中野区のマンション管理計画認定制度|独自基準なし・手数料5,900円以内の2026年度版

結論:中野区で管理計画認定を取ると何が変わるか、手数料はいくらか

私は大規模修繕の現場で20年近く、理事長さまや管理会社の担当者さまと修繕積立金の話をしてきました。最近ご相談が増えているのが「マンション管理計画認定制度」です。中野区に絞って結論から申し上げます。

中野区は令和5年8月1日からこの制度の運用を始めました。近隣の渋谷区などが防災・コミュニティに関する独自の上乗せ基準を追加しているのに対し、中野区は「独自の基準はございません」と明言しており、国が定めた共通基準のみで審査が行われます(出典:中野区 マンション管理計画認定制度)。上乗せ項目を別途整備する必要がない分、他区に比べて準備の焦点を長期修繕計画そのものの中身に絞りやすいのが中野区の特徴です。

手数料は、当初認定・更新申請ともに基本額4,100円に、長期修繕計画が1つ増えるごとに1,800円を加算する仕組みです(出典:中野区事務手数料条例)。一般的な単棟型マンションで長期修繕計画が1本であれば、区への手数料は4,100円のみで済みます。認定を取得すると、固定資産税の減額やフラット35の金利引下げなど、長期修繕計画の実行そのものを後押しする経済効果が得られます。この記事では、中野区で実際に認定を目指す理事会が押さえるべき手数料・要件・スケジュールを、現場の実務目線でまとめました。

認定主体はどこか(中野区固有)

マンション管理計画認定制度は、都道府県・政令指定都市・中核市などが「認定行政庁」として運用する仕組みです。東京都の場合、島しょ部を除く区市の区域は各区市が認定事務を担い、中野区のマンションについては中野区自身が認定行政庁になります(出典:東京都マンションポータルサイト)。

中野区で制度を担当しているのは都市基盤部住宅課住宅政策係で、電話番号は03-3228-5564です(出典:東京都マンションポータルサイト 区市町村担当窓口一覧(令和8年4月1日時点))。中野区の制度案内では、必要に応じて事前に区へ相談することが案内されています。私はこれまで多くの管理組合の申請準備に立ち会ってきましたが、書類を全部そろえてから疑問点が出てくるより、早い段階で一度電話を入れておくほうが結果的にスムーズに進むケースをよく見ています。

認定17要件(総会・修繕計画・修繕積立金・長期修繕計画 等)

管理計画認定制度は令和4年4月にスタートした国の制度で、国土交通省が定める認定基準は大きく5分野・合計17項目で構成されています(出典:国土交通省 マンションの管理計画認定の基準)。中野区も独自基準を設けていないため、審査はこの国基準そのものになります。

① 管理組合の運営(3項目)
– 管理者等が定められている
– 監事が選任されている
– 集会(総会)が年1回以上開催されている

② 管理規約(3項目)
– 管理規約が作成されている
– 緊急時等における専有部分への立入りや、修繕等の履歴情報の保管について規約に定めがある
– 管理組合の財務・管理に関する情報提供について規約に定めがある

③ 管理組合の経理(3項目)
– 管理費と修繕積立金が区分経理されている
– 修繕積立金会計から他の会計への充当がされていない
– 直前の事業年度末時点で、3か月以上の修繕積立金滞納額が全体の1割以内である

④ 長期修繕計画の作成及び見直し等(6項目)
– 計画の内容と修繕積立金額が総会で決議されている
– 計画の作成または見直しが7年以内にされている
– 計画期間が30年以上、かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれている
– 計画で一時的な修繕積立金の徴収を予定していない
– 計画期間全体の総額から算定した修繕積立金の平均額が著しく低額でない
– 計画期間の最終年度において借入金残高のない計画となっている

⑤ その他(2項目)
– 組合員名簿、居住者名簿が備えられており、年1回以上内容確認が行われている

私の経験上、多くの管理組合がつまずくのは④の長期修繕計画まわりです。特に「計画の作成または見直しが7年以内」という項目は、長らく計画を更新していないマンションほど、認定申請の前にまず計画改訂という一手間が必要になります。中野区は独自基準がない分、この長期修繕計画の中身の精度こそが審査の実質的な合否を左右すると考えてよいでしょう。

独自基準がないことの実務への影響

東京都・神奈川県では、市区町村が国の基準に独自の項目を上乗せできる仕組みがあり、渋谷区や一部の区市はこれを活用して防災・コミュニティ関連の項目を追加しています。一方で中野区は、令和5年8月の制度開始時点から現在まで独自基準を設けていません(出典:中野区 マンション管理計画認定制度)。

これは管理組合にとって、準備すべき書類・実績が国の17要件だけで完結することを意味します。防災マニュアルの新規整備や防災訓練の実施記録づくりといった追加の負担が発生しない分、他区より着手しやすい制度だと言えます。ただし油断は禁物です。独自基準がないからといって国の基準自体が緩いわけではなく、特に長期修繕計画と修繕積立金に関する6項目は、日頃から計画的に管理してきたマンションでなければクリアが難しい内容です。中野区で「独自基準がないから楽」と考えるのではなく、「上乗せがない分、国の基準そのものにしっかり向き合う」という姿勢で臨むことを、私は理事会の皆さまにお伝えしています。

なお、認定の有効期間は5年間で、中野区は満了日が近づいても区から更新の案内を送らない運用になっています(出典:中野区 マンション管理計画認定制度)。認定を取ったら終わりではなく、有効期限を管理組合側で自主的に管理しておく必要がある点も見落とされがちなポイントです。

手数料と申請ルート(当初・更新・変更、マンション管理センター経由)

中野区の手数料は、申請の種類によって次のように分かれています(出典:中野区事務手数料条例)。

申請区分 基本額 加算額
当初認定・更新申請 4,100円 長期修繕計画1つ増えるごとに1,800円
変更認定(管理組合の運営に関する事項) 4,800円 2,600円
変更認定(管理規約に関する事項) 4,000円 2,600円
変更認定(管理組合の経理に関する事項) 4,600円 2,800円
変更認定(長期修繕計画の作成・見直し等に関する事項) 9,800円 5,200円
変更認定(その他の事項) 2,900円 1,700円
変更認定(上記以外の事項) 2,000円 900円

変更内容が複数の区分にまたがる場合は、各項目の手数料を合算した金額が最終的な手数料になります。中野区への手数料とは別に、公益財団法人マンション管理センターの事前確認を利用する場合はシステム利用料10,000円と、長期修繕計画1計画あたりの事前確認審査料10,000円がかかります(出典:マンション管理センター 管理計画認定手続支援サービス)。単棟・単一計画の標準的なケースであれば、区の手数料4,100円とマンション管理センターの実費20,000円を合わせて、おおむね24,100円程度を見込んでおくとよいでしょう。

申請の流れは次のとおりです。

  1. 必要に応じて中野区(住宅課住宅政策係)へ事前相談する
  2. 長期修繕計画・修繕積立金額を含む申請内容について、総会で決議を得る
  3. 公益財団法人マンション管理センターに事前確認を依頼し、事前確認講習を修了したマンション管理士の審査を受ける
  4. 基準に適合すれば「事前確認適合証」が交付される
  5. 適合証をもとに、管理計画認定手続支援システムを通じて中野区へオンライン申請する
  6. 手数料を納付し、中野区が認定基準を満たすか審査する
  7. 認定通知書を受領(認定の有効期間は5年間、更新可能)

なお、当初認定・更新申請はオンライン申請が可能ですが、変更認定申請はオンライン不可で、郵送または窓口での提出に限られる点に注意してください(出典:中野区 マンション管理計画認定制度)。

認定の3つの経済効果(長寿命化促進税制/フラット35/共用部リフォーム融資)

認定を取ること自体がゴールではありません。認定マンションになると、実際に使える経済的なメリットが3つあります。

① マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)
管理計画認定を受けたマンションが、長寿命化に資する大規模修繕工事を実施した場合、工事翌年度の固定資産税額が一定割合減額される制度です(出典:国土交通省 マンション長寿命化促進税制)。適用には工事内容や申請時期の要件があるため、工事契約前に管理会社・施工会社と減額要件を確認しておく必要があります。

② フラット35の金利引下げ・フラット50の利用
住宅金融支援機構のフラット35には、管理計画認定マンションを対象にした金利引下げメニューがあります。また、通常は利用できないフラット50(最長50年の長期固定金利ローン)も、認定マンションの住戸であれば利用可能になります(出典:国土交通省 マンション管理計画認定制度)。区分所有者が住戸を売却・購入する際の資産価値にも直結するポイントです。

③ マンション共用部分リフォーム融資の金利優遇
管理組合が大規模修繕の資金を借り入れる際の「マンション共用部分リフォーム融資」でも、認定マンションは金利優遇の対象になります(出典:住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資)。修繕積立金だけで工事費をまかなえない場合の資金調達コストを抑えられる点は、理事会にとって実務的なメリットです。

私はいつも理事長さまに「認定は取って終わりではなく、取った後にどう使うかが本題です」とお伝えしています。特に③の融資メリットは、ロープアクセス工法を組み合わせて足場費を圧縮し、借入額そのものを減らす工夫と合わせると効果がさらに大きくなります。実際に私が関わった案件では、10階建て・外周80m・工期3か月程度の建物で、通常足場が約168万円かかるところをロープアクセス工法に切り替えたことで約59万円まで下がり、差額はおよそ109万円という例もありました(工法や現場条件により変動します)。この種の工法選択も、長期修繕計画の「著しく低額でない修繕積立金」という認定要件をクリアするための現実的な打ち手になります。ロープアクセス工法の技術的な仕組みや訓練体制については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく紹介しています。

逆算スケジュール(総会決議→書類準備→認定申請→交付)

中野区の申請ルートは事前確認・本申請と段階を踏むため、着手が遅れるほど工期に影響します。目安として、次の順序で逆算してください。

ステップ 目安時期 内容
① 総会決議 申請の4〜6か月前 長期修繕計画・修繕積立金額を総会で決議
② 長期修繕計画の点検・改訂 申請の3〜5か月前 作成・見直しから7年を超えていないか確認、必要なら改訂
③ 中野区への事前相談 申請の2〜3か月前 住宅課住宅政策係へ連絡し、疑問点を解消
④ マンション管理センターへ事前確認依頼 申請の1〜2か月前 書類提出、事前確認審査
⑤ 適合証取得・区へオンライン申請 申請月 適合証をもとに中野区へ申請
⑥ 認定交付 申請から数週間〜1か月程度 審査完了後、認定通知書受領

総会決議が必要な項目が多いため、通常総会が年1回しかない管理組合は、逆算すると総会の半年以上前から準備を始める計算になります。私の経験上、ここでいちばん時間がかかるのは、独自基準の整備ではなく「長期修繕計画そのものの見直し」です。計画が古いまま放置されているマンションでは、認定申請の前に計画自体の改訂作業が必要になるケースが少なくありません。あわせて、令和7年5月30日に公布された老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律(令和7年法律第47号、同年11月28日一部施行)により、区分所有法まわりの実務も見直しが進んでいます。長期修繕計画を改訂するタイミングで、こうした最新の法制度の動きも管理会社や専門家に確認しておくと安心です。

まとめ+今週動くこと3点

中野区のマンション管理計画認定制度は、独自の上乗せ基準を設けていない分、国の共通基準に集中して準備できるのが特徴です。手数料も当初・更新であれば基本4,100円と、他区に比べて分かりやすい水準に収まっています。正直に申し上げると、独自基準がないからといって審査が甘くなるわけではなく、長期修繕計画と修繕積立金に関する要件は、日頃の管理の積み重ねがそのまま結果に表れる部分です。

今週、理事会で動いていただきたいことを3点にまとめます。

  1. 長期修繕計画の最終見直し年月日を確認し、7年を超えていないかチェックする
  2. 直前の事業年度末時点での修繕積立金滞納額が全体の1割を超えていないか確認する
  3. 中野区都市基盤部住宅課住宅政策係(03-3228-5564)へ、認定を検討している旨を一度相談してみる

大規模修繕の実施計画とあわせて認定取得を進めたい場合は、足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法のどれが自分たちの建物に合うかという検討も、同じタイミングで進めておくと効率的です。ロープアクセス工法の技術的な詳細については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムでも解説していますので、あわせてご覧ください。

よくあるご質問

Q. 中野区にマンション管理計画認定制度の申請手数料はいくらかかりますか?

A. 当初認定・更新申請は基本額4,100円で、長期修繕計画が1つ増えるごとに1,800円が加算されます。マンション管理センターの事前確認を利用する場合は、別途システム利用料10,000円と長期修繕計画1計画あたりの審査手数料10,000円がかかります。

Q. 中野区には独自の上乗せ基準がありますか?

A. ありません。中野区は令和5年8月の制度開始時点から現在まで独自基準を設けておらず、国が定めた共通基準のみで審査を行っています。

Q. 中野区に直接申請することはできますか?

A. 当初認定・更新申請は管理計画認定手続支援システムを通じてオンラインで申請できます。ただし変更認定申請はオンライン不可で、郵送または窓口での提出に限られます。

Q. 認定の有効期間はどれくらいですか?

A. 認定日から5年間です。中野区は満了日が近づいても更新案内を送らない運用のため、有効期限は管理組合側で自主的に管理する必要があります。

Q. 認定を取ると具体的にどんなメリットがありますか?

A. 長寿命化に資する大規模修繕工事を行った場合の固定資産税減額、フラット35の金利引下げおよびフラット50の利用、マンション共用部分リフォーム融資の金利優遇といった経済的なメリットがあります。

Q. 長期修繕計画が古いままでも申請できますか?

A. 認定基準では、計画の作成または見直しが7年以内であることが求められます。7年を超えている場合は、申請前に計画の改訂が必要です。

Q. 修繕積立金の滞納があると認定は取れませんか?

A. 直前の事業年度末時点で、3か月以上の滞納額が全体の1割を超えていると基準を満たしません。滞納管理の状況を事前に確認しておくことをおすすめします。

大規模修繕そのものの進め方や工法選定でお悩みの場合は、ロープアクセス工法のご紹介や大規模修繕工事の安全管理のページもあわせてご参照ください。管理組合向けのサポート内容は管理組合さま向けサービスにまとめています。株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけており、ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。これまでの明誠の施工事例もあわせてご覧いただけます。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。通常足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3工法から、建物特性に応じて最適な工法を提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月23日

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月23日時点で公表されている中野区、東京都、国土交通省、公益財団法人マンション管理センター、住宅金融支援機構の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・基準変更があり得ます。実際に申請される前に、必ず中野区都市基盤部住宅課住宅政策係(03-3228-5564)および公益財団法人マンション管理センターへ最新の内容をご確認ください。

出典・参考資料

渋谷区のマンション管理計画認定制度|手数料無料化と区独自基準2026年度版

結論:渋谷区で管理計画認定を取ると何が変わるか、手数料はいくらか

私は大規模修繕の現場で20年近く、理事長さまや管理会社の担当者さまと修繕積立金の話をしてきました。その中で最近いちばん増えている相談が「マンション管理計画認定制度」です。渋谷区に絞って結論から申し上げます。

渋谷区は令和8年4月1日から、区への認定申請手数料を無料にしました。以前は申請のたびにコストがかかっていましたが、この変更で管理組合の負担は軽くなっています(出典:渋谷区ポータル マンション管理計画認定制度)。

一方で同じ令和8年4月1日から、渋谷区独自の上乗せ基準(防災・コミュニティ関連)が新設されました。手数料は下がったが要件は増えた、というのが渋谷区の令和8年度の実像です。認定を取得すると、固定資産税の減額やフラット35の金利引下げなど、長期修繕計画の実行そのものを後押しする経済効果が得られます。この記事では、渋谷区で実際に認定を目指す理事会が押さえるべき手数料・要件・スケジュールを、現場の実務目線でまとめました。

認定主体はどこか(渋谷区固有)

マンション管理計画認定制度は、都道府県・政令指定都市・中核市などが「認定行政庁」として運用する仕組みです。東京都の場合、島しょ部を除く区市の区域は各区市が認定事務を担い、渋谷区のマンションについては渋谷区自身が認定行政庁になります(出典:東京都マンションポータルサイト)。

ただし渋谷区では、区への直接申請は原則できません。申請は公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」を経由する仕組みになっており、区への直接申請が認められるのは変更認定申請のみです(出典:渋谷区ポータル マンション管理計画認定制度)。

さらに渋谷区では、マンション管理センターへ事前確認を依頼する前に、渋谷区への事前相談が必須とされています。この事前相談で、後述する渋谷区独自基準への適合状況を確認する流れです。私はこの「事前相談が必須」という点を見落として、書類を全部そろえてから区に問い合わせて手戻りになった理事会を実際に見ています。窓口は住宅政策課住環境整備係(電話03-3463-3548)です。申請を検討される段階で、まずこちらに一本電話を入れることをおすすめします。

認定17要件(総会・修繕計画・修繕積立金・長期修繕計画 等)

管理計画認定制度は令和4年4月にスタートした国の制度で、国土交通省が定める認定基準は大きく5分野・合計17項目で構成されています(出典:国土交通省 マンションの管理計画認定の基準)。渋谷区もこの国基準をベースに審査します。

① 管理組合の運営(3項目)
– 管理者等が定められている
– 監事が選任されている
– 集会(総会)が年1回以上開催されている

② 管理規約(3項目)
– 管理規約が作成されている
– 緊急時等における専有部分への立入りや、修繕等の履歴情報の保管について規約に定めがある
– 管理組合の財務・管理に関する情報提供について規約に定めがある

③ 管理組合の経理(3項目)
– 管理費と修繕積立金が区分経理されている
– 修繕積立金会計から他の会計への充当がされていない
– 直前の事業年度末時点で、3か月以上の修繕積立金滞納額が全体の1割以内である

④ 長期修繕計画の作成及び見直し等(6項目)
– 計画の内容と修繕積立金額が総会で決議されている
– 計画の作成または見直しが7年以内にされている
– 計画期間が30年以上、かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれている
– 計画で一時的な修繕積立金の徴収を予定していない
– 計画期間全体の総額から算定した修繕積立金の平均額が著しく低額でない
– 計画期間の最終年度において借入金残高のない計画となっている

⑤ その他(2項目)
– 組合員名簿、居住者名簿が備えられており、年1回以上内容確認が行われている

私の経験上、多くの管理組合がつまずくのは④の長期修繕計画まわりです。特に「修繕積立金の平均額が著しく低額でない」という項目は、目先の値上げを避けたい理事会心理と真っ向からぶつかります。ここは認定を取る・取らないに関わらず、資産価値を守るために避けて通れない論点だと私は考えています。

独自基準の有無と実務への影響

東京都・神奈川県では、市区町村が国の基準に独自の項目を上乗せできる仕組みがあり、渋谷区もこれを活用しています。渋谷区は令和8年4月1日から、以下の独自基準を追加しました(出典:渋谷区ポータル マンション管理計画認定制度)。

  • 防災マニュアルの作成:マンション独自の防災マニュアルを整備していること
  • 防災対策(次のいずれか1つ以上):年1回以上の防災訓練実施/自主防災組織の設置/防災資材・備蓄物資の整備/避難行動要支援者の把握
  • コミュニティ活動(次のいずれか1つ以上):自治会の設置または設置計画/地域町会・自治会への加入/地域活動への参加(美化活動、防災訓練等)/町会・自治会との連絡担当者の選任

経過措置として、令和8年3月31日までに事前確認申請を済ませた管理組合には旧基準が適用されます。これから申請する管理組合は、令和8年4月1日以降の新基準(独自基準込み)で審査される点に注意してください。

実務への影響は小さくありません。防災マニュアルや防災訓練の実施記録は、多くのマンションで「作った気になっているが、更新されていない」「総会議事録に記録が残っていない」状態になりがちです。認定を目指すなら、防災訓練の実施日・参加人数・実施内容を議事録や写真で残しておくことを、私は理事会に強くお伝えしています。

手数料と申請ルート(事前確認あり/なし・マンション管理センター経由)

手数料は「区への手数料」と「マンション管理センターへの事前確認手数料」の2階建てで理解する必要があります。

区分 金額 備考
渋谷区への申請手数料 無料(令和8年4月1日〜) それ以前は有料だった
マンション管理センター システム利用料 10,000円(税込) 事前確認を利用する場合
マンション管理センター 事前確認審査料 10,000円(税込)/長期修繕計画1計画あたり 事前確認を利用する場合

(出典:渋谷区ポータル マンション管理計画認定制度、マンション管理センター 管理計画認定手続支援サービス)

つまり渋谷区での申請は、事前確認あり・なしを自由に選べる制度ではありません。区への直接申請ができるのは変更認定に限られるため、新規に認定を取る管理組合は事実上、マンション管理センターの事前確認ルートを通ることになります。最低でも20,000円程度の実費がかかると見込んでおくとよいでしょう。区の手数料が無料になった分、実質的な負担はこのマンション管理センター側の費用だけと考えて差し支えありません。

申請の流れは次のとおりです。

  1. 渋谷区(住宅政策課住環境整備係)へ事前相談し、独自基準への適合状況を確認する
  2. 公益財団法人マンション管理センターに事前確認を依頼し、事前確認講習を修了したマンション管理士の審査を受ける
  3. 基準に適合すれば「事前確認適合証」が交付される
  4. 適合証をもとに渋谷区へ本申請し、区が認定基準を満たすか審査する
  5. 認定通知を受領(認定の有効期間は5年間、更新可能)

認定の3つの経済効果(長寿命化促進税制/フラット35/共用部リフォーム融資)

認定を取ること自体がゴールではありません。認定マンションになると、実際に使える経済的なメリットが3つあります。

① マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)
管理計画認定を受けたマンションが、長寿命化に資する大規模修繕工事を実施した場合、工事翌年度の固定資産税額が一定割合減額される制度です(出典:国土交通省 マンション長寿命化促進税制)。適用には工事内容や申請時期の要件があるため、工事契約前に管理会社・施工会社と減額要件を確認しておく必要があります。

② フラット35の金利引下げ・フラット50の利用
住宅金融支援機構のフラット35には、管理計画認定マンションを対象にした金利引下げメニューがあります。また、通常は利用できないフラット50(最長50年の長期固定金利ローン)も、認定マンションの住戸であれば利用可能になります(出典:国土交通省 マンション管理計画認定制度)。区分所有者が住戸を売却・購入する際の資産価値にも直結するポイントです。

③ マンション共用部分リフォーム融資の金利優遇・マンション債の利率上乗せ
管理組合が大規模修繕の資金を借り入れる際の「マンション共用部分リフォーム融資」でも、認定マンションは金利優遇の対象になります(出典:住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資)。修繕積立金だけで工事費をまかなえない場合の資金調達コストを抑えられる点は、理事会にとって実務的なメリットです。

私はいつも理事長さまに「認定は取って終わりではなく、取った後にどう使うかが本題です」とお伝えしています。特に③の融資メリットは、ロープアクセス工法を組み合わせて足場費を圧縮し、借入額そのものを減らす工夫と合わせると効果がさらに大きくなります。実際に私が関わった案件では、10階建て・外周80m・工期3か月程度の建物で、通常足場が約168万円かかるところをロープアクセス工法に切り替えたことで約59万円まで下がり、差額はおよそ109万円という例もありました(工法や現場条件により変動します)。この種の工法選択も、長期修繕計画の「著しく低額でない修繕積立金」という認定要件をクリアするための現実的な打ち手になります。ロープアクセス工法の技術的な仕組みや訓練体制については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく紹介しています。

逆算スケジュール(総会決議→書類準備→認定申請→交付)

渋谷区の申請ルートは事前相談・事前確認・本申請と段階を踏むため、着手が遅れるほど工期に影響します。目安として、次の順序で逆算してください。

ステップ 目安時期 内容
① 総会決議 申請の4〜6か月前 長期修繕計画・修繕積立金額を総会で決議
② 独自基準の整備 申請の3〜4か月前 防災マニュアル作成、防災訓練実施記録の整備
③ 渋谷区への事前相談 申請の2〜3か月前 住宅政策課住環境整備係へ連絡、独自基準適合を確認
④ マンション管理センターへ事前確認依頼 申請の1〜2か月前 書類提出、事前確認審査
⑤ 適合証取得・区へ本申請 申請月 適合証をもとに渋谷区へ申請
⑥ 認定交付 申請から数週間〜1か月程度 審査完了後、認定通知

総会決議が必要な項目が多いため、通常総会が年1回しかない管理組合は、逆算すると総会の半年以上前から準備を始める計算になります。私の経験上、ここでいちばん時間がかかるのは「長期修繕計画の見直し」そのものです。計画が古いまま放置されているマンションでは、認定申請の前に計画自体の改訂作業が必要になるケースが少なくありません。

まとめ+今週動くこと3点

渋谷区のマンション管理計画認定制度は、令和8年4月から手数料無料化と独自基準の追加が同時に始まった、いわば「入りやすくなったが、やることは増えた」制度です。正直に申し上げると、独自基準の防災・コミュニティ項目は、書類上の整備だけでなく実際の活動実績が問われるため、直前に慌てて用意できるものではありません。

今週、理事会で動いていただきたいことを3点にまとめます。

  1. 長期修繕計画の最終見直し年月日を確認し、7年を超えていないかチェックする
  2. 防災マニュアルの有無と、防災訓練・自主防災組織などの実施記録が議事録に残っているか確認する
  3. 渋谷区住宅政策課住環境整備係(03-3463-3548)へ、認定を検討している旨を一度相談してみる

大規模修繕の実施計画とあわせて認定取得を進めたい場合は、足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法のどれが自分たちの建物に合うかという検討も、同じタイミングで進めておくと効率的です。ロープアクセス工法の技術的な詳細については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムでも解説していますので、あわせてご覧ください。

よくあるご質問

Q. 渋谷区にマンション管理計画認定制度の申請手数料はいくらかかりますか?

A. 渋谷区への申請手数料は令和8年4月1日から無料です。ただし、マンション管理センターの事前確認を利用する場合、システム利用料10,000円と長期修繕計画1計画あたりの審査手数料10,000円、合計で最低20,000円程度の実費がかかります。

Q. 渋谷区の独自基準とはどのようなものですか?

A. 防災マニュアルの作成、防災対策(防災訓練・自主防災組織・備蓄整備・要支援者把握のいずれか1つ以上)、コミュニティ活動(自治会設置・地域加入・地域活動参加・連絡担当者選任のいずれか1つ以上)の3分野です。令和8年4月1日から適用されています。

Q. 渋谷区に直接申請することはできますか?

A. 新規の認定申請は、公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを経由する必要があります。区への直接申請が認められるのは変更認定申請の場合のみです。

Q. 認定の有効期間はどれくらいですか?

A. 認定日から5年間です。継続して制度のメリットを受けるには、期限内に更新申請を行う必要があります。

Q. 認定を取ると具体的にどんなメリットがありますか?

A. 長寿命化に資する大規模修繕工事を行った場合の固定資産税減額、フラット35の金利引下げおよびフラット50の利用、マンション共用部分リフォーム融資の金利優遇といった経済的なメリットがあります。

Q. 長期修繕計画が古いままでも申請できますか?

A. 認定基準では、計画の作成または見直しが7年以内であることが求められます。7年を超えている場合は、申請前に計画の改訂が必要です。

Q. 修繕積立金の滞納があると認定は取れませんか?

A. 直前の事業年度末時点で、3か月以上の滞納額が全体の1割を超えていると基準を満たしません。滞納管理の状況を事前に確認しておくことをおすすめします。

大規模修繕そのものの進め方や工法選定でお悩みの場合は、ロープアクセス工法のご紹介や大規模修繕工事の安全管理のページもあわせてご参照ください。管理組合向けのサポート内容は管理組合さま向けサービスにまとめています。株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけており、ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。これまでの明誠の施工事例もあわせてご覧いただけます。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。通常足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3工法から、建物特性に応じて最適な工法を提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月23日

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月23日時点で公表されている渋谷区、東京都、国土交通省、公益財団法人マンション管理センター、住宅金融支援機構の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・基準変更があり得ます。実際に申請される前に、必ず渋谷区住宅政策課住環境整備係(03-3463-3548)および公益財団法人マンション管理センターへ最新の内容をご確認ください。

出典・参考資料

改修工事の値段が変わる|大成建設「建築利益率17%」報道と「居ながら施工」を、オーナー・管理組合はどう読むか【2026年9月】

この記事の結論|「改修は新築より安い仕事」という前提が崩れつつある

先に結論をお伝えします。

長いあいだ、改修工事は建設業界のなかで「新築の合間にやる仕事」「単価の安い仕事」という扱いを受けてきました。私が現場に入った20年前は、まさにそうでした。ところがいま、業界最大手がその改修を「新築より利益率が高い本命事業」として名指しし、専門部署を増員しているのです。

これが発注者にとって何を意味するか。私の見立ては次の3点です。

  1. 改修工事の品質と管理レベルは、全体として上がる(大手が本気で人を入れるため)
  2. 改修工事の見積り単価は、下がりにくくなる(値引き前提の受注が減るため)
  3. 「安く出せる会社」と「高いが安心な会社」の二極化が進み、その中間が消える

つまり、発注者側は「相見積もりを取れば自然に安くなる」という時代の終わりに備える必要があります。備え方は1つしかありません。工事の中身を分解して読める状態にしておくこと、そして足場を前提としない見積り軸をもう1本持っておくことです。

大規模修繕の総工事費のうち、仮設足場費はおおむね1〜2割を占めます。ここを固定費として受け入れるか、変動させられる余地があると考えるかで、見積書の土台そのものが変わります。ロープアクセス工法(産業用ロープを使って高所へ直接アプローチする無足場工法)の一般的な安全基準や適用事例は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで解説しています。

以下、順を追ってご説明します。


何が報じられたのか|大手ゼネコンが「脱・新築」に舵を切った

報じられている事実関係

まず、報道内容を整理します。私が断定できない部分は、そのまま「報じられています」と記します。

項目 報じられている内容
報道時期 2026年8月〜9月(日本経済新聞ほか)
企業 大成建設
内容 建築事業の採算向上の軸を、既存建物の改修・リニューアル工事に置く
数値目標 建築利益率15%を最速2年で、その後17%も視野(相川善郎社長の発言として)
体制 改修(リニューアル)専門部署の増員
理由 大型再開発より地味だが利益率が高く、建設市況に左右されにくい
特徴 改修の多くは建物を稼働させたまま進める「居ながら施工」を伴う

(出典:日本経済新聞「大成建設、コツコツ稼ぎ建築利益率17% 成長の柱は改修工事」、ビジネスジャーナル)

「地味な仕事」が、なぜ最大手の本命になったのか

ここが本題です。

新築の大型プロジェクトは、受注額こそ大きいものの、工期が長く、その間の資材価格と労務単価の変動をまるごと請負側が抱え込みます。着工から竣工まで3年かかる案件で、途中で鉄骨が2割上がったらどうなるか。差額は基本的に施工会社の利益から出ていきます。ここ数年、大手ゼネコンが軒並み建築部門で採算を落としてきた最大の理由がこれです。

一方、改修工事は工期が数か月から1年程度です。見積り時点の価格と、実際に材料を買う時点の価格の距離が近い。物価が動く局面では、これが決定的に効きます。報道でも「短い工期、物価高に耐性」という表現が使われています(出典:日本経済新聞)。

私はこの話を聞いたとき、少し複雑な気持ちになりました。私たちのような改修専業の会社が20年やってきたことを、いま最大手が「これは儲かる」と言い出したわけです。正直に申し上げます。競争は確実に厳しくなります。ただ同時に、改修という仕事が正当に評価される時代になったのだと、素直に受け止めてもいます。


なぜいま改修なのか|発注者側から見た3つの構造要因

ゼネコンの都合だけの話ではありません。発注する側の建物が、そういう時期に入っているのです。

要因1:築40年超のストックが今後20年で3倍以上になる

国土交通省の最新統計によれば、築40年以上の分譲マンションは2025年末時点で約158.8万戸。これが20年後には約503.6万戸、およそ3.2倍に増える見込みとされています(出典:国土交通省「築40年以上のマンションストック数の推移」)。

時点 築40年以上のマンション戸数 2025年末比
2015年末(10年前) 約53.3万戸 —
2025年末(現在) 約158.8万戸 —
2035年末(10年後) 約313.1万戸 約2.0倍
2045年末(20年後) 約503.6万戸 約3.2倍

分譲マンションのストック総数は2025年末時点で約723.6万戸とされていますので、築40年超はすでにおよそ2割です(出典:国土交通省「分譲マンションストック数の推移」、割合は筆者算出)。

これは分譲マンションの数字ですが、賃貸マンション・オフィスビル・ホテルでも構図は同じです。新しく建てる建物より、直す建物のほうが圧倒的に多い。市場がそちらに寄るのは当然の帰結です。

要因2:リフォーム・リニューアル市場が数字として立ち上がった

国土交通省の「建築物リフォーム・リニューアル調査」は、建設業許可業者が受注した既存建築物の改修工事を四半期ごとに集計しています。2026年6月12日に公表された令和7年度計の数字が、この流れをはっきり示しています。

区分 令和7年度(2025年度)受注高 前年度比
合計 16兆4,104億円 18.7%増
住宅 4兆9,033億円 18.7%増
非住宅建築物 11兆5,071億円 18.6%増
うち共同住宅の共用部分 1兆1,507億円 19.7%増
うち発注者が管理組合 9,538億円 29.8%増

(出典:国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和7年度第4四半期受注分、令和7年度計)」)

注目していただきたいのは最後の行です。管理組合が発注者となる工事が、1年で約3割伸びている。大規模修繕の発注が、統計に出るレベルで動いているということです。

改修はもはや「新築の余り仕事」ではなく、独立した巨大市場になりました。最大手が専門部署を増員する経営判断は、この数字の裏付けがあってのことだと私は見ています。

要因3:働き方改革で「工期の読みやすさ」が価値になった

2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制が全面適用されました(出典:厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」)。

現場を回している人間として申し上げると、この規制の本当の影響は「残業が減る」ことではありません。遅れを人海戦術で取り戻せなくなったことです。以前なら「工期が押したら人を増やして土日で追い込む」で済んだものが、いまはできません。

すると何が起きるか。工期が読める仕事の価値が上がるのです。改修工事は既存図面と現況調査から工事範囲を絞り込めるため、新築より工程が読みやすい。ここも改修が選ばれる理由になっています。


「居ながら施工」とは何か|稼働させたまま直す技術と、その値段

今回の報道でいちばん注目してほしい言葉が、この「居ながら施工」です。

定義と、発注者にとっての意味

居ながら施工とは、建物を使い続けたまま行う改修工事のことを指します。オフィスビルならテナントに入居してもらったまま、マンションなら居住者が住んだまま、ホテルなら営業しながら直す。

なぜこれが高い技術と評価されるのか。理由は単純です。

制約 発注者にとっての価値
騒音・振動の制御が必要 クレーム・営業補償が発生しない
粉じん・臭気の管理が必要 入居者の健康・満足度が守られる
動線を分けて安全を確保 事故リスクを抑えられる
作業時間帯の制限 夜間・休日施工で日常が止まらない
部分ごとの工区分け 空室・休業を作らずに済む

発注者から見れば、「工事期間中の収入が止まらない」ということです。オフィスビルでテナントを一時退去させれば、賃料収入がその期間まるごと消えます。ホテルなら客室が売れません。この機会損失と比べれば、居ながら施工の割増分など安いものだ——という判断が働きます。

だからこそ、施工側にとっては価格決定力の源泉になるのです。報道でも、この技術的難易度の高さが発注者側の経済合理性と結びついたときに価格決定力に変わる、という趣旨で説明されています。

私の本音|これは私たちが20年やってきたことです

ここからが本題です。

「居ながら施工」という言葉が新しく聞こえるかもしれませんが、ロープアクセス工法は、そもそも居ながら施工を前提に発達してきた工法です。

足場を組むということは、建物の外周をぐるりと囲い、シートで覆うということです。すると次のことが起きます。

  • 全住戸・全テナントの窓が数か月間ふさがれる
  • バルコニーが物置になり、洗濯物が干せない
  • 足場からの侵入を警戒して窓を開けられない
  • 店舗であれば看板が隠れ、来客が減る
  • ホテルであれば眺望が売れなくなり、客室単価を下げざるを得ない

私はこれを「工事の副作用」と呼んでいます。そして20年見てきて一番悔しいのは、この副作用が見積書のどこにも金額として書かれていないことです。

ロープアクセス工法では、作業する面だけにロープを下ろします。北面を直しているとき、南面の住戸は普段どおりです。建物全体を止めずに、面ごとに直していける。これが構造的に「居ながら」なのです。

もちろん万能ではありません。この点は後段の比較表で正直に書きます。ロープアクセス工法の安全基準・適用範囲についてはロープアクセスドットコムにまとめていますので、あわせてご覧ください。当社の施工体制はロープアクセス工法のご紹介でご案内しています。


発注者にとってのグッドニュースとバッドニュース

報道を読んで、私が発注者の立場に立って整理したものが以下です。

グッドニュース(3つ)

  1. 改修の施工品質と安全管理の水準が、業界全体で底上げされる
    大手が専門部署に人を張るということは、施工計画書・品質管理記録・安全書類のレベルが標準化されるということです。中小の改修会社もそこに合わせざるを得なくなります。

  2. 「元施工データ」の活用が進む
    新築時に自社が施工した建物であれば、図面・配筋・下地の情報が残っています。調査コストが下がり、想定外の追加工事が減ります。管理組合にとっては「開けてみたら想定外でした」という追加請求のリスクが減るということです。

  3. 改修が「キャリアになる」ため、人材が流入する
    これは長期的には最大のメリットです。改修に優秀な若手が来るようになります。

バッドニュース(3つ)

  1. 値引き前提の受注が減る
    「利益率17%を目指す」と公言する会社は、赤字受注をしません。相見積もりで叩けば下がる、という交渉が通りにくくなります。

  2. 小規模・低単価の案件が後回しになる可能性
    利益率を重視すれば、選別受注に向かいます。戸数の少ないマンション、延床の小さいビルは、大手から見て優先度が下がるおそれがあります。

  3. 「居ながら施工ができる」ことが割増の理由に使われる
    本来は工法選択の話であるものが、「特殊技術だから高い」という説明に変換されて見積書に乗ってくる場面が増えると私は予想しています。

3つ目が、この記事でいちばんお伝えしたいところです。居ながら施工は割増料金の理由ではなく、工法選択の結果です。ここを混同すると、発注者は説明のつかない金額を飲むことになります。


価格が上がる局面で、オーナーが持つべき「もう1本の見積り軸」

足場は「必要経費」ではなく「選択した費用」

大規模修繕の見積書を開くと、たいてい一番上に仮設工事があります。仮設足場・養生シート・仮設電気・仮設トイレ。総工事費のおおむね1〜2割です。

多くの管理組合・オーナーが、ここを動かせない前提として読んでしまいます。私が理事会に呼ばれてまずお伝えするのは、ここです。

「その足場は、工事の必要経費ではありません。その工法を選んだ結果として発生した費用です。」

言い方を変えます。足場は工事そのものではなく、工事をするための移動手段です。移動手段には選択肢があります。

高所へのアプローチ手段 概要
枠組足場・くさび式足場 建物外周に組み上げる。もっとも一般的
ゴンドラ(常設・仮設) 屋上から吊り下げる。高層に多い
高所作業車 低層・敷地に余裕がある場合
ロープアクセス工法 産業用ロープで直接アプローチ。無足場
ハイブリッド(併用) 部位ごとに足場とロープを使い分け

見積書の土台がこのどれになっているかで、総額は大きく変わります。そして、施工会社が1つの手段しか持っていなければ、見積書は必然的にその手段を前提に作られます。これは不正でもなんでもなく、当たり前のことです。

だからこそ発注者側が、足場を前提にしない見積りをもう1本取っておくことに意味があります。

3工法の比較|正直に申し上げます

当社は足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3つを提案できる会社です。だからこそ、営業的に不都合なことも書きます。

比較項目 通常足場工法 ロープアクセス工法 ハイブリッド工法
仮設費 高い(総工事費の1〜2割) 大幅に圧縮できる 中間
適する建物 中低層・複雑形状・全面打診が必要 高層・足場架設が困難・部分補修 大規模・複雑物件
工期 架設・解体で前後に日数が乗る 着手が早く撤収も早い 部位ごとに最適化
居住者・利用者への影響 大きい(全面シート養生) 小さい(作業面のみ) 部位により変動
一度に投入できる人員 多い 限られる 中間
大量の資材揚重 得意 苦手 部位により対応
防犯面 侵入経路になりうる 足場がないため懸念が小さい 部位により変動

ロープアクセス工法が常に安いわけではありません。

たとえば、外壁全面のタイル打診調査から張り替え、加えて防水も鉄部塗装も一気にやる——という工事量の多い案件では、足場を組んで大人数を同時投入したほうが、トータルで安く早く終わることがあります。私は実際にそう提案した現場が何度もあります。

