本間社長ブログ

2026.09.24

江戸川区のマンション漏水・防災対策|ゼロメートル地帯のハザードマップと大規模修繕の優先順位【2026年度版】

江戸川区のマンション漏水・防災対策|ゼロメートル地帯のハザードマップと大規模修繕の優先順位【2026年度版】
本間 幸紘

著作者プロフィール

株式会社明誠 代表取締役

本間 幸紘

大規模修繕・外壁工事・ロープアクセス工事に関する情報を、現場経験をもとに分かりやすくお届けします。

2026年9月24日 更新

小岩のマンションで理事会に呼ばれたとき、理事長さまから「うちは荒川にも江戸川にも近いから、正直、大雨のたびに落ち着かない」と言われたことがあります。私はその場で否定しませんでした。江戸川区は東京23区の中でも、水害のリスクを数字で見たときに一番正直に向き合わなければならない区の一つだからです。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの大規模修繕に携わってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間として、今日は江戸川区のハザードマップの数字と、大規模修繕で先に手を打つべき場所を整理します。


結論:江戸川区の分譲・賃貸マンションで優先すべきは「屋上防水・排水設備」と「電気室・給水ポンプの浸水対策」です

先に結論を申し上げます。江戸川区の大規模修繕で私が最初に確認するのは、次の2点です。

1つ目は屋上防水とバルコニー排水経路の健全性。江戸川区は区面積の約7割が満潮位より低い「ゼロメートル地帯」です(出典:三井住友トラスト不動産「まちの防災情報 江戸川区」)。台風やゲリラ豪雨のたびに敷地の排水能力が追いつかなくなりやすく、屋上・バルコニーからの雨水侵入がそのまま漏水事故につながります。

2つ目は電気室・給水ポンプ・自家発電設備の設置位置。荒川と江戸川が氾濫した場合、区内には浸水深10m以上・浸水継続時間2週間以上になるエリアがあると想定されています(出典:同上、江戸川区水害ハザードマップ第2版)。地下や1階に電気室・ポンプ室がある建物では、水没した瞬間にエレベーター・給水・照明のすべてが止まります。この2点を大規模修繕の計画段階で見直すことが、江戸川区のマンションにとって最優先の対策になると私は考えています。


江戸川区のハザードマップを1枚で読む

区と国が公表している資料を、マンション修繕の視点で1枚に整理しました。

災害種別 江戸川区の該当 想定・該当範囲
洪水(荒川・江戸川、想定最大規模降雨) あり 浸水深10m以上・浸水継続2週間以上になるエリアを含む
内水氾濫(下水道の排水能力超過) あり 短時間豪雨で区内の低地に広く発生し得る
高潮 あり 台風・低気圧による海面上昇で河川へ海水が逆流
土砂災害警戒区域 指定なし 区内全域が平坦な沖積低地のため(出典:東京都建設局「土砂災害(特別)警戒区域の区市町村別指定状況」)
液状化 可能性あり 液状化予測図(令和6年3月改訂)で相対評価を確認できる(出典:江戸川区「液状化予測図」)
津波 限定的 東京湾内奥のため区独自のハザードマップは高潮想定に統合されている

過去の被害では、大正6年(1917年)の高潮で区内を含む一帯で240名が犠牲になり、昭和24年(1949年)のキティ台風では区の約6割が水没した記録が残っています(出典:三井住友トラスト不動産「まちの防災情報 江戸川区」)。荒川・江戸川が同時に氾濫した最悪のケースでは、江戸川区・江東区・墨田区・葛飾区・足立区の江東5区全体で最大約250万人が浸水被害に遭うと想定されており、江東5区広域避難計画の検討対象にもなっています(出典:内閣府「大規模・広域避難に関する定量的な算出方法~江東5区における具体的な検討~」)。

正直に申し上げます。この数字を最初に見たとき、私自身も「ここまでか」と思いました。ただし過去の水害と今の建物の防水性能・排水能力は別の話です。ハザードマップは「怖がるための資料」ではなく、「どこを優先して直すかを決めるための資料」だと私は理事会でお伝えしています。


