本間社長ブログ

高さ60m超の煙突、全国444本の4割に劣化・損傷|熊本地震の倒壊を受け国交省が初の全国調査。「点検は所有者任せ」の盲点は、首都圏のマンション・ビル・ホテルの外壁や屋上工作物にもある【2026年10月】

高さ60m超の煙突、全国444本の4割に劣化・損傷|熊本地震の倒壊を受け国交省が初の全国調査。「点検は所有者任せ」の盲点は、首都圏のマンション・ビル・ホテルの外壁や屋上工作物にもある【2026年10月】
本間 幸紘

著作者プロフィール

株式会社明誠 代表取締役

本間 幸紘

大規模修繕・外壁工事・ロープアクセス工事に関する情報を、現場経験をもとに分かりやすくお届けします。

この記事で分かること

「法律で点検が決まっていない高所の構造物は、誰が、いつ、どうやって確かめるのか?」——この記事は、この問いに答えるために書きました。

2026年10月23日、国土交通省は、令和8年熊本地震で工場の煙突が倒壊したことを受けて実施した全国調査の結果を公表しました。高さ60mを超える鉄筋コンクリート造の煙突は全国に444本あり、そのうち180本(約4割)で損傷・劣化が確認されたという内容です(出典:国土交通省 報道発表資料「令和8年熊本地震による被害を踏まえた煙突に関する調査結果を公表します」2026年10月23日)。

工場の煙突の話なので、東京・神奈川・埼玉・千葉でマンションやビル、ホテルを持つ方には遠い話に聞こえるかもしれません。ですが、私は大規模修繕の現場に20年以上いて、この調査結果を読んだとき「これは煙突だけの話ではない」と感じました。

ポイントは次の3つです。

  1. 損傷・劣化の割合は、2007年6月20日より前に設置された煙突で44%、それ以後の煙突で11%と、古いものほど高かった(出典:共同通信 2026年10月23日(Yahoo!ニュース掲載))
  2. 煙突のような「工作物」は、建物と違って行政への定期報告の対象外(遊戯施設など一部の工作物を除く)で、点検の状況を国が一律に把握する仕組みがなかった(出典:朝日新聞 2026年10月25日)
  3. 国交省が示した「応急的な補修方法」は、ひび割れへの樹脂充填やモルタルでのかぶり厚さ確保など、マンション外壁の補修とほぼ同じ考え方だった(出典:国土交通省「(参考)応急的な補修方法」)

この記事では、ニュースの中身を正確に押さえたうえで、管理組合の理事さまや一棟マンション・ビル・ホテルのオーナーさまが次の大規模修繕や外壁調査で確かめたい7項目を、現場の目線で整理します。

2026年10月27日 更新


結論:高所の構造物は「建てたときの基準」より「建った後の点検」で差がつく

最初に結論をお伝えします。

今回の調査が示したのは、「高い場所にあって、日常的に誰も近くで見ない構造物は、点検の仕組みがないと劣化が進んだまま放置されやすい」ということです。

これはマンションやビルでも同じです。外壁タイル、屋上の塔屋(エレベーター機械室や階段室の屋上に突き出た部分)、高架水槽、看板、屋上の手すりや避雷針の基礎。こうした部位は、住んでいる方や利用者の目に入りにくく、地震や強風のときに初めて問題が表に出ます。

今回の煙突調査で分かったこと マンション・ビル・ホテルに置き換えると
444本中180本(約4割)に損傷・劣化 高所の部位は「見えないうちに」劣化が進む
2007年6月20日より前の煙突は44%、以後は11% 築年数が古いほど点検・補修の優先度が上がる
工作物は行政への定期報告の対象外 法定点検の範囲外の部位は、所有者が自ら点検計画を持つ必要がある
180本のうち60本は「対策予定なし」と回答 劣化を見つけても、予算と計画がないと補修が先送りされる
国は応急補修方法を例示し、特定行政庁が相談対応 補修の考え方は外壁のひび割れ補修とほぼ共通

つまり、管理組合やオーナーがやるべきことは、「法律で決まっている点検だけを済ませる」ことではなく、建物のどこに“点検の空白”があるのかを洗い出し、長期修繕計画に組み込むことです。以降のセクションで、その具体的な進め方を見ていきます。