逆に、次のようなケースではロープアクセスが効きます。

  • 部分的な漏水補修・タイル浮きの是正
  • 高層階のシーリング打ち替え
  • 敷地に余裕がなく、足場が組めない、または組むために近隣交渉が必要
  • 店舗・ホテルなど、営業を止められない建物
  • 台風・地震のあとの緊急点検

要は、建物ごとに答えが違うというだけの話です。それを判定するには、両方を持っている会社に見てもらうのが早い、と私は考えています。大規模修繕の全体設計については大規模修繕工事のご紹介でご説明しています。


現場の話|「足場代を値切る」交渉が、いちばん危ない

ひとつ、現場で見た話をします。

数年前、ある賃貸マンションのオーナーさまから相談を受けました。他社の見積書を持ってこられて、「足場代が高いので、ここを削って交渉しようと思う」とおっしゃる。金額は総額のおよそ15%でした。

私はその場でお止めしました。理由は2つです。

ひとつは、足場代を値切ると、削られるのは足場の安全性だからです。段数を減らす、手すりを省く、壁つなぎのピッチを広げる。どれも見積書の上では同じ「仮設足場一式」のままで、金額だけが下がります。落ちるのは職人です。

もうひとつは、そもそもその建物に足場が最適だったのかを、誰も検証していなかったからです。3階建て・総戸数12戸・敷地に余裕なし。工事内容は外壁の部分補修とシーリングの打ち替えが中心でした。私が現地を見て提案したのは、ロープアクセスと部分足場の併用案です。

結果として、仮設費は当初見積りの半分以下になりました。ただ、私が本当にお伝えしたいのは金額のことではありません。そのオーナーさまは「足場は必ず要るもの」だと思い込んでいたので、値切るという交渉しか思いつかなかった。選択肢を知らないことのコストが、値引き交渉の成果よりずっと大きかったのです。

これから発注単価が上がりにくくならない局面に入るのなら、この構図はもっと重くなります。値切るのではなく、土台から比べる。私はこれをワンセットで提案するようにしています。


見落とされがちな法定義務|建築基準法第12条の定期報告と「全面打診」

改修の話をするとき、私が必ず確認するのが建築基準法第12条の定期報告です。ここを知らないまま「うちはまだ修繕の時期じゃない」とおっしゃる方が、本当に多い。

制度の概要

一定規模以上の特定建築物は、所有者・管理者が定期に調査・検査を行い、特定行政庁へ報告する義務があります(出典:国土交通省「建築基準法に基づく定期報告制度について」)。

区分 対象の例 調査・検査の周期
特定建築物 共同住宅・ホテル・事務所等で規模要件を満たすもの 1〜3年ごと(特定行政庁が指定)
建築設備 換気・排煙・非常用照明・給排水 6か月〜1年ごと
防火設備 防火扉・防火シャッター等 6か月〜1年ごと
昇降機 エレベーター・エスカレーター 6か月〜1年ごと

対象建築物の規模も周期も特定行政庁ごとに指定が異なりますので、詳細は所在地の自治体窓口でご確認ください。

「10年で全面打診」がコストを決めている

とくに外壁タイルについては、竣工または外壁改修から10年を超えた場合、次の定期報告までに落下のおそれのある部分について全面的な打診等の調査が必要とされています。これは2008年(平成20年)の告示改正で導入された、いわゆる「10年ルール」です。

ここが工事費に直結します。条文は「全面打診等」であり、打診以外の方法も認められています。国土交通省は赤外線調査(無人航空機=ドローンによるものを含む)についてガイドラインを示しており、条件を満たせば打診に代えることができます(出典:国土交通省「定期報告制度における赤外線調査による外壁調査ガイドライン」)。

とはいえ、赤外線調査には気象条件・日射・壁面の向きなどの制約があり、打診による確認が併用される場面は少なくありません。外壁の全面に人が手を届かせる必要が生じたとき、その手段は足場・ゴンドラ・ロープアクセスのいずれかになります。

私がよく相談を受けるのは、次のパターンです。

  • 「打診調査のためだけに足場を組むのは高すぎる」
  • 「でも大規模修繕はまだ数年先の予定で、積立金が足りない」
  • 「先送りにしていたら、報告期限が来てしまった」

このとき、調査だけを先にロープアクセスで済ませ、その結果を見てから修繕範囲と時期を決めるという順序が取れます。調査で全面を触れば、どの面のどの高さに浮きが集中しているかがわかります。そのデータがあれば、次の大規模修繕の数量拾いの精度が上がり、「一式」で丸められる余地が減ります。

つまり、先に調査へ投資したほうが、本工事の見積りを読む力が上がるという話です。私はこれを、必ずワンセットでご提案するようにしています。


発注前チェックリスト|理事会・オーナー会議でそのまま使える10項目

改修市場が売り手優位に傾く局面で、発注者側が最低限おさえておきたい項目をまとめました。印刷して理事会にお持ちいただければと思います。

  1. 見積書は「工種ごとの単価×数量」まで分解されているか(「一式」が3項目以上ある見積書は要注意)
  2. 仮設費が総額の何%かを計算したか(1〜2割から大きく外れていれば理由を聞く)
  3. 足場を前提としない工法での見積りを1本取っているか
  4. 工事期間中の空室・休業・クレームによる機会損失を金額換算したか
  5. 設計コンサルタントと施工会社の資本・人的関係を書面で確認したか
  6. 数量拾いの根拠図面を受け取っているか(タイル面積・シーリング延長など)
  7. 追加工事が発生する条件と単価が、契約前に明記されているか
  8. 工事保険・第三者賠償の付保内容と限度額を確認したか
  9. 居ながら施工の場合、作業時間帯・騒音対策・動線計画が書面化されているか
  10. 長期修繕計画と今回の工事範囲が整合しているか(出典:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」)

とくに1・2・3をセットで実行していただくと、見積書の読み方がまったく変わります。


賃貸オーナー・ホテル運営者の方へ|「止めない改修」は収益の話です

分譲マンションの管理組合と、収益不動産のオーナーさまとでは、判断の物差しが違います。

収益不動産の場合、工事期間中の判断はこう整理できます。

項目 足場工法の場合 無足場・部分施工の場合
工事期間中の募集 内見時の印象が落ちやすい 影響が限定的
既存入居者の不満 洗濯物・眺望・防犯で発生しやすい 作業面の住戸に限定
店舗テナントの看板 シートで隠れる期間が生じる 隠れない、または短期間
ホテルの客室単価 眺望・騒音で下げざるを得ない場合 面ごとの調整が可能
工事期間中の解約リスク 相対的に高い 相対的に低い

私がオーナーさまに毎回お願いしているのは、次のことです。工事費の比較だけでなく、「工事期間中に失う家賃」を1度だけでいいので計算してください。

たとえば全20戸・平均賃料10万円のマンションで、工事を理由に3戸が解約し、次の入居まで2か月空いたとします。それだけで60万円です。原状回復と募集経費を足せば、さらに増えます。この金額は、工法選択で圧縮できる余地がある費用です。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会や事業計画の前段階で、工法の当たりをつけるだけでもお力になれることがあります。お問合せフォームからどうぞ。


よくある質問(FAQ)

Q1. 大成建設が改修に力を入れると、私たちの工事費は本当に上がるのですか?
A. 直ちに全案件が値上がりするわけではありません。ただし「赤字でも受注する」会社が減るため、極端な安値の見積りは出にくくなる方向に働くと考えられます。相見積もりで下げる交渉より、工法・数量から比較する方法に切り替えるのが現実的です。

Q2. 「居ながら施工」は必ず割高になりますか?
A. いいえ。居ながら施工は工法選択の結果であり、割増料金の名目ではありません。足場を組まずに面ごとに施工する方法であれば、仮設費が下がって総額が下がる場合もあります。「居ながらだから高い」という説明を受けたら、根拠となる数量と単価の内訳をご確認ください。

Q3. ロープアクセス工法にすれば必ず安くなりますか?
A. なりません。外壁全面の打診・張り替えなど工事量が多い案件では、足場を組んで大人数を同時に投入したほうが安く早く終わることがあります。当社は建物ごとに3工法から比較してご提案しています。詳細はロープアクセスドットコムもご参照ください。

Q4. 築40年を超えた建物は、そもそも直す価値がありますか?
A. 建物の構造・立地・収益性で判断が分かれます。国土交通省の統計では築40年超のマンションは2025年末で約158.8万戸、20年後には約503.6万戸まで増える見込みとされ、「直して使う」ことが社会全体の前提になりつつあります(出典:国土交通省「マンションに関する統計・データ等」)。まずは劣化診断で現況を数値化することをおすすめします。

Q5. 見積書のどこを見れば「妥当かどうか」がわかりますか?
A. 最初に見るべきは仮設費が総額の何%かです。おおむね1〜2割が目安で、そこから大きく外れる場合は理由を確認してください。次に「一式」表記の数を数えてください。工種ごとの単価と数量に分解されていない見積書は、比較のしようがありません。


この記事のポイントまとめ

  • 大手ゼネコンが改修を「利益率17%の本命事業」と位置づけ、体制を厚くしている
  • 改修は工期が短く物価変動に強いため、新築より採算が読みやすい
  • 築40年超のマンションは2025年末で約158.8万戸、20年後には約3.2倍の見込み
  • 管理組合が発注者となるリフォーム・リニューアル受注高は前年度比29.8%増
  • 「居ながら施工」は割増の理由ではなく、工法選択の結果である
  • 仮設足場費は総工事費のおおむね1〜2割。ここは動かせる余地がある
  • ロープアクセスが常に安いわけではなく、建物ごとに最適解が違う
  • 発注者側は「値切る」より「土台から比べる」に切り替える時期に来ている

出典・参考資料

※制度・統計は改定される場合があります。最新の内容は必ず各公式ページでご確認ください。


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最後に、ひとつだけ。

改修が儲かる仕事だと業界が気づいたことは、私は悪いことだと思っていません。長いあいだ、直す仕事は建てる仕事の下に置かれてきました。それが変わるのは、現場で腕を磨いてきた職人にとって良いことです。

ただし、その変化のコストを、何も知らされないまま発注者が負担するのは違います。だから私は、足場が要る建物には要ると言い、要らない建物には要らないと言い続けます。これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない感想です。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開しています。

最終更新:2026年9月10日

ロープアクセス工法の技術情報は ロープアクセスドットコム に詳しくまとめています。

大規模修繕の談合38社処分と「二つの老い」|管理組合の自衛策7項目【2026年最新】

うちのマンションの大規模修繕は、適正な価格で発注できているのだろうか——。この記事は、その一点にお答えするために書きました。

2026年6月、マンションの大規模修繕工事をめぐる談合について、公正取引委員会が施工会社と設計コンサルタント合わせて38社に排除措置命令を出す方針を固めたと、複数の報道機関が伝えました。課徴金の総額はおよそ16億円と報じられています。そして同じ時期、国土交通省の統計は「建物の老朽化」と「居住者の高齢化」という二つの老いが同時進行している現実を示しています。

私は株式会社明誠の本間と申します。建設・改修の現場に20年以上いて、足場を組む工事もロープアクセス工法による無足場の工事も、両方を自分の目で見てきました。今回の報道について、業界の内側にいる人間として、正直に申し上げたいことがあります。


この記事の結論|変えるべきは「発注方式」より先に「情報の非対称」

先に結論をお伝えします。

今回の報道を受けて、「設計監理方式はダメだ、責任施工方式に変えよう」という単純な話に飛びつくのは、私はおすすめしません。方式を変えても、管理組合側に価格の妥当性を判定する物差しがなければ、同じことが起きるからです。

管理組合が本当に取り戻すべきは、次の3つです。

  1. 見積書を「工種ごとの単価×数量」まで分解して読める状態にすること
  2. 設計コンサルタントと施工会社の資本・人的関係を書面で確認すること
  3. 足場を前提としない工法も含めて、複数の見積り根拠を持つこと

とくに3つ目は見落とされがちです。大規模修繕の総工事費のうち、仮設足場費はおおむね1〜2割を占めます。足場を前提にするかどうかで、そもそも見積書の土台が変わります。ロープアクセス工法(産業用ロープで高所に直接アプローチする無足場工法)という選択肢を持っておくと、足場ありきの見積書に対して「では足場なしならいくらか」という比較の軸を1本増やせます。ロープアクセス工法の一般的な安全基準や事例は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで解説しています。

以下、順を追ってご説明します。


何が起きたのか|公取委が38社に排除措置命令の方針(2026年6月)

報道されている事実関係

まず、報道されている内容を整理します。断定的に書けない部分は、そのまま「報じられています」と記します。

項目 報じられている内容
発表時期 2026年6月11日〜12日にかけて各社が報道
対象社数 施工会社36社+設計コンサルタント2社の計38社(認定は約40社)
法的根拠 独占禁止法違反(不当な取引制限)
課徴金 施工会社に対し総額およそ16億円の納付命令の方針
対象地域 関東地方のマンション
対象期間 遅くとも2021年(令和3年)秋ごろ以降
対象工事 外壁改修、内装、防水などの大規模修繕工事、100件以上

出典:日本経済新聞「マンション修繕談合30社超 公取委が排除命令へ 100件以上、課徴金計16億円」、時事ドットコム「公取委、マンション修繕工事で談合認定」

なお、これらは報道ベースの情報です。処分の最終的な内容・対象・日付は、公正取引委員会の報道発表でご確認ください。制度や処分の内容は変更される可能性があります。

何が問題視されたのか

報じられているところによると、対象となった各社は、管理組合が発注する大規模修繕工事の見積り合わせや入札の前に、あらかじめ受注する会社と価格を話し合って決めていたとされています。

ここで注目すべきは、設計コンサルタント2社が対象に含まれているという点です。設計コンサルタントは、本来は管理組合の側に立ち、中立の立場で施工会社を選定するために雇われる存在です。その中立であるはずの立場が受注調整に関わっていたとされる点が、今回の件の構造的な特徴だと私は受け止めています。

もう一つ、2025年5月には、大阪府東大阪市に本社を置く工事会社の社員2人が、神奈川県の大型マンションの修繕委員会に「住民になりすまして偽名でもぐり込んだ」とされる事案も報じられました(出典:Wedge/Yahoo!ニュース「マンションが迎える〝二つの老い〟とは?」)。

正直に申し上げます。同じ業界にいる人間として、この報道はこたえました。私が20年やってきて一番悔しいのは、真面目に見積りを積み上げている職人や会社まで、ひとまとめに疑いの目で見られてしまうことです。


なぜ設計監理方式が狙われたのか|「利益相反」という構造の穴

3つの発注方式の違い

大規模修繕工事の発注方式には、主に3つのパターンがあります。専門用語なので、まず簡単にご説明します。

発注方式 仕組み 想定されるメリット 注意したい点
設計監理方式 設計コンサルタントが調査・設計・工事監理を担当し、施工は別会社が担当 第三者の目で施工品質をチェックできる コンサルタントの中立性が崩れると、チェック機能が働かない
責任施工方式 施工会社が調査・設計・施工まで一貫して担当 窓口が一本化され、責任の所在が明確 施工会社の見積りを検証する第三者がいない
管理会社主導方式 管理会社が元請となり、工事を取りまとめる 日常管理との連携がとりやすい 中間マージンと発注先の固定化が起きやすい

「中立であること」は仕組みで担保されていない

設計監理方式そのものは、悪い方式ではありません。むしろ国土交通省も、管理組合が第三者の専門知識を活用する手段として位置づけています。

ただし国土交通省は、令和5年4月3日付の通知「マンションの大規模修繕工事に関する発注等の実態と留意事項について」(国住参マ第231号/国不建キ第60号)の中で、設計コンサルタントが利益相反行為を起こさない中立的な立場を保つ形で施工会社の選定が公正に行われるよう留意する必要がある旨を、すでに注意喚起しています(出典:国土交通省 通知本文(PDF))。

つまり、行政は3年以上前からリスクを指摘していたわけです。それでも今回のような事態が報じられたのは、「中立であること」が精神論に委ねられていて、仕組みとして担保されていなかったからだと私は考えています。

私はいつも理事長さまに、こうお伝えしています。「コンサルタントさんを信じないでください、という話ではありません。信じたうえで、確認できる形にしておきましょう」と。

管理組合が書面で確認できる3点

具体的には、次の3点を契約前に書面で確認しておくことをおすすめします。

  1. 資本関係・人的関係の申告:設計コンサルタントと、応札する施工各社との間に、資本関係・役員兼務・元従業員の在籍などがないか
  2. 報酬の出所:コンサルタントが施工会社側から一切の金銭・便宜を受けていないことの表明(誓約書の形が望ましい)
  3. 選定過程の記録:見積り合わせの開封を理事会立会いで行い、議事録に金額を残すこと

この3点は、どの発注方式を選んでも有効です。方式の議論より先に、この3点を固めるほうが実効性は高いと、私は現場で感じています。


同時に進む「二つの老い」|数字で見るマンションストックの現実

談合の話と老朽化の話は、別々のニュースに見えて、実は根っこがつながっています。順にご説明します。

建物の老い

国土交通省の資料によると、日本のマンションストックは2023年末時点で約704.3万戸。このうち築40年以上は約137万戸で、この数は10年後に約274万戸、20年後には約464万戸に増えると推計されています(出典:国土交通省「マンションを取り巻く現状と課題」)。

20年で3倍を超えるペースです。数字だけ見ると実感が湧きにくいので、体感に置き換えます。現在の築40年超マンション3棟のうち2棟は、まだ築40年に達していない「これから老朽化する棟」という状態です。

人の老い

もう一つの老いは、居住者の高齢化です。国土交通省の令和5年度マンション総合調査によると、

  • 世帯主が70歳以上の割合は25.9%(前回調査より+3.7ポイント)
  • 昭和59年(1984年)以前に完成したマンションでは、70歳以上の割合が55.9%

(出典:国土交通省 報道発表「高経年マンションに居住する70歳以上の世帯主が半数以上に」(令和6年6月21日))

古いマンションほど、住んでいる方も高齢である。これが「二つの老い」の実態です。

なぜこれが談合の話とつながるのか

理由はシンプルです。修繕委員会の担い手が減り、専門知識を持つ第三者への依存度が上がるからです。

私が伺う現場でも、修繕委員が集まらず、理事の輪番が回らず、「もう管理会社さんとコンサルさんにお任せするしかない」という空気になっている組合は少なくありません。その依存が強いほど、外部の専門家が中立でなかったときのダメージは大きくなります。

「二つの老い」は建物と人の話ですが、その帰結として組合のチェック機能の老いが起きている。私はそう見ています。


修繕積立金は36.6%が不足|割高な発注が最も効いてしまう場所

積立金不足の現状

同じく令和5年度マンション総合調査によると、

  • 計画上の積立額に対して、現在の積立額が不足しているマンションの割合は36.6%(前回調査より+1.8ポイント)
  • 長期修繕計画(計画期間25年以上)に基づいて積立金額を設定しているマンションは59.8%(前回調査より+6.2ポイント)

(出典:国土交通省 報道発表(令和6年6月21日))

3棟に1棟以上が、計画より積立金が足りていない。この状態で工事費が想定より1割高く発注されると、何が起きるか。

100戸のマンションで試算すると

読者の財布の感覚に近づけるため、仮の数字で置いてみます。あくまで説明のための試算で、実際の金額は建物の形状・面積・劣化状況で大きく変わります。

項目 仮の金額
100戸マンションの大規模修繕工事費(仮定) 1億2,000万円
これが10%割高だった場合の差額 1,200万円
1戸あたりの負担増 12万円
月額修繕積立金13,054円※で換算すると 約9.2か月分

※月額13,054円は、令和5年度マンション総合調査における平均的な修繕積立金額の水準として報じられている数字です。

1戸あたり12万円。一時金を集めるか、次回の工事を先送りするか、積立金を値上げするか。どれを選んでも、住んでいる方に痛みが出ます。

修繕積立金が潤沢な組合にとって割高発注は「損」ですが、積立金が不足している組合にとっては「工事ができない」に直結します。 談合の被害が最も深く刺さるのは、実は体力のない組合のほうです。ここが、私が今回の件で一番申し上げたい点です。

積立金が足りない場合の資金調達の考え方は、過去記事「修繕積立金の不足で1億円超の借入も|2026年の回避策」にまとめています。


管理組合が今すぐできる自衛策7項目

ここからが本題です。明日の理事会から使える形で、7つに絞ってお伝えします。

① 見積書を「一式」で受け取らない

見積書に「外壁改修工事 一式 ○○円」とだけ書かれていたら、それは比較できない見積書です。工種ごとに「単価×数量」で分解された内訳書を求めてください。

分解されていれば、A社とB社の差額がどの工種で生まれているかが見えます。「足場費で300万円違う」「タイル張替の数量想定が3倍違う」といった具体が見えて初めて、比較が始まります。

② 数量根拠(劣化調査結果)を工事会社と共有する

各社が別々の前提数量で見積もっていたら、金額を並べても意味がありません。劣化診断の結果(打診調査のタイル浮き面積、シーリング総延長など)を全社に同一条件で提示してください。

③ 設計コンサルタントに利益相反の不存在を書面で確認する

前述の3点(資本関係・報酬の出所・選定過程の記録)です。口頭ではなく書面で。これを嫌がる相手であれば、その反応自体が判断材料になります。

④ 見積り合わせは理事会立会いで開封し、議事録に金額を残す

開封の場に理事が複数名立ち会い、その場で全社の金額を読み上げて議事録化する。地味ですが、事後の調整を難しくする効果があります。

⑤ 応札社を「紹介された会社」だけで固めない

コンサルタントや管理会社からの紹介が悪いわけではありません。ただ、紹介ルート以外から1社は入れておく。この1社が、価格の物差しになります。

この論点は、管理会社が発注者となる「管理者方式」でも同じ構造で起きます。過去記事「マンション管理業者31社に是正指導・49件|「管理者が発注者」になった2026年、大規模修繕の見積書」で詳しく整理しています。

⑥ 足場を前提としない工法の見積りも取る

仮設足場は総工事費のおおむね1〜2割を占めます。ロープアクセス工法や、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法での見積りを1本取っておくと、足場ありきの金額が妥当かどうかを検証できます。詳しくは後述します。

⑦ 管理計画認定制度・長期修繕計画の最新ガイドラインを確認する

長期修繕計画作成ガイドラインは令和6年6月に改定されています(出典:国土交通省「長期修繕計画標準様式・長期修繕計画作成ガイドライン」(PDF))。また、管理組合の運営や修繕計画に関する客観的な情報は、公益財団法人マンション管理センターでも公開されています。

7項目チェックリスト(理事会でそのまま使えます)

# 確認項目 済
1 見積書は工種ごとに単価×数量で分解されているか □
2 全社に同一の劣化調査結果・数量条件を提示したか □
3 コンサルタントから利益相反不存在の書面を取得したか □
4 見積り開封を理事会立会いで行い、議事録に金額を残したか □
5 紹介ルート以外の応札社を1社以上入れたか □
6 足場を前提としない工法の見積りを取得したか □
7 長期修繕計画は令和6年6月改定ガイドラインに沿っているか □

工法の選択肢を持つと、価格の妥当性が判定できる

ロープアクセス工法とは

ロープアクセス工法(無足場工法)は、産業用ロープと専用器具を使い、作業員が建物の高所へ直接アプローチして施工する工法です。ビルの窓ガラス清掃で、ロープで降りてくる作業員をご覧になったことがあるかと思いますが、あの技術を改修工事に適用したものと考えていただくと近いです。

「危なくないのか」というご質問をよくいただきます。ロープアクセスはメインロープとバックアップロープの2本を独立して使う二重系が基本で、器具の点検基準や資格の考え方も体系化されています。一般的な安全基準や施工事例はロープアクセスドットコムにまとめていますので、判断材料としてご覧ください。

3つの工法の比較

比較軸 通常足場工法 ロープアクセス工法(無足場) ハイブリッド工法
仮設費 総工事費のおおむね1〜2割 足場費が原則不要 足場が必要な部位のみ計上
工期 架設・解体の期間が別途必要 架設・解体が不要な分、短縮しやすい 部位ごとに最適化
居住者への影響 全戸のバルコニー・窓周りに足場がかかる期間が長い 施工箇所のみ・短期間に限定しやすい 影響範囲を限定できる
防犯面 足場からの侵入リスクへの対策が必要 足場が無いため当該リスクが生じにくい 足場設置部位のみ対策
向いている建物 中低層、形状が複雑、全面的な改修 高層、足場架設が困難、部分改修、コスト重視 大規模・複雑で総合的な最適化が必要
向かないケース 敷地に余裕がない、隣地が近い 全面打診・全面塗替えで施工量が極めて多い場合 —

ただし、ロープアクセスが常に安いわけではありません。 ここは正直に申し上げます。外壁の全面打診・全面塗替えのように施工量が非常に多い工事では、足場を組んだほうが総額で有利になるケースがあります。私が「必ずロープアクセスで」と言わないのは、そのためです。

大事なのは「両方の見積りを持てること」

私が理事会でよくお伝えするのは、「安い工法を選んでください」ではなく、「両方の見積りを机に並べてください」ということです。

足場ありの見積りしか手元にないと、その金額が高いのか安いのか判定できません。足場なしの見積りが1本あるだけで、「足場費として計上されている○○万円は妥当か」という問いが立てられます。この問いこそが、談合が最も嫌がるものです。

株式会社明誠は、通常の足場仮設による工事、ロープアクセス工法による無足場工事、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つを、建物の特性に応じてご提案しています。詳しくはロープアクセス工法のご紹介および大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。

※本セクションは、当社サービスのご紹介を含みます。判断材料の一つとしてお読みいただければ幸いです。


私が現場で見てきた「相見積もりが機能しない」瞬間

数字の話が続いたので、現場の話を一つさせてください。物件が特定されないよう、詳細は変えています。

築24年、6階建て、48戸のマンションでのことです。3社から相見積もりを取っていて、金額は9,800万円、1億200万円、1億500万円。理事長さまは「ちゃんと3社比べたので大丈夫だと思います」とおっしゃいました。

私が内訳書を拝見して気になったのは、3社とも仮設足場の数量が完全に同じ数字だったことです。足場の数量は、隣地との離隔や庇の出、設置できない部位の扱いで、会社ごとに多少ばらつくのが普通です。それがぴったり一致していた。

理由は単純で、3社ともコンサルタントが作成した設計数量書をそのまま転記していたからでした。そして、その数量には現地では足場を架けられない北面の一部が含まれたままになっていました。悪意があったとは限りません。図面上の計算がそのまま残っていただけかもしれません。

ただ、結果として3社の見積りは「同じ前提で少し違う金額」になっていて、比較しているようで比較になっていませんでした。私は現地を確認して、その部位は足場ではなくロープアクセスで対応する前提の見積りを1本お出ししました。最終的にどの会社が受注したかはここでは申し上げませんが、理事会で「なぜこの数量なのか」という議論が生まれたこと自体が、一番の成果だったと思っています。

現場で20年やってきて、私が一番もったいないと感じるのは、相見積もりを取ったこと自体で安心してしまう瞬間です。3社から取ることに意味があるのではなく、3社の前提が違うから意味がある。ここだけは、どうかお伝えさせてください。


賃貸マンション・ビルのオーナーさまへ

ここまで分譲マンションの管理組合を主な読者として書いてきましたが、収益不動産をお持ちのオーナーさまにも触れておきます。

管理組合と違い、オーナーさまの発注は意思決定が速いという大きな利点があります。総会も修繕委員会も不要です。一方で、チェックする第三者が誰もいないという弱点があります。談合という文脈では、組合とは違う形のリスクがあるとお考えください。

オーナーさまの場合、判断軸に「入居率」と「稼働の停止」が加わります。

論点 分譲マンション管理組合 賃貸マンション・ビルのオーナー
意思決定 総会・理事会の合意が必要 オーナー単独で可能
チェック機能 理事会・修繕委員会・区分所有者 原則として存在しない
重視される指標 積立金とのバランス、住民の納得 入居率、賃料維持、工事中の解約防止
足場の影響 居住者の生活影響・防犯 入居者の不満・退去、テナントの営業影響

足場を組むと、外から見て「工事中の物件」になります。募集中の部屋の内見にも影響しますし、1階に店舗が入っていれば売上に響きます。足場をかける期間を短くする、あるいは部分的にロープアクセスに切り替えるだけで、この影響はかなり抑えられます。

修繕費として計上できる支出か、資本的支出として減価償却の対象になるかは、工事内容によって扱いが変わります。私は税務の専門家ではありませんので、この点は必ず顧問税理士にご確認ください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 談合報道があった会社に、うちの工事を頼んでも大丈夫ですか?

A. 報道されている社名だけで一律に判断するのは、私はおすすめしません。処分の対象・内容は公正取引委員会の報道発表で確認したうえで、その会社が再発防止策を公表しているか、見積書の内訳を工種ごとに開示するか、という具体的な行動で判断されるほうが実質的です。

Q2. 設計監理方式はやめて、責任施工方式にすべきですか?

A. 方式の切り替えだけでは解決しません。責任施工方式には「施工会社の見積りを検証する第三者がいない」という別の弱点があります。本文の「自衛策7項目」のうち①②④⑥は、どちらの方式でも実行できます。まずそこからをおすすめします。

Q3. 修繕積立金が足りません。工事を先送りしてもよいですか?

A. 先送りは選択肢の一つですが、劣化が進むと同じ工事の単価が上がる傾向があります。まず劣化診断で「今やるべき部位」と「次回でよい部位」を切り分けることをご検討ください。国土交通省の令和5年度調査では、計画に対して積立金が不足しているマンションは36.6%で、決して例外的な状況ではありません(出典:国土交通省 報道発表)。

Q4. ロープアクセス工法にすれば必ず安くなりますか?

A. いいえ。施工量が非常に多い全面改修では、足場を組んだほうが総額で有利になるケースがあります。建物の高さ・形状・施工数量によって結論が変わりますので、両方の見積りを取って比較されることをおすすめします。

Q5. 築何年から大規模修繕を考えるべきですか?

A. 一律の年数はありません。国土交通省の長期修繕計画作成ガイドライン(令和6年6月改定)では、計画期間30年以上かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上を目安としています(出典:国土交通省(PDF))。実際の着手時期は、劣化診断の結果と積立金の状況から判断するのが現実的です。


この記事のポイントまとめ

  • 2026年6月、大規模修繕の談合で38社に排除措置命令の方針と報じられた
  • 設計コンサルタント2社が含まれ、中立性の構造的な穴が問題視された
  • 築40年超マンションは20年後に約464万戸へ、二つの老いが同時進行
  • 修繕積立金が計画に対し不足する組合は36.6%、割高発注の痛手は大きい
  • 見積書の内訳分解と、足場を前提としない見積り1本が最大の自衛策になる

出典・参考資料

※制度・処分内容・統計は更新される可能性があります。実際のご判断の際は、必ず公的機関の最新情報をご確認ください。


関連リソース

あわせて読みたい過去記事


今回の報道で、業界に対する信頼が揺らいだことは事実だと思います。ただ、私はこれを「工事会社を疑ってください」という話にはしたくありません。管理組合が見積書を読める状態になり、工事会社が内訳を開示する。それが当たり前になれば、真面目にやっている会社ほど選ばれるようになります。

見積書の読み方の整理だけでも構いません。総会の前段階で「この数量は何を根拠にしているのか」を一緒に確認する、そんな使い方でもお問合せフォームからご相談だけでも遠慮なくお声がけください。

これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない感想です。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。東京都知事認可(般-29)第148121号。

最終更新:2026年9月9日

佐倉市の賃貸マンション・アパート補助金|オーナー向け2026年版

佐倉市で賃貸マンション・アパート・戸建賃貸をお持ちのオーナーさまに、まず一つだけ質問させてください。「佐倉市の補助金のうち、法人でも、自分が住んでいなくても、オーナーの立場で直接申請できるものはどれか」——即答できるでしょうか。

私が現場で20年近く見てきたかぎり、ここを整理できていないオーナーさまは非常に多いです。そして取り違えると、使えるはずの制度を取り逃がし、使えない制度の書類集めに何週間も費やすことになります。

結論から申し上げます。2026年度(令和8年度)の佐倉市で、賃貸物件のオーナーが「所有者」の立場で直接申請できる市の補助制度は、実質2本しかありません。 一方で、佐倉市には全国的にも珍しい「入居者向けの家賃補助」があり、これは申請者こそオーナーではないものの、募集戦略を根本から変える力を持っています。

この記事では、佐倉市・千葉県・国の一次情報にあたって、収益不動産オーナーの判断軸——NOI(純営業収益=家賃収入から運営費を引いた利益)、入居率、雑収入の課税、資本的支出と修繕費の線引き、そして出口(売却)——で整理しました。

なお本記事は2026年9月3日時点の公表情報にもとづきます。予算枠のある制度は年度途中で受付終了となるため、申請前には必ず担当課へご確認ください。


まず結論:佐倉市の賃貸オーナーが今日動くべきは、この5本

賃貸物件を所有するオーナーの立場で佐倉市の制度を洗い出すと、優先順位は次のとおりです。

順位 制度名 補助率・上限 オーナーの使いやすさ
1 佐倉市 住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金(集合住宅用充電設備) 1口あたり上限50万円/100万円 ◎ 管理組合「又は所有者」が対象。一棟所有の賃貸オーナーが直接申請できる
2 佐倉市 危険コンクリートブロック塀等の除却・フェンス設置・緑化補助 除却1/2かつ1万円/m、フェンス1/2かつ1.5万円/m、合計上限25万円 ◎ 所有者または管理者が対象。居住要件なし
3 国 賃貸集合給湯省エネ2026事業 1台5万円/7万円(加算で最大8万円/10万円) ◎ 賃貸集合住宅オーナーが本来の対象。申請は登録事業者経由
4 国 先進的窓リノベ2026事業 100万円 × 改修した住戸数(1棟あたり上限) ○ 賃貸住宅所有者も対象。空室期間との段取りが鍵
5 佐倉市 空き家バンク賃貸登録物件リフォーム補助 改修費・家財処分費の1/2以内・上限30万円 △ 空き家バンク登録が前提、かつ法人は対象外

そして、多くのオーナーさまが誤解しているのが次の一点です。

佐倉市の太陽光発電・蓄電池・エネファーム・EV充電(戸建)・窓の断熱改修(戸建)への補助金は、原則としてオーナーの投資用物件には使えません。

理由は要綱にはっきり書かれています。これらの補助対象者は「市内に住所を有する個人であること」。つまり自ら居住し住民登録していることが前提で、投資用の賃貸物件は想定されていません(出典:別表第3、4 補助対象者の要件(PDF)|佐倉市)。

ところが同じ補助金の中で、たった一つだけ「所有者」を明記している設備があります。それが集合住宅用充電設備です。ここが2026年度の佐倉市における最大の狙い目です。

以下、順に実務レベルで掘り下げます。


佐倉市の賃貸市場を「NOIの視点」で見ると何が見えるか

成熟したベッドタウンで、ストックが一斉に更新期を迎えている

佐倉市は千葉県北部、印旛沼の南に広がる人口約17万人の市です。京成本線とJR総武本線・成田線が並走し、ユーカリが丘・志津・臼井・佐倉・根郷と、性格の異なる住宅地が帯状に連なっています。京成上野方面へのアクセスと、住宅価格の水準がバランスした——典型的な成熟ベッドタウンです。

オーナーの視点でこの街の特徴を一言でいえば、「賃貸ストックの築年が揃っている」ことです。1970〜1990年代に集中的に供給された木造アパート・軽量鉄骨アパート・中低層のRCマンションが、いま一斉に築30〜50年に入っています。

これは二つのことを意味します。ひとつは、同じエリアの競合物件も同時に劣化していること。もうひとつは、先に手を打った物件だけが選ばれることです。

NOIで考えると、補助金は「利回りの改善」ではなく「取得原価の圧縮」

補助金をどう評価すべきか。ここを整理しておきます。

補助金は毎年入ってくるものではありません。ですから利回りを恒常的に押し上げるものではなく、その工事の実質コストを一度だけ下げるもの——つまり取得原価の圧縮として捉えるのが正確です。

たとえば給湯器交換に120万円かかる工事で40万円の補助が出れば、実質80万円。この差額40万円が、そのままキャッシュフローに残ります。

一方で、工事そのものがNOIに与える効果は毎年続きます。給湯器が古いという理由での退去がなくなれば、その分の空室損と原状回復費・広告料が毎年浮きます。

数字にしてみます。佐倉市の郊外エリアで、家賃6万5,000円・8戸の木造アパートを想定します。

  • 満室想定年収入:6万5,000円 × 8戸 × 12か月 = 624万円
  • 1戸が1か月空室になると:6万5,000円の減収
  • 加えて原状回復20万円+広告料(家賃1か月分)6万5,000円 = 26万5,000円

つまり退去1件あたり、およそ33万円が飛びます。年間2件の退去を1件に減らせれば、それだけで33万円。給湯器交換の補助金40万円と、ほぼ同じインパクトが毎年発生する計算になります。

補助金は入口の値引き、工事は毎年効く配当。この二つを分けて考えるのが、オーナーとしての正しい評価軸です。


【最優先・所有者が直接申請できる】集合住宅用充電設備への補助——1口あたり上限50万〜100万円

制度の骨格

佐倉市の「住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金」のなかで、唯一「所有者」を対象者に明記しているのが集合住宅用充電設備(EV充電設備)です。

要綱の別表第4には、こう書かれています。

補助対象設備を設置するマンション等のマンション管理組合又は所有者であること。

(出典:令和8年度佐倉市住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金のご案内|佐倉市 生活環境課)

太陽光発電・エネファーム・蓄電池・電気自動車・V2Hが軒並み「市内に住所を有する個人」と限定されているなかで、この一項目だけが所有者を含んでいます。一棟所有の賃貸オーナーが、佐倉市から直接、補助金を受け取れる数少ないルートです。

補助金額——「基数」ではなく「口数」で数える

補助額は次のとおりです(出典:別表第6 補助金の額(PDF))。

利用範囲 補助率 上限
住民のみが充電設備を利用可能とする場合 設備本体購入費に係る国の促進補助金額の1/3 50万円 × 設置口数
住民以外も利用可能とする場合 設備本体購入費に係る国の促進補助金額の2/3 100万円 × 設置口数

ここで見落としてはいけないのが、「複数口の充電設備を設置する場合は、その口数を乗じる」という一文です。2口の設備を1基設置すれば、上限は50万円ではなく100万円(住民のみの場合)。台数ではなく口数で積み上がる設計になっています。

「住民以外も使える」に振ると補助率が倍になる意味

補助率が1/3から2/3へ、上限が50万円から100万円へ。利用範囲を住民以外にも開放するだけで、補助が倍になります。

これはオーナーにとって、単なる補助額の話ではありません。

  • 敷地内の空き駐車区画を、充電課金収入を生む区画に転換できる
  • 近隣EVユーザーの流入により、駐車場の稼働率が上がる
  • 物件の「EV充電あり」表示が、募集条件として差別化要素になる

つまり、NOIに直接効く投資に補助金が付く構造です。ただし住民以外に開放する場合は、管理・課金・トラブル対応の設計が別途必要になります。既存入居者の駐車区画を潰さないゾーニングも含め、設計段階で決めておくべき論点です。

実務上の注意点——国の補助金の交付決定が先

要綱には、次の条件が付されています。

補助対象設備の設置に当たって、(中略)国が実施するクリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金(国促進補助金)の交付決定通知を受けていること。ただし、住民のみ充電設備を利用可能とする場合の補助を受けようとするときは、この限りでない。

読み替えると、こうなります。

  • 住民以外も使えるようにする場合:国の充電インフラ補助金の交付決定が必須。国→市の順で進める
  • 住民のみが使う場合:国の交付決定は必須ではない(国の補助額を基準に市が算定)

上限100万円を狙うなら国の申請から逆算した工程が必要で、これは数か月単位の話になります。一方、上限50万円のルートなら市への申請から着手できます。どちらを狙うかを最初に決めることが、この制度の実務の8割です。

予算残額は公開されています——2026年8月4日時点

佐倉市はこの補助金の予算残額を公表しています。

  • 太陽光発電設備補助金:1,164,000円
  • その他設備:12,622,000円

(令和8年8月4日現在/出典:佐倉市 生活環境課)

集合住宅用充電設備は「その他設備」の枠です。残り約1,262万円。1口50万円で試算すれば、単純計算で25口分。年度後半に向けて確実に減っていく数字です。

受付開始は令和8年6月1日。申請は市役所1号館5階の生活環境課窓口、またはちば電子申請サービスから可能です。お問い合わせは生活環境課(環境政策班)043-484-4278。


