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遮熱塗料は大規模修繕で選ぶべき?|建築塗料の出荷が減るなか「遮熱」に活路。首都圏のマンション・ビル・ホテルが屋上・外壁で確かめたい7項目と、千代田区の令和8年度助成【2026年10月】

遮熱塗料は大規模修繕で選ぶべき?|建築塗料の出荷が減るなか「遮熱」に活路。首都圏のマンション・ビル・ホテルが屋上・外壁で確かめたい7項目と、千代田区の令和8年度助成【2026年10月】
本間 幸紘

著作者プロフィール

株式会社明誠 代表取締役

本間 幸紘

大規模修繕・外壁工事・ロープアクセス工事に関する情報を、現場経験をもとに分かりやすくお届けします。

この記事で分かること

「遮熱塗料は、マンションやビルの大規模修繕で本当に選ぶ価値があるのか?」——この記事は、この問いに答えるために書きました。

2026年10月、中日新聞の経済ニュースサイト「中日BIZナビ」が、建築塗料の市場が縮むなかで「遮熱塗料」が注目されていると報じました(出典:中日BIZナビ「『工場は暑い』を塗り替える 建築塗料、遮熱に活路」)。記事では、塗料の出荷量が過去10年で3割ほど減ったこと、夏の暑さ対策として遮熱塗料に期待が集まっていることが紹介されています。

工場の話に見えますが、東京・神奈川・埼玉・千葉など首都圏のマンション・ビル・ホテルにとっても、他人事ではありません。屋上防水や外壁塗装は、大規模修繕のたびに「どの塗料を選ぶか」を決める場面だからです。

結論から申し上げます。遮熱塗料は「夏の屋上・最上階の暑さ」には効果が期待できる一方、「冬の暖房費」や「外壁の全面」に同じ効果を期待するのは慎重であるべきです。私はいつも理事長さまやオーナーさまに、「どこに・何色で・何を期待して塗るのか」を先に決めてください、とお伝えしています。

最終更新:2026年10月28日


ニュースの要点:建築塗料の出荷は減り、「遮熱」に活路を探す流れ

まず、数字で状況を確認しておきます。

日本塗料工業会が公表している塗料の生産・出荷統計(経済産業省の統計をもとに集計)を見ると、塗料全体の出荷数量はこの5年でゆるやかに減り続けています(出典:日本塗料工業会「塗料生産数量・出荷数量・出荷金額実績表」2026年8月17日公表。2025年は年報値)。

暦年 出荷数量(トン) 前年比 出荷金額(百万円) 1kgあたり平均(参考・筆者計算)
2021年 1,607,617 102.7% 653,455 約406円
2022年 1,552,698 96.6% 697,365 約449円
2023年 1,526,418 98.3% 738,112 約484円
2024年 1,472,495 96.5% 730,413 約496円
2025年 1,439,540 97.8% 741,422 約515円

※出荷金額÷出荷数量で筆者が概算した参考値です。塗料の種類構成(建築用・自動車用・工業用など)が年ごとに違うため、個別の塗料の値上がり率を示すものではありません。

この表から読み取れることは、大きく2つです。

  1. 出荷数量は2021年から2025年の4年間で約10%減った(1,607,617トン→1,439,540トン)
  2. 一方で出荷金額は約14%増えた(6,534億円→7,418億円)。量は減っても、金額ベースでは市場が縮んでいない

私の現場感覚とも一致します。ここ数年、塗料メーカーからの値上げ通知は毎年のように届き、同じ面積を塗っても材料費は確実に上がっています。そのなかで塗料業界は、「同じ量を売る」から「機能で選ばれる塗料を売る」へと軸足を移しつつあります。遮熱塗料は、その代表格です。

首都圏の発注者にとって何が変わるのか

発注者の側から見ると、次の2点が実務に効いてきます。

  • 見積書で「遮熱」「高日射反射率」と書かれた塗料を提案される機会が増える
  • 一般塗料との価格差が、以前より「数字で比べにくい」状態になる

だからこそ、言葉の印象で選ぶのではなく、性能の表示と、建物のどこに効くのかを理解しておくことが大切になります。次の章からは、その見方を具体的に整理します。


結論:遮熱塗料は「部位・色・期待する効果」の3点で判断する

先に、この記事の結論を表にまとめます。

判断軸 遮熱塗料が向いているケース 慎重に考えたいケース
部位 屋上(陸屋根)・金属屋根・最上階の真上 北面の外壁、日陰の多い低層部
色 白・ライトグレーなど明るい色を選べる 景観上、濃い色を選ばざるを得ない
期待する効果 夏の最上階の室温上昇、屋上の表面温度、空調負荷の軽減 冬の暖房費の削減、結露対策
建物用途 最上階に住戸や客室があるマンション・ホテル、屋上直下に事務所があるビル 屋上直下が機械室・倉庫のみ