地域特性と漏水事故の関係

江戸川区は一つの顔ではなく、エリアごとにリスクの出方が違います。

臨海部・タワーマンション(西葛西・南葛西・臨海町など):海風による塩害で、外壁のシーリング劣化と鉄部の腐食が早く進みます。共用部の給排水管や設備配管の腐食も、内陸部より数年早く表面化する傾向があると私は現場で感じています。

中央部・低地の中高層マンション(中央・松島・小岩など):ゼロメートル地帯特有の内水氾濫リスクが高く、地下・半地下の駐車場や電気室が浸水すると、建物全体が長期間使用不能になりかねません。

荒川・江戸川沿いの物件:洪水と高潮が重なる複合災害の想定区域に入りやすく、想定最大規模降雨時には浸水継続が2週間を超えるエリアもあります。避難のタイミングだけでなく、垂直避難(上層階への移動)を前提にした建物内の備えが必要になります。

いずれのエリアでも共通するのは、「日常の漏水対策」と「非常時の浸水対策」がつながっているという点です。日頃の屋上防水・排水ドレンの点検を怠っている建物は、台風時の内水氾濫でも被害が大きくなります。


大規模修繕で必ずチェックすべき漏水ポイント7つ

私が漏水対応の現地調査で必ず見る7カ所です。江戸川区のような低地・多湿エリアでは、特に排水系統の劣化が早く進みます。

  1. 屋上防水層:経年劣化・膨れ・亀裂の有無。トップコートの摩耗だけでも雨水侵入のリスクが上がります。
  2. シーリング(目地):外壁パネル間・サッシまわりのシーリング材の硬化・ひび割れ。
  3. バルコニー排水(ドレン):落ち葉やゴミによる詰まりは、ゲリラ豪雨時に排水能力を一気に落とします。
  4. 屋上ドレン・オーバーフロー管:屋上に水がたまる「ドレン詰まり」は、江戸川区のような多雨エリアで漏水事故の最多原因の一つです。
  5. パラペット・笠木の立上り部:雨水の吹き込みが起きやすく、防水層の切れ目になりやすい箇所です。
  6. サッシまわりのシール:強風を伴う台風時、サッシ枠からの雨水侵入が急増します。
  7. エキスパンションジョイント:建物の伸縮を吸収する部材の劣化は、地震後の漏水事故の引き金にもなります。

これらは足場を組んでも、ロープアクセスでも点検・補修できます。ただし江戸川区のように台風シーズンの緊急対応が読みにくいエリアでは、足場の設置に日数がかかる工法より、即日着手できる工法を選べるかどうかが被害の拡大を左右します。技術的な詳細は姉妹サイトのロープアクセスドットコムでも解説しています。


漏水緊急対応でロープアクセスが強い理由

台風接近が予報された段階で「屋上の防水が心配」というご相談をいただくことがあります。仮設足場は組み立てだけで数日、規模によっては1〜2週間かかります。一方、ロープアクセス工法であれば、資材と作業員の手配ができ次第、当日〜翌日には屋上やバルコニーの応急補修に着手できます。

目安として、10階建て・外周80m・工期3ヶ月の大規模修繕を想定した場合、足場費用は約168万円、ロープアクセスなら約59万円というケースがあります(物件の規模・形状により変動するため、あくまで目安の一例です)。緊急の部分補修であれば、この差はさらに大きくなります。台風シーズンにピンポイントで屋上・バルコニーの防水だけを直したいというご相談には、ロープアクセスの機動力が向いていると私は考えています。

株式会社明誠は日本で数少ない、足場・ロープアクセス・ハイブリッド工法の3つから建物に最適な工法を提案できる会社です。ロープアクセスの高所作業について、明誠と全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。工法選びの考え方は明誠の施工事例からもご確認いただけます。詳しい技術情報はロープアクセスドットコムにまとまっています。


防災上の共用部(避難通路/エレベーター/受電設備/給水ポンプ/自家発電)の位置と修繕優先度

江戸川区のような浸水継続2週間以上を想定すべきエリアでは、共用部の設備配置そのものが防災計画の一部になります。私が理事会にお伝えしている優先順位は次のとおりです。

