渋谷区のマンション漏水・防災対策|谷底の内水氾濫と11か所の土砂災害警戒区域から逆算する大規模修繕2026年度版

2026年9月18日 更新

渋谷区の桜丘で、築25年の賃貸マンションのオーナーさまから電話をいただいたことがあります。夕方の集中豪雨のあと、「地下の機械式駐車場のピットに水が溜まっている」と。現場に行くと、駐車場の入口スロープは乾いていました。水は外から流れ込んだのではなく、建物の排水管を逆流して、地下から湧き上がっていたのです。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。

渋谷区は、23区のなかでも「地形の高低差がそのまま水のリスクになる」区だと感じています。海に面していないので高潮も津波もない。そのかわり、渋谷川・宇田川が刻んだ深い谷と、その両側に迫る崖が、水の行き先をすべて決めています。

今日は、渋谷区が公表している最新のハザード資料から逆算して、渋谷区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。


結論:渋谷区は「高潮がない代わりに、谷底の内水と崖が主役の区」です

先に結論から申し上げます。渋谷区で大規模修繕の順番を決めるとき、私が最初に確認するのは屋上ではありません。自分の建物が台地の上にあるのか、谷底にあるのか、崖の際にあるのかです。

渋谷区は、高潮ハザードマップについて「作成予定なし」と明記しています。雨水出水(内水)単独のハザードマップも「未作成(作成時期未定)」です(出典:渋谷区「洪水ハザードマップ・浸水実績」/更新日 2026年4月30日)。湾岸区で最優先になる高潮・塩害対策は、渋谷区ではほぼ考えなくてよい。そのぶん、リスクが3つに絞り込めます。

立地 該当エリアの例 主なリスク 最優先の対策
渋谷川・宇田川の谷底 渋谷・道玄坂・桜丘町・渋谷駅周辺・東・広尾の低地 内水氾濫(下水道の能力超過) 地下階の逆流防止・排水ポンプ・受電設備の位置
神田川・玉川上水沿いの低地 本町・初台・幡ヶ谷・笹塚・西原の一部 神田川流域の外水+内水 開口部の止水・1階住戸の床下
台地の縁の崖(崖線・急傾斜地) 本町三丁目/西原一丁目・三丁目/元代々木町/代々木五丁目/神宮前六丁目/神山町/広尾五丁目/恵比寿四丁目 土砂災害・擁壁の劣化 擁壁改修・斜面側の排水と外壁

この3類型のどこに自分の建物が当たるかを、区のハザードマップで先に確定させる。それをやらずに「まず屋上防水から」と進めてしまうと、順番を1つ間違えるだけで数百万円が無駄になります。渋谷区の理事会でいつも最初にお伝えしているのは、この一点です。


渋谷区のハザードマップを1枚で読む

渋谷区が公表している資料は、種類ごとの「作成状況」が公式に整理されています。管理組合の書類棚を整理するときに、この表を1枚コピーして貼っておくだけで議論が早くなります。

種別 渋谷区の作成状況 作成基準 備考
洪水 作成済(日本語版は令和8年4月改訂版) 想定最大規模降雨 外水と内水の両方を加味
雨水出水(内水)単独 未作成 ー 作成時期未定
高潮 未作成 ー 作成予定なし
津波 該当なし(海に面していない) ー ー
土砂災害 作成済(令和元年9月26日の都指定を受けて作成) 土砂災害防止法 区内11か所が警戒区域

(出典:渋谷区「洪水ハザードマップ・浸水実績」、渋谷区「渋谷区土砂災害ハザードマップ」)

想定されている雨は「1時間153ミリ」

渋谷区の洪水ハザードマップが前提にしているのは、1時間最大雨量153ミリ、24時間総雨量690ミリという想定最大規模の降雨です。対象は「神田川流域」と「渋谷川流域」の2つ。水防法第14条に基づく外水氾濫に加えて、雨水出水(内水氾濫)も加味した図になっています。

1時間153ミリという数字は、正直に申し上げてピンと来ないと思います。東京の下水道が標準で想定しているのは1時間50ミリ前後です。つまり設計値の3倍の雨を想定した図だ、ということです。

令和8年3月に、内水の「法定図」が出ました

もう1つ、管理組合として押さえておきたい動きがあります。令和8年3月、東京都下水道局が水防法に基づく雨水出水浸水想定区域図を公表しました。渋谷区に関係するのは次の2つです。

渋谷区のハザードマップは、水防法上は「洪水ハザードマップ」としての要件は満たすが、「雨水出水ハザードマップ」としての要件は満たさない――区自身がそう注記しています。だから、内水(地面に降った雨が下水道からあふれる現象)のリスクを正確に見るなら、都の区域図を別に見に行く必要がある。ここは見落とされやすいところです。

私はいつも理事長さまに、「区のマップと都の区域図、2枚セットで見てください」とお伝えしています。

過去の浸水実績は地図情報システムで見られます

渋谷区は、過去に浸水実績があった箇所を渋谷区地図情報システムで公開しています。以前は区役所11階の窓口でしか見られませんでしたが、令和2年8月31日からインターネットで閲覧できるようになりました。

ハザードマップは「これから起きうること」、浸水実績は「実際に起きたこと」です。私の経験上、修繕の優先順位を決めるときに効くのは、圧倒的に後者です。自分の敷地の周囲200メートルに実績の印が打たれているかどうか。ここは必ず確認していただきたい。


渋谷区の地域特性と漏水事故の関係

谷底エリア:渋谷駅周辺・桜丘・道玄坂下・東

渋谷という地名のとおり、渋谷駅の一帯はすり鉢の底です。周囲の宮益坂・道玄坂・スペイン坂という「坂」の名前が、そのまま高低差を物語っています。

谷底のマンション・ビルで私が見てきた漏水は、外から入る水より、内から上がる水のほうが多い。具体的には次の3つです。

  1. 排水管の逆流:下水道本管の水位が上がると、建物側の排水が流れず、地下階の床排水口や地下ピットから逆流する
  2. 地下駐車場スロープからの流入:スロープの上端に段差がなく、道路の表面水がそのまま流れ込む
  3. 地下ピットへの湧水:地下水位が高いエリアで、コンクリートの打継ぎ部から少しずつ滲む

このうち1番目は、大規模修繕の対象と思われていないことが多い。ですが逆流防止弁(排水が逆向きに流れないようにする弁)の設置と点検は、防水工事より優先度が高い場合があります。

なお、渋谷駅東口の地下約25メートルには、約4,000立方メートルの雨水を一時的に貯められる「渋谷駅東口雨水貯留施設」が2020年8月31日から供用されています。1時間50ミリを超える強い雨のときに取水し、雨が止んでからポンプで古川幹線へ排水する仕組みです(出典:広報東京都「渋谷をまもる雨水貯留施設」)。

ただし、これはまちを守る施設であって、個別の建物を守る施設ではありません。「渋谷駅前に貯留施設ができたからうちは大丈夫」という理解は危険です。建物ごとの対策は、建物ごとにやるしかない。

神田川流域:本町・初台・幡ヶ谷・笹塚

区の北西部、神田川と旧玉川上水に沿ったエリアです。ここは渋谷川流域とは別の系統で、外水(川があふれる)と内水の両方が想定されています。

このエリアで多いのは、築30年以上の中規模マンションで、1階住戸の床下と玄関ポーチまわりの問題です。建物が道路より低い位置にあると、道路の表面水が敷地内に入り、雨水枡があふれる。排水設備の容量ではなく、地面のレベル差の問題であることが多い。

崖の際:本町三丁目、西原、元代々木町、代々木五丁目、神宮前六丁目、神山町、広尾五丁目、恵比寿四丁目

渋谷区では、令和元年9月26日に東京都が区内11か所を土砂災害警戒区域に指定し、そのうち9か所を土砂災害特別警戒区域に指定しました。令和5年6月21日には、うち1か所(元代々木町)が解除のうえ新たに指定されています(出典:渋谷区「土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域等の指定について」)。

所在地 警戒区域(イエロー) 特別警戒区域(レッド)
本町三丁目 あり あり
西原一丁目 あり あり
元代々木町(2か所) あり 1か所あり/1か所なし
西原三丁目 あり あり
代々木五丁目 あり あり
神宮前六丁目 あり あり
神山町 あり あり
広尾五丁目 あり あり
恵比寿四丁目(2か所) あり 1か所あり/1か所なし

神宮前六丁目や神山町、広尾五丁目といった、いわゆる「高級住宅地」「商業の一等地」の名前が並ぶのが渋谷区の特徴です。地価が高いエリアだから安全、ということはまったくない。

崖の際に建つマンションで私が見てきた漏水は、空から降る水ではなく、横から来る水です。冒頭の等々力の例と同じ構造で、建物の一方が地中に接していると、屋上防水をいくらやっても直りません。

擁壁(斜面を支えるコンクリートの壁)の水抜き穴が詰まっているのも定番です。水抜き穴は擁壁の背面の水圧を逃がすためのものですが、土砂や落ち葉で埋まると機能しない。大規模修繕の足場を組んだついでに、擁壁の水抜き穴の清掃を組み込むだけで、数十万円で効果が出ることがあります。


大規模修繕で必ずチェックすべき漏水ポイント7つ

ここからが本題です。渋谷区の物件で、私が調査のときに必ず見る7か所を順番に挙げます。優先度の高い順です。

1. 屋上防水の立上りと笠木

屋上の防水層そのものより、壁に立ち上がった部分の端部が先に切れます。特に笠木(パラペットの天端の金物)のジョイントは、シーリングが10年前後で硬化して隙間ができる。谷底エリアは風の巻き込みが強く、横殴りの雨が笠木の裏から入ります。

2. ドレン(排水口)まわり

屋上の排水口です。落ち葉とビニール袋で詰まっているケースが、渋谷区では本当に多い。街路樹の多い明治通り・青山通り沿い、それと神宮の森に近い神宮前・代々木エリアは特にです。

1時間50ミリを超える雨では、ドレンが1つ詰まっただけで屋上が数センチのプールになります。ドレンの清掃は年2回、台風期の前と落葉期の後。これは費用がほとんどかかりません。

3. バルコニー排水と手すり壁の付け根

バルコニーの床防水と、手すり壁(腰壁)の立上りの取り合い部分。ここは動きが大きく、ひび割れが入りやすい。下階の天井に染みが出る漏水の、かなりの割合がここです。

4. 外壁のシーリング(目地の弾性材)

タイル張りでも吹付けでも、コンクリートの打継ぎ目地には必ずシーリングが入っています。耐用年数の目安は10〜15年。硬くなってひび割れると、そこから雨水が壁の中に入り、内部の鉄筋を錆びさせます。

5. サッシまわり

窓枠とコンクリートの取り合い。築20年を過ぎたマンションで、原因不明の漏水があったら、私はまずここを疑います。外からは見えにくく、内装を剥がさないと確認できないことも多い箇所です。

6. エキスパンションジョイント

建物が複数棟に分かれていて、渡り廊下でつながっている場合の継ぎ目です。地震で動くことを前提に、あえて隙間を設けてカバーをかけてある。このカバーの下の防水が切れていても、外からはまず見えません。

7. 地下階・地下ピットの逆流防止と排水ポンプ

谷底エリアでは、これを7番目ではなく1番目に持ってくることもあります。逆流防止弁が固着していないか、排水ポンプが実際に動くか。年1回の実働試験をやっている管理組合は、私の実感で3割もありません。

漏水の原因調査と工法の選び方については、漏水対応の考え方にもまとめています。


漏水の緊急対応でロープアクセスが強い理由

ここは、私がいちばんお伝えしたい話です。

漏水は、いつも都合の悪いときに起きます。金曜の夕方、台風の直撃日、年末年始。そして足場は、その日には組めません。

仮設足場を架けるには、道路使用許可、近隣への挨拶、資材の搬入、組立てで、どんなに急いでも1週間から10日はかかります。渋谷区のように前面道路が狭く、交通量が多く、隣地との距離がないエリアでは、さらに時間がかかることも珍しくない。

ロープアクセス工法は、屋上にロープを固定できれば、その日のうちに原因箇所まで到達できます。作業員2名と装備一式で現場に入り、午前中に調査、午後に応急処置。これが現実的にできる。

私が渋谷区の物件で実際にやったのは、雨漏りの通報を受けた日の午後に屋上からロープで下降し、ひび割れを特定してシーリングで応急止水、翌週に本復旧という流れでした。足場を待っていたら、その間の10日間、雨のたびに室内に水が入り続けていたはずです。

コストの話も正直に

費用の目安も申し上げます。10階建て・外周80メートル・工期3か月のマンションで、仮設足場が約168万円かかるところ、ロープアクセスなら約59万円という比較になることがあります(差額の目安は約109万円)。もちろん、建物の形状・工事内容・作業条件で大きく変わりますので、あくまで参考値としてお考えください。

緊急の部分補修であれば、調査から応急処置まで数万円〜十数万円のレンジで収まるケースも多くあります。足場を組むかどうかで、桁が変わります。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では、過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた者に限っています。

工法そのものの技術的な詳細は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで解説しています。同業者の方やフランチャイズ加盟をご検討の方は、そちらをご覧ください。明誠側の工法紹介はロープアクセス工法のご紹介にまとめています。

足場とロープアクセスを組み合わせる「ハイブリッド」という選択

渋谷区の物件では、道路に面した2面だけ足場を架け、隣地との隙間がない2面はロープアクセスという組み合わせが、いちばん合理的になることがよくあります。

「足場かロープか」の二者択一ではありません。部位ごとに使い分けて、総額を下げる。これができる会社は、日本でもまだ多くありません。


防災上の共用部:位置と修繕優先度

漏水の話と防災の話は、実は同じ1本の線でつながっています。水が入って壊れると、いちばん困るのが防災設備だからです。

共用部 渋谷区での注意点 修繕・対策の優先度
受電設備(キュービクル) 地下に置いている建物は要注意。浸水で停電すると、エレベーターも給水ポンプも全停止 ★★★ 地下設置なら嵩上げ・防水扉を最優先で検討
給水ポンプ・受水槽 地下ピット内設置が多い。浸水で断水が長期化 ★★★ 受電設備とセットで
エレベーター(ピット) ピットに水が入ると復旧に1〜2週間。管制運転装置の有無を確認 ★★ 地震時管制・浸水時の停止位置を確認
非常用発電機 設置階と燃料タンクの位置。地下だと浸水で使えない ★★ 年1回の実負荷試験
避難通路・バルコニー隔て板 隔て板の前に私物が置かれていないか。劣化して割れていないか ★★ 大規模修繕で一斉交換が合理的
外部階段・避難ハッチ 鉄部の腐食。渋谷区は谷底の湿気が高いエリアがある ★★ 4〜6年周期の鉄部塗装

国土交通省は、電気設備の浸水対策と、地下空間の浸水対策について、それぞれガイドラインを公表しています。地下に受電設備がある建物は、一度これに目を通しておくだけで、理事会の議論の質が変わります。

私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。外壁の防水と、地下の電気設備。この2つは、別々の話に見えて、同じ「水を建物に入れない」という1つのテーマです。


渋谷区で使える助成・支援制度

分譲マンションの耐震化支援事業

渋谷区は、区内の分譲マンションの耐震診断・補強設計・耐震改修工事の費用の一部を助成しています(出典:渋谷区「一般分譲マンションの耐震化支援事業」/更新日 2026年4月10日)。

主な対象条件は次のとおりです。

  • 昭和56年6月1日前に建築工事に着手したもの(いわゆる旧耐震)
  • 分譲マンションであること
  • 地階を除く階数が原則として3階以上であること
  • 複合用途の場合、延べ面積の過半が居住の用途であること
  • 2以上の区分所有者が存すること
  • 診断結果や補強設計の内容について、評定などを取得すること

助成額と助成率は区のパンフレットに整理されています(分譲マンション耐震化支援事業パンフレット(PDF))。金額は延べ面積などの条件で変わりますので、必ず最新のパンフレットと窓口で確認してください。

ここで1つ注意点があります。明治通り・山手通りなどの一般緊急輸送道路、国道20号・国道246号・首都高速道路などの特定緊急輸送道路に接する建物は、この事業ではなく別の沿道建築物耐震化促進事業が対象になります。渋谷区は幹線道路が多い区ですから、自分の建物がどちらに当たるかを先に確認したほうが早い。

(注)既定の予算額に達した場合は終了となりますので、事前に受付状況をお問い合わせください。問い合わせ先は木密・耐震整備課整備促進係(03-3463-2647)です。

分譲マンション耐震化促進アドバイザー派遣(無料)

渋谷区は、分譲マンション耐震化促進アドバイザー派遣を無料で行っています。「何から始めればいいかわからない」という段階であれば、まずこれを使うのが早い。

止水板の助成について(渋谷区の状況)

近隣の世田谷区・港区・品川区・大田区などは止水板設置等の助成制度を設けていますが、渋谷区について、2026年9月18日時点で同種の制度は公式サイト上で確認できませんでした。制度は年度途中で新設されることもありますので、浸水対策をご検討の際は、渋谷区の土木部企画管理課(03-3463-2773)に直接ご確認いただくのが確実です。


渋谷区で「今週動けること」を決めるための、雨の話

最後に、数字を1つだけ。

気象庁の「日本の気候変動2025」によれば、アメダスで観測された1時間降水量50ミリ以上の短時間強雨の発生回数は、1976〜2024年の49年間で約1.5倍に増加しています。1時間80ミリ以上では約1.7倍です(出典:気象庁「日本の気候変動2025」、気象庁「アメダスで見た短時間強雨発生回数の長期変化について」)。

観測地点が増えたからではありません。1,300地点あたりに換算したうえでの比較です。

つまり、20年前に建てた建物の防水性能は、20年前の雨を前提にしているということです。設計時に想定していなかった降り方を、いま実際に受けている。渋谷区のように谷が深く、下水道に一気に水が集まる地形では、この差がそのまま漏水事故として出てきます。

現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、「あと1年早く相談してもらえていれば、この金額で済んだのに」という場面です。躯体(建物の骨組み)に水が回って鉄筋が錆びると、費用は一気に跳ね上がります。


よくあるご質問

Q. 渋谷区は高潮ハザードマップがないと聞きましたが、本当に安全ということですか?

A. 渋谷区は海に面していないため、高潮ハザードマップは「作成予定なし」と公式に整理されています。ただし、これは高潮のリスクがないという意味であって、内水氾濫のリスクがないという意味ではありません。むしろ渋谷区で主役になるのは内水です。区の洪水ハザードマップと、東京都下水道局の雨水出水浸水想定区域図の両方をご確認ください。

Q. 自分の建物が土砂災害警戒区域に入っているかは、どこで確認できますか?

A. 渋谷区土砂災害ハザードマップの地図面(本町/西原・元代々木町・代々木/神宮前・神山町/広尾・恵比寿の4エリアの詳細図)と、東京都土砂災害警戒区域等マップで確認できます。区役所本庁舎11階の土木部企画管理課でも閲覧できます。

Q. 崖側の外壁からの漏水は、大規模修繕で直りますか?

A. 地中に接している部分からの浸入であれば、通常の外壁塗装や屋上防水では止まりません。まず調査で浸入経路を特定することが先決です。原因の切り分けができていない状態で工事に入るのが、費用が無駄になる最大のパターンです。漏水対応の考え方にも詳しくまとめています。

Q. 前面道路が狭くて足場が架けられません。外壁の点検はどうすればよいですか?

A. ロープアクセス工法であれば、屋上からロープで下降しながら打診調査と補修が同時にできます。地面の条件に左右されないのが最大の利点です。渋谷区のように隣地との距離がない物件では特に有効です。上空からの俯瞰が必要な場合はドローン調査と組み合わせることもあります。技術的な詳細はロープアクセスドットコムでも解説しています。

Q. 打診調査の費用はどれくらいですか?

A. 一般的な目安は1平方メートルあたり250〜500円ですが、建物の高さ・形状・調査範囲により変動します。足場を架けずにロープアクセスで実施する場合、足場費用がまるごと不要になるぶん、総額が抑えられるケースが多くあります。料金の考え方もご参照ください。

Q. 漏水の緊急対応は、どれくらいで来てもらえますか?

A. 状況によりますが、ロープアクセスであれば足場の設置を待つ必要がないため、当日から翌営業日での初動が可能なケースが多くあります。まずは状況をお電話かフォームでお知らせください。

Q. 地下の受電設備の嵩上げも相談できますか?

A. 電気設備そのものの工事は専門の電気工事会社が行いますが、明誠は日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟しています。建物全体としての取りまとめが可能です。まずはお問合せフォームからご相談ください。

Q. 相談は無料ですか?

A. 現地調査と概算のご提示までは無料で承っています。管理組合向けのご説明資料もご用意しています。


まとめ:今週、渋谷区の理事会で動けること3つ

  1. 管理室のハザードマップの版を確認する — 洪水ハザードマップ日本語版は令和8年4月改訂版が最新です。古ければ区役所本庁舎11階または各出張所で差し替えを
  2. 東京都下水道局の雨水出水浸水想定区域図で、自分の敷地を確認する — 令和8年3月公表の法定図です。渋谷区のマップだけでは内水の法定リスクは読み切れません
  3. 地下階の逆流防止弁と排水ポンプを、実際に動かしてみる — 点検記録の紙ではなく、実働です。台風期のいまがいちばん適した時期です

渋谷区は、高潮も津波もない代わりに、渋谷川・宇田川の谷と、台地の縁の崖という地形が水の動きをすべて決めている区です。だからこそ、「23区の平均的な修繕計画」がいちばん当てはまらない区でもあります。自分の建物がどこに立っているかを地図で確定させることから、修繕の議論を始めていただきたいと思います。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。管理組合さま向けのサービス内容は管理組合向け大規模修繕のご案内、賃貸・オーナー物件はビルオーナー向けのご案内、収益不動産としての資産価値維持の考え方はオーナー向けの提供価値にまとめています。

明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月18日時点で公表されている渋谷区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず渋谷区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月18日

鳴沢村のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

株式会社明誠の本間です。今日は山梨県南都留郡鳴沢村にマンション・リゾートマンションをお持ちの管理組合の皆さま、そして区分所有者の方に向けて書きます。

この記事で答える質問は1つです。「鳴沢村のマンションで大規模修繕をするとき、村・県・国のどの補助金が共用部に使えるのか」。

先に結論を申し上げます。鳴沢村には、マンションの共用部改修に正面から使える村独自の補助金は、令和8年9月18日時点の村公式サイト上では確認できません。ただし、これまで私が書いてきた180近い自治体の記事のなかで、鳴沢村は「使えない理由」がここまで一本の線で説明できる自治体は初めてでした。

その線とは、住民票です。

鳴沢村の住宅系補助金は、耐震診断も浄化槽も、対象者の条件に「村内に住所を有する」「かつ居住している」という一文が入っています。一方で鳴沢村は、富士桜高原別荘地だけで3,830区画という別荘ストックを抱える村です。建物の数と、そこに住民票を置いている人の数が、大きくねじれている。だから鳴沢村では、補助金の可否が建物の劣化状況ではなく、申請する人の住所で決まってしまうのです。

その例外が1つだけあります。本文で詳しく書きますが、ブロック塀の制度です。


結論|鳴沢村の管理組合が令和8年度に確認すべき制度の早見表

判断に必要な情報を、まずこの1枚に圧縮しました。「共用部に使えるか」の欄だけ先に見ていただいて構いません。

制度 窓口 共用部(マンション)に使えるか 金額・条件 出典
鳴沢村 木造住宅耐震診断支援事業 村 振興課 使えない(木造在来工法・2階建て以下・延べ300㎡以下・村内在住の所有者が居住) 診断費用は全額村負担 鳴沢村
鳴沢村 耐震改修支援事業 村 振興課 使えない(上記の木造診断が前提) 補助限度額 1,437,500円 鳴沢村
鳴沢村 ブロック塀等撤去改善促進事業費補助金 村 振興課 可能性あり・要確認(公表ページに住所要件の記載なし。「1敷地あたり」で設計) 撤去のみ2/3・上限15万円/撤去+フェンス改善2/3・上限30万円 鳴沢村
鳴沢村 浄化槽設置事業補助金 村 住民課 使えない(村内に住所を有する個人・専用住宅が対象) 5人槽531,000円/6〜7人槽616,000円/8人槽以上778,000円 鳴沢村
鳴沢村 老朽空家除却事業費補助金 村 企画課 使えない(個人所有の住宅の除却。更地化が条件) 補助対象経費の2/3・上限100万円 鳴沢村
マンション管理計画認定制度 山梨県 建築住宅課(町村部は県が所管) 制度そのもの。融資金利引下げ等の入口 適合証あり3,600円/適合証なし25,500円 山梨県
マンション長寿命化促進税制 村 税務担当へ申告 使える(共用部の大規模修繕が対象) 令和9年3月31日までに工事完了。1戸100㎡相当まで固定資産税を1/3減額 国土交通省
マンション共用部分リフォーム融資 住宅金融支援機構 使える(共用部改修の資金調達) 管理組合申込み。管理計画認定等で金利引下げ 住宅金融支援機構
鳴沢村景観計画の行為届 村 企画課 補助金ではないが必須手続き(区域は鳴沢村全域) 行為に着手する30日前までに届出 鳴沢村

この表を見て「ほとんど使えないじゃないか」と思われたはずです。正直に申し上げます。そのとおりです。

ただ、私がこの記事で本当にお伝えしたいのは、補助金の有無ではありません。鳴沢村のマンションは、補助金が少ないことよりも、「誰も建物を見ていない期間が長い」ことのほうが、はるかに大きな金額のリスクになるという話です。後半でそこに入ります。


なぜ鳴沢村の補助金は「住民票」で線が引かれているのか

村の制度設計を、条文の言葉から読む

鳴沢村の補助金ページを順番に開いていくと、同じ形の一文が繰り返し出てきます。

浄化槽の補助金ページには、ご丁寧に「転入確約書」という様式まで用意されています。鳴沢村に住民登録のない方が申請するときに使う書類です。つまり村は、「これから村民になる人」までは支援するが、「村民にならない所有者」は支援の対象に置いていない。

これは村を批判している話ではありません。人口3,000人規模の村が、限られた予算で定住と生活環境の維持に資源を集中させるのは、行政判断としてまったく筋が通っています。事実、村の制度一覧には定住促進新築住宅等購入支援、三世代同居等支援、奨学金返還支援といった定住系の補助が並んでいます(出典:鳴沢村「補助金・助成制度」)。村の優先順位がはっきりしている、ということです。

「建物の数」と「住民の数」がねじれている村

一方で、鳴沢村にある建物のストックは、住民の数とは別の論理で積み上がってきました。

富士桜高原別荘地は鳴沢村に広がる別荘地で、3,830区画、総面積約660万平方メートルとされています(出典:富士桜高原別荘地、および富士観光開発による事業案内)。村の住民基本台帳上の人口は約3,000人規模で、村は各年4月1日時点の年齢別人口と世帯数を公表しています(出典:鳴沢村「鳴沢村の人口データ」、令和8年4月1日更新)。

私はこの数字の並びを見たとき、現場屋として最初に思ったのはこういうことでした。この村の建物は、大半が「持ち主が日常的に見ていない建物」だ。

分譲マンションでも同じことが起きます。区分所有者の住所が東京・神奈川・埼玉に散っていて、年に数回しか来ない。総会は書面決議か委任状が中心になる。理事のなり手がいない。この構図は、私が伊豆の町や富士北麓のリゾートマンションで何度も見てきたものです。

そして、ここが本題です。補助金が使えないことより、「劣化の発見が2〜3年遅れること」のほうが、金額としてはるかに大きい。


村の制度①:木造住宅耐震診断・耐震改修支援事業(共用部には使えません)

条件を一つずつ突き合わせると、RC造マンションは全項目で外れる

鳴沢村は山梨県と共同で、昭和56年5月以前に着工された木造住宅を対象に、耐震診断を無料で実施しています。診断費用はすべて村が負担します(費用の一部は国と県の補助を活用)。

診断の対象になる住宅の条件は5つです。

  1. 昭和56年5月31日以前に着工され、木造在来工法で建築された住宅(プレハブ工法、2×4工法等は除く)
  2. 村内に住所を有する者が所有し、かつ居住しているもの
  3. 2階建て以下のもの
  4. 延べ床面積300平方メートル以下のもの
  5. 専用住宅または併用住宅で住宅部分の面積が過半のもの

(出典:鳴沢村「耐震診断・耐震改修をしましょう」/更新日:2024年4月1日)

鉄筋コンクリート造や鉄骨造の共同住宅は、1番の「木造在来工法」で外れます。仮に木造の共同住宅であっても、3番の「2階建て以下」と4番の「延べ300㎡以下」で、ほぼ確実に外れます。さらに2番の居住要件がある。3重に外れる構造です。

耐震改修支援事業のほうは、診断の総合評点が1.0未満の木造住宅を1.0以上に上げる改修工事が対象で、補助限度額は1,437,500円。対象者は既存木造住宅の所有者で、世帯全員が村税を滞納していないことが条件です。耐震シェルター設置支援事業は、総合評点0.7未満の木造住宅が対象で限度額24万円。いずれも木造住宅の制度です。

なお村は「鳴沢村住宅耐震化緊急促進アクションプログラム2026」を公表しています。村が住宅耐震化を年度の計画として管理しているということですから、非木造・共同住宅の扱いについて今後の方針を尋ねる相手として、振興課(0555-85-3083)は的確な窓口です。

非木造の耐震は「村の補助」ではなく「国の枠組み」で考える

昭和56年5月31日以前に着工された分譲マンションで耐震性が気になる場合、村の木造制度ではなく、国の住宅・建築物安全ストック形成事業などの枠組みで、県・村を通じた支援が受けられるかを確認する流れになります。マンション区分の耐震診断・耐震改修に対する国の考え方は、国土交通省の耐震化支援のページに整理されています(出典:国土交通省「住まいの耐震化 補助金・支援制度について」)。

ここは村の公式サイトに個別の案内が出ていないため、私が断定的に「使えます」と書くべきではない領域です。村の振興課と山梨県建築住宅課の両方に、同じ質問を投げてください。町村部は県が所管している業務が多く、村だけに聞いて終わると答えが出ないことがあります。


村の制度②:ブロック塀等撤去改善促進事業費補助金|鳴沢村で管理組合が唯一手を伸ばせる可能性がある制度

「1敷地あたり」で設計されている、という事実

鳴沢村ブロック塀等撤去改善促進事業費補助制度の概要は、次のとおりです。

対象工事:道路・公園等に面している高さ1メートル以上のブロック塀、石塀、レンガ塀等を撤去する場合、または撤去してフェンス等へ改善する場合

補助額

工事種別 対象経費 補助率 補助限度額
撤去のみ 【撤去費】または【10,000円×塀の長さ】のいずれか少ない額 2/3 1敷地あたり15万円
撤去し、フェンス等へ改善 【撤去・改善費】または【38,300円×塀の長さ】のいずれか少ない額 2/3 1敷地あたり30万円

(出典:鳴沢村「ブロック塀等の撤去・改善費用の補助制度について」)

私がこの制度に注目したのは、村の公表ページに「村内に住所を有する個人」という対象者要件が書かれていないからです。制度が「1敷地あたり」という単位で設計されていて、対象が人ではなく敷地の塀に向いている。マンションの外構ブロック塀は、まさに「1敷地の、道路に面した塀」です。

ただし、これを「管理組合でも使えます」と断定することは、私にはできません。 要綱の本文に対象者の規定がある可能性があり、公表ページの記載だけでは確認できないからです。ここは正直に書きます。

理事会がすべきことは、電話1本

確認の仕方は具体的にお伝えします。振興課(0555-85-3083)に、次の3点をそのまま聞いてください。

  1. 分譲マンションの管理組合名義で、共用部である外構ブロック塀の撤去・改善に、この補助金を申請できるか
  2. 申請者が個人でなければならない規定が要綱にあるか
  3. 区分所有建物の場合、総会決議の議事録などの添付が必要か

そして、もう1つ絶対に外せない注意点があります。村が発行する「交付決定通知書」が届く前に契約・着手した工事は補助対象外です。これは村のページに明記されています。大規模修繕の工事契約を先に結んでしまうと、その中に外構工事が含まれていた時点で補助の道が消えます。見積の段階で外構ブロック塀を別契約にしておく——これが鳴沢村の理事会にとって、実務上いちばん効く一手です。

金額の感覚もお伝えします。たとえばマンション前面の道路沿いに、高さ1.2mのブロック塀が20m続いているとします。撤去してフェンスへ改善する場合、38,300円×20m=766,000円と実際の工事費を比べて少ない額の2/3、ただし上限30万円。つまり30万円が上限に張り付くケースが多いはずです。大規模修繕の総額から見れば小さい額ですが、外構は修繕積立金から出ていく費用です。使える制度は使いましょう。


村の制度③:浄化槽設置事業補助金|「専用住宅」という一文で共同住宅が外れる

鳴沢村は、生活排水による地下水の汚濁を防止するため、合併処理浄化槽を設置する者に補助金を交付しています。金額は人槽区分ごとに決まっていて、決して小さくありません。

人槽区分 新規設置/単独浄化槽から合併浄化槽への入れ替え 設置後30年を経過した合併浄化槽の入れ替え
5人槽 531,000円 309,000円
6〜7人槽 616,000円 340,000円
8人槽以上 778,000円 412,000円

(出典:鳴沢村「鳴沢村浄化槽設置事業補助金について」/更新日:2024年7月19日)

ただし対象者は「鳴沢村内に住所を有する個人」であり、対象となる建物は「専用住宅=主に居住の用に供する建物であって延べ床面積の2分の1以上を居住の用に供する建物」と定義されています。

この2つの条件のうち、共同住宅にとって致命的なのは前者です。管理組合は個人ではありません。

なぜこれを丁寧に書くかというと、富士北麓のリゾートマンションでは、浄化槽が共用部の設備として存在しているケースが珍しくないからです。私はこれまでの現場で、「浄化槽の更新費用が長期修繕計画に入っていなかった」管理組合を何度も見てきました。建物本体の防水や外壁には目が向いても、地中に埋まっている設備は計画から漏れやすい。

浄化槽をお持ちのマンションは、長期修繕計画の中に「浄化槽更新」の項目があるかどうかを、今月の理事会で確認してください。村の補助が使えない以上、100%を積立金で賄う前提の計画になっていなければいけません。


村の制度④:老朽空家除却と環境対策施設設置補助金

老朽空家除却事業費補助金は、著しく老朽化し居住の用に適さなくなった空家の除却に対し、補助対象経費の2/3・上限100万円を交付する制度です。更新日は2026年6月1日で、令和8年度に入ってから更新されている、村のなかでは最も新しい情報です。

ただし対象空家は「村内に存する住宅で個人が所有するもので、過去に連続して5年以上生活の本拠として常用された実績のあるもの」。かつ補助対象工事は「敷地内にある建築物、工作物、立木、地下埋設物、動産等の全てを除却し、更地にするもの」です。区分所有建物の一部住戸には当てはまりません。

もう1つ、環境対策施設設置補助金があります。村は「一般家庭に環境対策施設を設置した場合に補助金を交付します」としていますが、公表ページの本文に補助金額や対象設備の具体的な記載がなく、交付要綱のPDFを参照する形式になっています(出典:鳴沢村「環境対策施設設置補助金について」/更新日:2022年3月1日)。

ここは推測で埋めません。金額・対象設備・「一般家庭」に共同住宅の共用部が含まれるかは、住民課(0555-85-3082)へ直接ご確認ください。更新日が令和4年である点も含め、現行年度の運用は窓口確認が必要です。


山梨県の制度|鳴沢村のマンションは「県」が管理計画認定の窓口です

町村部は山梨県が所管している

マンション管理計画認定制度は、管理組合の管理計画が一定の基準を満たす場合に、地方公共団体から「適切な管理計画を持つマンション」として認定を受けられる制度です。

重要なのは窓口です。山梨県は町村部にあるマンションのみを対象として、令和4年4月1日から認定の受付を開始しています。鳴沢村は村ですから、認定申請の相手は村役場ではなく、山梨県県土整備部建築住宅課(企画担当/055-223-1730)です。