ポイントは、遮熱塗料は「日射(太陽の熱)を反射する塗料」であり、熱を通しにくくする「断熱材」ではないということです。ここを取り違えると、「思ったほど効かなかった」という不満につながります。


遮熱塗料の仕組みと「★」の見方

遮熱塗料は赤外線を反射して、表面温度の上昇を抑える

日本塗料工業会のリーフレットでは、遮熱塗料を「太陽光に含まれる赤外線を多く反射し、屋根の温度上昇、ひいては室内の温度上昇を抑える塗料」と説明しています。真夏の屋根の表面温度は、遮熱塗料で最大20℃以上低下する例があるとされています(出典:日本塗料工業会「遮熱塗料」リーフレット2025)。

同じリーフレットでは、遮熱塗料の性能を「日射侵入比」という数値と★の数で選べるようにしています。日射侵入比は、室内に入ってくる熱の割合を表す数値で、黒い一般塗料ではほぼ1.0(ほとんどの熱が入る)です。

遮熱性能の表示 日射侵入比 侵入熱の削減率 色合いの目安
★ 0.8〜0.6 20〜40% 濃い色
★★ 0.6〜0.4 40〜60% 中間色
★★★ 0.4以下 60%以上 明るい色

出典:日本塗料工業会「遮熱塗料」リーフレット2025

この表から分かる大事なことは、同じ「遮熱塗料」でも、色によって効果が大きく変わるという点です。表の目安でいえば、濃い色は★1つの区分、白に近い明るい色ほど★3つの区分に入りやすくなります。

品質の目安は「JIS K 5675」と「日本塗料工業会の登録品」

もう1つの目安が、JIS(日本産業規格)です。JIS K 5675「屋根用高日射反射率塗料」では、日射反射率や耐久性などの品質が規定されています。また、日射侵入比の測定方法はJIS K 5603で決められています(出典:同リーフレット)。

なお、日本塗料工業会の★の登録制度とJIS K 5675は、いずれも屋根用の塗料を対象にしたものです(出典:日本塗料工業会「遮熱塗料(屋根用)自主管理要領」)。外壁用の遮熱塗料は★の登録の対象外のため、外壁ではメーカーの技術資料や第三者機関の日射反射率の測定値で確認することになります。

見積書に「遮熱塗料」とだけ書かれている場合は、次の3点を施工会社に確認してください。

  1. 製品名と、屋根用であれば日本塗料工業会の遮熱性能の登録品かどうか(★の数)
  2. 使用する色での日射反射率(カタログ値か、第三者機関の測定値か)
  3. 期待耐用年数と、汚れによる性能低下をどう見込んでいるか

特に3つ目は見落とされがちです。遮熱塗料は表面が汚れると反射性能が落ちます。都心のビル屋上は排気や粉じんで汚れやすいため、「塗った直後の数値」だけで判断しないことが大切です。


マンション・ビル・ホテル別:遮熱塗料が効く部位、効きにくい部位

マンション:最上階住戸の「夏の暑さ」への対策として検討する

分譲マンションでは、最上階の住戸から「夏は2階より明らかに暑い」という声が上がることがあります。屋上のコンクリートスラブが日中に熱をため込み、夜になっても室内に熱を放つためです。

大規模修繕で屋上防水を改修するとき、仕上げのトップコート(防水層を紫外線から守る保護塗装)を遮熱タイプにする選択肢があります。防水工事の工程を大きく変えずに追加できるのが利点です。

一方で、外壁全面を遮熱塗料にするかどうかは、慎重に考えたいところです。外壁は屋根ほど日射を受けない面が多く、色の制約も大きいためです。南面・西面の最上階付近に限定するなど、部位を絞る考え方もあります。

