中野区の管理組合・オーナーが無料で使える相談9選|土地建物無料相談会は毎月1回木曜(次は10月29日・申込10月23日まで)、リフォーム相談は毎週金曜・予約不要【令和8年度版】

2026年9月19日 更新

中野区で大規模修繕を検討している管理組合とビルオーナーさまへ。中野区には、無料で使える相談窓口と専門家派遣が9つあります。まずはそこからです。

「本間さん、うちは前の道が4メートルないんです。足場、組めますかね」

先月、中野区野方のマンションのオーナーさまから、こんなご相談をいただきました。築31年、18戸の賃貸マンション。外壁の塗膜が白く粉を吹き、シーリングが痩せているのはご本人も分かっている。ただ、前面道路が狭く、隣地との離隔も50センチあるかどうか。足場を組む前提で見積りを取ったら、仮設だけで想定の倍近い金額が返ってきた、というお話でした。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組んで建物を囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も自分の足で踏んできた人間です。

そのオーナーさまに最初にお伝えしたのは、工法の話ではありませんでした。見積りを比べる前に、中野区と東京都の無料の窓口を先に使いましょう、ということです。

中野区は、23区のなかでも道路の狭い住宅地が多く、建物が密集しているエリアです。中野・東中野・新井薬師前・沼袋・野方・鷺ノ宮といった沿線に、20戸前後の分譲マンションや賃貸マンションがびっしりと建っています。この「狭い」「近い」という条件は、大規模修繕の費用を押し上げる最大の要因になります。だからこそ、判断を誤らないための無料の相談窓口が、中野区では特に効くのです。

今日は、中野区のマンション管理組合とビルオーナーさまが、お金をかけずに使える相談・派遣を9つ、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。


結論:中野区で無料で使える相談・派遣は9ある

先に一覧でお示しします。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用・回数 申込先
1 中野区 土地建物無料相談会 建築士・宅建業者・土地家屋調査士・司法書士ほか5団体 無料/1人30分・毎月1回木曜 司法書士坂本洋事務所 03-3385-8523
2 中野区 すまいのリフォーム相談 区内建設事業者の相談員 無料/毎週金曜・予約不要 住宅課住宅政策係 03-3228-5564
3 中野区 専門相談(不動産相談) 宅地建物取引士 無料/25分・毎月3回 区民相談係 03-3228-8802
4 中野区 専門相談(法律相談) 弁護士 無料/25分・1人1年に1回 区民相談係 03-3228-8802
5 中野区 専門相談(登記・境界/税務) 司法書士・土地家屋調査士・税理士 無料/25分 区民相談係 03-3228-8802
6 中野区 消費生活相談 消費生活相談員 無料/月〜金 9時30分〜16時 03-3228-5438
7 中野区 分譲マンション支援(届出→専門家派遣・セミナー) マンション管理士等 無料 住宅課住宅政策係 03-3228-5564
8 東京都 マンションアドバイザー無料派遣 マンション管理士・建築士等 要届出マンションは1回、管理不全の兆候ありは5回まで無料 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1453
9 東京都 マンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応) マンション管理士 各テーマ2回まで無料/令和9年2月26日まで 東京都マンション管理士会HP

このうち 1・2・3 は、予約のハードルが低く、今月中に動ける窓口です。7・8・9 は東京都の制度と連動していて、腰を据えて使うタイプのものです。

私が現場でもったいないと感じるのは、この9つを1つも使わないまま、いきなり工事業者に見積りを頼んでしまう管理組合やオーナーさまが多いことです。順番が逆なのです。


中野区の管理組合が最初に使うべき「土地建物無料相談会」

中野区の窓口のなかで、大規模修繕の入口として一番使いやすいのがこれです。

民間5団体が合同で対応する、中野区独自の枠組み

土地建物無料相談会は、まちづくり推進土地建物協議会(区内の民間事業者5団体で構成)が開いている無料相談会です。建物の設計や施工、登記、売買など、土地建物に関するさまざまな相談に答えてくれます(出典:中野区「土地建物無料相談会(令和8年度)」/2026年3月26日更新)。

構成団体は次の5つです。

  • 社団法人東京都建築士事務所協会 中野支部
  • 公益社団法人東京都宅地建物取引業協会 第十ブロック
  • 中野建設まちづくり協議会
  • 東京土地家屋調査士会 中野支部
  • 東京司法書士会 中野支部

建築士事務所協会と建設まちづくり協議会が入っているというのが、この相談会の性格をよく表しています。区分所有や相続の話だけでなく、「この建物、どこから手を付けるべきか」という技術寄りの相談にも答えられる布陣です。

令和8年度の残り日程と申込期限

開催日 会場 申込期限
10月29日(木) 区役所1階 ミーティングルームB 10月23日(金)
11月19日(木) 区役所1階 ミーティングルームB 11月13日(金)
12月10日(木) 区役所1階 ミーティングルームB 12月4日(金)
令和9年1月28日(木) 区役所1階 ミーティングルームB 1月22日(金)
令和9年2月18日(木) 区役所1階 ミーティングルームB 2月12日(金)
令和9年3月18日(木) 区役所1階 ミーティングルームB 3月12日(金)

開催時間は10時から15時30分。相談時間は1人あたり30分です。予約優先ですが、当日の飛び込みも受け付けています。 予約先は司法書士坂本洋事務所(担当:坂本/電話:03-3385-8523)です。

対象は「中野区民の方、中野区内に土地や建物をお持ちの方」。つまり、区外にお住まいのビルオーナーさまでも、中野区内に物件を持っていれば使えるということです。ここは見落とされがちなポイントだと思います。

なお、8月は毎年開催していません。9月17日の回はすでに終了していますので、次に狙うのは10月29日(申込は10月23日まで)です。

30分で成果を出すための持ち物

1人30分は、決して長くありません。私が現場でお勧めしているのは、次の3点を持っていくことです。

  1. 不具合箇所の写真5枚以上(スマートフォンで構いません)
  2. 長期修繕計画書と、直近の修繕工事の記録
  3. 修繕積立金の残高が分かる直近の決算書

とくに写真は効きます。外壁のひび割れ、タイルの浮き、屋上の水たまり、シーリングの切れ。5枚もあれば、建築士は建物の状態をかなり正確に推測できます。逆に、口頭の説明だけで30分を使うと、状況の共有だけで終わってしまいます。


予約不要で毎週使える「すまいのリフォーム相談」

中野区の窓口のなかで、もっともハードルが低いのがこれです。

新築や増改築、簡易な修繕、バリアフリー化などの相談を、区内建設事業者の相談員が無料で受けてくれます(出典:中野区「すまいのリフォーム相談」/2026年4月1日更新)。

  • 日時:毎週金曜日(祝日を除く)10時〜16時(12時〜13時は昼休憩)
  • 場所:中野区役所 1階
  • 費用:無料
  • 予約不要

年間の開催日程は、区が公開している令和8年度のリフォーム相談チラシ(PDF)で確認できます。お問い合わせは住宅課住宅政策係(電話:03-3228-5564)です。

相談員は区内の建設事業者ですので、雨漏りの修繕、ベランダ・屋根・壁の修繕、設計や見積りの考え方といった、実務寄りの話ができます。

ただし、性格を正しく理解しておく必要があります。これは「工事の一般論を聞く窓口」であって、「特定の見積りの妥当性を判定してもらう窓口」ではありません。 相談員も同じ業界の事業者ですから、他社の見積りの是非を断じる立場にはないのです。

それでも、予約なしで毎週金曜に行ける窓口というのは、とても貴重です。理事会の議論が止まったとき、「金曜に区役所1階に寄ってみる」という選択肢を持っているだけで、話が前に進みます。


区役所4階の「専門相談」を、目的別に使い分ける

中野区は、区役所4階の専門相談室で、予約制の無料相談を実施しています(出典:中野区「中野区の専門相談」/2026年6月25日更新)。

相談時間はお1人につき25分以内。相談は無料で、秘密は厳守されます。

管理組合・オーナーに関係が深い4つ

相談名 相談日 定員 担当
不動産相談 毎月第1金曜・第3火曜・第4火曜 13時〜16時 6人 宅地建物取引士
法律相談 毎週月曜・水曜、毎月第3日曜 13時〜16時 12人 弁護士
登記・境界相談 毎月第2火曜 13時〜16時 6人 司法書士・土地家屋調査士
税務相談 毎月第1火曜 13時〜16時 12人 税理士

登記・境界相談が入っているのは、中野区の地域特性を考えると大きいと思います。隣地との境界が曖昧なまま何十年も経っている物件は、中野区に少なくありません。足場を建てるとき、隣地に少しでもかかるなら、境界の確認と隣地所有者の同意が要ります。ここが不明確なままだと、着工直前に工事が止まります。土地家屋調査士に無料で25分聞けるというのは、実務的に効く窓口です。

予約方法と、押さえておくべき制約

予約はWebと電話の2経路です。

  • Web予約:相談日の1週間前の同一曜日(午前0時)から、相談日前日(午後11時59分)まで、先着順
  • 電話予約:相談日の1週間前の同一曜日(午前9時)から、先着順。電話番号 03-3228-8802(区民相談係)

直接、区役所窓口での受付は行っていません。また、専門相談は祝日・休日と、12月20日から1月10日までは実施されません。年末年始に動こうと思っていると空振りしますので、ご注意ください。

制約もあります。法律相談は、お1人さま1年に1回しか受けられません(次回の利用は、相談日の翌日から1年経過した以降分の予約が可能)。係争中の事案や、すでに弁護士に依頼済みの案件は受け付けられません。年に1回という枠ですので、理事会で「誰が、何を聞くか」を決めてから使うことをお勧めします。

当日は、相談される方の氏名・住所が確認できるもの(運転免許証、マイナンバーカード、公共料金の請求書など)と、聞きたいことのメモ、関係資料をお持ちください。部屋には最大3名まで入室できますので、理事長と修繕委員の2〜3名で行くという使い方もできます。


工事業者とのトラブルは「消費生活相談」へ

管理組合やオーナーの悩みは、建物のことばかりではありません。訪問販売による強引な勧誘、契約後の不当な追加請求、期日を守らない業者。こうしたトラブルの窓口が、中野区消費生活センターです(出典:中野区「消費生活に関する相談窓口」/2026年6月5日更新)。

  • 受付日時:月曜日から金曜日 9時30分〜16時(土日祝・年末年始は休み)
  • 電話番号:03-3228-5438(中野区役所4階)
  • 対象:中野区在住・在勤・在学の方
  • 費用:無料(通話料は自己負担)

Teamsを使ったオンライン相談も実施されています(月〜金 10時〜12時、14時〜16時、30分以内)。まず電話で相談内容を伝えたうえで、予約方法を案内してもらう流れです。

相談件数が多いため、1回あたりの相談時間は原則30分以内が目安とされています。契約関係の書類をそろえてから電話をかけるのが、結果的に一番早いです。

なお、個人間のトラブル、人間関係のトラブル、労働問題、相続や家族関係に関する相談は受け付けていません。管理組合内部の対立は、この窓口ではなく法律相談の領域です。


管理状況届出を出せば、東京都の専門家派遣が無料で使える

ここからが、中野区の大規模修繕にとって本丸の部分です。

まず「要届出マンション」かどうかを確認する

東京都は「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」(平成31年3月制定)に基づき、令和2年4月から管理状況届出制度を実施しています。

昭和58(1983)年12月31日以前に新築され、居住用の独立部分が6戸以上ある分譲マンションは、管理状況の届出が義務付けられています。これを「要届出マンション」といいます(出典:公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」)。

中野区では、東京都のマンション管理状況届出システムへ入力するか、届出書を中野区役所住宅課へ郵送するか、どちらかの方法を選べます(出典:中野区「分譲マンション支援」)。

築43年以上ということですから、中野区内の分譲マンションではかなりの数が該当します。まず、自分のマンションが要届出かどうか、そして届出が受理されているかどうかを、住宅課(03-3228-5564)に確認してください。

届出が受理されると、無料派遣の回数が決まる

区分 無料回数
届出が受理された要届出マンション 1回まで無料
うち管理不全の兆候があるマンション 5回まで無料

各コース1回あたり2時間程度です。コースは講座編(A-1〜A-6)と相談編(B-1〜B-6)に分かれており、大規模修繕に直結するのは次のあたりです。

  • A-4 計画修繕工事の進め方(講座編)
  • A-2 長期修繕計画作成ガイドライン活用の手引きの解説(講座編)
  • B-4 修繕計画の作成や修繕積立金等の設定に関すること(相談編)
  • B-5① 修繕工事検討段階での相談(建物・設備等の劣化状況の調査・診断、修繕工事の検討組織、修繕工事の方式等)
  • B-5② 修繕工事準備段階での相談(修繕工事の内容、業者選定の仕方、合意形成等)

B-5①とB-5②は、区の窓口では踏み込めない「劣化診断の考え方」と「業者選定の仕方」を、正面から扱えます。 ここが区の相談会との決定的な違いです。

申込は、申込書に必要事項を記入のうえ、FAX・メール・郵送で東京都防災・建築まちづくりセンター(まちづくり推進課/TEL 03-5989-1453/FAX 03-5989-1548)へ。申込後1〜2週間程度で、派遣されるアドバイザーから日程調整の連絡が入ります。

管理不全の兆候があるマンションは、Cコースの費用助成も

管理不全の兆候があるマンション向けには、マンション管理アドバイザーCコース(支援編)の派遣費用助成も用意されています(出典:東京都マンションポータルサイト「マンション管理アドバイザーCコース(支援編)派遣費用の助成」)。

「管理不全の兆候」の判定基準は、管理組合の有無、管理者等の有無、管理規約の有無、年1回以上の総会開催の有無、管理費の有無、修繕積立金の有無、そして修繕の計画的な実施(大規模な修繕工事)の有無。これらのいずれかが「ない」「いない」と回答したマンションが該当します。

つまり、大規模修繕を計画的に実施していない、というだけで該当し得るということです。ネガティブに聞こえるかもしれませんが、私はむしろ逆だと思っています。該当するなら、5回まで無料で専門家を呼べるのです。使わない手はありません。


防災と認知症対応の「マンション管理士無料派遣」は令和9年2月26日まで

東京都が令和5年度から実施している事業で、令和8年度も継続しています(出典:東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」)。

  • 対象:都内の分譲マンション管理組合
  • 回数:1管理組合につき、防災力向上と認知症対応それぞれ2回まで(無料)
  • 受付期限:令和9年2月26日(金)まで
  • 申込:一般社団法人 東京都マンション管理士会のHPから

注意点が2つあります。

ひとつは、募集数に達した時点で締め切られること。都内全域が対象の枠ですので、年明けまで待つのは得策ではありません。

もうひとつは、派遣回数が通算でカウントされること。令和5年度から令和7年度までに本事業で派遣を受けている場合、その回数も各テーマ2回の上限に含まれます。過去に使ったことがある組合は、残り回数を確認してから申し込んでください。

お問い合わせは東京都住宅政策本部 民間住宅部 マンション課(03-5320-5004)です。

なお、東京都は日常の維持管理・再生に関する相談に応じる分譲マンション総合相談窓口も設けています。窓口の一覧は東京都マンションポータルサイトの相談窓口ページから確認できます。


中野区で大規模修繕を検討するとき、無料相談では埋まらない部分

ここまで9つの窓口をご紹介しました。正直に申し上げます。

無料の相談窓口は、「何を検討すべきか」を整理するのには非常に有効です。しかし、「この建物で、実際にいくらかかるか」「どの工法が成立するか」という問いには、原理的に答えられません。区の相談会が1人30分、専門相談が25分という設計になっているのは、そういう理由です。

そして中野区の場合、この「いくらかかるか」が、他区より読みにくいという事情があります。

中野区は「仮設足場が高くつく区」である

冒頭の野方のオーナーさまの話に戻ります。前面道路が狭く、隣地との離隔が50センチ。この条件だと、足場を組むために次のことが必要になります。

  • 隣地所有者との事前協議(足場が越境する場合)
  • 道路使用許可(歩道や車道に足場や資材置場がかかる場合)
  • 狭小地用の特殊な足場計画(通常より単価が上がる)
  • 資材搬入の小運搬(大型車が入れない場合、人力での搬入が増える)

これらは、すべて見積りに乗ってきます。中野区・杉並区のように道路が狭く建物が密集している地域では、仮設足場の費用が想定の1.3〜1.5倍になることが珍しくありません。

一般的な目安として、30戸規模のマンションの大規模修繕は総額3,500万〜5,000万円というレンジで、そのうち仮設足場が15〜25%を占めます。これが条件の悪さで1.4倍になれば、それだけで200万〜300万円が上振れします。しかもその200万〜300万円は、建物の性能を1ミリも向上させません。

足場とロープアクセスで、いくら違うのか

参考値として、当社が扱った条件に近いケースをお示しします。10階建て・外周80m・工期3か月の物件で、

工法 仮設費の目安
通常足場工法 約168万円
ロープアクセス工法(無足場) 約59万円

差額はおよそ109万円。工期も、足場工法の約60%が目安です。10階建て・外周80mであれば、足場工法で3か月かかるところ、ロープアクセス工法なら1.5〜2か月程度です。足場の組立・解体に必要な期間がまるごと不要になるためです。

もちろん、これは目安です。実際の見積りは、劣化状況・仕上材の種類・屋上の支持点の有無で大きく変動します。それでも、「仮設で100万円単位が動く」という感覚は、持っておいていただきたいと思います。

工事単価の目安も申し上げます。外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、外壁打診調査は250〜500円/㎡、屋上防水は5,000〜8,000円/㎡。これも物件により変動しますが、無料相談の場で「うちは㎡いくらくらいが妥当ですか」と聞くときの物差しにはなります。

工法の技術的な背景を詳しく知りたい方は、同業者・技術者向けにまとめている姉妹サイトロープアクセスドットコムをご覧ください。ロープの二重化や墜落制止用器具の運用など、安全管理の実務をそのまま公開しています。

すべてをロープアクセスにする必要はない

誤解のないよう申し添えます。私は、ロープアクセスが万能だとは考えていません。

低層部の作業、共用廊下の内側、大量の材料を使う工程は、足場のほうが速くて確実です。だから私は、部位ごとに分けるハイブリッド工法をご提案することが多いのです。低層部と共用廊下は足場、高層部の外壁とシーリングはロープアクセス。これで総額を抑えつつ、品質も工期も守れます。

考え方の詳細は明誠のロープアクセス工法の技術詳細と大規模修繕の料金の考え方にまとめています。

数字も申し上げます。株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工しており、安全管理の考え方は明誠の安全管理への取り組みに公開しています。

また当社は、日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズ本部を立ち上げ、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職に加盟いただいています。各工種を専門職が直接担当するため、重層下請けによる中間マージンが発生しにくい構造です。

実際の施工事例は施工実績ページ(約6,000棟)からご覧いただけます。中野区と条件の近い、狭小地・隣地近接の物件の事例もあります。


中野区の管理組合・オーナーが相談に持っていく「3点セット」

どの窓口を使う場合でも、これだけは持っていってください。

1. 不具合箇所の写真(5枚以上)

外壁のひび割れ、タイルの浮き、シーリングの切れ、屋上の水たまり、鉄部のサビ。スマートフォンで十分です。撮影日が分かるようにしておくと、なお良いです。

2. 長期修繕計画書(あれば)

なければ「ない」で構いません。むしろ、ないこと自体が東京都の「管理不全の兆候」の判定に関わり、無料派遣の回数が5回に増える根拠になり得ます。 無理に取り繕う必要はありません。

3. 修繕積立金の残高が分かる直近の決算書

「いくら使えるか」が分からないと、専門家も答えようがありません。総会資料の写しで構いません。

この3点があれば、25分でも30分でも、話は驚くほど前に進みます。


よくあるご質問

Q. 中野区の土地建物無料相談会は、区外に住んでいるオーナーでも使えますか?

A. 使えます。対象は「中野区民の方、中野区内に土地や建物をお持ちの方」です。区外在住でも、中野区内に賃貸マンションやビルをお持ちであれば相談できます。予約先は司法書士坂本洋事務所(03-3385-8523)で、予約優先ですが当日の飛び込みも可能です。

Q. すまいのリフォーム相談で、大規模修繕の見積りをチェックしてもらえますか?

A. 見積書の妥当性を判定する窓口ではありません。相談員は区内の建設事業者ですので、工事の一般的な進め方や考え方についてのアドバイスが中心になります。見積りの内容を第三者に検証してもらいたい場合は、東京都のマンションアドバイザー制度のB-5②コース(修繕工事準備段階での相談/修繕工事の内容、業者選定の仕方、合意形成等)を使うか、複数の施工会社から相見積りを取るのが現実的です。

Q. 中野区の法律相談は、何回でも使えますか?

A. お1人さま1年に1回までです。次回の利用は、相談日の翌日から1年経過した以降分の予約が可能になります。また、係争中の事案やすでに弁護士に依頼済みの案件は受け付けられません。予約は区民相談係(03-3228-8802)へ、相談日の1週間前の同一曜日の午前9時から先着順です。年1回という貴重な枠ですので、理事会で論点を整理してから臨むことをお勧めします。

Q. 東京都のマンションアドバイザー無料派遣は、どのマンションでも使えますか?

A. 無料になるのは、東京都の管理状況届出制度で届出が受理された要届出マンション(昭和58年12月31日以前に新築、居住用の独立部分6戸以上)に限られます。1回まで無料、管理不全の兆候がある場合は5回まで無料です。まずは届出の有無を中野区住宅課住宅政策係(03-3228-5564)にご確認ください。

Q. 東京都のマンション管理士無料派遣(防災・認知症)は、いつまで申し込めますか?

A. 令和8年度の受付期限は令和9年2月26日(金)です。ただし募集数に達した時点で締め切られます。また、令和5年度から令和7年度に本事業を利用している場合、その回数も各テーマ2回の上限に通算されます。申込は東京都マンション管理士会のHPからです。

Q. 中野区は道が狭い物件が多いですが、足場が組めない場合はどうなりますか?

A. 隣地との離隔や前面道路の幅によっては、足場の設置に道路使用許可や隣地所有者との協議が必要になり、想定外のコストと期間が発生することがあります。そうした条件の建物こそ、ロープアクセス工法やハイブリッド工法が効きます。屋上に支持点を確保できるかどうかが成立条件の中心で、現地を一度拝見すれば、その場でお答えできます。管理組合向けサービスページに、ご相談から着工までの流れをまとめています。

Q. 中野区の大規模修繕は、だいたいいくらかかりますか?

A. 30戸規模のマンションで総額3,500万〜5,000万円というレンジが一般的で、うち仮設足場が15〜25%を占めます。外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、屋上防水は5,000〜8,000円/㎡が目安です。ただし中野区は狭小地・隣地近接の物件が多く、仮設費が想定より上振れしやすい地域です。概算のお見積りは無料でお出しできますので、明誠のお問い合わせフォームからご連絡ください。

Q. 賃貸マンションのオーナーでも、これらの窓口は使えますか?

A. 窓口によります。土地建物無料相談会(中野区内に土地建物を所有)、すまいのリフォーム相談、専門相談の不動産・登記・税務相談は、賃貸オーナーでも使えます。一方、東京都のマンションアドバイザー無料派遣とマンション管理士無料派遣は分譲マンションの管理組合が対象ですので、賃貸物件は対象外です。賃貸物件の収支を踏まえた修繕の考え方はオーナー向けサービスページにまとめています。工法の技術的な比較はロープアクセスドットコムもあわせてご覧ください。


中野区の管理組合・オーナーが、今月やるべき3つのこと

1. 10月23日までに、土地建物無料相談会(10月29日開催分)を予約する

司法書士坂本洋事務所(03-3385-8523)へ電話を1本。建築士・宅建業者・土地家屋調査士・司法書士が揃う場で、30分使えます。写真5枚を忘れずに。

2. 住宅課に「うちは要届出マンションか」を確認する

住宅課住宅政策係(03-3228-5564)へ。昭和58年12月31日以前に新築、居住用6戸以上なら該当します。届出が受理されていれば、東京都の専門家派遣が最低1回、管理不全の兆候があれば5回まで無料で使えます。

3. 今週の金曜、区役所1階に寄ってみる

すまいのリフォーム相談は予約不要、毎週金曜10時〜16時。理事会で議論が止まっているなら、まずここで区内の建設事業者に一般論を聞いてみる。それだけでも、次の一手が見えてくることがあります。


中野区は、道が狭く、建物が近く、そのぶん工事の条件が厳しい区です。だからこそ、判断材料を無料で集められる窓口の価値が大きい。9つも用意されているのに、ほとんど使われないまま年度が終わってしまうのは、あまりにもったいないと思うのです。

冒頭の野方のオーナーさまは、結局この秋に区の土地建物無料相談会と、東京都のアドバイザー派遣の両方を使われました。そのうえで「足場を前提にしない選択肢も聞かせてほしい」とご連絡をいただきました。私はその順番が、正しいと思っています。


出典・参考資料


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月19日時点で公表されている中野区および東京都・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特に、中野区「分譲マンション支援」ページは執筆時点で掲載日の確認ができず、中野区「マンション管理計画認定制度」ページの更新日は2024年3月26日、「住宅課」ページの更新日は2024年6月24日であり、令和8年度の運用や連絡先に変更が加えられている可能性があります。また、東京都のマンション管理士無料派遣は募集数に達し次第締め切られます。実際に申請される前に、必ず中野区 都市基盤部 住宅課 住宅政策係(03-3228-5564)および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の建物に対する診断・助言ではありません。工法の適否や費用は、現地調査のうえで判断する必要があります。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月19日

渋谷区の管理組合が無料で使える相談・派遣10選|マンション相談は毎月第3金曜・区役所8階(次は10月16日・申込10月1日から)、管理士派遣は年度内4回まで無料【令和8年度版】

2026年9月19日 更新

「本間さん、うちは28戸しかないんです。管理会社に相談しても、なんだか後回しにされている気がしてね」

今年の夏、幡ヶ谷のマンションの理事長さまから、そう伺いました。築29年、28戸。1回目の大規模修繕から14年が経ち、外壁のタイルが数か所浮いているのは分かっている。でも、次に何をすればいいのかが分からない、というご相談でした。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンションやビル、ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組んで建物を囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も自分の足で踏んできた人間です。

その理事長さまにお伝えしたのは、ひとつだけでした。見積りを取る前に、渋谷区と東京都の無料の窓口を先に使いましょう、と。

渋谷区は、23区のなかでも小規模マンションの比率が高い区です。代官山・恵比寿・松濤のような住宅地にも、幡ヶ谷・笹塚・初台のような沿線エリアにも、30戸前後の分譲マンションが数多く建っています。戸数が少ないということは、修繕積立金の総額も小さく、理事のなり手も限られるということです。だからこそ、外部の専門家を無料で呼べる制度の価値が、大きい区でもあります。

今日は、渋谷区のマンション管理組合とビルオーナーさまが、お金をかけずに使える相談・派遣を10個、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。


結論:渋谷区で無料で使える相談・派遣は10ある

先に一覧でお示しします。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用・回数 申込先
1 渋谷区 マンション管理無料相談会 マンション管理士(東京都マンション管理士会 東京山手支部) 無料/毎月第3金曜・先着2組・年度内3回まで 住宅政策課 03-3463-3548
2 渋谷区 分譲マンション管理士派遣制度 マンション管理士 無料/1回2時間・年度内4回まで 住宅政策課 03-3463-3548
3 渋谷区 住宅相談会(庁内相談会) 一級建築士 無料/45分・先着6組 LINEまたは 03-3463-3548
4 渋谷区 専門家セミナー(6月・11月) 外部専門家 無料/年2回 住宅政策課 03-3463-3548
5 渋谷区 管理組合交流会(2月) ― 無料/年1回 住宅政策課 03-3463-3548
6 渋谷区 法律相談 弁護士 無料/40分・年度内3回まで 渋谷区コールセンター 03-3463-1211
7 渋谷区 消費者相談コーナー 消費生活相談員 無料/月〜金 9時30分〜16時 03-3406-7644
8 東京都 分譲マンション総合相談窓口 マンション管理士 無料/随時 03-6427-4900
9 東京都 マンションアドバイザー無料派遣 マンション管理士・建築士等 要届出マンションは1回、管理不全の兆候ありは5回まで無料 03-5989-1453
10 東京都 マンション管理士無料派遣(防災・認知症) マンション管理士 各テーマ2回まで無料/令和9年2月26日まで 東京都マンション管理士会HP

このうち 1・2・3 は渋谷区が独自に持っている窓口で、区内の管理組合なら真っ先に検討すべきものです。8・9・10 は東京都の制度で、渋谷区の窓口と併用できます。

私が現場で一番もったいないと感じるのは、この10個を1つも使わないまま、いきなり工事業者に見積りを頼んでしまう組合が多いことです。順番が逆なのです。


渋谷区の管理組合が最初に使うべき「マンション管理無料相談会」

渋谷区の相談窓口のなかで、管理組合にとって入口になるのがこれです。

開催は毎月第3金曜、先着2組

渋谷区は東京都マンション管理士会 東京山手支部の協力を得て、毎月第3金曜日にマンション管理無料相談会を開いています(出典:渋谷区「マンション管理無料相談会」/2026年4月1日更新)。

令和8年度の残りの日程は次のとおりです。

開催日 時間 場所 申込期間
10月16日(金) 14時〜16時 区役所本庁舎8階 810会議室 10月1日〜9日
11月20日(金) 15時30分〜16時30分 区役所本庁舎8階 813-1.2.3会議室 11月4日〜13日
12月18日(金) 14時〜16時 区役所本庁舎8階 810会議室 12月1日〜11日
令和9年1月15日(金) 14時〜16時 区役所本庁舎8階 810会議室 1月4日〜8日
令和9年2月19日(金) 15時30分〜16時30分 区役所本庁舎8階 813-1.2.3会議室 2月1日〜12日
令和9年3月19日(金) 14時〜16時 区役所本庁舎8階 811-2会議室 3月1日〜12日

対象は区内の分譲マンション管理組合の役員および区分所有者で、1組あたり2人以内。定員は各開催日先着2組まで。1組につき原則として年度内3回までです。

先着2組というのは、正直に申し上げてかなり狭い枠です。申込期間は開催の1〜2週間前しか開いていませんので、次の10月16日を狙うなら、10月1日の朝に電話するくらいの構えでちょうどいいと思います。申込先は住宅政策課住環境整備係(電話:03-3463-3548)です。

11月20日と2月19日は中身が違う

一覧をよく見ると、11月20日と2月19日だけ時間が15時30分〜16時30分と短くなっています。これは渋谷区が、6月と11月に専門家によるセミナー、2月に交流会を組み合わせているためです。

セミナーは、他のマンションがどう考えているかを知る機会になります。交流会はさらに直接的で、区内の他の管理組合の役員と情報交換ができます。

私は、これを軽く見ないほうがいいと考えています。私が理事長さまからよく伺うのは「うちだけがおかしいのかと思っていた」という言葉です。修繕積立金が足りない、理事のなり手がいない、管理会社の提案が妥当か分からない。こうした悩みは、ほとんどの組合が同じように抱えています。それを知るだけで、判断が落ち着きます。

持っていくと話が早くなる資料

渋谷区は、相談内容によって用意すると良い資料を具体的に挙げています。管理規約、総会議案書・議事録、理事会の議事録、管理委託契約書、滞納記録、不具合箇所の写真、長期修繕計画書、修繕工事記録です。

30分から2時間の枠で、資料なしに口頭だけで説明すると、状況の共有だけで時間が終わります。不具合箇所の写真は、特に効きます。 スマートフォンで撮った写真で構いません。外壁のひび割れ、タイルの浮き、屋上の水たまり。5枚もあれば、専門家は建物の状態をかなり正確に推測できます。

なお、この相談会では事業者の紹介、居住者間や近隣とのトラブルの解決・権利調整は対応していません。そこは別の窓口(後述の法律相談)の役割です。


専門家に来てもらう「分譲マンション管理士派遣制度」

相談会が「区役所に行く」制度なら、こちらは「マンションに来てもらう」制度です。渋谷区の制度のなかで、私が最も価値が高いと考えているのがこれです。

1回2時間、年度内4回まで、費用は無料

渋谷区は、マンション管理士を管理組合の会合などに無料で派遣しています(出典:渋谷区「分譲マンション管理士派遣制度」/2026年4月1日更新)。

  • 相談時間:1回につき2時間
  • 費用:無料(ただし配付物の印刷費や登記簿謄本の取得など一定の実費が発生する場合あり)
  • 回数:同一マンションで年度内4回まで

年度内4回、1回2時間ということは、合計8時間ぶんの専門家の時間を無償で使えるということです。マンション管理士に個別に業務委託すれば、相応の費用がかかります。それが4回無料というのは、区の制度としてはかなり手厚いほうです。

対象になる7つの要件

ただし、誰でも使えるわけではありません。次の7つのうちいずれか1つ以上に該当する区内分譲マンションの管理組合が対象です。

  1. 管理組合がないこと
  2. 管理者などが定められていないこと
  3. 管理規約が存在しない、または必要に応じた改正がされていないこと
  4. 集会(総会)が年1回以上開催されていないこと
  5. 管理費と修繕積立金の区分経理、適正管理がされていないこと
  6. 適宜適切な維持修繕を行うための修繕積立金が積み立てられていないこと
  7. 築20年以上のマンションで、過去に大規模修繕工事(外壁塗装など工事、床防水工事および屋根防水工事)を実施していないこと

私が特に申し上げたいのは7番目です。築20年以上で一度も大規模修繕をしていないというだけで、この制度の対象になります。渋谷区の築古マンションには、該当する物件が相当数あるはずです。

また、管理組合設立を自主的に行おうとする区分所有者の団体も申請できます。管理組合そのものが機能していない建物にも、入口が用意されているということです。

支援の対象になること・ならないこと

ここは誤解が多いところなので、正確に整理します。

支援を受けられること

  • 意見の整理およびアドバイス
  • 対応策などの資料作成
  • 関係資料の収集および提供
  • 管理組合の総会および理事会に係る開催支援

支援の対象外

  • 耐震診断、測定器などを使用した建物の精密測定、劣化診断・調査
  • 大規模修繕計画、長期修繕計画の作成
  • 修繕工事などの設計
  • 管理規約の作成
  • 見積書などの比較検討
  • 工事および維持管理業務の受注および発注並びに業者の紹介
  • 居住者間および居住者・近隣住民間の紛争解決および権利調整