優先度 設備 チェックポイント
高 受変電設備・自家発電設備 地下・1階設置の場合、浸水想定深を超える高さへの移設・かさ上げを検討
高 給水ポンプ室 停電・浸水時の給水停止リスク。予備電源との連携を確認
中 エレベーター機械室 冠水時の停止に備え、階段避難の動線と表示を確保
中 避難通路・共用廊下 浸水時に上層階へ垂直避難できる動線の明確化
中〜高 防水層・外壁(本記事の主題) 日常の漏水対策が非常時の被害拡大を防ぐ土台

2019年の台風19号では、都内近郊のタワーマンションで地下の電気室が浸水し、長期間にわたり停電・断水・エレベーター停止が続いた事例が広く報じられました。江戸川区は当時のその物件よりも浸水想定が大きいエリアを抱えており、他人事とは思えない数字だと私は感じています。大規模修繕のタイミングは、防水・外壁の更新と同時に、こうした設備の位置を見直す数少ない機会でもあります。


江戸川区の防災補助・耐震助成

江戸川区は住宅・建築物の耐震化助成制度の中で、分譲マンションも対象にしています(出典:江戸川区「分譲マンション」、最終更新2026年7月3日)。

助成内容 助成率 対象要件
耐震診断 3分の2 3階建て以上・耐火または準耐火建築物
耐震改修設計 3分の2 複数の区分所有者が自ら居住していること
耐震改修工事 2分の1(戸数に応じた上限額あり) 昭和56年5月31日以前に建築確認を取得

具体的な上限額は戸数によって変わるため、区の建築指導課耐震化促進係(電話:03-5662-6389)への確認が必要です。あわせて、令和8年度からは戸建て向けの老朽住宅除却工事助成の上限額が50万円から100万円に拡充されています(出典:江戸川区「住宅・建築物の耐震化助成制度」、最終更新2026年5月18日)。年度の予定予算額に達し次第、申請受付が終了する制度のため、検討される場合は早めの相談をおすすめします。


まとめ|今週動くこと3点

江戸川区のマンション管理組合・オーナーさまに、今週すぐできることを3つお伝えします。

  1. 区の水害ハザードマップ第2版で、自分の建物の浸水想定深と継続時間を確認する
  2. 屋上防水・ドレン・バルコニー排水の点検記録を、直近3年分だけでも見直す
  3. 受変電設備・給水ポンプの設置階を確認し、地下や1階にある場合は大規模修繕の議題に加える

理事会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談だけでも遠慮なくお問合せフォームからお声がけください。分譲マンションの管理組合さまは管理組合向けサービス、賃貸マンション・ビルのオーナーさまはビルオーナー向けサービスのページもご参照ください。


よくあるご質問

Q. 江戸川区は本当にそんなに浸水するのですか?

A. 荒川・江戸川の両方が想定最大規模降雨で氾濫した場合の想定であり、毎年起きる規模の話ではありません。ただし区の7割がゼロメートル地帯であることは事実で、想定を知ったうえで建物の防水・設備配置を見直すことに意味があります。

Q. うちのマンションは高台にないので、防水以外にできることはありますか?

A. 受変電設備・給水ポンプの設置階の確認、止水板の準備、避難動線の見直しが有効です。大規模修繕のタイミングで設備移設を検討する管理組合さまも増えています。

Q. 屋上防水の工事はどのくらいの費用がかかりますか?

A. 防水工事は工法・面積により5,000〜8,000円/㎡が目安です。物件の規模や劣化状況により変動するため、無料で概算お見積りを提示できます。

Q. 台風が来る前に、緊急で屋上だけ直すことはできますか?

A. ロープアクセス工法であれば、足場を組まずに当日〜翌日に着手できるケースがあります。応急補修のご相談はお早めにお願いします。

Q. 分譲マンションでも耐震助成は使えますか?

A. 江戸川区の場合、3階建て以上・耐火または準耐火建築物・昭和56年5月31日以前に建築確認を取得しているなどの要件を満たせば対象になります。詳細は区の窓口でご確認ください。

Q. 液状化のリスクはどう考えればよいですか?

A. 江戸川区は液状化予測図(令和6年3月改訂)で相対的な評価が公表されています。地盤調査の履歴がない古い建物は、大規模修繕の機会に基礎まわりの点検も合わせて検討することをおすすめします。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月24日時点で公表されている江戸川区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に耐震助成を申請される前に、必ず江戸川区の建築指導課耐震化促進係へ最新の内容をご確認ください。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月24日

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