中野区のマンション管理計画認定制度|独自基準ゼロ・手数料4,100円。ただし令和9年4月に認定基準が変わります【2026年度版】

中野区の管理組合から、この秋こんな相談をいただきました。「隣の区は独自基準があると聞いた。うちはどうなのか」。

結論から言えば、中野区に独自の上乗せ基準はありません。区の公式ページにも「中野区独自の基準はございません」とはっきり書かれています。23区のなかには防災マニュアルの策定やコミュニティ活動を上乗せで求める区もありますから、中野区は認定を取りに行きやすい部類です。

ただし、動きやすいこととゆっくりしていていいことは別です。令和9年4月1日から、国の管理計画認定基準そのものが見直されます。区への申請日が令和9年4月1日以降になる案件には、見直し後の基準が適用されます。中野区の理事会にとって、令和8年度は「今の基準で取れるうちに取る」か「新基準を待って組み立て直す」かを決める年です。

私は大規模修繕の施工会社の人間で、認定申請の代行はしません。ただ、認定基準の骨格である長期修繕計画・修繕積立金・計画的な修繕の実施は、私が20年以上、現場で向き合ってきた項目そのものです。パンフレットに書かれない「どこでつまずくか」を、中野区に絞ってお伝えします。

結論:中野区は独自基準ゼロ・区手数料4,100円。実費は2万4千円前後

先に数字から整理します。

中野区への管理計画認定の申請手数料は、当初認定申請・更新申請ともに基本手数料4,100円、長期修繕計画が1つ増えるごとに加算手数料1,800円です(出典:中野区「マンション管理計画認定制度」)。

ただし区に払う手数料だけでは終わりません。新規・更新の申請には公益財団法人マンション管理センターが発行する事前確認適合証が必要で、その分の費用がかかります。

費用の項目 金額の目安 支払先
中野区への申請手数料(基本) 4,100円 中野区
中野区への加算手数料(長期修繕計画1つ増えるごと) 1,800円 中野区
システム利用料 1申請あたり10,000円(税込) マンション管理センター
事前確認審査料 長期修繕計画1計画あたり10,000円(税込)※ マンション管理センター等

※日本マンション管理士会連合会経由(パターン③)またはセンターへ直接申込(パターン④)の場合の金額です。個別のマンション管理士や管理会社に事前確認を依頼する場合、審査料は管理組合と委託先の取り決めによります(出典:マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」)。

単棟で長期修繕計画が1つの標準的なマンションであれば、実費はおおむね2万4千円前後。23区には区の手数料だけで2万円台を求めるところもありますから、中野区は金銭面の入口が低い区だと言えます。

注意していただきたいのが、中野区の場合はオンライン申請だけでは手続きが終わらない点です。管理計画認定手続支援サービスでオンライン申請を済ませたあと、区から手数料納付に係る書類が届きます。この納付書で手数料を払って初めて、区が認定手続を開始します。ここで止まっている管理組合が、毎年一定数いらっしゃいます。

中野区の認定主体は中野区。東京都ではありません

管理計画認定制度は、マンション管理適正化推進計画を作成した市・特別区が認定主体になります(町村部は都道府県)。中野区は推進計画を作成済みで、令和5年8月1日から制度を開始しています。

つまり、中野区内のマンションの申請先は中野区です。窓口は以下になります。

  • 中野区 都市基盤部 住宅課 住宅政策係(区役所9階 4番窓口)
  • 電話:03-3228-5581
  • 受付:月曜〜金曜 午前8時30分〜午後5時(祝日を除く)

対象は中野区内の既存の分譲マンションです。新築マンションは制度の対象外ですが、マンション管理センターが認定主体となる「予備認定制度」が別にあります。申請できるのは管理組合の管理者等(区分所有法第25条第1号で選任された管理者、または第49条第1項で置かれた理事)です。

中野区の認定基準は国の17項目のみ。上乗せはない

中野区が採用しているのは国の認定基準そのままで、5つのカテゴリー・計17項目です。区独自の上乗せはありません。

管理組合の運営(3項目)

  1. 管理者等が定められていること
  2. 監事が選任されていること
  3. 集会(総会)が年に1回以上開催されていること

管理規約(3項目)

  1. 管理規約が作成されていること
  2. 災害等の緊急時や管理上必要なときの専有部の立ち入り、修繕等の履歴情報の管理等について定められていること
  3. 管理組合の財務・管理に関する情報の書面交付(または電磁的方法による提供)について定められていること

管理組合の経理(3項目)

  1. 管理費と修繕積立金等が明確に区分して経理されていること
  2. 修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと
  3. 直前の事業年度末時点で、修繕積立金の3ヶ月以上の滞納額が全体の1割以内であること

長期修繕計画の作成及び見直し等(6項目)

  1. 長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠して作成され、その内容と算定された修繕積立金額が集会で決議されていること
  2. 長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われていること
  3. 計画期間が30年以上で、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれるように設定されていること
  4. 将来の一時的な修繕積立金の徴収を予定していないこと
  5. 計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された平均額が著しく低額でないこと
  6. 計画期間の最終年度において、借入金の残高のない長期修繕計画となっていること

その他(2項目)

  1. 組合員名簿・居住者名簿を備え、1年に1回以上は内容を確認していること
  2. 中野区分譲マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること

現場の実感では、落ちるのはほぼ「長期修繕計画」の6項目です。特に③の「残存期間内に大規模修繕工事が2回以上」と、⑤の「修繕積立金の平均額が著しく低額でない」。この2つは、後述するとおり大規模修繕の工事費そのものと直結します。

なお、認定基準の判断材料になるガイドライン類は近年立て続けに改訂されています。マンションの管理計画認定に関する事務ガイドラインは令和8年3月改訂、マンション標準管理規約は令和7年10月改正、長期修繕計画作成ガイドラインとマンションの修繕積立金に関するガイドラインは令和6年6月改訂です(出典:マンション管理センター)。5年前に作った長期修繕計画のまま申請に臨むと、様式の段階で差し戻しになります。

中野区の公式ページは令和6年3月更新のまま。税制の期限に注意

ここは、中野区の管理組合に必ずお伝えしている点です。

中野区の管理計画認定制度のページは、更新日が2024年(令和6年)3月26日のままです。制度の骨格は変わっていませんが、ページに書かれている税制の記述が現在の内容と食い違っています。

区のページには、長寿命化促進税制について「令和5年4月1日〜令和7年3月31日までの間に長寿命化に資する大規模修繕工事を完了させた場合」とあります。しかしこの期限は令和7年度税制改正で2年延長され、現在は令和9年3月31日までです(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制」)。

区のページだけを読んで「もう期限切れだから急いでも意味がない」と判断してしまった理事会を、実際に見ています。逆です。令和9年3月31日までにあと1年半あり、いま動けば十分間に合うというのが正しい理解です。

自治体のページは更新が追いつかないことがあります。金額と期限は、必ず国土交通省・東京都主税局・区の三方向で突き合わせてください。

令和9年4月1日から認定基準が変わる。中野区の理事会が今年決めるべきこと

令和7年のマンション関係法改正を受けて、国は令和8年7月31日に省令と告示を公布し、令和9年4月1日から施行します(マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則等の一部を改正する省令=令和8年国土交通省令第70号/令和8年国土交通省告示第1017号)。

変わるのは主に2点です。

  1. 分譲事業者が申請者になれる(分譲時に分譲事業者が管理計画を作成し、管理組合の管理者等に引き継ぐ仕組みの導入)
  2. 管理組合の管理者等が申請者となる場合の認定基準の見直し

そして重要なのがこの一文です。「地方公共団体への申請日が令和9年4月1日以降となる場合は、見直し後の認定基準が適用されます」(出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度」)。

つまり、中野区の管理組合にとっての分岐点はこうです。

区への申請日 適用される認定基準
〜令和9年3月31日 現行の認定基準(17項目)
令和9年4月1日〜 見直し後の認定基準

総会決議 → 事前確認 → 区への申請という流れには、どんなに急いでも数ヶ月かかります。令和9年3月末までに区へ申請したいなら、令和8年度中(=2027年3月まで)の通常総会で決議しておく必要があるという逆算になります。次の総会が令和9年5月なら、その時点で新基準での申請です。

どちらが有利かは、管理組合の状況によります。新基準を前提に長期修繕計画から組み直したほうがきれいな場合もあります。ただ、「気づいたら基準が変わっていた」という形にだけはしないでください。それだけは、いま決めれば避けられます。

認定基準は、大規模修繕の中身とそのまま直結している

ここからが、施工会社である私たちの本業に関わる話です。

認定基準の長期修繕計画6項目のうち、③「残存期間内に大規模修繕工事が2回以上」と⑤「修繕積立金の平均額が著しく低額でない」は、工事費の見積り水準がそのまま効いてきます。

30戸規模のマンションの大規模修繕は、一般的に総額3,500万〜5,000万円のレンジになります(物件の規模・劣化状況により大きく変動します)。このうち仮設足場が全体の15〜25%を占めるのが通常です。ここが長期修繕計画の総額を押し上げ、結果として「必要な修繕積立金の平均額」を跳ね上げる構造になっています。

株式会社明誠は、通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場)・両者を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物特性に応じて最適な工法をご提案しています。工法を変えると、この仮設費が大きく動きます。

参考例(10階建て・外周80m・工期3ヶ月の場合の仮設費の目安)

工法 仮設費の目安 差額
通常足場 約168万円 ―
ロープアクセス工法 約59万円 ▲約109万円

工事単価の目安も挙げておきます。外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、打診調査は250〜500円/㎡、防水は5,000〜8,000円/㎡程度が一般的なレンジです。いずれも目安であり、実際の見積は建物の形状・劣化状況・立地条件で大きく変わります。

仮設費が下がれば、長期修繕計画に載せる1回あたりの工事費が下がります。工事費が下がれば、計画期間30年の総額が下がり、必要な修繕積立金の月額も下がる。認定基準の「著しく低額でない」を、値上げではなく工事費の最適化で満たすという道筋が、ここにあります。中野区のように独自基準がない区では、この長期修繕計画の作り込みが事実上すべてです。

工法の技術的な詳細は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで解説しています。明誠のロープアクセス工法の考え方はロープアクセス工法のページ、費用の考え方は大規模修繕の料金の考え方をご覧ください。

なお、ロープアクセス工法は足場を架けないため、居住者のベランダ前に足場が立たず、防犯面の不安や洗濯物の制約が大幅に減るという副次的な効果もあります。中野区のように築年数の進んだ賃貸併用マンションが多い地域では、入居者の退去リスクを抑える意味でも効いてきます。

中野区で認定を取るまでの逆算スケジュール

中野区の手続きの流れは、区のページに明記されています。実務の所要期間を私の経験値で添えて整理します。

ステップ 内容 目安期間
1 中野区住宅課への事前相談(必要に応じて) 1〜2週間
2 長期修繕計画の見直し・修繕積立金の再設定 2〜4ヶ月
3 総会で認定申請の決議 通常総会に合わせる
4 事前確認の依頼(マンション管理士) 1〜2ヶ月
5 事前確認適合証の発行 ―
6 管理計画認定手続支援システムから中野区へオンライン申請 ―
7 区から納付書が届く → 手数料4,100円を納付 2〜4週間
8 区の審査(必要に応じてヒアリング・資料提出) 1〜2ヶ月
9 認定通知書の発行・ウェブサイトで公表(希望者のみ) ―

最も時間がかかるのがステップ2と3です。長期修繕計画の見直しには工事費の見積りが要り、その金額を前提に修繕積立金を決め、総会にかける。ここだけで半年見ておくのが現実的です。

認定の有効期間は認定を受けた日から5年間。そして中野区のページには、はっきりこう書かれています。「中野区からは有効期間満了に関する通知等は行いませんので、ご注意ください」。

これは実務上、非常に重い一文です。更新のリマインドは来ません。認定を取った段階で、理事会の引き継ぎ資料に有効期限を書き込み、管理規約や年間スケジュールに「4年目に更新準備開始」と組み込んでおいてください。役員が毎年変わる管理組合では、5年後に覚えている人がいないというのが普通に起こります。

なお変更認定申請だけは、マンション管理センターのシステムからオンライン申請ができません。郵送または窓口への提出になります。手数料も内容ごとに異なり、「長期修繕計画の作成、見直し等」に係る変更は基本9,800円・加算5,200円と、他の項目より高く設定されています。事前に住宅課へ相談してから書類を揃えてください。

認定を取ると何が変わるか。金額で見る3つの効果

中野区のページが挙げているメリットのうち、金額として効くものを整理します。

① マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)

一定の要件を満たす認定マンションが、令和5年4月1日から令和9年3月31日までに長寿命化に資する大規模修繕工事を完了させた場合、工事完了日の翌年度分の固定資産税が減額されます。減額割合は市町村の条例で定めることとされており、東京23区では1戸あたり100㎡相当分までの固定資産税額の2分の1が減額されます(出典:東京都主税局)。

工事完了後3ヶ月以内の申告が必要です。ここを逃すと、工事をしても減額を受けられません。大規模修繕の竣工時に、施工会社側からも必ずお声がけするようにしています。

② 住宅金融支援機構の優遇

  • 【フラット35】の金利引下げ、および返済期間最長50年の【フラット50】の利用
  • マンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ
  • マンションすまい・る債の利率上乗せ

②のうち共用部分リフォーム融資の金利引下げは、大規模修繕の資金計画に直接効きます。修繕積立金が不足していて借入を検討している中野区の管理組合には、認定取得を先に進めるメリットがはっきりあります。

③ 市場評価

認定マンションは、マンション管理センターの管理計画認定マンション閲覧サイトや不動産情報サイトで公表されます(申請時に公表を希望した場合)。中野区も区のホームページで一覧を公開しています。管理状況が「見える化」されることで、売買時の評価につながることが期待されています。

中野駅周辺の再開発が進むなかで、周辺の築古マンションが資産価値をどう守るか。建物の中身で差をつけられる数少ない公的なラベルが、この認定です。

中野区で使える無料の相談先

中野区の管理組合が使える無料の窓口を挙げておきます。

  • 中野区の専門相談:法律相談・不動産相談など、専門の相談員による無料相談を実施(中野区「分譲マンション支援」)
  • 東京都の専門相談:弁護士・建築士による分譲マンションの専門相談。区を経由した申込みが必要なので、まず中野区住宅課(03-3228-5581)へ
  • マンション管理計画認定制度 相談ダイヤル:日本マンション管理士会連合会 TEL 03-5801-0858(月〜土 10:00〜17:00、祝日・年末年始を除く)
  • 東京都のマンションアドバイザー派遣:管理状況の届出内容に応じて派遣費用の助成あり(東京都マンションポータルサイト)

あわせて確認していただきたいのが、東京都の管理状況届出制度です。昭和58(1983)年12月31日以前に新築され、居住用の独立部分が6戸以上のマンションは「要届出マンション」にあたり、届出が義務づけられています。前回の届出から5年以内に更新届出が必要です(出典:東京都マンションポータルサイト「管理状況届出制度」)。届出を行うと、管理状況に応じてアドバイザー派遣などの支援を受けられます。認定申請の前段として、まずここを済ませておくと話が早く進みます。

よくあるご質問

Q. 中野区には独自基準が本当にないのですか?

A. 令和8年9月時点で、中野区の公式ページに「中野区独自の基準はございません」と明記されています。適用されるのは国の認定基準17項目のみです。ただし「その他」の2項目めに「中野区分譲マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること」が含まれますので、指針の内容は事前に住宅課でご確認ください。

Q. 認定にかかる費用は総額でいくらですか?

A. 単棟で長期修繕計画が1つの場合、区への手数料4,100円+システム利用料10,000円+事前確認審査料10,000円で、おおむね2万4千円前後が目安です。事前確認を個別のマンション管理士や管理会社に依頼する場合、審査料は委託先との取り決めによります。

Q. 認定を取ると固定資産税はいくら安くなりますか?

A. 東京23区では、要件を満たす工事を令和9年3月31日までに完了した場合、1戸あたり100㎡相当分までの固定資産税額の2分の1が翌年度分について減額されます。工事完了後3ヶ月以内の申告が必要です。減額される金額は各住戸の税額によって変わりますので、都税事務所にご確認ください。

Q. 長期修繕計画の修繕積立金が「著しく低額」と言われました。値上げしかないのでしょうか?

A. 値上げだけが選択肢ではありません。計画に載せる工事費そのものを見直す方法があります。特に仮設足場は工事費の15〜25%を占めるため、ロープアクセス工法やハイブリッド工法に置き換えられる部位があれば、計画総額が下がり、必要な積立額も下がります。長期修繕計画の見直しと工法の検討を同時に進めるのが効率的です。

Q. 令和9年4月1日から基準が変わると、いま取った認定はどうなりますか?

A. 既に取得済みの認定が失効するわけではありません。見直し後の基準が適用されるのは、区への申請日が令和9年4月1日以降のものです。ただし更新申請は「その時点の基準」で審査されますので、5年後の更新時には新基準が前提になります。長期修繕計画は、新基準も見据えて作っておくのが安全です。

Q. 大規模修繕の工期はどれくらい見ておけばよいですか?

A. ロープアクセス工法は足場の架設・解体が不要なため、足場工法の約60%の工期が目安です。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場工法で約3ヶ月のところ、ロープアクセス工法なら1.5〜2ヶ月程度。建物の形状や工事範囲により変動します。

Q. 認定の更新を忘れたらどうなりますか?

A. 有効期間の満了日までに更新申請を行わないと、認定は失効します。中野区からは満了に関する通知は行われません。認定取得時に有効期限を管理組合の年間スケジュールへ書き込み、4年目に更新準備を開始する形にしておくことをおすすめします。

Q. 施工会社は認定申請を手伝ってくれますか?

A. 認定申請そのものの代行はマンション管理士等の業務です。ただし、認定基準の中核である長期修繕計画の工事費算定や、修繕積立金の水準を満たすための工法検討については、施工会社としてお手伝いできます。お見積りとあわせてご相談ください。

まとめ|中野区の理事会が今週できる3つのこと

  1. 中野区住宅課(03-3228-5581/区役所9階4番窓口)に事前相談の予約を入れる。独自基準がない区なので、確認すべきは分譲マンション管理適正化指針と、自分たちの長期修繕計画が現行の標準様式に沿っているかの2点です。
  2. 長期修繕計画の作成・見直しが7年以内かを確認する。7年を超えていれば、認定申請の前にまず見直しが必要です。ここが最も時間を食います。
  3. 令和9年3月末までに区へ申請するかどうかを、次の総会の議案に載せるか決める。現行基準で取るなら、令和8年度中の総会決議が実務上のリミットです。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたり、安全管理の考え方は明誠の安全管理にまとめています。

管理組合向けのサービス内容は管理組合のみなさまへ、これまでの施工事例は施工事例一覧からご覧いただけます。工法そのものの技術的な比較検討は、同業者・技術者向けのロープアクセスドットコムもあわせてご参照ください。

長期修繕計画の工事費が認定基準に届くかどうかの概算は、無料でお出しできます。お問い合わせからお気軽にご相談ください。

出典・参考資料

  1. 中野区「マンション管理計画認定制度」(更新日2024年3月26日)
    https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/machizukuri/jyutaku/keikakuseido/0237575320231011100148507.html
  2. 中野区「分譲マンション支援」
    https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/505700/d018415.html
  3. 国土交通省「マンション管理計画認定制度」(令和9年4月1日施行関係を含む)
    https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/keikakunintei.html
  4. 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」
    https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000121.html
  5. 公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」
    https://www.mankan.or.jp/11_managementplan/mpsupport.html
  6. 東京都主税局「長寿命化に資する大規模修繕工事が行われたマンションに対する固定資産税の減額制度」
    https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/information/update/r5/06/2023060801
  7. 東京都マンションポータルサイト「管理状況届出制度」
    https://www.mansion-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/shisaku/01tekiseikanri-jourei02/
  8. 東京都マンションポータルサイト「管理状況の届出内容に応じたアドバイザー派遣費用の助成」
    https://www.mansion-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/kanri/01todokede-adviser/

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月18日時点で公表されている中野区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。なお、中野区の管理計画認定制度のページは2024年3月26日更新のもので、長寿命化促進税制の適用期限など一部の記述が現行の内容と異なります。本記事では国土交通省・東京都主税局の現行情報を優先して記載しました。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず中野区住宅課および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月18日

※本記事は制度の概要を解説するものであり、個別の申請可否を保証するものではありません。記載の金額はいずれも目安であり、実際の工事費は建物の規模・形状・劣化状況により大きく変動します。

渋谷区のマンション管理計画認定制度|区の手数料は無料化、その裏で令和8年4月から独自基準3本が追加【2026年度版】

渋谷区の理事長さまから、この夏に立て続けに同じ相談をいただきました。「区の手数料が無料になったと聞いたので、うちも管理計画認定を取ろうと思う」。

その通りです。ただ、私が資料を取り寄せて中身を読み込んだところ、話はそこで終わりませんでした。手数料が無料になった令和8年4月1日と同じ日に、渋谷区は独自の上乗せ基準を3本、新しく設けています。無料化と基準強化がセットになっている。ここを知らずに動き出すと、事前相談の席で書類が足りずに出直しになります。

私は大規模修繕の施工会社の人間ですので、認定申請そのものの代行はしません。ただ、認定基準の骨格である長期修繕計画、修繕積立金、計画的修繕の実施は、私が20年近く現場で向き合ってきた項目そのものです。制度パンフレットには書かれていない「どこでつまずくか」を、渋谷区に絞ってお伝えします。

結論:渋谷区は「区の手数料ゼロ・独自基準3本」。実費は2万円前後に収まる

先に結論です。

渋谷区への管理計画認定の申請手数料は、新規・更新・変更のいずれも無料になりました(令和8年4月1日から。出典:渋谷区「マンション管理計画認定制度」/更新日2026年6月3日)。

ただし費用がゼロになるわけではありません。渋谷区は公益財団法人マンション管理センターの事前確認を経由するルートしか認めていないため(変更認定申請を除く)、センター側の費用は発生します。

費用の項目 金額の目安 支払先
渋谷区への申請手数料(新規・更新・変更) 0円 ―
システム利用料 1申請あたり10,000円(税込) マンション管理センター
事前確認審査料 長期修繕計画1計画あたり10,000円(税込)※ マンション管理センター等

※センターまたは日本マンション管理士会連合会に依頼した場合の金額です。個別のマンション管理士や管理委託先に依頼する場合、審査料は管理組合と委託先の取り決めによります(出典:マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」)。

つまり渋谷区の管理組合が実際に負担するのは、おおむね2万円前後という計算になります。23区のなかには区への手数料だけで2万円台を求める区もありますから、渋谷区は金銭面ではかなり動きやすい部類です。

渋谷区の認定主体は渋谷区。都ではありません

管理計画認定制度の認定主体は、市および東京23区の区域内では当該市区、町村の区域内では都道府県です。ですから渋谷区内のマンションの認定主体は渋谷区であり、東京都ではありません。

窓口は渋谷区役所12階の都市整備部住宅政策課住環境整備係(電話03-3463-3548、渋谷区宇田川町1-1)です。マンション管理センターの相談ダイヤル(03-5801-0858)は制度全般、センター(03-6261-1274)は事前確認手続き、渋谷区は独自基準と区の手続き、と役割が分かれています。私はいつも理事長さまに「独自基準の話は区、それ以外はセンター」と整理してお伝えしています。

渋谷区の認定基準は全20項目。国が17、渋谷区が3

渋谷区の「マンション管理計画認定制度 申請の手引き」(令和8年6月版)によれば、渋谷区の認定基準は全20項目です。内訳は、国が定める基準(1①〜5①および5⑤)に、渋谷区の独自基準(5②〜5④)が加わる形になっています。

国の基準はおおむね次の5分類です。

  • 管理組合の運営:管理者等が定められている/監事が選任されている/集会(総会)が年1回以上開催されている
  • 管理規約:管理規約が作成されている/緊急時の専有部立入りと修繕履歴情報の管理が定められている/財務・管理情報の書面交付が定められている
  • 管理組合の経理:管理費と修繕積立金の区分経理/修繕積立金会計から他会計への充当がない/直前事業年度末で3か月以上の滞納額が全体の1割以内
  • 長期修繕計画:標準様式に準拠し総会決議済み/作成または見直しが7年以内/計画期間30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上/将来の一時金徴収を予定していない/修繕積立金の平均額が著しく低額でない/計画最終年度に借入金残高がない
  • その他:組合員名簿・居住者名簿を備え年1回以上内容確認している/渋谷区マンション管理適正化指針に照らして適切である

国の事務ガイドラインは令和8年3月に改訂されており、標準管理規約は令和7年10月改正版、長期修繕計画標準様式と修繕積立金ガイドラインは令和6年6月改訂版が前提です(出典:マンション管理センター)。手元の規約や計画が古い版のままだと、ここで引っかかります。

