本間社長ブログ

2026.09.20

杉並区のマンション漏水・防災対策|水は川から来るのではなく足元から出る。時間153ミリ想定の区で先に直す場所【大規模修繕2026年度版】

杉並区のマンション漏水・防災対策|水は川から来るのではなく足元から出る。時間153ミリ想定の区で先に直す場所【大規模修繕2026年度版】
本間 幸紘

著作者プロフィール

株式会社明誠 代表取締役

本間 幸紘

大規模修繕・外壁工事・ロープアクセス工事に関する情報を、現場経験をもとに分かりやすくお届けします。

2026年9月20日 更新

杉並区の堀ノ内で、築31年の賃貸マンションのオーナーさまから「1階のトイレから水が逆流した」とご相談をいただいたことがあります。台風でも何でもない、夏の夕立の日でした。川は近くを流れていますが、護岸から水があふれた形跡はどこにもありません。原因は建物側でも屋上でもなく、短時間に集中した雨で下水道管の中の水位が上がり、行き場をなくした水が宅地内の排水管を逆にのぼってきたことでした。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。

杉並区という区は、私の感覚では23区のなかでもっとも「水のリスクが誤解されている」区です。高潮のハザードマップはありません。津波災害警戒区域もありません。土砂災害警戒区域も、区内にわずか6か所しかない。数字だけを並べれば、23区でも安全な部類に見えます。ところが杉並区のマンションでは、漏水と浸水の相談が途切れません。理由ははっきりしていて、杉並区の水は川から来るのではなく、足元から出てくるからです。

今日は、杉並区が公表している最新のハザード資料から逆算して、杉並区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。


結論:杉並区は「外水」より「内水」で設計を考える区です

先に結論から申し上げます。杉並区で大規模修繕の順番を決めるとき、私が最初に見るのは屋上ではありません。その建物の1階床面が、前面道路より高いか低いか。半地下・地下ピット・ドライエリアがあるか。排水がどこへ抜けるかの3点です。

杉並区の「わが家の水害ハザードマップ」は、洪水(河川の氾濫)だけでなく、下水道の溢水による内水氾濫も同じ1枚に重ねて表示しています。浸水予想に使われた条件は、想定最大規模降雨として時間最大雨量153ミリメートル、総雨量690ミリメートルが区の全域に降った場合です(出典:杉並区「わが家の水害ハザードマップ」/更新日 2026年5月27日)。この数字を、ぜひ理事会で一度声に出して読んでみてください。1時間に153ミリという雨は、どんな排水設計でも受けきれません。

そして杉並区は、高潮によるハザードマップを作成していません。区内に津波災害警戒区域もありません。土砂災害警戒区域は6か所、うち土砂災害特別警戒区域は5か所だけです(出典:杉並区「土砂災害ハザードマップ」/更新日 2026年5月29日)。

つまり杉並区は、リスクの種類が少ないぶん、内水という1点に対策を集中できる区です。これは実はとても有利な条件です。北区や江東区のように低地・崖線・高潮を同時に抱える区と違い、杉並区の管理組合は予算の配分先を迷わずに済みます。問題は、その1点にきちんとお金を向けている管理組合が、まだ少ないことです。

立地 該当エリアの例 主なリスク 最優先の対策
神田川の谷 和田・方南・成田東・永福・浜田山 内水氾濫+下水道逆流 逆流防止弁、1階廻りの止水、敷地雨水桝
善福寺川の谷 堀ノ内・成田西・荻窪・宮前・善福寺 河川水位上昇+内水 半地下・ドライエリアの止水、受電設備の位置
妙正寺川の谷 清水・本天沼・下井草・井草 内水氾濫 敷地排水、1階外壁の立上り防水
武蔵野台地の平坦部 阿佐谷・高円寺・西荻・上荻の台地側 道路からの流れ込み(窪地) 前面道路との高低差の確認、止水板
崖線の6か所 久我山・高井戸・堀ノ内・和泉の各一部 がけ崩れ・擁壁劣化 擁壁の水抜き穴、斜面側外壁のシーリング