ビル:屋上直下のフロアの空調負荷と、テナントの満足度

事務所ビルやテナントビルでは、最上階のテナントの空調負荷が課題になることがあります。屋上に遮熱塗装を施すことで、夏場の空調負荷の軽減が期待できます。

日本塗料工業会のリーフレットでは、茨城県つくば市の実験棟でエアコンの消費電力が一般塗料に比べて夏場に7%削減された事例が紹介されています(出典:日本塗料工業会リーフレット)。ただし、これは特定の条件での実験結果です。建物の断熱仕様や空調方式によって効果は変わるため、「7%下がる」と約束できるものではありません。

ビルオーナーさまの場合、光熱費の削減だけでなく、「最上階のテナントからの暑さに関するクレームが減る」「退去を防ぐ材料になる」といった効果も含めて判断するのが現実的です。ビルの修繕全体の考え方は、ビルオーナー向けの大規模修繕のページでもご紹介しています。

ホテル:最上階の客室と、営業しながらの施工

ホテルの場合、最上階に眺望の良い上位の客室を置いていることが多く、夏の室温や空調の効きは客室の評価に直結します。屋上の遮熱塗装は、客室を止めずに施工しやすい工事の1つです。

ただし、ホテルは「営業を止めない」ことが最優先です。屋上の作業音や塗料のにおい、外壁作業時の窓まわりの養生など、客室への影響を工程表に落とし込む必要があります。ホテルの改修については、ホテル向けの大規模修繕のページもご覧ください。


遮熱塗料の費用の目安と、本当に効いてくる「足場費」

塗料の差額は「工事全体」から見れば大きくないことが多い

発注者の方からよくいただく質問が、「遮熱塗料にすると、いくら高くなるのか」です。

正直に申し上げます。塗料そのものの差額は製品や数量によって幅があり、一律の数字は出せません。私の経験上、一般的なトップコートと遮熱タイプの差は、屋上の面積に対して材料費の一部が上乗せされる程度にとどまることが多く、工事全体の金額を大きく動かす要素ではありません。

むしろ、工事費を大きく左右するのは、次のような項目です。

費用項目 目安(参考値) 備考
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡ 下地補修・塗料グレードにより変動
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/㎡ 工法(ウレタン・シート等)により変動
外壁打診調査 250〜500円/㎡ 調査方法・範囲により変動
30戸規模マンションの大規模修繕 総額 3,500〜5,000万円 うち仮設足場が15〜25%程度を占めることが多い

※いずれも明誠が首都圏で見積りを作る際の参考値です。実際の金額は建物の規模・劣化状況・仕様により大きく変わります。正式な金額は現地調査のうえでお見積りします。

表の最後の行が大事です。大規模修繕では、仮設足場の費用が総額の15〜25%程度を占めることが多いのです。遮熱塗料の差額を議論する前に、「その塗装に、本当に建物全周の足場が必要か」を考えるほうが、修繕積立金への影響は大きくなります。

屋上だけなら足場が要らないこともある

屋上の防水トップコートを遮熱タイプにするだけなら、作業は屋上の上で完結するため、外周の足場は不要なことが多いです。一方、外壁の上部(最上階付近の南面・西面など)に遮熱塗装をしたい場合は、足場を組むか、無足場工法を検討することになります。

ここで選択肢になるのが、ロープアクセス工法です。ロープアクセス工法は、作業員がメインロープとバックアップロープの2本に接続し、2点以上の吊元を確保する二重の安全対策を基本とする高所作業の方法です。外壁の一部の面だけ、あるいは高層部だけを施工する場合に、足場の組み立て・解体の費用と期間を抑えやすくなります。ロープアクセスの技術や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。

明誠のロープアクセス工法については、ロープアクセス工法の特徴と施工の流れ、費用の考え方は大規模修繕の料金の考え方のページにまとめています。


千代田区で使える遮熱塗装の助成:令和8年度ヒートアイランド対策助成

遮熱塗装は、自治体の助成の対象になる場合があります。日本塗料工業会のリーフレットでも「地方自治体の助成金制度の対象になる場合がある」とされています。

首都圏の例として、千代田区の「令和8年度ヒートアイランド対策助成」を紹介します(出典:千代田区「令和8年度ヒートアイランド対策助成」、2026年4月28日更新)。

項目 内容(令和8年度)
対象工事 屋上・壁面への高反射率塗料・熱交換塗料の塗布 など
助成額 助成対象経費(税抜き)の50%、上限50万円(高反射率塗料・熱交換塗料)
塗料の基準 揮発性有機化合物の含有量が少なく、第三者機関による日射反射率(近赤外線領域)の測定値が50%以上
申請のタイミング 施工前に申請。工事予定日の1〜2か月前を目安に、事前予約のうえ窓口へ
申込期限 令和9年2月15日(月曜日)まで。先着順で、予算がなくなりしだい終了
完了報告期限 令和9年3月15日(月曜日)
管理組合の場合 所有者全員の承諾書(管理組合の場合は議決書の写しまたはこれに代わるもの)が必要

