本間社長ブログ

大和市のマンション漏水・防災対策|境川・引地川の洪水と1時間153mmの内水想定から考える大規模修繕の優先順位【2026年度版】

大和市のマンション漏水・防災対策|境川・引地川の洪水と1時間153mmの内水想定から考える大規模修繕の優先順位【2026年度版】
本間 幸紘

著作者プロフィール

株式会社明誠 代表取締役

本間 幸紘

大規模修繕・外壁工事・ロープアクセス工事に関する情報を、現場経験をもとに分かりやすくお届けします。

2026年10月16日 更新

大和市で分譲マンションやビルをお持ちの方に、最初にお伝えしたい数字が2つあります。大和市の雨水出水(内水)の浸水想定は、1時間153mmの雨を前提にしています。これは、市内で浸水被害が出た2013年4月6日の1時間64mmの2倍以上です(出典:大和市 雨水出水浸水想定区域について)。一方、大和市の下水道全体計画の雨水の計画降雨は、5年確率で1時間48mmです(出典:大和市の下水道計画)。大和市のマンションは、この差の分だけ「排水が追いつかない雨」を前提に建物を見ておく必要があります。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。拠点は東京都東大和市ですが、神奈川県内のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕も手がけています。名前が似ていますが、東京都の東大和市と、神奈川県の大和市は別の市です。今日は神奈川県大和市のお話です。

私は20年以上、外壁と防水の現場に立ってきました。仮設足場を組む工事も、メインロープとバックアップロープの2本に接続して壁面に降りる無足場の工事も、どちらも自分の手でやってきました。

この記事では、大和市・国土交通省・気象庁・国土地理院の公式情報をもとに、大和市の分譲・賃貸マンション、オーナーさまのビルやホテルが、大規模修繕で先に手を打つべき漏水・防災の場所を整理します。なお、河川については大和市の公式ページに名前の出ている境川と引地川だけを書きます。広域の資料に出てくる他市の川を、大和市の川として並べることはしません。


結論:大和市で優先すべきは「屋上とバルコニーの排水」「境川・引地川沿いと低い土地の設備階」「半地下・地下の出入口」です

先に結論を申し上げます。大和市のマンションでは、次の3つから動くことをお勧めします。

  1. 屋上ドレン・バルコニー排水・サッシまわりのシーリングを点検し、防水の改修時期を記録で確認する:計画を超える雨で最初に出る被害は、排水が追いつかないことによる漏水です
  2. 受変電設備・給水ポンプ・非常用発電機の置き場所を、洪水と内水の浸水想定と照らして確認する:境川・引地川沿いや、周りより低い土地で、地下や1階にある設備は最初に止まります
  3. 地下駐車場・半地下の住戸・エレベーターピットの入口に、水が入る経路がないか確認する:内水の浸水は、川から離れた場所でも起こります

大和市は内陸の市です。市の公式ページでは、水防法に基づく水害ハザードマップの作成状況を「洪水:作成済み」「内水:作成済み」「高潮:区域外」「津波:区域外」としています(出典:大和市防災マップ(ハザードマップ))。つまり、大和市で見るべき水の話は、川の洪水と、街に降った雨の内水の2つです。


大和市のハザードマップを1枚で読む

大和市は、広域避難場所、避難生活施設、洪水・雨水出水浸水想定区域、土砂災害(特別)警戒区域などを載せた「大和市防災マップ」を、令和8年3月に更新しています。紙の地図面は「洪水」と「内水はん濫」の2枚に分かれており、Web版の大和市防災マップでは、住所から拡大して確認できます。

市の公式ページから、種類ごとに整理しました。

種類 大和市での扱い 読むときの注意
洪水 境川・引地川の浸水想定区域を防災マップ(令和8年3月更新)に掲載 両河川とも、平成26年6月1日に特定都市河川に指定
内水(雨水出水) 1時間153mmの想定最大規模降雨で区域を指定・公表 洪水(川の破堤・越水)による氾濫は含まない
土砂災害 土砂災害(特別)警戒区域を防災マップに記載 建物ごとに区域に入るかを地図で確認
高潮・津波 区域外 県の浸水想定区域図に大和市は含まれない