令和8年4月から追加された渋谷区独自基準3本が、実務では一番の関門

ここからが本題です。渋谷区が令和8年4月に新設した独自基準は、次の3本です(出典:渋谷区「マンション管理計画認定制度 申請の手引き」令和8年6月)。

独自基準1|防災マニュアルを作成していること

災害時の役割分担、避難経路、避難場所、緊急連絡先などを記載したものです。区のQ&Aでは「手書きでもよい」「数項目の簡単なものでも、最低限の項目が記載されていれば認められる」「防火管理者が作成する消防計画も含まれる」と明記されています。ハードルは高くありません。

独自基準2|マンション内の防災対策について、次の4つのうち1つ以上

  1. 防災訓練を年1回以上実施している
  2. 自主防災組織がある
  3. 防災資機材および備蓄物資の整備をしている
  4. 避難行動要支援者等の把握をしている

地域の自治会の防災訓練に担当者が参加して住民と情報共有していれば認められる、備蓄の保管場所がなく近隣の貸倉庫を使っていても認められる、といった柔軟な運用が手引きに書かれています。一方で、入居者が各自で備蓄しているだけでは認められません。

独自基準3|マンション内のコミュニティ活動について、次の4つのうち1つ以上

  1. マンション内で組織する自治会を設置または設置計画している
  2. 地域の町会・自治会等に区分所有者および居住者等が加入している
  3. 居住者間のコミュニティが形成される地域活動(美化活動、防災訓練等)を行っている
  4. 町会・自治会との連絡担当者を選任している

「区分所有者または居住者が一人でも町会・自治会に加入していることが分かれば認定可能」と手引きにあります。ただし懇親会や忘年会だけでは認められず、美化活動や防災訓練など地域のために行う活動が求められます。

そして重要なのが、この独自基準はマンション管理士による事前確認の対象外だという点です。 独自基準は渋谷区が自ら審査します。だから、センターに事前確認を依頼する前に、区への事前相談が組み込まれているわけです。

なお、令和8年3月31日までに事前確認申請を済ませた管理組合には経過措置が設けられています。該当しそうな組合は、区に確認したほうが早いです。

渋谷区への事前相談で持っていくもの

事前相談の持ち物は決まっています。

  • 第2号様式「渋谷区独自基準に係る申出書」
  • 防災マニュアルの写し
  • 独自基準2を満たすことが確認できる書類(防災訓練の実施報告書、自主防災組織の規約の写し、備蓄物資の写真や物品リスト、避難行動要支援者名簿の写し など)
  • 独自基準3を満たすことが確認できる書類(自治会規約の写し、町会の加入証明書や会費の支払い記録、地域活動の実施報告書、連絡担当者選任通知書 など)

加えて、申請段階では長期修繕計画のExcel版を区へ直接提出する決まりになっています。マンション管理センターへ送るPDFとは別です。ここは見落としが多いので、理事会の段階で担当を決めておくと後が楽になります。

私の経験上、備蓄倉庫の写真は「保管状況の全体像が分かる一枚」で足ります。日付が入っていることが望ましいとされていますので、スマートフォンで撮って日付表示を入れておけば十分です。

認定の3つの経済効果。金額で見るとこうなる

① マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)

築20年以上・総戸数10戸以上で、過去に長寿命化工事(外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事のすべて)を行っており、令和3年9月1日以降に修繕積立金を認定基準まで引き上げた認定マンション。この条件を満たして長寿命化工事を完了すると、工事完了の翌年度分の建物部分の固定資産税が、一戸あたり100㎡相当分まで減額されます。

東京23区の減額割合は「2分の1」です(出典:東京都主税局「長寿命化に資する大規模修繕工事が行われたマンションに対する固定資産税の減額制度」)。渋谷区内のマンションの申告先は渋谷都税事務所になります。

期限には注意が必要です。対象となるのは令和5年4月1日から令和9年3月31日までに工事が完了したもので、申告期限は工事完了日から3か月以内。さらに、賦課期日(工事完了の翌年1月1日)時点と申告時点の両方で管理計画の認定を受けていることが求められます(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制の要件」)。

本稿執筆時点で、令和9年4月1日以降への期限延長は公表されていません。国土交通省の令和8年度税制改正概要にも本税制の延長は盛り込まれておらず、今後の扱いは令和9年度税制改正の議論を待つことになります。断定はできませんので、いま工事を検討中の組合は「延びる前提」で計画を組まないほうが安全です。

修繕積立金の引上げ基準も具体的です。国の修繕積立金ガイドラインが示す下限値は、20階未満で建築延床面積5,000㎡未満なら月額235円/㎡、5,000〜10,000㎡未満で170円/㎡、10,000〜20,000㎡未満で200円/㎡、20,000㎡以上で190円/㎡、20階以上は240円/㎡です(機械式駐車場分を除く)。

② 【フラット35】維持保全型(購入者側のメリット)

認定を受けたマンションを中古で取得する方は、【フラット35】維持保全型として当初5年間、借入金利が年0.25%引き下げられます。借入額3,000万円・借入期間35年・借入金利年2.50%の試算例で、総返済額が約41万円軽くなる計算です(出典:住宅金融支援機構【フラット35】維持保全型)。返済期間が最長50年の【フラット50】も利用できます。

買主の住宅ローン条件が良くなるということは、売却時の競争力がわずかでも上がるということです。資産価値の話として理事会で説明すると、理解が早いことが多いです。

③ 共用部分リフォーム融資とマンションすまい・る債

認定を受けた管理組合は、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資(愛称「マンションすまい・る融資」)で金利の引下げを受けられます。また「マンションすまい・る債」を購入する際は利率が上乗せされます(出典:渋谷区「申請の手引き」)。

融資を使う場合、(公財)マンション管理センターの債務保証を利用すれば無担保で借りられます。マンションみらいネット登録組合などの「特定管理組合」は保証料が約20%安くなります(出典:マンション管理センター「共用部分リフォーム融資と債務保証」)。

認定基準は、大規模修繕の中身とそのまま直結している

ここで私の本業の話をさせてください。

認定基準の「長期修繕計画の計画期間30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上」「修繕積立金の平均額が著しく低額でない」という2項目は、工事費の見積り水準を上げれば上げるほど、達成が苦しくなる構造をしています。積立金を上げるか、工事費を下げるか。理事会はこの二択で足踏みします。

私がご提案しているのは、工事費の内訳を組み替えるアプローチです。30戸規模のマンションの大規模修繕は総額3,500万〜5,000万円程度が一つの目安ですが、このうち仮設足場が15〜25%を占めます。ここが効きます。

たとえば10階建て・外周80m・工期3か月の物件で、全面足場を架けると仮設費はおよそ168万円。同じ範囲をロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が壁面を昇降し、足場を架けずに施工する方法)で対応すると、概算で59万円。差額はおよそ109万円という試算になります。これは物件形状や施工範囲で大きく変わりますので、あくまで参考値としてご覧ください。

㎡単価の目安も申し上げます。外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、打診調査は250〜500円/㎡、防水は5,000〜8,000円/㎡といったレンジです。渋谷区のように敷地に余裕のない立地や、隣地との離隔が取れない物件では、足場そのものが架けにくく、この差はさらに広がります。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、当社および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工を担当します。工法の技術的な詳細は、同業者・加盟希望者向けの姉妹サイトロープアクセスドットコムにまとめています。

3つの工法(通常足場/ロープアクセス/両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド)を建物特性に応じて選べるかどうかで、長期修繕計画に載せる工事費の前提が変わります。詳しくは明誠のロープアクセス工法の技術詳細と大規模修繕の料金の考え方をご覧ください。

逆算スケジュール|渋谷区で認定を取るまでの流れ

渋谷区の申請は、次の順番で進みます。

  1. 理事会で方針決定(独自基準3本の証拠書類が今あるか棚卸し)
  2. 渋谷区へ事前相談(第2号様式+防災・コミュニティの証拠書類を持参。事前確認の依頼前に行う必要があります)
  3. 集会(総会)で認定申請の決議(管理計画の認定申請には集会での決議が要ります。臨時総会でも構いません)
  4. マンション管理センターの事前確認を依頼(マンション管理士/管理委託先/日本マンション管理士会連合会/センターの4パターン)
  5. 事前確認適合証の交付
  6. システムから渋谷区へ認定申請+独自基準の書類を区へ提出(長期修繕計画のExcel版も区へ直接)
  7. 渋谷区が審査し、認定通知書を交付

ボトルネックになりやすいのは3番です。通常総会は年1回しかありません。次の通常総会が来春なら、いまから独自基準の書類を揃えて秋のうちに事前相談を済ませ、議案書に間に合わせる。あるいは臨時総会を打つ。この判断を今月中にしておくと、動きが1年変わります。

長寿命化促進税制を狙う場合はさらに逆算が必要です。工事完了の翌年1月1日時点で認定を受けている必要がありますから、認定の取得が工事完了より先になるよう組み立てます。ここを逆にして税制を取り逃した組合を、私は実際に見ています。

認定の有効期間は5年です。更新は有効期間満了日の1か月前から申請できます。

渋谷区で使える無料の相談先

認定を目指す過程で、渋谷区の管理組合が使える窓口があります。

  • 渋谷区 都市整備部 住宅政策課 住環境整備係(03-3463-3548)※独自基準・区の手続き
  • マンション管理計画認定制度 相談ダイヤル(03-5801-0858、月〜土 10時〜17時)※制度全般
  • (公財)マンション管理センター(03-6261-1274、平日9時30分〜17時)※事前確認手続き

渋谷区は分譲マンション向けに長期修繕計画作成等費用助成や計画修繕調査費助成も設けています。制度の内容と令和8年度の受付状況は年度で変わりますので、渋谷区のマンション施策ページで最新の内容をご確認ください。

よくあるご質問

Q. 渋谷区に直接申請することはできますか?

A. できません。変更認定申請を除き、公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービス(事前確認)を経由するルートのみです。変更認定申請はセンターで対応していないため、渋谷区への直接申請となります。

Q. 区への手数料が無料なら、総額いくらかかりますか?

A. 渋谷区への申請手数料は新規・更新・変更とも0円です。別途、マンション管理センターのシステム利用料10,000円と事前確認審査料がかかります。センターまたは日本マンション管理士会連合会に依頼する場合、審査料は長期修繕計画1計画あたり10,000円ですので、おおむね2万円前後が目安です。

Q. 独自基準はマンション管理士が見てくれますか?

A. いいえ。地方公共団体の独自基準はマンション管理士による事前確認の対象外で、渋谷区が自ら審査します。だからこそ、事前確認を依頼する前に区への事前相談が必要とされています。

Q. 防災マニュアルは一から作らないといけませんか?

A. 区のQ&Aでは、防火管理者が作成する消防計画も防災マニュアルに含まれるとされています。手書きでも、項目数が少なくても、災害時の体制・発災時の対応・安否確認の方法が記載されていれば認められるとの説明です。まず既存の書類を探すところから始めるのが早道です。

Q. 町会に加入していないマンションは、コミュニティ基準を満たせませんか?

A. 4つの基準のうち1つ以上を満たせば足ります。町会加入がなくても、共用部の清掃や共同花壇の管理といった美化活動、防災訓練の実施、町会・自治会との連絡担当者の選任などで対応できます。実施頻度は年1回以上が望ましいものの、不定期でも認定可能とされています。

Q. 認定を取ると、大規模修繕の費用は安くなりますか?

A. 認定そのものが工事費を下げるわけではありません。ただし共用部分リフォーム融資の金利引下げや、長寿命化促進税制による固定資産税の減額といった形で、資金計画には効いてきます。工事費そのものは、工法の選び方で差が出ます。

Q. 長期修繕計画のExcel版とは何ですか?

A. 渋谷区は、マンション管理センターへ提出するPDFとは別に、長期修繕計画のExcel形式ファイルを区へ直接提出するよう求めています。区が公開している「長期修繕計画(Excel版)フォーマット」を参考にするか、任意の形式でも構わないとされています。

Q. 打診調査や12条点検の記録は、認定に関係しますか?

A. 国の認定基準には法定点検の実施そのものは含まれていませんが、計画的修繕の実施と長期修繕計画の実効性は基準に入っています。外壁の全面打診調査の結果は、長期修繕計画の妥当性を裏づける材料になります。調査から補修まで一貫して対応した事例は明誠の施工事例からご覧いただけます。

まとめ|渋谷区の理事会が今週できる3つのこと

渋谷区の管理計画認定は、区への手数料が無料になった一方で、令和8年4月から独自基準3本が加わりました。費用の壁は下がり、書類の壁が少し上がった、というのが私の読みです。

今週できることを3つに絞ります。

  1. 防災マニュアルに相当する書類が手元にあるか探す。消防計画でも構いません。あれば独自基準1はほぼ片づきます。
  2. 町会・自治会との関わりを一つ書き出す。加入している区分所有者が一人でもいれば、独自基準3は満たせる可能性があります。
  3. 長期修繕計画の作成・見直し日を確認する。7年を超えていれば、認定の前に見直しが要ります。ここが一番時間を食います。

この3つが揃っていれば、渋谷区への事前相談はすぐ予約できます。揃っていなくても、何が足りないかが分かるだけで動き出せます。

私は現場の人間ですので、認定申請の代行はできません。ただ、長期修繕計画に載せる工事費の前提を組み替えるお手伝いはできます。工法の選択で仮設費が変われば、修繕積立金の引上げ幅も変わります。管理組合向けのご提案内容は管理組合のみなさまへにまとめています。技術面をさらに詳しくお知りになりたい方はロープアクセスドットコムもあわせてご覧ください。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せはこちらから承ります。

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月18日時点で公表されている渋谷区および国土交通省・東京都・住宅金融支援機構・公益財団法人マンション管理センターの公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、渋谷区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

出典・参考資料

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月18日

渋谷区の12条点検・外壁全面打診|電子提出とメール提出の実務ガイド【令和8年度版】

株式会社明誠の本間幸紘です。東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。

今回は渋谷区の12条点検(建築基準法第12条に基づく定期調査・検査報告)について書きます。渋谷区は事務所ビル・ホテル・商業施設と共同住宅が混ざり合う街です。渋谷駅周辺の再開発で新しいビルが次々と建つ一方、代々木・幡ヶ谷・初台・恵比寿のあたりには昭和50年代から平成初期のタイル張りマンションや中小規模の雑居ビルが数多く残っています。渋谷区で建物をお持ちの方から「複合用途だと対象になるのか」「報告書はメールで出せると聞いたが本当か」というご相談を、私は毎年いただきます。

前置きは短くします。制度の条文解説は他所にもありますので、この記事では渋谷区で実際に報告書を出すときの手順と、外壁の全面打診にいくらかかるのかの2点を、現場の数字で書きます。

結論:渋谷区の12条点検で押さえるべき5点

先に結論からお伝えします。

論点 結論
対象になるか 不特定多数が利用する用途(共同住宅・ホテル・物販店舗・事務所等)で一定規模を超えるものが「特定建築物」。用途コードと規模は東京都の定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧で確認します
報告の頻度 特定建築物定期調査は用途・規模により毎年または3年ごと。防火設備・建築設備・昇降機等の検査は毎年(出典:渋谷区「定期報告について」)
外壁の打診 落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面打診等は概ね10年に1度(出典:国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」)
どこに出すか 報告の4種類それぞれで受付機関が別。届出書類は渋谷区役所本庁舎11階の建築課設備係
費用の目安 外壁打診調査そのものは250〜500円/㎡が目安。総額を左右するのは仮設費で、足場かロープアクセスかで数十万〜百万円単位の差が出ます

渋谷区のオーナーさま・管理組合にとって最初の関門は、「竣工または外壁改修から10年」です。そしてその10年目の調査を、足場を架けて行うのか、無足場のロープアクセス工法で行うのかで、費用も居住者・テナントへの影響もまったく違います。ここを知らずに1社だけの見積で決めてしまう組合さまを、私は何度も見てきました。

建築基準法第12条とは|1項の「調査」と3項の「検査」を分けて覚える

まず用語の整理です。ここを混同したまま管理会社の説明を聞くと、話が噛み合いません。

  • 第12条第1項|特定建築物定期調査……建物本体の調査です。敷地および地盤、建築物の外部、屋上・屋根、建築物の内部、避難施設等を、一級建築士・二級建築士または特定建築物調査員が調査します。外壁の打診はここに含まれます。
  • 第12条第3項|防火設備・建築設備・昇降機等の定期検査……防火扉や防火ダンパー、換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給排水設備、エレベーター・エスカレーター等の検査です。

渋谷区のホームページにも「建築基準法による定期報告には、特定建築物定期調査や防火設備定期検査、建築設備定期検査、昇降機等定期検査の4種類があります」と明記されています。また同ページには「建築基準法に基づく『定期調査・検査報告制度』は、消防法に基づく消防用設備等点検とは異なる制度です」という注記もあります(出典:渋谷区「定期報告について」)。消防点検をやっているから12条点検は不要、という誤解は本当に多いので、ここは分けて覚えてください。

渋谷区で報告書を出す先|4種類それぞれ受付機関が違う

渋谷区で実務上いちばん間違いが起きるのがここです。「区役所に持っていけばいい」と思っていると空振りします。

報告の種類 提出先(受付機関) 電話
1. 特定建築物(調査) 公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1929
2. 防火設備(検査) 同センター 03-5989-1937
3. 建築設備(検査) 一般財団法人 日本建築設備・昇降機センター 03-3591-2421
4. 昇降機等(検査) 一般社団法人 東京都昇降機安全協議会 03-6304-2225

(出典:渋谷区「定期報告について」、更新日2026年7月1日)

一方で、除却届・使用休止届・所有者等変更届・対象外届・改善計画書/改善完了報告書・新規登録といった渋谷区が定める届出書類は、渋谷区役所本庁舎11階の都市整備部 建築課 設備係が窓口です。問い合わせ先は電話03-3463-2742(FAX 03-5458-4923)と案内されています。郵送の場合は〒150-8010(住所不要)渋谷区都市整備部建築課設備係あて。副本の返却を希望する場合は返信用封筒を同封し、届出書は信書にあたるためレターパックや特定記録郵便など信書を送れる方法を使うよう案内されています。

なお、敷地内に延べ面積が1万㎡を超える建築物がある場合は、特別区ではなく東京都 市街地建築部 建築企画課(特定建築物・防火設備は03-5388-3344、建築設備・昇降機等は03-5388-3349)の所管になります(出典:東京都都市整備局)。渋谷駅周辺の大規模複合ビルは、こちらに該当するケースが出てきます。

渋谷区で使える電子提出・メール提出・スマート申請

渋谷区は、この数年で提出方法の電子化をかなり進めています。ここは他区と比べても運用が整理されている部分なので、実務担当の方は押さえておいて損がありません。

① 昇降機等定期検査報告書の電子提出(令和7年4月1日開始)
インターネットを利用した報告書提出の受付が令和7年4月1日から始まりました。渋谷区の説明では「報告書の提出から受理までの日数が大幅に短縮され、報告書の副本は電子データ(PDF)での返却」となります。

② 建築設備定期検査報告書の電子提出(令和8年4月1日開始)
建築設備(昇降機などを除く)の定期検査報告書の電子提出が、令和8年4月1日から開始されました。提出方法は日本建築設備・昇降機センターの案内に従います(出典:渋谷区「定期調査・検査報告書の電子提出について」、更新日2026年7月1日)。

③ 届出書類のメール提出(2026年1月5日から)
渋谷区が定める定期報告関係書類は、メールでも提出できるようになりました。宛先は建築課設備係のアドレスで、件名に報告書の種類、本文に物件名称・所在地(住居表示)・整理番号・会社名・担当者・電話番号・メールアドレス・受理書の要否を記載します。添付は全てPDFで、受信できる最大容量は約10MB。超える場合は分割するか、渋谷区指定のファイル共有サービスを使う運用です。

④ オンライン申請(スマート申請)
Grafferのスマート申請にも対応しています。Grafferアカウント、Googleアカウント、LINEアカウント、メールアドレス認証のいずれかでログインし、申請後は「受付完了メール」、受理時は「処理の完了メール」が届きます。審査・受理は土日祝・年末年始(12月29日〜1月3日)を除く平日8時30分〜17時15分です。

⑤ 昇降機の改修工事に伴う報告は不要に(令和7年4月1日から)
渋谷区では、令和7年4月1日より建築基準法第12条第5項による「昇降機の改修工事に伴う報告」が不要となりました。改修した年月日と改修内容は、昇降機等定期検査報告書の備考欄に記載して報告する運用です。これは管理会社側でも認識が更新されていないことがあるので、渋谷区の物件をお持ちの方は一度ご確認ください。

外壁全面打診の「10年」はいつから数えるのか

ここが、渋谷区に限らず最も多い質問です。国の告示では、次の事象が生じた日が属する年度の翌年度の4月1日から起算して10年を超え、最初の報告日までに、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面打診等が必要とされています。

  • 検査済証の交付を受けた日
  • 外壁の全面改修が完了した日
  • 落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的なテストハンマーによる打診等が完了した日

たとえば竣工年度(検査済証の日付)が平成25年度の共同住宅であれば、起算開始日は平成26年4月1日、全面打診等が必要になるのは令和6年4月1日以降の報告日まで、という数え方になります(出典:板橋区「建築基準法に基づく特定建築物の外壁全面打診などの調査について」/国土交通省)。

対象となる外装仕上げ材は、タイル、石貼りなど(乾式工法によるものを除く)、モルタルなどによるもの。乾式工法以外で固定方法が不明な仕上げ材も、原則として調査の対象です。

例外もあります。 定期調査の実施から3年以内に外壁改修もしくは全面打診等が行われることが確実である場合、または別途歩行者等の安全を確保する対策(壁面直下の落下物防護ネット設置など)を講じている場合は、この限りではないとされています。ただし前者は、建築基準法第8条第2項の維持保全計画書等で時期が明確にされており、かつ計画どおり実施される見込みであることが条件で、調査結果表の特記事項欄に予定時期を記載し、計画書を添付する必要があります。「大規模修繕を予定しているから今回は見送る」という判断をされるなら、この裏づけをセットで用意してください。

ちなみに「歩行者等に危害を加えるおそれのある部分」とは、当該壁面の前面かつ壁の高さの概ね2分の1の水平面内に、公道、不特定または多数の人が通行する私道、構内通路、広場を有するものを指します。渋谷区のように歩道に面して建つビルが多い街では、ほぼ全面が該当するとお考えいただくのが現実的です。

令和7年7月1日施行の告示改正|調査結果表の様式が変わりました

もう一点、渋谷区でこれから報告される方に必ず知っておいていただきたい改正があります。

令和6年国土交通省告示第974号(令和6年6月28日公布)および令和7年国土交通省告示第53号(令和7年1月29日公布)により、定期調査・検査等の項目、方法、結果の判定基準、調査結果表等の見直しが行われ、令和7年7月1日に施行されました。これを受けて東京都建築基準法施行細則および東京都告示も令和7年6月30日公布・同年7月1日施行で改正されています。

東京都は原則として国の改正内容を踏襲しますが、都独自の措置として次の点を維持・追加しています(出典:東京都都市整備局「2.定期調査・検査制度改正の内容」)。

  • 「常時閉鎖式防火扉」は従来どおり特定建築物定期調査で報告し、防火設備定期検査では報告を求めない
  • 「換気設備」の「物品放置の状況」について、自然換気設備は従来どおり特定建築物定期調査で報告
  • 避難経路上の「窓先の空間」の確保に関する調査を追記(東京都建築安全条例の改正内容を反映)

そして実務上の注意として、令和7年7月1日施行の調査・検査結果表は7月1日以降に調査・検査する物件に使用し、6月30日以前に調査・検査した物件は従前の様式を使用するとされています。調査会社から上がってきた報告書の様式が新旧どちらなのか、受け取る側も一度は確認しておくと差し戻しを防げます。

渋谷区のページからも、この改正については東京都のページを参照するよう案内が出ています。

渋谷区で外壁打診にかかる費用|足場かロープアクセスかで総額が変わる

ここからが、私が現場で一番お伝えしたい話です。

全面打診の方法として、告示や自治体の解説では主に2通りが示されています。

  1. 調査範囲に足場等を設置してテストハンマーで全面打診する方法
  2. 赤外線装置による調査で、国が指定するガイドライン等による方法

ここで見落とされがちなのが、「足場等」の「等」の部分です。告示が求めているのは「全面的な打診等」であって、枠組足場の架設そのものではありません。ロープアクセス工法でも、作業員が直接外壁に取り付いて打診棒で全面を叩いて打音を確認しますので、打診という行為の中身は足場の場合と同じです。

費用の目安を、レンジで示します。実際の見積は建物の形状・立地・仕上げ材の状態で大きく変わりますので、あくまで参考値としてご覧ください。

項目 目安
外壁打診調査(打診作業そのもの) 250〜500円/㎡
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡
防水 5,000〜8,000円/㎡
枠組足場の全面架設(10階建て・外周80m・工期3か月のモデル) 約168万円
同条件をロープアクセス工法で対応した場合の仮設費 約59万円