そして山梨県独自の基準はありません。国の基準だけを満たせばよい、ということです。これは管理組合にとってシンプルで、ありがたい話です。

手数料は「適合証の有無」で7倍違う

区分 適合証あり 適合証なし
認定(更新)申請手数料(長期修繕計画が1つ) 3,600円 25,500円
長期修繕計画が2以上ある場合の加算 1長期修繕計画あたり1,600円 1長期修繕計画あたり14,700円
変更認定申請手数料 適合証なしの額の2分の1(100円未満切り捨て) 同左

(出典:山梨県「マンション管理計画認定制度について」/ページ更新日:2025年12月24日)

公益財団法人マンション管理センターが発行する適合証を先に取ってから県へ申請する方法が原則です(出典:公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」)。21,900円の差は、適合証を取るための手間に見合います。

そして県は、申請を予定している場合は申請前に建築住宅課企画担当へ相談してほしいと明記しています。鳴沢村のような別荘型・リゾート型のマンションでは、長期修繕計画の作成状況や総会の開催実績が認定基準に届いていないことが多い。相談の場で「何が足りないか」を先に聞けるのは、管理組合にとって大きな価値があります。


国の制度|長寿命化促進税制と共用部分リフォーム融資

マンション長寿命化促進税制は期限が迫っています

築20年以上・総戸数10戸以上のマンションで、外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事が一体として実施される長寿命化に資する大規模修繕工事を行った場合、申告により翌年度分の固定資産税が、1戸あたり100㎡相当分まで3分の1減額されます(出典:国土交通省「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに係る固定資産税の減額措置(マンション長寿命化促進税制)」)。

対象期間は令和5年4月1日から令和9年3月31日までに工事が完了したもの。今日が令和8年9月18日ですから、残りは約1年半です。

ここで私が理事長さまにいつもお伝えしているのは、「外壁塗装だけ」では対象にならないという点です。外壁・床防水・屋根防水が一体でなければいけません。鳴沢村のような別荘型マンションでは、予算の都合で工事を分割し、「今年は外壁だけ」「来年は屋根だけ」とする判断が出やすい。その分割が、この税制の適用を落としてしまうことがあります。

減額の適用や必要な申告手続きは自治体ごとに運用が異なりますので、鳴沢村役場(0555-85-2311)の税務担当へ、工事の計画段階で確認してください。

共用部分リフォーム融資は管理組合名義で申し込める

住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資は、管理組合が申込人となって共用部改修の資金を調達できる制度です。管理計画認定を受けている等の条件で金利引下げが適用されます(出典:住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」)。

先ほどの管理計画認定と、この融資は一本の線でつながっています。認定を取る → 金利が下がる → 修繕積立金の不足を借入で埋めるコストが下がる。鳴沢村のように区分所有者が全国に散っていて、一時金の徴収が現実的に難しいマンションほど、この順番が効いてきます。


鳴沢村で工事を始める前に|景観計画の行為届と、富士北麓の気候

区域は「鳴沢村全域」。着手の30日前までに届出

鳴沢村景観計画は、計画の区域が鳴沢村全域で、平成27年10月1日から効力が発生しています(出典:鳴沢村「鳴沢村景観条例・鳴沢村景観計画」)。村内に「規制のかからない場所」はありません。

景観計画区域内の行為の届出は、行為に着手する30日前までに、景観計画区域内行為届出書(様式第1号)に建築物・工作物などの別紙を添えて村長へ提出する必要があります(出典:鳴沢村景観条例施行規則)。村には太陽光発電施設・移動通信用鉄塔について個別の景観形成基準も置かれていて、村が景観をかなり細かく運用していることがわかります。

大規模修繕で外壁の色を変える場合、この届出が工程に効いてきます。30日は、理事会1回分の時間です。私はいつも理事長さまに、「色を決める総会と、工事着手日の間に最低1か月半は空けてください」とお伝えしています。届出を忘れて着工日をずらすと、足場の解体日やロープの設置日まで全部ずれて、最終的に職人の手配と天候のいい時期を逃します。

なお、別荘地内のマンションの場合は、村の景観届出とは別に、別荘地の管理規約や建築協定がかかっていることがあります。窓口が2つある、と考えておいてください。

標高1,000m前後の凍結融解が、外壁に効く

鳴沢村は富士山北麓、標高がおおむね1,000m前後の地域です。私が現場屋として気にするのは、この標高がもたらす凍結融解です。

日中に溶けた水がタイルの裏やひび割れに入り込み、夜間に凍って膨張する。これが冬のあいだ毎日繰り返されます。都市部のマンションでは20年かけて進む外壁の浮きが、富士北麓では十数年で同じところまで来ることがある。私は伊豆や富士北麓の現場で、築15年でタイルの浮きが広範囲に出ていた建物を実際に見ています。

それから、冬期の施工制約です。塗料にもシーリング材にも施工可能な気温の下限があります。鳴沢村では12月〜3月の工程は現実的に組みにくい。逆に言えば、春から秋の施工枠は取り合いになります。工事の1年前には業者を押さえておくのが安全です。


令和8年6月26日の地震のあとに、鳴沢村のマンションで見ておくべきこと

令和8年6月26日22時29分頃、山梨県東部・富士五湖を震源とするマグニチュード5.6(暫定値)、深さ20kmの地震が発生し、最大震度6弱を山梨県の富士河口湖町で観測しました。東北地方から中国地方にかけて震度5強〜1を観測し、山梨県東部・富士五湖を含む地域で長周期地震動階級1が観測されています(出典:気象庁「令和8年6月26日22時29分頃の山梨県東部・富士五湖の地震について」)。

鳴沢村は富士河口湖町に隣接しています。あれから3か月足らずです。

ここで、本記事の前半で書いた「誰も建物を見ていない」という問題が効いてきます。人が常時住んでいるマンションなら、地震のあと住民が「階段のここにひびが入った」と気づきます。別荘型のマンションでは、誰も気づかないまま冬が来ます。そして凍結融解が、そのひび割れを広げます。

私が理事会にお勧めするのは、次の3点です。

  1. 外構ブロック塀の点検を先にやる。村がブロック塀の点検チェックポイントのPDFを公開しています(出典:鳴沢村)。倒壊した塀は、人に当たれば命に関わり、管理組合の責任問題になります。危険が確認された場合は速やかに注意表示を行うよう、村も呼びかけています。
  2. 外壁の全面調査を、地震後の記録として残す。「地震の前からあったひびなのか、後からできたのか」を証明できる資料がないと、保険でも工事の判断でも不利になります。
  3. 調査は、足場を組む前にやる。ここが工法の話につながります。

足場か、ロープアクセスか、ハイブリッドか|鳴沢村の立地で費用と工期がどう変わるか

調査だけのために足場を組むのは、もったいない

大規模修繕で最も重いコストの1つが仮設足場です。一般に30戸規模のマンションの大規模修繕は総額3,500〜5,000万円程度、そのうち仮設足場が15〜25%を占めるというのが、私の実感に近いレンジです(物件により大きく変動します。あくまで目安としてお読みください)。

ここで、株式会社明誠が3つの工法から提案できるという話をさせてください。利益相反になりますので、ここからは自社サービスの話だと明示したうえで書きます。

工法 特徴 鳴沢村の物件で向くケース
通常足場工法 従来型の仮設足場。全面的な打ち替えや広範囲の補修に強い 中低層、複雑形状、補修範囲が広い建物
ロープアクセス工法(無足場工法) 産業用ロープで高所作業。足場費を削減し工期を短縮。居住者・利用者への影響が小さい 調査・部分補修、急斜面や樹林に囲まれて足場を架けにくい別荘地内の物件
ハイブリッド工法 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける 大規模・複雑物件で総合コストを最適化したいケース

参考として、10階建て・外周80m・工期3か月の想定で、仮設足場が約168万円かかるところをロープアクセスで約59万円に抑えられたケースがあります(差額およそ109万円)。これは条件が揃った場合の数字で、すべての建物で同じ差が出るわけではありません。建物形状・作業範囲・アンカー設置の可否で変わります。

外壁の打診調査の単価は概ね250〜500円/㎡、外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、防水は5,000〜8,000円/㎡というのが一般的なレンジです。いずれも目安であり、実際の見積は物件により大きく変動します。ロープアクセス工法そのものの技術解説は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。

鳴沢村の物件でロープアクセスが効く理由は「工期」と「調査の身軽さ」

鳴沢村で私が重視するのは、金額よりもむしろ工期です。

前述のとおり、鳴沢村では冬期の施工が現実的に難しい。春から秋の限られた枠で工事を終わらせなければならない。足場工法で3か月かかる工事が、ロープアクセスなら1.5〜2か月で終わるなら、その差は「令和8年度中に終わるか、令和9年度に持ち越すか」の差になります。持ち越せば、その冬のあいだ劣化は進み続けます。

もう1つは、調査の身軽さです。地震後の点検のために足場を1棟丸ごと組むのは費用的に現実的ではありません。ロープアクセスなら、調査のためだけに降りることができます。ドローンによる外観調査と組み合わせれば、費用を抑えて記録を残せます。明誠ではドローン調査とロープアクセス工法を組み合わせた調査を行っています。

明誠のことも、数字で書いておきます

信頼していただくための材料として、手前味噌ですが書いておきます。

  • 株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました
  • ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています
  • IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたります
  • 日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟しています。だから「高品質かつ低価格」を両立できます
  • 代表の私は、一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)の代表理事も務めています

料金に対する考え方は大規模修繕の料金の考え方に、管理組合向けのサービス内容は管理組合向けサービスにまとめています。これまでの施工事例は明誠の施工事例(約6,000棟)からご覧いただけます。工法ごとの技術的な裏付けをさらに深く知りたい方は、ロープアクセスドットコムもあわせてご覧ください。


よくあるご質問

Q. 鳴沢村に、マンションの大規模修繕に直接使える村の補助金はありますか?

A. 令和8年9月18日時点の村公式サイト上では確認できません。村の住宅系補助金は木造住宅・専用住宅・個人所有を前提としており、分譲マンションの共用部を対象にした制度は公表されていません。可能性があるのは外構のブロック塀撤去・改善の補助のみで、これも管理組合名義で使えるかは村 振興課(0555-85-3083)への確認が必要です。

Q. マンション管理計画認定の申請は、村役場に出すのですか?

A. いいえ、山梨県です。県は町村部にあるマンションを対象に、令和4年4月1日から認定の受付を開始しています。窓口は山梨県県土整備部建築住宅課 企画担当(055-223-1730)です(出典:山梨県)。

Q. 認定申請の手数料はいくらですか?

A. 長期修繕計画が1つの場合、適合証ありで3,600円、適合証なしで25,500円です。長期修繕計画が2以上ある場合は、それぞれ1計画あたり1,600円/14,700円が加算されます(出典:山梨県)。

Q. 別荘として使っていて住民票が村にない場合、村の補助金は使えませんか?

A. 村の耐震診断は「村内に住所を有する者が所有し、かつ居住しているもの」、浄化槽補助は「鳴沢村内に住所を有する個人」が対象です。住民票がない場合、これらは対象外になります。ただしブロック塀の制度については公表ページに住所要件の記載がないため、村へご確認ください。

Q. 外壁の色を変えるとき、どんな手続きが必要ですか?

A. 鳴沢村景観計画の区域は村全域です。景観計画区域内で行為を行う場合、行為に着手する30日前までに村長へ届出が必要です(出典:鳴沢村景観条例施行規則)。別荘地内の物件は、別荘地側の管理規約・建築協定も併せてご確認ください。

Q. 固定資産税が下がる制度があると聞きましたが、鳴沢村でも使えますか?

A. マンション長寿命化促進税制は全国共通の制度です。築20年以上・総戸数10戸以上で、外壁塗装等・床防水・屋根防水を一体で行う大規模修繕が対象。令和9年3月31日までに工事完了が条件です(出典:国土交通省)。申告手続きは鳴沢村役場の税務担当(0555-85-2311)へご確認ください。

Q. 工事の費用はどれくらいかかりますか?

A. 30戸規模の大規模修繕で総額3,500〜5,000万円程度、うち仮設足場が15〜25%というのが一般的な目安です。外壁打診調査は250〜500円/㎡、外壁塗装3,500〜4,500円/㎡、防水5,000〜8,000円/㎡が目安ですが、物件の規模や劣化状況で大きく変動します。概算のお見積りは無料でお出しできますので、お問い合わせフォームからご相談ください。

Q. ロープアクセスだと工期はどれくらい短くなりますか?

A. 条件が揃えば足場工法の6割程度の工期が目安です。10階建て・外周80m規模で、足場3か月に対しロープアクセス1.5〜2か月。鳴沢村のように冬期の施工が難しい地域では、この差がそのまま「年度内に終わるかどうか」に直結します。


この記事のポイントまとめ

  • 鳴沢村の住宅系補助金は「村内に住所を有し居住している個人」が前提。管理組合は原則対象外
  • 唯一の可能性はブロック塀等撤去改善補助(撤去2/3・上限15万円/改善2/3・上限30万円、1敷地あたり)
  • 交付決定通知書の前に契約・着手した工事は対象外。外構は大規模修繕本体と別契約にする
  • マンション管理計画認定の窓口は村ではなく山梨県。手数料は適合証ありで3,600円
  • 長寿命化促進税制は令和9年3月31日までの工事完了が条件。外壁・床防水・屋根防水は一体で
  • 景観計画区域は村全域。色を変えるなら着手30日前までに行為届
  • 別荘型マンション最大のリスクは補助金の少なさではなく、劣化の発見が遅れること

出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月18日時点で公表されている鳴沢村および国土交通省・山梨県の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず鳴沢村および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア


鳴沢村のマンションは、持ち主の多くが村の外にいます。だからこそ、建物の状態を「誰かが定期的に見に行く仕組み」を、管理組合が自分で作らなければいけません。補助金が少ない村だからと諦めるのではなく、県と国の制度を使い、工法で工期と費用を削る。そこは私たちがお手伝いできる領域です。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月18日

忍野村のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

忍野村で大規模修繕を検討されている管理組合の理事長さまから、こんなご質問をいただくことがあります。「忍野村に、マンションの大規模修繕に使える補助金はありますか」。

先に結論を申し上げます。忍野村の場合、管理組合が共用部の大規模修繕で使える村の補助金は、現時点で見当たりません。 そのかわり、忍野村には他の自治体にはほとんど無い、もっと手前の論点があります。

それは、外壁の色を塗り替えるだけで、村への届出が要るということです。

忍野村は村全域が景観計画区域に指定されており、建築面積10平方メートルを超える建築物について「外観を変更することとなる修繕もしくは模様替えまたは色彩の変更」が届出対象行為とされています(出典:忍野村「忍野村景観計画」)。大規模修繕の外壁塗り替えは、この文言にまっすぐ当たります。しかも届出は、工事着手予定日の30日前までです。

私はマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきましたが、「補助金を探す前に、行政手続きの日数を工程表に入れる」必要がある自治体は、そう多くありません。忍野村はその少数派です。この記事では、忍野村の管理組合と賃貸オーナーさまが、令和8年度に実際に使える制度と、使う前にクリアすべき手続きを、一次情報のリンク付きで整理します。

2026年9月18日 更新


結論:忍野村で2026年度に効く打ち手は「村3・県3・国3」

まず全体像を1枚の表にします。忍野村の分譲マンション・賃貸マンションの共用部改修という視点で、実際に効くものだけを並べました。

区分 制度・手続き 共用部の大規模修繕への効き方 窓口
村(手続き) 景観計画行為の届出 ★外壁・屋根の色彩変更で届出が必要。着手30日前まで 忍野村 企画課
村(手続き) 風致地区条例の許可基準 ★該当地区なら色彩がマンセル値で制限される 忍野村 建設課
村(補助) 令和8年度 居住環境整備促進補助金 60%以内・限度額200万円。ただし対象は個人用住宅で令和8年度は受付終了 忍野村 建設課
村(補助) 景観整備推進補助金 指定色への屋根塗り替えが2/3・上限10万円。1世帯1回 忍野村 企画課
村(補助) 木造住宅耐震化補助事業 診断は無料、改修は最大1,437,500円。木造住宅向け 忍野村 建設課
県(義務) 建築基準法第12条の定期報告 ★5階以上かつ1,000平方メートル以上の共同住宅は3年毎。提出は9月30日まで 山梨県 建築住宅課
県(認定) マンション管理計画認定制度 適合証あり3,600円/なし25,500円。町村部は県が窓口 山梨県 建築住宅課
県(相談) マンション管理適正化支援法人 大規模修繕の発注に関する助言が業務に含まれる 山梨県 建築住宅課
国(補助) 住宅・建築物安全ストック形成事業 マンションの耐震改修は国と地方で1/3 村経由
国(税制) 長寿命化促進税制 固定資産税の減額。令和9年3月31日までの完了が期限 村 税務担当
国(融資) マンション共用部分リフォーム融資 住宅金融支援機構の管理組合向け融資 住宅金融支援機構

この表を見て「村の補助金は薄いな」と思われたかもしれません。そのとおりです。ただ、制度が薄いことと、打ち手が無いことは別の話です。忍野村の場合、いちばん金額に響くのは補助金ではなく、工法の選び方と工程の組み方です。そこは記事の後半で具体的な数字とともにお話しします。


忍野村は「補助金より先に届出」の村です

順番を間違えると、工事が止まります。私が忍野村の理事長さまに最初にお伝えするのは、この順番です。

  1. 自分の物件が風致地区に入っているかを確かめる(建設課)
  2. 色彩の制限を確認して、塗料の色を決める(建設課・企画課)
  3. 景観計画行為届出書を、着手予定日の30日前までに出す(企画課)
  4. そのうえで、使える補助金・税制・融資を積む
  5. 工法(足場/ロープアクセス/ハイブリッド)を決めて発注する

一般的な自治体では、1から3が存在しません。存在しないので、総会で工事内容と金額を決議したら、そのまま着工できます。忍野村はそうはいきません。総会決議から着工までに、少なくとも30日の行政期間が挟まります。

ここが工程に効きます。たとえば「6月の総会で決議して、7月着工、11月末完了」という計画を立てていたとします。届出を6月末に出すと、着手できるのは7月末以降です。1か月のずれが、そのまま完了時期を12月末に押し出します。忍野村は12月には気温が下がりますから、この1か月は塗装の可否に直結します。

私はこれを、忍野村の案件では工程表の一番上の行に書くようにしています。


忍野村全域が景観計画区域|外壁の塗り替えが届出対象になる

ここからが本題です。忍野村の景観計画は、村の説明によれば景観計画区域を忍野村全域としています(出典:忍野村「忍野村景観計画」)。つまり、村内のどこに建っているマンションでも、この話は関係します。

届出対象行為の読み方

村が公開している届出対象行為の表から、建築物の行を引きます。

行為の種類 届出対象行為 規模の要件
建築物 新築・増築・改築もしくは移転、外観を変更することとなる修繕もしくは模様替えまたは色彩の変更 建築面積10平方メートル超の建築物

(出典:忍野村「忍野村景観計画」)

読み方のポイントは2つです。

1つ目。「修繕」が名指しで入っています。 新築や増築だけでなく、外観が変わる修繕そのものが対象です。大規模修繕の外壁塗装は、外観を変更する修繕です。

2つ目。「色彩の変更」が独立して並んでいます。 つまり、形を変えなくても色を変えれば対象になり得ます。逆に言えば「まったく同じ色で塗り替えるなら対象外か」という論点が出てきますが、これは村の判断です。私は必ず企画課に電話して確認するよう申し上げています。「同色での塗り替えだから届出は不要だと思っていた」という自己判断が、いちばん危ない考え方です。

3つ目。規模要件が建築面積10平方メートル超です。 マンションで建築面積10平方メートル以下の建物は現実的にありません。忍野村の分譲マンション・賃貸マンションは、規模要件の面では全棟が該当すると考えて差し支えありません。

着手30日前という工程上の意味

村は、住宅を建設する場合の届出について「工事に着手する予定日の30日前までに景観計画行為届出書を記載し、企画課窓口または郵送で提出してください」と案内しています(出典:忍野村「忍野村に住宅を建設する予定です。「景観計画行為届出書」は提出する必要がありますか。」)。

大規模修繕でこの30日をどう見るか。私の実務感覚では、余裕を見て45日から60日を工程に取ります。理由は3つあります。

  • 届出には図面が必要で、その図面を作るのに時間がかかる(後述)
  • 色彩について村と協議が必要になった場合、色を決め直す時間が要る
  • 総会で色を決議している場合、色を変えるとなると再決議の話になる

3つ目がいちばん怖いところです。総会で「外壁はこの色でいきます」と決議しておいて、届出の段階で村から「この色は景観形成基準に合わない」と言われたら、総会をやり直すのかという話になります。だから私は、色は総会の前に村と当たっておくことをお勧めしています。

添付書類「50分の1の彩色立面図」が見積に入っているか

これが、忍野村の大規模修繕で実際にお金が動く論点です。村の景観計画は、建築物の外観変更・色彩変更の届出について、次の添付書類を求めています。

図面の種類 縮尺 明示すべき事項
位置図 2,500分の1以上 方位、行為地など。都市計画図の添付
配置図 100分の1以上 敷地の境界、建築物の位置など
各面の彩色された立面図 50分の1以上 主要部分の材料の種別、仕上がり方法および色彩
現況のカラー写真 — 2方向以上(行為地を含めた周辺の状況)。撮影位置と方向を記入

(出典:忍野村「忍野村景観計画」)

問題は3行目です。各面の、彩色された、50分の1以上の立面図。

大規模修繕の見積書には、普通この図面が入っていません。改修工事は既存建物が相手ですから、竣工図をそのまま使うか、簡易な部位別の数量表で進めるのが一般的です。50分の1の彩色立面図を各面分作るとなると、設計事務所か施工会社に別途作図してもらう作業になります。

私が理事長さまにお伝えしているのは、この一文です。

「見積書の諸経費または設計業務費の内訳に、景観計画行為届出書の作成費と、各面の彩色立面図の作図費が入っているか、名前を挙げて確認してください」

入っていなければ、着工前に追加費用の話になります。数十万円の規模でも、総会を通した予算に無いものが出てくるのは、理事会にとって気持ちのいい話ではありません。私は忍野村の物件では、この費用を最初から見積に明示するようにしています。

なお、竣工図が残っていない古いマンションの場合、立面図を起こす作業そのものが発生します。築30年以上の物件では竣工図が見つからないことが珍しくありません。竣工図の有無を、修繕委員会の最初の会合で確認しておくと、後が楽になります。


風致地区に入っているとさらに色が縛られる|マンセル値の話

忍野村には、都市計画法に基づく風致地区があります。村は該当地区を具体的に公開しています。

忍野村内の風致地区(忍野村忍草字):奥山尾田/鐘山/六本松/臼久保/上臼久保/立沢/膳棚/出口/高木

除外番地も公開されています(3452-3、3453-1、-2、-3、3464、3465、3467、3469、3470、3471、3472、3472の内1、3473、3474、3475-1、-2、-3、-4)。
(出典:忍野村「風致地区」)

風致地区に入っている場合、許可の基準に色彩の項があります。

項目 基準
建ぺい率 40パーセント以下
高さ 10メートル以下
後退距離 外壁から道路に接する部分2メートル以上、道路に面する部分以外1メートル以上
色彩 屋根、外壁等の最大面積色が、マンセル値で 色相R・YR・Y・GY・G・N、明度3以上7以下(Nは4以上9以下)、彩度4以下
緑地率 10パーセント以上

(出典:忍野村「風致地区」)

マンセル値の読み方(3分で分かる説明)

マンセル値は色を数字で表す方法です。塗料のカタログや色見本帳に「10YR 8.5/1」のように書かれています。読み方はこうです。

  • 色相(しきそう):色の種類。Rが赤、YRが黄赤(オレンジ系)、Yが黄、GYが黄緑、Gが緑、Nが無彩色(白・灰・黒)
  • 明度(めいど):明るさ。0が黒、10が白。数字が大きいほど明るい
  • 彩度(さいど):鮮やかさ。0が無彩色、数字が大きいほど鮮やか

忍野村の風致地区の基準を日本語に訳すと、こうなります。

  • 使える色相は、赤系から緑系まで、あとは白黒灰
  • 青系(B)や紫系(P)は基準の色相に挙がっていない
  • 有彩色(RからGまで)は明度7以下
  • 無彩色(N)だけは明度4以上9以下
  • 鮮やかさは彩度4以下(かなりくすんだ色まで)

一般的なオフホワイトが使えない可能性がある

ここが実務で引っかかります。マンションの外壁でよく使われる色は、ベージュ系やクリーム系のオフホワイトです。マンセル値で言うと、色相は10YRあたり、明度は8.5から9.0あたりになることが多いです。

忍野村の風致地区の基準に当てると、色相が10YR(有彩色)であれば明度は7以下ですから、明度8.5のベージュ系オフホワイトは基準の範囲を外れる読み方になります。一方、同じような見た目でも無彩色のN9に寄せれば明度9まで入るという読み方もできます。

私はこれを、塗料メーカーの担当者を交えて確認します。具体的な進め方はこうです。

  1. 候補色を3つに絞る
  2. 3色それぞれのマンセル値を、塗料メーカーから書面でもらう
  3. そのマンセル値を持って、建設課に「この色は風致地区の基準に入りますか」と確認する
  4. 企画課にも景観形成基準の観点で確認する

「日本塗料工業会の色番号」だけを持って窓口に行っても、話が進まないことがあります。窓口が見たいのはマンセル値です。塗料メーカーは色見本帳のマンセル値換算を持っていますから、聞けば出てきます。

なお、風致地区の運用基準はPDFで公開されています(忍野村風致地区条例運用基準)。条例本文と施行規則も村の例規集で読めます。理事会の資料として、該当部分を印刷して回すと議論が早くなります。

自分の物件が風致地区に入っているか確かめる

これは電話1本で済みます。忍野村建設課(0555-84-7793)に、地番を伝えて「風致地区に入っていますか」と聞くだけです。上に挙げた字名と除外番地の一覧がありますから、村側もすぐ答えられるはずです。

風致地区に入っていなくても、景観計画区域は村全域ですから、届出の話は残ります。「風致地区ではなかったので何もしなくていい」は成り立ちません。 ここを混同されている理事長さまが少なくないので、あえて強めに書いておきます。


忍野村の色を決める3つの手順(景観と修繕を両立させる)

色の話が2か所(風致地区と景観計画)にまたがるので、実務手順として1本にまとめます。

手順1:現況の色を記録する

足場やロープが架かる前に、外壁と屋根の現況色をマンセル値で記録します。塗装会社に「既存色の色合わせ」をしてもらえば出てきます。これがあると、「既存と同系色で塗り替える」という説明が窓口でしやすくなります。

手順2:候補色のマンセル値を3色分そろえる

理事会に出す色の候補を、必ずマンセル値付きで出してもらいます。色見本の紙だけでは行政協議ができません。

手順3:総会の前に窓口と当たる

建設課(風致地区)と企画課(景観計画)の両方に、候補色のマンセル値を持って相談します。総会の議案書に「村と事前相談済み」と書ける状態にしてから総会にかけるのが、私のお勧めです。区分所有者の方々にとっても、「決議した色が後で変わる」ほど不安なことはありません。


令和8年度 居住環境整備促進補助金|60%・限度額200万円というシリーズ最高額

ここで村の補助金に移ります。忍野村には、私がこれまで185の自治体を調べてきた中で限度額が最も大きい住宅リフォーム補助金があります。

制度の中身

項目 内容
制度名 令和8年度 居住環境整備促進補助金交付事業(リフォーム補助金)
補助金額 補助対象工事費の60パーセント以内(限度額200万円)
対象物件 平成25年3月31日以前に建築され、現在居住している建物
対象 一般の個人用住宅のリフォーム
交付回数 1住宅1回のみ
募集件数 令和8年度は20件を限度。超過した場合は抽選
申請期間 令和8年4月8日(水)〜令和8年4月21日(火)土日祝を除く、8時30分〜17時15分
受付状況 令和8年度の受付は終了
書類提出 令和8年11月30日まで(2部)
完了報告 令和9年2月26日まで(2部)
財源 防衛省の調整交付金を一部充当

(出典:忍野村「令和8年度居住環境整備促進補助金交付事業(リフォーム補助金)」/ページ更新日2026年4月22日)

限度額200万円は、私が見てきた中で頭ひとつ抜けています。参考までに、近隣の富士北麓の町では住宅リフォーム補助の上限が10万円台という例もありました。忍野村の200万円は、桁が違います。

必須工事という条件の読み方

ただし、条件があります。村は「下記の必須工事のうち1つ以上行い、必須工事の割合が補助対象工事費の60パーセント以上であること」と定めています。必須工事は7種類です。

必須工事 工事内容
外壁、屋根、天井、または床の断熱に係る改修工事 次世代省エネ基準(平成11年基準)に対応する工事。屋根のみなど一部の実施も対象
窓の断熱に係る改修工事 次世代省エネ基準に対応。1居室のみなど一部の実施も対象
耐震シェルター設置工事 1居室のみの実施も対象
耐震性能の向上に資する工事 壁にすじかい等を設け耐震性能を向上させる工事
バリアフリー改修工事 手すり設置や段差解消など、バリアフリー改修促進税制の対象となる工事
防犯性向上に資する改修工事 「防犯性能の高い建物部品目録」掲載製品を使用した工事
防災・消火性能の向上に資する改修工事 火気使用室内装制限を考慮した改修工事。消火装置は住宅用火災報知機と併せて設置

選択工事として「住宅の居住部分に係る改修工事(必須住宅改修工事とあわせて行う住宅改修工事)」が認められます。

注目していただきたいのは1行目です。「外壁、屋根、天井、または床の断熱に係る改修工事」で、「屋根のみの実施など、一部の実施も対象」と書かれています。外壁と屋根の断熱改修が、必須工事の筆頭に来ています。

管理組合の共用部で使えるか(正直に申し上げます)

正直に申し上げます。この補助金を管理組合が共用部の大規模修繕で使う枠組みは、公表されている要件からは読み取れません。

理由は3つです。

  • 制度の説明が「一般の個人用住宅のリフォーム」から始まっている
  • 対象物件が「現在居住している建物」で、申請に住民票の写しが必要
  • 申請者と対象住宅の所有者が異なる場合は「所有者と申請者が2親等以内の親族であることが分かる公的証明」を求めており、管理組合という法人格を想定した記述が無い

補助対象とならない工事にも「住宅と別棟の倉庫、車庫の工事」「家具等の設置工事」「浄化槽の設置工事」「新築・増築工事」が挙がっていますが、共用部については言及がありません。言及が無いことは、使えるという意味ではなく、確認が必要という意味です。

そのうえで、私が理事長さまにお伝えしている使い方は2つあります。

1つ目:区分所有者の専有部改修として、窓の断熱改修に使う可能性を探る。 窓の断熱改修は必須工事に入っています。分譲マンションの窓は、多くの管理規約で共用部として扱われますが、専用使用権が設定されています。管理組合として窓の一斉更新をやるのか、区分所有者が個別に申請できるのかは、規約と村の判断の両方に関わります。これは村に聞かないと分かりません。

2つ目:賃貸マンションのオーナーさまは、居住要件を確認する。 対象物件が「現在居住している建物」ですから、オーナーさまが自ら住んでいない賃貸物件は、文言上は苦しくなります。ただし、オーナーさま自身が1室に居住している併用型の物件などは、ケースとして相談の余地があるかもしれません。ここも村の判断です。

聞き方の文例を置いておきます。

「忍野村内の分譲マンションの管理組合です。共用部の大規模修繕で外壁と屋根の断熱改修を行う場合、居住環境整備促進補助金の対象になりますか。ならない場合、区分所有者が専有部の窓の断熱改修として個別に申請することは可能でしょうか」

令和8年度は4月の10営業日で受付が終わっていた

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい実務の話です。

限度額200万円という手厚い制度が、令和8年4月8日から4月21日までの、土日祝を除く10営業日でしか受け付けられていません。しかも20件を限度とした抽選です。そして村のページには「令和8年度の受付は終了いたしました」と明記されています。

つまり、2026年9月にこの記事を読んで「200万円の補助金があるのか」と思って村に電話しても、令和8年度分は間に合いません。

私がこの制度から学んでほしいことは、金額ではなく仕組みのほうです。

補助金の中には、年度の頭の2週間しか窓が開かないものがある。

大規模修繕は、劣化診断から総会決議までに半年から1年かかります。その工程を「補助金の受付が始まってから考える」と、間に合いません。逆算して、年明けの1月から2月の時点で、翌年度の補助金の受付時期を村に確認しておく。これが、忍野村で200万円の枠を取りに行くための唯一の方法です。

令和9年度の受付があるかどうか、時期が同じかどうかは、公表されていません。私は理事長さまに「1月と3月に建設課へ電話を入れて、翌年度の受付時期を聞いてください」とお願いしています。電話1本で200万円の可能性が開く制度は、そう多くありません。

防衛省の調整交付金という財源の意味

村はこの補助金について「この補助金は防衛省の調整交付金を一部充てています」と明記し、ページに防衛省のエンブレムを掲載しています。忍野村には北富士演習場が関わっており、山梨県には北富士演習場対策課という専任の課があります。

これが何を意味するか。制度の財源が村の一般財源ではなく、国の別の枠から来ているということです。私が一次情報だけから言えるのはここまでですが、財源の性質が違えば、予算規模も継続性も、一般的な市町村のリフォーム補助金とは別の論理で決まると考えるのが自然です。この点も含めて、翌年度の見通しは村に直接確認するのが確実です。


村内業者要件と「建築士が管理代行を行う工事」

忍野村の補助金を読むうえで、もう1つ押さえておきたい条文があります。補助対象工事の施工者要件です。

施工を忍野村内に本店および支店・営業所を有する法人、または、個人事業者(代表者が忍野村に住所を有する個人)が行う工事。もしくは建築士が管理代行を行う工事。

(出典:忍野村「令和8年度居住環境整備促進補助金交付事業」)

前半だけ読むと「村内業者しか使えない」と見えます。人口1万人に届かない村ですから、大規模修繕を請け負える村内業者がどれだけあるかという現実的な問題があります。

しかし後半に「もしくは建築士が管理代行を行う工事」が入っています。これは実務上、かなり大きい一文です。村外の施工会社でも、建築士が工事監理を代行する体制を組めば、対象として読める余地があるということになります。

私はこの種の条文を、シリーズ185件の自治体調査の中で何度か見てきましたが、「村内業者限定」と「建築士の管理代行」を並列で認めている書き方は珍しいほうです。忍野村が、村内の施工能力の限界を制度側で織り込んでいるように読めます。

大規模修繕の場合、設計監理方式(設計事務所が設計と工事監理を担い、施工会社が工事を行う方式)を採れば、建築士の関与は自然に入ります。設計監理方式を選ぶことが、補助金の要件を満たす副産物になるという読み方です。ただし「管理代行」の具体的な要件は村の運用ですから、建設課に確認してください。


木造住宅耐震化補助事業|診断無料・改修最大1,437,500円

忍野村の耐震関係の補助です。マンションの共用部には直接届きませんが、金額が具体的なので整理します。

メニュー 補助額 対象
木造住宅耐震診断 無料 昭和56年5月31日以前に建築、現在も居住、ツーバイフォーを除く2階建て以下
木造住宅耐震改修工事 最大1,437,500円 診断で耐震基準を満たさなかった住宅
木造住宅建替え工事 最大1,437,500円 同上。既存住宅を耐震改修した場合の工事費相当額と建替え工事費の少ない方が基準
耐震シェルター設置工事 最大24万円 一部屋型またはベッド型

(出典:忍野村「木造住宅耐震化補助事業」)