【居住要件なし】危険コンクリートブロック塀等の除却・フェンス設置・緑化補助——合計上限25万円

制度の概要

佐倉市が、通学路や災害時の避難路に面した危険なコンクリートブロック塀の除却・転換を支援する制度です。補助対象者は「危険と判定されたコンクリートブロック塀等を所有または管理されているかた」。居住要件はありません(出典:危険コンクリートブロック塀等の除却、フェンス等の設置及び緑化工事への補助|佐倉市 建築指導課 更新日:2026年4月21日)。

つまり、貸家・アパート・駐車場の塀でも、オーナーが直接申請できます。

補助金額——除却とフェンスで単価が違う

工事内容 補助額
塀等の除却工事(樹木の移植を含む) 要した経費の1/2 または 1万円/m(10,000円/m)のうち低い額
緑化に係る工事(生垣、8㎡以上の植栽) 市が算定した額の1/2
フェンス等の設置工事 要した経費の1/2 または 1.5万円/m(15,000円/m)のうち低い額

合計25万円が上限(危険ブロック塀の除却が前提)。

延長20mの塀を除却してフェンスに転換する場合を試算します。

  • 除却:単価1万円/m × 20m = 20万円が上限
  • フェンス設置:単価1.5万円/m × 20m = 30万円が上限
  • ただし合計25万円が天井

実際の工事費が除却40万円+フェンス60万円=100万円だったとすれば、1/2は50万円ですが、上限により25万円の交付。それでも工事費の4分の1がカバーされます。

部分撤去でも対象になる——ここが実務のポイント

令和2年度から、すべて撤去しなくても、道路面からの高さを60cm以下に下げる「部分撤去」も補助対象になりました。ただし残した塀の直上に、新たなブロック積みやフェンスを設置しないことが条件です。

擁壁を兼ねている塀、境界確定が済んでいない塀など、全撤去が難しいケースは実務では珍しくありません。部分撤去が認められることで、「うちは無理だ」と諦めていた物件にも道が開けます。

なぜこれをオーナーの最優先に置くのか

補助額は最大25万円。金額だけ見れば小さく思えるかもしれません。それでも私が最優先に挙げる理由は、リスクの性質にあります。

民法717条は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があり他人に損害を生じさせたとき、占有者・所有者に損害賠償責任を負わせています。所有者の責任は、注意していたことを立証しても免れない性質のもの(無過失責任)とされています。ブロック塀は、この「土地の工作物」の典型例です。

通学路に面した塀が倒れたときに何が起きるか——2018年の大阪府北部地震の事例が、社会全体に突きつけた問題です。

そして佐倉市の場合、危険かどうかの判定は建築指導課の職員が直接現地に伺って行います。塀の破損・傾き、内部鉄筋・基礎・控壁の有無を確認し、一定点数以下であれば補助対象。つまりまず相談すれば、専門職員による無料の危険度診断が受けられるということです。

「補助金がもらえるかどうか」以前に、自分の物件の塀が客観的にどう評価されるかを知っておくことに価値があります。

スケジュールと代理受領

  • 交付申請:補助を受けようとする年度の11月30日まで(工事着手前)
  • 実績報告:1月31日まで
  • 請求書:3月15日まで

2026年9月時点でまだ間に合いますが、現地判定→申請→交付決定→着工→完了という流れを考えると、10月中には相談を入れておきたい日程感です。

なお佐倉市には補助金の代理受領制度があり、施工業者が補助金を直接受領する形にすれば、オーナーの立替負担を圧縮できます。キャッシュフローを重視する方は必ず確認してください。

お問い合わせは建築指導課(指導班)043-484-6169。


【佐倉市ならでは】戸建賃貸住宅家賃補助事業——これは「入居者向け」ですが、オーナーの武器になります

制度の骨格

これは申請者が入居者であり、オーナーが補助金を受け取る制度ではありません。それでも私がこの記事で章を割く理由は、佐倉市で戸建賃貸を持つオーナーにとって、これが募集条件そのものを変える力を持つからです。

制度の内容はこうです(出典:令和8年度戸建賃貸住宅家賃補助事業について|佐倉市 住宅課)。

項目 内容
補助額 毎月の家賃の1/3以内(上限2万円)× 24か月
対象者 新たに戸建住宅を賃貸契約した方(申請時に契約から1年以内。契約更新は対象外)
世帯要件 2008年(平成20年)4月2日以降に生まれた子を育てる世帯、または令和8年4月1日時点で夫婦どちらかが40歳未満の世帯
対象住宅 市内の戸建民間賃貸住宅。親族の所有する住宅は対象外。契約期間1年未満の短期滞在向けは対象外
対象外費用 共益費・管理費・駐車場使用料
募集期間 令和8年4月21日〜令和9年2月26日(先着順、予算到達で終了)

オーナー視点で読み替えると、こうなります

上限2万円 × 24か月 = 最大48万円。これを、市が入居者に給付します。

家賃9万円の戸建賃貸を想定してください。入居者から見た実質負担は、2年間にわたり月7万円です。同じ佐倉市内で家賃7万円台の戸建賃貸を探している若年子育て世帯にとって、あなたの物件が突然、検討対象に入ってくるという意味になります。

そしてこれは、オーナーが1円も値引きしていない状態で起きます。表面家賃を下げずに、体感家賃だけを下げる——賃貸経営でこれ以上ありがたい構造はそうありません。

実務でやるべきこと

やることは単純です。募集図面と広告に、この制度を明記する。

「佐倉市戸建賃貸住宅家賃補助対象物件(要件を満たす世帯に限る/市への申請が必要です)」

この一行を入れているかどうかで、反響数は変わります。私が見てきたかぎり、この制度を告知に使っている募集図面は、まだ少数です。管理会社任せにしていると、まず載りません。今週、管理会社に電話一本入れる価値があります。

ただし注意点が二つ。

  1. 申請するのは入居者本人です。オーナーが代行することはできません。募集段階では「制度がある」ことの案内にとどめ、要件判定は市の窓口へ誘導してください
  2. 先着順で予算到達により終了します。「必ずもらえる」と断定した表示は避け、「市への申請が必要/予算により終了する場合があります」と添えてください

誠実な告知が、結果としてトラブルを防ぎ、成約率を上げます。

住宅課 043-484-6168。


【空き家をお持ちなら】空き家バンク賃貸登録物件リフォーム補助——1/2・上限30万円

相続などで取得した空き家を、賃貸に回すか売却するか迷っている方に直結する制度です。

項目 内容
補助額 住宅改修工事費および家財道具の処分費の1/2以内・上限30万円
対象者 空き家バンクに登録されている賃貸物件の所有者、または賃借した利用者
重要 法人は対象外
対象住宅 所有者が使う場合、賃貸契約する前の住宅であること
条件 1物件1回、補助金交付後1年以上、空き家バンク登録を継続すること
申請期間 令和8年4月17日〜令和9年2月26日(先着順)

(出典:令和8年度佐倉市定住人口維持増加活動支援事業(空き家バンク賃貸登録物件リフォーム補助)|佐倉市)

実務上、効くのは「家財道具の処分費」も対象になる点です。相続空き家の再生でいちばん腰が重くなるのが残置物処分で、戸建一棟で30万〜60万円かかることも珍しくありません。ここが補助対象に含まれているのは、実態をよく踏まえた設計だと思います。

一方で制約も明確です。法人名義は対象外。資産管理法人で物件を保有しているオーナーさまは、この制度だけは使えません。また、所有者が使う場合は賃貸契約前である必要があります。「入居が決まってから直す」という順序では間に合いません。

そして、空き家バンクへの登録と1年以上の継続が条件です。市場でさっと売り抜けたい物件には向かず、腰を据えて賃貸運用する物件に向いた制度といえます。


【重要な落とし穴】佐倉市の省エネ設備補助と耐震補助は、投資用物件には原則使えません

ここが本記事でいちばんお伝えしたい注意点です。

省エネ設備補助——「市内に住所を有する個人」

佐倉市住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金のうち、以下は補助対象者が「市内に住所を有する個人であること」と定められています。

  • 住宅用太陽光発電設備(1kWあたり1.5万円・上限6万円)
  • 家庭用燃料電池システム(エネファーム/上限10万円)
  • 定置用リチウムイオン蓄電システム(上限7万円)
  • 電気自動車等(上限10万〜15万円)
  • V2H充放電設備(1/10・上限25万円)
  • 窓の断熱改修(1/4・上限8万円)

つまり自ら住み、住民登録している住宅が前提です。投資用の賃貸物件に太陽光や蓄電池を載せる計画に、この補助金を織り込んでいた方は収支計画の見直しが必要です。

さらに窓の断熱改修には、もう一段の注意があります。マンション向けの枠(1/4・8万円×戸数)は、対象者が「マンション管理組合であること」。これは分譲マンションを想定した規定で、一棟所有の賃貸マンションオーナーは対象になりません。

加えて、市は明確に案内しています。

耐震補助——佐倉市は「お住まいのかた」

佐倉市の木造住宅耐震補助は、補助率4/5・上限115万円と全国的にも手厚い水準です。しかし補助対象者は「昭和56年5月31日以前に建築され、以降増築されていない戸建木造住宅にお住まいのかた」と定められています(出典:木造住宅の耐震診断・耐震補強工事への補助|佐倉市)。

「所有しているかた」ではなく「お住まいのかた」。この一語の差が決定的です。近隣の一部自治体では所有者であれば貸家でも対象としている例がありますが、佐倉市は居住を要件としている読み方が自然です。旧耐震の貸家をお持ちで、この補助を前提に改修を検討されている方は、着手前に必ず建築指導課へ個別確認してください。

同様に、分譲マンションの耐震診断補助(本診断で1戸4万円かつ1棟100万円が上限)も、対象者は管理組合であり、区分所有者が現に居住する住宅戸数が全戸数の1/2以上であることが条件です。投資用の区分所有や一棟賃貸マンションは想定されていません。

浸水区域のかさ上げ工事補助(1/2・上限100万円)も、対象は「自らがお住まいの住宅等」で、対象区域も表町二〜四丁目、鏑木町二丁目などに限定されています。

まとめると、佐倉市の住宅系補助は「居住者向け」に厚く設計されており、オーナーが直接使えるのは集合住宅用充電設備とブロック塀除却の2本。 ここを正確に押さえておけば、無駄な労力は発生しません。

では、オーナーはどうやって取り返すのか。答えは国の制度です。


【国・オーナーが主役】賃貸集合給湯省エネ2026事業——1台5万〜10万円

制度の骨格

この制度は、賃貸集合住宅のオーナーが主役として設計された、数少ない国の補助金です。

項目 内容
対象者 賃貸集合住宅のオーナー等(2戸以上を所有する区分所有者を含む)
補助額 追い焚き機能なしのエコジョーズ/エコフィール:5万円/台
追い焚き機能あり:7万円/台
一定の排水工事を伴う場合、加算により最大8万円/10万円/台
対象工事 令和7年11月28日以降に補助対象製品の設置工事に着手したもの
申請 登録事業者(施工業者・管理会社・リース事業者等)が交付申請を行う

(出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業について|資源エネルギー庁、賃貸集合給湯省エネ2026事業【公式】)

8戸のアパートで試算すると

追い焚きなしのエコジョーズに8台交換する場合。

  • 工事費(8台分):約120万円
  • 補助金:5万円 × 8台 = 40万円
  • 実質負担:約80万円

さらに追い焚きありなら7万円×8台=56万円。排水工事の加算要件を満たせば、さらに上振れします。

実務上の最重要ポイント:オーナーは直接申請できません

この制度は登録事業者が申請します。オーナーが自分で書類を出す制度ではありません。

したがってオーナーがやるべきことは、ただ一つ。依頼先の業者が「賃貸集合給湯省エネ事業者」として登録済みかを確認することです。登録していない業者に工事を頼んだ時点で、補助はゼロになります。事業者検索は公式サイトから可能です。

見積依頼のときに、この一言を入れてください。

「賃貸集合給湯省エネ2026事業の登録事業者ですか。補助金申請まで対応いただけますか」

給湯器交換が入居率に効く理由

給湯器は、入居者が退去を決める理由の上位に来る設備です。しかも故障は、使用頻度が上がる冬に集中します。冬の給湯器故障は即日対応を求められ、部材の在庫がなければ数日にわたり入居者に不便を強いることになります。これが原因の退去は、統計に残らない形で毎年発生しています。

故障を待って交換するのではなく、補助金のある年度に計画交換する。 これが、キャッシュフローと入居率の両方で優位に立つ考え方です。設置から15年を超えた給湯器をお持ちなら、今年度が動きどきです。


【国】先進的窓リノベ2026事業——賃貸住宅所有者も対象

環境省の先進的窓リノベ2026事業は、建物を所有する個人・法人・地方公共団体等が対象で、賃貸住宅所有者、マンション管理組合、管理組合法人等も含まれます(出典:事業概要|先進的窓リノベ2026事業)。

項目 内容
予算 令和7年度補正予算 1,125億円
対象者 建物を所有する個人・法人等(賃貸住宅所有者を含む)
補助上限 1棟につき 100万円 × 改修した住戸数(2025年度の200万円/戸から見直し)
下限 1申請あたり合計補助額5万円以上の工事
非住宅建築物 1棟あたり上限1,000万円
期限 申請開始〜遅くとも2026年12月31日まで(予算上限到達時点で終了)

(令和7年度補正予算の概要(PDF)|環境省)

賃貸物件で窓の断熱改修を行う場合、実務上の壁は居室内での作業です。入居中の部屋には入れません。したがって現実的な進め方は、退去のタイミングで内窓を設置し、原状回復工事と一体で発注すること。

このとき効いてくるのが、「1申請合計5万円以上」という下限です。1戸ずつバラバラに申請するのではなく、退去が重なったタイミングでまとめる、あるいは共用部の工事と束ねる設計が有利になります。予算が消化されきる前に、年間の退去見込みから逆算した申請計画を立ててください。

なお国の制度は、みらいエコ住宅2026事業・給湯省エネ2026事業とともに住宅省エネ2026キャンペーンとして一体運用されています。同一工事への重複受給はできませんが、対象工事が異なれば併用できる設計です。


税務:補助金の課税、資本的支出と修繕費、そして固定資産税

補助金は課税されます

まずここを外さないでください。賃貸経営に関して受け取った補助金は、原則として不動産所得の総収入金額に算入されます(法人の場合は益金算入)。

「補助金40万円をもらったから40万円得した」ではありません。所得税・住民税率が合計30%なら、実質の手取りは28万円程度です。

ただし対応する工事費が同じ年度に費用または資産として計上されるため、実質的な負担は緩和されます。また、固定資産の取得に充てた国庫補助金等については圧縮記帳という選択肢があり、課税の繰延べが可能な場合があります。適用要件は厳密なので、必ず顧問税理士にご確認ください。

資本的支出と修繕費——ここで最も差がつきます

賃貸経営で税務上いちばん結果が変わるのが、この線引きです。

工事 一般的な考え方
ブロック塀の除却のみ 撤去費用としてその年の必要経費になりやすい
ブロック塀撤去+フェンス新設 フェンスは構築物として資本的支出(減価償却)になりやすい
給湯器の同等品交換 原則修繕費
給湯器の高機能化を伴う交換 資本的支出と判断される可能性
窓の断熱改修(内窓設置) 性能向上を伴うため資本的支出になりやすい
EV充電設備の新設 資本的支出(構築物・機械装置)

重要なのは、見積書の内訳の書き方で判断が変わりうるという点です。「一式」でまとめられた見積書は、税務判断の材料になりません。除却費・撤去処分費・新設費を明確に分けた内訳書をもらってください。真っ当な業者であれば、依頼すれば出してくれるはずのものです。

私どもが見積書を出すときに内訳を細かく分けているのは、単に丁寧なのではなく、オーナーさまの税務判断のためです。

固定資産税の減額制度

佐倉市には、耐震改修および省エネ改修を行った住宅に対する固定資産税の減額制度があります。

いずれも申告しなければ適用されません。工事が終わったら自動的に減額されるものではない、という点だけは覚えて帰ってください。要件に居住条件が含まれるものもあるため、投資用物件での適用可否は資産税課へご確認ください。


モデルケースで見る:佐倉市のオーナーは、どれだけ変わるか

ケースA:築36年・木造アパート8戸(志津エリア、家賃6万5,000円)

課題:給湯器が全戸15年超。道路側のブロック塀にひび割れ。

打ち手 費用 補助 実質負担
エコジョーズ8台交換(国・賃貸集合給湯省エネ2026) 120万円 40万円 80万円
ブロック塀20m除却+フェンス(市・上限25万円) 100万円 25万円 75万円
合計 220万円 65万円 155万円

補助率にすると約30%。 さらに、給湯器起因の退去が年2件から1件に減れば年間33万円の改善。3〜4年で実質負担が回収される計算になります。

ケースB:築30年・RC一棟マンション12戸(ユーカリが丘エリア)

課題:敷地に来客用の空き駐車区画が3台分。EV充電の要望が入居者から出ている。

打ち手 内容
集合住宅用充電設備(2口)を設置 市の補助上限は50万円×2口=100万円(住民のみ利用の場合)
住民以外にも開放する設計に変更 国の充電インフラ補助の交付決定が必要/市の上限は100万円×2口=200万円

加えて、充電課金による収入が発生します。空き駐車区画という「NOIを生んでいない資産」を、収益区画に転換する——これが佐倉市で今年度いちばん見逃されている打ち手だと考えています。

ただし予算残額は令和8年8月4日時点で「その他設備」約1,262万円。動くなら年内です。

ケースC:相続で取得した空き家(戸建、佐倉地区)

課題:残置物が大量。賃貸に回すか売るか未定。

打ち手 費用 補助
空き家バンク登録 → 家財処分+内装リフォーム 90万円 1/2かつ上限30万円
入居者が戸建賃貸住宅家賃補助を利用(家賃9万円想定) — 入居者に最大48万円(月2万円×24か月)

オーナーは30万円の補助を受け、入居者は月2万円の負担軽減を受ける。募集競争力が上がった状態で、リフォーム費の1/3が戻ってくる構造です。ただし法人名義は補助対象外、かつ賃貸契約前に申請する必要がある点にご注意ください。


出口戦略:佐倉で「売れる物件」にするための修繕の順序

買主が減額交渉に使う3つの材料

収益物件の売買で、買主側が指値の根拠に使うのは、たいてい次の3つです。

  1. 危険なブロック塀・擁壁(是正費用+潜在的な賠償リスク)
  2. 旧耐震(融資が付きにくい/出口が狭い)
  3. 給湯器・屋上防水・外壁の残存年数(引渡し後すぐに発生する支出)

いずれも「いくらかかるか」を数字で示せてしまうため、そのまま価格から引かれます。

収益還元で考えると、修繕はどこまで正当化されるか

収益物件の価格は、おおまかに「年間NOI ÷ 期待利回り(キャップレート)」で決まります。

佐倉市の郊外・築古アパートで期待利回りを仮に8%と置くと、年間NOIが10万円改善すれば、理論上の物件価格は約125万円上がる計算です(10万円 ÷ 0.08)。

もちろんこれは単純化した試算で、実際の売買価格は立地・築年・融資環境で大きく変わります。それでも、「修繕は費用ではなく価格への投資でもある」という視点は、出口を意識するオーナーには欠かせません。

売却の2〜3年前に着手すべき順序

  1. ブロック塀の是正(補助が使え、賠償リスクを消せ、内見時の印象も変わる)
  2. 給湯器の計画交換(補助が使え、引渡し後の買主リスクを消せる)
  3. 外壁・防水の更新(最も金額が大きく、最も指値の根拠になりやすい)
  4. 窓の断熱(退去のタイミングに合わせて段階的に)

この順序は、補助金が使える順でもあり、単価あたりの効果が高い順でもあります。


コストは制度だけでなく「工法の選び方」でも変わります

ここまで補助金の話をしてきましたが、大規模修繕の総額を最も大きく動かすのは、実は工法の選択です。

一般的な大規模修繕では、仮設足場が工事費の2割前後を占めます。この2割は、建物の性能を1ミリも向上させません。作業員が高所に届くためだけの費用です。

佐倉市の賃貸ストックは2〜4階建ての中低層が中心で、多くの場合は足場工法が基本になります。それでも、次のような条件ではロープアクセス工法(無足場工法)やハイブリッド工法が有効に働きます。

  • 敷地が狭く、足場を組むと駐車場を潰さざるを得ない(駐車場収入の停止=NOIの直接的な毀損)
  • 隣地との距離が近く、足場の架設自体が困難
  • 部分補修で足りる(外壁の一部、シーリングのみ、屋上まわりのみ)
  • 入居者の生活影響を最小化したい(足場は防犯上の不安を生み、これが退去理由になることがあります)

株式会社明誠は、足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物の形状・劣化状況・入居状況に応じて最適な組み合わせをご提案できる、日本でも数少ない会社です。ロープアクセス工法の技術情報・安全基準・施工事例は、姉妹サイトロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。

また明誠は、日本初となるロープアクセス工事のフランチャイズを展開しており、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しています。中間マージンを重ねずに専門職へ直接発注できる体制が、高品質と適正価格の両立を可能にしています。

補助金で工事費の2〜3割を圧縮し、工法の選択でさらに足場費を圧縮する。この二段構えが、オーナーにとっての最適解です。大規模修繕の進め方全般については大規模修繕工事のご案内にまとめています。

近隣自治体の同シリーズ記事

佐倉市の物件と併せて、近隣にも物件をお持ちの方は次の記事もご参照ください。制度の中身は自治体ごとにかなり違います。


申請カレンダーと早見表

制度ごとの要点まとめ

制度 補助率・上限 対象者 期限 窓口
佐倉市 集合住宅用充電設備 国補助額の1/3または2/3、上限50万/100万円×口数 マンション等の管理組合又は所有者 予算到達まで(残額 約1,262万円/2026年8月4日時点) 生活環境課 043-484-4278
佐倉市 危険ブロック塀等除却・フェンス・緑化 除却1/2かつ1万円/m、フェンス1/2かつ1.5万円/m、合計25万円 塀の所有者または管理者 申請11/30、実績報告1/31、請求3/15 建築指導課 043-484-6169
佐倉市 空き家バンク賃貸登録物件リフォーム 1/2以内・上限30万円 空き家バンク登録賃貸物件の所有者(法人不可) 令和9年2月26日(先着順) 住宅課 043-484-6168
佐倉市 戸建賃貸住宅家賃補助 家賃1/3以内・上限2万円×24か月 入居者(若年・子育て世帯) 令和9年2月26日(先着順) 住宅課 043-484-6168
国 賃貸集合給湯省エネ2026 5万/7万円(加算で最大8万/10万円)/台 賃貸集合住宅のオーナー等 予算到達まで 登録事業者経由
国 先進的窓リノベ2026 1申請5万円以上、非住宅1棟上限1,000万円 建物所有者(賃貸住宅所有者を含む) 遅くとも2026年12月31日 登録事業者経由

2026年9月からの現実的なスケジュール

9月中

  • 所有物件のブロック塀を確認し、建築指導課へ現地判定を依頼
  • 給湯器の設置年を全戸分リストアップ
  • 空き駐車区画の有無を確認(EV充電設備を検討する材料になります)

10月中

  • ブロック塀の補助申請書類を準備(申請期限11月30日)
  • 給湯器交換の見積を、賃貸集合給湯省エネ登録事業者から取得
  • 集合住宅用充電設備を検討するなら、住民限定か開放型かを決定

11月〜12月

  • ブロック塀:11月30日までに交付申請
  • 窓リノベ:退去予定から逆算して申請計画(12月31日期限)
  • 令和9年度予算に向けた工事計画の整理

1月〜3月

  • ブロック塀:実績報告1月31日、請求3月15日
  • 確定申告に向け、補助金の収入計上と資本的支出/修繕費の整理

よくある質問(FAQ)

Q1. 佐倉市の補助金で、法人名義の賃貸物件でも使えるものはありますか。

A. 集合住宅用充電設備は、対象者が「マンション等のマンション管理組合又は所有者」と定められており、法人所有を明示的に除外する規定は置かれていません。一方、空き家バンク賃貸登録物件リフォーム補助は法人が明確に対象外です。法人名義での申請可否は、必ず事前に各担当課へご確認ください。

Q2. 貸家の耐震改修に、佐倉市の上限115万円の補助は使えますか。

A. 佐倉市の補助対象者は「戸建木造住宅にお住まいのかた」と定められており、居住していない貸家は原則対象外と読むのが自然です。近隣自治体には所有者要件のみの例もありますが、佐倉市では建築指導課(043-484-6169)への個別確認を強くおすすめします。

Q3. 市の補助金と国の補助金は併用できますか。

A. 佐倉市の場合、この論点は制度によって答えが逆になります。集合住宅用充電設備は、住民以外にも開放するなら国の充電インフラ補助の交付決定を受けていることが市の補助の条件——つまり併用が前提の設計です。一方、住宅用の省エネ設備については、市が「エコキュートは市の対象外なので国の給湯省エネ2026事業へ」と役割分担を明示しています。同一の工事に対する重複受給は原則できませんが、工事の対象が異なれば制度をまたいで組み立てられます。切り分け方は、着手前に各担当課へご相談ください。

Q4. 佐倉市の補助金を受け取ると、税金はどうなりますか。

A. 賃貸経営に関して受け取った補助金は、不動産所得の総収入金額に算入されるのが原則です(法人は益金算入)。たとえばブロック塀の補助25万円を受け取れば、その25万円は収入として計上されます。ただし同じ年度に工事費が費用または資産として計上されるため、実質的な負担は緩和されます。EV充電設備のように固定資産の取得に充てた国庫補助金等については、圧縮記帳による課税の繰延べという選択肢もあります。適用の可否は顧問税理士にご確認ください。

Q5. 佐倉市の物件で、入居者に住んでもらったまま工事はできますか。

A. 外装まわりの工事であれば可能です。むしろ佐倉市の賃貸物件で気をつけたいのは駐車場です。市内の物件は1戸1台以上の駐車区画を備えていることが多く、足場を組むと数区画が使えなくなり、入居者から不満が出やすくなります。ロープアクセス工法(無足場工法)であれば駐車区画をほぼ塞がずに施工でき、工期も短縮できるケースがあります。一方、窓の内窓設置のような居室内の工事は、退去のタイミングに合わせるのが現実的です。

Q6. ブロック塀の「危険」判定は誰がするのですか。

A. 佐倉市建築指導課の職員が直接現地に伺い、塀の破損・傾き、内部鉄筋・基礎・控壁の有無等を確認して評価し、一定点数以下のものが補助対象になります。判定を受けること自体は、専門職員による無料の危険度チェックにもなります。


この記事のポイントまとめ

  • 佐倉市で賃貸オーナーが直接申請できる市の補助は、EV充電設備とブロック塀除却の2本
  • 集合住宅用充電設備は「管理組合又は所有者」が対象。1口あたり上限50万〜100万円
  • 太陽光・蓄電池・エネファーム等は「市内に住所を有する個人」=投資用物件は原則対象外
  • 戸建賃貸の家賃補助(入居者に最大48万円)は、募集図面に明記すべき強力な武器
  • 給湯器と窓は国の制度が本命。登録事業者かどうかの確認が成否を分ける

まとめ:佐倉市のオーナーが取るべき3つの行動

1. 今週、所有物件の「塀」と「給湯器の設置年」を確認してください。

ブロック塀は上限25万円ですが、居住要件がなくオーナーが直接使える数少ない市の制度であり、同時に工作物責任という重いリスクを消せます。申請期限は11月30日。現地判定から逆算すると、10月中の相談が現実的なリミットです。給湯器は、国の賃貸集合給湯省エネ2026事業が使えるうちに計画交換へ切り替えるべきタイミングです。

2. 敷地に空き駐車区画があるなら、EV充電設備を検討してください。

佐倉市の補助金で「所有者」を対象に明記しているのは、集合住宅用充電設備だけです。1口あたり上限50万円(住民以外にも開放するなら100万円)。予算残額は2026年8月4日時点で約1,262万円。NOIを生んでいない空き区画を、補助金付きで収益区画に変えられる——今年度、佐倉市でいちばん見逃されている打ち手だと考えています。

3. 市の省エネ補助を投資用物件の収支計画に入れているなら、今すぐ見直してください。

佐倉市の太陽光・蓄電池・エネファーム・窓断熱(戸建)は、「市内に住所を有する個人」が要件です。投資用物件には原則使えません。代わりに、国の賃貸集合給湯省エネ2026事業と先進的窓リノベ2026事業が、賃貸オーナーを対象として設計されています。取り返すルートは、市ではなく国にあります。

そして最後に。補助金と同じくらい、場合によってはそれ以上に総額を左右するのが工法の選択です。足場は工事費の2割前後を占めながら、資産価値を生みません。株式会社明誠は、足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3つから、建物と入居状況に応じた最適解をご提案します。ロープアクセス工法の一般的な安全基準や事例はロープアクセスドットコムで解説しています。

佐倉市の物件で「補助金を使いつつ、工事総額も下げたい」とお考えでしたら、まずは1棟の現地調査と利回り改善シミュレーションからご相談ください。制度の適用可否と、工法別の概算を並べてお示しします。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開しています。

最終更新:2026年9月3日


出典・参考資料

お問い合わせ先(佐倉市役所 〒285-8501 千葉県佐倉市海隣寺町97)

  • 都市部 建築指導課(指導班):043-484-6169
  • 都市部 住宅課(住生活推進班):043-484-6168
  • 経済環境部 生活環境課(環境政策班):043-484-4278
  • 佐倉市役所 代表:043-484-1111

※本記事は2026年9月3日時点の公表情報に基づいて作成しています。制度内容・予算状況・受付期間は変更される場合がありますので、申請前に必ず各窓口へご確認ください。税務の取扱いについては、必ず顧問税理士にご相談ください。

磐田市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

磐田市で分譲マンションの理事長をされている方に、この記事でお答えしたい質問は1つです。「磐田市には、うちの大規模修繕に使える制度が本当にあるのか」。

結論から申し上げます。磐田市には、外壁塗装や外壁改修そのものに現金が出る市の補助金はありません。これは私の推測ではなく、磐田市が公式サイトのよくある質問で「磐田市では、現在お住まいの住宅に行う外壁塗装、外壁改修等に対する助成制度(補助金等)はありません」とはっきり書いています(出典:磐田市 よくある質問「外壁塗装等の助成制度はありますか」)。

ここで記事を閉じてしまえば、それまでの話です。ただ、私はこの連載で静岡県内の市町を1つずつ調べてきて、磐田市で初めて出会った事実があります。磐田市は、政令指定都市ではない普通の市でありながら、マンション管理計画認定制度を自前で運用していて、しかも市に支払う手数料がゼロです。

これがどれだけ珍しいことかは、あとで数字で示します。先に申し上げたいのは、磐田市の管理組合にとって、いま最も費用対効果の高い行動は「補助金を探すこと」ではなく「無料で取れる認定を取って、固定資産税の減額につなげること」だということです。

私は東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事を20年近くやってきました。足場を架ける工事も、ロープアクセス工法(産業用ロープで職人が下りながら施工する無足場工法)も、その両方を組み合わせるハイブリッド工法も自社で提案できる立場から、磐田市の管理組合が今日から動ける形で整理します。

最終更新:2026年8月31日


この記事の結論|磐田市の管理組合が今週やるべきことは3つ

長い記事になりますので、先に結論を3行で置きます。

  1. 磐田市 建設部 建築住宅課 住宅管理グループ(0538-37-4851)に電話し、管理計画認定の申請手順を聞く。 市に払う手数料はゼロです。
  2. 着工前の写真を撮る段取りを、施工会社との契約に書き込む。 足場が架かって高圧洗浄が終わったら、改修前の状態はこの世に存在しなくなります。
  3. 補助金を探す時間を、工法の比較と業者の相見積りに振り替える。 磐田市に外壁の補助金はありません。削れるのは仮設費です。

以下、この3つの根拠を1つずつ説明していきます。


Q. 磐田市のマンションは、管理計画認定をどこに申請するのか

A. 磐田市に申請します。静岡県ではありません。

これは制度の設計上、とても大きな意味を持ちます。マンション管理計画認定制度は、マンションの管理組合が管理計画を自治体に申請し、一定の基準を満たしていれば「適正に管理されているマンション」として認定を受けられる制度です。認定を出せるのは、マンション管理適正化推進計画を作成した都道府県または市町村に限られます。

静岡県のページを見ると、見出しからして「マンション管理計画認定制度(対象:県内の町域)」と書かれています(出典:静岡県 マンション管理・分譲マンション対策)。つまり静岡県が認定事務を行うのは町の区域だけで、市の区域は各市が自分で認定権者になっているかどうかで決まります。

この連載で私が扱ってきた静岡県内の市町を並べると、構図が見えてきます。

自治体 区分 管理計画認定の申請先 市町に払う手数料
長泉町・清水町・函南町 町 静岡県 4,000円(事前確認適合証あり)/28,100円(なし)
牧之原市・島田市・菊川市・御前崎市 市 公開情報からは申請先を確認できず ―
浜松市 政令指定都市 浜松市 電子申請なら令和9年3月31日まで0円
磐田市 市(政令市ではない) 磐田市 0円

(出典:静岡県、磐田市 マンション管理、浜松市 マンション管理計画認定制度)

磐田市のページには、こう書かれています。

「管理計画の認定基準は、国の基本的な方針で定められています。※磐田市独自の基準は設けていません。」
「申請には、(公財)マンション管理センターが発行する事前確認適合証が必要です。」
「市に支払う手数料等はありません。」

(出典:磐田市 マンション管理、更新日2026年8月21日)

私はこの3行を読んで、正直に言うと少し驚きました。人口16万人規模の市が、独自基準を設けず国の基準そのままで、手数料も取らずに認定制度を回している。県の町域なら28,100円かかるケースがある手続きが、磐田市では市への支払いがゼロです。


磐田市マンション管理適正化推進計画|目標は「15棟の認定」

磐田市が認定権者になれているのは、磐田市マンション管理適正化推進計画を策定しているからです。計画期間は令和6年4月1日から令和16年3月31日までの10年間で、目標として「15棟のマンションの管理計画の認定」が掲げられています(出典:磐田市マンション管理適正化推進計画 PDF)。

この「15棟」という数字を、私は2つの意味で読みました。

1つ目。市が本気で数を追いかけている。 目標を掲げている以上、担当課には認定を増やしたい動機があります。管理組合から相談が来ることを、市は歓迎する立場にあるということです。理事長が電話をかけて迷惑がられる話ではありません。

2つ目。まだ認定件数が多くない可能性がある。 10年で15棟という目標設定は、決して大きな数字ではありません。裏を返せば、いま相談すれば窓口の担当者と丁寧にやり取りできる可能性が高いということです。認定が殺到している自治体では、こうはいきません。

私はいつも理事長さまに、「制度は、使う人が少ないうちが一番使いやすい」とお伝えしています。行列ができてから並ぶより、行列ができる前に窓口に行ったほうが、教えてもらえる情報の密度が違います。


認定を取るには何が要るのか|事前確認適合証が入口

磐田市の認定申請には、(公財)マンション管理センターが発行する事前確認適合証が必要です。これは市独自のルールではなく、多くの自治体が採用している「管理計画認定手続支援サービス」という仕組みです。

流れはこうなります。

  1. マンション管理センターの電子システムに、管理組合の情報と長期修繕計画の内容を入力する
  2. 事前確認講習を修了したマンション管理士が、国の認定基準に適合しているかを事前に確認する
  3. 適合していれば事前確認適合証が発行される
  4. その適合証を添えて、磐田市に認定申請する(市への手数料は0円)

(出典:(公財)マンション管理センター 管理計画認定手続支援サービス)

費用がかかるのは、市ではなくセンター側です。システム利用料が1申請あたり10,000円(税込)、これに事前確認審査料が加わります。センターに直接申し込むパターンや日本マンション管理士会連合会の適正化診断サービスを併用するパターンでは、事前確認審査料は長期修繕計画1計画あたり10,000円(税込)です(出典:同上)。

つまり長期修繕計画が1本の一般的な管理組合なら、合計20,000円前後で認定申請までたどり着ける計算になります。県の町域で事前確認適合証なしに申請すると28,100円かかることを思えば、磐田市の管理組合が置かれた条件はかなり良い部類です。

なお、申請できるのは申請者本人か、委任を受けた代理人(行政書士に限る)のみです。管理会社に丸投げできる手続きではない点は、理事会で共有しておいてください。

認定基準についての注意点を1つ。 令和7年のマンション関係法改正により、令和9年4月1日から管理計画認定制度が拡充され、認定基準も見直されることが公表されています(出典:国土交通省 マンションの管理計画認定制度)。長期の準備を進める組合は、令和9年4月以降の申請には新しい基準が適用されることを頭に置いてください。


マンション長寿命化促進税制|期限は令和9年3月31日、残り約19か月

認定を取ることの実利は、固定資産税にあります。マンション長寿命化促進税制です。

この税制は、一定の要件を満たすマンションが長寿命化に資する大規模修繕工事を行った場合に、工事完了の翌年度分の固定資産税(建物部分)を、1戸あたり100㎡相当分まで減額するというものです。減額の割合は市町村の条例で1/6から1/2の範囲内で定められ、国が示す参酌基準は1/3です(出典:国土交通省 マンションに関する税制、令和8年4月1日 国住参マ第306号 PDF)。

磐田市のページにも、明確に書かれています。

「一定の要件を満たすマンションについて、令和9年3月31日までに、長寿命化に資する大規模修繕工事(長寿命化工事)を行った場合、固定資産税の一部が減額されます。」
「※減額措置の対象になるためには、申告前かつ工事完了年度の賦課期日(1月1日)までに管理計画の認定を受ける必要があります。」

(出典:磐田市 マンション管理)

工事完了の期限は令和9年3月31日です。この記事を公開している2026年8月31日から数えて、残り約19か月しかありません。

対象となる工事は3点セット

対象になる長寿命化工事は、次の3つです。

# 工事の種類 補足
1 外壁塗装等工事 外壁の塗替え・タイル補修等
2 床防水工事 開放廊下・バルコニー等の床防水
3 屋根防水工事 屋上・屋根の防水

(出典:国土交通省 マンションに関する税制)

この3つを、同一の工事請負契約など一体として実施することが要件です。 ここが実務で最も落とし穴になります。

私は現場で何度も見てきました。積立金が足りないという理由で、「今回は外壁と廊下の床までにして、屋上防水は5年後にやりましょう」という結論になる理事会が本当に多い。判断としては理解できます。ただ、その決定をした瞬間に、この税制の対象から外れる可能性が出てきます。

設計の段階で工事範囲を決めるとき、税制のことを誰も口にしないまま議案が固まってしまう。これが一番もったいないパターンです。工事の見積りを取る前に、「長寿命化促進税制の3点セットを一体で施工した場合と、分割した場合で、税制の適用がどう変わりますか」と設計事務所に一言聞いておくだけで、選択肢が残ります。

なお、共通の要件として、①築20年以上、②総戸数10戸以上、③過去に長寿命化工事の実績があること、が必要です(出典:同上)。


2つのルートの分かれ目は「修繕積立金の引き上げ」

長寿命化促進税制を使うには、上の共通要件に加えて、次のどちらか一方のルートを通る必要があります。

ルートA:管理計画認定ルート ルートB:助言・指導ルート
前提 管理計画の認定を取得している 法第5条の2に基づく助言・指導を受けている
積立金の要件 令和3年9月1日以降に、長期修繕計画期間全体の修繕積立金平均額を認定基準の引上げ基準額まで引き上げたこと(20階未満・5,000㎡未満なら235円/㎡月など) 修繕積立金の平均額が基準額(20階未満・5,000㎡未満なら91円/㎡月など)以上であること
主な必要書類 認定通知書の写し/修繕積立金引上証明書/過去工事証明書/大規模の修繕等証明書 助言・指導内容実施等証明書/過去工事証明書/大規模の修繕等証明書
総会との関係 積立金の引き上げ決議が必要になる可能性が高い 引き上げは必須ではない

(出典:国土交通省 概要PDF(認定ルート)、概要PDF(助言・指導ルート))

2つのルートの実質的な分かれ目は、修繕積立金を引き上げる決議が要るかどうかです。 そしてこれは、管理組合にとって総会運営の話に直結します。

積立金の値上げは、どこの組合でも最も通しにくい議案です。一方で、助言・指導ルートなら引き上げそのものは要件ではありません。ただし、長期修繕計画の期間が30年以上あること、残存期間中に長寿命化工事等が2回以上計画されていること、一時金の徴収予定がないこと、最終年度に借入金残高がないことなど、計画の中身に条件がつきます。

どちらが自分の組合に向いているかは、長期修繕計画書を1冊開けばだいたい判断がつきます。理事会で1時間取って、計画の作成年月日と計画期間、そして修繕積立金の月額(㎡あたりに割り戻した数字)を確認してみてください。