ニュースの概要:国交省が10月23日に公表した煙突調査の中身

調査のきっかけは令和8年熊本地震での煙突倒壊

2026年7月に発生した令和8年熊本地震では、熊本県八代市の日本製紙八代工場で高さ60mを超える鉄筋コンクリート造の煙突が倒壊し、9人が犠牲になりました(出典:日テレNEWS NNN 2026年10月23日(Yahoo!ニュース掲載))。

これを受けて国土交通省は関係省庁と連携し、倒壊した煙突に類似する煙突を所有する事業所等に対して、2026年8月18日から調査を実施しました(出典:国土交通省「令和8年熊本地震による被害を踏まえた高さ60m超の煙突に関する調査について」)。

調査結果の主な数字

国交省の報道発表資料と別紙1から、主な数字を整理します。

項目 数値 出典
調査対象(高さ60m超・RC造の煙突) 全国444本 国交省 報道発表資料
損傷・劣化あり 180本(約4割) 同上
うち対策予定あり 120本 国交省 別紙1
うち対策予定なし 60本 同上
損傷・劣化なし 256本 同上
事業者において点検実施に向けて調整中 8本 同上
2007年6月20日より前に設置された煙突の損傷・劣化率 44%(398本中) 共同通信
2007年6月20日以後に設置された煙突の損傷・劣化率 11%(46本中) 同上

損傷・劣化の内容は、ひび割れ、鉄筋の露出、腐食などです。国交省の担当者は「軽微なものも含んでいる」と説明しており、ただちに安全性が低いとまでは判断できないとしています(出典:共同通信)。数字だけを見て不安をあおるのではなく、「劣化の早期発見と計画的な補修が大切」という読み方をするのが適切だと思います。

業種別では廃棄物処理・製鉄・製紙が多い

別紙1の業種別の表を見ると、煙突の本数そのものが多いのは廃棄物処理(ごみ処理施設など)の128本、製鉄の87本、製紙の61本です。損傷・劣化ありの本数では、製紙36本、製鉄31本、セメント製造29本が上位でした(出典:国交省 別紙1)。

業種 総数 損傷・劣化あり うち対策予定なし
廃棄物処理 128本 24本 13本
製鉄 87本 31本 10本
製紙 61本 36本 6本
化学 56本 25本 8本
セメント製造 44本 29本 12本
電気 30本 13本 7本

国の対応:応急補修の要請と特定行政庁による相談対応

国交省は、各事業の所管省庁を通じて損傷・劣化が確認された180本の所有者に応急的な補修を要請し、今後フォローアップする予定です。あわせて、特定行政庁(建築確認などを行う都道府県や市)に調査結果と応急補修方法を周知し、特定行政庁でも事業者の取組状況の把握や相談対応を進めるとしています(出典:国交省 報道発表資料)。

また日本経済新聞は、国交省が有識者会議で原因究明と再発防止策を検討しており、煙突を定期報告の対象に加えるなどの法改正も視野に入れていると報じています(出典:日本経済新聞「60メートル超の煙突、4割に劣化や損傷 熊本地震受け国が調査」2026年10月23日)。制度の具体的な中身や時期はまだ決まっていないため、今後の発表を注視したいところです。


東京・神奈川・埼玉・千葉など関東1都6県では114本中30本に損傷・劣化

明誠の施工エリアである首都圏・関東の状況も確認しておきます。別紙1の都道府県別の表から、関東1都6県を抜き出しました。

都県 煙突の総数 損傷・劣化あり うち対策予定あり うち対策予定なし
東京都 27本 3本 1本 2本
神奈川県 20本 4本 4本 0本
埼玉県 10本 4本 2本 2本
千葉県 21本 8本 4本 4本
茨城県 26本 7本 7本 0本
栃木県 6本 3本 2本 1本
群馬県 4本 1本 1本 0本
関東計 114本 30本 21本 9本

(出典:国土交通省 別紙1 都道府県別煙突数をもとに明誠が集計)

関東の損傷・劣化率は約26%で、全国平均の約4割より低い数字です。ただし、これは「高さ60m超・鉄筋コンクリート造」という限られた条件の煙突だけの数字です。今回の調査の対象外である低い煙突、鋼製の煙突、ビルやホテルの屋上にあるボイラー用の煙突などは含まれていません。朝日新聞も、調査対象外の施設でも倒壊例があったことを報じています(出典:朝日新聞「初の全国調査で浮かんだ煙突の劣化 『調査対象外』の施設も倒壊例が」)。

