本間社長ブログ
マンション理事会の運営が不透明なとき区分所有者にできること|総会招集請求と改正区分所有法、大規模修繕の発注を理事長任せにしない備え【2026年10月】
目次
- この記事で分かること
- 何が起きている?理事会の「不透明さ」と管理会社任せの構図
- 区分所有者が使える手段|まずは「情報の開示」から
- 総会招集請求とは|区分所有者の5分の1以上でできる手続き
- 令和8年4月施行の改正区分所有法|総会の決議はどう変わったのか
- 大規模修繕で「不透明さ」が一番お金に響く理由
- 理事会を開かれたものにする、5つの実務
- 足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法を比べる
- 想定ケースで考える|築26年・90戸のマンションの場合
- 区分所有者・理事会、それぞれが今日からできること
- 注意点|この記事の読み方について
- 管理組合と区分所有者に伝えたい、私の考え
- よくある質問(FAQ)
- この記事のポイントまとめ
- 出典・参考資料

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著作者プロフィール
株式会社明誠 代表取締役
本間 幸紘
大規模修繕・外壁工事・ロープアクセス工事に関する情報を、現場経験をもとに分かりやすくお届けします。
この記事で分かること
「理事長や理事会に意見を言っても取り合ってもらえない」「管理会社は、規約に反していても理事長に従うだけに見える」——マンション管理の現場では、こうした不満の声を耳にすることが少なくありません。
この記事では、次の問いにお答えします。マンションの理事会運営が不透明だと感じたとき、区分所有者は法的にどんな手段を使えるのか。そして、その不透明さは、大規模修繕の費用や品質にどう響くのか?
きっかけは、2026年10月3日にGoogleアラート(「マンションオーナー」)で届いた、THE GOLD ONLINEの記事です。マンション管理士の松本洋さんが、不満を抱く住民が行使できる法的な対抗手段を解説しています。記事によると、管理組合は区分所有者が自ら役員を選び運営する自治組織であるため、行政が個々の対立を仲裁したり、総会決議の有効・無効を判断したりすることには限界がある、という趣旨です。そのうえで、総会招集請求という手段が紹介されています(出典:THE GOLD ONLINE 配信記事)。なお、私が確認できたのは記事の一部で、全文ではありません。ここでは紹介されている内容を起点に、一般論としてお話しします。
私は株式会社明誠の本間と申します。東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。足場を組む工事も、足場を使わないロープアクセス工事も、現場で両方を経験しています。
結論を先に書きます。理事会が不透明だと感じたとき、いきなり対立に進むのではなく、①情報の開示を書面で求める、②区分所有者の5分の1以上で総会の招集を請求する、③専門家を交えて第三者の目を入れる、という順に考えるのが現実的だと私は考えています。 規約によって要件が異なる場合もあるため、最終的な判断は規約の確認と専門家への相談が前提です。
そして大規模修繕に関わる立場として強くお伝えしたいのは、「不透明さ」が一番お金に響くのは、工事の発注の場面だということです。理事長ひとりに任せきりにしない仕組みを、工事の前につくっておくことが、修繕積立金を守る近道だと私は思っています。
なお、この記事は法的な助言ではありません。個別の管理組合の規約や決議の有効性は、規約の内容や経緯によって変わります。判断に迷う場合は、マンション管理士や弁護士などの専門家にご相談ください。
何が起きている?理事会の「不透明さ」と管理会社任せの構図
不満の中身は、大きく3つに分かれる
私が理事長さまや区分所有者の方からお聞きする不満は、おおむね次の3つに整理できます。
- 情報が出てこない:理事会の議事録が共有されない、収支の説明が簡単すぎる、見積りの中身が見られない
- 意見が通らない:総会や理事会で質問しても、十分な回答がないまま議事が進む
- 管理会社が動かない:規約違反が疑われる場面でも、管理会社が理事長の意向に従うだけに見える
どれも、感情的な対立に発展しやすいテーマです。ただ、私は現場で多くの管理組合を見てきて、悪意のある理事長さんは少数ではないかと感じています。多くの場合は、ボランティアで役員を引き受けた方が、専門知識のないまま、忙しさのなかで判断を急いでしまった結果として「不透明」に見えている、というのが私の実感です。
