本間社長ブログ

海老名市のマンション漏水・防災対策|相模川・目久尻川の洪水と内水のハザードマップから考える大規模修繕の優先順位【2026年度版】

海老名市のマンション漏水・防災対策|相模川・目久尻川の洪水と内水のハザードマップから考える大規模修繕の優先順位【2026年度版】
本間 幸紘

著作者プロフィール

株式会社明誠 代表取締役

本間 幸紘

大規模修繕・外壁工事・ロープアクセス工事に関する情報を、現場経験をもとに分かりやすくお届けします。

2026年10月17日 更新

海老名市で分譲マンションやビルをお持ちの方に、まず知っていただきたい数字があります。海老名市の雨水の排水能力は時間雨量50mmです。ところが市の内水ハザードマップは、1時間に153mmの雨が降った場合を想定して作られています(出典:海老名市防災ガイドブック 風水害編(知識))。50mmを超える雨では、海老名市内のどこでも、排水が追いつかない前提で建物を見ておく必要があります。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。拠点は東京都東大和市ですが、神奈川県内のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕も手がけています。20年以上、外壁と防水の現場に立ってきました。仮設足場を組む工事も、メインロープとバックアップロープの2本に接続して壁面に降りる無足場の工事も、どちらも自分の手でやってきた人間です。

今日は、海老名市・気象庁・国土交通省の公式情報をもとに、海老名市の分譲・賃貸マンション、そしてオーナーさまのビルやホテルが、大規模修繕で先に手を打つべき漏水・防災の場所を整理します。

なお、この記事では海老名市の公式ページ・防災ガイドブックに載っている河川と区域だけを書きます。相模川流域の広域資料に出てくる他市の川を、海老名市のものとして並べることはしません。


結論:海老名市で優先すべきは「屋上とバルコニーの排水」「相模川側の設備階」「東側台地の斜面まわり」です

先に結論を申し上げます。海老名市のマンションでは、次の3つから動くことをお勧めします。

  1. 屋上ドレン・バルコニー排水・サッシまわりのシーリングを点検し、防水の改修時期を記録で確認する:時間50mmを超える雨で最初に出る被害は、排水が追いつかないことによる漏水です。内水は川沿いでなくても起こります
  2. 相模川の浸水想定区域にある建物は、受変電設備・給水ポンプ・非常用発電機の置き場所を確認する:市は「相模川が氾濫すると市の西側のほとんどが浸水の危険がある」としています
  3. 東側の台地で、急斜面に近い建物は擁壁・排水溝・外構の排水を点検する:海老名市の土砂災害は急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)が対象です

海老名市のハザードマップは、洪水(相模川・目久尻川・永池川・鳩川)、内水、土砂災害の3種です。市は「海老名市においては、高潮及び津波は想定されていません」と明記しています(出典:海老名市防災ガイドブック(ハザードマップ))。


海老名市のハザードマップを1枚で読む

市の防災ガイドブック(令和8年6月12日 全面改訂)から、種類ごとの該当を整理しました。

種類 海老名市での扱い 想定の前提
洪水(相模川) 市の西側のほとんどが浸水の危険 48時間雨量567mm
洪水(目久尻川) 川沿いで浸水を想定 24時間総雨量398mm
洪水(鳩川) 川沿いで浸水を想定 24時間総雨量326mm
洪水(永池川) 川沿いで浸水を想定 24時間総雨量304mm
内水 川沿い以外の住宅街(東柏ケ谷など)でも危険あり 1時間153mm(排水能力は時間50mm)
土砂災害 急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)のみが対象 土砂災害警戒区域・特別警戒区域
地震・液状化 都心南部直下地震で市全域震度6弱、中新田と大谷の一部で震度6強 液状化危険度マップは別に公開
津波・高潮 想定されていない 市が明記