実務で気をつけたい3つのポイント

  1. 防水材は助成対象外になる点:千代田区の高反射率塗料の補足事項では、対象経費はトップコートとその下の下地塗料で、防水材やその下の下地は含まれないとされています。見積書もトップコートと防水材を分けて作る必要があります(出典:千代田区 高反射率塗料補足事項(PDF))。
  2. 第三者機関の性能証明書が必要な点:カタログだけでは足りず、製品の性能証明書(第三者機関発行)の提出が求められます。塗料を決める段階で、証明書が出る製品かを確認しておきましょう。
  3. 年度末に向けてスケジュールが詰まる点:申込期限は令和9年2月15日ですが、完了報告は令和9年3月15日までです。1月以降に申請する場合は、工事の完了が間に合うかを逆算する必要があります。

千代田区以外の区市町村でも、似た制度を設けているところがあります。ただし、内容や受付期間は年度ごとに変わります。検討の際は、所在地の自治体の令和8年度の公式ページで最新の内容を確認してください。


冬の暖房費にも効く?「遮熱」と「断熱」の違い

この時期によく聞かれるのが、「遮熱塗料で冬の暖房費も下がりますか」という質問です。灯油や電気代が上がるなか、気になるのは当然だと思います。

日本塗料工業会のリーフレットでは、先ほどのつくば市の実験棟について「冬場に差はなかったものの、寒くもなりません」と説明されています(出典:日本塗料工業会リーフレット)。つまり、遮熱塗料は夏の日射を減らす塗料であって、冬の暖房費を下げる目的で選ぶものではないと考えるのが妥当です。

また同じリーフレットは、太陽光の下では塗膜による断熱機能や放射機能の効果は小さく、日射反射機能が最も効果を発揮すると説明しています。「断熱塗料」と呼ばれる製品もありますが、一般的な建物の暖房費削減を目的とするなら、窓の改修や断熱材の追加といった別の手段を検討するほうが筋がよいでしょう。

目的 主な手段 遮熱塗料の位置づけ
夏の最上階の暑さ・冷房負荷 屋上の遮熱塗装、屋上緑化、窓の日射調整フィルム 有力な選択肢
冬の暖房費・寒さ 窓の断熱改修(内窓・複層ガラス)、断熱材の追加 主目的にはならない
屋上防水の長持ち 定期的なトップコートの塗り替え 表面温度の上昇を抑えることで、防水層への熱の負担を軽くする効果も期待される

最後の行は、私が現場で実感していることでもあります。真夏の屋上は、防水層の表面が素手で触れないほど熱くなります。熱による伸び縮みは、防水層やシーリング(目地のすき間を埋めるゴム状の材料)の劣化を早める要因の1つです。遮熱トップコートを「省エネのため」だけでなく「防水層を守るため」に選ぶという考え方もあります。


現場で見た「遮熱塗料の期待と現実」

ここで、私が現場でよく受けるご相談のパターンをお話しします。特定の1棟の話ではなく、これまでの経験をもとにした典型例です。

都内の中高層の賃貸マンションのオーナーさまから、「最上階の入居者さんから夏が暑いと言われる。外壁も屋上も全部遮熱塗料にしてほしい」というご相談をいただくことがあります。

現地を調べてみると、外壁の北面や東面の一部は隣のビルの影に入っていて、日射を強く受けるのは南面と西面の上部、そして屋上だけ、というケースが少なくありません。そうした場合、私は全面を遮熱塗料にするのではなく、

  • 屋上の防水改修のトップコートを遮熱タイプにする
  • 南面・西面の上部は、明るめの色で遮熱タイプの外壁塗料を使う
  • それ以外の面は、耐久性を優先した一般的な塗料にする

という組み合わせをご提案することが多いです。外壁の上部だけを施工するなら、足場ではなくロープアクセスで施工することで、仮設費を抑えられる場合があります。

もちろん、効果の感じ方は入居者さんの生活スタイルや、その年の気候にも左右されます。「これだけ涼しくなる」と数字でお約束できるものではありません。それでも私が多くの現場で感じてきたのは、「全部を遮熱にする」より「効く場所を見極めて使う」ほうが、費用対効果が高くなりやすいということでした。