管理組合は「自治組織」だから、行政は個別の対立に入りにくい
前述の記事が指摘するとおり、管理組合は区分所有者が自ら運営する自治組織です。そのため、国や自治体が「この総会決議は有効」「この理事長の判断は無効」と判定することは、基本的にはできないと考えられます。
行政ができるのは、主に標準管理規約などの指針の整備、相談窓口の案内、管理計画認定制度のような仕組みづくりです。個別の紛争は、組合内部の手続きや、マンション管理士・弁護士などの専門家、場合によっては裁判所を通じて解決していくことになります。
だからこそ、組合員自身が「どんな手続きがあるのか」を知っておくことが、とても大切になります。
管理会社は「理事長の指示で動く」立場であることが多い
もう一点、知っておきたいのは管理会社の立ち位置です。管理会社は管理委託契約に基づいて業務を行う受託者で、指示の相手は管理組合、実際には理事長や理事会であることが一般的です。
そのため、理事長が決めたことに管理会社が異を唱えにくい構造があります。管理会社が悪い、という話ではありません。構造として、第三者のチェックが働きにくいのです。だからこそ、区分所有者の側から、手続きに沿って確認の声をあげる意味があります。
区分所有者が使える手段|まずは「情報の開示」から
手段1:帳票類の閲覧を、理由を付けた書面で請求する
最初の一歩として、私がお勧めしやすいのは、感情的な議論ではなく書面での情報開示の請求です。国土交通省が示す標準管理規約(マンション標準管理規約。コメントを含む)には、理事長が会計帳簿や組合員名簿などの帳票類を保管し、組合員や利害関係人から理由を付した書面で請求があったときは閲覧させる、という趣旨の定めがあります(出典:国土交通省 マンション標準管理規約)。
ただし、実際に適用されるのは、各マンションが定めている管理規約です。条文の番号や細かな要件は、規約によって異なる場合があります。まずは、お住まいのマンションの規約で「閲覧」「帳票」「議事録」といった言葉を探してみてください。
請求のときのコツは3つあります。
- 目的を具体的に書く:「大規模修繕の見積り比較資料を確認したい」など、理由を明確にする
- 対象を絞る:「全部見せてください」ではなく、議事録、見積書、契約書の写しなど、必要なものを特定する
- 記録を残す:口頭ではなく書面で請求し、日付と控えを保管する
手段2:理事会・総会で、書面による質問をする
次に、総会の議案書に質問を書き込む、あるいは理事会に対して質問書を提出する方法です。口頭の質問は、その場の空気に流されたり、議事録に残らなかったりします。書面にしておけば、回答の有無が記録として残ります。
質問は、事実を問う形にするのがコツです。「なぜ○○なのか」と責めるのではなく、「見積りは何社から取りましたか」「選定の基準は何ですか」と、答えやすい形で聞きます。
手段3:専門家(マンション管理士など)に第三者の目を入れてもらう
役員が代わったばかり、あるいは専門知識が足りないことが、不透明さの原因になっている場合は、外部の専門家に入ってもらうのが効果的です。マンション管理士は、管理組合の運営や規約、修繕計画について助言する国家資格者です。
最近は、外部の専門家が理事長や監事を務める「第三者管理者方式」を採る組合もありますが、費用や責任の範囲、利益相反の防止など、検討すべき点も多い仕組みです。導入する場合は、総会で十分に議論するのが前提です。
総会招集請求とは|区分所有者の5分の1以上でできる手続き
区分所有法に定められた「少数者の権利」
それでも話が進まない場合に検討されるのが、総会(集会)の招集請求です。区分所有法には、区分所有者の5分の1以上で、議決権の5分の1以上を有するものは、会議の目的である事項を示して、管理者に集会の招集を請求できるという趣旨の規定があります。この定数は、規約で減らすことができるとされています(出典:e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律 第34条第3項)。
前述の記事では、標準管理規約に沿った運用として、次のような流れが紹介されています。
| 項目 | 内容(記事の紹介を要約) |
|---|---|
| 請求の要件 | 組合員総数と議決権総数の両方で、5分の1以上の同意 |
| 理事長の対応 | 請求から2週間以内に招集通知を発する |