つまり同じ条件で、仮設費だけで約109万円の差が出る計算です。30戸規模のマンションの大規模修繕は総工費3,500〜5,000万円程度、うち仮設足場が15〜25%を占めるのが一般的ですから、打診調査単体であればなおさら仮設費の比重が大きくなります。

加えて、渋谷区のような立地では足場を架けること自体のハードルがあります。敷地に余裕がなく隣地との離隔が取れない、前面が人通りの多い歩道、テナントの営業を止められない、ホテルで客室からの眺望と防犯を確保したい——こうした条件では、部位ごとに足場とロープアクセスを使い分けるハイブリッド工法が現実解になることも多いです。明誠が3工法を持っているのは、こうした「この建物にはどれが合うか」を数字で比較してお出しするためです。大規模修繕の料金の考え方もあわせてご覧いただくと、私たちの積算の前提が伝わるかと思います。

工法の技術的な比較や作業手順の詳細は、同業者・FC加盟をご検討の方向けに姉妹サイトで解説しています。ロープアクセスドットコム(https://rope-access-method.com/)をご参照ください。

渋谷区の複合用途ビルで判定に迷ったときの進め方

渋谷区に多いのが、1〜2階が店舗や飲食、上層階が事務所または共同住宅という複合用途の建物です。これは「うちは対象か」の判断が最も難しいパターンです。

東京都は、判断がつかない場合は次の情報を整理したうえで所管の特定行政庁に問い合わせるよう案内しています。

  1. 全体の階数・面積
  2. 各用途に供する面積
  3. 各階の用途等

また、物販店舗・共同住宅・複合建築物・事務所については報告対象建築物の判断のフローチャート、病院・旅館・ホテル・展示場・キャバレー・遊技場・飲食店等についてはケーススタディがPDFで公開されています(出典:東京都都市整備局)。まずこの2つに当たってから、渋谷区 建築課設備係(03-3463-2742)にご相談いただくのが早道です。

新たに定期報告の対象となる建築物については、渋谷区の「新規登録用紙」に各階の面積・用途が分かる資料を添えて提出します。逆に対象から外れる場合は「定期調査・検査報告対象外届」を、根拠資料(各階用途および床面積表、平面図、設備図、写真など)を添えて提出する運用です。

初回免除と報告時期|新築ビルのオーナーさまへ

渋谷区で新しくビルやマンションを取得された方が見落としやすいのが「初回免除」です。

特定建築物定期調査と防火設備定期検査には初回免除の制度があり、新築・改築後は検査済証の交付を受けた日の属する年度の翌年度以降の2回目の報告時期から報告が必要になります。3年ごとに報告が必要な共同住宅の例では、令和5年度中に検査済証が交付された建築物は令和6年度の報告が免除され、令和9年度(令和9年5月1日〜10月31日)から報告が必要になります。

一方、建築設備および昇降機等の定期検査報告は取扱いが異なり、検査済証の交付を受けた日の翌日から起算して2年を経過する日までに初回の報告を提出する必要があります。たとえば検査済証交付日が令和6年6月17日なら、初回報告は令和8年6月17日まで。「特定建築物と同じだろう」と構えていると期限を過ぎますので、ここは分けて管理してください(出典:東京都都市整備局)。

なお、定期報告をしなかったり虚偽の報告をした場合は罰則の対象になります。制度としての強制力はきちんとある、という前提でご検討ください。

明誠が渋谷区の12条点検・打診調査でお役に立てること

少しだけ自己紹介をさせてください。

株式会社明誠は、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けており、品質管理はISO9001のマネジメントシステムに基づいて運用しています。日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。

私たちの強みは、通常足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3つから、その建物に合う方法を数字で比較してご提案できることです。1工法しか持たない会社は、どうしても自社の得意な方法に寄った提案になります。技術の詳細は明誠のロープアクセス工法と安全管理の考え方をご覧ください。ビルオーナーさま向けの体制はビルオーナー向けサービスにまとめています。

これまでの施工事例は施工実績のページからご覧いただけます。渋谷区内の物件でも、打診調査から補修・改修まで一貫してお手伝いした実績があります。

日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟しているため、打診で浮きが見つかった際に補修まで同じ体制で進められるのも、結果として費用と工期を抑えられる理由です。加盟に関する技術情報はロープアクセスドットコムで公開しています。

よくあるご質問

Q. 渋谷区の小規模な賃貸マンションでも12条点検の対象になりますか?

A. 用途と規模で決まります。共同住宅の場合、階数と延べ面積の要件を満たすものが対象です。東京都の定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧で用途コードと規模をご確認ください。判断がつかない場合は、渋谷区 建築課設備係(03-3463-2742)にお問い合わせいただくのが確実です。

Q. 外壁の全面打診調査の費用はいくらぐらいですか?

A. 打診作業そのものは250〜500円/㎡が目安ですが、総額を決めるのは仮設費です。10階建て・外周80mのモデルケースで、枠組足場の全面架設が約168万円に対し、ロープアクセス工法なら約59万円程度というレンジ感です。建物の形状や立地で変わりますので、概算のお見積りは無料でお出ししています。

Q. 足場を架けずに全面打診をしても、報告書として認められますか?

A. 告示が求めているのは「全面的な打診等」であって、足場の架設ではありません。ロープアクセス工法でも作業員が直接外壁に取り付いて打診棒で打音を確認しますので、打診そのものの方法は足場の場合と同じです。加えて、赤外線装置による調査で国が指定するガイドライン等による方法も認められています(出典:国土交通省)。

Q. 渋谷区では報告書をメールで提出できますか?

A. 渋谷区が定める定期報告関係書類については、2026年1月5日からメール提出が可能になりました。添付は全てPDFで、受信できる最大容量は約10MBです。10MBを超える場合は分割するか、渋谷区指定のファイル共有サービスを利用します。なお、特定建築物・防火設備・建築設備・昇降機等の各報告書そのものは、それぞれの受付機関へ提出します(出典:渋谷区)。

Q. 報告の時期はいつですか?

A. 特定建築物定期調査は用途・規模により毎年または3年ごと、防火設備・建築設備・昇降機等の定期検査は毎年です。新築後は初回免除の制度があり、特定建築物と防火設備は検査済証交付年度の翌年度以降の2回目の報告時期から。建築設備・昇降機等は検査済証交付日の翌日から起算して2年を経過する日までに初回報告が必要です(出典:東京都都市整備局)。

Q. 前回の調査で「要是正」が出ました。直したあとに手続きは要りますか?

A. 渋谷区では特定建築物定期調査・防火設備定期検査それぞれの改善計画書・改善完了報告書の様式が用意されています。改善計画を策定したとき、または改善が完了したときに提出します。改善完了報告書には工事図面や工事写真など、改善が分かる資料の添付が必要です。スマート申請にも対応しています。

Q. 調査だけを頼むことはできますか?

A. できます。調査と補修を別々にご検討いただいて構いません。ただ、打診で浮きが見つかった場合、同じ仮設を使って補修まで進めたほうが費用も居住者・テナントへの負担も抑えられます。判断材料としての比較見積りをお出ししますので、どちらが有利か数字でご確認ください。

Q. 工期はどれくらいかかりますか?

A. 打診調査単体であれば、中規模の建物で数日から2週間程度が目安です。大規模修繕と一体で行う場合、ロープアクセス工法なら足場工法の6割程度の工期で進むケースが多く、10階建て・外周80mの建物で足場3か月に対しロープアクセス1.5〜2か月が一つの目安です。

まとめ|渋谷区のオーナーさま・管理組合が今週動くこと3点

長くなりましたので、動き方を3点に絞ります。

  1. 竣工年(または直近の外壁改修年)を確認する……その年度の翌年度4月1日から10年を超えていれば、次の定期調査で全面打診が発生します。検査済証の交付年度も合わせて確認すると、初回免除の有無まで判断できます。
  2. 報告書の様式が令和7年7月1日施行の新様式かを確認する……調査日が令和7年7月1日以降なら新様式、6月30日以前なら従前の様式です。ここで差し戻されると、報告期間内に間に合わなくなることがあります。
  3. 足場ありとロープアクセスの2パターンで概算を取る……調査費だけでなく仮設費を含めた総額で比較してください。この1点を守るだけで、数十万円から百万円単位の判断材料が手に入ります。

大規模修繕の検討が視野に入っている組合さま・オーナーさまであれば、明誠の理念と提供価値もあわせてご覧いただけると、私たちの考え方が伝わるかと思います。

12条点検は、法律で決められた義務であると同時に、建物の状態を第三者の目で棚卸しできる数少ない機会でもあります。報告書を出して終わりにするか、次の10年の修繕計画の土台にするかで、10年後の資産価値は変わります。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会や予算組みの前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。

お問い合わせは明誠のお問い合わせフォームからどうぞ。

出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月18日時点で公表されている渋谷区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・運用変更があり得ます。実際に報告・申請される前に、必ず渋谷区 建築課設備係および該当の受付機関へ最新の内容をご確認ください。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月18日

技術情報・工法の詳細は姉妹サイト ロープアクセスドットコム(https://rope-access-method.com/) もあわせてご覧ください。

世田谷区の12条点検・外壁全面打診|対象建築物と報告時期の実務ガイド【令和8年度版】

株式会社明誠の本間幸紘です。東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。

今回は世田谷区の12条点検(建築基準法第12条第1項に基づく特定建築物定期調査)について書きます。世田谷区は東京23区のなかでも分譲マンションのストックが厚く、昭和50年代から平成初期に建った中低層のタイル張りマンションが、成城・用賀・経堂・三軒茶屋といったエリアに数多く残っています。世田谷区でマンションやビルを持つ方から「うちは12条点検の対象なのか」「外壁の全面打診は本当にやらないといけないのか」というご相談を、私は毎年のように受けています。

ここからが本題です。制度の条文解説だけなら他所にいくらでもありますので、この記事では世田谷区で実際に報告書を出すときの動き方と、打診調査にいくらかかるのかという2点を、現場の数字で書きます。

結論:世田谷区で12条点検の対象になる建物と、全面打診が必要になるタイミング

先に結論から申し上げます。

論点 結論
対象になるか 不特定多数が利用する用途(共同住宅・ホテル・物販店舗・事務所等)で、一定規模を超える建築物が「特定建築物」として対象。世田谷区の定期報告が必要な特定建築物・防火設備・建築設備・昇降機等及び報告時期一覧(令和8年度版PDF)で用途コードと規模を確認するのが確実です
報告の頻度 共同住宅は3年に1度が基本。用途・規模により年次が定められています(出典:東京都都市整備局「3.定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧」)
外壁の打診 手の届く範囲の打診等は概ね6か月〜3年に1度。落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面打診等は概ね10年に1度(出典:国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」)
どこに出すか 世田谷区内の特定建築物(調査)の報告書は、区が受付業務を委託している公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター 建築防災課へ。ただし敷地内に延べ面積10,000㎡超の建築物がある場合は東京都所管
費用の目安 外壁打診調査は250〜500円/㎡が一つの目安。足場を架けるか、ロープアクセスで降りるかで総額が大きく変わります

つまり、「竣工または外壁改修から10年」が世田谷区のオーナーさま・管理組合にとっての最初の関門です。そしてその10年目の調査を、足場を架けてやるのか、無足場のロープアクセス工法でやるのかで、数十万円から百万円単位の差が出ます。ここを知らずに見積1社だけで決めてしまう管理組合を、私は何度も見てきました。

建築基準法第12条とは何か|1項の「調査」と3項の「検査」は別物

まず用語を整理します。ここを混同したまま管理会社の説明を聞くと、話が噛み合いません。

  • 第12条第1項|特定建築物定期調査……建物本体の調査です。敷地及び地盤、建築物の外部、屋上及び屋根、建築物の内部、避難施設等を、一級建築士・二級建築士または特定建築物調査員が調査します。外壁の打診はここに含まれます。
  • 第12条第3項|防火設備・建築設備・昇降機等の定期検査……防火扉や防火シャッター、換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給水排水設備、エレベーター等の検査です。

世田谷区の場合、この4種類で提出先がそれぞれ別の機関になります。これは区のホームページに明記されています(出典:世田谷区「定期調査・検査報告制度」)。

報告の種類 提出先
1. 特定建築物(調査) 公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター 建築防災課(電話 03-5989-1929)
2. 防火設備(検査) 同センター 防火設備課(電話 03-5989-1937)
3. 建築設備(検査) 一般財団法人 日本建築設備・昇降機センター(電話 03-3591-2421)
4. 昇降機等(検査) 一般社団法人 東京都昇降機安全協議会(電話 03-6304-2225)

「区役所に持っていけばいい」と思っていると空振りします。私はいつも理事長さまに「調査の会社と、報告書を出す先は分けて覚えてください」とお伝えしています。

なお、定期報告をしなかったり虚偽の報告をした場合は罰則の対象になります。制度としての強制力はきちんとある、という前提で読み進めてください。

世田谷区で報告対象になる規模と、報告サイクルの数え方

世田谷区は特定行政庁として、区内の特定建築物の定期報告を所管しています。ただし線引きがひとつあります。

  • 敷地内に延べ面積10,000㎡を超える建築物がある場合 → 東京都都市整備局 市街地建築部 建築企画課(電話 03-5388-3344)の所管
  • それ以外 → 世田谷区(受付は東京都防災・建築まちづくりセンター)

(出典:世田谷区「定期調査・検査報告制度」/東京都都市整備局)

世田谷区内で10,000㎡を超えるのは、二子玉川・三軒茶屋の大規模再開発系の建物や、大規模団地の一部です。多くの中小規模マンション・ビルは区扱いと考えてよいでしょう。

「初回免除」を知らないと1回分を余計に払う

見落とされがちなのが初回免除です。東京都の運用では、新築・改築後は、検査済証の交付を受けた日の属する年度の翌年度以降の2回目の報告時期から報告が必要になります。

たとえば3年ごと報告の共同住宅で、令和5年度中に検査済証が交付された建物なら、令和6年度の報告が「直近の時期」となって免除され、令和9年度(令和9年5月1日から令和9年10月31日まで)から報告が必要になります(出典:東京都都市整備局)。

報告期間が5月1日〜10月31日であることも覚えておいてください。世田谷区のマンションは3月・4月に通常総会を開く組合が多いので、総会で調査費用を議決 → 5月以降に調査 → 10月までに報告という流れがきれいに収まります。逆に、秋の総会で決議しようとすると、その年度の報告に間に合わない事態が起こり得ます。

令和7年7月1日施行の告示改正にも注意

令和6年国土交通省告示第974号(令和6年6月28日公布)および令和7年国土交通省告示第53号(令和7年1月29日公布)により、定期調査・検査の項目、事項、方法、結果の判定基準、調査結果表等が見直され、令和7年7月1日に施行されています(出典:世田谷区「定期調査・検査報告制度」)。

令和8年度の調査は、この改正後の様式・判定基準で行われます。数年前の報告書をそのまま流用しようとする業者には、私なら一度確認を入れます。

外壁の全面打診が必要になる4つのトリガー

ここが本記事の核心です。平成20年国土交通省告示第282号により、外装仕上げ材等(タイル、石貼り等(乾式工法によるものを除く)、モルタル等)の劣化及び損傷の状況の調査については、次のように定められています。

  • 概ね6か月から3年以内に1度、手の届く範囲の打診等
  • 概ね10年に1度、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等

(出典:国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」)

実務上、全面打診が発生するトリガーは次の4つです。

  1. 竣工から10年を経過して最初に到来する定期調査
  2. 外壁改修(タイル張替え・全面塗装等)から10年を経過して最初に到来する定期調査
  3. 前回調査で「要調査」と判定され、詳細調査が求められている場合
  4. 外壁タイルやモルタルの落下事故が発生した場合、またはその兆候が確認された場合

3番と4番は「10年」の話とは無関係に発生します。世田谷区は歩道が狭く、建物の直近を通学路が走っている立地が多いエリアです。私の経験上、道路に面した妻面・バルコニー側の手すり壁下端は、いちばん危ない割に、いちばん見落とされます。

現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、「3年前の調査で指摘されていたのに、理事会の引き継ぎで消えていた」というケースです。定期調査で要是正が出た場合、世田谷区には【特定建築物】改善完了報告書という様式があり、改善したら提出する運用になっています。この様式の存在を知らない管理組合が本当に多い。引き継ぎノートに一行足しておくだけで防げます。

世田谷区固有の運用|電子申請、郵送先、概要書の閲覧

世田谷区は定期報告まわりの手続きの電子化を進めています。ここは他区と運用が違う部分なので、実務担当の方は押さえておいてください。

電子申請(LoGoフォーム)に対応している区の様式

  • 建築物等の所有者等変更届
  • 建築物【除却・使用休止】届
  • 建築物再使用届
  • 特定建築設備等【廃止・使用休止】届/再使用届
  • 特定建築設備定期検査報告対象外届
  • 【特定建築物】改善完了報告書
  • 【防火設備】改善完了報告書

利用には事前にLoGoフォームのアカウント登録が必要です。また、区の受付印付きの副本が必要な場合は、電子申請ではなく郵送で正本・副本の2部と返信用封筒を送る必要があります。

郵送先:〒158-0094 世田谷区玉川1丁目20番1号 防災街づくり担当部 建築安全課 建築安全担当あて(電話 03-6432-7180)

定期報告概要書の閲覧:世田谷区役所 二子玉川分庁舎2階 A23番窓口。閲覧時間は午前9時〜午後5時(正午〜午後1時を除く。申込受付は午後4時30分まで)。閲覧のみは無料、写しの交付は1通100円です。

また、世田谷区では令和7年4月より昇降機等の定期検査報告について電子受付を順次開始しています。

(以上すべて出典:世田谷区「定期調査・検査報告制度」最終更新2026年4月1日)

中古で物件を取得したオーナーさまには、私はまず概要書の閲覧をおすすめしています。過去の調査でどこに要是正が出ていたかが分かると、修繕計画の優先順位が一気に具体化します。1通100円で買える情報としては、これほど費用対効果の高いものはそうありません。

世田谷区の建物事情から見た、外壁打診の勘所

世田谷区で12条点検をやっていて感じるのは、「高層タワーは少ないが、面倒な形状の中低層が多い」という特徴です。

  • 敷地が旗竿・不整形……成城、深沢、等々力あたりの住宅地に建つ低層マンションは、隣地との離隔が数十センチしかないことが珍しくありません。足場を架けようにも物理的に入らない。
  • 台地と谷の高低差……国分寺崖線沿い(等々力渓谷、岡本、上野毛)では、建物の前面と背面で地盤レベルが2〜3層ぶん違うことがあります。足場の計画が一気に複雑になり、仮設費が跳ね上がります。
  • タイル張りの中低層が主力……昭和50年代〜平成初期の5〜8階建てタイル張りが世田谷区の主力ストックです。まさに全面打診がいちばん効く(そして浮きが出やすい)世代です。
  • 駐車場・駐輪場・植栽が建物際を占有……これも足場の足かせになります。

世田谷区は令和4年度に区内全分譲マンションを対象とした分譲マンション実態調査を実施しており、維持管理や大規模修繕の実施状況を把握しています。区としてもマンションストックの維持管理には力を入れており、マンション管理アドバイザー制度利用助成などの支援メニューも用意されています。12条点検の結果を持って、こうした窓口に相談するのは有効な進め方です。

実務コスト感|打診調査の㎡単価と、足場費の重み

お金の話をします。ここを曖昧にしたまま「まずは調査だけ」と言う会社は、私はあまり信用しません。

外壁打診調査そのものの単価目安

項目 目安
外壁打診調査(打診棒による打音確認) 250〜500円/㎡
外壁塗装(仕上げ) 3,500〜4,500円/㎡
防水(屋上・バルコニー) 5,000〜8,000円/㎡

※いずれも参考値です。建物の形状、階数、外装材の種類、足場の要否、周辺環境により実際の見積は大きく変動します。

問題は打診の単価ではなく、そこに到達するための仮設費です。

足場とロープアクセスの費用差(10階建て・外周80m・工期3か月のモデルケース)

工法 仮設費の目安
枠組足場を全面架設 約168万円
ロープアクセス工法 約59万円
差額 約109万円

これは弊社が実際に比較提案してきたレンジの一例です。マンションの大規模修繕全体で見ても、30戸規模で総工費3,500〜5,000万円のうち、仮設足場が15〜25%を占めます。打診調査のためだけに足場を架けるのであれば、この負担はまるごと「調査費」に乗ってきます。

正直に申し上げます。竣工10年目の建物で、まだ大規模修繕をやる年次ではない。でも12条の全面打診は来る。このタイミングで足場を架けるのは、費用の使い方としてかなりもったいない。ここが無足場工法の出番です。

ロープアクセス工法が世田谷区の12条打診で選ばれる理由

ロープアクセス工法(産業用ロープで屋上から降下し、作業員が直接外壁にアクセスする無足場工法)が12条点検と相性が良い理由は、3つあります。

1. 足場が架けられない立地でも打診できる

前述のとおり、世田谷区は隣地との離隔が取れない物件が多い。ロープアクセスなら屋上の支点さえ確保できれば、外周に作業空間がいらない。国分寺崖線沿いの高低差のある敷地でも、上から降りる分には地盤レベルの影響を受けません。

2. 居住者・テナントの生活影響が小さい

足場を架けると、外周全体に養生シートがかかり、1〜3か月にわたって日照・通風・眺望・プライバシーが犠牲になります。さらに、足場は外部からの侵入経路にもなり得ます。ロープアクセスは必要な面を必要な日数だけ作業するので、この負担が大幅に減ります。分譲マンションの理事会で、これがいちばん歓迎される点です。

3. 打診から補修までワンストップで進められる

打診で浮きが見つかったら、そのままアンカーピンニング工法などの補修に移れます。調査と補修で2回足場を架ける、という無駄が生じません。私はこれを、ワンセットでご提案するようにしています。

工法そのものの技術的な詳細——降下手順、バックアップシステム、支点の取り方、作業員の資格体系——については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに同業者向けの情報をまとめています。管理組合の技術系理事の方が読んでも十分わかる内容です。

安全面についても触れておきます。株式会社明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では、ロープアクセス工法での高所作業について過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたり、ISO9001の品質マネジメントシステムのもとで管理しています。安全管理の考え方は明誠の安全管理への取り組みにまとめてあります。訓練体系や資格の詳細はロープアクセスドットコム側が詳しいので、そちらもご覧ください。

弊社はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。通常足場・ロープアクセス・その2つを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法という3つの選択肢から、建物特性に応じてご提案できる点が、私たちの立ち位置です。工法の中身は明誠のロープアクセス工法の技術詳細をご覧ください。

無人航空機(ドローン)による赤外線調査という選択肢

もうひとつ、押さえておきたい制度の動きがあります。

令和4年1月18日付けで平成20年国土交通省告示第282号が一部改正され、打診以外の調査方法として、無人航空機による赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するものが明確化されました(出典:国土交通省)。

同等以上の精度かどうかの判定にあたっては、一般財団法人日本建築防災協会が設置した委員会がとりまとめた「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドライン」を参照することとされています。地上設置型の赤外線装置による調査も同様です。

ただし、私は赤外線調査を万能とは考えていません。実務上の制約が明確にあります。

  • 天候・日射条件に左右される……外気温と壁面温度の差が十分に出ないと判定精度が落ちます。撮影可能な時間帯・季節が限られます。
  • 北面や庇の陰は苦手……日射が当たらない面は温度差がつきにくい。
  • 世田谷区は住宅密集地……ドローンの飛行には航空法上の許可・承認に加え、第三者の上空を飛ばさない配慮、近隣への事前周知が必要です。隣地との離隔が取れない物件では、そもそも飛行経路が確保できないことがあります。
  • 浮きは分かっても、補修はできない……結局、補修工程では人が外壁に取り付く必要があります。

ですから私は、赤外線で全体をスクリーニングし、疑わしい範囲をロープアクセスで直接打診・補修するという組み合わせを提案することが多いです。ドローンによる調査メニューは明誠のドローン調査にまとめています。赤外線とロープアクセスの使い分けの技術的な考え方は、ロープアクセスドットコムでも解説しています。

12条点検を大規模修繕と一体化するメリット

最後に、私がいちばんお伝えしたいことです。

12条の全面打診は、概ね10年に1度。大規模修繕も、概ね12〜15年に1度。この周期は、2回に1回は重なるか、少なくともかなり近接します。世田谷区の中低層タイル張りマンションでは、竣工10年目の全面打診で浮きが相当数出て、12年目の大規模修繕で本格補修、という流れがよくあります。

ここで一体化のメリットが出ます。

一体化する項目 効果
仮設(足場またはロープ)の共用 仮設費を1回分に圧縮できる
調査データの流用 打診結果をそのまま補修数量の根拠にでき、見積精度が上がる
居住者への告知・調整の一本化 説明会・回覧・駐車場移動の負担が半分に
長期修繕計画への反映 打診結果を修繕積立金の見直し根拠として使える