出典は、海老名市防災ガイドブック(ハザードマップ)の「風水害編(知識)」「地震編(知識)」、および震度分布図・液状化危険度マップ等の参考資料です。

令和8年6月の改訂で変わったこと

今回の改訂では、相模川の「家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流)」が、神奈川県が令和7年12月25日に発表した内容に合わせて修正されました。また、目久尻川・永池川・鳩川の「家屋倒壊等氾濫想定区域(河岸侵食)」が、それまで文字だけだった情報から地図に落とし込まれています。

手元に古い版のガイドブックがある管理組合さまは、令和8年6月版に差し替えてください。特に、川沿いの建物で家屋倒壊の区域を確認する場合は、新しい版で見る必要があります。

洪水と内水は、見る場所が違います

洪水は川があふれる話、内水は市街地に降った雨が排水しきれずにたまる話です。

市のガイドブックには、相模川の浸水継続時間マップも載っています。浸水深が50cm以上になってから50cmを下回るまでの時間を、12時間以内、12〜24時間、24〜72時間の3段階で示したものです。受変電設備が水に浸かった場合、復旧までに数日かかる前提で考えたほうがよい、ということです。

内水について、市は「坂の下や一部低地になっているところでも発生する」と書いています。東側の台地にある建物でも、敷地の中の低い場所、半地下の駐車場、1階の機械室は油断できません。

実際の避難の実績

令和元年(2019年)10月の台風第19号では、県が相模川上流の城山ダムで初めて緊急放流を行いました。海老名市は相模川の浸水想定区域内の住民約5万4千人に避難指示を出しています(出典:神奈川新聞 カナロコ 2020年2月3日)。同じ報道では、海老名市と厚木市の間にある相模大橋の地点で氾濫危険水位を超えたものの、大きな浸水被害は確認されなかったとされています。

ガイドブックにも「城山ダムの緊急放流等により相模川が氾濫するおそれがある場合には、市から避難指示等を発令」すると書かれています。区域内のマンションでは、避難のときに共用部の電源や給水が止まった後のことまで、あらかじめ決めておく必要があります。


海老名市の地域特性と漏水事故の関係

海老名市は、西側の相模川沿いの低地と、東側の標高の高い台地に大きく分かれます。市のガイドブックも「東側は標高が高くなっており、相模川の洪水の影響は受けにくい」としています。場所によって、漏水の出方が変わります。

西側の相模川沿いの低地:浸水すると、地下ピット、1階の電気室、エレベーターのピットが水に浸かります。漏水というより、設備の水没が主な被害です。

海老名駅周辺の市街地:駅の周辺は再開発で大型のマンションや商業施設が増えました。舗装面が多く、雨水が一気に側溝へ流れます。半地下の駐車場や地下の機械室の出入口には、止水板や排水ポンプの点検が欠かせません。

目久尻川・永池川・鳩川の川沿い:相模川ほど大きな川ではありませんが、市はこれらの川沿いでも浸水を想定しています。川に近い低い敷地の建物は、1階の床と外部の地盤の高さの差を確認しておくと安心です。

東側の台地の斜面:急斜面が土砂災害警戒区域に指定されている場所があります。擁壁のひび割れ、水抜き穴の詰まり、外構の排水溝の勾配不良が、建物側の漏水の原因になります。

現場の話を一つ。私が以前に見たある築30年超の中規模マンションでは、雨のたびに1階の廊下天井から水が落ちていました。調べると、原因は外壁ではなく、敷地の高い側から流れ込んだ雨水が外構の排水溝からあふれて、防水の立上りの下端から入っていたものでした。外壁のシーリングを全部打ち替えても止まらなかったと思います。水の入り口を見誤ると、費用だけがかさみます。私が現場で一番悔しい思いをするのは、こういうときです。