| 開催の時期 | 原則として、請求から4週間以内に開催 |
| 理事長が応じない場合 | 請求した組合員が、自ら総会を招集できる |
これらの数字や期限は、各マンションの規約によって異なる場合があります。お住まいの規約を、まず確認してください。
実際に進めるときの現実的な手順
総会招集請求は、権利として認められている一方で、進め方を間違えると、組合内の人間関係に長く影響が残ります。私が現場でお聞きした範囲での、現実的な進め方をまとめます。
- 規約と議事録を読み込む:請求の要件、議題の立て方、費用負担のルールを確認する
- 賛同者を静かに集める:5分の1という数字は、思っているよりも高いハードルです。賛同者名簿を作り、署名の形で記録する
- 議題を具体的にする:「理事長の解任」といった人への批判ではなく、「大規模修繕の発注方法の見直し」など、運営の改善に焦点を当てる
- 請求書を、記録の残る方法で提出する:内容証明郵便や、受領印をもらう方法を検討する
- 専門家に事前相談する:書面の書き方や、議案の立て方を確認する
議題の立て方で、結果は大きく変わります。「誰が悪いか」ではなく「どう仕組みを直すか」に焦点を当てた議案のほうが、多くの区分所有者の共感を得やすいと私は感じています。
令和8年4月施行の改正区分所有法|総会の決議はどう変わったのか
施行日と、国が示した「2つの老い」への対応
2025年(令和7年)5月30日に公布された、老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための区分所有法等の改正は、令和8年(2026年)4月1日に施行されています(出典:法務省 改正法の概要ページ)。国土交通省と法務省は、建物の高経年化と居住者の高齢化という「2つの老い」に対応して、管理と再生を円滑にすることを狙いとしています。
決議の円滑化|出席者を母数とする考え方
法務省の資料によると、改正の柱の一つが決議の円滑化です。区分所有権の処分を伴わない事項について、全区分所有者ではなく出席者を母数とした多数決で決議できるようになりました。総会に出席しない(できない)区分所有者が多いマンションで、決議が成立しにくいという課題に対応するものです。
加えて、裁判所の決定により所在等が不明な区分所有者を、決議の母数から除外できる仕組みも整えられました。連絡のつかない所有者がいても、総会の意思決定が止まりにくくなります。
具体的な決議要件の数値は、決議の種類によって異なります。詳細は、法務省の最新資料(区分所有法・被災区分所有法の改正について)で、ご確認ください。
標準管理規約も改正された
国土交通省は、この法改正に合わせて、令和7年10月17日にマンション標準管理規約の改正を公表しています。総会の決議要件や修繕積立金の使途など、全8項目程度が見直しの対象とされており、「皆様のマンションの管理規約も見直しが必要です」と呼びかけられています(出典:国土交通省 報道発表資料)。
この改正は、理事会の不透明さの問題とどうつながるか
ここが大切なポイントだと私は考えています。決議が円滑になるということは、少人数の出席でも、重要な決議が成立しやすくなるということでもあります。裏を返せば、総会に出席せず、議決権行使書や委任状だけで済ませてきた区分所有者の「意思表示の重み」が、これまで以上に大きくなります。
大規模修繕のような高額な議案が、少数の出席者で決まってしまう可能性もゼロではありません。だからこそ、議案書を事前によく読む、質問は書面で出す、可能な限り総会に出席することが、区分所有者自身の財産を守る行動になります。
大規模修繕で「不透明さ」が一番お金に響く理由
発注の場面は、ひとりの判断に集中しやすい
マンションの大規模修繕は、一般に築12〜15年前後から繰り返し行われ、1回の工事費は規模により数千万円から数億円になる例が多いとされます。管理組合にとって、最も大きな支出の一つです。
その一方で、工事会社の選定、設計監理の依頼先、見積りの比較といった重要な判断が、理事長や一部の理事、あるいは管理会社の提案に集中してしまう例があります。ここに情報の偏りが生じると、価格や仕様の妥当性を、他の区分所有者が検証できなくなります。
談合報道が示した「発注の仕組み」の弱さ
