物を見せてください、答えはそこにあります」とお伝えしています。

修繕積立金の「値上げ」は、最後の手段にしてほしい

建設費が上がると、多くの管理組合がまっさきに「修繕積立金の値上げ」を検討します。もちろん、計画的な積立は健全な管理の基本ですし、不足しているなら見直しは避けられません。ただ、私は「値上げは最後の手段にしてほしい」とお伝えしています。

理由は二つあります。一つは、値上げが家計に与える負担が想像以上に重いことです。ある調査では、過去に積立金の値上げを経験した世帯の約7割が「家計への影響」を実感し、その半数以上が食費や光熱費といった生活必需費を切り詰めていたという結果が出ています。値上げは「数字の調整」ではなく、住民一人ひとりの暮らしに直結します。

もう一つは、値上げを急ぐ前に、工事側でできる工夫がまだ残っていることが多いからです。専門家からは、積立金の値上げ幅は急激にしすぎず段階的に、という考え方も示されています。だからこそ、いきなり積立金を引き上げる前に、「工法の見直しで総額をどこまで下げられるか」「足場を束ねて回数を減らせないか」を先に検討する順番が大切なのです。値上げの議論と工法の議論を同じテーブルに乗せること。これが、私が総会前のオーナーさま・理事会にお願いしている一番のポイントです。

収益物件オーナーへ——修繕は「出口」も左右する

ここからは、特に収益不動産をお持ちのオーナーさまに向けた話です。

賃貸として運用している物件では、修繕は単なる「コスト」ではなく、家賃と入居率、そして売却時の価格を左右する「投資」です。直近の市況では、各地で募集家賃が最高値を更新したという調査もあり、立地と建物状態が良ければ賃料を維持・向上しやすい地合いが続いています。逆に、外壁の汚れやひび割れ、防水の劣化を放置すれば、内見時の印象が落ち、家賃を下げざるを得なくなります。値下げで失う家賃は、修繕費よりもじわじわと、しかし確実に効いてきます。

さらに見落とされがちなのが、売却(出口)のときです。私の経験上、修繕の履歴がきちんと残っていて、直近で適切に手が入っている物件は、買い手から見て「安心して引き継げる物件」です。逆に、いつ何をやったか分からない物件は、買い手側が将来の修繕リスクを織り込んで価格を引いてきます。つまり、適切な修繕とその記録は、保有中の家賃だけでなく、売るときの価格にも効くのです。

だからこそ私は、収益物件のオーナーさまには「修繕を、保有から出口までの一本の線で考えてください」とお伝えしています。コストを最適化しつつ、建物の価値と記録をきちんと残す。その積み重ねが、最終的な投資リターンを大きく変えます。とりわけ複数棟をお持ちのオーナーさまは、棟ごとに足場を組む時期がばらばらになりがちです。ポートフォリオ全体で「いつ、どの棟に、どの工法で入るか」を一枚の表に落とすだけでも、数年単位で見たときの総支出はずいぶん変わってきます。

総会で必ず聞かれる5つの質問と、私の模範回答

6月は総会のシーズンです。理事長さま・オーナーさまから「総会でどう説明すればいいか」というご相談が一番増える時期でもあります。よく聞かれる5つの質問と、私がいつもお伝えしている答え方を、そのまま置いておきます。

質問1:「なぜ前回より見積もりが上がっているのか」
お答え:施工会社の都合ではなく、職人さんの賃金(労務単価は14年連続で上昇し、ついに一日2.5万円超)と資材費の構造的な上昇が主因です、と公的な数字で説明します。感情論を避け、出典を示すと納得が得られやすくなります。

質問2:「もっと安い会社に頼めば下がるのか」
お答え:賃金や資材の相場は会社をまたいでも大きくは変わりません。本当に差が出るのは「工法の選び方」と「段取り」です、とお伝えします。安さの正体が品質や保証の削減でないか、必ず確認すべきです。

質問3:「修繕積立金を値上げしないと無理なのか」
お答え:値上げの前に、工法見直しで総額をどこまで圧縮できるかを先に検討しましょう、と提案します。値上げ幅は世帯の家計を直撃します。過去に値上げを経験した世帯の多くが家計への影響を実感しているという調査もあり、まず工事側の工夫を尽くす順番が大切です。