正直に申し上げます。「劣化診断」も「長期修繕計画の作成」も「見積書の比較検討」も、この制度では対象外です。

つまり、外壁の状態を実際に測ってもらったり、修繕費がいくらかかるかを計算してもらったりすることはできません。できるのは、理事会や総会の場で「今どういう状態で、次に何を検討すべきか」を整理してもらうことです。

私はこれを、限界ではなく役割分担だと考えています。合意形成と情報整理はマンション管理士、建物の物理的な状態の診断は施工会社や設計事務所。この線引きがはっきりしているほうが、組合にとってはむしろ安全です。中立の立場の人に「業者を紹介してもらう」形だと、その中立性が疑わしくなりますから。

申請は希望日の3週間前まで、理事長名で

手続きの流れは4段階です。

  1. 申請:派遣を希望する3週間前までに「分譲マンション管理士派遣事業マンション管理士派遣申請書」を住宅政策課の窓口へ持参または郵送
  2. 派遣決定の通知:承認されると決定通知書が届く
  3. 派遣:マンション管理士が訪問してアドバイス
  4. 報告:終了後、派遣結果報告書を区へ提出

申請は理事長名です。管理組合設立前で理事長名での申請が困難な場合は、設立を自主的に行おうとする団体の長が申請できます。

ひとつ注意点があります。区の案内には「令和9年2月以降に申請される場合は、事業スケジュールの都合により受付できない場合がございます」と明記されています。年度末に駆け込もうとすると間に合わない可能性があるということです。今が9月ですから、動くなら秋のうちです。

申請書と案内チラシは区の公式ページからダウンロードできます。


建築士に建物のことを聞ける「住宅相談会(庁内相談会)」

マンション管理士は管理・運営の専門家ですが、建物そのものの話をしたいときは、建築士のいる窓口が別にあります。

渋谷区は東京土建一般労働組合渋谷支部との共催で、「建築士」資格を有した相談員による無料相談会を開いています(出典:渋谷区「住宅相談会(庁内相談会)」/2026年3月11日更新)。

  • 相談時間:1組につき45分(13時30分〜/14時20分〜/15時10分〜の3枠)
  • 場所:区役所本庁舎1階ロビースペース
  • 定員:各開催日先着6組(空きがあれば当日参加も可能)
  • 対象:区内在住の人

令和8年度の残りの開催日は、10月21日(申込期間8月19日〜10月20日)、11月18日(10月22日〜11月17日)、12月16日(10月22日〜12月15日) です。

先ほどのマンション管理無料相談会と比べると、定員が6組と多く、申込期間も長いのが特徴です。空きがあれば当日参加もできます。ハードルはこちらのほうが低いということです。

申込はLINE(渋谷区公式アカウント @shibuyacity を友だち登録後、住宅相談会予約画面から)か、住宅政策課住環境整備係への電話(03-3463-3548)です。

私がこの窓口をお勧めするのは、「外壁の写真を見せて、これは急ぐのか急がないのかを聞く」という使い方です。45分あれば十分に話せます。管理会社から「そろそろ大規模修繕を」と言われたけれど本当に今なのか、という判断に迷っている段階で、利害関係のない建築士の意見を聞けるのは大きいと思います。


滞納・トラブルに使える「法律相談」と「消費者相談」

管理組合の悩みは、建物のことばかりではありません。管理費の滞納、区分所有者間のトラブル、リフォーム工事をめぐる業者との紛争。こうしたときの窓口も、渋谷区は無料で持っています。

弁護士による法律相談(毎週月・木)

渋谷区は、毎週月曜日・木曜日(月曜が祝日・休日の場合は翌火曜に振替)に弁護士による法律相談を行っています(出典:渋谷区「法律相談」/2026年4月21日更新)。

  • 相談時間:40分間
  • 相談枠:13時〜、13時45分〜、14時30分〜、15時25分〜、16時10分〜の5枠
  • 定員:月曜は各枠2人(合計10人)、木曜は各枠3人(合計15人)
  • 対象:区在住または在勤の人
  • 回数:おひとりにつき年度内3回まで
  • 電話相談も可

相談内容は相続関係、離婚、土地、家屋、相隣関係、金銭問題など。管理費滞納の督促や、区分所有者間の権利関係の整理は、ここに含まれます。

予約は3つの経路があります。渋谷区公式LINE、区民相談WEBメニュー、または渋谷区コールセンター(電話:03-3463-1211)。いずれも先着順です。

ひとつ、押さえておくべき運用ルールがあります。予約枠は毎月第3火曜日の9時から、翌月1か月分が開放されます。 つまり10月分の枠は9月15日(第3火曜)の9時に開いており、11月分は10月20日の9時に開きます。人気の枠は早く埋まりますので、この日時を理事会の誰かがカレンダーに入れておくと確実です。

なお、当日朝9時以降のキャンセルや日程変更は、相談実施1回分としてカウントされます。年度内3回という枠を無駄にしないよう、ご注意ください。

詳しい利用方法は区が公開しているR8年度区民相談のしおり(PDF)にまとまっています。

消費者相談コーナー(業者トラブル)

工事業者との契約トラブル、不当な請求、強引な訪問販売。こうした消費生活に関するトラブルは、消費者相談コーナーが窓口です(出典:渋谷区「消費者相談」/2025年10月1日更新)。

  • 相談専用電話:03-3406-7644
  • 相談日時:月曜日〜金曜日(祝休日・年末年始を除く)9時30分〜16時
  • 対象:区内在住・在勤・在学の人
  • 相談方法:電話または来所(まずは電話で問い合わせ)

ここで重要な制約があります。消費者相談コーナーは「消費者からの相談のみを受け付けています。事業者や個人事業主からの相談はお受けできません」と明記されています。

管理組合は法人格の有無によって扱いが変わり得ますので、組合として相談したい場合は、まず電話で「管理組合の立場だが受け付けてもらえるか」を確認するのが確実です。区分所有者個人としてのご相談であれば、問題なく受け付けてもらえます。

私が現場で見てきたなかで、いちばん多いトラブルは「点検に来た業者に、その場で屋上防水の緊急工事を勧められて契約してしまった」というパターンです。屋上に上がって写真を見せられると、素人目には確かに緊急に見えます。ですが、本当に急ぐ劣化かどうかは、複数の目で確認してから判断すべきです。 契約直後であればクーリング・オフが使える場合もありますので、迷ったらすぐ03-3406-7644に電話してください。


東京都の3制度:区の窓口と併用できる

渋谷区の窓口と並行して、東京都の制度も使えます。ここを知らずに区の窓口だけで終わっている組合が、かなり多いというのが私の実感です。

分譲マンション総合相談窓口(電話1本で聞ける)

公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンターに「分譲マンション総合相談窓口」が置かれています。マンション管理士が、日常の維持管理・再生に関する相談に応じます。

  • 電話:03-6427-4900
  • 受付:月曜日〜金曜日 9時〜17時(土日祝・年末年始休み)
  • メール:mansion-soudan@tokyo-machidukuri.jp
  • FAX:03-6427-4901

相談できる内容は、管理組合の運営、大規模修繕工事の検討や準備、改修や建替えに向けた合意形成のアドバイス、都や区市町村が実施している助成制度の紹介、管理状況届出制度に関する説明などです。

(注:この窓口を案内する渋谷区の該当ページは2023年3月17日更新のため、最新の運用は上記センターに直接ご確認ください。)

予約不要で電話1本、というのが最大の利点です。区の相談会は先着2組ですが、こちらは平日いつでもつながります。まず何から手をつけるべきか分からないという段階なら、ここが一番早い。

マンションアドバイザー無料派遣(要届出マンション向け)

こちらは、東京都の条例に基づく管理状況届出制度とセットになった制度です。

「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」により、昭和58(1983)年12月31日以前に新築された、居住用の独立部分が6戸以上の分譲マンションは、管理状況の届出が義務付けられています(要届出マンション)。渋谷区の場合、届出書の提出先は渋谷区です。

この届出が受理されると、マンションアドバイザー派遣を無料で使えます(出典:東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」)。

区分 無料回数
届出が受理された要届出マンション 1回まで無料
うち管理不全の兆候があるマンション 5回まで無料

各コース1回あたり2時間程度。コースは講座編(A-1〜A-6)と相談編(B-1〜B-6)に分かれており、大規模修繕に直結するのは次のあたりです。

  • A-2:長期修繕計画作成ガイドライン活用の手引きの解説
  • A-4:計画修繕工事の進め方
  • B-4:修繕計画の作成や修繕積立金等の設定に関すること
  • B-5①:修繕工事検討段階での相談(建物・設備等の劣化状況の調査・診断、修繕工事の検討組織、修繕工事の方式等)
  • B-5②:修繕工事準備段階での相談(修繕工事の内容、業者選定の仕方、合意形成等)

B-5①とB-5②は、渋谷区の管理士派遣では対象外だった「修繕工事の検討」を正面から扱えます。 ここが区の制度との大きな違いです。

申込は申込書に記入のうえ、FAX・メール・郵送で東京都防災・建築まちづくりセンター(まちづくり推進課/TEL 03-5989-1453)へ。申込後1〜2週間程度でアドバイザーから日程調整の連絡が入ります。

Cコース(支援編)の派遣費用助成

さらに、管理不全の兆候があるマンション向けに、Cコース(支援編)の派遣料助成があります(出典:東京都マンションポータルサイト「マンション管理アドバイザーCコース(支援編)派遣費用の助成」)。

対象は、①都マンション管理条例に基づく要届出マンション、②届出が受理されたマンション、③管理不全の兆候があるマンション──のすべてに該当する分譲マンションです。

助成内容は次のとおりです。

  • 「状況確認・課題整理、コース案内」と「総会立会等」:各1回まで全額助成
  • 「管理組合運営体制の整備に関すること」「長期修繕計画見直し案及び修繕積立金見直し案に関すること」など9コース:合計2回まで半額助成

「管理不全の兆候」の判定は、管理組合の有無、管理者等の有無、管理規約の有無、年1回以上の総会開催の有無、管理費の有無、修繕積立金の有無、修繕の計画的な実施(大規模な修繕工事)の有無──これらのいずれかが「ない」「いない」と回答したマンション、という基準です。

大規模修繕を計画的に実施していない、というだけで該当し得るということです。お問い合わせは東京都防災・建築まちづくりセンター まちづくり推進課(03-5989-1453/平日9時〜17時)へ。

マンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)

東京都が令和5年度から実施している事業で、令和8年度も継続しています(出典:東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」)。

  • 対象:都内に所在するマンション管理組合(築年数や届出の有無は問わない)
  • 回数:1管理組合につき、防災力向上と認知症対応それぞれ2回まで(無料)
  • 受付期間:令和8年6月23日(火)から令和9年2月26日(金)まで
  • 申込:東京都マンション管理士会のHPから

注意点が2つあります。ひとつは、申込が募集数(防災力向上・認知症対応 合わせて160件)に達した時点で新規受付が締め切られること。都内全体で160件ですから、決して多い枠ではありません。

もうひとつは、派遣回数は通算でカウントされること。令和5〜7年度に本事業で派遣を受けている場合、その回数も各テーマ2回の上限に含まれます。過去に使ったことがある組合は、残り回数を確認してから申し込んでください。

お問い合わせは東京都住宅政策本部 民間住宅部 マンション課 マンション管理担当(03-5320-5004)です。


国の窓口:(公財)マンション管理センターの無料電話相談

区でも都でもない、国の指定を受けた窓口もあります。

公益財団法人マンション管理センターは、マンション管理適正化法に基づく「マンション管理適正化推進センター」の指定を受けている唯一の団体です(出典:マンション管理センター「相談窓口について」)。

相談内容 電話番号
管理組合運営、管理規約等のご相談 03-3222-1517
建物・設備の維持管理のご相談 03-3222-1519
  • 受付:月曜日〜金曜日(祝日・年末年始を除く)9時30分〜17時
  • 費用:無料
  • 1件あたりの目安:15分前後

メールでの相談も受け付けています(回答は口頭)。面談は要予約です。

「公平・中立的な立場でアドバイス」を明示しており、特定の弁護士や企業を紹介することはしないと明記されています。だからこそ信頼できる、という見方もできます。

ただし制約もあります。専門家レベルの法律相談や税務相談、修繕等に関する個別具体的なアドバイスは行っていません。また、書面での回答はなく、個別事案の適法性の判断もしません。15分という時間も踏まえると、「一般論として、この進め方は妥当か」を確認する窓口と考えるのが実態に近いと思います。

なお、賃貸マンションに関する相談はこのセンターの担当外で、(公財)日本賃貸住宅管理協会が窓口になります。


渋谷区で大規模修繕を検討するとき、無料相談では埋まらない部分

ここまで10個の窓口をご紹介してきました。ここからが本題です。

無料の相談窓口は、「何を検討すべきか」を整理するのには非常に有効です。しかし、「実際にいくらかかるか」「この建物ならどの工法が最適か」という問いには、原理的に答えられません。渋谷区の管理士派遣が劣化診断と見積比較を対象外にしているのは、そういう理由です。

そして、この最後の部分で、渋谷区の建物には特有の事情があります。

渋谷区の狭小・近接立地では、足場が組みにくい

渋谷区の分譲マンションは、敷地に余裕のない物件が多いのが特徴です。隣地との離隔が1メートルを切っている、前面道路が細い、1階に店舗が入っていてシャッターを塞げない。私が実際に見てきた渋谷区の現場でも、こうした条件は珍しくありませんでした。

こういう建物で足場を組もうとすると、道路使用許可の取得、隣地所有者との協議、店舗の営業補償といった、工事費とは別のコストと時間が発生します。

足場費とロープアクセスの差額は、100万円規模になることがある

具体的な数字でお示しします。10階建て・外周80m・工期3か月という条件のマンションで、仮設足場を組む場合の費用はおよそ168万円。同じ範囲をロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が懸垂下降しながら施工する無足場工法)で施工した場合、およそ59万円。差額は109万円という試算になります。

30戸規模のマンションの大規模修繕は、総額3,500万〜5,000万円というレンジが一般的で、そのうち仮設足場が15〜25%を占めます。仮設の部分を圧縮できれば、その分を外壁や防水の品質に回せる、という考え方ができます。

工種別の㎡単価の目安も挙げておきます。外壁塗装3,500〜4,500円/㎡、打診調査250〜500円/㎡、屋上防水5,000〜8,000円/㎡。いずれも目安のレンジであり、劣化状況・足場条件・数量によって大きく変動します。実際の金額は現地を見なければ確定しません。

工法の技術的な背景を詳しく知りたい方は、同業者・技術者向けにまとめている姉妹サイトロープアクセスドットコムをご覧ください。ロープの二重化や墜落制止用器具の運用など、安全管理の実務をそのまま公開しています。

3つの工法から選べるということ

私がこの仕事で一番大切にしているのは、建物に合った工法を選ぶことです。

株式会社明誠は、通常の仮設足場工法、ロープアクセス工法(無足場工法)、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法──この3つを自社で提案できます。日本では数少ない体制だと思っています。

なぜ3つ持っているかというと、どの工法にも向き不向きがあるからです。ロープアクセスは万能ではありません。バルコニー内部の細かい作業や、大量の資材を上げ下ろしする工種では、足場のほうが効率的です。逆に、隣地に余裕がない高層部や、店舗の営業を止められない建物では、ロープアクセスが圧倒的に有利になります。

だから私は、部位ごとに分けるハイブリッド工法を提案することが多いのです。低層部と共用廊下は足場、高層部の外壁とシーリングはロープアクセス。これで総額を抑えつつ、品質も工期も守れます。詳しくは明誠のロープアクセス工法の技術詳細と大規模修繕の料金の考え方にまとめています。

数字も申し上げます。株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工し、安全管理の考え方は明誠の安全管理への取り組みに公開しています。

実際の施工事例は施工実績ページ(約6,000棟)からご覧いただけます。渋谷区と条件の近い、狭小地・隣地近接の物件の事例もあります。


相談に行く前に用意する「3点セット」

どの窓口に行くにしても、これだけは揃えておいてください。私が理事長さまにいつもお伝えしている3点です。

1. 総会議事録(直近3年分)

管理組合として何を決めてきたかが分かります。大規模修繕の検討が議題に上がった記録があるかどうかで、話の出発点が変わります。

2. 長期修繕計画書(あれば最新版)

なければ「ない」で構いません。むしろ、ないこと自体が渋谷区の管理士派遣制度の対象要件に該当し得ます。 無理に取り繕う必要はありません。

3. 不具合箇所の写真(スマートフォンで5枚)

外壁のひび割れ、タイルの浮き、屋上の水たまり、共用廊下の鉄部のサビ、エントランスの床の欠け。手が届く範囲で撮れるもので十分です。

この3つを1つのクリアファイルか、PDFにまとめておく。それだけで、45分や2時間という限られた相談枠を、状況説明ではなく中身の議論に使えます。

管理委託契約書と滞納記録も、内容によっては持参すると話が早くなります。渋谷区の相談会は、用意すべき資料を公式ページに明記していますので、申込の電話で「何を持っていけばいいか」を直接確認するのが確実です。


よくあるご質問

Q. 渋谷区のマンション管理無料相談会は、区分所有者個人でも申し込めますか?

A. 申し込めます。対象は「区内の分譲マンション管理組合役員および区分所有者」で1組あたり2人以内です。理事でなくても構いません。ただし定員が各回先着2組と少ないため、申込期間の初日に電話(03-3463-3548)するのが確実です。

Q. 分譲マンション管理士派遣制度で、大規模修繕の見積りをチェックしてもらえますか?

A. できません。渋谷区は支援の対象外として「見積書などの比較検討」「大規模修繕計画、長期修繕計画の作成」「劣化診断・調査」を明記しています。見積りの妥当性を確認したい場合は、東京都のマンションアドバイザー制度のB-5②コース(修繕工事準備段階での相談/業者選定の仕方、合意形成等)を検討するか、複数の施工会社から相見積りを取るのが現実的です。

Q. 東京都のマンションアドバイザー無料派遣は、どのマンションでも使えますか?

A. 無料になるのは、東京都の管理状況届出制度で届出が受理された要届出マンション(昭和58年12月31日以前に新築、居住用独立部分6戸以上)に限られます。1回まで無料、管理不全の兆候がある場合は5回まで無料です。要届出に該当しないマンションでも制度自体は有料で利用できます。まずは届出の有無を渋谷区住宅政策課(03-3463-3548)にご確認ください。

Q. 東京都のマンション管理士無料派遣(防災・認知症)は、いつまで申し込めますか?

A. 令和8年度の受付期間は令和9年2月26日(金)までです。ただし申込が募集数(防災力向上・認知症対応 合わせて160件)に達した時点で締め切られます。都内全体の枠ですので、年明けまで待たずに動くことをお勧めします。申込は東京都マンション管理士会のHPからです。

Q. 管理費の滞納について、渋谷区の無料相談で対応してもらえますか?

A. 渋谷区の法律相談(弁護士/毎週月・木、40分、年度内3回まで)で「金銭問題」として相談できます。ただし相談会のほうのマンション管理無料相談会は、居住者間の紛争解決や権利調整を対象外としています。督促の一般的な進め方はマンション管理士、法的手続きが視野に入るなら弁護士、と使い分けてください。法律相談の予約枠は毎月第3火曜9時から翌月分が開放されます。

Q. 30戸規模の大規模修繕は、だいたいいくらかかりますか?

A. 総額3,500万〜5,000万円というレンジが一般的です。うち仮設足場が15〜25%を占めます。外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、屋上防水は5,000〜8,000円/㎡が目安ですが、劣化状況と足場条件で大きく変動します。概算のお見積りは無料でお出しできますので、明誠のお問い合わせフォームからご連絡ください。

Q. ロープアクセス工法にすると工期はどれくらい短くなりますか?

A. 足場工法の約60%が目安です。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場工法で3か月かかるところ、ロープアクセス工法なら1.5〜2か月程度。足場の組立・解体に必要な期間がまるごと不要になるためです。居住者の方がバルコニーを使えない期間も、その分短くなります。工法ごとの適用条件はロープアクセスドットコムで技術的に整理しています。

Q. 渋谷区は敷地が狭い物件が多いのですが、足場は組めますか?

A. 隣地との離隔や前面道路の幅によっては、足場の設置に道路使用許可や隣地所有者との協議が必要になり、想定外のコストと期間が発生することがあります。そうした条件の建物こそ、ロープアクセス工法やハイブリッド工法が効きます。管理組合向けサービスページに、ご相談から着工までの流れをまとめています。現地を一度拝見すれば、どの工法が成立するかをその場でお答えできます。


まとめ:今週、渋谷区の管理組合が動けること3つ

長くなりましたので、動くべきことだけ3つに絞ります。

1. 10月1日の朝、マンション管理無料相談会に電話する(10月16日開催分)

申込期間は10月1日から9日まで。定員は先着2組です。区役所本庁舎8階、14時から16時。電話は住宅政策課住環境整備係 03-3463-3548。同じ番号で、10月21日の住宅相談会(建築士・45分・先着6組)も申し込めます。1本の電話で両方押さえるのが効率的です。

2. 管理士派遣制度の7要件に該当するか、理事会で確認する

とくに「築20年以上で、過去に大規模修繕工事(外壁塗装・床防水・屋根防水)を実施していない」に当てはまるなら、年度内4回・1回2時間の派遣を無料で使えます。申請は希望日の3週間前まで、理事長名。令和9年2月以降は受付できない場合があると区が明記していますので、動くなら秋のうちです。

3. 3点セットを1つのファイルにまとめる

総会議事録(直近3年分)・長期修繕計画(あれば)・不具合箇所の写真5枚。次の理事会で、誰が用意するかだけ決めてしまってください。これがあるかないかで、どの窓口でも話の進み方がまるで違います。

渋谷区は、小規模マンションが多いぶん、管理組合の負担が一人ひとりに重くのしかかりやすい区です。だからこそ、無料で外部の専門家を呼べる制度を、遠慮なく使っていただきたい。10個も用意されているのに、ほとんど使われないまま年度が終わってしまうのは、あまりにもったいないと思うのです。

冒頭の幡ヶ谷の理事長さまは、結局この秋に区の相談会と東京都の総合相談窓口の両方を使われました。そのうえで「工法の選択肢だけ聞かせてほしい」とご連絡をいただきました。私はその順番が、正しいと思っています。

10月1日という申込開始日がある以上、次の理事会を待っていると1か月ずれます。1分だけでも、この話題をメールで共有してみてください。工法の選択肢や概算のご相談だけでも、私どもでお力になれることがあります。


出典・参考資料


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月19日時点で公表されている渋谷区および東京都・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特に消費者相談は参照した渋谷区公式ページの更新日が2025年10月1日、分譲マンション総合相談窓口は2023年3月17日であり、令和8年度の運用に変更が加えられている可能性があります。また、東京都のマンション管理士無料派遣は募集数160件に達し次第締め切られ、渋谷区の分譲マンション管理士派遣制度は令和9年2月以降の申請を受け付けられない場合があります。実際に申請される前に、必ず渋谷区 住宅政策課住環境整備係(03-3463-3548)および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月19日

豊島区のマンション漏水・防災対策|河川の洪水想定は高田だけ。残りを決めるのは内水と20か所の擁壁です【大規模修繕2026年度版】

2026年9月19日 更新

豊島区の要町で、築31年の分譲マンションの理事長さまから「地下の機械室が湿っている」とご相談をいただいたことがあります。屋上からの雨漏りを疑って伺ったのですが、屋上は健全でした。原因は、前の年の夏に道路側の雨水桝が詰まり、通路から流れ込んだ水が地下階段の最下段に溜まり、長い時間をかけて壁の打継ぎ目から染みていたことでした。川からは1キロ以上離れています。それでも、水は来るのです。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。

豊島区は、23区のなかでも「川のリスクがきわめて限定的なのに、水のトラブルは普通に起きる区」です。理由ははっきりしていて、豊島区の水害は川があふれる話ではなく、降った雨が行き場を失う話だからです。

今日は、豊島区が公表している最新のハザード資料から逆算して、豊島区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。


結論:豊島区は「河川の洪水想定は高田だけ、残りは内水と擁壁が決める区」です

先に結論から申し上げます。豊島区で大規模修繕の順番を決めるとき、私が最初に確認するのは屋上ではありません。自分の建物が神田川沿いの高田にあるのか、暗渠になった谷筋の低地にあるのか、区内20か所の土砂災害警戒区域に接しているのかです。

豊島区内に「高潮浸水想定区域」はありません。「津波災害警戒区域」「津波災害特別警戒区域」の指定もありません(出典:豊島区「宅地建物取引業者の方へ(ハザードマップの作成状況等)」/更新日 2026年9月15日)。湾岸区で最優先になる塩害・高潮対策は、豊島区ではほぼ考えなくてよいということです。

さらに、区の公式Q&Aにはこう書かれています。洪水(河川の氾濫等)による浸水の表示は、高田1〜3丁目の神田川浸水想定区域のみ。これが豊島区という区の性格を一言で表しています。

立地 該当エリアの例 主なリスク 最優先の対策
神田川沿いの低地 高田1〜3丁目 外水(河川氾濫)+内水 地下・半地下の止水、受電設備の位置、逆流防止
暗渠化した谷筋・駅周辺の低地 池袋・東池袋・雑司が谷・要町・千川方面の谷地形 内水氾濫(下水道の能力超過) 敷地の雨水桝、地下階段の止水、ドライエリア
斜面・擁壁に接する敷地 高田1・2丁目、駒込1丁目ほか区内20か所 擁壁の劣化・がけ崩れ 擁壁の点検と改修、斜面側の排水と外壁

この3類型のどこに当たるかを、区のハザードマップで先に確定させる。それをやらずに「まず屋上防水から」と進めてしまうと、順番を1つ間違えるだけで数百万円が無駄になります。豊島区の理事会でいつも最初にお伝えしているのは、この一点です。


豊島区のハザード資料を1枚で読む

豊島区は、ハザードマップの作成状況を宅建業者向けページで公式に整理しています。管理組合の書類棚に、この表を1枚コピーして貼っておくだけで議論が早くなります。

災害種別 豊島区の作成状況 根拠法 備考
洪水(外水) 作成済 水防法 表示は高田1〜3丁目の神田川浸水想定区域のみ
雨水出水(内水) 令和8年3月に作成済となった 水防法 東京都下水道局が雨水出水浸水想定区域図を公表
高潮 なし 水防法 区内に高潮浸水想定区域はありません
土砂災害 作成済 土砂災害防止法 区内20か所が警戒区域、うち8か所が特別警戒区域
津波 なし 津波防災地域づくり法 区内に津波災害警戒区域の指定はありません

(出典:豊島区「宅地建物取引業者の方へ(ハザードマップの作成状況等)」/更新日 2026年9月15日、豊島区「豊島区土砂災害ハザードマップ」/更新日 2026年6月25日)

想定されている雨は「1時間153ミリ・総雨量690ミリ」

豊島区洪水・内水ハザードマップが前提にしているのは、時間最大雨量153ミリメートル、総雨量690ミリメートルという降雨です。神田川流域、石神井川及び白子川流域、隅田川及び新河岸川流域の3つの浸水想定から構成されています(出典:豊島区「豊島区洪水・内水ハザードマップ」/更新日 2026年9月15日)。

1時間153ミリという数字は、正直に申し上げてピンと来ないと思います。東京の下水道が標準で想定しているのは1時間50ミリ前後です。つまり設計値の3倍の雨を想定した図だ、ということです。

そして豊島区の場合、この3倍の雨が降ったときに問題になるのは、川からあふれた水ではありません。下水道に入りきらなかった雨水が、道路と敷地に溜まるほうです。

豊島区で最も見落とされている一行

区のハザードマップには、PDFの版に関する注記が付いています。豊島区洪水・内水ハザードマップは令和7年1月発行が最新で、令和6年9月発行版から浸水想定区域・雨水出水区域に変更はない、というものです。一方で、令和8年3月に東京都下水道局が水防法に基づく雨水出水浸水想定区域図を公表しています。

つまり、手元のPDFを見ているだけでは、内水の最新の浸水深は分からないということです。神田川洪水浸水想定区域(青色斜線部分)は外水の浸水深で表示されているため、同じ区域の内水の浸水深を知りたい場合は、東京都下水道局の雨水出水浸水想定区域図を別途確認する必要があります。

現場で管理組合の防災資料を見せていただくと、ここを追えている組合はほとんどありません。豊島区でいちばん実務的な差がつくポイントです。


高田1〜3丁目|区内で唯一、河川の洪水想定が示されているエリア

豊島区の南端、神田川に接する高田1〜3丁目が、区内で唯一「河川の氾濫による浸水」が想定されている地区です。ここに建つマンションでは、他の区域とは優先順位がはっきり変わります。

私が高田の物件で最初に見るのは、次の3つです。

  1. 受変電設備・非常用発電機の設置高さ — 地下や1階の低い位置にあると、浸水時に建物全体が停電します。エレベーターも給水ポンプも止まります。国土交通省の建築物における電気設備の浸水対策ガイドラインが、移設・嵩上げ・防水扉の考え方を整理しています
  2. 地下駐車場・地下倉庫のスロープ最頂部 — 道路面より数センチ低いだけで、水は一気に入ります
  3. 排水の逆流経路 — 1階の浴室・洗濯パンからの逆流は、外から水が入るより先に起きることがあります

そして、高田1・2丁目は令和8年6月24日付の東京都告示で、新たに土砂災害警戒区域に指定されました。神田川の谷と、その北側の台地の縁がぶつかる地形だからです。高田のマンションは、水と斜面の両方を同時に抱える、豊島区で最も条件の厳しい立地だと考えています。


池袋と暗渠の谷筋|豊島区の本命は内水氾濫です

豊島区の大部分は武蔵野台地の上にあります。地図で見ると平らです。しかし実際に歩くと、池袋から要町、千川、雑司が谷へ向かう道は、明らかに上り下りがあります。かつて川が流れ、いまは下水道の幹線として地下に入っている谷筋です。

この谷筋の底に建つマンションで、実際によく起きるのが次の症状です。

  • 大雨のあと、1階エントランスの床タイルの目地から水が滲む
  • 地下階段の最下段付近に、乾いても白い跡(エフロレッセンス)が残る
  • 駐輪場やゴミ置き場の床が、雨のたびに数時間だけ水たまりになる
  • 外壁の地際から50センチ程度の高さに、帯状の汚れと塗膜の膨れが出る

いずれも「雨漏り」とは呼ばれません。だから修繕計画に載らない。でも、これを放置すると躯体の鉄筋が錆び、10年後の大規模修繕で爆裂補修として何百万円かの請求書になって返ってきます。

区の浸水実績は、実は公開資料ではありません。豊島区役所本庁舎5階の防災課、または6階の道路整備課の各窓口でのみ閲覧可能で、平成11年から現在までに区が確認した箇所と、区民から報告を受けた箇所が示されています(出典:豊島区「宅地建物取引業者の方へ」)。

ここは強くお勧めしたいところです。理事長さんか管理会社のフロント担当者に、一度だけ区役所に足を運んでもらってください。自分の建物の前の道路が過去に浸水していたかどうかが分かるだけで、修繕の議論の質が変わります。問い合わせは道路整備課道路整備グループ(03-3981-4878)です。


土砂災害20か所・特別警戒8か所|令和8年6月24日に地図が変わりました

豊島区は平坦な区というイメージがありますが、台地の縁には高低差があります。令和8年6月24日付の東京都告示により、高田1・2丁目が土砂災害警戒区域に新規指定、駒込1丁目の土砂災害(特別)警戒区域が一部解除となりました。これにより区内の指定は警戒区域20か所、うち特別警戒区域8か所となっています。

ここで重要な注意点があります。区が配布している豊島区土砂災害ハザードマップのPDFには、この令和8年6月の変更が反映されていません。区の公式ページにも「令和6年9月発行の豊島区土砂災害ハザードマップは、これらの情報が反映されていませんのでご注意ください」と明記されています。

最新の正確な図面は、東京都の土砂災害警戒区域等マップで確認してください。管理組合の防災資料が数年前のPDFのままなら、いま差し替えるべきタイミングです。

擁壁は「大規模修繕の見積書に載らない場所」の筆頭です

土砂災害警戒区域に接する敷地のマンションで、私がいちばん多く見つける不具合が擁壁の水抜き穴の詰まりです。

擁壁には、背面に溜まった水を逃がすための穴が設けられています。この穴が土や落ち葉、根で塞がると、擁壁の裏に水圧がかかります。結果として起きるのは、擁壁のひび割れ・はらみ・傾きと、擁壁に接した建物側の1階躯体への回り込み漏水です。冒頭の要町の事例も、構図としては同じでした。

ところが、大規模修繕の標準的な見積書は「外壁・屋上・鉄部・シーリング」で組まれます。擁壁は外構扱いか、そもそも項目がありません。見積依頼の段階で「擁壁と敷地排水を含む」と明記する。これだけで見落としが防げます。


豊島区のマンションで水が入る5つのルート

現場で見ている範囲で、豊島区の中高層マンションに水が入る経路を優先度順に並べると、こうなります。

順位 侵入ルート 見つけ方 放置した場合のコスト感
1 屋上・塔屋のドレン詰まり ストレーナー(目皿)を外して手で確認 防水層の全面改修で数百万円規模
2 外壁のひび割れ・タイル浮き 打診調査・赤外線・近接目視 爆裂補修に発展すると1か所あたり数万円〜
3 サッシ廻り・手すり付け根のシーリング切れ 目視。指で押して弾力を見る 室内側の内装復旧費が上乗せ
4 バルコニー・開放廊下の排水口 大雨の翌朝に水たまりが残るか 下階住戸への漏水でトラブル化
5 敷地の雨水桝・擁壁の水抜き穴 蓋を開ける。穴に手を当てる 1階・地下の躯体劣化、機械室の被害

このうち1・3・4は、管理員さんか理事の方が今週できる確認です。特別な道具は要りません。2と5は専門業者の領域になりますが、順番としては1・3・4を先に潰してから診断に入ったほうが、原因の切り分けがはるかに正確になります。


打診調査の費用と、足場かロープアクセスかの分かれ目

外壁の状態を把握する打診調査の費用は、1平方メートルあたり250〜500円程度が目安です(物件の形状、足場の要否、タイルか塗装かで変動します)。外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、防水は5,000〜8,000円/㎡程度がひとつのレンジです。いずれも参考値で、実際の見積は建物ごとに大きく変わります。

大規模修繕の総額でいうと、30戸前後のマンションで3,500〜5,000万円程度、そのうち仮設足場が15〜25%を占めます。ここがロープアクセス工法(無足場工法)で圧縮できる部分です。