私はいつも理事長さまに「12条点検の年と、大規模修繕の検討開始の年を、長期修繕計画の同じ行に並べて書いてください」とお伝えしています。別々の資料で管理していると、必ずどちらかが後追いになります。

管理組合向けのサービス全体像は管理組合さま向けの大規模修繕サービス、賃貸・オーナー物件やテナントビルはビルオーナーさま向けサービスにまとめてあります。費用の考え方については明誠の料金の考え方をご覧ください。

明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。世田谷区内の中低層マンションの事例も掲載しています。

よくあるご質問

Q. 世田谷区の小規模な賃貸マンションでも12条点検の対象になりますか?

A. 用途と規模で決まります。共同住宅の場合、階数と延べ面積の要件を満たすものが対象です。世田谷区の報告時期一覧(令和8年度版PDF)で用途コードと規模をご確認ください。判断がつかない場合は、世田谷区 建築安全課(03-6432-7180)にお問い合わせいただくのが確実です。

Q. 外壁の全面打診調査の費用はいくらぐらいですか?

A. 打診作業自体は250〜500円/㎡が目安ですが、総額を決めるのは仮設費です。10階建て・外周80mのモデルケースで、枠組足場の全面架設が約168万円に対し、ロープアクセス工法なら約59万円程度というレンジ感です。建物の形状や立地で変わりますので、概算のお見積りは無料でお出ししています。

Q. 足場を架けずに全面打診をしても、報告書として認められますか?

A. 告示が求めているのは「全面的な打診等」であって、足場の架設ではありません。ロープアクセス工法でも作業員が直接外壁に取り付いて打診棒で打音を確認しますので、打診そのものの方法は足場の場合と同じです。加えて、令和4年1月18日付けの告示一部改正で、無人航空機による赤外線調査で打診と同等以上の精度を有するものも明確化されています(出典:国土交通省)。

Q. 報告書はどこに提出すればよいですか?

A. 世田谷区内の特定建築物(調査)は、公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター 建築防災課(03-5989-1929)が受付機関です。防火設備、建築設備、昇降機等はそれぞれ別の機関になります。敷地内に延べ面積10,000㎡超の建築物がある場合は東京都都市整備局 建築企画課(03-5388-3344)の所管です。

Q. 報告の時期はいつですか?

A. 特定建築物の報告期間は、報告年度の5月1日から10月31日までです。共同住宅は3年ごとが基本で、用途・規模により報告年次が定められています。新築後は初回免除の制度があり、検査済証の交付年度の翌年度以降の2回目の報告時期からの報告となります(出典:東京都都市整備局)。

Q. 前回の調査で「要是正」が出ました。直したあと何か手続きは要りますか?

A. 世田谷区では【特定建築物】改善完了報告書の様式が用意されており、改善が完了した際に提出する運用です。LoGoフォームによる電子申請にも対応しています。詳細は世田谷区のページをご確認ください。

Q. 工期はどれくらいかかりますか?

A. 打診調査単体であれば、中規模マンションで数日から2週間程度が目安です。大規模修繕と一体で行う場合、ロープアクセス工法なら足場工法の約6割の工期で進むケースが多く、10階建て・外周80mのマンションで足場3か月に対しロープアクセス1.5〜2か月が一つの目安です。

Q. 調査だけを頼むことはできますか?

A. できます。調査と補修を別々にご検討いただいて構いません。ただ、打診で浮きが見つかった場合、同じ仮設を使って補修まで進めたほうが費用も居住者への負担も抑えられます。判断材料としての比較見積りをお出ししますので、どちらが有利か数字でご確認ください。

まとめ|世田谷区のオーナーさま・管理組合が今週動くこと3点

長くなりましたので、動き方だけ3点に絞ります。

  1. 竣工年(または直近の外壁改修年)を確認する……10年を超えていれば、次の定期調査で全面打診が発生します。検査済証の交付年度も合わせて確認すると、初回免除の有無まで判断できます。
  2. 前回の定期報告概要書を取り寄せる……世田谷区役所 二子玉川分庁舎2階 A23番窓口で閲覧できます。写しは1通100円。前回どこに要是正が出ていたかが、次の修繕計画の出発点になります。
  3. 足場ありとロープアクセスの2パターンで概算を取る……調査費だけでなく仮設費を含めた総額で比較してください。この1点を守るだけで、数十万円から百万円単位の判断材料が手に入ります。

大規模修繕の検討が視野に入っている組合さまであれば、明誠の理念と提供価値もあわせてご覧いただけると、私たちの考え方が伝わるかと思います。

12条点検は、法律で決められた義務であると同時に、建物の状態を第三者の目で棚卸しできる数少ない機会でもあります。報告書を出して終わりにするか、次の10年の修繕計画の土台にするかは、管理組合とオーナーさま次第です。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。

お問い合わせは明誠のお問い合わせフォームからどうぞ。

出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月18日時点で公表されている世田谷区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・運用変更があり得ます。実際に報告・申請される前に、必ず世田谷区 建築安全課および該当の受付機関へ最新の内容をご確認ください。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月18日

技術情報・工法の詳細は姉妹サイト ロープアクセスドットコム(https://rope-access-method.com/) もあわせてご覧ください。

目黒区の管理組合が無料で使える相談・派遣8選|区独自の派遣がない目黒区で、届出1枚が最大5回の無料アドバイザーに変わる

2026年9月17日 更新

「うちの区は、無料で管理士さんを呼べる制度がないんですよね」

先月、中目黒の管理組合の理事長さまから、そう言われました。築34年、52戸。長期修繕計画の見直し時期に来ているのに、判断材料がない。近隣区の話を聞くと専門家を無料で呼べるらしいが、目黒区のホームページを探しても、それらしいページが見つからない——というご相談でした。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンションやビルの外壁の仕事をしてきました。足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、両方の現場を経験してきた人間です。

理事長さまのおっしゃったことは、半分だけ当たっていました。

確かに目黒区には、区が主体となって運営する無料のマンション管理士派遣制度がありません。これは事実です。墨田区や新宿区のように「区が年◯回まで無料で専門家を送ります」という独自メニューを、目黒区の「マンション管理支援」カテゴリに見つけることはできません(2026年9月17日時点)。

ただし、目黒区のマンションが無料の専門家支援を受けられない、という意味ではまったくありません。目黒区の管理組合は、東京都の制度を直接使います。しかもその入口は、多くの管理組合がすでに提出を求められている「管理状況届出」という1枚の書類です。

今日は、目黒区のマンション管理組合とオーナーさまが、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)にお金をかけずに使える相談・派遣を8つ、一次情報で整理します。


結論:目黒区で無料で使える相談・派遣は8つある

先に一覧でお示しします。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用 申込先
1 管理状況届出に応じたアドバイザー派遣費用の助成 マンション管理士等 無料(1回、管理不全の兆候ありなら5回まで) 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1453
2 マンション管理士無料派遣(防災力向上) マンション管理士 無料(2回まで) 東京都マンション管理士会
3 マンション管理士無料派遣(認知症対応) マンション管理士 無料(2回まで) 東京都マンション管理士会
4 管理不全予防・改善支援事業(伴走型) マンション管理士 無料(一定期間、役員等として派遣) 東京都マンション課 03-5320-7532
5 目黒区 建築無料相談 建築士 無料(予約不要・当日先着順) 東京都建築士事務所協会目黒支部 03-5724-5061
6 分譲マンション総合相談窓口 専門相談員 無料 03-6427-4900
7 マンション管理センター 電話相談 マンション管理士等 無料 03-3222-1517/03-3222-1519
8 目黒区 住宅課 居住支援係 区職員 無料 03-5722-6841

このうち1から4までが「専門家が目黒区内のマンションまで来てくれる」派遣、5から8が相談窓口です。

順に見ていきます。


目黒区に区独自の派遣制度がない、その代わりに何があるか

まず前提の整理です。

東京都は平成31年3月に「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」を制定し、令和2年4月から管理状況届出制度を始めました。対象は、昭和58(1983)年12月31日以前に新築されたマンションのうち、居住用の独立部分が6戸以上のもの。これを「要届出マンション」と呼びます(出典:目黒区「マンション管理状況の届出をお願いします」)。

築42年以上、6戸以上。目黒区の分譲マンションストックを考えると、かなりの棟数が該当します。

そして、この届出がそのまま無料派遣の受給資格になります。ここが目黒区の管理組合にとって一番大きなポイントです。

墨田区のように区が独自予算で管理士を送る形ではなく、東京都が派遣費用を全額助成する形で、目黒区のマンションに専門家が来る。財源が違うだけで、管理組合から見れば「無料で専門家が来る」ことに変わりはありません。

目黒区の窓口は都市整備部住宅課居住支援係(電話03-5722-6841)です。届出書の郵送先も、〒153-8573 目黒区上目黒二丁目19番15号の同係になります。


1. 管理状況届出に応じたアドバイザー無料派遣:目黒区の管理組合が最初に使うべき制度

これが目黒区における「主力」です。

助成の中身

東京都マンションポータルサイトには、次のように書かれています。

対象 助成内容
届出を行った要届出マンション(昭和58年12月31日以前新築・6戸以上)の管理組合 派遣費用を1回全額助成
届出を行ったマンションのうち、管理不全の兆候があるマンションの管理組合 派遣費用を5回まで全額助成

(出典:東京都「管理状況の届出内容に応じたアドバイザー派遣費用の助成」)

「管理不全の兆候がある」とは、届出によって次のいずれかが判明したマンションを指します。

  • 管理組合や管理規約がない
  • 管理者がいない
  • 年1回以上総会を開催していない
  • 管理費や修繕積立金を積み立てていない
  • 計画的に修繕工事を行っていない

ここで誤解が起きやすいのですが、これは罰則の対象を炙り出すための項目ではありません。むしろ逆で、こうした状態にあるマンションほど手厚く(5回まで)無料で専門家を呼べる、という設計になっています。

私が現場で見てきた印象では、「計画的に修繕工事を行っていない」に該当する目黒区内の中小規模マンションは、決して少なくありません。分譲時の長期修繕計画が一度も見直されないまま30年経っている、というケースです。そういう管理組合こそ、この5回枠の対象になり得ます。

選べるコース

派遣には「講座編」と「相談編」があり、大規模修繕に直結するのは相談編のB-4、B-5①、B-5②です。

コース 業務内容
B-4 修繕計画の作成や修繕積立金等の設定に関すること
B-5① 修繕工事検討段階での相談(建物・設備等の劣化状況の調査・診断、修繕工事の検討組織、修繕工事の方式等)
B-5② 修繕工事準備段階の相談(修繕工事の内容、業者選定の仕方、合意形成等)

太字にした「修繕工事の方式」という文言に注目してください。足場を組むのか、ロープアクセス工法(無足場工法)でいくのか、部位ごとに使い分けるハイブリッド工法にするのか。この判断そのものを、無料枠の中で第三者の専門家に相談できます。

講座編にはA-4「計画修繕工事の進め方」もあります。理事が毎年入れ替わる管理組合では、まずここから入るのが現実的です。

申込先

派遣の申込先は目黒区ではなく、公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター まちづくり推進課(電話03-5989-1453、月〜金 9時00分から17時00分)です。区役所に電話しても、結局ここを案内されます。最初からこちらへ。


2・3. マンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応):令和8年度は160件枠

東京都が令和5年度から実施している事業です。令和8年度の募集内容が公表されています。

項目 内容
対象 都内に所在するマンション管理組合(目黒区内も当然対象)
回数 1管理組合につき、防災力向上と認知症対応それぞれ2回まで
費用 無料
受付期間 令和8年6月23日(火曜日)から令和9年2月26日(金曜日)まで
募集数 防災力向上・認知症対応 合わせて160件(達し次第締切)
申込先 一般社団法人 東京都マンション管理士会(https://www.kanrisi.org/)

(出典:東京都「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」)

注意点が1つあります。派遣回数は通算でカウントされます。令和5年度から令和7年度にこの事業で派遣を受けている管理組合は、その回数も各テーマ2回の上限に含まれます。過去の理事会議事録を確認してから申し込んでください。

そして、160件という枠は東京都全体の数字です。9月時点ですでに相当数が消化されている可能性があります。令和8年度中に使う予定があるなら、年度末に近づくほど枠の残りは読めなくなります。

防災力向上のアドバイス例として都が挙げているのは、自主防災組織の設置・強化、災害時にも使える居住者名簿の作成、発災時の緊急対応を定める管理規約の整備、カード式防災マニュアルなどです。

私の仕事との接点で言えば、「発災時の緊急対応を定める管理規約の整備」は外壁と直結します。地震や台風のあと、外壁タイルが浮いているかもしれない、という状況で、誰の判断で緊急調査を発注するのか。総会を待つのか、理事長判断でいいのか。ここが規約で決まっていない管理組合は、対応が2週間、3週間と遅れます。その間、剥落のリスクは残り続けます。


4. 管理不全予防・改善支援事業(伴走型):管理組合そのものがない場合

これは少し特殊な、しかし目黒区にも確実に該当物件がある制度です。

管理組合や管理規約がない、区分所有者だけでは管理の適正化が難しいマンションに対して、東京都がマンション管理士を管理組合の役員等として、一定期間、無料で派遣します。

(出典:東京都「管理不全予防・改善支援事業(伴走型)」)

流れは次のとおりです。

  1. 支援を希望する区分所有者による任意の団体等からの応募を、先着順で受付
  2. マンション管理士が区分所有者へ事業を説明し、意向を確認のうえ、都が支援対象マンションを決定
  3. 派遣管理士が現地調査を行い、支援提案書を作成
  4. 説明会を実施し、外部管理者方式等(区分所有者以外の者を管理者に選任する仕組み)の導入を準備
  5. 総会等で規約改定案を決議し、外部管理者方式等を導入
  6. 派遣管理士が外部管理者として、管理組合の設立・運営・規約整備などの諸問題を解決

「うちのマンションは理事のなり手がいない」「そもそも総会が何年も開かれていない」という状態の物件で、単発のアドバイスでは動かないケースを想定した制度です。令和8年度の募集が行われています。問い合わせ先は東京都住宅政策本部マンション課マンション施策調整担当(電話03-5320-7532)。

先着順である点は押さえておいてください。


5. 目黒区の建築無料相談:令和8年度の開催日は公表済み

ここからは目黒区が直接関わる窓口です。

住宅などの建築物の安全性を確保するための助言、建築基準法の法令説明、建て替えなどの相談を、費用無料・事前予約不要・当日先着順で受け付けています。

令和8年度の平日開催日程は次のとおりです(会場はいずれも目黒区総合庁舎本館1階西口ロビー、13時30分から16時)。

開催日
令和8年10月7日(水曜日)
令和8年11月11日(水曜日)
令和8年12月9日(水曜日)
令和9年2月10日(水曜日)

土曜開催もあります。令和9年3月13日(土曜日)10時から15時、目黒区総合庁舎本館1階E会議室。平日に動けない理事のかたはこちらを。

(出典:目黒区「建築無料相談」更新日:2026年6月10日)

問い合わせ先は東京都建築士事務所協会目黒支部(電話03-5724-5061)、区の担当は建築課建築指導係(電話03-5722-9637)です。

この相談会には建築士が出てきます。マンション管理士とは守備範囲が違います。建築基準法第12条に基づく定期報告のこと、外壁の全面打診の時期のこと、外壁改修の法的な扱い——このあたりは建築士に聞くのが早い。予約不要で行ける枠は貴重です。


6・7・8. 電話で完結する3つの窓口

分譲マンション総合相談窓口(電話03-6427-4900)
管理状況届出書の書き方から、日常的な維持管理、建替えや改修まで、幅広く受け付けています。届出のログインIDが分からない、といった実務的な話もここです。

公益財団法人 マンション管理センター
目黒区がホームページで案内している国の窓口です。管理組合運営・管理規約の相談は03-3222-1517、建物・設備の維持管理の相談は03-3222-1519。大規模修繕の話は後者になります。面談相談は電話での事前予約制。登録会員はメール相談も可能です(出典:目黒区「マンションの管理に関する相談」)。

目黒区 住宅課 居住支援係(電話03-5722-6841)
どの制度を使えばいいか分からない、という段階の交通整理はここが適任です。区の窓口なので、目黒区固有の事情も踏まえた案内が受けられます。


無料枠で「工法の選択」まで踏み込めるか

ここからは、私の本業の話を少しさせてください。

無料のアドバイザー派遣は非常に有用です。ただし、マンション管理士は工事の専門家ではありません。長期修繕計画の妥当性、修繕積立金の水準、業者選定の手続き——ここは管理士の領域です。一方で「この建物なら足場を組まずに済むか」という判断は、現場を見る側の領域になります。

目黒区は、坂が多く、敷地に余裕のない物件が多い区です。中目黒、祐天寺、碑文谷、洗足。隣地との離隔が1メートル取れない、道路使用許可が現実的でない、という現場を何度も見てきました。こういう物件で足場を前提に見積もると、仮設費が跳ね上がります。

参考として、10階建て・外周80m・工期3ヶ月規模の物件で、仮設足場が約168万円かかるケースに対し、ロープアクセス工法なら約59万円、差額で約109万円というレンジがあります。30戸規模のマンション大規模修繕の総工費は3,500万円から5,000万円程度、そのうち仮設足場が15%から25%を占めるのが一般的です。外壁塗装は3,500円から4,500円/㎡、打診調査は250円から500円/㎡、防水は5,000円から8,000円/㎡が目安になります。

いずれも目安・レンジであり、実際の見積は建物の形状、劣化状況、立地条件によって大きく変動します。この点は誤解のないように申し添えます。

株式会社明誠は、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けています。

工法の技術的な詳細——ロープの冗長性、バックアップデバイス、風速による中止基準といった話は、同業者・加盟希望者向けの姉妹サイトロープアクセスドットコムで解説しています。管理組合のかたが読んでも、「なぜ足場より安全だと言えるのか」の根拠が分かる内容になっています。

発注者向けの情報は、明誠のロープアクセス工法の技術詳細と、大規模修繕の料金の考え方をご覧ください。管理組合向けのサービス内容は管理組合向けの大規模修繕サービスにまとめています。

私からの提案は単純です。まず東京都の無料アドバイザーを呼んで、長期修繕計画と積立金の妥当性を第三者に見てもらう。そのうえで、工法の選択肢を複数社に出させる。この順番なら、無料枠が最大限に生きます。


目黒区の管理計画認定は26件:無料枠の「次」にあるもの

無料相談の先にある制度として、マンション管理計画認定制度にも触れておきます。目黒区は令和5年4月から運用を開始しました。

2026年9月17日時点で、目黒区が認定したマンションは26件です。直近ではラコンド駒沢公園が令和8(2026)年8月10日に認定を受けています(出典:目黒区「マンション管理計画認定制度」更新日:2026年8月21日)。

費用の内訳は次のとおりです。

費目 金額 支払先
システム利用料 1申請あたり10,000円 マンション管理センター
事前確認審査料(パターン3・4の場合) 長期修繕計画1計画あたり10,000円 日本マンション管理士会連合会/マンション管理センター
目黒区への申請手数料 かかりません —

目黒区は国の基準以外の独自基準を設けていません。認定基準は項目1(1)から項目5(1)までで、区独自の上乗せはない、と明記されています。有効期間は5年間です。

認定を受けると、住宅金融支援機構のフラット35やマンション共用部分リフォーム融資の金利引き下げ、マンションすまい・る債の利率上乗せの対象になります。長期修繕計画の見直しを無料アドバイザーと一緒に進めるなら、その延長線上に認定申請を置くのが効率的です。


よくあるご質問

Q. 目黒区には本当に区独自の無料派遣制度がないのですか?

A. 2026年9月17日時点で、目黒区の「マンション管理支援」カテゴリに掲載されているのは、管理状況届出、管理計画認定制度、マンション管理適正化推進計画、マンションの管理に関する相談、建替え事業の各ページです。区が主体となって管理士を無料派遣する独自制度は見当たりません。ただし東京都の制度が目黒区内のマンションにそのまま使えますので、実質的に無料の専門家支援は受けられます。

Q. 昭和58年より後に建ったマンションは、無料派遣を使えませんか?

A. 管理状況届出に基づく無料派遣は、要届出マンション(昭和58年12月31日以前新築・6戸以上)と、管理不全の兆候があるマンションが対象です。それ以外は対象外とされています。ただし防災力向上・認知症対応の管理士無料派遣(各2回まで)は都内の管理組合であれば築年を問わず対象ですので、こちらは使えます。

Q. 無料派遣で、大規模修繕の見積の妥当性まで見てもらえますか?

A. アドバイザー派遣の相談編B-5②「修繕工事準備段階の相談」に、修繕工事の内容や業者選定の仕方が含まれています。個別の見積書の一行一行を査定する制度ではありませんが、金額の水準感や業者選定手続きの妥当性については助言が受けられます。

Q. 打診調査の費用はどのくらいかかりますか?

A. 一般的な目安は250円から500円/㎡ですが、外壁の仕上げ材、足場の要否、調査範囲によって変動します。明誠では無料で概算のお見積りを提示できますので、大規模修繕のお問い合わせ窓口からお気軽にご相談ください。

Q. ロープアクセス工法だと工期はどれくらい短くなりますか?

A. 足場工法のおおむね60%程度が目安です。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場3ヶ月に対してロープアクセス1.5ヶ月から2ヶ月が一般的なレンジになります。ただし補修数量が多い物件では差が縮まります。技術面の詳細はロープアクセスドットコムで解説しています。

Q. 足場を組まない工法だと、品質が落ちませんか?

A. 足場とロープアクセスでは、適する部位が異なります。バルコニー内部や複雑な形状部分は足場のほうが確実で、平滑な外壁面や高層部はロープアクセスが有利です。明誠は3つの工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて選べるため、「全面ロープありき」の提案はしません。部位ごとに使い分けるハイブリッド工法が最適解になる物件も多くあります。

Q. 複数の無料制度を同時に使えますか?

A. 制度ごとに対象と回数が独立しているため、たとえば「管理状況届出に基づくアドバイザー派遣」と「防災力向上のマンション管理士無料派遣」を同じ年度に使うことは可能です。ただし各制度の詳細な併用可否は、それぞれの申込先にご確認ください。


目黒区の管理組合が、今月やるべきこと

長くなりましたので、動き方を3行にまとめます。

  1. 管理状況届出が済んでいるかを確認する(未提出なら住宅課居住支援係 03-5722-6841/届出がアドバイザー無料派遣の入口です)
  2. 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1453 に電話して、派遣コースを相談する(B-4またはB-5①が大規模修繕の入口)
  3. 令和8年10月7日(水曜日)の建築無料相談を理事会の年間予定に入れる(予約不要・当日先着順)

この3つは、いずれも費用がかかりません。

明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。目黒区内の物件で、足場が組めるかどうかの判断に迷われている管理組合のかたは、現地を見てからでないと正確なことは申し上げられません。無料の現地確認から承っています。


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月17日時点で公表されている目黒区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特に「防災力向上・認知症対応のマンション管理士無料派遣」は令和8年度160件の募集枠に達し次第締め切られ、「管理不全予防・改善支援事業(伴走型)」は先着順です。また目黒区「マンションの管理に関する相談」および「マンション管理状況の届出をお願いします」の各ページは更新日が2024年4月1日であり、掲載内容は都条例に基づく恒常的な制度説明ですが、運用の細部が変わっている可能性があります。実際に申請される前に、必ず目黒区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の管理組合・物件に対する助言ではありません。制度の適用可否および工事費用は、物件の状況により異なります。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月17日


出典一覧

品川区の管理組合が無料で使える相談・派遣10選|大規模修繕の相談は毎月第3火曜、管理士・建築士は1組合3回×2時間【令和8年度版】

2026年9月17日 更新

「うちの規模だと、修繕委員会に建築士さんを入れるだけで何十万でしょう。そんな予算、うちの積立金からは出せませんよ」

今年の春、大井町のマンションの理事長さまから、そう言われました。築33年、62戸。2回目の大規模修繕をどう進めるかで、理事会が半年止まっていた物件です。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンションやビル、ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も踏んできた人間です。

その理事長さまにお伝えしたのは、ひとつだけでした。品川区は、一級建築士を管理組合に3回、1回2時間ずつ、無料で派遣してくれます。加えて毎月第3火曜日には、弁護士と一級建築士とマンション管理士が同じテーブルに座る「建替・修繕相談」がある。まず、そこを使いましょう、と。

品川区の支援メニューは、23区のなかでも「修繕」に振り切った設計になっています。管理運営の相談と、建替・修繕の相談を別々の窓口として立てている区は、そう多くありません。

今日は、品川区のマンション管理組合とビルオーナーさまが、お金をかけずに使える相談・派遣・助成を10個、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。


