本間社長ブログ
建設業の時間外労働上限規制から2年半、職人不足はどこまで深刻か|国交省・厚労省の最新データで整理。首都圏のマンション・ビル・ホテルが大規模修繕の発注タイミングで確かめたい7項目【2026年11月】
目次

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著作者プロフィール
株式会社明誠 代表取締役
本間 幸紘
大規模修繕・外壁工事・ロープアクセス工事に関する情報を、現場経験をもとに分かりやすくお届けします。
この記事で分かること
「来年の大規模修繕、見積りを3社から取ったのですが、どこも『工期を長めに見てください』と言われます。何が起きているのでしょうか」ーー東京都や神奈川県、埼玉県の管理組合の理事長さま、ビルオーナーさまから、ここ半年で本当に増えたご質問です。
2026年11月、建設業に時間外労働の上限規制が適用されてからちょうど2年半が経ちました。国土交通省・厚生労働省が公表する建設技能者数、有効求人倍率、建設工事費デフレーターなどの一次情報を読むと、職人不足と工期の長期化は、現場の実感どおり明確に数字へ表れています(出典:国土交通省 建設業を巡る最近の状況)。
この記事が答える質問は、次の1つです。「首都圏のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕は、職人不足の時代にどのタイミングで、どう発注すればよいか」。
結論から申し上げます。
- 建設技能者は、2000年の約432万人から2024年には約302万人まで約3割減りました。高齢化も進み、60歳以上が約4分の1を占めます。
- 時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間、特別条項でも年720時間)が2024年4月から建設業にも適用され、一人あたりの稼働時間が制度上も縮小しました。
- 結果として、首都圏の大規模修繕では、発注から着工までの待機期間が以前より長くなる傾向が実務でも見られます。早めに劣化診断・長期修繕計画の見直しに着手することが、資産価値を守る最大の防衛策です。
この記事では、国土交通省・厚生労働省・総務省の一次情報をもとに、職人不足の実像、工期・費用への影響、首都圏の管理組合・オーナーが発注タイミングで確かめたい7項目をお伝えします。
最終更新:2026年11月1日
結論:職人不足は構造的、発注は「早く・分けて・比べる」
まず、読者の方からいただきそうな問いに、短くお答えします。
| よくある問い | 答え(要点) | 根拠 |
|---|---|---|
| 職人は本当に足りていないのか | 建設技能者は2000年比で約3割減。60歳以上が約4分の1、29歳以下は約12%にとどまる | 総務省「労働力調査」/国土交通省資料 |
| 時間外労働の上限規制で何が変わった | 2024年4月から建設業も原則月45時間・年360時間、特別条項でも年720時間が上限 | 厚生労働省「建設業・改正労働基準法について」 |
| 大規模修繕の工期は延びているか | 全国で工期長期化の傾向。首都圏の中規模マンションで、従来4〜5か月の工事が5〜6か月へ延びる事例が増えています(当社実務) | 当社の実務経験・業界統計 |
| 工事費はどこまで上がっているか | 建設工事費デフレーターは2015年度を100として、2024年度時点で約125前後まで上昇 | 国土交通省「建設工事費デフレーター」 |
| 修繕積立金は見直すべきか | 長期修繕計画の工事費想定を最新の単価で引き直すのが基本。令和6年6月の国交省ガイドライン改定で、積立金の月額目安も引き上げられました | 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」 |
私はいつも理事長さまに、「“いつかやる”ではなく、”いつ・どの範囲で”を決めてから業者を探してください」とお伝えしています。順番を守れば、相見積りの精度も、工期の読みも大きく変わります。
建設業の2024年問題:何が起きたのか
時間外労働の上限規制が、建設業にも適用された
2019年4月に施行された改正労働基準法で、時間外労働の上限規制が導入されました。製造業・サービス業などは2019年4月(大企業)・2020年4月(中小企業)から適用されましたが、建設業は5年間の猶予を経て、2024年4月1日から適用されています(出典:厚生労働省 建設業・改正労働基準法について)。
上限の中身は次のとおりです。
| 区分 | 上限(原則) | 上限(特別条項・臨時的な特別の事情) |
|---|---|---|
| 1か月 | 時間外45時間 | 時間外・休日労働の合計で100時間未満 |
| 1年 | 時間外360時間 | 時間外720時間以内 |