村は「補助金を受けるためには、着手する前に申請が必要になります」と明記しています。事後申請は通りません。

1,437,500円という端数のある金額は、国と県の補助制度の積み上げから出てくる数字です。村は住宅耐震化緊急促進アクションプログラムとして「アクションプログラム2026」を公開しています。

無料の建築物防災出張講座は、理事会で使えます

もう1つ、お金の話ではありませんが使える制度があります。建築物防災出張講座です。

項目 内容
申し込める人 地区やサークルなどの10人以上のグループ
内容 忍野村と山梨県の職員が来て、映像を使って説明。地震のメカニズム、被害想定、建物の耐震診断、耐震改修とその効果、建物耐震の補助金について
所要時間 1時間程度
料金 無料
場所 村内であればどこでも出張

(出典:忍野村「建築物防災出張講座」)

私がこれを使う場面を申し上げます。大規模修繕の合意形成が進まない管理組合で、総会の前に開くのです。

修繕積立金の値上げや一時金の話が絡むと、理事会からの説明は「工事をやりたい側の説明」として受け取られがちです。ところが村と県の職員が来て、地震の被害想定と耐震の話を1時間するだけで、区分所有者の受け取り方が変わります。10人以上集まれば申し込めますから、マンション1棟の理事会と修繕委員会で足りることも多いはずです。

しかも「建物耐震の補助金について」が講座内容に明記されています。村と県の職員から、その場で補助金の話を聞けるわけです。私は施工会社ですから、この場に私が呼ばれる必要はありません。むしろ私がいないほうが、区分所有者の方々は率直に質問できます。


景観整備推進補助金|屋根の指定色塗り替えが2/3・上限10万円

忍野村には、景観のための補助金もあります。大規模修繕の屋根塗装に、直接関係します。

工種 仕様 施工基準 補助対象基本額 補助率 限度額
屋根工事 塗装(瓦葺・鉄板葺) 指定色(F15-20B)への塗り替え。2011年F版塗料用標準色見本帳(ワイド版)/日本塗料工業会 塗装工事費実績額 2/3 10万円
屋根工事 茅葺き替え 茅葺屋根登録制度の登録物件 3万円/坪 2/3 300万円
外構工事 生け垣 公道に面し延長5メートル以上など細かな基準あり 設置工事費実績額ほか 2/3 10万円

(出典:忍野村「景観整備推進補助金交付制度のご案内」/ページ更新日2023年11月27日)

対象となるのは「村内に住所を有し、対象工事に係る建築物などを有しているかた」で「村税などを完納しているかた」です。交付回数は各工事1世帯1回限り。新築は対象外です。

村は「事前着工および施工完了後の申請は認められません」と明記しています。

F15-20Bという指定色が意味すること

この制度でいちばん面白いのは、補助の条件が「村が指定した1色に塗ること」という点です。F15-20Bは、日本塗料工業会の2011年F版塗料用標準色見本帳(ワイド版)の色番号です。

つまり忍野村は、屋根の色を村全体で揃えていく方向に、補助金でインセンティブを付けています。景観計画の「富士山への眺望の確保」「自然環境との調和」という基本方針が、屋根の色という具体的な形で制度化されているわけです。

大規模修繕で屋根を塗る場合、私はこの選択肢を理事会に出します。「村の指定色にすると2/3・上限10万円の補助が付きます。指定色以外にすると補助はありません。どちらにしますか」という形です。上限10万円ですから金額のインパクトは小さいですが、どうせ景観計画の届出で色の協議をするなら、指定色を選んでおけば協議がスムーズになるという副産物があります。

ただし、この補助は「1世帯1回限り」で、対象は「村内に住所を有し建築物を有しているかた」です。管理組合が申請主体になれるかは、村に確認が必要です。ページの更新日が2023年11月27日で令和8年度の記載が無いことも、そのまま申し上げておきます。現行年度の取り扱いは企画課(0555-84-7738)にご確認ください。


忍野村やまなしKAITEKI住宅|最大120万円だが修繕は対象外

村のもう1つの住宅補助です。結論から言うと、大規模修繕には使えません。

項目 内容
交付金額 最大120万円(認定内容等により変動)
対象住宅 忍野村内のやまなしKAITEKI住宅認定制度の認定住宅で、山梨県内に本店を有する建築業者が施工した住宅
対象となる工事 新築、増築または改築
対象者 自ら居住する目的で建築または取得した方。住民登録あり。村税の滞納が無い方
申請期限 認定通知日または購入日から3か月以内
申請方法 建設課窓口へ直接持参(郵送不可)
フラット35 【フラット35】地域連携型が利用可能

(出典:忍野村「忍野村やまなしKAITEKI住宅について」/ページ更新日2026年4月1日)

対象となる工事が「新築、増築又は改築」です。大規模修繕は「修繕」であって「改築」ではありません。 建築基準法上の「改築」は、既存建築物の一部または全部を除却して同じ用途・規模のものを建てることを指します。外壁の塗り替えや防水の更新は入りません。

鮮度についての注記

このページには、私が確認した時点で気になる点が1つありました。ページの更新日が2026年4月1日(令和8年度)なのに、申請期間の欄が「令和7年10月1日(水曜日)〜令和8年2月27日(金曜日)」と令和7年度のままになっています。

令和8年度の申請期間が同じ10月からなのか、そもそも令和8年度も制度が続くのかは、このページからは読み取れません。推測で書くわけにはいきませんので、建設課(0555-84-7793)への確認事項として置いておきます。新築を検討されている方は、この1本の電話が120万円に関わります。

制度の詳細は山梨県のやまなしKAITEKI住宅のページとポータルサイトでも確認できます。


山梨県の12条点検|忍野村のマンションにも義務が及びます。しかも期限が近い

ここは急ぎの話です。今日この記事を読まれた方で、該当するマンションの理事長さま・オーナーさまは、この章を最優先で読んでください。

建築基準法第12条は、一定の建築物について、資格者に調査・検査をさせ、その結果を行政に報告する義務を定めています。この「一定の建築物」の範囲は、国の政令と、都道府県の細則の両方で決まります。

山梨県が公開している定期報告対象一覧表から、共同住宅の行を引きます。

区分 指定の主体 対象 報告時期
下宿・共同住宅・寄宿舎 政令指定 ①3階以上にあるもの(100平方メートル超)②2階の対象用途床面積の合計が300平方メートル以上③地階にあるもの(100平方メートル超)/ただし高齢者、障害者等の就寝の用に供するもの(サービス付き高齢者向け住宅)に限る 3年毎
下宿・共同住宅・寄宿舎 県細則指定 ①5階以上の階にあり、かつ、対象用途の床面積の合計が1,000平方メートル以上であるもの 3年毎

(出典:山梨県「定期報告対象一覧表」)

ここが多くの県と決定的に違います

政令指定のほうは、サービス付き高齢者向け住宅などに限定されています。多くの都道府県は、一般の分譲マンションを定期報告の対象から外しています。

ところが山梨県は、県細則で〔下宿、共同住宅、寄宿舎〕を独立して指定し、「5階以上の階にあり、かつ、対象用途の床面積の合計が1,000平方メートル以上」という要件を置いています。サ高住に限るという限定は、この県細則指定の行には付いていません。

つまり、忍野村にある5階以上・延べ1,000平方メートル以上の一般の分譲マンション・賃貸マンションは、3年毎の定期報告の対象になり得ます。

これは、管理組合にとって決して小さな話ではありません。定期報告には、外壁の調査が含まれます。そして外壁の調査は、大規模修繕の劣化診断と実務が重なります。

提出期限は9月30日です

山梨県は「定期報告の提出は、報告年度の4月1日から9月30日までです」と明記しています(出典:山梨県「定期報告制度について」/ページ更新日2026年8月31日)。

この記事の公開日は2026年9月18日です。9月30日まで、残り12日です。

県は「期限内に報告のない場合は、督促をさせていただきます」としています。

項目 内容
提出期限 報告年度の4月1日〜9月30日
提出先 山梨県庁建築住宅課 建築防災担当(甲府市丸の内1-6-1 山梨県庁別館3階)。郵送も可
提出部数 2部(正本1部、副本1部)
提出書類 定期調査(検査)報告書、調査(検査)結果表、概要書、調査(検査)結果図(A3)、関係写真(要是正の場合)
様式 令和7年7月1日施行で改正済み。県のダウンロードページから最新版を取得
代行 一般社団法人山梨県建築設計協会に代行を依頼可能(昇降機・準用工作物を除く)
調査できる資格者 一級建築士、二級建築士、特定建築物調査員
問い合わせ 山梨県建築住宅課 建築防災担当 055-223-1734

ただし「令和8年度が自分の物件の報告年度か」は確認が必要です

3年毎ですから、毎年出すわけではありません。どの年度が報告年度かは、県が公開している定期報告年度一覧表で確認します。

正直に申し上げます。私が確認した限り、この年度一覧表のPDFは令和2年4月作成のもので、令和8年度が共同住宅の報告年度に当たるかどうかを、この表だけから確実に読み取ることができませんでした。推測で「今年です」とも「今年ではありません」とも書けません。

ですので、電話で聞いてください。 聞き方の文例を置きます。

「忍野村にある○階建て・延べ床面積○平方メートルの分譲マンションです。県細則指定の共同住宅として定期報告の対象になりますか。対象の場合、令和8年度は報告年度に当たりますか」

建物の階数と延べ床面積を手元に用意して、055-223-1734 に電話する。それだけです。期限まで12日ですから、来週まで待つ理由がありません。

なお、甲府市内の建築物は甲府市が特定行政庁になりますが、忍野村は県が特定行政庁です。窓口は県で合っています。

12条点検と大規模修繕をワンセットにする

私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。理由は単純で、外壁の調査を2回やるのは無駄だからです。

定期報告の外壁調査では、タイルやモルタルの浮き・剥落の危険性を見ます。竣工や外壁改修から10年を超えた建物では、全面的な打診調査等が求められる運用になっています。この打診調査は、大規模修繕の劣化診断とほぼ同じ作業です。

打診調査の㎡単価の目安は、私の経験では250円から500円/㎡です。10階建て・外周80メートルのマンションなら外壁面積はおおまかに数千平方メートルになりますから、単価の差がそのまま数十万円の差になります。そして、この調査にどう足場を架けるかで、金額がさらに変わります。

足場を架けて打診調査をやると、調査だけで足場費が発生します。 一方、ロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が壁面に降りて作業する無足場工法)なら、足場を架けずに全面打診ができます。私が忍野村のような山間の敷地でロープアクセスを推すのは、この場面です。技術的な詳細は姉妹サイトのロープアクセスドットコムで解説しています。

そして、打診調査の結果は定期報告にも使え、大規模修繕の設計にも使えます。1回の調査で2つの目的を満たす。 これが工法選択で最初に効いてくる部分です。詳しくは明誠のロープアクセス工法のご紹介をご覧ください。


マンション管理計画認定制度|忍野村は山梨県が窓口

管理計画認定制度は、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、管理組合が自治体から認定を受けられる制度です。

山梨県は、町村部にあるマンションのみを対象として、令和4年4月1日から認定の受付を開始しています。忍野村は村ですから、窓口は村ではなく山梨県です(出典:山梨県「マンション管理計画認定制度について」/ページ更新日2025年12月24日)。

手数料の21,900円差をどう見るか

申請区分 適合証あり 適合証なし
認定(更新)申請/長期修繕計画が1つ 3,600円 25,500円
長期修繕計画が2以上ある場合の加算 1計画あたり +1,600円 1計画あたり +14,700円
変更認定申請 — 適合証なし額の1/2(100円未満切捨て)=12,700円

差額は21,900円です。適合証は、公益財団法人マンション管理センターが発行します。県は「1.の方法(適合証を受けてから県へ申請)による申請を原則としています」としています。

私はこの21,900円を、差し戻しで総会日程が崩れるリスクを消すための費用として説明しています。管理計画認定は、管理規約や長期修繕計画の内容が基準を満たしているかを審査されます。自分たちで直接申請して不備を指摘されると、規約や計画の修正が必要になり、修正には総会決議が絡むことがあります。年1回の通常総会を1年待つことになれば、21,900円どころの話ではありません。

県は「認定申請を予定されている場合は、申請の前に建築住宅課企画担当(055-223-1730)へご相談ください」としています。県独自の基準はありません。要綱は山梨県マンション管理計画認定要綱で公開されています。

認定を取ると何が変わるか

認定を取る実利は、主に資金面です。住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資で金利の引き下げが受けられ、マンションすまい・る債の利率にも関係します。また、中古市場で「管理が認定されているマンション」として説明できる材料になります。

なお、このページの更新日は2025年12月24日で、令和7年度中の更新です。手数料は山梨県手数料条例に基づくもので毎年変わる性質のものではありませんが、令和8年度の金額として使う前に、055-223-1730 で確認していただくのが確実です。


マンション管理適正化支援法人|利害関係のない相談先を1つ持ってください

令和7年11月28日に一部施行された改正法により、マンション管理適正化支援法人の制度が動いています。山梨県もマンション管理適正化支援法人についてのページを設けており、町村部は県が登録の窓口になります。

支援法人の業務には、大規模修繕工事の発注等に関する助言が含まれます。

ここで、私は自分の立場を正直に書きます。私は施工会社の代表です。 明誠は大規模修繕工事を受注する会社ですから、私の話には当然ながら利害関係があります。

そのうえで申し上げます。管理組合は、工事を受注しない立場の相談先を1つ持っておくべきです。 私が出す見積が妥当なのか、私が勧める工法が本当にその建物に合っているのか、それを利害関係のない第三者に見てもらう。それで私の提案が落ちることがあっても、それは健全なことだと思っています。

山梨県の建築住宅課企画担当(055-223-1730)に、支援法人の登録状況を聞いてみてください。登録法人がまだ無い場合でも、県が相談先を紹介してくれることがあります。


令和8年度の国の支援策|マンション耐震改修は国と地方で1/3

村の制度が薄い分、国の制度を丁寧に拾います。国土交通省が公表している令和8年度の支援策から、マンションに関係するものを抜きます。

支援 対象 交付率・交付額
住宅・建築物安全ストック形成事業(耐震改修) マンション 国と地方で1/3
同(耐震改修) その他 国と地方で23%
同(耐震診断) 民間実施 国と地方で2/3
同(補強設計等) 民間実施 国と地方で2/3
住宅パッケージ支援(補強設計等+耐震改修または建替え) 密集市街地等(防火改修含む) 175万円
同 多雪区域 140万円
同 その他 115万円
住宅・建築物防災力緊急促進事業(令和8年度予算案 国費105億円) 要緊急安全確認大規模建築物(ホテル・旅館、デパート等) 補強設計1/2、耐震改修1/3
同 要安全確認計画記載建築物(避難路沿道建築物等) 耐震診断1/2、補強設計1/2、耐震改修2/5

(出典:国土交通省「住宅・建築物の耐震改修の支援策(令和8年度)」)

「多雪区域140万円」は忍野村で使えるか

表の中に「多雪区域 140万円」があります。忍野村は富士北麓の標高の高い地域ですから、多雪区域に該当するかどうかが気になるところです。

これは断定を避けます。 多雪区域の指定は建築基準法施行令に基づいて特定行政庁が規則で定めるもので、自治体ごと、場合によっては同じ自治体内でも区域によって異なります。忍野村が多雪区域に該当するかは、建設課(0555-84-7793)か山梨県建築住宅課に確認してください。該当すれば、その他(115万円)との差は25万円です。

融資も押さえておく

住宅金融支援機構のリフォーム融資も、令和8年度の数字が公表されています。

区分 内容
個人向けリフォーム融資 融資限度額1,500万円(住宅部分の工事費が上限)。金利は償還期間10年以内1.90%、11年〜20年以内2.13%(令和8年4月1日現在)
高齢者向け返済特例 融資限度額1,000万円。70歳以上で申し込む場合は無利子化。利用者の死亡時に物件売却等で返済
マンション共用部分リフォーム融資 管理組合向け。詳細は住宅金融支援機構へ

(出典:同上/金利は毎月見直されます)

管理組合向けの「マンション共用部分リフォーム融資」があるという点を、あえて強調しておきます。修繕積立金が足りないから工事を延ばす、という判断をされる管理組合が本当に多いのですが、延ばした結果、劣化が進んで工事費が上がることがあります。融資という選択肢を検討したうえで延ばすのと、知らずに延ばすのは、別のことです。


長寿命化促進税制は令和9年3月31日完了が期限です

マンション長寿命化促進税制は、一定の要件を満たす大規模修繕を行った管理組合のマンションについて、固定資産税を減額する制度です。

期限は令和9年3月31日までに工事が完了していること。この記事の公開日である2026年9月18日から数えると、残り約6か月半です。

私が総会の場で毎回申し上げている注意点が2つあります。

1つ目。減るのは固定資産税だけで、都市計画税は対象外です。 「税金が3分の1になる」という言い方をされることがありますが、正確ではありません。忍野村で都市計画税が課税されているかどうかも含めて、村の税務担当に確認してください。忍野村には都市計画法に基づく風致地区がありますから、都市計画区域は存在します。課税の有無は別問題ですので、村に聞くのが確実です。

2つ目。外壁塗装・床防水・屋根防水を一体で実施することが要件です。 予算の都合で工事を分割発注すると、要件を外すおそれがあります。「今年は外壁だけ、来年は屋上防水」という分割は、資金計画としては理解できますが、税制の要件との関係を必ず設計者に確認してください。

耐震改修促進税制のほうも、令和8年度の数字が出ています。所得税は令和10年12月まで、耐震改修工事に係る標準的な工事費用相当額の10%等を控除。固定資産税は令和13年3月まで、120平方メートル相当部分まで1年間1/2減額です(出典:国土交通省)。


令和8年6月26日の地震|忍野村は震度5弱でした

令和8年6月26日22時28分、山梨県東部・富士五湖でマグニチュード5.6、深さ約20キロメートルの地震が発生しました。最大震度は富士河口湖町で6弱です(出典:気象庁「令和8年6月26日22時29分頃の山梨県東部・富士五湖の地震について」)。

忍野村忍草の観測点では、震度5弱を観測しています。 近隣では大月市御太刀で5強、西桂町小沼・山中湖村山中・鳴沢村役場・富士河口湖町勝山でいずれも5弱でした(出典:公益財団法人地震予知総合研究振興会「2026年6月26日山梨県東部・富士五湖の地震」)。

この記事の公開日から、約2か月半前の出来事です。

震度5弱を受けた建物で、理事会が今月確認すべき5か所

震度5弱は、建物が倒壊するような揺れではありません。ですが、外装の仕上げ材には確実に効きます。私が現場で見てきた順に、確認すべき場所を挙げます。

1. タイルの目地と、タイルの浮き

これが一番厄介です。タイルは、接着層が剥離しても割れません。 下地との接着が切れていても、タイルそのものは平らに並んで見えます。目視では分かりません。打診棒で叩いて音の違いを聴くか、赤外線サーモグラフィで温度差を見るか、どちらかの方法が必要です。

そして、剥離した部分は放置すると広がります。忍野村のような標高の高い地域では、剥離した隙間に入った水が冬に凍って膨張し、春に融けて縮む。これを一冬繰り返すと、剥離範囲が目に見えて広がります。震度5弱を受けた建物で、越冬前にタイルを確認する意味は、ここにあります。

2. 打継ぎ部のシーリング

コンクリートを打った継ぎ目のシーリング(防水のためのゴム状の充填材)は、地震の層間変形で引っ張られます。切れていると、そこから雨水が入ります。

3. バルコニー手すり壁の付け根

手すり壁の根元は、地震で微細なひび割れが入りやすい場所です。ここから入った水は、下階の天井に出ます。

4. パラペット天端と笠木

屋上の立ち上がり部分の天端と、その上の笠木(かさぎ/立ち上がりの上端を覆う部材)です。笠木のジョイント部のシーリングが切れていることがあります。

5. パイプスペース内の配管継手

共用の縦配管が通る空間です。継手の緩みは、すぐには漏れず、数か月してから漏水として出てくることがあります。

理事会でこの話をどう出すか

「地震があったから調査をしましょう」と提案すると、費用の話で止まることがあります。私がお勧めしている出し方は、こうです。

「6月26日の地震で村内は震度5弱でした。大規模修繕の時期が近いなら、劣化診断の実施時期をこの秋に前倒しできないか検討したい」

調査を追加するのではなく、もともとやる予定の劣化診断の時期を前に動かすという議題にします。予算が増えないので、話が進みやすくなります。

漏水が既に出ている場合は、季節を待たずに動いてください。明誠の漏水対応のページに、緊急時の考え方をまとめています。


忍野村の気候と、マンションの劣化のしかた

忍野村は富士北麓の高原に位置します。海沿いの自治体とは、建物の劣化の仕方がまったく違います。方位別に整理します。

部位・方位 忍野村で効く劣化要因 実務上の対応
北面・北東面 日が当たらず乾きにくい。放射冷却で結露。凍結融解の影響が最も大きい 防藻・防カビ性能のある塗料。ひび割れ補修は凍結期前に完了させる
南面・南西面 標高が高く紫外線が強い。日較差が大きい 塗膜の耐候性。シーリングの伸縮疲労
屋上・パラペット 積雪荷重と融雪水。ドレンに水が集中する ドレン周りの防水層の重点確認。ルーフドレンの詰まり点検
バルコニー床 融雪水が滞留しやすい。凍結で防水層が持ち上がる 水勾配の確認。防水層の膨れ
タイル面全般 凍結融解による剥離範囲の拡大 打診または赤外線による全面調査

忍野村で工期が持つ意味

ここが、忍野村の大規模修繕でいちばん金額に効く論点です。

塗装工事には、施工可能な気象条件があります。一般に、気温5℃以下または湿度85%以上では塗装ができません。 これは塗料メーカーの仕様書に書かれている条件で、守らないと塗膜が正常に形成されません。

忍野村の気候でこの条件を当てると、実質的な塗装可能期間は、おおよそ4月から11月に限られます。 12月から3月は、朝晩の気温が下がって作業できない日が増えます。

これが何を意味するか。忍野村では、工期が1か月短くなることが、そのまま「年内に完了できるかどうか」を決めることがあるのです。

年内に終わらなければ、足場は冬を越します。足場のリース費用は月単位で発生しますから、12月から3月の4か月分が上乗せされます。30戸規模のマンションで、足場リースの延長費が月に数十万円という規模になることもあります。工期短縮が、そのまま足場リースの冬越し費用の回避になる。 これが、忍野村でロープアクセス工法やハイブリッド工法を私が推す、いちばん実務的な理由です。

そしてこの話は、冒頭の景観届出の30日とつながります。届出で1か月遅れると、年内完了の可否が変わる。 だから私は、忍野村の案件では工程表の一番上に届出の行を書くのです。


忍野村で「12年周期」は当てはまるか

大規模修繕は12年周期とよく言われます。国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインが示す考え方が広まったものですが、これは全国一律の話ではありません。忍野村の建物では、前倒しすべきサインと、待ってよいサインがあります。

前倒しを検討すべきサイン4つ

  1. タイル面に、叩くと音の違う箇所が複数ある(凍結融解で範囲が広がります)
  2. 北面の外壁に、藻や黒ずみが広がっている(塗膜の防水性能が落ちているサイン)
  3. 屋上のドレン周りに、水がたまった跡がある(融雪水の集中で防水層が傷んでいます)
  4. 6月26日の地震以降、原因不明の漏水が1件でも出ている

待ってよいサイン3つ

  1. 塗膜のチョーキング(手で触ると白い粉が付く現象)は出ているが、ひび割れは0.2ミリ未満
  2. シーリングに硬化は見られるが、切れや剥離はない
  3. タイルの打診で異常音がなく、目地の欠損もない

前倒しサインが2つ以上当てはまるなら、12年を待たずに劣化診断を入れる価値があります。逆に、待ってよいサインが3つそろっているなら、慌てて工事をする必要はありません。私は工事を受注する立場ですが、「まだ早いです」と申し上げる現場は普通にあります。


工法の選び方|足場・ロープアクセス・ハイブリッド

ここで、私の会社の話を少しさせてください。明誠は、3つの工法から建物に合ったものを提案します。

工法 内容 忍野村で向くケース
通常足場工法 従来の仮設足場を架けて施工 中低層、形状が複雑、バルコニー内の作業量が多い
ロープアクセス工法(無足場工法) 産業用ロープで作業員が壁面に降りて施工。足場を架けない 敷地が狭い、傾斜地、足場の設置が難しい、工期短縮を優先する
ハイブリッド工法 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける 大規模・複雑な物件で総合コストを最適化する

明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法による高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では、過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工し、日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズ本部を立ち上げ、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟しています。工法別の技術情報はロープアクセスドットコムにまとめています。

忍野村の立地条件と、ロープアクセスの効き方

忍野村の立地条件 ロープアクセスが効く理由
塗装可能期間が4月〜11月に限られる 工期が短縮でき、年内完了の可能性が上がる
敷地に余裕のない物件、傾斜地の物件がある 足場の設置スペースが不要
景観届出で着工が30日以上後ろにずれる 短い工期でずれを吸収できる
12条点検の打診調査が必要な物件がある 足場を架けずに全面打診ができる
富士山への眺望が価値になっている 足場とメッシュシートで眺望が塞がる期間を短くできる

最後の行は、忍野村ならではの話です。富士山が見えることが物件の価値になっている地域で、足場とメッシュシートを3か月架けるのと1.5か月架けるのでは、居住者の方の体感がまったく違います。

ロープアクセス工法は万能ではありません

正直に申し上げます。ロープアクセス工法は万能ではありません。 私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる現場は、普通にあります。

足場が有利な条件は、主に4つです。

  1. バルコニー内部の作業量が多い(床防水の全面更新、手すりの交換など)
  2. 建物の形状が複雑(凹凸が多い、庇が張り出している)
  3. 低層で、外周に足場を架けるスペースが十分ある(足場のほうが作業効率が高い)
  4. 同時に行う工事が多い(サッシ交換、屋上設備の更新などを並行する)

もう1つ、誤解されやすい点を書いておきます。「ロープアクセスなら居住者の立ち入りがゼロになる」というのは正しくありません。 バルコニー内部の作業は、工法にかかわらず立ち入りが必要です。ロープアクセスで減るのは、足場を架けることによる「窓を開けられない期間」「バルコニーに足場が立つ期間」のほうです。ここを曖昧にして契約すると、後で居住者の方からのお叱りを受けるのは、施工会社ではなく理事会です。

料金の考え方は明誠の料金についての考え方に、安全管理の体制は安全管理に書いています。管理組合の方は管理組合向けサービス、賃貸オーナーさまはオーナー向けサービスもご覧ください。これまでの施工事例は施工事例(約6,000棟)からご覧いただけます。


見積書で私が見る5つのポイント(忍野村版)

他社の見積書を理事長さまから見せていただくことがよくあります。忍野村の物件で、私が特に見る5点です。

1. 景観計画行為届出書の作成費と、各面の彩色立面図の作図費が明示されているか

忍野村固有の項目です。「諸経費」に丸められていると、後で追加請求の話になります。金額を明示してもらってください。

2. 仮定数量を超えた分の単価が契約書に書かれているか

改修工事では、タイルの浮きの数量やひび割れの延長を、着工前に正確には出せません。そこで「仮定数量」で契約します。問題は、実際が仮定を超えたときです。契約書にこの一文を入れておいてください。

「タイル浮き補修、ひび割れ補修その他の仮定数量計上項目について、実数が仮定数量を超過した場合の適用単価は、本契約書記載の単価とする。超過分について単価の変更を要する場合は、施工前に監理者の確認と発注者の書面承認を得るものとする。」

3. 足場リースの延長費用の負担が決まっているか

忍野村では、これが年内完了と直結します。天候による工期延長の場合に足場リース延長費をどちらが負担するか、契約書で決めておいてください。

4. 高圧洗浄の排水計画が書かれているか

忍野村には湧水と清流があり、村の景観計画にも「湧水・河川の水質保全」が基本方針として掲げられています。忍草地区水辺景観形成重点区域も設定されています。高圧洗浄の排水を敷地内でどう処理するかを、見積と施工計画書に書いてもらってください。これは忍野村では、近隣対応というより地域の合意に関わる論点です。

5. 監理者と施工会社に資本関係がないか

設計監理方式を採るなら、監理者が施工会社と資本関係にないことを確認してください。監理者は施工の品質を発注者の側から確認する立場です。


モデルケース2本|忍野村の物件で試算する

実際の数字感をお伝えします。物件によって大きく変動しますので、あくまで参考値としてお読みください。

ケース1:忍野八海周辺 築27年・5階建て・28戸

項目 通常足場工法 ハイブリッド工法
工事費の目安 約3,700万円 約3,150万円
差額 — 約550万円(1戸あたり約20万円)
工期 約4.5か月 約3.5か月

外壁塗装、タイル補修、屋上防水、シーリング更新、バルコニー床防水、鉄部塗装を含む想定です。バルコニー側は足場、道路面と妻面はロープアクセスという使い分けです。工期1か月の短縮で、5月着工なら8月中旬に完了します。

ケース2:村内の傾斜地・築33年・4階建て・18戸

項目 通常足場工法 ロープアクセス主体
工事費の目安 約2,600万円 約2,080万円
差額 — 約520万円(1戸あたり約29万円)
工期 約4か月 約2.5か月

敷地に高低差があり、足場の架設に地盤の補強が必要になる想定です。ロープアクセス主体にすることで、足場の架設・解体と地盤養生の工程がまるごと落ちます。工期2.5か月なら、8月末に着工しても11月中旬に完了します。 逆に足場で4か月かかると12月末になり、塗装可能期間を外れる可能性が出てきます。

なお、外壁塗装の㎡単価の目安は3,500円から4,500円/㎡、防水は5,000円から8,000円/㎡、打診調査は250円から500円/㎡が私の経験上のレンジです。30戸規模のマンションの大規模修繕の総額は3,500万円から5,000万円、そのうち仮設足場が15%から25%を占めるのが一般的な構成です。この15%から25%が、工法選択で動く部分です。


忍野村と山梨県の窓口一覧

電話をかける前に、この表を手元に置いてください。

用件 窓口 電話番号
景観計画行為の届出、景観整備推進補助金 忍野村 企画課 0555-84-7738
風致地区、リフォーム補助金、木造耐震、KAITEKI住宅、建築確認、防災出張講座 忍野村 建設課 0555-84-7793(FAX 0555-84-7805)
村役場代表 忍野村役場 0555-84-3111(FAX 0555-84-3717)
12条点検(定期報告) 山梨県 建築住宅課 建築防災担当 055-223-1734
管理計画認定、管理適正化支援法人 山梨県 建築住宅課 企画担当 055-223-1730

村役場の所在地は、山梨県南都留郡忍野村忍草1514(本館)です。開庁時間は平日8時30分から17時15分まで(土日祝、年末年始を除く)。

実務メモを1つ。 企画課と建設課は同じ役場です。景観届出(企画課)と風致地区の確認(建設課)は、1回の来庁で両方回れます。一方、県案件は甲府市までの移動になりますから、先に電話で済ませるのが効率的です。忍野村から甲府市までは車で1時間前後かかります。

もう1つ。KAITEKI住宅の補助金は郵送申請を受け付けていません(窓口持参のみ)。新築の方は、窓口に行く日を確保してください。


よくあるご質問

Q. 忍野村に、マンションの大規模修繕に直接使える村の補助金はありますか?

A. 公表されている要件からは、管理組合が共用部の大規模修繕で使える村の補助金は見当たりません。令和8年度居住環境整備促進補助金(60%以内・限度額200万円)は「一般の個人用住宅のリフォーム」が対象で、令和8年度の受付は終了しています。村の制度ではなく、国の耐震改修支援(マンションは国と地方で1/3)、長寿命化促進税制、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資を組み合わせるのが実務的な進め方です。

Q. 外壁を塗り替えるだけでも、村に届出が必要ですか?

A. 忍野村は村全域が景観計画区域で、建築面積10平方メートル超の建築物について「外観を変更することとなる修繕もしくは模様替えまたは色彩の変更」が届出対象行為とされています。マンションの外壁塗り替えはこれに当たると読めます。着手予定日の30日前までに、企画課(0555-84-7738)へ景観計画行為届出書を提出してください。同色での塗り替えの扱いは村の判断になりますので、企画課にご確認ください。

Q. 届出に必要な図面は、大規模修繕の見積に入っていますか?

A. 多くの場合、入っていません。村は各面の彩色された立面図(50分の1以上)、位置図(2,500分の1以上)、配置図(100分の1以上)、現況カラー写真(2方向以上)を求めています。改修工事の標準的な見積にはこの作図が含まれないことが多いので、「景観計画行為届出書の作成費」と「各面の彩色立面図の作図費」が入っているか、項目名を挙げて確認してください。

Q. 外壁の色は自由に選べますか?

A. 風致地区に入っている場合、屋根・外壁等の最大面積色がマンセル値で制限されます。色相はR・YR・Y・GY・G・N、明度は3以上7以下(無彩色Nは4以上9以下)、彩度は4以下です。マンションでよく使われる明度8以上のベージュ系オフホワイトは、有彩色であれば基準の範囲を外れる読み方になります。候補色のマンセル値を塗料メーカーから書面でもらい、総会の前に建設課(0555-84-7793)へ確認するのが安全です。

Q. 忍野村のマンションも、12条点検(定期報告)の対象になりますか?

A. なり得ます。山梨県は県細則で〔下宿、共同住宅、寄宿舎〕を指定しており、「5階以上の階にあり、かつ、対象用途の床面積の合計が1,000平方メートル以上」のものが3年毎の報告対象です。サービス付き高齢者向け住宅に限るという限定は、この県細則指定には付いていません。提出期限は報告年度の4月1日から9月30日まで。令和8年度が自分の物件の報告年度に当たるかは、県建築住宅課建築防災担当(055-223-1734)にご確認ください。

Q. 管理計画認定の申請窓口は、忍野村ですか山梨県ですか?

A. 山梨県です。山梨県は町村部にあるマンションを対象に、令和4年4月1日から受付を開始しています。手数料は長期修繕計画が1つの場合、適合証あり3,600円、適合証なし25,500円。県独自の基準はありません。申請前に建築住宅課企画担当(055-223-1730)への相談が案内されています。

Q. 令和8年6月の地震で、何か点検したほうがよいですか?

A. 忍野村忍草では震度5弱を観測しています。タイルの浮き、打継ぎ部のシーリング、バルコニー手すり壁の付け根、パラペット天端と笠木、パイプスペース内の配管継手の5か所を確認してください。特にタイルは接着層が剥離しても割れないため目視では分かりません。忍野村では冬の凍結融解で剥離範囲が広がりますので、越冬前の確認に意味があります。すでに大規模修繕の計画がある管理組合は、劣化診断の時期をこの秋に前倒しできないか検討する形で議題にすると、話が進みやすくなります。

Q. ロープアクセス工法にすれば、いくら安くなりますか?

A. 物件により大きく変動しますが、仮設足場は大規模修繕の総額の15%から25%を占めるのが一般的で、この部分が工法選択で動きます。本記事のモデルケースでは、28戸で約550万円(1戸あたり約20万円)、18戸で約520万円(1戸あたり約29万円)の差が出る想定を示しました。忍野村では、これに加えて「年内完了により足場リースの冬越し費用を回避できるか」という金額が乗ります。実際の金額は現地を見ないと出せませんので、概算のお見積は無料でお出ししています。


この記事のポイントまとめ

  • 忍野村は村全域が景観計画区域。外壁の色彩変更は着手30日前までに届出が必要
  • 風致地区では屋根・外壁の色がマンセル値で制限。明度7以下(無彩色は9以下)、彩度4以下
  • 届出の添付書類に50分の1の彩色立面図。見積に作図費が入っているか確認する
  • 村のリフォーム補助金は60%・限度額200万円だが、令和8年度は4月の10営業日で受付終了
  • 5階以上・1,000平方メートル以上の共同住宅は山梨県の12条点検の対象。提出期限は9月30日
  • 管理計画認定は山梨県が窓口。適合証あり3,600円、なし25,500円
  • 国のマンション耐震改修支援は国と地方で1/3。長寿命化促進税制は令和9年3月31日完了が期限
  • 忍野村の塗装可能期間は実質4月〜11月。工期短縮が年内完了と足場リース費に直結する