結論:品川区で無料で使える相談・派遣は10ある

先に一覧でお示しします。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用・回数 申込先
1 マンション管理相談 マンション管理士 無料/1回50分・年3回まで 住宅課 03-5742-6776
2 建替・修繕相談 弁護士・一級建築士・マンション管理士 無料/1回80分・年3回まで 住宅課 03-5742-6776
3 マンション管理士派遣 マンション管理士 無料/1回2時間・1組合3回まで 住宅課 03-5742-6776
4 一級建築士派遣 一級建築士 無料/1回2時間・1組合3回まで 住宅課 03-5742-6776
5 管理計画認定申請アドバイザー派遣 認定制度のアドバイザー 無料/1回2時間・最大4回 住宅課/電子申請
6 建替え・改修アドバイザー制度利用助成 東京都防災・建築まちづくりセンター 派遣料を1回まで全額助成 住宅課(事前相談)
7 マンション管理セミナー 外部の専門家 無料/年2回程度 住宅課
8 品川区消費者センター 消費生活相談員 無料 03-6421-6137
9 区民相談室の法律相談 弁護士 無料/30分・同一案件3回まで 03-3777-1111(代)
10 東京都・国の相談窓口 管理士・建築士等 無料 都/マンション管理センター等

このうち1〜7は、すべて品川区役所の住宅課 住宅運営担当(電話03-5742-6776)が窓口です。番号はひとつ覚えておけば足ります。

ここからが本題です。


1. マンション管理相談:毎月第2・4水曜、1回50分

区役所に出向いて、マンション管理士に直接聞ける枠です。

区の公式ページには、次のように書かれています(出典:品川区「マンション支援」、令和8年4月1日更新)。

  • 日時:毎月第2・第4水曜日 午後1時から午後4時まで
  • 相談時間:1回につき50分程度
  • 回数:同一年度に3回まで
  • 場所:品川区役所 本庁舎6階 住宅課内 ほか
  • 相談員:マンション管理士(品川マンション管理士会の会員)
  • 申込期日:相談希望日の1週間前まで

扱うのは管理組合の運営、管理規約の見直し、長期修繕計画といった維持管理全般です。50分という枠は、私の感覚では「論点をひとつ持っていく」ちょうどいい長さです。あれもこれもと詰め込むと、何も決まらないまま終わります。


2. 建替・修繕相談:弁護士と一級建築士が同席する枠

品川区の特徴が、いちばんよく出ているのがこの窓口です。

  • 日時:毎月第3火曜日 午後1時から午後4時まで
  • 相談時間:1回につき80分程度
  • 回数:同一年度に3回まで
  • 場所:品川区役所 本庁舎6階 住宅課内 ほか
  • 相談員:弁護士、一級建築士、マンション管理士
  • 申込期日:相談希望日の1週間前まで

80分あって、法律と技術の専門家が同席する。この組み合わせは、大規模修繕の入口で起きる問題とよく噛み合います。

大規模修繕でもめる論点は、たいてい2種類が絡み合っています。ひとつは「工事の範囲と金額が妥当か」という技術の話。もうひとつは「その決議を普通決議で通せるのか、特別決議が要るのか」という法律の話です。片方だけの専門家に聞くと、もう片方で止まります。

私が現場で一番もったいないと感じるのは、この2つを別々の日に別々の人に相談して、話が食い違ったまま総会を迎えてしまうケースです。


3. マンション管理士派遣・4. 一級建築士派遣:理事会に来てもらう

窓口に出向くのではなく、専門家に来てもらうのがこちらです。

項目 マンション管理士派遣 一級建築士派遣
時間 1回につき2時間程度 1回につき2時間程度
回数 1管理組合につき3回まで 1管理組合につき3回まで
費用 無料 無料
派遣元 品川マンション管理士会 (一社)東京都建築士事務所協会 品川支部
申込 派遣希望日の1週間前まで(電子または電話) 同左

2時間 × 3回。合計6時間を、管理士と建築士のそれぞれで使えます。両方を使えば12時間分の専門家の時間が、費用ゼロで手に入る計算です。

私はこれを、必ずワンセットで理事会に提案するようにしています。理由は単純で、役割が違うからです。

  • 一級建築士:劣化の状況、修繕の優先順位、工事仕様書と見積書の読み方、施工会社の比較
  • マンション管理士:総会の決議要件、修繕積立金の見直し、管理規約との整合、住民合意の進め方

冒頭の大井町の理事長さまには、まず一級建築士派遣を1回使っていただきました。建築士の方が現地を歩いて出した所見は、「北面のタイル浮きが想定より進んでいる。打診の範囲を先に決めたほうがいい」というものでした。この一言で、止まっていた理事会が動き出しています。

私が「建築士派遣より先にやってほしい」と思うこと

正直に申し上げます。派遣を呼ぶ前に、理事会でやっておくと効果が倍になることがあります。

建物の現況を写真で撮っておくことです。スマートフォンで構いません。外壁のひび、タイルの浮きで浮き上がった箇所、屋上の水たまり、バルコニーの手すりの錆。2時間しかない枠で「まず現状を見せてください」から始まると、半分が状況把握で消えます。


5. 管理計画認定申請アドバイザー派遣:最大4回、認定を取りにいく組合向け

令和5年4月に始まった品川区のマンション管理計画認定制度について、申請の入口を伴走してくれる派遣です(出典:品川区「マンション管理計画認定申請のアドバイザー派遣」、令和8年4月1日更新)。

  • 対象:区内分譲マンションを管理する管理会社の担当者(管理組合役員の同席も可)
  • 派遣日時:平日・土曜日および休日(年末年始を除く)
  • 相談時間:1回あたり2時間程度
  • 相談回数:1マンションにつき最大4回まで
  • 申込:住宅課へ電話または電子申請。派遣希望日の2週間前まで

内容は認定基準・申請方法・認定を取るメリットの説明と、提出書類の申請事務支援です。

注意点をひとつ。この派遣は、他の制度と申込期限が違います。管理相談や管理士・建築士派遣は1週間前ですが、こちらは2週間前です。理事会の日程から逆算するとき、ここを取り違えると1か月ずれます。

窓口上の対象は管理会社の担当者ですが、役員の同席が認められています。自主管理の組合や、管理会社との距離をどう取るか考えている組合は、事前に住宅課へお問い合わせいただくのが確実です。


6. 建替え・改修アドバイザー制度利用助成:派遣料を区が肩代わり

(公財)東京都防災・建築まちづくりセンターが実施する「マンション建替え・改修アドバイザー制度」を利用した場合の派遣料を、1回まで全額助成する制度です。区内の分譲マンションが対象です。

区の公式ページには「予算に限りがあるため、助成を希望される場合は、事前にご相談ください」と明記されています。予算枠に達し次第、受付終了です。年度後半に動く場合は、住宅課へ残枠を確認してから予定を立てるのが安全です。

なお、東京都の管理状況届出制度に届出(または更新)を済ませた管理組合は、同センターのアドバイザー派遣そのものを無料で使える枠があります。届出済みの要届出マンションで1回まで、管理不全の兆候があると判断されたマンションでは5回まで無料という運用です(出典:東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」)。

つまり、届出を済ませている組合は、区の助成を使う前に「そもそも無料枠が残っていないか」を確認する順番になります。


7. マンション管理セミナー:年2回程度

区が専門家を招いて開く講演会です。開催は年2回程度で、日程は年度ごとに決まります。区の公式ページと「広報しながわ」で告知されるため、理事会の年間予定を組むときにチェックしておくといい枠です。

令和8年度の具体的な日程は、本稿執筆時点では公表分を確認できていません。住宅課(03-5742-6776)へお問い合わせいただくのが確実です。


8. 品川区消費者センター:契約トラブルの入口

工事業者との契約や、訪問販売のリフォームで起きたトラブルは、こちらが入口になります。

  • 場所:品川区西品川1-28-3 中小企業センター4階(東急大井町線 下神明駅 徒歩2分)
  • 消費者相談専用ダイヤル:03-6421-6137(センター代表 03-6421-6136)
  • 受付:平日 午前9時〜午後4時/第4火曜 午後4時〜午後7時(電話のみ)/土曜 午後0時30分〜午後4時(電話のみ)

出典:品川区「品川区消費者センター」

私の経験上、区分所有者のご自宅(専有部)に「近所で工事をしているので足場代がサービスになります」という飛び込み営業が来て契約してしまった、という相談は、大規模修繕の直前に増えます。共用部の工事が始まると、業者の出入りが日常になって警戒が緩むからです。

理事会からの掲示1枚で防げる被害が、かなりあります。


9. 区民相談室の法律相談:30分・同一案件3回まで

  • 場所:品川区役所 第三庁舎3階 区民相談室
  • 予約:03-3777-1111(代表)/相談希望日の1週間前(同じ曜日)午前9時から受付
  • 相談時間:30分以内、同一案件3回まで
  • 費用:無料
  • 内容:金銭貸借、離婚・親権、遺言、相続、借地借家など

ひとつ、注意すべき点があります。この法律相談の対象は、品川区に在住・在勤・在学の個人です。法人は対象外とされています。

管理組合として法律的な論点を相談したい場合は、2.の建替・修繕相談(毎月第3火曜)に弁護士が入っているので、そちらを使うのが筋です。管理費滞納や区分所有法の解釈は、組合の議題として第3火曜へ。区分所有者個人の相続や借地借家は、区民相談室へ。この振り分けを間違えると、せっかくの枠を1回無駄にします。


10. 東京都・国の窓口:区の枠を使い切ったあとに

区の回数を使い切っても、まだ手はあります。

東京都のマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)

都内の管理組合を対象に、講習を受けたマンション管理士を派遣する事業です。1管理組合につき、防災力向上と認知症対応でそれぞれ2回まで。令和8年度の申込期間は令和8年6月23日から令和9年2月26日まで、予定件数(両テーマ合計160件)に達し次第、締切です(出典:東京都マンションポータルサイト)。

枠が160件と限られています。防災マニュアルの見直しを考えている組合は、年度前半に動くほうが有利です。

(公財)マンション管理センターの電話相談

国土交通大臣から「マンション管理適正化推進センター」の指定を受けた唯一の団体です。

  • 管理組合運営・管理規約のご相談:03-3222-1517
  • 建物・設備の維持管理のご相談:03-3222-1519
  • 受付:月〜金(祝日・年末年始を除く)9時30分〜17時/1件15分前後

出典:(公財)マンション管理センター「相談窓口について」

15分という枠は短く感じますが、「うちの規約でこの決議は普通決議か特別決議か」といった一点勝負の質問には十分です。

住まいるダイヤル(住宅リフォーム・紛争処理支援センター)

国土交通大臣指定の住宅専門相談窓口。0570-016-100(または03-3556-5147)、受付は10時〜17時(土日祝・年末年始を除く)。工事の品質やリフォーム契約のトラブルを、一級建築士が電話で受けてくれます。


令和7年の法改正で、管理規約の見直しが宿題になっています

品川区の公式ページにも、お知らせとして掲載されている論点です。

国土交通省は、令和7年のマンション関係法(区分所有法等)の改正を踏まえ、令和7年10月にマンション標準管理規約を改正しました。総会の開催手続きや決議要件といった、管理組合の運営上の根幹に関わる内容が含まれています(出典:国土交通省「マンション標準管理規約」)。

つまり、令和8年度は多くの管理組合にとって「規約を点検する年」です。

そして、規約の点検はマンション管理士派遣の得意分野です。品川区の管理士派遣3回のうち1回を、この規約点検に充てる。私はいま、お付き合いのある理事会にはこの順番をお勧めしています。


何を用意して相談に行けばいいか

派遣も相談も、時間が限られています。手ぶらで行くと、状況説明で枠が溶けます。

私が理事長さまにお伝えしている3点セットは、これです。

  1. 直近2〜3年分の総会議事録(何が決まっていて、何が保留なのか)
  2. 長期修繕計画書(作成年と、直近の見直し年をメモしておく)
  3. 管理規約と使用細則(原本の写しで可)

これに加えて、大規模修繕の相談なら修繕積立金の残高と月額、そして先ほど触れた現況写真を足します。

この5点があると、2時間の派遣が「現状把握30分+助言90分」になります。なければ「現状把握90分+助言30分」です。同じ無料枠でも、持ち帰れるものが3倍変わります。


大規模修繕の費用は、工法の選び方で大きく動きます

無料の相談・派遣で方針が固まったあと、次に来るのが工事費の話です。ここで私の本業の話を少しだけさせてください。

大規模修繕の総工費は、30戸規模のマンションで3,500万〜5,000万円程度がひとつの目安です(物件の状態・仕様で大きく変わります)。そのうち仮設足場が15〜25%を占めます。

たとえば10階建て・外周80m・工期3か月の物件で試算すると、通常の仮設足場がおよそ168万円に対し、ロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が降下して施工する無足場工法)ならおよそ59万円。差額でおよそ109万円という参考値になります。足場を組まないので、工期も足場工法の6割程度に収まることが多いです。

外壁塗装の㎡単価は3,500〜4,500円、外壁打診調査は250〜500円/㎡、防水は5,000〜8,000円/㎡あたりが目安のレンジです。いずれも参考値で、実際の見積は建物の形状・劣化状況・仕様によって動きます。

株式会社明誠は、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が現場に立ち、日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。

品川区のような、湾岸のタワーマンションと内陸の中層マンションが混在するエリアでは、同じ区内でも最適な工法が物件ごとに変わります。海に近い物件は塩害で鉄部の劣化が早く、狭小地の物件はそもそも足場を組む敷地がない。だからこそ、通常足場・ロープアクセス・ハイブリッド(部位で使い分け)の3つから選べることに意味があります。工法別の作業手順や安全管理の考え方は、ロープアクセスドットコムでも解説しています。

これまでの施工事例(約6,000棟)はhttps://rita-construction.com/renew/blog/category/works/からご覧いただけます。


よくあるご質問

Q. 品川区のマンション管理士派遣と一級建築士派遣は、両方使えますか?

A. はい。区の公式案内では「各1回2時間程度(各3回まで無料)」とされており、管理士と建築士でそれぞれ3回の枠があります。役割が違うので、両方使う前提で年間計画を立てるほうが効率的です。

Q. 賃貸マンションのオーナーでも使えますか?

A. 品川区のマンション支援事業は分譲マンションの管理組合・区分所有者が対象です。賃貸オーナーさまの場合は、区民相談室の法律相談や消費者センター、(公財)日本賃貸住宅管理協会の相談窓口が入口になります。工事そのもののご相談は、私どもでも無料でお受けしています。

Q. 申込はいつまでにすればいいですか?

A. 制度によって違います。マンション管理相談・建替修繕相談・管理士派遣・建築士派遣は相談希望日の1週間前まで、管理計画認定申請アドバイザー派遣は2週間前までです。理事会の日程から逆算してご準備ください。

Q. 相談は無料でも、そのあと工事を頼まないといけませんか?

A. いいえ。区の派遣制度は、特定の施工会社を紹介するものではありません。派遣されるマンション管理士・一級建築士は中立の立場で助言する役割です。私どもへのご相談も、見積だけ、ご相談だけで構いません。

Q. 大規模修繕の費用はどれくらいかかりますか?

A. 30戸規模で3,500万〜5,000万円程度が目安ですが、劣化状況と仕様で大きく変動します。仮設足場が総額の15〜25%を占めるため、無足場のロープアクセス工法を部分的に組み合わせるだけでも総額が動きます。無料で概算のお見積りを出せますので、お気軽にお問い合わせください。

Q. ロープアクセス工法は、どんな建物でも使えますか?

A. 屋上にアンカーを取れる構造であることが前提です。取れない場合は仮設足場、あるいは部位ごとに使い分けるハイブリッド工法をご提案します。判断には現地調査が要りますので、まずはお問い合わせからご連絡ください。

Q. 東京都の管理状況届出を出していないと、無料派遣は使えませんか?

A. 品川区の相談・派遣は届出の有無に関わらず利用できます。届出が前提になるのは、東京都防災・建築まちづくりセンターのアドバイザー無料派遣枠です。届出がまだの組合は、届出そのものを管理士派遣の議題にするという使い方もあります。


まとめ:品川区で、今週動けること3つ

長くなったので、最後に絞ります。

1. 住宅課の電話番号(03-5742-6776)を理事会の連絡網に入れる

品川区のマンション支援は、1〜7のすべてがこの1本につながっています。理事が交代しても引き継がれるよう、規約のファイルに挟んでおいてください。

2. 次の第3火曜日を確認して、建替・修繕相談を1枠押さえる

弁護士と一級建築士とマンション管理士が同席する80分は、品川区の制度のなかで最も密度の高い枠だと私は見ています。1週間前までの申込です。

3. 総会議事録・長期修繕計画・管理規約の3点を、1つのフォルダにまとめる

これがあるかないかで、無料枠から持ち帰れるものが変わります。理事の誰か1人が、今週やれば終わる作業です。

大規模修繕は、動き出すまでが一番重たい工事です。品川区は、その最初のひと押しを無料で用意してくれています。使わない理由が、私には見当たりません。

工法や概算のご相談だけでも、遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問い合わせフォームか、明誠の会社の考え方をご覧いただければ幸いです。


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月17日時点で公表されている品川区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず品川区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


出典・参考資料


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市

マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月17日

世田谷区のマンション漏水・防災対策|多摩川・野川・国分寺崖線から逆算する大規模修繕2026年度版

2026年9月17日 更新

世田谷区の等々力で、築28年の分譲マンションの理事長さまから相談をいただいたことがあります。「屋上防水をやったばかりなのに、最下階の住戸で壁が湿る」。図面を見せていただいて、すぐに見当がつきました。建物の北側が斜面に接していて、そこだけ地中に埋まっていたのです。水は空から降ってきたのではなく、斜面の土の中を通って、横から来ていました。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。

世田谷区は、23区のなかでも水の入り方が独特な区だと感じています。海に面していないので高潮も津波もない。そのかわり、台地に刻まれた谷と、国分寺崖線という長大な崖が、水の動きをすべて決めています。

今日は、世田谷区が公表している最新のハザード資料から逆算して、世田谷区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。


結論:世田谷区は「高潮がない代わりに、谷と崖が主役の区」です

先に結論から申し上げます。世田谷区で大規模修繕の順番を決めるとき、私が最初に確認するのは屋上ではありません。自分の建物が台地の上にあるのか、谷底にあるのか、崖の際にあるのかです。

世田谷区は水防法に基づく高潮浸水想定区域が未指定で、津波の想定もありません(出典:世田谷区「世田谷区洪水・内水氾濫ハザードマップ」)。湾岸区で最優先になる塩害や高潮対策は、世田谷区ではほぼ考えなくてよい。そのぶん、リスクが3つに絞り込めます。

立地 該当エリアの例 主なリスク 最優先の対策
多摩川沿いの低地 玉川・二子玉川・鎌田・宇奈根・喜多見・野毛 多摩川の洪水(想定最大規模) 開口部の止水・地下設備の位置
谷筋・中小河川沿い 野川・仙川・谷沢川・丸子川・烏山川と北沢川の旧流路沿い(若林・太子堂・下馬・弦巻など) 内水氾濫・中小河川の洪水 地下駐車場・逆流防止弁・排水ポンプ
国分寺崖線とその周辺の崖 成城・喜多見・大蔵・岡本・瀬田・上野毛・中町・等々力・野毛・尾山台/桜・宮坂・代田・北沢・池尻 土砂災害・擁壁の劣化 擁壁改修・斜面側の排水と外壁

この3類型のどこに自分の建物が当たるかを、区のハザードマップで先に確定させる。それをやらずに「まず屋上防水から」と進めてしまうと、順番を1つ間違えるだけで数百万円が無駄になります。世田谷区の理事会でいつも最初にお伝えしているのは、この一点です。


世田谷区のハザードマップを1枚で読む

世田谷区のハザードマップは、大きく2冊に分かれています。どちらも令和8年7月に更新されたばかりです。

洪水・内水氾濫ハザードマップ(令和8年7月更新)

「多摩川洪水版」と「内水氾濫・中小河川洪水版」の2面構成です。区のページは令和8年8月14日に更新されています(出典:世田谷区「世田谷区洪水・内水氾濫ハザードマップ」)。

想定している雨の量が、2面でまったく違います。ここが世田谷区を読むうえでの勘どころです。

版 想定している雨 根拠となる図
多摩川洪水版 多摩川流域の2日間総雨量588ミリメートル 国土交通省京浜河川事務所「多摩川洪水浸水想定区域図(想定最大規模)」(平成28年度公表)
内水氾濫・中小河川洪水版 時間最大雨量153ミリメートル/総雨量690ミリメートル 城南地区河川、野川・仙川・入間川・谷沢川・丸子川の各洪水浸水想定区域図(令和6年2月公表)ほか

「2日間で588ミリ」と「1時間で153ミリ」は、建物にとって性格の違う攻撃です。前者はゆっくり水位が上がって長時間居座る水。後者は一気に来て排水が追いつかず、道路から建物へ流れ込む水です。マンションの共用部で効く対策も、当然変わります。

令和8年7月の改定では、浸水の範囲や深さそのものは令和6年7月版から変わっていません。変わったのは運用面で、なかでも管理組合として見逃せないのが次の1点です。

水害時避難行動判定フローに、地下施設の浸水リスクが追記された

区が「地下」を明示的に書き足したという事実を、私は重く受け止めています。世田谷区のマンションは、地下駐車場・地下ピット・半地下の機械室を持つ建物が本当に多い。ここが今回の記事の中心テーマです。

なお、令和8年3月に東京都から水防法に基づく雨水出水浸水想定区域の指定があり、世田谷区は現在、水防法に基づく雨水出水(内水氾濫)ハザードマップを作成中です。現行の内水氾濫の想定は東京都が独自に作成したもので、水防法に基づくものではない、という位置づけになります。近いうちに新しい図が出る可能性があるということです。

土砂災害ハザードマップ(令和8年7月発行)

最新版は令和8年7月発行。気象庁が令和8年5月29日から運用を開始した新たな防災気象情報が反映されています。土砂災害(特別)警戒区域そのものは、令和7年9月発行版から変更ありません(出典:世田谷区「世田谷区土砂災害ハザードマップ」)。

区が分割版として公開しているマップの表題を並べると、世田谷区の崖がどこに走っているかがそのまま見えてきます。

  • マップ1・2:桜・宮坂・代田
  • マップ3:北沢・池尻
  • マップ4:成城・喜多見
  • マップ5:成城・喜多見・大蔵・岡本
  • マップ6:大蔵・岡本・瀬田
  • マップ7:瀬田・上野毛・中町・等々力
  • マップ8:等々力・中町・野毛・尾山台

マップ4から8が、いわゆる国分寺崖線です。成城から喜多見、大蔵、岡本、瀬田、上野毛、等々力、尾山台へと、多摩川に沿って南東へ下っていく崖。マップ1から3は、烏山川・北沢川・蛇崩川といった旧河川が台地を削ってできた谷の斜面です。

指定区域の詳しい線引きは東京都土砂災害警戒区域等マップで番地単位まで確認できます。理事会資料をつくるなら、こちらの画面を印刷して添付するのが一番早いと思います。


世田谷区で水が入ってくる4つの経路

ここからは現場の話です。世田谷区の建物で、実際に水がどこから入るか。頻度の高い順に4つ挙げます。

経路1:地下駐車場・地下ピットへの流入

世田谷区が公開している「浸水確認箇所一覧/浸水確認箇所図」は、平成元年から令和7年9月30日までの区内の浸水被害を記録した資料です(令和8年3月11日更新)。

この資料の読み方に、ひとつ重要な仕掛けがあります。区の説明を引用します。

地下階の浸水は、該当メッシュに円で表しています。(中略)地下車庫など人が居住しない場所のみへの浸水は円単独で表示し、人が居住する場所への浸水を含む場合は円とメッシュを重ねて表示しています。

つまり、地図上に「円だけ」が打たれている場所は、地下車庫や地下室だけが水に浸かった記録ということです。住戸は無事でも、地下は水没している。管理組合の記録には残っていなくても、区の記録には残っている可能性があります。

自分のマンションの敷地とその周辺に円が打たれていないか。これを一度確認するだけで、大規模修繕の優先順位が変わることがあります。区は二子玉川分庁舎A棟2階でも掲示しています。

経路2:排水の逆流(トイレ・浴室・排水ピット)

道路面より低い位置に便所や浴室がある建物では、下水道管から水が逆流してきます。世田谷区は平成17年6月に「世田谷区建築物浸水予防対策要綱」を定め、次の建築物に浸水予防対策検討結果の届出を義務づけています。

  1. 建築物の周囲の地面または道路面より低い位置に床を有する建築物
  2. 便所、浴室等の排水が逆流するおそれのある建築物
  3. 洪水・内水氾濫ハザードマップで浸水予想区域となっている区域内の建築物

区が示している対策例は、半地下のトイレの下水道管に逆流防止弁と水中ポンプを設置するというものです。新築時に届出をしている建物であれば、その逆流防止弁が図面のどこかに描かれているはずです。竣工から20年経った建物で、この弁が生きているかどうかを確認したことがある管理組合は、私の経験では多くありません。