杉並区の理事会で私がいつも最初にお伝えしているのは、この5類型のどこに当たるかを、工事の話を始める前に確定させてください、という一点です。順番を1つ間違えるだけで、数百万円が効かない場所に消えます。


杉並区のハザード資料を1枚で読む

管理組合の書類棚に、この表を1枚コピーして貼っておくだけで、総会の議論が早くなります。

資料 対象 現在の版 備考
わが家の水害ハザードマップ(地図面) 洪水+内水 令和8年3月改訂 想定最大規模降雨・時間153ミリ/総雨量690ミリ
同(学習面・マイタイムライン編) 備え・避難行動 令和8年3月改訂 国標準配色版のPDFもあり
土砂災害ハザードマップ がけ崩れ 令和8年5月29日 情報更新 警戒6か所/特別警戒5か所
高潮ハザードマップ 高潮 作成なし 杉並区は対象外
津波災害警戒区域 津波 区内に指定なし —
善福寺川流域の浸水対策 治水事業の進捗 令和8年7月17日 更新 上流地下調節池が令和8年5月に準備工着手

注意していただきたいのは、地図面の前提条件です。浸水予想に使われた河川と下水道の整備状況は「平成28年時点」のものです。それ以降に完成した調節池や幹線の効果は、この地図には反映されていません。ですから、この地図は「これから良くなる前の、少し厳しめの姿」として読むのが正しい使い方になります。逆に言えば、この地図で色が付いていない場所が安全という意味には、まったくならないということでもあります。内水は、地形のわずかな窪みで簡単に起きます。


杉並区で「いま効いている」最新情報は3つあります

正直に申し上げます。自治体のハザード資料は、紙の冊子とウェブの記載が食い違うことが珍しくありません。杉並区で2026年9月時点で押さえておくべき更新は、次の3つです。

1つめ。水害ハザードマップが令和8年3月に改訂されました。
PDFは学習面・地図面ともに差し替えられており、色覚に配慮した国標準配色版も同じ令和8年3月改訂版で提供されています。理事会の防災資料が平成31年版や令和6年版のままなら、この時点で情報が古いということになります。区の電子地図サービス「すぎナビ」を使えば、自分のマンションの街区まで拡大して印刷できますので、総会資料にはこちらを使うほうが議論が具体的になります。

2つめ。令和8年5月29日から、気象庁の新たな防災気象情報の運用が始まりました。
従来の「土砂災害警戒情報」は「警戒レベル4土砂災害危険警報」に相当するものへ名称が整理されました。区は「情報の性質・意味に変更はない」と明記していますが、管理組合の防災マニュアルに旧名称がそのまま書かれていると、実際の放送や通知と言葉が合わず、避難のタイミングの判断が一拍遅れます。久我山・高井戸・堀ノ内・和泉の警戒区域に接するマンションは、ここを直してください。

3つめ。令和8年5月から、善福寺川上流地下調節池の準備工が始まりました。
都立善福寺川緑地での準備工着手にあたり、令和8年4月17日・18日に都による工事説明会が開かれています。この調節池は、荒川水系神田川流域河川整備計画(令和5年3月改定)で必要とされた約30万立方メートル規模のもので、完成すれば善福寺川流域の浸水リスクは相当に下がります(出典:杉並区「善福寺川流域の浸水対策について」/更新日 2026年7月17日、東京都建設局「善福寺川上流地下調節池事業の整備について」)。

ただし、ここが大事なところです。調節池が効き始めるのは完成後であって、工事期間中ではありません。長期修繕計画を「そのうち都が直してくれるから」という前提で先送りするのは、いちばん危ない判断です。私は工事の打合せの最初に、必ずこの点を確認するようにしています。工事の内容そのものより、どのリスクにお金を使うかの前提が変わってしまうからです。


3つの谷と、漏水事故は、こうつながっています

神田川の谷(和田・方南・成田東・永福・浜田山)