大規模修繕でチェックすべき漏水ポイント7つ

私の経験上、漏水の原因は7か所でほぼ説明がつきます。大規模修繕の見積りを見るときの、確認表としてお使いください。

  1. 屋上防水:ふくれ、ひび割れ、端部の浮きを確認します。防水改修の費用は、工法によりますが5,000〜8,000円/㎡が一つの目安です(物件により大きく変わります)
  2. シーリング:外壁目地とサッシ周囲の硬化・ひび割れ・肉やせを確認します
  3. バルコニー排水:排水溝に落ち葉や砂がたまっていないか、床の勾配が保たれているかを見ます
  4. ドレン(排水口):屋上とバルコニーのドレンが詰まると、水があふれて壁を伝います。雨の前の清掃が最も安く効きます
  5. 立上り:防水層の端部の立上りが低いと、想定を超えた雨で水が越えます
  6. サッシまわり:枠と躯体の取り合い、水切りの不具合を見ます
  7. エキスパンションジョイント:建物の動きを逃がす継ぎ目で、劣化すると雨水が内部に入ります

海老名市の排水能力は時間50mmです。市のガイドブックに掲載されている気象庁の区分では、1時間50〜80mmは「非常に激しい雨」にあたります。このくらいの雨では、屋上のドレン1か所が詰まっているだけで、屋上に水がたまり、立上りを越えて室内に入ることがあります。

7か所のうち、お金をかけずにできるのは、ドレンの清掃と、目視の点検です。私はいつも理事長さまに、雨の降る前の週に屋上へ上がって見ていただくようお伝えしています。それだけでも、状況はかなり分かります。


漏水緊急対応でロープアクセスが強い理由

漏水が起きたとき、足場を組むところから始めると、手配だけで数週間かかります。その間に雨は何度も降ります。

ロープアクセス工法は、メインロープとバックアップロープの2本に接続し、2点以上の吊元を確保して壁面に降りる工法です。足場を組む時間がないため、調査と応急処置を短い日数で始められます。居住者の方のバルコニーに足場の部材が通ることもなく、生活への影響も小さくなります。

費用面でも差が出ます。10階建て・外周80m・工期3か月の建物を例にすると、足場工法の仮設費が約168万円、ロープアクセスでは約59万円という試算があります。あくまで条件を置いた目安で、実際の見積りは建物により変わります。

安全面について。株式会社明誠は、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセスでの高所作業では、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業で、過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けており、品質管理はISO9001で行っています。

詳しい技術情報は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに、工法の考え方と訓練の内容をまとめています。同業の方や、フランチャイズにご関心のある方はロープアクセス工法の技術解説(姉妹サイト)もご覧ください。明誠の工法はロープアクセス工法のご紹介と安全管理の取り組みで説明しています。漏水の調査と補修は漏水対応のご案内をご覧ください。


防災上の共用部の位置と修繕優先度

漏水以外に、浸水や地震で止まると困る共用部を、優先度の高い順に並べます。

共用部 確認すること 優先度
受変電設備 設置階が洪水・内水の想定浸水深より上か 高
給水ポンプ ポンプ室が地下・1階にないか 高
非常用発電機 設置階と、燃料の保管場所 高
エレベーター ピットの浸水対策、停止時の運用 中
避難通路・階段 荷物の放置、手すり・床の劣化 中

市の地震被害想定(都心南部直下地震、冬の平日午後6時発災)では、上下水道の断水・機能支障が36,440人、復旧の見込みは上水道9日、下水道40日とされています(出典:海老名市防災ガイドブック 地震編(知識))。マンションでは、給水ポンプが動いても下水が使えない期間が長く続くことになります。トイレの使用ルールや、排水管の点検の順番を、理事会で決めておくことをお勧めします。

電気設備の浸水対策は、国土交通省・経済産業省が建築物における電気設備の浸水対策ガイドラインを公表しています。設備を上階に移す、止水板を設ける、といった考え方が整理されています。

大雨のときの危険度は、気象庁のキキクル(危険度分布)で確認できます。建物の住所を、国土地理院の重ねるハザードマップに入れて、洪水・内水・土砂・液状化を重ねて見ておくことをお勧めします。


海老名市で使える耐震・マンション支援の制度(令和8年度)