分かりやすい比較を1つ挙げます。10階建て・外周80メートル・工期3か月の物件で、仮設足場が約168万円かかるケースでも、ロープアクセスであれば約59万円。差額でおよそ109万円が浮く計算になります。これも目安であり、部位や作業量によって変わりますが、桁の感覚はつかんでいただけると思います。

豊島区で私が「ロープアクセスが効く」と判断するのは、次のような条件です。

  • 隣地との離隔がほとんどない — 池袋周辺や要町・東池袋の細街路沿いに多い形です。足場を組む空間そのものがない
  • 1階が店舗・事務所で、足場による営業影響を避けたい — 豊島区は1階テナント併設のマンションが多い区です
  • 補修範囲が限定的 — 全面改修ではなく、漏水箇所の特定と部分補修から始めたい場合
  • 調査だけ先にやりたい — 足場を組まずに打診・撮影だけ先行できるので、理事会の判断材料を安く早く揃えられます

逆に、外壁の全面打診+全面塗装+バルコニー防水を一気にやるなら、足場を組んだほうが総額で安くなることもあります。ハイブリッド工法といって、低層部と共用廊下側は足場、高層部の外壁面はロープアクセス、という組み合わせが最適解になるケースも豊島区では珍しくありません。工法そのものの技術的な背景は、ロープアクセスドットコムの技術解説で整理しています。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテル大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。安全管理の考え方は明誠の安全管理への取り組みに、費用の考え方は大規模修繕の料金の考え方にまとめています。


豊島区で使える助成制度(令和8年度)

豊島区には、水と斜面に関係する管理組合向けの制度がいくつかあります。現行年度の情報を整理します。

① 分譲マンション計画修繕調査費助成

漏水の原因を特定するための劣化診断に、そのまま使える制度です。

項目 内容
助成額 計画修繕調査に要する費用の2分の1(上限20万円)
対象 建築後8年以上を経過した分譲マンションの管理組合
要件 管理規約が整備されている/集会で調査実施の決議がなされている/過去10年以内に同助成を受けていない
対象調査 外壁(塗装・タイル)、防水(屋上・ルーフバルコニー・開放廊下・屋外階段)、鉄部塗装、外構、給排水・電気・消防設備、エレベーター、機械式駐車場
令和8年度の受付 4月1日から開始。予算の範囲内で、超過した場合は受付終了
重要な注意 申請は調査の契約締結前。調査完了は年度内のものが対象

(出典:豊島区「分譲マンション計画修繕調査費助成」/更新日 2026年3月10日)

この制度でいちばん多い失敗は、先に調査業者と契約してしまうことです。契約後の申請は対象外になります。理事会で「まず見積を取って、業者を決めてから区に相談」と進めると、そこで詰みます。順番は、事前相談(住宅・マンション課マンショングループ 03-3981-1385)→ 申請 → 承認通知 → 契約・着手、です。

対象調査に外構が含まれている点も見逃せません。前述の敷地排水や擁壁まわりを診断範囲に入れておけば、豊島区の内水リスクにきちんと届く調査になります。

② 擁壁等対策工事等助成・擁壁等専門家派遣(土砂災害警戒区域内)

土砂災害警戒区域内または特別警戒区域内の急傾斜地にある擁壁・がけについて、補強設計等と対策工事に助成があります。対象となるのは、耐震診断で崩落・倒壊のおそれがあると判断された擁壁等で、擁壁の下端から高さの2倍以内、または上端から水平距離10メートル以内に建築物があること。補強設計・対策工事は原則として特別警戒区域の指定を解除できる水準であることが求められます。

あわせて擁壁等専門家派遣があります。1回の派遣につき専門家1名、2時間以内、同一の擁壁につき2回まで。擁壁の安全性の相談、耐震診断・補強設計・対策工事の相談、公的支援の検討まで見てもらえます。

管理組合として使う場合の実務ポイントを1つ。申請書類には、対象地内の擁壁が区分所有建物の敷地に存する場合で、申請者が管理組合の代表者以外のときは、区分所有者全員の承諾書が必要と定められています。逆に言えば、理事長名で申請すればこの書類が不要ということです。ここを知らずに進めて止まる組合が実際にあります。

(出典:豊島区「土砂災害警戒区域内における豊島区擁壁等対策工事等助成について」、豊島区「土砂災害警戒区域内における豊島区擁壁等専門家派遣」)

なお、この2つの制度のページは最終更新日が2025年3月であり、令和8年度の助成額・予算枠・受付期間については区ホームページ上で現行年度の記載が確認できませんでした。申請を検討される場合は、建築課構造審査グループ(03-3981-0614)へ令和8年度の運用を必ずご確認ください。


豊島区の管理組合が今週できる4つの確認

大がかりな話の前に、費用ゼロでできることから並べます。

  1. ハザードマップの版を確認する — 土砂災害ハザードマップのPDFは令和6年9月発行が最新で、令和8年6月24日の指定変更は反映されていません。高田・駒込周辺の組合は東京都の土砂災害警戒区域等マップで現況を確認してください
  2. 内水の浸水深を都の図で確認する — 区のPDFだけでは分かりません。東京都下水道局の雨水出水浸水想定区域図を見てください
  3. 区役所で過去の浸水実績を閲覧する — 本庁舎5階の防災課、または6階の道路整備課の窓口のみで閲覧できます。自分の建物の前の道路が過去に浸水していたかが分かります
  4. 屋上ドレン・バルコニー排水口・敷地の雨水桝・擁壁の水抜き穴を、実物で見る — 点検記録の紙ではなく、現物です。台風期のいまがいちばん適した時期です

この4つを終えてから診断や見積の話に進むと、業者への発注内容が具体的になり、結果として金額も下がります。順番の問題です。


よくあるご質問

Q. 豊島区は川から離れているので、水害の心配はいらないのでは?

A. 河川の氾濫(外水)による浸水想定が示されているのは高田1〜3丁目だけですが、雨水出水(内水)の想定は令和8年3月に水防法に基づいて作成済となっています。豊島区で実際に多いのは、下水道に入りきらない雨が道路と敷地に溜まるタイプの浸水です。川からの距離だけで判断しないでください。

Q. 漏水の原因調査はいくらくらいかかりますか?

A. 調査範囲によりますが、打診調査は1平方メートルあたり250〜500円程度が目安です。豊島区の分譲マンションであれば、計画修繕調査費助成で費用の2分の1・上限20万円の助成が使えます(令和8年度は4月1日受付開始・予算の範囲内)。無料で概算のお見積りをお出しできますので、まずはご相談ください。

Q. 足場を組まずに外壁を調べられますか?

A. できます。ロープアクセス工法なら足場を組まずに打診・近接目視・撮影まで行えます。隣地と離隔がない物件や、1階に店舗が入っていて営業影響を避けたい物件では特に有効です。詳細はロープアクセス工法のページをご覧ください。

Q. 工期はどれくらい変わりますか?

A. ロープアクセス工法なら足場工法の約60%の工期が目安です。10階建て・外周80メートルのマンションであれば、足場で3か月のところ、ロープアクセスで1.5〜2か月程度という感覚です。作業量と部位によって変動します。

Q. 擁壁の調査も大規模修繕に含められますか?

A. 含められます。ただし標準的な見積書では調査範囲から外れていることが多いので、見積依頼の段階で「擁壁と敷地排水を含む」と明記してください。豊島区の計画修繕調査費助成も対象調査に外構を含んでいます。

Q. 土砂災害警戒区域に指定されたら、何かしなければいけませんか?

A. 指定そのものが直ちに工事を義務づけるものではありません。ただし擁壁の安全性は確認しておくべきです。豊島区には擁壁等専門家派遣があり、専門家1名・2時間以内・同一擁壁につき2回まで相談できます。令和8年度の運用は建築課構造審査グループ(03-3981-0614)へご確認ください。

Q. 台風のあと、まず何を見ればいいですか?

A. 屋上ドレンのストレーナー(落ち葉よけの目皿)、バルコニー排水口、敷地の雨水桝、擁壁の水抜き穴の4か所です。この詰まりを取るだけで、次の大雨での漏水リスクはかなり下がります。管理員さんに依頼できる範囲の作業です。

Q. 賃貸マンションのオーナーでも相談できますか?

A. できます。むしろ収益物件では、漏水を1件起こすと原状回復費と空室期間の両方が効いてきます。資産価値維持の観点からの考え方はオーナー向けの提供価値にまとめています。漏水対応そのものについては漏水調査・補修のページもご覧ください。


まとめ:今週、豊島区の理事会で動けること3つ

  1. ハザード資料を最新版に差し替える — 土砂災害の指定は令和8年6月24日の都告示で変わっています。区配布のPDFは未反映です
  2. 内水の想定を都の図で確認する — 豊島区の水害リスクの本体は内水です。区のPDFだけでは浸水深が分かりません
  3. 屋上ドレン・バルコニー排水・雨水桝・擁壁の水抜き穴を実物で確認する — 費用ゼロで、効果がいちばん確実な作業です

豊島区は、高潮も津波もなく、河川の洪水想定も高田1〜3丁目に限られる区です。リスクの総量で言えば、23区のなかでは軽いほうだと思います。だからこそ、残った2つ——内水と擁壁——に的を絞れば、少ない投資で守り切れる区でもあります。「23区の平均的な修繕計画」をそのまま当てはめるより、豊島区の地形に合わせて順番を組み替えたほうが、確実に費用対効果が上がります。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。管理組合向けのご支援内容は管理組合向けサービス、ご相談はお問合せフォームからどうぞ。工法の技術面をもう一段深く確認されたい方は、ロープアクセスドットコムもあわせてご覧ください。

明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月19日時点で公表されている豊島区および東京都・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特に擁壁等対策工事等助成および擁壁等専門家派遣については区ホームページの更新日が2025年3月であり、令和8年度の助成額・予算枠・受付期間は公式ページ上で確認できませんでした。実際に申請される前に、必ず豊島区および該当窓口(住宅・マンション課マンショングループ 03-3981-1385/建築課構造審査グループ 03-3981-0614)へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月19日

杉並区のマンション漏水・防災対策|神田川・善福寺川・妙正寺川の3河川と6か所の土砂災害警戒区域から逆算する大規模修繕2026年度版

2026年9月19日 更新

杉並区の成田西で、築28年の分譲マンションの理事長さまから電話をいただいたことがあります。夏の夕立のあと、「1階の集会室の壁際が湿っている」と。屋上からの雨漏りだろうと思って伺ったのですが、上を見ても跡がない。結局、原因は建物の北側、道路との境にある高さ1.8メートルの擁壁でした。擁壁の裏に溜まった水が、水抜き穴の詰まりで逃げ場を失い、地中から1階の躯体へ回り込んでいたのです。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。

杉並区は、23区のなかで「水のリスクの種類がいちばん少なく、そのぶん一点に集中している区」だと感じています。海に面していないので高潮も津波もない。埋立地もない。そのかわり、神田川・善福寺川・妙正寺川という3本の川が武蔵野台地を刻んだ谷筋に、リスクがきれいに集まります。

今日は、杉並区が公表している最新のハザード資料から逆算して、杉並区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。


結論:杉並区は「高潮も津波もない代わりに、3本の川の谷底がすべてを決める区」です

先に結論から申し上げます。杉並区で大規模修繕の順番を決めるとき、私が最初に確認するのは屋上ではありません。自分の建物が台地の上にあるのか、川の谷底にあるのか、谷の縁の崖に接しているのかです。

杉並区は、高潮によるハザードマップを作成していません。津波災害警戒区域も区内にありません(出典:杉並区「わが家の水害ハザードマップ」/更新日 2026年5月27日)。湾岸区で最優先になる塩害・高潮対策は、杉並区ではほぼ考えなくてよい。そのぶん、リスクが3類型に絞り込めます。

立地 該当エリアの例 主なリスク 最優先の対策
善福寺川の谷底 堀ノ内・和田・成田西・成田東・松ノ木・荻窪の一部・西田 外水+内水氾濫(過去に約1,600棟の浸水) 地下・半地下の止水、逆流防止、受電設備の位置
神田川・妙正寺川の谷底 高円寺・阿佐谷・下高井戸・永福・浜田山の低地/清水・井草・下井草の一部 内水氾濫(下水道の能力超過) 開口部の止水、1階住戸の床下、排水ポンプ
谷の縁の急傾斜地 久我山・高井戸・堀ノ内・和泉の4地区(区内6か所指定) 土砂災害(がけ崩れ)・擁壁の劣化 擁壁改修、斜面側の排水と外壁

この3類型のどこに当たるかを、区のハザードマップで先に確定させる。それをやらずに「まず屋上防水から」と進めてしまうと、順番を1つ間違えるだけで数百万円が無駄になります。杉並区の理事会でいつも最初にお伝えしているのは、この一点です。


杉並区のハザードマップを1枚で読む

杉並区が公表している資料は、種類ごとの作成状況が公式に整理されています。管理組合の書類棚に、この表を1枚コピーして貼っておくだけで議論が早くなります。

種別 杉並区の作成状況 作成基準 備考
洪水(水害ハザードマップ) 作成済(令和8年3月改訂版) 想定最大規模降雨 外水(洪水)と内水(下水道の溢水)の両方を表示
高潮 作成していません ー 海に面していないため
津波 該当なし ー 区内に津波災害警戒区域はありません
土砂災害 作成済(令和8年5月29日更新) 土砂災害防止法 区内6か所が警戒区域、うち5か所が特別警戒区域

(出典:杉並区「わが家の水害ハザードマップ」、杉並区「土砂災害ハザードマップ」)

想定されている雨は「1時間153ミリ・総雨量690ミリ」

杉並区の水害ハザードマップが前提にしているのは、時間最大雨量153ミリメートル、総雨量690ミリメートルという想定最大規模の降雨が、杉並区全域に降った場合です。区内を流れる神田川・善福寺川・妙正寺川はいずれも神田川流域にあたり、都市型水害対策連絡会が作成した浸水予想区域図がベースになっています。

1時間153ミリという数字は、正直に申し上げてピンと来ないと思います。東京の下水道が標準で想定しているのは1時間50ミリ前後です。つまり設計値の3倍の雨を想定した図だ、ということです。

見落としやすい注意書きが1行あります

杉並区のページには、こう書かれています。「対象とした地域の河川及び下水道の整備状況:平成28年時点での整備状況です」。

つまり、この図は平成28年時点のインフラ前提でシミュレーションされたものです。そのあとに整備された和田堀公園調節池などの効果は、この色分けには反映されていません。逆に言えば、図の色より実際は少しマシかもしれないが、少なくとも図より悪くはならないという読み方をするのが安全です。私は理事会で、この1行を必ず読み上げるようにしています。

土砂災害は「6か所・4地区」と数が確定している

杉並区で発生するおそれのある土砂災害は、急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)です。東京都が土砂災害防止法に基づき、区内6か所を土砂災害警戒区域に指定し、うち5か所が土砂災害特別警戒区域に指定されています。区のハザードマップでは、この6か所を久我山・高井戸・堀ノ内・和泉の4地区に分けて表示しています。

指定は固定ではありません。令和6年10月18日には、和泉4丁目18番の一部について特別警戒区域および警戒区域の解除が東京都から公表されています。指定は増えることも減ることもあるので、10年前の資料で「うちは関係ない」と判断するのはやめていただきたい。これは私の切実なお願いです。

令和8年5月29日から、警報の呼び方が変わりました

もう一点、実務に直結する変更があります。令和8年5月29日から気象庁の新たな防災気象情報の運用が始まり、従来の「土砂災害警戒情報」は「警戒レベル4土砂災害危険警報」に相当する情報として発表されるようになりました。情報の性質・意味そのものに変更はありません(出典:気象庁「新たな防災気象情報について」)。

管理規約の別表や防災マニュアルに旧称のまま書いてある管理組合が、いま非常に多い。次の総会資料を作るときに、ここだけは差し替えをおすすめします。


杉並区の地形と、漏水事故の関係

善福寺川の谷:区内でいちばん実績のある浸水エリア

善福寺川流域では、これまで度重なる浸水被害が発生してきました。杉並区が公表している数字では、平成17年9月の集中豪雨で約1,600棟、平成26年7月の集中豪雨で約60棟の浸水被害です(出典:杉並区「善福寺川流域の浸水対策について」/更新日 2026年7月17日)。

平成17年9月4日の豪雨は、私が同業の先輩から何度も聞かされた「東京の水害の教科書」です。区内の観測所で1時間112ミリを記録し、神田川・環状七号線地下調節池が供用開始後はじめて満水になった。あのとき床上まで水が来たマンションの理事長さまが、いまも「あの日から、うちは1階の受電盤の話ばかりしている」とおっしゃっていたのが忘れられません。

現在は、都による河川の拡幅、環状七号線地下調節池(貯留量54万立方メートル)、下水道の和田・弥生幹線等の整備によって、浸水被害は大きく減少しています。ただし善福寺川で1時間50ミリ対応の護岸整備が完成している整備率は、令和6年度末時点で約63%です。残り4割弱は、まだ途中です。

そしていま、善福寺川上流地下調節池(約30万立方メートル規模)が動き出しました。令和8年5月から都立善福寺川緑地で準備工に着手しています。西荻北・上荻・善福寺・桃井・南荻窪・荻窪・宮前・高井戸東・成田西の各地内が事業区域です。この沿線に建物をお持ちの管理組合さまは、工事期間中の振動・仮囲い・搬出入路と、自分たちの大規模修繕の時期が重ならないかを、いまのうちに突き合わせておいたほうがいい。足場の設置計画そのものに影響します。

台地の上:浸水はしないが、雨水の「量」が変わった

杉並区の大部分は武蔵野台地の上です。標高差はゆるやかで、浸水想定のかからない街区も多い。ただ、台地の上だから安心、とは申し上げられません。

気象庁の統計では、1時間降水量50ミリ以上の短時間強雨の年間発生回数は、直近10年(2014〜2023年)平均が約330回で、統計開始初期の10年(1976〜1985年)平均の約226回と比べて約1.5倍に増えています(出典:気象庁「アメダスで見た短時間強雨発生回数の長期変化について」)。

これは、浸水しないエリアのマンションにとっても他人事ではありません。屋上ドレンとバルコニー排水の「単位時間あたりの処理能力」が足りなくなるからです。築30年の建物の排水計画は、30年前の雨を前提に設計されています。私が現場で見てきた漏水の何割かは、防水層の破断ではなく、単純に「流しきれずに溢れた」ことが原因でした。

谷の縁の崖:擁壁は「外壁」より先に劣化していることがある

冒頭の成田西の事例がまさにこれです。久我山・高井戸・堀ノ内・和泉の4地区に指定がありますが、指定されていない小規模な擁壁は区内のいたるところにあります。

擁壁の水抜き穴(内部に溜まった水を逃がす穴)が土や落ち葉で詰まると、擁壁の裏に水圧がかかります。これは擁壁自体の倒壊リスクであると同時に、隣接する建物の地中梁や1階床への漏水経路にもなります。大規模修繕の見積を取るとき、擁壁と敷地排水を調査範囲から外していないか。ここは理事会で一度確認してみてください。


大規模修繕で必ずチェックすべき漏水ポイント7つ

杉並区の物件で、私が調査時に必ず順番どおりに潰していく7か所です。上から順に、事故になったときの被害が大きい順です。

順 部位 見るポイント 放置したときの典型的な被害
1 屋上防水 立上りの端末シール、保護層の浮き、ふくれ 最上階住戸の天井漏水。全面改修で5,000〜8,000円/㎡が目安
2 ルーフドレン(屋上排水口) ストレーナーの詰まり、ドレン廻りの防水の切れ プール状態から一気に室内へ。杉並区は落葉樹が多く詰まりやすい
3 外壁のシーリング 打継ぎ目地・サッシ廻りの硬化、切れ、肉やせ 壁内浸水→鉄筋腐食→爆裂。10〜15年で必ず打替え検討
4 バルコニー床防水と排水 床のひび、ドレン詰まり、排水勾配の不良 下階バルコニーへの漏水。住戸間トラブルの最多原因
5 サッシまわり 下枠の水切り、額縁との取合い、ビス廻り 強風雨時だけ漏る「原因不明の漏水」の正体がここに多い
6 エキスパンションジョイント カバーの変形、止水シートの劣化 棟をまたぐ漏水。調査が最も難しく、放置されやすい
7 外部立上り・地中梁・擁壁 水抜き穴の詰まり、クラック、白華 1階住戸・集会室・機械室への地中からの回り込み

この7か所のうち、1〜6は外部からのアプローチで調査できます。そして外部アプローチの手段が、足場かロープアクセスか、という選択になります。

外壁塗装の㎡単価は3,500〜4,500円、外壁打診調査は250〜500円/㎡、防水改修は5,000〜8,000円/㎡が一般的な目安です。いずれも物件の規模・状態・立地で大きく変動しますので、参考値としてお読みください。実際の金額は必ず現地調査のうえでお出しします。料金の考え方は大規模修繕の料金の考え方にまとめています。


漏水の緊急対応で、ロープアクセスが強い理由

漏水対応でいちばん困るのは、原因箇所が特定できないのに、足場を組まないと近づけないという状況です。

10階建て・外周80メートルのマンションで、仮設足場を全面に組むと、費用は168万円前後、設置だけで1週間前後かかるのが一般的です。同じ範囲をロープアクセス工法(ビル外壁に産業用ロープで直接アプローチする無足場工法)で対応した場合、59万円前後まで下がるケースがあります。差額でおよそ109万円。数字はあくまで一例で、建物形状や作業内容で変わります。

ただ、緊急漏水対応で本当に効くのは金額ではありません。時間です。

  • 足場:仮設計画→近隣周知→資材搬入→組立で、着手まで最短でも数日〜1週間
  • ロープアクセス:屋上のアンカー・支点を確認できれば、当日中に降下して該当箇所を目視・散水試験できる

台風が過ぎた翌日、最上階から「昨日から天井にシミが広がっている」と連絡が来る。そのときに「まず足場のお見積りを」とお答えするのは、私はどうしても嫌なのです。原因が屋上防水なのかサッシなのか外壁クラックなのかを、その日のうちに切り分ける。それができるかどうかで、その後の工事金額が一桁変わることがあります。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が、ISO9001の品質マネジメント体制のもとで作業にあたります。

工法そのものの技術的な仕組み・安全基準・訓練内容については、同業者向けの姉妹サイトロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。管理組合さまが業者を比較検討されるとき、「この会社の言っていることは技術的に正しいか」を確かめる材料としてもお使いいただけます。

実際の漏水調査・補修の流れは漏水対応のご案内、工法の全体像はロープアクセス工法のご紹介をご覧ください。屋上や高所に人が上がらずに全景を押さえたい場合はドローン調査と組み合わせることもあります。

杉並区で特に効く場面:狭小敷地と、隣地に迫った建物

杉並区は住宅地としての成熟度が高く、敷地いっぱいに建っていて足場を組む余地がないマンション・ビルが非常に多い区です。隣地との離隔が50センチしかない。前面道路が4メートルで、道路使用許可の条件が厳しい。こういう物件では、そもそも足場という選択肢が取れないことがあります。

このとき、全面ロープアクセス、あるいは足場が組める面だけ足場、組めない面はロープアクセスというハイブリッド工法が効きます。私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。3つの工法から選べるかどうかで、杉並区のような密集した住宅地では提案の幅がまったく変わります。


防災上の共用部:位置と、修繕の優先度

浸水リスクのあるマンションで、修繕積立金をどこから使うか。私の優先順位はこうです。

優先 共用部 杉並区で確認すべきこと 目安の対応
★★★ 受変電設備・キュービクル 地下または1階のピットにないか。浸水深0.5m以上の街区か かさ上げ、または上階・屋上への移設検討
★★★ 給水ポンプ・受水槽 地下ポンプ室の位置、排水ポンプの実働確認 止水板、逆流防止弁、非常用電源の確保
★★☆ エレベーター機械室・ピット ピット内の湧水、感水検知装置の有無 冠水時管制運転の設定確認
★★☆ 自家発電設備・燃料タンク 浸水想定区域内の地下設置でないか 位置の見直し、防水扉
★★☆ 地下駐車場・機械式駐車場ピット 排水ポンプの能力と非常電源 逆流防止、ピット排水の点検周期短縮
★☆☆ 避難通路・外階段 段差、手すりの腐食、夜間照明 大規模修繕とあわせて更新

国土交通省は「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」を公表しており、電気室の浸水対策の考え方が整理されています。地下空間については「地下空間における浸水対策ガイドライン」もあります。この2つは、理事会で技術的な議論をするときの共通言語として非常に使えます。

私の経験上、いちばん多い落とし穴は「点検記録はあるが、排水ポンプを実際に動かしたことが数年ない」というパターンです。紙の上では正常でも、いざというときに起動しない。台風期のいま、1度だけ実働させてみてください。費用はかかりません。

賃貸・オーナー物件で共用部の優先順位をどう決めるかはビルオーナー向けのご案内、分譲マンションの管理組合さま向けは管理組合向け大規模修繕のご案内にまとめています。


杉並区で使える水害対策の助成制度(令和8年度)

杉並区は、水害対策の助成メニューが23区のなかでも手厚い区です。ただし対象者の条件をよく読む必要があります。

防水板設置工事費の助成

住宅・店舗・事務所などの地下出入口に防水板を設置する場合、工事費用の4分の3、1つの建物につき上限100万円が助成されます(千円未満切捨て)。防水板はJISの定める止水性能の等級がWs-3相当以上であること、取り外し・移動が可能なものであることが条件です。内外壁の防水工事や土間コンクリート打設などの関連工事も対象に含まれます(出典:杉並区「防水板設置工事費の助成」/更新日 2026年4月1日)。

注意点を正直に申し上げます。この制度の助成対象者は「個人が使用する建築物に防水板の設置および関連工事を行う個人」と明記されています。分譲マンションの管理組合が申請主体になれるかどうかは、この文面だけでは読み切れません。必ず事前相談の段階で、土木計画課(03-5307-0739)に管理組合として使えるかを確認してください。計画の段階で相談すること自体が、この制度の手続きの第1ステップとして定められています。

水害予防住宅 高床化工事の助成

浸水想定0.5メートル以上の箇所を含む街区で、住宅などを高床にする工事に対する助成です。新築・増改築の場合は高床部分の床面積×標準工事費単価×2分の1で上限200万円。標準工事費単価は鉄筋コンクリート造で1平方メートルあたり40,000円、鉄骨造64,000円、木造77,000円です。揚家の場合は工事費の2分の1で上限200万円(出典:杉並区「水害予防住宅 高床化工事の助成」/更新日 2023年4月18日)。

こちらは区ホームページの更新日が2023年4月18日で、助成対象地域の基準も「わが家の水害ハザードマップ(平成31年4月作成)」と記載されています。令和8年3月改訂版のマップとの関係を含め、令和8年度の運用は必ず窓口で確認してください。既存マンションの大規模修繕で使う場面は限られますが、建て替え・附属棟の計画がある組合は検討の余地があります。

雨水浸透施設工事費の助成

雨水浸透ますなどを設置する個人を対象に、費用の一部が助成されます。杉並区は建物の新築・増改築の際に雨水流出抑制施設の設置を求めており、区内の流域対策の目標値は令和19年度までに62万7千立方メートルと設定されています。大規模修繕にあわせて敷地の排水計画を見直す組合には、あわせて検討していただきたいメニューです。

耐震化支援(マンション・ビル)

昭和56年5月以前に建てられた木造以外の建物については、耐震診断・補強設計・耐震改修の費用の一部助成と、無料のアドバイザー派遣があります(出典:杉並区「木造以外の建物の耐震化に関する助成制度」)。防災という観点では、漏水対策より先にこちらが来る建物もあります。


よくあるご質問

Q. うちのマンションが浸水想定区域かどうか、どうやって調べればいいですか?

A. 杉並区の電子地図サービス「すぎナビ」のわが家の水害ハザードマップで、住所から拡大して確認・印刷できます。紙のマップは土木計画課(区役所西棟4階)と各区民事務所でも配布しています。国土交通省の重ねるハザードマップで洪水・土砂災害を重ねて見るのもおすすめです。

Q. 漏水の原因調査だけをお願いすることはできますか?

A. できます。むしろ、その段階でご相談いただくほうが最終的な工事費は下がります。ロープアクセスであれば足場を組まずに当日中の降下調査が可能なケースが多く、屋上防水・サッシ・外壁クラックのどれが原因かを切り分けてから工事範囲を決められます。

Q. 足場とロープアクセス、費用はどれくらい違いますか?

A. 10階建て・外周80メートル・工期3か月規模の例では、仮設足場168万円に対しロープアクセス59万円程度と、100万円超の差が出ることがあります。ただし全面塗替えのように足場のほうが効率的な工事もあります。部位ごとに使い分けるハイブリッド工法で最適化するのが、私の基本の考え方です。

Q. 工期はどれくらい短くなりますか?

A. ロープアクセス工法は足場工法の6割程度の工期で完了するのが目安です。10階建て・外周80メートルのマンションであれば、足場3か月に対しロープアクセス1.5〜2か月が目安になります。足場の組立・解体期間そのものが不要になるためです。

Q. 杉並区は敷地が狭い物件が多いのですが、足場が組めない場合はどうなりますか?

A. 隣地との離隔が取れない、前面道路が狭いといった理由で足場が組めない物件こそ、ロープアクセス工法が本領を発揮します。屋上に支点を取れるかどうかが判断の分かれ目になりますので、まず屋上の状況を拝見させてください。

Q. 善福寺川上流地下調節池の工事期間中でも、大規模修繕はできますか?

A. できますが、事業区域内であれば工程調整が必要です。仮囲い・搬出入路・作業時間帯が競合する可能性があります。工事工程は善福寺川上流地下調節池の公式サイトで公開されていますので、修繕委員会の初回で一度突き合わせることをおすすめします。

Q. 擁壁の調査も大規模修繕に含められますか?

A. 含められます。ただし標準的な見積書では調査範囲から外れていることが多いので、見積依頼の段階で「擁壁と敷地排水を含む」と明記してください。杉並区は谷の縁に擁壁を持つ物件が多く、ここを飛ばすと1階住戸の漏水原因にたどり着けないことがあります。

Q. 台風のあと、まず何を見ればいいですか?

A. 屋上ドレンのストレーナー(落ち葉よけの目皿)、バルコニー排水口、擁壁の水抜き穴の3か所です。この3つの詰まりを取るだけで、次の大雨での漏水リスクはかなり下がります。管理員さんに依頼できる範囲の作業です。


まとめ:今週、杉並区の理事会で動けること3つ

  1. 管理室のハザードマップの版を確認する — 水害ハザードマップは令和8年3月改訂版が最新です。古ければ土木計画課(区役所西棟4階)または各区民事務所で差し替えを
  2. 防災マニュアルの「土砂災害警戒情報」の表記を直す — 令和8年5月29日から「警戒レベル4土砂災害危険警報」に相当する情報として運用されています。久我山・高井戸・堀ノ内・和泉の4地区に該当する組合は特に
  3. 屋上ドレン・バルコニー排水・擁壁の水抜き穴を、実際に見て詰まりを取る — 点検記録の紙ではなく、実物です。台風期のいまがいちばん適した時期です

杉並区は、高潮も津波もない代わりに、神田川・善福寺川・妙正寺川という3本の川がつくった谷筋と、その縁の崖が水の動きをすべて決めている区です。リスクの種類が少ないぶん、当たっているかどうかがはっきり分かれる。だからこそ、「23区の平均的な修繕計画」をそのまま当てはめるのがいちばん危ない区でもあります。自分の建物がどこに立っているかを地図で確定させることから、修繕の議論を始めていただきたいと思います。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。収益不動産としての資産価値維持の考え方はオーナー向けの提供価値、ご相談はお問合せフォームからどうぞ。技術面をもう一段深く確認されたい方は、ロープアクセスドットコムの技術解説もあわせてご覧ください。

明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月19日時点で公表されている杉並区および国土交通省・気象庁・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特に高床化工事助成については区ホームページの更新日が2023年4月18日であり、令和8年度の運用内容は窓口でのご確認が必要です。実際に申請される前に、必ず杉並区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月19日

道志村のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

道志村で分譲マンションの大規模修繕を考えている理事会の方に、いちばん先にお伝えしたいことがあります。道志村では、外壁の塗り替えそのものが村の景観条例の届出対象になり得ます。補助金を探すより先に、この届出の日数を工程表に書き込んでください。

私は株式会社明誠の本間幸紘です。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。この連載では関東・山梨・静岡の自治体を1つずつ調べて、その地域のマンションで実際に使える制度と、現場でつまずくポイントを書いています。今回は山梨県南都留郡の道志村です。

道志村は人口1,445人・615世帯(令和8年8月1日現在/出典:道志村役場)。面積79.57km²のうち可住地はわずか約6.4%で、村の大半が山林です。分譲マンションのストックは多くありません。それでも私がこの村を1本書く価値があると考えたのは、道志村の制度には、大規模修繕の工程と色決めを直接縛る条文が入っているからです。そして村の補助金は、共用部の修繕には使えません。この2つを最初に押さえるだけで、理事会が空振りする時間を丸ごと省けます。

結論から先に:道志村の大規模修繕で押さえるべき5点

# 論点 道志村での結論
1 村の補助金で共用部の修繕に使えるもの 令和8年9月20日時点で公表情報上は確認できません
2 景観条例の届出 外観を変更する修繕・模様替・色彩の変更が対象(延床面積10㎡超の建築物)
3 重点地区・大規模行為 届出の前に事前協議が必要
4 12条点検(定期報告) 山梨県細則で共同住宅が対象になり得る。提出は報告年度の4月1日〜9月30日
5 マンション管理計画認定 町村部は山梨県が所管(手数料 適合証あり3,600円/なし25,500円)

この表の1行目が、道志村の記事の出発点です。「補助金の記事」を期待して読み始めた方には申し訳ないのですが、正直に申し上げます。道志村には、管理組合が共用部の大規模修繕で申請できる村独自の補助制度が、公表されている情報の範囲では見当たりません。

ただし「ページが無いこと」と「使えないこと」は別です。村の要綱には公開されていない運用があり得ますし、県と国の制度は別にあります。この記事では、使えないものは使えないと書き、代わりに何を使い、何を工程表に書くべきかを具体的に整理します。


この記事で答える質問

  • 道志村のマンション大規模修繕で使える補助金は令和8年度にありますか?
  • 外壁の塗り替えで村への届出は必要ですか? 何日前までですか?
  • 道志村のマンションは12条点検(外壁の全面打診)の対象になりますか?
  • 足場を組めない傾斜地の物件はどうすればよいですか?
  • 費用はいくらが目安で、ロープアクセス工法にするといくら変わりますか?