なお、様式と記入例はすべて国土交通省のサイトで公開されています。理事会で「制度がよく分からない」という話になったら、記入例のPDFを1枚印刷して回すのが一番早いです。

助言・指導内容実施等証明書は誰が出すのか

助言・指導ルートを選ぶ場合、「助言・指導内容実施等証明書」を誰が発行するのかという疑問が必ず出ます。

国土交通省の通知には「助言・指導内容実施等証明書を発行できるのは、都道府県等とされています」と書かれています(出典:令和8年4月1日 国住参マ第306号 PDF)。この「都道府県等」は、マンション管理適正化法の定義上、市の区域内にあっては当該市を指します。したがって磐田市のマンションであれば、発行者は磐田市になると読めます。

ただし、磐田市のサイトに「当市が発行します」という直接の記載は見つかりませんでした。推測で埋めずに、窓口に確認してください。 電話で読み上げる質問文を用意しておきます。

「磐田市の分譲マンションの管理組合です。マンション長寿命化促進税制の助言・指導ルートを検討しています。助言・指導内容実施等証明書は、磐田市が発行していただけるものでしょうか。申請の窓口と、必要な書類の一覧をいただけますか。工事はこれからです。」

最後の「工事はこれからです」を必ず添えてください。 理由は3つあります。着工前でなければ撮れない写真があること、様式を先に知っていれば施工会社に必要書類の準備を指示できること、そして工事が始まってからでは間に合わない手続きがあることです。

問い合わせ先は、建設部 建築住宅課 住宅管理グループ 0538-37-4851(西庁舎2階)です。税の申告そのものについては、企画部 資産税課 家屋グループ 0538-37-4809(本庁舎1階)が窓口になります。磐田市は建築住宅課が西庁舎、資産税課が本庁舎と、建物が分かれています。訪問する場合は要注意です。


証明書の落とし穴3つ|着工前の写真は二度と撮れない

この連載で毎回書いていることですが、磐田市の理事長さまにも同じことをお伝えします。制度そのものより、証明書が取れなくなる事故のほうが、はるかに現実的なリスクです。

落とし穴1:大規模の修繕等証明書の発行が、建築士との契約に入っていない

この証明書は建築士等が発行します。ところが、設計監理を依頼する契約書の業務範囲に「大規模の修繕等証明書の発行」が書かれていないことがあります。工事が終わってから頼むと、追加費用や日程調整で揉めます。契約前に業務範囲へ明記させてください。

落とし穴2:改修前の写真が撮れていない

これが最も取り返しがつきません。足場が架かり、高圧洗浄が終わり、下地補修が始まったら、改修前の状態はこの世に存在しなくなります。

議事録に残す3行を、そのまま使ってください。

  1. 税制申告用の着工前写真について、施工会社に撮影を明示的に指示すること。
  2. 撮影範囲(各面・各階・部位別)と枚数を、仕様書に明記すること。
  3. 大規模の修繕等証明書の発行を、建築士との契約の業務範囲に含めること。

落とし穴3:過去工事証明書が取れない

過去に長寿命化工事を行った実績が要件になっているため、前回工事の記録が必要になります。ところが、前回の施工会社が廃業していて書類が取れないという事態は、実際にあります。

これは今日でも確認できます。管理事務室の書庫を開けて、前回の大規模修繕の契約書・工事写真・完了報告書が残っているかを見る。それだけです。15分で終わります。


磐田市は「外壁塗装の補助金はない」と明言している

ここからは、税制以外の話に移ります。まず、正直に書かなければならないことがあります。

冒頭に引用したとおり、磐田市はよくある質問のページで「磐田市では、現在お住まいの住宅に行う外壁塗装、外壁改修等に対する助成制度(補助金等)はありません」と明言しています(出典:磐田市 FAQ)。

この連載で、市自身がここまではっきり「ありません」と書いている自治体は初めてでした。多くの自治体は、該当ページが存在しないだけで、明言はしていません。磐田市は先回りして書いている。私はこれを、不親切ではなくむしろ誠実な対応だと受け止めました。管理組合が探し回る時間を減らしてくれているからです。

ですから磐田市の管理組合に対して、私は「補助金で工事費が安くなります」という提案は一切しません。磐田市で削れるのは、補助金ではなく仮設費です。この話は記事の後半で詳しくします。


それでも磐田市に4つある「使えるかもしれない」制度

外壁そのものへの補助はありません。ただし、大規模修繕に付帯して使える可能性がある制度は、私が調べた限り4つあります。いずれも建設部 建築住宅課 建築グループ(0538-37-4899)の所管です。1本の電話で4つとも聞けます。


【連載初】瓦屋根の耐風改修は「共同住宅を含む」と明文で書かれている

磐田市の制度で、私が最も注目したのがこれです。

住宅の瓦屋根の耐風診断・改修工事の助成制度の対象に、こう書かれています。

「令和3年12月31日以前に建築された瓦屋根の住宅(長屋、共同住宅、併用住宅を含む)」

(出典:磐田市 住宅の瓦屋根の耐風診断・改修工事の助成制度、更新日2026年4月27日)

「共同住宅」が括弧書きで名指しされています。 この連載で扱ってきた自治体の多くは、住宅系の補助について共同住宅を明示しておらず、対象かどうかを窓口に聞くしかありませんでした。磐田市は書いてある。書いてあるということは、想定されているということです。

助成の内容は次のとおりです。

事業 補助率 上限
耐風診断 診断費用の2/3 21,000円/棟
耐風改修 工事費用の23% 552,000円/棟

(出典:同上)

条件は、令和3年12月31日以前の建築であること、原則として屋根の全面について改修を行うこと、瓦屋根診断技士等が在籍する工事店に依頼することです。契約前(事業着手前)に交付決定が必要で、完了報告の提出期限は2月末です。

ただし、正直に申し上げます。この制度が効くのは、瓦屋根の共同住宅に限られます。 中高層のRC造マンションで陸屋根(平らな屋上)の物件には関係ありません。該当するのは、低層の長屋型・タウンハウス型の分譲住宅や、瓦屋根の共同住宅です。磐田市内にそうした物件が一定数あることを考えれば、確認する価値はあります。

自分の物件が該当するかは、屋上に上がって見れば5分で分かります。


建築物耐震診断の助成|ただし共同住宅の基準額には読み解きが要る

昭和56年5月31日以前に建築された非木造の建築物であれば、建築物耐震診断事業の対象になり得ます。

磐田市のページには、こう書かれています。

補助率:耐震診断費用と基準額を比較して、少ない額の3分の2以内 ※補助金交付額の限度 100万円
非木造戸建住宅 基準額:136,000円
木造住宅・非木造戸建住宅 以外 基準額:延べ面積×1,050円

(出典:磐田市 建築物耐震診断の助成制度)

一方、令和8年度の交付要綱を見ると、既存住宅の耐震診断について「136,000円/戸 共同住宅等にあっては、1棟を1戸とみなす」という記載があります(出典:令和8年度 磐田市建築物等耐震改修促進事業費補助金交付要綱 PDF)。

ここは断定を避けます。 分譲マンションが「延べ面積×1,050円」の区分で扱われるのか、「1棟を1戸とみなして136,000円」の区分で扱われるのかによって、補助額が桁違いに変わるからです。仮に延べ面積3,000㎡のマンションなら、前者は基準額315万円で補助上限100万円に到達しますが、後者なら約9万円です。

私が推測で数字を書いても、理事会の役には立ちません。建築住宅課 建築グループ 0538-37-4899 に、そのまま読み上げてください。

「昭和56年5月31日以前に建築された分譲マンションの管理組合です。建築物耐震診断事業の補助を検討しています。共同住宅の場合、基準額は『延べ面積×1,050円』と『1棟を1戸とみなして136,000円』のどちらで計算されますか。また、申請者は管理組合でよいのか、区分所有者個人になるのかも教えてください。」

申請者を誰にするかは、要綱に「管理組合」「区分所有」「共用部」という言葉が一切出てこないため、必ず事前確認が必要です。これは磐田市に限らず、多くの自治体で共通する論点です。

参考までに、他自治体との比較を置いておきます。

自治体 非木造の耐震診断の基準額単価
浜松市 1,000㎡以内 3,670円/㎡/1,000〜2,000㎡ 1,570円/㎡/2,000㎡超 1,050円/㎡
函南町 同上(3区分)
磐田市 区分なしの一律 1,050円/㎡(ページ記載)

(出典:浜松市、函南町、磐田市)

延べ面積が大きいマンションでは差は縮まりますが、小規模な物件では浜松市のほうが手厚い設計です。同じ静岡県内でも、制度の設計思想は自治体ごとに違います。これは磐田市が悪いという話ではなく、限られた予算をどこに配分するかという判断の差です。

なお、この制度には予算枠があり「予算の範囲内で補助金交付を行うため、上限に達した時点で年度途中であっても受付を終了します」と明記されています。契約締結前の申請が必須で、市税完納要件もあります。


緊急輸送路沿道なら、話が一段大きくなる

磐田市の耐震関連で、金額が大きく動く可能性があるのが建築物補強計画策定事業・建築物耐震化助成事業です。ただし対象は限定されています。

対象になるのは、次のいずれかです。

  1. 静岡県指定の緊急輸送路の沿道にあり、倒壊した場合に通行を妨げるおそれのある建築物
  2. 耐震改修促進法第7条第2号に規定する要安全確認計画記載建築物

(出典:磐田市 建築物の補強計画、耐震化の助成制度)

「緊急輸送路の通行を妨げるおそれのある建築物」の判定基準は、高さ12mを超える道路沿道の建築物のうち、高さが「道路幅の1/2+建物から道路境界線までの長さ」を超えるもの、などと定められています。中高層のマンションが幹線道路に面していれば、該当する可能性があります。

補強計画策定事業の基準額は、規模別に次のとおりです(戸建住宅を除く建築物)。

延べ面積(棟ごと) 基準額
1,000㎡未満 3,000,000円
1,000㎡以上 2,000㎡未満 4,800,000円
2,000㎡以上 3,000㎡未満 6,000,000円
3,000㎡以上 5,000㎡未満 7,200,000円
5,000㎡以上 10,000㎡未満 9,000,000円
10,000㎡以上 10,800,000円

補助率は、緊急輸送路沿道建築物なら2/3以内、要安全確認計画記載建築物なら5/6以内(要綱上は10/10の区分もあります)。耐震化助成については、緊急輸送路沿道の既存住宅で延べ面積(㎡)×34,100円を基準額とし、その2/3という設計です(出典:同上、および令和8年度交付要綱 PDF)。

つまり、旧耐震のマンションが県指定の緊急輸送路沿道にある場合、金額の桁が一段変わります。

自分の物件が沿道に該当するかは、電話1本で確認できます。

「磐田市内の分譲マンションです。所在地は○○です。この建物が静岡県指定の緊急輸送路の沿道建築物に該当するかを確認したいのですが。」

そして、旧耐震のマンションで大規模修繕を検討している組合には、順序の話を必ずお伝えしています。診断が先、外装が後です。 耐震補強で外壁に手を入れる可能性があるのに先に塗装をしてしまえば、足場を二度架けることになります。仮設費を二重に払うことほど無駄なことはありません。

自分の建物が旧耐震かどうかは、建築確認済証の交付日で確認できます。管理事務室の書庫か、登記簿謄本の新築年月日、あるいは重要事項説明書で分かります。


ブロック塀の撤去・建替えは、大規模修繕と同じ議案にまとめる

敷地の外周にブロック塀がある管理組合には、ブロック塀等の撤去・建替えの助成制度が使える可能性があります。

対象は「倒壊の危険のある4段積み以上のブロック塀、石塀、レンガ塀など(高さ60cm超)」で、避難路・通学路・緊急輸送路に面していることが条件です。

区分 事業 基準額 補助率
緊急輸送路沿道 撤去 19,980円/m 2/3以内
緊急輸送路沿道 建替え 58,380円/m 2/3以内
避難路沿道 撤去 9,200円/m 1/2以内
通学路沿道(市立小中学校の指定通学路) 撤去 9,200円/m 1/2以内
通学路沿道 建替え 47,600円/m 1/2以内

(出典:磐田市 ブロック塀等の撤去・建替えの助成制度、更新日2026年4月27日)

注意点を3つ。

1つ目。上限額(限度額)は、市のページとパンフレットのいずれにも記載が見当たりませんでした。 総額でいくらまでかは、要綱を確認するか窓口に聞いてください。ここは推測で書けません。

2つ目。ブロック塀への建替えは対象外です。 金属製フェンス、木塀、生け垣などへの造り替えが対象で、「原則として、現状の基礎の再利用はできません」と明記されています。

3つ目。撤去前に補助金の申請と交付決定が必要です。 パンフレットには「業者との契約は交付決定通知を受けた後に行ってください。事前に契約をしてしまうと補助対象とすることができません」と書かれています。

そのうえで、私からの実務提案です。ブロック塀の工事は、大規模修繕と同じ議案にまとめてください。

理由は3つあります。ガードマンと養生を共用できること、近隣へのあいさつが1回で済むこと、そして外構の色を新しい外壁の色と揃えられること。ただし、最大の理由は別にあります。

管理組合が物事を決められるのは、年1回の定時総会だけだからです。 別々の年に議案を立てれば、単純に2年かかります。理事も入れ替わります。同じ議案にまとめる価値は、金額よりもそこにあります。

申請前には市が現地調査を行いますが、「調査にはおおよそ2週間程度かかります。なお、現地での立ち合いは不要です」とされています。立会い不要ということは、理事長は電話をかけるだけでよいということです。先に調査を申し込んでおいて損はありません。


磐田市の住宅系17制度を「共用部の大規模修繕で使えるか」で一覧にした

理事会の時間は限られています。使えないと分かっている制度に時間を使わずに済むことにも、価値があります。 私が調べた範囲で、磐田市(および磐田市民が使える県事業)の住宅・環境系の制度を、共用部の大規模修繕で使えるかという一列で判定しました。

制度名 共用部の大規模修繕で使えるか 根拠・注意点 窓口
マンション管理計画認定制度 ◎ 磐田市が認定権者。市への手数料0円 建築住宅課 住宅管理 0538-37-4851
マンション長寿命化促進税制 ◎ 令和9年3月31日までの工事完了が期限 資産税課 0538-37-4809
住宅の瓦屋根の耐風診断・改修 ◎(瓦屋根の共同住宅に限る) 「長屋、共同住宅、併用住宅を含む」と明文 建築住宅課 建築 0538-37-4899
建築物耐震診断事業(非木造) ◯ 昭和56年5月31日以前。基準額の区分は要確認 建築住宅課 建築 0538-37-4899
ブロック塀等撤去・建替え ◯ 避難路・通学路・緊急輸送路沿いが条件 建築住宅課 建築 0538-37-4899
建築物補強計画策定・耐震化助成 △ 静岡県指定の緊急輸送路沿道等に限定 建築住宅課 建築 0538-37-4899
見付地区景観形成モデル事業 △ 見付地区の対象範囲に限定。事前相談必須 都市計画課 0538-37-4907
みんなのおうちに太陽光(県事業) △ 共同購入支援。管理組合名義の可否は要確認 県事務局 0120-752-300
浄化槽設置事業費補助金 △ 令和8年度は受付終了。共同住宅の可否は要確認 上下水道総務課 0538-58-3086
既存住宅取得等事業費補助金 × 「戸建ての住宅」に限定 建築住宅課 住宅管理 0538-37-4851
新エネ・省エネ設備普及促進奨励金 × 「法人は対象外」「賃貸住宅は対象外」 環境課 0538-37-4874
感震ブレーカー設置事業費補助金 × 「アパートやマンションなどの共同住宅は対象外」と明記。令和8年度は受付終了 危機管理課 0538-37-2116
雨水流出抑制貯留施設設置費補助 × 平成21年度で廃止 道路河川課 0538-37-4993
危険空き家等除却事業費補助金 × 除却(解体)が対象 建築住宅課 住宅管理 0538-37-4851
脱炭素投資促進事業費補助金 × 対象は中小企業者等。融資手数料の補助 産業政策課 0538-37-4904
いわた省エネ家電買替キャンペーン × 家電が対象。令和8年度の実施は未確認 環境課 0538-37-4874
外壁塗装・外壁改修の助成 × 「磐田市では…助成制度はありません」と市が明言 建築住宅課 住宅管理 0538-37-4851

(出典:各制度の磐田市公式ページ。詳細は記事末尾の出典欄を参照)

この表を見て、落胆された理事長さまもいると思います。◎が3つ、◯が2つ。決して多くはありません。

ただ、私はこう考えています。◎が3つあるということは、その3つに集中できるということです。 磐田市の管理組合は、10件の制度を1つずつ調べて時間を浪費する必要がありません。認定と税制と、(該当すれば)瓦屋根。この3つに絞って、あとは工事そのもののコストダウンに理事会の時間を使う。それが合理的です。


固定資産税の3つの改修減額|併用できる組み合わせとできない組み合わせ

磐田市の固定資産税のページには、長寿命化促進税制の専用ページはありません。固定資産税の軽減措置の子ページは9件あり、住宅用地特例、新築住宅、認定長期優良住宅、耐震改修、バリアフリー改修、省エネ改修、サービス付き高齢者向け住宅、空き家解体、わがまち特例です(出典:磐田市 固定資産税の軽減措置)。

長寿命化促進税制の説明は、税務側ではなく建築住宅課所管の「マンション管理」ページに置かれています。これは磐田市に限った話ではなく、この連載で扱った多くの自治体に共通する構図でした。ただ磐田市の場合、清水町や函南町と違って「どこかに書いてある」という点で条件は良いほうです。探す場所が税金のページではなく住宅のページだった、というだけの話です。

そして磐田市には、他の自治体ではあまり見かけない親切な記載があります。3つの改修減額の併用可否が、原文ではっきり書かれているのです。

組み合わせ 併用
耐震改修 × バリアフリー改修 できない
耐震改修 × 省エネ改修 できない
バリアフリー改修 × 省エネ改修 できる

(出典:耐震改修による減額、バリアフリー改修による減額、省エネ改修による減額)

各制度の内容も整理しておきます。

減額 減額割合 面積の上限 期間 主な要件
耐震改修 1/2(長期優良住宅の認定を受けた場合は2/3) 120㎡まで 翌年度1年間 昭和57年1月1日以前から所在。工事費50万円超
バリアフリー改修 1/3 100㎡まで 翌年度1年間 新築から10年以上経過。自己負担50万円超。居住者要件あり
省エネ改修 1/3(長期優良住宅の認定を受けた場合は2/3) 120㎡まで 翌年度1年間 平成26年4月1日以前から所在。工事費60万円超

いずれも改修工事完了後3か月以内の申告が必要です。「申請が改修工事完了日から3ヶ月を経過した場合は、減額が受けられない場合があります」と明記されています。

ここで、管理組合にとって重要な論点が1つ出てきます。共用部の申告(長寿命化促進税制)と、区分所有者個人の専有部の申告(窓の断熱改修など)が、同じ年度に重なる可能性があります。

管理組合が大規模修繕をやる年に、たまたま何戸かの区分所有者が個人で内窓を入れていた、というのはよくある話です。そのとき「両方申告できるのか」という質問が理事長のところに来ます。

私からの提案は、管理組合が税務判断をしないことです。 管理組合は、次の1行を工事のお知らせに入れるだけでよいと思います。

「本工事に伴い、区分所有者の皆さまの固定資産税に減額措置が適用される場合があります。ご自身で専有部の改修(内窓の設置等)を行っている方は、減額の重複について磐田市資産税課家屋グループ(0538-37-4809)へご相談ください。」

これで十分です。管理組合は周知役に徹する。判断は市がします。

なお、耐震改修による減額については、市のページ(HTML)に「令和8年3月31日までに」、添付されている令和8年度版のPDFに「令和13年3月31日までに」と、適用期限の表記が異なっていました。どちらが最新かは私には判断できません。この制度を使う予定がある方は、資産税課(0538-37-4809)に必ず確認してください。ウェブページの更新は、どの自治体でも追いつかないことがあります。


【要注意】令和8年11月2日から、磐田市の窓口受付時間が変わります

実務に直結する情報なので、独立した見出しにします。

磐田市は、令和8年11月2日(月曜)から窓口受付時間を「午前9時〜午後4時30分」に変更すると公表しています。対象は本庁舎(防災センター含む)、西庁舎、各支所、iプラザです(出典:磐田市 令和8年11月から窓口受付時間を変更します、更新日2026年7月28日)。

ただし、同じページにこう書かれています。

「職員の勤務時間や電話の受付時間(午前8時30分から午後5時15分)については、変更ありません。」

つまり、11月以降は「窓口は9時から16時30分、電話は8時30分から17時15分」になります。

これが理事長にとって何を意味するか。平日に休みが取りにくい理事長ほど、窓口ではなく電話を使うべきだということです。 朝8時30分から9時までの30分と、夕方16時30分から17時15分までの45分は、電話でしか市とやり取りできない時間帯になります。出勤前や退勤後に電話をかけるという選択肢が残っているのは、実は大きいことです。

私の経験上、自治体の窓口に電話がつながりやすいのは午前10時前後か午後2時台です。始業直後と昼休み明けは混みます。


静岡県のマンション管理セミナー|磐田会場は2日前に終わってしまいました

正直に書きます。静岡県が実施している令和8年度のマンション管理セミナーの磐田会場は、令和8年8月29日(土)に磐田商工会議所で開催され、この記事を公開する2日前に終了しています。申込期間も7月24日から8月17日までで、すでに締め切られていました(出典:静岡県 マンション管理・分譲マンション対策、磐田市 マンション管理)。

これを書かずに済ませることもできましたが、書きます。来年も同じ時期に開催される可能性が高いからです。 今年逃した組合は、来年7月にはアンテナを張っておいてください。

そして、県内の他会場ならまだ参加できます。令和8年度の日程は次のとおりです。

開催地 開催日 会場
浜松市 令和8年7月25日(土) 可美公園総合センター(終了)
磐田市 令和8年8月29日(土) 磐田商工会議所(終了)
三島市 令和8年9月12日(土) 三島市役所
熱海市 令和8年10月予定 未定
沼津市 令和8年10月予定 未定
静岡市 令和8年11月予定 未定
伊東市 令和8年12月予定 未定
富士市 令和9年2月予定 未定
浜松市 令和9年2月予定 未定

(出典:静岡県)

磐田市の管理組合にとって現実的なのは、令和9年2月予定の浜松市会場です。磐田駅から浜松駅までは在来線で20分程度、車でも東名高速で近い距離です。

そして毎回書いていることを、磐田市の理事長さまにも。理事長ひとりで行かないでください。次期理事の候補と2人で行ってください。 理事は毎年替わります。1人で聞いてきた話は、その人が理事を降りた瞬間に組合から消えます。2人で聞けば、翌年に引き継がれます。


静岡県のマンション管理士無料派遣|締切は令和8年11月14日

セミナーに間に合わなくても、こちらはまだ間に合います。

静岡県は、管理組合にマンション管理士を無料で派遣する制度を実施しています。令和8年度の条件は次のとおりです。

項目 内容
受付件数 10件(上限に達した時点で終了)
申込締切 令和8年11月14日(土)まで(定数に達し次第、早期終了)
派遣回数 各管理組合2回まで
派遣期限 令和9年1月31日(日)
申込先 一般社団法人 静岡県マンション管理士会
メール t_gotoh@tx.thn.ne.jp/FAX 0544-27-6561

(出典:静岡県 マンション管理・分譲マンション対策、令和8年度 派遣業務の概要 PDF、申込書 Word)

県内で10件です。 早い者勝ちの側面があります。申込書の「相談内容」欄に何を書くかで、派遣される管理士の準備が変わります。磐田市の組合であれば、私ならこの3行を書きます。

  1. 磐田市の管理計画認定を取得する場合の、当組合の長期修繕計画の不足点を確認したい。
  2. マンション長寿命化促進税制の2つのルート(認定ルート/助言・指導ルート)のうち、当組合はどちらを選ぶべきか助言がほしい。
  3. 修繕積立金の引き上げを総会に諮る場合の、区分所有者への説明の組み立て方を相談したい。

2回の派遣のうち1回目でこれを聞き、2回目に総会の直前で説明資料を見てもらう。この使い方が一番効率的だと思います。


国のモデル事業|令和8年度 第3回は9月14日〜18日

国土交通省のマンションストック長寿命化等モデル事業は、令和8年度は全3回の提案受付が予定されており、第1回と第2回はすでに終了しています。

回次 受付期間 状況
第1回 令和8年4月1日(水)〜4月15日(水) 終了
第2回 令和8年6月22日(月)〜6月26日(金) 終了
第3回 令和8年9月14日(月)〜9月18日(金) これから

(出典:国土交通省 マンションストック長寿命化等モデル事業、令和8年3月 募集要領 PDF)

正直に申し上げますが、この記事の公開から第3回の受付開始まで2週間しかありません。今から書類を揃えて応募するのは、多くの管理組合にとって現実的ではないと思います。

ですから、今週やることは1つだけに絞ってください。募集要領PDFを開いて、必要書類の一覧のページだけ印刷する。15分です。それを理事会の資料に挟んでおけば、来年度の第1回(例年4月)に間に合います。

問い合わせは、マンションストック長寿命化等モデル事業評価室事務局 03-6801-5902(平日10時〜16時、12時〜13時を除く)です。


ここからが本題です|磐田市で削れるのは、補助金ではなく仮設費

制度の話はここまでです。ここからが、私が現場の人間として一番お伝えしたい話になります。

大規模修繕工事の見積書を開くと、必ず一番上のほうに「仮設工事」という行があります。この仮設足場の費用は、工事費全体の15〜25%を占めるのが一般的です。

金額に置き換えると、こうなります。

工事費総額 仮設足場の概算(15〜25%)
3,000万円 450万〜750万円
5,000万円 750万〜1,250万円
8,000万円 1,200万〜2,000万円

私が理事会に呼ばれてよく感じることがあります。植栽の剪定20万円の是非は、みなさん真剣に議論されます。ところが750万円の足場の1行は、そのまま通っていくのです。

これは理事のみなさんが不真面目だからではありません。判断材料が渡されていないからです。「仮設工事一式 750万円」と書かれた1行に対して、素人が何を言えばいいのか分かるはずがありません。

ですから、見積書を受け取ったら、この1文を施工会社に伝えてください。

「仮設工事の金額を、架面積の平米単価とリース期間に分解して出してください。」

これだけで、議論できる形になります。架面積が何㎡で、単価が何円で、何か月借りるのか。分解されて初めて、「工期が1か月短くなればいくら安くなるのか」という話ができます。


磐田市の管理組合に、私が提案する3つのハイブリッド配分

ここで、私の会社がやっているロープアクセス工法の話をします。利益相反になりますので、はっきり申し上げておきます。以下は自社サービスの紹介です。そのうえで、押し売りにならないように、向かない場合も正直に書きます。

ロープアクセス工法は、産業用ロープで職人が屋上から下りながら施工する無足場工法です。足場を架けないので、仮設費が大きく削れ、工期も短くなります。ロープアクセス工法の技術情報や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。

磐田市の物件で、私が実際に提案することが多い配分は次の3つです。

配分1:駐車場を潰さない配分

磐田市は自動車の保有率が高い地域です。1世帯1台以上が前提の生活圏で、マンションの敷地内駐車場を長期間使えなくすることは、住民の不満に直結します。代替駐車場を借りれば、その費用が工事費に上乗せされます。

そこで、全周に足場を架けて6か月間すべての駐車場を潰すのではなく、面ごとに分けて2面ずつ各1.5か月で回す、あるいは駐車場側の面だけロープアクセスに置き換えるという配分をします。これは金額の話であると同時に、総会の議決の話です。

配分2:低層は足場、高層はロープ

下層階は下地補修の数量が読みにくく、足場を架けたほうが確実なことがあります。一方、上層階は劣化の程度が読みやすい面が多い。部位ごとに使い分けるのがハイブリッド工法の本質です。

配分3:隣地側・道路が狭い側だけロープ

磐田市内でも、前面道路が狭く4トン車が入らない立地の物件があります。足場は部材の搬入が必要で、10階建て1棟でトラック数台分になります。ロープアクセス工法は、そもそも足場部材が存在しません。これは営業トークではなく、物流の話です。道路条件が厳しい物件ほど、差が金額に出ます。

正直に申し上げます。ロープアクセス工法は万能ではありません

私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる現場は、普通にあります。次のような場合です。

  • 下地補修(ひび割れ・欠損部・タイル浮き)の数量が事前に読めない
  • タイルの浮きが広範囲に及んでいる可能性が高い
  • 外壁の形状が複雑で、ロープの支点が取りにくい
  • バルコニーの内部作業が広範囲にわたる

そして、これも正直に書きます。ロープアクセス工法でも、バルコニー内部の作業が必要な点は工法にかかわらず同じです。「ロープアクセスなら住戸への立ち入りがゼロになる」ということはありません。減るのは、外部足場が住戸の窓の前に架かっている期間です。


モデルケース2本|磐田駅圏と、海側の物件

具体的な数字がないとイメージしにくいと思いますので、実際の提案に近い形でモデルケースを2つ示します。実在の物件ではなく、条件を一般化したものです。

ケース1|JR磐田駅圏 築26年・6階建て・44戸

項目 全面足場 ハイブリッド
工事費 6,900万円 5,950万円
差額 ― ▲950万円(1戸あたり約22万円)
工期 5.5か月 4か月
駐車場の制限 全周5.5か月 2面ずつ各1.5か月

ケース2|海側(福田・竜洋方面) 築33年・4階建て・26戸

項目 全面足場 ロープアクセス主体
工事費 3,900万円 3,150万円
差額 ― ▲750万円(1戸あたり約29万円)
工期 4.5か月 3か月

ここで注目していただきたいのは、1戸あたりの金額です。

26戸で3,900万円なら、1戸あたり150万円。これが150戸の大規模マンションなら、同じ工事費でも1戸あたり26万円前後になります。戸数が小さいほど、工法の選定が1戸あたりの負担に効きます。

磐田市は、政令指定都市の浜松市と比べれば、中小規模の分譲マンションが多い地域です。だからこそ、工法の選定が効きます。

そして、これが最も重要な点です。工法は、設計を発注する前でなければ実質的に選べません。 設計事務所が「全面足場」を前提に図面と仕様書を作ってしまえば、後から工法を変えるのは事実上不可能です。


修繕積立金が足りないときの4つの打ち手

多くの管理組合が直面する現実の話をします。積立金が足りない。このとき取れる打ち手は、大きく4つです。

# 打ち手 注意点
1 工事範囲を絞る(段階施工) 仮設費が施工回数分かかります。また長寿命化促進税制の「3点セット一体施工」の要件を外す可能性があります
2 一時金を徴収する 総会の議決が最も重い。滞納リスクも
3 積立金を値上げする 認定ルートの要件にもつながる。ただし議決が重い
4 借入れる 住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資など

1番の段階施工は、一見すると賢い選択に見えて、実は割高になることが多い打ち手です。足場を2回架ければ、仮設費を2回払うことになります。そして先ほど書いたとおり、税制の要件からも外れかねません。

住宅金融支援機構には、管理組合が使える制度が3つあります。

  • 共用部分リフォーム融資:管理組合が借主となる融資
  • マンションすまい・る債:積立金を計画的に運用する仕組み
  • マンションライフサイクルシミュレーション:修繕積立金の計画を試算できる無料ツール

(出典:独立行政法人 住宅金融支援機構)

そして、総会に議案を出すときの実務的なコツを1つ。「一時金50万円」と「月々3,000円の値上げ」を、両方とも議案書に載せてください。

人は、選択肢が1つだけだと「賛成か反対か」で考えます。選択肢が2つあると「どちらがましか」で考えます。この違いは、議決の空気をかなり変えます。


見積書のチェック5点|足場が架かってからでは交渉できない

大規模修繕の見積書を受け取ったとき、素人でも確認できる5点を挙げます。

1. 下地補修の「仮定数量」を超えた分の単価が、契約書に明記されているか

これが最重要です。大規模修繕の見積書には、ひび割れ補修○m、欠損部補修○箇所、タイル張替え○㎡といった「仮定数量」が書かれています。実際に足場を架けて調べたら、この数量を超えることが普通にあります。

そのとき、超過分の単価が契約書に書かれていなければ、工事が始まって足場が架かった状態で、管理組合が対等に交渉することはできません。工事を止めるわけにいかないからです。

契約前に、この文を入れてもらってください。

「下地補修について、仮定数量を超過した部分の単価は、ひび割れ補修○円/m、欠損部補修○円/箇所、タイル張替え○円/㎡とし、実数精算とする。」

これを嫌がる会社は、そこで分かります。

2. 仮設工事が「一式」ではなく分解されているか

架面積の平米単価とリース期間に分解されているか。前述のとおりです。

3. 部位別の保証年数が明記されているか

外壁塗装、シーリング、防水はそれぞれ耐用年数が違います。「保証5年」と一括りにされている見積書は、内容を確認してください。

4. 気象条件による作業中止の基準と、予備日の扱い

見積書というより仕様書の話ですが、重要です。次の3文を聞いてください。

「強風・降雨による作業中止の判断基準は、仕様書のどこに書かれていますか。予備日は何日みていますか。予備日を超過した場合の足場リース延長費用は、誰の負担になりますか。」

3つ目が本命です。足場は日数で借りています。工期が延びれば、その分の費用が発生します。それを誰が負担するのかを、契約前に決めておいてください。

5. 高圧洗浄の排水計画が仕様書に入っているか

磐田市は天竜川と太田川に挟まれ、南は遠州灘に面しています。高圧洗浄で使った水の排水計画が仕様書に1ページあるだけで、住民説明会の質疑の空気が変わります。これは環境の話であると同時に、住民合意の話です。


磐田の工事適期と、方位別の劣化要因

工事適期

磐田市は温暖で晴天率が高い地域ですが、季節ごとの制約はあります。

時期 評価 理由
3月下旬〜5月上旬 ◎ 気温・湿度とも安定
5月中旬〜6月 △ 梅雨。工程に予備日が必要
7〜8月 △ 熱中症対策で作業時間に制限がかかる
9月〜10月中旬 △ 台風期
10月下旬〜11月 ◎ 最も条件が良い
12月〜2月 ◯ 温暖で晴天率が高く閑散期。ただし冬季の季節風で予備日が必要

塗装や防水には「気温5℃以下・湿度85%以上では施工しない」といった仕様条件が付くのが一般的です。12月着工を検討する場合は、こう聞いてください。

「12月着工なら、金額と工期はどうなりますか。閑散期の単価と、予備日の日数を教えてください。」

方位別の劣化要因(磐田市版)

方位・立地 主な劣化要因 対処の方向
南面 日照時間が長く紫外線量が大きい。チョーキング(塗膜の白亜化)が先行 耐候性の高い塗料の検討
南面(海側・福田/竜洋方面) 遠州灘からの飛来塩分。鉄部の腐食と塗膜劣化が早い 鉄部の下地処理の仕様を厚めに。手すり・避難ハッチの点検を重点化
北西面 冬季の季節風による雨がかり シーリングの早期劣化に注意
北面 日照が少なく乾きにくい。コケ・藻が発生しやすい 防藻・防カビ塗料の検討
磐田原台地の上(見付・国府台周辺) 風が抜けやすく、乾燥と季節風の影響が強い 予備日の設定を厚めに
低地(天竜川・太田川沿い) 地下水位が高く湿度が高い。1階まわりの湿気 基礎まわり・1階外壁の含水率確認

海に近い物件かどうかで、外壁の劣化のしかたはかなり変わります。築年数が同じでも、鉄部の傷み方がまるで違うことは珍しくありません。劣化診断を頼むときは、「海側の物件です」と一言伝えるだけで、診断の重点が変わります。


今週できること5項目|合計3時間以内

長い記事になりました。読み終えたあと何をすればいいのかを、5つに絞ります。

# やること 所要時間 期限
1 建築住宅課 住宅管理グループ(0538-37-4851)に電話し、管理計画認定の申請手順と必要書類を聞く 15分 今日中
2 建築住宅課 建築グループ(0538-37-4899)に電話し、①耐震診断の共同住宅の基準額 ②緊急輸送路沿道に該当するか ③ブロック塀の現地調査申込 を一度に聞く 20分 今日中
3 管理事務室の書庫で、前回の大規模修繕の契約書・工事写真・完了報告書が残っているかを確認する 15分 今週中
4 長期修繕計画書を開き、作成年月日・計画期間・修繕積立金の㎡単価を確認する 30分 今週中
5 静岡県マンション管理士無料派遣の申込書をダウンロードし、相談内容の3行を下書きする 30分 11月14日まで

1と2は、今日中の電話1本ずつです。磐田市の窓口は電話が8時30分から17時15分まで通じます(令和8年11月以降も電話の時間は変わりません)。


令和9年3月31日から逆算するカレンダー

長寿命化促進税制の工事完了期限(令和9年3月31日)から逆算すると、残り約19か月です。工程を並べてみます。

時期 やること
完了の18〜19か月前 劣化診断(1〜2か月)
完了の16〜17か月前 設計(2〜3か月)
完了の13〜16か月前 施工会社の選定(2〜3か月)
完了の12か月前まで 工法をここまでに決める(設計発注前が実質の分かれ目)
完了の最大12か月前 総会(年1回。ここが律速です)
完了の3〜6か月前 工事(3〜6か月)
着工直前 改修前の写真を撮る
完了後3か月以内 減額の申告

この表を見て気づいていただきたいのは、律速になっているのが工事ではなく総会だということです。

管理組合が物事を決められるのは、原則として年1回の定時総会だけです。そこで議案が通らなければ、次は1年後になります。19か月という残り時間の中に、総会は1回か2回しか入りません。

正直に書きます。この期限に間に合わない組合は、あります。それでも準備が無駄にならない理由を3つ挙げます。

  1. 期限が延長された実績はありますが、それを前提に計画を立てるのは危険です。ただ、準備を進めていた組合だけが延長の恩恵を受けられます。
  2. 管理計画の認定は、税制と切り離しても価値があります。フラット35や住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資で金利の優遇を受けられる場合があります。
  3. 認定基準の項目は、どのみち必要になるものばかりです。長期修繕計画の期間、修繕積立金の水準、総会の運営、管理規約の整備。認定を取らなくても、これらを整えること自体が資産価値の維持につながります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 磐田市に、マンションの外壁塗装に使える補助金はありますか。
A. ありません。磐田市が公式のよくある質問で「外壁塗装、外壁改修等に対する助成制度(補助金等)はありません」と明言しています(出典:磐田市 FAQ)。

Q2. 管理計画認定は、静岡県と磐田市のどちらに申請しますか。
A. 磐田市です。静岡県が認定事務を行うのは県内の町域のみで、磐田市は自らマンション管理適正化推進計画を策定し、認定権者になっています。市に支払う手数料はありません(出典:磐田市 マンション管理)。

Q3. 認定を取るのに、いくらかかりますか。
A. 磐田市への手数料は0円です。ただし(公財)マンション管理センターの事前確認適合証が必要で、システム利用料1申請10,000円(税込)と事前確認審査料(長期修繕計画1計画あたり10,000円税込のパターンあり)がかかります(出典:マンション管理センター)。

Q4. マンション長寿命化促進税制の期限はいつですか。
A. 令和9年3月31日までに長寿命化工事を完了することが要件です。減額は工事完了の翌年度分の固定資産税で、1戸あたり100㎡相当分まで、1/6〜1/2の範囲内で市町村条例が定める割合(国の参酌基準は1/3)です(出典:国土交通省)。

Q5. 築25年でも対象になりますか。
A. はい。長寿命化促進税制の共通要件は築20年以上、総戸数10戸以上、過去に長寿命化工事の実績があることです。築25年は要件を満たします(出典:同上)。

Q6. 外壁と床防水だけやって、屋上防水は次回に回してもいいですか。
A. 工事としては可能ですが、長寿命化促進税制の対象からは外れる可能性があります。対象工事は外壁塗装等・床防水・屋根防水の3点を一体で実施することが要件とされています。設計の段階で設計事務所に確認してください(出典:同上)。

Q7. 瓦屋根の共同住宅ですが、何か使える制度はありますか。
A. 住宅の瓦屋根の耐風診断・改修工事の助成制度が「長屋、共同住宅、併用住宅を含む」と明記しています。診断は2/3で最大21,000円/棟、改修は工事費の23%で最大552,000円/棟です。令和3年12月31日以前の建築で、屋根の全面改修が条件です(出典:磐田市)。

Q8. 昭和55年築の旧耐震マンションです。何から手を付けるべきですか。
A. 耐震診断が先、外装が後です。耐震補強で外壁に手を入れる可能性があるのに先に塗装をすると、足場を二度架けることになります。まず建築住宅課 建築グループ(0538-37-4899)に、耐震診断の助成と、物件が緊急輸送路沿道に該当するかを確認してください。