神田川沿いは、区内でも歴史的にもっとも水に悩まされてきたエリアです。善福寺川流域全体では、平成17年9月の集中豪雨で約1,600棟、平成26年7月の集中豪雨で約60棟の浸水被害が発生しています。その後、都による河川の拡幅、神田川・環状七号線地下調節池(貯留量54万立方メートル)の整備、下水道の和田・弥生幹線の整備によって、浸水被害は大きく減少しました。

ここで管理組合の方に知っておいていただきたいのは、減ったのは「川があふれる被害」であって、「下水道からの逆流」ではないということです。冒頭の堀ノ内の事例がまさにそれでした。1階のトイレや浴室から下水が噴き出すタイプの被害は、川の整備とは別の対策が要ります。具体的には排水設備への逆流防止弁、1階床面の立上り防水、そして敷地雨水桝の清掃です。

このエリアで多い漏水は、上からではなく横と下からです。敷地の雨水桝の詰まり、半地下駐輪場・ドライエリアへの流入、基礎の打継ぎ目からの染み。外壁と屋上を完璧に直しても、この3つは1ミリも改善しません。

善福寺川の谷(堀ノ内・成田西・荻窪・宮前・善福寺)

善福寺川では、1時間あたり50ミリメートルの降雨に対応できる護岸整備の整備率が約63パーセントです(令和6年度末時点)。現在も大成橋付近、白山前橋付近、西田端橋付近、宮木橋付近で工事が進んでいます。都の目標は1時間あたり85ミリメートル規模の降雨への対応ですから、いまはまだ道半ばということになります。

区の資料には「近年でも、松見橋・西田端橋付近などでは水位が頻繁に護岸天端付近まで上昇しています」と率直に書かれています。この一文は重いと思います。あふれてはいないが、毎年ぎりぎりまで来ているという意味だからです。

このエリアのマンションで私が真っ先に確認するのは、受電設備と給水ポンプの位置です。外壁も屋上もきれいに直したマンションで、地下の受電盤がひと晩で使い物にならなくなるのを見るのは、現場の人間として本当に悔しい。浸水深が50センチでも、盤の位置が床置きなら結果は同じです。低地側の物件では、外壁より先にここを議題にしてください。

妙正寺川の谷と台地の窪地(清水・本天沼・下井草・井草・阿佐谷・高円寺)

区北部の妙正寺川沿い、そして台地上に見える阿佐谷・高円寺・西荻あたりでも、道路からの流れ込みは起きます。台地は「平ら」ではなく、細かい窪地の集合だからです。

気象庁の「アメダスで見た短時間強雨発生回数の長期変化について」によれば、1時間50ミリメートル以上の短時間強雨の発生回数は、1976〜2024年の期間で約1.5倍に増加しています(出典:気象庁)。設計当時の排水能力の前提が、そもそも変わってきているということです。築30年のマンションの雨樋・ルーフドレン・敷地排水は、いまの雨を想定して作られていません。


杉並区でいちばん多いのは「半地下と地下ピット」の漏水です

杉並区が公式に注意喚起しているとおり、半地下家屋や地下室では2つの経路で浸水が起きます。下水道管からの逆流と、道路側からの雨水の流れ込みです。区はさらに「水の圧力で半地下、地下部のドアは開きにくくなり危険です」とまで書いています(出典:杉並区「半地下家屋、地下室では浸水被害に十分なご注意をお願いします」/更新日 2026年4月1日)。

杉並区の築古マンションには、敷地を有効に使うために半地下の駐車場・駐輪場・ゴミ置き場を設けたものが数多くあります。ここが、区内でいちばん事故が起きている場所です。私が現場で見てきた順に並べると、次のようになります。