| 2〜6か月平均 | ーー | 時間外・休日労働の合計で月平均80時間以内 |
違反には罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されます。現場の職長・施工管理者も含めて、原則すべての労働者が対象です。
同時に進む「担い手の減少と高齢化」
国土交通省の資料によれば、建設業の技能者数は次のように推移しています(出典:国土交通省 建設業を巡る最近の状況)。
- 1997年のピーク時:約455万人
- 2000年:約432万人
- 2010年:約331万人
- 2024年:約302万人
24年で約130万人、約3割減です。年齢構成を見ると、60歳以上が約25.7%、29歳以下は約11.7%(2024年、総務省「労働力調査」)。一般的な産業平均(29歳以下 約16.5%、60歳以上 約18.9%)と比べて、担い手の高齢化は明らかです。
結果として:一人あたりの稼働時間が制度上も縮小
数が減り、しかも一人あたりの残業時間にも上限ができた。つまり業界全体で動かせる「のべ労働時間」が減ったのが、2024年以降の建設業の姿です。首都圏のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕市場は、新築需要・インフラ再整備・再開発と同じ職人プールを取り合う構造なので、繁忙期の人繰りは年々シビアになっています。
大規模修繕への影響:工期・費用・発注タイミング
工期は確実に長くなっています
当社の実務でも、2024年以前なら4〜5か月で終わっていた首都圏の中規模マンション(50〜80戸、通常足場工法)の大規模修繕が、2025年以降は5〜6か月を見込む案件が増えています。原因は複合的です。
- 1日に動かせる職人の数が、繁忙期に足りない
- 若手の育成期間を確保するため、1班あたりの熟練工比率を上げられない
- 雨天中止の順延を取り戻す余裕が少ない
工期が1か月延びると、仮設費(足場・養生)がそのまま積み上がります。足場リース費は地域差がありますが、首都圏の中規模マンションで1か月あたり50万〜150万円ほどの影響になるケースがあります。
費用はどこまで上がっているか
国土交通省「建設工事費デフレーター」(2015年度=100)で見ると、建築(RC造・集合住宅)は次のように推移しています(出典:国土交通省 建設工事費デフレーター)。
| 年度 | 建築(RC造・集合住宅)のデフレーター |
|---|---|
| 2015年度 | 100.0 |
| 2020年度 | 約109 |
| 2022年度 | 約120 |
| 2024年度 | 約125前後 |
10年前と比べて約25%上がっています。大規模修繕(外壁・屋上・鉄部)も、塗料・シーリング材・防水材・足場資材の価格改定が2022年以降断続的に続いているため、ほぼ同水準の上昇基調です。
修繕積立金のガイドラインも引き上げへ
国土交通省は令和6年6月、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を改定し、新築時点での月額目安を実態に即した水準へ見直しました(出典:国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドライン)。管理組合は、長期修繕計画の工事費想定を最新の単価で引き直し、積立金不足が見込まれる場合は値上げや一時金の検討を早めに始めることが重要です。
首都圏のマンション・ビル・ホテルが発注タイミングで確かめたい7項目
1. 劣化診断は「次の大規模修繕の2年前」までに
職人不足で見積り取得〜着工までのリードタイムが延びています。次の大規模修繕の2年前までに劣化診断(建築士または専門業者による)を終え、修繕範囲を確定しておきましょう。首都圏の管理組合では、総会での合意形成にも半年〜1年かかります。
2. 相見積りは「同じ仕様書」で3社以上
同じ仕様書を各社に渡し、工法・数量・単価の内訳を比較できる形で取ります。足場工法のみで競わせず、ロープアクセス工法・ハイブリッド工法も含めて提案させると、仮設費の差が可視化されます(当社ロープアクセス事業ページ参照)。
3. 工期は「雨天・資材納期・是正工事」の余裕を含めて確認
職人不足の時代は、工期の内訳が重要です。見積書に雨天予備日・資材納期・是正工事期間が明記されているかを確かめます。繁忙期(春・秋)は着工が3〜6か月先になる覚悟で発注計画を立てます。
4. 仮設工法を部位ごとに比較する
高層マンションや足場架設が難しい物件では、ロープアクセス工法が有効です。ロープアクセスはメインロープとバックアップロープの2本に接続し、2点以上の吊元を確保するIRATA基準(国際産業ロープアクセス協会)に沿った二重冗長化が標準です。「ロープ1本で降りる」「シングルロープ」といった表現は誤りで、メインロープが損傷してもバックアップロープが作業員を保持する仕様です。足場組立・解体の人工(にんく)を削減できるため、人手不足時代と相性のよい工法です。