1. 道志村には共用部の大規模修繕に使える村の補助金があるか

村が公表している住宅関連の補助・助成は3系統

道志村役場の公表情報を令和8年9月20日時点で確認したところ、住宅・建物に関わる助成は次の3系統でした。

制度名 内容 共用部の修繕に使えるか
道志村エコライフ促進事業助成金 住宅用太陽光発電システム 上限10万円/木質バイオマスストーブ 上限10万円/生ごみ処理機 上限2万円/電気自動車 上限10万円/木質バイオマスボイラー 上限10万円 外壁塗装・防水は対象に含まれていません
令和8年度 道志村物価高騰対策省エネエアコン購入促進事業 省エネエアコン本体購入費の2分の1・1世帯あたり上限10万円・1世帯1回限り 対象は「自らが居住する村内の住宅」。共用部の工事は対象外
耐震改修事業(4事業) 耐震改修支援事業/耐震化建替支援事業/耐震性向上型改修支援事業/耐震シェルター設置支援事業 村ページに共同住宅・管理組合の記載がなく、要件は村への確認が必要

エコライフ促進事業助成金は、平成27年5月1日に交付要綱が制定されたものです。対象は5種類の設備で、いずれも外壁塗装・屋上防水・シーリング打ち替えといった大規模修繕の中心工事とは重なりません。

省エネエアコン補助は「共用部には使えないが、理事会が知っておく価値がある」

ここは少し丁寧に書きます。令和8年度の省エネエアコン購入促進事業は、対象が「自らが居住する村内の住宅に省エネエアコンを設置する方」です。管理組合が共用部の工事で申請する枠組みではありません。

ただ、区分所有者が自室のエアコンを買い替える場合は対象になり得ます。私が申し上げたいのは、これを総会の資料に1行入れるだけで理事会の信頼が変わる、ということです。大規模修繕の議案は「お金を出してくれ」という話です。その同じ資料に「ところで村にこういう補助があります」と書いてあると、理事会が住民の側に立っていることが伝わります。私はこれを、管理組合の合意形成のいちばん安いコストの投資だと考えています。

受付期間も具体的です。

区分 期間 対象
第1段 優先受付 令和8年8月10日(月)〜令和8年10月30日(金) 令和5年度の省エネ家電購入促進事業で補助を受けていない世帯
第2段 一般受付 令和8年11月2日(月)〜令和9年2月26日(金) 全世帯
購入対象期間 令和8年4月1日〜令和9年1月31日 ―

補助額は本体購入費(消費税等を除く)の2分の1、上限10万円。設置工事費・配送料・延長保証料・家電リサイクル料金・既存エアコンの撤去処分費は対象外です。必要な省エネ性能は「統一省エネラベルの多段階評価点が最新の目標年度で2.0以上」または「トップランナー基準の省エネ基準達成率が最新の目標年度で100%以上」のいずれか。村のページには「受付期間内であっても、申込みが予算額に達した時点で受付を終了します」と明記されています(出典:道志村役場 産業振興課)。

第1段の優先受付は、この記事を公開している令和8年9月20日から数えて残り約40日です。

耐震改修の4事業は「共同住宅が対象か」を電話で確かめる

村のページには「道志村では、山梨県と共に、耐震診断の結果『耐震性なし』と診断された住宅を対象に耐震化のために4つの補助事業を実施しています」と書かれ、パンフレットのPDFが置かれています。ページ自体に令和8年度の受付期間・補助率・限度額の記載がないため、私はここを断定しません。

産業振興課 建築住宅担当 0554-52-2114 に、次の3点をそのまま聞いてください。

  1. 令和8年度の受付期間と、まだ枠が残っているか
  2. 対象に「共同住宅」「分譲マンション」が含まれるか。含まれる場合、申請者は管理組合か区分所有者か
  3. 非木造(鉄筋コンクリート造)の建物が診断・改修のどちらで対象になるか

この連載で187の自治体を調べてきて分かったのは、要綱に「共同住宅」の語が1回も出てこない自治体が多数だということです。一方で、診断だけは共同住宅に開いているという自治体もありました。入口(診断)と出口(改修)で対象がずれていることがあるので、2つを分けて聞くのが確実です。


2. 道志村の記事の背骨:外壁の塗り替えが景観条例の届出対象になる

ここからが本題です。

道志村は平成22年9月1日に景観行政団体へ移行し、平成26年3月に道志村景観計画を策定、平成27年4月1日に道志村景観条例を制定しています(出典:道志村役場「景観条例策定について」)。村全体が景観計画区域で、さらに一般地域と重点地区に区分されています。

届出対象行為に「外観を変更することとなる修繕」が入っている

村が公表している届出対象行為の表を、マンションに関係する部分だけ抜き出します。

対象行為 対象規模
建築物の新築、増築、改築もしくは移転、外観を変更することとなる修繕もしくは模様替又は色彩の変更 延床面積が10㎡を超える建築物(建築基準法に基づき建築工事届が必要な行為規模)
工作物の擁壁 高さ2mを超えるもの
土地の形質の変更 開発区域の面積が1,000m²以上(道志村開発行為指導要綱に基づく事前協議を要する規模)

「外観を変更することとなる修繕もしくは模様替又は色彩の変更」——この一文が、マンションの大規模修繕を直撃します。外壁の塗り替えは、色を変えれば当然「色彩の変更」ですし、同系色でも塗膜の状態が変われば「外観を変更することとなる修繕」の読み方になり得ます。しかも規模要件は延床面積10㎡超。マンションで10㎡以下という建物はありません。

私はこの連載で、忍野村・山中湖村・西桂町でも同じ構造を見てきました。南都留郡の町村は、景観の規制が強い地域だと考えて工程を組むのが実務的です。

重点地区と大規模行為は「届出」の前に「事前協議」

村のページには2つの注記があります。

重点地区における行為は事前協議が必要となります。
また、大規模や建築確認申請が該当の場合も事前協議が必要となります。

これが道志村の実務上の要点です。届出(様式1)とは別に、事前協議(様式3)という手続きが先に立つ場合があります。マンションの大規模修繕は、規模によっては「大規模」にも「建築確認申請が該当」にも当てはまり得ます。つまり、事前協議が先、届出が後、という二段構えになる可能性があります。

日数の目安については、道志村のページに具体的な日数が示されていません。参考として、山梨県景観条例の大規模行為届出制度では「行為に着手する日の30日前までに建設予定地の市町村に3部提出」とされています。道志村は独自の景観条例を持つため県条例による届出は不要ですが(出典:同ページ。市町村景観計画の施行状況一覧に「道志村 平成27年4月1日 産業振興課 0554-52-2114」と記載)、村条例でも同等の日数が必要かどうかは、産業振興課に着工予定日を伝えて確認してください。

私が理事会にお願いしている、道志村での「順番」

補助金の記事なのに順番の話をするのは変に見えるかもしれません。でも、道志村では順番を間違えると年内完了の可否が変わります。

ステップ やること 窓口
① 物件が重点地区に入るか確認する 産業振興課 0554-52-2114
② 候補色をマンセル値で3色に絞る 塗料メーカーに書面で出させる
③ 事前協議が必要かを窓口に当てる 産業振興課
④ 届出(着工予定日から逆算) 産業振興課
⑤ 県・国の制度を積む 県建築住宅課 055-223-1730 ほか
⑥ 工法を決める(足場/ロープアクセス/ハイブリッド) 施工会社

②を先にやる理由をお話しします。窓口が見たいのは、日本塗料工業会の色番号ではなく、周囲の風景と調和するかどうかの判断材料です。マンセル値(色相・明度・彩度の3つの数値で色を表す方式)と、各面の彩色された立面図があると、話が一気に進みます。塗料メーカーの担当者に「候補色のマンセル値を書面でください」と頼めば出てきます。総会の前にこれを窓口に当てておくと、総会で決めた色が後から通らないという最悪の手戻りを避けられます。

見積書に「届出図書の作成費」が入っているかを確認する

これは金額に直結する話です。景観条例の届出には、建築物の概要を記載した別紙のほか、彩色した立面図・現況写真といった図書が必要になります。改修工事の標準的な見積に、この作図費が入っていることは多くありません。

見積を取るときに、各社へこう聞いてください。

「道志村景観条例の届出書および事前協議に必要な図書の作成費は、この見積のどの項目に入っていますか。入っていない場合、いくらになりますか。」

築30年を超える物件では竣工図が残っていないことがあり、立面図の起こしから発生します。ここを曖昧にしたまま契約すると、後から追加費用の話になります。私は、この質問への回答の速さで、その会社が道志村の制度を分かっているかどうかを見ています。地域の制度を把握している会社を一発で見分ける方法として、理事長さまにもお勧めしています。


3. 道志村には都市計画区域がない。これが意味すること

道志村景観計画には、関連法規制の現状としてこう書かれています。

道志村において、都市計画区域は定められていません。

(出典:道志村景観計画)

この連載で調べた188件目で、村内に都市計画区域が一切ない自治体は稀です。実務上、次の3つの意味があります。

① 用途地域・建ぺい率・容積率の指定がない

都市計画区域がないので、用途地域も指定されていません。増築を伴う改修を検討する場合、判断の軸が他の自治体と変わります。ただし、10,000m²以上の開発事業は都市計画法の許可が必要、3,000m²以上の宅地開発事業は山梨県宅地開発事業の基準に関する条例の対象、1,000m²以上の開発行為は道志村開発行為指導要綱の事前協議が必要、と別の網がかかっています。

② 都市計画税は考えにくい

都市計画税は都市計画区域内で課される税です。都市計画区域が定められていない道志村では、課税されていないと読むのが自然です。

これは後述する長寿命化促進税制の説明に関わります。総会で「税金が3分の1になる」と説明してしまう理事会を私は何度も見てきました。減るのは固定資産税だけで、都市計画税は対象外です。道志村の場合はそもそも都市計画税がないので、総会資料には「固定資産税が減額される」と書くのが正確です。課税の有無は村の税務担当(村役場代表 0554-52-2111)でご確認ください。

③ 建築確認の要否の基準が違う

道志村景観計画には、建築基準法についてこう整理されています。

建築確認申請が必要となるのは、木造の建築物で3以上の階数を有し、又は延べ面積が500㎡、高さが13m若しくは軒の高さが9mを超えるもの等です。
なお、10㎡を超える建築物を建築しようとする場合、建築物の新築に際し、建築工事届が必要です。

ここで誤解しないでいただきたいのは、「都市改画区域外だから確認申請は不要」ではないということです。共同住宅は建築基準法上の特殊建築物にあたり、規模によって確認申請の対象になります。そして景観条例の側は「建築確認申請が該当の場合も事前協議が必要」と書いています。つまり、確認申請が必要な規模の工事なら、景観の事前協議もついてくる構造です。

なお、令和7年4月1日から山梨県では「建築主事の業務」が各建設事務所から建築住宅課へ移管されています(出典:山梨県建築住宅課)。古い資料に載っている窓口に電話すると回り道になるので、県案件は建築住宅課から入るのが確実です。


4. 道志村だけの論点:横浜市の水源林と高圧洗浄の排水

道志村は「水源の郷」を掲げる村です。そしてこれは比喩ではありません。道志村の森林の多くが横浜市の水源林であり、道志川とその支流は下流の水道水源につながっています。村の景観計画にも「保安林の指定を受けている、道志川および支流の水源を守る重要な樹林地の多くを横浜市の水源林が占めています」と書かれています。

大規模修繕の工程で、私がこの村でいちばん神経を使うのはここです。

高圧洗浄の排水は「近隣対応」ではなく「流域の話」

外壁の高圧洗浄では、旧塗膜の粉、苔、藻、シーリングの削りかすを含んだ水が出ます。通常の市街地なら、養生と沈殿処理をして雨水系統へという整理で済みます。道志村では、その水の先が政令指定都市の水道水源です。

見積書で確認していただきたいのは次の4点です。

確認項目 見るポイント
排水の集水・処理方法 沈殿槽の設置か、バキュームでの回収か。項目として計上されているか
塗料の飛散防止 養生の範囲と、風速何m/sで作業を止めるかの基準
使用材料 水系(水性)材料を使えるか、溶剤系でなければならない部位はどこか
産業廃棄物の処理 削りかす・旧シーリングの処理費とマニフェストの扱い

これを「近隣からのクレーム対策」として説明する会社と、「流域の水を汚さないための工程」として説明する会社では、出てくる見積が違います。私は道志村のような立地では、後者の説明ができる会社を選ぶべきだと考えています。

屋外広告物条例とメッシュシートの社名

もう1つ、この村で特有の論点があります。道志村景観計画によれば、山梨県屋外広告物条例で御正体山自然保存地区が第一種禁止地域、残る村域の全てが第二種許可地域に指定されています。

工事中の法定掲示物(建設業の許可票、労災保険関係成立票など)は屋外広告物条例の適用対象と扱われないのが通例です。しかし、足場に張るメッシュシートに大きく社名やロゴを入れる業者は少なくありません。のぼりを立てる場合もあります。第二種許可地域にあたる道志村では、これが屋外広告物にあたるのか、景観条例の重点地区で問題にならないかを、あらかじめ窓口に当てておく価値があります。

そして、ここは私の本業の話になります。ロープアクセス工法では足場もメッシュシートも使いません。この論点そのものが消えます。ロープアクセス工法の技術的な背景や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。


5. 道志村の地形と工法選択:足場は「地面」がないと組めない

道志村景観計画の地形の記述は、私にとっては仕事の話としてそのまま読めます。

村東部(加入道山周辺から東)は道志川沿いまで山地が迫り、傾斜度も大きく、V字谷の様相となっています。

村の中央を一級河川の道志川が南西から北東へ貫流し、両岸に山が迫ります。可住地面積は村の約6.4%。標高は村内最高峰の御正体山が1,681.6m、大室山1,587.6m、菜畑山1,283.3m、赤鞍ヶ岳1,299.0m、一方で村東端の月夜野で400m程度です。

足場とロープアクセスの分かれ目は「平場が何mとれるか」

足場は、建物の外周に作業構台を組む工法です。当たり前の話ですが、組むためには地面が必要です。外周に幅1m前後の平場が連続して取れないと、足場は設計できません。道志川沿いの傾斜地に建つ物件、擁壁の上に建つ物件、法面が迫っている物件では、ここが最初の壁になります。

敷地の条件 足場の可否 私の判断
外周4面に幅1m以上の平場が連続 可 金額で比較。足場が有利な場合もあります
1〜2面が擁壁・法面に接している 一部不可 ハイブリッド工法(部位で使い分け)
3面以上が傾斜・河川に接している 実質不可 ロープアクセス主体
搬入路が狭く資材車が入らない 可だが高コスト ロープアクセス主体で検討

ロープアクセス工法は屋上のアンカーからロープを垂らして作業します。必要なのは屋上の支点で、地面ではありません。道志村の東部のような、地面がない立地こそロープアクセスが効くというのが、この村の地形から素直に導ける結論です。

標高と工事可能期間:南都留郡のなかで道志村は恵まれている

塗装は気温5℃以下、湿度85%以上では施工できません。標高が高いほど、実質的な塗装可能期間が短くなります。この連載で調べてきた南都留郡の町村と比べてみます。

自治体 主な居住域の標高目安 工事可能期間への影響
山中湖村 約980m 4〜11月に限られやすい
忍野村 約900m 4〜11月に限られやすい
富士河口湖町(河口湖畔) 約830m 4〜11月に限られやすい
西桂町 約600m 3月下旬〜11月下旬まで見込める
道志村(道志川沿い) 約400〜700m 南都留郡のなかでは最も余裕がある

標高が100m上がると気温は約0.6℃下がります。道志村の可住地は道志川沿いの標高400〜700m帯が中心で、富士北麓の町村より2〜3℃高い計算になります。春先と晩秋でそれぞれ2〜3週間の差です。

ただし、余裕があるからこそ先送りされる、というのが私の経験です。「来年でいいか」を5年繰り返した建物の補修数量は、私が見てきた限り確実に増えています。タイルの浮きは、放っておいて縮むことはありません。

方位と谷筋:道志村の劣化要因表

部位・方位 主な劣化要因 優先して見る場所
北・北東面 日が当たらず乾かない。放射冷却による結露、凍結融解 藻・カビ、タイル目地、打継ぎ
南・南西面 紫外線と日較差。シーリングの伸縮疲労 目地のひび、塗膜のチョーキング
谷筋(道志川沿い)方向 吹き抜ける風。飛来物 笠木・パラペットの固定、シートの飛散対策
屋上パラペット・ドレン 落ち葉の詰まり、融雪水の集中 天端のひび、ドレン周りの防水層
バルコニー床 水の滞留、防水層の膨れ 立ち上がりの端部、ドレン
タイル全般 凍結融解で接着層の剥離範囲が拡大 打診で面的に確認

道志川の谷を風が吹き抜ける立地では、足場工法の場合、強風時にメッシュシートを開放して復旧する手間が工程に乗ります。見積で4か月だったものが実際には4.5〜5か月になる、という形で表れます。ロープアクセス工法では、この要因自体が発生しません。


6. 12条点検(定期報告):提出期限は9月30日まで

これは期限が迫っているので、先に書きます。

建築基準法第12条に基づく定期報告について、山梨県のページには次のとおり明記されています。

定期報告の提出は、報告年度の4月1日から9月30日までです。
期限内に報告のない場合は、督促をさせていただきます。

(出典:山梨県 定期報告制度について/ページ更新日 2026年8月31日)

この記事を公開している令和8年9月20日から数えて、残り10日です。

山梨県では一般の分譲マンションが対象になり得る

ここが山梨県の特徴です。多くの都道府県は、共同住宅をサービス付き高齢者向け住宅等に限定して指定しています。しかし山梨県は県細則で〔下宿・共同住宅・寄宿舎〕を独立して指定しており、5階以上の階にあり、かつ対象用途の床面積が1,000㎡以上の建物が3年毎の報告対象になり得ます。

つまり、5階建て以上でそれなりの規模がある分譲マンションは、道志村にあっても定期報告の対象になり得ます。「うちはマンションだから対象外」という思い込みが一番危ないところです。

電話で聞くべきこと

令和8年度が共同住宅の報告年度に当たるかどうかは、県が公開している「定期報告年度一覧表」のPDFが平成/令和初期の作成で、列の対応が読み取り切れません。私は推測で書かないことにしています。次の内容をそのまま電話でお伝えください。

「南都留郡道志村の分譲マンションです。階数は◯階、延べ面積は約◯㎡です。令和8年度は共同住宅の定期報告年度に当たりますか。」

項目 内容
提出先 山梨県庁 建築住宅課 建築防災担当(甲府市丸の内1-6-1 県庁別館3階)
電話 055-223-1734
部数 2部(正本1部・副本1部)
郵送 受付あり(返却希望の場合は返信用封筒を同封)
様式 令和7年7月1日施行で改正済
代行 一般社団法人 山梨県建築設計協会に代行依頼が可能
資格者 一級建築士・二級建築士・特定建築物調査員

12条点検と大規模修繕の劣化診断は1回にまとめられる

12条点検では、外壁について全面打診(タイルやモルタルを打診棒で叩いて浮きを探す調査)が求められる場合があります。大規模修繕の前に実施する劣化診断も、同じことをします。

私はこの2つを1回の調査で兼ねる提案を、いつも申し上げています。打診調査の目安は250〜500円/㎡です。仮に外壁面積2,000㎡の物件なら50万〜100万円。これを2回払うのは、理事会にとって単純な損です。

そして打診調査は、足場を組まなくてもできます。ロープアクセスなら屋上から降りながら面的に叩けるので、調査だけのために仮設足場を組む必要がありません。ここが工法選択で最初に金額差が出るところです。技術的な手順はロープアクセスドットコムにまとめています。あわせて、明誠のロープアクセス工法の技術詳細もご覧ください。


7. マンション管理計画認定制度:道志村は山梨県が窓口

マンション管理計画認定制度は、管理組合の管理計画が一定の基準を満たす場合に自治体が認定する制度です。道志村のような町村部は、山梨県が所管しています(令和4年4月1日受付開始)。

区分 手数料
事前確認の適合証あり 3,600円
適合証なし 25,500円
長期修繕計画が2以上ある場合 適合証あり +1,600円/なし +14,700円
変更認定 適合証なし額の1/2(100円未満切捨)= 12,700円

(出典:山梨県 マンション管理計画認定制度について)

差額は21,900円です。私はこの21,900円を「安くなる手数料」ではなく「差し戻しで総会日程が崩れるリスクを消す費用」と読み替えて説明しています。事前確認を通してから申請すれば、書類不備で差し戻され、次の総会まで半年待つという事態を避けられます。

山梨県は独自基準を設けていません。国の基準どおりです。

認定を取る実利は3つ

  1. 長期修繕計画の見直しが、認定基準に沿って進む。これが最大の価値だと私は考えています。「30年以上で、残存期間内に大規模修繕が2回以上含まれる計画」といった基準に当てはめる作業が、そのまま計画の棚卸しになります。
  2. 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資で金利の引き下げを受けられる場合がある(出典:住宅金融支援機構)。
  3. 長寿命化促進税制の要件の一つになる(次章)。

あわせて、令和7年11月28日一部施行の改正により、マンション管理適正化支援法人の制度が動き始めています。町村部は県の登録です(出典:山梨県 マンション管理適正化支援法人について)。第一号業務に「大規模修繕工事の発注等に関する助言」が含まれています。

ここで正直に書きます。私は施工会社です。工事を受注する立場の人間です。だからこそ、工事を受注しない立場の相談先を1つ持ってください、と申し上げています。それで私の提案が落ちることがあっても、それは健全なことです。


8. 税制と融資:長寿命化促進税制の期限は令和9年3月31日

マンション長寿命化促進税制は、一定の要件を満たす大規模修繕工事を行った場合に、翌年度の固定資産税(家屋部分)が減額される制度です。

項目 内容
減額対象 固定資産税(家屋)のみ。都市計画税は対象外
工事完了期限 令和9年3月31日
記事公開時点の残り 約6か月半
工事要件 外壁塗装等・床防水・屋根防水を一体で実施すること
管理面の要件 管理計画の認定を受けている等

(出典:国土交通省 マンション政策)

私がここで申し上げたい注意点が2つあります。

1つめ。分割発注で要件を外す恐れがあります。「今年は外壁だけ、来年は屋上防水」という分け方は、予算の都合としては理解できます。しかしこの税制は3つの工事の一体実施が要件です。分けた瞬間に対象から外れることがあります。

2つめ。残り約6か月半という期間は、道志村では現実的にかなりタイトです。景観条例の届出・事前協議に日数が必要で、そのうえで工事に3〜5か月かかります。令和9年3月31日に間に合わせるには、令和8年秋に動き出す必要があります。工期が1か月短いかどうかで、適用の可否が変わる局面です。

融資については、住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資があります。修繕積立金が足りないから工事を延ばす、という判断をする前に、融資を検討したうえで延ばすのか、知らずに延ばすのかは別の話です。私は、理事会にこの選択肢を知らずに決めてほしくないと思っています。

国の支援策については、令和8年度もマンションの耐震診断・耐震改修に対する支援が続いています(出典:国土交通省 住宅・建築物の耐震化)。ただし、これらは地方公共団体が受け皿となる制度を持っていることが前提になるものが多く、道志村に該当制度が確認できない現状では、そのまま使えるとは限りません。ここは正直に書きます。


9. 令和8年6月の地震を受けた建物で、理事会が今月確認すべき5か所

令和8年6月26日22時28分頃、山梨県東部・富士五湖でマグニチュード5.6・深さ約20kmの地震が発生し、富士河口湖町で最大震度6弱が観測されました(出典:気象庁報道発表)。

道志村は震源から直線距離で20km台の位置にあり、富士北麓の町村より震度は小さかったとみられます。観測点ごとの震度は気象庁の資料全文でご確認ください。

ここでお伝えしたいのは、「震度6弱でなければ大丈夫」ではないということです。タイル張りの外壁は、接着層が剥離しても表面は割れません。目視では分からないのです。そして剥離した部分は、冬の凍結融解で範囲が広がります。標高400〜700mの道志村では、越冬中に進行します。

確認する5か所

# 場所 見るもの
1 タイル目地 目地のひび、叩いた音の違い(浮きは高く軽い音)
2 打継ぎ部のシーリング 切れ、剥がれ、肉やせ
3 バルコニー手すり壁の付け根 躯体との取り合いのひび
4 パラペット天端と笠木 笠木の浮き、天端のひび、シーリングの切れ
5 パイプスペース(PS)内の配管継手 漏れ跡、白い析出物

理事会での出し方

「地震があったから調査を追加しよう」という議題は、予算が増えるので通りにくいのです。私がお勧めしている出し方はこうです。

「もともと予定していた劣化診断の時期を、この秋に前倒しする」

予算は増えません。だから通ります。そして結果として、震後の状態を記録できます。漏水が既に出ている場合は、漏水・雨漏りへの対応もあわせてご覧ください。


10. 費用の目安:道志村のマンションでいくらかかるか

金額の話をします。ここは断定を避けますが、レンジは示します。

工種別の単価目安

工種 単価目安 備考
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡ 材料グレードで変動
打診調査 250〜500円/㎡ 12条点検と兼ねられる
屋上・床防水 5,000〜8,000円/㎡ 工法(ウレタン・シート等)で変動
仮設足場 総工費の15〜25% 立地条件で大きく変動

30戸規模のマンション大規模修繕の総額は、一般に3,500〜5,000万円のレンジです。このうち仮設足場が15〜25%を占めます。つまり、足場だけで500万〜1,200万円という計算です。ロープアクセス工法やハイブリッド工法でこの部分を削れるかどうかが、いちばん大きな金額差になります。

料金の考え方については明誠の料金に対する考え方をご覧ください。

モデルケース2本(道志村の立地を想定)

ケースA:道志川沿いの比較的開けた立地(村西部/道の駅どうし周辺のイメージ)

項目 足場工法 ハイブリッド工法
想定物件 築27年・5階・26戸 同
総工費 3,600万円 3,100万円
差額 ― ▲500万円(1戸あたり約19万円)
工期 4.5か月 3.5か月

ケースB:傾斜地・擁壁上の立地(村東部/V字谷側のイメージ)

項目 足場工法 ロープアクセス主体
想定物件 築33年・4階・18戸 同
総工費 2,600万円(足場設計が成立する場合) 2,050万円
差額 ― ▲550万円(1戸あたり約30万円)
工期 4か月 2.5か月
補足 3面が傾斜に接する場合、足場は実質不可 屋上の支点があれば施工可能

いずれも目安です。実際の見積は、外壁面積・タイルの浮き率・搬入路・屋上のアンカー設置可否で大きく変動します。ケースBのように、そもそも足場が成立しない物件では、比較の前提自体が変わります。

見積書で私が見る5つのポイント

  1. 仮定数量を超えた分の単価が契約書に書かれているか。タイル補修やシーリングは、開けてみないと数量が確定しません。「仮定数量◯㎡、超過分は1㎡あたり◯円」と契約書に明記させてください。
  2. 足場リースを延長した場合の費用負担。工期が延びたとき、誰が払うのかを先に決めます。
  3. 高圧洗浄の排水計画。前述のとおり、道志村では流域の話です。
  4. 監理者と施工会社の資本関係。設計監理方式を選ぶなら、両者が独立していることを確認します。
  5. 景観条例の届出図書の作成費。道志村ではここが独自項目です。

11. 私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる現場

利益相反をはっきりさせておきます。私はロープアクセス工事のフランチャイズ本部を運営しています。この工法を売る立場です。

そのうえで書きます。ロープアクセス工法は万能ではありません。 私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる現場は普通にあります。

足場が有利な4条件

条件 理由
タイルの浮きが広範囲(概ね面積の20%超) 補修数量が多いと、足場のほうが作業効率で逆転します
バルコニー内部の工事が主体 立ち入りが前提になるため、工法差が出にくい
開口部(サッシ・手すり)の交換を伴う 資材の揚重と仮置きの場が必要
外周に十分な平場があり、近隣への影響が小さい 足場の弱点が出ない立地

「ロープアクセスなら立ち入りゼロ」は正しくありません

これは強調しておきます。バルコニー内部の作業(床防水、手すりの塗装、内側の壁面)は、工法にかかわらず立ち入りが必要です。ロープアクセス工法で減るのは、外壁面の作業に伴う立ち入りと、メッシュシートで塞がれる期間です。ゼロにはなりません。

ここを曖昧にしたまま契約すると、居住者からお叱りを受けるのは施工会社ではなく理事会です。私は、この説明を契約前にさせていただいています。

明誠が3工法から選べる会社である、ということ

株式会社明誠は、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けており、ISO9001の品質マネジメントシステムを運用し、日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟しています。

私が申し上げたいのは実績の自慢ではありません。3つの工法を持っているから、足場を勧められるということです。足場しか持たない会社は足場を勧めるしかなく、ロープしか持たない会社はロープを勧めるしかありません。安全管理の考え方については明誠の安全管理に、管理組合向けのサービスは管理組合向けサービスにまとめています。これまでの施工事例は施工事例一覧からご覧いただけます。


12. 道志村の窓口一覧と、電話する順番

用件 窓口 電話
景観条例の届出・事前協議・重点地区の確認 道志村役場 産業振興課 0554-52-2114
建築・住宅(耐震改修事業、開発行為指導要綱) 道志村役場 産業振興課 建築住宅担当 0554-52-2114
省エネエアコン購入促進事業 道志村役場 産業振興課 0554-52-2114
エコライフ促進事業助成金 道志村役場 産業振興課 0554-52-2114
固定資産税 道志村役場(代表から取り次ぎ) 0554-52-2111
12条点検(定期報告) 山梨県 建築住宅課 建築防災担当 055-223-1734
マンション管理計画認定・管理適正化支援法人 山梨県 建築住宅課 企画担当 055-223-1730
景観(県条例・大規模行為) 山梨県 都市計画課 景観まちづくり室 055-223-1325

村役場の所在地は〒402-0209 山梨県南都留郡道志村6181番地1、FAXは0554-52-2572です。

実務メモです。道志村の案件は、産業振興課への1本の電話でほぼ足ります。景観・建築・補助金がすべて同じ課なので、「マンションの大規模修繕をやる予定で、景観条例の届出と事前協議の要否、それと耐震改修事業の対象を確認したい」と一度に伝えるのが効率的です。一方、県の案件(12条点検・管理計画認定)は甲府市の県庁まで車で1時間以上かかりますから、先に電話してから動いてください。


13. 道志村のマンションで、この秋にやることの順番

時期 やること
9月中(残り10日) 12条点検の報告年度に当たるかを県に電話(055-223-1734)
9〜10月 産業振興課に重点地区と事前協議の要否を確認
10月 劣化診断を前倒しで実施(打診調査と兼ねる)
10月 省エネエアコン補助の第1段優先受付を住民に周知(〜10月30日)
11〜12月 候補色のマンセル値を用意し、窓口に当てる
12〜1月 見積を3社取る(届出図書の作成費を必ず質問項目に入れる)
1〜3月 総会・届出・事前協議
春以降 着工(標高400〜700mなら3月下旬から可能)

よくあるご質問

Q. 道志村に、マンションの大規模修繕に使える村の補助金はありますか?

A. 令和8年9月20日時点で公表されている情報の範囲では、管理組合が共用部の修繕で申請できる村独自の補助制度は確認できませんでした。住宅関連の助成はエコライフ促進事業助成金、省エネエアコン購入促進事業、耐震改修事業の4事業ですが、いずれも対象は個人の住宅設備または耐震です。ページに無いことと使えないことは別ですので、産業振興課(0554-52-2114)へご確認ください。

Q. 外壁の塗り替えだけでも村への届出が必要ですか?

A. 道志村景観条例の届出対象行為に「外観を変更することとなる修繕もしくは模様替又は色彩の変更」が含まれ、対象規模は延床面積10㎡超の建築物です。マンションはこの規模を超えますので、対象になり得ます。重点地区にあたる場合や大規模・建築確認申請が該当する場合は、届出の前に事前協議が必要です(出典:道志村役場)。

Q. 届出は何日前までに出せばよいですか?

A. 道志村のページには具体的な日数の記載がありません。参考として山梨県景観条例の大規模行為届出制度では「行為に着手する日の30日前まで」です。道志村は独自条例を持つため県への届出は不要ですが、村条例での日数は産業振興課へ着工予定日を伝えてご確認ください。

Q. 道志村のマンションも12条点検の対象になりますか?

A. なり得ます。山梨県は県細則で〔下宿・共同住宅・寄宿舎〕を指定しており、5階以上の階にあり、かつ対象用途の床面積が1,000㎡以上の建物が3年毎の報告対象になり得ます。提出は報告年度の4月1日から9月30日まで、提出先は山梨県庁建築住宅課建築防災担当(055-223-1734)、2部提出です(出典:山梨県)。

Q. 打診調査の費用はいくらかかりますか?

A. 一般的な目安は250〜500円/㎡です。外壁面積2,000㎡なら50万〜100万円のレンジになります。物件の規模や状態により変動しますので、概算のお見積りは無料でお出ししています。12条点検の全面打診と大規模修繕の劣化診断を1回にまとめると、この費用を二重に払う必要がなくなります。

Q. 工期はどれくらい変わりますか?

A. ロープアクセス工法は足場工法の6〜7割程度の工期で完了するのが目安です。5階建て・26戸のマンションなら、足場4.5か月に対してハイブリッド工法で3.5か月、ロープアクセス主体で2.5〜3か月が目安です。道志川沿いの谷筋で風が強い立地では、足場のメッシュシートを開放・復旧する手間が工程に乗るため、差はさらに開く傾向があります。

Q. 傾斜地で足場が組めない物件はどうすればよいですか?

A. ロープアクセス工法をご検討ください。足場は外周に幅1m前後の平場が連続して必要ですが、ロープアクセス工法は屋上の支点があれば施工できます。道志村の東部のように道志川沿いまで山地が迫る立地では、工法の選択肢そのものが変わります。まず屋上の状況(パラペットの形状、アンカー設置の可否)を見せていただければ判断できます。お問い合わせフォームからご相談だけでもお寄せください。