  1. 半地下駐車場のスロープ下端から雨水が流入し、機械式駐車場のピットが水没する
  2. ドライエリアの排水桝が落ち葉で詰まり、地下住戸の掃き出し窓から浸水する
  3. 1階トイレ・浴室からの下水逆流(逆流防止弁の未設置または故障)
  4. 地下ピットに常時水が溜まり、配管・鉄筋が長期的に腐食する
  5. 基礎の打継ぎ目からの毛細管現象による染み(原因が配管漏水と誤診されやすい)

このうち3番と4番は、発生しても数年間は誰も気づかないタイプです。管理会社の日常点検では地下ピットの蓋を開けないことが多く、大規模修繕の調査で初めて発覚します。だから私は、杉並区の物件では必ず地下ピットと機械式駐車場のピットを開けて見せてくださいとお願いしています。

なお、浸水の恐れのある地域に地下室を新設する場合は、建築確認などの申請日までに区への浸水対策の届け出が必要です。既存建物の改修でも、ここは事前に区の建築課へ確認しておくと後戻りがありません。

漏水の原因調査そのものについては、明誠の漏水調査・漏水対応の考え方にまとめています。杉並区のように「上からではない漏水」が多い地域では、原因特定の手順を間違えると調査費だけが積み上がります。


土砂災害警戒区域は6か所——数が少ないからこそ見落とされます

杉並区内の土砂災害警戒区域は6か所、うち特別警戒区域は5か所。「久我山」「高井戸」「堀ノ内」「和泉」の4地区に分かれています。23区の他区と比べれば、確かに少ない数字です。

ただ、数が少ないことには副作用があります。該当する管理組合ですら、自分が該当していることを知らないのです。私が伺った久我山のマンションでは、擁壁の水抜き穴が全数詰まった状態で15年が経過していました。がけ崩れのリスクという以前に、擁壁の背面に水圧がかかり続け、擁壁に接する外壁の裏側がずっと湿った状態になり、内部の鉄筋が錆びます。

もう1つ、令和6年10月18日に和泉4丁目18番の一部について、土砂災害特別警戒区域および土砂災害警戒区域の解除が東京都から公表されています(公示図書 区域番号K004)。解除されたなら防災マニュアルの記載も直すべきですが、そのまま放置されている管理組合が少なくありません。指定も解除も、どちらも情報の更新が必要だということです。

そして崖面側の外壁は、足場が組めません。敷地に余裕がなく、隣地が斜面で、道路からも回り込めない。杉並区の該当地区では、これが本当によくある条件です。結果として「その面だけ10年以上手つかず」になっているマンションを、私は何棟も見てきました。


杉並区のマンションで、先に直すべき順番と費用の目安

私が杉並区で提案するときの優先順位は、だいたい次のようになります。金額はあくまで目安のレンジで、物件の規模・状態・立地により大きく変動します。

優先 工事項目 費用の目安 効く理由
1 排水設備の逆流防止弁設置・更新 1系統あたり8万〜25万円 下水道逆流は杉並区で最も発生頻度が高い
2 敷地雨水桝・側溝の清掃と改修 10万〜60万円 詰まりが半地下浸水の直接原因になる
3 半地下出入口の止水板設置 1か所30万〜120万円 令和8年度の区助成の対象になり得る
4 受電設備・給水ポンプの嵩上げ・移設 80万〜400万円 復旧不能期間を決定づける
5 1階廻り・立上り部の防水改修 5,000〜8,000円/平方メートル 基礎打継ぎ目からの染みを止める
6 外壁打診調査・シーリング打替え 打診250〜500円/平方メートル 12条点検と合わせて実施すると効率的
7 外壁塗装 3,500〜4,500円/平方メートル 防水性能の回復(優先度は上記の後)
8 屋上防水改修 5,000〜8,000円/平方メートル 杉並区では上からの漏水は相対的に少ない

30戸規模のマンションの大規模修繕全体では3,500万〜5,000万円がひとつのレンジで、そのうち仮設足場が15〜25パーセントを占めます。杉並区のように「1階と地下に手を入れたいが、予算は外壁で消える」という構図の区では、この足場比率をどう圧縮するかが、防災対策の原資を生むかどうかを決めます。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。そのなかで一貫してお伝えしているのは、「全面足場が唯一の正解ではない」ということです。料金の考え方については明誠の大規模修繕の料金の考え方にまとめています。