大規模修繕の設計段階で、逆流防止弁と排水ポンプの点検を「調査項目」に入れておく。費用にして数万円の追加です。これは費用対効果がきわめて高い項目だと考えています。

経路3:崖側・斜面側の外壁からの浸入

冒頭の等々力の事例がこれです。国分寺崖線沿いの建物は、敷地の高低差を擁壁で受けて、建物の一部が地中に接していることがよくあります。この部分の外壁は、雨ではなく土の中の水(土中水)にさらされ続けます。

土中水による漏水は、屋上防水をいくらやっても止まりません。止めるには、地中側の防水層か、内側からの止水処理が必要になります。そして地中側をやり直すには、土を掘る工事が要る。つまり工事の規模と費用が一桁変わります。

だからこそ、斜面側を持つ建物は、調査の段階で「どこから水が来ているか」を確定させる必要がある。ここを推測で進めると、修繕費が丸ごと無駄になります。

経路4:屋上・バルコニー・外壁からの通常の漏水

台地上の一般的な立地(経堂・祖師谷・烏山・松原など)では、水は素直に上から来ます。屋上防水の立ち上がり、ドレン(排水口)まわり、バルコニーの防水層の端部、外壁のひび割れ、サッシまわりのシーリングの劣化。この4つで、世田谷区に限らずマンションの漏水の大半を説明できます。

時間153ミリという想定雨量が意味するのは、屋上のドレンが1つ詰まっていたら、屋上がプールになるということです。年に2回、落ち葉と土砂を取るだけで防げる漏水が、現実にはたくさんあります。


世田谷区で使える防災・浸水対策の助成制度(令和8年度)

世田谷区は令和8年度から、浸水対策の助成をひとつ新設しました。

止水板設置等助成制度(令和8年4月1日施行・新設)

令和8年度から始まったばかりの制度です(出典:世田谷区「止水板設置等助成制度のご案内」/令和8年9月15日更新、世田谷区止水板設置等助成要綱)。

区分 助成額 限度額
止水板設置工事および関連工事(個人) 工事費用の5分の4 100万円
止水板設置工事および関連工事(法人) 工事費用の5分の3 100万円
簡易型止水板の購入(個人) 購入費用の5分の4 16万円
簡易型止水板の購入(法人) 購入費用の5分の3 16万円

「関連工事」には、内外壁の止水工事、土間コンクリート打設工事などが含まれます。止水板そのものだけでなく、止水効果を高めるための周辺工事まで対象という設計です。ここは実務上かなり大きい。

対象となる止水板の要件は3つです。

  • 浸水に耐えうる材質で、JIS規格(JIS A 4716)で定められた浸水防止性能に準じた性能を有すること
  • 取り外しまたは移動が可能であること
  • 繰り返しの使用が可能であること

そして特筆すべきなのが、令和7年7月10日から令和8年3月31日までに設置・購入したものも遡って対象になるという点です。制度開始前に自費で止水板を入れた管理組合・オーナーさまは、申請できる可能性があります。管理会社から案内が来ていないケースもありますので、心当たりがあれば確認されることをおすすめします。

注意点もあります。法令または条例により止水板の設置を義務づけられている場合、国・東京都・世田谷区から別の補助を受ける場合は対象外です。また、助成を受けて設置した止水板と同一の建築物に再度設置する場合も対象外になります。予算の定める額が上限であることも要綱に明記されています。

問い合わせ先は世田谷区土木部 豪雨対策・下水道整備課 豪雨対策(電話 03-6432-7963)です。

公道に面した擁壁改修等工事の補助制度

崖線沿いのマンションにとって、こちらのほうが金額の桁が大きい制度です(出典:世田谷区「公道に面した擁壁改修等工事の補助制度」/令和8年4月1日更新)。

  • 補助金額:補助対象経費の3分の1
  • 補助限度額:300万円
  • 対象:公道に面している既存擁壁の築造替え工事、公道に面している斜面(がけ)への擁壁新設工事
  • 条件:工事後の擁壁の高さが2メートルを超えること、建築基準法等に適合し検査済証が交付されるもの
  • 令和7年4月より、補助対象が「通学路」から「不特定多数が通行する公道に面している場合」へ拡大

管理組合にとって重要なのは、区分所有建物の敷地の場合、規約で定められた代表者、または区分所有者の過半数の合意により選出された代表者が申請できると明記されている点です。分譲マンションでも使える制度だということです。

ただし2点、落とし穴があります。補修工事は対象外(既存擁壁の造り替え、または斜面への擁壁新設のみ)であること。そして法人は対象外であること。賃貸マンションを法人名義で所有されている場合は使えません。

事前協議が必須で、区の職員が現場を確認してから対象可否が判断されます。国土交通省の「我が家の擁壁チェックシート」で評価点が5.0点以上であることも要件のひとつです。

問い合わせ先は世田谷区防災街づくり担当部 市街地整備課 宅地防災促進(電話 03-6432-7158)です。擁壁改修専門家派遣制度や、宅地防災の専門家によるがけ・擁壁の無料相談会も区が用意しています。


世田谷区で足場とロープアクセスをどう使い分けるか

ここからは工法の話です。世田谷区の建物で、どちらを選ぶべきか。

金額の目安から申し上げます。10階建て・外周80メートル・工期3ヶ月という条件の建物で、仮設足場の費用はおよそ168万円、ロープアクセス工法なら59万円前後。差額でおよそ109万円という試算になります。もちろん実際の見積は建物の形状・立地・工事範囲で大きく変わりますので、あくまで参考値としてご覧ください。

工種ごとの単価の目安はこのあたりです。

工種 単価の目安
外壁打診調査 250〜500円/平方メートル
外壁塗装 3,500〜4,500円/平方メートル
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/平方メートル

30戸規模のマンションの大規模修繕であれば、総工費はおおむね3,500万円から5,000万円。そのうち仮設足場が15〜25パーセントを占めます。足場をどう扱うかで、総額が数百万円動くということです。

世田谷区でロープアクセス工法が効く場面

崖線沿いの斜面地。これが世田谷区で最も差が出るところです。成城・岡本・瀬田・上野毛・等々力の斜面に建つマンションは、建物の片側が崖、もう片側が狭い道路、というケースが珍しくありません。足場を組もうにも、そもそも足場の脚を置く平らな地面がない。斜面に足場を架けるには特殊な支持が必要で、費用も工期も跳ね上がります。ロープアクセス工法なら、屋上から吊り下がるので、地面の条件にほとんど左右されません。

外周に空きのない敷地。世田谷区は住宅地としての密度が高く、隣地境界までの距離が50センチ程度という建物もあります。足場が物理的に入らない、あるいは隣地の承諾が取れない場合、無足場工法が現実的な選択肢になります。

部分的な補修。漏水箇所が特定できていて、外壁の一部だけ直したい。このために全面足場を架けるのは、費用として合いません。

世田谷区で足場を選ぶべき場面

一方で、私は足場を否定する立場ではありません。外壁の劣化が全面的に進行していて、下地補修の量が多い建物では、足場のほうが結果として安く、品質も安定します。作業員が両手を自由に使えて、材料と道具を手元に置けるからです。

工事範囲が広く、複数の工種(塗装・防水・タイル・シーリング・サッシ)を同時に動かす場合も、足場のほうが工程を組みやすい。

そしてハイブリッド工法。低層部と下地補修の多い面は足場、高層部や崖側の足場が架けにくい面はロープアクセス、という組み合わせです。世田谷区の崖線沿いの物件では、この選択が最もコスト最適になるケースが多いと感じています。

3つの工法を自社で持っていないと、この提案はできません。足場しか持たない会社は足場を勧め、ロープしか持たない会社はロープを勧める。建物にとって最適かどうかは、二の次になります。工法ごとの技術的な詳細は、同業者・加盟希望者向けの姉妹サイトロープアクセスドットコムでも解説していますので、より深く知りたい方はそちらもご覧ください。

株式会社明誠は、これまでにおよそ6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工し、ISO9001の品質マネジメントシステムのもとで管理しています。安全管理の具体的な体制については明誠の安全管理への取り組みにまとめています。


世田谷区のマンションで、防災の観点から先にやるべき5つ

大規模修繕の設計に入る前に、費用をかけずにできることから並べます。

1. ハザードマップの版を確認する

管理室にある洪水・内水氾濫ハザードマップと土砂災害ハザードマップの発行年月を見てください。どちらも令和8年7月更新版が最新です。それより古いものであれば、区役所東棟3階の災害対策課、各総合支所、まちづくりセンター、図書館で入手できます。

浸水の範囲や深さ自体は令和6年7月版から変わっていませんが、避難所の追加や、地下施設の浸水リスクの追記など、運用面の情報が更新されています。

2. 建物の浸水深を「数字」で押さえる

区のハザードマップは避難の目安であり、個々の住宅の浸水の程度を示すものではありません。より具体的な浸水深を知りたい場合、東京都建設局河川部の浸水リスク検索サービスで住所から検索できます。浸水継続時間も確認できるのが、この検索サービスの強みです。

多摩川洪水版と内水氾濫版の両方の浸水深を比べたい場合は、国土交通省の重ねるハザードマップが便利です。

3. 受電設備・ポンプ・エレベーターピットの標高を確認する

浸水想定深と、実際の設備の設置高さを並べて見る。これだけで「かさ上げが必要かどうか」が判断できます。国土交通省は建築物における電気設備の浸水対策ガイドラインを公表しており、既存建物への対策の考え方も整理されています。

受電設備が水に浸かると、建物全体が停電し、給水ポンプも止まり、エレベーターも止まります。住戸に一滴も水が入っていなくても、生活は成立しなくなる。ここが最優先だと私が考える理由です。

4. 逆流防止弁と排水ポンプの生存確認

竣工図を出して、逆流防止弁がどこにあるかを確認する。そのうえで、実際に動くかを点検する。地下駐車場の排水ポンプについても同様です。年1回の防災訓練の日に合わせて実施している管理組合もあります。

5. 擁壁のチェックシート点検

崖線沿いの建物であれば、国土交通省の「我が家の擁壁チェックシート」(世田谷区のページからダウンロードできます)で自主点検してみてください。評価点が5.0点以上であれば、区の擁壁改修補助の対象になり得ます。


よくあるご質問

Q. 世田谷区には高潮や津波のリスクはないのですか?

A. 世田谷区は水防法に基づく高潮浸水想定区域が未指定で、津波ハザードマップも作成されていません。海に面していないためです。そのぶん、多摩川の洪水、中小河川と内水氾濫、国分寺崖線の土砂災害の3つが、世田谷区で備えるべきリスクになります。

Q. 令和8年度の止水板の助成は、マンションの管理組合でも使えますか?

A. 助成対象者は「世田谷区の区域内で止水板の設置工事または簡易型止水板の購入を行う住宅、事務所等の所有者または使用者」とされています。具体的な適用可否は建物の所有形態や申請主体によりますので、世田谷区土木部 豪雨対策・下水道整備課(電話 03-6432-7963)に事前にご確認ください。法人の場合は助成率が5分の3になります。

Q. 令和7年に自費で止水板を設置しました。今から申請できますか?

A. 令和7年7月10日から令和8年3月31日までに設置・購入されたものは、遡って助成の対象になります。ただし添付書類が令和8年4月1日以降の設置とは異なりますので、区の案内をご確認のうえ申請してください。

Q. 地下駐車場の浸水対策だけを先にやりたいのですが、大規模修繕とは別にできますか?

A. できます。むしろ、浸水リスクが高い建物では、大規模修繕の本体工事を待たずに止水対策を先行させることをおすすめしています。止水板設置に助成が使える令和8年度のうちに動くほうが、費用面でも有利です。

Q. 崖側の外壁からの漏水は、大規模修繕で直りますか?

A. 地中に接している部分からの浸入であれば、通常の外壁塗装や屋上防水では止まりません。まず調査で浸入経路を特定することが先決です。原因の切り分けができていない状態で工事に入るのが、費用が無駄になる最大のパターンです。漏水対応の考え方にも詳しくまとめています。

Q. 足場が組めない斜面地のマンションですが、外壁の点検はどうすればよいですか?

A. ロープアクセス工法であれば、屋上からロープで下降しながら打診調査と補修が同時にできます。地面の条件に左右されないのが最大の利点です。上空からの俯瞰が必要な場合はドローン調査と組み合わせることもあります。技術的な詳細はロープアクセスドットコムでも解説しています。

Q. 打診調査の費用はどれくらいですか?

A. 一般的な目安は1平方メートルあたり250〜500円ですが、建物の高さ・形状・調査範囲により変動します。足場を架けずにロープアクセスで実施する場合、足場費用がまるごと不要になるぶん、総額が抑えられるケースが多くあります。料金の考え方もご参照ください。

Q. 相談は無料ですか?

A. 現地調査と概算のご提示までは無料で承っています。お問合せフォームからご連絡ください。管理組合向けのご説明資料もご用意しています。


まとめ:今週、世田谷区の理事会で動けること3つ

  1. 管理室のハザードマップ2冊の発行年月を確認する — どちらも令和8年7月更新版が最新です。古ければ区役所東棟3階または各総合支所で差し替えを
  2. 浸水確認箇所図で、自分の敷地周辺に「円」が打たれていないか確認する — 円は地下階の浸水記録です。地下駐車場・地下ピットの対策優先度がここで決まります
  3. 止水板設置等助成を理事会の議題に載せる — 令和8年度から始まった新制度で、個人は工事費の5分の4・限度額100万円。令和7年7月10日以降の設置は遡って申請できます

世田谷区は、高潮も津波もない代わりに、台地の谷と国分寺崖線という地形が水の動きをすべて決めている区です。だからこそ、「23区の平均的な修繕計画」がいちばん当てはまらない区でもあります。自分の建物がどこに立っているかを地図で確定させることから、修繕の議論を始めていただきたいと思います。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。管理組合さま向けのサービス内容は管理組合向け大規模修繕のご案内、賃貸・オーナー物件はビルオーナー向けのご案内、収益不動産としての資産価値維持の考え方はオーナー向けの提供価値にまとめています。

明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月17日時点で公表されている世田谷区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず世田谷区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月17日

大田区のマンション漏水・防災対策|多摩川・高潮・呑川の内水と台地の崖線から逆算する大規模修繕2026年度版

2026年9月17日 更新

去年の秋、大田区の蒲田で賃貸マンションを2棟お持ちのオーナーさまから、夜の10時過ぎに電話をいただきました。「1階の店舗に水が来た。屋上は問題ないと言われていたのに、なぜだ」。令和7年9月11日、大田区で初めて「記録的短時間大雨情報」が発表された日のことです。大田区の大規模修繕では、この日の雨が1つの分岐点になったと私は考えています。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。

現地に入って分かったのは、水は屋上からではなく、道路側から入ってきていたということでした。大田区の蒲田・大森あたりは、雨が降ったときに「上から漏る」より先に「下から来る」建物が少なくありません。同じ大田区でも、田園調布や久が原の高台では、まったく別の理由で水が回ります。

今日は、大田区が公表している最新のハザード資料から逆算して、大田区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。


結論:大田区は「4つのリスクが1区に同居する」珍しい区です

先に結論から申し上げます。大田区の建物では、自分の建物がどの地形に立っているかを地図で確定させてから、修繕の順番を組みます。23区のなかでも、大田区ほど条件の違う土地が1つの区に混在している場所は多くありません。

立地 該当エリアの例 主なリスク 最優先の対策
多摩川沿いの低地 田園調布南・鵜の木・下丸子・矢口・六郷 多摩川の洪水/内水 開口部の止水・地下設備の位置
内陸の低地 蒲田・大森・糀谷 呑川などの内水氾濫 排水経路・地下駐車場・受電設備
湾岸の埋立地 平和島・昭和島・京浜島・城南島・羽田 高潮・塩害・液状化 塩害腐食・シーリング・液状化沈下
台地とその崖線 田園調布・嶺町・久が原・雪谷・馬込・池上・千束 土砂災害・擁壁 擁壁とがけ・斜面側の排水

この4類型のうち、自分の建物がどれに当たるかを、区のハザードマップで先に確定させる。それをやらずに「とりあえず屋上防水から」と進めてしまうと、順番を1つ間違えるだけで数百万円が無駄になります。私が理事長さまにいつも最初にお伝えしているのは、この一点です。


大田区のハザードマップを1枚で読む

大田区は「大田区防災ハザードマップ」を冊子型で発行しています。最新版は令和8年2月発行で、区のページは令和8年7月2日に更新されています(出典:大田区「大田区防災ハザードマップ」)。

構成は3編です。

  • 震災編:液状化可能性マップ、火災の被害想定、建物倒壊の被害想定、津波ハザードマップ、防災マップ
  • 風水害編:多摩川ハザードマップ、高潮ハザードマップ、中小河川・土砂災害・内水氾濫ハザードマップ
  • 防災編:避難先の一覧、情報入手先

注目していただきたいのは、令和8年2月の改訂で高潮ハザードマップの被害想定が最新の情報に更新された点です。湾岸側に建物をお持ちの方は、手元のマップが令和7年3月版以前のものであれば、想定が変わっている可能性があります。管理室に置いてある冊子の発行年月を、一度確認されることをおすすめします。

それぞれのリスクを詳しく見たいときは、次の一次情報が使えます。

東京都の液状化予測図は、特定の地震を想定したものではなく、大正12年の関東大地震で都心が受けた程度のゆれ、都内全体として震度6弱程度を一律にかけた場合の相対評価です。境界線がはっきり引かれた地図ではない、という前提で読む必要があります。


大田区で起きた水害と、そこから見える建物の弱点

令和7年9月11日:区で初めての「記録的短時間大雨情報」

大田区の公式ページには、こう書かれています。令和7年9月11日、大田区で初めて「記録的短時間大雨情報」が発表され、家屋の浸水など多くの被害が発生しました(出典:大田区「大田区の豪雨対策」(令和8年3月19日更新))。

同じページに、建物を持つ側として押さえておくべき数字があります。

1時間に100mm以上の非常に激しい雨が降り、一般的な排水設備能力(50mm)を超えて道路の冠水が起こります。

つまり、大田区の街は時間50mmの雨を流す前提で下水と側溝が設計されている。そこに100mmが来れば、あふれるのは設計どおりということです。建物側で受け止めるしかない、という意味でもあります。

気象庁の「日本の気候変動2025」によれば、1時間降水量50mm以上の短時間強雨の年間発生回数は、1976〜1985年平均の226回から2013〜2022年平均の328回へ、約1.5倍に増えています(出典:気象庁「日本の気候変動2025」)。50mmを超える雨が例外ではなくなってきている、というのが私の実感とも一致します。

令和元年東日本台風:田園調布四丁目・五丁目

もう一つ、大田区の水害史で外せないのが令和元年台風19号です。大田区は田園調布四丁目・五丁目の浸水原因を究明するため、内水解析シミュレーションを実施し、検証結果を公表しています(出典:大田区「令和元年台風19号における田園調布地区内水解析 検証結果」)。

田園調布と聞くと高台のイメージをお持ちの方が多いのですが、四丁目・五丁目は多摩川側に下りた低地です。「区名」でも「町名のイメージ」でもなく、丁目と標高で判断する。大田区は特に、これが効く区です。


地域特性別・大田区のマンションで起きている漏水

現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、「地形に合っていない修繕を高いお金でやってしまった建物」を後から見せられるときです。大田区の4類型それぞれで、実際に多い漏水パターンを挙げます。

湾岸の埋立地(平和島・昭和島・京浜島・城南島・羽田)
潮風が常時当たるため、シーリング(外壁の目地に詰めるゴム状の材料)の劣化が内陸より数年早く進みます。手すりや避難ハッチの取付金物、屋上の笠木のビス周りから錆が回り、そこが水みちになる。塩害地域では、防水そのものより金物まわりの腐食が先に来ます。

内陸の低地(蒲田・大森・糀谷)
上からではなく下から来ます。地下駐車場のスロープ、地下ピット、1階店舗の出入口。冒頭のオーナーさまの蒲田の建物も、これでした。あわせて、屋上のドレン(排水口)に落ち葉やビニールが詰まって、屋上がプール状態になる「詰まり漏水」も多い区です。

多摩川沿いの低地(田園調布南・鵜の木・下丸子・矢口・六郷)
洪水時の浸水深が大きいエリアでは、受電設備(キュービクル)や給水ポンプが地下や1階にあると、水が引いても復旧に時間がかかります。建物は無事なのに電気と水が止まるという状況が、住民の生活を一番痛めつけます。

台地とその崖線(田園調布・嶺町・久が原・雪谷・馬込・池上・千束)
大田区が公表している土砂災害マップは、田園調布/嶺町/鵜の木・久が原/千束/雪谷/馬込・池上・新井宿/入新井・馬込・新井宿の7エリア分に分かれています。土砂災害警戒区域の指定基準は「傾斜度30度以上で高さ5m以上」など地形で決まるため、都心の住宅地でも該当します。斜面側の擁壁の水抜き穴、建物と擁壁の隙間、斜面に面した外壁の下端。ここが大田区の高台側の弱点です。


大規模修繕で見ておきたい漏水ポイント7つ

大田区のどの地形であっても、共通して押さえるべき箇所は7つです。私はこれを、いつもワンセットで提案するようにしています。

  1. 屋上防水の立上りと押えコンクリートの伸縮目地 — 平場より先に端部から切れます
  2. 外壁シーリング — 湾岸は劣化が早い。打ち替え周期を内陸と同じにしない
  3. バルコニーの床防水と排水ドレン — 住戸内漏水の入口No.1
  4. ドレン・ルーフドレンの詰まり — 時間100mmの雨は詰まりを一発で露呈させます
  5. サッシまわりのシーリングと水切り — 横殴りの雨で室内に回る典型
  6. エキスパンションジョイント(建物の継ぎ目のカバー) — 地震後に開き、そこから漏る
  7. 笠木・手すり・避難ハッチの取付金物 — 塩害地域では腐食起点になる

費用の目安を申し上げると、外壁塗装で3,500〜4,500円/㎡、外壁の打診調査で250〜500円/㎡、屋上防水で5,000〜8,000円/㎡といったレンジです。30戸規模のマンションの大規模修繕全体では3,500〜5,000万円程度、そのうち15〜25%が仮設足場費というのが一般的な構成になります。あくまで参考値で、実際の見積は建物の形状・立地・劣化状況で大きく変わります。


大田区の漏水緊急対応で、ロープアクセス工法が強い理由

漏水は、雨が降っているときに起きます。そして仮設足場は、雨の日に組めません。

足場を計画して組み上げるまでには、資材の手配から近隣への挨拶まで含めて、早くても1〜2週間はかかります。その間、漏れ続けます。私が「足場だけの会社では対応しきれない」と申し上げるのは、この時間差のためです。

ロープアクセス工法(産業用ロープで屋上から降下して作業する無足場工法)なら、当日から屋上の立上りやサッシまわりの応急止水に入れます。漏れている場所が7階の1住戸だけなら、そこだけをピンポイントで止める。全面を囲う必要がありません。

コストの差も大きい。10階建て・外周80m・工期3ヶ月という条件で試算すると、仮設足場が168万円のところ、ロープアクセスなら59万円程度。差額は約109万円です。これも物件条件で変動しますが、規模が大きくなるほど差は開きます。

大田区の湾岸エリアのように、建物の海側だけが激しく傷んでいるケースでは、傷んだ面だけロープアクセス、複雑な形状の面だけ足場というハイブリッド工法が総額を一番抑えます。株式会社明誠は、通常足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法から建物特性に応じて選べる、日本でも数少ない会社です。工法ごとの技術的な違いや安全管理の考え方は、同業者向けの姉妹サイトロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。

安全面についても申し上げておきます。明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では、ロープアクセス工法での高所作業について過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が担当し、ISO9001の品質マネジメントシステムのもとで施工しています。訓練体系の中身はロープアクセスドットコムに掲載しています。

より実務的な工法比較は明誠のロープアクセス工法の技術詳細、漏水そのものへの対応はマンション・ビルの漏水調査と補修をご覧ください。


防災上の共用部:修繕の優先度をどうつけるか

理事会で「どこから直すか」の議論になったとき、私は災害時に生活が止まる順で並べることをおすすめしています。

優先度 部位 理由
最優先 受電設備・給水ポンプ 浸水すると電気も水も止まり、復旧に最も時間がかかる
高 エレベーター機械室・ピット 浸水・冠水で長期停止。高層階の高齢入居者に直撃
高 避難通路・外部階段 鉄部の腐食は避難そのものを危うくする
中 屋上防水・ドレン 詰まりは低コストで直せるが、放置すると全体に波及
中 擁壁・がけの水抜き 崖線側の建物のみ。ただし該当すれば最優先へ繰り上げ