Q. 長寿命化促進税制は間に合いますか?

A. 工事完了期限は令和9年3月31日で、この記事の公開時点で残り約6か月半です。道志村では景観条例の届出・事前協議に日数が必要なため、令和8年秋に動き出す必要があります。また、外壁塗装等・床防水・屋根防水を一体で実施することが要件ですので、分割発注にすると要件を外す恐れがあります。


この記事のポイントまとめ

  • 道志村には共用部の大規模修繕に使える村独自の補助金が公表情報上は見当たらない
  • 外観を変更する修繕・色彩の変更は延床面積10㎡超で景観条例の届出対象になり得る
  • 重点地区・大規模・建築確認申請該当の場合は届出の前に事前協議が必要
  • 12条点検の提出期限は9月30日まで。山梨県は一般の共同住宅も対象になり得る
  • 都市計画区域がないため都市計画税は考えにくく、減るのは固定資産税のみ
  • 森林の多くが横浜市の水源林。高圧洗浄の排水計画は流域の話として扱う
  • 傾斜地・擁壁上の物件は足場が成立しない。ロープアクセス工法が現実的な選択肢

本記事の情報の鮮度について

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月20日時点で公表されている道志村および国土交通省・山梨県の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず道志村および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。とくに耐震改修事業の4事業、および景観条例の届出に要する日数については、村のページに令和8年度の記載がないため、産業振興課(0554-52-2114)への確認をお願いします。

なお、本記事は制度の一般的な解説であり、個別の申請の可否について法的な判断を示すものではありません。


出典・参考資料


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

最終更新:2026年9月20日

道志村は、補助金の多い村ではありません。けれど、制度をきちんと読めば、どの順番で動けばよいかははっきりします。まずは産業振興課に1本、県の建築住宅課に1本。それだけで、来春の着工が見えてきます。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。

西桂町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

山梨県南都留郡西桂町で分譲マンションの大規模修繕を検討されている管理組合の理事長さまへ。この記事は、ひとつの問いから始めます。「西桂町では、外壁を塗り替えるときに町へ届出が要るのでしょうか?」

要ります。しかも西桂町は、町のホームページに、こう書いています。

特に住宅等の建築物については、ほぼ全ての建築行為について届出対象となりますのでご注意ください。

私は株式会社明誠の本間と申します。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。全国の自治体の制度を1件ずつ調べて記事にしてきて、186件を超えましたが、行政が自ら「ほぼ全ての建築行為が届出対象」と言い切っている自治体は、西桂町が初めてです。

そしてもうひとつ。西桂町は町域の一部が富士箱根伊豆国立公園に含まれます。町のページには、自然公園法に違反した場合「6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金になる場合があります」と明記されています。罰金ではなく懲役から書かれている自治体も、私が調べた範囲では西桂町が初めてでした。

この記事では、西桂町の管理組合が大規模修繕を進めるときに、どの順番で、どこに、いつまでに何を出すのかを整理します。補助金の話もしますが、先に正直に申し上げます。西桂町の補助・助成ページに載っている住宅関係の制度は、私が調べた時点でブロック塀等の撤去補助のみでした。共用部の大規模修繕に直接使える町の補助金は見当たりません。だからこそ、手続きと工程の話が本題になります。

結論:西桂町の大規模修繕は「届出」から工程表を書く

先に結論の表を置きます。理事会にそのまま持ち帰っていただける形にしました。

順番 やること 目安の時期 窓口
① 物件が国立公園の区域内かどうかを確認 総会の半年〜1年前 西桂町 建設産業課 建設係 0555-25-2173
② 景観条例の「届出確認表」で自分の工事が該当するか確認 同上 西桂町 建設産業課 建設係
③ 塗り替え後の色をマンセル値で3案に絞る 総会の3〜4か月前 塗料メーカー+建設産業課
④ 景観条例の届出(区域内なら自然公園法の手続きも) 着手前(日数は町へ確認) 西桂町/山梨県
⑤ 山梨県の制度(管理計画認定・12条点検)を確認 総会議案の作成前 山梨県 建築住宅課
⑥ 工法(足場/ロープアクセス/ハイブリッド)を決定 見積比較時 施工会社
⑦ 工事完了後の完了届 行為完了後 西桂町/山梨県

見積を3社から取るのは、①〜③のあとです。順番を逆にすると、色が決まらないまま見積を比較することになり、あとで全部やり直しになります。私はこれを何度も見てきました。

(出典:西桂町「西桂町景観計画及び景観条例等の改正について」)

西桂町が「ほぼ全ての建築行為」と書いている意味

まず、この町の景観制度の成り立ちから整理します。

時期 できごと
平成24年度 西桂町景観計画を策定
平成25年9月 西桂町景観条例を制定
平成26年4月1日 町内の一定規模以上の建築物の建築、工作物の造成、開発行為について町への届出が必要に
平成27年7月1日 太陽光発電施設の届出について景観計画・条例・施行規則を改正
令和2年4月1日 太陽光発電施設の適正管理に関する条例を制定(太陽光は先にこちらの手続き)

条文上は「一定規模以上」です。ところが町は、そのすぐあとに「特に住宅等の建築物については、ほぼ全ての建築行為について届出対象となりますのでご注意ください」と書き足しています。

これは行政の側からの、かなり踏み込んだ注意喚起です。私の読み方を申し上げると、「規模で線を引いてはいるが、住宅系の建物で線を下回るケースはほとんどない。だから自分は対象外だと勝手に判断するな」というメッセージです。

分譲マンションは、住宅等の建築物です。そして大規模修繕は、景観法の用語でいえば「修繕」「模様替」「色彩の変更」にあたる行為です。「うちは小規模だから関係ない」という判断は、この町では成り立ちにくいとお考えください。

町は届出の要否を確認するための「届出確認表」を公開しています。あわせて「添付書類一覧」「景観形成共通基準の運用」「様式集」も公開されています。理事会で最初にダウンロードしていただきたいのは、この届出確認表です。

届出確認表は、理事長ではなく施工会社に読ませてください

実務の話をします。届出確認表は行政の様式なので、建築の素人が読んで判断するには向いていません。

私が理事長さまにお勧めしているのは、見積を依頼する段階で、各社に届出確認表を渡して「この工事は届出対象になりますか。なる場合、申請図書の作成費は御社の見積に入っていますか」と質問する方法です。

この質問には、副次的な効果があります。地域の制度を把握している会社と、そうでない会社が一発で分かります。「調べておきます」と言ったきり返事がない会社は、その時点で判断材料になります。

自然公園法:西桂町は「懲役」から書いている

西桂町の「富士山地域(山梨県側)における自然公園法のお知らせ」には、こうあります。

富士山の北麓の富士五湖地域(富士河口湖町・鳴沢村・西桂町など)は国立公園に指定されています。建築物の新・改・増築や木の伐採など様々な行為が規制されています。許可を受けないで行為に着手した等、法に違反すると、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金になる場合があります。

私が186件の自治体を調べてきたなかで、罰則を懲役から書いている自治体のページは、これが初めてでした。

景観条例の届出違反は、景観法に基づく罰金(多くの場合30万円以下)です。一方、自然公園法の特別地域での無許可行為は、懲役刑がある。法律の重さが違います。

ここで大事なのは、次の2点です。

①西桂町のすべての土地が国立公園なわけではありません。町のページは「富士五湖地域(富士河口湖町・鳴沢村・西桂町など)は国立公園に指定されています」と地域単位で書いています。町内のどこが特別地域で、どこが普通地域で、どこが公園区域外なのかは、物件ごとに確認が必要です。

②確認先は、町の建設産業課 建設係(0555-25-2173)です。住所を伝えれば、区域を教えてもらえます。自分で地図を見て判断しないでください。

理事会からの最初の1本の電話は、この質問だと思います。

「西桂町○○の分譲マンションです。外壁と屋根の塗り替えを含む大規模修繕を予定しています。当物件は自然公園法の区域内でしょうか。また、景観条例の届出対象になりますでしょうか」

(出典:西桂町「住まい・公共交通」一覧)

届出と許可は、管理組合にとって何が違うのか

専門用語なので、素人向けに噛み砕きます。ここを理解しているかどうかで、総会の進め方が変わります。

届出 許可
性格 行政に知らせる手続き 行政の判断を受ける手続き
出せば工事できるか 原則できる 許可されなければできない
不適合のとき 勧告・変更命令 不許可
総会との関係 決議した色で進められることが多い 決議した色が通らない可能性がある

つまり、自然公園法の特別地域にある物件で「許可」が必要な場合、総会で色を決議しても、その色で塗れるとは限らないということです。

私が理事長さまにいつもお伝えしているのは、「総会で決めるのは、行政に当ててみて感触が得られている色にしてください」ということです。総会で決めた色が通らないと分かったとき、いちばん困るのは理事会です。区分所有者への説明が立ちません。

色を決めるまでの手順

順番どおりに書きます。

  1. 区域を確認する。建設産業課 建設係(0555-25-2173)に住所を伝え、国立公園の区域内か、区域内ならどの区分かを聞く。あわせて景観条例の届出要否も聞く。
  2. 現況の色を実測してもらう。築20年以上の物件は、竣工図の色番号どおりの色にはなっていません。退色しています。施工会社か設計事務所に現況のマンセル値を測ってもらってください。
  3. 候補色を3案に絞り、マンセル値を書面でもらう。塗料メーカーに「マンセル値を明記した色見本」を依頼します。日本塗料工業会の色番号だけでは窓口で話が進みません。行政が見たいのはマンセル値です。
  4. 窓口に当てる。3案を持って建設産業課へ。町は「景観形成共通基準の運用」を公開していますので、事前に目を通しておくと話が早くなります。
  5. 総会にかける。行政の感触を得た案だけを議案にします。
  6. 届出(または許可申請)を出す。

マンセル値の読み方(3分で分かる説明)

マンセル値は色を3つの要素で表す方法で、「10YR 7.0/1.5」のように書きます。

  • 色相(Hue):R=赤、YR=黄赤(オレンジ〜茶)、Y=黄、GY=黄緑、G=緑、N=無彩色(白〜灰〜黒)
  • 明度(Value):明るさ。0が黒、10が白
  • 彩度(Chroma):鮮やかさ。0が無彩色で、数字が大きいほど鮮やか

「10YR 7.0/1.5」なら、黄赤系で、明度7.0(やや明るい)、彩度1.5(かなりくすんでいる)ということです。

景観形成基準は、多くの場合「彩度○以下」「明度○以上○以下」という形で数値を定めます。マンションでよく使われる明るいベージュ系は、明度の上限に引っかかることがあります。ここは各自治体で基準が異なりますので、西桂町の景観形成共通基準の運用を確認したうえで、窓口に当てるのが確実です。

見積書に、この費用が入っているか確認してください

届出にせよ許可申請にせよ、書類を作る手間が発生します。そして一般的な大規模修繕の見積に、この作業は入っていないことがあります。

見積書を受け取ったら、次の項目名を挙げて確認してください。

  • 景観条例に基づく届出書の作成費(該当すれば自然公園法の許可申請書も)
  • 各面の彩色立面図の作図費
  • 現況カラー写真の撮影・整理費
  • 配置図・位置図の作成費
  • 申請に伴う行政協議の立会い日当

特に彩色立面図は要注意です。建物の各面を、実際に塗る色で着色した立面図をつくります。竣工図が残っていない築30年超の物件では、立面図を起こすところから始まります。1日でできる作業ではありません。

「他社より安いと思ったら、申請図書の作成費が入っていなかった」という事態は、項目名を挙げて聞けば避けられます。誠実な会社なら正直に答えます。

大規模修繕の料金の考え方は別ページにまとめていますが、要は「どこまでが見積の範囲か」を最初に確定させることが、いちばんのコスト管理です。

西桂町の補助・助成──載っているのはブロック塀の撤去だけ

正直に書きます。2026年9月19日時点で、西桂町の「補助・助成」ページに掲載されている制度は8件で、住宅の工事に関わるものは次の1つだけでした。

制度名 内容 管理組合の共用部で使えるか 担当
西桂町ブロック塀等撤去促進事業費補助金 道路や公園など不特定多数が利用する土地に面したブロック塀等のうち、地震時に倒壊・転倒して通行人等に被害を与える塀を撤去する場合に費用の一部を補助 敷地内の塀が該当すれば対象になり得る 建設産業課 建設係 0555-25-2173

そのほかは、生ごみ処理機器の購入補助、合併処理浄化槽設置補助、重度心身障害者医療費助成、すこやか子育て応援医療費助成、鉄道利用通学者支援補助金、ひとり親家庭医療費助成、浄化槽設置補助です。

住宅リフォーム補助も、木造住宅の耐震診断・耐震改修補助も、このページには掲載されていませんでした。

これは西桂町が住民に冷たいという話ではありません。人口5,000人前後、面積15.38km²の町です。分譲マンションのストックが限られているため、制度設計の対象として登場していない、というのが実情だと私は見ています。

ブロック塀の補助は、管理組合にとって意外に効きます

マンションの敷地境界に、古いブロック塀が残っている物件は珍しくありません。大規模修繕とあわせて撤去・更新を検討されるなら、この補助が使える可能性があります。

条件は「道路や公園など、不特定多数の方が利用する土地に面した」塀であることです。敷地の奥にある塀は対象外になる可能性が高いので、どの塀が対象になるかを、図面を持って建設産業課に相談してください。

なお、このページの更新日は2018年12月17日です。令和8年度の補助率・限度額・受付期間は、ページ上で確認できません。申請を検討されるなら、建設産業課への電話が必須です。推測で金額を書くことはしません。

あわせて、町は「建築物の既設の塀(ブロック塀や組積造の塀)の安全点検について」というページも公開しており、所有者が自ら安全点検を実施するよう注意喚起しています。山梨県にも塀の安全性に関する相談窓口が開設されています。

(出典:西桂町「補助・助成」一覧)

木造住宅の耐震補助について、確認すべきこと

西桂町のサイト上では木造住宅の耐震診断・耐震改修補助のページを見つけられませんでしたが、制度が無いと断定することはできません。ページとして掲載されていないだけ、という可能性があります。

山梨県は木造住宅の耐震化を推進しており、県内の多くの市町村が国・県の補助スキームに乗った制度を持っています。県は「低コスト工法」を推奨しており、その実績は次のとおりです。

年度 R02 R03 R04 R05 R06 R07
県内の耐震改修件数 20 32 42 43 62 77
うち低コスト工法 4 10 15 13 16 13
割合 20% 31% 36% 30% 26% 17%

戸建てをお持ちの方は、町の建設産業課(0555-25-2173)または山梨県建築住宅課 建築防災担当(055-223-1734)にご確認ください。「ページが無いこと」と「制度が使えないこと」は別です。これは自治体調査をしていて何度も経験しました。

(出典:山梨県「木造住宅耐震改修工事の低コスト工法について」/2026年9月4日更新)

標高600m──西桂町は富士北麓で最も工事しやすい

ここからが、この町の大きな利点の話です。

西桂町は、北の三つ峠山麓と南の杓子山麓に挟まれた、標高約600mの町です。桂川流域に集落が展開しています。

富士北麓の他の市町村と比べてみます。

市町村 おおよその標高 塗装工程への影響
西桂町 約600m 富士北麓では最も低く、工程を組みやすい
富士吉田市 約750m前後 ―
富士河口湖町 約830m前後(河口湖畔) ―
忍野村 約900m前後 冬季の工程停止リスクが大きい
山中湖村 約980m(湖面標高) 富士五湖で最も高い

同じ南都留郡でも、標高で400m近い差があります。

なぜこれが工事に効くのか。塗料には施工条件があるからです。一般的な建築用塗料は、気温5℃以下、または湿度85%以上では施工できません。メーカーの仕様であって、施工会社の都合ではありません。無理に塗れば乾燥不良で膨れや剥がれが起きます。

標高が100m上がると、気温はおおむね0.6℃下がります。標高600mの西桂町と標高980mの山中湖村では、単純計算で2℃以上の差があります。この2℃が、春先と晩秋のそれぞれ2〜3週間の違いになって表れます。

つまり西桂町は、富士北麓のなかでは工事可能期間が長く、工程に余裕を持たせやすい町です。これは管理組合にとって、はっきりとした有利条件です。

ただし、余裕があるからこそ先送りされやすい、という面もあります。私の実感では、工程が厳しい地域の管理組合のほうが、かえって計画的に動かれています。

三つ峠の麓の町で、ロープの話をします

もうひとつ、この町だけの切り口があります。

西桂町は、三つ峠の登り口となる町です。三つ峠は、ハイキングコースとしてだけでなく、ロッククライミングのゲレンデとして全国に知られた岩場を持ちます。

私が仕事で使っているロープアクセス工法(無足場工法。産業用ロープで作業員が壁面を昇降して作業する方法)は、もともと登山・クライミングの技術を産業用に体系化したものです。支点の取り方、確保の考え方、二重系統での安全確保──土台にあるのは、岩場で培われた技術です。

その技術の源流のひとつが、この町の山にあります。

これは私にとって、少し特別なことです。三つ峠の屏風岩で技術を磨いた人たちがいて、その系譜のうえに、いま私たちがマンションの外壁で使っている工法がある。西桂町の管理組合さまにご提案するとき、私はこの話を必ずします。

技術的な詳細や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。工法そのものを詳しく知りたい理事の方は、そちらもご覧ください。

株式会社明誠は、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕をこれまでに約6,000棟手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では、過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたります。

令和8年6月26日の地震──西桂町小沼は震度5弱でした

制度の話から離れて、建物の話をします。

令和8年6月26日22時28分頃、山梨県東部・富士五湖を震源とするマグニチュード5.6、深さ約20kmの地震が発生しました。この地震で、西桂町小沼は震度5弱を観測しています。近隣では大月市御太刀が震度5強、富士河口湖町勝山・鳴沢村役場・山中湖村山中などが震度5弱でした。

小沼は町役場の所在地です。町の中心部が震度5弱を受けたということです。記事公開時点で、地震から約3か月弱が経過しています。

震度5弱は、建物が倒壊するような揺れではありません。ですが、外装の下地には影響が出ます。そして、その影響は目視では分かりません。

震度5弱を受けた建物で、理事会が今月中に確認すべき5か所

私が現場で20年見てきて、地震のあとに必ず見る場所です。理事の方が双眼鏡とスマートフォンで確認できる範囲で書きます。

確認箇所 見るポイント なぜ重要か
タイルの目地 ひび、白華(エフロレッセンス/白い粉状の析出物)、目地のズレ 接着層の剥離が始まっているサイン
打継ぎ部のシーリング 切れ、剥がれ、痩せ 揺れで最初に切れるのがここ。雨水の侵入口になる
バルコニー手すり壁の付け根 床との取り合いのひび 片持ち構造で揺れが増幅されやすい
パラペット天端と笠木 笠木のガタつき、シーリングの口開き 屋上防水層への水の回り込み経路
PS(パイプスペース)内の配管継手 にじみ、錆汁 縦管の継手は揺れで緩む。放置すると漏水事故に

タイルは「割れない剥離」が怖い

機序を説明します。

タイル張りの外壁は、コンクリート下地の上にモルタルで接着層をつくり、その上にタイルを張っています。地震の揺れでこの接着層が下地から剥がれても、タイル自体は割れません。だから、下から見上げても何も変わって見えないのです。

問題はその後です。剥がれた隙間に雨水が入ります。標高600mの西桂町では、冬に水が凍って融けることを繰り返します。水は凍ると体積が約9%増えます。この凍結融解が繰り返されると、隙間は少しずつ広がります。

震度5弱で生じた見えない剥離が、越冬中に拡大する。これが、この秋に打診調査を入れていただきたい理由です。

理事会での議題の立て方に、ひとつ工夫があります。「地震があったので調査を追加しましょう」ではなく、「もともと予定していた劣化診断の時期を、この秋に前倒しする」という形にしてください。予算が増えないので、格段に通りやすくなります。

漏水が起きてからの対応については漏水対応のページにまとめていますが、起きる前に手を打てるなら、そのほうが圧倒的に安く済みます。

(出典:気象庁 地震情報、観測点別震度については一般財団法人地震予知総合研究振興会の公表資料による)

山梨県の制度①:12条点検の提出期限は今月末です

ここは、この記事を読んだ当日に動いていただきたい項目です。

建築基準法第12条に基づく定期報告制度について、山梨県のページ(2026年8月31日更新)にはこうあります。

定期報告の提出は、報告年度の4月1日から9月30日までです。

この記事の公開日は2026年9月19日です。9月30日まで、残り11日です。

分譲マンションが対象になり得ます

定期報告の対象は、国(政令)と県(県細則)が指定しています。多くの都道府県では、共同住宅のうち対象となるのはサービス付き高齢者向け住宅等に限られ、一般の分譲マンションは対象外です。

しかし山梨県は県細則で独自に対象を指定しており、一般の共同住宅が対象になり得ます。県の「定期報告対象一覧表」で、ご自身の物件の階数と延べ床面積を当ててみてください。

判断に迷う場合は、階数と対象用途の床面積を控えて、こう電話してください。

「南都留郡西桂町の分譲マンションです。○階建てで、共同住宅の用途に供する部分の床面積の合計は約○㎡です。当物件は建築基準法第12条の定期報告の対象になりますでしょうか。また、令和8年度は当物件の報告年度にあたりますでしょうか」

「報告年度にあたるか」を必ず聞いてください。共同住宅は3年ごとの報告ですので、令和8年度が該当年度かどうかで、今月末の期限が自分に関係あるかが決まります。

提出の実務

項目 内容
提出先 山梨県庁建築住宅課 建築防災担当(甲府市丸の内1-6-1 県庁別館3階)/055-223-1734
提出期限 報告年度の4月1日〜9月30日
部数 2部(正本1部・副本1部)
郵送 可(返却希望なら返信用封筒を同封)
様式 令和7年7月1日施行で改正済。県サイトからダウンロード
代行 一般社団法人山梨県建築設計協会に代行可(昇降機・準用工作物を除く)
調査できる資格者 一級建築士・二級建築士・特定建築物調査員
提出書類 定期調査報告書/調査結果表/概要書/調査結果図(A3)/関係写真(要是正の場合)

期限内に報告がない場合は督促がなされる旨も、県のページに明記されています。

(出典:山梨県「定期報告制度について」)

12条点検の打診調査と、劣化診断は1回にまとめられます

私の専門分野の話なので、実務として使える提案をひとつ。

定期報告の外壁調査では、竣工または外壁改修から10年を超えた建物について、全面打診等による調査が必要になります。全面打診とは、外壁のタイルやモルタルを打診棒で叩いて、浮きを音で探す調査です。

一方、大規模修繕の前には劣化診断を行います。こちらも外壁の浮きを調べます。

この2つは、1回の調査で兼ねられます。

打診調査の費用は、一般的に250〜500円/㎡が目安です(物件の条件により変動します)。別々に発注すれば2回分かかります。まとめれば1回分です。

そして、ここが工法の話につながります。全面打診には、外壁全面にアクセスする手段が要ります。従来は足場かゴンドラでした。ロープアクセス工法であれば、足場を架けずに全面打診ができます。三つ峠の麓の町で、岩場由来の技術を使って外壁を調べる。私にとっては、少し縁を感じる仕事です。

山梨県の制度②:マンション管理計画認定制度(町村部は県が所管)

西桂町は町村部ですので、マンション管理計画認定制度の所管は山梨県です。県は令和4年4月1日から受付を開始しています。

この制度は、管理組合の運営、管理規約、経理、長期修繕計画の作成および見直し等が一定の基準を満たす場合に、自治体から「適切な管理計画を持つマンション」として認定を受けられるものです。県独自の基準はありません。国の基準だけを見ればよい、ということです。

認定申請手数料

区分 適合証あり 適合証なし
認定(更新)申請・長期修繕計画が1つ 3,600円 25,500円
長期修繕計画が2以上(1計画あたり加算) +1,600円 +14,700円
変更認定申請 ― 適合証なし額の1/2(100円未満切捨)=12,700円

差額は21,900円です。

私は理事長さまに、こうお伝えしています。「21,900円は、書類の差し戻しで総会の日程が崩れるリスクを消す費用だと考えてください」と。適合証は公益財団法人マンション管理センターが発行します。県も「適合証を受けてから県へ申請する方法を原則としています」と書いています。

申請を予定している場合は、申請の前に山梨県建築住宅課 企画担当(055-223-1730)へ相談することが求められています。要綱は令和7年11月28日版です。ページの更新日は2025年12月24日ですので、令和8年度に手数料条例の改正があったかどうかは、申請前に県へご確認ください。

(出典:山梨県「マンション管理計画認定制度について」)

認定を取ると何が変わるのか

管理組合の実利で言うと、次の3点です。

  1. 住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資で金利の引き下げを受けられる場合がある
  2. 中古市場で「管理が評価されているマンション」として表示できる
  3. 長期修繕計画の見直しが、認定基準に沿って強制的に進む

私は3つ目がいちばん大きいと思っています。認定を取るには長期修繕計画を整えなければなりません。「いつか見直そう」で10年経っている管理組合が、期限のある手続きをきっかけに動き出す。これは実際に効きます。

国の令和8年度の支援策と税制

耐震改修の支援策(令和8年度)

国土交通省の「住宅・建築物の耐震改修の支援策(令和8年度)」によると、交付率は次のとおりです。

建物の種類 交付率
マンション 国と地方で1/3
その他 国と地方で23%

このほか耐震診断、補強設計、除却、建替え、合意形成についても支援メニューがあります。ただし国の制度は、地方公共団体が受け皿の制度を持っていることが前提になるものが多く、西桂町に鉄筋コンクリート造共同住宅向けの制度が確認できない以上、そのまま使えるとは限りません。町と県の両方に確認する必要があります。

(出典:国土交通省「住宅・建築物の耐震改修の支援策(令和8年度)」(PDF))

長寿命化促進税制(適用期限に注意)

一定の要件を満たす大規模修繕工事を行ったマンションについて、固定資産税が減額される制度です。理事会の説明で誤解が生じやすい2点を挙げます。

①減るのは固定資産税だけです。「税金が3分の1になる」という説明を聞いたことがありますが、正確ではありません。都市計画税は対象外です。西桂町の都市計画税の課税状況は、税務住民課 税務係(0555-25-2171)にご確認ください。

②外壁塗装・床防水・屋根防水を一体で実施することが要件です。予算の都合で工事を分割発注すると、要件を外してしまう恐れがあります。「今年は外壁だけ、来年は防水」という進め方を検討している管理組合は、税制の適用可否を先に確認してください。

適用期限は令和9年3月31日までに工事が完了することです。この記事の公開時点(2026年9月19日)から、残り約6か月半です。

(出典:国土交通省「令和8年度税制改正概要」(PDF))

マンション共用部分リフォーム融資

住宅金融支援機構には、管理組合が共用部の工事資金を借りられる融資制度があります。積立金が足りないという理由で工事を先送りしている管理組合は少なくありませんが、知らずに先送りするのと、融資を検討したうえで先送りするのは、まったく別です。議事録に「融資も検討したが、○○の理由で見送った」と残せるかどうかで、次期の理事会の判断が変わります。

西桂町の建物が置かれている条件

標高600m、桂川流域、三つ峠と杓子山に挟まれた谷筋の町です。方位別の劣化要因を整理します。

方位・部位 主な負荷 診断で見てほしいこと
北・北東 山影になりやすく乾かない。放射冷却の結露。凍結融解 藻・カビ、タイル浮き、防藻防カビ仕様の要否
南・南西 標高が高いぶん紫外線が強い 塗膜のチョーキング(白亜化)、シーリングの痩せ
東 朝日で急激に温まる。日較差による伸縮疲労 打継ぎシーリングの切れ
谷筋方向(桂川沿い) 谷を吹き抜ける風。飛来物 笠木・パラペットの固定、メッシュシートの飛散対策
屋上パラペット 積雪荷重と融雪水のドレン集中 笠木のガタつき、防水層の立ち上がり
バルコニー床 融雪水の滞留 防水層の膨れ・持ち上がり

劣化診断を依頼するときは、「報告書を方位別に分けてください」とお願いしてください。「外壁全体で浮き○%」という報告書は、補修数量の根拠になりません。北面と南面では必要な仕様が違うからです。

なお、谷筋を吹き抜ける風は、足場工事の工程に直接効きます。強風時はメッシュシートを開放(たたむ)する必要があり、その作業と復旧の人工が工程に乗ります。山間の町では、これが積み重なって工期が伸びる要因になります。

工法の話──ここから先は、私の会社の提案が入ります

利益相反を明示します。ここから先は、私が代表を務める株式会社明誠のサービスに関する内容を含みます。判断材料としてお読みください。

明誠は、通常の足場仮設による工法、無足場のロープアクセス工法、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物の特性に応じて提案しています。

西桂町の条件と、ロープアクセスの効き方

西桂町の条件 ロープアクセス工法の効き方
標高600mで工事可能期間が比較的長い 足場でも組めるが、工期短縮で秋着工の選択肢が増える
谷筋の強風でメッシュシート開放が発生 シートが不要なため、強風による工程停止が減る
敷地に余裕がない物件がある 足場の設置スペースが要らない
三つ峠への眺望が資産価値 メッシュシートで眺望が塞がる期間を短くできる
景観条例の手続きに日数がかかる 着工の遅れを工期で取り戻せる

ただし、ロープアクセス工法は万能ではありません

これは私が20年やってきての、嘘偽りのない感想です。私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる現場は、普通にあります。

足場のほうが有利な4つの条件

  1. タイルの浮きが広範囲に及んでいる:張り替え面積が大きいと、足場で一気にやったほうが安く早い
  2. バルコニー内部の工事量が多い:どのみち立ち入るなら、足場の利点が大きい
  3. サッシ・手すりなど付帯物の交換を伴う:重量物の揚重には足場が要る
  4. 建物形状が複雑でロープの支点が取りにくい:安全が確保できなければ、工法として選べない

そして、「ロープアクセスなら居住者の立ち入りはゼロ」は正しくありません。バルコニー内部の作業(床防水、手すり壁内側の塗装、隔て板の交換など)は、工法にかかわらず立ち入りが必要です。ここを曖昧にしたまま契約すると、工事が始まってから「話が違う」となり、居住者からお叱りを受けるのは施工会社ではなく理事会です。私はこれを見てきたので、必ず先にお伝えしています。

ハイブリッド工法は、この判断を部位ごとに分けるやり方です。タイル張りの立面は足場、塗装だけの立面はロープ、といった組み合わせです。総額で見ると、これがいちばん安くなる物件が少なくありません。

明誠のこれまでの施工事例はブログの施工事例カテゴリから、管理組合向けのサービス内容は専用ページからご覧いただけます。工法ごとの技術的な違いをさらに詳しく知りたい方は、ロープアクセスドットコムに解説をまとめています。

モデルケース2本(西桂町の条件で試算)

金額の感覚をお持ちいただくため、モデルケースを2つ置きます。実際の見積は物件の状態・規模・仕様により大きく変動します。あくまで参考値としてお読みください。

ケース1:三つ峠駅圏/築26年・5階建て・28戸

項目 足場工法 ハイブリッド工法
工事費総額 約3,700万円 約3,180万円
1戸あたり 約132万円 約114万円
工期 約4.5か月 約3.5か月
差額 ― ▲約520万円(1戸あたり約19万円)

標高600mなら、4月着工で足場でも8月中旬に終わります。工程の自由度が高い物件です。この場合、工法選択は「工期」ではなく「金額」で判断することになります。

ケース2:桂川沿いの谷筋/築32年・4階建て・18戸

項目 足場工法 ロープアクセス主体
工事費総額 約2,600万円 約2,080万円
1戸あたり 約144万円 約116万円
工期 約4か月 約2.5か月
差額 ― ▲約520万円(1戸あたり約28万円)

こちらは谷筋の強風が効くケースです。足場工法では強風時のメッシュシート開放・復旧が繰り返し発生し、見積上の4か月が実際には4.5〜5か月になることがあります。ロープアクセス主体なら、この要因自体が消えます。

参考:㎡単価の目安

工種 単価の目安
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/㎡
外壁打診調査 250〜500円/㎡
仮設足場 工事総額の15〜25%

仮設足場が総額の15〜25%を占めるという点が、ロープアクセス工法の費用面での根拠です。この15〜25%を圧縮できるかどうかが、工法選択の経済的な中身です。

見積書で、私が必ず見る5つのポイント

①仮定数量を超えた分の単価が契約書に書いてあるか

外壁の浮き補修やシーリング打ち替えは、叩いてみないと正確な数量が出ません。だから見積では「仮定数量」で計上します。問題は、実際に叩いたら仮定より多かったときです。契約書にこう入れてください。

「仮定数量を超過した場合の単価は、本見積書記載の単価を適用する。単価の変更を要する場合は、施工者は着手前に書面により理由を示し、発注者の承諾を得るものとする」

②足場リース延長費用の負担がどちらか

工期が延びたとき、足場のリース料が誰の負担になるか。天候要因、行政手続きの遅延、追加工事の発生──それぞれのケースで誰が負担するのかを、契約前に文書で確認してください。西桂町では谷筋の強風による工程遅延が起こり得るぶん、ここが重要になります。

③高圧洗浄の排水計画

西桂町は桂川流域の町で、水が綺麗なところにしか生えないバイカモが自生していることでも知られます。外壁の高圧洗浄で出る排水をどこに流すのか。近隣対応というより、地域との合意に関わる論点として扱うべきだと私は考えています。

④申請図書の作成費が入っているか

前述のとおりです。届出書・許可申請書の作成費、彩色立面図の作図費、現況カラー写真。項目名を挙げて聞いてください。

⑤監理者と施工会社の資本関係

設計監理方式を採る場合、監理を担当する設計事務所と施工会社に資本関係や継続的な取引関係がないかを確認してください。監理は、発注者の代わりに施工をチェックする仕事です。ここが独立していないと機能しません。

工事を受注しない立場の相談先を、1つ持ってください

最後に、施工会社である私が「私以外の相談先を持ってください」とお願いする話をします。

マンション管理適正化推進法の改正(令和7年11月28日一部施行)により、都道府県等がマンション管理適正化支援法人を指定できる仕組みができました。山梨県も制度のページを設けています。町村部にあるマンションは県の所管です。

支援法人の業務には、大規模修繕工事の発注等に関する助言が含まれています。工事を受注する立場にない第三者から助言を受けられる仕組みです。

私は施工会社です。私の提案が客観的に正しいかどうかを、私自身が保証することはできません。工事を受注しない立場の相談先を1つ持ってください。その結果、私の提案が落ちても、それは健全なことだと思っています。