この記事のポイントまとめ

  • 磐田市に外壁塗装・外壁改修の補助金はなく、市自身がその旨を明言している
  • 磐田市は政令指定都市ではないが、自らマンション管理適正化推進計画を策定し認定権者になっている
  • 管理計画認定の市への手数料は0円。県の町域なら最大28,100円かかる手続き
  • 磐田市マンション管理適正化推進計画の目標は「15棟の認定」(令和6〜15年度)
  • マンション長寿命化促進税制の工事完了期限は令和9年3月31日、残り約19か月
  • 対象工事は外壁塗装等・床防水・屋根防水の3点セットを一体で施工すること
  • 2つのルートの分かれ目は、修繕積立金の引き上げ決議が要るかどうか
  • 改修前の写真は、足場が架かって高圧洗浄が終われば二度と撮れない
  • 瓦屋根の耐風改修は「長屋、共同住宅」を明文で対象にしている(最大552,000円/棟)
  • 建築物耐震診断の共同住宅の基準額は、ページと要綱で読み方が分かれるため要確認
  • 緊急輸送路沿道なら、補強計画と耐震化の助成で金額の桁が変わる
  • ブロック塀の助成は現地調査に約2週間、立会いは不要
  • 固定資産税の3つの改修減額は、耐震とバリアフリー・省エネは併用不可、バリアフリーと省エネは併用可
  • 令和8年11月2日から磐田市の窓口受付は9時〜16時30分に変更(電話は8時30分〜17時15分のまま)
  • 県のマンション管理セミナー磐田会場は8月29日に終了。次に近いのは令和9年2月予定の浜松会場
  • 静岡県のマンション管理士無料派遣は県内10件、締切は令和8年11月14日(土)
  • 国のモデル事業 令和8年度第3回は9月14日〜18日
  • 仮設足場は工事費の15〜25%。「一式」ではなく平米単価とリース期間に分解させる
  • 下地補修の仮定数量を超過した分の単価は、必ず契約前に明記させる
  • 戸数が小さいマンションほど、工法の選定が1戸あたりの負担に効く
  • 工法は設計を発注する前でなければ、実質的に選べない
  • 律速になるのは工事ではなく、年1回の総会

主なお問い合わせ先

用件 窓口 電話
管理計画認定・マンション管理全般 磐田市 建設部 建築住宅課 住宅管理グループ(西庁舎2階) 0538-37-4851
耐震診断・耐震化・瓦屋根・ブロック塀 磐田市 建設部 建築住宅課 建築グループ(西庁舎2階) 0538-37-4899
固定資産税の減額申告 磐田市 企画部 資産税課 家屋グループ(本庁舎1階) 0538-37-4809
市役所代表 磐田市役所(国府台3-1) 0538-37-2111
県のマンション施策全般 静岡県 くらし・環境部 建築住宅局 住まいづくり課 054-221-3084
マンション管理士 無料派遣の申込 一般社団法人 静岡県マンション管理士会 FAX 0544-27-6561
管理計画認定の相談(土曜も可) 一般社団法人 日本マンション管理士会連合会 相談ダイヤル 03-5801-0858(月〜土 10:00〜17:00)
事前確認適合証・支援サービス 公益財団法人 マンション管理センター 03-3222-1516
国のモデル事業 マンションストック長寿命化等モデル事業評価室事務局 03-6801-5902

磐田市の窓口の受付時間は、令和8年11月2日から午前9時〜午後4時30分に変わります。ただし電話の受付時間(午前8時30分〜午後5時15分)は変わりません。電話がつながりやすいのは、私の経験では午前10時前後か午後2時台です。


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明誠にご相談いただく場合

私どもは、足場を架ける従来工法、ロープアクセス工法(無足場工法)、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つを、自社で提案できる体制を取っています。日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しています。

「補助金があるから工事をしましょう」という話は、磐田市に関してはできません。制度がないからです。私どもがお手伝いできるのは、工法の選定によって仮設費と工期をどこまで圧縮できるか、という一点です。

見積りの前段階、理事会での論点整理だけでもお力になれることがあります。「まだ工法を決める段階ではない」という状態でこそ、聞いていただく価値があると思っています。


磐田市を調べていて、私が一番印象に残ったのは「市に支払う手数料等はありません」という一行でした。

制度を作るだけなら、どこの自治体でもできます。手数料を取らないと決めるのは、そこに人手と予算を割く判断をしたということです。10年で15棟という目標も、決して派手ではありませんが、地に足がついた数字だと感じました。

一方で、外壁塗装の補助金はないと先回りして書いてある。期待させないという誠実さと、使える制度は無料で開けておくという姿勢が、同じ市のサイトに同居しています。

ですから、この記事の結論は電話2本です。建築住宅課 住宅管理グループ 0538-37-4851、そして建築住宅課 建築グループ 0538-37-4899。どちらも西庁舎2階にあります。

制度があるのに知らずに諦めてしまう管理組合があることが、私はいちばん惜しいと思っています。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開しています。

最終更新:2026年8月31日


出典・参考資料

磐田市

静岡県

国

関係団体


免責事項:本記事は2026年8月31日時点で公開されている情報にもとづいて作成しています。制度の内容・金額・期限は変更される場合があり、また予算枠に達した時点で受付が終了することがあります。申請にあたっては、必ず各窓口の最新情報をご確認ください。本記事は税務・法務に関する助言を目的としたものではありません。個別の判断については、各自治体の窓口および税理士等の専門家にご相談ください。

浜松市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

この記事で答える質問は、ひとつです。浜松市の分譲マンション管理組合は、大規模修繕工事にあたって、どの公的支援をどの順番で使えばいいのか。

2026年8月30日 更新。

先に結論を書きます。浜松市の管理組合は、この連載でこれまで扱ってきたどの自治体よりも恵まれています。理由は制度の数ではありません。手続きの経路が短いからです。

私は東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事を20年近くやってきました。足場を架ける工事も、ロープアクセス工法(無足場工法)も、その両方を組み合わせるハイブリッド工法も、どれも現場で回してきた人間です。この連載では静岡県内の市町を順番に取り上げてきましたが、浜松市は少し性格が違います。政令指定都市だからです。

これが何を意味するのか。ここから具体的に書いていきます。

結論:浜松市の管理組合は、制度が「市の中だけで」完結する

長泉町・清水町・函南町の記事では、私は毎回こう書かなければなりませんでした。「この町は『町』なので、マンション管理計画の認定は静岡県に申請してください」と。牧之原市・島田市・菊川市・御前崎市の記事では逆に、「この市は『市』なので、県には申請できません。市に確認してください」と書きました。

浜松市は、そのどちらとも違います。

浜松市はマンション管理計画認定制度の認定権者であり、同時に、長寿命化促進税制で必要になる「助言・指導内容実施等証明書」の発行者でもあり、さらに固定資産税の減額申告を受け付ける課税庁でもあります。この3つがすべて浜松市役所の中にあります。

浜松市の資産税課のページには、証明書の発行者が明記されています。

証明書の種類 発行者
大規模の修繕等証明書 建築士事務所に所属する建築士、または住宅瑕疵担保責任保険法人
過去工事証明書 マンション管理士または建築士
修繕積立金引上証明書 マンション管理士または建築士
助言・指導内容実施等証明書 都道府県等(都道府県、政令指定都市)

(出典:浜松市「7.長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに係る固定資産税の減額」)

最後の行の括弧書きを、もう一度読んでください。「都道府県等(都道府県、政令指定都市)」。浜松市は政令指定都市です。つまり、この証明書を出すのは浜松市自身です。

函南町の管理組合が助言・指導ルートを使おうとすれば、静岡県住まいづくり課(054-221-3084/静岡市葵区)に連絡することになります。浜松市の管理組合は、市役所の住宅課(053-457-2457)に連絡すれば済みます。市役所本館は浜松市中央区元城町103-2、JR浜松駅から歩ける距離です。

「近い」というのは、行政手続きにおいて思っている以上に大きな要素です。理事長が平日に半日だけ時間を作れるかどうかで、制度を使えるかどうかが決まってしまう。これは制度設計の問題ではなく、管理組合の現実の問題です。

浜松市の窓口は3つだけ覚えればいい

大規模修繕まわりで浜松市の管理組合が関わる窓口は、実質3つです。

用件 課 電話番号 場所
管理計画認定、助言・指導、マンション管理全般、無料相談会 都市整備部 住宅課 053-457-2457 市役所本館(中央区元城町103-2)
固定資産税の減額申告(長寿命化促進税制ほか) 財務部 資産税課 053-457-2155 元目分庁舎(中央区元目町120-1)
耐震診断・耐震補強・アスベスト・ブロック塀の補助 都市整備部 建築行政課 053-457-2471 市役所本館4階

(出典:各制度ページの問い合わせ欄/浜松市)

資産税課だけ場所が違う点に注意してください。市役所本館ではなく、元目町の元目分庁舎です。申告書を持参するつもりで本館に行くと二度手間になります。

どこに聞けばいいか分からないときは、市民コールセンター(053-457-2111、8時30分〜17時15分)があります。開庁時間は月曜〜金曜の8時30分〜17時15分です。

【本記事の核心1】管理計画認定の手数料が、令和9年3月31日まで0円

ここが浜松市の最大の「使い時」です。

浜松市の管理計画認定の申請手数料は、次のとおりです。

管理計画認定手続支援サービスを利用する場合 利用しない場合
1件につき 0円(令和9年4月1日以降は4,000円) 28,100円
追加の長期修繕計画1つあたりの加算額 0円(令和9年4月1日以降は1,800円) 16,200円

(出典:浜松市「マンション管理計画認定制度」/更新日2026年7月2日)

浜松市のページには「制度開始から5年間(令和9年3月31日まで)は無料とします」と書かれています。

比較してみます。静岡県の町域(長泉町・清水町・函南町など)で県に申請する場合、事前確認の適合証があれば4,000円、なければ28,100円でした(令和8年4月1日改定)。浜松市は、支援サービスを利用した電子申請であれば、令和9年3月31日までは0円です。

一団地に複数の住棟があるマンションで長期修繕計画が3本あるケースなら、支援サービスを使わない場合は28,100円+16,200円×2=60,500円。使えば0円です。差は60,500円。

もちろん、管理計画認定手続支援サービスの利用には、(公財)マンション管理センターへのシステム利用料と事前確認審査料が別途かかります。ここは正直に書いておきます。それでも、市の手数料が0円である期間は限られている、という事実は変わりません。

令和9年3月31日は、浜松市の管理組合にとって「二重の締切」

ここで気づいてほしいことがあります。

  • 管理計画認定の手数料無料期間の終わり:令和9年3月31日
  • マンション長寿命化促進税制の対象工事の完了期限:令和9年3月31日

同じ日です。

長寿命化促進税制は、令和5年4月1日から令和9年3月31日までに長寿命化工事が完了したマンションが対象です(出典:浜松市 固定資産税の減額ページ)。そして認定制度の手数料無料期間も同じ日に終わる。

本記事の公開日から令和9年3月31日まで、およそ19か月です。

この19か月で何が起きるかを、工事屋の感覚で並べておきます。

段階 標準的にかかる期間
劣化診断・調査 1〜2か月
設計・仕様の確定 2〜3か月
施工会社の選定(相見積り・比較・面談) 2〜3か月
総会での議決 最大12か月待ち(定時総会が年1回のため)
工事 3〜6か月
完了後の減額申告 完了日から3か月以内

合計だけ見れば19か月に収まりそうに見えます。しかし律速になるのは総会です。管理組合が意思決定できるのは、原則として年1回の定時総会だけだからです。次の定時総会で議決できるかどうかが分岐点になります。

正直に書きますが、これから検討を始めて令和9年3月31日までに工事を完了させられる管理組合は、多くはありません。それでも今から動く価値がある理由を3つ挙げます。

  1. 税制の期限は延長されてきた実績がある。 令和8年度税制改正でも延長と要件緩和が行われています。ただし「延長されるはずだ」という前提で計画を組むのは危険です。
  2. 管理計画認定は税制と切り離しても価値がある。 【フラット35】および住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資で金利優遇を受けられます(出典:浜松市 認定制度ページ)。
  3. 準備が無駄にならない。 長期修繕計画の見直し、修繕積立金の水準確認、区分所有者名簿の整備。これらは認定基準の項目であると同時に、どのみち管理組合がやらなければならないことです。

【本記事の核心2】長寿命化促進税制は、管理者等が「一括申請」できる

これは、この連載で初めて明確に書ける論点です。浜松市のページに、はっきり書かれています。

マンション管理組合の管理者等による一括申請が可能です。
マンション管理組合の管理者等から必要な書類の提出があり、要件に該当すると認められる場合には、当該マンションの各納税義務者(区分所有者)からの申告書の提出がなくても、減額措置の適用が受けられます。

(出典:浜松市 固定資産税の減額ページ)

しかも同ページには「(マンション管理組合の管理者等が必要な書類を提出する場合は減額申告書は不要です。)」とも書かれています。

これが実務的に何を意味するか。

100戸のマンションで、区分所有者100人がそれぞれ申告書を書いて資産税課に出す——これは現実的ではありません。賃貸に出しているオーナーは市外に住んでいます。相続で名義が変わったばかりの住戸もあります。高齢で書類の記入が難しい方もいます。100人全員の足並みを揃えるのは、理事会の仕事としては重すぎる。

一括申請が可能なら、理事長(管理者等)が書類を揃えて資産税課に1回持っていけば、全戸に減額が適用されるということです。

理事会でこの制度を説明するとき、「各自で申告してください」と言うのと「理事会でまとめて申告します」と言うのとでは、議案の通りやすさがまるで違います。後者にできる、という点を必ず確認してください。確認先は資産税課(053-457-2155)です。

長寿命化促進税制の中身を、要件から確認する

制度の中身を整理します。すべて浜松市のページの記載に基づきます。

対象になるマンション((1)か(2)のどちらか)

(1)管理計画認定マンションの場合

項目 要件
対象家屋 管理計画認定マンションであること/居住用専有部分を有すること/新築から20年以上経過/総戸数10戸以上
過去の工事 過去に長寿命化工事が行われたもの(外壁・床防水・屋根防水が同時期である必要はない)
修繕積立金 令和3年9月1日以降に修繕積立金の平均額を管理計画の認定基準まで引き上げたもの

(2)助言又は指導を受けた管理組合の場合

項目 要件
対象家屋 マンション管理適正化法第5条の2第1項に基づく助言又は指導を受けた管理組合の管理者等に係るマンション/居住用専有部分を有すること/新築から20年以上経過/総戸数10戸以上
過去の工事 過去に長寿命化工事が行われたもの
長期修繕計画 助言又は指導を受けて長期修繕計画を作成または見直し、基準に適合することとなったもの

ここが分かれ目です。(1)は修繕積立金の引き上げが要件に入っています。(2)には入っていません。

修繕積立金の引き上げは総会決議事項です。つまりどちらのルートを選ぶかが、管理組合の総会運営そのものを左右します。(1)を選ぶなら「積立金の値上げ」という重い議案を通さなければならない。(2)なら長期修繕計画の見直しで足りる可能性がある。

そして浜松市は、(2)の助言・指導を出す主体でもあります。ここが政令指定都市の強みです。県に問い合わせて、県から様式をもらって、という往復が発生しません。

対象になる工事

次の3つすべてが、同一の工事請負契約の中で行われるなど、一体として扱われる工事であることが必要です。

  1. 外壁について行う修繕又は模様替(外壁塗装工事)
  2. 直接外気に開放されている廊下・バルコニー等について行う防水の措置(床防水工事)
  3. 屋上部分・屋根・ひさし等について行う防水の措置(屋根防水工事)

工事屋として、ここは強く言っておきたいところです。「屋上防水は積立金が厳しいから次回に回そう」という判断が、この税制の対象から外れる原因になります。

大規模修繕の設計段階で予算が足りないとき、削られやすいのが屋上防水です。外壁とバルコニー床防水は見た目に直結するので残る。屋上は住民の目に触れないので後回しになる。よくある話です。

しかしこの3点セットが揃わないと、税制は使えません。設計事務所や施工会社に見積りを依頼する段階で、「この3つを同一契約に入れた場合と入れない場合で、金額がどう変わるか」を出させてください。分けたほうが安く見えても、税の減額と、次回の仮設費が二重にかかることを合わせると、逆転するケースがあります。

減額の内容

項目 内容
対象税額 1戸あたり居住部分100平方メートルまでに相当する額(100平方メートル以下の家屋は全額)
減額率 3分の1
減額期間 1年間
都市計画税 減額なし

正直に書きます。1年間・3分の1です。固定資産税が年10万円の住戸なら、減額されるのは約3.3万円。「その程度か」と思う理事の方もいると思います。

ですが100戸のマンションなら、組合全体では300万円規模になり得ます。そして手続きは理事長の一括申請1回で済む。費用対効果でいえば、大規模修繕にまつわる事務作業の中で、これはかなり上位に来ます。

申告の手続きと必要書類

長寿命化工事が完了した日から3か月以内に、資産税課へ申告します。

必要な書類は以下のとおりです。

  • 大規模修繕工事等を行ったマンションに対する固定資産税の減額申告書(管理者等が提出する場合は不要)
  • 大規模の修繕等証明書
  • 過去工事証明書
  • 総戸数が分かる書類
  • 管理計画の認定通知書(認定マンションの場合)
  • 修繕積立金引上証明書(認定マンションの場合)
  • 助言・指導内容実施等証明書(助言・指導ルートの場合)

浜松市は申告書のPDF・Word・記載例(PDF)を公開しています。理事会で「制度がよく分からない」という話になったら、記載例を1枚印刷して回すのが最短です。

証明書には、着工前でないと取れないものがある

ここが実務上いちばん大事なところです。

上記の書類のうち、「大規模の修繕等証明書」は建築士事務所に所属する建築士が発行します。工事が終わってから「証明書を出してください」と頼んでも、工事前・工事中の状況を確認していない建築士は書けません。

だから、こうしてください。

  1. 設計監理を委託する建築士との契約に、「長寿命化促進税制の大規模の修繕等証明書の発行」を業務範囲として明記する。後から追加で頼むと別料金になるか、そもそも受けてもらえません。
  2. 着工前の写真を、施工会社に明示的に指示して撮らせる。足場が架かり、高圧洗浄が終わり、下地補修が始まったら、改修前の状態はもう存在しません。撮影範囲と枚数を仕様書に書いてください。
  3. 「過去工事証明書」は、前回工事の資料が必要になる。前回の施工会社が廃業していると、契約書も竣工図書も取れなくなります。理事会の書庫に何が残っているか、今のうちに確認してください。これは今日でもできます。

証明書が1枚足りないだけで、100戸分の減額が丸ごと消えます。工事の品質とは無関係のところで損をするのは、あまりに惜しい。

【本記事の核心3】浜松市の補助制度には「マンション」という行がある

ここからは金額の話です。この連載でこれまで扱ってきた市町の中で、浜松市の建築物耐震補強助成事業は、群を抜いて金額が大きい制度です。

浜松市の建築物耐震補強助成事業の対象用途一覧には、こう書かれています。

用途 規模
(中略:学校・病院・ホテル・事務所・工場など) 延べ面積1,000平方メートル以上
マンション 階数3以上かつ延べ面積1,000平方メートル以上

(出典:浜松市「建築物耐震補強助成事業」/更新日2026年4月8日)

用途の一覧の中に、独立した行として「マンション」があります。しかも規模の条件が他の用途と違う(階数3以上という条件が加わっている)。これは、浜松市が分譲マンションを補助対象として個別に想定していることの証拠です。

さらに補助金額の基準額表を見てください。

免震工法で施工する場合 83,800円/平方メートル
免震工法以外で施工する場合 マンション 50,200円/平方メートル
マンション以外 51,200円/平方メートル

基準額の単価表に「マンション」という専用行がある。これも本シリーズ初です。函南町では「非木造住宅(マンション含む)」という括弧書きを見つけて驚きましたが、浜松市は単価表のレベルでマンションを分けています。

補助金額の計算方法

浜松市のページの記載はこうです。

耐震改修工事に要する経費と基準額とを比較して、いずれか少ない額の23%の3分の2以内(上限1,600万円)

計算してみます。実際の耐震改修工事費が基準額を下回る一般的なケースで試算します。

耐震改修工事費 23%相当額 その3分の2 補助額(上限1,600万円)
3,000万円 690万円 460万円 460万円
5,000万円 1,150万円 766万円 766万円
8,000万円 1,840万円 1,226万円 1,226万円
1億2,000万円 2,760万円 1,840万円 1,600万円(上限)

(筆者試算。実際の交付額は建築行政課の審査によります)

上限1,600万円。この連載で扱ってきた制度の中で、桁がひとつ違います。ブロック塀の上限が20万円台、アスベスト除去が300万円、そして耐震補強が1,600万円です。

なお「要緊急安全確認大規模建築物」に該当する場合は607/1,800という別の率が適用されます。該当するかどうかは建築行政課に確認してください。

また、この事業は代理受領制度が使えます。補助金を管理組合が受け取ってから施工会社に払うのではなく、市から施工会社へ直接支払う仕組みです。管理組合の資金繰りの負担が軽くなります。これも見積り段階で施工会社に伝えておいてください。

ただし、対象は旧耐震(昭和56年5月31日以前)に限られます

条件を正確に書きます。次のすべてに該当することが必要です。

  • 昭和56年5月31日以前に建築された建築物
  • 倒壊の危険性がある建築物(Is値0.6未満またはq値1.0未満等)
  • 上記の用途・規模に該当する
  • 建築基準法第10条に規定する耐震改修に係る命令を受けていない
  • 耐震改修後に地震に対して安全な構造(Is値0.6以上かつq値1.0以上等)となる工事を実施する

つまり、築45年以上の分譲マンションの話です。浜松市内に該当する物件は決して多くはありません。しかし該当するなら、1,600万円という金額は管理組合の意思決定を根本から変えます。

自分のマンションが旧耐震かどうかは、建築確認済証の交付日で判断するのが確実です。管理組合の書庫か、管理会社の保管書類にあります。昭和56年5月31日以前の交付なら、旧耐震基準で確認を受けた建物です。

旧耐震なら、外装より耐震が先です

これは工事屋として毎回書いていることですが、浜松市は補助額が大きいぶん、より強く言います。

旧耐震のマンションで、耐震診断をしないまま大規模修繕(外壁・防水)を先に発注するのは、順番を間違えています。

理由は単純で、耐震補強工事は壁を壊し、ブレースや耐震壁を入れ、外壁の一部をやり直す工事だからです。先に外壁をきれいに塗ってから耐震補強をすれば、塗ったばかりの外壁を壊すことになります。そして足場を2回架けることになります。

仮設足場は工事費の15〜25%を占めます。5,000万円の工事なら750万円〜1,250万円。これを2回払うのか1回で済ませるのか。管理組合にとっては、そのまま積立金の話です。

耐震診断も、補助率は3分の2と明記されている

耐震補強の前段には耐震診断があります。浜松市の「非木造住宅・建築物耐震診断事業」の対象には、こう書かれています。

昭和56年5月31日以前に建築された非木造住宅、住宅以外の建築物及びマンション(※)
(※)マンションとは、地上3階以上かつ延べ面積1,000平方メートル以上のものをいいます。

(出典:浜松市「建築物耐震診断事業」/更新日2026年4月16日)

補助金額は、耐震診断に要する経費と基準額とを比較して少ない額の3分の2以内。基準額の単価は次のとおりです。

延べ面積の区分 単価
1,000平方メートル以内の部分 3,670円/平方メートル
1,000平方メートル超〜2,000平方メートル以内の部分 1,570円/平方メートル
2,000平方メートルを超える部分 1,050円/平方メートル

延べ面積ごとに基準額と補助上限(基準額の3分の2)を試算すると、次のようになります。

延べ面積 基準額 補助額の目安(基準額×2/3)
1,000平方メートル 367万円 約244万円
2,000平方メートル 524万円 約349万円
3,000平方メートル 629万円 約419万円
5,000平方メートル 839万円 約559万円
8,000平方メートル 1,154万円 約769万円

(筆者試算。実際の交付額は経費と基準額の少ないほうが基礎になります)

ここで連載の流れを補足しておきます。函南町の記事では、同じ単価表(3,670円/1,570円/1,050円)が公表されているものの、マンションを含む「その他建築物」欄に補助率の記載がなかったため、「基準額がそのまま交付額かどうかは分からない」と正直に書きました。浜松市は「3分の2以内」と明記しています。同じ静岡県内でも、公表の粒度がこれだけ違います。

なお、一定規模以上のものについては第三者機関による評定書の取得が必要です。診断費用の見積りには、現場調査費・耐震診断費・図面作成費・報告書作成費・各種試験費用・耐震評定書の費用が含まれます。

【最重要の落とし穴】浜松市の補助は、全部「契約前」です

浜松市の補助制度のページを順番に読んでいくと、同じ文言が繰り返し出てきます。

  • 建築物耐震診断事業:「手続きをする前に建築士事務所と契約等を進めてしまった場合は、補助の対象となりません」
  • 建築物耐震補強助成事業:同上
  • アスベスト対策事業:「事後の申請はできませんので、分析機関や飛散防止工事の施工業者と契約する前に、建築行政課と事前協議を行ってください」
  • ブロック塀等撤去改善事業:「決定通知書が届いてから契約をしてください。既に着手または完了している場合は補助金をお出しできません」

浜松市の補助制度は、例外なく「交付決定 → 契約 → 着工」の順序を要求します。

管理組合にとって、これは総会運営の問題です。よくある失敗はこうです。

総会で「大規模修繕工事を〇〇社に発注する件」を可決 → 理事長が工事請負契約を締結 → その後に「そういえば補助金があるらしい」と気づく → 手遅れ

これを防ぐために、総会議案書に次の一文を入れてください。

「本工事のうち補助制度の対象となり得る部分については、市の交付決定を受けた後に契約を締結するものとし、交付決定に至らない場合の対応は理事会に一任する。」

この一文があるだけで、理事長は「補助金の結果を待つ」という判断ができます。ない場合、理事長は総会決議を早く執行しなければならないというプレッシャーの中で、契約を急いでしまいます。

【本シリーズ初】吹付けアスベスト対策事業と、その正直な限界

これは、この連載でまだ一度も取り上げていない制度です。浜松市には民間建築物吹付けアスベスト対策事業があります(令和8年4月1日改正)。

事業 補助率 上限
アスベスト分析調査事業 分析調査に要する経費の10分の10以内 1棟あたり25万円
アスベスト除去等事業 除去等に要する経費の3分の2以内 1敷地あたり300万円

(出典:浜松市「民間建築物吹付けアスベスト対策事業について」/更新日2026年4月3日)

分析調査は10分の10、つまり全額です(上限25万円)。

なぜ大規模修繕の記事でアスベストを扱うのか

昭和50年代までに建てられたマンションでは、共用部の一部に吹付け材が使われていることがあります。具体的には、機械室・電気室、エレベーターシャフト内、パイプスペース、駐車場や自転車置場の天井、屋上塔屋の内部などです。

大規模修繕工事では、これらの場所に足場が架かり、人が入り、場合によっては下地を触ります。吹付け材が石綿を含有していれば、大規模修繕の工程そのものが変わります。作業計画も、届出も、養生も、費用も変わる。だから工事の設計に入る前に、有無を確定させておくほうがいい。

分析調査が全額補助(上限25万円)で受けられるのなら、これは使わない理由がありません。

ただし、外壁の仕上塗材は対象外です

ここは正直に、はっきり書きます。浜松市のページには注記があります。

(※1)バーミキュライト、パーライト、仕上塗材の除去等は対象外です。
成形板(スレート波板、ケイ酸カルシウム板、カラーベスト屋根材、ビニル床タイル材等)は対象外です。

大規模修繕でいちばん問題になりやすいのは、実は外壁の石綿含有仕上塗材です。古いマンションの吹付けタイルやリシンに石綿が含まれていることがあり、これを剥がす作業には石綿則に基づく措置が必要になります。そしてこの補助金は、そこには使えません。

対象になるのは「規制の対象となる吹付けアスベスト」、つまり鉄骨梁や天井などに吹き付けられたアスベストです。外壁の仕上塗材は別扱いです。

「アスベストの補助があるから外壁の石綿対策費が減る」と期待して見積りを組むと、そこは補助の対象外です。この線引きを、設計段階で施工会社と共有しておいてください。

手続きの注意点

  • 申請窓口は建築行政課(市役所本館4階)のみ。区役所や協働センターでは申請できません。
  • 事後の申請はできません。分析機関や施工業者と契約する前に、建築行政課と事前協議を行ってください。
  • 調査は建築物石綿含有建材調査者による調査に基づいて実施する必要があります。
  • 申請時の添付書類に「対象経費の見積書の写し(2社以上)」が含まれます。1社見積りでは受け付けられません。
  • 「予算がなくなり次第、受付終了となります」と明記されています。年度の早い時期に動くほうが有利です。

ブロック塀等撤去改善事業|調査結果は「翌々年度まで有効」

敷地の外周にブロック塀があるマンションは、この制度を大規模修繕と同じ議案にまとめることを検討してください。

区分 基準額の単価 補助率 上限
撤去費 14,000円/メートル 3分の2以内 200,000円
新設費(安全な塀) 38,400円/メートル 3分の2以内 250,000円

(出典:浜松市「ブロック塀等撤去改善事業」/更新日2026年4月7日)

対象になるのは、道路等に沿っている(または転倒時に道路等に影響を及ぼす)、道路からの高さ80センチメートル以上かつ2段以上積まれた塀で、市が実施する事前現地調査を受けたものです。

この制度で、いちばん実務的に効く一文

浜松市のページには、こう書かれています。

調査結果は、ブロック塀等の状況が変わらない限り、翌々年度まで有効です。

これは管理組合にとって大きい。今年度のうちに事前現地調査だけ受けておけば、その結果は翌々年度まで使えます。大規模修繕の工事年度が令和9年度や令和10年度になっても、調査は今受けておいていい、ということです。

事前現地調査は電話・窓口・オンラインフォームから申し込めます。申込から調査までは3週間程度。立会いは基本的に不要です。理事長が現地に行く必要すらありません。

今週やれることのリストに、これを入れてください。電話1本と、3週間後に市職員が来て見ていくだけです。

大規模修繕と同じ議案にまとめる理由

ブロック塀の工事を別の年に立てると、次のことが起きます。

  • 近隣へのあいさつ回りが2回になる
  • ガードマンと車両誘導の費用が2回かかる
  • 外構の色を新しい外壁色に合わせられない(先に塀を替えると色が合わない、後に替えると足場の後の再工事になる)
  • そして最大の理由:管理組合が決められるのは年1回の定時総会だけ。別々の年に議案を立てれば2年かかる。

注意:法人格のある管理組合はオンライン申請ができません

浜松市のブロック塀補助はオンライン申請に対応していますが、「浜松市職員による事前現地調査が完了済みの個人が対象」であり、「申請区分が法人の場合は、窓口又は郵送での申請が必要」と明記されています。

管理組合法人の場合は、窓口か郵送になります。マイナンバーカードを用意して申請しようとして、当日になって使えないと分かると時間を失います。事前に建築行政課(053-457-2471)に確認してください。

浜松市の住宅系制度を「共用部の大規模修繕で使えるか」で1列判定する

浜松市の「はままつ住まいづくりガイド」には、公的助成制度が数十本並んでいます。管理組合の理事が全部読むのは現実的ではありません。共用部の大規模修繕という観点だけで判定した表を作りました。

制度 共用部の大規模修繕で使えるか 一言
マンション管理計画認定制度 ◎ 令和9年3月31日まで手数料0円(支援サービス利用時)
長寿命化促進税制(固定資産税の減額) ◎ 管理者等の一括申請が可能。外壁・床防水・屋根防水の3点セットが要件
建築物耐震診断事業 ◎(旧耐震・3階以上・1,000平方メートル以上) 3分の2以内
建築物耐震補強助成事業 ◎(同上) 上限1,600万円。代理受領制度あり
民間建築物吹付けアスベスト対策事業 ◯ 分析調査は全額(上限25万円)。ただし外壁の仕上塗材は対象外
ブロック塀等撤去改善事業 ◯ 事前現地調査が必須。結果は翌々年度まで有効
感震ブレーカー設置費助成事業 △ 共用部設置の可否は要確認(危機管理課)
創エネ・省エネ・蓄エネ型住宅推進事業費補助金 △ 個人住宅向けの設計。共用部での適用可否は要確認
木造住宅耐震補強助成事業 × 木造限定
住宅の省エネ改修に伴う固定資産税の減額措置 × 専有部の話。区分所有者個人が申告
住宅のバリアフリー改修に伴う固定資産税の減額措置 × 同上
まちなか定住促進・子育て応援環境づくり補助金 × 取得・移住向け
空き家等除却促進事業費補助金 × 除却向け
がけ地近接等危険住宅移転事業 × 移転向け

(出典:浜松市「2 浜松市の公的助成制度」/更新日2026年6月3日をもとに筆者が判定)

「×」だと分かっている制度に理事会の時間を使わずに済むこと。これにも価値があります。理事の任期は1年か2年です。時間は有限です。

なお、省エネ改修とバリアフリー改修の固定資産税減額は、区分所有者個人が専有部で申告するものです。管理組合が判断することではありません。ただし、同じ年度に共用部の長寿命化促進税制と個人の専有部の減額が重なるケースはあり得ます。減額措置には併用できる組み合わせとできない組み合わせがあるので、管理組合は税務判断をせず、「各自で資産税課にご確認ください」と周知する役割に徹するのが正解です。

工事完了後の周知文に、この1行を入れておいてください。

「共用部の工事について、管理組合が固定資産税の減額申告を一括で行います。専有部の窓の断熱改修などで個人の減額申告を予定されている方は、同じ年度に重なる場合の取扱いを資産税課(053-457-2155)にご確認ください。」

浜松市自身が「10年後に37%」と書いている

浜松市は、令和4年4月に浜松市マンション管理適正化推進計画を策定・公表しています。計画期間は令和4年度から令和13年度の10年間(5年後に見直し)。

この計画に、市内マンションの実態として次の数字が載っています。

築40年を超えるマンションが急増(現在:8%、10年後:37%、20年後:70%)し、適切な管理がなされないと居住者・近隣住民等の生命・身体・財産に危害を及ぼす恐れがあります。

(出典:浜松市マンション管理適正化推進計画/更新日2026年4月16日)

そして市が掲げる目標はこれです。

25年以上の長期修繕計画に基づく修繕積立金額を設定しているマンション管理組合の割合を現状の51%から令和13年度までの10年間で75%以上に引き上げる。

この数字の読み方を書いておきます。

現状51%ということは、浜松市内の分譲マンション管理組合のおよそ半分が、25年以上の長期修繕計画に基づく積立金設定をしていないということです。市が実態調査をして出した数字です。

私は現場で、長期修繕計画が実質的に機能していない管理組合をたくさん見てきました。10年前に作ったきり見直していない。作った当時の物価で組まれている。前回工事の実績が反映されていない。そういう計画は「ある」けれども「基づいていない」。

浜松市はそれを51%と数字にして、市の計画に書きました。自分たちの組合がその51%側にいるのか49%側にいるのかを確かめることが、大規模修繕の出発点です。確かめ方は簡単で、長期修繕計画の作成年月日と計画期間を見るだけです。

そして市の施策として、次の3つが計画に書かれています。

  • 分譲マンション管理セミナーの開催
  • マンション管理士の派遣
  • 分譲マンション管理に関する相談会の実施

このうち、いま日程が確定しているものがあります。

10月27日の無料相談会|定員10組・申込開始は9月15日

浜松市は、分譲マンションの管理組合役員や区分所有者を対象とした無料相談会を開催します。

項目 内容
日時 令和8年10月27日(火曜日)午前10時00分〜午後4時00分
場所 浜松市役所本館5階 51会議室(中央区元城町103-2)
対象 浜松市民の方で分譲マンションに関する相談がある方
相談員 静岡県マンション管理士会のマンション管理士
定員 10組(先着順)
参加費 無料
相談時間 1組あたり30分まで(時間帯は市が指定・後日通知)
申込期間 令和8年9月15日(火曜日)〜10月2日(金曜日)
申込方法 所定の申込用紙をファクス・Eメール・持参、またはインターネット
結果通知 令和8年10月8日(木曜日)以降に郵送

(出典:浜松市「分譲マンションについての無料相談会のご案内」/更新日2026年8月20日)

相談内容として市が挙げているのは、次のとおりです。

  • 総会・理事会、滞納処理対策、大規模修繕工事等の管理組合の運営
  • 管理規約・使用細則の作成および改正に係る問題
  • 管理会社・分譲会社との関わり など

「大規模修繕工事等」が、市が例示する相談内容に明記されています。遠慮なく大規模修繕の相談をしていい相談会だ、ということです。

この相談会を使い切るための、現実的な注意点

正直に書きます。この相談会には3つのハードルがあります。

  1. 定員10組・先着順。浜松市内の分譲マンション管理組合の数を考えると、10組は多くありません。
  2. 申込開始は9月15日(火)。それより前には申し込めません。
  3. 平日火曜日の10時〜16時。働いている理事長は有給休暇が必要です。

だから、こうしてください。

今日のうちに、9月15日(火)にリマインダーを設定する。これだけです。スマートフォンのカレンダーに「浜松市マンション無料相談会 申込開始」と入れて、通知をオンにする。所要時間1分。

そして相談の30分をどう使うか、事前に決めておいてください。30分は短い。世間話をしていたら終わります。私なら、この3点に絞ります。

  1. 「うちの長期修繕計画は、管理計画認定の基準を満たしていますか」(計画期間30年以上、残存期間内に大規模修繕2回以上、積立金の平均額が著しく低額でないか)
  2. 「認定ルートと助言・指導ルート、うちの組合はどちらが現実的ですか」(積立金の引き上げ議案を通せるかどうかが分岐点)
  3. 「相見積りの比較で、素人がいちばん見落とすのはどこですか」

そして持っていくものは3点。長期修繕計画書、直近の総会議事録、修繕積立金の残高が分かる書類。これがないと、相談員は一般論しか答えられません。

もう1つ。理事長ひとりで行かないでください。次期理事の候補と2人で行く。理事の任期は短く、引き継ぎで抜け落ちる情報は必ずあります。同じ話を2人が聞いていることの価値は大きい。

なお、市が実施する施策にはマンション管理士の派遣も含まれています(推進計画に記載)。相談会とは別枠の可能性があるので、住宅課(053-457-2457)に「派遣制度の実施状況」を併せて確認してください。1回の電話で2つの用件を済ませられます。

国の制度|モデル事業の第3回公募は令和8年9月14日〜18日

国土交通省のマンションストック長寿命化等モデル事業は、令和8年度も提案募集が行われています。第3回の受付期間は令和8年9月14日(月曜日)から9月18日(金曜日)までです(出典:国土交通省 報道発表)。

本記事の公開日から2週間ほどしかありません。正直に書きます。今から準備して第3回に間に合う管理組合は、限られます。

それでもこの情報を書く理由が3つあります。

  1. 年度内に複数回の募集がある。令和8年度は第1回(4月)、第2回(6月)、第3回(9月)という構成でした。次年度も同様の構成になる可能性があります。
  2. 公募要領の必要書類一覧が、そのまま良い準備リストになる。申請しなくても、何を揃えるべきかが分かります。
  3. 先導性の要件に、工法の工夫が入り込む余地がある。無足場工法による居住者負担の軽減や工期短縮は、モデル性として説明できる論点です。

今週やることは1つだけでいいです。公募要領の必要書類一覧のページだけ印刷する。所要時間15分。理事会の書類ばさみに入れておく。それだけで来年度の初動が変わります。

長寿命化促進税制は、国レベルで延長・緩和されています

令和8年度税制改正で、マンション長寿命化促進税制について適用期限の延長と要件の見直しが行われています(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制」)。床面積の下限についても見直しが行われています。

ここで注意です。自治体のページの更新が、国の改正に追いついていないことがあります。浜松市の減額ページの更新日は2026年6月18日で比較的新しいのですが、それでも記載内容と最新の国の制度が完全に一致しているかは、市に確認するのが確実です。

理事会の宿題として、「住戸タイプ別の専有面積一覧を管理会社に依頼し、40平方メートル台と50平方メートル台が何戸あるか数える」を出しておいてください。30分の作業です。床面積要件が話題になったときに、即答できるかどうかで議論のスピードが変わります。

静岡県の支援|マンション管理士の無料派遣と県セミナー

浜松市の制度とは別に、静岡県の制度も使えます。

静岡県マンション管理士無料派遣は、県内10件程度・各組合2回まで、費用は無料です。申込先は静岡県マンション管理士会(ファクス 0544-27-6561)、制度の窓口は静岡県住まいづくり課(054-221-3084)です。派遣の期限があるため、年度後半は締切に注意してください。