首都圏の建物オーナーにとって大事なのは、「自分の建物には60mの煙突はない」で終わらせず、自分の建物の高所にある部位が、どの点検制度に入っていて、どれが入っていないかを確かめることです。


なぜ煙突は「盲点」だったのか:定期報告制度と工作物の関係

建物には「12条点検(定期報告)」がある

建築基準法第12条には、一定の用途・規模の建築物について、所有者(または管理者)が専門の資格者に定期的に調査させ、その結果を特定行政庁に報告する「定期報告制度」があります。いわゆる「12条点検」です。

外壁については、平成20年国土交通省告示第282号で、おおむね6か月から3年以内に一度の手の届く範囲の打診等に加え、おおむね10年に一度、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等を行うこととされています。令和4年1月の告示改正では、テストハンマーによる打診と同等以上の精度があれば、無人航空機(ドローン)による赤外線調査も認められるようになりました(出典:国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」)。

煙突は「工作物」で、定期報告の対象外

一方、煙突は建築基準法上の「建築物」ではなく「工作物」に分類されます。建築基準法施行令第138条では、高さ6mを超える煙突、高さ4mを超える広告塔・広告板、高さ8mを超える高架水槽などが、建築確認の手続きが必要な工作物として定められています。

ところが、こうした工作物は、建てるときには確認を受けても、建った後に行政へ点検結果を報告する仕組みの対象外です。朝日新聞は、人の集まる施設と違って煙突などの工作物は行政への報告義務の対象外であることが「盲点」になっていたと報じています(出典:朝日新聞)。

区分 主な例 行政への定期報告 点検の主体
特定建築物(12条1項) ホテル・旅館、百貨店等(政令で指定)、事務所等(特定行政庁が指定) あり(おおむね6か月〜3年ごと) 所有者・管理者が資格者に依頼
共同住宅(マンション) 分譲・賃貸マンション 特定行政庁の指定による(自治体ごとに異なる) 同上
建築設備・昇降機等(12条3項) エレベーター、換気設備、防火設備など あり(おおむね6か月〜1年ごと) 同上
煙突などの工作物 煙突、高架水槽、広告塔 煙突は対象外(今回の報道で「盲点」と指摘) 所有者の自主管理

※定期報告の対象となる建物の用途・規模や報告時期は、特定行政庁ごとに異なります。東京都の場合は東京都都市整備局「定期調査・検査報告制度」で確認できます。お住まいの市区町村や県の建築指導担当課にもあわせて確認してください。

「法定点検がない=点検しなくてよい」ではない

ここで押さえておきたいのは、法定の報告義務がないことと、安全管理の責任がないことは別だということです。

民法第717条では、建物などの「土地の工作物」の設置や保存に欠陥があって他人に損害を与えたとき、占有者や所有者が損害賠償責任を負うと定められています(出典:e-Gov法令検索「民法」)。外壁タイルが落ちて通行人がけがをした、看板が強風で飛んだ、といったケースでは、所有者の管理が問われます。

マンションであれば管理組合、一棟マンションやビル、ホテルであればオーナー(所有法人)が、その立場にあたります。


マンション・ビル・ホテルに置き換えると:「点検の空白」になりやすい5つの部位

では、首都圏のマンション・ビル・ホテルで、点検の空白になりやすいのはどこでしょうか。私が現場で見てきた中で、特に注意したい部位を5つ挙げます。

部位 起こりやすい劣化 法定点検との関係 見落とされやすい理由
① 外壁タイル・モルタル(高層部) 浮き、ひび割れ、剥落 定期報告対象の建物なら10年ごとの全面打診等 マンションが定期報告の対象外の自治体では、自主点検に頼る
② 塔屋・パラペット(屋上の立ち上がり) ひび割れ、鉄筋の露出、笠木の浮き 外壁の一部として扱われるが、屋上からしか見えない 地上や室内から見えない
③ 高架水槽・受水槽の架台 鉄骨の腐食、アンカーボルトの錆 給水設備の点検はあっても、架台の構造は見落とされがち 「水の点検」と「構造の点検」が分かれている
④ 屋上看板・広告塔・アンテナ架台 支持部の腐食、ボルトの緩み 4m超の広告塔は工作物。定期報告の対象外が多い テナントや広告主の設置物で、所有者が把握していない
⑤ ホテル・ビルのボイラー用煙突、排気筒 内部の腐食、外装材の劣化 今回の全国調査(60m超・RC造)の対象外 設備更新のときにしか誰も上がらない