大田区には、浸水被害を受けた場合の排水ポンプ貸出制度があり、区内在住・在勤の方が対象です。また区内30か所に土のう置場が設置されていて、連絡なしで利用できます(出典:大田区「大田区の豪雨対策」)。管理会社任せにせず、管理組合として置場の位置を1か所把握しておくだけでも、当日の動きが変わります。


大田区で使える防災・耐震の助成制度(令和8年度)

止水板設置助成制度

令和7年9月の浸水被害を受けて、大田区は止水板設置の助成を行っています。令和8年度現在の内容は次のとおりです(出典:大田区「止水板設置助成制度」(令和8年8月25日更新))。

区分 助成割合 限度額
止水板設置工事(関連工事含む) 5分の3(個人は5分の4) 150万円(個人は100万円)
簡易型止水板の購入費 5分の3(個人は5分の4) 20万円(個人は25万円)

対象区域は、区内で過去に浸水被害が発生した地域、および区の防災ハザードマップの中小河川・内水氾濫ハザードマップにおける浸水想定区域です。1棟につき1回が限度で、交付決定前に工事に着手すると対象外になります。設置後は10年間の適切な維持管理が求められます。

管理組合として申請される場合は「個人」ではない扱いになりますので、5分の3・上限150万円が適用される想定です。適用区分は事前に建築調整課(03-5744-1308)へご確認ください。

マンションの耐震診断・改修助成

大田区は、地階を除く3階建て以上の耐火・準耐火の共同住宅を対象に、分譲・賃貸ともに耐震診断と耐震改修の助成を行っています(出典:大田区「マンションの耐震診断・改修の費用の助成について」(令和8年4月1日更新))。

ステップ 分譲マンション 賃貸マンション
耐震診断 上限300万円/費用の2/3 上限100万円/費用の2/3
耐震改修設計 上限300万円/費用の2/3 上限100万円/費用の2/3
耐震改修工事 上限4,000万円/費用の1/2 上限500万円/費用の1/2

耐震改修工事は、単価51,700円/㎡×延べ面積で算出した額と実費のうち、低いほうが適用されます。賃貸はさらに50万円/戸の上限が重なります。道路への突出がある場合や未接道の場合は助成不可となる点にご注意ください。

令和8年度の申請締切日は、分譲マンション耐震化アドバイザー派遣申請および非木造建築物の診断・改修設計・改修工事申請が令和8年12月18日(金)です(出典:大田区「令和8年度耐震化助成申請締切日について」)。

あわせて、大田区は分譲マンション耐震化アドバイザー派遣制度を無料で実施しています。建築士が管理組合に出向いて耐震化の助言を行うもので、派遣回数は調査・報告で各1回、その他3回までが上限です。総会に諮る前の整理に使いやすい制度だと思います。


よくあるご質問

Q. 大田区で漏水が起きたとき、いつ来てもらえますか?

A. ロープアクセス工法であれば、足場を組まずに屋上から降下して調査・応急止水に入れるため、状況によっては当日から対応できます。足場工法の場合は資材手配と近隣挨拶を含めて1〜2週間が目安となり、その間の漏水は続いてしまいます。

Q. 漏水の原因調査だけをお願いすることはできますか?

A. できます。外壁の打診調査は250〜500円/㎡が目安で、ロープアクセスやドローンを併用すれば足場費をかけずに全面を確認できます。調査結果をもとに、補修範囲と概算をご提示します。

Q. 湾岸エリアは本当に修繕周期が短いのですか?

A. 潮風が常時当たる立地では、シーリングや鉄部塗装の劣化が内陸より早く進む傾向があります。長期修繕計画を内陸の標準周期のまま使っていると、実態と合わなくなることがあります。現況調査のうえで周期を見直すことをおすすめします。

Q. 止水板の助成は管理組合でも使えますか?

A. 大田区の止水板設置助成は「区内に存する又は新たに建築される建築物」が対象で、個人以外の場合は助成割合5分の3・上限150万円が適用される想定です。対象区域と適用区分は物件ごとに判断されますので、着工前に建築調整課へご確認ください。

Q. 足場とロープアクセスは、どちらが安いのですか?

A. 建物の形状と工事範囲によります。10階建て・外周80m・工期3ヶ月の条件では足場168万円に対しロープアクセス59万円程度という試算になりますが、複雑な形状の建物や全面改修では足場のほうが効率的な場合もあります。明誠は3工法を比較したうえで、総額が最も抑えられる組み合わせをご提案します。

Q. 耐震改修の助成を使うと、大規模修繕と同時にできますか?

A. 同時期に計画すること自体は可能ですが、耐震改修助成は交付決定後に契約・着手する必要があります。大規模修繕のスケジュールと申請時期の調整が要点になりますので、早めに区へご相談ください。

Q. 相談は無料ですか?

A. 現地調査と概算のご提示までは無料で承っています。お問合せフォームからご連絡ください。管理組合向けのご説明資料もご用意しています。


まとめ:今週、大田区の理事会で動けること3つ

  1. 管理室の防災ハザードマップの発行年月を確認する — 令和8年2月発行版より古ければ差し替え。高潮の想定が更新されています
  2. 受電設備・給水ポンプ・エレベーターピットの標高を確認する — 浸水想定深と見比べて、かさ上げ検討の要否を判断する
  3. 止水板設置助成と耐震化助成の締切を理事会の議題に載せる — 耐震化助成の非木造・アドバイザー派遣は令和8年12月18日(金)が締切です

大田区は、多摩川・東京湾・呑川・台地の崖線という、性格の違うリスクを1つの区に抱えています。だからこそ、「23区の平均的な修繕計画」がいちばん当てはまらない区でもあります。自分の建物がどこに立っているかを地図で確定させることから、修繕の議論を始めていただきたいと思います。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。管理組合さま向けのサービス内容は管理組合向け大規模修繕のご案内、賃貸・オーナー物件はビルオーナー向けのご案内にまとめています。

明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月17日時点で公表されている大田区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、大田区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月17日

世田谷区のマンション管理計画認定制度|区への手数料は無料・独自基準なし。認定119件の現実を大規模修繕の現場から解説【2026年度版】

世田谷区の理事長さまとお話ししていると、管理計画認定の話題で必ず出てくるのが「うちの区はどうなんですか」という質問です。

隣の区と制度の中身が違うことは、あまり知られていません。実際に違います。同じ東京23区でも、区への手数料が2万6千円かかるところもあれば、世田谷区のように無料のところもある。区が独自の上乗せ基準を置いているところもあれば、世田谷区のように置いていないところもある。

私は大規模修繕の施工会社の人間ですので、認定申請の代行はしません。ただ、認定基準の中身は大規模修繕工事と真正面から重なります。長期修繕計画、修繕積立金、計画的な修繕の実施。どれも現場で毎日向き合っている項目です。この記事では、世田谷区でマンション管理計画認定を取るときの実務を、制度解説書には書かれていない「どこでつまずくか」まで含めて整理します。

結論:世田谷区への認定申請手数料は無料。独自基準もない

先に結論をお伝えします。

世田谷区でマンション管理計画認定(管理組合の管理計画が一定の基準を満たすと自治体が認定する制度)を取る場合、世田谷区への新規申請・更新申請の手数料は無料です。区の申請の手引きには「本制度の普及促進を図るため、当面のあいだは無料とします」と明記されています(出典:世田谷区「マンション管理計画認定制度 申請の手引き」(PDF)/令和7年11月28日 Ver1.2)。

もうひとつ、世田谷区は区独自の上乗せ基準を設けていません。区のページにも「審査基準に、区独自基準は設定していません」と書かれています(出典:世田谷区「マンション管理計画認定制度」/最終更新日2026年9月1日)。

制度上は、認定基準の5②に「世田谷区マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること」という項目があります。ただし世田谷区の適正化指針は国の基準以外の独自基準を置いていないため、1①から5①までの16項目に適合すれば、5②にも自動的に適合するという扱いです。理事会・議事録の保管、要援護者名簿、自治会加入、防災訓練の実績——こうした上乗せ項目を求める区もありますが、世田谷区にはありません。

ただし「区への手数料が無料」と「申請費用がゼロ」はイコールではありません。ここを取り違えると予算取りで失敗します。

費目 支払先 金額
認定申請手数料(新規・更新) 世田谷区 無料(当面のあいだ)
支援システム利用料 (公財)マンション管理センター 1申請あたり10,000円
事前確認審査料 依頼先(マンション管理士・管理会社・日管連・センター) 依頼先により異なる
変更申請手数料 世田谷区 有料(後述)

事前確認審査料は、管理組合がマンション管理センターに直接申し込むパターンでは長期修繕計画1計画あたり10,000円です(出典:(公財)マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」)。管理会社やマンション管理士に依頼する場合は個別見積になります。

つまり世田谷区の管理組合は、実費2万円前後+手間で認定に手が届く、というのが現在地です。

世田谷区の認定は119件。23区の中でも突出している

数字を見てください。

世田谷区が公表している管理計画認定マンション一覧には、令和8年9月1日現在で119件が掲載されています(公表に同意したマンションのみ、出典:世田谷区管理計画認定マンション一覧(PDF))。世田谷区が制度を開始したのは令和5年10月31日ですから、約2年10か月で119件です。

同じ東京23区でも、公表件数が20件前後にとどまる区は珍しくありません。この差がどこから来ているかというと、私は3つあると見ています。

1. 区への手数料が無料であること。予算計上のハードルが下がります。総会に諮る際も「区への手数料はかかりません」と言えるかどうかで、議論の入口がまったく違います。

2. 独自基準がないこと。事前確認をしてくれるマンション管理士が国の基準だけを見ればよく、区の追加チェックで差し戻される心配がありません。

3. そもそも母数が多いこと。世田谷区は分譲マンションのストックが厚く、区は令和4年度に全分譲マンションを対象とした実態調査まで実施しています(出典:世田谷区分譲マンション実態調査報告書(令和4年度))。

一覧の中身にも示唆があります。成城・砧・等々力・経堂・烏山・三軒茶屋・二子玉川と、区内のほぼ全域に分布している。そして名称から推測するに、1980年代から1990年代に竣工したと思われる物件が相当数含まれています。新しいマンションだけの制度ではない、ということです。

「うちは古いから」「うちは小さいから」で最初から降りている組合が、世田谷区にはまだ相当数あると私は見ています。もったいない。

申請はオンラインのみ。紙で持ち込むことはできない

世田谷区の運用で、最初に押さえておくべき点があります。

新規申請と更新申請は、オンライン(管理計画認定手続支援システム)のみの受付です。区の窓口に書類を持ち込んで受け付けてもらう、という選択肢はありません。

流れはこうです。

  1. 総会(集会)で認定申請を決議する——ここが起点です。区分所有法第34条第1項の集会で、臨時総会も含みます
  2. マンション管理センターの支援システムに必要事項を入力し、書類をアップロードする
  3. 事前確認講習を受けたマンション管理士が、認定基準への適合を確認する
  4. 適合すれば「事前確認適合証」が発行される
  5. システム上で「認定申請」ボタンを押すと、世田谷区へ申請が飛ぶ
  6. 世田谷区が審査し、認定通知書を交付する

事前確認の依頼先は4パターンあります。①マンション管理士に個別依頼、②管理委託先(マンション管理業協会経由)に依頼、③日本マンション管理士会連合会に依頼、④マンション管理センターに直接依頼。なお、申請マンションの区分所有者や、管理委託先の担当者であるマンション管理士は、そのマンションの事前確認を行えません。

そして時間です。事前確認審査には1〜2か月程度、さらに申請が集中した場合は区の審査に1か月以上かかることがあると区が明記しています。総会決議から認定通知まで、半年程度は見ておくのが現実的です。

変更申請だけは有料。しかも書面

見落とされがちなのがここです。

認定を受けたあとに管理計画の内容を変更する場合、支援システムが使えないため世田谷区へ直接、書面で申請します。そしてこの変更申請には手数料がかかります。

審査項目 基本手数料 加算手数料
管理組合の運営 4,800円 2,600円
管理規約 4,000円 2,600円
管理組合の経理 4,600円 2,800円
長期修繕計画の作成、見直し等 9,800円 5,200円
その他 2,900円 1,700円
上記以外の事項 2,000円 900円

(出典:前掲「申請の手引き」P.22。加算手数料は変更する長期修繕計画の数から1を引いた数を乗じて算出)

長期修繕計画の変更が9,800円と、最も高く設定されています。ここに現場としてのアドバイスがあります。認定申請の直前に長期修繕計画を見直しておく。認定を取った半年後に計画を大きく変えると、変更申請の手間と費用が発生します。順番を逆にするだけで、避けられる出費です。

なお、修繕の内容や実施時期の変更で計画期間や修繕資金計画を伴わないもの、監事の変更などは「軽微な変更」に該当し、変更申請ではなく届出で足ります。どちらに当たるか迷ったら、変更申請の前に区へ事前相談してください。

認定基準16項目のうち、世田谷区で実際に落ちるのはここ

独自基準がないということは、勝負は国の16項目で決まるということです。私の経験上、世田谷区の組合が引っかかりやすい項目は限られています。

修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと(4⑤)

これが最大の関門です。計画期間全体の修繕積立金総額から算出した月当たりの平均額が、国の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」が示す下限値を上回っている必要があります。下限値の目安は、20階未満・建築延床面積5,000㎡未満で月額235円/㎡、5,000〜10,000㎡で170円/㎡、10,000〜20,000㎡で200円/㎡、20,000㎡以上で190円/㎡、20階以上は240円/㎡です(機械式駐車場分を除く)。

70㎡の住戸なら、5,000㎡未満のマンションで月額16,450円が目安になります。世田谷区は住宅地としての歴史が長く、1980年代に分譲されて以来、積立金を大きく上げてこなかった組合が現実に存在します。ここで止まります。

下限値を下回る場合は、専門家による「著しく低額でない旨の理由書」を添付する道もあります。ただし理由書で通すより、計画そのものを見直すほうが本筋だと私は思います。

長期修繕計画が標準様式に準拠していること(4①)

国の長期修繕計画標準様式に沿って、19の工事項目、概算費用、実施時期、修繕積立金の月当たり㎡単価、計画期間当初の残高、期間全体で集める総額——これらが盛り込まれている必要があります。管理会社が作った簡易版の「修繕計画表」では要件を満たさないことがあります。

計画期間30年以上・残存期間に大規模修繕2回以上(4③)

築30年を超えたマンションで、計画期間を20年で切っている例をよく見ます。30年以上に引き延ばし、そのなかに大規模修繕を2回入れる。この作業をすると、必然的に積立金の総額が増え、4⑤の判定にも影響します。4③と4⑤はセットで考えてください。

修繕積立金の3か月以上の滞納額が全体の1割以内(3③)

直前事業年度末時点での判定です。滞納整理は時間がかかりますので、認定を目指すなら早めに着手してください。

長期修繕計画の見直しに、世田谷区の助成が使える場合がある

ここは世田谷区ならではの話です。

世田谷区は令和6年6月1日から、公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターの「マンション管理アドバイザー制度」のCコースを利用した際の派遣料の2分の1を助成しています。同一マンションにつき2回まで(出典:世田谷区「マンション管理アドバイザー制度利用助成」)。

認定に直結するコースを抜き出すと、次のとおりです。

コース 派遣料 助成後の自己負担(1/2)
C-6(修繕積立金の設定案) 95,700円 約47,850円
C-7(長期修繕計画見直し案及び修繕積立金見直し案) 95,700円 約47,850円
C-8(大規模修繕工事計画案) 191,400円 約95,700円

ただし助成には条件があります。東京都のマンション管理条例に基づく要届出マンション(昭和58年12月31日以前に新築された、居住用の独立部分6戸以上の分譲マンション)で届出済みであること、届出から5年以内であること、そして管理不全の兆候があるマンションであること。管理組合・管理者等・管理規約・総会開催・管理費・修繕積立金・修繕の計画的な実施のうち、いずれかが「無い」と回答しているマンションが対象です。

条件は限定的ですが、該当する組合にとっては、認定の一番の関門である長期修繕計画の見直しを半額で進められる制度です。区の居住支援課(03-5432-2504)に、まず該当するかどうかを確認する価値はあります。

なお、東京都条例に基づく管理状況の届出そのものは、5年以内ごとの更新が必要です。変更の届出をしても更新の扱いにはなりません。世田谷区では区役所西棟1階の窓口105、または郵送・インターネットで受け付けています(出典:世田谷区「マンション管理状況の届出について」/最終更新日2026年7月14日)。

認定がもたらす3つの経済効果と、税制の落とし穴

認定は「表彰状」ではありません。お金に効きます。

1)マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)

管理計画認定マンションが長寿命化に資する大規模修繕工事を行うと、工事完了翌年度の建物部分の固定資産税額が1/6〜1/2の範囲内で減額されます。対象は専有部分のうち居住用部分、100㎡相当分までです(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制の要件」(PDF))。

マンション側の要件は、築20年以上/総戸数10戸以上/過去に長寿命化工事を行っている/令和3年9月1日以降に修繕積立金を認定基準まで引き上げている(または引上げ予定)/認定を取得している(または取得予定)。工事側の要件は、外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事のいずれかを含み、令和5年4月1日から令和9年3月31日までに工事が完了すること。

現場で見ている落とし穴を2つ挙げます。

ひとつはタイミング。認定は、固定資産税の賦課期日(1月1日)時点と、減額措置の申告時点の両方で取得している必要があります。申告期限は工事完了日から3か月以内。「工事は終わったが認定はこれから」では間に合いません。

もうひとつは申告先。23区の固定資産税を課税しているのは世田谷区ではなく東京都です。減額の申告先は都税事務所(世田谷区であれば世田谷都税事務所)になります。認定の窓口は区、税の窓口は都。ここを最初に整理しておくと、後半がずいぶん楽です。

なお、国土交通省の令和8年度税制改正概要では、本特例を5年間(令和8年4月1日〜令和13年3月31日)延長し、対象住宅の床面積要件の下限を40㎡(現行50㎡)に緩和する旨が示されています(出典:国土交通省「令和8年度税制改正概要」(PDF))。一方で、制度概要資料には工事完了期限が令和9年3月31日と記載されたままの箇所もあります。申告を検討される際は、国土交通省マンション税制のページと世田谷都税事務所の最新情報を必ずご確認ください。

2)住宅金融支援機構の金利優遇

世田谷区の申請の手引きには、具体的な数字まで書かれています。マンション共用部分リフォーム融資は金利が年0.2%引下げ、【フラット35】維持保全型は購入後当初5年間の金利が年0.25%引下げ、マンションすまい・る債は利率の上乗せ。

フラット35の引下げは購入者側のメリットです。つまり、売却時に「認定済み」であることが買い手のローン条件を良くする。資産価値の話として理事会で説明すると、区分所有者の理解が一気に進みます。

3)市場での「見える化」

認定マンションは、マンション管理センターの閲覧サイトのほか、不動産情報サイトの建物ライブラリーにも掲載されます(出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度」)。世田谷区のホームページにも名称・所在地・認定コードが公表されます(公表可で申請した場合)。

世田谷区で大規模修繕を考えるとき、工法で積立金の景色が変わる

ここからは施工会社としての話です。

認定基準4⑤の「修繕積立金の平均額が著しく低額でない」をクリアする方法は、実は2つあります。積立金を上げるか、将来の工事費を下げるかです。長期修繕計画の推定修繕工事費が下がれば、必要な積立総額も下がります。

世田谷区の物件で、私が毎回申し上げていることがあります。世田谷区は住宅地としての性格上、隣地との離隔が狭い低中層マンションが非常に多い。成城や等々力のような閑静な住宅地では、道路幅員が狭く、足場の資材搬入自体に苦労する現場もあります。

こういう物件で効くのが、無足場工法であるロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が壁面を昇降して施工する工法)です。

具体的な数字でお示しします。10階建て・外周80m・工期3か月の条件で、仮設足場を組むと168万円前後。同条件でロープアクセス工法なら59万円前後まで下がります。差額はおよそ109万円。あくまで条件による目安で、物件形状や近隣条件で大きく変動しますが、桁がひとつ違う話ではありません。

単価感もお伝えします。外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、屋上・バルコニー防水は5,000〜8,000円/㎡、外壁の打診調査は250〜500円/㎡が目安です。30戸規模のマンションの大規模修繕は総額3,500万〜5,000万円がひとつのレンジで、そのうち仮設足場が15〜25%を占めます。この15〜25%を圧縮できるかどうかが、長期修繕計画の総額を左右します。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。明誠のロープアクセス工法の技術詳細と大規模修繕の料金の考え方は、それぞれのページにまとめています。工法の技術的な比較検討をもっと深く知りたい方は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに工法比較や訓練体系を掲載していますので、設計事務所や管理会社と議論する際の材料にお使いください。

もうひとつ。長寿命化促進税制の対象工事は「外壁塗装等工事、床防水工事及び屋根防水工事」——大規模修繕の中核そのものです。工事仕様を組む段階で税制要件を意識しておけば、証明書取得の段取りもスムーズになります。足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法という選択肢もありますので、詳しくはロープアクセスドットコムの工法解説をご覧ください。

令和9年4月1日から認定基準が変わる。逆算スケジュールを引く

今年いちばん重要な情報です。

令和7年のマンション関係法改正を受けて、令和8年国土交通省令第70号および令和8年国土交通省告示第1017号が令和8年7月31日に公布され、令和9年4月1日に施行されます。分譲事業者が申請者となる仕組みの導入に伴い、管理組合の管理者等が申請者となる場合の認定基準も見直されました(出典:前掲・国土交通省「マンション管理計画認定制度」令和9年4月1日施行関係)。

国交省は「地方公共団体への申請日が令和9年4月1日以降となる場合は、見直し後の認定基準が適用されます」と明記しています。申請日がいつになるかで、適用される基準が変わる。

世田谷区の運用(オンライン申請のみ、事前確認1〜2か月、区審査1か月以上)に合わせて逆算すると、こうなります。

時期 やること
今すぐ(2026年9月〜10月) 区の居住支援課(03-5432-2504)へ電話。申請の手引きを入手し、アドバイザー助成の対象になるかも確認
2026年10〜11月 長期修繕計画を標準様式に準拠して見直し。計画期間30年以上・大規模修繕2回以上・積立金平均額の3点を試算
2026年11〜12月 修繕積立金の滞納状況を整理。3か月以上の滞納額が全体の1割以内かを確認
2026年12月〜2027年1月 管理規約を確認(専有部立入り、修繕履歴の管理、財務情報の書面交付の定め)。組合員名簿・居住者名簿の年1回更新体制を整える
2027年1〜2月 総会(または臨時総会)で認定申請と長期修繕計画・修繕積立金額を決議
2027年2月 事前確認を依頼(1〜2か月を見込む)
2027年3月 事前確認適合証の交付を受け、世田谷区へオンライン申請

総会決議が必要な点を見落とさないでください。定時総会が春の組合なら、令和9年春の定時総会では令和9年4月1日の新基準に間に合いません。実質的に逆算の起点は臨時総会になる可能性があります。

そして更新です。認定の有効期間は5年間で、更新申請をしないと効力を失います。更新の申請手続きは有効期間満了日の1か月前から行えます。満了日までに申請していれば、更新認定または不認定の通知が届くまでは従前の認定が有効です。認定日を管理規約の付属資料や理事会の引継ぎ書に書き込んでおくことをおすすめします。

まとめ|世田谷区の管理組合が今週動くこと3点

長くなりましたので、今週できることに絞ります。

1. 区の「申請の手引き」をダウンロードして、認定基準16項目を理事会で1回だけ読み合わせる

区独自基準がないぶん、チェックすべきは国の16項目だけです。理事会の30分で、どこがクリアできてどこが足りないかは見当がつきます。

2. 直近の長期修繕計画を引っ張り出して、3点だけ確認する

計画期間は30年以上か。残存期間に大規模修繕が2回以上入っているか。作成・見直しから7年以内か。この3点が揃っていなければ、認定より先に計画の見直しです。

3. 世田谷区居住支援課(03-5432-2504)に電話して、アドバイザー助成の対象か聞く

要届出マンションで届出から5年以内、かつ管理不全の兆候がある場合に限られますが、該当すれば長期修繕計画の見直しを半額で進められます。聞くだけならゼロ円です。

10月から12月にかけての理事会が分かれ目です。理事会の議題に1分でもこの話題を出してみてください。工法の選択肢で工事費が変わる余地があるかどうかは、図面と現状写真があれば概算でお答えできます。総会前の整理だけでもお力になれることがありますので、管理組合向けサービスのご案内をご覧いただくか、お問合せフォームからお気軽にお声がけください。これまでの施工事例(約6,000棟)は施工事例一覧からご覧いただけます。

よくあるご質問

Q. 世田谷区の管理計画認定は、本当に手数料がかからないのですか?

A. 世田谷区への新規申請・更新申請の手数料は、当面のあいだ無料です。ただしマンション管理センターのシステム利用料10,000円と、事前確認審査料(センター直接依頼なら長期修繕計画1計画あたり10,000円)は別途かかります。実費としては2万円前後を見込んでください。なお区は「今後、社会的または経済的なインセンティブが十分に行われていると判断したときは手数料を設定する場合があります」としていますので、無料が恒久的な措置ではない点にはご注意ください。