あわせて、山梨県は建築物防災出張講座を実施しています。合意形成が進まない管理組合には、これが効きます。理事会が「大規模修繕をやりましょう」と説明すると、どうしても「工事をやりたい側の説明」と受け取られます。県の職員が同じ内容を話すと、受け取り方が変わります。私が呼ばれる必要はありません。むしろ私がいないほうが、区分所有者は率直に質問できます。

(参考:山梨県「マンション管理適正化支援法人について」/山梨県「建築物防災出張講座について」)

よくあるご質問

Q. 西桂町で、マンションの共用部大規模修繕に使える町の補助金はありますか?

A. 2026年9月19日時点で町の「補助・助成」ページを確認した範囲では、見当たりませんでした。掲載されている住宅関係の制度はブロック塀等撤去促進事業費補助金のみです。ただし、ページに掲載されていない制度がある可能性はありますので、建設産業課 建設係(0555-25-2173)にご確認ください。

Q. 外壁の塗り替えだけでも、町への届出は必要ですか?

A. 西桂町は「特に住宅等の建築物については、ほぼ全ての建築行為について届出対象となります」と明記しています。町が公開している「届出確認表」でご自身の工事が該当するかを確認し、建設産業課 建設係にご確認ください。国立公園の特別地域内であれば、自然公園法に基づく許可が必要になる場合もあります。

Q. 手続きを忘れて工事を始めてしまったら、どうなりますか?

A. 景観条例の届出義務違反には景観法に基づく罰則が、自然公園法の無許可行為には町のページによれば6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される場合があります。工事の中止や原状回復を求められる可能性もあります。着工前に必ず窓口でご確認ください。

Q. 大規模修繕の費用はどれくらいかかりますか?

A. 30戸規模のマンションで3,500〜5,000万円がひとつの目安ですが、建物の状態と仕様で大きく変わります。㎡単価では外壁塗装3,500〜4,500円/㎡、防水5,000〜8,000円/㎡、打診調査250〜500円/㎡が目安です。仮設足場が工事総額の15〜25%を占めます。無料で概算をお出しできますので、お気軽にご相談ください。

Q. 西桂町は冬でも工事ができますか?

A. 標高約600mで、富士北麓のなかでは比較的低い町です。ただし一般的な建築用塗料は気温5℃以下または湿度85%以上では施工できませんので、真冬の塗装工程は難しくなります。4月〜11月に収める前提で工程を組み、年内完了を目標にするのが安全です。

Q. 12条点検の提出期限はいつですか?

A. 山梨県では報告年度の4月1日から9月30日までです。共同住宅は3年ごとの報告ですので、令和8年度がご自身の物件の報告年度にあたるかどうかを、山梨県建築住宅課 建築防災担当(055-223-1734)にご確認ください。提出は正本1部・副本1部の計2部です。

Q. ロープアクセス工法にすれば、居住者の立ち入りはゼロになりますか?

A. なりません。バルコニー内部の作業(床防水、手すり壁内側の塗装、隔て板の交換など)は、工法にかかわらず立ち入りが必要です。ロープアクセス工法で減らせるのは、足場の設置・解体期間と、メッシュシートで窓が塞がれる期間です。

Q. 管理計画認定は、適合証を取ったほうが安いのですか?

A. はい。山梨県の場合、適合証ありなら3,600円、なしなら25,500円で、差額は21,900円です。適合証の取得には別途費用がかかりますが、県も適合証を受けてから申請する方法を原則としています。書類の差し戻しで総会日程が崩れるリスクを考えると、私は適合証を取る方法をお勧めしています。

西桂町・山梨県の相談窓口一覧

理事会でそのまま使えるように、連絡先をまとめます。

用件 窓口 電話番号
景観条例の届出・自然公園法・建築・ブロック塀補助 西桂町 建設産業課 建設係 0555-25-2173
固定資産税・都市計画税 西桂町 税務住民課 税務係 0555-25-2171
太陽光発電施設の条例手続き 西桂町 税務住民課 環境係 0555-25-2171
町役場代表 西桂町役場(西桂町小沼1500-1) 0555-25-2121
マンション管理計画認定・支援法人 山梨県 建築住宅課 企画担当 055-223-1730
12条点検(定期報告)・耐震・低コスト工法 山梨県 建築住宅課 建築防災担当 055-223-1734
建築確認・建築住宅全般 山梨県 富士・東部建設事務所 建築住宅担当 0554-22-7817

実務メモ:西桂町役場は開庁時間が月曜〜金曜の午前8時30分から午後5時15分です。建設産業課・税務住民課はいずれも同じ庁舎(小沼1500-1)ですので、1回の来庁で両方回れます。FAXは町共通で0555-20-2015です。県の窓口は甲府市にあり、西桂町から車で1時間以上かかりますので、まず電話をお勧めします。

なお、町の一部のページには担当課名が「産業振興課環境係」と記載されているものがあります。これは作成時点の組織名です。現在の組織では税務住民課 環境係が環境関係を担当していますので、古い資料の課名ではなく、代表番号(0555-25-2121)から取り次いでもらうのが確実です。

最後に

西桂町を調べていて、いちばん印象に残ったのは「ほぼ全ての建築行為について届出対象となりますのでご注意ください」という一文でした。

行政がここまで踏み込んで書くのは、おそらく、届出をせずに工事を始めてしまった事例が実際にあったからだろうと私は思います。そして、届出を出さずに工事を始めてしまう管理組合の多くは、悪意があるわけではありません。知らなかっただけです。

大規模修繕は、管理組合にとって10年に一度あるかないかの仕事です。理事も数年で交代します。前回の工事のときの書類が残っていないことも珍しくありません。知らないのが普通なのです。

だから私は、こういう記事を書いています。

西桂町で大規模修繕を考えている理事長さまに、私からお願いしたいことはひとつです。見積を取る前に、建設産業課 建設係(0555-25-2173)に1本電話してください。「うちのマンションの外壁塗り替えは、届出が要りますか」。この質問だけで、その後の工程が全部変わります。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。工法の話をする前の、手続きと工程の整理だけでも、お力になれることがあると思います。三つ峠の岩場から始まった技術で、この町の建物のお役に立てるなら、私にとってはありがたいことです。

お問い合わせはこちらから承っております。

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月19日時点で公表されている西桂町および山梨県・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。また、西桂町の景観計画・景観条例のページは2021年3月4日更新、自然公園法のお知らせは2017年8月25日掲載、ブロック塀等撤去補助のページは2018年12月17日掲載と、いずれも現行年度より前の情報です。実際に申請される前に、必ず西桂町および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な手続きの要否や基準の適用については、所管の行政窓口または建築士等の専門家にご確認ください。

出典・参考資料


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月19日

大規模修繕を断念して建て替えへ|築40年158.8万戸に対し建替えは累計323件、2026年4月施行の改正区分所有法で分岐点はこう動いた【2026年9月】

2026年9月19日 更新

Q. 「老朽化が進んだので大規模修繕をやめて建て替える」という判断は、うちのマンションやビルにも起こりうるのでしょうか。起こるとしたら、その分かれ目はどこにあるのでしょうか。

A. 分かれ目は「築年数」ではなく、①躯体(くたい=建物の骨格)が修繕で使い続けられる状態か ②合意が取れるか ③建て替え後の取得費を負担できるか の3点です。日本のマンションの現実を数字で言えば、築40年以上のストックは2025年末で約158.8万戸あるのに対し、建替えの実績は累計323件・約26,000戸(2025年3月31日時点)にとどまります(出典:国土交通省「築40年以上の分譲マンション数の推移」「マンション建替え等の実施状況」)。つまり大半の建物にとって、現実解は「修繕で寿命を延ばしながら、資産価値を保つ」ことになります。

2026年9月17日、宮城県の村井知事が県議会で、老朽化した宮城県武道館について改修方針を転換し、現地での建て替えを表明したと各社が報じました。公共施設の話ではありますが、「大規模な改修を行っても繰り返し修繕が必要になる」「空調の設置に多額の費用がかかる」「エレベーターの設置が難しい」という判断理由は、築40年を超えたマンションやビルで私たちが日々ぶつかっている論点とほぼ同じです。

私は20年以上、東京・神奈川・埼玉・千葉をはじめとする関東一円で、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕の現場に立ってきました。この記事では、今回のニュースを入口に、「修繕で延命するか、建て替えに舵を切るか」を管理組合・オーナーがどう判断すればよいのかを、公的な一次情報の数字と、現場で見てきた実感の両方から整理します。


何が起きたのか|宮城県武道館が「大規模修繕を断念」した経緯

報道で示された3つの理由

2026年9月17日の宮城県議会で表明された内容は、報道によれば次の通りです。

  • 県が2024年に定めた整備方針では、建物が頑丈であることを前提に、バリアフリー化や空調設備の設置などの改修にとどめる計画だった
  • その後の調査で老朽化が著しく、大規模な改修を行っても繰り返し修繕が必要になることが判明した
  • 空調設備の設置に多額の費用がかかり、エレベーターの設置も難しいことが分かった

(出典:khb東日本放送「宮城県武道館が現地建て替えへ 老朽化著しく大規模修繕を断念」、仙台放送「老朽化の宮城県武道館が現地建て替えへ」。工期・予算は今後検討とされています)

注目していただきたいのは、方針転換のきっかけが「調査」だったという点です。2024年の段階では「建物が頑丈だから改修で足りる」と判断されていたものが、詳細に調べたら前提が崩れた。これは公共施設に限った話ではありません。

「築45年」という年齢が持つ意味

宮城県武道館は1981年開館で、2026年時点で築45年です。1981年(昭和56年)6月1日は、建築基準法の新耐震基準が施行された日でもあります。マンションの世界では、この日より前に建築確認を受けた建物を「旧耐震マンション」と呼び、耐震診断や耐震改修の議論の起点になっています。

私がお付き合いのある管理組合でも、築40年を超えたあたりから「このまま直し続けていいのか」という声が理事会で出はじめます。正直に申し上げますが、その問いが出ること自体は健全です。問題は、問いに答えるための材料を持たないまま、印象論で議論が進んでしまうことのほうです。


結論|修繕か建て替えかの分岐点は「躯体」「合意」「資金」の3つ

先に結論をお伝えします。私が現場で見てきた限り、修繕と建て替えの分かれ目は次の3点に集約されます。築年数そのものではありません。

分岐点 修繕で進められるサイン 建て替え・再生を検討し始めるサイン
①躯体の状態 鉄筋の腐食が限定的、コンクリートの中性化が表層にとどまる、構造体に大きな損傷がない 構造クラックが広範、鉄筋の断面欠損が進行、耐震性能が現行基準に大きく不足
②合意形成 総会で修繕の予算議案が通る、理事会の継続性がある 区分所有者の高齢化・所在不明で決議が成立しない、賃貸化・空室が過半
③資金 修繕積立金と借入で工事費を賄える見通しがある 修繕費が建て替え後の取得費に接近、追加負担金の合意が見込めない

このうち①躯体の状態だけは、調査しなければ誰にも分かりません。宮城県武道館のケースがまさにそうでした。2024年時点の「頑丈だから改修でよい」という前提が、調査によって覆っています。

私はいつも理事長さまに、「まず建物に聞いてください」とお伝えしています。外壁の打診調査、赤外線調査、ドローンによる外観確認、コンクリートのコア抜き試験。これらは建て替えを判断するためにも、修繕を判断するためにも、同じだけ必要な材料です。調査を省いて出した結論は、数年後にひっくり返ります。明誠の調査メニューは建物の点検・調査サービスとドローンによる外壁点検にまとめています。


数字で見る現実|築40年以上158.8万戸に対し、建替えは累計323件

国土交通省の最新データ(2026年8月31日更新)

ここからが本題です。日本のマンションストックの現実を、公的な数字で押さえておきます。

指標 数値 時点 出典
築40年以上のマンション 約158.8万戸 2025年末 国土交通省
10年後(2035年末)の見込み 約313.1万戸(約2.0倍) 推計 同上
20年後(2045年末)の見込み 約503.6万戸(約3.2倍) 推計 同上
マンション建替えの実績 累計323件・約26,000戸 2025年3月31日 国土交通省
建替円滑化法によるマンション敷地売却等 累計17件・約1,300戸 2025年3月31日 同上

築40年以上の約158.8万戸に対し、これまでに建て替えられたのは約26,000戸。単純に比べれば2%にも届きません(建替え実績には築40年未満の案件も含まれるため、厳密な比率ではなく規模感としてご覧ください)。

さらに、改正法の政府資料では、築40年以上のマンションの住戸のうち世帯主が70歳以上の世帯が5割以上と示されています(出典:法務省・国土交通省「改正法の概要」)。建物の老いと居住者の老いが同時に進む、いわゆる「2つの老い」です。

なぜ建て替えが進まないのか|新築価格という壁

建て替えが進まない最大の理由は、建て替え後の住戸を取得する費用です。ここで2026年9月17日に発表された、もうひとつのニュースが効いてきます。

不動産経済研究所の調査によれば、2026年8月の首都圏(1都3県)新築分譲マンションの1戸あたり平均価格は9,770万円(前年同月比5.4%下落)、発売戸数は1,140戸(同12.4%減)、初月契約率は61.1%でした(出典:不動産経済研究所 マンション市場動向、NOVAIST「首都圏新築マンション、8月平均9770万円」)。4カ月ぶりに1億円を下回ったとはいえ、9,770万円です。

建て替えでは、容積率に余裕がある敷地なら増床分を売却して費用の一部を賄えます。しかし増床余地が乏しい物件では、区分所有者が数千万円単位の追加負担金を負うことになります。世帯主が70歳以上の世帯が半数を超える建物で、この負担に全員が合意できるか。この一点が、建て替えが累計323件にとどまっている理由の大きな部分だと私は見ています。

一方で修繕は、後述するとおり戸あたり100万円台のレンジで回る工事です。桁が2つ違う。だからこそ、多くの管理組合・オーナーにとって「修繕で延命する」が合理的な第一選択になるわけです。


法改正で分岐点はこう動いた|2026年4月1日施行の改正区分所有法と、先行施行済みの関連法

建替え等の決議は原則4/5、一定の場合は3/4に

2025年5月23日に成立し、同月30日に公布された「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第47号)のうち、区分所有法および被災区分所有法の改正部分は2026年(令和8年)4月1日から施行されています(出典:法務省)。

改正のポイントを、修繕・建て替えの判断に関わる範囲で整理します。

  1. 建物・敷地の一括売却、一棟リノベーション、建物の取壊しを、建替えと同様に多数決決議(原則4/5)で可能にした
  2. 耐震性不足等に該当する場合は、決議要件を3/4に緩和した(政令で指定された災害による被災の場合は2/3)
  3. 修繕など区分所有権の処分を伴わない事項の決議は、集会出席者の多数決で足りることとした(改正前は全区分所有者の多数決)
  4. 裁判所が認定した所在不明者を決議の母数から除外する制度を創設した

(出典:法務省・国土交通省「改正法の概要」)

実務的に一番効くのは、実は3番目と4番目だと私は考えています。大規模修繕のような区分所有権の処分を伴わない議案は、出席者の多数決で決められるようになりました。政府資料には、賛成2/5で否決されていたケースが、改正後は賛成2/3で可決される例が示されています。所在不明の区分所有者が一定数いる建物で総会が動かない、という悩みに対する制度的な手当てです。

なお、管理計画認定制度の見直し(新築時の分譲事業者による認定申請の導入)や認定マンションの表示制度の創設に係る部分は、2027年(令和9年)4月1日施行とされています。改正法は段階施行ですので、ご自身の管理組合に関わる部分がいつ動くのかは、国土交通省マンション管理・再生ポータルサイトで最新の情報をご確認ください。

【2025年11月28日に先行施行】自治体が「外壁剥落等の危険なマンション」に勧告できるようになった

もうひとつ、私が外壁を扱う立場から重く見ているのが、地方公共団体の権限強化です。改正法では、外壁剥落等の危険な状態にあるマンションに対する報告徴収、助言指導・勧告、あっせん等が措置されました(出典:改正法の概要)。

こちらは区分所有法ではなく、国土交通省が所管するマンションの建替え等の円滑化に関する法律・マンションの管理の適正化の推進に関する法律の改正にあたる部分で、「都道府県知事等の建替え等及びマンションの管理に係る権限の強化関係」として2025年(令和7年)11月28日にすでに施行されています(出典:国土交通省「マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法の一部の施行に伴う関係政令を閣議決定」令和7年8月26日)。つまり、この論点は「これから始まる話」ではなく、すでに動いている話です。

政府はこの改正のKPIとして、「外壁剥落等の危険なマンションを10年後におおむね解消できる水準」を掲げ、マンションの再生等の件数を472件(令和6年)から1,000件へ、管理計画認定の取得割合を約3%(令和6年)から20%へ引き上げる目標を置いています。

つまり、外壁の劣化を放置することのリスクが、これまでの「落下事故を起こしたら責任を問われる」から、「行政から指導・勧告を受ける対象になりうる」へと一段上がったということです。外壁の浮きやタイルの剥落は、建築基準法第12条に基づく定期報告(いわゆる12条点検)の全面打診調査で発見される代表的な劣化です。ここを先送りする理由は、制度面からもなくなりつつあります。


大規模修繕の費用構造|仮設工事が総工事費の22.8%を占める

戸あたり100〜125万円/戸がボリュームゾーン

では、修繕で延命すると決めた場合、いくらかかるのか。国土交通省が200社818件の工事事例を集計した調査から、代表的な数字を引きます。

項目 調査結果
平均修繕周期 「13年」が最多。全体の約7割が12〜15年
1回目の修繕周期 15.6年
2回目の修繕周期 14.0年
3回目の修繕周期 12.9年
戸あたり工事金額 「100〜125万円/戸」が最多、次いで「75〜100万円/戸」「125〜150万円/戸」

(出典:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」。工事金額に共通仮設費および消費税は含みません。なお本調査は令和3年度時点の集計で、その後の資材価格・建設労務単価の上昇を踏まえると、現在の実勢はこの水準を上回る可能性があります)

回数を重ねるほど修繕周期が短くなる、という結果に注目してください。1回目15.6年、2回目14.0年、3回目12.9年。建物は年齢を重ねるほど手がかかるという、現場の実感そのままの数字です。宮城県武道館の「大規模な改修を行っても繰り返し修繕が必要になる」という判断も、この延長線上にあります。

内訳を見ると、削れる場所がはっきりする

同じ調査から、総工事金額の内訳です。

区分 構成比
建築系工事(屋根防水・床防水・外壁塗装・鉄部塗装・建具等) 60.3%
仮設工事(足場等) 22.8%
諸経費(現場管理費・一般管理費・法定福利費、大規模修繕瑕疵保険料) 10.3%

さらに建築系工事の内訳は、外壁関係(外壁塗装・外壁タイル・シーリング)が49.4%、防水関係(屋根防水・床防水)が32.0%です。

ここが本題です。総工事費のおよそ4分の1近くを占める22.8%が、建物に何も付加しない「仮設」に消えている。足場は必要なときには当然必要ですが、全面に組む必要が本当にあるのかは、物件ごとに検証する価値があります。

参考までに、部位別の単価の目安をお伝えします(物件の規模・劣化状況・数量により大きく変動しますので、あくまでレンジとしてご覧ください)。

  • 外壁塗装:3,500〜4,500円/㎡程度
  • 外壁打診調査:250〜500円/㎡程度
  • 屋上・バルコニー防水:5,000〜8,000円/㎡程度

(いずれも明誠の自社実績に基づく目安であり、公的な統計単価ではありません)

大規模修繕全体の考え方と費用の組み立ては、大規模修繕工事のご案内と明誠の料金の考え方にまとめています。


足場をロープアクセスに置き換えると、何がどれだけ変わるか

10階建て・外周80mの試算例

明誠は、通常の足場仮設による工事、無足場工法であるロープアクセス工法、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物特性に応じた最適な工法をご提案しています。日本でも数少ない体制だと自負しています。

10階建て・外周80m・工期3か月というモデルケースで、足場の架設・解体とメッシュシートに係る直接仮設費のみを比べた試算例をお示しします(養生、共通仮設、資材運搬、現場管理費などは含みません)。

工法 対象数量 直接仮設費の目安 差額
全面足場 約2,400㎡(外周80m×高さ約30m)×約700円/㎡ 約168万円 —
ロープアクセス(無足場) 同数量を降下作業で対応 約59万円 約▲109万円

(自社試算による目安です。建物形状、外周長、階数、施工数量、養生範囲、近隣条件により金額は大きく変動します。また上表は直接仮設費のみを切り出した比較であり、工事全体の仮設費とは範囲が異なります。実際の金額は現地調査のうえお見積りいたします)

国の統計で仮設工事が総工事金額の22.8%を占めることと併せて考えれば、仮設をどう組むかが、大規模修繕の総額に効く変数のひとつであることがお分かりいただけると思います。

費用以外の効果も申し上げておきます。足場を全面に組まないということは、居住者の窓の外に他人が立たない、防犯上の不安が生じない、洗濯物が干せる、日照が遮られないということです。私が理事長さまから最も感謝されるのは、実は金額の話ではなく、この生活影響の話であることが多いのです。ロープアクセス工法の技術的な背景や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。

ハイブリッド工法という現実解

誤解のないように申し上げますが、私は「足場をやめてすべてロープアクセスにすべきだ」とは考えていません。バルコニー内部の作業量が多い物件、タイルの張り替え面積が広い物件、低層で足場の効率がよい物件では、足場のほうが合理的です。

私が最も多くご提案しているのは、ハイブリッド工法です。たとえば、足場が架けにくい道路側や隣地ギリギリの面だけをロープアクセスで受け持ち、残りは通常足場で組む。あるいは、全面足場を組む前の段階で、ロープアクセスで先行して打診調査だけを済ませ、正確な数量を掴んでから見積りを固める。

正直に申し上げます。工事の金額が膨らむ最大の原因は、数量が読めないまま契約し、着工後に「開けてみたら想定以上でした」となることです。私はこれを、必ず調査工程とワンセットでご提案するようにしています。3つの工法を一社で持っている強みは、まさにここにあります。明誠の工法の考え方は明誠の3工法と理念をご覧ください。


修繕で延命すると決めたときの7つの判断材料

建て替えではなく修繕で進める、と決めた管理組合・オーナーに、私が必ずお伝えしている7点です。理事会の議題としてそのまま使っていただけるよう、順番に並べています。

  1. 躯体の状態を数字にする:外壁の打診調査結果を「浮き面積○㎡/全体○㎡(○%)」の形で押さえる。印象ではなく比率で共有すると、議論が一気に進みます。
  2. 長期修繕計画を実勢価格で引き直す:建設労務単価と資材価格の上昇で、10年前に作った計画は現実と乖離しています。周期13年・戸あたり100〜125万円/戸という国の統計を物差しに、自分たちの計画を検算してください。
  3. 仮設費を単独の項目として見る:見積書の「仮設工事」が総額の何%かを確認します。22.8%が全国平均です。ここが30%を超えているなら、工法の選択肢を広げる余地があります。
  4. 調査と施工の順番を逆にしない:数量が確定する前に総額を固めると、追加工事で揉めます。先に調べる。これに尽きます。
  5. 決議のハードルが下がったことを織り込む:2026年4月1日施行の改正区分所有法により、修繕など区分所有権の処分を伴わない議案は集会出席者の多数決で決議できます。過去に「決議が成立しなかったから先送り」となった案件は、再検討の価値があります。
  6. 外壁の劣化を「行政リスク」として扱う:改正法により、外壁剥落等の危険な状態にあるマンションに対する助言指導・勧告等が措置され、この部分は2025年11月28日にすでに施行されています。放置のコストが上がったと考えてください。
  7. 相見積りは「同じ数量」で取る:数量が業者ごとに違う見積りを比べても意味がありません。第三者の調査数量を共通の前提として配布するのが公平です。

ビルオーナー・ホテルの場合|区分所有ではない建物の判断軸

ここまでは分譲マンション(区分所有建物)を中心に書いてきました。一棟所有のビル・賃貸マンション・ホテルの場合、合意形成の問題がない代わりに、収益の問題が前面に出ます。

判断軸はシンプルです。

  • 修繕:支出は一時的に大きいが、稼働を止めずに実施でき、内容によっては修繕費として費用化できる場合がある(税務上の取扱いは工事内容により資本的支出となることもありますので、顧問税理士にご確認ください)
  • 建て替え:稼働をゼロにする期間が発生する。テナント退去交渉・営業補償・解体費が上乗せされる

とくにホテルは、客室稼働を止めた瞬間に収益がゼロになります。私どもがホテルの大規模修繕でロープアクセス工法をご提案する理由は、まさにここです。足場を組まない=営業を止めない、宿泊客の視界を塞がない。明誠はホテル案件については全国で対応しています。詳しくはホテルオーナー向けサービスとビル・マンションオーナー向けサービスをご覧ください。管理組合の皆さまには管理組合向けサービスをご用意しています。

なお、2026年8月の首都圏新築マンション平均価格が9,770万円という水準は、賃貸経営にとっては追い風の側面もあります。新築が買いにくい層が賃貸に流れるからです。既存物件を直して貸し続けることの経済合理性は、むしろ上がっているというのが私の見立てです。


私が現場で見てきた「手遅れ」と「間に合った」の差

現場で20年以上やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、あと数年早く調査していれば修繕で足りたはずの建物に出会うときです。

具体的な物件名は申し上げられませんが、築38年のRC造・5階建てのビルで、3階の入口付近の天井に雨の日だけ漏水が出る、という相談を受けたことがあります。点検口を開けて追いかけると、原因は天井裏ではなく、上階の外壁のクラックとシーリングの破断でした。水は入った場所から真下に落ちるとは限りません。外壁を伝い、スラブの上を流れ、まったく別の場所から顔を出します。

このケースは間に合いました。外壁のクラック補修とシーリングの打ち替え、部分的な防水の増し打ちで止まり、費用も全面改修の数分の一で済みました。決め手は、入口付近の1点だけを見るのではなく、ロープで降りて上から下まで通して外壁を見たことです。

逆に間に合わなかったケースでは、鉄筋の発錆がコンクリートを内側から押し広げ(爆裂)、断面欠損が構造に及んでいました。こうなると補修の範囲が一気に広がり、費用は跳ね上がります。

差はどこにあったのか。最初の異変から調査までにかかった時間です。それだけです。だから私は、しつこいくらいに「まず調べましょう」と申し上げます。調査は工事を売るための入口ではなく、工事をしなくて済む範囲を確定する作業でもあるのです。

明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました(自社集計)。ロープアクセス工法による高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています(自社集計・フランチャイズ加盟企業を含む)。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたり、品質面ではISO9001のマネジメントシステムを運用、日本ロープ高所作業協会の事務局も担っています。工法の技術的な詳細は明誠のロープアクセス工法と、ロープアクセスドットコムの技術解説をあわせてご覧ください。

これまでの施工事例は明誠の施工実績(約6,000棟)からご覧いただけます。


よくあるご質問

Q. 築何年を過ぎたら建て替えを検討すべきですか?

A. 築年数そのものには明確な境界線はありません。判断は躯体の状態・合意形成の可否・資金の3点で行います。現実の数字として、築40年以上のマンションが約158.8万戸あるのに対し、建替えの実績は累計323件・約26,000戸(2025年3月31日時点)にとどまっており、大半の建物は修繕で運用されています(出典:国土交通省)。

Q. 大規模修繕の費用は戸あたりいくらが目安ですか?

A. 国土交通省の実態調査では「100〜125万円/戸」が最も多く、次いで「75〜100万円/戸」「125〜150万円/戸」となっています(出典:令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査)。ただし劣化状況・仕様・数量で大きく変わりますので、現地調査のうえ無料でお見積りいたします。

Q. ロープアクセス工法にすると、どれくらい安くなりますか?

A. 削減できるのは主に仮設費です。国の統計では仮設工事が総工事金額の22.8%を占めます。10階建て・外周80m(足場面積約2,400㎡)のモデルケースで直接仮設費のみを比べると、全面足場の約168万円に対しロープアクセスは約59万円という試算例があります(自社試算の目安。養生・共通仮設・運搬費等は含みません)。建物形状や施工数量により変動しますので、比較試算をご希望の場合はお申し付けください。

Q. 2026年4月に施行された区分所有法の改正で、修繕の決議は変わりましたか?

A. 変わりました。改正により、区分所有権の処分を伴わない事項(修繕等)の決議は、集会出席者の多数決によることとされました。また、裁判所が認定した所在不明者を決議の母数から除外する制度も創設されています(出典:法務省)。過去に決議が成立せず先送りになった修繕議案は、再検討の余地があります。

Q. 外壁を放置すると、行政から指導を受けることがありますか?

A. 改正法では、外壁剥落等の危険な状態にあるマンションに対する報告徴収、助言指導・勧告、あっせん等が措置されました(出典:改正法の概要)。都道府県知事等の権限強化に関する部分は2025年11月28日に施行済みです(出典:国土交通省報道発表)。政府は外壁剥落等の危険なマンションを10年後におおむね解消する水準を目標に掲げています。制度の詳細や運用は自治体により異なりますので、所管の窓口でご確認ください。

Q. 足場とロープアクセス、どちらが自分の建物に向いているか分かりません。

A. 建物形状・階数・外周長・施工数量・近隣条件で答えが変わります。明誠は通常足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法をすべて自社で扱っていますので、どれかに誘導する必要がありません。現地を拝見したうえで、工法ごとの概算を並べてご提示します。ご相談はお問い合わせフォームからどうぞ。

Q. 調査だけをお願いすることはできますか?

A. 可能です。打診調査、赤外線調査、ドローンによる外壁点検、ロープアクセスによる近接目視など、必要な範囲だけをご依頼いただけます。調査結果は数量表の形でお渡ししますので、他社との相見積りの共通前提としてもお使いいただけます。


この記事のポイントまとめ

  • 修繕か建て替えかの分岐点は築年数ではなく、躯体の状態・合意形成・資金の3点
  • 築40年以上のマンションは2025年末で約158.8万戸、建替え実績は累計323件・約26,000戸
  • 2026年8月の首都圏新築マンション平均9,770万円が、建て替えの資金的な壁になっている
  • 2026年4月1日施行の改正区分所有法で、修繕の決議は集会出席者の多数決に変わった
  • 大規模修繕の総工事費のうち仮設工事が22.8%。ここが工法選択で動かせる最大の変数

自分たちの建物が修繕で行けるのか、それとも再生を考える段階なのか。その答えは、建物の中にしかありません。私たちにできるのは、その答えを正確に読み取ってお渡しすることです。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月19日


出典・参考資料

※本記事の制度に関する記述は2026年9月19日時点の公表情報に基づきます。個別の法的手続(所在不明区分所有者に関する裁判所の認定など)や税務上の取扱いについては、弁護士・マンション管理士・税理士などの専門家にご相談ください。制度は変更される可能性がありますので、最新の内容は各公式サイトでご確認ください。また、費用の記載はいずれも目安であり、実際の金額は建物の状態・数量・条件により変動します。

世田谷区の管理組合が無料で使える相談・派遣10選|マンション相談は第4月曜・三茶、管理講座は10月10日で申込は10月2日まで【令和8年度版】

2026年9月18日 更新

「本間さん、うちの管理組合は理事が1年交代でしてね。毎年ゼロから勉強し直しなんですよ」

今年の春、経堂のマンションの理事長さまから、そう伺いました。築33年、62戸。2回目の大規模修繕をそろそろ考えなければいけない、という時期でした。輪番制で理事が回るタイプの組合で、前年度の検討が引き継がれないまま、また同じ議論を最初からやり直している、と。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンションやビル、ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組んで囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も自分の足で踏んできた人間です。

その理事長さまにお伝えしたのは、ひとつだけでした。世田谷区には、30分の無料相談から、専門家がマンションまで出向いてくれる派遣制度まで、段階に応じた窓口が揃っている。まず使えるものを一覧にして、引き継ぎ資料にしてしまいましょう、と。

世田谷区は23区でもっとも人口が多い区で、成城・二子玉川・下北沢・経堂・烏山と、マンションの性格が地域ごとにまるで違います。区の相談体制も、それを反映して「5つの総合支所を専門家が巡回する」という、他区にはあまりない形をとっています。近い会場を選べる、というのが世田谷区の相談窓口の一番の特徴です。

今日は、世田谷区のマンション管理組合とビルオーナーさまが、お金をかけずに使える相談・派遣を10個、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。


結論:世田谷区で無料で使える相談・派遣は10ある

先に一覧でお示しします。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用・回数 申込先
1 世田谷区住宅相談「マンション相談」 一級建築士+マンション管理士 無料/30分・第4月曜 住まいサポートセンター 03-6379-1420
2 住宅まちづくり総合相談 一級建築士 無料/30分・5総合支所を巡回 同上
3 住まいの法律相談 弁護士 無料/30分・月2回 同上
4 登記相談/土地家屋調査士相談 司法書士/土地家屋調査士 無料/30分 同上
5 マンション管理講座・相談会 外部講師+管理士+一級建築士 無料/年3回・相談会は最大5組 居住支援課 03-5432-2504
6 東京都マンションアドバイザー無料派遣(A・Bコース) マンション管理士等 無料/要届出1回・管理不全の兆候ありは5回 まちづくりセンター 03-5989-1453
7 世田谷区マンション管理アドバイザー制度利用助成(Cコース) マンション管理士等 派遣料の2分の1/同一マンション2回まで 居住支援課 03-5432-2504
8 分譲マンション専門相談 都が認めた専門家 無料/区の窓口経由 居住支援課 03-5432-2504
9 分譲マンション総合相談 マンション管理士 無料 まちづくりセンター 03-6427-4900
10 東京都マンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応) マンション管理士 無料/令和9年2月26日まで受付 東京都マンション管理士会

電話番号は、実質2つ押さえておけば足ります。住まいサポートセンター(03-6379-1420)が1〜4の窓口相談の予約口。世田谷区 居住支援課(03-5432-2504)が5・7・8の派遣・講座の入口です。

ここからが本題です。


1. 世田谷区住宅相談「マンション相談」:第4月曜、三茶で30分

世田谷区の住宅相談には複数のメニューがありますが、管理組合が最初に使うべきなのはマンション相談です。

区の公式ページには、次のように書かれています(出典:世田谷区「世田谷区住宅相談」、2026年5月1日更新)。

  • 相談員:一級建築士、マンション管理士
  • 相談時間:30分無料(予約優先)
  • 会場・日時:三茶しゃれなあどオリオン(三茶昭和ビル5階)/第4月曜日 午後1時30分〜午後3時30分(面談のみ)
  • 対象:世田谷区在住・在勤・在学の方
  • 予約:住まいサポートセンター 03-6379-1420(月曜〜金曜 午前8時30分〜午後5時)