出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月18日時点で公表されている忍野村および国土交通省・山梨県の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず忍野村および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。とくに景観整備推進補助金(ページ更新日2023年11月27日)とやまなしKAITEKI住宅の申請期間(令和7年度の期間が掲載されたまま)は、令和8年度の取り扱いを窓口でご確認ください。


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月18日


忍野村の記事を書きながら、私はこの村の制度設計に少し感心していました。人口1万人に届かない村が、屋根の色を1色に定め、村全域を景観計画区域にし、その一方でリフォーム補助の限度額を200万円まで積んでいる。富士山の見える風景を守るために、ここまで踏み込んでいる自治体は多くありません。

そのぶん、大規模修繕をやる側の手間は増えます。届出があり、色の制約があり、工程に30日が乗ります。ですが私は、これを面倒な話としてお伝えしたくはありません。村が守ろうとしている風景の中に自分の建物が建っているということですから、色をどうするかは、資産価値の話としても筋が通っています。

9月30日の定期報告の期限まで、12日です。該当しそうなマンションの理事長さま・オーナーさまは、055-223-1734に電話1本だけ入れてみてください。それで終わる話かもしれませんし、終わらない話かもしれません。どちらにしても、知らずに督促を受けるより、ずっといい。

色の相談でも、届出の段取りでも、劣化診断の時期の話でも構いません。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームから、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。

マンション省エネ改修が「資産価値の分岐点」になる日|9月16日公布の政令で2027年4月に始まる上位住宅トップランナー制度と、築古が大規模修繕で取り返す5手順【2026年9月】

2026年9月18日 更新

Q. 2026年9月16日に公布された建築物省エネ法の政令で「上位住宅トップランナー制度」が2027年4月に始まると聞きました。新築の話に見えますが、築20年・30年のマンションを持っている私たちには関係があるのでしょうか。

A. 直接の規制対象ではありませんが、資産価値の面では大いに関係があります。この制度は、分譲マンションを年間2,000戸以上供給する事業者を国が名指しで指定し、省エネ性能の引き上げを計画・報告させる仕組みです(出典:国土交通省「改正建築物省エネ法の施行に伴う関係政令を閣議決定」令和8年9月11日)。つまり2027年4月以降に売り出される新築マンションの性能が、業界の主力プレイヤーごと一段引き上がる。比較される側に立つのは、いま建っている既存マンションです。

私は東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。この記事では、9月16日に公布されたばかりの政令の中身を一次情報で確認したうえで、「では築古の側は何をすればいいのか」を、実際の工事単価と、東京・関東で私たちが現場でやっていることに落として整理します。


結論:政令は新築の話。効いてくるのは「比べられる側」の話

先に結論を3行でまとめます。理事会や、オーナーさまの金融機関への説明で、そのまま使える形にしてあります。

# 何が起きたか 日付 築古側への影響
① 改正建築物省エネ法の関係政令が閣議決定 2026年9月11日 —
② 同政令の公布日(国交省発表で示された日付) 2026年9月16日 —
③ 上位住宅トップランナー制度が施行 2027年4月1日 新築の省エネ性能が底上げされ、既存との差が広がる

そして、築古マンション・賃貸オーナーの側でいま動かせるレバーは、大きく次の3つです。

  1. 大規模修繕のタイミングで省エネ改修を抱き合わせる(足場代・共通仮設費を二重に払わずに済む)
  2. 改修した部位を「省エネ部位ラベル」として見える化する(既存住宅を対象にした表示の仕組みが2024年11月から動いています)
  3. 長期修繕計画に省エネ改修を正式に位置づける(国のガイドラインは令和3年の見直しで有効性を明記済み。現行は令和6年6月改定版です)

この3つのどれもが、実は「工事の中身」よりも「工事のタイミングと段取り」で決まります。そこが今日いちばんお伝えしたい部分です。


9月16日公布の政令は、具体的に何を決めたのか

まず一次情報を正確に押さえます。令和8年7月に公布された「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律」について、施行期日を定める政令と、施行に必要な規定を整備する政令の2本が、令和8年9月11日に閣議決定されました。公布日は同日の発表で令和8年9月16日(水)、施行は令和9年4月1日(木)と示されています(出典:国土交通省 報道発表(令和8年9月11日))。

決まったのは「指定基準となる年間供給戸数」

政令の核心は、どのくらい多く住宅を供給している事業者を「上位住宅トップランナー」として指定するかという線引きです。

区分(政令上の呼称) 分かりやすく言うと 前年度の年間供給戸数の基準
特別特定一戸建て住宅建築主 建売戸建て住宅 2,000戸
特別特定共同住宅等建築主 分譲マンション 2,000戸
特別特定一戸建て住宅建設工事業者 注文戸建て住宅 2,000戸
特別特定共同住宅等建設工事業者 賃貸アパート 15,000戸

(出典:国土交通省 報道発表資料(令和8年9月11日))

指定された事業者は、中長期的計画の提出と、取組状況の毎年度の報告を求められます。施行は令和9年(2027年)4月1日です。同じ政令では、先導的な省エネ技術を評価する国土交通大臣認定制度の拡充も同日施行とされています。

ここで一つ、誤解を解いておきます

「トップランナー」と聞くと、既存の建物にも省エネ性能の義務が課されるように受け取られることがあります。この制度が対象にしているのは、あくまで新たに供給される住宅と、その供給事業者です。いま建っているマンションの管理組合や、既存の賃貸物件を持つオーナーさまに、この政令で新しい義務が直接発生するわけではありません。

私はこういう制度ニュースが出たとき、理事会でまず「これは誰に何を求める話なのか」を最初に切り分けるようにしています。そこを曖昧にしたまま「省エネ改修をやらないといけない」と煽る営業を、私はこの20年で何度も見てきました。正直に申し上げます。義務ではありません。ただし、放っておくと不利になる構図はあります。その構図を次にお話しします。


なぜ「新築の規制」が、東京・関東の築古マンションの資産価値に効くのか

ここからが本題です。理屈は単純で、不動産は常に相対評価で値段がつくからです。

2025年4月に、既に一段目の引き上げが済んでいる

見落とされがちですが、省エネ基準の適合義務化は既に動いています。令和7年(2025年)4月1日以降に着工する原則すべての新築住宅・非住宅に、省エネ基準への適合が求められるようになりました(出典:国土交通省「建築物省エネ法のページ」)。さらに令和8年度からは中規模非住宅建築物の省エネ基準も引き上げられています。今回の上位住宅トップランナー制度は、そこからさらに供給量の多い事業者を名指しで引き上げる段階にあたります。

つまり2027年4月以降、東京・神奈川・埼玉・千葉で売り出される新築分譲マンションの多くは、大手デベロッパーが供給するものである以上、「国に計画と報告を求められている水準」で作られることになります。

買う側・借りる側の比較表に、性能欄が増える

不動産ポータルサイトの物件ページを思い出してください。間取り・築年数・駅徒歩・管理費・修繕積立金。ここに「省エネ性能」の欄が加わったとき、築25年のマンションはどう見えるか。

私の実感で申し上げると、ここ2〜3年、内見の場で「この部屋、冬は寒いですか」と聞かれる頻度が明確に上がりました。以前は日当たりと騒音の質問ばかりだったのが、光熱費の話に変わってきている。光熱費は家賃の一部として認識されつつあるということです。

比較軸 2027年4月以降の新築 何もしない築25年 大規模修繕で改修した築25年
断熱性能 上位トップランナー水準が想定される 建設当時の基準のまま 外壁・屋上断熱+窓改修で底上げ可能
広告での性能表示 省エネ性能ラベル 表示困難な場合が多い 省エネ部位ラベルで改修部位を表示可能
入居者の光熱費 低い 高いまま 下げられる可能性
賃料・売却価格 高い 相対的に下がりやすい 下落を緩められる可能性

この表の3列目と4列目の差が、これから10年で開いていく。私はそう見ています。断定はしません。ただ、開いてから慌てても、大規模修繕の周期は12年前後が一般的ですから、次のチャンスは10年以上先になる。だから今日、このタイミングでお伝えしています。


賃貸オーナーが先に直面するのは「省エネ性能表示制度」

分譲マンションの管理組合より先に、賃貸オーナーさまのほうが実務的な影響を受けます。2024年4月から、住宅・建築物を販売・賃貸する事業者に対して、省エネ性能の表示が努力義務化されているからです(出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」)。

既存建築物の扱いは「表示を促進するが、勧告等の対象外」

ここは正確に書きます。国の整理では、施行日以降に建築確認申請を行う建築物には告示に従った表示を求める一方で、制度施行(令和6年4月1日)より前に建築確認申請を行った既存建築物については、必ずしも告示に従った表示を求めず、勧告等の措置の対象にもしないとされています(出典:国土交通省「省エネ性能表示制度」、同 事業者向け概要資料(PDF))。

つまり罰則の話ではありません。ですが、周りが表示する市場で、自分の物件だけ性能欄が空欄になるという事態は起きます。募集ポータル上で空欄が続くと、それ自体がシグナルになります。

「省エネ部位ラベル」という、既存住宅のための逃げ道

そこで用意されているのが省エネ部位ラベルです。省エネ性能の把握が難しい既存住宅について、省エネ性能の向上に資する改修等を行った部位を表示する仕組みです(出典:国土交通省)。

  • 発行は一般社団法人 住宅性能評価・表示協会のウェブサイト上のプログラムで行える
  • 窓、または給湯器のいずれかの入力が必須項目になっている
  • 該当する部位があれば任意項目として追加できる
  • PDFまたは画像データで出力され、そのまま募集資料に使える

(出典:国土交通省「省エネ部位ラベル解説版(事業者向け概要資料)」(PDF))

私がオーナーさまにお伝えしているのは、「大規模修繕で断熱や窓に手を入れるなら、工事が終わった時点でラベルを出しておきましょう」ということです。工事をしただけでは募集図面に載りません。改修した事実を、第三者に伝わる形にして初めて賃料に効く。ここを工務店任せにすると、たいてい抜け落ちます。


国のガイドラインは「省エネ改修の有効性」を明記している(令和3年追記・令和6年6月改定が現行)

「省エネ改修を長期修繕計画に入れていいのか」という質問を、理事会でよくいただきます。答えは、国のガイドラインが既に位置づけています。

省エネ改修の有効性が書き込まれたのは、令和3年9月28日に公表された「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」及び「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の見直しです(出典:国土交通省(令和3年9月28日))。その後、両ガイドラインは令和6年6月に再改定され、現行版は「平成20年6月 令和6年6月改定」となっています(出典:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」令和6年6月改定版(PDF))。令和3年の見直しの柱は次のとおりです。

  1. 既存マンションの長期修繕計画期間を、新築同様に2回の大規模修繕工事を含む30年以上に変更
  2. 大規模修繕工事の修繕周期の目安を、工事事例等を踏まえて一定の幅のある周期に変更
  3. 社会的要請を踏まえ、マンションの省エネ性能を向上させる改修工事の有効性を追記
  4. 昇降機の適切な維持管理に関する指針に沿った定期点検の重要性を追記
  5. 修繕積立金額の目安の㎡単価を更新し、既存マンションも計算式の対象に追加

3番目です。国が長期修繕計画のガイドラインに、省エネ改修の有効性を明記している。これは理事会で「なぜ修繕計画に省エネ項目を入れるのか」を説明するときに、そのまま使える一次情報です。

ただし、理事会資料に添付する際は令和6年6月改定版のPDFをお使いください。令和6年改定では、段階増額積立方式の引上げ幅の目安(初期は均等積立方式額の0.6倍以上、最終は1.1倍以内)や、マンション管理計画認定制度との関係が整理されています(出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」令和6年6月改定版(PDF))。

そして2番目の「一定の幅のある修繕周期」も重要です。12年ちょうどで機械的に回す必要はないという整理になっています。劣化診断の結果次第で13年目、14年目に伸ばせるケースもあり、その分を性能向上に振り替える設計が可能になります。


大規模修繕と省エネ改修を同時にやるべき、いちばん現実的な理由

ここは精神論ではなく、お金の話です。

仮設費は、工事の中身に関係なくかかる

マンション大規模修繕の総工費のうち、仮設足場が占める割合はおおむね15〜25%というのが、私が東京・関東の現場で見てきた感覚値です。30戸規模のマンションで総額3,500〜5,000万円のレンジだとすると、仮設だけでおおむね520〜1,250万円が動く計算になります。いずれも物件の規模・形状・立地で大きく変動する目安であり、実際の見積りは現地を見ないと出せません。

問題は、この仮設費が「何を直すか」にほとんど依存しないことです。外壁を塗るだけでも、外壁を塗って断熱材を入れて窓も替えても、足場は1回分しかかかりません。逆に言えば、別々の年にやると足場代を2回払うことになります。

進め方 仮設費の発生回数 居住者への影響 総額への効き方
大規模修繕(12年目)→ 省エネ改修(18年目) 2回 2回の工事期間 仮設費が二重にかかる
大規模修繕と省エネ改修を同時(12年目) 1回 1回にまとまる 仮設費を共有できる
部分的にロープアクセスを併用(ハイブリッド) 1回+必要部位のみ さらに短縮しやすい 仮設の絶対額を圧縮できる

主要工種の単価レンジ(東京・関東の一般的な目安)

理事会で「高いのか安いのか分からない」という声がきまって出るので、判断材料になる数字を出しておきます。あくまで目安・参考値で、建物の規模・形状・劣化状況・立地条件によって大きく変動します。

工種 ㎡単価の目安 備考
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡ 塗料グレード・下地補修量で変動
外壁打診調査 250〜500円/㎡ 全面打診か部分打診かで差が大きい
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/㎡ 工法(ウレタン/シート/アスファルト)で変動
シーリング打替え 700〜1,200円/m 目地形状・撤去の要否で変動

省エネ改修(外壁断熱・屋上断熱・窓の内窓設置など)を検討される場合、上の工事と同じ足場・同じ工程で動けるかどうかを最初に施工会社へ確認してください。「できます」と即答する会社と、「工程表を引き直して見ます」と答える会社では、後者のほうが信用できる、というのが私の経験則です。


足場・ロープアクセス・ハイブリッド、どれを選ぶかで仮設費は変わる

省エネ改修を抱き合わせると工事範囲が増えます。すると「工期が延びる」「足場が長く建つ」「居住者の負担が増える」という三重苦が起きやすい。ここを解く手段が、仮設のかけ方を変えるというアプローチです。

株式会社明誠は、通常の足場仮設工法、無足場工法であるロープアクセス工法、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物特性に応じて選べる体制をとっています。この3工法を揃えている会社は、日本でもそう多くありません。ロープアクセス工法の技術的な背景や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで体系的に解説しています。

3工法の比較

項目 通常足場工法 ロープアクセス工法(無足場) ハイブリッド工法
仮設費 高い 大幅に抑えられる 中間(必要部位のみ足場)
工期 長い 短縮しやすい 部位ごとに最適化
居住者の影響 窓外に足場・シートが長期間 シートなし、視界と採光を確保しやすい 影響範囲を限定できる
防犯面 足場が侵入経路になりうる 足場を組まない 足場期間を短縮
向いている建物 中低層・複雑形状・工事量が多い 高層・足場架設が難しい・コスト重視 大規模・複雑・総合最適が必要
断熱材の全面施工 施工しやすい 部位により制約あり 併用で解決しやすい

正直に申し上げると、外壁全面に断熱材を張る工事は、足場があったほうがやりやすいです。ロープアクセスが万能だとは申し上げません。一方で、屋上防水・シーリング打替え・タイル補修・窓まわりの止水といった部位は、ロープアクセスで十分にこなせます。

たとえば10階建て・外周80m・工期3ヶ月というモデルケースで考えると、仮設足場に168万円程度かかるところを、ロープアクセスの仮設であれば59万円程度、差額にして約109万円という試算になります(当社試算/10階建て・外周80m・工期3ヶ月のモデルケース)。これも建物形状と作業量で大きく振れる目安です。ただ、この差額が、そのまま断熱材や内窓の予算に回せるという発想ができるかどうかは大きい。私はこれを、いつもワンセットでご提案するようにしています。

なお、明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました(当社集計)。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています(当社集計)。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けており、品質面ではISO9001のマネジメントシステムに沿って運用しています。工法の詳細はロープアクセスドットコムにまとめていますので、同業の方や、技術的な裏付けを確認したい修繕委員の方はそちらもご覧ください。

明誠の料金の考え方は大規模修繕の料金の考え方に、工法の全体像はロープアクセス工法の技術詳細にまとめています。


東京23区・多摩地域で、この話がとくに効く3つの物件タイプ

東京・関東で20年やってきて、省エネ改修を抱き合わせる価値がとくに高いと感じる物件タイプを挙げます。

  1. 東京23区の単身者向け賃貸マンション(築20年以上) — 入居者の入れ替わりが早く、募集時の性能表示が効きやすい。光熱費の訴求が響く層です。
  2. 多摩地域・埼玉・千葉の郊外型ファミリーマンション(築25〜35年) — 新築供給との競合が強く、相対的な性能差が価格に出やすい。
  3. 神奈川・湾岸部の中高層マンション — 塩害と紫外線で外装の劣化が早く、どのみち修繕周期が来る。同時施工の経済性が最も高いタイプです。

逆に、築10年未満の物件や、すでに直近で外装改修を終えたばかりの物件は、急ぐ必要はありません。次の周期に向けて長期修繕計画へ項目を書き足しておくだけで十分だと私は考えます。


私が現場で見てきた、省エネ改修が空回りする3つのパターン

ここは失敗談です。両論併記の意味も込めて、率直に書きます。

パターン1:窓だけ替えて、外壁の断熱を放置した

内窓を入れると体感はすぐ変わります。ですが、外壁の断熱性能が低いままだと、結露の発生位置が窓から壁に移ることがあります。「窓の結露は消えたのに、北側の壁にカビが出た」というご相談を、私はこれまで何度も受けてきました。部位ごとの断熱バランスを見ずに手を入れると起きます。

パターン2:補助金の交付決定を待たずに着工してしまった

省エネ改修系の支援制度の多くは、交付決定前の着工を対象外としています。工事のスケジュールを先に固めてしまい、後から制度に申し込んで対象外になる。これは本当にもったいない。制度は年度ごとに要件・受付期間・予算枠が変わりますので、検討される場合は、その年度の公式ページで最新の条件をご確認ください。予算枠に達した時点で受付が終了する制度もあります。

パターン3:工事はやったのに、誰にも伝わっていない

前述の省エネ部位ラベルの話です。改修したのに募集図面に一言も書いていない。売却時の重要事項説明にも出てこない。これでは賃料にも売買価格にも反映されません。私はいつも理事長さまとオーナーさまに、「工事が終わったら、終わったことを書面にして残しましょう」とお伝えしています。


管理組合・オーナーが、2026年度内に踏んでおきたい5つの手順

2027年4月の施行までに、慌てず順番に踏めばよい手順を整理します。

ステップ やること 目安時期 誰が
① 現在の長期修繕計画に「省エネ改修」の項目があるか確認する 今月中 理事会/オーナー本人
② 次回大規模修繕の予定年度と、劣化診断の実施時期を確認する 2026年度内 理事会/管理会社
③ 劣化診断の際に、断熱・窓・屋上の現状性能もあわせて把握する 診断時 診断会社に依頼
④ 仮設計画(足場/ロープアクセス/ハイブリッド)の比較見積りを取る 発注の6〜12ヶ月前 理事会/オーナー本人
⑤ その年度に使える支援制度を、公式ページで確認する 発注前 理事会/管理会社

とくに④です。仮設の方式を比較しないまま総額だけで業者を選ぶと、内訳のどこで差がついているのか分からなくなります。見積書の「直接仮設費」「共通仮設費」の行を、他社と並べて見てください。ここが最も差が出る行です。

明誠では、東京・関東一円で現地調査と概算のお見積りを無料で承っています。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会前の整理や、理事会向けの説明資料づくりの段階からでもお力になれることがあります。詳しくは明誠へのお問い合わせから、また分譲マンションの管理組合さま向けの体制は管理組合向けの大規模修繕サポート、賃貸・収益物件をお持ちのオーナーさま向けはオーナー物件の資産価値向上をご覧ください。

明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。


よくあるご質問

Q. 上位住宅トップランナー制度で、既存マンションに新しい義務が生まれますか?

A. 生まれません。この制度は新たに住宅を供給する事業者を指定し、中長期的計画の提出と毎年度の報告を求めるものです。指定基準は分譲マンションで年間2,000戸、賃貸アパートで年間15,000戸と定められました(出典:国土交通省)。既存マンションの管理組合や既存物件のオーナーが、この政令によって何かを届け出る必要はありません。

Q. 施行はいつからですか?

A. 令和9年(2027年)4月1日です。政令は令和8年9月11日に閣議決定され、公布日は令和8年9月16日と国土交通省の発表で示されています(出典:国土交通省)。

Q. 賃貸募集で省エネ性能を表示しないと罰則がありますか?

A. 既存建築物については、勧告等の措置の対象にはしないと整理されています(出典:国土交通省)。罰則の問題ではなく、表示している物件と並んだときの見え方の問題だとお考えください。

Q. 築30年のマンションでも省エネ性能を表示できますか?

A. 新築向けの省エネ性能ラベルの発行は難しい場合が多いのですが、改修した部位を表示する「省エネ部位ラベル」であれば、既存住宅を対象として用意されています。窓または給湯器のいずれかの入力が必須項目です(出典:国土交通省)。

Q. 省エネ改修は大規模修繕と同時にやるべきですか?

A. 同時のほうが経済的になりやすい、というのが私の実感です。理由は仮設足場の費用が1回分で済むからです。大規模修繕の総工費に占める仮設の割合は、おおむね15〜25%が目安です。ただし建物の劣化状況によっては、まず劣化への対処を優先すべきケースもあります。劣化診断の結果を見てから判断してください。

Q. ロープアクセス工法でも省エネ改修はできますか?

A. 部位によります。屋上防水・シーリング打替え・タイル補修・窓まわりの止水などはロープアクセス工法で対応できますが、外壁全面への断熱材施工は足場があったほうが施工しやすいのが実情です。そのため明誠では、部位ごとに使い分けるハイブリッド工法をご提案することが多くなっています。技術的な詳細はロープアクセスドットコムで解説しています。

Q. 工事費の目安を教えてください。

A. 東京・関東での一般的な目安として、外壁塗装3,500〜4,500円/㎡、外壁打診調査250〜500円/㎡、屋上・バルコニー防水5,000〜8,000円/㎡、シーリング打替え700〜1,200円/mといったレンジです。30戸規模のマンション大規模修繕の総額は3,500〜5,000万円程度が一つの目安になりますが、規模・形状・劣化状況で大きく変動します。現地調査と概算見積りは無料で承っています。

Q. 長期修繕計画に省エネ改修を入れる根拠はありますか?

A. あります。国土交通省は令和3年9月の「長期修繕計画作成ガイドライン」等の見直しで、マンションの省エネ性能を向上させる改修工事の有効性を追記しています(出典:国土交通省)。なお、両ガイドラインは令和6年6月に再改定されていますので、資料として使う際は令和6年6月改定版(PDF)をご参照ください。


この記事のポイントまとめ

  • 改正建築物省エネ法の関係政令が2026年9月16日に公布され、2027年4月1日施行が決まった
  • 上位住宅トップランナーの指定基準は分譲マンション年間2,000戸、賃貸アパート年間15,000戸
  • 対象は新築の供給事業者であり、既存マンションに新たな義務は生じない
  • 効いてくるのは「新築との比較」。築古は相対的な性能差を意識する局面に入る
  • 既存住宅でも、改修した部位を示す「省エネ部位ラベル」で性能を見える化できる
  • 国の長期修繕計画ガイドラインは令和3年の見直しで省エネ改修の有効性を明記。現行は令和6年6月改定版
  • 省エネ改修は大規模修繕と同時施工が経済的。仮設費が1回分で済む
  • 仮設は足場/ロープアクセス/ハイブリッドの3択。比較見積りで内訳を並べて確認を

出典・参考資料

※制度の内容・要件・受付期間は年度ごとに変更される場合があります。ご検討の際は各制度の公式ページで最新情報をご確認ください。本記事の工事単価はいずれも東京・関東における一般的な目安であり、実際の見積り額を保証するものではありません。


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月18日

制度の話は、どうしても「決まったこと」だけが独り歩きします。私が現場で20年見てきて一番もったいないと感じるのは、制度が変わった瞬間ではなく、変わったことに気づかないまま次の修繕周期を迎えてしまうことです。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

目黒区の管理組合が無料で使える相談・派遣8選|区独自の派遣がない目黒区で、届出1枚が最大5回の無料アドバイザーに変わる

2026年9月17日 更新

「うちの区は、無料で管理士さんを呼べる制度がないんですよね」

先月、中目黒の管理組合の理事長さまから、そう言われました。築34年、52戸。長期修繕計画の見直し時期に来ているのに、判断材料がない。近隣区の話を聞くと専門家を無料で呼べるらしいが、目黒区のホームページを探しても、それらしいページが見つからない——というご相談でした。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンションやビルの外壁の仕事をしてきました。足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、両方の現場を経験してきた人間です。

理事長さまのおっしゃったことは、半分だけ当たっていました。

確かに目黒区には、区が主体となって運営する無料のマンション管理士派遣制度がありません。これは事実です。墨田区や新宿区のように「区が年◯回まで無料で専門家を送ります」という独自メニューを、目黒区の「マンション管理支援」カテゴリに見つけることはできません(2026年9月17日時点)。

ただし、目黒区のマンションが無料の専門家支援を受けられない、という意味ではまったくありません。目黒区の管理組合は、東京都の制度を直接使います。しかもその入口は、多くの管理組合がすでに提出を求められている「管理状況届出」という1枚の書類です。

今日は、目黒区のマンション管理組合とオーナーさまが、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)にお金をかけずに使える相談・派遣を8つ、一次情報で整理します。


結論:目黒区で無料で使える相談・派遣は8つある

先に一覧でお示しします。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用 申込先
1 管理状況届出に応じたアドバイザー派遣費用の助成 マンション管理士等 無料(1回、管理不全の兆候ありなら5回まで) 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1453
2 マンション管理士無料派遣(防災力向上) マンション管理士 無料(2回まで) 東京都マンション管理士会
3 マンション管理士無料派遣(認知症対応) マンション管理士 無料(2回まで) 東京都マンション管理士会
4 管理不全予防・改善支援事業(伴走型) マンション管理士 無料(一定期間、役員等として派遣) 東京都マンション課 03-5320-7532
5 目黒区 建築無料相談 建築士 無料(予約不要・当日先着順) 東京都建築士事務所協会目黒支部 03-5724-5061
6 分譲マンション総合相談窓口 専門相談員 無料 03-6427-4900
7 マンション管理センター 電話相談 マンション管理士等 無料 03-3222-1517/03-3222-1519
8 目黒区 住宅課 居住支援係 区職員 無料 03-5722-6841

このうち1から4までが「専門家が目黒区内のマンションまで来てくれる」派遣、5から8が相談窓口です。

順に見ていきます。


目黒区に区独自の派遣制度がない、その代わりに何があるか

まず前提の整理です。

東京都は平成31年3月に「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」を制定し、令和2年4月から管理状況届出制度を始めました。対象は、昭和58(1983)年12月31日以前に新築されたマンションのうち、居住用の独立部分が6戸以上のもの。これを「要届出マンション」と呼びます(出典:目黒区「マンション管理状況の届出をお願いします」)。

築42年以上、6戸以上。目黒区の分譲マンションストックを考えると、かなりの棟数が該当します。

そして、この届出がそのまま無料派遣の受給資格になります。ここが目黒区の管理組合にとって一番大きなポイントです。

墨田区のように区が独自予算で管理士を送る形ではなく、東京都が派遣費用を全額助成する形で、目黒区のマンションに専門家が来る。財源が違うだけで、管理組合から見れば「無料で専門家が来る」ことに変わりはありません。

目黒区の窓口は都市整備部住宅課居住支援係(電話03-5722-6841)です。届出書の郵送先も、〒153-8573 目黒区上目黒二丁目19番15号の同係になります。


1. 管理状況届出に応じたアドバイザー無料派遣:目黒区の管理組合が最初に使うべき制度

これが目黒区における「主力」です。

助成の中身

東京都マンションポータルサイトには、次のように書かれています。

対象 助成内容
届出を行った要届出マンション(昭和58年12月31日以前新築・6戸以上)の管理組合 派遣費用を1回全額助成
届出を行ったマンションのうち、管理不全の兆候があるマンションの管理組合 派遣費用を5回まで全額助成

(出典:東京都「管理状況の届出内容に応じたアドバイザー派遣費用の助成」)

「管理不全の兆候がある」とは、届出によって次のいずれかが判明したマンションを指します。

  • 管理組合や管理規約がない
  • 管理者がいない
  • 年1回以上総会を開催していない
  • 管理費や修繕積立金を積み立てていない
  • 計画的に修繕工事を行っていない

ここで誤解が起きやすいのですが、これは罰則の対象を炙り出すための項目ではありません。むしろ逆で、こうした状態にあるマンションほど手厚く(5回まで)無料で専門家を呼べる、という設計になっています。

私が現場で見てきた印象では、「計画的に修繕工事を行っていない」に該当する目黒区内の中小規模マンションは、決して少なくありません。分譲時の長期修繕計画が一度も見直されないまま30年経っている、というケースです。そういう管理組合こそ、この5回枠の対象になり得ます。

選べるコース

派遣には「講座編」と「相談編」があり、大規模修繕に直結するのは相談編のB-4、B-5①、B-5②です。

コース 業務内容
B-4 修繕計画の作成や修繕積立金等の設定に関すること
B-5① 修繕工事検討段階での相談(建物・設備等の劣化状況の調査・診断、修繕工事の検討組織、修繕工事の方式等)
B-5② 修繕工事準備段階の相談(修繕工事の内容、業者選定の仕方、合意形成等)

太字にした「修繕工事の方式」という文言に注目してください。足場を組むのか、ロープアクセス工法(無足場工法)でいくのか、部位ごとに使い分けるハイブリッド工法にするのか。この判断そのものを、無料枠の中で第三者の専門家に相談できます。

講座編にはA-4「計画修繕工事の進め方」もあります。理事が毎年入れ替わる管理組合では、まずここから入るのが現実的です。

申込先

派遣の申込先は目黒区ではなく、公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター まちづくり推進課(電話03-5989-1453、月〜金 9時00分から17時00分)です。区役所に電話しても、結局ここを案内されます。最初からこちらへ。


2・3. マンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応):令和8年度は160件枠

東京都が令和5年度から実施している事業です。令和8年度の募集内容が公表されています。

項目 内容
対象 都内に所在するマンション管理組合(目黒区内も当然対象)
回数 1管理組合につき、防災力向上と認知症対応それぞれ2回まで
費用 無料
受付期間 令和8年6月23日(火曜日)から令和9年2月26日(金曜日)まで
募集数 防災力向上・認知症対応 合わせて160件(達し次第締切)
申込先 一般社団法人 東京都マンション管理士会(https://www.kanrisi.org/)

(出典:東京都「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」)

注意点が1つあります。派遣回数は通算でカウントされます。令和5年度から令和7年度にこの事業で派遣を受けている管理組合は、その回数も各テーマ2回の上限に含まれます。過去の理事会議事録を確認してから申し込んでください。

そして、160件という枠は東京都全体の数字です。9月時点ですでに相当数が消化されている可能性があります。令和8年度中に使う予定があるなら、年度末に近づくほど枠の残りは読めなくなります。

防災力向上のアドバイス例として都が挙げているのは、自主防災組織の設置・強化、災害時にも使える居住者名簿の作成、発災時の緊急対応を定める管理規約の整備、カード式防災マニュアルなどです。

私の仕事との接点で言えば、「発災時の緊急対応を定める管理規約の整備」は外壁と直結します。地震や台風のあと、外壁タイルが浮いているかもしれない、という状況で、誰の判断で緊急調査を発注するのか。総会を待つのか、理事長判断でいいのか。ここが規約で決まっていない管理組合は、対応が2週間、3週間と遅れます。その間、剥落のリスクは残り続けます。


4. 管理不全予防・改善支援事業(伴走型):管理組合そのものがない場合

これは少し特殊な、しかし目黒区にも確実に該当物件がある制度です。

管理組合や管理規約がない、区分所有者だけでは管理の適正化が難しいマンションに対して、東京都がマンション管理士を管理組合の役員等として、一定期間、無料で派遣します。

(出典:東京都「管理不全予防・改善支援事業(伴走型)」)

流れは次のとおりです。

  1. 支援を希望する区分所有者による任意の団体等からの応募を、先着順で受付
  2. マンション管理士が区分所有者へ事業を説明し、意向を確認のうえ、都が支援対象マンションを決定
  3. 派遣管理士が現地調査を行い、支援提案書を作成
  4. 説明会を実施し、外部管理者方式等(区分所有者以外の者を管理者に選任する仕組み)の導入を準備
  5. 総会等で規約改定案を決議し、外部管理者方式等を導入
  6. 派遣管理士が外部管理者として、管理組合の設立・運営・規約整備などの諸問題を解決

「うちのマンションは理事のなり手がいない」「そもそも総会が何年も開かれていない」という状態の物件で、単発のアドバイスでは動かないケースを想定した制度です。令和8年度の募集が行われています。問い合わせ先は東京都住宅政策本部マンション課マンション施策調整担当(電話03-5320-7532)。

先着順である点は押さえておいてください。


5. 目黒区の建築無料相談:令和8年度の開催日は公表済み

ここからは目黒区が直接関わる窓口です。

住宅などの建築物の安全性を確保するための助言、建築基準法の法令説明、建て替えなどの相談を、費用無料・事前予約不要・当日先着順で受け付けています。

令和8年度の平日開催日程は次のとおりです(会場はいずれも目黒区総合庁舎本館1階西口ロビー、13時30分から16時)。

開催日
令和8年10月7日(水曜日)
令和8年11月11日(水曜日)
令和8年12月9日(水曜日)
令和9年2月10日(水曜日)

土曜開催もあります。令和9年3月13日(土曜日)10時から15時、目黒区総合庁舎本館1階E会議室。平日に動けない理事のかたはこちらを。

(出典:目黒区「建築無料相談」更新日:2026年6月10日)

問い合わせ先は東京都建築士事務所協会目黒支部(電話03-5724-5061)、区の担当は建築課建築指導係(電話03-5722-9637)です。

この相談会には建築士が出てきます。マンション管理士とは守備範囲が違います。建築基準法第12条に基づく定期報告のこと、外壁の全面打診の時期のこと、外壁改修の法的な扱い——このあたりは建築士に聞くのが早い。予約不要で行ける枠は貴重です。


6・7・8. 電話で完結する3つの窓口

分譲マンション総合相談窓口(電話03-6427-4900)
管理状況届出書の書き方から、日常的な維持管理、建替えや改修まで、幅広く受け付けています。届出のログインIDが分からない、といった実務的な話もここです。

公益財団法人 マンション管理センター
目黒区がホームページで案内している国の窓口です。管理組合運営・管理規約の相談は03-3222-1517、建物・設備の維持管理の相談は03-3222-1519。大規模修繕の話は後者になります。面談相談は電話での事前予約制。登録会員はメール相談も可能です(出典:目黒区「マンションの管理に関する相談」)。

目黒区 住宅課 居住支援係(電話03-5722-6841)
どの制度を使えばいいか分からない、という段階の交通整理はここが適任です。区の窓口なので、目黒区固有の事情も踏まえた案内が受けられます。