5. 石綿事前調査の報告漏れに注意
請負金額100万円以上(税込)の改修工事では、石綿事前調査結果の報告が工事開始前に必要です(出典:環境省 石綿事前調査結果の報告について)。報告は電子届出が原則で、違反すると発注者・元請の双方にリスクがあります。見積り時点で業者にスケジュールを確認します。
6. 修繕積立金の再試算を同時に進める
工事費の最新単価で長期修繕計画を引き直し、12年・24年・36年の大規模修繕総額を再計算します。不足が見込まれる場合、総会に向けた段階的値上げ案を早めに準備しましょう。駆け込みの大幅値上げは合意が取りにくくなります。
7. 補助金・認定制度を確認する
東京都の「東京都マンション管理計画認定制度」、国土交通省「マンション長寿命化促進税制」など、制度を活用できる物件は積立金負担を軽減できます(出典:国土交通省 マンション長寿命化促進税制)。当社の管理計画認定制度の解説記事(本間社長ブログ内)もあわせてご覧ください。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 2027年以降、工期と費用はもっと悪くなりますか
労働人口の減少・ベテラン職人の退職は構造的で、短期的に改善する材料は少ないのが実情です。一方で、省力化工法(ロープアクセス、プレキャスト部材、ドローン診断)が普及すれば緩和は期待できます。発注側としては、早め発注・仕様の標準化・支払条件の明確化で、優良業者を押さえる競争に勝つ発想が有効です。
Q2. 小規模マンション(50戸未満)でも職人不足の影響はありますか
むしろ小規模ほど影響を受けます。業者は同じ工期なら戸数の多い物件を優先しやすいためです。小規模物件ほど仕様書の明確化・早期発注・ロープアクセス等の省力化工法の活用が重要になります。
Q3. ビル・ホテルの修繕も影響を受けますか
受けます。ホテルは稼働中の施工になるため、工期短縮が収益に直結します。ロープアクセスとハイブリッド工法の組み合わせは、客室稼働を維持しながら外装改修を進める上で有効な選択肢です。
Q4. 当社に相談する場合、どこから始めますか
建物の現況写真と長期修繕計画の該当ページをお問い合わせフォームからお送りください。劣化診断の必要性・時期・概算予算の目安を無料でお答えします。
この記事のポイントまとめ
- 建設業に時間外労働上限規制が適用されて2年半。原則月45時間・年360時間、特別条項でも年720時間が上限
- 建設技能者は2000年比で約3割減。60歳以上が約25.7%、29歳以下は約11.7%
- 首都圏の中規模マンション大規模修繕で、工期が5〜6か月に延びる事例が増加
- 建設工事費デフレーター(RC造集合住宅)は2015年度比で約25%上昇
- 国交省は令和6年6月に修繕積立金ガイドラインを改定、月額目安を引き上げ
- 次の大規模修繕の2年前までに劣化診断・長期修繕計画の見直しを完了させる
- ロープアクセス工法はメインロープ+バックアップロープの2本、2点以上の吊元を確保する国際標準
出典・参考資料
- 国土交通省「建設業を巡る最近の状況」
- 厚生労働省「建設業・改正労働基準法について」
- 国土交通省「建設工事費デフレーター」
- 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制」
- 総務省「労働力調査」
- 環境省「石綿事前調査結果の報告について」
※本記事は、国土交通省・厚生労働省・総務省・環境省の公表資料に基づいています。工期・費用は一般的な目安・参考値であり、実際は建物の状況・発注時期により異なります。個別の判断は、建築士・施工業者と相談の上で行ってください。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
職人不足のニュースが出るたびに、「うちのマンションは大丈夫だろうか」と不安になるお気持ちは、私もよく分かります。ただ、個々の管理組合・オーナーができることは、早めに動くことと、工法の選択肢を広げることです。劣化診断・長期修繕計画の見直し・ロープアクセスを含む仮設工法の比較ーーこの3つを、今の時代の標準装備にしてください。外壁や屋上のご相談だけでも、お問い合わせフォームからお声がけください。現場で20年見てきた者として、できる限り分かりやすくお答えします。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年11月1日
関連記事(姉妹サイト)
ロープアクセス工法の詳細や実例については、姉妹サイト「ロープアクセスドットコム」の以下の記事もぜひご覧ください。
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