質問4:「工事中、住人や利用者の生活はどうなるのか」
お答え:足場は防犯面・採光面・プライバシー面の負担が大きい一方、ロープアクセスを組み合わせると影響を抑えられる部位があります、と具体的に説明します。居住者の納得は、工事をスムーズに進めるうえで欠かせません。

質問5:「今やるべきか、もう少し待つべきか」
お答え:費用は構造的に上がり続けており、「待てば下がる」可能性は低い状況です。ただし、劣化を放置すると後の工事費が膨らむため、長期修繕計画(十数年単位の修繕の計画表)に照らして判断しましょう、とお伝えします。

ロープアクセスが効く物件・効かない物件(両論併記)

公平のために、デメリットもはっきり申し上げます。ロープアクセス工法は万能ではありません。

向いているのは、高層で足場の架設が難しい物件、敷地が狭く足場を建てにくい物件、部分的な補修や点検、そしてコストを最重視する物件です。一方で、外壁を全面的に張り替えるような大がかりな工事や、足場の作業床がどうしても必要になる工程が多い場合は、通常足場のほうが結果的に安全で合理的なこともあります。天候の影響も足場より受けやすく、強風時は作業を止める判断が必要です。

ですから私は、「御社の物件はロープアクセスで全部いけます」とは申し上げません。建物を一度きちんと見せていただいて、足場・ロープ・ハイブリッドの3案を並べ、それぞれの概算と工期、生活への影響をお示ししたうえで、オーナーさま・理事会に選んでいただく。これが一番フェアなやり方だと考えています。

いま、オーナー・理事会が動くべき順番

最後に、具体的な行動の順番を整理します。読み終えたら、ぜひ次の流れで動いてみてください。

  1. 長期修繕計画を引っぱり出す:次の大規模修繕がいつ予定されているか、積立金の残高はいくらかを確認します。
  2. 「足場を組む予定」を洗い出す:今後10年でいつ足場を組む計画か。複数回あるなら、束ねられないかを検討します。
  3. 3工法での比較見積もりを取る:足場前提の1社だけでなく、ロープアクセスやハイブリッドを扱える会社にも声をかけ、工法ごとの違いを見比べます。
  4. 総会で「数字と出典」で説明する:値上がりの理由を公的データで共有し、感情論ではなく工法と段取りの議論に持っていきます。

この順番で進めるだけでも、「とりあえず積立金を値上げ」という結論に飛びつく前に、いくつもの選択肢が見えてくるはずです。

よくあるご質問(FAQ)

Q. ロープアクセスにすると、どのくらいコストが下がりますか。
A. 物件の形状や工事範囲によって大きく変わるため、一律に「○%下がる」とは申し上げられません。足場費の比重が大きい物件ほど効果は出やすい傾向です。まずは実際の建物で概算を比較するのが確実です。

Q. 築古の収益物件でも相談できますか。
A. もちろんです。むしろ築年数が進んだ物件こそ、限られた予算で資産価値を守る工法選びが重要になります。出口(売却)を見据えた修繕履歴の整え方も含めてご相談いただけます。

Q. 相談すると、必ず工事を発注しないといけませんか。
A. そのようなことはありません。総会前の整理や、見積もりの読み解きだけでもお力になれます。

Q. ホテルやテナントビルでも対応できますか。
A. 対応しています。営業を止めずに進めたいホテルや、テナントの稼働に配慮したいビルでは、足場で全面を覆わずに済むロープアクセスの組み合わせが特に有効なことがあります。稼働への影響を抑えながら必要な部位を直す計画を、一緒に組み立てます。

おわりに

業界団体が初めて協議会をつくったというニュースは、裏を返せば「建設費の高騰は、もう個社の努力だけでは吸収しきれないところまで来ている」という業界からのメッセージでもあります。だからこそ、建物を持つ側にできる工夫——工法の選び方と、足場を二度組まない段取り——の価値が、これまで以上に大きくなっています。

これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない感想です。総会の前の整理だけでも、見積もりの読み解きだけでも構いません。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください(お問合せフォーム)。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

出典・参考資料

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