2回の使い方を、浜松版に具体化しておきます。

  • 1回目: 長期修繕計画と修繕積立金の水準確認。管理計画認定の基準に照らして、どこが足りないかを洗い出す。
  • 2回目: 相見積りの比較と施工会社の選定。見積書を3社分持参して、どこを見るべきかを教わる。

申込書の「相談内容」欄には、次の3行を書いてください。抽象的に書くと、抽象的な回答しか返ってきません。

  1. 「管理計画認定と長寿命化促進税制について、認定ルートと助言・指導ルートのどちらが当組合にとって現実的か判断したい」
  2. 「長期修繕計画が管理計画認定の基準(計画期間30年以上・残存期間内に大規模修繕2回以上)を満たしているか確認したい」
  3. 「大規模修繕の相見積り3社の比較で、管理組合が見落としやすい点を教えてほしい」

県のマンション管理セミナーも県内各地で開催されています。浜松市は県西部の中心都市なので、県が会場を設定する際の主要都市のひとつです。開催予定は静岡県住まいづくり課に確認してください。

住宅金融支援機構の3制度も、忘れずに

修繕積立金が足りないときの選択肢として、独立行政法人 住宅金融支援機構の制度があります。

制度 内容
マンション共用部分リフォーム融資 管理組合が借主となる融資。管理計画認定を受けていると金利が引き下げられます
マンションすまい・る債 修繕積立金を積み立てながら運用する仕組み。認定を受けていると利率が上乗せされる取扱いがあります
マンションライフサイクルシミュレーション 積立金の将来推計を無料で試算できるツール

(出典:住宅金融支援機構)

浜松市の認定制度ページにも、認定のメリットとして「(独)住宅金融支援機構の【フラット35】及びマンション共用部リフォーム融資の金利優遇を受けることができる」と明記されています。

認定の価値は、税制だけではありません。融資条件と、将来の売却時の市場評価にも効きます。ここは理事会で説明するときに落としやすいポイントです。

ここからは工事屋の話です|遠州のからっ風と、足場

制度の話はここまでです。ここからは、浜松市の建物を工事する側から見た話を書きます。

浜松には「遠州のからっ風」という言葉があります。冬になると北西から強い季節風が吹く。地元の方には説明不要でしょうが、これは大規模修繕にとって、はっきりとした技術的条件です。

強風が工期と金額に効く仕組み

足場を架けると、建物の外周にメッシュシートが張られます。塗料の飛散を防ぎ、工具の落下を防ぐためです。このメッシュシートが、風を受けます。

強風が予想される日は、シートの一部を開放するか、たたんで縛ります。作業が終わったら戻します。この開放と復旧の作業が、そのまま人工(にんく)として工程に乗ります。そして強風の日は高所作業そのものを中止します。

つまり冬季の浜松では、次のことが起きます。

  • 予備日を多めに見ておく必要がある
  • 足場の控え(壁つなぎ)の本数が増えることがある
  • 工期が延びれば、足場のリース期間が延びる

足場は日数で借りています。工期が延びれば仮設費が増える。これは避けようがありません。

見積書に、この1文を質問してください

「強風・降雨による作業中止の判断基準は仕様書のどこに書かれていますか。予備日は何日みていますか。予備日を超過した場合の足場リース延長費用は、誰の負担になりますか。」

3つ目が本命です。予備日を超過したときの足場延長費用の負担者が契約書に書かれていないまま着工すると、工期が延びたときに揉めます。天候は誰のせいでもないので、なおさら揉めます。

方位別の劣化要因を、浜松版で整理する

方位・部位 主な劣化要因 現場で出やすい症状
北西面 冬季の強い季節風と雨がかり シーリングの早期硬化、塗膜の摩耗が他面より進む
南面 日照時間が長く、紫外線量が大きい チョーキング(白亜化)の進行が早い、塗膜の退色
北面 日照が少なく乾きにくい コケ・藻の付着、防水層の乾燥不良
屋上 日射と温度差による伸縮 防水層のふくれ、押えコンクリートのひび
海側に近い立地 飛来塩分 鉄部の腐食が早い、手すり根元の膨張
バルコニー床 生活動線・排水 防水層のすり減り、排水ドレン周りの詰まり

浜松は日照時間が長い地域です。これは南面の塗膜にとっては厳しい条件です。「外壁塗装 一式」という1行の見積書では、南面と北面で仕様を変えているのかどうかが分かりません。方位別に数量と仕様を分けて出させてください。

仮設足場は、工事費の15〜25%を占めます

これは全国どこでも変わらない数字です。大規模修繕工事の総額に占める仮設足場費の割合は、おおむね15〜25%です。

工事総額 仮設足場費の目安(15〜25%)
3,000万円 450万円〜750万円
5,000万円 750万円〜1,250万円
8,000万円 1,200万円〜2,000万円
1億2,000万円 1,800万円〜3,000万円

見積書では、この金額が「仮設工事 一式 〇〇円」というたった1行で出てくることがあります。

理事会でよく起きることを書きます。植栽の剪定費20万円については活発に議論が起きるのに、仮設工事750万円の1行には誰も質問しない。これは理事が不真面目だからではありません。判断材料が渡されていないからです。20万円の剪定は想像できるが、750万円の足場が高いのか安いのか、判断する物差しがない。

物差しを手に入れる質問は1文です。

「仮設工事の金額を、架面積の平米単価とリース期間に分解して出してください。」

架面積(足場を架ける面積)×単価×期間。この3つに分解されれば、3社の見積りを比較できるようになります。単価が同じで期間が違えば、工程の組み方が違うということです。

浜松市のマンション向け|ハイブリッド工法の3パターン

ここで私の会社の話を少しだけします。株式会社明誠は、通常の足場を架ける工法、ロープアクセス工法(無足場工法)、そしてその両方を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つを、建物の条件に応じて提案できる会社です。日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。ロープアクセス工法の技術的な情報は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。

先に、いちばん大事なことを書きます。ロープアクセス工法は万能ではありません。私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる現場は、普通にあります。

足場が有利になる条件は、はっきりしています。

  • 下地補修(コンクリートの欠損・ひび割れ・タイル浮き)の数量が読めない場合。開けてみないと分からない補修が多いなら、足場のほうが結果的に安く早い。
  • タイルの浮きが広範囲に及ぶ場合。打診調査の結果次第です。
  • 外壁の形状が複雑で、凹凸やルーバーが多い場合。
  • サッシ廻りや手すりの取替など、資材の搬入が多い工事を同時にやる場合。

そのうえで、浜松市のマンションで実際に効きやすい組み合わせを3つ挙げます。

パターン1:風の当たる面だけ、ロープアクセスに置き換える

冬季の北西面は、メッシュシートが風を受けて工程が乱れやすい面です。この面を足場ではなくロープアクセスで施工すると、風による中止判断の影響を受ける範囲が小さくなります。足場の架面積が減れば、そのまま仮設費が減ります。

パターン2:低層は足場、高層はロープアクセス

建物の上に行くほど風は強くなります。上層階を足場で覆わないことで、風圧を受ける面積そのものを減らせます。下層階は資材の出し入れが多いので足場を残す。この組み合わせは、工期の安定性という意味でも合理的です。

パターン3:駐車場を潰さない配分

浜松市は自動車の保有率が高い地域です。1世帯1台以上が前提のマンションが多い。足場を建物の全周に架けると、外周の駐車スペースが工事期間中ずっと使えなくなります。代替駐車場を借りれば、その費用は工事費とは別に管理組合の負担になります。

ロープアクセスは足場の部材を地上に置く必要がないため、駐車場を残したまま施工できる面が出てきます。これは金額だけの話ではありません。「半年間、車をどこに置けばいいのか」という住民の不満は、総会の議決そのものに影響します。

ロープアクセス工法の安全基準や実際の施工事例については、ロープアクセスドットコムで解説しています。工法の技術的な背景を理事会で説明する際の資料としてもお使いいただけます。

モデルケース2本|浜松市の管理組合を想定した試算

実在の物件ではありません。浜松市内でよくある条件を想定した試算です。数字は目安であり、実際の金額は建物ごとに変わります。

ケースA:JR浜松駅圏の中規模マンション

項目 内容
条件 築26年・8階建て・56戸・敷地内に平面駐車場
全面足場の場合 工事費 8,800万円/工期 6か月/駐車場は全周6か月使用制限
ハイブリッド工法の場合 工事費 7,500万円/工期 4.5か月/駐車場は2面ずつ各1.5か月の制限
差額 ▲1,300万円(1戸あたり約23万円)/工期1.5か月短縮

ケースB:郊外の小規模マンション

項目 内容
条件 築33年・5階建て・28戸・前面道路が狭く4トン車が入らない
全面足場の場合 工事費 4,400万円/工期 5か月
ロープアクセス主体の場合 工事費 3,550万円/工期 3.5か月
差額 ▲850万円(1戸あたり約30万円)/工期1.5か月短縮

ケースBについて補足します。28戸で4,400万円ということは、1戸あたり157万円です。同じ工事内容でも150戸のマンションなら1戸あたり30万円前後になります。

戸数が小さいマンションほど、1戸あたりの負担が重くなる。そして戸数が小さいほど、工法の選択が効きます。仮設足場は建物の大きさに応じてかかりますが、それを頭数で割るときの分母が小さいからです。

もう1つ、道路条件の話です。前面道路が狭くて4トン車が入らないと、足場材を2トン車で分割搬入することになります。搬入回数が増え、道路使用許可と警備員が必要になり、その費用は「仮設工事一式」の中に埋もれます。ロープアクセス工法は足場材の搬入そのものがないため、道路条件が厳しい現場ほど、差が金額に出ます。これは営業トークではなく、単純な物流の話です。

最後にひとつ、時期の話

工法は、設計を発注してからでは実質的に選べません。

設計事務所が全面足場を前提に設計図と数量表を作ってしまえば、その後の見積りはすべて足場前提で出てきます。工法を比較したいなら、設計を発注する前に「足場前提とハイブリッド前提の両方で概算を出してほしい」と伝えてください。これは設計事務所に対して失礼な要求ではなく、当然の要求です。

工法選定と概算のご相談は、明誠のお問合せフォームからお受けしています。

修繕積立金が足りないときの4つの打ち手

浜松市の推進計画にあった「25年以上の長期修繕計画に基づく積立金設定は51%」という数字を思い出してください。積立金が足りないのは、あなたの組合だけではありません。

打ち手は4つです。

  1. 一時金を徴収する。総会で決議が必要。金額が大きいと反対が出ます。
  2. 積立金を値上げする。将来のためには最も健全ですが、決議のハードルは高い。
  3. 借入れる。住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資など。管理計画認定で金利優遇があります。
  4. 工事を段階的に分ける。

4番目には、はっきり注意点があります。

段階施工は、仮設費が回数分かかります。外壁を今年、屋上防水を3年後にすれば、足場も2回架けることになります。そして長寿命化促進税制は「外壁・床防水・屋根防水が同一の工事請負契約の中で一体として行われること」を要件にしているので、分けた瞬間に税制の対象から外れる可能性があります。

段階施工を検討する際は、この2点を必ず試算に入れてください。

議案書には「一時金」と「月々」の両方を載せてください

理事会が議案を作るとき、「一時金50万円」だけを書くと反対されます。「月々3,000円の値上げ」だけを書いても、実感が湧きません。

両方を並べて書いてください。

「不足額を賄う方法として、(A)1戸あたり一時金50万円、(B)修繕積立金を月額3,000円値上げ(〇年間)、の2案を比較しました。」

人は、選択肢が2つあると比較して考えます。1つしかないと、賛成か反対かしか考えません。これは総会運営の技術です。

見積書チェック5点|最重要は「下地補修の超過分」

3社から見積書が届いたとき、どこを見るか。私が管理組合の理事だったら、この5点を見ます。

1. 数量の根拠

外壁塗装の面積、シーリングの延長メートル数。この数字がどこから来たのかを聞いてください。図面から拾ったのか、現地で測ったのか。3社で数量が大きく違うなら、どれかが間違っています。

2. 仕様の具体性

「外壁塗装 一式」ではなく、塗料のメーカー名・製品名・仕様(下塗り・中塗り・上塗りの回数)まで書かれているか。方位別に仕様が分かれているか。

3. ★下地補修の仮定数量を超えた分の単価が、契約前に明記されているか

これが最重要です。

下地補修(ひび割れ、欠損、タイルの浮き)は、足場を架けて調査するまで正確な数量が分かりません。だから見積書には「仮定数量」が入ります。ひび割れ100メートル、タイル張替え50平方メートル、といった具合です。

問題は、実際にはこれを超えるのが普通だということです。

そして超過分の単価が契約書に書かれていないと、工事が始まってから「追加で〇〇万円です」と言われます。そのとき管理組合は交渉できません。工事を止めるわけにいかないからです。足場が架かり、住民が不便を我慢している状況で、「その単価は高い」と言えるでしょうか。言えません。

だから、契約前にこう書かせてください。

「下地補修の仮定数量を超過した場合の単価を、ひび割れ〇円/メートル、欠損部補修〇円/箇所、タイル張替え〇円/平方メートル、として契約書に明記する。」

これを嫌がる会社は、そこで分かります。

4. 仮設工事の内訳

架面積の平米単価とリース期間に分解されているか。前述のとおりです。

5. 「別途」の中身

見積書の最後に「別途工事」として並んでいる項目を必ず読んでください。そこに書かれているものは、この見積金額に含まれていません。産業廃棄物処分費、仮設電気・水道、駐車場代、近隣対策費。これらが「別途」になっていると、最終的な支払額は見積額を上回ります。

より詳しい調査・診断の考え方については、明誠の建物調査・劣化診断のページもご覧ください。

工事適期カレンダー(浜松版)

時期 評価 理由
3月下旬〜5月上旬 ◎ 気温・湿度が安定。塗膜の乾燥条件が最も良い
5月中旬〜6月 △ 梅雨入り。降雨による中止日が増える
7月〜8月 △ 高温。熱中症対策で作業時間が制限される日がある
9月〜10月中旬 △ 台風期。強風・大雨のリスク
10月下旬〜11月 ◎ 気候が安定し、日照時間も確保できる
12月〜2月 ◯ 温暖で晴天率は高い。ただしからっ風で予備日が3〜5日増える

一般的な塗装の施工条件は「気温5度以下、湿度85%以上では施工しない」とされています。浜松市の平地であれば、冬でもこの条件に引っかかる日は多くありません。冬は閑散期なので、価格交渉の余地がある時期でもあります。

見積り依頼のときに、この1文を添えてみてください。

「12月着工の場合、金額と工期はどうなりますか。からっ風による予備日は何日みていますか。」

季節を変えるだけで金額が動くことは、普通にあります。聞かなければ、動きません。

相見積りの環境は、この連載でいちばん良い

これは正直に評価します。浜松市は、相見積りを揃えるという意味で、この連載で扱ってきたどの自治体よりも条件が良いです。

理由は単純です。人口が静岡県内最大の政令指定都市であり、市内に建設会社・改修会社・設計事務所が集中しているからです。伊豆半島の町の記事では「まず車で20分圏の隣町から、次に県東部の中核市へ」と段階的に広げる提案をしましたが、浜松市では市内だけで3社を揃えることが現実的に可能です。

そのうえで、比較の組み方を提案します。

段階 声をかける先 ねらい
第1段階 浜松市内の改修専門会社 移動費が乗らない。緊急時の対応が早い
第2段階 磐田市・袋井市・湖西市・掛川市など西部の会社 価格の相場観を市外から検証する
第3段階 首都圏・名古屋圏の改修専門会社 工法の選択肢を広げる。無足場工法などの専門性

第3段階について補足します。浜松市は東海道新幹線の停車駅があり、東名・新東名の両方が通っています。名古屋から約35分、東京から約1時間半(新幹線)という立地は、市外の専門会社が日帰りで現場対応できる距離です。「遠方だから割高になる」という前提は、浜松市には当てはまりにくい。

比較のときは、次の2つを必ず統一してください。

  1. 移動費・現場管理費が、諸経費に含まれているのか別途なのかを、最初に明記させる。含まれ方が違う見積りを比べても意味がありません。
  2. 現地調査は、同じ日にまとめて実施する。建物の状態は日々変わります。3社が別々の日に見れば、見ているものが微妙に違います。同日に来てもらえば、条件が揃います。

浜松市の管理組合は、補助金を探す時間と同じくらい、業者を比べる時間に投資する価値があります。制度も、業者の選択肢も、両方ある珍しい市だからです。

今週できること5つ(合計3時間以内)

理事会の次の集まりまでに、これだけやってください。

1. 【今日・1分】9月15日(火)にリマインダーを設定する

浜松市の無料相談会の申込開始日です。定員10組・先着順。カレンダーに「浜松市マンション無料相談会 申込開始」と入れる。それだけです。

2. 【今日・10分】ブロック塀の事前現地調査を申し込む

敷地の外周にブロック塀があるなら、建築行政課(053-457-2471)に電話するか、オンラインフォームから申し込む。調査まで3週間程度。立会い不要。結果は翌々年度まで有効なので、工事年度が先でも今受けておいて損はありません。

3. 【15分】建築確認済証の交付日を確認する

管理組合の書庫か管理会社の保管書類を確認します。昭和56年5月31日以前なら旧耐震です。該当するなら、建築行政課に耐震診断事業の相談を。上限1,600万円の補強助成が視野に入ります。

4. 【30分】長期修繕計画の作成年月日と計画期間を確認する

計画期間が30年以上あるか。残存期間内に大規模修繕が2回以上含まれているか。作成から何年経っているか。これが管理計画認定の入口です。浜松市が言う「51%」のどちら側にいるかが分かります。

5. 【30分・電話1本】資産税課に長寿命化促進税制を確認する

053-457-2155(資産税課)に電話して、こう聞いてください。

「分譲マンションの管理組合の者です。長寿命化に資する大規模修繕工事の固定資産税減額について、管理組合の管理者等による一括申請の具体的な手続きと、着工前に準備しておくべき書類・写真を教えてください。工事はこれからです。」

「工事はこれからです」を必ず添えてください。着工前に様式を知れば、工事中に撮る写真と、施工会社に用意させる証明書を、先に指定できます。工事が終わってから聞くのとでは、価値がまるで違います。

19か月逆算カレンダー

令和9年3月31日(長寿命化促進税制の工事完了期限/認定手数料無料期間の終了)から逆算します。

時期 やること
今週 上記の5項目
1か月以内 管理計画認定のルート(認定ルート/助言・指導ルート)を理事会で仮決め
2か月以内 10月27日の無料相談会に参加(申込は9月15日〜10月2日)
3か月以内 劣化診断・調査の実施。設計事務所の選定
6か月前まで 工法をここまでに決める(設計発注前でないと実質選べない)
6〜9か月 設計・仕様確定。相見積り3社の取得と比較
総会 工事の議決。「交付決定後に契約する」旨を議案に明記
着工直前 改修前の写真を撮影(撮影範囲と枚数を仕様書に明記済みであること)
工事期間 各補助制度の交付決定 → 契約 → 着工の順序を守る
完了後3か月以内 資産税課へ減額申告(管理者等による一括申請)

太字にした2つ——工法の決定時期と改修前の写真——が、後から取り返しのつかない項目です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 浜松市に、マンションの大規模修繕工事そのものへの補助金はありますか。

A. 工事費に直接現金が出る市独自の補助金は、2026年8月30日時点の公開情報では確認できません。使えるのは、固定資産税の減額(長寿命化促進税制)、旧耐震建物の耐震診断・耐震補強助成、吹付けアスベスト対策、ブロック塀等撤去改善です。

Q2. 管理計画認定の申請手数料はいくらですか。

A. 管理計画認定手続支援サービスを利用する場合、令和9年3月31日までは0円です(令和9年4月1日以降は4,000円)。利用しない場合は28,100円です。(出典:浜松市 マンション管理計画認定制度)

Q3. 固定資産税の減額は、区分所有者が全員申告しないといけませんか。

A. いいえ。管理組合の管理者等による一括申請が可能です。管理者等が必要書類を提出し要件に該当すると認められれば、各区分所有者からの申告書がなくても減額の適用を受けられます。

Q4. 築25年のマンションですが、耐震補強の助成は使えますか。

A. 使えません。建築物耐震補強助成事業の対象は昭和56年5月31日以前に建築された建築物です。築25年(1990年代後半〜2000年代の建築)は新耐震基準の建物です。

Q5. 補助金の申請は、工事契約の後でもできますか。

A. できません。浜松市の補助制度は、耐震診断・耐震補強・アスベスト・ブロック塀のいずれも「契約前の申請・事前協議」を要件としています。契約や着工の後では対象外になります。

Q6. 外壁塗装だけを先にやって、屋上防水は次回にしてもいいですか。

A. 大規模修繕としては可能ですが、長寿命化促進税制の対象からは外れる可能性があります。この税制は外壁塗装・床防水・屋根防水の3つが同一の工事請負契約の中で一体として行われることを要件としています。

Q7. ロープアクセス工法にすれば、住戸に立ち入られずに済みますか。

A. いいえ。バルコニー内部の作業(床防水、手すりの塗装、避難ハッチ周りなど)が必要な点は、工法にかかわらず同じです。ロープアクセスでも立ち入りがゼロになるわけではありません。ただし足場が架からないぶん、防犯上の不安や日照・視線の問題は生じません。

Q8. 相談会に行けない場合、どこに相談すればいいですか。

A. 平日に時間が取れない場合は、静岡県マンション管理士会への無料派遣制度の申込(ファクス 0544-27-6561)を検討してください。制度の一般的な質問であれば、浜松市住宅課(053-457-2457)が窓口です。

この記事のポイントまとめ

  • 浜松市は政令指定都市なので、認定・助言指導・税の減額がすべて市内で完結する
  • 管理計画認定の手数料は、支援サービス利用なら令和9年3月31日まで0円
  • 令和9年3月31日は、手数料無料期間と長寿命化促進税制の工事完了期限が重なる日
  • 長寿命化促進税制は管理組合の管理者等による一括申請が可能で、区分所有者の申告は不要
  • 対象工事は外壁塗装・床防水・屋根防水の3点セットが同一契約であること
  • 減額は固定資産税の3分の1・1年間・1戸100平方メートルまで。都市計画税は減額なし
  • 建築物耐震補強助成事業の対象用途表に「マンション」の行があり、上限は1,600万円
  • 基準額の単価表にも「マンション 50,200円/平方メートル」という専用行がある
  • 耐震診断の補助率は3分の2以内。延べ面積3,000平方メートルなら約419万円が目安
  • 対象は昭和56年5月31日以前の建築物のみ。建築確認済証の交付日で判断する
  • 吹付けアスベストの分析調査は全額補助(上限25万円/棟)。除去等は3分の2(上限300万円/敷地)
  • ただし外壁の仕上塗材はアスベスト補助の対象外という線引きがある
  • ブロック塀の事前現地調査の結果は翌々年度まで有効。今年度受けておく価値がある
  • 浜松市の補助はすべて「交付決定 → 契約 → 着工」の順序。契約後の申請は対象外
  • 総会議案書に「交付決定後に契約する」旨の一文を入れておく
  • 市の推進計画によれば、築40年超のマンションは現在8%、10年後37%、20年後70%
  • 25年以上の長期修繕計画に基づく積立金設定は現状51%(市の目標は令和13年度に75%)
  • 無料相談会は令和8年10月27日(火)、定員10組・先着順、申込は9月15日から
  • 仮設足場は工事費の15〜25%。架面積の平米単価とリース期間に分解させる
  • 遠州のからっ風は予備日と足場リース期間に効く。超過時の費用負担者を契約前に決める
  • 下地補修の仮定数量を超えた分の単価は、契約前に契約書へ明記させる
  • 工法は設計を発注する前でなければ実質的に選べない
  • 浜松市は市内だけで相見積り3社を揃えられる、この連載で最も条件の良い自治体

主なお問い合わせ先

用件 窓口 連絡先
マンション管理計画認定・助言指導・無料相談会 浜松市 都市整備部 住宅課 053-457-2457
固定資産税の減額申告(長寿命化促進税制) 浜松市 財務部 資産税課(元目分庁舎) 053-457-2155
耐震診断・耐震補強・アスベスト・ブロック塀 浜松市 都市整備部 建築行政課 053-457-2471
担当課が分からないとき 浜松市 市民コールセンター 053-457-2111(8:30〜17:15)
マンション管理士の無料派遣の申込 静岡県マンション管理士会 ファクス 0544-27-6561
県のマンション施策全般 静岡県 くらし・環境部 住まいづくり課 054-221-3084

浜松市役所の開庁時間は月曜〜金曜の8時30分〜17時15分(土日祝日・年末年始を除く)です。経験上、電話がつながりやすいのは午前10時前後か午後2時台です。

出典・参考資料

浜松市

国土交通省

その他

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執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法(無足場工法)/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事を行っています。通常の足場仮設による工法、ロープアクセス工法(無足場工法)、その両方を組み合わせるハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法をご提案できる、日本でも数少ない会社です。ロープアクセス工事としては日本で初めてとなるフランチャイズ展開も行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板工事など各分野の専門職が加盟しています。ロープアクセス工法のご紹介もあわせてご覧ください。

最終更新:2026年8月30日

免責事項:本記事は2026年8月30日時点で公開されている情報をもとに作成しています。補助制度・税制は年度や国の改正によって内容が変更されることがあり、予算の上限に達した時点で受付が終了する制度もあります。実際の申請にあたっては、必ず各窓口の最新情報をご確認ください。本記事の内容によって生じたいかなる結果についても、当社は責任を負いかねます。

函南町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

函南町の分譲マンションで大規模修繕を控えている管理組合が、町の補助金として最初に確認すべき制度はどれでしょうか。

答えを先に書きます。函南町「建築物耐震診断事業」です。 対象が「昭和56年5月31日以前に建築された非木造住宅(マンション含む)」と、町のページに括弧書きで名指しされています(出典:函南町 建築物耐震診断事業)。

私はこの連載で、静岡県内の市町を1つずつ調べてきました。島田市、牧之原市、菊川市、御前崎市、長泉町、清水町。その多くで「分譲マンションの共用部を直接補助する制度は確認できませんでした」と、正直に書かざるを得ませんでした。RC造(鉄筋コンクリート造)マンションの耐震診断についても、町のページで対象だと読み取れる自治体はほとんどありませんでした。

函南町は違いました。「マンション含む」と、書いてあるのです。

この記事では、函南町の管理組合が2026年度に使える制度を、町の公式ページの一次情報だけを根拠に整理します。使えないものは「使えない」とはっきり書きます。理事会の時間は、×だと分かっている制度を調べることに使うべきではないからです。

最終更新:2026年8月30日

結論:函南町の管理組合が今週やるべきことは3つだけ

長い記事になりますので、先に結論を置きます。

  1. 旧耐震(昭和56年5月31日以前着工)のマンションなら、都市計画課(055-979-8117)に「建築物耐震診断事業はうちのマンションで使えますか」と電話する
  2. 税務課資産税係(055-979-8108)に「マンション長寿命化促進税制の申告書の様式をください」と電話する
  3. 理事会で、着工前の写真を誰が撮るかを決める

3つとも、電話1本か会議での5分で終わります。そして3つとも、着工してからでは間に合いません。

やること 窓口 所要時間 期限の考え方
耐震診断補助の可否確認 都市計画課 055-979-8117 電話10分 契約・着手前に申請が必要
長寿命化促進税制の様式入手 税務課資産税係 055-979-8108 電話10分 工事完了後3か月以内に申告
着工前写真の担当決め 理事会 5分 足場が架かる前・洗浄前

函南町の住宅系補助金を「共用部の大規模修繕で使えるか」で仕分ける

函南町の都市計画課が所管する補助金は、補助金の一覧ページに9本並んでいます。管理組合の視点で1列にして判定すると、こうなります。

制度名 共用部の大規模修繕で使えるか 根拠
建築物耐震診断事業 ◯(旧耐震のRC造なら本命) 「非木造住宅(マンション含む)」と明記
雨水浸透施設・雨水貯留施設設置補助金 △(敷地1,000㎡未満なら可能性) 対象者に「共同住宅を含む」と明記
ブロック塀等撤去事業・建替え事業 △(敷地の塀が条件に合えば) 避難路等に面する高さ60cm以上の塀
木造住宅耐震補強助成事業 × 木造住宅が対象
木造住宅除却助成事業 × 木造住宅が対象
耐震シェルター・防災ベッド設置事業 × 木造住宅への設置が対象
がけ地近接危険住宅移転事業 × 除却・移転が対象
空き家バンク登録奨励金 × 空き家の登録が対象

9本のうち、管理組合が共用部の工事で検討する価値があるのは3本。少ないと感じるかもしれません。ただ、私はこう考えています。3本に絞れたということは、残りの6本に理事会の時間を使わなくて済むということです。

制度が少ない町だからこそ、順番が効く

補助金の数が多い自治体では、どれから調べるかで迷います。函南町では迷う必要がありません。旧耐震なら耐震診断、そうでなければ税制。この2本です。

建築物耐震診断事業——「マンション含む」と書いてある補助金

本題です。函南町の建築物耐震診断事業は、事業内容の1行目にこう書かれています。

昭和56年5月31日以前に建築された非木造住宅(マンション含む)の耐震診断を行う方に対し、補助金を交付します。

(出典:函南町 建築物耐震診断事業、更新日2026年4月1日)

補助基準額は延べ面積の区分ごとに単価が公表されている

しかも、金額の出し方まで公表されています。

構造・用途 延べ面積 補助基準額
木造以外の一戸建て住宅 面積区分なし 耐震診断経費と136,000円を比較して少ない額の3分の2以内の額
その他建築物 1,000㎡以内の部分 延べ面積に1㎡あたり3,670円を乗じて得た額
その他建築物 1,000㎡超〜2,000㎡以内の部分 延べ面積に1㎡あたり1,570円を乗じて得た額
その他建築物 2,000㎡を超える部分 延べ面積に1㎡あたり1,050円を乗じて得た額

分譲マンションは「その他建築物」に当たります。この単価で、延べ面積別に補助基準額を計算するとこうなります。

延べ面積 補助基準額の計算 補助基準額
1,000㎡ 1,000×3,670 3,670,000円
2,000㎡ 1,000×3,670+1,000×1,570 5,240,000円
3,000㎡ 上記+1,000×1,050 6,290,000円
5,000㎡ 上記+2,000×1,050 8,390,000円

延べ面積3,000㎡というと、おおよそ5階建て40戸前後のマンションです。その規模で補助基準額が629万円。桁を見間違えたのかと思って、私は3回読み直しました。

ただし「補助率」は表に書かれていません

ここは正直に書きます。木造以外の一戸建て住宅の欄には「3分の2以内の額」と補助率が明記されていますが、「その他建築物」の欄には基準額の計算式だけで、補助率の記載がありません。

つまり、この基準額がそのまま交付額になるのか、基準額に補助率を掛けるのかは、町のページだけでは断定できません。 私はここを推測で書きません。管理組合が確認すべき質問は、この1文です。

「昭和56年5月31日以前に着工した分譲マンションです。建築物耐震診断事業を使いたいのですが、その他建築物の補助基準額に対する補助率と、1棟あたりの上限額を教えてください」

窓口は函南町役場 建設経済部 都市計画課(055-979-8117)です。

契約前に申請しなければ対象外になります

もう1つ、外せない注意点があります。函南町のTOUKAI-0⁺総合支援事業のページには、こう明記されています。

補助制度を利用する場合は契約(着手)前に申請が必要となります。申請前に事業を進めた場合は、補助の対象になりません。
補助事業は年度毎の予算の範囲内で交付する事業であり、予算の状況によっては交付を受けられないことがあります。

管理組合の意思決定は、年1回の定時総会が基本です。「総会で診断業者を決めてから申請」という段取りだと、契約と申請の前後が逆になる危険があります。私が理事長さまにお伝えしているのは、総会議案に「補助金の交付申請を先に行い、交付決定後に契約する」という一文を入れておいてくださいということです。

診断が先、修繕が後。順番を間違えると足場を二度架けることになります

旧耐震のマンションで私がいちばん悔しい思いをするのは、外壁と防水を先にきれいにした2年後に耐震補強の話が出てくるケースです。

耐震補強は、外壁に鉄骨ブレースを入れたり、柱に炭素繊維を巻いたりします。仕上げた外壁を壊すことになります。そして足場をもう一度架けます。仮設足場は工事費の15〜25%を占めますから、二度架ければその分がまるごと余計にかかります。

順番 1回目 2回目 仮設費
正しい順番 耐震診断→(必要なら)補強と外装を同時 — 1回分
よくある失敗 外壁・防水 数年後に耐震補強 2回分

函南町は、その診断に補助を用意している町です。旧耐震のマンションであれば、外装の話より先に、診断の話を理事会の議題に載せてください。

昭和56年5月31日以前かどうかの確認方法

「うちは旧耐震かどうか分からない」という理事長さまは少なくありません。確認は3つの書類のどれかでできます。

  • 建築確認済証(確認通知書)の日付
  • 検査済証の日付
  • 管理会社が保管している竣工図の表題欄

いちばん確実なのは建築確認済証です。管理会社に「建築確認済証の写しをください」と依頼してください。これは無料で、たいてい1週間以内に出てきます。

雨水浸透施設・雨水貯留施設補助——「共同住宅を含む」のもう1本

函南町の補助金でもう1本、対象者に共同住宅が明記されている制度があります。雨水浸透施設・雨水貯留施設設置に対する補助金です。

町内に敷地面積が1,000平方メートル未満の居住の用に供する住宅(併用住宅及び共同住宅を含む)の所有者(これから建築しようとするものを含む)で、雨水浸透施設または雨水貯留施設を設置する方。

補助額は次のとおりです。

施設 型 補助金の額
雨水浸透施設 A型 工事に要する経費または6万円のいずれか少ない額
雨水浸透施設 B型 工事に要する経費または5万円のいずれか少ない額
雨水貯留施設 浄化槽転用型 工事に要する経費の2分の1以内または8万円のいずれか少ない額
雨水貯留施設 簡易貯留型 工事に要する経費の2分の1以内または5万円のいずれか少ない額

敷地面積1,000㎡未満という条件がハードルです

正直に申し上げます。分譲マンションの敷地は1,000㎡を超えることが多く、この条件で外れる組合のほうが多いと思います。

ただ、函南町には小規模なマンションもあります。敷地面積は登記簿謄本(全部事項証明書)の土地の表示欄に書いてあります。 管理会社に「敷地の登記簿の面積を教えてください」と聞けば5分で分かります。1,000㎡未満だった組合は、都市計画課に相談する価値があります。

屋上防水の改修と同じタイミングでしか検討できない工事です

この補助は「屋根に降った雨水」を浸透・貯留させる施設が対象です。マンションでいえば、屋上の雨水が流れ込む先の縦樋と、地上の排水設備をいじる話になります。

大規模修繕で屋上防水をやり直すときは、屋上から地上までの排水経路を全部点検する数少ない機会です。 このタイミングを逃すと、次は12〜15年後です。補助金の額そのものは5万円から8万円と大きくありませんが、「検討したうえで見送った」と議事録に残せることには意味があります。

なお、設置(購入)前の申請が必要で、完了届には「工事着工前、工事中、完了後」の写真が必要と要綱に定められています(出典:函南町雨水浸透施設・雨水貯留施設設置費補助金交付要綱)。ここでも写真です。

ブロック塀等撤去・建替え事業を、大規模修繕と同じ議案にまとめる

函南町のブロック塀等撤去事業・ブロック塀等建替え事業は、金額の水準が目を引きます。

事業 単価 補助率 1敷地あたり上限
撤去事業 延長1mにつき2万円 3分の2以内 26万6,000円
建替え事業 延長1mにつき5万8,380円 3分の2以内 59万9,000円

条件は2つです。

  • 避難路や通学路(私道を除く)に面した高さ60cm以上のブロック塀であること
  • 工事後にブロック塀の高さが避難路等から60cm以下となる工事であること

撤去より建替えのほうが上限が2倍以上手厚い

この町の設計は、はっきりしています。撤去して更地にするより、安全な塀に造り替えるほうを厚く支援する設計です。上限で26万6,000円と59万9,000円。倍以上の差があります。

マンションの敷地境界にブロック塀が残っている組合は、大規模修繕で外壁の色を変えるタイミングで塀も造り替えられます。外構の色を新しい外壁色と揃えられるのは、この機会だけです。

別の年に議案を立てると2年かかります

私が「同じ議案にまとめてください」とお伝えする最大の理由は、金額ではありません。

管理組合が正式に物事を決められるのは、原則として年1回の定時総会だけだからです。 大規模修繕を今年の総会で決め、ブロック塀を来年の総会で決めれば、それだけで2年が過ぎます。近隣へのあいさつも2回、警備員の手配も2回、養生も2回です。

函南町にマンション長寿命化促進税制の専用ページはありません。それでも使えます

ここからは税金の話です。

函南町の固定資産・都市計画税のページには15本のページが並んでいます。そのうち改修に伴う減額制度は4本です。

ページがある減額制度 対象
新築された認定長期優良住宅に係る減額 新築
耐震改修工事が行われた住宅に係る減額 耐震改修
バリアフリー改修が行われた住宅に係る減額 バリアフリー改修
省エネ(熱損失防止)改修工事が行われた住宅に係る減額 省エネ改修

マンション長寿命化促進税制の専用ページは、2026年8月30日時点で確認できませんでした。

ページが無いことと、制度が使えないことは別です

マンション長寿命化促進税制は、地方税法にもとづく制度です。市町村が「やる・やらない」を選べる制度ではありません。国土交通省がマンション税制のページで、証明書の様式まで公開しています。

私はこの連載で、前日に隣の清水町を扱いました。清水町にも専用ページはありませんでした。一方、その前日の長泉町には専用ページと必要書類一覧がありました。同じ静岡県東部の、車で20分と離れていない3つの町です。

この差は、町の規模と職員数の差であって、区分所有者の権利の差ではありません。

制度の概要(2026年8月30日時点)

項目 内容
対象 築後20年以上の分譲マンション(10戸以上)
工事 令和5年4月1日から令和9年3月31日までに長寿命化に資する大規模修繕工事が完了
過去要件 過去に1回以上、長寿命化工事を実施していること
減額 家屋の固定資産税額の3分の1(1戸あたり100㎡相当分まで)
期間 工事完了の翌年度分に限る
前提 管理計画認定を受けている、または助言・指導を受けて修繕積立金を引き上げていること

※制度の詳細・最新の取扱いは国土交通省および函南町税務課でご確認ください。

町のバリアフリー改修減額の様式が教えてくれる「工事中に撮る写真」

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい実務の話です。

函南町に長寿命化促進税制の専用ページはありません。けれど、バリアフリー改修減額のページには、必要書類が6点すべて列挙されています(出典:函南町 バリアフリー改修が行われた住宅に係る固定資産税の減額制度)。

  1. 減額申告書
  2. 改修工事の明細書(工事内容を確認することができる書類)
  3. 改修前、改修後の工事箇所の写真
  4. 改修費用を確認することができる書類(領収書等)
  5. 補助金や給付金を受けた場合はそれが確認できる書類
  6. 要件に該当する方が居住していることを証するもの

そして「改修工事が完了した日から3ヶ月以内に税務課資産税係へ提出」と書かれています。申告書の様式(PDF)もダウンロードできます。

減額制度の申告実務は、どれも形が似ています

長寿命化促進税制も、完了後3か月以内の申告、100㎡までの部分に3分の1という点でバリアフリー改修の減額と同じ形です。必要書類の考え方も似ています。

つまり、函南町の税務課資産税係は、改修に伴う減額の申告を日常的に処理している窓口です。 「ページが無いから扱えない」ということではありません。

3番の写真は、着工してからでは二度と撮れません

書類1・2・4・5は、工事が終わってからでも施工会社に頼めば出てきます。

3番の「改修前の写真」だけは違います。 足場が架かり、高圧洗浄が終わり、下地補修が始まってしまったら、改修前の状態はもうこの世に存在しません。

私が現場で20年やってきて、最後の最後で管理組合に頭を下げさせてしまうのは、たいていこれです。工事は完璧に終わったのに、減額の申告に必要な着工前の写真が撮られていない。

理事会で決めておく3行

議事録にこの3行を残してください。

  1. 着工前の外観・屋上・バルコニー・共用廊下の写真を、施工会社に「税制申告用」として明示的に撮影・保管させる
  2. 撮影範囲と枚数は工事請負契約の仕様書に明記する
  3. 大規模の修繕等証明書の発行を、設計監理を委託する建築士との契約に含める

3番目は落とし穴です。証明書は建築士等が発行します。工事が終わってから「証明書もお願いします」と言うと、別料金の見積が出てくることがあります。契約の段階で含めておけば、その交渉は不要です。

