
2026年6月の金融政策決定会合で、日本銀行は政策金利を1.00%へと引き上げました(利上げ幅+0.25%)。長く続いた超低金利の時代から、「金利のある世界」へと日本経済が本格的に移行しつつあります。
この変化は、住宅ローンや預金だけの話ではありません。建物を建て、直し、維持していく建設業にも、そして私たちが日々お見積もりしている工事金額にも、じわじわと影響を及ぼしていきます。マンション・ビル・ホテルを所有・管理されている方にとっては、「これから大規模修繕の費用はどうなるのか」という、きわめて切実なテーマです。
この記事では、日銀の利上げが建設業界にどのような経路で影響するのか、そしてそれが工事金額にどう反映されうるのかを、現時点での推測としてできるだけ分かりやすく整理します。なお本記事は一般的な情報提供と見通しの整理を目的としたもので、特定の投資判断を保証するものではありません。
まず押さえたい:日銀の利上げで何が変わったのか
今回の利上げで政策金利は1.00%となりました。数字だけ見れば小さく感じるかもしれませんが、ポイントは「水準」よりも「方向」です。市場では、年内のさらなる追加利上げを見込む声もあり、金利が「上がっていく局面」に入ったという認識が広がっています。
金利が上がるということは、ひとことで言えば「お金を借りるコストが上がる」ということです。これは、住宅を買う個人だけでなく、建物を建てる事業者、不動産に投資する法人、そして建設会社そのものにも共通して効いてきます。建設業は、材料の仕入れから工事完成・代金回収まで時間がかかり、その間の資金を借入でまかなう「資金集約型」の産業です。だからこそ、金利の動きに対して構造的に敏感なのです。
金利上昇が建設業に効く「4つの経路」
日銀の利上げが建設業に与える影響は、主に次の4つの経路に整理できます。
経路①:建設会社・デベロッパーの資金調達コスト上昇
建設会社や不動産開発会社(デベロッパー)は、用地の取得費、資材の仕入れ、工事中の運転資金などを借入でまかなうのが一般的です。金利が上がれば、この借入にかかる利息が増えます。とくに大規模なプロジェクトほど借入額が大きく、工期も長いため、金利上昇の影響は累積的に効いてきます。資金調達コストの上昇は、企業の利益を圧迫し、最終的には工事の値付けにも影響します。
経路②:不動産開発・投資の減速(需要面の影響)
金利が上がると、不動産投資の採算(利回り)が悪化します。借入金利が上がれば、同じ家賃収入でも手元に残るキャッシュは減り、投資の妙味は薄れます。その結果、新規の開発計画が見送られたり、着工が先送りされたりして、建設の「需要」そのものが減速する可能性があります。新築マンションやオフィスビルの着工件数が鈍れば、建設業界全体の受注環境は厳しくなります。
経路③:住宅ローン金利の上昇(個人需要の影響)
政策金利の上昇は、時間差を伴いながら住宅ローン金利にも波及していきます。住宅ローンの負担が増せば、新築住宅・分譲マンションの購入意欲は冷え込みやすくなります。これも、住宅系の建設需要を抑える方向に働きます。
経路④:設備投資・修繕投資の判断への影響
企業や個人が「いま大きな工事をすべきか」を判断する際、金利は重要な変数です。借入で修繕や設備投資を行う場合、金利が上がればその分だけ総支払額が増えます。一方で、「これ以上金利が上がる前に、借入を起こすなら早めに」という前倒しの動きが出ることもあり、影響は一方向とは限りません。
では、「工事金額」にはどう反映されるのか——相反する2つの力
ここが本記事の核心です。金利上昇は工事金額に対して、上げる力と下げる力の両方を同時に生み出します。どちらが強く出るかは、時期や工事の種類によって変わります。
工事金額を「上げる」方向に働く力
第一に、資金調達コストの転嫁です。建設会社の借入金利が上がれば、その負担はいずれ見積もりに反映されます。とくに工期が長く、立替資金の大きい大規模工事ほど、金利コストが価格に乗りやすくなります。
第二に、在庫・立替コストの増加です。資材を早めに確保して保有する場合、その資金にかかる金利が上がれば、保有コストも増えます。
そして忘れてはならないのが、金利とは別の要因である資材価格と人件費です。近年の建設費は、資材価格の高止まりと、深刻な人手不足による労務費の上昇によって、すでに高い水準にあります。いわゆる「2024年問題」以降、職人の働き方改革や担い手不足が続いており、人件費が下がる気配は乏しいのが実情です。金利上昇は、こうした「もともと高い建設費」の上に、さらに資金面のコストを上乗せする要因になり得ます。
工事金額を「下げる(抑える)」方向に働く力
一方で、価格を抑える力も存在します。最大のものは需要の減速です。前述のとおり、金利上昇で開発や投資が鈍れば、建設会社の受注競争は激しくなります。仕事を取るために価格競争が起きれば、工事金額は下押し圧力を受けます。
もう一つ、見逃せないのが為替の影響です。一般に、日本の利上げは円高方向に働きやすいとされます。鋼材やアルミ、塗料の原料など、建設資材には輸入や海外市況に左右されるものが多くあります。仮に利上げをきっかけに円安が修正されれば、輸入資材のコストが下がり、資材価格の高騰が一服する可能性もあります。これは工事金額にとっては朗報となり得る要素です。
推測:当面の工事金額はどう動くか
これらを総合すると、現時点での見通しは次のように整理できます。あくまで一つの推測としてお読みください。