特に④と⑤は、「誰の設置物で、誰が点検しているのか」がはっきりしないことが多い部位です。テナントが付けた看板、以前の所有者が増設した設備、ホテルの改装で使わなくなった排気筒などは、図面や管理台帳にも載っていないことがあります。

築年数が古い建物ほど、優先度を上げる

今回の調査で、2007年6月20日より前に設置された煙突の損傷・劣化率が44%、それ以後は11%だったことは、建物でも参考になります。2007年の建築基準法改正(構造計算の厳格化)の前後で設計の基準が変わったことに加え、単純に年数がたつほど劣化が進むという当たり前の事実が数字に表れています。

築20年を超えたマンションやビルでは、外壁や屋上の工作物について「前回はいつ、誰が、どの方法で点検したか」を一度確認しておくことをおすすめします。


国が示した応急補修は、マンション外壁の補修と同じ考え方

国交省が公表した「応急的な補修方法」を読むと、マンションの大規模修繕で日常的に行っている外壁補修と、考え方がほぼ共通していることが分かります(出典:国土交通省「(参考)応急的な補修方法」)。

国が示した煙突の応急補修 マンション・ビルの大規模修繕での対応
ひび割れ幅約0.3mm以下:V字・U字の溝を掘り、低粘度エポキシ樹脂などを充填 ひび割れ補修(Uカットシール材充填、エポキシ樹脂注入)
ひび割れが多い場合:樹脂充填のうえ、耐食処理した補強バンドで締め付け ひび割れが多い面は、補修範囲を広げ、仕上げで面全体を保護
鉄筋のかぶり厚さを増す・発錆や中性化を抑える:耐酸性・耐熱性のモルタルを塗る 鉄筋露出(爆裂)部の防錆処理と断面修復、表面保護
損傷の程度により、下地用金網や鉄筋の追加 浮きの大きいタイル・モルタルのアンカーピンニング、張替え
頂部の腐食が著しい場合は切除し、ステンレス鋼の煙突を設置 劣化の著しい部位の撤去・更新(笠木、手すり、設備架台など)

このように、コンクリートのひび割れ・鉄筋の錆・中性化への対処という基本は、煙突でもマンションでも同じです。違いは「高さ」と「近づきにくさ」です。だからこそ、どうやって高所に近づいて点検・補修するかが、費用と工期を大きく左右します。


高所の点検・補修をどう進めるか:足場・ドローン・ロープアクセスの比べ方

高所の外壁や工作物を点検・補修する方法には、大きく分けて3つあります。それぞれに向き・不向きがあり、どれか1つが常にすぐれているわけではありません。

方法 向いているケース 長所 注意点
仮設足場 外壁全面の補修・塗装を同時に行う大規模修繕 作業性が高く、全面を一度に施工できる 仮設費が高く、設置・解体に時間がかかる。居住者の生活への影響が大きい
ドローン赤外線調査 外壁タイルの浮きの面的な把握 短時間で広い面を調査できる 打診と同等以上の精度が条件。天候・日射・周辺環境に左右される。補修はできない
ロープアクセス工法 部分的な打診・補修、塔屋・煙突・高架水槽など足場をかけにくい部位 足場が不要で、短期間・低コストで高所に近づきやすい。点検と補修を同時に行える 全面の塗り替えなど作業量が多い工事は、足場やハイブリッドが合理的な場合もある

ロープアクセス工法は、作業員がメインロープとバックアップロープの2本に接続し、2点以上の吊元を確保する二重の安全対策を基本とする高所作業の方法です。海外では、洋上プラントや橋梁、煙突などの高所構造物の点検にも広く使われています。ロープアクセスの安全基準や事例は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。