出典は、大和市防災マップ(ハザードマップ)、大和市 雨水出水浸水想定区域について、大和市 特定都市河川浸水被害対策法についてです。

市のページには「過去の浸水履歴は、電話または危機管理課窓口にてお伝えが可能」とあります。建物の場所で過去に浸水があったかどうかは、管理組合として一度問い合わせておく価値があります。

洪水と内水は、地図を分けて見てください

洪水は川があふれる話、内水は市街地に降った雨が下水道管や水路で流しきれずにたまる話です。大和市は、この2つを別々の地図面にしています。

市の内水の想定図には、注意書きがあります。この図は、洪水(川の破堤や越水)による氾濫を考えていません。また、落ち葉や土砂による排水施設の詰まりや、局地的な「くぼ地」での浸水も対象外です。色が付いていない場所も、シミュレーション上の水深が0.1m未満というだけで、雨の降り方や地形によっては深くなることがあります。

つまり、「地図で色が付いていないから大丈夫」とは言い切れない、ということです。私が建物を見るときは、地図と同じくらい、敷地の高低差と排水の流れを見ます。

境川と引地川は「特定都市河川」です

大和市の公式ページによれば、平成26年6月1日に、二級河川の境川と引地川が、特定都市河川浸水被害対策法に基づく特定都市河川に指定されています。市街化が進み、川の改修だけでは浸水被害を防ぎにくい流域が対象になる制度です。

この指定に伴い、特定都市河川流域で、宅地など以外の土地で1,000㎡以上の「雨水浸透阻害行為」(土地を舗装するなど、雨がしみ込みにくくする行為)を行う場合は、許可が必要です。敷地の大きいマンションやビルで、外構の舗装や駐車場の造り替えを大規模修繕と合わせて考えている場合は、該当しないかを事前に市へ確認してください。


大和市の地域特性と漏水事故の関係

大和市は台地の上に市街地が広がる市で、市の東側を境川、中央部を引地川が流れています。市の下水道計画でも、雨水の流れる先を「引地川水系」と「境川水系」に分けています(出典:大和市の下水道計画)。場所によって、水の出方が変わります。

境川・引地川沿いの低い土地:洪水の浸水想定に入る場所では、地下ピット、1階の電気室、エレベーターピットが水に浸かることが主な被害になります。漏水というより、設備の水没です。

駅周辺の市街地:舗装された面が多く、降った雨が一気に側溝と下水道に集まります。市の下水道は、大和駅周辺と南林間地区が、汚水と雨水を一緒に流す合流式で整備されています。大雨のときに、半地下の出入口や駐車場のスロープに水がたまりやすい建物があります。

台地の上の平らな住宅地:川から離れていても、周りよりわずかに低い場所や、道路より敷地が低い建物では、内水の水が敷地に流れ込みます。

現場の話を一つ。以前、ある築30年を超える中規模マンションで、大雨のたびに地下の機械室に水が入るというご相談を受けました。外壁のひび割れを疑っておられましたが、調べると、前面道路からの雨水が駐車場のスロープを流れ下り、スロープ下の排水溝があふれて機械室の扉の下から入っていました。外壁を全部直しても止まらなかったはずです。正直に申し上げます。水の入り口を見誤ると、費用だけがかさみます。


大規模修繕でチェックすべき漏水ポイント7つ

私の経験上、漏水の原因は7か所でほぼ説明がつきます。大規模修繕の見積りを見るときの、確認表としてお使いください。

  1. 屋上防水:ふくれ、ひび割れ、端部の浮きを確認します。防水改修の費用は、工法によりますが5,000〜8,000円/㎡が一つの目安です(物件により大きく変わります)
  2. シーリング:外壁目地とサッシ周囲の硬化・ひび割れ・肉やせを確認します
  3. バルコニー排水:排水溝に落ち葉や砂がたまっていないか、床の勾配が保たれているかを見ます
  4. ドレン(排水口):屋上とバルコニーのドレンが詰まると、水があふれて壁を伝います。市の内水想定も、詰まりによる浸水は対象外です。雨の前の清掃が最も安く効きます
  5. 立上り:防水層の端部の立上りが低いと、計画を超えた雨で水が越えます
  6. サッシまわり:枠と躯体の取り合い、水切りの不具合を見ます
  7. エキスパンションジョイント:建物の動きを逃がす継ぎ目で、劣化すると雨水が内部に入ります