海老名市には、管理組合が使える耐震化の補助制度があります。市のページの更新日は令和8年4月1日です(出典:海老名市 分譲マンションの耐震化促進関係補助事業)。

対象は、昭和56年5月31日以前に建築確認を得て工事に着手した分譲マンションの管理組合です。補助額は次のとおりです。

内容 補助率 上限
予備診断 費用の3分の2 1棟あたり20万円
耐震診断 費用の2分の1 1棟あたり150万円(延床1,000㎡未満は1㎡あたり1,500円)
耐震改修計画書作成 費用の2分の1 1住戸あたり5万円
耐震改修工事等 費用の2分の1 1住戸あたり50万円

診断等を行う前に事前相談と申請が必要で、管理組合の集会で耐震診断の実施を議決していることも条件です。窓口は市のまちづくり部 住宅まちづくり課です。

このほか、令和8年度は神奈川県のマンションアドバイザー派遣事業があり、マンション管理士や建築士を管理組合に無料で派遣しています。申込期間は令和8年6月26日から令和9年2月26日までで、申込者が多い場合は早めに終了します(出典:海老名市 令和8年度マンションアドバイザー派遣事業)。長期修繕計画の見直しを考えている管理組合さまには、使いやすい制度です。


よくあるご質問

Q. 海老名市のマンションで、ハザードマップはどこで見られますか?

A. 海老名市防災ホームページの防災ガイドブック(ハザードマップ)で、地区ごとのPDFをダウンロードできます。令和8年6月12日に全面改訂されています。

Q. 海老名市で津波や高潮の心配はありますか?

A. 市は、海老名市においては高潮と津波は想定されていないと明記しています。想定されているのは洪水、内水、土砂災害です。

Q. 内水とは何ですか?

A. 排水施設の能力を超える大雨で、雨水が排出しきれずにたまる浸水です。海老名市の排水能力は時間50mmで、内水マップは1時間153mmの雨を想定しています。川から離れた場所でも起こります。

Q. 屋上防水の改修費用はいくらくらいですか?

A. 工法により、5,000〜8,000円/㎡が一つの目安です。建物の状態で大きく変わります。無料で概算お見積りを出せますので、お気軽にお問い合わせください。

Q. 漏水が起きたら、まず何をすればよいですか?

A. 水が入っている場所を写真で記録し、ドレンの詰まりを確認してください。そのうえで原因の調査を依頼します。外壁か、屋上か、敷地からの水かを見極めることが、費用を抑える近道です。

Q. ロープアクセスなら、足場より工期は短くなりますか?

A. 足場工法の約60%の工期が目安です。10階建て・外周80mなら、足場3か月に対し1.5〜2か月程度です。建物により変わります。

Q. 旧耐震のマンションですが、診断の補助は令和8年度も使えますか?

A. 市のページ(令和8年4月1日更新)に、予備診断は費用の3分の2・上限20万円などの補助が掲載されています。診断の前に事前相談が必要ですので、住宅まちづくり課にご相談ください。


まとめと今週動くこと3点

海老名市では、相模川側の洪水、市内全域の内水、東側の斜面のがけ崩れを、建物の場所に合わせて見分けることが出発点です。そのうえで、漏水の7か所と、電気設備の置き場所を点検します。

今週、動いていただきたいことを3つに絞ります。

  1. 令和8年6月版の防災ガイドブックで、建物の住所が洪水・内水・土砂のどの想定に入るかを確認し、理事会で共有する:地区のページを1枚コピーして配るだけで十分です
  2. 受変電設備・給水ポンプ・非常用発電機の設置階を、竣工図で確認する:浸水想定より下にあれば、止水板などの対策の検討を始めてください
  3. 屋上ドレンとバルコニー排水を、雨の前に清掃する:費用をほとんどかけずにできる、最も効果の高い備えです

総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。管理組合さまは管理組合向けのご案内、ビルオーナーさまはビルオーナー向けのご案内をご覧のうえ、お問合せフォームからお気軽にご相談ください。費用の考え方は明誠の料金の考え方に、これまでの実績は明誠の施工事例にあります。

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年10月17日時点で公表されている海老名市および国土交通省・気象庁の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、海老名市および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

出典・参考資料

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年10月17日


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