朝日新聞の社説では、関東地方のマンション大規模修繕工事で談合を繰り返したとして、公正取引委員会が独占禁止法違反を認定した問題が取り上げられました。報道によれば、設計コンサルタント会社が、受注予定の工事会社が選ばれるよう誘導したとされ、対象は171か所に及んだとされています(出典:朝日新聞 社説「マンション談合 業者は補償、国は是正を」)。私は、この件の詳細な事実関係を、公式資料で一つずつ確認したわけではなく、社説の本文も全文は確認できていません。ここでは報道が指摘した点として紹介します。
私がこの種の報道から受け取るのは、特定の会社や人への批判ではありません。「発注の仕組みが、第三者の目の届かないところで固まってしまうと、管理組合の側に不利益が生じかねない」という、構造的な教訓です。
談合のような不正までいかなくても、次のような「不透明さ」は、現場で珍しくありません。
- 見積りの比較表が、金額だけで、仕様や数量の違いが分からない
- 選定の理由が、総会で十分に説明されない
- 設計コンサルタントや管理会社と、工事会社との関係が開示されない
- 工事中の変更や追加の費用が、事後報告になりやすい
私が現場で感じる「説明できる発注」の価値
私は施工の側にいる人間ですが、説明のできる発注のほうが、結果として工事の品質も、施工会社との信頼関係も良くなると感じています。見積りの内訳が明確で、住民の質問に答える場が設けられている現場は、工事中のトラブルも少なく、完成後の評価も安定している、というのが私の経験上の実感です。
理事会を開かれたものにする、5つの実務
不透明さを解消するのは、疑いの目を向けることではなく、仕組みで見える化することだと私は考えています。理事会側、区分所有者側のどちらにも役立つ5つの実務を挙げます。
実務1:修繕委員会を設け、理事会と役割を分ける
大規模修繕は、専門的で時間のかかる検討事項です。理事会とは別に、修繕委員会を設置し、複数の区分所有者が検討に関わる形にすると、判断の偏りが減ります。委員会の設置や権限は、総会の決議や規約の定めに沿って整えます。
実務2:検討経過を、議事録と掲示・配布で共有する
検討の経過を、議事録として残し、掲示板や配布物で共有します。電磁的方法(メールや専用の連絡ツール)を使えば、コストを抑えながら、共有の頻度を上げられます。
実務3:見積りは、条件をそろえた「相見積り」で取る
見積りは、同じ仕様書(工事の範囲、使用材料、数量、工期)をもとに、複数社から取ります。条件がそろっていない見積りは、金額を比べても意味がありません。目安として、3社程度に声をかける管理組合が多い印象ですが、社数が多ければよいわけでもありません。条件のそろえ方と、各社への説明会の持ち方が大切です。
実務4:設計コンサルタントや管理会社の関与を、開示する
設計監理を依頼する会社や、管理会社の関与の仕方、報酬の仕組みを、総会などで説明します。工事会社との関係に利益相反がないか、関係がある場合はどう管理するかを、あらかじめ確認します。
実務5:「工法の比較」も、検討の入り口に入れる
大規模修繕は、足場を組む通常工法だけではありません。ロープアクセス工法(ロープで建物の外壁を移動して作業する工法)や、足場とロープアクセスを組み合わせるハイブリッド工法という選択肢もあります。工法の選択肢が1つしかないと、比較そのものができません。 検討の入り口で複数の工法を並べることも、透明性を高める有効な方法の一つです。ロープアクセス工法の技術情報は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムにも詳しくまとめています。
足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法を比べる
建物の形、劣化の状況、周辺の環境によって、向いている工法は変わります。特定の工法が常に優れているわけではない、というのが私の基本的な立場です。
| 項目 | 通常足場工法 | ロープアクセス工法 | ハイブリッド工法 |
|---|---|---|---|
| 向いている建物 | 大規模・複雑な形状で、全面的な改修が必要 | 部分補修、外壁調査、ゴンドラ不可の狭小地 | 全面と部分が混在する建物 |
| 費用の傾向 | 足場の仮設費がかかる | 足場費を抑えやすい場合がある | 条件に応じた組み合わせで最適化 |
| 工期の傾向 | 足場の組立・解体の期間が必要 | 仮設が少なく、短くなる場合がある | 組み合わせにより調整 |
| 注意点 | 近隣への圧迫感、防犯面の配慮 | 作業量が多いと割高になる場合がある | 計画と工程管理に経験が必要 |