大規模修繕で遮熱塗料を選ぶ前に確かめたい7項目

理事会やオーナーさまの検討の場で、そのまま使えるチェックリストにしました。

  1. 目的は何か:夏の最上階の暑さか、空調費か、防水層の保護か。目的を1つに絞って書き出す
  2. 効く部位はどこか:屋上・南面・西面など、日射を強く受ける場所を図面と写真で確認する
  3. 色の制約はあるか:景観・管理規約・テナントの意向で、明るい色を選べるかを確認する
  4. 性能の根拠は何か:屋根なら★の数(日射侵入比)とJIS K 5675への適合、外壁なら第三者機関の日射反射率の測定値の有無を確認する
  5. 汚れと耐久性をどう見込むか:期待耐用年数、汚れによる性能低下、次回の塗り替え時期を確認する
  6. 足場は本当に必要か:屋上だけなら外周足場が不要なことも。外壁の一部なら無足場工法も比較する
  7. 助成は使えるか:所在地の自治体の令和8年度の制度、申請のタイミング(施工前申請か)、必要書類を確認する

この7項目を見積りの前に整理しておくだけで、施工会社からの提案の質が変わります。「遮熱にしたほうがいいですか」と聞くより、「この目的で、この部位に、この予算で」と伝えるほうが、具体的な比較ができるからです。


見積書で遮熱塗料を提案されたら:比べ方と理事会での説明のしかた

「塗料の名前」ではなく「同じ条件」で並べて比べる

複数の施工会社から見積りを取ると、ある会社は一般塗料、別の会社は遮熱塗料で提案してくる、ということがよくあります。このまま総額だけを比べると、どちらが割安なのか判断できません。

私がおすすめしているのは、次のような比較表を理事会やオーナーさまの手元で作っていただくことです。

比較項目 A社(一般塗料) B社(遮熱塗料) 確認のポイント
施工する部位と面積 屋上〇㎡・外壁〇㎡ 屋上〇㎡・外壁〇㎡ 面積の拾い方がそろっているか
製品名・性能表示 ー 製品名・★〇(屋根)/日射反射率〇%(外壁) 登録品か、使う色での数値か
塗装の工程(下塗り・中塗り・上塗り) 〇回 〇回 回数と塗布量が同じか
期待耐用年数 〇年 〇年 根拠(メーカー資料など)があるか
仮設(足場・ロープアクセス等) 〇円 〇円 仮設の範囲と工法が同じか
助成の活用 なし 申請予定 施工前申請の段取りを誰が担うか

この表のなかで、意外と差が出るのが「仮設」の行です。同じ屋上の遮熱塗装でも、ある会社は外周足場を前提に、別の会社は屋上だけの作業で見積もっている、ということがあります。仮設の条件をそろえないと、塗料の比較そのものが意味を持たなくなります。

総会・理事会では「目的」と「やらない部分」を一緒に説明する

分譲マンションで遮熱塗料を採用する場合、最上階以外の区分所有者さまからは「自分の住戸には関係ないのに、なぜ費用を出すのか」という声が出ることがあります。

このとき大切なのは、次の2点をセットで説明することだと私は考えています。

  1. 共用部分の保全という目的:屋上の表面温度の上昇を抑えることは、防水層を熱の負担から守ることにもつながり、建物全体の資産価値の維持に関わる
  2. やらない部分を決めた理由:外壁全面ではなく、効果が期待できる部位に絞ったことで、追加の費用を抑えた

「全部を良くします」という説明より、「ここはやる、ここはやらない、その理由はこうです」という説明のほうが、区分所有者さまの納得感は高まりやすいものです。修繕積立金は皆さまから預かった大切なお金です。使い道を絞って説明できることも、管理組合の信頼につながります。


明誠の考え方:3工法から「塗る場所」と「塗り方」を決める

株式会社明誠は、通常の足場工法、ロープアクセス工法、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物ごとに最適な方法をご提案しています。

遮熱塗料の話でいえば、

  • 屋上は通常の工程で遮熱トップコートを施工
  • 日射の強い外壁上部はロープアクセスで部分施工
  • 全面の外壁改修が必要な時期なら、足場とロープアクセスを組み合わせる