証明書の様式は国土交通省が公開しています(大規模の修繕等証明書 様式、記入例)。契約前に印刷して、建築士に見せてください。

減額措置は、重ねられるものと重ねられないものがあります

函南町のバリアフリー改修減額のページには、こういう注意書きがあります。

新築住宅に係る減額措置及び耐震改修に係る減額措置を受けている場合は対象となりませんが、省エネ改修を同時に実施した場合は、併せて減額措置の対象となります。

私はこれを読んで、この町のページは丁寧だと思いました。「併用できない組み合わせ」と「併用できる組み合わせ」の両方が、1行に書かれています。

管理組合と区分所有者で申告する年が重なる可能性

考えてみてください。大規模修繕が終わった翌年度、管理組合は共用部について長寿命化促進税制の申告をします。同じ年、ある区分所有者が専有部の内窓を入れて省エネ改修の減額を申告するかもしれません。別の区分所有者は手すりを付けてバリアフリー改修の減額を申告するかもしれません。

同じ家屋の、同じ年度の固定資産税に、複数の減額が関わってくる。ここがどう扱われるかは、私が判断してよい領域ではありません。税の判断は税務課の仕事です。

管理組合がやるべきなのは「周知」だけです

管理組合が税務判断をする必要はありません。むしろしてはいけません。工事完了のお知らせに、この1行を入れてください。

「共用部の大規模修繕にともなう固定資産税の減額申告を組合で行います。専有部でバリアフリー改修や省エネ改修をされた方、または今年度される予定の方は、申告の取扱いについて函南町税務課資産税係(055-979-8108)にご相談ください」

これで十分です。組合は情報を渡す役割だけを担い、判断は各区分所有者と町に委ねる。この線引きが、あとで揉めない管理組合のやり方です。

函南町は「町」なので、静岡県に管理計画認定を申請できます

マンション管理計画認定制度は、マンション管理適正化推進計画をつくった市・特別区が窓口になり、町村部は都道府県が窓口になる仕組みです(出典:国土交通省 マンション管理計画認定制度)。

函南町は田方郡函南町、つまり「町」です。ですから静岡県に申請できます。私が扱ってきた島田市・牧之原市・菊川市・御前崎市の4市では「県には申請できません」と書かざるを得なかった論点が、函南町では反転します。

問い合わせ先は静岡県くらし・環境部 住まいづくり課(054-221-3084)です。

認定より先に、助言・指導ルートの様式を見てください

長寿命化促進税制を使うには、2つのルートがあります。

ルート 内容 修繕積立金引上証明書
A:管理計画認定 県の認定を受ける 不要
B:助言・指導 助言・指導を受けて積立金を引き上げる 必要

そして、Bルートの様式は国土交通省のサイトで誰でもダウンロードできます。

いずれも令和8年4月1日付の通知(国住参マ第305号・第306号)にもとづく最新様式です。

理事会で「制度がよく分からない」という話になったとき、記入例のPDFを1枚印刷して回すのが、いちばん早いというのが私の実感です。何を書かされるのかが分かれば、あとは事務です。

なお、Bルートは修繕積立金の引き上げが前提になります。積立金の引き上げは総会の決議事項ですから、どちらのルートを選ぶかは、総会でどんな議案を立てるかに直結します。 ここは早めに決めてください。

相談ダイヤルもあります

制度そのものの質問は、一般社団法人日本マンション管理士会連合会のマンション管理計画認定制度 相談ダイヤル(03-5801-0858、月〜土 10:00〜17:00、祝日・年末年始を除く)で受け付けています。役場の開庁時間に電話できない理事長さまは、土曜日にこちらへ。

国のマンションストック長寿命化等モデル事業 令和8年度第3回

国土交通省のマンションストック長寿命化等モデル事業は、計画支援型・工事支援型で補助が出る制度です。令和8年度の第3回提案募集は、令和8年9月14日(月)から9月18日(金)です。

この記事の公開日から2週間しかありません。正直に申し上げます。今から書類を揃えて間に合う管理組合は、限られます。

それでも書く理由が3つあります。

  1. 年度内に複数回の募集がある制度なので、次の回に向けた準備ができる
  2. 公募要領の必要書類一覧が、そのまま良い準備リストになる
  3. 先導性が評価される制度なので、無足場工法の採用が提案の材料になりうる

今週やることは1つだけです。公募要領の必要書類の一覧ページだけ印刷してください。 15分で終わります。それが次の募集の準備リストになります。

静岡県のマンション管理士無料派遣とセミナー

静岡県は、分譲マンションの管理組合にマンション管理士を無料で派遣する事業を行っています。令和8年度は県内10件程度、1組合あたり2回という規模です。詳細と申込は静岡県マンション管理士会(FAX 0544-27-6561)、制度の窓口は静岡県住まいづくり課(054-221-3084)です。

2回の使い方を、函南町の組合向けに具体化するとこうなります。

回 相談テーマ
1回目 長期修繕計画と修繕積立金。標高差のある立地で冬季の工程がどう影響するかを含めて
2回目 相見積りの比較と業者選定。三島・沼津・熱海の業者をどう並べるか

申込書の相談内容欄には、次の3行を書いてください。

  1. 旧耐震のため、町の建築物耐震診断事業を使った診断と外装改修の順序を相談したい
  2. 町に共用部の直接補助がないため、長寿命化促進税制のルート選択を相談したい
  3. 区分所有者に町外・県外居住者が多く、総会の議決権行使書の回収に不安がある

3番目は、次の章の話です。

函南町の地形が、見積書の数字を動かします

函南町は、箱根西麓から丹那盆地、狩野川沿いの低地まで、標高差の大きい町です。丹那盆地は標高およそ230m。同じ町内でも、JR函南駅周辺の低地とはまるで気候が違います。

標高で工事適期が変わる町

塗料も防水材も、施工できる気温・湿度の条件があります。一般に、気温5℃以下または湿度85%以上では施工しないという条件が仕様書に書かれます。

低地では問題にならない冬の朝の気温が、箱根西麓や丹那では条件を割ります。同じ函南町のマンションでも、標高によって「12月着工」の意味が変わるということです。

見積書を受け取ったら、この1文を聞いてください。

「気温と湿度による施工中止の条件は仕様書のどこに書かれていますか。予備日は何日みていますか」

予備日の日数が明記されていない見積は、工期が延びたときに誰の責任かで揉めます。

方位別・立地別の劣化要因

部位・方位 函南町で起きやすいこと
南面 紫外線によるチョーキング(塗膜が白い粉になる現象)が先行
北面 山際・谷筋は日照が短くコケ・藻が出やすい。防藻・防カビ塗料の検討
高台の物件全般 冬季の凍結融解によるタイル浮き・シーリングの早期硬化
傾斜地の敷地 足場のベースを段組みにする必要があり仮設費が上がる
旧集落部 4t車が入らず2t車での分割搬入。道路使用許可と警備員

凍結融解というのは、コンクリートやタイルの隙間に入った水が凍って膨らみ、溶けて縮むのを繰り返すうちに、材料が割れたり剥がれたりする現象です。高台の物件で「築年数の割にタイルが浮いている」場合、これを疑います。

丹那断層のある町であること

函南町の丹那盆地には、国の天然記念物に指定されている丹那断層があります。昭和5年(1930年)の北伊豆地震で動いた断層で、地表のずれが今も保存されています。

私は不安を煽るつもりはありません。ただ、町が非木造住宅の耐震診断に「マンション含む」と書いて補助を用意しているのは、この土地の歴史と無関係ではないだろうと思っています。制度は、その土地の必要から生まれます。

リゾート型マンションという、函南町固有の論点

函南町には、JR函南駅・伊豆仁田駅周辺の中層マンションと、箱根西麓や畑毛温泉周辺の別荘的な区分所有マンションが併存しています。伊豆半島の玄関口という立地の特徴です。

この2つは、管理組合としての性格がまったく違います。

論点 駅周辺の居住型 高台のリゾート型
区分所有者の居住地 町内・近隣市 首都圏・県外が多い
総会出席率 比較的高い 低くなりがち
最大のボトルネック 合意形成の内容 議決権行使書・委任状の回収
在宅確認 平日夜・土日で可能 数か月連絡がつかない住戸が出る

工法を選ぶ前に、委任状の回収スケジュールを決めてください

リゾート型の組合で私が何度も見てきたのは、内容の議論は済んでいるのに、書面が集まらずに総会が成立しないという事態です。

工法選定より前に、「いつまでに、誰が、どうやって回収するか」を決めてください。 発送から締切まで最低3週間、督促を2回。これができていない組合は、良い提案があっても1年遅れます。

遠隔地オーナーにとって、工期の短さは実利です

もう1つ、リゾート型に固有の話をします。

大規模修繕では、バルコニーの防水や手すりの塗装、避難ハッチの点検で、専有部分に立ち入らせていただく日が必ず出ます。区分所有者が町外にお住まいだと、その日程調整が工程の律速になります。

工期が6か月と4か月では、遠隔地の所有者が「現地に来るかどうかを気にしなければならない期間」が2か月違います。これは金額に表れない、しかし所有者にとって実際の負担の差です。

ロープアクセス工法は足場を組まないため、工期が短くなる傾向があります。ロープアクセス工法の技術的な解説は、姉妹サイトロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。

ただし、バルコニー内部の作業が必要な点は工法にかかわらず同じです。 「ロープアクセスなら立ち入りゼロ」ではありません。ここは正直に申し上げます。

仮設足場は、工事費の15〜25%を占めます

大規模修繕の見積書で、金額が大きいのに中身が見えにくいのが仮設工事です。私の経験では、総工事費の15〜25%が目安になります。

総工事費 仮設足場の概算(15〜25%)
3,000万円 450万〜750万円
5,000万円 750万〜1,250万円
8,000万円 1,200万〜2,000万円

理事会で「仮設工事一式 750万円」という1行を見せられて、その場で判断できる方はほとんどいません。質問はこの1文で足ります。

「仮設工事の金額を、平米単価とリース期間に分解して出してください」

20万円の支出は判断できて、750万円の1行は判断できない。 理事の皆さまが不真面目なのではありません。判断材料が渡されていないだけです。

函南町向け、ハイブリッド工法の3パターン

私どもは、通常の足場仮設による工事と、無足場工法であるロープアクセスによる工事、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから提案しています。函南町の物件条件でよく採る配分は、次の3つです。

パターン 内容 効きやすい物件
① 傾斜面だけロープ 高低差があり足場のベースが段組みになる面をロープに置き換える 箱根西麓・高台の物件
② 低層足場/高層ロープ 下層は足場、上層はロープで風圧を受ける面積を減らす 冬季の季節風が強い立地
③ 駐車場を潰さない配分 足場を架ける面を分割し、代替駐車場の費用と期間を圧縮 1戸1台前提の敷地

③は地方の物件で効きます。都市部と違い、代替駐車場を近所で借りるのは簡単ではありません。駐車場が半年使えないことは、居住者にとって金額以上の負担です。

ロープアクセス工法は万能ではありません

はっきり書きます。私が「今回は足場でいきましょう」と申し上げる現場は、普通にあります。

  • 下地補修の数量が読めないほど劣化が進んでいる
  • タイルの浮きが広範囲で、打診調査の結果次第で工事量が大きく変わる
  • 外壁の形状が複雑で、ロープでは届かない部位が多い

こういう現場では足場のほうが結果的に安く、確実です。工法は目的ではなく手段です。ロープアクセス工法と足場工法の使い分けについてはロープアクセスドットコムでも解説していますが、最終的には現地を見ないと分かりません。

大規模修繕の全体像は大規模修繕工事のご紹介、ロープアクセスによる施工事例はロープアクセス工法のご紹介にまとめています。

モデルケース2本(函南町の物件条件を想定した試算)

実在の物件ではなく、函南町でよくある条件を想定した試算です。

ケース1:JR函南駅圏/築25年・6階建て・42戸

項目 全面足場 ハイブリッド
工事費 6,600万円 5,700万円
差額 — ▲900万円(1戸あたり約21万円)
工期 5.5か月 4か月
駐車場の制限 全周5.5か月 2面ずつ各1.5か月

ケース2:箱根西麓の高台/築32年・4階建て・24戸

項目 全面足場 ロープ主体
工事費 3,800万円 3,050万円
差額 — ▲750万円(1戸あたり約31万円)
工期 4.5か月 3か月
傾斜地の段組み足場 必要 不要

ケース2で1戸あたりの効果が大きいのは、戸数が小さいからです。24戸で3,800万円なら1戸あたり約158万円。同じ工事を150戸で割れば1戸あたり25万円前後です。戸数が小さい組合ほど、工法選定が1戸あたりの負担に効きます。

そして重要な前提が1つ。工法は、設計を発注する前でなければ実質的に選べません。 足場を前提にした設計図と数量表ができてしまうと、あとから工法だけ変えることはできないからです。

修繕積立金が足りないときの4つの打ち手

打ち手 内容 注意点
① 一時金の徴収 総会で議決し各戸から徴収 合意形成の難易度が高い
② 借入 住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資など 返済計画を長期修繕計画に反映
③ 工事範囲の見直し 優先順位をつけて絞る 段階施工は仮設費が回数分かかる
④ 工法の見直し ロープアクセス/ハイブリッドで仮設費を圧縮 設計発注前に決める必要あり

③には落とし穴が2つあります。段階施工にすると仮設費が施工回数分かかり、総額はかえって増えることがあります。 そしてもう1つ、長寿命化促進税制の対象工事要件(外壁塗装等・床防水・屋根防水)から外れる可能性があります。「屋上防水は次回にしましょう」という判断が、税制の適用を落とすことがあるということです。

議案書の書き方についても1つだけ。「一時金50万円」と「月額3,000円の値上げ」を、両方載せてください。 総額だけを見せると否決されやすく、月額だけを見せると総額の重さが伝わりません。両方あって初めて、区分所有者は自分の財布で判断できます。

見積書のチェックは、この5点です

# チェック項目 見るところ
1 数量の根拠 「一式」ではなく㎡・m・箇所で書かれているか
2 仕様の具体性 塗料・防水材のメーカー名と製品名、塗り回数
3 下地補修の超過単価 仮定数量を超えた分の㎡単価・m単価が契約前に書いてあるか
4 仮設の内訳 平米単価とリース期間
5 「別途」の中身 何が含まれず、いくらかかりうるのか

3番が最重要です。下地補修は、足場を架けて打診調査をするまで正確な数量が分かりません。だから見積では仮定数量で計上されます。

工事が始まって足場が架かった状態で、管理組合が対等に交渉することはできません。工事を止めるわけにいかないからです。 超過分の単価は、契約前に紙に書かせてください。

函南町の工事適期(標高別)

時期 低地(函南駅周辺) 高台(丹那・箱根西麓)
3月下旬〜5月上旬 ◎ ◯(朝の気温に注意)
5月中旬〜6月 △(梅雨) △(梅雨・霧)
7〜8月 △(熱中症で作業時間に制限) ◯(低地より涼しい)
9〜10月中旬 △(台風期) △(台風期)
10月下旬〜11月 ◎ ◎
12〜2月 ◯(閑散期で価格交渉の余地) △(凍結・低温で予備日が必要)

高台の物件では、冬季施工の予備日を3〜5日多めに見てください。そのうえで、業者にはこう聞いてください。

「12月着工なら金額はどうなりますか」

閑散期の価格には、交渉の余地があります。

今週できること(合計3時間以内)

  1. 管理会社に建築確認済証の写しを依頼する(メール5分)
  2. 旧耐震なら都市計画課055-979-8117に電話し、建築物耐震診断事業の補助率と上限を聞く(10分)
  3. 税務課資産税係055-979-8108に電話し、長寿命化促進税制の申告書様式を依頼する(10分)
  4. 管理会社に敷地の登記簿面積を確認する(メール5分・雨水施設補助の判定用)
  5. 国交省サイトから証明書の記入例3本をダウンロードして印刷する(15分)

1と3は、今日中でもできます。

18か月の逆算カレンダー

時期 やること
18か月前 耐震診断の補助申請(旧耐震の場合)/管理士派遣の申込
15か月前 劣化診断・建物調査
12か月前 設計・数量拾い(工法をここまでに決める)
9か月前 業者選定・相見積り(3社以上)
6か月前 定時総会で議決
5か月前 着工前写真の撮影・近隣あいさつ
0か月 着工
完了後3か月以内 固定資産税の減額申告

よくある質問(FAQ)

Q1. 函南町に、分譲マンションの共用部の大規模修繕そのものを補助する制度はありますか。
A. 2026年8月30日時点の公開情報では、工事費を直接補助する町独自の制度は確認できませんでした。ただし旧耐震のマンションについては、耐震診断に対する建築物耐震診断事業が「非木造住宅(マンション含む)」を対象としています。

Q2. 築25年の分譲マンションですが、耐震診断の補助は使えますか。
A. 対象は昭和56年5月31日以前に建築(着工)された建築物です。築25年(1990年代後半以降の建築)であれば新耐震基準ですので対象外です。この場合は長寿命化促進税制のほうを検討してください。

Q3. マンション長寿命化促進税制は、函南町でも使えますか。
A. 地方税法にもとづく全国共通の制度ですので、市町村が実施の可否を選ぶ制度ではありません。町のサイトに専用ページがないだけです。手続きは函南町税務課資産税係(055-979-8108)にご確認ください。

Q4. 管理計画認定は、函南町に申請するのですか。
A. いいえ。函南町は町村部にあたるため、静岡県が窓口です。静岡県住まいづくり課(054-221-3084)へお問い合わせください(出典:国土交通省 マンション管理計画認定制度)。

Q5. 補助金の申請は、工事契約の後でも間に合いますか。
A. 函南町は「補助制度を利用する場合は契約(着手)前に申請が必要」「申請前に事業を進めた場合は補助の対象になりません」と明記しています(出典:TOUKAI-0⁺のご案内)。順番を逆にしないでください。

Q6. ブロック塀の補助は、マンションの敷地でも使えますか。
A. 避難路や通学路(私道を除く)に面した高さ60cm以上のブロック塀であることなど、条件があります。敷地の塀が該当するかは都市計画課(055-979-8117)にご確認ください。

Q7. 着工前の写真は、何をどこまで撮ればよいですか。
A. 外壁の各面、屋上、バルコニー、共用廊下・階段、鉄部など、工事対象となる部位すべてです。「税制申告用の記録写真」として仕様書に明記し、施工会社に撮影・保管させてください。

Q8. ロープアクセス工法なら、必ず安くなりますか。
A. いいえ。下地補修の数量が読めない現場や、外壁形状が複雑な物件では、足場のほうが結果的に安く確実なことがあります。物件を見ないと判断できません。

この記事のポイントまとめ

  • 函南町の建築物耐震診断事業は対象に「非木造住宅(マンション含む)」と明記されている
  • 補助基準額は延べ面積区分ごとの単価(3,670円/1,570円/1,050円)で公表されている
  • ただし「その他建築物」の補助率は町ページに記載がなく、都市計画課への確認が必要
  • 補助制度は契約(着手)前の申請が必須。総会の議決順序に注意
  • 旧耐震は診断が先、外装が後。逆にすると足場を二度架けることになる
  • 雨水浸透・貯留施設補助は対象者に「共同住宅を含む」と明記。ただし敷地1,000㎡未満が条件
  • ブロック塀は撤去上限26万6,000円、建替え上限59万9,000円。建替えのほうが手厚い
  • 町サイトにマンション長寿命化促進税制の専用ページはないが、制度は全国共通で使える
  • バリアフリー改修減額の必要書類6点が、税制申告の準備リストとして使える
  • 改修前の写真だけは、着工してからでは二度と撮れない
  • 減額措置には併用できる組み合わせと、できない組み合わせがある
  • 函南町は「町」なので、管理計画認定は静岡県が窓口
  • 助言・指導ルートの証明書様式は国交省サイトから誰でも入手できる
  • 国のモデル事業 令和8年度第3回は9月14日〜18日
  • 標高差の大きい町なので、冬季の施工可否と予備日が立地で変わる
  • リゾート型の組合は、工法選定より先に委任状の回収スケジュールを決める
  • 戸数が小さい組合ほど、工法選定が1戸あたりの負担に効く
  • 工法は設計を発注する前でなければ実質的に選べない

主なお問い合わせ先

用件 窓口 電話番号
耐震診断・ブロック塀・雨水施設の補助 函南町 建設経済部 都市計画課 055-979-8117
固定資産税の減額申告 函南町 総務部 税務課 資産税係 055-979-8108
町役場代表 函南町役場(8:30〜17:15) 055-978-2250
管理計画認定・管理士派遣 静岡県 住まいづくり課 054-221-3084
管理士派遣の申込 静岡県マンション管理士会(FAX) 0544-27-6561
認定制度・税制の一般的な相談 日本マンション管理士会連合会 相談ダイヤル 03-5801-0858

各課の連絡先一覧は函南町 各課へのお問い合わせにまとまっています。

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出典・参考資料

おわりに

函南町は、補助金という形で工事費に現金が出る町ではありません。けれど、町の補助金のページには「マンション含む」「共同住宅を含む」という言葉が、たしかに書かれています。書いてあるということは、想定されているということです。

制度が少ない町の管理組合ほど、自分たちで動いた分がそのまま結果に出ます。逆に言えば、動かなければ何も起きません。大きな市には丁寧な解説ページと担当者がいますが、小さな町では、こちらから電話をかけないと情報にたどりつけないのが実際のところです。

ですからこの記事の結論は、電話2本と写真1組です。都市計画課に055-979-8117、税務課資産税係に055-979-8108。そして、足場が架かる前に写真を撮っておくこと。

総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。工法の相談でも、見積書の読み方でも、お問合せフォームから遠慮なくお声がけください。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、東京・関東一円および静岡県でロープアクセス工法・足場工法・ハイブリッド工法の3つから建物に最適な工法をご提案できる改修会社です。日本初となるロープアクセス工事のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板などの専門職が加盟しています。

最終更新:2026年8月30日

※本記事は2026年8月30日時点で公開されている情報にもとづいて作成しています。補助金・税制の内容や期限は変更される場合がありますので、実際のお手続きの前に各窓口の最新情報をご確認ください。本記事は税務・法務に関する助言を行うものではありません。

伊勢原市の賃貸マンション補助金|オーナー向け2026年版

伊勢原市で賃貸マンション、賃貸アパート、テナントビル、医療・介護施設をお持ちのオーナーさまへ。2026年度(令和8年度)に「収益物件のオーナーが自分名義で申請できる」補助制度を、市・県・国の一次情報だけをもとに整理しました。

先に結論をお伝えします。伊勢原市の市独自の住宅系補助金は、2026年度についてはオーナーの収益物件では使えません。「住民登録を有する個人」「戸建住宅」「集合住宅でないこと」といった要件が、制度の条文にはっきり書かれているからです。

では打つ手がないかというと、そうではありません。神奈川県と国の制度には、申請者として「賃貸共同住宅を所有する個人又は法人」「賃貸集合住宅のオーナー等」が名指しで書かれているものがあります。しかも、そのうち最大の制度は2026年9月7日(月曜日)8時30分から先着順で受付が始まり、9月30日(水曜日)で締め切られます。

この記事では、使えない制度と使える制度を最初に切り分け、補助額の計算方法、9月30日までの時間軸、そして受け取った後に必ず発生する税務の論点まで踏み込みます。最後に、伊勢原という市場で賃貸物件の外装をどう維持するか、工法選定でコストがどこまで動くかについても触れます。


この記事のポイントまとめ

  • 伊勢原市省エネ住宅導入促進補助金は、対象者が「本市に住民登録を有する個人」で、対象設備も戸建住宅のZEHまたは断熱窓改修に限られます。賃貸マンション・アパートのオーナーは対象外です。予算残額は200,000円(令和8年8月5日時点)まで減っています。
  • 伊勢原市既存住宅用太陽光発電設備等導入補助金は、補助対象住宅の要件に「集合住宅(共同住宅、長屋、寮等)でないこと」と明記されています。さらに令和8年6月9日(火曜日)15時25分をもって受付終了しました。
  • 住宅の省エネ改修に伴う固定資産税の減額措置も、伊勢原市の案内に「賃貸住宅を除く」と書かれています。オーナーの収益物件は対象になりません。
  • 神奈川県既存住宅省エネ改修事業費補助金は、Q&Aに「Q1. 賃貸住宅の賃借人が改修する場合、補助対象となるか。A1. 賃貸住宅については、補助対象外です。」と明記されています。
  • 【本命①】令和8年度 神奈川県住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金は、申請できる者に「県内の賃貸共同住宅を所有する個人又は法人」が明記された、数少ない制度です。太陽光は発電出力1kWあたり7万円、蓄電システムは1台あたり15万円。第2期は9月7日(月)8時30分開始、9月30日(水)締切、電子申請のみ・先着500件程度。
  • 令和8年8月28日、県は「施工業者等による代行申請はできません」という注意喚起を追加しました。代行申請と判明した場合は不受理、受理後に判明した場合も交付されません。オーナーご本人(法人の場合は法人)が申請する必要があります。
  • 【本命②】賃貸集合給湯省エネ2026事業(国)は、補助対象者が「賃貸集合住宅のオーナー等」。追い焚きなし5万円/台、追い焚きあり7万円/台が基本で、一定の排水工事を伴うと最大8万円/台・10万円/台まで加算されます。ただし申請手続はオーナーが直接できず、登録事業者が代行します。
  • 補助金は受給時に雑収入(益金)として課税対象。修繕費か資本的支出かの判定で、初年度に落とせる損金額が大きく変わります。
  • 伊勢原市の推計人口は100,455人(令和8年5月1日時点、前月比188人増)。判断の物差しは補助額の大小ではなく、NOI(純営業収益=賃料収入から運営費を引いた利益)がいくら動くかです。

1. 結論:伊勢原市は「市はゼロ、県と国で取りにいく」年

伊勢原市で収益物件を所有するオーナーが、2026年度に自分名義で申請を検討できる制度を、実務上の優先順位で並べると次のようになります。

動くべき制度(3つ)

  1. 令和8年度 神奈川県住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金(県)
    → 共同住宅枠で「県内の賃貸共同住宅を所有する個人又は法人」が申請者。太陽光7万円/kW、蓄電システム15万円/台。9月7日8時30分開始、9月30日締切、電子申請のみ先着500件程度。
  2. 賃貸集合給湯省エネ2026事業(国/資源エネルギー庁)
    → 補助対象者が「賃貸集合住宅のオーナー等」。従来型給湯器からエコジョーズ・エコフィールへの取替が対象。
  3. 住宅省エネ2026キャンペーン(先進的窓リノベ2026事業ほか)(国)
    → 賃貸住宅のオーナーも対象になり得る枠があります。工事内容と住戸タイプで単価が変わるため、事前の確認が必須です。

諦めるべき制度(4つ)

  1. 伊勢原市省エネ住宅導入促進補助金(住民登録を有する個人・戸建住宅)
  2. 伊勢原市既存住宅用太陽光発電設備等導入補助金(集合住宅でないこと・受付終了)
  3. 住宅の省エネ改修に伴う固定資産税の減額措置(賃貸住宅を除く)
  4. 神奈川県既存住宅省エネ改修事業費補助金(賃貸住宅は補助対象外)

この切り分けが、伊勢原市のオーナーにとって最初の分岐点です。リフォーム系のまとめサイトでよく見かける「伊勢原市で最大◯◯万円」といった見出しは、自宅所有者向けの制度を積み上げた数字であることがほとんどで、収益物件のオーナーがそのまま使えるものではありません。まずここを誤解しないことが、時間とコストの節約になります。


2. 【対象外①】伊勢原市省エネ住宅導入促進補助金 ── 「住民登録を有する個人」で止まる

伊勢原市が2026年度に実施している住宅系の柱が、この制度です。脱炭素社会の実現と地球温暖化防止を目的に、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)または断熱窓改修を導入する方に補助金を交付します。

2-1. 制度の骨格

項目 内容
対象設備 ZEH(戸建住宅)/断熱窓改修(戸建の既存住宅)
補助額 ZEH:100,000円/断熱窓改修:改修経費(税抜)から国・県の補助金額を控除した額または100,000円の低い方
予定件数 ZEH・断熱窓改修あわせて10件
対象者 ①本市に住民登録を有する個人 ②令和8年2月16日〜令和9年2月15日の間に完了 ③国又は神奈川県から交付決定を受けた方 の3要件すべてに該当する方
申請受付期間 令和9年3月15日(月曜日)まで(予算額に達した場合は締切)
予算残額 200,000円(令和8年8月5日時点)
窓口 経済環境部 環境対策課 環境衛生係 TEL 0463-94-4737

出典:伊勢原市「伊勢原市省エネ住宅導入促進補助金」(2026年8月6日更新)

2-2. なぜオーナーは使えないのか

要件を条文どおりに読むと、壁は二重です。

壁①:対象者が「本市に住民登録を有する個人」
法人所有の物件は入口で外れます。個人オーナーであっても、市外に住民登録がある方は対象外です。

壁②:対象設備が「戸建住宅」
ZEHは「年間の1次エネルギー消費量の収支がゼロになることを目指した戸建住宅」と定義され、断熱窓改修も「居室部分の窓を一定以上の断熱性能を持つ窓に改修した戸建の既存住宅」と書かれています。賃貸マンション・アパートの共用部や住戸は想定されていません。

さらにこの制度は「国や県の実施する補助事業の交付決定を受けた方を対象とした、上乗せ補助制度」です。前提となる国・県の交付決定がなければ、そもそも申請できません。二段構えの要件になっている点は押さえておいてください。

2-3. 唯一の例外パターン

一つだけ、検討の余地があるケースがあります。伊勢原市内に住民登録があるオーナーが、自ら居住する戸建住宅を所有していて、その住宅で断熱窓改修を行う場合です。これは「収益物件の補助金」ではありませんが、同じ工事業者に自宅と収益物件を同時発注すれば、現場移動コストが下がる分だけ収益物件側の見積も動くことがあります。

ただし予算残額は20万円。ZEHなら残り2件、断熱窓改修でも上限額で申請すれば2件で枠が埋まる水準です。動くなら早い判断が必要です。


3. 【対象外②】既存住宅用太陽光発電設備等導入補助金 ── 「集合住宅でないこと」と明記

伊勢原市には、太陽光発電設備の導入を支援する制度もあります。1kWあたり30,000円(上限150,000円)、蓄電池は太陽光と同一申請で一律50,000円。予定件数は20件でした。

しかしこの制度は、補助対象住宅の要件に次の一文があります。

集合住宅(共同住宅、長屋、寮等)でないこと。

賃貸マンション、賃貸アパート、寮のいずれも、この時点で対象外です。

加えて、予算額の上限に達したため、令和8年6月9日(火曜日)15時25分をもって申請の受付を終了しています。分単位で終了時刻が公表されているところに、この種の制度の消化スピードが表れています。

出典:伊勢原市「伊勢原市既存住宅用太陽光発電設備等導入補助金」(2026年6月9日更新)

ここで大事なのは、「市の太陽光補助が集合住宅を除外している」という事実そのものより、その裏返しです。後述する県の制度は、逆に共同住宅枠を持ち、賃貸オーナーを名指しで申請者に含めています。市で門前払いされた工事が、県では通ることがある。伊勢原市のオーナーにとって、これが2026年度の最重要ポイントです。


4. 【対象外③】固定資産税の省エネ改修減額 ── 条文に「賃貸住宅を除く」

補助金ではありませんが、オーナーの誤解が最も多いのがここです。

伊勢原市の「住宅の省エネ改修工事に伴う固定資産税(家屋)の減額措置」は、既存住宅で省エネ改修工事を行った場合、翌年度分に限り対象家屋の固定資産税の3分の1が減額される制度です(長期優良住宅に該当することとなった場合は3分の2)。

窓の改修工事が必須で、工事費は補助金等を除いた費用が60万円超であること(太陽光発電装置・高効率空調機・高効率給湯器・太陽熱利用システムの設置工事費を含む場合は、断熱改修に係る工事費が50万円超であること)、減額対象は床面積120平方メートルまで、といった条件が付きます。

そして、住宅の要件にこう書かれています。

平成26年4月1日以前に建築された住宅であること。(賃貸住宅を除く、併用住宅の場合は居住部分の床面積が全体の2分の1以上であること。)

出典:伊勢原市「住宅の省エネ改修工事に伴う固定資産税(家屋)の減額措置」(2026年4月1日更新)

「窓を替えれば固定資産税が下がる」は、オーナーの収益物件には当てはまりません。税負担の軽減を工事の投資回収シナリオに織り込んでいた場合、前提が崩れます。ここは早めに修正しておくべき点です。

なお、耐震改修に伴う固定資産税の減額措置は別制度として存在します。要件が異なりますので、築年数の古い物件をお持ちの方は、伊勢原市「住宅耐震改修に伴う固定資産税の減額措置」を個別にご確認ください。


5. 【対象外④】神奈川県既存住宅省エネ改修事業費補助金 ── Q&Aで明確に否定

県レベルでも、窓の断熱改修に補助率3分の1・上限15万円を出す制度があります。令和8年度の申請受付は5月11日に始まり、6月8日で一度締め切られましたが、9月7日(月曜日)から電子申請のみ・先着順(25件程度)で受付を再開します。申請期限は9月30日(水曜日)です。

魅力的に見えますが、対象事業の要件にこうあります。

改修工事を行う既存住宅は、次の全てに該当する必要があります。
1 神奈川県内にあること。
2 申請者の方が常時居住し、所有または区分所有していること。
3 耐震性能を確保した住宅であること。(具体的には、昭和56年6月1日以降に建築確認を得て着工したもの又は現行の耐震基準に適合させる改修工事が施工されているもの)

さらにQ&Aで念を押されています。

Q1.賃貸住宅の賃借人が改修する場合、補助対象となるか。
A1.賃貸住宅については、補助対象外です。

出典:神奈川県「令和8年度神奈川県既存住宅省エネ改修事業費補助金」(2026年8月28日更新)

「申請者が常時居住」という要件は、賃貸経営とは構造的に両立しません。オーナーが自ら住んでいない物件は、この制度では通りません。

なお、この制度にも令和8年8月28日付で「施工業者等による代行申請はできません」という同趣旨の注意喚起が追加されています。県の補助金全般で、申請主体の厳格化が進んでいるとみるべきでしょう。


6. 【本命①】神奈川県の太陽光・蓄電池補助 ── 「賃貸共同住宅を所有する個人又は法人」が申請者

ここからが本題です。

6-1. 申請者に賃貸オーナーが明記されている

令和8年度 神奈川県住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金は、申請できる者を次のように定めています。

【戸建住宅】補助対象住宅を所有又は区分所有する個人
【共同住宅】県内の分譲共同住宅の管理組合、県内の賃貸共同住宅を所有する個人又は法人

「賃貸共同住宅を所有する個人又は法人」。この一文があるかどうかで、オーナーが自分名義で動けるかが決まります。伊勢原市の制度にはこの一文がなく、県の制度にはあります。

補助対象となる住宅は「戸建住宅(賃貸住宅を除く。)又は共同住宅」で、県内にあること・耐震性能を確保した住宅であることが要件です。戸建賃貸は対象外、共同住宅であれば賃貸でも対象、という整理になっている点にご注意ください。事務所・店舗等との併用住宅も含まれます。

6-2. 補助額は機械的に決まる

設置機器 補助対象経費 補助額
太陽光発電設備 設備費・設置工事費 発電出力に1kWあたり7万円を乗じた額
蓄電システム等 設備費・設置工事費 導入する蓄電システム台数に1台あたり15万円を乗じた額

発電出力は、太陽電池モジュールの公称最大出力の合計値とパワーコンディショナーの定格出力合計値のいずれか低い方です。パワコンが小さければ、パネルをいくら載せても補助額は伸びません。設計段階で気づかないと、想定より補助額が下がります。

蓄電システムは設置が必須です。太陽光だけの申請はできません。また、15万円はパッケージ型番ごとの台数にかかるもので、蓄電池ユニットの数ではない点も要注意です。

試算例:出力20kWの太陽光と蓄電システム2台を賃貸マンションに導入した場合
20kW × 7万円 = 140万円、蓄電システム 2台 × 15万円 = 30万円、合計170万円(補助対象経費が上限)

6-3. 第2期のスケジュールは「9月7日8時30分・先着500件程度・9月30日締切」

項目 内容
第1期 受付終了
第2期 受付開始 令和8年9月7日(月曜日)午前8時30分
申請期限 令和8年9月30日(水曜日)
申請方法 電子申請システムのみ(郵送・持込不可)
受付方法 先着順(500件程度)
事業完了期限 令和9年3月31日(水曜日)
審査期間 交付決定まで2〜3か月程度

出典:神奈川県「令和8年度神奈川県住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金」(2026年8月28日更新)

第1期は令和8年5月11日に受付を開始し、5月12日で締切になりました。実質2日です。第2期も先着順ですから、電子申請システム上で受付が「完了」と表示されても、500件程度を超えた後の申請は不受理になる可能性があります。

6-4. 令和8年8月28日追加の注意喚起 ── 代行申請は不受理

県は本日(2026年8月28日)、ページ冒頭に注意喚起を追加しました。

本補助金は、申請者御本人が申請手続きを行う必要があります。施工業者等による代行申請はできません。代行申請であることが分かった場合は、不受理となります。また、申請受理後に代行申請が判明した場合は補助金の交付(決定)はできません。

背景には行政書士法の規定があります。報酬を得て官公署提出書類を作成できるのは行政書士等に限られる、という趣旨が併記されています。

オーナー実務への影響は小さくありません。これまで「工事業者に任せておけば申請までやってくれる」という感覚で動いていた方は、9月7日に向けて社内の体制を変える必要があります。法人所有物件であれば、法人アカウントで誰が電子申請を行うのか、必要書類(登記事項証明書、役員等全員の氏名一覧表など)を誰が集めるのかを、今週中に決めておくべきです。

6-5. 賃貸共同住宅で申請する場合の必要書類

共同住宅枠で、賃貸オーナーが特に注意すべき書類は次の3点です。

  1. 補助事業者の登記事項証明書の写し(法人の場合は現在事項または履歴事項証明書、発行日から3か月以内)
  2. 建物の登記関係書類又はこれに代わるもの(登記事項証明書または検査済証の写し。共同住宅を新築する場合は建築確認済証の写し)
  3. 役員等全員の氏名一覧表(法人の場合、県指定の今年度様式)

登記事項証明書は、いずれも発行日から3か月以内のものが求められます。法務局での取得に数日を要しますので、9月7日の受付開始に間に合わせるなら、書類の手配は8月中に始めるのが現実的です。なお戸建住宅枠では「登記情報提供サービス等でダウンロードしたものは不可」と明記されていますので、共同住宅枠でも正式な証明書を用意しておくほうが安全です。

また、昭和56年6月1日より前に建築確認を得て着工した共同住宅の場合は、耐震基準適合証明書等の提出が必要です。築45年前後の物件をお持ちの方は、この書類の有無が申請可否を左右します。


7. 【本命②】賃貸集合給湯省エネ2026事業 ── 補助対象者が「オーナー等」

国の制度で、賃貸オーナーが名指しで対象になっている数少ない事業です。正式名称は「既存賃貸集合住宅用小型省エネルギー型給湯器導入促進事業費補助金(賃貸集合給湯省エネ2026事業)」。令和7年度補正予算で35億円が計上され、所管は資源エネルギー庁です。

7-1. 制度の骨格

項目 内容
補助対象者 賃貸集合住宅のオーナー等
対象事業 既存賃貸集合住宅の従来型給湯器を、小型の省エネ型給湯器(エコジョーズ/エコフィール)に交換する事業(リースの利用を含む)
補助額 追い焚きなし5万円/台、追い焚きあり7万円/台
加算 一定の排水工事を行うと最大8万円/台・10万円/台まで
申請者 原則、オーナーは直接申請できず、登録された賃貸集合給湯省エネ事業者(施工業者またはリース事業者)が手続きを行う。ただし国内に所有または管理する既存賃貸集合住宅の住戸数が200戸以上である事業者(工事発注者)は、事務局へ申請し認められれば補助事業者として自ら手続きが可能

出典:資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業」/賃貸集合給湯省エネ2026事業 公式サイト

7-2. 「県は本人申請、国は事業者申請」という逆転に注意

ここが実務上の落とし穴です。

  • 神奈川県の太陽光・蓄電池補助:オーナー本人が申請。代行は不受理。
  • 賃貸集合給湯省エネ2026事業:原則、オーナーは直接申請できない。登録事業者が申請(200戸以上を所有・管理する事業者は例外あり)。

同じ年度に両方を使おうとすると、申請の主体が制度ごとに逆になります。「業者に任せる/任せない」を制度をまたいで一律に決めると、どちらかで失敗します。制度ごとに主体を確認してください。