無料枠で「工法の選択」まで踏み込めるか

ここからは、私の本業の話を少しさせてください。

無料のアドバイザー派遣は非常に有用です。ただし、マンション管理士は工事の専門家ではありません。長期修繕計画の妥当性、修繕積立金の水準、業者選定の手続き——ここは管理士の領域です。一方で「この建物なら足場を組まずに済むか」という判断は、現場を見る側の領域になります。

目黒区は、坂が多く、敷地に余裕のない物件が多い区です。中目黒、祐天寺、碑文谷、洗足。隣地との離隔が1メートル取れない、道路使用許可が現実的でない、という現場を何度も見てきました。こういう物件で足場を前提に見積もると、仮設費が跳ね上がります。

参考として、10階建て・外周80m・工期3ヶ月規模の物件で、仮設足場が約168万円かかるケースに対し、ロープアクセス工法なら約59万円、差額で約109万円というレンジがあります。30戸規模のマンション大規模修繕の総工費は3,500万円から5,000万円程度、そのうち仮設足場が15%から25%を占めるのが一般的です。外壁塗装は3,500円から4,500円/㎡、打診調査は250円から500円/㎡、防水は5,000円から8,000円/㎡が目安になります。

いずれも目安・レンジであり、実際の見積は建物の形状、劣化状況、立地条件によって大きく変動します。この点は誤解のないように申し添えます。

株式会社明誠は、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けています。

工法の技術的な詳細——ロープの冗長性、バックアップデバイス、風速による中止基準といった話は、同業者・加盟希望者向けの姉妹サイトロープアクセスドットコムで解説しています。管理組合のかたが読んでも、「なぜ足場より安全だと言えるのか」の根拠が分かる内容になっています。

発注者向けの情報は、明誠のロープアクセス工法の技術詳細と、大規模修繕の料金の考え方をご覧ください。管理組合向けのサービス内容は管理組合向けの大規模修繕サービスにまとめています。

私からの提案は単純です。まず東京都の無料アドバイザーを呼んで、長期修繕計画と積立金の妥当性を第三者に見てもらう。そのうえで、工法の選択肢を複数社に出させる。この順番なら、無料枠が最大限に生きます。


目黒区の管理計画認定は26件:無料枠の「次」にあるもの

無料相談の先にある制度として、マンション管理計画認定制度にも触れておきます。目黒区は令和5年4月から運用を開始しました。

2026年9月17日時点で、目黒区が認定したマンションは26件です。直近ではラコンド駒沢公園が令和8(2026)年8月10日に認定を受けています(出典:目黒区「マンション管理計画認定制度」更新日:2026年8月21日)。

費用の内訳は次のとおりです。

費目 金額 支払先
システム利用料 1申請あたり10,000円 マンション管理センター
事前確認審査料(パターン3・4の場合) 長期修繕計画1計画あたり10,000円 日本マンション管理士会連合会/マンション管理センター
目黒区への申請手数料 かかりません —

目黒区は国の基準以外の独自基準を設けていません。認定基準は項目1(1)から項目5(1)までで、区独自の上乗せはない、と明記されています。有効期間は5年間です。

認定を受けると、住宅金融支援機構のフラット35やマンション共用部分リフォーム融資の金利引き下げ、マンションすまい・る債の利率上乗せの対象になります。長期修繕計画の見直しを無料アドバイザーと一緒に進めるなら、その延長線上に認定申請を置くのが効率的です。


よくあるご質問

Q. 目黒区には本当に区独自の無料派遣制度がないのですか?

A. 2026年9月17日時点で、目黒区の「マンション管理支援」カテゴリに掲載されているのは、管理状況届出、管理計画認定制度、マンション管理適正化推進計画、マンションの管理に関する相談、建替え事業の各ページです。区が主体となって管理士を無料派遣する独自制度は見当たりません。ただし東京都の制度が目黒区内のマンションにそのまま使えますので、実質的に無料の専門家支援は受けられます。

Q. 昭和58年より後に建ったマンションは、無料派遣を使えませんか?

A. 管理状況届出に基づく無料派遣は、要届出マンション(昭和58年12月31日以前新築・6戸以上)と、管理不全の兆候があるマンションが対象です。それ以外は対象外とされています。ただし防災力向上・認知症対応の管理士無料派遣(各2回まで)は都内の管理組合であれば築年を問わず対象ですので、こちらは使えます。

Q. 無料派遣で、大規模修繕の見積の妥当性まで見てもらえますか?

A. アドバイザー派遣の相談編B-5②「修繕工事準備段階の相談」に、修繕工事の内容や業者選定の仕方が含まれています。個別の見積書の一行一行を査定する制度ではありませんが、金額の水準感や業者選定手続きの妥当性については助言が受けられます。

Q. 打診調査の費用はどのくらいかかりますか?

A. 一般的な目安は250円から500円/㎡ですが、外壁の仕上げ材、足場の要否、調査範囲によって変動します。明誠では無料で概算のお見積りを提示できますので、大規模修繕のお問い合わせ窓口からお気軽にご相談ください。

Q. ロープアクセス工法だと工期はどれくらい短くなりますか?

A. 足場工法のおおむね60%程度が目安です。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場3ヶ月に対してロープアクセス1.5ヶ月から2ヶ月が一般的なレンジになります。ただし補修数量が多い物件では差が縮まります。技術面の詳細はロープアクセスドットコムで解説しています。

Q. 足場を組まない工法だと、品質が落ちませんか?

A. 足場とロープアクセスでは、適する部位が異なります。バルコニー内部や複雑な形状部分は足場のほうが確実で、平滑な外壁面や高層部はロープアクセスが有利です。明誠は3つの工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて選べるため、「全面ロープありき」の提案はしません。部位ごとに使い分けるハイブリッド工法が最適解になる物件も多くあります。

Q. 複数の無料制度を同時に使えますか?

A. 制度ごとに対象と回数が独立しているため、たとえば「管理状況届出に基づくアドバイザー派遣」と「防災力向上のマンション管理士無料派遣」を同じ年度に使うことは可能です。ただし各制度の詳細な併用可否は、それぞれの申込先にご確認ください。


目黒区の管理組合が、今月やるべきこと

長くなりましたので、動き方を3行にまとめます。

  1. 管理状況届出が済んでいるかを確認する(未提出なら住宅課居住支援係 03-5722-6841/届出がアドバイザー無料派遣の入口です)
  2. 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1453 に電話して、派遣コースを相談する(B-4またはB-5①が大規模修繕の入口)
  3. 令和8年10月7日(水曜日)の建築無料相談を理事会の年間予定に入れる(予約不要・当日先着順)

この3つは、いずれも費用がかかりません。

明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。目黒区内の物件で、足場が組めるかどうかの判断に迷われている管理組合のかたは、現地を見てからでないと正確なことは申し上げられません。無料の現地確認から承っています。


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月17日時点で公表されている目黒区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特に「防災力向上・認知症対応のマンション管理士無料派遣」は令和8年度160件の募集枠に達し次第締め切られ、「管理不全予防・改善支援事業(伴走型)」は先着順です。また目黒区「マンションの管理に関する相談」および「マンション管理状況の届出をお願いします」の各ページは更新日が2024年4月1日であり、掲載内容は都条例に基づく恒常的な制度説明ですが、運用の細部が変わっている可能性があります。実際に申請される前に、必ず目黒区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の管理組合・物件に対する助言ではありません。制度の適用可否および工事費用は、物件の状況により異なります。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月17日


出典一覧

品川区の管理組合が無料で使える相談・派遣10選|大規模修繕の相談は毎月第3火曜、管理士・建築士は1組合3回×2時間【令和8年度版】

2026年9月17日 更新

「うちの規模だと、修繕委員会に建築士さんを入れるだけで何十万でしょう。そんな予算、うちの積立金からは出せませんよ」

今年の春、大井町のマンションの理事長さまから、そう言われました。築33年、62戸。2回目の大規模修繕をどう進めるかで、理事会が半年止まっていた物件です。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンションやビル、ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も踏んできた人間です。

その理事長さまにお伝えしたのは、ひとつだけでした。品川区は、一級建築士を管理組合に3回、1回2時間ずつ、無料で派遣してくれます。加えて毎月第3火曜日には、弁護士と一級建築士とマンション管理士が同じテーブルに座る「建替・修繕相談」がある。まず、そこを使いましょう、と。

品川区の支援メニューは、23区のなかでも「修繕」に振り切った設計になっています。管理運営の相談と、建替・修繕の相談を別々の窓口として立てている区は、そう多くありません。

今日は、品川区のマンション管理組合とビルオーナーさまが、お金をかけずに使える相談・派遣・助成を10個、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。


結論:品川区で無料で使える相談・派遣は10ある

先に一覧でお示しします。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用・回数 申込先
1 マンション管理相談 マンション管理士 無料/1回50分・年3回まで 住宅課 03-5742-6776
2 建替・修繕相談 弁護士・一級建築士・マンション管理士 無料/1回80分・年3回まで 住宅課 03-5742-6776
3 マンション管理士派遣 マンション管理士 無料/1回2時間・1組合3回まで 住宅課 03-5742-6776
4 一級建築士派遣 一級建築士 無料/1回2時間・1組合3回まで 住宅課 03-5742-6776
5 管理計画認定申請アドバイザー派遣 認定制度のアドバイザー 無料/1回2時間・最大4回 住宅課/電子申請
6 建替え・改修アドバイザー制度利用助成 東京都防災・建築まちづくりセンター 派遣料を1回まで全額助成 住宅課(事前相談)
7 マンション管理セミナー 外部の専門家 無料/年2回程度 住宅課
8 品川区消費者センター 消費生活相談員 無料 03-6421-6137
9 区民相談室の法律相談 弁護士 無料/30分・同一案件3回まで 03-3777-1111(代)
10 東京都・国の相談窓口 管理士・建築士等 無料 都/マンション管理センター等

このうち1〜7は、すべて品川区役所の住宅課 住宅運営担当(電話03-5742-6776)が窓口です。番号はひとつ覚えておけば足ります。

ここからが本題です。


1. マンション管理相談:毎月第2・4水曜、1回50分

区役所に出向いて、マンション管理士に直接聞ける枠です。

区の公式ページには、次のように書かれています(出典:品川区「マンション支援」、令和8年4月1日更新)。

  • 日時:毎月第2・第4水曜日 午後1時から午後4時まで
  • 相談時間:1回につき50分程度
  • 回数:同一年度に3回まで
  • 場所:品川区役所 本庁舎6階 住宅課内 ほか
  • 相談員:マンション管理士(品川マンション管理士会の会員)
  • 申込期日:相談希望日の1週間前まで

扱うのは管理組合の運営、管理規約の見直し、長期修繕計画といった維持管理全般です。50分という枠は、私の感覚では「論点をひとつ持っていく」ちょうどいい長さです。あれもこれもと詰め込むと、何も決まらないまま終わります。


2. 建替・修繕相談:弁護士と一級建築士が同席する枠

品川区の特徴が、いちばんよく出ているのがこの窓口です。

  • 日時:毎月第3火曜日 午後1時から午後4時まで
  • 相談時間:1回につき80分程度
  • 回数:同一年度に3回まで
  • 場所:品川区役所 本庁舎6階 住宅課内 ほか
  • 相談員:弁護士、一級建築士、マンション管理士
  • 申込期日:相談希望日の1週間前まで

80分あって、法律と技術の専門家が同席する。この組み合わせは、大規模修繕の入口で起きる問題とよく噛み合います。

大規模修繕でもめる論点は、たいてい2種類が絡み合っています。ひとつは「工事の範囲と金額が妥当か」という技術の話。もうひとつは「その決議を普通決議で通せるのか、特別決議が要るのか」という法律の話です。片方だけの専門家に聞くと、もう片方で止まります。

私が現場で一番もったいないと感じるのは、この2つを別々の日に別々の人に相談して、話が食い違ったまま総会を迎えてしまうケースです。


3. マンション管理士派遣・4. 一級建築士派遣:理事会に来てもらう

窓口に出向くのではなく、専門家に来てもらうのがこちらです。

項目 マンション管理士派遣 一級建築士派遣
時間 1回につき2時間程度 1回につき2時間程度
回数 1管理組合につき3回まで 1管理組合につき3回まで
費用 無料 無料
派遣元 品川マンション管理士会 (一社)東京都建築士事務所協会 品川支部
申込 派遣希望日の1週間前まで(電子または電話) 同左

2時間 × 3回。合計6時間を、管理士と建築士のそれぞれで使えます。両方を使えば12時間分の専門家の時間が、費用ゼロで手に入る計算です。

私はこれを、必ずワンセットで理事会に提案するようにしています。理由は単純で、役割が違うからです。

  • 一級建築士:劣化の状況、修繕の優先順位、工事仕様書と見積書の読み方、施工会社の比較
  • マンション管理士:総会の決議要件、修繕積立金の見直し、管理規約との整合、住民合意の進め方

冒頭の大井町の理事長さまには、まず一級建築士派遣を1回使っていただきました。建築士の方が現地を歩いて出した所見は、「北面のタイル浮きが想定より進んでいる。打診の範囲を先に決めたほうがいい」というものでした。この一言で、止まっていた理事会が動き出しています。

私が「建築士派遣より先にやってほしい」と思うこと

正直に申し上げます。派遣を呼ぶ前に、理事会でやっておくと効果が倍になることがあります。

建物の現況を写真で撮っておくことです。スマートフォンで構いません。外壁のひび、タイルの浮きで浮き上がった箇所、屋上の水たまり、バルコニーの手すりの錆。2時間しかない枠で「まず現状を見せてください」から始まると、半分が状況把握で消えます。


5. 管理計画認定申請アドバイザー派遣:最大4回、認定を取りにいく組合向け

令和5年4月に始まった品川区のマンション管理計画認定制度について、申請の入口を伴走してくれる派遣です(出典:品川区「マンション管理計画認定申請のアドバイザー派遣」、令和8年4月1日更新)。

  • 対象:区内分譲マンションを管理する管理会社の担当者(管理組合役員の同席も可)
  • 派遣日時:平日・土曜日および休日(年末年始を除く)
  • 相談時間:1回あたり2時間程度
  • 相談回数:1マンションにつき最大4回まで
  • 申込:住宅課へ電話または電子申請。派遣希望日の2週間前まで

内容は認定基準・申請方法・認定を取るメリットの説明と、提出書類の申請事務支援です。

注意点をひとつ。この派遣は、他の制度と申込期限が違います。管理相談や管理士・建築士派遣は1週間前ですが、こちらは2週間前です。理事会の日程から逆算するとき、ここを取り違えると1か月ずれます。

窓口上の対象は管理会社の担当者ですが、役員の同席が認められています。自主管理の組合や、管理会社との距離をどう取るか考えている組合は、事前に住宅課へお問い合わせいただくのが確実です。


6. 建替え・改修アドバイザー制度利用助成:派遣料を区が肩代わり

(公財)東京都防災・建築まちづくりセンターが実施する「マンション建替え・改修アドバイザー制度」を利用した場合の派遣料を、1回まで全額助成する制度です。区内の分譲マンションが対象です。

区の公式ページには「予算に限りがあるため、助成を希望される場合は、事前にご相談ください」と明記されています。予算枠に達し次第、受付終了です。年度後半に動く場合は、住宅課へ残枠を確認してから予定を立てるのが安全です。

なお、東京都の管理状況届出制度に届出(または更新)を済ませた管理組合は、同センターのアドバイザー派遣そのものを無料で使える枠があります。届出済みの要届出マンションで1回まで、管理不全の兆候があると判断されたマンションでは5回まで無料という運用です(出典:東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」)。

つまり、届出を済ませている組合は、区の助成を使う前に「そもそも無料枠が残っていないか」を確認する順番になります。


7. マンション管理セミナー:年2回程度

区が専門家を招いて開く講演会です。開催は年2回程度で、日程は年度ごとに決まります。区の公式ページと「広報しながわ」で告知されるため、理事会の年間予定を組むときにチェックしておくといい枠です。

令和8年度の具体的な日程は、本稿執筆時点では公表分を確認できていません。住宅課(03-5742-6776)へお問い合わせいただくのが確実です。


8. 品川区消費者センター:契約トラブルの入口

工事業者との契約や、訪問販売のリフォームで起きたトラブルは、こちらが入口になります。

  • 場所:品川区西品川1-28-3 中小企業センター4階(東急大井町線 下神明駅 徒歩2分)
  • 消費者相談専用ダイヤル:03-6421-6137(センター代表 03-6421-6136)
  • 受付:平日 午前9時〜午後4時/第4火曜 午後4時〜午後7時(電話のみ)/土曜 午後0時30分〜午後4時(電話のみ)

出典:品川区「品川区消費者センター」

私の経験上、区分所有者のご自宅(専有部)に「近所で工事をしているので足場代がサービスになります」という飛び込み営業が来て契約してしまった、という相談は、大規模修繕の直前に増えます。共用部の工事が始まると、業者の出入りが日常になって警戒が緩むからです。

理事会からの掲示1枚で防げる被害が、かなりあります。


9. 区民相談室の法律相談:30分・同一案件3回まで

  • 場所:品川区役所 第三庁舎3階 区民相談室
  • 予約:03-3777-1111(代表)/相談希望日の1週間前(同じ曜日)午前9時から受付
  • 相談時間:30分以内、同一案件3回まで
  • 費用:無料
  • 内容:金銭貸借、離婚・親権、遺言、相続、借地借家など

ひとつ、注意すべき点があります。この法律相談の対象は、品川区に在住・在勤・在学の個人です。法人は対象外とされています。

管理組合として法律的な論点を相談したい場合は、2.の建替・修繕相談(毎月第3火曜)に弁護士が入っているので、そちらを使うのが筋です。管理費滞納や区分所有法の解釈は、組合の議題として第3火曜へ。区分所有者個人の相続や借地借家は、区民相談室へ。この振り分けを間違えると、せっかくの枠を1回無駄にします。


10. 東京都・国の窓口:区の枠を使い切ったあとに

区の回数を使い切っても、まだ手はあります。

東京都のマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)

都内の管理組合を対象に、講習を受けたマンション管理士を派遣する事業です。1管理組合につき、防災力向上と認知症対応でそれぞれ2回まで。令和8年度の申込期間は令和8年6月23日から令和9年2月26日まで、予定件数(両テーマ合計160件)に達し次第、締切です(出典:東京都マンションポータルサイト)。

枠が160件と限られています。防災マニュアルの見直しを考えている組合は、年度前半に動くほうが有利です。

(公財)マンション管理センターの電話相談

国土交通大臣から「マンション管理適正化推進センター」の指定を受けた唯一の団体です。

  • 管理組合運営・管理規約のご相談:03-3222-1517
  • 建物・設備の維持管理のご相談:03-3222-1519
  • 受付:月〜金(祝日・年末年始を除く)9時30分〜17時/1件15分前後

出典:(公財)マンション管理センター「相談窓口について」

15分という枠は短く感じますが、「うちの規約でこの決議は普通決議か特別決議か」といった一点勝負の質問には十分です。

住まいるダイヤル(住宅リフォーム・紛争処理支援センター)

国土交通大臣指定の住宅専門相談窓口。0570-016-100(または03-3556-5147)、受付は10時〜17時(土日祝・年末年始を除く)。工事の品質やリフォーム契約のトラブルを、一級建築士が電話で受けてくれます。


令和7年の法改正で、管理規約の見直しが宿題になっています

品川区の公式ページにも、お知らせとして掲載されている論点です。

国土交通省は、令和7年のマンション関係法(区分所有法等)の改正を踏まえ、令和7年10月にマンション標準管理規約を改正しました。総会の開催手続きや決議要件といった、管理組合の運営上の根幹に関わる内容が含まれています(出典:国土交通省「マンション標準管理規約」)。

つまり、令和8年度は多くの管理組合にとって「規約を点検する年」です。

そして、規約の点検はマンション管理士派遣の得意分野です。品川区の管理士派遣3回のうち1回を、この規約点検に充てる。私はいま、お付き合いのある理事会にはこの順番をお勧めしています。


何を用意して相談に行けばいいか

派遣も相談も、時間が限られています。手ぶらで行くと、状況説明で枠が溶けます。

私が理事長さまにお伝えしている3点セットは、これです。

  1. 直近2〜3年分の総会議事録(何が決まっていて、何が保留なのか)
  2. 長期修繕計画書(作成年と、直近の見直し年をメモしておく)
  3. 管理規約と使用細則(原本の写しで可)

これに加えて、大規模修繕の相談なら修繕積立金の残高と月額、そして先ほど触れた現況写真を足します。

この5点があると、2時間の派遣が「現状把握30分+助言90分」になります。なければ「現状把握90分+助言30分」です。同じ無料枠でも、持ち帰れるものが3倍変わります。


大規模修繕の費用は、工法の選び方で大きく動きます

無料の相談・派遣で方針が固まったあと、次に来るのが工事費の話です。ここで私の本業の話を少しだけさせてください。

大規模修繕の総工費は、30戸規模のマンションで3,500万〜5,000万円程度がひとつの目安です(物件の状態・仕様で大きく変わります)。そのうち仮設足場が15〜25%を占めます。

たとえば10階建て・外周80m・工期3か月の物件で試算すると、通常の仮設足場がおよそ168万円に対し、ロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が降下して施工する無足場工法)ならおよそ59万円。差額でおよそ109万円という参考値になります。足場を組まないので、工期も足場工法の6割程度に収まることが多いです。

外壁塗装の㎡単価は3,500〜4,500円、外壁打診調査は250〜500円/㎡、防水は5,000〜8,000円/㎡あたりが目安のレンジです。いずれも参考値で、実際の見積は建物の形状・劣化状況・仕様によって動きます。

株式会社明誠は、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が現場に立ち、日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。

品川区のような、湾岸のタワーマンションと内陸の中層マンションが混在するエリアでは、同じ区内でも最適な工法が物件ごとに変わります。海に近い物件は塩害で鉄部の劣化が早く、狭小地の物件はそもそも足場を組む敷地がない。だからこそ、通常足場・ロープアクセス・ハイブリッド(部位で使い分け)の3つから選べることに意味があります。工法別の作業手順や安全管理の考え方は、ロープアクセスドットコムでも解説しています。

これまでの施工事例(約6,000棟)はhttps://rita-construction.com/renew/blog/category/works/からご覧いただけます。


よくあるご質問

Q. 品川区のマンション管理士派遣と一級建築士派遣は、両方使えますか?

A. はい。区の公式案内では「各1回2時間程度(各3回まで無料)」とされており、管理士と建築士でそれぞれ3回の枠があります。役割が違うので、両方使う前提で年間計画を立てるほうが効率的です。

Q. 賃貸マンションのオーナーでも使えますか?

A. 品川区のマンション支援事業は分譲マンションの管理組合・区分所有者が対象です。賃貸オーナーさまの場合は、区民相談室の法律相談や消費者センター、(公財)日本賃貸住宅管理協会の相談窓口が入口になります。工事そのもののご相談は、私どもでも無料でお受けしています。

Q. 申込はいつまでにすればいいですか?

A. 制度によって違います。マンション管理相談・建替修繕相談・管理士派遣・建築士派遣は相談希望日の1週間前まで、管理計画認定申請アドバイザー派遣は2週間前までです。理事会の日程から逆算してご準備ください。

Q. 相談は無料でも、そのあと工事を頼まないといけませんか?

A. いいえ。区の派遣制度は、特定の施工会社を紹介するものではありません。派遣されるマンション管理士・一級建築士は中立の立場で助言する役割です。私どもへのご相談も、見積だけ、ご相談だけで構いません。

Q. 大規模修繕の費用はどれくらいかかりますか?

A. 30戸規模で3,500万〜5,000万円程度が目安ですが、劣化状況と仕様で大きく変動します。仮設足場が総額の15〜25%を占めるため、無足場のロープアクセス工法を部分的に組み合わせるだけでも総額が動きます。無料で概算のお見積りを出せますので、お気軽にお問い合わせください。

Q. ロープアクセス工法は、どんな建物でも使えますか?

A. 屋上にアンカーを取れる構造であることが前提です。取れない場合は仮設足場、あるいは部位ごとに使い分けるハイブリッド工法をご提案します。判断には現地調査が要りますので、まずはお問い合わせからご連絡ください。

Q. 東京都の管理状況届出を出していないと、無料派遣は使えませんか?

A. 品川区の相談・派遣は届出の有無に関わらず利用できます。届出が前提になるのは、東京都防災・建築まちづくりセンターのアドバイザー無料派遣枠です。届出がまだの組合は、届出そのものを管理士派遣の議題にするという使い方もあります。


まとめ:品川区で、今週動けること3つ

長くなったので、最後に絞ります。

1. 住宅課の電話番号(03-5742-6776)を理事会の連絡網に入れる

品川区のマンション支援は、1〜7のすべてがこの1本につながっています。理事が交代しても引き継がれるよう、規約のファイルに挟んでおいてください。

2. 次の第3火曜日を確認して、建替・修繕相談を1枠押さえる

弁護士と一級建築士とマンション管理士が同席する80分は、品川区の制度のなかで最も密度の高い枠だと私は見ています。1週間前までの申込です。

3. 総会議事録・長期修繕計画・管理規約の3点を、1つのフォルダにまとめる

これがあるかないかで、無料枠から持ち帰れるものが変わります。理事の誰か1人が、今週やれば終わる作業です。

大規模修繕は、動き出すまでが一番重たい工事です。品川区は、その最初のひと押しを無料で用意してくれています。使わない理由が、私には見当たりません。

工法や概算のご相談だけでも、遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問い合わせフォームか、明誠の会社の考え方をご覧いただければ幸いです。


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月17日時点で公表されている品川区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず品川区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


出典・参考資料


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市

マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月17日

世田谷区のマンション漏水・防災対策|多摩川・野川・国分寺崖線から逆算する大規模修繕2026年度版

2026年9月17日 更新

世田谷区の等々力で、築28年の分譲マンションの理事長さまから相談をいただいたことがあります。「屋上防水をやったばかりなのに、最下階の住戸で壁が湿る」。図面を見せていただいて、すぐに見当がつきました。建物の北側が斜面に接していて、そこだけ地中に埋まっていたのです。水は空から降ってきたのではなく、斜面の土の中を通って、横から来ていました。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。

世田谷区は、23区のなかでも水の入り方が独特な区だと感じています。海に面していないので高潮も津波もない。そのかわり、台地に刻まれた谷と、国分寺崖線という長大な崖が、水の動きをすべて決めています。

今日は、世田谷区が公表している最新のハザード資料から逆算して、世田谷区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。


結論:世田谷区は「高潮がない代わりに、谷と崖が主役の区」です

先に結論から申し上げます。世田谷区で大規模修繕の順番を決めるとき、私が最初に確認するのは屋上ではありません。自分の建物が台地の上にあるのか、谷底にあるのか、崖の際にあるのかです。

世田谷区は水防法に基づく高潮浸水想定区域が未指定で、津波の想定もありません(出典:世田谷区「世田谷区洪水・内水氾濫ハザードマップ」)。湾岸区で最優先になる塩害や高潮対策は、世田谷区ではほぼ考えなくてよい。そのぶん、リスクが3つに絞り込めます。

立地 該当エリアの例 主なリスク 最優先の対策
多摩川沿いの低地 玉川・二子玉川・鎌田・宇奈根・喜多見・野毛 多摩川の洪水(想定最大規模) 開口部の止水・地下設備の位置
谷筋・中小河川沿い 野川・仙川・谷沢川・丸子川・烏山川と北沢川の旧流路沿い(若林・太子堂・下馬・弦巻など) 内水氾濫・中小河川の洪水 地下駐車場・逆流防止弁・排水ポンプ
国分寺崖線とその周辺の崖 成城・喜多見・大蔵・岡本・瀬田・上野毛・中町・等々力・野毛・尾山台/桜・宮坂・代田・北沢・池尻 土砂災害・擁壁の劣化 擁壁改修・斜面側の排水と外壁

この3類型のどこに自分の建物が当たるかを、区のハザードマップで先に確定させる。それをやらずに「まず屋上防水から」と進めてしまうと、順番を1つ間違えるだけで数百万円が無駄になります。世田谷区の理事会でいつも最初にお伝えしているのは、この一点です。


世田谷区のハザードマップを1枚で読む

世田谷区のハザードマップは、大きく2冊に分かれています。どちらも令和8年7月に更新されたばかりです。

洪水・内水氾濫ハザードマップ(令和8年7月更新)

「多摩川洪水版」と「内水氾濫・中小河川洪水版」の2面構成です。区のページは令和8年8月14日に更新されています(出典:世田谷区「世田谷区洪水・内水氾濫ハザードマップ」)。

想定している雨の量が、2面でまったく違います。ここが世田谷区を読むうえでの勘どころです。

版 想定している雨 根拠となる図
多摩川洪水版 多摩川流域の2日間総雨量588ミリメートル 国土交通省京浜河川事務所「多摩川洪水浸水想定区域図(想定最大規模)」(平成28年度公表)
内水氾濫・中小河川洪水版 時間最大雨量153ミリメートル/総雨量690ミリメートル 城南地区河川、野川・仙川・入間川・谷沢川・丸子川の各洪水浸水想定区域図(令和6年2月公表)ほか

「2日間で588ミリ」と「1時間で153ミリ」は、建物にとって性格の違う攻撃です。前者はゆっくり水位が上がって長時間居座る水。後者は一気に来て排水が追いつかず、道路から建物へ流れ込む水です。マンションの共用部で効く対策も、当然変わります。

令和8年7月の改定では、浸水の範囲や深さそのものは令和6年7月版から変わっていません。変わったのは運用面で、なかでも管理組合として見逃せないのが次の1点です。

水害時避難行動判定フローに、地下施設の浸水リスクが追記された

区が「地下」を明示的に書き足したという事実を、私は重く受け止めています。世田谷区のマンションは、地下駐車場・地下ピット・半地下の機械室を持つ建物が本当に多い。ここが今回の記事の中心テーマです。

なお、令和8年3月に東京都から水防法に基づく雨水出水浸水想定区域の指定があり、世田谷区は現在、水防法に基づく雨水出水(内水氾濫)ハザードマップを作成中です。現行の内水氾濫の想定は東京都が独自に作成したもので、水防法に基づくものではない、という位置づけになります。近いうちに新しい図が出る可能性があるということです。

土砂災害ハザードマップ(令和8年7月発行)

最新版は令和8年7月発行。気象庁が令和8年5月29日から運用を開始した新たな防災気象情報が反映されています。土砂災害(特別)警戒区域そのものは、令和7年9月発行版から変更ありません(出典:世田谷区「世田谷区土砂災害ハザードマップ」)。

区が分割版として公開しているマップの表題を並べると、世田谷区の崖がどこに走っているかがそのまま見えてきます。

  • マップ1・2:桜・宮坂・代田
  • マップ3:北沢・池尻
  • マップ4:成城・喜多見
  • マップ5:成城・喜多見・大蔵・岡本
  • マップ6:大蔵・岡本・瀬田
  • マップ7:瀬田・上野毛・中町・等々力
  • マップ8:等々力・中町・野毛・尾山台

マップ4から8が、いわゆる国分寺崖線です。成城から喜多見、大蔵、岡本、瀬田、上野毛、等々力、尾山台へと、多摩川に沿って南東へ下っていく崖。マップ1から3は、烏山川・北沢川・蛇崩川といった旧河川が台地を削ってできた谷の斜面です。

指定区域の詳しい線引きは東京都土砂災害警戒区域等マップで番地単位まで確認できます。理事会資料をつくるなら、こちらの画面を印刷して添付するのが一番早いと思います。


世田谷区で水が入ってくる4つの経路

ここからは現場の話です。世田谷区の建物で、実際に水がどこから入るか。頻度の高い順に4つ挙げます。

経路1:地下駐車場・地下ピットへの流入

世田谷区が公開している「浸水確認箇所一覧/浸水確認箇所図」は、平成元年から令和7年9月30日までの区内の浸水被害を記録した資料です(令和8年3月11日更新)。

この資料の読み方に、ひとつ重要な仕掛けがあります。区の説明を引用します。

地下階の浸水は、該当メッシュに円で表しています。(中略)地下車庫など人が居住しない場所のみへの浸水は円単独で表示し、人が居住する場所への浸水を含む場合は円とメッシュを重ねて表示しています。

つまり、地図上に「円だけ」が打たれている場所は、地下車庫や地下室だけが水に浸かった記録ということです。住戸は無事でも、地下は水没している。管理組合の記録には残っていなくても、区の記録には残っている可能性があります。

自分のマンションの敷地とその周辺に円が打たれていないか。これを一度確認するだけで、大規模修繕の優先順位が変わることがあります。区は二子玉川分庁舎A棟2階でも掲示しています。

経路2:排水の逆流(トイレ・浴室・排水ピット)

道路面より低い位置に便所や浴室がある建物では、下水道管から水が逆流してきます。世田谷区は平成17年6月に「世田谷区建築物浸水予防対策要綱」を定め、次の建築物に浸水予防対策検討結果の届出を義務づけています。

  1. 建築物の周囲の地面または道路面より低い位置に床を有する建築物
  2. 便所、浴室等の排水が逆流するおそれのある建築物
  3. 洪水・内水氾濫ハザードマップで浸水予想区域となっている区域内の建築物

区が示している対策例は、半地下のトイレの下水道管に逆流防止弁と水中ポンプを設置するというものです。新築時に届出をしている建物であれば、その逆流防止弁が図面のどこかに描かれているはずです。竣工から20年経った建物で、この弁が生きているかどうかを確認したことがある管理組合は、私の経験では多くありません。

大規模修繕の設計段階で、逆流防止弁と排水ポンプの点検を「調査項目」に入れておく。費用にして数万円の追加です。これは費用対効果がきわめて高い項目だと考えています。

経路3:崖側・斜面側の外壁からの浸入

冒頭の等々力の事例がこれです。国分寺崖線沿いの建物は、敷地の高低差を擁壁で受けて、建物の一部が地中に接していることがよくあります。この部分の外壁は、雨ではなく土の中の水(土中水)にさらされ続けます。

土中水による漏水は、屋上防水をいくらやっても止まりません。止めるには、地中側の防水層か、内側からの止水処理が必要になります。そして地中側をやり直すには、土を掘る工事が要る。つまり工事の規模と費用が一桁変わります。

だからこそ、斜面側を持つ建物は、調査の段階で「どこから水が来ているか」を確定させる必要がある。ここを推測で進めると、修繕費が丸ごと無駄になります。

経路4:屋上・バルコニー・外壁からの通常の漏水

台地上の一般的な立地(経堂・祖師谷・烏山・松原など)では、水は素直に上から来ます。屋上防水の立ち上がり、ドレン(排水口)まわり、バルコニーの防水層の端部、外壁のひび割れ、サッシまわりのシーリングの劣化。この4つで、世田谷区に限らずマンションの漏水の大半を説明できます。

時間153ミリという想定雨量が意味するのは、屋上のドレンが1つ詰まっていたら、屋上がプールになるということです。年に2回、落ち葉と土砂を取るだけで防げる漏水が、現実にはたくさんあります。


世田谷区で使える防災・浸水対策の助成制度(令和8年度)

世田谷区は令和8年度から、浸水対策の助成をひとつ新設しました。

止水板設置等助成制度(令和8年4月1日施行・新設)

令和8年度から始まったばかりの制度です(出典:世田谷区「止水板設置等助成制度のご案内」/令和8年9月15日更新、世田谷区止水板設置等助成要綱)。

区分 助成額 限度額
止水板設置工事および関連工事(個人) 工事費用の5分の4 100万円
止水板設置工事および関連工事(法人) 工事費用の5分の3 100万円
簡易型止水板の購入(個人) 購入費用の5分の4 16万円
簡易型止水板の購入(法人) 購入費用の5分の3 16万円