Q. 世田谷区に独自の上乗せ基準はありますか?

A. ありません。区のページに「審査基準に、区独自基準は設定していません」と明記されています。認定基準5②の「世田谷区マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること」は、国の16項目に適合すれば自動的に適合する扱いです。事前確認を担当するマンション管理士が国の基準だけを見ればよいため、手戻りが起きにくい運用になっています。

Q. 紙の書類を区役所に持っていけば申請できますか?

A. 新規申請と更新申請はオンライン(管理計画認定手続支援システム)のみの受付で、窓口への持ち込みはできません。書面申請ができるのは、認定後に管理計画を変更する「変更申請」の場合だけです。変更申請は有料で、長期修繕計画の変更なら基本手数料9,800円がかかります。

Q. 申請してから認定までどれくらいかかりますか?

A. 事前確認審査に1〜2か月程度、さらに申請が集中した場合は区の審査に1か月以上かかると区が案内しています。総会決議から認定通知まで、半年程度は見ておくのが現実的です。令和9年4月1日から認定基準が見直されますので、現行基準での申請をご希望なら逆算して動いてください。

Q. 築40年を超えていますが、認定は取れますか?

A. 築年数の要件はありません。世田谷区の認定マンション一覧にも、名称から1980年代の分譲と推測される物件が複数含まれています。ただし長寿命化促進税制の適用には総戸数10戸以上・築20年以上という別要件がありますので、税制メリットまで狙う場合はあわせてご確認ください。

Q. 修繕積立金が足りないと言われました。上げるしかないですか?

A. 積立金を上げる以外に、将来の推定修繕工事費そのものを下げるという道があります。総工費の15〜25%を占める仮設足場を、ロープアクセス工法やハイブリッド工法で圧縮できれば、長期修繕計画の総額が下がり、必要な積立金の平均額も下がります。10階建て・外周80m・工期3か月の条件では、足場168万円前後に対しロープアクセス工法で59万円前後という比較になります。あくまで条件による目安で、物件により変動します。

Q. 打診調査だけでも依頼できますか?

A. お受けしています。打診調査の単価は250〜500円/㎡が目安です。ロープアクセス工法なら足場を組まずに調査でき、調査で見つかった不具合の補修まで同じ体制で一貫して進められます。建築基準法第12条に基づく定期報告の期限が迫っている場合は、残り期間を伺ったうえで段取りをご提案します。

Q. 固定資産税の減額は、世田谷区の窓口に申告するのですか?

A. いいえ。東京23区の固定資産税は東京都が課税していますので、減額の申告先は都税事務所(世田谷区であれば世田谷都税事務所)です。認定の窓口は世田谷区、税の窓口は東京都、と分かれています。申告期限は工事完了日から3か月以内です。

出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月17日時点で公表されている世田谷区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。とくに世田谷区への申請手数料の無料措置は「当面のあいだ」の取扱いです。実際に申請される前に、必ず世田谷区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月17日

大田区のマンション管理計画認定制度|手数料26,300円と区独自の上乗せ基準を実務で解説【2026年度版】

大田区の理事長さまから、ここ一年で似た質問を何度も受けるようになりました。「管理計画認定って、うちも取ったほうがいいんですか」「手数料はいくらですか」「取ると何が得なんですか」。

私は大規模修繕の施工会社の人間ですので、認定申請の代行はしません。ただ、認定基準の中身は大規模修繕工事と真正面から重なっています。長期修繕計画、計画的修繕の実施、法定点検。どれも現場で毎日向き合っている項目です。だからこそ、制度の解説書には書かれていない「どこでつまずくか」を、大田区に絞ってお伝えできると思っています。

この記事では、大田区でマンション管理計画認定を取るときの手数料、大田区だけの上乗せ基準、そして認定が資金面にどう効くのかを、順を追って整理します。

結論:大田区の管理計画認定は、手数料26,300円か4,200円か。分かれ目は申請ルート

先に結論からお伝えします。

大田区でマンション管理計画認定(管理組合の管理計画が一定の基準を満たすと自治体が認定する制度)を取る場合、大田区へ直接申請すると認定申請手数料は26,300円、公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを経由してから大田区へ申請すると4,200円です(出典:大田区「マンション管理計画認定制度」/更新日2026年5月27日)。

ただし、この「4,200円」だけを見て安いと判断すると、あとで話が合わなくなります。センター経由の場合は区への手数料とは別に、システム利用料が1申請あたり10,000円、さらに事前確認審査料が発生します(出典:(公財)マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」)。管理組合がセンターに直接申し込むパターンでは、事前確認審査料は長期修繕計画1計画あたり10,000円です。

つまり実際の総額はこうなります。

申請ルート 大田区への手数料 センターへの費用 目安の総額
大田区へ直接申請 26,300円 なし 26,300円
センター経由(管理組合が直接申込) 4,200円 システム利用料10,000円+事前確認審査料10,000円 24,200円程度
センター経由(管理会社・マンション管理士に依頼) 4,200円 システム利用料10,000円+事前確認審査料(個別見積) 依頼先による

総額はほぼ拮抗します。では何で選ぶのか。私の見方は「書類の手戻りをどれだけ嫌うか」です。センター経由なら、事前確認講習を修了したマンション管理士が国の認定基準への適合を先にチェックしてくれます。総会をやり直す事態を避けたい組合には、この安心料は高くありません。

なお、長期修繕計画が複数ある団地型などでは、大田区への手数料に直接申請で14,900円、センター経由で1,600円が加算されます。

認定主体は大田区。窓口は蒲田の区役所7階

「東京都に出すんですか、大田区ですか」。これも頻繁に聞かれます。

答えは大田区です。マンション管理適正化法に基づく認定主体は、マンション管理適正化推進計画を策定した市・特別区であり、町村部のみ都道府県が担当します(出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度」)。東京都のマンションポータルサイトにも「区市の区域のマンションの認定事務は、各区市が行います」と明記されています(出典:東京都マンションポータルサイト)。

大田区の窓口はこちらです。

  • 大田区住宅・空家相談窓口(建築調整課 住宅政策担当)
  • 〒144-8621 東京都大田区蒲田五丁目13番14号 大田区役所7階11番窓口
  • 電話:03-5744-1343

ここで大事な点がひとつ。大田区は、直接申請でもセンター経由でも、はじめに大田区住宅相談窓口への事前相談を求めています。しかも事前相談の際には事前相談チェック票と必要書類を持参し、必要書類は2部用意する運用です。書類が不足していると受付されません。

さらに、区職員による書類審査のあとに訪問調査があります。机上の書類だけで完結しない制度だ、という前提で段取りを組んでください。

国の認定17要件を、理事長目線で並べ直す

国の認定基準は大きく5分類、細目で17項目です(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制の要件」)。分類ごとに並べます。

1)管理組合の運営(3項目)
管理者等が定められている/監事が選任されている/集会(総会)が年1回以上開催されている。

2)管理規約(3項目)
管理規約が作成されている/災害等の緊急時や管理上必要なときの専有部への立ち入り、修繕等の履歴情報の管理について定めがある/管理組合の財務・管理に関する情報の書面交付(または電磁的方法による提供)について定めがある。

3)管理組合の経理(3項目)
管理費と修繕積立金の区分経理/修繕積立金会計から他会計への充当がない/直前事業年度末時点で、修繕積立金の3か月以上の滞納額が全体の1割以内。

4)長期修繕計画の作成・見直し等(7項目)
国の長期修繕計画標準様式に準拠して作成され、計画内容と修繕積立金額が総会決議されている/作成または見直しが7年以内/計画期間30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上/将来の一時金徴収を予定していない/計画期間全体の修繕積立金の平均額が著しく低額でない/計画最終年度に借入金残高がない、など。

5)その他(1項目)
組合員名簿・居住者名簿を備え、1年に1回以上は内容を確認している、ほか都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切であること。

私の経験上、ここで最初に引っかかるのが4)の「修繕積立金の平均額が著しく低額でない」です。国の修繕積立金ガイドラインが示す下限値は、20階未満・建築延床面積5,000㎡未満で月額235円/㎡、5,000〜10,000㎡で170円/㎡、10,000〜20,000㎡で200円/㎡、20,000㎡以上で190円/㎡、20階以上は240円/㎡です(機械式駐車場分を除く、同上出典)。

大田区は六郷・羽田・大森方面に1980年代竣工の中規模マンションが多く残っています。この年代の物件で、値上げをずっと先送りしてきた組合は、まずここで止まります。

大田区の独自上乗せ基準——実は、ここで落ちる組合が一番多い

ここからが本題です。

大田区は国の認定基準に加えて、区独自の上乗せ基準を設けています(出典:大田区マンション管理計画認定制度認定基準(PDF))。国基準にはない、あるいは国基準より踏み込んでいる主な項目は次のとおりです。

理事会の運営
理事会が開催され、議事録が作成・適正保管されていること。国基準は総会年1回どまりですが、大田区は理事会の議事録まで見ます。

名簿まわりの深掘り
組合員名簿・居住者名簿に加えて要援護者名簿を備え、1年に1回以上内容を確認していること。さらに名簿の取扱いに関する規定を定め、管理組合が適正に保管・利用していること。

図書の保管
設計図書、点検記録、届出書、修繕履歴等のマンションに関する図書を適正に保管していること。

法定の検査・点検の実施
建築物および設備に係る法定の検査または点検を実施し、加えて良好な住環境を維持するために必要な日常点検等を適切に実施していること。

東京都条例に基づく管理状況の届出
「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」に基づく管理状況の届出を行っていること。昭和58年12月31日以前に新築された、居住用独立部分6戸以上のマンションは要届出マンションですが、それ以外も任意で届出でき、大田区の認定申請には管理状況の届出が前提になります。

危機管理体制
自主防災組織の結成または防災訓練の実施、防災資機材・備蓄物資の整備、要援護者等の把握/マンションの状況に応じた危機管理マニュアルの整備/昭和56年5月31日以前に新築工事着手のマンションは耐震診断を実施し、耐震性が不足していれば耐震改修や長期修繕計画の見直しを行っていること。

コミュニティの形成
マンション内に自治会を設置しているか、地域の町会・自治会に区分所有者・居住者等が加入していること。

そして、実務上いちばん注意していただきたいのがこれです。

大田区の独自基準は、マンション管理センターのマンション管理士による事前確認の対象外です。

大田区のページにもはっきり書かれています。センターから事前確認適合証の交付を受けただけでは認定申請は完了せず、区独自の認定基準に適合しなければ認定は受けられません。センター側の案内にも「地方公共団体が独自基準を設けている場合、当該独自基準はマンション管理士による事前確認の対象外」とあります。

だから大田区は、センター経由の場合も「区独自基準に基づく必要書類のみ、あらかじめ審査する」という形で先に区の事前相談を通す運用にしているわけです。順番を間違えると、センターに2万円払ったあとで区の基準に落ちる、という最悪の展開になりかねません。

「法定の検査・点検」は、大規模修繕の現場と直結している

上乗せ基準の中で、私が施工会社としてどうしても付け加えたい項目があります。「建築物及び設備に係る法定の検査又は点検を実施していること」です。

分譲マンションで該当しやすいのが、建築基準法第12条に基づく定期報告、いわゆる12条点検です。とくに外壁については、竣工・外壁改修等から10年を超えた建物で、全面打診等の調査が求められます(令和4年の告示改正で運用が整理されました)。

ところが現場に行くと、「打診調査は足場を組まないとできない」と管理会社から言われて、報告期限だけが迫っている、という組合が本当に多い。私が一番悔しい思いをするのは、この段階で相談をいただけなかったときです。

打診調査の㎡単価は、私の感覚では250〜500円/㎡が目安です。仮に外壁面積3,000㎡なら75万〜150万円。ここに仮設足場を別途組むと、話は一気に変わります。10階建て・外周80m規模で工期3か月なら、足場だけで168万円前後が乗ってくる計算です。

ここで無足場工法であるロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が壁面を昇降して施工する工法)を使うと、同条件で59万円前後まで下がります。差額はおよそ109万円。あくまで条件による目安で、物件形状や近隣条件で大きく変動しますが、桁がひとつ違う話ではありません。

大田区は蒲田・大森・京急沿線に敷地いっぱいに建った中層マンションが多く、隣地との離隔が取れずに足場自体が組みにくい物件が珍しくありません。こういう物件こそ、明誠のロープアクセス工法の技術詳細が効いてきます。技術面をもっと深く知りたい方は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに工法比較や訓練体系をまとめています。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。認定申請の前段として点検体制を整えたい組合には、この実績を根拠にお話ししています。

認定がもたらす3つの経済効果

認定は「表彰状」ではありません。お金に効きます。3つに分けて整理します。

1)マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)

管理計画認定マンションが長寿命化に資する大規模修繕工事を行うと、工事完了翌年度の建物部分の固定資産税額が1/6〜1/2の範囲内で減額されます。減額割合は条例で定められ、対象は専有部分のうち居住用部分、100㎡相当分までです(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制の要件」)。

適用要件はマンション側・工事側の両方にあります。

マンションの要件
築20年以上/総戸数10戸以上/過去に長寿命化工事を行っている/令和3年9月1日以降に修繕積立金の額を管理計画の認定基準まで引き上げている(または引上げ予定)/管理計画の認定を取得している(または取得予定)。

工事の要件
外壁塗装等工事、床防水工事、屋根防水工事のいずれかを含むこと/令和5年4月1日から令和9年3月31日までの間に工事が完了すること。

ここに私が現場で見ている落とし穴があります。認定は、固定資産税の賦課期日(1月1日)時点と、減額措置の申告時点の両方で取得している必要があるという点です。申告期限は工事完了日から3か月以内。つまり「工事は終わったが認定がまだ」では間に合いません。

そしてもうひとつ、大田区の組合が混同しがちな点。23区の固定資産税を課税しているのは大田区ではなく東京都です。減額の申告先は都税事務所(大田都税事務所)になります。認定の窓口は区、税の窓口は都。ここを最初に整理しておくと、後半がずいぶん楽になります。

なお、国土交通省の令和8年度税制改正概要では、本特例を5年間(令和8年4月1日〜令和13年3月31日)延長し、対象住宅の床面積要件の下限を40㎡(現行50㎡)に緩和する旨が示されています(出典:国土交通省「令和8年度税制改正概要」(PDF))。一方で、国交省の制度概要資料には工事完了期限が令和9年3月31日と記載されたままの箇所もあります。申告を検討される際は、国土交通省マンション税制のページと大田都税事務所の最新情報をあわせてご確認ください。

2)【フラット35】の金利引下げと【フラット50】

管理計画認定マンションは、住宅金融支援機構の【フラット35】維持保全型による借入金利の一定期間引下げを受けられます。また、返済期間が最長50年となる【フラット50】を利用できます(出典:国土交通省「管理計画認定を取得することのメリット」、住宅金融支援機構)。

これは購入者側のメリットです。つまり、売却時に「認定済み」であることが買い手のローン条件を良くする。資産価値の話として理事会で説明すると、区分所有者の理解が一気に進みます。

3)共用部分リフォーム融資の金利引下げと、すまい・る債の利率上乗せ

管理組合側の直接メリットはこちらです。住宅金融支援機構のマンションすまい・る融資(マンション共用部分リフォーム融資)の金利引下げ、そしてマンションすまい・る債の利率上乗せを受けられます(出典:同上)。

修繕積立金が不足していて大規模修繕を借入で賄う組合にとって、共用部分リフォーム融資の金利引下げは実額で効きます。30戸規模のマンションの大規模修繕は総額3,500万〜5,000万円がひとつのレンジで、そのうち仮設足場が15〜25%を占めます。借入額が大きいほど、金利差の絶対額も大きくなる。大規模修繕の料金の考え方と合わせて検討すると、判断材料が揃います。

大田区の認定実績は20件。この数字をどう読むか

大田区が公表している管理計画認定マンション一覧には、令和8年3月24日現在で20件が掲載されています(公表に同意したマンションのみ、出典:大田区管理計画認定マンション一覧)。

中身を見ると示唆があります。プラウドシティ大田六郷(634戸)や東京マスタープレイス(434戸)のような大規模物件だけでなく、パーク・コート山王(18戸)、朝日クレス・パリオ仲池上(21戸)、プラウド山王二丁目(23戸)といった20戸前後の小規模マンションが複数含まれているのです。

「うちは小さいから無理だろう」という思い込みは、この一覧を見る限り当たりません。むしろ小規模だからこそ、理事会で意思決定が早く、名簿や規約の整備も現実的だという側面があります。

一方で、建設年月を見ると1982年、1986年、1991年といった高経年物件も並んでいます。築40年超でも認定は取れる。ただしその場合、旧耐震(昭和56年5月31日以前着手)に該当すれば、大田区独自基準として耐震診断の実施と、耐震性不足時の対応が求められます。

令和9年4月1日から認定基準が変わる。逆算スケジュールを引く

ここは今年いちばん重要な情報です。

令和7年のマンション関係法改正を受けて、令和8年国土交通省令第70号および令和8年国土交通省告示第1017号が令和8年7月31日に公布され、令和9年4月1日に施行されます。分譲事業者が申請者となる仕組みの導入に伴い、管理組合の管理者等が申請者となる場合の認定基準も見直されました(出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度」令和9年4月1日施行関係)。

国交省は「地方公共団体への申請日が令和9年4月1日以降となる場合は、見直し後の認定基準が適用されます」と明記しています。つまり、申請日がいつになるかで適用される基準が変わる。

これを踏まえた逆算スケジュールを、大田区の運用に合わせて引くとこうなります。

時期 やること
今すぐ(2026年9月〜10月) 大田区住宅相談窓口(03-5744-1343)へ電話。事前相談チェック票と必要書類の一覧を入手
2026年10〜11月 東京都条例に基づく管理状況の届出を確認・実施。名簿(組合員・居住者・要援護者)と名簿取扱い規定の整備
2026年11〜12月 長期修繕計画を標準様式に準拠して見直し。修繕積立金の平均額がガイドライン下限を上回るか試算
2026年12月〜2027年1月 危機管理マニュアル・防災訓練・備蓄の実績を整理。旧耐震なら耐震診断の状況を確認
2027年1〜2月 区へ事前相談(書類2部持参)→区職員の書類審査→訪問調査
2027年2〜3月 総会(または臨時総会)で認定申請と長期修繕計画・修繕積立金額を決議
2027年3月まで 大田区へ認定申請。手数料納付書を受領し納付

総会決議が必要な点を見落とさないでください。大田区のページにも「管理計画の認定申請にあたっては、その旨を集会で決議を得ておく必要があります」と書かれています。定時総会が春の組合なら、実質的に逆算の起点は総会です。

そして、忘れられがちなのが更新です。認定の有効期間は5年間で、更新申請をしないと失効します。しかも大田区は「区からは有効期間満了に関する通知等は行いません」と明言しています。認定日を管理規約の付属資料や引継ぎ書に書き込み、理事会の年間スケジュールに組み込んでおくことをおすすめします。

認定と大規模修繕は、別々に走らせない

最後に、施工会社としての提案です。

私はこれを、いつもワンセットで提案するようにしています。長期修繕計画の見直しと、次回大規模修繕の工法検討を、同じタイミングで動かすという段取りです。

理由は単純で、認定基準の4)は「長期修繕計画に基づく大規模修繕工事等の計画的修繕が実施されていること」を含むからです。計画だけ立派で、工事が実行されていなければ意味がない。逆に、工法を先に決めて工事費を下げられれば、修繕積立金の引上げ幅を抑えながらガイドライン下限をクリアできる可能性が出てきます。

具体的な単価感をお伝えします。外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、屋上・バルコニー防水は5,000〜8,000円/㎡が目安です。ここに仮設費が乗る。総工費の15〜25%を占める仮設足場を、ロープアクセス工法やハイブリッド工法(足場とロープアクセスを部位ごとに使い分ける工法)で圧縮できれば、その分を長寿命化工事の質に回せます。

そしてもう一点。長寿命化促進税制の対象工事は「外壁塗装等工事、床防水工事及び屋根防水工事」です。大規模修繕の中核そのものです。工事仕様を組むときに税制要件を意識しておけば、証明書取得の段取りもスムーズになります。工法の技術的な比較検討はロープアクセスドットコムにまとめていますので、設計事務所や管理会社と議論する際の材料にお使いください。

管理組合さま向けのご相談メニューは管理組合向けサービスのご案内に、これまでの施工事例(約6,000棟)は施工事例一覧からご覧いただけます。

まとめ|大田区の管理組合が今週動くこと3点

長くなりましたので、今週できることに絞ります。

1. 大田区住宅相談窓口(03-5744-1343)に電話して、事前相談チェック票を入手する
直接申請とセンター経由でチェック票が分かれています。どちらのルートを検討しているかを伝えて、必要書類一覧を先に手元に置いてください。

2. 東京都条例に基づく管理状況の届出を済ませているか確認する
大田区の認定申請の前提条件です。未届なら、ここが最初のボトルネックになります。

3. 直近の長期修繕計画を引っ張り出して、3点だけ確認する
計画期間は30年以上か。残存期間に大規模修繕が2回以上入っているか。見直しから7年以内か。この3点が揃っていなければ、認定より先に計画の見直しです。

大田区は、分譲マンション管理セミナーや個別相談会を年2回、マンション管理無料相談会を事前予約制で開いています。無料の窓口から入るのが、いちばん損の少ない順番だと私は思っています。

10月から12月にかけての理事会が分かれ目です。理事会の議題に1分でもこの話題を出してみてください。工法の選択肢で工事費が変わる余地があるかどうかは、図面と現状写真があれば概算でお答えできます。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームからお気軽にお声がけください。

よくあるご質問

Q. 大田区の管理計画認定の手数料は、結局どちらが安いですか?

A. 大田区へ直接申請すると26,300円、マンション管理センター経由だと区への手数料は4,200円ですが、システム利用料10,000円と事前確認審査料が別途かかります。管理組合が直接センターに申し込むパターンでは総額24,200円程度となり、直接申請とほぼ同水準です。書類の手戻りを避けたいならセンター経由、自組合で書類を固められるなら直接申請、という選び方が現実的です。

Q. マンション管理センターの事前確認適合証をもらえば、大田区の認定は通りますか?

A. 通るとは限りません。大田区は国の基準に加えて独自の上乗せ基準を設けており、その独自基準はマンション管理士による事前確認の対象外です。センターへ申請する前に大田区住宅相談窓口へ事前相談し、区独自基準に関する書類を先に審査してもらう流れになっています。

Q. 築40年を超えていますが、認定は取れますか?

A. 大田区の認定マンション一覧には1982年築や1986年築の物件も掲載されています。ただし昭和56年5月31日以前に新築工事に着手したマンションは、区独自基準として耐震診断の実施と、耐震性が不足する場合の耐震改修または長期修繕計画の見直しが求められます。

Q. 小規模マンションでも認定は現実的ですか?

A. 大田区の一覧には18戸、21戸、23戸といった小規模マンションも含まれています。戸数の下限要件はありません。ただし長寿命化促進税制の適用には総戸数10戸以上という別要件がありますので、税制メリットまで狙う場合はご注意ください。

Q. 固定資産税の減額は、大田区の窓口に申告するのですか?

A. いいえ。東京23区の固定資産税は東京都が課税していますので、減額の申告先は都税事務所(大田区であれば大田都税事務所)です。認定の窓口は大田区、税の窓口は東京都、と分かれています。申告期限は工事完了日から3か月以内です。

Q. 認定を取ると大規模修繕の費用は安くなりますか?

A. 認定そのものが工事費を下げるわけではありません。ただし共用部分リフォーム融資の金利引下げが受けられるため、借入を伴う場合の総支払額は下がります。工事費自体を下げるには工法の選択が効きます。10階建て・外周80m・工期3か月の条件では、仮設足場168万円前後に対しロープアクセス工法で59万円前後という比較になり、差額はおよそ109万円です。あくまで条件による目安で、物件により変動します。

Q. 打診調査だけでも依頼できますか?

A. お受けしています。打診調査の単価は250〜500円/㎡が目安です。ロープアクセス工法なら足場を組まずに調査でき、調査で見つかった不具合の補修まで同じ体制で一貫して進められます。12条点検の報告期限が迫っている場合は、残り期間を伺ったうえで段取りをご提案します。

Q. 認定の更新は自動ですか?

A. 自動ではありません。有効期間は認定日から5年間で、満了日までに更新申請をしないと失効します。大田区からは有効期間満了に関する通知は行われませんので、理事会の年間スケジュールに更新時期を組み込んでおくことをおすすめします。更新手数料は直接申請で26,300円、センター経由で4,200円です。

出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月17日時点で公表されている大田区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず大田区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月17日

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