明誠の工法の詳しい内容は「明誠のロープアクセス工法」をご覧ください。

費用の目安

費用感がつかめないと計画が立てにくいので、明誠の参考値をお示しします(いずれも目安です。建物の状態・仕様・規模・立地で大きく変わります)。

項目 目安
外壁の打診調査 1㎡あたり250〜500円程度
外壁塗装 1㎡あたり3,500〜4,500円程度
防水(屋上・バルコニー等) 1㎡あたり5,000〜8,000円程度
足場とロープアクセスの仮設費の比較(試算例) 10階建て・外周80m・工期3か月の外壁補修で、足場約168万円に対しロープアクセス約59万円(差額約109万円)

たとえば「外壁の全面打診は12条点検のために必要だが、補修は数か所しかない」という場合、全面に足場を組むと調査のための仮設費が大きくなります。こうしたケースでは、ロープアクセスで打診と部分補修を一度に済ませ、全面的な補修は次の大規模修繕のタイミングで足場を使う、という組み合わせ(ハイブリッド工法)も選択肢になります。料金の考え方は「大規模修繕の料金の考え方」にまとめています。


管理組合・オーナーが今月から確認したい7項目

ここまでの内容を、管理組合の理事会やオーナーさまがすぐに使えるチェックリストにまとめました。

  1. 自分の建物が定期報告(12条点検)の対象かどうかを確認する。対象であれば、前回の報告日と、次の外壁全面打診等の時期(竣工・外壁改修からおおむね10年)を把握する
  2. 屋上・塔屋・高所にある工作物を洗い出す。高架水槽、看板・広告塔、アンテナ架台、排気筒・煙突、避雷針、手すりなどを図面と現地で照合する
  3. それぞれの部位について、「誰が設置し、誰が点検しているか」を一覧にする。テナントや広告主、設備会社の設置物も含める
  4. 前回の点検日・方法・結果を記録で確認する。「点検したはず」ではなく、報告書や写真が残っているかを見る
  5. 劣化が見つかった部位について、補修の予定と予算が長期修繕計画に入っているかを確認する。今回の調査でも、損傷・劣化が見つかった180本のうち60本は「対策予定なし」でした
  6. 築20年以上の建物は、次の大規模修繕を待たずに高所の部分点検を検討する。足場を組まない方法(ロープアクセスやドローン)で、点検だけを先に行うこともできる
  7. 地震や台風の後に臨時点検を行う手順を決めておく。誰が、どこを、どの順番で見るかを決めておくだけで、初動が変わる

管理組合の場合は、この7項目を理事会の議題にし、管理会社と分担して確認すると進めやすくなります。管理組合向けの進め方は「管理組合さま向けのご案内」、ビル・ホテルのオーナーさま向けは「ビルオーナーさま向けのご案内」「ホテルさま向けのご案内」もあわせてご覧ください。


ホテル・ビルのオーナーに伝えたいこと:営業しながら高所を点検する

ホテルやテナントビルでは、外壁や屋上の点検のために足場を組むと、客室の眺望や採光、テナントの看板や出入りに影響が出ます。そのため「次の改装まで先送り」になりやすいのが現実です。

ですが、今回の煙突調査のように、問題が表に出るのは地震や強風といった「いざというとき」です。ホテルは宿泊客、ビルはテナントと来訪者という、多くの第三者を抱えています。

ロープアクセス工法なら、足場を組まずに外壁の打診や部分補修、屋上設備の点検を行えるため、営業を続けながら短期間で作業を進めやすくなります。明誠では、ホテルの大規模修繕を全国で手がけており、客室の稼働への影響を抑える工程の組み方を、現地調査のうえでご提案しています。


明誠の考え方:3つの工法から、建物ごとに最適な方法を選ぶ

株式会社明誠は、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕に携わってきました。ロープアクセス工法での高所作業では、明誠と全国のフランチャイズ加盟企業で、過去16年間、墜落による労働災害ゼロを続けています(2026年10月時点・明誠調べ)。作業員には、IRATA(国際産業ロープアクセス協会)の基準に準じた技能訓練を実施しています。安全管理の考え方は「明誠の安全管理」にまとめています。

明誠の特徴は、通常の足場工法、ロープアクセス工法(無足場工法)、両者を部位ごとに組み合わせるハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な方法をご提案できることです。工法の選択肢が限られると提案も限られがちですが、建物の高さ、形状、劣化の範囲、居住者や利用者への影響によって、最適な方法は変わります。