足場が組めない面、組まなくていい面をどうするか

杉並区の物件でロープアクセス工法が効くのは、主に次の3つの場面です。

1つめは、崖線や隣地に接して足場が組めない面。 久我山・高井戸・堀ノ内・和泉の斜面側がこれに当たります。ロープアクセス工法なら屋上から吊り下げて施工しますから、地上に作業スペースが要りません。

2つめは、部分補修で足りる面。 3面は健全で1面だけ劣化している、というケースで全面足場を組むと、足場代のほうが補修費より高くつきます。10階建て・外周80メートル・工期3か月の条件では、仮設足場が約168万円なのに対し、ロープアクセス工法では約59万円という差が出ることがあります(▲109万円/物件条件により変動します)。この差額が、そのまま逆流防止弁と止水板の予算になります。

3つめは、居住者の生活影響を抑えたい場合。 足場を組むと約3か月、全住戸が窓を開けられず、ベランダも使えず、防犯上の不安も抱えます。ロープアクセス工法なら、その期間を約60パーセントに短縮できます。賃貸マンションのオーナーさまにとっては、退去リスクの差として跳ね返ります。

もちろん、ロープアクセス工法が万能なわけではありません。外壁全面の塗替えやタイルの大量張替えが必要な物件では、足場を組んだほうが結果的に安くなります。だから明誠では、通常足場・ロープアクセス・ハイブリッド(部位ごとに使い分け)の3工法から、建物ごとに最適な組み合わせをご提案しています。3つとも自社で施工できる会社は、日本でも多くありません。工法の技術的な詳細は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで解説しています。

安全面についても正直に書いておきます。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工し、明誠は日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。訓練体制や資格制度の詳細はロープアクセスドットコムをご覧ください。技術面の考え方は明誠のロープアクセス工法と安全管理の取り組みにもまとめています。


杉並区で使える助成制度(令和8年度)

杉並区は総合治水対策の一環として、個人を対象とした助成制度を用意しています。金額は令和8年度の公表値です。

制度 助成額 情報の状態
防水板設置工事費の助成 工事費の4分の3、1建物あたり100万円限度(千円未満切捨て) 区ページ更新日 2026年4月1日=令和8年度現行
雨水浸透施設工事費の助成 施設の種類・規模による 区の総合治水対策ページで要確認
水害予防住宅 高床化工事の助成 標準工事費単価×高床部分床面積の2分の1、200万円限度 区ページ更新日が2023年4月18日のため、令和8年度の適用可否と金額は必ず区へ直接ご確認ください

防水板の助成では、設置する防水板にJISの定める止水性能の等級がWs-3相当以上であることの証明書類が求められます。手順は「事前相談 → 交付申請 → 交付決定通知 → 工事着手 → 完了届 → 現地検査 → 請求」で、交付決定前に工事を始めると対象外になります。ここは毎年いちばん多い失敗です(出典:杉並区「防水板設置工事費の助成」/更新日 2026年4月1日)。

ひとつ注意点を正直に書きます。防水板助成の対象者は「個人が使用する建築物に防水板の設置および関連工事を行う個人」と明記されています。分譲マンションの管理組合が共用部の出入口に設置する場合に対象となるかどうかは、区の土木計画課(電話 03-5307-0739)への事前相談が必須です。賃貸マンションをオーナー個人名義で所有されている場合は、要件に合う可能性があります。ここを確認せずに工事を先に発注してしまうと、助成は受けられません。

収益不動産としての判断材料は、オーナー向けの大規模修繕の考え方にまとめています。


大規模修繕の中に、防災を組み込むという考え方

最後に、私がいちばんお伝えしたいことを書きます。

杉並区のマンションで防災対策が進まない理由は、予算がないからではありません。防災が長期修繕計画の外に置かれているからです。逆流防止弁も、止水板も、受電盤の嵩上げも、標準的な長期修繕計画の項目表には載っていません。載っていないものは、総会の議題にもなりません。