といったように、「何を塗るか」と「どう塗るか」をセットで考えます。

明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業では、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業で過去16年間、墜落による労働災害ゼロを続けています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けており、品質管理はISO9001の考え方に沿って行っています。安全管理の取り組みは、明誠の安全管理のページでご紹介しています。

また、明誠は日本初のロープアクセス工事のフランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職と連携しています。屋上防水と外壁塗装、看板の点検をまとめて行うといった、分野をまたぐ対応もしやすい体制です。ロープアクセスの技術情報やフランチャイズの取り組みについては、ロープアクセスドットコムでも発信しています。

管理組合の皆さまには管理組合向けの大規模修繕のページを、これまでの実績は明誠の施工事例をご覧ください。


よくあるご質問

Q. 遮熱塗料と一般の塗料は、何が違うのですか?

A. 遮熱塗料は、太陽光に含まれる赤外線を多く反射して、塗った面の温度上昇を抑える塗料です。日本塗料工業会は、日射侵入比という数値と★の数(★〜★★★)で性能を比べられるようにしています(出典:日本塗料工業会)。

Q. マンションの外壁を全部遮熱塗料にしたほうがよいですか?

A. 一律にはおすすめしていません。遮熱塗料が効果を発揮しやすいのは、日射を強く受ける屋上や南面・西面の上部です。日陰の多い面や、濃い色を選ぶ必要がある面では効果が小さくなりやすいため、部位を絞って検討するのが現実的です。

Q. 遮熱塗料で冬の暖房費は下がりますか?

A. 主な目的にはならないと考えてください。日本塗料工業会のリーフレットでも、実験棟で冬場の差はなかったと紹介されています。冬の暖房費を下げたい場合は、窓の断熱改修など別の手段を検討するほうが効果的です。

Q. 遮熱塗装に使える助成金はありますか?

A. 自治体によってはあります。たとえば千代田区の「令和8年度ヒートアイランド対策助成」では、屋上・壁面の高反射率塗料が対象で、助成対象経費(税抜き)の50%、上限50万円です。施工前の申請が必要で、申込期限は令和9年2月15日です(出典:千代田区)。他の自治体は、所在地の公式ページで令和8年度の内容を確認してください。

Q. 屋上だけ遮熱塗装する場合も、足場は必要ですか?

A. 屋上の防水トップコートの塗り替えだけであれば、作業は屋上の上で完結するため、外周の足場は不要なことが多いです。外壁の上部も施工する場合は、足場のほか、ロープアクセスなどの無足場工法も比較の対象になります。

Q. 遮熱塗料の効果はどれくらい続きますか?

A. 製品や環境によって異なります。表面が汚れると反射性能は落ちるため、都心の排気や粉じんが多い場所では、期待耐用年数と次回の塗り替え時期を施工会社に確認しておくことをおすすめします。

Q. 遮熱塗料の相談だけでもできますか?

A. はい、可能です。明誠では、屋上・外壁の現地調査をしたうえで、遮熱塗料が効く部位かどうか、足場が必要かどうかを含めてご提案しています。お問い合わせフォームからご相談ください。


この記事のポイントまとめ

  • 塗料の出荷数量は2021年から2025年で約10%減った一方、出荷金額は約14%増えた(日本塗料工業会)
  • 遮熱塗料は赤外線を反射し、夏の屋根の表面温度の上昇を抑える塗料。断熱材とは役割が違う
  • 性能は日射侵入比と★の数で比べられ、明るい色ほど効果が出やすい
  • マンション・ビル・ホテルでは、屋上や南面・西面の上部など「効く場所」に絞る考え方が現実的
  • 大規模修繕では塗料の差額より、総額の15〜25%程度を占めることが多い足場費の検討が効いてくる
  • 千代田区の令和8年度助成は高反射率塗料で上限50万円。施工前申請で、防水材は対象外
  • 冬の暖房費の削減は遮熱塗料の主目的にはならない

出典・参考資料

※助成制度の内容や受付状況は変更される場合があります。最新の情報は各自治体の公式ページでご確認ください。本文中の費用は参考値であり、実際の金額は建物の状況により異なります。


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

塗料の名前に「遮熱」と付いているだけで、建物が涼しくなるわけではありません。これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない実感です。どこに、何色で、何を期待して塗るのか。そこを一緒に整理するところから始めれば、修繕積立金や修繕費を無駄にしない選び方ができます。屋上や最上階の暑さが気になっている、助成が使えるか知りたい、といったご相談だけでも、お問い合わせフォームからお気軽にお声がけください。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年10月28日


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