短期的には、工事金額は高止まりが続く可能性が高いと考えられます。なぜなら、工事金額を決める最大の要因は依然として資材価格と人件費であり、これらは金利とは別の構造的な理由(人手不足、世界的な資材需給)で高い水準にあるからです。金利上昇による資金調達コストの増加は、この高止まりにさらに上乗せされる方向に働きます。
中長期的には、二極化が進む可能性があります。金利上昇で開発・投資が鈍れば需要が減速し、受注競争による価格下押しが効いてきます。同時に、円高修正が進めば資材コストが落ち着く可能性もあります。一方で、人件費の高止まりは続くと見られ、「人の手がかかる工事ほど高く、効率化できる工事ほど価格競争にさらされる」という構図が強まることも考えられます。
つまり、金利は工事金額に対して「単純に上げる/下げる」ではなく、複数の力を通じて複合的に効いてくる、というのが実態に近い見方です。
オーナー・管理組合が今、考えておくべきこと
金利のある世界で、建物を持つ側はどう動けばよいのでしょうか。推測される環境変化をふまえ、押さえておきたい視点を整理します。
第一に、修繕の先送りは、これまで以上にコスト増につながりやすいという点です。資材・人件費が高止まりしているうえに、借入で修繕費をまかなう場合は金利負担も増します。さらに、劣化を放置すれば被害が拡大し、補修範囲そのものが大きくなります。「待てば安くなる」という環境ではないため、必要な修繕は計画的に、できるだけ傷が小さいうちに進めるほうが、結果的に総コストを抑えやすくなります。
第二に、工法の選択でコストをコントロールするという発想です。大規模修繕の費用のうち、かなりの割合を足場などの仮設費が占めます。資材や人件費、金利といった「下げにくいコスト」が増える環境だからこそ、足場・ロープアクセス(無足場工法)・両者を組み合わせたハイブリッド工法を比較し、建物に合った最も無駄のない工法を選ぶことの価値が高まります。仮設費を圧縮できれば、コスト環境の悪化を一部相殺できます。
第三に、長期修繕計画と修繕積立金の見直しです。金利のある世界では、資金計画の前提も変わります。借入を前提とした修繕計画なら金利上昇を織り込む必要がありますし、積立金で備えるなら高止まりする工事費を前提に計画を点検しておくことが重要です。
まとめ
2026年6月の日銀の利上げは、建設業に対して、資金調達コストの上昇と需要の減速という相反する影響を同時に及ぼします。工事金額には、価格を押し上げる力(金利・資材・人件費)と、押し下げる力(需要減による競争、円高修正による資材安)の両方が働き、当面は資材と人件費を主因とした高止まりが続きやすい、というのが現時点での推測です。
建物を持つ側にとって大切なのは、こうした不確実な環境のなかで「待つ」のではなく、必要な修繕を計画的に進め、工法選択と資金計画でコストをコントロールしていくことです。金利も資材も人件費も、私たちの力で動かせるものではありませんが、「どの工法で、いつ、どう直すか」は、選ぶことができます。
よくあるご質問(金利と工事金額)
Q1. 金利が上がると、大規模修繕の費用はすぐに高くなりますか?
すぐに大きく跳ね上がるというよりは、じわじわと効いてくる性質のものです。工事金額を決める最大の要因は資材価格と人件費で、これらは金利とは別の理由で高止まりしています。金利上昇は、資金調達コストの面からそこに上乗せされる形で効いてきます。
Q2. 金利が上がるなら、修繕は先送りしたほうが得ですか?
一概にそうとは言えません。資材・人件費が高止まりし、借入金利も上がる環境では「待てば安くなる」とは限りません。むしろ劣化の放置で補修範囲が広がり、総額が増えるリスクがあります。必要な修繕は早めの計画が安全です。
Q3. コスト上昇に対して、オーナー側にできる工夫はありますか?
工法の選択が有効です。費用の大きな割合を占める仮設(足場)費は、ロープアクセスやハイブリッド工法の活用で圧縮できる場合があります。複数の工法を比較できる会社に相談することで、コスト環境の悪化を一部相殺できる可能性があります。
本記事は2026年6月時点の公表情報をもとにした一般的な情報提供・見通しの整理であり、将来の金利・資材価格・工事金額の動向を保証するものではありません。また、特定の投資判断や金融商品の推奨を目的とするものではありません。最新の金融政策の内容は日本銀行等の一次情報をご確認ください。
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株式会社明誠は、創業から6000棟超の施工実績を持つ、マンション・ビル・ホテルの総合改修工事会社です。従来の足場仮設による大規模修繕工事、足場を組まない無足場工法「ロープアクセス」、そして両者を組み合わせた「ハイブリッド工法」という3つの工法を扱い、建物の形状・ご予算・長期計画に合わせて、御物件にとって本当にベストな工法をご提案できる、日本でも数少ない会社です。
さらに、塗装・防水・タイル・電気・看板工事など、各分野の専門職が加盟するフランチャイズのネットワークを持ち、それぞれの工程をその道のプロが責任をもって施工することで、高品質と低価格を両立しています。
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【会社名】 株式会社明誠
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