私の提案は単純です。次回の大規模修繕の設計段階で、防災項目を修繕項目と同じ表に並べてしまう。 そのうえで、足場のかけ方を工夫して浮いた費用を、その防災項目に充てる。これだけで、追加の一時金を集めずに防災対策が進んだ管理組合を、私は何組も見てきました。

調査の段階でも工夫の余地があります。近年はドローンによる外壁調査を併用することで、足場を組む前に劣化の分布を把握し、どの面に費用をかけるべきかを事前に判断できるようになりました。杉並区のように敷地の狭い物件が多い区では、この事前判断の精度がそのまま総額に響きます。

管理組合としての進め方は管理組合向けのサービス案内をご覧ください。これまでの施工事例(約6,000棟)はhttps://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。


よくあるご質問

Q. 杉並区のハザードマップで色が付いていなければ、浸水対策は不要ですか?

A. いいえ。区の地図面が前提としている河川・下水道の整備状況は平成28年時点のもので、さらに内水は地形のわずかな窪みで発生します。色の有無にかかわらず、前面道路と1階床面の高低差と半地下の有無を実地で確認することをおすすめします。

Q. 逆流防止弁の設置費用はどれくらいですか?

A. 1系統あたり8万〜25万円が目安です。既存配管の状態や設置位置によって変動します。杉並区で発生頻度が最も高いタイプの被害に対して、費用対効果はかなり高い部類の工事です。

Q. 防水板設置の助成は、分譲マンションの管理組合でも使えますか?

A. 令和8年度の区の要件では、助成対象者は「個人が使用する建築物に防水板の設置および関連工事を行う個人」と記載されています。管理組合による共用部への設置が対象となるかは個別判断になりますので、工事の計画段階で杉並区都市整備部土木計画課(電話 03-5307-0739)へ事前相談してください。交付決定前に着工すると対象外になります。

Q. 善福寺川上流地下調節池ができれば、もう浸水対策は要らなくなりますか?

A. 完成すれば流域の浸水リスクは相当に下がりますが、効果が出るのは完成後です。令和8年5月に準備工へ着手した段階ですので、工事期間中は現状のリスクが続きます。また調節池は河川の氾濫を抑えるものであり、下水道からの逆流や道路からの流れ込みは別の対策が必要です。

Q. 足場を組まずに外壁を直せるというのは本当ですか?

A. 部分補修、シーリング打替え、タイル浮き部の補修、防水の部分改修などはロープアクセス工法で施工できます。10階建て・外周80メートル・工期3か月の条件では、仮設足場約168万円に対しロープアクセス約59万円という差が出た例があります(物件条件により変動)。ただし外壁全面の塗替えなど、足場のほうが適する工事もありますので、建物ごとの判断になります。

Q. 工期はどれくらい違いますか?

A. ロープアクセス工法なら足場工法の約60パーセントの工期が目安です。10階建て・外周80メートルのマンションであれば、足場3か月に対しロープアクセス1.5〜2か月程度になります。居住者が窓を開けられない期間も、それだけ短くなります。

Q. 地下ピットの水は、放っておくとどうなりますか?

A. 常時水が溜まった状態が続くと、配管の腐食、基礎コンクリートの中性化促進、鉄筋の発錆が進みます。表に症状が出るまで時間がかかるぶん、発覚したときには補修費が大きくなりがちです。大規模修繕の調査時に必ず蓋を開けて確認してください。

Q. まず何から相談すればいいですか?

A. 建物の図面(配置図・各階平面図)と、直近の長期修繕計画があれば十分です。現地で1階廻りと地下、屋上を確認したうえで、優先順位と概算をお出しします。無料でご相談いただけますので、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月20日時点で公表されている杉並区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず杉並区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月20日

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