この表は一般的な傾向を示したもので、実際の費用や工期は、現地調査と見積りで確認する必要があります。私たち明誠は、3工法のどれも自社で提案できる立場です。だからこそ、「この工法ありき」ではなく、建物にとってのベストを、比較のうえで説明することを大切にしています。詳しくは、大規模修繕工事のご紹介とロープアクセス工法のご紹介をご覧ください。
想定ケースで考える|築26年・90戸のマンションの場合
ここからは、実在の物件ではない、想定ケースです。
想定する状況
築26年、90戸のマンション。2回目の大規模修繕を控え、理事長が管理会社の推薦する工事会社1社から見積りを取り、総会で承認を得ようとしています。一部の区分所有者は「金額の根拠が分からない」と感じています。
想定される3つの進め方
- そのまま進める:総会で承認が得られれば工事は進みます。ただし、金額の妥当性への疑問が残り、工事後も不信感が残る可能性があります
- 書面で情報開示を求め、質問書を出す:見積りの内訳、選定理由、他社への依頼状況を確認します。理事会が丁寧に回答すれば、疑問が解消されることも多いと考えられます
- 修繕委員会を立ち上げ、相見積りに切り替える:条件をそろえた複数社の見積りと、工法の比較を行います。時間はかかりますが、説明の根拠が整います
私は、この3つのうち、2から3へと進むのが、一番現実的だと考えています。総会招集請求は、これらの手段で解決しない場合の、最後の選択肢として位置づけるのが、組合内の関係を守るうえでも望ましいと私は思います。
区分所有者・理事会、それぞれが今日からできること
区分所有者の方へ
- 規約を読み、「閲覧請求」「総会招集請求」の条文と要件を確認する
- 議案書は事前に読み、不明点は書面で質問する
- 総会には、できるだけ出席する。出席が難しい場合も、議決権行使書には意思を示す
- 疑問は、人への批判ではなく「仕組みの改善」として提案する
理事長・理事の方へ
- 検討の経過を、議事録と配布物で共有する
- 見積りは、条件をそろえた相見積りで取り、比較表を示す
- 修繕委員会など、複数の目が入る体制をつくる
- 令和7年改正の標準管理規約を踏まえ、自分のマンションの規約を見直す
理事長のお仕事は、本当に大変です。無報酬で、専門外のことを判断する責任を負っています。だからこそ、「ひとりで抱え込まない」ための仕組みが、理事長ご自身を守ることにもつながると私は考えています。
注意点|この記事の読み方について
注意点①:報道は一例であり、個別の事案の評価ではない
この記事は、特定の管理組合や個人を評価するものではありません。報道で紹介された内容は、一般論として参考にしています。私が全文を確認できていない記事も含まれます。
注意点②:規約や制度は変わる
区分所有法の改正は令和8年4月に施行され、標準管理規約も令和7年10月に改正されています。数値や手続きは、今後の運用や各マンションの規約改正によって変わることがあります。最新の情報は、法務省・国土交通省の公式ページでご確認ください。
注意点③:法的な判断は専門家に
総会招集請求、役員の解任、決議の有効性の争いなどは、規約や経緯によって結論が変わります。この記事は法的な助言ではありません。具体的な手続きに入る前に、マンション管理士や弁護士にご相談ください。
注意点④:透明にすれば安くなるとは限らない
発注の透明性を高めても、工事費が下がるとは限りません。適正な価格と品質を、納得して選べるようになる、という意味での効果と考えてください。
管理組合と区分所有者に伝えたい、私の考え
私はこれまで20年以上、現場で職人として、また経営者として、数多くのマンションの大規模修繕に関わってきました。そのなかで強く感じているのは、「揉めている管理組合の多くは、悪い人がいるのではなく、情報が共有されていない」ということです。
理事長さんも、区分所有者の皆さんも、同じマンションの資産価値を守りたいという目的は一緒です。違うのは、持っている情報と、見えている景色です。その差を埋めるのが、書面での情報開示であり、修繕委員会であり、複数社の見積りであり、工法の比較だと私は考えています。
正直に申し上げます。私は施工会社の立場ですから、「工事をやらせてください」と言えば、それで話が早いのかもしれません。でも、それでは長くお付き合いいただけません。説明のできる発注を、一緒につくる。 それが、管理組合さまにとっても、私たちにとっても、一番長続きする形です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 理事長が理事会の議事録を見せてくれません。どうすればよいですか?