7-3. 数字で見たときのインパクト

20戸の賃貸マンションで、追い焚きありの給湯器20台を一斉に更新した場合、7万円 × 20台 = 140万円。排水工事を伴い加算が付けば最大200万円です。

給湯器は入居者からのクレームが最も出やすい設備の一つで、故障のたびに個別対応するとコストも手間も膨らみます。築20年を超えて従来型給湯器が残っている物件では、「壊れてから替える」より「補助が出るうちにまとめて替える」ほうが、結果的にNOIを守れるケースが多いというのが現場感覚です。


8. 【併用検討】住宅省エネ2026キャンペーンの4事業

国は2026年度、4つの事業を「住宅省エネ2026キャンペーン」として束ねています。

事業名 概要 賃貸オーナーとの関係
先進的窓リノベ2026事業 窓の断熱改修。補助上限は公式サイトで要確認(2026年は前年から見直しが入っています) 賃貸住宅のオーナーも補助対象になり得る
みらいエコ住宅2026事業 躯体(床・壁・天井)の断熱改修を含む幅広いリフォーム 工事内容により検討可能
給湯省エネ2026事業 エコキュート・ハイブリッド給湯機・エネファーム 対象機器が異なる
賃貸集合給湯省エネ2026事業 エコジョーズ・エコフィールへの取替 賃貸オーナー専用

出典:住宅省エネ2026キャンペーン【公式】

先進的窓リノベ2026事業では、低層集合住宅の場合、ガラス交換と内窓設置は「中高層集合住宅」と同じ補助単価、外窓交換(カバー工法、はつり工法)は「戸建て住宅」と同じ補助単価が適用されるという整理になっています。同じ工事でも、建物の階数と工法で単価が変わるということです。見積を取る前に、対象製品と単価区分を施工業者と確認してください。

なお、県の既存住宅省エネ改修事業費補助金のQ&Aには「Q17. 国の補助金と併用できるか。→ A17. できます。」とあります。県の太陽光・蓄電池補助のQ&Aにも「国や市町村の補助金と併用できますか。→ 可能です」とあります。制度の縦の重ね合わせは、原則として否定されていません。ただし個別の制度で併用を認めていない場合があるため、必ず各制度の要綱で確認が必要です。


9. 伊勢原市オーナー向け・制度早見表(2026年8月28日時点)

制度 主体 賃貸物件で使えるか 補助額 期限
神奈川県 住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金 県 ○(賃貸共同住宅を所有する個人・法人) 太陽光7万円/kW、蓄電システム15万円/台 9/7 8:30〜9/30(先着500件程度)
賃貸集合給湯省エネ2026事業 国 ○(オーナー等) 5万〜10万円/台 予算上限まで
先進的窓リノベ2026事業 国 △(工事・住戸タイプによる) 公式サイトで要確認 予算上限まで
伊勢原市 省エネ住宅導入促進補助金 市 ×(住民登録を有する個人・戸建) ZEH・断熱窓改修 各10万円 R9/3/15(残額20万円)
伊勢原市 既存住宅用太陽光発電設備等導入補助金 市 ×(集合住宅でないこと) 3万円/kW(上限15万円) R8/6/9 受付終了
神奈川県 既存住宅省エネ改修事業費補助金 県 ×(賃貸住宅は補助対象外) 1/3・上限15万円 9/7〜9/30(先着25件程度)
住宅の省エネ改修に伴う固定資産税減額 市 ×(賃貸住宅を除く) 翌年度分1/3減額 工事完了後3か月以内に申告

※金額・期限は各制度の公式ページ記載の2026年8月28日時点の情報です。予算消化により前倒しで終了する場合があります。


10. 補助金は「もらって終わり」ではない:オーナーが必ず押さえる税務3点

ここは管理組合向けの記事ではほとんど触れられない、オーナー特有の論点です。

10-1. 補助金は雑収入(益金)として課税対象になる

国庫補助金等を受け取った場合、原則としてその事業年度の益金(個人の場合は不動産所得の総収入金額)に算入されます。仕訳としては雑収入です。

「170万円の補助が出た」という話は、そのまま170万円が手元に残る話ではありません。法人税・所得税・住民税・事業税を差し引いた後の金額が、実際のキャッシュフローへの寄与です。補助率だけを見て投資判断をすると、税引後で計算が合わなくなります。

10-2. 修繕費か資本的支出かで、初年度の損金額が大きく変わる

工事費の扱いには2つの道があります。

  • 修繕費:原状回復・維持管理に該当する支出。その年に全額を損金算入できる
  • 資本的支出:資産価値を高める、または使用可能期間を延長する支出。減価償却を通じて複数年にわたって費用化する

太陽光発電設備の新設は、通常は資本的支出(設備の取得)です。一方、給湯器の同等品への取替は修繕費として処理できる可能性があります。同じ「省エネ工事」でも、初年度に落とせる金額はまったく違います。

判定は個別事情に強く依存します。工事の発注前に、必ず顧問税理士に工事内容と見積の内訳を見せて確認してください。見積書の項目の書き方一つで判定が変わることもあります。

10-3. 圧縮記帳という選択肢

国庫補助金等で固定資産を取得した場合、一定の要件のもとで圧縮記帳が認められています。補助金相当額を固定資産の取得価額から減額し、その年度の課税を繰り延べる方法です。

課税が消えるわけではなく、減価償却費が減る分だけ将来の課税所得が増えます。「今期に利益が出すぎている」「今期は赤字で税額控除が使えない」といった状況によって、有利不利が逆転します。これも顧問税理士との相談事項です。


11. 伊勢原市という市場で、賃貸物件はどう戦うか

11-1. 数字で見る伊勢原市

伊勢原市の推計人口は100,455人(令和8年5月1日時点)で、前月比188人増。神奈川県内では中規模の市ですが、人口が微増している点は、県内の同規模市の中では特筆すべき状況です。

出典:伊勢原市「人口と世帯(推計人口・毎月1日)」

11-2. 伊勢原の立地特性 ── 「医療」と「交通」の2軸

伊勢原市の賃貸需要を支える構造は、他の県央エリアの市とは少し違います。

軸①:東海大学医学部付属病院
市内下糟屋にある大学病院で、医療従事者、研修医、医学部生、患者家族という通年で発生する賃貸需要を生んでいます。単身向け・DK帯の需要が読みやすく、しかも景気変動に対する感応度が低い。賃貸経営の観点では、この安定性は評価に値します。

一方で、この層は設備の実用性に対する要求水準が高いという特徴もあります。給湯の安定性、断熱、遮音、共用部の清潔さ。夜勤明けに休む生活パターンでは、断熱性能と遮音性能が直接的な満足度になります。先進的窓リノベや給湯器更新が、この市場では効きやすい理由です。

軸②:小田急線伊勢原駅と新東名
新宿方面へのアクセスと、新東名高速道路の伊勢原大山IC・伊勢原ジャンクションによる自動車交通の結節。大山を擁する観光需要もあり、通勤・通学だけに依存しない需要構造を持っています。

11-3. 判断軸はNOI ── 補助額の大小ではない

ここが、この記事で最もお伝えしたい点です。

補助金は、投資判断の主役ではありません。主役はNOI(純営業収益)がいくら動くかです。

たとえば20戸のマンションで、平均賃料7万円、現在の入居率が85%(17戸稼働)だとします。年間賃料収入は1,428万円。これが工事によって入居率90%(18戸稼働)に改善すれば、年間1,512万円。差は84万円/年です。

補助金170万円は一度きりですが、入居率5ポイントの改善は毎年84万円を生みます。2年で補助金額を超え、以降は積み上がっていきます。さらに、収益還元法で物件価値を評価する場合、NOIの改善はキャップレートを通じて物件価格そのものを押し上げます。仮にキャップレート6%とすれば、NOI84万円の改善は理論上1,400万円の価値増に相当します。

補助金は「工事に踏み切る理由」にはなりますが、「工事をやる理由」そのものではありません。この順序を間違えると、補助金が取れなかったときに必要な工事まで止まってしまいます。


12. 伊勢原の物件に、足場は本当に必要か ── 工法選定でコストが動く

補助金の話をここまでしてきましたが、実際のところ、大規模修繕の総額に対して補助金が占める割合は限定的です。数百万円単位のインパクトを持つのは、多くの場合、工法の選定です。

私はこの業界に20年近くおりますが、オーナーさまから最初にいただくご相談は、たいてい「補助金は使えますか」から始まります。しかし現地を見せていただいて見積を組み直すと、補助金より工法選定のほうが金額の振れ幅が大きい、というケースが少なくありません。補助金で数十万円を取りに行くのと同じ熱量で、仮設計画を見直したほうが効くことがあるというのが、私の率直な実感です。

12-1. 仮設足場が総工事費に占める重さ

外壁の改修工事では、仮設足場の架設・解体費が総工事費のなかで無視できない比率を占めます。しかも足場は、それ自体が建物を良くする工事ではありません。職人が作業できる場所をつくるためだけの費用です。

加えて、足場には副次的なコストがあります。

  • 入居者の生活影響:バルコニーが使えない、窓が開けにくい、洗濯物が干せない期間が発生する
  • 防犯上の懸念:足場は侵入経路にもなり得るため、養生ネットや防犯対策が別途必要になる
  • 工期の長期化:架設と解体に日数を要し、その分だけ入居者のストレス期間が延びる

賃貸物件の場合、これらは退去リスクとして跳ね返ります。工事期間中に数戸が退去すれば、原状回復費と募集コストが上乗せされ、削減したはずのコストが消えます。

12-2. ロープアクセス工法(無足場工法)という選択肢

産業用ロープを使って外壁作業を行う工法です。足場を組まないため、架設・解体の費用と日数が発生しません。部分補修、シーリング打ち替え、外壁調査、塗装など、適用できる工事は年々広がっています。

賃貸物件にとって特に大きいのは、バルコニーが塞がらないという点です。入居者の生活が止まらないため、工事を理由とした退去の発生確率が下がります。

ロープアクセス工法の技術情報や安全基準については、姉妹サイト ロープアクセスドットコム に詳しくまとめています。

12-3. ハイブリッド工法という現実解

もっとも、ロープアクセスがすべての建物・すべての部位に最適というわけではありません。低層部や広い面積の全面塗装は足場のほうが効率的な場合もあります。

そこで実務上有効なのが、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法です。足場が有利な面には足場を架け、高所や狭小部、足場の架設が難しい部位はロープアクセスで対応する。総額と工期の両方で最適解を探す考え方です。

株式会社明誠は、通常の足場仮設工法、ロープアクセス工法(無足場工法)、ハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法をご提案できる数少ない会社です。詳しくはロープアクセス工法のご紹介、および大規模修繕工事のご案内をご覧ください。

12-4. 私が伊勢原の現場で感じていること

私が最近気になっているのは、「補助金の締切に工事の判断を引っ張られる」オーナーさまが増えていることです。

先着順の制度が増え、締切が9月末に集中すると、どうしても「まず申請、工事内容は後で詰める」という順番になりがちです。ところが補助金は交付決定前に着工できませんから、決定が11月にずれ込めば、年度内完了のために真冬の工事になります。塗装も防水も、低温と結露は施工品質に直結する条件です。急いだ結果として、10年後に効いてくる差が生まれる。これは現場で何度も見てきました。

もう一つ、私がオーナーさまにいつも申し上げているのは、「補助対象工事だけを切り出して発注しないでください」ということです。太陽光だけ、給湯器だけを別業者に出すと、屋上の防水層に穴を開けた責任の所在が曖昧になったり、後から防水改修をしようとしてパネルが邪魔になったりします。補助金で50万円を得て、5年後に150万円を失う。この構図は、決して珍しいものではありません。

工事全体の設計と順序を先に描き、そのうえで「この部分は補助が取れる」と当てはめていく。順番が逆になっていないか、一度立ち止まって確認していただければと思います。明誠がどういう考え方でコストを組み立てているかは、適正価格への考え方にまとめています。


13. 伊勢原市の収益物件オーナーが、9月30日までにやるべきこと

時間軸で整理します。

【今週中(8月末まで)】

  1. 物件の登記事項証明書を法務局で取得する(ダウンロード版は不可)
  2. 法人所有の場合、現在事項または履歴事項証明書を取得する(発行日から3か月以内)
  3. 昭和56年6月1日より前に建築確認を得た物件は、耐震基準適合証明書の有無を確認する
  4. 神奈川県の交付要綱・実施要領・手引きをダウンロードして通読する

【9月第1週(9月1日〜6日)】

  1. 太陽光・蓄電池の見積を取得し、パワーコンディショナーの定格出力を確認する(補助額はここで決まる)
  2. 役員等全員の氏名一覧表を県指定の今年度様式で作成する
  3. 電子申請システムのアカウントを準備し、申請フォームプレビューで入力項目を事前確認する

【9月7日(月)8時30分】

  1. 電子申請システムで交付申請を行う。先着500件程度。オーナー本人(法人)が申請すること

【9月中】

  1. 給湯器更新については、賃貸集合給湯省エネ2026事業の登録事業者に相談する
  2. 顧問税理士に、工事内容と補助金額を伝えて修繕費/資本的支出の見通しを確認する

【交付決定後】

  1. 交付決定通知を受けてから着工する(決定前の着手は補助対象外。審査に2〜3か月かかります)
  2. 令和9年3月31日までに工事完了・支払完了。実績報告は事業の完了から2か月以内、または令和9年4月30日(金曜日)のいずれか早い期日まで(必着)

よくある質問(FAQ)

Q1. 伊勢原市には、賃貸マンションのオーナーが使える市独自の補助金はまったくないのですか。

A. 2026年度の住宅系の主要3制度(省エネ住宅導入促進補助金、既存住宅用太陽光発電設備等導入補助金、固定資産税の省エネ改修減額)については、いずれも要件上、賃貸物件のオーナーは対象外です。ただし市の制度は年度ごとに見直されますし、住宅系以外(産業・防災・福祉分野)に該当する制度がないとは言い切れません。個別の物件用途によっては相談の余地がありますので、市の窓口へ直接ご確認ください。

Q2. 法人名義で所有していますが、県の太陽光・蓄電池補助は使えますか。

A. はい。共同住宅枠の申請者に「県内の賃貸共同住宅を所有する個人又は法人」と明記されています。法人の場合は現在事項または履歴事項証明書(発行日から3か月以内)と、県指定様式の役員等全員の氏名一覧表が必要です。

Q3. 施工業者に申請を任せることはできますか。

A. 制度によって逆になります。県の太陽光・蓄電池補助は、2026年8月28日の注意喚起で代行申請は不受理と明示されました。オーナーご本人による申請が必要です。一方、賃貸集合給湯省エネ2026事業は逆に、原則としてオーナーが直接申請できず、登録された事業者が手続きを行います(国内に所有・管理する既存賃貸集合住宅が200戸以上の事業者は、事務局の承認を得て自ら申請できる例外があります)。

Q4. 太陽光だけ導入したいのですが、県の補助は使えますか。

A. 使えません。県の制度は「太陽光発電設備と併せて蓄電システム等を導入する事業」が対象で、蓄電システムの設置が必須です。太陽光単独では対象になりません。

Q5. 9月7日に申請すれば、確実に交付されますか。

A. いいえ。第2期は先着順(500件程度)で、電子申請システム上で受付が「完了」と表示されても、受付可能件数を超過していた場合は不受理になる可能性があります。第1期は5月11日開始・5月12日締切という実績でした。8時30分の開始時点で申請できる準備が必要です。

Q6. 補助金の入金は工事前ですか、工事後ですか。

A. 工事後です。県の制度では、交付決定通知は補助金の入金を知らせるものではなく、補助金の交付は事業完了後に提出する実績報告書の審査を経てから行われます。工事費は一度全額を自己資金または借入で立て替える必要があります。キャッシュフロー計画にこの立替期間を織り込んでおいてください。

Q7. 交付決定前に着工してしまったらどうなりますか。

A. 補助金は交付されません。県の制度は「必ず交付決定を受けた後に事業に着手してください。交付決定の前に事業に着手した場合は補助金を交付できません」と明記しています。審査に2〜3か月かかることがあるため、着工予定日から逆算した申請が必要です。年度内(令和9年3月31日)の完了も必須ですので、申請が遅れるほど工期の選択肢が狭まります。

Q8. 大規模修繕と補助対象工事は、同じタイミングでやったほうがいいですか。

A. 一概には言えません。補助対象工事は交付決定を待つ必要があり、大規模修繕の工期をそれに合わせられるかが判断の分かれ目です。ただし、足場を使う工事を一度にまとめられれば仮設費を圧縮できるため、日程が合うなら同時施工のメリットは大きいといえます。太陽光パネルの設置と屋上防水は特に相性がよく、パネル設置後に防水改修を行うと施工が難しくなるため、順序の設計が重要です。

Q9. 築45年の賃貸マンションですが、補助金の対象になりますか。

A. 県の太陽光・蓄電池補助は、耐震性能を確保した住宅であることが要件です。昭和56年6月1日より前に建築確認を得て着工した共同住宅の場合、耐震基準適合証明書等の提出が必要になります。証明書がない場合は、今年度中に現行の耐震基準に適合させる改修工事を実施し、実績報告時に提出するという道もありますが、年度内完了の制約が厳しくなります。

Q10. 伊勢原の物件は屋上が狭く、足場を組むスペースも限られています。何か選択肢はありますか。

A. ロープアクセス工法(無足場工法)が選択肢になり得ます。屋上や躯体にアンカーを設置できるかなど、建物側の条件を現地で確認する必要がありますので、まずは現況をご相談ください。足場が組める部位と組みにくい部位を分けて、ハイブリッドで対応するケースもあります。


制度は変わります。最新は必ず公式でご確認ください

本記事は2026年8月28日時点で公開されている一次情報をもとに作成しています。補助金制度は、予算の消化状況によって受付が前倒しで終了することがあり、要件や様式も年度途中で変更される場合があります。伊勢原市の太陽光補助が6月9日15時25分で終了した例、県の太陽光補助の第1期が実質2日で締め切られた例のように、「まだ大丈夫」と思っているうちに枠が埋まることは珍しくありません。

申請を検討される際は、必ず各制度の公式ページで最新情報をご確認いただき、判断に迷う点は各窓口へ直接お問い合わせください。

  • 伊勢原市の省エネ住宅・太陽光補助について:伊勢原市 経済環境部 環境対策課 環境衛生係 電話 0463-94-4737
  • 伊勢原市の固定資産税減額措置について:伊勢原市 総務部 資産税課 家屋・償却資産係 電話 0463-74-5469
  • 伊勢原市の耐震改修補助・住宅施策について:伊勢原市 建築住宅課(連絡先は市の組織一覧からご確認ください)
  • 神奈川県 太陽光・蓄電池補助について:神奈川県脱炭素戦略本部室補助金審査事務局 電話 050-1784-5835(平日8時45分〜17時00分、12時〜13時を除く)
  • 賃貸集合給湯省エネ2026事業について:同事業の公式サイト

株式会社明誠では、伊勢原市を含む神奈川県内の収益物件について、大規模修繕の工法選定と概算のご相談を承っています。「補助金の対象工事とそれ以外をどう切り分けるか」「太陽光設置と屋上防水をどの順序で組むか」「狭小地で足場とロープアクセスにどれだけ差が出るか」といった具体的なご相談も歓迎です。ご相談はお問い合わせフォームからお寄せください。


執筆:株式会社明誠 代表取締役 本間幸紘
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事を手がけ、通常の足場仮設工法、ロープアクセス工法(無足場工法)、両者を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法をご提案しています。ロープアクセス工事では日本初となるフランチャイズ展開を行い、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟することで、高品質と低価格を両立しています。

最終更新:2026年8月28日


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出典・参考資料

※本記事の内容は情報提供を目的としたものであり、税務・法務上の個別判断を保証するものではありません。実際の申請・税務処理にあたっては、各制度の窓口および顧問税理士にご確認ください。

築40年マンションの資産価値|修繕で差がつく3つの判断軸

築41年以上が中古マンション反響の約半分に──いま市場で起きていること

この記事で答える質問:築40年を超えたマンションの資産価値は、これから上がるのか下がるのか。オーナーと管理組合は何から手をつければいいのか。

先に結論を申し上げます。築40年超のマンションは「古いから価値がない」時代を抜けつつあります。ただし価値が残るのは、立地・管理履歴・これから10年の修繕計画の3つが揃った物件だけです。この3つのうち、管理組合とオーナーが今からでも動かせるのは後ろの2つ。ここに手を打てるかどうかで、10年後の売却価格と入居率がはっきり分かれます。

株式会社LIFULLが2026年7月21日に公表した「LIFULL HOME’S 築年数別 東京23区中古マンション調査」によれば、東京23区の中古マンションで築41年以上の物件が占める反響(問い合わせ)シェアは49.1%。2018年の25.5%から、8年でほぼ倍になりました(出典:株式会社LIFULL プレスリリース、2026年7月21日)。

数字で見る変化:25.5% → 49.1%

同調査で特に目を引いたのは、「築51年以上」の物件の伸びです。

築年帯 2018年の反響シェア 2026年の反響シェア 変化
築51年~ 3.9% 22.2% 約5.7倍
築41~50年 (21.6%相当) 26.9% 拡大
築41年以上 合計 25.5% 49.1% 約1.9倍

出典:株式会社LIFULL「LIFULL HOME’S 築年数別 東京23区中古マンション調査」(集計期間2020年~2026年6月/駅徒歩10分以内、専有面積30㎡未満・リノベ済み物件・異常値を除外)。

築50年を超えた物件への問い合わせが5.7倍というのは、私が20年近くこの業界にいて、正直かなり驚いた数字でした。

掲載シェアは18.3%──需要と供給がねじれている

もう一つ重要なのが、同じ調査の「掲載シェア」です。築41年以上の物件は、市場に出ている数(掲載シェア)では18.3%にとどまるのに、問い合わせは49.1%集まっている。つまり売り物より買いたい人のほうが多い状態です。

これは築古マンションのオーナーにとって、売却でも賃貸でも追い風です。ただし条件があります。買い手・借り手は「築年数は妥協するが、管理状態は妥協しない」からです。

現場で私が感じている「問い合わせの質」の変化

ここからは私の実感です。5年ほど前まで、築40年前後のマンションからいただくご相談は「雨漏りが出たので直したい」という事後対応が大半でした。ところがここ2年、「売却前に外観を整えたい」「重要事項調査報告書に修繕履歴をきちんと書きたい」という資産価値起点のご相談が明確に増えています。

先日も、築43年・68戸の管理組合さまから「来年の売却を考えている区分所有者が複数いるので、外壁の状態を数値で説明できる資料が欲しい」というご依頼をいただきました。工事の前に、まず調査と説明資料。20年前には、まずなかった依頼です。

背景には、買い手側の変化があります。築古マンションを検討する方は、いま住宅ローンの審査でも管理状態を見られます。金融機関は融資期間を決めるとき、建物の残存耐用年数と管理の質を判断材料にします。管理が良好で修繕履歴が明確な物件のほうが、買い手が長期のローンを組みやすく、結果として売却価格が下支えされる。この連鎖が、築古マンションの世界で現実に起きています。

つまり、管理組合が修繕にどう向き合ってきたかが、区分所有者一人ひとりの売却額として跳ね返る時代になった、ということです。


築40年マンションの資産価値を決める3つの判断軸

築古物件を見るとき、私はこの3つで判断しています。

軸1:立地──これは変えられない

1970年代・80年代に分譲されたマンションは、駅前・駅近の一等地に建っているケースが少なくありません。当時は駅周辺から順に開発されたためです。LIFULL HOME’S総研の中山登志朗氏も、築古マンションが注目される理由として立地の良さを挙げています(前掲プレスリリース)。

立地は後から変えられません。裏を返せば、立地が良い築古物件ほど、管理と修繕に投資する価値が高いということです。

軸2:管理・修繕の履歴と、修繕積立金の残高

買い手も金融機関も、いま最も厳しく見るのがここです。具体的には次の4点。

  1. 長期修繕計画が25年以上の期間で作られ、直近5年以内に見直されているか
  2. 修繕積立金が計画どおり積み上がっているか
  3. 過去の大規模修繕の実施年と施工内容が記録として残っているか
  4. 建築基準法第12条に基づく定期報告(後述)がきちんと出されているか

このうち3番目は、意外と多くの管理組合で抜け落ちています。管理会社が変わった、理事会の引き継ぎが口頭だった、施工会社が廃業した──理由はさまざまですが、「10年前に何をどこまで直したか」が分からなくなっているケースは珍しくありません。

私は建物調査に入るとき、まず過去の工事記録を見せていただきます。記録がないと、外壁のどこが改修済みでどこが竣工時のままなのかを、目視と打診で一から拾い直すことになります。これは調査費が上がる要因ですし、なにより長期修繕計画の精度を落とします。

もし記録が散逸しているようであれば、この機会に修繕履歴台帳を作り直すことを強くお勧めします。工事写真、仕様書、竣工図、定期報告書のコピーをまとめておくだけで、次の理事会も、次の買い手も助かります。台帳づくりは費用がほとんどかかりませんが、資産価値への効き方は大きい取り組みです。

軸3:これから10年の修繕計画に「現実性」があるか

一番見落とされるのがこれです。計画書に「12年後に2回目の大規模修繕、総額1億2,000万円」と書いてあっても、そのとき積立金が6,000万円しかなければ、計画は絵に描いた餅になります。

私はいつも理事長さまに、「計画の総額ではなく、積立残高との差額を見てください」とお伝えしています。差額が見えれば、値上げか、借入か、工法の見直しか、打てる手が具体的になります。


築40年マンションは「安くない」──価格データの読み方

築古=割安、というイメージをお持ちの方は、次の表を見てください。

築年数 2018年 平均掲載価格 2026年 平均掲載価格 上昇率
~5年 7,351万円 1億9,387万円 263.7%
6~10年 6,141万円 1億5,631万円 254.5%
11~20年 5,618万円 1億5,872万円 282.5%
21~30年 4,462万円 1億1,564万円 259.1%
31~40年 3,757万円 7,358万円 195.9%
41~50年 3,359万円 6,088万円 181.2%
51年~ 3,404万円 5,602万円 164.6%

出典:株式会社LIFULL プレスリリース(東京23区・2026年6月まで)。

築41~50年で平均6,088万円、築51年以上でも5,602万円。「築古だから安い」という水準ではありません。

上昇率が低い=伸びしろ、と読むこともできる

築浅が250〜280%上昇しているのに対し、築41年以上は160〜180%。この差は、市場が築古物件に「管理と修繕のリスク」を織り込んでいるからです。

逆に言えば、そのリスクを潰した物件は、価格差を縮められる余地があるということです。私はここに、修繕という仕事の意味があると思っています。塗り替えは見た目の話ではなく、価格差を縮める投資です。

固定資産税は下がるが、維持費は上がる

築古マンションのメリットとして、法定耐用年数の経過により固定資産税評価額が下がる点が挙げられます。一方で、管理費・修繕積立金は築年数とともに上がるのが一般的です。買い手も借り手も、いまは月々のランニングコスト込みで比較しています。


修繕積立金は足りているか──公的データで自己診断する

ここからが本題です。資産価値の話は、最終的に修繕積立金の話に着地します。

月額平均は13,054円

国土交通省「令和5年度マンション総合調査」によれば、月/戸当たりの修繕積立金の平均額は13,054円、駐車場使用料等からの充当額を含む総額の平均は13,378円でした(出典:国土交通省 令和5年度マンション総合調査の結果について)。

戸あたり月13,054円ということは、100戸のマンションで年間約1,566万円。12年で約1億8,800万円。ここから日常修繕や小規模工事を差し引いた残りが、大規模修繕の原資になります。ご自身のマンションの数字と、ぜひ突き合わせてみてください。

36.6%が「計画に対して不足」

同調査では、長期修繕計画上の必要額に対して積立額が不足しているマンションが36.6%、そのうち「20%超の不足」が11.7%という結果が出ています(同調査)。3棟に1棟は足りていない計算です。

また、計画期間25年以上の長期修繕計画に基づいて積立額を設定しているマンションは59.8%。裏を返せば、4割は25年未満の計画で運営していることになります。築40年を超えた建物で25年未満の計画は、次の設備更新(給排水管、エレベーター、サッシ)を織り込めていない可能性があります。

値上げを総会で通すための3ステップ

「値上げが必要なのは分かるが、総会で否決される」というご相談を、私は毎年いただきます。私の経験上、通る提案には共通点があります。

  1. 現状の差額を1枚の表にする(計画必要額/現在残高/不足額/戸あたり不足額)
  2. 選択肢を3つ出す(値上げのみ/工法見直しで工事費を下げる/両方の組み合わせ)
  3. 値上げしない場合に起こることを金額で示す(借入利息、劣化進行による工事費増、売却価格への影響)

3番目が抜けている資料が本当に多い。「上げてください」だけでは、区分所有者の財布は動きません。「上げないと、こちらのコストが増えます」まで示して、はじめて比較になります。


築40年超で必ず来る「外壁の全面打診調査」──建築基準法第12条

築古マンションのオーナー・管理組合に、法令面で必ず関わってくるのがこれです。

10年ごとの調査義務

建築基準法第12条に基づく定期報告制度では、一定規模以上の特定建築物について、竣工または外壁改修から10年を経過したものは、外壁のタイル・モルタル等について全面打診等による調査が求められます。2008年(平成20年)4月1日施行の改正で、調査項目・方法・判定基準が国土交通省告示第282号に定められました(出典:国土交通省 建築基準法に基づく定期報告制度について、定期報告制度パンフレット)。

対象建築物の用途・規模や報告の頻度は特定行政庁(都道府県・市区)ごとに定められています。ご自身の物件が対象かどうかは、必ず所在地の特定行政庁の公表資料でご確認ください。

なお2024年(令和6年)6月には告示の一部改正が公布され、調査方法の選択肢が広がっています。赤外線調査(無人航空機=ドローンを用いるものを含む)なども、一定の条件下で活用しうる方向です。制度は変更される可能性がありますので、最新の内容は必ず国土交通省または特定行政庁の公式情報でご確認ください。

「調査のためだけに足場を組む」という無駄

ここが、私が一番もったいないと感じている点です。

全面打診調査のためだけに建物全周へ仮設足場を組むと、足場費用だけで数百万円規模になることがあります。しかも調査の結果「まだ修繕は先で大丈夫」と分かった場合、その足場費は丸ごと調査コストになってしまいます。

調査から工事までの期間が空くと、工事のときにもう一度足場を組むことになります。同じ費用を2回払う構図です。

ロープアクセス工法・ドローンという選択肢

私たちが提案しているのは、調査は足場を組まずに行い、工事が必要な範囲が確定してから最適な工法を選ぶという順番です。

ロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が壁面を昇降しながら調査・施工する無足場工法)であれば、足場を組まずに打診調査ができます。ドローンによる赤外線調査と組み合わせれば、全体をスクリーニングしてから、要注意箇所だけロープで直接打診する、という段取りも可能です。ロープアクセス工法の一般的な安全基準や技術解説は、姉妹サイトロープアクセスドットコムにまとめています。

明誠のドローン点検・調査のご案内、点検・調査サービスもあわせてご覧ください。


足場とロープアクセス、どちらを選ぶべきか──費用と工期の比較

「ロープアクセスは安い」と単純に言い切るつもりはありません。向き不向きがあります。

比較項目 通常足場工法 ロープアクセス工法(無足場) ハイブリッド工法
仮設費 建物全周分が必要 原則不要 必要部位のみ
工期 架設・解体の期間が加算 架設不要のため短縮しやすい 中間
居住者の生活影響 窓周りの養生期間が長い/防犯面の配慮が必要 窓が塞がれる期間が短い 部位により限定的
作業効率(広い面) 高い 足場に劣る場合がある 面は足場、狭所はロープ
適する場面 全面改修、複雑形状、低層 部分補修、調査、高層、足場架設が難しい立地 大規模・複雑物件の総合最適化

ロープアクセスが向かないケース──正直に申し上げます

  • 外壁全面を一気に塗り替えるような大面積の工事は、足場のほうが作業効率で有利な場合があります
  • 屋上にアンカーを取れる支持点が確保できない建物では、採用が難しいことがあります
  • 強風・降雨時は作業を止める判断が必要で、天候による工程変動があります
  • 部材の搬入量が多い工事(サッシ交換など)は足場と併用したほうが現実的です

私は、ロープアクセスを「すべての現場の答え」だとは考えていません。建物ごとに、足場・ロープアクセス・その組み合わせの3つを見積もって比較する。これが正しい進め方だと思っています。

工法を1つしか持たない会社に相談すると、当然その工法での見積りしか出てきません。足場専門の会社は足場で、ロープ専門の会社はロープで組み立てる。どちらが悪いという話ではなく、比較する材料が最初から片方しかない状態になってしまう、ということです。

管理組合さまが相見積りを取るときは、「足場案とロープアクセス案を両方出せますか」と最初に聞いてみてください。この一言で、比較の土俵が整います。

ハイブリッド工法という第3の答え

たとえば、大面積のバルコニー側は足場、道路に面して足場が組みにくい面と塔屋・高所の狭所はロープアクセス、という組み合わせ方です。仮設費を圧縮しつつ、作業効率も落とさない。私はこれを、条件が合う物件では必ずワンセットで提案するようにしています。

工法の考え方は明誠の3工法・強みのご紹介、大規模修繕の全体像は大規模修繕工事のご紹介、ロープアクセスの詳細はロープアクセス工法のご紹介にまとめています。


賃貸オーナー視点:築古物件で入居率と売却価格を守る

ここからは、収益物件をお持ちのオーナーさま向けの話です。

外観は「内見前」に効いている

賃貸の内見では、部屋に入る前にエントランスと外壁を見られます。室内をいくらリノベーションしても、外壁のチョーキング(手で触ると白い粉が付く塗膜劣化)やタイルの浮き、シーリングの割れが目立てば、そこで検討から外れることがあります。

私が現場で悔しい思いをするのは、「室内フルリノベに1戸あたり300万円かけたのに、共用部が手つかずで空室が埋まらない」というご相談を受けたときです。順番が逆だったのではないか、と思うことがあります。

一棟フルリノベか、部分修繕か

前掲のLIFULL HOME’S総研の解説でも、築古マンションを買う際は「一棟丸ごとフル・リノベーションされている物件が比較的安心」との指摘がありました。売却を見据えるなら、共用部の状態は買い手にとって分かりやすい判断材料になります。

とはいえ、いきなり一棟フルリノベは資金的に難しいケースがほとんどです。私がお勧めしているのは次の順番です。

  1. 調査(足場なしで現状を数値化する)
  2. 止血(漏水・タイル剥落リスクなど、事故につながる箇所を先に処置)
  3. 見せ場(エントランス・共用廊下・道路側の外壁など、内見動線を優先)
  4. 全面(積立と補助制度のタイミングを見て実施)

2番目の「止血」を後回しにすると、費用は雪だるま式に増えます。タイルの浮きは放置すると剥落につながり、剥落は第三者への事故に直結します。雨水が躯体に入れば鉄筋が錆び、爆裂(コンクリートが内部から押し出されて割れる現象)に進みます。爆裂まで進んだ箇所の補修は、塗り替えだけで済んだ段階と比べて、費用も工期も大きく変わります。

私が現場で見てきた範囲でも、「あと2年早く手を打っていれば、この面は塗装だけで済んだ」という物件はいくつもありました。劣化は静かに進んで、ある時期から急に加速します。だからこそ、調査を安く早く済ませられる手段を持っておくことに意味があると考えています。

なお、収益物件の場合は工事費を修繕費として計上できるか、資本的支出として減価償却するかで、単年度の損益への影響が変わります。この線引きは工事内容によって判断が分かれるため、実際の処理は必ず顧問税理士にご確認ください(本記事は税務上の助言を行うものではありません)。

漏水でお困りの場合は漏水・雨漏り調査のご案内、部分補修はピンポイント施工のご案内、オーナーさま向けの体制はマンション・ビルオーナーさま向けサービスをご覧ください。


管理計画認定制度を「資産価値の証明書」として使う

最後に、管理組合さまにお伝えしたい制度の話です。

制度の概要

マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)の改正により、マンション管理計画認定制度が2022年(令和4年)4月1日から施行されています。管理適正化推進計画を作成した地方公共団体の区域内で、管理計画が一定の基準を満たすマンションが認定を受けられる仕組みです(出典:国土交通省 マンション管理計画認定制度)。

認定基準には、管理組合の運営(集会が年1回以上開催されていること等)、管理規約、経理、長期修繕計画の作成および見直しなどが含まれます。手続の支援は公益財団法人マンション管理センターが行っています。

認定を取りに行く順番

認定基準の中で、多くの管理組合がつまずくのが長期修繕計画の要件です。逆に言えば、長期修繕計画をきちんと作り直すことが、認定への最短ルートであり、同時に資産価値対策そのものになります。

私は、順番としてこう考えています。

順番 やること 得られるもの
1 建物調査(足場なしで実施可能) 現状の劣化状況の数値データ
2 長期修繕計画の見直し 認定基準の充足+総会説明の根拠
3 工法比較(足場/ロープ/ハイブリッド) 工事費の圧縮余地
4 積立金計画の再設計 不足額の解消道筋
5 管理計画認定の申請 対外的な「管理が良い」証明

制度の要件や運用は自治体によって異なり、変更される可能性もあります。申請にあたっては、必ずお住まいの自治体の公式情報をご確認ください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 築40年を超えたマンションは、もう資産価値が上がることはないのでしょうか。
A. 東京23区の中古マンションでは、築41年以上の物件が反響(問い合わせ)シェアの49.1%を占めるまで拡大しており、需要は明確に存在します(出典:株式会社LIFULL、2026年7月21日)。ただし価格を左右するのは立地・管理履歴・修繕計画の3点です。詳しくは本文の「築40年マンションの資産価値を決める3つの判断軸」をご覧ください。

Q2. 修繕積立金が足りているかどうか、簡単に確認する方法はありますか。
A. 長期修繕計画の必要積立額と現在の残高を突き合わせるのが基本です。国土交通省「令和5年度マンション総合調査」では、計画に対して不足しているマンションが36.6%、うち20%超の不足が11.7%という結果でした(出典:国土交通省)。まずは戸あたり月額と、全国平均13,054円を比べてみてください。

Q3. 外壁の打診調査のために、毎回足場を組む必要がありますか。
A. 建築基準法第12条に基づく定期報告では、竣工または外壁改修から10年を経過した建築物について全面打診等による調査が求められますが、調査方法には選択肢があります。ロープアクセス工法やドローンによる赤外線調査を用いれば、足場を組まずに実施できる場合があります。対象範囲・方法は特定行政庁により異なるため、国土交通省の定期報告制度のページと所在地の特定行政庁の公表資料をご確認ください。

Q4. ロープアクセス工法は足場より安いのですか。
A. 仮設足場の架設・解体費が原則不要になるため、部分補修や調査では費用を抑えやすい傾向があります。一方、外壁全面を一括で塗り替えるような大面積工事では足場のほうが効率的な場合もあります。明誠では足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3案を比較してご提示しています。工法の技術解説はロープアクセスドットコムもご参照ください。

Q5. 管理計画認定を取ると、何が変わりますか。
A. 地方公共団体から「適切な管理計画を持つマンション」として認定されるため、売買・賃貸の場面で管理状態を対外的に示す材料になります。認定基準には長期修繕計画の作成・見直しが含まれるため、取得に向けた作業そのものが修繕計画の整備につながります(出典:国土交通省)。


この記事のポイントまとめ

  • 東京23区の中古マンションで築41年以上の反響シェアは49.1%(2018年は25.5%)
  • 掲載シェアは18.3%にとどまり、築古物件は需要超過の状態にある
  • 築41~50年の平均掲載価格は6,088万円、築古=割安とは言えない水準
  • 修繕積立金は月/戸あたり全国平均13,054円、36.6%が計画に対して不足
  • 築40年超は建築基準法第12条の全面打診調査が関わる、足場なしの調査手段がある
  • 足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3案比較が、工事費圧縮の出発点になる
  • 管理計画認定制度は、修繕計画の整備と資産価値の対外証明を同時に進められる

最後に、私の実感をひとつだけ。

築年数は、どうやっても巻き戻せません。けれど「この建物は手が入っている」という印象は、外壁と共用部で確実に作れます。そして今、市場はその印象にきちんと値段をつけ始めています。

まずは、いまの建物の状態を数字にするところからで構いません。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。

お問合せフォームはこちら


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法(無足場工法)/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社です。建物ごとに足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法から最適な組み合わせをご提案します。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開しています。

最終更新:2026年8月16日

※本記事の制度・統計情報は執筆時点のものです。制度は変更される可能性がありますので、申請等にあたっては必ず各公式サイトで最新情報をご確認ください。


出典・参考資料

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