「関連工事」には、内外壁の止水工事、土間コンクリート打設工事などが含まれます。止水板そのものだけでなく、止水効果を高めるための周辺工事まで対象という設計です。ここは実務上かなり大きい。

対象となる止水板の要件は3つです。

  • 浸水に耐えうる材質で、JIS規格(JIS A 4716)で定められた浸水防止性能に準じた性能を有すること
  • 取り外しまたは移動が可能であること
  • 繰り返しの使用が可能であること

そして特筆すべきなのが、令和7年7月10日から令和8年3月31日までに設置・購入したものも遡って対象になるという点です。制度開始前に自費で止水板を入れた管理組合・オーナーさまは、申請できる可能性があります。管理会社から案内が来ていないケースもありますので、心当たりがあれば確認されることをおすすめします。

注意点もあります。法令または条例により止水板の設置を義務づけられている場合、国・東京都・世田谷区から別の補助を受ける場合は対象外です。また、助成を受けて設置した止水板と同一の建築物に再度設置する場合も対象外になります。予算の定める額が上限であることも要綱に明記されています。

問い合わせ先は世田谷区土木部 豪雨対策・下水道整備課 豪雨対策(電話 03-6432-7963)です。

公道に面した擁壁改修等工事の補助制度

崖線沿いのマンションにとって、こちらのほうが金額の桁が大きい制度です(出典:世田谷区「公道に面した擁壁改修等工事の補助制度」/令和8年4月1日更新)。

  • 補助金額:補助対象経費の3分の1
  • 補助限度額:300万円
  • 対象:公道に面している既存擁壁の築造替え工事、公道に面している斜面(がけ)への擁壁新設工事
  • 条件:工事後の擁壁の高さが2メートルを超えること、建築基準法等に適合し検査済証が交付されるもの
  • 令和7年4月より、補助対象が「通学路」から「不特定多数が通行する公道に面している場合」へ拡大

管理組合にとって重要なのは、区分所有建物の敷地の場合、規約で定められた代表者、または区分所有者の過半数の合意により選出された代表者が申請できると明記されている点です。分譲マンションでも使える制度だということです。

ただし2点、落とし穴があります。補修工事は対象外(既存擁壁の造り替え、または斜面への擁壁新設のみ)であること。そして法人は対象外であること。賃貸マンションを法人名義で所有されている場合は使えません。

事前協議が必須で、区の職員が現場を確認してから対象可否が判断されます。国土交通省の「我が家の擁壁チェックシート」で評価点が5.0点以上であることも要件のひとつです。

問い合わせ先は世田谷区防災街づくり担当部 市街地整備課 宅地防災促進(電話 03-6432-7158)です。擁壁改修専門家派遣制度や、宅地防災の専門家によるがけ・擁壁の無料相談会も区が用意しています。


世田谷区で足場とロープアクセスをどう使い分けるか

ここからは工法の話です。世田谷区の建物で、どちらを選ぶべきか。

金額の目安から申し上げます。10階建て・外周80メートル・工期3ヶ月という条件の建物で、仮設足場の費用はおよそ168万円、ロープアクセス工法なら59万円前後。差額でおよそ109万円という試算になります。もちろん実際の見積は建物の形状・立地・工事範囲で大きく変わりますので、あくまで参考値としてご覧ください。

工種ごとの単価の目安はこのあたりです。

工種 単価の目安
外壁打診調査 250〜500円/平方メートル
外壁塗装 3,500〜4,500円/平方メートル
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/平方メートル

30戸規模のマンションの大規模修繕であれば、総工費はおおむね3,500万円から5,000万円。そのうち仮設足場が15〜25パーセントを占めます。足場をどう扱うかで、総額が数百万円動くということです。

世田谷区でロープアクセス工法が効く場面

崖線沿いの斜面地。これが世田谷区で最も差が出るところです。成城・岡本・瀬田・上野毛・等々力の斜面に建つマンションは、建物の片側が崖、もう片側が狭い道路、というケースが珍しくありません。足場を組もうにも、そもそも足場の脚を置く平らな地面がない。斜面に足場を架けるには特殊な支持が必要で、費用も工期も跳ね上がります。ロープアクセス工法なら、屋上から吊り下がるので、地面の条件にほとんど左右されません。

外周に空きのない敷地。世田谷区は住宅地としての密度が高く、隣地境界までの距離が50センチ程度という建物もあります。足場が物理的に入らない、あるいは隣地の承諾が取れない場合、無足場工法が現実的な選択肢になります。

部分的な補修。漏水箇所が特定できていて、外壁の一部だけ直したい。このために全面足場を架けるのは、費用として合いません。

世田谷区で足場を選ぶべき場面

一方で、私は足場を否定する立場ではありません。外壁の劣化が全面的に進行していて、下地補修の量が多い建物では、足場のほうが結果として安く、品質も安定します。作業員が両手を自由に使えて、材料と道具を手元に置けるからです。

工事範囲が広く、複数の工種(塗装・防水・タイル・シーリング・サッシ)を同時に動かす場合も、足場のほうが工程を組みやすい。

そしてハイブリッド工法。低層部と下地補修の多い面は足場、高層部や崖側の足場が架けにくい面はロープアクセス、という組み合わせです。世田谷区の崖線沿いの物件では、この選択が最もコスト最適になるケースが多いと感じています。

3つの工法を自社で持っていないと、この提案はできません。足場しか持たない会社は足場を勧め、ロープしか持たない会社はロープを勧める。建物にとって最適かどうかは、二の次になります。工法ごとの技術的な詳細は、同業者・加盟希望者向けの姉妹サイトロープアクセスドットコムでも解説していますので、より深く知りたい方はそちらもご覧ください。

株式会社明誠は、これまでにおよそ6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工し、ISO9001の品質マネジメントシステムのもとで管理しています。安全管理の具体的な体制については明誠の安全管理への取り組みにまとめています。


世田谷区のマンションで、防災の観点から先にやるべき5つ

大規模修繕の設計に入る前に、費用をかけずにできることから並べます。

1. ハザードマップの版を確認する

管理室にある洪水・内水氾濫ハザードマップと土砂災害ハザードマップの発行年月を見てください。どちらも令和8年7月更新版が最新です。それより古いものであれば、区役所東棟3階の災害対策課、各総合支所、まちづくりセンター、図書館で入手できます。

浸水の範囲や深さ自体は令和6年7月版から変わっていませんが、避難所の追加や、地下施設の浸水リスクの追記など、運用面の情報が更新されています。

2. 建物の浸水深を「数字」で押さえる

区のハザードマップは避難の目安であり、個々の住宅の浸水の程度を示すものではありません。より具体的な浸水深を知りたい場合、東京都建設局河川部の浸水リスク検索サービスで住所から検索できます。浸水継続時間も確認できるのが、この検索サービスの強みです。

多摩川洪水版と内水氾濫版の両方の浸水深を比べたい場合は、国土交通省の重ねるハザードマップが便利です。

3. 受電設備・ポンプ・エレベーターピットの標高を確認する

浸水想定深と、実際の設備の設置高さを並べて見る。これだけで「かさ上げが必要かどうか」が判断できます。国土交通省は建築物における電気設備の浸水対策ガイドラインを公表しており、既存建物への対策の考え方も整理されています。

受電設備が水に浸かると、建物全体が停電し、給水ポンプも止まり、エレベーターも止まります。住戸に一滴も水が入っていなくても、生活は成立しなくなる。ここが最優先だと私が考える理由です。

4. 逆流防止弁と排水ポンプの生存確認

竣工図を出して、逆流防止弁がどこにあるかを確認する。そのうえで、実際に動くかを点検する。地下駐車場の排水ポンプについても同様です。年1回の防災訓練の日に合わせて実施している管理組合もあります。

5. 擁壁のチェックシート点検

崖線沿いの建物であれば、国土交通省の「我が家の擁壁チェックシート」(世田谷区のページからダウンロードできます)で自主点検してみてください。評価点が5.0点以上であれば、区の擁壁改修補助の対象になり得ます。


よくあるご質問

Q. 世田谷区には高潮や津波のリスクはないのですか?

A. 世田谷区は水防法に基づく高潮浸水想定区域が未指定で、津波ハザードマップも作成されていません。海に面していないためです。そのぶん、多摩川の洪水、中小河川と内水氾濫、国分寺崖線の土砂災害の3つが、世田谷区で備えるべきリスクになります。

Q. 令和8年度の止水板の助成は、マンションの管理組合でも使えますか?

A. 助成対象者は「世田谷区の区域内で止水板の設置工事または簡易型止水板の購入を行う住宅、事務所等の所有者または使用者」とされています。具体的な適用可否は建物の所有形態や申請主体によりますので、世田谷区土木部 豪雨対策・下水道整備課(電話 03-6432-7963)に事前にご確認ください。法人の場合は助成率が5分の3になります。

Q. 令和7年に自費で止水板を設置しました。今から申請できますか?

A. 令和7年7月10日から令和8年3月31日までに設置・購入されたものは、遡って助成の対象になります。ただし添付書類が令和8年4月1日以降の設置とは異なりますので、区の案内をご確認のうえ申請してください。

Q. 地下駐車場の浸水対策だけを先にやりたいのですが、大規模修繕とは別にできますか?

A. できます。むしろ、浸水リスクが高い建物では、大規模修繕の本体工事を待たずに止水対策を先行させることをおすすめしています。止水板設置に助成が使える令和8年度のうちに動くほうが、費用面でも有利です。

Q. 崖側の外壁からの漏水は、大規模修繕で直りますか?

A. 地中に接している部分からの浸入であれば、通常の外壁塗装や屋上防水では止まりません。まず調査で浸入経路を特定することが先決です。原因の切り分けができていない状態で工事に入るのが、費用が無駄になる最大のパターンです。漏水対応の考え方にも詳しくまとめています。

Q. 足場が組めない斜面地のマンションですが、外壁の点検はどうすればよいですか?

A. ロープアクセス工法であれば、屋上からロープで下降しながら打診調査と補修が同時にできます。地面の条件に左右されないのが最大の利点です。上空からの俯瞰が必要な場合はドローン調査と組み合わせることもあります。技術的な詳細はロープアクセスドットコムでも解説しています。

Q. 打診調査の費用はどれくらいですか?

A. 一般的な目安は1平方メートルあたり250〜500円ですが、建物の高さ・形状・調査範囲により変動します。足場を架けずにロープアクセスで実施する場合、足場費用がまるごと不要になるぶん、総額が抑えられるケースが多くあります。料金の考え方もご参照ください。

Q. 相談は無料ですか?

A. 現地調査と概算のご提示までは無料で承っています。お問合せフォームからご連絡ください。管理組合向けのご説明資料もご用意しています。


まとめ:今週、世田谷区の理事会で動けること3つ

  1. 管理室のハザードマップ2冊の発行年月を確認する — どちらも令和8年7月更新版が最新です。古ければ区役所東棟3階または各総合支所で差し替えを
  2. 浸水確認箇所図で、自分の敷地周辺に「円」が打たれていないか確認する — 円は地下階の浸水記録です。地下駐車場・地下ピットの対策優先度がここで決まります
  3. 止水板設置等助成を理事会の議題に載せる — 令和8年度から始まった新制度で、個人は工事費の5分の4・限度額100万円。令和7年7月10日以降の設置は遡って申請できます

世田谷区は、高潮も津波もない代わりに、台地の谷と国分寺崖線という地形が水の動きをすべて決めている区です。だからこそ、「23区の平均的な修繕計画」がいちばん当てはまらない区でもあります。自分の建物がどこに立っているかを地図で確定させることから、修繕の議論を始めていただきたいと思います。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。管理組合さま向けのサービス内容は管理組合向け大規模修繕のご案内、賃貸・オーナー物件はビルオーナー向けのご案内、収益不動産としての資産価値維持の考え方はオーナー向けの提供価値にまとめています。

明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月17日時点で公表されている世田谷区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず世田谷区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月17日

大田区のマンション漏水・防災対策|多摩川・高潮・呑川の内水と台地の崖線から逆算する大規模修繕2026年度版

2026年9月17日 更新

去年の秋、大田区の蒲田で賃貸マンションを2棟お持ちのオーナーさまから、夜の10時過ぎに電話をいただきました。「1階の店舗に水が来た。屋上は問題ないと言われていたのに、なぜだ」。令和7年9月11日、大田区で初めて「記録的短時間大雨情報」が発表された日のことです。大田区の大規模修繕では、この日の雨が1つの分岐点になったと私は考えています。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。

現地に入って分かったのは、水は屋上からではなく、道路側から入ってきていたということでした。大田区の蒲田・大森あたりは、雨が降ったときに「上から漏る」より先に「下から来る」建物が少なくありません。同じ大田区でも、田園調布や久が原の高台では、まったく別の理由で水が回ります。

今日は、大田区が公表している最新のハザード資料から逆算して、大田区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。


結論:大田区は「4つのリスクが1区に同居する」珍しい区です

先に結論から申し上げます。大田区の建物では、自分の建物がどの地形に立っているかを地図で確定させてから、修繕の順番を組みます。23区のなかでも、大田区ほど条件の違う土地が1つの区に混在している場所は多くありません。

立地 該当エリアの例 主なリスク 最優先の対策
多摩川沿いの低地 田園調布南・鵜の木・下丸子・矢口・六郷 多摩川の洪水/内水 開口部の止水・地下設備の位置
内陸の低地 蒲田・大森・糀谷 呑川などの内水氾濫 排水経路・地下駐車場・受電設備
湾岸の埋立地 平和島・昭和島・京浜島・城南島・羽田 高潮・塩害・液状化 塩害腐食・シーリング・液状化沈下
台地とその崖線 田園調布・嶺町・久が原・雪谷・馬込・池上・千束 土砂災害・擁壁 擁壁とがけ・斜面側の排水

この4類型のうち、自分の建物がどれに当たるかを、区のハザードマップで先に確定させる。それをやらずに「とりあえず屋上防水から」と進めてしまうと、順番を1つ間違えるだけで数百万円が無駄になります。私が理事長さまにいつも最初にお伝えしているのは、この一点です。


大田区のハザードマップを1枚で読む

大田区は「大田区防災ハザードマップ」を冊子型で発行しています。最新版は令和8年2月発行で、区のページは令和8年7月2日に更新されています(出典:大田区「大田区防災ハザードマップ」)。

構成は3編です。

  • 震災編:液状化可能性マップ、火災の被害想定、建物倒壊の被害想定、津波ハザードマップ、防災マップ
  • 風水害編:多摩川ハザードマップ、高潮ハザードマップ、中小河川・土砂災害・内水氾濫ハザードマップ
  • 防災編:避難先の一覧、情報入手先

注目していただきたいのは、令和8年2月の改訂で高潮ハザードマップの被害想定が最新の情報に更新された点です。湾岸側に建物をお持ちの方は、手元のマップが令和7年3月版以前のものであれば、想定が変わっている可能性があります。管理室に置いてある冊子の発行年月を、一度確認されることをおすすめします。

それぞれのリスクを詳しく見たいときは、次の一次情報が使えます。

東京都の液状化予測図は、特定の地震を想定したものではなく、大正12年の関東大地震で都心が受けた程度のゆれ、都内全体として震度6弱程度を一律にかけた場合の相対評価です。境界線がはっきり引かれた地図ではない、という前提で読む必要があります。


大田区で起きた水害と、そこから見える建物の弱点

令和7年9月11日:区で初めての「記録的短時間大雨情報」

大田区の公式ページには、こう書かれています。令和7年9月11日、大田区で初めて「記録的短時間大雨情報」が発表され、家屋の浸水など多くの被害が発生しました(出典:大田区「大田区の豪雨対策」(令和8年3月19日更新))。

同じページに、建物を持つ側として押さえておくべき数字があります。

1時間に100mm以上の非常に激しい雨が降り、一般的な排水設備能力(50mm)を超えて道路の冠水が起こります。

つまり、大田区の街は時間50mmの雨を流す前提で下水と側溝が設計されている。そこに100mmが来れば、あふれるのは設計どおりということです。建物側で受け止めるしかない、という意味でもあります。

気象庁の「日本の気候変動2025」によれば、1時間降水量50mm以上の短時間強雨の年間発生回数は、1976〜1985年平均の226回から2013〜2022年平均の328回へ、約1.5倍に増えています(出典:気象庁「日本の気候変動2025」)。50mmを超える雨が例外ではなくなってきている、というのが私の実感とも一致します。

令和元年東日本台風:田園調布四丁目・五丁目

もう一つ、大田区の水害史で外せないのが令和元年台風19号です。大田区は田園調布四丁目・五丁目の浸水原因を究明するため、内水解析シミュレーションを実施し、検証結果を公表しています(出典:大田区「令和元年台風19号における田園調布地区内水解析 検証結果」)。

田園調布と聞くと高台のイメージをお持ちの方が多いのですが、四丁目・五丁目は多摩川側に下りた低地です。「区名」でも「町名のイメージ」でもなく、丁目と標高で判断する。大田区は特に、これが効く区です。


地域特性別・大田区のマンションで起きている漏水

現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、「地形に合っていない修繕を高いお金でやってしまった建物」を後から見せられるときです。大田区の4類型それぞれで、実際に多い漏水パターンを挙げます。

湾岸の埋立地(平和島・昭和島・京浜島・城南島・羽田)
潮風が常時当たるため、シーリング(外壁の目地に詰めるゴム状の材料)の劣化が内陸より数年早く進みます。手すりや避難ハッチの取付金物、屋上の笠木のビス周りから錆が回り、そこが水みちになる。塩害地域では、防水そのものより金物まわりの腐食が先に来ます。

内陸の低地(蒲田・大森・糀谷)
上からではなく下から来ます。地下駐車場のスロープ、地下ピット、1階店舗の出入口。冒頭のオーナーさまの蒲田の建物も、これでした。あわせて、屋上のドレン(排水口)に落ち葉やビニールが詰まって、屋上がプール状態になる「詰まり漏水」も多い区です。

多摩川沿いの低地(田園調布南・鵜の木・下丸子・矢口・六郷)
洪水時の浸水深が大きいエリアでは、受電設備(キュービクル)や給水ポンプが地下や1階にあると、水が引いても復旧に時間がかかります。建物は無事なのに電気と水が止まるという状況が、住民の生活を一番痛めつけます。

台地とその崖線(田園調布・嶺町・久が原・雪谷・馬込・池上・千束)
大田区が公表している土砂災害マップは、田園調布/嶺町/鵜の木・久が原/千束/雪谷/馬込・池上・新井宿/入新井・馬込・新井宿の7エリア分に分かれています。土砂災害警戒区域の指定基準は「傾斜度30度以上で高さ5m以上」など地形で決まるため、都心の住宅地でも該当します。斜面側の擁壁の水抜き穴、建物と擁壁の隙間、斜面に面した外壁の下端。ここが大田区の高台側の弱点です。


大規模修繕で見ておきたい漏水ポイント7つ

大田区のどの地形であっても、共通して押さえるべき箇所は7つです。私はこれを、いつもワンセットで提案するようにしています。

  1. 屋上防水の立上りと押えコンクリートの伸縮目地 — 平場より先に端部から切れます
  2. 外壁シーリング — 湾岸は劣化が早い。打ち替え周期を内陸と同じにしない
  3. バルコニーの床防水と排水ドレン — 住戸内漏水の入口No.1
  4. ドレン・ルーフドレンの詰まり — 時間100mmの雨は詰まりを一発で露呈させます
  5. サッシまわりのシーリングと水切り — 横殴りの雨で室内に回る典型
  6. エキスパンションジョイント(建物の継ぎ目のカバー) — 地震後に開き、そこから漏る
  7. 笠木・手すり・避難ハッチの取付金物 — 塩害地域では腐食起点になる

費用の目安を申し上げると、外壁塗装で3,500〜4,500円/㎡、外壁の打診調査で250〜500円/㎡、屋上防水で5,000〜8,000円/㎡といったレンジです。30戸規模のマンションの大規模修繕全体では3,500〜5,000万円程度、そのうち15〜25%が仮設足場費というのが一般的な構成になります。あくまで参考値で、実際の見積は建物の形状・立地・劣化状況で大きく変わります。


大田区の漏水緊急対応で、ロープアクセス工法が強い理由

漏水は、雨が降っているときに起きます。そして仮設足場は、雨の日に組めません。

足場を計画して組み上げるまでには、資材の手配から近隣への挨拶まで含めて、早くても1〜2週間はかかります。その間、漏れ続けます。私が「足場だけの会社では対応しきれない」と申し上げるのは、この時間差のためです。

ロープアクセス工法(産業用ロープで屋上から降下して作業する無足場工法)なら、当日から屋上の立上りやサッシまわりの応急止水に入れます。漏れている場所が7階の1住戸だけなら、そこだけをピンポイントで止める。全面を囲う必要がありません。

コストの差も大きい。10階建て・外周80m・工期3ヶ月という条件で試算すると、仮設足場が168万円のところ、ロープアクセスなら59万円程度。差額は約109万円です。これも物件条件で変動しますが、規模が大きくなるほど差は開きます。

大田区の湾岸エリアのように、建物の海側だけが激しく傷んでいるケースでは、傷んだ面だけロープアクセス、複雑な形状の面だけ足場というハイブリッド工法が総額を一番抑えます。株式会社明誠は、通常足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法から建物特性に応じて選べる、日本でも数少ない会社です。工法ごとの技術的な違いや安全管理の考え方は、同業者向けの姉妹サイトロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。

安全面についても申し上げておきます。明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では、ロープアクセス工法での高所作業について過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が担当し、ISO9001の品質マネジメントシステムのもとで施工しています。訓練体系の中身はロープアクセスドットコムに掲載しています。

より実務的な工法比較は明誠のロープアクセス工法の技術詳細、漏水そのものへの対応はマンション・ビルの漏水調査と補修をご覧ください。


防災上の共用部:修繕の優先度をどうつけるか

理事会で「どこから直すか」の議論になったとき、私は災害時に生活が止まる順で並べることをおすすめしています。

優先度 部位 理由
最優先 受電設備・給水ポンプ 浸水すると電気も水も止まり、復旧に最も時間がかかる
高 エレベーター機械室・ピット 浸水・冠水で長期停止。高層階の高齢入居者に直撃
高 避難通路・外部階段 鉄部の腐食は避難そのものを危うくする
中 屋上防水・ドレン 詰まりは低コストで直せるが、放置すると全体に波及
中 擁壁・がけの水抜き 崖線側の建物のみ。ただし該当すれば最優先へ繰り上げ

大田区には、浸水被害を受けた場合の排水ポンプ貸出制度があり、区内在住・在勤の方が対象です。また区内30か所に土のう置場が設置されていて、連絡なしで利用できます(出典:大田区「大田区の豪雨対策」)。管理会社任せにせず、管理組合として置場の位置を1か所把握しておくだけでも、当日の動きが変わります。


大田区で使える防災・耐震の助成制度(令和8年度)

止水板設置助成制度

令和7年9月の浸水被害を受けて、大田区は止水板設置の助成を行っています。令和8年度現在の内容は次のとおりです(出典:大田区「止水板設置助成制度」(令和8年8月25日更新))。

区分 助成割合 限度額
止水板設置工事(関連工事含む) 5分の3(個人は5分の4) 150万円(個人は100万円)
簡易型止水板の購入費 5分の3(個人は5分の4) 20万円(個人は25万円)

対象区域は、区内で過去に浸水被害が発生した地域、および区の防災ハザードマップの中小河川・内水氾濫ハザードマップにおける浸水想定区域です。1棟につき1回が限度で、交付決定前に工事に着手すると対象外になります。設置後は10年間の適切な維持管理が求められます。

管理組合として申請される場合は「個人」ではない扱いになりますので、5分の3・上限150万円が適用される想定です。適用区分は事前に建築調整課(03-5744-1308)へご確認ください。

マンションの耐震診断・改修助成

大田区は、地階を除く3階建て以上の耐火・準耐火の共同住宅を対象に、分譲・賃貸ともに耐震診断と耐震改修の助成を行っています(出典:大田区「マンションの耐震診断・改修の費用の助成について」(令和8年4月1日更新))。

ステップ 分譲マンション 賃貸マンション
耐震診断 上限300万円/費用の2/3 上限100万円/費用の2/3
耐震改修設計 上限300万円/費用の2/3 上限100万円/費用の2/3
耐震改修工事 上限4,000万円/費用の1/2 上限500万円/費用の1/2

耐震改修工事は、単価51,700円/㎡×延べ面積で算出した額と実費のうち、低いほうが適用されます。賃貸はさらに50万円/戸の上限が重なります。道路への突出がある場合や未接道の場合は助成不可となる点にご注意ください。

令和8年度の申請締切日は、分譲マンション耐震化アドバイザー派遣申請および非木造建築物の診断・改修設計・改修工事申請が令和8年12月18日(金)です(出典:大田区「令和8年度耐震化助成申請締切日について」)。

あわせて、大田区は分譲マンション耐震化アドバイザー派遣制度を無料で実施しています。建築士が管理組合に出向いて耐震化の助言を行うもので、派遣回数は調査・報告で各1回、その他3回までが上限です。総会に諮る前の整理に使いやすい制度だと思います。


よくあるご質問

Q. 大田区で漏水が起きたとき、いつ来てもらえますか?

A. ロープアクセス工法であれば、足場を組まずに屋上から降下して調査・応急止水に入れるため、状況によっては当日から対応できます。足場工法の場合は資材手配と近隣挨拶を含めて1〜2週間が目安となり、その間の漏水は続いてしまいます。

Q. 漏水の原因調査だけをお願いすることはできますか?

A. できます。外壁の打診調査は250〜500円/㎡が目安で、ロープアクセスやドローンを併用すれば足場費をかけずに全面を確認できます。調査結果をもとに、補修範囲と概算をご提示します。

Q. 湾岸エリアは本当に修繕周期が短いのですか?

A. 潮風が常時当たる立地では、シーリングや鉄部塗装の劣化が内陸より早く進む傾向があります。長期修繕計画を内陸の標準周期のまま使っていると、実態と合わなくなることがあります。現況調査のうえで周期を見直すことをおすすめします。

Q. 止水板の助成は管理組合でも使えますか?

A. 大田区の止水板設置助成は「区内に存する又は新たに建築される建築物」が対象で、個人以外の場合は助成割合5分の3・上限150万円が適用される想定です。対象区域と適用区分は物件ごとに判断されますので、着工前に建築調整課へご確認ください。

Q. 足場とロープアクセスは、どちらが安いのですか?

A. 建物の形状と工事範囲によります。10階建て・外周80m・工期3ヶ月の条件では足場168万円に対しロープアクセス59万円程度という試算になりますが、複雑な形状の建物や全面改修では足場のほうが効率的な場合もあります。明誠は3工法を比較したうえで、総額が最も抑えられる組み合わせをご提案します。

Q. 耐震改修の助成を使うと、大規模修繕と同時にできますか?

A. 同時期に計画すること自体は可能ですが、耐震改修助成は交付決定後に契約・着手する必要があります。大規模修繕のスケジュールと申請時期の調整が要点になりますので、早めに区へご相談ください。

Q. 相談は無料ですか?

A. 現地調査と概算のご提示までは無料で承っています。お問合せフォームからご連絡ください。管理組合向けのご説明資料もご用意しています。


まとめ:今週、大田区の理事会で動けること3つ

  1. 管理室の防災ハザードマップの発行年月を確認する — 令和8年2月発行版より古ければ差し替え。高潮の想定が更新されています
  2. 受電設備・給水ポンプ・エレベーターピットの標高を確認する — 浸水想定深と見比べて、かさ上げ検討の要否を判断する
  3. 止水板設置助成と耐震化助成の締切を理事会の議題に載せる — 耐震化助成の非木造・アドバイザー派遣は令和8年12月18日(金)が締切です

大田区は、多摩川・東京湾・呑川・台地の崖線という、性格の違うリスクを1つの区に抱えています。だからこそ、「23区の平均的な修繕計画」がいちばん当てはまらない区でもあります。自分の建物がどこに立っているかを地図で確定させることから、修繕の議論を始めていただきたいと思います。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。管理組合さま向けのサービス内容は管理組合向け大規模修繕のご案内、賃貸・オーナー物件はビルオーナー向けのご案内にまとめています。

明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月17日時点で公表されている大田区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、大田区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月17日

山中湖村のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

株式会社明誠の本間です。今日は山梨県南都留郡山中湖村のマンション管理組合の皆さま、そして山中湖村に物件をお持ちの区分所有者の方に向けて書きます。

この記事で答える質問は1つです。「山中湖村のマンションで大規模修繕をするとき、使える補助金はあるのか。そして、工事を始める前に何をしておくべきか」。

先に結論を申し上げます。山中湖村には、マンションの共用部改修に直接使える村独自の補助金は、現時点で公式サイト上に見当たりません。効いてくるのは山梨県と国の制度です。そして山中湖村の場合、補助金よりも先に効く論点がもう1つあります。外壁の色を変えるなら、工事より前に届出が要る、という話です。

これは私が他の自治体の記事では一度も書いていない、山中湖村と忍野村・富士吉田市などの富士北麓地域に固有の段取りです。ここを知らずに総会で工事を決議してしまうと、工程が丸ごと組み直しになることがあります。


結論|山中湖村のマンション共用部に効くのは「県・国・届出の段取り」の3つ

まず全体像を、共用部に使えるか使えないかで仕分けた早見表でお示しします。総会資料にそのまま貼っていただいて構いません。

制度・手続き 実施主体 共用部に使えるか 令和8年度の要点
山中湖村 木造住宅耐震診断・耐震化支援 山中湖村 使えない(木造在来工法2階建て以下が対象) 診断無料、改修最大100万円(工事費の8割が限度)
山中湖村 住宅用太陽光発電システム設置費補助金 山中湖村 原則使えない(申請者本人が居住する住宅が対象) 1kWにつき2万円・最大20万円/受付は令和9年3月31日まで
山中湖村 定住化促進新築等補助金 山中湖村 使えない(新築・購入が対象) 50万円
住宅・建築物安全ストック形成事業(耐震改修) 国+地方 使える可能性あり マンションの耐震改修は国と地方で1/3
耐震診断への支援 国+地方 使える可能性あり 民間実施は国と地方で2/3
マンションストック長寿命化等モデル事業 国 使える(採択制) 令和8年度 第3回受付は9月18日(金)まで
マンション管理計画認定制度 山梨県(町村部) 直接の補助ではないが税制の入口 適合証あり3,600円/なし25,500円
マンション長寿命化促進税制 国(固定資産税) 使える(要件あり) 令和8年度税制改正で5年延長
マンション共用部分リフォーム融資 住宅金融支援機構 使える 管理組合向けの融資制度
自然公園法の許可・届出 山梨県/村土整備課 補助ではなく必須手続き 屋根・壁面等の色彩変更が対象行為
山中湖村景観条例の届出 山中湖村 補助ではなく必須手続き 「色彩のみ」の届出様式が用意されている

この表の下3行、つまりお金をくれる制度ではなく、やらないと工事が止まる手続きが、山中湖村では一番重要です。順番に解説します。


山中湖村はリゾートマンション30数棟・2,886室以上|管理組合の数がそもそも多い村です

山中湖村の規模感を、村の公式資料で確認しておきます。

  • 総面積:53.05平方キロメートル
  • 村役場の海抜:980.5m。村の大半は標高1,000m前後の高原地帯
  • 別荘:約3,490軒
  • ホテル・旅館・民宿・ペンション等:大小あわせて320軒以上
  • リゾートマンション:30数棟・2,886室以上
  • 観光客:年間約150万人

(出典:山中湖村「山中湖村の概要」2024年4月6日更新)

私がこの数字を見たとき、正直に申し上げて「これは無視できない」と思いました。人口5,000人規模の村に、2,886室以上のリゾートマンションがある。単純に言えば、居住者より区分所有者のほうが多い建物が、30数棟あるということです。

そしてその区分所有者の多くは、東京・神奈川・静岡にお住まいです。理事会が年に数回しか物理的に集まれない。総会の委任状が頼り。修繕積立金の滞納が起きても顔が見えない。こういう構造の管理組合が、山中湖村には集中しています。

この構造を前提にしないと、大規模修繕の計画は絵に描いた餅になります。後半で、この合意形成をどう設計するかを具体的に書きます。


山中湖村ならではの論点|外壁の色を変えるなら、工事より先に「2つの届出」

ここからが本題です。

山中湖村は昭和11年に富士箱根伊豆国立公園として指定され、平成8年7月16日に公園区域(地種区分)が決定されています。そして村の公式サイトには、こう明記されています。

建築物、工作物の新築・改築・増築行為、木竹の伐採、看板・標識等の設置、屋根・壁面等の色彩変更、土地の形状変更、太陽光パネルの設置などを行う場合については、場所・規模等により、自然公園法の規制を受けます

(出典:山中湖村「自然公園法について」2024年10月10日更新)

太字は私が付けました。「屋根・壁面等の色彩変更」が、自然公園法の規制対象として名指しされているのです。

大規模修繕で外壁を塗り替えるとき、まったく同じ色に戻すなら問題になりにくい。しかし「せっかくだから少し明るくしよう」「サッシまわりのアクセントを変えよう」という話は、理事会でごく普通に出ます。山中湖村では、その判断が法手続きに直結します。

さらに村の景観条例でも届出が要ります

山中湖村は、湖を囲む自然景観と富士山への眺望を守るために山中湖村景観計画を策定し、山中湖村景観条例を定めています。そして届出様式のラインナップを見ると、村の本気度がわかります。

  • 第4号様式(1)景観計画区域内行為届出(通知)書(色彩のみ)
  • 第4号様式(2)(3)景観計画区域内行為届出(通知)書
  • 第5号様式 景観計画区域内行為変更届出(通知)書
  • 第11号様式 対象行為完了届出書
  • 第16号様式 大規模行為に係る事前協議書
  • 第17号様式 事前説明状況報告書

(出典:山中湖村「山中湖村景観条例について」)

注目していただきたいのは、「色彩のみ」という専用の届出様式がわざわざ用意されている点です。色を変えるだけの行為が、それ単独で届出対象として想定されている。こういう様式構成の自治体は、全国的にも多くありません。

加えて、規模が大きければ「大規模行為に係る事前協議書」と「事前説明状況報告書」が出てきます。事前説明ということは、周辺への説明が求められる可能性があるということです。

地種区分によって建築規制が変わります

自然公園法の規制内容は、その土地がどの地種区分にあるかで変わります。山中湖村が公表している建築物の取り扱い概要から、集合住宅に関わる部分を抜き出します。

区域 集合住宅等の高さ 建ぺい率 容積率
第二種特別地域(分譲地内) 10m・2階建以下 20% 40%
第二種特別地域(その他) 13m 敷地面積により10〜20% 20〜40%
第三種特別地域 第二種と同じ 20% 60%
普通地域 15m 70%(50%) 200%

※「集合住宅等」には、集合住宅・集合別荘・分譲ホテル・保養所または分譲地内に設けられる建築物が含まれます
(出典:山中湖村「自然公園法による建築物の取り扱い概要」2013年4月1日更新)

同じ資料には、こうも書かれています。

  • 高さ13m又は延べ床面積が1,000平方メートルを超える建築物は、届出が必要(自然公園法)
  • 高さ10m又は敷地面積が2,000平方メートルを超える建築・開発行為は、村との事前協議が必要(村住環境保全指導要綱による)
  • 上記の規模を超えない場合の後退距離は、景観計画により隣地・道路共に2mのセットバック

さらに、屋根及び壁面の色彩並びに形態が周囲の自然との調和を著しく乱すものでないこと、という判断基準も明記されています。

なお、この取り扱い概要のページは2013年4月1日更新と表示されています。現行の運用が同じとは限りませんので、実際の計画では必ず村土整備課と山梨県富士・東部林務環境事務所に事前確認してください。私が管理組合の立場なら、ここは絶対に自分で電話します。