A. まず、お住まいの規約で閲覧に関する定めを確認し、理由を付けた書面で請求します。標準管理規約には、帳票類の閲覧に関する定めがあります。それでも応じてもらえない場合は、マンション管理士や弁護士にご相談ください。
Q2. 総会招集請求は、何人の賛同があれば出せますか?
A. 区分所有法では、区分所有者の5分の1以上で、議決権の5分の1以上を有するものが、会議の目的を示して請求できるとされています。この定数は規約で減らせるため、お住まいの規約をご確認ください(出典:e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律)。
Q3. 令和8年4月の改正で、総会の決議は何が変わりましたか?
A. 法務省の資料では、決議の円滑化として出席者を母数とする多数決の考え方や、所在等不明区分所有者を決議の母数から除外する仕組みなどが示されています。決議の種類ごとの要件は、法務省の最新資料で確認してください(出典:法務省 改正法の概要)。
Q4. 標準管理規約が改正されたら、うちの規約も変えなければなりませんか?
A. 標準管理規約は、各マンションが規約を定める際の「ひな型」です。直ちに適用されるわけではありませんが、国土交通省は法改正に合わせた見直しを呼びかけています。総会の決議で、規約の改正を検討することになります(出典:国土交通省 報道発表資料)。
Q5. 大規模修繕の見積りは、何社から取るのがよいですか?
A. 一律の決まりはありません。同じ仕様書で、複数社から見積りを取るのが基本です。社数を増やすよりも、条件をそろえること、各社の説明を受ける場を設けることが大切です。
Q6. ロープアクセスやハイブリッド工法は、どんなマンションに向いていますか?
A. 部分補修が中心の建物、狭小地、足場の設置が難しい建物などで、検討の価値がある場合があります。全面改修では通常足場が適することもあります。現地調査のうえで、3工法を比較して判断します。
この記事のポイントまとめ
- 理事会の不透明さに悩んだら、書面での情報開示請求から始める
- 区分所有者の5分の1以上で、総会の招集を請求できる。数値は規約で異なる場合がある
- 改正区分所有法は令和8年4月に施行。決議の円滑化などが盛り込まれた
- 大規模修繕の発注は、修繕委員会・相見積り・工法比較で、見える化する
- 足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法を、建物ごとに比べて判断する
出典・参考資料
- THE GOLD ONLINE「マンション理事会の不透明な運営と、従うだけの管理会社…不満を抱く住民が行使できる〈法的な対抗手段〉」(2026年10月3日アラート配信分)
- 法務省「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について」
- 法務省民事局「区分所有法・被災区分所有法の改正について」(令和8年4月)
- 国土交通省「「マンション標準管理規約」を改正します」(令和7年10月)
- 国土交通省「マンション標準管理規約」
- e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」
- 朝日新聞「(社説)マンション談合 業者は補償、国は是正を」
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この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年10月6日
理事会の運営に不安を感じたら、まずは規約と議事録を読み、書面で質問することから始めてみてください。大規模修繕の進め方や、見積りの見方、工法の比較についてのご相談だけでも遠慮なくお声がけください。お問合せフォームから承ります。これは私が現場で20年以上見てきた実感です。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。管理組合向けのご案内はこちらもご覧ください。
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