7か所のうち、お金をかけずにできるのは、ドレンの清掃と目視の点検です。私はいつも理事長さまに、雨の降る前の週に屋上へ上がって見ていただくようお伝えしています。それだけでも、建物の状態はかなり分かります。

外壁全体の点検費用の目安として、打診調査は250〜500円/㎡程度、外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡程度が一つのレンジです。いずれも足場の有無や建物の形で大きく変わりますので、参考値としてご覧ください。


漏水の緊急対応でロープアクセスが強い理由

漏水が起きたとき、足場を組むところから始めると、手配だけで数週間かかることがあります。その間にも雨は降ります。

ロープアクセス工法は、メインロープとバックアップロープの2本に接続し、2点以上の吊元を確保して壁面に降りる工法です。足場を組む時間がいらないため、調査と応急処置を短い日数で始められます。居住者の方のバルコニーに足場の部材が入ることもなく、生活への影響も小さくなります。

費用面でも差が出ます。10階建て・外周80m・工期3か月の建物を例にすると、足場工法の仮設費が約168万円、ロープアクセスでは約59万円という試算があります。工期も、足場工法の約60%が目安です。あくまで条件を置いた目安で、実際の見積りは建物によって変わります。

安全面についてもお伝えします。株式会社明誠は、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセスでの高所作業では、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業で、過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けており、品質管理はISO9001で行っています。

工法の詳しい技術情報は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。同業の方や、フランチャイズへの加盟にご関心のある方は、ロープアクセスドットコムの技術・訓練情報もご覧ください。明誠の工法は明誠のロープアクセス工法のご紹介とロープアクセスの安全管理の取り組みで、漏水の調査と補修はマンション漏水対応のご案内で説明しています。


防災上の共用部の位置と修繕優先度

漏水のほかに、浸水や地震で止まると困る共用部を、優先度の高い順に並べます。

共用部 確認すること 優先度
受変電設備 設置階が洪水・内水の想定浸水深より上か 高
給水ポンプ ポンプ室が地下・1階にないか 高
非常用発電機 設置階と、燃料の保管場所 高
地下駐車場・スロープ 入口に止水板や排水溝があるか、排水ポンプが動くか 高
エレベーター ピットの浸水対策、停止時の運用 中
避難通路・階段 荷物の放置、手すり・床の劣化 中

電気設備の浸水対策は、国土交通省・経済産業省が建築物における電気設備の浸水対策ガイドラインを公表しています。設備を上の階に移す、止水板を設ける、といった考え方が整理されています。

大雨のときの危険度は、気象庁のキキクル(危険度分布)で確認できます。建物の住所を国土地理院の重ねるハザードマップや、市のWeb版防災マップに入れて、洪水・内水・土砂を重ねて見ておくことをお勧めします。


大和市の分譲マンション耐震診断費補助(令和8年度)

防災の話では、地震への備えも外せません。大和市には、旧耐震基準の分譲マンションの管理組合向けに「マンション耐震診断費補助金制度」があります。市のページは2026年4月1日に更新されています(出典:大和市 マンション耐震診断費補助金制度)。

対象となる建物(すべてに該当するもの)

  • 昭和56年5月31日以前に建築確認を得て、新築工事に着手したもの
  • 区分所有者がいる建物で、住戸数の過半数が区分所有者の居住用であるもの
  • 延べ面積の2分の1を超える部分が共同住宅
  • 平面図・構造図などの建築図面があるもの