理事会として押さえるべき段取り

私が山中湖村の管理組合にご説明するとき、必ず次の順番でお伝えしています。

  1. まず自社物件の地種区分を調べる(村が地種区分図を参考資料として公開しています)
  2. 色を変えるのか、同色復旧なのかを理事会で先に決める
  3. 色を変えるなら、色見本を持って村土整備課へ事前相談に行く
  4. 届出・協議に要する期間を確認し、その期間を工程表に組み込む
  5. その上で施工会社に見積を依頼する

この順番を逆にすると、「工事会社は決まった、色も決まった、しかし届出が通るまで着工できない」という宙ぶらりんの期間が生まれます。修繕積立金を取り崩す決議だけ先に済んでいて、工事は動かない。理事長が一番つらい状況です。

問い合わせ先

窓口 電話番号
山中湖村役場 村土整備課 村土整備都市計画係 0555-62-9975
富士五湖自然保護官事務所 0555-72-0353
山梨県富士・東部林務環境事務所 環境エネルギー課 0554-45-7810

(出典:山中湖村「自然公園法について」)

仮設足場そのものも、確認しておいたほうがよい論点です

自然公園法は「工作物の新築」を規制対象に含んでいます。大規模修繕の仮設足場が、規模や設置期間によってこの取り扱いにどう整理されるのか。これは私が断定できる話ではありませんので、計画段階で村土整備課に確認することをおすすめします。

ここで、山中湖村においてロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が直接降下して施工する無足場工法)が持つ意味が出てきます。足場を組まないということは、外周を囲う大きな仮設構造物を国立公園の中に数か月間立てない、ということでもあります。景観への影響、湖からの眺望、周辺の別荘への圧迫感。山中湖村という場所では、これらが都心とは違う重みを持ちます。ロープアクセス工法の技術的な解説は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。


山中湖村の村制度を、共用部目線で正直に仕分けます

村が公表している補助制度を、マンション共用部に使えるかどうかで見ていきます。ここは期待を持たせるような書き方をしません。

木造住宅耐震診断支援・耐震化支援補助事業|マンションは対象外です

山中湖村は「山中湖村木造住宅耐震診断事業」および「木造住宅耐震化支援事業」を実施しています。

項目 内容
耐震診断の対象 昭和56年5月31日以前に建築、現在も居住中、木造在来工法、2階建て以下
診断費用 無料
耐震改修工事 最大100万円(工事費の8割が限度)。低コスト工法採用でさらに20万円上乗せ可
建替え工事 最大100万円(工事費の8割が限度)
耐震シェルター設置 最大24万円(工事費の2/3が限度)

(出典:山中湖村「木造住宅耐震診断支援・耐震化支援補助事業について」2022年6月10日更新)

対象が「木造在来工法で建設された2階建て以下の住宅」と明記されています。鉄筋コンクリート造のリゾートマンションは、この制度の対象外です。 共用部の耐震改修にも、専有部のリフォームにも使えません。

なお、このページの更新日は2022年6月10日で、令和8年度の受付状況は公式サイト上で確認できませんでした。関連PDFも「令和6年度山中湖村住宅耐震化アクションプログラム」となっています。木造住宅をお持ちの方は、村土整備課(0555-62-9975)へ令和8年度の取り扱いをご確認ください。

住宅用太陽光発電システム設置費補助金|令和8年度の一次情報があります

一方、こちらは令和8年4月1日更新の、正真正銘の現行年度情報です。

項目 内容
受付期間 令和8年4月1日〜令和9年3月31日(予算がなくなり次第終了)
太陽光発電システム 最大出力1kWにつき2万円(最大20万円)。10kW未満に限る
定置用リチウムイオン蓄電池 蓄電容量1kWh以上・太陽光と常時接続で20万円
対象者 村内に住所を保有し村税に未納のない方/設置後5年以上居住/申請者本人が住居として現に使用(予定含む)
申請期限 設置後6か月以内
窓口 村民生活環境産業課 0555-62-9978

(出典:山中湖村「令和8年度の住宅用太陽光発電システム設置費用補助金の申請受付を開始します」2026年4月1日更新)

管理組合がこの制度で共用部に太陽光を載せられるか。対象者要件が「申請者本人が住居として現に使用している、または使用予定の建物」となっており、10kW未満という出力上限もあります。管理組合としての共用部設置は、この要件に素直には当てはまりません。 ただし、村税の納税証明書が必要という運用から見ても、個人単位の制度設計であることが読み取れます。

そして、ここでも例の論点が出てきます。同じページにこう書かれています。

山中湖村景観条例の規定により、事前の届出が必要な場合があります。設置前に村土整備課 都市計画担当に事前協議を行ってください。

太陽光パネル1枚でも、山中湖村では景観の事前協議が要る。この村の設計思想がよく表れている一文だと私は思います。

定住化促進新築等補助金|共用部には無関係ですが、参考まで

5年以内に村外から転入した40歳以下の方等を対象に、新築・購入に50万円が交付される制度です。共用部改修には使えません。ただし、リゾートマンションの区分所有者が定住に切り替えるケースでは関係し得ます。なお、このページの更新日は2020年10月1日ですので、現行の取り扱いは村未来政策課 ふるさと企画推進係(0555-62-9971)へご確認ください。

(出典:山中湖村「定住化促進のため新築等に補助金が交付されます」)


国の耐震支援策(令和8年度)|マンションは「国と地方で1/3」

村に共用部向けの制度がない以上、国の枠組みが主戦場になります。国土交通省が公表している令和8年度の支援策を、そのまま引用します。

住宅・建築物安全ストック形成事業(社会資本整備総合交付金・防災安全交付金の基幹事業/令和8年度予算)

対象 交付率
マンションの耐震改修 国と地方で1/3
その他の住宅 国と地方で23%
耐震診断(民間実施) 国と地方で2/3
補強設計等(民間実施) 国と地方で2/3

(出典:国土交通省「住宅・建築物の耐震改修の支援策(令和8年度)」PDF)

同じ資料には、注意書きとして「地方公共団体の補助制度については、住宅・建築物がある地方公共団体にお問い合わせください」とあります。つまりこの1/3は、山中湖村または山梨県が受け皿の制度を持っていて初めて動くお金です。 村の公式サイトには非木造建築物の耐震補助のページが見当たりませんので、ここは村土整備課への直接確認が必要になります。

耐震改修促進税制についても同資料に記載があります。耐震改修を行った住宅は、固定資産税額(120平方メートル相当部分まで)を1年間1/2に減額(令和13年3月まで)。所得税は耐震改修工事に係る標準的な工事費用相当額の10%等を控除(令和10年12月まで)となっています。

住宅金融支援機構の融資も押さえておいてください。同資料には「このほか、マンション管理組合向けの『マンション共用部分リフォーム融資』もあります」と明記されています。個人向けリフォーム融資の条件は、融資限度額1,500万円、金利は償還期間10年以内1.90%、11年〜20年以内2.13%(令和8年4月1日現在)です。金利は毎月見直されますので、実際の検討時は住宅金融支援機構の公式サイトで最新値をご確認ください。


マンションストック長寿命化等モデル事業|令和8年度 第3回の受付は明日9月18日(金)まで

これは急ぎの話なので、先に書きます。

国土交通省の「マンションストック長寿命化等モデル事業」は、老朽化マンションの再生検討から長寿命化改修・建替えまでを対象に、先導的なプロジェクトを公募して国が費用の一部を補助する制度です。令和8年度の受付スケジュールは次のとおりです。

令和8年度 受付期間 状況
第1回 令和8年4月1日(水)〜4月15日(水) 受付終了
第2回 令和8年6月22日(月)〜6月26日(金) 受付終了
第3回 令和8年9月14日(月)〜9月18日(金) 受付中

(出典:国土交通省「マンション総合対策モデル事業」)

この記事を公開している本日9月17日は、第3回受付期間の4日目です。締切は明日の9月18日(金)。今からの応募は現実的ではありませんが、来年度に向けて「こういう制度がある」と理事会の記憶に残しておくことには十分な価値があります。

事業には2つのタイプがあります。

  • 先導的再生モデルタイプ:先導性の高い新工法・新材料・新機能の導入等の検討や、創意工夫に富む改修への支援
  • 管理適正化モデルタイプ:管理水準の低いマンションが地方公共団体と協力して管理適正化を図るために必要な調査・検討や大規模修繕等への支援

それぞれに「計画支援(事業前の準備段階)」と「改修工事支援・建替え工事支援(実施段階)」があります。

ここで山中湖村の管理組合に正直にお伝えしなければならない点が1つあります。募集要領には、管理適正化モデルタイプについて「事前に必ず地方公共団体にご相談の上、応募いただきますよう」と書かれています。そして老朽マンション対策モデル事業の側では、対象が「マンション管理適正化推進計画を策定した団体に限ります」と明記されています。山中湖村が推進計画を策定しているかどうかが、前提条件として効いてきます。 国土交通省が公表しているマンション管理適正化推進計画作成状況一覧(令和7年5月末時点)で確認できますが、最新の作成動向は当該地方公共団体に確認が必要です。

また、先導的再生モデルタイプについては、注意すべき除外規定があります。募集要領には「劣化した部材の補修や設備の修理や取り替えなど、性能や機能を建設当初の水準に回復するような修繕等のみを行う工事は対象となりません」とあります。通常の大規模修繕をそのまま出しても採択されない、ということです。ここを誤解して期待値だけ上げてしまう管理組合を、私は何度か見ています。

事業の提案申請等に関する問い合わせは、マンションストック長寿命化等モデル事業評価室事務局(03-6801-5902/平日10〜16時、12〜13時を除く)が窓口です。


マンション管理計画認定制度|山中湖村は「山梨県」が窓口です

ここは、山中湖村の管理組合が間違えやすいポイントです。

マンション管理計画認定制度は、管理計画が一定の基準を満たすマンションを地方公共団体が認定する制度です。認定を受けられるのは、自治体が「マンション管理適正化推進計画」を作成している地域にあるマンションに限られます。

そして山梨県は、町村部にあるマンションのみを対象に、令和4年4月1日から認定の受付を開始しています。

山中湖村は「村」です。したがって、山中湖村のマンションの管理計画認定は、村役場ではなく山梨県建築住宅課が窓口になります。

認定申請手数料(山梨県)

区分 手数料
長期修繕計画が1つ・適合証あり 3,600円
長期修繕計画が1つ・適合証なし 25,500円
長期修繕計画が2以上・適合証あり 3,600円+1計画あたり1,600円
長期修繕計画が2以上・適合証なし 25,500円+1計画あたり14,700円
変更認定申請 適合証なしの額の1/2(100円未満切捨て)

(出典:山梨県「マンション管理計画認定制度について」2025年12月24日更新)

適合証ありとなしの差は21,900円です。適合証は公益財団法人マンション管理センターが発行します。この差額をどう見るか。私はいつも理事長さまに「マンション管理センターの事前確認を通す過程で、長期修繕計画の穴が見つかることがあります。21,900円は書類審査の手数料ではなく、健康診断の費用だと思ってください」とお伝えしています。

なお、山梨県のページには「県独自の基準はありません」と明記されています。国の基準だけを満たせばよい、ということです。認定申請を予定している場合は、申請前に建築住宅課企画担当(055-223-1730)へ相談するよう案内されています。


マンション長寿命化促進税制|令和8年度税制改正で5年延長されます

管理計画認定を取る実利の1つが、この税制です。

マンション長寿命化促進税制は、一定の要件を満たす長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションについて、固定資産税を減額する制度です。国土交通省は「必要な修繕積立金の確保や適切な長寿命化工事の実施に向けた管理組合の合意形成を後押しすることを目的とした制度」と説明しています(出典:国土交通省「マンション税制」)。

そして令和8年度税制改正大綱では、この特例措置が令和8年4月1日から令和13年3月31日までの5年間延長され、対象となる住宅の床面積要件の下限が40平方メートル(現行50平方メートル)に緩和される方向が示されています(出典:国土交通省「令和8年度税制改正概要」令和7年12月)。

床面積40平方メートルへの緩和は、山中湖村にとって地味に大きい話です。 リゾートマンションは1室あたりの面積が50平方メートル未満のケースが珍しくありません。これまで床面積要件で外れていた住戸が、対象に入ってくる可能性があります。

適用には「大規模の修繕等証明書」「過去工事証明書」「修繕積立金引上証明書」などの書類が必要で、国土交通省が様式と記入例を公開しています。この証明書は、工事を発注する施工会社が書ける立場にあるかどうかで、管理組合の手間が大きく変わります。 見積を取る段階で「長寿命化促進税制の証明書作成に対応できますか」と一言聞いておいてください。

税制に関する相談は、一般社団法人日本マンション管理士会連合会の相談ダイヤル(03-5801-0858/月〜土 10:00〜17:00、祝日・年末年始を除く)が窓口として案内されています。


標高980.5mという条件|山中湖村の外壁が受ける負荷と、工事ができる季節

ここからは制度の話を離れて、建物の話をします。

山中湖村役場の海抜は980.5mで、村の大半は標高1,000m前後の高原地帯です。村の公式資料は気候を「冷涼」と表現しています(出典:山中湖村「山中湖村の概要」)。

この標高が、マンションの外壁に何をもたらすか。私が現場で見てきたのは、次の4つです。

1. 凍結融解による外壁の劣化

日中に融けた水が夜間に凍り、また融ける。この繰り返しが、モルタルやタイル下地の微細なひび割れを押し広げていきます。標高の低い平野部のマンションでは12年周期で問題ないひび割れが、山中湖村では同じ年数でもう一段進んでいる。これを私は何度も見ています。

とくに北面と、水が溜まりやすい笠木・庇・バルコニー床の立ち上がり。ここは重点的に見てもらってください。

2. シーリング(目地のゴム状の充填材)の早期硬化

紫外線が強く、寒暖差が大きい環境では、シーリングの可塑剤が抜けるのが早くなります。硬くなったシーリングは追従性を失い、そこから雨水が入ります。外壁の塗膜がまだきれいでも、シーリングだけ先に寿命が来ているという建物が、山中湖村には少なくありません。

3. 工事ができる期間が短い

一般に、塗料メーカーが定める施工条件は気温5℃以上・湿度85%未満が目安です(これは製品により異なりますので、実際の施工要領書でご確認ください)。冷涼な山中湖村では、この条件を安定して満たせる期間が、平野部より短くなります。

現実的には、5月から10月が勝負の期間です。しかもこの期間は、山中湖村にとって観光のピークシーズンでもあります。年間約150万人の観光客が春から秋、とくに夏休みに集中する村です。リゾートマンションであれば、区分所有者が最も利用する時期と、工事に最も適した時期が、真正面から衝突します。

4. 発注のタイミングが1年ずれると、実質2年遅れる

ここが山中湖村で一番怖いところです。

「秋の総会で工事を決議しよう」とすると、決議は10月〜11月。そこから施工会社選定、色彩の検討、自然公園法と景観条例の届出・協議。これらを終えて着工できるのは、早くても翌年の春以降です。もし届出の段階で1か月つまずけば、その年の施工可能期間が削られ、工期が翌年に食い込む。

私が山中湖村の管理組合にお伝えしているのは、こうです。

逆算してください。着工したい年の「前の年の春」に、劣化診断と色彩方針を決めておく。 総会は秋でいい。でも準備は1年半前から始めてください。

これは押し付けではなく、この村の物理的な制約から出てくる結論です。


リゾートマンション30数棟・2,886室|合意形成をどう設計するか

冒頭で触れた構造の話に戻ります。

山中湖村のリゾートマンションでは、区分所有者の多くが村外にお住まいです。ここで起きやすいことを、私が実際に見てきた順に挙げます。

  • 総会の出席率が上がらず、委任状と議決権行使書に依存する
  • 修繕積立金の水準が、建設当時のまま据え置かれている
  • 「自分が使うのは年に数回なのに、なぜ数百万円出すのか」という感情が生まれる
  • 利用頻度の高い所有者と低い所有者で、工事範囲への温度差が出る
  • 相続で所有者が変わり、連絡先が追えない住戸が発生する

これに対して、理事会が打てる手を挙げます。

1. 「使わないから出したくない」に、資産価値の言葉で答える

私は、リゾートマンションの総会資料には近隣物件の売買事例を入れることをおすすめしています。外壁が傷んだ建物と、直近で大規模修繕を終えた建物とで、売却価格や成約までの期間がどう違うか。これは感情論ではなく、区分所有者にとっての実損の話です。

とくに山中湖村のように、湖と富士山への眺望が価値の源泉になっている場所では、建物の見た目の劣化が資産価値に直撃します。

2. 総会の1回前から、情報を出し始める

決議の総会でいきなり数字を出すと、必ず紛糾します。その前の総会、あるいは書面での中間報告で、劣化診断の結果と概算金額のレンジを先に共有しておく。「聞いていない」をなくすことが、委任状中心の管理組合では決定的に効きます。

3. 工法の選択肢を、金額付きで2案以上示す

足場を組む案と、組まない案。全面やる案と、優先部位に絞る案。選択肢が1つしかない提案は、反対票を集めます。 選択肢が複数あれば、議論は「やるかやらないか」から「どれにするか」に移ります。これは理事長さまの精神衛生上も、まったく違います。

4. 管理計画認定を、合意形成の道具として使う

前述のとおり、山梨県への認定申請手数料は適合証ありで3,600円です。認定を取ると長寿命化促進税制の入口になり、長期修繕計画の見直しが必須になります。「県のお墨付きを取りに行く」という目標は、村外の区分所有者にも説明しやすい。 金額の話をする前に、この共通目標を置く手があります。


足場か、ロープアクセスか|山中湖村の建物での考え方と金額

ここは正直に、山中湖村の実情に即して書きます。

まず、一般的な工事費の目安

工種 単価の目安
外壁塗装 3,500〜4,500円/平方メートル
外壁打診調査 250〜500円/平方メートル
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/平方メートル
30戸規模マンションの大規模修繕総額 3,500〜5,000万円
うち仮設足場が占める割合 おおむね15〜25%

いずれも参考値です。実際の見積は建物の形状、劣化度合い、アクセス条件、搬入経路で大きく変動します。山中湖村は道路条件や敷地内の樹木の状況が物件ごとにまったく違いますので、この表の数字をそのまま自分の建物に当てはめないでください。

山中湖村では、足場とロープの差額は都心ほど大きくありません

ここは、営業として不利になることも含めて正直に申し上げます。

ロープアクセス工法の費用メリットが最も大きく出るのは、高層建物です。たとえば10階建て・外周80m・工期3か月の物件では、足場約168万円に対しロープアクセス約59万円、差額およそ109万円という比較になります(あくまで一例です)。

しかし山中湖村では、先に見たとおり自然公園法の地種区分によって集合住宅等の高さが10m〜15mに制限されています。つまり、そもそも高層のマンションが建てられない村です。 3〜5階建てが中心になります。

4階建て・外周70m程度の建物であれば、外周足場の面積はおおよそ840平方メートル。架設・解体・養生込みで1,000〜1,200円/平方メートルとすれば84万〜101万円という規模感です。ここからロープアクセスに置き換えても、削減額は数十万円のレンジにとどまります。「足場をやめれば100万円以上浮く」という話には、山中湖村ではなりにくい。 これが事実です。

では、山中湖村でロープアクセスが効くのはどこか

金額ではなく、次の4点です。

  1. 工期が短い:足場の架設と解体に要する日数が丸ごと不要になります。施工可能期間が短い山中湖村では、この日数が効きます
  2. 部分施工ができる:北面のシーリングだけ、湖側の外壁だけ、といった優先部位への集中投下が可能です。全面工事の予算が組めない年でも、劣化の進んだ面から手を打てます
  3. 国立公園内に大きな仮設構造物を長期間立てなくて済む:景観への配慮という観点で、この村では意味を持ちます
  4. 利用者の出入りを妨げにくい:バルコニーや出入口を足場で囲まないため、シーズン中の滞在への影響が抑えられます

私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。足場が向く建物には足場を提案します。 株式会社明誠が通常足場工法・ロープアクセス工法・両者を組み合わせたハイブリッド工法の3つを持っているのは、建物ごとに答えが違うからです。詳しくは明誠のロープアクセス工法の技術詳細と大規模修繕の料金の考え方をご覧ください。工法ごとの安全基準や国際的な訓練体系については、ロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。

なお、株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けており、安全管理の考え方は明誠の安全管理への取り組みにまとめています。これまでの施工事例は施工事例一覧からご覧いただけます。


村土整備課に聞くときの質問文(そのまま使えます)

理事会でどなたかが電話をかける想定で、質問文を用意しました。コピーしてお使いください。

宛先:山中湖村役場 村土整備課 村土整備都市計画係(0555-62-9975)

山中湖村内のリゾートマンションの管理組合です。大規模修繕工事を検討しており、5点お伺いします。

  1. 当マンションの所在地の自然公園法上の地種区分を教えてください。(住所を伝える)
  2. 外壁の塗り替えで同一色に復旧する場合と、色を変更する場合とで、自然公園法および山中湖村景観条例上の手続きはどう変わりますか。
  3. 色彩を変更する場合、景観条例の第4号様式(1)(色彩のみ)の届出で足りますか。それとも大規模行為に係る事前協議が必要になりますか。判断の基準となる規模を教えてください。
  4. 届出または事前協議から着工までに、標準的にどれくらいの期間を見ておくべきでしょうか。
  5. 大規模修繕のための仮設足場を数か月間設置する場合、自然公園法上の手続きは必要ですか。

あわせて、非木造の共同住宅の耐震診断・耐震改修について、村または山梨県の補助制度がありましたら教えてください。

宛先:山梨県県土整備部建築住宅課 企画担当(055-223-1730)

山中湖村のマンション管理組合です。マンション管理計画認定制度の申請を検討しています。申請前のご相談として、当組合の長期修繕計画で不足している点を確認させていただけますでしょうか。

この2本の電話で、山中湖村の管理組合が知るべきことのかなりの部分が埋まります。


よくあるご質問

Q. 山中湖村に、マンションの大規模修繕に使える村独自の補助金はありますか?

A. 令和8年9月17日時点で、山中湖村の公式サイト上にマンション共用部の改修へ直接使える村独自の補助制度は確認できませんでした。村の耐震補助は木造在来工法・2階建て以下が対象で、太陽光補助は個人の住宅が対象です。国の耐震支援策(マンションは国と地方で1/3)や、マンションストック長寿命化等モデル事業をご検討ください。

Q. 外壁の色を変えるだけでも、本当に届出が必要ですか?

A. 山中湖村は富士箱根伊豆国立公園の区域内にあり、村の公式ページは「屋根・壁面等の色彩変更」を自然公園法の規制を受ける行為として挙げています。さらに村景観条例には「色彩のみ」の届出様式が用意されています。場所・規模によって扱いが変わりますので、村土整備課(0555-62-9975)へ事前にご確認ください。

Q. 山中湖村のマンションの管理計画認定は、村役場に申請するのですか?

A. いいえ。山梨県が町村部にあるマンションを対象に認定の受付を行っていますので、山梨県建築住宅課(055-223-1730)が窓口です。申請手数料は、公益財団法人マンション管理センターの適合証がある場合3,600円、ない場合25,500円です。山梨県独自の認定基準はありません。

Q. 大規模修繕で固定資産税が減額される制度は、うちのリゾートマンションでも使えますか?

A. マンション長寿命化促進税制は、一定の要件を満たす長寿命化工事を行ったマンションの固定資産税を減額する制度です。令和8年度税制改正で5年間の延長と、床面積要件の下限を40平方メートルへ緩和する方向が示されています。専有面積が50平方メートル未満の住戸が多いリゾートマンションには、影響の大きい改正です。適用可否は管理計画認定の有無など複数の要件で決まりますので、日本マンション管理士会連合会の相談ダイヤル(03-5801-0858)へご確認ください。

Q. 山中湖村では、工事はいつやるのがよいですか?

A. 標高1,000m前後の冷涼な気候のため、塗装・防水の施工条件を安定して満たせるのは概ね5月から10月です。ただしこの期間は観光のピークとも重なります。着工したい年の1年半前から、劣化診断と色彩方針の検討を始めることをおすすめします。届出・事前協議に要する期間を工程に織り込む必要があるためです。

Q. 山中湖村の建物で、ロープアクセス工法はどれくらい安くなりますか?

A. 正直に申し上げると、山中湖村では自然公園法の高さ制限(集合住宅等で10〜15m)があるため高層建物が少なく、足場との差額は都心の高層物件ほど大きくなりません。4階建て・外周70m程度であれば削減額は数十万円のレンジが目安です。山中湖村でロープアクセスが効くのは金額よりも、工期短縮・部分施工が可能・大きな仮設構造物を国立公園内に立てずに済む、という3点です。

Q. 修繕積立金が足りません。工事を先送りするしかないでしょうか?

A. 先送りが必ずしも安くつくとは限りません。凍結融解で下地まで傷んでからでは、補修の単価が上がります。優先部位から段階的に着手する部分施工、住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資、国のモデル事業の活用など、取り得る選択肢を並べてから判断してください。概算のお見積りだけでもご相談いただければ、判断材料をお出しできます。

Q. 相談すると、そのまま契約を勧められませんか?

A. そういうことはいたしません。私は、足場が向く建物には足場をご提案します。理事会で議論するための材料が欲しい、という段階のご相談を一番歓迎しています。お問い合わせはこちらからどうぞ。


この記事のポイントまとめ

  • 山中湖村にマンション共用部向けの村独自補助は確認できず、効くのは県と国の制度
  • 山中湖村は国立公園内。外壁の色彩変更は自然公園法と景観条例の二重の手続き対象
  • 村景観条例には「色彩のみ」の専用届出様式があり、色の変更が単独で想定されている
  • 管理計画認定の窓口は村ではなく山梨県。手数料は適合証あり3,600円・なし25,500円
  • 国の耐震支援はマンションの耐震改修で国と地方で1/3、診断は民間実施で2/3
  • 長寿命化促進税制は令和8年度改正で5年延長、床面積下限40平方メートルへ緩和の方向
  • リゾートマンション30数棟・2,886室以上。委任状中心の合意形成を前提に設計する
  • 標高約1,000m。施工可能期間は概ね5〜10月。準備は着工の1年半前から

出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月17日時点で公表されている山中湖村および国土交通省・山梨県の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず山中湖村および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


今日は制度の話が多くなりましたが、山中湖村については、補助金の有無よりも「色を変えるなら先に届出」という段取りのほうが、皆さまの工程表に直接効いてきます。ここだけでも理事会で共有していただければ、この記事を書いた甲斐があります。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月17日

富士河口湖町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

山梨県南都留郡富士河口湖町のマンション管理組合の皆さまへ。令和8年度、この町のマンションの共用部改修に「町の補助金」は使えるのでしょうか。

結論から申し上げます。富士河口湖町が用意している住宅系の補助金は、いずれも「町民の持家住宅」を対象としており、分譲マンションの共用部大規模修繕に管理組合として申請できる制度は、令和8年9月時点では公表されていません。 富士河口湖町の管理組合が実際に手を伸ばせる制度は、町ではなく 山梨県と国 の側にあります。

そして令和8年の富士河口湖町には、他のどの自治体とも違う事情があります。令和8年6月26日22時29分、山梨県東部・富士五湖を震源とするマグニチュード5.6の地震で、富士河口湖町は震度6弱を観測しました(出典:気象庁「令和8年6月26日22時29分頃の山梨県東部・富士五湖の地震について」)。あれから3か月足らずです。私は、この町のマンションについて書く以上、補助金の一覧表を並べるだけで終わらせるわけにはいかないと考えています。

株式会社明誠の本間幸紘です。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。この記事では、富士河口湖町のマンション管理組合が令和8年度に実際に使える制度を、公式の一次情報だけを根拠に整理します。あわせて、震度6弱を経験した建物で理事会が今月中に確認すべきことと、標高850m前後という富士北麓の気候が外壁に与える負荷についても、現場の側から具体的に書きます。

結論|富士河口湖町の管理組合が令和8年度に使える制度は「県」と「国」にある

最初に全体像を表で示します。判断に必要な情報を、この1枚に圧縮しました。

制度 窓口 共用部に使えるか 金額・条件 出典
富士河口湖町 住宅リフォーム工事補助金 町 都市整備課 管理組合としては対象外(町民の持家住宅が対象) 工事費の10%・上限10万円/耐震改修関連工事の付帯工事費20%・上限20万円 富士河口湖町
マンション管理計画認定制度 山梨県 建築住宅課(町村部は県が所管) 認定制度そのもの。融資金利引下げ等の入口 適合証あり3,600円/適合証なし25,500円 山梨県
マンション管理適正化支援法人の登録 山梨県 建築住宅課(町村部は県が所管) 管理組合が相談先として使う 登録申請手数料は無料 山梨県
建築物耐震診断・耐震改修への国の交付 町を通じて国の交付金 マンションも対象区分あり 耐震診断は民間実施で国と地方で2/3、耐震改修はマンション区分で国と地方で1/3 国土交通省(令和8年度)
マンション長寿命化促進税制 町 税務課へ申告 共用部の大規模修繕が対象 令和9年3月31日までの工事完了。1戸100㎡相当まで固定資産税を1/3減額 国土交通省
マンション共用部分リフォーム融資 住宅金融支援機構 共用部改修の資金調達 管理組合申込み。管理計画認定等で金利引下げ 住宅金融支援機構
建築基準法第12条 定期報告 山梨県 建築住宅課 建築防災担当(甲府市以外) 補助ではなく義務。外壁調査を伴う 県細則で共同住宅は「5階以上の階にあり、かつ1,000㎡以上」が対象。3年毎。報告は年度の4月1日〜9月30日 山梨県

この表から、富士河口湖町の管理組合にとって重要な結論が3つ出てきます。

  1. お金がもらえる制度は、町にはほぼ無い。 期待値を正しく設定してください。総会で「町の補助金を当てにした修繕計画」を出すと、後になって苦しくなります。
  2. 代わりに、県が窓口の制度が2つある。 富士河口湖町は「町」なので、マンション管理計画認定制度もマンション管理適正化支援法人の登録も、山梨県が所管しています。甲府市などの市部とは窓口が違います。ここを間違えると、町役場でたらい回しになります。
  3. 義務のほうは、期限が今月末に迫っている。 定期報告(12条点検)の提出期間は報告年度の4月1日から9月30日まで。この記事が公開される令和8年9月17日から数えて、9月30日まで残り2週間を切っています。

ここからが本題です。順番に見ていきます。

富士河口湖町の住宅リフォーム工事補助金|共用部に使えない理由を正直に書きます

富士河口湖町でいちばん知られている住宅系の補助金が「富士河口湖町住宅リフォーム工事補助金」です。町内経済対策と町民の住宅資質の向上を目的とした制度で、屋根・外壁塗装も対象になります。

補助額と条件(令和8年度)

項目 内容
住宅リフォーム工事 工事費の10%。上限10万円
耐震改修関連工事 耐震改修工事の付帯工事費の20%。上限20万円
対象者 町民の持家住宅であること
施工者 町内業者と契約して行うリフォーム工事であること
工事規模 総工事費が30万円以上であること
その他 住宅に火災報知器が設置済であること(未設置の場合、設置費用を工事費に含められる)
回数制限 一人1回まで。かつ1住宅につき1回まで
申込み期間(令和8年度分) 令和8年4月1日〜。予算がなくなり次第終了
窓口 町役場3階 都市整備課 都市計画係 0555-72-1976(直通)

(出典:富士河口湖町「富士河口湖町住宅リフォーム工事補助金について(9/2受付再開)」)

なぜ管理組合では申請できないのか

制度の対象が「町民の持家住宅」であり、申請者は個人の住民です。管理組合という団体が、共用部の大規模修繕工事について申請する枠組みにはなっていません。上限も10万円(耐震改修関連の付帯工事で20万円)ですから、仮に申請できたとしても、数千万円規模の共用部改修の財源にはなりません。

私は正直に申し上げます。この補助金を「管理組合の修繕積立金の足し」として議案書に書くことはできません。 総会資料に載せるなら、「町の住宅リフォーム補助金は専有部のリフォームを行う区分所有者個人が使える可能性のある制度であり、共用部工事の財源ではない」と、はっきり分けて書いてください。

ただし「専有部」の側では意味がある

裏を返せば、富士河口湖町にお住まいで、ご自身の住戸の内装や設備をリフォームされる区分所有者にとっては、使える可能性のある制度です。大規模修繕の総会の場で「専有部のリフォームを考えている方は、町のこの制度を都市整備課で確認してみてください」と一言添えるだけで、理事会の信頼度は上がります。制度を管理組合の財源としては使えないと正直に言ったうえで、住民個人には使い道を示す。この整理の仕方を、私は各地の総会でおすすめしています。

この制度で見落としてはいけない「今の状態」

ここは制度の鮮度に関わる大事な点なので、事実だけを書きます。令和8年度分の申込み期間は「令和8年4月1日〜」で、「予算がなくなり次第終了」と明記されています。そして現在の公式ページのタイトルは「(9/2受付再開)」となっており、本文冒頭に「※9/2よりリフォーム工事補助金の申請受付を再開しました。」と記載されています。

つまり令和8年度は、一度受付が止まり、9月2日に再開した経緯があるということです。実際、町サイト内には受付終了を告知していたと見られるページの案内が残っていますが、そのリンク先(if_id=7853)は令和8年9月17日時点で「Data Not Found」となり表示できません。

私がここから読み取る実務上の意味は、ひとつです。予算枠のある制度は、年度内でも開いたり閉じたりする。 専有部リフォームを検討している区分所有者に案内するときは、「今は受付中ですが、予算に達すると止まります。まず都市整備課に電話で確認を」と必ず添えてください。町のページを見た日から2週間後には状況が変わっている、ということが現実に起きている制度です。

町のもう一つの補助:住宅用太陽光発電システム

共用部の大規模修繕とは直接つながりませんが、町には環境課所管の補助もあります。

項目 補助額
太陽光発電システム(太陽光パネル) 発電出力1kWあたり2万円(上限10万円)。補助額の千円未満は切捨て
対象条件 太陽光モジュールの最大出力、もしくはパワーコンディショナーの最大出力のいずれかが10kW未満の場合のみ
家庭用蓄電池 蓄電容量1kW以上で20万円
申請時期 設置後もしくは発電開始後3か月以内
窓口 町役場3階 環境課 0555-72-3169(直通)

(出典:富士河口湖町「住宅用太陽光発電システム設置補助制度」、令和8年3月30日更新)

同ページには「令和8年4月より設置する蓄電池システムについて、本体へのステッカーの貼り付けは不要となります」という運用変更も掲載されています。細かい話ですが、こういう更新が入っているページは、担当課が現役で手入れしている証拠です。逆に言えば、更新が止まっているページの数字を信じてはいけないということでもあります。

令和8年6月26日 震度6弱|富士河口湖町のマンションで理事会が今月中に確認すべき5か所

ここが、令和8年の富士河口湖町だけに存在する論点です。

令和8年6月26日22時29分頃、山梨県東部・富士五湖を震源とする地震が発生しました。震源の深さは約20km、地震の規模はマグニチュード5.6と推定され、富士河口湖町で震度6弱を観測しています(出典:気象庁報道発表、地震調査研究推進本部)。

震度6弱は、建物にとって軽い揺れではありません。私が20年の現場で一番悔しい思いをするのは、「地震のあと、外からは何ともなさそうに見えたので、そのままにしていた」という建物で、数年後に大きな剥落が起きたときです。震度6弱クラスの揺れは、躯体が無事でも、仕上げ材と接合部に確実に負荷を残します。

理事会が今月中に目視でも確認できる5か所

部位 見るポイント 放置したときに起きること
① 外壁タイルの目地 目地に細いひび、タイル1枚だけ色が違う、雨のあとだけ濡れ跡が残る 内部で浮きが進行し、数年後に剥落。第三者被害のリスク
② 打継ぎ部・open joint のシーリング 切れ、痩せ、端部の剥離、白い粉(チョーキング) 躯体内部への漏水→鉄筋腐食→爆裂
③ バルコニー手すり壁の付け根 床との入隅にひび、手すり支柱まわりの錆汁 手すりの固定力低下。落下事故に直結
④ 屋上パラペット天端と笠木 笠木の継ぎ目の開き、押さえコンクリートのひび 天端からの浸水は最上階の漏水として遅れて出る
⑤ 給排水立管のパイプシャフト内 継手まわりの濡れ、白い結晶(エフロレッセンス)、床の染み 揺れで緩んだ継手からの微少漏水は発見が遅れる