相談内容として区が挙げているのは、マンションの維持管理や大規模修繕の相談、維持管理や大規模修繕の計画・工事実施について、建替え円滑化方法の相談、管理組合の運営や集会の開催に関する相談です。修繕の話が正面から受けてもらえる枠だ、ということです。

注意点が2つあります。ひとつは月1回・第4月曜のみという点。しかも面談のみで、オンライン枠はありません。もうひとつは30分という枠の短さです。理事会で論点を1つか2つに絞ってから行かないと、状況説明で終わってしまいます。

もうひとつ、祝日と8月13日〜15日、12月27日〜1月5日は相談が休止になります。第4月曜が祝日に当たる月は事前に確認してください。


2. 住宅まちづくり総合相談:一級建築士が5つの総合支所を巡回する

「第4月曜は理事が集まれない」という組合には、こちらのほうが使いやすいはずです。一級建築士による住宅まちづくり総合相談は、世田谷区内の5つの総合支所を巡回しています。

会場と日時(令和8年度)

会場 日時
世田谷総合支所 区民相談室(区役所西棟2階) 第2月曜日 13:30〜15:30(オンライン相談可)
北沢総合支所 区民相談室(北沢タウンホール4階) 第1水曜日 13:30〜15:30
玉川総合支所 区民相談室(庁舎4階) 第2・第4木曜日 13:30〜15:30
砧総合支所 区民相談室(庁舎3階) 第1・第3金曜日 13:30〜15:30
烏山総合支所 区民相談室(庁舎4階) 第2・第4火曜日 13:30〜15:30
三茶しゃれなあどオリオン(三茶昭和ビル5階) 第4月曜日 13:30〜15:30
三茶しゃれなあどビーナス(三茶昭和ビル6階) 第1月曜日 午後6時30分〜午後8時30分(夜間)

(出典:世田谷区「世田谷区住宅相談」、2026年5月1日更新)

管理組合の実務で効いてくるのは、下2つの枠です。

夜間枠(第1月曜・三茶しゃれなあどビーナス・18:30〜20:30)。平日日中に動ける理事がいない組合でも、仕事帰りに寄れます。世田谷区のこの夜間枠は、23区の住宅相談のなかでも珍しい設計です。

オンライン枠(第2月曜・世田谷総合支所)。区役所まで出向かなくても、一級建築士に相談できます。

そして、この相談で区が受け付けているものの中に、「図面や見積書の見方やアドバイス」が明記されています。これは管理組合にとって、かなり大きい。施工会社から出てきた大規模修繕の見積書を、利害関係のない一級建築士に30分見てもらえる、ということだからです。

私どもも見積書を出す側ですから、はっきり申し上げておきます。第三者の目が1回入っている組合との打ち合わせは、話が速いです。数量の拾い方や仮設の考え方について、最初から論点が共有されているからです。明誠が料金の内訳をどう考えているかは、大規模修繕の料金の考え方にまとめています。


3. 住まいの法律相談・登記相談・土地家屋調査士相談

管理組合の悩みは、技術の話ばかりではありません。世田谷区の住宅相談には、士業別の枠も用意されています。いずれも30分無料・予約優先、予約は住まいサポートセンター(03-6379-1420)です。

住まいの法律相談(弁護士)

  • 北沢総合支所 区民相談室:第1火曜日 13:30〜15:30
  • 三茶しゃれなあどオリオン:第4月曜日 13:30〜15:30

区が挙げている相談内容に「規約、約款などに関することや民事調停や少額訴訟の手続き」が含まれています。管理規約の解釈でもめている、修繕積立金の滞納をどう処理するか決めきれない、といった場面で使えます。

登記相談(司法書士)

  • 北沢総合支所 区民相談室:第3水曜日 13:30〜15:30
  • 三茶しゃれなあどオリオン:第4月曜日 13:30〜15:30

土地家屋調査士相談

  • 三茶しゃれなあどオリオン:第4月曜日 13:30〜15:30

境界確定の手順、建物の調査・測量。共用部分の範囲や隣地との境界が絡む修繕では、ここが効いてきます。

不動産相談(宅地建物取引士)も、世田谷総合支所(第1月曜・オンライン可)ほか5会場で受け付けています。賃貸マンションのオーナーさまはこちらの枠が使いやすいでしょう。

第4月曜の三茶しゃれなあどオリオンは、建築士・マンション管理士・弁護士・司法書士・土地家屋調査士・宅建士が同じ日に揃う日です。論点が複数ある組合は、この日に照準を合わせるのが効率的です。


4. マンション管理講座・相談会:令和8年度第1回は10月10日、申込期限は10月2日

区が年3回開いている、講座と個別相談のセット企画です。世田谷区の公式ページは2026年9月18日に更新されており、令和8年度の日程が公表されています(出典:世田谷区「マンション管理講座・相談会」、2026年9月18日更新)。

令和8年度の開催内容

回 開催日 講座テーマ 会場
第1回 令和8年10月10日(土曜日) マンション防災について 玉川せせらぎホール 第4・第5集会室
第2回 令和8年12月5日(土曜日) 検討中 北沢タウンホール 第1・第2集会室
第3回 令和9年2月予定 検討中 未定

第1回の内訳は、講座が午前10時〜11時30分、無料相談会が午前11時30分〜12時。講師は村上陽一氏(株式会社世田谷サービス公社 地域防災支援センター所長)です。

申込のポイントは3つあります。

ひとつめ。申込期間は2026年9月1日(火)〜10月2日(金)。この記事の公開時点で、締切まで2週間あまりです。

ふたつめ。講座と相談会で申込先が別です。

  • 講座:オンライン申込(https://logoform.jp/f/Na239)または せたがやコール 03-5432-3333(年中無休 8:00〜21:00)
  • 無料相談会:都市整備政策部 居住支援課 03-5432-2504(平日 8:30〜17:00)

みっつめ。定員の決まり方が違います。講座は会場75名で、超えた場合は抽選。相談会は最大5組・先着順です。相談会を狙うなら、申込は早いほうがいい。

無料相談会では、マンション管理士(一般社団法人 東京都マンション管理士会 世田谷支部)と一級建築士が、30分の個別相談に応じます。対象は管理講座を受講した区内分譲マンションの居住者・管理組合役員等なので、講座とセットで申し込む必要があります。

第1回のテーマは防災ですが、相談会の中身はテーマに縛られません。外壁の劣化、長期修繕計画の見直し、修繕積立金の不足——修繕の相談をここで持ち込むことができます。むしろ、防災の講座を聞いたあとのほうが、外壁タイルの剥落リスクのような話は理事同士で共有しやすくなります。地震時にタイルが落ちるかどうかは、防災の話であり、修繕の話でもあるからです。

第2回・第3回の申込開始は、区のおしらせ「せたがや」の開催1か月前の1日号に掲載される予定です。12月5日の回なら、11月1日号を確認してください。


5. 東京都マンションアドバイザー無料派遣:届出済みなら専門家が組合に来てくれる

ここからは、専門家がマンションまで出向いてくれる制度です。窓口に行くのではなく、来てもらう。理事会の場でそのまま相談できるので、合意形成の速度が変わります。

公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンターの「マンションアドバイザー制度」は、条例に基づく管理状況の届出を行った管理組合限定で、A・Bコースと建替え・改修アドバイザーAコースを無料で利用できます(出典:東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」)。

無料派遣の回数

対象 無料回数
届出が受理された要届出マンション 1回まで無料
届出が受理されたマンションのうち、管理不全の兆候があるマンション 5回まで無料

「要届出マンション」とは、昭和58(1983)年12月31日以前に新築された、居住用の独立部分が6戸以上の分譲マンションを指します。世田谷区内には、この条件に当てはまる物件が数多くあります。築40年を超えていれば、まず該当すると思ってください。

大規模修繕に直結するコースを挙げます。1回あたり2時間程度です。

講座編(Aコース)

  • A-2:長期修繕計画作成ガイドライン活用の手引きの解説
  • A-4:計画修繕工事の進め方

相談編(Bコース)

  • B-4:修繕計画の作成や修繕積立金等の設定に関すること
  • B-5①:修繕工事検討段階での相談(建物・設備等の劣化状況の調査・診断、修繕工事の検討組織、修繕工事の方式等)
  • B-5②:修繕工事準備段階での相談(修繕工事の内容、業者選定の仕方、合意形成等)
  • B-6:その他マンションの維持管理に関すること

実務的におすすめしたいのは、B-5①を先に1回入れることです。「そもそも今、調査から始めるべきなのか」「足場を組む前提で考えていいのか」という段階の疑問を、利害関係のない専門家にぶつけられます。ここで工法の選択肢が整理できていると、そのあと施工会社を呼んだときの打ち合わせが、まるで違う密度になります。

申込は、申込書に記入のうえFAX・メール・郵送で東京都防災・建築まちづくりセンターへ。申込後1〜2週間程度でアドバイザーから日程調整の連絡が来ます。問い合わせは03-5989-1453です。

ひとつ、事前に共有しておくべき点があります。無料派遣で相談した内容は、東京都・世田谷区と共有されます。これは条例施行や耐震化促進の基礎資料として使われるもので、行政目的以外には使われない、と明記されています。総会で「なぜ区に情報が行くのか」と質問が出たときのために、押さえておいてください。


6. 世田谷区独自のCコース派遣料2分の1助成

Aコース・Bコースの無料枠を使い切った、あるいはもっと踏み込んだ成果物が欲しいという組合には、Cコース(支援編)という選択肢があります。こちらは有料ですが、世田谷区が令和6年6月1日から派遣料の2分の1を助成しています(出典:世田谷区「マンション管理アドバイザー制度利用助成」、2024年10月3日更新)。

助成対象となるCコースと派遣料

コース 内容 派遣料
C-1 管理組合の設立・実体化に向けた体制整備 191,400円
C-2 総会準備に向けた取り組み 95,700円
C-3 管理組合運営体制の整備 214,500円
C-4 管理規約の設定案又は改定案 357,500円
C-5 管理費の設定案及び見直し案 95,700円
C-6 修繕積立金の設定案 95,700円
C-7 長期修繕計画見直し案及び修繕積立金見直し案 95,700円
C-8 大規模修繕工事計画案 191,400円

助成額は派遣料の2分の1で、同一のマンションにつき2回まで。たとえばC-8(大規模修繕工事計画案)なら、191,400円のうち区の助成が約95,700円、組合の負担は約95,700円という計算になります。C-7とC-8を1回ずつ使えば、長期修繕計画の見直しと工事計画案の2点セットが、合計約14万円強の自己負担で手に入る、ということです。

コンサルティング会社に同等の検討を依頼した場合の費用感と比べると、これはかなり有利な条件です。

助成条件は3つあり、すべてを満たす必要があります。

  1. 東京都のマンション管理条例に基づく要届出マンションで、届出を行っていること
  2. 届出から5年以内であること
  3. 管理不全の兆候のあるマンションであること(管理組合・管理者等・管理規約・総会開催・管理費・修繕積立金・修繕の計画的な実施のうち、いずれかが「無い」と回答しているマンション)

3つめは誤解されやすいので補足します。「管理不全」という言葉は強く聞こえますが、判定基準は届出時の回答内容です。たとえば長期修繕計画に基づく修繕の計画的な実施ができていないと回答していれば、これに該当します。荒れた物件だけの話ではありません。

手続きの順番にも注意してください。アドバイザー制度の利用申し込みの前に、区へ助成の申請をする必要があります。先に派遣を受けてしまうと助成が受けられません。また、完了報告書の提出期限は交付決定を受けた年度の末日までで、これを過ぎると交付取消しになります。令和8年度に申請するなら、令和9年3月31日までに派遣と報告まで終える段取りが要ります。逆算すると、秋のうちに動き出すのが現実的です。

事前相談は、世田谷区 都市整備政策部 居住支援課(03-5432-2504)へ。

なお、このページの最終更新日は2024年10月3日です。制度そのものは継続していますが、派遣料や助成条件が令和8年度に改定されている可能性は否定できません。申請前に必ず居住支援課へ現在の金額をご確認ください。


7. 東京都の相談窓口:専門相談・総合相談・管理士無料派遣

区の窓口で解決しきらない場合、東京都側にもう一段の受け皿があります。

分譲マンション専門相談
区市の相談窓口で相談したうえで、専門家による対応が必要と都が認めたものについて実施されます。申込先は世田谷区です。居住支援課(03-5432-2504)に相談してください。区の相談が「入口」、専門相談が「二段目」という位置づけになります。

分譲マンション総合相談
公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンターが、マンション管理士による総合相談に応じます。専用電話 03-6427-4900。管理・建替え・改修のいずれも対象です。

東京都マンション管理士会 相談専用電話
一般社団法人 東京都マンション管理士会が、管理に関する相談とマンション管理士の紹介に応じています。電話 03-5829-9774。

東京都リフォーム総合相談窓口
分譲マンションの専有部分についても相談できます。電話 03-5989-1683。共用部分は管理組合、専有部分は区分所有者——この線引きで悩む相談が持ち込まれたときの案内先として、理事会が知っておくと便利です。

マンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)
東京都が実施する分譲マンション向けの管理士派遣です。令和8年度の申込期間は令和8年6月23日(火)から令和9年2月26日(金)まで。防災力向上・認知症対応を合わせて160件の募集数に達し次第、新規の申込みは締め切られます(出典:東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」)。申込は東京都マンション管理士会から行えます。

「防災」の派遣ではありますが、外壁の落下リスクや避難経路の安全性は防災の検討項目そのものです。修繕の優先順位を考える材料として、十分に使えます。

ひとつ補足しておくと、世田谷区は「マンション管理適正化支援法人の登録は行わない」という方針を公表しています(出典:世田谷区「マンション管理適正化支援法人について」、2025年12月22日更新)。支援法人経由のルートは世田谷区にはない、ということです。上に挙げた区と都の窓口が、現時点での支援の全体像になります。


8. 世田谷区で大規模修繕を考えるときの費用感

無料相談を使う前に、おおよその桁を頭に入れておくと、相談の中身が濃くなります。

総工費の目安。30戸規模のマンションの大規模修繕で、3,500万円〜5,000万円というレンジが一般的です。このうち仮設足場が15〜25%を占めます。つまり、600万円〜1,200万円が「工事そのものではない部分」に使われている計算になります。

㎡単価の目安。外壁塗装が3,500〜4,500円/㎡、外壁の打診調査が250〜500円/㎡、屋上防水が5,000〜8,000円/㎡。いずれも劣化状況と施工条件で大きく変動しますので、参考値としてお考えください。

足場とロープアクセスの差。10階建て・外周80m・工期3か月という条件で試算すると、仮設足場が約168万円に対し、ロープアクセス工法なら約59万円。差額はおよそ109万円です。もちろん物件形状や作業範囲によって変わりますが、桁としてはこのくらいの開きが出ます。

世田谷区は、成城や深沢のように隣地との距離が近い低中層マンションが多い地域と、二子玉川や三軒茶屋のように高層物件が集まる地域が混在しています。足場が組みにくい敷地条件の物件では、ロープアクセス工法を部分的に組み合わせるハイブリッド工法が現実的な選択肢になることが少なくありません。全面をロープに切り替えるのではなく、足場が入らない面だけをロープで処理する、という考え方です。

工法の技術的な比較や、ロープアクセスの安全基準について深く知りたい方は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに同業者向けの詳しい解説をまとめています。管理組合の技術担当理事の方が読んでも理解できる内容です。工法そのものの概要は明誠のロープアクセス工法の技術詳細をご覧ください。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたり、安全管理の考え方は明誠の安全管理への取り組みにまとめています。訓練体制や資格制度の詳細はロープアクセスドットコム側で公開しています。

これまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。世田谷区内の物件も含まれています。


9. 無料相談を最大限に活かす3つの準備

30分の枠を無駄にしないために、持っていくものを決めておいてください。

準備1:直近3年分の総会議事録

修繕の議論がどこまで進んでいるか、相談員が最初に知りたいのはここです。議事録があれば、状況説明の5分が1分で済みます。

準備2:長期修繕計画と修繕積立金の残高

「積立金がいくら足りないか」は、相談の質を決める数字です。残高と、次回修繕の予定額。この2つだけでも構いません。

準備3:外壁の写真を5枚

ひび割れ、浮き、雨だれ、鉄部のサビ、バルコニーの防水。スマートフォンで撮ったもので十分です。言葉で「劣化しています」と説明するより、写真1枚のほうが伝わります。

この3点をPDFで1つのファイルにまとめておくと、どの窓口に行っても、東京都のアドバイザー派遣に切り替えても、そのまま使い回せます。輪番制で理事が交代する組合なら、この3点セットを引き継ぎ資料にしてしまうのが一番効きます。冒頭でお話しした経堂の理事長さまには、これをお勧めしました。


よくあるご質問

Q. 世田谷区の無料相談は、賃貸マンションのオーナーでも使えますか?

A. 窓口によって分かれます。世田谷区住宅相談(マンション相談・住宅まちづくり総合相談・法律相談・不動産相談など)は、世田谷区在住・在勤・在学の方が対象なので、区内にお住まいまたはお勤めのオーナーさまはご利用いただけます。一方、東京都のマンションアドバイザー派遣とCコース助成は分譲マンションの管理組合が対象です。ビル1棟や賃貸マンションの修繕計画のご相談は、明誠のビルオーナー向けページからもお受けしています。

Q. 窓口相談とアドバイザー派遣、どちらを先に使うべきですか?

A. 課題がまだ整理できていない段階なら、30分の窓口相談が先です。論点を絞る作業に向いています。「調査から始めるべきか」「足場かロープか」のように論点が固まってきたら、アドバイザー派遣のB-5①に切り替えると、2時間かけて掘り下げられます。総会に出す資料が欲しい段階になったら、Cコース(C-7・C-8)です。この3段階で考えると迷いません。

Q. 管理状況の届出をしていません。それでも相談できますか?

A. 世田谷区住宅相談と管理講座・相談会は、届出の有無を問いません。ただし東京都のアドバイザー無料派遣とCコース助成は、届出が受理されていることが条件です。しかもCコース助成は「届出から5年以内」という条件も付きます。届出そのものの手続きは居住支援課(03-5432-2504)で聞けますので、まずそこから始めるのが近道です。

Q. Cコース助成の「管理不全の兆候」に、うちは当てはまりますか?

A. 届出時に、管理組合・管理者等・管理規約・総会開催・管理費・修繕積立金・修繕の計画的な実施の7項目のうち、いずれか1つでも「無い」と回答していれば該当します。たとえば長期修繕計画に沿った修繕ができていない、というだけで条件を満たします。ご自身の組合の届出内容が分からない場合は、居住支援課で確認できます。

Q. 相談は無料でも、そのあと工事を頼まされませんか?

A. 区や都の相談窓口は、マンション管理士会・建築士事務所協会・弁護士会などから派遣された相談員が対応するもので、特定の業者を紹介する場ではありません。工事業者の選定は、あくまで管理組合が別途行うことになります。

Q. 大規模修繕の費用はどれくらいが目安ですか?

A. 30戸規模のマンションで3,500〜5,000万円というレンジが一般的です。うち仮設足場が15〜25%を占めます。外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、屋上防水は5,000〜8,000円/㎡が目安ですが、劣化状況と足場条件で大きく変動します。概算のお見積りは無料でお出しできますので、明誠のお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

Q. ロープアクセス工法にすると工期はどれくらい短くなりますか?

A. 足場工法の約60%が目安です。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場工法で3か月かかるところ、ロープアクセス工法なら1.5〜2か月程度。足場の組立・解体に必要な期間がまるごと不要になるためです。居住者の方がバルコニーを使えない期間も、その分短くなります。

Q. 管理組合として、明誠に相談することはできますか?

A. もちろんです。工法の選択肢を知りたい、他社の見積りの妥当性を確認したい、といった段階でも構いません。管理組合向けのサービスページに、ご相談から着工までの流れをまとめています。


まとめ:今週、世田谷区の管理組合が動けること3つ

長くなりましたので、動くべきことだけ3つに絞ります。

1. 10月10日の管理講座に申し込む(締切は10月2日)

令和8年度第1回、玉川せせらぎホール。講座のあとに一級建築士とマンション管理士の個別相談が付いて、どちらも無料です。相談会は最大5組・先着順なので、狙うなら早めに。講座は せたがやコール 03-5432-3333、相談会は居住支援課 03-5432-2504。申込先が別なので、両方に電話してください。

2. 管理状況の届出が済んでいるか確認する

東京都のアドバイザー無料派遣も、世田谷区のCコース助成も、ここが入口条件です。Cコース助成はさらに「届出から5年以内」という条件が付きます。済んでいるかどうか分からなければ、居住支援課(03-5432-2504)に電話1本で確認できます。

3. 3点セットを1つのファイルにまとめる

総会議事録・長期修繕計画・外壁の写真5枚。これを1冊にしておけば、どの窓口に行っても即座に本題に入れます。次の理事会で、誰が用意するかだけ決めてしまってください。

世田谷区は、相談の入口が地域ごとに分散している区です。近くの総合支所で受けられるのは利点ですが、裏を返せば「どこに何があるか分かりにくい」ということでもあります。この記事が、その地図の代わりになれば嬉しく思います。

10月2日という締切がある以上、次の理事会を待っていると間に合わない可能性があります。1分だけでも、この話題をメールで共有してみてください。工法の選択肢や概算のご相談だけでも、私どもでお力になれることがあります。


出典・参考資料


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月18日時点で公表されている世田谷区および東京都・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特にマンション管理アドバイザー制度利用助成については、参照した世田谷区公式ページの更新日が2024年10月3日であり、令和8年度の派遣料・助成条件に変更が加えられている可能性があります。また、東京都のマンション管理士無料派遣は募集数160件に達し次第締め切られます。実際に申請される前に、必ず世田谷区 都市整備政策部 居住支援課(03-5432-2504)および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月18日

大田区の管理組合が無料で使える相談・派遣10選|管理士相談は毎月第3木曜、建築士は第1・3水曜、訪問相談は件数上限あり【令和8年度版】

2026年9月18日 更新

「本間さん、うちは管理会社さんに任せきりでね。でも今度の大規模修繕だけは、第三者の目を一度入れておきたいんですよ。ただ、コンサル料が何十万もかかるんでしょう」

去年の秋、大森北のマンションの理事長さまから、そう言われました。築29年、48戸。1回目の大規模修繕から14年が経っていて、そろそろ2回目を考えなければいけない、という段階の物件です。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンションやビル、ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組んで囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も自分の足で踏んできた人間です。

その理事長さまにお伝えしたのは、ひとつだけでした。大田区には、マンション管理士が組合まで出向いてくれる訪問相談がある。費用はかかりません。まずそこを使って、課題の棚卸しだけでもしてしまいましょう、と。

大田区は23区でもっとも面積が広い区で、蒲田・大森・田園調布・池上・羽田と、マンションの性格が地域ごとにまるで違います。区の支援メニューも、それを反映して「来てもらう」「出向いてもらう」「専門家を呼ぶ」の3系統に分かれています。使い分けができると、動きがずいぶん速くなります。

今日は、大田区のマンション管理組合とビルオーナーさまが、お金をかけずに使える相談・派遣を10個、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。


結論:大田区で無料で使える相談・派遣は10ある

先に一覧でお示しします。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用・回数 申込先
1 マンション管理無料相談会 マンション管理士 無料/毎月第3木曜・3枠 都マンション管理士会大田支部 03-6410-9542
2 マンション管理等訪問相談 マンション管理士(組合へ訪問) 無料/年間件数に上限あり 建築調整課 住宅政策担当 03-5744-1416
3 マンション管理等アドバイザー派遣制度 まちづくりセンターのアドバイザー 派遣料無料 建築調整課 住宅政策担当 03-5744-1416
4 分譲マンション管理セミナー 外部の専門家(弁護士等) 無料/年2回 住宅・空家相談窓口 03-5744-1343
5 マンション交流会 他組合の理事・区職員 無料/申込不要 同上
6 マンション個別相談会 マンション管理士 無料/抽選4組 同上
7 一級建築士による無料建築相談 一級建築士 無料/第1・第3水曜 建築調整課 03-5744-1383(予約制)
8 法律相談 弁護士 無料/25分・対面+オンライン 広聴広報課 03-5744-1135(予約制)
9 不動産取引相談/消費者生活センター 宅建業協会相談員/消費生活相談員 無料 03-5744-1135/03-3736-0123
10 東京都・国の相談窓口 管理士・建築士等 無料 都マンション課 03-5320-5004 ほか

このうち2・3・7は、区役所の建築調整課 住宅政策担当(電話03-5744-1416)が入口になります。4〜6は住宅・空家相談窓口(03-5744-1343)。番号はこの2つを押さえておけば、ほぼ足ります。

ここからが本題です。


1. マンション管理無料相談会:毎月第3木曜、区役所1階南ロビー

区役所に出向いて、マンション管理士に直接聞ける枠です。予約制で、費用はかかりません。

区の公式ページには、次のように書かれています(出典:大田区「マンション管理無料相談会(参加費無料、事前予約制)」、2026年9月1日更新)。

  • 日時:毎月第3木曜日。相談時間は(1)午後1時(2)午後2時(3)午後3時 から選択
  • 会場:大田区役所本庁舎 1階南ロビー(中央の入口から入ってすぐ左のスペース)
  • 相談員:マンション管理士
  • 申込:東京都マンション管理士会 大田支部/電話 03-6410-9542/メール tokyomankan.otasibu@gmail.com

令和8年度の残りの開催日は、公表されている日程表によると次のとおりです。

開催日 曜日
令和8年10月15日 木曜日
令和8年11月19日 木曜日
令和8年12月17日 木曜日
令和9年1月21日 木曜日
令和9年2月18日 木曜日
令和9年3月18日 木曜日

(令和8年9月17日の回は本記事公開時点で終了しています)

ひとつ注意点があります。申込先の電話は留守番電話に設定されています。区の案内では「区役所での相談会に申し込みたい」旨を録音すれば、担当者から折り返し連絡が来る、とされています。かけて誰も出ないからといって、諦めないでください。

区が挙げている相談例は、管理組合の運営、大規模修繕工事の検討や準備、管理規約の改定、そして「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」についての相談です。修繕の話が正面から受けてもらえる枠だ、ということです。

私は理事長さまに、この枠を「見積書を持っていく場」としてお勧めしています。管理会社から出てきた大規模修繕の概算を1枚持って、「この金額感、どう思われますか」と聞く。第三者の管理士がどこに引っかかるかを聞くだけで、理事会の議論の質が変わります。


2. マンション管理等訪問相談:管理士が組合まで来てくれる

大田区の支援メニューで、私がいちばん価値が高いと思っているのがこれです。

東京都マンション管理士会大田支部のマンション管理士が管理組合を訪問し、抱えている問題や取り組むべき課題の整理を支援して、解決の方向性や区・都の支援策の使い方を助言してくれます。費用はかかりません(出典:大田区「マンション管理等訪問相談」)。

理事会に専門家が来てくれる、という形です。理事1人が区役所に行って話を聞いて帰ってくるのと、理事会全員が同じ説明を同じ場で聞くのとでは、その後の合意形成のスピードがまるで違います。

対象:「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」に基づく管理状況の届出を行っている、区内の管理組合等(管理組合設立に向けて準備している区分所有者の団体を含む)

申請:派遣希望日の30日前までに、管理組合等の代表者名で「大田区マンション管理等訪問相談員派遣申請書」を提出。日程調整が必要なので、区は事前連絡を求めています

窓口:建築調整課 住宅政策担当(大田区蒲田五丁目13番14号)/電話 03-5744-1416

ここで、見落とされがちな一文を引いておきます。区のページには「マンション管理士を派遣する年間件数が決まっているため、上限に達し次第、申込みの受付けを終了します」と書かれています。

つまり、早い者勝ちの制度です。私は理事長さまに「総会で決めてから申し込もう」ではなく、「理事会で方向が固まった時点で、まず枠を取ってください」とお伝えしています。9月は、年度の折り返しです。枠が残っているうちに動く意味があります。

なお、このページの更新日は2025年4月15日(令和7年4月15日)です。令和8年度の年間派遣件数そのものは公表されていないため、現時点の受付状況は建築調整課へ直接ご確認ください。本記事では「上限あり・先着」という制度の枠組みのみをお伝えしています。


3. マンション管理等アドバイザー派遣制度:都のアドバイザーを区が無料で呼ぶ

2の訪問相談が「区の管理士」だとすると、こちらは「都のアドバイザー」を区の制度で呼ぶ仕組みです。

区内マンションの適切な管理運営と維持管理水準の向上を図るため、(公財)東京都防災・建築まちづくりセンターが実施する「マンション管理アドバイザー制度」および「マンション建替え・改修アドバイザー制度」によるアドバイザーを、大田区が無料で派遣します(出典:大田区「マンション管理等アドバイザー派遣制度」)。

対象要件が少し特殊なので、丁寧に読んでください。区が挙げているのは次の2つを両方満たす管理組合です。

  1. 「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」に基づく管理状況の届出を行っていること
  2. まちづくりセンターのマンションアドバイザー無料派遣を受けることができない管理組合であること

2つめが分かりにくいので、まちづくりセンター側の無料派遣の枠を並べます。区のページに書かれている内容は次のとおりです。

区分 まちづくりセンターの無料派遣
届出が受理された要届出マンション 1回まで無料
届出が受理され、管理不全の兆候があるマンション 5回まで無料
要届出マンション以外で、管理不全の兆候のないマンション 無料派遣の対象外

要するに、まちづくりセンターの無料枠を使い切った組合、あるいはそもそも都の無料枠の対象にならない組合を、大田区が独自に拾い上げる制度だということです。「もう都の1回は使ってしまった」という組合ほど、この区の制度を知る価値があります。

派遣内容:マンション管理アドバイザー制度の「講座編」「相談編」、マンション建替え・改修アドバイザー制度の「入門編」「検討書の作成」。各コースの詳細は区が公開している制度案内パンフレット(PDF)にまとまっています

申請:派遣希望日の30日前までに、管理組合理事長名(設立準備中の団体は代表者名)または所有者名で申請書(第1号様式)を提出

注意点:派遣料以外の費用(テキスト代、違約金等)は申請者の負担です。また、派遣申請後に辞退すると違約金が発生します。日程は理事会でしっかり固めてから申請してください

こちらのページの更新日は2025年4月1日(令和7年4月1日)です。令和8年度の運用に変更がないかどうかは、申請前に建築調整課(03-5744-1416)へ一度ご確認ください。

「検討書の作成」コースは、大規模修繕か改修か建替えかで理事会が割れているときに効きます。私の経験上、割れているのは意見ではなく前提となる情報であることが多い。第三者がつくった検討書が1冊あるだけで、話が前に進みます。


4〜6. セミナー・交流会・個別相談会:年2回、次は令和9年3月予定

大田区は分譲マンション管理セミナーを年2回、参加費無料で開いています(出典:大田区「分譲マンション管理セミナー、交流会、個別相談会」、2026年8月14日更新)。

令和8年度第1回は、令和8年9月6日(日曜日)に開催されました。内容は次のとおりでした。

  • 日時:令和8年9月6日(日曜日)午後1時から3時
  • 会場:消費者生活センター 2階 大集会室(大田区蒲田五丁目13番26-101号)
  • テーマ:管理組合の基礎知識と改正関係
  • 講師:香川 希理 氏(香川総合法律事務所 代表弁護士)
  • 定員:先着60名

そして重要なのはここです。区のページには「令和8年度第2回セミナー・相談会 令和9年3月開催予定」と明記されています。

セミナー本体(第1部)のあとに、第2部としてマンション交流会とマンション個別相談会が同時間帯で開かれます。第1回の例では、次のような構成でした。

区分 内容 申込
マンション交流会 セミナー終了後、同会場でそのまま開催 事前申込不要
マンション個別相談会 別室でマンション管理士に個別相談 事前申込制・抽選4組

(注)交流会と個別相談会は同じ時間帯のため、両方には参加できません。

個別相談会は抽選4組と狭き門ですが、交流会のほうは申込不要です。私は、こちらを軽く見ないでほしいと思っています。他の組合の理事長と、修繕の話を生でできる場は、そう多くありません。「うちは前回いくらでやった」「その業者はどうだった」という情報は、どんな資料よりも実務的です。

申込先は〒144-8621 大田区蒲田5-13-14 大田区住宅相談窓口(建築調整課住宅政策担当内)、FAX 03-5744-1558、電話 03-5744-1343。第1回はFAX・郵送・電子申請フォームの3通りで受け付けていました。

令和9年3月回の具体的な日程・テーマ・申込開始日は、本記事公開時点では未公表です。第1回の受付開始が開催の約1か月前(令和8年8月1日)だったことを踏まえると、令和9年1月末から2月初旬には区のページを見に行っておくとよさそうです。


7. 一級建築士による無料建築相談:第1・第3水曜、予約制

修繕の話を「建築の専門家」に聞きたいときの枠です。

  • 日時:第1水曜日・第3水曜日 午後1時から午後4時(祝日を除く)
  • 場所:区役所本庁舎1階ロビー
  • 相談員:東京都建築士事務所協会大田支部所属の一級建築士等
  • 相談内容:新築、増築、耐震診断、改修、工事管理など
  • 予約:予約制/電話 03-5744-1383

出典:大田区「一級建築士による無料建築相談」(2026年3月4日更新)。なお区のページには「9月は日程が変更になります。お問い合わせください」との注記があります。9月にご利用の場合は、事前に電話でご確認ください。

「改修」「工事管理」が相談内容に入っているのが、この枠の使いどころです。大規模修繕の工事監理を誰が担うのか——管理会社なのか、設計監理方式で別の設計事務所を入れるのか。ここは金額にして数百万円が動く判断です。第三者の一級建築士に30分聞けるなら、聞いておいて損はありません。

私は、外壁の打診調査の報告書を持っていくことをお勧めしています。打診調査(外壁を専用の道具で叩き、内部の浮きを音で判別する調査)の結果は、素人が読むと「浮きが○㎡」という数字の羅列に見えます。それがこの建物にとってどれくらい深刻なのかを建築士に訳してもらう。その一手間で、理事会の温度が変わります。

打診調査の㎡単価は、私どもがお受けしている案件ではおおむね250〜500円/㎡が目安です。外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、屋上防水は5,000〜8,000円/㎡といったレンジになります。いずれも物件の状態と規模で大きく振れますので、参考値としてご覧ください。