補助の内容

区分 補助内容 受付期間
予備診断 予備診断にかかった費用(1棟あたり上限20万円) 当該年度4月頃〜12月末頃
本診断(緊急輸送路を塞ぐおそれのあるもの) 本診断費用の3分の2(1棟あたり上限200万円。1,000㎡未満は1㎡あたり2,000円) 当該年度4月頃〜12月末頃
本診断(その他) 本診断費用の2分の1(1棟あたり上限150万円。1,000㎡未満は1㎡あたり1,500円) 当該年度4月頃〜12月末頃

申請者は管理組合です。予備診断・本診断とも、行う前に市への事前相談が必要で、診断の実施には管理規約や細則に基づく議決が要ります。本診断の申請には、総会の決議書の写しが必要です。受付は12月末頃までとされていますので、令和8年度中の申請を考える管理組合さまは、総会や理事会の日程から逆算して、早めに市の建築指導課(電話046-260-5422)へご相談ください。予算や受付状況は年度途中で変わることがあります。


よくあるご質問

Q. 大和市のハザードマップはどこで見られますか?

A. 市の大和市防災マップ(ハザードマップ)のページに、令和8年3月更新の洪水と内水はん濫の地図面があります。Web版では住所から拡大して確認できます。

Q. 大和市の内水の想定は、どのくらいの雨ですか?

A. 1時間153mmです。市内で浸水被害が出た2013年4月6日の1時間64mmの2倍以上にあたります。

Q. 川から離れた建物でも、浸水の心配はありますか?

A. あります。内水は、下水道管や水路で流しきれない雨が、マンホールや雨水ますからあふれる浸水です。川から離れていても、周りより低い土地や半地下の出入口では起こります。

Q. 屋上防水の改修費用はいくらくらいですか?

A. 工法により、5,000〜8,000円/㎡が一つの目安です。建物の状態で大きく変わります。無料で概算のお見積りを出せますので、お気軽にご相談ください。

Q. 漏水が起きたら、まず何をすればよいですか?

A. 水が入っている場所を写真で記録し、ドレンの詰まりを確認してください。そのうえで原因の調査を依頼します。外壁か、屋上か、地面からの水かを見極めることが、費用を抑える近道です。

Q. ロープアクセスなら、足場より工期は短くなりますか?

A. 足場工法の約60%の工期が目安です。10階建て・外周80mなら、足場3か月に対して1.5〜2か月程度です。建物により変わります。

Q. 大和市のマンション耐震診断の補助は、令和8年度も使えますか?

A. 市のページは2026年4月1日に更新されており、受付期間は当該年度の4月頃から12月末頃までとされています。診断の前に事前相談が必要ですので、早めに市の建築指導課へお問い合わせください。


まとめと今週動くこと3点

大和市では、境川・引地川の洪水と、1時間153mmの雨を前提にした内水を、建物の場所に合わせて見分けることが出発点です。そのうえで、漏水の7か所と、電気設備・地下の出入口を点検します。

今週、動いていただきたいことを3つに絞ります。

  1. 市のWeb版防災マップで、建物の住所が洪水と内水のどちらの想定に入るかを確認し、理事会で共有する:印刷して1枚配るだけで十分です
  2. 受変電設備・給水ポンプ・非常用発電機の設置階を、竣工図で確認する:浸水想定より下にあれば、止水板などの対策の検討を始めてください
  3. 屋上ドレン、バルコニー排水、駐車場スロープの排水溝を、雨の前に清掃する:費用をほとんどかけずにできる、最も効果の高い備えです

総会の前の整理だけでも、お力になれることがあります。管理組合さまは管理組合向けの大規模修繕のご案内、ビルオーナーさまはビルオーナー向けの大規模修繕のご案内をご覧のうえ、お問合せフォームからお気軽にご相談ください。費用の考え方は大規模修繕の料金の考え方に、これまでの実績は明誠の施工事例にあります。

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年10月16日時点で公表されている大和市および国土交通省・気象庁・国土地理院の公式情報をもとに執筆しています。補助制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず大和市の担当窓口へ最新の内容をご確認ください。

次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

出典・参考資料

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年10月16日


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