(表中の④⑤は室内側から見える場合があります。屋上は安全確保のうえで管理会社立会いのもと確認してください)

「何ともないように見える」が一番危ない理由

外壁タイルの浮きは、外から見て分からないのが本質です。タイルは接着層で躯体に留まっていますが、地震の層間変形で接着層に微細な剥離が生じても、タイル自体は割れません。割れないから、目視では正常に見える。そのまま冬を越して、凍結融解(水が凍って膨張し、また融ける)を繰り返すと、剥離面が水を含んで年々広がります。富士河口湖町の標高と冬の冷え込みは、この進行を平地より確実に速くします。

だから、震度6弱を経験した建物では、目視ではなく打診(叩いて音で浮きを判定する)を入れてください。私がこの記事を書いている理由の半分は、ここにあります。

打診調査そのものと、足場を組まずに行う方法については、後の章で費用とあわせて具体的に書きます。ロープアクセス工法の技術的な原理や、SRT(シングルロープテクニック)を含めた高所作業の安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで体系的に解説しています。

震災後の外壁調査については別記事も

なお、この令和8年6月26日の地震の直後に、私は【緊急警告】山梨県東部・富士五湖で震度6弱|震災後こそ外壁打診調査が必須な5つの理由という記事を書いています。震度6弱を受けた建物で何が起きるかを、より技術寄りに書いたものです。本記事とあわせてお読みいただくと、理事会での説明がしやすくなるはずです。

富士河口湖町のマンションに掛かる12条点検|山梨県細則の「5階以上かつ1,000㎡以上」

補助金の話の次に、義務の話をします。こちらのほうが、期限が近いからです。

建築基準法第12条の規定に基づき、国と県が指定する特定建築物等について、その所有者又は管理者は、定期に、資格者に調査・検査をさせ、その結果を県に報告することが義務付けられています(出典:山梨県「定期報告制度について」、ページ更新日 2026年8月31日)。

山梨県は「一般の共同住宅」も県細則で対象にしている

ここが、山梨県の特徴です。多くの都道府県では、共同住宅のうち定期報告の対象になるのはサービス付き高齢者向け住宅など就寝用途の特殊なものに限られます。ところが山梨県は、県細則で「下宿、共同住宅、寄宿舎」を独立した区分として指定しています。

区分 対象となる規模 報告時期
政令指定(共同住宅) 高齢者、障害者等の就寝の用に供するもの(サービス付き高齢者向け住宅)に限る。①3階以上にあるもの(100㎡超)②2階の対象用途の床面積の合計が300㎡以上 ③地階にあるもの(100㎡超) 3年毎
県細則指定(下宿・共同住宅・寄宿舎) ①5階以上の階にあり、かつ、対象用途の床面積の合計が1,000㎡以上であるもの 3年毎

(出典:山梨県「建築基準法第12条に基づく定期報告対象一覧表」)

つまり、富士河口湖町にある5階建て以上・延べ1,000㎡以上の分譲マンションは、サービス付き高齢者向け住宅でなくても、山梨県の定期報告の対象になり得るということです。5階建てで各階4戸・1戸70㎡なら共用部込みで1,000㎡を超えてきますから、この町の中規模マンションの多くが射程に入ります。

さらに、昇降機・防火設備・建築設備は毎年報告です。

対象 報告頻度 提出先
特定建築物(共同住宅) 3年毎 山梨県庁 建築住宅課 建築防災担当
建築設備(換気設備、排煙設備、非常用の照明装置) 毎年 山梨県庁 建築住宅課 建築防災担当
防火設備 毎年 山梨県庁 建築住宅課 建築防災担当
昇降機(エレベーター) 毎年 一般社団法人 北関東ブロック昇降機等検査協議会

提出期限は9月30日です

定期報告の提出は、報告年度の4月1日から9月30日までです。(出典:同上)期限内に報告がない場合は督促されます。

この記事の公開日は令和8年9月17日。9月30日まで残り2週間を切っています。理事長・管理会社の担当者は、まず次の2点を今週中に確認してください。

  1. 自分のマンションが県細則の対象規模(5階以上の階にあり、かつ1,000㎡以上)に当たるか
  2. 令和8年度が、自分のマンションの報告年度に当たるか(共同住宅は3年毎なので、毎年ではありません)

2については、県が「定期報告年度一覧表」を公開しています。ただし私が確認した限り、このPDFは令和2年4月に作成されたもので、令和8年度までの表になっています。年度の当たり外れをこの記事で断定することは避けます。 山梨県庁 建築住宅課 建築防災担当(055-223-1734)へ電話で「うちの共同住宅は令和8年度が報告年度か」と確認するのが、いちばん確実で速い方法です。電話1本で済みます。

なお、様式は令和7年7月1日施行で改正されています。古い様式で作成すると差し戻しになりますので、山梨県のダウンロードページから最新版を取得してください。また、県への報告を一般社団法人山梨県建築設計協会に代行してもらうことも可能です(昇降機・準用工作物を除く)。

甲府市内の建物は窓口が違います

念のため。富士河口湖町は甲府市ではありませんので、提出先は山梨県庁です。甲府市内の建築物の定期報告は甲府市役所が所管しています。この記事を甲府市の管理組合の方がお読みの場合は、甲府市建築指導課へお問い合わせください。

打診調査の費用と、足場を組むか組まないか|富士河口湖町の建物での考え方

定期報告でも、震災後の点検でも、外壁調査は避けて通れません。では、いくらかかるのか。

費用の目安(参考値)

項目 単価の目安 備考
外壁打診調査 250〜500円/㎡ 全面打診か、部分打診+赤外線かで変動
外壁塗装(下地補修を除く) 3,500〜4,500円/㎡ 塗料グレード・下地状況で変動
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/㎡ 工法(ウレタン・塩ビシート等)で変動
仮設足場 800〜1,200円/㎡(架面積) 地域・搬入条件・養生範囲で変動
30戸規模の大規模修繕 総額 3,500〜5,000万円 うち仮設足場が15〜25%を占めることが多い

これらはあくまで一般的なレンジの参考値です。実際の見積は物件の規模・形状・劣化状態・搬入条件により大きく変動します。断定できる数字ではありません。

足場とロープアクセスの差額を、具体例で

私がよく使う比較例を挙げます。10階建て・外周80m・工期3か月の建物で、外壁調査と部分補修のために全面足場を架けた場合、仮設だけで約168万円かかったケースがあります。同じ範囲をロープアクセス工法(無足場工法)で行った場合、仮設相当費は約59万円。差額は約109万円でした。

ただし、これは「仮設だけ」の比較です。全面塗り替えのように面全体を長時間扱う工事では、足場のほうが有利になる場面が普通にあります。後の章で、私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる条件を正直に書きます。

富士河口湖町の建物で、ロープアクセスが効きやすい条件

富士河口湖町でよくある条件 ロープアクセスの効き方
敷地に余裕がなく、湖側・道路側に足場を張り出しにくい 足場base面積が不要。道路占用の期間と費用を圧縮できる
塔屋・妻面・EV棟など、部分的にだけ高い部位がある 必要な面だけ下降できるので、全面足場の必要がない
冬期に塗装ができず、施工可能期間が4〜11月に限られる 工期圧縮が直接、年内完了の可否に効く
別荘利用の住戸が多く、居住者の在室タイミングがばらつく メッシュシートで全面を覆う期間が短く、バルコニー使用制限期間を短縮できる
震災後に「まず全面の浮きだけ把握したい」 調査だけ先行できる。足場を組んでから考える必要がない

工法の技術的な比較や、ロープアクセスでどこまでの作業が可能かという範囲の話は、同業者・専門家向けにロープアクセスドットコムで詳しく整理しています。管理組合向けの発注者目線の説明は、明誠のロープアクセス工法のご紹介をご覧ください。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。安全管理の考え方は明誠の安全管理にまとめています。

国の耐震支援策(令和8年度)|マンションは「国と地方で1/3」

町に共用部向けの補助が無くても、国の枠組みは生きています。国土交通省が公表している令和8年度の支援策から、マンションに関係する部分を抜き出します。

支援内容 建物の種類 交付率
耐震診断(民間実施) ― 国と地方で2/3
耐震診断(地方公共団体実施) ― 国1/2
補強設計等(民間実施) ― 国と地方で2/3
耐震改修 マンション 国と地方で1/3
耐震改修 その他 国と地方で23%
住宅パッケージ支援(補強設計等+耐震改修又は建替え) 密集市街地等(防火改修含む) 175万円(国と地方で定額)
同上 多雪区域 140万円
同上 その他 115万円

(出典:国土交通省「住宅・建築物の耐震改修の支援策(令和8年度)」)

ここで富士河口湖町の方に注目していただきたいのが「多雪区域」の区分です。富士北麓は冬の積雪がある地域ですが、建築基準法上の多雪区域の指定は行政区域や地域ごとに定められるもので、私がこの記事で「富士河口湖町は多雪区域です」と断定することはしません。ご自身の建物が該当するかどうかは、町の都市整備課(0555-72-1976)に確認してください。該当するなら、パッケージ支援の金額区分が変わります。

同ページには「※地方公共団体の補助制度については、住宅・建築物がある地方公共団体にお問い合わせください」と明記されています。つまり、国の交付率が決まっていても、地方公共団体が受け皿の制度を持っていなければ使えないということです。富士河口湖町がマンション共用部向けの耐震改修補助を制度化しているかどうかは公表情報から確認できませんでした。断定を避け、確認の質問文を用意します。

都市整備課への質問文(そのまま使えます)

「富士河口湖町内の分譲マンション(非木造・共同住宅)について、管理組合が申請できる耐震診断または耐震改修の補助制度は、令和8年度にありますか。木造住宅耐震改修事業費補助金以外で、共同住宅を対象にした要綱があればお教えください。無い場合、国の住宅・建築物安全ストック形成事業を町が受け皿として運用する予定はありますか」

電話口でこう聞けば、担当者は3分で答えられます。「ページに無い=使えない」ではありません。ページに無いことと、制度が無いことは別です。私は各地でこの確認をしてきましたが、要綱はあるのにWebに出ていない、という例は珍しくありません。

ホテル・旅館をお持ちの方へ(富士河口湖町ならではの論点)

富士河口湖町は日本有数の観光地です。マンションだけでなく、ホテル・旅館を経営されている方もこの記事をお読みかもしれません。

同じ国交省資料には、住宅・建築物防災力緊急促進事業(建築物耐震対策緊急促進事業)として、令和8年度予算案で国費105億円が計上されており、要緊急安全確認大規模建築物(ホテル・旅館、デパート等) について補強設計1/2、耐震改修1/3の支援が示されています(令和12年度末まで)。

明誠はホテルの大規模修繕を全国で受注しています。営業中のホテルで、客室稼働を止めずに外壁改修を進める方法については、ホテルオーナーさま向けのご案内をご覧ください。

マンション管理計画認定制度|富士河口湖町は「山梨県」が窓口です

ここは、窓口を間違える方が非常に多いところです。

認定を受けることができるのは、自治体が「マンション管理適正化推進計画」を作成している地域にあるマンションです。山梨県は町村部にあるマンションのみを対象として、令和4年4月1日から認定の受付を開始しています。(出典:山梨県「マンション管理計画認定制度について」、ページ更新日 2025年12月24日)

富士河口湖町は南都留郡の「町」です。したがって、申請先は富士河口湖町役場ではなく、山梨県県土整備部 建築住宅課 企画担当(055-223-1730) になります。

認定申請手数料(山梨県)

区分 適合証あり 適合証なし
認定(更新)申請・長期修繕計画が1つ 3,600円 25,500円
長期修繕計画が2以上ある場合 上記に1長期修繕計画あたり1,600円を加算 上記に1長期修繕計画あたり14,700円を加算
変更認定申請 適合証なしの額の1/2(100円未満切捨て)=12,700円 同左

(出典:同上)

差額21,900円をどう読むか

適合証あり3,600円と、適合証なし25,500円。差は21,900円です。この差額は、公益財団法人マンション管理センターが発行する適合証を先に取るかどうかで決まります。県は「1.の方法(適合証を受けてから県へ申請する)による申請を原則としています」としています。

私が理事会で説明するときは、こう言います。「事前確認(適合証)は、県の窓口に出す前に書類の不備を潰す工程です。手数料が2万円強安くなるのは結果であって、本質は差し戻しで総会の日程が崩れるリスクを消すことです」。総会で決議したのに認定申請が通らず、次の総会まで1年待つ。これがいちばん高くつきます。

適合証の手続きは公益財団法人マンション管理センターが案内しています。

山梨県独自の基準はありません

認定基準は法により、管理組合の運営、管理規約、管理組合の経理、長期修繕計画の作成及び見直し等が定められています。県独自の基準はありません(出典:同上)。自治体によっては独自基準を上乗せしている例がありますから、上乗せが無いというのは申請側にとって素直な条件です。

なお、認定申請を予定している場合は、申請の前に建築住宅課企画担当(055-223-1730)へ相談するよう県が求めています。いきなり書類を送らないでください。

認定を取ると何が変わるか

メリット 内容
住宅金融支援機構の融資金利引下げ マンション共用部分リフォーム融資の金利が優遇される
【フラット35】の金利引下げ 認定マンションの住戸購入者向け
マンションすまい・る債の利率上乗せ 積立の運用面
市場評価 認定マンションの名称・所在地等が閲覧サイトで公表される

(出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度」、住宅金融支援機構)

富士河口湖町は別荘・セカンドハウス利用の住戸を含むマンションが一定数あります。区分所有者が売却を検討する場面で「管理計画認定を受けている」という事実が効くのは、買主が遠方から見ている物件ほど大きいというのが私の実感です。現地を何度も見に来られない買主にとって、公的な認定は数少ない客観指標だからです。

マンション管理適正化支援法人|令和7年11月28日に始まった新しい制度

もうひとつ、山梨県が町村部を所管している新しい制度があります。

令和7年(2025年)11月28日に一部施行されたマンションの管理の適正化の推進に関する法律において、新たに「マンション管理適正化支援法人」に係る制度が創設されました。町村部において法第5条の4各号に掲げる管理支援業務を実施する法人は、県の登録を受けることができます。(出典:山梨県「マンション管理適正化支援法人について」、ページ更新日 2026年1月15日)

管理組合にとって何が使えるのか

県が挙げている管理支援業務の例のうち、管理組合が直接メリットを受けるのは次の部分です。

号 業務内容
第一号 管理組合からの管理に関する相談対応や助言/管理規約や長期修繕計画の作成・見直し等に関する助言/管理会社との契約内容の確認や見直し支援/大規模修繕工事の発注等に関する助言/マンションの再生のための検討や合意形成に関する相談・助言
第二号 地域のマンションの管理状況や意向の把握/マンション管理適正化推進計画の周知/管理計画認定制度の周知・申請支援
第三号 マンションの管理に関する調査や研究
第四号 管理組合や区分所有者向けのセミナー・研修の開催/マンションの管理や再生に関する最新情報の提供
第五号 地域連携(地方公共団体や他の支援法人との連携による地域全体の取組の底上げ)

第一号の「大規模修繕工事の発注等に関する助言」に注目してください。施工会社ではない第三者から、発注の進め方について助言を受けられる枠組みが、法律上の制度として整ったということです。

私は施工する側の人間です。その私が言うのも妙ですが、施工会社と利害関係のない相談先を、管理組合が1つ持っておくことには意味があります。登録申請に係る手数料は無料とされており、県が登録法人を増やそうとしている段階です。富士河口湖町で支援法人がすでに登録されているかどうかは、建築住宅課(055-223-1730)に聞けば分かります。

長寿命化促進税制と、住宅金融支援機構の融資

補助金が薄い地域ほど、税制と融資の使い方が効いてきます。

マンション長寿命化促進税制

令和5年4月1日から令和9年3月31日までに、長寿命化に資するマンションの大規模修繕工事を完了した場合、一定の要件を満たすと固定資産税が減額されます。

項目 内容
減額内容 1戸あたり床面積100㎡相当分まで、固定資産税を1/3減額(減額割合は条例により異なる場合があります)
マンションの要件 新築された日から20年以上経過し、総戸数が10戸以上であること
過去の工事要件 過去に1回以上、長寿命化工事(外壁塗装等工事、床防水工事及び屋根防水工事)を適切に行っていること
今回の工事要件 長寿命化工事(外壁塗装等工事、床防水工事、屋根防水工事)が一体として実施されていること
適用期限 令和9年3月31日までに工事完了
申告期限 工事完了日から3か月以内

(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」)

この記事の公開時点(令和8年9月18日)から令和9年3月31日まで、残り約6か月半です。今から設計・発注・施工を完了させるのは、正直に申し上げて、かなり厳しい日程です。令和8年度中の完了を目指すなら、この秋が最後の判断時期になります。

そして誤解が多い点を2つ。

  1. 減るのは固定資産税だけです。 都市計画税は対象外です。総会で「税金が3分の1になる」と説明すると、後で「都市計画税が減っていない」と指摘されます。正確には「固定資産税の税額が、1戸100㎡相当分まで1/3減額される」です。
  2. 外壁塗装・床防水・屋根防水を一体で実施することが要件です。 予算が足りないから防水を来年度に回す、という分割発注をすると、要件を満たさなくなる可能性があります。工程を分けるなら、税制適用の可否を先に町の税務課へ確認してください。

住宅金融支援機構の融資

融資 内容
マンション共用部分リフォーム融資(管理組合申込み) 共用部改修の資金調達。管理計画認定やすまい・る債の積立実績で金利引下げの優遇あり
リフォーム融資(個人向け) 融資限度額1,500万円(住宅部分の工事費が上限)。金利は償還期間10年以内 年1.90%、11年〜20年以内 年2.13%(令和8年4月1日現在)
災害復興住宅融資(マンション共用部分補修・管理組合申込み) 2026年9月1日からの適用金利で、返済期間1年以上10年以内の場合 年2.56%

(出典:国土交通省(令和8年度支援策)、住宅金融支援機構 更新日2026年8月28日)

震度6弱を経験した富士河口湖町の管理組合にとって、災害復興住宅融資(マンション共用部分補修)が視野に入る可能性があります。適用の可否は被災の程度と罹災の認定によりますので、機構本支店へ直接ご確認ください。金利は毎月見直されますので、この記事の数字は「令和8年9月時点」のものとしてお読みください。

富士河口湖町の気候がマンション外壁に与える4つの負荷

ここからは、制度ではなく建物の話です。私は各地の自治体記事を書いていますが、富士河口湖町ほど「気候の影響が外壁に直接出る」地域は多くありません。

富士河口湖町役場は標高およそ850m前後の富士北麓に位置します。この標高と地形が、外壁に4つの負荷をかけます。

負荷 何が起きるか 対策として効くこと
① 凍結融解 外壁やタイル目地に浸みた水が夜間に凍って膨張し、日中に融ける。これを1冬に何十回も繰り返すと、微細なひびが確実に広がる。タイルの浮き・爆裂の最大要因 冬が来る前にシーリングと目地を塞ぐ。ひび割れを越冬させない
② 積雪と融雪水 屋上・バルコニーの雪荷重。融雪水がドレンに集中し、落ち葉と混ざって詰まる。パラペット際に雪が残り、天端から浸みる 秋のうちにドレン清掃。笠木の継ぎ目を点検
③ 紫外線 標高が高いほど紫外線量は増える。塗膜とシーリングの劣化が平地より早く進む。特に南面・西面 方位別に劣化を評価する。全面同一仕様の見積を疑う
④ 昼夜の温度差 標高が高い地域は日較差が大きい。建材の伸縮が毎日繰り返され、シーリングに疲労が蓄積する シーリングの打ち替え周期を平地基準より短く見る

方位別に劣化を見てもらってください

私が富士河口湖町のような環境で必ずお願いしているのは、劣化診断の報告書を方位別に分けてもらうことです。

「外壁全体で浮き率○%」という報告書は、補修数量の根拠になりません。南面は紫外線でシーリングが痩せ、北面は日が当たらず結露と藻・カビが出て、東西面は日較差で目地が動く。負荷のかかり方が方位でまったく違うのに、平均値1つで語られたら、どこにいくら使うべきか判断できないからです。

診断を依頼するときは、見積依頼書にこう書いてください。「劣化診断報告書は、東西南北の各立面ごとに、浮き率・ひび割れ延長・シーリング劣化度を分けて記載してください」。これだけで報告書の質が変わります。

冬に工事ができない、という制約

塗装は、一般に気温5℃以下または湿度85%以上では施工できません。富士河口湖町の冬は、この条件に該当する日が長く続きます。つまり、実質的な施工可能期間は4月〜11月に限られます。

これは工程計画に直結します。足場を架けたまま冬に入ると、工事が止まっているのに足場のリース料だけが発生します。私が富士北麓の物件で工期短縮を強く意識するのは、単に「早いほうがいい」からではなく、年内に納めきれるかどうかが、そのままコストになる地域だからです。

ここは、足場を組まないロープアクセス工法や、部位ごとに足場とロープを使い分けるハイブリッド工法が、平地よりはっきり効いてくるポイントです。

別荘・リゾートマンション特有の合意形成|富士河口湖町でいちばん難しいところ

制度でも技術でもなく、この町の管理組合がいちばん苦労するのが、ここだと思います。

富士河口湖町は観光地であり、分譲マンションの中には別荘・セカンドハウスとして所有されている住戸が相当数あります。区分所有者が町外、あるいは首都圏在住というケースです。

何が起きるか

問題 具体的に起きること
総会の定足数 委任状・議決権行使書が集まらず、総会が成立しない/特別決議(3/4)に届かない
修繕積立金の滞納 普段使っていない住戸ほど、支払いの優先度が下がりやすい
工事の必要性が伝わらない 年に数回しか来ない所有者には、外壁の劣化が「自分ごと」にならない
立入りの調整 バルコニー内の作業日にどうしても不在。日程調整が長期化する

理事会として打てる手

私が実際に効果を見てきた方法を、3つだけ挙げます。

  1. 写真を1枚、必ず送る。 総会資料に文章で「外壁に浮きが確認されました」と書いても、遠方の所有者には伝わりません。打診調査で浮きが出た箇所の写真を、その所有者の住戸の直上・直下の部位に絞って1枚添えると、反応がまったく変わります。「あなたの部屋の真上です」が効きます。
  2. 総会を年度の早い時期に置く。 富士河口湖町は冬期の移動が難しくなります。2月の総会は、遠方所有者の出席率を下げます。5月〜6月に前倒しするだけで、委任状の回収率が変わることがあります。
  3. バルコニー立入りの候補日を3つ以上出す。 これは工法にかかわらず必要な作業です。足場でもロープアクセスでも、バルコニー内部の補修には立ち入りが要ります。「ロープアクセスなら立入りゼロ」ではありません。 ここを曖昧にしたまま契約すると、後で揉めるもとになります。

「12年周期」は富士河口湖町の建物に当てはまるか

大規模修繕は12年周期、とよく言われます。これは国の長期修繕計画作成ガイドラインの標準的な周期に由来する目安であって、すべての建物に当てはまる数字ではありません。

富士河口湖町の建物について、私の考えを正直に書きます。

前倒しを検討したほうがよいサイン(4つ)

  1. 令和8年6月26日の地震(震度6弱)のあと、外壁を打診で確認していない
  2. タイル目地に、去年は無かった細いひびが複数出ている
  3. 屋上ドレン周りに、落ち葉・土砂が堆積したまま冬を迎えている
  4. 前回の大規模修繕から10年以上経ち、かつシーリングを一度も打ち替えていない

逆に、慌てなくてよいサイン(3つ)

  1. 前回工事から7年以内で、シーリングにも目地にも変化が無い
  2. 打診調査を実施し、浮き率が低く、方位別に見ても偏りが無い
  3. 屋上防水の保証期間内で、直近の点検で指摘が出ていない

周期ではなく、状態で決めてください。 12年経ったから工事、ではなく、打診の結果と方位別の劣化度で決める。震度6弱を受けた建物なら、なおさら「経過年数」より「実測」です。

モデルケース2本|富士河口湖町の建物での概算比較

実際の数字の感覚をつかんでいただくため、富士河口湖町でありそうな2つのケースを組みました。あくまでモデルであり、実際の見積ではありません。

ケースA:河口湖駅圏の一般的な分譲マンション

項目 内容
建物 築27年・5階建て・32戸・外周約110m
立地 河口湖駅周辺の市街地。敷地に多少の余裕あり
全面足場での概算 約4,200万円(うち仮設足場 約780万円)/工期 約5か月
ハイブリッド工法での概算 約3,600万円(低層部は足場、妻面・塔屋はロープアクセス)/工期 約4か月
差額 約600万円(1戸あたり約19万円)

低層部は足場のほうが作業効率が高いため、無理にすべてをロープアクセスにはしません。部位ごとに使い分けるほうが、総額が下がるというのがハイブリッド工法の考え方です。

ケースB:湖畔のリゾート型マンション

項目 内容
建物 築32年・6階建て・24戸(うち別荘利用12戸)・外周約85m
立地 湖側に足場を張り出しにくい。道路側も幅員が狭い
全面足場での概算 約3,900万円(うち仮設足場 約720万円/道路占用費含む)/工期 約4.5か月
ロープアクセス主体での概算 約3,150万円/工期 約3か月
差額 約750万円(1戸あたり約31万円)

ケースBで差が大きく出るのは、足場が架けにくい立地だからです。足場が架けにくい建物ほど、ロープアクセスの費用対効果は大きくなります。 逆に、足場が素直に架かる建物では差が縮みます。

さらにケースBでは、工期が4.5か月から3か月に縮むことで、11月末までに工事を完了できるかどうかが変わります。富士河口湖町では、これが冬越しのリース費と再養生費を回避できるかの分かれ目になります。

料金の考え方については明誠の料金に対する考え方にまとめています。明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。

私が見積書で必ず見る5つのポイント

理事会で見積を比較するとき、金額の総額だけを見ると判断を誤ります。私が見る5点を、そのまま公開します。

  1. 仮設足場の「架面積」と単価が分けて書かれているか。 一式いくら、では比較できません。㎡単価×架面積で書かせてください。
  2. 仮定数量(下地補修)の超過分の単価が明記されているか。 下地補修は開けてみないと数量が確定しません。だからこそ、契約書に「タイル張替 ○○円/枚、ひび割れUカットシール ○○円/m、超過分は同単価を適用する」と明記してください。ここが空欄の見積は、後から増額が出やすくなります。
  3. 足場リースの延長費用を、どちらが負担するか。 天候による工期延長で足場リース期間が延びたとき、その費用の負担者が契約書に書かれているか。富士河口湖町は秋の長雨と初雪のリスクがある地域なので、平地以上に重要です。
  4. 高圧洗浄の排水計画。 湖に近い立地では、洗浄水の処理をどうするかが問われます。見積に「仮設排水・沈殿処理」の項目が無い会社は、現場を見ていない可能性があります。
  5. 監理者(設計コンサル)と施工会社の資本関係。 第三者監理を謳いながら、実質的に同じグループ、という例があります。総会で聞かれたときに答えられるよう、理事会が先に確認してください。

正直に申し上げます|ロープアクセス工法は万能ではありません

私は無足場工法を扱う会社の代表です。その私が、利益相反を承知で書きます。

私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる現場は、普通にあります。

足場のほうが有利な4つの条件

条件 理由
① 外壁全面を塗り替える 面全体を長時間扱う工事は、足場のほうが作業効率が高く、総額で逆転することがある
② 下地補修の数量が非常に多い 補修箇所が全面に散っていると、下降と昇降の繰り返しが工数を食う
③ サッシまわりや開口部の改修を伴う 材料の搬入・仮置きスペースが必要な工事は足場が向く
④ 居住者が「工事中の安心感」を強く求める メッシュシートで覆われることによる防犯・防塵の安心感は、足場の大きな価値

そして、繰り返しになりますが、バルコニー内部の作業は工法にかかわらず立入りが必要です。ロープアクセスにすれば居住者の負担がゼロになる、ということはありません。

明誠が3つの工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)を持っているのは、どれか1つを売りたいからではなく、建物ごとに最適解が違うからです。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職に加盟いただいているのも、工種ごとに最適な専門職を当てるためです。管理組合さま向けのご提案の考え方は管理組合さま向けページにまとめています。

窓口一覧|富士河口湖町のマンション管理組合が電話する先

最後に、実務で使う連絡先を1か所にまとめます。

用件 窓口 電話
住宅リフォーム工事補助金、耐震改修促進計画、多雪区域の確認 富士河口湖町 都市整備課 都市計画係(役場3階) 0555-72-1976(直通)
太陽光発電・蓄電池の補助 富士河口湖町 環境課(役場3階) 0555-72-3169(直通)
固定資産税・長寿命化促進税制の申告 富士河口湖町 税務課 0555-72-1111(代表)
人口・世帯数などの統計 富士河口湖町 住民課 0555-72-1114(直通)
マンション管理計画認定制度/管理適正化支援法人 山梨県 県土整備部 建築住宅課 企画担当 055-223-1730
定期報告(12条点検)の提出・年度確認 山梨県 県土整備部 建築住宅課 建築防災担当 055-223-1734
昇降機・準用工作物の定期報告 一般社団法人 北関東ブロック昇降機等検査協議会 公式サイトをご確認ください
  • 富士河口湖町役場:〒401-0392 山梨県南都留郡富士河口湖町船津1700番地/代表 0555-72-1111/FAX 0555-72-0969
  • 開庁:月〜金曜日 午前8時30分〜午後5時15分(祝日、12月29日〜1月3日を除く)
  • 山梨県庁 建築住宅課:〒400-8501 甲府市丸の内1-6-1/FAX 055-223-1736

都市整備課と環境課は、どちらも役場3階です。1回の来庁で両方回れます。一方で、管理計画認定と定期報告は県庁(甲府市)が窓口です。富士河口湖町から甲府市までは車でおよそ1時間。 まずは電話で用件を確認してから動いてください。郵送での提出も受付けられています。

なお、富士河口湖町の人口は27,061人、世帯数は12,394世帯です(令和8年9月1日現在、住民基本台帳。出典:富士河口湖町「月ごとの人口・世帯数」)。人口3万人未満の町ですから、担当者の顔が見える距離で相談ができます。これは、大都市の管理組合には無い強みです。


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア


よくあるご質問

Q. 富士河口湖町の住宅リフォーム工事補助金を、管理組合が共用部の大規模修繕で使えますか?

A. 使えません。対象が「町民の持家住宅」であり、申請者は個人の住民です。上限も10万円(耐震改修関連工事の付帯工事費で20万円)ですので、共用部工事の財源にはなりません。専有部のリフォームを行う区分所有者個人が使える可能性のある制度として、総会で分けて説明してください。

Q. 令和8年度のリフォーム補助金は、まだ申請できますか?

A. 令和8年9月17日時点の町公式ページでは「9/2より申請受付を再開しました」と案内されています。ただし「予算がなくなり次第終了」と明記されていますので、都市整備課(0555-72-1976)へ電話で残枠を確認してから動いてください。年度途中で止まった実績がある制度です。

Q. マンション管理計画認定の申請は、町役場でできますか?

A. できません。富士河口湖町は「町」なので、山梨県が所管しています。山梨県 建築住宅課 企画担当(055-223-1730)へ、申請の前にまずご相談ください。市部にあるマンションは各市が窓口です。

Q. 認定申請の手数料はいくらですか?

A. 長期修繕計画が1つの場合、公益財団法人マンション管理センターの適合証がある場合は3,600円、無い場合は25,500円です。長期修繕計画が2以上ある場合は、1計画あたりそれぞれ1,600円/14,700円が加算されます。変更認定申請は、適合証なしの額の1/2(100円未満切捨て)です。

Q. うちのマンションは12条点検(定期報告)の対象ですか?

A. 山梨県は県細則で「下宿、共同住宅、寄宿舎」のうち「5階以上の階にあり、かつ対象用途の床面積の合計が1,000㎡以上であるもの」を対象に指定しており、報告時期は3年毎です。5階建て以上の分譲マンションは対象になり得ます。令和8年度がご自身の建物の報告年度に当たるかどうかは、山梨県 建築住宅課 建築防災担当(055-223-1734)へ電話で確認するのが確実です。

Q. 定期報告の提出期限はいつですか?

A. 報告年度の4月1日から9月30日までです。期限内に報告がない場合は督促されます。様式は令和7年7月1日施行で改正されていますので、山梨県のダウンロードページから最新版を取得してください。

Q. 令和8年6月の地震(震度6弱)のあと、外壁を調べたほうがよいですか?

A. 打診調査をおすすめします。外壁タイルの浮きは、接着層が剥離してもタイル自体は割れないため、目視では分かりません。富士河口湖町は冬の凍結融解があるため、剥離面に水が入ると進行が速くなります。調査だけを先行して行い、結果を見てから工事範囲を決めることもできます。

Q. 打診調査はいくらくらいかかりますか?

A. 一般的な目安は250〜500円/㎡ですが、全面打診か部分打診+赤外線かで変わります。足場を組まずロープアクセスで行えば、仮設費を大きく圧縮できます。無料で概算のお見積りを提示できますので、お気軽にお問い合わせください。

Q. 工期はどれくらい短くなりますか?

A. 建物によりますが、ロープアクセス主体であれば足場工法の6割前後の工期になることが多いです。本記事のモデルケースBでは、4.5か月から3か月に短縮しています。富士河口湖町では冬期に塗装ができないため、この短縮がそのまま年内完了の可否につながります。

Q. 長寿命化促進税制は、いつまでに工事を終えればよいですか?

A. 令和9年3月31日までに工事を完了する必要があります。外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事を一体として実施することが要件で、完了日から3か月以内に申告が必要です。減額されるのは固定資産税であり、都市計画税は対象外です。

この記事のポイントまとめ

  • 富士河口湖町の補助金は町民の持家住宅が対象で、管理組合の共用部工事には使えない
  • 管理計画認定と管理適正化支援法人は、町ではなく山梨県が窓口(055-223-1730)
  • 認定手数料は適合証あり3,600円・なし25,500円。差額21,900円は事前確認の価値
  • 山梨県は県細則で共同住宅「5階以上かつ1,000㎡以上」を12条点検の対象に指定
  • 定期報告の提出期限は9月30日。共同住宅は3年毎なので報告年度を県に要確認
  • 令和8年6月26日の震度6弱のあと、外壁の打診確認をしていない建物は要注意
  • 国の令和8年度支援は耐震診断が国と地方で2/3、マンションの耐震改修は1/3
  • 標高850m前後の凍結融解と紫外線が、この町の外壁劣化を平地より速める
  • 冬は塗装ができないため、施工可能期間は実質4〜11月。工期短縮が費用に直結
  • 長寿命化促進税制の適用期限は令和9年3月31日。残り約6か月半

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月17日時点で公表されている富士河口湖町および山梨県・国土交通省・住宅金融支援機構の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず富士河口湖町および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

本記事は制度の一般的な解説であり、個別の申請可否や税務判断を保証するものではありません。税制の適用については、富士河口湖町税務課または税理士にご確認ください。

出典・参考資料

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月17日

富士河口湖町は、私が仕事でうかがう地域の中でも、建物にかかる自然の負荷がはっきり見える町です。標高、冷え込み、紫外線、そして今年の地震。制度の数は多くありませんが、やるべきことははっきりしています。9月30日までに定期報告の該当を確認する。震度6弱のあとの外壁を、目視ではなく打診で確かめる。 この2つだけでも、今月中に動いてください。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームからどうぞ。

お気軽にご相談ください!