8〜9. 弁護士の法律相談・不動産取引相談・消費者生活センター

管理費の滞納、区分所有者間のトラブル、工事契約の解釈——法律の話になったときの窓口です。

法律相談(無料)

  • 日時:毎週 月曜日・水曜日・金曜日(祝日、12月29日〜1月4日を除く)
  • 時間枠:午後1時30分/1時55分/2時20分/2時45分/3時10分(相談時間は25分)
  • 場所:区民相談室(区役所本庁舎2階)
  • 予約:予約制/電話 03-5744-1135(メール予約不可)。相談希望日の2週間前から受付
  • 対象:大田区に在住・在勤・在学の方
  • オンライン相談あり(午後1時30分〜1時55分の枠、LoGoフォームから申込。画面共有は不可)

出典:大田区「法律相談(無料)」(2026年8月5日更新)。

ひとつ注意があります。区の案内では「原則として、同じ内容の相談は一度だけです。繰り返しの相談はできません」とされています。25分1回きり、と考えて臨んでください。事実関係を時系列で1枚にまとめて持っていくだけで、密度が段違いになります。

区以外の窓口としては、東京都内の3弁護士会が共同運営する法律相談センターの電話無料相談(0570-200-050、月〜金 午前10時〜午後4時、15分程度)があります。区外の物件についてのご相談は、こちらが窓口になります。

不動産取引相談(無料)

  • 日時:第1木曜日・第3木曜日 午後1時から午後4時(受付は午後3時まで)
  • 場所:区民相談室(区役所本庁舎2階)
  • 相談員:宅地建物取引業協会相談員
  • 予約不要・受付順

出典:大田区「不動産取引相談(無料)」(2026年8月5日更新)。予約不要というのは、地味ですが大きな利点です。

大田区立消費者生活センター

訪問販売や電話勧誘で結んでしまった工事契約について相談できる窓口です。

  • 相談専用電話:03-3736-0123
  • 受付:月曜日から金曜日 午前9時から午後4時30分まで(祝日、年末年始を除く)
  • 所在地:大田区蒲田五丁目13番26-101号

出典:大田区「消費生活相談」。

正直に申し上げます。私が現場で20年やってきて、いちばん悔しい思いをするのは、飛び込みの業者に「今すぐ工事しないと危ない」と言われて契約してしまった後のご相談です。屋上に上がってみると、そもそも手を入れる必要がなかった、ということが実際にあります。

契約書にハンコを押す前に、この番号に電話してください。クーリング・オフが使える期間かどうかも、ここで確認できます。


10. 東京都・国の相談窓口:大田区の枠を使い切ったら

東京都:マンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)

東京都が令和5年度から実施している事業です。防災力向上や認知症対応の講習を受けたマンション管理士が、実践的なノウハウの習得や合意形成のアドバイスを行います。

  • 対象:都内に所在するマンション管理組合
  • 回数:1管理組合につき、防災力向上と認知症対応それぞれ2回まで(無料)
  • 注意:派遣回数は通算。令和5〜7年度に派遣を受けている場合、その回数も上限に含まれます
  • 受付期間:令和8年6月23日(火)から令和9年2月26日(金)まで
  • 募集数:防災力向上・認知症対応 合わせて160件。達し次第、新規申込を締切
  • 申込:東京都マンション管理士会のHPから
  • 問合せ:東京都 住宅政策本部 民間住宅部 マンション課 03-5320-5004

出典:東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」。

都内全体で160件という枠です。9月時点で残りが何件かは公表されていませんので、使うと決めたら早めに動いてください。

東京都:管理状況の届出とアドバイザー派遣費用の助成

大田区の制度(上記2・3)は、いずれも条例に基づく管理状況の届出が入口条件になっています。まだ届出をしていない組合は、そこが最初の一歩です。届出制度の詳細は東京都マンションポータルサイト「管理状況届出制度」に、大田区での手続きは大田区の管理状況届出制度のページにまとまっています。

国:(公財)マンション管理センター

全国の管理組合向けに、電話相談を受け付けています。

長期修繕計画の標準様式や修繕積立金ガイドラインなど、国が示している基準の原典にあたれるのが強みです。国土交通省のマンション政策のページもあわせてご覧ください。


何を持っていけばいいか:3点セットだけ用意してください

どの窓口を使うにしても、持参資料で相談の質が決まります。私がいつもお伝えしているのは、次の3点です。

資料 なぜ必要か どこにあるか
直近の総会議事録(2〜3期分) 組合が何を決めて、何を決めていないかが分かる 管理会社または理事長保管
長期修繕計画書 次の修繕の時期と積立金の過不足が一目で分かる 管理会社または理事長保管
管理規約(最新版) 工事の決議要件(普通決議か特別決議か)を判断できる 同上

この3点が揃っていれば、初回の25分や50分で「何から手をつけるか」まで踏み込めます。逆にこれがないと、相談員は一般論しか言えません。

余裕があれば、直近の修繕履歴(いつ何をいくらでやったか)と、外壁の写真を数枚。スマホで撮ったもので十分です。特にひび割れや鉄部の錆は、写真があると建築士の話が具体的になります。


大規模修繕の工法は、無料相談で先に「選択肢」を知っておく

ここからは、私の本業の話を少しだけさせてください。

無料相談で第三者の意見をもらった後、実際の工事に進むとき、大田区のマンションで判断が分かれるのが足場をどうするかです。

蒲田や大森の商業地に建つ物件、羽田周辺の敷地に余裕のない物件、田園調布や久が原の傾斜地に建つ物件——大田区は、足場を組むこと自体が難しい立地が少なくありません。

参考までに、私どもがよくお示しする比較を挙げます。10階建て・外周80m・工期3か月のマンションの場合、仮設足場の費用はおよそ168万円。同じ範囲をロープアクセス工法(建物の屋上からロープで吊り下がって施工する無足場工法)で行うとおよそ59万円。差額は約109万円です。30戸規模の大規模修繕の総額が3,500〜5,000万円というレンジのなかで、仮設足場が占める割合は15〜25%。ここが削れるかどうかは、積立金の議論に直結します。

もちろん、ロープアクセスが常に正解ではありません。躯体の劣化が広範囲に及んでいる物件は、足場を組んでしっかり囲ったほうが結果的に安く済みます。私どもは通常の足場工法、ロープアクセス工法、そして部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物に合うものをご提案しています。詳しくは明誠のロープアクセス工法の技術詳細と大規模修繕の料金の考え方をご覧ください。

工法そのものの技術的な比較や、ロープアクセスの安全基準について深く知りたい方は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに、同業者向けの詳しい解説をまとめています。管理組合の技術担当理事の方が読んでも理解できる内容です。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたり、安全管理の考え方は明誠の安全管理への取り組みにまとめています。訓練体制や資格制度の詳細はロープアクセスドットコム側で公開しています。

これまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。大田区内の物件も含まれています。


よくあるご質問

Q. 大田区の無料相談は、賃貸マンションのオーナーでも使えますか?

A. 窓口によって分かれます。マンション管理無料相談会・訪問相談・アドバイザー派遣は分譲マンションの管理組合が対象です。一方、一級建築士による無料建築相談、法律相談、不動産取引相談は大田区に在住・在勤・在学の個人が対象なので、区内にお住まいのオーナーさまはご利用いただけます。ビル1棟の修繕計画のご相談は、明誠のビルオーナー向けページからもお受けしています。

Q. 訪問相談とアドバイザー派遣、どちらを先に使うべきですか?

A. 課題がまだ整理できていない段階なら訪問相談が先です。マンション管理士が課題の棚卸しから助言してくれます。「大規模修繕か改修か建替えか」のように論点が絞れている段階なら、アドバイザー派遣の検討書作成コースのほうが成果物が残る分、総会で使いやすくなります。

Q. 管理状況の届出をしていません。それでも相談できますか?

A. 相談会(毎月第3木曜)や一級建築士相談、法律相談は届出の有無を問いません。ただし訪問相談とアドバイザー派遣は、条例に基づく管理状況の届出を行っていることが条件です。届出そのものの手続きも相談会で聞けますので、まずそこから始めるのが近道です。

Q. 相談は無料でも、そのあと工事を頼まされませんか?

A. 区の相談窓口はマンション管理士会や建築士事務所協会、弁護士会から派遣された相談員が対応するもので、特定の業者を紹介する場ではありません。区は「特定の弁護士の紹介はしておりません」と明記しています。工事業者の選定は、あくまで管理組合が別途行うことになります。

Q. 大規模修繕の費用はどれくらいが目安ですか?

A. 30戸規模のマンションで3,500〜5,000万円というレンジが一般的です。うち仮設足場が15〜25%を占めます。外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、屋上防水は5,000〜8,000円/㎡が目安ですが、劣化状況と足場条件で大きく変動します。概算のお見積りは無料でお出しできますので、明誠のお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

Q. ロープアクセス工法にすると工期はどれくらい短くなりますか?

A. 足場工法の約60%が目安です。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場工法で3か月かかるところ、ロープアクセス工法なら1.5〜2か月程度。足場の組立・解体に必要な期間がまるごと不要になるためです。居住者の方がバルコニーを使えない期間も、その分短くなります。

Q. 令和9年3月のセミナーはいつから申し込めますか?

A. 本記事公開時点で日程・申込開始日とも未公表です。令和8年度第1回は開催の約1か月前(令和8年8月1日)から受付が始まりました。令和9年1月末ごろから大田区のセミナーページを確認されることをお勧めします。

Q. 管理組合として、明誠に相談することはできますか?

A. もちろんです。工法の選択肢を知りたい、他社の見積りの妥当性を確認したい、といった段階でも構いません。管理組合向けのサービスページに、ご相談から着工までの流れをまとめています。


まとめ:今週、大田区の管理組合が動けること3つ

長くなりましたので、動くべきことだけ3つに絞ります。

1. 管理状況の届出が済んでいるか確認する

訪問相談もアドバイザー派遣も、ここが入口条件です。済んでいなければ、まずここから。建築調整課 住宅政策担当(03-5744-1416)に電話1本で確認できます。

2. 訪問相談の枠を押さえる

年間件数に上限があり、達し次第終了です。9月は年度の折り返し。理事会で方向が固まっているなら、総会を待たずに問い合わせてください。派遣希望日の30日前までの申請が必要なので、逆算するとあまり時間はありません。

3. 3点セットを1つのファイルにまとめる

総会議事録・長期修繕計画・管理規約。これを1冊にしておけば、どの窓口に行っても即座に本題に入れます。次の理事会で、誰が用意するかだけ決めてしまってください。

大田区は、支援の入口が複数ある区です。裏を返せば、どこから入ればいいか分かりにくい。この記事が、その地図の代わりになれば嬉しく思います。

9月中に動けるかどうかが分かれ目です。次の理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。 工法の選択肢や概算のご相談だけでも、私どもでお力になれることがあります。


出典・参考資料


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月18日時点で公表されている大田区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特にマンション管理等訪問相談およびマンション管理等アドバイザー派遣制度については、参照した大田区公式ページの更新日が令和7年(2025年)4月時点であり、令和8年度の運用に変更が加えられている可能性があります。実際に申請される前に、必ず大田区建築調整課 住宅政策担当(03-5744-1416)および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月18日

中野区のマンション漏水・防災対策|妙正寺川・江古田川の浸水履歴と22か所の土砂災害警戒区域から逆算する大規模修繕2026年度版

2026年9月18日 更新

中野区の若宮で、築28年の分譲マンションの理事長さまから相談をいただいたことがあります。「1階の集会室の床が、雨のたびに湿る」と。屋上防水をやり直したばかりで、なぜ直らないのか分からない、というご相談でした。

現場に行って、まず見たのは屋上ではありません。敷地の外、前面道路の高さです。建物の1階床レベルが、道路より20センチ低かった。そして敷地の雨水桝は、その低いほうに向かって水を集める向きに付いていました。屋上防水は無関係だったのです。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。

中野区は、23区のなかでも「川と暗渠(あんきょ、蓋をされて地下に埋められた水路)の記憶がそのまま水のリスクになる」区だと感じています。海に面していないので高潮も津波もない。そのかわり、妙正寺川・江古田川・神田川という3本の川と、桃園川をはじめとする暗渠の筋が、水の行き先をすべて決めています。

今日は、中野区が公表している最新のハザード資料から逆算して、中野区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。


結論:中野区は「高潮も津波もない代わりに、川筋と暗渠と崖が主役の区」です

先に結論から申し上げます。中野区で大規模修繕の順番を決めるとき、私が最初に確認するのは屋上ではありません。自分の建物が川沿いの低地にあるのか、台地の上にあるのか、崖の際にあるのか、それとも暗渠の筋の上にあるのかです。

中野区は、高潮ハザードマップを作成していません。区のハザードマップ作成状況の表には、高潮について「区内に高潮浸水想定区域がない」と明記されています。津波災害警戒区域の指定もありません(出典:中野区「宅地建物取引業者の方へ(水防法に基づくハザードマップ等について)」/更新日 2026年6月24日)。湾岸区で最優先になる高潮・塩害対策は、中野区ではほぼ考えなくてよい。そのぶん、リスクが4つに絞り込めます。

立地 該当エリアの例 主なリスク 最優先の対策
妙正寺川・江古田川の低地 鷺宮・白鷺・若宮・大和町・野方・沼袋・新井・江古田・江原町・上高田 外水(川の氾濫)+内水 1階・地下の開口部の止水/雨水桝の向き
神田川・善福寺川の低地 弥生町・南台・本町・中央一丁目付近 外水+内水、家屋倒壊等氾濫想定区域 擁壁・基礎まわり/1階住戸の床下
桃園川など暗渠の筋 中野・中央・新井の一部(旧水路跡) 内水氾濫(下水道の能力超過) 逆流防止・地下ピットの排水
台地の縁の崖 松が丘・上高田・中央・本町五丁目・弥生町 土砂災害・擁壁の劣化 擁壁改修・斜面側の排水と外壁

この4類型のどこに自分の建物が当たるかを、区のハザードマップで先に確定させる。それをやらずに「まず屋上防水から」と進めてしまうと、順番を1つ間違えるだけで数百万円が無駄になります。冒頭の若宮の物件は、まさにその典型でした。中野区の理事会でいつも最初にお伝えしているのは、この一点です。


中野区のハザードマップを1枚で読む

中野区のハザードマップは、水害と土砂災害を1冊の冊子にまとめた「統合版」として発行されています。管理組合の書類棚を整理するときに、この表を1枚コピーして貼っておくだけで議論が早くなります。

種別 中野区の作成状況 水防法準拠 備考
洪水(外水) 作成済 〇 神田川・妙正寺川・江古田川・善福寺川の流域
雨水出水(内水) 一部作成 × 都の「雨水出水浸水想定区域図」を別途参照
高潮 未作成 ー 区内に高潮浸水想定区域がない
津波 該当なし ー 津波災害警戒区域の指定なし
土砂災害 作成済 ー 区内22か所が警戒区域
造成宅地防災区域 指定なし ー 区内に指定なし

(出典:中野区ハザードマップ/更新日 2026年8月7日、中野区「宅地建物取引業者の方へ」/更新日 2026年6月24日)

最新版は「令和8年7月発行」です

中野区の最新のハザードマップは、令和8年7月発行のものです。令和8年度版では、次の4点が改訂されています。

  • 防災気象情報の変更
  • 風水害タイムラインの変更・追加
  • 学校の統廃合に伴う避難所の変更
  • 家屋倒壊等氾濫想定区域図(氾濫流・河岸浸食)の追加

管理組合の立場から見て、いちばん重いのは4番目です。「家屋倒壊等氾濫想定区域」とは、川があふれたときの水の勢いや、川岸が削られることで建物そのものが壊れるおそれがある範囲を示した図です。浸水深の図とは意味がまったく違います。水に浸かるかどうかではなく、建物が持ちこたえるかどうかの話だからです。

この図が令和8年度版で新しく入ったことを、私が訪問した中野区の管理組合で知っていた方は、まだ多くありませんでした。管理室に置いてあるハザードマップが令和7年以前のものなら、それは差し替えのタイミングです。配布窓口は防災危機管理課(区役所8階)、総合案内窓口(1階)、区内15か所の区民活動センター、区内4か所のすこやか福祉センターです。

想定されている雨は「1時間153ミリ」

中野区の水害ハザードマップが前提にしているのは、1時間最大雨量153ミリ、総降雨量690ミリという想定最大規模の降雨です。これは東京都が公表する「浸水予想区域図」に基づくもので、川からあふれる外水氾濫と、下水道からあふれる内水氾濫を合わせて表示しています。

1時間153ミリという数字は、正直に申し上げてピンと来ないと思います。東京の下水道が標準で想定しているのは1時間50ミリ前後です。つまり設計値の3倍の雨を想定した図だ、ということです。

なお注意点として、色分けの元になっている「浸水予想区域図」そのものは、平成30年に更新されたものが最新です(出典:中野区ハザードマップ)。冊子は令和8年7月に改訂されましたが、浸水深の想定そのものは平成30年時点のものだ、ということは押さえておいてください。

令和8年3月に、内水の「法定図」が出ました

もう1つ、管理組合として押さえておきたい動きがあります。令和8年3月、東京都が水防法第13条の2第1項の規定により排水施設等を指定し、「雨水出水浸水想定区域図」を作成・公表しました。

中野区自身が、自区のハザードマップについて「雨水出水(内水)は水防法準拠ではない」と表の中で明示しています。区のハザードマップに反映されているのは「洪水浸水想定区域」の想定結果であって、「雨水出水浸水想定区域」の結果ではないのです。河川周辺の内水の想定については、東京都下水道局の神田川流域 雨水出水浸水想定区域図を見に行く必要があります。

私はいつも理事長さまに、「区のマップと都の区域図、2枚セットで見てください」とお伝えしています。ここは見落とされやすいところです。

浸水履歴は昭和60年から町丁目別に公開されています

中野区は、昭和60年7月14日から現在までの浸水被害記録を、町丁目ごとのPDFで公開しています(出典:中野区の水害被害記録一覧/更新日 2025年12月22日)。新井、江古田、江原町、上鷺宮、上高田、鷺宮、白鷺、中央、中野、沼袋、野方、東中野、本町、松が丘、丸山、南台、大和町、弥生町、若宮の19町名分と、統合版があります。

しかもこの記録、街区(番地)単位で、床上・床下・小規模事業所の別に件数が載っています。ここまで細かく公開している区は多くありません。

ハザードマップは「これから起きうること」、浸水履歴は「実際に起きたこと」です。私の経験上、修繕の優先順位を決めるときに効くのは、圧倒的に後者です。自分の敷地の番地、あるいは周囲の番地に件数が立っているかどうか。ここは確認していただきたい。総会資料に1枚貼るだけで、議論の温度がまったく変わります。


中野区で使える漏水・防災の地形の読み方

妙正寺川・江古田川の低地:鷺宮・白鷺・若宮・大和町・野方・沼袋・新井・江古田・江原町

中野区北部を東西に蛇行しながら流れるのが妙正寺川です。杉並区の妙正寺池に源を発し、哲学堂公園付近で江古田川を合流して新宿区に抜けます。流域面積21.4平方キロメートル、延長9.7キロメートル。江古田川は流域面積5.0平方キロメートル、延長1.6キロメートルです(出典:中野区内の河川)。

このエリアで押さえておきたいのは、平成17年9月4日の水害です。妙正寺川・善福寺川で甚大な被害が出て、東京都は河川激甚災害対策特別緊急事業の指定を受けました。中野区内では妙正寺川の新昭栄橋から葛橋の間で、平成21年度末までに緊急かつ集中的に護岸整備と河床の掘り下げが行われています。

20年前の水害の記憶が、いま築30年前後のマンションの「効かない対策」として残っているケースを、私は何度も見ています。当時、各戸の玄関前に止水板を置いた。土のうを積んだ。その運用が、理事会のメンバーが入れ替わるうちに引き継がれずに消えている。設備は残っているのに、誰も使い方を知らない。これは工事以前の問題です。

このエリアで私が見てきた漏水は、次の3つが多い。

  1. 1階住戸の床下と玄関ポーチまわり:建物が道路より低い位置にあると、道路の表面水が敷地内に入り、雨水桝があふれる。排水設備の容量ではなく、地面のレベル差の問題であることが多い
  2. 外壁の水切り(みずきり、壁面を伝う水を切って落とすための部材)の欠損:低層で軒が浅い建物ほど、壁を伝う水量が多くなる
  3. バルコニー側の排水口(ドレン)の詰まり:桜や欅の落ち葉が多い地域ほど顕著です

神田川・善福寺川の低地:弥生町・南台・本町・中央一丁目付近

神田川は三鷹市の井の頭池に源を発し、流域面積105.0平方キロメートル、延長24.6キロメートルの一級河川です。中野区弥生町地先で善福寺川を、中央一丁目地先で桃園川下水道幹線を合流します(出典:中野区内の河川)。都内の中小河川では最大規模です。

ここで「桃園川下水道幹線」という名前が出てくるのが、中野区の特徴です。かつての桃園川は、いまは暗渠になって下水道幹線として使われ、地上は桃園川緑道になっています。地図の上では川が見えないのに、地下には川があって、雨が降ると水が集まってくる。この構造が、中野・中央エリアの内水リスクの正体です。

暗渠の筋の上に建つ建物で、私が実際に見てきたのは次の3つです。

  1. 排水管の逆流:下水道本管の水位が上がると建物側の排水が流れず、地下階の床排水口や地下ピットから逆流する
  2. 地下駐車場スロープからの流入:スロープの上端に段差がなく、道路の表面水がそのまま流れ込む
  3. 地下ピットへの湧水:地下水位が高いエリアで、コンクリートの打継ぎ部から少しずつ滲む

このうち1番目は、大規模修繕の対象と思われていないことが多い。ですが逆流防止弁(排水が逆向きに流れないようにする弁)の設置と点検は、防水工事より優先度が高い場合があります。漏水の原因の切り分けについては漏水対応の考え方にも整理しています。

崖の際:松が丘・上高田・中央・本町五丁目・弥生町

中野区では、東京都が土砂災害防止法に基づく基礎調査結果を踏まえ、区内22か所を土砂災害警戒区域(イエローゾーン)に、うち9か所を土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に指定しています(出典:中野区「土砂災害警戒区域」/更新日 2026年8月7日)。

町名 警戒区域(イエロー) 特別警戒区域(レッド)
松が丘 4か所 1か所
上高田 9か所 5か所
中央 3か所 0か所
東中野 0か所 0か所
本町 2か所 0か所
弥生町 4か所 3か所
計 22か所 9か所

指定状況は動きます。中野区の場合、次のような変更が公式に整理されています。

  • 2021年(令和3年)5月28日:東中野五丁目(区域番号114001-K014)の土砂災害(特別)警戒区域の指定が解除
  • 2023年(令和5年)6月21日:上高田四丁目(114001-K011)で警戒区域の一部縮小、特別警戒区域の全域が指定解除
  • 2024年(令和6年)6月21日:上高田四丁目(114001-K009)の特別警戒区域の指定が解除
  • 2024年(令和6年)6月21日:弥生町六丁目(114001-K021)の特別警戒区域が一部縮小
  • 2024年(令和6年)6月21日:中央一丁目(114001-K023)が警戒区域として新たに指定

ここで注目していただきたいのは、解除もあれば、新規指定もあるという点です。「うちは前に確認したから大丈夫」は通用しません。中野区は区域番号ごとに図面PDFを公開しているので、自分の敷地に近い番号の図面を1枚ダウンロードして、管理室のファイルに綴じておくのがいちばん確実です。

上高田が9か所と突出しているのは、妙正寺川が削った谷と、その北側の台地の高低差が大きいためです。上高田・松が丘のエリアは、崖の上と下で建物の対策がまったく変わります。崖の上なら擁壁と排水、崖の下なら建物背面の外壁と基礎まわり。同じ町名でも真逆になるということです。


中野区の治水施設は「まちを守る施設」であって「建物を守る施設」ではありません

中野区の水害リスクを語るとき、避けて通れないのが治水施設の話です。中野区内・周辺には次の調節池があります(出典:中野区内の河川)。

調節池名 貯留量(立方メートル) 上部利用形態
妙正寺川第一 30,000 公園・住宅
妙正寺川第二 100,000 哲学堂公園等
上高田 160,000 上高田運動施設
落合 50,000 落合公園
鷺宮 35,000 白鷺せせらぎ公園
北江古田(江古田川) 17,000 江古田の森公園

さらに大きいのが、神田川・環状七号線地下調節池です。延長4.5キロメートル、内径12.5メートル、貯留量は約54万立方メートル。環状七号線の路面下、約40メートルの深さに造られたトンネルです。第一期事業(青梅街道〜甲州街道間 約2.0キロメートル、最大貯留量約24万立方メートル)は昭和63年度に着手し、平成9年4月から取水を開始。第二期事業(延長2.5キロメートル、貯留量30万立方メートル)は平成20年3月に全施設が完成しています。

これらの施設によって、中野区の河川溢水の被害は確実に減ってきました。区自身も、豪雨対策実施計画のなかで「河川改修工事や環状七号線地下調節池の整備などにより河川溢水の被害は減少してきている」と書いています。

ただし、同じ文章はこう続きます。「低地での道路冠水や下水道からの内水氾濫による住宅への浸水被害などの都市型水害が発生しています」(出典:中野区豪雨対策実施計画)。

つまり、川はかなり抑え込めた。残っているのは内水だ、というのが中野区の現在地です。

「環七の下に巨大な調節池があるからうちは大丈夫」という理解は、だから危険です。調節池が守っているのは川の水位であって、あなたの建物の地下ピットではありません。建物ごとの対策は、建物ごとにやるしかない。


中野区のマンションで、修繕の順番をどう決めるか

ここからは実務の話です。私が中野区の管理組合さまにお伝えしている、順番の決め方です。

第1優先:水の入口を止める(数万円〜数十万円)

費用対効果がいちばん高いのは、実は工事ではありません。

  • 雨水桝・ドレンの清掃と、桝の蓋の向きの確認
  • 地下階の逆流防止弁の作動確認(書類ではなく実働で)
  • 排水ポンプの試運転と、非常用電源の有無の確認
  • 止水板・土のうの保管場所と、使い方を知っている人が今の理事会にいるか

ここまでは、多くの場合で数万円から数十万円の範囲です。にもかかわらず、台風のときに効く度合いがいちばん大きい。

第2優先:外壁の打診調査で、浸入経路を特定する(250〜500円/平方メートルが目安)

漏水の相談で私がいちばん多く見る失敗は、原因の切り分けをせずに工事に入ってしまうことです。屋上防水をやり直したのに直らない。外壁を塗り直したのに直らない。冒頭の若宮の事例がまさにそうでした。

外壁の打診調査(打診棒で壁面を叩き、内部の浮きを音で判別する調査)の費用は、1平方メートルあたり250〜500円が一般的な目安です。ただし建物の高さ・形状・調査範囲によって変動しますので、あくまでレンジとお考えください。

ここでロープアクセス工法(産業用ロープで屋上から下降して作業する無足場の工法)が効いてきます。中野区は、前面道路が狭く、隣地との距離がない物件が非常に多い。足場が架けられない、あるいは架けると駐車場や通路が使えなくなるという物件が多数あります。ロープアクセスなら、地面の条件に左右されずに調査と補修が同時にできます。工法の技術的な詳細は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで解説しています。

第3優先:防水と外壁の本工事(規模により大きく変動)

参考までに、㎡単価の一般的な目安を挙げておきます。

工種 ㎡単価の目安
外壁塗装 3,500〜4,500円/平方メートル
打診調査 250〜500円/平方メートル
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/平方メートル

30戸規模のマンションの大規模修繕であれば、総工費のレンジはおおむね3,500万〜5,000万円、そのうち仮設足場が15〜25%を占めるのが一般的です。いずれも物件の規模・形状・劣化状況によって大きく変動しますので、参考値としてご覧ください。

この「仮設足場15〜25%」が、中野区ではとくに効いてきます。たとえば10階建て・外周80メートル・工期3か月の物件で、仮設足場が約168万円かかるケースがあるとします。同じ範囲をロープアクセスで対応できれば、概算で59万円程度。差額はおよそ109万円です。これも物件条件で変わりますが、足場が架けにくい中野区の路地奥の物件ほど、この差は開きます。料金の考え方については大規模修繕の料金の考え方にまとめています。

ちなみに株式会社明誠は、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたります。安全管理の考え方は明誠の安全管理をご覧ください。


雨の降り方そのものが変わっています

気象庁の「日本の気候変動2025」によれば、アメダスで観測された1時間降水量50ミリ以上の短時間強雨の発生回数は、1976〜2024年の49年間で約1.5倍に増加しています。1時間80ミリ以上では約1.7倍です(出典:気象庁「日本の気候変動2025」、気象庁「アメダスで見た短時間強雨発生回数の長期変化について」)。

観測地点が増えたからではありません。1,300地点あたりに換算したうえでの比較です。

つまり、20年前に建てた建物の防水性能は、20年前の雨を前提にしているということです。設計時に想定していなかった降り方を、いま実際に受けている。中野区のように川と暗渠が入り組み、下水道に一気に水が集まる地形では、この差がそのまま漏水事故として出てきます。

現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、「あと1年早く相談してもらえていれば、この金額で済んだのに」という場面です。躯体(建物の骨組み)に水が回って鉄筋が錆びると、費用は一気に跳ね上がります。


よくあるご質問

Q. 中野区は高潮も津波もないと聞きましたが、水害の心配は少ないということですか?

A. 中野区には高潮浸水想定区域がなく、津波災害警戒区域の指定もありません。ただし、これは高潮・津波のリスクがないという意味であって、水害のリスクがないという意味ではありません。中野区で主役になるのは、妙正寺川・江古田川・神田川の外水氾濫と、下水道からあふれる内水氾濫です。区の水害ハザードマップと、東京都下水道局の神田川流域 雨水出水浸水想定区域図の両方をご確認ください。

Q. 「家屋倒壊等氾濫想定区域図」とは何ですか?浸水深の図と何が違うのですか?

A. 浸水深の図が「どれくらいの深さまで水に浸かるか」を示すのに対し、家屋倒壊等氾濫想定区域図は「川の水の勢い(氾濫流)や川岸が削られること(河岸浸食)で、建物そのものが壊れるおそれがある範囲」を示した図です。令和8年7月発行の中野区ハザードマップから新しく追加されました(34〜37ページ)。管理室のマップが令和7年以前のものなら、差し替えをおすすめします。

Q. 自分の建物の番地に過去の浸水被害があったかは、どこで確認できますか?

A. 中野区の水害被害記録一覧で、昭和60年7月14日から現在までの記録を町丁目別のPDFで確認できます。街区(番地)単位で、床上・床下・小規模事業所の別に件数が載っています。個人情報保護の観点から「号」までは表示されていません。

Q. 自分の建物が土砂災害警戒区域に入っているかは、どこで確認できますか?

A. 中野区「土砂災害警戒区域」のページで、区域番号ごとの図面PDFが公開されています。松が丘・上高田・中央・本町・弥生町の該当箇所です。東京都土砂災害警戒区域等マップでも位置を確認できます。ご不明な点は中野区総務部防災危機管理課防災対策係(電話 03-3228-8933)へどうぞ。

Q. 崖側の外壁からの漏水は、大規模修繕で直りますか?

A. 地中に接している部分からの浸入であれば、通常の外壁塗装や屋上防水では止まりません。まず調査で浸入経路を特定することが先決です。原因の切り分けができていない状態で工事に入るのが、費用が無駄になる最大のパターンです。漏水対応の考え方にも詳しくまとめています。

Q. 前面道路が狭くて足場が架けられません。外壁の点検はどうすればよいですか?

A. ロープアクセス工法であれば、屋上からロープで下降しながら打診調査と補修が同時にできます。地面の条件に左右されないのが最大の利点です。中野区のように路地が細く、隣地との距離がない物件では特に有効です。上空からの俯瞰が必要な場合はドローン調査と組み合わせることもあります。技術的な詳細はロープアクセスドットコムでも解説しています。

Q. 打診調査の費用はどれくらいですか?

A. 一般的な目安は1平方メートルあたり250〜500円ですが、建物の高さ・形状・調査範囲により変動します。足場を架けずにロープアクセスで実施する場合、足場費用がまるごと不要になるぶん、総額が抑えられるケースが多くあります。料金の考え方もご参照ください。

Q. 漏水の緊急対応は、どれくらいで来てもらえますか?

A. 状況によりますが、ロープアクセスであれば足場の設置を待つ必要がないため、当日から翌営業日での初動が可能なケースが多くあります。現地調査と概算のご提示までは無料で承っており、管理組合向けのご説明資料もご用意しています。まずは状況をお電話かフォームでお知らせください。


まとめ:今週、中野区の理事会で動けること3つ

  1. 管理室のハザードマップの版を確認する — 中野区ハザードマップは令和8年7月発行が最新です。家屋倒壊等氾濫想定区域図が新たに入りました。古ければ区役所8階の防災危機管理課または各区民活動センターで差し替えを
  2. 自分の番地の浸水履歴を1枚プリントして、総会資料に貼る — 昭和60年からの記録が街区単位で公開されています。「これから起きうること」より「実際に起きたこと」のほうが、修繕の順番を決める材料になります
  3. 地下階の逆流防止弁と排水ポンプを、実際に動かしてみる — 点検記録の紙ではなく、実働です。台風期のいまがいちばん適した時期です

中野区は、高潮も津波もない代わりに、妙正寺川・江古田川・神田川の3本の川と、桃園川をはじめとする暗渠の筋、そして台地の縁の崖という地形が、水の動きをすべて決めている区です。だからこそ、「23区の平均的な修繕計画」がいちばん当てはまらない区でもあります。自分の建物がどこに立っているかを地図で確定させることから、修繕の議論を始めていただきたいと思います。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。管理組合さま向けのサービス内容は管理組合向け大規模修繕のご案内、賃貸・オーナー物件はビルオーナー向けのご案内、収益不動産としての資産価値維持の考え方はオーナー向けの提供価値にまとめています。お問い合わせはお問合せフォームからどうぞ。

明誠のこれまでの施工事例(約6,000棟)は https://rita-construction.com/renew/blog/category/works/ からご覧いただけます。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月18日時点で公表されている中野区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。ハザードマップの版や土砂災害警戒区域の指定状況は年度途中でも改訂・変更があり得ます。実際にご判断される前に、中野区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月18日

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