また、明誠は日本初のロープアクセス工事のフランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職と連携しています。外壁の補修と看板・電気設備の点検を一度に済ませるといった、分野をまたぐ対応もしやすい体制です。ロープアクセスの技術情報やフランチャイズの取り組みについては、ロープアクセスドットコムでも発信しています。

明誠のこれまでの施工の様子は「明誠の施工事例」からご覧いただけます。


よくあるご質問

Q. 今回の煙突の調査は、マンションにも関係がありますか?

A. 調査の対象は工場などにある高さ60m超の鉄筋コンクリート造の煙突で、マンションは直接の対象ではありません。ただ、「高所にあり、法定の報告義務がない部位は点検が所有者任せになりやすい」という教訓は、マンションの屋上設備や外壁にも当てはまります。

Q. 分譲マンションも12条点検(定期報告)の対象ですか?

A. 共同住宅が定期報告の対象になるかどうかは、特定行政庁(都道府県や市)ごとの指定によって異なります。管理会社か、所在地の自治体の建築指導担当課に確認してください。対象外の場合でも、外壁タイルなどは自主的に点検しておくことが、事故の予防と資産価値の維持につながります。

Q. 外壁の全面打診は何年ごとに必要ですか?

A. 定期報告の対象となる建物では、平成20年国土交通省告示第282号により、おおむね10年に一度、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等を行うこととされています(出典:国土交通省)。起算点の扱いなどは特定行政庁によって異なる場合があります。

Q. 全面打診の代わりにドローン調査でもよいですか?

A. 令和4年1月の告示改正で、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を持つ無人航空機による赤外線調査も認められました。ただし、天候や日射、周辺の建物の影響を受けるため、建物条件によっては打診との併用が必要です。

Q. 屋上の看板や高架水槽の点検費用はどれくらいですか?

A. 部位の数や高さ、劣化の状態で大きく変わるため、一律の金額は示しにくいのが実情です。外壁の打診調査であれば1㎡あたり250〜500円程度が目安で(明誠の参考値)、屋上設備は外壁の点検とあわせて行うと効率的です。現地を確認したうえで、無料で概算をお出ししています。

Q. ロープアクセス工法は安全ですか?

A. ロープアクセス工法では、作業員がメインロープとバックアップロープの2本に接続し、2点以上の吊元を確保する二重の安全対策をとるのが業界の基本です。明誠と全国のフランチャイズ加盟企業では、過去16年間、墜落による労働災害ゼロを続けています(2026年10月時点・明誠調べ)。

Q. 足場とロープアクセス、どちらを選べばよいですか?

A. 外壁全面の塗り替えなど作業量が多い工事は足場、部分的な打診や補修、塔屋や煙突など足場をかけにくい部位はロープアクセスが向いていることが多いです。両方を部位ごとに組み合わせるハイブリッド工法もあります。建物ごとに比較したうえでご提案します。


この記事のポイントまとめ

  • 国交省は2026年10月23日、高さ60m超のRC造煙突444本中180本(約4割)に損傷・劣化と公表
  • 2007年6月20日より前の煙突は44%、以後は11%と、古いものほど損傷・劣化の割合が高い
  • 関東1都6県では114本中30本に損傷・劣化(国交省別紙1をもとに集計)
  • 煙突・広告塔・高架水槽などの工作物は行政への定期報告の対象外で、点検は所有者任せになりやすかった
  • マンション・ビル・ホテルでも、屋上工作物や高層部外壁に「点検の空白」がないか確認したい
  • 国が示した応急補修はひび割れ充填や断面修復など、外壁補修と同じ考え方
  • 高所の点検は、足場・ドローン・ロープアクセスを部位ごとに使い分けると費用と工期を抑えやすい

出典・参考資料

※制度の内容や運用は変更される場合があります。最新の情報は国土交通省や所在地の特定行政庁の公式ページでご確認ください。


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

高い場所にあるものほど、普段は誰の目にも入りません。だからこそ、大規模修繕や外壁調査という節目に、屋上や高層部まで含めて「建物の点検の空白」を一緒に確かめていただければと思います。自分の建物が定期報告の対象かどうか分からない、屋上設備の点検をどこに頼めばよいか分からない、といったご相談だけでも、お問い合わせフォームからお気軽にお声がけください。次回も、現場で本当に使える話をお届けします。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年10月27日


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